(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】異種金属継手及びその抵抗溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 11/16 20060101AFI20241106BHJP
B23K 11/24 20060101ALI20241106BHJP
B23K 11/20 20060101ALI20241106BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20241106BHJP
B23K 103/20 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
B23K11/16
B23K11/24 315
B23K11/16 101
B23K11/20
B23K35/28 310A
B23K35/28 310Z
B23K103:20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521284
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2022113073
(87)【国際公開番号】W WO2023065797
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202111229295.6
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513314104
【氏名又は名称】中国科学院上海光学精密机械研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ ミンファン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シャンルウ
(72)【発明者】
【氏名】タオ ウー
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヤンジュン
(57)【要約】
本発明は、異種金属継手の抵抗溶接方法を提供し、外層が鉄又は鉄系合金で構成され、内層が密度5g/cm3未満又は融点が800℃未満の金属で構成された積層構造を溶接する。抵抗溶接方法は、スパッタリング段階を含み、スパッタリング段階における積層構造中間の軽金属又は低融点金属は、スパッタリングの形式で離脱し、溶接界面内の鉄又は鉄系合金層の相互に直接接合構造を形成して溶接を完了させる。本発明は、異種継手溶接界面における脆性の金属間化合物の形成を回避することができ、継手の力学的性能を向上させ、異種金属間の確実な接合を実現することができる。本発明は、さらに異種金属継手を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種金属積層構造を溶接する異種金属継手の抵抗溶接方法であって、前記積層構造は、第1類金属板及び第2類金属板を含み、前記第1類金属板は、純鉄又は鉄系合金であり、前記第2類金属板は、密度が5g/cm
3未満又は融点が800℃未満の単体又は合金であり、前記積層構造の外側の板は、第1類金属板であり、前記第2類金属板は、前記第1類金属板の間に位置し、前記抵抗溶接方法は、前記第2類金属板を溶接領域から排出するステップ及び溶接段階を含む異種金属継手の抵抗溶接方法において、
前記第2類金属板を排出するステップは、スパッタリング段階を含み、
前記スパッタリング段階において、前記積層構造にスパッタリング電流及び電極圧力を印加して、溶接領域内のスタック構造を加熱し、第2類金属は溶融し圧力作用でスパッタリングの形式で溶接領域から離脱し、第1類金属は、抵抗熱及び圧力作用で互いに近接し、ここで、少なくとも一部の溶接領域において前記第2類金属板は完全に飛散し、
前記溶接段階において、前記少なくとも一部の溶接領域において前記第1類金属板のみが接触して構成される溶接界面を形成し、前記溶接界面に冶金接合を発生させることを特徴とする異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項2】
前記スパッタリング電流は、1つ又は複数、好ましくは2~5個の電流パルスを含み、単一の前記パルスの持続時間は、200ms以下であり、好ましくは50ms~120msであることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項3】
前記スパッタリング電流強度I1=K1*I0であり、ここでI0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別に抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K1の取り得る値の範囲は、0.8~3.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項4】
前記スパッタリング段階において、前記第2類金属板がスパッタリング形式で溶接領域から離脱した後に第1類金属板のみが接触して構成される溶接界面を形成し、前記溶接界面に残された第2類金属層の厚さ≦0.15mmであり、好ましくは、その中に残された第2類金属層の厚さ≦.05mmであり、且つ前記溶接界面の相当径≧溶接電極の電極端面径の0.5倍であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項5】
前記溶接段階において、前記積層構造に溶接電流及び電極圧力を印加し、前記溶接電流の強度は、前記スパッタリング電流の強度以下であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項6】
I2=K2*I0であり、ここで、I2は、溶接電流の強度であり、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K2の取り得る値の範囲は、0.5~2.5であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項7】
前記スパッタリング電流と前記溶接電流との間の間隔は、0ms~200msであることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項8】
前記溶接段階の後に焼戻し段階をさらに含み、前記焼戻し段階において電極は溶接領域に焼戻し電流を提供することを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項9】
前記焼戻し電流強度I3=K3*I0であり、ここで、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K3の取り得る値の範囲は、0.4~1.8であることを特徴とする請求項8に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項10】
前記スパッタリング段階の前に予熱段階をさらに含み、前記予熱段階において電極は溶接対象の領域に予熱電流を提供することを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項11】
前記予熱電流強度I4=K4*I0であり、ここで、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K4の取り得る値の範囲は、0.2~1.3であることを特徴とする請求項10に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項12】
前記抵抗溶接方法は、前記スパッタリング段階の前に予熱段階をさらに含み、前記予熱段階において電極は溶接対象の領域に予熱電流を提供し、前記スパッタリング段階の後に溶接段階をさらに含み、前記溶接段階の後に焼戻し段階をさらに含み、前記焼戻し段階において電極は溶接領域に焼戻し電流を提供し、スパッタリング電流強度I1=K1*I0で、溶接電流強度I2=K2*I0で、予熱電流強度I4=K4*I0で、焼戻し電流強度I3=K3*I0であり、ここで、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K1の取り得る値の範囲は、0.8~3.5であり、K2の取り得る値の範囲は、0.5~2.5であり、K4の取り得る値の範囲は、0.2~1.3であり、K3の取り得る値の範囲は、0.4~1.8であり、K1≧K2≧K3≧K4であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項13】
前記溶接電流、前記予熱電流、前記焼戻し電流は、少なくとも1つの電気パルスを有し、作用時間は、800ms以下であり、好ましくは200~700msであることを特徴とする請求項12に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項14】
前記溶接電流又は前記予熱電流と前記スパッタリング電流との間、前記焼戻し電流と前記溶接電流との間は、0~200ms、好ましくは5~80msの間隔を有することを特徴とする請求項12に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項15】
前記第1類金属板の少なくとも1つの表面にめっき層が存在し、前記めっき層は、亜鉛系めっき層又はアルミニウム系めっき層であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項16】
前記積層構造の構造形式は、3層群又は5層群であり、前記3層群の2つの外層群は、第1類金属板の単層又は隣接する重畳層であるが、内層群は、第2類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、前記5層群の2つの外層群、中間層群は、第1類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、別の2層群は、第2類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、外層群と中間層群との間にそれぞれ位置することを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項17】
前記積層構造における前記第1類金属板の少なくとも2層は、同一の金属板を折り曲げてなり、前記折り曲げ位置は、溶接領域外であることを特徴とする請求項1又は16に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項18】
前記第2類金属板は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金のうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの積層の組み合わせのいずれかであることを特徴とする請求項1又は16に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項19】
隣接して間隔を置いた前記第1類金属板の間の単層又は隣接して重畳された前記第2類金属板の厚さ≦4.5mmであり、単層又は隣接して重畳された前記第1類金属板の総厚さ≦5.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項20】
前記積層構造の2つの外側の板のうち一方は、他方に比べて、板の厚さ(単位mm)と抗張強度(単位MPa)との積の値が小さいことを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項21】
積層構造であり、第1類金属板及び第2類金属板を含み、前記第1類金属板は、純鉄又は鉄系合金であり、前記第2類金属板は、密度が5.0g/cm
3未満又は融点が800℃未満の単体又は合金であり、前記積層構造の外側の板は、第1類金属板であり、前記第2類金属板は、前記第1類金属板の間に位置する異種金属継手において、
異種金属継手の横断面から見ると、電極端面の圧痕領域及びその周辺材料は、中間が薄く、両側が厚いという特徴を呈し、前記異種金属継手の電極端面の圧痕領域における厚さは、第1類金属板の厚さの和以下であり、電極端面の圧痕領域の中間圧痕領域は、第1類金属板のみからなり、且つ前記第1類金属板の間は、界面で原子間結合が発生して永久接合を形成し、圧痕領域の縁部から外側へスタック構造の厚さが徐々に増加し、第2類金属板は、第1類金属板の間において、小さい厚さから第2類金属板の元の厚さまで漸増することを特徴とする異種金属継手。
【請求項22】
前記圧痕領域外の前記第1類金属板と第2類金属板の間には、第2類金属板の溶融スパッタリングによる「噴射状」の凝固組織が存在することを特徴とする請求項21に記載の異種金属継手。
【請求項23】
電極端面の圧痕縁部領域において、前記第2類金属板と前記第1類金属板との接触界面に、金属間化合物(IMC層)が生成されることを特徴とする請求項21に記載の異種金属継手。
【請求項24】
前記積層構造における前記第1類金属板は、そのうち少なくとも2層が同一の金属板を折り曲げてなり、前記折り曲げは、溶接領域外に位置することを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載の異種金属継手。
【請求項25】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の方法により得られることを特徴とする異種金属継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接分野に属し、具体的には異種金属継手及びその抵抗溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーと排出削減の要求が継続的に高くなることに伴い、軽量化設計は、既に自動車工業が直面する重要な課題となっている。少数のラグジュアリーブランドの製品では、オールアルミボディなどの設計手段が既に出現している。しかしながら、オールアルミボディは、コストが高く、メンテナンスが困難であり、その価格が一般的な消費者に広く受け入れられない。そのため、市場の主流製品において、車体構造の主体は、特にAピラー、Bピラー、ドア補強板及びサイドメンバーなどの構造部材が挙げられ、依然として鋼材を主とし、高強度鋼、ひいては超高強度鋼は、従来の普通の鋼材を代替して、ますます多く用いられている。また、自動車企業及び消費者は、ショックアブソーバー、ホイールハウス端板、床、エンジン及び車体外被覆部材などの局所にアルミニウム合金、マグネシウム合金を含む軽合金材料を採用することが、コスト及び性能上、いずれも受け入れられる解決手段であることを徐々に発見していく。そのため、鋼材と軽金属とを複合した自動車の製造手段は、ますます多くの人気がある。鋼と軽金属異種継手との接合プロセスの重要性が顕在化する。
【0003】
従来のホワイトボディの製造プロセスは、抵抗溶接を用いて鋼板に対して抵抗溶接接合を行うことが多い。しかしながら、鋼材、特に高強度鋼はアルミニウム合金、マグネシウム合金との物理的特性の差が大きく、鋼材の融点は、一般的に1400℃を超えるが、アルミニウム合金、マグネシウム合金の融点は、700℃以下であることが多く、従来の抵抗溶接プロセスでは、鋼とアルミニウム、マグネシウム合金との溶接継手に大量のポロシティやクラックなどの欠陥が発生し、且つ溶接領域内に大量の脆性の鉄-アルミニウム又は鉄-マグネシウムの金属間化合物が形成され、継手の機械的強度に大きな影響を与える。
【0004】
一部の従来技術は、鋼ワークピース・アルミニウムワークピース・鋼ワークピースの3層複合構造又は鋼部品・アルミニウムワークピース・鋼ワークピースを用い、そのうち鋼部品は、一般的に、特別に設計されたリベットであり、特製の中実、中空及び半中空のリベットなどを含む。これらを組み合わせて溶接する時、まず溶接領域を加熱し、又は鋼部品を駆動して高速回転状態でアルミニウム部材に接触して押圧するように保持し、中間のアルミニウム板を高温で軟化させ、又は半溶融状態にさせ、さらに溶接機器により大きな圧力を提供して軟化又は半溶融状態のアルミニウム合金を溶接領域から押し出し、さらに直接最外層の鋼板又は鋼部品と鋼ワークピースとの間に溶接の手段を完了させる。しかしながら、本発明者らは、この過程において、加熱された高温のアルミニウム合金と鋼板とが長時間接触することにより、脆性の金属間化合物が大量に形成され、高温塑性状態のアルミニウム合金も溶接領域から効率的に押し出されにくくて溶接の品質に影響を及ぼすことに気づいた。その原因として、アルミニウムと鋼の異種金属を溶接する時に、アルミニウムにおける鉄の固溶度が高いが、アルミニウムが鉄においてほとんど固溶できないため、鉄とアルミニウムとの間に固溶体が大量に形成できず、溶接時に溶接継目に大量の鉄アルミニウム系の脆性の金属間化合物(例えばFeAl3、Fe2Al5、FeAl2、FeAl及びFe3Alなど)が迅速に形成され、これらの脆性の金属間化合物が、通常、層状構造となって溶接界面に分布し、化合物層が外部応力を受ける時にクラックを生成しクラック成長を提供することが極めて容易であり、最終的な継手強度に顕著な悪影響を与えることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-328774号公報
【特許文献2】特開2003-236673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抵抗スポット溶接による異種金属溶接時に溶接強度が低く、溶接界面に大量の脆性の金属間化合物が存在し、クラックが発生しやすいという問題を解決するように、異種金属継手の抵抗溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の別の目的は、確実な接合を有する異種金属継手を提供することである。
【0008】
本発明の実施例の1つの態様によれば、異種金属継手の抵抗溶接方法が提供され、異種金属積層構造を溶接し、前記積層構造は、第1類金属板及び第2類金属板を含み、前記第1類金属板は、純鉄又は鉄系合金であり、前記第2類金属板は、密度が5g/cm3未満又は融点が800℃未満の単体又は合金である。前記積層構造の外側の板は、第1類金属板であり、前記第2類金属板は、前記第1類金属板の間に位置する。前記抵抗溶接方法は、前記第2類金属板を溶接領域から排出するステップ及び溶接段階を含み、前記第2類金属板を排出するステップは、スパッタリング段階を含む。前記スパッタリング段階において、前記積層構造にスパッタリングリング電流及び電極圧力を印加して、溶接領域内のスタック構造を加熱し、第2類金属は溶融し圧力作用でスパッタリングの形式で溶接領域から離脱し、第1類金属は、抵抗熱及び圧力作用で互いに近接し、ここで、少なくとも一部の溶接領域において前記第2類金属板は完全に飛散する。前記溶接段階において、前記少なくとも一部の溶接領域において前記第1類金属板のみが接触して構成される溶接界面を形成し、前記溶接界面に冶金接合を発生させる。
【0009】
任意選択的に、前記スパッタリング電流は、1つ又は複数、好ましくは2~5個の電流パルスを含み、単一の前記電流パルスの持続時間は、200ms以下であり、好ましくは50ms~120msである。
【0010】
さらに、前記スパッタリング電流強度I1=K1*I0であり、ここで、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別に抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K1の取り得る値の範囲は、0.8~3.5である。
【0011】
任意選択的に、前記スパッタリング段階において、前記第2類金属板がスパッタリング形式で溶接領域から離脱した後に第1類金属板のみが接触して構成される溶接界面を形成し、前記溶接界面に残された第2類金属層の厚さ≦0.15mmであり、且つ前記溶接界面の相当径≧前記電極端面径の0.5倍であり、その中に残された第2類金属層の厚さ≦0.05mmであることが好ましい。
【0012】
任意選択的に、前記溶接段階において、前記積層構造に溶接電流及び電極圧力を印加し、溶接電流の強度を前記スパッタリング電流の強度以下とする。
【0013】
さらに、前記溶接電流の強度I2=K2*I0であり、ここでI0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別に抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K2の取り得る値の範囲は、0.5~2.5である。溶接電流強度に対する制御は、抵抗溶接方法で得られた異種継手の溶接強度を保証することができる。
【0014】
任意選択的に、前記スパッタリング電流と前記溶接電流との間の間隔は、0ms~200msである。
【0015】
任意選択的に、前記溶接段階の後に焼戻し段階をさらに含み、前記焼戻し段階において電極は前記溶接領域に焼戻し電流を提供する。焼戻し過程は、継手の力学的性能を改善することができる。
【0016】
さらに、前記焼戻し電流強度I3=K3*I0であり、ここでI0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別に抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K3の取り得る値の範囲は、0.4~1.8である。
【0017】
任意選択的に、前記スパッタリング段階の前に予熱段階をさらに含み、前記予熱段階において電極は溶接対象の領域に予熱電流を提供する。予熱過程は、中間層中のアルミニウム合金又はマグネシウム合金をより速く溶解させ、スパッタリング過程の発生を促進することができる。
【0018】
さらに、前記予熱電流強度I4=K4*I0であり、ここでI0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別に抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K4の取り得る値の範囲は、0.2~1.3である。
【0019】
任意選択的に、前記溶接方法は、前記スパッタリング段階の前に予熱段階をさらに含み、前記予熱段階において電極は溶接対象の領域に予熱電流を提供し、前記溶接段階の後に焼戻し段階をさらに含み、前記焼戻し段階において電極は溶接領域に焼戻し電流を提供し、スパッタリング電流強度I1=K1*I0で、溶接電流強度I2=K2*I0で、予熱電流強度I4=K4*I0で、焼戻し電流強度I3=K3*I0であり、K1の取り得る値の範囲は、0.8~3.5であり、K2の取り得る値の範囲は、0.5~2.5であり、K4の取り得る値の範囲は、0.2~1.3であり、K3の取り得る値の範囲は、0.4~1.8であり、K1≧K2≧K3≧K4である。
【0020】
さらに、前記溶接電流、前記予熱電流、前記焼戻し電流は、少なくとも1つの電気パルスを有し、作用時間は、800ms以下であり、好ましくは200~700msである。
【0021】
さらに、前記溶接電流又は前記予熱電流と前記スパッタリング電流との間、前記焼戻し電流と前記溶接電流との間は、0~200ms、好ましくは5~80msの間隔を有する。
【0022】
任意選択的に、前記第1類金属板のうちの少なくとも1つの表面にめっき層が存在し、前記めっき層は、亜鉛系めっき層又はアルミニウム系めっき層である。
【0023】
任意選択的に、前記積層構造の構造形式は、3層群又は5層群であり、前記3層群の2つの外層群は、第1類金属板の単層又は隣接する重畳層であるが、内層群は、第2類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、前記5層群の2つの外層群、中間層群は、第1類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、別の2層群は、第2類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、外層群と中間層群との間にそれぞれ位置し、前記溶接段階において、隣接する前記第1類金属板は、電極圧力で互いに直接接触して溶接される。
【0024】
さらに、前記積層構造における前記第1類金属板のうち少なくとも2層は、同一の金属板を折り曲げてなり、前記折り曲げ位置は、溶接領域外である。
【0025】
任意選択的に、前記第2類金属板は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金のうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの積層の組み合わせのいずれかである。
【0026】
任意選択的に、前記第1類金属板の抗張強度は、2500MPa以下であり、マイクロビッカース硬さは、650Hv以下であり、単層の厚さ範囲は、0.5mm~2.5mmである。
【0027】
任意選択的に、隣接して間隔を置いた前記第1類金属板の間の単層又は隣接して重畳された前記第2類金属板の厚さ≦4.5mmであり、単層又は隣接して重畳された前記第1類金属板の総厚さ≦5.5mmである。
【0028】
任意選択的に、前記第1類金属板の単層又は隣接する重畳層は、板の厚さ(単位mm)と抗張強度(単位MPa)との積Aが100≦A≦5000を満たすという条件を満たす。
【0029】
任意選択的に、前記積層構造の2つの外側の板のうち一方は、他方に比べて、板の厚さ(単位mm)と抗張強度(単位MPa)との積の値が小さい。
【0030】
本発明の実施例の別の態様によれば、異種金属継手が提供され、前記異種金属継手は、積層構造であり、第1類金属板及び第2類金属板を含み、前記第1類金属板は、純鉄又は鉄系合金であり、前記第2類金属板は、密度が5.0g/cm3未満又は融点が800℃未満の単体又は合金であり、前記積層構造の外側の板は、第1類金属板であり、前記第2類金属板は、前記第1類金属板の間に位置する。ここで、異種金属継手の外観からは、前記異種金属継手の電極端面の圧痕領域における厚さは、第1類金属板の厚さの和以下であり、電極端面の圧痕領域の縁部から外側へ継手構造の厚さが徐々に増加し、最後に元の組み合わせのスタック構造を呈し、異種金属継手の横断面から見ると、電極端面の圧痕領域及びその周辺材料は、中間が薄く、両側が厚いという特徴を呈し、電極端面の圧痕領域の中間圧痕領域は、第1類金属板のみからなり、且つ前記第1類金属板の間は、界面で原子間結合が発生して永久接合を形成し、圧痕領域の縁部から外側へスタック構造の厚さが徐々に増加し、第2類金属板は、第1類金属板の間において、小さい厚さから第2類金属板の元の厚さまで漸増する。
【0031】
任意選択的に、前記圧痕領域外の前記第1類金属板の間には、第2類金属板の溶融スパッタリングによる「噴射状」の凝固組織が存在する。
【0032】
任意選択的に、前記電極端面の圧痕縁部領域において、前記第2類金属板と前記第1類金属板との接触界面に、金属間化合物(IMC層)が生成される。
【0033】
さらに、前記積層構造における前記第1類金属板は、そのうち少なくとも2層が同一の金属板を折り曲げてなり、前記折り曲げは、溶接領域外に位置する。
【0034】
本発明の実施例のさらに別の態様によれば、上記いずれかの実施形態の抵抗溶接方式により得られる異種金属継手が提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明の実施例の有益な効果は、以下のとおりである。
【0036】
(1)本発明の方法のスパッタリング特徴により、スタック構造における軽金属の効果的な排出を実現して、軽金属による継手接合に対する悪影響を回避する。本分野の一般的な認知では、抵抗溶接のスポット溶接過程におけるスパッタリングは、回避すべき欠陥であるが、本発明では、スパッタリング現象が利用される。溶接領域にスパッタリング電流を印加することにより、中間層に位置する第2類金属を迅速に溶融させ、溶融した液状金属は、電極圧力と電流加熱の共同作用で瞬時に液状領域周辺の塑性変形領域を突破し、スパッタリングの形式で溶接領域から離脱し、溶接領域に微量の第2類金属板のみが存在し、ひいては第2類金属板が存在しないようにして第1類金属の間の密着接触を実現し、後続の溶接段階において溶接界面内に大量の脆性の金属間化合物(IMC層)が生成されることを回避し、溶接の品質を効果的に改善し、本発明の方法は、簡便で、効率が高く、適用範囲が広く、接合の品質が高い。
【0037】
(2)本発明のスパッタリング段階は、複数のパルスにより実施することができ、軽金属を複数回加熱して排出する効果を奏することができ、スタック構造における軽金属を最大限に排出することを実現し、それにより複数層の軽金属を含むスタック構造の接合を満たす。
【0038】
(3)本発明の方法は、軽金属と鋼板との複数層の間隔を置いたスタック構造の高品質の接合を実現することができ、軽金属の種類、成分及び加工方法、並びに鋼板の強度に制限されず、例えばマグネシウム合金、アルミニウム合金冷間圧延板、アルミニウム合金形材、アルミニウム鋳造及び中間に超高強度熱間成形鋼が存在する場合を含む接合を実現する。
【0039】
(4)従来の鋼とアルミニウムとの直接抵抗スポット溶接方法に比べて、本発明の方法は、電極と軽金属との直接接触を回避し、それにより電極の耐用年数と継手の接合の品質を大幅に向上させることができる。
【0040】
(5)本発明の方法は、従来の同じ種類の技術に比べて、ロック特徴を有する鋼製金属部品を専門的に製造することを必要とせず、軽金属又は鋼部材を突き刺すことを必要とせず、非常に広い応用市場を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】異種金属継手の一実施例の積層構造概略図である。
【
図2a】異種金属継手の別の実施例の積層構造概略図である。
【
図2b】異種金属継手のさらに別の実施例の積層構造概略図である。
【
図3】異種金属継手のさらに別の実施例の積層構造概略図である。
【
図4】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施形態における電流、電極圧力と時間との関係の概略図である。
【
図5a】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施形態における異なる溶接段階の溶接継手の変化概略図である。
【
図5b】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施形態における異なる溶接段階の溶接継手の変化概略図である。
【
図5c】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施形態における異なる溶接段階の溶接継手の変化概略図である。
【
図5d】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施形態における異なる溶接段階の溶接継手の変化概略図である。
【
図5e】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施形態における異なる溶接段階の溶接継手の変化概略図である。
【
図6】異種金属継手の一実施例の溶接継手の構造概略図である。
【
図7】異種金属継手の別の実施例の溶接継手の構造概略図である。
【
図8a】異種金属継手の別の2つの異なる実施例の溶接継手の構造概略図である。
【
図8b】異種金属継手の別の2つの異なる実施例の溶接継手の構造概略図である。
【
図9】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例1の溶接継手の剥離破面構造図である。
【
図10】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例2の溶接継手の断面金相図である。
【
図11】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例2の溶接継手の引張せん断荷重-変位曲線図である。
【
図12】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例4の溶接継手の断面金相図である。
【
図13】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例4の溶接継手の引張せん断荷重-変位曲線図である。
【
図14】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例5の溶接継手の断面金相図である。
【
図15】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例5の溶接継手の引張せん断荷重-変位曲線図である。
【
図16】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例7の溶接継手の断面金相図である。
【
図17】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例7の溶接継手の引張せん断荷重-変位曲線図である。
【
図18】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例8の溶接継手の断面金相図である。
【
図19】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例8の溶接継手の引張せん断荷重-変位曲線図である。
【
図20】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例の溶接継手の断面金相図である。
【
図21】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例10の溶接継手の断面金相図である。
【
図22】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例11の溶接継手の断面金相図である。
【
図23】異種金属継手の抵抗溶接方法の実施例12の溶接継手の断面金相図である。
【
図24】異種金属継手の抵抗溶接方法の比較例の溶接継手の断面金相図である。
【
図25】異種金属継手の抵抗溶接方法の比較例の溶接継手の引張せん断荷重-変位曲線図である。
【
図26】異種金属継手の各領域範囲の概略図である。 上記図面の目的は、当業者の理解を容易にするために、本発明の技術的思想を説明することであり、図面は、本発明の技術的特徴に関連する部分のみを含み、発明の全体及び全ての詳細を示さない。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、具体的な実施例により図面を参照して本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0043】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。理解すべきものとして、これらの実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。また、図面は、概略図であり、したがって、本発明の方法、継手に係る関連寸法は、前記概略図の寸法又は比例に制限されない。なお、本特許の特許請求の範囲及び明細書において、第1及び第2などのような関係用語は、1つのエンティティ又は操作と別のエンティティ又は操作を区別するために用いられるだけであり、必ずしもこれらのエンティティ又は操作の間にいかなるこのような実際の関係又は順序が存在することを要求又は示唆するものではない。また、用語の「含む」、「包含」又はその他のあらゆる変形は、非排他的な包含を含むことを意図し、それにより一連の要素を含む過程、方法、物品又は機器は、それらの要素を含むだけでなく、また明確に列挙されない他の要素を含み、又はこのような過程、方法、物品又は機器に固有の要素を含む。用語の「上」、「下」、「外側」、「内側」などは、相対位置関係を相対的に説明するだけであり、特定の内外制限がない。より多くの制限がない場合、文の「1つの…を含む」により限定された要素は、前記要素を含む過程、方法、物品又は機器に他の同じ要素がさらに存在することを排除するものではない。
【0044】
異種金属継手は、
図1に示すような積層構造を有し、当該積層構造は、第1類金属板3、5及び第2類金属板4を含む。第1類金属板3、5は、それぞれ上板3、下板5と呼ばれてもよく、第2類金属板4は、内板4と呼ばれてもよい。第1類金属製の上板3、第2類金属製の内板4、及び第1類金属製の下板5である。上板3及び下板5について、板材を製造する第1類金属は、純鉄又は鉄系合金であり、具体的な板材は、複数の点から選択することができ、例えば機械的特性の点では、その抗張強度は、2500MPa以下であり、マイクロビッカース硬さは、650Hv以下であり、また、寸法の点では、単層の厚さは、0.5mm~2.5mmの範囲であり、又は板厚(単位mm)と抗張強度(単位MPa)との積の数値Aが100~5000の間であることを総合的に考慮して、好ましい実施例において上板3と下板5のA値が等しくないとする。いずれかの第1類金属板のいずれかの表面は、裸の板であってもよく、例えば亜鉛めっき層、アルミニウムシリコンめっき層、亜鉛アルミニウムめっき層又は亜鉛ニッケルめっき層のようなアルミニウム系又は亜鉛系めっき層、鉛錫めっき層を有してもよい。内板4について、板材を製造する第2類金属は、密度が5g/cm
3未満、又は融点が800℃未満の単体又は合金であり、その具体的な板材としては、複数の点から選択することができ、例えば成分上、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金のうちいずれか1つ又は少なくとも2つの積層の組み合わせのいずれかを選択してもよく、また寸法の点から考慮して、厚さが4mm以下のものとする。
【0045】
上板3、内板4及び下板5は、単層板構造であり、他の実施例において複数層板が隣接して重畳した複合構造であってもよく、このような複数層板が隣接して重畳した複合構造は、それぞれ上記制限条件を複合する異なる板材からなるものであってもよい。溶接の品質を向上させることに役立つために、積層構造の形態によらず、そのうち第1類金属板の総厚さは、5mm以下、第2類金属板の総厚さは、4mm以下であることが好ましい。
【0046】
異種金属継手の上板3、内板4及び下板5は、いずれも複数層構造として設置することができる。
図2aに示す異種金属継手(溶接前)では、上板3は3層構造であり、下板5は2層継手である。
図2bに示す異種金属継手(溶接前)では、内板4は2層構造である。ここで、上板3、内板4及び下板5の複数層構造は、同じ種類の材料であってもよく、前述した実施例におけるパラメータ制限を満たす複数種類の異なる材料の組み合わせであってもよい。例えば、上板3、下板5の複数層構造は、低炭素鋼と純鉄との積層の組み合わせのいずれかであってもよく、内板4の複数層構造は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金のうちいずれか1つ又は少なくとも2つの積層の組み合わせのいずれかであってもよい。
【0047】
図3に示すように、異種金属継手の別の形式は、さらに第1類金属で構成された上板3、下板5と、第2類金属で構成された内板4と、第1類金属で構成された内板13とからなる5層群の複合構造であってもよく、その中で、各層の板材は、単板であってもよく、複数層の板材が隣接して重畳された複合構造であってもよい。このような構造に対して、溶接段階では、隣接して間隔を置いた第1類金属板、すなわち、上板3と内板13、内板13と下板5はそれぞれ接触して溶接される。
【0048】
以下、
図1にて提供される3層の積層構造を例として、異種金属継手の抵抗溶接方法の実施形態の溶接過程について説明し、
図5を参照し、抵抗溶接過程において、上電極1及び下電極2は、積層構造に電流及び電極圧力を印加する。
図5において、横軸は、時間(ms)であり、縦軸は、電極圧力(N)又は電流(kA)であり、ここで、破線は、圧力の時間的変化を示し、実線は、電流の時間的変化を示す。抵抗溶接過程は、t1~t2の予熱段階、t3~t4のスパッタリング段階、t5~t6の溶接段階及びt6~t7の焼戻し段階を含む。各段階において、上電極1及び下電極2は、それぞれ積層構造に対して対応する予熱電流I4、スパッタリング電流I1、溶接電流I2及び焼戻し電流I3を印加する。電極圧力は、
図4では時間変化に伴って段階的に変化する。スパッタリング段階において、積層構造にスパッタリング電流及び電極圧力を印加して、溶接領域内のスタック構造を加熱し、第2類金属は溶融し圧力作用でスパッタリングの形式で溶接領域から離脱し、第1類金属は、抵抗熱及び圧力作用で互いに近接し、ここで、少なくとも一部の溶接領域において第2類金属板は完全に飛散する。溶接段階において、少なくとも一部の溶接領域において第1類金属板のみが接触して構成される溶接界面を形成し、溶接界面に冶金接合を発生させる。別の実施形態において、溶接過程全体は、表1に示す電極圧力を変わらないように保持することができる。
【0049】
ここで、スパッタリング電流と電極圧力は、溶接電極により印加され、溶接電極は、電極端面を有する。スパッタリング過程において第2類金属板が完全に飛散することは、第1類金属板が接触して構成される溶接界面に微量に残された第2類金属を有し、且つ微量に残された第2類金属が前記第1類金属の表面のめっき層又は基体元素と混合することで、溶接点の断面を肉眼で観察する時に第1類金属からなるスタック構造のみを見て、その後に溶接を継続する過程において、微量に残された第2類金属が完全に融合して第1類金属板で形成された溶接ナゲットに入り込み、且つ溶接の品質に影響を与えず、すなわち微量に残された第2類金属板が第1類金属板と脆性の金属間化合物を形成することができず、溶接ナゲットの性能にも影響を与えないという状況を含む。
【0050】
溶接界面に発生した第1類金属と第2類金属元素との混合、及び第1類金属のみの接合により元の接触面が融合して消失する状況は、冶金接合の発生である。冶金接合は、後述の実施例において、拡散接合と溶接ナゲット接合とを含む。
【0051】
まず基準電流強度I0を定義し、I0は、上板3、下板5に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、そのうちの薄い板の厚さである。
【0052】
電極が積層構造に電流を印加する前に、選択可能な予圧ステップを印加し、予圧ステップは、積み上げワークピースを緊密に接触させ、板材間の抵抗を低下させ、予圧圧力は、
図5に示すとおりであり、それは後述するスパッタリング、溶接段階の電極圧力よりも低いとすることができる。
【0053】
予熱段階において、
図5aに示すように、電極は、積層構造に予熱電流を印加し、積み上げワークピースの接触をより緊密にさせ、板材間の抵抗を低下させる。予熱電流は、少なくとも1つの電気パルスを有し、作用時間は、一般的に800ms以下であり、好ましくは200~700msである。予熱電流は、優先的にスパッタリングが発生せず、予熱電流強度I4は、数値的に、I4=K4*I0を満たし、K4の取り得る値の範囲は、0.2~1.3である。いくつかの実施例において、予熱段階を省略しても依然として積層構造に対する溶接を完了することができる。
【0054】
スパッタリング段階において、
図5b、
図5cに示すように、電極は、積層構造にスパッタリング電流を印加し、スパッタリング電流の作用で溶接領域範囲内の内板4材料は、溶融して液体金属6になり、そのうちの一部は、スパッタ7を形成して溶接領域から離脱し、第1類金属板3、5の間に第2類金属が存在しない領域が形成され、第1類金属板3、5は、電流の作用で熱によって軟化し、上電極1と下電極2の圧力で中間に近接し、この第2類金属が存在しない領域内に互いに接触して溶接界面8を形成する。第2類金属4は、押圧されて変形し、溶接界面8に残された第2類金属の厚さは、一般的に≦0.15mmであり、好ましい状態でその厚さは、≦0.05mmであり、且つ溶接界面8の相当径は、通常、上電極1又は下電極2の端面径の0.5倍以上である。スパッタリング電流強度I1は、数値的に、I1=K1*I0を満たし、K1の取り得る値の範囲は、0.8~3.5である。スパッタリング電流は、シングルパルスであっても複数パルスであってもよく、パルス数は、好ましくは2~5個であり、単一のパルスの持続時間は、200ms以下であり、好ましくは50ms~120msである。
【0055】
溶接段階において、
図5dに示すように、電極は、積層構造に溶接電流を印加する。溶接電流の強さは、スパッタリング段階よりも小さいが、電極圧力は、スパッタリング段階よりも大きい。溶接電流は、シングルパルスであっても複数パルスであってもよく、作用時間は、一般的に800ms以下であり、好ましくは200~700msである。溶接電流強度I2は、数値的に、I2=K2*I0を満たし、K2の取り得る値の範囲は、0.5~2.5である。第1類金属板3、5は、溶接電流の作用で加熱され続け、接触面8における金属は溶融して、鋼溶接ナゲット9を径が3.5√tに達するように形成し、さらに第1類金属板3、5の間の冶金接合を実現する。内板4の溶接界面の周囲に残された液状金属の一部と近傍の鋼とが接触する界面部分に少量の金属間化合物(IMC層)が形成される。スパッタリング発生後に上板3と下板5を十分に接触させるために、スパッタリング電流と溶接電流との間に0~200msの間隔を設定することができ、好ましくは10~70msにする。
【0056】
焼戻し段階において、
図5eに示すように、電極は、積層構造に焼戻し電流を印加して、溶接界面に保温及び焼戻し処理を行い、均一な溶接組織を取得し、残留応力を除去する。焼戻し電流は、少なくとも1つの電気パルスを有し、作用時間は、一般的に800ms以下であり、好ましくは200~700msである。焼戻し電流は、優先的にスパッタリングア発生せず、焼戻し電流強度I3は、数値的に、I3=K3*I0を満たし、K3の取り得る値の範囲は、0.4~1.8である。いくつかの実施例において、焼戻し段階を省略しても依然として積層構造に対する溶接を完了することができ、焼戻し電流I3は、一般的に15kA以下であり、好ましくは4~12kAである。
【0057】
上記過程において、K1、K2、K3、K4は、K1≧K2≧K3≧K4を満たすべきである。
【0058】
上記電流は、前記溶接電極により提供され、その具体的な数値は、有効電流又はピーク電流又は平均電流であってもよく、これは本分野では容易に理解されるものである。溶接電極は、抵抗溶接機器の一部として機能する。抵抗スポット溶接機器は、工業に広く応用される商用周波数溶接機、中間周波数溶接機、交流溶接機により実現することができる。ここで、抵抗スポット溶接機器は、定置スポット溶接機器、又は一般的にC字形、X字形及び他の種類の構造形状の溶接用クランプを含み、通常、ロボット又は自動化部材により実現される、ロボットにより駆動される自動化機器であってもよい。溶接電極は、任意の導電性及び熱伝導性を有する材料で製造され、例えば、銅クロム(CuCr)合金、銅クロムジルコニウム(CuCrZr)合金を含む銅合金、酸化アルミニウム粒子を添加した銅合金、又は電極材料として使用可能なその他の種々の銅合金のような銅合金で製造されてもよく、その溶接面は、球面、横断面、及びその他の特殊な形状面であってもよく、例えば表面に突起構造又は凹構造の端面を有する電極キャップが挙げられる。
【0059】
異なる実施例の具体的な状況に応じて、予熱電流とスパッタリング電流との間、スパッタリング電流と溶接電流との間、溶接電流と焼戻し電流との間にいずれも時間間隔を設定することができ、間隔の設定範囲は、0~200msであり、好ましくは5~80msである。間隔期間内において、溶接電極は、保圧状態を維持する。
【0060】
別のいくつかの実施例において、例えば上板3と下板5が厚い熱間成形鋼であり、内板4が非常に薄いアルミニウム板である場合、抵抗溶接過程においてスパッタリング段階の過程は非常に短く、内板4を構成するアルミニウム材は、短時間で迅速に溶接界面から離脱することができ、この場合にスパッタリング電流I1と溶接電流I2は、一致するように保持することができる。また、溶接段階に要する持続時間も短く、熱間成形鋼製の上板3と下板5は、溶接領域で溶融が発生することなく、拡散溶接の形式で固着される。このような実施例では、継手組織に溶接ナゲットが生成されない。
【0061】
前述した抵抗溶接方法は、3層の積層構造に限定されず、
図2a、
図2b、
図3に示す積層構造にも適用され、ここで、I0は、第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、
図2aを例とし、tは、上板3における3層板及び下板5における2層板のうち薄い板の厚さであり、
図3を例とし、tは、上板3、内板13、下板5のうち薄い板の厚さである。
【0062】
上記実施形態により、本発明の実施形態の別の態様にて提供される異種金属継手を取得することができる。典型的な継手構造は、
図6に示すとおりであり、異種金属継手は、積層構造であり、第1類金属板及び第2類金属板を含み、そのうち第1類金属板は、純鉄又は鉄系合金であり、上板3及び下板5を含み、第2類金属板は、密度が5.0g/cm
3未満又は融点が800℃未満の単体又は合金であり、内板4を含む。外観からは、異種金属継手の電極端面の圧痕領域10、11の間の厚さは、第1類金属板3、5の厚さの和以下であり、電極端面の圧痕領域10と11の縁部から外側へ継手構造の厚さが徐々に増加し、最後に元の組み合わせのスタック構造を呈する。異種金属継手の横断面から見ると、電極端面の圧痕領域10と11及び周辺材料は、中間が薄く、両側が厚いという特徴を呈し、電極端面の圧痕領域の中間圧痕領域は、第1類金属板のみからなり、且つ第1類金属板は、界面で原子間結合が発生して永久接合を形成し、このような永久接合は、凝固した溶接ナゲット9である可能性があり、固体拡散接合が発生した金属界面である可能性もある。圧痕の縁部から外側へ積層構造の厚さが徐々に増加し、外側の第1類金属板は、V字形を呈し、第2類金属板は、第1類金属板により形成されたV字形構造の間において、小さい厚さから第2類金属板の元の厚さまで漸増する。スパッタリング過程に変形する第2類金属板は、継手組織において、通常、電極端面の圧痕領域10と11範囲内の厚さ≦0.15mmの領域の相当径が、上電極1又は下電極2の端面径の0.5倍以上であるという特徴に合致する。
【0063】
通常、内板4と上板3又は下板5との間には、スパッタリング過程に第2類金属板である内板4が溶融してスパッタリング7が凝固して形成された噴射状の凝固組織が存在する。
【0064】
図6に示すように、電極端面の圧痕縁部領域では、第2類金属板で構成される内板4と第1類金属板で構成される上板3、下板5とが接触する領域の表面が溶融し、金属間化合物(IMC層)12が生成される。金属間化合物12の外側において、押圧されて変形した第2類金属板は、そのうち厚さ≦0.15mmの第2類金属板領域(溶接ナゲットを含む)の相当径が一般的に上電極1又は下電極2の端面径の0.5倍以上である。いくつかの実施例において、IMC層は、第2類金属板と第1類金属板との間の拡散により形成される可能性がある。
【0065】
他の実施例において、異種金属の継手における上板3、内板4、下板5は、いずれも単層であっても複数層であってもよく、
図6に示すように3層構造であってもよく、
図7に示すように複数層の第2類金属板からなる内板4の中間に第1類金属で構成される中間層13を追加して5層構造になるようにしてもよい。
【0066】
図8a、8bに示すように、異種金属継手の別の形式としては、1枚の折り曲げられた第1類金属板が積層構造のうちの少なくとも2層を構成するものであってもよく、折り曲げ部14の位置は、溶接領域外である。このような積層構造は、
図8aに示す3層構造であってもよく、スタック構造の外側は、折り曲げ部14付きの第1類金属板5からなり、第2類金属板で構成される内板4は、折り曲げられた重ね領域に嵌め込まれ、
図8bに示す5層構造であってもよく、積層構造は、第1類金属製の上板3及び下板5を含み、そのうち下板5は、折り曲げ部14を有し、2枚の第2類金属製の内板4は、上板3と下板5との間及び下板5の折り曲げ構造で形成された空間内にそれぞれ挿入される。
【0067】
上記言及した溶接継手における各領域をより容易に理解するように
図26を参照し、溶接継手aは、第1類金属板及び第2類金属板を含み且つ点接合を形成する構造であり、溶接領域bは、溶接電極がスタック構造を溶接し抵抗熱から影響を受けて接合を実現する領域を含み、電極端面の圧痕領域cは、溶接過程において前記溶接電極の端面が前記異種金属継手と直接接触し加圧して形成された受圧領域であり、溶接界面領域dは、第2類金属が離脱した後に第1類金属板のみが互いに接触して構成される領域であり、また溶接継手は、軽金属薄化領域eをさらに含み、軽金属薄化領域eは、第2類金属板の元の厚さから溶接界面領域に近接して徐々に薄くなる領域である。以下、異種金属継手の抵抗溶接方法の実施形態について例を挙げて説明する。
【0068】
(実施例1)
厚さが0.8mmで且つ抗張強度が400MPa未満のCR210冷間圧延鋼を上板3とし、厚さが0.8mmのAA6016アルミニウム合金を内板4とし、厚さが1.0mmで且つ抗張強度が600MPa未満のCR420冷間圧延鋼を下板5として選択し、第1の溶接電極1及び第2の溶接電極2は、いずれも普通の球面電極を採用し、電極の溶接端面は、6mmであり、具体的な溶接プロセスのパラメータは、表1に示すとおりであり、溶接終了後に剥離破面は、
図9に示すとおりであり、内板4と下板5との界面に、溶接点の周囲を回って外周に向かって放射状に分布する凝固した軽金属スパッタ7が存在し、溶接後の継手の引張せん断荷重試験結果は、表2に示すとおりであり、第1類金属板3、5と第2類金属板4との間に強固な鋼と鋼との溶接ナゲットが形成されるため、引張せん断荷重試験によれば、継手は3775Nほど極めて高い引張せん断強度を有する。
【0069】
(実施例2)
厚さが1.0mmで且つ抗張強度が400MPa未満のCR210冷間圧延鋼を上板3とし、厚さが1.2mmのAA5754アルミニウム合金を内板4として選択し、実施例1が選択した材質とは異なり、内板4は5シリーズアルミニウム合金であり、厚さが1.0mmで且つ抗張強度が600MPa未満のCR420冷間圧延鋼を下板5とし、第1の溶接電極1及び第2の溶接電極2は、いずれも普通の球面電極を採用し、電極の溶接端面は、6mmであり、具体的な溶接プロセスのパラメータは、表1に示すとおりであり、継手の断面金相図は、
図10に示すとおりである。溶接終了後に継手に対して引張せん断荷重試験を行い、引張せん断荷重-変位曲線は、
図11に示すとおりである。引張せん断荷重試験によれば、継手は、せん断引張過程において、顕著な塑性変形段階では、7292.4Nほど極めて高い引張せん断強度を有する。引張せん断のピーク荷重試験結果を表2に示す。
【0070】
(実施例3)
厚さが1.0mmのQ&P980冷間圧延鋼であって、抗張強度が一般的に1000MPa以上の冷間圧延鋼を上板3とし、厚さが1.5mmのAA5754アルミニウム合金を内板4とし、厚さが1.2mmのQ&P1180冷間圧延高強度鋼であって、抗張強度が一般的に1200MPa以上の冷間圧延高強度鋼を下板5として選択し、第1の溶接電極1及び第2の溶接電極2は、いずれも普通の球面電極を採用し、電極の溶接端面は、6mmであり、具体的な溶接プロセスのパラメータは、表1に示すとおりであり、溶接終了後に継手に対して引張せん断荷重試験を行い、試験によれば、継手は、同様に、7557.6Nほど極めて高い引張せん断強度を有し、引張せん断のピーク荷重試験結果を表2に示す。
【0071】
(実施例4)
厚さが1.0mmのCR420冷間圧延鋼であって、抗張強度が600MPa以下の冷間圧延鋼を上板3とし、厚さが1.6mmのAA6016アルミニウム合金を内板4とし、厚さが1.2mmのQ&P1180冷間圧延高強度鋼であって、抗張強度が一般的に1200MPa以上の冷間圧延高強度鋼を下板5として選択し、第1の溶接電極1及び第2の溶接電極2は、いずれも普通の球面電極を採用し、電極の溶接端面は、6mmであり、具体的な溶接プロセスのパラメータは、表1に示すとおりであり、継手の断面金相図は、
図12に示すとおりである。溶接終了後に継手に対して引張せん断荷重試験を行い、引張せん断荷重-変位曲線は、
図13に示すとおりである。引張せん断荷重試験によれば、継手に明らかな塑性変形が発生し、8995.0Nほど極めて高い強度を有し、引張せん断のピーク荷重試験結果を表2に示す。
【0072】
(実施例5)
厚さが1.0mmで且つ抗張強度が600MPa以下のCR420冷間圧延鋼を上板3とし、厚さが2.0mmのAA6016アルミニウム合金を内板4とし、厚さが1.2mmで且つ抗張強度が一般的に1200MPa以上のQ&P1180冷間圧延高強度鋼を下板5として選択し、第1の溶接電極1及び第2の溶接電極2は、いずれも普通の球面電極を採用し、電極の溶接端面は、6mmであり、具体的な溶接プロセスのパラメータは、表1を参照し、継手断面の金相図は、
図14に示すとおりである。溶接終了後に継手に対して引張せん断荷重試験を行い、引張せん断荷重-変位曲線は、
図15に示すとおりである。引張せん断荷重試験によれば、継手は9508.4Nほど極めて高い引張せん断強度を有し、引張せん断のピーク荷重試験結果を表2に示す。
【0073】
(実施例6)
厚さが1.0mmのQ&P980冷間圧延高強度鋼であって、抗張強度が一般的に1000MPa以上の冷間圧延高強度鋼を上板3とし、厚さが2.0mmのAA6061アルミニウム合金を内板4とし、厚さが1.4mmで且つ抗張強度が600MPa以下のCR420冷間圧延鋼を下板5とし、下板5の表面は亜鉛めっき層を有する。第1の溶接電極1及び第2の溶接電極2は、いずれも普通の球面電極を採用し、電極の溶接端面は、6mmであり、具体的な溶接プロセスのパラメータは、表1を参照する。溶接終了後に継手に対して引張せん断荷重試験を行い、試験結果によれば、継手は10437.8Nほど極めて高い引張せん断強度を有し、引張せん断ピーク荷重試験結果を表2に示す。
【0074】
(実施例7)
厚さが1.0mmで且つ抗張強度が600MPa以下のCR420鋼を上板3とし、厚さが2.0mmのAZ31マグネシウム合金を内板4とし、厚さが1.2mmの熱成形超高強度鋼であって、抗張強度が一般的に1300Mpa以上の熱成形超高強度鋼を下板5として選択し、第1の溶接電極1及び第2の溶接電極2は、いずれも普通の球面電極を採用し、電極の溶接端面は、6mmであり、具体的な溶接プロセスのパラメータは、表1を参照し、継手断面金相図は、
図16に示すとおりである。溶接終了後に継手に対して引張せん断荷重試験を行い、引張せん断荷重-変位曲線は、
図17に示すとおりである。引張せん断荷重試験によれば、継手は6970.0Nほど極めて高い引張せん断強度を有し、引張せん断ピーク荷重試験結果を表2に示す。
【0075】
(実施例8)
厚さが1.0mmで且つ抗張強度が一般的に1000MPa以上のQ&P980鋼を上板3とし、厚さが2.4mmの6061アルミニウム合金形材を内板4とし、厚さが1.4mmの熱成形超高強度鋼を下板5として選択し、具体的な溶接プロセスのパラメータは、表1を参照し、継手断面金相図は、
図18に示すとおりである。溶接終了後に継手に対して引張せん断荷重試験を行い、引張せん断荷重-変位曲線は、
図19に示すとおりである。引張せん断荷重試験によれば、継手は9883.4Nほど極めて高い引張せん断強度を有し、引張せん断試験のピーク荷重結果を表2に示す。
【0076】
(実施例9)
厚さが1.0mmのQ&P980鋼を上板3とし、厚さが1.6mmのAA6061アルミニウム合金を内板4とし、厚さが1.2mmで抗張強度が2000MPaの熱間成形鋼と厚さが1.2mmで抗張強度が1180MPaのQ&P1180焼入鋼とを複合して下板5として選択し、そのうち熱間成形鋼を下板5の上層部分とし、Q&P1180鋼を下板5の下層部分とした。溶接は、3つの16kAのパルスをスパッタリング電流I1として用い、スパッタリング電流は、各パルスが80ms持続し、20ms間隔であり、スパッタリング電流後に30ms冷却し、13kA溶接電流I2を印加し、300ms持続して溶接を行い、得た継手金相図を
図20に示し、本実施例では、I0は8.2kA(溶接時間が280ms)であった。溶接ナゲット組織9は、完全に鋼からなり、明るい金属間化合物を含まなかった。
【0077】
(実施例10)
厚さが1.0mmのDP780鋼を上板3とし、厚さが2.0mmのAZ31マグネシウム合金を内板4とし、厚さが1.4mmで抗張強度が2000MPaの熱間成形鋼と厚さが1.2mmで抗張強度が1180MPaのQ&P1180焼入鋼とを複合して下板5として選択し、そのうち熱間成形鋼を上板5の上層部分とし、Q&P1180鋼を下板5の下層部分とした。溶接は、3つの19kAのパルスをスパッタリング電流I1として用い、スパッタリング電流は、各パルスが80ms持続し、20ms間隔であり、スパッタリング電流後に30ms冷却し、13kA溶接電流I2を印加し、400ms持続して溶接を行い、得た継手金相図を
図21に示し、本実施例では、I0は8.7kA(溶接時間が280ms)であった。溶接ナゲット組織9は、完全に鋼からなり、明るい金属間化合物を含まなかった。
【0078】
(実施例11)
厚さが1mmのDP780鋼を上板3とし、厚さが0.8mmの5754アルミニウム合金と厚さが1.6mmのAA6061アルミニウム合金をそれぞれ内板4として選択し、その中に厚さが1.2mmで抗張強度が1200MPaのQ&P1180焼入鋼を内板13として挿入し、厚さが1mmのDP780鋼を下板5として選択して5層複合構造を構成し、そのうち5754アルミニウム合金は、内板13の上方に配置され、AA6061アルミニウム合金は、内板13の下方に配置された。6kA予熱電流I4を用いて100msの予熱を行い、続いて3つの20kAのパルスをスパッタリング電流I1として用い、スパッタリング電流は、各パルスが85ms持続し、20ms間隔であり、スパッタリング電流後に30ms冷却し、15kA溶接電流I2を印加し、400ms持続して溶接を行い、得た継手金相図を
図22に示し、本実施例では、I0は8.6kA(溶接時間が300ms)であった。溶接ナゲット組織9は、完全に鋼からなり、明るい金属間化合物を含まなかった。
【0079】
(実施例12)
厚さが1mmのDP780鋼を上板3とし、厚さが0.8mmの5754アルミニウム合金と厚さが1.6mmのAA6061アルミニウム合金とを複合して内板4とし、厚さが1.2mmで抗張強度が1200MPaのQ&P1180焼入鋼を下板5として選択した。6kA予熱電流I4を用いて100msの予熱を行い、続いて3つの21kAのパルスをスパッタリング電流I1として用い、スパッタリング電流は、各パルスが80ms持続し、20ms間隔であり、スパッタリング電流後に30ms冷却し、15kA溶接電流I2を印加し、380ms持続して溶接を行い、得た継手金相図を
図23に示し、本実施例では、I0は8.5kA(溶接時間が280ms)であった。溶接ナゲット組織9は、完全に鋼からなり、明るい金属間化合物を含まなかった。
【0080】
(比較例)
本発明の実施例と比較するために、本例は、従来の抵抗スポット溶接方法を用いてアルミニウム鋼異種金属を溶接し、溶接時に第1の溶接電極及び第2の溶接電極は、いずれも球面であり、球面半径は、100mmであり、前記球面電極の溶接面の径は、10mmであり、最適化された好ましい溶接パラメータを選択して溶接し、採用された溶接パラメータは、溶接圧力5600N、溶接電流17kA、溶接時間100ms、5つのパルス電流、パルス電流の間の間隔20ms、溶接後に300ms維持であり、継手金相図を
図24に示す。溶接は、1.2mm厚さのQ&P1180鋼を第1の金属板5とし、1.6mm厚さのAA6016を第2の金属板4として選択し、溶接後に継手に対して引張せん断荷重試験を行い、試験結果を表2及び
図25に示し、継手引張せん断ピーク荷重は、3265.8Nに過ぎず、本発明の継手のピーク荷重よりも遥かに低く、荷重-変位曲線から分かるように、継手変位が極めて小さくて、約0.3mmであり、脆性が顕著であり、本発明にて提供される継手よりも遥かに小さい。
【0081】
【0082】
【0083】
理解すべきものとして、上記実施例は、図面に合わせて、当業者が本発明の技術的思想をよりよく理解できるようにするためのものであり、本発明の実施形態及び保護範囲を具体的に限定するものではない。本発明の特許請求の範囲内において、関連部品、材料、方法のステップを修正又は置換し、衝突が発生しない場合に異なる実施形態を結合することは、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種金属積層構造を溶接する異種金属継手の抵抗溶接方法であって、前記積層構造は、第1類金属板及び第2類金属板を含み、前記第1類金属板は、純鉄又は鉄系合金であり、前記第2類金属板は、密度が5g/cm
3未満又は融点が800℃未満の単体又は合金であり、前記積層構造の外側の板は、第1類金属板であり、前記第2類金属板は、前記第1類金属板の間に位置し、前記抵抗溶接方法は、前記第2類金属板を溶接領域から排出するステップ及び溶接段階を含む異種金属継手の抵抗溶接方法において、
前記第2類金属板を排出するステップは、スパッタリング段階を含み、
前記スパッタリング段階において、前記積層構造にスパッタリング電流及び電極圧力を印加して、溶接領域内のスタック構造を加熱し、第2類金属は溶融し圧力作用でスパッタリングの形式で溶接領域から離脱し、第1類金属は、抵抗熱及び圧力作用で互いに近接し、ここで、少なくとも一部の溶接領域において前記第2類金属板は完全に飛散し、
前記第1類金属板のみが接触して構成される溶接界面を形成し、前記溶接界面に残された第2類金属層の厚さ≦0.15mmであり、
前記溶接段階において、前記少なくとも一部の溶接領域において前記第1類金属板のみが接触して構成される溶接界面を形成し、前記溶接界面に冶金接合を発生させることを特徴とする異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項2】
前記スパッタリング電流は、1つ又は複数、好ましくは2~5個の電流パルスを含み、単一の前記パルスの持続時間は、200ms以下であり、好ましくは50ms~120msであることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項3】
前記スパッタリング電流強度I1=K1*I0であり、ここでI0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別に抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K1の取り得る値の範囲は、0.8~3.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項4】
前記スパッタリング段階において
、前記溶接界面に残された第2類金属層の厚さ≦.05mmであり、且つ前記溶接界面の相当径≧溶接電極の電極端面径の0.5倍であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項5】
前記溶接段階において、前記積層構造に溶接電流及び電極圧力を印加し、前記溶接電流の強度は、前記スパッタリング電流の強度以下であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項6】
I2=K2*I0であり、ここで、I2は、溶接電流の強度であり、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K2の取り得る値の範囲は、0.5~2.5であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項7】
前記スパッタリング電流と前記溶接電流との間の間隔は、0ms~200msであることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項8】
前記溶接段階の後に焼戻し段階をさらに含み、前記焼戻し段階において電極は溶接領域に焼戻し電流を提供することを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項9】
前記焼戻し電流強度I3=K3*I0であり、ここで、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K3の取り得る値の範囲は、0.4~1.8であることを特徴とする請求項8に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項10】
前記スパッタリング段階の前に予熱段階をさらに含み、前記予熱段階において電極は溶接対象の領域に予熱電流を提供することを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項11】
前記予熱電流強度I4=K4*I0であり、ここで、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K4の取り得る値の範囲は、0.2~1.3であることを特徴とする請求項10に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項12】
前記抵抗溶接方法は、前記スパッタリング段階の前に予熱段階をさらに含み、前記予熱段階において電極は溶接対象の領域に予熱電流を提供し、前記スパッタリング段階の後に溶接段階をさらに含み、前記溶接段階の後に焼戻し段階をさらに含み、前記焼戻し段階において電極は溶接領域に焼戻し電流を提供し、スパッタリング電流強度I1=K1*I0で、溶接電流強度I2=K2*I0で、予熱電流強度I4=K4*I0で、焼戻し電流強度I3=K3*I0であり、ここで、I0は、前記異種金属継手における第1類金属板に対して個別にシングルパルス抵抗溶接を行って溶接ナゲット断面径≧4√tのように形成する時の電流強度であり、tは、前記第1類金属板のうち薄い板の厚さであり、K1の取り得る値の範囲は、0.8~3.5であり、K2の取り得る値の範囲は、0.5~2.5であり、K4の取り得る値の範囲は、0.2~1.3であり、K3の取り得る値の範囲は、0.4~1.8であり、K1≧K2≧K3≧K4であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項13】
前記溶接電流、前記予熱電流、前記焼戻し電流は、少なくとも1つの電気パルスを有し、作用時間は、800ms以下であり、好ましくは200~700msであることを特徴とする請求項12に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項14】
前記溶接電流又は前記予熱電流と前記スパッタリング電流との間、前記焼戻し電流と前記溶接電流との間は、0~200ms、好ましくは5~80msの間隔を有することを特徴とする請求項12に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項15】
前記第1類金属板の少なくとも1つの表面にめっき層が存在し、前記めっき層は、亜鉛系めっき層又はアルミニウム系めっき層であることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項16】
前記積層構造の構造形式は、3層群又は5層群であり、前記3層群の2つの外層群は、第1類金属板の単層又は隣接する重畳層であるが、内層群は、第2類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、前記5層群の2つの外層群、中間層群は、第1類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、別の2層群は、第2類金属板の単層又は隣接する重畳層であり、外層群と中間層群との間にそれぞれ位置することを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項17】
前記積層構造における前記第1類金属板の少なくとも2層は、同一の金属板を折り曲げてなり、前記折り曲げ位置は、溶接領域外であることを特徴とする請求項1又は16に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項18】
前記第2類金属板は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金のうちのいずれか1つ又は少なくとも2つの積層の組み合わせのいずれかであることを特徴とする請求項1又は16に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項19】
隣接して間隔を置いた前記第1類金属板の間の単層又は隣接して重畳された前記第2類金属板の厚さ≦4.5mmであり、単層又は隣接して重畳された前記第1類金属板の総厚さ≦5.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項20】
前記積層構造の2つの外側の板のうち一方は、他方に比べて、板の厚さ(単位mm)と抗張強度(単位MPa)との積の値が小さいことを特徴とする請求項1に記載の異種金属継手の抵抗溶接方法。
【請求項21】
積層構造であり、第1類金属板及び第2類金属板を含み、前記第1類金属板は、純鉄又は鉄系合金であり、前記第2類金属板は、密度が5.0g/cm
3未満又は融点が800℃未満の単体又は合金であり、前記積層構造の外側の板は、第1類金属板であり、前記第2類金属板は、前記第1類金属板の間に位置する異種金属継手において、
異種金属継手の横断面から見ると、電極端面の圧痕領域及びその周辺材料は、中間が薄く、両側が厚いという特徴を呈し、前記異種金属継手の電極端面の圧痕領域における厚さは、第1類金属板の厚さの和以下であり、電極端面の圧痕領域の中間圧痕領域は、第1類金属板のみからなり、且つ前記第1類金属板の間は、界面で原子間結合が発生して永久接合を形成し、圧痕領域の縁部から外側へスタック構造の厚さが徐々に増加し、第2類金属板は、第1類金属板の間において、小さい厚さから第2類金属板の元の厚さまで漸増することを特徴とする異種金属継手。
【請求項22】
前記圧痕領域外の前記第1類金属板と第2類金属板の間には、第2類金属板の溶融スパッタリングによる「噴射状」の凝固組織が存在することを特徴とする請求項21に記載の異種金属継手。
【請求項23】
電極端面の圧痕縁部領域において、前記第2類金属板と前記第1類金属板との接触界面に、金属間化合物(IMC層)が生成されることを特徴とする請求項21に記載の異種金属継手。
【請求項24】
前記積層構造における前記第1類金属板は、そのうち少なくとも2層が同一の金属板を折り曲げてなり、前記折り曲げは、溶接領域外に位置することを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載の異種金属継手。
【請求項25】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の方法により得られることを特徴とする異種金属継手。
【国際調査報告】