(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20241106BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20241106BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20241106BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12Q1/6813 Z
C12M1/42
C12M1/34 B
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524711
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 SE2022050974
(87)【国際公開番号】W WO2023075663
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523351852
【氏名又は名称】カウンタゲン・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】レイオレ・アジュリア・アストビザ
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト・バーリマン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029CC03
4B029FA15
4B029GA03
4B029GB09
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR82
4B063QR90
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
本明細書において、複数の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含む試料を分析する方法が提供され、方法は、(i)複数の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含む試料溶液を提供することと、(ii)ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを磁気ビーズに結合させてビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを提供し、それによって更なる試料溶液を提供することと、(iii)更なる試料溶液を試料支持要素の第1の表面に適用することと、(iv)ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き出す(例えば、引き付ける)ように磁気源を提供することと、を含む。本発明はまた、本方法における使用のための試料分析デバイス、並びに本発明の方法で使用されるパーツのキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含む試料を分析する方法であって、前記方法が、
(i)複数の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含む試料溶液を提供することと、
(ii)前記ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを磁気ビーズに結合させて、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを提供し、それによって更なる試料溶液を提供することと、
(iii)前記更なる試料溶液を試料支持要素の第1の表面に適用することと、
(iv)前記ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを前記試料支持要素の前記第1の表面の位置に引き寄せる(例えば、引き付ける)ように磁気源を提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記磁気ビーズが、約10nm~約5μm、例えば、約500nm~約2μmなどの約10nm~約2μmの平均サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁気ビーズが、約30nm~約200nmの平均サイズを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記磁気ビーズが、超常磁気ビーズであり、任意選択的に、鉄、ニッケル、コバルト、又はそれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが、吸着若しくはコンジュゲーション、又はそれらの組み合わせを介して前記磁気ビーズに結合される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気ビーズが、前記ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドに直接的又は間接的に(例えば、相補的捕捉オリゴヌクレオチドを介して)コンジュゲートするために構成された表面コーティングを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記表面コーティングが、前記ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドにコンジュゲートするための反応性基を含み、任意選択的に、前記反応性基が、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、アミン(例えば、アルキルアミン)、スクシンイミド(N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)、イミダート(例えば、イミドエステル)、イミド(例えば、マレイミド)、ハロアセチル、ジスルフィド(例えば、ピリジルジスルフィド)、ヒドラジン、ジアジリン又はアジド(アリールアジドなど)、アビジン(例えば、ストレプトアビジン及びニュートラアビジン)、ビオチン、カルボキシル、チオール、アルキン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが、前記磁気ビーズの前記表面コーティングにコンジュゲートするための化合物を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記磁気ビーズの前記表面コーティングにコンジュゲートするための前記化合物が、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、アミン(例えば、アルキルアミン)、スクシンイミド(N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)、イミダート(例えば、イミドエステル)、イミド(例えば、マレイミド)、ハロアセチル、ジスルフィド(例えば、ピリジルジスルフィド)、ヒドラジン、ジアジリン又はアジド(アリールアジドなど)、アビジン(例えば、ストレプトアビジン及びニュートラアビジン)、ビオチン、カルボキシル、アルキン、チオール、及びそれらの混合物からなる群から選択される反応性基を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記磁気源が、前記ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを、光学的検知デバイスの視野と同等であるか、又はそれよりも小さい、前記試料支持要素の前記第1の表面上の位置に引き付ける、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複数のポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが、ローリングサークル増幅産物又はパッドロックプローブである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが、ローリングサークル増幅ステップ又はハイブリダイゼーション連鎖反応ステップによって調製される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
本発明の前記方法における使用のための前記本発明の第2の態様による試料分析デバイスであって、試料分析デバイスが、
試料溶液を受容するための複数のウェルを含む試料支持要素と、
複数の磁気源を含むベース要素であって、前記ベース要素が、前記試料支持要素が前記ベース要素の上部に配置できるように適合され、前記複数の磁気源が、磁場の集束点が、前記試料支持要素内の各ウェルの底部の中心に向かって提供されるように、前記磁場を生成するように空間的に構成される、ベース要素と、を含む、試料分析デバイス。
【請求項14】
第1及び第2の表面を有する試料支持要素を含む試料分析デバイスであって、磁気源が、前記試料分析デバイスの前記第2の表面に取り付けられている、試料分析デバイス。
【請求項15】
前記磁気源のサイズが、光学的検知デバイスの視野と同等であるか、又はそれよりも小さい、請求項14に記載の試料分析デバイス。
【請求項16】
前記試料支持要素の前記第1の表面が、試料溶液を受容するための試料受容ウェルの底部を形成する、請求項14又は15に記載の試料分析デバイス。
【請求項17】
前記試料受容ウェルが、試料溶液を前記試料受容ウェルに導入するための開口を含む、請求項16に記載の試料分析デバイス。
【請求項18】
パーツのキットであって、
i)ローリングサークル増幅試薬及び/又はハイブリダイゼーション連鎖反応試薬を含む容器又は複数の容器と、
ii)磁気ビーズを含む容器と、
iii)請求項13~17のいずれか一項に記載の試料分析デバイスと、を含む、パーツのキット。
【請求項19】
パーツのキットであって、
i)ローリングサークル増幅試薬及び/又はハイブリダイゼーション連鎖反応試薬を含む容器又は複数の容器と、
ii)磁気ビーズを含む容器と、
iii)請求項1~12のいずれか一項に記載の方法における前記キットの使用説明書と、を含む、パーツのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料分析方法、特に、ローリングサークル増幅(RCA)産物(RCP)などのポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを測定、分析、及び定量化するためのかかる試料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子、特に核酸の正確な定量化は、生物医学研究、遺伝子工学、及び薬物開発のために最も重要なものである。単一分子溶液は、それらが量における微妙な差異を検出することを可能にするため、バルク測定よりも優れていることが証明されてきており、例えば、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、従来のPCRよりも多くの利点を有する。
【0003】
RCAは、分子の個々のコピーを検出するために使用することができる単一分子増幅技術である。RCAは本質的にデジタルであり、複合溶液中の単一分子コピーを区別することができるように、デジタルPCRが行うような液滴又はウェルへの区画化を必要としないことを意味する。RCPは、フルオロフォアで標識されているときに光学的センサによって最も頻繁に検出される。しかしながら、他の光学的及び非光学的読み出しモードが同様に探索されてきている。RCPを含有する液体試料からRCPを定量化するための主な課題は、最終反応体積を光学デバイスの焦点体積と一致させることである。これは、ミスマッチを生じ、試料中のRCPの絶対数が、検出するために十分高くあり得ても、試料中のRCPの濃度は低い可能性があり、これは、液体試料中の全てのRPCのうちの全て又は実質的な割合を検出して統計的有意性に到達するために、試料体積全体が分析されなければならないことを必要とし得る。
【0004】
液体試料中のRCPを適用し、スライドガラスなどの二次元(2D)表面に加えて広げることができ、次いで、スライドガラス全体を撮像することによってRCPの総数を決定することができる。しかしながら、かかる手順は、顕微鏡光学的対物レンズのいくつかの隣接する視野の画像を高精度に取得して、領域全体をキャプチャできるようにする走査ステージを有する複雑化した自動顕微鏡を必要とする。
【0005】
核酸をビーズで捕捉することは、様々な適用に有用であることが示されている。
【0006】
例えば、Sato et al.Microbead-based rolling circle amplification in a microchip for sensitive DNA detection.Lab Chip(2010);10:1262-1266は、ビーズでのRCPの増幅及びその後のデジタル定量化のためのマイクロビーズの使用を報告している。しかしながら、このシステムは反応を伴う負荷を必要とし、ビーズ結合産物は小さな表面積に容易に濃縮することができない。別の例では、Soares et al.Silica bead-based microfluidic device with integrated photodiodes for the rapid capture and detection of rolling circle amplification products in the femtomolar range,Biosens.Bioelectron.(2019),1;128:68-75は、蛍光強度ベースの読み出しのためのシリカマイクロビーズでのRCPのトラッピングを報告している。しかしながら、このシステムは連続的なフローを必要とし、数十マイクロメートルサイズの大きなビーズを使用し、RCPのデジタル定量化を可能にしない。Donolato et al.Quantification of rolling circle amplified DNA using magnetic nanobeads and a Blu-ray optical pick-up unit.Biosens.Bioelectron.(2014);67:649-655の更なる別の例は、RCPの捕捉及びその後の光磁気定量化のためのナノビーズの使用を公表している。しかしながら、RCPは、磁気モメンタムを増加させるために複数の磁気ビーズに結合され、単一RCPのデジタル定量化は不可能である。要約すると、これらの方法はいずれも、単一視野内で核酸をデジタル定量化するために、ビーズ結合RCPを小領域に濃縮する可能性を報告していない。更に、ビーズ結合RCPの観察された蛍光強度の増加は報告されていない。
【0007】
磁気ビーズを使用して、液体試料中のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを捕捉し(又はそれらの上で生成し)、かつ磁気源を使用して、それらを小さい表面積に、又はそれに向けて濃縮する、新規方法が本明細書に提供される。この方法は、試料体積中の最初にあるポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの数を維持することを可能にし、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの局所濃度を、顕微鏡対物レンズなどの光学的感知デバイスの単一視野内に効果的に増加させる。試料分析方法は、単純な光学的読み出しでRCPを含有する試料の分析を容易し、一方、依然として高い検出感度を達成する。
【0008】
また本明細書において、本方法で使用される試料分析デバイスが提供される。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第一の態様により、複数の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含む試料を分析する方法が提供され、方法は、
(i)複数の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含む試料溶液を提供することと、
(ii)ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを磁気ビーズに結合させて、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを提供し、それによって更なる試料溶液を提供することと、
(iii)更なる試料溶液を、試料支持要素の第1の表面に適用することと、
(iv)ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面の位置に引き寄せる(例えば、引き付ける)ように磁気源を提供することと、を含み、方法は、「本発明の方法」と以後称される。
【0010】
本開示の目的は、上記で考察された問題のうちの1つ以上を克服するか、又は少なくとも緩和することであり、これまで知られている技術によって提供されなかった利点及び態様を提供することである。
【0011】
本発明の方法の特定の目的は、小さな定義された領域上/中に、更なる試料溶液からのポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの濃縮及び集中を可能にすることである。この目的及び他の目的は、本明細書に開示される本発明によって満たされる。
【0012】
更に説明すると、磁気源がビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き寄せる(例えば引き付ける)と述べられているステップ(iv)において、これは、磁気源を提供する前にビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが更なる試料溶液内に分布しており、それが試料支持要素の第1の表面に適用されることを意味する。磁気源の提供に続いて、磁気ビーズは、試料支持要素の第1の表面の所定の位置に向かって引き寄せられる(例えば、引き付けられる)。誤解を避けるために、磁気ビーズが分析及び/又は視覚化を可能にする領域に向かって引き寄せられる(例えば、引き付けられる)限り、本発明を実施に移すために、磁気ビーズが試料支持要素の第1の表面と接触することは必要としない。
【0013】
「引き寄せられる」という用語により、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが磁気源によって試料の第1の表面上の位置に「引き付けられる」か、又はビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが磁気源によって試料の第1の表面上の位置に「跳ね返される」ことを含む。実際、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、力の組み合わせが、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが引き寄せられる集中点を提供するように、複数の磁気源の配置によって提供される引き付ける力と跳ね返す力の組み合わせによって位置に引き寄せられる。本明細書で使用される「引き寄せる」という用語は、「引き付ける」又は「跳ね返す」のいずれかで置き換えられ得る。
【0014】
すなわち、ステップ(iv)において、磁気源は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き付けるように提供され得る。
【0015】
ステップ(iv)において、磁気源は、第1の表面とは反対側の試料支持要素の第2の表面に提供され得る。これにより、試料支持要素の第2の表面と接触している磁気源、例えば磁石を指す。
【0016】
代替的に、磁気源は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き寄せる(例えば、引き付ける)ように、試料支持要素の近傍に提供され得る。これにより、磁気源、又は実際には複数の磁気源が、試料支持要素の第1の表面上の位置にビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを引き寄せる(例えば、引き付ける)ようにそれらの磁場が集束するように、試料支持要素に十分に近接して提供されることを意味する。これは、本発明を実施に移すために、磁気源が必ずしも試料支持要素と接触する必要がないことを意味する。例えば、磁気源は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き寄せる(例えば、引き付ける)集束した磁場を生成するように、試料支持要素の周りに空間的に構成される磁石若しくは電磁石の配列、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0017】
更に、磁気源は、第1の表面とは反対側の試料支持要素の第2の表面の近傍に配置され得るか、実際には、試料支持要素の第1の表面の近傍に配置され得る。
【0018】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、鎖におけるヌクレオチドモノマー、例えば、DNA及び/又はcDNA及び/又はRNAで構成された生体高分子を指す。典型的には、ポリヌクレオチドは、鎖に少なくとも14ヌクレオチドを含む。
【0019】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、合成DNA又はRNAの任意の短い一本鎖を指す。典型的には、オリゴヌクレオチドは、鎖に約3~20ヌクレオチドを含む。
【0020】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、目的の特徴のうちの少なくとも2つを指す。例えば、試料溶液中の複数のポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、試料溶液が、少なくとも2つのポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを含むことを意味する。更に、複数のポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは同一であり得るか、又は実際には試料溶液は、分析のために複数の異なるポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを含み得る。
【0021】
当業者は、本明細書で使用される「目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチド」という語句が、増幅及び/又は分析されるべきポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを指すことを理解するであろう。当業者は、かかるポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドが、合成及び/又は天然に存在するポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを指し得ることを理解するであろう。
【0022】
誤解を避けるために、「複数」という用語を用いずに本明細書でポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを指す場合、複数のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを指している。
【0023】
磁気ビーズは、約10nm~約5μm、例えば、約10nm~約2μm、例えば、約500nm~約2μmの平均サイズを有し得る。この点で、磁気ビーズは、約10nm~約5μm、例えば、約500nm~約2μmなどの約10nm~約2μm、又は約10nm~約500nmなどの約10nm~約1μm、例えば、約30nm~約200nm又は約50nm~約200nmの平均直径を有し得る。
【0024】
磁気ビーズのサイズの変動係数(CV)は、一般に、相対標準偏差(RSD)とも称され、約10%未満、例えば、約5%未満であり得る。
【0025】
当業者は、磁気ビーズのサイズをnm~μmの範囲で決定するための好適な方法を認識しており、かかる方法には、動的光散乱(DLS)、透過電子顕微鏡(TEM)散乱電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、及びレーザー回折分析が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「磁気ビーズ」という用語は、磁気を帯び、かつ/又は磁気特性を有するビーズを指す。
【0027】
磁気ビーズは、フェリ磁気又は超常磁気であり得る。磁気ビーズは、超常磁気であることが好ましい。
【0028】
磁気ビーズは、鉄、ニッケル、コバルト、又はそれらの組み合わせを含み得る。好ましくは、磁気ビーズは、磁鉄鉱(Fe3O4)などの酸化鉄を含む。
【0029】
使用され得る磁気ビーズの例としては、Dynabeads(例えば、Dynabeads(商標)MyOne(商標)ストレプトアビジンT1(Thermo Fisher Scientific)、Dynabeads(商標)MyOne(商標)ストレプトアビジンC1(Thermo Fisher Scientific)、Dynabeads(商標)M-270ストレプトアビジン(Thermo Fisher Scientific)、Dynabeads(商標)M-280ストレプトアビジン(Thermo Fisher Scientific)、Dynabeads(商標)MyOne(商標)シラン(Thermo Fisher Scientific))、MACS(登録商標)MicroBeads及びMACSxpress(登録商標)Beads(Miltenyi Biotec)、Turbobeads(Turbobeads Llc)、Sera-Mag(商標)ビーズ(Cytiva)、Ni-NTA磁気アガロースビーズ(QIAGEN)、SuperMagストレプトアビジン磁気ビーズ(Ocean NanoTech)、及びMagSi(AMSBIO)が挙げられる。
【0030】
当業者であれば、磁気ビーズにポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを「結合させる」ことは、吸着及び/若しくはコンジュゲーション、又はそれらの組み合わせを介するなど、当該技術分野における標準的な方法を使用した、かかるポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドの結合を含み得ることを理解するであろう。結合は、コンジュゲーションを介して実行されることが好ましい。
【0031】
コンジュゲーションを介した磁気ビーズへのポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドの結合の場合、かかるコンジュゲーションは、目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴペプチドに直接的又は間接的(例えば、相補的捕捉オリゴヌクレオチドを介して)のいずれかであり得る。
【0032】
磁気ビーズは、磁気ビーズへのポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドの結合を可能にするために構成された表面コーティング及び/又は修飾を含み得る。かかる表面コーティングは、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドにコンジュゲートするための反応性基を含み得、かかる反応性基は、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、アミン(例えば、アルキルアミン)、スクシンイミド(N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)、イミダート(例えば、イミドエステル)、イミド(例えば、マレイミド)、ハロアセチル、ジスルフィド(例えば、ピリジルジスルフィド)、ヒドラジン、ジアジリン又はアジド(アリールアジドなど)、アビジン(例えば、ストレプトアビジン及びニュートラアビジン)、ビオチン、カルボキシル、アルキン、及びチオールからなる群から選択され得る。
【0033】
また、本発明の方法のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドは、磁気ビーズの表面コーティングにコンジュゲートするための化合物を含み得ることを理解されたい。かかる化合物は、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドにコンジュゲートするための反応性基を含み得、かかる反応性基は、カルボジイミド(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)など)、アミン(例えば、アルキルアミン)、スクシンイミド(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、イミダート(例えば、イミドエステル)、イミド(例えば、マレイミド)、ハロアセチル、ジスルフィド(例えば、ピリジルジスルフィド)、ヒドラジン、ジアジリン又はアジド(アリールアジドなど)、アビジン(例えば、ストレプトアビジン及びニュートラアビジン)、ビオチン、カルボキシル、アルキン、及びチオールからなる群から選択され得る。
【0034】
ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、クリックケミストリーを介して磁気ビーズの表面コーティングにコンジュゲートされ得る。例えば、磁気ビーズの表面は、アジド基を含み得、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、クリックケミストリーを介してコンジュゲートするアルキン基を含み得る。誤解を避けるために、コンジュゲートする基は入れ替えられ得、例えば、磁気ビーズ表面は、アルキン基を含み得、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、アジド基を含み得る。
【0035】
更に、磁気ビーズの表面は、表面コーティング反応性基の磁気ビーズ表面へのコンジュゲーションを強化するために、銀層又は金層などの層を含み得る。
【0036】
本発明の方法のステップ(i)は、複数の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含む試料溶液を提供することを伴う。本方法は、当技術分野で既知のものによる適切な増幅方法によって、本明細書に前述されるような複数の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドの生成を含む、ステップ(i)の前のステップを含み得ることが理解されるべきである。
【0037】
代替的に、又は追加的に、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを磁気ビーズに結合させるステップ(ii)の後に、本方法は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを増幅するステップを含み得る。この意味で、増幅のためにビーズに結合しているポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、ビーズ上にRCPを生成するために使用されるパッドロックプローブであり得る。
【0038】
前述の「増幅方法」には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換アッセイ(SDA)、転写媒介アッセイ(TMA)、及びハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)、特にローリングサークル増幅(RCA)などの単一分子増幅方法が含まれる。
【0039】
RCAは、区画化することなくデジタル定量化を可能にする、周知の単一分子増幅法である。RCA産物(以後「RCP」と称され得る)をフルオロフォアなどの定義した光学的特性の分子で標識した後、当該増幅した分子は、個々に定量することができる単一ドットとして検出することができる。RCAを行うための環状オリゴヌクレオチドテンプレートは、いくつかの高度に標的特異的な手段によって設計及び生成され得、これらの標的は、事実上、任意のヌクレオチド配列であり得る。
【0040】
RCAは、環状DNA標的上で高度に進行性のポリメラーゼを使用して、長いssDNA(すなわち、一本鎖DNA)コンカテマーを数百ナノメートル~マイクロメートルの範囲で生成する(Baner,J.;Nilsson,M.;Mendel-Hartvig,M.;Landegren,U.Signal Amplification of Padlock Probes by Rolling Circle Replication.Nucleic Acids Res.1998,26(22),5073-5078)。RCAは、しばしば「パッドロックプローブ」(PLP)と組み合わされ、配列特異的オリゴヌクレオチドが、次いでライゲーションステップによって共有結合によって連結することができる標的鎖に環状方式で結合する。PLPベースのRCAアッセイは、極度のストリンジェンシーを単一塩基精度で提供する(Nilsson,M.;Malmgren,H.;Samiotaki,M.;Kwiatkowski,M.;Chowdhary,B.P.;Landegren,U.Padlock Probes: Circularizing Oligonucleotides for Localized DNA Detection.Science.1994,265(5181),2085-2088)。PLPと同様に、「セレクター」プローブは、RCAと組み合わされ得、標的は、RCAの前に環状化される(Johansson,H.;Isaksson,M.;Soerqvist,E.F.;Roos,F.;Stenberg,J.;Sjoeblom,T.;Botling,J.;Micke,P.;Edlund,K.;Fredriksson,S.;Kultima,H.G.;Ericsson,O.;Nilsson,M.Targeted Resequencing of Candidate Genes Using Selector Probes.Nucleic Acids Res.2011,39(2),e8)。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ローリングサークル増幅産物」という用語は、単一分子で並んだ、環状テンプレートの数百の逆相補性要素からなる長反復一本鎖アンプリコンなどのローリングサークル増幅(RCA)によって生成された産物を指す。誤解を避けるために、RCAによって生成されたポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドは、以後、「RCA産物」又は「RCP」と称され得る。
【0042】
また、ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)は、RCAと同様な周知の単一分子増幅方法であるが、アンプリコン生成のための酵素の使用に依存しない。
【0043】
本明細書の前述で定義された本発明の方法におけるポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドは、ローリングサークル増幅産物又はハイブリダイゼーション連鎖反応産物であることが好ましい。
【0044】
本発明者らは、本方法が典型的には、1つの磁気ビーズに結合する1つのポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのみに到達することを見出した。したがって、実施形態では、単一のポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、各々の磁気ビーズに結合する。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者は、この出現について2つの仮説を有する。第1の仮説は、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの増幅が、同じ位置で別の増幅を開始するために、それが全ての試薬を局所的に使い果たす速度で生じるというものである。第2の仮説は、増幅産物が形成されると、それが立体障害によって他の増幅事象が発生することを阻害するというものである。同様な手段で、増幅産物がビーズでの捕捉のためにすでに形成されている場合(ビーズ上に形成されるのではなく)、それは確率的プロセスであり、ビーズ及び増幅産物のサイズのために、増幅産物がビーズ結合になると、それは同じビーズへの結合から他のものを退ける。
【0045】
ステップ(i)において、試料溶液は、ビーズ結合していない複数のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含み、ステップ(ii)の後に、複数のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドが次いでビーズ結合し、したがって、更なる試料溶液を提供し、この場合、ステップ(i)における試料溶液は、第1の試料溶液と称され得、ステップ(ii)において調製された試料溶液は、第2の試料溶液と称され得る。
【0046】
誤解を避けるために、本発明の方法では、ステップ(ii)でビーズ結合になる全てのポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドが本発明を実施に移す必要はなく、当業者は、熱力学的及び運動学的要因により、たとえ過剰の磁気ビーズがあっても、全てのポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドが試料溶液中でビーズ結合になることはない可能性があることを理解するであろう。
【0047】
本発明の方法のステップ(iii)は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを含有する更なる試料溶液を試料支持要素の第1の表面に適用することを伴う。すなわち、試料支持要素は、更なる試料溶液を適用し、試料支持要素上の位置に保持することができる第1の表面(例えば、平面状表面)を含む。かかる支持要素は、第1の表面とは反対側に第2の表面を有し得る。
【0048】
試料支持要素は、更なる試料溶液を、更なる分析/視覚化のために表面で位置に適用して保持することを可能にすることを条件として、任意の材料を含み得る。例えば、試料支持要素は、顕微鏡スライド(例えば、ガラス顕微鏡スライド)又は膜であり得る。代替的に、試料支持要素の第1の表面は、更なる試料溶液を受容するための試料受容ウェルの底部を形成し得、任意選択的に、ウェルは、更なる試料溶液を試料受容ウェルに導入するための開口を含む。
【0049】
試料支持要素の第1の表面に添加される更なる試料溶液の量は、約5~約20μLなどの約1~約50μLの範囲にあり得る。
【0050】
本発明の方法のステップ(iv)は、ビーズ結合ポリヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き寄せる(例えば、引き付ける)ように磁気源を提供することを伴う。
【0051】
本発明の方法により、前述で定義された磁気源(例えば、本発明の方法のステップ(iv)における)は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを、光学的検知デバイスの視野と同等であるか、又はそれよりも小さい、試料支持要素の第1の表面上の位置に引き寄せ(例えば、引き付け)得る。代替的に、漏斗を使用して試料溶液を複数のウェルに制限し得、その後、複数のウェルにまたがる磁気源を使用して、ビーズ結合ポリヌクレオチドを試料支持要素の各ウェルの第1の表面上の複数の位置に引き付け得る。
【0052】
磁気源は、ネオジム磁石又は電磁石などの永久磁石又は非永久磁石であり得る。更に、磁気源は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き寄せる(例えば、引き付ける)集束した磁場を生成するように、試料支持要素の周りに空間的に構成される磁石若しくは電磁石の配列、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0053】
磁石は、支持要素に約0.75mm2~約12cm2などの約0.75mm2~約25cm2、例えば、約7mm2~約12cm2の範囲で面する表面積を有し得る。
【0054】
磁気源の磁気保持力(通常、引張力とも称される)は、約1g~約500gなどの約1g~約50kg、例えば、例えば、約250g~約500gの範囲にあり得る。誤解を避けるために、当業者は、磁石の磁気保持力が、磁石を3.175mmの厚さの鋼板からまっすぐに引き離すために必要な力であることを理解するであろう。
【0055】
磁気源の提供に続いて、方法は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが試料支持要素の第1の表面上の位置に向けて移動するのに十分な時間まで、室温でインキュベーションステップを含み得る。誤解を避けるために、この意味での「インキュベーション」という用語は、試料が特定期間乱されないままにされることを意味し、必ずしも試料が加熱されていることを意味するわけではなく、例えば、インキュベーションは室温であり得る。しかしながら、インキュベーションはまた、約25~約40℃などの約25~約50℃の温度など、制御された温度下で実行され得る。
【0056】
磁気源を提供するステップは、更なる試料溶液が適用されるときに、試料支持要素の第2の表面の近傍にすでに存在している磁気源を含むことに留意されたい。例えば、磁気源は、試料支持要素の第2の表面に固定される磁石であり得、これは、試料溶液が第1の表面に適用されると、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが直ちに、又は少なくとも実質的に直ちに、磁気源に向かって引き付けられ始めることを意味する。
【0057】
ステップ(iv)の後に、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、顕微鏡、例えば、蛍光顕微鏡、好ましくは落射蛍光顕微鏡などの光学デバイスを使用して視覚化及び/又は定量化され得る。したがって、方法は、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを標識するステップを含み得る。
【0058】
実施例4及び5で説明されるように、本発明者らは、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの蛍光シグナルが、ビーズ及びポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチド単独の蛍光の合計よりも大きいことを予期せず見出している。
【0059】
様々な標識を使用することができ、フルオロフォア、比色標識、化学発光標識、リン光標識、並びに金及び銀粒子などの粒子、その上量子ドットが含まれる。例えば、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、蛍光によるタグ化オリゴヌクレオチド又はビオチンタグ化ヌクレオチドを用いて標識され得る。ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、ビーズとの結合の前又は後に標識され得る。
【0060】
視覚化の前に、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、洗浄され得る。すなわち、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持体要素の第1の表面上の位置に引き寄せる(例えば、引き付ける)ステップ(iv)の後、溶液の体積(すなわち、上清)が除去され得、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが更なる溶液で洗浄され得る。
【0061】
洗浄のための更なる溶液は、ポリソルベート界面活性剤、例えば、Tween20という商標名によっても一般的に呼ばれるポリソルベート20、などの界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、約0.1~5%(v/v)の量で存在し得る。
【0062】
また、洗浄のための溶液は、塩化ナトリウムなどの塩を含み得る。塩は、約50~約150mMなどの約20~約200mMの量で含まれ得る。
【0063】
また、洗浄溶液は、EDTAなどのキレート剤を、任意選択的に、約2~約10mMなどの約1~約20mMの量で含み得る。
【0064】
洗浄溶液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(一般にトリスと称される)などの緩衝剤を、任意選択的に、約5~約15mMなどの約1~約20mMの量で更に含み得る。
【0065】
代替的に、溶液の体積の除去後、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを含む試料溶液の更なる小分けを、試料支持要素の第1の表面に適用し得、その後、更なる小分け中のビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドも試料支持要素の第1の表面上の位置に引き付けられる。これは、希釈試料を迅速かつ簡単な手段で濃縮することを可能し、光学的感知デバイスが単一視野で視覚化/定量化することを可能にする。誤解を避けるために、試料溶液の更なる小分けの添加後、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは洗浄され得る。
【0066】
試料支持要素の第1の表面上の位置に引き寄せられた(例えば、引き付けられた)後、方法は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上に固定又は固着するステップを含み得る。固着されると、試料支持要素は、可視化のために磁気源の近傍から取り除かれる。このように、後続の撮像のためにビーズ-RCP複合体を所定の位置に保つために、磁場を一貫して印加する必要はない。
【0067】
ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドは、磁気源を提供した後、ゲル様構造で固定化/固着化することができる。ゲルを成型/作製するために使用することができる化合物は、ポリアクリルアミド、アガロース、硬化取付媒体(例えば、VECTASHIELD Vibrance Antifade Mounting Media)、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリル化オリゴマー及び光開始剤(例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO))などのUV硬化化学物質、並びにエポキシ、接着剤、例えば、シアノアクリレートベース(Superglue)及びシリコーン、又は上記のゲル化学物質の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0068】
また、本発明の方法のポリヌクレオチド及び/若しくはオリゴヌクレオチド又はビーズは、試料支持体要素の第1の表面上のコーティングにコンジュゲートするための化合物を含み得ることも理解されたい。
【0069】
試料支持要素の第1の表面にコーティングするためのかかる化合物は、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチド又はビーズにコンジュゲートするための反応性基を含み得、かかる反応性基は、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC))、アミン(例えば、アルキルアミン)、スクシンイミド(N-ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)、イミダート(例えば、イミドエステル)、イミド(例えば、マレイミド)、ハロアセチル、ジスルフィド(例えば、ピリジルジスルフィド)、ヒドラジン、ジアジリン又はアジド(アリールアジドなど)、アビジン(例えば、ストレプトアビジン及びニュートラアビジン)、ビオチン、カルボキシル、アルキン、及びチオール、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0070】
本発明は、試料溶液からの目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを、顕微鏡対物レンズなどの光学的感知デバイスの単一視野の領域に対応する小さな定義された領域に集中させることを可能にする、以下に記載の試料分析デバイスに関する。試料分析デバイスは、単純な光学的読み出しで目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含有する試料の分析を容易し、一方、依然として高い検出感度を達成する。
【0071】
したがって、本発明の第2の態様により、第1及び第2の表面を有する試料支持要素を含む試料分析デバイスが提供され、磁気源が試料分析デバイスの第2の表面に取り付けられる。
【0072】
磁気源のサイズは、光学的検知デバイスの視野と同等であるか、又はそれよりも小さいものであり得、本発明の第1の態様に関して上記に概説された特徴のうちのいずれかを含み得る。
【0073】
磁気源は、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き寄せる(例えば、引き付ける)集束した磁場を生成するように、試料支持要素の周りに空間的に構成される磁石若しくは電磁石の配列、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0074】
試料分析デバイスは、本明細書で定義されるような試料溶液中の目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドが、顕微鏡対物レンズなどの光学的感知デバイスの単一視野の領域に対応する小さな定義された領域に集中することを可能にするように構成され得る。
【0075】
試料分析デバイスは、低濃度のかかるポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを含有する本発明の方法による試料からの目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドをセンサ検出ゾーン上に濃縮するために使用され得、その結果、ポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドの検出は、試料中に含有される全ての目的のポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドを検出する単一測定のみを必要とし、それによって、検出野のいくつかの異なる領域で測定する必要性を回避し、複雑化した撮像ツールを使用することを回避する。
【0076】
試料分析デバイスは、特に、ローリングサークル増幅によって生成された(すなわち、増幅された)ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを分析及び定量化するように設計されている。
【0077】
本発明の試料分析デバイスによる試料支持要素の第1の表面は、試料分子を受容するための試料受容ウェルの底部を形成し得る。
【0078】
本発明の試料分析デバイスによる試料受容ウェルは、試料溶液を試料受容ウェルに導入するための開口を含み得る。当業者は、かかるウェルもまた、開いたウェルであり得ることを理解するであろう。代替的に、ウェルは、少なくとも部分的に、好ましくは光学的に透明な材料によって覆われ得る。
【0079】
本発明の方法では、試料溶液は、開口を通してウェルに導入され得、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを試料支持要素の第1の表面上の位置に引き付けるステップ(iv)の後に、上清を除去して、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを位置に残し、その後、更なるビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを含有する試料溶液の更なる小分けの導入が続くか、又は洗浄液(例えば、10mMのTris-HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、100mMのNaCl、及び0.1%(v/v)のTween-20)を導入して、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを洗浄し得る。
【0080】
更に、ウェルは、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが引き付けられる領域から離れたウェルの一端に配置された吸収性材料を含み得、吸収性材料は、毛細管力を介して試料溶液で引き寄せるように作用し、次いで更なる試料溶液が添加されることを可能にする。
【0081】
本発明の方法における使用のための本発明の第2の態様による代替的な試料分析デバイスが更に提供され、試料分析デバイスは、
試料溶液を受容するための複数のウェルを含む試料支持要素と、
複数の磁気源を含むベース要素であって、ベース要素が、試料支持要素がベース要素の上部に配置できるように適合され、複数の磁気源が、磁場の集束点が試料支持要素内の各ウェルの底部の中心に向かって提供されるように磁場を生成するように空間的に構成される、ベース要素と、を含む。
【0082】
誤解を避けるために、試料支持要素における各ウェルの底部は、本発明の方法に関連して本明細書で定義される試料支持要素の第1の表面としてとらえられるべきである。
【0083】
試料支持要素及びベース要素は、それらが1つの方向でのみ結合可能であるように構成され得る。これは、試料支持要素がベース要素の上に配置されるごとに、磁気源の空間配置が正確であることを確実にする。例えば、試料支持要素及びベース要素は、それらが1つの方向でのみ結合することができるように、対応する様式に形状化され得る。代替的に、又は追加的に、ベース要素は、ピンを含み得、試料支持要素は、スルーホールを含み得、その結果、試料支持要素は、ピンとスルーホールとが整列する場合にのみベース要素に適合する。
【0084】
この試料分析デバイスは、試料溶液が各ウェルに配置されると、試料支持要素をベース要素の上に配置することができ、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドが各ウェルの底部の中心に引き寄せられる(例えば、引き付けられる)という点で、本発明において有用である。これに続いて、試料支持要素を取り出して分析することができる。例えば、試料支持要素は、複数の試料の分析を可能にする視覚化装置のホルダーに配置することができる96ウェルプレートであり得る。
【0085】
上記に概説したように、試料は、各ウェルの底部の中心に引き寄せられている(例えば、引き付けられている)ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドに続いて固定化/固着化され得る。固着化を可能にするために、試料支持要素における各ウェルの底部は、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチド又はビーズにコンジュゲートするための反応性基のコーティングを含み得る。好適なコーティング化合物は、本発明の方法に関して上記に概説される。
【0086】
誤解を避けるために、2つの部分からなるデバイスは、視覚化の際に磁石が存在しないことが望まれるときに有用であるが、試料支持要素とベース要素とが結合されたままであるときにウェル内の試料を視覚化できることも企図される。
【0087】
試料分析デバイスを磁石の存在下で可視化することを意図する全ての実施形態では、試料支持要素の底部は、磁石からの蛍光シグナルの反射及び屈折を低減するために、磁気源の間に不透明な層を含み得る。
【0088】
本発明の第3の態様により、
i)ローリングサークル増幅試薬及び/又はハイブリダイゼーション連鎖反応試薬を含む容器又は複数の容器と、
ii)本明細書に記載の磁気ビーズなどの磁気ビーズを含む容器と、
iii)本発明の第2の態様による試料分析デバイス及び/又は本発明の第1の態様の方法による使用説明書と、を含むパーツのキットも提供される。
【0089】
本発明の第4の態様により、
i)ローリングサークル増幅試薬及び/又はハイブリダイゼーション連鎖反応試薬を含む容器又は複数の容器と、
ii)本明細書に記載の磁気ビーズなどの磁気ビーズを含む容器と、
iii)本発明の第1の態様の方法による方法におけるキットの使用説明書と、を含むパーツのキットが提供される。
【0090】
本発明の第3又は第4の態様によるパーツのキットは、試料支持体要素の第1の表面をコーティングするための試薬を含む容器を更に含み得、この試薬は、ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチド又はビーズにコンジュゲートするための反応性基を含む。試料支持要素の第1の表面をコーティングするための好適な化合物は、本発明の方法に関して上記に記載されている。
【0091】
本発明の第3又は第4の態様によるパーツのキットは、ビーズ結合ポリヌクレオチド/オリゴヌクレオチドを固定化するためのゲルを成型/作製するための試薬を含む容器を更に含み得る。かかるゲルを調製するために好適な試薬は、本発明の方法に関して上記に概説される。
【0092】
「約」という単語が、組成物又は組成物の成分(濃度及び比率を含む)、時間枠、及び温度などのパラメータにおける個々の構成要素の量、例えば、重量、体積、サイズ、直径などの絶対量、又は相対量(例えば、パーセンテージ)の文脈で本明細書において用いられる場合はいつでも、かかる変数は近似的であり、そのため、本明細書に指定される実際の数字から±10%、例えば±5%、好ましくは±2%(例えば、±1%)変動し得ることを理解されたい。これは、かかる数字が最初にパーセンテージとして示される場合であっても当てはまる(例えば、「約10%」は、数字10の当たりである±10%を意味し得、9%~11%のいずれかである)。
【0093】
実施形態は、その更なる目的及び利点と一緒に、実施例と一緒にした図面の以下の説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】試料分析モジュールの主な作動及び原理を例示する、キャリアビーズ上にRCP、パッドロックプローブ、又はパッドロックプローブを有する標的DNAの捕捉原理、並びに試料分析モジュールの実施形態の断面の側面図。RCPは、RCA反応後に捕捉することができるか、又は標的DNA及び/若しくはパッドロックプローブをビーズ上に捕捉し、それらで直接増幅することができる。
【
図2】異なる設計レイアウトを示す、試料分析モジュールの例示的な実施形態の断面の側面図。開いたチャネル構造並びに吸収性パッドの使用は、負荷体積を増加させることができ、それによって検出感度を更に増加させる。A)1つの流入口及び1つの流出口を有する例示的なチップ設計1、B)1つの流入口及び液体を保持する1つのチャンバーを有する例示的なチップ設計2、C)ウェルを有し、ウェルが画像取得前にカバースリップで密封することができる例示的なチップ設計3、並びにD)1つの流入口及び反対側の端部にチップ内により多くの液体を満たすことができる吸収性パッドを有する例示的なチップ設計4
【
図3】(A)スライドガラス上に、及び(B)試料分析モジュールの実施形態の試料受容ウェル内に固定化された蛍光標識RCPの画像。A.20×顕微鏡対物レンズで撮像したスライドガラス上のカバースリップ下の1pMのRCPを示す。B.(A)からの同じ1pMのRCP溶液を、本明細書に記載の濃縮方法の使用後に、20×顕微鏡対物レンズを用いて示す。
【
図4A】試料分析モジュールの実施形態を使用したRCPの連続希釈の定量化を示すグラフ。A.スライドガラス上での検出と比較して増加した検出感度を示す。B.連続希釈での直線回帰を示す。2つの個々の測定値の平均が示される。
【
図4B】試料分析モジュールの実施形態を使用したRCPの連続希釈の定量化を示すグラフ。A.スライドガラス上での検出と比較して増加した検出感度を示す。B.連続希釈での直線回帰を示す。2つの個々の測定値の平均が示される。
【
図5】試料分析モジュールの実施形態によって固定化されたヒトゲノムDNAからの蛍光標識RCPの画像。RCPは、コントロール、標的、及び参照遺伝子のプローブを区別するために、異なる蛍光バーコードで標識される。RCPの数は、3つの遺伝子全てについて等しくなければならず(比率1:1:1)、これは、溶液中のRCPの低濃度を視覚化する試料分析モジュールと併せたRCAによって確証される。挿入画像は、蛍光バーコードの各々について、それぞれのRCPを示す。
【
図6A】「遊離」/非結合RCPと比較したビーズ結合RCPの蛍光強度増強特性を示す例示的なRCPのグラフ及び画像。増強特性は、ここでは、3つの異なる蛍光チャネルによって例示される。A.スライド及びビーズ上のRCPの蛍光強度のグラフ。RCPの集団は、同じ反応から生じ、3つの蛍光チャネルに示される例示的なビーズ結合RCPの強度の増加を強調する。B.溶液中(スライドガラス上)及びビーズに結合した単一の例示的なRCPを示す一連の画像。画像は同じしきい値に設定され、ビーズ結合RCPの増加した強度及びサイズを示した。
【
図6B】「遊離」/非結合RCPと比較したビーズ結合RCPの蛍光強度増強特性を示す例示的なRCPのグラフ及び画像。増強特性は、ここでは、3つの異なる蛍光チャネルによって例示される。A.スライド及びビーズ上のRCPの蛍光強度のグラフ。RCPの集団は、同じ反応から生じ、3つの蛍光チャネルに示される例示的なビーズ結合RCPの強度の増加を強調する。B.溶液中(スライドガラス上)及びビーズに結合した単一の例示的なRCPを示す一連の画像。画像は同じしきい値に設定され、ビーズ結合RCPの増加した強度及びサイズを示した。
【
図7】ビーズ結合RCPの蛍光強度が、ビーズ及びRCPのそれら自体での合計よりも大きいことを示す例示的な画像。A.蛍光顕微鏡下での顕微鏡スライド上の磁気ビーズ、RCP、及びビーズ結合RCPの例示的な画像。左隅の数字は、画像の最も高い蛍光強度に対応する。B.ビーズとRCPとの合計がビーズ結合RCPよりも少ないという驚くべき事実を実証する例示的な画像の計算。
【
図8A】ニトロセルロース膜及び磁気ビーズの自己蛍光を比較して示すグラフ及び画像。A.異なる蛍光チャネルにおけるニトロセルロース膜及びMyOne Dynabeads C1の自己蛍光レベルのグラフ。B.膜及びビーズ結合でのFITC標識RCPの例示的な画像及び挿入図。RCPは、ビーズを使用した磁気濃縮で明確に区別できるが、ニトロセルロースの自己蛍光は、RCPを覆い隠す。
【
図8B】ニトロセルロース膜及び磁気ビーズの自己蛍光を比較して示すグラフ及び画像。A.異なる蛍光チャネルにおけるニトロセルロース膜及びMyOne Dynabeads C1の自己蛍光レベルのグラフ。B.膜及びビーズ結合でのFITC標識RCPの例示的な画像及び挿入図。RCPは、ビーズを使用した磁気濃縮で明確に区別できるが、ニトロセルロースの自己蛍光は、RCPを覆い隠す。
【
図9】(破棄可能な)定量チップ及び再利用可能なチップホルダーを有する2成分試料分析モジュールの例示的な実施形態。A.例示的なチップ及びチップホルダー設計の上面図、及び両方の組み立て。B.例示的な組み立てられた実施形態の概略側面図。C.組み立てられた例示的な実施形態の写真。
【
図10】磁石又は磁石配置の中心に均一な磁場を生じる磁石配置及び設計の2つの例示的な概念。A.視界を遮断するようにチャンバーと対物レンズとの間に磁石が配置されている場合には機能しない、ウェルを介して撮像するための倒立顕微鏡の例示的な概略図。B.及びC.は、チャンバーの周りの4つの磁石の配置を示し、D.及びE.は、その中心に均質な磁場を生じる単一の環状磁石の配置を示す。
【
図11】本明細書に開示される方法を使用してハイスループットスクリーニングを可能にする2つの例示的なマルチウェル設計。A.マルチウェルプレート及び
図3D及びEに記載される環状磁気源を収容するプレートホルダーの図解及び例。
図11B.マルチウェルプレート及びディスク形状磁気源を収容するプレートホルダーの図解及び例。
【
図12A】「遊離」/非結合RCPと比較したビーズ結合RCPの蛍光強度増強特性、及びビーズサイズの独立性(特定のサイズ範囲内)を示す例示的なRCPのグラフ及び画像。A.スライド上及びビーズに結合したRCPの蛍光強度の箱ひげ図。B.溶液中(スライドガラス上)及びビーズに結合した(同じガラススライド上)単一の例示的なRCPを示す一連の画像。
【
図12B】「遊離」/非結合RCPと比較したビーズ結合RCPの蛍光強度増強特性、及びビーズサイズの独立性(特定のサイズ範囲内)を示す例示的なRCPのグラフ及び画像。A.スライド上及びビーズに結合したRCPの蛍光強度の箱ひげ図。B.溶液中(スライドガラス上)及びビーズに結合した(同じガラススライド上)単一の例示的なRCPを示す一連の画像。
【
図13】6つの例示的なビーズサイズについて、それらの間の些細ではない光学的差異を例示する画像。スケールバーは、40μmを表す。
【
図14】RCPが結合した5つの例示的なビーズサイズ、並びに磁力下でのそれらの些細ではない挙動及び光学的差異の画像。スケールバーは20μmを表す。
【符号の説明】
【0095】
図では、以下の参照番号が使用されている、
1.ローリングサークル増幅産物を含有する溶液
2.捕捉分子(図中の三角形)。化学的又は生物学的、例えば、チオール又はビオチン。捕捉分子は、ハイブリダイゼーション、反応、又は鎖合成中のいずれかで添加することができる
3.蛍光色素(図中の星形)、例えば、配列特異的又はインターカレーティング
4.官能基を有する磁気粒子。化学的又は生物学的(例えば、ストレプトアビジン官能化又は捕捉オリゴヌクレオチドを有する)
5.DNAサークル又は連結したパッドロックプローブ
6.標的DNA
7.磁気粒子に結合/固定化されたローリングサークル増幅産物
7.試料支持要素
8.試料支持要素の第1の表面
9.試料支持要素の第2の表面
10.ビーズ結合ローリングサークル増幅産物を有する溶液
11.磁気源、例えば、永久的又は電気的
12.表面で濃縮され、磁気的に固定化されたローリングサークル増幅産物
13.顕微鏡対物レンズ、例えば、濃縮したローリングサークル増幅産物領域に一致する視野で10×又は20×
14.開口
15.薄いガラス、プラスチック層、又は短い作動距離のイメージングを可能にする他の透明材料。チップ自体と同じ素材にすることができる
16.吸収性パッド、例えば、紙又はコットン
17.透明な上層
18.スルーホール
19.濃縮チャンバー/チャネル
20.濃縮チップ
21.磁石
22.チップを位置に保持するためのピン
23.チップホルダー
24.ウェル/チャンバー
25.磁気源を収容するウェル/チャンバープレートホルダー
26.ウェル/チャンバープレート、例えば、96ウェルプレート
27.ウェル/チャンバープレートと組み合わせたウェル/チャンバープレートホルダー
図面全体を通して、同じ参照番号は、類似又は対応する要素に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0096】
図1は、試料分析モジュールの主な作動及び原理を例示する、キャリアビーズ(4)上にRCP、パッドロックプローブ、又はパッドロックプローブを有する標的DNAの捕捉原理、及び試料分析モジュールの実施形態の断面の側面図を詳細に示す。RCPは、RCA反応後に捕捉することができるか、又は標的DNA及び/若しくはパッドロックプローブをビーズ上に捕捉し、それらで直接増幅することができる。
【0097】
ローリングサークル増幅産物(7)を含む試料溶液(1)は、エッペンドルフチューブ中に提供され、官能基(化学的又は生物学的、例えば、ストレプトアビジン官能化)を有するか、又は捕捉オリゴヌクレオチド(2)を有する磁気粒子(4)が提供され、試料溶液に添加される。ローリングサークル増幅産物が磁気ビーズに結合することを可能にする期間後、ビーズ結合RCPが達成され(7)、試料溶液は、試料支持要素として作用するスライドガラスの第1の表面(8)に移された。
【0098】
次に、磁石(11)が、第1の表面とは反対側のスライドガラスの第2の表面(9)に提供され、蛍光顕微鏡などの光学撮像装置(13)の視野と等しいか、又はそれよりも小さい、スライドガラス(12)上の特定の領域にビーズを引き付けた。
【0099】
図2は、本発明の第2の態様による試料分析デバイスの4つの更なる実施形態を示す。実施形態Aは、支持要素の第1の表面(8)が、試料溶液が配置されるウェルの底部を形成するデバイスを示す。試料分析デバイスは、視覚化を可能にする透明である上層(17)を有し、デバイスは、必要に応じて試料溶液を添加及び除去することを可能にする2つの開口(14)を含む。
【0100】
実施形態Bは、実施形態Aと同等であるが、デバイスは、1つの開口(14)のみを含む。実施形態Cは、実施形態Aと同等であるが、別個の開口を有するのではなく、ガラスカバースリップ(15)がウェルの開口の上部に提供されて体積を密封する。
【0101】
実施形態Dは、実施形態Aと類似しているが、デバイスの一方の側で、開口(14)は、ビーズ結合ポリヌクレオチドが磁気源によって位置に保持されると、更なる試料溶液が添加されることを可能にするために、毛細管力を通して過剰な試料溶液を吸収する吸収性材料(16)で充填されている。
【0102】
図9は、(破棄可能な)定量化/濃縮チップ(20)及び再利用可能なチップホルダー(23)を有する2成分試料分析モジュールの例を示す。定量化チップは、正確な位置を可能にするスルーホール(18)を有し、チップホルダーピン(22)にはめ込む。これにより、直立及び反転撮像システムで撮像することが可能になる。8つの濃縮チャネル(19)は互いに9mm離れており、標準的なマルチチャネルピペットで添加することができる。
図9Aは、例示的なチップ(20)及びチップホルダー(23)設計、並びに両方の組み立ての上面図を示す。
図9Bは、例示的な組み立てられた実施形態の概略側面図である。
図9Cは、組み立てられた例示的な実施形態の写真である。磁石(21)からの蛍光シグナルの反射及び屈折を低減するために、チップホルダーを非光吸収性ペイントで積層することができるか、又は濃縮チップ自体が不透明な底層を有し、両方の事例は同様の結果で調査されている。
【0103】
図10は、磁石又は磁石配置の中心に均一な磁場を生じる磁石(11)の配置及び設計の2つの例示的な概念を示す。これらの磁石設定は、ビーズ結合RCPの濃縮のために均一な磁場を生じることを可能にし、同時に、チャンバーの中心を自由に維持し、例えば、底部からの画像取得(反転顕微鏡)を可能にする。
図10Aは、ウェル(24)を介して撮像するための倒立顕微鏡(13)の例示的な概略図を示し、チャンバーと対物レンズとの間に視界を遮断するように磁石が配置されている場合には機能しない。
図10B及び10Cは、チャンバーの周りの4つの磁石(11)の配置を示し(それぞれ、側面図及び上面図)、磁石配置の中心に均一な磁場を生じる。
【0104】
かかる磁場の配置及び生成は、よく知られており、文献に十分報告されており、かかる例は、Tretiak,O.,Bluemler,P.,&Bougas,L.(2019).Variable single-axis magnetic-field generator using permanent magnets.AIP Advances,9(11),115312.doi:10.1063/1.5130896、Manz,B.,Benecke,M.,&Volke,F.(2008);and a simple, small and low-cost permanent magnet design to produce homogeneous magnetic fields.Journal of Magnetic Resonance,192(1),131-138.doi:10.1016/j.jmr.2008.02.011である。
【0105】
かかる配置の重要性は、互いの間の磁石間の等しい距離(d1)、及びチャンバーまでのそれらの等しい距離(d2)を確実にすることである。
図10D及び10Eは、その中心に均一な磁場を生成する単一環状磁石の配置を示す。RCP(12)含有溶液を有するチャンバーを磁石の中心(d3)に配置すると、RCPは中心に濃縮される。
図10B及び10C、並びに10D及び10Eに示される2つの構成は、両方とも、チャンバーの底部層を通って反転顕微鏡検査を可能にするであろう。
【0106】
図11は、本明細書に開示される方法を使用してハイスループットスクリーニングを可能にする2つの例示的なマルチウェル設計を示す。
図3は、標準的な顕微鏡スライド(2.5cm×7.5cm)のサイズにおける例示的なチップ設計を示し、ここでは、例示的なプレートは、顕微鏡及びプレートリーダーなどの様々な標準化された画像取得ユニットに適合することができる標準的な96ウェルプレートである。
図Aは、
図3D及び3Eに記載されるマルチウェルプレート及び環状磁気源を収容するプレートホルダーハウジングの図解及び例である。この概念は、一度に96例の試料の処理及び分析を可能にする。
図Bは、マルチウェルプレート及びディスク形状磁気源を収容するプレートホルダーの図解及び例である。
【0107】
配列
配列番号1
パッドロックプローブ1
PO4-GGGCAGCTGTCTAATTTTTGAGTCGGAAGTACTACTCTCTGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACGTATCCTCGGAGAAGGTT
配列番号2
合成標的1
AGACCTGTTACATCTGGGTGCTTTCCTATAATGCACGACAGAACAAAAATTAGACAGCTGCCCAACCTTCTCCGAGGATAC
配列番号3
パッドロックプローブ1のための検出プローブ
Cy3-AGTCGGAAGTACTACTCTCT
配列番号4
捕捉オリゴ
ビオチン-TTTTTCCTCAGTAATAGTGTCTTAC
配列番号5
RPP30パッドロックプローブ
PO4-TTGTTGAGTGTTGGCGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACATTTAGCATACATCGTCGCGTGCATAACCAGGCCA
配列番号6
NRXN1未編集パッドロックプローブ
PO4-CGGCGGCCGCCTGCAGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACGGGCCTTATTCCGGTGCTATGCTGATTCTGACGCG
配列番号7
NRXN1参照パッドロックプローブ
PO4-AATAAGGGTCCCGAGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACAGAGAGTAGTACTTCCGACTACACCGTGACGAAGA
配列番号8
RPP30のための検出プローブ
Cy3-ATTTAGCATACATCGTCGCG
配列番号9
未編集NRXN1のための検出プローブ
FITC-GGGCCTTATTCCGGTGCTAT
配列番号10
NRXN1のための検出プローブ
Cy5-AGAGAGTAGTACTTCCGACT
配列番号11
外側プライマー
TACTGAGGAGCTGCATAC*A*C
配列番号12
外部プライマー
ACACTATTACTGAGG
配列番号13
NRXN1のための検出プローブ2
FITC-AGAGAGTAGTACTTCCGACT
「*」は、ホスホノチオエート塩基を示すことに留意されたい。
【実施例】
【0108】
略語の一覧
RCA=ローリングサークル増幅
DNA=デオキシリボ核酸
BSA=ウシ血清アルブミン
dNTP=デオキシヌクレオチド三リン酸
RCP(複数可)=ローリングサークル増幅産物(複数可)
EDTA=エチレンジアミン四酢酸
Tth=Thermus Thermophilus
NAD=ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
PBS=リン酸緩衝化生理食塩水
【0109】
実施例1
この実施例は、カバースリップの下にRCA産物を広げることによるスライド上の標準的定量化と比較したとき、本発明を使用する視野当たりの増加したRCA産物数を示す。この実施例は、
図3に示され、磁気ビーズに捕捉されて、所定の位置に磁気的に引き付けられることが伴わないと、単一視野内のRCAアンプリコンの数が、磁気ビーズに捕捉された数よりもはるかに少ないことを示す。
【0110】
RCP産生
インフルエンザBからのヘマグルチニン遺伝子の保存された40nt領域のものを模倣する合成一本鎖DNA標的によってテンプレート化されたパッドロックプローブライゲーション反応を行うことによって、その後のRCAのために機能する環状テンプレートを生成した。パッドロックプローブのライゲーションは、100pMパッドロックプローブ(PO4-GGGCAGCTGTCTAATTTTTGAGTCGGAAGTACTACTCTCTGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACGTATCCTCGGAGAAGGTT、配列番号1)、1pM合成標的(AGACCTGTTACATCTGGGTGCTTTCCTATAATGCACGACAGAACAAAAATTAGACAGCTGCCCAACCTTCTCCGAGGATAC、配列番号2)、Tthリガーゼ緩衝液(20mMのTris-HCl(pH8.3)、25mMのKCl、10mMのMgCl2、0.5mMのNAD、及び0.01%(v/v)Triton(登録商標)X-100)からなる混合物を用いて、5U Tth DNAリガーゼ(Blirt S.A.)を20μLの最終体積で行った。混合物を55℃で20分間インキュベートした。
【0111】
次に、得られるサークルを、0.2μg/μLのBSA(Fisher Scientific)、125μMのdNTP(Fisher Scientific)、及び8Uのphi29 DNAポリメラーゼ(Blirt S.A.)を30μLの最終体積に含む混合物で、標的プライミングしたRCAによって増幅させた。RCA反応物は、37℃で2時間、及び65℃で2分間インキュベートした。
【0112】
RCPの標識
得られるRCPは、RCP内の反復に相補的である蛍光タグ化オリゴヌクレオチド及びビオチンタグ化オリゴヌクレオチドを使用して標識した。このために、RCP産物を、5nMのシアニン3(Cy3)-(Cy3-AGTCGGAAGTACTACTCTCT、配列番号3)及びビオチンタグ化オリゴヌクレオチド(ビオチン-TTTTTCCTCAGTAATAGTGTCTTAC、配列番号4)を含有する標識緩衝液(10mMのTris-HCl(pH8.0)、10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.05%(v/v)のTween20、1MのNaClの30μLと混合した。標識反応物は、75℃で2分間、55℃で15分間インキュベートした。
【0113】
ビーズ上のRCPの捕捉
得られる標識RCPを、Dynabeads(商標)MyOne(商標)Streptavidin T1(Thermo Fisher Scientific)上で捕捉した。Dynabeads(商標)MyOne(商標)ストレプトアビジンT1ビーズは、表面に共有結合した組換えストレプトアビジンの単層を多層でなく有し、BSAで更にブロッキングされた、1μmの直径を有する超常磁気ビーズである。このために、ビーズを製造業者の説明書に従って調製し、続いて、0.125μg/μLの濃度でRCP溶液に添加した。捕捉反応物を37℃で20分間インキュベートし、続いてビーズを洗浄緩衝液で1回洗浄し、同じ緩衝液に再懸濁させた。
【0114】
RCPの撮像
得られるビーズ結合RCPを可視化するために、10μLの捕捉反応物をSuperfrostガラススライド(Thermo Fisher Scientific)上に置いた。1.5mmの環状磁石(Supermagnete)をスライドに取り付け、小さな表面積にビーズ結合RCPの局所的濃縮を可能にした。溶液を広げるために、24×24mm2のカバースリップを溶液の上部に配置した。スライドを室温で5分間インキュベートし、ビーズを濃縮させた。インキュベーション後、スライドを、20×拡大対物レンズ及び0.65×0.65μm2の視野を有するOlympus IX72倒立蛍光顕微鏡で撮像した。
【0115】
磁気ビーズに捕捉されなかったRCPを視覚化するために、同様の手順を使用したが、RCPは磁力の影響を受けないため、スライドガラスに磁石は取り付けなかった。
【0116】
結論として、
図3bと比較して、
図3aで観察されたRCPの数に顕著な差異がある。磁気濃縮法を使用する場合、RCPが小さな表面積に引き付けられるため、RCPの数は同じ視野内ではるかに高い。結果は、増加した感度であり、したがって、低濃度のRCPを含有する試料をスキャンする必要がないため、簡素化した検出でもある。それによって、RCAの主要な限界のうちの1つである、低濃度でのRCPの検出を克服する。
【0117】
実施例2
本発明の分析能力。
この実施例は、スライド上の通常の読み出しと比較して、本発明を使用する増加した分析能力を実証する。この実施例を
図4に示す。
【0118】
RCPは、実施例1に記載したのと同じ方法で調製した。要するに、ライゲーションを介して異なる合成標的濃度を環化し、RCPに2時間増幅させた。次に、RCPを蛍光及びビオチンプローブで標識した。
【0119】
濃縮方法では、RCPを実施例1に記載されるように磁気ビーズとともにインキュベートした。試料溶液(60μLの反応体積のうちの10μL)を、その底部に取り付けた直径1.5mmの磁石を有したセルカウンタースライド(BioRad)に加えた。5分後、セルカウンタースライドを顕微鏡ステージに配置し、20×対物レンズを使用して濃縮したRCPを可視化した。
【0120】
比較方法では、標識RCPは、ビーズに捕捉されなかった。試料溶液(60μLの反応体積のうちの10μL)を、セルカウンタースライドに加えたが、磁石は取り付けなかった。5分後、RCPを定着させ、同じ20×対物レンズを使用して可視化することができる。
【0121】
RCP定量
得られた画像を、CellProfilerソフトウェア中のカスタム作製されたパイプラインを使用して分析した(バージョン4.1.3、https://cellprofiler.org、Broad Instituteによるものであり、最初にLamprecht et al.CellProfiler:free,versatile software for automated biological image analysis,Biotechniques(2007);42(1):71-75)によって公開された)。パイプラインは、手動しきい値設定による画像強調及びオブジェクト特定で構成されていた。
【0122】
結論として、結果は、顕微鏡スライドガラス上の通常の読み出しと比較したとき、本明細書に開示される濃縮方法の増加した感度を確証する。濃縮方法を用いて、RCPは、通常の読み出しがブランクにみえる濃度で検出することができる(
図4a)。追加的に、検出されたRCPの数は、入力標的の濃度と直線的に相関する。それによって、濃度に依存しないRCP濃縮を確証する(
図4b)。別の利点は、RCPを特定するための通常の経路を使用することができ、この方法の適応をほぼバリアフリーにすることである。
【0123】
実施例3
ヒトゲノムDNAの定量化
この実施例は、ゲノムDNAにおける異なる遺伝子を定量化する能力を実証し、
図5に例示される。この実施例では、3つの異なるパッドロックプローブを使用して、3つの異なる遺伝子セグメントを検出した。1つのパッドロックプローブは、全てのステップが正しく行われた場合、アッセイコントロールとして機能し(コントロールとして印される)、1つのパッドロックプローブを参照として使用して(参照として印される)、目的の遺伝子について目的の遺伝子に関連するときの編集レベルを定量化し、1つのパッドロックプローブは、遺伝子編集の位置を特定するように機能した(標的遺伝子として印される)。これは、野生型の実験では、3つのパッドロックプローブ全てについて等しい数のRCPが予想され、一方、編集されたゲノムでは、コントロール及び参照について等しい数のRCPが予想されるが、標的遺伝子については減少した数が予想されることを意味する。この試料では、野生型ヒトゲノムDNAを使用し、したがって、パッドロックプローブの各々におけるRCPの数は等しい。
【0124】
いくつかの細胞株は、様々な染色体又は/及び遺伝子コピー数を有し得るため、この説明は非常に一般的である。したがって、野生型試料に対するゲノム編集実験を標準化し、潜在的なバイアスを回避することが推奨される。
【0125】
RCP産生
ヒトゲノムDNA(Merck)を使用して、RCA反応のための環状テンプレートを生成した。ゲノムDNAでの3つの異なる領域である、RPP30遺伝子の1つの領域、及びNRXN1遺伝子で2つの領域を標的とした。最初に、1μgのヒトゲノムDNAを、緩衝液(20mMのTris-HCl(pH8.3)、25mMのKCl、10mMのMgCl2、0.5mMのNAD、及び0.01%(v/v)のTriton(登録商標)X-100)、及び15UのAluI(New England Biolabs)からなる20μLの総体積における断片化混合物中で断片化した。反応物を、37℃で5分間インキュベートした。
【0126】
ライゲーションでは、Tthリガーゼ緩衝液(20mMのTris-HCl(pH8.3)、25mMのKCl、10mMのMgCl2、0.5mMのNAD、及び0.01%(v/v)のTriton(登録商標)X-100)、1nMのパッドロックプローブ(PO4-TTGTTGAGTGTTGGCGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACATTTAGCATACATCGTCGCGTGCATAACCAGGCCA、配列番号5、PO4-CGGCGGCCGCCTGCAGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACGGGCCTTATTCCGGTGCTATGCTGATTCTGACGCG、配列番号6、及びPO4-AATAAGGGTCCCGAGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACAGAGAGTAGTACTTCCGACTACACCGTGACGAAGA、配列番号7)、及び7.5UのTth DNAリガーゼを含有する10μLのライゲーション混合物を添加した。ライゲーション反応物を、98℃で3分間、55℃で45分間インキュベートした。
【0127】
次に、得られるサークルをRCAによって増幅し、そのために、混合物は、0.2μg/μLのBSA、125μMのdNTP、5nMの外側プライマー(TACTGAGGAGCTGCATAC*A*C、配列番号11、星形は、ポリメラーゼのエキソ核活性を回避するホスホノチオエート塩基を示す)、10.5UのexoI(New England Biolabs)、及び28Uのphi29 DNAポリメラーゼを最終体積35μLに含んだ。RCA反応物を、37℃で3時間、及び65℃で2分間インキュベートした。
【0128】
RCPの標識
得られるRCPは、実施例1に記載されるように、蛍光タグ化オリゴヌクレオチド及びビオチンタグ化オリゴヌクレオチドを使用して標識した。要するに、RCP産物を、標識緩衝液(10mMのTris-HCI(pH8.0)、10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.05%(v/v)のTween20、1MのNaCl)に5nMのシアニン3(Cy3)-(Cy3-ATTTAGCATACATCGTCGCG、配列番号8)、ビオチン-(ビオチン-TTTTTCCTCAGTAATAGTGTCTTAC、配列番号4)、AlexaFluor488(FITC)-(FITC-GGGCCTTATTCCGGTGCTAT、配列番号9)、及びシアニン5(Cy5)-タグ化オリゴヌクレオチド(Cy5-AGAGAGTAGTACTTCCGACT(配列番号10)を含有する15μLと混合した。標識反応物を、75℃で2分間、55℃で15分間インキュベートした。
【0129】
ビーズ上のRCP捕捉及びRCPの撮像
標識RCPの捕捉、撮像、及びそれに続く画像分析を実施例1及び2に記載されるように行った。
【0130】
結論として、
図5は、3つ全てのチャネルの複合物を示す。挿入図は、3つのチャネルの各々についてRCPを個別に示す。明らかなように、各チャネルにおけるRCPの数は等しく、それによって、このヒトゲノムDNAは任意の編集を有しないという概念を確証する。
【0131】
実施例4
この実施例は、非結合/溶液中RCPと比較したときに、ビーズ結合RCPの増加した蛍光強度を示す。この実施例を結果が、
図6に示される。
【0132】
RCPを生成し、実施例3に記載されるように定量化した。RCP蛍光強度の分析では、CellProfilerパイプラインを、各対象の蛍光強度を測定する別のモジュールを含むように適合させた。
【0133】
この実施例の結果は、ビーズに結合しているRCPが未結合よりも明るいことを示す(
図6A)。更に、増加した蛍光強度は、溶液中のRCPと比較してRCPをより大きく出現させた(
図6B)。比較は、溶液中で獲得されて、ビーズに結合した数百のRCPの平均に基づいた。
【0134】
この実施例から導き出された結論は、磁気ビーズでRCPに結合して可視化する本発明は、予期しない増加した蛍光強度をもたらし、定量化をより容易にし、例えば、必要とされる曝露時間をより短くし、かつ必要とされる光学デバイスの感度をより低くする。
【0135】
実施例5
この実施例は、ビーズ結合RCPが、ブランク磁気ビーズ(結合RCPなし)と非結合RCPとの合計よりも高い蛍光強度を示すことを確証する。RCPを生成し、実施例3に記載されるように定量化した。例示的な計算のために、ブランク磁気ビーズ(結合したRCPなし)、溶液中のRCP、及びビーズ結合RCPをマニュアルで選択し、最大画素強度をImageJソフトウェアを介して得た。ブランクビーズと溶液中RCPとの合計は、ビーズ結合RCPで観察された蛍光強度よりも小さい。この効果は、3つの蛍光チャネル(Cy3、FITC、及びCy5)によって例示される。
【0136】
蛍光強度の結果は、
図7に認めることができる。Cy3を蛍光標識として使用した場合、ビーズ単独からのシグナルの強度は494であり、RCP単独は1555であったが、ビーズ結合RCP強度は2461であり、ビーズとRCP単独との合計と比較して20.1%の強度増加に等しかった。
【0137】
FITCを蛍光標識として使用した場合、ビーズ単独からのシグナルの強度は472であり、RCP単独は1732であったが、ビーズ結合RCP強度は3078であり、ビーズとRCP単独との合計と比較して39.7%の強度増加に等しかった。
【0138】
Cy5を蛍光標識として使用した場合、ビーズ単独からのシグナルの強度は1985であり、RCP単独は2661であったが、ビーズ結合-RCP強度は5233であり、ビーズとRCP単独との合計と比較して強度が12.6%増加した。
【0139】
実施例6
この実施例は、膜上でのRCPの捕捉と比較して、記載された方法の改善されたRCP定量化能力を実証する。実施例は、
図8に示される。
【0140】
膜及びビーズを、同じ曝露時間を使用して、異なる蛍光チャネルにおいて20×対物レンズを使用して撮像した。膜をPBSで湿らせ、ビーズをPBS中で溶離した。蛍光強度を、ImageJソフトウェアを使用して測定し、顕微鏡画像の全体的な蛍光強度を得た。
【0141】
図8BにおけるRCP強度の比較のために、RCPを実施例3に記載されるように生成した。ここでは、FITC標識RCPのみが膜及び磁石上に示され、差は、より短い波長について最も顕著である。左上の画像は、ニトロセルロース膜上のFITC標識RCPを示し、右側の拡大は、RCPが高い自己蛍光のために容易に分解されないことを示す。左下の画像は、同じ溶液からのRCPを示すが、ビーズに結合して濃縮されている。右下の拡大から明らかなように、FITC標識RCPは、容易に分解及び定量化することができ、膜のものを超える磁気濃縮アプローチの利点を示す。
【0142】
膜チップは、Aline,Inc.によって製造された。濾過膜は、0.1μmのポアサイズを有するProtran(商標)NCニトロセルロース膜(GE Healthcare lifesciences)であり、吸収層は、セルロース繊維試料パッドシート(Merck)であり、スペーシング層は、感圧性接着剤(Aline)の形態であり、液体不透過性層は、ポリエチレンテレフタレート(Aline)だった。試料受容ウェルは、1.5mmの直径を有した。試料分析デバイスは、試料分析デバイス上に整列された10個の試料受容ウェルを有し、標準的な顕微鏡スライドの寸法25×75mmを有するように製造された。この膜チップの完全な特性は、PCT/EP2020/060771(WO2020/212531として公開されている)に記載されている。
【0143】
膜上でRCPを撮像及び濃縮するために、10μLの試料溶液を、試料受容ウェルに加えた。液体が膜を通過した後、10μLのSlowfade Gold(Fisher Scientific)を膜上に添加し、カバースリップ(Menzel)をその上に配置した。
【0144】
本発明の方法を使用してRCPを濃縮する利点は、以下である:
・ビーズ結合RCPを洗浄することができ、アッセイ又は生体試料成分からのより低いバックグラウンドにつながる。
・ビーズ結合RCPを撮像デバイスの視野と一致する小さな領域に磁気で引き付けることができるため、溶液をスライドガラス上に広げることと比較したとき、感度が視野ごとに増加してみえる。
・この方法におけるスペクトル標識の可能性は、磁気ビーズが膜濃縮と比較したときに低い自己蛍光を示すため、増加する。
【0145】
実施例7
この実施例は、ビーズ結合RCPが、ブランク磁気ビーズ(結合RCPを有せず)と結合RCPとの合計よりも高い蛍光強度を示すことを確証する。
【0146】
ヒトゲノムDNA(Roche)を使用して、RCA反応のための環状テンプレートを生成した。ゲノムDNAでの3つの異なる領域である、GAPDH遺伝子の領域、NRXN1遺伝子の1つの領域、及びPLA3G6遺伝子の1つの領域を標的とした。最初に、1μgのヒトゲノムDNAを、緩衝液(20mMのTris-HCl(pH8.3)、25mMのKCl、10mMのMgCl2、0.5mMのNAD、及び0.01%(v/v)のTriton(登録商標)X-100)、及び2.5UのAluI(New England Biolabs)からなる20μLの総体積における断片化混合物中で断片化した。反応物を、37℃で15分間インキュベートした。
【0147】
ライゲーションでは、Tthリガーゼ緩衝液(20mMのTris-HCl(pH8.3)、25mMのKCl、10mMのMgCl2、0.5mMのNAD、及び0.01%(v/v)のTriton(登録商標)X-100)、100ngのサケ精子DNA(Thermo Fisher Scientific)、5nMの外側プライマー(ACACTATTA CTGAGG、配列番号12)、1nMのパッドロックプローブ(PO4-AATAAGGGTCCCGAGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACAGAGAGTAGTACTTCCGACTACACCGTGACGAAGA、配列番号7)、及び1.26UのTth DNAリガーゼを含有する10μLのライゲーション混合物を添加した。ライゲーション反応物を、98℃で10分間、及び55℃で20分間インキュベートした。
【0148】
次に、得られるサークルをRCAによって増幅し、そのために混合物は、125μMのdNTP、4UのexoI(New England Biolabs)、及び5.32Uのphi29 DNAポリメラーゼを最終体積35μLに含んだ。RCA反応物を、37℃で2時間、及び65℃で2分間インキュベートした。
【0149】
RCPの標識及び捕捉
得られるRCPは、RCP内の反復に相補的である蛍光タグ化オリゴヌクレオチド及びビオチンタグ化オリゴヌクレオチドを使用して標識した。このために、RCP産物を、5nMのAlexaFluor488(FITC)-(FITC-AGAGAGTAGTACTTCCGACT、配列番号13)、ビオチンタグ化オリゴヌクレオチド(ビオチン-TTTTTCCTCAGTAATAGTGTCTTAC、配列番号4)、及び0.025μg/μLのSuperMagストレプトアビジン磁気ビーズ、50nm(Ocean Nano Tech)を含有する標識緩衝液(10mMのTris-HCl(pH8.0)、10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.05%(v/v)のTween20、120mMのNaCl、10mMのMgCl2の10μLと混合した。標識反応物を、75℃で2分間、55℃で10分間インキュベートした。前述のSuperMagストレプトアビジン磁気ビーズは、表面に共有結合した組換えストレプトアビジンの単層を多層でなく有し、BSAで更にブロッキングされた、50nmの直径を有する超常磁気ビーズである。
【0150】
ビーズでのRCP捕捉及びRCPの撮像
標識RCPの捕捉、撮像は、実施例1に記載されるように行った。得られる画像は、ImageJソフトウェアのカスタムメイドパイプラインを使用して分析した。パイプラインは、画像強調、マニュアルによるしきい値設定を用いた対象識別、各対象の蛍光強度測定で構成された。
【0151】
この実施例は、強度がブランク磁気ビーズと非結合RCPとの合計を超える、ビーズ結合RCPの蛍光強度の驚くべき増加を確証する。例示的な計算のために、ブランク磁気ビーズ、溶液中のRCP、及びビーズ結合RCPを選択し、最大画素強度をImageJソフトウェアを介して得た。ブランクビーズと溶液中RCPとの合計は、ビーズ結合RCPで観察された蛍光強度よりも小さい。
【0152】
蛍光強度の結果は、
図12に認めることができる。
図12Aは、複数のRCPにおける増加した蛍光強度を示し、
図12Bは、例示的な場合でのこの相乗効果を示す。FITCを蛍光標識として使用した場合、ビーズ単独からのシグナルの例示的な強度は1786であり、RCP単独は2549であったが、ビーズ結合RCP強度は5236であり、ビーズとRCP単独との合計と比較して20.8%の強度増加に等しかった。
【0153】
実施例8
この実施例は、50nm磁気ビーズが、低い自己蛍光バックグラウンド、濃縮能力、及び結合効率の点で最良の性能を示すことを確証する。
【0154】
ブランクビーズの蛍光強度の比較のために、0.025μg/μLのTurboBeadsストレプトアビジン(Turbobeads GmbH)、0.025μg/μLの前述の50~200nmのSuperMagストレプトアビジン磁気ビーズ(Ocean NanoTech)、0.125μg/μLの前述のDynabeads(商標)MyOne(商標)ストレプトアビジンT1(Thermo Fisher Scientific)、及び0.125μg/μLのDynabeads(商標)M-270カルボン酸(Thermo Fisher Scientific)を、Milli-Q水(Sigma-Aldrich)で調製した。10μLの試料を実施例1に記載されるように顕微鏡スライドのために調製し、その上で撮像し、実施例7に記載されるように定量化した。裸のナノ粒子の例示的な画像が
図13に示され、一方、磁場下でRCPを有するナノ粒子(濃縮された)が
図14に示される。
【0155】
FITCチャネルを使用する場合、最大200nmビーズである30nmビーズは目視できなかったが、1μmビーズはある程度の自己蛍光を示し、2.8μmビーズは高いレベルの自己蛍光強度を示した。直径30~200nmのビーズからのシグナルの強度は、およそ1500AUで、バックグラウンドから区別できなかった。直径1μmのDynabeads(商標)MyOne(商標)ストレプトアビジンT1では、蛍光強度は3108AUであったが、サイズ2.8μmのDynabeads(商標)M-270カルボン酸では、蛍光強度は7451AUで更に高かった。これらの結果は、例示的な画像を用いて
図13に示される。
【0156】
光学的挙動並びにRCP捕捉効率及び濃縮効率の観点からビーズを更に評価するために、
図14において、ビーズをRCPで装飾し、磁場下で濃縮し、ここでは、30nm Turbobeadsが、およそ6748AUの強度レベルで高レベルの自己蛍光及び凝集を示し、これはRCPの定量化を可能にしない。50nmビーズでは、単一視野内のRCPの数は、100nm、200nm、及び1μmビーズと比較して最も高い。追加的に、1μmビーズは、磁力下にあるときモザイク様構造を形成し始め、全体的なバックグラウンド強度(ノイズ)を増加させ、事象の画像分析をより困難にする。これは、示されるビーズについて理想的なビーズサイズが30nm~100nmであることを示し、これは、例えば、ゲノム抽出キットにおいて、長いポリヌクレオチド配列を捕捉するためにしばしば大きな粒子(数μm~mm)が使用されるため、逆の直感的結果である。
【配列表】
【国際調査報告】