(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を抽出し、プルトニウム(IV)を還元することなくそれらを分離するための環状アミンモノアミド
(51)【国際特許分類】
G21C 19/46 20060101AFI20241106BHJP
B01D 11/04 20060101ALI20241106BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G21C19/46 620
G21C19/46 300
B01D11/04 B
C09K3/00 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523755
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 FR2022051946
(87)【国際公開番号】W WO2023067273
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(71)【出願人】
【識別番号】522120004
【氏名又は名称】オラノ・リサイクレイジ
(71)【出願人】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セシル・マリー
(72)【発明者】
【氏名】オドレイ・ベイヤール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・アロワン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ソレル
【テーマコード(参考)】
4D056
【Fターム(参考)】
4D056AB07
4D056AB10
4D056AC11
4D056AC22
4D056BA04
4D056BA09
4D056CA13
4D056CA17
4D056CA18
4D056CA27
4D056DA01
4D056DA05
(57)【要約】
本発明は、ウラン(VI)及び/又はプルトニウム(IV)を酸性水溶液から抽出するための、及びまた酸性水溶液から出発してウラン(VI)をプルトニウム(IV)から完全に又は部分的に分離するための、環状アミンモノアミドの使用に関する。本発明は更に、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液を処理するための方法であって、プルトニウム(IV)還元操作を行う必要なく、この溶液中に存在するウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を単一サイクルで抽出、分離、及び除染することを可能にし、それにおいて環状アミンモノアミド又は環状アミンモノアミドの混合物を抽出剤として使用する方法に関する。環状アミンモノアミドは、式(I):
(式中、n=1、2、又は3であり;R
1は、直鎖又は分岐のC4~C12アルキルであり、R
2は、直鎖又は分岐のアルキル又はアルコキシであり、その鎖は、場合により1回以上酸素原子が間に入り、その炭素原子及び該当する場合、酸素原子の総数は、3~10の間である)に相当する。用途:ウラン系使用済み核燃料(例えばUOX)又はウラン及びプルトニウム系使用済み核燃料(例えばMOX)の処理。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0未満のpHを有する酸性水溶液からウラン(VI)及び/又はプルトニウム(IV)を抽出するための、下記式(I):
【化1】
(式中、
n=1、2、又は3であり;
R
1は、4~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;かつ
R
2は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基であり、その鎖は、任意選択により場合によっては1回以上酸素原子が割り込んでいてもよく、炭素原子及び該当する場合には酸素原子の総数は、3~10の間である)
のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物の使用。
【請求項2】
酸性水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液に接触させ、次いで水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
有機溶液が、1mol/L~2mol/L、好ましくは1.1mol/L~1.3mol/Lの、モノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
0未満のpHを有する酸性水溶液が、使用済み核燃料を硝酸中に溶解させることによって生じる水溶液である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
0未満のpHを有する酸性水溶液から、ウラン(VI)をプルトニウム(IV)から完全に又は部分的に分離するための、下記式(I):
【化2】
(式中、
n=1、2、又は3であり、
R
1は、4~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
R
2は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基であり、その鎖は、任意選択により場合によって1回以上酸素原子が割り込んでいてもよく、炭素原子及び該当する場合には酸素原子の総数は、3~10の間である)
のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物の使用であって、以下の工程:
a)前記水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を共抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S1に少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、共抽出する工程;
b)工程a)から生じた有機溶液から+IV酸化状態のプルトニウム及びウラン(VI)の一部分(フラクション)を逆抽出する工程であって、前記有機溶液を、0より大きいpHを有する酸性水溶液に少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程;及び
c)工程b)から生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分(フラクション)の全部又は一部を再抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S2と少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程、
を含み、
それによって、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)及びウラン(VI)の混合物を含む水溶液と、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む有機溶液とが得られる、
使用。
【請求項6】
有機溶液S1及びS2が、1mol/L~2mol/L、好ましくは1.1mol/L~1.3mol/Lの、モノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
0未満のpHを有する酸性水溶液が、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液であり、一方、0より大きいpHを有する酸性水溶液が、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む溶液である、請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
n=2又は3である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
R
1が、6~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、好ましくは分岐鎖のアルキル基であり、且つ/又は
R
2が、4~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、好ましくは直鎖のアルキル基である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
モノアミドが、
N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、又は
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド
である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
使用済み核燃料を硝酸中に溶解させることによって生じる水溶液を1サイクルで処理するための方法であって、前記水溶液が、ウラン(VI)、プルトニウム(IV)、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びにルテニウム及びテクネチウムを含めた核分裂及び放射化生成物を含み、前記サイクルが、以下の工程:
a)前記水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を共抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S1に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含み、前記1種又は複数のモノアミドが、下記式(I):
【化3】
(式中、
n=1、2、又は3であり;
R
1は、4~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;かつ
R
2は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基であり、その鎖は、任意選択により場合により1回以上酸素原子が割り込んでいてもよく、炭素原子及び該当する場合には酸素原子の総数は、3~10の間である)
で表される、共抽出する工程;
b)工程a)から生じた有機溶液を、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びに核分裂及び放射化生成物に関して除染する工程であって、前記有機溶液を、0.5mol/L~6mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、除染する工程;
c)工程b)から生じた有機溶液中に存在するウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)とウラン(VI)との混合物を含む水溶液と、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む有機溶液とに分配する工程であって、分配が以下の工程:
c
1)+IV酸化状態のプルトニウム、及びウラン(VI)の一部分(フラクション)を、工程b)から生じた有機溶液から逆抽出する工程であり、前記有機溶液を、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程と、
c
2)工程c
1)から生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分(フラクション)の全部又は一部を再抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S2に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程と
を含む、分配する工程;
d)工程c
1)から生じた有機溶液を、テクネチウムに関して除染する工程であって、除染が以下の工程:
d
1)工程c
1)から生じた有機溶液から+IV酸化状態のテクネチウムを逆抽出する工程であって、前記有機溶液を、0.1mol/L~3mol/Lの硝酸及び+VII酸化状態のテクネチウムを+IV酸化状態に還元することが可能な少なくとも1種の還元剤を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程と、
d
2)工程d
1)から生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分(フラクション)を再抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又はモノアミドの混合物を含む有機溶液S3に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程と、
を含む、除染する工程;
e)工程d
1)から生じた有機溶液からウラン(VI)を逆抽出する工程であって、前記有機溶液を、多くとも0.05mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程;及び
f)任意選択により場合によって、工程e)から生じた有機溶液を再生させる工程、
を含み、
それによって、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びに核分裂及び放射化生成物に関して除染された第1及び第2の水溶液が得られ、第1の水溶液が、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)とウラン(VI)との混合物を含み、かつ、第2の水溶液が、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む、
方法。
【請求項12】
有機溶液S1、S2、及びS3が、1mol/L~2mol/L、好ましくは1.1mol/L~1.3mol/Lのモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程b)の水溶液が、4mol/L~6mol/Lの硝酸を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
工程c
1)の抽出器内で有機溶液と水溶液とを接触させることが、1より大きい、好ましくは3以上の有機溶液の水溶液に対する流量比で有機溶液及び水溶液を循環させることを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
還元剤が、硝酸ウラナス、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシルアンモニウム、アセトアルドキシム、ヒドロキシイミノアルカン酸、又はこれらの混合物、好ましくは、硝酸ウラナス及び硝酸ヒドラジニウムの混合物、又は硝酸ウラナス及び硝酸ヒドロキシルアンモニウムの混合物である、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
- ステップd
1)の抽出器が30℃~40℃の温度に加熱され、且つ/又は
- ステップe)の抽出器が40℃~50℃の温度に加熱される、
請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程e)の抽出器内で有機溶液と水溶液とを接触させることが、1より大きい有機溶液の水溶液に対する流量比で有機溶液及び水溶液を循環させることを含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップe)から生じた有機溶液が再生され、次いで第1及び第2の部分に分けられ、第1の部分が有機溶液S1を形成し、第2の部分が有機溶液S2を形成する、請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
n=2又は3である、請求項11から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
R
1が、6~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、好ましくは分岐鎖のアルキル基であり、且つ/又は
R
2が、4~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、好ましくは直鎖のアルキル基である、
請求項11から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
モノアミドが、
N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、又は
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド
である、請求項11から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、又は
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド
である、モノアミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み核燃料処理の分野を対象とする。
【0002】
より詳細には、本発明は、酸性水溶液、特に、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液からウラン(VI)及び/又はプルトニウム(IV)を抽出するための環状アミンモノアミドの使用を対象とする。
【0003】
本発明はまた、酸性水溶液から、特に、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液から、完全に又は部分的に、ウラン(VI)をプルトニウム(IV)から分離するためのこれらの環状アミンモノアミドの使用を対象とする。
【0004】
本発明はまた、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液を処理するための方法であって、プルトニウム(IV)を還元するいずれの操作にも頼らずに、この溶液中に存在するウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を単一サイクルで抽出、分離、及び除染することを可能にし、それにおいてこれらの環状アミンモノアミド又はこれらの混合物のうちの1種を抽出剤として使用する方法を対象とする。
【0005】
本発明は更に、上述した使用及び方法において使用するのに有望な環状アミンモノアミドを対象とする。
【0006】
本発明は、ウラン系(とりわけUOX燃料として知られる酸化ウラン系)、又はウラン及びプルトニウム系(とりわけMOX燃料として知られるウラン・プルトニウム混合酸化物系)の使用済み核燃料の処理における用途が見出される。
【背景技術】
【0007】
PUREX法は、世界中の全ての使用済み核燃料処理プラントで使用されており(フランスのLa Hague、日本の六ケ所村、イギリスのSellafield等)、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液からの液液抽出によってこれらの燃料を回収するための抽出剤として、リン酸トリ-n-ブチル(あるいはTBP)を使用する。
【0008】
この方法では、TBPは、水素化テトラプロピレン(あるいはTPH)タイプ等の脂肪族希釈剤中の30%(v/v)溶液として使用される。この有機溶液は一般に、考慮される分野で「溶媒」とよばれる。
【0009】
ウラン及びプルトニウムは、PUREX法によって以下の幾つかのサイクルで回収される:
- ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を精製する第1のサイクル(「1CUPu」とよばれる)、このサイクルは、これらの元素をマイナーアクチニド(ネプツニウム、アメリシウム、及びキュリウム)並びに核分裂及び放射化生成物に関して除染することを目的とし、この第1のサイクルから先、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を2つの水性流れに分配する;
- ウラン(VI)を精製する第2のサイクル(「2CU」とよばれる)、このサイクルは、この元素の除染を強化して、最終生成物としてのウランについてASTM規格によって規定される仕様を達成することを目的とする;
- プルトニウム(IV)を精製する第2のサイクル、幾つかのプラントの場合は第3のサイクル(それぞれ「2CPu」及び「3CPu」とよばれる)、このサイクルは、この元素の除染を強化して、最終生成物としてのプルトニウムについてASTM規格によって規定される仕様を達成し、それを酸化物PuO2へ転化させる前に濃縮することを目的とする。
【0010】
PUREX法の性能は満足のいくものであり、操業以来それを実践しているプラントからのフィードバックは肯定的である。
【0011】
しかし、TBPの使用には、将来の使用済み核燃料処理プラントに設定された単純性、コンパクト化、及び向上した安全性という目的を達成する可能性にこの抽出剤では相反するという限界がある。
【0012】
主たる限界は、ウラン及びプルトニウムを2つの水性流れへと分配することが、プルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への還元を必要とすることである。何故なら、TBPでは、分配に使用される水溶液の酸性度が幾つであろうが、ウラン(VI)とプルトニウム(IV)との間の分離係数が不十分だからである。結果として、TBPを使用すると大量の還元剤及び抗亜硝酸剤(anti-nitrous agent)の使用が必要とされ、それは分解による不安定な反応種を生成するために、安全性の点で制約的である。
【0013】
したがって、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液からウラン及びプルトニウムを定量的に共抽出し、次いでプルトニウム(IV)からプルトニウム(III)への還元を必要とすることなくこれらの2つの元素の完全な又は部分的な分離を確実に行うことができる抽出剤を提供するための幾つかの研究が実施されてきた。
【0014】
このことから、以下の使用が提案されてきた:
- 国際公開第2017/017207号(以降、参考文献[1])における、対称N,N-ジアルキルアミド、例えば、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)-3,3-ジメチルブタンアミド(あるいはDEHDMBA)、
- 非対称N,N-ジアルキルアミド、例えば、
* 国際公開第2017/017193号(以降、参考文献[2])における、N-メチル-N-オクチル-2-エチルヘキサンアミド(あるいはMOEHA)又はN-デシル-N-メチル-2-エチルヘキサンアミド(あるいはMDEHA)、
* 国際公開第2018/138441号(以降、参考文献[3])における、N-メチル-N-ノニル-2-メチルヘキサンアミド(あるいはMNMHA)又はN-メチル-N-ヘキシル-2-プロピルヘプタンアミド(あるいはMHPHepA)、及び
- 国際公開第2019/002788号(以降、参考文献[4])における、テトラアルキル化カルバミド、例えば、N,N,N’,N’-テトラ-n-ブチル尿素(あるいはTBU)、又はトリアルキル化カルバミド、例えば、N,N,N’-トリ-n-オクチル尿素(あるいはTrOU)。
【0015】
全てのこれらの抽出剤、特に、参考文献[2]及び[3]の非対称N,N-ジアルキルアミドは、極めて興味深い性能を呈することが見出された。
【0016】
更にまた、1960年にJ. Phys. Chem、64、12、1863~1866頁(以降、参考文献[5])に発表された研究の範囲内で、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を硝酸の強酸性水性相(3mol/L及び6mol/L)から抽出する数多くのN,N-二置換アミドの能力を評価することを目的として、T. H. Siddallは、2種の環状アミンモノアミド、すなわち、N-ヘキサノイルピペリジン及びN-2-エチルヘキサノイルピペリジンのトルエン中0.5mol/Lの濃度での能力について研究した。
【0017】
また、H. Jing-Tianら(Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 1999年、241、215~217頁、以降、参考文献[6])によって報告されたのは、環状アミンモノアミド、ここではN-オクタノイルピロリジンによる、トルエン中0.3mol/Lの濃度でのウラン(VI)抽出についてのデータである。
【0018】
参考文献[5]は、構造は極めて類似しているが、2種のピペリジン環モノアミドは、硝酸の酸性度が3mol/Lであるか6mol/Lであるかに関わらず、同じ操作条件下で相反する抽出結果を与えることを示している。それは、これらの2つの酸性度で、N-ヘキサノイルピペリジンはプルトニウム(IV)をウラン(VI)より良好に抽出し、それに対してN-2-エチルヘキサノイルピペリジンはウラン(VI)をプルトニウム(IV)よりも良好に抽出するからである。
【0019】
参考文献[6]は、トルエン中0.3mol/Lの濃度で使用した場合、N-オクタノイルピロリジンは、3mol/Lの硝酸水溶液からウラン(VI)を極めて弱く抽出し、分配係数DUは25℃において1未満であると述べている。
【0020】
更にまた、上記に鑑みると、参考文献[5]及び[6]に報告されているデータは、硝酸の強酸性水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を定量的に共抽出するための環状アミンモノアミドの使用を特に奨励しておらず、これらがそのような溶液から共抽出された後で、プルトニウム(IV)からプルトニウム(III)への還元に頼ることなくウラン(VI)をプルトニウム(IV)から分離するためにこのタイプの化合物を使用する可能性について何も示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2017/017207号
【特許文献2】国際公開第2017/017193号
【特許文献3】国際公開第2018/138441号
【特許文献4】国際公開第2019/002788号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】1960年, J. Phys. Chem、64, 12, 1863~1866頁
【非特許文献2】H. Jing-Tianら, Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 1999年, 241, 215~217頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の研究の範囲内で、本発明者らは、1つ以上のアルキル又はアルコキシ基で置換されたアゼチジン、ピロリジン、又はピペリジン環を有するモノアミドが以下のような抽出特性を有することを認めた:
- 使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液にみられるタイプの強酸性水性相の存在下で、それらのモノアミドは、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の2つの元素をこの水性相から定量的に共抽出させるのに適したウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の分配係数をもたらす。そして、
- 中程度に酸性の水性相の存在下で、それらのモノアミドは、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元する必要なしに、ウラン(VI)をプルトニウム(IV)から分離するのに適したU(VI)/Pu(IV)分離係数をもたらし、この分離は、所望に従って完全又は部分的である。
【0024】
本発明は、これらの実験的発見に基づくものである。
【0025】
したがって、第1に、本発明の一つの目的は、0未満のpHを有する酸性水溶液からウラン(VI)及び/又はプルトニウム(IV)を抽出するための、下記式(I):
【化1】
(式中、
n=1、2、又は3であり、
R
1は、4~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、かつ
R
2は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基であり、その鎖は、任意選択により場合によっては1回以上酸素原子が割り込んでいてもよく、炭素原子及び該当する場合には酸素原子の総数は、3~10の間である)
のモノアミド又はモノアミド(複数)の混合物の使用である。
【0026】
上記及び下記において、「......~.....」、「......~......の範囲」、及び「......~......の間」という語句は同義であり、それらの限界値が含まれることを意味している。
【0027】
更にまた、
- 「4~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基」とは、任意のアルキル基であって、その鎖が1つ以上の同一の又は異なる分岐を含んでも含まなくてもよく、その炭素原子の数が4、5、6、7、8、9、10、11、又は12に等しいものを意味し、
- 「直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基であり、その鎖は任選択により場合によっては1回以上酸素原子が間に入り、炭素原子及び該当する場合には酸素原子の総数は、3~10の間である」とは、任意のアルキル又は-O-アルキル基であって、その鎖が、1つ以上の同一の又は異なる分岐及び2つの炭素原子間の酸素原子の1つ以上の挿入を含んでも含まなくてもよく、炭素及び酸素原子(1つ以上の酸素原子が存在する場合)の総数が3、4、5、6、7、8、9、又は10に等しいものを意味する。
【0028】
本発明によれば、ウラン(VI)及び/又はプルトニウム(IV)は、好ましくは、液液抽出によって、すなわち、この水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液に接触させ、次いで水溶液と有機溶液とを互いに分離することによって、酸性水溶液から抽出される。
【0029】
この場合、有機溶液は、好ましくは1mol/L~2mol/L、更により好ましくは1mol/L~1.3mol/Lのモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含み、優先的には、1.2mol/Lの濃度である。
【0030】
酸性水溶液は、好ましくは、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液、すなわち、典型的には3mol/L~6mol/Lの硝酸を含む水溶液である。
【0031】
上記及び下記において、「有機希釈剤」とは、任意の無極性炭化水素、又は無極性の脂肪族及び/若しくは芳香族炭化水素の混合物を意味しており、その使用は、親油性抽出剤を溶解させるために提供される。そのような希釈剤の例として、とりわけ、n-ドデカン、水素化テトラプロピレン(TPH)、ケロシン、及びイソパラフィン系希釈剤、例えば、TotalEnergies社によってIsane(商標)IP-185及びIsane(商標)IP-175という参照名で市販されるものを挙げることができる。
【0032】
0未満のpHを有する酸性水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を定量的に抽出できることに加えて、上記式(I)のモノアミドは、続いて、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元する必要なしに、このように共抽出されたウランとプルトニウムとを互いに分離することを可能にすることが示され、ここでは、この分離は、以下のいずれかであり得る:
- ウラン(VI)とプルトニウム(IV)の完全な分離、すなわち、ここでは、2つの水溶液が得られ、一方はウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含み、他方は、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む;
- 又はウラン(VI)とプルトニウム(IV)の部分的な分離、すなわち、ここでは、2つの水溶液が得られ、一方はプルトニウム(IV)とウラン(VI)との混合物を含み、他方はプルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む。
【0033】
したがって、本発明の別の目的は、0未満のpHを有する酸性水溶液から、ウラン(VI)をプルトニウム(IV)から完全に又は部分的に分離するための、上記式(I)のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物の使用であって、以下の工程:
a)上記水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を共抽出する工程であって、水溶液を、有機希釈剤中に式(I)のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S1に少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、共抽出する工程;
b)工程a)から得られた有機溶液から+IV酸化状態のプルトニウム及び一部分のウラン(VI)を逆抽出(stripping)する工程であって、有機溶液を、0より大きい、一層良好には0.3より大きいpHを有する酸性水溶液に少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程;及び
c)工程b)から得られた水溶液中に存在するウラン(VI)部分の全部又は一部を再抽出する工程であって、水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S2に少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程、
を含み、それによって、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)及びウラン(VI)の混合物を含む水溶液と、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む有機溶液とが得られる、
使用である。
【0034】
有機溶液S1及びS2は、好ましくは、1mol/L~2mol/L、一層良好には、1mol/L~1.3mol/Lのモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含み、最も好ましくは1.2mol/Lの濃度である。
【0035】
0未満のpHを有する水溶液は、好ましくは、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液、すなわち、典型的には3mol/L~6mol/Lの硝酸を含む水溶液であり、この場合、0を上回るpHを有する酸性水溶液は、好ましくは、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む溶液である。
【0036】
工程c)から得られる有機溶液中に存在するウランは、次いで、有機溶液を、少なくとも1.3のpHを有する酸性水溶液、例えば、多くとも0.05mol/Lの硝酸を含む溶液に接触させ、次いで有機溶液と水溶液とを互いに分離することによって、この相から抽出することができる。
【0037】
上述した特性を有することに加えて、上記式(I)のモノアミドは、使用済み核燃料を処理するための方法におけるそれらの使用に完全に適合した動的粘度及びウラン(VI)担持能を有する有機相をもたらすことが示されている。
【0038】
この特性の組み合わせから、これらのモノアミドによって、使用済み核燃料を溶解させることによって生じる硝酸水溶液(aqueous nitric solution)を処理するための方法であって、そのような溶液中に存在するウラン及びプルトニウムを回収し、除染するという点でPUREX法と同じように有効でありつつ、何らのプルトニウム還元逆抽出操作もなく、単一の処理サイクルしか含まない方法を開発することが可能となった。
【0039】
したがって、本発明の別の目的は、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液を1サイクルで処理するための方法であって、その水溶液が、ウラン(VI)、プルトニウム(IV)、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びに、ルテニウム及びテクネチウムを含めた核分裂及び放射化生成物を含み、そのサイクルが、以下の工程:
a)上記水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を共抽出する工程であって、水溶液を、有機希釈剤中に式(I)のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S1に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、共抽出する工程;
b)工程a)から生じた有機溶液を、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びに核分裂及び放射化生成物に関して除染する工程であって、有機溶液を、0.5mol/L~6mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、除染する工程;
c)工程b)から生じた有機溶液中に存在するウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)とウラン(VI)との混合物を含む水溶液と、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む有機溶液とに分配する工程であって、以下の工程:
c1)+IV酸化状態のプルトニウム、及びウラン(VI)部分(フラクション)を、工程b)から生じた有機溶液から逆抽出する工程であって、有機溶液を、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程と、
c2)工程c1)から生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分の全部又は一部を再抽出する工程であり、その水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S2に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程、
を含む、分配する工程;
d)工程c1)から生じた有機溶液を、テクネチウムに関して除染する工程であって、以下の工程:
d1)工程c1)から生じた有機溶液から+IV酸化状態のテクネチウムを逆抽出する工程であって、その有機溶液を、0.1mol/L~3mol/Lの硝酸及びテクネチウムを+VII酸化状態から+IV酸化状態に還元することが可能な少なくとも1種の還元剤を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程と、
d2)工程d1)から生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分(フラクション)を再抽出する工程であり、その水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S3に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程、
を含む、除染する工程;
e)工程d1)から生じた有機溶液からウラン(VI)を逆抽出する工程であって、その有機溶液を、多くとも0.05mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程;及び、
f)任意選択により場合によっては、工程e)からの有機溶液を再生する工程と
を含み、それによって、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びに核分裂及び放射化生成物に関して除染された第1及び第2の水溶液が得られ、第1の水溶液が、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)とウラン(VI)との混合物を含み、かつ、第2の水溶液が、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む、
方法である。
【0040】
本発明によれば、有機溶液S1、S2、及びS3は、好ましくは、1mol/L~2mol/L、一層良好には1mol/L~1.3mol/Lのモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含み、最も好ましくは1.2mol/Lの濃度である。
【0041】
前に示したように、工程b)において使用される水溶液は、0.5mol/L~6mol/Lの硝酸を含むことができる。しかし、この水溶液は、工程a)から生じた有機溶液からのルテニウム及びテクネチウムの逆抽出を容易にするように、4mol/L~6mol/Lの硝酸を含むことが好ましい。この場合、工程b)は、有利には、有機溶液を脱酸することも含み、この脱酸は、有機溶液を、0.1mol/L~1mol/L、更に良好には、0.5mol/Lの硝酸を含む水溶液に少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む。
【0042】
本発明によれば、工程c1)が行われる抽出器内で有機溶液と水溶液とを接触させることは、プルトニウムの濃縮逆抽出(すなわち、水溶液中のプルトニウム濃度が逆抽出される有機溶液中のプルトニウム濃度より高い水溶液をもたらすプルトニウムの逆抽出)が得られるように、これらの溶液を、有利には1より大きい、好ましくは3以上、一層より有利には5以上のO/A流量比で循環させることを含む。
【0043】
工程d1)において使用される水溶液中に存在する還元剤(1又は複数)は、好ましくは、硝酸ウラナス(「U(IV)」としても知られる)、硝酸ヒドラジニウム(「硝酸ヒドラジン」としても知られる)、硝酸ヒドロキシルアンモニウム(硝酸ヒドロキシルアミンとしても知られる)、アセトアルドキシム、ヒドロキシイミノアルカン酸(例えば、6-ヒドロキシイミノヘキサン酸)、及びそれらの混合物、例えば、硝酸ウラナスと硝酸ヒドラジニウムとの混合物、硝酸ウラナスと硝酸ヒドロキシルアンモニウムとの混合物、又は硝酸ウラナスとアセトアルドキシムとの混合物から選択され、優先的には硝酸ウラナスと硝酸ヒドラジニウムとの混合物、又は硝酸ウラナスと硝酸ヒドロキシルアンモニウムとの混合物であり、これらは、好ましくは、0.1mol/L~0.3mol/Lの範囲、典型的には0.2mol/Lの濃度で使用される。
【0044】
更にまた、工程d1)は、室温で実施することができるが、好ましくは、テクネチウムの逆抽出速度を促進しながら、水性相中でのこの元素の再酸化の現象を可能な限り制限するように、30℃~40℃の範囲の温度、一層良好には32℃で実施される。工程d1)が行われる抽出器は、したがって、好ましくは、30℃~40℃の間の温度に加熱される。
【0045】
本発明によれば、工程d2)は、好ましくは、工程d1)から生じた水溶液を酸性化することを追加で含み、この酸性化は、水溶液中の硝酸の濃度を少なくとも2.5mol/Lに等しい値にするために、工程d2)が行われる抽出器に硝酸を添加することを含む。
【0046】
工程e)は、室温において実施されてもよい。しかし、やはりウランの逆抽出を促進するために、好ましくは40℃~50℃の間の温度で実施される。工程e)が行われる抽出器は、したがって、好ましくは、40℃~50℃の間の温度に加熱される。
【0047】
工程e)が実施される温度が何度であれ、この工程が行われる抽出器内で有機溶液と水溶液とを接触させることは、ウランの濃縮逆抽出(すなわち、水溶液中のウラン濃度が逆抽出される有機溶液中のウラン濃度より高い水溶液をもたらすウランの逆抽出)が得られるように、これらの溶液を1より大きいO/A流量比で循環させることを含む。
【0048】
好ましくは、本方法は、工程e)からの有機溶液を再生する工程f)を含み、この再生は、好ましくは、有機溶液を少なくとも塩基性水溶液で洗浄し、続いて有機溶液を少なくとも硝酸水溶液で洗浄することを含む。
【0049】
この場合、このように再生された有機溶液は、次いで、有利には、第1及び第2の部分(フラクション)に分けられ、第1の部分(フラクション)は、工程a)において使用される有機溶液S1を形成し、かつ、第2の部分(フラクション)は、工程c2)において使用される有機溶液S2を形成する。
【0050】
本発明において記述される方法は、幾つかの利点を有する。実際に、
- ウランの逆抽出は、PUREX法より実践が容易である。何故なら、室温及び加熱下の両方で、1より大きいO/A流量比を使用して実施することができ、それによってウランを濃縮的に逆抽出することが可能になるが、これはPUREX法では不可能である;
- いずれのプルトニウム還元反応も含まず、したがってプルトニウム再酸化のいずれのリスクも排除されるので、プルトニウムの逆抽出もPUREX法より実践が容易であり、後者よりも高濃縮するやり方で実施することができる;将来の使用済み核燃料処理プラントは、現在処理されている燃料よりプルトニウムが濃厚な燃料(軽水炉又は高速中性子炉からのMOX燃料等)を加工しなければならないので、これらの利点は一層重要である;
- モノアミドの分解生成物(加水分解及び放射線分解による)は、TBPの分解生成物よりも問題を起こしにくく、なぜなら、それらは水に可溶性であり、プルトニウムを保持するおそれがある錯体を形成しないからである;
- 水性相へのモノアミドの溶解度は、典型的にはTBPの溶解度より100倍~200倍低く、それによって、本発明の方法によって得られる水溶液を有機希釈剤で洗浄する回数が、PUREX法でもたらされる回数に対して、不要になるか又は最低限でも低減することを予期することが可能になる;
- モノアミド及びそれらの分解生成物は、TBP及びその分解生成物とは異なり、炭素、水素、酸素、及び窒素原子しか含まないので、完全に焼却することができ、したがっていずれの有害な二次廃棄物も生成しない。
【0051】
前に示したように、上の式(I)において、nは、1、2、又は3に等しいことが可能である。
【0052】
この場合、式(I)のモノアミドは、以下の特定の式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)のうちの1つを有し得る:
【化2】
【0053】
本発明によれば、nは、好ましくは2又は3に等しく、したがって、式(I)のモノアミドは、好ましくは、特定の式(Ib)及び(Ic)のうちの1つを有する。
【0054】
更にまた、R1は、有利には、6~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、一層良好には、分岐鎖のアルキル基、例えば、1-メチルペンチル、1-メチルヘキシル、1-メチルヘプチル、1-メチルオクチル、1-メチルノニル、1-エチルペンチル、1-エチルヘキシル、1-エチルヘプチル、1-エチルオクチル、1-プロピルブチル、1-プロピルペンチル、1-プロピルヘキシル、1-プロピルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-エチルヘプチル、2-エチルオクチル基等である。これらのうち、最も好ましくは、それは1-エチルペンチル又は1-プロピルブチル基である。
【0055】
R2については、有利には、4~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、更に良好には、直鎖のアルキル基、すなわち、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、又はn-デシル基である。これらのうち、最も好ましくは、それはn-ヘキシル、n-ヘプチル、又はn-オクチル基である。
【0056】
これらの優先度に合うモノアミドは、とりわけ、
- N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド(以降、EHPyr2とよぶ)、これは、特定の式(Ib)を有し、式中、R1は1-エチルペンチル基を表し、一方、R2は、ピロリジン環の2位に位置する炭素原子によって担持されるn-ヘプチル基を表す;
- N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド(以降、EHPip2とよぶ)、これは、特定の式(Ic)を有し、式中、R1は1-エチルペンチル基を表し、一方、R2は、ピペリジン環の2位に位置する炭素原子によって担持されるn-ヘキシル基を表す;
- N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド(以降、EHPip3とよぶ)、これは、特定の式(Ic)を有し、式中、R1は1-エチルペンチル基を表し、一方、R2は、ピペリジン環の3位に位置する炭素原子によって担持されるn-ヘキシル基を表す;
- N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド(以降、EHPip4とよぶ)、これは、特定の式(Ic)を有し、式中、R1は1-エチルペンチル基を表し、一方、R2は、ピペリジン環の4位に位置する炭素原子によって担持されるn-ヘキシル基を表す;及び
- N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド(以降、PPPip3とよぶ)、これは、特定の式(Ic)を有し、式中、R1は1-プロピルブチル基を表し、一方、R2は、ピペリジン環の3位に位置する炭素原子によって担持されるn-ヘキシル基を表す。
【0057】
これらのうち、モノアミドEHPyr2が最も好ましく使用される。何故なら、強酸性水性相、例えば3mol/L~6mol/Lの硝酸を含む水性相からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を極めて効果的に共抽出することに加えて、中程度に酸性の水性相、例えば、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む水性相の存在下で、プルトニウム(IV)に対するウラン(VI)の特に高い選択性を有するからである。
【0058】
式(I)のモノアミドの幾つかは、技術水準から公知である。その一方で、その他のものは、本発明者らの知る限り、文献に記載されていない。
【0059】
本発明は更に、これらの新たなモノアミドに関連し、それらは以下のもの:
- N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
- N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
- N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
- N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、及び
- N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド
である。
【0060】
本発明の更なる特性及び利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0061】
しかし、言うまでもなく、この更なる説明は、本発明の目的の実例として示されるに過ぎず、決してこの目的を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】本発明によって、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液を処理するための方法の概略図を示す。この図では、長方形1~7は、多段階抽出器、例えば、使用済み核燃料の処理に従来から使用されているもの(ミキサーセトラー、パルスカラム、又は遠心抽出器)を表す。有機相は実線で表され、一方、水性相は点線で表される。
【発明を実施するための形態】
【0063】
I-式(I)のモノアミドの合成:
式(I)のモノアミドは、以下でそれぞれA及びBと称する2つの異なる手順によって合成することができる。
【0064】
手順A:
これは、式:R
1-COOH(式中、R
1は式(I)におけるものと同じ意味を有する)のカルボン酸と、式:
【化3】
(式中、n及びR
2は、式(I)におけるものと同じ意味を有する)
の環状アミンとの反応に基づいている。
【0065】
この反応は、例えば、次のように行うことができる:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(又はHOBt - 1.20当量)及びN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(又はDCC - 1.20当量)を含む2-メチルテトラヒドロフラン(0.2mol/L)中の溶液を室温で10分間、完全に溶解するまで撹拌する。次いでカルボン酸(1.00当量)をその混合物に添加する。得られた溶液を10分間撹拌し、次いで環状アミン(1.00当量)(場合により塩の形態)の2-メチルテトラヒドロフラン中の溶液を添加する。得られた懸濁液を一晩室温で撹拌し、次いでCelite(商標)で濾過する。濾液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で2回、次いで飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄する。その溶液を最後に硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、次いで減圧下で濃縮する。
【0066】
手順B:
これは、式:R1-C(O)Xの酸ハロゲン化物(式中、Xは、ハロゲン原子、例えば塩素原子を表し、かつ、R1は、式(I)におけるものと同じ意味を有する)と、上で示した式の環状アミンとの反応に基づいている。
【0067】
この反応は、次のように行うことができる:トリエチルアミン(1.50~4.00当量)を、環状アミン(1.00当量)(場合により塩の形態)のジクロロメタン(又はDCM)中の溶液に添加する。得られた溶液を室温で10分間撹拌し、次いで酸ハロゲン化物(1.50当量)を添加する。2時間室温で撹拌した後、水を反応媒体に添加する。次いで水性相をジクロロメタンで3回抽出する。有機相を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、次いで飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。
【0068】
式(I)の特定のモノアミドの合成への、手順A及びBの適用:
下記に合成を報告する式(I)の様々なモノアミドは、ジアステレオ異性体の形成に至る幾つかの不斉中心を有しうる。これらのジアステレオ異性体は、1H又は13C NMRで見ることができる。加えて、各ジアステレオ異性体は、回転異性体を有していてもよく、これもNMRで見ることができる。それらのNMR分析の理解を助けるために、可能な限り各ピークの割合(%)を下で追加した。
【0069】
-
モノアミドEHPip2の合成:
特定の下記式:
【化4】
を有するモノアミドEHPip2は、手順Bを使用して合成し、ここでは、酸塩化物として2-エチルヘキサノイルクロリド(3.00mL、17.4mmol、1.05当量)、環状アミン塩として2-ヘキシルピペリジン塩酸塩(3.40g、16.5mmol、1.00当量)、トリエチルアミン(5.6mL、41.3mmol、2.50当量)、及びDCM(165mL)を用いる。
【0070】
これにより、4.42g(15.7mmol)のEHPip2が黄色油状物として得られた。収率:95%。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ (ppm): 4.92 - 4.83 (m, 1H, 56%), 4.67 - 4.63 (m, 1H, 22%), 4.63 - 4.57 (m, 1H, 22%), 4.07 - 3.97 (m, 1H, 44%), 3.87 - 3.81 (m, 1H, 28%), 3.81 - 3.74 (m, 1H, 28%), 3.07 (t, J = 13. 7 Hz, 1H, 28%), 3.06 (t, J = 13.8 Hz, 1H, 28%), 2.64 - 2.55 (m, 1H, 44% + 1H, 100%), 1.76 - 1.54 (m, 8H), 1.51 - 1.36 (m, 4H), 1.34 - 1.12 (m, 12H), 0.95 - 0.82 (m, 100%)
13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ (ppm): 174.92 (C=O, 22%), 174.87 (C=O, 22%), 174.6 (C=O, 56%), 53.0 (C=O, 56%), 52.9 (C=O, 44%), 48.1, 48.0, 42.8 (78%), 42.6 (22%), 40.99 (44%), 40.95 (56%), 36.68, 36.66, 33.1, 32.9, 32.6, 32.3, 32.02, 31.98, 31.93, 31.90, 30.63, 30.57, 30.5, 30.2, 30.0, 29.9, 29.6, 29.52, 29.48, 29.45, 29.4, 28.6, 28.5, 26.9, 26.83, 26.76, 26.45, 26.41, 26.39, 26.3, 26.2, 26.00, 25.95, 25.7, 23,2, 23.12, 23.07, 23.06, 22.74, 22.71, 19.35 (44 %), 19.34 (56 %), 14.23, 14.19, 12.7, 12.5, 12.20, 12.16
IR (cm-1): 2955, 2924, 2872, 2855, 1636, 1437, 1250, 1217
HRMS (CI+): Theoretical exact mass for C19H38NO+ [M + H]+: 296.2953; experimental: 296.2963。
【0071】
-
モノアミドEHPip3の合成:
特定の下記式:
【化5】
を有するモノアミドEHPip3は、手順Bを使用して合成し、ここでは、酸塩化物として2-エチルヘキサノイルクロリド(890μL、5.10mmol、1.50当量)、環状アミン塩として3-ヘキシルピペリジン塩酸塩(700mg、3.40mmol、1.00当量)、トリエチルアミン(1.84mL、13.6mmol、4.00当量)、及びDCM(12mL)を用いる。
【0072】
これにより、990mg(3.35mmol)のEHPip3が黄色油状物として得られた。収率:99%。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ (ppm): 4.52 (t, J = 11.8 Hz, 1H, 100%), 3.89 (d, J = 13.2 Hz, 1H, 100%), 2.99 (t, J = 12.3 Hz, 1H, 50%), 2.69 - 2.51 (m, 2H, 100%), 2.32 (q, J = 10.7, 12.3, 1H, 50%), 1.86 (d, J = 12.3 Hz, 1H, 100%), 1.74 - 1.57 (m, 3H, 100%), 1.49 - 1.35 (m, 4H, 100%), 1.33 - 1.05 (m, 15H, 100%), 0.86 (m, 18H, 100%)
13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ (ppm): 174.4 (C=O), 52.10, 52.06, 48.2, 46.7, 42.97, 42.94, 42.65, 42.63, 42.55, 42.52, 37.4, 36.35, 36.31, 34.05, 33.91, 32.81, 32.80, 32.6, 32.5, 31.9, 31.70, 31.68, 31.4, 30.2, 30.1, 30.02, 29.95, 29.7, 29.6, 26.9, 26.8, 26.4, 26.23, 26.19, 26.14, 26.11, 25.4, 23.04, 22.8, 22.7, 14.21, 14.16, 12.44 (50 %), 12.42 (50 %), 12.3 (50 %), 12.2 (50 %)
IR (cm-1): 2957, 2928, 2872, 2855, 1639, 1460, 1439
HRMS (CI+): Theoretical exact mass for C19H38NO [M + H]+: 296.2953; experimental: 296.2973
【0073】
-
モノアミドPPPip3の合成:
特定の下記式:
【化6】
を有するモノアミドPPPip3は、手順Aを使用して合成し、ここでは、カルボン酸として2-プロピルペンタン酸(2.93mL、18.4mmol、1.00当量)、環状アミン塩として3-ヘキシルピペリジン塩酸塩(3.00g、18.4mmol、1.00当量)、HOBt(2.99g、22.1mmol、1.20当量)、DCC(4.56、22.1、1.20当量)、及び2-メチルテトラヒドロフラン(184mL)を用いる。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(あるいはDIPEA - 6.6mL、36.8mmol、2.00当量)を最初に添加して、3-ヘキシルピペリジン塩酸塩を脱プロトン化する。
【0074】
これにより、4.03g(13.63mmol)のPPPip3が透明油状物として得られた。収率:74%。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ (ppm): 4.54 (t, J = 12.1 Hz, 1H), 3.91 (d, J = 13.3 Hz, 1H), 2.99 (td, J = 12.7, 2.6 Hz, 1H, 50%), 2.74 - 2.51 (m, 2H), 2, 36 - 2.26 (m, 1H, 50%), 1.91 - 1.83 (m, 1H), 1.73 - 1.58 (m, 3H), 1.45 - 1.17 (m, 19H), 0.95 - 0.83 (m, 9H, -CH3)
13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ (ppm): 174.6 (C=O), 52.1, 48.2, 46.7, 43.0, 40.6, 40.5, 37.4, 36.3, 35.7, 35.6, 35.5, 34.1, 34.0, 31.9, 31.7, 31.4, 29.7, 29.6, 26.9, 26.8, 26.4, 25.4, 22.79, 22.76, 21.2, 21.1, 21.0, 20.9, 14.42, 14.40, 14.38, 14.2
IR (cm-1): 2957, 2922, 2855, 1636, 1441
HRMS (CI+): Theoretical exact mass for C19H38NO [M + H]+: 296.2953, experimental: 296.2895
【0075】
-
モノアミドEHPip4の合成:
特定の下記式:
【化7】
を有するモノアミドEHPip4は、手順Bを使用して合成し、ここでは、酸塩化物として2-エチルヘキサノイルクロリド(2.48mL、14.3mmol、1.05当量)、環状アミン塩として4-ヘキシルピペリジン塩酸塩(2.80g、13.6mmol、1.00当量)、トリエチルアミン(4.60mL、34.0mmol、2.50当量)、及びDCM(136mL)を用いる。
【0076】
これにより、3.51g(12.5mmol)のEHPip4が黄色油状物として得られた。収率:92%。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ (ppm): 4.75 - 4.69 (m, 1H, 50%), 4.69 - 4.64 (m, 1H, 50%), 4.07 - 4.01 (m, 1H, 50%), 4.01 - 3.95 (m, 1H, 50%), 2.98 (t, J = 12.4 Hz, 1H, 50%), 2.98 (t, J = 12.4 Hz, 1H, 50%), 2.64 - 2.48 (m, 2H), 1.78 - 1.59 (m, 4H), 1.53 - 1.37 (m, 3H), 1.34 - 1.16 (m, 14H), 1.11 - 0.98 (m, 2H), 0.93 - 0.82 (m, 9H)
13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ (ppm): 173.5 (C=O), 45.2, 41.6, 41.54, 41.45, 41.4, 35.6, 35.4, 32.5, 31.8, 31.6, 31.5, 31.0, 29.1, 29.0, 28.6, 25.7, 25.2, 25.1, 22.1, 22.0, 21.8, 13.24, 13.18, 11.4, 11.2
IR (cm-1): 2953, 2926, 2868, 2856, 1628, 1429, 1246
HRMS (CI+): C19H38NOの理論的に正確な質量 [M + H]+: 296.2953, 実験値: 296.2963
【0077】
-
モノアミドEHPyr2の合成:
特定の下記式:
【化8】
を有するモノアミドEHPyr2は、手順Bを使用して合成し、ここでは、酸塩化物として2-エチルヘキサノイルクロリド(2.53mL、14.6mmol、1.20当量)、環状アミンとして2-ヘプチルピロリジン(2.17g、12.2mmol、1.00当量)、トリエチルアミン(2.46mL、18.3mmol、1.50当量)、及びDCM(165mL)を用いる。
【0078】
これにより、4.42g(15.7mmol)のEHPyr2が黄色油状物として得られた。収率:82%。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ (ppm): 4.17 - 4.08 (m, 1H, 67%), 3.89 - 3.80 (m, 1H, 33%), 3.61 - 3.39 (m, 2H, 100%), 2.42 - 2.31 (m, 1H, 100%), 2.03 - 1.78 (m, 4H), 1.72 - 1.39 (s, 5H), 1.35 - 1.16 (m, 15H), 0.92 - 0.83 (m, 9H)
13C NMR (CDCl3, 101 MHz): δ (ppm): 175.14 (C=O, 16%), 175.06 (C=O, 16%), 174.73 (C=O, 33%), 174.71 (C=O, 33%), 57.65 (16%), 57.63 (16%), 57.3 (33%), 57.2 (33 %), 47.0 (100 %), 45.73, 45.71, 45.35, 45.32, 45.25, 35.65 (16 %), 35.62 (16 %), 33.48, 33.47, 33.4, 33.0, 32.6, 32.5, 32.0 (67 %), 31.93 (16 %), 31.91 (16 %), 30.5, 30.23, 30.22, 30.19, 29.95, 29.92, 29.74, 29.72, 29.64, 29.56, 29.5, 29.4, 29.3, 29.2, 26.7, 26.7, 26.6, 26.5, 26.0, 25.9, 24.2, 23.2, 23.1, 23.0, 22.8, 22.2, 14.24, 14.21, 14.18, 12.70, 12.41, 12.18, 12.15
IR (cm-1): 2957, 2924, 2864, 2855, 2636, 1419
HRMS (CI+): Theoretical exact mass for C19H38NO [M + H]+: 296.2953, experimental: 296.2962
【0079】
II-式(I)のモノアミドの抽出特性:
抽出試験は、以下を用いて実施する:
- 有機相として:1.2mol/Lの次のモノアミド:EHPip2、EHPip3、PPPip3、EHPip4、及びEHPyr2のうちの1つをTPH中に含む溶液、並びに
- 水性相として:約10g/Lのウラン(VI)、約200kBq/mLの239~240プルトニウム(IV)、及び4mol/L(使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液がおそらく呈すると思われる酸性度をシミュレートするため)又は0.5mol/L(プルトニウムを逆抽出するのに使用されると思われる水溶液がおそらく呈すると思われる酸性度をシミュレートするため)のいずれかの濃度の硝酸を含む水溶液。
【0080】
これらの試験の各々は、チューブ内で撹拌しながら30分間25℃で、有機相のうちの1つを水性相のうちの1つと接触させることによって実施する。使用するO/A体積比は1である。次いでこれらの相を遠心分離後に互いに分離する。
【0081】
このようにして分離された有機及び水性相中のウラン(VI)濃度及びプルトニウム(IV)活性は、それぞれ誘導結合プラズマ原子発光分析(plasma inductively coupled-atomic emission spectrometry)(又はICP-AES)及びα分光法によって測定する。
【0082】
ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の分配係数、並びにU/Pu分離係数は、液液抽出の分野の慣例に従って決定した。すなわち、
- 2つの相(それぞれ有機相及び水性相)の間の金属元素Mの分配係数(D
Mと表記)は、以下に等しい:
【数1】
(式中、
[M]
org.=抽出平衡における有機相中の金属元素の濃度(単位mg/L)、
[M]
aq.=抽出平衡における水性相中の金属元素の濃度(単位mg/L));
- 2つの金属元素M1とM2との間の分離係数(FS
M1/M2と表記する)は、以下に等しい:
【数2】
(式中、
D
M1=金属元素M1の分配係数;及び
D
M2=金属元素M2の分配係数)。
【0083】
下記の表Iは、試験した各モノアミドについての、4mol/LのHNO3及び0.5mol/LのHNO3の水性相で得られたウラン(VI)の分配係数(DUと表記)、及びプルトニウム(IV)の分配係数(DPuと表記)、並びに0.5mol/LのHNO3の水性相で得られた分離係数U/Pu(FSU/Puと表記)を示す。
【0084】
【0085】
比較として、同じ操作条件下であるが、有機相として以下のものを使用して実施した試験の結果もこの表に報告している:
- その一つは、1.2mol/LのMDEHA(N-デシル-N-メチル-2-エチルヘキサンアミド)(参考文献[2]に示される)をTPH中に含む溶液である。MDEHAは、環状アミンのない不斉モノアミドであり、試験したモノアミドと同じ分子式(C19H38NO)を有し、モノアミドEHPip2、EHPip3、EHPip4、及びEHPyr2と同様に1-エチルペンチル基を有するカルボニル基を含む。そして
- もう一つは、1.1mol/LのTBPをTPH中に含む溶液である。何故なら、TBPは、PUREX法の溶媒だからである。
【0086】
表Iは、試験した全てのモノアミドが、高酸性度ではウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を共抽出し([HNO3]=4mol/LではD>1)、中程度の酸性度ではプルトニウム(IV)を選択的に逆抽出する([HNO3]=0.5mol/LではDPu<0.05)ことを示している。
【0087】
ピペリジン環のモノアミドEHPip3及びPPPip3は、高酸性度([HNO3]=4mol/L)において、MDEHAの場合に、同じ酸性度及び有機相中の同一濃度で得られたものよりも高いウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の分配係数をもたらす一方、中程度の酸性度では良好なU/Pu選択性を保っている([HNO3]=0.5mol/LではFSU/Pu>10)。
【0088】
しかし、最も興味深いモノアミドは、ピロリジン環のモノアミドEHPyr2である。実際に、このモノアミドは、高酸性度([HNO3]=4mol/L)においてウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を強力に抽出しながら、中程度の酸性度においては高いU/Pu分離係数を達成している([HNO3]=0.5mol/LではFSU/Pu=33)。
【0089】
加えて、プルトニウム(IV)より強力にウラン(VI)を抽出するMDEHA等のモノアミドとは異なり、モノアミドEHPyr2は、高酸性度([HNO3]=4mol/L)において、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)について同様の分配係数をもたらす。これらの分配係数は、MDEHAの場合には、同じ酸性度及び有機相中の同一濃度で得られたものよりも高い。モノアミドEHPyr2の場合には、中程度の酸性度([HNO3]=0.5mol/L)において得られたU/Pu分離係数も、同じ酸性度においてMDEHAの場合に得られたものよりも高い。
【0090】
モノアミドEHPyr2の場合に高酸性度([HNO3]=4mol/Lにおいて得られたウラン(VI)及びプルトニウム(IV)の分配係数が、TBPの場合に同じ酸性度において得られたものよりも低いことに留意するべきである。その一方で、中程度の酸性度([HNO3]=0.5mol/Lにおいて、モノアミドEHPyr2は、TBPの場合に、同じ酸性度において得られたものよりも10倍高いFSU/Pu分離係数をもたらすので、TBPのものより遥かに高いU/Pu選択性を有する。
【0091】
III-式(I)のモノアミドのウラン(VI)担持能:
ウラン(VI)担持能試験は、1.2mol/LのモノアミドEHPip3をTPH中に含む有機相を、135g/Lのウラン(VI)及び4mol/Lの硝酸を含む水溶液に5回連続して接触させることによって実施する。
【0092】
各接触は、チューブ内で撹拌しながら30分間25℃において、O/A体積比2で行い、続いて遠心分離し、接触させた水性相及び有機相を分離し、有機相中のウラン(VI)濃度を測定する。
【0093】
下記の表IIは、5回の各接触後、有機相中に得られたウラン(VI)濃度([U]orgと表記され、g/Lで表される)を示す。
【0094】
【0095】
5回の接触中に脱混合(すなわち、第3の相の形成)が認められなかったことに加えて、表IIは、モノアミドを含む有機相が142g/Lのウラン(VI)を担持することが可能であることを示しており、これは、使用済み核燃料を処理するための方法の開発に適合する高い担持能であることを表している。
【0096】
IV-本発明の処理方法の一実施態様の概略図:
本発明による、使用済み核燃料を硝酸中に溶解させることによって生じる水溶液を処理するための方法の一実施態様の概略図を表している
図1を参照されたい。
【0097】
その図に示すように、本方法は8つの工程を含む。
【0098】
図1において「U/Pu共抽出」と表記される、これらの工程の1番目の工程は、使用済み核燃料を溶解させることによって生じる硝酸水溶液からウラン及びプルトニウムを一緒に抽出することを目的としており、前者のウランは+VI酸化状態であり、かつ後者のプルトニウムは+IV酸化状態である。
【0099】
そのような溶液は、典型的には、3~6mol/LのHNO3、ウラン(VI)、プルトニウム(IV)、マイナーアクチニド(アメリシウム、キュリウム、及びネプツニウム)、核分裂生成物(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Mo、Ru、Tc、Rh、Ru、Pd、Y、Cs、Ba、Zr、Nb、…)、並びに幾つかの放射化生成物、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、及びニッケルを含む。
【0100】
「U/Pu共抽出」工程は、抽出器1内で、1mol/L~2mol/L、一層良好には1.1mol/L~1.3mol/L、例えば1.2mol/Lの式(I)のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を有機希釈剤中の溶液中に含む有機相(
図1に「PO」と表記)に対して向流で溶解液を循環させることによって実施される。
【0101】
有機希釈剤は、とりわけ、直鎖又は分岐鎖の炭化水素、例えば、n-ドデカン、TPH、又はイソパラフィン、例えば、商品名Isane(商標)IP 185Tの商品名で市販されるものであってもよく、優先的にはTPHである。
【0102】
図1において「PF洗浄」と称される、本方法の第2の工程は、「U/Pu共抽出」によって生じた有機相から、ウラン(VI)及びプルトニウム(IV)と一緒に溶解液から抽出された核分裂及び放射化生成物の部分(フラクション)を逆抽出することを目的とする。
【0103】
これを行うために、「PF洗浄」工程は、「U/Pu共抽出」によって生じた有機相を1回以上洗浄する操作を含み、各洗浄操作は、抽出器2内で、濃度が1mol/L~6mol/LのHNO3の範囲内であり得るが、ルテニウム及びテクネチウムの逆抽出を容易にするように好ましくは4mol/L~6mol/LのHNO3であり、更に良好には4mol/L~5mol/LのHNO3である硝酸水溶液に対して向流でこの有機相を循環させることによって実施される。
【0104】
「PF洗浄」工程が、1回以上の強酸性水溶液、すなわち、典型的には3mol/L以上のHNO
3で実施される場合は、この工程は、有機相を脱酸することも含み、これは、この有機相を弱い酸性の硝酸水溶液、すなわち、すなわち0.1mol/L~1mol/LのHNO
3を含む水溶液、例えば、0.5mol/LのHNO
3を含む水溶液に対して向流で循環させることによって実施され、これは、
図1において「Pu逆抽出」と表記されている第3の工程に割り当てられた抽出器へ多すぎる量の酸が運ばれて、この第3の工程の能力が損なわれることがないようにするためである。
【0105】
この「Pu逆抽出(Pu stripping)」工程は、U/Pu分配の第1の工程であって、「PF洗浄」から生じた有機相から+IV酸化状態のプルトニウムを逆抽出すること、したがってこのプルトニウムを還元することなく逆抽出することを目的としている。
【0106】
それは、抽出器3内で、0.1mol/L~0.5mol/LのHNO3を含む水溶液に対して向流で、好ましくは、プルトニウム(IV)が濃縮するようなやり方で逆抽出されるように、1より大きい、好ましくは3以上、一層良好には5以上のO/A流量比を使用して、この有機相を循環させることによって実施される。
【0107】
「Pu逆抽出」工程において実施されるプルトニウム(IV)の逆抽出(Stripping)は、「PF洗浄」から生じた有機相中にやはり存在するウラン(VI)部分(フラクション)の逆抽出を伴う。
【0108】
したがって、
図1において「第1のU洗浄」と表記され、U/Pu分配の第2の工程となる、本方法の第4の工程は、「Pu逆抽出」によって生じた水性相から、以下のいずれかを抽出することを目的とする:
- この水性相中に存在する全てのウラン(VI)(U/Pu分配によって、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含む水溶液と、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む有機溶液とがもたらされることが所望される場合);
- 又は、「第1のU洗浄」の終了時に、予め選択された比率でウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を含む水溶液を得ること可能にする量のウラン(VI)(U/Pu分配によって、この比率のプルトニウム(IV)とウラン(VI)の混合物を含む水溶液と、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む有機溶液とがもたらされることが所望される場合)。
【0109】
いずれの場合でも、「第1のU洗浄」は、抽出器4内で、「Pu逆抽出」によって生じた水性相を、「U/Pu共抽出」に使用された有機相の組成と同一の組成の有機相(
図1でとりわけ「PO」と表記される)に対して向流で循環させることによって実施される。抽出されるウラン(VI)の量は、一方ではO/A流量比を変えることによって、他方では水性相の酸性度を変えることによって調整され、有機相/水性相の流量比が高いほど、また水性相の酸性度が高いほど、ウラン(VI)の抽出が良好になる。したがって、抽出器4内で循環する水性相に、この水性相にもたらすことが所望される酸性度に応じて、より高い又はより低い濃度のHNO
3を添加することができる。
【0110】
図1において「α-Tcバリア」と称される第5の工程は、「逆抽出Pu」から生じた有機相から、「共抽出U/Pu」中に抽出されたものであって「PF洗浄」中に逆抽出されなかったテクネチウム部分(フラクション)を逆抽出することを目的としており、これは、テクネチウムに関してこの有機相の除染を強化するためである。
【0111】
それはまた、「U/Pu共抽出」中に抽出されたネプツニウムのフラクション及び「α-Tcバリア」までのテクネチウムに続くネプツニウムのフラクション、並びにこの有機相がなおも含有していると思われるいかなる微量のプルトニウム(IV)も、「Pu逆抽出」によって生じた有機相から逆抽出することを可能にする。
【0112】
それは、抽出器5内で、「Pu逆抽出」によって生じた有機相を、硝酸水溶液に対して向流で循環させることによって実施され、その硝酸水溶液は、0.1mol/L~3mol/LのHNO3、更に良好には1mol/LのHNO3、並びにウラン(VI)を還元することなく、テクネチウム(有機相中に+VII酸化状態で存在する)をテクネチウム(IV)に、ネプツニウム(VI)をネプツニウム(IV)又はネプツニウム(V)に、そしてプルトニウム(IV)をプルトニウム(III)にそれぞれ還元するための1種以上の還元剤を含む。このタイプの酸性度の場合、テクネチウム(IV)及びネプツニウム(IV)は、式(I)のモノアミドによって抽出可能ではなく、一方、プルトニウム(III)はプルトニウム(IV)より抽出されにくい。
【0113】
還元剤として、硝酸ウラナス(あるいはU(IV))、硝酸ヒドラジニウム(あるいはNH)、硝酸ヒドロキシルアンモニウム(あるいはNHA)、及びアセトアルドキシム、ヒドロキシイミノアルカン酸(例えば、6-ヒドロキシイミノヘキサン酸)、又はこれらの混合物、例えば、U(IV)/NH、U(IV)/NHA、又はU(IV)/アセトアルドキシム混合物をこのように使用することができ、優先的にはU(IV)/NH又はU(VI)/NHA混合物である。必要であれば、グルコン酸を水溶液に添加して、水性相中でのテクネチウム(IV)の再酸化現象を減少させ、これによって還元剤(1又は複数)の消費を制限することができる。
【0114】
この工程は、室温(すなわち、20~25℃)において実施することができるが、好ましくは、テクネチウム(IV)の逆抽出速度を促進しながら、水性相中でのテクネチウム(IV)の再酸化現象を制限するように、したがって一度逆抽出されたテクネチウムが有機相中に再抽出されるリスクを制限するように、30℃~40℃の間の温度で、一層良好には32℃において実施される。
【0115】
図1で「第2のU洗浄」と表記される第6の工程は、「α-Tcバリア」から生じた水性相から、その前の工程においてテクネチウムと一緒に逆抽出されたウラン(VI)を抽出することを目的とし、「α-Tcバリア」工程が水性相中への大き過ぎるウラン(VI)の喪失をもたらさないようにするためのものである。
【0116】
それは、抽出器6内で、「α-Tcバリア」から生じた水性相を、「U/Pu共抽出」及び「第1のU洗浄」に使用された有機相の組成と同一の組成を有する有機相(
図1で「PO」とも表記される)に対して向流で循環させることによって実施され、それは、ウラン(VI)の抽出を促進するために、濃硝酸、とりわけ10mol/Lの濃硝酸を添加することによってこの水性相を酸性化した後で実施される。
【0117】
図1において「U逆抽出」と表記される第7の工程は、「α-Tcバリア」から生じた有機相からウラン(VI)を逆抽出することを目的としている。
【0118】
それは、抽出器7内で、「α-Tcバリア」から生じた有機相を、多くとも0.5mol/L、更に良好には多くとも0.05mol/LのHNO3を含む硝酸水溶液、例えば、0.01mol/LのHNO3を含む水溶液等に対して向流で循環させることによって実施される。この工程は、室温において(例えば、20~25℃において)実施することができるが、好ましくは、ウラン(VI)が濃縮されるやり方で抽出されるように、加熱下で(すなわち、典型的には40~50℃の温度で)、1より大きいO/A流量比を使用して実施される。
【0119】
これらの7つの工程の終了時に、以下のものが得られる:
- 2つのラフィネート(raffinate)、これらは、抽出器1及び6からそれぞれ出る水性相に相当し、第1のものについては、核分裂及び放射化生成物、並びにアメリシウム及びキュリウム(
図1での「一次ラフィネート」)を含み、第2のものについては、テクネチウム、ネプツニウム、及び場合により微量のプルトニウム(
図1での「二次ラフィネート」を含む;
- 抽出器4を出る水性相、これは、除染されたプルトニウム(IV)、又は除染されたプルトニウム(IV)及びウラン(VI)の混合物のいずれかを含み、それぞれの場合に応じて「Pu流れ」又は「Pu+U流れ」とよばれる;
- 抽出器7から出る水性相、これは、除染されたウラン(VI)を含み、「U流れ」とよばれる;並びに
- 抽出器7から出る有機相、これは、もはやプルトニウム(IV)又はウラン(VI)のいずれも含まないが、前の工程の間に蓄積してきたと思われる幾つかの不純物及び抽出剤の分解生成物(加水分解及び放射線分解によって形成される)を含有し得る。
【0120】
したがって、
図1で「PO洗浄」と表記される第8の工程は、この有機相を塩基性水溶液による1回以上の洗浄に供することによって、それを再生することを目的としている。この洗浄は、例えば、0.3mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液で第1の洗浄を行い、続いて0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで第2の洗浄を行い、続いて再酸性化のために硝酸水溶液、例えば、2mol/LのHNO
3を含む水溶液で1回以上の洗浄を行うことであり、各洗浄は、前記有機相を、抽出器内で水性洗浄液に対して向流で循環させることによって実施される。
【0121】
図1に見られるように、このように再生された有機相は、次いで処理サイクルに再導入するために抽出器1及び4に戻すことができる。
【0122】
(参考文献)
[1]国際公開第2017/017207号
[2]国際公開第2017/017193号
[3]国際公開第2018/138441号
[4]国際公開第2019/002788号
[5]T. H. Siddall, Journal of Physical Chemistry 1960, 64, 12, 1863-1866
[6]H. Jing-Tianら, Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry 1999, 241, 215-217
【符号の説明】
【0123】
1・・・U/Pu共抽出
2・・・PF洗浄
3・・・Pu逆抽出
4・・・第1のU洗浄
5・・・α-Tcバリア
6・・・第2のU洗浄
7・・・U逆抽出
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0未満のpHを有する酸性水溶液からウラン(VI)及び/又はプルトニウム(IV)を抽出するための、下記式(I):
【化1】
(式中、
n=1、2、又は3であり;
R
1は、4~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;かつ
R
2は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基であり、その鎖は、任意選択により場合によっては1回以上酸素原子が割り込んでいてもよく、炭素原子及び該当する場合には酸素原子の総数は、3~10の間である)
のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物の使用。
【請求項2】
酸性水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液に接触させ、次いで水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
有機溶液が、1mol/L~2mol/L
のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
0未満のpHを有する酸性水溶液が、使用済み核燃料を硝酸中に溶解させることによって生じる水溶液である、請求項
1に記載の使用。
【請求項5】
n=2又は3である、請求項
1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
R
1が、6~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル
基であり、且つ/又は
R
2が、4~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル
基である、
請求項
1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
モノアミドが、
N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、又は
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド
である、請求項
1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
0未満のpHを有する酸性水溶液から、ウラン(VI)をプルトニウム(IV)から完全に又は部分的に分離するための、下記式(I):
【化2】
(式中、
n=1、2、又は3であり、
R
1は、4~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
R
2は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基であり、その鎖は、任意選択により場合によって1回以上酸素原子が割り込んでいてもよく、炭素原子及び該当する場合には酸素原子の総数は、3~10の間である)
のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物の使用であって、以下の工程:
a)前記水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を共抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S1に少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、共抽出する工程;
b)工程a)から生じた有機溶液から+IV酸化状態のプルトニウム及びウラン(VI)の一部分(フラクション)を逆抽出する工程であって、前記有機溶液を、0より大きいpHを有する酸性水溶液に少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程;及び
c)工程b)から生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分(フラクション)の全部又は一部を再抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S2と少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程、
を含み、
それによって、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)及びウラン(VI)の混合物を含む水溶液と、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む有機溶液とが得られる、
使用。
【請求項9】
有機溶液S1及びS2が、1mol/L~2mol/L
のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む、請求項
8に記載の使用。
【請求項10】
0未満のpHを有する酸性水溶液が、使用済み核燃料を硝酸に溶解させることによって生じる水溶液であり、一方、0より大きいpHを有する酸性水溶液が、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む溶液である、請求項
8に記載の使用。
【請求項11】
n=2又は3である、請求項8
から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
R
1が、6~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル
基であり、且つ/又は
R
2が、4~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル
基である、
請求項
8から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
モノアミドが、
N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、又は
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド
である、請求項
8から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
使用済み核燃料を硝酸中に溶解させることによって生じる水溶液を1サイクルで処理するための方法であって、前記水溶液が、ウラン(VI)、プルトニウム(IV)、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びにルテニウム及びテクネチウムを含めた核分裂及び放射化生成物を含み、前記サイクルが、以下の工程:
a)前記水溶液からウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を共抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S1に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて水溶液と有機溶液とを互いに分離することを含み、前記1種又は複数のモノアミドが、下記式(I):
【化3】
(式中、
n=1、2、又は3であり;
R
1は、4~12個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;かつ
R
2は、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基であり、その鎖は、任意選択により場合により1回以上酸素原子が割り込んでいてもよく、炭素原子及び該当する場合には酸素原子の総数は、3~10の間である)
で表される、共抽出する工程;
b)工程a)から生じた有機溶液を、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びに核分裂及び放射化生成物に関して除染する工程であって、前記有機溶液を、0.5mol/L~6mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、除染する工程;
c)工程b)から生じた有機溶液中に存在するウラン(VI)及びプルトニウム(IV)を、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)とウラン(VI)との混合物を含む水溶液と、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む有機溶液とに分配する工程であって、分配が以下の工程:
c
1)+IV酸化状態のプルトニウム、及びウラン(VI)の一部分(フラクション)を、工程b)から生じた有機溶液から逆抽出する工程であり、前記有機溶液を、0.1mol/L~0.5mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程と、
c
2)工程c
1)から生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分(フラクション)の全部又は一部を再抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む有機溶液S2に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程と
を含む、分配する工程;
d)工程c
1)から生じた有機溶液を、テクネチウムに関して除染する工程であって、除染が以下の工程:
d
1)工程c
1)から生じた有機溶液から+IV酸化状態のテクネチウムを逆抽出する工程であって、前記有機溶液を、0.1mol/L~3mol/Lの硝酸及び+VII酸化状態のテクネチウムを+IV酸化状態に還元することが可能な少なくとも1種の還元剤を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程と、
d
2)工程d
1)から生じた水溶液中に存在するウラン(VI)部分(フラクション)を再抽出する工程であって、前記水溶液を、有機希釈剤中にモノアミド又はモノアミドの混合物を含む有機溶液S3に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、再抽出する工程と、
を含む、除染する工程;
e)工程d
1)から生じた有機溶液からウラン(VI)を逆抽出する工程であって、前記有機溶液を、多くとも0.05mol/Lの硝酸を含む水溶液に抽出器内で少なくとも1回接触させ、続いて有機溶液と水溶液とを互いに分離することを含む、逆抽出する工程;及び
f)任意選択により場合によって、工程e)から生じた有機溶液を再生させる工程、
を含み、
それによって、アメリシウム(III)、キュリウム(III)、並びに核分裂及び放射化生成物に関して除染された第1及び第2の水溶液が得られ、第1の水溶液が、ウラン(VI)を含まずにプルトニウム(IV)を含むか、又はプルトニウム(IV)とウラン(VI)との混合物を含み、かつ、第2の水溶液が、プルトニウム(IV)を含まずにウラン(VI)を含む、
方法。
【請求項15】
有機溶液S1、S2、及びS3が、1mol/L~2mol/L
のモノアミド又は複数のモノアミドの混合物を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
工程b)の水溶液が、4mol/L~6mol/Lの硝酸を含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
工程c
1)の抽出器内で有機溶液と水溶液とを接触させることが、1より大き
い有機溶液の水溶液に対する流量比で有機溶液及び水溶液を循環させることを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
還元剤が、硝酸ウラナス、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシルアンモニウム、アセトアルドキシム、ヒドロキシイミノアルカン酸、又はこれらの混合
物である、請求項
14に記載の方法。
【請求項19】
- ステップd
1)の抽出器が30℃~40℃の温度に加熱され、且つ/又は
- ステップe)の抽出器が40℃~50℃の温度に加熱される、
請求項
14に記載の方法。
【請求項20】
工程e)の抽出器内で有機溶液と水溶液とを接触させることが、1より大きい有機溶液の水溶液に対する流量比で有機溶液及び水溶液を循環させることを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項21】
ステップe)から生じた有機溶液が再生され、次いで第1及び第2の部分に分けられ、第1の部分が有機溶液S1を形成し、第2の部分が有機溶液S2を形成する、請求項
14に記載の方法。
【請求項22】
n=2又は3である、請求項
14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
R
1が、6~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル
基であり、且つ/又は
R
2が、4~10個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル
基である、
請求項
14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
モノアミドが、
N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、又は
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド
である、請求項
14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
N-(2-ヘプチルピロリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(2-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、
N-(4-ヘキシルピペリジニル)-(2-エチル)ヘキサンアミド、又は
N-(3-ヘキシルピペリジニル)-(2-プロピル)ペンタンアミド
である、モノアミド。
【国際調査報告】