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特表2024-541794樹状細胞を標的する新規なペプチド、及びこれを含む癌治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】樹状細胞を標的する新規なペプチド、及びこれを含む癌治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241106BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 39/106 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20241106BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/47
A61K38/10
A61K38/02
A61P35/00
A61P37/04
A61K48/00
A61K39/106
A61K39/00 H
A61K47/64
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513491
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2022016492
(87)【国際公開番号】W WO2023075421
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0146081
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】308026861
【氏名又は名称】インダストリー ファウンデーション オブ チョンナム ナショナル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ヘン
(72)【発明者】
【氏名】リ,シ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェック,ヴァーマ
(72)【発明者】
【氏名】プース,サオ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ソル ヒ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC06
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA18
4C084BA41
4C084CA53
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA03
4C085BA20
4C085BB01
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045CA42
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド、及びこれを含む癌治療用組成物に関する。具体的には、生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含む癌治療又は予防用組成物に関する。また、本発明の生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンは、一つのペプチドで連結されるか、それぞれのペプチドに含まれてよい。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状細胞を標的とする、配列番号1~配列番号11からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項2】
配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号9及び配列番号10からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項3】
配列番号6、配列番号9及び配列番号10からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項4】
配列番号6のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項5】
生体内で樹状細胞と結合してその活性を誘導することを特徴とする、請求項1に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項6】
腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項7】
前記腫瘍抗原4個を連続して含むことを特徴とする、請求項6に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項8】
前記腫瘍抗原は、配列番号22のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項6に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項9】
前記フラジェリンは、配列番号23のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項6に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項10】
配列番号6のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、及び配列番号23のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項6に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項11】
配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項12】
長期生存を誘導することを特徴とする、請求項6に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項13】
免疫増強効果を有することを特徴とする、請求項6に記載の癌治療又は予防用ペプチド。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項のペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1のペプチドを含む癌治療又は予防用薬学組成物。
【請求項16】
腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の癌治療又は予防用薬学組成物。
【請求項17】
前記腫瘍抗原4個を含むことを特徴とする、請求項16に記載の癌治療又は予防用薬学組成物。
【請求項18】
請求項1のペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含み、
前記請求項1のペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンが、一つのペプチドに連結されているか、又は、それぞれのペプチドで含まれることを特徴とする、請求項16に記載の癌治療又は予防用薬学組成物。
【請求項19】
請求項1のペプチドを含む癌治療又は予防用ワクチン組成物。
【請求項20】
腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の癌治療又は予防用ワクチン組成物。
【請求項21】
前記腫瘍抗原4個を含むことを特徴とする、請求項20に記載の癌治療又は予防用ワクチン組成物。
【請求項22】
請求項1のペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含み、
前記請求項1のペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンが、一つのペプチドに連結されているか、又は、それぞれのペプチドで含まれることを特徴とする、請求項20に記載の癌治療又は予防用ワクチン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド(a novel peptide targeting dendritic cells in vivo)、及びこれを含む癌治療用組成物に関する。具体的には、生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含む癌治療又は予防用組成物に関する。また、本発明の生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンは一つのペプチドで連結されるか、それぞれのペプチドに含まれてよい。
【背景技術】
【0002】
既存の癌治療方法には、手術、放射線療法、及び抗癌剤を用いた化学療法などで癌細胞を極力除去する方法があり、これらは比較的広範囲に癌治療に利用できるが、副作用を伴うだけでなく完治が難しいため、癌の根本的な治療法にはならない実情である。特に、転移癌や再発癌はたいてい手術が不可能であり、化学的治療剤に抵抗性を有する場合が多いため、このような癌患者のための新しい治療剤の開発が切に望まれる実情である。
【0003】
かかる従来の癌治療法の限界を克服するために、抗癌免疫治療研究が活発に行われており、最近では、世界的に臨床での使用が許可されている。抗癌免疫治療は、体内免疫細胞の特性を用いて癌細胞に対する免疫活性を高めるか、癌細胞が免疫細胞の攻撃から回避する方法を抑制させることによって癌を治療する方法であり、免疫細胞療法(Immune cell therapy)、免疫チェックポイント抑制剤(Immune checkpoint inhibitor)、治療用癌ワクチン(Therapeutic cancer vaccine)、抗体治療剤(Therapeutic antibodies)などがある。
【0004】
治療用癌ワクチンは、自然に発生した癌組織(intact tumour cell)、癌細胞株に由来する癌溶解物(tumor cell lysate)又は腫瘍抗原(tumor antigen)を用いた抗癌ワクチン(cancer vaccine)と、癌細胞由来抗原又は癌溶解物を露出させて生成した自己由来樹状細胞(dendritic cell,DC)を用いたDC癌ワクチン(DC-based cancer vaccine)がある。
【0005】
最近に研究開発されている樹状細胞を用いた癌治療剤は、既存のいかなる治療剤よりも患者指向的であり、記憶免疫によって長期効能を示すことができるため、同一癌に対する転移や再発の防止に非常に効果的であると共に安全である。したがって、新しい抗癌免疫治療法として期待され、種々の癌に対する治療用ワクチンとして開発されている。特に、樹状細胞癌ワクチンは、原発癌を手術で除去した後に転移及び再発を防止できる治療剤として用いることができ、癌治療の市場で相当な競争力を持つようになるであろう。
【0006】
樹状細胞(Dendritic Cell,DC)は、哺乳類免疫系の抗原提示細胞であり、膜性或いは棘のような樹枝状の突起を持っている。樹状細胞の主な機能は、抗原物質を処理して免疫系のT細胞に提示することである。したがって、樹状細胞は、非感作Tリンパ球を活性化させる主要な抗原標識細胞で、自然免疫体系と適応免疫体系との間でメッセンジャーの役割を担う。現在まで免疫システムを用いた癌治療が多数の動物実験から証明されたし、ヒトのTリンパ球によって認識される腫瘍特異的抗原の同定が免疫療法の発達を促進している。
【0007】
樹状細胞を標的とする様々な抗癌ワクチン戦略が研究されてきた。一部は、樹状細胞を試験管内(in vitro)で操作することを基盤とし、残り一部は、生体内(in vivo)で樹状細胞を刺激することを基盤とする。前者では、樹状細胞は、患者から採取した血液細胞から分化される。すなわち、体外において腫瘍抗原ペプチド、腫瘍溶解物(lysates)、死滅腫瘍細胞、又は自己腫瘍から抽出された熱衝撃タンパク質と共に培養及び成熟させ、最終的には、患者に再び注入される。しかしながら、最近の研究結果によれば、未成熟樹状細胞を細胞治療剤として用いる場合に却って癌をより活性化させる結果につながり、十分に成熟した成熟樹状細胞を用いなければならないという問題点がある他、個人に合わせた個別化治療剤であるため高コストとなる短所もある。後者では、樹状細胞の刺激は、ペプチド、タンパク質、放射線照射腫瘍細胞又は樹状細胞をターゲットとする抗原性ペプチドを含有する他のウイルスを患者内に注入した後に行われる。しかし、樹状細胞の活性化は、細胞傷害性Tリンパ球を効果的に活性化する能力に影響されるので、樹状細胞活性化の程度は繊細な要素であると判断される。
【0008】
一方、鞭毛のフィラメントを構成する構成単位タンパク質をフラジェリン(flagellin)という。フラジェリンは規則的に組み合わされてフィラメントを形成し、バクテリアが動き得るように働く。このようなフラジェリンは、パターン認識受容体を刺激する物質で、ワクチン担体タンパク質又はワクチン補助剤の開発の対象として研究されてきた。抗原とフラジェリンとの融合タンパク質は、肺炎、ウェストナイル発熱、マラリア、結核、及び細菌性歯周疾患をはじめとする様々な感染性疾病に対する実験用ワクチンとして効果的であることが立証され、フラジェリンによるTLR5活性化は、造血細胞と放射線による胃腸組織を保護し、癌細胞の生存と成長に影響を及ぼすものとして報告されたことがある。また、韓国登録特許第10-0795839号において、本発明者らは、敗血症ビブリオ菌の構成成分であるフラジェリン(FlaB)が宿主細胞のToll様受容体5(Toll-like receptor 5)に作用して強力な免疫調節効果を誘導することにより、優れた粘膜ワクチン補助剤(adjuvant)の効能を示すことを証明した。
【0009】
したがって、本発明の発明者らは、生体内で樹状細胞を標的する新規なペプチドをバイオパニングによって発掘したし、前記樹状細胞を標的する新規なペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含む組換え一体型ポリペプチドワクチンを開発し、癌治療に対してより優れた効果を有する組成物を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0795839号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Lee SE,Kim SY,Jeong BC,Kim YR,Bae SJ,Ahn OS,et al.A bacterial flagellin,Vibrio vulnificus FlaB,has a strong mucosal adjuvant activity to induce protective immunity.Infect Immun.2006;74(1):694-702.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、生体内樹状細胞を標的する新規なペプチドを提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、樹状細胞を標的する新規なペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含む癌治療又は予防用ペプチドを提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含む癌治療又は予防用薬学組成物を提供することを目的とする。
【0015】
本発明は、生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含む癌治療又は予防用ワクチン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドを提供する。
【0017】
また、前記ペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0018】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドは、配列番号1~配列番号11からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含んでよく、好ましくは、ペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号9及び配列番号10からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含んでよい。より好ましくは、配列番号6、配列番号9及び配列番号10からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含んでよく、最も好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列を含んでよい。
【0019】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドは、生体内で樹状細胞と結合してその活性を誘導するものであってよい。
【0020】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドは、腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むものであってよく、前記腫瘍抗原を4個連続して含むものであってよい。
【0021】
前記腫瘍抗原は、配列番号22のアミノ酸配列を含んでよく、前記フラジェリンは配列番号23のアミノ酸配列を含んでよい。
【0022】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、及び配列番号23のアミノ酸配列を含んでよく、好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列を含んでよい。
【0023】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドは、長期生存を誘導するものであってよく、免疫増強効果を有するものであってよい。
【0024】
また、本発明は、前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドを含む癌治療又は予防用薬学組成物を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドを含む癌治療又は予防用ワクチン組成物を提供する。
【0026】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドを含む癌治療又は予防用薬学組成物、又はワクチン組成物は、腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むものであってよく、前記腫瘍抗原を4個連続して含むものであってよい。
【0027】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドを含む癌治療又は予防用薬学組成物、又はワクチン組成物は、樹状細胞を標的するペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンが一つのペプチドで連結されるか、それぞれのペプチドに含んでよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の生体内樹状細胞を標的する新規なペプチド(the novel peptide targeting dendritic cells in vivo)、腫瘍抗原及びフラジェリンを含む組成物は、強力な樹状細胞の活性化及び免疫増強効能を誘導することで、腫瘍抗原特異抗癌免疫反応を増加させ、優れた癌抑制効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の全般を示す図である。
【0030】
図2】マウスにおける生体内バイオパニング過程の概略図である。
【0031】
図3】マウスにおいて生体内バイオパニングのラウンドによるファージミド粒子の濃縮及び頻度を示す。
【0032】
図4】マウスにおいて生体内バイオパニングのラウンドによって得られたペプチドの配列を示す。
【0033】
図5】マウスにおいて2回の生体内バイオパニング後に選択された6個のペプチドを示す。
【0034】
図6】骨髄由来樹状細胞(BMDC)において本発明の樹状細胞標的ペプチドの細胞吸収を測定した結果を示す。
【0035】
図7】リンパ節細胞、脾臓樹状細胞及び骨髄由来樹状細胞(BMDC)において本発明の樹状細胞標的ペプチドの細胞吸収を測定した結果を示す。
【0036】
図8】マウス鼻腔にペプチドを投与した後、共焦点顕微鏡観察による頸部リンパ節(cLN)細胞における本発明のDCpep6ペプチドの位置を示す。
【0037】
図9】本発明のペプチド成分の概略図である。
【0038】
図10】FlaB、E7ΔNLS、EF及びDEFのSDS-PAGE及びウェスタンブロット結果を示す。
【0039】
図11】E7FL、E7ΔNLS、FlaBの単独投与及び混合投与によるマウスの腫瘍体積及びサイズを示す。
図12】E7FL、E7ΔNLS、FlaBの単独投与及び混合投与によるマウスの腫瘍体積及びサイズを示す。
【0040】
図13】FlaB、EF及びDEFのTLR-5刺激によるNF-κBの活性レベルを示す。
【0041】
図14】骨髄由来樹状細胞(BMDC)においてEF及びDEFの細胞吸収をフローサイトメトリー分析によって測定した結果を示す。
【0042】
図15】共焦点顕微鏡観察による骨髄由来樹状細胞(BMDC)及びRaw264.7細胞におけるEF及びDEFの位置を示す。
【0043】
図16】EF及びDEF投与後に時間による生体リンパ節内分布を示す。
【0044】
図17】排液鼠径リンパ節(iLN)細胞においてEF及びDEFの細胞吸収を測定した結果を示す。
【0045】
図18】E7Pep+F、E7ΔNLS、EF及びDEF投与によるマウスの生存率を示す。
図19】E7Pep+F、E7ΔNLS、EF及びDEF投与によるマウスの生存率及び腫瘍体積を示す。
【0046】
図20】EF及びDEFによる骨髄由来樹状細胞(BMDC)のCD80及びCD86発現程度を示す。
【0047】
図21】E7ΔNLS、EF及びDEF投与によるマウスの末梢血液CD8細胞においてE7-CTLエピトープに選択的なテトラマー陽性細胞を測定した結果を示す。
図22】E7ΔNLS、EF及びDEF投与によるマウスの末梢血液CD8細胞においてE7-CTLエピトープに選択的なテトラマー陽性細胞を測定した結果を示す。
【0048】
図23】E7ΔNLS、EF及びDEF投与によるマウスの脾臓又は腫瘍リンパ節においてIFN-γ分泌細胞を測定した結果を示す。
図24】E7ΔNLS、EF及びDEF投与によるマウスの脾臓又は腫瘍リンパ節においてIFN-γ分泌細胞を測定した結果を示す。
【0049】
図25】EF及びDEF投与による野生型(WT)、TLR5欠乏(TLR5-/-)及びNLRC4欠乏(NLRC4-/-)マウスの生存率及び腫瘍体積を示す。
【0050】
図26】EF及びDEF投与による野生型(WT)及びNLRC4欠乏(NLRC4-/-)マウスのCD8T細胞の分裂指数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、添付の図面を参照して、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施態様及び実施例を詳細に説明する。ただし、本願は様々な形態で具現可能であり、ここで説明する実施態様及び実施例に限定されない。
【0052】
本願明細書全体を通じて、ある部分がある構成要素を「含む」としたとき、これは、特に断らない限り、他の構成要素を排除することではなく、他の構成要素をさらに含んでよいことを意味する。
【0053】
本発明は、バイオパニング(biopanning)によって発掘した生体内で樹状細胞を標的する新規なペプチドを提供する。
【0054】
前記生体内樹状細胞を標的する新規なペプチドは、脾臓及びリンパ節から分離された樹状細胞、及び様々な骨髄から誘導された樹状細胞を標的する能力に優れ、生体内で樹状細胞を効果的に活性化させることができる。
【0055】
一実施態様において、本発明の生体内樹状細胞を標的する新規なペプチドは、配列番号1~配列番号11のアミノ酸配列を含むものであってよく、好ましくは、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号9及び配列番号10のアミノ酸配列を含むものであってよい。より好ましくは、配列番号6、配列番号9及び配列番号10のアミノ酸配列を含むものであってよく、最も好ましくは配列番号6のアミノ酸配列を含むものであってよい。
【0056】
本発明において、「バイオパニング(biopanning)」は、ファージディスプレイ(phage display)をはじめとするバクテリアディスプレイ(bacterial display)又はmRNAディスプレイ(mRNA display)、リボソームディスプレイ(ribosome display)、酵母ディスプレイ(yeast display)などのような様々なディスプレイ技術によって構成されたペプチドライブラリー(peptide library)から与えられたターゲットに親和性を有するペプチドを選別する技術である。
【0057】
本発明の「樹状細胞(dendritic cell,DC)」とは、主要組織適合複合体(major histocompatibility complex,MHC)/ペプチド複合体によってT細胞受容体と相互作用してT細胞の活性化及び分化を調節することにより、自然免疫反応と適応免疫反応とを連結する上で中核的な役割を担う専門的な抗原提示細胞である。樹状細胞は、ヒト末梢循環血液に由来する場合に、CD14が陽性であり、樹状細胞に分化するにつれてCD11c及びCD68細胞表示因子が陽性を示すことが知られている。
【0058】
本発明において「CD11c」とは、integrin CD18 familyの一つで、CD11c/CD18の形態でヘテロ二量体(heterodimer)形態をなしており、補体レセプター4(complement receptor 4)として貪食作用に関与する。ヒトのCD11cは主に、単球(monocytes)の原形質膜(plasma membrane)、マクロファージ(macrophage)、ナチュラルキラー細胞(natural killer cell)、及び大部分の樹状細胞(denritic cell)に発現することが知られているが、マウスではほとんど樹状細胞にのみ発現し、樹状細胞の最良の標識子(marker)として知られている。
【0059】
本発明は、樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドを提供する。
【0060】
また、前記ペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0061】
一実施態様において、前記ペプチドは、配列番号1~配列番号11からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含んでよく、好ましくは、ペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号9及び配列番号10からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含んでよい。より好ましくは、配列番号6、配列番号9及び配列番号10からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含んでよく、最も好ましくは、配列番号6のアミノ酸配列を含んでよい。
【0062】
前記ペプチドは、生体内で樹状細胞と結合してその活性を誘導することができる。
【0063】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドは、腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含んでよい。
【0064】
一実施態様において、前記ペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、及び配列番号23のアミノ酸配列を含んでよい。
【0065】
一実施態様において、前記ペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を4個連続して含んでよく、好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列(DCpep6-4xE7ΔNLS-FlaB)を含んでよい。
【0066】
前記配列番号22のアミノ酸配列は腫瘍抗原を示し、前記腫瘍抗原は、腫瘍細胞にのみ発現する腫瘍特異的抗原で、突然変異によるタンパク質、腫瘍特異的癌遺伝子又はウイルス性癌遺伝子であってよい。
【0067】
一実施態様において、前記腫瘍抗原は、HPV16E7(E7FL)からN末端核局在化配列(nuclear localization sequence;NLS)が欠失したE7NLSであってよい。
【0068】
前記配列番号23のアミノ酸配列は、敗血症ビブリオ菌(Vibrio vunigicus)に由来するフラジェリンB(FlaB)を示し、前記フラジェリン(flagellin)はバクテリア鞭毛のフィラメントを構成する主要タンパク質であり、鞭毛性細菌が感染された場合に、感染された宿主内で免疫反応を誘導することができる。具体的には、人体の細胞膜の表面に存在するToll様受容体5(TLR5;Toll like receptor 5)は、前記フラジェリンとの相互作用によって細胞内信号伝達を誘発し、これによって転写因子であるNF-κBの発現が増加して先天性免疫信号活性化を誘導するだけでなく、獲得免疫反応を調節することができる。また、人体の細胞内に存在するNAIP(NLR family,apoptosis inhibitory protein)は、前記フラジェリンとの相互作用によってNLRC4(NLR containing a caspase activating and recruitment domain protein 4)インフラマソーム(inflammasome)活性化を誘発し、これによって転写因子であるNF-κBの発現が増加して先天性免疫信号活性化を誘導するだけでなく、獲得免疫反応を調節することができる。
【0069】
一実施態様において、前記フラジェリンは、敗血症ビブリオ菌(Vibrio vunigicus)に由来するフラジェリンB(FlaB)であり、韓国登録特許第10-0795839号に開示の方法によって製造されてよく、これらの文献はその全文が本発明に参照によって援用される。
【0070】
本発明は、生体内樹状細胞を標的する癌治療用又は予防用ペプチドを含む癌治療又は予防用薬学組成物を提供する。
【0071】
また、本発明は、生体内樹状細胞を標的する癌治療用又は予防用ペプチドを含む癌治療又は予防用ワクチン組成物を提供する。
【0072】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドを含む癌治療又は予防用薬学組成物、又はワクチン組成物は、腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含んでよい。
【0073】
前記樹状細胞を標的する癌治療又は予防用ペプチドを含む癌治療又は予防用薬学組成物、又はワクチン組成物は、樹状細胞を標的するペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンが一つのペプチドで連結されるか、それぞれのペプチドに含んでよい。
【0074】
一実施態様において、前記薬学組成物又はワクチン組成物は、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、及び配列番号23のアミノ酸配列を含むペプチドを含むか、配列番号6のアミノ酸配列を含むペプチド、配列番号22のアミノ酸配列を有するペプチド、及び配列番号23のアミノ酸配列を含むペプチドをそれぞれ含んでよい。
【0075】
一実施態様において、前記ペプチドは、配列番号22のアミノ酸配列を4個連続して含んでよく、好ましくは、配列番号25のアミノ酸配列(DCpep6-4xE7ΔNLS-FlaB)を含んでよい。
【0076】
本発明の薬学組成物又はワクチン組成物は、抗原非特異的及び特異的免疫誘導物質を含み、生体内での全般的な免疫反応及び特定抗原に対する特異的な免疫反応を誘導できる。
【0077】
本発明の薬学組成物又はワクチン組成物は、抗腫瘍効果を示すことができる。
【0078】
本発明の薬学組成物又はワクチン組成物は、免疫増強効果を示すことができる。
【0079】
本発明の薬学組成物又はワクチン組成物は、前記組成物が投与された対象において長期生存を誘導することができる。
【0080】
本発明に使われた用語「薬学組成物」は、特定の目的のために投与される組成物を意味する。本発明の目的上、本発明の薬学組成物は、生体内樹状細胞を標的するペプチド、腫瘍抗原及びフラジェリンを含む癌治療又は予防用組成物である。
【0081】
本発明に使われた用語「ワクチン」は、宿主であるヒトを含む動物から当該病原体に対する免疫反応を誘導することによって、当該病原体の感染又は再感染の予防、当該病原体による症状の重症度の減少又は症状の除去、又は当該病原体やその病原体による疾患の実質的又は完全な除去を含む意味である。また、本発明に使われる用語「ワクチン」は、宿主であるヒトを含む動物において当該特定抗原に対する免疫反応を調節することによって、当該抗原と関連した疾患症状の重症度の減少又は症状の除去、又は当該疾患の実質的又は完全な除去を含む意味である。したがって、本発明の「ワクチン組成物」は、当該病原体の感染前に予防的に、又は当該病原体の感染後に治療的に、ヒトを含む動物に投与されてよい。
【0082】
本願に使われた用語「治療」は、組成物の投与によって疾患の疑い及び発病個体の症状が好転するか有益に変更される全ての行為を意味し、「予防」は、組成物の投与によって疾患の発病を抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。
【0083】
本発明によれば、樹状細胞を効果的に活性化させることができる他にも、腫瘍細胞特異的免疫を効果的に誘導でき、顕著に向上した抗癌免疫を誘導することができる。
【0084】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明するが、下記の実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本願発明の範囲を限定するためのものではない。
【0085】
[実施例1]
樹状細胞標的ペプチドを発掘するための生体内バイオパニング(biopanning)
図2に示すように、本発明の生体内樹状細胞(DC)を標的するペプチドを発掘するために下記のように行った。
【0086】
生体内バイオパニングのために、10μlのCPL3ペプチドファージミドライブラリー(1012pfu/ml)を、Balb/cマウスの各鼻孔に注入した。ライブラリーファージは3匹のマウスに注入した。生体内パンニング6時間後に、マウスを安楽死させ、頸部リンパ節(cLN)を採取した。採取したcLNを遠心分離し、0.2% PBSTで3回以上洗浄した後、100μlの0.2M グリシン-HClバッファー、pH 2.2で1回洗浄した。その後、cLNを同一のバッファーに入れて常温で10分間培養した後、グリシンバッファー(glycine buffer)を、冷たい1x PBSに入れ換えた。cLNのカプセルを軽く砕け、細胞懸濁液を40μm細胞濾過器(Falcon,352340)に通過させた。生成された単一細胞懸濁液を遠心分離し、グリシンバッファーで5分間処理した後、細胞をPBSで洗浄してMACSバッファーに懸濁させた。
【0087】
細胞懸濁液は、CD11c MicroBeads MACS(Miltenyi Biotec,130-052-001)で標識させ、DCは、メーカーの推奨事項に従って磁場を適用して精製した。精製されたDCをグリシンバッファーにさらに5分間入れた後、細胞をPBST(1x PBS+0.05% Tween20)を用いて3回以上洗浄した。その後、細胞内ファージを溶出するために、100μlグリシンバッファーに懸濁して高速遠心分離(13000rpm、10分)を用いて5回の凍結解凍サイクルで破壊した。細胞破壊は、トリパンブルー染色で確認した。サイクルの末尾で同一体積の1x PBS(pH 7.5)を添加してグリシンバッファーを中和した。最終的に調製物を遠心分離し、溶出されたファージを含む上澄液を回収して-20℃で保管した。調製物のファージ力価は、標準プロトコルによって決定された。ファージミドを含む個別バクテリアクローンは、アンピシリン(200μg/ml)含有のルリア培地(Luria Broth)でOD600値が0.5になるまで培養した。全ての45個のバクテリアクローンの同一のボリュームを共に混合し、13時間、M13KO7ヘルパーファージを用いてファージを溶出させた後、大腸菌TG1で増幅させた。細胞のない上澄液のファージは、PEG/NaCl沈殿によって回収された(4℃/o/n)。上記(1ラウンド)と類似な方式により、1ラウンドで増幅されたファージを用いて2ラウンドのパンニングを行ったし、ラウンドによって得られたファージのDNA配列は、ジデオキシ塩基配列法(dideoxy sequencing)によって決定された。
【0088】
前記2回の生体内バイオパニング後に、ラウンドによるファージ回収率を計算して図3に示し、ラウンドによって得られたペプチドの配列を図4に示した。
【0089】
図3及び図4に示すように、2回の生体内バイオパニング後にファージの回収率は増加し、ペプチド配列の多様性は減少し、反復して現れるペプチド配列を確認した。
【0090】
また、前記2ラウンドでシーケンシングされた50個のペプチドのうち、樹状細胞(DC)標的化をテストするために多重決定された6個のペプチドを選択し、下記表1に示した。
【0091】
【表1】
【0092】
樹状細胞標的能力を確認するためにペプチドの視覚化が必要であり、視覚化のためにはビオチン(biotin)をタギング(tagging)しなければならない。また、前記ビオチンタギングのためには、リジン(Lys;K)残基が必要であるが、前記ペプチド1~5はアミノ酸配列中にリジンを含まないため、アミノ酸特性の上、リジンと類似な電気化学的特性を有するアルギニン(Arg;R)をリジンで置換した。したがって、最終に決定された6個のペプチド(DCpep 1~6)を、下記表2及び図5に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
[実施例2]
樹状細胞標的ペプチドの標的効率確認
上記の実施例1で決定された6個のペプチドの樹状細胞(DC)標的効率を確認するために下記のように行った。
【0095】
C57BL/6マウスの大腿骨及び脛骨をフラッシングして骨髄細胞を分離した後、赤血球(RBC)をACK溶解(lysis)(Gibco,A10492-01)によって除去した。細胞を遠心分離した後、70μmフィルターで濾過し、10%熱-不活性化FBS、100units/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンが添加されたRPMI 1640培地に懸濁した。細胞を、GM-CSF(10ng/mL;R&D systems,415-ML-010)及びIL-4(10ng/mL;R&D systems,415-ML-010)を含むRPMI 1640培養培地に懸濁し、細胞培養皿に接種して37℃、5% COで培養した。培養培地は2日ごとに新しく入れ換えた。7~8日に、底に弱く付いてある樹状細胞(DC)を穏やかなピペッティングで収集して骨髄由来樹状細胞(BMDC)を準備した。脾臓樹状細胞は、メーカー指示に従ってCD11 MicroBeads MACS(Miltenyi Biotec,130-052-001)によって準備した。
【0096】
ペプチドは、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル化学(9-fluorenylmethyoxycarbonyl chemistry)を用いて合成したし、高圧液体クロマトグラフィーを用いて純度95%以上に精製したし、側鎖にビオチン化させた(韓国、Anygen Inc.)。ペプチドは、適切な溶媒に0.5mg/mlの濃度で溶解させた。合成されたペプチドの樹状細胞(CD11c)標的化をテストするために、頸部リンパ節(cLN)細胞、脾臓樹状細胞及び骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、RPMI1640培地で前記6個のペプチドを処理して2時間培養した。培養した後、細胞を採取して洗浄し、抗マウスCD11 APC-接合抗体(eBioscience,Clone: N418,170114-82)又はストレプトアビジン-AF488で染色した。FACSを用いて樹状細胞(CD11c)集団を分析し、その結果を図6及び図7に示した。
【0097】
図6に示すように、骨髄由来樹状細胞からペプチドの細胞吸収を測定した結果、DCpep1、2及び5の標的能力は、陰性対照群の標的能力と類似であったが、DCpep3、4及び6は、CD11c-BMDCを効率的に標的化したことが見られた。特に、DCpep6ペプチドが顕著に高い値を示した。
【0098】
また、図7に示すように、前記優れた効率を示す3個のペプチド(DCpep 3、4及び6)は、頸部リンパ節細胞、脾臓樹状細胞及び骨髄由来樹状細胞のいずれにおいても増加した様相を示した。特に、DCpep6ペプチド(配列番号6)が顕著に高い値を示した。
【0099】
したがって、バイオパニングによって発掘した本発明の樹状細胞標的ペプチドのうちDCpep3、DCpep4及びDCpep6ペプチドが優れた標的効率を示すことを確認したし、特に、DCpep6ペプチド(配列番号6)が最も優れた標的効率を有することが分かる。また、リンパ節及び脾臓から分離された樹状細胞、及び骨髄から誘導された樹状細胞のいずれにも標的することが分かる。
【0100】
[実施例3]
樹状細胞標的ペプチドの標的能力確認
上記の実施例2で選択されたDCpep6ペプチドの生体内での樹状細胞に対する標的能力を確認するために下記のように行った。
【0101】
BALB/cマウスに10μl/nostrilの総体積で適切な濃度のペプチドを鼻腔から投与した。以前に樹状細胞に非特異的に現れたスクランブルされたペプチドを陰性対照群として使用した。接種6.5時間後に、マウスを犠牲させ、頸部リンパ節(cLN)を採取した。cLNのカプセルを優しく破って単一細胞懸濁液を準備した。1x PBSで優しく洗浄した後、細胞を抗マウスCD11 APC接合抗体(eBioscience,Clone: N418,170114-82)又はストレプトアビジン-AF488で染色し、FACSを用いて分析した。
【0102】
図8に示すように、陰性対照群と比較して、本発明のDCpep6ペプチドは、頸部リンパ節においてCD11c細胞の細胞質に明確に局限されることが見られた。したがって、バイオパニングによって発掘した本発明のDCpep6ペプチド(配列番号6)の樹状細胞(CD11c)標的能力を確認した。
【0103】
[実施例4]
ペプチドの製造
下記表3及び図9に示すように、HPV16E7による腫瘍形成の可能性を排除するためのN末端核局在化配列(nuclear localization sequence;NLS)が欠失したHPV16E7(E7FL)変異体であるE7NLSペプチドを生産するために、切断されたE7に該当するDNA断片を含むpET30a+プラスミド(Novagen,69909-Merck Millipore)を構築した。挿入DNA断片は、コドン最適化されたDNA鋳型と配列番号14及び15のプライマーを用いてPCRで増幅した。
【0104】
敗血症ビブリオ菌(Vibrio vunigicus)由来FlaBは、Lee SE,et al.A bacterial flagellin,Vibrio vulnificus FlaB,has a strong mucosal adjuvant activity to induce protective immunity.Infect Immun.2006;74(1):694-702に開示された方法によって生産された。
【0105】
4xE7ΔNLS-FlaB(EF)のペプチドを生産するために、まず、合成された4xE7ΔNLS DNA断片(NdeI-E7ΔNLS-EcoRI-E7ΔNLS-SalI-E7ΔNLS-SalI-E7ΔNLS-HindIII)を、NdeI及びHindIIIの特定制限酵素(RE)によって認識されるオーバーハングを有するpET30a+プラスミドに複製した。次に、FlaBのDNA断片はそれぞれ、HindIII及びXhoIオーバーハングを有する配列番号18及び19のプライマーを用いてPCRで生成した。前記FlaBのDNA断片は、HindIII及びXhoI制限酵素によって分解され、4xE7ΔNLSのC末端に融合してpET30a+::4xE7ΔNLS::FlaBを生成した。
【0106】
DCpep6-4xE7ΔNLS-FlaB(DEF)のペプチドを生成するために、3xE7ΔNLS::FlaBのDNA断片をEcoRI-XhoI制限酵素を用いてpET30a+::4xE7ΔNLS::FlaBから抽出し、pET30a+プラスミドにクローニングしてpET30a+::3xE7ΔNLS::FlaBを生成した。次に、合成されたDCpep6-E7ΔNLS(NdeI-DCpep6-E7ΔNLS-EcoRI)のDNA断片をそれぞれ、NdeI及びEcoRIオーバーハングを有する配列番号16及び20のプライマーを用いてPCRで増幅し、pET30a+::3xE7ΔNLS::FlaBのN末端にクローニングすることによってpET30a+::DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaBを生成した。
【0107】
発現ベクトルのDNA塩基配列は、Macrogen Online Sequencing Order System(http://dna.macrogen.com/kor/)からジデオキシ鎖終結塩基配列法(dideoxy-chain termination sequencing)で確認した。生成されたプラスミドを適格大腸菌BL21細胞に形質転換させた。タンパク質発現は、0.2mM IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactoside)を処理し、20℃で18時間培養して誘導したし、細胞は、遠心分離でペレット化して-80℃に保管した。バクテリア細胞ペレットは、50mlの溶解バッファー(pH8;50mM NaHPO、300mM NaCl、10mMイミダゾール、0.1% Triton X-100、0.1% Tween、及び20μMフッ化フェニルメチルスルホニル)で溶解させた。18,000rpmで30分間遠心分離した後、メーカーの指針に従って無細胞上澄液を、Ni-NTA agarose beads(Qiagen,Hilden,Germany)含有のカラムにローディングした。
【0108】
組換えペプチドの純度は、SDS-PAGE及びBALB/cマウスから生成された抗E7又は抗FlaB抗体を用いたウェスタンブロットで確認し、その結果を図10に示した。脂質多糖類(LPS)汚染は、TritonX-114(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を用いて除去し、残されたTritonX-114の残余物は、1mlのタンパク質に対して0.3gのBio-beads(登録商標)-2と共に培養し、メーカーの指針に従ってBio-Beads(登録商標)SM-2(Bio-Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA)を用いて除去した。残留LPS含有量は、gel-clotting Endosafe LAL kit(Charles River,Charleston,SC)を用いて決定した。タンパク質製剤のLPSレベルは、FDA指針(マウス当たりに0.15EU/30g未満)以下に維持された。
【0109】
【表3】
【0110】
前記方法によって製造されたE7FL、E7ΔNLS(E)、FlaB(F)、4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)のペプチド配列を、下記表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
[実施例5]
E7ΔNLSの腫瘍抗原効能評価
7~8週齢の雌SPF C57BL/6マウスは、ORIENT(キョンギド・ソンナムシ)から購入し、TC-1細胞は、37℃、5% COで10%熱-不活性化FBS、100units/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンが添加されたRPMI1640培地で培養した。腫瘍は、各マウスの右横腹中央に100μl PBSに5×10TC-1細胞を皮下注射して確立した。腫瘍直径が3~5mmに到達すると、腫瘍を有するマウスを無作為に分け、麻酔後に200μl PBS、4μg FlaB(F)、10μg E7FL(EFL)、10μg E7FL+4μg FlaB(EFL+F)、8μg E7ΔNLS及び8μg E7ΔNLS+4μg FlaB(E+F)を腫瘍周辺に5日間隔で3回投与した。腫瘍サイズは3日間隔で測定し、腫瘍体積は腫瘍体積(V)=(腫瘍長さ)×(腫瘍幅)×(腫瘍高さ)/2で計算した。
【0113】
図11及び図12に示すように、抗腫瘍活性を測定した結果、E7ΔNLS(E)及びE7FL(EFL)は類似のレベルで腫瘍抑制を誘導し、フラジェリン(F)が補強されたE7ΔNLS+FlaB(E+F)及びE7FL+FlaB(EFL+F)は、より優れたレベルで腫瘍抑制を誘導することが見られた。一方、フラジェリン(F)投与だけでは腫瘍の成長を抑制できていないことが見られた。
【0114】
したがって、本発明のE7ΔNLSペプチドが最適の腫瘍抗原であることを確認すると共に、フラジェリン(FlaB)が抗原媒介腫瘍抑制を向上させることができることを確認した。
【0115】
[実施例6]
ペプチドのTLR5活性能力評価
HEK-Blue(登録商標)hTLR5細胞(InvivoGen,hκb-htlr-5)及びHEK-Blue(登録商標)検出(InvivoGen,hb-det2)分析システムを用いて4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)のTLR5依存的NF-κB刺激活性を測定した。また、EC50は、広範囲なタンパク質濃度(AAT Bioquestウェブサイト、0.0375nM~19.29nM)で各タンパク質濃度に対して3重OD 620nm値を用いて計算した。
【0116】
図13に示すように、NF-κBの活性レベルを測定した結果、4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、容量依存的に活性が増加することが見られ、TLR5刺激活性を誘導することを確認した。また、4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)のEC50はそれぞれ、0.38nM及び0.32nMで、FlaBのEC50(0.73nM)に比べて格別に低いことが見られたし、このことから、本発明の4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)がTLR5結合活性を妨害しないでTLR5結合モチーフを安定化させることが分かる。さらに、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)が4xE7ΔNLS::FlaB(EF)と比較してより優れた効果を示すことが分かる。
【0117】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、構造的又は機能的に他のペプチドを含むにもかかわらず、生物学的活性を安定して保つことを確認した。
【0118】
[実施例7]
ペプチドの樹状細胞(CD11)標的能力評価
上記の実施例2と同じ方法によって準備した骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、RMPI1640培地で各濃度の4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)で処理して2時間培養した。PBSのみを処理した細胞を陰性対照群として使用した。培養した後、細胞を、3%のFBSが含まれた冷たい1x PBSで2回洗浄し、抗マウスCD11c抗体(eBioscience,Clone:N418,25-0114-82)で4℃で1時間染色し、室温で10分間4%パラホルムアルデヒド(T&I,BPP-9004)で固定させた。メーカー指針(Invitrogen,00-8333-56)に従って細胞を透過キットを用いて透過した後、抗FlaB抗体を用いて染色し、FACSを用いて樹状細胞(CD11c)集団を分析した。その結果を図14に示した。
【0119】
また、BMDC又はRaw264.7細胞をRMPI1640培地で20μg/mlの4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)で処理して2時間培養した。培養した後、細胞を採取して洗浄し、室温で15分間100%メタノールで固定させた後、抗マウスCD11 APC接合抗体と、核を染色するDAPIを入れ、室温で1時間染色した。冷たい1x PBSで2回洗浄した後、共焦点顕微鏡を用いて樹状細胞(CD11c)内の位置を観察した。その結果を図15に示した。
【0120】
図14に示すように、骨髄由来樹状細胞において4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)の細胞吸収を測定した結果、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は濃度依存的方式で細胞吸収を示したのに対し、4xE7ΔNLS::FlaB(EF)ではほとんど見られなかった。
【0121】
また、図15に示すように、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)がCD11c細胞の細胞質に位置し、句読点パターン(punctuated pattern)で蓄積されることを確認した。
【0122】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、樹状細胞標的ペプチド(DCpep6)を含むことにより、優れた樹状細胞(CD11c)標的能力を有することが分かる。
【0123】
[実施例8]
ペプチドの生体内分布確認
精製された4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)を、4℃でFNR675-NHSエステル(BioActs,Korea)と混合し、暗所で一晩撹拌しながら保持した。標識されたEF-FNR675又はDEF-FNR675を遠心フィルター(10kDaカットオフ)(Amicon Ultra -4,UFC801024)を用いて非接合染料から分離した後、PBSを用いて洗浄した。その後、UV-Vis分光光度計(spectrophotometer)(UV-2700,Shimadzu,Japan)を用いてFNR675-NHSエステルの検量線から、接合されたタンパク質の量を決定した。
【0124】
C57BL/6マウスの右側鼠経部にPBS、50μg EF-FNR675及び50μg DEF-FNR675を皮下投与した。投与して1、6、12及び24時間後に排液鼠径リンパ節(iLN)を分離し、蛍光イメージングを決定して図16に示した。また、投与6時間後の排液鼠径リンパ節(iLN)細胞を準備し、FACSを用いて樹状細胞(CD11c)集団を分析して生体内での樹状細胞標的化を決定し、図17に示した。
【0125】
図16に示すように、DEF-FNR675(DEF)を投与した場合、投与6時間後に蛍光信号が検出され、投与12時間後に、より強い蛍光信号が検出されたし、投与24時間後に蛍光信号が減少したことが見られた。一方、EF-FNR675(EF)はDEF-FNR675(DEF)と比較してより低い蛍光信号を示した。
【0126】
また、図17に示すように、DEF-FNR675(DEF)を投与した場合に、より高い蛍光信号を示し、投与6時間後にCD11c細胞から検出されることが見られた。
【0127】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、生体内に投与されると、リンパ循環によって排液リンパ節に効率的に到達するだけでなく、生体内で樹状細胞(CD11c)と相互作用できたということを確認した。また、生体内に投与されたDEFは、投与24時間以内に排液リンパ節から除去されることが分かる。
【0128】
[実施例9]
ペプチドの抗腫瘍効能評価
上記の実施例5と同じ方法によって腫瘍保有マウスに本発明の一体型ワクチンを投与し、マウスの生存率及び腫瘍体積を測定した。陽性対照群としては、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導ペプチドとして知らされたHPV16 E7 CTLペプチド(アミノ酸49-57:RAHYNIVTF)を投与した。
【0129】
図18に示すように、E7ΔNLS+FlaB(E+F)及びDCpep6-4xE7ΔNLS-FlaB(DEF)を投与した群は、E7ΔNLS(E)を投与した群よりも長く生存することが見られたし、特に、DCpep6-4xE7ΔNLS-FlaB(DEF)を投与した場合に、最も長い生存を維持することが見られた。また、HPV16 E7 CTLペプチド+FlaB(E7Pep+F)を投与した群に比べても顕著に長い生存を示した。
【0130】
また、図19に示すように、DCpep6-4xE7ΔNLS-FlaB(DEF)を投与した場合に腫瘍体積が最も少なく示されたし、HPV16 E7 CTLペプチド+FlaB(E7Pep+F)を投与した群に比べても顕著に少ない体積を示した。
【0131】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、優れた生体内抗腫瘍効能を有することを確認した他にも、長期に生存を維持させ得ることを確認した。また、生体内樹状細胞を標的するペプチド(DCpep6)、腫瘍抗原(E7ΔNLS)及びフラジェリン(FlaB)を含む本発明のペプチドは、腫瘍抗原とフラジェリンのみを含むペプチドに比べてより優れた抗腫瘍効能を有することを確認した。
【0132】
[実施例10]
ペプチドの免疫反応評価
【0133】
10-1.抗原提示細胞活性化
【0134】
上記の実施例2と同じ方法によって準備した骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、PBS、0.5μg/ml 4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及び0.5μg/ml DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)で24時間処理した後、蛍光物質で標識された抗体で氷上で染色した後、フローサイトメトリー分析で分析した。
【0135】
図20に示すように、BMDC表面上のCD80及びCD86発現を測定した結果、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)はCD80及びCD86の発現を向上させたのに対し、4xE7ΔNLS::FlaB(EF)は、CD80及びCD86の発現に統計的に有意な変化を誘導しないことが見られた。
【0136】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、抗原提示細胞(Antigen presenting cell;APC)を活性化させることを確認した。
【0137】
10-2.抗原特異的T細胞免疫反応
上記の実施例5と同じ方法によって腫瘍保有マウス及び腫瘍非保有マウスに本発明のペプチドを投与してマウスの末梢血液を収集した。RBC溶解(lysis)バッファーを用いてRBCを除去した血液を、テトラマー抗体(PE-conjugated HPV16H-2Db-RAHYNIVTF、TB-5008-1、MBL)及びCD8抗体で染色し、フローサイトメトリー分析で分析した。
【0138】
図21に示すように、腫瘍を保有しているマウスのCD8細胞から細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープ特異的テトラマー+細胞を測定した結果、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)を投与した群において、PBS、E7ΔNLS(E)及び4xE7ΔNLS::FlaB(EF)を投与した群と比較して顕著に高いレベルを示した。
【0139】
また、図22に示すように、腫瘍を保有していないマウスも、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)を投与した群において顕著に高いレベルを示した。
【0140】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、抗原特異的T細胞免疫反応を効果的に誘導することを確認した。
【0141】
10-3.細胞傷害性Tリンパ球(CTL)ペプチド特異的免疫反応
【0142】
上記の実施例5と同じ方法によって腫瘍保有マウス及び腫瘍非保有マウスに本発明のペプチドを投与し、マウスの脾臓(SPL)又は腫瘍リンパ節(TDLN)での単一細胞懸濁液を準備した。1×10 SPL又は2.5×10 TDLN細胞を96ウェル濾過(Filtration)ELISpotプレート(Merc,HAMAS4510)に入れ、1μg/ml E7CTLペプチド(アミノ酸49-57:RAHYNIVTF)で刺激した。10ng/mlコンカナバリンAで刺激された細胞を陽性対照群として使用した。脾臓(SPL)から分離した細胞は、培養2日後又は腫瘍リンパ節(TDLN)から分離した細胞は培養5日後に、メーカーの指針に従ってマウスIFN-γ ELISpotセット(BD Bioscience,551083)を用いてIFN-γ生産細胞を検出した。IFN-γ生産細胞(SPOT)は、CTL-ImmunoSpotアナライザー及びImmunoSpot Professional Softwareバージョン5.0(Cellular Technology,Shaker Heights,OH,USA)を用いて分析した。
【0143】
図23に示すように、腫瘍を保有しているマウスの脾臓(SPL)及び腫瘍リンパ節(TDLN)からIFN-γ分泌細胞を測定した結果、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)を投与した群において、PBS、E7ΔNLS(E)及び4xE7ΔNLS::FlaB(EF)を投与した群と比較して顕著に高いレベルを示した。
【0144】
また、図24に示すように、腫瘍を保有していないマウスも、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)を投与した群において顕著に高いレベルを示した。
【0145】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、CTLペプチドによる特異的免疫反応を効果的に誘導することを確認した。
【0146】
結果として、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)は、生体内で抗原特異的免疫反応を効果的に誘導することを確認したし、このような免疫調節活性誘導によって優れた抗腫瘍免疫反応を誘導できることが分かる。
【0147】
[実施例11]
ペプチド媒介免疫反応の信号伝達経路評価
野生型(WT)、TLR5欠乏(TLR5-/-)及びNLRC4欠乏(NLRC4-/-)マウスグループの右側横腹中央にTC-1細胞を移植し、腫瘍サイズの直径が約3~5mmに到達した時に、PBS単独200μl、4xE7ΔNLS::FlaB(EF)20μg、及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)20μgを5日間隔で3回、腫瘍周囲に投与した。腫瘍保有マウスの腫瘍体積及び生存を測定し、図25に示した。さらに、TLR5又はNLRC4欠乏(ノックアウト)がTC-1腫瘍成長に影響を及ぼさないことを、事前実験から確認した。
【0148】
図25に示すように、TLR5欠乏(TLR5-/-)マウスにおいて、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)を投与した場合に、PBSグループと比較して有意により長い生存を誘導し、腫瘍体積が減少することが見られたが、野生型マウスにおける場合と比較して顕著に低いレベルだった。また、NLRC4欠乏(NLRC4-/-)マウスでは、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)を投与した場合に、腫瘍体積及び生存期間が改善されていないことが見られた。
【0149】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)のアジュバント(補助剤)機能、すなわち、FlaB(F)が、TLR5よりはNLRC4インフラマソーム(inflammasome)媒介活性化によって作用することを確認した。
【0150】
[実施例12]
ペプチド媒介CD8T細胞活性化評価
上記の実施例2と同じ方法によって準備した骨髄由来樹状細胞(BMDC)に、1μg/mLの4xE7ΔNLS::FlaB(EF)及びDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)で24時間活性化させた。TC-1腫瘍保有マウスのCD8脾臓細胞は、メーカーの指示に従ってMagniSort(登録商標) Mouse CD8 T Cells Enrichment kit(Invitrogen,8804-6822)を用いて製造したし、5μM CFSEで標識した。EF又はDEFで刺激したBMDCは、10%牛胎児血清(Hyclone,Logan,UT)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Tech-nologies,Grand Island,NY,USA)と50mM 2-メルカプトエタノール(Sigma,516732)が補充されたRPMI1640培地で3日間1:5の割合で、CFSEで染色されたCD8細胞と共同培養した。CD8T細胞増殖は、フローサイトメトリー分析を用いてCFSE希釈によって評価した。
【0151】
図26に示すように、DCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)で刺激した場合に、野生型(WT)マウスにおいてCD8T細胞の分裂指数が顕著に増加したが、NLRC4欠乏(NLRC4-/-)マウスでは却って減少することが見られた。
【0152】
したがって、本発明のDCpep6::4xE7ΔNLS::FlaB(DEF)がCD8T細胞を活性化させることを確認したし、これは、NLRC4インフラマソーム(inflammasome)信号伝達経路の影響を受けることが分かる。
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10
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図20
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図24
図25
図26
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号1~配列番号11からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項2】
配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号9及び配列番号10からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項3】
配列番号6、配列番号9及び配列番号10からなる群から選ばれるいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項4】
配列番号6のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項5】
生体内で樹状細胞と結合してその活性を誘導することを特徴とする、請求項1に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項6】
腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項7】
前記腫瘍抗原4個を連続して含むことを特徴とする、請求項6に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項8】
前記腫瘍抗原は、配列番号22のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項6に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項9】
前記フラジェリンは、配列番号23のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項6に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項10】
配列番号6のアミノ酸配列、配列番号22のアミノ酸配列、及び配列番号23のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項6に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項11】
配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項12】
長期生存を誘導することを特徴とする、請求項6に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項13】
免疫増強効果を有することを特徴とする、請求項6に記載の樹状細胞を標的とするペプチド。
【請求項14】
請求項1~11のいずれかに記載の樹状細胞を標的とするペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載樹状細胞を標的とするペプチドを含む癌治療又は予防用薬学組成物。
【請求項16】
腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の癌治療又は予防用薬学組成物。
【請求項17】
前記腫瘍抗原4個を含むことを特徴とする、請求項16に記載の癌治療又は予防用薬学組成物。
【請求項18】
前記腫瘍抗原及び前記フラジェリンを含み、
前記樹状細胞を標的とするペプチド、前記腫瘍抗原及び前記フラジェリンが、つのペプチドに連結されているか、又は、それぞれのペプチドで含まれることを特徴とする、請求項16に記載の癌治療又は予防用薬学組成物。
【請求項19】
請求項1~13のいずれかに記載の樹状細胞を標的とするペプチドを含む癌治療又は予防用ワクチン組成物。
【請求項20】
腫瘍抗原及びフラジェリンからなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の癌治療又は予防用ワクチン組成物。
【請求項21】
前記腫瘍抗原4個を含むことを特徴とする、請求項20に記載の癌治療又は予防用ワクチン組成物。
【請求項22】
前記腫瘍抗原及び前記フラジェリンを含み、
前記樹状細胞を標的とするペプチド、前記腫瘍抗原及び前記フラジェリンが、つのペプチドに連結されているか、又は、それぞれのペプチドで含まれることを特徴とする、請求項20に記載の癌治療又は予防用ワクチン組成物。
【国際調査報告】