(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】配位化学フロー電池の電解液地絡の検出
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20241106BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518815
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 US2022078358
(87)【国際公開番号】W WO2023076826
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515024601
【氏名又は名称】ロッキード マーティン エナジー,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】LOCKHEED MARTIN ENERGY, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】フリアス,ルイ・エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ビバレッジ,ケヴィン・ハートリー
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA10
5H126AA13
5H126BB10
5H126FF10
(57)【要約】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極の電解液を保持するように構成された正極エンクロージャと、負極の電解液を保持するように構成された負極エンクロージャとを含む電池セルと、
1)前記正極の電解液とグランドとの間、及び2)前記負極の電解液と前記グランドとの間の少なくとも一方に電気的に接続された検出システムであって、前記正極の電解液及び前記負極の電解液の少なくとも一方のパラメータを検出するように構成された検出システムと、
前記検出システムから前記パラメータを受信し、前記パラメータを参照パラメータと比較し、前記パラメータと前記参照パラメータとの比較に基づいて前記正極のエンクロージャ及び前記負極のエンクロージャの一方に漏れがあるか否かを判定するように構成されたコントローラと、
を含む、電池システム。
【請求項2】
前記電池セルは、複数のセルのうちの第1のセルであり、
前記複数のセルのそれぞれは、前記正極の電解液を受け入れるように構成された正極エンクロージャと、前記負極の電解液を受け入れるように構成された負極エンクロージャとを含む、請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記複数のセルは、前記複数のセルの前記第1のセルから前記複数のセルの第2のセルまで直列に配置されている、請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記複数のセルは、第1の複数のセルであり、
前記第1の複数のセルを含む第1の電池スタックと、
第2の複数のセルを含む第2の電池スタックであって、前記第2の複数のセルは、前記第1の複数のセルと実質的に同様に構成されている第2の電池スタックと、
をさらに含む、請求項2に記載の電池システム。
【請求項5】
前記パラメータは、電圧を含む、請求項1に記載の電池システム。
【請求項6】
前記参照パラメータは、前記電池システムのモデルに基づいて予め設定された予想電圧である、請求項5に記載の電池システム。
【請求項7】
前記検出システムは、前記パラメータを検出するように構成された少なくとも1つのセンサを含む、請求項1に記載の電池システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサは、複数のセンサを含み、前記複数のセンサのうちの第1のセンサは、第1の場所で前記正極の電解液及び前記負極の電解液の少なくとも一方に電気的に接続され、前記複数のセンサのうちの第2のセンサは、第2の場所で前記正極の電解液及び前記負極の電解液の少なくとも一方に電気的に接続され、前記第2の場所は、前記第1の場所とは異なる場所である、請求項7に記載の電池システム。
【請求項9】
前記正極エンクロージャを通して前記正極の電解液を圧送するように構成された正極電解液ポンプと、
前記負極エンクロージャを通して前記負極の電解液を圧送するように構成された負極電解液ポンプと、
をさらに含み、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つは、前記正極電解液ポンプ及び前記負極電解液ポンプの少なくとも一方の出口に配置されている、請求項8に記載の電池システム。
【請求項10】
フロー電池システムにおける漏れを検出する方法であって、
前記フロー電池システムは、内部に電解液を受け入れるように構成されたフローチャネルを画定するエンクロージャを有する電池セルを含み、
前記エンクロージャ内の前記電解液のパラメータを検出すること、
検出されたパラメータを参照パラメータと比較すること、及び、
検出されたパラメータと前記参照パラメータとの比較に基づいて前記エンクロージャに漏れがあるか否かを判定すること、
を含む、方法。
【請求項11】
前記パラメータは第1のパラメータであり、前記参照パラメータは第1の参照パラメータであり、前記第1のパラメータは、前記エンクロージャ内の第1の場所で検出され、
前記エンクロージャ内の第2の場所で前記電解液の第2のパラメータを検出すること、
検出された第2のパラメータを第2の参照パラメータと比較すること、及び、
検出された第2のパラメータと前記第2の参照パラメータとの比較に基づいて前記エンクロージャに漏れがあるか否かを判定すること、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のパラメータは、前記第1の場所における前記電解液の第1の電圧を含み、前記第2のパラメータは、前記第2の場所における前記電解液の第2の電圧を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フロー電池システムのモデルに基づいて前記参照パラメータを計算することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記参照パラメータは、前記判定することの前に予め設定された予想電圧である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フロー電池システムは、電解液ポンプをさらに含み、前記電解液ポンプは、前記エンクロージャの少なくとも一部を画定し、前記電解液のパラメータは、前記電解液ポンプの出口で検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記パラメータを検出することは、前記エンクロージャ内の前記電解液とグランドとの間に電気的に接続されたセンサによって行われ、
前記センサの場所に基づいて前記エンクロージャにおける漏れの場所を特定することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
内部に電解液を受け入れるように構成されたフローチャネルを画定するエンクロージャを含む電池セルと、
前記電解液とグランドとの間に電気的に接続された検出システムであって、
前記エンクロージャ内の第1の場所で前記電解液に電気的に接続され、前記第1の場所で前記電解液の第1のパラメータを検知するように構成された第1のセンサと、
前記エンクロージャ内の第2の場所で前記電解液に電気的に接続され、前記第2の場所で前記電解液の第2のパラメータを検知するように構成された第2のセンサと、
を含む検出システムと、
前記検出システムから前記第1のパラメータ及び前記第2のパラメータを受信し、前記第1のパラメータを第1の参照パラメータと比較し、前記第2のパラメータを第2の参照パラメータと比較し、前記第1のパラメータと前記第1の参照パラメータとの比較に基づいて前記第1の場所に第1の漏れがあるか否かを判定し、前記第2のパラメータと前記第2の参照パラメータとの比較に基づいて前記第2の場所に第2の漏れがあるか否かを判定するように構成されたコントローラと、
を含む、フロー電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して電池システム及び方法に関し、より詳細には電池システムの故障を検出することに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年10月28日に出願された係属中の米国特許出願第17/513,470号の利益及び優先権を主張する。この出願は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
フロー電池の電気化学セルは、セパレータ構造によって分離されたカソード側とアノード側とを含む。カソード側は、カソード電流コレクタ、カソード電気活性材料及び電解液を含み得る。アノード側は、アノード電流コレクタ、アノード電気活性材料及び電解液を含み得る。カソード側とアノード側とを分離するセパレータ構造は、それらの間のイオンの流れを許容する。そのため、電流コレクタ、電気活性材料、電解液、及びセパレータ構造は、化学エネルギーを電気に変換する電気化学反応器を形成する。両電流コレクタは、電気回路を形成するために電気的に接続され得る。
【0004】
フロー電池システム内の地絡を検出してその場所を特定することは、リフローシステムにおいて重要である。地絡は、システム内で漏れが発生している可能性を早期に示すものである。電解液とグランド(GND)との間の電位差は非常に大きい。例えば、ピンホール漏れは、グランドへの電流伝導経路を提供する。この経路は、大電流を流す可能性があり、電池システムの構成要素(例えば、タンクライナ、ポンプ、及びパイプ)に過剰な熱や損傷を与える可能性がある。漏れが検出されない場合、孔がどんどん大きくなり、システムへの大きな損傷を与えたり、電解液が失われたりするおそれがある。
【0005】
本明細書のこの背景セクションに含まれる情報は、本明細書で引用される参考文献及びその説明又は考察を含めて、技術的な参照のみを目的としており、本発明の範囲を限定する主題としてみなされるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
上記の必要性は、本明細書に記載の電池システムによって大いに満たされる。この電池システムは、1)電池システムにおける故障の存在と、2)電池システムにおける故障の場所とを特定することが可能な故障検出システムを含む。
【0007】
本開示の一態様は、電池システムを提供する。電池システムは、電池セルと、検出システムと、コントローラとを含む。電池セルは、正極の電解液を保持するように構成された正極エンクロージャと、負極の電解液を保持するように構成された負極エンクロージャとを含む。検出システムは、1)正極の電解液とグランドとの間、及び、2)負極の電解液とグランドとの間の少なくとも一方に電気的に接続される。検出システムは、正極の電解液及び負極の電解液の少なくとも一方のパラメータを検出するように構成されている。コントローラは、検出システムからパラメータを受信し、パラメータを参照パラメータと比較し、パラメータと参照パラメータとの比較に基づいて正極エンクロージャ及び負極エンクロージャの一方に漏れがあるか否かを判定するように構成されている。
【0008】
本開示の別の態様は、フロー電池システムにおける漏れを検出する方法を提供する。フロー電池システムは、内部に電解液を受け入れるように構成されたフローチャネルを画定するエンクロージャを有する電池セルを含む。方法は、エンクロージャ内の電解液のパラメータを検出すること、検出されたパラメータを参照パラメータと比較すること、及び、検出されたパラメータと参照パラメータとの比較に基づいてエンクロージャに漏れがあるか否かを判定することを含む。
【0009】
本開示の別の態様は、フロー電池システムを提供する。フロー電池システムは、電池セルと、検出システムと、コントローラとを含む。電池セルは、内部に電解液を受け入れるように構成されたフローチャネルを画定するエンクロージャを含む。検出システムは、電解液とグランドとの間に電気的に接続されている。検出システムは、第1のセンサ及び第2のセンサを含む。第1のセンサは、エンクロージャ内の第1の場所で電解液に電気的に接続されている。第1のセンサは、第1の場所で電解液の第1のパラメータを検知するように構成されている。第2のセンサは、エンクロージャ内の第2の場所で電解液に電気的に接続されている。第2のセンサは、第2の場所で電解液の第2のパラメータを検知するように構成されている。
【0010】
コントローラは、検出システムから第1のパラメータ及び第2のパラメータを受信し、第1のパラメータを第1の参照パラメータと比較し、第2のパラメータを第2の参照パラメータと比較し、第1のパラメータと第1の参照パラメータとの比較に基づいて第1の場所に第1の漏れがあるか否かを判定し、第2のパラメータと第2の参照パラメータとの比較に基づいて第2の場所に第2の漏れがあるか否かを判定するように構成されている。
【0011】
本概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は必須の特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために用いられることも意図したものではない。本発明の特徴、詳細、有用性、及び利点のより広範な提示が、本発明の種々の態様の以下の記載で提供され、添付の図面に示され、及び添付の特許請求の範囲で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一態様によるフロー電池システムの概略図である。
【
図2】本開示の一態様による
図1に示されるフロー電池システムのフロー電池スタックの概略図である。
【
図3】本開示の一態様による検出システムの概略図である。
【
図4】本開示の一態様による試験電池システムの一部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本説明において使用される特定の用語は、便宜上のものでしかなく、限定するものではない。「頂部」、「底部」、「戦闘」、「末尾」、「上方」、「下方」、「軸方向」、「横断方向」、「周方向」、及び「径方向」という語は、参照される図面の中での方向を示している。「実質的に」という用語は、かなりの程度又は大部分を意味することを意図しており、必ずしも指定されたもの全体である必要はない。本明細書に開示される全ての範囲は、記載される端点を包含し、独立して組み合せ可能である(例えば、「2グラム~10グラム」の範囲は、端点である2グラム及び10グラム、並びに全ての中間値を包含する)。前記用語は、上記の単語、その派生語及び類似の意味の語を含む。
【0014】
本明細書に記載されたフロー電池システムは、電池システムにおける特定の場所でグランドを基準とした電解液電圧を測定するための絶縁された検出システム(isolated detection system)を含む。場所は、ポンプ、パイプフランジ、バルブ、又はさらに他の場所などの電解液流体系における漏れのリスクが比較的高いポイントを含み得る。測定された電圧は、フル電池ストリング電圧に基づいて予想される(又は計算される)電圧と比較され得る。測定された電圧が予想電圧と所定量(例えば、10%)異なる場合、グランドへの経路が存在する。絶縁された手段を使用して電解液電圧を測定する方法は、電池システムにおいて故障が発生した場所を特定する(場所を絞り込む)こともできる。検出システムは、後述するように、電池システムの複数の場所に実装され得る。前記フロー電池システムは、トラブルシューティングの時間、ダウンタイム、及び修理費用を削減することができる。
【0015】
図1は、フロー電池システム100の概略図である。フロー電池システム100では、電池スタックのそれぞれの端部にある電極(例えば、端子プレート)が供給マニホールド内の電解液をエンドセル(終端セル)の電圧に接続する。フロー電池システム100は、電気接続111によって互いに電気的に接続された4つのスタック102、104、106、108を含む。フロー電池システム100は、4つよりも少ない又は多い電池スタックを含み得ることは理解されるであろう。一態様において、電池スタック110のそれぞれは、電気接続111によって直列に配置され得る。
【0016】
フロー電池システム100は、負極の電解液導管113、正極の電解液導管115、アノードタンク150、アノードポンプ153、カソードタンク152、及びカソードポンプ151をさらに含む。アノードポンプ153は、負極の電解液124をアノードタンク150から負極の電解液導管113及び電池スタック110を通して圧送するように構成されている。同様に、カソードポンプ151は、正極の電解液128をカソードタンク152から正極の電解液導管115及び電池スタック110を通して圧送するように構成されている。一態様において、電池スタック110のそれぞれのための電解液導管113及び115は、並列に配置され得る。
【0017】
図2は、本開示の一態様によるフロー電池システム100のフロー電池スタック110の概略図である。フロー電池システム100は、複数のフロー電池スタック110を含むことができる。各電池スタック110は、複数の独立した電池セル112を含むことができる。一態様において、1つの電池スタック110内の複数の電池セル112のそれぞれは、他の電池スタック110のそれぞれにおける複数の電池セル112のそれぞれと実質的に同様に構成される。
【0018】
図1及び
図2に示される態様は、4つの電池スタック110及び4つの電池セル112を示している。フロー電池システム100は、より少ない又は多くの電池スタック110及び電池フローセル112を含み得ることは理解されるであろう。電池フローセル112は、1つ以上の溶解された電気活性種を含有する電解液が、化学エネルギーを電気に変換する電気化学反応器を通って流れる(出入りする)タイプの再充電可能セルである。また、1つ以上の溶解された電気活性種を含有する電解液は、外部に、一般的にはタンク150及び152内に貯蔵され、通常、各電池スタック110内のポンプ151、153及び/又はポンプ114、116によって電気化学反応器(又は複数の電気化学反応器)を通して圧送される。フローセル112は、外部貯蔵タンクのサイズに応じて可変の容量を有することができる。
【0019】
図2を参照すると、各フローセル112は、セパレータ120(例えば、イオン交換膜)によって分離されたアノード側116とカソード側118とを含むことができる。アノード側116は、負極の電解液124を受け入れるように構成された負極フローチャネル122を含む。カソード側118は、正極の電解液128を受け入れるように構成された正極フローチャネル126を含む。セパレータ120は、負極フローチャネル122内の電気活性材料と正極フローチャネル126内の電気活性材料との間のイオンの流れを許容する。
【0020】
フロー電池スタック110は、複数の電極130をさらに含む。複数の電極130は、第1の電極130a、第2の電極130b、及び少なくとも1つのバイポーラ電極130cを含み得る。複数の電極130は、電流コレクタとしての役割を果たすことができる。第1の電極130aは、フローセル112の第1のセル112aのアノード側116に接続されている。第2の電極130bは、フローセル112の第2のセル112bのカソード側118に接続されている。各バイポーラ電極130cは、電池スタック110の隣接するフローセル112の間に接続され得る。代替形態において、各セル112は、負極及び正極を含むことができ、隣接するセル112の負極及び正極は、バイポーラプレート(図示せず)によって分離される。
【0021】
負極フローチャネル122、正極フローチャネル126、第1の電極130a、第2の電極130b、少なくとも1つのバイポーラ電極130c、及びセパレータ120は、化学エネルギーを電気に変換する(また、特定の構成においては電気を化学エネルギーに変換する)電気化学反応器を形成する。第1の電極130a及び第2の電極130bは、負荷132によって互いに電気的に接続されて電気回路を形成することができる。
【0022】
フロー電池スタック110は、負極マニホールド134及び正極マニホールド136をさらに含む。負極マニホールド134は、負極の電解液124を各セル112の負極フローチャネル122に提供するように構成された負極のエンクロージャを含む。同様に、正極マニホールド136は、正極の電解液128を各セルの正極フローチャネル126に提供するように構成された正極エンクロージャを含む。負極マニホールド134は、各電池セル112の負極フローチャネル122に並列接続され得る。この構成において、負極の電解液124は、負極供給マニホールド部分138から負極のフローチャネル122のそれぞれに供給され、負極フローチャネル122のそれぞれを通って負極受取りマニホールド部分140に流れる。負極の電解液124は、ポンプ114によって負極マニホールド134及び負極フローチャネル122のそれぞれを通して圧送され得る。アノードタンク150が負極の電解液124を収容できることは理解されるであろう。
【0023】
同様に、正極マニホールド136は、各電池セル112の正極フローチャネル126に並列接続され得る。この構成において、正極の電解液128は、正極供給マニホールド部分142から正極フローチャネル126のそれぞれに供給され、正極フローチャネル126のそれぞれを通って正極受取りマニホールド部分144に流れることができる。正極の電解液128は、ポンプ116によって正極マニホールド136及び正極フローチャネル126のそれぞれを通して圧送され得る。カソードタンク152が正極の電解液128を収容することができることは理解されるであろう。
【0024】
一態様において、マニホールド134、136は、電解液がそれぞれのフローチャネル122、126に進入する際に電解液の適切な混合を引き起こすためのフロー方向付け構造を含むことができる。そのようなフロー方向付け構造は、各セル112内の予想される充電状態及び他の流体特性に基づき、フロー電池スタック110内の各セル112におけるフローを最適化するように構成され得る。
【0025】
フロー電池システム100は、検出システム150をさらに含む。検出システム150は、グランドGを基準とした負極の電解液124及び正極の電解液128のいずれか一方又は両方のパラメータを検知又は検出するように構成される。パラメータは、例えば、電解液電圧、電解液電流、又は他の電解液パラメータを含み得る。検出システム150は、第1の少なくとも1つのセンサ160、第2の少なくとも1つのセンサ162、及びコントローラ170を含む。検出システム150は、例えば、プローブ、追加のセンサ、切断スイッチ、送受信機、又はさらに他の構成要素など、電圧検出システム及び/又は電流検出システムにおいて一般的に使用される他の構成要素をさらに含むことができる。
【0026】
図示されているように、第1の少なくとも1つのセンサ160は、第1のセンサ160a及び第2のセンサ160bを含む。同様に、第2の少なくとも1つのセンサ162は、第3のセンサ162a及び第4のセンサ162bを含む。検出システム150が図示された4つのセンサよりも少ない又は多くのセンサを含み得ることは理解されるであろう。センサ160a及び160bは、負極マニホールド134に結合され、負極の電解液124をグランドGに電気的に接続する。一態様において、センサ160a及び160bは、コントローラ170を介してグランドGに接続される。同様に、センサ162a及び162bは、正極マニホールド138に結合され、正極の電解液128をグランドGに電気的に接続する。一態様において、センサ162a及び162bは、コントローラ170を介してグランドGに接続される。第1の少なくとも1つのセンサ160は、負極の電解液124のパラメータの直接測定値を示す信号をコントローラ170に提供することができる。同様に、第2の少なくとも1つのセンサ162は、正極の電解液128のパラメータの直接測定値を示す信号をコントローラ170に提供することができる。
【0027】
コントローラ170は、第1の少なくとも1つのセンサ160及び第2の少なくとも1つのセンサ162から受信したデータを記録し、センサ160及び162から受信したデータに少なくとも基づいてフロー電池システム100内に故障が存在するか否かを判定するように構成されている。コントローラ170は、電子制御ユニット、システムコンピュータ、中央処理ユニット、又は他のデータ記憶操作デバイスであり得、これらは本明細書に記載の方法又は手順のうちのいずれかの制御や調整を容易にするために使用され得る。コントローラ170は、
図2では2つのユニットとして表されているが、他の態様において、コントローラ170は、単一のユニットであってもよいし、複数の別個の相互動作するユニットとして分散配置されてもよいし、別の構成要素に組み込まれてもよいし、フロー電池システム100上の又はフロー電池システム100外の異なる場所に配置されてもよい。
【0028】
図3は、本開示の一態様による検出システム150の概略図である。例示の目的で、電池スタック110の一部(例えば、負極マニホールド134)のみが示されている。コントローラ170は、測定及び絶縁バリア(アイソレータ)172と、電池管理システム(BMS)174とを含む。バリア172は、第1のセンサ160とBMS174との間に接続され、バリア172は、第1のセンサ160とグランドGとの間にも接続される。検出システム150が2つ以上のバリア172を含むことができることは理解されるであろう。例えば、少なくとも1つのセンサ160及び162は、それぞれのバリア172を介してBMS174に電気的に接続され得る。バリア172は、センサ160から信号を受信し、検出された電解液のパラメータを示す検出信号(M2)をBMS174に送信するように構成されている。
【0029】
BMS174は、バリア172からの検出信号(M2)と、外部ソース176からの予想信号(M1)とを受信してメモリに記憶するように構成されている。予想信号(M1)は、例えば、電解液のモデル化されたパラメータ(例えば、モデル化電圧又はモデル化電流)を含み得る。モデル化されたパラメータは、フロー電池システム100のモデルに基づいて決定され得る。フロー電池システム100のモデルは、例えば、故障していないフロー電池システム、フロー電池システムのシミュレーション、その組合せ、又は電解液の予想パラメータを決定することが可能なさらに他のモデルを含むことができる。一態様において、モデル化されたパラメータは、システム100の最も正極の電池スタックにおけるフル電池ストリング電圧を基準として予測されるモデル化電圧である。
【0030】
BMS174は、マイクロプロセッサなどのプロセッサと、メモリとを含むことができる。プロセッサは、バリア172及び外部ソース176に接続されて、バリア172及び外部ソース176から信号を受信するように構成され得る。プロセッサの例は、本明細書に記載されるようなコンピューティングデバイス及び/又は専用ハードウェアが含むが、これらに限定されず、1つ以上の中央処理ユニット及びマイクロプロセッサであってもよい。一態様において、BMS174は、フロー電池システム100上の又はフロー電池システム100から離れた様々な場所との間で信号を送受信するためのオプションの通信モジュールを含むことができる。
【0031】
BMS174は、バリア172から受信した検出パラメータを外部ソース176からの予想パラメータと比較するように構成されている。検出パラメータが予想パラメータと所定値以上異なる場合、フロー電池システム100内に故障Fが存在する可能性がある。所定値は、BMS174のメモリに記憶され得る。所定値は、例えば、センサ160及び162の個別の場所に基づいて修正又は調整され得る。所定値は、検出パラメータと予想パラメータとの間の百分率の差を含むことができる。例えば、所定値が10%である場合、BMS174は、検出パラメータが予想パラメータと10%以上異なる場合に、潜在的な故障Fが存在するかを示すことができる。潜在的な故障Fが存在する場合、BMS174は、視覚的、聴覚的又はその両方のいずれかのアラームを作動させて、故障Fが電池システム100内に存在することを示すことができる。
【0032】
BMS174によって潜在的な故障Fが判定されると、潜在的な故障Fの場所が特定され得る。例えば、第1のセンサ160aによって検出された検出パラメータが予想パラメータと所定値以上異なる場合、電池システム100内の故障Fは、第1のセンサ160aの場所の近くにある。同様に、第2のセンサ160bによって検出された検出パラメータが予想パラメータと所定値以上異なる場合、電池システム100内の故障Fは、第2のセンサ160bの場所の近くにある。第1のセンサ160aの場所における予想パラメータが第2のセンサ160bの場所における予想パラメータと異なり得ることは理解されるであろう。
【0033】
複数の第1のセンサ160及び第2のセンサ162が、負極の電解液124及び正極の電解液128のパラメータを検出するために、電池システム100全体にわたって配備され得る。一態様において、第1のセンサ160及び第2のセンサ162は、電池システム100上の故障リスクの比較的高い場所の近くに配置され得る。故障リスクの比較的高い場所には、例えば、ポンプ、パイプフランジ、バルブ又は電解液ループ内の他の高抵抗な場所が含まれ得る。
【0034】
ポンプ114及び116を制御して負極の電解液及び正極の電解液をそれぞれタンク150及び152から負極マニホールド134及び正極マニホールド136を通して流すことによってフロー電池システム100を動作させることができる。電解液が各電池セル112のそれぞれの負極フローチャネル122及び正極フローチャネル126を通って流れる際に各セパレータ120を介してイオン交換が起こり、電池セル112のそれぞれと負荷132との間に電気回路が形成される。
【0035】
電解液が各電池セル112の負極フローチャネル122及び正極フローチャネル126を通って流れている間、第1の少なくとも1つのセンサ160は、負極フローチャネル122を通って流れる負極の電解液124のパラメータを検出し、第2の少なくとも1つのセンサ162は、正極フローチャネル126を通って流れる正極の電解液128のパラメータを検出する。検出されたパラメータは、コントローラ170に送信される。コントローラ170は、検出されたパラメータを予想パラメータ(例えば、参照パラメータ)と比較する。検出されたパラメータと予想パラメータとの差が所定値以上ある場合、コントローラ170は、正極エンクロージャ136及び負極エンクロージャ134の一方又は両方に故障が存在すると判定する。
【0036】
図4は、本開示の一態様による試験電池システム200の一部の側面図である。電池システム200は、電池システム100を通して電解液を圧送するように構成されたポンプ202を含む。ポンプ202は、ポンプ114、ポンプ116、又は電解液を圧送するように構成された他のポンプで構成され得る。絶縁隔壁204が、ポンプ202とグランドG’との間に配置されている。絶縁隔壁204は、ポンプ202を「フロート」させ、これによってグランドG’への経路を除去する。グランド導線206がポンプ202とグランドG’との間に配置される。グランド導線206は、ポンプ202を選択的にグランド接続するように構成されたサーキットブレーカ208を含む。センサ210は、電池システム200のエンクロージャ212内の電解液とグランドG’との間に電気的に接続されている。
【0037】
下記の表1は、電池システム200の試験シナリオによるサンプル結果を表す。1行目のデータは、ポンプ202が動作中であり、サーキットブレーカ208が開いている場合の電解液の電圧及び電流を表す。2行目のデータは、ポンプが動作中であり、サーキットブレーカ208が閉じており、故障がセンサ210の近くに存在する場合の電解液の電圧及び電流を表す。
【0038】
【0039】
サンプル結果に表されるように、地絡/漏れの領域における電解液電圧は、故障の存在によって大きな影響を受ける。サーキットブレーカ208が閉じられると、ポンプ202がグランド接続され、これにより、回路内に故障が生じる。故障が回路内にある場合、電解液電圧は、約250Vから約40Vに低下する。この約200Vの電圧変化により、検出システム150は、電池システム200内に故障が存在するかを判定し、故障の大まかな場所(例えば、センサ210の近くにあること)を判定することができる。
【0040】
フロー電池システム100は、システムのグランド絶縁の健全性を判断する先進アルゴリズムの開発に利用され得る動作データ及び統計データやシステム100内の流体電圧のより良好な理解を提供することができる。電解液電圧は、シャットダウン中にモニタリングされることもでき、電圧データの時間に対する減衰データは、電池システム100の潜在的な問題を示す別のデータとして利用され得る。
【0041】
検出システム150は、電池システム100の複数の領域に実装され得るものであり、これにより、従来の検出システムよりも故障に対する感度を向上させ、従来の検出システムよりも大きい保護を提供することができる。検出システム150は、電池システム100内の故障の場所を絞り込んで正確に特定することを支援することができ、これにより、ダウンタイム及びトラブルシューティングの時間を削減することができる。これは、検出システム150が大規模電池システム100に実装される場合、例えば、故障の場所の特定に時間及び費用がかかり得るリフローエネルギー貯蔵システムに実装される場合に特に重要であり得る。検出システム150は、電池システム100の損傷が増大する前の故障の早期検出を提供することもできる。
【0042】
当業者であれば、上述の説明から変形例及び代替的な実施形態が可能であることは明白であろう。したがって、そのような変形例及び代替的な実施形態は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0043】
結合等を示す用語(例えば、取り付けられる、結合される、接続される、接合されるなど)は、広義に解釈されるべきであり、要素の接続間の中間部材及び要素間の相対的な移動を含み得る。したがって、結合等を示す用語は、2つの要素が直接接続され、互いに対して固定関係にあることを必ずしも示すものとは限らない。
【0044】
上記の仕様、例及びデータは、開示された技術の例示的な態様の構造の完全な説明及び使用を提供する。開示される技術の様々な態様は、ある特定の具体性をもって、又は1つ以上の個別の態様を参照して説明されているが、当業者であれば、この開示された技術の趣旨又は範囲から逸脱することなく、開示された態様に対して多くの変更を加えることができるであろう。したがって、他の態様も想定される。上記の説明に含まれ、添付の図面に示された全ての事項は、特定の態様を例示でしかなく、限定するものではないと解釈されることを意図したものである。添付の特許請求の範囲に定義される開示技術の基本的な要素から逸脱することなく、細部又は構造の変更を行うことができる。
【0045】
[態様]
以下の態様は、例示であり、本開示の範囲又は添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0046】
態様1.
正極の電解液を保持するように構成された正極エンクロージャと、負極の電解液を保持するように構成された負極エンクロージャと含む電池セルと、
1)正極の電解液とグランドとの間、及び2)負極の電解液とグランドとの間の少なくとも一方に電気的に接続された検出システムであって、正極の電解液及び負極の電解液の少なくとも一方のパラメータを検出するように構成された検出システムと、
検出システムからパラメータを受信し、パラメータを参照パラメータと比較し、パラメータと参照パラメータとの比較に基づいて正極エンクロージャ及び負極エンクロージャの一方に漏れがあるか否かを判定するように構成されたコントローラと、
を含む、電池システム。
【0047】
態様2.
電池システムは、フロー電池システムを含む、態様1に記載の電池システム。
【0048】
態様3.
電池セルは、複数のセルのうちの第1のセルであり、複数のセルのそれぞれは、正極の電解液を受け入れるように構成された正極エンクロージャと、負極の電解液を受け入れるように構成された負極エンクロージャとを含む、態様1に記載の電池システム。
【0049】
態様4.
複数のセルは、複数のセルの第1のセルから複数のセルの第2のセルまで直列で配置されている、態様3に記載の電池システム。
【0050】
態様5.
複数のセルは、第1の複数のセルであり、
第1の複数のセルを含む第1の電池スタックと、
第2の複数のセルを含む第2の電池スタックであって、第2の複数のセルは、第1の複数のセルと実質的に同様に構成されている第2の電池スタックと、
をさらに含む、態様3に記載の電池システム。
【0051】
態様6.
パラメータは、電圧を含む、態様1に記載の電池システム。
【0052】
態様7.
参照パラメータは、電池システムのモデルに基づいて予め設定された予想電圧である、態様6に記載の電池システム。
【0053】
態様8.
検出システムは、パラメータを検出するように構成された少なくとも1つのセンサを含む、態様1に記載の電池システム。
【0054】
態様9.
少なくとも1つのセンサは、複数のセンサを含み、複数のセンサのうちの第1のセンサは、第1の場所で正極の電解液及び負極の電解液の少なくとも一方に電気的に接続され、複数のセンサのうちの第2のセンサは、第2の場所で正極の電解液及び負極の電解液の少なくとも一方に電気的に接続され、第2の場所は、第1の場所とは異なる場所である、態様8に記載の電池システム。
【0055】
態様10.
正極エンクロージャを通して正極の電解液を圧送するように構成された正極電解液ポンプと、
負極エンクロージャを通して負極の電解液を圧送するように構成された負極電解液ポンプと、
をさらに含み、
複数のセンサのうちの少なくとも1つは、正極電解液ポンプ及び負極電解液ポンプの少なくとも一方の出口に配置されている、態様9に記載の電池システム。
【0056】
態様11.
フロー電池システムにおける漏れを検出する方法であって、フロー電池システムは、内部に電解液を受け入れるように構成されたフローチャネルを画定するエンクロージャを有する電池セルを含み、
エンクロージャ内の電解液のパラメータを検出すること、
検出されたパラメータを参照パラメータと比較すること、及び、
検出されたパラメータと参照パラメータとの比較に基づいてエンクロージャに漏れがあるか否かを判定すること、
を含む、方法。
【0057】
態様12.
パラメータは第1のパラメータであり、参照パラメータは第1の参照パラメータであり、第1のパラメータは、エンクロージャ内の第1の場所で検出され、
エンクロージャ内の第2の場所で電解液の第2のパラメータを検出すること、
検出された第2のパラメータを第2の参照パラメータと比較すること、及び、
検出された第2のパラメータと第2の参照パラメータとの比較に基づいてエンクロージャに漏れがあるか否かを判定すること、
をさらに含む、態様11に記載の方法。
【0058】
態様13.
第1のパラメータは、第1の場所における電解液の第1の電圧を含み、第2のパラメータは、第2の場所における電解液の第2の電圧を含む、態様12に記載の方法。
【0059】
態様14.
フロー電池システムのモデルに基づいて参照パラメータを計算することをさらに含む、態様11に記載の方法。
【0060】
態様15.
参照パラメータは、判定することの前に予め決定された予想電圧である、態様14に記載の方法。
【0061】
態様16.
フロー電池システムは、電解液ポンプをさらに含み、電解液ポンプは、エンクロージャの少なくとも一部を画定し、電解液のパラメータは、電解液ポンプの出口で検出される、態様11に記載の方法。
【0062】
態様17.
パラメータを検出することは、エンクロージャ内の電解液とグランドとの間に電気的に接続されたセンサによって行われ、
センサの場所に基づいてエンクロージャにおける漏れの場所を特定することをさらに含む、態様11に記載の方法。
【0063】
態様18.
内部に電解液を受け入れるように構成されたフローチャネルを画定するエンクロージャを有する電池セルと、
電解液とグランドとの間に電気的に接続された検出システムであって、
エンクロージャ内の第1の場所で電解液に電気的に接続され、第1の場所で電解液の第1のパラメータを検知するように構成された第1のセンサと、
エンクロージャ内の第2の場所で電解液に電気的に接続され、第2の場所で電解液の第2のパラメータを検知するように構成された第2のセンサと、
を含む検出システムと、
検出システムから第1のパラメータ及び第2のパラメータを受信し、第1のパラメータを第1の参照パラメータと比較し、第2のパラメータを第2の参照パラメータと比較し、第1のパラメータと第1の参照パラメータとの比較に基づいて第1の場所に第1の漏れがあるか否かを判定し、第2のパラメータと第2の参照パラメータとの比較に基づいて第2の場所に第2の漏れがあるか否かを判定するように構成されたコントローラと、
を含む、フロー電池システム。
【国際調査報告】