(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-12
(54)【発明の名称】修飾GCC受容体アゴニストの産生のための合成プロセス
(51)【国際特許分類】
C07K 1/04 20060101AFI20241105BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20241105BHJP
C07K 1/10 20060101ALI20241105BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20241105BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C07K1/04 ZNA
C07K1/06
C07K1/10
A61K38/10
A61P13/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531058
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 US2022080303
(87)【国際公開番号】W WO2023097210
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521540818
【氏名又は名称】アイアンウッド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レーザイサー, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ステーケーア, グンナー
(72)【発明者】
【氏名】アンビー, ウルフ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA06
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA18
4C084BA25
4C084BA26
4C084BA28
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA811
4H045AA20
4H045BA30
4H045BA32
4H045BA34
4H045EA20
4H045FA20
4H045FA33
4H045FA58
4H045FA59
4H045FA61
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、配列番号1の合成ペプチドまたはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法に関する。本明細書に記載の方法は、(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、固相支持体に結合したそのC末端およびそのN末端に保護されたアミン基を有する直鎖ペプチドを化学的に合成することによって始まり、直鎖ペプチドは、1もしくはそれを超えるアミノ酸および/または少なくとも1つのポリアミノ酸シントンに保護基を有する。いくつかの実施形態では、シントンは、アセチル化された少なくとも1つのアミン基および少なくとも1つのカルボン酸保護基を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ペプチド、またはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法であって、前記方法が、
(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、C末端が固相支持体に結合しており、N末端に保護されたアミン基を有する直鎖ペプチドを化学的に合成することであって、前記直鎖ペプチドが、1またはそれを超えるアミノ酸および/または前記少なくとも1つのポリアミノ酸シントンに保護基を有し、
前記シントンが、少なくとも1つのアセチル化されたアミン基および少なくとも1つのカルボン酸保護基を有する、化学的に合成することと、
(ii)前記シントンの前記カルボン酸保護基および前記直鎖ペプチドの前記N末端の前記アミン基からの前記保護基を除去して、保護されていないアミン基および保護されていないカルボン酸基を有する部分的に保護されていない固相支持体結合ペプチドを形成することと、
(iii)前記保護されていないアミン基と前記保護されていないカルボン酸基とをカップリングして、環化固相支持体結合ペプチドを形成することと、
(iv)前記環化固相支持体結合ペプチドを前記固相支持体から切断して、環化保護されたペプチドを生成することと、
(v)前記環化保護されたペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得ることと、
(vi)前記全体的に脱保護されたペプチドを折り畳んで、1またはそれを超える追加の架橋を形成して、前記合成ペプチドを得ることと、
(vii)前記合成ペプチドを精製することと、を含み、
前記合成ペプチドが、アミノ酸配列:
Ac-Cys
1 Cth
2 Glu
3 Leu
4 Cys
5 Cys
6 Asn
7 Val
8 Ala
9 Cys
10 Tyr
11 Gly
12 Cys
13(配列番号1)を含み、
前記合成ペプチドが、以下:
a)Cys
1およびCys
6、
b)Cth
2およびCys
10、ならびに
c)Cys
5およびCys
13
のアミノ酸残基間に共有結合を含む、方法。
【請求項2】
前記合成ペプチドを、溶液から凍結乾燥することを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固相支持体が、Wang樹脂、トリチル樹脂、およびRink樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固相支持体が、約0.10mmol/g、約0.20mmol/g、約0.30mmol/g、約0.40mmol/g、約0.50mmol/g、約0.60mmol/g、約0.70mmol/g、約0.80mmol/g、約0.90mmol/g、または約1.00mmol/gの充填量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミノ酸シントンが、式:
【化27】
(式中、
P
2は、アミン保護基であり、
P
3は、カルボン酸保護基であり、
P
4は、チオール保護基である)の化合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
前記保護基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、トリチル、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルジメチルシリル、アリルオキシカルボニル(alloc)、tert-ブチルオキシカルボニル、アセトアミドメチル(Acm)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、および2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
P
2が9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
P
3が、アリル保護基である、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
P
4が、トリチル保護基である、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアミノ酸シントンのサブユニットが、D配置を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリアミノ酸シントンのサブユニットが、L配置を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリアミノ酸シントンのサブユニットが、D配置およびL配置の両方を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のアミノ酸および前記シントンが、カルボジイミド媒介反応によって、または非カルボジイミドカップリング剤:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1H-ベンゾトリアゾリウム1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-ヘキサフルオロホスフェート(1-)、3-オキシド(HCTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)、またはプロパンホスホン酸無水物(T3P)によって媒介される反応によって結合されて、工程(i)の前記直鎖ペプチドを形成する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のペプチドおよび/または前記シントン由来の少なくとも1つのアミノ酸が、カルボジイミド媒介反応によって結合されて、工程(i)の前記直鎖ペプチドを形成する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記カルボジイミドが、ジイソプロピルカルボキシイミド(diisopropylcarboxiimide)(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)からなる群から選択される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項16】
前記カルボジイミドが、DICである、15に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボジイミド媒介反応が、酸化防止剤を更に含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化防止剤が、1,3-ジイソプロピル-2チオウレア(DITU)またはジチオスレイトールである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記環化カップリング反応が、非カルボジイミドカップリング剤によって媒介される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記非カルボジイミドカップリング剤が、HATUである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(iii)の前記環化ペプチドが、チオエーテル結合を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記全体的な脱保護工程(v)が、ヨウ化アンモニウム(NH
4I)を有するカクテル溶液の添加を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記折り畳み工程(vi)が、ヨウ素媒介酸化またはアルカリ媒介酸化によって達成される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記アルカリ媒介酸化が、ジメチルスルホキシド(DMSO)媒介酸化またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)媒介酸化である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
Cys
1とCys
6およびCys
5とCys
13との間の前記共有結合が、ジスルフィド結合である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
式I:
【化28】
の合成ペプチドを調製する方法であって、
(i)保護されたアミノ酸側鎖を有するC末端樹脂結合Tyr-Gly-Cysペプチドを式II:
【化29】
(式中、
P
2は、アミン保護基であり、
P
3は、カルボン酸保護基であり、
P
4は、チオール保護基である)
のポリアミノ酸シントンにカップリングして、式III:
【化30】
の樹脂結合ペプチドを形成することと、
(ii)式IIIのP
2保護基を除去して、保護されていないアミン基を有する式IV:
【化31】
の樹脂結合ペプチドを得ることと、
(iii)式IVの遊離アミン基を介してP
2-アラニンを式IVの前記樹脂結合ペプチドにカップリングして、式V:
【化32】
の樹脂結合ペプチドを形成することと、
(iv)式VのP
2保護基を除去して遊離アミン基を得て、続いて前記遊離アミン基をP
2-アミノ酸にカップリングすることであって、
前記P
2アミノ酸の側鎖が、保護されていてもよい、カップリングすることと、
(v)工程(iv)を更に5回繰り返して、式VI:
【化33】
の樹脂結合ペプチドを形成することであって、
少なくとも1つのアミノ酸側鎖が、保護されている、形成することと、
(vi)前記P
2保護基および前記P
3保護基を除去して、遊離アミン基および遊離カルボン酸基を得ることと、
(vii)前記遊離アミン基と前記遊離カルボン酸基とをカップリングして、式VII:
【化34】
の環化ペプチドを得ることと、
(viii)式VIIの前記ペプチドを前記樹脂から切断して、環化ペプチドを得ることと、
(ix)前記環化ペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得ることと、
(x)2つのジスルフィド結合を形成することによって、前記全体的に脱保護されたペプチドを折り畳み、式Iの前記合成ペプチドを得ることと、を含む、方法。
【請求項21】
式VIの前記Glu、前記Cys、前記Cys、前記Asn、前記Glyおよび前記Cys残基が、側鎖保護基を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
P
2が、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、およびアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から選択される保護基である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
P
2が、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
P
3が、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル、トリチル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、およびベンジル(Bn)からなる群から選択される保護基である、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
P
3が、アリル保護基である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
P
4が、アセトアミドメチル(Acm)、tert-ブチル(t-But)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)、およびトリチル(Trt)からなる群から選択される保護基である、請求項20~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
P
4が、トリチル保護基である、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月24日に出願された米国仮出願第63/282,851号の優先権および利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、配列番号1の合成ペプチドまたはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法に関する。
【0003】
配列表
本出願は、2022年11月18日の3:45 PMに作成され、本明細書と共に電子的に提出された「223355-519433.xml」(8.11キロバイト)と題された配列表XMLをその全体が参照により組み込む。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)は、通常、尿意切迫、頻度の増加および/または夜間頻尿が付随して起こる、膀胱痛を伴う慢性状態である。IC/BPSはしばしば尿路感染症と誤診され、抗生物質は一般に無効である。女性の3~7%および男性の3~4%がIC/BPSの定義を満たすと推定される。IC/BPSの原因にはいくつかの寄与因子が存在する場合があり、IC/BPSが原発性障害であるか、または別の障害の二次的結果であるかは不明である[Hannoら、2015、193;1545-1553]。IC/BPSの診断試験はなく、診断は一般に、膀胱に関連する疼痛を伴う緊急性および頻度の排尿症状に基づく。診断は、一般に、これらの症状を引き起こし得る他の疾患が除外されるまで保留される。
【0005】
IC/BPSに利用可能な承認された治療法はほとんどない。患者は、非薬理学的処置(全身のリラクセーション、ストレス管理、行動修正、および理学療法の手法)による処置を開始することが多い。IC/BPSに利用可能なわずかに有効な治療のために、多くの患者は、症状を軽減するために膀胱内注入(すなわち、カテーテルを介して膀胱に直接送達される薬剤の混合物)を含むオフラベルの治療を利用する。IC/BPSのためのより効果的で忍容性の高い処置が必要とされている。
【0006】
13アミノ酸グアニル酸シクラーゼC(GC-C)アゴニスト合成ペプチドは、IC/BPSに関連する膀胱痛、および潜在的に腹部領域の他の内臓痛状態の処置のために開発されている。このペプチドの開発を更に進めるために、効率的な合成および精製プロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、合成ペプチド、またはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法に関する。(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、C末端が固相支持体に結合しており、N末端に保護されたアミン基を有する直鎖ペプチドを化学的に合成する工程であって、直鎖ペプチドが、1またはそれを超えるアミノ酸および/または少なくとも1つのポリアミノ酸シントンに保護基を有し、シントンが、少なくとも1つのアセチル化されたアミン基および少なくとも1つのカルボン酸保護基を有する、化学的に合成する工程と、(ii)シントンのカルボン酸保護基および直鎖ペプチドのN末端のアミン基からの保護基を除去して、保護されていないアミン基および保護されていないカルボン酸基を有する部分的に保護されていない固相支持体結合ペプチドを形成する工程と、(iii)保護されていないアミン基と保護されていないカルボン酸基とをカップリングして、環化固相支持体結合ペプチドを形成する工程と、(iv)環化固相支持体結合ペプチドを固相支持体から切断して、環化保護されたペプチドを生成する工程と、(v)環化保護されたペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得る工程と、(vi)全体的に脱保護されたペプチドを折り畳んで、1またはそれを超える追加の架橋を形成して、合成ペプチドを得る工程と、(vii)合成ペプチドを精製する工程と、を有する方法。合成ペプチドは、アミノ酸配列:Ac-Cys1 Cth2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)を含む。合成ペプチドは、以下:Cys1およびCys6、Cth2およびCys10、ならびにCys5およびCys13のアミノ酸残基間に共有結合を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本明細書に記載される方法の工程(i)の直鎖合成ペプチドを製造するための例示的なフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
合成ペプチド、またはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法が本明細書中に記載される。本明細書中に記載される方法は、
(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、C末端が固相支持体に結合しており、N末端に保護されたアミン基を有する直鎖ペプチドを化学的に合成することであって、前記直鎖ペプチドが、1またはそれを超えるアミノ酸および/または前記少なくとも1つのポリアミノ酸シントンに保護基を有し、
前記シントンが、少なくとも1つのアセチル化されたアミン基および少なくとも1つのカルボン酸保護基を有する、化学的に合成することと、
(ii)前記シントンの前記カルボン酸保護基および前記直鎖ペプチドの前記N末端の前記アミン基からの前記保護基を除去して、保護されていないアミン基および保護されていないカルボン酸基を有する部分的に保護されていない固相支持体結合ペプチドを形成することと、
(iii)前記保護されていないアミン基と前記保護されていないカルボン酸基とをカップリングして、環化固相支持体結合ペプチドを形成することと、
(iv)前記環化固相支持体結合ペプチドを前記固相支持体から切断して、環化保護されたペプチドを生成することと、
(v)前記環化保護されたペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得ることと、
(vi)前記全体的に脱保護されたペプチドを折り畳んで、1またはそれを超える追加の架橋を形成して、前記合成ペプチドを得ることと、
(vii)前記合成ペプチドを精製することと、を含み、
前記合成ペプチドが、アミノ酸配列:
Ac-Cys1 Cth2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)を含み、
前記合成ペプチドが、以下:
a)Cys1およびCys6、
b)Cth2およびCys10、ならびに
c)Cys5およびCys13
のアミノ酸残基間に共有結合を含む。
【0010】
定義
本明細書で使用される場合、「Cth」は、ペプチド結合を形成することができるスキーム1において「1」および「2」と呼ばれる2つのα-アミノカルボキシル基を有するシスタチオニンを表す。
【化1】
【0011】
しかし、ペプチド配列を記述する際の3文字アミノ酸コードの使用を容易にするために、ペプチド配列中の不連続な位置でα-アミノカルボキシル基のそれぞれ(「1」および「2」と呼ばれる)とペプチド結合を形成して環状チオエーテル架橋を作り出することによって環状ペプチド配列を作り出す場合、1位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合は「Cth」と呼ばれ、2位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合は「Cys」と呼ばれる。更なる詳細については、「合成ペプチド」と題されたセクションを参照されたい。
【0012】
本明細書で使用される場合、「Hcy」または「Hcys」は、スキーム1に示されるホモシステインを表す。スキーム1から分かるように、シスタチオニンは、ホモシステインとシステインとの組み合わせと見なすことができ、これらの側鎖は硫黄原子を共有する。したがって、ペプチド配列中の不連続な位置でシスタチオニンのα-アミノカルボキシル基のそれぞれとペプチド結合を形成することによって作り出される環状ペプチド配列を指定する代替方法は、1位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合を「Hcy」と表記し、2位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合を「Cys」と表記することである。
【0013】
本明細書で使用される場合、他の指示がない限り、「薬学的に許容され得る」は、動物またはヒトにおけるインビボ使用に生物学的または薬理学的に適合性であることを意味し、好ましくは、連邦または州政府の規制当局によって承認されているか、動物、より具体的にはヒトにおける使用のために米国薬局方または他の一般的に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味し、これは値がどのように測定または決定されるか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣例に従って、1標準偏差以内または1標準偏差を超えることを意味することができる。あるいは、組成物に関して「約」は、最大20%、好ましくは最大10%の範囲のプラスまたはマイナスを意味することができる。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特定の値は、本出願および特許請求の範囲に記載されており、特に明記しない限り、「約」という用語は、特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味する。
【0015】
合成ペプチド
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって産生される合成ペプチドは、Ac-Cys1 Cth2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)として直線的に表すことができ、「Ac」はN末端アミン基がアセチル化されていることを示す。
【0016】
配列番号1の合成ペプチドは、2つのジスルフィド結合を形成する4つのシステイン残基と、定義された連結性(Cys1-Cys6,Cys5-Cys13,Cth2-Cys10)を有する内部スルフィド(またはチオエーテル)結合を提供するシスタチオン(cystathione)(Cth)単位(側鎖硫黄(sulfure)原子を共有する、ホモシステインとシステインとを組み合わせる)とを含む。
【0017】
本明細書の目的のために、直鎖配列の2つの部分はCth2およびCys10と命名され、チオエーテル結合は、硫黄ホモシステイン(Hcy)側鎖とdes-SHシステイン側鎖の炭素とを接続し、この二重アミノ酸はシスタチオニン(Cth)残基に対応するが、提案された命名は、シスタチオニンの1位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合は「Cth」と命名され、2位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合を「Cys」と命名される残基の3文字コード指定を使用する場合の説明を容易にする。
【0018】
あるいは、本明細書の目的のため、構成要素の2つの部分をそれぞれ[Hcy]および[Cys]と命名することができ、ホモシステイン(Hcy)側鎖の硫黄がシステイン(Cys)の側鎖と共有されてチオエーテル架橋を形成し、この二重アミノ酸はシスタチオニン(Cth)残基に対応するが、提案された命名は、残基の3文字コード命名を使用する場合の説明を容易にする。この代替命名法を使用して、配列番号1は以下のように表される:Ac-Cys1 Hcy2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)。
【0019】
いくつかの実施形態では、Cth
2-Cys
10またはその任意の変形の命名は、以下に示すようにチオエーテル架橋を形成する配列番号1の2つの非連続アミノ酸の側鎖間の連結を説明することを意味する:
【化2】
【0020】
(配列番号1)いくつかの実施形態では、Cth2-Cys10またはその任意の変形の命名は、合成ペプチドの2位および10位でペプチド結合を形成し、チオエーテル架橋を形成するシスタチオニンを説明する。
【0021】
いくつかの実施形態では、配列番号1の合成ペプチドは、式:
【化3】
(配列番号1)
によって表すことができる。
【0022】
合成ペプチドを産生する方法
本明細書に記載の方法は、(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、固相支持体に結合したそのC末端およびそのN末端に保護されたアミン基を有する直鎖ペプチドを化学的に合成することによって始まり、直鎖ペプチドは、1もしくはそれを超えるアミノ酸および/または少なくとも1つのポリアミノ酸シントンに保護基を有する。いくつかの実施形態では、シントンは、アセチル化された少なくとも1つのアミン基および少なくとも1つのカルボン酸保護基を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、固相支持体は、Wang樹脂、トリチル樹脂、およびRink樹脂からなる群から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態では、固相支持体は、約0.10mmol/g、約0.20mmol/g、約0.30mmol/g、約0.40mmol/g、約0.50mmol/g、約0.60mmol/g、約0.70mmol/g、約0.80mmol/g、約0.90mmol/g、または約1.00mmol/gの充填量を有する。いくつかの実施形態では、固相は、約0.70mmol/gの充填量を有する。いくつかの実施形態では、固相は、約0.90mmol/gの充填量を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンは、式:
【化4】
(式中、P
2は、アミン保護基であり、P
3は、カルボン酸保護基であり、P
4は、チオール保護基である)によって表される化合物である。
【0026】
いくつかの実施形態では、保護基は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、トリチル、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルジメチルシリル、アリルオキシカルボニル(alloc)、tert-ブチルオキシカルボニル、アセトアミドメチル(Acm)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、および2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)からなる群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、アミン保護基P2は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、およびカルボキシベンジル(Cbz)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、P2は、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である。
【0028】
いくつかの実施形態では、カルボン酸保護基P3は、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、ベンジル(Bn)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、P3は、アリル保護基である。
【0029】
いくつかの実施形態では、P4は、トリチル保護基である。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンのサブユニットは、D配置を有し、例えば、シントンはD-エナンチオマーである。いくつかの実施形態では、D配置のサブユニットを有するポリアミノ酸シントンは、下記式によって表すことができる。
【化5】
【0031】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンのサブユニットは、L配置を有し、例えば、シントンはL-エナンチオマーである。いくつかの実施形態では、L配置のサブユニットを有するポリアミノ酸シントンは、下記式によって表すことができる。
【化6】
【0032】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンのサブユニットは、D配置およびL配置の両方を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、直鎖ペプチドのアミノ酸側鎖は、保護基を有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖保護基は、tert-ブチル(tBu)、トリチル(Trt)、アリル、シクロヘキシル、2-フェニルイソプロピル、アセトアミドメチル(Acm)、ベンジル(Bzl)、4-メチルベンジル(4-MeBzl)、4-メトキシベンジル(4-MeOBzl)、9-フルオレニルメチル(Fm)、tert-ブチルチオ(t-ブチオ)、4-メトキシトリチル(Mmt)、キサンチル(Xan)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-Cl2Bzl)、および2-ブロモベンジルカーボネート(2-BrZ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖保護基は、tert-ブチル(tBu)またはトリチル(Trt)である。
【0034】
いくつかの実施形態では、側鎖に保護基を有する直鎖ペプチドのアミノ酸側鎖は、配列番号1のCys1、Glu3、Cys5、Cys6、Asn7、Tyr11、およびCys13である。
【0035】
いくつかの実施形態では、複数のアミノ酸およびシントンは、カルボジイミド媒介反応によって、または非カルボジイミドカップリング剤:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1H-ベンゾトリアゾリウム1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-ヘキサフルオロホスフェート(1-)、3-オキシド(HCTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)、またはプロパンホスホン酸無水物(T3P)によって媒介される反応によって結合されて、工程(i)の直鎖ペプチドを形成する。
【0036】
いくつかの実施形態では、複数のペプチドおよび/またはシントン由来の少なくとも1つのアミノ酸は、カルボジイミド媒介反応によって結合されて、工程(i)の直鎖ペプチドを形成する。いくつかの実施形態では、カルボジイミドは、ジイソプロピルカルボキシイミド(diisopropylcarboxiimide)(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、カルボジイミドは、DICである。
【0037】
いくつかの実施形態では、カルボジイミド媒介反応は、酸化防止剤を更に含む。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、可溶性チオウレアまたはチオール化合物である。いくつかの実施形態では、酸化防止剤は、1,3-ジイソプロピル-2チオウレア(DITU)またはジチオスレイトールである。
【0038】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸を、非カルボジイミドカップリング剤によって結合する。いくつかの実施形態では、環化カップリング反応は、非カルボジイミドカップリング剤によって媒介される。いくつかの実施形態では、環化カップリング反応で使用される非カルボジイミドカップリング剤は、HATUである。
【0039】
工程(i)の直鎖ペプチドは、本出願では「直鎖13mer」と呼ばれる場合があり、下記式:
【化7】
(配列番号2)によって表すことができ、式中、シスタチオニンチオエーテル側鎖架橋(-CH
2-CH
2-S-CH
2-)は、
【化8】
で表される。いくつかの実施形態では、下線を引いた1またはそれを超えるアミノ酸の側鎖が保護されている。いくつかの実施形態では、下線を引いた全てのアミノ酸の側鎖が保護されている。
【0040】
直鎖ペプチドが形成された後、(ii)シントンのカルボン酸保護基および直鎖ペプチドのN末端のアミン基からの保護基を除去して、保護されていないアミン基および保護されていないカルボン酸基を有する部分的に保護されていない固相支持結合ペプチドを形成する。いくつかの実施形態では、脱保護は、DMF中のPd(PPh3)4および1,3-DMBAを用いて達成される。
【0041】
いくつかの実施形態では、部分的に保護されていない固相支持体結合ペプチドは、下記式によって表され得る:
【化9】
【0042】
(配列番号3)部分的な脱保護に続いて、(iii)保護されていないアミン基と保護されていないカルボン酸基とを結合させて、環化固相支持体結合ペプチドを形成する。
【0043】
いくつかの実施形態では、環化固相支持体結合ペプチドは、下記式によって表され得る:
【化10】
【0044】
(配列番号4)環化固相支持体結合ペプチドは、(iv)固相支持体から切断されて、環化保護されたペプチドを生成する。
【0045】
いくつかの実施形態では、直鎖ペプチドは、希酸性処理によって樹脂から切断される。いくつかの実施形態では、希酸性処理は、側鎖保護基およびポリアミノ酸シントンの保護基を保存する。いくつかの実施形態では、希酸性処理は、弱酸溶液、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)である。いくつかの実施形態では、希酸溶液はトリフルオロ酢酸(TFA)溶液である。いくつかの実施形態では、希酸溶液は、ジクロロメタン(DCM)溶液中の1%トリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0046】
環化保護されたペプチドが樹脂から切断されると、ペプチドは、(v)全体的に脱保護されて、全体的に脱保護されたペプチドが得られる。いくつかの実施形態では、全体的な脱保護工程(v)は、少なくともヨウ化アンモニウム(NH4I)を含むカクテルの添加を含む。いくつかの実施形態では、全体的な脱保護工程(v)は、少なくともヨウ化アンモニウム(NH4I)およびトリイソプロピルシランを含むカクテルの添加を含む。
【0047】
環化ペプチドが全体的に脱保護されると、ペプチドは、(vi)折り畳まれて1またはそれを超える追加の架橋を形成し、Ac-Cys1 Cth2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)の合成ペプチドを得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「折り畳み」および「酸化」は、折り畳みが配列番号1のシステイン残基の酸化を介して達成されるのと同じ工程を指し得る。いくつかの実施形態では、折り畳み工程(vi)は、ヨウ素媒介酸化またはアルカリ媒介酸化によって達成される。いくつかの実施形態では、アルカリ媒介酸化は、ジメチルスルホキシド(DMSO)媒介酸化またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)媒介酸化である。
【0049】
いくつかの実施形態では、合成ペプチドは、合成ペプチドの以下のアミノ酸残基:Cys1とCys6、Cth2とCys10、およびCys5とCys13の間の共有結合を含む。いくつかの実施形態では、Cys1とCys6およびCys5とCys13との間の共有結合は、ジスルフィド結合である。いくつかの実施形態では、Cth2とCys10との間の共有結合はチオエーテル結合である。
【0050】
全体的に脱保護されたペプチドのフォールディングに続いて、配列番号1の合成ペプチドを精製する。
【0051】
いくつかの実施形態では、配列番号1の合成ペプチドは、下記式:
【化11】
(配列番号1)
によって表すことができる。
【0052】
また本明細書中に記載されるのは、式I:
【化12】
の合成ペプチドを調製する方法であり、この方法は、
(i)保護されたアミノ酸側鎖を有するC末端樹脂結合Tyr-Gly-Cysペプチドを式II:
【化13】
(式中、
P
2は、アミン保護基であり、
P
3は、カルボン酸保護基であり、
P
4は、チオール保護基である)
のポリアミノ酸シントンにカップリングして、式III:
【化14】
の樹脂結合ペプチドを形成することと、
(ii)式IIIのP
2保護基を除去して、保護されていないアミン基を有する式IV:
【化15】
の樹脂結合ペプチドを得ることと、
(iii)式IVの遊離アミン基を介してP
2-アラニンを式IVの前記樹脂結合ペプチドにカップリングして、式V:
【化16】
の樹脂結合ペプチドを形成することと、
(iv)式VのP
2保護基を除去して遊離アミン基を得て、続いて前記遊離アミン基をP
2-アミノ酸にカップリングすることであって、
このアミノ酸の側鎖が、保護されていてもよい、カップリングすることと、
(v)工程(iv)を更に5回繰り返して、式VI:
【化17】
の樹脂結合ペプチドを形成することであって、
少なくとも1つのアミノ酸側鎖が、保護されている、形成することと、
(vi)前記P
2保護基および前記P
3保護基を除去して、遊離アミン基および遊離カルボン酸基を得ることと、
(vii)前記遊離アミン基と前記遊離カルボン酸基とをカップリングして、式VII:
【化18】
の環化ペプチドを得ることと、
(viii)式VIIの前記ペプチドを前記樹脂から切断して、環化ペプチドを得ることと、
(ix)前記環化ペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得ることと、
(x)2つのジスルフィド結合を形成することによって、前記全体的に脱保護されたペプチドを折り畳み、式Iの前記合成ペプチドを得ることと、を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、式VIのGlu、Cys、Cys、Asn、GlyおよびCys残基は、側鎖保護基を有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖保護基は、tert-ブチル(tBu)、トリチル(Trt)、アリル(All)、シクロヘキシル、2-フェニルイソプロピル、アセトアミドメチル(Acm)、ベンジル(Bzl)、4-メチルベンジル(4-MeBzl)、4-メトキシベンジル(4-MeOBzl)、9-フルオレニルメチル(Fm)、tert-ブチルチオ(t-ブチオ)、4-メトキシトリチル(Mmt)、キサンチル(Xan)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-Cl2Bzl)、および2-ブロモベンジルカーボネート(2-BrZ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖保護基は、tert-ブチル(tBu)またはトリチル(Trt)である。
【0054】
いくつかの実施形態では、P2は、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、およびアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から選択される保護基である。いくつかの実施形態では、P2は、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である。
【0055】
いくつかの実施形態では、P3は、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル(All)、トリチル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、およびベンジル(Bn)からなる群から選択される保護基である。いくつかの実施形態では、P3は、アリル(All)保護基である。
【0056】
いくつかの実施形態では、P4は、アセトアミドメチル(Acm)、tert-ブチル(t-But)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)、およびトリチル(Trt)からなる群から選択される保護基である。いくつかの実施形態では、P4は、トリチル保護基である。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、本発明に包含される多くの変形および均等物が本開示を読むと当業者に明らかになることから、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0058】
略語
AA: アミノ酸
AAA: アミノ酸分析
Ac: アセチル
AcOH: 酢酸
Allまたはアリル: 2-プロペニル
API: 活性医薬成分
BB: 以下の構造を有する(Fmoc-Cys
10*[Ac-Cys(Trt)-Hcys(S
*)-OAll]-OH):
【化19】
C18: シリカゲルC18
DBU: 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DIC: ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA: ジイソプロピルエチルアミン
DITU: 1,3-ジイソプロピル-2-チオウレア(1,3-Diisopropy1-2-thiourea)
1,3-DMBA: 1,3-ジメチルバルビツール酸
DMF: N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO: ジメチルスルホキシド
DTT: ジチオスレイトール
EtOH: エタノール
eq: 当量
Fmoc: 9-フルオレニルメトキシカルボニル
GC: ガスクロマトグラフィー
GSH/GSSG: グルタチオン(red./ox.)
HATU: 1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム,1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-,3-オキシド,ヘキサフルオロホスフェート(1-)(1:1)
HDPE: 高密度ポリエチレン
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
IPA: イソプロパノール
LC: 液体クロマトグラフィー
MeCN: アセトニトリル
MeOH: メタノール
MTBE: メチルtert-ブチルエーテル
MS: 質量分析
Mw: 分子量
NH
4OAc: 酢酸アンモニウム
NMM: N-メチルモルホリン
NMP: N-メチルピロリドン
NMR: 核磁気共鳴
Oxyma: (ヒドロキシイミノ)シアノ酢酸エチル
PPh
3: トリフェニルホスフィン
SEC : サイズ排除クロマトグラフィー
SPPS: 固相ペプチド合成
tBu: tert-ブチル
TFA: トリフルオロ酢酸
Thz: チアゾリジン
Thz(Me)
2: 2,2-ジメチルチアゾリジン
TIS: トリイソプロピルシラン
Trt: トリフェニルメチル
Trt-H: トリフェニルメタン
UV: 紫外線
【0059】
実施例1
配列番号1の合成ペプチドの製造プロセス
配列番号1のペプチドまたはその薬学的に許容され得る塩は、医薬品適正製造基準(GMP)の規制に従って製造された。
【0060】
材料
HPLC分析用のFmoc-D-Cys(Trt)-OH(>97.0%、HPLC)およびTFA(>99.0%、HPLC)は、Sigma-Aldrichから購入した。Fmoc-Thz-OH(99.6%、HPLC)およびFmoc-Thz(Me)2-OH(>99.3%、HPLC;99.7%ee)は、PepTechから入手した。BB(>98.5%、HPLC)をカスタム合成した。BB、L-エナンチオマーの同一性をNMRおよびキラル分析によって確認した。Molekula製のDITU、Riedel-de Hahn製のDMSO(pa)、およびMerck製のO-メチルヒドロキシルアミン塩酸塩を使用した。GSHおよびGSSGはSigma-Aldrichから入手した。他の全ての試薬、アミノ酸誘導体、2-CTC樹脂および溶媒を保管庫から入手した。全ての材料を受け取ったまま使用した。精製水を使用した。
【0061】
機器
合成機器
【0062】
小規模のSPPSおよび切断/脱保護のために、フィルタを備えた特別な栓付きシリンジを使用した。それらの内容物を含むシリンジを周囲温度(20~25℃)で、自動で振盪した。
【0063】
より大規模なSPPSは、オーバーヘッド撹拌器を備えたジャケット付き反応器を利用した。クライオスタット(Julabo)を備えたジャケット付き反応器内で温度を制御した。
【0064】
5g超のペプチド樹脂から出発する切断/脱保護をガラス製品または密閉HDPE瓶内で行った。
【0065】
ヨウ素媒介酸化(ジスルフィド形成)を、シリンジポンプおよび適切なTEFLON(登録商標)管を用いて行った。
【0066】
そうでなければ、標準的な実験室機器/器具を合成作業に使用した。
【0067】
時折、Beckman遠心分離機(3750~4000rpm、10分)を切断された/脱保護されたペプチドの小規模沈殿のために使用した。
【0068】
分析機器
【0069】
HPLCは、XSelectペプチド130A 150×4.6mm 2.5μカラムを備えたAgilentシステムを用いて30℃で実行した。移動相A:0.1 %TFA(水溶液);移動相B:0.1%TFA(MeCN)
【0070】
LC/MSは、ESI Thermo Q-Exactive MS Spectrometerに接続されたThermo Scientific Vanquish Horizon UHPLCの同じカラムを使用した。ChromeleonソフトウェアをHPLC/MS評価に使用した。
【0071】
キラルAAAを、C.A.T.GmbH&Co.ChromatographieおよびAnalysentechnik KG(ドイツ国チュービンゲン)で作製した。
【0072】
NMR分析は、RED GLEAD DISCOVERY AB(Medicon Village、スウェーデン国ルンド223 81)によって行った。
【0073】
ペプチド合成
SPPS
【0074】
図1は、固体に結合した13merのSPPS合成のフロー図を示す。
【0075】
標準的なプロトコルを使用した。乾燥後、全てのペプチド樹脂を冷凍庫で保存した。
【0076】
L-H-Cys-2-CT樹脂またはD-H-Cys-2-CT樹脂
【0077】
L-CysまたはD-Cysを、ガラスフィルタを備えたSPPS反応器内で20~25℃で約5時間、2-CTC樹脂に結合させ、樹脂上の残っている結合部位をメタノールでキャップした。排出/洗浄後、DMF中20%(v/v)ピペリジンで処理することによって(2×10分)Fmoc基を除去した。ピペリジンの除去を示すクロラニル試験陰性まで樹脂をDMFで洗浄し、次いでイソプロパノールで洗浄し、最後に20~25℃で1~2日間真空乾燥した。
L-H-Cys-2-CT樹脂;102.0g、0.42mmol/g(トリフェニルメタン)
D-H-Cys-2-CT樹脂;14.5g、0.40mmol/g(トリフェニルメタン)
【0078】
Fmoc(7-13)-2-CT樹脂
【0079】
L-Cys13バージョンでは、ジャケット付き反応器を使用した。D-Cys13の場合、20℃(Tジャケット)、20~25℃で反応を行った。
【0080】
カップリングは、DMF中またはNMP中のいずれかで行った。Cys13充填量に対して、BB(1.5当量)を除いて、約2.0当量のAA誘導体を使用した。約2.2当量のOxyma/DIC、および約0.2当量。DITUを使用した。グリシンを1時間事前活性化した。追加のDIC(約2.2当量)を、概して、しばらくしてから加えた。総カップリング時間は、一般に2~3時間であり、BBについては約5時間であった。
【0081】
グリシンを事前活性化してGlyカップリングを加速し、したがってわずかに酸性のOxymaまたはアミノ酸による酸感受性2-CT樹脂からのCysの意図しない脱離を回避し、endo-Cysおよびdes-Cysを潜在的にもたらした。
【0082】
各カップリング後、反応器を空にし、樹脂をDMFで洗浄した。合成を一晩休止した場合に、ペプチド樹脂を反応器中で保存した(5~10℃)。操作温度を上昇させた後、合成を続けた。
【0083】
DMF中20%(v/v)ピペリジンで処理することによって(2×10分)Fmoc基を除去し、クロラニル試験で陰性になるまで樹脂を十分に洗浄し、これは、ピペリジンの完全な除去を示した。
【0084】
配列が完成したら、DMFおよびイソプロパノールで洗浄した。次いで、樹脂を20~25℃で1~2日間真空乾燥した。
【0085】
シス誘導性配座による環化を促進するために、Cys
(5または6)の1つをシュードプロリンとして組み込んだ。選択される適切な誘導体は、Fmoc-L-Thz-OH(CAS番号[133054-21-4])およびFmoc-L-Thz(Me
2)-OH(CAS番号[873842-06-9])であり得る。Thzは、6位もしくは5位、または両方の位置でCys(Trt)を置換することができた。したがって、4つの異なるFmoc(3-13)-2-CT樹脂ペプチドを以下に示すように合成した:
【化20】
理論製品重量に基づく収率。
【0086】
閉環/ラクタム化
【0087】
Fmoc(3-13)-2-CT樹脂をシリンジ内で、DMFで膨潤させた。排出後、Fmocを20%ピペリジンで除去した(>10分+>20分)。クロラニル試験が陰性になるまで樹脂を十分に洗浄した。Hcysのアリルエステルを、DMF中約10mol%のPd(PPh3)4および約10当量の1,3-DMBAを用いて一晩酸に変換した。樹脂を排出し、DMFで洗浄し、約2当量のHATUおよび2.7当量のNMMで閉環した。Kaiser試験は、4~5時間以内に完全な反応を示した。上記のようにして最終的な洗浄および乾燥を行った。
【0088】
切断/脱保護
【0089】
分析スケールの切断/脱保護は、シリンジ内で以下に記載されるように行った。TFA溶液を氷冷(-18℃)ジエチルエーテルに濾過した。沈殿物を遠心分離し、上清をデカントし、残渣をジエチルエーテルで磨砕し、固体を再度遠心分離した。
【0090】
分取スケール(Ac-Cys(H)-Hcys(S1-Glu-Leu-Cys(H)-Cys(H)-Asn-Val-Ala-Cys*-Tyr-Gly-Cys(H)-OH):
閉環ペプチド樹脂Cys5および6(Trt)(5.41g)を、1.8gのDTT、1.7gのNH4I、4.5mLのTIS、1.8mLの水および50mLのTFAと混合した。混合物を3時間撹拌した。樹脂を濾別し、2×15mLのTFAで洗浄した。合わせた濾液を冷却し(10℃)、氷冷(-18℃)ジエチルエーテル(360mL)を撹拌しながら10~15分間(T.23℃)少しずつ添加した。撹拌を0℃で約5分間続けた。固体を濾過し(16~40μm)、ジエチルエーテル(2×100mL)で洗浄した。次いで、これを20~25℃で2日間真空乾燥した。これにより、粗環状ペプチド(遊離-SH)1.80gが得られた。
【0091】
酸化(S-S架橋の形成)
【0092】
これらの実験は、Fmoc-Glu(OtBu)-Leu-Cys(Trt)-Cys(Trt)-Asn(Trt)-Val-Ala-BB-Tyr(tBu)-Gly-Cys(Trt)-2CTC-樹脂から得られた粗環状ペプチド(遊離-SH)を用いて行った。全ての酸化は20~25℃で行った。
【0093】
ヨウ素酸化
【0094】
粗環化ペプチドのDMSO中溶液(10g/L)を作製した。溶液を20%MeCN(水溶液)で10倍希釈すると、わずかに濁った(pH約4)。この溶液に、ヨウ素を含むMeCN(1%w/v)を、黄色/褐色が持続するまで約1時間かけて滴下添加した。ヨウ素を水性アスコルビン酸(0.5M)でクエンチした。3.5%NH3(水溶液)を用いてpHを7~7.5に上げた。GSH/GSSGを異なる時点で添加した(1~3.5mM)。
【0095】
DMSO酸化
【0096】
透明な溶液を、DMSOを用いて作製した。これらを水(pH約4)で30%DMSOに希釈して、1~3.3g/Lの濃度にした。このわずかに濁った混合物を60℃で撹拌するか、または3.5%NH3(水溶液)でpHを7.5~8に調整した。後者のpHで、溶液は再び完全に透明になった。必要に応じて、GSH/GSSGを添加した。
【0097】
NMP酸化
【0098】
0.5g粗製物/ml NMPの透明溶液を作製した。
【0099】
結果および考察
H-Cys(Trt)-2-CT樹脂およびFmoc(7-13)-2-CT樹脂
【0100】
0.5mmol/g樹脂のCys充填量を目標とした。Fmoc-Cys(Trt)-OHの消費に続いて反応溶液のHPLCを行った。約0.6mmol/gに相当する54mmolが組み込まれた段階(約5時間)で、洗浄することによって反応を中断した。充填量は、0.42mmol/gであることが分かった。
【0101】
このCys樹脂から、本発明者らは中間体Fmoc(7-13)樹脂を作製し、これは樹脂の閉環について提案された(3-13)候補全てに共通である。
【0102】
Fmoc充填量(0.199mmol/g)に基づいて、Fmoc(7-13)-2-CT樹脂(61.9g)の収率は81.6%であった。側鎖保護なしの切断されたFmoc(7-13)OHの純度は、(HPLCによって測定する場合)約85%であった。
【0103】
いくつかのペプチドは、2-CTへのエステル結合が酸に感受性であるため、わずかに酸性のOxymaの長期作用によって切断される可能性がある。DMF中約3当量のOxymaでFmoc(7-13)-2-CT樹脂を21時間(20~25℃)処理したが、ペプチドの損失は生じなかった。
【0104】
DMFを全体を通して使用したが、カップリングを行う場合にNMPも試験した。後者の溶媒は改善をもたらさなかった。
【0105】
D-H-Cys(Trt)-2-CT樹脂(0.40mmol/g)および[D-H-Cys13(Trt)]Fmoc(7-13)-2-CT樹脂(0.175mmol/g)を、L-Cys13バージョンと同じ方法で作製した。
【0106】
Fmoc(3-13)-2-CT樹脂
【0107】
Fmoc(3-13)-2-CTペプチドのシリンジ合成を、それぞれ7.5gのFmoc(7-13)樹脂から行った。Oxyma/DICを用いて3~5時間カップリングを行い、およそ2時間後に追加のDICを加えた。
【化21】
理論製品重量に基づく収率。
【0108】
最終的な洗浄/乾燥の後、小さな試料を切断/脱保護し、更なる分析に供した。5位および6位の両方でCys(Trt)を使用して最良の結果が認められた。既に組み込まれたThzへのカップリングはより遅かった(4~5時間)。Thz(Me)2バリアントは、Fmoc-Gly-Leuを欠く。
【0109】
H-Thz(Me2)5-Cys(Trt)-Asn(Trt)-Val-Ala-BB-Tyr(tBu)-Gly-Cys(Trt)-2-CT樹脂のカップリング継続に対する抵抗(reluctance)を克服するために、これを再びDMF中で膨潤させ、HATU/NMMおよびFmoc-Leu-OHで30℃にて一晩処理した。活性化Fmoc-Leu-OAtが形成され、ヒンダードアミンに対してより反応性であると考えられる。残念ながら、これは成功しなかった。
【0110】
ベースラインFmoc-Glu(OtBu)-Leu-Cys(Trt)-Cys(Trt)-Asn(Trt)-Val-Ala-BB-Tyr(tBu)-Gly-Cys(Trt)-2CT樹脂の推定収率は、H-Cys(Trt)-2-CT樹脂と比較して(Fmoc充填量ならびに(7-13)および(3-13)中間体の純度に基づいて)48%であった。
【0111】
樹脂上の閉環(ラクタム化)
【0112】
環化は、最初に(3-13)樹脂からFmocを除去し、続いてHcysのPd触媒脱アリル化およびHATU支援環化(-Hcy-OHのH-Glu-へのカップリング)を4~5時間行うことによって行った。反応工程は、以下の樹脂を用いて行った:
【化22】
【0113】
all-L類似体の中で、ベースライン樹脂は最も純粋なラクタムをもたらしたが、Kaiser試験は環化速度の大きな差を示さなかった。不完全なカップリングのために、直鎖Thz樹脂の純度はベースライン樹脂と比較して幾分低かったことを想起されたい。
【0114】
ベースライン樹脂の推定収率は、Fmoc/Trt充填量および(7-13)、(3-13)および(1-13)中間体の純度に基づいて、32%(H-Cys(Trt)-2-CT樹脂に対して)であった。
【0115】
ベースライン樹脂(5.41g)から、環化し、続いて切断/脱保護/沈殿すると、以下に示すラクタムが1.80gの量で得られた。
【化23】
【0116】
ベースラインラクタム中のD-Cysの測定された含有量は、Cys13のエピマー化が少なくともあまり顕著ではないことを示す。
【0117】
酸化(S-S架橋の形成)
【0118】
酸化が最後の工程である。
【0119】
ベースラインAc(1-13)-OH環化生成物は、HPLC分析のためにDMFに十分に可溶性であるが、10g/L溶液を作製することは困難であるようである。これは、MeCN、20~80%MeCN(AcOHを含むまたは含まない水溶液)、純正のAcOH、25%AcOH(水溶液)、水、EtOHおよびMeOHに非常に不溶性のようである。これはDMSOに非常に可溶性であり、溶液は5~10℃、更には25℃で数日間(HPLC)維持した場合に安定である。20%MeCN(水溶液)で10倍希釈すると、得られた混合物がいくらか濁る(hazens)が、濾過の際のペプチド損失はなかった(HPLC)。それは、NMP(10g/L)には容易に溶解するが、すぐに反応する。
【0120】
アルカリ性DMSO酸化は、最も簡単な方法であった。粗濃度を3g/Lから1g/Lに低下させると、実質的に同じ結果が得られ、3g/L実験と比較して純度の増加は観察されなかった。粗ラクタムの濃度に関係なく、折り畳み時間を1日から2日に延長してもHPLCプロファイルに変化はなかった。
【0121】
GSH/GSSGが実際にヨウ素酸化の際の折り畳みに影響を及ぼすかどうか、またはpHの上昇のみがHPLCプロファイルを変化させるかどうかは明らかではなく、少なくともアルカリ性DMSO酸化の場合、GSH-GSSGは識別可能な役割を果たさなかった。
【0122】
ペプチドが不確定の混合物に非常に迅速に反応したため、溶媒としてのNMPは有用ではなかった。高い反応性は、酸化条件下(空気)でのエージングにおいてNMP中に形成されるNMP(5-OOH)に起因する可能性が最も高い。
【0123】
結論
図1に示す戦略、例えばアミノ酸を所望の配列にアセンブルするための標準的なSPPSプロトコルを使用して、配列番号1の合成ペプチドを合成し、続いてHcysとGluとの間のHATU支援アミド結合形成による環化を行って、以下に示す樹脂上に大環状保護されたペプチドを得ることができる。
【化24】
【0124】
H-Cys(Trt)-2-CT樹脂に基づく樹脂上のこの環状ペプチドの推定収率は32%であった。これは、67%の環化収率に相当する。
【0125】
5もしくは6の位置または両方におけるThzとの類似体は、利点をもたらさなかった。既に組み込まれたThzへのカップリングは、完了するのにより多くの時間を必要とする。これらのCys類似体での置換は、ジスルフィド架橋構築の前に、水性MeONH2でメチレン架橋を除去してホルムアルデヒドを取り除く追加のプロセス工程を更に必要とするであろう。それらはTFAカクテルによって脱保護されなかった。
【0126】
別のCys誘導体、Fmoc-Thz(Me)2-OHも調べた。これは、TFA脱保護によってCysに容易に変換されるが、ペプチド配列に組み込まれた場合、更なるカップリングは不可能であった。
【0127】
したがって、上に示される環化ベースライン樹脂が最良の選択である。中間ペプチド配列にThzがなければ、残留ホルムアルデヒドの可能性を検出する分析方法は不要であろう。
【0128】
閉環の際、切断/脱保護/沈殿(5.41gのベースライン樹脂から1.80g)によって以下:
【化25】
に示すラクタムを得て、これは、下記式によって表すこともできる。
【化26】
【0129】
酸化、例えば上記ラクタムからのジスルフィドの形成を、ヨウ素によるかまたはDMSO含有溶液中のいずれかで行った。正確に折り畳まれた生成物が形成された(これまでの最良の選択は、アルカリ性DMSO酸化(HPLC/SEC)であった)。
【0130】
他の実施形態
本発明の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態によって限定されない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかになる。そのような修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。全ての値は近似値であり、説明のために提供されていることを更に理解されたい。
【0131】
全ての特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコルは、本出願を通して引用され、その開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】