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特表2024-541731製織性が向上したポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】製織性が向上したポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/04 20060101AFI20241101BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20241101BHJP
   D03D 15/52 20210101ALI20241101BHJP
【FI】
D01F6/04 B
D03D15/283
D03D15/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530503
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2022019382
(87)【国際公開番号】W WO2023101474
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0170790
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,シノ
【テーマコード(参考)】
4L035
4L048
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB55
4L035BB81
4L035BB89
4L035BB91
4L035CC07
4L035EE20
4L035HH01
4L035HH10
4L035MA01
4L048AA15
4L048AA34
4L048AB11
4L048AC09
4L048AC10
4L048CA00
4L048DA03
(57)【要約】
本発明は製織性が向上したポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地に関するものであって、より詳しくは、適切な冷感および優れた着用感を使用者に提供することができ、毛羽の発生頻度が非常に低い生地の製造が可能である、製織性が向上したポリエチレン原糸、およびこれを含む機能性生地に関するものである。本発明によるポリエチレン原糸は、多分散指数(Polydispersity Index、PDI)が5以上20以下、ASTM D2256によって測定される強度が1.5~10g/d、および、最大強度での伸び率が10~50%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多分散指数(Polydispersity Index、PDI)が5以上20以下、ASTM D2256によって測定される強度が1.5~10g/d、および、最大強度での伸び率が10~50%である、ポリエチレン原糸。
【請求項2】
前記ポリエチレン原糸は、
分子量(Mw)のログスケールをx軸、重量分布度(dw/dLogM)をy軸とする、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)分析を通じた重量分布グラフにて、下記式1を満足し、前記重量分布グラフはユニモーダルである、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
[式1]
(Mwmax-Mwaver)<(Mwaver-Mwmin
(上記式中、Mwaverは、前記重量分布グラフにおける最大重量分布を有する分子量であり、Mwmax及びMwminは、Mwaverでの重量分布度値Qに対して、重量分布グラフにおける0.25Qに該当する二つの分子量を意味し、Mwmawは二つの分子量のうちの最大値を、Mwminは最小値を意味する。)
【請求項3】
前記原糸は、ASTM2256によって測定される初期モジュラス(initial modulus)が30~80d/gである、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
【請求項4】
前記原糸は、結晶化度が65~85%である、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
【請求項5】
前記原糸は、密度が0.93~0.97g/cm3である、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
【請求項6】
前記原糸は、重量平均分子量が90,000~400,000g/molである、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
【請求項7】
請求項1~6のうちのいずれか一項のポリエチレン原糸を含む機能性生地。
【請求項8】
前記生地は、20±2℃、65±2%R.Hで、20±2℃の生地に対して30±2℃の熱板(T-box)を接触させて測定される接触冷感が0.18~0.30W/cm2である、請求項7に記載の機能性生地。
【請求項9】
前記生地は、20±2℃、65±2%R.Hで、20±2℃の生地に対して30±2℃の熱源板(BT-box)を接触させて測定される厚さ方向の熱伝導度(thermal conductivity)が0.05~0.20W/mKである、請求項7に記載の機能性生地。
【請求項10】
前記生地は、100,000m2当りの毛羽の発生数が10個以下である、請求項7に記載の機能性生地。
【請求項11】
前記生地は、面密度が150~800g/m2である、請求項7に記載の機能性生地。
【請求項12】
請求項7の生地から製造された冷感性製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製織性が向上したポリエチレン原糸およびこれを含む機能性生地に関するものであって、より詳しくは、適切な冷感および優れた着用感を使用者に提供することができ、毛羽発生頻度が非常に低い生地の製造が可能な、製織性が向上したポリエチレン原糸、これを含む機能性生地および冷感性製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、生活水準の向上、人口増加などにより、繊維の需要が、一般衣類用汎用糸および産業用繊維から、多様な機能を有する高機能性、高性能化された先端繊維素材へと変わっている。特に、夏季や高温の作業環境における使用者の快適感を付与した、冷感性を有する繊維素材の開発が活発に行われているのが実情である。
【0003】
冷感性繊維素材は、繊維自体の熱伝導性を用いて冷感性が付与されるか、または熱伝導度が高い金属成分のコーティングなどを通じて繊維素材の表面の熱伝導度が調節されることで冷感性が付与された。特に、繊維自体の熱伝導性を用いた冷感性繊維素材は、生地の製織工程のみで製造することができるのであり、洗濯後にも冷感性を維持することができることから、現在、実質的に多様な産業分野で生産されている。
【0004】
従来、繊維自体の熱伝導性を用いた冷感性繊維素材は、日本登録特許公報JP2010-236130Aおよび大韓民国公開特許公報第10-2017-0135342号に開示されているように、高分子量ポリエチレン(HMWPE)繊維が有する優れた熱伝導性を用いて、運動服、登山服、および作業服などの、高い冷感が要求されるファッション衣類およびテクニカル繊維分野に、多様に適用する試みが行われている。
【0005】
しかし、従来の高分子量ポリエチレン繊維は、冷感性発現のために結晶化度および配向度を最大化させて原糸として製造されることによって高強度を有する。よって、原糸の伸び率が低くて製織性が低下するという短所があり、柔軟性が低くて製造された生地の着用感が比較的良くないという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、適切な冷感および優れた着用感を使用者に提供することができ、毛羽発生頻度が非常に低い生地の製造が可能な、製織性が向上したポリエチレン原糸、これを含む機能性生地、および冷感性製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるポリエチレン原糸は、多分散指数(Polydispersity Index、PDI)が5以上20以下、ASTM D2256によって測定される強度が1.5~10g/d、および、最大強度での伸び率が10~50%である。
【0008】
本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸において、前記ポリエチレン原糸は、分子量(Mw)のログスケールをx軸、重量分布度(dw/dLogM)をy軸とする、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)分析を通じた重量分布グラフにおいて、下記式1を満足するのであり、前記重量分布グラフはユニモーダルでありうる。
【0009】
[式1]
(Mwmax-Mwaver)<(Mwaver-Mwmin
【0010】
(上記式中、Mwaverは、前記重量分布グラフにおける最大重量分布を有する分子量であり、Mwmax及びMwminは、Mwaverでの重量分布度値Qに対して、重量分布グラフにおける0.25Qに該当する二つの分子量を意味し、Mwmawは二つの分子量のうちの最大値を、Mwminは最小値を意味する。)
【0011】
本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸において、前記原糸は、ASTM2256によって測定される初期モジュラス(initial modulus)が30~80d/gでありうる。
【0012】
本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸において、前記原糸は結晶化度が65~85%でありうる。
【0013】
本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸において、前記原糸は密度が0.93~0.97g/cm3でありうる。
【0014】
本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸において、前記原糸は重量平均分子量が90,000~400,000g/molでありうる。
【0015】
本発明によるポリエチレン生地は前述のポリエチレン原糸を含む。
【0016】
本発明の一実施形態によるポリエチレン生地において、前記生地は、20±2℃、65±2%R.Hにて、20±2℃の生地に対して30±2℃の熱板(T-box)を接触させて測定される接触冷感が0.18~0.30W/cm2でありうる。
【0017】
本発明の一実施形態によるポリエチレン生地において、前記生地は、20±2℃、65±2%R.Hにて、20±2℃の生地に対して30±2℃の熱源板(BT-box)を接触させて測定される厚さ方向の熱伝導度(thermal conductivity)が0.05~0.20W/mKでありうる。
【0018】
本発明の一実施形態によるポリエチレン生地において、前記生地は、100,000m2当りの毛羽発生数が10個以下でありうる。
【0019】
本発明の一実施形態によるポリエチレン生地において、前記生地は、面密度が150~800g/m2でありうる。
【0020】
本発明による冷感性製品は、前述の生地から製造されたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるポリエチレン原糸は、優れた熱伝導度を有すると同時に、製織性が向上して適切な冷感特性を有し、毛羽の発生頻度が非常に低い生地の製造が可能である。
【0022】
また、本発明による機能性生地は、優れた熱伝導度および高い製織性を有するポリエチレン原糸を含むことによって、冷感特性を有すると同時に、毛羽といった欠陥が少なくて優れた品質を有することができる。
【0023】
また、本発明による機能性生地は、冷感だけでなく優れたドレープ性を有することによって、このような生地から製造された製品を使用者が着用する際、使用者と製品との間の接触面積が高いことから、実質的に、さらに優れた冷感効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸製造装置を、概略的に示した模式図である。
図2】生地の接触冷感を測定する装置を、概略的に示した模式図である。
図3】生地の厚さ方向の熱伝導度を測定する装置を、概略的に示した模式図である。
図4】実施例3による原糸についての、GPC分析を通じた重量分布グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有するのであり、下記の説明および添付図面にて、本発明の要旨を不必要にぼやかせうる公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0026】
また、本明細書で使用される単数の形態は、文脈にて特別な指示がない限り複数の形態も含むものと意図しうる。
【0027】
また、本明細書で特別な言及なく使用された単位は、重量を基準とするのであり、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味するのであって、重量%は別に定義されない限り一つの全体組成物中のいずれか一つの成分が組成物内で占める重量%を意味する。
【0028】
また、本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内での全ての値、定義される範囲の形態及び幅から論理的に誘導される増分、二重限定された全ての値、および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書で特別な定義がない限り、実験誤差または値の丸めによって発生する可能性がある数値範囲以外の値も、定義された数値範囲に含まれる。
【0029】
本明細書の用語、‘含む’は、‘備える’、‘含有する’、‘有する’または‘特徴とする’などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、追加的に列挙されていない要素、材料または工程を排除しない。
【0030】
従来の高分子量ポリエチレン繊維は、冷感性発現のために結晶化度および配向度を極大化させて原糸に製造されることによって原糸の強度が高く伸び率が低くて製織性が低下するという短所がある。また、製造された原糸の強撚度が良くなくて、製織性がさらに低下するだけでなく、これから製造される生地のドレープ性(drapability)および着用感(wearability)が良くない。よって、実際の使用者が着用時、使用者と生地間の接触面積が高くなくて、使用者が感じる実質的な冷感効果が優れていないという短所がある。
【0031】
よって、本出願人は、冷感特性は維持しつつ優れた製織性を有するポリエチレン繊維を開発するために、長期間踏み込んだ研究を行った結果、特定の多分散指数、強度、および伸び率を有するポリエチレン繊維が適切な熱伝導度を有し製織性に優れて、さらに優れた物性を有する生地に製造することができるのを発見し、これに対する研究を深化した結果、本発明を完成するに至った。
【0032】
本明細書で、ポリエチレン原糸は、ポリエチレンチップを原料にして紡糸および延伸などの工程を通じて製造されたモノおよびマルチフィラメントを意味する。一例として、ポリエチレン繊維は、1~3デニールの繊度をそれぞれ有する40~500個のフィラメントを含むことができ、100~1,000デニールの総繊度を有することができる。
【0033】
本発明のポリエチレン原糸は、多分散指数(Polydispersity Index、PDI)5以上20以下、ASTM D2256によって測定される強度が1.5~10g/d、および、最大強度での伸び率が10~50%であって、優れた熱伝導度を有すると同時に製織性が向上することから、適切な冷感特性を有し毛羽発生頻度が非常に低い生地に製造することができる。
【0034】
本発明によるポリエチレン原糸を含む生地の冷感性は、原糸の高い熱伝導度を通じて、生地を着用した使用者が、適切な冷感、即ち、涼しさ(cooling feeling)を感じることができるという特性である。具体的に、高分子の場合、主にフォノン(phonon)という格子振動(lattice vibration)を通じて、熱が高分子内で(特に、共有結合を通じて連結された分子鎖方向に)伝達される。即ち、原糸の熱伝導度は、同一の樹脂から製造された原糸であっても、原糸の結晶化度および配向度などの高分子自体の構造的特徴によって異なるように調節できる。
【0035】
前述のように、多分散指数(Polydispersity Index、PDI)5以上20以下、ASTM D2256によって測定される強度が1.5~10g/d、および最大強度での伸び率が10~50%である原糸は、優れた熱伝導度を有し、柔軟性が高く、優れた製織性を有しうることから、高い冷感特性を有し、毛羽の発生頻度が低い生地に製造することができる。
【0036】
具体的に、多分散指数は、7以上20以下、または11~16、さらに具体的に、12~15でありうる。ここで、ASTM D2256によって測定される強度は5~10g/d、または6~9g/d、具体的に、7~8g/dであってもよく、最大強度での伸び率は10~30%、または15~25%、さらに具体的に17~23%でありうるが、これに限定されるわけではない。但し、前記範囲にて、高い熱伝導度を有すると同時に、製織性に有利な適切な強撚度を有することができる。
【0037】
特に、ポリエチレン原糸は、分子量(Mw)のログスケールをx軸、重量分布度(dw/dlogM)をy軸にする、ゲルろ過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)分析を通じた重量分布グラフにて、下記式1を満足する時、さらに優れた熱伝導度を有し、毛羽の発生頻度が非常に低い生地に製造することができる。ここで、前記重量分布グラフはユニモーダルである。
【0038】
[式1]
(Mwmax-Mwaver)<(Mwaver-Mwmin
【0039】
(上記式中、Mwaverは、前記重量分布グラフにおける最大重量分布を有する分子量であり、Mwmax及びMwminは、Mwaverでの重量分布度値Qに対して、重量分布グラフにおける0.25Qに該当する二つの分子量を意味し、Mwmawは二つの分子量のうちの最大値を、Mwminは最小値を意味する。)
【0040】
上記式1を満足するポリエチレン原糸は、比較的低分子量で広い重量分布を有する。このようなポリエチレン原糸は、フォノンによる優れた熱伝導度を有するとともに、高い柔軟性および強度を有しうることから、より優れた製織性を有し、さらには、毛羽の発生頻度が非常に低い冷感性生地に製造することができる。
【0041】
また、前記式1を満足することにより、(Mwmax-Mwaver)-(Mwaver-Mwmin)の値は、負の数であり得る。一例として、0超過-3未満、具体的に0超過-1未満、さらに具体的に0超過-0.5未満であり得るが、これに限定されないのはもちろんである。
【0042】
ゲル透過クロマトグラフィー分析は、ポリエチレン原糸を下記の溶媒に完全に溶解させた後に、以下の分析機器を用いて測定された。
【0043】
-分析機器:Tosoh社 HLC-8321 GPC/HT
-カラム:PLgel guard(7.5×50mm)+2×PLgel mixed-B(7.5×300mm)
-カラム温度:160℃
-溶媒:トリクロロベンゼン(TCB)+0.04wt.%ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(0.1%CaCl2での乾燥後;after drying with 0.1%CaCl2
-インジェクター及び検出器の温度(Injector、Detector温度):160℃
-検出器(Detector):RI Detector
-流速:1.0ml/min
-注入量:300mL
-試料濃度:1.5mg/mL
-標準試料:ポリスチレン
【0044】
また、ポリエチレン原糸は、通常の冷感用ポリエチレン原糸より低い初期モジュラス(initial modulus)であり、即ち、ASTM D2256によって測定される初期モジュラスが50~100g/d、具体的に、30~80g/dでありうる。前記範囲よりもポリエチレン原糸の初期モジュラスが高ければ、弾性は良好であるが、剛軟度(stiffness)が悪くなりうるのであり、前記範囲よりもポリエチレン原糸の初期モジュラスが低ければ、剛軟度は良好であるが、弾性回復力が低くなって生地の強靭性が悪くなりうる。即ち、前記範囲にて、適切な剛軟度および強靭性を有することによって、より優れた製織性を有することができ、よって、ドレープ性に優れた生地に製造することができる。
【0045】
一様態として、ポリエチレン原糸は、重量平均分子量が20,000~200,000g/molのもの、好ましくは30,000~150,000g/molのものでありうる。前記範囲にて、原糸の溶融押出時溶融物の流れ性が良く、熱分解発生を防止し、延伸時に糸切れが発生しないなどの工程性が確保されることから、均一な物性の原糸を製造することができるのであり、耐久性に優れた生地を提供することができる。
【0046】
また、ポリエチレン原糸は、密度が0.93~0.97g/cm3であり、紡糸を通じた結晶化度が50~90%、具体的に60~85%であありうる。前記ポリエチレン原糸の結晶化度は、X線回折分析器を用いた結晶性の分析の際に、微結晶の大きさと共に導出されうる。前述のように、結晶化度が前記範囲を満足する範囲で、高密度ポリエチレン(HDPE)の共有結合を通じて連結された分子鎖方向に、‘フォノン(phonon)’という格子振動(lattice vibration)を通じて熱が急速に拡散および発散され、汗および息などの水分の排出機能が向上して、着用感に優れた生地を提供することができる。
【0047】
以下、図1を参照して、本発明の一様態によるポリエチレン原糸の製造方法を、具体的に説明する。本発明のポリエチレン原糸は、PDI、強度、および最大強度での伸び率などの前記物性の範囲を満足するものであれば、その製造方法に制限されるわけではなく、以下は一様態を説明するものである。
【0048】
まず、チップ(chip)の形態のポリエチレンを、エクストルーダー(extruder)100に投入して溶融させることによって、ポリエチレン溶融物を得る。
【0049】
溶融されたポリエチレンが、前記エクストルーダー100内のスクリュー(図示せず)によって口金200を通じて運搬されるのであり、前記口金200に形成された多数のホールを通じて押出される。前記口金200のホールの個数は、製造される原糸のDPF(Denier Per Filament)および繊度に応じて決定されうる。例えば、75デニールの総繊度を有する原糸を製造する場合、前記口金200は20~75個のホールを有することができるのであって、450デニールの総繊度を有する原糸を製造する場合、前記口金200は90~450個、好ましくは100~400個のホールを有することができる。
【0050】
前記エクストルーダー100内での溶融工程および口金200を通じた押出工程は、ポリエチレンチップの溶融指数に応じて変更適用可能であるが、具体的に、例えば150~315℃、好ましくは250~315℃、さらに好ましくは265~310℃で行われることが好ましい。即ち、エクストルーダー100および口金200が、150~315℃、好ましくは250~315℃、さらに好ましくは265~310℃に維持されることが好ましい。
【0051】
前記紡糸温度が150℃未満である場合、低い紡糸温度によって、ポリエチレンの均一な溶融が行われなくて紡糸が困難でありうる。反面、紡糸温度が315℃を超過する場合、ポリエチレンの熱分解が引き起こされて、所望の強度を発現できないのでありうる。
【0052】
前記口金200のホール直径Dに対するホール長さLの比率であるL/Dは、3~40でありうる。L/Dが3未満であれば、溶融押出時、ダイスウェル(Die Swell)現象が発生し、ポリエチレンの弾性挙動の制御が困難になることによって、紡糸性が不良になりうるのであり、L/Dが40を超過する場合には、口金200を通過する溶融ポリエチレンのネッキング(necking)現象による糸切れと共に、圧力降下による吐出不均一の現象が発生しうる。
【0053】
溶融されたポリエチレンが、口金200のホールから吐出されるに伴い、紡糸温度と室温との間の差によって、ポリエチレンの固化が始まって半固化状態のフィラメント11が形成される。本明細書では、半固化状態のフィラメントはもちろんのこと、完全固化されたフィラメントの全てを“フィラメント”と統称する。
【0054】
複数の前記フィラメント11は、冷却部(または“quenching zone”)300で冷却されることによって完全固化される。前記フィラメント11の冷却は空冷方式で行うことができる。
【0055】
前記冷却部300での前記フィラメント11の冷却は、0.2~1m/sec風速の冷却風を用いて15~40℃に冷却されるように行われることが好ましい。前記冷却温度が15℃未満であれば、過冷却によって伸度が不足して延伸過程で糸切れが発生しうるのであり、前記冷却温度が40℃を超過すれば、固化の不均一によってフィラメント11間の繊度偏差が大きくなり、延伸過程で糸切れが発生しうる。
【0056】
また、冷却部で冷却時に多段冷却を行うことによって、より均一に結晶化が行われるようにすることができ、これにより、湿気および汗の排出をより円滑にし、冷感性に優れた原糸を製造することができる。より具体的に、前記冷却部は3つ以上の区間に分けられうる。例えば3つの冷却区間からなる場合、第1冷却部から第2冷却部に行くほど温度が次第に低くなるように設計されることが好ましい。具体的に、例えば、第1冷却部は50~80℃に設定され、第2冷却部は30~50℃に設定され、第3冷却部は15~30℃に設定されうる。
【0057】
また、第1冷却部で風速を最も高く設定することによって、表面が、より滑らかな繊維を製造することができる。具体的に、第1冷却部は1.0~1.5m/secの風速の冷却風を用いて50~80℃に冷却されるようにし、第2冷却部は0.6~1.0m/secの風速の冷却風を用いて30~50℃に冷却されるようにし、第3冷却部は0.3~0.6m/secの風速の冷却風を用いて15~30℃に冷却されるようにするものでありうるのであり、このような条件に調節することによって、結晶化度が、より高く、表面が、より滑らかな原糸を製造することができる。
【0058】
次いで、集束機400に、前記冷却および完全固化されたフィラメント11を集束させてマルチフィラメント10を形成させる。
【0059】
図1に例示されているように、本発明のポリエチレン原糸は、直接紡糸延伸(DSD)工程を通じて製造することができる。即ち、前記マルチフィラメント10が、複数のゴデットローラー部GR1…GRnを含む多段延伸部500に直接伝達され、2~20倍、好ましくは3~15倍の総延伸比で多段延伸された後、ワインダー600に巻き取られる。また、多段延伸時、最後の延伸区間では、1~5%の収縮延伸(弛緩)を付与することによって、耐久性に、より優れた原糸を提供することができる。
【0060】
代替案として、前記マルチフィラメント10を未延伸糸として一旦巻き取った後、前記未延伸糸を延伸することによって、本発明のポリエチレン原糸を製造することもできる。即ち、本発明のポリエチレン原糸は、ポリエチレンを溶融紡糸して未延伸糸を一旦製造した後、前記未延伸糸を延伸する、2段階工程を通じて製造することもできる。
【0061】
延伸工程にて適用される総延伸比が2未満であれば、最終的に得られるポリエチレン原糸が60%以上の結晶化度を有することができず、前記原糸から製造される生地上に毛羽(フィリング)が誘発される危険がある。
【0062】
反面、前記総延伸比が15倍を超過すれば、糸切れが発生する可能性があり、最終的に得られるポリエチレン原糸の強度が適合し得ず、前記ポリエチレン原糸の製織性が良くないだけでなく、これを用いて製造された生地が過度にごわごわして、使用者が不便さを感じうる。
【0063】
本発明の溶融紡糸の紡糸速度を決定する一番目のゴデットローラー部GR1の線速度が決定されれば、前記多段延伸部500にて、2~20、好ましくは3~15の総延伸比が前記マルチフィラメント10に適用されるように、残りのゴデットローラー部の線速度が適切に決定される。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、前記多段延伸部500のゴデットローラー部GR1…GRnの温度を40~140℃の範囲にて適切に設定することによって、前記多段延伸部500を通じてポリエチレン原糸の熱固定(heat-setting)が行われる。具体的に、例えば、前記多段延伸部は、3つ以上の、具体的に3~5個の延伸区間からなるものであり得る。また、各延伸区間は、複数のゴデットローラー部からなるものであり得る。
【0065】
具体的に、例えば、前記多段延伸部は4つの延伸区間からなり、第1延伸区間~第4延伸区間にて総延伸比2~15倍に延伸した後、第5延伸区間にて1~3%の収縮延伸(弛緩)を行うものであり得る。前記総延伸比は、延伸を行う前の繊維に比べた、第1延伸区間から第3延伸区間を経た繊維の最終延伸比を意味する。
【0066】
さらに具体的に、第1延伸区間は、40~80℃で行われ、第1延伸区間の延伸比が1.5~3倍であるものであり得る。第2延伸区間は、前記第1延伸区間に比べて高い温度で行われ、具体的に80~130℃で行われうるのであり、第2延伸区間の延伸比が1.05~3倍になるように延伸するのであり得る。第3延伸区間は、100~150℃で行われ、延伸比が1.05~3倍になるように延伸するのであり得る。第4延伸区間は、前記第2延伸区間と同一または低い温度で行われ、具体的に80~140℃で行われ、1~3%の収縮延伸(弛緩)を行うものであり得る。
【0067】
多段延伸部500によって、前記マルチフィラメント10の多段延伸と熱固定が同時に行われるのであり、多段延伸されたマルチフィラメント10がワインダー600に巻き取られることによって、本発明のポリエチレン原糸が完成される。
【0068】
本発明による機能性生地は、前述のポリエチレン原糸を含むもので、優れた熱伝導度および高い製織性を有するポリエチレン原糸を含むことによって、冷感特性を有すると同時に、毛羽といった欠陥が少なくて優れた品質を有することができる。また、機能性生地は、前述のポリエチレン原糸を含むことによって、冷感だけでなく、優れたドレープ性を有することにより、このような生地から製造された製品を使用者が着用した際、使用者と製品との間の接触面積が高くて、実質的に、より優れた冷感効果を発揮することができる。
【0069】
本発明による機能性生地は、前記説明されたポリエチレン原糸を単独で使用するものでありうるのであり、他の機能性をさらに付与するために異種原糸をさらに含むこともできるが、冷感性および製織性を同時に有することができる観点からは、前記ポリエチレン原糸を単独で使用することが好ましい。
【0070】
具体的に、機能性生地は、20±2℃、65±2% R.Hで、20±2℃の生地に対して30±2℃の熱板(T-box)を接触させて測定された接触冷感が0.15~0.45W/cm2であり、20±2℃の生地に対して30±2℃の熱源板(BT-box)を接触させて20℃で厚さ方向熱伝導度(thermal conductivity)が0.01~0.30W/mKであり得る。さらに具体的に、接触冷感が0.18~0.30W/cm2であり、厚さ方向の熱伝導度(thermal conductivity)が0.05~0.2W/mKであり得る。このような冷感を有する機能性生地は、後で製品として製造または加工されて使用者に着用される際、高温環境下で使用者が快適感を感じることができる、適切な冷感を提供することができる。
【0071】
また、機能性生地は、100,000m2当りの毛羽の発生数が10個以下、具体的に、8個以下であり得る。即ち、機能性生地は、製織性が向上したポリエチレン原糸を含むことによって、高品質で製造することができる。
【0072】
機能性生地は、150~800g/m2の単位面積当りの重量(即ち、面密度)を有する織物または編物であり得る。生地の面密度が150g/m2未満であれば、生地の稠密性が不足して、生地内に多くの空隙が存在することになり、このような空隙は生地の冷感性を低下させる。反面、生地の面密度が800g/m2を超過すれば、過度に稠密な生地構造によって、生地がごわごわになり、使用者が感じる触感に問題が発生し、高い重量によって使用上の問題点が誘発される。
【0073】
このような生地は、適切な冷感性が要求される、冷感性製品として加工されうる。製品は、従来の繊維製品は全て可能であるが、好ましくは人体に冷感性を付与するための夏季の夏服、スポーツウェア、マスク、および作業服であり得る。
【0074】
本発明の冷感性製品は、前述の生地から製造されることにより、5gf以下、さらに好ましくは2~5gfの低い強撚度を有することによって優れたドレープ性を有し、優れた着用感を示すことができる。また、優れたドレープ性を示すことによって、使用者が着用した際、使用者の身体と接触面積が高くて、実質的に、さらに優れた冷感効果を有することができる。
【0075】
以下、実施例を通じて本発明についてさらに詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明を詳しく説明するための一つの参照に過ぎず、本発明がこれに限定されるのではなく、様々の形態に実現できる。
【0076】
また、別に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は本発明の属する当業者の中の一つによって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本願で説明に使用される用語は、単に特定実施例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限するものと意図されない。また、明細書で特に記載していない添加物の単位は重量%であり得る。
【実施例
【0077】
物性は、以下のように測定した。
【0078】
[原糸物性測定]
<1.重量分布グラフ、重量平均分子量(Mw)(g/mol)、および多分散指数(PDI)>
ポリエチレン原糸を下記の溶媒に完全に溶解させた後、次のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて重量分布グラフ、前記ポリエチレン原糸の重量平均分子量(Mw)、および、多分散指数(Mw/Mn:PDI)をそれぞれ求めた。
【0079】
-分析機器:Tosoh社 HLC-8321 GPC/HT
-カラム:PLgel guard(7.5×50mm)+2×PLgel mixed-B(7.5×300mm)
-カラム温度:160℃
-溶媒:トリクロロベンゼン(TCB)+0.04wt.% ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(0.1% CaCl2での乾燥後;after drying with 0.1% CaCl2
-インジェクター及び検出器の温度(Injector、Detector温度):160℃
-検出器(Detector):RI Detector
-流速:1.0ml/min
-注入量:300mL
-試料濃度:1.5mg/mL
-標準試料:ポリスチレン
【0080】
<2.強度(g/d)、初期モジュラス(g/d)、および伸び率(%)>
ASTM D2256の方法によって、インストロン社(Instron Engineering Corp、Canton、Mass)の万能引張試験機を用いてポリエチレン原糸の変形-応力曲線を得た。サンプル長さは250mmであり、引張速度は300mm/minであり、初期ロード(load)は0.05g/dに設定した。破断点での応力と伸びから、強度(g/d)および最大強度での伸び率(%)を求め、前記曲線の原点付近における最大勾配を付与する接線から、初期モジュラス(g/d)を求めた。それぞれの原糸ごとに5回測定した後、その平均値を算出した。
【0081】
<3.結晶化度>
XRD機器(X-ray Diffractometer)製造社:PANalytical社、モデル名:EMPYREANを用いてポリエチレン原糸の結晶化度を測定した。具体的に、ポリエチレン原糸を切断して2.5cmの長さを有するサンプルを準備し、前記サンプルをサンプルホルダーに固定させた後、下記の条件下で測定を実施した。
【0082】
-光源(X-ray Source):Cu-K α radiation
-電力(Power):45KV×25mA
-モード:連続スキャンモード
-スキャン角度範囲:10~40°
-スキャン速度:0.1°/sec
【0083】
[生地の物性測定]
<1.接触冷感>
韓国衣類試験研究院に依頼して、KES-F7(Thermo Labo II)装置を用いて試験環境20±2℃、65±2% R.Hで測定した。
【0084】
具体的に、20cm×20cmのサイズの生地サンプルを準備した後、20±2℃の温度および65±2%のRHの条件下で24時間放置した。次いで、20±2℃の温度および65±2%のRHのテスト環境で、KES-F7 THERMO LABO II(Kato Tech Co., LTD.)装置を用いて生地の接触冷感(Q max)を測定した。具体的に、図2に例示されているように、20℃で維持されるベースプレート(‘Water-Box’とも称される)21上に、前記生地サンプル23を載せて、30℃で加熱された熱板(T-Box)22a(接触面積:3cm×3cm)を前記生地サンプル23上に1秒間のみ載せた。即ち、一面がベースプレート21と接触している前記生地サンプル23についての他面を、T-Box22aに瞬間的に接触させた。前記T-Box22aによって前記生地サンプル23に加えられた接触圧力は、6gf/cm2であった。次いで、前記装置に連結されたモニター(図示せず)に表示されたQ max値を記録した。このようなテストを10回繰り返し、Q max値の算術平均を算出した。
【0085】
<2.熱伝導度>
20cm×20cmサイズの生地サンプルを準備した後、20±2℃の温度および65±2%のRHの条件下で24時間放置した。次いで、20±2℃の温度および65±2%のRHのテスト環境で、KES-F7 THERMO LABO II(Kato Tech Co., LTD.)装置を用いて、生地の熱伝導度および熱伝達係数を求めた。具体的に、図3に例示されているように、20℃で維持されるベースプレート21上に前記生地サンプル23を載せ、30±2℃の熱源板(BT-Box)22b(接触面積:5cm×5cm)を、前記生地サンプル23上に1分間載せた。前記BT-Box22bが前記生地サンプル23と接触する間にも、その温度が30℃で維持されるように、前記BT-Box22bに熱が持続的に供給された。前記BT-Box22bの温度維持のために供給された熱量(即ち、熱流損失(heat flow loss))が、前記装置に連結されたモニター(図示せず)に表示された。このようなテストを5回繰り返し、熱流損失の算術平均を算出した。次いで、生地の熱伝導度および熱伝達係数を、下記の式2および式3を用いて算出した。
【0086】
式2:K=(W・D)/(A・ΔT)
式3:k=K/D
【0087】
ここで、Kは熱伝導度(W/cm・℃)であり、Dは生地サンプル23の厚さ(cm)であり、Aは前記BT-Box22bの接触面積(=25cm2)であり、ΔTは生地サンプル23の両面の温度差(=10℃)であり、Wは熱流損失(Watt)であり、kは熱伝達係数(W/cm2・℃)である。
【0088】
<3.剛軟度(stiffness)(gf)>
生地サンプル(横:60mm、縦:60mm)を採取した後、ASTM D885/D885M-10a(2014)のsection38によって試片の剛軟度を測定した。測定装置は、以下の通りであった。
【0089】
(i)CRE型引張試験機(CRE-type Tensile Testing Machine)(model:INSTRON3343)
(ii)ロードセル(Loading Cell)、2 KN(200 kgf)
(iii)試料ホルダー(Specimen Holder):section 38.4.3に規定されたspecimen holder
(iv)試料押下げ具(Specimen Depressor):section 38.4.4に規定されたspecimen depressor
【0090】
具体的に、サンプルがspecimen holderによって直接的に支持されるように、サンプルをspecimen holderの中央に載せた。サンプルは曲がらずに扁平な状態を維持した。この時、前記specimen holderのサンプル支持部(specimen supporting part)と、specimen depressorのディプレシング部(depressing part)との間の距離は5mmであった。次いで、specimen depressorを動かさずに、そのままにしておいた状態で、specimen holderを15mmまで上昇させながら最大強力を測定した。
【0091】
[実施例1]
<ポリエチレン原糸の製造>
図1に例示された装置を用いて200個のフィラメントを含み総繊度が150デニールであるポリエチレン原糸を製造した。
【0092】
具体的に、ポリエチレンチップをエクストルーダー100に投入して溶融させた。溶融されたポリエチレンは、200個のホールを有する口金200を通じて押出された。口金200のホール直径Dに対するホール長さLの比率である、L/Dは6であった。口金温度は270℃であった。
【0093】
口金200のノズルホールから吐出されつつ形成されたフィラメント11は、3つの区間からなる冷却部300にて、順次に冷却を行った。第1冷却部では1.2m/secの風速の冷却風によって70℃に冷却し、第2冷却部では0.8m/secの風速の冷却風によって40℃に冷却したのであり、第3冷却部で0.4m/secの風速の冷却風によって20℃に最終冷却された。冷却された後、集束機400によって、マルチフィラメント糸10として集束された。
【0094】
次いで、前記マルチフィラメント糸は延伸部500に移動した。前記延伸部は、4個の区間からなる多段延伸部からなり、具体的に、第1延伸区間では最大延伸温度70℃で総延伸比1.5倍に延伸され、第2延伸区間では最大延伸温度100℃で総延伸比2.0倍に延伸され、第3延伸区間では最大延伸温度120℃で総延伸比1.5倍に延伸され、第4延伸区間では、最大延伸温度125℃で、第3延伸区間に比べて2%の収縮延伸(弛緩)がなされるようにして延伸および熱固定された。
【0095】
次いで、前記延伸されたマルチフィラメント糸は、ワインダー600に巻き取られた。巻取り張力は0.8g/dであった。
【0096】
製造された原糸の物性を測定して下記表1に示した。
【0097】
<機能性生地の製造>
前記製造されたポリエチレン原糸を製織して、面密度500g/m2の機能性生地を製造した。製造された機能性生地の物性を測定して、下記表3に示した。
【0098】
[実施例2~7]
下記表1のように原糸条件を変更したことを除いて、実施例1と同一に生地を製造した。また、実施例1と同一に製造された生地の物性を測定して下記表3に示した。
【0099】
[比較例1~4]
下記表2のように原糸条件を変更したことを除いて、実施例1と同一に生地を製造した。また、実施例1と同一に製造された生地の物性を測定して下記表4に示した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
上記表1~表4を参照すれば、実施例による生地の場合、適切な冷感を有し、優れた剛軟度でドレープ性に優れているのを確認することができ、生地の製造時に、毛羽の発生頻度が極めて低くて製織性に優れているのを確認することができた。特に、実施例3のGPC分析を通じた重量分布グラフが示された図4を参照すれば、前記式1を満足する実施例にて、即ち、(Mwmax-Mwaver)-(Mwaver-Mwmin)の値が負の数である実施例にて、さらに優れた製織性および冷感性を有するのを確認することができた。
【0105】
以上のように、本発明では特定の事項と限定された実施例および図面によって説明されたが、これは本発明の、より全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は前記の実施例に限定されるのではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であればこのような記載から、多様な修正および変形が可能である。
【0106】
したがって、本発明の思想は説明された実施例に限定され決められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等であるか、または等価的変形がある全てのものは、本発明思想の範疇に属するというべきである。
【符号の説明】
【0107】
100:エクストルーダー
200:口金
300:冷却部
400:集束部
500:延伸部
600:ワインダー
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】