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特表2024-541896タイヤ用RFIDデバイスに用いるゴムコーティング
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  • 特表-タイヤ用RFIDデバイスに用いるゴムコーティング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】タイヤ用RFIDデバイスに用いるゴムコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 107/00 20060101AFI20241106BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241106BHJP
   C09D 109/00 20060101ALI20241106BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241106BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
C09D107/00
C09D7/63
C09D109/00
B60C19/00 B
C09D7/61
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524011
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022079372
(87)【国際公開番号】W WO2023067137
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21204210.5
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(72)【発明者】
【氏名】マリア セシリア パランビ
(72)【発明者】
【氏名】グイード リッピエロ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ロンバルディ
【テーマコード(参考)】
3D131
4J038
【Fターム(参考)】
3D131AA13
3D131BC31
3D131LA20
4J038CA001
4J038CA041
4J038DA042
4J038HA446
4J038JC36
4J038KA03
4J038KA08
4J038KA10
4J038PB09
(57)【要約】
ゴムコーティングであって、タイヤ用RFIDデバイス用であり、以下の構成を含むことを特徴とする:(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー;(b)式1による少なくとも1種の化学物質。
【化1】


ここで、前記化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの組み合わせにおいて、1~10個の炭素原子からなる脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
ゴムコーティングで囲まれたRFIDデバイスを含むタイヤ用RFIDモジュール、該RFIDモジュールを含むタイヤまたはリトレッドタイヤ、およびRFIDデバイスを囲むためのゴムコーティングの使用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用のRFIDデバイスのためのゴムコーティングであって、以下の構成、
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化1】


を含み、
ここで、前記化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、前記2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖状もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよいものである
ことを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項2】
請求項1に記載のゴムコーティングにおいて、前記化学物質が、フェノールホルムアルデヒド樹脂から選択され、好ましくはノボラック樹脂または2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、またはこれらの2つの組み合わせから選択されることを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴムコーティングにおいて、0.1~10phr、好ましくは0.1~7phrの前記化学物質を含むことを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のゴムコーティングにおいて、さらに少なくとも1種の充填剤を含むことを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項5】
請求項4に記載のゴムコーティングにおいて、前記充填剤がシリカであることを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゴムコーティングであって、前記ジエン系エラストマーが、天然ゴムもしくはポリイソプレンまたはこれらの2つの混合物であることを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項7】
タイヤ用RFIDモジュールであって、少なくともアンテナを含むRFIDデバイスを備え、前記アンテナは外面を有し、前記アンテナの外面の少なくとも一部分が請求項1~6のいずれか一項に記載のゴムコーティングで囲まれている、RFIDモジュール。
【請求項8】
請求項7に記載のRFIDモジュールにおいて、前記アンテナはコアを含み、前記コアは少なくとも部分的に真鍮層で被覆されていることを特徴とする、RFIDモジュール。
【請求項9】
請求項7~9のいずれか一項に記載のRFIDモジュールにおいて、RFIDデバイスの大部分がゴムコーティングで囲まれており、好ましくはRFIDデバイスの全体がゴムコーティングで囲まれていることを特徴とする、RFIDモジュール。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載のRFIDモジュールを備えることを特徴とする、タイヤまたはリトレッドタイヤ。
【請求項11】
タイヤ用RFIDデバイスを囲むための請求項1~6のいずれか一項に記載のゴムコーティングの使用であって、前記RFIDデバイスは少なくともアンテナを含み、前記アンテナは外面を有し、少なくとも前記アンテナの外面がゴムコーティングで囲まれるようにする、使用。
【請求項12】
請求項12に記載のコーティングゴムの使用において、前記アンテナはコアを含み、前記コアは少なくとも部分的に真鍮層で被覆されるようにすることを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用RFID(無線識別:radiofrequency identification)デバイス用のゴムコーティング、該ゴムコーティングで囲まれたRFIDデバイスを含むタイヤ用RFID(無線識別)モジュール、該RFIDデバイスを含むタイヤならびにリトレッドタイヤ、および該RFIDデバイスを囲むゴムコーティングの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ業界では、製造者が、タイヤの製造から使用そして廃棄に至るまで、自動の、および明白なタイヤの識別を可能にする方法のニーズを表明している。
【0003】
例えば、タイヤの生産について具体的に述べると、自動の、および明白なタイヤの識別によって、製造者は生産プロセスと物流業務の最適化、自動制御システムの使用のサポート、タイヤの効率的な位置確認/追跡の実施、ひいてはスマートタイヤ工場を構築することが可能となる。
【0004】
現在では、この課題を達成するためのいくつかの技術的な解決策が知られており、例えば、タイヤ用のRFIDデバイスの使用によるRFID(無線識別)技術などが存在する。
【0005】
該デバイスは、実質的に、RFIDチップおよびチップに接続したアンテナを含む。いくつかの構成では、第1のアンテナに電磁気的に結合した第2のアンテナをさらに備えることもある。このデバイスは、RFIDチップおよびアンテナを完全に囲むため一方が他方に隣接して配置される2つの外側ゴムコーティング層の間でサンドイッチ状にして内包するように配設される。RFIDデバイスとその周囲のゴムコーティングからなる集合体は、RFID(無線識別)モジュールと定義する。
【0006】
RFIDデバイスを実現するために通常使用するRFIDチップに接続するアンテナは、一般的に、真鍮層で被覆したスチール製のコアを含む多層構造で構成される。
【0007】
真鍮が銅と亜鉛の合金であることはよく知られているが、2つの材料の比率を変えることで、機械的、電気的、化学的特性を変えることができる。また、真鍮はヒ素、鉛、リン、アルミニウム、マンガン、およびケイ素など、さまざまな他の元素を僅かな割合で含むことができる。
【0008】
真鍮は腐食現象に敏感な素材で、酸素条件下では表面に緑青といわれる生成物を形成し、また、最悪の場合、合金から亜鉛が溶出する脱亜鉛という破壊的な腐食プロセスに発展することがある。
【0009】
このような腐食現象は、アンテナの伝送性能の低下、発信または受信した周波数信号の読み取り精度の低下、さらにはRFIDデバイスの機能停止を引き起こす可能性がある。また、真鍮層で覆われたアンテナが腐食現象を起こすと、RFIDデバイスとそれを囲んでいるゴムコーティングとの密着性にも影響を及ぼす。
【0010】
RFIDデバイスがそれを囲んでいるゴムコーティングに正しく固定されていないと、RFIDモジュールが分裂することがある。この分裂はデバイスの正常な動作を妨げ、モジュールをタイヤに組み入れる際に、隣接するゴム層に損傷を与えるおそれがある。取り囲んでいるゴムコーティングとの接着がうまくいかず、RFIDデバイスがモジュールから外れてしまうと、該デバイスを組み込んだタイヤの隣接するゴム部分に切れ目が入り、タイヤの耐久性が損なわれるおそれがある。
【0011】
上記の問題を克服するために、この分野の専門家に知られている1つの解決策は、真鍮層を備えるアンテナを接着強化剤で前処理することである。上記の方法は、アンテナの前処理によって製造工程が増えるため、RFIDの製造工程が複雑になり、生産性が低下するという欠点がある。さらに、接着強化剤は化学薬品をベースにしているため、健康面および安全面で問題がある。
【0012】
したがって、タイヤ用RFIDモジュールの構造的安定性と耐久性を確保すると同時にアンテナの読み取り性能を維持し、長期にわたってデバイスが正常に機能すると保証できることを可能にする解決策が必要とされている。
【0013】
本発明の発明者らは、前述の必要性を満たし、RFID製造プロセスの生産性を損なうことがない、および作業者の安全を確保することができる解決策を考案した。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、当該技術の現状を参照して、上述した欠点の少なくとも複数を克服することである。
【0015】
第1の態様において、本発明は、以下を含むことを特徴とするRFID(無線識別)デバイス用のゴムコーティングに関する。
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化1】

ここで、該化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
【0016】
第2の態様において、本発明はタイヤ用のRFIDモジュールに関する。該RFIDモジュールは少なくともRFIDデバイスを含み、該デバイスは少なくともアンテナを含み、該アンテナは外面を有し、少なくとも該アンテナの外面はゴムコーティングに囲まれており、該コーティングゴムが以下からなることを特徴とする。
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化2】
ここで、該化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
【0017】
第3の態様において、本発明は、本発明の第2の態様によるRFIDモジュールを含むタイヤまたはリトレッドタイヤに関する。
【0018】
第4の態様において、本発明は、タイヤ用RFIDデバイスを囲むために用いる本発明の第1の態様におけるゴムコーティングの使用に関連し、該RFIDデバイスは少なくともアンテナを含み、該アンテナは外面を有し、少なくとも該アンテナの外面はゴムコーティングで囲まれており、該ゴムコーティングは以下を含むことを特徴とする。
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化3】

ここで、該化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
【0019】
本発明の好ましい特徴は、特許請求の範囲の従属請求項の実体である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】RFIDモジュール(E)の概略図であり、RFIDモジュールは、RFIDチップ(A)からなるRFIDデバイス(C)、およびそれに電気的に結合した1つのアンテナで構成され、アンテナは2つのアンテナブランチ(B1およびB2)からなり、2層のコーティング化合物(D)に囲まれている。
図2】RFIDモジュール(E)の第2の概略図であり、RFIDモジュールは、RFIDチップ(A)と、それに電気的に結合した1つのアンテナからなるRFIDデバイス(C)で構成され、アンテナは、2つのアンテナブランチ(B1およびB2)で構成され、2層のコーティング化合物(D)に囲まれている。<ゴムコーティング>
【0021】
第1の態様によれば、本発明は、RFIDデバイス用のゴムコーティングを対象とする。
【0022】
本発明書に開示されるゴムコーティングは、(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー、(b)式1による少なくとも1種の化学物質、を含む。
【化4】

ここで、該化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
【0023】
好ましい実施形態では、RFIDデバイスに適用するゴムコーティングが開示される。ゴムコーティングは、以下を含む。
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化5】

ここで、該化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
【0024】
本明細書ならびに以下において、用語「適用する(applied to)」は、ゴムコーティングおよびRFIDデバイスに関連して使用する場合、ゴムコーティングがRFIDデバイスを効果的に囲んでいる、すなわち、RFIDデバイスの全体または少なくとも一部の周囲に配置されていることを意味し、好ましくは、RFIDデバイスに直接触れていることを意味する。
【0025】
本明細書ならびに以下において、用語「囲む(surrounding)」および「~によって囲まれる(surrounded by)」は、ゴムコーティングと、アンテナまたはRFIDデバイスのような他の要素との関連で使用する場合、ゴムコーティングが、その要素(例えば、アンテナまたはRFIDデバイス)の全体または少なくとも一部の周囲に配置されていることを意味し、好ましくは、該要素と直接接触して配置されていることを意味し、これはRFIDモジュールを組み立てるために使用する方法から独立している。
【0026】
本明細書で提供されるゴムコーティングおよびその構成成分に関するすべての記載は、逆の記載がない限り、本発明の各実施形態に等しく適用されると解すべきである。
【0027】
上記構造によるジエン系エラストマーおよび化学物質について、以下にさらに詳しく説明する。
【0028】
本明細書ならびに以下において、用語「ジエン系エラストマー」は、ジエンモノマー含有ポリマー、コポリマー、またはそれらの組み合わせを意味する。ゴムコーティングに使用するのに適したジエン系エラストマーの非限定的な例としては、スチレン-ブタジエンゴム(SBRまたはスチレン-ブタジエン共重合体とも称される)、ポリブタジエン(BRとも称される)、天然ゴム(NRとも称される)のうちの少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDMゴムとも称される)、ブチルゴム(IIRとも称される)、ポリイソブチレンゴム、エポキシ化天然ゴム(ENRとも称される)、ネオプレン、合成ポリイソプレン(IRとも称される)、ポリウレタン(PUとも称される)などが挙げられる。
【0029】
コーティングゴムのジエン系エラストマーは、官能基化ジエン系エラストマーを含んでもよい。
【0030】
用語「官能基化ジエン系エラストマー(functionalized diene-based elastomer)」は、鎖の一方もしくは両方の末端、またはエラストマーの主鎖に官能基を有するエラストマー、およびそれらの任意の組み合わせを含むと解すべきである。例えば、シリカ反応性官能基含有エラストマーは、官能基を鎖の片末端もしくは両末端、または主鎖中、またはその両方に有することができる。
【0031】
ゴムコーティングに使用するのに適したシリカ反応性官能基で、ジエン系エラストマーの官能基化に利用できることが知られているものの非限定的な例としては、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基、酸素または硫黄含有官能基、および金属含有官能基が挙げられる。
【0032】
好ましくは、ジエン系エラストマーは、天然ゴム、ポリイソプレン、またはこれら2つの混合物から選択される。
【0033】
用語「天然ゴム(natural rubber)」は、天然に存在する1,4-シスポリイソプレンポリマーを意味し、パラゴムノキおよびパラゴムノキ以外の供給源(例えば、グアユールの低木およびTKSなどのタンポポ)から採取することができる。
【0034】
用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除外すると解されるべきである。ポリイソプレンは、イソプレンモノマーのホモポリマーを意味すると解釈でき、天然に存在するゴムを含むと解するべきではない。しかしながら、ポリイソプレンという用語は、イソプレンモノマーの天然供給源から製造したポリイソプレンを含むと解釈するべきである。
【0035】
第1~第4の態様におけるコーティングゴムは、式1による、少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造体をその構造中に含む化学物質をさらに含む。
【化6】

ここで、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
【0036】
オルト位、パラ位またはメタ位は、1位を占めると仮定した-OHに対するベンゼンの炭素原子上の置換基の位置を指すと解される。位置は時計回りの方向に番号づける。したがって、置換基は、-OHに隣接する位置(2位または6位)を占め、この場合オルト置換基と称され、置換基は、-OHに対して3位または5位を占め、この場合メタ置換基と称され、置換基は、-OHと反対側の位置(4位)を占め、この場合パラ置換基と称される。
【0037】
好ましい実施形態によれば、この化学物質は、2’2-メチレンジフェノールを、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせで、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位と重合することで誘導される。
【0038】
本明細書において、用語「重合する(polymerizing)」は、重合という化学的プロセスを実行する作用を意味し、これは、モノマーと呼ばれる比較的小さな分子が特定の条件下で一緒に反応し、ポリマーと呼ばれる非常に大きな鎖状または網目状の分子を生成するあらゆるプロセスを指す。
【0039】
好ましい実施形態によれば、化学物質は、アルキルフェノールホルムアルデヒド(APF)樹脂である。
【0040】
用語「フェノールホルムアルデヒド樹脂」および「アルキルフェノールホルムアルデヒド」は、フェノールまたは置換フェノール(アルキルフェノール)とホルムアルデヒドとの反応によって得られる合成高分子構造を意味する。
【0041】
一般に、フェノールホルムアルデヒド樹脂またはアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂は、酸触媒または塩基触媒下のいずれでもよい段階成長重合反応によって形成するものであって、フェノールまたはアルキルフェノールがオルト位および/またはパラ位でホルムアルデヒドと反応してフェノール環のオルト位またはパラ位のいずれかでメチレン架橋を形成し、重合が進行するにつれてさらなる反応に関与するメチレンビスフェノール二量体を生成する。当業者であれば既知のとおり、パラ位はオルト位の約2倍反応性が高いが、オルト位が2倍多い(フェノール分子1個につき2個)ので、構造中のオルト-オルト、パラ-パラ、オルト-パラ架橋の割合はほぼ等しくなり、反応が進むにつれて構造のランダムな配向と分岐が生じ、その結果、大きさと構造の異なるポリマーの極めて複雑な混合物が生成する。
【0042】
さらに好ましい実施形態によれば、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂は、ノボラック樹脂である。
【0043】
ノボラック樹脂は、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂で、ホルムアルデヒドおよびフェノールを、フェノールに対するホルムアルデヒドのモル比を1未満で反応させることで得られる。この重合は酸触媒を使用して完了する。該ノボラック樹脂は、よく、クレゾール(メチルフェノール)モノマーの重合で製造する。このモノマー比と酸性の反応環境により、構造のランダムな配向と分岐を制御することができ、ほとんどが分岐のない、長い直鎖構造を生成することができる。重合は、好ましくは、フェノール基のオルト位で起こり、式3に記載されているように、フェノール基がほぼ同じ方向に配向した構造になる。
【化7】
【0044】
さらに好ましい実施形態によれば、化学物質は、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)である。
【0045】
メチレンジフェノール二量体は、式2に記載されているように、パラ位がメチル基で置換され、オルト位がt-ブチル基で置換されている。
【化8】
【0046】
さらに好ましい実施形態によれば、化学物質は、APF樹脂、好ましくは、ノボラック樹脂および2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)との混合物であってもよい。
【0047】
好ましい実施形態によれば、化学物質は、0.1~10phr、好ましくは、0.1~7phrの範囲の量でゴムコーティング中に導入することができる。特に好ましい実施形態では、2,2’-メチレンジ(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)を、0.1~3phrの範囲の量で添加することができる。さらに好ましい実施形態において、APF樹脂、好ましくはノボラック樹脂、は、0.1~7phrの範囲の量で導入してもよい。
【0048】
ゴムコーティングは、少なくとも1種の充填剤をさらに含んでもよい。少なくとも1種の充填剤は、カーボンブラック、シリカ、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、リサイクルカーボンブラック、クレー、二酸化チタン、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、デンプン、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、炭化ケイ素、またはそれらの混合物から選択することができる。特定の実施形態において、ゴムコーティングは、1~120phrの充填剤を含み、好ましくは10~110、より好ましくは20~100、より好ましくは30~90、さらに好ましくは、40~80phrの充填剤を含む。特定の実施形態において、ゴムコーティングは、いかなる充填剤も含まない(すなわち、0phrを含む)ことができる。好ましい実施形態において、充填剤はシリカを含む。より好ましい実施形態においては、充填剤の唯一の組成物がシリカである。
【0049】
本明細書に開示されるゴム組成物においてシリカが使用される場合、特定の実施形態においては、少なくとも1種のシランカップリング剤が使用され得る。特定の実施形態に従って、シランカップリング剤は、シリカの0.01~40質量%、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは、0.01~25質量%の量で存在する。一般に、従来型のシランカップリング剤であればどのようなものでも使用でき、例えばシリコン基および部位を有し、ゴム、特に加硫可能なゴムと反応し得るもの使用することができる。シランカップリング剤は、シリカとゴムをつなぐ架橋として作用する。好適なシランカップリング剤としては、メルカプト、ブロック化メルカプト、ポリスルフィド、アミノ、ビニル、エポキシ、およびそれらの組み合わせなどの基を含むものが挙げられる。好ましくは、本要旨発明で使用するシランは、ビス-(3-トリエトキシ-シリルプロピル)ジスルフィド(Si75)である。
【0050】
特定の実施形態によれば、ゴムコーティングは、1つまたは複数の追加の成分をさらに含むことができる。該追加の成分の非限定的な例を以下に説明する。
【0051】
ゴムコーティングは1種または複数のプロセスオイルをさらに含んでいてもよく、該プロセスオイルは硬化前のゴムコーティングのムーニー粘度を低下させることで加工性を改善するのに有用である。そのような実施形態において、1つまたは複数のプロセスオイルはゴムコーティングにフリーオイルとして、または少なくとも1つのジエン系エラストマーの一部として(すなわち、エクステンダーオイルとして)、または両方の組み合わせとして添加することができる。ゴムコーティングに有用なオイルの非限定的な例としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などが挙げられる。好ましくは、本要旨発明で使用するオイルはRAEオイルである。コーティングゴムは、0(任意)~40phr(プロセス、エクステンダー、またはその両方)のオイルを含むことができ、好ましくは1~35phr、より好ましくは5~25phr、さらに好ましくは5~20phrの、上記のような1種または複数のオイルからなることができる。
【0052】
ゴムコーティングは、他の従来のゴム添加剤をさらに含んでもよい。これらには、例えば、酸化防止剤やオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤が含まれる。
【0053】
劣化防止剤は、酸化攻撃からゴムを保護するために添加する成分である。劣化防止剤の例としては、フェニレンジアミン、例えばN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-ベンゼンジアミン(6PPD)、トリメチルジヒドロキノリン、例えば2,2,4-トリメチル1-1、2-ジヒドロキノリン含有物(TMQ)、フェノール類、アルキル化ジフェニルアミン(DPA)、パラフィン系ワックスもしくはマイクロクリスタリンワックスもしくはそれらのブレンド、芳香族ホスファイト、およびジフェニルアミン-ケトン縮合物が挙げられる。これらの成分の適切な量は、当業者によって決定され得る。
【0054】
ゴムコーティングは、さらに加硫パッケージ(curing package)を含むことができる。一般に、加硫パッケージは、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫抑制剤、およびスコーチ防止剤(anti-scorching agent)のうちの少なくとも1つを含む。本発明で使用可能な加硫パッケージは、少なくとも1種の加硫剤、少なくとも1種の加硫促進剤、少なくとも1種の加硫活性化剤、および任意に加硫抑制剤および/またはスコーチ防止剤を含む。加硫促進剤および加硫活性化剤は、加硫剤の触媒として作用する。加硫抑制剤およびスコーチ防止剤は当該技術分野において公知であり、当業者は所望の加硫物性に基づいて選択することができる。
【0055】
ゴムコーティングに使用するのに適した加硫剤の例としては、硫黄系または過酸化物系の加硫成分が挙げられるが、これらに限定されない。好適な硫黄加硫剤の具体的な例としては、可溶性硫黄;二硫化アミン、高分子ポリスルフィドもしくは硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性加硫剤;および不可溶性高分子硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は不溶性硫黄、または可溶性硫黄と不可溶性高分子硫黄の混合物である。加硫剤は単独または組み合わせて使用することができる。一般的に、加硫剤は0.1~10phr、好ましくは1~8phrの範囲の量で使用する。
【0056】
加硫促進剤は、加硫に必要な時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために使用する。本発明のゴムコーティングに使用するのに適した加硫促進剤の例は、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MTBS)などのチアゾール系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)等のスルフェンアミド系促進剤;ジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系加硫促進剤;カーバメート系加硫促進剤;ヘキサメチレン-1,6ビスチオ硫酸(HTS);等が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましくは、本発明で使用する加硫促進剤は、CBSもしくはDPG、もしくはこれらの混合物である。一般に、加硫促進剤の使用料は0.1~10phr、好ましくは、0.5~5phrである。
【0057】
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用する添加剤である。一般的に、加硫活性化剤は無機成分および有機成分を含む。酸化亜鉛は最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。様々な有機加硫活性剤で一般的に使用されているものには、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、およびこれらの亜鉛塩などがある。一般的に、加硫活性化剤の使用量の範囲は0.1~9phr、より好ましくは0.5~6phrである。
【0058】
加硫抑制剤は加硫プロセスを制御するために使用し、一般的に所望の時間および/または温度に達するまで加硫を遅延または抑制する。一般的な加硫抑制剤としてはPVI(シクロヘキシルチオフタルイミド)が挙げられるが、これに限定されない。一般的に、加硫抑制剤の量は0.1~3phr、好ましくは0.5~2phrである。
【0059】
特定の実施形態によれば、ゴムコーティングはさらに、接着促進剤としての添加剤として、コバルトの有機塩または錯体を含んでいてもよい。当業者であれば既知のとおり、ゴムコーティングとアンテナの金属表面との接着界面は、RFIDモジュールの耐久性において大きな役割を果たす。接着性を向上させるために、添加剤としてコバルトの有機塩または錯体を組成に含有させてもよい。本発明のコーティングゴムに使用するのに適したコバルト塩の例としては、ネオデカン酸ホウ酸コバルトまたはネオデカン酸コバルトが挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、コバルト塩の使用量は0.1~5phr、より好ましくは、0.5~3phrである。
【0060】
<RFIDデバイス>
第2の態様では、タイヤ用のRFIDモジュールを開示する。このRFIDモジュールは、少なくともアンテナを含み、該アンテナは好ましくは真鍮層で覆われたコアを有し、該アンテナは外面を有し、少なくとも該アンテナの外面はゴムコーティングで囲まれており、該ゴムコーティングは以下を含む。
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化9】

ここで、該化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
【0061】
RFIDデバイスは、チップに電気的に接続した少なくとも1つのアンテナを含み、該アンテナは外面を有し、該アンテナの外面はゴムコーティングに囲まれている。特定の実施形態によれば、少なくとも、1つのアンテナの外部表面の大部分がゴムコーティングに囲まれている。本明細書における表現「大部分(a majority)」は、50%より多く、100%であることを意味する。好ましい実施形態によれば、アンテナはダイポールアンテナであり、該ダイポールアンテナはRFIDデバイスのチップの逆向きの異なる方向に突出する2つのアンテナブランチを含む。特定の実施形態によれば、両方のアンテナブランチの外面の大部分はコーティングゴムに囲まれている。さらなる実施形態によれば、RFIDデバイスは、互いに電磁気的に結合した2つのアンテナを含み、該2つのアンテナのうちの一方がチップに電気的に接続されている。特定の実施形態によれば、該2つのアンテナの外部表面の大部分はゴムコーティングによって囲まれている。さらに他の実施形態によれば、RFIDデバイスの外部表面の全体がゴムコーティングによって囲まれている。
【0062】
ゴムコーティングは、様々な方法によりRFIDデバイス上に配置することができる。特定の実施形態によれば、ゴムコーティングは、ゴムのシートまたは層としてRFIDデバイス上に配置する。より具体的には、このような実施形態によれば、ゴムコーティングはカレンダー処理またはその他の方法で、均一な厚さ(例えば、0.2mm~約1.2mm)のゴムの未硬化シートとして形成する。RFIDデバイスは、ゴムシートの上面に配置し、RFIDデバイスの下面の一部がゴムシートに接触するよう配置する。第2のゴムシート(通常、第1のゴムシートと同一厚さを有する)をRFIDデバイスの上面にかぶせ、これによりRFIDデバイスの外面が2つのゴム層で被覆される。次に、2つのゴム層を一緒にプレスし、RFIDデバイスが実質的に両者間に捕捉された状態で、第1のゴム層と第2のゴム層との接着を促進する。2つのゴム層の接着は様々な方法で補助することができ、例えば、デュアルローラーアセンブリを使用して部品を一緒にプレスし、閉じ込められた空気を排出する方法、層を一緒に縫合する方法(例えば、縫合ローラーの使用により)、人力の指圧による方法、膨張可能なブラダーを使用する方法、圧縮成形治具を使用する方法、または2つのゴム層の接着を補助するのに適した任意の方法などにより補助することができる。好ましくは、RFIDモジュールは、RFIDデバイスおよびゴムコーティングを含み、合計6mmの厚さを有する。
【0063】
本発明の実施形態によれば、RFIDデバイスは、RFIDチップ、およびチップに接続した少なくとも1つのアンテナとからなる。
【0064】
通常、RFIDアンテナは層構造で形成され、コアおよび被覆層を含む。RFIDアンテナの製造には、いくつかの材料が当該技術分野で知られている。特にコアは一般的に金属のコアである。被覆層は、例えば真鍮または銅または銅-ニッケル(Cu-Ni)合金などの銅合金で形成することができる。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、RFIDチップに接続するアンテナは、真鍮製の層で覆われた鋼鉄製の核からなる多層構造を含む。
【0066】
<タイヤ>
本発明の第3の態様によれば、本明細書に記載のRFIDモジュールは、タイヤまたはリトレッドタイヤに組み込む。換言すれば、第3の実施形態は、タイヤおよびリトレッドタイヤを対象とし、該タイヤおよびリトレッドタイヤはRFIDモジュールからなり、該RFIDモジュールはRFIDデバイスを含み、該RFIDデバイスは少なくともアンテナを含み、該アンテナは、好ましくは真鍮層に覆われたコアを有し、該アンテナは外面を有し、少なくとも該アンテナの外面は、ゴムコーティングによって囲まれており、以下を含む。
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化10】

ここで、該化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよい。
【0067】
さらなる実施形態によれば、RFIDモジュールは、タイヤの様々な構成要素に組み込むことができ、例えばトレッド、サイドウォール、ベルトスキム、またはカーカスに組み込むことができる。
【0068】
本明細書および以下において、用語「タイヤ」は、使用済みまたは摩耗したタイヤを含み、該使用済みまたは摩耗したタイヤは、リトレッドと呼ばれるプロセスでタイヤケーシングの外面に適用した新しいトレッドストリップが施されている。このようなプロセスを経たタイヤは、一般にリトレッドタイヤという。
【0069】
本明細書および以下において、用語「リトレッドタイヤ」は、タイヤのリトレッドプロセスでタイヤケーシングに適用する、あらかじめ準備したトレッドスリップという意味を含む。
【0070】
本明細書および以下において、用語「組み込む(incorporated)」または「組み入れる(incorporated into)」は、タイヤまたはリトレッドタイヤの内部に埋め込むまたは挿入するだけでなく、タイヤまたはリトレッドタイヤに関連付けるなどの他の方法、例えばインナーライナーまたはサイドウォールのといったタイヤの外面にパッチを使用する意味も含む。
【0071】
さらなる実施形態によれば、RFIDモジュールをタイヤまたはたリトレッドタイヤに関連付けるために使用するパッチは、本発明の第1の実施形態によって開示されたゴムコーティングの構成を有することができる。
【0072】
さらなる実施形態によれば、RFIDデバイスの少なくとも1つのアンテナの少なくとも外面を囲んでいるゴムコーティングは、RFIDモジュールをタイヤまたはタイヤ部品に組み入れる前に硬化(加硫)する。
【0073】
このような実施形態によれば、RFIDモジュール中のRFIDデバイスの少なくとも1つのアンテナにおける少なくとも外面を囲んでいるゴムコーティングが、該ゴムコーティングをタイヤまたはタイヤの構成部材に組み入れる前に硬化するとき、RFIDモジュールは、タイヤまたはタイヤ構成部材の硬化済みゴムコーティングに接着されていてもよく、これにはパッチ、適切な接着剤、またはタイヤの動作条件に耐え得るセメントを使用することができる。特定の実施形態では、パッチはゴムコーティングを含むことができ、該ゴムコーティングはRFIDデバイスの少なくとも1つのアンテナの少なくとも外面を囲む。
【0074】
さらに、コーティングゴムはRFIDモジュール中のRFIDデバイスの少なくとも1つのアンテナの少なくとも外面を囲んでおり、RFIDモジュールのゴムコーティングを硬化させる前に、タイヤまたはリトレッドタイヤに組み入れることができる。このような実施形態では、未硬化のゴムコーティングを含むRFIDモジュールは、タイヤまたはリトレッドタイヤの所望の位置に組み入れる。RFIDモジュールの未硬化のゴムコーティングは、タイヤまたはリトレッドタイヤと共に、同時に硬化する。
【0075】
一般的に、本明細書に記載のゴムコーティングをタイヤまたはリトレッドタイヤに使用する場合、これらの組成物はタイヤまたはリトレッドタイヤに組み入れ、これは標準的なゴム成形、成形、および硬化技術を含む従来のタイヤ製造技術に従って行う。
【0076】
第4の態様において、本発明は、以下のゴムコーティングの使用を対象とする。
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化11】

ここで、該化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖上もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせで重合していてもよく、RFIDデバイスを囲むために、第3の実施形態によるタイヤまたはリトレッドタイヤに組み入れてもよい。
【実施例
【0077】
以下の実施例は、本開示の具体的ならびに例示的な実施例および/または特徴を示す。実施例は、説明としての目的のみのために開示され、本開示の限定として解釈されるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、具体例に対する多数の変更が可能である。
【0078】
より具体的には、以下の実施例に使用するジエン系エラストマー、充填剤、およびほかの成分(例えば、硬化性パッケージ成分、劣化防止剤またはプロセスオイルなど)は限定的に解釈されるべきではなく、詳細な説明における開示と一致する他の成分または追加の成分を代替的に利用することができる。
【0079】
対照組成物(実施例C)および本発明における2つの異なる実施例を調製した:実施例A(1~3)および実施例B(1~3)である。実施例A(1~3)は実施例Cの対照組成物と異なるものであって、本発明における1種の化学物質の含有量が異なり、すなわちアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(APF樹脂)、特にノボラック樹脂の含有量が異なる。実施例B(1-3)は、実施例Cの対照組成物と異なるものであって、本発明における1種の化学物質の含有量が異なり、すなわち2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(NS6)の含有量が異なる。コーティングゴムの全ての実施例(対照例および本発明例)における構成は、表1に示す配合によって調整し、表1の全ての成分はphrで示した。
【0080】
【表1】
【0081】
使用したシランカップリング剤は、ビス-(3-トリエトキシ-シリルプロピル)ジスルフィドシラン(Si75)である。
【0082】
使用した促進剤はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)である。
【0083】
使用したオイルは残留芳香族抽出物(RAE)である。
【0084】
使用したコバルトはネオデカン酸塩である。
【0085】
使用したAPF樹脂はノボラック樹脂である。
【0086】
表1のすべての実施例のゴム組成物を、以下の混合手順に従って混合した:
【0087】
架橋性ポリマーベースおよびカーボンブラックを、混合開始前に、接線方向ローターを備えた内容積230~270リットルのミキサーに投入し、充填率は66~72%に達した。
【0088】
(第1混合ステップ)
ミキサーを40~60回転/分の範囲で運転し、得られた混合物を140~160℃の範囲における温度に達した後に排出した。
【0089】
(第2混合ステップ)
先のステップで得られた混合物を、新たにミキサーを40~60回転/分の範囲で運転して処理し、その後、130~15℃の範囲における温度に達した後に排出した。
【0090】
(最終混合ステップ)
加硫系(硫黄、促進剤、加硫戻り防止剤、酸化防止剤/オゾン劣化防止剤、酸化亜鉛)を前のステップで得られた混合物に添加し、充填率は63~67%に達した。
【0091】
混錬は20~40回転/分の範囲における回転速度で運転し、得られた混合物を100~110℃の範囲における温度に達した後に排出した。
【0092】
表1のそれぞれのゴム組成物はコーティングゴムで囲まれたRFIDデバイスからなるRFIDモジュールを作製するために使用し、表1の各例にしたがって使用した。このようなRFIDモジュールは、以下の方法により作製した。
【0093】
実施例によるゴムコーティングを、平均厚さ0.6mmのシート状または層状にカレンダー処理し、RFIDデバイス上に配置した。RFIDデバイスはゴムシートの上面に置き、RFIDデバイスの下面の一部がゴムシートに接触させた。第2のゴムシート(第1のゴムシートと同一厚さ)をRFIDデバイスの上面に置き、RFIDデバイスの外面を2つのゴム層で被覆した。次に、2つのゴム層はRFIDデバイスを挟み込んだ状態で一緒にプレスし、第1のゴム層と第2のゴム層の接着を促進した。2つのゴム層の接着を、ローラーアセンブリを使用して部品を一緒にプレスし、閉じ込められた空気を排出することで補助した。
【0094】
このプロセスの終わりに、RFIDデバイスおよび周囲のゴムコーティングからなるRFIDモジュールの総厚さは6mmとなる。
【0095】
上記のRFIDモジュールを試験し、以下のRFIDデバイスへのゴムコーティングの接着性を評価した:CRA力評価およびCRA被覆率。
【0096】
<CRA力評価>
この試験方法により、RFIDデバイスをゴムパッドから引っ張るのに要する力を測定することができる。試験は以下の手順に従って実施した:評価対象のRFIDデバイスのサンプルを本発明によるコーティングゴムで被覆した。試験は、RFIDデバイスをコーティングゴムから180°の剥離角度で引っ張ることで行い、定張力(CRE)試験機を用いて、ゴムパッドからデバイスを引っ張るために加える最大の力を測定した。試験の手順は、RFIDアンテナの露出端の約2mmを試験機の上部クランプの中央に置き、RFIDを剥がす必要があるパッドの端の約2mmを下部クランプに置いた。パッドの軸線は試験機の垂直軸線と並行である必要がある。RFIDデバイスをパッドから引っ張り、デバイスを引き剥がすのに必要な最大引き剥がし力(ニュートン)を記録する。試験は室温で行う。
【0097】
剥離力の値は、従来のコーティングコンパウンド(C)で被覆したRFIDデバイスに対して指標化した。対照Cにおけるコンパウンドで、RFIDデバイスがコーティング剤から剥離する際の剥離力は従来通り100とした。
【0098】
対照に対する本発明の実施例の値が高いほど、RFIDのコーティングコンパウンドへの接着力が高いことを示し、これはRFIDをゴムパッドから取り出すために加える力が大きくなるためである。
【0099】
<CRA被覆率>
この試験方法により、RFIDデバイスをゴムパッドから引き剥がした後に、RFIDデバイスを被覆しているゴムの量をランク付けし、接着特性を評価することができる。これは目視判定による。
【0100】
評価対象のRFIDデバイスのサンプルは、本発明のコーティングゴムによって被覆した。該試験はRFIDデバイスをコーティングゴムから180°の剥離角度で引っ張ることで行い、定張力(CRE)試験機を用いた。試験手順は、RFIDアンテナの露出端の約2mmを試験機の上部クランプの中心に置き、RFIDを剥がす必要があるパッドの端の約2mmを下部クランプに置いた。パッドの軸線は試験機の垂直軸線と並行である必要がある。RFIDデバイスをパッドから引っ張り出し、引っ張り出されたRFIDが約30mmのラインに達した時点で試験は停止する。試験は室温で行う。
【0101】
パッドをクランプから外す前に、RFIDデバイスのゴム被覆率を目視で判定し、記録した。ランクはRFIDアンテナ表面をまだ覆っているゴムの割合で表す。
【0102】
ゴム被覆率のランクは、従来のコーティングコンパウンド(C)でコーティングした対照RFIDデバイスと比較して記録した。対照Cのランクは、従来は10%であった。
【0103】
対照に対して本発明の実施例の値が高いほど、接着力が高いことを示し、これはRFIDアンテナ表面の露出が低いためである。
【0104】
表2に実施例のゴムコーティングで被覆された各RFIDデバイスの試験結果を示した。結果は、上述のとおり、RFIDデバイス用に一般に使用されるゴムコーティングを表す対照コンパウンドCの結果に対して指数化した。
【0105】
【表2】
【0106】
上記の結果の表に示したように、CRA力評価試験によって得られた値は、水または酸素による老化後に、本発明の各ゴムコーティングがそれぞれ、対照コンパウンドに対して接着性を増加できることを示している。一貫して、CRA被覆判定は、対照コンパウンドに対して、本発明によるゴムコーティングの、より高い接着性能を示した。RFIDデバイスに対するゴムコーティンの接着性の増加は、接着強化剤によってアンテナを処理することなく達成された。このように、本発明はしたがって、RFID製造プロセスの生産性や作業者の安全性を損なうことなく、タイヤ内に挿入するRFIDモジュールの構造安定性や耐久性を確保し、同時にアンテナの読み取り性能を維持するというニーズを満たすことができる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用のRFIDデバイスのためのゴムコーティングであって、以下の構成、
(a)100phrの少なくとも1種のジエン系エラストマー
(b)式1による少なくとも1種の化学物質
【化1】

を含み、
ここで、前記化学物質は、その構造中に少なくとも2,2’-メチレンジフェノールの構造を含み、前記2,2’-メチレンジフェノールは、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、脂肪族、直鎖状もしくは分枝状の、炭素原子数1~10の炭化水素鎖で置換されていてもよく、または、オルト位、パラ位、メタ位もしくはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つ以上の追加のアルキルフェノール単位で重合していてもよいものである
ことを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項2】
請求項1に記載のゴムコーティングにおいて、前記化学物質が、フェノールホルムアルデヒド樹脂から選択され、好ましくはノボラック樹脂または2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、またはこれらの2つの組み合わせから選択されることを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項3】
請求項1に記載のゴムコーティングにおいて、0.1~10phr、好ましくは0.1~7phrの前記化学物質を含むことを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項4】
請求項1に記載のゴムコーティングにおいて、さらに少なくとも1種の充填剤を含むことを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項5】
請求項4に記載のゴムコーティングにおいて、前記充填剤がシリカであることを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項6】
請求項1に記載のゴムコーティングであって、前記ジエン系エラストマーが、天然ゴムもしくはポリイソプレンまたはこれらの2つの混合物であることを特徴とする、ゴムコーティング。
【請求項7】
タイヤ用RFIDモジュールであって、少なくともアンテナを含むRFIDデバイスを備え、前記アンテナは外面を有し、前記アンテナの外面の少なくとも一部分が請求項1~6のいずれか一項に記載のゴムコーティングで囲まれている、RFIDモジュール。
【請求項8】
請求項7に記載のRFIDモジュールにおいて、前記アンテナはコアを含み、前記コアは少なくとも部分的に真鍮層で被覆されていることを特徴とする、RFIDモジュール。
【請求項9】
請求項7に記載のRFIDモジュールにおいて、RFIDデバイスの大部分がゴムコーティングで囲まれており、好ましくはRFIDデバイスの全体がゴムコーティングで囲まれていることを特徴とする、RFIDモジュール。
【請求項10】
請求項7に記載のRFIDモジュールを備えることを特徴とする、タイヤまたはリトレッドタイヤ。
【請求項11】
タイヤ用RFIDデバイスを囲むための請求項1~6のいずれか一項に記載のゴムコーティングの使用であって、前記RFIDデバイスは少なくともアンテナを含み、前記アンテナは外面を有し、少なくとも前記アンテナの外面がゴムコーティングで囲まれるようにする、使用。
【請求項12】
請求項1に記載のコーティングゴムの使用において、前記アンテナはコアを含み、前記コアは少なくとも部分的に真鍮層で被覆されるようにすることを特徴とする、使用。
【国際調査報告】