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特表2024-541852カーボングラファイト製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】カーボングラファイト製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/52 20060101AFI20241106BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C04B35/52
F27D7/06 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522606
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 RU2021000550
(87)【国際公開番号】W WO2023068964
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2021130743
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518312460
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー“ロスエネルゴアトム”
(71)【出願人】
【識別番号】524141315
【氏名又は名称】ルッチ リサーチ アンド プロダクション アソシエーション, リサーチ アンド デベロップメント インスティテュート, ジョイントストック カンパニー(“ルッチ ジェーエスシー”)
(71)【出願人】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイセンコ, エフゲニー・コンスタンティノヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】フェディン, オレグ・イゴレヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】マルシキン, ドミトリー・ヴァレリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】チェルカーソフ, アレクサンドル・セルゲイヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】チュマク, レシャ・グリゴリエヴナ
【テーマコード(参考)】
4K063
【Fターム(参考)】
4K063AA06
4K063AA15
4K063BA09
4K063CA01
4K063CA03
4K063DA04
4K063DA07
4K063DA22
4K063DA32
4K063DA34
(57)【要約】
本発明は、カーボン製品の製造、すなわち焼成処理技術に関し、電極、るつぼ、ヒーターの製造、さらにウラン黒鉛燃料要素などの原子力工学用材料を製造するための様々な技術分野で使用できる。カーボングラファイト製品を製造する方法は、ワークピースを充填材とともにコンテナ内に入れて、空気雰囲気中で焼成するステップを含み、コンテナ内への充填材として、ワークピースの5~10wt%の量の尿素が使用され、コンテナは、空気へのアクセスが制限された密閉容器内に配置され、密閉容器には、5~10wt%の量の尿素を含む炭素充填材も充填される。本発明の課題および本発明を使用することによって達成される技術的結果は、焼成プロセスを簡素化すること、およびカーボングラファイト製品、特に小型の製品の酸化および充填材のコークス化を防止することにより、その製品の品質を向上させることである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボングラファイト製品を製造する方法であって、
ワークピースを充填材とともにコンテナ内に入れて、空気雰囲気中で焼成するステップを含み、
前記充填材として、前記ワークピースの5~10wt%の量の尿素が使用され、
前記コンテナは、空気へのアクセスが制限された密閉容器内に配置され、
前記密閉容器には、5~10wt%の量の尿素を含む炭素充填材も充填される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ワークピースを収容する前記コンテナの材質として、グラフレックスまたはグラファイトが使用される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素充填材として、石油粒状コークスが使用される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ワークピースが、750~800℃の温度で加熱して焼成される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン製品の製造、すなわち焼成処理技術に関し、電極、るつぼ、ヒーターの製造、さらにウラン黒鉛燃料要素などの原子力工学用材料を製造するための様々な技術分野で使用できる。
【背景技術】
【0002】
カーボングラファイト製品の製造工程は、焼成を含むいくつかの工程から構成されており、焼成はカーボングラファイト製品の製造において特別な工程になっている。
【0003】
「グリーン」ワークピースを焼成する際の主なプロセスは、バインダーからのセメンティングコークス格子の形成である。これには、バインダーの熱破壊、そこからの半コークスの形成、およびその後のコークスへの変化が含まれる。
【0004】
焼成は、カーボングラファイト製品の品質と性能特性を決定する。得られるカーボングラファイト製品の品質は、焼成時の酸化の程度に大きく依存する。
【0005】
カーボングラファイトは、酸化環境において比較的低温(400℃まで)では安定しているが、高温では比較的容易に反応することが知られている。環境に応じて、グラファイトとの顕著な相互作用が始まる温度が大きく変化し得る。
【0006】
例えば、大気中の酸素との反応は400℃で始まり、二酸化炭素との反応は500℃で始まる(Levashova A.I.、Kravtsov A.V. Chemical Technology of Carbon Materials:Textbook.Tomsk:TPU出版,2008年 14ページ)。
【0007】
さらに、焼成中にカーボングラファイトワークピースの酸化部分と非酸化部分とでは収縮の大きさが異なり、必然的に亀裂や破壊に繋がる。
【0008】
したがって、400~600℃の焼成温度範囲では、気体環境の選択に対して最も責任のあるアプローチを必要とする。
【0009】
焼成工程の品質を確保するため、壁越しの間接加熱が用いられる。しかし、ほとんどの場合、これでは不十分である。
【0010】
この問題は、カーボングラファイトワークピースを包装材(充填材)に入れ、この包装材が、製品の酸化や変形を部分的に防ぎ、加熱チャンバー全体に温度場をより均一に分布させて温度勾配を減少させ、炉内のガス雰囲気の組成と圧力に影響を与えることによって解決される(Levashova A.I.、Kravtsov A.V. Chemical Technology of Carbon Materials:Textbook.Tomsk:TPU出版,2008年 72ページ)。充填材には、粉砕した冶金用コークスまたは無煙炭と川砂の混合物が使用される。
【0011】
カーボングラファイト製品の製造方法については、バインダーの相転移領域において製品の焼成温度を周期的に低下させながら熱処理を実行する方法が知られている(ロシア特許第2230380号、IPC G21C 21/02 (2000.01)、2004年6月10日公開)。
【0012】
このような焼成には、不活性雰囲気または還元雰囲気中での熱処理が必要であり、プロセスのハードウェア設計が複雑になる。
【0013】
さらに、放出される揮発性ガスの圧力によって製品をコンテナ内で焼成する、カーボングラファイト製品の製造方法が知られている(ソ連特許第865789号、IPC C01B 31/04 (2000.01)、1981年9月23日公開)。
【0014】
この方法の欠点は、ワークピースをコンテナに押し込んで熱処理する際に、揮発性ガスの放出圧力が数十気圧に達することである。また、専用のコンテナを個別に作製する必要があり、製品の大量生産に利用することは困難であるという問題がある。
【0015】
技術的な詳細説明と解決すべき課題の点で最も近いカーボングラファイト製品の製造方法は、コンテナ内にカーボングラファイトのワークピースを配置するとともに、このワークピースとコンテナの壁との間に炭素充填材を配置し、その後、密閉容器内において揮発性物質が放出される圧力下でワークピースを焼成して黒鉛化することを含む方法である(英国特許第759160号、IPC C04B 35/532、1956年10月17日公開)。
【0016】
この方法は、充填材に含まれる空気の量が、焼成されるワークピースの表面に顕著な酸化を発生させるのに十分ではない場合に、大型の製品を得るのに非常に有効である。
【0017】
しかし、充填材の存在下で小型のワークピースをこのように焼成すると、得られた製品の表面への部分酸化と充填材のコークス化の発生をもたらす。さらに、密閉容器内で高温高圧(数十気圧)で焼成すると、プロセスのハードウェア設計が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】ロシア特許第2230380号
【特許文献2】ソ連特許第865789号
【特許文献3】英国特許第759160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題および本発明を使用することによって達成される技術的結果は、焼成プロセスを簡素化すること、およびカーボングラファイト製品、特に小型の製品の酸化および充填材のコークス化を防止することにより、その製品の品質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題は、本発明に係る方法、すなわち、カーボングラファイト製品を製造する方法であって、ワークピースを充填材とともにコンテナ内に入れて、空気雰囲気中で焼成するステップを含み、前記充填材として、前記ワークピースの5~10wt%の量の尿素が使用され、前記コンテナは、空気へのアクセスが制限された密閉容器内に配置され、前記密閉容器には、5~10wt%の量の尿素を含む炭素充填材も充填されることを特徴とする方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の具体的な実施例としては、ワークピースを入れるコンテナの素材には、グラフレックス(graphlex)またはグラファイト(黒鉛)が使用され、石油粒状コークスが炭素充填材として使用され、ワークピースは、750~800℃の温度に加熱して焼成される。
【0022】
焼成中に保護雰囲気を提供(作成)するために、尿素((NH)CO)が、炭素充填材と、焼成サンプルの入ったコンテナとに追加される。
【0023】
150℃以上に加熱すると、尿素が分解されてアンモニアと二酸化炭素が生成される。二酸化炭素が500℃以上の温度で炭素と反応して、以下のように一酸化炭素が生成される。
【0024】
С+СО=2СО
生成された一酸化炭素とアンモニアは、焼成サンプルの酸化を防ぐ保護雰囲気の役割を果たす。
【0025】
提案されたカーボングラファイトワークピースの焼成方法は、黒鉛粉末とフェノールホルムアルデヒド樹脂の混合物をプレスすることによって得られた「グリーン」ワークピースで試験された。
(方法の実施)
MPG-6黒鉛粉末(5~100μm)と粒径100μm未満の人造黒鉛粉末および18wt%の量のSFP 011Aフェノールホルムアルデヒド樹脂のバインダーの混合物から作られた、約12.8mm×55mm(d×l)の大きさのワークピースが、70~130℃の温度と8~10MPaの圧力でプレスされた。
【0026】
上記の技術的解決策に従って、プレスされた「グリーン」ワークピースは、そのワークピースの5~10wt.%の量の尿素充填材が収容されている円筒形のコンテナ内に配置された。このコンテナは、GMZ黒鉛とグラフレックスで作られている。
【0027】
ワークピースと尿素充填材が入ったコンテナは、蓋によって空気へのアクセスが制限された耐熱鋼製の容器内に配置され、その容器内において、5~10wt%の量の尿素を含む炭素充填材で覆われた。
【0028】
焼成は、SNOL 6/10タイプの標準的な焼成マッフル炉内で、30~50℃/時間の加熱速度で750℃の温度に達するまで行われた。試験サンプルNo.1(表を参照)は、尿素を追加せずに焼成された。
【0029】
カーボングラファイト製品のサンプルの焼成結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表中の焼成結果は、サンプルの質量が6.9~10.2%の範囲で減少したことを示している。このサンプルの質量減少は、バインダーであるフェノールホルムアルデヒド樹脂SFP 011Aの熱分解によるところが大きく、カーボンの部分酸化によるところが小さい。
【0032】
バインダーの熱分解により減少する質量がすべてのサンプルでほぼ同じであるので、サンプルの酸化の程度は、焼成サンプルの総質量減少(バインダーの熱分解による質量減少および炭素の酸化による減少)で判断することができる。
【0033】
記載された試験データからわかるように、質量減少が最も小さかったのは、焼成サンプルが入ったコンテナと、容器に充填された炭素充填材とのそれぞれに、5~10wt%の尿素を添加して焼成されたサンプルNo.3~5であった。これらのサンプルは、焼成後、顕著な酸化が見られず、滑らかで光沢のある表面をしていた。
【0034】
試験データは、コンテナと容器内への充填材中の尿素含有量が上記の範囲の上限を超えても、製品(サンプル)の質量減少に目立った変化は見られないが、その下限を下回ると、サンプルの質量減少が増加し、それに応じて、焼成サンプルの表面の酸化が顕著になることを示している。
【0035】
提案された方法では、不活性ガスや還元ガスを使用することなく、焼成サンプルが入ったコンテナを密封する複雑な集合システムも使用せずに、従来の焼成マッフル炉で熱処理を行うことができるので、カーボングラファイト製品の製造を大幅に簡素化でき、また、その製品の表面の酸化や表面への充填材のコークス化を防止することにより、製品の品質を向上できる。
【0036】
提案されたカーボングラファイトワークピースの製造方法は、粉末冶金によって得られた、および黒鉛やその他の多孔質セラミック材料にさまざまな金属塩溶液を含浸させることによって得られた、「グリーン」ワークピースを焼成する場合に適用できる。
【0037】
提案された方法は、酸化の可能性、クラックの有無、製品の表面状態などの要求が厳しい小型製品の製造に特に有効である。
【国際調査報告】