IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンワ ケミカル コーポレイションの特許一覧

特表2024-541729加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法
<>
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図1
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図2
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図3
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図4
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図5
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図6
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図7
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図8
  • 特表-加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/00 20060101AFI20241101BHJP
   C08F 4/64 20060101ALI20241101BHJP
   C08F 4/02 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F4/64
C08F4/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529893
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2022018463
(87)【国際公開番号】W WO2023096297
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0162175
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】キム アルム
(72)【発明者】
【氏名】パク へ ラン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リム ジェ ユン
(72)【発明者】
【氏名】セオ ユンホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウン ウィ ギャップ
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J015EA00
4J100AA02P
4J100AA16Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA05
4J100DA09
4J100DA14
4J100DA15
4J100DA42
4J100DA43
4J100FA08
4J100FA10
4J100FA22
4J100FA28
4J100JA15
4J100JA28
4J100JA43
4J100JA57
4J128AA03
4J128AC26
4J128AC27
4J128AC28
4J128AD05
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128AE07
4J128BA01A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128CA28A
4J128DB03A
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128FA04
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
(57)【要約】
本発明は、加工性に優れたオレフィン系重合体に関する。本発明の実施形態によると、混成メタロセン触媒の存在下で製造されるオレフィン系重合体は、ショルダーを有する単峰型(unimodal)の広い分子量分布を有し、高速加工性に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;GPC)で測定したときに分子量分布がショルダー(shoulder)を有する単峰型(unimodal)であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャー(melt fracture)やシャークスキン(shark skin)現象が現れる、下記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である、オレフィン系重合体。
【数1】
(数学式1)
前記数学式中、
は、見かけのせん断速度(sec-1)であり、Vは、ピストンにより生成される体積流量(mm/sec)であり、Rは、円形ホールの毛細管の半径(mm)である。
【請求項2】
密度が0.930~0.965g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.5~4.5g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(MFR)が30~150であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャーやシャークスキン現象が現れるせん断速度が700sec-1以上である、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
オレフィン系重合体は、混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合により製造され、混成メタロセン触媒は、(a)下記化学式1で表される遷移金属化合物および下記化学式2で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第1遷移金属化合物と、(b)下記化学式3で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第2遷移金属化合物と、(c)下記化学式4で表される遷移金属化合物、下記化学式5aで表される遷移金属化合物、および下記化学式5bで表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第3遷移金属化合物と、(d)助触媒化合物と、を含む、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【化1】
前記化学式中、l1およびm1は、それぞれ独立して0~5の整数であり、
l2、l3、m2、およびn1は、それぞれ独立して0~4の整数であり、
m3およびo1は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
pは、Mの酸化状態として、+3、+4、または+5であり、
qは、YZLリガンドの形式電荷として、0、-1、-2、または-3であり、
Mは、それぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であり、
M’は、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムであり、それぞれ+2、+3、または+4の形式酸化状態であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドであり、
X’は、それぞれ独立して、アルキルであり、
Qは、それぞれ独立して、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、またはスズ(Sn)であり、
Q’は、アニオン性脱離基として、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、ヘテロ原子、またはハロゲンであり、
Lは、第15族または第16族元素であり、
Yは、第15族元素であり、
Zは、第15族元素であり、
Z’は、それぞれ独立して、-O-、-S-、-N(C1-40炭化水素基)-、または-P(C1-40炭化水素基)-であり、
~R、R、R、R11、およびR12は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、または置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、この際、これらは、それぞれ独立して、隣接した基が連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC4-20環を形成しても形成しなくてもよく、
、R、R、R10、R13、およびR14は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、または置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、この際、RとR、RとR10、R13とR14は、それぞれ独立して、互いに連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC2-20環を形成しても形成しなくてもよく、
15およびR16は、それぞれ独立して、C1-20炭化水素基またはヘテロ原子含有基であり、ここで、ヘテロ原子は、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、またはリンであるか、またはR15およびR16は、互いに連結されていてもよく、
17は、存在しないか、または水素、C1-20アルキル、ハロゲン、またはヘテロ原子含有基であり、
18およびR19は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、置換されたアリール基、環状アルキル基、置換された環状アルキル基、または多環系であり、
20およびR21は、それぞれ独立して、存在しないか、または水素、アルキル基、ハロゲン、ヘテロ原子、炭化水素基、またはヘテロ原子含有基であり、
およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、ハロゲン、または水素であり、
22a、R23a、R24a、R25a、R22b、R23b、R24b、R25b、R26c、R27c、R28c、R29c、R26d、R27d、R28d、およびR29dは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、-Si(R、-OSi(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-OCF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン、および水素から選択され、ここで、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-30炭化水素基、または置換もしくは非置換のC1-30ヘテロ炭化水素基であり、この際、R22a、R23a、R24a、R25a、R22b、R23b、R24b、R25b、R26c、R27c、R28c、R29c、R26d、R27d、R28d、およびR29dのうち2つ以上は、1つ以上の環構造を形成しても形成しなくてもよい。
【請求項4】
前記化学式1の遷移金属化合物は、下記化学式1-1~化学式1-8で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式2の遷移金属化合物は、下記化学式2-1で表される遷移金属化合物である、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化2】
前記化学式中、Meはメチルである。
【請求項5】
前記化学式3の遷移金属化合物は、下記化学式3-1~化学式3-10で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つである、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化3】
前記化学式中、Meはメチル、n-Buはn-ブチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニル、p-Tolはp-トリルである。
【請求項6】
前記化学式4の遷移金属化合物は、下記化学式4-1~化学式4-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式5aの遷移金属化合物は、下記化学式5-1~化学式5-4で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式5bの化合物は、下記化学式5-5および化学式5-6で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つである、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化4】
前記化学式中、Meはメチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニルである。
【請求項7】
助触媒化合物は、下記化学式6で表される化合物、化学式7で表される化合物、および化学式8で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【化5】
(化学式6)
(化学式7)
[L-H][Z(A)または[L][Z(A) (化学式8)
前記化学式6中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、またはハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基であり、
前記化学式7中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
前記化学式8中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【請求項8】
化学式6で表される化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、およびブチルアルミノキサンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7に記載のオレフィン系重合体。
【請求項9】
化学式7で表される化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7に記載のオレフィン系重合体。
【請求項10】
化学式8で表される化合物は、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、およびトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7に記載のオレフィン系重合体。
【請求項11】
混成メタロセン触媒は、混成遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担持する担体をさらに含む、請求項3に記載のオレフィン系重合体。
【請求項12】
担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項11に記載のオレフィン系重合体。
【請求項13】
担体に担持される混成遷移金属化合物の総量が担体1gを基準として0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が担体1gを基準として2~15mmoleである、請求項11に記載のオレフィン系重合体。
【請求項14】
(a)下記化学式1で表される遷移金属化合物および下記化学式2で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第1遷移金属化合物と、(b)下記化学式3で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第2遷移金属化合物と、(c)下記化学式4で表される遷移金属化合物、下記化学式5aで表される遷移金属化合物、および下記化学式5bで表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第3遷移金属化合物と、(d)助触媒化合物と、を含む混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンを重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(MFR)が30~200であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布がショルダーを有する単峰型であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャーやシャークスキン現象が現れる、下記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である、オレフィン系重合体の製造方法。
【化6】
【数2】
(数学式1)
前記化学式中、l1、l2、l3、m1、m2、m3、n1、o1、p、q、M、M’、X、X’、Q、Q’、L、Y、Z、Z’、R~R21、R、R、R22a、R23a、R24a、R25a、R22b、R23b、R24b、R25b、R26c、R27c、R28c、R29c、R26d、R27d、R28d、およびR29dは、請求項3における定義と同様であり、前記数学式中、
、V、Rは、請求項1における定義と同様である。
【請求項15】
α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、および1-ヘキサデセンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項14に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項16】
α-オレフィンが1-ヘキセンである、請求項15に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項17】
エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合は、気相重合により行われる、請求項14に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法に関する。具体的に、本発明は、混成メタロセン触媒の存在下で重合し、ショルダーを有する単峰型(unimodal)の広い分子量分布を有し、加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系重合体は、実生活でショッピングバッグ、ビニールハウス、漁網、タバコの包装紙、麺袋、ヨーグルトボトル、電池ケース、自動車バンパー、内装材、靴底、洗濯機などの材料として幅広く用いられている。
【0003】
従来、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン-α-オレフィン共重合体のようなポリオレフィン系重合体およびこれらの共重合体は、チタン化合物およびアルキルアルミニウム化合物からなるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒のような不均一系触媒により製造されていた。
【0004】
近年、触媒活性の非常に高い均一系触媒であるメタロセン触媒を用いたポリオレフィンの製造方法が研究されている。メタロセン触媒は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物にシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、インデニル(indenyl)、シクロヘプタジエニル(cycloheptadienyl)などのリガンドが配位結合した化合物として、サンドイッチ構造を基本的な形態として有する。この際、リガンドの形態および中心金属の種類に応じて様々な分子構造を有する。
【0005】
不均一系触媒であるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒は、活性点である金属成分が不活性の固体表面に分散し、活性点の性質が均一でないのに対し、メタロセン触媒は、一定の構造を有する1つの化合物であるため、全ての活性点が同一の重合特性を有する単一活性点触媒(single-site catalyst)として知られている。
【0006】
このようなメタロセン触媒は、共重合しやすく、触媒の対称性に応じて重合体の立体構造を調節することができ、これにより製造された高分子は、分子量分布が狭く、コモノマーの分布が均一であるという利点がある。
しかし、メタロセン触媒により製造された重合体は、分子量分布が狭いため、機械的強度は優れるが、加工性が低いという問題がある。
【0007】
一方、LAN(local area network)ケーブルの製造には、クロム系またはチーグラー・ナッタ触媒を用いることで得られるポリオレフィンが主に用いられていた。LANケーブルの製造時に生産量を増やすためには高速で加工しなければならず、高速加工時にはメルトフラクチャー(melt fracture)またはシャークスキン(shark skin)現象が発生する場合がある。さらに、メタロセン触媒により製造されるポリオレフィンは、加工性が低いため、LANケーブルの製造には適さないことが知られている。
【0008】
メタロセン触媒により製造されるポリオレフィンの加工性を改善するために、異種のメタロセン触媒を混合して担持触媒を製造する試みがあった。例えば、米国特許第4,935,474号、米国特許第6,828,394号、米国特許第6,894,128号、大韓民国特許第1437509号、米国特許第6,841,631号には、コモノマーに対する反応性が互いに異なる触媒を混合して二峰型(bimodal)の分子量分布を有するポリオレフィンを製造する方法が開示されている。
【0009】
しかし、2つの触媒による樹脂の分子量差が激しく、分子量分布が広すぎるか、または分子量差があまり出ず、単一のメタロセン触媒と比較してあまり差がない場合があった。また、ポリオレフィンの分子量分布は、二峰型が顕著であるほど、加工性に優れる場合があるが、単峰型を有するポリオレフィンに比べて加工性に劣る場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、混成メタロセン触媒の存在下で重合し、ショルダーを有する単峰型の広い分子量分布を有し、高速加工性に優れたオレフィン系重合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の一実施形態によると、密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;GPC)で測定したときに分子量分布がショルダー(shoulder)を有する単峰型(unimodal)であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャー(melt fracture)やシャークスキン(shark skin)現象が現れる、下記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である、オレフィン系重合体が提供される。
【0012】
【数1】
(数学式1)
【0013】
前記式中、
は、見かけのせん断速度(sec-1)であり、Vは、ピストンにより生成される体積流量(mm/sec)であり、Rは、円形ホールの毛細管の半径(mm)である。
【0014】
本発明の一実施形態によると、混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合により製造されるオレフィン系重合体であって、密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;GPC)で測定したときに分子量分布が単峰型(unimodal)であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャー(melt fracture)やシャークスキン(shark skin)現象が現れる、前記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である、オレフィン系重合体が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態によると、混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合により製造されるオレフィン系重合体であって、密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;GPC)で測定したときに分子量分布が単峰型(unimodal)であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャー(melt fracture)やシャークスキン(shark skin)現象が現れる、前記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である、オレフィン系重合体が提供される。
【0016】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体の密度が0.930~0.965g/cm、好ましくは0.935~0.960g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.5~4.5g/10分、好ましくは0.5~4.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(MFR)が30~150、好ましくは40~135であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャーやシャークスキン現象が現れるせん断速度が700sec-1以上、好ましくは750sec-1以上であってもよい。
【0017】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合により製造され、混成メタロセン触媒は、(a)下記化学式1で表される遷移金属化合物および下記化学式2で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第1遷移金属化合物と、(b)下記化学式3で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第2遷移金属化合物と、(c)下記化学式4で表される遷移金属化合物、下記化学式5aで表される遷移金属化合物、および下記化学式5bで表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第3遷移金属化合物と、(d)助触媒化合物と、を含んでもよい。
【0018】
【化1】
【0019】
前記化学式中、l1およびm1は、それぞれ独立して0~5の整数であり、
l2、l3、m2、およびn1は、それぞれ独立して0~4の整数であり、
m3およびo1は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
pは、Mの酸化状態として、+3、+4、または+5であり、
qは、YZLリガンドの形式電荷として、0、-1、-2、または-3であり、
Mは、それぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であり、
M’は、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムであり、それぞれ+2、+3、または+4の形式酸化状態であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドであり、
X’は、それぞれ独立して、アルキルであり、
Qは、それぞれ独立して、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、またはスズ(Sn)であり、
Q’は、アニオン性脱離基として、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、ヘテロ原子、またはハロゲンであり、
Lは、第15族または第16族元素として、好ましくは窒素であり、
Yは、第15族元素として、好ましくは窒素またはリン、より好ましくは窒素であり、
Zは、第15族元素として、好ましくは窒素またはリン、より好ましくは窒素であり、
Z’は、それぞれ独立して、-O-、-S-、-N(C1-40炭化水素基)-、または-P(C1-40炭化水素基)-であり、
~R、R、R、R11、およびR12は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、または置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、この際、これらは、それぞれ独立して、隣接した基が連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC4-20環を形成しても形成しなくてもよく、
、R、R、R10、R13、およびR14は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、または置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、この際、RとR、RとR10、R13とR14は、それぞれ独立して、互いに連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC2-20環を形成しても形成しなくてもよく、
15およびR16は、それぞれ独立して、C1-20炭化水素基またはヘテロ原子含有基であり、ここで、ヘテロ原子は、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、またはリンであるか、またはR15およびR16は、互いに連結されていてもよく、
17は、存在しないか、または水素、C1-20アルキル、ハロゲン、またはヘテロ原子含有基であり、
18およびR19は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、置換されたアリール基、環状アルキル基、置換された環状アルキル基、または多環系であり、
20およびR21は、それぞれ独立して、存在しないか、または水素、アルキル基、ハロゲン、ヘテロ原子、炭化水素基、またはヘテロ原子含有基であり、
およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、ハロゲン、または水素であり、
22a、R23a、R24a、R25a、R22b、R23b、R24b、R25b、R26c、R27c、R28c、R29c、R26d、R27d、R28d、およびR29dは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、-Si(R、-OSi(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-OCF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン、および水素から選択され、ここで、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-30炭化水素基、または置換もしくは非置換のC1-30ヘテロ炭化水素基であり、この際、R22a、R23a、R24a、R25a、R22b、R23b、R24b、R25b、R26c、R27c、R28c、R29c、R26d、R27d、R28d、およびR29dのうち2つ以上は、1つ以上の環構造を形成しても形成しなくてもよい。
【0020】
本発明の具体例において、前記化学式1の遷移金属化合物は、下記化学式1-1~化学式1-8で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよく、前記化学式2の遷移金属化合物は、下記化学式2-1で表される遷移金属化合物であってもよい。
【0021】
【化2】
前記化学式中、Meはメチルである。
【0022】
本発明の具体例において、前記化学式3の遷移金属化合物は、下記化学式3-1~化学式3-10で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよい。
【化3】
前記化学式中、Meはメチル、n-Buはn-ブチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニル、p-Tolはp-トリルである。
【0023】
本発明の具体例において、前記化学式4の遷移金属化合物は、下記化学式4-1~化学式4-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式5aの遷移金属化合物は、下記化学式5-1~化学式5-4で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式5bの化合物は、下記化学式5-5および化学式5-6で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよい。
【化4】
前記化学式中、Meはメチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニルである。
【0024】
本発明の具体例において、助触媒化合物は、下記化学式6で表される化合物、化学式7で表される化合物、および化学式8で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【化5】
(化学式6)
(化学式7)
[L-H][Z(A)または[L][Z(A) (化学式8)
【0025】
前記化学式6中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、またはハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基であり、
前記化学式7中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
前記化学式8中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【0026】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式6で表される化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、およびブチルアルミノキサンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0027】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式7で表される化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0028】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式8で表される化合物は、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、およびトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0029】
本発明の具体例において、混成メタロセン触媒は、混成遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担持する担体をさらに含んでもよい。
本発明の具体例において、前記担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0030】
ここで、担体に担持される混成遷移金属化合物の総量が担体1gを基準として0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が担体1gを基準として2~15mmoleである。
【0031】
本発明の一実施形態によると、(a)前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第1遷移金属化合物と、(b)前記化学式3で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第2遷移金属化合物と、(c)前記化学式4で表される遷移金属化合物、前記化学式5aで表される遷移金属化合物、および前記化学式5bで表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第3遷移金属化合物と、(d)助触媒化合物と、を含む混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンを重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布がショルダーを有する単峰型(unimodal)であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャー(melt fracture)やシャークスキン(shark skin)現象が現れる、前記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である、オレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0032】
本発明の具体例において、α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、および1-ヘキサデセンからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。好ましくは、α-オレフィンが1-ヘキセンであってもよい。
【0033】
本発明の具体例において、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合は、気相重合により行われてもよく、具体的に、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合は、気相流動層反応器内で行われてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の実施形態によると、混成メタロセン触媒により製造されるオレフィン系重合体は、ショルダーを有する単峰型の広い分子量分布を有し、高速加工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】単峰型の分子量分布を説明するためのGPC-FTIRグラフである。
図2】本発明の実施例のオレフィン系重合体のGPCグラフである。
図3】本発明の実施例のオレフィン系重合体のGPCグラフである。
図4】本発明の実施例のオレフィン系重合体のGPCグラフである。
図5】本発明の実施例のオレフィン系重合体のGPCグラフである。
図6】本発明の比較例のオレフィン系重合体のGPCグラフである。
図7】本発明の比較例のオレフィン系重合体のGPCグラフである。
図8】本発明の実施例のオレフィン系重合体のせん断速度によるメルトフラクチャーまたはシャークスキンの有無を観察した写真である。
図9】本発明の比較例のオレフィン系重合体のせん断速度によるメルトフラクチャーまたはシャークスキンの有無を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[オレフィン系重合体]
本発明の一実施形態によると、密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200である、オレフィン系重合体が提供される。
【0037】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、密度が0.930~0.970g/cmである。オレフィン系重合体の密度が、好ましくは0.930~0.965g/cm、より好ましくは0.935~0.960g/cm、特に好ましくは0.940~0.950g/cmであってもよい。
【0038】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分である。190℃で2.16kgの荷重で測定されるオレフィン系重合体の溶融指数が、好ましくは0.5~4.5g/10分、より好ましくは0.5~4.0g/10分、特に好ましくは0.5~2.0g/10分であってもよい。
【0039】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200である。オレフィン系重合体のMFRが、好ましくは30~150、より好ましくは40~135、特に好ましくは50~120であってもよい。
【0040】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;GPC)で測定したときに分子量分布が単峰型(unimodal)である。
【0041】
具体的に、重合体の一般的なGPCグラフを示す図1を参照すると、この重合体のGPCグラフにおいて、接線の傾きが正の値から負の値に変化する地点(aおよびc)を「ピーク(peak)」とし、接線の傾きが負の値から正の値に変化する地点(b)を「谷(valley)」とする場合、本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、1つのピークを有する単峰型(unimodal)の分子量分布を示す。
【0042】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、図2図5に示すように、GPCグラフ上にショルダー(shoulder)が存在する。ショルダーとは、GPCグラフ上で、分子量が増加するほど、低分子量成分側(ピークの左側)の正の傾きの絶対値が大きくなり、再び小さくなるが、負の値に変化しない区間、もしくは高分子量成分側(ピークの右側)の負の傾きの絶対値が小さくなり、再び大きくなるが、正の値に変化しない区間を意味し得る。この地点でグラフの接線の値が正から負または負から正に変化しない限り、それをピークとして分類しない。
【0043】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体のGPC測定時、分子量(横軸)に対する分率(縦軸)の値を数値化し、その値の変化を確認することで、GPCグラフ上のピークの存在およびその数を確認することができる。
【0044】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャー(melt fracture)やシャークスキン(shark skin)現象が現れる、下記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である。メルトフラクチャー(melt fracture)やシャークスキン(shark skin)現象が現れるせん断速度が、好ましくは700sec-1以上、より好ましくは750sec-1以上、1,050sec-1以上、または1,100sec-1以上であってもよい。
【数2】
(数学式1)
前記式中、
は、見かけのせん断速度(sec-1)であり、Vは、ピストンにより生成される体積流量(mm/sec)であり、Rは、円形ホールの毛細管の半径(mm)である。
【0045】
メルトフラクチャーまたはシャークスキンは、重合体の押出時、重合体の表面に不規則的な凹凸またはシャークスキンのような形状が生じるか、または表面の光沢を失う現象を称する。このようなメルトフラクチャーまたはシャークスキンが発生するせん断速度が大きいほど、当該重合体の加工性に優れるといえる。
【0046】
本発明の実施形態に係るオレフィン系重合体は、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合により製造される。
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、(a)下記化学式1で表される遷移金属化合物および下記化学式2で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第1遷移金属化合物と、(b)下記化学式3で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第2遷移金属化合物と、(c)下記化学式4で表される遷移金属化合物、下記化学式5aで表される遷移金属化合物、および下記化学式5bで表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第3遷移金属化合物と、(d)助触媒化合物と、を含む混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合により製造される。
【0047】
【化6】
【0048】
前記化学式中、l1およびm1は、それぞれ独立して0~5の整数である。好ましくは、l1は1であり、m1はそれぞれ独立して1~5の整数である。
【0049】
l2、l3、m2、およびn1は、それぞれ独立して0~4の整数である。好ましくは、l2、l3、およびm2はそれぞれ1であり、n1はそれぞれ0である。
【0050】
m3およびo1は、それぞれ独立して0~2の整数である。好ましくは、m3はそれぞれ1であり、o1はそれぞれ0である。
Pは、Mの酸化状態として、+3、+4、または+5である。
qは、YZLリガンドの形式電荷として、0、-1、-2、または-3である。
【0051】
Mは、元素周期表の第4族遷移金属である。具体的に、Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であってもよく、より具体的に、ジルコニウムまたはハフニウムであってもよい。
【0052】
M’は、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムであり、それぞれ+2、+3、または+4の形式酸化状態である。具体的に、M’は、ジルコニウムまたはハフニウムであってもよい。
【0053】
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドである。具体的に、Xは、それぞれ独立して、ハロゲンまたはC1-20アルキルであってもよく、より具体的に、塩素(Cl)またはメチルであってもよい。
X’は、それぞれ独立して、アルキルである。具体的に、X’は、それぞれ独立して、メチルであってもよい。
【0054】
Qは、それぞれ独立して、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、またはスズ(Sn)である。具体的に、Qは、それぞれ独立して、炭素(C)またはシリコン(Si)であってもよい。
【0055】
Q’は、アニオン性脱離基として、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、ヘテロ原子、またはハロゲンである。具体的に、Q’は、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アシル基、アロイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル-またはジアルキル-カルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキレン基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0056】
Lは、第15族または第16族元素として、好ましくは窒素である。
Yは、第15族元素として、好ましくは窒素またはリン、より好ましくは窒素である。
【0057】
Zは、第15族元素として、好ましくは窒素またはリン、より好ましくは窒素である。
Z’は、それぞれ独立して、-O-、-S-、-N(C1-40炭化水素基)-、または-P(C1-40炭化水素基)-である。具体的に、Z’は、それぞれ独立して、-O-であってもよい。
【0058】
~R、R、R、R11、およびR12は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、または置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、この際、これらは、それぞれ独立して、隣接した基が連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC4-20環を形成しても形成しなくてもよい。具体的に、R~R、R、R、R11、およびR12は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールであってもよい。
【0059】
、R、R、R10、R13、およびR14は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、置換もしくは非置換のC6-20アリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換もしくは非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC3-20ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC1-20アルキルアミド、置換もしくは非置換のC6-20アリールアミド、または置換もしくは非置換のC1-20シリルであり、この際、RとR、RとR10、R13とR14は、それぞれ独立して、互いに連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC2-20環を形成しても形成しなくてもよい。具体的に、R、R、R、R10、R13、およびR14は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-20アルキル、置換もしくは非置換のC2-20アルケニル、または置換もしくは非置換のC6-20アリールであってもよい。
【0060】
15およびR16は、それぞれ独立して、C1-20炭化水素基またはヘテロ原子含有基であり、ここで、ヘテロ原子は、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、またはリンであるか、またはR15およびR16は、互いに連結されていてもよい。具体的に、R15およびR16は、それぞれ独立して、C1-6炭化水素基であってもよい。
【0061】
17は、存在しないか、または水素、C1-20アルキル、ハロゲン、またはヘテロ原子含有基である。具体的に、R17は、水素またはメチルであってもよい。
【0062】
18およびR19は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、置換されたアリール基、環状アルキル基、置換された環状アルキル基、または多環系である。具体的に、R18およびR19は、それぞれ独立して、置換されたアリール基であってもよい。
【0063】
20およびR21は、それぞれ独立して、存在しないか、または水素、アルキル基、ハロゲン、ヘテロ原子、炭化水素基、またはヘテロ原子含有基であってもよい。
【0064】
およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、ハロゲン、または水素である。RおよびRは、それぞれ独立して、メチルまたは水素であってもよい。
【0065】
22a、R23a、R24a、R25a、R22b、R23b、R24b、R25b、R26c、R27c、R28c、R29c、R26d、R27d、R28d、およびR29dは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-40炭化水素基、置換もしくは非置換のC1-40ヘテロ炭化水素基、-Si(R、-OSi(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、-OCF、-S(O)R、-S(O)、-N=C(R、-OC(O)R、-C(O)OR、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R、ハロゲン、および水素から選択され、ここで、Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-30炭化水素基、または置換もしくは非置換のC1-30ヘテロ炭化水素基であり、この際、R22a、R23a、R24a、R25a、R22b、R23b、R24b、R25b、R26c、R27c、R28c、R29c、R26d、R27d、R28d、およびR29dのうち2つ以上は、1つ以上の環構造を形成しても形成しなくてもよい。
【0066】
本発明の実施形態に係るオレフィン重合用混成メタロセン触媒において、第1遷移金属化合物、第2遷移金属化合物、および第3遷移金属化合物の含量は、各触媒の活性に応じて決められてもよい。好ましくは、オレフィン重合用混成メタロセン触媒中の遷移金属化合物の総量を基準として、第1遷移金属化合物、第2遷移金属化合物、および第3遷移金属化合物をそれぞれ10重量%以上含有してもよい。
【0067】
本発明の具体例において、前記化学式1の遷移金属化合物は、下記化学式1-1~化学式1-8で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよく、前記化学式2の遷移金属化合物は、下記化学式2-1で表される遷移金属化合物であってもよい。
【化7】
前記化学式中、Meはメチルである。
【0068】
本発明の具体例において、前記化学式3の遷移金属化合物は、下記化学式3-1~化学式3-10で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよい。
【化8】
前記化学式中、Meはメチル、n-Buはn-ブチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニル、p-Tolはp-トリルである。
【0069】
本発明の具体例において、前記化学式4の遷移金属化合物は、下記化学式4-1~化学式4-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式5aの遷移金属化合物は、下記化学式5-1~化学式5-4で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式5bの化合物は、下記化学式5-5および化学式5-6で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであってもよい。
【化9】
前記化学式中、Meはメチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニルである。
【0070】
本発明の具体例において、助触媒化合物は、下記化学式6で表される化合物、化学式7で表される化合物、および化学式8で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0071】
【化10】
(化学式6)
前記化学式6中、nは、2以上の整数であり、Rは、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素、またはハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素であってもよい。具体的に、Rは、メチル、エチル、n-ブチル、またはイソブチルであってもよい。
【0072】
【化11】
(化学式7)
前記化学式7中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のアルコキシ基である。具体的に、Dがアルミニウム(Al)であるとき、R、R、およびRは、それぞれ独立して、メチルまたはイソブチルであってもよく、Dがボロン(B)であるとき、R、R、およびRは、それぞれペンタフルオロフェニルであってもよい。
【0073】
【化12】
前記化学式8中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H]および[L]は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。具体的に、[L-H]は、ジメチルアニリニウムカチオンであってもよく、[Z(A)は、[B(Cであってもよく、[L]は、[(CC]であってもよい。
【0074】
前記化学式6で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどが挙げられ、メチルアルミノキサンが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0075】
前記化学式7で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどが挙げられ、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記化学式8で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンなどが挙げられる。
【0077】
本発明の具体例において、オレフィン重合用混成メタロセン触媒は、混成遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担持する担体をさらに含んでもよい。
【0078】
ここで、担体は、表面にヒドロキシ基を含有する物質を含んでもよく、好ましくは、乾燥して表面に水分が除去された、反応性の大きいヒドロキシ基およびシロキサン基を有する物質が用いられてもよい。例えば、担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。具体的に、高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが担体として用いられてもよく、通常、これらはNaO、KCO、BaSO、およびMg(NOなどの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有してもよい。また、これらは炭素、ゼオライト、塩化マグネシウムなどを含んでもよい。ただし、担体はこれらに特に限定されるものではない。
【0079】
担体は、平均粒度が10~250μmであってもよく、平均粒度が、好ましくは10~150μmであってもよく、より好ましくは20~100μmであってもよい。
【0080】
担体の微細気孔の体積は0.1~10ml/gであってもよく、好ましくは0.5~5ml/gであってもよく、より好ましくは1.0~3.0ml/gであってもよい。
【0081】
担体の比表面積は1~1,000m/gであってもよく、好ましくは100~800m/gであってもよく、より好ましくは200~600m/gであってもよい。
【0082】
好ましい一実施形態において、担体がシリカである場合、シリカは、乾燥温度が200~900℃であってもよい。乾燥温度は、好ましくは300~800℃、より好ましくは400~700℃であってもよい。乾燥温度が200℃未満である場合には、水分が多すぎるため、表面の水分と第1助触媒化合物が反応することになり、900℃超過である場合には、担体の構造が崩壊し得る。
【0083】
乾燥されたシリカ中のヒドロキシ基の濃度は0.1~5mmole/gであってもよく、好ましくは0.7~4mmole/gであってもよく、より好ましくは1.0~2mmole/gであってもよい。ヒドロキシ基の濃度が0.1mmole/g未満である場合には、助触媒の担持量が低くなり、5mmole/g超過である場合には、触媒成分が不活性化する問題が生じ得る。
【0084】
担体に担持される混成遷移金属化合物の総量は、担体1gを基準として0.001~1mmoleであってもよい。混成遷移金属化合物と担体の比が上記範囲を満たす場合、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0085】
担体に担持される助触媒化合物の総量は、担体1gを基準として2~15mmoleであってもよい。助触媒化合物と担体の比が上記範囲を満たす場合、触媒の活性維持および経済性の面で有利である。
【0086】
担体は、1種または2種以上が用いられてもよい。例えば、1種の担体に混成遷移金属化合物および助触媒化合物の両方が担持されてもよく、2種以上の担体に混成遷移金属化合物と助触媒化合物がそれぞれ担持されてもよい。また、混成遷移金属化合物および助触媒化合物のいずれか1つのみが担体に担持されてもよい。
【0087】
本発明の具体例において、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体の単独重合体(homopolymer)、またはオレフィン系単量体とコモノマーとの共重合体(copolymer)であってもよい。好ましくは、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体とオレフィン系コモノマーとの共重合体である。
【0088】
ここで、オレフィン系単量体は、C2-20α-オレフィン(α-olefin)、C1-20ジオレフィン(diolefin)、C3-20シクロオレフィン(cycloolefin)、およびC3-20シクロジオレフィン(cyclodiolefin)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0089】
例えば、オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、または1-ヘキサデセンなどであってもよく、オレフィン系重合体は、上記で例示したオレフィン系単量体を1種のみ含む単独重合体であるか、または2種以上含む共重合体であってもよい。
【0090】
例示的な実施形態において、オレフィン系重合体は、エチレンとC3-20α-オレフィンが共重合された共重合体であってもよい。好ましくは、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体がエチレンであり、オレフィン系コモノマーが1-ヘキセンである、直鎖状低密度ポリエチレンであってもよい。
【0091】
この場合、エチレンの含量は55~99.9重量%であることが好ましく、90~99.9重量%であることがより好ましい。α-オレフィン系コモノマーの含量は0.1~45重量%であることが好ましく、0.1~10重量%であることがより好ましい。
【0092】
[オレフィン系重合体の製造方法]
本発明の一実施形態によると、(a)下記化学式1で表される遷移金属化合物および下記化学式2で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第1遷移金属化合物と、(b)下記化学式3で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第2遷移金属化合物と、(c)下記化学式4で表される遷移金属化合物、下記化学式5aで表される遷移金属化合物、および下記化学式5bで表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第3遷移金属化合物と、(d)助触媒化合物と、を含む混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンを重合してオレフィン系重合体を得るステップを含む、オレフィン系重合体の製造方法が提供される。
【0093】
【化13】
【0094】
前記化学式中、l1、l2、l3、m1、m2、m3、n1、o1、p、q、M、M’、X、X’、Q、Q’、L、Y、Z、Z’、R~R21、R、R、R22a、R23a、R24a、R25a、R22b、R23b、R24b、R25b、R26c、R27c、R28c、R29c、R26d、R27d、R28d、およびR29dは、前記[オレフィン系重合体]の項目における説明と同様である。
【0095】
前述したように、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造されるオレフィン系重合体は、密度が0.930~0.970g/cm、好ましくは0.935~0.965g/cm、より好ましくは0.935~0.960g/cm、特に好ましくは0.940~0.950g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分、好ましくは0.5~4.5g/10分、より好ましくは0.5~4.0g/10分、特に好ましくは0.5~2.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200、好ましくは30~150、より好ましくは40~135、特に好ましくは50~120であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布がショルダーを有する単峰型であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャーやシャークスキン現象が現れる、下記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上、好ましくは700sec-1以上、より好ましくは750sec-1以上、1,050sec-1以上、または1,100sec-1以上である。
【0096】
【数3】
(数学式1)
前記数学式中、
、V、Rは、前記オレフィン系重合体の項目における説明と同様である。
【0097】
本発明の例示的な実施形態において、オレフィン系重合体は、フリーラジカル(free radical)、カチオン(cationic)、配位(coordination)、縮合(condensation)、添加(addition)などの重合反応により重合されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0098】
本発明の一実施形態として、オレフィン系重合体は、気相重合法、溶液重合法、またはスラリー重合法などにより製造されてもよい。好ましくは、オレフィン系単量体の重合は、気相重合により行われてもよく、具体的に、オレフィン系単量体の重合は、気相流動層反応器内で行われてもよい。
【0099】
オレフィン系重合体が溶液重合法またはスラリー重合法により製造される場合、使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体のようなC5-12脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒;およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
[実施例]
以下、実施例および比較例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0101】
製造例1
化学式1-1の遷移金属化合物1.7g、化学式3-1の遷移金属化合物0.76g、化学式5-2の遷移金属化合物3.5gを、グローブボックス内でメチルアルミノキサン(MAO)10重量%のトルエン溶液951.2gと混合(Al/Zr=150)し、常温で1時間撹拌した。一方、シリカ(XP2402)230gを反応器に投入し、精製されたトルエン1,000mlを加えて混合した。得られたシリカスラリーに前述した遷移金属化合物溶液を注入し、75℃のオイルバスで3時間撹拌した。担持が終わり、固体/液体が十分に分離された後に上澄みを除去した。トルエンを用いて担持触媒を3回洗浄し、30℃の真空中で10時間乾燥させ、自由流れ粉末状の混成担持触媒を320g得た。
【0102】
製造例2
化学式1-1の遷移金属化合物1.4g、化学式3-1の遷移金属化合物0.63g、化学式4-1の遷移金属化合物2.72gを、グローブボックス内でメチルアルミノキサン(MAO)10重量%のトルエン溶液825gと混合(Al/Zr=150)し、常温で1時間撹拌した。一方、シリカ(XP2402)200gを反応器に投入し、精製されたトルエン1,000mlを加えて混合した。得られたシリカスラリーに前述した遷移金属化合物溶液を注入し、75℃のオイルバスで3時間撹拌した。担持が終わり、固体/液体が十分に分離された後に上澄みを除去した。トルエンを用いて担持触媒を3回洗浄し、60℃の真空中で10時間乾燥させ、自由流れ粉末状の混成担持触媒を280g得た。
【0103】
製造例3
化学式1-1の遷移金属化合物1.4g、化学式3-1の遷移金属化合物1.25g、化学式4-1の遷移金属化合物2.2gを用いたことを除いては、製造例2と同様の方法で自由流れ粉末状の混成担持触媒を280g得た。
【0104】
製造例4
化学式2-1の遷移金属化合物1.3g、化学式3-1の遷移金属化合物0.63g、化学式4-1の遷移金属化合物2.72g、メチルアルミノキサン(MAO)10重量%のトルエン溶液824gを用いたことを除いては、製造例2と同様の方法で自由流れ粉末状の混成担持触媒を280g得た。
【0105】
製造例5
化学式1-1の遷移金属化合物1.4g、化学式3-1の遷移金属化合物0.63g、化学式5-2の遷移金属化合物2.72gを用いたことを除いては、製造例1と同様の方法で自由流れ粉末状の混成担持触媒を280g得た。
【0106】
実施例
上記の製造例で得られたそれぞれの担持触媒を用いて、連続式気相流動層反応器にてエチレンと1-ヘキセンを共重合した。重合体の分子量調節のために水素を添加した。重合条件を下記表1にまとめた。比較のために、非メタロセン触媒により製造されるハンファソリューションズ社製の8380樹脂を比較例2として用いた。
【0107】
【表1】
【0108】
試験例
実施例および比較例で得られたそれぞれの担持触媒を用いて製造されたオレフィン系重合体の物性を下記のように測定した。その測定結果を下記表2および表3に示した。
【0109】
(1)溶融指数比(melt flow ratio;MFR)
ASTM D1238に準じて、190℃で、21.6kgの荷重と2.16kgの荷重で溶融指数をそれぞれ測定し、その比(MI21.6/MI2.16)を求めた。
【0110】
(2)密度
ASTM D1505に準じて測定した。
【0111】
(3)ゲル浸透クロマトグラフィー
Polymer Char社製のモデル名GPC-6製品のゲル浸透クロマトグラフィー-FTIR(GPC-FTIR)を用いた。160℃の温度で測定し、溶媒としてはトリクロロベンゼンを用いた。実施例1~4および比較例1~2の測定結果を図2図7に順次示した。
【0112】
(4)せん断速度
Gottfert RG25毛細管レオメーターを用いて測定した。測定条件は、円形ホール、長さ20mm、有効長さ20mm、直径/幅2、高さ0mm、ランアングル(run angle)180°であり、230℃で、ピストンの直径が15mm、毛細管の直径が2mmであった。シャークスキンやメルトフラクチャーが発生するせん断速度を基準に測定し、せん断速度を前記数学式1から求めた。実施例1~4および比較例1~2の重合体に対して、せん断速度によるシャークスキンやメルトフラクチャーの有無を観察し、図8図9にそれぞれ示した。
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
前記表2と表3および図2~9から確認できるように、ショルダーを有する単峰型の広い分子量分布を有する本発明の範囲に属する実施例(図2~5および図8)のオレフィン系重合体は、メルトフラクチャーやシャークスキンが現れるせん断速度が高く、高速加工性に優れるものであった。これに対し、二峰型の分子量分布を有する比較例1(図6および図9)のオレフィン系重合体は、低いせん断速度でメルトフラクチャーが発生し、高速加工性が良くないものであった。また、実施例のオレフィン系重合体は、商業製品(比較例2;図7および図9)と類似またはより優れた高速加工性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の実施形態によると、混成メタロセン触媒により製造されるオレフィン系重合体は、ショルダーを有する単峰型の広い分子量分布を有し、高速加工性に優れる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(melt flow ratio;MFR)が30~200であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography;GPC)で測定したときに分子量分布がショルダー(shoulder)を有する単峰型(unimodal)であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャー(melt fracture)やシャークスキン(shark skin)現象が現れる、下記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である、オレフィン系重合体。
【数1】

(数学式1)
前記数学式中、

は、見かけのせん断速度(sec-1)であり、Vは、ピストンにより生成される体積流量(mm/sec)であり、Rは、円形ホールの毛細管の半径(mm)である。
【請求項2】
密度が0.930~0.965g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.5~4.5g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(MFR)が30~150であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャーやシャークスキン現象が現れるせん断速度が700sec-1以上である、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
(a)下記化学式1で表される遷移金属化合物および下記化学式2で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第1遷移金属化合物と、(b)下記化学式3で表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第2遷移金属化合物と、(c)下記化学式4で表される遷移金属化合物、下記化学式5aで表される遷移金属化合物、および下記化学式5bで表される遷移金属化合物から選択される少なくとも1つの第3遷移金属化合物と、(d)助触媒化合物と、を含む混成メタロセン触媒の存在下で、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンを重合してオレフィン系重合体を得るステップを含み、オレフィン系重合体の密度が0.930~0.970g/cmであり、190℃で2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)が0.1~5.0g/10分であり、190℃で21.6kgの荷重で測定される溶融指数(I21.6)と2.16kgの荷重で測定される溶融指数(I2.16)との比(MFR)が30~200であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したときに分子量分布がショルダーを有する単峰型であり、毛細管レオメーターで測定したときにメルトフラクチャーやシャークスキン現象が現れる、下記数学式1で定義される、せん断速度が500sec-1以上である、オレフィン系重合体の製造方法。
【化1】

【数2】

(数学式1)
前記化学式中、l1およびm1は、それぞれ独立して0~5の整数であり、
l2、l3、m2、およびn1は、それぞれ独立して0~4の整数であり、
m3およびo1は、それぞれ独立して0~2の整数であり、
pは、Mの酸化状態として、+3、+4、または+5であり、
qは、YZLリガンドの形式電荷として、0、-1、-2、または-3であり、
Mは、それぞれ独立して、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、またはハフニウム(Hf)であり、
M’は、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムであり、それぞれ+2、+3、または+4の形式酸化状態であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C 1-20 アルキル、C 2-20 アルケニル、C 2-20 アルキニル、C 6-20 アリール、C 1-20 アルキルC 6-20 アリール、C 6-20 アリールC 1-20 アルキル、C 1-20 アルキルアミド、またはC 6-20 アリールアミドであり、
X’は、それぞれ独立して、アルキルであり、
Qは、それぞれ独立して、炭素(C)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、またはスズ(Sn)であり、
Q’は、アニオン性脱離基として、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC 1-40 炭化水素基、置換もしくは非置換のC 1-40 ヘテロ炭化水素基、ヘテロ原子、またはハロゲンであり、
Lは、第15族または第16族元素であり、
Yは、第15族元素であり、
Zは、第15族元素であり、
Z’は、それぞれ独立して、-O-、-S-、-N(C 1-40 炭化水素基)-、または-P(C 1-40 炭化水素基)-であり、
~R 、R 、R 、R 11 、およびR 12 は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC 1-20 アルキル、置換もしくは非置換のC 2-20 アルケニル、置換もしくは非置換のC 6-20 アリール、置換もしくは非置換のC 1-20 アルキルC 6-20 アリール、置換もしくは非置換のC 6-20 アリールC 1-20 アルキル、置換もしくは非置換のC 1-20 ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC 3-20 ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC 1-20 アルキルアミド、置換もしくは非置換のC 6-20 アリールアミド、または置換もしくは非置換のC 1-20 シリルであり、この際、これらは、それぞれ独立して、隣接した基が連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC 4-20 環を形成しても形成しなくてもよく、
、R 、R 、R 10 、R 13 、およびR 14 は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC 1-20 アルキル、置換もしくは非置換のC 2-20 アルケニル、置換もしくは非置換のC 6-20 アリール、置換もしくは非置換のC 1-20 アルキルC 6-20 アリール、置換もしくは非置換のC 6-20 アリールC 1-20 アルキル、置換もしくは非置換のC 1-20 ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のC 3-20 ヘテロアリール、置換もしくは非置換のC 1-20 アルキルアミド、置換もしくは非置換のC 6-20 アリールアミド、または置換もしくは非置換のC 1-20 シリルであり、この際、R とR 、R とR 10 、R 13 とR 14 は、それぞれ独立して、互いに連結され、置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和のC 2-20 環を形成しても形成しなくてもよく、
15 およびR 16 は、それぞれ独立して、C 1-20 炭化水素基またはヘテロ原子含有基であり、ここで、ヘテロ原子は、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、またはリンであるか、またはR 15 およびR 16 は、互いに連結されていてもよく、
17 は、存在しないか、または水素、C 1-20 アルキル、ハロゲン、またはヘテロ原子含有基であり、
18 およびR 19 は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、置換されたアリール基、環状アルキル基、置換された環状アルキル基、または多環系であり、
20 およびR 21 は、それぞれ独立して、存在しないか、または水素、アルキル基、ハロゲン、ヘテロ原子、炭化水素基、またはヘテロ原子含有基であり、
およびR は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC 1-40 炭化水素基、置換もしくは非置換のC 1-40 ヘテロ炭化水素基、ハロゲン、または水素であり、
22a 、R 23a 、R 24a 、R 25a 、R 22b 、R 23b 、R 24b 、R 25b 、R 26c 、R 27c 、R 28c 、R 29c 、R 26d 、R 27d 、R 28d 、およびR 29d は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC 1-40 炭化水素基、置換もしくは非置換のC 1-40 ヘテロ炭化水素基、-Si(R 、-OSi(R 、-Ge(R 、-P(R 、-N(R 、-OR 、-SR 、-NO 、-CN、-CF 、-OCF 、-S(O)R 、-S(O) 、-N=C(R 、-OC(O)R 、-C(O)OR 、-N(R)C(O)R 、-C(O)N(R 、ハロゲン、および水素から選択され、ここで、R は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC 1-30 炭化水素基、または置換もしくは非置換のC 1-30 ヘテロ炭化水素基であり、この際、R 22a 、R 23a 、R 24a 、R 25a 、R 22b 、R 23b 、R 24b 、R 25b 、R 26c 、R 27c 、R 28c 、R 29c 、R 26d 、R 27d 、R 28d 、およびR 29d のうち2つ以上は、1つ以上の環構造を形成しても形成しなくてもよい。
前記数学式中、

は、見かけのせん断速度(sec -1 )であり、Vは、ピストンにより生成される体積流量(mm /sec)であり、Rは、円形ホールの毛細管の半径(mm)である。
【請求項4】
α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、および1-ヘキサデセンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項5】
α-オレフィンが1-ヘキセンである、請求項に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項6】
エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの重合は、気相重合により行われる、請求項に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記化学式1の遷移金属化合物は、下記化学式1-1~化学式1-8で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式2の遷移金属化合物は、下記化学式2-1で表される遷移金属化合物である、請求項3に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【化2】

前記化学式中、Meはメチルである。
【請求項8】
前記化学式3の遷移金属化合物は、下記化学式3-1~化学式3-10で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つである、請求項3に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【化3】

前記化学式中、Meはメチル、n-Buはn-ブチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニル、p-Tolはp-トリルである。
【請求項9】
前記化学式4の遷移金属化合物は、下記化学式4-1~化学式4-2で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式5aの遷移金属化合物は、下記化学式5-1~化学式5-4で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つであり、前記化学式5bの化合物は、下記化学式5-5および化学式5-6で表される遷移金属化合物のうち少なくとも1つである、請求項3に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【化4】

前記化学式中、Meはメチル、t-Buはt-ブチル、Phはフェニルである。
【請求項10】
助触媒化合物は、下記化学式6で表される化合物、化学式7で表される化合物、および化学式8で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【化5】

(化学式6)

(化学式7)
[L-H] [Z(A) または[L] [Z(A) (化学式8)
前記化学式6中、nは、2以上の整数であり、R は、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、またはハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基であり、
前記化学式7中、Dは、アルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R 、R 、およびR は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲンで置換された炭素数1~20の炭化水素基、または炭素数1~20のアルコキシ基であり、
前記化学式8中、Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、[L-H] および[L] は、ブレンステッド酸であり、Zは、第13族元素であり、Aは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【請求項11】
化学式6で表される化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、およびブチルアルミノキサンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項12】
化学式7で表される化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項13】
化学式8で表される化合物は、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、およびトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載のオレフィン系重合体。
【請求項14】
混成メタロセン触媒は、混成遷移金属化合物、助触媒化合物、または両方を担持する担体をさらに含む、請求項3に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項15】
担体は、シリカ、アルミナ、およびマグネシアからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項14に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項16】
担体に担持される混成遷移金属化合物の総量が担体1gを基準として0.001~1mmoleであり、担体に担持される助触媒化合物の総量が担体1gを基準として2~15mmoleである、請求項14に記載のオレフィン系重合体の製造方法
【国際調査報告】