(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】マイクロニードル製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
A61M37/00 505
A61M37/00 520
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024551879
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2022004814
(87)【国際公開番号】W WO2023113108
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0178684
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524194045
【氏名又は名称】デウン セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ボッキ
(72)【発明者】
【氏名】パク,サンハン
(72)【発明者】
【氏名】オム,ジェホン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ユンシク
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ブヨン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB24
4C267BB31
4C267BB40
4C267CC05
4C267FF10
4C267GG06
4C267GG10
4C267GG16
(57)【要約】
本発明の一実施例はマイクロニードルモールドに形成された一つ以上の陰刻部に薬理成分を含有した原料物質を塗布する段階、および原料物質が塗布されたマイクロニードルモールドを加圧チャンバ内に進入させ、前記原料物質を前記陰刻部の微細構造体に充填するために前記加圧チャンバの内部圧力で前記原料物質を加圧する段階を含み、前記加圧する段階は、前記加圧チャンバで空気の注入と空気の排出を同時に進行して、前記加圧チャンバ内対流現象を起こして前記原料物質の充填および乾燥を同時に遂行する、マイクロニードル製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロニードルモールドに形成された一つ以上の陰刻部に薬理成分を含有した原料物質を塗布する段階;および
原料物質が塗布されたマイクロニードルモールドを加圧チャンバ内に進入させ、前記原料物質を前記陰刻部の微細構造体に充填するために前記加圧チャンバの内部圧力で前記原料物質を加圧する段階を含み、
前記加圧する段階は、前記加圧チャンバで空気の注入と空気の排出を同時に進行して、前記加圧チャンバ内対流現象を起こして前記原料物質の充填および乾燥を同時に遂行する、マイクロニードル製造方法。
【請求項2】
前記加圧チャンバに注入される空気の圧力がX barであり、前記加圧チャンバから排出される空気の圧力がY barであるとき、前記加圧チャンバの内部圧力X-Y barは、1.5bar以上であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロニードル製造方法。
【請求項3】
前記加圧チャンバに注入される空気の圧力は2bar以上であり、前記加圧チャンバから排出される空気の圧力は0.5bar以上であることを特徴とする、請求項2に記載のマイクロニードル製造方法。
【請求項4】
前記マイクロニードルモールドは熱可塑性プラスチック樹脂を射出成形して製造されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロニードル製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性プラスチック樹脂はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリプロピレン(PP)からなる群から選択された少なくとも一つ以上であることを特徴とする、請求項4に記載のマイクロニードル製造方法。
【請求項6】
前記マイクロニードルモールドの陰刻部は尖端陰刻部であり、それぞれ独立的に存在することを特徴とする、請求項1に記載のマイクロニードル製造方法。
【請求項7】
治具上に多数のマイクロニードルモールドを載置する段階;
前記マイクロニードルモールドに形成された一つ以上の陰刻部に薬理成分を含有した原料物質を塗布する段階;
一つ以上の前記治具をトレイに固定させる段階;および
前記トレイを加圧チャンバ内に進入させ、前記原料物質を前記陰刻部の微細構造体に充填するために前記加圧チャンバの内部圧力で前記原料物質を加圧する段階を含み、
前記加圧する段階は、前記加圧チャンバで空気の注入と空気の排出を同時に進行して、前記加圧チャンバ内対流現象を起こして前記原料物質の充填および乾燥を同時に遂行する、マイクロニードル製造方法。
【請求項8】
前記加圧チャンバに注入される空気の圧力がX barであり、前記加圧チャンバから排出される空気の圧力がY barであるとき、前記加圧チャンバの内部圧力X-Y barは、1.5bar以上であることを特徴とする、請求項7に記載のマイクロニードル製造方法。
【請求項9】
前記加圧チャンバに注入される空気の圧力は2bar以上であり、前記加圧チャンバから排出される空気の圧力は0.5bar以上であることを特徴とする、請求項8に記載のマイクロニードル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロニードル製造方法に関し、より詳細には、マイクロニードルモールドに塗布された薬理成分に対して加圧および乾燥工程を同時に遂行して工程を単純化し、薬理成分の定量性を向上させたマイクロニードル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にマイクロニードル剤形は皮膚を通じて目的とする効能を達成するための成分の伝達を目的とする。マイクロニードル剤形は皮膚を通じての成分伝達の主な障壁層である角質層を突き破るために、直径と高さが数十~数千マイクロメートルに過ぎないマイクロニードルを利用する。前記マイクロニードルを利用して目的とする成分が表皮層または真皮層に到達するようにして、マイクロニードルを適用した部位または人体の循環システムを通じて全身で効能を示すことになる。
【0003】
マイクロニードルの材質は大きく金属製マイクロニードルと生分解性素材のマイクロニードルに区分することができる。
【0004】
金属製マイクロニードルは伝達しようとする成分が移動できる経路が開けられた一般注射ニードルのような中空を有する中空型(hollow)マイクロニードル形態と、成分をマイクロニードルの表面にコーティングして伝達するソリッド(solid)マイクロニードル形態がある。
【0005】
一方、生分解性マイクロニードルは主にソリッドマイクロニードルの形態であって、成分をマイクロニードルの表面にコーティングするか生分解性高分子とともにマイクロニードルを形成して皮膚に適用後、適用されたマイクロニードルが分解されながら成分を伝達する方法を取る。前記生分解性マイクロニードルの製造は、一般的にマイクロニードルの形状が陰刻で形成されたモールドにマイクロニードルを構成する薬理成分を注入して形成する方式で製造される。
【0006】
この時、
図1に図示された通り、従来の生分解性マイクロニードルの製造方法は薬理成分をモールド上に塗布する工程、減圧または真空環境でモールド内微細構造体に薬理成分を浸透させる工程、およびマイクロニードルを形成するようにモールド内薬理成分を乾燥させる工程を含んで構成される。
【0007】
ただし、このような従来の生分解性マイクロニードルの製造方法は、減圧または真空過程で薬理成分およびモールド内気泡が外に抜け出る現象(気泡が破裂しながら薬理成分がモールドの陰刻に溢れる)等によってマイクロニードル内の薬理成分の定量偏差が発生し得る問題点がある。
【0008】
先行技術文献
韓国登録特許公報第10-1747099号(2017.06.08)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述した従来技術の問題点を解決するためのもので、本発明の目的はマイクロニードルモールドに塗布された薬理成分に対して加圧および乾燥工程を同時に遂行して工程を単純化し、薬理成分の定量性を向上させたマイクロニードル製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような目的を達成するために、本発明の一側面はマイクロニードルモールドに形成された一つ以上の陰刻部に薬理成分を含有した原料物質を塗布する段階、および原料物質が塗布されたマイクロニードルモールドを加圧チャンバ内に進入させ、前記原料物質を前記陰刻部の微細構造体に充填するために前記加圧チャンバの内部圧力で前記原料物質を加圧する段階を含み、前記加圧する段階は、前記加圧チャンバで空気の注入と空気の排出を同時に進行して、前記加圧チャンバ内対流現象を起こして前記原料物質の充填および乾燥を同時に遂行する、マイクロニードル製造方法を提供する。
【0011】
本発明の一実施例において、前記加圧チャンバに注入される空気の圧力がX barであり、前記加圧チャンバから排出される空気の圧力がY barであるとき、前記加圧チャンバの内部圧力X-Y barは、1.5bar以上であることを特徴とする、マイクロニードル製造方法であり得る。
【0012】
本発明の一実施例において、前記加圧チャンバに注入される空気の圧力は2bar以上であり、前記加圧チャンバから排出される空気の圧力は0.5bar以上であることを特徴とする、マイクロニードル製造方法であり得る。
【0013】
本発明の一実施例において、前記マイクロニードルモールドは熱可塑性プラスチック樹脂を射出成形して製造されることを特徴とする、マイクロニードル製造方法であり得る。
【0014】
本発明の一実施例において、前記熱可塑性プラスチック樹脂はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリプロピレン(PP)からなる群から選択された少なくとも一つ以上であることを特徴とする、マイクロニードル製造方法であり得る。
【0015】
本発明の一実施例において、前記マイクロニードルモールドの陰刻部は尖端陰刻部であり、それぞれ独立的に存在することを特徴とする、マイクロニードル製造方法であり得る。
【0016】
前記のような目的を達成するために、本発明の他の側面は治具上に多数のマイクロニードルモールドを載置する段階、前記マイクロニードルモールドに形成された一つ以上の陰刻部に薬理成分を含有した原料物質を塗布する段階、一つ以上の前記治具をトレイに固定させる段階、および前記トレイを加圧チャンバ内に進入させ、前記原料物質を前記陰刻部の微細構造体に充填するために前記加圧チャンバの内部圧力で前記原料物質を加圧する段階を含み、前記加圧する段階は、前記加圧チャンバで空気の注入と空気の排出を同時に進行して、前記加圧チャンバ内対流現象を起こして前記原料物質の充填および乾燥を同時に遂行する、マイクロニードル製造方法を提供する。
【0017】
本発明の一実施例において、前記加圧チャンバに注入される空気の圧力がX barであり、前記加圧チャンバから排出される空気の圧力がY barであるとき、前記加圧チャンバの内部圧力X-Y barは、1.5bar以上であることを特徴とする、マイクロニードル製造方法であり得る。
【0018】
本発明の一実施例において、前記加圧チャンバに注入される空気の圧力は2bar以上であり、前記加圧チャンバから排出される空気の圧力は0.5bar以上であることを特徴とする、マイクロニードル製造方法であり得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によると、本発明のマイクロニードル製造方法は、マイクロニードルモールドの陰刻部に塗布された原料物質に対して加圧チャンバ内で加圧および乾燥工程を同時に遂行して工程を単純化し、原料物質の定量性を向上させることができ、製造過程中に外部環境への露出を減らしてマイクロニードルの汚染可能性を低くすることができる。
【0020】
また、多数のマイクロニードルモールドが配置され得る治具および多数の治具を固定させ得るトレイを利用して加圧チャンバ内でマイクロニードルを大量で形成することができ、これに伴い、マイクロニードルの生産性が向上し得る。
【0021】
本発明の効果は前記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術に係るマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面である。
【
図2】本発明の一実施例に係るマイクロニードル製造方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施例に係るモールドの陰刻部内点塗布方式である場合のマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面である。
【
図4】本発明の一実施例に係るモールド全体塗布方式である場合のマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面である。
【
図5】本発明の他の実施例に係るマイクロニードル製造方法のフローチャートである。
【
図6】本発明の他の実施例に係るモールドの陰刻部内点塗布方式である場合のマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面である。
【
図7】本発明の他の実施例に係るモールド全体塗布方式である場合のマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面である。
【
図8】加圧チャンバの内部圧力によって各高分子別にマイクロニードルの生成の有無を示す実施例を示す。
【
図9】加圧チャンバの内部圧力によって各高分子別にマイクロニードルの生成の有無を示す実施例を示す。
【
図10】加圧チャンバの内部圧力によって各高分子別にマイクロニードルの生成の有無を示す実施例を示す。
【
図11】加圧チャンバの内部圧力によって各高分子別にマイクロニードルの生成の有無を示す実施例を示す。
【
図12】加圧チャンバの内部圧力によって各高分子別にマイクロニードルの生成の有無を示す実施例を示す。
【
図13】加圧チャンバの内部圧力によって各高分子別にマイクロニードルの生成の有無を示す実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、添付した図面を参照して本発明を説明することにする。しかし、本発明は種々の異なる形態で具現され得、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面で本発明を明確に説明するために説明に関わらない部分は省略し、明細書全体を通じて類似する部分に対しては類似する図面符号を付した。
【0024】
明細書全体で、或る部分が他の部分と「連結」されているとする時、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を挟んで「間接的に連結」されている場合も含む。また、或る部分が何らかの構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0025】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明することにする。
【0026】
図2は本発明の一実施例に係るマイクロニードル製造方法のフローチャートであり、
図3は本発明の一実施例に係るモールドの陰刻部内点塗布方式である場合のマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面であり、
図4は本発明の一実施例に係るモールド全体塗布方式である場合のマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面である。
【0027】
図2~
図4を参照すると、本発明のマイクロニードル製造方法はマイクロニードルモールド100を準備する段階(S110)、マイクロニードルモールド100の陰刻部110に原料物質120を塗布する段階(S120)、および加圧チャンバ30で原料物質120を加圧して充填および乾燥する段階(S130)を含む。
【0028】
より具体的には、本発明のマイクロニードル製造方法はマイクロニードルモールド100を準備する段階(S110)、マイクロニードルモールド100に形成された一つ以上の陰刻部110に薬理成分を含有した原料物質120を塗布する段階(S120)、および原料物質120が塗布されたマイクロニードルモールド100を加圧チャンバ30内に進入させ、前記原料物質120を前記陰刻部110の微細構造体111に充填するために前記加圧チャンバ30の内部圧力で前記原料物質120を加圧する段階(S130)を含み、前記加圧する段階(S130)は、前記加圧チャンバ30で空気の注入と空気の排出を同時に進行して、前記加圧チャンバ30内対流現象を起こして前記原料物質120の充填および乾燥を同時に遂行するように構成される。
【0029】
マイクロニードルモールド100を準備する段階(S110)で、射出装置を利用して熱可塑性プラスチック樹脂を溶融、流動、冷却および脱型させる過程を通じて射出成形して、一つ以上の陰刻部を含むマイクロニードルモールド100を製造することができる。この時、前記マイクロニードルモールド100の一面は一つ以上の陰刻部110を含むことができ、他面は平坦であり得る。陰刻部110は後続段階で形成されるマイクロニードルに対するモールドとして作用するものであって、前記マイクロニードルと同一の形状であり得る。
【0030】
この時、陰刻部110は尖端陰刻部を含むことができる。本明細書に使われた用語、「尖端陰刻部」は通常のマイクロニードルの形状を有するように平面である上面から尖端をなす下面まで断面積が減少して前記上面から凹入した陰刻を意味する。本明細書に使われた用語、「上面」および/または「下面」は各構成の相対的な位置関係を特定するためのものであって、これらの絶対的な位置を特定するものではない。
【0031】
一方、マイクロニードルモールド100は堅固な材質からなり得る。マイクロニードルモールド100は任意の適切な材料で製造され得るが、好ましくはプラスチック樹脂からなり得る。
【0032】
より具体的には、マイクロニードルモールド100はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリプロピレン(PP)からなる群から選択された少なくとも一つ以上であり得、これに限定されるものではない。
【0033】
従来のシリコン素材は高価であるため使い捨てとして使用するには負担があり再使用が必要であるが、この場合、マイクロニードルが成形される微細陰刻部部分に対する洗浄バリデーション(CV、Cleaning Validation)と洗浄溶媒のシリコン透過度に対する検証が難しい。またシリコン素材の場合、物理化学的に分解され、比較的弱い硬度によって製造過程または洗浄過程で破片の発生とシリコンモールドの寿命に対する検証が難しい部分がある。
【0034】
また、シリコン素材を利用したモールド製造方式はシリコンが外部の空気や異物に対する保護の役割をできないので、乾燥されたマイクロニードルをシリコンモールドから脱型後に再包装しなければならない。この過程で微細な大きさのマイクロニードルを個別に密着包装することは現実的に難しいため、マイクロニードルが空気に露出されたままパウチに包装されるかキャップ状の容器を被せた形態で包装されなければならない。
【0035】
包装容器の閉鎖性および安定性は内部医薬品の品質維持に非常に大きな影響を及ぼす因子であるため、最終製品の運搬条件シミュレーションおよび機械的テストを通じて内部マイクロニードル医薬品の物理化学的変形や変質から完全に保護することができなければならない。
【0036】
本発明のマイクロニードルモールド100は、陰刻部110で成形されたマイクロニードルを脱型して再包装する必要なくマイクロニードルに完全密着した1次包装容器として機能することができ、使用する前に除去される形態で構成され得る。これにより、マイクロニードルの包装工程が単純化され、マイクロニードルの品質維持が容易となり得る。
【0037】
マイクロニードルモールド100の陰刻部110に原料物質120を塗布する段階(S120)で、原料物質120を貯蔵槽から単一の吐出部を通じて前記マイクロニードルモールド100に供給して陰刻部110に塗布することができる。ただし、原料物質120の塗布方法はこれに限定されるものではなく、必要に応じて前記原料物質120を複数の陰刻部110それぞれに隣接して位置した複数の吐出部を通じて前記陰刻部110に塗布してもよい。
【0038】
この時、
図3および
図4を参照すると、原料物質120の塗布はそれぞれの陰刻部110にのみ一つ以上の滴を点塗布する方式で遂行されるか、陰刻部110が形成されたマイクロニードルモールド100の上面に全体的に塗布する方式で遂行され得る.
原料物質120はマイクロニードルの用途により金属、非金属、生分解性高分子、および薬理成分(active pharmaceutical ingredients)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。例えば、原料物質120は薬理成分を含む組成物であり得、金属、非金属、生分解性高分子、またはこれらのうち2以上の組み合わせを含む組成物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0039】
加圧チャンバ30で陰刻部110に塗布された原料物質120を加圧する段階(S130)では、原料物質120を陰刻部110の微細構造体111に充填するために加圧チャンバ30の内部圧力を利用して原料物質120を加圧する。
【0040】
加圧チャンバ30が遮蔽された状態で、加圧チャンバ30の注入口31を通じて空気が注入されて加圧チャンバ30の圧力が高くなると、加圧チャンバ30内部の気体圧力によって原料物質120が圧力を受けて原料物質120に含まれた微細気泡が自然に原料物質120から離脱しながら除去され、原料物質120が陰刻部110内の微細構造体111に充填される。
【0041】
この時、加圧チャンバ30の排出口32を通じての空気の排出を同時に進行して、前記加圧チャンバ30内対流現象を起こして原料物質120の乾燥を同時に遂行できる。
【0042】
すなわち、本発明のマイクロニードル製造方法は、マイクロニードルモールド100の陰刻部110に塗布された原料物質120に対して加圧チャンバ30内で加圧および乾燥工程を同時に遂行して工程を単純化し、原料物質120の定量性を向上させることができ、製造過程中に外部環境への露出を減らしてマイクロニードルの汚染可能性を低くすることができる。
【0043】
一方、注入口31を通じて加圧チャンバ30に注入される空気の圧力がX barであり、排出口32を通じて加圧チャンバ30から排出される空気の圧力がY barであるとき、前記加圧チャンバ30の内部圧力X-Y barは、1.5bar以上、好ましくは2bar以上であり得る。
【0044】
また、加圧チャンバ30に注入される空気の圧力は2bar以上、好ましくは2.5bar以上であり、加圧チャンバ30から排出される空気の圧力は0.5bar以上であり得る。
【0045】
すなわち、加圧チャンバ30で空気の注入と空気の排出を同時に遂行するものの、加圧チャンバ30の内部圧力が1.5bar以上、好ましくは2bar以上に維持されるようにして原料物質120の充填および乾燥が円滑になされ得る。加圧チャンバ30の内部圧力が1.5bar未満であれば、陰刻部110内の微細構造体111に原料物質120の充填が円滑になされず、原料物質120に含まれた微細気泡が自然に前記原料物質120から離脱しないことができる。
【0046】
図5は本発明の他の実施例に係るマイクロニードル製造方法のフローチャートであり、
図6は本発明の他の実施例に係るモールドの陰刻部内点塗布方式である場合のマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面であり、
図7は本発明の他の実施例に係るモールド全体塗布方式である場合のマイクロニードル製造方法を概念的に示した図面である。
【0047】
以下では、前述した一実施例との相違点または追加された点を中心に説明することにする。
【0048】
図5~
図7を参照すると、本発明のマイクロニードル製造方法はマイクロニードルモールド100を準備する段階(S210)、治具10上に多数のマイクロニードルモールド100を載置する段階(S220)、マイクロニードルモールド100の陰刻部110に原料物質120を塗布する段階(S230)、一つ以上の前記治具10をトレイ20に固定させる段階(S240)、およびトレイ20を加圧チャンバ30内に進入させ、原料物質120を陰刻部110の微細構造体111に充填するために加圧チャンバ30の内部圧力で原料物質120を加圧する段階(S250)を含み、前記加圧する段階(S250)は、加圧チャンバ30で空気の注入と空気の排出を同時に進行して、前記加圧チャンバ30内対流現象を起こして原料物質120の充填および乾燥を同時に遂行するように構成される。
【0049】
治具10上に多数のマイクロニードルモールド100を載置する段階(S220)で、治具10は板状で形成され得、上面にはマイクロニードルモールド100が位置できる多数の載置部(図示されず)が備えられ得る。前記載置部はマイクロニードルモールド100の形状と対応する形状の溝構造からなり得る。
【0050】
治具10はN×M(ここで、N、Mは数字)の形態でマイクロニードルモールド100が載置され得るように構成され得、一つの治具10には総N×M個のマイクロニードルモールド100が載置され得る。
【0051】
マイクロニードルモールド100の陰刻部110に原料物質120を塗布する段階(S230)で、原料物質120を貯蔵槽から単一の吐出部を通じて前記マイクロニードルモールド100に供給して陰刻部110に塗布することができる。ただし、原料物質120の塗布方法はこれに限定されるものではなく、必要に応じて前記原料物質120を複数の陰刻部110それぞれに隣接して位置した複数の吐出部を通じて前記陰刻部110に塗布してもよい。
【0052】
この時、
図6および
図7を参照すると、原料物質120の塗布はそれぞれの陰刻部110にのみ一つ以上の滴を点塗布する方式で遂行されるか、陰刻部110が形成されたマイクロニードルモールド100の上面に全体的に塗布する方式で遂行され得る。
【0053】
一つ以上の治具10をトレイ20に固定させる段階(S240)で、トレイ20は多段のトレイであり得、一つのトレイ20に多数の治具10が多段で固定され得る。また、トレイ20の一つの段には多数の治具10が固定され得る。
【0054】
このように、多数のマイクロニードルモールド100が載置され得る治具10および多数の治具10を固定させ得るトレイ20を利用して加圧チャンバ30内でマイクロニードルを大量で形成することができ、これに伴い、マイクロニードルの生産性が向上し得る。
【0055】
図8~
図13は、加圧チャンバの内部圧力によって各高分子別にマイクロニードルの生成の有無を示す実施例を示す。
【0056】
図8~
図13を参照すると、原料物質として4種の高分子、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒアルロン酸(HA)を使ったし、各高分子に対する加圧チャンバでの加圧および乾燥工程以後にマイクロニードルの生成の有無を測定した。この時、理想的なマイクロニードルの最大(Max)サイズは650μmであり、マイクロニードルの尖端部が生成されるかどうかおよび400μm以上のサイズを有するかどうかによりマイクロニードルの生成の有無を判断した。
【0057】
図8を参照すると、マイクロニードルモールドに塗布された4種の高分子に対して加圧チャンバに注入される空気の圧力が2barであり、加圧チャンバから排出される空気の圧力が1barであり、加圧チャンバの内部圧力が1barである環境で、48hの間加圧および乾燥工程を遂行した。この時、4種の高分子に対して、マイクロニードルの尖端部が生成され、400μm以上のサイズを有するマイクロニードルは生成されないと確認された。
【0058】
図9を参照すると、マイクロニードルモールドに塗布された4種の高分子に対して加圧チャンバに注入される空気の圧力が3barであり、加圧チャンバから排出される空気の圧力が1barであり、加圧チャンバの内部圧力が2barである環境で、48hの間加圧および乾燥工程を遂行した。この時、ポリビニルアルコール(PVA)高分子に対して、マイクロニードルの尖端部が生成され、400μm以上のサイズを有するマイクロニードルが生成されると確認されたし、残りの3種の高分子に対してはマイクロニードルが生成されないと確認された。
【0059】
図10を参照すると、マイクロニードルモールドに塗布された4種の高分子に対して加圧チャンバに注入される空気の圧力が4barであり、加圧チャンバから排出される空気の圧力が1barであり、加圧チャンバの内部圧力が3barである環境で、48hの間加圧および乾燥工程を遂行した。この時、ポリビニルピロリドン(PVP)高分子に対して、マイクロニードルの尖端部が生成され、400μm以上のサイズを有するマイクロニードルが生成されると確認されたし、残りの3種の高分子に対してはマイクロニードルが生成されないと確認された。
【0060】
図11を参照すると、マイクロニードルモールドに塗布された4種の高分子に対して加圧チャンバに注入される空気の圧力が5barであり、加圧チャンバから排出される空気の圧力が1barであり、加圧チャンバの内部圧力が4barである環境で、48hの間加圧および乾燥工程を遂行した。この時、4種の高分子すべてに対して、マイクロニードルの尖端部が生成され、400μm以上のサイズを有するマイクロニードルが生成されると確認された。
【0061】
図12を参照すると、マイクロニードルモールドに塗布された4種の高分子に対して加圧チャンバに注入される空気の圧力が6barであり、加圧チャンバから排出される空気の圧力が1barであり、加圧チャンバの内部圧力5barである環境で、48hの間加圧および乾燥工程を遂行した。この時、4種の高分子すべてに対して、マイクロニードルの尖端部が生成され、400μm以上のサイズを有するマイクロニードルが生成されると確認された。
【0062】
図13を参照すると、マイクロニードルモールドに塗布された4種の高分子に対して加圧チャンバに注入される空気の圧力が7barであり、加圧チャンバから排出される空気の圧力が1barであり、加圧チャンバの内部圧力が6barである環境で、48hの間加圧および乾燥工程を遂行した。この時、4種の高分子すべてに対して、マイクロニードルの尖端部が生成され、400μm以上のサイズを有するマイクロニードルが生成されると確認された。
【0063】
前述した本発明の説明は例示のためのものに過ぎず、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能であるということが理解できるであろう。したがって以上で記述した実施例はすべての面において例示的なものであり限定的ではないものと理解されるべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散されて実施され得、同様に分散されたものとして説明されている構成要素も結合された形態で実施され得る。
【0064】
本発明の範囲は後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態も本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0065】
100:マイクロニードルモールド
110:陰刻部
111:微細構造体
120:原料物質
10:治具
20:トレイ
30:加圧チャンバ
31:注入口
32:排出口
【国際調査報告】