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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】複数の照射ベクトルを定める技術
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/36 20210101AFI20241106BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241106BHJP
   B22F 10/37 20210101ALI20241106BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241106BHJP
   B29C 64/277 20170101ALI20241106BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20241106BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20241106BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241106BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241106BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20241106BHJP
【FI】
B22F10/36
B22F10/28
B22F10/37
B29C64/153
B29C64/277
B29C64/268
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523894
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2022079605
(87)【国際公開番号】W WO2023067199
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】102021127580.6
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523460981
【氏名又は名称】ニコン・エスエルエム・ソルーションズ・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Nikon SLM Solutions AG
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ クロップホレル
(72)【発明者】
【氏名】ジアチュン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ディーター シュヴァルツェ
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AP06
4F213AP11
4F213AP20
4F213AR07
4F213AR12
4F213AR16
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL44
4F213WL45
4F213WL50
4F213WL76
4F213WL85
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【解決手段】付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定める方法が提供される。この方法は、生成される3次元ワークピースの層に対して、該層にダウンスキン領域を画定することと、該ダウンスキン領域をカバーするように第1の照射ベクトルのセットを定めること、とを有する。第1の照射ベクトルの少なくとも1つは、ダウンスキン領域に隣接する、該層のボリューム領域内に延在する。第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つは、1mm以上の長さを有する。この方法は、該層のボリューム領域の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットを定めるステップと、第1の照射ベクトルのセットに第1の照射パラメータのセットを割り当てるステップと、第2の照射ベクトルのセットに第2の照射パラメータのセットを割り当てるステップとをさらに有し、第2の照射パラメータのセットは第1のセットとは異なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定める方法であって、該方法は、生成される3次元ワークピースの層に対して、
前記層にダウンスキン領域を画定するステップと、
前記ダウンスキン領域をカバーするように第1の照射ベクトルのセットを定めるステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、前記ダウンスキン領域に隣接する前記層のボリューム領域内に延在し且つ1mm以上の長さを有する、ステップと、
前記層の前記ボリューム領域の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットを定めるステップと、
前記第1の照射ベクトルのセットに、第1の照射パラメータのセットを割り当てるステップと、
前記第2の照射ベクトルのセットに、前記第1の照射パラメータのセットとは異なる第2の照射パラメータのセットを割り当てるステップと、
を有する、
複数の照射ベクトルを定める方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記第1の照射ベクトルの各々は、少なくとも15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmの長さを有する、
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記第2の照射ベクトルの各々は、少なくとも15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmの長さを有する、
方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、
前記ダウンスキン領域は、前記層と未固化の原材料粉末下層との間に所定数よりも少ないワークピース層が存在する前記層の領域として定義され、
及び/又は、
前記ボリューム領域は、前記層と前記未固化の原材料粉末下層との間に少なくとも前記所定数のワークピース層が存在する、又は前記未固化の原材料粉末下層が存在しない、前記層の領域として定義される、
方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、
前記照射パラメータのセットは、レーザ出力、レーザ波長、走査速度、走査モード、レーザスポットサイズ、レーザスポット形状、レーザ動作モード、ハッチング距離、及びベクトル間のジャンプ時間のうちの少なくとも1つを含む、
方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、該方法はさらに、
前記ダウンスキン領域において1又は複数の第1の初期ベクトルを規定するステップと、
前記1又は複数の第1の初期ベクトルの各々について、前記第1の初期ベクトルのそれぞれが第1の所定長よりも短い長さを有するかどうかを判定するステップと、
前記1又は複数の第1の初期ベクトルの各々について、前記第1の初期ベクトルが前記第1の所定長よりも短い長さを有すると判定された場合、前記第1の初期ベクトルを、前記ボリューム領域内に延在するように延長して、第1の延長照射ベクトルを形成するステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの前記少なくとも1つのベクトルは、前記第1の延長照射ベクトルである、ステップと、
を有する、
方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、該方法はさらに、
前記ダウンスキン領域及び前記ボリューム領域の初期ベクトルのハッチングパターンを定めるステップであって、前記ダウンスキン領域は第1の初期ベクトルのセットによってカバーされ、前記ボリューム領域は第2の初期ベクトルのセットによってカバーされる、ように該ハッチングパターンを定めるステップと、
複数の前記第1の照射ベクトルに対して、前記第1の初期ベクトルのそれぞれが第1の所定長よりも短い長さを有するかどうかを判定するステップと、
複数の前記第1の初期ベクトルの各々について、前記第1の初期ベクトルが前記第1の所定長よりも短い長さを有すると判定された場合、前記第1の初期ベクトルを、前記ボリューム領域内に延在するように延長して、第1の延長照射ベクトルを形成するステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの前記少なくとも1つのベクトルは前記第1の延長照射ベクトルである、ステップと、
を有する、
方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記ダウンスキン領域に隣接する領域における前記第2の初期ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、前記第1の延長照射ベクトルの向きとは異なる向きを有し、前記第2の初期ベクトルのうちの前記少なくとも1つのベクトルは、少なくとも部分的に除去され、前記第2の初期ベクトルの除去された部分は、前記第1の延長照射ベクトルによって置き換えられる、
方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
前記延長して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップは、前記第1の初期ベクトルを、前記第2の初期ベクトルのうちの1つ又は2つの隣接する第2の初期ベクトルと統合して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップを含む、
方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の方法において、
前記第1の延長照射ベクトルは、前記第1の所定長を有する、
方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
前記統合して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップにおいて、前記第1の初期ベクトルは、前記第2の初期ベクトルのうちの2つの隣接する第2の初期ベクトルと統合され、前記2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの第1のベクトルの統合された部分は、前記2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの第2のベクトルの統合された部分と同じ長さを有する、
方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、
前記第1の初期ベクトルには、前記第2の初期ベクトルのうちの隣接する第2の初期ベクトルの全体が統合され、特に、前記隣接する第2の初期ベクトルは、統合の前においては、統合される端部とは反対側の端部で輪郭ベクトルに隣接する、
方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、該方法はさらに、
前記統合して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップの後に、前記1つ又は2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルの残った部分が第2の所定長よりも小さいかどうかを判定するステップと、
前記残った部分が前記第2の所定長よりも小さいと判定された場合、前記第1の統合照射ベクトルを前記残った部分と統合して第2の延長照射ベクトルを形成するステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの前記少なくとも1つのベクトルは、前記第2の延長照射ベクトルである、ステップと、
を有する、
方法。
【請求項14】
請求項6~13のいずれか1項に記載の方法において、該方法はさらに、
第2の所定長よりも短い長さを有する第2の初期ベクトルを特定するステップと、
前記特定された第2の初期ベクトルを隣接する第1の初期ベクトル又は隣接する第1若しくは第2の延長照射ベクトルに統合して、第1の照射ベクトルを形成するステップと、
を有する、
方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、該方法はさらに、
第1の初期ベクトルのセットを定めるステップであって、複数の前記第1の初期ベクトルは前記層のボリューム領域内に延在し且つ同じ第1の所定長を有し、複数の前記第1の照射ベクトルの各々は対応する第1の初期ベクトルを含む、ように該第1の初期ベクトルのセットを定めるステップと、
特に、前記第1の初期ベクトルのセットを定めるステップの後に、第2の初期ベクトルのセットを定めるステップであって、前記第2の照射ベクトルのうちの少なくともいくつかのベクトルは、対応する第2の初期ベクトルに対応するように該第2の初期ベクトルのセットを定めるステップと、
を有する、
方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、該方法はさらに、
第2の所定長よりも短い長さを有する第2の初期ベクトルを特定するステップと、
前記特定された第2の初期ベクトルを隣接する第1の初期ベクトルに統合して第1の照射ベクトルを形成するステップと、
を有する、
方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、該方法はさらに、
ダウンスキン領域の境界までの距離が第2の所定長よりも短いワークピース輪郭線を特定するステップと、
前記ワークピース輪郭線まで延びるように第1の初期ベクトルを定めるステップと、
を有する、
方法。
【請求項18】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、該方法はさらに、
前記第1の照射ベクトルのうち、前記ダウンスキン領域内にあり且つ第1の所定長よりも短い長さを有する部分の量が最小となるように、前記層内の前記第1の照射ベクトルのセットの向きを決定するステップ、
を有する、
方法。
【請求項19】
請求項7に記載の方法において、該方法はさらに、
前記第1の初期ベクトルのうち、前記ダウンスキン領域内にあり且つ第1の所定長よりも短い長さを有する部分の量が最小となるように、前記層内の前記第1の初期ベクトルのセットの向きを決定するステップ、
を有する、
方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の方法において、該方法はさらに、
定められた前記第1の照射ベクトルのセット及び定められた前記第2の照射ベクトルのセットに従って前記3次元ワークピースの前記層を照射するステップ、
を有する、
方法。
【請求項21】
プログラムコード部分を備えるコンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品が1又は複数のコンピューティング装置で実行されるときに、前記プログラムコード部分が請求項1~19のいずれか1項に記載の方法を実行する、
コンピュータプログラム製品。
【請求項22】
請求項21に記載のコンピュータプログラム製品において、
該コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読記録媒体に記憶された、
コンピュータプログラム製品。
【請求項23】
付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定めるための装置であって、該装置は、生成される3次元ワークピースの層に対して、
前記層にダウンスキン領域を画定し、
前記ダウンスキン領域をカバーするように第1の照射ベクトルのセットを定め、前記第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、前記ダウンスキン領域に隣接する前記層のボリューム領域内に延在し且つ1mm以上の長さを有し、
前記層の前記ボリューム領域の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットを定め、
前記第1の照射ベクトルのセットに、第1の照射パラメータのセットを割り当て、
前記第2の照射ベクトルのセットに、前記第1の照射パラメータのセットとは異なる第2の照射パラメータのセットを割り当てる、
装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、該装置はさらに、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法の前記ステップを実行する、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、付加製造に関する。特に、本発明は、付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定めるための技術に関する。3次元ワークピースを製造する機器は、限定するものではないが、選択的レーザ焼結及び/又は選択的レーザ溶融等の粉末床溶融結合を行う機器であってもよい。
【背景技術】
【0002】
粉末床溶融結合は、粉末状の、特に金属及び/又はセラミックの原材料を複雑な形状の3次元ワークピースに加工することができる積層造形法である。それを行うために、原材料粉末層がキャリア上に塗布され、製造されるワークピースの所望の幾何学的形状に応じて、該粉末層が位置選択的に照射(例えば、レーザ照射又は荷電粒子照射)される。粉末層に進入する照射は、原材料粉末粒子の加熱、ひいては溶融又は焼結を引き起こす。次いで、照射処理を受けたキャリア上の該層に、ワークピースが所望の形状及びサイズを有するまで、さらなる原材料粉末層が連続的に塗布される。粉末床溶融結合は、CADデータに基づいて、プロトタイプ、工具、交換部品、高価値部品、又は医療用補装具、例えば、歯科用補装具又は整形外科用補装具等、を製造するために使用することができる。粉末床溶融結合技術の例としては、選択的レーザ溶融及び選択的レーザ焼結が挙げられる。
【0003】
上記の技術に従って1つ以上のワークピースを製造する機器が知られている。例えば、欧州特許出願公開第2961549号明細書及び欧州特許出願公開第2878402号明細書には、選択的レーザ溶融技術によって3次元ワークピースを製造するための機器が記載されている。これらの文献に記載された一般的な原理は、本開示の技術にも適用され得る。
【0004】
上述の付加製造プロセスを用いて、様々な形状及び寸法を有するワークピースを生成することが可能である。例えば、ワークピースは、3次元ワークピースが造形構築されるキャリアに向かって下向きの表面を備える場合がある。ワークピースのこのタイプの表面を、本明細書ではダウンスキン表面とも呼ぶ。ダウンスキン表面は、ワークピースの、オーバーハング(張り出し)領域、内部ボア、及び/又は傾斜側面に存在し得る。
【0005】
従来技術では、ダウンスキン表面の一部であるワークピースの層の領域の照射ベクトルに対して修正された照射パラメータを適用することが知られている。これは、これらの領域における熱伝導の不足のために必要であり、そのような熱伝導の不足は、該領域の過熱、内部応力の増大、及び変形を引き起こす可能性がある。
【0006】
特に、ワークピースの層のダウンスキン領域において照射パワーを低減することが知られている。修正された照射パラメータを適用するために、ハッチング(すなわち、照射ベクトルの位置を定める)は、ダウンスキン領域と残りの領域(以下では、ボリューム領域)がそれぞれ別々にハッチングされ、異なる照射パラメータがダウンスキン領域のハッチングのベクトル及びボリューム領域のハッチングのベクトルに適用されるように、行われる。
【0007】
すなわち、低角度構造又は格子構造を造形構築するために、造形プロセス中の非常に重要な問題は、過熱及び結果として生じる内部応力であり、これは、固化層の変形を引き起こし、幾何学的形状がクリティカルなままである場合には、包み込み(wrap up)をもたらす。低角度構造の場合、オーバーハング領域における熱伝導は、塊状であるボリューム部分にわたる領域よりもはるかに悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来技術は、ダウンスキン領域のベクトル及び/又は残りのボリューム領域のベクトルが短すぎるという状況を引き起こす場合がある。短いベクトルは、隣接するベクトル間の冷却時間を短くすることになる。結果として生じる過熱は、例えば、不安定な造形プロセスの問題をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、上述の問題及び/又は他の関連する問題のうちの少なくとも1つを解決する技術を提供することを目的とする。特に、限定はしないが、ダウンスキン領域において短いベクトルを回避する技術が提供される。
【0010】
この目的は、独立請求項に記載の方法、コンピュータプログラム製品、及び装置によって達成される。好適な実施形態は、従属請求項に示される。
【0011】
第1の態様によれば、付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定める方法が提供される。この方法は、生成される3次元ワークピースの層に対して、該層にダウンスキン領域を画定するステップと、前記ダウンスキン領域をカバーするように第1の照射ベクトルのセットを定めるステップ、とを有する。前記第1の照射ベクトルの少なくとも1つのベクトルは、前記ダウンスキン領域に隣接する前記層のボリューム領域内に延在する。前記第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、1mm以上の長さを有する。本方法は、前記層のボリューム領域の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットを定めるステップと、前記第1の照射ベクトルのセットに、第1の照射パラメータのセットを割り当てるステップと、第2の照射ベクトルのセットに、第2の照射パラメータのセットを割り当てるステップとをさらに有する。前記第2の照射パラメータのセットは、前記第1の照射パラメータのセットとは異なる。
【0012】
本開示の方法の態様の以下の説明は、以下に説明される装置の態様にも適用される。
【0013】
本方法は、生成される3次元物体の幾何学的形状を定める入力ファイルに基づいて、該3次元物体を生成するためにどのように照射を実行するかに関する上記機器のための命令を含む出力ファイルを生成する装置によって実行されてもよい。該装置は、第1の態様の方法を実行するように構成されたソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行するパーソナルコンピュータであってもよい。従って、本方法は、生成される3次元物体の幾何学的形状を定める入力ファイルをロードするステップと、前記入力ファイルに基づいて前記3次元物体の層を定めるステップとを有してもよい。このプロセスは、スライスと呼ばれることもある。さらに、照射パラメータが割り当てられた後、本方法は、上記機器のための命令を含む出力ファイルを出力するステップを有してもよい。前記命令は、ワークピースの各層に対する複数の照射ベクトルと、これらの照射ベクトルに割り当てられる1又は複数の照射パラメータとを定義してもよい。
【0014】
付加製造によって3次元物体を製造する上記機器は、選択的レーザ溶融又は選択的レーザ焼結等の粉末床溶融結合のための機器であってもよく、これらは両方とも当業者には周知の技術であり、本開示では簡単に説明するだけにする。
【0015】
特に、上記機器によって実行されるプロセスは、該機器のキャリア上に原材料粉末の第1の層を堆積させるステップを有してもよい。第1の層(及び後続の層)は、所定の層厚を有してもよく、層厚は、層ごとに調整されてもよく、又は固定されていてもよい。粉末層は、任意の適切な技術によって堆積されてもよく、原材料粉末層を生成するための方法及び機器は当技術分野では周知である。第1の原材料粉末層を堆積させた後、該粉末の所定の領域が、本方法によって生成された出力ファイルに従ってレーザ又は電子ビームによって照射される。該出力ファイルは、製造されるワークピース及び/又はサポート構造を定義する。このようにして、生成されるワークピースの第1の層は、キャリア上に直接置かれた状態で、又はキャリアに接合された若しくはキャリアへの直接的又は間接的な固体接続なしのサポート構造上で、照射され、それによって固化される。次のステップでは、原材料粉末の第2の層が堆積され、該層の所定の領域が照射され、固化される。このようにして、ワークピースは一層ずつ生成される。
【0016】
第1の態様の方法は、ワークピースの各層に対して実行されてもよい。第1のベクトルのセットは、ダウンスキン領域を完全にカバーしてもよい。これは、第1のベクトルのセットがダウンスキン領域全体を固化するように構成されることを意味する。すなわち、第1のベクトルのセットに属さない照射ベクトルによってカバーされるダウンスキン領域の部分はない。ダウンスキン輪郭線は、考慮に入れられてもよく、又は考慮から除外されてもよい。ダウンスキン領域における輪郭ベクトルは、第1のベクトルとして、又はそれ以外のベクトルとして或いは第1のベクトルとそれ以外のベクトルとの混合としてみなされてもよい。しかしながら、第1のセットの個々の照射ベクトル(並びに本明細書で定められる他の照射ベクトル)は、互いの間に所定の距離(ハッチング距離)を有し、ベクトルの延在方向及び該延在方向に垂直な方向の両方において個々のベクトルの間に小さな空間が残されてもよいことに留意されたい。しかしながら、この小さな空間は、生成されたメルトプールが広がることによって固化する。同様に、照射される輪郭を規定するワークピースの1以上の輪郭ベクトルに対して、小さな空間が残されてもよい。
【0017】
層のボリューム領域内に延在する第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、ダウンスキン領域とボリューム領域との間の境界線を越えて延在してもよい。第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つは、1mm以上の長さを有する。これは、第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つに対して1mmの最小長が設定されたことを意味し得る。第1の照射ベクトルの少なくとも1つは、1.5mm以上、2mm以上、3mm以上、又は4mm以上の長さを有してもよい。層のボリューム領域は、ダウンスキン領域ではない、層の残りの部分として定義されてもよい。
【0018】
照射パラメータを照射ベクトルのそれぞれのセットに割り当てるステップは、第1の照射パラメータのセットで第1の照射ベクトルのセットを照射し、第2の照射パラメータのセットで第2の照射ベクトルのセットを照射するように上記機器に命令する命令が生成されることを意味する。
【0019】
第2の照射パラメータのセットが第1のセットと異なるという事実は、第2のセットの少なくとも1つの照射パラメータ(例えば、レーザ出力)が第1のセットの対応する照射パラメータと異なることを意味する。例えば、第1の照射ベクトルに割り当てられるレーザパワーは、第2の照射ベクトルに割り当てられるレーザパワーと異なっていてもよい。
【0020】
第1の照射ベクトルの各々は、少なくとも15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmの長さを有してもよい。すなわち、第1の照射ベクトルのセットを定めるステップにおいて定められる各第1の照射ベクトルの長さに対して下限が定められてもよい。この下限は、本明細書では第1の所定長とも呼ばれる。第1の所定長は、適宜選択されてもよく、15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmのうちの1つであってもよい。
【0021】
第2の照射ベクトルの各々は、少なくとも15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmの長さを有してもよい。すなわち、第2の照射ベクトルのセットを定めるステップにおいて定められる各第2の照射ベクトルの長さに対して下限が定められてもよい。この下限は、本明細書では第2の所定長とも呼ばれる。第2の所定長は、適宜選択されてもよく、15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmのうちの1つであってもよい。
【0022】
第1の照射ベクトル及び/又は第2の照射ベクトルの長さに下限を設定することは、それぞれの照射ベクトルが安定した照射条件下で確実に照射され得るという利点を有し得る。さらに、短い照射ベクトルは、隣接するベクトル間の冷却時間を短くしすぎる場合がある。結果として生じる過熱は、例えば、不安定な造形プロセスの問題をもたらし得る。
【0023】
ダウンスキン領域は、層と未固化の原材料粉末下層との間に所定数よりも少ないワークピース層が存在する、そのような層の領域として定義されてもよい。ボリューム領域は、層と未固化の原材料粉末下層との間に少なくとも所定数のワークピース層が存在する、又は未固化の原材料粉末下層が存在しない、そのような層の領域として定義されてもよい。
【0024】
ダウンスキン領域及び/又はボリューム領域を画定する際、サポート構造は、固化した原材料とみなされてもよい。サポート構造は通常は小さいので、サポート構造は、ダウンスキン領域及び/又はボリューム領域を画定する目的で、未固化の原材料粉末とみなされてもよい。
【0025】
所定数のワークピース層は、1つ又は2つ以上であってもよい。所定数が1である場合、ダウンスキン領域は、未固化の原材料粉末下層に直接接触し、従って、ワークピースのダウンスキン表面の少なくとも一部を構成するワークピースの層の領域として定義される。所定数が1より大きい場合、少なくとも1つの中間ワークピース層が、ダウンスキン領域と下方にある未固化の原材料粉末との間に存在する。ダウンスキン領域の上記定義は、z軸に沿った、すなわち、ワークピースの層に垂直な軸に沿った、投影において考慮される。これは、(すなわち、層内、従って、x-y平面内において)ダウンスキン領域の境界の位置が、x-y平面に関して、未固化粉末の境界の位置に対応することを意味する。ボリューム領域の定義は、ダウンスキン領域とは別である、ワークピースの層の残りの部分を含むようなものであってもよい。
【0026】
照射パラメータのセットは、レーザ出力、レーザ波長、走査速度、走査モード、レーザスポットサイズ、レーザスポット形状、レーザ動作モード、ハッチング距離、及びベクトル間のジャンプ時間のうちの少なくとも1つを含んでよい。例示的な走査モードは、例えば、連続的、段階的、又は振動的な動きであってもよい。例示的なレーザスポット形状は、円形、矩形、又はドーナツ形状のレーザスポットであってもよい。例示的なレーザ動作モードは、連続波、準連続波、長パルス、短パルス、単一パルス、繰り返しパルス、又はバーストモードであってもよい。
【0027】
本方法はさらに、ダウンスキン領域において1又は複数の第1の初期ベクトルを規定するステップと、1又は複数の第1の初期ベクトルの各々について、第1の初期照射ベクトルのそれぞれが第1の所定長よりも短い長さを有するかどうかを判定するステップとを有してもよい。本方法はさらに、1又は複数の第1の初期ベクトルの各々について、第1の初期ベクトルが第1の所定長よりも短い長さを有すると判定された場合、第1の初期ベクトルを、ボリューム領域内に延在するように延長して、第1の延長照射ベクトルを形成するステップを有してもよい。第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、第1の延長照射ベクトルであってもよい。
【0028】
従って、少なくとも1つの初期ベクトルが生成され、その後、長さ要件を満たすように、すなわち、少なくとも第1の所定長を有するように「最適化」される。
【0029】
本方法は、ダウンスキン領域及びボリューム領域の初期ベクトルのハッチングパターンを定めるステップをさらに有してもよい。該ダウンスキン領域は、第1の初期ベクトルのセットによってカバーされ、該ボリューム領域は、第2の初期ベクトルのセットによってカバーされる。本方法はさらに、複数の第1の初期ベクトルに対して、第1の初期ベクトルのそれぞれが第1の所定長よりも短い長さを有するかどうかを判定するステップと、複数の第1の初期ベクトルの各々について、第1の初期ベクトルが第1の所定長よりも短い長さを有すると判定された場合、第1の初期ベクトルを、ボリューム領域内に延在するように延長して、第1の延長照射ベクトルを形成するステップと、を有してもよく、第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、第1の延長照射ベクトルである。
【0030】
従って、複数の初期ベクトルが生成され、これらの初期ベクトルは、その後、長さ要件を満たすように、すなわち、少なくとも第1の所定長を有するように「最適化」される。
【0031】
本開示において、初期ベクトルは、(本方法のプロセス中に)本方法によって定められるベクトルであってもよいが、最終照射ベクトル(すなわち、第1の照射ベクトルのセット又は第2の照射ベクトルのセットの一部)と必ずしも同一である必要はない。従って、初期ベクトルは、方向及び空間的な延長情報とみなされてよく、又はむしろ数学的要素とみなされてよい。しかしながら、初期ベクトルは、実際には、最終照射ベクトルに対応してもよい。初期ベクトルは、例えば、従来技術の装置の照射ベクトルのハッチングパターンとして使用される初期ハッチングパターンの一部とみなされてもよい。しかしながら、この初期ハッチングパターンは、特に、短すぎる照射ベクトルを回避するために、本開示の技術によって最適化される。
【0032】
ベクトル走査方向は、ベクトル生成(ハッチング)後に変更されたり、又はベクトル生成の完了後にのみ割り当てられたりするという事実により、本開示の文脈における用語「ベクトル」は、必ずしも方向に関する情報を含まず、計画された照射経路として理解されるべきである。計画された照射経路の位置及び大きさに関する情報が、本開示の用語では「ベクトル」として考えられるべきである。すなわち、本開示の全体において、「照射ベクトル」という表現は、「照射経路」又は「照射ライン」と言い換えることができる。しかしながら、当然ながら、本開示による「照射ベクトル」は、実際には、いくつかの実施形態においては、方向に関する情報を含んでよい。従って、「初期ベクトル」という用語は、最終照射ベクトルを生成するプロセス中に論理的定義のために使用される「中間段階の照射経路」として理解されてもよい。例えば、初期ベクトルは、最終照射ベクトルになる前に、さらなる統合、延長、方向変更、及び/又は短縮ステップを受けてもよい。本明細書に開示される「初期ベクトル」は、特に、「初期照射ベクトル」と呼ばれてもよい。
【0033】
最新の技術では、ベクトルに沿って照射ビームを走査する間に照射パラメータを変更するための追加情報が、ベクトルに割り当てられて提供されることがある。本開示の文脈において、パラメータ切り替え点を有するそのようなベクトルは、切り替え点で切断された、異なるパラメータを有する別個のベクトルとみなされ得る。
【0034】
ダウンスキン領域は、第1の初期ベクトルのセットによって完全にカバーされてもよく、ボリューム領域は、第2の初期ベクトルのセットによって完全にカバーされてもよい。例えば、ダウンスキン領域は、ダウンスキン領域全体(輪郭線の可能性のある部分は別として)が第1の初期ベクトルのセットによって固化されるように、第1の初期ベクトルのセットによってカバーされてもよい。ボリューム領域は、(輪郭線の可能性のある部分は別として)ボリューム領域全体が第2の初期ベクトルのセットによって固化されるように、第2の初期ベクトルのセットによってカバーされてもよい。
【0035】
第1の所定長は、例えば、15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmであってもよい。第1の所定長は、使用される原材料粉末材料に基づいて、使用される層厚に基づいて、適用される照射パラメータに基づいて、及び/又は使用される照射システムに基づいて、設定されてもよい。本発明においては、そのような指定は、適用される照射パラメータ、特に走査速度を考慮して直接的又は間接的に実行されてもよく、そのような照射パラメータから、結果として生じる照射ベクトル長を導出することができる。
【0036】
例えば、第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つは、第1の延長照射ベクトルに対応してもよい。第1の初期ベクトルを延長すること(及び、一般に、本明細書で使用されるベクトルを延長すること)は、ベクトルは方向を維持するが、それぞれのベクトルの開始側又は終了側のいずれかで延長される(すなわち、より長くする)ことを意味し得る。
【0037】
ダウンスキン領域に隣接する領域における第2の初期ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、第1の延長照射ベクトルの向きとは異なる向きを有してもよい。第2の初期ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、少なくとも部分的に除去されてもよい。前記第2の初期ベクトルの除去された部分は、第1の延長照射ベクトルによって置き換えられてもよい。
【0038】
第2の初期ベクトルのうちの少なくとも1つベクトルの向きは、第1の延長照射ベクトルの向きに対して垂直であってもよい。例えば、第2の初期ベクトルは、いわゆる格子縞状パターンで配置されてもよく、各タイル(例えば、正方形タイル)において、平行ベクトルが配置され、ベクトルの向きは、タイルごとに90度変化する。すなわち、第2の初期ベクトルのうちのいくつかのベクトルの少なくともある部分は、置換される部分の向きとは異なる向きを有する第1の延長照射ベクトルによって置換される。
【0039】
さらに、ダウンスキン領域に隣接する領域における少なくとも2つの第2の初期ベクトルは、ダウンスキン領域における少なくとも2つの第1の照射ベクトル又は第1の初期ベクトルのハッチング距離とは異なるハッチング距離を有してもよい。この場合、少なくとも2つの第1の照射ベクトル又は第1の初期ベクトルは、ボリューム領域内に延長されてもよく、それによって、ボリューム領域内のハッチングパターンは、第1の照射ベクトル又は第1の初期ベクトルのハッチングパターンに合わせてもよい。
【0040】
前記延長して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップは、第1の初期ベクトルを、前記第2の初期ベクトルのうちの1つ又は2つの隣接する第2の初期ベクトルと統合して、第1の延長照射ベクトルを形成するステップを含んでもよい。
【0041】
しかしながら、統合することは、1つ又は2つの隣接する第2の初期ベクトルの全体を第1の初期ベクトルに追加することを必ずしも意味しない。統合することは、1つ又は2つの隣接する第2の初期ベクトルの少なくとも一部のみが追加される(又は「統合される」)ことを意味してもよい。1つの隣接する第2の初期ベクトルが統合される場合、これは、第1の初期ベクトルが一方の側において延長されることを意味する。2つの隣接する第2の初期ベクトルが統合される場合、これは、第1の初期ベクトルが2つの(両方の)側(すなわち、ベクトルの開始側及び終了側)において延長されることを意味する。
【0042】
一般に、本開示によれば、第1のベクトルを第2のベクトルと「統合すること」は、第1のベクトル及び第2のベクトルを互いに隣り合わせ(隣接させ)、同じライン上に位置させる状況を指す。第1のベクトルと第2のベクトルとの間に隙間が設けられてもよい。統合とは、a)第1のベクトルを第2のベクトルの方向に延長し、その結果、得られるベクトル(「統合された」又は「延長された」ベクトル)が第1のベクトル及び第2のベクトルの少なくとも一部を含むこと、又はb)第2のベクトルが第1のベクトルの方向に延長され、その結果、得られるベクトル(「統合された」又は「延長された」ベクトル)が第2のベクトル及び第1のベクトルの少なくとも一部を含むことを意味する。しかしながら、本開示によれば、統合することは、必ずしも、結果として生じるベクトルが常に第1及び第2のベクトル全体を含むことを意味するとは限らない。しかしながら、「ベクトル全体」が別のベクトルに統合されること、又はあるベクトルが「あるベクトル全体」に統合されることが言及される場合、これは、ベクトル全体及び別のベクトルが、結果として生じるベクトルに含まれることを意味する。
【0043】
2つ以上の統合されたベクトルは、必ずしも同じライン上にあるとは限らないことにさらに留意されたい。例えば、ダウンスキン領域のダウンスキンベクトルは、ボリューム領域のボリュームベクトルと統合されてよく、ここで、ダウンスキンベクトル間の距離(ハッチング距離)は、ボリュームベクトルの距離(ハッチング距離)とは異なる。この場合、例えば、ダウンスキンベクトルのハッチング距離は、ボリュームベクトルのハッチング距離に揃えられてもよく、その逆であってもよい。すなわち、例えば、2つ以上のダウンスキンベクトルがボリューム領域内に延長される場合、延長前に、ボリューム領域内のボリュームベクトルのハッチング距離が該2つ以上のダウンスキンベクトルのハッチング距離とは異なっていた場合であっても、2つ以上のボリュームベクトルのハッチング距離はボリューム領域内で維持されてよい。
【0044】
第1の延長照射ベクトルは、第1の所定長を有してもよい。
【0045】
前記統合して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップにおいて、第1の初期ベクトルは、前記第2の初期ベクトルのうちの2つの隣接する第2の初期ベクトルと統合され、前記2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの第1のベクトルの統合された部分は、前記2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの第2のベクトルの統合された部分と同じ長さを有してもよい。
【0046】
すなわち、両側に均等に(すなわち、同じ長さだけ)統合(又は延長)してもよい。この場合も、本開示全体によれば、統合は、「第2のベクトルの少なくとも一部を追加することによって第1のベクトルを延長すること」と理解すべきであり、「第2のベクトル全体を追加することによって第1のベクトルを延長すること」と理解されてはならない。
【0047】
追加的に又は代替的に、第1の初期ベクトルは、2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの第1のベクトルが第1の初期ベクトルに完全に統合され、2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの第2のベクトルが第1の初期ベクトルに部分的にのみ統合されるように、2つの隣接する第2の初期ベクトルと統合されてもよい。これは、隣接する第2の初期ベクトルのうちの第1のベクトルが第2の所定長よりも短い場合、及び/又は隣接する第2の初期ベクトルのうちの第1のベクトルを残すように想定したときの残りの部分が第2の所定長よりも短い場合、及び/又は隣接する第2の初期ベクトルのうちの第1のベクトルが他端で輪郭線に隣接する場合に有利である。すなわち、第1の初期ベクトルには、前記第2の初期ベクトルのうちの隣接する第2の初期ベクトルの全体が統合されてもよい。特に、隣接する第2の初期ベクトルは、統合の前においては、統合される端部とは反対側の端部で輪郭ベクトルに隣接していてもよい。
【0048】
本方法はさらに、統合するステップの前、間、又は特に後に、1つ又は2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルの残った部分が第2の所定長よりも小さいかどうかを判定するステップと、該残った部分が第2の所定長よりも小さいと判定された場合、第1の統合照射ベクトルを該残った部分と統合して第2の延長照射ベクトルを形成するステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、前記第2の延長照射ベクトルである、ステップと、を有してもよい。任意選択で、第2の延長ベクトルは、残りの部分が追加されていない端部において短縮されてもよい。特に、この短縮は、結果として生じるベクトルが所定の長さ、例えば、第1の所定長又は第2の所定長を有するように行われてもよい。
【0049】
第2の所定長は、第1の所定長に対応してもよく、又は第1の所定長と異なってもよい。すなわち、例えば、プロセスにおいて、ダウンスキン領域の短すぎる第1の照射ベクトルが存在しないように対処された後、該プロセスは、ボリューム領域の短すぎる第2の照射ベクトルが残らないように管理される。過熱のために、例えば、短すぎるベクトルは、ダウンスキン領域及びボリューム領域の両方において問題となり得る。第1の所定長は、第2の所定長よりも長くてもよい。或いは、第1の所定長は、第2の所定長よりも短いか又は同じであってもよい。
【0050】
本方法はさらに、第2の所定長よりも短い長さを有する第2の初期ベクトル、特に残りの第2の初期ベクトル、を特定するステップと、特定された第2の初期ベクトルを隣接する第1の初期ベクトル又は隣接する第1若しくは第2の延長照射ベクトルに統合して、第1の照射ベクトルを形成するステップと、を有してもよい。
【0051】
このステップは、短すぎる第2の照射ベクトルを「収集する」、特に、短すぎる残りの第2の照射ベクトルを「収集する」こと、及び可能であれば、これらのベクトルを隣接するベクトルに統合することとみなされてもよい。
【0052】
本方法はさらに、第1の初期ベクトルのセットを定めるステップであって、複数の第1の初期ベクトルは、前記層のボリューム領域内に延在し且つ同じ第1の所定長を有し、複数の前記第1の照射ベクトルの各々は対応する第1の初期ベクトルを含む、ように該第1の初期ベクトルのセットを定めるステップと、前記第1の初期ベクトルのセットを定めるステップの前、間、又は特に後に、第2の初期ベクトルのセットを定めるステップであって、前記第2の照射ベクトルの少なくともいくつかのベクトルは、対応する第2の初期ベクトルに対応する、ように該第2の初期ベクトルのセットを定めるステップと、を有してもよい。
【0053】
第1の初期ベクトルのセットは、互いに対して平行に配向されてもよく、及び/又は第2の初期ベクトルのセットは、互いに対して平行に配向されてもよい。上述のオプションによれば、ベクトルのハッチングは、短すぎず、むしろ第1の所定長(すなわち、十分な長さ)を有する第1の照射ベクトルから既に始めてもよい。ボリューム領域における残りの第2の照射ベクトルは、後続のステップにおいて、又は同時に、第1のベクトルの「周りに」配置されてもよい。
【0054】
本方法は、ダウンスキン領域の境界までの距離が第2の所定長よりも短いワークピース輪郭線を特定するステップと、該ワークピース輪郭線まで延びるように第1の初期ベクトルを定めるステップとを、有してもよい。第1の初期ベクトルは、第1の初期ベクトルのセットのうちの1つであってもよい。
【0055】
本方法はさらに、第2の所定長よりも短い長さを有する第2の初期ベクトル、特に残りの第2の初期ベクトル、を特定するステップと、特定された第2の初期ベクトル、特に残りの第2の初期ベクトル、を隣接する第1の初期ベクトルに統合して第1の照射ベクトルを形成するステップと、を有してもよい。
【0056】
このステップによれば、第2のベクトル(すなわち、ボリューム領域のベクトル)があまりにも短くなることを防止することができる場合には、短すぎる第2のベクトルも残らないように対処される。
【0057】
本方法はさらに、前記第1の照射ベクトルのうち、ダウンスキン領域内にあり且つ第1の所定長よりも短い長さを有する部分の量が最小となるように、前記層内の前記第1の照射ベクトルのセットの向きを決定するステップ、を有してもよい。
【0058】
上述のオプションによれば、第1の照射ベクトルの向きは自由に選択されてもよく、理想的には、最低限の所定長を有するために延長されなければならない第1の照射ベクトルの数が最小となるように選択される。
【0059】
本方法はさらに、前記第1の初期ベクトルのうち、ダウンスキン領域内にあり且つ第1の所定長よりも短い長さを有する部分の量が最小となるように、前記層内の前記第1の初期ベクトルのセットの向きを決定するステップ、を有してもよい。
【0060】
従って、初期ベクトルもまた、それらの向きに関して最適化されてもよい。特に、少なくとも最低限の所定長を有するために延長されなければならない第1の初期ベクトルの数が最小となるように、初期ベクトルの向きが選択されてもよい。
【0061】
本方法はさらに、定められた第1の照射ベクトルのセット及び定められた第2の照射ベクトルのセットに従って3次元ワークピースの層を照射するステップ、を有してもよい。
【0062】
このステップは、上記機器によって実行される。この点に関して、上記機器は上記装置を備えてもよい。或いは、上記方法は、該装置及び該機器を含むシステムを対象とする。本方法はさらに、原材料粉末の層を塗布すること、所定の部分を照射すること、原材料粉末のさらなる層を塗布すること、さらなる層の所定の部分を照射すること等の、付加製造の典型的なステップ、を有してもよい。
【0063】
第2の態様によれば、プログラムコード部分を備えるコンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品が1又は複数のコンピューティング装置で実行されるときに、前記プログラムコード部分が上記第1の態様の方法を実行する、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0064】
コンピュータプログラム製品は、生成されるワークピースの形状を定義する入力ファイルを読み込み、該機器のための命令を含む出力ファイルを出力するように構成されてもよい。
【0065】
コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読記録媒体に記憶されてもよい。記録媒体は、例えば、固体記録媒体、光記録媒体、又は磁気記録媒体であってもよい。
【0066】
第3の態様によれば、付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定めるための装置が提供される。該装置は、生成される3次元ワークピースの層に対して、該層内のダウンスキン領域を画定し、該ダウンスキン領域をカバーするように第1の照射ベクトルのセットを定めるように構成される。第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、ダウンスキン領域に隣接する該層のボリューム領域内に延在する。第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、1mm以上の長さを有する。該装置はさらに、該層のボリューム領域の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットを定め、第1の照射ベクトルのセットに、第1の照射パラメータのセットを割り当て、第2の照射ベクトルのセットに、第1の照射パラメータのセットとは異なる第2の照射パラメータのセットを割り当てる。
【0067】
第3の態様の装置はさらに、第1の態様の方法のいずれかのステップを実行するように構成されてもよい。
【0068】
さらに、第1の態様(方法)に関して上述した詳細の各々は、第3の態様(装置)に適用されてもよい。
【0069】
ダウンスキン領域をカバーするベクトルの他にさらに、ダウンスキン領域における輪郭ベクトルも同様に扱われてもよい。1つ以上のダウンスキン輪郭ベクトルは、ボリューム輪郭領域に延長されて、第1の照射ベクトルとみなされてもよい。特別な実施形態では、全ての輪郭ベクトルが第1の照射ベクトルとみなされてもよい。
【0070】
他の実施形態では、ダウンスキン領域における輪郭ベクトルは、ダウンスキン領域に属さないものとして扱われてもよく、特に、全ての輪郭ベクトルが第2の照射ベクトルとみなされてもよい。全ての輪郭ベクトルを第1の照射ベクトルとして扱う場合、又は全ての輪郭ベクトルを第2の照射ベクトルとして扱う場合、ワーク表面上の異なる外観が防止され得る。すなわち、輪郭線の領域におけるより均一な外観及び/又はより良好なワークピース品質を達成することができる。
【0071】
一般に、異なる照射パラメータが輪郭ベクトル及びハッチングベクトルに割り当てられてもよいことにさらに留意されたい。照射パラメータは、例えば、上記のものである。例えば、輪郭ベクトルを形成する第1の照射ベクトルの1つ以上の照射パラメータは、輪郭を形成しない、すなわち、輪郭ベクトルではない、第1の照射ベクトルの1つ以上の照射パラメータとは異なってもよい。同様に、輪郭ベクトルを形成する第2の照射ベクトルの1つ以上の照射パラメータは、輪郭を形成しない、すなわち、輪郭ベクトルではない、第2の照射ベクトルの1つ以上の照射パラメータとは異なってもよい。
【0072】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1は、付加製造によって3次元ワークピースを製造するための既知の機器の概略図である。
図2図2は、図1の機器によって生成された3次元物体を示し、該物体において、ダウンスキン領域及びボリューム領域がワークピースの各層に示されている。
図3図3は、本開示による複数の照射ベクトルを定めるための方法のフローチャートを示す。
図4図4は、本開示による複数の照射ベクトルを定めるための装置の概略図を示す。
図5図5は、本開示による複数の照射ベクトルをどのように定めるかについての異なる実施形態を含む図を示す。
図6図6は、図5に示すプロセスAのチャートを示す。
図7図7は、図5に示すプロセスB及びプロセスCのチャートを示す図である。
図8図8は、本開示の一実施形態に係る方法が、層のエッジ領域にダウンスキン領域を有する例示的なワークピース層にどのように適用されるかを示す図である。
図9図9は、本開示の実施形態に係る方法が、ストライプの形態において、層の内部領域にダウンスキン領域を有する例示的なワークピース層にどのように適用されるかを示す図である。
図10図10は、本開示の一実施形態による方法が、ダウンスキン領域を有する例示的なワークピース層にどのように適用されるかの他の例を示す図である。
図11図11は、本開示の実施形態による方法が、ストライプの形態において、層の内部領域を有する例示的なワークピース層にどのように適用されるかの他の例を示す図であり、ここでは、ダウンスキンベクトルの最適な方向が選択される。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、3次元ワークピース12を製造する機器10の概略図を示す。該機器は、本開示による方法及び/又は装置を用いて生成されたファイルが転送される機器であってもよい。すなわち、本開示は、複数の照射ベクトルを定めるための技術を説明する。例えば、定められた照射ベクトルを含むファイルが生成される。このファイルは、ファイルに記憶された命令に従って3次元ワークピース12を製造するために、図1の機器10によって使用されてもよい。さらに言い換えると、機器10は、本明細書に記載された技術に従って定められた照射ベクトルを照射する。
【0075】
機器10の原理は、付加製造の分野の当業者には周知であり、簡潔に説明するだけにする。例えば、そのような機器10は、選択的レーザ溶融のための機器又は選択的レーザ焼結のための機器であってもよく、それら機器においては、1又は複数のレーザビーム14が、原材料粉末の層を順次、選択的に照射・固化するために使用される。
【0076】
以下に説明する選択的レーザ溶融のプロセスを実行する機器10は、一例として機能することができる。粉末床溶融結合の典型的な特徴は、原材料粉末が層に塗布され、各層が選択的に照射・固化されることにより、製造すべきワークピース12の1つ1つの層が生成されることである。余分の粉末を除去した後、及び後処理の任意のステップ(例えば、1つ又は複数のサポート構造を除去すること)の後、最終ワークピース12が得られる。
【0077】
図1は、選択的レーザ溶融によって3次元ワークピース12を製造する機器10を示す。機器10は、プロセスチャンバ16を備える。プロセスチャンバ16は、周囲雰囲気に対して、すなわちプロセスチャンバ16を取り囲む環境に対してシール可能である。プロセスチャンバ16内に配置された粉末塗布装置18は、原材料粉末をキャリア20上に塗布する働きをする。キャリア20が鉛直方向に変位可能となるように鉛直移動ユニット22が設けられる。これにより、キャリア20上に原材料粉末からワークピース12が層状に造形され、ワークピース12の造形高さが増加するにつれて、キャリア20は鉛直方向下方に移動可能となる。
【0078】
鉛直移動ユニット22によるキャリア20の移動は、選択的レーザ溶融の分野では周知であるため、本明細書では詳細に説明しない。可動キャリア20の代替として、キャリア20は、(特に、鉛直z方向に関して)静止(又は固定)キャリアとして提供されてもよく、その場合、照射ユニット24(下記参照)及びプロセスチャンバ16は、造形プロセス中に(すなわち、ワークピース12の造形高さが増加するにつれて)上方に移動するように構成される。また、キャリア20と照射ユニット24との両方が、z方向に沿って個別に移動可能であってもよい。
【0079】
キャリア20のキャリア表面は、水平面(x-y平面)を画定し、該平面に対して垂直な方向は、鉛直方向又は造形方向(z方向)として定義される。従って、原材料粉末の各最上層及びワークピース12の各層は、上で定義された水平面(x-y平面)に平行な平面内に延在する。
【0080】
機器10は、不活性ガス(例えば、アルゴン)をプロセスチャンバ16内に供給するためのガス入口26をさらに備える。ガス回路を実装することによって、ガスの連続流がプロセスチャンバ16を通じて生成されるように、ガス出口(図示せず)が設けられてもよい。好ましい実施形態では、一方向の層流が、最上の原材料粉末層の上に生成される。
【0081】
さらに、動作中に光学ユニット24によって粉末床に向けて方向付けられたレーザビーム14を観察するために、及び/又はレーザビーム14による照射後に照射領域を観察するために、カメラ28がプロセスチャンバ16内に配置される。また、光学フィルタでレーザビーム14の波長を遮断することで、生成されたメルトプールの熱輻射のみを観測することもできる。カメラ28は、メルトプール観察装置の一部であってもよい。
【0082】
機器10は、キャリア20上に塗布された原材料粉末の最上層にレーザビーム14を選択的に照射するための光学ユニット24(照射ユニットとも呼ばれる)をさらに備える。光学ユニット24によって、キャリア20上に塗布された原材料粉末は、製造されるワークピース12の所望される形状に応じて、位置選択的にレーザ照射を受けることができる。
【0083】
光学ユニット24は、キャリア20上に塗布された原材料粉末にレーザビーム14を選択的に照射するように構成された走査ユニット30を備える。走査ユニット30は、機器10の制御ユニット(図示せず)によって制御される。走査ユニット30は、2つの直交する軸に対して傾斜可能な1つのミラーを備えてもよい。或いは、走査ユニット30は、それぞれが対応する軸に対して傾斜するように構成された2つの傾斜可能なミラーを備えてもよい。傾斜可能なミラーは、例えば、ガルバノミラーである。
【0084】
光学ユニット24には、レーザビーム源32からレーザ照射が供給される。レーザビーム源32は、光学ユニット24内に設けられてもよいし、図1に示すように光学ユニット24外に設けられてもよい。後者の場合、レーザビームはレーザビーム源32によって生成され、光ファイバ34を介して光学ユニット24にガイドされる。或いは、レーザビームは、例えば、1又は複数のミラーを使用することによって、空気を通って、又は真空を通って光学ユニット24内にガイドされてもよい。
【0085】
レーザビーム源32からのレーザビームは、走査ユニット30に導かれる。レーザビーム源32は、例えば、約1070~1080nmの波長のレーザ光を放出するダイオード励起イッテルビウムファイバレーザを備えることができる。
【0086】
光学ユニット24は、z軸に沿った所望の焦点位置にレーザビーム14を集束させるように構成された2つのレンズ36及び38をさらに含む。図1に示される実施形態では、レンズ36及び38の両方が正の屈折力を有する。ビーム経路の上流側のレンズ38は、ファイバ34によって放出されたレーザ光をコリメートするように構成され、それにより、コリメートされた又は略コリメートされたレーザビームが生成される。ビーム経路の下流側のレンズ36は、コリメートされた(又は略コリメートされた)レーザビームを所望のz位置に集束させるように構成される。
【0087】
図2は、複数のダウンスキン領域が画定された例示的なワークピース12の概略図を示す。ワークピース12は、例えば、図1に示される機器10によって生成されたワークピース12である。図1に示されるワークピース12は滑らかな側面を有するが、図2の表現はこの点に関してより現実的であり、ワークピース12の側面における階段状構造が示されている。ワークピースの各層は、x-y平面内で所定の寸法を有し、側面の平滑度は、例えば、個々の層の層厚を変更することによって制御することができる。
【0088】
図2に示すように、例示的なワークピース12は、キャリア20に対して(従って、x-y平面に対して)角度42を形成する第1の傾斜側面40を有する。ワークピース12はさらに、キャリア20に対して角度46を形成する第2の傾斜側面44を有する。さらに、ボア48が、ワークピース12の中央領域にある。傾斜側面40及び44は、破線によって近似され、表面40、44の実際の階段状の形状も図2に示されている。
【0089】
傾斜面40及び44に関して、x-y平面に対して、すなわちキャリア20の表面に対して、例えば85度のような、閾値ダウンスキン角度が考慮されてもよい。それぞれの傾斜面40、44の角度42、46が前記閾値ダウンスキン角度よりも小さい場合にのみ、ダウンスキン領域は、それぞれの傾斜面に関して画定される。すなわち、該傾斜面がx-y平面に対して(すなわち、ワークピース12の層が延在する平面に対して)90度又は90度に近い角度を形成する場合、該傾斜面はダウンスキン表面とはみなされず、該傾斜面に対してダウンスキン領域は画定されない。
【0090】
しかしながら、図2に示される場合では、両方の傾斜面40及び44の角度42及び46は、十分に小さい(すなわち、閾値ダウンスキン角度より小さい)ので、ダウンスキン領域がこれらの面40、44に対して画定される。
【0091】
閾値角度の定義と同様に、閾値長さが定義されてもよい。この場合、可能性があるダウンスキン表面の各々について、x-y平面内の全ての方向における該ダウンスキン表面の広がりが所定の長さよりも大きいかどうかがチェックされる。これが該当する場合にのみ、可能性のあるダウンスキン表面は、ダウンスキン領域の画定のために考慮され、そうでない場合は考慮されない。
【0092】
ワークピース12のそれぞれの層のダウンスキン領域は、格子状の塗りつぶし又はストライプ状の塗りつぶしによって示されている。格子状の塗りつぶしによって示される領域52は、直接ダウンスキン領域を表し、ストライプ状の塗りつぶしによって示される領域54は、間接ダウンスキン領域を表す。両方のタイプの領域は、以下でダウンスキン領域と呼ばれ、両方の領域は、それぞれの層のダウンスキン領域として扱われる。各層の残りの領域は、ボリューム領域50として画定される。直接ダウンスキン領域52は、ワークピース12のダウンスキン表面の一部を構成する。
【0093】
直接ダウンスキン領域52は、ワークピース12の特定の層のある領域であり、未固化の原材料粉末下層(図2のワークピースの層以外の白い領域)の直上にある。間接ダウンスキン領域52がさらに画定されてもよい。特に、ダウンスキン領域は、ワークピース12のある層におけるある領域において、該層と未固化の原材料粉末下層との間に所定の層数よりも少ないワークピース層が存在する場合、該層の該領域を、ダウンスキン領域として定義してもよい。図2に示される例では、所定の層数は3である。すなわち、直接ダウンスキン領域52の他に、その直接ダウンスキン領域52上に続く2つの層に間接ダウンスキン領域54が存在する。さらに、ワークピース12の各層の残りの部分は、ボリューム領域50として定義される。すなわち、ボリューム領域50は、ある層のある領域において、該層と未固化の原材料粉末下層との間に少なくとも所定の層数(図2の場合は3)のワークピース層が存在する該層の該領域又は未固化の原材料粉末下層が存在しない層の領域、として定義される。
【0094】
ダウンスキン領域及びボリューム領域の他に、アップスキン領域又はサポート接触領域等のさらに別の領域が、ワークピースの層に画定されてもよい。しかしながら、領域の画定は、重複していてもよく、及び/又は、どのタイプの領域を利用するかに依存してもよい。
【0095】
一般的に言えば、ダウンスキン領域52、54は、ボリューム領域50と比較して、少なくとも1つの異なる照射パラメータが適用される領域である。例えば、ダウンスキン領域52、54に照射されるレーザパワーは、ボリューム領域 50に照射されるレーザパワーよりも低い。直接ダウンスキン領域52において低減されたレーザパワーを適用する理由は、下方にある原材料粉末への熱伝導が低減しているからであり、この低減は過熱をもたらす可能性がある。同様に、この効果は、直接ダウンスキン領域52の真上の層にも存在し得るので、間接ダウンスキン領域54にも異なる照射パラメータを適用することが有利であり得る。
【0096】
図2に示すように、ダウンスキン領域52、54は、層の縁部に(すなわち、層の輪郭に直接接触して)、又は層の内側部分に内部ダウンスキン領域52、54の形態で、すなわち、層の縁部に隣接せずに、存在してもよい。
【0097】
以下では、本開示の実施形態に従って、ダウンスキン領域52、54がどのようにボリューム領域50とは異なるように扱われるかが説明される。特に、以下に説明する全ての方法について、ダウンスキンベクトル及びボリュームベクトルが定められる。本明細書に記載される方法に共通することは、第1の照射パラメータのセットがダウンスキンベクトルに割り当てられ、それと異なる、第2の照射パラメータのセットがボリュームベクトルに割り当てられることである。例えば、ダウンスキンベクトルに割り当てられるレーザパワーは、ボリュームベクトルに割り当てられるレーザパワーとは異なる。
【0098】
ダウンスキンベクトル及びボリュームベクトルを割り当てるプロセスは、スライサ(slicer)(例えば、論理ユニット又はソフトウェアユニット)によって実行されるスライスプロセスの後に実行されることにさらに留意されたい。スライサは、例えば、対応する入力されたCADファイルを読み取ることによって、生成されるべきワークピース12の幾何学的形状データを考慮する。幾何学的形状データに基づいて、キャリア20に対するワークピース12の向きが決定され、ワークピース12の個々の層が画定される。個々の層の層厚は異なっていてもよい。
【0099】
これらの個々の層は、以下のプロセスの入力を構成する。
【0100】
図3は、本開示に係る、複数の照射ベクトルを定めるための方法のフローチャートを示す。
【0101】
この方法は、生成される3次元ワークピース12の層に対して実行され、ワークピース12の各層に対して繰り返されてもよい。
【0102】
この方法は、層のダウンスキン領域52、54を画定するステップ60から開始する。ダウンスキン領域52、54は、図2に関して上述した基準に従って画定されてもよい。
【0103】
ステップ62において、ダウンスキン領域52、54を完全にカバーするように第1の照射ベクトルのセットが定められる。第1の照射ベクトルの少なくとも1つのベクトルは、ダウンスキン領域52、54に隣接する、層のボリューム領域50内に延びる。該第1の照射ベクトルの少なくとも1つのベクトルは、1mm以上の長さを有する。
【0104】
ステップ64において、層のボリューム領域50の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットが定められる。
【0105】
ステップ66において、第1の照射パラメータのセットが、第1の照射ベクトルのセットに割り当てられる。
【0106】
ステップ68において、第1のセットとは異なる第2の照射パラメータのセットが第2の照射ベクトルのセットに割り当てられる。
【0107】
図3に示す方法の出力は、ワークピース12の造形をどのように実行するか(特に、個々の層の照射をどのように実行するか)に関する、3次元ワークピースを生成する機器10(例えば、図1に示す機器10)のための命令を含むファイルであってもよい。
【0108】
図4は、本開示の一実施形態に係る、付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定める装置70の概略図を示す。
【0109】
装置70は、3次元ワークピース12の層におけるダウンスキン領域を画定するように構成された第1決定モジュール72を備える。該装置は、ダウンスキン領域52、54を完全にカバーするように第1の照射ベクトルのセットを定めるように構成される第2決定モジュール74を有する。第1の照射ベクトルの少なくとも1つのベクトルは、ダウンスキン領域52、54に隣接する、層のボリューム領域50内に延びる。該第1の照射ベクトルの少なくとも1つは、1mm以上の長さを有する。
【0110】
装置70は、層のボリューム領域50の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットを定めるように構成された第3決定モジュール76を備える。装置70は、第1の照射パラメータのセットを第1の照射ベクトルのセットに割り当てるように構成された第1割り当てモジュール78を含む。装置70は、第1のセットとは異なる第2の照射パラメータのセットを第2の照射ベクトルのセットに割り当てるように構成された第2割り当てモジュール80を含む。
【0111】
装置70のモジュール72~80の各々は、ハードウェア及び/又はソフトウェアで実現されてもよい。さらに、モジュールの全てが同じ物理的実体に配置され及び/又は同じ物理的実体において動作される必要はない。例えば、装置70は、個々のモジュールが異なる物理サーバに割り当てられる、分散型クラウドコンピューティングエンティティであってもよい。装置70は、3次元ワークピース12を生成するために機器10によって読み取り可能な出力ファイルを出力するように構成されてもよい。装置70は、上記の図3に関して説明された方法を実行するように構成される。
【0112】
図5は、本開示に係る、複数の照射ベクトルをどのように定めるかについての種々の実施形態を含む図を示す。
【0113】
これらの実施形態は、図3に関して説明された方法のより詳細な説明とみなされ得る。図5は、本開示の実施形態による種々の方法を示す。
【0114】
図5では、3つの仕様(事前設定)90、92、及び94から始まる。仕様90により、図2に関して上記でより詳細に説明した、閾値ダウンスキン角度が与えられる。閾値ダウンスキン角度は、数値(例えば、度の単位で与えられる)であってもよく、ユーザによって設定されてもよく、又は記憶装置からロードされてもよい。閾値ダウンスキン角度は、どれくらいの角度において、(わずかに)傾斜した表面がもはやダウンスキン表面とみなされなくなり、従って、そのような角度の表面の近傍にはダウンスキン領域は割り当てられないであろう角度を定義する。さらに、仕様90は、原材料粉末に使用される材料及びワークピース12の要求品質に応じた、カバー層数を含む。カバー層数は、間接ダウンスキン領域が重なり合う際の層数を規定する。従って、カバー層数は、図2に関して説明された所定の層数から1を引いた数に対応する。カバー層数は、ユーザによって設定されてもよく、又は記憶装置からロードされてもよい。
【0115】
仕様92により、ワークピース12の3次元モデルが与えられる。3次元モデルは、入力ファイル、例えばCADファイル、の形態で与えられてもよい。3次元モデルは、サポート構造のモデルを含んでもよく、或いは、サポート構造の幾何学的形状は、スライスの前、又はスライス中に作成されてもよい。
【0116】
さらに、仕様94により、層厚が与えられる。層厚は、使用される機器10及び必要とされる製品品質に応じて決まる。層厚を固定値とする代わりに、これらの値に対して上限及び/又は下限境界が設定されてもよく、この場合、スライサ(以下を参照)は、これらの境界内において各層の個々の層厚を設定する。
【0117】
次のステップ96において、スライサは、3次元モデルによって規定されたワークピースの層を生成する。その結果、ステップ98で、層モデルが与えられる。ここでは、スライサは、適宜であるが、各層においてダウンスキン(DS)領域52、54及びボリューム領域50を既に画定している。或いは、ダウンスキン領域52、54及びボリューム領域50の画定は、別のモジュール又はエンティティによって及び/又は別のステップにおいて実行されてもよい。
【0118】
次のステップ100において、ハッチャー(hatcher)100は、スライサによって画定されたワークピースの層のそれぞれについて照射ベクトルを定める。
【0119】
ハッチャーは、種々の設定に従って動作してもよい。ハッチング回転は、層に基づくルールに応じて適用されてもよく(ステップ102)、ハッチング回転が全体に適用されるべきか、又は部分的に適用されるべきかが決定されてもよい(ステップ104)。第1の例では、ハッチング回転は、ワークピース12の層に対して既に事前に決定されている。すなわち、層内(すなわち、x-y平面内)の照射ベクトルの向きは、予め決められている。例えば、ハッチング回転は、スライサ96によって、又は、該方法の後続のステップにおいて、設定されてもよい。他の例では、ハッチング回転(すなわち、層内の照射ベクトルの向き)は、事前に決定されず、以下の方法によって自由に選択されてもよい。全ての照射ベクトルが同じ方向に沿って(すなわち、互いに平行に)配向されるのではなく、例えば、異なる領域が各層に画定され、異なる領域におけるベクトルの向きは互いに平行であるが、それらの向きが領域ごとに、例えば90度、回転しているような場合があり得ることに留意されたい。この点に関して、格子状パターンが与えられてもよく、その場合、領域は正方形のタイルで与えられる。どの例が使用されても、ハッチング回転は、例えばガス流の方向に応じて、特定の向きに制限され得る。
【0120】
図5に示される方法の以下の部分は、各層のいわゆるハッチングを定める。ハッチングという用語は、各照射層の位置及び/又は向きを各層に対して定めることを意味する。照射ベクトルは、平行ベクトルのグループ、例えば、平行ベクトルの縞模様又は平行ベクトルの格子状タイル、で与えられてもよい。
【0121】
ハッチャーの異なる動作モードにおいて、実施形態A、実施形態B、及び実施形態Cとして示される3つの実施形態が説明される。
【0122】
実施形態Aでは、初期ハッチング(最初のハッチング)は、例えば、平行ベクトルの縞模様の形態で、又は格子状タイルの形態で行われる。この初期ハッチングでは、ダウンスキン領域52、54は既に考慮されており、ダウンスキン領域52、54は、ボリューム領域とは異なる照射ベクトルでハッチングされている。続いて、再ハッチング(rehatching)が実行される。ここでは、初期ハッチングに対して適宜の修正が行われ、ダウンスキンベクトルが延長されるか或いは他の方法で最小長(例えば、1mm)を有するように定められる。実施形態Aの詳細については以下で説明される。
【0123】
実施形態Bでは、ダウンスキンベクトルに対して初期ハッチングが実行され、このハッチングでは、ダウンスキンベクトルが最小長(例えば、1mm)を有することが既に考慮されている。前の、同時の、又は後のステップにおいて、ボリュームベクトルが、ボリューム領域の残りの部分においてハッチングされる。実施形態Bの詳細については以下で説明される。
【0124】
実施形態Cは、実施形態Bと同様であり、実施形態Bの特殊な場合とみなすこともできる。実施形態Cでは、ダウンスキンベクトル及びボリュームベクトルに対して初期ハッチングが実行され、そこでは、ダウンスキンベクトルは最小長(例えば、1mm)を有し、任意選択であるが、ボリュームベクトルは同じ又は異なる最小長を有することが既に考慮されている。全てのベクトルは、既に最適条件を用いた先行する計算によって作成されており、後に続いて行われる統合は必要ない。実施形態Cの詳細については以下で説明される。
【0125】
どの実施形態が適用されるかとは無関係に、第1の例では、1つ又は複数のダウンスキン領域の各々について(例えば、ボリュームベクトルのハッチング回転とは無関係に)個別にハッチング回転が選択される。ダウンスキンベクトルの向きは、ダウンスキン領域内に、最小長(例えば、1mm)未満のベクトルが存在しないか、又は可能な限り少なくなるように、選択される。そのようなベクトルが存在する場合には、少なくとも最小長の長さまで延長される。これらのベクトルは、ベクトルの開始側、終了側、又は両側のいずれかにおいて、延長される。
【0126】
第2の例では、第1の例と同様に、ダウンスキンベクトルに対してハッチング回転が選択される。しかしながら、第2の例は、ハッチング回転が層によって予め決められていないという前提条件の下にある。第3の例では、全体ハッチング回転が、全てのダウンスキンベクトルに対して(すなわち、それぞれの層の全てのダウンスキン領域52、54内の全てのダウンスキンベクトルに対して)選択される。ハッチング回転は、最小長(例えば、1mm)未満の長さを有するベクトルが存在しないか、又は、可能な限り少なくなるように、選択される。
【0127】
第1、第2、及び第3の例は、ダウンスキンベクトルの向きを選択することを主に対象としており、層の完全なハッチングを実行する必要はないので、層全体のハッチングは、実施形態Aと同様に、実施形態Bと同様に、又は実施形態Cと同様に実行され得る。以下の実施形態A、B、及びCの詳細な説明は、第1、第2、又は第3の例のうちの1つと組み合わせた実施形態に準用される。
【0128】
ハッチングへの他の影響としては、ワークピースの輪郭線、1又は複数の照射ユニットの走査範囲、最大ベクトル長等があり得る。これらの条件は、ハッチング中に考慮されなければならない場合がある。
【0129】
図6は、図5に示される実施形態Aの詳細(すなわち、詳細な方法ステップ)を示す。
【0130】
実施形態Aは、開始動作[0]から開始し、ここでは、複数のDSベクトル及びボリュームベクトルが既に定められている。この最初に定められた照射ベクトルは、初期ベクトルとも呼ばれる。この方法は、所定の順序で、例えば、層に沿った所定の方向で、ベクトルからベクトルへと行われる。
【0131】
第1のステップ[1]では、注目しているDSベクトルについて、その長さが少なくとも本明細書で最小長として示される長さを有するかどうかがチェックされる。最小長は、ユーザによって設定されていてもよく、及び/又は、図5に示され上述された仕様と同様に、考慮される仕様であってもよい。例えば、最小長は、使用される材料、所望のワークピース品質等に応じて、1mm、2mm、3mm、4mm、又は5mmに設定される。
【0132】
ベクトルが少なくとも所望の最小長を有する場合、長さを変更する必要はなく、本方法は次のベクトルに進む。注目しているDSベクトルが小さすぎる(すなわち、最小長よりも短い長さを有する)場合、どちらの側において統合が可能かをチェックする[2]。従って、隣接するベクトル又は隣接するハッチングフィールド(タイル)の数が判定される(候補ベクトル又は候補ハッチングフィールドとも呼ばれる)。輪郭ベクトルは、存在しないとみなしてよい。この場合、隣接するとは、ベクトルの方向に沿って、すなわち、ベクトルの開始側又は終了側において隣接することを意味する。特に、隣接するベクトルは、同じ向きを有し且つ注目しているDSベクトルの延長方向にあるベクトルであってよい。すなわち、DSベクトルと隣接するベクトルとが、該DSベクトルの方向を有する1つのベクトルに統合されることが可能である。
【0133】
隣接するベクトルの数が0である場合、注目しているDSベクトルを延長する可能性はなく、本方法は次のベクトルに進む。隣接するベクトルの数が1である場合、DSベクトルは、所定の目標長になるように統合される。所定の目標長は、最小長と同一であってもよいし、それより長くてもよい。ここで、目標長になるように統合するということは、DSベクトルが目標長を有するように、候補ベクトル又は候補ハッチングフィールドの方向にDSベクトルを延長することを意味する。目標ベクトル又は目標ハッチングフィールドの残りの部分は、変更されない。ただし、延長されたベクトル部分と残りの部分との間には、小さな隙間が挿入されていてもよい。
【0134】
さらに、初期ボリュームベクトル及び/又は残りのボリュームベクトルが十分に大きいかどうか、及び/又は初期ボリュームタイル及び/又は残りのボリュームタイルが十分に大きいかどうかがチェックされる[3]。DSベクトルが所定の目標長に統合されると、残っているボリュームベクトルが十分に長いかどうか、すなわち、少なくとも最小長の長さを有するかどうかが判定される。候補タイルの場合、残りのタイルが十分に大きいかどうか、すなわち、所定の値よりも大きいサイズを有するかどうかが判定される。
【0135】
Yesの場合、本方法は次のベクトルに進む。Noの場合、隣接するボリュームベクトル又は隣接するハッチングフィールドがあるかどうか、すなわち、上記十分に長くないボリュームベクトル又は十分に大きくないボリュームハッチングフィールドに隣接するものがあるかどうかが判定される。Noの場合、その十分に長くないベクトルは、DSベクトルに統合される。ハッチングフィールドの場合、DSベクトルは、小さすぎるハッチングフィールドにわたって延在するように延長される。
【0136】
Yesの場合、その十分に長くないベクトルは、隣接するベクトルに統合されるか、又は隣接するハッチングフィールドの場合は、その隣接するハッチングフィールドに拡張される。十分に大きくないハッチングフィールドについても同様である。本方法は次のベクトルに進む。
【0137】
両側への統合が可能である場合、すなわち、隣接ベクトルの数(隣接ベクトル又はハッチングフィールドの数)が2つであると判定される場合、両側への統合又は一方の側のみへの統合のどちらがよいかがチェックされる[4]。また、ベクトル全体を統合すること又はそれらの一部のみを統合することのどちらがよいのかが判定される[5]。例えば、隣接する短すぎるボリュームベクトル又は隣接する小さすぎるタイルの数が判定される。この場合も、短すぎるベクトルは、所定の値、例えば、最小長、未満の長さを有するものとして定義される。小さすぎるタイルは、所定の閾値未満のサイズを有するものとして定義される。
【0138】
隣接する短すぎる(小さすぎる)ものの数が2である場合、DSベクトルは、両方(短すぎるボリュームベクトル又は小さすぎるタイル)に統合され、次のベクトルに進む。数が1である場合、DSベクトルは、その1つの短すぎるボリュームベクトル又は小さすぎるタイルに統合される。次いで、結果として得られるDSベクトルが十分に長いかどうか、すなわち最小値よりも長いかどうかがチェックされる。Yesであれば、該方法は次のベクトルに進む。Noの場合、2つの隣接するベクトル又はハッチングフィールドのうちの第2のものに統合される。次いで、残りのボリュームベクトルが十分に長いかどうか、すなわち、少なくとも最小長であるかどうかが判定される。Yesであれば、次のベクトルに進む。Noの場合、残りも統合され、次のベクトルに進む。
【0139】
判定された短すぎる隣接ボリュームベクトルの数が0である場合、目標長(例えば、最小長)にするための、DSベクトルの両側への等しい量による統合が計算される。そして、残った隣接する短すぎるボリュームベクトル又は小さすぎるタイルの数が判定される。
【0140】
この数が0である場合、計算された統合はそのまま行われ、本方法は次のベクトルに進む。残った隣接する短すぎる(小さすぎる)ものの数が1である場合、小さすぎることになる方のベクトル又は小さすぎることになる方のタイルが全て統合される。他方の側は、統合されずにそのままである。本方法は次のベクトルに進む。残った隣接する短すぎる(小さすぎる)ベクトルの数が2の場合、該ベクトルが、片側統合ボリュームベクトルの前後のxベクトルの範囲内にあるか否かを判定する。Yesの場合、それは同じ側に統合され、他方の側は統合されないままである。本方法は次のベクトルに進む。Noの場合、ワークピースの層のより近い輪郭線の方向に統合される。他方の側は、統合されずにそのままである。しかしながら、このステップでは、この選択は多かれ少なかれ任意であるので、異なるルールも可能である。そして、本方法は次のベクトルに進む。
【0141】
各DSベクトルに対して上記のステップが実行された後、短すぎるボリュームベクトル又は小さすぎるタイルがないか再びチェックされ[6]、小さすぎるベクトル(すなわち、最小長より小さい、いわゆるマイクロベクトル)を回避するために、それらはDSベクトルに統合される。
【0142】
図7は、図5に示された実施形態B及びCの詳細(すなわち、詳細な方法ステップ)を示す。
【0143】
実施形態B及びCは、両方とも、初期DSベクトル及び初期ボリュームベクトルが定められていない状況から開始する。
【0144】
実施形態Bにおいて、第1のステップにおいて、ダウンスキン領域にDSベクトルが作成され、該DSベクトルがワークピース輪郭線の位置に作成されたかどうか(すなわち、該DSベクトルがワークピース輪郭線において開始及び/又は終了するかどうか)がチェックされる[1]。これが当てはまる場合、すなわちYesの場合、該DSベクトルは、ワークピース輪郭線から開始して作成されている。さらに、このベクトルについて、その初期長が少なくとも所定長(最小長)であるかどうかが判定される。Yesであれば、次のベクトルが、例えば、第1のベクトルに隣接して作成される。Noの場合、該ベクトルを目標長(例えば、最小長に等しい長さ)まで延長して作成する[3]。該ベクトルがワークピース輪郭線の位置に位置しない場合(すなわち、Noの場合)、DSベクトルの隣の(すなわち、DSベクトルの延長方向に沿った)ワークピース輪郭線までの距離が、DSベクトルの実際の長さに対する最小長の差を最小長に足した値よりも小さいかどうかが判定される[2]。
【0145】
DSベクトルの両側がこれに該当する場合、DSベクトルは、ワークピース輪郭線からワークピース輪郭線まで拡張される。どちらの側も該当しない場合、目標長(例えば、最小長)を有するDSベクトルが、DSに対して中央に位置づけられる。一方の側が該当する場合、DSにおけるベクトルが少なくとも最小長の長さを有するかどうかがチェックされる。Yesであれば、DSベクトルはワークピース輪郭線まで延長され、次のベクトルが生成される。そうでない場合、ベクトルは、ワークピース輪郭線から始めて、目標長となるように作成される。
【0146】
前の、後の、又は同時のステップにおいて、特にDSベクトルを作成した後に、ボリューム領域はボリュームベクトルでハッチングされる[4]。必要であれば、ボリュームベクトルは、小さすぎるボリュームベクトル(マイクロベクトル)、すなわち最小長未満のベクトル、を回避するために、DSベクトルに統合される。ボリューム領域が同時にハッチングされるとき、統合は全く必要なく、これは実施形態Cで示される。
【0147】
実施形態Cでは、実施形態Bと同様の方法が適用される。しかしながら、DS領域及びDSベクトルに関して位置、距離、及び長さをチェックするだけではなく、全てのステップがボリューム領域及びボリュームベクトルに対しても実行される。実施形態Bにおける統合の最後のステップは、実施形態Cでは省かれる。
【0148】
以下の図は、本開示に係る、複数の照射ベクトルを定めるための技術が、例示的なワークピース層に対して、及び異なる実施形態に対してどのように実施され得るかのいくつかの例を示す。以下の図は、本明細書に記載される技術の特定の特徴を示し、これは、特定の層において照射ベクトルを定めることに対して改善又は最適化をもたらし得ることに留意されたい。以下の図は、照射ベクトルを定める方法を、それらが本明細書に記載される技術に従ってどのように実行され得るかを示すが、個々の照射ベクトルを定めること及び割り当てることは必ずしも最適化されていないことに留意されたい。すなわち、照射ベクトルの1以上を短縮するさらなるステップ及び/又は延長するさらなるステップが、照射ベクトルを定めることに対して、さらなる改善又はさらなる最適化を実現するために有用である場合もある。
【0149】
図8は、ケース1によるシナリオを示す。ワークピース領域が示されており、DS領域110が層のエッジ領域に設けられている。該層の残りの部分は、ボリューム領域112として画定される。図8の上側は、初期ハッチングを示し、DS領域110は、DSベクトルによって完全にカバーされ、ボリューム領域112は、ボリュームベクトルによって完全にカバーされている。両方の領域において、同じ向きを有する平行なハッチングベクトルのパターンが適用され、ハッチング距離は同じであり、ベクトル経路は互いに平行に並んでいる。図8の下側は、本開示に係る方法が適用された後の同じ層を示す。図8に示す方法によれば、所定の長さ(最小長)未満の長さを有するDSベクトルの各々が、ワークピースの隣の輪郭(より正確には輪郭ベクトル)まで延長される。図8の例では、これは、初期DSベクトルの全てについて当てはまる。ダウンスキン領域に隣接する輪郭(すなわちダウンスキン輪郭線)も、ダウンスキンパラメータを用いた照射のために画定される。この例では、ダウンスキン輪郭線は、隣接する輪郭ベクトルと統合されない。他の実施形態では、ダウンスキン輪郭線は、輪郭ベクトルと統合され、延長されることもできる。他の実施形態では、全ての輪郭ベクトル及びダウンスキン輪郭線は、ダウンスキンパラメータを用いた照射のために画定される。別の実施形態において、ダウンスキン輪郭線は、通常の輪郭線のように扱われる、すなわち、ダウンスキン輪郭線は、輪郭パラメータを用いた照射のために画定される。
【0150】
図9は、ケース2によるシナリオを示す。ケース2では、上側は初期ハッチングを示し、下側は、例えば、上記の図5及び図6に関して説明した実施形態Aに対応する方法に従って変換されている。上側では、内側DS領域110は、DSベクトル(破線)によって完全にカバーされ、ボリューム領域112は、ボリュームベクトル(実線)によって完全にカバーされている。下側では、最初に、初期DSベクトルの全てが、それらが最小長未満であったので、延長されたことが示されている。最も上側に位置するDSベクトル114は、輪郭線から輪郭線まで完全に延長されて(目標長を上回る)、延長DSベクトル114Aとなっている。そうでなければ、残りのボリュームベクトルは、最小長未満の長さを有することになる。中間にあるDSベクトル116は、その両側に等しく、目標長になるまで延長されて、延長DSベクトル116Aとなっている。ワークピースの輪郭に近い下部領域では、2つの状況が生じる。DSベクトル118を両側で等しく延長した場合、左側では、残りのボリュームベクトルが、最小長未満の長さを有することになる。従って、DSベクトル118は、輪郭に達するまで延長され、反対側に、ボリュームベクトルから残りの部分を追加することによって目標長まで延長される。すなわち、DSベクトル118は輪郭線まで移動され、延長DSベクトル118Aとなる。さらに、右側では、最も下側に位置するDSベクトル120は、その左側に十分な空間がないので、その右側のみに延長されて、目標長を有する延長ベクトル120Aとなる。
【0151】
ここでは、図9の例だけでなく、本明細書に記載される他の全ての例及び実施形態にも適用される、以下のことに留意すべきである。個々の照射ベクトルの照射に関して、種々の異なる手法が可能である。例えば、ボリュームベクトルとDSベクトルを順次照射することができる。特に、最初に、ボリュームベクトルが照射され、その後、ダウンスキンベクトルが照射される(或いは、その逆)。他の例として、ボリュームベクトル及びダウンスキンベクトルは、「混合」方式で照射されてもよい。例えば、ストライプ照射によれば、ベクトルは、層内で決められている順序で照射されてもよく、この場合、ベクトルの照射パラメータは、DSベクトル及びボリュームベクトルに対して変化する。
【0152】
さらに、本明細書に記載される(且つ任意の特定の実施形態に限定されない)技術によれば、ベクトルの統合すること又は定めることにおいては、別の種類のベクトル(例えば、DSベクトル)及び/又は照射されない領域によって囲まれたタイル、或いは別の種類のタイルを前後に有する及び/又は照射されない領域を前後に有する照射ストライプ部分であるタイルを意味する「アイランド」の回避を考慮してもよい。特に、これは、好ましくは、先にボリュームベクトルであった部分がDSベクトルの照射パラメータで照射されるように統合されることを意味する。
【0153】
図9に関して上述したシナリオの状況では、第1のボリュームベクトル、次いでDSベクトルの順次照射を考えると、左上の「角」の2つのボリュームベクトルは、左上の角における小さすぎるボリューム(又はタイル若しくはアイランド)を回避するために、ダウンスキンベクトルに変更され得る。すなわち、これら2つのボリュームベクトルをDS照射パラメータで照射されるDSベクトルに変更することができる。
【0154】
図10は、ケース2aによるシナリオを示し、これは、例えば、上述の実施形態A又は実施形態Bによる変換演算の結果を示す。この例は、十分な長さを有するDSベクトル122を示しており、従って、延長されていない。さらに、片側だけに延長されたベクトル124Aが示されている。これは、両側へ等しい統合を行った場合、両側に短すぎるボリュームベクトルをもたらすことになるからである。
【0155】
図11は、ケース3によるシナリオを示す。これは、例えば、上述の実施形態1による方法の結果を示す。この例では、短すぎるDSベクトル(すなわち、最小長未満の長さを有するDSベクトル)を完全に回避するように、DSベクトル(破線)のハッチング方向が選択されている。
【0156】
上述の技術によれば、少なくとも実施形態において、ダウンスキン領域の存在する状況において、所定長未満のベクトル(いわゆる、マイクロベクトル)を回避すること又は数を低減することが可能である。このようにして、製造されるワークピースの品質を向上させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定める方法であって、該方法は、生成される3次元ワークピースの層に対して、
前記層にダウンスキン領域を画定するステップと、
前記ダウンスキン領域をカバーするように第1の照射ベクトルのセットを定めるステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、前記ダウンスキン領域に隣接する前記層のボリューム領域内に延在し且つ1mm以上の長さを有する、ステップと、
前記層の前記ボリューム領域の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットを定めるステップと、
前記第1の照射ベクトルのセットに、第1の照射パラメータのセットを割り当てるステップと、
前記第2の照射ベクトルのセットに、前記第1の照射パラメータのセットとは異なる第2の照射パラメータのセットを割り当てるステップと、
を有する、
複数の照射ベクトルを定める方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記第1の照射ベクトルの各々は、少なくとも15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmの長さを有し、
及び/又は
前記第2の照射ベクトルの各々は、少なくとも15mm、10mm、8mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmの長さを有する、
方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記ダウンスキン領域は、前記層と未固化の原材料粉末下層との間に所定数よりも少ないワークピース層が存在する前記層の領域として定義され、
及び/又は、
前記ボリューム領域は、前記層と前記未固化の原材料粉末下層との間に少なくとも前記所定数のワークピース層が存在する、又は前記未固化の原材料粉末下層が存在しない、前記層の領域として定義され、
及び/又は
前記照射パラメータのセットは、レーザ出力、レーザ波長、走査速度、走査モード、レーザスポットサイズ、レーザスポット形状、レーザ動作モード、ハッチング距離、及びベクトル間のジャンプ時間のうちの少なくとも1つを含む、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、該方法はさらに、
前記ダウンスキン領域において1又は複数の第1の初期ベクトルを規定するステップと、
前記1又は複数の第1の初期ベクトルの各々について、前記第1の初期ベクトルのそれぞれが第1の所定長よりも短い長さを有するかどうかを判定するステップと、
前記1又は複数の第1の初期ベクトルの各々について、前記第1の初期ベクトルが前記第1の所定長よりも短い長さを有すると判定された場合、前記第1の初期ベクトルを、前記ボリューム領域内に延在するように延長して、第1の延長照射ベクトルを形成するステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの前記少なくとも1つのベクトルは、前記第1の延長照射ベクトルである、ステップと、
を有する、
方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、該方法はさらに、
前記ダウンスキン領域及び前記ボリューム領域の初期ベクトルのハッチングパターンを定めるステップであって、前記ダウンスキン領域は第1の初期ベクトルのセットによってカバーされ、前記ボリューム領域は第2の初期ベクトルのセットによってカバーされる、ように該ハッチングパターンを定めるステップと、
複数の前記第1の初期ベクトルに対して、前記第1の初期ベクトルのそれぞれが第1の所定長よりも短い長さを有するかどうかを判定するステップと、
複数の前記第1の初期ベクトルの各々について、前記第1の初期ベクトルが前記第1の所定長よりも短い長さを有すると判定された場合、前記第1の初期ベクトルを、前記ボリューム領域内に延在するように延長して、第1の延長照射ベクトルを形成するステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの前記少なくとも1つのベクトルは前記第1の延長照射ベクトルである、ステップと、
を有する、
方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法において、
前記ダウンスキン領域に隣接する領域における前記第2の初期ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、前記第1の延長照射ベクトルの向きとは異なる向きを有し、前記第2の初期ベクトルのうちの前記少なくとも1つのベクトルは、少なくとも部分的に除去され、前記第2の初期ベクトルの除去された部分は、前記第1の延長照射ベクトルによって置き換えられ、
及び/又は、
前記延長して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップは、前記第1の初期ベクトルを、前記第2の初期ベクトルのうちの1つ又は2つの隣接する第2の初期ベクトルと統合して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップを含む、
方法。
【請求項7】
請求項に記載の方法において、
前記第1の延長照射ベクトルは、前記第1の所定長を有する、
方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法において、
前記統合して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップにおいて、前記第1の初期ベクトルは、前記第2の初期ベクトルのうちの2つの隣接する第2の初期ベクトルと統合され、前記2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの第1のベクトルの統合された部分は、前記2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの第2のベクトルの統合された部分と同じ長さを有
及び/又は、
前記第1の初期ベクトルには、前記第2の初期ベクトルのうちの隣接する第2の初期ベクトルの全体が統合され、特に、前記隣接する第2の初期ベクトルは、統合の前においては、統合される端部とは反対側の端部で輪郭ベクトルに隣接する、
方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法において、該方法はさらに、
前記統合して、前記第1の延長照射ベクトルを形成するステップの後に、前記1つ又は2つの隣接する第2の初期ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルの残った部分が第2の所定長よりも小さいかどうかを判定するステップと、
前記残った部分が前記第2の所定長よりも小さいと判定された場合、前記第1の統合照射ベクトルを前記残った部分と統合して第2の延長照射ベクトルを形成するステップであって、前記第1の照射ベクトルのうちの前記少なくとも1つのベクトルは、前記第2の延長照射ベクトルである、ステップと、
を有する
方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法において、該方法はさらに、
第2の所定長よりも短い長さを有する第2の初期ベクトルを特定するステップと、
前記特定された第2の初期ベクトルを隣接する第1の初期ベクトル又は隣接する第1若しくは第2の延長照射ベクトルに統合して、第1の照射ベクトルを形成するステップと、
を有する、
方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、該方法はさらに、
第1の初期ベクトルのセットを定めるステップであって、複数の前記第1の初期ベクトルは前記層のボリューム領域内に延在し且つ同じ第1の所定長を有し、複数の前記第1の照射ベクトルの各々は対応する第1の初期ベクトルを含む、ように該第1の初期ベクトルのセットを定めるステップと、
特に、前記第1の初期ベクトルのセットを定めるステップの後に、第2の初期ベクトルのセットを定めるステップであって、前記第2の照射ベクトルのうちの少なくともいくつかのベクトルは、対応する第2の初期ベクトルに対応するように該第2の初期ベクトルのセットを定めるステップと、
を有する、
方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、該方法はさらに、
第2の所定長よりも短い長さを有する第2の初期ベクトルを特定するステップと、
前記特定された第2の初期ベクトルを隣接する第1の初期ベクトルに統合して第1の照射ベクトルを形成するステップと、
を有する、
方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、該方法はさらに、
ダウンスキン領域の境界までの距離が第2の所定長よりも短いワークピース輪郭線を特定するステップと、
前記ワークピース輪郭線まで延びるように第1の初期ベクトルを定めるステップと、
を有する、
方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、該方法はさらに、
前記第1の照射ベクトルのうち、前記ダウンスキン領域内にあり且つ第1の所定長よりも短い長さを有する部分の量が最小となるように、前記層内の前記第1の照射ベクトルのセットの向きを決定するステップ、
を有する、
方法。
【請求項15】
請求項に記載の方法において、該方法はさらに、
前記第1の初期ベクトルのうち、前記ダウンスキン領域内にあり且つ第1の所定長よりも短い長さを有する部分の量が最小となるように、前記層内の前記第1の初期ベクトルのセットの向きを決定するステップ、
を有する、
方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、該方法はさらに、
定められた前記第1の照射ベクトルのセット及び定められた前記第2の照射ベクトルのセットに従って前記3次元ワークピースの前記層を照射するステップ、
を有する、
方法。
【請求項17】
プログラムコード部分を備えるコンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品が1又は複数のコンピューティング装置で実行されるときに、前記プログラムコード部分が請求項1に記載の方法を実行する、
コンピュータプログラム製品。
【請求項18】
請求項17に記載のコンピュータプログラム製品において、
該コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読記録媒体に記憶された、
コンピュータプログラム製品。
【請求項19】
付加製造によって3次元ワークピースを製造する機器のための複数の照射ベクトルを定めるための装置であって、該装置は、生成される3次元ワークピースの層に対して、
前記層にダウンスキン領域を画定し、
前記ダウンスキン領域をカバーするように第1の照射ベクトルのセットを定め、前記第1の照射ベクトルのうちの少なくとも1つのベクトルは、前記ダウンスキン領域に隣接する前記層のボリューム領域内に延在し且つ1mm以上の長さを有し、
前記層の前記ボリューム領域の残りの部分をカバーするように第2の照射ベクトルのセットを定め、
前記第1の照射ベクトルのセットに、第1の照射パラメータのセットを割り当て、
前記第2の照射ベクトルのセットに、前記第1の照射パラメータのセットとは異なる第2の照射パラメータのセットを割り当てる、
装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置において、該装置はさらに、請求項1に記載の方法の前記ステップを実行する、
装置。
【国際調査報告】