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特表2024-541845ユーザーにとって使いやすい陰圧創傷療法装置およびこうした装置を動作させる方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ユーザーにとって使いやすい陰圧創傷療法装置およびこうした装置を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
A61M27/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522441
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022079091
(87)【国際公開番号】W WO2023072704
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】2115353.1
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2117771.2
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.FIREWIRE
3.THUNDERBOLT
4.Linux
5.WINDOWS
6.VXWORKS
7.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】397070118
【氏名又は名称】ティージェイ スミス アンド ネフュー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボスカロ、アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】エルダー、デービッド、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ホワース、グラント
(72)【発明者】
【氏名】アイバン、パベル
(72)【発明者】
【氏名】ナイト、リース、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】マジョーレ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ、クリストファー、ジョン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA39
4C267BB62
4C267CC01
4C267HH07
4C267HH08
4C267JJ09
4C267JJ12
4C267JJ14
(57)【要約】
陰圧創傷療法装置が、動きを監視し、装置が落下していること、ならびに落下の持続時間および高さを決定するように構成され得る。フラットな落下および回転する落下を正確に検出することができる。装置が、療法の停止を含む、落下の表示を提供することができる。装置が、創傷から除去された滲出液の量を監視し、低滲出液速度陰圧創傷療法への移行の有無を決定し、そのような移行を提案することができる。装置が、比例積分微分(PID)制御ループを利用して、装置の陰圧源を駆動することができる。PID制御ループは、異なる陰圧設定点に対して異なる比例ゲインおよび積分ゲインを利用して、目標圧力を迅速に、かつ大きなオーバーシュートなしに達成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧創傷療法装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジングによって支持され、創傷包帯によって覆われた創傷に流体流路を介して接続されるように構成される陰圧源であって、前記創傷に陰圧を提供するようにさらに構成される陰圧源と、
前記ハウジングによって支持される電子回路であって、前記ハウジングの動きを検出するように構成され、
前記ハウジングの前記動きに基づき、前記ハウジングが落下していることを検出し、落下の持続時間を決定し、および
前記落下の前記持続時間が持続時間閾値を満たすと決定することに応答して、第一の表示を提供する、ようにさらに構成される、電子回路と、を含む、陰圧創傷療法装置。
【請求項2】
前記電子回路が、加速度計を含み、前記電子回路が、前記加速度計によって検出された加速度が、低加速度を示す第一の加速度閾値を満たすと決定することに応答して、前記ハウジングが落下していることを検出するように構成される、請求項1に記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項3】
前記加速度計によって検出される前記加速度が、z軸に沿った加速度または複数の軸に沿った加速度の大きさのうちの一つまたは複数を含む、請求項2に記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項4】
前記電子回路が、前記加速度計によって検出された前記加速度が前記第一の加速度閾値を満たす持続時間を検出するのに応答して、前記落下の前記持続時間を決定するように構成される、請求項2~3のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項5】
前記電子回路が、
前記加速度計によって検出された前記加速度が最初に前記第一の加速度閾値を満たす第一の時間を決定し、
前記ハウジングが表面と第一の衝撃をなす第二の時間を決定し、
前記第二の時間と初期時間との間の時間差に基づき、前記落下の前記持続時間を決定することであって、前記落下の前記持続時間を決定することが、前記落下中の前記ハウジングの可能な回転を考慮した前記時間差に基づくように、決定する、ように構成される、請求項2~4のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項6】
前記電子回路が、前記加速度計によって検出された前記加速度が、高加速度閾値を示す第二の加速度閾値を満たすことを検出することに応答して、前記第二の時間を決定するように構成される、請求項5に記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項7】
前記陰圧源を動作させるように構成される電子処理回路をさらに含み、前記電子回路が、前記落下の前記持続時間が前記持続時間閾値を満たすと決定することに応答して、前記電子処理回路を非動作状態から動作状態に移行させるように構成される、請求項1~6のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項8】
前記電子回路が、前記落下の前記持続時間に基づき、前記落下の高さを決定するようにさらに構成される、請求項1~7のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項9】
前記第一の表示が、前記陰圧源を停止すること、または前記装置の一つまたは複数の試験を実施することのうちの一つまたは複数を含む、請求項1~8のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項10】
前記電子回路が、前記ハウジングの前記動きに基づき、前記ハウジングが傾斜していることを検出し、前記ハウジングが傾斜していることの検出に応答して第二の表示を提供するようにさらに構成される、請求項1~9のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項11】
前記電子回路が、加速度計を含み、前記電子回路が、前記加速度計によって検出された加速度が傾斜閾値を満たすと決定することに応答して、前記ハウジングが傾斜していることを検出するように構成される、請求項10に記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項12】
前記加速度が、前記z軸に沿った加速度を含む、請求項11に記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項13】
前記第一の表示が、前記陰圧源を停止することを含む、請求項11~12のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項14】
陰圧創傷療法装置であって、
流体流路を介して、創傷包帯で覆われた創傷に接続されるように構成される陰圧源であって、前記創傷に陰圧を提供するようにさらに構成される陰圧源と、
前記流体流路を介して前記陰圧源に流体接続されるように構成され、前記創傷から吸引された流体を貯蔵するようにさらに構成されるキャニスターであって、前記陰圧源から接続解除され、交換キャニスターによって置き換えられるようにさらに構成される、キャニスターと、
前記キャニスターの交換を監視することに基づき、前記創傷からの流体の吸引速度を監視し、前記吸引速度が、前記創傷を低滲出液速度陰圧創傷療法システムで治療することへの移行を示す閾値を満たすと決定することに応答して、前記移行が推奨されるという表示を提供するように構成される電子処理回路と、を含む、陰圧創傷療法装置。
【請求項15】
前記低滲出液速度陰圧創傷療法システムが、前記創傷から吸引された流体を吸収性包帯に貯蔵するように構成され、キャニスターを利用しない、請求項14に記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項16】
前記電子処理回路が、前記キャニスターが満杯でない状態で、少なくとも一つのキャニスター交換が閾値持続時間外に発生したことを検出することに応答して、前記吸引速度が前記閾値を満たすと判定するように構成される、請求項14~15のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項17】
前記閾値持続時間が、三日間を含み、前記少なくとも一つのキャニスター交換が、二つの連続するキャニスター交換を含む、請求項16に記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項18】
前記キャニスターおよび交換キャニスターのサイズが、第一のサイズおよび前記第一のサイズよりも大きい第二のサイズを含み、前記電子処理回路が、前記キャニスターが前記第一のサイズであることの検出に応答して、前記吸引速度が前記閾値を満たすと判定するように構成される、請求項14~17のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項19】
前記電子処理回路が、前記交換キャニスターが異なる陰圧創傷療法装置で以前に使用されたと決定することに応答して、前記キャニスターの交換を監視することから前記交換キャニスターを無視するように構成される、請求項14~18のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項20】
前記電子処理回路が、前記キャニスターを前記陰圧源に流体接続することから接続解除し、その後、前記キャニスターを再接続することを検出し、前記キャニスターの交換を前記監視することから前記キャニスターを再接続することを無視するように構成される、請求項14~19のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項21】
陰圧創傷療法装置であって、
流体流路を介して、創傷包帯で覆われた創傷に接続されるように構成される陰圧源であって、前記創傷に陰圧を提供するようにさらに構成される陰圧源と、
前記陰圧源を動作させて前記創傷における目標陰圧を確立するように構成される電子処理回路であって、前記目標陰圧が、複数の陰圧設定点から選択され、前記電子処理回路が、
第一の陰圧設定点に関連付けられる第一の対の積分ゲインおよび比例ゲイン、ならびに前記第一の陰圧設定点とは異なる第二の陰圧設定点に関連付けられる第二の対の積分ゲインおよび比例ゲインを使用する比例積分微分(PID)制御ループを使用して、前記陰圧源を制御することであって、前記第一の対の積分ゲインおよび比例ゲインが、前記第二の対の積分ゲインおよび比例ゲインと異なるように、制御する、ようさらに構成される、電子処理回路と、を含む、陰圧創傷療法装置。
【請求項22】
前記PID制御ループが、前記複数の陰圧設定点の各陰圧設定点に対して、異なる対の積分ゲインおよび比例ゲインを使用する、請求項21に記載の陰圧創傷療法装置。
【請求項23】
前記電子処理回路が、前記目標陰圧に達したと決定することに応答して、前記第一および第二の対の積分ゲインを増加させるように構成される、請求項21~22のいずれかに記載の陰圧創傷療法装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、例えば、陰圧創傷療法と組み合わせて包帯を使用する、創傷の治療のための機器、システム、および方法に関する。
【0002】
関連技術の説明
多数の異なる種類の創傷包帯が、ヒトまたは動物の治癒過程を補助するものとして公知である。これらの異なるタイプの創傷包帯には、異なるタイプの材料および層、例えば、ガーゼ、パッド、発泡体パッド、または多層創傷包帯が含まれる。局所陰圧(TNP)療法は、真空補助閉鎖療法、陰圧創傷療法、または減圧創傷療法とも称されることがあり創傷の治癒率を改善するための有益な機構として広く認識される。そのような療法は、切開創、開放創、および腹部創などの広範な創傷に適用可能である。TNP療法は、組織浮腫を減少させ、血流を促進させ、肉芽組織の形成を刺激し、過剰な滲出液を除去することによって創傷の閉鎖および治癒を助け、細菌負荷を減少させ得る。従って、創傷への感染を減少させる。その上、TNP療法は、創傷の外部障害を減らし、より迅速な治癒を促す。
【発明の概要】
【0003】
陰圧創傷療法装置が、ハウジングと、ハウジングによって支持され、創傷包帯によって覆われた創傷に流体流路を介して接続されるように構成される陰圧源とを含むことができ、陰圧源はさらに陰圧を傷に提供するように構成される。装置が、ハウジングによって支持される電子回路を含むことができ、電子回路はハウジングの動きを検出するように構成される。電子回路が、ハウジングの動きに基づき、ハウジングが落下していることを検出し、落下の持続時間を決定するように構成され得る。電子回路が、落下の持続時間が持続時間閾値を満たすと判定することに応答して、第一の表示を提供するように構成され得る。
【0004】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法装置、および/または本明細書に開示される機器、システム、もしくは装置のいずれかは、以下の特徴のうちの一つまたは複数を含み得る。電子回路が、加速度計を含み得る。電子回路が、加速度計によって検出された加速度が、低加速度を示す第一の加速度閾値を満たすと決定することに応答して、ハウジングが落下していることを検出するように構成され得る。加速度計によって検出される加速度は、z軸に沿った加速度、または多軸に沿った加速度の大きさのうちの一つまたは複数を含み得る。電子回路が、加速度計によって検出された加速度が第一の加速度閾値を満たす持続時間を検出するのに応答して、落下の持続時間を決定するように構成され得る。電子回路が、加速度計によって検出された加速度が最初に第一の加速度閾値を満たす第一の時間を決定するように構成され得る。電子回路が、ハウジングが表面と第一の衝撃をなす第二の時間を決定するように構成され得る。電子回路が、第二の時間と初期時間との間の時間差に基づき落下の持続時間を決定するように構成されてもよく、落下の持続時間を決定することが、落下中のハウジングの可能な回転を考慮した時間差に基づく。電子回路が、加速度計によって検出された加速度が、高加速度閾値を示す第二の加速度閾値を満たすことを検出することに応答して、第二の時間を決定するように構成され得る。
【0005】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法装置、および/または本明細書に開示される機器、システム、もしくは装置のいずれかは、以下の特徴のうちの一つまたは複数を含み得る。装置が、陰圧源を動作させるように構成される電子処理回路を含むことができる。電子回路が、落下の持続時間が持続時間閾値を満たすと判定することに応答して、電子処理回路を非動作状態から動作状態に移行させるように構成され得る。電子回路が、落下の持続時間に基づき落下の高さを決定するように構成され得る。第一の表示が、陰圧源を停止すること、または装置の一つまたは複数の試験を実施することのうちの一つまたは複数を含み得る。電子回路が、ハウジングの動きに基づき、ハウジングが傾斜していることを検出し、ハウジングが傾斜していることの検出に応答して第二の表示を提供するように構成され得る。電子回路が、加速度計を含み得る。電子回路が、加速度計によって検出された加速度が傾斜閾値を満たすと決定することに応答して、ハウジングが傾斜していることを検出するように構成され得る。加速は、z軸に沿った加速であり得る。第一の表示には、陰圧源の停止を含めることができる。
【0006】
陰圧創傷療法装置が、流体流路を介して、創傷包帯で覆われた創傷に接続されるように構成される陰圧源を含むことができ、陰圧源はさらに、創傷に陰圧を提供するように構成される。装置が、流体流路を介して陰圧源に流体接続されるように構成され、創傷から吸引された流体を貯蔵するようにさらに構成されるキャニスターを含み得、キャニスターが、陰圧源から接続解除され、交換キャニスターによって交換されるようにさらに構成される。装置が、キャニスターの交換を監視することに基づき、創傷からの流体の吸引速度を監視するように構成される電子処理回路を含み得る。電子回路が、吸引速度が、低滲出液速度陰圧創傷療法システムを用いて創傷を治療することへの移行を示す閾値を満たすと決定することに応答して、移行が推奨されるという表示を提供するように構成され得る。
【0007】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法装置、および/または本明細書に開示される機器、システム、もしくは装置のいずれかは、以下の特徴のうちの一つまたは複数を含み得る。低滲出液速度陰圧創傷療法システムは、創傷から吸引された流体を吸収性包帯に貯蔵するように構成され得、キャニスターを利用しない。電子処理回路が、キャニスターが満杯でない状態で、少なくとも一つのキャニスター交換が閾値持続時間外に発生したことを検出することに応答して、吸引速度が閾値を満たすと判定するように構成され得る。閾値持続時間は、三日間を含むことができる。少なくとも一つのキャニスター交換は、二つの連続的なキャニスター交換を含み得る。キャニスターおよび交換キャニスターのサイズは、第一のサイズおよび第一のサイズよりも大きい第二のサイズを含み得る。電子処理回路が、キャニスターが第一のサイズのものであることを検出することに応答して、吸引速度が閾値を満たすと判定するように構成され得る。電子処理回路が、交換キャニスターが異なる陰圧創傷療法装置で以前に使用されたと決定することに応答して、キャニスターの交換を監視することから交換キャニスターを無視するように構成され得る。電子処理回路が、キャニスターが陰圧源に流体接続されることから接続解除され、その後、キャニスターを再接続することを検出し、キャニスターの交換を監視することからキャニスターを再接続することを無視するように構成され得る。
【0008】
陰圧創傷療法装置が、流体流路を介して、創傷包帯で覆われた創傷に接続されるように構成される陰圧源を含むことができ、陰圧源はさらに、創傷に陰圧を提供するように構成される。装置が、陰圧源を動作させて創傷における標的陰圧を確立するように構成される電子処理回路を含み得、標的陰圧は、複数の陰圧設定点から選択される。電子処理回路が、第一の陰圧設定点に関連付けられる第一の対の積分ゲインおよび比例ゲイン、ならびに第一の陰圧設定点とは異なる第二の陰圧設定点に関連付けられる第二の対の積分ゲインおよび比例ゲインを使用する比例積分微分(PID)制御ループを使用して、陰圧源を制御することであって、第一の対の積分ゲインおよび比例ゲインが、第二の対の積分ゲインおよび比例ゲインと異なるように、制御するように構成され得る。
【0009】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法装置、および/または本明細書に開示される機器、システム、もしくは装置のいずれかは、以下の特徴のうちの一つまたは複数を含み得る。PID制御ループは、複数の陰圧設定点の各陰圧設定点に対して、異なる対の積分ゲインおよび比例ゲインを使用することができる。電子処理回路が、標的陰圧に達したと判定することに応答して、第一および第二の対の積分ゲインを増加させるように構成され得る。第一および第二の対の比例ゲインは、線形または二乗の関係によって第一および第二の陰圧設定点に関連し得る。
【0010】
陰圧創傷療法装置が、流体流路を介して、創傷包帯で覆われた創傷に接続されるように構成される陰圧源を含むことができ、陰圧源はさらに、創傷に陰圧を提供するように構成される。装置が、陰圧源を動作させて創傷に陰圧を提供するように構成される電子処理回路を含み得る。装置が、流体流路内に位置付けられ、かつ創傷から吸い出された流体を貯蔵するように構成されるキャニスターを含み得る。電子処理回路が、キャニスターが満杯であり、流体流路内に閉塞が存在することを検出することに応答して、陰圧源を停止するように構成され得る。
【0011】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法装置、および/または本明細書に開示される機器、システム、もしくは装置のいずれかは、以下の特徴のうちの一つまたは複数を含み得る。電子処理回路が、陰圧源を停止させた後、キャニスターが満杯ではない、または流体流路内に閉塞が存在しないことを少なくとも一つの検出に応答して、陰圧源を起動させるように構成され得る。
【0012】
本明細書において、先行段落のいずれかの陰圧創傷療法装置、および/または本明細書に開示される装置、機器、もしくはシステムのいずれかを動作させる方法について開示する。
【0013】
先行段落のいずれかの陰圧創傷療法装置、および/または本明細書に開示される装置、機器、もしくはシステムのいずれかと、一つまたは複数の創傷包帯と、を含むキットについて開示する。
【0014】
本明細書に開示される機器の実施形態のいずれか、および本明細書に開示される陰圧創傷療法の実施形態のいずれかを含むが、これらに限定されない、本出願に開示される配列もしくは実施形態のいずれかの特徴、構成要素、または詳細のいずれかは、新しい配列および実施形態を形成するために、本明細書に開示される配列もしくは実施形態のいずれかの任意の他の特徴、構成要素、または詳細と相互に組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、陰圧創傷療法システムを示す。
図1B図1Bは、別の陰圧創傷療法システムを示す。
図2A図2Aは、装置のポンプアセンブリーから引き離されたキャニスターを示す、陰圧創傷療法装置およびキャニスターの等角図である。
図2B図2Bは、図2Aに示される陰圧創傷療法装置の背面図である。
図2C図2Cは、ユーザーインターフェイスを示す、図2Aに示される陰圧創傷療法装置の頂部表面を示す。
図3図3は、陰圧創傷療法装置の制御システムの概略図を例示する。
図4図4は、別の陰圧創傷療法システムを例示する。
図5図5図6図7、および図8は、加速対時間のプロットを示す。
図6】同上。
図7】同上。
図8】同上。
図9図9は、キャニスターレス創傷療法システムに移行するプロセスを示す。
図10A図10A図10B図10C図10D図11A図11B図11C、および図11Dは、グラフィカルユーザーインターフェイス画面を提供する。
図10B】同上。
図10C】同上。
図10D】同上。
図11A】同上。
図11B】同上。
図11C】同上。
図11D-1】同上。
図11D-2】同上。
図11D-3】同上。
図12図12は、目標圧力に対する比例ゲインのプロットを示す。
図13図13および図14は、キャニスターレス創傷療法システムに移行するためのプロセスを示す。
図14】同上。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に開示される実施形態は、創傷を治療および/または監視するシステムならびに方法に関する。本明細書に開示される陰圧創傷療法装置のいくつかの実施形態は、流体流路を介して、創傷包帯によって覆われた創傷に接続および/または流体的に連結され、創傷に陰圧を提供するように構成される陰圧源を含み得る。
【0017】
本明細書全体を通して、創傷についての言及がなされる。創傷という用語は広く解釈され、皮膚が断裂、切開、もしくは穿孔される、または外傷によって挫傷が引き起こされる開放創および閉鎖創、あるいは患者の皮膚における任意の他の表面もしくは他の病状または不完全状態、あるいは減圧治療によって利益を得る他のものを包含する。従って、創傷は、流体が生成されるか、またはされ得ない、組織の任意の損傷領域として広く定義される。そのような創傷の例としては、腹部創傷、または手術、外傷、胸骨切開、筋膜切開、あるいは他の状態のいずれかの結果としての他の大規模または切開性の創傷、裂開創傷、急性創傷、慢性創傷、亜急性創傷および裂開創傷、外傷性創傷、フラップおよび皮膚移植片、裂傷、擦傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡性潰瘍、ストーマ、術創、外傷性潰瘍および静脈性潰瘍などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0018】
本明細書に開示されるシステムおよび方法の実施形態は、局所陰圧(「TNP」)または減圧療法システムとともに使用され得る。簡単に言えば、陰圧創傷療法は、組織の浮腫を減少させること、血流および顆粒組織形成を促進させること、または過剰な滲出液を除去することによって、「治癒が困難な」創傷の多くの形態の閉鎖および治癒を支援し、細菌負荷(ひいては、感染リスク)を減少させ得る。さらに、この療法により、創傷の障害を少なくし、より迅速な治癒につなげることができる。TNP療法システムはまた、流体を除去することによって、外科的に閉じられた創傷の治癒を支援することができる。TNP療法は、閉鎖の反対位置の組織を安定化するのに役立つことができる。TNP療法のさらなる有益な使用は、過剰な流体を除去することが重要であり、組織の生存度を確保するために移植片が組織に近接していることが求められる、移植片およびフラップにおいて見出すことができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、-XmmHgなどの減圧または陰圧レベルは、760mmHg(または1atm、29.93inHg、101.325kPa、14.696psiなど)に相当し得る、平常の周囲大気圧に対する圧力レベルを表す。従って、-XmmHgの陰圧値は、760mmHgよりもXmmHg低い圧力、または、言い換えれば、(760-X)mmHgの圧力を反映する。加えて、XmmHgよりも「低い」または「小さい」陰圧は、大気圧により近い圧力に相当する(例えば、-40mmHgは-60mmHgよりも低くなる)。-XmmHgよりも「高い」または「大きい」陰圧は、大気圧からより遠い圧力に相当する(例えば、-80mmHgは-60mmHgよりも高くなる)。一部の事例では、局所的な周囲大気圧は、基準点として使用され、そのような局所的な大気圧は、必ずしも、例えば、760mmHgでなくてもよい。
【0020】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、洗滌、超音波、加熱もしくは冷却、神経刺激、またはこれに類するものなどの減圧療法に加えて、またはその代わりに、他のタイプの治療で使用され得る。一部の事例では、開示されたシステムおよび方法は、追加の療法の適用なしに創傷監視に使用することができる。本明細書に開示のシステムおよび方法は、圧縮包帯、減圧包帯、またはこれに類するものを含む、包帯とともに使用され得る。
【0021】
医師、看護師、またはこれに類するものなどの医療提供者は、例えば、圧力レベルまたは適用時間を指定するTNP処方を提供することができる。しかしながら、治癒過程は患者ごとに異なり、処方は、臨床医または医療提供者が処方を考案する際に予想しなかった方法で治癒過程に影響を与え得る。医療提供者は、創傷が治癒する(または治癒しない)際に、処方を調整しようとし得るが、こうしたプロセスは、時間がかかり、かつ反復的であり得るさまざまな予約を必要とし得る。本明細書に開示される実施形態は、TNP処方を効率的に調整し、効果的なTNP療法を送達するシステム、装置、または方法を提供する。
【0022】
創傷療法システム
図1Aは、陰圧創傷治療システム100′(減圧または陰圧創傷療法システム、TNPシステム、または創傷治療システムとも呼ばれる)を概略的に示す。本明細書に開示される任意の実装例では、要求されないが、陰圧創傷治療システム100′は、創傷104(空洞であり得る)の上または内側に設置される創傷充填材102を含み得る。創傷104は、創傷カバー106が創傷104と流体連通し得るように、ドレープであり得る創傷カバー106によってシールされ得る。創傷カバー106と組み合わされた創傷充填材102は、創傷包帯と称され得る。管または導管108′(本明細書では、可撓性吸引アダプターまたは流体コネクターとも称される)を使用して、創傷カバー106を、減圧または陰圧を供給するように構成される創傷療法装置110′(全体として、または部分的に「ポンプアセンブリー」と称される場合もある)と接続することができる。導管108′は、単一ルーメン菅であっても、多重ルーメン菅であり得る。コネクターを使用して、装置110’の導管またはチューブを導管108’に取り外し可能かつ選択的に結合することができる。
【0023】
本明細書に開示されるシステムのいずれかにおいて、創傷療法装置が、キャニスターレスであってもよく、例えば、および限定されるものではないが、創傷滲出液は、創傷包帯の中に収集されるか、または別の場所で収集するために導管を介して移される。しかしながら、本明細書に開示される創傷療法装置のいずれかは、キャニスターを含み得るか、またはキャニスターを支持し得る。
【0024】
さらに、本明細書で開示される創傷療法システムのいずれかでは、創傷療法装置のいずれかは、創傷包帯に装着され得るか、もしくは創傷包帯によって支持され得、または創傷包帯に隣接し得る。創傷充填材102は、親水性または疎水性の発泡体、ガーゼ、膨張可能なバッグなどのような、任意の好適なタイプであり得る。創傷充填材102は、創傷充填材102が創傷104の空洞を実質的に充填するように、創傷104に適合可能であり得る。創傷カバー106は、創傷104の上に実質的に流体不透過性シールを提供し得る。創傷カバー106は、頂部側および底部側を有し得る。底部側は、例えば、創傷104の周りの皮膚とシールすることによって、創傷104と接着剤で(または任意の他の好適な方法で)シールすることができる。導管108または本明細書で開示される任意の他の導管は、ポリウレタン、PVC、ナイロン、ポリエチレン、シリコーン、または任意の他の適切な材料から形成され得る。
【0025】
創傷カバー106は、導管108の端を受けるように構成されるポート(図示せず)を有し得る。一部の事例では、導管108は、別のやり方では、創傷104内に所望のレベルの減圧を維持するように、減圧を創傷104に供給するために創傷カバー106を通って、または創傷カバー106の下を通過し得る。導管108は、創傷療法装置110′によって提供される減圧を創傷104に供給するように、創傷療法装置110′と創傷カバー106との間に少なくとも実質的にシールされた流体流路または通路を提供するように構成される任意の好適な物品であり得る。
【0026】
創傷カバー106および創傷充填材102は、単一の物品または一体型の単一ユニットとして提供され得る。一部の事例では、創傷充填材は提供されず、創傷カバー自体が、創傷包帯とみなされ得る。次いで、創傷包帯は、導管108を介して、創傷療法装置110′の陰圧源に接続され得る。一部の事例では、要求されないが、創傷療法装置110′は、小型化され、持ち運び可能とすることができるが、より大きな従来の陰圧源(またはポンプ)を使用することもできる。
【0027】
創傷カバー106は、治療されることになる創傷部位の上に位置し得る。創傷カバー106は、創傷の上に、実質的にシールされた空洞または筐体を形成することができる。創傷カバー106は、余剰流体の蒸発を可能にする高い水蒸気浸透性を持つフィルムを有し得、かつ創傷滲出液を安全に吸収するために内部に含有された超吸収性材料を有し得る。一部の事例では、本明細書に記載のTNPシステムの構成要素は、少量の創傷滲出液を滲出する切開創に特に適し得る。
【0028】
創傷療法装置110′は、滲出液キャニスターの使用の有無に関わらず動作させることができる。一部の事例では、示されるように、創傷療法装置110′は、滲出液キャニスターを含み得る。一部の事例では、導管108′を創傷療法装置110′から迅速かつ容易に取り外すことができるように創傷療法装置110′および導管108′を構成することにより、必要に応じて、創傷包帯またはポンプを変更するプロセスを容易にするか、または改善することができる。本明細書で開示されるポンプアセンブリーのいずれかは、導管108′とポンプとの間の任意の適切な接続を有し得る。
【0029】
創傷療法装置110′は、およそ-80mmHg、または約-20mmHg~-200mmHgの陰圧を送達し得る。これらの圧力は、正常な周囲大気圧と相対的であり、つまり、-200mmHgが、実際的には約560mmHgであり得ることに留意されたい。一部の事例では、圧力範囲は、約-40mmHgと-150mmHgとの間であり得る。代替的に、-75mmHg以下、-80mmHg以下、または-80mmHg超の圧力範囲を使用することができる。また、一部の事例では、-75mmHgを下回る圧力範囲も使用され得る。あるいは、およそ-100mmHg、またはさらには-150mmHg超の圧力範囲が、創傷療法装置110′によって供給され得る。
【0030】
以下でより詳細に記載されるように、陰圧創傷治療システム100′は、別個のまたは遠隔コンピューティング装置334に対する接続332を提供するように構成され得る。接続332は、有線または無線(Bluetooth、Bluetooth低エネルギー(BLE)、ニアフィールドコミュニケーション(NFC)、WiFi、またはセルラーなど)であり得る。遠隔コンピューティング装置334は、スマートフォン、タブレット、ラップトップもしくは別のスタンドアローン型のコンピューター、サーバー(クラウドサーバーなど)、別のポンプ装置などであり得る。
【0031】
図1Bは、別の陰圧創傷治療システム100を示す。陰圧創傷治療システム100は、図1Bに示され、かつ/または本明細書に記載される陰圧創傷治療システム100の構成要素、特徴、またはその他の詳細のいずれかと組み合わせて、またはこれらの代わりに、図1Aに示される陰圧創傷治療システム100′または図4に示される陰圧創傷治療システム400を含むが、これらに限定されない、本明細書に開示される他の陰圧創傷治療システムのいずれかの構成要素、特徴、またはその他の詳細のいずれかを有し得る。陰圧創傷治療システム100は、創傷104をシールし得る、創傷104の上に創傷カバー106を有し得る。単一ルーメン菅または多重ルーメン菅などの導管108を使用して、創傷カバー106を、減圧または陰圧を供給するように構成される創傷療法装置110(全体として、または部分的に「ポンプアセンブリー」と称される場合もある)と接続することができる。創傷カバー106は、創傷104と流体連通し得る。
【0032】
図1Bを参照すると、導管108は、近位端部分および遠位端部分(遠位端部分は近位端部分よりも創傷104に近い)を有し得るブリッジ部分130と、可撓性吸引アダプター(または導管)108を形成する、ブリッジ部分130の遠位端にあるアプリケーター132と、を有し得る。図1Bに示される導管108のブリッジ部分130の長さに沿って延在しチャネルのうちの少なくとも一つに接続するように、コネクター134がブリッジ部分130の近位端に配置され得る。キャップ140を、導管108の一部分と連結することができ、一部の事例では、示されるように、コネクター134に取り付けることができる。キャップ140は、流体がブリッジ部分130の近位端から漏れ出るのを防止する際に有用な場合がある。導管108は、Smith&Nephewが製造したSoft Portであり得る。上述のように、陰圧創傷治療システム100は、導管108を通って創傷104に陰圧を供給することができる装置110などの陰圧源を含み得る。要求されないが、キャニスターまたは装置110はまた、創傷滲出液、および創傷から取り外され得る他の流体を貯蔵するための他の容器を含み得る。
【0033】
装置110は、導管または管142を介してコネクター134に接続され得る。使用時、アプリケーター132は、好適に準備された創傷または創傷104の上に置かれたカバー106内に形成される開口の上に設置され得る。その後、創傷療法装置110が管142を介してコネクター134に接続される状態で、創傷療法装置110を稼働させて、創傷に陰圧を供給することができる。陰圧の印加は、創傷の所望のレベルの治癒が達成されるまで印加され得る。
【0034】
ブリッジ部分130は、下部チャネル材料または層が中間層と底部層との間に位置付けられる状態で、上部層と中間層との間に位置付けられる上部チャネル材料または層を含み得る。上部層、中間層、および下部層は、近位端と遠位端との間に延在する細長い部分を有し得、かつ流体不浸透性の材料、例えば、ポリウレタンなどのポリマーを含み得る。当然のことながら、上部層、中間層、および下部層は各々、半浸透性の材料を含む異なる材料から構築され得ることが理解されよう。一部の事例では、上部層、中間層、および下部層のうちの一つまたは複数は、少なくとも部分的に透明であり得る。いくつかの実例では、上部層および下部層は、上部層および下部層の長さの大部分にわたって湾曲していても、丸みを帯びていても、外向きに凸状であり得る。
【0035】
上部チャネル層および下部チャネル層は、ブリッジ130の近位端から遠位端まで延在する細長い層であってもよく、かつ各々が、好ましくは、例えば、ポリエチレンまたはポリウレタンなどのオープンセル発泡体を含む多孔性材料を含み得る。一部の事例では、上部チャネル層および下部チャネル層のうちの一つまたは複数は、例えば、編まれたもしくは織られたスペーサー布帛(編まれたポリエステル3D織物、Baltex 7970.RTM.、もしくはGehring 879.RTM.など)、または不織布材料、あるいはテリー織りもしくはループパイル材料から構成され得る。繊維は必ずしも織られるわけではなく、フェルトおよびフ係止繊維材料(Flotex.RTM.などの材料を含む)を含み得る。選択される材料は、好ましくは、創傷滲出液を創傷から離すように導き、陰圧または排出された空気を創傷部位へ伝達するように置かれ、かつまた、ある程度のねじれ抵抗または閉塞抵抗をチャネル層に与え得る。一つの実施例では、上部チャネル層は、ポリウレタンなどのオープンセル発泡体を含み得、下部チャネル層は、布帛を含み得る。別の実施例では、上部チャネル層は、任意選択であり、システムは、代わりに、開いた上部チャネルを含み得る。上部チャネル層は、湾曲しているか、丸みを帯びているか、または上向きに凸状である上部表面と、実質的に平坦な下部表面と、有し得、下部チャネル層は、湾曲しているか、丸みを帯びているか、または下向きに凸状である下部表面と、実質的に平坦な上部表面と、を有し得る。
【0036】
ブリッジ130の任意の構成要素の布帛または材料は、三次元(3D)構造を有し得、一つまたは複数のタイプの繊維は、繊維が全三次元方向に延在する構造を形成する。かかる布帛は、一部の事例では、ウィッキング、流体輸送、または陰圧の伝達を助ける場合がある。一部の事例では、チャネルの布帛または材料は、互いの上に積み重なった、または層状にされた材料のいくつかの層を含み得、これは、一部の事例では、陰圧の印加下で、チャネルが崩壊するのを防止する際に有用な場合がある。導管108のいくつかの実装に使用される材料は、適合可能かつ柔軟性であってもよく、これは、一部の事例では、褥瘡および患者の皮膚に押し付けられた創傷治療システムによって生じ得る他の合併症を回避するのに役立ち得る。
【0037】
上部層、中間層、および下部層の遠位端、ならびにチャネル層は、(創傷部位の上に設置される)該層の遠位端で拡張され得、「涙滴」または他の拡張形状を形成し得る。少なくとも上部層、中間層、および下部層の遠位端、ならびにチャネル層はまた、少なくとも一つの貫通開口を含み得る。この開口は、創傷滲出液を抜くため、および創傷に陰圧を印加するためだけでなく、これらの開口が、これらのそれぞれの層を適切に整列させるために使用され得るため、装置の製造中にも有用な場合がある。
【0038】
いくつかの実装では、制御されたガスリーク部146(ガスリーク部、空気リーク部、または制御された空気リーク部と称される場合もある)は、ブリッジ部分130の上、例えば、ブリッジ部分130の近位端に配置され得る。この空気リーク部146は、空気リーク部146がブリッジ部分130の上部チャネルと流体連通するように、ブリッジ部分130の上部層を通って延在する開口部またはチャネルを含み得る。導管108への吸引の印加時に、ガス(空気など)が、ガスリーク部146を通って入り、ブリッジ部分130の上部チャネルに沿って、ブリッジ部分130の近位端からブリッジ部分の遠位端まで移動し得る。次いで、上部層、中間層、および下部層の遠位端を通して、開口を通過させることによって、ガスをブリッジ部分130の下部チャネル内に吸引することができる。
【0039】
空気リーク部146は、フィルターを含み得る。好ましくは、空気リーク部146は、創傷滲出液または他の流体が空気リーク部146またはフィルターと接触し、空気リーク部146またはフィルターを閉塞または妨害する可能性を最小化するように、ブリッジ部分130の近位端に位置する。いくつかの実例では、フィルターは、微生物および細菌を排除することができ、45μmより大きい粒子を濾過することができ得る、微多孔膜であり得る。好ましくは、フィルターは、1.0μmよりも大きい粒子、より好ましくは、0.2μmよりも大きい粒子を排除することができる。有利には、いくつかの実装は、例えば、水、シャンプーなどの一般的な家庭用液体、および他の界面活性剤に対して、少なくとも部分的に化学的に耐性のあるフィルターを提供し得る。一部の事例では、吸引アダプターへの真空の再印加またはフィルターの露出した外側部分の拭き取りは、フィルターを閉塞する任意の異物を一掃するのに十分であり得る。フィルターは、アクリル、ポリエーテルスルホン、またはポリテトラフルオロエチレンなどの好適に耐性のあるポリマーから構成され得、かつ油性または疎水性であり得る。一部の事例では、ガスリーク部146は、追加の陰圧が導管108に印加されるときに、認め得るほどに増加しない比較的一定のガス流を供給し得る。ガスリーク部146を通るガス流が、追加の陰圧が印加されるときに増加する、陰圧創傷治療システム100の実例では、好ましくは、この増加したガス流は、最小化され、それに印加される陰圧に比例して増加しないことになる。本明細書に開示される陰圧創傷治療システムの任意の実装例で使用され得る、そのようなブリッジ、導管、空気リーク部、およびその他の構成要素、特徴、ならびに詳細のさらなる説明は、本明細書に完全に記載されるかのように全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,801,685号に見出される。
【0040】
本明細書に開示される創傷療法装置(装置110または110′など)のいずれかは、連続的または断続的な陰圧療法を提供し得る。連続的な療法は、0mmHgより上、-25mmHg、-40mmHg、-50mmHg、-60mmHg、-70mmHg、-80mmHg、-90mmHg、-100mmHg、-120mmHg、-125mmHg、-140mmHg、-160mmHg、-180mmHg、-200mmHg、または-200mmHgより下で送達され得る。断続的な療法は、低い陰圧設定点と高い陰圧設定点(設定点と称される場合もある)との間で送達され得る。低い設定点は、0mmHgより上、-25mmHg、-40mmHg、-50mmHg、-60mmHg、-70mmHg、-80mmHg、-90mmHg、-100mmHg、-120mmHg、-125mmHg、-140mmHg、-160mmHg、-180mmHg、または-180mmHgより下に設定され得る。高い設定点は、-25mmHgより上、-40mmHg、-50mmHg、-60mmHg、-70mmHg、-80mmHg、-90mmHg、-100mmHg、-120mmHg、-125mmHg、-140mmHg、-160mmHg、-180mmHg、-200mmHg、または-200mmHgより下に設定できる。断続的治療中、低い設定点での陰圧を第一の持続時間にわたって送達することができ、また第一の持続時間の終了時には、高い設定点での陰圧を第二の持続時間にわたって送達することができる。第二の持続時間の終了時には、低い設定点での陰圧を送達することができる。第一および第二の持続時間は、同じ値または異なる値とすることができる。
【0041】
動作時、創傷充填材102は、創傷104の空洞内に挿入され得、創傷カバー106は、創傷104をシールするように設置され得る。創傷療法装置110’は、創傷カバー106に陰圧を提供することができ、これは、創傷充填材102を介して創傷104に伝達され得る。流体(創傷滲出液など)は、導管108’を通って引き出され、キャニスター内に貯蔵され得る。場合によっては、流体は、創傷充填材102または一つまたは複数の吸収層(図示せず)によって吸収される。
【0042】
本出願のポンプアセンブリーおよびシステムとともに利用され得る創傷包帯としては、Smith & Nephewから入手可能なRenasys-F、Renasys-G、Renasys AB、およびPico Dressingが挙げられ得る。本出願のポンプアセンブリーおよびシステムとともに使用され得る陰圧創傷療法システムの創傷包帯、ならびにその他の構成要素のさらなる説明は、米国特許公開第2012/0116334号、同第2011/0213287号、同第2011/0282309号、同第2012/0136325号、米国特許第9,084,845号、および国際特許第PCT/EP2020/078376号において見出され、これらの文献の各々が、本明細書に完全に記載されるかのように全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の事例では、他の好適な創傷包帯が利用され得る。
【0043】
図2A図2B、および図2Cは、陰圧創傷療法装置110’を示す。示されるように、ポンプアセンブリー160およびキャニスター162を接続し、それによって、創傷療法装置110’を形成することができる。図2Cを参照すると、ポンプアセンブリー160は、ディスプレイ172を有するインターフェイスパネル170、一つまたは複数のインジケーター174、または例えば、療法の開始および一時停止ボタン180もしくは警報/警告ミュートボタン182を含むが、これらに限定されない、一つまたは複数の制御もしくはボタンを含み得る。インターフェイスパネル170は、ポンプアセンブリー160またはインターフェイスパネル170の任意の機能を制御するために使用され得る、一つまたは複数の入力制御またはボタン184(三つが示される)を有し得る。例えば、および限定されるものではないが、ボタン184のうちの一つまたは複数を使用して、ポンプアセンブリー160をオンもしくはオフにすること、療法を開始もしくは一時停止すること、ポンプアセンブリー160を動作させ、動作を監視すること、ディスプレイ172上に表示されたメニュー内をスクロールすること、またはその他の機能を制御もしくは実施することができる。一部の事例では、コマンドボタン184は、プログラム可能であってもよく、かつ触覚性で柔らかいゴムから作製され得る。
【0044】
さらに、インターフェイスパネル170は、一つまたは複数のボタン184のうちのどれが稼働中であるかを示すことができる視覚インジケーター186を有し得る。インターフェイスパネル170はまた、さまざまなボタン(例えば、ボタン184)またはディスプレイ172の機能を選択的に係止または係止解除するように構成され得る、係止/係止解除制御またはボタン188を有し得る。例えば、療法設定の調整は、係止/係止解除制御188を介して係止/係止解除され得る。係止/係止解除ボタン188が係止状態にある場合、さまざまなその他のボタンのうちの一つまたは複数またはディスプレイを押下することにより、ポンプアセンブリー160が、装置の任意の表示機能または性能機能を変更させることはない。このように、インターフェイスパネル170は、さまざまなボタンまたはディスプレイが偶発的にぶつけられること、または触れられることから保護されることになる。インターフェイスパネル170は、ポンプアセンブリー160の上部分の上、例えば、および限定されるものではないが、ポンプアセンブリー160の上向き面上に位置し得る。
【0045】
LCDスクリーンなどのスクリーンであり得るディスプレイ172は、インターフェイスパネル170の中央部分に装着され得る。ディスプレイ172は、タッチスクリーンディスプレイであり得る。ディスプレイ172は、指示ビデオなどの視聴覚(AV)コンテンツの再生をサポートし、ポンプアセンブリー160の動作を構成、制御、および監視するためのいくつかのスクリーンまたはグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)をレンダリングすることができる。
【0046】
一つまたは複数のインジケーター174は、照明(LEDなど)であってもよく、警報状態およびまたはポンプの状態の視覚的表示を提供するように構成され得る。例えば、および限定されるものではないが、一つまたは複数のインジケーター174は、ポンプアセンブリー160、または導管108もしくは創傷カバー106を含むが、これに限定されない、陰圧創傷治療システム100のその他の構成要素の状態の視覚的表示を提供するように構成され得る(通常の動作、低バッテリー、漏れ、キャニスターが満杯、閉塞、過圧などの表示を提供するなど)。視覚的、聴覚的、触覚的インジケーターなどのような任意の一つまたは複数の好適なインジケーターを、さらにまたは代替的に使用することができる。
【0047】
図2Bは、図2Aに示される創傷療法装置110’の背面または後方図を示す。示されるように、ポンプアセンブリー160は、音声を生成するためのスピーカ192を含み得る。例えば、および限定されるものではないが、スピーカ192は、療法送達の偏り、療法送達の不遵守、または任意の他の同様のもしくは好適な病状、あるいはこれらの組み合わせに応答して、音響警報を発生させ得る。スピーカ192は、ディスプレイ172上に表示され得る一つまたは複数の指示ビデオに付随する音響を提供することができる。
【0048】
ポンプアセンブリー160は、抗菌フィルターなどの、ポンプアセンブリー160の一つまたは複数のフィルターへの容易なアクセス(ポンプアセンブリーのケーシング上のアクセスドアなど)を提供するように構成され得る。これにより、ユーザー(医療提供者または患者など)は、かかるフィルターに対するより容易なアクセス、検査、または交換を行うことができる。ポンプアセンブリー160はまた、ポンプアセンブリー160に電力を提供するため、または内部電源(バッテリーなど)を充電および再充電するための電力ジャック196を含み得る。ポンプアセンブリー160のいくつかの実装例は、一つまたは複数のバッテリーなどの、使い捨てまたは再生可能な電源を含むことができ、その結果、電力ジャックは必要ない。ポンプアセンブリー160は、ポンプアセンブリー160の把持を容易にするために、内部に形成される凹部198を有し得る。
【0049】
キャニスター162は、創傷104から吸い出された流体を保持し得る。例えば、キャニスター162は、800mL(もしくはおよそ800mL)の容量、または300mL以下の容量~1000mL以上の容量、またはこの範囲内の任意の容量レベルを有し得る。キャニスター162は、流体流路を形成するために、導管108’に接続するための管類を含み得る。キャニスター162は、キャニスター162が流体で充填される場合などに、別のキャニスターと交換することができる。図2Aを参照すると、創傷療法装置110は、キャニスター162と流体連通するキャニスター入口管142(本明細書では、包帯ポートコネクターとも称される)を含み得る。例えば、限定されるものではないが、キャニスター入口管142を使用して、導管108’と接続することができる。
【0050】
キャニスター162は、ポンプアセンブリー160に対して選択的に連結可能および取り外し可能であり得る。図2Aを参照すると、一部の事例では、キャニスターリリースボタン202が、キャニスター162をポンプアセンブリー160から選択的に解放するように構成され得る。図2Bを参照すると、キャニスター162は、ユーザーに示すため、およびキャニスター162内に貯蔵された流体または滲出液の量を示すための、一つまたは複数の充填線または目盛り204を有し得る。
【0051】
創傷療法装置110は、創傷療法装置110を持ち上げるか、または運ぶために使用することができる、ハンドル208を有し得る。ハンドル208は、ポンプアセンブリー160と連結することができ、およびハンドルを、創傷療法装置110またはポンプアセンブリー160を持ち上げるか、もしくは運ぶために上向きに回転させること、またはハンドルが使用されていないときに、よりコンパクトな位置に下部輪郭へと回転させることができるように、創傷療法装置110に対して回転可能であり得る。一部の事例では、ハンドル208は、固定位置でポンプアセンブリー160と連結され得る。ハンドル208は、ポンプアセンブリー160の上部分と連結され得るか、または創傷療法装置110から取り外し可能であり得る。
【0052】
図3は、創傷療法装置110など、本明細書に記載の創傷療法装置のいずれかに用いられ得る制御システム300の概略図を例示する。電気部品は、ユーザー入力を受けいれること、ユーザーに出力を提供すること、圧力源を動作させること、接続を提供することなどを行うように動作し得る。第一のプロセッサー(メインコントローラー310など)が、ユーザー活動を担当することができ、第二のプロセッサー(ポンプコントローラー370)が、ポンプ390などの別の装置を制御することを担当することができる。
【0053】
入力/出力(I/O)モジュール320を使用して、ポンプ390、一つまたは複数のセンサー(例えば、流体流路の一つまたは複数の場所で圧力を監視するように構成される一つまたは複数の圧力センサー325)などのような、別の構成要素もしくは装置への入力および/または出力を制御することができる。例えば、I/Oモジュールは、シリアル(例えば、I2C)、パラレル、ハイブリッドポートおよびこれに類するものなどの一つまたは複数のポートを介して一つまたは複数のセンサーからデータを受信し得る。圧力センサーのいずれかが、創傷療法装置またはキャニスターの一部であり得る。一部の事例では、圧力センサー325のいずれかが、創傷に、または創傷の近くに(例えば、包帯または包帯を創傷療法装置に接続する導管内に)位置付けられるなど、創傷療法装置に対して遠隔にあり得る。かかる実装例では、遠隔の圧力センサーのいずれかが、有線接続を介してI/Oモジュールと通信し得るか、または無線接続を介して一つまたは複数のトランシーバー340と通信し得る。
【0054】
一つまたは複数の動きセンサー328は、創傷療法装置の動きを監視することができる。一つまたは複数の動きセンサー328は、一つまたは複数の加速度センサーまたは加速度計(例えば、MEMS加速度計集積回路の一部であり得る一つまたは複数のMEMS加速度計)、ジャイロスコープなどを含み得る。加速度計のいずれかは、三軸加速度計、圧電加速度計などとすることができる。一つまたは複数の動きセンサー328は、モーションデータをメインコントローラー310に提供し得る。一つまたは複数の動きセンサー328は、内部電源によって電力供給され得る。例えば、一つまたは複数の動きセンサー328は、装置がオフである時(装置が保管中、輸送中、またはそうでなければ使用されていないときなど)に一つまたは複数の動きセンサー328が動作可能なままであるように、内部電源から直接電力を受け取ることができる。一部の事例では、一つまたは複数の動きセンサー328は、内部電源が枯渇したときに一つまたは複数の動きセンサー328が動作可能なままとなるように、別の電源によって電力供給され得る。一つまたは複数の動きセンサー328は、低電力装置(低電力MEMS加速度計集積回路など)とすることができる。
【0055】
メインコントローラー310は、一つまたは複数のUSBポート、SDポート、コンパクトディスク(CD)ドライブ、DVDドライブ、FireWireポート、Thunderboltポート、PCI Expressポートなどのような、一つまたは複数の拡張モジュール360との間でデータを受信および提供することができる。メインコントローラー310は、他のコントローラーまたはプロセッサーとともに、メインコントローラー310の内部または外部にあり得るメモリー350(一つまたは複数のメモリーモジュールなど)にデータを格納することができる。RAM、ROM、磁気メモリー、ソリッドステートメモリー、磁気抵抗ランダムアクセスメモリー(MRAM)などのような、揮発性または不揮発性メモリーを含む任意の好適なタイプのメモリーを使用することができる。
【0056】
メインコントローラー310は、低電力プロセッサーまたは特定用途向けプロセッサーなどの汎用コントローラーであり得る。メインコントローラー310は、制御システム300の電子アーキテクチャー内で「中央」プロセッサーとして構成され得、かつメインコントローラー310は、ポンプコントローラー370、一つまたは複数の通信コントローラー330、および一つまたは複数の追加のプロセッサー380などの、その他のプロセッサーの活動を調和させることができる。メインコントローラー310は、Linux、Windows CE、VxWorksなどのような、好適なオペレーティングシステムを動かすことができる。
【0057】
ポンプコントローラー370は、陰圧または減圧を発生させ得るポンプ390の動作を制御することができる。ポンプ390は、ダイヤフラムポンプ、蠕動ポンプ、回転ポンプ、回転ベーンポンプ、スクロールポンプ、ねじポンプ、液封式ポンプ、圧電トランスデューサーによって動作するダイヤフラムポンプ、ボイスコイルポンプなどのような、好適なポンプであり得る。ポンプコントローラー370は、一つまたは複数の圧力センサー325から受信したデータを使用して、流体流路内の圧力を測定すること、流体流量を計算すること、およびポンプを制御することができる。ポンプコントローラー370は、所望のレベルの陰圧が創傷104内で達成されるように、ポンプアクチュエーター(モーターなど)を制御することができる。所望のレベルの陰圧は、圧力設定またはユーザーによって選択され得る。ポンプコントローラー370は、パルス幅変調(PWM)またはパルス制御を使用して、ポンプ(例えば、ポンプモーター)を制御することができる。ポンプを駆動するための制御信号は、0~100%のデューティサイクルPWM信号であり得る。ポンプコントローラー370は、流量計算を実施すること、および警報を検出することができる。ポンプコントローラー370は、メインコントローラー310に情報を通信することができる。ポンプコントローラー370は、低電力プロセッサーであり得る。
【0058】
一つまたは複数の通信コントローラー330のいずれかが、接続(有線または無線接続332など)を提供し得る。一つまたは複数の通信コントローラー330は、データを送信および受信するために一つまたは複数のトランシーバー340を利用することができる。一つまたは複数のトランシーバー340は、一つまたは複数のアンテナ、光学センサー、光学トランスミッター、振動モーターもしくは振動変換器、振動センサー、音響センサー、超音波センサーなどを含み得る。一つまたは複数のトランシーバー340のいずれが、通信コントローラーとして機能し得る。そのような場合には、一つまたは複数の通信コントローラー330を省略することができる。一つまたは複数のトランシーバー340のいずれを、無線通信を容易にする一つまたは複数のアンテナに接続することができる。一つまたは複数の通信コントローラー330は、以下のタイプの接続のうちの一つまたは複数を提供し得る。グローバル位置決めシステム(GPS)、セルラー接続(例えば、2G、3G、LTE、4G、5Gなど)、NFC、Bluetooth接続(もしくはBLE)、無線周波数識別(RFID)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)、WiFi接続、インターネット接続、光学接続(例えば、赤外線、QRコードなどのバーコードなどを使用する)、音響接続、超音波接続など。接続は、ポンプアセンブリーの場所追跡、アセット追跡、コンプライアンス監視、遠隔選択、ログ、警報、および他の動作データのアップロード、ならびに療法設定の調整、ソフトウェアまたはファームウェアのアップグレード、ペアリングなどのような、さまざまな活動のために使用され得る。
【0059】
一つまたは複数の通信コントローラー330のいずれかが、デュアルGPS/セルラー機能を提供し得る。セルラー機能は、例えば、3G、4G、または5G機能であり得る。一つまたは複数の通信コントローラー330は、メインコントローラー310に情報を通信することができる。一つまたは複数の通信コントローラー330のいずれかが、内部メモリーを含み得るか、またはメモリー350を利用することができる。一つまたは複数の通信コントローラー330のいずれかが、低電力プロセッサーであり得る。
【0060】
制御システム300は、GPSデータ、療法データ、装置データ、および事象データなどのデータを格納することができる。このデータは、例えば、メモリー350に格納することができる。このデータには、一つまたは複数のセンサーによって収集された患者データが含まれ得る。制御システム300は、療法および他の動作データを追跡およびログ記録することができる。こうしたデータは、例えば、メモリー350に格納され得る。
【0061】
一つまたは複数の通信コントローラー330によって提供される接続を使用して、制御システム300は、装置334などの、遠隔コンピューティング装置に、制御システム300によって記憶、維持、または追跡されたデータのいずれかをアップロードすることができる。制御システム300は、療法の選択、ならびにパラメーター、ファームウェアおよびソフトウェアのパッチおよびアップグレードなどのさまざまな動作データを(例えば、装置334への接続を介して)ダウンロードすることもできる。一つまたは複数のユーザーインターフェイス(一つまたは複数のディスプレイなど)を制御するためのプロセッサーなどの、一つまたは複数の追加のプロセッサー380を利用することができる。一部の事例では、制御システム300の例示または記載される構成要素のいずれかを、制御システム300が使用される、創傷監視または治療システムの一実施形態に応じて省略することができる。
【0062】
本明細書に記載される陰圧創傷療法装置のうちのいずれかは、米国特許第9,737,649号または米国特許公開WO2017/0216501号に開示される一つまたは複数の特徴を含んでもよく、その各々は参照によりその全体が組み込まれる。
【0063】
複数包帯陰性創傷療法
図4は、別の陰圧創傷治療システム400を例示する。システム400は、創傷療法装置110などの、創傷部位に陰圧を供給することができる創傷療法装置を含み得る。創傷療法装置110は、創傷104aおよび104bなどの一つまたは複数の創傷に陰圧を供給するように、一つまたは複数の創傷包帯406a、406b(集合的に406と称する)と流体連通し得る。第一の流体流路は、創傷療法装置110から第一の創傷包帯406aへの流体接続を提供する構成要素を含み得る。非限定的な実施例として、第一の流体流路は、創傷療法装置110との流体接続における、創傷包帯406aから創傷療法装置110までの通路、または第一の創傷包帯406aから分岐アタッチメント(もしくはコネクター)444の入口446までの通路を含み得る。同様に、第二の流体流路は、創傷療法装置110から第二の創傷包帯406bへの流体接続を提供する構成要素を含み得る。
【0064】
システム400は、複数の創傷104aおよび140bがシステム400によって治療されることを除いて、システム100と同様であり得る。システム400は、第一の創傷と第二の創傷とを区別するために、付加された文字「a」または「b」とともに図4に例示される、システム100の構成要素(創傷104aおよび104b、カバー106aおよび106bなど)のうちの任意の一つまたは複数を含み得る。例示されるように、システム400は、アダプター108などの複数の吸引アダプターを介して創傷療法装置110と流体連通する、複数の創傷包帯406a、406b(および対応する流体流路)を含み得る。吸引アダプターは、第一の創傷と第二の創傷とを区別するために、付加された文字「a」または「b」とともに図4に示される、アダプター108の構成要素(ブリッジ部分130aおよび130b、コネクター134aおよび134b、ならびにキャップ140aおよび140bなど)のうちの任意の一つまたは複数を含み得る。
【0065】
創傷療法装置110は、管142を介して、コネクター444の入口446と流体的に連結され得る。コネクター444は、分岐445a、445b、および管または導管442a、442bを介して、管または導管130a、130bと流体的に連結され得るコネクター134a、134bと流体的に連結され得る。管または導管130a、130bは、包帯406a、406bと流体的に連結され得る。全ての導管および包帯構成要素が連結され、動作可能に位置付けられると、創傷療法装置110′を稼働させ、それによって、流体流路を介して創傷104a、104bに陰圧を供給することができる。陰圧の適用は、創傷104a、104bの所望するレベルの治癒が達成されるまで適用され得る。二つの創傷および創傷包帯が図4に例示されるが、創傷療法装置110のいくつかの実装例は、(例えば、コネクター444の未使用の分岐445aもしくは445bを閉じることによって)単一の創傷に、または(例えば、コネクター444に分岐を追加することによって)三つ以上の創傷に治療を提供することができる。
【0066】
システム400は、米国特許公開WO2020/0069850号または国際公開WO2018/167199号に開示される一つまたは複数の特徴を含み得、これらの各々は、全体が参照により組み込まれる。
【0067】
落下検出および装置配向検出
陰圧創傷療法装置の動きを監視して、装置が墜落した(または誤配置されたなどの誤用された)かどうかを決定すること、装置の動きを監視すること、または患者の動きを監視することが有利であり得る。これを達成するために、一つまたは複数の動きセンサー(一つまたは複数の動きセンサー328など)を利用することができる。一つまたは複数の動きセンサーからのデータは、一つまたは複数のコントローラー(メインコントローラー310など)を提供することができ、これは装置が墜落した(またはそうでなければ誤用された)ことを検出することができる。一部の事例では、一つまたは複数の動きセンサーは、一つまたは複数の動きセンサーによって検出されたデータを分析するための処理能力を提供する装置またはパッケージ(集積回路など)の一部とすることができる。本明細書に記載されるように、墜落(または誤用)の表示が提供され得る。
【0068】
墜落(または自由落下)は、一つまたは複数の加速度計またはジャイロスコープなどの一つまたは複数の動きセンサーによって測定される低減された重力と関連付けられ得る。図5は、陰圧創傷療法装置の三軸加速度計によって測定される加速度対時間のプロットを示す。こうした加速度計は、x軸(図5では502として示される)、y軸(図5では504として示される)、およびz軸(図5では506として示される)に沿った加速度を測定することができる。期間510の間、装置は表面(机など)上に置かれる。この期間の間、x軸およびy軸に沿った加速度は0g(g=9.8m/s)であり、z軸に沿って-1gの一定の重力加速度が観察される(装置の配向に起因して加速度は負であり、一部の事例では、z軸に沿った加速度は1gであり得る)。期間512の間、装置は表面から押し出される。この期間中、x軸、y軸、およびz軸に沿った加速度は変化しない。
【0069】
期間514の間、装置は自由に落下する。x軸およびy軸に沿った加速度は変化しない一方で、z軸に沿った加速度は0gに減少する(装置が自由落下状態にあるため)。一部の事例では、自由落下は、墜落または誤用の表示であり得る「ゼロG近傍」状態(または事象)を引き起こす。こうしたほぼゼロGの状態は、z軸に沿った加速度が減少するときに、「低G」の状態(または事象)が先行し得る。自由落下中、床(または別の表面)との衝撃が(図5に示すように約4秒で)発生するまで、三つの軸に沿った加速度値はゼロのままである。
【0070】
期間516の間、装置は床(または別の表面)と第一の衝撃をなす。この期間中、装置が表面上に着地すると重力が増加するにつれて、三つの軸に沿った加速度値は大きい(正または負)値である。こうした「高G」事象(または状態)は、硬い表面と接触すると装置が減速することを示す。期間518の間、装置は床(または別の表面)と一つまたは複数の第二の衝撃をなす。これらの一つまたは複数の第二の衝撃は、装置の跳ね返りまたはローリングに起因し得る。期間518中に複数のピークによって例示されるように、装置が、表面といくつかの第二の衝撃をなす。この期間中、三つの軸に沿った加速度値は、大きい(正または負)値である。最後に、期間520の間、装置は床(または別の表面)上に静止している。期間510と同様に、この期間中、x軸およびy軸に沿った加速度は0gであり、一方で-1gの一定の重力加速度がz軸に沿って観察される。
【0071】
図6は、三軸加速度計によって測定される加速度の大きさ対時間のプロットを示す。加速度の大きさ(|g|)は、以下の方程式(g、g、およびgはそれぞれx軸、y軸、およびz軸に沿った加速度値である)に従って決定することができる:
【0072】
【数1】

図6の持続時間610、612、614、616、618、および620は、図5の持続時間510、512、514、516、518、および520に対応する。持続時間614によって図示されるように、装置が自由落下している時、加速度の大きさは0gに減少し、0gのままである。
【0073】
フィルターまたは閾値分析のうちの一つまたは複数を、加速度データ(加速度データの大きさなど)に適用して、装置が自由落下にあるか、またはより小さな動き(装置を持ち上げるか、または装置を表面上に下に置くなど)を検出するかを決定することができる。閾値(低加速度閾値とも呼ばれる)に対する慎重な考慮が、偽陽性を回避するために必要とされ得る(例えば、潜在的なトリガーが装置を持ち上げるか、または下げるとき早すぎる場合があるため)。一部の事例では、加速度の大きさからの自由落下を検出する閾値は、約0.5~0.4(または低G状態を示す別の適切な値)とすることができる。例えば、加速度の大きさが閾値を満たす間(加速度の大きさが閾値を満たす、および/または閾値を下回ったままの間など)、装置は自由落下にあると判定することができる。図6は、約0.5の閾値630を図示する。持続時間614の間(装置が自由落下している時)、加速度の大きさは閾値630と等しいか、またはそれ未満である。
【0074】
一部の実施では、墜落(または落下)の高さを決定することができる。これは、自由落下にある装置の持続時間(持続時間614など)を決定することによって達成することができる。墜落の高さ(h)は、以下の式(gは自由落下加速度(9.8m/s)であり、tは自由落下の持続時間である)を使用して計算することができる:
h=(1/2)gt
落下の持続時間または落下高さのうちの一つまたは複数の表示が提供され得る。
【0075】
自由落下の持続時間(および/または高さ)を測定することが、落下検出のために衝撃で瞬間衝撃を検出することに依存するアプローチよりも利点を提供することができる。例えば、自由落下の持続時間は、装置が自由落下にあるかどうかの検出のチェックとして機能することができる。閾値持続時間を使用して、偽陽性を実際の自由落下と区別することができる。一部の事例では、判定された自由落下の持続時間が閾値持続時間を満たさない(例えば、閾値持続時間よりも短い)場合、偽陽性の判定を行うことができる。有利なことに、落下検出の精度を改善することができる。
【0076】
一部の事例では、加速度計の位置は、装置の質量中心からオフセットされ得る。例えば、図3を参照すると、加速度計(328として示される)は、制御システム300の基材(プリント回路基板(PCB)など)上に位置付けられ得る。図2Bを参照すると、PCBは、装置の質量中心からオフセットされた位置にポンプアセンブリー160のハウジング内に位置付けられ得る。装置の質量中心は、キャニスターの充填レベルに応じて変化し得る。
【0077】
装置の質量中心は加速度計の位置からオフセットされ得るため、墜落または落下はフラット(装置が回転しない時)または回転(装置が質量中心を中心に回転する時)のいずれかであり得る。実際には、多くの落下は回転落下であり得る。本明細書に記載されるように、加速度の大きさが低G状態を示す閾値を満たすと決定することによって、フラットな落下を検出することができる。これは、図5と類似している図7に図示される。自由落下は、加速度の大きさが閾値以下のままである持続時間714によって示される。第一および第二の衝撃は、716および718によって示される。第一の衝撃の後に装置が表面(床など)上で跳ね返る持続時間は、722として図示される。
【0078】
回転落下により、加速度計が、装置回転速度(v)および回転軸からの加速度計のオフセット(r)によって求められる求心加速度(a)を検出できる:
a=v/r
この加速度値は、図8に示すように閾値分析を中断するのに十分有意であり得る(図7に類似しているが、回転落下を取り込むプロットを示す)。装置が自由落下する持続時間814によって示されるように、加速度の大きさは、求心加速度の余分な寄与に起因して、低加速度閾値を超える可能性がある。持続時間814中の加速度値は、持続時間714中のものほどフラットかつ一定ではない。例えば、加速度値のバンプが、持続時間714の間に示される。こうした求心加速度寄与は、墜落を見逃すか、または持続時間(および墜落高さ)を不正確に決定(過小評価など)させ得る。
【0079】
墜落中に装置が回転する(またはスピンする)可能性を考慮するために、以下のように自由落下検出を精密化することができる:
1.高G事象によって証明されるように、第一の衝撃の時間を検出する。
2.これらの事象は第二の衝撃によって引き起こされる可能性が高いため、1秒(または別の適切な期間)の間、いかなるさらなる入ってくるデータがトリガーすることを妨げる。
3.低G事象の開始時間について、加速度計によって取り込まれたデータを検索する。
4.1~3の時間分離に基づき墜落の高さを計算する。
【0080】
一部の事例では、ステップ(ステップ2など)のいずれかを省略することができ、および/またはステップを異なる順序で実施することができる。
【0081】
第一の衝撃は、加速度(加速度の大きさなど)が高加速度閾値を満たすことを検出することによって検出され得る。例えば、図6を参照すると、616として示される第一の衝撃の間、加速度の大きさは大きな値(例えば、約4.5など)に達する。高加速度閾値は、4.0または別の適切な値に設定できる。別の実施例として、衝撃中、加速度の大きさの変化率は大きい(ピーク616の傾斜によって示されるように)。変化率閾値を使用して、衝撃を検出することができる。自由落下の検出(上記のステップ3)と第一の衝撃(上記のステップ1)との間の持続時間が決定されると、上述のように、墜落の高さを計算することができる。
【0082】
加速度計がサンプリングされる(または加速度計データが取得される)適切な周波数を選択することが、落下高さの計算精度および分解能を確保するために重要であり得る。しかしながら、サンプリング周波数が高いほど加速度計の電力消費量が増加するため、トレードオフがある。例えば、MEMS加速度計は、10ヘルツから数キロヘルツまでのさまざまな周波数でサンプリングすることができる。一部の構成では、試験は、約50ヘルツのサンプリングレートが、過剰な電力を消費することなく、十分な分解能および精度をもたらし得ることを明らかにした。いくつかの実装では、他の好適なサンプリングレートを使用することができる。
【0083】
本明細書に記載されるように、落下の検出に応答して、墜落の表示を提供することができる。一部の事例では、表示が、落下の検出に応答して、陰圧創傷療法の送達を一時停止すること(例えば、陰圧源をオフにすることによって)、または療法の強度を低減すること(例えば、陰圧源に提供される電力を低下させることによって)を含み得る。有利なことに、これにより、患者の不快感(例えば、創傷包帯または流体流路の別の部分が落下の結果として外れたか、または接続解除されるときに、創傷における所望の圧力を維持しようとする陰圧源によって引き起こされ得る)を低減し、ノイズ(例えば、陰圧源の動作または漏れ警報などの一つまたは複数の可聴警報の起動から)を低減し得る。
【0084】
特定の事例では、落下の検出に応答して、装置が、装置が陰圧創傷療法を適切に提供することができることを確実にするために、一つまたは複数の自己試験を開始することができる。自己試験の追加の詳細は、「陰圧創傷療法装置の自己試験」と題する国際公開第WO2021/191203号に開示され、参照によりその全体が組み込まれる。一部の事例では、装置が、落下を検出するのに応答して(例えば、装置への損傷の可能性が高くなり得る、大きな高さからの落下を検出するのに応答して)、および/または一つまたは複数の自己試験が失敗したと判定することに応答して、陰圧創傷療法の提供を防止することができる。追加的または代替的な安全機構は、落下の検出に応答して起動され得る。
【0085】
一部の実例では、落下検出は、装置がオフである(例えば、ストレージ、移送、輸送、またはそうでなければ使用されていない)時に実施され得る。本明細書に記載されるように、加速度計は、内部電源(または別の電源)から直接電力を受け取ることができる。このようにして、加速度計は、他の電子構成要素(メインコントローラー310など)が動作していない(例えば、電源が切られている、またはスリープ状態にある)時でさえも、装置の動きを監視することができる。本明細書に記載されるように、加速度計は、処理能力を提供するパッケージの一部とすることができる。低Gまたは高G事象のうちの一つまたは複数の検出は、加速度計パッケージに、メインコントローラー310または装置の別の一つまたは複数の電子構成要素をウェイクアップさせ得る(例えば、一つまたは複数の割込みをアサートまたはトリガーすることを介して)。本明細書に記載されるように、一つまたは複数の是正措置(表示の提供、療法の一時停止など)を取ることができる。
【0086】
装置の配向は、本明細書に記載されるアプローチのいずれかを使用して検出され得る。例えば、x軸、y軸、またはz軸のうちの一つまたは複数に沿った加速度値の分析を介して、反転された装置の配向を検出することができる。z軸に沿った加速度値は、装置が上下逆さまで、表面上に置かれた時に1gとなる(図5の持続時間510中に図示した通り、-1gではなく)。一つまたは複数の(または二つ以上の)加速度計軸が閾値を満たす(例えば、等しい、および/または超える)場合、望ましくない傾斜が検出され得る。例えば、装置が表面上に直立している時、z軸に沿った加速度値は、約1(または一部の事例では、加速度計の較正に応じて-1)である。装置が45度で傾斜している場合、z軸に沿った加速度値は、約0.5(または一部の事例では、-0.5)である。装置が横に横たわっている場合、z軸に沿った加速度値はほぼゼロである。z軸に沿った加速度が負である(または一部の事例では、正である)場合、装置が、その側面上に横たわることを超えて傾斜し得る。z軸に沿った加速度が-1(または一部の事例では+1)である場合、装置は完全に反転される。結果として、z軸に沿った加速度が傾斜閾値を満たす(例えば、下回る/超える/下回る)と決定することに基づき、傾斜検出を実施することができる。一部の事例では、傾斜閾値は、0.5(または一部の事例では、-0.5)とすることができる。決定は、z軸に沿った加速度および傾斜閾値の絶対値を使用して行われて、加速度計の較正に対する任意の依存性をなくすことができる。
【0087】
望ましくない傾斜の検出は、装置に、装置を適切な配向(可聴警告、視覚メッセージ、またはこれに類するものなど)に置くためのユーザーへの表示を生成させ得る。一部の事例では、陰圧創傷療法の送達は、装置が適切な配向に置かれるまで一時停止され得る。これにより、一つまたは複数のフィルターの閉塞(キャニスターの変更を不必要に必要とし得る、キャニスター内のフィルターの閉塞など)を防止し得る。追加的なまたは代替的な安全機構は、不正確な装置の配向の検出に応答して起動され得る。
【0088】
患者の活動は、本明細書に開示されるアプローチのいずれかを使用して監視することができる。例えば、患者の可動性は、(閾値と比較して)有意なレベルの動作が(閾値と比較して)有意な時間間隔にわたって検出されるかどうかを決定するために、加速度の大きさを調べることによって検出され得る。活動のレベルは、累積活動レベル指標を与えるために合計され得る。患者の移動度(または移動度の欠如)を追跡することが、患者の治療を決定または調整するために医療従事者にとって有益であり得る。患者の活動に関連するデータは、本明細書に記載されるように、遠隔コンピューティング装置に通信され得る。
【0089】
加速度計データを分析して、装置が動いているか、または移動中対静止している(ベッド側など)周波数を理解することができる。この分析は、陰圧創傷療法装置に対して、よりユーザー最適化された設計につながり得る。例えば、加速度計データが、装置のユーザーが非常に移動可能であることを示唆する場合、設計における携帯性に焦点を当てることが望ましい。別の実施例として、墜落検出が頻繁にトリガーされる場合、耐久性に焦点を当てた設計が好ましくあり得る。加速度計データは、不正確な装置の向きなど、ユーザーのエラーまたは誤用の原因を理解するために、調査を実施することを可能にし得る。また、患者の移動度を追跡することが、患者にとって最良の治療過程を決定する際に、医療従事者(HCP)に有用な情報を提供し得る。
【0090】
有利なことに、このセクションで説明されるアプローチは、改善された落下検出または誤用検出を提供することができる。結果として、患者の快適さおよび安全性を促進することができる。加えて、患者の可動性をモニターすることができ、これは、治療を精密化し、より信頼性が高く、患者にとって使いやすい陰圧創傷療法装置を開発し、患者にとって最良の治療過程を決定するために使用することができる。
【0091】
異なる療法システムへの移行
患者が、より大きなより重いキャニスター対応陰圧創傷療法システム(典型的には、より大きな創傷を治療するように構成される)から、より小さくよりポータブルなキャニスターレス陰圧創傷療法システム(典型的には、より小さな創傷を治療するように構成される)に移行し得ることを決定および示唆することができることが有利であり得る。陰圧創傷療法の適用により患者の創傷が治癒しているにつれ、創傷のサイズを減少することができ、創傷滲出液の量が小さくなり得る。結果として、患者は、治療中のある時点でキャニスターレスシステムに移行することができ得る。キャニスターレスシステムの一例は、Smith & Nephewから入手可能なPicoシステムである。
【0092】
一部の事例では、創傷によって生成される流体(滲出液など)の量をモニターすることができる。創傷によって生成される流体の速度が十分に低い場合、キャニスターレスシステム(またはモード)への移行が提案され得る。これらの目標を達成するためのアプローチを以下に記載する。
【0093】
装置110などの陰圧創傷療法装置のいずれかは、キャニスター162などの本明細書に開示されるキャニスターのいずれかと通信することができる。装置が、キャニスターからデータを取得することができる。こうしたデータは、状態データ(キャニスターが満杯であるか、またはキャニスター内の流体のレベルなど)、構成データ(例えば、キャニスター容量またはサイズ、例えば、300mLまたは800mLなど)、識別データ(キャニスター識別子、バッチコード、またはキャニスターのシリアル番号など)、キャニスターの製造日(タイムスタンプであり得る)、キャニスターの最初の使用の日/時(タイムスタンプであり得る)などのうちの一つまたは複数を含み得る。
【0094】
データの取得は、装置の一つまたは複数のコントローラーによって、またはその制御下で実行できる。データの取得は、有線接続を介して、または一つまたは複数のトランシーバー340を使用するなど、無線で実施され得る。例えば、装置が、近距離無線プロトコル(NFCなど)、RFID、Bluetoothなどを使用してデータを取得することができる。データは、陰圧創傷療法を開始する前に取得され得る。
【0095】
キャニスター162などの本明細書に開示されるキャニスターのいずれかは、メモリー(このセクションに記載されるデータのいずれかを格納することができる)および通信能力を有する電子機器を含み得る。電子機器は、キャニスターハウジング内に部分的または完全に位置付けられ得る。電子機器は、コインセルバッテリーまたは一つまたは複数のコンデンサーなどの電源によって電力供給され得る。一部の事例では、NFC、RFID、または他の無線充電プロトコルを介してなど、外部電力を提供することができる。
【0096】
キャニスターとの通信およびデータ取得のさらなる詳細は、「Communication Systems and Methods for Negative Pressure Wound Therapy Devices」と題する2022年、4月20日に出願された国際特許出願第PCT/EP2022/060464号、「Canister Status Determination for Negative Pressure Wound Therapy Devices」と題する2022年、4月20日に出願された国際特許出願第PCT/EP2022/060463号、および「Intelligent Disposable Devices for Wound Therapy and Treatment」と題する2022年、4月20日に出願された国際特許出願第PCT/EP2022/060459号、に開示され、その各々は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0097】
場合によっては、装置はキャニスターの存在を検出することができる。例えば、装置が、キャニスターとの通信を試み、応答が受信されたかどうかを判定することができる。別の実施例として、装置が、光学センサー、抵抗センサー、静電容量センサー、磁気センサーなどのセンサーを利用して、キャニスターの存在を決定することができる。本明細書に記載されるように、装置が、キャニスターシリアル番号、キャニスター容量またはサイズ(300mLまたは800mLなど)、キャニスター充填検出(フルではない、またはフルなど)、およびキャニスターの第一の使用日/時(キャニスターが装置に接続されることに応答して、および/または陰圧創傷療法の開始に応答して、キャニスターメモリーに格納され得る)のうちの一つまたは複数を含む、キャニスターからデータを取得することができる。
【0098】
創傷からの流体の除去速度は、直接的に(例えば、流量センサーを使用することによって)、または間接的に(例えば、陰圧源の速度またはデューティサイクルを監視することによって)監視することができる。流体の除去速度は、キャニスターから取得されたデータを使用して間接的に監視することができる。一部の事例では、流体の除去速度は、キャニスターの変更を監視することによって監視することができる。キャニスターが満杯であるときにキャニスターを頻繁に変更させることは、キャニスターをあまり頻繁に変更させない、または満杯でないときにキャニスターを変更するよりも、流体の除去速度が高いことを示し得る。一部の例では、流体の除去速度が流体流閾値(例えば、約100mL/日など)を満たす(例えば、満たす、および/または下回る)場合、キャニスターレスシステムへの移行が適切であり得、提案され得る。
【0099】
キャニスターレスシステムへの移行が適切であるとの決定は、二つ(またはそれ以上)の連続キャニスター交換が行われるときに行うことができ、各々が閾値期間よりも長い期間(例えば、三日間以下またはそれ以上)にわたって行われ、各々が、キャニスターが満杯でない状態で行われる。一部の例では、連続キャニスター交換は、特定のキャニスターサイズ(より小さな300mLキャニスターなど)に関連する必要があり得る。いくつかの実装では、キャニスターが満杯または満杯ではないという決定ではなく、キャニスター充填レベルの実際の決定を考慮に入れることができる。
【0100】
一部の事例では、閾値期間外になされた充満していない単一のキャニスターの交換は、キャニスターレスシステムへの移行の決定をトリガーし得る。例えば、六日間(またはそれ以下もしくはそれ以上)外になされたより大きなキャニスター(800mLキャニスターなど)の交換は、決定をトリガーし得る。キャニスター変更の傾向を監視することが、決定を行うために使用され得る。例えば、キャニスターの変更を毎日行うことができ、三日後(またはそれ以下もしくはそれ以上)に続く変更、またはいくつかのこうした変更が決定をトリガーし得る。
【0101】
キャニスター(キャニスター162など)が装置(装置110など)に接続されるとき、キャニスターが、キャニスターレスシステムに移行するかどうかを決定するためのプロセスに含まれるかどうかをチェックすることができる。決定は、キャニスターが新鮮であることを検証すること(例えば、キャニスターメモリーが第一の使用日/時を保存していないことを検証することによって決定され得る別の装置で使用されていないこと)、キャニスターが正しいサイズ(300mLなど)であることを検証すること、およびキャニスター識別(シリアル番号など)が装置に以前に接続されたと認識されることを検証することのうちの一つまたは複数を含み得る。一部の実例では、これらの検証の最初の二つは、キャニスターレスシステムに移行するかどうかを決定するためのプロセスに含まれるキャニスターに対して、満たされる必要がある。キャニスターが不注意に接続解除され、その後再接続されることに誤って反応するプロセスの問題を克服するために、キャニスターを(例えば、キャニスターが初めて装置に接続されるとき)プロセス内に含めるべきであるという初期検証の後に、後者の検証(キャニスターを装置に以前に接続されたものとして検証すること)を使用することができる。キャニスターがプロセスに含まれると、キャニスター除去の頻度、および除去されたときキャニスターが満杯ではなかった(または閾値充填レベル以下の流体レベルを有した)かどうかの監視を行うことができる。
【0102】
300mLのキャニスターが、例えば、3日間にわたって満杯であると登録されない場合、創傷からの流体の除去速度は、100mL/日未満(または120mL/日、80mL/日、50mL/日、もしくはそれ未満もしくはそれ超)であると仮定され得る。二つのこうしたキャニスター変更を連続的になすことが、六日間にわたって流体除去量が600mL未満であることを示すことができる。別の実施例として、100mLなどのより小さなキャニスターを使用することができ、二日間(またはそれ以上)このようなキャニスターを充填しないことが、除去速度が100mL/日未満であることを示すことができる。こうした低い除去速度は、キャニスターレスシステムによって治療されるのに十分に治癒した創傷を示し得る。結果として、キャニスターレスシステムへの移行を提案することができる。除去の実際の閾値速度は、提案される療法の能力に基づき決定することができる。キャニスターレスシステムに送信するかどうかの決定は、装置の一つまたは複数のコントローラー(メインコントローラー310など)によって行うことができる。
【0103】
図13は、キャニスターレスモードに移行するためのプロセス1300を示す。プロセス1300は、メインコントローラー310などの装置の一つまたは複数のコントローラーによって実装することができる。プロセス1300は、キャニスターが接続されていないという検出に応答して実行することができ、これは、キャニスター欠落警報(または警告)によって示され得る。プロセス1300は、プロセスが新しいキャニスターの取り付けを検出できるブロック1302で開始することができる。プロセス1300は、ブロック1304に移行することができ、ここでキャニスターが変更されたかどうかを判定することができる。この判定は、図14に関連して記載したものなど、本明細書に記載のアプローチのいずれかを使用して実施することができる。ブロック1304において、プロセス1300が、同じキャニスターが再取り付けられたことを検出する場合、プロセス1300は、ブロック1314に移行することによって終了することができる。
【0104】
ブロック1304において、プロセス1300が、異なるキャニスターが取り付けられたことを検出する場合、プロセスは、ブロック1306に移行し得、ここで、キャニスターレスシステム(例えば、図14に関連して説明したように)への移行に向けてカウントされたキャニスター変更の数が閾値を満たすかどうかを決定することができる。閾値は、例えば、二つの連続的なキャニスターの変更とすることができる。そうでない場合、プロセス1300はブロック1308に移行し得、そこでキャニスター欠落警報をクリアすることができ、その後、プロセスはブロック1314に移行することによって終了し得る。ブロック1306で、プロセス1300が、キャニスターが閾値を満たすときにキャニスターの変更の数を判定する場合、プロセスはブロック1310に移行し得、キャニスター欠落警報をクリアし得る。プロセスは、その後、キャニスターレスシステムへの移行の決定が行われたという通知を提供することができるブロック1312に移行することができる。こうした通知は、例えば、図9に関連して説明される。通知が提供された後、プロセス1300は、ブロック1314に移行することによって終了し得る。
【0105】
図14は、キャニスターが変更されたこと、およびキャニスターレスシステムに移行するかどうかを決定するためにキャニスターを含めるべきであることを検証するためのプロセス1400を示す。プロセス1400は、メインコントローラー310などの装置の一つまたは複数のコントローラーによって実装することができる。プロセス1400は、図13のブロック1304で実行することができる。
【0106】
ブロック1402では、プロセス1400は、キャニスターが以前に装置に取り付けられていないかどうかを決定するために取り付けられたキャニスターの識別を分析することができる。ブロック1404では、プロセス1400は、以前に取り付けられたキャニスター(交換された)が満杯ではなかった(または特定の充填レベルを有していた)かどうかを決定することができる。ブロック1406では、プロセスは、キャニスター変更が一定期間(3日など)外に実施されたかどうかを判定することができる。ブロック1408では、プロセス1400は、ブロック1402、1404、および1406の条件の各々が満たされたかどうかを判定し得る。その場合、プロセス1400は、ブロック1412に移行することができ、ここでキャニスターレスシステムへの移行に向かってキャニスター変更の数を増加することができる。この数は、図13のブロック1306で利用することができる。プロセス1400は、その後、ブロック1414で終了することができる。プロセス1400が、ブロック1402、1404、および1406の条件のうちのいずれか一つまたは複数が満たされていないとブロック1408で決定する場合、プロセス1400は、キャニスター変更の数をリセットできるブロック1410に移行することができる。プロセス1400は、その後、ブロック1414で終了することができる。
【0107】
キャニスターレスシステムへの移行の決定が行われると、図9に示すように、通知(または表示)を提供することができ、これはキャニスターレスモードに移行するためのプロセス900を示す。プロセス900は、メインコントローラー310などの装置の一つまたは複数のコントローラーによって実行することができる。ブロック902、904、908、910、912、および920に例示されるユーザーインターフェイス画面は、ディスプレイ172上に表示され得る。ブロック902は、キャニスターを接続するようにユーザーを促すための例示的なユーザーインターフェイス画面を示す。ブロック904は、キャニスターが接続されていないという警報のための例示的なユーザーインターフェイス画面を示す。キャニスターが接続されると、プロセスはブロック906に移行することができ、キャニスターレスシステムへの移行に関する決定を行うことができる。この決定は、本明細書で説明するアプローチのいずれかを使用して行うことができる。
【0108】
キャニスターレスシステムに移行するための決定がブロック906で行われない場合、プロセス900は、キャニスターを有する装置を使用して陰圧創傷療法の提供を開始するための例示的なユーザーインターフェイス画面が例示されるブロック920に移行し得る。キャニスターレスシステムに移行するための決定がブロック906でなされる場合、プロセス900は、キャニスターレスシステムへの移行を提案するための例示的なユーザーインターフェイス画面が図示されるブロック908に移行することができる。図示されるように、キャニスターレスシステムへの移行の決定がなされると、移行メッセージは、患者が移行に適しているとの明確な記述をしえない。むしろ、メッセージはHCPが移行を検討することを示唆するかもしれない。ブロック910および912は、こうした移行を示唆するための追加のユーザーインターフェイス画面を示す。ユーザーは、インターフェイスパネル170上の一つまたは複数の入力または構成要素を操作することによって、ユーザーインターフェイス画面をブロック908からブロック910へ、およびブロック910からブロック912へと前進させることができる。例えば、ユーザーは、ボタンのセット184の一つまたは複数のボタンを押すことができる。
【0109】
図9では、BTIN1は、ボタンのセット184の第一のボタンに対応し、BTN3は、ボタンのセット184の第三のボタンに対応する。例えば、アクション「次へ」(BTN3など)に関連付けられるボタンを押すと、次のブロック(910または912)への移行を引き起こし得る。ユーザーは、ボタンのセット184からのボタンのうちの一つを押すことによって、ブロック908、910、および912のいずれかからブロック920に移行することができる。例えば、アクション「却下」(BTN1など)に関連付けられるボタンを押すと、ブロック920への移行を引き起こし得る。
【0110】
一部の事例では、通知は、遠隔コンピューティング装置に送信され得る。例えば、通知は、装置334に無線で送信され得る。
【0111】
有利なことに、創傷からの流体の除去速度を監視することが、キャニスターレスシステムへの移行を行うことができると決定するために使用され得る。とりわけ、これにより、患者の快適さを促進し、患者の可動性を改善し、陰圧創傷療法に対する患者のコンプライアンスを高めることができる。
【0112】
キャニスターレスシステムへの移行のさらなる詳細は、「Systems and Methods for Applying Reduce Pressure Therapy」と題する米国特許第10,143,785号、「Negative Pressure Wound Therapy Apparatuses and Methods for Using the Same」と題する米国特許公開第2019/0358372号、「Power Source Charging for Negative Pressure Wound Therapy Apparatus」と題する米国特許公開第2021/0106735号、「Negative Pressure Wound Therapy Apparatus with Removable Panels」と題する米国特許公開第2020/0230302号、「Systems and Methods for Determining Blockages in a Negative Pressure Wound Therapy System」と題する米国特許公開第2021/0106736号、「Securing Control of Settings of Wound Therapy Apparatuses」と題する国際公開WO2019/179943号、「Negative Pressure Wound Therapy Apparatuses and Methods of Using the Same」と題する米国特許公開第2020/0330662号、「Systems and Methods for Controlling Dual Mode Negative Pressure Wound Therapy Apparatus」と題する米国特許公開第2021/0038776号、「Exhaust Vent for a Negative Pressure Wound Therapy System」と題する国際公開第WO2019/211732号、に開示され、その各々は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0113】
特定の実施例は、キャニスターレス陰圧創傷療法システムへの移行の文脈で提示されるが、本明細書に記載のアプローチは、一般に、第一の治療システムから第一の治療システムとは異なる第二の治療システムへの移行を決定(および提案)することに適用可能である。第一の治療システムは、輸送性が低く、大きく、かつより重いシステムであり得る。第二の治療システムは、より輸送可能、より小さく、より軽量のシステムであり得る。一部の事例では、第一の治療システムは、高滲出液速度(または高滲出液)陰圧創傷療法システムであってもよく、第二の治療システムは、低滲出液速度(または低滲出液)陰圧創傷療法システム(キャニスターレスシステム、機械式電力供給システム、キャニスターを有する小型システムなどのうちの一つまたは複数)であり得る。
【0114】
マルチパラメーターPID制御
陰圧創傷療法システムは、内部装置変動(電圧またはポンプ間変動など)、外部環境変動(温度または大気圧など)、さまざまなユーザー選択可能な圧力設定点、創傷状態(創傷体積、包帯空気リーク、または滲出液体積および粘度など)のうちの一つまたは複数を考慮して、多種多様な動作状態にわたって所望の圧力設定点を維持できる必要があり得る。こうした変動は、陰圧源を制御するための固定駆動信号(例えば、陰圧源のモーターまたは別のアクチュエーターに適用される駆動信号)を使用するシステムを設計することを困難にし得る。一部の事例では、比例積分微分(PID)制御ループ(PIDループと呼ばれることもある)を使用することができる。PIDループは、システムが動作する全ての条件(本明細書に記載の一つまたは複数の変形など)にわたって安定し、なお応答性である必要があり得る。
【0115】
PIDループは、ループ内のゲインを制御する固定パラメーターのセットを有することができる。こうしたパラメーターには、以下が含まれ得る。
・出力誤差の比(目標圧力と比較した現在の圧力の差など)に基づき出力されるPIDループを駆動するために使用できる比例ゲイン(Pゲイン)
・システム積分誤差(電流と以前の出力誤差の合計など)の比率に基づき出力されるPIDループを駆動するために使用できる積分ゲイン(Iゲイン)
・現在の出力誤差と以前の誤差との間の差の比に基づき出力されるPIDループを駆動するために使用され得る差動ゲイン(Dゲイン)
【0116】
一部の事例では、陰圧創傷療法システムは、比例ゲインおよび積分ゲインを実装することができるが、差動ゲインを実装することができない。こうした制御ループは、PIループ(PIDループの特別な事例であり得る)と呼ばれることがある。
【0117】
比例ゲインは、他のゲインよりも重要であり得、出力誤差が非常に大きいときに主駆動部を考慮し得る。積分ゲインは、システムが目標圧力にほぼ達すると、定常状態エラーを補正することができる。差動ゲインは、目標圧力に向かう加速/減速を処理することができ、システムの慣性を考慮し得る。
【0118】
PIDパラメーターの単一のセットを使用して、対称システムを制御することができる。対称システムの実施例は、ポインターを標的角度(速度計針など)に駆動することである。こうしたシステムでは、出力の補正は、標的位置に関係なく同じ駆動を必要とする。しかしながら、陰圧創傷療法システムは、少なくとも以下の理由から対称ではあり得ない。第一に、より高い陰圧レベル設定点(またはより高い真空レベル)を確立することが、より低い陰圧レベル設定点を確立することよりも多くの電力を必要とし得る。例えば、圧力を0mmHgから-50mmHgに減少させるのに必要な電力は、両方の場合の誤差が50mmHgであっても、圧力を-150mmHgから-200mmHgに減少させるのに必要な電力よりもはるかに小さい。これは、以下に起因し得る。流体流路内の流量は、陰圧が増大する(またはより陰圧になる)につれて増加し得るが、これは、陰圧源電力の
【0119】
比例二乗増加を引き起こし得、陰圧源構成要素上の余分な圧力は、より高い陰圧を維持するために必要な電力を増加させる。第二に、システムは、陰圧源を一方向にのみ駆動することができる(例えば、圧力を低減するが、増加させない)。陰圧がオーバーシュートする場合、陰圧源を制御するための駆動信号はオフにされ、システムは、例えば、流体流路内の一つまたは複数の漏れによって陰圧が自然に減衰するまで待つ必要がある。
【0120】
従って、一部の実例では、例えば、-200mmHgの標的設定点に対して良好な性能のために最適化されるPIDループは、例えば、-50mmHgの標的設定点に対して同様には機能しない。その理由は、比例ゲイン(P-ゲイン)の検査で見ることができる。システムが初期状態(流体流路が大気圧にあるときなど)にあり、目標設定点が-200mmHgである場合、初期誤差は-200である。-1のPゲインと仮定すると、誤差を陰圧源を駆動するための部分電力に変換する(パーセンテージで表され得る)ことは、PIDループが最初に、200%で陰圧源を駆動しようと試みることを意味する(これは、-200*1=200%に対応する式(誤差*Pゲイン)を使用して決定され得る)。陰圧源は最大100%で駆動され得るため、陰圧源は、流体流路内の圧力が、例えば、-100mmHgに達するまで、100%で駆動され続ける。この時点で、比例ゲインは、標的設定点が達成されるまで、比例駆動電力を直線的に(誤差が減少するために)減少させ得る。目標設定点が-25mmHgであり、-1の同じP-ゲインが使用されると仮定する。初期誤差は-25であり、陰圧源電力の25%のみが印加される(‐25×-1=25%)。結果として、システムは、標的設定点に到達するのに非常に遅いことになる。これは、陰圧源が、流体流路内で任意の陰圧値を達成することができる前に排出される必要があるシステム内のガス(空気など)の固定体積を克服する必要があることに起因し得る。
【0121】
システムが、圧力を-25mmHgに低減するように最適化されると仮定する。予想される誤差がより小さくなるため、-8など、はるかに高いP-ゲインを選択することができる。これにより、起動時に100%の初期陰圧源電力が可能となる(-25×-8=200%、これは100%に制限される)。電力は、目標圧力に向かって直線的に低減される。しかしながら、圧力を-200mmHgに減少させるためにPゲイン値-8がシステムに適用される場合、PIDループは、陰圧源を1600%(‐200×8)で駆動しようと試みる。これは、陰圧源を駆動して設定点を確立する持続時間の大部分に対して100%に制限され、目標圧力に非常に近い100%未満の駆動に減少する。望ましくないことに、システムの慣性は、目標圧力の大きなオーバーシュートを引き起こす可能性が高い。
【0122】
これらの問題に対処するために、各目標圧力設定点に対する個々のPIDループパラメーターを使用することができる。一部の事例では、異なるP-ゲイン、I-ゲイン、またはD-ゲイン値が、一つまたは複数の異なる陰圧設定点に対して決定され得る。例えば、PIループが使用されるときに、各陰圧設定点(または少なくともいくつかの異なる設定点)に対して異なるPゲイン値およびIゲイン値を決定することができる。P-ゲインとI-ゲインの比は、約0.1(または1%)とすることができる。Pゲイン値は、図12に示すように、設定点に直線的に比例し得る。こうしたPゲイン値およびIゲイン値を使用すると、PIDループが高圧および低圧の両方で良好な制御を提供することができる。目標圧力は、大きなオーバーシュートを生じさせることなく、合理的な時間で達成することができる。
【0123】
例えば、各陰圧設定点に対する以下のP-ゲインおよびI-ゲイン値を決定し(例えば、試験を介して)、PIループに使用し得る。
【0124】
【表1】
【0125】
一部の事例では、Pゲインと設定点との間の線形関係(上の表および図12の表など)の代わりに、二乗関係を使用することができる。こうした関係は、圧力対電力曲線をより密接にモデル化し得る。一部の実例では、線フィッティングまたは曲線フィッティングを使用することができる。こうしたアプローチは、陰圧創傷療法システムの非対称性をさらに説明し得る。
【0126】
陰圧創傷療法システムの非対称的な性質を補償するために、I-ゲインは、流体流路内の圧力が設定点を上回る(または設定点よりも負である)ときに調整され得る。これにより、オーバーシュートのサイズおよび持続時間を低減することができる。調整係数は、定数、例えば、整数値(2、3、5、または5超など)とすることができる。調整は、乗算とすることができる(このような場合、調整係数は乗数と呼ぶことができる)。例えば、設定点が-125mmHgであり、乗数がMであると仮定する。流体流路内の実際の圧力が設定点を下回る(または-125mmHgよりも正)場合、実際の圧力を目標に上げるために使用されるI-ゲインは、X(整数値であり得る)であり得る。実際の圧力が設定点を上回る(または-125mmHgよりも負である)場合、I-ゲインは、乗数によってM*Xに調整され得る。これにより、任意のオーバーシュートを低減し、結果として、不快感または痛みを引き起こす可能性がある、過剰な陰圧を患者に提供するリスクを低減することができる。
【0127】
I-ゲインの調整は、設定点が達成された後に実施されて、任意の圧力オーバーシュートのサイズおよび持続時間を低減し、創傷を過圧するリスクを低減することができる。一部の事例では、Iゲインの調整は、設定点が達成される前に実施されて、目標圧力のより速い達成を容易にすることができる(これは、圧力のオーバーシュートを引き起こすリスクを伴い得る)。
【0128】
乗算器が大きすぎるとして選択される場合、これは、例えば、滲出液の気泡が吸引され、流体流路内の圧力にわずかな擾乱を引き起こすことに起因して、自然に生じ得るわずかな圧力変動があっても、PIまたはPIDループの積分項(または積分和)を急速に崩壊させ得る。大きすぎる乗数を使用することが、駆動信号電力の周期的低下を伴う不均一かつ望ましくない圧力調節を生成し得る。
【0129】
PID(またはPI)ループは、ポンプコントローラー370などの一つまたは複数のコントローラーによって実施され得る。異なる設定点に対するPゲイン値およびIゲイン値は、メモリー350などのメモリーに記憶され得る。例えば、設定点によってインデックス付けされたルックアップテーブルを使用することができる。
【0130】
一部の事例では、創傷における圧力は、例えば、創傷に、またはその近くに位置付けられる一つまたは複数の圧力センサーによって直接測定され得る。このような場合、このセクションで使用される流体流路内の圧力への言及は、創傷における圧力と置き換えられ得る。
【0131】
有利には、このセクションに記載されるアプローチは、高陰圧設定点および低陰圧設定点の両方で陰圧源の良好な制御を容易にすることができる。目標圧力は、迅速に、かつ大きなオーバーシュートなしに達成することができる。
【0132】
陰圧創傷療法装置を動作させるためのチュートリアル
本明細書に開示される陰圧創傷療法装置(装置110など)のいずれかは、装置を動作させるための一つまたは複数のチュートリアルを提供するように構成され得る。一つまたは複数のチュートリアルは、AV形式で提供され得る。例えば、ディスプレイ172上に表示されるユーザーインターフェイスから、一つまたは複数のチュートリアルを選択することができる。一つまたは複数のチュートリアルは、装置概要、陰圧創傷療法の適用、警報の解決などを含み得る。一つまたは複数のコントローラー(メインコントローラー310など)は、一つまたは複数のチュートリアルの提供を制御することができる。
【0133】
本明細書に記載されるように、装置が、装置を操作するためのユーザーインターフェイス(インターフェイス170など)を含み得る。ユーザーインターフェイスは、一つまたは複数のインジケーター174または一つまたは複数の制御もしくはボタン(例えば、療法開始および一時停止ボタン180または警報/警告ミュートボタン182および一つまたは複数の入力制御もしくはボタン184を含むが、これらに限定されない)を含み得る。装置の操作方法のユーザーの学習をさらに容易にするために、ユーザーが動作して、装置が特定の機能を実行させるために必要な一つまたは複数のユーザーインターフェイスコンポーネントを強調(照明など)することができるが、一つまたは複数のチュートリアルが提供される。
【0134】
例えば、図10Aに示すユーザーインターフェイス画面1010を参照すると、ボタン184のうちの一つ(または二つ以上)を使用して、陰圧創傷療法の強度を変更することができる。ユーザーインターフェイス画面1010は、ディスプレイ172上に表示され得る。ユーザーインターフェイス画面1010が表示される間、関連するボタン184は、点灯され得る(またはそうでなければ、ユーザーに強調表示され得る)。別の実施例として、図10Bに示すユーザーインターフェイス画面1020を参照すると、ボタン184のうちの一つを使用して、ディスプレイ172上のメニューにアクセスすることができる。ユーザーインターフェイス画面1020がディスプレイ172上に表示される間、関連するボタン184は点灯(または別の方法でユーザーに強調表示)され得る。
【0135】
さらに別の実施例として、図10Cに示すユーザーインターフェイス画面1030を参照すると、ボタン188は、さまざまな他の制御(例えば、療法設定を調整するための一つまたは複数のボタン)の機能をロックまたはロック解除するように動作することができる。ユーザーインターフェイス画面1030が表示される間、ボタン188は点灯され得る(またはそうでなければユーザーに強調表示され得る)。さらに別の実施例として、図10Dに図示したユーザーインターフェイス画面1040を参照すると、ボタン202は、キャニスターを接続解除および取り外すように動作することができる。ユーザーインターフェイス画面1040が表示される間、ボタン202は点灯され得る(またはそうでなければ、ユーザーに対して強調表示され得る)。同様に、開始および一時停止ボタン180は、点灯され得る(または別の方法でユーザーに強調表示され得る)。
【0136】
療法概要およびログ
本明細書に開示される陰圧創傷療法装置(装置110など)のいずれかは、療法の提供に関連するデータを記録し、一つまたは複数の要約をユーザーに提供するように構成され得る。例えば、一つまたは複数の要約は、ディスプレイ172上に表示され得る。一つまたは複数のコントローラー(メインコントローラー310など)は、データの記録を制御し、一つまたは複数の要約を提供することができる。
【0137】
図11Aは、数日間の療法概要を提供するユーザーインターフェイス画面1110を示す。画面1110は、要約によって捕捉された数日間の療法時間を示す棒グラフ1112を含み得る。数日間は、当日(例示の例では、日曜日であり得る)および三日前(例えば、土曜日、金曜日、および木曜日)を含み得る。いくつかの実装では、棒グラフ1112以外の、またはそれに加えてフォーマットを表示することができる(円グラフ、折れ線グラフなど)。ユーザーインターフェイス画面1110は、数日間(例示される例では四日間など)に決定される一日平均1114を含み得る。
【0138】
図11Bは、特定の日(例えば、日曜日などの当日に対応し得る)に対する療法概要を提供するユーザーインターフェイス画面1120を示す。画面1120の療法概要は、画面1110の概要よりも詳細に説明され得る。ユーザーインターフェイス画面1120は、図11Aのオプション1102(「次へ」とラベル付けされた)を選択することによって、画面1110からアクセスすることができる。本明細書に記載されるように、オプション1102は、ボタン184のうちの一つによって起動され得る。ユーザーインターフェイス画面1120は、特定の日の経時的な陰圧レベルのグラフ1132を図示することができる。さまざまな警報または他の事象1134を例示することができ、発生時間と一致するように位置付けられ得る。これにより、陰圧創傷療法が特定の日にどのように提供されたかのユーザーの分析および理解を容易にすることができる。
【0139】
図11B(または図11A)のオプション1104(「ログ」とラベル付け)を選択すると、図11Cに示すユーザーインターフェイス画面1130が表示される。本明細書に記載されるように、オプション1104は、ボタン184のうちの一つによって起動され得る。ユーザーインターフェイス画面1130は、さまざまな警報または他の事象1134のより詳細なリストを提供することができる。図示されるように、さまざまな警報または他の事象1134の発生時間を提供することができる。
【0140】
図11Dは、図11Aに図示した数日間(例えば、四日間、日曜日、土曜日、金曜日、および木曜日)の療法概要間の移行を示す。移行は、数日間にわたって療法概要を提供するユーザーインターフェイス画面1110から開始することができる。画面1110上のオプション1102(「次へ」とラベル付けされた)を選択することが、現在の日(例えば、日曜日)に対するより詳細な療法概要を提供するユーザーインターフェイス画面1120を表示することができる。画面1120上のオプション1102(「次へ」とラベル付けされた)を選択することが、前日(例えば、土曜日)に対してより詳細な療法概要を提供するユーザーインターフェイス画面1122を起動することができる。画面1122上のオプション1102(「次へ」とラベル付けされた)を選択することが、一昨日(金曜日など)のより詳細な療法概要を提供するユーザーインターフェイス画面1124を起動することができる。最後に、画面1124上のオプション1102(「次へ」とラベル付けされた)を選択することが、三日前(例えば、木曜日)からより詳細な療法概要を提供するユーザーインターフェイス画面1126を起動することができる。ユーザーインターフェイス画面1122、1124、および1126は、ユーザーインターフェイス画面1120と類似し得る。画面1126上のオプション1102(「次へ」とラベル付けされた)を選択することが、数日間、療法概要を提供するユーザーインターフェイス画面1110を表示することができる。
【0141】
有利なことに、本セクションに記載されるアプローチは、ユーザーフレンドリーかつ理解しやすい形式での療法の提供に関連するデータを提供することができる。
【0142】
陰圧創傷療法の送達の阻害
一部の事例では、陰圧の送達は、一つまたは複数の動作状態を検出するのに応答して、本明細書に開示されるポンプアセンブリー(ポンプアセンブリー160など)のいずれかによって抑制され得る。例えば、陰圧の送達は、一つまたは複数のキャニスターフィルターが流体で塞がれていることを検出することに応答して抑制され得る。キャニスターが、ポンプアセンブリー160内への液体の通過を阻害する一つまたは複数の疎水性フィルターを含み得るが、キャニスターが完全に流体で充填され、より多くのフィルターが閉塞されるとき、陰圧の連続的な印加(特に、約-200mmHgなどのより高い陰圧設定点)は、一つまたは複数のフィルター膜に機械的にストレスを加え、一つまたは複数のフィルターの機械的故障(引き裂きまたは取り外しなど)を引き起こす可能性がある。結果として、ポンプアセンブリー160を液体で損傷するリスクがあり得る。このリスクを軽減するために、一つまたは複数のフィルターが閉塞していることを検出するのに応答して、陰圧の送達(陰圧源を停止させることによるなど)を阻害することが有利であり得る。
【0143】
一つまたは複数のフィルターの閉塞の検出は、以下のように実施され得る。ポンプアセンブリー160(例えば、一つまたは複数のコントローラー310または370を介して)は、一つまたは複数のフィルターの閉塞を直接検出するように構成されなくてもよい。一部の事例では、これは、キャニスターが満杯であり、流体流路内に閉塞があることを検出することに応答して間接的に実施され得る。これらの二つの条件は、例えば、キャニスターが満杯であることによる閉塞(近位閉塞)とキャニスターの上流の閉塞(遠位閉塞)とを区別するために、ポンプアセンブリー160によって独立して検出され得る。これらの条件の両方の検出は、近位および遠位の閉塞の両方が検出されるため、一つまたは複数のフィルターが塞がれていることを示唆し得る。陰圧の送達は、キャニスターが満杯であり、流体流路内に閉塞があることを検出するのに応答して抑制され得る。
【0144】
いくつかの実装では、キャニスターの内側に定置された二つの電極を使用して流体接続を検出することによって、キャニスターの満杯検出を実施することができる。キャニスターの満杯検出のさらなる詳細は、「Canister Status Determination for Negative Pressure Wound Therapy Devices」と題された2022年4月20日に出願された国際特許出願第PCT/EP2022/060463号に開示され、参照によりその全体が組み込まれる。閉塞検出は、陰圧源の活動を監視することによって(例えば、陰圧源のモーターの速度を監視することによって、陰圧源のアクチュエーターのデューティサイクルを監視することによって、またはこれに類するものによって)、かつ活動を流体流路内の閉塞を示す一つまたは複数の活動閾値と比較することによって実施され得る。閉塞検出のさらなる詳細は、2017年8月22日に発行され「Systems and Methods for Applying Reduced Pressure Therapy」と題される米国特許第9,737,649号、および2020年8月18日に発行され「Leak Detection in Negative Pressure Wound Therapy System」と題される米国特許第10,744,239号、に開示され、その各々は参照によりその全体が組み込まれる。
【0145】
陰圧の送達は、キャニスター満杯または流体流路内の閉塞のうちの少なくとも一つをクリアすることに応答して再開され得る。陰圧源が停止されることで、閉塞がクリアする可能性は低いが、キャニスター満杯は、(キャニスターが満杯であることによるのではなく)ポンプアセンブリー160の誤った配向の結果としてキャニスター満杯検出がトリガーされた場合、クリアし得る。例えば、ポンプアセンブリー160は、キャニスター満杯検出をトリガーする、傾斜しているか、または上下逆さまに置かれたかもしれない。ポンプアセンブリー160を直立位置に配置することが、キャニスターフル状態をクリアし、それによって陰圧創傷療法の送達を継続することを可能にし得る。
【0146】
他の変形例
本明細書に開示される陰圧創傷療法システムおよび/または装置のいずれかは、さまざまな前述のセクションに開示された特徴の任意の組み合わせを実施することができる。例えば、システムおよび/または装置のいずれかは、「落下検出と装置の向き検出」セクション、「異なる療法システムへの移行」セクション、「マルチパラメーターPID制御」セクション、「陰圧創傷療法装置操作のためのチュートリアル」セクション、「療法概要とログ」、または「陰圧創傷療法の送達の障害」セクション、の一つまたは複数に記載される。
【0147】
いくつかの実施形態は、陰圧創傷療法を記載するが、本明細書に開示されるシステム、装置、および/または方法は、スタンドアローンで、またはTNP療法に加えて、使用可能な他のタイプの療法に適用され得る。本明細書に開示されるシステム、装置、および/または方法は、任意の医療装置、特に任意の創傷治療装置に拡張され得る。例えば、本明細書に開示されるシステム、装置、および/または方法は、超音波療法、酸素療法、神経刺激、マイクロ波療法、活性剤、抗生物質、抗微生物剤、またはこれに類するもののうちの一つまたは複数を提供する装置とともに使用され得る。こうした装置が、さらにTNP療法を提供することができる。本明細書に開示されるシステムおよび方法は、医療装置に限定されず、任意の電子装置によって利用され得る。
【0148】
本明細書に記載されるデータの任意の送信は、安全に実施され得る。例えば、暗号化、httpsプロトコル、安全なVPN接続、エラーチェック、送達の確認、またはこれに類するもののうちの一つまたは複数を利用することができる。
【0149】
一部の実施形態は、加速度計および加速度計データの使用を説明するが、任意の他の動きセンサーを使用することができる。例えば、一つまたは複数のショックセンサーまたは衝撃センサーを利用することができる。
【0150】
本明細書で提供される閾値、制限、期間などの値は、絶対的な値を意図したものではなく、従っておおよその値とすることができる。加えて、本明細書で提供される任意の閾値、制限、期間などは、自動的にまたはユーザーによって、固定されるかまたは変えられ得る。さらに、本明細書で使用される場合、基準値に関連した、超える、超、未満などの相対的な程度を表す用語は、基準値と等しい場合も包含することが意図される。例えば、正の基準値を超えることは、基準値以上であることを包含することができる。加えて、本明細書で使用される場合、基準値に関連した、上回る、超、未満などの相対的な程度を表す用語は、基準値に関連した、下回る、未満、超などの開示された関係とは逆のものも包含することが意図される。
【0151】
特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明される特性、物質、特徴、または群は、本明細書に記載される他の任意の態様、実施形態、または実施例に、これらと両立できないことがない限り、適用可能であることを理解されたい。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示される特徴の全て、および/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップ全ては、そのような特徴および/またはステップのうちの少なくともいくつかが相互排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせられ得る。保護対象は、前述の任意の実施形態の詳細に限定されない。保護対象は、本明細書(添付の任意の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)において開示される特性のうちの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせにおよび、または同様に開示される任意の方法またはプロセスのステップのうちの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0152】
特定の実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は、単に例として提示されており、保護範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規な方法およびシステムは、さまざまな他の形態で具現化され得る。さらに、本明細書に記載の方法およびシステムの形態において、さまざまな省略、置換、および変更がなされ得る。いくつかの実施形態では、図示および/または開示されたプロセスにおいて実施される実際の工程は、図に示された工程とは異なり得ることを、当業者は認識するであろう。実施形態によっては、上述した工程のうちのある特定の工程が除かれる場合もあれば、他のものが追加される場合もある。例えば、開示されるプロセスで実施される実際のステップおよび/またはステップの順序は、図で示したものとは異なり得る。実施形態によっては、上述した工程のうちのある特定の工程が除かれる場合もあれば、他のものが追加される場合もある。例えば、図に示されるか、または本明細書に開示されるさまざまな構成要素が、プロセッサー、コントローラー、ASIC、FPGA、および/または専用ハードウェア上の、ソフトウェアおよび/またはファームウェアとして実装され得る。ソフトウェアまたはファームウェアは、非一時的コンピューター可読メモリーに格納される指示を含み得る。指示は、プロセッサー、コントローラー、ASIC、FPGA、または専用ハードウェアによって実行することができる。コントローラー、プロセッサー、ASIC、FPGAおよび類似のものなど、ハードウェアコンポーネントは論理回路を含むことができる。さらに、上記に開示された特定の実施形態の特徴および特性は、異なる方式で組み合わされて追加の実施形態を形成し得るが、その全ては本開示の範囲内に収まる。
【0153】
本明細書で図示され、説明されるユーザーインターフェイス画面には、追加の構成要素および/または代替の構成要素が含まれ得る。これらの構成要素には、メニュー、リスト、ボタン、テキストボックス、ラベル、ラジオボタン、スクロールバー、スライダー、チェックボックス、コンボボックス、状態バー、ダイアローグボックス、ウィンドウなどが含まれ得る。ユーザーインターフェイス画面には、追加の情報、および/または代替の情報が含まれ得る。構成要素は、任意の好適な順番に配置され、グループ化され、標示され得る。
【0154】
「し得る(can)」、「し得る(could)」、「可能性がある(might)」、または「場合がある(may)」などの条件付き言い回しは、別途具体的に記載されない限り、または使用される文脈の範囲内で別途解釈されない限り、ある特定の実施形態が、ある特定の特徴、要素、および/または状態を含む一方で、他の実施形態は含まないということの伝達を意図するのが通例である。従って、こうした条件付き言い回しは、特徴、要素、および/もしくは状態が一つまたは複数の実施形態に多少なりとも必要とされるという示唆、またはこれらの特徴、要素、および/もしくは状態が特定の任意の実施形態に含まれているかどうか、もしくは該実施形態で実施されるべきかどうかを、作者入力または命令の有無にかかわらず決定するためのロジックが、一つまたは複数の実施形態に必然的に含まれているという示唆を必ずしも意図するものではない。「含む」、「含む」、および「有する」等の用語は、同義語であり、包含的に、オープンエンドの様式で使用され、追加の要素、特徴、行為、動作などを排除するものではない。また、用語「または(or)」は、包括的な意味で(排他的な意味ではなく)使用されることで、例えば要素の列記をつなぐのに使用される場合、列記の要素のうちの一つ、いくつか、または全てを意味することになる。加えて、「各々」という用語は、本明細書で使用される場合、その通常の意味を有することに加えて、「各々」という用語が適用される一連の要素の任意のサブセットも意味し得る。さらに、本明細書で使用される場合、「本明細書での(herein)」、「上記(above)」、「下記(below)」および類似する言葉は、本出願で使用される場合、本明細書の全体を指し、本明細書の特定の部分を指すものではないことを意味する。
【0155】
特に明記されない限り、「X、Y、およびZのうちの少なくとも一つ」という語句などの結合言語は、項目、用語などが、X、Y、またはZ、またはそれらの組み合わせのいずれかであり得ることを一般的に伝達するために使用される文脈で理解されるべきである。従って、こうした結合言語は、特定の実施形態がXのうちの少なくとも一つ、Yのうちの少なくとも一つ、およびZのうちの少なくとも一つが各々存在する必要があることを暗示することを一般的に意図するものではない。
【0156】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「一般に」、および「実質的に」という用語等の、本明細書で使用される程度を表す言い回しは、所望の機能を依然として果たすかまたは所望の結果をもたらす所定の値、量、または特性に近い値、量、または特性を表すものである。例えば、「およそ」、「約」、「一般に」、および「実質的に」という用語は、所定の量の10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、および0.01%未満以内の量を意味し得る。別の実施例として、特定の実施形態では、「一般に平行」および「実質的に平行」という用語は、丁度平行である状態から15度以下、10度、5度、3度、1度、または0.1度逸脱する値、量、または特性を指す。
【0157】
別段の明示的な記載がない限り、「a」または「an」などの記事は、一般的に、一つまたは複数の記載項目を含むと解釈されるべきである。従って、「ように構成される装置」などの語句は、一つまたは複数の列挙された装置を含むことが意図される。こうした一つまたは複数の列挙された装置はまた、述べられた列挙を行うように集合的に構成され得る。
【0158】
本開示には、特定の実施形態、実施例、および適用例が含まれるが、本開示は、具体的に開示された実施形態の範囲を超えて、他の代替の実施形態および/または使用ならびにその明らかな変更形およびその等価物にまでおよび、これには本明細書に記載された特徴および利点の全てを提供しているとは限らない実施形態が含まれることは、当業者に理解されるはずである。従って、本開示の範囲は、本明細書における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、本明細書に提示されるまたはこの後に提示される特許請求の範囲によって定義され得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D-1】
図11D-2】
図11D-3】
図12
図13
図14
【国際調査報告】