(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】フィールドデータに基づく人工知能ニューラルネットワークバッテリーモデルを通じたバッテリーの異常検出方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20241106BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20241106BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20241106BHJP
G01R 31/374 20190101ALI20241106BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/374
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524459
(86)(22)【出願日】2023-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 KR2023001295
(87)【国際公開番号】W WO2023191283
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2022-0039370
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン・ユル・ユン
(72)【発明者】
【氏名】キ・ウク・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ビン・イ
【テーマコード(参考)】
2G216
【Fターム(参考)】
2G216BA07
2G216BA17
2G216BA34
2G216BA35
2G216CB13
2G216CB51
(57)【要約】
本発明は、フィールドデータを用いたバッテリーの異常挙動の検出方法及びシステムであって、運用中のバッテリーからリアルタイムのフィールドデータを時系列的に取り出し、取り出されたフィールドデータからセル電圧、セル温度を予測した予測値とリアルタイムのフィールドデータのセル電圧、セル温度値とを比較して、その偏差に応じてバッテリーの異常挙動有無を検出する方法及びシステムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの異常挙動を検出するためのシステムであって、
稼働中のバッテリーからリアルタイム測定値を受信し、これらからフィールドデータを算出して出力するフィールドデータ算出部と、
前記フィールドデータからセル電圧を予測するためのフィールドデータを取り出して出力するフィールドデータ前処理部と、
前記フィールドデータ前処理部の出力の入力を受けてセル電圧を予測し、その予測値を出力する人工知能ニューラルネットワーク部と、
前記人工知能ニューラルネットワーク部が出力する予測値を前記フィールドデータと比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合にバッテリーの異常挙動であると判定するバッテリー異常挙動検出部と、
を備える、バッテリーの異常挙動の検出システム。
【請求項2】
前記フィールドデータ前処理部は、
セル温度を予測するためのフィールドデータをさらに取り出して出力し、
前記人工知能ニューラルネットワーク部は、
前記フィールドデータ前処理部の出力の入力を受けてセル温度をさらに予測してその予測値を出力し、
前記バッテリー異常挙動検出部は、
前記人工知能ニューラルネットワーク部が出力するセル電圧予測値とフィールドデータ中のセル電圧値とを比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合に、又は前記人工知能ニューラルネットワーク部が出力するセル温度の予測値とフィールドデータ中のセル温度値とを比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合にバッテリーの異常挙動であると判定することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリーの異常挙動の検出システム。
【請求項3】
前記セル電圧を予測するためのフィールドデータは、
前記バッテリーを構成するそれぞれのバッテリーセル及びバッテリーモジュールに関するラック電流、大気温度、ファンオン/オフ情報、モジュールSOC、セルSOH、セル電圧の時系列値であり、
前記セル温度を予測するためのフィールドデータは、
前記バッテリーを構成するそれぞれのバッテリーセル及びバッテリーモジュールに関するセル温度、大気温度、ファンオン/オフ情報の時系列値であることを特徴とする、請求項2に記載のバッテリーの異常挙動の検出システム。
【請求項4】
前記人工知能ニューラルネットワーク部は、
前記セル電圧を予測するためのフィールドデータの入力を受けて次の周期のセル電圧の予測値を出力し、
前記セル温度を予測するためのフィールドデータの入力を受けて次の周期のセル温度の予測値を出力することを特徴とする、請求項3に記載のバッテリーの異常挙動の検出システム。
【請求項5】
前記人工知能ニューラルネットワーク部は、
前記フィールドデータを算出するバッテリーではなく、標準バッテリーから算出される前記セル電圧を予測するためのフィールドデータ対応値を学習データとして学習され、前記セル電圧を予測するためのフィールドデータの入力を受けて次の周期のセル電圧の予測値を出力するセル電圧予測モデルと、
前記フィールドデータを算出するバッテリーではなく、標準バッテリーから算出される前記セル温度を予測するためのフィールドデータ対応値を学習データとして学習され、前記セル温度を予測するためのフィールドデータの入力を受けて次の周期のセル温度の予測値を出力するセル温度予測モデルと、
を含むことを特徴とする、請求項4に記載のバッテリーの異常挙動の検出システム。
【請求項6】
前記人工知能ニューラルネットワーク部は、
前記バッテリーの正常運転区間の所定の期間の間のフィールドデータを新たな学習データとして追加して前記セル電圧予測モデルとセル温度予測モデルを再学習して更新するニューラルネットワーク学習部をさらに備えることを特徴とする、請求項5に記載のバッテリーの異常挙動の検出システム。
【請求項7】
バッテリーの異常挙動の検出方法において、
運用中のバッテリーからリアルタイムのバッテリーの状態情報データを測定し、かつ算出するフィールドデータ算出過程と、
算出されたフィールドデータからセル電圧の予測のためのデータを取り出すセル電圧の予測のためのフィールドデータの前処理過程を含むフィールドデータの前処理過程と、
前記セル電圧の予測のためのデータをセル電圧予測モデルに入力して次の周期のセル電圧予測値を算出するセル電圧の予測過程を含むリアルタイム予測過程と、
前記セル電圧予測値を前記フィールドデータのセル電圧値と比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合にセル電圧の異常挙動検出信号を生成するセル電圧の異常挙動検出過程を含むバッテリー異常挙動の検出過程と、
を含む、バッテリーの異常挙動の検出方法。
【請求項8】
前記フィールドデータの前処理過程は、
前記算出されたフィールドデータからセル温度を予測するためのデータを取り出すセル温度の予測のためのフィールドデータの前処理過程をさらに含み、
前記リアルタイム予測過程は、
前記セル温度の予測のためのデータをセル温度予測モデルに入力して次の周期のセル温度の予測値を算出するセル温度の予測過程をさらに含み、
前記バッテリー異常挙動の検出過程は、
前記セル温度の予測値を前記フィールドデータのセル温度値と比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合にセル温度の異常挙動検出信号を生成するセル温度の異常挙動検出過程をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載のバッテリーの異常挙動の検出方法。
【請求項9】
前記セル電圧を予測するためのデータは、
前記バッテリーを構成するそれぞれのバッテリーセル及びバッテリーモジュールに関するラック電流、大気温度、ファンオン/オフ情報、モジュールSOC、セルSOH、セル電圧の時系列値であり、
前記セル温度を予測するためのデータは、
前記バッテリーを構成するそれぞれのバッテリーセル及びバッテリーモジュールに関するセル温度、大気温度、ファンオン/オフ情報の時系列値であることを特徴とする、請求項8に記載のバッテリーの異常挙動の検出方法。
【請求項10】
前記セル電圧予測モデルは、
前記フィールドデータを算出する運用中のバッテリーではなく、標準バッテリーから算出される前記セル電圧を予測するためのデータ対応値を学習データとして学習され、前記セル電圧を予測するためのデータの入力を運用中のバッテリーから受けて次の周期のセル電圧の予測値を出力し、
前記セル温度予測モデルは、
前記フィールドデータを算出する運用中のバッテリーではなく、標準バッテリーから算出される前記セル温度を予測するためのデータ対応値を学習データとして学習され、前記セル温度を予測するためのデータの入力を運用中のバッテリーから受けて次の周期のセル温度の予測値を出力することを特徴とする、請求項9に記載のバッテリーの異常挙動の検出方法。
【請求項11】
前記フィールドデータを算出する運用中のバッテリーの正常運転区間の所定の期間の間のフィールドデータを新たな学習データとして追加して前記セル電圧予測モデルとセル温度予測モデルを再学習して更新する予測モデルの更新過程をさらに含み、
前記リアルタイム予測過程は、
前記セル電圧及びセル温度の予測のためのデータを前記予測モデルの更新手続きを通じて更新されたセル電圧予測モデル及びセル温度予測モデルに入力して次の周期のセル電圧及びセル温度の予測値を算出することを特徴とする、請求項10に記載のバッテリーの異常挙動の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーモデルを通じたバッテリーの異常検出方法及びシステムに関する。特に、本発明は、バッテリーモデルを構成するに当たって、従来の化学的/電気的な等価回路モデルではなく、フィールドデータを用いて人工知能ニューラルネットワークバッテリーモデルを通じてバッテリーの異常を検出する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通常のリチウムイオンバッテリーのモデリングは、化学的な組成や電気的な等価回路を活用して実現してきた。当該バッテリーのモデリングの場合、基本的に充/放電をはじめとするセルテストデータを踏まえてモデリングをすることになる。
【0003】
しかしながら、内部セルテストデータは、実際のフィールド環境とは異なる。また、たとえ様々な条件下で内部セルテストをするとしても、セル試料の数、モジュール/ラック単位、劣化の度合い、温度条件、テスト装備、時間など現実的な実験の限界があるが故に、十分なデータを確保することができなくなる可能性がある。
【0004】
これに関連して、特許文献1においては、バッテリーの初期特性の測定データの入力を受けて人工知能ニューラルネットワークを学習させ、これらから長期特性データを予測し、その信頼性を判定するシステムを提示しており、特許文献2においては、バッテリーの物理量情報をバッテリーの学習モデルに入力し、バッテリーの学習モデルから推定情報を取得するバッテリーの状態推定方法を開示している。
【0005】
ところで、このような従来の技術は、依然として実際のフィールドデータに基づいてバッテリーの状態を推定し、バッテリーの異常有無を判別する方法を実現するのに不十分である。
【0006】
関連する先行技術としては、下記に掲げる文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2009-0020448号公報
【特許文献2】大韓民国公開特許第10-2018-0057226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した問題を解決するために、本発明においては、フィールドデータを活用してバッテリーセルの異常を検出する方法及びシステムを提供しようとしている。
【0009】
フィールドデータを活用するに当たっても解決すべき課題が存在するが、それは、データの収集項目の種類に制限があることが避けられず、しかも、精度が低いということである。
【0010】
このような問題を解消すべく、多種多様なフィールドデータを活用してバッテリーのモデリングをするために、人工知能(AI)学習を通じたバッテリーのモデリングを実現し、これを用いたバッテリーの異常検出方法及びシステムを提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した問題を解決するために、本発明は、バッテリーの異常挙動を検出するためのシステムであって、稼働中のバッテリーからリアルタイム測定値を受信し、これらからフィールドデータを算出して出力するフィールドデータ算出部と、前記フィールドデータからセル電圧を予測するためのフィールドデータを取り出して出力するフィールドデータ前処理部と、前記フィールドデータ前処理部の出力の入力を受けてセル電圧を予測し、その予測値を出力する人工知能ニューラルネットワーク部と、前記人工知能ニューラルネットワーク部が出力する予測値を前記フィールドデータと比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合にバッテリーの異常挙動であると判定するバッテリー異常挙動検出部と、を備えるバッテリーの異常挙動の検出システムを提供する。
【0012】
前記人工知能ニューラルネットワーク部は、前記フィールドデータを算出するバッテリーではなく、標準バッテリーから算出される前記セル電圧を予測するためのフィールドデータ対応値を学習データとして学習され、前記セル電圧を予測するためのフィールドデータの入力を受けて次の周期のセル電圧の予測値を出力するセル電圧予測モデルと、前記フィールドデータを算出するバッテリーではなく、標準バッテリーから算出される前記セル温度を予測するためのフィールドデータ対応値を学習データとして学習され、前記セル温度を予測するためのフィールドデータの入力を受けて次の周期のセル温度の予測値を出力するセル温度予測モデルと、を含んでなってもよく、前記バッテリーの正常運転区間の所定の期間の間のフィールドデータを新たな学習データとして追加して前記セル電圧予測モデルとセル温度予測モデルを再学習して更新するニューラルネットワーク学習部をさらに備えていてもよい。
【0013】
また、本発明は、運用中のバッテリーからリアルタイムのバッテリーの状態情報データを測定し、かつ算出するフィールドデータ算出過程と、算出されたフィールドデータからセル電圧の予測のためのデータを取り出すセル電圧の予測のためのフィールドデータの前処理過程を含むフィールドデータの前処理過程と、前記セル電圧の予測のためのデータをセル電圧予測モデルに入力して次の周期のセル電圧予測値を算出するセル電圧の予測過程を含むリアルタイム予測過程と、前記セル電圧予測値を前記フィールドデータのセル電圧値と比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合にセル電圧の異常挙動検出信号を生成するセル電圧の異常挙動検出過程を含むバッテリー異常挙動の検出過程と、を含むバッテリーの異常挙動の検出方法を提供する。
【0014】
このとき、セル電圧を予測するためのデータは、前記バッテリーを構成するそれぞれのバッテリーセル及びバッテリーモジュールに関するラック電流、大気温度、ファンオン/オフ情報、モジュールSOC(充電状態)、セルSOH(健全度や劣化状態)、セル電圧の時系列値であってもよく、前記セル温度を予測するためのデータは、前記バッテリーを構成するそれぞれのバッテリーセル及びバッテリーモジュールに関するセル温度、大気温度、ファンオン/オフ情報の時系列値であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バッテリーのフィールドデータを活用してリアルタイムにてバッテリーの温度及び電圧値を予測し、これらを実際の温度及び電圧値と比較してバッテリーの異常動作有無をリアルタイムにて検出することができる。
【0016】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、前述された発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割のためのものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明において測定及び算出する各フィールドデータの例を示す図である。
【
図2】
図1のフィールドデータのうち、一部の区間又は所定の時間の間に取得されたフィールドデータを前処理して学習データとして取り出した例を示す図である。
【
図3】本発明に係るバッテリーの異常挙動の検出方法の手順を示す図である。
【
図4】時間に伴うセル温度のフィールドデータ値とセル温度の予測値を示すグラフである。
【
図5】本発明に係るバッテリーの異常挙動の検出システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、フィールドデータにより予測モデルを学習させて次の時点の電圧及び温度などを予測する。本発明において用いられるフィールドデータの種類は、下記の通りである。
【0019】
1.フィールドデータ
【0020】
本発明において、「フィールドデータ」とは、運用中のバッテリーからリアルタイムにて測定される下記のデータ及びそれらから計算される下記のデータのことを意味する。フィールドデータは、所定の時間ごとにバッテリーの運用中に算出されるバッテリーの状態情報の時系列データである。
【0021】
本発明において用いられるフィールドデータの種類は、下記の通りである。
【0022】
(1)ラックデータ
【0023】
バッテリーラックのデータである。ラックデータは、ラック電流、周囲温度、ファンオン/オフ情報を含む。これらは、通常、ラックバッテリー管理システム(BMS(Rack Battery Management System))が測定し、かつ算出する。
【0024】
ラック電流は、Rack.Current、周囲温度は、Ambient.Temp、ファンオン/オフ情報は、Fan_ON/OFF flag値と書き表わされ、所定の時間ごとに測定される。
【0025】
所定の周期にて測定される時間tでのラック電流(Rack Current)、周囲温度は、Ambient.Temp(Ambient Temp.)、ファンオン/オフ(Fan ON/OFF)情報は、Rack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)と書き表わされ得る。このとき、Rack.Current(t)、Ambient.Temp(t)の値は、適切な測定センサーの測定値を有し、Fan.ON(t)は、ファンが駆動中である場合に「1」、駆動中ではない場合に「0」の値を有し得る。
【0026】
例えば、1秒おきに測定したとき、駆動してから3秒でのラック電流、周囲温度、ファンオン/オフ情報(ファンが駆動されているのであれば)は、それぞれRack.Current(3)、Ambient.Temp(3)、Fan.ON(3)と書き表わし得る。
【0027】
(2)モジュールデータ
【0028】
バッテリーラックに含まれる多数のバッテリーモジュールのそれぞれのデータである。モジュールデータは、各モジュールのSOC値を含み、バッテリーラックを構成するモジュールがi個あるとき、各モジュールは、Mk(k=1,2,3,…,i)と書き表わし、各モジュールのSOC値(SOCM)は、SOC.Mkと書き表わす。例えば、2番目のモジュールのSOC値は、SOC.M2と書き表わす。モジュールデータは、通常、モジュールBMS(Module Battery Management System)が測定し、かつ算出する。
【0029】
ラックデータと同様に、SOC.Mk値は、所定の時間ごとに測定され得、時間tでのSOC.Mk値は、SOC.Mk(t)と書き表わす。
【0030】
(3)セルデータ
【0031】
バッテリーモジュールに含まれる多数のバッテリーセルのそれぞれのデータである。セルデータは、各セルが電圧の測定値としてのセル電圧値(Cell V)を含み、セル電圧値は、Cell.V.MkCj(k=1,2,3,…,i, j=1, 2, 3, …, m)と書き表わす。例えば、2番目のモジュール、3番目のセルのセル電圧値は、Cell_V_M2C3と書き表わす。セルデータは、通常、セルバッテリー管理システム(BMS(Cell Battery Management System))や、セルBMSがない場合にモジュールバッテリー管理システム(BMS(Module Battery Management System))が測定し、かつ算出する。
【0032】
Cell.V.MkCj値も同様に、所定の時間ごとに測定され得、時間tでのCell.V.MkCj値は、Cell.V.MkCj(t)と書き表わす。
【0033】
セルデータは、セル温度を含んでいてもよい。時間tでのk番目のモジュール、j番目のセルのセル温度は、Cell.T.MkCj(t)と書き表わされる。
【0034】
(4)計算値
【0035】
また、本発明は、SOH値(SOH MkCj)を計算値の一つとして用いる。各セルのSOH値は、セルバッテリー管理システム(BMS(Cell Battery Management System))や、モジュールバッテリー管理システム(BMS(Module Battery Management System))又はラックバッテリー管理システム(BMS(Rack Battery Management System))が算出するが、特定のセルのSOHは、SOH.MkCj(k=1, 2, 3, …, i, j=1, 2, 3, …, m)と書き表わす。
【0036】
SOH.MkCj値も同様に、所定の時間ごとに測定され得、時間tでのSOH.MkCj値は、SOH.MkCj(t)と書き表わす。
【0037】
2.バッテリーの異常挙動の検出方法
【0038】
本発明に係るバッテリーの異常挙動の検出方法を
図3に基づいて説明する。
【0039】
2-1.フィールドデータの算出及び前処理過程(S100)
【0040】
本発明は、上述したフィールドデータを測定し、かつ算出し、前処理を行う手続きである。
【0041】
(1)フィールドデータ算出過程(S110)
【0042】
運用中のバッテリーからリアルタイムのバッテリーの状態情報データを測定し、かつ算出する過程である。
【0043】
フィールドデータの測定及び算出は、所定の時間単位で運用中のバッテリーからリアルタイムにて行うが、
図1は、本発明において測定及び算出する各フィールドデータの例を示す。
【0044】
フィールドデータの測定及び算出は、各セルバッテリー管理システム(BMS(Cell Battery Management System))や、モジュールバッテリー管理システム(BMS(Module Battery Management System))又はラックバッテリー管理システム(BMS(Rack Battery Management System))において進められてもよく、フィールドデータ算出部100に送信される。フィールドデータ算出部は、ラックBMSに統合されて構成されてもよい。
【0045】
図1に示し、かつ、以上において説明したフィールドデータのうち、一部の区間又は所定の時間の間に取得されたフィールドデータを前処理して
図2に示すような学習データとして取り出す。
【0046】
(2)セル電圧の予測のためのフィールドデータの前処理過程(S120)
【0047】
算出されたフィールドデータからセル電圧の予測のためのデータを取り出すセル電圧の予測のためのフィールドデータの前処理過程である。
【0048】
本発明は、フィールドデータからセル電圧を予測するセル電圧予測モデルを用いてセル電圧を予測するが、図 2に示すように、ラック電流、周囲温度、SOC、SOH、前サイクルのセル電圧をセル電圧予測のためのデータとして入力する。
【0049】
このために、前処理過程においては、所定の周期にてリアルタイムにて算出されるフィールドデータから、ラック電流、周囲温度、SOC、SOH、セル電圧値であるRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)の値を周期的に取り出す。
図2は、各時間周期別のRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)の値及びこれらに対応するモジュール1のセル1、2のSOH_M1C2(t)、Cell_V_M1C2(t)の値を取り出すデータの形式を示す。
【0050】
(3)セル温度の予測のためのフィールドデータの前処理過程(S130)
【0051】
前記算出されたフィールドデータから算出されたセル温度を予測するためのデータを取り出す過程である。
【0052】
また、本発明は、フィールドデータからセル温度を予測するセル温度予測モデルを用いてセル温度を予測するが、セル温度の予測のためのデータとして、セルの現在の温度値であるCell.T.MkCj(t)、周囲温度Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)を用いて次の周期のセル温度を予測する。
【0053】
このために、前処理過程においては、所定の周期にてリアルタイムにて算出されるフィールドデータから、Cell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)の値を周期的に取り出す。
【0054】
2-2.予測モデルの生成過程(S200)
【0055】
(1)セル電圧予測モデルの生成過程(S210)
【0056】
所定の人工知能ニューラルネットワークにRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)を入力し、その出力値をCell.V.MkCj(t+1)として指導学習してセル電圧の予測のためのセル電圧予測モデル210を生成する。セル電圧予測モデルは、所定の人工知能ニューラルネットワークを用いて生成する。人工知能ニューラルネットワークとしては、公知の人工知能ニューラルネットワークが使用可能であり、所定の学習データにより学習が完了した人工知能ニューラルネットワークは、
図5のセル電圧予測モデル210に格納される。
【0057】
前記セル電圧予測モデル210の学習データとしては、前記セル電圧の予測のためのフィールドデータの前処理過程(S120)を通じて前処理された、所定の時間区間のRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)の値をニューラルネットワークの入力値として用い、次の周期のセル電圧の測定値であるCell.V.MkCj(t+1)をその出力値として用いて、所定の時間区間のRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)の値が前記人工知能ニューラルネットワークに入力されるとき、その出力値が次の周期のセル電圧の測定値であるCell.V.MkCj(t+1)になるように人工知能ニューラルネットワークを指導学習してセル電圧予測モデルを生成する。
【0058】
このようにして学習された人工知能ニューラルネットワークは、セル電圧予測モデル210に格納されて、Rack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)の値の入力を受けて、次の周期のセル電圧の予測値であるCell.Vprdic.MkCj(t+1)を算出する。
【0059】
セル電圧予測モデルの生成過程において用いる学習データであるRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t+1)の値は、下記のセル電圧の予測過程(S310)において用いるデータとは異なる時間に測定されたフィールドデータであってもよく、バッテリーの運用前に又はサンプルバッテリーの運用を通じて取得されたサンプルデータであってもよい。
【0060】
他の実施形態を挙げると、前記セル電圧予測モデル210の学習データとして、フィールドデータではなく、実験室において標準バッテリーを用いて算出した所定の時間区間のRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t+1)を用いて生成されてもよい。
【0061】
すなわち、セル電圧予測モデルは、前記フィールドデータを算出する運用中のバッテリーではなく、標準バッテリーから算出されるセル電圧を予測するためのデータ対応値を学習データとして学習されて生成され、この後、前記セル電圧を予測するためのデータの入力を運用中のバッテリーから受けて次の周期のセル電圧の予測値を出力する。
【0062】
(2)セル温度予測モデルの生成過程(S220)
【0063】
さらに、本発明は、セル温度予測モデルを含むが、セル温度の予測のためのセル温度予測モデルも同様に、前記前処理されたデータを学習データとして用いて、前記セル電圧予測モデルの生成過程の方式と同様にしてセル温度予測モデル220を生成する。すなわち、所定の人工知能ニューラルネットワークに、Cell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)の値を周期的に入力し、その出力値をCell.T.MkCj(t+1)として指導学習する。すなわち、人工知能ニューラルネットワークの入力データとして、所定の時間の間にCell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)の値を周期的に入力し、その出力値が次の周期のセル温度の測定値であるCell.T.MkCj(t+1)になるように人工知能ニューラルネットワークを指導学習してセル温度予測モデルを生成する。
【0064】
このようにして学習された人工知能ニューラルネットワークは、セル温度予測モデル220に格納されて、Cell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)値の入力を受けて、次の周期のセル温度の予測値であるCell.Tpredic.MkCj(t+1)を算出する。
【0065】
セル温度予測モデルの生成過程において用いる学習データであるCell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、Cell.T.MkCj(t+1)の値は、下記のセル温度の予測過程(S320)において用いるデータとは異なる時間に測定されたフィールドデータであってもよく、バッテリーの運用前に又はサンプルバッテリーの運用を通じて取得されたサンプルデータであってもよい。
【0066】
他の実施形態を挙げると、学習データとして、フィールドデータではなく、実験室において標準バッテリーを用いて算出した所定の時間区間のCell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、Cell.T.MkCj(t+1)の値を用いて生成されてもよい。
【0067】
すなわち、セル温度予測モデル220は、前記フィールドデータを算出する運用中のバッテリーではなく、標準バッテリーから算出されるセル温度を予測するためのデータ対応値を学習データとして学習され、前記セル温度を予測するためのデータの入力を運用中のバッテリーから受けて次の周期のセル温度の予測値を出力する。
【0068】
(3)予測モデルの更新過程(S230)
【0069】
他の実施形態を挙げると、前記フィールドデータを算出する運用中のバッテリーの正常運転区間の所定の期間の間のフィールドデータを新たな学習データとして追加して前記セル電圧予測モデルとセル温度予測モデルを再学習して更新する過程である。
【0070】
セル電圧予測モデルの生成過程は、バッテリーが異常挙動を示さない間に算出された所定の時間の間のRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t+1)の値を新たな学習データとして入力してセル電圧予測モデル210を更新してもよい。このような場合、実際のフィールドデータを適用して学習モデルを更新するので、フィールドに配置された実際のバッテリーに対してより一層正確な予測値を取得することが可能である。
【0071】
セル温度予測モデルの生成過程は、バッテリーが異常挙動を示さない間に算出された所定の時間の間のCell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、Cell.T.MkCj(t+1)の値を新たな学習データとして入力してセル温度予測モデル220を更新してもよい。このような場合、実際のフィールドデータを適用して学習モデルを更新(S230)するので、フィールドに配置された実際のバッテリーに対してより一層正確な予測値を取得することが可能である。
【0072】
2-3.リアルタイム予測過程(S300)
【0073】
リアルタイム予測過程は、前記学習が完了したセル電圧予測モデル及びセル温度予測モデルを用いてセル電圧及びセル温度を予測する手順である。
【0074】
(1)セル電圧の予測過程(S310)
【0075】
セル電圧の予測過程は、前記セル電圧の予測のためのフィールドデータの前処理過程(S120)において前処理して取り出したRack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)の値を前記生成した、又は更新されたセル電圧予測モデル210に入力して次の周期のセル電圧予測値であるCell.Vprdic.MkCj(t+1)を算出する手順である。
【0076】
(2)セル温度の予測過程(S320)
【0077】
セル温度の予測過程において、前記前処理過程(S220)において取り出したCell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)の値を前記生成した、又は更新されたセル温度予測モデル220に入力して次の周期のセル温度の予測値であるCell.Tpredic.MkCj(t+1)を算出する。
【0078】
2-4.バッテリー異常挙動の検出過程(S400)
【0079】
(1)セル電圧の異常挙動検出過程(S410)
【0080】
このセル電圧の異常挙動検出過程は、セル電圧の予測過程(S310)を通じてセル電圧予測モデル210が出力する予測値であるCell.Vprdic.MkCj(t+1)の値と、バッテリーから算出されるフィールドデータ中のCell.V.MkCj(t+1)の値とを比較して、所定の基準値以上の差が生じる場合を検出する過程である。所定の基準値以上の差が生じた場合、セル電圧の異常挙動検出信号を生成する。
【0081】
(2)セル温度の異常挙動検出過程(S420)
【0082】
このセル温度の異常挙動検出過程は、セル温度の予測過程(S320)を通じてセル温度予測モデル220が出力する予測値であるCell.Tpredic.MkCj(t+1)の値と、バッテリーから算出されるフィールドデータ中のCell.T.MkCj(t+1)の値とを比較して、所定の基準値以上の差が生じる場合を検出する過程である。所定の基準値以上の差が生じた場合、セル温度の異常挙動検出信号を生成する。
【0083】
検出の例を
図4に基づいて説明すれば、フィールドデータであるCell.T.MkCj(t+1)の値が「test data」として示され、予測値であるCell.T
predic.MkCj(t+1)が「simulation」として示されているが、
図4の(a)でのように、フィールドデータと予測値との間に所定の基準値以上の偏差が生じていない場合には正常挙動であると判断し、
図4の(b)でのように、所定の基準値以上の偏差が生じる場合、バッテリーの異常挙動であると判断して検出する。
【0084】
2-5.診断及び警報の発生過程(S500)
【0085】
診断及び警報の発生過程は、前記バッテリー異常挙動の検出過程(S400)において予測したCell.Vprdic.MkCj(t+1)、Cell.Tpredic.MkCj(t+1)の値と、実測のフィールドデータのうちのCell.V.MkCj(t+1)、Cell.T.MkCj(t+1)の値との偏差が基準値以上に出る場合、診断手続きを行うか、あるいは、外部に警報を発する手順である。
【0086】
本発明において、前記診断手続きは、格別に定められた手続きに何ら制限されるものではなく、前記基準値以上の偏差が所定の時間区間の間に所定の回数以上生じる場合に警報発生信号を出力したり、バッテリーの充電又は放電の動作を遮断する制御信号を出力したりしてもよい。
【0087】
3.バッテリーの異常挙動の検出システム
【0088】
図5に基づいて、本発明に係るバッテリーの異常挙動の検出システムについて説明する。
【0089】
3-1.フィールドデータ算出部100
【0090】
フィールドデータ算出部100は、稼働中のバッテリーからリアルタイム測定値を受信し、受信されたデータからフィールドデータ値を算出して出力する。フィールドデータの測定及び算出は、各セルBMS(Cell Battery Management System)や、モジュールBMS(Module Battery Management System)又はラックBMS(Rack Battery Management System)において進められてもよく、フィールドデータ算出部100に送信される。フィールドデータ算出部は、ラックBMSに統合されて構成されてもよい。前記バッテリーから受信する測定値は、バッテリーに配設された各センサーから受信される値であり、通常のバッテリーの状態情報測定値を含む。算出されるフィールドデータは、上述した本発明のフィールドデータである。
【0091】
フィールドデータ算出部は、フィールドデータ前処理部200にフィールドデータを送信する。
【0092】
3-2.フィールドデータ前処理部200
【0093】
フィールドデータ前処理部200は、フィールドデータ算出部において算出したフィールドデータからセル電圧の予測のためのフィールドデータを取り出すセル電圧予測フィールドデータ前処理部210、及びセル温度の予測のためのフィールドデータを取り出すセル温度予測フィールドデータ前処理部220を備えてなり、セル電圧の予測のためのフィールドデータの前処理過程(S120)及びセル温度の予測のためのフィールドデータの前処理過程(S130)を行う。
【0094】
フィールドデータ前処理部200は、人工知能ニューラルネットワーク部300に学習データ及びフィールドデータを送信する。
【0095】
このとき、学習データは、
図5中に点線にて示された矢印の経路にて示されているように、実験室において正常品質が検証された標準バッテリーからフィールドデータを構成する各項目に対応するデータを所定の期間の間に算出して人工知能ニューラルネットワーク部300に提供されてもよい。すなわち、人工知能ニューラルネットワーク部を構成するセル電圧予測モデル320は、標準バッテリーから算出されるセル電圧を予測するためのフィールドデータ対応値を学習データとして学習され、セル温度予測モデル330は、標準バッテリーから算出されるセル温度を予測するためのフィールドデータ対応値を学習データとして学習されてもよい。
【0096】
他の実施形態を挙げると、学習データは、バッテリーの運転時に一定の期間の間のフィールドデータを学習データとして取り出して人工知能ニューラルネットワーク部300に提供するように構成されてもよい。
【0097】
一方、学習データとして前記2種類のうちのいずれの形態のデータが用いられるにせよ、フィールドデータ前処理部200は、正常運転区間のバッテリーのフィールドデータを学習データとして提供して既に学習された人工知能ニューラルネットワーク320、330を学習するように提供してもよい。
【0098】
3-3.人工知能ニューラルネットワーク部300
【0099】
(1)ニューラルネットワーク学習部310
【0100】
ニューラルネットワーク学習部310は、フィールドデータ前処理部200から上述した学習データを受信して人工知能ニューラルネットワークを学習する。人工知能ニューラルネットワークは、セル電圧予測モデル320とセル温度予測モデル330により学習されるが、ニューラルネットワーク学習部は、それぞれをセル電圧とセル温度を予測するように学習されて格納される。
【0101】
さらに、ニューラルネットワーク学習部310は、所定の周期にて、又は制御部500の制御に従って、バッテリーの正常運転区間の所定の期間の間のフィールドデータを新たな学習データとして追加して人工知能ニューラルネットワークを再学習して予測モデル320、330を更新するように制御されてもよい。
【0102】
例えば、予測モデル320、330が標準バッテリーから提供された学習データにより学習されて運用され、フィールドデータの入力を受けて予測値を生成していく間に、後述するバッテリー異常挙動検出部400において異常挙動が検出されない区間、すなわち、正常区間でのフィールドデータを前記学習データに追加して予測モデル320、330を再学習させることにより、予測モデル320、330が実際のフィールドバッテリーの稼働状態から生成されるフィールドデータを反映するように学習され、これは、予測モデル320、330の予測の確度を向上させる。
【0103】
前記学習データにより学習され、又はフィールドデータを追加して学習が更新された人工知能ニューラルネットワークは、それぞれセル電圧予測モデル320とセル温度予測モデル330に格納される。
【0104】
(2)セル電圧予測モデル320
【0105】
セル電圧予測モデル320は、フィールドデータ前処理部200からセル電圧の予測のためのフィールドデータの入力を受けて次の周期のセル電圧を予測する学習された人工知能ニューラルネットワークである。セル電圧の予測のためのフィールドデータは、Rack.Current(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)、SOC.Mk(t)、SOH.MkCj(t)、Cell.V.MkCj(t)の値であってもよく、これらの入力を受けてセル電圧予測値であるCell.Vprdic.MkCj(t+1)を算出する。
【0106】
(3)セル温度予測モデル330
【0107】
セル温度予測モデル330は、フィールドデータ前処理部200からセル温度の予測のためのフィールドデータの入力を受けて次の周期のセル温度を予測する学習された人工知能ニューラルネットワークである。セル温度の予測のためのフィールドデータは、Cell.T.MkCj(t)、Ambient.Temp(t)、Fan.ON(t)の値であってもよく、これらの入力を受けてセル温度の予測値であるCell.Tpredic.MkCj(t+1)を算出する。
【0108】
3-4.バッテリー異常挙動検出部400
【0109】
バッテリー異常挙動検出部400は、人工知能ニューラルネットワーク部300のセル電圧予測モデル320とセル温度予測モデル330が算出するセル電圧とセル温度の予測値をフィールドデータのセル電圧及びセル温度と比較してバッテリーの異常挙動を検出し、異常挙動検出信号を制御部に送信する。異常挙動検出信号は、後述するセル電圧異常挙動信号又はセル温度異常挙動信号のうちの少なくともどちらか一方又は両方ともを含んでいてもよい。
【0110】
バッテリー異常挙動検出部400は、前記フィールドデータ算出部が出力するフィールドデータ及び前記人工知能ニューラルネットワーク部300が出力する予測値を受信する。
【0111】
(1)セル電圧異常挙動判定部410
【0112】
セル電圧異常挙動判定部410は、上述したCell.Vprdic.MkCj(t+1)の値をフィールドデータのCell.V.MkCj(t+1)の値と比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合、セル電圧の異常挙動であると判定し、セル電圧の異常挙動信号を制御部に送信する。
【0113】
(2)セル温度異常挙動判定部420
【0114】
セル温度異常挙動判定部420は、上述したCell.Tpredic.MkCj(t+1)の値をフィールドデータのCell.T.MkCj(t+1)の値と比較して、その偏差が所定の範囲以上である場合、セル温度の異常挙動であると判定し、セル温度の異常挙動信号を制御部に送信する。
【0115】
3-5.制御部500
【0116】
制御部500は、異常挙動検出部400の異常挙動検出信号を受信して上述した診断及び警報の発生過程(S500)を行う。
【0117】
制御部は、フィールドデータ算出部、フィールドデータ前処理部、予測モデル、異常挙動検出部とそれぞれ接続されて各構成要素を制御してもよく、他の実施形態においては、フィールドデータ算出部、フィールドデータ前処理部、予測モデル、異常挙動検出部のすべての構成要素が物理的に統合されて制御部として構成されてもよい。このような場合、統合された制御部は、バッテリーのRACK BMSと直接的に通信可能に接続されてもよく、RACK BMSに統合されて実現されてもよい。
【符号の説明】
【0118】
本発明の図面中に用いられている符号及び名称は、下記の通りである。
【0119】
100…フィールドデータ算出部
200…フィールドデータ前処理部
210…セル電圧予測フィールドデータ前処理部
220…セル温度予測フィールドデータ前処理部
300…人工知能ニューラルネットワーク部
310…ニューラルネットワーク学習部
320…セル電圧予測モデル
330…セル温度予測モデル
400…バッテリー異常挙動検出部
410…セル電圧異常挙動判定部
420…セル温度異常挙動判定部
500…制御部
【手続補正書】
【提出日】2024-04-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2009-0020448号公報
【特許文献2】大韓民国公開特許第10-2018-0057266号公報
【国際調査報告】