(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ドリルビット
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20241105BHJP
A61C 3/02 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C3/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525754
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2022081526
(87)【国際公開番号】W WO2023083984
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506260386
【氏名又は名称】ノベル バイオケア サーヴィシィズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイツェル, イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ブレナン, ニール
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052DD02
4C159AA54
(57)【要約】
ドリルビット(10)は、根尖端部(1)と、冠状端部(2)と、根尖端部と冠状端部との間に延びる長手方向軸(L)と、ドリルビットコア(11)と、少なくとも部分的にドリルビットコアに沿って延びる切断部分(C)とを含む。切断部分に沿って、長手方向軸に垂直なドリルビットコアの断面の外形線は、長手方向軸から第1の半径方向距離(r1)にある少なくとも1つの最外点(12)と、長手方向軸から第2の半径方向距離(r2)にある少なくとも1つの切断点(14)とを含む。切断部分の第1の部分に沿って、第2の半径方向距離は第1の半径方向距離よりも小さく、切断部分の第2の部分に沿って、第2の半径方向距離は第1の半径方向距離に実質的に等しい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
根尖端部(1)と、冠状端部(2)と、前記根尖端部と前記冠状端部との間に延びる長手方向軸(L)と、
ドリルビットコア(11)と、
少なくとも部分的に前記ドリルビットコアに沿って延びる切断部分(C)と
を備えるドリルビット(10)であって、
前記長手方向軸に垂直な前記切断部分の断面の外形線が、前記長手方向軸から第1の半径方向距離(r1)にある少なくとも1つの最外点(12)と、前記長手方向軸から第2の半径方向距離(r2)にある少なくとも1つの切断点(14)とを備え、
前記切断部分の第1の部分に沿って、前記第2の半径方向距離が前記第1の半径方向距離よりも小さく、前記切断部分の第2の部分に沿って、前記第2の半径方向距離が前記第1の半径方向距離に実質的に等しい、
ドリルビット(10)。
【請求項2】
前記切断部分(C)の前記第1の部分が、前記切断部分の前記第2の部分の根尖側に位置決めされる、請求項1に記載のドリルビット(10)。
【請求項3】
前記ドリルビットが、前記ドリルビットコア(11)に沿って延びる非切断部分(N)をさらに含み、前記非切断部分に沿って、前記長手方向軸(L)に垂直な前記ドリルビットコアの断面の外形線が、前記長手方向軸からの第1の半径方向距離(r1)に少なくとも1つの最外点(12)を備える、請求項1または2に記載のドリルビット(10)。
【請求項4】
前記非切断部分(N)が前記切断部分(C)の根尖側に位置決めされる、請求項3に記載のドリルビット(10)。
【請求項5】
根尖端部(1)と、冠状端部(2)と、前記根尖端部と前記冠状端部との間に延びる長手方向軸(L)と、
ドリルビットコア(11)と、
切断部分(C)と、
非切断部分(N)であって、前記切断部分及び前記非切断部分が、前記ドリルビットコアに沿って延びる非切断部分(N)と
を備えるドリルビット(10)であって、
前記切断部分及び前記非切断部分に沿って、前記長手方向軸に垂直な前記ドリルビットコアの断面の外形線が、前記長手方向軸から第1の半径方向距離(r1)にある少なくとも1つの最外点(12)を備え、前記切断部分の前記外形線が、前記長手方向軸から第2の半径方向距離(r2)にある少なくとも1つの切断点(14)をさらに備え、
前記非切断部分が、前記切断部分の根尖側に位置決めされる、
ドリルビット(10)。
【請求項6】
前記切断部分(C)が、前記第2の半径方向距離(r2)が前記第1の半径方向距離(r1)よりも小さい、前記長手方向軸に沿った少なくとも一部を含む、請求項5に記載のドリルビット(10)。
【請求項7】
前記ドリルビットコア(11)の前記非切断部分(N)が圧縮ゾーンと、弛緩ゾーンとを含む、請求項5または6に記載のドリルビット(10)。
【請求項8】
前記ドリルビットコア(11)の前記非切断部分(N)に沿っており、かつ前記長手方向軸(L)に垂直な断面の前記外形線が、非円形である、請求項5~7のいずれか1項に記載のドリルビット(10)。
【請求項9】
前記ドリルビットコア(11)の前記切断部分(C)が圧縮ゾーン(17)と、弛緩ゾーン(18)とを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のドリルビット(10)。
【請求項10】
前記切断点(14)が前記圧縮ゾーン内に位置決めされる、請求項9に記載のドリルビット(10)。
【請求項11】
前記ドリルビットコア(11)の前記切断部分(C)に沿っており、かつ前記長手方向軸(L)に垂直な断面の前記外形線が、非円形である、請求項1~10のいずれか1項に記載のドリルビット(10)
【請求項12】
前記根尖端部(1)から前記冠状端部(2)に延びる前記ドリルビットコアが、誘導部分(16)をさらに備え、前記長手方向軸(L)に垂直な前記誘導部分の前記断面が、好ましくは円形である、請求項1~11のいずれか1項に記載のドリルビット(10)。
【請求項13】
前記長手方向軸(L)に垂直な前記ドリルビットコア(11)の前記断面が、2対または3対の最外点(12)及び切断点(14)を有し、各対が、最外点及び切断点を備える、請求項1~12のいずれか1項に記載のドリルビット(10)。
【請求項14】
前記ドリルビットの所定の回転方向で、前記切断点(14)の前記位置が、根尖-冠状方向で、前記最外点(12)の前の位置から前記最外点の後の位置に変化する、請求項1~13のいずれか1項に記載のドリルビット(10)。
【請求項15】
前記長手方向軸(L)に沿った前記切断部分(C)の前記断面間の前記第1の半径方向距離(r1)と第2の半径方向距離(r2)の比が変化する、請求項1~14のいずれか1項に記載のドリルビット(10)。
【請求項16】
前記切断部分(C)が、少なくとも1つの切断溝(15)を備える、請求項1~15のいずれか1項に記載のドリルビット(10)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの切断溝(15)が、第1のピッチで前記ドリルビットコア(11)の周りに螺旋状に延びる、請求項16に記載のドリルビット(10)。
【請求項18】
前記長手方向軸(L)に沿って、前記断面の前記最外点(12)が、第2のピッチを有する螺旋状の線に沿って位置し、前記第1のピッチ及び前記第2のピッチが互いに異なり、前記第1のピッチが好ましくは前記第2のピッチよりも小さい、請求項17に記載のドリルビット(10)。
【請求項19】
前記ドリルビットが、前記ドリルビットコア(11)の周りに螺旋状に形成され、好ましくは単一のねじ山として形成される少なくとも1つの誘導ねじ山(19)をさらに備える、請求項1~18のいずれか1項に記載のドリルビット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科インプラントを受け入れるための凹所を準備するために歯科で使用できるドリルビットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科では、患者の骨組織における凹所は、様々な環境下で、特に歯科インプラントの挿入のために準備する必要がある。インプラントを受け入れる穴の準備が、インプラントのオッセオインテグレーション及びその長期的な成功に重要な影響を与えることが知られている。
【0003】
骨の密度、向き、及び質が患者ごとに異なることを所与とすると、適切なインプラント受け入れ凹所を準備するためには、通常、いくつかのツールを使用することが必要である。しかしながら、凹所を作成するために用いるツールが相互依存的であるほど、治療プロトコルはより広範囲になる。さらに、後に使用されるツールの位置合わせが困難になる可能性がある。
【0004】
さらに、顎骨は比較的に硬い外層、つまり皮質骨、及びより弱い海綿状の骨構造の下に海綿骨を有する。硬い皮質を提供する皮質骨は、海綿骨よりもはるかに密度が高く、弾力性が低い。結果的に、歯科インプラントを受け入れるための骨凹所を準備するとき、ドリルビットは、皮質骨から海綿骨の中に延びるこの凹所を生成しなければならない。言い換えれば、ドリルビットは、異なる患者間だけではなく、一人の患者においても異なる種類の骨に直面する。
【0005】
上記を考慮して、インプラントの挿入に備えて骨組織内に凹所を作成するプロセスを改善するために絶え間のない努力が行われてきた。この点において、第WO2017/129828 A1号は、骨組織を同時に凝縮し、切断するように構成された骨組織を準備するためのドリルビットを開示している。
【発明の概要】
【0006】
それにも関わらず、歯科インプラントの挿入のために骨組織内に凹所を作成するプロセスを強化するドリルビットに対する需要が残っている。特に、インプラントが固定される異なる骨層を考慮に入れることにより穴開けプロセスを強化することが望ましい。
【0007】
上記に対応するために、本開示は、根尖端部と、冠状端部と、根尖端部と冠状端部との間に延びる長手方向軸と、ドリルビットコアと、少なくとも部分的にドリルビットコアに沿って延びる切断部分とを含むドリルビットを開示する。長手方向軸に垂直な切断部分の断面の外形線は、長手方向軸から第1の半径方向距離にある少なくとも1つの最外点と、長手方向軸から第2の半径方向距離にある少なくとも1つの切断点とを含み、断面は切断部分に沿って位置する。さらに、切断部分の第1の部分に沿って、第2の半径方向距離は第1の半径方向距離よりも小さく、切断部分の第2の部分に沿って、第2の半径方向距離は、第1の半径方向距離に実質的に等しい。
【0008】
ドリルビットコアは、実質的には円筒体または円錐体であってよい。円錐体は、円形、非円形、球形、及び/または非球形の断面を有し得、断面はドリルビットの長手方向軸に垂直である。
【0009】
切断部分の断面の最外点は、長手方向軸から最大半径方向距離を有する、ドリルビットコアの断面の外形線上の点である。複数の最外点がある場合がある。つまり、2つ、3つ、4つ、または5つの最外点など、長手方向軸から最大半径方向距離を有する複数の点がある場合がある。言い換えれば、ドリルビットコアの断面の外形線に沿っていくつかの個別の最外点がある。
【0010】
本開示の切断部分は、骨組織を切断するように構成されたドリルビットの一部分に関する。この点に関して、切断点は、切断端縁の最大延長部として理解されるべきである。一般に、切断点は、ドリルビットコアの断面の外形線に沿った長手方向軸からの半径方向距離(第2の半径方向距離)を定義し、ドリルビットコアは、骨組織を切断するように構成される。第2の半径方向距離よりも大きい半径方向距離を有する、ドリルビットコアの断面の外形線に沿った点は、好ましくは骨組織を切断するように構成されない。
【0011】
別の言い方をすると、切断部分の第1の部分は、半径として第2の半径方向距離を有する円に沿って骨組織を切断するように構成される。さらに、切断部分の第1の部分は、第2の半径方向距離と第1の半径方向距離との間のリング状の領域内で骨を切断するように構成されない。
【0012】
ドリルビットが骨を切断するように構成されないこのリング状の領域では、ドリルビットが所定の方向で回転する間に、好ましくは、ドリルビットにより骨組織の変形が引き起こされる。特に、切断点がその回転方向で通過した後、切断点に対して半径方向に外側に位置する(つまり、リング状の領域内に位置する)骨組織は、次の最外点に到達するまで半径方向に外側に圧縮される。
【0013】
この骨組織の圧縮は、それによって骨密度が高まり、初期の安定性の改善につながるので有利である。
【0014】
最外点の後、断面の外形線は、半径方向に圧縮された骨組織が弛緩する(つまり、長手方向軸に対して半径方向に内側に拡張する)ことを可能にするように構成される。次の切断点の前、外形線は、特に半径として切断点の半径方向距離を有する切断円の内側で長手方向軸の周りに延びる。
【0015】
理論に拘束されることを望むものではないが、ドリルビットは、高密度を有する骨組織、つまり硬骨組織が、一般に、低密度を有する骨組織、つまり軟骨組織よりも速く弛緩また反発するという効果を利用することが想定される。結果として、硬骨組織は軟骨組織よりも多く切断される傾向がある。言い換えれば、ドリルビットは、組織の密度に応じて骨組織を切断する傾向がある。
【0016】
切断部分の第2の部分では、ドリルビットは、切断部分の第1の部分での切断性能とは異なる切断性能を有する。最外点及び切断点の半径方向距離は実質的に等しいので、切断部分の第2の部分の断面の外形線は一般に、骨組織に圧縮を加えることなく骨組織を切断するか、または骨組織のみを切断するように構成される。これは、基本的に、実質的に一致する最外点及び切断点を有することにより達成される。
【0017】
結果的に、ドリルビットは、深さ方向で異なる骨組織に適合され得る、長手方向軸に沿って変化する切断性能を有する。
【0018】
切断部分の第1の部分は、切断部分の第2の部分の根尖側に位置決めされ得る。
【0019】
この好ましい構成では、切断部分の第1の部分の上述の切断性能は、おもに、骨凹所が形成される骨のより根尖の領域に、つまり特に海綿骨組織に適用されている。切断性能は、海綿骨が圧縮及び切断された結果、得られる。したがって、骨組織はより少ない範囲で切断される。理論に拘束されることを望むものではないが、ドリルビットによる圧縮及び切断の組み合わせによって、インプラントを挿入する前に骨組織を凝縮することが可能になり、このため一次安定性が高まると想定される。
【0020】
切断部分の第2の部分は、例えば、皮質骨の領域になど、骨のより冠状の領域に位置し、切断部分の第2の部分は基本的に骨組織を凝縮しないので、埋め込まれるインプラントの形状に概して一致し得る、ドリルビットと実質的に同じ形状の凹所を形成することができる。それにより、骨のこの領域におけるストレス及び外傷を軽減することができ、結果的に骨吸収がより少なくなる。これにより、特に根尖の領域で提供される一次安定性と組み合わせると、歯科インプラントのより高速の骨の内部成長が可能になる。
【0021】
ドリルビットは、ドリルビットコアに沿って延びる非切断部分をさらに含み得、非切断部分に沿って、長手方向軸に垂直なドリルビットコアの断面の外形線は、長手方向軸からの第1の半径方向距離にある少なくとも1つの最外点を含み得る。
【0022】
非切断部分は、骨組織を切断するように構成されていない、ドリルビットの長手方向軸に沿った一部分を表す。それにより、この部分は、任意の意図的な切断動作なしに、つまり、切断点が断面の外形線に沿って存在することなく、おもにまたは単に骨組織に対して凝縮効果を提供するように適合される。
【0023】
非切断部分は、切断部分の根尖側に位置決めされ得る。結果的に、非切断部分は、インプラントの挿入のためのインプラント治療部位を準備するためにインプラント治療部位に進入するドリルビットの第1の部分である。ドリルビットの結果得られる凹所では、非切断部分によって処置された根尖端部は、インプラントの安定した一次固定を提供する。根尖端部にある非切断部分の場合、ドリルビットを使用する前にパイロットドリルで準備することが好ましい。
【0024】
本開示の別の態様では、ドリルビットは、根尖端部と、冠状端部と、根尖端部と冠状端部との間に延びる長手方向軸と、ドリルビットコアと、切断部分と、非切断部分とを含む。切断部分及び非切断部分は、ドリルビットコアに沿って延びる。切断部分及び非切断部分に沿って、長手方向軸に垂直なドリルビットコアの断面の外形線は、長手方向軸から第1の半径方向距離にある少なくとも1つの最外点を含む。切断部分の外形線は、長手方向軸から第2の半径方向距離にある少なくとも1つの切断点をさらに含む。非切断部分は、切断部分の根尖側に位置決めされる。
【0025】
非切断部分が切断部分の根尖側に位置していることにより、切断部分で骨組織を切断する前に、骨組織を事前に圧縮することが可能になる。これには、骨組織を切断することなく、骨組織のより根尖の領域、つまり、海綿骨が位置する領域に対して凝縮効果を発揮することが可能であるという利点がある。それにより、歯科インプラントのオッセオインテグレーションを強化する歯科インプラントを受け入れるための骨凹所が形成される。
【0026】
切断部分は、第2の半径方向距離が第1の半径方向距離よりも小さい、長手方向軸に沿った少なくとも一部を含み得る。
【0027】
言い換えれば、切断部分は、すでに上述したように、第2の半径方向距離と第1の半径方向距離との間にリング状の領域を有する、長手方向軸に沿った部分を含み得る。
【0028】
長手方向軸に沿ったドリルビットコアの非切断部分及び/または切断部分は、圧縮ゾーン及び弛緩ゾーンを含み得る。
【0029】
圧縮ゾーンは、長手方向軸に垂直な断面でドリルビットコアの外形線に沿って延びる。圧縮ゾーンでは、長手方向軸からの外形線の半径方向距離は、外形線をたどるときに最外点まで増加する。したがって、骨組織(またはドリルビットコアに隣接する点)に対してドリルビットを回転させると、ドリルビットの外形線が骨組織(または点)を外側に押す、つまり、骨組織を圧縮させることになる。
【0030】
言い換えれば、圧縮ゾーンは、ドリルビットの所定の回転方向とは反対の外形線に沿った方向で、長手方向軸から外形線の最外点までドリルビットコアの外形線の半径方向距離を増加させることによって画定される。
【0031】
圧縮ゾーンは、ドリルビットの回転時に、隣接する骨組織に向かって半径方向に外側に移動を実行するように構成される、ドリルビットコアの断面の外形線に沿ったゾーンである。これにより、骨組織に半径方向に外側の方向に力が加えられ、圧縮される隣接する骨組織が生じる。
【0032】
外形線の最外点が材料(または点)を通過した後、つまり、ドリルビットの所定の回転方向と反対の方向で、ドリルビットの外形線に沿った弛緩ゾーンが始まり得、長手方向軸からの外形線の半径方向距離が減少する。したがって、周囲の骨組織に対してドリルビットを回転させると、ドリルビットコアの外形線は内側に(骨組織から離れて)相対的に半径方向に移動することになる。これにより、骨組織は、圧縮ゾーンに圧縮された後に弛緩することが可能になる。
【0033】
したがって、弛緩ゾーンは、外形線に沿った方向での外形線の最外点の後の、ドリルビットの所定の回転方向とは反対の、長手方向軸からのドリルビットコアの外形線の距離の減少によって画定される。
【0034】
弛緩ゾーンは、ドリルビットの回転時に、隣接する骨組織から離れて半径方向に内側に移動を実行するように構成される、ドリルビットコアの断面の外形線に沿ったゾーンである。これにより、隣接する圧縮された骨組織が弛緩し、それにより半径方向に内側の方向でドリルビットコアの外形線の半径方向の変位に従うことが可能になる。
【0035】
好ましくは、切断点は圧縮ゾーン内に位置決めされる。
【0036】
圧縮ゾーン内に切断点を位置決めすることにより、最外点の距離まで長手方向軸から離れる半径方向に圧縮された後にドリルビットの長手方向軸に向かって回復した骨組織を選択的に切断することが可能になる。したがって、切断点のこの配置によって、ドリルビットの切断挙動を骨組織の異なる領域または種類に調整することが可能になる。
【0037】
ドリルビットコアの非切断部分に沿っており、かつ長手方向軸に垂直な断面の外形線は、非円形であってよい。
【0038】
さらに、ドリルビットコアの切断部分に沿っており、かつ長手方向軸に垂直な断面の外形線は、非円形であってよい。
【0039】
切断部分及び/または非切断部分の非円形の外形線は、楕円形、三楕円形(trioval)、四楕円形(quadrioval)以上であってよい。
【0040】
この文脈での非円形の外形線は、円の外形線とは異なる外形線を指す。ただし、非円形外形線が実質的に曲線的であること、つまり、非円形外形線に鋭い端縁がないこと好ましい(切断部分の場合、切断ゾーンを表す切断点に対する外形線の部分を除く)。
【0041】
非円形の外形線により、少なくとも1つの圧縮ゾーン及び少なくとも1つの弛緩ゾーンを形成し、それにより骨組織に凝縮効果を発揮することが可能である。上述のように、圧縮ゾーンは、最大半径方向距離から最小半径方向距離まで所定の回転方向で、ドリルビットコアの断面の外形線に沿って画定される。弛緩ゾーンは、最小半径方向距離から最大半径方向距離まで所定の回転方向で、ドリルビットコアの断面の外形線に沿って画定される。外形線の形状に応じて、複数の圧縮ゾーン及び弛緩ゾーンが形成され得る。特に、2対、3対、4対、または5対の圧縮ゾーン及び弛緩ゾーンが形成され得る。
【0042】
ドリルビットコアは、誘導部分を含み得、長手方向軸に垂直な誘導部分の断面は好ましくは円形である。
【0043】
ドリルビットが、根尖部分に切断挙動(切断点)を実質的に有さないとして構成される一実施形態では、好ましくは、パイロットドリルが、ドリルビットが挿入可能であるパイロット穴を形成するために使用される。一般に切断能力または凝縮能力を有さないドリルビットの誘導部分は、ドリルビットの挿入及び誘導を容易にし、ドリルビットのパイロット穴との位置合わせを強化する。
【0044】
長手方向軸に垂直なドリルビットコアの断面は、2対または3対の最外点及び切断点を有し得、各対は、最外点及び切断点を含む。
【0045】
したがって、複数の圧縮ゾーン及び弛緩ゾーンが形成され得る。さらに、ドリルビットの切断挙動を適応させる切断点及び最外点の円周方向の位置によって、骨組織の回復時間は調整され得る。
【0046】
ドリルビットの所定の回転方向で、切断点の位置は、根尖-冠状方向で、最外点の前の位置から最外点と同じ位置に変化し得る。
【0047】
所定の回転方向に対する最外点及び切断点の相対的な位置により、特に、骨組織の回復時間を変更することで少なくともおもに切断される骨組織の種類の調整が達成される。より具体的には、切断点がドリルビットの所定の回転方向の最外点の後に(つまり、切断点が最外点の前の骨組織の場所を通過するように、上述の圧縮ゾーンに)位置する場合、切断点がドリルビットの所定の回転方向の最外点に位置する配置と比較して、骨の弛緩時間は長くなる。したがって、切断挙動は、異なる種類の骨組織に調整することができる。
【0048】
さらに、最外点及び切断点の相対的な配置は、連続的に変化する場合がある。例えば、これにより、ドリルビットの挿入経路に沿った骨構造または密度の変化に応じて、ドリルビットの切断挙動を調整することが可能になる。
【0049】
長手方向軸に沿った切断部分の断面間の第1の半径方向距離と第2の半径方向距離の比は、好ましくは連続的に変化する場合がある。
【0050】
ドリルビットコアの断面の第1の半径方向距離と第2の半径方向距離の比は、ドリルビットの長手方向軸に沿ったドリルビットコアの切断特性を定義する。言い換えれば、長手方向軸に沿った第1の半径方向距離と第2の半径方向距離の比の変化により、ドリルビットの切断挙動の変化が生じることになる。
【0051】
切断部分は、少なくとも1つの切断溝を含み得る。少なくとも1つの切断溝が、ドリルビットコアの周りに螺旋状に延びることが好ましい。
【0052】
切断溝は、切断点の容易な形成を可能にし、インプラント治療前に骨空洞を準備するときに切断された骨材料を収集することができる。
【0053】
切断溝は、長手方向軸に垂直な断面でドリルビットの外形線に凹部として形成される。切断溝は、ドリルビットの外形線に沿って切断ゾーンを形成する。
【0054】
凹部または切断ゾーンの片側は、ドリルビットの切断点を確立する。特に、切断点は、外形線に沿った不連続点、つまり、ドリルビットコアの外面と切断溝の表面との交差点にある不連続点として形成される。切断点は、好ましくは、ドリルビットの所定の回転方向で見られるときに続く溝の外形線の端部に位置する。溝がドリルビットの周りに螺旋状に延びる場合、切断部分の断面の切断点も、特に第1のピッチで、ドリルビットの周りに延びる。
【0055】
好ましくは、切断溝の数は、最外点及び切断点の数と等しい。断面の最外点は、第2のピッチを有する螺旋状の線に沿って位置し得、第1のピッチ及び第2のピッチは互いに異なり、第1のピッチは好ましくは第2のピッチよりも小さい。
【0056】
第1のピッチ及び第2のピッチが互いに異なる場合、切断点及び最外点の相対的な円周方向の位置は連続的に変化する。上述のように、切断点及び最外点の相対的な位置が、ドリルビットの切断挙動を定義する。したがって、第1のピッチ及び第2のピッチの差によって、好ましくは骨密度の変化に対応して、ドリルビットの切断部分に沿ってドリルビットの切断挙動を連続的に調整し得る。
【0057】
ドリルビットは、ドリルビットコアの周りに螺旋状に形成され、好ましくは単一のねじ山として形成される少なくとも1つの誘導ねじ山をさらに含み得る。それにも関わらず、二重または三重のねじ山も想定され得る。
【0058】
誘導ねじ山は、所定の方向での回転時に、ドリルビットを骨組織の中に、または骨組織内のパイロット穴の中に引き込む、ドリルビットコアから突出する部分として構成される。骨組織へのドリルビットの所定の速度は、誘導ねじ山のピッチによって調整可能である。
【0059】
誘導ねじ山は、骨組織内へのドリルビットの送り速度を定義し、ユーザーが加える力に対する依存を排除するという利点を有する。特に、ユーザーが患者の骨の中にドリルビットを押し込むのが速すぎるまたは遅すぎることによって、潜在的な悪影響が回避される。これにより、歯科インプラントのオッセオインテグレーションが強化され得る。
【0060】
また、骨切術を準備する方法も開示されており、方法は、上述のような外形線を有する非球形のドリルで顎骨に穴を開けることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0061】
以下の図及び説明を用いて、本開示をより良く理解するために実施形態がより詳細に説明される。この目的のため、図に現れる特徴には参照符号が付けられている。この文脈では、これらの実施形態の特徴が同じであるか、または同じ効果を達成するならば、本質的に同じ参照符号が異なる例示的な実施形態に対して使用される。
【0062】
【
図1】骨組織に凹所を準備するためのツールの、及びツールの長手方向軸に沿った異なる位置における断面の例示的な実施形態を示す。
【
図2】本開示によるツールによって準備された骨凹所と、この凹所に挿入されるインプラントとの関係性を示す。
【
図3】インプラント治療に使用されるツール及びインプラントの例示的な順序を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下では、骨組織に凹所を準備するためのツールの例示的な実施形態、特に、本開示によるドリルビットの実施形態が、添付の図面を参照して説明される。
【0064】
図1は、本開示によるドリルビット10の斜視図である。ドリルビット10は、根尖端部1と、冠状端部2と、根尖端部1と冠状端部2との間に延びる長手方向軸Lとを含む。さらに、ドリルビット10は、ドリルビットコア11を含む。ドリルビットコア11は、好ましくは、ドリルビット10の根尖端部1と冠状端部2との間で実質的に長手方向軸Lに沿って延びる。ドリルビットコア11の冠状端部に隣接して、ドリルビット10は、ドリルビット10に所定の回転を加えるための別のツール(図示せず)にドリルビット10を結合するための結合部分5を含み得る。
【0065】
図1は、長手方向軸Lに沿った異なる位置でのドリルビット10の正面図(a)と、断面図(b)~(e)をさらに示す。
図1に示される断面図は、根尖-冠状方向で見られるときの長手方向軸Lに垂直なドリルビット10の断面を示す。これらの正面図(a)及び断面図(b)~(e)のそれぞれは、ドリルビット10の外形線3を示しており、外形線は、切断溝15または誘導ねじ山19などの特徴から発生する外形線部分を含む場合がある。断面図(c)~(e)は、比較のために、それぞれ概略でドリルビットコア11の基本的な外形線4、つまり、切断溝15または誘導ねじ山19などの追加の特徴のないドリルビットコア11の基本的な形状を表すドリルビットコア11の外形線をさらに含む。断面図(e)では、基本的な外形線3は、切断溝15のないドリルビットコア11の最外点12がどこに位置するであろうかを示すことを可能にする。
【0066】
ドリルビットコア11の断面の外形線は、好ましくは、少なくとも1つの最外点12を含む。少なくとも1つの最外点12は、長手方向軸Lから第1の半径方向距離r1に実質的に位置する。結果的に、コアの最外点12での半径方向距離r1は、長手方向軸Lが断面と交差する点までの外形線の最大半径方向距離を表す。
【0067】
図1で、ドリルビットコア11は3つの最外点12を含む。ただし、1つ、2つ(つまり、楕円形)、3つ(つまり、三楕円形)、4つ、5つ、または6つの最外点12など、任意の他の数の最外点12が形成されてよい。好ましくは、最外点12は、ドリルビットコア11の外形線に沿って均一に分布している。
【0068】
断面図は、長手方向軸Lに沿ったドリルビット10の異なる部分での断面を含む。以下にさらに詳細に説明されるように、正面図(a)は、ドリルビット10の非切断部分Nの基本的に円形の外形線を示す。言い換えれば、外形線は最外点12を有していない。断面図(b)は、非切断部分に沿った断面内の外形線を示しており、外形線は3つの最外点を含む。断面図(c)は、ドリルビット10の凝縮部分D内の切断部分Cに沿った断面を示す。断面図(d)及び(e)は、切断部分Cに沿った凝縮部分Dの冠状方向の断面を示す。
【0069】
さらに、これらの図(a)~(e)では、ドリルビット10の所定の回転方向は、
図1の曲線状の矢印で示されるように左回り方向に定義されている。
【0070】
再び最外点12を参照すると、ドリルビット10は、根尖-冠状方向に長手方向軸Lに沿って、ドリルビットコア11の直径及び/または第1の半径方向距離r1が増加する少なくとも一部分を含み得る。この増加は、好ましくは、ドリルビット10を用いて作成された凹所の中に埋め込まれる歯科インプラント50(
図2を参照)の直径の増加に相当する。
【0071】
さらに、ドリルビット10は、長手方向軸Lに沿って、ドリルビットコア11の直径及び/または第1の半径方向距離r1が実質的に同じままとなる少なくとも一部分を含み得る。このような部分はまた、埋め込まれるインプラント50に一致するように成形され得る。
【0072】
冠状端部2で、ドリルビット10の形状は、埋め込まれた状態でその位置にある歯科インプラント50と実質的に同じサイズを有するように適合され得る。根尖端部1で、ドリルビット10は、歯科インプラント50よりもサイズが小さくなるように適合され得る。後者は、患者の骨組織とインプラント50との間に圧入を生じさせることによってインプラント50の一次安定性を強化するためである。
【0073】
一般に、長手方向Lに沿ったドリルビット10の形状を、ドリルビット10を用いて準備される骨凹所に挿入される歯科インプラント50の幾何学形状に適合させることは有利である。好ましくは、この適合は、インプラント治療後にインプラント50に隣接して位置する骨の種類を考慮に入れる。特に、軟骨では、ドリルビット10は、骨組織内にインプラント50の固定を支持するためにインプラント50に対して小さめである。
【0074】
冠状端部2においてドリルビット10が歯科インプラント50と同じサイズであることにより、インプラント治療後の皮質骨組織内の歪みが低減され、骨吸収が防がれ、骨の内部成長が促進される。
【0075】
根尖端部1においてドリルビット10が歯科インプラント50よりも小さいサイズであることにより、骨凹所内での歯科インプラント50の良好な第1の安定性が達成される。
【0076】
すでに上述されたように、ドリルビットコア11は、少なくとも1つの圧縮ゾーン17と、少なくとも1つの弛緩ゾーン18(例えば
図1の断面図(b))とを含み得る。
【0077】
ドリルビット10の所定の回転方向で、少なくとも1つの圧縮ゾーン17は、長手方向軸Lから半径方向距離r3を有する最内点21で開始し、好ましくは外形線に沿った最外点12まで、及び外形線と長手方向軸Lとの間の最大半径方向距離r1まで、ドリルビットコア11の断面の外形線の一部分に沿って延びる。
【0078】
また、ドリルビット10の所定の回転方向で、少なくとも1つの弛緩ゾーン18は、長手方向軸Lから最大半径方向距離r1にある最外点12で開始し、長手方向軸Lから半径方向距離r3を有する最内点21まで、ドリルビットコア11の断面の外形線の一部分に沿って延びる。
【0079】
圧縮ゾーン17及び/または弛緩ゾーン18の最内点21と最外点12との間の外形線は、好ましくは滑らかであり、つまり(単に)曲線状である。それにも関わらず、ゾーン17と18とのどちらかまたは両方は、少なくとも1つの真っすぐな小区域を有し得る。
【0080】
互いにじかに隣接して位置する、つまり、円形の線状断面を形成する複数の最外点12を有するドリルビットコアの断面の外形線も、これらのすべての最外点12が第1の半径方向距離r1(最大半径方向距離)を有するため、含まれることに留意されたい。同じことは、長手方向軸Lから最小半径方向距離r3にある最内点21に当てはまる。それにも関わらず、個別の最外点(複数可)12及び/または最内点(複数可)21を有することも可能である。
【0081】
好ましくは、ドリルビットコア11の断面内の圧縮ゾーン17の数は、弛緩ゾーン18の数に概して等しい。この状況では、どちらかのまたは両方のゾーン17及び18が、以下により詳細に説明される切断ゾーン13によって中断される場合があるため、用語が概して使用される。
【0082】
圧縮ゾーン17では、ドリルビット10は、半径方向に外側の方向に骨組織を圧縮する、つまり、骨組織に対して密度を高める効果または凝縮効果を発揮するように構成される。ドリルビットの回転時、ドリルビットコア11の断面の半径方向距離が、半径方向距離r3から半径方向距離r1に増加するため、骨組織内の所定の点(図示せず)は、半径方向に外側に押し出される。骨組織に対するこの外側の移動により、骨組織は凝縮される。
【0083】
弛緩ゾーンでは、ドリルビット10は、ドリルビットコア11の外形線3が半径方向に内側に移動することにより、圧縮された骨組織が回復することを可能にする。言い換えれば、ドリルビットの回転時、ドリルビットコアの外形線の半径方向距離が、最外点12から最内点21に減少するため、骨組織内の所定の点(図示せず)は、半径方向に内側に続くことができる。
【0084】
理論に拘束されることを望むものではないが、例えば皮質骨などの高密度を有する骨組織が、一般に、例えば海綿骨などの低密度を有する骨組織よりも速く弛緩または反発することが判明している。言い換えれば、ドリルビット10の弛緩ゾーンでは、より高い密度を有する骨組織は、より低い密度を有する骨組織よりも速く半径方向に内側に弛緩し、延びる。
【0085】
ドリルビットコア11の断面の外形線の少なくとも一部は、好ましくは非円形である。したがって、長手方向軸Lに沿ったドリルビットコア11の少なくとも一部分は、少なくとも部分的に非円形の断面を有する。
【0086】
ドリルビットコア11の断面の外形線はまた、長手方向Lに沿ったドリルビットコア11の全延長部に沿って、または少なくとも実質的に全延長部に沿って非円形である場合がある。例えば、非円形の外形線は楕円形または三楕円形であってよい。ただし、非円形外形線の他の形状、特に実質的に球形の外形線も可能である。それにも関わらず、及び上述のように、ドリルビットコア11はまた、少なくとも長手方向軸Lの一部分に沿って、実質的に円形である断面の外形線を含み得る。
【0087】
非円形の外形線は、少なくとも1つの圧縮ゾーン17及び弛緩ゾーン18を画定することを可能にする。すなわち、ドリルビット10の所定の回転方向での最小半径方向距離r3から最大半径方向距離r1までのドリルビットコア11の断面の外形線の部分は、圧縮ゾーン17として画定され、つまり、それは、隣接する骨組織を圧縮するように構成される。ドリルビット10の所定の回転方向での最大半径方向距離から最小半径方向距離までのドリルビットコア11の断面の外形線の部分は、弛緩ゾーン18として画定され、つまり、それは、以前に圧縮された骨組織の弛緩を可能にするように構成される。非円形外形線3の形状は、ドリルビットコア11の断面の外形線に沿った複数の圧縮ゾーン17及び弛緩ゾーン18が画定されるように設計され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、ドリルビット10は、少なくとも長手方向軸Lに沿ったドリルビット10の一部分に沿った誘導ねじ山19を含む。誘導ねじ山19の外形線は、コアから半径方向に突出し、ドリルビットコア11の周りに螺旋状に延びる。誘導ねじ山は、好ましくは、後に配置されるインプラント用のネジタップとなることを意図していない。
【0089】
誘導ねじ山19は、ドリルビットコア11の周りに所定のピッチで形成される。誘導ねじ山19は、好ましくは単一のねじ山として形成される。上述のように、誘導ねじ山19はまた、二重ねじ山または三重ねじ山としても形成されてよい。
【0090】
誘導ねじ山は、好ましくは、根尖端部で開始する。さらに、誘導ねじ山は、特に、以下にさらに詳細に説明される切断溝15の冠状端部に対して根尖側で終了する。誘導ねじ山の冠状端部の冠状方向に、ドリルビット10は好ましくは伸び部分Eを含む。したがって、伸び部分は、切断溝15を含み得るが、好ましくはねじ山を含まない。伸び部分は、隣接する骨組織内に形成された凹所に対してさらなる修正を実質的に引き起こさないようにさらに構成され得る。代わりに、ドリルビット10は、誘導ねじ山19を含まない場合がある。
【0091】
誘導ねじ山19によって、ドリルビット10は骨組織内に所定の速度で引き込まれるか、または誘導される。誘導ねじ山19のピッチは、好ましくは、満足の行く再現可能なインプラント受け入れ穴を作成するために、ドリルビット10がそれ自体を所定の速度(1回転あたりの送り)で骨組織の中に引き込むように適合される。結果的に、ユーザーは、ドリルビット10を骨組織内に押し込むためにドリルビット10に力を加える必要はない。これには、ツールの使用を容易にするという利点がある。言い換えれば、ユーザーは、骨組織の中へのツールの送り込みが速すぎるまたは遅すぎることを心配する必要はない。
【0092】
特に、ドリルビット10が、以前に準備されたパイロット穴(図示せず)に挿入される場合、誘導ねじ山19は、ドリルビット10の穴との位置合わせも支援する。それにより、ユーザーによるツールの位置ずれはより効果的に防がれる。これは、骨凹所の所望の形状を達成するために貢献し、インプラントのオッセオインテグレーション及びその長期の成功を促進し得る。
【0093】
長手方向軸Lに沿って、ドリルビット10は切断部分Cを含む。ドリルビット10は、凝縮部分D、非切断部分N、及び/または長手方向軸L及び誘導領域16に沿った伸び部分Eをさらに含み得る。凝縮部分Dは、切断部分C及び/または非切断部分Nと部分的にまたは完全に重複し得る。
【0094】
ドリルビット10の長手方向軸に沿って上述の部分のいくつかまたはすべてを含めることにより、ドリルビット10を骨組織の異なる密度に適合させることが可能になる。特に、ドリルビット10は、ドリルビット10がコンパクトな構造及び比較的に高密度の皮質骨を準備している冠状端部2で、ドリルビット10が小柱構造及び概して低密度の海綿骨組織を概して準備している根尖端部とは異なって構成される。したがって、歯科インプラントを挿入するための骨凹所を準備するときに、ただ1度のステップで骨組織のこれらの異なる領域を準備することが可能である。このようにして、大部分の患者で複雑なドリルプロトコルを回避し得る。それにも関わらず、パイロットドリル30は、準備を容易にするためにドリルビット10の前に用いられ得る。
【0095】
ドリルビット10の長手方向軸に沿ったすべての部分は、
図1を参照して以下により詳細に説明される。
【0096】
ドリルビット10は、少なくとも1つの切断部分Cを含む。切断部分Cは、好ましくは、長手方向軸Lに沿って少なくとも部分的にドリルビットコア11に沿って延びる。好ましくは、切断部分Cは、ドリルビット10またはドリルビットコア11の根尖端部1まで延びない。言い換えれば、ドリルビット10は、根尖端部1で骨組織を切断するために構成されない場合がある。代わりに、切断部分Cは、長手方向軸Lに沿ってドリルビットコア11の実質的に全長に沿って(つまり、結合部分5なしで)存在する場合がある。
【0097】
いずれにせよ、根尖端部は、ドリルビット10を患者の骨組織内に誘導するために使用され得る。
【0098】
切断部分Cは、凝縮部分Dと少なくとも部分的に重複し得る。すなわち、切断部分Cは、ドリルビット10の凝縮部分Dとして少なくとも部分的に構成され得る、またはその逆も同様である。
【0099】
図1に示されるように、切断部分Cは、根尖側に先細になっており、つまり、長手方向Lに垂直な切断部分Cの断面は、切断部分Cの冠状端部から切断部分Cの根尖端部へサイズが縮小する。結果として、ドリルビットが骨組織内に穴を開けると、切断部分は、隣接する骨組織を切断することにより作成される穴のサイズを増大させる。誘導ねじ山19が存在する場合、切断の動きは、特定の安定した送りにより、特定の螺旋状に実行される。
【0100】
切断部分Cが凝縮部分Dとして少なくとも部分的にまたは完全に構成される場合も、この切断部分Cの断面は、好ましくは圧縮ゾーン17及び弛緩ゾーン18を含む。それにより、このような切断部分Cは、ドリルビット10の所定の方向に回転しながら、圧縮ゾーン17内で骨組織を圧縮し、骨組織が弛緩ゾーン18内で弛緩することを可能にするように構成される。
【0101】
圧縮ゾーン17及び弛緩ゾーン18に沿った外形線、及び/または圧縮ゾーン17と弛緩ゾーン18との間の遷移は、好ましくは(単に)曲線状であり、つまり、外形線は、(以下により詳細に説明される切断部分Cの場合の切断ゾーン13を除き)真っすぐな区域または不連続点を含まない場合がある。これは、ドリルビット10で処置される骨組織の構造上の完全性に良い影響を与える。
【0102】
本開示では、存在する場合、及び圧縮ゾーン17と弛緩ゾーン18を有する場合、凝縮部分Dは、圧縮ゾーン17と弛緩ゾーン18の両方(つまり、圧縮ゾーン17だけではなく、弛緩ゾーン18だけではなく)を含むことに留意されたい。
【0103】
それにも関わらず、切断部分Cの少なくとも一部または全体的な切断部分Cは、凝縮部分Dとして構成されることなく、切断部分Cとして構成されてもよい。結果的に、このような切断部分は、圧縮ゾーン及び弛緩ゾーンなしで構成される。
【0104】
好ましくは、全体的な切断部分Cの少なくとも一部に沿ったドリルビットコア11の断面の外形線は、非円形である。なおさらに好ましくは、外形線は非円形であり、圧縮ゾーン17と、弛緩ゾーン18とを含む。この結果、外形線は凝縮部分Dとして構成される。それにより、ドリルビット10は、骨組織に対して凝縮効果を発揮することができる。非円形外形線の構成に応じて、ドリルビットコア11の断面の外形線に沿った複数の圧縮ゾーン及び弛緩ゾーンを画定することができる。
【0105】
凝縮部分Dとして構成されていない場合、特に切断部分Cとしても構成されていない場合、ドリルビットコア11の断面の外形線は、実質的に円形であってよい。凝縮部分Dとして構成されていない切断部分Cの断面の外形線は、切断溝15及び/または誘導ねじ山19が存在する場合には実質的に円形であるとして理解されるべきである。
【0106】
ドリルビットコア11の切断部分の断面の外形線に沿って、切断部分Cは、好ましくは、切断点14を含む少なくとも1つの切断ゾーン13を含む。切断ゾーン13は、切断部分Cの外形線に凹状の凹所を形成する切断溝15によって画定され得る。したがって、切断部分Cは少なくとも1つの切断溝15をさらに含み得る。切断溝15は、好ましくは、ドリルビットコア11内で凹所または溝として形成され、ドリルビットコア11に沿って延びている。さらに、切断溝15は真っすぐであってよいが、好ましくは、ドリルビットコア11の周りに螺旋状に延びる。後者の場合、ドリルビット10の外周に沿って切断力を分散させ、挿入中の誘導を容易にする。
【0107】
好ましくは、切断点14を含む切断ゾーン13は、凝縮部分Dとしても構成される切断部分Cの外形線4の圧縮ゾーン17に位置する。この場合、圧縮ゾーン17の外形線は、切断ゾーン13によって中断される。
【0108】
少なくとも1つの切断点14は、切断部分Cに沿ってドリルビットコア11の断面図で長手方向軸Lから第2の半径方向距離r2に位置する。切断部分Cに沿ったドリルビットコア11の断面の外形線4は、2対または3対の最外点12と切断点14を含み得、各対は、最外点12と切断点14とを含む。
【0109】
切断点14は、好ましくは、切断部分Cの外形線4に沿った不連続点を表す。したがって、切断点は、逃げ角と、切断角度と、すくい角とを含む。
【0110】
第2の半径方向距離r2に位置する少なくとも1つの切断点14により、長手方向軸Lから第2の半径方向距離r2を半径として有する断面内の円に沿って骨組織を切断することが可能になる。第2の半径方向距離r2が、以下により詳細の説明される最外点12の第1の半径方向距離r1よりも小さい場合、ドリルビット10は、第2の半径方向距離r2よりも大きい半径方向距離を有する領域内で骨組織を切断するように構成されない。
【0111】
したがって、第2の半径方向距離r2は、長手方向軸Lに沿った切断部分Cの少なくとも一部、つまり、長手方向軸Lに沿った断面の少なくとも一部で、ドリルビットコア11の断面内の最外点12の第1の半径方向距離r1よりも小さい場合がある。言い換えれば、ドリルビット10及び切断部分Cは、負の逃げ角αを有する、長手方向軸Lに沿った一部分を含み得る。
【0112】
代わりに、第1の半径方向距離r1及び第2の半径方向距離r2はまた、ドリルビットコア11の断面内で、長手方向軸Lに沿った切断部分Cの少なくとも一部分で実質的に等しくてもよい。言い換えれば、最外点12及び切断点14は、実質的に一致し得る。この場合、ドリルビット10及び切断部分Cは、切断点14が正の逃げ角αを有する、長手方向軸に沿った一部分を含み得る。
【0113】
好ましくは、最外点12の第1の半径方向距離r1と、切断点14の第2の半径方向距離r2の比は、切断部分Cに沿ったドリルビットコア11の断面ごとに変化する。
【0114】
第2の半径方向距離r2が第1の半径方向距離r1よりも小さい一実施形態では、ドリルビット10及び切断部分Cは、ドリルビット10が骨を切断するように構成されていない非切断ゾーン22を含む(
図1の断面(c)を参照)。非切断ゾーン22は、好ましくは圧縮ゾーン17の一部である。
【0115】
非切断ゾーン22の半径方向延長部は、第2の半径方向距離r2と第1の半径方向距離r1との間にリング状の領域を画定する。この非切断部分22内で、ドリルビット10は、骨組織を交互に圧縮するか、または骨組織の弛緩を可能にするように、つまり、骨組織を切断することなく半径方向距離内の骨組織に力を加えるように構成される。上述のように、圧縮ゾーン17では、圧縮ゾーンに隣接する骨組織は、所定の回転方向でのドリルビット10の回転時に半径方向に外側に押し出されるが、一方、弛緩ゾーン18では、半径方向に内側の方向での骨組織の回復が可能である。
【0116】
理論に拘束されることを望むものではないが、ドリルビット10は、より大きい密度を有する骨組織の方がより低い密度を有する骨組織よりもより速く弛緩する、つまり、半径方向に内側により速く移動するという所見を利用する。圧縮ゾーン17内で骨組織を半径方向に外側の方向に圧縮した後、圧縮された骨組織は、弛緩ゾーン18内で半径方向に内側に回復する(つまり、移動する)。回復時間の差により、ドリルビット10は、より大きい密度を有する骨組織(例えば、皮質骨組織)を切断する傾向がある。
【0117】
回復に許容される時間は、切断点14及び最外点12の円周方向の位置(ならびにドリルビット10の回転率または回転速度)、したがって切断点14に対するドリルビットコア11の断面の外形線4に沿った圧縮ゾーン17及び弛緩ゾーン18の位置に依存している。所定の許容された回復時間内に、第2の半径方向距離r2よりも小さい半径方向距離まで回復する骨組織は、通過する次の切断点14で切断されるが、一方、第2の半径方向距離r2と第1の半径方向距離r1との間の点まで回復する骨組織は、次の切断点14で切断されない。したがって、切断点14は、骨組織を異なる程度に切断する、つまり、硬骨組織を、軟骨組織よりも高い程度まで切断することができる。この効果は、ドリルビットコア10の幾何学形状、つまり、第1及び第2の半径方向距離r1とr2の大きさ、ならびにその円周方向の位置によって調整することができる。
【0118】
第2の半径方向距離r2が、第1の半径方向距離r1に実質的に等しい場合には、ドリルビット10及び切断部分Cは、上述の切断挙動とは異なる切断挙動を有する。切断点14及び最外点12が実質的に一致するので、切断点14は、最も半径方向外側の位置に位置する。言い換えれば、ドリルビットコア11の断面の外形線上の他のすべての点は、切断点14よりもより半径方向に内側に位置する。したがって、ドリルビット10は、骨組織を圧縮するか、または骨組織の弛緩を可能にするように構成されていないが、代わりに、第1の半径方向距離r1または第2の半径方向距離r2が及ぶ円形領域内で骨組織を切断する。
【0119】
これは、
図1の断面(d)及び(e)に構造的に示されている。断面(d)では、ドリルビットコア11の基本的な外形線4(つまり、誘導ねじ山19及び/または切断溝15を考慮しない外形線)の理論上の最外点12’、及びドリルビットの外形線3の最外点12は、ドリルビットの外形線3の切断点14と一致する。
【0120】
ドリルビットの外形線3の最外点12の決定は、存在する場合(
図1の断面(c)~(e)を参照)誘導ねじ山19を考慮に入れないことに留意されたい。さらに、たとえ切断部分Cに沿った長手方向軸に垂直な断面が、概して所定数の圧縮ゾーン17、弛緩ゾーン18、切断ゾーン13、非切断ゾーン22、最外点12、及び/または切断点14を含んでいても、特定の断面は、ドリルビット10の他の構造上の特徴、特に、誘導ねじ山19の影響により、これらの特徴のすべてを含まない場合がある(誘導ねじ山19に起因して、1つの弛緩ゾーン及び1つの圧縮ゾーンの部分を欠いている
図1の断面(c)を参照)。
【0121】
したがって、外形線は、圧縮ゾーン17及び弛緩ゾーン18を含むように構成されない。圧縮ゾーン17が位置するであろう外形線の部分に沿って、代わりに切断溝15によって形成された凹所がある。言い換えれば、圧縮ゾーン17の代わりに、切断ゾーン13が、ドリルビット10の外形線に沿って配置される。
【0122】
図1の断面(e)を参照すると、ドリルビットコア11の基本的な外形線4の理論上の最外点12’は、ドリルビット10の外形線3に沿った切断溝15が形成される切断ゾーン13に沿って位置する。したがって、理論上の最外点12’は、ドリルビットの外形線3の最外点12と一致しない。ただし、この場合も、最外点12は切断点14と一致する。同様に、断面(e)は、圧縮ゾーン17または弛緩ゾーン18を含んでいない。外形線の部分は構造上弛緩ゾーン18に一致しているが、外形線の部分は、その機能構成の点で一致しない。言い換えれば、ドリルビット10の圧縮ゾーン17によって以前圧縮された骨組織の弛緩を可能にする弛緩ゾーン18が存在できないように、外形線3は骨組織を圧縮する機能を有する圧縮ゾーン17を欠いている。
【0123】
当業者は、上記説明から、ドリルビット10の切断挙動が、第1の半径方向距離r1と第2の半径方向距離r2の比の変化に伴って変化することを理解する。したがって、特に、骨組織の深さ方向の異なる領域を考慮に入れて、長手方向軸Lに沿ってドリルビット10の切断挙動を調整することが可能である。
【0124】
好ましくは、切断部分Cは長手方向軸Lに沿って第1の部分C1を含み、切断点14の第2の半径方向距離r2は、最外点12の第1の半径方向距離r1よりも小さい。この第1の部分C1で、切断部分Cは、切断点14で負の逃げ角αを含む場合がある。さらに、切断部分Cの第1の部分C1はまた、凝縮部分Dとして構成されてもよい。したがって、切断部分Cの第1の部分C1の断面の外形線は、好ましくは、少なくとも1つの圧縮ゾーン17及び少なくとも1つの弛緩ゾーン18を含む。
【0125】
切断部分Cは、第2の部分C2をさらに含み得る。切断部分Cの第2の部分C2では、第2の半径方向距離r2は、第1の半径方向距離r1に実質的に等しくてよい。切断部分Cの第2の部分C2は、正の逃げ角αを有する切断点14をさらに含み得る。切断部分Cの第2の部分C2は、ドリルビット10の凝縮部分Dを形成しない場合がある。したがって、切断部分Cの第2の部分C2は、好ましくは、圧縮ゾーン17または弛緩ゾーン18を含まない。好ましくは、切断部分Cの第1の部分C1は、切断部分の第2の部分C2の根尖側に位置決めされる。
【0126】
切断部分Cの第1の部分C1と第2の部分C2との間の第1の半径方向距離r1と第2の半径方向距離r2の比の差により、これらの部分の切断挙動は互いに異なる。
【0127】
特に、切断部分Cの第1の部分C1の外形線は、ドリルビットの回転時に、圧縮ゾーン17内で骨組織を圧縮し、弛緩ゾーン18で骨組織の弛緩を可能にし、次に切断ゾーン13の切断点14で骨組織を切断するように構成される。結果として、回転時に切断される骨組織の量は、骨組織の弛緩特性、つまり、骨組織が圧縮された後にどれほど多く及びどれほど速く弛緩するのかに依存する。
【0128】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者は、比較的に低い骨密度を有する海綿骨がより少なく切断されることを観察した。したがって、挿入される歯科インプラントを支持するための軟骨組織のより多くが残る。
【0129】
切断部分Cの第2の部分C2は、回転時に骨組織を圧縮するように構成されないが、代わりに、切断点14に一致する最外点12で骨組織を切断する。
【0130】
理論に拘束されることを望むものではないが、この特徴は、骨組織のさらなる凝縮の影響が少ない、比較的に高い骨密度を有する皮質骨では有利である。したがって、第2の部分は、好ましくは、骨吸収を回避し、したがって、歯科インプラント50のより速い内部成長のために歯科インプラント50のサイズに実質的に一致するサイズを有する骨組織の皮質領域に骨凹所を作成する。
【0131】
ドリルビット10の所定の回転方法で、第1の部分C1に沿った切断点14は、回転時、切断点14が最外点12の前にまたは最外点12と同時に骨組織位置を通過するように、ドリルビットの断面の外形線に沿って位置し得る。最外点12及び切断点14の相対位置が、それらが互いに一致するように外形線に沿って変化した後、理論上の最外点12’はその相対位置を変化させ続けて、切断点の前の骨組織位置を通過し得る。これにより、負の逃げ角から正の逃げ角へ逃げ角αの連続的な変化が生じる。
【0132】
上述のように、ドリルビット10の幾何学形状、及び特に第1と第2の半径方向距離r1とr2の大きさ、及びそれらの円周方向の位置によって、ドリルビット10の切断挙動を定義する。
【0133】
切断挙動の変更の場合、長手方向軸Lに沿ったドリルビットコア11の断面の最外点12は、長手方向軸Lの周りで第2のピッチで螺旋状の線に沿って位置し得る。代わりに、これらの断面の最外点12は、好ましくは長手方向軸Lに平行に配置される実質的に真っすぐな線に沿って位置し得る。
【0134】
上述のように、切断溝は、ドリルビット10の周りに螺旋状に延び得る。したがって、切断点14はまた、第1のピッチでドリルビット10の周りに螺旋状に延びる。第1のピッチは、最外点12の第2のピッチと同じピッチである場合もあれば、最外点12の第2のピッチとは異なる場合もある。特に、第1のピッチは第2のピッチよりも小さい場合がある。
【0135】
好ましくは、切断点14の第1のピッチ及び最外点12の第2のピッチは、互いに異なる。特に、第1のピッチは第2のピッチよりも小さい。代わりに、第1及び第2のピッチは、実質的に等しくてよい。
【0136】
第1のピッチ及び第2のピッチが互いに異なる一実施形態では、最外点12及び切断点14の相対的な円周方向の位置は、ドリルビット10の切断部分Cの長手方向軸Lに沿って変化する。したがって、長手方向軸Lに沿ったドリルビット10の切断挙動を骨の異なる領域に連続的に調整することが可能である。
【0137】
ドリルビット10は、ドリルビット10の長手方向軸Lに沿って延びる非切断部分Nをさらに含み得る。非切断部分Nで、ドリルビット10は、切断点14または切断ゾーン13を含まない。言い換えれば、ドリルビット10は、この非切断部分N内で骨組織を切断するように構成されていない。
【0138】
好ましくは、非切断部分Nは、切断部分Cの根尖側に位置する。
【0139】
非切断部分Nは、ドリルビット10の凝縮部分Dと少なくとも部分的に重複し得る。したがって、非切断部分Nは、少なくとも部分的にドリルビット10の凝縮部分Dとして構成されてもよい。したがって、非切断部分Nに沿ったドリルビットコア11の断面の外形線は、少なくとも1つの圧縮ゾーン17及び少なくとも1つの弛緩ゾーン18を含み得る。
【0140】
それにより、非切断部分に沿った骨組織に対して凝縮効果を発揮することが可能である。非円形外形線の形状に応じて、すでに上述されたように、外形線は、複数の圧縮ゾーン17及び弛緩ゾーン18を含むようにさらに構成され得る。
【0141】
非切断部分Nが切断部分Cの根尖側に位置する場合、骨組織を切断する前に骨組織に対して凝縮効果を発揮することが可能である。それにより、骨組織は、骨組織が最初に切断される前にすでに圧縮されている場合がある。これにより、一方で切断力がないためにドリルビット10の骨組織内への誘導が強化され、骨組織が事前に凝縮される。
【0142】
したがって、長手方向軸Lに沿った非切断部分Nの少なくとも一部分または全体的な非切断部分Nに沿ったドリルビットコア11の断面の外形線は、非円形であってよい。
【0143】
非切断部分Nはまた、実質的に円形の外形線を有する少なくとも一部分またはその全体に沿って断面を含み得る。非切断部分Nは、実質的に円形の誘導部分16をさらに含み得る。この場合、誘導部分16に沿ったドリルビットコア11の断面の外形線は、実質的に円形である。
【0144】
好ましくは、誘導部分16は、切断部分Cの根尖側に、より好ましくは長手方向軸Lに垂直なドリルビットコア11の断面内に非円形の外形線を含む非切断部分Nの一部分の根尖側に位置する。言い換えれば、誘導部分16は、ドリルビット10の最も根尖部分であってよい。
【0145】
誘導部分16はまた、ドリルビット10の根尖端部にある円錐形の誘導先端部(図示せず)として形成される場合もあれば、円錐形の誘導先端部を含む場合もある。代わりに、ドリルビット10は、誘導部分16を含まない場合もある。
【0146】
ドリルビット10が、骨組織を切断するように構成されていない根尖部分を有する場合、好ましくは、ドリルビット10を使用して骨凹所を準備する前に、パイロットドリルを使用してパイロット穴が開けられる。特にここで、誘導部分16は、ドリルビット10とパイロット穴の位置合わせを強化し、ドリルビット10の挿入を容易にする。
【0147】
すでに上述されたように、ドリルビット10は、ドリルビットコア11の一部分に沿って延びる凝縮部分Dを含み得る。凝縮部分Dは、非切断部分N及び/または切断部分Cと少なくとも部分的に重複し得る。好ましい実施形態では、凝縮部分Dは、切断部分Cの第1の部分C1と少なくとも部分的に重複する。なおさらに好ましくは、凝縮部分Dは、非円形外形線を含む非切断部分Nと少なくとも部分的に重複する。
【0148】
凝縮部分Dは、インプラント治療のために骨凹所を準備するために使用されるドリルビット10の回転時に骨組織の圧縮と弛緩のサイクルを引き起こすように構成される。
【0149】
凝縮部分Dは、ドリルビット10の根尖部分に含まれない場合があり、つまり、凝縮部分Dは、非切断部分Nの誘導部分16内に、及び/またはドリルビットコア11の冠状部分内に存在しない場合がある。好ましくは、凝縮部分Dは、切断部分Cの第2の部分C2に沿って存在しない。代わりに、凝縮部分Dは、ドリルビットコア11全体に沿って延び得る。
【0150】
上述のように、凝縮部分Dに沿ったドリルビットコア11の断面の外形線は、好ましくは、少なくとも1つの圧縮ゾーン17と、少なくとも1つの弛緩ゾーン18とを含む。凝縮部分Dでは、ドリルビットコア11の断面の外形線が、非円形ではない場合がある。さらに、切断点14は、凝縮部分Dの少なくとも一部に存在する場合もあれば、存在しない場合もある。凝縮部分Dの少なくとも一部が切断点14を含む場合、最外点12の第1の半径方向距離r1は、好ましくは切断点14の第2の半径方向距離r2よりも大きい。
【0151】
図2は、本開示によるドリルビット10によって準備された骨凹所と、歯科インプラント50の2つの異なる長さ、凹所に挿入される歯科インプラント50との関係性を示す。歯科インプラント50は、周囲の骨組織内に歯科インプラントを固定する外部ねじ山51を含む。
【0152】
図2に示されるように、ドリルビット10は、好ましくは、その冠状端部部分に(つまり、骨組織の冠状領域内に)歯科インプラント50と実質的に同じサイズを有する。言い換えれば、ドリルビット10の冠状端部2にある冠状端部部分は、歯科インプラント50の対応する部分の外径と実質的に同じサイズを有し得る。
【0153】
歯科インプラントに対するドリルビット10のこれらの寸法は、骨組織内に準備された凹所の開口部で十分な密封を可能にし、骨吸収を引き起こす皮質骨部分の歪みを最小限に抑える、または低減するように構成される。これは、治癒時間に良い影響を与え、この領域における歯科インプラント50への骨の内部成長を強化する基礎として役立つ。
【0154】
図2も示すように、ドリルビット10は、歯科インプラント50に対してサイズが縮小する場合がある。より具体的には、冠状-根尖方向で長手方向に沿ったドリルビットの断面の相対的なサイズはより小さくなる。すなわち、根尖側に、ドリルビット10は、歯科インプラント50の外径の30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、または70%未満になる、長手方向軸に垂直な最大延長部を含み得る。好ましくは、ドリルビット10と歯科インプラント50の間のサイズのこの関係性は、根尖端部1から冠状端部2に向かって開始する、ドリルビット10及び/または歯科インプラント50の長さの40%、50%、または60%に沿って延びる。
【0155】
ドリルビット10のサイズに比べて海綿骨部分内の歯科インプラント50の外径が大きくなるほど、骨凹所内の歯科インプラント50の初期安定性は強化されることになる。この安定性は、骨の内部成長の基礎を提供することにより歯科インプラント50の固定を促進する。
【0156】
図3は、パイロットドリル30と、ドリルビット10と、歯科インプラント50との関係性を示す斜視図である。より具体的には、
図3は、パイロットドリル30、ドリルビット10、及び骨組織内に挿入されているときの歯科インプラント50の重複、したがって歯科インプラント50に骨凹所を準備するための例示的な手順を示す。
【0157】
パイロットドリル30は、ドリルビット10の対応するサイズよりも概して小さい直径を有する骨内にパイロット穴を開けるための第1のステップで使用され得る。しかしながら、ドリルビット10の誘導部分16は、パイロットドリルの直径以下である直径を有してよい。パイロットドリル30によって作成されたパイロット穴は、後続のステップのための誘導穴として役立つ。
【0158】
図3に示される例示的なドリルビット10は、その根尖端部1に非切断部分Nを含むので、ドリルビット10またはドリルビット10の非切断部分N内の誘導ねじ山19と組み合わせた誘導部分16は、以前に開けられたパイロット穴内のドリルビットを誘導する。
【0159】
次に、ドリルビット10は、歯科インプラント50の挿入用の骨凹所を準備するためにパイロットドリル30によって作成されたパイロット穴を拡大するために使用され得る。したがって、ドリルビット10は、パイロット穴内に挿入され、ドリルビット10の誘導ねじ山19は、好ましくは、ドリルビット10の回転に対応する所定の速度でドリルビット10をパイロット穴内に引き込む。存在する場合、誘導ねじ山は、ドリルビット10をパイロット穴内に移動させるためにユーザーがドリルビット10に力を加える必要性を排除する利点を有する。
【0160】
骨凹所の準備の後、歯科インプラント50は挿入される。
【0161】
本開示によるドリルビット10によれば、ドリルプロトコルを最小3つのステップに低減することが可能である。したがって、複数の異なるツールの連続使用及び複雑なドリルプロトコルを回避し得、連続して使用されるツールのずれをより容易に防ぎ得る。
【符号の説明】
【0162】
1 根尖端部
2 冠状端部
3 ドリルビットの外形線
4 ドリルビットコアの基本的な外形線
5 結合部分
10 ドリルビット
11 ドリルビットコア
12 最外点
12’ 理論上の最外点
13 切断ゾーン
14 切断点
15 切断溝
16 誘導部分
17 圧縮ゾーン
18 弛緩ゾーン
19 誘導ねじ山
21 最内点
22 非切断ゾーン
30 パイロットドリル
50 歯科インプラント
51 外部ねじ山
C 切断部分
C1 切断部分の第1の部分
C2 切断部分の第2の部分
D 凝縮部分
E 伸び部分
L 長手方向軸
N 非切断部分
r1 第1の半径方向距離
r2 第2の半径方向距離
r3 最小半径方向距離
α 逃げ角
【国際調査報告】