(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 68/08 20060101AFI20241101BHJP
C07C 68/06 20200101ALI20241101BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C07C68/08
C07C68/06
C07C69/96 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529885
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 KR2022018154
(87)【国際公開番号】W WO2023096263
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0164916
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ミ ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ワン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョン ミョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ウ ネ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006AD17
4H006BA69
4H006BA83
4H006BC53
4H006KA57
(57)【要約】
本発明は、カーボネートの製造方法に関する。本発明の方法は、カーボネート生成反応にて用いられた触媒を安全に除去することができる。本発明の方法は、カーボネート生成反応の生成物を精製する工程において、触媒が原因で発生し得る不良を予防することができる。本発明の方法は、高収率でカーボネートを製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒の存在下で反応させて、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートを含む生成物を製造する、反応段階と、
前記生成物に触媒除去剤を投入し、前記触媒と触媒除去剤の中和塩を生成させる、触媒中和段階と、
前記中和塩を除去する、中和塩除去段階と、を含み、
前記触媒除去剤は、pKa値が2.0以下である、
カーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記触媒除去剤は、線状ジカルボン酸である、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記触媒除去剤は、シュウ酸である、
請求項2に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記反応段階は、水分含有量が20ppm~500ppmの範囲内の原料を反応させるものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記反応段階は、前記ジメチルカーボネートの重量を基準として0.02重量%~0.2重量%の範囲内の触媒を用いるものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記触媒中和段階は、前記触媒除去剤を投入した生成物のpHが5~8の範囲内になるように前記触媒除去剤を投入するものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記触媒中和段階は、前記触媒の重量に対して0.7倍~1倍の範囲内の前記触媒除去剤を投入するものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記触媒は、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムヒドロキシド、またはナトリウムヒドロキシドである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボネートの製造方法に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、カーボネート生成反応にて用いられた触媒を効率的に除去する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バッテリ電解液の有機溶媒としては、主にエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)が用いられる。EMCとDECは、ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)のエステル交換反応により製造される。該反応は、可逆反応でもある。また、該反応を触媒の存在下で行うこともできる。このとき、触媒としては、主に塩基性触媒が用いられる。以下の反応式1は、当該反応を示すものである(ここで、MeOHは、メタノールの略語である):
【化1】
【0004】
前記反応では、触媒として塩基性触媒(主にアルカリ金属またはアルカリ土類金属などを金属成分として含む、金属塩)が用いられる。当該触媒は、前記反応の反応物または生成物であるカーボネートに対する溶解度が低い。したがって、前記触媒を別途に除去しなければ、後続する工程において不良が発生する。なぜなら、析出した触媒は、後工程にてカラムの目詰まり(column plugging)またはファウリング(fouling)を引き起こすからである。
【0005】
触媒を除去する方法として、触媒をフィルターでろ過する方式を考慮したことがある。しかし、触媒の大きさがフィルターの気孔の大きさよりも小さい場合、または前記反応の生成物が含むアルコール(メタノール)が前記触媒を溶解した場合には、前記フィルターで触媒をろ過することができない。
【0006】
また、前記反応に適用する触媒としては、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドなどが挙げられるが、これらは強塩基性であり、禁水性物質である。したがって、フィルター等を用いて前記触媒を除去したり、これを交換する過程で当該触媒をそのまま雰囲気に曝露すると安定性の問題も発生し得る。
【0007】
特許文献1は、NaOCH3触媒を適用した反応性蒸留を介してジメチルカーボネートを製造し、金属焼結フィルターを適用し、前記触媒を除去する内容を紹介する。しかしながら、特許文献1は、フィルターで触媒を除去するため、フィルターを交換する過程で雰囲気または水分に触媒が暴露され、安全性の問題が発生し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、カーボネート生成反応にて用いられた触媒を安全に除去しようとするものである。
【0010】
本発明は、カーボネート生成反応の生成物を精製する工程において、触媒が原因で発生し得る不良を防止しようとするものである。
【0011】
本発明は、高収率でカーボネートを製造しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のカーボネートの製造方法は、ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒の存在下で反応させて、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートを含む生成物を製造する、反応段階と、前記生成物に触媒除去剤を投入し、前記触媒と触媒除去剤の中和塩を生成させる、触媒中和段階と、前記中和塩を除去する、中和塩除去段階と、を含み、前記触媒除去剤はpKa値が2.0以下のものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法は、カーボネート生成反応にて用いられた触媒を安全に除去することができる。
【0014】
本発明の方法は、カーボネート生成反応の生成物を精製する工程において、触媒が原因で発生し得る不良を防止することができる。
【0015】
本発明の方法は、高収率でカーボネートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本出願の内容についてより詳しく説明する。
【0017】
上述したように、本発明は、カーボネート、具体的には、エチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートを生成する反応にて用いられた触媒を効率的に回収または除去しようとするものである。その結果、前記生成物を高純度で得ることができる。また、本発明では、前記触媒を安全に除去することができる。こうして生成されたカーボネートを二次電池電解液の溶媒として有用に適用することができる。
【0018】
上述したように、本発明における前記反応の生成物は、前記反応に適用した触媒を溶かすことができない。触媒を除去せずに反応を行った後、工程を進めると、前記触媒が析出されて管等が詰まり、工程不良の原因となるカラムの目詰まりまたはファウリングを引き起こす。フィルターを用いて触媒をろ過してみることもできるが、前記反応の副産物であるアルコールに前記触媒が溶解され得、溶解した触媒は前記フィルターをそのまま通過することができる。溶解した状態の触媒を含む生成物ストリームもまた後工程不良を引き起こすため、溶解した状態の触媒も除去できなければならない。また、上述した反応に用いられる触媒は、禁水性物質であるため、フィルターを交換する過程などで前記触媒を雰囲気に曝露すると安全事故の危険性もある。
【0019】
本発明は、前記反応に適用した触媒を除去する特定の触媒除去剤を適用する。前記触媒除去剤は、前記触媒と塩を形成することができる。その結果、本発明の方法を適用すると、カーボネートの製造反応にて用いられた触媒を安全に除去し、高純度のカーボネートを製造することができる。また、工程の経済性もまた確保することができる。
【0020】
本発明におけるカーボネートの製造方法は、少なくとも3段階からなる。
【0021】
本発明におけるカーボネートの製造方法は、ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒の存在下で反応させて、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートを含む生成物を製造する、反応段階を含む。
【0022】
後述するが、ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)は、エステル交換反応により主要生成物としてエチルメチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)を、副生成物としてメタノール(MeOH)を生成する。
【0023】
前記原料の反応物間の組成によって反応物の転化率および目的生成物の選択性と収率が異なり得る。したがって、目的生成物の種類と反応物の転化率を最大化することを考慮して、前記原料の反応物間の組成を調節することができる。
【0024】
一具現例では、前記原料は、ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)を0.2~8.0の範囲内のモル比(EtOH/DMC)として含むことができる。
【0025】
一方、EMCとDECの市場予測資料では、今後EMCの需要がDECに対して約5倍以上高いといわれている。これを考慮すると、同じ原料を用いたとき、選択性の高いEMCを製造することが有利であり得る。このとき、前記原料は、DMCとEtOHを0.5~2.0の範囲内のモル比(EtOH/DMC)で含むことができる。
【0026】
また、前述した成分は、通常液状として存在するため、これらを混合した原料は、若干の水分も含み得る。例えば、前記原料を製造する段階では、水分含有量が20ppm~500ppmの範囲内である原料を反応させるものであってもよい。
【0027】
本発明は、生成物に残留する触媒を除去するためのものであるため、前記原料を反応させる反応器は、少なくとも触媒を反応生成物に残す反応器である。
【0028】
一方、固定層反応器(Fixed Bed Reactor)は、反応器内に触媒を充填し固定する。本発明では、生成物中に残っている触媒を除去しようとするが、固定層反応器では、生成物に触媒が残っていない。したがって、本発明にて述べる反応器は、少なくとも前記固定層反応器ではない。すなわち、本発明にて述べる反応器は、少なくとも反応器内で流動する触媒を含む反応器である。このような反応器は、業界では流動層反応器と呼ばれる。
【0029】
本発明の方法では、前記反応器として連続フロー式反応器を用いることができる。連続フロー式反応器は、言葉通り反応物の供給と生成物の流出が連続して起こる反応器である。
【0030】
連続フロー式反応器は、大きく2つに分類することができる。第一に、連続撹拌槽型反応器または混合流れ反応器(CSTRまたはMFR)であり、第二に、プラグフロー反応器(PFR)である。この中、CSTRは反応器内で成分間の組成を一定に保持することができる。本発明は、前記反応器としてCSTRを適用し、満遍なく反応を進めることができる。すなわち、一具現例では、前記反応段階は、前記原料を連続撹拌槽型反応器(CSTR)にて反応させてもよい。
【0031】
本発明の方法は、前記反応器の設計に関する事項を特に限定するものではない。本発明の方法では、反応器の設計事項(大きさなど)は、前記反応の速度、目的生成物の収率および/または選択性、並びに反応物の転化率などを総合的に考慮して決定することができる。
【0032】
本発明の方法にて用いられる化学反応は、DMCとEtOHのエステル交換反応である。化学反応では反応物の組成、触媒の含有量、反応温度などによって、前記反応における反応物の転化率、目的生成物の選択性、および収率などが異なる。ここで、触媒の含有量と反応温度は、反応速度に影響を及ぼす。
【0033】
一方、本発明にて用いられる化学反応は、上述したように、原料の反応物の組成によって生成物組成が大きく異なる。また、特定の反応器、例えば、CSTRにて前記反応を進めると、特に反応物の組成が生成物の組成を決定することができる。この場合、触媒の含有量と温度などは生成物の組成に大きな影響を及ぼさない場合がある。触媒の含有量と温度が変化すると、目標生成物の組成に達する時間のみに変化を与え、最終目標組成は変化がない。
【0034】
また、前記反応の転化率が100%でなくてもよいため、前記生成物は前記原料が含むDMCとEtOHを所定量含むことができる。
【0035】
本発明の方法では、前記反応は触媒の存在下で行われる。前記反応に適用できる触媒は、メトキシドナトリウム(Sodium Methoxide、NaOCH3)、エトキシドナトリウム(Sodium ethoxide、NaOC2H5)、水酸化カリウム(Potassium Hydroxide、KOH)、水酸化ナトリウム(Sodium Hydroxide、NaOH)などであってもよい。これらの中でも、メトキシドナトリウム(またはナトリウムメトキシド、NaOCH3、Sodium Methoxide;SME)を代表的に用いることができる。反応物または生成物中のカーボネートは、この触媒を溶解できないが、反応物または生成物中のアルコールは、当該触媒を溶解することができる。したがって、前記生成物は、所定量のナトリウムイオン(Na+)を含むことができる。これは普通のフィルターではろ過することができず、反応後の工程である精製工程などにて析出され、工程不良を引き起こし得る。また、前記触媒は禁水性成分であるため、上述したように別途に処理を施すことなくフィルターで除去しようとすると、フィルターなどの交換過程で雰囲気に曝露され、安全事故の危険性が発生し得る。
【0036】
一具現例では、前記触媒の使用量もまた適切に調節することができる。一具現例では、前記反応段階は、前記ジメチルカーボネートの重量を基準として0.02重量%~0.2重量%の範囲内の触媒を用いるものであってもよい。前記触媒の含有量は、触媒自体の含有量を意味することができる。例えば、前記触媒を特定の溶媒に溶解させた溶液として適用することができるが、このとき、前記触媒の含有量は、前記溶液ではない、溶媒を除いた触媒自体の含有量を意味することができる。
【0037】
本発明の方法では、特に前記のような触媒の使用によって発生する問題を解決しようとするものである。
【0038】
本発明におけるカーボネートの製造方法は、前記生成物に触媒除去剤を投入し、前記触媒と触媒除去剤の中和塩を生成させる、触媒中和段階を含む。具体的には、前記触媒中和段階にて、触媒除去剤は前記触媒と中和反応し、中和塩とメタノール、エタノール、または水を生成することができる。ここで、中和塩を除く残りの成分は触媒の種類によって異なる。前記のような反応にて適用した触媒は、通常塩基性成分であるため、これと適切な中和反応を行って塩を生成することができる触媒除去剤は酸性成分である。具体的には、前記反応にて適用した触媒は、強塩基性成分であるため、これと中和反応を行って塩を生成することができる触媒除去剤は強酸性成分である。したがって、本発明の方法にて適用する前記触媒除去剤は、pKa値が2.0以下である。
【0039】
pKa値が2.0以下である化合物としては、多様なものを適用することができるが、本発明では特にジカルボン酸化合物、より具体的には線状ジカルボン酸化合物を触媒除去剤として用いることが有利であり得る。ここで、線状ジカルボン酸とは、線状アルキレンが2つのカルボキシル基間に存在する構造を有する化合物を指すことができる。このような線状ジカルボン酸化合物の代表的な成分としては、シュウ酸である。本発明の方法は、実際にシュウ酸を触媒除去剤として用いた。
【0040】
本発明の方法は、前記触媒中和段階において、通常酸性物質である触媒除去剤を適用するため、前記触媒除去剤を投入した生成物のpH値も変化し得る。一具現例では、前記触媒中和段階は、前記触媒除去剤を投入した生成物のpHが5~8の範囲内になるように前記触媒除去剤を投入するものであってもよい。
【0041】
また、本発明の方法は、触媒除去剤として特定成分を適用することによって、相対的に少量の触媒除去剤を用いても生成物が所望のpHを有するようにすることができる。一具現例では、前記触媒中和段階は、前記触媒の重量に対して0.7倍~1倍の範囲内の前記触媒除去剤を投入するものであってもよい。触媒除去剤として他の酸性化合物を適用することができるが、これらで生成物の所望のpHを達成するにはその適用量が相当必要となる。
【0042】
本発明におけるカーボネートの製造方法は、前記触媒中和段階にて生成された中和塩を除去する、中和塩除去段階を含む。ここで、中和塩を除去した結果、中和塩を除去した反応生成物を製造することができる。前記中和塩は、前記反応生成物中に固体として存在することから、後続する工程において不良を引き起こすおそれがあるため、除去しなければならない。すなわち、本発明において、前記触媒で形成された中和塩を含む生成物を精製し、生成物を得る前に、前記生成物中にて触媒で形成された中和塩は除去されなければならない。
【0043】
一具現例では、本発明の方法は、前記中和塩除去段階において、前記触媒で形成された中和塩を除去する。一具現例では、前記中和塩の除去は、ろ過(filtering)により行うことができる。適切な気孔の大きさを有するフィルターに前記反応生成物を適切に通過させると、前記中和塩がフィルターに残り、生成物から中和塩を除去することができる。
【0044】
本発明による方法はまた、上述した内容に基づいて触媒を除去した生成物を分離する段階をさらに含み得る。具体的には、本発明による方法は、前記中和塩を除去した反応生成物からエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離する、生成物分離段階をさらに含むことができる。
【0045】
本発明による方法が用いる化学反応の生成物のうち、目的生成物はカーボネートである。現在はDECを二次電池電解液用溶媒として使用しているが、上述したようにEMCへの需要も相当である。したがって、本発明の方法では、事業上の重要度によって前記生成物ストリームに含まれるカーボネートの中から特定化合物(DECまたはEMC)を目的生成物として分離する工程を進めることができる。
【0046】
本発明による方法は、前記段階に加えて、カーボネート系化合物の製造工程とこれに用いられた触媒を除去するために使用する工程で必要とされることが知られているその他の工程を全部含むことができる。
【実施例】
【0047】
以下において、実施例により本発明の内容をより詳しくは説明する。しかし、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0048】
[実験例1]Karl-Fischer
原料の水分含有量は、Karl-Fischer法を用いて測定した。
【0049】
[実験例2]動的光散乱分析
触媒除去剤と触媒の中和反応により生成された中和塩の平均の大きさは、動的光散乱分析法により測定した。動的光散乱分析は、Malvern社のNanoZS装置を用いて行った。中和塩を生成させた生成物試料1mLを取り、前処理の過程なしに前記装置のCellに入れて分析した。
【0050】
[実験例3]誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)
Na含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析計(ICP-AES)を用いて測定した。Perkinelmer社のOptima 8300モデルを使用した。流出物サンプル10gと70%の硝酸10mlおよび水10mlを混合し、250℃で2時間加熱した後、分析を行った。
【0051】
[実験例4]ガスクロマトグラフィー
生成物の定性および定量分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)により行った。具体的には、生成物1gを取り、0.1gのm-キシレンと混合した試料についてGCを行った。GC機器としては、Young In Chromas社のYL6500GC製品を使用しており、GCカラムはDB-1 30 m*0.32mmであり、GC検出器はFIDであった。原料の主要反応物であるジメチルカーボネートの転化率は、投入量に対して消費量をモル%で計算した。生成物であるジエチルカーボネートの選択性は、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの総含有量に対してジエチルカーボネートの含有量をモル%で計算した。生成物であるエチルメチルカーボネートの選択性は、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートの総含有量に対してエチルメチルカーボネートの含有量をモル%で計算した。
【0052】
[実施例1]
DMC90.1g(1mol)およびEtOH46.07g(1mol)を混合した原料溶液を製造した。原料の水分は65ppmであった。SME触媒をメタノールに30重量%の濃度で溶解した触媒溶液を製造した。SME触媒を原料のDMC重量を基準として0.04重量%の割合で原料溶液と共に500mLの体積を有する反応器に投入した。
【0053】
反応器にて反応圧力を1barとし、反応温度を50℃に保持し、500rpmの撹拌速度でエステル交換反応を1時間行った。生成物中のDMC転化率は54モル%であり、EMCの選択性は82モル%であり、およびDECの選択性は18モル%であった。
【0054】
反応完了後、生成物に触媒除去剤としてシュウ酸(OA)を触媒重量に対して0.82倍注入した。その後、生成物のpHと固体沈殿物の粒度を分析した。粒度は動的光散乱光度計(DLS)を用いた。生成物をPTFE材質の気孔の大きさ1μmのシリンジフィルターでろ過した。ろ過した生成物のナトリウム含有量をICPにより測定した。
【0055】
[実施例2]
水分含有量が94ppmである原料溶液を製造し、SME触媒を原料のDMC重量を基準として0.05重量%の割合で反応器に投入したことを除いては、実施例1と同様の過程にて進めた。
【0056】
[実施例3]
水分含有量が130ppmである原料溶液を製造し、SME触媒を原料のDMC重量を基準として0.067重量%の割合で反応器に投入したことを除いては、実施例1と同様の過程にて進めた。
【0057】
[実施例4]
水分含有量が150ppmである原料溶液を製造し、SME触媒を原料のDMC重量を基準として0.073重量%の割合で反応器に投入したことを除いては、実施例1と同様の過程にて進めた。
【0058】
[比較例1]
水分含有量が91ppmである原料溶液を製造し、触媒溶液を原料のDMC重量を基準として0.05重量%の割合で反応器に投入し、触媒除去剤としてPPAを触媒重量に対して1.2倍注入したことを除いては、実施例1と同様の過程にて進めた。
【0059】
[比較例2]
水分含有量が65ppmである原料溶液を製造し、触媒溶液を原料のDMC重量を基準として0.04重量%の割合で反応器に投入し、触媒除去剤としてIPAを触媒重量に対して1.6倍注入したことを除いては、実施例1と同様の過程にて進めた。
【0060】
[比較例3]
水分含量が130ppmである原料溶液を製造し、触媒溶液を原料のDMC重量を基準として0.07重量%の割合で反応器に投入し、触媒除去剤としてIPAを触媒重量に対して1.6倍注入したことを除いては、実施例1と同様の過程にて進めた。
実施例及び比較例の原料組成及び実験結果を表1に要約した。
【0061】
【0062】
表1によれば、線状飽和ジカルボン酸であり、pKa(酸解離定数)が1.25と低いOAを適用した実施例1~3は、少量の酸を注入しても生成物のpHが12から7と、下に減少することを確認することができる。また、OA添加により生成された中和塩の粒子の大きさが1μm以上であることも確認することができる。
【0063】
また、フィルターでろ過した生成物のNa含有量が0.50~0.64mg/Lであることを確認することができるが、これは原料に存在するNa含有量と同様であった。すなわち、OA添加により生成された中和塩がフィルターにより全部除去されたことを確認することができた。しかし、pKaが2.16であるポリリン酸(比較例1)、pKaが3.46であるイソフタル酸(比較例2及び比較例3)を適用した比較例は、OAを適用した実施例に比べて1.5~2倍の触媒除去剤を用いて初めて生成物のpHが12から7~8程に減少することが確認できた。
【0064】
また、比較例にて製造された中和塩の粒子の大きさはいずれも1μm以上であるが、ろ過した生成物のNa含有量は2.83~6.18mg/Lであった。すなわち、PPAまたはIPA添加により生成された中和塩をフィルターが全部除去できなかったことを確認することができた。このことは、PPAおよびIPAにより生成された中和塩が水に対する高い溶解度を有し、生成物ストリームが前記中和塩を溶解したからであると考えられる。
【国際調査報告】