(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】生体吸収性尿道ステント
(51)【国際特許分類】
A61L 31/06 20060101AFI20241106BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20241106BHJP
A61F 2/848 20130101ALN20241106BHJP
【FI】
A61L31/06
A61L31/14 500
A61F2/848
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024521750
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022082260
(87)【国際公開番号】W WO2023089021
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132690
【氏名又は名称】ポリメルビオ,ソシエダ リミタダ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ フェルナンデス ムニョース
(72)【発明者】
【氏名】ダビド ヘイホ アレナル
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ フェルナンデス エルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】フアン カルロス アンティゲダード アモ
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ ルビオ エマサベル
(72)【発明者】
【氏名】ジュレナ ポーロ アロジャベ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C267
【Fターム(参考)】
4C081AC09
4C081BA16
4C081CA17
4C081CC01
4C081DA03
4C267AA45
4C267AA49
4C267BB40
4C267CC26
4C267GG43
4C267HH08
(57)【要約】
本発明は、尿道などの体内管腔の閉塞を防止するために使用することができる、医療デバイスに関する。有利なことに、ステントは、狭窄を低減するために外科的処置後に挿入することができ、ステントは生体吸収性であることから、ステントがその機能を果たした後にステントを取り外すための第2の手術を回避することができる。ステントは、ε-カプロラクトン、ε-デカラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンと、ラクチドとの共重合によって調製された、ポリマー材料を含む。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道などの体内管腔への挿入に好適な硬質チューブ状構造物であって、前記構造物は、ε-カプロラクトン、ε-デカラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンとラクチドとの共重合によって調製されたポリマー材料を含み、
前記チューブ状構造物は、半径方向外側表面と、前記半径方向外側表面の反対側の半径方向内側表面とを含み、
前記チューブ状構造物は、前記チューブ状構造物を通って延びる管腔を含み、前記管腔は、前記半径方向内側表面によって画定され、
前記チューブ状構造物は、前記半径方向外側表面から半径方向に離れる方に延びる複数の突出部を含む、硬質チューブ状構造物。
【請求項2】
前記ラクチドが、L-ラクチド、D-ラクチド、ラセミラクチド、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項3】
前記ラクチドが、ラセミラクチドである、請求項1又は2に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項4】
前記ポリマー材料の数平均分子量が、15kDa~300kDaの範囲内、例えば、35kDa~125kDaの範囲内、例えば、45kDa~75kDaの範囲内にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項5】
前記ポリマー材料の重量平均分子量が、15kDa~600kDaの範囲内、例えば、70kDa~250kDaの範囲内、例えば、90kDa~150kDaの範囲内にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項6】
ε-カプロラクトン、ε-デカラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンのモル分率が、前記ポリマー材料の2~35の範囲内にあり、ラクチドのモル分率が、前記ポリマー材料の98~65の範囲内にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項7】
ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンのモル分率が、前記ポリマー材料の8~20の範囲内にあり、例えば、前記ポリマー材料の8~18の範囲内にあり、ラクチドのモル分率が、前記ポリマー材料の92~80の範囲内にあり、例えば、前記ポリマー材料の92~82の範囲内にある、請求項6に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項8】
前記ε-カプロラクトン、ε-デカラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンが、ε-カプロラクトンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項9】
前記チューブ状構造物が、検出可能な量のオクタン酸第一スズを含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項10】
前記複数の突出部が、複数の円周リングである、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項11】
前記複数の円周リングの各々が、前記管腔に対して直角である、請求項10に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項12】
前記複数の円周リングの各々が、丸みを帯びている、請求項10又は11に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項13】
前記複数の円周リングの各々が、前記複数の円周リングのうちの隣り合う円周リングから長手方向に離間している、請求項10~12のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項14】
前記複数の円周リングが、前記チューブ状構造物の長手方向端部から長手方向に離間している、請求項10~13のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項15】
前記複数の突出部により、前記チューブ状構造物の前記半径方向外側表面上に波形構造が作り出された、請求項1~14のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項16】
前記チューブ状構造物が、円筒形である、請求項1~15のいずれか一項に記載の硬質チューブ状構造物。
【請求項17】
狭窄を外科的除去した後の尿道の閉塞の予防に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー材料。
【請求項18】
前記ポリマー材料は、狭窄の前記外科的除去によって引き起こされる瘢痕組織を保護する、請求項17に記載の使用のためのポリマー材料。
【請求項19】
前記ポリマー材料は、尿が瘢痕組織と接触するのを防止する、請求項18に記載の使用のためのポリマー材料。
【請求項20】
前記使用の期間が、約2~90日間、例えば、約5~45日間、例えば、約6~35日間又は約7~30日間である、請求項17~19のいずれか一項に記載の使用のためのポリマー材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道などの体内管腔の閉塞を防止するために使用することができる、医療デバイスに関する。有利なことに、ステントは、狭窄を低減するために外科的処置後に挿入することができ、ステントは生体吸収性であることから、ステントがその機能を果たした後にステントを取り外すための第2の手術を回避することができる。
【背景技術】
【0002】
尿道狭窄は、尿の流れを遮断する可能性のある尿道の異常な狭細化である。これは、虚血性海綿繊維症(ischemic spongiofibrosis)と呼ばれる、管に沿った線維性瘢痕組織の生成によって生じ、通常は、外傷性破裂、感染、先天性、以前の手術(カテーテル、カテーテル法など)、腫れに由来する、別の疾患後の、又は尿道付近の増大する腫瘍に由来する、尿道若しくはその粘膜への攻撃によって引き起こされる。
【0003】
尿道狭窄は、成人男性人口の約0.6%(男性100,000人のうち患者229~627人)の有病率を有し、医原症(他の種類の手術の医療行為によって引き起こされる障害)がその状態の主な原因(病因)であり、外傷も同様である。平均的な患者は50~60歳であるので、この有病率は人口の高齢化により増加している。その治療は手術を必要とし、その手術は以下によって行うことができる:
尿道切開→小さい(<3cm)縦方向の狭窄に、特に若い患者に使用される。これは、患部組織を切断するナイフを組み込んだ尿道切開刀(内視鏡)を使用して行われる。手術後、ガイドチューブは1~4週間放置する必要があり、これは尿路及び治癒を促進する。これは、その後、摘出される。
尿道形成術→これはゴールドスタンダード技術であるが、狭窄の位置を特定して除去するために会陰からの切開手術を必要とするので、複雑である。これは、大きな狭窄に使用され、縫合糸で接合された健常な粘膜(身体の他の部分、例えば口から得られる)からの尿道の再上皮化による尿道再生が必要である。続いて、非生分解性ガイドカテーテルも、先の場合と同じ期間に、配設する必要がある。
【0004】
フォーリー(膀胱留置)カテーテルは、この種類の介入のためにガイドチューブとして使用される。それらは、膀胱に導入される柔軟なラテックスチューブであり、バルーンは、その正確な配置のために滅菌水で膨張させて、尿道を支持し、尿の通過を容易にするのに役立ち、一方で、再上皮化が起こる。現在、、治癒不良を防止するために、又は感染のリスクを低減するために、チューブに、通常、手で抗線維症薬及び抗菌薬が塗布される。
【0005】
他方、Urolume(金属)などの非生体吸収性尿道内ステントが市販されているが、いくつかの分析論文によれば、線維症、感染、手術の複雑さなどの問題が生じており、多くの場合、その使用は勧められない。同じことが、Memokath又はAllium URSのような他のものにも起こっている。他方、米国の会社であるCook Medicalは、尿道下裂用に設計された一群の尿道ステントを有しており、それらは、縫合糸が吸収されると排尿中に排出される。SRS Medicalなどの他の会社は、フォーリーカテーテルに代わるステントを開発しているが、それらはいずれも生体吸収性でない。
【0006】
欧州特許第0 943 299号は、生体吸収性脂肪族ポリエステルに基づく、場合によってはそのようなポリエステルの組み合わせに基づくステントを開示している。しかしながら、特定の組み合わせは開示されていない。更に、実際の生体吸収の例は提示されていない。
【0007】
したがって、適切な機械的特性(柔軟性/剛性、弾性など)を有するとともに、例えば、手術によって除去される尿道狭窄の治癒時間に適合する時間スケールにおいて生体吸収性である、尿道などの体内管腔への挿入に好適なチューブ状構造物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は、尿道などの体内管腔への挿入に好適なチューブ状構造物であって、当該構造物は、ε-カプロラクトン、ε-デカラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンとラクチドとの共重合によって調製されたポリマー材料を含む、チューブ状構造物に関する。更なる態様では、本発明は、尿道などの体内管腔の閉塞の予防に使用するための、ε-カプロラクトン、ε-デカラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン、又はδ-ヘキサラクトンとラクチドとの共重合によって調製されたポリマー材料に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A-1B】
図1A-1Bは、突出部の全くないチューブ状構造物の斜視図(1A)及び長手方向図(1B)である。
【
図2A-2C】
図2A-2Cは、本開示による例示的なチューブ状構造物の図である。
【
図3A-3B】
図3A-3Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(3A)及び側面図(3B)である。
【
図4A-4B】
図4A-4Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(4A)及び側面図(4B)である。
【
図5A-5B】
図5A-5Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(5A)及び側面図(5B)である。
【
図6A-6B】
図6A-6Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(6A)及び側面図(6B)である。
【
図7A-7B】
図7A-7Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(7A)及び側面図(7B)である。
【
図8A-8B】
図8A-8Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(8A)及び側面図(8B)である。
【
図9A-9B】
図9A-9Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(9A)及び側面図(9B)である。。
【
図10A-10B】
図10A-10Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(10A)及び側面図(10B)である。
【
図11A-11B】
図11A-11Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(11A)及び側面図(11B)である。
【
図12】本開示による複数の突出部の概略的な例を示す図である。
【
図13A-13B】
図13A-13Bは、本開示による複数の突出部の概略的な例を示す図である。
【
図14A-14B】
図14A-14Bは、本開示による複数の突出部の概略的な例を示す図である。
【
図15A-15B】
図15A-15Bは、本開示による例示的なチューブ状構造物の斜視図(15A)及び側面図(15B)である。
【
図16A-16B】
図16A-16Bは、本開示による複数の突出部の概略的な例を示す図である。
【
図17A-17B】
図17A-17Bは、本開示による複数の突出部の概略的な例を示す図である。
【
図18】
図18は、1つ以上のアパーチャを有するチューブ状構造物の斜視図である。
【
図19】
図19は、本開示による試験されたチューブ状構造物のジオメトリーを示す図である。
【
図20】
図20は、ポリマーの応力-歪み曲線の試験結果を示す図である。
【
図21】
図21は、ポリマーの応力-歪み曲線の試験結果を示す図である。
【
図22A-22C】
図22A-22Cは、設計された試験尿道の構成要素を示す図である。
【
図23】
図23は、完成した設計された試験尿道を示す図である。
【
図25】
図25は、摘出後の膀胱の画像、並びに10日後及び30日後の対照対処置の組織病理学的分析の結果を示す図である。10倍及び40倍の画像。
【
図26】
図26は、0、10、20、及び30日目におけるラット膀胱に挿入されたコポリマー膜の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、天然に存在するモノマーから調製された生分解性材料に基づいており、当該モノマーは、天然源又は合成源から提供される。より詳細には、本発明は、2種のモノマーの共重合に基づく。本明細書で定義されるコポリマーは、尿道などの体内管腔への挿入に有用なチューブ状ステントなどのチューブ状構造物を形成するために使用することができる。挿入されると、チューブ状構造物は、例えばステントに関して、当該技術分野で知られている様式で体内管腔の閉塞を回避する。コポリマーの特定の特性によって、チューブ状構造物は、手術によるその後の取り外しの必要性を回避しながら、所望の時間にわたってその機能を果たすことを可能にする速度で身体によって吸収又は排出される。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、尿道などの体内管腔への挿入に好適なチューブ状構造物に関し、当該構造物は、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンとラクチドとの共重合によって調製されたポリマー材料を含む。更なる態様では、本発明は、尿道などの体内管腔の閉塞の予防に使用するための、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンとラクチドとの共重合によって調製されたポリマー材料に関する。
【0012】
コポリマー
本発明によるチューブ状構造物は、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンとラクチドとの共重合によって調製されたポリマー材料を含む。ラクチドは、2つの乳酸分子間のエステル化から得られる環状ラクトンエステルである。L-ラクチド、D-ラクチド及びmeso-ラクチドをはじめとする、ラクチドのいくつかの立体異性形態が存在する。更に、ラセミラクチドは、L-ラクチドとD-ラクチドとの50:50の混合物である。したがって、一実施形態では、ラクチドは、L-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド、ラセミラクチド、及びそれらの混合物から選択される。更なる実施形態では、ラクチドはラセミラクチドである。
【0013】
ラクチドと共重合されるモノマーは、ε-カプロラクトン、ε-デカラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン及びδ-ヘキサラクトンからなる群から選択される。一実施形態では、ラクチドと共重合されるモノマーは、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン及びδ-ヘキサラクトンからなる群から選択される。更なる実施形態では、ラクチドと共重合されるモノマーは、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン及びブラシル酸エチレンブラシレートからなる群から選択される。より更なる実施形態では、ラクチドと共重合されるモノマーは、ε-カプロラクトン及びδ-バレロラクトンからなる群から選択される。より更なる実施形態では、ラクチドと共重合されるモノマーはε-カプロラクトンである。
【0014】
特定のニーズ、例えば、身体によるポリマー材料の吸収時間又は特定の機械的特性に関する特定のニーズに応じて、ポリマー材料の分子量を調整してもよい。これは、とりわけ、時間、温度、触媒及び撹拌速度などの重合条件を調整することによって達成することができる。分子量は、数平均分子量又は重量平均分子量として示すことができる。一実施形態では、ポリマー材料の数平均分子量は、15kDa~300kDaの範囲内にある。別の実施形態では、ポリマー材料の数平均分子量は、35kDa~125kDaの範囲内にある。更に別の実施形態では、ポリマー材料の数平均分子量は、45kDa~75kDaの範囲内にある。更なる実施形態では、ポリマー材料の重量平均分子量は、30kDa~600kDaの範囲内にある。より更なる実施形態では、ポリマー材料の重量平均分子量は、70kDa~250kDaの範囲内にある。より更なる実施形態では、ポリマー材料の重量平均分子量は、90kDa~150kDaの範囲内にある。
【0015】
ポリマー材料の分子量(重量平均及び数平均)は、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィー-サイズ排除クロマトグラフィー(GPC-SEC)(Fernandez, J. et al, Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical materials, 64, 2016, 209-219に明記されている)によって求めることができ、分散度(=Mw/Mn)も求めることができる。
【0016】
重合に使用されるモノマー材料の割合は、最適な結果を得るために必要に応じて調整してもよい。典型的には、ラクチドの量は、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンの量を超える。一実施形態では、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンのモル分率はポリマー材料の2~35の範囲内にあり、ラクチドのモル分率はポリマー材料の98~65の範囲内にある。更なる実施形態では、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンのモル分率はポリマー材料の8~20の範囲内にあり、ラクチドのモル分率はポリマー材料の92~80の範囲内にある。なお更なる実施形態では、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンのモル分率はポリマー材料の8~18の範囲内にあり、ラクチドのモル分率はポリマー材料の92~82の範囲内にある。
【0017】
ポリマーの調製
(S)-乳酸及び(R)-乳酸から誘導されるラクトンの立体異性体に基づく主にランダムな配置を有するコポリマー(又はターポリマー)を得るための手順は、バルク重合法を使用する単一の合成ステップを含む。
使用したモノマー:
a)主モノマー:(S)-乳酸及び(R)-乳酸から誘導されるラクトン(ラクチド)
【化1】
b)副モノマー:他の環状エステル(ラクトン)
【化2】
これらのポリマーについては、それらのランダム度(R)が0.80≦R≦1.20である場合、それらはランダムコポリマーであると考えることができる。反応は、異なるモノマー及び触媒の添加の順序に無関係に、単一の合成反応ステップで実施することができる。
【0018】
その反応は、触媒又は開始剤によるラクトン環からのエネルギーの放出に基づいて、ROP(開環重合)型反応に分類される。これらのROP触媒又は開始剤は、以下のものであることができる:
a.活性中心として金属又は半金属を有する金属触媒(又は半金属):活性中心及びそれらの非金属対応物の酸化状態に無関係に、金属塩、有機金属化合物。Sn、Y、Bi、Al、Cu、Zn、Sb、Fe、Ni又はCoなどの金属及び半金属が挙げられる。
b.有機触媒:例えば、求核性窒素化塩基(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD))。チオ尿素誘導体、スルホンアミドホスフィン、ホスファゼン系塩基及びN-複素環式カルベン、酸性触媒(ジフェニルホスフェート(DPP)、トリフル酸(TfOH)、メタンスルホン酸(MsOH)、ホスホロアミド酸。
【0019】
主モノマーと副モノマーとの合計と、触媒/開始剤とのモル比を、好ましくは反応時に、温度及び副モノマーの固有の反応性に応じて、100対1~10,000対1に維持する。本発明で合成されたポリマーの最終モル組成は、好ましくは、最初の供給混合物の組成にかかわらず、副モノマーに関しては2%~35%である。本発明において合成されるポリマーの最終モル組成は、好ましくは、最初の供給混合物の組成にかかわらず、主モノマーに関しては65%~98%である。
【0020】
反応時間は、副モノマーの固有の反応性、触媒の活性又は性質、触媒の濃度、及び反応温度に応じて、1時間~72時間(3日間)の反応であることができる。反応は、アルゴン(Ar)又は窒素(N2)の不活性雰囲気中で実施することができる。しかしながら、大気酸素の存在下であっても、触媒活性を失わないいくつかの触媒が存在する(例えば、トリフェニルビスマス(BiPh3)又は(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU))。当該方法では、重合反応において多くの場合使用される触媒であるオクタン酸第一スズの使用が回避されるため、微量のこの潜在的に細胞毒性のある物質が体組織と接触することが避けられるという利点がある。したがって、一実施形態では、本発明のポリマー材料は、オクタン酸第一スズを実質的に使用しない触媒を使用して調製される。更なる実施形態では、オクタン酸第一スズは、ポリマー材料の調製において使用されない。より更なる実施形態では、本発明のチューブ状構造物は、検出可能な量のオクタン酸第一スズを含まない。
【0021】
医療での使用
本発明のチューブ状構造物は、体内管腔の閉塞を防止する際の使用に好適である。そのような管腔としては、尿道、尿管、血管、消化器系の管、咽頭、食道、小腸、大腸、胆道系、胆管、胆嚢管、膵管、気道、咽頭、気管及び細気管支、特に尿道が挙げられるが、それらに限定されない。尿道などの体内管腔の狭窄は、先天性の原因がある場合があり、又は外傷、感染によって引き起こされることがあり、あるいは、外科的処置の副作用であり得る。狭窄は、典型的には外科的に除去され、ステントなどのチューブ状構造物を使用して、通常の状況下で管腔を通って輸送される生理学的物質の通過のために管腔を開いた状態に維持することができる。したがって、更なる態様では、本発明は、尿道などの体内管腔の閉塞の予防に使用するための、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、ブラシル酸エチレン又はδ-ヘキサラクトンとラクチドとの共重合によって調製されたポリマー材料に関する。一実施形態では、ポリマー材料は、狭窄の外科的除去後、尿道などの体内管腔の閉塞の防止に使用される。更なる実施形態では、本発明は、狭窄の外科的除去後の尿道の閉塞の防止に使用するための、本発明のポリマー材料に関する。更なる実施形態では、使用の期間は約2~90日間、例えば、約5~45日間、例えば、約6~35日間又は約7~30日間である。特定の理論に束縛されるものではないが、本発明の硬質連続チューブ状構造物は、尿道がその健常な縁(edges)から上皮化することを可能にすることによって、以前の狭窄手術中に治療された尿道の領域を保護するのに有益であり得る。更に、メッシュ様の拡張可能なチューブ状構造物とは異なり、そのような硬質連続チューブ状構造物は、損傷領域が尿と接触するのを防いで、感染のおそれを減少させることができる。
【0022】
ステント設計
本明細書では、1つ以上の例示的なチューブ状構造物が開示される。チューブ状構造物は、例えば、チューブ、デバイス、インプラント、外科用インプラント、シリンダ、医療デバイス、チューブ状デバイス、ステント、スパイラル状ステント及びチューブ状ステントのうちの1つ以上であることができる。チューブ状ステントは、上述の材料から形成することができる。チューブ状構造物は、上述の材料から完全に形成することができる。チューブ状構造物は、硬質であってもよい。チューブ状構造物は柔軟なものであってもよい。チューブ状構造物は、硬質部分と柔軟な部分との両方を含み得る。
【0023】
チューブ状構造物は、半径方向外側表面を含む。チューブ状構造物は、半径方向内側表面を含む。半径方向内側表面は、半径方向外側表面の反対側であり得る。チューブ状構造物は、第1の端部及び第2の端部を含み得る。第1の端部及び第2の端部は、チューブ状構造物の長手方向の端部とみなし得る。本明細書で使用する場合、「表面」は、チューブ状構造物の外壁を意味する。したがって、チューブ状構造物は、半径方向内側表面(その最も内側の壁である)及び半径方向外側表面(その最も外側の壁である)によって画定される。好ましい実施例では、半径方向内側表面及び半径方向外側表面は連続壁である。本明細書で使用する場合、「連続壁」又は「連続表面」という用語は、その長手方向寸法全体に沿って、又はその長手方向寸法のかなりの部分(例えば、少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%)に沿って、不連続性を示さない壁又は表面を指す。
【0024】
チューブ状構造物は、中空であり、円筒形又は略円筒形であることができる。この特定の形状は、限定的なものではなく、チューブ状構造物に対する改変を使用する。チューブ状構造物は、チューブ状構造物を通って延びる長手方向中心線(例えば、長手方向軸)を有し得る。長手方向中心線は、チューブ状構造物の第1の端部から第2の端部まで延び得る。
【0025】
チューブ状構造物は、長手方向の長さを有し得る。例えば、チューブ状構造物は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90mmの長手方向の長さを有し得る。チューブ状構造物は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90mmを超える長手方向の長さを有し得る。チューブ状構造物は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90mm未満の長手方向の長さを有し得る。
【0026】
チューブ状構造物は、3、4、5、6、7、8、9又は10mmの外径を有し得る。チューブ状構造物は、3、4、5、6、7、8、9又は10mmの内径を有し得る。
【0027】
チューブ状構造物は、0.1、0.2、0.3、0.333、0.4、0.5、0.6、0.7又は0.8mmの厚さ(例えば、半径方向内側表面から半径方向外側表面まで、及び/又は半径方向内側表面と半径方向外側表面との間の厚さ)を有し得る。チューブ状構造物は、0.1、0.2、0.3、0.333、0.4、0.5、0.6、0.7又は0.8mmを超える厚さを有し得る。チューブ状構造物は、0.1、0.2、0.3、0.333、0.4、0.5、0.6、0.7又は0.8mm未満の厚さを有し得る。チューブ状構造物の厚さは変化し得る。例えば、チューブ状構造物の厚さは、チューブ状構造物の長手方向の長さに沿って変化し得る。チューブ状構造物の厚さは変化しなくてもよい。
【0028】
チューブ状構造物は管腔を含む。管腔は、チューブ状構造物の半径方向内側表面によって画定(例えば、形成、境界付け)され得る。長手方向中心線は、管腔を通って延び得る。管腔は、円形断面を有し得る。管腔は、卵形断面を有し得る。管腔は、多角形断面を有し得る。
【0029】
管腔は、チューブ状構造物を通って延び得る。管腔は、チューブ状構造物の長手方向軸に沿って延び得る。流体、及び管腔よりも小さい他のものは、チューブ状構造物の一端からチューブ状構造物の反対端まで管腔を通過し得る。
【0030】
管腔は、チューブ状構造物全体にわたって同じ寸法を有し得る。例えば、管腔は略円筒形の形状であることができる。管腔は、チューブ状構造物全体にわたって寸法が変化し得る。例えば、半径方向内側表面は、長手方向中心線に向かって、又は長手方向中心線から離れる方に動くことができる。
【0031】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、チューブ状構造物は、1つ以上の突出部(protrusions)を含み得る。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、チューブ状構造物は複数の突出部を含み得る。複数の突出部は、チューブ状構造物の半径方向外側表面上に存在し得る(例えば、チューブ状構造物の半径方向外側表面から延び得る)。複数の突出部は、チューブ状構造物の半径方向内側表面上に存在し得る。複数の突出部は、チューブ状構造物の半径方向内側表面上に存在していなくてもよい。複数の突出部は、チューブ状構造物と一体的に形成され得る。複数の突出部は、チューブ状構造物の例えば半径方向外側表面上などで、チューブ状構造物に取り付けられてもよい。例えば、複数の突出部は、チューブ状構造物に機械的又は化学的に取り付けられてもよい。
【0032】
複数の突出部は、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0又は3.5mmの長手方向の長さを有し得る。この特定の長手方向の長さは限定的なものではない。複数の突出部は、半径方向外側表面から離れる方向に0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5mm延びていてもよい。
【0033】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、チューブ状構造物は、単一の突出部を含み得る。例えば、単一の突出部は、後述するように、複数の相互接続された突出部から形成することができる。したがって、本明細書で論じられるような接続された突出部は、単一の突出部として理解され得る。
【0034】
複数の突出部は、半径方向外向きの力を提供するように構成することができる。例えば、複数の突出部は、チューブ状構造物から半径方向外側の表面上に摩擦力を提供することができる。例えば、複数の突出部は、半径方向外側表面と接触している組織に摩擦力を提供するように構成することができる。これは、有利なことに、埋め込まれてからチューブ状構造物を適所に保持する(例えば、チューブ状構造物の望まない移動を防止する)のに役立ち得る。
【0035】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の突出部は、ノブ(knobs)、リング(rings)、ヘリックス(helixes)、スパイラル(spirals)、拡張部(extensions)、バブル(bubbles)、突出部(protrusions)、ハンプ(humps)、突起部(protuberances)、バンプ(bumps)、ナブ(nubs)、及び突起部の任意の不規則なパターンのうちの1つ以上であり得る。複数の突出部は波形であり得る。複数の突出部は、チューブ状構造物の半径方向外側表面の上に波形構造を作り出すことができる。複数の突出部は、摩擦を増加させる突出部であり得る。複数の突出部は、拡張部であり得る。複数の突出部はリングであり得る。複数の突出部は、テクスチャ加工された表層であり得る。
【0036】
複数のリングは、管腔及び/又は長手方向中心線に対して直角であり得る。複数のリングは、管腔及び/又は長手方向中心線に対して平行であり得る。複数のリングは、管腔及び/又は長手方向中心線に対して角度を付けることができる。
【0037】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の突出部は、複数の円周リングであり得る。複数の円周リングの各々は、チューブ状構造物の円周の周りに部分的又は完全に延び得る。複数の円周リングのうちの隣り合うリングが接続されていてもよい。複数の円周リングのうちの隣り合うリングが接続されていなくてもよい。例えば、複数の円周リングのうちの隣り合うリングは、長手方向に0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5又は10.0mm離間させることができるが、特定の寸法は、限定的なものではない。
【0038】
複数の円周リングは、管腔及び/又は長手方向中心線に対して直角であり得る。複数の円周リングは、管腔及び/又は長手方向中心線に対して平行であり得る。複数の円周リングは、管腔及び/又は長手方向中心線に対して角度付けされていてもよい。
【0039】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングの各々は、管腔及び/又は長手方向中心線に対して同じ角度であり得る。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちの1つ以上は、管腔及び/又は長手方向中心線に対して、複数の円周リングのうちの別の1つとは異なる角度であり得る。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングの各々は、管腔及び/又は長手方向中心線に対してランダムに角度付けされていてもよい。
【0040】
上述したように、複数の突出部、例えば、複数の円周リングは、チューブ状構造物の半径方向外側表面から半径方向に離れる方に延びている。
【0041】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングの各々は、丸みを帯びていてもよい。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちの少なくとも1つは、丸みを帯びていてもよい。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングの各々は、少なくとも1つの丸みを帯びたエッジを含んでいてもよい。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの丸みを帯びたエッジを含んでいてもよい。
【0042】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングの各々は、少なくとも1つのエッジを含んでいてもよい。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのエッジを含んでいてもよい。少なくとも1つのエッジは、丸みを帯びていないエッジであることができる。
【0043】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのエッジを含み得、複数の円周リングのうちの少なくとも1つは、丸みを帯び得る。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちの1つ以上は、丸みを帯びたエッジ及び丸みを帯びていないエッジを有し得る。
【0044】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングは、チューブ状構造物の第1の端部又は第2の端部に向かって角度付けされていてもよい。あるいは、複数の円周リングは、中心に位置していてもよい(例えば、チューブ状構造物の特定の端部に向かって角度付けされていない)。
【0045】
複数の突出部、例えば、複数の円周リングは、正方形状、矩形形状、三角形状、円形状、楕円形状、半円形状、台形状、湾曲形状、四分円形状、多角形状及び任意の不規則なパターンのうちの1つ以上であり得る。例えば、複数の突出部は、三角形状であることができ、それによって、チューブ状構造物と直接一体化されていない1つのエッジ(例えば、1つの自由エッジ)を有していてもよい。複数の突出部が正方形である場合、それらは、チューブ状構造物と直接一体化されていない2つのエッジ(例えば、2つの自由エッジ)を有していてもよい。複数の突出部が円形又は卵形(又は湾曲)である場合、それらは自由エッジを有していないことがある。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の突出部は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.5、0.7、0.8又は0.9mmの曲率半径を有することができる。
【0046】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちの隣り合うリングが接続されていなくてもよい。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングの全てが互いに接続されていなくてもよい。例えば、複数の円周リングの各々は、複数の円周リングのうちの隣り合うリングから長手方向に離間している。複数の円周リングのうちの隣り合うリングの間に間隙が存在していてもよい。
【0047】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちの隣り合うリングが接続されていてもよい。1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングの全てが接続されていてもよい。例えば、複数の円周リングは、チューブ状構造物の半径方向外側表面に沿って螺旋形状を形成するように一つに接続していてもよい。1つ以上の例示的チューブ状構造物では、複数の突出部、例えば、複数の円周リングは、ヘリックスを形成することができる。
【0048】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の円周リングのうちのいくつかの隣り合うリングが接続されていてもよく、複数の円周リングのうちの他の隣り合うリングが接続されていなくてもよい。
【0049】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の突出部、例えば、複数の円周リングは、チューブ状構造物の長手方向の端部まで延びていてもよい。例えば、円周リングは、チューブ状構造物の第1の端部及び/又は第2の端部を構成していてもよい。
【0050】
あるいは、複数の突出部、例えば、複数の円周リングは、チューブ状構造物の長手方向の端部まで延びていなくてもよい。したがって、チューブ状構造物の第1の端部及び/又は第2の端部と、複数の突出部のうちの第1の突出部との間、例えば、複数の円周リングとの間に間隙が存在していてもよい。例えば、複数の円周リングは、チューブ状構造物の長手方向の端部から長手方向に離間していてもよい。
【0051】
例えば、第1の端部から、複数の突出部のうちの最も近いものまでには、0.0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5又は4.0mmの間隙が存在していてもよい。
【0052】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、複数の突出部、例えば、複数の円周リングは、チューブ状構造物の第1の端部まで延びていてもよいが、チューブ状構造物の第2の端部までは延びていなくてもよい。
【0053】
1つ以上の例示的なチューブ状構造物では、チューブ状構造物は、さらに、1つ以上のアパーチャ(例えば、管腔、間隙、穿孔、開口部、穴)を含んでいてもよい。1つ以上のアパーチャは、チューブ状構造物の半径方向外側表面からチューブ状構造物の半径方向内側表面まで延びていてもよい。1つ以上のアパーチャの特定の形状及びサイズは、限定的なものではない。
【0054】
有利には、1つ以上のアパーチャにより、流体は、チューブ状構造物の管腔からチューブ状構造物の外側に達することができる。例えば、1つ以上のアパーチャは、創傷又は糜爛におけるあり得る感染からの膿を排出することができる。更に、1つ以上のアパーチャは、組織への摩擦接着を更に改善することができる。
【0055】
1つ以上のアパーチャは、複数の突出部、例えば、複数の円周リングのうちの1つ以上を通って延びていてもよい。1つ以上のアパーチャは、複数の突出部のいずれにも貫通していなくてもよい。
【0056】
1つ以上のアパーチャは、チューブ状構造物の円周の周りに等間隔で配置されていてもよい。1つ以上のアパーチャは、チューブ状構造物の円周の周りに等間隔で配置されていなくてもよい。
【0057】
1つ以上のアパーチャは、チューブ状構造物の長手方向長さの周りに等間隔で配置されていてもよい。1つ以上のアパーチャは、チューブ状構造物の長手方向長さの周りに等間隔で配置されていなくてもよい。
【0058】
図の詳細な説明
図1A~
図1Bは、平滑チューブとも呼ばれる、突出部の全くないチューブ状構造物50の斜視図(1A)及び長手方向図(1B)を示す。この設計は、患者などに挿入することが容易であり得るが、複数の突出部などのいかなる外形も有しておらず、それによって、最小限の摩擦力を示す。したがって、軸方向変位のリスクが高い。
【0059】
図2A~
図2Cは、本開示による例示的なチューブ状構造物100を示す。
図2Aは斜視図を示し、
図2Bは長手方向長さに沿った断面を示し、
図2Cは半径方向断面を示す。斜線領域は、チューブ状構造物100の厚さを示す。外側リングは、複数の突出部200の高さ、例えば、半径方向の長さを示す。チューブ状構造物100は、第1の端部102、第2の端部104、及び第1の端部102と第2の端部104との間に延びる本体106を有し得る。更に、チューブ状構造物100は、半径方向外側表面108及び半径方向内側表面110を含み得る。本体106の半径方向内側表面110は、長手方向軸114(
図2Bに示した)に沿ってチューブ状構造物100の長手方向長さを通過する管腔112を画定する(例えば、形成する)ことができる。管腔112は、第1の端部102から第2の端部104まで延びていてもよく、それによって、流体が通過するための開口部を第1の端部102及び第2の端部104に提供する。
【0060】
示したように、チューブ状構造物100は、複数の突出部200を含み得る。この図では、複数の突出部200は、複数の円周リング202である。全体を通して詳細に論じられるように、複数の突出部200は、様々なバリエーションがあり得る。有利なことに、複数の突出部200は、チューブ状構造物100が埋め込まれるときに摩擦力を提供することができる。
【0061】
複数の円周リング202は、長手方向軸114及び/又は管腔112に対して直角になるように整列される。したがって、複数の円周リング202は、半径方向外側表面108上でチューブ状構造物100の本体106の周りに円周方向に延びていてもよい。示したように、複数の円周リング202(例えば、複数の突出部200)は、本体106と一体的に形成することができる。あるいは、複数の円周リング202(例えば、複数の突出部200)は、チューブ状構造物106の本体106に取り付けられていてもよい。
【0062】
複数の円周リング202は、図に示したように、丸みを帯びていてもよい(例えば、湾曲、球形、卵形)。したがって、複数の円周リング202は、エッジを含まないことがある。示したチューブ状構造物100において、円周リング202は、断面が半円のように見えるであろう。
【0063】
更に、示したように、複数の円周リング202の各々は、複数の円周リング202のうちの隣り合う円周リングから長手方向に離間していてもよい(例えば、分離することができる、間隔を置いて配置することができる、切り離すことができる)。更に、複数の円周リング202は、第1の端部102及び第2の端部104から長手方向に離間していてもよい(例えば、分離していても、間隔を置いて配置されていても、不接続であってもよい)。
【0064】
図3A~
図4Bは、三角形状の複数の突出部200A/200Bを有するチューブ状構造物100を示す。したがって、複数の突出部200A/200Bは、第1の壁及び第2の壁から、第1の壁と第2の壁との間に角部を有して形成することができる。
【0065】
具体的には、
図3A~
図3Bは、直角三角形である複数の突出部200Aを示す。有利なことに、直角三角形は、陰茎への挿入を容易にし、患者の一部の痛みを最小限に抑えることができる。更に、複数の突出部200Aは、粘膜に入り込むことができ、排尿中の軸方向移動を最小限に抑える。
【0066】
図4A~
図4Bは、正三角形である複数の突出部200Bを示す。
図3A~
図3Bと同様に、複数の突出部200Bは、陰茎への挿入を容易にすることができる。幾何学的に対称であることによって、この設計は、両方向に(例えば、いずれかの方向に)挿入することもできる。
【0067】
図5A~
図5Bは、矩形形状の複数の突出部200Cを有するチューブ状構造物100を示す。したがって、複数の突出部200Cは、第1の壁、上部壁及び第2の壁から、第1の壁と上部壁との間に第1の角部、及び上部壁と第2の壁との間に第2の角部を有して形成することができる。複数の突出部は、チューブ状構造物の長手方向長さに沿って寸法(幅及び/又は高さなど)が変化してもよい。有利なことに、この設計は、両側にかなり高い摩擦力を提供することができ、これにより、チューブが外側及び内側の両方に移動することを防止することができる。更に、この設計は、両方向に挿入することができる。
【0068】
図6A~
図8Bは、湾曲形状及び/又は円形状の複数の突出部200D/200E/200Fを有するチューブ状構造物100を示す。
【0069】
図6A~
図6Bは、半円形状を有する複数の突出部200Dを示す。この設計は、両方向に挿入することができる。更に、複数の突出部200Dは、チューブ状構造物100が移動するのを防止するのに十分な摩擦力を提供することができる。更に、複数の突出部200Dにより、患者に痛みを与え得るスパイクが全くない湾曲形状を有するので、尿道に容易に挿入することが可能になる。
【0070】
図7A~
図7Bは、四分円形状を有する複数の突出部200Eを示す。この設計により、単純な挿入が有利に可能になると共に、直角壁による移動を防止するための強い摩擦力を提供することが可能になる。更に、その痛みは、容易な移動を可能にする湾曲形状によって、挿入中、最小に抑えることができる。上述したように、垂直壁により、チューブ状構造物100が尿道を通って外に出るのを防止するために、より大きな摩擦力を生み出すことが可能になる。
【0071】
図8A~
図8Bは、湾曲形状を有する複数の突出部200Fを示す。複数の突出部200Fは、粘膜に結合し、チューブ状構造物100が移動するのを防止する摩擦力を生み出すように構成することができる。更に、これは、鋭い角部及び/又は尖端を使用することなく、いずれの方向からも患者に容易に挿入することができる。
【0072】
図9A~
図12は、複数の突出部200G/200H/200I/200Jの異なる組み合わせ形状を有する、チューブ状構造物100を示す。
【0073】
図9A~
図9Bは、矩形形状と組み合わされた半円形状を有する、複数の突出部200Gを示す。この設計は、チューブ状構造物100の一方の側の湾曲部分を介した容易な挿入を可能にすることができる。更に、これは、尿道内で大きな把持力を生み出す垂直壁を有するので、優れた把持力を有することができる。複数の突出部200Gの矩形部分は、幅が変化し得、ジオメトリーの数は変化し得る。
【0074】
図10A~
図10Bは、矩形形状と組み合わされた直角三角形状を有する、複数の突出部200Hを示す。この設計により、容易な挿入が可能になる。更に、これは、チューブが尿道内で移動しないように大きな摩擦力を与える垂直壁を有するので、良好な把持力を有する。矩形部分は、幅が変化し得、ジオメトリーの数は変動し得る。
【0075】
図11A~
図11Bは、四分円形状、矩形形状、及び別の四分円形状を有する、複数の突出部200Iを示す。矩形部分により、半円のジオメトリーを長くすることができる。それにより両側から挿入することが可能になり、痛みがなくなり、取り扱いが容易になる。更に、それにより必要な摩擦力が生み出され、その結果として移動しないチューターチューブ(tutor tube)というものは許容されない。ジオメトリーの数及び矩形部分の幅は可変である。
【0076】
図12は、三角形、矩形、及び別の三角形の形状を有する、複数の突出部200Jを示す。矩形部分により、三角形状のジオメトリーを長くすることができる。それにより両側から挿入することが可能になり、痛みがなくなり、取り扱いが容易になる。更に、それにより必要な摩擦力が生み出され、その結果として移動しないチューターチューブというものは許容されない。ジオメトリーの数及び矩形部分の幅は可変である。
【0077】
図13A~
図17Bは、非対称突出部200K/200L/200M/200N/200Oを有する、チューブ状構造物100を示している。特に、複数の突出部は全て接続することができ、チューブ状構造物100の円周の周りを回転することができる。あるいは、複数の突出部のうちの隣り合う突出部の間に接続部又は間隙が存在し得る。例えば、それらは、チューブ状構造物100の周りにスパイラル状となっており、ヘリックス/ヘリカル形状を形成していてもよい。
【0078】
図13A~
図14Bは、螺旋状突出部200K/200Lを有する、チューブ状構造物100を示す。
【0079】
有利には、複数の突出部の形状と、チューブ状構造物100に沿った複数の突出部のピッチとに応じて、異なるジオメトリーを得ることができる。
図13A~
図13Bに示したように、複数の突出部200Kは、直角三角形の形状を有することができ、一方、
図14A~
図14Bは、正三角形の形状を有し得る複数の突出部200Lを示す。
【0080】
図15A~
図17Bは、二重螺旋状突出部200M/200N/200Oを有する、チューブ状構造物100を示す。特に、複数の突出部のうちの1つのセットは、全て接続され、チューブ状構造物100の円周の周りを回転することができる。複数の突出部の第2のセットは、接続され、反対方向に回転することができる。例えば、複数の突出部の両方のセットは、チューブ状構造物100の周りにスパイラル状となっており、ヘリックス/ヘリカル形状を形成し得る。
【0081】
図15A~
図15Bは、チューブ状構造物100の半径方向外側表面108上に二重ヘリックス形状を形成する2セットの複数の突出部200Mを有する、チューブ状構造物100を示す。
【0082】
有利には、複数の突出部の形状と、チューブ状構造物100に沿った複数の突出部のピッチとに応じて、異なるジオメトリーを得ることができる。
図16A~
図16Bに示したように、複数の突出部200Nは、直角三角形の形状を有することができ、一方、
図17A~
図14Bは、正三角形の形状を有することができる複数の突出部200Oを示す。
【0083】
図18は、1つ以上のアパーチャ300を有するチューブ状構造物100を示す。1つ以上のアパーチャ300が、半径方向外側表面108と半径方向内側表面110との間に延びていてもよい。1つ以上のアパーチャ300が、特定のチューブ状構造物100に示されているが、1つ以上のアパーチャ300は、本明細書で説明される変形のいずれか及び/又は全てにおいて使用することができる。
【0084】
「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」、「一次」、「二次、副(secondary)」、「三次」などの用語の使用は、任意の特定の順序を意味するものではなく、個々の要素を識別するために含まれる。更に、「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」、「一次」、「二次、副(secondary)」、「三次」などの用語の使用は、順序又は重要性を示すものではなく、むしろ、用語「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」、「一次」、「二次、副(secondary)」、「三次」などは、ある要素を別の要素から区別するために使用される。「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」、「一次」、「二次、副(secondary)」、「三次」などの語は、ここ及び他の箇所では、ラベル付けの目的のためだけに使用されており、任意の特定の空間的順序又は時間的順序を表すことを意図していないことに留意されたい。更に、第1の要素のラベル付けは、第2の要素の存在を意味せず、逆もまた同様である。
【0085】
「含む(comprising)」という語は、列挙されたもの以外の要素又は工程/ステップの存在を必ずしも排除しないことに留意されたい。
【0086】
要素に先行する単語「a」又は「an」は、複数のそのような要素の存在を除外しないことに留意されたい。
【0087】
更に、いかなる参照符号も特許請求の範囲を限定しないことに留意されたい。
【0088】
特徴を示し説明してきたが、それらは特許請求される開示を限定することを意図するものではないことが理解され、また特許請求される開示の範囲から逸脱することなく様々な変更及び改良を行えることは当業者に明らかであろう。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示であると見なされるべきである。特許請求される開示は、全ての代替物、改良物及び均等物に及ぶことが意図されている。
【実施例】
【0089】
実施例1.ε-カプロラクトンとラセミラクチドとのコポリマーの調製
触媒としてトリフェニルビスマス(BiPh3)を使用して、80対20(%w/w)の供給組成によるポリ(D,L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(P(DLLA-CL))コポリマーの合成を、1500対1のコモノマー対触媒のモル比で、ワンポットワンステップ開環重合によって、バルクで行った。バルクの温度が130℃に達したとき、トリフェニルビスマスを反応器に注入した。反応混合物を130℃で3時間撹拌した。
【0090】
この後、バルク反応物をジクロロメタンに溶解し、過剰の冷メタノール中に沈殿させた。得られたスラリーを85℃の真空オーブン内で減圧乾燥した。
【0091】
得られたコポリマーは、1H-NMRスペクトルによって測定すると、D,L-ラクチド/ε-カプロラクトンが85/15である最終モル組成を有し、133kDaのMw及び1.93の分散度を有していた。表1は、合成されたコポリマーの特性評価データを要約したものである(分散度又はMw/Mn(D)、ラクチド及びカプロラクトンの平均長さ単位(lLA及びlCL)、ランダムさの指標(randomness character)(R)及びガラス転移温度(Tg))。
【0092】
【0093】
最終コポリマー組成は、コモノマーの反応性の差によって、供給物と比較してD,L-ラクチドコモノマーに富んでいる。D,L-ラクチドは、小環ラクトン(6員環、より高い環歪み)であるため、ε-カプロラクトン(7員環ラクトン、より低い環歪み)よりも反応性が高く、このより反応性が高いコモノマーは、より速く消費される。熱特性によれば、非晶質P(DLLA-CL)コポリマーは、30.1℃のガラス転移温度(Tg)を示した。
【0094】
ポリ(D,L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)の繰返し単位は、以下の通りである:
【化3】
【0095】
表2には、モル組成及び微細構造パラメータの計算のための、ポリ(DL-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(上に示した)における様々なプロトン及び炭素の帰属が示してある。1H-NMRスペクトル法から得られた結果を平均することによって、P(DLLA-CL)コポリマーのモル組成を計算した。
【0096】
【0097】
化学シフト(δ)は、隣接するコモノマーに応じて異なる。2つのコモノマーを有する基では、ポリマー配列における異なる配置によって、異なる磁気遮蔽を示すことがある。コポリマーP(DLLA-ε-CL)の場合、3つの異なる配列:すなわち、a)LA-LA、
【化4】
及びd)CL-CLがある。
【化5】
【0098】
1H-NMRスペクトルにおける面積からの組成計算
化学シフト及び積分に基づくコポリマー組成の計算の例として、本発明者らは、重量基準で80:20の供給によるP(DLLA-ε-CL)のコポリマーを使用し、その1H-NMR化学シフトを表3に示す。
【0099】
【0100】
各モノマーには2つの独立した信号がある:すなわち、A信号は、LAモノマー(2つの-CH-ジアステレオトピックを含む)のプロトンのみに対応し、BB及びCC信号は、ε-CLモノマー(6位に-CH2-及び2位に-CH2-)のプロトンのみを含む。残りのプロトンは、1.7~1.3ppmの信号信号に含まれる。
【0101】
したがって、A、B-B及びC-C信号を使用して、各コモノマーのプロトン寄与を計算する:すなわち、LAについてはA信号、並びにε-CLについてはB-B及びC-C信号を使用し、式1を用いて計算する。
【数1】
【0102】
プロトン寄与(CPH)を使用し、以下の式を用いて各コモノマーのポリマーにおける最終モル分率を計算することが可能である:
【数2】
【0103】
LAの分子量が144.13g/molであり、ε-CLの分子量が114.14g/molであることを考慮し、コポリマーの重量に基づく最終組成は、以下の式を用いて計算される:
【数3】
【0104】
したがって、LA対ε-CLの80対20重量比の供給を合成すると、81.5対18.5のコポリマーの最終重量組成が得られた。
【0105】
実施例2.ブラシル酸エチレンとラセミラクチドとのコポリマーの調製
触媒としてトリフェニルビスマス(BiPh3)を使用して、70対30(%w/w)の供給組成によるポリ(D,L-ラクチド-co-ブラシル酸エチレン)(P(DLLA-EB))コポリマーの合成を、100対1のコモノマー対触媒のモル比で、ワンポットワンステップ開環重合によって、バルクで行った。バルクの温度が140℃に達したとき、トリフェニルビスマスを反応器に注入した。その反応混合物を、140℃で72時間撹拌した。
【0106】
この後、バルク反応物をジクロロメタンに溶解し、過剰の冷メタノール中に沈殿させた。得られたスラリーを85℃の真空オーブン内で減圧乾燥した。
【0107】
得られたコポリマーは、1H-NMRスペクトルによって測定すると、D,L-ラクチド/ブラシル酸エチレンが95/5である最終モル組成を有し、111.6kDaのMw及び2.01の分散度を有していた。表4は、合成されたコポリマーの特性評価データを要約したものである(分散度又はMw/Mn(D)、ラクチド及びブラシル酸エチレンの平均長さ単位(lLA及びlCL)、ランダムさの指標(R)及びガラス転移温度(Tg))。
【0108】
【0109】
最終コポリマー組成は、コモノマーの反応性の違いによって、供給物と比較してDL-ラクチドコモノマーにより富んでいる。DL-ラクチドは、小環ラクトン(6員環、より高い環歪み)であるため、ブラシル酸エチレン(17員環マクロラクトン、より低い環歪み)より反応性が高く、このより反応性が高いコモノマーは、より速く消費される。熱特性に関して、非晶質P(DLLA-EB)コポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)曲線において、27.9℃のガラス転移温度(Tg)を示した。
【0110】
ポリ(D,L-ラクチド-co-ブラシル酸エチレン)の繰返し単位は以下の通りである:
【化6】
【0111】
表5は、モル組成及び微細構造パラメータの計算のための、ポリ(DL-ラクチド-co-ブラシル酸エチレン)の繰返し単位における様々なプロトン及び炭素の帰属を示す。P(DLLA-EB)コポリマーのモル組成は、1H及び13C-NMRスペクトル法から得られた結果を平均することによって計算した。
【0112】
【0113】
表5は、P(DLLA-EB)コポリマーの
1H-NMRスペクトルの化学シフトを示す。分析は、4.20ppmを中心とするエステル基に結合した
【化7】
メチレン(H
14及びH
15)、及び2.25ppmを中心とするカルボニル基に結合したEBメチレン(H
2及びH
12)に対して、5.05ppmのLAメチン(H
2)の信号を比較することによって行った。
1H NMR信号は、配列活性を示さなかったため、表1の平均配列長及びランダムさの指標のデータは、
13C-NMRスペクトルから得られたLA-EB二連子(dyad)相対モル分率に基づいて推定した。
【0114】
表5は、81%のD,L-ラクチド含有量を有するポリ(DLLA-co-EB)コポリマーの
13C NMRスペクトルの化学シフトも示す。モル組成は、LA及びEB炭素(EBカルボニルとは無関係に)のピーク下面積を比較することによって決定した。ラクチドの平均相対値は、170及び70ppmの信号(C
1及びC
2)を使用して計算した。ブラシル酸エチレンについては、使用した信号は、174及び25ppm(C
1、C
3及びC
11)の信号であった。表2では、試験した核を基礎とするコポリマー由来の異なる二連子も帰属させた。平均二連子相対モル分率(LA-EB)を、鎖微細構造パラメータの推定から決定した。この変数は、
【化8】
平均二連子モル分率の合計であり、172及び70ppmでの
【化9】
二連子から得られた
【化10】
の平均値を2倍することによって、並びに25ppmでの
【化11】
二連子によって提供された値を2倍することによって、推定した。
【0115】
ビスマス触媒は、コモノマーのランダム分布をもたらし、ランダムコポリマーが得られる(R=1)。微細構造パラメータは、式1~3を使用して計算され、LAの平均配列長lLAは4.56であり、EBの平均配列長lEBは1.51であり、ランダム度R=0.88の値を得た。
【0116】
【0117】
式中、(A)及び(B)は、コモノマーA及びコモノマーBのモル分率であり、(A-A)、(A-B)及び(B-B)は、それぞれ、二連子A-A、A-B及びB-Bの平均相対モル分率である(a)J. Fernandez et.al. Polymer Degradation and Stability, 2017, 137, 23-34.b)J. Fernandez et al. Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials, 2012, 9, 100-112.c)E. Prestch, T. Clerc, J. Seibl, W. Simon, Tables of spectral data for structure determination of organic compounds, Chemical Laboratory Practice Book. Springer-Verlag, Berlin Heidelberg, 2013. GmbH.参照)。
【0118】
実施例3.チューブ状構造物のジオメトリー
造形された尿道を用いて、いくつかの異なるチューブ状構造物のジオメトリーを試験した。
図19は、試験された異なるジオメトリーを示す。
具体的には、積層造形(Stratasys Objet260 Connex3(商標))を使用して、プローブ及び造形尿道を造形した。本質的に、これにより、2種の主要材料を異なる割合で混合して、所望の機械的特性を有する第3の材料を得ることが可能になった。実験計画のために、Agilus30ブラックと、Veroblueとして知られる硬質ポリマーとの混合物を使用した。これらの2種の主要材料から、12の材料が製造され、そのうちの6つは柔軟な挙動(flexible behavior、FLXA)を有し、そのうちの6つは硬質挙動(rigid behavior、RGDA)を有する。
1)FLXA-CK-S40-DM
2)FLXA-CK-S50-DM
3)FLXA-CK-S60-DM
4)FLXA-CK-S70-DM
5)FLXA-CK-S85-DM
6)FLXA-CK-S95-DM
7)RGDA-CK-K10-DM
8)RGDA-CK-K20-DM
9)RGDA-CK-K30-DM
10)RGDA-CK-K40-DM
11)RGDA-CK-K50-DM
12)RGDA-CK-K60-DM
【0119】
引張試験台で試験するために種々の材料を用いてプローブを製造して、特定の材料について応力-歪み曲線を得た。全てのプローブが同じ寸法を有していたので、ジオメトリーは、この試験のファクターではなかった。
図20に示すように、材料K50は、参照材料(ポリ(DL-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(PLCL)コポリマー)と最も類似して作用することができる。
【0120】
更に、口腔粘膜に基づく機械的特性試験を行った。Dynamic mechanical properties of oral mucosa: comparison with polymeric soft denture liners. Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials, vol. 4 (n°3), pp. 269-274, ISSN 1751-6161の研究では、ポリマーと口腔粘膜との比較が行われた。ヤング率は、約2.72MPaであると記載されている。
【0121】
図21は、得られた応力-歪み曲線を示し、表6にその結果を抜粋する。以下の材料、すなわち、FLXA-CK-S60-DM、FLXA-CK-S70-DM、FLXA-CK-S85-DM及びFLXA-CK-S95-DMでプローブを製造した。これによると、既知のヤング率に最も類似する材料は、材料S85である。
【0122】
【0123】
次に、チューブ状構造物のジオメトリーを試験するために、設計された試験尿道を造形した。設計された試験尿道は、
図22A~22Cに示した3つの部分、すなわち、外側部分(
図22A)、内側部分(
図22B)及び補助部分(
図22C)から形成された。
【0124】
図22Aに示した外側部分は、尿道を取り囲む海綿体筋をシミュレートし、3Dプリンタが有する最も柔らかい材料で作製され、そのヤング率は0.45MPaである。
図22Bに示した内側部分は、尿道自体をシミュレートするものであって、先に引用した材料S85で作製した。
図22Cに示した補助部品は、後に引張試験を行うことができるように、アセンブリに追加される。この補助部品によって、設計された試験尿道を上記装置のジョーに取り付けて、引張試験を行うことができた。
【0125】
設計された試験尿道の最終構造物を
図23に示す。
図19に関して上述した、材料K50で作製されたチューブ状構造物の各々は、設計された試験尿道内の空気によってそれ以上全く前進することができない点まで、ねじ込まれることなく内部部品に挿入された。次いで、チューブ状構造物を試験尿道から引き出して、その「把持力」、例えば、チューブ状構造物が設計された試験尿道から出ることを防止する摩擦力を決定した。試験は、チューブ状構造物が、シミュレートされた尿道、例えば、設計した試験尿道の穴から完全に出る点まで行った。試験速度は1mm/分であった。試験結果を表7に示す。示されているように、最も高い「把持力」を有するチューブ状構造物は、設計5である。試験値は、2対1スケールの試験からのものであるが、挿入状態における各チューブ状構造物は、1対1スケールである。
【0126】
【0127】
更に、材料K50を用いて、
図19に示したチューブ状構造物について変位試験を行った。流体がチューブ状構造物を非交互式でに通過するときに変位試験を行うために、熱試験台を開発した。すなわち、試験が可能な限り現実に即して行われるように、流体は「x」回ごとに循環して停止する。
【0128】
各チューブ状構造物を2つの異なる方法で試験した。第1の試験は水の連続流で5時間行い、第2の試験は不連続的に5時間行った。不連続流れ試験の場合、流れは、30秒間活性のままであり、5秒間オフのままである。実際の状況では停止がないので、結果が可能な限り信頼できるように、各チューブ状構造物を丸1日、10時間連続して休みなく試験した。表8は試験結果を示す。
【0129】
【0130】
示されているように、どのチューブ状構造物も測定可能な変位を受けなかったことから、変位に関していずれのジオメトリーも機能し得たと結論付けることができる。
【0131】
実施例4.ε-カプロラクトンとラセミラクチドとのコポリマーの調製、及びin vivo試験
コモノマー対触媒のモル比1500対1で、各ラクトンのワンポットワンステップ開環重合(ROP)によって、ポリ(DL-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(PLCL)コポリマーを、バルクで合成した。2Lの反応容器内で、130℃で1時間かけて反応を行った。ラクチド対ε-カプロラクトンの供給組成75対25(%w/w)比で、500グラムのコポリマーを合成した。反応混合物には開始剤を添加せず、温度が130℃に達したときに触媒(BiPh3)を添加した。
【0132】
その反応生成物をジクロロメタンに溶解し、過剰のメタノール中に沈殿させて、触媒不純物及び反応しなかったモノマーを除去した。コポリマーを室温で一晩乾燥させ、熱処理を行って(真空下100℃で1時間)、確実に残留溶媒を完全に除去した。最後に、生成物を秤量し、合成プロセスの収率を得た。
【0133】
プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によってその組成及び微細構造を、示差走査熱量測定(DSC)によって熱特性を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分子量分布を調べて、コポリマーの特性評価を行った。得られた結果を表9に示す。
【0134】
【0135】
P 200 E(Collin)ホットプレス機において、150℃で加圧溶融し、更に追加の水で急冷することによって、250μmの膜を調製した。これらの膜から、直径5mmの円形試料を得て、in vivoでの適合性及び分解を試験した。
【0136】
インビボ試験
in vivo試験は、全身麻酔下、無菌条件で、成体雄Wistarラット(250~300g)の膀胱内に動物1匹当たり5つの試料を埋め込むことによって行った。ハサミで尾側正中線に沿って皮膚及び筋肉を切開し、膀胱を露出させた。尾側膀胱瘻設置術の後、試料を、非生分解性縫合糸(8/0)で膀胱内に固定した。SHAM対照については、非生分解性縫合糸を、試料なしで配設した。生分解性連続縫合糸(8/0)を使用して膀胱を閉じ、ビクリル/絹縫合糸(4/0)を使用して皮膚及び筋肉を閉じた。10、20又は30日後、動物に対して肉眼的評価を行い、血液及び尿を採取し、組織学的分析のために動物を殺処分した(10日目及び30日目に行った)。
【0137】
肉眼的評価では、動物に疼痛又は苦痛の徴候は認められなかった。CLED、MacConkey及び血液寒天中の尿培養物は、全ての試料において陰性であったか又は有意ではなかった。表10に要約した血液試験では、摘出と分析との間の時間経過に起因し得るクレアチンキナーゼ値の増加にもかかわらず、試験したパラメータに関する変化は認められなかった。冷蔵にもかかわらず、いくつかの試料は、部分的に溶血し、これはパラメータを変化させたかもしれない。
【0138】
【0139】
埋め込み部位の組織病理学的試験を、多形核細胞(急性応答)、リンパ球、血漿細胞及びマクロファージ(長期応答)、巨大細胞、組織の壊死及び線維形成の量をカウントすることによって行った。組織学的試験によると、分析した組織には壊死も線維形成も認められなかった。手術及びそれに続く埋め込み後の組織には、炎症細胞はごく少数しか検出されなかった。更に、表11から判るように、最も高い炎症レベル(レベル4のうちのレベル2)が10日目に検出され、30日目に低下した(レベル4のうちレベル1)。これは、炎症が手術プロセスによって引き起こされた確率が最も高いことを示している。
図25は、摘出後の膀胱の画像と、10日後及び30日後の、処置に対する対照の組織病理学的分析の結果を示す図である。
【0140】
全体として、泌尿器学的、血液学的及び組織学的分析により、コポリマーの埋め込み又は分解は、いかなる炎症性、線維性又は壊死性プロセスも引き起こさないことが実証された。
【0141】
【0142】
HPLC-GPC装置(Metrohm,Azura,Column Linear(2)Phenogel-Phenomenex)を使用して、コポリマー試料の3つの時点(10日、20日、及び30日)での分子量の変遷を評価した。in vivoでの分解試料のGPC結果を表12に示す。
図26は、摘出された標本の写真を示し、この標本では、残留物がペースト状形態を示し、集まっており、その元の形状を失っていた。また、分子量は、その初期分子量から(試験の終わりに)ほぼ4分の1に減少した(分子量は、in vivo試験の試料を調製するために実施された圧力溶融処理の結果として、合成されたポリマーよりわずかに低かったことに留意されたい)。
【0143】
【国際調査報告】