(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ハーフトーン画像によって形成されたウォーターマークを有しているディスプレイデバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1681 20190101AFI20241106BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20241106BHJP
G02F 1/1675 20190101ALI20241106BHJP
G09F 9/37 20060101ALI20241106BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241106BHJP
G02F 1/1676 20190101ALI20241106BHJP
【FI】
G02F1/1681
G02F1/167
G02F1/1675
G09F9/37
G09F9/30 338
G09F9/30 349Z
G09F9/30 309
G09F9/30 349A
G02F1/1676
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523427
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 US2022078970
(87)【国際公開番号】W WO2023091855
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カン, イー-ミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ブライアン ハンス
【テーマコード(参考)】
2K101
5C094
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA02
2K101BB13
2K101BB23
2K101BB53
2K101BC02
2K101BD33
2K101BD55
2K101BF42
2K101EB71
2K101EC92
2K101EE02
2K101EG52
5C094AA31
5C094BA75
5C094DA07
5C094EA05
5C094ED02
5C094JA01
(57)【要約】
本発明は、複数のマイクロセルを備えているディスプレイデバイスを対象としている。電気泳動ディスプレイデバイスは、隔壁によって互いに分離された複数のマイクロセルを備えており、それぞれのマイクロセルは、電気泳動媒体を含む。複数のマイクロセルは、異なるフィルファクターを有している異なる種類のマイクロセルを備える。そのデバイスは、ハーフトーン画像によって異なる種類のマイクロセルから形成されているウォーターマークを有する。ウォーターマークは、偽造から保護する、または装飾目的のために使われることを目指す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学物質層を備えている電気光学ディスプレイデバイスであって、前記電気光学物質層は、複数のマイクロセルを備え、前記複数のマイクロセルは、隔壁によって互いに分離されており、それぞれのマイクロセルの前記隔壁は、表面積を有しており、前記複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、マイクロセル開口を有しており、前記マイクロセル開口は、表面積およびフィルファクターを有しており、前記複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、電気泳動媒体を含み、前記電気泳動媒体は、無極性流体の中に帯電した色素粒子を備え、前記電気光学ディスプレイデバイスは、視認側、視認側と反対側およびハーフトーン画像によって前記複数のマイクロセルから形成されているウォーターマークを有し、前記複数のマイクロセルは、5より多い種類のマイクロセルを備え、ある種類のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、他の種類の全てのマイクロセルのフィルファクターと異なるフィルファクターを有し、マイクロセルの前記フィルファクターは式1によって決定され、
フィルファクター=A
1/(A
1+A
2) (式1)
A
1は、前記マイクロセル開口の前記表面積であり、A
2は、前記マイクロセルを囲む前記隔壁の前記表面積である、電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項2】
前記複数のマイクロセルが、6より多い種類のマイクロセルを備え、ある種類のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、他の種類のマイクロセルの全てのマイクロセルの前記フィルファクターと異なるフィルファクターを有している、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項3】
前記電気光学ディスプレイデバイスが、同じフィルファクターを有しているが、異なる隔壁高を有しているマイクロセルを備える、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項4】
前記電気光学ディスプレイデバイスが、同じフィルファクターを有しているが、異なるマイクロセル形状を有しているマイクロセルを備える、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項5】
前記隔壁が透明である、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項6】
前記隔壁が不透明である、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項7】
前記電気光学ディスプレイデバイスが、少なくとも2種類の隔壁、第一の種類の隔壁および第二の種類の隔壁を備え、前記第一の種類の隔壁および前記第二の種類の隔壁が、異なる色を有する、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項8】
第一の光透過性電極層および第二の電極層をさらに備え、前記電気光学物質層が、前記第一の光透過性電極層と前記第二の電極層との間に配置されている、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項9】
前記第二の電極層が、光透過性である、請求項8に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項10】
前記第二の電極層が、色づけられている、請求項8に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項11】
密封層をさらに備え、前記密封層が、前記複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルの前記開口に跨り、前記密封層が、前記電気光学物質層と前記第二の電極層との間に配置されている、請求項8に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項12】
前記密封層が、透明である、請求項11に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項13】
前記密封層が、色づけられている、請求項11に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項14】
前記電気光学ディスプレイデバイスが、前記密封層と前記第二の電極層との間に配置される接着剤層をさらに備える、請求項11に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項15】
前記接着剤層が、透明である、請求項14に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項16】
前記接着剤層が、色づけられている、請求項14に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項17】
圧電物質を備えている圧電層をさらに備えている、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項18】
前記圧電層が、前記電気光学物質層に隣接して位置している、請求項17に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項19】
光起電性の層をさらに備えている、請求項7に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【請求項20】
前記電気光学ディスプレイデバイスが、対偽造目的のために、製品、文書または通貨紙幣の部分として使われる、請求項1に記載の電気光学ディスプレイデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月19日に提出された米国仮特許出願第63/281,353号の優先権を主張する。本明細書で参照された任意の特許、公開出願または他の公開された成果の全体の内容は、参照によって組み込まれている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ウォーターマークを有する電気泳動ディスプレイデバイスを対象としている。電気泳動ディスプレイデバイスは、隔壁によって互いに分離された複数のマイクロセルを備えており、それぞれのマイクロセルは、電気泳動媒体を含む。ウォーターマークは、複数のマイクロセルの隔壁から、ハーフトーンの画像によって形成されている。ウォーターマークの特徴を備えるディスプレイデバイスは、偽造からの保護または装飾の目的に対して有用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
用語「電気光学」は、物質またはディスプレイまたはディスプレイデバイスに適用されるときに、本明細書では、少なくとも一つの光学的性質の異なる、第一のディスプレイ状態と第二のディスプレイ状態とを有する物質であって、物質に電場を印加することによって、その第一ディスプレイ状態からその第二のディスプレイ状態へと変化させられる物質を指し示すために、画像化技能におけるその従来の意味で使われている。その光学的性質は、通常、人間の目で知覚可能な色であるが、光学的透過、反射、発光、または、(機械読み取りを意図するディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射における変化という意味での)疑似色のような他の光学的性質であり得る。
【0004】
用語「グレー状態」は、本明細書では、ピクセルの二つの極端な光学的状態の中間状態を指し示すために、画像化技能におけるその従来の意味で使われており、必ずしもこれら二つの極端な光学的状態の間の白黒の遷移を意味しているわけではない。例えば、下記に指し示されているE Inkの特許および公開出願のいくつかは、中の極端な状態が白および深青である電気泳動ディスプレイデバイスを記載しているため、実は中間の「グレー状態」は、薄い青であるだろう。実際、既に言及されたように、光学的状態における変化は、全く色の変化でない場合もあり得る。用語「黒」および「白」は、ディスプレイデバイスの二つの極端な光学的状態を指し示すために以下使われ得、厳密には黒および白ではない極端な光学的状態(例えば前述の白および深青の状態)を普通は含んでいるように理解されるべきである。用語「単色」は、ピクセルを、間のグレー状態なしで、それらの二つの極端な光学的状態へ駆動するだけの駆動スキームを表すために以下使われ得る。
【0005】
いくかの電気光学物質は、その物質が、内部の液体充填空間または気体充填空間を有し得る、およびしばしば有するが、その物質が固体の外部表面を有するという意味では固体である。固体の電気光学物質を使うようなディスプレイデバイスは、以下では便宜上「固体電気光学ディスプレイ」を指し示し得る。したがって、用語「固体電気光学ディスプレイ」は、回転する二色部材のディスプレイ、カプセル化された電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイ、およびカプセル化された液晶ディスプレイを含む。
【0006】
用語「双安定的」および「双安定性」は、本明細書では、少なくとも一つの光学的性質の異なる、第一のディスプレイ状態と第二のディスプレイ状態とを有するディスプレイ要素であって、有限の間隔のアドレッシングパルスを用いて、その第一のディスプレイ状態か第二のディスプレイ状態かのどちらかをとるように、所与の要素が駆動されたあと、そのアドレッシングパルスが終わったあとに、ディスプレイ要素の状態を変化させるために必要なアドレッシングパルスの最小の間隔の少なくとも数倍(例えば少なくとも四倍)の間、状態が持続するような、ディスプレイ要素を備えているディスプレイデバイスを指し示すために、画像化技能におけるその従来の意味で使われる。米国特許第7,170,670号の中では、グレースケールが可能ないくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイデバイスが、それらの極端な黒の状態および白の状態の中だけでなく、それらの中間のグレー状態の中でも安定であり、それと同じことが、他のいくつかの種類の電気光学ディスプレイにも当てはまることが、示されている。この種類のディスプレイデバイスは、双安定的ではなく「多安定的」と正しく呼ばれているが、便宜上、用語「双安定的」は、本明細書では、双安定的なディスプレイデバイスと多安定的なディスプレイデバイスとの両方を包含するために使われ得る。
【0007】
何年にもわたって精力的な研究および発展の主題である、電気光学ディスプレイデバイスの種類の一つは、中で複数の帯電した粒子が、電場の影響の下、流体を通って動いている、粒子ベースの電気泳動ディスプレイデバイスである。電気泳動ディスプレイデバイスは、液晶ディスプレイと比較して、良好な輝度特性および良好なコントラスト特性、広視野角、状態双安定性、ならびに低い電力消費量を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイデバイスの長時間の画質に関する問題は、それらの広範囲での普及を妨げてきた。例えば、電気泳動ディスプレイデバイスを構成する粒子は、固まる傾向があり、結果、これらのディスプレイデバイスにとって不十分な耐用年数になる。
【0008】
the Massachusetts Institute of Technology(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LCC、および関連企業に譲渡された、あるいはそれらを名義とする数々の特許および出願は、カプセル化されたおよびマイクロセルの電気泳動媒体およびその他の電気光学媒体において使われている様々な技術を記載している。カプセル化された電気泳動媒体は、数々の小さなカプセルを備えており、カプセルそのものは、それぞれ、流体媒体の中に、電気泳動的に移動可能な粒子を含有している内部の相と、その内部の相を囲んでいるカプセル壁とを備えている。通常、そのカプセルは、二つの電極層の間に位置決めされているコヒーレント層を形成するために、高分子バインダーの内に保持されている。マイクロセル電気泳動ディスプレイの中では、帯電した粒子および流体は、マイクロカプセルの内にカプセル化されるのではなく、代わりに、キャリア媒体(通常は高分子フィルム)の内に形成される複数の空洞の内に保たれている。以下では、用語「マイクロ空洞電気泳動ディスプレイ」は、カプセル化された電気泳動ディスプレイおよびマイクロセルの電気泳動ディスプレイの両方を包含するために使われ得る。これらの特許および出願の中で記載されている技術は、以下を含む。
【0009】
(a)電気泳動粒子、電気泳動流体および電気泳動流体添加剤。例えば、米国特許第7,002,728号および米国特許第7,679,814号を参照。
【0010】
(b)カプセル、バインダーおよびカプセル化プロセス。例えば、米国特許第6,922,276号および米国特許第7,411,719号を参照。
【0011】
(c)マイクロセル構造、壁物質およびマイクロセルの形成方法。例えば、米国特許第7,072,095号および米国特許第9,279,906号を参照。
【0012】
(d)マイクロセルを充填および密封する方法。例えば、米国特許第7,144,942号および米国特許第7,715,088号を参照。
【0013】
(e)電気光学物質を含有しているフィルムおよびサブアッセンブリー。例えば、米国特許第6,982,178号および米国特許第7,839,564号を参照。
【0014】
(f)バックプレーン、接着剤層および補助層、ならびにディスプレイで使われている方法。例えば、米国特許第7,116,318号および米国特許第7,535,624号を参照。
【0015】
(g)色形成および色調整。例えば、米国特許第7,075,502号および米国特許第7,839,564号を参照。
【0016】
(h)ディスプレイを駆動する方法。例えば、米国特許第7,012,600号および米国特許第7,453,445号を参照。
【0017】
(i)ディスプレイの適用。例えば、米国特許第7,312,784号および米国特許第8,009,348号を参照。
【0018】
(j)米国特許出願公開第2015/0277160号に記載されているような非電気泳動ディスプレイ、およびディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の適用。例えば、米国特許出願公開第2015/0005720号および米国特許出願公開第2016/0012710号を参照。
【0019】
米国特許第6,930,818号および米国特許第6,795,138号は、マイクロセル技術に基づいた画像ディスプレイデバイスを開示している。その特許は、ディスプレイマイクロセルのようなマイクロセルの製造を記載している。ここで、そのマイクロセルは電気泳動流体で充填されている。そのマイクロセルの上面開口は、同じサイズおよび形状を有し得、そのようなマイクロセルは、ディスプレイ表面全体に広がり得る。
【0020】
米国特許第9,470,917号、米国特許第10,401,668号、米国特許第10,831,052号、米国特許第9,436,057号、米国特許第10,073,318号、および米国特許第10,100,528号は、マイクロセル技術に基づく画像ディスプレイデバイスを開示している。その画像ディスプレイデバイスのマイクロセルは、マイクロセルの壁によって分離されている。その画像ディスプレイデバイスは、ウォーターマーク領域と非ウォーターマーク領域とを有する。そのウォーターマーク領域の中の、隔壁の厚さ、隔壁の高さ、マイクロセルの上面開口、マイクロセルのサイズ、またはマイクロセルの底の厚さは、非ウォーターマーク領域の中のマイクロセルのそれらとは異なる。
【0021】
先行技術のディスプレイは、ウォーターマーク領域の中の、二つの異なる種類のマイクロセルの存在によって、ウォーターマークの存在を可能にしている。しかし、それらは、印刷分野におけるハーフトーン化の結果と似ている、リアルで高質なウォーターマーク画像を形成することができない。本発明は、ウォーターマークの美的価値および偽造能力を向上させるような結果を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第7,002,728号明細書
【特許文献2】米国特許第7,679,814号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一つの側面は、電気光学物質層を備える電気光学ディスプレイデバイスを対象としている。その電気光学物質層は、複数のマイクロセルを備え、それは隔壁によって互いに分離されている。それぞれのマイクロセルの隔壁は、表面積を有する。複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、マイクロセル開口を有し、マイクロセル開口は、表面積およびフィルファクターを有している。複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、電気泳動媒体を含有し、電気泳動媒体は、無極性流体の中で、帯電した色素粒子を備えている。その電気光学ディスプレイデバイスは、視野面、視野面と反対の面、およびハーフトーン画像によって複数のマイクロセルから形成されているウォーターマークを有する。複数のマイクロセルは、5より多い種類のマイクロセルを備える。ある種類のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、他の種類のマイクロセルの全てのマイクロセルのフィルファクターと異なるフィルファクターを有する。マイクロセルのフィルファクターは、式1によって決定され、
フィルファクター=A1/(A1+A2) (式1)
A1は、マイクロセル開口の表面積であり、A2は、マイクロセルを囲む隔壁の表面積である。
【0024】
電気光学ディスプレイデバイスの電気光学物質層の複数のマイクロセルは、6より多い種類のマイクロセル、または7より多い種類のマイクロセル、または8より多い種類のマイクロセル、または9より多い種類のマイクロセル、または10より多い種類のマイクロセル、または12より多い種類のマイクロセル、または15より多い種類のマイクロセルを備え得る。ある種類のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、他の種類のマイクロセルの全てのマイクロセルのフィルファクターと異なるフィルファクターを有する。その電気光学ディスプレイデバイスは、同じフィルファクターを有しているが、異なる隔壁高を有しているマイクロセルを備え得る。その電気光学ディスプレイデバイスは、同じフィルファクターを有しているが、異なるマイクロセル形状を有しているマイクロセルを備え得る。
【0025】
電気光学ディスプレイデバイスの電気光学物質層の隔壁は、不透明または透明であり得る。その電気光学ディスプレイデバイスは、少なくとも2種類の隔壁、第一の種類の隔壁および第二の種類の隔壁を備え得、第一の種類の隔壁および第二の種類の隔壁は異なる色を有している。
【0026】
電気光学ディスプレイデバイスは、第一の光透過性電極層および第二の電極層をさらに備え得、電気光学物質層は、第一の電極層と第二の電極層との間に配置されている。その第二の電極層もまた、光透過性であり得る。その第一の光透過性電極層は、色づけられているかまたは無色であり得る。その第二の光透過性電極層は、色づけられているかまたは無色であり得る。電気光学ディスプレイデバイスは、複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセル開口に跨っている密封層をさらに備える。その密封層は、電気光学物質層と第二の電極層との間に配置され得る。その密封層は、不透明または透明であり得る。その密封層は、色づけられているかまたは無色であり得る。
【0027】
電気光学ディスプレイデバイスは、密封層と第二の電極層との間に配置されている接着剤層を備え得る。その接着剤層は、透明であり得る。その接着剤層は、色づけられているかまたは無色であり得る。隔壁が透明である場合、密封層は、透明であり得、接着剤層は、不透明であり得、接着剤層もまた色づけられている。隔壁が透明である場合、密封層もまた、透明であり得、接着剤層もまた、透明であり得、第二の電極層は、色づけられ得る。層が色づけられている場合、色づけられた層の色
は、白、黒、グレー、緑、青、マゼンタ、シアン、黄、オレンジおよびバイオレットからなるグループから選択され得る。
【0028】
電気光学ディスプレイデバイスは、圧電物質を備えている圧電層を備え得る。その圧電層は、電気光学物質層に隣接して位置し得る。電気光学ディスプレイデバイスは、集光し外部電力供給の必要なくデバイスを給電するために光起電性層を備え得る。
【0029】
電気光学ディスプレイデバイスは、対偽造目的のために、製品、文書または通貨紙幣の部分として使われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、複数のマイクロセルを備える電気光学ディスプレイデバイスの断面図を示す。
【
図2】
図2は、複数のマイクロセルを備える電気光学ディスプレイデバイスの上面図を図示する。
【
図3】
図3および
図4は、異なる種類のマイクロセルを有している複数のマイクロセルの上面図を図示する。
【
図4】
図3および
図4は、異なる種類のマイクロセルを有している複数のマイクロセルの上面図を図示する。
【
図5】
図5および
図6は、数々の種類のマイクロセルを有している複数のマイクロセルの上面図を図示する。
【
図6】
図5および
図6は、数々の種類のマイクロセルを有している複数のマイクロセルの上面図を図示する。
【
図7】
図7および
図8は、ハーフトーン画像によって形成されたウォーターマークを有しているデバイスの例を示す。
【
図8】
図7および
図8は、ハーフトーン画像によって形成されたウォーターマークを有しているデバイスの例を示す。
【
図12】
図12は、ロール・ツー・ロールプロセスを使う本発明のマイクロセルを作るための方法を示す。
【
図13-1】
図13Aおよび
図13Bは、熱硬化性樹脂の前駆体でコーティングされた導電性フィルムのフォトマスクを通したフォトリソグラフィの露出を使った、電気光学ディスプレイデバイスのためのマイクロセルの生成を詳しく述べる。
【
図13-2】
図13Cおよび
図13Dは、電気光学ディスプレイデバイスのためのマイクロセルが、フォトリソグラフィを使って製作されている代替的な実施形態を列挙する。
図13Cおよび
図13Dでは、上部露出と下部露出との組み合わせが使われ、一つの横方向の向きにおける隔壁が、フォトマスクの上部露出によって硬化されるようにし、もう一方の方向における隔壁が、不透明なベース導電性フィルムを通した下部露出によって硬化されるようにしている。
【
図14】
図14A~
図14Dは、電気光学ディスプレイで使われているマイクロセルのアレイを充填し、密封するステップを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(詳細な説明)
本発明は、ディスプレイデバイスに、ウォーターマークが加えられ得ることを発見し、そのウォーターマークは、ディスプレイデバイスに安全対策が必要なときに、偽造から保護するのに有用になる。加えて、ウォーターマークは、観賞用のデザイン/装飾目的でも使われ得る。
【0032】
ウォーターマークは、通常、認証、識別または美的理由で使われている、紙、文書、電子ディスプレイ、またはその他の画像基板上に存在し得る固定された画像である。ウォーターマークは、時々、暗い背景などのようなある状況下で、反射光によって、または透過光によって、または特定の視野角で見えるように設計されている。
【0033】
ハーフトーン画像は、多様なサイズおよび隙間のドットを使うことによって画像を生成するために、出版業界で使われる手法である。それは、極めて高質な画像の生成を可能にする。用語「ドット」は、任意の固有の形状に特定されない。ハーフトーンのドットが極めて小さいとき、人間の目には、連続した滑らかなトーンに見えるが、顕微鏡下では、個々のドットが、区別可能である。
【0034】
層Aを指し示している用語「光透過性の」および「透明性の」は、同義で、本明細書では、(層Aがその観察者と層Bとの間にあるような)層を通して見ている観察者が、層Bの中に存在する画像または色を観察することを可能にするために、そのように指定された層が、十分な光を透過させることを意味するために使われている。特に、光透過性の、または透明性の層は、入射する可視光の60%またはそれより多くを透過させる。その層が入射する可視光の60より少なく透過させる場合、その層は、不透明である。
【0035】
電気光学ディスプレイデバイスの「接着剤層」は、デバイスの二つの他の層の間の接着剤接続を構築する層である。接着剤層は、200nmから5mmまたは1μmから100μmの厚さを有し得る。
【0036】
用語「マイクロセル形状」は、開口の上方から見ている観察者から観られるようなマイクロセル開口の二次元形状を指し示す。
【0037】
用語「隔壁高」は、隔壁におけるマイクロセル空洞の底面と上部隔壁との間の距離を指し示す。それは、マイクロセルの深さを定義し、
図1に示される(108)。
【0038】
本発明の電気光学ディスプレイデバイスは、
図1に示されるように、視認側および視認側と反対の側を有する。その電気光学ディスプレイは、複数のマイクロセルを備えている電気光学物質層106を備える。三つのマイクロセル101が、
図1の電気光学ディスプレイデバイス100に示されている。そのマイクロセルは、底面102および開口103を有し、開口103は、境界を有する。それぞれのマイクロセルは、隣接するマイクロセルからそのマイクロセルを分離する多数の隔壁104と対応し得る。マイクロセルの隔壁高108は、マイクロセルの深さを定義し、隔壁におけるマイクロセルの底面と上部隔壁との間の距離を指し示す。マイクロセルの隔壁高は、0.5mmから3μm、または300μmから5μm、または250μmから10μm、または200μmから12μm、または100μmから15μm、または50μmから20μmであり得る。その電気光学ディスプレイデバイス100の電気光学物質層106は、密封層120を備え得る。その密封層120は、それぞれのマイクロセル開口103に跨る。その電気光学ディスプレイデバイスは、基板130を備え得る。
【0039】
電気光学ディスプレイデバイスのマイクロセルは、帯電した色素粒子を備えている電気泳動媒体を含有する。
図1に図示されている電気光学デバイスの例に、黒の円、白の円およびグレーの円で図示されている三種類の帯電した色素粒子がある。そのグレーの円は、白または黒と異なる色を表現し得る。
【0040】
図2は、マイクロセル開口により近いディスプレイデバイスの側から視認される電気光学ディスプレイデバイスの部分を図示する。九つのマイクロセル(101)が
図2に示されている。マイクロセルK(
図2の中央)は、隔壁104によって隣のマイクロセルから分離されている。その点線は、マイクロセルKの開口の境界を図示する。そのマイクロセルKに対するマイクロセル開口の表面積は、単に開口の境界の内側の表面積である。
【0041】
電気光学ディスプレイデバイスは、密封層を備え得、その密封層は電気光学物質層のマイクロセル開口に跨っている。その密封層は、マイクロセルの内側に電気泳動媒体を密封する。その電気光学物質層は、第一の電極層と第二の電極層との間に配置され得る。複数のマイクロセルのそれぞれの開口に跨っている密封層を備える電気光学ディスプレイデバイスにおいて、その電気光学ディスプレイデバイスは、密封層と第二の電極層との間、または密封層と第一の電極層との間に配置される接着剤層を備え得る。その密封層は、透過性であり得る。その接着剤層もまた、透過性であり得る。
【0042】
第二の電極層は、互いに独立して扱われることができる複数の電極層(ピクセル電極)を備え得る。このように、可変な画像がディスプレイデバイス全体を通じて可能にされる。
【0043】
電気光学ディスプレイデバイスは、6種類のマイクロセルを有している電気光学物質層を備え得る。それぞれの種類は、同じフィルファクターを有しているマイクロセルを備える。それぞれの種類のマイクロセルは、他の全ての種類のマイクロセルのフィルファクターと異なるフィルファクターを有する。その電気光学ディスプレイデバイスは、6より多い種類のマイクロセル、または7より多い種類のマイクロセル、または8より多い種類のマイクロセル、または9より多い種類のマイクロセル、または10より多い種類のマイクロセル、または12より多い種類のマイクロセル、または15より多い種類のマイクロセル、または20より多い種類のマイクロセル、または30より多い種類のマイクロセルを有している電気光学物質層を備える。
【0044】
マイクロセルの隔壁の表面積は、隔壁の表面の領域を指し示し、それは、マイクロセル開口と同じ平面上、またはマイクロセル開口の平面と平行な平面上にある。つまり、観察者が、マイクロセル開口およびマイクロセルの隔壁の上側表面を(マイクロセルの底面と反対側に対比して)マイクロセル開口により近接しているデバイス側から垂直に観察することができると仮定すると、マイクロセルを囲む隔壁の表面積は、
図3および
図4、ならびに対応する記載に示されるように、決定できる。
【0045】
電気光学ディスプレイデバイスのマイクロセルそれぞれは、フィルファクターを有する。マイクロセルのフィルファクターは、電気光学的に能動である電気光学物質層の表面の尺度を提供する。電気的能動は、表面に表示される画像が可変であることが可能であることを意味する。そのマイクロセルのフィルファクターは、式1で決定される。
フィルファクター=A1/(A1+A2) (式1)
A1は、マイクロセル開口の表面積であり、A2は、(マイクロセルの底面に近接する側からに対比して)マイクロセル開口により近接している電気光学ディスプレイデバイスの側から視認されるときにマイクロセルを囲んでいる隔壁の表面積である。マイクロセルM(または任意のマイクロセル)の隔壁の表面積A2は、下記に記載されている方法によって決定されている。
【0046】
図3および
図4に図示される一つのシナリオは、六角形のマイクロセル開口を有している電気光学ディスプレイデバイスに関わっている。
図3および
図4は、マイクロセル開口により近接しているデバイス側からのデバイスの部分のビューを図示する。このシナリオでは、マイクロセルMは、マイクロセル開口の表面積A
1を有し、マイクロセルMは、マイクロセルNを含む他のマイクロセルと隣接している。マイクロセルNは、表面積A
1と異なるマイクロセル開口の表面積A
n1を有する。この場合、マイクロセルMのマイクロセル開口の表面積A
1は、マイクロセルNのマイクロセル開口の表面積A
n1よりも大きい。A
2の決定の第一のステップとして、マイクロセルMおよびマイクロセルNを分離する隔壁は、境界線Bによって分割される。境界線Bは、マイクロセルMの開口の境界のそれぞれの点からd1離れていて、かつ二つのマイクロセルの間にある一連の点によって画定され、d1が、式2によって提供され、
d1=[A
1/(A
1+A
n1)]×d (式2)
dは、マイクロセルNの開口の境界に最も近接している点から、マイクロセルMの開口の境界の点までの距離である。つまり、マイクロセルNは、開口の境界が、マイクロセルMの開口の境界の特定の点に最も近接しているマイクロセルである。
【0047】
マイクロセルMと、(マイクロセルN以外の)マイクロセルMに隣接している他の全てのマイクロセルとを分離する隔壁に対する境界線を画定するプロセスは、マイクロセルNを囲む境界線が画定され、かつ閉じられた線として完成するまで、繰り返される。マイクロセルNの開口の境界の任意の点が、デバイスの任意の他のマイクロセル開口の境界における任意の点より、マイクロセルMの開口の境界の任意の点に距離が近い場合、マイクロセルは、マイクロセルNに隣接していると考えられる。
【0048】
図3にも示されている同じディスプレイデバイスの他のシナリオにおいて、マイクロセルMは、マイクロセル開口の表面積A
1を有し、マイクロセルMは、マイクロセルOに隣接している。マイクロセルOは、A
1と同じマイクロセル開口の表面積A
O1を有する。このシナリオにおいて、マイクロセルMとマイクロセルOとを分離する隔壁の表面上の境界線は、マイクロセルMの開口の境界とマイクロセルOの開口の境界との間の中間点において境界線Lによって分割されている。マイクロセルMと(マイクロセルO以外の)マイクロセルMに隣接している他の全てのマイクロセルとを分離する隔壁に対する境界線を画定するプロセスは、マイクロセルNを囲む境界線が画定され、かつ閉じられた線として完成するまで、繰り返される(
図3および
図4の点線を参照)。
【0049】
マイクロセルを囲む境界線が画定されたとき、隔壁の表面積A2は、対応するマイクロセルに対して、幾何学的に計算されるか、または図を用いて測定されることが可能である。(容易に幾何学的に計算され、もしくは図を用いて決定されるマイクロセル開口の表面積である)表面積A2および所与の表面積A1の決定のあと、特定のマイクロセルに対するフィルファクターは、式1から計算されることができる。二つのマイクロセルM、Nを互いから分離する隔壁の各単位面積は、マイクロセルMを囲む隔壁の表面積(A2)の部分、またはマイクロセルMを囲む隔壁の表面積(An2)の部分のどちらかであって、複数のマイクロセルの任意の他のマイクロセルの部分ではない。
【0050】
圧電物質は、機械的負荷の適用に反応して、電荷を生み出すことができる物質である。圧電物質に機械的負荷が適用されるとき、物質シフトにおいて正電荷および負電荷が、集中し、結果として、バッテリーまたは外部電源の必要なく、デバイスを動作するために使われることができる電場が、生み出される。例えば、圧電物質を備えるデバイスを屈曲させる、または機械的負荷を導入することによって、電圧が生み出され得る。この電圧は、デバイスを動作するために利用されることができる。圧電物質の非制限的な例は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、石英(SiO2)、ベルリナイト(AlPO4)、リン酸ガリウム(GaPO4)、トルマリン、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、リチウムタルタン石、ランタンガリウムケイ酸塩、および酒石酸カリウムナトリウムを含む。圧電電気泳動ディスプレイの例は、米国特許出願第16/415022号に開示されており、米国特許出願公開第2019/0352973号として公開されていて、本明細書では、その全体が参照によって組み込まれている。本発明において、圧電物質を備えている層は、電気泳動ディスプレイデバイスの色状態を変化させるために、電気泳動物質層の帯電した色素粒子を駆動させるように、電気光学ディスプレイデバイスを動作するために使われ得る。
【0051】
本発明の電気光学ディスプレイデバイスは、集光デバイスでもあり得る。つまり、入射光エネルギーを電気的エネルギーに変換することによって、その動作のためのエネルギーを集めることができる。これは、電気光学ディスプレイデバイスの表面において、または電気光学ディスプレイデバイスが取り付けられた基板の表面もしくはその近くにおいて、光起電性のセル層が含まれていることによって果たされることができる。集光電気泳動ディスプレイデバイスの例は、米国特許出願第16/815,269において開示されており、米国特許出願公開第2020/0295222で公開されていて、本明細書では、その全体において参照によって組み込まれている。入射光エネルギーによって生み出された電気エネルギーは、電気泳動ディスプレイデバイスの色状態を変化させるために、電気泳動物質層の帯電した色素粒子を駆動することができる。
【0052】
ウォーターマークの特徴は、様々な種類の複数のマイクロセルを有する電気光学物質層を設計される。その様々な種類のマイクロセルは、異なるフィルファクターを有する。異なるフィルファクターを有しているマイクロセルの組み合わせは、ハーフトーン画像の「ドット」に相当し、それは、高質な画像を生み出すために、印刷業界で使われている手法である。
【0053】
図5、
図6、
図7、および
図8は、本発明による電気光学ディスプレイデバイスの上面図を図示する。
図5は、六角形の開口を有する複数のマイクロセルを備えているデバイスを図示する。そのデバイスは、白く見えるマイクロセル壁を備える。そのデバイスの全てのマイクロセルは、暗い状態において存る。複数のマイクロセルは、異なるフィルファクターを有している様々な種類のマイクロセルを備える。
図5の電気光学デバイスの下方部分は、大きいフィルファクターを持つマイクロセルを有し、そのマイクロセル開口の表面積は、マイクロセルを囲んでいる隔壁の表面積よりもはるかに大きい。
図5のマイクロセルの底から上部に向かって動くと、マイクロセルのフィルファクターは、徐々により小さくなる。このように、この電気光学ディスプレイデバイスは、(異なるフィルファクターを有している)数々の種類のマイクロセルを備える。事実、このデバイスのマイクロセルの各列は、他の全ての列と異なる種類のマイクロセルを備えており、ハーフトーン画像を形成している。これは、結果として
図5に示されるウォーターマークになる。本発明の電気光学ディスプレイデバイスのマイクロセルのフィルファクターは、0.01から0.99、または0.10から0.90、または0.15から0.85であり得る。
【0054】
図6は、電気光学ディスプレイデバイスの部分的な上面図を図示し、10のマイクロセル(A-J)を示している。この事例では、10のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、他の9のマイクロセルと異なるフィルファクターを有する。このように、デバイスのこの部分では、それぞれのマイクロセルは,異なる種類のマイクロセルを表現する。
【0055】
図7および
図8は、ハーフトーン画像によって、異なるフィルファクターを有している数々の種類のマイクロセルを備えているマイクロセルから作成されたウォーターマークの他の例を図示する。この仕法で作成されたウォーターマークは、詳細かつ正確な画像を表現し、デバイスの美的価値、ならびに認証および対偽造能力を向上させている。
【0056】
本発明の電気光学ディスプレイデバイスの向上された美観および認証能力もまた、デバイスが、可変な画像を表示可能であるという事実に依存する。その電気光学ディスプレイデバイスは、複数のマイクロセルを有している電気光学物質層を備える。複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、無極性流体の中で、電気光学物質層を横切って適用された電場に応じて、視認側に向かって、あるいはデバイスの視認側と反対側に向かって動くことができる帯電した色素粒子を備える。その電場は、第一の電極層および第二の電極層を介して適用され得、その中で電気光学物質層は、第一の電極層と第二の電極層との間に位置している。このように、それぞれのマイクロセルは、可変な色を有することができ、デバイスは、異なるフィルファクターを有している異なる種類のマイクロセルによって形成された固定されたウォーターマーク画像に加えて、所望の画像を表示することができる。
【0057】
特に、一つの例では、複数のマイクロセルは、無極性流体の中に一種類の帯電した色素粒子を備えている電気泳動媒体を含む。その無極性流体は、可溶性染料によって染められ得るか、またはそれは色付けされなくてもよい。マイクロセル上の第一の電極層と第二の電極層との間に電位が適用されたとき、帯電した色素粒子は、電気泳動媒体を介してマイクロセルの片側に向かって移動し、視認側から見られる色素粒子の色または溶媒の色のどちらかを引き起こす。
【0058】
他の例では、複数のマイクロセルは、無極性流体の中に、白の色素粒子および黒の色素粒子のような二種類の帯電した色素粒子を備えている電気泳動媒体を含む。第一の種類の色素粒子は、第一の電荷極性を有し、第二の種類の色素粒子は、第二の電荷極性を有する。その第二の電荷極性は、第一の電荷極性と反対である。この場合、マイクロセルを横切って第一の電極層と第二の電極層との間に電圧差が課されたとき、二種類の帯電した色素粒子は、電気泳動媒体を介してマイクロセルの両端へ動く。このように、二種類の帯電した色素粒子の色の一方は、マイクロセルの視認側で見えるだろう。
【0059】
他の例では、複数のマイクロセルは、無極性流体の中に(第一の種類の帯電した色素粒子、第二の種類の帯電した色素粒子、および第三の種類の帯電した色素粒子の)三種類の帯電した色素粒子を備えている電気泳動媒体を含む。第一の種類の帯電した色素粒子および第二の種類の帯電した色素粒子は、第一の電荷極性を有し、第三の種類の帯電した色素粒子は、第二の電荷極性を有し、第二の電荷極性は、第一の電荷極性と反対である。
【0060】
他の例では、複数のマイクロセルは、無極性流体の中に(第一の種類の帯電した色素粒子、第二の種類の帯電した色素粒子、第三の種類の帯電した色素粒子、および第四の種類の帯電した色素粒子の)四種類の帯電した色素粒子を備えている電気泳動媒体を含む。第一の種類の帯電した色素粒子および第二の種類の帯電した色素粒子は、第一の電荷極性を有し、第三の種類の帯電した色素粒子および第四の種類の帯電した色素粒子は、第二の電荷極性を有し、第二の電荷極性は、第一の電荷極性と反対である。第一の種類の帯電した色素粒子は、第二の帯電した色素粒子よりも高い電荷を有し得、第三の種類の帯電した色素粒子は、第四の種類の帯電した色素粒子よりも高い電荷を有し得る。
【0061】
他の例では、複数のマイクロセルは、無極性流体の中に(第一の種類の帯電した色素粒子、第二の種類の帯電した色素粒子、第三の種類の帯電した色素粒子、および第四の種類の帯電した色素粒子の)四種類の帯電した色素粒子を備えている電気泳動媒体を含む。第一の種類の帯電した色素粒子、第二の種類の帯電した色素粒子、および第三の種類の帯電した色素粒子は、第一の電荷極性を有し、第四の種類の帯電した色素粒子は、第二の電荷極性を有し、第二の電荷極性は、第一の電荷極性と反対である。第一の種類の帯電した色素粒子は、第二の帯電した色素粒子よりも高い電荷を有し得、第三の種類の帯電した色素粒子は、第二の種類の帯電した色素粒子よりも高い電荷を有し得る。
【0062】
他の例では、複数のマイクロセルは、無極性流体の中に、五種類または六種類の帯電した色素粒子を備えている電気泳動媒体を含む。
【0063】
電気泳動媒体における帯電した色素粒子は、白、黒、シアン、マゼンタ、黄、赤、青、および緑からなるグループから選択された色を有している帯電した色素粒子を備え得る。
【0064】
マイクロセル開口は、異なる形状、例えば、三角形、四角形、円、楕円形、または六角形(ハニカム)構造のような多角形を有し得る。同じ電気光学物質層は、様々なマイクロセル形状を有し得る。
【0065】
複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセル開口は、300μmより小さいマイクロセル幅を有し得る。マイクロセル開口の幅は、マイクロセル開口の境界の二点の間の最長直線距離として定義される。マイクロセル幅は、マイクロセルのそれぞれの種類で異なり得る。同じ種類のマイクロセルでも、異なる幅を有し得る。マイクロセル開口の幅は、300μmから1μm、または250μmから5μm、または200μmから10μm、または2mmから2μm、または1mmから4μm、または800μmから8μm、または500μmから10μm、または400μmから12μm、または300μmから15μmの範囲であり得る。マイクロセル開口を分離する隔壁幅(または同義語として、マイクロセル壁の厚さ、
図4中のdによって表現されている)もまた、2mmから3μm、または1mmから5μm、または800μmから8μm、または500μmから10μm、または400μmから12μm、または300μmから15μm、または300μmから1μmの間に及ぶ。
【0066】
本発明の電気光学ディスプレイデバイスは、マイクロセル種のマイクロセル、つまり、同じフィルファクターを有しているが、異なる隔壁高または異なる形状を有しているマイクロセルを備え得る。異なる壁高は、マイクロセルの底の厚さを変動させることによって果たされ得る。つまり、マイクロセルの底面は、マイクロセルの内側で異なる高さに位置決めされ得る。
【0067】
本発明の電気光学ディスプレイデバイスは、マイクロセル種のマイクロセル、つまり、同じフィルファクターを有しているが、異なる隔壁の色を有しているマイクロセルを備え得る。加えて、本発明の電気光学ディスプレイデバイスは、(異なるフィルファクターを有している)異なる種類のマイクロセルを備え得、その中に異なる色を持つ隔壁を有する二種類のマイクロセルがある。
【0068】
本発明によって作成されたウォーターマークは、ある視野角で、および/または、ある光状況下で見え得る。そのウォーターマークは、(電気泳動媒体の流体における帯電した色素粒子の動きに基づいて)表示された所望の正規の画像に干渉しないだろう。
【0069】
本発明の電気泳動ディスプレイデバイスの例は、
図9に提供されている。
図9は、第一の電極層910、隔壁904を持つマイクロセル901Aおよびマイクロセル901B、密封層920、随意の接着剤層930、ならびに第二の電極層940を備えているデバイス900の一部の断面図である。そのデバイスは、視認側および視認側と反対側を有する。この例では、その密封層は、電気泳動媒体を備えているマイクロセル空洞との関係で、デバイスの視認側から離れた側により近接して位置し得る。しかし、他のデバイスの例では、密封層は、電気泳動媒体を備えているマイクロセル空洞との関係で、視認側により近接して位置し得る。
【0070】
本発明の第一の実施形態において、隔壁は、不透明である。デバイスの不透明な隔壁は、全て単色を有し得、またはデバイス全体を通じて様々な隔壁が、異なる色を有し得る。
【0071】
本発明の第二の実施形態において、隔壁は、透明であり得る。この第二の実施形態において、デバイスは、色づけられた層を備え得、それは、ウォーターマークの外観を強化し得る。その密封層もまた、不透明または透明であり得る。
図9に図示されている例では、密封層は、不透明であり得、電気泳動媒体を備えているマイクロセル空洞との関係で、デバイスの視認側から離れた側により近接して位置し得る。この例では、その密封層は、色づけられ得る。第一の電極層および隔壁が透明であるとすると、不透明な密封層の色は、デバイスの視認側から見ている観察者に見えるだろう。つまり、ウォーターマークは、密封層の色を有するように見えるだろう。ウォーターマークは、関連するマイクロセルの電気泳動媒体の光学的状態が、密封層の光学的状態と区別可能であるとき、観察者に見えるだろう。
【0072】
電気光学ディスプレイデバイスの第二の実施形態の他の例において、密封層は透明である。この例では、デバイスは、密封層と第二の電極層との間に位置している接着剤層を備える。その接着剤層は、不透明であり得る。この例は、
図10に図示されており、密封層が透明であり、かつ接着剤層が不透明である。
図10は、第一の電極1010、隔壁1004を有しているマイクロセル1001、密封層1020、接着剤層1030、および第二の電極層1040を備えている電気光学ディスプレイデバイス1000の側面図を図示する。電気光学ディスプレイデバイス1000のこの例では、接着剤層1030は、色づけされ得る。第一の電極層1010、隔壁1004、および密封層1020が全て透明であるとすると、不透明な接着剤層1030の色は、デバイスの視認側から見ている観察者に見えるだろう。つまり、ウォーターマークは、接着剤層1030の色を有するように見えるだろう。ウォーターマークは、関連するマイクロセルの電気泳動媒体の状態が、接着剤層1030の状態と区別可能であるとき、観察者に見えるだろう。ウォーターマークの色の外観は、透明な密封層1020に染料を含んでいることによって、制御可能にさらに改変され得る。
【0073】
電気光学ディスプレイデバイスの第二の実施形態のさらに他の例において、密封層と接着剤層との両方が、透明である。第二の電極層は、不透明であり得る。この例は、
図11に図示され、密封層および接着剤層が透明であり、かつ第二の電極層が不透明である。
図11は、第一の電極層1101、隔壁1104を有しているマイクロセル1011、密封層1120、接着剤層1130、および第二の電極層1140を備えている電気光学ディスプレイデバイス1100の側面図を図示する。この場合、第二の電極層1140は、色づけられ得る。第一の電極層1110、隔壁1104、密封層1120、および接着剤層1130が、全て透明であるとすると、不透明な第二の電極層1140の色は、デバイスの視認側から見ている観察者に見えるだろう。つまり、ウォーターマークは、接着剤層1130の色を有するように見えるだろう。そのウォーターマークは、関連するマイクロセルの電気泳動媒体の状態が、第二の電極層の状態と区別可能である場合、観察者に見えるだろう。ウォーターマークの色の外観は、透明な密封層1120、および/または透明な接着剤層1130に染料を含んでいることによって、制御可能にさらに改変され得る。
【0074】
電気泳動媒体を備えているマイクロセル空洞との関係で、密封層が、デバイスの視認側により近接して位置している場合、その密封層は、透明である。この場合、密封層との関係で電気光学物質層のもう一方の側に位置している層が、色づけられることができることを、同意の分析が、示すだろう。
【0075】
他の例において、本発明の電気光学ディスプレイデバイスは、第一の光透過性電極層、複数のマイクロセルを備えている電気光学物質、随意の密封層、随意の接着剤層、および第二の光透過性電極層を備え得る。複数のマイクロセルは、透明の隔壁によって互いに分離されており、複数のマイクロセルのそれぞれのマイクロセルは、開口を有し、電気泳動媒体を含んでおり、その電気泳動媒体は、無極性流体の中に帯電した色素粒子を備えている。ウォーターマークは、ハーフトーン画像によって複数のマイクロセルから形成されており、その中で複数のマイクロセルは、五種類より多いマイクロセルを備えており、それぞれの種類のマイクロセルは、他の全ての種類と異なるフィルファクターを有している。この例では、隔壁は、デバイスが取り付けられている基板の色を有する。その基板は、印刷された画像であり得、ウォーターマークの外観を極めて複雑にし、潜在的にそのデバイスの美的価値および認証価値を強化している。さらに、2またはそれより多くの、類似または非類似のそのようなデバイスは、基板上へ積み重ねられ得、複雑性およびウォーターマークの価値をさらにもっと強化している。
【0076】
電気光学ディスプレイデバイスが、色づけられている層を備える場合、その色は、白、黒、グレー、マゼンタ、シアン、黄、青、緑、赤、オレンジ、バイオレット、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択された色を有し得る。その層は、メタリックな陰影も有し得る。
【0077】
(マイクロセルを構築する手法)マイクロセルは、バッチ式プロセスまたは米国特許第6,933,098号で開示されているようなロール・ツー・ロールプロセスのどちらかで形成され得る。後者は、電気光学ディスプレイデバイスを含んでいる多種の応用においての使用のための区画の生成のための、持続的、低コスト、高いスループットの製造技術を提示する。本発明と共に使用に適しているマイクロセルアレイは、
図12に図示されているように、マイクロエンボスを用いて作成されることができる。雄型1220は、
図12に示されるようにウェブ1240の上方またはウェブ1240の下方(示されていない)のどちらかに置かれ得るが、代替の配置が可能である。米国特許第7,715,088号を参照(それは、本明細書では、その全体が参照によって組み込まれている)。導電性基板は、デバイスの裏面になるポリマー基板上に導電性フィルム1210(第一の電極)を形成することにより構築され得る。次いで、熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂またはそれらの前駆体1220を備えている組成が、導電性フィルム上にコーティングされる。その熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性樹脂の前駆体層は、ローラー、プレートまたはベルトの形をした雄型によって、熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性樹脂の前駆体層のガラス転移温度よりも高い温度でエンボス加工される。
【0078】
マイクロセルの調製のための熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性樹脂の前駆体は、多機能性アクリレートまたはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシドおよびオリゴマーまたはそれらのポリマー、ならびに同様のものであり得る。多機能性エポキシドおよび多機能性アクリレートの組み合わせは、望ましい物理的機械的性質を果たすのに極めて有用でもある。ウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレートのように、柔軟性を授けている架橋可能なオリゴマーは、エンボス加工されたマイクロセルの曲げ抵抗を向上させるために加えられ得る。その組成は、ポリマー、オリゴマー、モノマーおよび添加剤、またはオリゴマー、モノマーおよび添加剤のみを含有し得る。この部類の物質のガラス転移温度(またはTg)は、大抵、約-70℃から約150℃、好ましくは約-20℃から約50℃に及ぶ。マイクロエンボスプロセスは、通常Tgよりも高い温度で実行される。加熱された雄型または型が圧迫する加熱されたハウジング基板は、マイクロエンボス温度および圧力を制御するために使われ得る。
【0079】
図12に示されるように、前駆体層がマイクロセル1230のアレイを露呈させるように硬化している間または後に、離型する。その前駆体層の硬化は、冷却、溶媒蒸発、放射線による架橋、熱または水分によって成され得る。UV放射によって熱硬化性樹脂の前駆体の硬化が成される場合、UVは、ウェブの底または上部から透明な導電性フィルム上へと放射し得る。代替的に、UVランプは、型の内側に置かれ得る。この場合、型は、UV光を予めパターン化された雄型を通して熱硬化性樹脂の前駆体層上へ放射させるために、透明でなければならない。雄型は、エッチングまたは電気めっきのどちらかに続くダイアモンド切削プロセスまたはフォトレジストプロセスのような、任意の適切な方法によって調製され得る。雄型のマスターテンプレートは、電気めっきのような任意の適切な方法によって製造され得る。電気めっきでは、ガラスベースは、クロムインコネルのようなシードメタルの薄い層(通常3000Å)を用いてスパッタリングされる。次いで、型は、フォトレジストの層でコーティングされ、UVに露出される。マスクは、UVとフォトレジストの層との間に置かれる。露出されたフォトレジストの領域は硬化する。このとき、露出されていない領域は、適切な溶媒を用いてそれらを洗浄することによって除去される。残りの硬化したフォトレジストは、乾燥され、シードメタルの薄い層を用いて再びスパッタリングされる。このときマスターは電鋳の準備ができている。電鋳に使われる通常の物質は、ニッケル・コバルトである。代替的に、マスターは、電鋳または無電解ニッケルめっきによってニッケルで作られることができる。型の底面は、通常約50ミクロンから400ミクロンの間である。そのマスターは、“Replication techniques for micro-optics”,SPIE Proc.Vol.3099,pp.76-82(1997)に記載されているような、レーザー干渉、電子線書き込み、ドライエッチング、化学エッチングまたはレーザー書き込みを含んでいる他のマイクロエンジニアリング技術を使って、作られることもできる。代替的に、その型は、プラスチック、セラミックまたは金属を使う写真機械加工によって作られることができる。
【0080】
UV硬化樹脂の組成を適用するのに先立って、型は、離型プロセスにおいて役立つ離型剤を用いて処理され得る。そのUV硬化樹脂は、分配に先立って脱ガスされ得、随意に溶媒を含有し得る。その溶媒は、存在する場合、容易に蒸発する。そのUV硬化樹脂は、雄型を覆う、コーティング、浸漬、注入または同様のもののような任意の適切な手段によって分配される。ディスペンサーは、動いているまたは静止し得る。導電性フィルムは、UV硬化樹脂が重ね合わせられている。圧力は、必要な場合、樹脂とプラスチックとの間に適当な接合を確保するために、かつマイクロセルの底面の厚さを制御するために適用され得る。その圧力は、ラミネートローラー、真空成形、プレスデバイスまたは他の同様の手段を使って適用され得る。雄型がメタリックかつ不透明である場合、プラスチック基板は、通常樹脂を硬化するために使われる化学放射線に対して透明である。逆に、その雄型は、透明であることができ、プラスチック基板は、化学放射線に対して不透明であることができる。成形された特徴の転写シート上への良好な転写を得るために、導電性フィルムは、型表面に対する良好な離型性を有すべきであるUV硬化樹脂に対して、良好な接着力を有する必要がある。
【0081】
(フォトリソグラフィ)マイクロセルは、フォトリソグラフィを使って生成されることもできる。マイクロセルアレイを製作するためのフォトリソグラフィプロセスは、
図13Aおよび
図13Bに図示されている。
図13Aおよび
図13Bに示されるように、マイクロセルアレイ1340は、マスク1346を通して投影される画像に対応している隔壁1341bを形成するために、既知の方法によって導電性電極フィルム1342上へコーティングされた放射性硬化物質1341aのUV光(または代替的に放射線の他の形態、電子線および同様のもの)へのマスク1346を通した露出によって調製され得る。そのベース導電性フィルム1342は、好ましくは(プラスチック物質を備え得る)支えとなる基板ベースウェブ1343に搭載されている。
【0082】
図13Aでのフォトマスク1346において、暗い四角形1344は、不透明な領域を表現しており、暗い四角形の間の空間は、マスク1346の透明な領域1345を表現する。UVは、透明な領域1345を通って放射性硬化物質1341a上へ放射する。その露出は、好ましくは放射性硬化物質1341a上へ直接行われ、すなわちUVは、基板1343またはベース導電体1342を通過しない(上部露出)。この理由で、基板1343も導電体1342も、UVまたは他の採用された放射性波長に対して透明である必要がない。
【0083】
図13Bに示されるように、露出された領域1341bは、硬化し、このとき(マスク1346の不透明な領域1344によって保護されている)露出されていない領域は、適切な溶媒またはディベロッパーによってマイクロセル1347を形成するために除去される。その溶媒またはディベロッパーは、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、アセトン、イソプロパノールまたは同様のもののような放射性硬化物質を溶かすまたは粘度を減らすために一般的に使われているものから選択される。そのマイクロセルの調製は、ウェブを支える導電性フィルム/基板の下にフォトマスクを置くことによって類似的に達成され得、この場合フォトマスクを通って底および基板から放射するUV光は、放射線に対して透明である必要がある。
【0084】
(像の露出)像の露出による本発明のマイクロセルの調製のさらに他の代替的な方法が、
図13Cおよび
図13Dに図示されている。不透明な導電性ラインが使われているとき、導電性ラインは、底からの露出のためにフォトマスクとして使われることができる。耐久性のあるマイクロセルの隔壁は、導電性ラインに対して直行する不透明な線を有している第二のフォトマスクを通した上部からの追加の露出によって形成される。
図13Cは、本発明のマイクロセルアレイ1350を生成するために、上部と底との両方の露出原理の使用を図示する。ベース導電性フィルム1352は、不透明であり、かつ線状にパターン化されている。ベース導電体1352および基板1353上にコーティングされている放射性硬化物質1351aは、底から(第一のフォトマスクとして機能する)導電性ラインパターン1352を通して露出される。第二の露出は、「上部」側から、導電性ライン1352に対して直行する線状パターンを有している第二のフォトマスク1356を通して行われる。線1354の間の空間1355は、UV光に対して実質的に透明である。このプロセスでは、隔壁物質1351bは、一つの横方向の向きに底から上へ硬化し、直行する方向に上部から下へ硬化し、完全なマイクロセル1357を形成するように結合する。
図13Dに示されるように、露出されていない領域は、次いで、上記に記載されているように、マイクロセル1357を露呈するために溶媒またはディベロッパーによって除去される。
【0085】
マイクロセルは、(マイクロセルとの良好な適合性を有し、電気泳動媒体に作用しない
)熱可塑性エラストマーから構築され得る。有用な熱可塑性エラストマーの例は、ジブロック、トリブロックおよびマルチブロックのコポリマーのABAおよび(AB)nの種類を含み、その中でAは、スチレン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレンまたはノルボルネンであり、Bは、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ジメチルシロキサンまたはプロピレン硫化物であり、AおよびBは、同じ化学式であることができない。数字nは、≧1であり、好ましくは1から10である。SB(ポリ(スチレン-b-ブタジエン))、SBS(ポリ(スチレン-b-ブタジエン-スチレン))、SIS(ポリ(スチレン-b-イソプレン-b-スチレン))、SEBS(ポリ(スチレン-b-エチレン/ブチレン-b-スチレン)) ポリ(スチレン-b-ジメチルシロキサン-b-スチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-プロピレン 硫化物-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-ジメチルシロキサン-b-α-メチルスチレン)のようなスチレンまたはox-メチルスチレンのジブロックまたはトリブロックのコポリマーはとりわけ有用である。(Kraton Polymer(Houston,Tex.)製の)Kraton D and G seriesのような商業的に手に入るスチレンブロックのコポリマーは、とりわけ有用である。ポリ(エチレン-co-プロピレン-co-5-メチレン-2-ノルボルネン)のような結晶性ゴムまたは(Exxon Mobil(Houston,Tex.)製の)Vistalon 6505のようなEPDM(エチレンプロピレンジエンターポリマー)ゴムおよびそれらのグラフトコポリマーもまた、極めて有用であることがわかっている。
【0086】
熱可塑性エラストマーは、マイクロセルの中のディスプレイ流体と混ざらず、ディスプレイ流体の引力より小さい、特定の引力を引き出す溶媒または溶媒混合物に溶かされ得る。低表面張力溶媒は、マイクロセルの隔壁および電気泳動流体を超える、より良好な湿潤性質のため、オーバーコーティング組成が好ましい。35dyne/cmより低い表面張力を有している溶媒または溶媒混合物は、好ましい。30dyne/cmより低い表面張力は、より好ましい。適している溶媒は、アルカン(好ましくは、ヘプタン、オクタンまたはExxon Chemical Company製のアイソパー溶媒のようなC6-12アルカン、ノナン、デカンおよびそれらの異性体)、シクロアルカン(好ましくは、シクロヘキサンおよびデカリンおよび同様のもののようなC6-12シクロアルカン)、アルキルベンゼン(好ましくは、トルエン、キシレンおよび同様のもののようなモノC1-6アルキルベンゼンまたはジC1-6アルキルベンゼン)、アルキルエステル(好ましくは、酢酸エチル、酢酸イソブチルおよび同様のもののようなC2-5アルキルエステル)および(イソプロパノールおよび同様のものならびにそれらの異性体のような)C3-5アルキルアルコールを含む。アルキルベンゼンおよびアルカンの混合物は、とりわけ有用である。
【0087】
ポリマー添加物に加えて、ポリマー混合物もまた、湿潤剤(界面活性剤)を含む。(3MCompany製のFC 界面活性剤、DuPont製のZonyl フッ素系界面活性剤、フッ素アクリル酸、フッ素メタクリル酸、フッ素置換長鎖アルコール、プレフルオロ置換長鎖カルボン酸およびそれらの誘導体、ならびにOSi(Greenwich,Conn.)製のSilwet Silicone 界面活性剤のような)湿潤剤もまた、マイクロセルへの密封剤の接着力を向上させ、より柔軟なコーティングプロセスを提供するために、組成中に含まれ得る。架橋剤(例えば、4,4’-ジアジドジフェニルメタルおよび2,6-ジ(4’-アジドベンンザル)-4-メチルシクロヘキサノンのようなビスアジド)、加硫剤(例えば、2-ベンジチアゾリルジスフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド)、多機能性モノマーまたはオリゴマー(例えばヘキサンジオール、ジアクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレン)、熱開始剤(例えば、過酸化ジラウロイル、過酸化ベンゾイル)ならびに光開始剤(例えば、イソプロピルチオキサンテン(ITX)、Ciba-Geigy製のIrgacure 651およびIrgacure) 369)を含んでいる他の材料もまた、オーバーコーティングプロセスの間または後の架橋または重合反応によって密封層の物理的機械的性質を強化するために、非常に有用である。
【0088】
マイクロセルが生成された後、それらは、適切な電気泳動媒体で充填される。マイクロセルアレイ1460は、上記に記載されている方法のいずれかによって調製され得る。
図14A-
図14D中の断面に示されるように、マイクロセルの隔壁1461は、開いたセルを形成するために基板1463から上向きに伸びる。そのマイクロセルは、混合物を不動態化するためにプライマー層1462を含み得、マイクロセル物質が電気泳動媒体1465含有している混合物と作用しないようにし得る。
【0089】
マイクロセルは、次に無極性流体の中に帯電した色素粒子1465を備えている電気泳動媒体1464で充填される。そのマイクロセルは、多種の手法を使って充填され得る。いくつかの例では、ブレードコーティングは、マイクロセルをマイクロセルの隔壁1461の深さまで充填するために使われ得る。他の例では、インクジェットタイプのマイクロインジェクションは、マイクロセルを充填するために使われることができる。さらに他の例では、マイクロニードルアレイは、マイクロセルのアレイを充填するために使われ得る。
【0090】
図14Cに示されるように、充填の後、マイクロセルは、密封層になるポリマー1466を適用することによって密封される。いくつかの例では、密封プロセスは、熱、乾燥熱風またはUV放射線への露出に関わり得る。ポリマー1466は、電気泳動媒体に適合しているが、電気泳動媒体1464の流体によって溶けない。それにより、最終のマイクロセルの構造は、漏れに対してほとんど不浸透であり、層間剥離なしで曲げに耐えることができる。
【0091】
多種の個々のマイクロセルは、反復的にフォトリソグラフィを使うことによって所望の電気泳動媒体で充填され得る。そのプロセスは、通常、ポジティブに働くフォトレジストの層で空のマイクロセルのアレイをコーティングし、ポジティブフォトレジストを像露出させることによりある数のマイクロセルを選択的に開け、続いてフォトレジストを現像し、開けられたマイクロセルを所望の混合物で充填し、そし充填されたマイクロセルをて密封プロセスによって密封することを含む。
【0092】
マイクロセル1460が充填された後、密封されたアレイは、仕上げ層1468で、好ましくは、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、または熱、水分もしくは放射線硬化接着剤であり得る接着剤層で仕上げ層1468をプレコーティングすることによって、ラミネートされ得る。ラミネート接着剤は、上部導電性フィルムを通したUVのような放射線によって、後者が放射線に対して透明である場合、後硬化され得る。
【0093】
本デバイスの電気光学ディスプレイデバイスは、圧電層を備え得、外部エネルギー供給の必要によるデバイスの動作を可能にしている。
図15Aは、そのようなデバイスの例を図示する。
図15の電気光学ディスプレイ1500は、第一の電極1510、第二の電極1540、圧電物質を備えている圧電層1580および複数のマイクロセルを備えている電気光学物質層1560を備える。そのデバイスは、二つの隣接する層を併せて接合するために1またはそれより多い接着剤層も備え得る。その1またはそれより多い接着剤層は、透明であり得る。電極層のうち少なくとも一つは、光透過性である。両方の電極層が、光透過性であり得る。つまり、デバイス1500の全ての層は、透明であり得る。それが真である場合、ディスプレイ画像は、両側から視認され得る。機械的負荷の圧電層への適用(例えばデバイスを屈曲させることによる)は、電気泳動物質の色素の動きを引き起こすために利用されることができる電位を生み出す。つまり、デバイスの光学状態は、変化し得る。圧電層を備えるこの種のデバイスは、バッテリーのような外部電源なしで動作することができる。
【0094】
圧電を備える電気光学ディスプレイデバイスの他の例は、
図15Bの電気光学ディスプレイ1501に提供されている。そのディスプレイデバイスは、第一の電極1511、第二の電極1541、複数のマイクロセルを備えている電気光学物質層1561および圧電物質1581を備えている圧電層を備える。そのデバイスは、二つの隣接する層を併せて接合するために1またはそれより多い接着剤層も備え得る。その1またはそれより多い接着剤層は、透明であり得る。電極層のうち少なくとも一つは、光透過性である。両方の電極層が、光透過性であり得る。つまり、デバイス1501の全ての層は、透明であり得る。それが真である場合、ディスプレイ画像は、両側から視認され得る。機械的負荷の圧電層への適用(例えばデバイスを屈曲させることによる)は、電気泳動物質の色素の動きを引き起こすために利用されることができる電位を生み出す。つまり、デバイスの光学状態は、変化し得る。圧電層を備えるこの種のデバイスは、バッテリーのような外部電源なしで動作することができる。
【0095】
本発明がそれらの特定の例の参照と共に記載されてきたが、本発明の範疇から逸脱することなく、様々な変化がなされ得、均等物が、置換され得ることは、当業者によって理解されるべきである。加えて、本発明の目標および範疇に、特有の状況、物質、組成、プロセス、プロセス段階(単数または複数)を適応させるために多くの修正がなされ得る。全てのそのような修正は、本明細書に添付される特許請求の範囲内であると意図される。
【国際調査報告】