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特表2024-541901レビー小体型認知症を有する患者の選択的集団の処置
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  • 特表-レビー小体型認知症を有する患者の選択的集団の処置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】レビー小体型認知症を有する患者の選択的集団の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/519
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524404
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022049052
(87)【国際公開番号】W WO2023081422
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,529
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513282009
【氏名又は名称】イーアイピー ファーマ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アラム, ジョン ジャハンガー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA15
4C084ZC20
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA15
(57)【要約】
本発明は、レビー小体型認知症(DLB)を有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体の処置のための方法および組成物を提供する。実質的なタウ病理を有しないDLBを有する被験体は、実質的なタウ病理を有するDLBを有する被験体と比較して、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターでの処置に対して特に応答性であることが示される。いくつかの実施形態において、DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてレビー小体型認知症(DLB)を処置する方法であって、上記方法は、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを上記被験体に投与する工程を包含する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レビー小体型認知症(DLB)を有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体を処置するための方法であって、前記方法は、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを前記被験体に投与する工程を包含する方法。
【請求項2】
前記p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターは、ネフラマピモドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中のptau181のレベルによって特徴づけられる、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中のptau217のレベルによって特徴づけられる、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、脳の陽電子放出断層撮影(PET)によって特徴づけられる、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、前記被験体の脳脊髄液中のアミロイドβ(Aβ)42のレベルがアルツハイマー病を有すると診断された被験体のものより低いことと関連する、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、Simoa ptau 181アッセイにおいて測定される場合、アルツハイマー病またはアルツハイマー病関連病理を有する被験体のものより低い血漿ptauのレベルによって特徴づけられる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてα-シヌクレイン関連変性疾患を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法。
【請求項9】
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体の中枢神経系においてニューロン喪失を阻害する方法であって、前記方法は、前記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法。
【請求項10】
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてエンドソーム機能障害を逆転させる方法であって、前記方法は、前記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法。
【請求項11】
前記MAPKインヒビターは、ネフラマピモドである、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ネフラマピモドは、40mg TIDで投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体は、前脳基底部においてコリン作動性神経変性を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記投与は、前記被験体の前脳基底部においてコリン作動性神経変性の症候性の影響の減少を生じる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体は、内側中隔におけるシナプス機能障害、海馬におけるニューロン細胞喪失、内側中隔におけるニューロン喪失、または対角帯核の垂直脚におけるニューロン細胞喪失を有する、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記海馬におけるニューロン細胞喪失は、海馬のCA2-3領域におけるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被験体は、
(a)注意複合zスコアによって測定される場合の注意、言語流暢性、エピソード記憶における欠損、
(b)Timed Up and Go(TUG)によって測定される場合の運動性における欠損、
(c)Clinical Dementia Rating Scale(CDR-SB)によって測定される場合の記憶、見当識、判断および問題解決、地域社会の用件、家庭生活および趣味の遂行、ならびにパーソナルケアにおける欠損、ならびに/あるいは
(d)神経心理学的検査群(NTB)によって測定される場合の神経心理学的活動における欠損、
を有する、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記被験体は、前記海馬においてαシヌクレイン沈着を有する、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記被験体は、アルツハイマー病を有しない、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2022年11月5日出願の米国仮特許出願第63/276,529号(これは、その全体において本明細書に参考として援用される)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
レビー小体型認知症(DLB)は、アルツハイマー病に続く第2位の最も一般的な認知症であり、この進行性の障害に対処するための承認された治療はまだ存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
本開示は、選択的p38αMAPKインヒビターであるネフラマピモドの投与が、レビー小体型認知症(DLB)を有するが、実質的なタウ病理を有しない選択された患者集団の処置に有効であるという発見を包含する。具体的には、ネフラマピモドは、タウ病理の生体マーカー(例えば、血漿中のリン酸化タウ(ptau)のレベル)によって特徴づけられる実質的なタウ病理がない患者においてDLB症状を処置するために有効であった。血漿中の上昇したptauレベルは、脳におけるタウ病理の代理の尺度であり、これはしばしば、アルツハイマー病病理と関連する。DLB患者の部分セットはタウ病理を有するが、DLB患者の別の部分セットは、実質的なタウ病理を有しないこと、および実質的なタウ病理のない患者はネフラマピモド治療に異なって応答するということが、本明細書で発見されている。ネフラマピモドを、実質的なタウ病理を有しないDLB患者に投与する工程を包含する処置方法が、本明細書で提供される。
【0004】
いくつかの実施形態において、DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてレビー小体型認知症(DLB)を処置する方法であって、上記方法は、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを上記被験体に投与する工程を包含する方法が提供される。
【0005】
いくつかの実施形態において、上記p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターは、ネフラマピモドである。
【0006】
いくつかの実施形態において、被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中のptau181のレベルによって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中のptau217のレベルによって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、被験体において実質的なタウ病理がないことは、脳の陽電子放出断層撮影(PET)によって特徴づけられる。
【0007】
いくつかの実施形態において、被験体において実質的なタウ病理がないことは、上記被験体における脳脊髄液中のアミロイドβ(Aβ)42のレベルが、アルツハイマー病を有すると診断された被験体のものより低いことと関連する。
【0008】
いくつかの実施形態において、被験体において実質的なタウ病理がないことは、Simoa ptau181アッセイにおいて測定される場合のアルツハイマー病またはアルツハイマー病関連病理を有する被験体のもの、または血漿ptauを測定する別のアッセイ方法論のその等価物より低い血漿ptauのレベルによって特徴づけられる。
【0009】
いくつかの実施形態において、被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中で2.2pg/mL未満のptau181レベルによって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、被験体において実質的なタウ病理がないことは、Simoaプラットフォームアッセイによって評価される、血漿中で2.2pg/mL未満のptau181レベル、または別のアッセイ方法論のその等価物によって特徴づけられる。
【0010】
いくつかの実施形態において、DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてα-シヌクレイン関連変性疾患を処置する方法であって、上記方法は、上記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法が、本明細書で提供される。
【0011】
いくつかの実施形態において、DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体の中枢神経系においてニューロン喪失を阻害するための方法であって、上記方法は、上記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法が、提供される。
【0012】
いくつかの実施形態において、DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてエンドソーム機能障害を逆転させる方法であって、上記方法は、上記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法が、提供される。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記MAPKインヒビターは、ネフラマピモドである。いくつかの実施形態において、ネフラマピモドは、40mg TIDで投与される。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、前脳基底部においてコリン作動性神経変性を有する。いくつかの実施形態において、ネフラマピモドの投与は、被験体の前脳基底部においてコリン作動性神経変性の症候性の影響の減少を生じる。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、内側中隔におけるシナプス機能障害、海馬におけるニューロン細胞喪失、内側中隔におけるニューロン喪失、または対角帯核の垂直脚におけるニューロン細胞喪失を有する。いくつかの実施形態において、上記海馬におけるニューロン細胞喪失は、海馬のCA2-3領域におけるものである。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、
(a)注意複合zスコア(Attention Composite z-score)によって測定される場合の注意、言語流暢性、エピソード記憶における欠損、
(b)Timed Up and Go(TUG)によって測定される場合の運動性における欠損、
(c)Clinical Dementia Rating Scale(CDR-SB)によって測定される場合の記憶、見当識、判断および問題解決、地域社会の用件(community affair)、家庭生活および趣味の遂行(home and hobbies performance)、ならびにパーソナルケアにおける欠損、ならびに/あるいは
(d)神経心理学的検査群(Neuropsychological Test Battery)(NTB)によって測定される場合の神経心理学的活動における欠損、
を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、海馬においてαシヌクレイン沈着を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、アルツハイマー病を有しない。
【0019】
いくつかの実施形態において、ネフラマピモドは、DLBおよび3pg/mL未満の血漿ptau181レベルを有する被験体に投与される。
【0020】
いくつかの実施形態において、ネフラマピモドは、DLBおよび2.5pg/mL未満の血漿ptau181レベルを有する被験体に投与される。
【0021】
いくつかの実施形態において、ネフラマピモドは、DLBおよび2pg/mL未満の血漿ptau181レベルを有する被験体に投与される。
【0022】
いくつかの実施形態において、ネフラマピモドは、DLBおよび1pg/mL未満の血漿ptau181レベルを有する被験体に投与される。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記被験体はまた、コリンエステラーゼインヒビターを受けている。
【0024】
いくつかの実施形態において、投与されるネフラマピモドの1日用量は、40mg(TID)の用量に等しい。
【0025】
いくつかの実施形態において、ネフラマピモドを投与される被験体はまた、コリンエステラーゼインヒビター治療を受けている。いくつかの実施形態において、2.2pg/mL未満の血漿ptauレベルを有し、コリンエステラーゼ治療を受けている被験体は、少なくとも40mg TIDの用量でネフラマピモドを投与される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、情報処理速度を評価する神経心理学的検査群(NTB)内での試験の注意複合zスコアに関するネフラマピモドを受容する被験体における臨床試験結果を示す。データは、反復測定混合モデル(Mixed Model for Repeated Measures)(MMRM)を利用するベースラインからの分析変化の出力(平均、95% CI)として表される。改善は、NTBおよび注意複合zスコアにおける増大として反映される。
【0027】
図2図2Aは、Clinical Dementia Rating Scale(CDR-SB)に関するネフラマピモドを受容する被験体における臨床試験結果を示す。データは、反復測定混合モデル(MMRM)を利用するベースラインからの分析変化の出力(平均、95% CI)として表される。改善は、CDR-SBスコアにおける減少として反映される。40mg TID 対 プラシーボがプロットされる。
【0028】
図2Bは、Timed Up and Go(TUG)試験に関するネフラマピモドを受容する被験体における臨床試験結果を示す。データは、反復測定混合モデル(MMRM)を利用するベースラインからの分析変化の出力(平均、95% CI)として表される。改善は、TUG試験を完了するまでの時間における減少として反映される。40mg TID 対 プラシーボがプロットされる。
【0029】
図3図3は、International Shopping List Test(ISLT)に関するネフラマピモドを受容する被験体における臨床試験結果を示す。データは、反復測定混合モデル(MMRM)を利用するベースラインからの分析変化の出力(平均、95% CI)として表される。改善は、ISLTスコアにおける増大として反映される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
キャリア: 用語「キャリア」とは、活性薬剤(例えば、p38 MAPKαインヒビター(例えば、ネフラマピモド))を含む組成物へと、上記薬剤の安定性および/または活性に(例えば、上記薬剤の生物学的活性に)顕著に干渉することなく組み込まれ得る任意の化学的実体をいう。ある特定の実施形態において、用語「キャリア」とは、薬学的に受容可能なキャリアをいう。
【0031】
製剤: 用語「製剤」とは、本明細書で使用される場合、少なくとも1種の活性薬剤(例えば、p38 MAPKαインヒビター(例えば、ネフラマピモド))を、患者への投与のために、1またはこれより多くのキャリア、賦形剤または他の薬学的添加剤と一緒に含む組成物をいう。概して、特定のキャリア、賦形剤および/または他の薬学的添加剤は、活性薬剤の所望の安定性、放出、分布および/または活性を達成するために、当該分野の知識に従って選択され、それは、特定の投与経路に適切である。
【0032】
薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクル。 用語「薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクル」とは、これが一緒に製剤化される化合物の薬理学的活性を破壊しない、非毒性のキャリア、アジュバント、またはビヒクルをいう。本発明の組成物において使用され得る薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝化物質(例えば、ホスフェート)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩もしくは電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド性シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂。
【0033】
治療上有効な量および有効量。 本明細書で使用される場合、および別段特定されなければ、用語、薬剤の「治療上有効な量」および「有効量」とは、疾患、障害、または状態の処置、防止および/または管理において治療上の利益を提供するために、例えば、処置されるべき疾患、障害または状態の発症を遅らせるか、それと関連する1またはこれより多くの症状を最小化する(例えば、その発生率および/または大きさを低減する)ために十分な量をいう。いくつかの実施形態において、組成物は、これが治療レジメンの文脈内で単一用量として投与されるときに有効である量を含む場合、「治療上有効な量」の薬剤を含むといわれ得る。いくつかの実施形態において、組成物は、これが治療レジメンの文脈内で1より多くの用量(例えば、2用量、3用量、または4もしくはこれより多くの用量)として投与されるときに有効である量を含む場合、「治療上有効な量」の薬剤を含むといわれ得る。いくつかの実施形態において、治療上有効な量は、投与レジメンの一部として投与されるときに、統計的に、疾患、障害もしくは状態の発症を遅らせるか、またはその1もしくはこれより多くの症状もしくは副作用を最小化する(その発生率および/もしくは大きさを低減する)可能性がある量である。
【0034】
処置するまたは処置すること。 用語「処置する」または「処置すること」とは、本明細書で使用される場合、障害、疾患、もしくは状態を、または上記障害、疾患、もしくは状態の1もしくはこれより多くの症状もしくは出現を部分的にまたは完全に緩和する、阻害する、その発症を遅らせる、その発生率を低減する、その予防を生じさせる、改善するおよび/またはもしくは軽減するもしくは元に戻すことをいう。
【0035】
単位用量。 表現「単位用量」とは、本明細書で使用される場合、処置されるべき被験体に適した製剤の物理的に別個の単位(例えば、単一用量に対して)をいう;各単位は、治療レジメンに従って投与される場合に所望の治療効果を生じる(多数の用量が、所望のまたは最適な効果を達成するために必要とされ得ることは理解される)ように選択された活性薬剤の所定の量を、必要に応じて薬学的に受容可能なキャリア(これは、所定の量で提供され得る)と一緒に含む。上記単位用量は、例えば、1もしくはこれより多くの治療剤の所定の量を含む液体(例えば、受容可能なキャリア)の容積、固体形態にある1もしくはこれより多くの治療剤の所定の量(例えば、錠剤もしくはカプセル剤)、1もしくはこれより多くの治療剤の所定の量を含む徐放性製剤もしくは薬物送達デバイスなどであり得る。単位用量が上記治療剤に加えて種々の構成要素を含み得ることは、認識される。例えば、受容可能なキャリア(例えば、薬学的に受容可能なキャリア)、希釈剤、安定化剤、緩衝化剤、保存剤などは、下記のように含まれ得る。しかし、本発明の製剤の合計の1日の使用が、主治医によって、賢明な医学的判断の範囲内で決定されることは、理解される。任意の特定の被験体の具体的な有効用量レベルは、以下を含む種々の要因に依存し得る:処置されている障害および上記障害の重篤度;使用される具体的活性化合物の活性;使用される具体的組成物;上記被験体の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事;投与時間、および使用される具体的活性化合物の排出速度;処置の継続期間;使用される具体的化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物および/またはさらなる治療、ならびに医療分野において周知の類似の要因。いくつかの実施形態において、p38 MAPKαインヒビター(例えば、ネフラマピモド)の単位用量は、約1mg、3mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、100mg、125mg、または250mgである。
【0036】
ある特定の実施形態の詳細な説明
本発明は、とりわけ、選択的p38 MAPKαインヒビター(例えば、ネフラマピモド)を含む組成物を投与することによる、レビー小体型認知症(DLB)および関連病理を有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体を処置するための組成物および方法を提供する。タウ病理は、ホスホ-タウ(ptau)の循環(例えば、血液または血漿)レベルの測定によって特徴づけられ得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、2.2pg/mL未満の血漿ptau181レベルは、実質的なタウ病理がないことを示し、2.2pg/mLに等しいかまたはこれより大きい血漿ptau181レベルは、脳におけるタウ病理の存在を示す。
【0038】
いくつかの実施形態において、被験体におけるタウ病理は、血漿中のptau217のレベル、脳における陽電子放出断層撮影(PET)、および/または脳脊髄液におけるアミロイドβ(Aβ)42のレベルによって特徴づけられる。
【0039】
よって、いくつかの実施形態において、実質的なタウ病理(またはアルツハイマー病様病理)を有しない被験体においてDLBを処置する方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、タウ病理を決定するために測定されるptauは、ptau181である。いくつかの実施形態において、タウ病理を決定するために測定されるptauは、ptau217である。いくつかの実施形態において、タウ病理を決定するために測定されるptauは、ptau231である。例示的なptauアッセイおよび匹敵する結果に関しては、例えば、Bayoumiら, Alzheimer’s Research & Therapy, 13:198 (2021)を参照のこと。
【0040】
AD様病理を特定または診断する方法は公知である。例えば、AD病理は、被験体の血液、血漿、CSF、または脳におけるβアミロイド、前駆体、またはそのフラグメントのレベルを測定することによって決定されうる。
【0041】
いくつかの実施形態において、血漿ptau181は、タウ病理のマーカーとして使用され、被験体がタウ病理を有するか否かを決定するための閾値は、2.2pg/mLである。いくつかの実施形態において、ptau181の閾値は、少なくとも1.5pg/mLである。いくつかの実施形態において、ptau181の閾値は、少なくともlpg/mL、1.6pg/mL、1.7pg/mL、1.8pg/mL、1.9pg/mL、2pg/mL、2.1pg/mL、2.2pg/mL、2.3pg/mL、2.4pg/mL、2.5pg/mL、2.6pg/mL、2.7pg/mL、2.8pg/mL、2.9pg/mL、もしくは3pg/mLであるか、またはこれより大きい。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明は、DLBの発生もしくは進行の疑いがあるかまたはそのリスクにある被験体を処置するための組成物および方法を提供する。
【0043】
本発明の種々の局面は、以下の節において詳細に記載される。節の使用は、本発明を限定することを意味されない。各節は、本発明の任意の局面にあてはまり得る。この適用において、「または」の使用は、別段述べられなければ、「および/または」を意味する。
【0044】
レビー小体型認知症
疾患の進行を元に戻すおよび/または遅らせるためにDLBに利用可能な治療は、現在のところ存在しない。シナプス機能障害を標的化する治療的介入(例えば、ネフラマピモド)は、存在するシナプスの欠陥を元に戻し、かつさらなる減少を遅らせる可能性を有する。
【0045】
DLBの中心的な特徴は、進行性の認知症、すなわち、注意および実行機能の減少によって特徴づけられるが、記憶障害を含み得る機能障害と関連する認知機能の低下である。加えて、関連する症状としては、注意力の変動、動作緩慢、頑固さ、REM睡眠障害、幻視、無嗅覚症、注意力の変動、うつ、アパシー、および自律神経系機能障害が挙げられる。DLBは、細胞におけるα-シヌクレインの沈着(レビー小体またはレビー神経突起として公知)と関連する。
【0046】
内側中隔(Ch1としても公知)および対角帯の垂直脚(Ch2としても公知)は、海馬にコリン作動性神経支配を提供する。内側中隔核および対角帯の垂直脚におけるニューロンの喪失は、DLBをADから区別する、DLBの特異的特徴である(Fujishiroら, Acta Neuropathol, 111:109-1114 (2006)。内側中隔におけるコリン作動性ニューロンの喪失は、選択的p38α MAPKインヒビターであるネフラマピモドの投与によって阻害され得ることが、本明細書において発見されている。
【0047】
ネフラマピモド
多くの細胞外刺激(炎症促進性サイトカインおよび他の炎症メディエーターを含む)は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路の活性化を通じて特異的細胞応答を誘発する。MAPKは、核に対して環境刺激を伝達するプロリン標的化セリン-スレオニンキナーゼである。いったん活性化されると、MAPKは、リン酸化を通じて他のキナーゼまたは核タンパク質(潜在的転写因子および基質を含む)を活性化する。p38 MAPキナーゼの4種のアイソフォーム(α、β、δ、およびγ)は、細胞ストレスおよび炎症シグナルに対する応答を媒介するMAPKの1つの特異的ファミリーを含む。ネフラマピモドは、p38 MAPKのαアイソフォームの選択的低分子インヒビターである。
ネフラマピモドは、VX-745としても公知であり、化学名 5-(2,6-ジクロロフェニル)-2-(2,4-ジフルオロフェニルチオ)-6H-ピリミド[1,6-b]ピリダジン-6-オンを有する。
【化1】
薬学的組成物
【0048】
いくつかの実施形態において、提供される方法は、患者に、ネフラマピモドを、1またはこれより多くの治療剤および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルと一緒に含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、ネフラマピモドのある用量を、1またはこれより多くの治療剤および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルと一緒に含む薬学的組成物であって、ここでネフラマピモドの上記用量は、約1ng/mL~約15ng/mL、約1ng/mL~約10ng/mL、約5ng/mL~約15ng/mL、または約5ng/mL~約10ng/mLの平均血中濃度を生じる薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態において、ネフラマピモドの上記用量は、8ng/mlの平均血中濃度を生じる。WO 2017/185073の表2は、投与後収集時間間隔によるネフラマピモド血漿濃度値を例証し、本明細書に参考として援用される。
【0049】
任意の特定の患者に関する特定の投与量および処置レジメンは、使用される具体的化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物組み合わせ、および処置している医師の判断、ならびに処置されている特定の疾患の重篤度を含む種々の要因に依存することはまた、理解されるべきである。上記組成物中の本発明の化合物の量はまた、上記組成物中の特定の化合物に依存する。
【0050】
投与
いくつかの実施形態において、組成物は、治療上有効な量において、および/または特定の所望される転帰と(例えば、疾患を処置するかまたは疾患のリスクを低減する)と相関する投与レジメンに従って投与される。
【0051】
いくつかの実施形態において、提供される組成物は、治療上有効な量、および/または特定の所望される転帰と(例えば、低減など)と相関する投与レジメンに従って投与される。(例えば、症状の低減など)。
【0052】
代わりにまたはさらに、いくつかの実施形態において、適切な用量または量が、投与されるべき所望のまたは最適な投与量範囲または量を特定することを助けるために、1またはこれより多くのインビトロまたはインビボアッセイの使用を通じて決定される。
【0053】
種々の実施形態において、提供される組成物は、治療上有効な量で投与される。一般には、治療上有効な量は、上記被験体に対して意味のある利益(例えば、根底にある疾患または状態を処置する、調節する、治癒する、防止するおよび/または改善すること)を達成するために十分である。いくつかの実施形態において、DLBを有する被験体を処置する方法は、治療上有効な量の選択的p38αインヒビターを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、DLBを有する被験体を処置する方法は、治療上有効な量のネフラマピモドを投与する工程を包含する。
【0054】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的製剤として提供される。いくつかの実施形態において、薬学的製剤は、DLBの症状における疾患低減、DLBに起因する機能低下の停止もしくは速度の減少の達成と相関した投与レジメンに従う投与のために単位投与量であるか、または単位投与量を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、単一用量として投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、2用量として投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、規則的な間隔で投与される。「間隔」をおいての投与は、本明細書で使用される場合、治療上有効な量が周期的に投与される(1回の用量から区別されるとおり)ことを示す。上記間隔は、標準的な臨床技術によって決定され得る。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、1週間に2回、1週間に3回、2日に1回、毎日、1日に2回。または8時間ごとに投与される。
【0056】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの組成物を含む製剤は、1日に1回投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、1日に2回投与される。いくつかの実施形態において、上記1日に2回の投与は、約9~15時間空けて起こる。いくつかの実施形態において、上記1日に2回の投与は、約12時間空けて起こる。いくつかの実施形態において、約40mg~約250mgのネフラマピモドを含む製剤は、1日に2回投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの組成物を含む製剤は、1日に3回投与される。いくつかの実施形態において、上記投与は、患者が摂食した状態にあるときに起こる。いくつかの実施形態において、上記投与は、被験体が食べ物を摂取した後30~60分間以内に起こる。いくつかの実施形態において、上記投与は、患者が絶食した状態にあるときに起こる。単一個体に関する投与間隔は、固定された間隔である必要はないが、上記個体のニーズに応じて、時間を経て変動され得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、規則的な間隔で投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、規定された期間にわたって規則的な間隔で投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、2年間、1年間、11ヶ月間、10ヶ月間、9ヶ月間、8ヶ月間、7ヶ月間、6ヶ月間、5ヶ月間、4ヶ月間、3ヶ月間、2ヶ月間、1ヶ月間、3週間、2週間、1週間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、または1日間、規則的な間隔で投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりの提供される組成物を含む製剤は、16週間、規則的な間隔で投与される。
【実施例
【0058】
例証
以下の実施例は、例証目的で提供され、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0059】
実施例1
この実施例は、ネフラマピモドが実質的なタウ病理のないDLBを有する被験体の処置のために特に有効であることを明らかに示す。
【0060】
コリンエステラーゼインヒビター治療を受容している軽度から中程度のDLB患者集団におけるネフラマピモドの処置効果を、軽度から中程度のDLBで91名の患者の、16週間のプラシーボ対照フェーズ2試験(「AscenD-LB Study」)において評価したところ、ネフラマピモドは、認知(DLB特異的神経心理学的検査群(NTB)によって評価)、運動機能(Timed-Up-and-Go(TUG)試験によって評価)、ならびに認知機能(Clinical Dementia Rating Scale sum-of-boxes(CDR-SB)によって評価)において、プラシーボに対して有意な改善を明らかに示した。
【0061】
DLBを有する患者のうちの半数までが、タウ病理、すなわち「AD共存病理(AD copathology)」(van der Leeら, 2021)を有し、このような共存病理は、コリンエステラーゼインヒビターに対する応答に影響しうる(Graff-Radfordら, 2012)。DLBを有する患者において、血漿ホスホ-タウ(ptau217またはptau181のいずれか)は、側頭皮質におけるタウ-PETシグナルと相関し、異常なタウ-PET状態およびCSF β-アミロイド状態を予測する(Hallら, 2021)。よって、血漿ptau181レベルを、AscenD-LBのスクリーニング相の間に得られる血漿サンプル中で評価した。タウ病理とAscenD-LBにおける処置転帰との関連に関する結果は、以下に記載される。
【0062】
投与レジメン
患者において20nMという目標平均血漿薬物濃度を一様に達成する目的で、ネフラマピモドまたはプラシーボへの無作為化の後の投与レジメンは、体重に基づいた:
体重<80kg: 40mg ネフラマピモドカプセル剤または適合するプラシーボカプセル剤 BID
体重≧80kg: 40mg ネフラマピモドカプセル剤または適合するプラシーボカプセル剤 TID
しかし、上記試験において、40mg TIDは、目標血漿薬物濃度を達成した;しかし、40mg BIDは達成せず、およそ30~40%欠損した。
トラフ血漿薬物濃度は、40mg TIDに対して40mg BIDで50%低かった。
【0063】
結果として、有効性分析は、(1)プラシーボに対する全てのネフラマピモド(すなわち、40mg BIDおよび40mg TIDを含む);(2)プラシーボに対する40mg TID(目標濃度を達成した用量群);および(3)プラシーボ TIDに対する 40mg TIDを比較した。
【0064】
処置効果を評価するために、反復測定線形混合効果モデル(LMMRM)を利用して、治療上の血漿薬物レベルを達成し、以前に報告された主要分析において有効性を明らかに示した用量群であるNFMD 40mg TIDの転帰と、(1)全てのプラシーボレシピエント、および(2)適合するより高い重量のプラシーボレシピエント(プラシーボ TID)とを比較した。血漿ptau181レベルを、VU Medical CenterでSIMOA pTau181 Assay(Quanterix)によって決定し、ここでタウ病理の社内定義のカットオフを2.2pg/mLで設定した。
【0065】
ベースライン疾患特性
ベースライン時に、有効性分析集団(少なくとも1つの有効性エンドポイントに対するベースラインおよび処置時データ)において、プラシーボ参加者41名のうちの22名(53%)およびネフラマピモド参加者42名のうちの22名(54%)は、血漿ptau181<2.2pg/mL(すなわち、タウ病理を有しないと予測される人々)を有した。表1を参照のこと。
表1. 血漿ptau181状態によるベースライン特性
【表1-1】
【表1-2】
* 認知機能変動、幻視、REM睡眠障害、またはパーキンソニズム
パーセンテージとして示される場合を除いて、平均(SD)
注: ISLT(遅延)およびISLT(認識)に関しては、ベースラインptau<2.2pg/mLを有する1名のNFMD参加者、ptau>2.2pg/mLを有する1名のプラシーボ参加者においてデータが失われている。ベースラインptau181≧2.2pg/mLを有する1名の参加者においても、TUGデータが失われている。
【0066】
結果
主要分析(NTB zスコア、注意zスコア、TUG、CDR-SB)における顕著な処置効果を示した全4つのエンドポイントに関して、ベースラインptau181状態による結果の記述的評価は、陽性の処置効果が、タウ病理を有することに関する閾値(2.2pg/mL)未満であった患者に対するものであり、上記閾値を上回るベースライン血漿ptau181レベル、すなわち、タウ病理を有する人々に伴う識別可能な処置効果(陽性または陰性)はないことを明らかにした。
【0067】
LMMRM分析をベースラインでptau181<2.2pg/mLを有する患者に限った場合、両方の比較のために、NFMD 40mg TIDに有利となる有意な陽性の処置は、注意複合zスコアに関して認められ(プラシーボに対してp=0.021、差異=0.42 95% CI: 0.07, 0.78; プラシーボ TIDに対してp=0.034、差異=0.46 zスコア、95% CI: 0.04, 0.88)。図1を参照のこと。
【0068】
LMMRM分析を、ベースラインでptau181<2.2pg/mLを有する患者に限った場合、両方の比較のために、NFMD 40mg TIDに有利となる有意な陽性の処置は、TUGに関して認められた(プラシーボに対してp<0.001、差異= -3.1、95% CI: -4.7,-1.6; プラシーボ TIDに対してp=0.010、差異= -3.5秒、95% CI: -6.1,-0.9)。図2Bを参照のこと。
【0069】
LMMRM分析を、ベースラインでptau181<2.2pg/mLを有する患者に限った場合、両方の比較のために、NFMD 40mg TIDに有利となる有意な陽性の処置は、CDR-SBに関して認められた(プラシーボに対してp=0.031、差異= -0.60、95% CI: -1.14, -0.06; プラシーボ TIDに対してp=0.009、差異= -0.93点、95% CI: -1.61, -0.25)。図2Aを参照のこと。
【0070】
LMMRM分析を、ベースラインでptau181<2.2pg/mLを有する患者に限った場合、両方の比較のために、NFMD 40mg TIDに有利となる有意な陽性の処置は、NTB zスコアに関して認められたが、数字上は、NFMD 40mg TID処置に有利であった(プラシーボに対して差異=0.21、95% CI: -0.07,0.49; プラシーボ TIDに対して差異=0.25、95% CI: -0.07, 0.57)。サンプルサイズを限定すると、差異は、有意ではなかった(プラシーボに対してp=0.13、プラシーボ TIDに対してp=0.12)。しかし、NTBに関して、有意なPK-PD関係性(推定トラフ血漿ネフラマピモド薬物濃度 対 NTB zスコアに関して、p=0.035、r=0.46)が明らかになった。
【0071】
LMMRM分析を、ベースラインでptau181<2.2pg/mLを有する患者に限った場合、両方の比較のために、NFMD 40mg TIDに有利となる有意な正の傾向は、ISLD即時想起に関して(プラシーボに対してp=0.053、差異=2.1ワード、95% CI: -0.0, 4.2; プラシーボ TIDに対してp-0.063、差異=2.3ワード、95% CI: -0.1, 4.7)、NFMD 40mg TIDに有利となる有意な陽性の改善は、ISLD認識に関して(プラシーボに対してp=0.024、差異=1.4ワード、95% CI: 0.2, 2.5; プラシーボ TIDに対してp=0.035、差異=0.9ワード、95% CI: 0.1, 1.7)認められた。図3を参照のこと。ISLD認識に対する陽性効果は、ワーキングメモリに対する効果と一致する。
【0072】
主要エンドポイントの有効性分析は、ベースライン血漿ptau181<2.2pg/mLを有する患者(すなわち、実質的なタウ病理のない人々)における応答が、ベースライン血漿ptau181レベル≧2.2pg/mLを有する患者(すなわち、脳においてタウ病理、および潜在的には、AD関連混合病理を有する人々)における応答より良好であるようであることを示す。
【0073】
プロトコールが特定された有効性分析(反復測定混合モデル)を実質的なタウ病理のない患者に限定した場合、プラシーボに対するネフラマピモド処置効果の大きさは、かなりのものでありかつ臨床上重要である。表2を参照のこと。
表2: タウ病理のない(ベースライン血漿ptau181<2.2pg/mL)DLB患者集団におけるネフラマピモド有効性の概要
【表2】
集団全体における結果と比較した場合、個々のエンドポイントに関するプラシーボに対するネフラマピモド処置効果の大きさは、ベースラインで血漿ptau181<2.2pg/mLを有する集団において1.5~2.0倍大きかった。
【0074】
均等物および範囲
当業者は、単なる慣用的実験法を使用して、本明細書で記載される発明の具体的実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認し得る。本発明の範囲は、上記の詳細な説明に限定されることが意図されるのではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲に示されるとおりである。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レビー小体型認知症(DLB)を有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体を処置するための組成物であって、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを含み、前記組成物が前記被験体に投与されることを特徴とする、組成物
【請求項2】
前記p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターは、ネフラマピモドである、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中のptau181のレベルによって特徴づけられる、請求項1~2のいずれかに記載の組成物
【請求項4】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中のptau217のレベルによって特徴づけられる、請求項1~2のいずれかに記載の組成物
【請求項5】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、脳の陽電子放出断層撮影(PET)によって特徴づけられる、請求項1~2のいずれかに記載の組成物
【請求項6】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、前記被験体の脳脊髄液中のアミロイドβ(Aβ)42のレベルがアルツハイマー病を有すると診断された被験体のものより低いことと関連する、請求項1~2のいずれかに記載の組成物
【請求項7】
被験体において実質的なタウ病理がないことは、Simoa ptau 181アッセイにおいて測定される場合、アルツハイマー病またはアルツハイマー病関連病理を有する被験体のものより低い血漿ptauのレベルによって特徴づけられる、請求項5に記載の組成物
【請求項8】
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてα-シヌクレイン関連変性疾患を処置するための組成物であって、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを含み、前記組成物が前記被験体に投与されることを特徴とする、組成物
【請求項9】
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体の中枢神経系においてニューロン喪失を阻害するための組成物であって、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを含み、前記組成物が前記被験体に投与されることを特徴とする、組成物
【請求項10】
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてエンドソーム機能障害を逆転させるための組成物であって、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを含み、前記組成物が前記被験体に投与されることを特徴とする、組成物
【請求項11】
前記MAPKインヒビターは、ネフラマピモドである、請求項8~10のいずれか1項に記載の組成物
【請求項12】
前記ネフラマピモドは、40mg TIDで投与される、請求項11に記載の組成物
【請求項13】
前記被験体は、前脳基底部においてコリン作動性神経変性を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の組成物
【請求項14】
前記投与は、前記被験体の前脳基底部においてコリン作動性神経変性の症候性の影響の減少を生じる、請求項13に記載の組成物
【請求項15】
前記被験体は、内側中隔におけるシナプス機能障害、海馬におけるニューロン細胞喪失、内側中隔におけるニューロン喪失、または対角帯核の垂直脚におけるニューロン細胞喪失を有する、請求項1~14のいずれかに記載の組成物
【請求項16】
前記海馬におけるニューロン細胞喪失は、海馬のCA2-3領域におけるものである、請求項15に記載の組成物
【請求項17】
前記被験体は、
(a)注意複合zスコアによって測定される場合の注意、言語流暢性、エピソード記憶における欠損、
(b)Timed Up and Go(TUG)によって測定される場合の運動性における欠損、
(c)Clinical Dementia Rating Scale(CDR-SB)によって測定される場合の記憶、見当識、判断および問題解決、地域社会の用件、家庭生活および趣味の遂行、ならびにパーソナルケアにおける欠損、ならびに/あるいは
(d)神経心理学的検査群(NTB)によって測定される場合の神経心理学的活動における欠損、
を有する、請求項1~16のいずれかに記載の組成物
【請求項18】
前記被験体は、前記海馬においてαシヌクレイン沈着を有する、請求項1~17のいずれかに記載の組成物
【請求項19】
前記被験体は、アルツハイマー病を有しない、請求項1~18のいずれかに記載の組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
均等物および範囲
当業者は、単なる慣用的実験法を使用して、本明細書で記載される発明の具体的実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認し得る。本発明の範囲は、上記の詳細な説明に限定されることが意図されるのではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲に示されるとおりである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
レビー小体型認知症(DLB)を有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体を処置するための方法であって、前記方法は、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを前記被験体に投与する工程を包含する方法。
(項目2)
前記p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターは、ネフラマピモドである、項目1に記載の方法。
(項目3)
被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中のptau181のレベルによって特徴づけられる、項目1~2のいずれかに記載の方法。
(項目4)
被験体において実質的なタウ病理がないことは、血漿中のptau217のレベルによって特徴づけられる、項目1~2のいずれかに記載の方法。
(項目5)
被験体において実質的なタウ病理がないことは、脳の陽電子放出断層撮影(PET)によって特徴づけられる、項目1~2のいずれかに記載の方法。
(項目6)
被験体において実質的なタウ病理がないことは、前記被験体の脳脊髄液中のアミロイドβ(Aβ)42のレベルがアルツハイマー病を有すると診断された被験体のものより低いことと関連する、項目1~2のいずれかに記載の方法。
(項目7)
被験体において実質的なタウ病理がないことは、Simoa ptau 181アッセイにおいて測定される場合、アルツハイマー病またはアルツハイマー病関連病理を有する被験体のものより低い血漿ptauのレベルによって特徴づけられる、項目5に記載の方法。
(項目8)
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてα-シヌクレイン関連変性疾患を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法。
(項目9)
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体の中枢神経系においてニューロン喪失を阻害する方法であって、前記方法は、前記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法。
(項目10)
DLBを有するが、実質的なタウ病理を有しない被験体においてエンドソーム機能障害を逆転させる方法であって、前記方法は、前記被験体に、選択的p38αマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)インヒビターを投与する工程を包含する方法。
(項目11)
前記MAPKインヒビターは、ネフラマピモドである、項目8~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記ネフラマピモドは、40mg TIDで投与される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記被験体は、前脳基底部においてコリン作動性神経変性を有する、前述の項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記投与は、前記被験体の前脳基底部においてコリン作動性神経変性の症候性の影響の減少を生じる、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記被験体は、内側中隔におけるシナプス機能障害、海馬におけるニューロン細胞喪失、内側中隔におけるニューロン喪失、または対角帯核の垂直脚におけるニューロン細胞喪失を有する、項目1~14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記海馬におけるニューロン細胞喪失は、海馬のCA2-3領域におけるものである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記被験体は、
(a)注意複合zスコアによって測定される場合の注意、言語流暢性、エピソード記憶における欠損、
(b)Timed Up and Go(TUG)によって測定される場合の運動性における欠損、
(c)Clinical Dementia Rating Scale(CDR-SB)によって測定される場合の記憶、見当識、判断および問題解決、地域社会の用件、家庭生活および趣味の遂行、ならびにパーソナルケアにおける欠損、ならびに/あるいは
(d)神経心理学的検査群(NTB)によって測定される場合の神経心理学的活動における欠損、
を有する、項目1~16のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記被験体は、前記海馬においてαシヌクレイン沈着を有する、項目1~17のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記被験体は、アルツハイマー病を有しない、項目1~18のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】