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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】乳様生成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/00 20060101AFI20241106BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20241106BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20241106BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C12P21/00 A
C12N5/071
C12N5/10
A61P3/02
A61P43/00
A61K35/36
C07K14/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524437
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022080115
(87)【国際公開番号】W WO2023073119
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21205094.2
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】ハラー, コリンヌ
(72)【発明者】
【氏名】シャンブリン, ブリス
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキ, アリアナ
(72)【発明者】
【氏名】マシンチアン, オミッド
(72)【発明者】
【氏名】クラウス, マリン
(72)【発明者】
【氏名】デスタイラッツ, フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ヤート, ルシール
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC21
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB23
4B065BC41
4B065BC46
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB39
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZC51
4C087ZC80
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA61
4H045CA40
4H045DA37
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
哺乳動物乳様生成物、例えばヒト乳様生成物を製造するための方法であって、哺乳動物乳腺上皮細胞、例えばヒト乳腺上皮細胞に由来するラクトサイトを生成することと、並びに、ラクトサイトから哺乳動物乳様生成物、例えばヒト乳様生成物を発現させることと、を含む方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物乳様生成物を製造するための方法であって、
A)乳腺上皮細胞を培養培地中で培養して、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップと、
B)前記ラクトサイトから前記哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
ステップA)の持続時間が、14日以下であり、任意選択で14日間である、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
ステップA)からの前記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドが、任意選択でKRT-18及びERから選択される、1つ又は複数の乳腺陽性細胞マーカーを発現する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップA)からの前記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドが、誘導前と比較して誘導後に1つ以上の乳生物活性マーカーのmRNA発現が増加している、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップA)からの前記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドが、誘導前と比較して誘導後にLTFのmRNA発現が増加している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップA)からの前記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドが、誘導前と比較して誘導後にMFGE8のmRNA発現が増加している、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記培養培地が、適切な3次元培養系における、例えば三次元懸濁条件における、MammoCult培地である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップA)が更に、
i)前記乳腺上皮細胞を培養すること、及び
ii)乳タンパク質の発現を誘導すること、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップAのi)が、7日間以下であり、任意選択で7日間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップAのii)が、7日間以下であり、任意選択で7日間である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
ステップA)が更に、
i)前記乳腺上皮細胞を、基礎培地、増殖サプリメントを含み、ヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された完全MammoCult培地中で7日間培養することと、
ii)前記細胞を、EpiCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン、インスリン、FBS、プロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で7日間インキュベーションすることによって乳タンパク質発現を誘導することと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップA)が更に、
i)前記乳腺上皮細胞を、MammoCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン及びヘパリンを添加したMammoCultB培地中で7日間培養することと、
ii)EpiCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン、インスリン、FBS、プロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で7日間インキュベーションすることによって乳タンパク質発現を誘導することと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記乳様生成物を更に処理して、調整哺乳動物乳様生成物を生成するステップC)を任意選択で含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記乳腺上皮細胞が、ヒト乳腺上皮細胞である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項14の方法に従って得ることができるヒト乳様生成物。
【請求項16】
治療に使用するための、請求項15に記載のヒト乳様生成物。
【請求項17】
請求項15に記載のヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物としての、任意選択で母乳代替物としての、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物乳様生成物(product)、例えばヒト乳様生成物をインビトロで製造するための方法であって、哺乳動物乳腺上皮細胞、例えばヒト乳腺上皮細胞に由来するラクトサイトを、並びに/又は、かかるラクトサイトを含む乳腺様腺オルガノイドを、培養及び分化を介して生成することと、かかるラクトサイト及び/又は乳腺様腺オルガノイドから哺乳動物乳様生成物、例えばヒト乳様生成物を発現させることと、を含む方法に関する。本発明はまた、哺乳動物乳様生成物、例えば、かかる方法から得ることができるヒト乳様生成物に関する。
【0002】
[背景技術]
哺乳動物の乳、特にヒトの乳は、多数の成分を含む複雑な体液であり、その成分のそれぞれは、乳児及びおそらく母体の健康に実質的に寄与し得る。少なくとも6ヶ月齢まではヒト母乳が最も適切な栄養源であることが明らかになってきている。ヒト乳の多くの成分は、乳児用フォーミュラの製造の基礎となる牛乳中には全く見られないか、ほとんど見られないか、又は活性が低い。このような成分には、例えばタンパク質ラクトフェリン、増殖/成長因子、長鎖多価不飽和脂肪酸又はオリゴ糖が含まれる。ヒト乳組成物は、現在の乳児用フォーミュラを開発するためのゴールドスタンダードとして使用されているが、乳児用フォーミュラ組成物における最近の主要な開発にもかかわらず、現在の製造プロセスでヒト乳の複製物が達成されると考えることは非現実的である。
【0003】
今日、ヒト乳の唯一の供給源は、ヒトドナー(授乳中の母親)である。献乳は、非商業的使用(ヒト乳バイオバンク)及び商業的使用について報告されている。しかしながら、献乳は限られており、強い規制、安全性、及び時には倫理的又は宗教的制約を伴う。
【0004】
哺乳動物の乳、特にヒト乳中には幹細胞が見出されており、ヒト母乳幹細胞(HBsC)と呼ばれている。hBSCは、高度に可塑性であり、培養において複数の細胞種に分化し、より重要なことには、ヒト乳腺の小葉-腺房(lobulo-alveolar)構造を形成するのに必要な3つの系統に分化することが示されている(Hassiotou F.et al.Stem Cells.2012)。しかしながら、ヒト母乳を製造させるためのhBSCの使用は、ヒトドナーを必要とするため、実用的でもなく、持続可能でもない。
【0005】
人工多能性幹細胞(iPSC)と呼ばれる、幹細胞機能を有する細胞株をベースとした技術が知られている。ヒトiPSC(hiPSC)からヒト乳腺様オルガノイド(mammary like organoids)を生成するための信頼できる2ステッププロトコルが開発されている(Ying Qu et al,Stem Cell Report vol 8,205-215,February 14th,2017)。
【0006】
したがって、本発明の目的は、乳腺細胞を製造するための代替的かつ改善された方法であって、初期段階の未分化幹細胞を使用することなく、培養細胞において哺乳動物乳、例えばヒト乳の発現を再現する方法を提供することである。また、本発明の目的は、レシピエントの特異的なニーズに適合させることができる培養細胞において、カスタマイズされた哺乳動物乳様生成物、例えばヒト乳様生成物を調製すること、及び/又は、やはり幹細胞を使用せずに、乳幼児期栄養のための既存のウシベースのソリューションを補完するためのヒト乳生物活性物質を製造することである。
【0007】
[発明の概要]
本発明は、上記の技術的課題を解決する。
本明細書中で提供されるのは、哺乳動物乳様生成物を製造するための方法であって、
A)乳腺上皮細胞を培養培地中で培養して、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップと、
B)該ラクトサイトから哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップと、を含む、方法である。
【0008】
本明細書中に記載の方法に従って得ることができるヒト乳様生成物も、本明細書で提供される。
【0009】
治療に使用するための、本明細書中に記載の方法によるヒト乳様生成物も、本明細書で提供される。
【0010】
本明細書中に記載の方法によるヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物、任意選択で母乳代替物としての使用も、本明細書で提供される。
【0011】
[発明を実施するための形態]
定義
本発明の文脈において、「インビトロ」という用語は、試験管、培養皿、バイオリアクター又は生きている生物の体外の任意の場所で行われるか又は生じることを意味する。
【0012】
本発明の文脈において、「哺乳動物」という用語は、哺乳動物種、例えばヒト、ウシ、サル、ラクダ、ヒツジ、ヤギなどに属する動物を指す。
【0013】
本発明の文脈において、用語「ラクトサイト」又は「乳腺様細胞」は、CK18細胞マーカーを発現し、哺乳動物乳腺上皮細胞に由来し、特にヒト乳腺上皮細胞に由来する、分泌上皮細胞を指す。本明細書中で使用されるヒト乳腺上皮細胞は、市販されており、任意の適切な細胞株から選択され得る。本発明の文脈における適切なヒト乳腺上皮細胞株は、例えば、MCF-10などの非腫瘍形成性細胞株であるか、又はMCF-7などの腫瘍形成性細胞株であり得る。
【0014】
本発明の文脈において、「乳腺様(mammary gland like)オルガノイド」又は「乳腺様(mammary like)オルガノイド」という用語は、二次元又は三次元(2D/3D)で発達し、上記で定義されたようなラクトサイトを含む、乳腺のミニチュア化及び単純化されたバージョンを意味する。
【0015】
本発明の文脈において、「ヒト乳様生成物」という用語は、細胞培養した乳生成物である。かかる生成物は、本発明の方法に従って生成されたラクトサイト及び/又は乳腺様オルガノイドによって発現される食用生成物である。
【0016】
本発明による「ヒト乳様生成物」は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳と同じ成分(例えば、生物活性物質、多量栄養素及び微量栄養素並びにそれらのレベルの観点による)を有することができる。これを本明細書では「標準ヒト乳生成物」と称する。あるいは、本発明による「ヒト乳様生成物」は栄養状態の良好な母親のヒト母乳に天然に見られるものとは異なる成分比及び成分濃度を有し得る。これを本明細書では「非標準乳様生成物」と称する。本発明による「ヒト乳様生成物」は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に天然には見出されない成分を含むように調整することができる(「調整(modified)乳様生成物」)。ヒト乳様生成物の非限定的な例は、サプリメント、強化剤、ヒト母乳代替物(又は代用物)、ならびに生物活性物質の1つ及び/又は一部のみに富んだ原材料、栄養状態の良好な母親のヒト母乳に典型的に見出すことができる多量栄養素及び微量栄養素からなる群から選択される。
【0017】
「ヒト乳様生成物」は、自然に分泌される乳を摂取する代わりに使用することができる(「ヒト乳代替物」)。乳代替生成物は、天然に分泌された乳と組み合わせて摂取されるサプリメント(「ヒト乳サプリメント」)又は強化剤(「ヒト乳強化剤」)として使用することができる。
【0018】
一実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物は、少なくとも、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に典型的に見出すことができる多量栄養素及び微量栄養素を含む。一実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、タンパク質、ペプチド、脂質(リノール酸及びα-リノレン酸を含む)、炭水化物、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンC及びビオチンを含む)、ミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、塩化物、カリウム、マンガン、ヨウ素、セレン、銅及び亜鉛を含む)、コリン、ミオイノシトール及びL-カルニチンを含む。一実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、増殖/成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、エキソソーム由来の生物活性物質(例えば、miRNA)及び分泌型IgAからなる群から選択される、少なくとも1つの生物活性物質も含む。本発明による標準ヒト乳様生成物は、天然に生じるヒト母乳分泌物ではない。
【0019】
別の実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、それを受ける乳児の具体的なニーズに適合させることができる。本発明によるヒト乳様生成物は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に典型的に見出され得る、生物活性物質、多量栄養素及び微量栄養素のうちの1つのみ及び/又は一部を含み得る。かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、「非標準ヒト乳様生成物」という用語で称されることもある。一実施形態では、本発明による非標準ヒト乳様生成物は、タンパク質、ペプチド、脂質(リノール酸及びα-リノレン酸を含む)、炭水化物(ヒト乳オリゴ糖を含む)、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンC及びビオチンを含む)、ミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、塩化物、カリウム、マンガン、ヨウ素、セレン、銅及び亜鉛を含む)、コリン、ミオイノシトール、L-カルニチン、増殖/成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、エキソソーム由来の生物活性物質(例えば、miRNA)及び分泌型IgAからなる群から選択される、1つ以上の栄養素又は生物活性物質を含む。
【0020】
本発明の文脈において、「無調整ヒト乳様生成物」という用語は、ラクトサイトによって、及び/又は本発明の方法のステップA)及びステップB)に従って生成された乳腺様オルガノイドによって発現され、本発明の方法の任意のステップC)によるさらなる処理に供されていない、ヒト乳様生成物を示す。無調整ヒト乳様生成物は、標準及び非標準ヒト乳様生成物のいずれをも含み得る。非標準ヒト乳様生成物の非限定的な例は、サプリメント、強化剤、ならびに栄養状態の良好な母親のヒト母乳に典型的に見出され得る、生物活性物質、多量栄養素及び微量栄養素のうちの1つのみ及び/又は一部に富んだ原材料からなる群から選択される。
【0021】
本発明の文脈において、「調整ヒト乳様生成物」という用語は、ラクトサイトによって、及び/又は本発明の方法のステップA)及びステップB)に従って生成された乳腺様オルガノイドによって発現され、本発明の方法の任意のステップC)によるさらなる処理に供されている、ヒト乳様生成物を示す。
【0022】
調整ヒト乳様生成物は、標準及び非標準ヒト乳様生成物のいずれをも含み得る。
【0023】
本発明の文脈において、「EB」という用語は、「胚様体」を意味する。
【0024】
本発明の文脈において、「mEB」という用語は、「MammoCult培地で培養された胚様体」を意味する。
【0025】
MammoCult培地は、基礎培地、少なくとも1種類の増殖サプリメント、ヘパリン及びヒドロコルチゾンを含む、無血清培養培地を指す。
【0026】
本発明の文脈において、「胚様体(EB)」、「MammoCult培地で培養された胚様体(mEB)」、「マンモスフェア」及び/又は「スフェロイド」という用語は、本発明の方法のステップA)下で懸濁液中に形成された三次元凝集体を指す。
【0027】
本発明の文脈における「乳児」という用語は、12ヶ月齢未満、例えば9ヶ月齢未満、特に6ヶ月齢未満の小児を指す。
【0028】
本発明の文脈において、乳児は、正期産児又は早期産児のいずれかであり得る。本発明の一実施形態では、乳児は、早期産児及び正期産児の群から選択される。
【0029】
用語「正期産児」は、正期産又は37週以上の在胎齢で生まれた乳児を指す。
【0030】
用語「早期産児」は、37週未満の在胎齢で生まれた乳児を指す。
【0031】
本発明の文脈において、「出生時体重」という用語は、出生後に胎児又は新生児が獲得していた最初の体重を意味する。
【0032】
本発明の文脈において、「低出生体重」という用語は、2500g未満(2499g以下)の出生時体重を意味する。
【0033】
本発明の文脈において、「極低出生時体重」という用語は、1500g未満(1499g以下)の出生時体重を意味する。
【0034】
本発明の文脈において、「超低出生時体重」という用語は、1000g未満(999g以下)の出生時体重を意味する。
【0035】
用語「在胎不当過小児」は、在胎期間別成長チャート(gestational growth chart)の出生時体重に対する平均基準よりも2標準偏差を超えて低い出生時体重を有する乳児、又は同じ在胎齢の乳児から得られた集団ベースの体重データの10thパーセンタイル未満の出生時体重を有する乳児を指す。「在胎不当過小児」という用語には、構造的(constitutive)もしくは遺伝的起源のいずれかにより、又は子宮内発育遅延の結果として、出生時に小さい乳児が含まれる。
【0036】
本発明の文脈において、「幼児(young children)」又は「低年齢の小児(toddler)」という用語は、1~3歳の小児を示す。
【0037】
本明細書で使用される「乳児用フォーミュラ」という用語は、乳児を対象とし、Codex Alimentarius、(Codex STAN 72-1981)、及びCodex Alimentarius、(Codex STAN 72-1981)に定義されている乳児用特別用途食品(特別医療目的用食品を含む)に定義されている栄養組成物を指す。乳児用フォーミュラはまた、出生後1ケ月の間の乳児の特定の栄養補給用途を意図する食品であって、当該フォーミュラそのものによって、このカテゴリーに該当する乳児の栄養要件(乳児用フォーミュラ及びフォローオンフォーミュラに対する、Article 2(c)of the European Commission Directive 91/321/EEC 2006/141/EC of 22 December 2006)を満たす、食品を指す。乳児用フォーミュラは、スターター乳児用フォーミュラ及びフォローアップフォーミュラ又はフォローオンフォーミュラを包含する。一般に、スターターフォーミュラは、出生時からの乳児のための母乳代替物であり、フォローアップフォーミュラ又はフォローオンフォーミュラは6ヶ月以降のためのものである。
【0038】
「グローイングアップミルク」(又はGUM)は、1年目以降から与えられる。このミルクは、概して、特に小児の栄養必要量に合わせて調整された乳系飲料である。かかる飲料は、他の食品と組み合わせて12ヶ月齢から2~3歳の小児に与えるために使用される栄養組成物である。
【0039】
本発明の文脈において、「強化剤」という用語は、乳児又は幼児に対して栄養上の利益を有する1つ以上の栄養素を含む組成物を指す。
【0040】
「乳強化剤」という用語は、ヒト母乳、乳児用フォーミュラ、グローイングアップミルク、又は他の栄養素で強化されたヒト母乳のいずれかを強化又は補充するために使用される任意の組成物を意味する。したがって、本発明のヒト乳強化剤は、ヒト母乳、乳児用フォーミュラ、グローイングアップミルク、又は他の栄養素で強化されたヒト母乳に溶解させた後に投与することができ、あるいは独立した組成物として投与することができる。
【0041】
独立した組成物として投与される場合、本発明のヒト乳強化剤は、「サプリメント」であると特定することもできる。一実施形態では、本発明の乳強化剤はサプリメントである。
【0042】
「ヒト乳強化剤」という用語は、ヒト母乳、又は他の栄養素で強化されたヒト母乳を強化又は補充するために使用される任意の組成物を意味する。本発明による「ヒト乳強化剤」は、極低出生時体重(very low birth weight、VLBW)又は超低出生時体重(extremely low birth weight、ELBW)を有する早産で生まれた乳児に投与されることが意図され得る。
【0043】
本発明による乳強化剤は、液体形態の粉末であってもよい。
【0044】
液体形態を有する乳強化剤組成物は、いくつかの特定の利点を示す。例えば、液体製剤は、特定の重量又は体積の較正された液滴を送達する包装と組み合わせられる場合、より便利であり得る。
【0045】
更に、液体製剤は強化される組成物と混合するのがより容易であるが、粉末製剤は場合によっては塊を形成することがある。
【0046】
本明細書におけるEpiCult培地又はEpiCultB培地への言及は、ヒドロコルチゾン、インスリン、FGF10及びHGFを含む無血清培養培地を指す。
【0047】
本明細書中に開示される培養培地は、微生物(microorganism)の成長及び分化を支援するように設計された、必須栄養素を含む固体、半固体又は液体を指す。MammoCult培地は、本発明において使用され得る培養培地の一例である。
【0048】
本発明による方法及び使用
本発明は、特定の条件下で培養される哺乳動物上皮細胞を使用して乳腺細胞を製造する方法、及び該乳腺細胞を使用して哺乳動物乳様生成物をインビトロで製造する方法に関する。
【0049】
驚くべきことに、本発明では、哺乳動物乳様生成物を製造するためのプロトコルにおいて、乳腺上皮細胞を開始材料として使用できることが実証された。乳腺上皮細胞を開始材料として使用することは、例えば、初期段階の未分化幹細胞から乳腺上皮細胞を最初に製造するための複雑な分化プロトコルの必要がないことを意味する。このような必要がないことは、幹細胞プロトコルと比較して、哺乳動物乳様生成物を製造するための方法の全体の時間を短縮し、費用を節約するという利益を有する。
【0050】
したがって、本発明は、哺乳動物乳様生成物を製造するための方法であって、
A)乳腺上皮細胞を培養培地中で培養して、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップと、
B)該ラクトサイトから哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップと、を含む方法、に関する。
【0051】
哺乳動物乳様生成物の製造
本発明は、本明細書で定義されるようなステップA)及びステップB)のいずれか、ならびに本明細書で定義されるような任意のステップC)を含む、明細書で定義される哺乳動物乳様生成物を製造するための方法に関する。
【0052】
ステップA ラクトサイト及び/又は乳腺様オルガノイドを生成するステップ
本発明の方法によれば、乳腺様細胞及び/又はオルガノイド構造は、ステップA)下で生成される。
【0053】
この生成には、乳腺上皮細胞を成長及び成熟させて乳腺様オルガノイド(例えば、ラクトサイト)を製造することが含まれる。
【0054】
本明細書に開示される方法では、乳腺上皮細胞が開始材料として使用され、すなわち、上皮細胞の培養が本方法の第1のステップである。
【0055】
乳腺上皮細胞の成長及び成熟は、特定の培養培地、例えば完全MammoCult培地(StemCell Technologies)中で乳腺上皮細胞を培養することによって生じる。完全MammoCult培地は、好ましくは、基礎培地、増殖サプリメント、ヘパリン(典型的には4μg/mL)、及びヒドロコルチゾン(典型的には0.48μg/mL)から構成される。培地は通常3日毎に交換される。次いで、前記ステップで得られたmEB(マンモスフェア)を非神経外胚葉細胞に富ませる。
【0056】
いくつかの実施形態では、成長及び成熟段階は、0日目~7日目であり、0日目は、乳腺上皮細胞が初めて培養培地に添加される時点である。いくつかの実施形態では、成長及び成熟段階は、7日間である。いくつかの実施形態では、成長及び成熟段階は、7日間以下である。
【0057】
成長及び成熟段階の後、細胞は、乳タンパク質の発現を誘導される。いくつかの実施形態では、誘導期間は、7日間~14日間である。いくつかの実施形態では、誘導期間は、7日間である。いくつかの実施形態では、誘導期間は、7日間以下である。
【0058】
本発明の一実施形態では、ヒト乳様生成物を製造するための方法であって、ステップA)下でヒト乳腺上皮細胞からラクトサイトを生成することを含み、かかるステップA)が、
i)適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中でヒト乳腺上皮細胞を培養して、7日後、ラクトサイトを生成することを含む、方法が提供される。
【0059】
別の実施形態では、ヒト乳様生成物を製造するための方法であって、ステップA)下でヒト乳腺上皮細胞からラクトサイトを生成することを含み、かかるステップA)が、
i)非接着条件下で、適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中でヒト乳腺上皮細胞を少なくとも7日間培養して、ラクトサイトを生成することを含む、方法が提供される。
【0060】
一実施形態では、本発明による方法は、ヒト乳様生成物を分泌することができるヒト乳腺上皮細胞に由来するラクトサイトを生成するように調節した、ステップA)による培養条件を提供する。
【0061】
好ましい実施形態では、ヒト乳代用生成物を製造するための方法であって、ステップA)下でヒト乳腺上皮細胞からラクトサイトを生成することを含む方法が提供され、かかるステップA)は、本明細書中に記載される適切な三次元培養系(例えば、三次元懸濁条件)において乳腺上皮細胞を成長及び成熟させて乳腺細胞(例えば、ラクトサイト)へと分化させることを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも7日間。いくつかの実施形態では、7日間以下。
【0062】
別の好ましい実施形態では、ヒト乳様生成物を製造するための方法であって、ステップA)下でヒト乳腺上皮細胞からラクトサイトを生成することを含み、かかるステップA)が、
i)乳腺上皮細胞を、適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中で、適切な三次元培養系(例えば、三次元懸濁条件)において、少なくとも7日間(0日~7日間)培養して、ラクトサイトを生成することを含む、方法が提供される。
【0063】
本発明の特に好ましい実施形態では、ヒト乳様生成物を製造する方法であって、ステップA)下でヒト乳腺上皮細胞からラクトサイトを生成することを含み、その際、
i)基礎培地、増殖サプリメントを含み、ヘパリン(典型的には4μg/mL)、ヒドロコルチゾン(典型的には0.48μg/mL)が添加された完全MammoCult培地(StemCell Technologies社)中で、7日間にわたって(0日~7日)乳腺上皮細胞を培養すること、及び
ii)EpiCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン、インスリン、FBS、プロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で細胞を7日間(7日~14日)インキュベーションすることにより乳タンパク質の発現を誘導すること、を含む、方法が提供される。
【0064】
ステップii)は、好ましくは、乳タンパク質発現細胞、特にラクトサイト、及び/又は乳腺様腺オルガノイドへの分化をもたらす。
【0065】
本発明のさらなる特に好ましい実施形態では、ヒト乳様生成物を製造する方法であって、ステップA)下でヒト乳腺上皮細胞からラクトサイトを生成することを含み、その際、
i)MammoCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン、ヘパリンを添加したMammoCultB培地中で、乳腺上皮細胞を、本明細書中に記載されるように7日間(0日~7日)培養すること、及び
ii)EpiCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン、インスリン、FBS、プロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で細胞を7日間(7日~14日)インキュベーションすることにより乳タンパク質の発現を誘導すること、を含む、方法が提供される。
【0066】
ステップii)は、好ましくは、乳タンパク質発現細胞、特にラクトサイト、及び/又は乳腺様腺オルガノイドへの分化をもたらす。
【0067】
一実施形態では、特に好ましい実施形態について上記で定義されたステップii)は、好ましくは、少なくとも乳房細胞、管腔細胞、及び基底細胞への形成/分化をもたらす。これに関連して、乳房細胞は、好ましくは、β-カゼイン、乳タンパク質、及びホルモン受容体からなる群から選択されるマーカーの1つ又は複数、好ましくはすべてを発現する。更に、管腔細胞は、好ましくは、EpCAM、MUC1、CD49F、GATA3、CK8、及びCK18からなる群から選択されるマーカーの1つ又は複数、好ましくはすべてを発現する。更に、基底細胞は、好ましくは、CK14、α-平滑筋アクチン及びP63からなる群から選択される、1つ又は複数のマーカーを発現する。
【0068】
さらなる一実施形態では、特に好ましい実施形態について上で定義したステップii)の後に、β-カゼイン、乳タンパク質及びホルモン受容体からなる群から選択される、1つ又は複数のマーカーを発現する乳腺様オルガノイド、EpCAM、MUC1、CD49F、GATA3、CK8、CK18からなる群から選択される、1つ又は複数のマーカーを発現する管腔細胞、ならびにCK14、α-平滑筋アクチン及びP63からなる群から選択される、1つ又は複数のマーカーを発現する基底細胞を得ることができる。
【0069】
本発明の一実施形態では、上記の方法は、ヒト乳様生成物を製造するために提供される。
【0070】
(ステップAの)一実施形態では、栄養素及び生体模倣刺激の送達は、細胞成長、分化、及び組織形成に影響を及ぼすように制御される。(ステップAの)一実施形態では、かかる制御は、バイオリアクター内で行われる。
【0071】
いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、乳腺特異的マーカーの高発現を有する。いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、ケラチン18(KRT-18)を発現する。いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、エストロゲン受容体(ER)を発現する。いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、59%を超えるKRT-18及びERをエストロゲン受容体陽性管腔乳腺集団として発現する。
【0072】
いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、重要な乳生物活性物質の高発現を有する。いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、重要な乳生物活性物質の発現が増加している。いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、誘導前(例えば7日目)と比較して誘導後(例えば14日目)に、重要な乳生物活性物質の発現が増加している。いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、誘導前と比較して誘導後にラクトフェリン(LTF)のmRNA発現が増加している。いくつかの態様では、ステップAに由来する乳腺様腺オルガノイド又はラクトサイトは、誘導前と比較して誘導後にMFGE8(milk fat globule-EGF factor 8)のmRNA発現が増加している。
【0073】
本明細書に開示される任意の方法又は方法ステップは、支持体として膜マトリックスを使用するのではなく、三次元懸濁培養において行われ得ることが理解されるであろう。したがって、いくつかの実施形態では、全ての分化手順の間、細胞は懸濁培養で維持される。
【0074】
ステップB ヒト母乳様生成物の発現
本発明の一実施形態では、本方法は、好ましくはステップAに従って調製される、ヒト乳腺上皮細胞に由来する乳腺様オルガノイドから、ヒト乳様生成物を発現させることを含む。ヒト乳様生成物の発現は、好ましくは、かかるラクトサイト及び/又は乳腺様腺オルガノイドからのヒト乳様生成物の発現の誘導時に生じる。
【0075】
一実施形態では、泌乳期のラクトサイトは、催乳(lactogenic)因子(例えば、プロラクチン、ヒドロコルチゾン、及びインスリン)を添加した特定の培地(例えば、EpiCultB)を適用することによって誘導される。
【0076】
特に、好ましくはステップA)に従って調製された、ヒト乳腺上皮細胞に由来する乳腺様オルガノイドから得られるヒト乳様生成物は、タンパク質、脂質又はオリゴ糖、好ましくはヒト乳オリゴ糖などを含むか又はそれらからなる群から選択されるヒト乳の生物活性物質を含有する。本発明者らは、特に、上記で実施されたステップAのi)~iv)による特に好ましいプロトコルを用いて、とりわけ、オリゴ糖(ラクトース及びいくつかのHMOを含む)、脂質(4つの脂肪酸を含む)、タンパク質(カゼインを含む7つが検出)、及びmiRNA(HBMにおいて典型的に検出される11を含む、75が検出)を同定することに成功した。
【0077】
一実施形態では、好ましくはステップA)に従って調製された、ヒト乳腺上皮細胞に由来する乳腺様オルガノイドから得られたヒト乳様生成物は、オリゴ糖、脂質、タンパク質、エキソソーム及びmiRNAを含むか又はそれらからなる群から選択される、ヒト乳の生物活性物質を含有する。
【0078】
別の態様では、好ましくはステップA)に従って調製された、ヒト乳腺上皮細胞に由来する乳腺様オルガノイドから得られるヒト乳様生成物は、ラクトース、6’SL、C-4:0脂肪酸、C-8:0脂肪酸、C-10:0脂肪酸、C-14:0脂肪酸、C-15:0脂肪酸、C-16:0脂肪酸、C-16:1n7脂肪酸、C-17:0脂肪酸、C-18:0脂肪酸、C-18:1 n9脂肪酸、C-18:1脂肪酸、C-18:2 n6脂肪酸、C-20:0脂肪酸、C-20:1 n9脂肪酸、C-18:3 n3脂肪酸、C-22:0脂肪酸、ラクトフェリン、アルブミン、プロラクチン、アルファS1-カゼイン、ヘモグロビンサブユニットベータ、ヘモグロビンサブユニットアルファ、α-ラクトアルブミン、アルファ-2-マクログロブリン、β-カゼイン、胆汁酸塩活性化リパーゼ、κ-カゼイン、ラクトアドヘリン、CD14、脂肪酸シンターゼ、IgA、pIgR、血清アルブミン、キサンチンデヒドロゲナーゼ、エキソソーム、miR-21-5p、miR-181a-5p、miR-30d-5p、miR-30b-5p、miR-22-3p、miR-146b-3p、miR-30c-5p、miR-30a-5p、miR-30e-5p及びmiR-148b-3pを含むか又はそれらからなる群から選択されるヒト乳生物活性物質を含む。
【0079】
本発明の一実施形態では、ヒト乳腺上皮細胞に由来する乳腺様オルガノイドから得られるヒト乳様生成物は、標準ヒト乳生成物である。本発明の別の実施形態では、ヒト乳腺上皮細胞に由来する乳腺様オルガノイドから得られるヒト乳様生成物は、非標準ヒト乳生成物である。
【0080】
ステップC 調整ヒト母乳様生成物を製造するためのさらなる処理
本発明の任意の一実施形態では、本明細書に記載の方法は、ステップB)から得ることができるヒト乳様生成物に対して行われ、かかる生成物に対して追加の処理を行って調整ヒト乳様生成物を提供することを含む追加のステップC)を含む。
【0081】
特定の一実施形態では、本発明のヒト母乳様生成物に対して行われる追加の処理ステップC)は、精製ステップ、単離プロセス、抽出プロセス、分画ステップ、富化プロセス、酵素処理、さらなる成分(例えば、ヒト乳腺オルガノイドによって発現され得ないもの(例えば、免疫グロブリン、プロバイオティクス及び/又はミネラルなど))の添加又はそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0082】
ヒト乳様生成物
「標準」ヒト母乳様生成物
本発明の一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、「標準」ヒト母乳様生成物であり、すなわち、栄養状態の良好な母親のヒト母乳と同じ成分を含む。
【0083】
母乳育児の利点は科学文献において周知であり、ヒト母乳様生成物へのアクセスが可能になることで、かかる生成物を多くの同様に周知の健康上の利点のために使用可能になる。
【0084】
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、実際の授乳が不可能な状況下で、母乳代替物として使用することができる。
【0085】
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、例えば、泌乳が少ない女性、又は出産の6ヶ月後に泌乳しなくなった女性の授乳経験がより長期間になるよう支援するために使用されることが意図される。
【0086】
同様に、ヒト母乳様生成物は、例えば、病気により母親からの実際の授乳が損なわれる状況下であっても、授乳を可能にするために使用されることが意図される。
【0087】
別の実施形態では、ヒト母乳様生成物は、母乳の産生が自然に開始されない状況、例えば乳児を養子とした場合に使用されることが意図される。
【0088】
一実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、天然に生じるとおりのヒト母乳授乳期の生成物ではない。
【0089】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、乳児に最適な栄養を提供する際に使用するためのものである。
【0090】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、乳児に健康な発育を提供する際に使用するためのものである。
【0091】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、幼児における感染、肥満の予防及び免疫発達の促進に使用するためのものである。
【0092】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、無調整ヒト母乳様生成物である。
【0093】
別の実施形態では、ヒト母乳様生成物は、調整ヒト母乳様生成物である。
【0094】
一実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン及びミネラルを含む。
【0095】
別の実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル及び生物活性物質を含む。
【0096】
一実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、タンパク質、脂質(リノール酸及びα-リノレン酸を含む)、炭水化物、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンC及びビオチンを含む)、ミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、塩化物、カリウム、マンガン、ヨウ素、セレン、銅及び亜鉛を含む)、コリン、ミオイノシトール及びL-カルニチンを含む。
【0097】
さらなる実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物はまた、増殖/成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、エキソソーム由来の生物活性物質(例えば、miRNA)及び分泌型IgAからなる群において選択される、少なくとも1つの生物活性物質を含む。
【0098】
かかるヒト母乳様生成物は、例えば、増殖/成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、エキソソーム由来の生物活性物質(例えば、miRNA)及び分泌型IgAを添加するステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って調製され得る。
【0099】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、プロバイオティクスを含有する。
【0100】
かかるヒト母乳様生成物は、例えば、いくつかの商業的に入手可能な供給源から得ることができるプロバイオティクス(例えば、B.ラクティス(B.Lactis)、B.インファンティス(B.Infantis)、L.ラムノサス(L.Ramnhosus))を含有させることにより、本発明の方法に従い調製され得る。
【0101】
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、胃腸機能を最適化するため、及び/又は免疫を促進するために使用され得る。
【0102】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、分泌型IgA及びプロバイオティクスを含有する。
【0103】
かかるヒト母乳様生成物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/156301号及び国際公開第2009/156367号に記載されているように調製することができるプロバイオティクスと分泌型IgAとの組合せを添加するステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って調製することができる。かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、免疫グロブリンの欠乏を予防するために、及び/又は乳児及び幼児における再発感染の予防において使用され得る。
【0104】
「非標準」ヒト母乳様生成物
本発明の一実施形態では、ヒト乳様生成物は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に天然に見出される成分比及び成分濃度とは変更させることができる。これを本明細書では「非標準乳様生成物」と称する。
【0105】
一実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、乳強化剤、サプリメント、及び/又は特別な目的に適合させたヒト母乳代用物からなる群から選択され得る。
【0106】
ヒト乳強化剤及びヒト乳生物活性サプリメント
一実施形態では、本発明の方法は、授乳中の母親から自然に得られるヒト母乳を強化するために、又は乳児用フォーミュラを強化するために使用することができるヒト母乳様生成物を提供する。
【0107】
別の実施形態では、本発明の方法は、必要に応じて乳児又は幼児のためのサプリメントとして使用され得るヒト母乳様生成物を提供する。
【0108】
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、健康な発育を提供するために、及び/又は、乳児又は幼児における特定の状態(例えば、ぜんそく、アレルギー、認知変化など)に典型的に関連する病気を発症するリスクを低減するために、及び/又は、発育、免疫力の発達、感染からの保護を促進するために、使用され得る。
【0109】
注目すべきことに、かかる強化剤又はサプリメント中の成分(特に生物活性成分)がヒト起源であることは、それらが本発明の方法によるものであるという事実と相まって、かかる成分にそのままの(intact)又はより高い機能性を提供すると考えられる。
【0110】
ヒト母乳様生成物は、好ましくは強化剤としての使用が意図される。かかるヒト母乳様生成物は、強化剤としての使用が意図され、例えば、ステップB)から得ることができるヒト母乳様生成物からの(特定の)生物活性物質の単離及び/又は富化のステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って調製され得る。かかる単離ステップは、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物の古典的な分画、富化及び/又は精製を介して行われてもよい。
【0111】
サプリメントとしての使用が意図されるヒト母乳様生成物は、ヒト乳オリゴ糖(例えば、2 FL、3 FL、LNT、LnNT、DiFl、6SL及び/又は3SL)、脂質、増殖/成長因子(例えば、上皮増殖因子(EGF)、ヘパリン結合上皮増殖因子)、サイトカイン(例えば、形質転換増殖因子-β2(TGFβ-2)、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-18、インターフェロンガンマ(INF-γ)、TNF-α)、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、マイクロRNAを含むエキソソーム、及び抗菌/保護の生物活性物質(例えば、IgA、ラクトフェリン、リゾチーム、ラクトアドヘリン)からなる群から選択される、1つ以上の生物活性物質を含み得る。サプリメントとしての使用が意図されるかかるヒト母乳様生成物は、例えば、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物から生物活性物質を単離するステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って調製されてもよい。かかる単離ステップは、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物の古典的な分画、富化及び/又は精製を介して行われてもよい。
【0112】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、フコシル化ヒト乳オリゴ糖、例えば2FL及び/又は3FLを含有するサプリメント又は乳強化剤である。かかるサプリメント又は乳強化剤は、FUT2遺伝子が不活性であることに起因してフコシル化オリゴ糖を分泌しない女性のヒト母乳のプロファイルを充足させる際に使用するためのものである。
【0113】
強化剤又はサプリメントとしての使用が意図されるかかるヒト母乳様生成物は、例えば、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物からフコシル化オリゴ糖(例えば、2FL及び/又は3FL)を単離及び/又は富ませるステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って調製されてもよい。
【0114】
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、胃腸機能を最適化するため、及び/又は免疫を促進するために使用され得る。
【0115】
遺伝的疾患を有する乳児のためのヒト母乳様生成物
一実施形態では、本発明によるヒト母乳様生成物は、遺伝的疾患を有して生まれた乳児の特異的なニーズに対処するように適合され得る。
【0116】
ガラクトース血症
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、ガラクトース血症に罹患している乳児のニーズに適合させることができる。ガラクトース血症は、乳児のガラクトース代謝能に影響を及ぼす稀な遺伝子疾患である。
【0117】
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、ラクトース及び/又はラクトース含有サッカリドを除去されるべきである。かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、ガラクトース血症に罹患した乳児に健康な発育を提供するために使用され得る。
【0118】
一実施形態では、ラクトース及び/又はラクトース含有サッカリドが除去されたヒト母乳様生成物は、ステップB)から得られる無調整ヒト母乳様生成物の、酵素処理(ラクターゼ処理)のステップC)、又は膜分画及び限外濾過のステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って得られ得る。
【0119】
フェニルケトン尿症
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、フェニルケトン尿症(PKU)に罹患している乳児のニーズに適合させることができる。PKUは、フェニルアラニンをチロシンに変換するフェニルアラニンヒドロキシラーゼが存在しないこと又は機能不全であることに起因する。未処置では、脳毒性により重度の精神遅滞がもたらされる。
【0120】
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、フェニルアラニンを除かれる(deprived)か又は枯渇されるべきである。
【0121】
かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、PKUに罹患した乳児に健康な発育を提供するために使用され得る。
【0122】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、フェニルアラニン含量がそれを受ける対象の体重1kg当たり20mg未満に維持されるようにフェニルアラニンが枯渇している。
【0123】
一実施形態では、フェニルアラニンが枯渇又は除去されたヒト母乳様生成物は、ステップB)から得られる無調整ヒト母乳様生成物の、酵素処理(タンパク質加水分解)又は濾過のステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って得ることができる。
【0124】
一実施形態では、フェニルアラニンが枯渇したヒト母乳様生成物は、ステップB)から得られる無調整ヒト母乳様生成物の酵素処理(タンパク質加水分解)又は濾過のステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って得ることができる。
【0125】
別の実施形態では、フェニルアラニンが枯渇したヒト母乳様生成物は、ステップB)において、限定量又はゼロ量のフェニルアラニンを提供する培養培地(例えば、乳清由来のグリコマクロペプチド(GMP)を含有する培養培地など)を提供することによって、本発明の方法に従って得ることができる。
【0126】
本発明の追加的な実施形態
次のものが提供される:
【0127】
S1. 哺乳動物乳様生成物を製造するための方法であって、
A)乳腺上皮細胞を培養培地中で培養して、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップと、
B)該ラクトサイトから前記哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップと、を含む方法。
【0128】
S2. ステップA)の持続時間が、14日以下であり、任意選択で14日間である、ステートメント2に記載の方法。
【0129】
S3. ステップA)からの前記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドが、KRT-18及びERから任意選択で選択される、1つ又は複数の乳腺陽性細胞マーカーを発現する、ステートメント1又は2に記載の方法。
【0130】
S4. ステップA)からの前記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドが、誘導前と比較して誘導後に1つ以上の乳生物活性マーカーのmRNA発現が増加している、ステートメント1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
S5. ステップA)からの前記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドが、誘導前と比較して誘導後にLTFのmRNA発現が増加している、ステートメント1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
S6. ステップA)からの前記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドが、誘導前と比較して誘導後にMFGE8のmRNA発現が増加している、ステートメント1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
S7. 前記培養培地が、適切な三次元培養系における、例えば、三次元懸濁条件における、MammoCult培地である、ステートメント1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
S8. ステップA)が更に、
i)前記乳腺上皮細胞を培養すること、及び
ii)乳タンパク質発現を誘導すること、を含む、ステートメント1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
S9. ステップAのi)が、7日間以下であり、任意選択で7日間である、ステートメント8に記載の方法。
【0136】
S10. ステップAii)が、7日間以下であり、任意選択で7日間である、ステートメント8又は9に記載の方法。
【0137】
S11. ステップA)が、
i)前記乳腺上皮細胞を、基礎培地、増殖サプリメントを含み、ヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された完全MammoCult培地中で7日間培養することと、
ii)細胞を、EpiCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン、インスリン、FBS、プロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で7日間インキュベーションすることによって乳タンパク質発現を誘導することと、を含むステートメント1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
S12. ステップA)が、
i)前記乳腺上皮細胞を、MammoCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン及びヘパリンを添加したMammoCultB培地中で7日間培養することと、
ii)前記細胞を、EpiCult増殖サプリメント、ヒドロコルチゾン、インスリン、FBS、プロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で7日間インキュベーションすることによって乳タンパク質発現を誘導することと、を含むステートメント1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
S13. 乳様生成物を更に処理して、調整哺乳動物乳様生成物を生成するステップC)を任意選択で含む、ステートメント1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
S14. 乳腺上皮細胞が、ヒト乳腺上皮細胞である、ステートメント1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
S15. ステートメント14の方法に従って得ることができるヒト乳様生成物。
【0142】
S16. 治療に使用するための、ステートメント15に記載のヒト乳様生成物。
【0143】
S17. ステートメント15に記載のヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物、任意選択で母乳代替物としての、使用。
【0144】
本明細書に開示するとおりの詳細な説明の様々な態様及び実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法を例示するものであり、請求項及び詳細な説明と共に考慮するにあたり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の態様及び実施形態に由来する特徴を、本発明の同じ又は異なる態様及び実施形態に由来する更なる特徴と組み合わせてもよいことも理解されたい。
【0145】
発明を実施するための形態及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の指示が文脈上明確にない限り、複数の参照物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
図1】Ying Quに概説され、本発明の方法のステップA)における1つの代替法に適用されるプロトコルによるヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)の分化を示す。
図2】ステップA)によるヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)の分化を示す。
図3図2の方法に従って製造されたhiPSCの三次元器官型培養が、乳腺特異化に対して高度に許容的であることを示す。三次元分化(42日)プロトコルにおける、Nanog、TUBB3、FOXA2、TP63、KR-14、EpCAM、KRT8及びCSN2のmRマーカーは、左から右へ、多能性(Nanog)、系統(外胚葉及び内胚葉)(TUBB3、FOXA2)、基底細胞/筋上皮マーカー(TP63、KR-14)、管腔上皮マーカー(EpCAM、KRT8)、及び乳タンパク質(CSN2(カゼインベータ))、の段階を示す。
図4】比較例として製造された、hiPSCの二次元器官培養を示す。二次元分化(31日)プロトコルにおける、Nanog、TUBB3、FOXA2、TP63、KR-14、EpCAM、KRT8及びCSN2のmRNA発現を示す。マーカーは、左から右へ、多能性(Nanog)、系統(外胚葉及び内胚葉)(TUBB3、FOXA2)、基底細胞/筋上皮マーカー(TP63、KR-14)、管腔上皮マーカー(EpCAM、KRT8)、及び乳タンパク質(CSN2(カゼインベータ))、の段階を示す。
図5】乳腺上皮細胞の三次元(3D)培養における泌乳誘導を示す。aは、乳腺上皮細胞の培養プロトコル及び泌乳誘導の概略図である(D7~14)。bは、乳腺上皮細胞培養物の成長期中の乳腺マーカーケラチン18及びエストロゲン受容体の、フローサイトメトリーによる解析を示す。cは、成長期(7日目)中及び泌乳誘導期(14日目)中のヒトラクトフェリン(LTF)及び乳脂肪球-EGF因子8(MFGE8)/ラクトアドヘリンのRNA発現(ΔCt)レベルである。パネル提示にはΔCt法を使用し、候補参照遺伝子の相対発現に基づいて平均標準偏差(SD)を計算することによって、LTF遺伝子及びMFGE8遺伝子をランク付けする。記載の遺伝子のうち最も低いSDを有する遺伝子を、最も安定な又は最も発現された遺伝子として同定した。
図6】遺伝子発現プロファイリングにNanoString技術を使用して、乳腺上皮細胞における様々な乳腺上皮マーカーの発現を示す(a~h)。
【0147】
実験
実施例1
hiPSCの培養及びラクトサイトへの分化による、ヒト乳様生成物の取得
Ying Qu et al,Stem Cell Report vol 8,205-215 February 14th2017に記載されている手順に従って、ihPSCから出発してラクトサイトを培養し、それによって分泌されたヒト乳様生成物を回収し、本発明による治療において及び/又は母乳代替物として使用することができる。
【0148】
実施例2
hiPSCの培養及び3D-ラクトサイトへの分化による、ヒト乳様生成物の取得
本発明の方法に従ってhiPSCから出発して、上記のステップA)及びステップB)に従ってラクトサイトを培養し、それによって分泌されたヒト乳様生成物を回収して、治療において、及び/又は本発明による母乳代替物として使用することができる。
【0149】
実施例3
hiPSCの培養及びラクトサイトへの分化の代替的方法による、ヒト乳様生成物の取得
hiPSCからの効率的なラクトサイト分化は、以下に記載される条件1~4を含む代替的な培養条件から得ることができる。
1. EBに由来する細胞の単層としてビトロネクチン被覆プレート上で二次元培養し、L-グルタミン、ウシ胎児血清(FBS)、インスリン、上皮増殖因子(EGF)、ヒドロコルチゾン、Pen-Strepペニシリン/ストレプトマイシン:抗生物質-抗真菌剤溶液を添加したRPMI 1640を含有する培地中で少なくとも28日間培養する。
2. EBに由来する細胞の付着凝集体(EB)のビトロネクチン被覆プレート上で二次元培養し、L-グルタミン、ウシ胎児血清(FBS)、インスリン、上皮増殖因子(EGF)、ヒドロコルチゾン、Pen-Strep(抗生物質-抗真菌剤溶液)を添加したRPMI 1640を含有する培地中で少なくとも28日間培養する。
3. 少なくとも10日間、MammoCult培地中懸濁液において3次元培養し、次いで、上皮小体ホルモンの存在下で、特定の培地(例えば、EpiCultB)中で更に5日間、続いてインスリン、HGF、ヒドロコルチゾン及びFGF10の存在下で25日間、混合浮遊ゲル(例えば、マトリゲル及びコラーゲン1)中で培養する。
4. MammoCult培地中懸濁液(超低接着性プレート)において少なくとも10日間、次いで上皮小体ホルモンの存在下で特定の培地(例えばEpiCultB)中で更に5日間、続いてインスリン、HGF、ヒドロコルチゾン及びFGF10の存在下で25日間、EBを三次元培養する。
【0150】
実施例4
ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603をベースとするラクトサイトの二次元分化及び三次元分化
(a)ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603をベースとするラクトサイトの三次元分化:
ラクトサイトの三次元分化には、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603を使用した。ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603は、Fujifilm Cellular Dynamics,Inc(FCDI)から購入した。
(i)三次元分化プロトコル(本発明による)のために、hiPSCの単一細胞を、10uM rock阻害剤を含むE8培地中、37℃、5%CO2で、95rpmで回転させながら一晩インキュベーションすることによって、EB(スフェロイド)を形成させた。
2日目に、培地をE8で交換した(-2日目~0日目)。
翌日、培地をMammo1培地(ペニシリン/ストレプトマイシンを添加し、増殖サプリメント、ヘパリン(4μg/mL)、及びヒドロコルチゾン(0.48μg/mL)を添加したMammoCult培地)で10日間(0日目~10日目)交換した。培地を2日毎に交換した。
(ii)分化後、Mammo2培地(EpiCultB+サプリメント、PTHrP 100ng/ml+ペニシリン/ストレプトマイシン)中で5日間培養した。培養培地を3日毎(10日目~15日目)に交換した。
(iii)上皮構造の枝分かれ、肺胞分化及び乳腺特異化を誘導するために、mEBs(スフェロイド/マンモスフェア)にMammo3培地(完全EpiCultB、ヒドロコルチゾン(1μg/ml)、インスリン(10μg/ml)、FGF10(50ng/ml)、HGF(50ng/ml)及びペニシリン/ストレプトマイシン)を20日間フィードした。培地を3日毎に交換した(15日目~35日目)。
(iv)最後に、乳生物活性物質製造(3D)を誘導するために、Mammo4培地(完全EpiCultB、10%FBS、プロラクチン(10μg/ml)、ヒドロコルチゾン(1μg/ml)、インスリン(10μg/ml)、プロゲステロン、β-エストラジオール及びペニシリン/ストレプトマイシン)を7日間使用し、培地を3日毎に交換した(35日目~42日目)。全ての分化手順の間、スフェロイドを懸濁培養で維持した(95rpmで回転)。分化手順は42日目に終了した。結果を図3に表す。
【0151】
(b)ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603をベースとするラクトサイトの二次元分化:
ラクトサイトの二次元分化にも、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603を使用した。ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603は、Fujifilm Cellular Dynamics,Inc(FCDI)から購入した。
二次元分化プロトコル(比較のために使用)では、本発明者らは、全ての分化段階中にラクト(Lacto)培地(RPMI 1640、20%FBS、1mMグルタミン、4μg/mlインスリン、20ng/ml EGF、0.5μg/mlヒドロコルチゾン、ペニシリン/ストレプトマイシン添加)を使用した。細胞を37℃、5%CO2でインキュベーションした。培地を2日毎に交換した。結果を図4に表す。
【0152】
(c)結果
定量的RT-PCRを使用して、ラクトサイト誘導中の分化の各段階を捕捉した(図3は三次元分化、図4は二次元分化)。二次元及び三次元の設定のいずれでも、多能性のマーカーとしてのNanoG発現は、細胞が成熟及び分化するのに従い減少する。神経外胚葉マーカー及び内胚葉マーカー、TUBB3(チューブリンベータ3クラスIII)及びフォークヘッドボックスタンパク質A2(FOXA2)は、三次元フォーマットにおいて有意に発現されず、TUBB3の上昇は二次元の設定でのみ捕捉される。これは、hiPSCが非神経外胚葉系統に向かってパターン化され、したがって、三次元フォーマットで乳腺前駆体に富んだものとすることを実証する。本発明者らは、p63(p53と相同性のある核タンパク質)及びサイトケラチン14(KRT-14)などの一般的に使用される基底細胞/筋上皮マーカーの発現パターンを試験した。両方のマーカーは、両方の系において有意に検出可能である。更に、上皮細胞接着分子(EpCAM)及びサイトケラチン8(KRT8)は三次元システムでのみ追跡され、KRT8は、二次元フォーマットではごく部分的に発現された。その結果、器官タイプの設定における三次元プレートは、乳房組織マーカー、管腔マーカー、及び基底マーカーのいずれも発現した。かかる乳腺様オルガノイドは、CSN2(カゼインベータ)、乳タンパク質ペプチド、及びホルモン受容体を含むヒト乳房特異的タンパク質を発現する。管腔細胞は、EpCAM、MUC1、CD49F、GATA3、CK8、及びCK18を特異的に発現するが、基底細胞は、CK14、α-平滑筋アクチン、及びP63を特異的に発現する。最終的に、EpCAM及びCD49F二重陽性細胞は、D10とD35との間の初期前駆細胞の段階で検出することができる。興味深いことに、CSN2発現は、三次元器官系の最後の時点(D42)でのみ捕捉され、二次元の分化プラットフォームでは捕捉されない。
【0153】
乳腺様オルガノイドのセクレトームの解析は、以下に記載されるように、オリゴ糖(ラクトース及びいくつかのHMOを含む)、脂質(4つの脂肪酸を含む)、タンパク質(カゼインを含む7つが検出)、及びmiRNA(HBMにおいて典型的に検出される11を含む75が検出)を含むヒト乳特異的生物活性物質の分泌を示した。
【0154】
初代細胞の上清を、「Austin and Benet,Quantitative determination of non-lactose milk oligosaccharides,Analytica Chimica Acta 2018,1010,86-96」に記載される手順に従って、わずかな変更を加えて、ラクトース又はヒト乳オリゴ糖の存在について解析した。試料をUHPLCで解析し、検出されたラクトース又はヒト乳オリゴ糖(HMO)を、ラクトース及び7種のHMO(2’FL、3’FL、DFL、LNT、LNnT、3’SL及び6’SL)の混合物の検量線に対して定量した。この方法は0.1mg/Lの限界を有していると推定された。初代細胞の上清では、42日目にラクトース(0.22mg/L)及び6’SL(0.32mg/L)が検出された。
【0155】
培地及び細胞上清中の脂肪酸を、水素炎イオン化検出器と連結したガスクロマトグラフィーによって分析した。簡単に説明すると、42日目に得られた上清を分析して、いくつかの脂質クラスに含まれる脂肪酸の存在を調査する。溶融シリカCP-Sil 88キャピラリーカラム(100%シアノプロピルポリシロキサン、100m、内径0.25mm、フィルム厚0.25mm)を備えた分取ステーションモジュールを有する7693オートサンプラーを備えた7890Aガスクロマトグラフを、250℃で加熱されたスプリットインジェクター(1:25比)、及び300℃で操作される水素炎イオン化検出器と共に使用する。FAME(脂肪酸メチルエステル)の調製は、メタノール性塩酸(methanolic chloridric acid)による試料の直接エステル交換によって行われる。FAMEの分離は、キャピラリーガスクロマトグラフィー-FID(GC)を使用して行われる。FAMEの同定は、保持時間(RT)及び外部標準との比較によって行われる。脂肪酸の定量は、内部標準としてメチルC11:0を使用する計算によって行われる。本方法のエステル交換性能は、第2の内部標準としてTAG C13:0を用いて制御される。内部標準の添加後、溶液を2mLのメタノール、2mLのメタノール/HCl(3N)及び1mLのヘキサンと混合した。100℃/60分で加熱した後、試料を室温まで冷却し(約15分)、2mLの水を添加することによって反応を停止させる。遠心分離後、有機相をGCに直接注入する。
【0156】
42日目における実施例4aのプロトコルからの脂肪酸の結果(培地と上清との間で観察された差)を表1に示す。
【0157】
以下の表1は、細胞上清サンプル中の発現された脂肪酸を列挙する。
【0158】
【表1】
【0159】
細胞上清中のタンパク質を、SDS-PAGEプロファイリング、次いでLC-MSMSによる同一性確認のためのバンド単離を使用して分析した。SDS-PAGE分析のために、調製した試料の全量をゲルにロードした。ヒト乳サンプルを対照として比較のために添加した。選択されたゲル領域(バンド)を切断して、LC-MSMSによってヒトタンパク質を探索した。最終的に、バンドをゲル内トリプシン消化に供し、LC-MSMSによって分析した。LC-MSMSデータをPeaks Studioで分析し、ヒトタンパク質のUniProtデータベースに対して照合した。
【0160】
以下の表2は、全ての切り出されたバンドについての最良の候補を列挙する。
【0161】
【表2】
【0162】
ExoQuickポリマーネットを使用して、エキソソーム単離及びmiRNAプロファイリングを行った。ExoQuickポリマーは、ネットワークを形成することによってエキソソームを沈殿させるように作用し、ある程度のサイズのエキソソームを全て回収する。ExoQuickメッシュが形成されると、エキソソームは、単純な低速遠心分離によって容易にペレットとして沈殿する。エキソソームは損なわれておらず、タンパク質又はRNA分析が可能な状態であり、機能試験にあたり生物活性を有する。沈殿緩衝液を0.25倍の割合で試料に添加し、次いでボルテックスした。混合物を4℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、試料を1500×gで30分間遠心分離した。エキソソームペレットを、QC用のBuffer XE(QIAGEN)又はmiRNAプロファイリング用のHTG EdgeSeq miRNA Whole Transcriptome AssayからのLysis Bufferを用いて初期容量でボルテックスすることによって再懸濁した。細胞外小胞(EV)の単離を評価するために、まず上清を3000gで15分間遠心分離して、細胞ペレット及び破片を除去した。次いで、100マイクロリットルの培地を使用し、ExoQuick緩衝液(0.25×比)により4℃で一晩沈殿させた。EV沈殿物を1500gで30分間の遠心分離によって回収した。各試料に対して2回の沈殿を行い、1回目のEV沈殿は、実施する可能性のあるさらなる分析のために緩衝液XE(QIAGEN)に再懸濁し、2回目の沈殿では、10倍濃縮するために50 ulのHTG溶解緩衝液のみに再懸濁し、その後HTGによるmiRNAプロファイリングに供した。
【0163】
miRNAプロファイリングのために、試料を第1の溶解ステップにおいて直接使用した。したがって、全試料を直接使用し、血漿溶解緩衝液で1:1の比で溶解した。次に、プロテイナーゼK(1/10)を添加し、試料をThermomixer上で50℃、600rpmで3時間インキュベーションした。EVを溶解緩衝液に再懸濁し、同じ条件で溶解し、溶解インキュベーションの前には95℃で10分間のインキュベーションステップを加えた。26μLの溶解物を、HTG EdgeSeq miRNA全トランスクリプトームアッセイV2手順に従って、HTGプロセッサ上で70μLの油で処理した。インデックス付け及び増幅ライブラリーのために、試料をIlluminaアダプターでタグ付けし、OneTaq(登録商標)Hot Start 2X Master Mix GC Buffer(95℃で4分;16サイクル:95℃で15秒、56℃で45秒、68℃で45秒;68℃10分;4℃で保持)でPCRし、ロボット液体ハンドラーSciClone NGS WorkStation(Perkin Elmer)上でAMPure洗浄した(2.5比)。Hamiltonロボット上で本発明者らのカスタムプーリングプログラムを用いてプールを得た。サンプルを、GXタッチチップHS定量に基づいてプールした。2回目には、AMPure Bead(1.8比)を用いて手動でプールを精製して、残っている可能性のある微量のプライマー二量体を除去し、Qubitを用いて定量して、最終濃度を2nMに調整した。最後のステップとして、MiSeq配列決定のために、5%PhiXを添加してMiSeq上に20pMのプールをロードし、150V3キットを用いて50塩基シングルリードについてMiSeq上で配列決定した。
【0164】
簡潔には、細胞上清中には974のmiRNAが検出され、そのうちの75個を超えるmiRNAが、乳試料において高度に発現されるmiRNAである。
【0165】
以下の表3は、上位10個の高度に発現されたmiRNAを列挙する。
【0166】
【表3】
【0167】
本発明者らの知見は、正常な乳腺細胞の運命及び機能と、母乳生物活性物質製造との調節及び発達を研究するための新規のiPSCベースの三次元器官型モデルを提供する。
【0168】
実施例5
分化培地M1/M4を使用して、7日間の成長期及び7日間の誘導期のために、マトリックスあり及びなしで、三次元フォーマットで乳腺上皮細胞を培養した(図5のa)。他の異なる培地を使用してもよい。簡潔に述べると、1~5,000,000個の解離した上皮細胞を、4.5mLの培地を含有する6ウェルプレート(超低接着)に、平面シェーカープラットフォームを使用して播種した。培養細胞は、フローサイトメトリーによる定量を用いて、ケラチン18及びエストロゲン受容体などの乳腺特異的マーカーを発現することができ(図5のb)、成長期(7日目)中及び誘導期(14日目)中、ヒトラクトフェリン(LTF)及び乳脂肪球-EGF因子8(MFGE8)又はラクトアドヘリンのmRNAレベルを発現することができる(図5のc、d)。
【0169】
本発明者らは、遺伝子発現プロファイリングにNanoString技術を使用して、乳腺上皮細胞における様々な乳房上皮マーカーの発現を評価した(図6)。乳腺上皮前駆細胞マーカーCD24は一貫して発現し、泌乳時には高発現している傾向があった(図6のa)。泌乳が進行するにつれて、細胞がKRT5、KRT14及びITGA6(CD49f)などの乳腺基底様細胞のマーカー発現の減少を示すことを観察することは興味深い(図6のb~d)。細胞は、EpCAM、KRT8、KRT18及びMUC1などの様々なマーカーを使用して、泌乳中及び泌乳後に管腔様の表現型を維持したようである(図6のe~h)。誘導後の期間は、ラクトフェリン(LTF)、クラステリン及び脂肪酸シンターゼ(FASN)などの異なるタンパク質についての、ラクトサイト(ルミナル様細胞)特異的分泌プロファイルの開始によって評価する(表1a)。泌乳後の精製上皮細胞から単離されたエキソソームもまた、表1bに掲載されている乳特異的miRNAの豊富な発現を示す。泌乳後の乳腺上皮細胞における乳腺上皮マーカー及びエキソソーム精製上皮細胞における乳汁特異的miRNAの発現も、別の分化条件を用いて観察した。
【0170】
【表4】
【0171】
【表5】
【0172】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。このような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、並びに本発明の付随する利点を減らすことなく、なされてもよい。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】