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特表2024-541890鉄鋼製造のためのプロセスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】鉄鋼製造のためのプロセスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/02 20060101AFI20241106BHJP
   F27B 1/08 20060101ALI20241106BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C21B13/02
F27B1/08 Z
F27D17/00 104A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024523903
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 AU2022051250
(87)【国際公開番号】W WO2023064981
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2021903330
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022901433
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022903022
(32)【優先日】2022-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513030938
【氏名又は名称】カリックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】シーツ, マーク
(72)【発明者】
【氏名】アディプリ, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ブート-ハンドフォード, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ギル, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ダフティ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント, アダム
【テーマコード(参考)】
4K012
4K045
4K056
【Fターム(参考)】
4K012DA01
4K012DA05
4K045AA01
4K045BA02
4K045GB00
4K056DB00
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、鉄鉱石を還元するための外部加熱式縦型反応器であって、(a)炉に垂直に隣接して配置された反応器管と、(b)反応器管の少なくとも1つの壁に垂直に隣接して配置され、少なくとも1つの壁を通じて伝導される熱を供給する外部炉と、(c)反応器管の底部にある投入口であって、還元ガスが反応器管を通って上方に上昇するように、還元ガスが加熱されて投入口に注入される、投入口と、(d)反応器の上面に隣接して配置されたガス排出口と、(e)ガス排出口の入口に隣接して配置されたガスフィルターと、(f)反応器管の底部に配置された床であって、還元鉄粉生成物が反応器管の底部の床に集められる、床とを備える、外部加熱式縦型反応器を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石を還元するための外部加熱式縦型反応器であって、
(a)炉に垂直に隣接して配置された反応器管であって、鉄鉱石の投入粉末が前記反応器管の上端に隣接するホッパーに投入され、前記投入粉末が前記反応器管を通って下方に落下し、還元ガスの投入が前記反応器管の底部に注入される、反応器管と、
(b)前記反応器管の少なくとも1つの壁に垂直に隣接して配置され、前記少なくとも1つの壁を通じて伝導される熱を供給する外部炉であって、前記伝導された熱が前記落下する投入粉末の温度を上昇させる、外部炉と、
(c)前記反応器管の底部にある投入口であって、前記還元ガスが前記反応器管を通って上方に上昇するように、前記還元ガスが加熱されて前記投入口に注入され、前記上昇する還元ガスによって前記鉄鉱石が還元されるように、前記落下する投入粉末の前記温度をさらに上昇させ、
前記還元ガスが還元反応で前記鉄鉱石によって消費され、その結果、前記反応器底部で還元鉄粉生成物が形成されるように、700℃~900℃の反応温度に到達し、外部熱が前記反応器管の長さに沿って制御され、前記鉄鉱石を還元する反応温度プロファイルを維持する、投入口と、
(d)前記反応器の上面に隣接して配置されたガス排出口であって、前記反応器の上部で排気されるガスが流れを形成し、未反応の投入粉末粒子を巻き込み、前記未反応粒子が前記ガス流から抽出され、前記反応器に再注入される、ガス排出口と、
(e)前記ガス排出口の入口に隣接して配置されたガスフィルターであって、前記反応器管から抽出されたガスが蒸気および二酸化炭素を含むガス反応生成物をスクラビングし、前記スクラビングされた抽出ガスが投入ガス流に再注入される、ガスフィルターと、
(f)前記反応器管の前記底部に配置された床であって、前記還元鉄粉生成物が前記反応器管の前記底部の前記床に集められ、その後の処理のために反応器から排気される、床と
を備える、外部加熱式縦型反応器。
【請求項2】
前記還元ガスが、一酸化炭素、水素、メタン、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の外部加熱型縦型反応器。
【請求項3】
壁、ガス、および粒子排出を考慮した場合、約1メートルの放射浸透深さに対する体積分率が約1x10-4であり、前記反応器壁が1100~1700℃の温度に加熱される、請求項1または2に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項4】
外部熱源が、固体もしくはガス状燃料の燃焼から前記炉内で生成されるか、または抵抗、誘導、もしくはマイクロ波生成を使用して電力から生成され、前記反応器の長さに沿って分布して、壁、ガス、および粒子排出を考慮した場合、約1メートルの放射浸透深さに対する前記体積分率が約1x10-4である反応器壁温度プロファイルを提供し、前記反応器壁が1100~1700℃の温度に加熱される、請求項1~3のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項5】
鉄鉱石粉が、ヘマタイト、マグネタイト、ゲータイト、シデライト、または他の鉄系鉱物、および前記鉱物を処理するために鉄の還元を必要とするそれらの混合物であり得る、請求項1~4のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項6】
前記反応器管の前記少なくとも1つの壁が、約1050℃で水素に対して安定な鋼鉄またはセラミックから作られている、請求項1~5のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項7】
前記還元ガスが水素であり、前記熱源が前記生成物のCO排出原単位を最小限に抑えるための再生可能電力である、請求項3~5のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項8】
前記投入粉末が、25μmより大きく、かつ約250μm未満の粒子直径の範囲を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項9】
前記反応器管の直径が約2m以下であり、前記反応器管の長さが10~35mであり、流下する鉄鉱石粒子の滞留時間が約10~50秒であり、前記滞留時間がガス流方向および前記鉄鉱石粒子のクラスター形成に依存する、請求項1~8のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項10】
前記反応器の壁間の熱交換が約100kW/m未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項11】
前記反応器管を通って前記落下する間の前記投入粉末の平均速度が、3.0m/s未満、かつ0.2m/sより大きい、請求項1~10のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項12】
前記反応器内の前記投入粉末の流束が、0.5~1.0kg・m-2-1の範囲内である、請求項1~11のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項13】
前記投入粉末および投入還元ガスが、水コンデンサおよび前記還元鉄生成物の使用に関連する他のプロセスなどの他のプロセスからの廃熱から予熱される、請求項1~12のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項14】
前記ガス流から抽出された前記未反応の投入粉末粒子が、前記反応器管の中心を通過する金属管を通じて水素とともに前記反応器管に再注入され、それによってこれらの粒子が前記反応器の前記底部への移動中に加熱されて還元される、請求項1~13のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項15】
還元度が95%以上である、請求項1~14のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の前記外部加熱式縦型反応器を使用して投入鉄鉱石粉を還元するプロセスであって、投入鉄鉱石粉が低品位のヘマタイトまたはゲータイトであり、
(a)前記プロセスは、マグネタイトなどの強磁性材料を生成するために、実質的に還元の程度を制限するように制御され、
(b)粉末冷却プロセスは、フラッシュクエンチプロセスであり、
(c)使用され、
(d)磁選機は、磁性鉄鉱石生成物から脈石を分離するために使用され、
(e)前記磁性鉄鉱石生成物は、鉄に処理されるために、請求項1~15のいずれか1項に記載の第2の反応器に注入される
プロセス。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の前記反応器を使用して投入鉄鉱石粉を還元するプロセスであって、
(a)低品位の鉄鉱石粒子を高温の鉄粉に処理し、
(b)前記高温の鉄粉を加熱槽に注入して溶融鉄を生成し、
(c)スラグが形成されるように、前記溶融鉄と石灰などのスラグ化剤とを前記加熱槽内で混合し、前記スラグが前記槽の上部に浮遊し、排出され、冷却され、
(d)前記溶融鉄を前記加熱槽から取り出し、冷却し、高品位鉄のインゴットを製造するために処理する
プロセス。
【請求項18】
不浸透性鉄鉱石を活性化するためのプロセスであって、
(a)鉄鉱石を酸化して多孔質ヘマタイト鉱石を作り、
(b)前記多孔質ヘマタイト鉱石を請求項1~15のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器中で還元して、鉄鉱石を作る
プロセス。
【請求項19】
前記酸化プロセスが、前記還元ガスが空気で置換された請求項1~15のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器を使用する、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
セメンタイトを製造するプロセスであって、
(a)鉄鉱石を、請求項1から15のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器を使用して還元し、鉄粒子を作り、
(b)必要に応じて、高品位の鉄粉を製造するために、請求項17のプロセスを組み込んでもよく、
(c)前記鉄粉を、COおよびHが前記ガス状供給物として使用される請求項1から15のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器への供給物として使用してもよく、
(d)前記反応器温度とCOの相対組成割合が、前記鉄の一部をセメンタイトに変換するように選択される
プロセス。
【請求項21】
鉄を選鉱し、不浸透性鉄鉱石を活性化し、または鉄中のセメンタイトの所望の割合を生成するために使用される、請求項1~15のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器であって、投入鉄鉱石フィードが中央サイロから前記反応器に分配され、前記還元ガスが適切なガス源から前記反応器に分配され、電力またはガスを加熱するために商業プロセスの他の要素から独立して熱交換され得る、約8個のそのような反応器のモジュールを使用することによる、外部加熱式縦型反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して鉄鋼製造のための多くの手段を提供することに関する。一般に、本明細書に記載されるプロセスは、直接還元鉄(Direct Reduced Iron:DRI)反応器の間接加熱を使用して、ヘマタイト、マグネタイト、およびゲータイトなどの広範な鉄鉱石粉から鉄の直接還元プロセスによって鉄を製造する方法であり、具体的には、このプロセスは、間接加熱式水素直接還元鉄(Hydrogen Direct Reduced Iron:H-DRI)反応器の還元剤として水素を使用し、好ましくは間接加熱に再生可能電力を使用して、鉄鋼製造のためのCO排出量を低減することに関する。また、製鉄用に低品位の鉄鉱石をアップグレードし、鉄を不動態化するためにこれらの反応器を使用すること、および製鉄と製鋼の両方にこのような間接加熱式反応器を統合することについても説明する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業界は、世界のCO排出量の約6~8%を占めており、地球温暖化を緩和するために、鉄鋼業界はCO排出量の削減が求められている。世界鉄鋼協会(World Steel Association)の報告によると、2019年、11億トンの鉄鋼
製造に対し、CO排出原単位は鉄鋼1トン当たり約1800kgのCOであり、エネルギー原単位は約19.84GJ/トンであった。2010年以降、CO排出原単位は1,800から1,830に増加し、エネルギー原単位は20.13GJ/トンから19.84GJ/トンにわずかに減少した。鉄鋼プロセスは一般に、鉄鉱石からの製鉄工程および製鋼工程を含み、鉄鉱石から直接製鋼する場合は密接に統合されることもある。
【0003】
当業者であれば、鉄鋼に関する先行技術は膨大かつ奥が深く、これらの業界で使用されるプロセスに関連する特許のほとんどは、30年以上前に採用されたプロセスを繰り返し改良することで進歩したものであることを理解できるであろう。今日、現行プロセスのエネルギー原単位は非常に高く、この高い排出原単位は、燃焼、還元、電極、および炭素鋼への組み込みに処理された石炭を使用するこれらのプロセス開発の結果である。先行技術は、特許および刊行物ではなく、長い時間をかけて開発された特定の技術によって定義される。
【0004】
主な3つの製鉄プロセスには、鉄鉱石中の脈石を除去しないスポンジ鉄、スラグ化によって脈石を除去する銑鉄製造、および溶融還元がある。
【0005】
この鉄、すなわち鉄スクラップを使用する場合のある主な3つの製鋼プロセスには、平炉、転炉(Basic Oxygen Furnace:BOF)、および電気炉(Electric Arc Furnace:EAF)がある。製鋼は、鋳造、熱間圧延、および冷間圧延のプロセスに続く。現在、この業界では、BOFおよびEAFプロセスが主流である。気候変動緩和のためには、鉄鋼製造における排出原単位を削減する必要がある。最も望ましいのは、このプロセスが、回収されたCOの隔離コストを含め、製鋼プロセス全体の総合的なエネルギー原単位を増加させないことである。本明細書に開示された発明は、主に低排出鉄鋼製造に関する。
【0006】
排出原単位の削減は、まず、既存のプロセスに低排出鉄を使用して鉄鉱石を置き換えることで実現し得る。平炉および転炉(BOF)は通常、DRIスポンジ鉄の30%までを置き換え得る。BOFプロセスでは、鉄鉱石の還元と加熱プロセスの両方に、また炭素鋼の炭素源として、通常冶金グレードの石炭からコークスの形で炭素を使用する。製鋼プロセスで発生するCOは、鉄鉱石を溶融鉄に還元する際に生成される。生成されたCOは、石炭を使用することから高炉ガス(Blast Furnace Gas:BFG)として知られるオフガスの一部として存在する。
【0007】
既存のBOFプロセスを低排出鉄鋼の製造に変換する場合、H-DRIを供給物として使用して、一般的に排出量を約30%削減するのが限界である。石炭を天然ガスに置き換えることで、排出原単位を削減し得る。排出量は、約600kg CO/トンまで削減され得る。これでは、気候変動を緩和し、2050年までにゼロエミッションを達成するという目標に達するには不十分である。
【0008】
EAFプロセスにおけるDRIによる鉄スクラップの置き換えは最大100%まであり得るが、EAFは低品位の鉱石からの多量の脈石に耐えられないため、置き換えは現在、高品位の鉱石から製造されるDRIに限定されている。サブマージアーク炉(Submerged Arc Furnace:SAF)などの新しいEAF設計は、この制限を克服するために開発されている。現在の市場ニーズを満たし、排出量を削減するためには、低品位の鉱石を使用する低炭素DRIプロセスを採用することが望ましい。
【0009】
炭素鋼を製造するには、強度に十分なセメンタイトFeCを作るために炭素を加える必要がある。製鋼からのCO排出量を減らすために、セメンタイト製造からの排出量の削減も必要である。製鋼における別のCO排出源は、石灰石からの石灰、スラグ化のためのCa:Mg比の最適化によく使用されるドロマイトなどの他の炭酸塩の使用による排出である。さらなるCO排出源は、鉄鉱石の輸送によるものである。製鋼のサプライチェーンには、多くのCO排出源が存在する。しかし、CO排出量に最も大きく寄与しているのは、現在のDRIおよびBOFプロセスにおける化石燃料の使用によるものである。
【0010】
時間の経過とともに、低排出鉄鋼を製造するための新たな製鋼プロセスが開発されていくが、これは、気候変動を緩和するために必要なゼロエミッション目標に達するための排出量削減の必要性によって推進される。本明細書で開示される発明は、鉄と鋼の製造の両方に対する低排出鉄に関する。
【0011】
世界的に高品位の鉄鉱石の供給は減少しているため、排出原単位を削減し、エネルギー効率を維持するための開発は、好ましくは、鉄鋼の製造に低品位の鉱石を使用できるようにするべきである。本明細書に開示された発明は、製鉄と製鋼両方のための低品位の鉱石を選鉱するために採用され得る。
【0012】
低排出原単位の鉄鋼を製造するためのロードマップは、主に低排出電力、および鉄の還元プロセスのための水素ガスを使用することに基づいている。また、ロードマップは、高品位の鉄鉱石の不足が進行しているため、低品位の鉄鉱石が不可避であることを認めている。製鋼プロセスのうち、コークスを使用する主流のBOFプロセスを低排出鉄鋼の製造に適応することができない根本的な理由がある。ロードマップは、製鉄または製鋼のための二酸化炭素回収貯留(Carbon Capture and Storage:CCS)などの「エンド・オブ・パイプ」プロセスは除外している。これらのプロセスは一般に、鋼鉄などの汎用製品では不経済であることが判明しているからである。したがって、低排出の鉄鋼の主要な製造手段は、現在のDRIプロセスを改良し、天然ガスから得られる水素と一酸化炭素の混合ガス(合成ガス)の代わりに低排出水素を使用してスポンジ鉄を製造する、H-DRIと呼ばれるプロセスに関心を向けている。スポンジ鉄によるH-DRIから低排出で鉄鋼を製造するための見込みのある手段は、再生可能電力を使用してEAFプロセスを稼動させることである。低品位の鉄鉱石の選鉱手段は、達成可能であるとしばしば暗示されている。多くのH-DRIプロセスが開発されている。
【0013】
見込みのあるH-DRIのプロセスは、次の2つのアプローチに分類され得る。
(a)ペレットの還元。低排出DRIプロセスのために開発されている第1のアプローチは、MIDREX(低圧)プロセスおよびHYL(高圧)プロセスなどの、成功したDRIプロセスを適応させることである。このペレットDRIプロセスは、鉄鉱石のペレットがゆっくりとスポンジ鉄ペレットに還元されるシャフト炉を使用する。これは、DRIに対して実証済みの技術である。還元剤として合成ガスの代わりに水素を使用して、低排出を達成し得る。このようなプロセスはH-DRIと呼ばれ、スウェーデンのHYBRITプロセス(https://www.hybritdevelopment.se/en/)がその例である。このプロセスでは、高品位の鉱石から高温のH-DRIペレットを製造し、鋼鉄用のEAFプロセスに直接注入する。プロセスの変更は、合成ガスを使用した発熱反応から水素を使用した吸熱反応へのプロセスの変換を考慮に入れなければならない。
(b)粒子還元。H-DRIプロセスの第2のアプローチは、粒子の粒子フラッシュ還元を使用することで、(a)で使用したペレット化プロセスを排除するという利点を有する。
粒子還元の一例として、フラッシュ製鉄技術(Flash Iron Making Technology:FIT)があり、これは、一般的に30ミクロン未満の予熱された鉄鉱石粉を、水素と酸素の下向きの共流に巻き込む懸濁反応器の使用に基づいて、ベンチスケールで開発されたものである。水素の燃焼により、粉末は十分に高温に、典型的には1300℃超に加熱され、約5秒の滞留時間で還元プロセスが実質的に完了する。フラッシュ反応器を使用したFITプロセスは、「A Novel Flash Ironmaking Process」US DOE,Office of Energy Efficiency and Renewable Energy,2018に報告されている。滞留時間が短いのは、多くの要因のためである。すなわち、固体とガスの共流において、流下するガスの巻き込みにより粒子の流れが速いこと、プロセスの高温が非常に高いガスの速度を生み出すこと、燃焼ガスと還元ガスの流れの混合が、ガス速度をさらに増加させること、および、燃焼による蒸気の発生は、その蒸気が逆反応を促進するため、反応を高温に推進することである。高温とガス速度の正味の結果として、高さ約19mの反応器で滞留時間約5秒を達成し得る。FITプロセス温度は鉄の融点未満であるが、粒子の焼結が強く、粒子内の細孔が閉塞し、水素ガスが粒子内の還元反応界面に到達するのを妨げるため、反応時間が増加することが報告されている。
粒子還元の別の例は、HIsmeltプロセスの水素への採用である。HIsmeltプロセスは、酸素と合成ガスの燃焼および合成ガスの還元によって生成されたスポンジ鉄の溶滴を溶鋼浴に注入する商業用のEAF製鉄プロセスである。溶融スポンジ鉄の液滴は、高温サイクロンコレクタに注入された鉄鉱石粒子から作られる。サイクロンは、水素と一酸化炭素による還元プロセスを活性化するために、酸素を用いた合成ガスの燃焼から開発され、溶融スポンジ鉄が生成されるのに十分なほど温度が高い。溶融浴内では、スラグ化によって脈石が除去されて銑鉄が作られ、または、鉄鉱石の品位が高い場合は、溶融鉄がEAFに注入されることもある。HIsarnaプロセスでは、合成ガスを水素で置換する。
粒子還元の別の例はFINEXプロセスであり、このプロセスでは、通常2つまたは3つの連続した流動床を使用し、合成ガスと酸素の燃焼によって70μm未満の粒子を加熱し、余剰の合成ガスで還元することによって、鉄を製造する。凝集の影響は、粒径分布を変更することでプロセスを改良することによって軽減され得る。この流動床のアプローチの水素への変換は、HYFOR(150μm未満)、CICORED(100~2000μm)、およびFINMET(50~8000μm)技術などのような、多くのプロセスで開発されており、主に図のように異なる粒径によって区別される。250μm未満の範囲の粒子は、一般に超微粉と呼ばれることに留意されたい。
【0014】
要約すると、上記に開示されたH-DRIに関する公知技術のアプローチはすべて、加熱のために燃焼用酸素を使用し、反応器内での還元のために余剰水素を使用する。
【0015】
H-DRIプロセスでは、ブルー水素と呼ばれる低排出水素を化石燃料から製造して、水素と一酸化炭素を製造する場合があり、蒸気を使用して一酸化炭素をCOと水素に変換し、COガスを水素から分離し、COを約100バールまで圧縮または液化し、このCOを輸送して地質貯留層に隔離し、そこで長期間かけて炭酸塩岩石に変化させる。これらのプロセス工程はどれも実績のある技術だが、製造にはコストがかかる。
【0016】
あるいは、グリーン水素と呼ばれる低排出水素は、水の電気分解を使用して、太陽光、風力、水力発電などの再生可能電力から製造され得る。現在のトレンドでは、グリーン水素が最も低コストとなるだろう。なぜなら、よりシンプルなプロセスであり、電解槽のコストが下がり、風力および太陽光による再生可能電力のコストが下がっているからである。グリーン水素はHYBRITプロジェクトで進められている。
【0017】
化石燃料を使用するプロセスの適応の課題は、水素製造の追加コストが、一般的にプロセスの改善によって相殺されないことである。また、多くのこのようなプロセスは、EAFの使用に必要とされるような低品位の鉱石の使用には適応していない。シャフト炉で処理するための鉄鉱石のペレット化のコストは、決して無視できないものであり、例えば、シャフト炉の床でのペレットの破砕を抑制するためのバインダとしてベントナイトまたはバイオマスを使用する必要がある。
【0018】
DRIプロセスでは高温のスポンジ鉄を製造することができ、この高温のスポンジ鉄は、Hot Briquetted Iron(HBI)プロセスを使用してスポンジ鉄ブリケットを製造するために製鉄で使用され得ることに留意されたい。HBI処理を使用して、製鋼用の鉄の輸送中の酸化および自然発火の抑制を含む、ブリケットの酸化を抑制する。HBIスポンジ鉄は、製鉄メーカーが、製鋼プロセスに供給することができる原料として、製鋼メーカーに販売する製品である。したがって、H-DRIを使用して製造されたHBIは、上述したプロセスのいずれであっても、鉄鋼製造の排出原単位を下げるために使用され得る。H-DRIは、HBIプロセスを使用して低排出スポンジ鉄のブリケットに処理され得ると理解されている。
【0019】
H-DRI製品が、BOFもしくはEAFで使用する銑鉄インゴットを製造するためのスラグ化用溶融鉄に直接注入される場合、または高品位の鉱石の場合、鉄鋼を製造するためのEAFに直接注入される場合は、HBIは必要ない。上記で検討したH-DRIのための多くの粒子ベースのアプローチは、高品位の鉄鉱石を使用してH-DRIを製造する場合、EAF製鋼プロセスに直接注入され得る鉄を製造する。
【0020】
EAF技術は、主に鉄スクラップのバッチ再処理のために開発されたものであることに留意されたい。H-DRIペレット、ブリケット、またはインゴットを連続的に鋼鉄に処理することができるように、連続EAFプロセスの開発が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、鉄鉱石の還元に水素を使用すると、還元プロセスが吸熱反応に変わるが、炭素系燃料の場合、一般的に反応はわずかに発熱を伴う。製鉄および製鋼のための上述の水素ベースのプロセスは、その多くの形態において、水素の製造がエネルギー集約的であることを理解する当業者によって評価されている。水素の消費を最小限に抑えるプロセスを開発する必要がある。
【0022】
本発明では、水素-一酸化炭素/合成ガス中で鉄鉱石を処理するために間接加熱式反応器を使用してもよく(DRI反応器)、好ましくは水素であり得る(H-DRI反応器)ことが開示されている。H-DRIは、CO排出原単位を下げる。
【0023】
間接加熱式反応器については、以前にSceatsらによって次のように説明されている。
(a)Sceatsらによる、国際公開第2016/077863号「Process and Apparatus for Manufacture of Calcined Compounds for the Production of Calcined Products」およびその中の参考文献、ならびに豪国特許出願公開第2020904492号および豪国特許出願公開第20201902810号「Process and Methods for the Calcination and Minerals」およびその中の参考文献、国際公開第2015/077818号「Process and Apparatus for Manufacture of Portland Cement」および国際公開第2021号の中の参考文献における、炭酸塩材料の焼成のためのCO還元プロセス。
(b)豪国特許出願公開第2020902858号「A Method for Pyroprocessing of Powers」およびその参考文献における、相変化を示す粉末の処理、ならびに
(c)豪国特許出願公開第2021902040号「Processes and Method of Calcination of Minerals」における、電池に使用する材料を製造するための材料の処理
ここで、これらの発明は、間接加熱とは、熱が反応容器から外部に発生することを意味し、反応器を取り囲む炉内の燃焼反応から生じるか、または抵抗加熱もしくは誘導加熱された電気素子を使用し得ること、また、反応器への熱伝達は、加熱とプロセスを分離するために、そのような炉から鋼鉄または他の熱伝導性要素を介して行われ得ることを認識している。間接加熱式反応器に関するこの先行技術には、製鉄または製鋼のためのこのような間接加熱式反応器を使用する用途および利点は開示されていない。
この間接加熱の先行技術は、製鉄または製鋼プロセスから脈石を除去するための低排出スラグ化プロセスのために、従来の石灰またはドライム(dolime)の代わりに使用され得る低排出石灰または低排出ドライムの製造を開示している。
【0024】
本発明の目的は、DRI鉄、好ましくはH-DRI鉄を製造するための間接加熱式反応器の設計を最適化する1つ以上の手段を提供することであり得る。
【0025】
本発明の別の目的は、DRIまたはH-DRI反応器に間接熱を供給するために電力を使用する1つ以上の手段を提供することであり得る。
【0026】
本発明の別の目的は、このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用して低品位の鉄鉱石をアップグレードすることについて説明することであり得る。
【0027】
本発明の別の目的は、鉄粒子の浸炭プロセスを説明することであり、このプロセスは、鉄を不動態化し、軟鋼および炭素鋼の製造において鉄中に炭素を供給することを目的としており、これによって、特に炭素源が、そうでなければ排出されるはずのCOである場合、炭素鋼における炭素隔離が可能となる。軟鋼は約0.03~0.15重量%の炭素を含み、炭素鋼は0.3~1.5重量%を含む。一酸化炭素COを使用した鉄の浸炭プロセスは、Stephensによる米国特許第5,869,018号に開示されていることに留意されたい。
【0028】
本発明の別の目的は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器をスケールアップして製造能力を高める手段を提供することであり得る。
【0029】
本発明の別の目的は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を製鉄プロセスに統合することを説明することであり得る。
【0030】
本発明の別の目的は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を製鋼プロセスに統合することを説明することであり得る。
【0031】
本明細書全体における先行技術の議論は、そのような先行技術が広く知られていること、または当該分野で共通の全般的な知識の一部を形成していることを認めるものと、決してみなされるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本特許の発明は、一般に、還元剤としてそれぞれ一酸化炭素/合成ガスまたは水素を使用した製鉄および製鋼用の間接加熱式直接還元鉄(DRI)および水素直接還元鉄(H-DRI)反応器に関連する。CO排出量を減らすためには、水素の使用が望ましい。開示された発明に関するDRI反応器への言及は、文脈が許す限り、H-DRI反応器への言及を含む。
【0033】
このような発明には、次のようなものがある。
(a)鉄鉱石粉を還元するための間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器であり、反応器内の粉末粒子の滞留時間内に還元プロセスを十分に完了させるために、反応器壁に沿って反応器温度プロファイルを制御して、反応を開始し維持することが可能である。
(b)このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器は、加熱のための燃料にとらわれず、鉄鉱石が燃焼ガスおよびその中の不純物とも反応する直接燃焼の通常の制限なしに、ガスの間接燃焼によって動力供給され得る。
(c)このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器は、抵抗、誘導、またはマイクロ波加熱を使用して、電力を加熱に使用し得る。このような反応器は、間接加熱式e-DRI反応器またはe-H-DRI反応器と明示的に呼ばれることもある。このような反応器は、再生可能電力の典型的な変動供給に対処するために、迅速な停止および起動を可能にし、鉄鉱石および還元ガス投入の供給速度が変動するグリッドの負荷バランスを可能にするために、可変電力スループットで運転するか、または再生可能発電が低いときに熱もしくは電力を供給するために、バッテリー、加熱流体もしくは固体などのエネルギー貯蔵システムを使用してほぼ一定の電力で運転するかの、いずれかの能力を有することが好ましい。
(d)このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器のモジュールを使用することで、プロセスがスケールアップされる一方で、好ましくは、粉末投入、還元ガス投入、および必要に応じて選択された間接加熱投入を制御することによって、各反応器を制御することができる。
(e)多段式間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用し、必要に応じて粉砕を行い、上述した高品位の鉄に還元する最終段階の前に部分的に処理された鉄粉から脈石を磁気分離することで、鉄含有量の点で粉末のアップグレードを可能にする。
(f)間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器セグメントを使用することで、炭素コーティングの形成による鉄表面の不動態化を可能にし、耐酸化性および自己燃焼性を高め、炭素鋼に炭素を供給することによって、鋼鉄中の炭素の隔離を可能にする。
(g)このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を、鉄粉を溶融する炉と統合し、溶融鉄を低排出石灰/ドライムなどのスラグ化剤と混合して、高品位の銑鉄のインゴットを製造する。
(h)高品位の鉄をブリケットまたはインゴットのいずれかの形で消費する間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を、流束の追加を含むEAFプロセスと統合して、鉄鋼を製造する手段である。
【0034】
間接加熱による反応器の制御。鉄の還元のために、反応器の改善された制御を提供する必要がある。本明細書に記載された発明は、DRIまたはH-DRI反応器プロセスにおいて、粉末およびガスの間接加熱が、燃焼と還元が反応容器内で同時に行われる製鉄および製鋼用のDRIまたはH-DRI処理の従来技術と比較して、DRIまたはH-DRIプロセスの改善された制御を提供することを開示している。
【0035】
水素削減。H-DRIプロセスで使用される水素の量を削減する必要がある。グリーン水素またはブルー水素の製造コストは高いため、好ましくは、水素の使用を最小限に抑えるH-DRIプロセスを開発するべきである。間接加熱を使用することで、水素および酸素の需要が低下することを示す。本開示で開発されたパラダイムは、鉄の還元には水素を使用すべきであり、間接加熱は低コストの燃焼または好ましくは電気加熱のいずれかから提供することができるというものである。このようなコスト削減は、採掘されたままの鉄鉱石をこのような間接加熱式反応器で処理するための粉末サイズに粉砕するのに必要なエネルギーを相殺し得る。
【0036】
鉄鉱石微粉の処理。鉄鉱石微粉を、好ましくは約200μm未満に処理するために使用することができる鉄鉱石還元プロセスが必要とされている。このような微粉は、採掘から製鉄および製鋼に至るまで多くの段階で生産され、シャフト炉または流動床では容易に処理することができない便利な粉末源を提供する。
【0037】
低品位の鉄鉱石の処理。低品位の鉄鉱石を原料として使用し、製鉄に使用するために脈石を除去することによって鉄の品質をアップグレードさせることができる鉄処理を開発する必要がある。本発明の開示には、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用する鉄鉱石の選鉱のための多くのプロセスが含まれている。
【0038】
鋼鉄における炭素隔離。軟炭素鋼を製造するためには、鉄に炭素を加える必要がある。本発明の開示には、鉄の製造中にDRIもしくはH-DRIを浸炭する、または部分的に浸炭するプロセスが含まれ、そのプロセスでは鋼鉄中の炭素の隔離が可能になる。
【0039】
反応器のスケールアップ。大量の鉄鉱石を処理するためには、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器のスケールアップが必要である。
【0040】
要約すると、本発明の開示は、間接加熱および還元ガスのための任意の手段を使用し得る間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の使用に関し、また、反応器制御、高い熱効率、鉄鉱石微粉の処理、低品位の鉄鉱石のアップグレード、浸炭および炭素による鉄の不動態化、ならびにそのような反応器のモジュールを使用してスケールアップする手段の利点も使用し得る。
【0041】
CO 排出削減。本発明の包括的な目的は、鉄鋼製造におけるCOの排出量を削減することであり、H-DRI反応器は、上述の利点を持つ再生可能電力を加熱およびグリーン水素に使用し、ゼロエミッションの石灰およびドライムをスラグ化に使用し、さらに鉄の浸炭を炭素隔離に使用する。
【0042】
落下管などの間接加熱式反応器が材料の実験室評価に使用されてきたことが認められている。しかし、Sceatsらの先行技術は、間接加熱式反応器がさまざまな用途に商業規模で展開可能であることを実証している。
【0043】
本発明は、DRIおよびH-DRI反応器への間接加熱の商業的応用に関し、e-DRIおよびe-H-DRI反応器(本明細書ではe-DRIおよびe-H-DRI反応器と呼ぶ)への電力加熱の使用を含む。
【0044】
第1の態様によれば、本発明は、鉄鉱石を還元するための外部加熱式縦型反応器であって、
(a)炉に垂直に隣接して配置された反応器管であって、鉄鉱石の投入粉末が反応器管の上端に隣接するホッパーに投入され、投入粉末が反応器管を通って下方に落下し、還元ガスの投入が反応器管の底部に注入される、反応器管と、
(b)反応器管の少なくとも1つの壁に垂直に隣接して配置され、少なくとも1つの壁を通じて伝導される熱を供給する外部炉であって、伝導された熱が落下する投入粉末の温度を上昇させる、外部炉と、
(c)反応器管の底部にある投入口であって、還元ガスが反応器管を通って上方に上昇するように、還元ガスが加熱されて投入口に注入され、上昇する還元ガスによって鉄鉱石が還元されるように、落下する投入粉末の温度をさらに上昇させ、
還元ガスが還元反応で鉄鉱石によって消費され、その結果、反応器底部で還元鉄粉生成物が形成されるように、700℃~900℃の反応温度に到達し、外部熱が反応器管の長さに沿って制御され、鉄鉱石を還元する反応温度プロファイルを維持する、投入口と、
(d)反応器の上面に隣接して配置されたガス排出口であって、反応器の上部で排気されるガスが流れを形成し、未反応の投入粉末粒子を巻き込み、未反応粒子がガス流から抽出され、反応器に再注入される、ガス排出口と、
(e)ガス排出口の入口に隣接して配置されたガスフィルターであって、反応器管から抽出されたガスが蒸気および二酸化炭素を含むガス反応生成物をスクラビングし、スクラビングされた抽出ガスが投入ガス流に再注入される、ガスフィルターと、
(f)反応器管の底部に配置された床であって、還元鉄粉生成物が反応器管の底部の床に集められ、その後の処理のために反応器から排気される、床と
を備える、外部加熱式縦型反応器を提供する。
還元ガスは、好ましくは一酸化炭素、水素、メタン、またはそれらの混合物を含む。
外部熱源は、固体もしくはガス状燃料の燃焼から炉内で生成されるか、または抵抗、誘導、もしくはマイクロ波生成を使用して電力から生成され、反応器の長さに沿って分布して、壁、ガス、および粒子排出を考慮した場合、約1メートルの放射浸透深さに対する体積分率が約1×10-4である反応器壁温度プロファイルを提供し、反応器壁が1100~1700℃の温度に加熱される。
鉄鉱石粉は、ヘマタイト、マグネタイト、ゲータイト、シデライト、または他の鉄系鉱物、および鉱物を処理するために鉄の還元を必要とするそれらの混合物であり得る。
反応器管の少なくとも1つの壁は、好ましくは、約1050℃で水素に対して安定な鋼鉄またはセラミックから作られている。
好ましくは、還元ガスは水素であり、熱源が生成物のCO排出原単位を最小限に抑えるための再生可能電力である。
投入粉末は、好ましくは25μmより大きく、かつ約250μm未満の粒子直径の範囲を有する。反応器管の直径は、好ましくは約2m以下であり、反応器管の長さは10~35mであり、流下する鉄鉱石粒子の滞留時間が約10~50秒であり、滞留時間がガス流方向および鉄鉱石粒子のクラスター形成に依存する。
反応器の壁間の熱交換は、好ましくは約100kW/m未満である。反応器管を通って落下する間の投入粉末の平均速度は、好ましくは3.0m/s未満、かつ0.2m/sより大きい。好ましくは、反応器内の投入粉末の流束は、0.5~1.0kg m-2-1の範囲内である。
投入粉末および投入還元ガスは、好ましくは水コンデンサおよび還元鉄生成物の使用に関連する他のプロセスなどの他のプロセスからの廃熱から予熱される。
ガス流から抽出された未反応の投入粉末粒子は、好ましくは反応器管の中心を通過する金属管を通じて水素とともに反応器管に再注入され、それによってこれらの粒子が反応器の底部への移動中に加熱されて還元される。
鉄の還元度は、好ましくは95%以上である。
第2の態様によれば、本発明は、本発明に記載の外部加熱式縦型反応器を使用して投入鉄鉱石粉を還元するプロセスであって、投入鉄鉱石粉が低品位のヘマタイトまたはゲータイトであり、
(a)プロセスは、マグネタイトなどの強磁性材料を生成するために、実質的に還元の程度を制限するように制御され、
(b)粉末冷却プロセスは、フラッシュクエンチプロセスであり、
(c)使用され、
(d)磁選機は、磁性鉄鉱石生成物から脈石を分離するために使用され、
(e)磁性鉄鉱石生成物は、鉄に処理されるために、請求項1~15のいずれか1項に記載の第2の反応器に注入される
プロセスを提供する。
第3の態様によれば、本発明は、本発明に記載の反応器を使用して投入鉄鉱石粉を還元するプロセスであって、
(a)低品位の鉄鉱石粒子を高温の鉄粉に処理し、
(b)高温の鉄粉を加熱槽に注入して溶融鉄を生成し、
(c)スラグが形成されるように、溶融鉄と石灰などのスラグ化剤とを加熱槽内で混合し、スラグが槽の上部に浮遊し、排出され、冷却され、
(d)溶融鉄を加熱槽から取り出し、冷却し、高品位鉄のインゴットを製造するために処理する
プロセスを提供する。
第4の態様によれば、本発明は、不浸透性鉄鉱石を活性化するためのプロセスであって、
(a)鉄鉱石を酸化して多孔質ヘマタイト鉱石を作り、
(b)多孔質ヘマタイト鉱石を本発明に記載の外部加熱式縦型反応器中で還元して鉄鉱石を作る
プロセスを提供する。好ましくは、酸化プロセスは、還元ガスが空気で置換された本発明に記載の外部加熱式縦型反応器を使用する。
第5の態様によれば、本発明は、セメンタイトを製造するプロセスであって、
(a)鉄鉱石を、本発明に記載の外部加熱式縦型反応器を使用して還元し、鉄粒子を作り、
(b)必要に応じて、高品位の鉄粉を製造するために、第4の態様のプロセスを組み込んでもよく、
(c)鉄粉を、COおよびHがガス状供給物として使用される請求項1から15のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器への供給物として使用してもよく、
(d)反応器温度とCOの相対組成割合が、鉄の一部をセメンタイトに変換するように選択される
プロセスを提供する。
第6の態様によれば、本発明は、鉄を選鉱し、不浸透性鉄鉱石を活性化し、または鉄中のセメンタイトの所望の割合を生成するために使用される、本発明に記載の外部加熱式縦型反応器であって、投入鉄鉱石フィードが中央サイロから反応器に分配され、還元ガスが適切なガス源から反応器に分配され、電力またはガスを加熱するために商業プロセスの他の要素から独立して熱交換され得る、約8個のそのような反応器のモジュールを使用することによる、外部加熱式縦型反応器を提供する。
【0045】
本発明のさらなる態様では、鉄鉱石の還元に間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用する手段が開示されている。この態様には、水素を還元に使用し、再生可能な電力を間接加熱に使用する好ましい手段が含まれており、これらを合わせることで、e-H-DRI反応器として、排出原単位をほぼゼロに低減する。
【0046】
本発明の別の態様では、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の構成を使用した低品位の鉄鉱石の選鉱手段が開示されている。
【0047】
本発明のさらなる態様では、炭素鋼の製造および鉄の不動態化のための、鉄中にCOを隔離する手段を提供する。
【0048】
本発明の別の態様では、製鉄および製鋼用のいくつかのこのような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器のモジュールを使用して、第1の態様のプロセスをスケールアップする手段が開示されている。
【0049】
本発明のさらなる形態は、説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明の実施形態は、例示としてのみ、図面と併せて以下の文章による説明から、当業者によりよく理解され、容易に明らかになるであろう。
図1】商業規模で運転される間接加熱式DRI反応器の例示的実施形態の概略図である。この例では、間接加熱は任意の燃料を使用する燃焼炉システムであり、反応器内の還元ガスはCO、H、または合成ガスなどの混合ガスである。
図2】間接熱が電力によって供給され、水素ガスが還元ガスとして使用される間接加熱式DRI反応器(e-H-DRI反応器)の例示的実施形態の概略図である。図2の実施形態は、再生可能電力が使用される場合、ほぼゼロエミッションを達成し得る。
図3】セグメント化された間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用して低品位の鉄鉱石をアップグレードするための概略的なプロセスフローであり、第1セグメントは、脈石の磁気分離を可能にする磁性鉄材料を製造するために使用され、第2セグメントは、鉄への還元を完了するために使用される。
図4】低品位の鉄鉱石をアップグレードするための概略的なプロセスフローであり、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器からの鉄粉をDRI粉末にして溶融鉄槽に注入し、そこにスラグ化剤を注入して脈石を抽出し、その後、銑鉄のインゴットを製造するものである。
図5】セグメント化された間接加熱式DRIまたはHDI反応器を使用して、セメンタイトで鉄鉱石を不動態化し、軟鋼および炭素鋼製造用の炭素を供給するための概略的なプロセスフローであり、最初のセグメントではDRIが製造され、COと水素のガスを注入してセメンタイトFeCの層を堆積させることによって、鉄のコーティングが生成されるものである。このCOは、鋼鉄中の炭素を隔離し、鋼鉄のCOフットプリントを減らすために使用され得る。
図6】間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器のモジュールからの鉄粉を使用してDRI粉末を製造し、このDRI粉末を溶融鉄槽に注入し、石灰などのスラグ化剤を注入して脈石を抽出し、製鋼用の銑鉄のインゴットを製造する、概略的なプロセスフローである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
次に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面および非限定的な実施例を参照して説明する。
間接加熱式DRIおよびH-DRI反応器
【0052】
DRI処理の公知技術、およびH-DRI処理を開発するための試験について記載されている公知技術を使用して鉄鋼を製造する場合、還元ガスは常に2つの役割を果たす。第1の役割は、注入された酸素による燃焼によって熱を供給し、ガスと固体の温度を上昇させて還元反応を開始し、必要に応じて鉄鉱石を水素によって鉄に還元するための追加の熱を供給することであり、第2の役割は、還元のためのガスを供給することである。場合によっては、燃焼/還元プロセスには、燃料として石炭が含まれる。
【0053】
現在のDRIプロセスは、製鉄および製鋼プロセス用に開発されており、商業的に最も発展したものは、ペレットまたは粉鉄鉱石/塊鉄鉱石を原料として使用している。これらのDRI反応器では、ゆっくりと移動するペレットの床が、シャフトキルン内で還元ガスによって還元される。燃焼による熱はペレット表面で吸着され、ペレットを通る熱と還元ガスの拡散が一般的に還元反応の律速プロセスである。このような充填床で均一な還元を達成するための典型的な滞留時間は、数時間のオーダーである。
【0054】
本発明の主要な開示は、反応器内の燃焼からではなく、間接的に加熱された反応器の壁から反応物に加熱を供給し得る。しかし、加熱された反応器表面から移動する充填床への熱の浸透は、高温表面近傍の領域に限定され、その結果生じる温度勾配は非常に高いため、充填床反応器には間接加熱は有用ではない。このようなH-DRI反応器のDRIを作るためには、粒径分布が約250μm未満の粒子として鉄鉱石を注入すべきであり、使用されるべきであり、反応器全体で均一な還元を達成するために、粒子の体積固形分率は約10-4のオーダーである。
【0055】
この低い体積固形分率は、放射浸透深さが理想的には本発明の反応器管半径約1mと同等であり、反応器全体の温度分布が好ましくはほぼ均一になるようなものである。Sceatsらの先行技術において、多くの化学的および物理的反応は、このような小さな粒子でも十分に速いことが判明している。なぜなら、粒子内の熱および質量輸送は十分に速く、ペレットと比較して小さな粒子を使用することによる反応速度の増加は、体積分率の低さを相殺するからである。したがって、生成物の流束は、反応器内の燃焼ガスによるペレットの充填床、または粒子の流動床と同様である。間接加熱式反応器における粉末粒子の滞留時間は、好ましくは約50秒未満である。速い反応時間は、間接加熱式反応器内を流れる小粒子の反応器における鉄鉱石の質量流量が、従来のDRI反応器で使用されるペレットの移動床と同様であるため、反応器断面を通過する生成物の流束も同様である。
【0056】
粒子の落下流の間接加熱は、流動床と比較される。間接加熱の利点は、床が変動によって崩壊する傾向が取り除かれるということであり、特に流動床は粒子の凝集の影響を非常に受けやすい。間接加熱式反応器は、同等の熱伝達に対して流動床よりも高くなり得ることが認められている。間接加熱式反応器が落下する粉末と上昇するガスで運転される場合、反応器から微粒子が水ひされる(elutriated)傾向があるが、これは循環流動床で使用されるように、そのような粒子を反応器に再注入することによって克服される。間接加熱式反応器の利点は、上昇燃焼ガスがないためガス流量が減少し、エルトリエーションの程度が小さくなることである。
【0057】
本明細書に開示された発明の前提は、還元ガスを用いた間接加熱式反応器からの鉄の流束は、反応器内の還元ガスの一部の燃焼により直接加熱が使用される鉄鉱石ペレットの充填床または粒子の流動床の還元と類似しているということである。このアプローチは、間接加熱式反応器で幅広い鉄鉱石を処理することによって検証されている。
【0058】
エネルギー効率に関しては、間接炉から反応器内への熱の放射は、炉外壁から周囲空気への熱損失による放射損失によって相殺される。これは、炉の外面を取り囲むように耐火物を使用することによって最小限に抑えられる。厚い耐火物はエネルギーを蓄えるため、ヒーターの温度変化に対するシステムの応答が遅れる場合がある。用途によっては、高速応答が必要となるため、低熱質量の耐火物が使用されることもある。したがって、間接加熱式DRIおよびH-DRI反応器は、既存のプロセスに匹敵するエネルギー効率を有する。
【0059】
その利点は、これらの反応器が、熱、鉄鉱石粉、または還元ガスの質量流量のいずれかの変動に対応するためのより柔軟な運転を提供し、加熱エネルギーは、任意の燃焼プロセス、および電力、またはそれらの組み合わせによって生成され得るということである。
【0060】
本発明の第1の態様を考慮されたい。商業規模で鉄鉱石を還元するために、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用する手段が開示されている。一酸化炭素または水素などの還元ガス中で還元反応を開始するためには、鉄鉱石を加熱しなければならないというのが、鉄鉱石還元の基本原理である。先行技術では、HとCOの還元ガスに酸素を注入することによって酸化鉄を加熱し、還元ガスの燃焼を誘導して熱を供給している。鉄鉱石の特性によって設定されるある温度で、過剰なCOおよびHを用いた鉄鉱石の還元プロセスが始まる。COによる鉄鉱石の還元は発熱性であり、Hによる還元は吸熱性であるため、ガス組成の制御によってバランスを達成することができる。
一般的に、酸化燃焼プロセスと還元プロセスを同じ反応器内で組み合わせる結果、プロセスの制御に制約が加わる。これは、排気ガス流における微粉の排出を抑えるために鉄鉱石をペレットとして導入するか、または複雑な流動床を導入する必要があることによって、さらに複雑なものとなる。鉄鋼業界は長年にわたり、このプロセスを操業するためのエネルギー効率の高い手段を開発し、BOFなどの大型反応器でプロセスをスケールアップしてきた。
【0061】
鉄鉱石の間接加熱の使用により、熱を供給するために反応器内で燃焼プロセスを実施する必要がなくなる。外部炉での燃焼による熱の移動は、鋼鉄壁またはセラミック壁などの熱伝導性の媒体を介する。反応器に沿った温度分布を制御する能力によってプロセスの制御が向上するのに対し、従来のプロセスでは、反応器に沿ったさまざまな時点で還元ガスまたは酸素を注入する必要がある。
【0062】
間接加熱の結果の1つは、還元プロセスが熱源に依存しないことである。そのため、内燃還元プロセスで使用すると鉄の品質に悪影響を及ぼす物質を含む低品位の燃料を、外部炉での燃焼に使用してもよい。別の結果は、高価な酸素燃焼器ではなく、空気を燃料の燃焼に使用してもよいことである。
【0063】
理想的には、間接加熱式反応器中の粒径は250μm未満であるべきで、これは鉱石を破砕および粉砕することによって達成することができ、250μmという好ましい範囲は、採掘された鉄鉱石の低コストの破砕機および粉砕機を使用して容易に達成することができる。好ましくは、約25μm未満の粒子の割合は少なくあるべきで、メカノフュージョンによる粉砕中に減少し得る。
【0064】
図1には、反応器の上部から注入された鉄鉱石粉と、ガスの向流を提供するために底部で注入された還元ガスによって、スポンジ鉄粉を製造するための間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の概略図が示されている。還元ガスは、CO、もしくはH、またはそれらの混合物であり得る。反応器は主に反応器管101と燃焼炉102からなり、この燃焼炉はガス、またはガス固体燃焼プロセスによって動力供給され得る。好ましくは乾燥され予熱された鉄鉱石精鉱粉末投入103は、ホッパー104に注入されて粉末の床を形成し、この粉末は、ロータリーバルブ105によって反応器の上部で注入管106に注入されて、粉末の下方プルームを形成する。反応器の底部では、還元ガス107の流れが旋回流として約105kPaの圧力で反応器に接線方向に注入される。ガスは好ましくは予熱され得る。上昇するガスおよび落下する粉末は、反応器壁を通じて外部燃焼炉によって加熱される。セグメント化された燃焼器は、この構成において還元ガスが鉄鉱石によって制御された速度で消費されるように、反応器に沿って所望の反応温度を提供することができる。これは重要である。なぜなら、反応は、還元ガス組成および反応器内の任意の点での還元速度論に応じて、吸熱、発熱、またはその両方の混合となり得るからである。還元プロセスを通じて、還元ガスが反応器内を上昇するにつれて、蒸気とCOに変換される。上述したように、反応器に注入される還元ガスは、還元反応が完了するまで進行させることができるように、消費される量を上回っている。反応器の上部では、排気ガス蒸気は反応器の上部から排気され、粉末の微粉を運び、サイクロン108およびフィルター109によってガスから分離されて、排気ガス蒸気110が得られる。排気ガスは落下する粉末によって冷却される。ガスは落下する粉末によって冷却される。巻き込まれた微粉はコーン111内の床に集められ、ロータリーバルブ112を使用して微粉再注入管113を通じて反応器に再注入される。スポンジ鉄として処理された粉末はすべて、反応器の底部に注入されたガスによって冷却され、反応器の底部のコーン114の床に集められ、ロータリーバルブ115を通ってスポンジ鉄116として反応器から放出される。通常、蒸気、CO、および未反応の還元ガスを含む排気ガス蒸気110は冷却され、石油化学産業で使用される既知のプロセスを使用して水とCOが抽出される。過剰の還元ガスは、還元ガス流107の一部として反応器にリサイクルされる。望ましいプロセス温度は、粒子の表面積の焼結または酸化物への水素の拡散を遅らせる鉄の融解のいずれかによって反応速度が阻害されないように、好ましくは低温であるべきである。反応器内の滞留時間は、好ましくは50秒未満であり、典型的には10~50秒の範囲である。粉末およびガスの予熱の程度は、統合システムからのエネルギー損失を最小化することによって決定され、望ましくない反応を抑制するためのプロセス要件によって決定されることもある。
【0065】
反応器の高速処理時間は、反応器内の材料量が数十キログラムのオーダーであるため、鉄供給鉱石および還元ガスの供給速度を非常に迅速に変更して、熱生産から利用可能なエネルギーに対応することができる。
【0066】
したがって、本開示の発明は、粒子の体積分率が十分に小さく、反応器壁からの放射が粉末の塵およびガスを貫通することができる希薄流領域で、反応器を流下する鉄鉱石粒子を直接加熱することである。放射浸透深さは1mのオーダーであり、700~1100℃のオーダーの温度で壁、ガス、および粒子の放射率を考慮した場合、体積固形分率は約10-4である。粉末中の粒子の体積固形分率を低くする必要性は、高さ8~30mの反応器の粒子の滞留時間が、還元ガスの向流中で粒子が流下する場合、10~50秒のオーダーであることを意味する。したがって、主要な考慮事項は鉄の還元反応速度であり、必要な滞留時間内に反応が完了することができるようにすることである。
【0067】
上記で考慮した滞在時間の短さには、ある利点がある。鉄は、対象のプロセス温度で形成されると、粒子中を素早く拡散することができ、鉄粒子の凝集を引き起こす鉄の「毛」を形成することが知られている。これは、流動床反応器における課題を引き起こす既知のリスクである。なぜなら、凝集または「スティッキング現象(sticking phenomena)」によって床が崩壊する可能性があり、そのため反応器が運転を停止し、流動状態を再確立するまでの時間が商業運転には長すぎるからである。本明細書に開示されている発明は、流動床ではないプロセスについて説明している。
【0068】
上記を考慮に入れると、鉄鉱石粒子を約10~50秒内でスポンジ鉄に処理することができるかどうかが適用の基準となる。以下で考慮される理由から、プロセス温度は好ましくは700~900℃の範囲であるべきである。この低温により、流動床などのガスベースのDRI反応器によく見られる「スティッキング現象」を防ぐ。鉄鉱石の還元速度論は、集中的に研究されてきた。ヘマタイトからマグネタイト、およびマグネタイトからウスタイトへの直接還元反応の速度論は、ウスタイトから鉄への遅い還元反応と比較して、非常に速く起こることが知られており、これが速度を決定する工程となる。Liuら(W.Liu、j.Y.Lim、M.A.Sausedo、A.N.Hayhurst、S.A.Scott、およびJ.S.Dennis)による決定的な研究、「Kinetics of the reduction of wustite(uはウムラウトが付く) by hydrogen and carbon dioxide for the chemical looping production of hydrogen」,Chem.Eng.Sci.120,149-166(2014)では、還元速度論を考慮している。この研究では、約5%の水素でも、この温度領域での反応は非常に速いことを示されており、この結果は、反応器の底部で初めに100%の水素、反応器の上部で約60%の水素に外挿した場合、約250μmまでの粒子では5~10秒未満で反応が完了することを保証する。この反応速度は、水素中で鉄鉱石粒子を処理する希薄流反応器(dilute flow reactor)で使用するのに十分な速さである。より詳細な計算では、反応器の高温壁面間の熱交換は約100kW/m未満であり、高吸熱反応に必要な約200kW/mの速度よりも小さい。還元の化学的速度論も、高温の反応器壁からの熱伝達も、本明細書に説明されているプロセスの限界ではないと結論付けることができよう。間接加熱式反応器で行われた実験は、これらの結論を裏付けている。
【0069】
上記で考慮された要件により、反応器は直径が数メートルまでの管に限定される。数秒という非常に速い反応速度のため、管から排出されるスポンジ鉄の流束は、管の断面に関して、ペレットの移動床を使用する典型的なDRI反応器の流束に類似している。なぜなら、このような床での反応速度は数時間のオーダーだからである。当業者であれば、約3ms-1未満での速度の粉末の希薄流は、ペレットの移動床よりも反応器材料の摩耗をはるかに少なくすることが理解できるであろう。間接加熱式DRIまたはH-DRIプラントは、ペレット化プラントの必要性を排除することによって、鉄鋼の製造プロセスを簡素化するという利点を有することは、当業者には明らかであろう。炭素排出量の多い鉄鋼製造プロセスから転換するためには、ペレット化などの製造プロセスを排除することによってコストを削減し得ることが重要である。鉄鉱石精鉱から鉄または鋼鉄を作る能力は、そのような多くの利点を有する。
【0070】
図1の例は、鉄の製造におけるCO排出削減の必要性に明確に対処していない、間接加熱式DRI(H-DRI反応器)である。炉内の排出削減は、注入する還元ガスとして水素を使用するか、またはバイオマスもしくは廃棄物などの低排出燃料を使用することによって達成され得る。しかし、大規模な産業プラントの場合、大量のバイオマスまたは廃棄物を利用することは一般的に不可能である。加熱プロセスを簡素化する代わりのアプローチは、再生可能な電力を加熱に使用することである。これについては後述する。
【0071】
図2には、水素を還元ガスとして使用して、鉄鉱石粉からスポンジ鉄粉を製造するための間接加熱式e-H-DRI反応器の好ましい実施形態の概略図が示されている。還元ガスはHである。反応器は、主に反応器管201と電気炉要素202のアレイからなる。好ましくは乾燥され予熱された鉄鉱石精鉱粉末投入203は、ホッパー204に注入されて粉末の床を形成し、この粉末はロータリーバルブ205によって反応器の上部で注入管206に注入され、粉末の下方プルームを形成する。反応器に沿って、水素の流れ207が約105kPaの圧力で旋回流として反応器に接線方向に注入される。この実施形態では、電気炉は、ガスおよび粒子を偏向させるデフレクタプレート208と組み合わせて、反応器への注入のために水素を予熱することもできるいくつかのそのような注入器要素202を有する。乱流は、ガスと粒子の流れの分裂を助けて粉末の凝集体の形成を抑制し、ガスと粒子の熱交換を促進し、滞留時間を増加させることができる。上昇するガスおよび落下する粉末は、所望の反応温度に達するように、電気炉によって反応器壁を通じて加熱され、還元ガスが還元プロセスで鉄鉱石によって消費され、その結果、反応器底部でスポンジ鉄が形成される。還元プロセスを通じて、水素ガスが反応器内を上昇するにつれて、蒸気に変換される。上述したように、水素ガスは、還元反応が完了するまで進行させることができるように、消費される量を常に上回っている。反応器の上部では、ガス流は反応器の上部から排気され、粉末の微粉を運び、サイクロン209およびフィルター210によってガスから分離されて、排気ガス蒸気211が得られる。微粉はコーン212内の床に集められ、ロータリーバルブ213を使用して微粉再注入管214を通じて反応器に再注入される。スポンジ鉄として処理された粉末はすべて、反応器の底部のコーン215の床に集められ、ロータリーバルブ216を通って反応器から放出され、高温のスポンジ鉄217を放出する。蒸気と水素からなる排気ガス蒸気211が冷却され、冷却によって水が容易に抽出されて液体水が形成され、最小限の蒸気を含む水素ガスが残る。過剰の水素ガスは、還元ガス流207の一部として反応器にリサイクルされる。望ましい反応器温度は、表面積の焼結または鉄の融解のいずれかによって反応速度が阻害されないように、好ましくは低温であるべきである。粉末およびガスの予熱の程度は、統合システムからのエネルギー損失を最小化することによって決定され、望ましくない反応を抑制するためのプロセス要件によって決定されることもある。
【0072】
ガス流の注入および反応器に沿ったプレートデフレクタの使用は、間接加熱式反応器のあらゆる用途に使用され得る。向流のガスおよび粉末流は、相互作用を最小化するように反応器管内で組織化され、その結果、下向きに流れる粒子は壁の近くに蓄積する傾向があり、ガスは管の中央部で高速で上方に移動することがよく知られている。これは、上昇するガスが粉末の速度を低下させて滞留時間を増加させ、ガスと粒子の熱伝達を促進するという利点が失われることを意味する。反応器の上部では、このような分離は排気中の微粉の巻き込みを減少させることができ、有用である。粒子およびガスは管内のプレートによって偏向され得るが、プレートは汚れる可能性がある。内管などの単純なアプローチにより、対称性を崩して環状反応器を作成し、管を使用して図2に記載されたものとは異なる方法でガスを注入することができる。水素の注入は、水素の運動量が小さいため、粒子を大きく偏向させることはない。最も望ましいアプローチは、図2に示すように、水素ジェットで洗浄し、プレートの汚れを防ぐデフレクタプレートを使用することである。パルスガスシステムはフィルターシステムで日常的に使用されており、この目的に使用され得る。このようなデバイスの間隔は、パイプ内の定常流動を再確立する長さよりも短くすべきである。この詳細はプロセスの詳細に依存する。
【0073】
図2の実施形態のように、電動要素の使用により、非常に高速な停止または起動が達成され得る。この反応器は再生可能電力を使用するように設計されており、そのような電力は常時発電されているわけではない。太陽または風のピーク状態では、コストは非常に低くなる。これによって、反応器のスループットを、電力の利用可能性およびコストに合わせて上げたり下げたりすることが可能になり、グリーン水素も同様の反応を有することになる。
【0074】
可変エネルギーを緩和する1つのアプローチは、燃焼もしくは再生可能電力、またはそれぞれの可変ミックスを切り替えることができる反応器設計を使用することである。
【0075】
別のアプローチは、必要な電力を一定期間維持するために、特に太陽光発電所および風力発電所からの再生可能電力のギャップを埋めるために必要な、電力をバッテリーに蓄えるか、または熱を蓄えて熱を電力に変換することである。長期的には、再生可能電力の平均コストは、MWhrベースで化石燃料のコストを下回ると予想される。そのため、電力は24時間年中無休の運転で反応器を加熱し、電気分解によって水素を生成するための使用することができる。その場合、電気分解を使用して燃焼用の水素を作り、燃焼によって熱を発生させるよりも、電気加熱に電力を使用する方が常に有利である。
【0076】
図1および図2において、熱伝達のための加熱壁は、次のいずれかであり得る。
(a)炭素鋼では脆化および破損につながる水素による攻撃につながり得る炭素を無視できる程度に有し、縦型反応器管として自重を支えることができるように約1100℃の温度で強度を示す鋼の金属合金であり、好ましくは、ニッケルとクロムとの合金にシリカを添加したものであってもよく、適切な条件下で鋼はクロムとシリカの酸化物の不動態化層を形成する。反応器内に少量の蒸気が存在することで、これらの酸化物層は水素中で安定であることに留意されたい。さらに、合金は水素の拡散を抑制するオーステナイト相であるべきである。このような金属を熱伝達に使用する場合、電気素子を炉内に配備して鋼鉄に照射し、静止ガス条件は酸化環境を維持するようにする。このようなシステムは、温度を素早く上昇させ得、鋼管は容易に交換することができるように取り付けられ、ベローおよびカウンターウェイトを使用して鋼鉄への応力を軽減し、熱膨張およびクリープに対処し、座屈を抑制するために反応器内のガス圧力を正のゲージ圧力で維持する必要がある。
(b)セラミック材料は、電気加熱要素を封じ込めることができるという付加的な利点がある場合、反応器の設計に使用され得る。このような要素は熱衝撃を受ける場合があるため、反応器の運転はこれを考慮する必要がある。
【0077】
図1は、燃焼による間接加熱を使用する実施形態を説明し、図2は、電力を使用した間接加熱を使用する実施形態を説明する。上述した間接加熱式反応器、特に間接加熱式H-DRI反応器は、マンガン、ニッケル、銅、クロムなどの要素を含み、最初の鉄還元工程が必要な、広範囲の第一鉄または第二鉄含有鉄鉱石の処理に適用され得ることに留意されたい。その後のプロセスには、湿式冶金抽出プロセス、またはAl熱還元などのより深い還元プロセスが含まれ得る。本明細書で説明する間接加熱式反応器の利点は、この最初の還元工程からの生成物が、一般に浮遊および酸塩基抽出プロセスに使用される力であり、多孔質であるため、効率的な抽出が可能であることである。
【0078】
DRIまたはHDRI処理の別の実施形態は、フィルターから反応器への微粉の再注入を修正することである。図1および図2では、これらの粒子を投入粒子流とともに反応器の上部に注入するため、サイロンおよびフィルター内の微粉が過負荷になる可能性がある。あるいは、微粉は、反応器内の中央の熱伝導管に、並行流の構成の還元ガスとともに注入され得る。ガスおよび粒子が反応器を通って流れ落ちると、反応器壁からの放射熱によって加熱される管壁からの放射/対流によって、ガスおよび粒子が加熱される。還元条件が満たされると反応が起こる。
微粉および粒子の質量流量は、ガスおよび微粉が反応器の底部付近に排出されるまでに、これらの粒子が十分に減少するように設定される。微粉は生成物用のコーンに向かって排出され、加熱ガスは注入された還元ガスとともに反応器内へと上方に導かれる。この還元ガスは、外部で余熱されている場合がある。これを達成するための望ましい構成は、反応器の底部におけるサイクロンセパレーターである。したがって、この実施形態を実施することによって、上部のサイクロンおよびフィルターに排出される微粉の負荷が大幅に減少され得る。
CO 排出削減
【0079】
鉄鋼の製造におけるCO排出量を削減するための本明細書に記載された発明のパラダイムは、間接加熱に基づき得る。ほぼゼロに近い排出原単位は、以下を使用することによって達成することができる。
(a)好ましくは約250μm未満の粒径を有する鉄鉱石微粉、および
(b)鉄鉱石を直接鉄に還元するためのグリーン水素またはCCSを用いたブルー水素、ならびに
(c)再生可能な電力は、還元反応を開始させるための反応物および生成物の間接加熱と、鉄鉱石から鉄への吸熱水素還元を駆動するためのエネルギー供給に使用されるべきである。
【0080】
間接加熱は加熱源にとらわれないので、望ましい排出削減の程度を達成するために、図1(燃焼加熱)および図2(電気加熱)の実施形態の間で反応器を構成する多くの方法がある。
鉄鉱石の選鉱および間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の使用
【0081】
低品位の鉄鉱石の選鉱は、低品位の鉄鉱石を小粒子に粉砕し、鉄鉱石と脈石の密度差を使用する公知技術に基づくさまざまなプロセスによって、またはマグネタイトの場合は磁選機を使用することによって、脈石を抽出することによって達成され得る。本セクションでは、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の使用を含む鉄鉱石選鉱プロセスについて説明する。
【0082】
低品位のヘマタイト鉱石の還元焙焼は、焙焼によって生成したマグネタイトから脈石の磁気分離を強化するために使用することができることがよく知られている。なぜなら、マグネタイトが高い磁化率を持つ強磁性材料であるからである。したがって、ヘマタイトをマグネタイトに還元することで、脈石の分離を改善することができる。鉄鉱石の磁気特性は、粒子形態および粒径を通じて熱履歴に依存するため、選鉱の詳細なプロセスフローは大きく異なる。従来の磁気還元焙焼は、数時間の時間スケールで行われる。粒子還元のための粒径が約250μm未満であることを考慮すると、焙焼時間は非常に短く数秒のオーダーであり、温度はマグネタイトからウスタイトへの還元温度よりも低く保たれ、フラッシュ焙焼のために約600℃の温度が選択される。再酸化を抑制するために、好ましくは不活性雰囲気中で、フラッシュクエンチを行うことによって生成物を冷却すると、キュリー温度に達し、温度が下がるにつれて磁化率が上昇する。フラッシュクエンチは、粉末粒子にひずみを引き起こす可能性があり、その結果、より多孔質のマグネタイトのさらなる粉砕工程により、さらなる脈石が放出される可能性がある。
【0083】
図3は、低品位のヘマタイト鉱石301をアップグレードするための概略的なプロセスフローを示している。ヘマタイト鉱石301は、還元剤として水素を使用して高温のマグネタイト304の粉末を製造するために運転される間接加熱式H-DRI反応器の第1のセグメント303に注入するためのサイズに、破砕機/粉砕機302によって粉砕される。これにより、ヘマタイトはマグネタイトに還元され、窒素(図示せず)中でフラッシュ冷却され、第2の粉砕機305に注入されて、脈石およびマグネタイトが放出され、この粉末は磁選機306に注入されて、脈石の蒸気307および高品位の多孔質マグネタイトの流れ308が放出される。多孔質マグネタイト鉱石は、第2のH-DRIセグメント309~310で還元され、高品位の高温の鉄311が製造される。ヘマタイトからマグネタイトへの還元プロセスは、鉄への全体的な還元に比べ非常に速いため、破砕粉砕回路の初期サイズは、鉄の製造に指定された250μm未満よりも大きい場合がある。したがって、図3に記載されたプロセスは、粉砕段階において脈石を放出するために反復され得る。
【0084】
ヘマタイトからマグネタイトへの変換に必要なエネルギー需要は低く、必要に応じて標準的な熱回収システムを使用してエネルギーを回収することができる。反応器は間接加熱式のDRI反応器であり、合成ガスの代わりに水素が使用される場合、CO排出削減の利点を相殺する場合がある。ヘマタイトからマグネタイトへの反応のエネルギー消費は低いので、間接加熱式反応器を使用する主な利点は、マグネタイトの焼結を最小限に抑え、特に鉄と脈石が熱反応して分離不可能な鉄ケイ酸塩を形成するのを抑制するための、プロセスの細かな制御である。フラッシュクエンチは、冷却されたマグネタイト粒子の応力を増加させ、マグネタイトの粉砕中に粒子のデクレピテーションおよび脈石の放出を促進するために望ましい。このプロセスでは、ヘマタイト鉱石中の、または最初の破砕/粉砕工程で放出された脈石粒子材料が分離されることが認識されている。脈石流には、磁気分離が不十分であったマグネタイトが含まれている場合があり、この供給物は、図3に記載されている磁気分離プロセスを複数回通過することで、このような残留鉄を除去するためにさらに処理することができる。図3に記載されたような粉砕および熱処理のプロセスは、鉱石の必要な品位が達成されるまで繰り返すことができる。
【0085】
ヘマタイトは一般に低品位の鉄鉱石であるため、図3に記載された2段式反応器システムで処理する鉄鉱石として選択されたが、ゲータイトおよびシデライトなど他の鉱石を処理することもある。
【0086】
マグネタイト鉱石は自然界に見られ、一般に非多孔質鉱物として発見され、しばしば地質学的なプロセスと関連している。ヘマタイトに関しては、高品位のマグネタイトが枯渇しつつあり、そのような鉱石を選鉱する必要性が高まっている。磁気分離が使用されるが、マグネタイト鉱石は低多孔性を有し、脈石は粒子内に強固に結合しているため、磁気分離は不完全である。上述のDRIおよびH-DRIプロセスに必要な小粒径は、図1および図2の文脈で説明した間接加熱式反応器への注入前に、このような強固に結合した脈石の放出を助ける。
【0087】
マグネタイトの小粒径が、強固に保持された脈石の放出に有利であるにもかかわらず、低多孔性の脈石の還元速度は遅いため、間接加熱式DRIおよびH-DRI反応器の長さは、ヘマタイトおよびゲータイトなどの高多孔性の鉄鉱石よりも大きくなることが観察されている。このような鉱物の多孔性は、間接加熱式反応器でマグネタイトをヘマタイトに酸化するプロセスによって向上させることができ、酸素、または好ましくは空気が、還元ガスに置換することによって上述の間接加熱式反応器に導入される。マグネタイトからヘマタイトへの酸化中に、粒子がデクレピテーションし、膨張し、亀裂が生じ、これにより十分に多孔質な材料が得られる。この材料は、合成ヘマタイトとして、鉄の還元のために上述のDRIまたはHDI反応器に注入され得る。マグネタイトを酸化するために必要なエネルギーは小さく、酸素の需要も少ない。間接加熱式反応器での鉄への酸化は、多孔性および表面積を最大にすることで行われ、元のマグネタイト鉱石よりも迅速に還元される材料が得られる。これは、よりコンパクトな反応器を意味する。
【0088】
マグネタイトを多孔質の合成ヘマタイトに酸化するアプローチにより、これまで強固に保持されていた脈石を放出することができる。合成ヘマタイトは、図3で上述した選鉱プロセスに注入され、説明したように鉱石をさらに選鉱して、より高品位の鉄製品を製造することができる。
【0089】
当業者であれば、上述のプロセスは一般に鉄鉱石の鉱物学に依存する不可逆的なプロセスであることが理解できよう。上述のプロセスは、鉄鉱石の鉱物学、および高品位鉄の需要、特に低排出フットプリントでEAFに直接投入することができるスポンジ鉄の需要によって異なる。鉱石を選鉱してリンを除去する必要がある場合が多く、その場合、上述の選鉱プロセスをリン抽出のための公知技術に統合することができる。
【0090】
当業者であれば、上述の選鉱プロセスの利点は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器がペレットの代わりに粒子を使用するため、粒子の磁気分離に基づく粒子ベースの選鉱プロセスが、このような間接加熱式反応器を使用する鉄の製造に容易に統合されることであると認識することが理解されよう。
【0091】
選鉱の別のアプローチは、DRIまたはH-DRI反応器によって製造された鉄粉にフラッシュスラグアプローチ(flash slagging approach)を使用することである。このアプローチを図4に示す。高温の鉄粒子401は、加熱槽402に注入され、炭酸塩材料ではなく、好ましくは石灰、ドライムまたは両方の混合物からなるスラグ化剤403の注入によって、スラグ化された粒子を溶融する。この材料は、Sceatsらの先行技術に記載されている石灰石、ドロマイト、またはマグネサイトの焼成から作られるのが最も好ましく、これにより、COを純粋なガス流として回収し、隔離する。したがって、ここで説明されているプロセスは低排出プロセスである。Ca/Mg比は、脈石の化学分析から理解される最もよく知られた比を使用して、脈石を抽出するために最適化され得る。スラグは槽の上部を上昇し、流れ404として抽出され、溶融鉄は、これらの流れを抽出し、溶融鉄とスラグ化剤を混合するための公知のスラグ化技術を使用して、流れ405として槽から取り出される。後続のプロセス(図示せず)では、スラグは熱回収プロセスを使用して冷却され、任意の鉄は公知技術を使用して回収することができ、溶融鉄は好ましくは冷却され、インゴットに引き出され、鉄に冷却される。インゴットは銑鉄の一形態である。必要であれば、後の炭素鋼の製造を容易にするために、コークスをプロセスに加えることができる。
【0092】
銑鉄インゴットの最も望ましい用途は、EAFに注入して鉄鋼を製造することである。なぜなら、銑鉄中の残留脈石は十分に低いため、必要に応じてEAFで銑鉄を100%まで処理することができ、それによって鉄スクラップの需要を低下させることができるからである。このプロセスは、バッチプロセスとして実施するのが望ましい場合があると認識されている。DRIおよびH-DRI反応器からの高温の粉末スポンジ鉄を使用する利点は、スラグ化剤が鉄粉と密接に接触しているため、脈石とスラグ化剤の反応成分の拡散長が最小限となることから、「フラッシュスラグ化(flash slagging)」が発生することである。
鉄中の炭素隔離
【0093】
石炭に由来する炭素は、加工および使用に適した延性特性を保ちながら鋼鉄の強度を最大化するために、軟鋼または炭素鋼の製造において特定のレベルで使用される。したがって、軟鋼および炭素鋼は、相当量のセメンタイトFeCによって特徴づけられる。歴史的には、相当量の炭素が銑鉄原料に含まれていた。HBIに炭素を加える別の理由は、表面を不動態化することである。周囲空気または湿気によるセメンタイトの酸化は遅いため、セメンタイトのコーティングは酸化を遅らせることができる。さらに、急速な酸化の結果、高温の鉄は自然発火性であり、DRIの取り扱いには安全上の問題がある。これは、鉄の表面積を減少させて酸化の暴走を抑制するHBIプロセスによって未然に防がれるかもしれないが、そのプロセスでは、圧縮後の露出した表面での酸化は抑制されない。こうした観点からも、鉄の表面をセメンタイトでコーティングすることには利点がある。重要なのは、その炭素が本来排出されるはずのCOに由来するものであれば、製鋼プロセスにおける排出原単位が低減されるということである。このようなCOは、現在の鉄鋼排出量のごく一部であるが、前述のように、H-DRIでも他のCO排出源が存在する。排出の一例は、石灰、ドロマイト、またはマグネサイトのCO排出によるもので、Sceatsらの先行技術を使用して、純粋なCO流として回収することができる。
【0094】
Stephensの先行技術では、CO流が水素とともに注入され、反応機構を通じて鉄をセメンタイトに変換させ得ることを教えている。
+CO⇔HO+CO
3Fe+H+CO→FeC+H
ここで、水性ガスシフト反応は平衡状態にあり、HO分圧は鉄の酸化が抑制されるようなものであると仮定する。この技術は、セメンタイトの形成を鉄鉱石の還元で行おうとした場合、反応速度が遅すぎることを教えている。H、CO、COの流れは、製鋼プロセスのオフガスである場合がある。
【0095】
図5では、鉄粒子の表面をコーティングする手段が検討されている。このプロセスでは、上述の間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器からの高温のDRI501が、この場合は電力503によって加熱された第2の間接加熱式反応器502に注入され、必要な水素/COガス混合物504が底部で注入される。外部加熱は、反応器内で発生する水素/CO/CO/HO分圧に対して、セメンタイトを生成するための高速反応が得られるように制御され、鉄とガスの供給の与えられた入力温度に対してセメンタイト反応メカニズムの条件が満たされるようにする。排気ガス505はコンデンサ506で冷却され、水が流れ507として抽出され、CO、H、およびCOの残留ガス流508がリサイクルされる。生成物509中の鉄からセメンタイトへの反応の程度は、反応器中の粒子の滞留時間と、セメンタイト生成物層の抵抗が反応速度を妨げるため、気孔率および細孔分布などの投入鉄流の特性とに依存する。固形生成物509は、製鉄および製鋼の次のプロセスに必要なように処理される。
【0096】
生成物中の鉄からセメンタイトへの反応の程度は、反応器中の粒子の滞留時間と、セメンタイト生成物層の抵抗が反応速度を妨げるため、気孔率および細孔分布などの投入鉄流の特性とに依存する。理想的には、周囲条件下でのセメンタイト生成物層は、鉄の自然発火燃焼を抑制するのに十分な厚みがあるため、粉末は十分に安定し得、理想的には、鉄鋼プラントへの輸送にHBIプロセスは必要ない。軟鋼または炭素鋼の製造では、製鋼において加える必要がある炭素の量は、好ましくはゼロまで削減され得る。
【0097】
低品位鉄の選鉱と、セメンタイト転換の度合いと、炭素隔離の組み合わせを共に達成することで、鉄鋼製造のプロセスコストを削減し、鉄鋼のカーボンフットプリントを低減する場合がある。
製造のスケールアップ
【0098】
パワーガスプロセスのための間接加熱式反応器の潜在的な欠点は、壁からの放射線がガスおよび粒子の雲を貫通することができることを保証する必要があることである。典型的には、これにより、単管反応器の直径は約2メートルに制限される。反応器の流束は、従来のDRI反応器と同じである場合があるが、鉄鋼プラントのニーズとしては、年間最大500万トンのFeのスループットを達成するために、そのようなプラントに複数の反応器管が必要となる。反応器の設計が単純であるため、反応器管のモジュールが開発され得る。大規模プラントでは、複数のモジュールを使用してもよい。
【0099】
図6に、EAFに結合された間接加熱式H-DRI反応器のモジュールの上部平面図を示す。8管モジュール601は、図1または図2の反応器などの、8つの間接加熱式反応器ユニットを含む。各反応器は、好ましくは独立して運転され得る。各反応器は、高温のスポンジ鉄および石灰粉をEAF603の溶鋼池(pond of molten steel)に供給する。EAFは、電極604を備えた3電極ユニットとして設計されている。EAFは、好ましくは、当業界で開発中の連続EAFであり、そこでは溶鋼605がEAFの底部から引き出され、スラグ606が溶鋼の上部から引き出される。EAFの材料を混合するためにさまざまな手段が使用され、必要に応じて炭素および合金用の他の金属などの追加材料が追加される。鉄とセメンタイトのアップグレードを含む改良が、製鋼用モジュール設計に含まれる場合がある。
【0100】
図6に記載された管のモジュールは、各反応器の排出口にある粉末が集められ、HBIプラントに注入される、低排出原単位の鉄のブリケットの製造にも適用され得る。鉄とセメンタイトのアップグレードを含む改良は、製鉄用モジュール設計に含まれる場合がある。
【0101】
製鉄および製鋼用モジュールでは、各反応器は各管を独立制御して運転可能である場合もあり、または投入粉末を管群に分配して高温の鉄粉流を一緒に集める場合もある。このモジュール運用のオプションは、電力および水素のコストが低いときに、製造のための電力を引き出す能力も可能にする。粉末および還元ガスの反応器への投入流を予熱するために、同様のアプローチが使用され得る。このような予熱は公知の技術であり、予熱の最適な手段は統合設計に依存する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、間接加熱式反応器での鉄の直接還元を含む、鉄鋼の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業界は、世界のCO排出量の約6~8%を占めており、地球温暖化を緩和するために、鉄鋼業界はCO排出量の削減が求められている。世界鉄鋼協会(World Steel Association)の報告によると、2019年、11億トンの鉄鋼製造に対し、CO排出原単位は鉄鋼1トン当たり約1800kgのCOであり、エネルギー原単位は約19.84GJ/トンであった。2010年以降、CO排出原単位は1,800から1,830に増加し、エネルギー原単位は20.13GJ/トンから19.84GJ/トンにわずかに減少した。鉄鋼プロセスは一般に、鉄鉱石からの製鉄工程および製鋼工程を含み、鉄鉱石から直接製鋼する場合は密接に統合されることもある。
【0003】
当業者であれば、鉄鋼に関する先行技術は膨大かつ奥が深く、これらの業界で使用されるプロセスに関連する特許のほとんどは、30年以上前に採用されたプロセスを繰り返し改良することで進歩したものであることを理解できるであろう。今日、現行プロセスのエネルギー原単位は非常に高く、この高い排出原単位は、燃焼、還元、電極、および炭素鋼への組み込みに処理された石炭を使用するこれらのプロセス開発の結果である。先行技術は、特許および刊行物ではなく、長い時間をかけて開発された特定の技術によって定義される。
【0004】
主な3つの製鉄プロセスには、鉄鉱石中の脈石を除去しないスポンジ鉄、スラグ化によって脈石を除去する銑鉄製造、および溶融還元がある。
【0005】
この鉄、すなわち鉄スクラップを使用する場合のある主な3つの製鋼プロセスには、平炉、転炉(Basic Oxygen Furnace:BOF)、および電気炉(Electric Arc Furnace:EAF)がある。製鋼は、鋳造、熱間圧延、および冷間圧延のプロセスに続く。現在、この業界では、BOFおよびEAFプロセスが主流である。気候変動緩和のためには、鉄鋼製造における排出原単位を削減する必要がある。プロセスは、回収されたCOの隔離コストを含め、製鋼プロセス全体の総合的なエネルギー原単位を増加させることを求めるべきではない。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器は、主に低排出鉄鋼製造に関する。
【0006】
排出原単位の削減は、まず、既存のプロセスに低排出鉄を使用して鉄鉱石を置き換えることで実現し得る。平炉および転炉(BOF)は通常、直接還元鉄(Direct Reduced Iron:DRI)スポンジ鉄の30%までを置き換え得る。BOFプロセスでは、鉄鉱石の還元と加熱プロセスの両方に、また炭素鋼の炭素源として、通常冶金グレードの石炭からコークスの形で炭素を使用する。製鋼プロセスで発生するCOは、鉄鉱石を溶融鉄に還元する際に生成される。生成されたCOは、石炭を使用することから高炉ガス(Blast Furnace Gas:BFG)として知られる炉オフガスの一部として存在する。
【0007】
既存のBOFプロセスを低排出鉄鋼の製造に変換する場合、水素直接還元鉄(Hydrogen Direct Reduced Iron:H-DRI)を供給物として使用して、一般的に排出量を約30%削減するのが限界である。石炭を天然ガスに置き換えることで、排出原単位を削減し得る。排出量は、約600kg CO/トンまで削減され得る。これでは、気候変動を緩和し、2050年までにゼロエミッションを達成するという目標に達するには不十分である。
【0008】
EAFプロセスにおけるDRIによる鉄スクラップの置き換えは最大100%まであり得るが、EAFは低品位の鉱石からの多量の脈石に耐えられないため、置き換えは現在、高品位の鉱石から製造されるDRIに限定されている。サブマージアーク炉(Submerged Arc Furnace:SAF)などの新しいEAF設計は、この制限を克服するために開発されている。現在の市場ニーズを満たし、排出量を削減するためには、低品位の鉱石を使用する低炭素DRIプロセスを採用することが望ましい。
【0009】
炭素鋼を製造するには、強度に十分なセメンタイトFeCを作るために炭素を加える必要がある。製鋼からのCO排出量を減らすために、セメンタイト製造からの排出量の削減も必要である。製鋼における別のCO排出源は、石灰石からの石灰、スラグ化のためのCa:Mg比の最適化によく使用されるドロマイトなどの他の炭酸塩の使用による排出である。さらなるCO排出源は、鉄鉱石の輸送によるものである。製鋼のサプライチェーンには、多くのCO排出源が存在する。しかし、CO排出量に最も大きく寄与しているのは、現在のDRIおよびBOFプロセスにおける化石燃料の使用によるものである。
【0010】
時間の経過とともに、低排出鉄鋼を製造するための新たな製鋼プロセスが開発されていくが、これは、気候変動を緩和するために必要なゼロエミッション目標に達するための排出量削減の必要性によって推進される。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器の1つ以上の実施形態は、鉄と鋼の製造の両方のための低排出鉄に関し得る。
【0011】
世界的に高品位の鉄鉱石の供給は減少しているため、排出原単位を削減し、エネルギー効率を維持するための開発は、好ましくは、鉄鋼の製造に低品位の鉱石を使用できるようにするべきである。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器の1つ以上の実施形態は、製鉄と製鋼の両方のための低品位鉱石の選鉱に採用し得る。
【0012】
低排出原単位の鉄鋼を製造するためのロードマップは、主に低排出電力、および鉄の還元プロセスのための水素ガスを使用することに基づいている。
また、ロードマップは、高品位の鉄鉱石の不足が進行しているため、低品位の鉄鉱石が不可避であることを認めている。製鋼プロセスのうち、コークスを使用する主流のBOFプロセスを低排出鉄鋼の製造に適応することができない根本的な理由がある。ロードマップは、製鉄または製鋼のための二酸化炭素回収貯留(Carbon Capture and Storage:CCS)などの「エンド・オブ・パイプ」プロセスは除外している。これらのプロセスは一般に、鋼鉄などの汎用製品では不経済であることが判明しているからである。したがって、低排出の鉄鋼の主要な製造手段は、現在のDRIプロセスを改良し、天然ガスから得られる水素と一酸化炭素の混合ガス(合成ガス)の代わりに低排出水素を使用してスポンジ鉄を製造する、H-DRIと呼ばれるプロセスに関心を向けている。スポンジ鉄によるH-DRIから低排出で鉄鋼を製造するための見込みのある手段は、再生可能電力を使用してEAFプロセスを稼動させることである。低品位の鉄鉱石の選鉱手段は、達成可能であるとしばしば暗示されている。多くのH-DRIプロセスが開発されている。
【0013】
見込みのあるH-DRIのプロセスは、次の2つのアプローチに分類され得る。
(a)ペレットの還元。低排出DRIプロセスのために開発されている第1のアプローチは、MIDREX(低圧)プロセスおよびHYL(高圧)プロセスなどの、成功したDRIプロセスを適応させることである。このペレットDRIプロセスは、鉄鉱石のペレットがゆっくりとスポンジ鉄ペレットに還元されるシャフト炉を使用する。これは、DRIに対して実証済みの技術である。還元剤として合成ガスの代わりに水素を使用して、低排出を達成し得る。このようなプロセスはH-DRIと呼ばれ、スウェーデンのHYBRITプロセス(https://www.hybritdevelopment.se/en/)がその例である。このプロセスでは、高品位の鉱石から高温のH-DRIペレットを製造し、鋼鉄用のEAFプロセスに直接注入する。プロセスの変更は、合成ガスを使用した発熱反応から水素を使用した吸熱反応へのプロセスの変換を考慮に入れなければならない。
(b) 粒子還元。H-DRIプロセスの第2のアプローチは、粒子の粒子フラッシュ還元を使用することで、(a)で使用したペレット化プロセスを排除するという利点を有する。
粒子還元の一例として、フラッシュ製鉄技術(Flash Iron Making Technology:FIT)があり、これは、一般的に30ミクロン未満の予熱された鉄鉱石粉を、水素と酸素の下向きの共流に巻き込む懸濁反応器の使用に基づいて、ベンチスケールで開発されたものである。水素の燃焼により、粉末は十分に高温に、典型的には1300℃超に加熱され、約5秒の滞留時間で還元プロセスが実質的に完了する。フラッシュ反応器を使用したFITプロセスは、「A Novel Flash Ironmaking Process」US DOE,Office of Energy Efficiency and Renewable Energy,2018に報告されている。滞留時間が短いのは、多くの要因のためである。すなわち、固体とガスの共流において、流下するガスの巻き込みにより粒子の流れが速いこと、プロセスの高温が非常に高いガスの速度を生み出すこと、燃焼ガスと還元ガスの流れの混合が、ガス速度をさら増加させること、および、燃焼による蒸気の発生は、その蒸気が逆反応を促進するため、反応を高温に推進することである。高温とガス速度の正味の結果として、高さ約19mの反応器で滞留時間約5秒を達成し得る。FITプロセス温度は鉄の融点未満であるが、粒子の焼結が強く、粒子内の細孔が閉塞し、水素ガスが粒子内の還元反応界面に到達するのを妨げるため、反応時間が増加することが報告されている。
粒子還元の別の例は、HIsmeltプロセスの水素への採用である。HISmeltプロセスは、酸素と合成ガスの燃焼および合成ガスの還元によって生成されたスポンジ鉄の溶滴を溶鋼浴に注入する商業用のEAF製鉄プロセスである。溶融スポンジ鉄の液滴は、高温サイクロンコレクタに注入された鉄鉱石粒子から作られる。サイクロンは、水素と一酸化炭素による還元プロセスを活性化するために、酸素を用いた合成ガスの燃焼から開発され、溶融スポンジ鉄が生成されるのに十分なほど温度が高い。溶融浴内では、スラグ化によって脈石が除去されて銑鉄が作られ、または、鉄鉱石の品位が高い場合は、溶融鉄がEAFに注入されることもある。HIsarnaプロセスでは、合成ガスを水素で置換する。
粒子還元の別の例はFINEXプロセスであり、このプロセスでは、通常2つまたは3つの連続した流動床を使用し、合成ガスと酸素の燃焼によって70μm未満の粒子を加熱し、余剰の合成ガスで還元することによって、鉄を製造する。凝集の影響は、粒径分布を変更することでプロセスを改良することによって軽減され得る。この流動床のアプローチの水素への変換は、HYFOR(150μm未満)、CICORED(100~2000μm)、およびFINMET(50~8000μm)技術などのような、多くのようなプロセスで開発されており、主に図のように異なる粒径によって区別される。250μm未満の範囲の粒子は、一般に超微粉と呼ばれることに留意されたい。
【0014】
要約すると、上記に開示されたH-DRIに関する公知技術のアプローチはすべて、加熱のために燃焼用酸素を使用し、反応器内での還元のために余剰水素を使用する。
【0015】
H-DRIプロセスでは、ブルー水素と呼ばれる低排出水素を化石燃料から製造して、水素と一酸化炭素を製造する場合があり、蒸気を使用して一酸化炭素をCOと水素に変換し、COガスを水素から分離し、COを約100バールまで圧縮または液化し、このCOを輸送して地質貯留層に隔離し、そこで長期間かけて炭酸塩岩石に変化させる。これらのプロセス工程はどれも実績のある技術だが、製造にはコストがかかる。
【0016】
あるいは、グリーン水素と呼ばれる低排出水素は、水の電気分解を使用して、太陽光、風力、水力発電などの再生可能電力から製造され得る。現在のトレンドでは、グリーン水素が最も低コストとなるだろう。なぜなら、よりシンプルなプロセスであり、電解槽のコストが下がり、風力および太陽光による再生可能電力のコストが下がっているからである。グリーン水素はHYBRITプロジェクトで進められている。
【0017】
化石燃料を使用するプロセスの適応の課題は、水素製造の追加コストが、一般的にプロセスの改善によって相殺されないことである。また、多くのこのようなプロセスは、EAFの使用に必要とされるような低品位の鉱石の使用には適応していない。シャフト炉で処理するための鉄鉱石のペレット化のコストは、決して無視できないものであり、例えば、シャフト炉の床でのペレットの破砕を抑制するためのバインダとしてベントナイトまたはバイオマスを使用する必要がある。
【0018】
DRIプロセスでは高温のスポンジ鉄を製造することができ、この高温のスポンジ鉄は、Hot Briquetted Iron(HBI)プロセスを使用してスポンジ鉄ブリケットを製造するために製鉄で使用され得ることに留意されたい。HBI処理を使用して、製鋼用の鉄の輸送中の酸化および自然発火の抑制を含む、ブリケットの酸化を抑制する。HBIスポンジ鉄は、製鉄メーカーが、製鋼プロセスに供給することができる原料として、製鋼メーカーに販売する製品である。したがって、H-DRIを使用して製造されたHBIは、上述したプロセスのいずれであっても、鉄鋼製造の排出原単位を下げるために使用され得る。H-DRIは、HBIプロセスを使用して低排出スポンジ鉄のブリケットに処理され得ると理解されている。
【0019】
H-DRI製品が、BOFもしくはEAFで使用する銑鉄インゴットを製造するためのスラグ化用溶融鉄に直接注入される場合、または高品位の鉱石の場合、鉄鋼を製造するためのEAFに直接注入される場合は、HBIは必要ない。上記で検討したH-DRIのための多くの粒子ベースのアプローチは、高品位の鉄鉱石を使用してH-DRIを製造する場合、EAF製鋼プロセスに直接注入され得る鉄を製造する。
【0020】
EAF技術は、主に鉄スクラップのバッチ再処理のために開発されたものであることに留意されたい。H-DRIペレット、ブリケット、またはインゴットを連続的に鋼鉄に処理することができるように、連続EAFプロセスの開発が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、鉄鉱石の還元に水素を使用すると、還元プロセスが吸熱反応に変わるが、炭素系燃料の場合、一般的に反応はわずかに発熱を伴う。製鉄および製鋼のための上述の水素ベースのプロセスは、その多くの形態において、水素の製造がエネルギー集約的であることを理解する当業者によって評価されている。水素の消費を最小限に抑えるプロセスを開発する必要がある。
【0022】
本開示では、水素-一酸化炭素/合成ガス(DRI反応器)、あるいは水素(H-DRI反応器)中で鉄鉱石を処理するために、間接加熱式反応器を使用してもよいことが示される。H-DRIは、CO排出原単位を下げる。
【0023】
間接加熱式反応器については、以前にSceatsらによって次のように説明されている。
(a) Sceatsらによる、国際公開第2016/077863号「Process and Apparatus for Manufacture of Calcined Compounds for the Production of Calcined Products」およびその中の参考文献、ならびに豪国特許出願公開第2020904492号および豪国特許出願公開第20201902810号「Process and Methods for the Calcination and Minerals」およびその中の参考文献、国際公開第2015/077818号「Process and Apparatus for Manufacture of Portland Cement」および国際公開第2021号の中の参考文献における、炭酸塩材料の焼成のためのCO還元プロセス。
(b) 豪国特許出願公開第2020902858号「A Method for Pyroprocessing of Powers」およびその参考文献における、相変化を示す粉末の処理、ならびに
(c) 豪国特許出願公開第2021902040号「Processes and Method of Calcination of Minerals」における、電池に使用する材料を製造するための材料の処理
ここで、これらの開示は、間接加熱とは、熱が反応容器から外部に発生することを意味し、反応器を取り囲む炉内の燃焼反応から生じるか、または抵抗加熱もしくは誘導加熱された電気素子を使用し得ること、また、反応器への熱伝達は、加熱とプロセスを分離するために、そのような炉から鋼鉄または他の熱伝導性要素を介して行われ得ることを認識している。間接加熱式反応器に関するこの先行技術には、製鉄または製鋼のためのこのような間接加熱式反応器を使用する用途および利点は開示されていない。
この間接加熱の先行技術は、製鉄または製鋼プロセスから脈石を除去するための低排出スラグ化プロセスのために、従来の石灰またはドライム(dolime)の代わりに使用され得る低排出石灰または低排出ドライムの製造を開示している。
【0024】
本開示のいくつかの態様は、DRI鉄、好ましくはH-DRI鉄を製造するための間接加熱式反応器の設計を最適化する1つ以上の手段を提供することに関し得る。
【0025】
本開示の別の態様は、DRIまたはH-DRI反応器に間接熱を供給するために電力を使用する1つ以上の手段を提供することに関し得る。
【0026】
本開示のさらなる態様は、このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用した低品位の鉄鉱石のアップグレードに関し得る。
【0027】
本開示のさらなる態様は、鉄粒子の浸炭プロセスに関し得、このプロセスは、鉄を不動態化し、軟鋼および炭素鋼の製造において鉄中に炭素を供給することを目的としており、これによって、特に炭素源が、そうでなければ排出されるはずのCOである場合、炭素鋼における炭素隔離が可能となる。軟鋼は約0.03~0.15重量%の炭素を含み、炭素鋼は0.3~1.5重量%を含む。一酸化炭素COを使用した鉄の浸炭プロセスは、Stephensによる米国特許第5,869,018号に開示されていることに留意されたい。
【0028】
本開示のさらなる態様は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器をスケールアップして製造能力を高める手段を提供することに関し得る。
【0029】
本開示のさらなる態様は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を製鉄プロセスに統合することに関し得る。
【0030】
本開示のさらなる態様は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を製鋼プロセスに統合することに関し得る。
【0031】
本明細書全体における先行技術の議論は、そのような先行技術が広く知られていること、または当該分野で共通の全般的な知識の一部を形成していることを認めるものと、決してみなされるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本開示は、一般に、還元剤としてそれぞれ一酸化炭素/合成ガスまたは水素を使用した製鉄および製鋼用の間接加熱式直接還元鉄(DRI)および水素直接還元鉄(H-DRI)反応器に関連する。CO排出量を減らすためには、水素の使用が望ましい。
本開示に関するDRI反応器への言及は、文脈が許す限り、H-DRI反応器への言及を含む。
【0033】
第1の態様において、鉄鉱石を還元するためのプロセスが本明細書に開示されている。このプロセスは、鉄鉱石を含む粉末を、上記粉末が反応器管内で下方に落下するように投入することを含むことができる。このプロセスは、反応器管に還元ガスを投入することを含むこともできる。還元ガスは、下方に落下する粉末と還元ガスが希薄流領域を想定するように反応器管に投入することができる。このプロセスは、落下する粉末および還元ガスを、落下する粉末が還元させられる温度まで加熱するために、反応器管を間接的に加熱することをさらに含むことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、0.5~1.0kg・m -2 -1 の範囲の流束として前記粉末を投入することを含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、下方に落下する粉末の平均速度は、3.0m/s未満、かつ0.2m/sより大きくてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、鉄鉱石を含む粉末の粒径分布は、25μm~250μmの範囲内であり得る。これらの実施形態では、流束、平均速度および粒径分布は、下方に落下する粉末および還元ガスが希薄流領域を想定するように選択され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、下方落下粉末の滞留時間は約10~50秒であり得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、プロセスは、得られた還元鉄粉生成物を反応器管の底部から集めることをさらに含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、プロセスは、排気ガスを集めることをさらに含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、排気ガスは、巻き込まれた投入粉末粒子を含み得る。これらの実施形態では、プロセスは、粒子をガス流から抽出することと、粒子を反応器管に再投入することと、をさらに含み得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、プロセスは、排気ガスからガス反応生成物を除去するように、排気ガスをスクラビングすることをさらに含み得る。スクラビングされたガスは、反応器管に再投入され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、反応器管は、反応器管内で700℃~900℃の温度に到達するように加熱され得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、加熱は、反応器管の長さに沿って制御され、反応器管の長さ内で700℃~900℃の温度を維持するようにし得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、還元ガスは、一酸化炭素、水素、メタンまたはそれらの混合物を含み得る。これらの実施形態のいくつかでは、還元ガスは水素を含み得る。還元ガスとして水素を使用することによって、プロセスの二酸化炭素排出量を有利に低減し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、還元ガスは、接線方向の注入などによって、反応器管に接線方向に投入され得る。これらの実施形態のいくつかでは、還元ガスは、反応器管に約105kPaの圧力で接線方向に注入され得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、壁、ガス、および粒子放射排出を考慮した場合、約1メートルの放射浸透深さに対する固体体積分率が約1×10 -4 であり得る。これらの実施形態のいくつかでは、反応器管の壁は1100°C~1700℃の温度に加熱され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、プロセスは、外部燃焼を使用して反応器を間接的に加熱することを含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、プロセスは、電力を使用して反応器を間接的に加熱することを含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、プロセスは、鉄鉱石を含む粉末および/または還元ガスを、水コンデンサおよび鉄鉱石の還元に関連する他のプロセスなど、他のプロセスからの廃熱を使用して予熱することをさらに含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、鉄鉱石を含む粉末の還元度は95%以上であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、鉄鉱石を含む粉末はヘマタイト、マグネタイト、ゲータイト、シデライト、または他の鉄系鉱物、および鉱物を処理するために鉄の還元を必要とするそれらの混合物を含み得る。
【0052】
いくつかの変形例では、集められた還元鉄粉は、高品位の鉄のインゴットを製造するようにさらなる処理に付され得る。
【0053】
これらの変形例のいくつかでは、さらなる処理は、集められた還元鉄粉を加熱槽に注入して溶融鉄を製造することを含み得る。さらなる処理は、スラグが形成されるように、石灰などのスラグ化剤を槽内の溶融鉄と混合することであって、スラグが槽の上部に浮遊し、排出され、冷却される、ことも含み得る。さらなる処理は、加熱槽から溶融鉄を取り出すことをさらに含み得る。さらなる処理は、取り出された溶融鉄を冷却し、処理して、高品位の鉄のインゴットを製造することをさらに含み得る。
【0054】
他の変形例では、鉄鉱石が不浸透性鉄鉱石を含む場合など、プロセスは、鉄鉱石を酸化して多孔質ヘマタイト鉱石を作る初期酸化段階を含み得る。その後、多孔質ヘマタイト鉱石は、反応器管に投入され得る。
【0055】
これらの他の変形例のいくつかでは、酸化段階は、還元ガスを酸素または空気で置換する第1の態様のプロセスを含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、集められた還元鉄粉は、セメンタイトを製造するようにさらなる処理に付され得る。例えば、さらなる処理は、第1の態様のプロセスを含む第2の還元プロセスを含み得、還元ガスが、二酸化炭素、一酸化炭素、および水素を含み、反応器温度と、還元ガス中の二酸化炭素および一酸化炭素の相対割合は、鉄の一部がセメンタイトに変換されるように選択される。
【0057】
これらの実施形態のいくつかでは、第2の還元プロセスの前に、集められた還元鉄粉は、高品位の鉄粉を形成するプロセスに付される。得られた粉末は、還元プロセスの反応器管に投入され得る。
【0058】
鉄鉱石を還元するためのプロセスであって、鉄鉱石が低品位のヘマタイトまたはゲータイトを含む、プロセスもまた、本明細書に開示されている。プロセスは、第1の態様の還元プロセスを含む第1の還元プロセスを含むことができる。第1の還元プロセスでは、プロセスは、マグネタイトなどの強磁性生成物を生成するために、還元度を実質的に制限するように制御され得る。プロセスはまた、得られた強磁性生成物を、フラッシュクエンチプロセスを使用して冷却することを含むこともできる。プロセスは、冷却された強磁性生成物から脈石を磁気的に分離することをさらに含むことができる。プロセスは、冷却された強磁性生成物を、第1の態様の還元プロセスを含む第2の還元プロセスに投入することをさらに含むことができる。
【0059】
第2の態様において、鉄鉱石を還元するための外部加熱式縦型反応器が本明細書に開示されている。反応器は、垂直に配向された反応器管を備えることができる。反応器はまた、反応器管の上端に隣接して配置され、鉄鉱石を含む粉末を、上記粉末が反応器管内で下方に落下するように、投入するように構成されたホッパーを備えることもできる。反応器は、反応器管に還元ガスを投入するために、反応器管の底部から反応器管に沿って配置された還元ガス投入口をさらに備えることができる。反応器は、反応器管の少なくとも1つの壁に垂直に隣接して配置され、少なくとも1つの壁を通して伝導される熱を供給するように構成された加熱要素であって、これにより、反応器管内の粉末およびガスを、粉末およびガスが反応させられる温度まで加熱する、加熱要素をさらに備えることができる。反応器はさらに、反応器管の上端に隣接して配置されたガス排出口をさらに備えることができる。反応器はさらに、反応器管の底部に配置された還元鉄粉出力をさらに備えることができる。
【0060】
第2の態様のいくつかの実施形態では、反応器は、ガスおよび粉末を偏向させるように構成されたデフレクタプレートを反応器管内にさらに備え得る。例えば、デフレクタプレートは、還元ガス投入口に隣接して反応器管内に配置され得る。
【0061】
第2の態様のいくつかの実施形態では、還元ガス投入口は、接線方向の注入などによって、還元ガスを反応器管に接線方向に投入するように配置され得る。これらの実施形態のいくつでは、還元ガス投入口は、約105kPaの圧力で還元ガスを反応器管に接線方向に注入するように構成され得る。
【0062】
第2の態様のいくつかの実施形態では、反応器は、ガス排出口の入口に隣接して配置されたガス分離器をさらに備え得る。ガス分離器は、ガスから巻き込まれた粉末を除去するように構成され得る。
【0063】
第2の態様のこれらの実施形態のいくつかでは、反応器は、ガス分離器に接続された金属管をさらに備え得る。金属管は、反応器管の中心を通り得、分離器から除去された巻き込まれた粉末を反応器管に通すように構成され得る。
【0064】
第2の態様のこれらの実施形態のいくつかでは、反応器は、分離された排気ガスが通過するフィルターをさらに備え得る。フィルターにおいて、上記ガスはガス反応生成物からスクラビングされ得る。
【0065】
第2の態様のいくつかの実施形態では、反応器管の少なくとも1つの壁は、約1050℃で水素に対して安定な鋼またはセラミックを含み得る。
【0066】
第2の態様のいくつかの実施形態では、反応器管の直径は約2m以下であり得る。反応器管の長さは10~35mであり得、これらの実施形態では、下方に落下する粉末の滞留時間は約10~50秒であり得る。特に、滞留時間は、ガス流方向および鉄鉱石粒子のクラスター形成に依存し得る。
【0067】
第2の態様のいくつかの実施形態では、反応器管は、反応器管の壁間の熱交換が約100kW/m未満となるように構成され得る。
【0068】
また、第1の態様の鉄鉱石を還元するためのプロセスにおける、第2の態様の外部加熱式縦型反応器の使用が、本明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、外部加熱式縦型反応器の使用は、約8個のそのような縦型反応器を並列に使用することを含み得、鉄鉱石を含む投入粉末は中央サイロから縦型反応器に分配され、還元ガスはガス源から分配される。
【0069】
本開示の他の態様には、以下が含まれる。
(a) 鉄鉱石粉を還元するための間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器であり、反応器内の粉末粒子の滞留時間内に還元プロセスを十分に完了させるために、反応器壁に沿って反応器温度プロファイルを制御して、反応を開始し維持することが可能である。
(b) このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器は、加熱のための燃料にとらわれず、鉄鉱石が燃焼ガスおよびその中の不純物とも反応する直接燃焼の通常の制限なしに、ガスの間接燃焼によって動力供給され得る。
(c) このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器は、抵抗、誘導、またはマイクロ波加熱を使用して、電力を加熱に使用し得る。このような反応器は、間接加熱式e-DRI反応器またはe-H-DRI反応器と明示的に呼ばれることもある。このような反応器は、再生可能電力の典型的な変動供給に対処するために、迅速な停止および起動を可能にし、鉄鉱石および還元ガス投入の供給速度が変動するグリッドの負荷バランスを可能にするために、可変電力スループットで運転するか、または再生可能発電が低いときに熱もしくは電力を供給するために、バッテリー、加熱流体もしくは固体などのエネルギー貯蔵システムを使用してほぼ一定の電力で運転するかの、いずれかの能力を有することが好ましい。
(d) このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器のモジュールを使用することで、プロセスがスケールアップされる一方で、好ましくは、粉末投入、還元ガス投入、および必要に応じて選択された間接加熱投入を制御することによって、各反応器を制御することができる。
(e) 多段式間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用し、必要に応じて粉砕を行い、上述した高品位の鉄に還元する最終段階の前に部分的に処理された鉄粉から脈石を磁気分離することで、鉄含有量の点で粉末のアップグレードを可能にする。
(f) 間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器セグメントを使用することで、炭素コーティングの形成による鉄表面の不動態化を可能にし、耐酸化性および自己燃焼性を高め、炭素鋼に炭素を供給することによって、鋼鉄中の炭素の隔離を可能にする。
(g) このような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を、鉄粉を溶融する炉と統合し、溶融鉄を低排出石灰/ドライムなどのスラグ化剤と混合して、高品位の銑鉄のインゴットを製造する。
(h) 高品位の鉄をブリケットまたはインゴットのいずれかの形で消費する間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を、流束の追加を含むEAFプロセスと統合して、鉄鋼を製造する手段である。
【0070】
間接加熱による反応器の制御。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器の少なくとも一実施形態が、製鉄および製鋼用のDRIまたはH-DRI処理の既存技術と比較して、DRIまたはH-DRIプロセスの制御が改善され、燃焼および還元が反応器容器内で同時に行われる、DRIまたはH-DRI反応器プロセスにおいて、粉末およびガスの間接加熱を提供できれば有利である。
【0071】
水素削減。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器の少なくとも一実施形態が、H-DRIプロセスで使用される水素の量を削減できれば有利であろう。グリーン水素またはブルー水素の製造コストは高い可能性があるため、水素の使用を最小限に抑えるH-DRIプロセスを提供することが有利となり得る。
有利なことに、間接加熱の使用は、水素および酸素の需要を低下させ得る。本開示で開発されたパラダイムは、鉄の還元には水素を使用することができ、間接加熱は低コストの燃焼または電気加熱のいずれかから提供することができるというものである。このようなコスト削減は、採掘されたままの鉄鉱石をこのような間接加熱式反応器で処理するための粉末サイズに粉砕するのに必要なエネルギーを相殺し得る。
【0072】
鉄鉱石微粉の処理。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器の少なくとも一実施形態が、約200μm未満の粒径の鉄鉱石微粉などの処理に使用することができる鉄鉱石還元プロセスを提供できれば有利であろう。このような微粉は、採掘から製鉄および製鋼に至るまで多くの段階で生産され、シャフト炉または流動床では容易に処理することができない便利な粉末源を提供する。
【0073】
低品位の鉄鉱石の処理。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器の少なくとも一実施形態が、低品位の鉄鉱石を原料として使用し、製鉄に使用するために脈石を除去することによって鉄の品質をアップグレードさせることができる鉄処理のためのプロセスを提供できれば有利であろう。この点に関して、本開示の態様は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用する鉄鉱石の選鉱のための多くのプロセスを提供することに関し得る。
【0074】
鋼鉄における炭素隔離。エンドユーザによっては、軟炭素鋼を製造するために鉄に炭素を加える必要があり得る。この点に関して、本開示の態様は、鉄の製造中にDRIもしくはH-DRIを浸炭する、または部分的に浸炭するプロセスに関し得、そのプロセスでは鋼鉄中の炭素の隔離が可能になる。
【0075】
反応器のスケールアップ。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器の少なくとも一実施形態が、大量の鉄鉱石を処理するためにスケールアップすることができる間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を提供できれば有利であろう。
【0076】
要約すると、本開示の態様は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の使用に関し得る。これらの反応器は、間接加熱および異なる還元ガスに異なる方法を使用してもよく、高い熱効率をもたらす反応器制御を採用してもよく、鉄鉱石微粉の処理、低品位の鉄鉱石のアップグレード、浸炭および炭素による鉄の不動態化に利用されてもよい。本明細書に開示された反応器は、例えばそのような反応器のモジュールを使用することによって、スケールアップにも適し得る。
【0077】
CO 排出削減。本明細書で開示されたプロセスおよび反応器の少なくとも一実施形態が、CO 排出量が削減される鉄または鋼鉄の製造のためのプロセスを提供できれば有利であろう。これらの態様の実施形態では、H-DRI反応器は、再生可能電力を加熱およびグリーン水素に使用し、ゼロエミッションの石灰およびドライムをスラグ化に使用し、さらに鉄の浸炭を炭素隔離に使用し得る。
【0078】
落下管などの間接加熱式反応器が材料の実験室評価に使用されてきたことが認められている。しかし、Sceatsらの先行技術は、間接加熱式反応器がさまざまな用途に商業規模で展開可能であることを実証している。
【0079】
本開示のプロセスおよび反応器の1つ以上の実施形態は、DRIおよびH-DRI反応器への間接加熱の商業的応用に関し、e-DRIおよびe-H-DRI反応器(本明細書ではe-DRIおよびe-H-DRI反応器と呼ぶ)への電力加熱の使用を含む。
【0080】
間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の使用を含むことができる鉄鉱石を還元するためのプロセスが、本明細書に開示されている。これは、還元用の水素、および間接加熱用の再生可能な電力の使用を含むことができ、これらを合わせることで、e-H-DRI反応器として、排出原単位をほぼゼロに低減することができる。
【0081】
間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の構成を使用した低品位の鉄鉱石の選鉱プロセスもまた、本明細書に開示されている。
【0082】
炭素鋼の製造および鉄の不動態化のための、鉄中にCO を隔離するプロセスもまた、本明細書に開示されている。
【0083】
製鉄および製鋼用のいくつかのこのような間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器のモジュールを使用して、鉄鉱石を還元するためのプロセスをスケールアップする方法もまた、本明細書に開示されている。
【0084】
プロセスおよび反応器のさらなる形態は、説明および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
プロセスおよび反応器の実施形態は、例示としてのみ、図面と併せて以下の文章による説明から、当業者によりよく理解され、容易に明らかになるであろう。
図1】商業規模で運転される間接加熱式DRI反応器の例示的実施形態の概略図である。この例では、間接加熱は任意の燃料を使用する燃焼炉システムであり、反応器内の還元ガスはCO、H、または合成ガスなどの混合ガスである。
図2】間接熱が電力によって供給され、水素ガスが還元ガスとして使用される間接加熱式DRI反応器(e-H-DRI反応器)の例示的実施形態の概略図である。図2の実施形態は、再生可能電力が使用される場合、ほぼゼロエミッションを達成し得る。
図3】セグメント化された間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器を使用して低品位の鉄鉱石をアップグレードするための実施形態の概略的なプロセスフローであり、第1セグメントは、脈石の磁気分離を可能にする磁性鉄材料を製造するために使用され、第2セグメントは、鉄への還元を完了するために使用される。
図4】低品位の鉄鉱石をアップグレードするための実施形態の概略的なプロセスフローであり、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器からの鉄粉をDRI粉末にして溶融鉄槽に注入し、そこにスラグ化剤を注入して脈石を抽出し、銑鉄のインゴットを製造するものである。
図5】セグメント化された間接加熱式DRIまたはHDI反応器を使用して、セメンタイトで鉄鉱石を不動態化し、軟鋼および炭素鋼製造用の炭素を供給するための実施形態の概略的なプロセスフローであり、第1のセグメントではDRIが製造され、COと水素のガスを注入してセメンタイトFeCの層を堆積させることによって、鉄のコーティングが生成されるものである。このCOは、鋼鉄中の炭素を隔離し、鋼鉄のCOフットプリントを減らすために使用され得る。
図6】間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器のモジュールからの鉄粉を使用してDRI粉末を製造し、このDRI粉末を溶融鉄槽に注入し、石灰などのスラグ化剤を注入して脈石を抽出し、製鋼用の銑鉄のインゴットを製造する、実施形態の概略的なプロセスフローである。
図7図4~5の選鉱および不動態化プロセスを使用し得るDRIまたはH-DRI反応器の間接加熱モジュールから鉄を製造するために、HBIプロセスを使用してスポンジ鉄ブリケットを製造するために使用される、製鉄のための実施形態の概略プロセスフローである。
図8DRI反応器またはH-DRI反応器を、図4図6の選鉱および不動態化プロセスを使用し得る、製鋼用のEAFプロセスに粉末またはインゴットを注入するためのモジュールに統合するための実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
次に、プロセスおよび反応器の好ましい実施形態を、添付の図面および非限定的な実施例を参照して説明する。
間接加熱式DRIおよびH-DRI反応器
【0087】
DRI処理の公知技術、およびH-DRI処理を開発するための試験について記載されている公知技術を使用して鉄鋼を製造する場合、還元ガスは常に2つの役割を果たす。第1の役割は、注入された酸素による燃焼によって熱を供給し、ガスと固体の温度を上昇させて還元反応を開始し、必要に応じて鉄鉱石を水素によって鉄に還元するための追加の熱を供給することであり、第2の役割は、還元のためのガスを供給することである。場合によっては、燃焼/還元プロセスには、燃料として石炭が含まれる。
【0088】
現在のDRIプロセスは、製鉄および製鋼プロセス用に開発されており、商業的に最も発展したものは、ペレットまたは粉鉄鉱石/塊鉄鉱石を原料として使用している。これらのDRI反応器では、ゆっくりと移動するペレットの床が、シャフトキルン内で還元ガスによって還元される。燃焼による熱はペレット表面で吸着され、ペレットを通る熱と還元ガスの拡散が一般的に還元反応の律速プロセスである。このような充填床で均一な還元を達成するための典型的な滞留時間は、数時間のオーダーである。
【0089】
本明細書に開示された反応器の1つ以上の実施形態では、反応器内の燃焼からではなく、間接的に加熱された反応器の壁から反応物に加熱を供給し得る。
しかし、加熱された反応器表面から移動する充填床への熱の浸透は、高温表面近傍の領域に限定され、その結果生じる温度勾配は非常に高いため、充填床反応器には間接加熱は有用ではない。このようなH-DRI反応器のDRIを作るためには、粒子として鉄鉱石を注入すべきであり、使用されるべきであり、反応器全体で均一な還元を達成するために、粒子の体積固形分率は約10-4のオーダーである。
【0090】
この低い体積固形分率は、放射浸透深さが理想的には反応器管半径約1mと同等であり、反応器全体の温度分布が好ましくはほぼ均一になるようなものである。Sceatsらの先行技術において、多くの化学的および物理的反応は、このような小さな粒子でも十分に速いことが判明している。なぜなら、粒子内の熱および質量輸送は十分に速く、ペレットと比較して小さな粒子を使用することによる反応速度の増加は、体積分率の低さを相殺するからである。したがって、生成物の流束は、反応器内の燃焼ガスによるペレットの充填床、または粒子の流動床と同様である。間接加熱式反応器における粉末粒子の滞留時間は、好ましくは約50秒未満である。速い反応時間は、間接加熱式反応器内を流れる小粒子の反応器における鉄鉱石の質量流量が、従来のDRI反応器で使用されるペレットの移動床と同様であるため、反応器断面を通過する生成物の流束も同様である。
【0091】
粒子の落下流の間接加熱は、流動床と比較される。間接加熱の利点は、床が変動によって崩壊する傾向が取り除かれるということであり、特に流動床は粒子の凝集の影響を非常に受けやすい。間接加熱式反応器は、同等の熱伝達に対して流動床よりも高くなり得ることが認められている。間接加熱式反応器が落下する粉末と上昇するガスで運転される場合、反応器から微粒子が水ひされる(elutriated)傾向があるが、これは循環流動床で使用されるように、そのような粒子を反応器に再注入することによって克服される。間接加熱式反応器の利点は、上昇燃焼ガスがないためガス流量が減少し、エルトリエーションの程度が小さくなることである。
【0092】
本明細書に開示されたプロセスおよび反応器の1つの前提は、還元ガスを用いた間接加熱式反応器からの鉄の流束は、反応器内の還元ガスの一部の燃焼により直接加熱が使用される鉄鉱石ペレットの充填床または粒子の流動床の還元と類似しているということである。このアプローチは、間接加熱式反応器で幅広い鉄鉱石を処理することによって検証されている。
【0093】
エネルギー効率に関しては、間接炉から反応器内への熱の放射は、炉外壁から周囲空気への熱損失による放射損失によって相殺される。これは、炉の外面を取り囲むように耐火物を使用することによって最小限に抑えられる。厚い耐火物はエネルギーを蓄えるため、ヒーターの温度変化に対するシステムの応答が遅れる場合がある。用途によっては、高速応答が必要となるため、低熱質量の耐火物が使用されることもある。したがって、間接加熱式DRIおよびH-DRI反応器は、既存のプロセスに匹敵するエネルギー効率を有する。
【0094】
その利点は、これらの反応器が、熱、鉄鉱石粉、または還元ガスの質量流量のいずれかの変動に対応するためのより柔軟な運転を提供し、加熱エネルギーは、任意の燃焼プロセス、および電力、またはそれらの組み合わせによって生成され得るということである。
【0095】
本開示の1つの態様では、商業規模で鉄鉱石を還元するための、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の使用が開示されている。一酸化炭素または水素などの還元ガス中で還元反応を開始するためには、鉄鉱石を加熱しなければならないというのが、鉄鉱石還元の基本原理である。先行技術では、HとCOの還元ガスに酸素を注入することによって酸化鉄を加熱し、還元ガスの燃焼を誘導して熱を供給している。鉄鉱石の特性によって設定されるある温度で、過剰なCOおよびHを用いた鉄鉱石の還元プロセスが始まる。COによる鉄鉱石の還元は発熱性であり、Hによる還元は吸熱性であるため、ガス組成の制御によってバランスを達成することができる。一般的に、酸化燃焼プロセスと還元プロセスを同じ反応器内で組み合わせる結果、プロセスの制御に制約が加わる。これは、排気ガス流における微粉の排出を抑えるために鉄鉱石をペレットとして導入するか、または複雑な流動床を導入する必要があることによって、さらに複雑なものとなる。鉄鋼業界は長年にわたり、このプロセスを操業するためのエネルギー効率の高い手段を開発し、BOFなどの大型反応器でプロセスをスケールアップしてきた。
【0096】
鉄鉱石の間接加熱の使用により、熱を供給するために反応器内で燃焼プロセスを実施する必要がなくなる。外部炉での燃焼による熱の移動は、鋼鉄壁またはセラミック壁などの熱伝導性の媒体を介する。反応器に沿った温度分布を制御する能力によってプロセスの制御が向上するのに対し、従来のプロセスでは、反応器に沿ったさまざまな時点で還元ガスまたは酸素を注入する必要がある。
【0097】
間接加熱の結果の1つは、還元プロセスが熱源に依存しないことである。そのため、内燃還元プロセスで使用すると鉄の品質に悪影響を及ぼす物質を含む低品位の燃料を、外部炉での燃焼に使用してもよい。別の結果は、高価な酸素燃焼器ではなく、空気を燃料の燃焼に使用してもよいことである。
【0098】
理想的には、間接加熱式反応器中の粒径は250μm未満であるべきで、これは鉱石を破砕および粉砕することによって達成することができ、250μmという好ましい範囲は、採掘された鉄鉱石の低コストの破砕機および粉砕機を使用して容易に達成することができる
【0099】
図1には、反応器の上部から注入された鉄鉱石粉と、ガスの向流を提供するために底部で注入された還元ガスによって、スポンジ鉄粉を製造するための間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の概略図が示されている。還元ガスは、CO、もしくはH、またはそれらの混合物であり得る。反応器は主に反応器管101と燃焼炉102からなり、この燃焼炉はガス、またはガス固体燃焼プロセスによって動力を供給され得る。好ましくは乾燥され予熱された鉄鉱石精鉱粉末投入103は、ホッパー104に注入されて粉末の床を形成し、この粉末は、ロータリーバルブ105によって反応器の上部で注入管106に注入されて、粉末の下方プルームを形成する。反応器の底部では、還元ガス107の流れが旋回流として約105kPaの圧力で反応器に接線方向に注入される。上昇するガスおよび落下する粉末は、反応器壁を通じて外部燃焼炉によって加熱される。セグメント化された燃焼器は、この構成において還元ガスが鉄鉱石によって制御された速度で消費されるように、反応器に沿って所望の反応温度を提供することができる。これは重要である。なぜなら、反応は、還元ガス組成および反応器内の任意の点での還元速度論に応じて、吸熱、発熱、またはその両方の混合となり得るからである。還元プロセスを通じて、還元ガスが反応器内を上昇するにつれて、蒸気とCOに変換される。上述したように、反応器に注入される還元ガスは、還元反応が完了するまで進行させることができるように、消費される量を上回っている。反応器の上部では、排気ガス蒸気は反応器の上部から排気され、粉末の微粉を運び、サイクロン108およびフィルター109によってガスから分離されて、排気ガス蒸気110が得られる。排気ガスは落下する粉末によって冷却される。ガスは落下する粉末によって冷却され、巻き込まれた微粉はコーン111内の床に集められ、ロータリーバルブ112を使用して微粉再注入管113を通じて反応器に再注入される。スポンジ鉄として処理された粉末はすべて、反応器の底部に注入されたガスによって冷却され、反応器の底部のコーン114の床に集められ、ロータリーバルブ115を通ってスポンジ鉄116として反応器から放出される。通常、蒸気、CO、および未反応の還元ガスを含む排気ガス蒸気110は冷却され、石油化学産業で使用される既知のプロセスを使用して水とCOが抽出される。過剰の還元ガスは、還元ガス流107の一部として反応器にリサイクルされる。望ましいプロセス温度は、粒子の表面積の焼結または酸化物への水素の拡散を遅らせる鉄の融解のいずれかによって反応速度が阻害されないように、好ましくは低温であるべきである。反応器内の滞留時間は、好ましくは50秒未満であり、典型的には10~50秒の範囲である
【0100】
反応器の高速処理時間は、反応器内の材料量が数十キログラムのオーダーであるため、鉄供給鉱石および還元ガスの供給速度を非常に迅速に変更して、熱生産から利用可能なエネルギーに対応することができる。
【0101】
したがって、本開示の1つ以上の態様は、粒子の体積分率が十分に小さく、反応器壁からの放射が粉末の塵およびガスを貫通することができる希薄流領域で、反応器を流下する鉄鉱石粒子を直接加熱することを含むことができる。700~1100Cのオーダーの温度で壁、ガス、および粒子排出を考慮した場合、放射線の浸透深さは1メートルのオーダー、体積固形分率は約10-4である。粉末中の粒子の固形分体積分率を低くする必要性は、高さ8~30mの反応器の粒子の滞留時間が、還元ガスの向流中で粒子が流下する場合、10~50秒のオーダーであることを意味する。したがって、主要な考慮事項は鉄の還元反応速度であり、必要な滞留時間内に反応が完了することができるようにすることである。
【0102】
上記で考慮した滞在時間の短さには、ある利点がある。鉄は、対象のプロセス温度で形成されると、粒子中を素早く拡散することができ、鉄粒子の凝集を引き起こす鉄の「毛」を形成することが知られている。これは、流動床反応器における課題を引き起こす既知のリスクである。なぜなら、凝集または「スティッキング現象(sticking phenomena)」によって床が崩壊する可能性があり、そのため反応器が運転を停止し、流動状態を再確立するまでの時間が商業運転には長すぎるからである。本明細書に開示されたプロセスおよび反応器は、流動床ではないプロセスを採用している。
【0103】
上記を考慮に入れると、鉄鉱石粒子を約10~50秒内でスポンジ鉄に処理することができるかどうかが適用の基準となる。以下で考慮される理由から、プロセス温度は好ましくは700~900Cの範囲であるべきである。この低温により、流動床などのガスベースのDRI反応器によく見られる「スティッキング現象」を防ぐ。鉄鉱石の還元速度論は、集中的に研究されてきた。ヘマタイトからマグネタイト、およびマグネタイトからウスタイトへの直接還元反応の速度論は、ウスタイトから鉄への遅い還元反応と比較して、非常に速く起こることが知られており、これが速度を決定する工程となる。Liuら(W.Liu、j.Y.Lim、M.A.Sausedo、A.N.Hayhurst、S.A.Scott、およびJ.S.Dennis)による決定的な研究、「Kinetics of the reduction of wustite(uはウムラウトが付く) by hydrogen and carbon dioxide for the chemical looping production of hydrogen」,Chem.Eng.Sci.120,149-166(2014)では、還元速度論を考慮している。この研究では、約5%の水素でも、この温度領域での反応は非常に速いことを示されており、この結果は、反応器の底部で初めに100%の水素、反応器の上部で約60%の水素に外挿した場合、約250μmまでの粒子では5~10秒未満で反応が完了することを保証する。この反応速度は、水素中で鉄鉱石粒子を処理する希薄流反応器(dilute flow reactor)で使用するのに十分な速さである。より詳細な計算では、反応器の高温壁面間の熱交換は約100kW/m未満であり、高吸熱反応に必要な約200kW/mの速度よりも小さい。還元の化学的速度論も、高温の反応器壁からの熱伝達も、本明細書に説明されているプロセスの限界ではないと結論付けることができよう。間接加熱式反応器で行われた実験は、これらの結論を裏付けている。
【0104】
上記で考慮された要件により、反応器は直径が数メートルまでの管に限定される。数秒という非常に速い反応速度のため、管から排出されるスポンジ鉄の流束は、管の断面に関して、ペレットの移動床を使用する典型的なDRI反応器の流束に類似している。なぜなら、このような床での反応速度は数時間のオーダーだからである。当業者であれば、約3ms-1未満での速度の粉末の希薄流は、ペレットの移動床よりも反応器材料の摩耗をはるかに少なくすることが理解できるであろう。間接加熱式DRIまたはH-DRIプラントは、ペレット化プラントの必要性を排除することによって、鉄鋼の製造プロセスを簡素化するという利点を有することは、当業者には明らかであろう。炭素排出量の多い鉄鋼製造プロセスから転換するためには、ペレット化などの製造プロセスを排除することによってコストを削減し得ることが重要である。鉄鉱石精鉱から鉄または鋼鉄を作る能力は、そのような多くの利点を有する。
【0105】
図1の例は、鉄の製造におけるCO排出削減の必要性に明確に対処していない、間接加熱式DRI(H-DRI反応器)である。炉内の排出削減は、注入する還元ガスとして水素を使用するか、またはバイオマスもしくは廃棄物などの低排出燃料を使用することによって達成され得る。しかし、大規模な産業プラントの場合、大量のバイオマスまたは廃棄物を利用することは一般的に不可能である。加熱プロセスを簡素化する代わりのアプローチは、再生可能な電力を加熱に使用することである。これについては後述する。
【0106】
図2には、水素を還元ガスとして使用して、鉄鉱石粉からスポンジ鉄粉を製造するための間接加熱式e-H-DRI反応器の好ましい実施形態の概略図が示されている。還元ガスはHである。反応器は、主に反応器管101と電気炉要素102のアレイからなる。好ましくは乾燥され予熱された鉄鉱石精鉱粉末投入103は、ホッパー104に注入されて粉末の床を形成し、この粉末は、ロータリーバルブによって反応器の上部で注入管106に注入されて、粉末の下方プルームを形成する。反応器に沿って、水素の流れ107が約105kPaの圧力で旋回流として反応器に接線方向に注入される。この実施形態では、電気炉は、ガスおよび粒子を偏向させるデフレクタプレート108と組み合わせて、反応器への注入のために水素を予熱することもできるいくつかのそのような注入器要素102を有する。乱流は、ガスと粒子の流れの分裂を助けて粉末の凝集体の形成を抑制し、ガスと粒子の熱交換を促進し、滞留時間を増加させることができる。上昇するガスおよび落下する粉末は、所望の反応温度に達するように、電気炉によって反応器壁を通じて加熱され、還元ガスが還元プロセスで鉄鉱石によって消費され、その結果、反応器底部でスポンジ鉄が形成される。還元プロセスを通じて、水素ガスが反応器内を上昇するにつれて、蒸気に変換される。上述したように、水素ガスは、還元反応が完了するまで進行させることができるように、消費される量を常に上回っている。ガス流は反応器の上部から排気され、粉末の微粉を運び、サイクロン109およびフィルター110によってガスから分離されて、排気ガス蒸気111が得られる。微粉はコーン112内の床に集められ、ロータリーバルブ113を使用して微粉再注入管114を通じて反応器に再注入される。スポンジ鉄として処理された粉末はすべて、反応器の底部のコーン115の床に集められ、ロータリーバルブ116を通って反応器から放出され、高温のスポンジ鉄117を放出する。蒸気と水素からなる排気ガス蒸気111が冷却され、冷却によって水が容易に抽出されて液体水が形成され、最小限の蒸気を含む水素ガスが残る。過剰の水素ガスは、還元ガス流107の一部として反応器にリサイクルされる。望ましい反応器温度は、表面積の焼結または鉄の融解のいずれかによって反応速度が阻害されないように、好ましくは低温であるべきである
【0107】
ガス流の注入および反応器に沿ったプレートデフレクタの使用は、間接加熱式反応器のあらゆる用途に使用され得る。向流のガスおよび粉末流は、相互作用を最小化するように反応器管内で組織化され、その結果、下向きに流れる粒子は壁の近くに蓄積する傾向があり、ガスは管の中央部で高速で上方に移動することがよく知られている。これは、上昇するガスが粉末の速度を低下させて滞留時間を増加させ、ガスと粒子の熱伝達を促進するという利点が失われることを意味する。反応器の上部では、このような分離は排気中の微粉の巻き込みを減少させることができ、有用である。粒子およびガスは管内のプレートによって偏向され得るが、プレートは汚れる可能性がある。内管などの単純なアプローチにより、対称性を崩して環状反応器を作成し、管を使用して図2に記載されたものとは異なる方法でガスを注入することができる。水素の注入は、水素の運動量が小さいため、粒子を大きく偏向させることはない。最も望ましいアプローチは、図2に示すように、水素ジェットで洗浄し、プレートの汚れを防ぐデフレクタプレートを使用することである。パルスガスシステムはフィルターシステムで日常的に使用されており、この目的に使用され得る。このようなデバイスの間隔は、パイプ内の定常流動を再確立する長さよりも短くすべきである。この詳細はプロセスの詳細に依存する。
【0108】
図2の実施形態のように、電動要素の使用により、非常に高速な停止または起動が達成され得る。この反応器は再生可能電力を使用するように設計されており、そのような電力は常時発電されているわけではない。太陽または風のピーク状態では、コストは非常に低くなる。これによって、反応器のスループットを、電力の利用可能性およびコストに合わせて上げたり下げたりすることが可能になり、グリーン水素も同様の反応を有することになる。
【0109】
可変エネルギーを緩和する1つのアプローチは、燃焼もしくは再生可能電力、またはそれぞれの可変ミックスを切り替えることができる反応器設計を使用することである。
【0110】
別のアプローチは、必要な電力を一定期間維持するために、特に太陽光発電所および風力発電所からの再生可能電力のギャップを埋めるために必要な、電力をバッテリーに蓄えるか、または熱を蓄えて熱を電力に変換することである。長期的には、再生可能電力の平均コストは、MWhrベースで化石燃料のコストを下回ると予想される。そのため、電力は24時間年中無休の運転で反応器を加熱し、電気分解によって水素を生成するための使用することができる。その場合、電気分解を使用して燃焼用の水素を作り、燃焼によって熱を発生させるよりも、電気加熱に電力を使用する方が常に有利である。
【0111】
図1および図2において、熱伝達のための加熱壁は、次のいずれかであり得る。
(a)炭素鋼では脆化および破損につながる水素による攻撃につながり得る炭素を無視できる程度に有し、縦型反応器管として自重を支えることができるように約1100Cの温度で強度を示す鋼の金属合金であり、好ましくは、ニッケルとクロムとの合金にシリカを添加したものであってもよく、適切な条件下で鋼はクロムとシリカの酸化物の不動態化層を形成する。反応器内に少量の蒸気が存在することで、これらの酸化物層は水素中で安定であることに留意されたい。さらに、合金は水素の拡散を抑制するオーステナイト相であるべきである。このような金属を熱伝達に使用する場合、電気素子を炉内に配備して鋼鉄に照射し、静止ガス条件は酸化環境を維持するようにする。このようなシステムは、温度を素早く上昇させ得、鋼管は容易に交換することができるように取り付けられ、ベローおよびカウンターウェイトを使用して鋼鉄への応力を軽減し、熱膨張およびクリープに対処し、座屈を抑制するために反応器内のガス圧力を正のゲージ圧力で維持する必要がある。
(b) セラミック材料は、電気加熱要素を封じ込めることができるという付加的な利点がある場合、反応器の設計に使用され得る。このような要素は熱衝撃を受ける場合があるため、反応器の運転はこれを考慮する必要がある。
【0112】
図1は、燃焼による間接加熱を使用する実施形態を説明し、図2は、電力を使用した間接加熱を使用する実施形態を説明する。上述した間接加熱式反応器、特に間接加熱式H-DRI反応器は、マンガン、ニッケル、銅、クロムなどの要素を含み、最初の鉄還元工程が必要な、広範囲の第一鉄または第二鉄含有鉄鉱石の処理に適用され得ることに留意されたい。その後のプロセスには、湿式冶金抽出プロセス、またはAl熱還元などのより深い還元プロセスが含まれ得る。本明細書で説明する間接加熱式反応器の利点は、この最初の還元工程からの生成物が、一般に浮遊および酸塩基抽出プロセスに使用される力であり、多孔質であるため、効率的な抽出が可能であることである。
CO 排出削減
【0113】
鉄鋼の製造におけるCO 排出量を削減するための本明細書に記載されたプロセスおよび反応器のパラダイムは、間接加熱に基づき得る。ほぼゼロに近い排出原単位は、以下を使用することによって達成することができる。
(a) 好ましくは約250μm未満の粒径を有する鉄鉱石微粉、および
(b) 鉄鉱石を直接鉄に還元するためのグリーン水素またはCCSを用いたブルー水素、ならびに
(c) 再生可能な電力は、還元反応を開始させるための反応物および生成物の間接加熱と、鉄鉱石から鉄への吸熱水素還元を駆動するためのエネルギー供給に使用されるべきである。
【0114】
間接加熱は加熱源にとらわれないので、望ましい排出削減の程度を達成するために、図1(燃焼加熱)および図2(電気加熱)の実施形態の間で反応器を構成する多くの方法がある。
鉄鉱石の選鉱および間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の使用
【0115】
低品位の鉄鉱石の選鉱は、低品位の鉄鉱石を小粒子に粉砕し、鉄鉱石と脈石の密度差を使用する公知技術に基づくさまざまなプロセスによって、またはマグネタイトの場合は磁選機を使用することによって、脈石を抽出することによって達成され得る。本セクションでは、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器の使用を含む鉄鉱石選鉱プロセスについて説明する。
【0116】
低品位のヘマタイト鉱石の還元焙焼は、焙焼によって生成したマグネタイトから脈石の磁気分離を強化するために使用することができることがよく知られている。なぜなら、マグネタイトが高い磁化率を持つ強磁性材料であるからである。したがって、ヘマタイトをマグネタイトに還元することで、脈石の分離を改善することができる。鉄鉱石の磁気特性は、粒子形態および粒径を通じて熱履歴に依存するため、選鉱の詳細なプロセスフローは大きく異なる。従来の磁気還元焙焼は、数時間の時間スケールで行われる。粒子還元のための粒径が約250μm未満であることを考慮すると、焙焼時間は非常に短く数秒のオーダーであり、温度はマグネタイトからウスタイトへの還元温度よりも低く保たれ、フラッシュ焙焼のために約600 Cの温度が選択される。再酸化を抑制するために、好ましくは不活性雰囲気中で、フラッシュクエンチを行うことによって生成物を冷却すると、キュリー温度に達し、温度が下がるにつれて磁化率が上昇する。フラッシュクエンチは、粉末粒子にひずみを引き起こす可能性があり、その結果、より多孔質のマグネタイトのさらなる粉砕工程により、さらなる脈石が放出される可能性がある。
【0117】
図3は、低品位のヘマタイト鉱石301をアップグレードするための概略的なプロセスフローを示している。ヘマタイト鉱石301は、還元剤として水素を使用して高温のマグネタイト304の粉末を製造するために運転される間接加熱式H-DRI反応器の第1のセグメント303に注入するためのサイズに、破砕機/粉砕機302によって粉砕される。これにより、ヘマタイトはマグネタイトに還元され、窒素(図示せず)中でフラッシュ冷却され、第2の粉砕機305に注入されて、脈石およびマグネタイトが放出され、この粉末は磁選機306に注入されて、脈石の蒸気307および高品位の多孔質マグネタイトの流れ308が放出される。多孔質マグネタイト鉱石は、第2のH-DRIセグメント309~310で還元され、高品位の高温の鉄311が製造される。ヘマタイトからマグネタイトへの還元プロセスは、鉄への全体的な還元に比べ非常に速いため、破砕粉砕回路の初期サイズは、鉄の製造に指定された250μm未満よりも大きい場合がある。したがって、図3に記載されたプロセスは、粉砕段階において脈石を放出するために反復され得る。
【0118】
ヘマタイトからマグネタイトへの変換に必要なエネルギー需要は低く、必要に応じて標準的な熱回収システムを使用してエネルギーを回収することができる。反応器は間接加熱式のDRI反応器であり、合成ガスの代わりに水素が使用される場合、CO 排出削減の利点を相殺する場合がある。ヘマタイトからマグネタイトへの反応のエネルギー消費は低いので、間接加熱式反応器を使用する主な利点は、マグネタイトの焼結を最小限に抑え、特に鉄と脈石が熱反応して分離不可能な鉄ケイ酸塩を形成するのを抑制するための、プロセスの細かな制御である。フラッシュクエンチは、冷却されたマグネタイト粒子の応力を増加させ、マグネタイトの粉砕中に粒子のデクレピテーションおよび脈石の放出を促進するために望ましい。このプロセスでは、ヘマタイト鉱石中の、または最初の破砕/粉砕工程で放出された脈石粒子材料が分離されることが認識されている。脈石流には、磁気分離が不十分であったマグネタイトが含まれている場合があり、この供給物は、図3に記載されている磁気分離プロセスを複数回通過することで、このような残留鉄を除去するためにさらに処理することができる。図3に記載されたような粉砕および熱処理のプロセスは、鉱石の必要な品位が達成されるまで繰り返すことができる。
【0119】
ヘマタイトは一般に低品位の鉄鉱石であるため、図3に記載された2段式反応器システムで処理する鉄鉱石として選択されたが、ゲータイトおよびシデライトなど他の鉱石を処理することもある。
【0120】
マグネタイト鉱石は自然界に見られ、一般に非多孔質鉱物として発見され、しばしば地質学的なプロセスと関連している。ヘマタイトに関しては、高品位のマグネタイトが枯渇しつつあり、そのような鉱石を選鉱する必要性が高まっている。磁気分離が使用されるが、マグネタイト鉱石は低多孔性を有し、脈石は粒子内に強固に結合しているため、磁気分離は不完全である。上述のDRIおよびH-DRIプロセスに必要な小粒径は、図1および図2の文脈で説明した間接加熱式反応器への注入前に、このような強固に結合した脈石の放出を助ける。
【0121】
マグネタイトの小粒径が、強固に保持された脈石の放出に有利であるにもかかわらず、低多孔性の脈石の還元速度は遅いため、間接加熱式DRIおよびH-DRI反応器の長さは、ヘマタイトおよびゲータイトなどの高多孔性の鉄鉱石よりも大きくなることが観察されている。このような鉱物の多孔性は、間接加熱式反応器でマグネタイトをヘマタイトに酸化するプロセスによって向上させることができ、酸素、または好ましくは空気が、還元ガスに置換することによって上述の間接加熱式反応器に導入される。マグネタイトからヘマタイトへの酸化中に、粒子がデクレピテーションし、膨張し、亀裂が生じ、これにより十分に多孔質な材料が得られる。この材料は、合成ヘマタイトとして、鉄の還元のために上述のDRIまたはHDI反応器に注入され得る。マグネタイトを酸化するために必要なエネルギーは小さく、酸素の需要も少ない。間接加熱式反応器での鉄への酸化は、多孔性および表面積を最大にすることで行われ、元のマグネタイト鉱石よりも迅速に還元される材料が得られる。これは、よりコンパクトな反応器を意味する。
【0122】
マグネタイトを多孔質の合成ヘマタイトに酸化するアプローチにより、これまで強固に保持されていた脈石を放出することができる。合成ヘマタイトは、図3で上述した選鉱プロセスに注入され、説明したように鉱石をさらに選鉱して、より高品位の鉄製品を製造することができる。
【0123】
当業者であれば、上述のプロセスは一般に鉄鉱石の鉱物学に依存する不可逆的なプロセスであることが理解できよう。上述のプロセスは、鉄鉱石の鉱物学、および高品位鉄の需要、特に低排出フットプリントでEAFに直接投入することができるスポンジ鉄の需要によって異なる。鉱石を選鉱してリンを除去する必要がある場合が多く、その場合、上述の選鉱プロセスをリン抽出のための公知技術に統合することができる。
【0124】
当業者であれば、上述の選鉱プロセスの利点は、間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器がペレットの代わりに粒子を使用するため、粒子の磁気分離に基づく粒子ベースの選鉱プロセスが、このような間接加熱式反応器を使用する鉄の製造に容易に統合されることであると認識することが理解されよう。
【0125】
選鉱の別のアプローチは、DRIまたはH-DRI反応器によって製造された鉄粉にフラッシュスラグアプローチ(flash slagging approach)を使用することである。このアプローチを図4に示す。高温の鉄粒子401は、加熱槽402に注入され、炭酸塩材料ではなく、好ましくは石灰、ドライムまたは両方の混合物からなるスラグ化剤403の注入によって、スラグ化された粒子を溶融する。この材料は、Sceatsらの先行技術に記載されている石灰石、ドロマイト、またはマグネサイトの焼成から作られるのが最も好ましく、これにより、CO を純粋なガス流として回収し、隔離する。したがって、ここで説明されているプロセスは低排出プロセスである。Ca/Mg比は、脈石の化学分析から理解される最もよく知られた比を使用して、脈石を抽出するために最適化され得る。スラグは槽の上部を上昇し、流れ404として抽出され、溶融鉄は、これらの流れを抽出し、溶融鉄とスラグ化剤を混合するための公知のスラグ化技術を使用して、流れ405として槽から取り出される。
後続のプロセス(図示せず)では、スラグは熱回収プロセスを使用して冷却され、任意の鉄は公知技術を使用して回収することができ、溶融鉄は好ましくは冷却され、インゴットに引き出され、鉄に冷却される。インゴットは銑鉄の一形態である。必要であれば、後の炭素鋼の製造を容易にするために、コークスをプロセスに加えることができる。
【0126】
銑鉄インゴットの最も望ましい用途は、EAFに注入して鉄鋼を製造することである。なぜなら、銑鉄中の残留脈石は十分に低いため、必要に応じてEAFで銑鉄を100%まで処理することができ、それによって鉄スクラップの需要を低下させることができるからである。このプロセスは、バッチプロセスとして実施するのが望ましい場合があると認識されている。DRIおよびH-DRI反応器からの高温の粉末スポンジ鉄を使用する利点は、
スラグ化剤が鉄粉と密接に接触しているため、脈石とスラグ化剤の反応成分の拡散長が最小限となることから、「フラッシュスラグ化(flash slagging)」が発生することである。
鉄中の炭素隔離
【0127】
石炭に由来する炭素は、加工および使用に適した延性特性を保ちながら鋼鉄の強度を最大化するために、軟鋼または炭素鋼の製造において特定のレベルで使用される。したがって、軟鋼および炭素鋼は、相当量のセメンタイトFe Cによって特徴づけられる。歴史的には、相当量の炭素が銑鉄原料に含まれていた。HBIに炭素を加える別の理由は、表面を不動態化することである。周囲空気または湿気によるセメンタイトの酸化は遅いため、セメンタイトのコーティングは酸化を遅らせることができる。さらに、急速な酸化の結果、高温の鉄は自然発火性であり、DRIの取り扱いには安全上の問題がある。これは、鉄の表面積を減少させて酸化の暴走を抑制するHBIプロセスによって未然に防がれるかもしれないが、そのプロセスでは、圧縮後の露出した表面での酸化は抑制されない。こうした観点からも、鉄の表面をセメンタイトでコーティングすることには利点がある。重要なのは、その炭素が本来排出されるはずのCO に由来するものであれば、製鋼プロセスにおける排出原単位が低減されるということである。このようなCO は、現在の鉄鋼排出量のごく一部であるが、前述のように、H-DRIでも他のCO 排出源が存在する。排出の一例は、石灰、ドロマイト、またはマグネサイトのCO 排出によるもので、Sceatsらの先行技術を使用して、純粋なCO 流として回収することができる。
【0128】
Stephensの先行技術では、CO 流が水素とともに注入され、反応機構を通じて鉄をセメンタイトに変換させ得ることを教えている。
+CO ⇔H O+CO
3Fe+H +CO→Fe C+H
ここで、水性ガスシフト反応は平衡状態にあり、H O分圧は鉄の酸化が抑制されるようなものであると仮定する。この技術は、セメンタイトの形成を鉄鉱石の還元で行おうとした場合、反応速度が遅すぎることを教えている。H 、CO、CO の流れは、製鋼プロセスのオフガスである場合がある。
【0129】
図5では、鉄粒子の表面をコーティングする手段が検討されている。このプロセスでは、上述の間接加熱式DRIまたはH-DRI反応器からの高温のDRI501が、この場合は電力503によって加熱された第2の間接加熱式反応器502に注入され、必要な水素/CO ガス混合物504が底部で注入される。外部加熱は、反応器内で発生する水素/CO /CO/H O分圧に対して、セメンタイトを生成するための高速反応が得られるように制御され、鉄とガスの供給の与えられた入力温度に対してセメンタイト反応メカニズムの条件が満たされるようにする。排気ガス505はコンデンサ506で冷却され、水が流れ507として抽出され、CO、H 、およびCO の残留ガス流508がリサイクルされる。生成物509中の鉄からセメンタイトへの反応の程度は、反応器中の粒子の滞留時間と、セメンタイト生成物層の抵抗が反応速度を妨げるため、気孔率および細孔分布などの投入鉄流の特性とに依存する。固形生成物509は、製鉄および製鋼の次のプロセスに必要なように処理される。
【0130】
生成物中の鉄からセメンタイトへの反応の程度は、反応器中の粒子の滞留時間と、セメンタイト生成物層の抵抗が反応速度を妨げるため、気孔率および細孔分布などの投入鉄流の特性とに依存する。理想的には、周囲条件下でのセメンタイト生成物層は、鉄の自然発火燃焼を抑制するのに十分な厚みがあるため、粉末は十分に安定し得、理想的には、鉄鋼プラントへの輸送にHBIプロセスは必要ない。軟鋼または炭素鋼の製造では、製鋼において加える必要がある炭素の量は、好ましくはゼロまで削減され得る。
【0131】
低品位鉄の選鉱と、セメンタイト転換の度合いと、炭素隔離の組み合わせを共に達成することで、鉄鋼製造のプロセスコストを削減し、鉄鋼のカーボンフットプリントを低減する場合がある。
製造のスケールアップ
【0132】
パワーガスプロセスのための間接加熱式反応器の潜在的な欠点は、壁からの放射線がガスおよび粒子の雲を貫通することができることを保証する必要があることである。典型的には、これにより、単管反応器の直径は約2メートルに制限される。反応器の流束は、従来のDRI反応器と同じである場合があるが、鉄鋼プラントのニーズとしては、年間最大500万トンのFeのスループットを達成するために、そのようなプラントには複数の反応器管が必要となる。反応器の設計が単純であるため、反応器管のモジュールが開発され得る。大規模プラントでは、複数のモジュールを使用してもよい。
【0133】
図6に、EAFに結合された間接加熱式H-DRI反応器のモジュールの上部平面図を示す。8管モジュール601は、図1または図2の反応器などの、8つの間接加熱式反応器ユニットを含む。各反応器は、好ましくは独立して運転され得る。各反応器は、高温のスポンジ鉄および石灰粉をEAF603の溶鋼池(pond of molten steel)に供給する。EAFは、電極604を備えた3電極ユニットとして設計されている。EAFは、好ましくは、当業界で開発中の連続EAFであり、そこでは溶鋼605がEAFの底部から引き出され、スラグ606が溶鋼の上部から引き出される。EAFの材料を混合するためにさまざまな手段が使用され、必要に応じて炭素および合金用の他の金属などの追加材料が追加される。鉄とセメンタイトのアップグレードを含む改良が、製鋼用モジュール設計に含まれる場合がある。
【0134】
図6に記載された管のモジュールは、各反応器の排出口にある粉末が集められ、HBIプラントに注入される、低排出原単位の鉄のブリケットの製造にも適用され得る。鉄とセメンタイトのアップグレードを含む改良は、製鉄用モジュール設計に含まれる場合がある。
【0135】
製鉄および製鋼用モジュールでは、各反応器は各管を独立制御して運転可能である場合もあり、または投入粉末を管群に分配して高温の鉄粉流を一緒に集める場合もある。このモジュール運用のオプションは、電力および水素のコストが低いときに、製造のための電力を引き出す能力も可能にする。粉末および還元ガスの反応器への投入流を予熱するために、同様のアプローチが使用され得る。
このような予熱は公知の技術であり、予熱の最適な手段は統合設計に依存する。
【0136】
後に続く特許請求の範囲、ならびにプロセスおよび反応器の先行する説明において、明示的な言語または必要な含意により文脈上別段必要とされる場合を除き、「含む(comprise)」という語、または「含む(comprises)」もしくは「含まれる(comprising)」などの変形は、包括的な意味で、すなわち、記載された特徴の存在を特定するために使用されるが、プロセスおよび反応器のさまざまな実施形態におけるさらなる特徴の存在または付加を排除するために使用されるものではない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石を還元するためのプロセスであって、
鉄鉱石を含む粉末を、前記粉末が反応器管内で下方に落下するように投入することと、
前記反応器管に還元ガスを投入することによって、前記下方に落下する粉末と前記還元ガスが希薄流領域を想定することと、
前記落下する粉末および前記還元ガスを、前記落下する粉末が還元させられる温度まで加熱するために、前記反応器管を間接的に加熱することと
を含む、プロセス。
【請求項2】
0.5~1.0kg・m -2 -1 の範囲の流束で前記粉末を投入することを含む、請求項1に記載のプロセス
【請求項3】
前記下方に落下する粉末の平均速度が、3.0m/s未満、かつ0.2m/sより大きい、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
鉄鉱石を含む前記粉末の粒径分布が、25μm~250μmの範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記下方落下粉末の滞留時間が約10~50秒である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
得られた還元鉄粉生成物を前記反応器管の底部から集めることをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
排気ガスを集めることをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記排気ガスが、巻き込まれた投入粉末粒子を含み、前記プロセスが、前記粒子をガス流から抽出することと、前記粒子を前記反応器管に再投入することと、をさらに含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記排気ガスからガス反応生成物を除去するように、前記排気ガスをスクラビングすることと、前記スクラビングされたガスを前記反応器管に再投入することと、をさらに含む、請求項7または8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記反応器管が、前記反応器管内で700℃~900℃の温度に到達するように加熱される、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記加熱が、前記反応器管の長さに沿って制御され、前記反応器管の前記長さ内で700℃~900℃の前記温度を維持するようにする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記還元ガスが、一酸化炭素、水素、メタンまたはそれらの混合物を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記還元ガスが水素を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記還元ガスが、接線方向の注入などによって、前記反応器管に接線方向に投入される、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記還元ガスが、前記反応器管に約105kPaの圧力で接線方向に注入される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
壁、ガス、および粒子放射排出を考慮した場合、約1メートルの放射浸透深さに対する固体体積分率が約1x10 -4 であり、前記反応器管の壁が1100°C~1700℃の温度に加熱される、請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記プロセスが、外部燃焼を使用して前記反応器を間接的に加熱することを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスが、電力を使用して前記反応器を間接的に加熱することを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
鉄鉱石を含む前記粉末および/または前記還元ガスを、水コンデンサおよび鉄鉱石の前記還元に関連する他のプロセスなど、他のプロセスからの廃熱を使用して予熱することをさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
鉄鉱石を含む前記粉末の還元度が95%以上である、請求項1~19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
鉄鉱石を含む前記粉末が、ヘマタイト、マグネタイト、ゲータイト、シデライト、または他の鉄系鉱物、および前記鉱物を処理するために鉄の還元を必要とするそれらの混合物を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記集められた還元鉄粉が、高品位の鉄のインゴットを製造するようにさらなる処理に付される、請求項6、または請求項6に従属する場合には請求項7~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記さらなる処理が、
前記集められた還元鉄粉を加熱槽に注入して溶融鉄を製造することと、
スラグが形成されるように、石灰などのスラグ化剤を前記槽内の前記溶融鉄と混合することであって、前記スラグが前記槽の上部に浮遊し、排出され、冷却される、ことと、
前記加熱槽から前記溶融鉄を取り出すことと、
前記取り出された溶融鉄を冷却し、処理して、高品位の鉄のインゴットを製造することと
を含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記鉄鉱石が不浸透性鉄鉱石を含み、前記プロセスが、前記鉄鉱石を酸化して多孔質ヘマタイト鉱石を作る初期酸化段階を含み、前記多孔質ヘマタイト鉱石が前記反応器管に投入される、請求項1~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記酸化段階が、前記還元ガスを酸素または空気で置換する請求項1~19のいずれか1項に記載のプロセスを含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記集められた還元鉄粉が、セメンタイトを製造するようにさらなる処理に付される、請求項6、または請求項6に従属する場合には請求項7~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記さらなる処理が、請求項1~19のいずれか1項に記載の前記プロセスを含む第2の還元プロセスを含み、
前記還元ガスが、二酸化炭素、一酸化炭素、および水素を含み、
前記反応器温度と、前記還元ガス中の二酸化炭素および一酸化炭素の相対割合は、前記鉄の一部がセメンタイトに変換されるように選択される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第2の還元プロセスの前に、前記集められた還元鉄粉が、高品位の鉄粉を形成するように請求項23に記載の前記プロセスに付され、前記得られた粉末が前記還元プロセスの前記反応器管に投入される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
鉄鉱石を還元するためのプロセスであって、前記鉄鉱石が低品位のヘマタイトまたはゲータイトを含み、前記プロセスが、
請求項1~19のいずれか1項に記載の前記還元プロセスを含む第1の還元プロセスであって、前記プロセスが、マグネタイトなどの強磁性生成物を生成するために、還元度を実質的に制限するように制御される、第1の還元プロセスと、
前記得られた強磁性生成物を、フラッシュクエンチプロセスを使用して冷却することと、
前記冷却された強磁性生成物から脈石を磁気的に分離することと、
前記冷却された強磁性生成物を、請求項1~20のいずれか1項に記載の前記還元プロセスを含む第2の還元プロセスに投入することと
を含む、プロセス。
【請求項30】
鉄鉱石を還元するための外部加熱式縦型反応器であって、
垂直に配向された反応器管と、
前記反応器管の上端に隣接して配置され、鉄鉱石を含む粉末を、前記粉末が前記反応器管内で下方に落下するように、投入するように構成されたホッパーと、
前記反応器管に還元ガスを投入するために、前記反応器管の底部から前記反応器管に沿って配置された還元ガス投入口と、
前記反応器管の少なくとも1つの壁に垂直に隣接して配置され、前記少なくとも1つの壁を通して伝導される熱を供給するように構成された加熱要素であって、これにより、前記反応器管内の前記粉末および前記ガスを、前記粉末および前記ガスが反応させられる温度まで加熱する、加熱要素と、
前記反応器管の前記上端に隣接して配置されたガス排出口と、
前記反応器管の底部に配置された還元鉄粉出力と
を備える、反応器。
【請求項31】
ガスおよび粉末を偏向させるように構成されたデフレクタプレートを前記反応器管内にさらに備える、請求項30に記載の反応器。
【請求項32】
前記デフレクタプレートが、前記還元ガス投入口に隣接して前記反応器管内に配置される、請求項31に記載の反応器。
【請求項33】
前記還元ガス投入口が、接線方向の注入などによって、前記還元ガスを前記反応器管に接線方向に投入するように配置される、請求項30~32のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項34】
前記還元ガス投入口が、約105kPaの圧力で前記還元ガスを前記反応器管に接線方向に注入するように構成されている、請求項33に記載の反応器。
【請求項35】
前記ガス排出口の入口に隣接して配置され、前記ガスから巻き込まれた粉末を除去するように構成されたガス分離器をさらに備える、請求項30~34のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項36】
前記ガス分離器に接続された金属管をさらに備え、前記金属管は、前記反応器管の中心を通り、前記分離器から前記除去された巻き込まれた粉末を前記反応器管に通すように構成されている、請求項35に記載の反応器。
【請求項37】
前記分離された排気ガスが通過するフィルターをさらに備え、このフィルターにおいて前記ガスがガス反応生成物からスクラビングされる、請求項35または36に記載の反応器。
【請求項38】
前記反応器管の少なくとも1つの壁が、約1050℃で水素に対して安定な鋼またはセラミックを含む、請求項30~37のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項39】
前記反応器管の直径が約2m以下であり、前記反応器管の長さが10~35mであり、前記下方に落下する粉末の滞留時間が約10~50秒であり、前記滞留時間がガス流方向および前記鉄鉱石粒子のクラスター形成に依存する、請求項30~38のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項40】
前記反応器管が、前記反応器管の壁間の熱交換が約100kW/m未満となるように構成されている、請求項30~39のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項41】
請求項1~28のいずれか1項に記載の鉄鉱石を還元するためのプロセスにおける、請求項30~40のいずれか1項に記載の外部加熱式縦型反応器の使用。
【請求項42】
約8個のそのような縦型反応器が並列に使用され、鉄鉱石を含む前記投入粉末が中央サイロから前記縦型反応器に分配され、前記還元ガスがガス源から分配される、請求項41に記載の外部加熱式縦型反応器の使用。
【国際調査報告】