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特表2024-541752改善された日射反射率を有するビニル物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-12
(54)【発明の名称】改善された日射反射率を有するビニル物品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20241105BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241105BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241105BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G02B5/26
B32B7/023
B32B27/30 101
B32B27/30 A
B32B27/36 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527107
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 US2022050173
(87)【国際公開番号】W WO2023091531
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/280,324
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ユエンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク、イアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ユー、シンディ
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
【Fターム(参考)】
2H148FA04
2H148FA09
2H148FA12
2H148FA24
4F100AK02A
4F100AK12B
4F100AK15A
4F100AK16A
4F100AK19C
4F100AK19E
4F100AK25C
4F100AK25E
4F100AK42B
4F100AK42D
4F100AK45B
4F100AK45D
4F100AK46B
4F100AK46D
4F100AK55B
4F100AK55D
4F100BA05
4F100BA08
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100DJ01A
4F100GB07
4F100JD10B
4F100JD10C
4F100JD10D
4F100JD10E
4F100JN06B
4F100JN06C
4F100JN06D
4F100JN06E
(57)【要約】
ビニル物品は、ビニル基材と、ビニル基材上に配置された赤外線反射フィルムと、を含む。赤外線反射フィルムは、800~1000nmの波長に対して30%を超える反射率を有し、400~700nmの波長に対して60%を超える透過率を有する。ビニル物品を製造するためのプロセスも開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル物品であって、
ビニル基材と、
前記ビニル基材上に配置された赤外線反射フィルムであって、800~1000nmの波長に対して30%を超える反射率を有し、400~700nmの波長に対して60%を超える透過率を有する、赤外線反射フィルムと、を含む、ビニル物品。
【請求項2】
前記ビニル基材が、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を含む、請求項1に記載のビニル物品。
【請求項3】
前記赤外線反射フィルムが、屈折率n1を有する第1のポリマー材料と、屈折率n2を有する第2のポリマー材料と、を含み、n1/n2が1.04より大きい、請求項1~2のいずれか一項に記載のビニル物品。
【請求項4】
前記赤外線反射フィルムが、前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料の複数の交互層を含む、請求項3に記載のビニル物品。
【請求項5】
前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料の前記複数の交互層のそれぞれが、100~250nmの範囲の平均厚さを有する、請求項4に記載のビニル物品。
【請求項6】
前記第1のポリマー材料が、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリアミド、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群から選択され、前記第2のポリマー材料が、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン、及びポリエチレンオキシドからなる群から選択される、請求項3~5のいずれか一項に記載のビニル物品。
【請求項7】
前記第1のポリマー材料がポリカーボネートを含み、前記第2のポリマー材料がポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項3~6のいずれか一項に記載のビニル物品。
【請求項8】
前記赤外線反射フィルムが、前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料の50~400の交互層を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載のビニル物品。
【請求項9】
前記赤外線反射フィルムが、800~1000nmの波長に対して40%を超える反射率、及び400~700nmの波長に対して70%を超える透過率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のビニル物品。
【請求項10】
前記ビニル物品が、ビニル製羽目板、建築トリム、又は発泡ビニル基材の厚板を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のビニル物品。
【請求項11】
ビニル物品を製造するためのプロセスであって、
ビニル基材を提供することと、
前記ビニル基材上に赤外線反射フィルムを積層することと、を含み、
前記赤外線反射フィルムが、800~1000nmの波長に対して30%を超える反射率を有し、400~700nmの波長に対して60%を超える透過率を有する、プロセス。
【請求項12】
前記赤外線反射フィルムが、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を共押出しして50~400の交互層を形成し、前記形成された層を冷却ロール上にキャストして前記赤外線反射フィルムを得ることによって形成される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第1のポリマー材料が屈折率n1を有し、前記第2のポリマー材料が屈折率n2を有し、n1/n2が1.04より大きい、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第1のポリマー材料が、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリアミド、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群から選択され、前記第2のポリマー材料が、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン、及びポリエチレンオキシドからなる群から選択される、請求項12又は13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第1のポリマー材料及び前記第2のポリマー材料の前記層のそれぞれが、100~250nmの範囲の平均厚さを有する、請求項12~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記赤外線反射フィルムが、800~1000nmの波長に対して40%を超える反射率、及び400~700nmの波長に対して70%を超える透過率を有する、請求項11~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ビニル物品が、ポリ塩化ビニル樹脂を含む、請求項11~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ビニル物品が、ビニル製羽目板、建築トリム、又は発泡ビニル基材の厚板を含む、請求項11~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された日射反射率を有するビニル物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル物品、特に、ビニル製羽目板及びトリムなどの太陽光に曝露されるビニル基材は、太陽放射に起因する欠陥を被ることが多い。例えば、ビニル製羽目板における一般的な欠陥は、「オイルキャニング(oil canning)」と呼ばれる。オイルキャニングは、使用中のビニル厚板における表面の膨らみ、波及び波紋の外観として現れる。オイルキャニングは、太陽放射による温度上昇によって引き起こされる。
【0003】
オイルキャニングを最小限に抑える1つの試みは、白色顔料をビニル厚板に添加することであり、その理由は、白色顔料が太陽放射を散乱させ、発生する熱を低減することができるからである。このような技術は、例えば、米国特許出願公開第2012/0052317号に開示されている。しかしながら、白色顔料の添加はいくつかの欠点を有し得る。1つの問題は、白色顔料が高温領域において太陽光を十分に散乱させることができないことである。可視光を散乱させるように設計された多くの白色顔料は、近赤外線(NIR)を効果的に散乱させない。さらに、白色顔料は、より暗い色調のビニル製羽目板には使用できない。
【0004】
オイルキャニングを最小限に抑える他の試みは、ビニル製羽目板の熱変形温度を改善し、及び/又は熱膨張係数を低下させる試みを含む。
【0005】
したがって、既存の改善策の欠点のない、オイルキャニングに対する改善された耐性を有するビニル物品を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様は、ビニル基材と、ビニル基材上に配置された赤外線反射フィルムと、を含む、ビニル物品に関する。赤外線反射フィルムは、800~1000nmの波長に対して30%を超える反射率を有し、400~700nmの波長に対して60%を超える透過率を有する。
【0007】
本発明のさらなる態様は、ビニル基材を提供することと、ビニル基材上に赤外線反射フィルムを積層することと、を含む、ビニル物品を製造するためのプロセスに関する。赤外線反射フィルムは、800~1000nmの波長に対して30%を超える反射率を有し、400~700nmの波長に対して60%を超える透過率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による赤外線反射フィルムのAFM画像である。
図2】本発明の一実施形態による赤外線反射フィルムの正反射スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、近赤外(IR)範囲で反射性(すなわち、IR反射性)である視覚的に透明なフィルムをビニル物品に加えることによって、太陽放射に起因するビニル物品の欠陥を著しく低減させることができることを発見した。太陽エネルギーの50%が750nm~1200nmの波長にあるので、IR反射フィルムは太陽光を反射し、ビニル物品の表面温度を低下させることができる。この改良は、下にあるビニル基材の外観を著しく変えることなく、かつ下にあるビニル基材の組成の変更を必要とすることなく、全ての色のビニル物品物品(article articles)に対して達成することができる。
【0010】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。一般的な用語「ポリマー」には、用語「ホモポリマー」、「コポリマー」、及び「樹脂」が含まれる。本明細書で使用される場合、「から誘導された重合単位」という用語は、生成物ポリマーが、重合反応の出発物質である構成モノマー「から誘導された重合単位」を含有する、重合技術に従って合成されるポリマー分子を指す。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート若しくはメタクリレート又はそれらの組み合わせのいずれかを指し、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル若しくはメタクリル又はそれらの組み合わせのいずれかを指す。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、少なくとも1つの付着した化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、及びそれらの組み合わせを有することを指す。
【0011】
本明細書で使用される場合、「重量平均分子量」又は「Mw」という用語は、ASTM D5296-11(2011)に従い、かつ移動相及び希釈液としてテトラヒドロフラン(「THF」)を使用して、較正標準ポリスチレンに対するアクリル酸ポリマーについて、ゲル浸透クロマトグラフィ(「GPC」)で測定したポリマーの重量平均分子量を指す。本明細書で使用される場合、「ポリマーの重量」という用語は、ポリマーの乾燥重量を意味する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「ポリマー組成物が特定の物質をほとんど又は全く含まない」と述べられるとき、ポリマー組成物は、その物質を全く含まないこと、又はその物質のいずれかが本組成物中に存在する場合、その物質の量は、ポリマー組成物の重量を基準にして、1重量%以下である。本明細書に特定の物質を「ほとんど又は全く」有さないと記載されている実施形態の中で、その特定の物質のいずれも存在しない実施形態が想定される。
【0013】
ビニル基材と、ビニル基材上に配置された赤外線反射フィルムと、を含む。ビニル物品が本明細書に開示される。
【0014】
好ましくは、ビニル基材は、ポリ塩化ビニル(PVC)基材を含む。しかしながら、ビニル基材の組成は限定されず、当該技術分野において既知の任意のビニルポリマーを含んでもよい。好ましくは、ビニル基材は、ビニル製羽目板、建築トリム、又は発泡ビニル基材(例えば、敷板材料、鼻隠しパーゴラ(fascia pergola)、及び他の外装建築製品に使用されるPVC発泡板)の厚板である。
【0015】
赤外線反射フィルムは、近赤外線領域の波長を含む800~1000nmの波長に対して30%を超える反射率を有する。好ましくは、赤外線反射フィルムは、800~1000nmの波長に対して40%を超える反射率を有する。より好ましくは、赤外線反射フィルムは、800~1000nmの波長に対して50%を超える反射率を有する。さらにより好ましくは、赤外線反射フィルムは、800~1000nmの波長に対して60%を超える反射率を有する。反射率/透過率は、PerkinElmer Lambda 950 UV-Vis-NIR分光計及び60mm Integrated Sphere Accessoryを使用して、2nmの解像度(スリット幅)及び2nmのデータ間隔で測定する。検出器応答時間は0.2秒であり、8°の反射/透過データが収集された。
【0016】
近赤外線領域における反射率に加えて、赤外線反射フィルムは、400~700nmの波長、すなわち可視領域に対して、60%を超える透過率を有する。好ましくは、赤外線反射フィルムは、400~700nmの波長に対して70%を超える透過率を有する。より好ましくは、赤外線反射フィルムは、400~700nmの波長に対して80%を超える透過率を有する。
【0017】
好ましくは、赤外線反射フィルムの厚さは、5マイクロメートル~100マイクロメートルの範囲である。例えば、赤外線反射フィルムの厚さは、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、又は少なくとも40マイクロメートルであってもよく、赤外線反射フィルムの厚さは、100マイクロメートル未満、90マイクロメートル未満、80マイクロメートル未満、70マイクロメートル未満、又は60マイクロメートル未満であってもよい。
【0018】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、屈折率n1及び第2の屈折率n2を有する第1のポリマー材料を含む。屈折率コントラストn1/n2は、好ましくは1.04より大きい。より好ましくは、屈折率コントラストは1.05より大きい。さらにより好ましくは、屈折率コントラストは1.06より大きい。
【0019】
好ましくは、第1のポリマー材料は、1.5より大きい屈折率n1を有する。第1のポリマー材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリアミド、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、第1のポリマー材料は、1.58の屈折率を有するポリカーボネートを含む。
【0020】
好ましくは、第2のポリマー材料は、1.5未満の屈折率n2を有する。第2のポリマー材料の例としては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン、及びポリエチレンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、第2のポリマー材料は、約1.49の屈折率を有するポリ(メチルメタクリレート)を含む。
【0021】
好ましくは、赤外線反射フィルムが約1.06の屈折率コントラスト(n1/n2)を有するように、赤外線反射フィルムの第1のポリマー材料はポリカーボネートを含み、第2のポリマー材料はポリ(メチルメタクリレート)を含む。
【0022】
好ましくは、赤外線反射フィルムは、第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料の複数の交互層を含む。交互層のそれぞれは、100~250nm、好ましくは110~225nm、より好ましくは120~200nmの範囲の平均厚さを有することができる。本明細書で定義されるように、層の「平均厚さ」は、赤外線反射フィルム中の全ての層の算術平均が記載された範囲の間にあることを意味する。好ましくは、赤外線反射フィルムにおける各層は、全ての層の平均厚さの50%未満の厚さ変動を有する。
【0023】
赤外線反射フィルムは、好ましくは、第1のポリマー材料と第2のポリマー材料の50~400の交互層、すなわち、25~200のそれぞれの材料の層を含む。
【0024】
本発明の別の態様は、ビニル物品を製造するためのプロセスに関する。このプロセスは、ビニル基材を提供することと、上述したような赤外線反射フィルムをビニル基材上に積層することと、を含む。本明細書で使用される場合、「ビニル基材を提供する」という用語は、プロセスで使用するためにビニル基材が製造又は取得されるが、ビニル基材が本方法によって製造されることを必要としないことを意味する。例えば、ビニル基材を製造し、赤外線反射フィルムがビニル基材上に積層される場所に輸送することができる。「積層」という用語は、赤外線反射フィルムが、例えば、接着剤を使用して、ビニル基材に結合されることを意味する。
【0025】
本発明のプロセスにおいて、赤外線反射フィルムは、例えば、押出によって製造され得る。第1のポリマー材料及び第2のポリマー材料を共押出しして、交互層からなる赤外線反射フィルムを形成することができる。押出フィルムを冷却ロール上で冷却して、赤外線反射フィルムを形成することができる。
【0026】
赤外線反射フィルムをビニル基材に積層するために、赤外線反射フィルムをビニル基材の表面に接着することができる。例えば、水性のアクリル接着剤である接着剤などの適切な接着剤を使用して、赤外線反射フィルムをビニル基材に接着することができる。
【実施例
【0027】
赤外線反射フィルムの作製及び測定
Calibre200-14NA天然樹脂(MFI=14dg/分、300℃/1.2kg)を、Trinseo,LLCから入手した。Plexiglas V045-100(MFI=2.3dg/分、230℃/3.8kg)をArkema Incから受け取った。ポリカーボネート(PC)及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)樹脂を120℃及び80℃の乾燥機で一晩乾燥させて、処理前に水分含有量を減少させた。
【0028】
ミクロ層押出試験のために共押出ラインを利用するが、この共押出ラインは、直径31.75mm(1.25インチ)、24:1 L/Dの2つの単軸スクリュー押出機からなっていた。押出機は、フィードブロック及びダイへのポリマー溶融物の均一な流れを確実にするために、個々のギアポンプに供給した。精密フィードリング(feedring)を使用して、100又は200層を有する層状共押出構造体を製造した。それらをスキン層(50体積%)と合体させ、幅8インチのフィルムダイから20lb/時で厚さ12~50マイクロメートルのフィルムに押出した。押出機及びダイの温度を243℃に設定した。押出フィルムを、104℃に設定した冷却ロール上で冷却した。
【0029】
試料から試験片を打ち抜き、それらをバイスホルダに取り付けることによって、断面多層フィルム試料を調製した。試料を、約-80℃で凍結粉砕機で平らに粉砕した。次に、試料を-80℃で低温ミクロトームにより研磨した。ブロック面を検査した。Nanoscope Vコントローラ(ソフトウェアv8.15)を使用して、Bruker Iconでピーク力タッピングAFM画像を得た。使用したカンチレバーは、AL-2016-005591に概説される設定を有するNanoWorld Arrow NCRであった。全ての画像は1024の解像線数で撮影され、SPIPバージョン6.4.2.ソフトウェアで生成された。ゼロ次LMSを用いた2次平均平面当て嵌めを使用し、平均をゼロに設定した。層測定をImageJで行った。PC層の平均厚さは163nmであり、PMMA層の平均厚さは152nmであった。例示的なフィルムのAFM画像を図1に示す。
【0030】
PerkinElmer Lambda 950 UV-Vis-NIR分光計及び60mm Integrating Sphere Accessoryを、2nmの解像度(スリット幅)及び2nmのデータ間隔で使用して、IR反射を測定した。検出器応答時間は0.2秒であった。8°反射データを収集した。図2は、本発明の一実施形態による赤外線反射フィルムの正反射スペクトルを示す。
【0031】
Solar Spectrum Reflectometer SSR-ER(Devices&Services Company)を使用して、フィルムの総日射反射率を測定した。比較例は、厚さ127マイクロメートル(5ミル)の透明耐衝撃性ポリカーボネートフィルム(McMaster-Carr Co.の85585K102)である。総日射反射率の結果を表1にまとめる。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に見られるように、本発明の赤外線反射フィルムは、有意な日射反射率を有し、可視範囲において透明である。
【0034】
熱的加熱低減測定
4つの異なるビニル製羽目板製品をLowe’sから入手した。それらは、Georgia-Pacific社製のコンパスシリーズに属し、Heartstone Brown(実施例1)、Redwood(実施例2)、Pewter(実施例3)、及びCoastal Blue(実施例4)を含む様々な暗色を有する。各色の2つの試料を1インチ厚のポリスチレン発泡体基材に接着して、試料の下の全ての熱伝達を基本的に遮断した。
【0035】
各製品の2つの試料を横並びで基材に接着した。一方の試料を比較例とし、本発明による赤外線反射フィルムを、水性のアクリル接着剤である接着剤を用いて他方の試料の前面に接着した。接着剤は、適用された厚さで透明に見えた。
【0036】
時々雲がある晴れた日に、試料パネルを水平及び垂直の向きで太陽光に曝露した。試験は午前11時から午後2時の間に行われ、周囲温度は約30℃であった。各曝露条件を約45分間続けて、定常状態に到達させた。水平の向きは、太陽加熱に関して最悪の場合のシナリオである直射日光曝露を模倣した。垂直の向きは、すれすれ入射、又は平均曝露条件を模倣した。試料表面温度は、FLIR TG167熱画像温度計によって測定した。結果を以下の表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2に見られるように、本発明の赤外線反射フィルムを有する試料は、同じ日光曝露条件で対照試料よりも低い温度を有する。日光曝露後の全ての試料の温度は63℃未満である。実施例と比較例との間の温度差は、ビニル製品の色(含まれるNIRスペクトル)に依存する。製品「Redwood」は、直射日光曝露下で8℃の最大温度差を示した。本発明の赤外線反射フィルムによって提供される低下した温度は、PVCビニル製羽目板のオイルキャニングを防止すると予想される。
図1
図2
【国際調査報告】