(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-12
(54)【発明の名称】修飾GCC受容体アゴニストの産生のための合成プロセス
(51)【国際特許分類】
C07K 1/04 20060101AFI20241105BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20241105BHJP
C07K 1/10 20060101ALI20241105BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20241105BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20241105BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C07K1/04 ZNA
C07K1/06
C07K1/10
A61K38/10
A61K38/12
A61P13/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531062
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 US2022080295
(87)【国際公開番号】W WO2023097207
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521540818
【氏名又は名称】アイアンウッド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レーザイサー, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ストルツ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】チェン, リン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA18
4C084BA25
4C084BA26
4C084BA28
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA811
4H045AA20
4H045BA30
4H045BA32
4H045EA20
4H045FA20
4H045FA33
4H045FA58
4H045FA59
4H045FA61
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、配列番号1の合成ペプチドまたはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法に関する。本明細書に記載の方法は、(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、C末端が固相支持体に結合した直鎖ペプチドを化学的に合成することによって始まり、直鎖ペプチドは、1もしくはそれを超えるアミノ酸および/またはポリアミノ酸シントンに保護基を有する。いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンの少なくとも1つのアミン基は、直鎖ペプチドのN末端とは異なる保護基を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ペプチド、またはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法であって、前記方法が、
(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、C末端が固相支持体に結合した直鎖ペプチドを化学的に合成することであって、前記直鎖ペプチドが、1またはそれを超えるアミノ酸および/または前記ポリアミノ酸シントンに保護基を有し、
前記ポリアミノ酸シントンの少なくとも1つのアミン基が、前記直鎖状ペプチドのN末端とは異なる保護基を有する、化学的に合成することと、
(ii)前記直鎖ペプチドを前記固相支持体から切断して、保護されたペプチドを生成することと、
(iii)アミノ酸を前記保護されたペプチドのC末端にカップリングさせることであって、前記アミノ酸が、保護されていないアミン基、保護されたカルボン酸基、および必要に応じて保護されているアミノ酸側鎖を有する、カップリングさせることと、
(iv)前記保護されたペプチドの1つのアミン保護基および1つのカルボン酸保護基を除去して、保護されていないアミンおよび保護されていないカルボン酸基を有する部分的に保護されていないペプチドを形成することと、
(v)前記保護されていないアミンと前記保護されていないカルボン酸基とをカップリングして環化ペプチドを形成することと、
(vi)前記環化ペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得ることと、
(vii)前記全体的に脱保護されたペプチドを折り畳んで、1またはそれを超える追加の架橋を形成して、前記合成ペプチドを得ることと、
(viii)必要に応じて、前記合成ペプチドのN末端を1またはそれを超える化学部分で修飾することと、
(ix)前記合成ペプチドを精製することと、を含み、
前記合成ペプチドが、アミノ酸配列:
Cys
1 Cth
2 Glu
3 Leu
4 Cys
5 Cys
6 Asn
7 Val
8 Ala
9 Cys
10 Tyr
11 Gly
12 Cys
13(配列番号1)を含み、
前記合成ペプチドが、前記合成ペプチドの以下:
a)Cys
1およびCys
6、
b)Cth
2およびCys
10、ならびに
c)Cys
5およびCys
13のアミノ酸残基間に共有結合を含む、方法。
【請求項2】
前記合成ペプチドを、溶液から沈殿させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固相支持体が、Wang樹脂、トリチル樹脂、およびRink樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固相支持体が、約0.10mmol/g、約0.20mmol/g、約0.30mmol/g、約0.40mmol/g、約0.50mmol/g、約0.60mmol/g、約0.70mmol/g、約0.80mmol/g、約0.90mmol/g、または約1.00mmol/gの充填量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミノ酸シントンが、下記式:
【化41】
(式中、
P
1およびP
2は、異なるアミン保護基であり、
P
3は、カルボン酸保護基であり、
P
4は、チオール保護基である)
によって表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記保護基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、トリチル、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルジメチルシリル、アリルオキシカルボニル(alloc)、tert-ブチルオキシカルボニル、アセトアミドメチル(Acm)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、および2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
P
1がtert-ブチルオキシカボニル(Boc)保護基であり、P
2が9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
P
3が、アリル保護基である、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
P
4が、トリチル保護基である、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリアミノ酸シントンのサブユニットが、D配置を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリアミノ酸シントンのサブユニットが、L配置を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリアミノ酸シントンのサブユニットが、D配置およびL配置の両方を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(iv)の前記保護されたカルボン酸が、前記ポリアミノシントンの前記保護されたカルボン酸基に由来する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(v)の前記保護されていないカルボン酸が、前記ポリアミノシントンの前記保護されていないカルボン酸基に由来する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のアミノ酸および前記シントンが、カルボジイミド媒介反応によって、または非カルボジイミドカップリング剤:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1H-ベンゾトリアゾリウム1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-ヘキサフルオロホスフェート(1-)、3-オキシド(HCTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、1-[(1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)-ジメチルアミノ-モルホリノメチレン)]メタナミニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyOxim)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)、またはプロパンホスホン酸無水物(T3P)によって媒介される反応によって結合されて、工程(i)の前記直鎖ペプチドを形成する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のペプチドおよび/または前記シントン由来の少なくとも1つのアミノ酸が、カルボジイミド媒介反応によって結合されて、工程(i)の前記直鎖ペプチドを形成する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボジイミドが、ジイソプロピルカルボキシイミド(diisopropylcarboxiimide)(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)からなる群から選択される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボジイミドが、DICである、17に記載の方法。
【請求項19】
前記カルボジイミド媒介反応が、アミノ酸ラセミ化抑制剤を更に含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ラセミ化抑制剤が、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド(HOPO)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アゾ-ベンゾトリアゾール(HOAt)、および2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート)からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ラセミ化抑制剤が、2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記カルボジイミド媒介反応のための溶媒が、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、またはジメチルホルムアミド(DMF)である、請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ピリジンを前記カルボジイミド媒介反応と共に使用して、前記直鎖ペプチドの早すぎる切断を防止する、請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つのアミノ酸が、非カルボジイミドカップリング剤によって結合される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記非カルボジイミドカップリング剤が、TBTUである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(ii)で得られた前記保護されたペプチドをそのまま工程(iii)で使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
工程(ii)における前記直鎖ペプチドが、弱酸溶液で前記固体支持体から切断される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
工程(v)の前記環化ペプチドが、溶液中で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記全体的な脱保護工程(vi)が、少なくともヨウ化アンモニウム(NH
4I)およびチオアニソールを含むカクテルの添加を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、前記合成ペプチドのN末端を1またはそれを超える化学部分で修飾する必要に応じた(viii)工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記修飾が、前記合成ペプチドのN末端のアセチル化である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程(vii)の前記ペプチドが、前記修飾工程(viii)の前に精製される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
Cys
1とCys
6およびCys
5とCys
13との間の前記共有結合が、ジスルフィド結合である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
Cth
2とCys
10との間の前記共有結合が、チオエーテル結合である、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記沈殿工程が、酸性化工程と、それに続く有機溶媒混合物による希釈工程とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項36】
前記有機溶媒混合物が、アセトニトリルまたはメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)のうちの少なくとも1つを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
式I:
【化42】
の合成ペプチドを調製する方法であって、
(i)C末端樹脂結合Tyr-Glyペプチド(前記Tyrアミノ酸残基は、保護されている)を、式II:
【化43】
(式中、
P
1およびP
2は、異なるアミン保護基であり、
P
3は、カルボン酸保護基であり、
P
4は、チオール保護基である)
のポリアミノ酸シントンにカップリングさせて式III:
【化44】
の樹脂結合ペプチドを形成することと、
(ii)式IIIの前記P
2保護基を除去して、保護されていないアミン基を有する式IV:
【化45】
の樹脂結合ペプチドを得ることと、
(iii)式IVの遊離アミン基を介してP
2-アラニンを式IVの前記樹脂結合ペプチドにカップリングして、式V:
【化46】
の樹脂結合ペプチドを形成することと、
(iv)式Vの前記P
2保護基を除去して遊離アミン基を得て、続いて前記遊離アミン基をP
2-アミノ酸にカップリングさせることであって、
前記アミノ酸の側鎖が、必要に応じて保護されている、カップリングさせることと、
(v)工程(iv)を更に5回繰り返して、式VI:
【化47】
の樹脂結合ペプチドを形成することであって、
少なくとも1つのアミノ酸側鎖が、保護されている、形成することと、
(vi)式VIの前記ペプチドを前記樹脂から切断して、C末端カルボン酸基を有する直鎖ペプチドを形成することと、
(vii)前記直鎖ペプチドの前記C末端カルボン酸基をシステインのアミン基にカップリングして式VII
【化48】
の保護されたペプチドを得ることであって、
前記システインが、カルボン酸保護基を含み、
前記システインアミノ酸の前記側鎖が、保護されていてもよく、
式中、P
5は、P
3とは異なるカルボン酸保護基である、式VIIの保護されたペプチドを得ることと、
(viii)前記P
2保護基および前記P
3保護基を除去して、遊離アミン基および遊離カルボン酸基を得ることと、
(ix)前記遊離アミン基と前記遊離カルボン酸基とをカップリングして、式VIII:
【化49】
の環化ペプチドを得ることと、
(x)前記環化ペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得ることと、
(xi)2つのジスルフィド結合を形成することによって、前記全体的に脱保護されたペプチドを折り畳み、式Iの合成ペプチドを得ることと、を含む、方法。
【請求項38】
式Iの遊離アミン基をアセチル化して、式IX:
【化50】
の合成ペプチドを得ることを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
式VIIの前記Glu、前記Cys、前記Cys、前記Asn、前記Glyおよび前記Cys残基が、側鎖保護基を有する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
P
1およびP
2がそれぞれ、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、およびアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から選択される保護基である、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
P
1が、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
P
2が、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
P
3が、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル、トリチル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、およびベンジル(Bn)からなる群から選択される保護基である、請求項37~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
P
3が、アリル保護基である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
P
4が、アセトアミドメチル(Acm)、tert-ブチル(t-Bu)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、2-ピリジン-スルフェニル(Pys)、およびトリチル(Trt)からなる群から選択される保護基である、請求項37~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
P
4が、トリチル保護基である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
P
4が、tert-ブチル保護基である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
以下の構造式:
【化51】
(式中、
P
1およびP
2は、水素またはアミン保護基であり、ただし、P
1およびP
2の両方がアミン保護基である場合、それらは同じアミン保護基ではなく、
P
3は、水素またはカルボン酸保護基であり、
P
4は、水素またはチオール保護基である)
によって表される、化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項49】
P
1およびP
2が、それぞれアセチル、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、およびアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から選択されるアミン保護基である、請求項48に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項50】
P
1が、アセチル基である、請求項49に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項51】
P
1が、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基である、請求項49に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項52】
P
2が、Fmoc保護基である、請求項49に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項53】
P
3が、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル、トリチル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、およびベンジル(Bn)からなる群から選択されるカルボン酸保護基である、請求項48~52のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項54】
P
3が、アリル保護基である、請求項53に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項55】
P
4が、アセトアミドメチル(Acm)、tert-ブチル(t-Bu)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)、およびトリチル(Trt)からなる群から選択されるチオール保護基である、請求項48~54のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項56】
P
4が、トリチル保護基である、請求項55に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩。
【請求項57】
P
1、P
2、P
3、および/またはP
4のうちの少なくとも1つが、水素である、請求項48に記載の化合物。
【請求項58】
P
1~P
4が、それぞれ水素である、請求項48に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月24日に出願された米国仮出願第63/282,842号、および2022年3月25日に出願された米国仮出願第63/323,552号の優先権および利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、配列番号1の合成ペプチドまたはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法に関する。
【0003】
配列表
本出願は、2022年11月21日の9:49 AMに作成され、本明細書と共に電子的に提出された「223355-519432.xml」(7.73キロバイト)と題された配列表をその全体が参照により組み込む。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)は、通常、尿意切迫、頻度の増加および/または夜間頻尿が付随して起こる、膀胱痛を伴う慢性状態である。IC/BPSはしばしば尿路感染症と誤診され、抗生物質は一般に無効である。女性の3~7%および男性の3~4%がIC/BPSの定義を満たすと推定される。IC/BPSの原因にはいくつかの寄与因子が存在する場合があり、IC/BPSが原発性障害であるか、または別の障害の二次的結果であるかは不明である[Hannoら、2015、193;1545-1553]。IC/BPSの診断試験はなく、診断は一般に、膀胱に関連する疼痛を伴う緊急性および頻度の排尿症状に基づく。診断は、一般に、これらの症状を引き起こし得る他の疾患が除外されるまで保留される。
【0005】
IC/BPSに利用可能な承認された治療法はほとんどない。患者は、非薬理学的処置(全身のリラクセーション、ストレス管理、行動修正、および理学療法の手法)による処置を開始することが多い。IC/BPSに利用可能なわずかに有効な治療のために、多くの患者は、症状を軽減するために膀胱内注入(すなわち、カテーテルを介して膀胱に直接送達される薬剤の混合物)を含むオフラベルの治療を利用する。IC/BPSのためのより効果的で忍容性の高い処置が必要とされている。
【0006】
13アミノ酸グアニル酸シクラーゼC(GC-C)アゴニスト合成ペプチドは、IC/BPSに関連する膀胱痛、および潜在的に腹部領域の他の内臓痛状態の処置のために開発されている。このペプチドの開発を更に進めるために、効率的な合成および精製プロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、合成ペプチド、またはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法に関する。(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、C末端が固相支持体に結合した直鎖ペプチドを化学的に合成する工程であって、直鎖ペプチドが、1またはそれを超えるアミノ酸および/またはポリアミノ酸シントンに保護基を有し、ポリアミノ酸シントンの少なくとも1つのアミン基が、直鎖状ペプチドのN末端とは異なる保護基を有する、化学的に合成する工程と、(ii)直鎖ペプチドを固相支持体から切断して、保護されたペプチドを生成する工程と、(iii)アミノ酸を保護されたペプチドのC末端にカップリングさせる工程と、(iv)保護されたペプチドの1つのアミン保護基および1つのカルボン酸保護基を除去して、保護されていないアミンおよび保護されていないカルボン酸基を有する部分的に保護されていないペプチドを形成する工程と、(v)保護されていないアミンと保護されていないカルボン酸基とをカップリングして環化ペプチドを形成する工程と、(vi)環化ペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得る工程と、(vii)全体的に脱保護されたペプチドを折り畳んで、1またはそれを超える追加の架橋を形成して、合成ペプチドを得る工程と、(viii)必要に応じて、合成ペプチドのN末端を1またはそれを超える化学部分で修飾する工程と、(ix)合成ペプチドを精製する工程とを有する方法。本明細書に記載される方法によって生成される合成ペプチドは、アミノ酸配列:Cys1 Cth2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)を含む。合成ペプチドは、合成ペプチドの以下:Cys1およびCys6、Cth2およびCys10、ならびにCys5およびCys13のアミノ酸残基間に共有結合を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、方法は、(viii)合成ペプチドのN末端を1またはそれを超える化学部分で修飾するという必要に応じた工程を含む。
【0009】
また、以下の構造式:
【化1】
(式中、P
1およびP
2は、水素またはアミン保護基であり、ただし、P
1およびP
2の両方がアミン保護基である場合、それらは同じアミン保護基ではなく、P
3は、水素またはカルボン酸保護基であり、P
4は、水素またはチオール保護基である)によって表される、化合物、またはその薬学的に許容され得る塩が本明細書で開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、配列番号1の合成ペプチドの製造のための例示的なフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
合成ペプチド、またはその薬学的に許容され得る塩を産生する方法が本明細書中に記載される。本明細書中に記載される方法は、
(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、C末端が固相支持体に結合した直鎖ペプチドを化学的に合成することであって、直鎖ペプチドが、1またはそれを超えるアミノ酸および/またはポリアミノ酸シントンに保護基を有し、
ポリアミノ酸シントンの少なくとも1つのアミン基が、直鎖状ペプチドのN末端とは異なる保護基を有する、化学的に合成することと、
(ii)直鎖ペプチドを固相支持体から切断して、保護されたペプチドを生成することと、
(iii)アミノ酸を保護されたペプチドのC末端にカップリングさせることであって、アミノ酸が、保護されていないアミン基、保護されたカルボン酸基、および必要に応じて保護されているアミノ酸側鎖を有する、カップリングさせることと、
(iv)保護されたペプチドの1つのアミン保護基および1つのカルボン酸保護基を除去して、保護されていないアミンおよび保護されていないカルボン酸基を有する部分的に保護されていないペプチドを形成することと、
(v)保護されていないアミンと保護されていないカルボン酸基とをカップリングして環化ペプチドを形成することと、
(vi)環化ペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得ることと、
(vii)全体的に脱保護されたペプチドを折り畳んで、1またはそれを超える追加の架橋を形成して、合成ペプチドを得ることと、
(viii)必要に応じて、合成ペプチドのN末端を1またはそれを超える化学部分で修飾することと、
(ix)合成ペプチドを精製することと、を含み、
合成ペプチドが、アミノ酸配列:
Cys1 Cth2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)を含み、
合成ペプチドが、合成ペプチドの以下:a)Cys1およびCys6、b)Cth2およびCys10、ならびにc)Cys5およびCys13のアミノ酸残基間に共有結合を含む。
【0012】
定義
本明細書で使用される場合、「Cth」は、ペプチド結合を形成することができるスキーム1において「1」および「2」と呼ばれる2つのα-アミノカルボキシル基を有するシスタチオニンを表す。
【化2】
【0013】
しかし、ペプチド配列を記述する際の3文字アミノ酸コードの使用を容易にするために、ペプチド配列中の不連続な位置でα-アミノカルボキシル基のそれぞれ(「1」および「2」と呼ばれる)とペプチド結合を形成して環状チオエーテル架橋を作り出することによって環状ペプチド配列を作り出す場合、1位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合は「Cth」と呼ばれ、2位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合は「Cys」と呼ばれる。更なる詳細については、「合成ペプチド」と題されたセクションを参照されたい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「Hcy」は、スキーム1に示されるホモシステインを表す。スキーム1から分かるように、シスタチオニンは、ホモシステインとシステインとの組み合わせと見なすことができ、これらの側鎖は硫黄原子を共有する。したがって、ペプチド配列中の不連続な位置でシスタチオニンのα-アミノカルボキシル基のそれぞれとペプチド結合を形成することによって作り出される環状ペプチド配列を指定する代替方法は、1位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合を「Hcy」と表記し、2位のα-アミノカルボキシル基によって形成されるペプチド結合を「Cys」と表記することである。
【0015】
本明細書で使用される場合、他の指示がない限り、「薬学的に許容され得る」は、動物またはヒトにおけるインビボ使用に生物学的または薬理学的に適合性であることを意味し、好ましくは、連邦または州政府の規制当局によって承認されているか、動物、より具体的にはヒトにおける使用のために米国薬局方または他の一般的に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、「約(about)」および「およそ(approximately)」という用語は、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味し、これは値がどのように測定または決定されるか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣例に従って、1標準偏差以内または1標準偏差を超えることを意味することができる。あるいは、組成物に関して「約」は、最大20%、好ましくは最大10%の範囲のプラスまたはマイナスを意味することができる。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特定の値は、本出願および特許請求の範囲に記載されており、特に明記しない限り、「約」という用語は、特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味する。
【0017】
合成ペプチド
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって産生される合成ペプチドは、Cys1 Cth2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)として直線的に表すことができる。
【0018】
配列番号1の合成ペプチドは、2つのジスルフィド結合を形成する4つのシステイン残基と、定義された連結性(Cys1-Cys6,Cys5-Cys13,Cth2-Cys10)を有する内部スルフィド(またはチオエーテル)結合を提供するシスタチオン(cystathione)(Cth)単位(側鎖硫黄原子を共有する、ホモシステインとシステインとを組み合わせる)とを含む。
【0019】
本明細書の目的のために、直鎖配列の2つの部分はCth2およびCys10と命名され、チオエーテル結合は、硫黄ホモシステイン(Hcy)側鎖とdes-SHシステイン側鎖の炭素とを接続し、この二重アミノ酸はシスタチオニン(Cth)残基に対応するが、提案された命名は、残基の3文字コード指定を使用する場合の説明を容易にし、1位のα-アミノカルボキシル基によって形成されたペプチド結合は「Cth」と命名され、2位のα-アミノカルボキシル基によって形成されたペプチド結合は「Cys」と命名され、上記スキーム1を参照されたい。
【0020】
あるいは、本明細書の目的のため、ビルディングブロックの2つの部分をそれぞれ[Hcy]および[Cys]と命名することができ、ホモシステイン(Hcy)側鎖の硫黄がシステイン(Cys)の側鎖と共有されてチオエーテル架橋を形成し、この二重アミノ酸はシスタチオニン(Cth)残基に対応するが、提案された指定は、残基の3文字コード指定を使用する場合の説明を容易にする。この代替命名法を使用して、配列番号1は以下のように表すことができる:Cys1 Hcy2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)。
【0021】
いくつかの実施形態では、Cth
2-Cys
10またはその任意の変形の指定は、以下に示すようにチオエーテル架橋を形成する配列番号1の2つの非連続アミノ酸の側鎖間の連結を説明することを意味する。
【化3】
【0022】
いくつかの実施形態では、Cth2-Cys10またはその任意の変形の指定は、合成ペプチドの2位および10位でペプチド結合を形成し、チオエーテル架橋を形成するシスタチオニンを説明する。
【0023】
いくつかの実施形態では、配列番号1の合成ペプチドは、式:
【化4】
によって表すことができる。
【0024】
合成ペプチドを産生する方法
本明細書に記載の方法は、(i)複数のアミノ酸および少なくとも1つのポリアミノ酸シントンを使用して、C末端が固相支持体に結合した直鎖ペプチドを化学的に合成することによって始まり、直鎖ペプチドは、1もしくはそれを超えるアミノ酸および/またはポリアミノ酸シントンに保護基を有する。いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンの少なくとも1つのアミン基は、直鎖ペプチドのN末端とは異なる保護基を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、固相支持体は、Wang樹脂、トリチル樹脂、およびRink樹脂からなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態では、固相支持体は、約0.10mmol/g、約0.20mmol/g、約0.30mmol/g、約0.40mmol/g、約0.50mmol/g、約0.60mmol/g、約0.70mmol/g、約0.80mmol/g、約0.90mmol/g、または約1.00mmol/gの充填量を有する。いくつかの実施形態では、固相は、約0.70mmol/gの充填量を有する。いくつかの実施形態では、固相は、約0.90mmol/gの充填量を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンは、式:
【化5】
(式中、P
1およびP
2は、水素またはアミン保護基であり、ただし、P
1およびP
2の両方がアミン保護基である場合、それらは同じアミン保護基ではなく、P
3は、水素またはカルボン酸保護基であり、P
4は、水素またはチオール保護基である)によって表される、化合物である。
【0028】
好ましい実施形態では、P1およびP2は、異なるアミン保護基であり、P3は、カルボン酸保護基であり、P4は、チオール保護基である。
【0029】
いくつかの実施形態では、保護基は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、トリチル、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル(All)、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、ベンジル(Bn)、tert-ブチルジメチルシリル、アリルオキシカルボニル(alloc)、tert-ブチルオキシカルボニル、アセトアミドメチル(Acm)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、および2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)からなる群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態では、アミン保護基P1およびP2はそれぞれ、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、およびカルボキシベンジル(Cbz)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、P1またはP2は、tert-ブチルオキシカボニル(Boc)保護基である。いくつかの実施形態では、P1またはP2は、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である。いくつかの実施形態では、P1はtert-ブチルオキシカボニル(Boc)保護基であり、P2は9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である。
【0031】
いくつかの実施形態では、カルボン酸保護基P3は、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル(All)、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、ベンジル(Bn)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、P3は、アリル(All)保護基である。
【0032】
いくつかの実施形態では、P4は、トリチル保護基である。
【0033】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンのサブユニットは、D配置を有し、例えば、シントンはD-エナンチオマーである。いくつかの実施形態では、D配置のサブユニットを有するポリアミノ酸シントンは、下記式によって表すことができる。
【化6】
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンのサブユニットは、L配置を有し、例えば、シントンはL-エナンチオマーである。いくつかの実施形態では、L配置のサブユニットを有するポリアミノ酸シントンは、下記式によって表すことができる。
【化7】
【0035】
いくつかの実施形態では、ポリアミノ酸シントンのサブユニットは、D配置およびL配置の両方を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、直鎖ペプチドのアミノ酸側鎖は、保護基を有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖保護基は、tert-ブチル(tBu)、トリチル(Trt)、アリル(All)、シクロヘキシル、2-フェニルイソプロピル、アセトアミドメチル(Acm)、ベンジル(Bzl)、4-メチルベンジル(4-MeBzl)、4-メトキシベンジル(4-MeOBzl)、9-フルオレニルメチル(Fm)、tert-ブチルチオ(t-ブチオ)、4-メトキシトリチル(Mmt)、キサンチル(Xan)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-Cl2Bzl)、および2-ブロモベンジルカーボネート(2-BrZ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖保護基は、tert-ブチル(tBu)またはトリチル(Trt)である。
【0037】
いくつかの実施形態では、側鎖に保護基を有する直鎖ペプチドのアミノ酸側鎖は、配列番号1のCys1、Glu3、Cys5、Cys6、Asn7、Tyr11、およびCys13である。
【0038】
いくつかの実施形態では、複数のアミノ酸およびシントンは、カルボジイミド媒介反応によって、または非カルボジイミドカップリング剤、例えば、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1H-ベンゾトリアゾリウム1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-ヘキサフルオロホスフェート(1-)、3-オキシド(HCTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、1-[(1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)-ジメチルアミノ-モルホリノメチレン)]メタナミニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyOxim)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)、またはプロパンホスホン酸無水物(T3P)によって媒介される反応によって結合されて、工程(i)の直鎖ペプチドを形成する。
【0039】
いくつかの実施形態では、複数のペプチドおよび/またはシントン由来の少なくとも1つのアミノ酸は、カルボジイミド媒介反応によって結合されて、工程(i)の直鎖ペプチドを形成する。いくつかの実施形態では、カルボジイミドは、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、カルボジイミドは、DICである。
【0040】
いくつかの実施形態では、カルボジイミド媒介反応混合物は、アミノ酸ラセミ化抑制剤を更に含む。いくつかの実施形態では、ラセミ化抑制剤は、2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド(HOPO)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アゾ-ベンゾトリアゾール(HOAt)、および2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ラセミ化抑制剤は、2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート)である。
【0041】
いくつかの実施形態では、カルボジイミド媒介反応のための溶媒は、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、またはジメチルホルムアミド(DMF)であるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、カルボジイミド媒介反応のための溶媒は、N-メチルピロリジノン(NMP)である。
【0042】
いくつかの実施形態では、ピリジンをカルボジイミド媒介反応と共に使用して、直鎖ペプチドの固体支持体からの早すぎる切断を防止する。
【0043】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は、非カルボジイミドカップリング剤によって結合される。いくつかの実施形態では、非カルボジイミドカップリング剤は、TBTUである。
【0044】
工程(i)の直鎖ペプチドは、本出願では「直鎖12mer」と呼ばれる場合があり、下記式:
【化8】
(配列番号2)によって表すことができ、式中、シスタチオニンチオエーテル側鎖架橋-CH
2-CH
2-S-CH
2-は、
【化9】
で表される。いくつかの実施形態では、下線を引いた1またはそれを超えるアミノ酸の側鎖が保護されている。いくつかの実施形態では、下線を引いた全てのアミノ酸の側鎖が保護されている。
【0045】
工程(i)の直鎖ペプチドが形成された後、工程(ii)において、直鎖ペプチドを(ii)固相支持体から切断して、保護されたペプチドを生成する。
【0046】
いくつかの実施形態では、直鎖ペプチドは、希酸性溶液での処理によって樹脂から切断される。いくつかの実施形態では、希酸性溶液による処理は、側鎖保護基およびポリアミノ酸シントンの保護基を保存する。いくつかの実施形態では、希酸性溶液は、例えば、希トリフルオロ酢酸(TFA)または希ブロモトリメチルシラン(TMSBr)である。いくつかの実施形態では、希酸溶液はTFA溶液である。いくつかの実施形態では、希酸溶液は、ジクロロメタン(DCM)溶液中の1%トリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0047】
保護されたペプチドを生成するための樹脂からの直鎖ペプチドの切断に続いて、保護されていないアミン基、保護されたカルボン酸基、および必要に応じて保護されたアミノ酸側鎖を有するアミノ酸が、工程(iii)において保護されたペプチドのC末端に結合される。
【0048】
いくつかの実施形態では、工程(ii)で得られた保護されたペプチドは、工程(iii)でそのまま使用される。
【0049】
いくつかの実施形態では、保護されたペプチドのC末端に結合したアミノ酸は、システインである。いくつかの実施形態では、システインは、保護されている。いくつかの実施形態では、C末端に結合したアミノ酸は、S-トリチル-L-システイニル-O-t-ブチル-エステルである。いくつかの実施形態では、工程(ii)で得られた保護されたペプチドは、下記式:
【化10】
によって表され得る。
【0050】
(配列番号3)いくつかの実施形態では、下線を引いた1またはそれを超えるアミノ酸の側鎖が保護されている。いくつかの実施形態では、下線を引いた全てのアミノ酸の側鎖が保護されている。
【0051】
工程(iv)におけるC末端へのアミノ酸のカップリングに続いて、1つのアミン保護基および1つのカルボン酸保護基が、工程(iii)で形成された保護されたペプチドから除去されて、保護されていないアミンおよび保護されていないカルボン酸基を有する部分的に保護されていないペプチドが形成される。
【0052】
いくつかの実施形態では、工程(iv)において脱保護されるカルボン酸は、ポリアミノシントンの保護されたカルボン酸基に由来する。
【0053】
保護基が除去されると、工程(v)において、保護されていないアミンおよび保護されていないカルボン酸基が結合されて、環化ペプチドが形成される。
【0054】
工程(v)における環化ペプチドの形成に続いて、工程(vi)において、環化ペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得る。いくつかの実施形態では、全体的な脱保護工程(vi)は、少なくともヨウ化アンモニウム(NH4I)およびチオアニソールを含むカクテルの添加を含む。
【0055】
環化ペプチドが全体的に脱保護されると、工程(vii)において、ペプチドは、折り畳まれて1またはそれを超える追加の架橋を形成し、Cys1 Cth2 Glu3 Leu4 Cys5 Cys6 Asn7 Val8 Ala9 Cys10 Tyr11 Gly12 Cys13(配列番号1)の合成ペプチドを得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、工程(vii)で形成された架橋合成ペプチドは、合成ペプチドの以下のアミノ酸残基:Cys1とCys6、Cth2とCys10、およびCys5とCys13の間の共有結合を含む。いくつかの実施形態では、Cys1とCys6およびCys5とCys13との間の共有結合は、ジスルフィド結合である。いくつかの実施形態では、Cth2とCys10との間の共有結合はチオエーテル結合である。
【0057】
全体的に脱保護されたペプチドのフォールディングに続いて、配列番号1の合成ペプチドを精製する。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法は、合成ペプチドのN末端を1またはそれを超える化学部分で修飾する必要に応じた工程(viii)を含む。いくつかの実施形態では、合成ペプチドのN末端はアセチル基で修飾されている。合成ペプチドのN末端が1またはそれを超える化学部分で修飾されている場合、合成ペプチドは、折り畳み工程(vii)の直後に1回およびN末端修飾の後に1回の2回精製される。
【0059】
いくつかの実施形態では、方法は、溶液から合成ペプチドを沈殿させることを更に含む。いくつかの実施形態では、沈殿工程は、酸性化工程と、それに続く有機溶媒混合物による希釈工程とを含む。いくつかの実施形態では、有機溶媒混合物は、アセトニトリルまたはメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)のうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
式I:
【化11】
の合成ペプチドを調製する方法も本明細書に記載され、この方法は、
(i)C末端樹脂結合Tyr-Glyペプチド(Tyrアミノ酸残基は、保護されている)を、式II:
【化12】
(式中、
P
1およびP
2は、異なるアミン保護基であり、
P
3は、カルボン酸保護基であり、
P
4は、チオール保護基である)
のポリアミノ酸シントンにカップリングさせて式III:
【化13】
の樹脂結合ペプチドを形成する、C末端樹脂結合Tyr-Glyペプチドを式IIのポリアミノ酸シントンにカップリングさせることと、
(ii)式IIIのP
2保護基を除去して、保護されていないアミン基を有する式IV:
【化14】
の樹脂結合ペプチドを得ることと、
(iii)式IVの遊離アミン基を介してP
2-アラニンを式IVの樹脂結合ペプチドにカップリングして、式V:
【化15】
の樹脂結合ペプチドを形成することと、
(iv)式VのP
2保護基を除去して遊離アミン基を得て、続いて遊離アミン基をP
2-アミノ酸にカップリングすることであって、
このアミノ酸の側鎖が、保護されていてもよい、カップリングすることと、
(v)工程(iv)を更に6回繰り返して、式VI:
【化16】
の樹脂結合ペプチドを形成することであって、
少なくとも1つのアミノ酸側鎖が、保護されている、形成することと、
(vi)式VIのペプチドを樹脂から切断して、C末端カルボン酸基を有する直鎖ペプチドを形成することと、
(vii)直鎖ペプチドのC末端カルボン酸基をシステインのアミン基にカップリングして式VIIの保護されたペプチドを得ることであって、
システインが、カルボン酸保護基を含み、
システインアミノ酸の側鎖が、保護されていてもよい、
【化17】
(式中、P
5は、P
3とは異なるカルボン酸保護基である)、得ることと、
(viii)P
2保護基およびP
3保護基を除去して、遊離アミン基および遊離カルボン酸基を得ることと、
(ix)遊離アミン基と遊離カルボン酸基とをカップリングして、式VIII:
【化18】
の環化ペプチドを得ることと、
(x)環化ペプチドを全体的に脱保護して、全体的に脱保護されたペプチドを得ることと、
(xi)2つのジスルフィド結合を形成することによって、全体的に脱保護されたペプチドを折り畳み、式Iの合成ペプチドを得ることと、を含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、P
2-アミノ酸とは、P
1のアミン保護基とは異なるアミン保護基であるアミン保護基でアミン基が保護されたアミノ酸である。例えば、P
2-アラニンは、以下の構造式:
【化19】
を有するであろう。
【0062】
いくつかの実施形態では、方法は、式Iの遊離アミン基をアセチル化して、式IX:
【化20】
の合成ペプチドを得ることを更に含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、P1はアセチル基であり、工程(i)~(ix)は上記のように行われる。しかし、全体的な脱保護工程中の工程(x)において、P1で表されるアセチル基は除去されず、工程(x)折り畳み工程は式IXで表される化合物を形成する。
【0064】
いくつかの実施形態では、式VIIのGlu、Cys、Cys、Asn、GlyおよびCys残基は、側鎖保護基を有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖保護基は、tert-ブチル(tBu)、トリチル(Trt)、アリル(All)、シクロヘキシル、2-フェニルイソプロピル、アセトアミドメチル(Acm)、ベンジル(Bzl)、4-メチルベンジル(4-MeBzl)、4-メトキシベンジル(4-MeOBzl)、9-フルオレニルメチル(Fm)、tert-ブチルチオ(t-ブチオ)、4-メトキシトリチル(Mmt)、キサンチル(Xan)、2,6-ジクロロベンジル(2,6-Cl2Bzl)、および2-ブロモベンジルカーボネート(2-BrZ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、アミノ酸側鎖保護基は、tert-ブチル(tBu)またはトリチル(Trt)である。
【0065】
いくつかの実施形態では、P1およびP2はそれぞれ、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、およびアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から選択される保護基である。いくつかの実施形態では、P1は、tert-ブチルオキシカボニル(Boc)保護基である。いくつかの実施形態では、P2は、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基である。
【0066】
いくつかの実施形態では、P3は、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル(All)、トリチル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、およびベンジル(Bn)からなる群から選択される保護基である。いくつかの実施形態では、P3は、アリル(All)保護基である。
【0067】
いくつかの実施形態では、P4は、アセトアミドメチル(Acm)、tert-ブチル(t-Bu)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)、およびトリチル(Trt)からなる群から選択される保護基である。いくつかの実施形態では、P4は、トリチル保護基である。いくつかの実施形態では、P4は、tert-ブチル保護基である。
【0068】
化合物
【0069】
また、以下の構造式:
【化21】
(式中、
P
1およびP
2は、水素またはアミン保護基であり、ただし、P
1およびP
2の両方がアミン保護基である場合、それらは同じアミン保護基ではなく、
P
3は、水素またはカルボン酸保護基であり、
P
4は、水素またはチオール保護基である)
によって表される、化合物、またはその薬学的に許容され得る塩が本明細書で開示される。
【0070】
いくつかの実施形態では、P1、P2、P3、および/またはP4のうちの少なくとも1つは、水素である。いくつかの実施形態では、P1~P4はそれぞれ水素である。
【0071】
いくつかの実施形態では、P1~P4は、それぞれ保護基である(例えば、P1およびP2はそれぞれアミン保護基であり、P3はカルボン酸保護基であり、P4はチオール保護基である)。
【0072】
いくつかの実施形態では、P1およびP2はそれぞれ、アセチル、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、およびアリルオキシカルボニル(Alloc)からなる群から選択されるアミン保護基である。いくつかの実施形態では、P1はアセチル基である。いくつかの実施形態では、P1は、tert-ブチルオキシカボニル(Boc)保護基である。いくつかの実施形態では、P2は、Fmoc保護基である。
【0073】
いくつかの実施形態では、P3は、メチル、エチル、tert-ブチル、アリル(All)、トリチル、2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)、9-フルオレニルメチル(Fm)、およびベンジル(Bn)からなる群から選択されるカルボン酸保護基である。いくつかの実施形態では、P3は、アリル(All)保護基である。
【0074】
いくつかの実施形態では、P4は、アセトアミドメチル(Acm)、tert-ブチル(t-Bu)、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル(NPYS)、2-ピリジン-スルフェニル(Pyr)、およびトリチル(Trt)からなる群から選択されるチオール保護基である。いくつかの実施形態では、P4は、トリチル保護基である。
【0075】
いくつかの実施形態では、化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、式A:
【化22】
の化合物である。
【0076】
いくつかの実施形態では、式Aの化合物に到達するために、以下のスキームに示すように、3つのビルディングブロックを別々に合成し(パートA~C)、組み合わせて(パートD)、式Aの化合物を合成する。
パートA:
【化23】
パートB:
【化24】
パートC:
【化25】
パートD:
【化26】
【化27】
【0077】
いくつかの実施形態では、式Aの化合物に到達するために、以下のスキームに示すように、ジブロック化合物(Alloc-HCys((Fmoc-Ala-OH)3-イル)-OAll)を最初に合成する。
【化28】
【実施例】
【0078】
以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、本発明に包含される多くの変形および均等物が本開示を読むと当業者に明らかになることから、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0079】
試薬および溶媒
【0080】
特許請求されるペプチドの製造に使用される出発材料、試薬および溶媒をそれぞれ表1~3に列挙する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2】
【表3】
【0081】
実施例1
配列番号1の合成ペプチドの製造プロセス
序論
配列番号1のペプチド、配列番号1のN末端修飾ペプチド、またはその薬学的に許容され得る塩は、計画した臨床試験で使用されることになっており、医薬品適正製造基準(GMP)規制に従って製造された。全ての略語をそれぞれ表2(試薬のリスト)および表3(溶媒のリスト)に列挙する。
【0082】
配列番号1のペプチド、配列番号1のN末端修飾ペプチドまたはその薬学的に許容され得る塩を、以下に記載される合成スキームに従って製造した。合成経路は、固相ペプチド化学の十分に確立された原理によるペプチド鎖の一部の段階的合成を組み合わせた。これに続いて、C末端アミノ酸を組み込むための連続工程、チオエーテル架橋を形成するための環化、折り畳み、一次精製、N末端アセチル化、分取スケールのクロマトグラフィーによる最終精製、および沈殿による固体としての原薬の単離を行った。
【0083】
配列番号1のペプチド、配列番号1のN末端修飾ペプチドまたはその薬学的に許容され得る塩のための例示的な製造プロセスを
図1に示す。ペプチド一次配列を構成する全ての出発材料は、選択された化学と適合する保護された形態で導入される。全ての光学活性アミノ酸残基は、天然に存在する「L」形態で使用される。
【0084】
指定されたシステイン残基間の2つのジスルフィド架橋をもたらす折り畳みは、アセンブリの完了後に誘導される。(2位における)ホモシステイン側鎖と(10位における)システイン側鎖との間のチオエーテル結合は、トリペプチドビルディングブロックにおいて予め形成される。その後の環化は、下記のようにラクタム結合の形成によって誘導される(工程5)。最終的なクロマトグラフィー精製の後、原薬を沈殿および乾燥によって単離する。
【0085】
ペプチド合成
工程1:段階的固相アセンブリ
【0086】
一次アミノ酸配列を、グリシン残基(合成ペプチドのGly
12)を組込み済みの2-クロロトリチル樹脂から始まる反復プロセスによって構築した。表4~5に詳述されている9回の連続サイクルを以下のように行った:
-ジメチルホルムアミド(DMF)中の塩基(ピペリジン)で処理し、続いてDMFで徹底的に洗浄することによる、先に導入したアミノ酸残基からのN末端Fmoc保護基の除去。この脱保護は、最後の取り込み工程(グルタミン酸)の後に実行されなかった。脱保護反応をHPLCによってモニターした。
-DIPEAの存在下、TBTUの作用により、NMP中で行われる第1の反応(樹脂に固定されたグリシンへのチロシンのカップリング)を除いて、Oxyma(登録商標)の存在下、DICの作用により、NMP中での次のFmoc保護アミノ酸またはビルディングブロック(関連するものとしてその側鎖上に適切に保護されている)のカップリング。カップリング反応をHPLCによってモニターした。
-DMFによる徹底的な洗浄。
【表4】
【表5】
【0087】
カップリング
【0088】
NMPを、アミノ酸、DeFmoc溶液を溶解するための溶媒、カップリング剤、キャッピング溶液およびピリジン-キック(pyridine-kick)を溶解するための溶媒として使用した。ピリジン-キックは、固体支持体からの成長中のペプチドの部分的な切断を回避するための、カップリングサイクルごとの3.6当量のピリジン添加である。以下に考察するようにシステイン残基をカップリングする場合を除いて、全てのカップリング反応でピリジンキックを使用した。DMFは、カップリングおよびDefmoc工程後の洗浄工程にのみ使用した。DMFではなくNMPを使用したため、カップリング時間は、標準アミノ酸では90分から180分に、トリペプチドビルディングブロックでは180分から360分に延長する必要があった。標準的なカップリングのために2.0当量の代わりに1.2当量のトリペプチドのみを使用した。標準プロセスのための条件を表4に示す。保護された直鎖ペプチドのSPPSは、プロトコル(表5)に記載されているように、予め充填されたH-Gly-CT樹脂を用いたTribute自動合成装置で0.75mmolスケールで実施した。ピリジンキックは、酸性カップリング条件のために、樹脂からのペプチドの早すぎる切断を最小限に抑えるために使用した。
【0089】
分析HPLC LC-MS分析は、高含有量の欠失配列についてのヒントを示さない。実験は、1.2当量のトリペプチドビルディングブロックが完全なカップリングに適していることを示した。
【0090】
システインのラセミ化(ピリジン-キック)
【0091】
酸性カップリング条件をもたらすDIC/Oxymaを使用したSPPSは、樹脂からのペプチドの部分的な切断を引き起こす可能性がある。したがって、ピリジン-キックが確立された。上記のように、ピリジンキックは、反応を完了させるためのピリジンの一部の添加である。ラセミ化がシステインの基本的なカップリングのために起こり得ることが知られている。したがって、ラセミ化のリスクに関して、システイン残基はアルカリ条件(ピリジンによって誘導される等)に特に感受性であるため、システイン残基のカップリング中にピリジンキックは実施されなかった。そのため、システイン-カップリングのために、L-トリペプチドの代わりにメチオニンを使用した試験ペプチドを、ピリジンキックありで1回およびなしで1回合成した。
【0092】
全てのカップリングにピリジンキックを使用すると、D-システイン含有量は1.49%となり、システイン-カップリングでピリジンキックなしで合成されたペプチドでは1.35%になる。また、SPPSの樹脂収率に影響はなかった。結論として、得られた生成物の収率および品質への影響は最小限であった。しかし、ラセミ化のリスクを減らすために、システイン-カップリングおよびトリペプチド(保護されたシステインに化学的に類似)カップリングにはピリジン-キックを使用しなかった。
【0093】
樹脂の充填量
【0094】
下流での処理のための新しい材料を生成する間、樹脂充填量の影響を調査した。一実験では、0.7mmol/gの充填量で予め充填されたH-Gly-CT樹脂を使用し、一方、別の実験では、0.9mmol/gの充填量で予め充填されたH-Gly-CT樹脂を使用した。粗ペプチドは、樹脂に対して同じ品質および同じ収率を示す。
【0095】
SPPSラン
【0096】
構築は、0.65mmol/gの予め充填したH-Gly-2CT樹脂に対して7.5mmolスケールで行った。各カップリング工程をKaiser試験によってモニターした。結果を表6に示す。温和な試験切断を行い、UHPLCによって分析した。87.3%ANの純度に達した。樹脂に対する収率は98%であった。
【0097】
第2のSPPSバッチを自動運転した。スケールは再び7.5mmolであり、樹脂充填量は0.69mmol/gであった。樹脂に対する定量的(≧100%)収率で89.4%ANの純度が達成された。
【表6】
【0098】
工程2:樹脂-ペプチド結合の切断
【0099】
ペプチドは、Cys1残基の側鎖保護基ならびにN-アルファBoc保護基を保存する温和な酸性処理下で樹脂から切断される。この反応の完了は時間に特異的である。反応混合物を蒸発によって濃縮し、溶媒をDMFに交換する。
【0100】
ガラス製品に付着するゴム状固体の形成を回避するために、C末端システインの直接カップリングを試験した。これにより、1つの単離工程が省略され、サイクル時間が短縮された。直接カップリングを温和な切断バッチで試験し、ペプチドを沈殿させるために異なる貧溶媒を既に試験した。バッチを油に蒸発させ、DCMで再構成し、全ての残留貧溶媒を除去するために再び蒸発させた。DCMで再構成した後、ペプチドをそのままシステインカップリングに使用した。表7は切断条件を示す。
【0101】
【0102】
工程3:C末端残基の組み込みおよび保護基のGlu3からのIn-Situ脱保護
【0103】
工程2からの切断されたペプチド溶液をDIC/HOPOによって活性化し、H-Cys(Trt)-OtBuとのカップリングを、塩基としてDIEAの存在下、DMF中で行った。反応が完了したら、HPLCによってモニターしたところ、N-αGlu
3残基のFmoc保護基を、ピペリジンを反応混合物に直接添加することによって切断した。HPLCによってモニターされる反応の完了の際に、反応の生成物を抽出、沈殿、濾過および乾燥によって単離した。表8は、システインカップリング条件を示す。
【表8】
【0104】
工程4:Hcy2からの保護基除去
【0105】
その後、C-アルファ-Hcy2のO-アリルエステル保護基を、それをDCMに溶解し、捕捉剤としてのフェニルシランの存在下でパラジウム含有触媒(Pd(PPh3)4)でO-アリルエステルを切断することによって除去した。反応の進行をHPLCによってモニターした。脱アリル(DeAllyl)条件は以下のとおりである。
1)Pd(PPh3)4(0.05当量)をDCMに溶解する
2)フェニルシラン(2当量)および13merをPd(PPh3)4/DCM溶液に添加する
3)1時間撹拌し、HPLCによって反応の進行をモニターする
4)脱アリル化が完了すると、溶液は次の工程の準備ができている。
【0106】
工程5:Hcy2→Glu3カップリングによる環化
【0107】
工程4が完了したら、HOPOおよびDICを反応混合物に直接添加して、Hcy2のカルボン酸官能基とGlu3のアミン官能基との間のカップリングによって環化を誘導した。この反応をHPLCによってモニターした。表9は環化条件を示す。
【0108】
全ての環化濃度(5、10、25または50mg/mL)について、クロマトグラムでオリゴマーのピークは見えなかった。4つ全ての実験を同じスケールで実行し、各実験の粗収量は40±2mgであった。50mg/mLでの環化について最大ピーク面積が得られ、これは、粗製物にペプチドの最大量が含まれることを示した。
【0109】
環化も100mg/mLで試験した。これを達成するために、カップリング剤を脱アリル溶液に直接添加した。クロマトグラムからで判定して、オリゴマー化を示すピークは見られない。両方の環化濃度(50mg/mLおよび100mg/mL)は、非常に類似した結果を与える。より高い濃度は、純度に関していかなる利益ももたらさなかった。
【表9】
【0110】
工程6:全体的な脱保護
【0111】
Pd除去
【0112】
環化が完了したら、反応混合物を真空下での蒸発によって濃縮し(元の体積の約50%まで)、Pd系触媒の除去に特異的な捕捉剤であるSi-チオールによって処理した。複合体化したPd捕捉剤を濾別し、回収した濾液を蒸発によって更に濃縮した。表10はPd除去条件を示す。
【表10】
【0113】
次いで、依然として保護された環化13merペプチドを、TFA中のDTT、水、チオアニソール、TISおよびNH
4Iの混合物の添加によって完全な脱保護に供した。反応が完了したら、粗製の脱保護されたペプチドをn-ヘプタンおよびMBTE中で沈殿させることによって回収した。得られた固体を真空下で乾燥させた。表11は、全体的な脱保護条件を示す。
【表11】
【0114】
工程7:ジスルフィド架橋による折り畳み
【0115】
工程6からの粗製脱保護されたペプチドを重炭酸アンモニウムに添加し、DMSOを添加して、それぞれCys
1およびCys
6、ならびにCys
5およびCys
13の側鎖間の2つのジスルフィド架橋の形成によって折り畳みを誘導した。折り畳み反応をHPLCによってモニターした。表12は折り畳み工程に用いた条件を示す。
【表12】
【0116】
工程8:1次(1回目の)精製
【0117】
工程7が完了したら、反応混合物をTFAで酸性化し、セライトを濾過助剤として添加し、得られたスラリーを濾過する。透明な濾液を、C18(3)固定相を充填した分取HPLCカラムに直接ロードした。アセトニトリル中0.1%TFAおよびアセトニトリル:水(5:95v/v)中0.1% TFAにおける勾配溶出によって精製を行った。個々の画分を収集し、選択は分析HPLCモニタリングに基づいた:≧90%(面積%)の純度を示す画分をプールする。
【0118】
工程9:N末端アセチル化
【0119】
折り畳み溶液中の折り畳まれたペプチドの直接アセチル化を試験した。15当量のAcOSuを添加した後、ごくわずかの変換しか検出されなかった。pH調整および追加のAcOSu投入の後、依然として実質的な変換は得られなかった。これを、第2の折り畳み溶液を用いて繰り返し、同じ結果が得られた。Ac2Oの添加は、より良好な変換をもたらさなかった。
【0120】
この化合物のアセチル化反応について所見を得るために、15当量のAcOSuおよび2当量のAc2Oをそれぞれ使用して、2つの実験を一晩実行した。両反応は有望な結果を示し、AcOSuとの反応は15時間後に完了しなかった。
【0121】
Ac2O、それぞれ3当量および4当量の増加した当量を用いて反応を繰り返し、18時間後にモニターした。より多量のアセチル化剤は、反応を完了させるようであり、反応時間の短縮は、特に遅く溶出する2つの最大の不純物についての、副反応の量を減少させるようであった。
【0122】
したがって、最終プロセスは、4.0当量のAc
2Oで実行すると確定した。したがって、アセチル化工程9を、DMSOを含有する重炭酸アンモニウム溶液に希釈した一次(1回目の)精製工程8から収集したプールから実行し、次いで、N-αCys
1残基を無水酢酸によってアセチル化した。反応をHPLCによってモニターした。表13はアセチル化工程の条件を示す。
【表13】
【0123】
工程10:二次精製
【0124】
アセチル化反応混合物を酢酸アンモニウム溶液で1/1に希釈し、30%(v/v)水酸化アンモニウム水溶液でpHを7~8に調整し、C18(3)固定相を充填した分取HPLCカラムに注入することによって最終精製に供した。精製は、アセトニトリルと25mM水性酢酸アンモニウム:アセトニトリル(95:5、v/v)の勾配溶出によって行った。
【0125】
個々の画分を収集し、選択は分析HPLCモニタリングに基づいた:95%(面積%)以上の純度を示し、1.0%(面積%)超の単一不純物を示さない画分をプールする。
【0126】
出発材料を0.1%未満に減少させるために最適化されたアセチル化条件で、2回目の精製は、材料のわずかな研磨を提供し、トリフルオロアセテートからアセテートへのイオン交換を促進した。
【0127】
工程11:沈殿、濾過による単離および乾燥
【0128】
二次精製工程から収集した精製プールを真空下での蒸発によって50~100mg/mLの目標濃度まで濃縮した。次いで、生成物を酸性化(酢酸)、アセトニトリルで希釈、およびMBTEの添加によって沈殿させた。沈殿物を、0.2μmフィルタを通して回収し、MBTE/アセトニトリル溶液で徹底的に洗浄した。条件を表14に示す。
【0129】
固体を30%(v/v)水性アセトニトリル、続いて水で加湿し、真空下での最終乾燥によって単離して、配列番号1の合成ペプチドを得た。
【表14】
【0130】
実施例2
Alloc-HCys(Fmoc-Ala-OH)-3-イル)-OAllの調製
以下の反応スキームは、表題化合物の調製を示す。
【化29】
【0131】
【0132】
5L三口フラスコ中、500gの(S)-3-アミノジヒドロフラン-2(3H)-オン臭化水素酸塩を1Lの水に溶解した。1Lの水中の230gのNaOHの溶液を添加した。反応をTLCでモニターした。反応終了後、濃HClを添加してpHを7.5に調整した。230gのNa2CO3を添加し、混合物を0℃に冷却した。331gのアロキシカルボニルクロリド(Alloc-Cl)を滴下添加し、その間、温度を0~10℃に保ち、pHを7.5に保った。混合物を一晩撹拌した。次いで、溶媒を除去し、次いで、2500mLのDMFを添加した。230gのNaHCO3を添加した後、665gの臭化アリルを添加した。混合物を一晩撹拌した後、7000mLの水を添加して反応をクエンチした。混合物をMTBE(5L×3)で抽出し、合わせた有機相を800mLのNaHCO3、800mLのKHSO4および800mLのブラインで順次洗浄した。溶媒MTBEを除去した後、残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO2)によって精製して、273.9g油状生成物を得た。1H NMR (400 MHz,クロロホルム-d) δ 6.02 - 5.65 (m, 3H), 5.39 - 5.07 (m, 4H), 4.58 - 4.17 (m, 4H), 3.80 - 3.52 (m, 2H), 3.08 (s, 1H), 2.77 - 2.17 (m, 1H), 2.17 - 2.01 (m, 1H), 1.88 - 1.64 (m, 1H)。ESI-MS C11H17NO5 [M+H]+の計算値:244.12;実測値:244.08.
【0133】
Alloc-Abu(4-Br)-OAllの合成
【化31】
【0134】
10Lの三口フラスコ中で、378gのAlloc-HSer-OAllおよび216gのEt3Nを3400mLのDCMに溶解した。次いで、215gのメシルクロリド(MsCl)を滴下添加し、その間、温度を0~10℃に維持した。反応終了後、アセトン3400mLを加え、続いて1356gのLiBrを少しずつ加えた。反応物を25~30℃で一晩維持した。200gのLiBrおよび520mLのアセトンを添加して、反応を完了させた。次いで、溶媒を除去し、残留物を153gのAlloc-HSer-OAllから出発する別のバッチと合わせた。572gのAlloc-Abu(4-Br)-OAllをカラムクロマトグラフィー(SiO2)後に得た。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 5.99 - 5.75 (m, 2H), 5.52 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.40 - 5.11 (m, 4H), 4.63 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 4.55 (d, J = 5.4 Hz, 2H), 4.48 (td, J = 8.4, 5.1 Hz, 1H), 3.42 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 2.50 - 2.34 (m, 1H), 2.33 - 2.13 (m, 1H)。ESI-MS C11H16BrNO4 [M+H]+の計算値:306.03;実測値:306.11。
【0135】
(Fmoc-Cys-O(t-Bu))
2の合成
【化32】
【0136】
210gのL-シスチン(L-Cystine)および4kgの酢酸t-ブチルを5Lの三口フラスコ中で混合した。301.2gのHClO4を滴下添加した。混合物を一晩撹拌した。2.3kgのK2CO3および4.0kgの水を添加した。混合物を一晩撹拌し、次いで、20gのセライトに通して濾過した。分離後、有機層を1Lのブラインで洗浄し、次いで濃縮して258.8gの油状残留物を得た。残留物を2400LのTHFに溶解した後、430gのFmoc-OSuを加えた。その後、126gのN-メチルモルヒネを滴下添加した。反応混合物を2時間撹拌した。THFの溶媒を除去し、1500mLのDCMを加えて残留物を溶解した。有機溶液を10%クエン酸溶液、飽和NaHCO3およびブラインで順次洗浄した。溶媒を除去した後、500mLのEtOAcを添加した。混合物を2時間スラリー化した(slurred)後、濾過した。濾過ケークを乾燥させて、453.3gの(Fmoc-Cys-O(t-Bu))2を得た。収率は65%であった。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.75 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.39 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 7.29 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 5.79 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 4.74 - 4.53 (m, 1H), 4.50 - 4.29 (m, 2H), 4.29 - 4.17 (m, 1H), 3.37 - 3.07 (m, 2H), 1.50 (s, 9H)。
【0137】
Fmoc-Cys-O(t-Bu)の合成
【化33】
【0138】
4300mLのTHF中の367gの(Fmoc-Cys-O(t-Bu))2の溶液に、170mLの(t-Bu)3Pを添加した。混合物を2時間撹拌した後、550mLの水を添加して反応をクエンチした。混合物を一晩撹拌した。THFの溶媒を除去し、1500mLのEtOAcを添加した。混合物を0.5時間撹拌し、有機物を450mLの10%クエン酸および450mLのブラインで順次洗浄した。有機溶液を次の工程で直接使用した。
【0139】
Alloc-HCys((Fmoc-Ala-O(t-Bu))-3-イル)-OAllの合成
【化34】
【0140】
10Lの4つ口フラスコに、1080gのテトラブチルアンモニウムブロミドを3350mLの飽和NaHCO3に溶解した。EtOAc中の257gのAlloc-Abu(4-Br)-OAllの500mLの溶液および最後の工程から得られた2.8LのFmoc-Cys-O(t-Bu)溶液を添加した。混合物を一晩撹拌した。1Lのブラインで洗浄した後、有機溶液を濃縮した。カラムクロマトグラフィー(SiO2)により418gの油状残留物を得た。収率は80%であった。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.76 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.61 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.40 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 7.31 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 5.97 - 5.81 (m, 2H), 5.70 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.43 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.37 - 5.12 (m, 4H), 4.63 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 4.61 - 4.43 (m, 4H), 4.39 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 4.23 (t, J = 7.1 Hz, 1H), 4.12 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 3.08 - 2.85 (m, 2H), 2.72 - 2.47 (m, 2H), 2.22 - 2.07 (m, 1H), 2.02 - 1.86 (m, 1H), 1.49 (s, 9H)。ESI-MS C33H40N2O8S[M+Na]+についての計算値:647.24;実測値:647.24.
【0141】
Alloc-HCys((Fmoc-Ala-OH)-3-イル)-OAllの合成
【化35】
【0142】
5Lフラスコに308gのAlloc-HCys((Fmoc-Ala-O(t-Bu)-3-イル)-OAll、2430mLのTFAおよび53gのi-Pr3SiHを加えた。溶液を20~25℃で一晩撹拌した後、溶媒を除去した。520mLのDCMを添加し、溶液を濃縮して残りのTFAを除去した。520mLのDCMを添加し、溶液を濃縮して残りのTFAを除去した。1LのMTBEを添加して残留物を溶解した。有機溶液を4Lの飽和NaHCO3水溶液で中和した。混合物を濾過した後、固体を3LのDCMに溶解した。有機溶液を1Lの20%クエン酸溶液で洗浄して酸性化した。得られた有機溶液を900mLの10%クエン酸溶液、500mLのブラインで順次洗浄した。有機層を150gのMgSO4で乾燥させ、次に、混合物を濾過した。溶媒を除去し、残留物を撹拌して固化させ、237gの固体生成物を得た。収率は84.4%であった。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.75 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.60 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.39 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.30 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 6.43 (s, 3H), 5.99 - 5.79 (m, 3H), 5.55 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.39 - 5.13 (m, 4H), 4.76 - 4.28 (m, 8H), 4.23 (dd, J = 7.0 Hz, 1H), 3.22 - 2.76 (m, 2H), 2.74 - 2.48 (m, 2H), 2.14 (s, 1H), 1.97 (s, 1H)。ESI-MS C29H32N2O8S [M+H]+の計算値:569.20;実測値:569.12。
【0143】
実施例3
Fmoc-L-Cth[3-Boc-L-Cys(Trt),4-Oアリル]-OHビルディングブロックの調製
Fmoc-L-Cth[3-Boc-L-Cys(Trt),4-Oアリル]-OHビルディングブロックに到達するために、以下のスキームに示すように、3つのビルディングブロックを別々に合成し(パートA~C)、組み合わせて(パートD)、表題化合物を合成する。
パートA:
【化36】
パートB:
【化37】
パートC:
【化38】
パートD:
【化39】
【化40】
【0144】
他の実施形態
本発明の範囲は、本明細書に記載の特定の実施形態によって限定されない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかになる。そのような修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。全ての値は近似値であり、説明のために提供されていることを更に理解されたい。
【0145】
全ての特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコルは、本出願を通して引用され、その開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】