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特表2024-541739炎症を治療及び/又は予防するためのプロアントシアニジン及び亜鉛を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】炎症を治療及び/又は予防するためのプロアントシアニジン及び亜鉛を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20241101BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 36/45 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20241101BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20241101BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241101BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241101BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P29/00
A61K33/30
A61P43/00 121
A61K36/45
A61K9/20
A61P1/02
A61Q11/00
A61Q19/00
A61P1/00
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/48
A61P21/00
A61P17/10
A61P37/08
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531615
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 CA2022051759
(87)【国際公開番号】W WO2023097398
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/264,733
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524200483
【氏名又は名称】アニモラ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フィリップ コテ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ-アン アダム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB22
4C076BB31
4C076CC16
4C076CC18
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB191
4C083AB192
4C083AC302
4C083AC841
4C083AC842
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD15
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE11
4C083EE31
4C083EE33
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZB11
4C086ZC61
4C086ZC75
4C088AB44
4C088CA03
4C088MA13
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA28
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA43
4C088MA52
4C088MA57
4C088NA14
4C088ZA66
4C088ZA67
4C088ZB11
4C088ZC61
4C088ZC75
(57)【要約】
A型プロアントシアニジン(PAC-A)及び亜鉛を含む、対象における炎症を治療及び/又は予防するための組成物が提供される。本組成物は、0.001重量%~10重量%のPAC-A及び0.01重量%~25重量%の亜鉛含有化合物を含むことができる。A型プロアントシアニジン(PAC-A)及び亜鉛を含む組成物の投与を含む、対象における炎症を予防及び/又は治療するための方法が提供される。本組成物はまた、炎症の治療のための薬剤の製造に使用することもできる。例えば、炎症は、口腔、皮膚膜、又は胃腸管に関連し得る。例えば、経口ゲル製品を生産するためのプロセスであって、ゲル基剤を提供することと、亜鉛含有化合物及びA型プロアントシアニジン(PAC-A)含有抽出物をゲル基剤に混合して、経口ゲル製品を形成することと、を含む、プロセスが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型プロアントシアニジン(PAC-A)及び亜鉛を含む、対象における炎症を治療及び/又は予防するための組成物。
【請求項2】
前記組成物の総重量に対して少なくとも0.001重量%のPAC-Aを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも0.01重量%のPAC-Aを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも0.1重量%のPAC-Aを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1重量%のPAC-Aを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも10重量%のPAC-Aを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
0.001重量%~10重量%のPAC-Aを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
PAC-Aを提供するためのPAC-A含有抽出物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記PAC-A含有抽出物が、前記PAC-A含有抽出物の総重量に対して1重量%~15重量%のPAC-Aを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物の総重量に対して0.05重量%~15重量%の前記PAC-A含有抽出物を含む、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
0.05重量%~6重量%の前記PAC-A含有抽出物を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
1重量%~3重量%の前記PAC-A含有抽出物を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
0.05重量%~6重量%の前記PAC-A含有抽出物を含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
1重量%~3重量%の前記PAC-A含有抽出物を含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記PAC-A含有抽出物が、天然源から単離されている、請求項8~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記PAC-A含有抽出物が、PAC-A含有クランベリー抽出物として提供されている、請求項8~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記PAC-A含有抽出物が、不溶性抽出物である、請求項8~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記PAC-A含有抽出物が、可溶性抽出物である、請求項8~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記PAC-A含有抽出物が、乾燥クランベリー粉末である、請求項8~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記亜鉛を提供するための亜鉛含有化合物を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記亜鉛含有化合物が、亜鉛塩である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記亜鉛塩が、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、亜鉛メチオニン、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、及び塩化亜鉛を含む群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記亜鉛塩が、クエン酸亜鉛である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも0.01重量%の前記亜鉛含有化合物を含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
0.01重量%~25重量%の前記亜鉛含有化合物を含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
0.01重量%~10重量%の前記亜鉛含有化合物を含む、請求項20~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
0.01重量%~1重量%の前記亜鉛含有化合物を含む、請求項20~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、食用である、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、経口投与のために構成されている、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、局所適用のために構成されている、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が、チュアブル送達のために構成されている、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
ゲル基剤を更に含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が、口腔ケア製品である、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記口腔ケア製品が、洗口液、歯磨剤、ペースト、スプレー、歯科用ソフトキャンディー、ガム、又はトローチ剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が、スキンケア製品である、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記スキンケア製品が、皮膚膜への局所適用のために構成されているゲル、ローション、クリーム、又はスプレーである、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、胃腸ケア製品である、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記胃腸ケア製品が、ペースト、粉末、カプセル、又はチュアブル物質である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物が、ペースト、粉末、ゲル、液体、又はチュアブル物質である、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記対象が、哺乳動物である、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記対象が、ヒトである、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記対象が、動物である、請求項40に記載の組成物。
【請求項43】
前記対象が、イヌ、ネコ、又はウマである、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
A型プロアントシアニジン(PAC-A)及び亜鉛を含む組成物の投与を含む、対象における炎症を予防及び/又は治療するための方法。
【請求項45】
前記炎症が、口腔、皮膚膜、又は胃腸管に関連する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記炎症が、歯肉炎、歯周炎、筋肉痛、ざ瘡、アレルギー、皮膚炎、乾癬、湿疹、あせも、光過敏性、擦過傷、口内炎、病変、及び胃腸の炎症のうちの少なくとも1つに関連する、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記炎症が、皮膚炎に関連する、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記炎症が、歯周炎に関連する、請求項44~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記組成物が、経口投与される、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が、局所的に投与される、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、哺乳動物である、請求項44~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、ヒトである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が、動物である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が、イヌ、ネコ、又はウマである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物への複数回の曝露を更に含む、請求項44~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
A型プロアントシアニジン(PAC-A)及び亜鉛を含む前記組成物が、請求項1~43のいずれか一項に定義されている通りである、請求項44~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
炎症を予防及び/又は治療するための請求項1~43のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項58】
炎症の治療のための薬剤の製造のための請求項1~43のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項59】
経口ゲル製品を生産するためのプロセスであって、
ゲル基剤を提供することと、
亜鉛含有化合物及びA型プロアントシアニジン(PAC-A)含有抽出物を前記ゲル基剤に混合して、前記経口ゲル製品を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項60】
前記混合が、0.001重量%~10重量%のPAC-Aを有する前記経口ゲル製品を形成するために実施される、請求項59に記載のプロセス。
【請求項61】
前記PAC-A含有抽出物が、PAC-A含有クランベリー抽出物である、請求項59又は60に記載のプロセス。
【請求項62】
前記亜鉛含有化合物が、亜鉛塩である、請求項59~61のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項63】
前記混合が、0.01重量%~10重量%の前記亜鉛含有化合物を有する前記口腔用ゲル製品を形成するために実施される、請求項59~62のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項64】
前記ゲル基剤への前記PAC-A含有抽出物及び前記亜鉛含有化合物の混合中に、前記PAC-Aの分解を防止する温度を維持することを含む、請求項59~63のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、一般に、炎症を治療及び/又は予防するための組成物に関する。具体的には、本技術分野は、対象における炎症を軽減するためのプロアントシアニジン及び亜鉛を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、細菌又は毒素などの有害な刺激に対する身体の生物学的応答の一部である。炎症は、治療せずに放置すると、上皮組織、歯周組織、又は胃腸組織などの様々な身体組織内の重篤な炎症性疾患又は病気につながり得る。例えば、歯周病は、歯周組織と接触しているグラム陰性及び嫌気性細菌などの細菌性バイオフィルムによって引き起こされる、歯肉及び歯周組織の炎症性疾患である。イヌの約80%及びネコの70%が2歳までに歯周病を有し、重度の歯周炎が成人のほぼ20%に影響を及ぼすことが推定されている。治療せずに放置した場合、歯周病によって引き起こされる炎症は、歯肉の分解、歯槽骨の分解、歯牙欠損、及び血液感染につながり得る。
【0003】
炎症を軽減するために使用される従来の溶液には、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug、NSAID)又はステロイドなどの合成薬物が含まれる。しかしながら、これらの合成薬物は、抗凝血剤などの他の薬物との有害反応を有し得、心臓疾患を有する人々及び妊娠している女性によって服用することができない。ポリフェノールは、カナダ特許第2.532.596号における抗炎症製剤などの炎症を治療するための天然代替物として知られている。しかしながら、大量の天然抽出物が、ポリフェノールの有効投与量を達成するために必要とされ得る。クランベリーは、カナダ特許第2.730.716号に記載されているような既知のポリフェノール源であり、国際公開第1996/028135号においてその抗菌及び抗細菌特性について記載されている。
【0004】
歯肉炎症などの口腔の炎症を治療するための代替法には、歯垢及び歯石の予防、又は細菌膜の増殖を介した口臭の軽減が含まれる。したがって、歯周病の通常の治療は、組織の炎症ではなく細菌感染に向けられている。しかしながら、細菌感染を軽減することは、歯肉炎症を部分的にのみ軽減し得、免疫系が炎症と戦うことに関与しているときに細菌感染の再発の危険を冒し得る。
【0005】
したがって、対象における炎症及び細菌増殖を予防及び/又は治療するための組成物の改良の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本技術は、対象における炎症の軽減に向けた相乗効果を有する活性成分の組み合わせを含む組成物の製造及び使用を可能にする。亜鉛及びプロアントシアニジン(PAC-A)の組み合せは、組成物を、炎症を治療するために使用可能にすることが見出されている。
【0007】
一態様では、A型プロアントシアニジン(A-type proanthocyanidin、PAC-A)及び亜鉛を含む、対象における炎症を治療及び/又は予防するための組成物が提供される。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも0.001重量%のPAC-Aを含むことができる。例えば、組成物は、少なくとも0.01重量%のPAC-Aを含むことができる。例えば、組成物は、少なくとも0.1重量%のPAC-Aを含むことができる。例えば、組成物は、少なくとも1重量%のPAC-Aを含むことができる。例えば、組成物は、少なくとも10重量%のPAC-Aを含むことができる。任意選択的に、組成物は、0.001重量%~10重量%のPAC-Aを含むことができる。
【0008】
組成物は、PAC-Aを提供するためのPAC-A含有抽出物を含むことができる。PAC-A含有抽出物は、PAC-A含有抽出物の総重量に対して5重量%~15重量%のPAC-Aを含むことができる。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して0.05重量%~15重量%のPAC-A含有抽出物を含むことができる。任意選択的に、組成物は、0.05重量%~6重量%のPAC-A含有抽出物を含むことができる。更に任意選択的に、組成物は、1重量%~3重量%のPAC-A含有抽出物を含むことができる。
【0009】
いくつかの実施態様では、PAC-A含有抽出物は、天然源から単離することができる。例えば、PAC-A含有抽出物は、PAC-A含有クランベリー抽出物として提供することができる。別の例では、PAC-A含有抽出物は、不溶性抽出物であり得る。別の例では、PAC-A含有抽出物は、可溶性抽出物であり得る。任意選択的に、PAC-A含有抽出物は、乾燥クランベリー粉末であり得る。
【0010】
組成物はまた、亜鉛を提供するための亜鉛含有化合物を含むこともできる。例えば、亜鉛含有化合物は、亜鉛塩であり得る。例えば、亜鉛塩は、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、亜鉛メチオニン、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、及び塩化亜鉛からなる群から選択され得る。任意選択的に、亜鉛塩は、クエン酸亜鉛であり得る。
【0011】
いくつかの実施態様では、組成物は、少なくとも0.01重量%の亜鉛含有化合物を含むことができる。例えば、組成物は、0.01重量%~25重量%の亜鉛含有化合物を含むことができる。例えば、組成物は、0.01重量%~10重量%の亜鉛含有化合物を含むことができる。例えば、組成物は、0.01重量%~1重量%の亜鉛含有化合物を含むことができる。
【0012】
いくつかの実施態様では、組成物は、経口投与のために構成することができる。例えば、組成物は、食用であり得る。
【0013】
いくつかの実施態様では、組成物は、局所適用のために構成することができる。
【0014】
いくつかの実施態様では、組成物は、チュアブル送達のために構成することができる。
【0015】
いくつかの実施態様では、組成物は、ゲル基剤を更に含む。
【0016】
いくつかの実施態様では、組成物は、口腔ケア製品であり得る。例えば、口腔ケア製品は、洗口液、歯磨剤、ペースト、スプレー、歯科用ソフトキャンディー、ガム、又はトローチ剤である。
【0017】
いくつかの実施態様では、組成物は、スキンケア製品であり得る。例えば、スキンケア製品は、皮膚膜への局所適用のために構成されているゲル、ローション、クリーム、又はスプレーであり得る。
【0018】
いくつかの実施態様では、組成物は、胃腸ケア製品であり得る。例えば、胃腸ケア製品は、ペースト、粉末、カプセル、グミ、液体、坐薬、又はチュアブル物質であり得る。
【0019】
いくつかの実施態様では、組成物は、ペースト、粉末、ゲル、液体、又はチュアブル物質であり得る。
【0020】
別の態様では、A型プロアントシアニジン(PAC-A)及び亜鉛を含む組成物の投与を含む、対象における炎症を予防及び/又は治療する方法が提供される。例えば、炎症は、口腔、皮膚膜、又は胃腸管に関連し得る。例えば、炎症は、歯肉炎、歯周炎、筋肉痛、ざ瘡、アレルギー、皮膚炎、乾癬、湿疹、あせも、光過敏性、擦過傷、口内炎、病変、及び胃腸の炎症のうちの少なくとも1つに関連し得る。例えば、炎症は、皮膚炎に関連し得る。例えば、炎症は、歯周炎に関連し得る。
【0021】
いくつかの実施態様では、組成物は、経口投与することができる。他の実施態様では、組成物は、局所的に投与することができる。
【0022】
いくつかの実施態様では、方法は、組成物への複数回の曝露を含むことができる。
【0023】
対象は、哺乳動物であり得る。例えば、対象は、ヒトであり得る。例えば、対象は、動物であり得る。例えば、対象は、イヌ、ネコ、又はウマであり得る。
【0024】
別の態様によれば、対象における口腔に関連する炎症を軽減及び/又は予防するための口腔ケア製品であって、A型プロアントシアニジン(PAC-A)及び亜鉛を含む口腔ケア製品が提供される。
【0025】
いくつかの実施態様では、炎症は、歯周病又は口内炎に関連する。
【0026】
いくつかの実施態様では、口腔ケア製品は、0.001重量%~10重量%のPAC-A、任意選択的に、約0.0035%~約0.42%のPAC-Aを含む。
【0027】
いくつかの実施態様では、PAC-Aは、PAC-A含有抽出物として提供される。
【0028】
いくつかの実施態様では、口腔ケア製品は、0.05重量%~15重量%のPAC-A含有抽出物、任意選択的に、約1重量%~約3重量%のPAC-A含有抽出物を含む。いくつかの実施態様では、口腔ケア製品は、約0.01重量%~約25重量%の亜鉛含有化合物、任意選択的に、約0.1重量%~約10重量%の亜鉛含有化合物、更に任意選択的に、約0.1重量%~約1重量%の亜鉛含有化合物を含む。例えば、亜鉛含有化合物は、クエン酸亜鉛などの亜鉛塩である。PAC-A含有抽出物は、クランベリー抽出物として提供することができる。例えば、クランベリー抽出物は、乾燥クランベリー粉末、可溶性クランベリー抽出物、及び不溶性クランベリー抽出物のうちの1つであり得る。
【0029】
別の態様では、炎症を予防及び/又は治療するための本明細書で定義される組成物の使用が提供される。
【0030】
別の態様では、炎症の治療のための薬剤の製造のための本明細書で定義される組成物の使用が提供される。
【0031】
別の態様では、経口ゲル製品を生産するためのプロセスが提供される。本プロセスは、ゲル基剤を提供することと、亜鉛含有化合物及びA型プロアントシアニジン(PAC-A)含有抽出物をゲル基剤に混合して、経口ゲル製品を形成することと、を含む。例えば、混合は、0.001重量%~10重量%のPAC-Aを有する口腔ゲル製品を形成するために実施することができる。例えば、混合は、0.01重量%~10重量%の亜鉛含有化合物を有する口腔ゲル製品を形成するために実施することができる。
【0032】
いくつかの実施態様では、PAC-A含有抽出物は、PAC-A含有クランベリー抽出物である。
【0033】
いくつかの実施態様では、亜鉛含有化合物は、亜鉛塩である。
【0034】
いくつかの実施態様では、本プロセスは、ゲル基剤へのPAC-A含有抽出物及び亜鉛含有化合物の混合中に、PAC-Aの分解を防止する温度を維持することを含むことができる。
【0035】
加えて、本明細書に記載される方法/プロセスは、本明細書で提供されるPAC-A及び亜鉛を含む組成物の定義に由来する少なくとも1つの追加の特徴/ステップを含むことができる。
【0036】
本発明は、例示的実施態様と併せて説明されるが、本発明の範囲をそのような実施形態に限定することは意図されていないことが理解されるであろう。それどころか、本説明によって定義されるように含まれ得る全ての代替形態、修正形態、及び均等物が包含され得ることが意図されている。本発明の目的、利点、及び他の特徴は、添付の図面を参照して与えられる本発明の以下の非限定的な説明を読むと、より明らかになり、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】表1の製剤で治療されたときの炎症ストレス(細菌性リポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)及びポリイノシン:ポリシチジル酸(polyinosinic:polycytidylic acid、ポリI:C))下でのヒト器官型モデルによるインターロイキン-6(interleukin-6、IL-6)産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図2】表1の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルによるインターロイキン-8(interleukin-8、IL-8)産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図3】表1の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルにおけるIL-6をコードする遺伝子の平均発現レベル(増加倍率)を示す棒グラフである。
図4】表1の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルにおけるIL-8をコードする遺伝子の平均発現レベル(増加倍率)を示す棒グラフである。
図5】PAC-A濃縮クランベリー粉末である様々な濃度レベルのPAC-A含有抽出物(0%、0.1%、1%、3%、6%、及びHBSS)で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルによるIL-6産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図6】表2で識別される製剤2A、2C、2G、及び2Hで治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルによるIL-6産生及びIL-8産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図7】表2の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルによるIL-8産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図8】表2の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルにおけるIL-6をコードする遺伝子の平均発現レベル(増加倍率)を示す棒グラフである。
図9】表2の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルにおけるIL-8をコードする遺伝子の平均発現レベル(増加倍率)を示す棒グラフである。
図10】表3の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデル(歯肉モデル)によるIL-6産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図11】表4の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデル(歯肉モデル)によるIL-6産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図12】表5の製剤で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデル(歯肉モデル)によるIL-6産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図13】様々な活性成分を含有する異なる試験ゲルの抗酸化値(抗酸化能力TEACとして測定される)を示す棒グラフである。
図14】様々な温度で30分間熱処理を受けたPAC豊富クランベリー1重量%及び亜鉛0.2重量%のうちの少なくとも1つを含むクリーム製剤で治療されたときの炎症ストレス下での皮膚モデルによるIL-6産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図15】少なくとも1つの銅及びPAC豊富クランベリーを含むゲル製剤で治療されたときのヒト器官型モデル(歯肉モデル)によるIL-6産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
図16】亜鉛源、亜鉛濃度、及び調製されるときにゲルが曝露される温度の変動とともに、クランベリーの可溶性及び不溶性画分で作製されたゲル製剤で治療されたときのヒト器官型モデル(歯肉モデル)によるIL-6産生(pg/ml)を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施例、変形例、及び好ましい実施形態が、以下に記載される。一態様では、A型プロアントシアニジン(PAC-A)及び亜鉛イオンの相乗的組み合わせを含む、対象における炎症を治療及び/又は予防するための組成物が提供される。より具体的には、驚くべきことに、本明細書で実証されるように、亜鉛イオンがPAC-Aの抗炎症能力の増強剤として作用し、亜鉛及びPAC-A含有化合物/抽出物の組み合わせが対象における炎症を治療及び/又は予防することができることが見出されている。
【0039】
いくつかの実施態様では、この組成物は、動物などの対象における口腔に関連する炎症の治療及び/又は予防のための歯科用製品として使用することができる。
【0040】
本明細書の文脈では、炎症の「治療」という用語は、対象における炎症を軽減することを含むことができる。
【0041】
A型プロアントシアニジン
プロアントシアニジン(PAC)は、クランベリー及びブルーベリー並びにEricaceae科の他のメンバーなどの天然源、並びにアロニア(チョークベリー)、シナモン及び桂皮、ブドウ及びブドウ種子油、イチゴ、アボカド、緑茶、ハスカップベリーなどの他の植物によって産生されるポリフェノールのクラスである。PACは、高い抗酸化能力、並びに抗炎症及び抗菌特性を有する。PACは、細菌に結合して、細菌が粘膜にしがみつくことを防止し、したがって、対象における生物膜の増殖又はコロニーの付着を防止することができる。これに関連して、「対象」という用語は、限定されないが、ヒト、イヌ若しくはネコなどの家庭用動物、ウマなどの農場又は家畜動物、動物園の動物を含む、哺乳動物などの生きている脊椎動物を指す。
【0042】
A型プロアントシアニジン(PAC-A)は、Vaccinium oxycoccos及びVaccinium macrocarpon(クランベリー)由来などの天然源に見出され得る、抗菌及び抗炎症特性を有するPACのサブクラスである。例えば、PAC-Aは、PAC-A含有天然源に由来するPAC-A含有抽出物に含まれ得る。別の例では、調整された濃度の合成PAC-Aを有するPAC-A含有抽出物を調製することができるように、PAC-Aを合成することができる。PAC-A含有天然源がクランベリーを含む場合、PAC-A含有抽出物は、PAC-A含有クランベリー抽出物と称され得る。本明細書に包含されるPAC-A含有抽出物は、可溶性PAC-A含有抽出物、不溶性PAC-A含有抽出物、又はそれらの組み合わせを含むことができる。可溶性抽出物は、ゲル中の製剤、又はスプレー中などの局所適用のため若しくは経口摂取のための液体製剤に溶解された製剤に有用であり得る。例えば、乾燥クランベリー粉末の可溶性部分(可溶性抽出物)は、乾燥クランベリー粉末の不溶性部分(不溶性抽出物)よりも短い鎖のPAC-Aポリマーからなり得る。別の例では、PAC-A含有抽出物は、PAC-A含有天然源全体、すなわち、クランベリーから取得される乾燥クランベリー粉末(可溶性部分及び不溶性部分を含む)であり得る。純粋な乾燥クランベリー粉末は、最大約7重量%のPAC-Aを含有することができる。例えば、天然源に由来するPAC-A含有抽出物は、PAC-A含有抽出物の総重量に対して約1重量%~約15重量%の範囲のPAC-A濃度を有することができる。例えば、乾燥クランベリー粉末は、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、又は少なくとも7重量%のPAC-A濃度を有することができる。しかしながら、PAC-A含有抽出物は、PAC-A濃度を増加させるための任意の既知の技術に従って調製又は合成され得ることを理解されたい。本技術は、PAC-A含有抽出物中の具体的なPAC-A濃度に限定されないことに留意されたい。炎症の治療に向けた相乗効果は、亜鉛、及び組成物の総重量に対して少なくとも0.001重量%のPAC-A、少なくとも0.01%のPAC-A、少なくとも1%のPAC-A、又は少なくとも10%のPAC-Aを含む組成物について観察され得る。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して約0.001重量%~約10重量%のPAC-Aを含むことができる。
【0043】
本明細書の文脈では、「抽出物」又は「PAC-A含有抽出物」という用語は、結果として生じる抽出物中にそのPAC-A含有量を回収するために、PAC-A含有天然源の物理的及び/又は化学的処理から生じるPAC-A含有化合物を含むことを意図している。物理的及び/又は化学的処理は、結果として生じる抽出物(可溶性抽出物、不溶性抽出物、又は乾燥クランベリーなど)中でより高いPAC-A濃度を取得するために調整することができる。可溶性抽出物は、可溶化されたクランベリー搾りかすの溶液を含み、濾液の脱水によって調製することができる。不溶性抽出物は、前述の可溶性クランベリー搾りかすの非可溶化画分を含み、脱水によって調製することができる。乾燥クランベリーは、更に粉砕されて、PAC-A含有抽出物として使用することができる純粋な乾燥クランベリー粉末を生産することができる。
【0044】
PACポリマーは、大イオンを収容することができる反応性結合部位をその末端単位上に有する。例えば、PAC-Aポリマーの反応部位は、亜鉛イオンを収容し、それによって、PAC-A/亜鉛錯体を形成することができる。具体的には、PACは、2つの異なる種類の結合によって連結された2つのフラバノールサブユニット、すなわち、カテキン及びエピカテキンからなるポリマーである。B型プロアントシアニジン(B-type proanthocyanidin、PAC-B)における結合が、炭素C4とC8との間の単共有結合(b型結合)である一方で、A型プロアントシアニジン(PAC-A)における結合は、炭素C2と炭素C7の酸素との間の第2のフラバノ-ル間結合(a型結合)である。PAC-Aにおけるカテキンとエピカテキンとの間のa型結合は、2つのPAC-Aポリマーの末端単位への亜鉛イオン(Zn2+)の結合を可能にし、したがって、それらをPAC-A/亜鉛錯体にまとめることができる。
【0045】
クランベリー粉末などの市販のクランベリー抽出物/製品は、クランベリー抽出物/製品の生産の方法に応じてPAC-Aを含まない場合があることに留意されたい。加えて、クランベリー抽出物中のPAC-A濃度は、抽出物の種類によって変化し得る。クランベリー源又は抽出物に、ある温度での熱処理を受けさせることは、PAC-Aを分解し、クランベリー抽出物を、亜鉛イオンとPAC-Aとの間の相乗効果を標的とする本発明の目的のために非効率的にし得ることに更に留意されたい。実験結果は、過剰な温度への曝露が、組成物中のPAC-A及び亜鉛の相乗的組み合わせの抗炎症機能を妨げ得ることを示すために提供される。本明細書に包含される組成物は、亜鉛含有成分と組み合わせたときに炎症に向けた相乗効果の低減又は抑制を引き起こす任意の熱にPAC-A含有抽出物を曝露しない技術に従って調製される。
【0046】
亜鉛
亜鉛イオンは、抗菌特性を有することが知られており、歯垢を制御し、歯石形成を阻害し、口臭を軽減するために、洗口液又はスプレー、及び歯磨剤などの口腔衛生製品に使用することができる。
【0047】
しかしながら、亜鉛系化合物とも称される亜鉛含有化合物によって提供される亜鉛イオンは、PAC-A含有抽出物と組み合わせて、PAC-Aの抗炎症能力の増強剤として採用し得ることが本明細書で示される。本明細書に包含される亜鉛含有化合物は、限定されないが、亜鉛塩若しくはそれらの組み合わせであり得るか、又はそれを含むことができる。亜鉛塩には、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、亜鉛メチオニン、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、塩化亜鉛、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0048】
組成物中の亜鉛含有化合物の濃度は、治療される対象ゾーンの生存率によって限定され得ることに留意されたい。
【0049】
PAC-Aの効果の増強
炎症関連インターロイキン-6(IL-6)及びインターロイキン-8(IL-8)遺伝子のインビトロ発現の低減/抑制におけるPAC-A含有抽出物の効果は、亜鉛イオンの存在下で有利に変化することが見出された。実施例の節で見られるように、3重量%のPAC-A含有クランベリー抽出物(乾燥クランベリー粉末)を含む組成物は、増強剤を使用せずに、インターロイキン-6及びインターロイキン-8遺伝子の発現、並びにIL-6及びIL-8の産生を低減するために最適であり、したがって、対象の組織における炎症を軽減することに最適であることが見出された。PAC-A含有クランベリー抽出物がクエン酸亜鉛と組み合わせられると、IL-6及びIL-8遺伝子発現並びにIL-6及びIL-8産生の実質的に同様の抑制を依然として示しながら、PAC-A含有クランベリー抽出物の濃度が低減され得、したがって、亜鉛イオンがPAC-Aの抗炎症特性の増強剤であり得ることを示した。
【0050】
したがって、PAC-Aを亜鉛と組み合わせる組成物は、対象の組織における炎症を軽減するために通常必要となる、より少量のPAC-Aを利用することができる。実施例の節に見られるように、増強剤としての亜鉛イオンの使用は、増強剤なしで使用されたときの3重量%のPAC-Aの最適レベルとしてIL-6及びIL-8遺伝子発現並びにIL-6及びIL-8産生の同様のレベルを維持しながら、有効投与量において必要とされるPAC-A含有抽出物の総濃度を組成物中の少なくとも1重量%のPAC-A含有抽出物まで低減することができる。いくつかの実施態様では、増強剤としての亜鉛の使用は、組成物中のPAC-A含有抽出物の濃度を少なくとも約0.05重量%まで低減することができる。実施例の節に見られるように、亜鉛の増強効果は、PAC-Aを含有する抽出物で実証されたが、ブルーベリー抽出物などのB型プロアントシアニジン(PAC-B)を含有する抽出物では示されなかった。PAC-Aポリマーのa型結合が、第2のPAC-Aポリマーとともに亜鉛イオンに安定的に結合することができる反応部位を生成する一方で、PAC-Bポリマー中のエピカテキンとカテキンとの間の単結合b型結合は、そうではない。
【0051】
別の例では、少なくとも1重量%のPAC-A含有抽出物及び少なくとも0.01重量%の亜鉛含有化合物を含有する組成物は、インターロイキン-6及びインターロイキン-8遺伝子の発現、並びにIL-6及びIL-8の産生を低減し、したがって、炎症を軽減することが示されている。PAC-A含有抽出物とともに少なくとも0.01重量%の亜鉛含有化合物を含むことは、PAC-Aの抗炎症特性を増加させることが示されている。PAC-Aの抗炎症特性の増強剤として亜鉛イオンを使用することは、組成物の有効用量において必要な抗炎症PAC-A化合物の総濃度を低減する。ほとんどのPAC-A含有成分又は抽出物が色鮮やかである(クランベリーなど)ため、PAC-A含有成分の量の低減は、無色又は容易に染色される製剤の作成を促進する。更に、PAC-Aの抗炎症能力の増強剤として亜鉛イオンを使用することは、亜鉛イオンを含まない製剤よりも高い効力を有する抗炎症組成物を可能にする。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約0.05重量%~約15重量%のPAC-A含有抽出物、約0.05重量%~約6重量%のPAC-A含有抽出物、又は約1重量%~約3重量%のPAC-A含有抽出物を含み、組成物中で少なくとも0.001重量%、少なくとも0.01重量%、少なくとも1重量%、又は少なくとも10重量%のPAC-A濃度を達成することができる(PAC-A含有抽出物のPAC-A濃度による。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して約0.001%~約10%のPAC-A、任意選択的に、約0.0035%~約0.42%のPAC-Aを含むことができる。PAC-A含有抽出物は、クランベリーなどの天然源に由来し得る。PAC-A含有抽出物は、可溶性又は不溶性であり得る。いくつかの実施態様では、PAC-A含有抽出物は、乾燥クランベリー粉末である。
【0053】
いくつかの実施態様では、組成物は、約0.01重量%~約25重量%の亜鉛含有化合物、例えば、約0.01重量%~約10重量%の亜鉛含有化合物、任意選択的に、0.01重量%~1重量%の亜鉛含有化合物を含む。例えば、組成物は、最大で3重量%、最大で2重量%、又は最大で1重量%のPAC-A含有抽出物、及び最大で0.6重量%、最大で0.2重量%、又は少なくとも0.01重量%のクエン酸亜鉛などの亜鉛塩を含むことができる。
【0054】
他の効果
本明細書に記載される活性成分、すなわち、PAC-A及び亜鉛イオンは、抗炎症機能/効果以上のものを提供することができることに留意されたい。本明細書に記載される組成物の適用を炎症の治療に限定することは意図されず、組成物は、抗酸化機能のために、細菌増殖の低減/防止のために、又は免疫応答を支持するために更に使用され得る。
【0055】
送達方法
PAC-A及び亜鉛を含む組成物は、口腔の炎症(歯周炎又は歯肉炎などの歯周病及び口内炎を含む)、皮膚の炎症(ざ瘡、蕁麻疹(アレルギー)、皮膚炎、乾癬、湿疹、あせも、光過敏症、擦過傷及び病変を含む)、及び/又は胃腸の炎症(咽頭炎又は炎症性腸疾患を含む)によって引き起こされる様々な病気又は状態を治療するために使用することができる。したがって、組成物の送達方法は、例えば、罹患組織上の局所適用、経口投与、又はチュアブル送達を含むことができる。これに関連して、「局所適用」という用語は、皮膚、舌下、頬側、又は口腔粘膜吸収を通した活性物質の送達のための、口腔(口、歯肉など)及び皮膚膜(皮膚)を含む体表面への適用のために構成される製剤を意味する。「経口投与」という用語は、吸収のための胃腸管への活性物質の送達のために構成される製剤を意味する。「チュアブル送達」という用語は、ガム又は歯科用ソフトキャンディーなどの口腔への局所送達のために噛めるように構成される製剤を意味する。本明細書に記載される組成物は、限定されないが、ゲル、歯磨剤、歯科用ソフトキャンディー、ローション、スプレー、クリーム、ガム、飲料、錠剤、トローチ剤、カプセル、シロップ、カプセル、水溶性又は油懸濁液などを含む、様々な送達方法を介して、(罹患する/炎症状態になる前、又はそのときに)組織に送達することができる。
【0056】
いくつかの実施形態、特に、経口投与、チュアブル送達、又は口腔への局所適用のために構成された組成物では、組成物は、乾燥クランベリー粉末及びクエン酸亜鉛などの食用成分から完全になり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物は、歯肉及び口腔を含む、口腔又は口腔粘膜への局所適用のために構成される。例えば、歯周炎では、歯肉の炎症は、骨密度の損失の主な原因である。炎症によって産生されるマトリックスメタロプロテイナーゼは、カルシウムをキレート化することによって歯槽骨の分解を引き起こす。したがって、対象の歯肉における炎症を軽減することは、歯槽骨の潜在的損失を軽減する。口腔又は口腔粘膜への局所適用のために構成された組成物は、ゲル、歯磨剤、口腔スプレー、洗口液、トローチ剤などを含むことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、組成物は、皮膚膜(皮膚)への局所適用のために構成される。例えば、炎症性ざ瘡は、詰まった毛穴から生じ得る。皮膚の炎症の治療は、詰まった毛穴の腫脹及び発赤を軽減し得る。筋肉痛はまた、筋肉組織の炎症によって引き起こされ得、罹患組織における炎症を軽減することは、関連する筋肉痛を軽減し得る。皮膚膜への局所適用のために構成された組成物は、ゲル、ローション、クリーム、又はスプレーを含むことができる。他の実施形態では、組成物は、瘢痕又は皮膚再生クリーム、メイクアッププライマー、コンシーラーなどの化粧品に使用することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与のために構成される。例えば、咽頭炎は、咽喉の疼痛及び腫脹を引き起こし得る、咽頭(すなわち、口/鼻腔と食道/気管との間の咽喉の部分)の炎症によって引き起こされる。咽頭における炎症を軽減することは、関連する症状を軽減し得る。胃腸管への組成物の送達のための経口投与は、ゲル、スプレー、飲料、錠剤、トローチ剤、カプセル、水又は油懸濁液、シロップなどの形態の組成物を含むことができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、組成物は、歯周病を治療するための口腔粘膜への送達のためなどのチュアブル送達のために構成される。チュアブル送達は、口腔粘膜への曝露の時間を最大化するために、特に非ヒト対象のために有用である。例えば、組成物は、イヌ又はネコなどの家庭用動物の口腔粘膜への投与のための歯科用ソフトキャンディーの形態であり得る。ヒト対象用などの他の実施形態では、組成物は、口腔粘膜への長期曝露のためのチューインガムの形態であり得る。
【0061】
例えば、組成物は、最大で3重量%、最大で2重量%、又は最大で1重量%の乾燥クランベリー粉末などのPAC-A含有抽出物、及び最大で0.6重量%、最大で0.2重量%、又は少なくとも0.01重量%のクエン酸亜鉛などの亜鉛塩を含む、口腔ケア製品であり得る。別の例では、組成物は、最大で3重量%、最大で2重量%、又は最大で1重量%の乾燥クランベリー粉末などのPAC-A含有抽出物、及び最大で0.6重量%、最大で0.2重量%、又は少なくとも0.01重量%のクエン酸亜鉛などの亜鉛塩を含む、スキンケア製品であり得る。
【0062】
いくつかの実施態様では、対象の健康にとって、又は組成物の口あたりの良さを改善するために有益である他の化合物を、化合物として含むことができる。例えば、ブルーベリー、アロニア(チョークベリー)、ハスカップベリー、緑茶、イチゴ、ブドウ及びブドウ種子油、グレープフルーツ、レモン、並びにサクランボから単離された抽出物などのPAC-B抗酸化物質を含有する天然抽出物を組成物に含むことができる。いくつかの実施態様では、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、オメガ-3脂肪酸、オメガ-6脂肪酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸塩、リン酸二カルシウム、クエン酸、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、リゾチーム、及び/又はプロテアーゼなどの化合物を組成物に含むことができる。いくつかの実施態様では、保湿剤、増粘剤、ワックス、小麦粉、デンプン、乳化剤、及び/又は油などの作用物質を、組成物の送達系の一部として使用することができる。
【0063】
例示的な実施態様
歯科用ゲル製品の例が以下に提供される:
【0064】
【表1】
【0065】
歯科用ソフトキャンディー組成物の例が以下に提供される:
【0066】
【表2】
【0067】
健康飲料組成物の例が以下に提供される:
【0068】
【表3】
【0069】
ローション組成物の例が以下に提供される:
【0070】
【表4】
【0071】
クリーム組成物の例が以下に提供される:
【0072】
【表5】
【0073】
組成物を対象に提供するために他の製品が生産され得ることに留意されたい。例えば、本明細書に包含される組成物を含有するカプセルを、胃腸の炎症を治療するために使用することができる。任意選択的に、カプセル中の組成物は、少なくとも80重量%のPAC-A含有抽出物及び1重量%のクエン酸亜鉛を含むことができる。例えば、カプセル中の組成物は、約99重量%の乾燥クランベリー粉末及び約1重量%のクエン酸亜鉛を含むことができる。
【0074】
実験結果
実施例1-インビトロ器官型モデルに対するPAC及び亜鉛を含有する組成物の効果-炎症性サイトカイン(IL-6及びIL-8)の検出
インビトロアッセイを実施して、人工ヒト器官型モデルに対するPAC-A及び亜鉛組成物の向上した抗炎症効果を示した。EpiGingival(商標)三次元器官型モデル(MaTtek(商標)からのGIN-112)を使用して、炎症性サイトカイン産生に対するPAC-A及び亜鉛イオンの相乗的組み合わせの阻害効果を決定した。器官型モデルは、高度に分化したヒトケラチノサイトの多層によって形成されるヒト口腔粘膜と同等である。簡潔に言えば、健康なボランティアから単離されたヒト上皮細胞を、増殖因子を含有する培養培地に浸した多孔性膜の表面上に堆積させた。多孔性膜によって支持される基底外側部分が培養培地と接触している間に、細胞多層が、環境(空気)と接触しているモデルの先端(上)部分との空気・液体界面と形成された。モデルを一晩インキュベートし(37℃、5%CO)、次いで、10μg/mLのポリイノシン:ポリシチジル酸(ポリI:C)及び2μg/mLの細菌性リポ多糖(LPS)を含有する免疫刺激培地を接種して、炎症反応を誘導した。24時間のインキュベーション(37℃、5%CO)期間の前に、40μLの表に示される製剤を器官型モデルの表面上に堆積させた。
【0075】
器官型モデルを冷PBSですすぎ、残留した微量のゲルを除去し、RNAlater(登録商標)中に保存した。培養培地中の炎症性サイトカイン(IL-6及びIL-8)の検出に加えて、炎症性サイトカインをコードする遺伝子の発現の分析を実施した。器官型モデルを、600μLの冷RLT緩衝液(EZNAキット、Omega(登録商標))とともにCK14セラミックビーズを含むPrecellys(登録商標)型チューブに移した。試料を、Precellys(登録商標)ホモジナイザーを用いて6500rpmで30秒間均質化した。次いで、細胞溶解物を使用し、製造業者の推奨に従ってOmega(登録商標)EZNAキットを使用してRNAを抽出した。次いで、RNAを60μLの溶出緩衝液中に溶出した。製造業者の指示に従ってQiagen(登録商標)レトロトランスクリプターゼ(RT First Strand)を使用して、500ngのRNAを相補的DNA(complementary DNA、cDNA)に転写した。Qiagen(登録商標)からのプライマーを使用したサーモサイクラー(Mx3000p、Stratagene(登録商標))を使用して、増幅を20μLの体積まで実行した。試料を、95℃で10分間の初期サイクルで変性させ、次いで、95℃で15秒間の変性と60℃での対合とを交互に行う40サイクルを実施した。蛍光を各サイクルの終わりに測定した。ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、GAPDH)及びβ-グルクロニダーゼ(β-glucuronida、GUSB)の発現も監視した。デルタ-デルタCt法(ΔΔCt)を使用して、遺伝子の各々の発現を定量化した。計算のための参照ベースとして機能する試料は、完全培地であるハンクス平衡塩溶液(Hank's Balanced Salt Solution、HBSS)のみと接触している細胞から抽出されたRNAであった。
【0076】
以下の製剤を試験した:
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
【0081】
【表10】
【0082】
ここで図1~4を参照すると、結果は、3%のPAC-A含有クランベリー抽出物を含む製剤(製剤1B及び1C)並びに3%のPAC-B含有ブルーベリー抽出物を含む製剤(製剤1D)が、HBSSを含有する対照製剤(製剤1A)と比べて、IL-6及びIL-8遺伝子の発現並びにIL-6及びIL-8の産生を著しく低減することを示した。PAC-A含有クランベリー抽出物のみ、又はPAC-B含有ブルーベリー抽出物のみを含有する製剤の間に、有意差は見出されなかった。0.2%のクエン酸亜鉛を含む製剤(製剤1E)は、IL-6若しくはIL-8遺伝子の発現又はIL-6若しくはIL-8の産生においていずれの有意差も生じさせなかった。
【0083】
ここで図5を参照すると、棒グラフは、対照としてHBSSを含有する製剤を含む0%、0.1%、1%、3%、及び6%のPAC-A含有クランベリー抽出物で治療されたときの炎症ストレス(LPS/ポリI:C)下でのヒト器官型モデルによるIL-6産生(pg/ml)を示す。IL-6の産生を低減するための増強剤を使用しないPAC-A含有抽出物の最低最適濃度は、少なくとも3%であることが見出された。1%のPAC-A含有抽出物を含有する製剤と3%のPAC-A含有抽出物を含有する製剤との間に、IL-6産生の著しい減少があり、IL-6の産生は、6%の増加したPAC-A濃度を有する製剤が適用されたときに著しく低減されなかった。したがって、3%のPAC-A含有抽出物の濃度を、後続の実験で陽性対照として使用した。
【0084】
ここで図6~9を参照すると、結果は、IL-6及びIL-8遺伝子発現並びにサイトカイン濃度レベルが、3%のPAC-A含有クランベリー抽出物を含む製剤(製剤2A)で24時間治療された器官型モデルでは著しく低減されることを確認した。製剤2B及び2Dで治療された器官型モデルにおけるIL-6産生の比較は、クランベリーPAC-A組成物(2B)の抗炎症機能が、0.5%ヒドロコルチゾン組成物の抗炎症機能に匹敵することを示す。
【0085】
したがって、実験は、クランベリー抽出物の濃度がより高いときに、炎症性サイトカイン産生の低減がより顕著であるため、PAC-A含有クランベリー抽出物が抗炎症効果の大部分を生じることを示している。
【0086】
3%のアロニアベリー(チョークベリー)抽出物を含む製剤(製剤2C)もまた、器官型モデルで試験された。図6及び7を参照すると、結果は、PAC含有アロニアベリー抽出物を含む製剤(製剤2C)が、ゲル基剤と比べてIL-6及びIL-8の産生の減少をもたらすことを示したが、アロニアベリーの抗炎症特性は、クランベリー抽出物のものほど顕著ではなかった。図5、17、及び18を参照すると、IL-6及びIL-8遺伝子発現、並びにIL-6、IL-8、TNF-α、及びNF-κB産生について観察された傾向が類似しているようだったため、実施された更なる試験は、IL-6産生のみの評価に基づいた。
【0087】
ここで図10を参照すると、図5及び6に示される結果と同様に、3重量%のPAC-A含有クランベリー抽出物を含む製剤(製剤3B)は、1重量%のPAC-A含有クランベリー抽出物のみを含む製剤(製剤3C)よりも著しく少ない炎症性サイトカイン産生を示した。しかしながら、0.2重量%のクエン酸亜鉛を1重量%のPAC-A含有クランベリー抽出物と組み合わせると(製剤3E)、IL-6サイトカインの産生は、3重量%のPAC-A含有クランベリー抽出物を含有する製剤と同等の産生レベルまで著しく低減された。0.2重量%のクエン酸亜鉛のみを含有する製剤(製剤1D)が、HBSS対照と比べてIL-6サイトカインの産生を著しく低減しなかった(図1)ため、結果は、亜鉛がPAC-Aの抗炎症能力の増強剤として作用することを示す。1%のPAC-A含有クランベリー抽出物及び0.2%のクエン酸亜鉛を含有する製剤(製剤3E)並びに1%のPAC-B含有ブルーベリー抽出物及び0.2%のクエン酸亜鉛を含有する製剤(製剤5G、図12)で治療された器官型モデルにおける結果として生じるIL-6産生の比較は、驚くべきことに、亜鉛イオンの増強効果がPAC-A含有クランベリー抽出物では存在し、PAC-B含有ブルーベリー抽出物では存在しないことを示す。
【0088】
図11に示されるように、0.6重量%、0.05重量%、及び0.0125重量%を含む、様々なレベルのクエン酸亜鉛を用いて、更なる実験を行った。IL-6産生は、3重量%のPAC-Aクランベリー抽出物及び0.6重量%のクエン酸亜鉛を含有する製剤(製剤4F)では著しく低減された。0.05重量%以下のクエン酸亜鉛を含有する製剤4G及び4Hは、少なくとも0.2重量%のクエン酸亜鉛を含有する製剤(製剤3E及び4F)で示される増強効果を示さなかった。
【0089】
可溶性PAC-A含有クランベリー抽出物及び不溶性PAC-A含有クランベリー抽出物を含有する製剤もまた、器官型モデルに適用された。3重量%のPAC-A含有クランベリー抽出物(製剤4B)で治療されたモデル、及び可溶性PAC-A含有クランベリー抽出物又は不溶性PAC-A含有クランベリー抽出物(それぞれ、製剤4C及び4D)のいずれかで治療されたモデルでは、IL-6サイトカイン産生の間に有意差はなかった。
【0090】
実施例2-H-ORACアッセイを使用したPAC及び亜鉛を含有する組成物の効果-抗酸化能力の研究
Trolox等価抗酸化能力(Trolox Equivalent Antioxidant Capacity、TEAC)及び親水性酸素ラジカル吸収能力(Hydrophilic-Oxygen Radical Absorbance Capacity、H-ORAC)潜在性を使用することによって、別個の活性成分及び成分のいくつかの混合物を含むゲルの抗酸化能力を評価した。表6は、別個の成分(クランベリー、ブルーベリー、クエン酸亜鉛)を含有する中性ゲル、成分の混合物、及び595 TEACで評価されている参照中性ゲル(ゲル4)のTEAC結果の概要を提供する。
【0091】
【表11】
【0092】
表6及び図13を参照すると、0.2重量%のクエン酸亜鉛で作製されたゲルは、中性ゲルの測定値のすぐ下のTEAC値を有することが見出された。1重量%のクランベリー粉末で作製されたゲルは、1018の測定TEAC値を有していた。0.2重量%のクエン酸亜鉛を1重量%のクランベリー粉末に添加すると、抗酸化能力値は、1997 TEACと測定され、これは、陽性対照として使用される3重量%のクランベリー粉末のみを使用したときよりも185 TEAC高い。これは、亜鉛又はクエン酸亜鉛などの亜鉛系化合物、及びPAC豊富クランベリー粉末を使用することが、本系の抗酸化能力を増加させるという考えを支持する。
【0093】
PAC豊富ブルーベリー粉末を使用したときに、相乗効果は観察されなかった。したがって、抗酸化能力/能の増加に関する相乗効果は、クランベリープロアントシアニジン、すなわち、PAC-Aを使用するときに観察される。
【0094】
実施例3-皮膚モデルに対するPAC及び亜鉛を含有する組成物の効果-炎症性サイトカイン(IL-6)の検出による抗炎症効果の研究
別の一連の実験を実施して、異なる種類のヒト組織に適用された異なる媒体中のPAC豊富クランベリー粉末及びクエン酸亜鉛の抗炎症効果を測定した。この場合、活性成分を、油性の市販のスキンクリーム中に提供し、皮膚モデル(MaTtek EpiDerm(商標))に適用した。2つの仮説を、この一連の実験で試験した。第1の仮説は、クランベリー・亜鉛相乗作用が媒体にも組織モデルにも依存しないということであった。第2の仮説は、相乗作用が温度依存性であるということである。
【0095】
図14を参照すると、PAC豊富クランベリー粉末(1重量%)で強化された市販のスキンクリームは、参照として使用された中性クリームとは著しく異なる抗炎症効果を有することが見出された。クエン酸亜鉛(0.2重量%)のみで強化されたクリームは、中性クリームと比較して抗炎症効果にいずれの有意差も生じさせなかった。1.0重量%のPAC豊富クランベリー粉末及び0.2重量%のクエン酸亜鉛の組み合わせを(熱処理なしで)クリームに添加すると、著しく異なり、かつより高い抗炎症効果が観察された。このクリームは、他のクリームと比較すると、最も有効であることが見出された。これは、相乗作用がゲルとは異なる媒体で観察され得ることを示唆する。それはまた、相乗作用が、異なる種類のヒト組織(例えば、歯肉モデル及び皮膚モデル)で、かつ異なる媒体で使用されるときに働くことを示唆する。
【0096】
実験の後半では、同じ市販のクリームに、1.0重量%のPAC含有クランベリー粉末及び0.2重量%のクエン酸亜鉛を補充したが、30分の持続時間にわたって75℃の温度まで加熱した。依然として図14を参照すると、クリーム試料は、いずれの相乗的抗炎症応答も示さず、それによって、温度がPAC-A-亜鉛相乗作用に有害であり得ることを示した。
【0097】
実施例4-歯肉モデルに対するPAC及び銅を含有する組成物の効果-炎症性サイトカイン(IL-6)の検出による抗炎症効果の研究
別の一連の実験を実施して、亜鉛とは異なる金属イオンの効果を評価した。実施例1に記載されるように、媒体としてのゲル及び歯肉組織モデル(MaTtek EpiGingival(商標))を使用して、これらの試験を行った。クエン酸銅(2+)を、クエン酸亜鉛の代わりに使用した。同じ濃度の銅及び亜鉛イオンを有するために、使用される銅の濃度(0.1046重量%)を使用した。Cu2+が、原子半径、原子量、及び電子分布においてZn2+に非常に近いため、代用物として選択された。図15を参照すると、銅がゲル中で単独で使用されたときに、このゲルと中性ゲル(ゲル基剤)との間に有意差はなかった。クランベリー及びクエン酸銅を含むゲルを作製すると、IL-6産生は、銅のみで作製されたゲル又は中性ゲルのものと有意に異ならなかった。このデータは、Zn2+イオンのみがクランベリーとともに増強剤効果を有するという仮説を支持する。
【0098】
実施例5-歯肉モデルに対するPAC及び亜鉛を含有する組成物の効果-炎症性サイトカイン(IL-6)の検出による抗炎症効果の研究
別の一連の実験を、実施例1に記載される歯肉モデル(MaTtek EpiGingival(商標))に実施して、炎症の軽減に関する観察された相乗作用におけるクランベリーの可溶性画分及び不溶性画分の役割を特性評価した。PAC-A含有クランベリー抽出物の可溶性画分及び不溶性画分の分離を実施し、それぞれ、クランベリー粉末の1重量%の可溶性画分及び1重量%の不溶性画分の濃度、並びに0.2重量%のクエン酸亜鉛の濃度を使用して、2つの異なるゲル試料を作製した。図16を参照すると、可溶性画分で作製されたゲル試料が、中性ゲルとは著しく異なる抗炎症結果を示した一方で、不溶性画分のみで作製されたゲル試料は、抗炎症結果を示さなかった。したがって、不溶性画分は、可溶性画分と同じ相乗作用を与えないと思われた。1重量%の可溶性画分のみ及び0.2重量%のクエン酸亜鉛で作製されたゲルは、クランベリー粉末全体を使用したときほど強い相乗効果を達成しなかった。他の実験では、1重量%のクランベリー粉末全体及び0.2重量%のクエン酸亜鉛で作製されたゲルは、3重量%のクランベリー粉末と同じ効果を有する。この場合、3重量%のクランベリーゲル、並びに0.2重量%のクエン酸亜鉛とともに1重量%の可溶性及び不溶性クランベリー画分で作製されたゲルは全て、中性とは著しく異なり、両方の画分が相乗効果を示し得ることを示唆する。
【0099】
亜鉛利用の亜鉛上限が更に試験されている。例えば、5重量%のクエン酸亜鉛の濃度が使用されている。仮説は、Zn2+イオンが使用されたときにPACの抗酸化能を補充するということである。5重量%のクエン酸亜鉛は、ゲル中の1,745重量%のZn2+イオンの最大濃度に対応する。使用される最大濃度は、ゲル中の沈殿物が形成され、かつ/又は試験されたインビトロ組織モデルの分解が観察される、亜鉛濃度の上限に対応する。依然として図16を参照すると、5重量%のクエン酸亜鉛及び1重量%のクランベリーを含むゲルは、可溶性クランベリー画分で作製されたゲルよりも良好な結果を生じなかった。生存率アッセイを最大亜鉛濃度のその添加後の歯肉モデルに行い、生存率が有意に減少したことが見出された。これは、モデル上のインターロイキンIL-6の産生に影響を及ぼした可能性がある。非常に高濃度の亜鉛イオンは、おそらく低い相乗作用を説明し得る。1重量%のクランベリー粉末のみを使用したため、PACは、限定的な反応物質であった。この例示的な一連の実験は、プロアントシアニジン(PAC)が限定的な濃度を有する反応物質として使用された、唯一の事例を表す。これは、亜鉛が、以前に仮定されたように、PACの抗酸化能力を補充しないことを意味する。そうでなければ、多大な相乗作用が観察されたであろう。
【0100】
相乗作用が起こるためにクエン酸イオンが必要であるかどうかを理解するために、異なる亜鉛塩が使用されている。1重量%のクランベリー粉末及び0.0875重量%の酸化亜鉛で、ゲルを作製した。この濃度は、0.2重量%のクエン酸亜鉛の使用量として当量Zn2+イオン濃度を表す。このゲルは、可溶性クランベリー及びクエン酸亜鉛ゲルと同様の結果を示す。これらの結果は、酸化亜鉛が増強剤として作用して、より高濃度のPAC-A含有抽出物で作製されたゲルと同様の効果を得ることができることを示した(以前に報告された結果を参照されたい)。
【0101】
本系に対する熱の影響が、再び研究されている。1.0重量%のクランベリー及び0.2重量%のクエン酸亜鉛ゲルで作製されたゲルを、70℃の湯浴に30分間入れた。この加熱レジメンは、クランベリー中の最大限のPACを変性させようとするために使用されている。PACの濃度を変化させることによって、相乗作用があまり効果的でないはずであることが仮定されている。この試験の結果を、同じモデルで行われた可溶性画分及び不溶性画分と比較することができた。歯肉モデルに適用されると、冷却されたゲルは、中性ゲルと著しく異なる結果を示さなかった。これは、媒体が加熱されるときに相乗作用が減少し、可能性として不活性化され得ることを意味する。相乗作用が加熱によって低減されるとき、これは、PACが完全に分解されるためではない可能性が最も高い。
【0102】
上記の説明では、「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値について許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。10%の精度の尺度が許容可能であり、「約」という用語を包含することが一般的に認められている。
【0103】
特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む」という用語と併せて使用される場合の単語「a」又は「an」の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。
【0104】
上記の説明では、実施形態は、本発明の実施例又は実施態様である。「一実施形態」、「実施形態」、又は「いくつかの実施形態」の様々な出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。本発明の様々な特徴が、単一の実施態様の文脈で説明され得るが、特徴はまた、別々に、又は任意の好適な組み合わせで提供され得る。逆に、本発明は、明確にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載され得るが、本発明はまた、単一の実施形態でも実装され得る。更に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか、又は図面に例証される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の変形例又は実施形態が可能であり、かつ様々な方法で実践又は実行されることが可能である。また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明の目的のためであり、限定的とみなされるべきではないことを理解されたい。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」及びそれらの変形例の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの同等物、並びに追加の好適な項目を包含するように意図されている。
【0105】
PAC-A含有抽出物及び亜鉛含有剤の組み合わせの各組成物、製品、方法、プロセス、及び使用の上述の実施態様のうちのいずれか一方は、2つの実施態様をそれらの相互排他性に起因して明らかに組み合わせることができない場合を除き、それらの実施態様のうちのいずれか他方と組み合わせられ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】