IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コクリコの特許一覧

特表2024-541829所定の期間にわたって建物の部屋に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法、装置、及びシステム
<>
  • 特表-所定の期間にわたって建物の部屋に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法、装置、及びシステム 図1
  • 特表-所定の期間にわたって建物の部屋に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法、装置、及びシステム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】所定の期間にわたって建物の部屋に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法、装置、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01K 17/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G01K17/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024521755
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2022077589
(87)【国際公開番号】W WO2023057453
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2110545
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132955
【氏名又は名称】コクリコ
【氏名又は名称原語表記】KOCLIKO
【住所又は居所原語表記】74 Cours Aristide Briand,33000 BORDEAUX FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エリク・エマニュエル・ヴォルジャー
(72)【発明者】
【氏名】ルノー・マルセル・ネデレック
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・セルジュ・ロビヤール
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・ムナレット
(57)【要約】
本発明は、集合熱管理装置(30)によって、所定の期間にわたって、建物(2)内の敷地(20)に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法(100)に関する。前記決定は、1つ以上のプロセッサによって実行され、建物の複数の周囲温度値、建物(2)の外部温度値、建物内の敷地(20)の容積、及び熱損失係数を使用することを含み、前記方法は、熱損失係数が、敷地の形状と壁の構成を考慮して、建物の熱シミュレーションモデル(41)から計算される(130)ことを特徴とする。本発明はまた、集合熱管理装置(30)によって供給される熱エネルギーの量を決定するためのアロケータ(10)、及び本発明によるアロケータ(10)を含む、暖房費を割り当てるためのシステム(1)にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別の敷地(20)と少なくとも1つの集合熱管理装置(30)を含む集合建物(2)においてエネルギーコストを割り当てるための方法(100)であって、方法(100)は、集合建物(2)のすべての個別の敷地(20)に適用可能であり、少なくとも1つの集合熱管理装置(30)によって、所定の期間にわたって、集合建物(2)の少なくとも1つの個別の敷地(20)に供給される熱エネルギーの量を決定すること;及び
集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)に基づいて、個別の敷地(20)の少なくとも1つの熱損失係数を計算すること(130)を含み、
前記決定が、1つ以上のプロセッサによって実行され、以下を使用することを含む、方法:
集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)であって、集合建物(2)を仮想的に表現し、個別の敷地(20)ごとに、個別の敷地(20)の形状、個別の敷地(20)の壁の構成、及び集合建物(2)のさまざまな敷地間の熱交換を考慮する熱シミュレーションモデル(41);
集合建物(2)の複数の周囲温度値であって、個別の敷地(20)の複数の温度と、当該個別の敷地(20)に隣接する集合建物(2)の敷地又は共用スペースの複数の温度を含む、集合建物(2)の複数の周囲温度値;
集合建物(2)の外の温度の1つ以上の値;
個別の敷地の容積(20);及び
個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数(20)。
【請求項2】
前記個別の敷地(20)が建具構成によってさらに定義される場合、前記方法は、集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)が建具構成をさらに考慮することを特徴とする、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)は、所定の期間にわたる局所的な日射量を表すデータをさらに考慮することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)は、集合建物(2)の動的熱シミュレーションモデル(41)であることを特徴とする、請求項1又は3のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項5】
個別の建物(20)の少なくとも1つの熱損失係数は、少なくとも2つの所定の熱損失係数から選択され、前記所定の熱損失係数はそれぞれ1つの期間に対応することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項6】
少なくとも1つの集合熱管理装置(30)によって集合建物(2)の少なくとも1つの個別の敷地(20)に供給される熱エネルギーの量の決定は、1つ以上の調整係数の使用を含み、各調整係数は、所定の期間に測定又は計算された調整変数に適用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記調整変数は、以下から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法(100):窓の開口部に関連する熱損失を表す変数、個別の敷地(20)の居住レベルを表す変数、気象条件を表す変数、及び/又は補助暖房の使用を表す変数。
【請求項8】
前記調整変数は、集合建物(2)の個別の敷地(20)で直接測定されるか、統計に基づいて確率論的にモデル化されるか、又は機械学習アルゴリズムの測定に基づいて再構築される、ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法(100)。
【請求項9】
集合建物(2)の熱シミュレーションモデルの校正ステップ(120)を含み、前記校正ステップ(120)は、好ましくは、周囲温度値と外部温度値の第1の測定期間及びベイジアン校正アルゴリズムに基づいて実行され、これにより、集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)によって計算された温度は、測定された温度値をできるだけ正確に再現することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項10】
個別の敷地(20)の周囲温度は、個別の敷地(20)内の複数の場所で測定された温度に対応することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項11】
集合熱管理装置(30)によって個別の敷地(20)に供給される熱エネルギーの決定された量の関数として、集合建物(2)の前記個別の敷地(20)の個別の暖房費(170)を計算するステップを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項12】
個別の暖房費を計算するステップ(170)は、集合建物(2)の敷地又は共用スペース間の格差を是正するような方法で、集合建物(2)内の個別の建物(20)の向き及び位置の特性を考慮することを特徴とする、請求項11に記載の方法(100)。
【請求項13】
建物の熱シミュレーションモデルに基づく、個別の敷地(20)の少なくとも1つの熱損失係数の計算(130)は、個別の敷地(20)について、集合建物(2)に関連する不確実性を組み込むような方法で、個別の敷地(20)の形状及び壁の構成の値が変更された複数のシミュレーションに基づいて、少なくとも1つの熱損失係数を計算することを含み得ることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項14】
集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)に基づく、個別の敷地(20)の少なくとも1つの熱損失係数の計算(130)は、個別の敷地(20)について、集合建物(2)に関連する不確実性を組み込むような方法で、建具構成の値が変更された複数のシミュレーションに基づいて、少なくとも1つの熱損失係数を計算することを含み得ることを特徴とする、請求項2又は請求項2に従属する3~13のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項15】
前記建物の熱シミュレーションモデル(41)に基づく、個別の敷地(20)の少なくとも1つの熱損失係数の計算(130)は、個別の敷地(20)について、用途と気象条件に関連する不確実性を組み込むような方法で、用途及び/又は気象条件の値がさらに変更された複数のシミュレーションに基づいて、少なくとも1つの熱損失係数を計算することを含み得ることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法(100)。
【請求項16】
複数の個別の敷地(20)と少なくとも1つの集合熱管理装置(30)を含む集合建物(2)におけるエネルギーコストのアロケータ(10)であって、前記アロケータは集合建物(2)のすべての個別の敷地(20)に適用され、少なくとも1つの集合熱管理装置(30)によって、所定の期間にわたって、集合建物(2)の少なくとも1つの個別の敷地(20)に供給される熱エネルギーの量を決定することを含み、前記アロケータ(10)は、以下を使用して供給される熱エネルギーの量を決定するように構成された1つ又は複数のプロセッサを含み:
集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)であって、集合建物(2)を仮想的に表現し、個別の敷地(20)ごとに、個別の敷地(20)の形状、個別の敷地(20)の壁の構成、及び集合建物(2)のさまざまな敷地間の熱交換を考慮する熱シミュレーションモデル(41);
集合建物(2)の複数の周囲温度値であって、個別の敷地(20)の複数の温度と、当該個別の敷地(20)に隣接する集合建物(2)の敷地又は共用スペースの複数の温度を含む、集合建物(2)の複数の周囲温度値;
集合建物(2)の外の温度の1つ以上の値;
個別の敷地(20)の容積;及び
個別の敷地(20)の少なくとも1つの熱損失係数;
前記アロケータ(10)は、集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)に基づく、個別の敷地(20)の少なくとも1つの熱損失係数の計算(130)するように構成されることを特徴とする、アロケータ(10)。
【請求項17】
前記個別の敷地(20)が建具構成によってさらに定義される場合、システムは、集合建物(2)の熱シミュレーションモデル(41)が建具構成をさらに考慮することを特徴とする、請求項16に記載のアロケータ(10)。
【請求項18】
請求項16~17のいずれか1項に記載のアロケータ(10)を含む、暖房費を割り当てるためのシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の分野に関し、特に建物内の熱エネルギーの管理に関する。特に、本発明は、所定の期間にわたって建物内の敷地に供給される熱エネルギーの量を決定する方法に関する。さらに、本発明は、特にエネルギーコストの割り当てのために、建物内の敷地に供給される熱エネルギーの量を決定するための装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明が開発された基礎となった既知の従来技術を以下に説明する。
【0003】
パリ協定で定められた目標を踏まえ、欧州連合は、再生可能エネルギーの普及促進、エネルギー効率、温室効果ガス排出量の削減に重点を置き、2030年と2050年までのエネルギー転換に関する野心的な目標を定めた。
【0004】
2016年、建物は欧州連合の最終エネルギー消費のほぼ40%を占めていた。したがって、国によって建物の性能には大きな差があるが、この分野はエネルギー効率の点で大きな進歩の余地がある。特に、住宅部門、サービス及び産業における冷暖房は、EUの一次エネルギー供給の約50%を占めている(欧州委員会-情報シート-2016年2月16日)。特に、住宅暖房用の一次エネルギーの起源は主に化石燃料(2016年で82%)に依存しており、ヨーロッパへの総ガス輸入量の68%は冷暖房部門によるものである。
【0005】
このため、建物の暖房は、2030年と2050年までのエネルギー転換目標を達成するための主要な目標となる。
【0006】
したがって、建物は、そのエネルギー性能を特徴付けることを目的とした数多くの研究やモデルの対象となってきた。例えば、建物の動的熱シミュレーション(dynamic thermal simulations、DTS)が提案されている。これらの研究は主に建物の所有者を対象としており、CMV、熱発生器、さらには人工照明管理ソリューションの比較など、想定されるさまざまな技術ソリューションのエネルギー性能をシミュレーションすることを可能にする。建物の動的熱シミュレーションに基づくこれらの研究は、空調がない夏の熱快適性を分析したり、暖房の必要性を定量化したりするための建設プロジェクトプログラムにも導入されている。
【0007】
このようなシミュレーションは、予測消費量を見積もるためにも提案されている。しかし、建物は複雑で非定常的なエネルギーシステムである。したがって、入力データ、居住シナリオ、又は環境条件の誤差により、シミュレーションで予測された消費量と測定された消費量の間に重要な変動が観察される。さらに、これらのシミュレーションは通常、重いソフトウェアクライアントに基づいており、リアルタイムで分析を実行するように構成された組み込みシステムでは使用されない。最近、エネルギー管理を最適化するために、建物とそのシステムをモデル化することが提案された(Hugo Viot. Modelisation et instrumentation d’un batiment et de ses systemes pour optimiser sa gestion energetique. University of Bordeaux, 2016. In French. NNT:2016BORD0349; tel. +33 (0)1503037)。特に、DTSモデルは重すぎると考えられているため、エネルギー管理を改善するためにコントローラーに埋め込むことができるように、小さな寸法でモデルを構築することが提案されている。それにもかかわらず、このような単純化されたモデルには改善の余地のあるパフォーマンスがある。さらに、ある建物が別の建物と同じような挙動をしないことを考慮すると、そのパフォーマンスは使用される学習ベースに大きく依存し、モデルは新しい建物ごとにトレーニングを必要とする可能性がある。
【0008】
したがって、この消費量を効率的に予測できない場合は、モニタリングが実施され、特にRT2012の文脈では、場所ごと、エネルギーの種類ごとに、エネルギー消費量を毎月最小限測定することが必要である。ただし、これはモニタリングにすぎず、エネルギー転換を促進するための措置ではない。
【0009】
この点において、集合暖房のアパートでは、暖房費の分割は通常、所有権の割合に応じて、又はアパートの表面積に基づいて按分される。このような分割は倹約を促すものではない。なぜなら、暖房の消費量が住居ごとに異なるとしても、暖房費はアパートの表面積又は所有権の割合に応じて計算されるからである。
【0010】
したがって、建物のエネルギー性能の向上を評価するだけでなく、居住者に責任を負わせるために、フランスでは暖房費の個別化が実施されている。暖房費の個別化(又は割り当て)により、各アパートが実際に消費した金額に応じて支払いが可能になる。したがって、居住者は消費を制御し、エネルギーの無駄を避けることが促される。暖房費の個別化により、平均して15%程度のエネルギー節約が達成され、消費量の調整を希望する住民の請求額の削減が可能になった(ADEME、2019年9月、ISBN979-10-297-1399-6)。
【0011】
各居住者が何を消費したかを把握できるようにするには、リモートで読み取り可能な測定デバイスを設置する必要がある。現在、市場を占めているのは、個別熱エネルギーメーター(thermal energy meters、TEM)と熱コストアロケータ(heat cost allocators、HCA)の2つの主要なデバイスである。
【0012】
TEMは各住居の入り口に設置され、実際の暖房消費量を表示して、居住者が自分の消費量を監視できるようにする。HCAは、TEMの設置が技術的に不可能又は採算が合わない場合に設置される。HCAは、発熱体の表面温度の測定を利用する。それらは住居の各ラジエーターに配置される。「従来の」HCAには3つの主要な動作モードがある。これらは標準NFEN834によって定義されている:i)シングルプローブ測定法(発熱体の表面温度又は伝熱流体の温度を測定するプローブ);ii)2プローブ測定法(1つのプローブが発熱体の表面温度又は伝熱流体の温度を測定し、もう1つのプローブが周囲温度を測定する);iii)マルチプローブ測定法(伝熱流体の平均温度を測定するための複数のプローブと周囲温度用の1つのプローブ)。
【0013】
これらのソリューションのインストールの成果は、期待を大きく下回っている。より具体的には、主にこれらのシステムの設置が複雑であるため、多くの建物では暖房費を個別に設定できていない。
【0014】
さらに、暖房費を割り当てるためのこれらのシステムは、住居の位置に関して消費されるエネルギーの信頼できる計算を提案することができない。より具体的には、不利な熱的状況を考慮するための補正係数を組み込む可能性(北側に位置する住宅は太陽光の流入量が少なく、最上階の住宅は熱損失が大きいなど)と併せて、30%の固定部分に基づいて暖房費を計算することが提案されている。しかしながら、これらの措置は住宅の消費を正確に考慮することはできない。したがって、住居の位置に応じて、居住者にとって強い不公平が残る。
【0015】
さらに、これらのシステムは依然として「盗熱」に対して弱い。より具体的には、建物の中心に位置する暖房能力の低い住居は、隣接する暑い住居から伝達される熱の恩恵を受けることになる。したがって、個別の熱エネルギーメーターの使用と実際の暖房費の割り当てに関連する不公平も残る。
【0016】
したがって、住宅の熱エネルギー消費量、特に、集合熱管理装置によって建物内の敷地に供給される熱エネルギーの量を効果的に(例えば、リアルタイムかつ正確に)決定できるソリューションが必要である。さらに、このようなソリューションにより、暖房費のより正確な計算も可能になり、集合建物における暖房費の支払いの公平性が強化されるはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、従来技術のこれらの欠点を改善することを目的とする。特に、本発明は、所定の期間にわたって建物内の敷地に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法を提案することを目的とする。この方法は、そのような量を精密かつ正確に決定することができ、高価な専用装置の設置を必要とせずにそれを行うことができる。さらに、建物の熱シミュレーションモデルと、周囲温度を考慮して割り当てを実行できることを考慮して、補償システムを導入することができ、これにより、ユーザー間の公平性が向上し、最終的にはエネルギー消費のレベルではなく温熱快適性のレベルが考慮されるようになる。
【0018】
さらに、本発明は、集合熱管理装置によって建物内の敷地に供給される熱エネルギーの量を決定するためのアロケータを提案することを目的とする。前記アロケータは、集合熱管理装置によって建物内の敷地に供給される熱エネルギーの量を決定するために、建物の周囲温度及び外気温の簡単な測定に基づいて動作することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、これらの欠点を克服することを目的とする。
【0020】
本発明は、特に、複数の個別の敷地と少なくとも1つの集合熱管理装置とを含む集合建物においてエネルギーコストを割り当てる方法を提供することを目的とする。この方法は、集合建物のすべての個別の敷地に適用可能であり、少なくとも1つの集合熱管理装置によって、所定の期間にわたって、集合建物の少なくとも1つの個別の敷地に供給される熱エネルギーの量を決定すること;及び
集合建物の熱シミュレーションモデルに基づいて、個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数を計算することを含み、
前記決定は、1つ以上のプロセッサによって実行され、以下をすること使用を含む:
集合建物の熱シミュレーションモデルであって、集合建物を仮想的に表現し、個別の敷地ごとに、個別の敷地の形状、個別の敷地の壁の構成、及び集合建物のさまざまな敷地間の熱交換を考慮する熱シミュレーションモデル;
集合建物の複数の周囲温度値であって、個別の敷地の複数の温度と、当該個別の敷地に隣接する集合建物の敷地又は共用スペースの複数の温度を含む、集合建物の複数の周囲温度値;
集合建物の外の温度の1つ以上の値;
個別の敷地の容積;及び
個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数。
【0021】
出願人は、基本的に内外の周囲温度データに基づいて、個別の敷地に供給されるエネルギー量を迅速に計算できる方法を開発した。特に、本発明の文脈では、敷地の数と同じ数だけの熱損失係数の使用が可能になる。そして、特定の有利な実施形態では、考慮される期間の関数として、複数の熱損失係数を同じ個別の敷地に関連付けることができる。この方法は、特に、暖房費を計算し、同じ集合建物のユーザー間の公平性の概念を組み込むために使用できる。
【0022】
方法の他の任意選択の特徴によれば、前記方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を単独で、又は組み合わせて任意選択で含むことができる。
【0023】
個別の敷地が建具構成によって追加的に定義される場合、集合建物の熱シミュレーションモデルは、建具構成をさらに考慮したモデルである。このように、集合建物の熱シミュレーションモデルの構築時に建具構成を直接組み込むことで、計算に負荷をかけることなく性能を向上させることが可能となる。
【0024】
集合建物の熱シミュレーションモデルは、所定の期間にわたる局所的な日射量を表すデータをさらに考慮したモデルである。このように、集合建物の熱シミュレーションモデルの構築時に日射量を表すデータを直接組み込むことで、計算に負担をかけずに性能を向上させることができる。
【0025】
集合建物の熱シミュレーションモデルは、集合建物の動的熱シミュレーションモデルである。動的熱シミュレーションモデルの使用により、本発明による方法を使用して、改善された精度で決定された供給熱量を取得することが可能になる。
【0026】
個別の敷地の熱損失係数は、少なくとも2つの所定の熱損失係数から選択され、前記所定の熱損失係数はそれぞれ1つの期間に対応する。したがって、例えば季節又は月の関数として、供給される熱エネルギーの量をより正確に決定できる熱損失係数を選択することが可能である。
【0027】
少なくとも1つの集合熱管理装置によって集合建物の少なくとも1つの個別の敷地に供給される熱エネルギーの量の決定は、1つ以上の調整係数の使用を含み、各調整係数は、所定の期間に測定又は計算された調整変数に適用される。好ましくは、調整係数は、集合建物の動的熱シミュレーションモデルに基づいて計算される。したがって、個別の敷地の用途を最もよく表す追加パラメータの関数として決定される、供給されるエネルギー量を調整することが可能である。これにより、供給される熱エネルギーの量をより正確に決定することができる。
【0028】
調整変数は、以下から選択される:窓の開口部に関連する熱損失を表す変数、個別の敷地の居住レベルを表す変数、気象条件を表す変数(例えば、異常な気象条件)、及び/又は補助暖房の使用を表す変数。これにより、モデルに負担をかけることなく、個別の敷地ごとに直接測定又はモデル化された実際の使用状況を組み込むことが可能になり、より高い精度が得られる。
【0029】
調整変数は、個別の敷地内で直接測定されるか、統計に基づいて確率的にモデル化されるか、機械学習アルゴリズムの測定に基づいて再構築される。
【0030】
各調整係数について、方法は、複数の調整係数値を、それぞれが年の期間の関数として計算するステップを含み、供給される熱エネルギーの量を決定するために使用される調整係数の値は、所定の期間の関数である。例えば、月ごとに時間の関数として計算される調整係数値がある。考慮されている月に対応する値が使用される。
【0031】
方法は、集合建物の熱シミュレーションモデルの校正ステップを含み、前記校正ステップは、好ましくは、第1の測定期間及びベイジアン(Bayesian)校正アルゴリズムに基づいて実行され、これにより、集合建物の熱シミュレーションモデルの時間単位での消費量と内部温度の予測は、測定値をできるだけ正確に再現する。
【0032】
方法は、集合建物の熱シミュレーションモデルの校正ステップを含み、前記校正ステップは、好ましくは、周囲温度及び外部温度値の第1の測定期間及びベイジアン校正アルゴリズムに基づいて実行され、これにより、集合建物の熱シミュレーションモデルによって計算された温度が、測定された温度値をできるだけ正確に再現する。
【0033】
個別の敷地の周囲温度は、敷地内の複数の場所で測定された温度に対応する。さまざまな場所を異なる部屋に対応させることができる。
【0034】
方法は、集合熱管理装置によって前記個別の敷地に供給される熱エネルギーの決定された量の関数として、個別の敷地の個別の暖房費を計算するステップを含む。
【0035】
個別の暖房費を計算するステップでは、集合建物内の個別の敷地の向きと位置の特徴が考慮される。これにより、集合建物の敷地間や共用スペース間の格差を是正することが可能となる。これにより、暖房費の配分に公平性の原則が導入され、集合建物の敷地間や共用スペース間の不均衡(例えば、向きの違い、フロアの違いなど)を修正することが可能になる。さらに、これにより、テナントは暖房消費量のうち実際に責任を負う部分、つまり暖房温度の分を支払うことができる。
【0036】
方法は、決定された熱エネルギー量の信頼区間を計算するステップを含む。好ましくは、信頼区間の前記計算は、供給される熱エネルギーの量の決定中に使用される1つ以上の調整変数に対する少なくとも1つの不確実性の値の使用を含む。
【0037】
集合建物の熱シミュレーションモデルに基づく、個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数の計算は、個別の敷地について、集合建物に関連する不確実性を組み込むような方法で、個別の敷地の幾何学的値、壁の構成、及び任意選択で建具構成が変更された複数のシミュレーションに基づいて、少なくとも1つの熱損失係数を計算することを含み得る。
【0038】
集合建物の熱シミュレーションモデルに基づく、個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数の計算は、個別の敷地について、用途と気象条件に関連する不確実性を組み込むような方法で、用途及び/又は気象条件の値がさらに変更された複数のシミュレーションに基づいて、少なくとも1つの熱損失係数を計算することを含み得る。
【0039】
第2の目的によれば、本発明は、複数の個別の敷地と少なくとも1つの集合熱管理装置を含む集合建物におけるエネルギーコストのアロケータに関し、この方法は集合建物のすべての個別の敷地に適用可能であり、少なくとも1つの集合熱管理装置によって、集合建物の少なくとも1つの個別の敷地に供給される熱エネルギーの量を決定することを含み、前記アロケータは、以下を使用して供給される熱エネルギーの量を決定するように構成された1つ又は複数のプロセッサを含み:
集合建物の熱シミュレーションモデルであって、集合建物を仮想的に表現し、個別の敷地ごとに、個別の敷地の形状、個別の敷地の壁の構成、及び集合建物のさまざまな敷地間の熱交換を考慮する熱シミュレーションモデル;
集合建物の複数の周囲温度値であって、個別の敷地の複数の温度と、当該個別の敷地に隣接する集合建物の敷地又は共用スペースの複数の温度を含む、集合建物の複数の周囲温度値;
集合建物の外の温度の1つ以上の値;
個別の敷地の容積;及び
個別の敷地に供給される熱エネルギーのうち、個別の敷地に隣接する敷地又は共用スペースに伝達される熱エネルギーの割合を表す、個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数;
前記アロケータは、集合建物の熱シミュレーションモデルに基づいて、個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数を計算するように構成されることを特徴とする。
【0040】
特定の実装形態では、個別の敷地が建具構成によってさらに定義される場合、アロケータは、集合建物の熱シミュレーションモデルが建具構成をさらに考慮することを特徴とする。
【0041】
好ましくは、アロケータは、集合的建物の熱シミュレーションモデルが、所定の期間にわたる局所的な日射量を表すデータをさらに考慮したモデルであるようなものである。
【0042】
以下に説明するように、アロケータは複数の熱損失係数を有し、それぞれが個別の敷地に専用である。さらに、敷地は、それぞれが所定の期間に特化した複数の熱損失係数に関連付けることができる。
【0043】
第3の目的によれば、本発明は、本発明によるアロケータを含む、暖房費を割り当てるためのシステムに関する。特に、このような割り当てシステムにより、テナントは、暖房消費量のうち実際に責任を負う部分、つまり暖房温度の分を支払うことが可能になる。
【0044】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の説明を読むことにより、よりよく理解されるが、これらは例示を目的としており、決して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施形態による方法を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による、集合熱管理装置によって供給される熱エネルギーの量を決定するためのシステムを表す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
説明の目的で、図は、特に厚さの点で、必ずしもスケールを反映しているわけではない。
【0047】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、デバイス(システム)及びコンピュータープログラム製品の流れ図及び/又はブロック図を参照して説明される。
【0048】
図面において、フロー図及びブロック図は、本発明のさまざまな実施形態による、システム、方法及びコンピュータープログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能及び動作を示す。この点において、フロー図又はブロック図の各ブロックは、システム、デバイス、モジュール、又はコードを表すことができ、これは、1つ又は複数の指定された論理関数を実装するための1つ又は複数の実行可能命令で構成される。特定の実装形態では、ブロックに関連付けられた機能は、図に示されている順序とは異なる順序で表示される場合がある。例えば、連続して示されている2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行することも、関連する機能に応じて逆の順序で実行することもできる。ブロック図及び/又はフロー図の各ブロック、及びブロック図及び/又はフロー図内のブロックの組み合わせは、特別なハードウェアシステムによって実装でき、これは、指定された機能やアクションを実行するか、特殊なハードウェアとコンピューター命令の組み合わせを実行する。
【0049】
以下に、本発明の概要及び関連する用語を説明し、その後、従来技術の欠点を提示し、最後に、本発明がこれらをどのように克服するかをより詳細に示す。
【0050】
「熱損失係数」という表現は、建物の全容積熱損失係数とも呼ばれ、内部環境と外部環境の1度ごとの差の熱損失という断熱材の全体的な性能に対応する。建物の全容積熱損失係数は、単位加熱容積あたりの熱損失を表す。一般に、屋外と屋内の温度間の摂氏1度の変化に対する1立方メートルあたりのワット数(ワット/m3及び℃)で表される。係数Gは、1974年の熱規制:「住宅用建物の暖房設備の断熱と自動制御に関する1974年4月10日の命令」制定時に導入された。一般に、0.5~3ワット/m3及び℃の範囲で変化する。
【0051】
説明の残りの部分では、「建物内の敷地」という表現は、1つ又は複数の部屋で構成される建物の一部に対応する。敷地は、例えばオフィスや住居に相当する。したがって、「敷地の容積」という表現は、建物内の1つ以上の部屋の容積に相当する。
【0052】
「個別の暖房費」という表現は、一般に建物内の敷地の実際の消費量に基づいて計算された暖房費に相当する。この消費量は、各敷地内で消費される暖房又は冷房の量を決定する装置に基づいて確立される。
【0053】
本発明の文脈において、「熱シミュレーションモデル」という表現は、建物を仮想的に表現し、気候又はユーザーの行動に関連するストレスに直面したときの建物の挙動を記述するように構成されたモデルに対応し得る(これらのストレスは、確率的にモデル化される)。特に、「建物の動的熱シミュレーション」という表現は、本発明の文脈では、建物の熱状態の時間の経過に伴う変化を計算するように構成されたモデルに対応し得る。これは特に、シミュレーションの選択されたすべての時間で、要素の特定の数の点(要素を構成し、熱交換(対流、伝導、放射、状態変化)を支配するさまざまな法則に従って進化するもの)の温度を決定することを可能にする。したがって、熱シミュレーションモデルは、建物のシェルとその慣性、さまざまな熱入力、居住者の行動、及び地域の気候を考慮して、建物の熱需要を推定できる。
【0054】
「局所的な日射量」という表現は、本発明の文脈では、単位表面積当たりに受け取られる太陽エネルギーの量に対応することができる。例えば、平方メートルあたりのワット数(ワット/m2)で表すことができる。
【0055】
「相関モデル」又は「アルゴリズム」という用語は、本発明の意味の範囲内で、1つ又は複数の入力値に基づいて値を計算できるようにする有限系列の演算又は命令として理解されるべきである。この有限系列の操作の実装により、例えば、ラベルYなどの値Yを、使用される一連の特徴又はパラメータXによって記述される観測値に帰属させることが可能になり、これにより、例えば、観測されたXをもってYを再現した関数fを実装できる。
Y=f(X)+e
式中:
e:ノイズや測定誤差。
【0056】
「教師あり機械学習モデル」という用語は、本発明の意味の範囲内で、観測値(ラベル付けされる)と呼ばれるデータに基づいて、自動的に生成される相関モデルを意味すると理解されるべきである。
【0057】
「教師なし機械学習モデル」という用語は、本発明の意味の範囲内で、観測値(ラベル付けされていない)と呼ばれるデータに基づいて、自動的に生成される相関モデルを意味すると理解されるべきである。
【0058】
本発明の意味の範囲内で、用語「処理」、「計算」、「決定」、「表示」、「変換」、「抽出」、「比較」、又はより広義には「実行可能な操作」は、文脈によって別段の指示がない限り、デバイス又はプロセッサによって実行されるアクションとして理解されるべきである。この点に関して、動作は、データ処理システム、例えばコンピューターシステム又は電子計算装置(コンピューターシステム又は他の記憶装置のメモリ内で物理的(電子)量として表されるデータを処理及び変換し、情報を送信又は表示するもの)の動作及び/又はプロセスに関連する。これらの操作は、アプリケーション又はソフトウェアに基づくことができる。
【0059】
「アプリケーション」、「ソフトウェア」、「プログラムコード」、及び「実行可能コード」という用語又は表現は、特定の機能を直接的又は間接的に(例えば、別のコードへの変換操作後)実行するためのデータ処理を引き起こすことを目的とした、一連の命令の表現、コード、又は表記法を意味する。プログラムコードの例として、限定的ではないが、サブプログラム、関数、実行可能アプリケーション、ソースコード、オブジェクトコード、ライブラリ、及び/又はコンピューターシステム上で実行するために設計されたその他の命令シーケンスが含まれ得る。
【0060】
本発明の意味において「プロセッサ」という用語は、コードに含まれる命令に従って動作を実行するように構成された少なくとも1つのハードウェア回路を意味するものとする。ハードウェア回路は集積回路であってもよい。プロセッサの例には、中央処理装置、グラフィックプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びプログラマブル論理回路が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
「電子デバイス」という用語は、例えばデータメモリ、任意選択でプログラムメモリ(分離可能なもの)と協働するマイクロコントローラの形態の、処理ユニット又はプロセッサを備える任意のデバイスを意味するものとする。処理ユニットは、内部通信バスを介して前記メモリと協働する。
【0062】
本発明の意味において「結合された」という用語は、1つ以上の中間要素と直接的又は間接的に接続されることを意味するものとする。2つの要素は機械的又は電気的に結合することも、通信チャネルによってリンクすることもできる。
【0063】
「正確な」又は「正確さ」、「信頼できる」又は「信頼性」、「高精度な」又は「精度」という用語は、再現可能で正確な測定を意味する。さらに、これは、測定値に誤差がないこと、又は少なくとも、測定値の誤差率が例えば5%未満、好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満であることを意味する。さらに、「向上された精度」という表現は、本発明の意味の範囲内で、非常に正確な消費量に対応し得る。その値は、例えば5%未満、好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満の誤差率の精度を有する。
【0064】
個別の熱エネルギーメーター(TEM)は存在するが、これらのシステムは高価で、設置が複雑である(温水ループごとに1つのメーターが必要で、設置には配管工事が必要である)。ラジエーターの表面温度の測定に基づいた熱コスト配分ツール(HCA)も存在する。しかしながら、これらのシステムは正確ではなく、設置が複雑である(特に、各ラジエーターに設置する必要がある)。TEMもHCAも、建物の占有者に対して公平性を確立することはできない。
【0065】
本発明者らは、重い電子装置を設置することなく、所定の期間にわたって建物内の敷地に供給される熱エネルギーの量を決定することを可能にするソリューションを開発した。
【0066】
特に、本発明者らは、敷地の形状と壁の構成を考慮した、建物の熱シミュレーションモデルに基づいて計算された敷地の熱損失係数を考慮した決定ソリューションを開発した。さらに、敷地に建具が含まれている場合、建物の熱シミュレーションモデルはこの建具の構成も考慮に入れることができる。さらに、好ましくは、所定の期間にわたる局所的な日射量を表すデータも考慮に入れることができる。このようなソリューションにより、大規模な計算システムを使用した熱シミュレーションを使用したソリューションの精度と、熱損失係数に基づくソリューションの応答性及び軽量性を兼ね備えることが可能になる。より具体的には、敷地に供給される熱エネルギーの量を決定する方法に熱シミュレーションモデルを直接組み込むことが試みられてきたが、これらのソリューションは十分に正確ではなく、一般に実装するには重すぎであった。
【0067】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、図1の例に従って示されるように、建物2内の敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法100に関する。
【0068】
敷地20に供給される熱エネルギー量は、例えば、集合熱管理装置30によって供給されるエネルギー量に相当する。集合熱管理装置30は、一般に集合ガスボイラーに対応する。それにもかかわらず、ヒートポンプやヒートネットワークなど、別の加熱システム(場合によっては電気)に対応することもできる。
【0069】
特に、供給される熱エネルギーの決定量は相対的なものとなり得る。ただし、供給される熱エネルギーの決定された量は、ワット時などの熱エネルギーの国際測定単位で表現されることが好ましい。供給される熱エネルギーの量は、例えば、月当たりの量に対応することができる。
【0070】
好ましくは、供給される熱エネルギーの量が決定される敷地20は、個別の敷地に対応し、より好ましくは住居に対応する。敷地は幾何学的形状によって定義されてもよい。敷地の幾何学的形状は、前記敷地を形成する壁の寸法に対応し得る。これらの寸法は、建具の寸法を指すこともあり、敷地を形成する壁の向きを含めることもある。好ましくは、敷地20の幾何学的形状には、壁の表面積、及び任意選択で建具の表面積、建物2内での建具の位置及び向きが含まれる。さらに、敷地は、特に壁の構成によって、また必要に応じて建具の構成によって画定される。より具体的には、使用される材料の寸法と特性の関数、敷地の挙動、したがって供給される熱エネルギーの量は変化する可能性がある。
【0071】
本発明による決定方法100は、所定の期間にわたって供給される熱エネルギーの量を有利に計算することができる。
【0072】
所定の期間は、例えば、1週間、1か月、四半期、半年、さらには1年に相当する。以下に詳述するように、本発明は、気候条件(例えば、日射)に関連する差動変動を考慮することができ、所定の期間は、好ましくは、単一の同じ熱損失係数が使用される期間に対応することができる。有利には、所定の期間は暦期間であり、季節に関連付けられることが好ましい。
【0073】
本発明の文脈では、建物2の敷地20に供給される熱エネルギー量の決定には、以下を使用することが含まれる:建物の複数の周囲温度値、建物2の外の温度の値、建物の敷地20の容積、及び敷地の熱損失係数。
【0074】
建物の周囲温度値は、決定方法専用の温度センサー、又は建物に既に設置されているシステムに組み込まれた温度センサーによって提供できる。周囲温度センサーは、通信ネットワーク(例えば、インターネット、wifi(登録商標)、sigfox(登録商標)、LoRa(登録商標)、LoRaWAN(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Z-Wave(登録商標)、Enocean(登録商標)、3G/4G/5G)に接続された温度センサーであることが好ましい。建物の周囲温度値は、調査対象の敷地(言い換えれば、供給する熱エネルギー量を決める必要があるもの)の複数の温度、調査対象の敷地に隣接する敷地又は調査対象の敷地に隣接する共用スペースの温度を含むことが好ましい。
【0075】
敷地20の周囲温度は、敷地20の複数の場所(すなわち、部屋)で少なくとも1時間ごとに測定される温度に対応することができる。敷地20で使用される周囲温度の値は、平均値又は中央値に対応することもできる。
【0076】
特に、決定は、敷地20の少なくとも2つの周囲温度測定位置(好ましくは、日中ゾーンと夜間ゾーン)の使用を含むことができる。
【0077】
決定方法は、建物2の外の温度の1つ以上の値を使用することができる。建物の外の1つ以上の温度は、決定方法専用の温度センサー、又は建物の周囲若しくは建物上に既に設置されているシステムに組み込まれた温度センサーによって提供できる。外部温度センサーは、通信ネットワーク(例えば、インターネット、wifi(登録商標)、sigfox(登録商標)、LoRa(登録商標)、LoRaWAN(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Z-Wave(登録商標)、Enocean(登録商標)、3G/4G/5G)に接続された温度センサーであることが好ましい。あるいは、建物の外部の温度値は、建物2が位置する地理的領域について測定又は計算された局所的な外部温度値に対応することもできる。建物の外の温度値は、建物2が位置する地理的エリアについて推定された局所的な外部温度値に対応することもできる。
【0078】
建物の敷地20の容積は、一般に、既知の値、又は特に建物及び敷地の幾何学的形状を考慮して計算された値に対応する。特定の実施形態では、敷地の容積は、それぞれが敷地の1つ又は複数の空間に関連付けられた複数の容積に対応することができる。例えば、敷地20に供給される熱エネルギーの量の決定では、使用される敷地の周囲温度値ごとに特定の容積を考慮することができる。温度値に関連付けられたより高温のゾーンは、敷地20のサブボリュームに関連付けることができ、一方、より低温のゾーンは、他の温度値及び敷地20の別のサブボリュームに関連付けられることになる。
【0079】
本発明の文脈では、敷地に供給される熱エネルギー量の決定は、建物2の熱シミュレーションモデル41に基づいて計算された敷地の熱損失係数に基づくことになる。
【0080】
建物2の熱シミュレーションモデル41に基づいて敷地の熱損失係数を計算することにより、他のバイアスによって計算又は推定された熱損失係数よりも、精密かつ正確な敷地の熱損失係数を得ることができる。
【0081】
好ましくは、敷地の熱損失係数を計算するために使用される建物の熱シミュレーションモデル41は、建物の動的熱シミュレーションモデルである。より具体的には、動的熱シミュレーションモデルは、壁の形状と構成の正確な記述に基づいている。さらに、敷地に建具が含まれている場合、建物の熱シミュレーションモデルはこの建具の構成も考慮に入れることができる。これにより、関連する物理現象(対流、伝導、放射による熱交換)を考慮できるようになり、敷地に供給される熱エネルギー量を正確に計算できるようになる。
【0082】
EPCを生成するために使用される、従来の住宅の消費量を計算するための3CL法以外にも他の方法が存在する。しかし、これらの方法は、熱損失表面積のより大まかな記述と熱交換のより大まかなモデリングに基づくものである。例えば、3CL法は、好ましくは建物の動的熱シミュレーションモデルに基づく本発明とは異なり、動的側面の考慮を組み込んでいない。計算できるのは暖房/冷房/DHWの年間消費量のみであり、例えば時間の経過に伴う温度の変化などは計算できない。さらに、それはフレームの分析にのみ適用され、用途は考慮されていない。実際には、それは、用途を考慮しながら、消費量と内部温度の両方について、時間単位の時間ステップで計算を好ましく実行できる本発明による方法と比較して、正確ではない。
【0083】
したがって、建物の熱シミュレーションモデルは、敷地の形状、壁の構成(任意選択で建具の組成)及び建物が受けるストレス(好ましくは気候や用途など)を有利に考慮する。
【0084】
本発明の文脈において、動的熱シミュレーションモデル(DTS)は、それに近似された数値モデルを使用して、建物の熱状態の経時的変化を計算することを可能にする。このモデルにより、シミュレーションの選択されたすべての時点で、建物の特定の数の点の温度(熱交換(対流、伝導、放射、状態変化)を支配するさまざまな法則に従って変化するもの)を取得できるようになる。
【0085】
したがって、本発明の文脈における動的熱シミュレーションモデルは、稼働中の建物の各ゾーンの熱需要(暖房及び冷房の需要)及び温度を推定することができる。このモデルは、建物のシェルとその惰性(建物の内壁と外壁の記述に基づくもの)、熱ゾーン間の熱交換の流れ、さまざまな熱入力、居住者の行動と地域の気候を考慮する。さらに、有利なことに、モデルを使用して実際のエネルギー消費を推定する場合、計算では、エネルギーシステム(生産システム、エミッタの種類など)も考慮に入れることができる。
【0086】
熱シミュレーションモデルは、マルチゾーンモデルであることが好ましく、有限の容積を有することがより好ましく、モーダル解析によって縮小されることがさらに好ましい。このような構成により、計算時間を3分の1に短縮できる。さらに、モデルは各時間ステップで、建物の各ゾーンの冷暖房の必要性及び/又は温度を決定するように構成されている。このモデルは、ゾーン間、例えば敷地20間の熱交換を組み込むように構成されるのが有利である。さらに、モデルは、各壁における熱慣性を考慮するように構成されるのが有利である。
【0087】
加えて、本発明による決定の精度と正確性をさらに向上させるために、使用される建物2の熱シミュレーションモデル41は、局所的な日射量を表すデータをさらに考慮できることが有利である。
【0088】
特に、期間(例えば、所定の期間)ごとの局所的な日射量に関するデータを考慮することにより、直接的又は間接的などのような形態であっても、日射量からのエネルギー入力を考慮に入れることができる。
【0089】
特に、局所的な日射量のデータには、全体的な水平日射量と拡散した水平日射量が含まれる。特定の建物2のこれらの値は、考慮された期間の関数として大きく変化する。また、特定の期間において、異なる地理的状況(場所や向きなど)にある2つの敷地における日射の影響は大きく異なる可能性がある。したがって、本発明の文脈では、調査期間(すなわち、期間)の局所的な日射量のデータ又は調査期間の局所的な日射量を表すデータを考慮した建物2の熱シミュレーションモデル41を使用することが非常に有利である。
【0090】
局所的な日射量のデータ又は局所的な日射量を表すデータは、局所的な履歴データに基づいて構築されていることができ、局所的な履歴データに基づいてモデル化されることが好ましい。より具体的には、特定の放射線値の測定値を調査対象の建物ごとに取得する必要がある場合、その測定値を取得するのに特に費用がかかる。
【0091】
あるいは、局所的な日射量を表すデータは、少なくとも1つの機器装置から、又は局所的な日射量に関するデータを含むコンピュータサーバから取得されている。
【0092】
次に、本発明による、所定の期間にわたって建物2の敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法のさまざまな実施形態について説明する。
【0093】
図1に示すように、本発明による決定方法は、建物の熱シミュレーションモデルを生成するステップ110を含むことができる。
【0094】
建物の熱シミュレーションモデルを生成110するための多くのツールが存在する。建物2の熱シミュレーションモデルは、建物の記述に必要な要素専用の1つ以上のライブラリと、調査対象の建物2を3Dでグラフィカルに記述することを可能にするモデリングモジュールとを組み合わせたコンピュータソリューションに基づいて構築されることが好ましい。したがって、材料、建具、設備、及びエネルギー性能に関するすべての情報を含む建物2のデジタルモデルを作成することが可能である。
【0095】
これらの側面を超えて、建物の動的熱シミュレーションモデルを生成して使用することで、より優れた結果を得ることが可能になる。より具体的には、環境への影響、特に光放射に関連する要因をさらに組み込むことができるモデリングソリューションを使用することが可能である。
【0096】
敷地の熱損失係数の計算に関連して使用される建物2の熱シミュレーションモデル41は、周囲のソーラーマスクの特性を含むことができる動的熱シミュレーションモデルであることが好ましい。
【0097】
特に、敷地の熱損失係数の計算に関連して使用される建物2の熱シミュレーションモデル41は、壁の組成及び任意選択で建具の組成の特性を含む。有利には、空気更新流量及び/又は暖房ネットワークの分配損失の特性をさらに含むことができる。
【0098】
また、建物2の熱シミュレーションモデル41は、建物の居住時間及び/又は居住レベルなどの建物の居住に関する特性を含む動的熱シミュレーションモデルである。さらに、特定の電気用途、暖房又は空調の温度設定、及び/又は暖房又は空調のスケジュールなどの特性を含めることができる。
【0099】
有利には、建物2の熱シミュレーションモデル41は、所定の建物2の敷地20、20b間の熱交換を考慮するように構成された動的熱シミュレーションモデルでもある。
【0100】
図1に示すように、本発明による決定方法は、有利には、建物の熱シミュレーションモデルを校正するステップ120を含むことができる。このようなステップにより、方法の精度が向上し、したがって供給される熱エネルギーの決定量の値の精度も向上することができる。
【0101】
校正ステップ120は、第1の測定期間及び校正アルゴリズム、好ましくはベイジアン校正アルゴリズムに基づいて実行することができ、これにより、建物の熱シミュレーションモデルの時間ごとの時間ステップでの消費量と内部温度の予測が、測定値をより正確に再現できるようになる。
【0102】
校正ステップ120は、建物2の実際の熱挙動を可能な限り正確に再現することを保証するような方法で、熱シミュレーションモデルの信頼性を高めることができる。このステップの目的は、現場での測定値(周囲温度及び外部温度データに基づく)と熱シミュレーションモデルの出力(モデルによってシミュレートされた温度と消費量)を調整することによって、建物の実際の挙動の信頼性が高く正確な表現を取得することである。
【0103】
したがって、このステップでは、一方では、熱シミュレーションモデルによって生成されたデジタルモデルからの測定値を組み込むことができ、他方では、シミュレートされたデータと測定値の違いを説明できる不確実性と誤差の原因を考慮してモデルを校正できる。有利には、誤差の推定はベイジアン校正アルゴリズムの使用に基づく。
【0104】
したがって、この校正ステップ120は、熱シミュレーションモデルのパラメータの修正をもたらすことができ、この修正は、所定の期間に生成される敷地の熱損失係数の値に反映されることになる。
【0105】
本発明の文脈では、建物2の熱シミュレーションモデル41は、少なくとも50Wh/m2、例えば少なくとも100Wh/m2変化する太陽光条件下、外気温は少なくとも10℃、好ましくは少なくとも30℃変化する下で、考慮される期間の関数として校正することができる。さらに、少なくとも15%変化する外部の相対湿度条件下で、考慮した期間の関数として校正することができる。より具体的には、本発明者らは、可能な限り正確に決定される熱エネルギー量を供給するために、これらの振幅レベルを有するこれらの特定の変数が本発明の文脈において最も適していると判断した。
【0106】
さらに、特定の期間にわたって建物2の敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定するための方法は、特に事前の校正ステップが含まれる場合、供給される熱エネルギーの決定された量の値の不確実性スコアを計算するステップを含むことができる。
【0107】
特に、この不確実性スコアは、校正手順中に生成され、建物の熱シミュレーションモデルと測定値の時間単位のタイムステップでの消費量予測と内部温度の間の偏差を表す変数に基づいて計算できる。
【0108】
図1に示すように、本発明による決定方法は、建物の熱シミュレーションモデルに基づいて建物の少なくとも1つの熱損失係数を計算するステップ130を含むことが有利である。
【0109】
したがって、各敷地20の熱損失係数は、建物の未校正、又は好ましくは校正された熱シミュレーションモデルに基づいて計算することができる。このように推定された熱損失係数は、建物2の変動する運転条件下での敷地20内で予想される熱損失に有利に対応することができる。この計算により、熱損失の推定で生じる誤差が最小限に抑えられる。この誤差は、建物が受ける応力(天候、用途など)の動的側面に対する建物の慣性を考慮しない、純粋に統計的な計算が実行される場合、かなり大きくなる可能性がある。
【0110】
前述したように、理想的には、熱損失係数の計算には、住宅のさまざまな壁のタイプ(ガラス張りかどうか)、表面積、向きだけでなく、隣接する接点、空気の更新、さまざまな熱橋、さらには太陽の入力と用途(代謝熱、特定の電力)にリンクされた自由入力などの多くの要素を考慮する必要がある。これに関連して、この熱損失係数を推定するための校正された熱シミュレーションモデルの使用は非常に興味深いものである。敷地の熱損失係数の計算の目的は、建物2及びその環境(フレーム、システム、用途、気象条件に関連する不確実性)に関連するさまざまな不確実性源を考慮しながら、敷地20の係数Gの値を推定できるようにすることである。
【0111】
不確実性解析は、モデルの入力係数の不確実性によって引き起こされる、建物の校正済み熱シミュレーションモデルの出力(特に消費量)の変動を定量化することを目的として実行できる。一実施形態によれば、この不確実性分析を実行するために、各静的パラメータは一方では確率密度関数によって定義され、他方では用途及び気象条件の変動モデルが使用される。例えば、これらのデータに基づいて、各敷地20の消費実績のばらつきを得るなど、500回以上のシミュレーションを実行することができ、そして、これらのシミュレーションに基づいて、敷地の1つ又は複数の熱損失係数Gを再計算できる。
【0112】
したがって、集合建物の熱シミュレーションモデルに基づく、個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数の計算130は、個別の敷地20について、集合建物2に関連する不確実性を組み込むような方法で、個別の敷地20の幾何学的値、壁の構成、及び任意選択で建具構成が変更された複数のシミュレーションに基づいて、少なくとも1つの熱損失係数を計算することを好ましく含み得る。
【0113】
より好ましくは、建物の熱シミュレーションモデルに基づく、個別の敷地の少なくとも1つの熱損失係数の計算130は、敷地について、用途と気象条件に関連する不確実性を組み込むような方法で、用途及び/又は気象条件(気温や日照)の値がさらに変更された複数のシミュレーションに基づいて、少なくとも1つの熱損失係数を計算することを含み得る。これらの実施形態では、確率密度関数及び/又は変動モデルに従って値を修正することができる。
【0114】
係数Gを計算するために不確実性分析を使用することにより、本発明の動作に負担をかけることなく、従来の方法と比較してより高い精度を本発明にもたらすことが可能になる。
【0115】
さらに、本発明による決定方法は、それぞれが建物の熱シミュレーションモデルに基づいて計算される、所定の敷地20に対する複数の熱損失係数の使用を含むことができる。好ましくは、本発明による決定方法は、少なくとも4つの熱損失係数の使用を含む。有利には、これらの熱損失係数は、所定の期間、例えば暦期間に特有のものとなる。より好ましくは、本方法の文脈において、敷地20の熱損失係数は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つの熱損失係数から選択され、それぞれの熱損失係数は1年の期間に対応する。さらにより好ましくは、熱損失係数は、所定の敷地20について少なくとも12の熱損失係数(月次係数)から選択される。
【0116】
本発明による決定方法は、建物の単一の同じ熱シミュレーションモデルに基づいて、又は建物のさまざまな熱シミュレーションモデルに基づいて、複数の熱損失係数を計算するステップ130を含むことができる。
【0117】
本発明による決定方法は、所定の期間にわたって建物2内の敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定することを含む。
【0118】
すでに説明したように、決定には、建物の複数の周囲温度値、建物2の外の1つ以上の温度値、建物の敷地20の容積、及び敷地の熱損失係数が考慮される。
【0119】
この決定は、敷地の周囲温度の測定値を使用して暖房費アロケータによって実行される計算と比較できる。特に、本発明による決定は、複数の周囲温度値と外の1つ以上の温度値に基づいて、割り当ての対象となる前に敷地内で個人的に消費されるエネルギー量の推定に対応することができる。
【0120】
例えば、計算は次のような形式になる。
【数1】
式中:
E:調査対象の敷地20内で私的に消費されるエネルギー量
Ta:調査対象の敷地20の周囲温度
Te:建物2の外の温度
V:調査対象の敷地20の容積
G:調査対象の敷地20の熱損失係数
t:時間ステップ
【0121】
調整変数を使用した式の例:
【数2】
式中:
E:調査対象の敷地20内で私的に消費されるエネルギー量
Ta:調査対象の敷地20の周囲温度
Te:建物2の外の温度
V:調査対象の敷地20の容積
G:調査対象の敷地20の熱損失係数
adjustment:調整変数に関連付けられた調整係数
adjustment:調整変数
t:時間ステップ
【0122】
説明したように、本発明は、調整変数なしで、調整変数を使用して、又は複数の調整変数を使用して実施することができる。
【0123】
有利には、決定には、建物の熱シミュレーションモデルに基づいて計算された1つ又は複数の調整係数の使用が組み込まれ得る。これらの調整係数と、環境要因を表す調整変数と組み合わせて使用すると、モデルの精度をさらに向上させることができる。
【0124】
したがって、本発明による方法は、有利には、供給される熱エネルギーの量の調整ステップ140を含む。前記調整ステップ140は、1つ以上の調整係数の使用を含み、各調整係数は調整変数に適用される。
【0125】
1つ又は複数の調整変数は、敷地に供給される熱エネルギーに影響を与える人的要因又は環境要因に対応し得る。したがって、調整変数は、大気圧や風速などの気象データに対応することができる。
【0126】
調整変数は、建物2の敷地20内で直接測定されてもよい。あるいは、調整変数は、建物2が位置する地理的エリアで測定されてもよい。調整変数を取得する別の手段は、例えば統計に基づいて確率的に調整変数をモデル化すること、又は機械学習アルゴリズムに基づいて生成することである。
【0127】
調整変数は、週次、日次、又は時間ごとのデータに基づいて計算されることが好ましい。これらの値は、月次値を生成する方法で組み込むことができる。特に、熱損失係数が月次の場合、調整変数も月次になる。
【0128】
例えば、敷地20に供給される熱エネルギーの量の決定には、以下から選択される調整変数の使用を組み込むことができる:窓の開口部及び/又は自然換気に関連する熱損失を表す変数;及び/又は補助暖房の使用を表す変数。これにより、直接測定された、又は各敷地ごとにモデル化された実際の使用を組み込むことが可能になる。
【0129】
好ましくは、敷地20に供給される熱エネルギー量の決定には、補助暖房を含む敷地の電力消費を表す調整変数の使用が組み込まれる。
【0130】
この決定には、建物の少なくとも1つの窓24を開けることによる熱損失を表す調整変数の使用を組み込むこともできる。
【0131】
この場合及び好ましい方法では、窓開口部24に関連する熱損失を表す調整変数は、敷地の周囲温度及び敷地内の湿度の変化の関数として計算され得る。特に、屋内外の温度と湿度の時系列を使用することができる。したがって、これにより、各窓にセンサーを配置する必要がなく、窓が開いている期間の正確な推定が可能になる。
【0132】
調整係数は、例えば、敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定する際に調整変数値とともに使用される値に対応する。特に、この調整係数は、敷地20に供給する熱エネルギー量を決定する式に用いられる。この調整係数の値は、建物2の熱シミュレーションモデルに基づいて算出されることが好ましい。
【0133】
調整係数値は、例えば、3か月以下、好ましくは2か月以下、より好ましくは1か月以下の頻度で更新されてもよい。したがって、調整変数の値を季節の関数として、より一般的には、特定の期間の通常の気候を最もよく考慮することが可能である。好ましくは、この方法は、同じ調整係数に対して、所定の期間の関数として複数の所定の調整係数値を使用する。
【0134】
本発明による敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定する方法に関連して、複数の調整変数/調整係数のペアが有利に使用される。これにより、他のシステムと比較して、より正確に熱エネルギーの供給量を算出することが可能となる。
【0135】
特に、本発明による方法は、所定の値が所定の期間の関数として選択される複数の調整係数の使用を含むことができる。例えば、敷地の少なくとも1つの窓24の開口部による熱損失を表す調整変数に関連付けられた調整係数は、7月では11月と同じ値を持たない。好ましくは、本発明による方法は、同じ敷地20に対して、少なくとも2つの調整係数、より好ましくは少なくとも3つの調整係数、さらにより好ましくは少なくとも4つの調整係数の使用を含む。
【0136】
また、調整変数や調整係数を用いることにより、熱エネルギー供給量の計算をより高精度に行うことができ、計算の複雑さを軽減することができる。さらに、これにより、熱シミュレーションモデルを1回使用するだけで、年間の検討期間に柔軟に適応する方法で、敷地の多数の調整係数値と熱損失係数値を生成することができる。
【0137】
前述したように、本発明による方法の利点の1つは、供給される熱エネルギーの決定された量について信頼区間を計算できることである。
【0138】
この信頼区間の計算は、供給される熱エネルギーの量の決定中に使用される調整変数の不確実性値の使用に依存し得る。
【0139】
調整変数の不確実性値は、所定の値、又は同じ期間の複数の変数調整値の関数として計算された値(例えば、標準偏差)であり得る。あるいは、又はさらに、この信頼区間の計算は、供給される熱エネルギーの計算量及び使用される調整変数の不確実性の値の計算に依存することができる。
【0140】
本発明の性能は、特に以下の表1によって例証される。
【0141】
【表1】
【0142】
表1は、所定の期間にわたって建物2の敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定するための従来の方法と比較して、予測の精度がどのように改善されるかを示す。具体的には、動的熱シミュレーションモデルに基づいて計算された熱損失係数を使用しない場合、結果は現実とはかけ離れており、放射、窓の開口部、補助暖房などの外部要因を正しく考慮することができない。
【0143】
さらに、表1は、動的熱シミュレーションに基づいて計算された敷地の熱損失係数に関して放射を考慮すると精度が向上し、建物が十分に断熱されている場合にはさらに精度が向上することを示している。さらに、表1は、調整変数(調整係数とともに)として窓の開口部(「開口部」)と補助暖房の使用(「補助暖房」)を考慮すると、精度がさらに向上することを示している。
【0144】
上述したように、敷地Gの熱損失係数の計算は、放射及び内部入力(用途を参照)を含み得る多数のパラメータを変化させる不確実性の伝播を介して実行されることが好ましい。これにより、これらの変数(放射、内部入力など)の平均的な影響(予想)を考慮することが可能になる。
【0145】
消費量の計算をさらに調整し、実際のエネルギー消費量にさらに近づけるために、本発明によるソリューションは、調整変数を組み込むことを提案する。これにより、変数の実際の値を考慮して消費量の計算を調整できるようになる。例えば、放射に伴う調整の際、敷地Gの熱損失係数を計算することで、放射の平均的な影響(例えば、年間で1200kWh/m2、又は1か月で120kWh/m2)を考慮した平均消費量を算出することができる。放射線に調整変数を追加すると、消費量の計算を変更できるようになる。例えば、実際にはこれが1年間で測定された1300kWh/m2(又は、期間全体で100kWh/m2)であるとする。敷地の熱損失係数Gの値の計算は、放射の調整係数と調整変数を使用して変更される。(例えば、調整後の消費量=平均消費量+Coeff×(1300/1200-1))。
【0146】
図1に示すように、本発明による決定方法は、電力消費を分析するステップ150を含むことが有利である。
【0147】
特に、補助暖房の使用は、電力消費量の分析150に基づいて検出することができる。これらの電力消費量の分析は、統計モデルによる推定、電気料金の分析に基づく計算、さらには電子電力メーターによる測定に対応し得る。
【0148】
したがって、図1に示すように、本発明による決定方法は、追加の加熱装置の使用の定量化ステップ160を有利に含むことができる。
【0149】
追加の加熱装置の使用に関するこの定量化ステップ160は、特に、電子電力メーターからのデータ、又は電気料金などの消費報告書を含む文書の分析に基づくことが好ましい。
【0150】
図1に示すように、本発明による決定方法は、供給される熱エネルギーの決定された量の関数として個別化された暖房コストを計算するステップ170を有利に含むことができる。
【0151】
特に、個別の暖房費の計算ステップ170は、集合熱管理装置30によって前記敷地20に供給される熱エネルギーの決定された量の関数として、建物2の敷地20に対する個別の暖房費の計算ステップ170であり得る。
【0152】
好ましくは、この方法は、所定の予想内部温度、局所変数、及び調整係数の関数として、敷地の予測快適コストを計算するステップを含むことができる。
【0153】
図1に示すように、本発明による決定方法は、調整変数値の修正の関数として敷地に供給される熱エネルギーの量に関する予想節約量の計算ステップをさらに含むことができる。
【0154】
したがって、調整変数の使用を実施する場合、本発明による方法は、他の調整変数値の関数として敷地に供給される熱エネルギーの量がどの程度になるかについての計算ステップを含むことができる。例えば、窓の開口部の数が2つ減少した場合、敷地に供給される熱エネルギーの量の観点からどれだけの節約になるかを計算できる。
【0155】
このようなステップにより、エネルギー改善措置の推奨事項が生成され、ユーザーが暖房費を削減し得る。
【0156】
図1に示すように、本発明による決定方法は、データを電子表示装置50に送信するステップ180をさらに含むことができる。
【0157】
送信されるデータには、例えば、供給される熱エネルギーの決定された量が含まれる場合がある。
【0158】
別の態様によれば、本発明は、所定の期間に集合熱管理装置30によって建物2内の敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定するためのアロケータ10に関する。
【0159】
アロケータ10は電子デバイスであってもよく、1つ以上のプロセッサを含んでもよい。好ましくは、本発明によるアロケータ10は、本発明による方法、好ましくは、有利であるか否かにかかわらず、供給される熱エネルギーの量を決定するための方法100、及びその様々な好ましい実施形態を実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサを含む。
【0160】
アロケータ10は、建物2内に設置されてもよい。しかしながら、図2に示すように、アロケータ10は、調査対象の敷地20を収容する建物2の外側に配置されてもよい。例えば、アロケータ10は、コンピュータサーバの機能モジュールなどの電子デバイスの機能モジュールであってもよい。これらの条件下では、同じコンピュータサーバ40が、それぞれ建物2専用の複数のアロケータ10、10bをホストすることができる。図2に示すように、コンピュータサーバ40は、アロケータ10、10bによって使用される熱損失係数を計算するために使用された熱シミュレーションモデル41、41bをホストすることもできる。あるいは、好ましくは、アロケータは、熱損失係数を生成するために使用される熱シミュレーションモデルを記憶する必要がない。より具体的には、敷地20ごとに少なくとも1つ、複数の熱係数が生成されると、そのモデルは、供給される熱エネルギーの量の決定にもはや必須ではない。これにより、出願人は、結果の精度を犠牲にすることなく、リアルタイム計算のための軽量で応答性の高いソリューションを提案できるようになる。
【0161】
所定の期間に集合熱管理装置30によって建物2の敷地20に供給される熱エネルギーの量を決定するため、アロケータ10、特にアロケータ10の1つ以上のプロセッサは、好ましくは、建物2の複数の周囲温度値、建物2の外の温度の値、敷地20の容積、及び敷地の熱損失係数を使用するように構成される。
【0162】
有利には、アロケータ10は、敷地20の幾何学的形状、壁の構成、及び任意選択で前記敷地20の建具の構成を考慮した、建物2の熱シミュレーションモデル41に基づいて計算された敷地の熱損失係数を使用する。
【0163】
さらに、建物2の熱シミュレーションモデル41は、所定の期間にわたる局所的な日射量を表すデータを考慮することができる。
【0164】
上述したように、局所的な日射量のデータは、局所的な履歴データを使用したモデルに基づいて生成されるため、測定されないが、考慮されることが好ましい。
【0165】
アロケータ10は、特に、各敷地20に対して決定された供給エネルギーのすべての量の関数として集合暖房に関連する財務コストを割り当てるために、割り当てデータを計算するように構成された1つ又は複数のプロセッサを含むことができる。
【0166】
別の態様によれば、本発明は、暖房費を割り当てるためのシステム1に関する。暖房費を割り当てるシステム1は、1つ以上のプロセッサを備えた電子装置を含んでもよい。好ましくは、本発明による暖房費を割り当てるためのシステム1は、本発明による方法、好ましくは、有利であるか否かにかかわらず、供給される熱エネルギーの量を決定するための方法100、及びその様々な好ましい実施形態を実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサを含む。
【0167】
特に、暖房費を割り当てるためのシステム1は、本発明によるアロケータ10を含むことができる。前述したように、このアロケータはコンピュータサーバ40によってサポートできる。さらに、コンピュータサーバ40は、暖房費又は敷地に供給される熱エネルギー量に関するデータを受信できる電子表示装置50又は他の電子装置と通信するように構成することができる。
【0168】
さらに、本発明による暖房費を割り当てるシステム1は、複数の電子温度測定装置22を含んでもよい。これらの装置は、本発明による暖房費を割り当てるためのシステム1専用の電子温度測定装置22であってもよく、あるいは、本発明に従って暖房費を割り当てるためにシステム1にデータを通信するように構成され、住宅にすでに存在する装置であってもよい。例えば、これらのデバイスは煙感知器や接続されたサーモスタットに組み込まれることができる。
【0169】
図2に示すように、電子温度測定装置22は、敷地20の様々なゾーン又は部屋21に配置することができる。例えば、複数の電子温度測定装置22が、同じ敷地20内の、補助加熱手段23を含んでも含まなくてもよい部屋21に配置されてもよい。
【0170】
特に、これらの電子温度測定装置22は、温度センサーに加えてセンサーを含むことができる。特に、電子温度測定装置22は、湿度センサーを含むことができる。CO2センサーも含むことができる。このようなセンサーを使用すると、窓24を含む室内にこの電子温度測定装置22を配置することにより、窓24の開放時間を推定するのに十分なデータを生成することができる。
【0171】
電子温度測定装置22は、測定データをアロケータ10に直接的又は間接的に送信するように構成されることが好ましい。温度は、1日に少なくとも1回、好ましくは1日に少なくとも2回、より好ましくは少なくとも1時間ごと、より好ましくは少なくとも30分ごとに測定することができる。対照的に、これらのデータは、電子温度測定装置22に保存することができ、少なくとも月に1回、好ましくは少なくとも毎週、より好ましくは少なくとも毎日、より好ましくは少なくとも1日6回、直接的又は間接的にアロケータ10に送信することができる。
【0172】
電子温度測定装置22は、無線通信又は有線接続を介して、最も好ましくは無線通信を介して、測定データをアロケータ10に直接送信するように構成されることが好ましい。あるいは、これらのデータは、無線接続又は有線接続を介してデータコレクタ60に送信されてもよい。
【0173】
データコレクタ60は、特に、建物2の共用部分又は建物2の外部に設置することができる。システム1がデータコレクタ60を含む場合、システム1は、一方で、データコレクタ60と各敷地に関連付けられた電子温度測定装置22との間の、建物2内で実施される第1の無線通信と、他方で建物2のデータコレクタ60からアロケータ10への第2の無線通信(通常は集中管理されており、インターネットなどの通信ネットワークを介してアクセスできる)を実装するように構成され得る。
【0174】
本発明は、上述したもの以外の多くの代替案及び応用例を含むことができる。特に、断りのない限り、上記の各実装のさまざまな構造的及び機能的特徴は、相互に結合及び/又は近接に及び/又は密接に関連しているものとして考慮されるべきではなく、対照的に単純な並置として考慮されるべきである。さらに、上述の様々な実施形態の構造的及び/又は機能的特徴は、全体的又は部分的に、任意の異なる並置又は任意の異なる組み合わせの主題となり得る。
図1
図2
【国際調査報告】