(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】アルコキシシラン及びそれから製作される高密度有機シリカ膜
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20241106BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522400
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022077912
(87)【国際公開番号】W WO2023064773
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】マシュー アール.マクドナルド
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイムズ フーディ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA16
4K030BA29
4K030CA12
4K030FA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030LA02
4K030LA15
5F058BA20
5F058BC02
5F058BC04
5F058BF04
5F058BF07
5F058BF25
5F058BF27
5F058BF29
5F058BH17
5F058BJ02
(57)【要約】
改善された機械特性を備える高密度有機ケイ素膜を製作する方法は、反応チャンバ内へ基板を提供する工程;アルコキシシランを含むガス状組成物を反応チャンバへ導入する工程;及び反応チャンバ内のアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを適用して、アルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘導し、基板上に有機ケイ素膜を堆積させる工程を含む。この有機ケイ素膜は、約2.40から約3.20の誘電率、約6GPaから約30GPaの弾性率、及びXPSによる測定で約10から約45の原子%炭素を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された機械特性を備える高密度有機シリカ膜を製作する方法であって、前記方法は:
反応チャンバ内へ基板を提供すること;所定の式Iの構造を有する少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を含むガス状組成物を、前記反応チャンバ内へ導入すること:
【化1】
ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルカン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルケン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルキン、C
4~C
10環状アルカン、C
4~C
10環状アルケン、C
5~C
10アレーンからなる群から誘導される有機部分である;及び
前記反応チャンバ内の前記少なくとも1種のアルコキシシランを含む前記ガス状組成物にエネルギーを適用して、前記少なくとも1種のアルコキシシランを含む前記ガス状組成物の反応を誘導し、前記基板上に有機シリカ膜を堆積させること、
を含み、前記有機シリカ膜は、約2.40から約3.20の誘電率及び約6GPaから約30GPaの弾性率を有する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種のアルコキシシランは、2,3-ビス(ジメチルシロキシ)ブタン、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサン、1,2-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)-シス-2-ブテン、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)-2-ブチン、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルシロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ジメチルシロキシ)プロパン、1,3-ビス(ジメチルシロキシ)-2-メチルプロパン、1,2-ビス(ジメチルシロキシ)プロパン、1,3-ビス(ジメチルシロキシ)ブタン、1,4-ビス(ジメチルシリル)ブタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコキシシランを含む前記ガス状組成物は、硬化添加剤を含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
化学気相堆積法である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プラズマ化学気相堆積法である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコキシシランを含む前記ガス状の組成物は、水蒸気、水プラズマ、オゾン、酸素、酸素プラズマ、酸素/ヘリウムプラズマ、酸素/アルゴンプラズマ、窒素酸化物プラズマ、二酸化炭素プラズマ、過酸化水素、有機過酸化物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコキシシランを含む前記ガス状の組成物は、酸化剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記適用工程における前記反応チャンバは、He、Ar、N
2、Kr、Xe、CO
2及びCOからなる群から選択される少なくとも1種のガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機シリカ膜は、632mmにおいて約1.3から約1.6の屈折率(RI)及び、XPSによる測定で約10原子%から約45原子%の炭素含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機シリカ膜は、約5nm/分から約2000nm/分の速度で堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記有機シリカ膜は、約10から約30の相対的なジシリルメチレン密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
誘電体膜の気相堆積のための組成物であって、前記組成物は、式Iの構造を有する少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を含み:
【化2】
ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルカン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルケン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルキン、C
4~C
10環状アルカン、C
4~C
10環状アルケン、C
5~C
10アレーンからなる群から誘導される有機部分であり、前記アルコキシシランは、ハライド、水、窒素含有不純物、酸素含有不純物及び金属からなる群から選択される1種又は複数種の不純物を実質的に含有しない、組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種のアルコキシシランは、2,3-ビス(ジメチルシロキシ)ブタン、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサン、1,2-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)-シス-2-ブテン、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)-2-ブチン、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルシロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ジメチルシロキシ)プロパン、1,3-ビス(ジメチルシロキシ)-2-メチルプロパン、1,2-ビス(ジメチルシロキシ)プロパン、1,3-ビス(ジメチルシロキシ)ブタン、1,4-ビス(ジメチルシリル)ブタンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ハライドは、塩化物イオンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記塩化物イオンは、存在する場合には、ICによる測定で50ppm以下の濃度で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記塩化物イオンは、存在する場合には、ICによる測定で5ppm以下の濃度で存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記アルコキシシラン化合物は、窒素含有不純物を実質的に含まない、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記窒素含有種は、存在する場合には、GCによる測定で1000ppm以下の濃度で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記酸化剤の流量を調節することにより、得られる膜中の炭素含有量を調整することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項20】
式Iの構造を有する少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を含む組成物であって:
【化3】
ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルカン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルケン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルキン、C
4~C
10環状アルカン、C
4~C
10環状アルケン、及びC
5~C
10アレーンからなる群から誘導される有機部分である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる、2021年10月13日に出願された米国特許仮出願第63/255,323号に対する利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載されるのは、膜への前駆体としてアルコキシシランを用いる、高密度有機シリカ誘電体膜を形成するための組成物及び方法である。より具体的には、本明細書に記載されるのは、約2.4から約3.2の範囲の誘電率kを有する高密度膜を形成するための組成物及び化学気相堆積(CVD)法であり、この膜は、従来の前駆体から製作される膜と比較して、高い弾性率及びプラズマ誘起損傷に対する優れた抵抗を有する。
【0003】
エレクトロニクス産業は、回路と集積回路(IC)及び関連するエレクトロニクス装置の構成要素の間の絶縁層として、誘電体材料を利用する。配線寸法は、マイクロエレクトロニクス装置(例えば、コンピュータチップ)の速度及びメモリストレージ能力を増加させるために、減らされている。配線寸法が減少するにつれて、層間誘電体(ILD)についての絶縁要件は、より一層厳しくなる。間隔を縮小することは、RC時定数を最小限にするために、より低い誘電率を必要とする。ここで、Rは伝導性配線の抵抗であり、Cは絶縁誘電体中間層の静電容量である。静電容量(C)は、間隔に反比例し、層間誘電体(ILD)の誘電率(k)に比例する。SiH4又はTEOS(Si(OCH2CH3)4、オルトケイ酸テトラエチル)、及びO2から製造される従来のシリカ(SiO2)CVD誘電体膜は、4.0超の誘電率kを有する。より低い誘電率を有するシリカベースのCVD膜を製造するために、当産業において試みられていた数々の手法があり、最も成功しているものは、約2.4から約3.5の範囲の誘電率を提供する、有機基を備える絶縁酸化ケイ素膜のドープである。この有機シリカガラス(OSG)は、典型的には、メチルシラン又はシロキサンのような有機ケイ素前駆体、及びO2又はN2Oのような酸化剤から高密度膜(密度約1.5g/cm3)として堆積される。
【0004】
CVD法分野による多孔性ILDの分野における特許、出願公開、及び公表物は、以下を含む:欧州特許出願公開第1119035号明細書及び米国特許第6,171,945号明細書、これらは、N2Oのような酸化剤及び任意の過酸化物の存在下において、不安定な基を備える有機ケイ素前駆体からOSG膜を堆積させ、続いて、熱アニールを用いて不安定な基を除去し、多孔性OSGを提供するプロセスを記載し;米国特許第6,054,206号明細書、及び同第6,238,751号明細書、これらは、酸化的アニールを用いて、堆積されたOSGから本質的に全ての有機基を除去し、多孔性無機SiO2を得ることを教示し;欧州特許出願公開第1037275号明細書、これは、酸化プラズマを用いた後処理により多孔性無機SiO2へ変換される、水素化炭化ケイ素膜の堆積を記載し;並びに米国特許第6,312,793号明細書、国際公開第00/24050号、及び文献記事、Grill,A.Patel,V.Appl.Phys.Lett.(2001),79(6),pp.803-805、これら全ては、有機ケイ素前駆体及び有機化合物から膜を共堆積させ、続いて、熱アニールさせ、重合した有機成分の一部が保持された、多相OSG/有機膜を提供することを教示する。後者の参照文献において、膜の最終的な最終組成は、残留ポロゲン、及びおよそ80原子%から90原子%の高い炭化水素膜含有量を示す。さらに、最終膜は、酸素原子の一部を有機基に置換しつつ、SiO2状の網目を保持する。
【0005】
米国特許第201110113184号明細書は、約2.4≦k≦2.8の範囲の誘電率を備える絶縁膜を、PECVDプロセスを介して堆積するのに用いることができる材料の種類を開示する。材料は、互いに結合し、Si原子とともに環状構造を形成することができる2つの炭化水素基を有するSi化合物、又は1つ以上の分岐鎖炭化水素基を有するSi化合物を含む。分岐鎖炭化水素基において、Si原子に結合して、メチレン基を構成するC原子であるα-C、及びメチレン基に結合しているC原子であるβ-C、又はβ-Cに結合しているC原子であるγ-Cは分岐点である。具体的には、Siに結合されたアルキル基のうち2つは、CH2CH(CH3)CH3、CH2CH(CH3)CH2CH3、CH2CH2CH(CH3)CH3、CH2C(CH3)2CH3及びCH2CH2CH(CH3)2CH3を含み、ケイ素に結合された第3の基は、OCH3及びOC2H5を含む。この発明は、SiCH2Rからアルキル基Rのプラズマ解離を介し、堆積されたままの膜内に高密度のSiCH2Si基が形成されると主張するが、その特許出願の実施例は、膜が紫外線照射に曝露された後にのみ高密度のSiCH2Si基が生じることを明確に示す。紫外線照射によるSiCH2Si基の形成は、文献によく記載されている。加えて、これらの膜について報告されているk値は低く、2.8以下である。
【0006】
米国特許第2020075321号明細書は、プラズマ化学気相堆積(PECVD)プロセスにより、高い硬度を有する低k炭素ドープ酸化ケイ素(CDO)層を形成する方法を開示する。その方法は、あるキャリアガス流量におけるキャリアガス、及びある前駆体流量におけるCDO前駆体をプロセスチャンバに提供することを含む。無線周波数(RF)出力は、ある出力レベル及び周波数でCDO前駆体に適用される。CDO層は、プロセスチャンバ内の基板に堆積される。
【0007】
国際公開第21050798号[EN]は改善された機械的特性を備える高密度有機ケイ素膜を製作する方法であって、この方法は:反応チャンバ内へ基板を提供する工程;新規なモノ又はジアルコキシシランを含むガス状組成物を反応チャンバへ導入する工程;及び反応チャンバ内の新規モノ又はジアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを適用して、新規モノ又はジアルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘導し、基板上に有機ケイ素膜を堆積させる工程を含む。この有機ケイ素膜は、約2.8から約3.3の誘電率、約7から約30GPaの弾性率、及びXPSによる測定で約10から約30の原子%炭素を有する。
【0008】
国際公開第21050659号は、改善された機械的特性を備える高密度有機ケイ素膜を製作する方法を開示しており、この方法は:反応チャンバ内へ基板を提供する工程;新規なモノアルコキシシランを含むガス状組成物を反応チャンバへ導入する工程;及び反応チャンバ内で新規モノアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを適用して、新規モノアルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘導し、基板上に有機ケイ素膜を堆積させる工程を含む。この有機ケイ素膜は、約2.80から約3.30の誘電率、約9GPaから約32GPaの弾性率、及びXPSによる測定で約10から約30の原子%炭素を有する。
【0009】
低k膜におけるプラズマ又はプロセス誘起損傷(PID)は、プラズマ暴露の間、特にエッチング及びフォトレジスト剥離プロセスの間、膜から炭素を除去することにより引き起こされる。これは、プラズマ損傷領域を、疎水性から親水性に変化させる。損傷した層のような親水性のSiO2の、(界面活性剤のような添加剤を伴う、又は伴わない)希釈HFベースの湿式化学プラズマ後処理への暴露は、この層の急速な分解をもたらす。パターン化された低kウエハにおいて、これは、外形浸食をもたらす。低k膜におけるプロセス誘起損傷及びもたらされる外形浸食は、ULSI相互接続において、低k材料を組み込む場合、装置製造者が克服しなければならない重大な問題である。
【0010】
向上した機械特性(より高い弾性率、より高い硬度)を備える膜は、パターン化された特徴における配線エッジ粗さを減少し、パターン崩壊を減少し、及び相互接続内のより大きい内部機械応力を提供し、エレクトロマイグレーションに起因する欠陥を減少する。したがって、所与の誘電率における、PIDに対する優れた抵抗、及び可能な限り高い機械特性を備える低k膜が必要とされている。本発明における前駆体は、最先端のテクノロジーノード、典型的には約2.4から3.2の誘電率を備える膜を目標としている。
【発明の概要】
【0011】
本明細書に記載される方法及び組成物は、上記の1つ又は複数の要求を満たす。アルコキシシラン前駆体を用いて、約2.40から約3.20のk値を備える高密度低k膜を堆積させることができ、そのような膜は、予期されない高い弾性率/硬度、及びプラズマ誘起損傷に対する予期されない高い抵抗を示す。
【0012】
一態様において、改善された機械特性を備える高密度有機シリカ膜を製作するための方法が提供され、この方法は:反応チャンバ内へ基板を提供する工程;式Iの構造を有する少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を含むガス状組成物を反応チャンバへ導入する工程を含み:
【化1】
ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルカン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルケン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルキン、C
4~C
10環状アルカン、C
4~C
10環状アルケン、C
5~C
10アレーンからなる群から誘導される有機部分である。上の式Iについて、アルキル基の組み合わせは、アルコキシシラン化合物の沸点が250℃未満になるように選択されることが好ましい。加えて、最適な性能のために、アルキル基は、好ましくは、酸素原子に結合した炭素原子が第二級又は第三級炭素であるように選択され、その結果、ホモリティック結合解離に際して、より安定な第二級又は第三級炭素ラジカルをもたらす(例えば、SiO-R-OSi→SiO・+SiO-R・、このSiO-R・は第一級、又は第二級若しくは第三級ラジカルである)。次に、反応チャンバ内のアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを適用して、アルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘導し、基板上に有機シリカ膜を堆積させる。例示的な実施形態によると、有機シリカ膜は、約2.40から約3.20の誘電率及び約6GPaから約30GPa、好ましくは約6GPaから約25GPaの弾性率を有する。別の実施形態によると、膜は更にXPSによる測定で約10から約45の原子%炭素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例3に記載される条件下における、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンを用いて堆積された膜のFTIRスペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載されるのは、改善された機械特性を備える高密度有機シリカ膜の製作についての化学気相堆積法であり、この方法は:反応チャンバ内へ基板を提供する工程;反応チャンバへアルコキシシラン、O2又はN2Oのようなガス状酸化剤、及びHeのような不活性ガスを含むガス状組成物を導入する工程;並びに反応チャンバ内のアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを適用して、アルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘導し、基板上に有機シリカ膜を堆積させる工程を含む。例示的な実施形態によると、有機シリカ膜は、約2.40から約3.20の誘電率、約6GPaから約30GPaの弾性率、及びXPSによる測定で約10から約45の原子%炭素を有し、好ましくは、約2.80から約3.00の誘電率、約7GPaから約23GPaの弾性率、及びXPSによる測定で約12から約43の原子%炭素を有する。
【0015】
また、本明細書に記載されるのは、改善された機械特性を備える高密度有機シリカ膜の製作についての方法であり、この方法は:反応チャンバ内へ基板を提供する工程;反応チャンバ内へアルコキシシラン、O2又はN2Oのようなガス状酸化剤、及びHeのような不活性ガスを含むガス状組成物を導入する工程;並びにアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを適用して、基板上に有機シリカ膜を堆積させる工程を含む。例示的な実施形態によると、有機シリカ膜は、約2.40から約3.20の誘電率、及び約6GPaから約30GPaの弾性率を有する。
【0016】
アルコキシシランは、ジエトキシメチルシラン(DEMS)及び1-エトキシ-1-メチルシラシクロペンタン(MESCP)のような先行技術の構造形成前駆体と比較して、高密度有機シリカ膜について、相対的に低い誘電率を達成し、驚くべきことに優れた機械特性を示すことを可能とする固有の性質を提供する。理論により拘束されないが、本発明においてアルコキシシランは、堆積されたままの膜におけるジシリルメチレン基(すなわち、Si-CH2-Si部分)の形成を促進することを助ける、安定な第二級又は第三級ジラジカルを提供できると考えられている。
【0017】
有機化学分野の当業者にとって、第一級炭化水素ラジカル(エチルラジカルCH3CH2・のような)を生成するために、第二級炭素水素ラジカル(イソプロピルラジカル(CH3)2CH・のような)よりも多くのエネルギーを供給しなければならないことは周知である。これは、エチルラジカルに対して、イソプロピルラジカルのより高い安定性に起因する。同じ原理は、ケイ素アルコキシ基中の酸素-炭素結合のホモリティック結合解離に当てはまり;イソプロポキシシラン中の酸素-炭素結合を解離するために、エトキシシランにおけるよりも少ないエネルギーを必要とする。同様に、イソプロピルシラン中のケイ素-炭素結合を解離するために、エチルシランにおけるよりも少ないエネルギーがかかる。切断により少ないエネルギーを必要とする結合は、プラズマ中で、より解離しやすいと推測される。したがって、Si-OPri、又はSi-OBus若しくはSi-OBut基を有するアルコキシシランは、プラズマ中で、Si-OEt基を有するアルコキシシランに対して、より高い密度のSiO・型のラジカルをもたらすことができる。同様に、Si-Et、又はSi-Pri、Si-Bus若しくはSi-But基を有するアルコキシシランは、プラズマ中で、単なるSi-Me基を有するアルコキシシランに対し、より高い密度のSi・型のラジカルをもたらすことができる。おそらく、これは、Si-OMeを有するアルコキシシランに対し、式IのR基を構築するSi-OEt、Si-OPri、又はSi-OBus若しくはSi-OBut部分を有するアルコキシシランを用いて堆積されたものの、差別化された特性に寄与する。重大なことには、SiO-R-OSi結合は、酸素-炭素結合に起因する炭化水素ラジカルよりも、より安定なSiO-R・ラジカルを提供することができ、したがって、堆積したままのケイ素含有膜における、より多くのジシリルメチレン結合の生成を潜在的に可能とする。
【0018】
理論に拘束されることを意図することなく、TEOS(テトラエトキシシラン)、MTES(メチルトリエトキシシラン)、DEMS(ジエトキシメチルシラン)、又はジメチルメトキシシランのような単純アルコキシシランよりも、高密度有機シリカ膜の堆積のための前駆体としてのこれらの使用に関して、式Iを有するアルコキシシラン化合物に利点があり得ると考えられる。具体的には、本明細書に記載される式Iを有するアルコキシシラン化合物は、1個の代わりに2個のケイ素原子を有し、これはより高い堆積速度及び/又はより効率的な基板表面上へのケイ素原子の堆積につながり得る。加えて、これらの分子中のアルコキシ部分は、ジオールから誘導され、前駆体がプラズマ反応体ガス及び基板表面と反応するときに、2個のケイ素原子を互いに近接するように橋渡しする。また、式I中のR基の炭素原子上に生成すると考えられるラジカルは、メトキシ、エトキシ、iso-プロポキシ、sec-ブトキシ、及びtert-ブトキシのような末端アルコキシ基から生成するそれらのラジカル種と比較して、基板上に高密度な網目状の有機シリカ膜を形成するより良い安定性及び/又はより良い能力を有し得る。
【0019】
ケイ素前駆体としてアルコキシシランを用いて達成される、先行技術に対する利点の幾つかは、以下を含むがこれに限定されない:
低コスト及び合成のしやすさ
高い弾性率
広範囲のXPS炭素
高いジシリルメチレン密度
Si(CH3)xIRバンドにおける、Si(CH3)2又はSi(CH3)CH2Siの高い変数%、及び
高い堆積速度。
【0020】
一態様において、改善された機械特性を備える高密度有機シリカ膜の製作についての方法が提供され、この方法は:反応チャンバ内へ基板を提供する工程;式Iの構造を有する少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を含むガス状組成物を反応チャンバへ導入する工程を含み:
【化2】
ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルカン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルケン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルキン、C
4~C
10環状アルカン、C
4~C
10環状アルケン、C
5~C
10アレーンからなる群から誘導される有機部分であり、酸素源を備える、又は備えない。上の式Iについて、アルキル基の組み合わせは、分子の沸点が200℃未満になるように選択される。加えて、最適な性能のために、R基は、ホモリティック結合解離に際して、第二級又は第三級炭素ラジカルを形成する可能性があるものから選択される(例えば、SiO-R-OSi→SiO・+SiO-R・、このSiO-R・は第一級、又は第二級若しくは第三級ラジカルである)。もたらされるSiO-R・ラジカルは、Si-Me基と反応し、ジシリルメチレン密度の増加を助けるSi-CH
2-Si結合を生成することが期待される。次に、反応チャンバ内のアルコキシシランを含むガス状組成物にエネルギーを適用して、アルコキシシランを含むガス状組成物の反応を誘導し、基板上に有機ケイ素膜を堆積させる。例示的な実施形態によると、有機シリカ膜は、約2.40から約3.20の誘電率及び約6GPaから約25GPaの弾性率を有する。基板温度もまた、もたらされる高密度有機シリカ膜の特性に影響を有し、例えば300℃から400℃、又は350℃から400℃のような、より高い温度が好ましくてもよい。特定の実施形態において、酸素源は水蒸気、水プラズマ、オゾン、酸素、酸素プラズマ、酸素/ヘリウムプラズマ、酸素/アルゴンプラズマ、窒素酸化物プラズマ、二酸化炭素プラズマ、過酸化水素、有機過酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
さらに別の態様において、式Iの構造を有する少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を含む組成物が提供され:
【化3】
ここで、Rは、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルカン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルケン、直鎖又は分岐鎖のC
2~C
5アルキン、C
4~C
10環状アルカン、C
4~C
10環状アルケン、C
5~C
10アレーンからなる群から誘導される有機部分である。表1に好ましい式Iを有するアルコキシシランを載せる。
【0022】
【0023】
本明細書に記載されるアルコキシシランは、種々の経路により合成され得る。一経路は、式(1)に示されるように、対応するジオール(2つの-OH基を含む)をテトラメチルジシラザンと反応させることを伴う。
【化4】
別の経路は、式(2)に示されるように、ジメチルアミノジメチルシランのようなアミノジメチルシランと対応するジオールの反応を伴う。
【化5】
別の経路は、式(3)に示されるように、テトラメチルジシロキサンと対応するジオールの反応を伴う。
【化6】
別の経路は、式(4)に示されるように、ジメチルエトキシシランのようなアルコキシジメチルシランと対応するジオールの反応を伴う。
【化7】
別の経路は、式(5)に示されるように、クロロジメチルシランと対応するジオールの反応を伴う。
【化8】
【0024】
あるいは、式(5)に示される反応は、アミン塩基又はHClスカベンジャーの幾つかの他の種類の存在下で、反応を完了まで促進するために実施することができる。
【0025】
別の経路は、2ステッププロセスを伴い、第1のステップは、対応するジオールを有機リチウム試薬(例えば、n-ブチリチウム)、異なる有機金属試薬(例えば、ジブチルマゲネシウム)、金属アミド(例えば、LiN
iPr
2若しくはNaN(SiMe
3)
2)、グリニャール試薬(例えば、MeMgCl)、又は金属水素化物試薬(例えば、LiH、NaH、KH、CaH
2)で金属化し、最初に金属化ジオレート中間体を生成することを含む。第2のステップは、その金属化ジオレートを、アルコキシジメチルシラン、テトラメチルジシロキサン、又はクロロジメチルシランのいずれかと反応させることを含む。この2ステッププロセスの例を式(6)に示す。
【化9】
【0026】
上式及び本明細書全体を通して、用語「アルカン」は、2個の酸素原子に結合している1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の官能基を示す。例示的な直鎖アルキル基は、エタン、プロパン、n-ブタンを含むが、これらに限定されない。例示的な分岐鎖アルキル基は、イソブタン、2,3-ジメチルブタンを含むが、これらに限定されない。
【0027】
上式及び本明細書全体を通して、用語「環状アルカン」は、2個の酸素原子に結合している3~10個の炭素原子を有する環状官能基を示す。例示的な環状アルキル基は、シクロペンタン、シクロヘキサンを含むが、これらに限定されない。
【0028】
上式及び本明細書全体を通して、用語「アルケン」は、1個以上の炭素-炭素二重結合を有し、2個の酸素原子に結合している2~10個又は2~6個の炭素原子を有する基を示す。
【0029】
上式及び本明細書全体を通して、用語「アルキン」は、1個以上の炭素-炭素三重結合を有し、2個の酸素原子に結合している2~10個又は2~6個の炭素原子を有する基を示す。
【0030】
上式及び本明細書全体を通して、用語「アレーン」は、2個の酸素原子に結合している3~10個の炭素原子、5~10個の炭素原子、又は6~10個の炭素原子を有する芳香族環状官能基を示す。例示的なアリール基は、ベンゼン及びトルエンを含むが、これらに限定されない。
【0031】
上式及び本明細書全体を通して、用語「第二級炭素」は、2個の炭素原子に結合している炭素を示す。
【0032】
上式及び本明細書全体を通して、用語「第三級炭素」は、3個の炭素原子に結合している炭素を示す。
【0033】
本明細書中全体を通して、記号「~」は、その値から約5.0%の偏差を示し、例えば~3.00は約3.00(±0.15)を示す。
【0034】
本発明による式Iを有するアルコキシシラン及び本発明による式Iを有するアルコキシシラン化合物を含む組成物は、好ましくはハロゲン化物イオンを実質的に含まない。本明細書で使用される場合、例えば、塩化物(すなわち、HCl又は少なくとも1つのSi-Cl結合を有するケイ素化合物のような塩化物含有種)並びにフッ化物、臭化物、及びヨウ化物のようなハロゲン化物イオン(又はハロゲン化物)に関する「実質的に含まない」という用語は、イオンクロマトグラフィー(IC)による測定で5ppm未満(重量比)、好ましくはICによる測定で3ppm未満、より好ましくはICによる測定で1ppm未満、最も好ましくはICによる測定で0ppmを意味する。塩化物は、式Iを有するケイ素前駆体化合物の分解触媒として作用することが知られている。最終生成物中の塩化物のレベルが大きいことは、シリコン前駆体化合物の分解を引き起こす可能性がある。シリコン前駆体化合物が徐々に分解することは、膜堆積プロセスに直接影響を与え、半導体製造業者が膜の仕様を満たすことが困難になり得る。そのうえ、シリコン前駆体化合物の分解速度が速くなることは、貯蔵寿命又は安定性に悪影響を及ぼし、そのため、1~2年の貯蔵寿命を保証することが難しくなる。したがって、シリコン前駆体化合物の加速する分解は、これらの可燃性及び/又は発火性のガス状副生成物の形成に関連する安全性及び性能の懸念をもたらす。式Iを有するアルコキシシランは、好ましくは、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+のような金属イオンを実質的に含まない。本明細書で使用される場合、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関する「実質的に含まない」という用語は、ICP-MSによる測定で5ppm未満(重量比)、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.1ppmを意味する。幾つかの実施形態において、式Iを有するケイ素前駆体化合物は、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+のような金属イオンを含まない。本明細書で使用される場合、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関する金属不純物を「含まない」という用語は、ICP-MSによる測定で1ppm未満(重量比)、好ましくは0.1ppm、最も好ましくはICP-MS又は金属測定のための他の分析方法による測定で0.05ppm未満(重量比)を意味する。
【0035】
さらに、式Iを有するアルコキシシランは、高密度有機シリカ膜を堆積する前駆体として使用される場合、GCによる測定で好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%の純度を有する。重要なことには、式Iを有するアルコキシシラン化合物は、好ましくは、合成中に使用される出発材料又は合成中に生成する副生成物のいずれかに由来する酸素含有又は窒素含有不純物を実質的に含まない。例は、水、テトラメチルジシロキサン、トリエチルアミンのような有機アミン、ピリジン及び反応を促進するために使用される他の有機アミンを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される、酸素含有又は窒素含有不純物を「含まない」という用語は、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルジシラザン、水、トリエチルアミンのような有機アミン、ピリジン及びその他の有機アミンに関する場合、GCによる測定で1000ppm以下、好ましくは500ppm以下(重量比)を意味し、最も好ましくは、GC又はその他の分析方法による測定で、100ppm以下(重量比)を意味する。本明細書で定義される酸素含有不純物は、少なくとも1個の酸素原子を有する化合物であり、出発材料に由来するか、式Iを有するアルコキシシラン化合物の合成から生成する。これらの酸素含有不純物は、式Iを有するアルコキシシラン化合物に近い沸点を有する場合があり、したがって、精製後の製品中に残存する可能性がある。同様に、本明細書で定義される窒素含有不純物は、少なくとも1個の窒素原子を有する化合物であり、出発材料に由来するか、式Iを有するアルコキシシラン化合物の合成から生成する。これらの窒素含有不純物は、式Iを有するアルコキシシラン化合物に近い沸点を有する場合があり、したがって、精製後の製品中に残存する可能性がある。
【0036】
有機ケイ酸塩のような低k誘電体膜は、有機シリカガラス(「OSG」)膜又は材料である。有機ケイ酸塩は、例えば、低k材料としてエレクトロニクス産業で採用される。材料特性は膜の化学組成及び構造に依存する。有機ケイ素前駆体のタイプは、膜の構造及び組成に強い影響を及ぼすため、必要な膜特性を提供する前駆体を使用して、所望の誘電率に到達するために必要な量の多孔性の付加が機械的に堅固でない膜を製造しないことを確保することが有益である。本明細書に記載された方法及び組成物は、電気的及び機械的特性の所望のバランス、並びに高炭素含有量として他の有益な膜特性を有する低k誘電体膜を生成して、プラズマ耐性を統合的に改善する手段を提供する。
【0037】
本明細書に記載される方法及び組成物の特定の実施形態において、ケイ素含有誘電体材料の層は、反応チャンバを使用する化学気相堆積(CVD)プロセスを介して、基板の少なくとも一部の上に堆積される。したがって、この方法は、反応チャンバ内に基板を提供する工程を含む。適切な基板は、ヒ化ガリウム(「GaAs」)のような半導体材料、シリコン、並びに結晶性シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化シリコン(「SiO2」)、シリコンガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、石英、ホウケイ酸ガラス、及びそれらの組み合わせのようなシリコン含有組成物を含むがこれらに限定されない。他の適切な材料は、クロム、モリブデン、並びに半導体、集積回路、フラットパネルディスプレイ及びフレキシブルディスプレイ用途で一般的に使用される他の金属を含む。基板は、例えば、シリコン、SiO2、有機ケイ酸塩ガラス(OSG)、フッ化ケイ酸塩ガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、ホウ窒化物、有機無機複合材料、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔性有機及び無機材料及び複合材、並びに酸化アルミニウム及び酸化ゲルマニウムのような金属酸化物などの追加の層を有してもよい。更なる層は、ゲルマノシリケート、アルミノシリケート、銅及びアルミニウム、並びに、限定しないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W又はWNのような拡散バリア材料であることができる。
【0038】
反応チャンバは、典型的には、例えば、熱CVD若しくはプラズマCVD反応器、又は様々な方法でのバッチ炉タイプ反応器である。一実施形態において、液体輸送システムを利用してもよい。液体輸送配合物において、本明細書に記載される前駆体は、ニートの液体形態で輸送されてもよく、又は代わりに、これを含む溶媒配合物又は組成物中で用いてもよい。したがって、特定の実施形態において、前駆体配合物は、基板に膜を形成する所与の最終用途適用において、望ましく、有利であり得るような適切な性質の溶媒成分(複数可)を含んでよい。
【0039】
本明細書に開示される方法は、アルコキシシランを含むガス状組成物を、反応チャンバ内へ導入する工程を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、例えば、酸素含有種、例えばO2、O3及びN2O、ガス状若しくは液状の有機物質、CO2又はCOのような追加の反応物を含む。1つの詳細な実施形態において、反応チャンバ内へ導入される反応混合物は、O2、N2O、NO、NO2、CO2、水、H2O2、オゾン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤を含む。代替実施形態において、反応混合物は酸化剤を含まない。
【0040】
本開示に記載される誘電体膜を堆積させるための組成物は、溶媒中に約40重量%からから約100重量%のアルコキシシランを含み、直接液体注入(DLI)を介して、反応チャンバへ輸送されることができる。
【0041】
実施形態において、アルコキシシランを含むガス状組成物は、堆積膜の弾性率を更に増加するために、硬化添加剤と共に用いることができる。
【0042】
実施形態において、アルコキシシランを含むガス状組成物は、例えば、塩化物のようなハライドを実質的に含まない、又は含まない。
【0043】
アルコキシシランに加えて、追加の材料を、堆積反応の前、間、及び/又は後に反応チャンバに導入することができる。そのような材料は、例えば、不活性ガス(例えば、He、Ar、N2、Kr、Xe等、これは低い揮発性前駆体のキャリアガスとして用いることができ、及び/又は堆積材料の硬化を促進し、より安定な最終膜を提供することができる)を含む。
【0044】
アルコキシシランを含む用いられる試薬は、別個の源から別々に、又は混合物として反応器に運ぶことができる。試薬は、任意の数の手段により、好ましくは、プロセス反応器への液体の輸送を可能にすることに適切なバルブ及び付属品が取り付けられた加圧可能なステンレス鋼ベッセルを用いて、反応器システムに輸送することができる。好ましくは、前駆体は、ガスとしてプロセス減圧チャンバに輸送され、すなわち、液体は、それがプロセスチャンバに輸送される前に気化されなければならない。
【0045】
他の実施形態において、本明細書に開示される方法は、1-アルコキシ-1-メチルシラシクロペンタン及びアルコキシシランの混合物を含むガス状の組成物を、反応チャンバ内へ導入する工程を含む。
【0046】
本明細書に開示される方法は、反応チャンバ中のアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、アルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘導し、基板に有機シリカ膜を堆積させる工程を含み、ここで、有機シリカ膜は、幾つかの実施形態において約2.40から約3.20、他の実施形態において約2.40から約3.00、更に好ましい実施形態において、約2.40から約2.90、又は約2.80から約3.00の誘電率を有し;約2GPaから約30GPa、好ましくは3GPaから23GPaの弾性率を有し;及びXPSによる測定で約10原子%炭素から約45原子%炭素を有する。エネルギーをガス状試薬に適用して、アルコキシシラン、及び存在する場合、他の反応物の反応を誘導し、基板に膜を形成する。そのようなエネルギーを、例えば、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、リモートプラズマ、熱フィラメント、及び熱(すなわち、非フィラメント)並びに方法により提供することができる。二次rf周波数源を用いて、基板表面でプラズマ特性を変更することができる。好ましくは、膜は、プラズマ化学気相堆積(「PECVD」)により形成される。
【0047】
ガス状試薬の各流量は、単一の300mmウエハ毎に、好ましくは、10sccmから5000sccm、より好ましくは30sccmから3000sccmの範囲である。必要とされる実際の流量は、ウエハサイズ及びチャンバ構成に依存してよく、300mmウエハ又は単一のウエハチャンバに制限されるものではない。
【0048】
特定の実施形態において、膜は、毎分約5ナノメートル(nm)から約200ナノメートル(nm)の堆積速度で堆積される。他の実施形態において、膜は、毎分約30ナノメートル(nm)から200ナノメートル(nm)の堆積速度で堆積される。
【0049】
堆積中の反応チャンバ内の圧力は、典型的には、約0.01Torrから約600Torr又は約1Torrから15torrの範囲である。
【0050】
厚さは、必要に応じて種々様々であることができるけれども、膜は、好ましくは、0.001ミクロンから500ミクロンの厚さに堆積する。非パターン化表面に堆積したブランケット膜は、優れた均一性を有し、例えば、基板の5mmの最も外側のエッジが均一性の統計的計算に含まれない合理的なエッジ除外で、基板にわたり1標準偏差に対して3%未満の厚さの変動を有する。
【0051】
本発明のOSG製品に加えて、本発明は、製品が製作されるプロセス、製品及び化合物を用いる方法、並びに製品を調製するために有用な組成物を含む。例えば、半導体デバイス上に集積回路を製作するプロセスは、米国特許第6,583,049号に開示され、これは、参照として本明細書に組み込まれる。
【0052】
開示される方法により製造される高密度有機シリカ膜は、特に、エッチング及びフォトレジストストリッププロセス中の、プラズマ誘起損傷に対する優れた抵抗を示す。
【0053】
開示される方法により製造される高密度有機シリカ膜は、同じ誘電率を有するが、アルコキシシランではない前駆体から製作される高密度有機シリカ膜に対して、所与の誘電率について優れた機械的特性を示す。典型的には、(堆積されたまま)得られる有機シリカ膜は、幾つかの実施形態において約2.40から約3.20、他の実施形態において約2.80から約3.10、更に他の実施形態において約2.40から約3.00の誘電率を有し、約6GPaから約30GPaの弾性率、及びXPSによる測定で約10原子%炭素から約45原子%炭素を有する。幾つかの実施形態において、窒素の取り込みは、高密度有機シリカ膜の誘電性を潜在的に増加させると考えられているため、したがって、窒素含有量は、XPS、SIMS若しくはRBS、又は任意の分析法による測定で、0.1原子%以下、好ましくは0.1原子%以下、最も好ましくは0.01原子%以下であることが期待される。加えて、有機シリカ膜は、FTIRスペクトルからの計算で、約1から約30、約5から約30、約10から約30又は約1から約20の相対ジシリルメチレン密度を有する。幾つかの実施形態において、有機シリカ膜は、約5nm/分から約1000nm/分、又は約50nm/分から約1000nm/分の速度で堆積する。他の実施形態において、有機シリカ膜は、約100nm/分から約2000nm/分、約200nm/分から約2000nm/分、又は約500nm/分から約2000nm/分のより高い速度で堆積する。重要なことには、式Iを有するアルコキシシランは、他のアルコキシシランが既存のSi-R-Si結合を有するため、他のアルコキシシランより高い堆積速度を提供することが期待される。
【0054】
得られる高密度有機シリカ膜は、堆積後に後処理プロセスに供してもよい。したがって、本明細書で用いられる「後処理」という用語は、材料特性を更に高めるために、エネルギー(例えば、熱、プラズマ、光子、電子、マイクロ波等)又は化学物質で膜を処理することを示す。
【0055】
後処理が実施される条件は、種々様々であってよい。例えば、後処理を高圧下又は減圧環境下で実施することができる。
【0056】
UVアニールは、以下の条件下で実施される好ましい方法である。
【0057】
環境は、不活性(例えば、窒素、CO2、希ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)等)、酸化性(例えば、酸素、空気、希釈酸素環境、富化酸素環境、オゾン、一酸化二窒素等)、又は還元性(希薄若しくは濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖若しくは分岐鎖、芳香族)等)であってよい。圧力は、好ましくは約1Torrから約1000Torrである。しかしながら、減圧環境は、他の後処理手段と同じように熱アニールについて好ましい。温度は、好ましくは200℃から500℃であり、昇温速度は0.1deg℃/分から100deg℃/分である。全UVアニール時間は、好ましくは0.01分から12時間である。
【0058】
本発明は、以下の実施例を参照してより詳細に示されるが、それに限定されるとはみなされないと理解されるべきである。また、本発明に記載された前駆体は、既存の多孔性低k膜に対して、同様のプロセス利点(すなわち、誘電率の所与の値についてより高い弾性率及びプラズマ誘起損傷に対するより大きい抵抗)を備える多孔性低k膜を堆積させるために用いることもできることも認識される。
【実施例】
【0059】
幾つかの実験は、300mm AMAT Producer SEで実施され、それは、2つのウエハに膜を同時に堆積させる。したがって、前駆体及びガス流量は、2つのウエハに同時に膜を堆積させるのに要求される流量に対応する。各ウエハ処理ステーションは、それ自体の独立したRF電源を有するため、ウエハごとに示されるRF出力は正確である。両方のウエハ処理ステーションは同じ圧力で維持されるため、示される堆積圧力は正確である。他の実験は、200mm AMAT P5000 Platformで実施され、単一のウエハ上に様々な高密度有機シリカ膜を提供した。堆積チャンバには、業界標準のPECVDプロセスに適しているRF電源が取り付けられる。
【0060】
特定の具体的な実施形態及び実施例に関して上に示し、記載したけれども、それにもかかわらず、本発明は、示された詳細に制限されることは意図されない。むしろ、様々な変更が、特許請求の範囲の均等物の範囲及び範囲内の詳細において、本発明の精神から逸脱することなくなされてよい。例えば、この文書において広く記載された全ての範囲は、その広い範囲内にある、その範囲内の全てのより狭い範囲を含むことが、明確に意図される。本発明において開示されたヒドリド-ジメチル-アルコキシシランを、高い弾性率、高いXPS炭素含有量、及びプラズマ誘起損傷に対する高い抵抗を備える多孔性低k膜の堆積のための構造形成剤として用いることができることも認識される。
【0061】
厚さ及び屈折率は、WoollamモデルM2000 Spectroscopic Ellipsometerで測定された。誘電率は、中抵抗率のp型ウエハ(8オームcmから12オームcmの範囲)上でHgプローブ技術を用いて決定された。FTIRスペクトルは、12インチウエハを扱うための窒素パージされたPike Technologies Map300が取り付けられたThermo Fisher Scientific Model iS50分光計を用いて測定された。FTIRスペクトルを用いて、膜中の橋掛けジシリルメチレン基の相対的な密度を計算した。赤外分光法により決定される、膜中の橋掛けジシリルメチレン基の相対的な密度(すなわち、SiCH2Si密度)は、1360cm-1付近を中心とするSiCH2Si赤外バンドの面積を約1250cm-1から920cm-1のSiOXバンドの面積で割ったものに1E4をかけたものとして定義される。CH3伸縮、非対称屈曲、対称屈曲に対応するピークは、それぞれ約2960cm-1、1410cm-1、及び1274cm-1を中心とする。HXSiOについての結合伸縮振動モードが、2100-1cmから2300cm-1の範囲である広域ピークとして観測される。機械的特性は、KLA iNano Nano Indenterを用いて決定された。
【0062】
組成データは、PHI 5600(73560、73808)又はThermo K-Alpha(73846)のいずれかを用いたX線光電子分光法(XPS)により得られ、原子量パーセントで提供される。表中に報告されている原子量パーセント(%)値に、水素は含まれない。
【0063】
特定の具体的な実施形態及び実施例に関して上に示し、記載したけれども、それにもかかわらず、本発明は、示された詳細に制限されることは意図されない。むしろ、様々な変更が、特許請求の範囲の均等物の範囲及び範囲内の詳細において、本発明の精神から逸脱することなくなされてよい。例えば、この文書において広く記載された全ての範囲は、その広い範囲内にある、その範囲内の全てのより狭い範囲を含むことが、明確に意図される。本発明において開示されたアルコキシシランを、高い弾性率、高いXPS炭素含有量、及びプラズマ誘起損傷に対する高い抵抗を備える多孔性低k膜の堆積のための構造形成剤として用いることができることも認識される。
【0064】
実施例1:1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンの合成。
【0065】
0.77g(5.78mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシラザンに0.67g(5.78mmol)の1,4-シクロヘキサンジオールを直接添加した。16時間後、GC-MSは以下のピークを備える生成物を示した:m/z=232(M+)、217(M-15)、207、189、175、149、133、117、102、87、75、59、45。
【0066】
実施例2:1,2-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンの合成。
【0067】
0.77g(5.78mmol)の1,1,3,3-テトラメチルジシラザンに0.67g(5.78mmol)の1,2-シクロヘキサンジオールを直接添加した。16時間後、GC-MSは以下のピークを備える生成物を示した:m/z=232(M+)、217(M-15)、207、189、173、149、133、113、101、85、75、59、41。
【0068】
実施例3:1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサン由来の高密度有機シリカ膜の堆積。
【0069】
DEMS低k誘電体膜堆積と同様の処理条件を使用して、200mmウエハ上に様々な高密度有機シリカ膜を堆積することができる。1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサン前駆体は、350ミルのペデスタル間隔で、100標準立方センチメートル/分(sccm)から1000標準立方センチメートル/分(sccm)のHeキャリアガス流量、10mg/分から50mg/分の低流量又は100mg/分から1000mg/分の高流量のO2を使用して、100mg/分から2000mg/分の流量で直接液体注入(DLI)を介して反応チャンバに輸送される。表2にまとめたように、2Torrから9Torrの圧力範囲で、300℃から400℃の様々な温度にて膜を成長させた。
【0070】
【0071】
ここに載せられた堆積条件に従い、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンから成長させた膜を、同じプロセス条件下でDEMSから誘導された膜と比較した。1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンから誘導された膜は、同様の屈折率値を有することが観察されたが、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンをベースとする有機シリカ膜のk値は、DEMSから誘導された膜よりも、表3に示されるように、それぞれ2.76及び3.1と、大幅に低かった。表3の結果は、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンについての堆積速度も、同様の条件下でDEMSよりもはるかに高いことを示す。FTIR分析は、炭素、ケイ素、及び酸素を含む膜組成と一致するピークを備えるスペクトルを生成した。1274cm-1から約2960cm-1のピークは、-CH3の変角及び伸縮結合振動に対応する。膜は主として、SiO2の特徴から構成され、1250cm-1から920cm-1のSi-O-Siネットワークバンド及び1250cm-1のショルダーピークとしてのSi-O-Siケージ結合振動モードで観察される。
【0072】
【0073】
実施例4:炭素取り込みを下げるための100mg/分及び750mg/分のO2流速におけるSiOC膜の堆積。
【0074】
さらに、100mg/分及び750mg/分のより高いO2流速を用いてプロセスが繰り返された場合、得られる膜はより低い炭素取り込みを有することがわかった。O2流速を変え、他の全てのプロセスのパラメータを一定に維持して成長させた膜におけるFTIRスペクトルは、反応チャンバ内へ導入されるO2の量が膜内の炭素濃度だけでなく、k値、堆積速度、及び屈折率を有意に変えることを示す。O2流量を調節することは、1,4-ビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンから誘導された膜の組成、成長速度、及び物理的特性を最適化するために用いることができる。
【0075】
表4:より高いO
2流速におけるビス(ジメチルシロキシ)シクロヘキサンを用いた高密度有機シリカ膜
【表4】
【国際調査報告】