(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-11
(54)【発明の名称】イリジウム酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 55/00 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
C01G55/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024551880
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2022020167
(87)【国際公開番号】W WO2023113411
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0178920
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524192867
【氏名又は名称】ヒソン カタリスツ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ホドン
(72)【発明者】
【氏名】カン、 ドンクン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ミンシク
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 ヨンサン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、 ジョンミン
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE06
4G048AE08
(57)【要約】
イリジウムクロリドを準備する段階、イリジウムクロリドと溶媒および気孔制御剤を混合して分散液を製造する段階、分散液にイオン交換剤を混合してイオン交換させる段階、分散液から溶媒を除去して粉末を製造する段階、そして粉末を熱処理する段階を含む、イリジウム酸化物の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリジウムクロリドを準備する段階、
前記イリジウムクロリドと、溶媒および気孔制御剤を混合して分散液を製造する段階、
前記分散液にイオン交換剤を混合してイオン交換させる段階、
前記分散液から溶媒を除去して粉末を製造する段階、および、
前記粉末を熱処理する段階
を含む、イリジウム酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記イリジウムクロリドを準備する段階は、
イリジウム金属粉末とアルカリ金属化合物の混合物を準備する混合段階、
前記混合物を焼成してアルカリが含まれているイリジウム酸化物を製造する焼成段階、
前記アルカリが含まれているイリジウム酸化物を塩酸水溶液で洗浄してイリジウム酸化物を得る塩酸水溶液洗浄段階、および、
前記イリジウム酸化物を加圧下で塩酸に溶解した後に反応させる塩酸溶解反応段階
を含む、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属過酸化物、またはこれらの混合物を含む、請求項2に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、またはこれらの混合物を含み、
前記アルカリ金属過酸化物は、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化リチウム、またはこれらの混合物を含む、請求項3に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリが含まれているイリジウム酸化物は、下記化学式1で表される化合物を含む、請求項2に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
[化学式1]
Na
xIr
yO
z
(前記化学式1で、前記xは、2~4の整数であり、前記yは、1~3の整数であり、前記zは、3~8の整数である)
【請求項6】
前記塩酸水溶液洗浄段階で、前記塩酸水溶液の濃度は、5%~10%である、請求項2に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項7】
前記塩酸溶解反応段階は、5圧力~10圧力の加圧下、130℃~170℃で2時間~6時間行われる、請求項2に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項8】
前記分散液を製造する段階で、前記溶媒は、アルコール系混合溶媒である、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項9】
前記アルコール系混合溶媒は、エタノールおよびイソプロパノールを含む、請求項8に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項10】
前記イソプロパノールと前記エタノールの重量比は、4:6~6:4である、請求項9に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項11】
前記分散液を製造する段階で、前記溶媒は、前記イリジウムクロリド1重量部に対して10重量部~20重量部で混合される、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項12】
前記気孔制御剤は、ベンゼン環を含む化合物または炭素数6~10の炭化水素化合物である、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項13】
前記気孔制御剤は、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ヘキサノール、キシレン、トルエン、ブチルアセテート、オクタノール、またはこれらの混合物を含む、請求項12に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項14】
前記イリジウムクロリドと前記気孔制御剤のモル比は、1:1~1:3である、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項15】
前記イオン交換剤は、アルカリ金属ナイトレートである、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項16】
前記イリジウムクロリドと前記イオン交換剤のモル比は、1:5~1:10である、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項17】
前記イオン交換は、70℃~90℃で行われる、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項18】
前記粉末を製造する段階は、150℃~180℃で12時間以上乾燥して行われる、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項19】
前記熱処理する段階は、300℃~600℃で1時間~1.5時間行われる、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【請求項20】
前記製造されたイリジウム酸化物は、
平均気孔サイズが2nm~5nmであり、
平均気孔体積が0.21cm
3/g~0.25cm
3/gであり、
比表面積が100m
2/g~420m
2/gである、請求項1に記載のイリジウム酸化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
燃料電池および水電解反応に使用することができる酸素発生反応用触媒として、高い気孔体積および高い比表面積を有するイリジウム酸化物を商業的に容易に製造することができる方法に関する
【背景技術】
【0002】
燃料電池および水電解技術は、炭素中立を実現するための方法で注目されているが、触媒の耐久性の問題の解決に困難があって商用化が遅れている。
【0003】
燃料電池と水電解システムが作動して電気が生成される時に副産物として生成された水が触媒の表面を覆うようになると、水素の供給不足により陰極の逆電圧(reversal voltage)現象が発生することで、高い電圧により触媒支持体である炭素が水と反応して酸化されて陰極触媒の腐食が起こるようになる。
【0004】
これにより、触媒の効率低下および安定性と耐久性の問題を誘発するようになる。
【0005】
燃料電池および水電解システムの電極で発生する耐久性低下の問題を解決することができる方法として、陰極にイリジウム(Ir)基盤の酸素発生反応(OER、oxygen evolution reaction)用触媒を導入する技術が知られている。
【0006】
これによって、電極触媒担体である炭素を腐食させる前に副産物である水を分解して電極触媒を安定化させて、逆電圧現象に対する耐久性を向上させる
【0007】
燃料電池の作動原理は、下記の反応式1で表すことができる。
【0008】
ここで発生する水(H2O)を分解して酸素を発生させる酸素発生反応触媒の作動原理は、反応式2で表すことができる。
【0009】
[反応式1]
【0010】
アノード(anode):H2→2H++2e-
【0011】
カソード(cathode):1/2O2+2H++2e-→H2O
【0012】
全体(Overall):H2+1/2O2→H2O+Heat
【0013】
[反応式2]
【0014】
2H2O→2H2+O2
【0015】
一方、酸素発生反応に使用されるイリジウム酸化物(IrO2)触媒は、高い性能を有するためにナノサイズの粒子および高い比表面積を有さなければならない。
【0016】
しかし、イリジウム金属を1300℃以上で単純熱的酸化時、酸化物に転換は可能であるが、焼結によりマイクロン単位の巨大粒子が生成され、比表面積も30m2/g以下に製造されて触媒として性能を発現し難い。
【0017】
そこで、高い気孔体積および高い比表面積を有するイリジウム酸化物を商業的に容易に製造することができる方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2019-0018836号
【特許文献2】米国特許登録第8,263,290号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】international journal of hydrogen energy 43(2018), 19460-19467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の一実施形態は、イリジウム金属から高い気孔体積および高い比表面積を有するイリジウム酸化物を商業的に容易に製造することができるイリジウム酸化物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、イリジウムクロリドを準備する段階、イリジウムクロリドと溶媒および気孔制御剤を混合して分散液を製造する段階、分散液にイオン交換剤を混合してイオン交換させる段階、分散液から溶媒を除去して粉末を製造する段階、および粉末を熱処理する段階を含む、イリジウム酸化物の製造方法を提供する。
【0022】
イリジウムクロリドを準備する段階は、イリジウム金属粉末とアルカリ金属化合物の混合物を準備する混合段階、混合物を焼成してアルカリが含まれているイリジウム酸化物を製造する焼成段階、アルカリが含まれているイリジウム酸化物を塩酸水溶液で洗浄してイリジウム酸化物を得る塩酸水溶液洗浄段階、およびイリジウム酸化物を加圧下で塩酸に溶解した後に反応させる塩酸溶解反応段階を含むことができる。
【0023】
アルカリ金属化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属過酸化物、または、これらの混合物を含むことができる。
【0024】
アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、または、これらの混合物を含むことができる。
【0025】
アルカリ金属過酸化物は、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化リチウム、または、これらの混合物を含むことができる。
【0026】
アルカリが含まれているイリジウム酸化物は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0027】
[化学式1]
【0028】
NaxIryOz
【0029】
化学式1で、xは、2~4の整数であり、yは、1~3の整数であり、zは、3~8の整数である。
【0030】
塩酸水溶液洗浄段階で、塩酸水溶液の濃度は、5%~10%である。
【0031】
塩酸溶解反応段階は、5圧力~10圧力の加圧下、130℃~170℃で2時間~6時間行われる。
【0032】
分散液を製造する段階で、溶媒は、アルコール系混合溶媒である。
【0033】
アルコール系混合溶媒は、エタノールおよびイソプロパノールを含むことができる。
【0034】
イソプロパノールとエタノールの重量比は、4:6~6:4である。
【0035】
分散液を製造する段階で、溶媒は、イリジウムクロリド1重量部に対して10重量部~20重量部で混合される。
【0036】
気孔制御剤は、ベンゼン環を含む化合物、または、炭素数6~10の炭化水素化合物である。
【0037】
気孔制御剤は、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ヘキサノール、キシレン、トルエン、ブチルアセテート、オクタノール、または、これらの混合物を含むことができる。
【0038】
イリジウムクロリドと気孔制御剤のモル比は、1:1~1:3である。
【0039】
イオン交換剤は、アルカリ金属ナイトレートである。
【0040】
イリジウムクロリドとイオン交換剤のモル比は、1:5~1:10である。
【0041】
イオン交換は、70℃~90℃で行われる。
【0042】
粉末を製造する段階は、150℃~180℃で12時間以上乾燥して行われる。
【0043】
熱処理する段階は、300℃~600℃で1時間~1.5時間行われる。
【0044】
製造されたイリジウム酸化物は、平均気孔サイズが2nm~5nmであり、平均気孔体積が0.21cm3/g~0.25cm3/gであり、比表面積が100m2/g~420m2/gである。
【発明の効果】
【0045】
本発明の一実施形態によるイリジウム酸化物の製造方法は、イリジウム金属から高い気孔体積および高い比表面積を有するイリジウム酸化物を商業的に容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の一実施形態によるイリジウム酸化物を製造する段階を示す工程フローチャートである。
【0047】
【
図2】
図1でイリジウムクロリド準備段階を示す工程フローチャートである。
【0048】
【
図3】実施例1でイリジウム酸化物を製造する各段階別生成物を示す写真である。
【0049】
【
図4】実施例1~実施例4で製造されたイリジウム酸化物のX線回折分析(XRD)結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下で説明する技術の利点および特徴、そして、これらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明らかになる。
しかし、具現される形態は、以下で開示される実施例に限定されるのではない。
他の定義がなければ、本明細書で使用される全ての用語(技術および科学的用語を含む)は、当該技術分野における通常の知識を有する者に共通的に理解され得る意味として使用される。
また、一般に使用される辞書に定義されている用語は、明確に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0051】
また、単数型は、文句で特に言及しない限り、複数型も含む。
【0052】
図1は、本発明の一実施形態によるイリジウム酸化物を製造する段階を示す工程フローチャートである。
【0053】
図1を参照して、イリジウム酸化物を製造する方法を詳細に説明する。
【0054】
イリジウム酸化物の製造方法は、イリジウムクロリド準備段階(S1)、分散液製造段階(S2)、イオン交換段階(S3)、粉末製造段階(S4)、そして熱処理段階(S5)を含む。
【0055】
一例として、イリジウムクロリド準備段階(S1)では、イリジウム金属粉末からイリジウムクロリドを製造することができる。
【0056】
図2は、イリジウムクロリドを製造する段階を示す工程フローチャートである。
【0057】
図2を参照して、イリジウムクロリドを製造する方法を詳細に説明する。
【0058】
イリジウムクロリドの製造方法は、アルカリ金属化合物混合段階(S1-1)、焼成段階(S1-2)、塩酸水溶液洗浄段階(S1-4)、そして塩酸溶解反応段階(S1-5)を含む。
【0059】
アルカリ金属化合物混合段階(S1-1)では、イリジウム金属粉末とアルカリ金属化合物の混合物を混合する。
【0060】
アルカリ金属化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属過酸化物、または、これらの混合物を含むことができ、例えば、アルカリ金属水酸化物とアルカリ金属過酸化物の固体混合物を含むことができる。
【0061】
アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、または、これらの混合物を含むことができ、例えば、アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム(NaOH)である。
【0062】
アルカリ金属過酸化物は、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化リチウム、または、これらの混合物を含むことができ、例えばアルカリ金属過酸化物は、過酸化ナトリウム(Na2O2)である。
【0063】
一例として、アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウムと過酸化ナトリウムの混合物を含むことができる。
【0064】
混合物は、アルカリ金属化合物をイリジウム金属粉末1重量部に対して0.5重量部~1重量部、例えば、0.6重量部~0.7重量部で含むことができる。
アルカリ金属化合物の含有量がイリジウム金属粉末1重量部に対して0.5重量部未満の場合、イリジウム金属の表面にアルカリ成分の吸着量が足りなくて焼成過程で酸化が均一に行われないことがあり、1重量部を超える場合、過剰のアルカリ金属化合物がイリジウム金属の表面を覆って酸化剤がイリジウム金属と接触することを妨害することがある。
【0065】
または、混合物は、アルカリ金属化合物中のアルカリ金属過酸化物をイリジウム金属粉末1重量部に対して1重量部~3重量部、例えば、1.75重量部~2.25重量部で含むことができる。
アルカリ金属過酸化物の含有量がイリジウム金属粉末1重量部に対して1重量部未満の場合、酸化剤の不足により焼成後にも依然としてイリジウム金属が残存することがあり、3重量部を超える場合、イリジウム金属を過酸化させてイリジウムナノ粒子が形成されることで以降のろ過過程でろ過紙を通過して生成物を得ることが難しくなることがある。
【0066】
この時、アルカリ金属化合物がアルカリ金属水酸化物とアルカリ金属過酸化物の混合物を含む場合、アルカリ金属水酸化物とアルカリ金属過酸化物の重量比は、1:2~1:4、例えば1:2.5~1:3.5である。
アルカリ金属過酸化物の重量比が2未満の場合、酸化剤の不足により焼成後にも依然としてイリジウム金属が残存することがあり、4を超える場合、イリジウム金属を過酸化させてイリジウムナノ粒子が形成されることで以降のろ過過程でろ過紙を通過して生成物を得ることが難しくなることがある。
【0067】
焼成段階(S1-2)では、混合物を焼成してアルカリが含まれているイリジウム酸化物を製造する。
【0068】
焼成は、750℃以上で行われる。
焼成温度が750℃未満の場合、未反応のイリジウム金属が残っていることがあり、750℃以上ではイリジウム金属が完全にアルカリが含まれているイリジウム酸化物に転換される。
例えば、焼成は、5時間~10時間にかけて750℃以上に昇温し、750℃以上で2時間~4時間維持する過程で行われる。
【0069】
焼成により製造されたアルカリが含まれているイリジウム酸化物は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0070】
[化学式1]
【0071】
NaxIryOz
【0072】
化学式1で、xは、2~4の整数であり、yは、1~3の整数であり、zは、3~8の整数である。
【0073】
例えば、化学式1で表されるアルカリが含まれているイリジウム酸化物は、Na2IrO3、Na4IrO4、Na4Ir3O8、または、これらの混合物を含むことができる。
【0074】
選択的に、焼成段階で得られたアルカリが含まれているイリジウム酸化物は、塩酸水溶液洗浄段階の前に、水で洗浄する段階を経ることができる(S1-3)。
【0075】
水は、脱イオン水、蒸溜水、または、超純水などであり、例えば、脱イオン水を利用することができる。
【0076】
一例として、水洗浄段階は、アルカリが含まれているイリジウム酸化物を水で、60℃~70℃で、2時間~4時間行われる。
水洗浄段階の温度が60℃未満の場合、洗浄が完璧に行われず、洗浄後に残存アルカリイオンが存在することがあり、70℃を超える場合、洗浄水が蒸発して濃縮されることがある。
水洗浄段階の時間が2時間未満の場合にも、洗浄が完璧に行われないことがあり、4時間を超える場合には、作業時間が不必要に長くなることがある。
【0077】
選択的に、水洗浄段階の後に、ろ過段階をさらに含むことができる。
例えば、ろ過は、水で洗浄された溶液を紙フィルターを用いて高温状態で行われる。
【0078】
また、選択的に、ろ過段階の後に、水洗浄段階をさらに経ることができ、例えば、ろ過後に予め製造された60℃~70℃の高温水で洗浄することができる。
【0079】
水洗浄段階を通じてアルカリが含まれているイリジウム酸化物内でアルカリ金属イオンを一部除去することができ、これにより、一部イリジウム酸化物を得ることができる。
しかし、水洗浄段階の後にも約400ppm以上のアルカリ金属成分が残存することがある。
【0080】
そこで、塩酸水溶液洗浄段階(S1-4)では、アルカリが含まれているイリジウム酸化物を塩酸水溶液で洗浄して、残存するアルカリ金属成分の含有量を10ppm以下に減らし、イリジウム酸化物を製造することができる。
【0081】
塩酸水溶液の濃度は、5%~10%であり得る。
塩酸水溶液の濃度が5%未満の場合、洗浄効果が良好に現れず、アルカリ金属が依然として残存することがあり、10%を超える場合、アルカリ金属以外に一部のイリジウム金属まで溶解させることがある。
【0082】
選択的に、塩酸水溶液洗浄段階の後に、ろ過段階をさらに含むことができる。
例えば、ろ過は、塩酸水溶液で洗浄された溶液を紙フィルターを用いて高温の状態で行われる。
【0083】
また、選択的に、塩酸水溶液洗浄段階を経たイリジウム酸化物を乾燥してケーキ(cake)を製造することができる。
【0084】
乾燥は、100℃以上で12時間~24時間行われる。
乾燥温度が100℃未満の場合、乾燥時間が長くなるだけでなく、乾燥後にも残存水分が存在することがある。
【0085】
塩酸水溶液洗浄段階を通じて、残存するアルカリ金属成分の含有量を減らすことができる。
これにより、イリジウム酸化物のケーキは、アルカリ金属の含有量が10ppm以下、例えば、0ppm~5ppmである。
【0086】
アルカリ金属の含有量が10ppmを超える場合、最終生成物であるイリジウムクロリドの純度が落ちることで、これを利用した触媒の製造時、触媒反応に否定的な影響を与えることがある。
【0087】
塩酸溶解反応段階(S1-5)では、イリジウム酸化物を加圧下で塩酸に溶解した後に反応させてイリジウムクロリド水和物を製造する。
【0088】
イリジウム酸化物1重量部に対する塩酸の含有量は、5重量部~15重量部、例えば、8重量部~10重量部である。
イリジウム酸化物1重量部に対する塩酸の含有量が5重量部未満の場合、反応に必要なクロリドイオンの含有量の不足によりイリジウム酸化物がイリジウムクロリドに100%転換とはならないことがあり、15重量部を超える場合、後続工程である濃縮過程で塩酸水溶液の蒸発にエネルギー費用が過多に投入されることがある。
【0089】
塩酸溶解反応段階は、加圧下で行われ得、一例として加圧容器内で行われる。
加圧時の圧力は、5圧力~10圧力、例えば、6圧力~8圧力下で行われる。
圧力は反応温度に比例して増加するため、以下の温度範囲で行えば圧力は別途に調節する必要がない。
【0090】
また、塩酸溶解反応段階は、加圧下、130℃~170℃で2時間~6時間、例えば、150℃~170℃で2時間~4時間行われる。
塩酸溶解反応段階で温度が130℃未満の場合、イリジウム酸化物がイリジウムクロリドに100%転換され難いことがあり、170℃を超える場合、イリジウムクロリド転換は容易であるが、加圧容器が腐食あるいは変形が起きて商業的適用が難しいことがあり、時間が2時間未満の場合、イリジウムクロリドの転換反応率が落ちることがあり、6時間を超える場合、エネルギー費用が過多に投入されることがある。
【0091】
選択的に、塩酸溶解反応段階の後に、ろ過段階をさらに含むことができる。
【0092】
ろ過段階を通じて塩酸溶解反応段階で製造されたイリジウムクロリド水和物を得ることができる。
例えば、ろ過は、塩酸溶解反応を経た溶液を紙フィルターを用いて高温の状態で行われる。
この時、残留溶液の回収のためのリンス溶液、例えば、脱イオン水は、最小量を使用する。
【0093】
製造されたイリジウムクロリド水和物は、例えば、H2IrCl6・xH2Oで表される化合物である。
塩酸溶解反応段階で得られたイリジウムクロリド水和物は、実質的に完全溶解、例えば、99.9%以上溶解され、アルカリ金属の含有量が10ppm以下である。
【0094】
このようなイリジウムクロリド水和物の製造方法は、焼成段階(S1-2)でイリジウム金属の完全な酸化を誘導して製造収率を高めることができ、塩酸水溶液洗浄段階(S1-4)では、塩酸水溶液の単独溶媒を用いて窒素酸化物が発生されず、加圧反応前に塩酸を利用して酸化剤として使用されたアルカリ金属成分を除去して、得られたイリジウムクロリド内のアルカリ金属の含有量が10ppm以下であり、塩酸溶解反応段階(S1-5)で、加圧反応を通じて99.9%以上の溶解度を有するようになり、未反応のイリジウムが存在しないため、生成物の純度が非常に高い。
【0095】
選択的に、製造されたイリジウムクロリド水和物を濃縮してイリジウムクロリドを製造することができる(S1-6)。
【0096】
一例として、濃縮は、減圧蒸留方法を利用することができる。
【0097】
製造されたイリジウムクロリドは、例えば、IrCl4・xH2Oで表される化合物である。
【0098】
分散液製造段階(S2)では、準備されたイリジウムクロリドと、溶媒および気孔制御剤を混合して分散液を製造する。
【0099】
溶媒は、エタノール、イソプロパノール、または、これらの混合物のようなアルコール系溶媒であり、例えば、エタノールおよびイソプロパノールの混合溶媒であり得る。
溶媒としてエタノールおよびイソプロパノールの混合溶媒を使用する場合、個別溶媒で使用する場合に比べて、最終生成物であるイリジウム酸化物(IrO2)の粒子サイズをより小さく製造することができる。
この時、イソプロパノールとエタノールの重量比は、4:6~6:4であり、イソプロパノールとエタノールのモル比は、1:1~1:1.5であり、例えば、1:1.2~1:1.4である。
【0100】
溶媒は、イリジウムクロリド1重量部に対して10重量部~20重量部で混合される。
溶媒の含有量が、10重量部未満の場合、イリジウムクロリド(IrCl4)の溶解度が落ちることがあり、20重量部を超える場合、以降の溶媒の除去時に多くの時間がかかることがある。
【0101】
気孔制御剤は、イリジウムクロリドと溶媒の混合物から溶媒を除去する過程でイリジウムとイリジウムとの間隔を広げて最終熱処理後に生成されたイリジウム酸化物の比表面積および気孔体積を高める役割を果たす。
【0102】
気孔制御剤は、ベンゼン環を含む化合物または炭素数6~10の炭化水素化合物であり得、例えば1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ヘキサノール、キシレン、トルエン、ブチルアセテート、オクタノール、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0103】
気孔制御剤が炭素数6~10の炭化水素化合物である場合、炭素数が10を超える場合は、分散液の粘度が高くなり、熱処理過程で気孔制御剤が完全に除去されないことがあり、気孔制御剤の炭素数が6未満の場合は、気孔制御剤の効果が明確に現れないことがある。
【0104】
イリジウムクロリドと気孔制御剤のモル比は、1:1~1:3であり得る。
気孔制御剤のモル比が3を超える場合、以降の熱処理過程で急激な発熱によりイリジウム酸化物の粒子サイズが大きくなって比表面積が低くなることがあり、1未満の場合、その効果が明確に現れないことがある。
【0105】
溶媒と気孔制御剤は、同時にまたはそれぞれイリジウムクロリドと混合され、例えば、イリジウムクロリドと溶媒を混合して攪拌した後、気孔制御剤を追加添加して攪拌することができる。
この時、攪拌時間は、特に限定されないが、それぞれ1時間以上維持する場合、イリジウムクロリドを完全に分散させることができる。
【0106】
イオン交換段階(S3)では、分散液にイオン交換剤を混合してイオン交換させる。
【0107】
イオン交換剤は、溶媒内でイリジウムクロリド中のクロリドイオンを他のイオンに交換させて、溶媒を除去する過程でイリジウムとイリジウムとの間隔が広くなるようにして最終熱処理後に生成されたイリジウム酸化物の大きさを小さくし、比表面積および気孔体積を高めることができる。
【0108】
イオン交換剤は、イリジウムクロリドのクロリドイオンを交換できる物質であれば如何なるものでも使用可能であり、例えば、KNO3、NaNO3、または、これらの混合物などの洗浄が容易なアルカリ金属ナイトレートを含むことができる。
【0109】
イリジウムクロリドとイオン交換剤のモル比は、1:5~1:10であり得、例えば、1:6~1:8である。
イオン交換剤のモル比が10を超える場合、イオン交換反応中に残余のイオン交換剤が残っており、溶媒を除去した後にも継続して水分生成反応が起き、以降の工程である熱処理過程の前に液化されることがあり、イオン交換剤のモル比が5未満の場合、クロリドのイオン交換が完全に行われないことがある。
【0110】
イオン交換は、70℃~90℃で行われ得る。
イオン交換の温度が70℃未満の場合、イオン交換効率が落ちることがあり、90℃を超える場合、溶媒蒸発が先に起きてイオン交換反応の前に粉末化が行われて同様にイオン交換率が落ちることがある。
【0111】
イオン交換は、前記温度で5時間以上攪拌して行われる。
攪拌時間は、特に限定されないが、5時間以上維持する場合、イリジウムクロリドを完全にイオン交換させることができる。
【0112】
粉末製造段階(S4)では、溶媒を除去して粉末を製造する。
【0113】
溶媒の除去は、常圧雰囲気では200℃以上で乾燥を行わなければならないが、この時、イリジウムナイトレート化合物がアルコール系溶媒により還元されて再びイリジウム金属への変形が起こり得るため、一例として比較的に低温である150℃~180℃、例えば、160℃~170℃で、12時間以上真空乾燥方式で溶媒を除去することができる。
溶媒除去時、乾燥温度が150℃未満の場合、溶媒を完全に除去し難いことがあり、180℃を超える場合、溶媒を完全に除去することができるが、温度増加に比べて明確な長所がない。
【0114】
溶媒除去時において乾燥時間は特に限定されないが、12時間以上維持する場合、溶媒を完全に除去することができる。
【0115】
熱処理段階(S5)では、溶媒除去後の粉末内に存在するナイトレートイオンおよび炭化水素類の気孔制御剤が除去される。
【0116】
熱処理温度は、製造しようとするイリジウム酸化物の気孔体積、比表面積により適切に調節することができる。
一例として、熱処理段階は、300℃~600℃、例えば350℃~450℃で、1時間~1.5時間行われる。
熱処理温度が300℃未満の場合、ナイトレートイオンの完全な除去が難しいことがあり、600℃を超える場合、イリジウム酸化物の凝集が起きて気孔体積および高い比表面積が減少することがある。
【0117】
熱処理過程で昇温および維持時間は、熱処理炉の状態により異なり得るが、一例として1分当たり2℃~3℃の昇温速度で昇温後、1時間~1.5時間維持して行われ得る。
昇温後に維持時間が長くなるとイリジウム酸化物の結晶化が起きて気孔サイズが大きくなり、比表面積が低くなることがあり、維持時間が短い場合、イリジウム酸化物への転換が完全に行われないことがある。
【0118】
選択的に、熱処理段階の後に洗浄およびろ過する段階をさらに経ることができる(S6)。
【0119】
洗浄は、脱イオン水、蒸溜水、または、超純水などを利用することができ、例えば、脱イオン水を利用することができ、ろ過は、水で洗浄された溶液を紙フィルターを用いて行われる。
また、洗浄およびろ過は、生成されたイリジウム酸化物内のアルカリイオンが5ppm以下になるまで数回行われる。
【0120】
また、選択的に、洗浄およびろ過の後に、乾燥する段階をさらに経ることができる。
【0121】
乾燥温度および乾燥時間は特に限定されず、一例として乾燥後にイリジウム酸化物の水分含水率が1重量%未満になるまで行われ、例えば、100℃以上で12時間~24時間行われる。
乾燥温度が100℃未満の場合、乾燥時間が長くなるだけでなく、乾燥後にも残存水分が存在することがある。
【0122】
製造されたイリジウム酸化物は、イリジウム酸化物の水酸化物(IrO2・xH2O)形態である。
【0123】
イリジウム酸化物は、気孔制御剤およびイオン交換剤を利用して製造されることによって、平均気孔サイズが2nm~5nmであり、平均気孔体積が0.21cm3/g~0.25cm3/gであり、比表面積が100m2/g~420m2/gである。
[実施例]
【0124】
以下、発明の具体的な実施例を提示する。
ただし、下記に記載された実施例は、発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これによって発明の範囲が制限されてはならない。
【0125】
[製造例1:イリジウムクロリドの製造]
【0126】
Ir金属粉末20gを基準としてNaOHパウダーおよびNa2O2パウダーをそれぞれ13.5g、40gずつ添加して物理的混合(physical mixing)する。
【0127】
混合されたパウダーをルツボに入れて750℃で焼成後、徐々に冷却させる。
焼成時、750℃昇温6時間、維持2.5時間の段階で行う。
また、焼成時、ルツボの蓋は、開放させる。
【0128】
焼成された粉末を脱イオン水500mlに入れて洗浄した後にろ過してカリウムとナトリウムを除去する。
【0129】
次に、脱イオン水に5%に希釈したHCl溶液200gを利用して、追加で洗浄した後、乾燥機に移して100℃で12時間乾燥して粉末を得る。
【0130】
粉末を圧力容器に入れ、HCl250gを追加で入れて混合する。
【0131】
準備された圧力容器を熱処理炉に入れ、150℃で4時間高温加圧反応後に冷却する。
その後、圧力容器を開放した時、粉末は、全て溶解されて溶液状態で存在するようになる。
【0132】
溶液を80℃で粉末状態になるまで減圧蒸留して最終的にイリジウムクロリド前駆体を製造する。
【0133】
[製造例2:イリジウム酸化物の製造]
【0134】
(実施例1)
【0135】
図3は、実施例1でイリジウム酸化物を製造する各段階別生成物を示す写真である。
図3を参照して、実施例1のイリジウム酸化物の製造過程を説明する。
【0136】
製造例1で製造されたイリジウムクロリド粉末10g、および溶媒としてエタノールとイソプロパノールをそれぞれ75gずつ入れ、次いで、気孔制御剤であるトリメチルベンゼン7gを攪拌が可能な湯煎機に入れた後、1時間攪拌して混合物を分散させる。
【0137】
十分な攪拌が完了した後の混合物にイオン交換剤であるカリウムナイトレートを20g入れて80℃に昇温した後、5時間攪拌してイオン交換過程を行う。
【0138】
イオン交換が完了した後、混合物を真空乾燥機に移して170℃に昇温した後、12時間乾燥過程を行って溶媒を完全に除去した粉末を製造する。
【0139】
その後、粉末を熱処理炉に移動させて350℃の温度で1時間維持させて残存する有機化合物を除去する。
【0140】
最後に、熱処理された粉末を脱イオン水を利用して洗浄およびろ過過程を反復的に行って残存するカリウムイオンを除去した後、乾燥機で100℃の温度で24時間乾燥する。
【0141】
製造されたイリジウム酸化物をX線回折分析(XRD)した結果、非晶質の結晶構造を有するIrO2・xH2Oの組成を有することを確認し、BET分析結果、比表面積412m2/g、気孔体積0.24cm3/g、気孔サイズ2.5nmであることを確認した。
【0142】
(実施例2~4および比較例1~4)
【0143】
実施例1で反応条件を下記表1のように変更したことを除き、実施例1と同様に実施してイリジウム酸化物を製造する。
【0144】
【0145】
参考までに、実施例2~実施例4は、熱処理温度を変更した場合であり、比較例1は、気孔制御剤を添加しない場合であり、比較例2~比較例3は、単一溶媒を使用した場合であり、比較例4は、イリジウムクロリド前駆体の気孔を形成する過程を経ずに直接熱処理をして製造した場合である。
【0146】
[実験例:イリジウム酸化物の特性分析]
【0147】
実施例および比較例で製造されたイリジウム酸化物に対してX線回折分析(XRD)およびBET分析を行った後、その結果を表2および
図4に整理する。
【0148】
【0149】
表2および
図4を参照すれば、実施例1~実施例4の生成物に対して結晶性分析(XRD分析)を行った結果、熱処理温度が高くなることによってイリジウム酸化物は、次第に結晶性のある物質に転換され、これにより、比表面積および気孔体積は小さくなり、粒子サイズはイリジウム酸化物の凝集現象により大きくなることを確認することができる。
【0150】
前記の結果を基に、気孔制御剤を導入して気孔体積が広くなった中間生成物(熱処理前の粉末)が熱処理温度が高くなることによって粒子骨格が崩れ、結局、低い比表面積および気孔体積を有する物質に変わることが分かる。
【0151】
また、実施例1および比較例1は、気孔制御剤の使用有無による気孔分布を比較した結果である。
気孔制御剤を使用しない比較例1は、比表面積および気孔体積が実施例1に比べて非常に低いことを確認することができる。
これは気孔制御剤がイリジウム酸化物中間体を形成させる時、微細骨格を提供することによって多孔質の形態を生成および維持させることが分かる。
【0152】
実施例1および比較例2~比較例3は、溶媒とイリジウムクロリド粉末の混合時、溶媒の使用方法を比較した結果である。
実施例1とは異なり、エタノールまたはイソプロパノールの単独溶媒を使用する場合、イオン交換や熱処理など他の製造条件が同一でも、気孔制御剤が効果を現わすことができず、気孔の形成に不利であることが分かり、これは、溶媒と気孔制御剤との溶解度または結合強度の差によるものと予想することができる。
【0153】
実施例1および比較例4は、気孔制御剤およびイオン交換剤を使用せず、単純熱処理をした時の生成物を比較した結果である。
実施例1とは異なり、気孔形成剤を添加しない場合には低い熱処理温度にもかかわらず非常に低い気孔特性を示すことを確認することができる。
【0154】
これにより、高い気孔体積および高い比表面積のイリジウム酸化物を製造するためには、1次で微細気孔を生成する段階が必須で行われなければならず、その気孔形態を維持させるためには、適切な熱処理温度が必要である。
【0155】
以上で本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0156】
燃料電池および水電解反応に使用することができる酸素発生反応用触媒として、高い気孔体積および高い比表面積を有するイリジウム酸化物を商業的に容易に製造することができる方法を提供する。
【国際調査報告】