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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】POEGMAベース脂質ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241106BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61K9/16
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/06
A61K47/18
A61K47/22
A61K31/713
A61K31/7105
A61K31/711
A61P31/00
A61P25/14
A61P21/00
A61P37/06
A61P35/00
A61K48/00
C12N15/113 Z
C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524728
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022078659
(87)【国際公開番号】W WO2023076902
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/271,595
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】チルコティ アシュトッシュ
(72)【発明者】
【氏名】サハ ソウメン
(72)【発明者】
【氏名】シロヒ パルル
(72)【発明者】
【氏名】ハックナル アンガス
(72)【発明者】
【氏名】デシュパンデ ソナル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC26
4C076CC29
4C076DD34
4C076DD49
4C076DD59
4C076DD60
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE12
4C076EE23
4C076EE48
4C076EE49
4C076FF34
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA41
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA941
4C084ZB081
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB321
4C084ZC411
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA94
4C086ZB08
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC41
(57)【要約】
本明細書では、PEGベースの対応物によって被る免疫上の帰結を伴わずに治療薬を効果的にカプセル化及び送達することができるPOEGMA-脂質コンジュゲートを含む脂質ナノ粒子が開示される。脂質ナノ粒子例は、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、POEGMA-脂質コンジュゲート、及び治療薬を含む。また、本明細書では、POEGMAベース脂質ナノ粒子を含む医薬組成物、疾患又は障害を治療する方法、及び治療薬を細胞に送達する方法も開示される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化可能な脂質;
リン脂質;
ステロール;
ポリ[オリゴ(エチレングリコール)エーテルメタクリレート](POEGMA)が100kDa未満の数平均分子量を有する、10mol%未満にてのPOEGMA-脂質コンジュゲート;及び
治療薬
を含む、脂質ナノ粒子。
【請求項2】
POEGMAは、ポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合で付着した複数の側鎖を有し、各側鎖は、タンデムに反復したエチレングリコール(EG)の2~9つのモノマーを含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項3】
ポリエチレングリコール(PEG)を含む脂質ナノ粒子と比べて減少した免疫応答を有する、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項4】
対象において既存の抗PEG抗体と反応しない、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項5】
POEGMA-脂質コンジュゲートの脂質はC2-40炭化水素鎖を含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項6】
POEGMA-脂質コンジュゲートの脂質は、トリアゾール、アミド、エステル、エーテル、又は炭化水素リンカーを介してPOEGMAにコンジュゲートされている、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項7】
POEGMAは、約1kDa~約50kDaの数平均分子量を有する、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項8】
POEGMA-脂質コンジュゲートを約0.1mol%~約10mol%で含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項9】
イオン化可能な脂質は、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102)、3,6-ビス({4-[ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ]ブチル})ピペラジン-2,5-ジオン(cKK-E12)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(1,2-Dilinoleylcarbanioyloxy-3-dimethylaniinopropane)(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(l,2-Dilmoleoyl-3-dimethylammopropane)(DLm-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(2,2-dilmoleyl-4-(2-dimethylaiiimoethyl)-[l,3]-dioxolane)(DLin-KC2-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート((6Z,9Z,28Z,3lZ)-heptatriaeonta-6,9,28,31-tetraen-19-yl 4-(dimethylamino)butanoate)(DLin-MC3-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ジオクタデシルアミドログリシルカルボキシスペルミン(dioctadecylamidoglycyocarboxyspermine)(DOGS)、スペルミンコレステリルカルバメート(GL-67)、ビス-グアニジニウム-スペルミジン-コレステロール(BGTC)、3b-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(N-(NAN’-dimethylammoethanej-carbam oxl cholesterol)(DC-Chol)、N-t-ブチル-N’-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン(ジC14-アミジン)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMR1E)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ))プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(N-(l-(2,3-dioleyloxy3)propyl)-N-2-(spenninecarboxamido)ethyl)-N,N-dimethylamrnonium trifluoracetate)(DOSPA)、2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、アミノプロピル-ジメチル-ビス(ドデシルオキシ)-プロパンアミニウムブロミド(aminopropyl-dimethyl-bis(dodecyloxy)-propanaminiumbromide)(GAP-DLRIE)、1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項10】
イオン化可能な脂質は、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102)を含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項11】
イオン化可能な脂質を約20mol%~約65mol%で含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項12】
リン脂質は、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、スフィンゴミエリン(SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DMPC)、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項13】
リン脂質を約5mol%~約25mol%で含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項14】
ステロールは、コレステロール、カンペステロール、アントロステロール、デスモステロール、ニカステロール、スチグマステロール、シトステロール、オキシステロール、C4-10ステロール、エルゴステロール、コレスタ-4-エン-3-オン、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項15】
ステロールを約10mol%~約50mol%で含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項16】
治療薬は、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、mRNA、tRNA、rRNA、CircRNA、DNA、又はそれらの組合せを含む核酸である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項17】
核酸は、siRNA、mRNA、又はそれらの組合せを含む、請求項16に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項18】
(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102);
DSPC;
コレステロール;
ポリ[オリゴ(エチレングリコール)エーテルメタクリレート](POEGMA)が約1kDa~約50kDaの数平均分子量を有する、約0.25mol%~約3mol%にてのPOEGMA-脂質コンジュゲート;及び
mRNA
を含む、脂質ナノ粒子。
【請求項19】
約4:1~約16:1のN:P比を有する、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項20】
約30nm~約300nmの直径を有する、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項21】
蛍光により測定して75%以上の治療薬カプセル化効率を有する、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項22】
ターゲティングリガンドをさらに含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項23】
請求項1に記載の1つ又は複数の脂質ナノ粒子;及び
薬学的に許容される賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項24】
疾患又は障害を治療する必要がある対象において前記疾患又は障害を治療する方法であって、薬学的に許容される賦形剤と組合せでよい、請求項1に記載の1つ又は複数の脂質ナノ粒子の有効量を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項25】
1つ又は複数の脂質ナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む脂質ナノ粒子と比べて減少した免疫応答を有する;対象において既存の抗PEG抗体と反応しはない、又はそれらの組合せである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
疾患又は障害は、感染症、ハンチントン病、筋ジストロフィー、自己免疫疾患、又はがんである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
細胞に治療薬を送達する方法であって、細胞を請求項1に記載の1つ又は複数の脂質ナノ粒子と接触させるステップを含み、それによって治療薬は細胞に送達される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月25日出願の米国仮特許出願第63/271,595号の優先権を主張するものであり、上記仮特許出願は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
電子形式配列表の参照
電子形式配列表(名称:028193-9376-WO01_Sequence_Listing.xml;サイズ:9,210バイト;作成日:2022年10月25日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
本開示は、POEGMA-脂質コンジュゲートを含む脂質ナノ粒子及び薬物送達等の生物医学的用途におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
緒論
脂質ナノ粒子(LNP)は、その生体適合性、ペイロードとの効率的な複合体形成、細胞取り込み、及びエンドソーム脱出の成功により、核酸送達(例えば、mRNA)用の有力な担体として浮上してきた。LNPは、mRNAを効果的に保護し細胞に輸送する上でのその役割から、COVID-19 mRNAワクチンの重要な成分として注目を浴びてきた。LNPは、LNPにステルス特性をもたらすことができるPEG化脂質を通常には含む。PEGコーティングを備えるLNPは、オプソニン作用の減少及び溶解性の改善に起因して、ネイティブなLNPよりもはるかに長い血漿半減期を有する。残念なことに、PEG化LNPのin vivo投与には、免疫原性、アレルギー副反応、並びに誘導性及び既存のPEG抗体によるクリアランスの増強を含めて、いくつかの制限がある。PEGの反復投与により、その非生分解性構造及びRESによるクリアランスに起因して、主要臓器において空胞が形成される場合もある。さらに、PEG不耐容性により、いくつかの治験が早期終了させられ、いくつかの治療薬が市場から撤退させられてきた。CDCによると、PEGは、LNPベースのPfizer-BioNTech covidワクチンに対するアレルギー反応の原因となる主要成分の1つであると特定されてきた。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、イオン化可能な脂質;リン脂質;ステロール;ポリ[オリゴ(エチレングリコール)エーテルメタクリレート](POEGMA)が100kDa未満の数平均分子量を有する、10mol%未満にてのPOEGMA-脂質コンジュゲート;及び治療薬を含む、脂質ナノ粒子が開示される。
別の態様では、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102);DSPC;コレステロール;POEGMAが約1kDa~約50kDaの数平均分子量を有する、約0.25mol%~約3mol%にてのPOEGMA-脂質コンジュゲート;及びmRNAを含む、脂質ナノ粒子が開示される。
別の態様では、本明細書に開示の1つ又は複数の脂質ナノ粒子;及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物が開示される。
別の態様では、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法であって、薬学的に許容される賦形剤と組合せでよい、本明細書で開示の1つ又は複数の脂質ナノ粒子の有効量を対象に投与するステップを含む、方法が開示される。
別の態様では、細胞に治療薬を送達する方法であって、細胞を本明細書に開示の1つ又は複数の脂質ナノ粒子と接触させるステップを含み、それによって治療薬は細胞に送達される、方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】例示のアジドポリ[オリゴ(エチレングリコール)エーテルメタクリレート](POEGMA)に関するゲル浸透クロマトグラフィー-多角度光散乱(GPC-MALS)(図1A)及び逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(図1B)のトレースを示す図である。
図1B】同図1A
図2A】例示のPOEGMA-脂質コンジュゲート(POEGMAL)に関する精製及び特性評価を示す図である。図2A:POEGMALの精製の概略図。図2B:POEGMA化脂質の典型的なTLCトレース。図2C:POEGMA10及びPOEGMAL10の物理的外観。図2D:δ0.5~2.5とδ7.3~7.8の間のプロトンの理論数の比及びプロトンNMRによって実験的に決定された相当する値。
図2B】同図2A
図2C】同図2A
図2D】同図2A
図3A】例示のLNPに関する動的光散乱分析を示す図である。図3A図3C:ブランクLNP。mRNAを含まない種々のLNPの流体力学的半径(図3A)、多分散性(図3B)、及び粒径分布(図3C)。図3D図3F:mRNAを含むLNP。mRNAを含む種々のLNPの流体力学的半径(図3D)、多分散性(図3E)、及び粒径分布(図3F)。
図3B】同図3A
図3C】同図3A
図3D】同図3A
図3E】同図3A
図3F】同図3A
図4A】例示のLNPの中にカプセル化されたmRNAの特性評価及び定量化を示す図である。図4A:TritonX-100添加前(-)及び添加後(+)の種々のLNPのゲル電気泳動。図4B:Ribogreenアッセイの概略図。図4C:Ribogreenアッセイによって測定されたmRNAカプセル化効率%。*P<0.01、**P<0.001;二元配置ANOVA(Tukeyの多重比較検定)。
図4B】同図4A
図4C】同図4A
図5A】例示のLNPのルシフェラーゼmRNAカプセル化効率(EE)を改善するための脂質比の解析を示す図である。図5A:POEGMAL10-50及びSM-102の種々のmol%にてのLNPのEE。0.5(図5B)、1.5(図5C)、及び2.5(図5D)の各mol%にての種々のLNPのEEと流体力学的半径との間の関係。図5E:PBSに対する透析後の例示のLNPのEE。
図5B】同図5A
図5C】同図5A
図5D】同図5A
図5E】同図5A
図6A】PBSに対する透析後の、POEGMAL5の種々のmol%にての例示のLNPのルシフェラーゼmRNA EEの解析を示す図である。図6A:半径;図6B:多分散性%;及び図6C カプセル化%。
図6B】同図6A
図6C】同図6A
図7】PBSに対する透析後のLNPPOEGMAL5(上パネル)及びLNPPOEGMAL10(下パネル)の低温透過電子顕微鏡(Cryo-TEM)画像を示す図である。
図8A】治療上重要な成熟完全長SARS COV-2 mRNAをカプセル化するようにLNPPOEGMAL10のEEを改善するパラメータの解析を示す図である。PBSに対する透析前(図8A)及び透析後(図8B)のEE。図8C:示された緩衝剤に対する透析後の流体力学的半径。mRNAカプセル化に対するN:P(図8D)、LNP調製過程でのエタノール画分(図8E)、及び脂質mol%(図8F)の影響。
図8B】同図8A
図8C】同図8A
図8D】同図8A
図8E】同図8A
図8F】同図8A
図9A】HEK293T細胞における例示のLNPのCluc mRNAカーゴの発現を示す図である。図9A:mRNA 500ngにてのLipofectamine 2000に対する相対発現;図9B:mRNA 300ngにてのLipofectamine 2000に対する相対発現;図9C:500ngにての種々のN:Pにての生のAUC値;及び図9D:300ngにての種々のN:Pにての生のAUC値。
図9B】同図9A
図9C】同図9A
図9D】同図9A
図10】48時間の連続処理後のHEK293T細胞に対するLNPの毒性を示す図である。
図11A】4:1~8:1の範囲の電荷比(N:P)にてのHEK293T細胞における例示のLNPの種々の量のCLuc mRNAカーゴの発現を示す図である、丸:LNPPOEGMAL5、四角:LNPPOEGMAL10、及び三角:LNPPEG-DMG図11A:8:1にてのmRNA 500ng;図11B:6:1にてのmRNA 500ng;図11C:4:1にてのmRNA 500ng;図11D:8:1にてのmRNA 300ng;図11E:6:1にてのmRNA 300ng;及び図11F:4:1にてのmRNA 300ng。
図11B】同図11A
図11C】同図11A
図11D】同図11A
図11E】同図11A
図11F】同図11A
図12】RNase保護アッセイを示す図である。例示のLNPを、RNaseの添加後に0.5時間インキュベートした。添加順序を左側の表に示し、ゲルを右側に示す。例示のLNPの全てが、RNaseからCluc mRNAカーゴを保護する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書では、85%超のEEを備える、完全長モデルルシフェラーゼmRNA及び治療上重要なSARS COV-2 mRNA等の、治療薬をカプセル化するためのステルスLNPを造り上げるために使用することができるPOEGMA化脂質が開示される。エタノール画分、電荷比(N:P)、脂質mol%、及び緩衝剤交換等のLNP作製のパラメータを調査することにより、各パラメータがLNPのEEにどのように影響を及ぼすことができるかを明らかにした。POEGMA化LNPはまた、in vivoでの送達の成功に必須条件である、RNaseに対するmRNAへの必要な保護ももたらした。さらに、レポーターmRNA発現アッセイでは、10kDa POEGMA化脂質を含むLNPはModernaバイオシミラーLNP製剤よりも優れていた。このことは、PEGの免疫原性を潜在的に回避しながらin vivo mRNAワクチン送達のためのPOEGMA化LNPプラットフォームの強力な事例を為すものであることから、期待できるものである。
【0006】
1.定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合、定義を含めて本明細書が優先するものとする。本明細書に開示の材料、方法、及び例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書に記載されるものと同様の又は均等な方法及び材料を、開示されている本発明の実践又は試験において使用することができる。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それら全体が参照により組み込まれる。
「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有している(having)」、「有する(has)」、「することができる(can)」、「含有する(contain(s))」という各用語及びこれらの変化形は、本明細書で使用される場合、さらなる行為又は構造の可能性を除外しないオープンエンド形式の移行句、用語又は語句であることが意図される。単数形「1つの(a)」、「及び(and)」及び「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示をしない限り、複数形への言及を含む。本開示はまた、明示的に示されるか否かにかかわらず、本明細書に提供される実施形態又は要素「を含む」、それ「からなる」及びそれ「から本質的になる」他の実施形態も企図するものである。
【0007】
量に関連して使用される「約」という修飾語句は、記載されている値を含むものであり、文脈によって指示される意味を有する(例えば、これは、特定の量の測定に伴う誤差の度合いを少なくとも含む)。「約」という修飾語句は、2つの端点の絶対値によって定義される範囲も開示するものとみなすべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、範囲「2~4」も開示する。「約」という用語は、示される数のプラス又はマイナス10%を指すことができる。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を示すことができ、「約1」は、0.9~1.1を意味する場合がある。四捨五入等の「約」の他の意味は文脈から明らかとなる場合があり、そのため、例えば、「約1」は0.5~1.4を意味する場合もある。
【0008】
本明細書での数値範囲の記述について、同じ精度をもってそれらの間にある各介在する数が明示的に企図される。例えば、6~9の範囲について、6及び9に加えて数7及び8が企図され、且つ6.0~7.0の範囲について、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0の各数が明示的に企図される。
【0009】
「抗原」という用語は、抗体又はT細胞受容体が結合することができる分子を指す。「抗原」という用語はまた、T細胞エピトープも包含する。付加的に抗原は、免疫系が認識することができ、並びに/又は、液性免疫応答及び/若しくは細胞性免疫応答を誘導してBリンパ球及び/若しくはTリンパ球の活性化を招くことができる。一部の実施形態では、抗原は、Th細胞エピトープを含有するか又はこれに連結されている。抗原は、1つ又は複数のエピトープ(BエピトープとTエピトープ)を有することができる。抗原には、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、小分子、ポリマー、ポリマーコンジュゲート、及びそれらの組合せが含まれ得る。抗原はまた、幾種かのそれぞれ異なった抗原の混合物であってもよい。
「抗原性」という用語は、T細胞受容体又は抗体に特異的に結合する抗原の能力を指し、これには、対象における既存の抗体に対する抗原の反応性が含まれる。
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、有益な若しくは望ましい生物学的結果及び/又は臨床結果をもたらすのに十分な量を指す。
「免疫原性」という用語は、免疫応答を誘導する抗原の能力を指し、これには、対象において抗体を産生する抗原の固有の能力が含まれる。本明細書で使用される場合、「抗原性」という用語と「免疫原性」という用語は、免疫系の異なる側面を指すものであり、互換性ではない。
【0010】
「mRNA」という用語は、本明細書で使用される場合、メッセンジャーリボ核酸を指す。mRNAは、天然に存在するものであっても天然に存在しないものであってもよい。例えば、mRNAは、1つ又は複数の核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、若しくはリンカー等の修飾された及び/又は天然に存在しない成分を含むことができる。mRNAは、キャップ構造、鎖終結ヌクレオシド、ステムループ、ポリA配列、及び/又はポリアデニル化シグナルを含むことができる。mRNAは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有することができる。mRNAの翻訳によって、例えば、哺乳動物細胞内部でのmRNAのin vivo翻訳によって、ポリペプチドを産生することができる。通常、mRNA分子の基本成分には、少なくとも1つのコード領域、5’非翻訳領域(5’UTR)、3’UTR、5’キャップ、及びポリA配列が含まれる。
「N:P比」という用語は、本明細書で使用される場合、脂質中のイオン化可能な(生理学的pH範囲における)窒素原子と核酸(例えば、RNA)中のリン酸基のモル比を指す。
【0011】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、その最も広い意味で使用され、ヌクレオチドのポリマーを含むあらゆる化合物及び/又は物質を包含する。こういったポリマーは、ポリヌクレオチドと呼ばれる場合が多い。例示の核酸又はポリヌクレオチドの例としては、それらに限定されないが、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA-RNAハイブリッド、RNAi誘導性作用剤、RNAi剤、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒DNA、三重らせん形成を誘導するRNA、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA、これには、b-D-リボ立体配置を有するLNA、a-L-リボ立体配置を有するa-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能基化を有する2’-アミノ-LNA、及び2’-アミノ官能基化を有する2’-アミノ-a-LNAが含まれる)、又はそれらのハイブリッドが挙げられる。核酸は、化学合成法によって得られる場合があり、組換え法によって得られる場合もある。
【0012】
「リン脂質」という用語は、本明細書で使用される場合、リン酸部分及び不飽和脂肪酸鎖等の1つ又は複数の炭素鎖を含む脂質を指す。リン脂質は、1つ又は複数の多重(例えば、二重又は三重)結合(例えば、1つ又は複数の不飽和)を含むことができる。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という各用語は、本明細書で使用される場合、ペプチド結合によって一緒に連結された少なくとも3個のアミノ酸のストリングを指して互換的に使用することができる。ペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸(すなわち、自然界には存在しないが、ポリペプチド鎖に組み込むことができる化合物)、及び/又はアミノ酸アナログを含有することができる。また、ペプチド中のアミノ酸のうちの1個又は複数を、例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、コンジュゲーション用のリンカー、官能基化、又はその他の修飾等の化学的実体の付加によって修飾することができる。修飾には、ペプチドの環化、D-アミノ酸の組込み等が含まれ得る。
【0013】
「RNA」という用語は、本明細書で使用される場合、天然に存在するものであっても天然に存在しないものであってもよいリボ核酸を指す。例えば、RNAは、1つ又は複数の核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はリンカー等の修飾された及び/又は天然に存在しない成分を含むことができる。RNAは、キャップ構造、鎖終結ヌクレオシド、ステムループ、ポリA配列、及び/又はポリアデニル化シグナルを含むことができる。RNAは、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有することができる。例えば、RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)とすることができる。RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ダイサー基質RNA(dsRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、mRNA、シングルガイドRNA(sgRNA)、cas9 mRNA、及びそれらの混合物からなる非限定的な群から選択することができる。
【0014】
「治療」又は「治療すること」という用語は、疾患からの対象の保護、例えば、当該疾患を予防する、抑制する、抑止する、改善する、又は完全に消散させることを指す。疾患を予防することは、本開示のコンジュゲートを対象に疾患の発症前に投与することを伴う。疾患を抑制することは、本開示のコンジュゲートを対象に疾患の誘導後であるがその臨床的視診前に投与することを伴う。疾患を抑止すること又は改善することは、本開示のコンジュゲートを対象に疾患の臨床的視診後に投与することを伴う。
「対象」という用語には、ヒト及び哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ及びウマ)が含まれる。本開示の典型的な対象には、哺乳動物、特に霊長類及びヒトが含まれ得る。獣医学的用途の場合、適切な対象には、例えば、畜牛、ヒツジ、ヤギ、乳牛、ブタ類等の家畜;ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ等の家禽、並びに飼い慣らされた動物、特にイヌ及びネコ等のペットが含まれ得る。研究用途の場合、適切な対象には、哺乳動物、例えばげっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類及び近交系ブタ等のブタ類等が含まれ得る。
【0015】
2.脂質ナノ粒子
本明細書では、POEGMA-脂質コンジュゲートを含む脂質ナノ粒子(LNP)が開示される。脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、POEGMA-脂質コンジュゲート、及び治療薬を含むことができる。脂質ナノ粒子は、細胞、組織、臓器、対象等への核酸等の治療薬の導入を容易にすることができる。脂質ナノ粒子はまた、標的細胞との相互作用を容易にすることができるターゲティングリガンドを含むこともできる。例えば、ターゲティングリガンドは、標的細胞と特異的に相互作用して(例えば、標的細胞の表面上の細胞外タンパク質と特異的に相互作用して)、投与の後の脂質ナノ粒子の局在化を改善することができる。ターゲティングリガンドの例としては、それらに限定されないが、アプタマー、炭水化物、タンパク質、抗体、単鎖可変断片等が挙げられる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子はターゲティングリガンドをさらに含む。加えて、脂質ナノ粒子の成分は薬学的に許容されるその塩であってもよい。
【0016】
治療薬が核酸を含む場合、脂質(例えば、イオン化可能な脂質)の量と核酸の量は、特定のN:P比をもたらすように選択することができる。脂質ナノ粒子のN:P比とは、1つ又は複数の脂質中の窒素原子と核酸中のリン酸基の数のモル比を指す。1つ又は複数の核酸、脂質、及びそれらの量は、約2:1~約20:1、例えば、約3:1~約19:1、約4:1~約18:1、約5:1~約17:1、約4:1~約16:1、約6:1~約16:1、約7:1~約15:1、約8:1~約14:1、約9:1~約13:1、約7:1~約12:1、約5:1~約14:1、約8:1~約12:1、約2:1~約12:1、又は約3:1~約12:1のN:P比をもたらすように選択することができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、2:1超、3:1超、4:1超、5:1超、6:1超、7:1超、8:1超、9:1超、10:1超、又は11:1超のN:P比を有する。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、20:1未満、19:1未満、18:1未満、17:1未満、16:1未満、15:1未満、14:1未満、13:1未満、12:1未満、又は11:1未満のN:P比を有する。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、約10:1のN:P比を有する。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、約8:1のN:P比を有する。
【0017】
脂質ナノ粒子は、脂質ナノ粒子に含まれる脂質成分に左右され得る様々な粒径を有してもよい。例えば、脂質ナノ粒子は、約30nm~約300nm、例えば、約35nm~約250nm、約40nm~約200nm、約30nm~約150nm、約30nm~約100nm、約35nm~約90nm、約40nm~約80nm、又は約35nm~約125nmの直径を有することができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、30nm超、35nm超、40nm超、45nm超、又は50nm超の直径を有する。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、300nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満の直径を有する。
【0018】
脂質ナノ粒子のゼータ電位を使用して、組成物の界面動電電位を示すことができる。例えば、ゼータ電位によって脂質ナノ粒子の表面電荷を説明することができる。比較的低い電荷を、正電荷か負電荷かにかかわらず、有する脂質ナノ子粒子が一般に望ましいが、これは、より高度に帯電した種は、細胞、組織、及び体内のその他のエレメントと望ましくない相互作用をする場合があるからである。脂質ナノ粒子は、約-10mV~約+20mV、例えば、約-10mV~約+15mV、約-10mV~約+10mV、約-10mV~約+5mV、約0mV~約+5mV、又は約-5mV~約+10mVのゼータ電位を有することができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、-5mV超、0mV超、+1mV超、+2mV超、+3mV、又は+4mV超のゼータ電位を有する。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は+20mV未満、+19mV未満、+18mV未満、+17mV未満、+16mV未満、又は+15mV未満のゼータ電位を有する。
【0019】
治療薬のカプセル化の効率によって、提供される初期の量と比較した、調製後に脂質ナノ粒子にカプセル化されるか、そうでなければ脂質ナノ粒子と他の方法で会合した治療薬の量を表す。カプセル化効率は、高いのが望ましい。カプセル化効率は、例えば、1種又は複数の有機溶媒又は洗浄剤で脂質ナノ粒子を崩壊させる前後で脂質ナノ粒子を含有する溶液中の治療薬の量を比較することによって測定することができる。蛍光を使用して、溶液中の遊離治療薬(例えば、RNA)の量を測定することができる。本明細書に記載の脂質ナノ粒子の場合、治療薬分子のカプセル化効率は、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は99%以上、又は約100%とすることができる。一部の実施形態では、カプセル化効率は75%以上である。一部の実施形態では、カプセル化効率は85%以上である。一部の実施形態では、カプセル化効率は約70%~約99%、例えば約70%~約90%、約75%~約95%、又は約75%~約99%である。
脂質ナノ粒子は、様々な方法によって特徴付けることができる。例えば、顕微鏡法(例えば、透過電子顕微鏡法又は走査電子顕微鏡法)を使用して、脂質ナノ粒子の形態及びサイズ分布を調べることができる。動的光散乱又は電位差測定法(例えば、電位差滴定法)を使用して、ゼータ電位を測定することができる。動的光散乱を利用して、粒径を同様に決定することができる。Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd、Malvern、Worcestershire、英国)等の機器を使用して、脂質ナノ粒子の複数の特性、例えば、粒径、多分散指数、及びゼータ電位を測定することもできる。
【0020】
POEGMA-脂質コンジュゲートの組み入れにより、PEG-脂質コンジュゲートと比較して、開示された脂質ナノ粒子は有利な免疫応答特性を有することができる。例えば、脂質ナノ粒子は、PEGを含む脂質ナノ粒子と比べて減少した免疫応答を有することができる。減少又は消失した免疫応答には、脂質ナノ粒子に関して減少若しくは消失した抗原性、減少若しくは消失した免疫原性、又はその両方が含まれ得る。脂質ナノ粒子の有益な免疫相互作用は、脂質ナノ粒子が対象の既存の抗PEG抗体と反応しないとし得るという点においても捉えることができる。したがって、開示された脂質ナノ粒子は、対象の免疫系と有益な相互作用を有することができる。対象の免疫系との脂質ナノ粒子相互作用の解析は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT/US2022/023158(WO2022/212911として公開)に記載のとおりに評価することができる。
【0021】
脂質ナノ粒子は、いくつの様々な技術によって作製することができる。例示技法としては、アルコール注入法が挙げられる。例えば、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、及びPOEGMA-脂質コンジュゲートをアルコールに添加して、第1の混合物を形成することができる。アルコールはエタノールであってもよい。第1の混合物を第2の混合物へと注入して、脂質ナノ粒子混合物を用意することができる。第2の混合物は、治療薬及び緩衝剤(例えば、クエン酸緩衝剤)を含むことができる。脂質ナノ粒子混合物は、用意した後に透析する場合がある。
【0022】
A.POEGMA-脂質コンジュゲート
POEGMA-脂質コンジュゲートは、POEGMA及び脂質を含む。POEGMA-脂質コンジュゲートによれば、コンジュゲートに有利なステルス性及び免疫系特性を注ぎ込むことができる。脂質ナノ粒子は、1タイプのPOEGMA-脂質コンジュゲート(例えば、単一種のコンジュゲート)を含む場合があり、又は少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種若しくは少なくとも5種の異なるタイプのPOEGMA-脂質コンジュゲートを含む場合もある。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、2~5種の異なるタイプのPOEGMA-脂質コンジュゲートを含む。一例として、脂質ナノ粒子は、POEGMAの分子量、脂質の炭化水素の長さ、又はその両方によって異なる少なくとも2種の異なるPOEGMA-脂質コンジュゲートを含むことができる。こういった変化(例えば、分子量及び炭化水素鎖長等の)については、下でさらに論議する。POEGMAと脂質を1:1の化学量論的モル比で含めることができる。例えば、コンジュゲートは、1つの脂質分子に付着した1つのPOEGMA分子を含むことができる。
【0023】
POEGMAは、ポリ(メチルメタクリレート)骨格及びその骨格に共有結合で付着した複数の側鎖を有する。側鎖はエチレングリコール(EG)のオリゴマーである。例えば、各側鎖は、タンデムに反復したEGの2~9つのモノマー、例えばタンデムに反復したEGの2~8つのモノマー、タンデムに反復したEGの2~7つのモノマー、タンデムに反復したEGの2~6つのモノマー、タンデムに反復したEGの2~5つのモノマー、又はタンデムに反復したEGの2~4つのモノマーを含むことができる。一部の実施形態では、各側鎖は、タンデムに反復したEGの3つのモノマーを含む。
隣接する側鎖は、同一POEGMA分子内で同じであってもよく又は異なっていてもよい。例えば、一方の側鎖は、タンデムに反復したEGの3つのモノマーを有することができ、一方、別の側鎖は(同一POEGMA分子中)、タンデムに反復したEGの4つのモノマーを有することができる。
【0024】
各側鎖は、第1の末端及び第2の末端を有することができる。第1の末端を、骨格に共有結合で付着させることができる。第2の末端は遊離であってもよい。第2の末端を修飾してもよい。一部の実施形態では、第2の末端それぞれは独立して、アルキル、エステル、アミン、アミド、又はカルボキシルの各基を含む。一部の実施形態では、第2の末端それぞれはアルキルを含む。一部の実施形態では、第2の末端それぞれはC1-C4アルキルを含む。一部の実施形態では、第2の末端それぞれはメチル基を含む。一部の実施形態では、第2の末端それぞれはヒドロキシル基を含まない。各側鎖の第2の末端は、同一POEGMA分子内の隣接する側鎖の第2の末端と同じであっても異なっていてもよい。一部の実施形態では、各側鎖の第2の末端は、POEGMA全体をとおして同じである。一部の実施形態では、少なくとも1つの側鎖の第2の末端は、少なくとも1つの隣接する側鎖の第2の末端とは異なる。
加えて、骨格は、第1の末端及び第2の末端を有することができる。
【0025】
POEGMAは、様々な分子量を有することができる。例えば、POEGMAは、約1kDa~約100kDa、例えば、約1kDa~約85kDa、約1kDa~約75kDa、約1kDa~約60kDa、約1kDa~約50kDa、約2kDa~約45kDa、約3kDa~約40kDa、約4kDa~約35kDa、約5kDa~約30kDa、約1kDa~約30kDa、約1kDa~約25kDa、約1kDa~約20kDa、約1kDa~約15kDa、約1kDa~約12kDa、又は約1kDa~約10kDaの数平均分子量を有することができる。一部の実施形態では、POEGMAは、1kDa超、2kDa超、3kDa超、4kDa超、5kDa超、6kDa超、7kDa超、8kDa超、9kDa超、又は10kDa超の数平均分子量を有する。一部の実施形態では、POEGMAは、100kDa未満、90kDa未満、80kDa未満、70kDa未満、60kDa未満、50kDa未満、40kDa未満、30kDa未満、20kDa未満、15kDa未満、12kDa未満、又は10kDa未満の数平均分子量を有する。一部の実施形態では、POEGMAは約10kDaの数平均分子量を有する。POEGMAの分子量は、SEC、多角度光散乱と組み合わせたSEC、ゲル浸透クロマトグラフィー等の当技術分野内で使用される技法によって測定することができる。
【0026】
コンジュゲートの脂質は、POEGMAにコンジュゲートすることができ且つそのコンジュゲートが脂質ナノ粒子に含まれることを可能にする適切なあらゆる脂質とすることができる。脂質は飽和であっても不飽和であってもよい。脂質には、様々な長さの炭化水素鎖が含まれ得る。炭化水素鎖における炭素原子の数は、接頭辞「Cx-y」又は「Cx-Cy-」によって指すことができ、この場合、xは炭化水素鎖における炭素原子の最小数であり、yは最大数である。したがって、例えば、「C6-22炭化水素鎖」又は「C6-C22炭化水素鎖」とは、6~22個の炭素原子を含有する炭化水素鎖を指す。脂質には、C2-40炭化水素鎖、例えば、C2-35炭化水素鎖、C2-30炭化水素鎖、C2-25炭化水素鎖、C2-20炭化水素鎖、C4-40炭化水素鎖、C10-40炭化水素鎖、C6-22炭化水素鎖、C10-28炭化水素鎖、C12-20炭化水素鎖、C10-22炭化水素鎖、C12-30炭化水素鎖、C14-40炭化水素鎖、C12-18炭化水素鎖、又はC8-18炭化水素鎖が含まれ得る。一部の実施形態では、POEGMA-脂質コンジュゲートの脂質は、長さ4個超の炭素、長さ6個超の炭素、長さ8個超の炭素、長さ10個超の炭素、長さ12個超の炭素、又は長さ14個超の炭素である、炭化水素鎖を有する。一部の実施形態では、POEGMA-脂質コンジュゲートの脂質は、長さ40個未満の炭素、長さ36個未満の炭素、長さ32個未満の炭素、長さ30個未満の炭素、長さ24個未満の炭素、又は長さ20個未満の炭素である、炭化水素鎖を有する。
【0027】
脂質は、1つの炭化水素鎖又は複数の炭化水素鎖を含むことができる。例えば、脂質は、1~5つの個別の炭化水素鎖、例えば、1~4つの個別の炭化水素鎖、2~5つの個別の炭化水素鎖、1~3つの個別の炭化水素鎖、又は2~4つの個別の炭化水素鎖を含むことができる。一部の実施形態では、脂質は、1つ超の個別の炭化水素鎖、2つ超の個別の炭化水素鎖、又は3つ超の個別の炭化水素鎖を含む。一部の実施形態では、脂質は、5つ未満の個別の炭化水素鎖、4つ未満の個別の炭化水素鎖、又は3つ未満の個別の炭化水素鎖を含む。2つ以上の炭化水素鎖を有する脂質は、上記のように、様々な長さの炭化水素鎖を有することができる。加えて、複数の炭化水素鎖を含む実施形態は、全て同じ長さの個別の炭化水素鎖を含む場合があり、又は脂質は、様々な長さの個別の炭化水素鎖を含む場合もある。
【0028】
脂質はまた、脂質をPOEGMAにコンジュゲートさせる際の柔軟性を可能にすることができるいくつかの様々な官能基を含むこともできる。例えば、脂質は、トリアゾール、アミド、エステル、エーテル、炭化水素リンカー、及びその他の適切なコンジュゲーションリンカーを含むことができる。一部の実施形態では、脂質は、トリアゾール、アミド、エステル、エーテル、又は炭化水素リンカーを介してPOEGMAにコンジュゲートされている。一部の実施形態では、POEGMA-脂質コンジュゲートの脂質には、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、1,2-ジミリスチルオキシプロピル(dimyristyloxlpropyl)-3-アミン、又はそれらの組合せが含まれる。様々なリンカー戦略のさらなる論議については、下で論議する。
【0029】
POEGMA-脂質コンジュゲートは、脂質ナノ粒子中に様々な量で含めることができる。例えば、脂質ナノ粒子は、POEGMA-脂質コンジュゲートを、約0.1mol%~約10mol%、例えば、約0.2mol%~約9.5mol%、約0.3mol%~約9mol%、約0.4mol%~約8.5mol%、約0.1mol%~約8mol%、約0.1mol%~約7.5mol%、約0.1mol%~約7mol%、約0.1mol%~約6.5mol%、約0.1mol%~約6mol%、約0.1mol%~約5.5mol%、約0.1mol%~約5mol%、約0.2mol%~約7mol%、約0.2mol%~約6mol%、約0.3mol%~約6mol%、約0.3mol%~約5.5mol%、約0.1mol%~約5mol%、約0.1mol%~約4.5mol%、約0.1mol%~約4mol%、約0.1mol%~約3.5mol%、約0.1mol%~約3mol%、約0.1mol%~約2.5mol%、約0.1mol%~約2mol%、約0.1mol%~約1.5mol%、約0.1mol%~約1mol%、又は約0.1mol%~約0.75mol%で含むことができる。ここで及び全体をとおしてmol%とは、脂質ナノ粒子の脂質成分(例えば、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、及びPOEGMA脂質コンジュゲート)の総量に関連して、成分、例えば、ここではPOEGMA脂質コンジュゲートのモルパーセンテージを指す。
【0030】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、POEGMA-脂質コンジュゲートを、0.1mol%超、0.15mol%超、0.2mol%超、0.25mol%超、0.3mol%超、0.35mol%超、0.4mol%超、0.45mol%超、0.5mol%超、1mol%超、2mol%超、3mol%超、4mol%超、又は5mol%超で含む。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、POEGMA-脂質コンジュゲートを、10mol%未満、9.5mol%未満、9mol%未満、8.5mol%未満、8mol%未満、7.5mol%未満、7mol%未満、6.5mol%未満、6mol%未満、5.5mol%未満、5mol%未満、4.5mol%未満、4mol%未満、3.5mol%未満、3mol%未満、2.5mol%未満、2mol%未満、1.5mol%未満、1mol%未満、0.9mol%未満、0.8mol%未満、0.75mol%未満、又は0.6mol%未満で含む。
【0031】
POEGMAは、当技術分野で公知のあらゆる適切なコンジュゲーション戦略を介して脂質にコンジュゲートさせることができる。例えば、脂質及びPOEGMAは、適正な条件下で官能基間に共有結合を形成することができるという点で、互いに補完的(complimentary)である官能基をそれぞれ個々に有することができる。共有結合を形成することができる代表的な補完的官能基としては、それらに限定されないが、アミンと活性化エステル、アミンとイソシアネート、アミンとイソチオシアネート、アミンとカルボネート、ジスルフィドの形成のためのチオール、エナミン形成のためのアルデヒドとアミン、及びStaudingerライゲーションを経るアミドの形成のためのアジドが挙げられる。コンジュゲーションに適した官能基には、生体直交型官能基も含まれる。生体直交型官能基は、補完的生体直交型官能基と選択的に反応することができる。生体直交型官能基には、それらに限定されないが、クリック化学反応を経るトリアゾールの形成のためのアジドとアルキン、trans-シクロオクテン(TCO)及びにテトラジン(Tz)(例えば1,2,4,5-テトラジン)等が含まれる。一部の実施形態では、脂質及びPOEGMAはそれぞれ個々に生体直交型官能基を含む。一部の実施形態では、脂質はジベンゾシクロオクチンで官能化されており、POEGMAはアジド又はその両方で官能化されている。官能基に応じて、様々な結合又はリンケージを脂質とPOEGMAの間に形成することができる。POEGMAは、その骨格で又は側鎖で官能化することができる。
【0032】
POEGMA、その合成、及びその適用に関するさらなる議論は、米国特許第8,497,356号及び米国特許第10,364,451号に見出すことができ、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
B.イオン化可能な脂質
脂質ナノ粒子は、1種又は複数のイオン化可能な脂質を含むことができる。「イオン化可能な脂質」(又は代替的にカチオン性脂質)とは、生理学的pH(例えば、約7.4のpH)で正電荷又は部分的な正電荷を有する脂質を指す。イオン化可能な脂質はまた、双性イオン性、すなわち、正と負の電荷の両方を有する中性分子であってもよい。脂質ナノ粒子は、1種のイオン化可能な脂質(例えば、単一種のイオン化可能な脂質)を含む場合があり、又は少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種若しくは少なくとも5種の異なるタイプのイオン化可能な脂質を含む場合もある。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、2~5種の異なるタイプのイオン化可能な脂質を含む。
【0034】
イオン化可能な脂質の例としては、それらに限定されないが、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102)、3,6-ビス({4-[ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ]ブチル})ピペラジン-2,5-ジオン(cKK-E12)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(1,2-Dilinoleylcarbanioyloxy-3-dimethylaniinopropane)(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(l,2-Dilmoleoyl-3-dimethylammopropane)(DLm-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(2,2-dilmoleyl-4-(2-dimethylaiiimoethyl)-[l,3]-dioxolane)(DLin-KC2-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート((6Z,9Z,28Z,3lZ)-heptatriaeonta-6,9,28,31-tetraen-19-yl 4-(dimethylamino)butanoate)(DLin-MC3-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ジオクタデシルアミドログリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、スペルミンコレステリルカルバメート(GL-67)、ビス-グアニジニウム-スペルミジン-コレステロール(BGTC)、3b-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(N-(NAN’-dimethylammoethanej-carbam oxl cholesterol)(DC-Chol)、N-t-ブチル-N’-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン(ジC14-アミジン)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMR1E)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ))プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(N-(l-(2,3-dioleyloxy3)propyl)-N-2-(spenninecarboxamido)ethyl)-N,N-dimethylamrnonium trifluoracetate)(DOSPA)、2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、アミノプロピル-ジメチル-ビス(ドデシルオキシ)-プロパンアミニウムブロミド(aminopropyl-dimethyl-bis(dodecyloxy)-propanaminiumbromide)(GAP-DLRIE)、1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及び(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)が挙げられる。
【0035】
一部の実施形態では、イオン化可能な脂質には、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102)、(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、又はそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、イオン化可能な脂質には、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102)が含まれる。
【0036】
イオン化可能な脂質は、脂質ナノ粒子中に様々な量で含めることができる。例えば、脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質を、約20mol%~約65mol%、例えば、約25mol%~約60mol%、約25mol%~約65mol%、約30mol%~約65mol%、約40mol%~約65mol%、約45mol%~約65mol%、約20mol%~約55mol%、約20mol%~約50mol%、約20mol%~約45mol%、約30mol%~約60mol%、約35mol%~約55mol%、約20mol%~約65mol%、約40mol%~約55mol%、又は約45mol%~約55mol%で含むことができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質を、20mol%超、25mol%超、30mol%超、35mol%超、40mol%超、45mol%超、50mol%超、又は55mol%超で含む。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質を、65mol%未満、60mol%未満、58mol%未満、56mol%未満、54mol%未満、52mol%未満、50mol%未満、又は45mol%未満で含む。
【0037】
C.リン脂質
脂質ナノ粒子は、1種又は複数のリン脂質を含むことができる。一般に、リン脂質は、リン脂質部分及び1つ又は複数の脂肪酸部分を含むことができる。脂質ナノ粒子は、1種のリン脂質(例えば、単一種のリン脂質)を含む場合があり、又は少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種若しくは少なくとも5種の異なるタイプのリン脂質を含む場合もある。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、2~5種の異なるタイプのリン脂質を含む。
【0038】
リン脂質の例としては、それらに限定されないが、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、スフィンゴミエリン(SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DMPC)、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0039】
一部の実施形態では、リン脂質(phospholipoid)には、DSPC、DPPE、DMPG、DOPC、DPPC、DOPG、又はそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、リン脂質には、DSPC、DPPE、DOPC、又はそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、リン脂質にはDSPCが含まれる。一部の実施形態では、リン脂質はDSPCである。
【0040】
リン脂質は、脂質ナノ粒子中に様々な量で含めることができる。例えば、脂質ナノ粒子は、リン脂質を、約5mol%~約25mol%、例えば、約6mol%~約20mol%、約7mol%~約18mol%、約8mol%~約16mol%、約5mol%~約20mol%、約5mol%~約15mol%、約6mol%~約15mol%、約6mol%~約12mol%、約8mol%~約12mol%、又は約9mol%~約11mol%で含むことができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、リン脂質を、5mol%超、6mol%超、7mol%超、8mol%超、9mol%超、10mol%超、又は15mol%超で含む。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、リン脂質を、20mol%未満、19mol%未満、18mol%未満、17mol%未満、16mol%未満、15mol%未満、14mol%未満、13mol%未満、12mol%未満、11mol%未満、又は10mol%未満で含む。
【0041】
D.ステロール
脂質ナノ粒子は、1種又は複数のステロールを含むことができる。「ステロール」という用語は、ステロイドアルコールとしても知られるステロイドのサブグループを指す。ステロールは2つのクラス:(1)「フィトステロール」としても知られる植物ステロール、及び(2)「ズーステロール」としても知られる動物ステロール、に通常には分けられる。脂質ナノ粒子は、1種のステロール(例えば、単一種のステロール)を含む場合があり、又は少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種若しくは少なくとも5種の異なるタイプのステロールを含む場合もある。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、2~5種の異なるタイプのステロールを含む。一部の実施形態では、ステロールはズーステロールを含む。
【0042】
ステロールの例としては、それらに限定されないが、コレステロール、カンペステロール、アントロステロール、デスモステロール、ニカステロール、スチグマステロール、シトステロール、オキシステロール、C4-10ステロール、エルゴステロール、及びコレスタ-4-エン-3-オンが挙げられる。一部の実施形態では、ステロールには、コレステロール、カンペステロール、アントロステロール、デスモステロール、ニカステロール、スチグマステロール、シトステロール、オキシステロール、C4-10ステロール、エルゴステロール、コレスタ-4-エン-3-オン、又はそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、ステロールには、コレステロール、カンペステロール、スチグマステロール、シトステロール、C4-10ステロール、エルゴステロール、コレスタ-4-エン-3-オン、又はそれらの組合せが含まれる。
【0043】
一部の実施形態では、ステロールはコレステロールを含む。一部の実施形態では、ステロールはコレステロールである。コレステロールは、コレステロール自体、又はその塩若しくはそのエステル、例えば、コハク酸コレステロール、硫酸コレステロール、ヘミコハク酸コレステロール、フタル酸コレステロール、リン酸コレステロール、吉草酸コレステロール、酢酸コレステロール、オレイン酸コレステリル、リノール酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、アラキジン酸コレステリル、又はコレステリルホスホリルコリンとすることができる。
【0044】
ステロールには、コレステロールの誘導体が含まれ得る。コレステロールの誘導体例としては、それらに限定されないが、ジヒドロコレステロール、ent-コレステロール、エピコレステロール、デスモステロール、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、3β[N-(N’N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイルコレステロール(DC-Chol)、24(S)-ヒドロキシコレステロール、25-ヒドロキシコレステロール、25(R)-27-ヒドロキシコレステロール、22-オキサコレステロール、23-オキサコレステロール、24-オキサコレステロール、シクロアルテノール、22-ケトステロール、20-ヒドロキシステロール、7-ヒドロキシコレステロール、19-ヒドロキシコレステロール、22-ヒドロキシコレステロール、25-ヒドロキシコレステロール、7-デヒドロコレステロール、5α-コレスタ-7-エン-3β-オール、3,6,9-トリオキサオクタン-1-オール-コレステリル-3e-オール、デヒドロエルゴステロール、デヒドロエピアンドロステロン、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、ラノステノール、ルミステロール、シトカルシフェロール、カルシポトリオール、コプロスタノール、コレカルシフェロール、ルペオール、エルゴカルシフェロール、22-ジヒドロエルゴカルシフェロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、チモステロール、ジオスゲニン、フコステロール、フェコステロール、及びフェコステロール、又はそれらの塩若しくはそれらのエステルが挙げられる。
【0045】
ステロールは、脂質ナノ粒子中に様々な量で含めることができる。例えば、脂質ナノ粒子は、ステロールを、約10mol%~約50mol%、例えば、約15mol%~約45mol%、約20mol%~約40mol%、約25mol%~約40mol%、約30mol%~約40mol%、約35mol%~約45mol%、約35mol%~約40mol%、約20mol%~約50mol%、約25mol%~約50mol%、約30mol%~約50mol%、約15mol%~約40mol%、又は約15mol%~約35mol%で含むことができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、ステロールを、10mol%超、15mol%超、20mol%超、25mol%超、30mol%超、又は35mol%超で含む。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、ステロールを、50mol%未満、45mol%未満、42mol%未満、40mol%未満、38mol%未満、又は35mol%未満で含む。
【0046】
E.治療薬
脂質ナノ粒子は、1種又は複数の治療薬を含むことができる。治療薬の例としては、それらに限定されないが、核酸及びアニオン性ポリペプチドが挙げられる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、核酸、アニオン性ポリペプチド、又はその両方を含む。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、核酸又はアニオン性ポリペプチドを含む。
【0047】
脂質ナノ粒子は、1種又は複数の核酸を含むことができる。核酸は、例えば細胞内でのポリペプチドの産生に用いることができる。核酸の例としては、それらに限定されないが、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、mRNA、tRNA、rRNA、CircRNA、及びDNAが挙げられる。一部の実施形態では、核酸には、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、mRNA、tRNA、rRNA、CircRNA、DNA又はそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、核酸には、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、mRNA、tRNA、rRNA、CircRNA、又はDNAが含まれる。一部の実施形態では、核酸には、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、mRNA、tRNA、rRNA、又はCircRNAが含まれる。一部の実施形態では、核酸には、siRNA、mRNA、又はそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、核酸にはsiRNA又はmRNAが含まれる。一部の実施形態では、核酸にはmRNAが含まれる。一部の実施形態では、核酸はmRNAである。mRNAは、天然に存在する若しくは天然に存在しない又は他の方法で修飾されたあらゆるポリペプチドを含めて、目的のポリペプチドをコードすることができる。mRNAによってコードされるポリペプチドは、任意のサイズのものとすることができ、任意の二次構造又は活性を有することができる。一部の実施形態では、mRNAによってコードされるポリペプチドは、細胞内で発現される場合に治療効果を有することができる。
【0048】
核酸はRNAとすることができる。RNAの例としては、それらに限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)(例えば、目的のタンパク質をコードする)、修飾mRNA(mmRNA)、マイクロRNA結合部位(miR結合部位)を組み入れるmRNA、機能性RNAエレメントを含む修飾RNA、マイクロRNA(miRNA)、アンタゴミル、低分子(短)干渉RNA(siRNA)(ショートマー及びダイサー基質RNAを含む)、RNA干渉(RNAi)分子、アンチセンスRNA、リボザイム、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、ロックド核酸(LNA)及びCRISPR/Cas9テクノロジーが挙げられる。
一部の実施形態では、核酸は、配列番号1、配列番号2、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、核酸は配列番号1又は配列番号2を含む。
【0049】
核酸及びアニオン性ポリペプチドは市販のものを購入することができる。代替的に、核酸は、DNAテンプレートからのin vitro転写によって調製することもできる。DNAテンプレートから核酸を用意する技法及び方法は、実施例に記載のもの等の当技術分野内で公知の技法によって行うことができる。核酸は、配列安定化、キャッピング、及びポリアデニル化によって適用前に修飾することができる。加えて、アニオン性ポリペプチドは、化学合成及び/又は組換え法を介して調製することができる。
【0050】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102);DSPC;コレステロール;ポリ[オリゴ(エチレングリコール)エーテルメタクリレート](POEGMA)が約1kDa~約50kDaの数平均分子量を有する、約0.25mol%~約3mol%にてのPOEGMA-脂質コンジュゲート;及びmRNAを含む。
【0051】
3.医薬組成物
本明細書では、1つ又は複数の脂質ナノ粒子を含む医薬組成物がさらに開示される。医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、非毒性、不活性な固体、半固体若しくは液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料又は任意のタイプの製剤助剤を意味する。薬学的に許容される賦形剤として利用することができる材料の一部の例は、それらに限定されないが、ラクトース、グルコース及びスクロース等の糖;それらに限定されないが、トウモロコシデンプン及びバレイショデンプン等のデンプン;それらに限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース等のセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;それらに限定されないが、ココアバター及び座薬ワックス等の賦形剤;それらに限定されないが、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油等の油;プロピレングリコール等のグリコール;それらに限定されないが、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル;寒天;それらに限定されないが、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝化剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩液;リンガー溶液;エチルアルコール、クエン酸緩衝剤及びリン酸緩衝溶液、並びに、それらに限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム等の他の非毒性の適合滑沢剤であり、同様に、着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味剤及び香料、保存剤及び抗酸化剤も、配合者の判断に従って、組成物中に同様に存在してもよい。組成物が投与される経路及び組成物の形態によって、使用される賦形剤のタイプを規定することができる。
【0052】
薬学的に許容される賦形剤は、脂質ナノ粒子を含む医薬組成物の総質量又は体積の50%超を構成することができる。例えば、薬学的に許容される賦形剤は、医薬組成物の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれより多く構成することができる。一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%純粋である。一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、ヒトでの使用のために及び獣医学的使用のために承認されている。一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は医薬品グレードである。一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の基準を満たす。
【0053】
医薬組成物及び薬剤の製剤化及び製造についての一般的な指針は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, A. R. Gennaro; Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, Md., 2006において入手可能である。従来の何らかの賦形剤又は補助成分が脂質ナノ粒子の1種又は複数の成分と不適合である恐れがある限りを除いて、従来の賦形剤及び補助成分は、あらゆる医薬組成物において使用することができる。賦形剤又は補助成分は、脂質ナノ粒子の成分とのその組合せが、何らかの望ましくない生物学的影響又は他の形で悪影響をもたらす恐れがある場合、脂質ナノ粒子の成分と不適合とすることができる。
【0054】
一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤には、緩衝化剤、可溶化剤、溶媒、抗菌保存剤、抗酸化剤、懸濁剤、錠剤又はカプセル希釈剤、錠剤崩壊剤、又はそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤には、緩衝化剤、可溶化剤、溶媒、抗菌保存剤、抗酸化剤、懸濁剤、錠剤又はカプセル希釈剤、又は錠剤崩壊剤が含まれる。
一部の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤には緩衝剤が含まれる。一部の実施形態では、緩衝剤にはクエン酸塩及びアルコールが含まれる。一部の実施形態では、緩衝剤は、約70%~約80%mMのクエン酸塩-エタノール緩衝剤である。一部の実施形態では、緩衝剤は別の緩衝剤に対して透析される。一部の実施形態では、緩衝剤はtris酢酸緩衝剤に対して透析される。
【0055】
医薬組成物は、製薬技術分野の当業者に周知の対象(例えば、ヒトであってもよい患者又は非ヒトであってもよい患畜)への投与に適切とすることができる。医薬組成物は、対象への投与向けに調製することができる。このような医薬組成物は、特定の対象の年齢、性別、体重及び状態、並びに投与経路等の要因を考慮して、医療技術分野の当業者に周知の投薬量及び技法によって投与することができる。
組成物は、予防的に投与してもよく、治療的に投与してもよい。予防的投与では、組成物は、応答を誘導するのに十分な量で投与することができる。治療用途では、組成物は、治療効果を引き出すのに十分な量で、それを必要とする対象に投与することができる。これを達成するのに適当な量は、「治療有効用量」として定義される。この使用に有効な量は、例えば、投与されるコンジュゲートレジメンの特定の組成、投与様式、疾患の段階及び重症度、患者の一般的な健康状態、並びに処方する医師の判断次第である。
組成物は、単回用量で与えるのが、又は適正な間隔で投与される分割用量として、例えば、1日当たり2、3、4回若しくはそれより多いサブ用量として与えるのが好都合である。サブ用量自体は、例えば、いくつかの別々のおおまかに間隔を開けた投与にさらに分けられる場合もある。
【0056】
当業者であれば容易に明らかであるように、投与すべき有用なin vivo投薬量及び投与の特定の様式は、年齢、体重、苦痛の重症度、及び治療される対象、用いられる特定の化合物、及びこれらの化合物が用いられる特定の用途によって異なることになる。有効投薬量レベル、すなわち所望の結果を達成するのに必要な投薬量レベルの決定は、ルーチンな方法、例えばヒト治験、in vivo研究及びin vitro研究を使用して、当業者であれば行うことができる。
投薬量及び間隔を個々に調整して、モジュレーション効果又は最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分である生物学的活性剤の血漿レベルを提供することができる。MECは薬剤毎に異なるが、in vivo及び/又はin vitroデータから推定することができる。MECを得るのに必要な投薬量は、個体の特徴及び投与経路次第である。しかし、当業者に周知のアッセイを使用して、血漿濃度を決定することができる。投薬間隔は、MEC値を使用して決定することもできる。組成物は、時間の10~90%、例えば30~90%の間又は50~90%の間、MECを上回る血漿レベルを維持するレジメンを使用して投与することができる。局所投与又は選択的取り込みの場合では、薬物の有効局所濃度は血漿濃度と関連していなくてもよい。
【0057】
医薬組成物は、例えば、対象の様々な特徴及び投与経路に応じて、種々の投薬量で投与してもよい。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、所与の用量で、約0.0001mg/kg~約10mg/kg、約0.001mg/kg~約10mg/kg、約0.005mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、約2mg/kg~約10mg/kg、約5mg/kg~約10mg/kg、約0.0001mg/kg~約5mg/kg、約0.001mg/kg~約5mg/kg、約0.005mg/kg~約5mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約0.0001mg/kg~約1mg/kg、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.005mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、又は約0.1mg/kg~約1mg/kgを送達するのに十分な投薬量レベルで投与することができ、この場合、用量1mg/kgによって、対象の体重1kg当たり治療用ナノ粒子又は脂質ナノ粒子1mgを供給する。一部の実施形態では、用量約0.005mg/kg~約5mg/kgの本開示の治療用ナノ粒子又は脂質ナノ粒子を投与する場合がある。
【0058】
主治医であれば、毒性若しくは臓器不全に起因して、投与を終了、中断、若しくは調整する方法及び時期を知っているはずであることに留意されたい。反対に、主治医であればまた、臨床応答が適正ではなかった場合(毒性を除く)に、治療をより高いレベルへと調整することも知っているはずである。目的の障害の管理における投与用量の振幅は、治療する症状の重症度及び投与経路によって異なる。さらに、用量及びおそらく用量頻度もまた、個々の患者の年齢、体重、及び応答に従って異なる。上で論議のものに相当するプログラムを獣医学で使用することができる。
【0059】
4.方法
本明細書では、脂質ナノ粒子及びその医薬組成物を使用する方法も開示される。脂質ナノ粒子、POEGMA-脂質コンジュゲート、イオン化可能な脂質、リン脂質、ステロール、治療薬、及び医薬組成物に関する記載はまた、本明細書に開示の、治療する方法及び細胞に治療薬を送達する方法にも適用することができる。
【0060】
A.疾患又は障害を治療する方法
それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法がさらに提供される。方法は本明細書で開示の1つ又は複数の脂質ナノ粒子の有効量を対象に投与するステップを含むことができる。脂質ナノ粒子は、薬学的に許容される賦形剤と組合せで(例えば、開示された医薬組成物として)投与してもよい。
開示された脂質ナノ粒子は、細胞、組織、臓器、又は対象内でのポリペプチドの産生を容易にすることができる。したがって、いくつかの疾患又は障害がこの能力から恩恵を被ることができる。疾患例又は障害例としては、それらに限定されないが、感染症、ハンチントン病、筋ジストロフィー、自己免疫疾患、及びがんが挙げられる。一部の実施形態では、疾患又は障害は、感染症、がん、又は自己免疫疾患である。一部の実施形態では、疾患又は障害は、ウイルス等の感染症である。
一部の実施形態では、方法は、感染症に罹患している対象による免疫応答をモジュレートして、それによって対象における感染症病原体に対する免疫応答を増強することができる。治療することができる感染症の非限定的な例としては、ウイルス、細菌、真菌、酵母及び寄生性病原体によって生じる感染症が挙げられる。ウイルスの例としては、それらに限定されないが、A型及びB型インフルエンザウイルス、ジカ、狂犬病、RSV、チクングニア熱、シクロメガロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、エボラ出血熱、HIV-1、並びにSARS-CoV-2が挙げられる。
【0061】
方法は、例えばワクチンによってモジュレートされるような様式で、免疫応答をモジュレートするために使用することができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子の核酸によって、樹状細胞又は骨髄細胞等の免疫細胞の活性化又は活性を刺激することができるポリペプチドを供給することができる。例えば、核酸は、ワクチン抗原(例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、腫瘍抗原)等の抗原であるポリペプチドをコードすることができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子に会合する/脂質ナノ粒子によってカプセル化される核酸(例えば、mRNA)は、がん抗原又は感染症抗原(例えば、細菌抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、原虫抗原又は寄生虫抗原)等の目的の抗原をコードする。
【0062】
一部の実施形態では、方法は、がんを患っている対象による免疫応答を刺激して、それによって対象におけるがんに対する免疫応答を増強するために使用される。治療することができるがんの非限定的な例としては、副腎皮質がん、進行がん、肛門がん、再生不良性貧血、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨転移、脳腫瘍、脳がん、乳がん、小児がん、原発不明のがん、キャッスルマン病、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ユーイングファミリー腫瘍、眼がん、胆嚢がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎細胞癌、喉頭がん及び下咽頭がん、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、骨髄異形成症候群(難治性貧血及び難治性血球減少症を含む)、骨髄増殖性新生物又は疾患(真性多血症、本態性血小板増多症及び原発性骨髄線維症を含む)、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺カルチノイド腫瘍、皮膚のリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔及び口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、成人軟部肉腫、基底及び扁平上皮がん、黒色腫、小腸がん、胃がん、精巣がん、咽喉がん、胸腺がん、甲状腺がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、及びがん治療によって引き起こされる二次がんが挙げられる。
【0063】
一部の実施形態では、方法は、自己免疫疾患、アレルギー性障害又は炎症応答を患っている対象を含めて、異常な免疫活性を有する対象による免疫応答をモジュレートするために使用される。治療することができる自己免疫疾患の非限定的な例としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む)、1型糖尿病、多発性硬化症、乾癬、バセドウ病、橋本甲状腺炎、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、糸球体腎炎及び血管炎が挙げられる。
他の箇所で論議のように、脂質ナノ粒子及びその医薬組成物は、有利な免疫特性を有することができる。例えば、投与の後、脂質ナノ粒子及びその医薬組成物は、PEGを含む脂質ナノ粒子と比べて減少した免疫応答を有することができるか;対象において既存の抗PEG抗体と反応しない可能性があるか;又はそれらの組合せである。
【0064】
B.治療薬を細胞に送達する方法
治療薬を細胞に送達する方法も提供される。方法は、細胞を本明細書に開示の1つ又は複数の脂質ナノ粒子又はその医薬組成物と接触させるステップによって、細胞に治療薬を送達することを含むことができる。一部の実施形態では、治療薬は核酸である。細胞を脂質ナノ粒子と接触させるステップにより、粒子を、例えばエンドサイトーシスによって内在化させることができ、核酸(例えばmRNA)は細胞内で翻訳されて目的のポリペプチドを産生することができる。
細胞を接触させるステップは、in vivo、ex vivo、培養中で、又はin vitroで行うことができる。細胞と接触させる脂質ナノ粒子の量、及び/又はその中の治療薬の量は、接触する細胞又は組織のタイプ、投与手段、脂質ナノ粒子及びその中の治療薬の物理化学的特徴(例えば、サイズ、電荷及び化学組成)、並びにその他の要因次第であってもよい。脂質ナノ粒子又はその医薬組成物の有効量によって、細胞内での効率的なポリペプチド産生を可能にすることができる。効率の測定基準には、ポリペプチド翻訳(ポリペプチド発現によって示される)、mRNA分解のレベル、及び/又は免疫応答指標が含まれ得る。
【0065】
標的とすることができる又は送達することができる細胞のタイプは一般に限定されるものではない。したがって、無数の細胞タイプを本明細書に開示の方法で使用することができる。細胞例としては、それらに限定されないが、肝細胞、上皮細胞、造血細胞、内皮細胞、肺細胞、骨細胞、幹細胞、間葉細胞、神経細胞、心臓細胞、脂肪細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、ベータ細胞、下垂体細胞、滑膜表層細胞、卵巣細胞、精巣細胞、線維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、及び腫瘍細胞が挙げられる。
他の箇所で記載のように、脂質ナノ粒子に含まれる核酸(例えば、mRNA)は、ワクチン抗原(例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、腫瘍抗原)等の抗原であるポリペプチドをコードすることができる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子に会合する/脂質ナノ粒子によってカプセル化される核酸は、がん抗原又は感染症抗原等の抗原をコードする。
【0066】
一部の実施形態では、脂質ナノ粒子中に含まれる核酸は、脂質ナノ粒子と接触させる細胞においては実質的に存在してない場合がある、1種又は複数のポリペプチドに取って代わることができる組換えポリペプチドをコードすることができる。1種又は複数の実質的に存在していないポリペプチドは、コードする遺伝子又はその調節経路の遺伝子突然変異に起因して欠落している場合がある。或いは、核酸の翻訳により生成される組換えポリペプチドは、細胞中に存在するか、細胞の表面上に存在するか、又は細胞から分泌される内因性タンパク質の活性をアンタゴナイズすることができる。アンタゴニスト性組換えポリペプチドは、内因性タンパク質の活性により引き起こされる悪影響、例えば突然変異により引き起こされる活性又は局在化の変更と闘うために望ましい場合がある。一部の実施形態では、核酸の翻訳により生成される組換えポリペプチドは、細胞中に存在するか、細胞の表面上に存在するか、又は細胞から分泌される生物学的部分の活性を間接的又は直接的にアンタゴナイズすることができる。アンタゴナイズされる生物学的部分には、それらに限定されないが、脂質(例えば、コレステロール)、リポタンパク質(例えば、低密度リポタンパク質)、核酸、炭水化物、及び小分子毒素が含まれ得る。核酸の翻訳により生成される組換えポリペプチドは、細胞内での、例えば核等の特異的コンパートメント内での局在化に向けて操作することができ、又は、細胞からの分泌に向けて若しくは細胞の原形質膜へのトランスロケーションに向けて操作することができる。
【0067】
疾患又は障害を治療する方法には、細胞に治療薬を送達することが含まれる場合があるので、細胞に治療薬を送達する方法に関する記載は、疾患又は障害を治療する方法にも適用することができる。同様に、疾患又は障害を治療する方法に関する記載は、細胞に治療薬を送達する方法にも(適用できる場合には)適用することができる。
開示される発明は複数の態様を有し、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例
【0068】
5.実施例
(実施例1)
材料及び方法
一般材料。特に別途明記しない限り、全ての化学物質はMillipore Sigma(St.Louis、MO)から購入した。全ての溶媒はVWR International(Radnor、PA)から購入した。1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ジベンゾシクロオクチル(16DBCO PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DSPC)、及びコレステロールはAvanti Polar Lipids(Birmingham、AL)から調達した。(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)[SM-102]はSINOPEG(中国)から入手した。ウミホタル(Cypridina)ルシフェラーゼ(CLuc)遺伝子をコードするpCMV-CLuc2、HiScribe(商標)T7 ARCA mRNA Kit、及びMonarch(登録商標)RNA Cleanup KitはNew England BioLabs(Ipswich、MA)から購入した。Quant-it(商標)RiboGreen RNA Assay kit、Pierce(商標)Cypridina Luciferase Glow Assay Kit、Lipofectamine 2000、及びクエン酸緩衝剤はThermo Fisherから入手した。LDH-Glo(商標)Cytotoxicity Assayキット及びプロテイナーゼKはPromegaから調達した。
【0069】
アジドPOEGMA(POEGMA5-50)の合成。トリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートを塩基性アルミナに通して、フリーラジカル阻害剤を除去した。臭化銅(II)及びtris(2-ピリジルメチル)アミン(TPMA)を超純水中で混合して、最終濃度0.01M CuBr2及び0.08M TPMAを含む触媒錯体を調製した。氷浴上に置いたシュレンクフラスコに、以下:トリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(10mmol、2.26mL)、メタノール(5.8mL)、Cu触媒錯体(0.01mmol、1mL)、水-NaCl溶液(2mmol、0.5Mから4ml)、アジドエチル-2-ブロモイソブチレート(0.1mmol、16.4μL)を添加し、フラスコをセプタムで密封した。別のシュレンクフラスコで、超純水中のアスコルビン酸フレッシュ溶液(64mM、2mL)を調製した。両方のフラスコを氷浴中で低温に維持し、アルゴンで45分間パージして酸素を除去した。脱酸素後、不活性雰囲気下でシリンジポンプを使用して0.001mL/分の速度で重合フラスコへと様々な時間にわたってアスコルビン酸溶液を連続注入して、様々な分子量を得た。生成する溶液を空気で1時間パージして反応をクエンチし、次いで水に対して4日間透析した。次いで、透析溶液を凍結乾燥して、アジドPOEGMAを粘稠なゲルとして得、これを-20℃で保存した。様々なMWのアジドPOEGMAを合成するための条件を下の表1に与える。
【0070】
【表1】
【0071】
ゲル浸透クロマトグラフィー-多角光散乱(GPC-MALS)。GPC-MALSを使用して、POEGMAポリマーのサイズ及び分散性を特徴付けた。全てのGPC実験を、溶離液としてTHF(100ppm BHTで安定化)を使用して、2本のインラインカラム(Agilent PLgel混合-Cカラム105Å、7.5×300mm、5μm、部品番号PL1110-6500)で室温で実施した。Agilent 1260 Infinity Isocraticポンプを使用して、流量1ml/分に設定した。インラインWyatt-DAWN TREOS MALS検出器及びWyatt-Optilab DSP屈折率検出器を使用して、分子量を決定した。屈折率増加(dn/dc)値を、試料の既知の濃度と質量に対してWyatt Astraソフトウェアに内蔵されるオンライン100%質量回収仮定法を使用することによって決定した。UV吸光度を、インラインAgilent 1260 Infinity UV検出器を用いて測定した。試料2mgをHPLCグレードTHF 1mlに溶解させ、孔径0.2μmの無機膜シリンジフィルター(Whatman、Anotop(商標)10)を通して濾過することによって、GPC-MALS分析用の全試料を調製した。
【0072】
POEGMA化脂質(POEGMAL5-50)の合成。アジドPOEGMA10-50100mgを20mg/mLの濃度でクロロホルムに溶解させた。5モル過剰の16 DBCO PEを添加し、溶液を37℃のシェーカーで24時間インキュベートした。反応物を、移動相としてクロロホルム中10%メタノール(v/v)を使用する薄層クロマトグラフィーでモニタリングした。24時間後、反応混合物を蒸発させ、POEGMAL5を除いて、10%クロロホルムヘキサン混合物から再沈殿させた。POEGMAL5の場合、10%メタノールヘキサン混合物を使用した。3~4ラウンドの再沈殿により、純粋なPOEGMA化脂質が>90%の収率で得られた。
【0073】
逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)。POEGMA5-50の純度を、固定相としてPhenomenex C18カラム及び移動相として1mL/分にてのメタノールを使用する逆相HPLCによって評価した。化合物を、インラインUV検出器を使用して230nmで検出した。
NMR分光法。NMRを、BBO室温プローブを備えたBruker 16.4 Tesla分光計(Bruker、英国)で実施した。POEGMAL5-50をCDCl3に可溶化させ、溶液を1D次元性1H分光分析で調査した。データはMestReNova x64を使用して処理した。
【0074】
mRNAの合成及びアガロースゲル電気泳動。ウミホタルルシフェラーゼ(CLuc)遺伝子をコードするin vitro転写mRNAを、製造業者のプロトコルに従ってHiScribe(商標)T7 ARCA mRNAキット(テーリング付き)(NEBカタログ番号:E2060S)を使用して合成した。簡潔に述べると、レポーター遺伝子ルシフェラーゼをコードするプラスミドpCMV-CLuc2(NEBカタログ番号:N0321)を、XbaI(20ユニット/μg DNA)によって37℃で30分間線状化し、Oligo Clean & Concentratorスピンカラム(Zymo Researchカタログ番号:D4060)を使用して精製した。遺伝子の下流のプラスミド線状化によって、T7 RNAポリメラーゼによる長い異種転写物の生成が回避される。in vitro転写(IVT)反応物20μLを、線状プラスミド1μg、T7 RNAポリメラーゼミックス2μL及び1×リボヌクレオチドミックス(1mM GTP、4mMアンチリバースキャップアナログ、1.25mM CTP、1.25mM UTP、最終>1.25 mM ATP)でセットした。反応物を37℃で30分間インキュベートした。次いで、IVT反応におけるDNAテンプレートを、0.2U/μLの濃度にてのDNaseIを使用して消化し、37℃で30分間インキュベートした。次いで、反応物100μLでポリ(A)ポリメラーゼ5μLを使用して、1×ポリ(A)緩衝剤中でポリ(A)テーリングを実施した。反応物を37℃で30分間インキュベートした。合成した成熟mRNAをMonarch(登録商標)RNA Cleanup Kit(NEBカタログ番号:T2050)を使用して精製し、RNA保存緩衝剤(Invitrogenカタログ番号:AM7001)20μLで溶出した。
【0075】
SARS-CoV2スパイクタンパク質mRNAのDNAテンプレートを、Gibsonアセンブリを使用して自社で組み立てた。非翻訳領域(UTR)を含めてWuhan株SARS-CoV-2スパイクタンパク質(1-1273、K986P及びV987P)をコードするgblockを、UTRとともにpCMVベクターに組み立てた。具体的には、mRNAの安定性及び翻訳効率を向上させるために、(i)コザック配列を有するヒトアルファ-グロビン5’UTRをタンパク質コード配列の上流に組み込み、(ii)ミトコンドリアでコードされた12S rRNA(mtRNR1)及びスプリットのアミノ-末端エンハンサー(AES)に由来する3‘UTRを下流にタンデムに組み込み、(iii)共転写テーリングに向けて、10ntリンカー(A30LA70、L=GCAUAUGACU)によって中断されるポリAテールをテンプレートの3’末端に組み込んだ。これらのエレメントを、WHO国際「医薬品一般名称プログラム」からアクセスしたmRNA配列に基づいて選択した。T7プロモーター配列もCleanCap-AG(Cap1)との共転写キャッピングに向けて修飾し、BbsI部位をスカーレスランオフ転写に向けて導入した。テンプレート配列をサンガー配列決定法によって検証し、プラスミドをNEB-5-アルファコンピテント細胞に形質転換した。pCMV-SARS-Cov2sプラスミドをQiagenのプラスミド精製キットを使用して精製し、BbsIを使用して線状化した。典型的なIVT反応物は、1×転写緩衝剤(40mM HEPES-KOH(pH=7.5)、2mMスペルミジン、10mM DTT)中に、T7 RNAポリメラーゼ、無機ピロホスファターゼ、製造業者(Aldevron)によって推奨される濃度にてのリボヌクレアーゼ阻害剤、ヌクレオチド三リン酸(NTP、それぞれ2.5mM又は5mM)、Cleancap AG(3’OMe)(GTPの80%)及びMgCl2を含み、典型的なIVT反応物を37℃で2時間又は4時間インキュベートした。副生成物を最小限に抑えるために、Mg:NTP比、総NTP濃度、及びインキュベーション時間を最適化した。mRNAを、NEBのMonarch mRNA精製キットを使用して精製し、Nanodropを使用して定量化した。mRNAの品質を、RNAローディング色素を添加し、試料を65℃で10分間変性させた後、TAE緩衝剤中で130mVで30分間ランさせる1%アガロースゲル電気泳動によって検証した。ゲルを、SyBr safe染色によって画像化した。
【0076】
脂質ナノ粒子(LNP)の製剤。LNPを、広く使用されているエタノール注入法を使用することによって調製した(双方とも、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、Duong et al., Preparation of Solid Lipid Nanoparticles and Nanostructured Lipid Carriers for Drug Delivery and the Effects of Preparation Parameters of Solvent Injection Method. Molecules 2020, 25 (20), 1-36及びGanesan et al., Lipid Nanoparticles: Different Preparation Techniques, Characterization, Hurdles, and Strategies for the Production of Solid Lipid Nanoparticles and Nanostructured Lipid Carriers for Oral Drug Delivery. Sustain. Chem. Pharm. 2017, 6, 37-56を参照されたい)。簡潔に述べると、イオン化可能な脂質SM-102、DSPC、コレステロール、及びステルス脂質(PEG-DMG又はPOEGMAL5-50)を50:10:38.5:0.5~2.5mol%でエタノールに溶解させた。上記の脂質混合物を含有するエタノール溶液(1容量)を、4:1~8:1の窒素(SM-102由来)とリン(mRNA由来)のモル比(N:P)でmRNAを含有する10mMクエン酸緩衝剤(pH4)4容量へと速やかに注入した。特に言及のない限り、LNPPOEGMAL5-50をN:P 8:1で調製し、一方、LNPPEG-DMGを6:1で調製した。生成する溶液をPBSに対して24時間透析し、4℃で保存した。
【0077】
緩衝剤組成物。以下の緩衝剤を、mRNAをロードしたLNPPOEGMAL(n)及びLNPPEG-DMGの透析に使用した:A)Pfizer:10mMTris緩衝剤、300mMスクロース、pH7.4。B)Moderna:Tris(0.5mg/mL)、Tris-HCl(2.5mg/mL)、氷酢酸(0.042mg/mL)、酢酸ナトリウム三水和物(0.2mg/mL)、スクロース(87mg/mL)。
動的光散乱(DLS)研究。全てのLNPの流体力学的半径(Rh)及び多分散性を、温度がプログラムされたDynaProマイクロサンプラー(Wyatt Technology、Santa Barbara、CA)を使用した動的光散乱(DLS)によって決定した。試料をPBS中で調製し、透明平底の黒色96ウェルプレートへと濾過した(0.2μmセルロースフィルター)。少なくとも15回の取得を25℃で行い、収集データは、DYNAMICS v7ソフトウェア(Wyatt technology)を使用して自己相関関数の正則化フィットによって解析した。
【0078】
Ribogreenアッセイ。Ribogreenアッセイを、非透析試料に対して実施した。製造業者のプロトコルに従って、Ribogreenアッセイキットを使用して、Tris-EDTA緩衝剤中の1%TritonX-100の有り又は無しで、LNPをmRNAについて評価した。LNP試料を1%TritonX-100とともに室温で5分間インキュベートして、LNPの破壊を行った。カプセル化効率を、式:カプセル化%=(RFUf-RFUi)/RFUf*100(式中、RFUi及びRFUfは、それぞれTritonx-100をLNPに添加する前及び添加した後の相対蛍光単位である)を使用することによって算出した。
【0079】
細胞培養。HEK293T細胞はDuke University Core Culture施設から入手した。細胞を、10%ウシ胎児血清(熱不活化、Gibco)及び2mM L-グルタミン(Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。細胞は5%CO2インキュベーター内で37℃で維持した。
ルシフェラーゼ発現アッセイ。アッセイを、製造業者の推奨プロトコルに従ってPierce(商標)Cypridina Luciferase Glow Assay Kit(Thermo Scientific)を使用して実施した。簡潔に述べると、HEK293T(1×104個の細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、5%CO2中37℃で一晩インキュベートした。培地を除去し、細胞をOpti-MEM培地100μL/ウェルに調製したmRNA 300ng又は500ngで処理し、5%CO2中37℃でインキュベートした。Lipofectamine 2000を製造業者のプロトコルに従って使用した。ルシフェラーゼの発現を、トランスフェクト細胞からの培地5μLを、キット付属のアッセイ緩衝剤中の1×Vargulin 25μLに添加することによって、所定の時点でモニタリングした。室温で10分間インキュベートした後、BioTekのSynergy H1ハイブリッドマルチモードリーダーを使用して、発光を463nmで定量化した。
【0080】
細胞傷害性アッセイ。HEK293T細胞を96ウェルプレートに3000個の細胞/ウェルで処理の16時間前に播種した。細胞を一連の濃度の種々のLNPで処理した。処理の48時間後、膜不全である細胞からの放出乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を、製造業者の取扱説明書に従ってLDH-gloアッセイキットを用いて評価した。
RNase保護アッセイ。CLuc mRNA 300ngを含有するLNPを、最終濃度0.1%のTriton-Xの添加前又は添加後に、333pg RNase/μg mRNAとともに37℃で2時間インキュベートした。最終的に、50mM TrisHCl/CaCl2緩衝剤中の1×プロテイナーゼKとともに55℃で20分間試料をインキュベートすることによってRNaseをクエンチした。試料を、前記のように1%アガロースゲル上で流した。
【0081】
(実施例2)
アジドPOEGMA(POEGMA5-50)の合成及び特性評価
POEGMA化脂質(POEGMAL)を、2つの構成要素:POEGMAポリマー及び脂肪酸テールのクリックコンジュゲーションを使用して合成した。DBCO修飾脂肪酸テール(16:0 DBCO PE)は商業的に入手したが、一方、アジド修飾POEGMAポリマーは自社で合成した(スキーム1)。簡潔に述べると、銅(II)-tris(2-ピリジルメチル)アミン(TPMA)触媒錯体を、不活性雰囲気下で氷浴中でトリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート及びアジドエチル-2-ブロモイソブチレートとともにインキュベートした。アスコルビン酸のフレッシュ溶液をフラスコに連続的に添加することによって反応を開始した。完了時に、混合物を空気でパージすることによって反応をクエンチした。アジドPOEGMAを水に対して透析することによって精製し、凍結乾燥された粘稠なゲルとして保存した。
【0082】
スキーム1:アジドPOEGMAの合成
【化1】
【0083】
アジドPOEGMAの5種のバリアントを5~50kDaの範囲のMWをもって合成した。アジドPOEGMAの数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及び多分散性(D)を、ゲル浸透クロマトグラフィー-多角度光散乱(GPC-MALS)によって評価した。GPC-MALSの結果により、アジドPOEGMAのサイズ及び狭い多分散性が確認された(表2及び図1A)。重合度(n)を、POEGMAのMwから重合開始剤のMwを差し引き、生成する質量をモノマー単位の平均Mwで割ることによって算出した(表2)。アジドPOEGMAの純度もまた、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で評価した。230nmにての全てのPOEGMAのHPLCトレースにより、95%超の純度が確認された(図1B)。この構造を、種々のプロトンの積分比を算出することによって1HNMRを用いてさらに確認したが、これは予想された構造とぴったりと合致した。最終的に、アジドの組込みを、アジド-POEGMAを過剰のDBCO-PEG4と反応させることによって確認した。DBCOは308nmに特徴的な吸光度を有し、この吸光度はDBCOの濃度に比例する。DBCOはPOEGMAポリマーのアジド基とほぼ100%の効率で反応するので、未反応DBCOの濃度を算出することで、反応混合物中のアジドの濃度を決定することが可能になる。44時間目のDBCO-PEG4とのアジドPOEGMA5-50の反応が示したところは、全てのPOEGMAポリマーにおける90%超のアジド含有量である。
【0084】
【表2】
【0085】
(実施例3)
POEGMA-脂質(POEGMAL5-50)の合成及び特性評価
アジドPOEGMA5-50を、ひずみ促進型アジド-アルキン環化付加(SPAAC)によってクロロホルム中で5モル過剰の16DBCO PEとクリックコンジュゲートさせて、POEGMA-脂質コンジュゲート(POEGMAL5-50)を得た。反応の24時間後、過剰のヘキサンを用いて5kDaのPOEGMALについてはメタノールから又は10~50kDaのPOEGMALについてはクロロホルムから再沈殿させることによって生成物を精製した(図2A)。ペレットをメタノールに最終的に再溶解させ、逆相HPLCに供した。典型的な薄層クロマトグラフィープレートを図2Bに示す。POEGMAL10はPOEGMA10よりもゆっくりと移動した。また、アジドPOEGMAの典型的な物理的外観は透明であるが、一方、POEGMALの物理的外観は不透明である(図2C)。HPLCトレースにおいて未反応のPOEGMA5-50ピークが非存在であったことにより、POEGMA5-50及び16 DBCO PEはそれぞれの反応で完全に消費されたことが示される。予想どおり、疎水性脂質残基の添加後、POEGMALの保持時間はPOEGMAと比較して大きくなる。
【0086】
コンジュゲーションをさらに確認するために、1HNMR分析を行った。最終的なPOEGMA-脂質コンジュゲートのNMRスペクトログラムは、POEGMA5-50と16DBCO PEの両方のトレースを保有し、このことは、コンジュゲーションの成功を示す。POEGMAL5-50ではδおよそ7.3~7.8ppmに芳香族プロトンが存在することで、DBCO修飾脂肪酸テールのPOEGMA骨格への統合が成功したことが示唆されている。POEGMA5-50及び16DBCO PE脂質には、デコンボリューションするのが困難である重複領域がいくつかあり、16DBCO PEの芳香族領域(化学シフトδおよそ7.3~7.8ppm)のみがこの重複領域から遠く離れている。したがって、δおよそ0.5~2.5ppmの間と7.3~7.8の間との積分比(I0.5-2.5/I7.3-7.8)を使用してプロトン比を算出した(図2D)。理論比と実験比の間の差異は、(i)プロトン数がδおよそ7.3~7.8ppmよりもδおよそ0.5~2.5ppmで大きく、このことによって感度が抑制される可能性があるためである;及び/又は(ii)δおよそ7.3~7.8ppm領域の残留溶媒ピークが算出を妨げる可能性があるためであると推定される。それにもかかわらず、まとめると、これら全てのデータによれば、POEGMA化脂質の合成及び精製の成功が強く示唆されている。
【0087】
(実施例4)
脂質ナノ粒子(LNP)の製剤及び特性評価
LNPを、括弧内に示されたmol%をもって異なる4種の共脂質を用いてエタノール注入法を使用して製剤化した:(i)イオン化可能な脂質(SM102)、これは、mRNAをカプセル化する一助となる、安定性をもたらす、及びエンドソーム脱出の成功に向けて粒子の一助となる(50mol%);(ii)DSPC(10mol%);(iii)コレステロール(38.5mol%);並びに(iv)市販のPEG-DMG又は自社合成POEGMA化脂質のいずれかであるステルス脂質(1.5mol%)。この脂質比は、PEG化脂質向けに特別に仕立てられており、POEGMA化脂質を含むLNPを製剤化するための良好な出発点をもたらす。PEG-DMGを含むLNP製剤はベンチマークとして機能し、こういった脂質組成物はModernaのmRNA COVID19ワクチンでも使用された。留意されたいこととは、10~50kDaのPOEGMALが、LNPのmRNAカプセル化効率に対するMW及び脂質比の役割に関する最初の研究に使用され、研究の後半部分ではPOEGMAL5が組み込まれたことである。少容量のエタノールに可溶化させた脂質を、ルシフェラーゼmRNAを含有するクエン酸緩衝剤(pH4)に迅速に注入して、LNPを得た。次いで、LNPを4℃でPBSと緩衝剤交換した。mRNAを全く含まない一連のLNPも合成した。動的光散乱(DLS)を使用して、ナノ粒子の形成を特徴付けた。図3A及び図3Bにまとめられているように、ステルス脂質を使用した場合に安定なLNPが得られた。PEG化脂質又はPOEGMA化脂質を含まないLNPはより混濁しているように見え、高い多分散性を有し、Rh>600nmを提示した。対照的に、他の全てのLNPは半透明であり、狭い多分散性をもって100nm未満Rhを有した(図3A図3B、及び図3C)。mRNAのカプセル化は、PEG-DMG、POEGMAL10、及びPOEGMAL20についてはナノ粒子のサイズを有意に変化させることはなかった。POEGMAL40及びPOEGMAL50を含むLNPのRhは、mRNAカプセル化後、それぞれ1.3倍及び1.9倍拡大した(図3D図3E、及び図3F)。
【0088】
(実施例5)
mRNAカプセル化効率の定量化
LNPのmRNAカプセル化効率を、アガロース電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を使用して第1に定性的に評価した。遊離mRNAのみがアガロースゲルをとおって泳動するので - LNPmRNAは泳動しないが - 製剤中のLNP mRNAから遊離mRNAを分離することができる。mRNAの総量は - カプセル化された及び遊離の - カプセル化されたmRNAを放出するTriton-X等の界面活性剤でLNPを破裂させることにより、アガロースゲル上で推定した。均等の濃度にての遊離mRNAは、実験の対照としての役割を果たす。電気泳動実験により、調製及び保存過程でのmRNAのあらゆる分解が同様に示される。図4Aからわかるように、全てのLNPは相当量のmRNAをカプセル化した。LNPPOEGMAL40及びLNPPEG-DMGは、ハンドリング及び保管過程でのmRNAの分解を有意に減少させた。他方、LNPPOEGMAL50の場合ではmRNAが分解された。LNPPOEGMAL10~20では、遊離mRNAのみが分解されたが、カプセル化mRNAは分解されなかった。このことが示すところは、LNPPOEGMAL40の場合の非カプセル化mRNAは、溶液中で完全に遊離であるわけではなく、むしろLNPと弱く会合していることであり、普通ならLNPPOEGMAL10-20の場合と同様に分解されてしまったはずである。次に、POEGMA化LNP内のmRNAのカプセル化パーセントをRibogreenアッセイで定量化し、PEG化LNPのカプセル化パーセントとともにベンチマーキングした。ハンドリング及び保管の影響を無効にするために、製剤を透析せずに調製直後にカプセル化を評価した。DLSによって、LNPのサイズが透析前と透析後の両方で同様のままであることが確認された。Ribogreenは、遊離のmRNAにのみ結合し、LNPと会合したmRNA又は分解されたヌクレオチドには結合しない有機色素である。非結合状態では、Ribogreenは蛍光をほとんど又は全く保有しないが、遊離mRNAに結合する場合に強烈な蛍光を呈する(図4B)。LNPと混合されたRibogreenの相対蛍光単位(RFU)は、LNP溶液中の遊離mRNAの量に比例するが、一方、1%Triton-Xで破裂させたLNP中のRibogreenのRFUは、総mRNA(遊離とカプセル化両方の合計)に比例する。したがって、Ribogreenの相対蛍光吸光度を使用して、カプセル化%を算出することができる。図4Cから証明されるように、LNPPOEGMAL50のカプセル化効率は最低およそ12%であった。対照的に、LNPのカプセル化効率は、LNPPOEGMAL50と比較して、LNPPOEGMAL40についておよそ4.5倍、LNPPOEGMAL20について4.1倍、及びLNPPOEGMAL10について3.8倍向上した。POEGMAL40を含有するLNPは、PEG-DMGよりわずか1.5分倍だけ低いという56%の相当量のカプセル化を示した。このようなより低いカプセル化効率は、PEG化LNP向けに仕立てられるLNPを調製するのに使用される脂質比として、予想することができる。
【0089】
(実施例6)
mRNAカプセル化を最大化するためのLNPの解析及び特性評価
改善されたカプセル化効率(EE)を得るために、一時一事法(OFAT)研究を設計して、ナノ粒子を安定して形成することができ、一方、EEを最大化することができる、POEGMALとSM-102のモル分率を解析した。POEGMAL10-50とSM-102とのmol%を変化させ、EMSAによる透析の前にmRNAカプセル化を測定した。図5Aからわかるように、POEGMAL10及びPOEGMAL20は、≧75%という相当量のローディングを提示したが、これを、LNP候補物質を下方選択する閾値として設定した。SM-102のmol%を変更することはEEに影響を及ぼした。EEとナノ粒子サイズ分布との間の関係を図5B図5C、及び図5Dに図示する。全てのPOEGMALは、それらのEEにかかわらず、全てのmol%で安定な単分散ナノ粒子を形成した。選択された候補物質(図5Aで丸で囲んだ)をPBSに対して透析し、DLS及びRibogreenアッセイで特徴付けた。選択された全ての候補物質は安定なナノ粒子を形成したが、0.5mol%にてのPOEGMAL10のLNPはおよそ2.5倍拡大のサイズを示し、この製剤は安定且つ再現性のあるEE>85%を示した(図5E)。この事実に動機付けられて、OFAT研究を、mol%を変動させることによってPOEGMA5を用いて実施して、POEMALのMWをさらに低下させることでEEが向上するかどうかを評価した。全ての製剤が、100nm未満の半径及び<30%の多分散性という状態で安定なナノ粒子を呈した。EEは、透析前で全てのmol%で>90%であったが、透析後は0.5mol%が最も高いEEを呈することがわかった(図6A及び図6B)。まとめると、0.5mol%にてのPOEGMAL5とPOEGMAL10は両方とも、透析後でも85%超のmRNAを保持することができる安定なLNPを形成した。そこで、これら2つの製剤をcryo-TEMにより画像化することにした。図7からわかるように、両方とも球状のナノ粒子を形成した。
【0090】
(実施例7)
治療上重要なmRNAのカプセル化
次に、治療上重要なSARS COV-2スパイクタンパク質mRNAをカプセル化するためにLNPシステムを精査した。完全長のSARS-CoV-2スパイク糖タンパク質をコードするmRNAは、WHO国際「医薬品一般名称プログラム」からアクセスした。このmRNAはPfizerのCOVID19ワクチンに使用されていると推定される。T7 RNAポリメラーゼによるin vitro転写のパラメータを使用して、mRNA収量を増加させ、副産物(長い転写物及びdsRNA)の形成を最小限にした。使用された製剤はルシフェラーゼmRNA用に仕立てられている - 0.5mol%POEGMAL5&10、N:P 8:1、20%エタノール、PBSに対して透析されている。透析後のEEは、LNPPOEGMAL5がおよそ30%のみのEEを呈するという状態で、損なわれた。このことは、以下の3つの理由で完全に予想外というわけではない:(i)SARS COV-2 mRNAのサイズはルシフェラーゼmRNAよりも2倍大きい;(ii)透析緩衝剤が最適ではない、及び(iii)調製方法、脂質、及びN:P比が効果的でない可能性がある。これら全ての課題について、LNPPOEGMAL10を用いて精査した(図8)。第1に、透析緩衝剤の役割を評価した(図8A及び図8B)。本製剤はModernaのバイオシミラーであるため、Moderna LNPワクチン向けにぴったりと仕立てられている緩衝剤中では改善されたEE(およそ67%)を示した(図8B)。また、LNPのサイズは未変化のままであった(図8C)。したがって、Moderna緩衝剤をその後の解析には使用した。第2に、EEを、一連のN:P及びエタノール濃度で評価した。N:P 10:1(図8D)及び30%エタノール(図8E)がmRNAのカプセル化に有用であり、透析後でEEを80%超に押し上げることがわかる。第3に、同様のOFAT研究を設計し、0.5mol%がなおもPOEGMAL10に対して最も有効な脂質濃度であることがわかった(図8F)。より高いN:P比では上昇する可能性があり且つLNPの毒性上昇の一因とすることができる表面電位についても評価した。興味深いことに、表面電荷は有意には上昇せず、このことが示すところは、より高いN:Pでは、LNPのmRNA含有量は、向上しながら且つ表面電荷を中和していることである。全ての透析製剤の表面電荷は10mV未満であった。この範囲内のゼータ電位は、ほぼ中性であると考えられる。まとめると、これらのデータが示唆したところは、LNPPOEGMAL10がモデルルシフェラーゼmRNA並びに治療上重要なSARS COV-2 mRNAを高いEE(およそ85%)で首尾よくカプセル化することができることである。
【0091】
(実施例8)
LNPのin vitro性能
最終的に、本LNPシステムがSARS COV-2 mRNAワクチンを送達する代替方法として機能することができるという事実に動機付けられて、以下について評価した:(i)HEK293T細胞における傷害性;(ii)ある一定期間にわたりHEK293T細胞株においてルシフェラーゼmRNAを発現させる有効性;及び(iii)RNaseからmRNAを保護する能力。まとめると、これらの実験は、可能性のあるin vivo有用性を実証するためにmRNAワクチン研究で広く使用されているモデルスクリーニングプラットフォームとして機能する。さらに、LNPの性能を、ModernaバイオシミラーLNPPEG-DMG及び/又はLipofectamine 2000でベンチマーキングした。LNPの傷害性について、LDHアッセイでHEK293T細胞に対して評価した。48時間の連続処理の後でも、全てのLNPは最小限の傷害性を示した(図10)。ルシフェラーゼ発現を評価するために、HEK293T細胞を、N:P比4:1~8:1及びmRNA量300~500ngにての種々のLNPで処理した。図11A図11B図11C図11D図11E、及び図11Fにまとめたが、LNPPOEGMAL5とLNPPOEGMAL10の両方が、96時間にわたってルシフェラーゼの有意な発現を示した。LNPPOEGMAL10はLNPPOEGMAL5よりも良好であることが判明した。 - LNPPOEGMAL10については8:1とLNPPEG-DMGについては6:1 - のN:Pで、両方の製剤がLipofectamine 2000よりも優れていた(図9A及び図9B)。発現の差異は、mRNA300ngでより顕著になり、この場合、LNPPOEGMAL10はlipofectamine 2000よりも300%超のルシフェラーゼ活性を示し、ModernaバイオシミラーLNPPEG-DMGよりも優れていた。ルシフェラーゼ発現をおよそ3日の期間にわたって測定し、台形則を使用する曲線下面積(AUC)の測定を行った。図9C及び図9Dにまとめたように、LNPPOEGMAL10は、全てのN:P比にてLNPPOEGMAL5よりも優れていた。等しく重要な観察とは、より高量のmRNA(500ng)を使用した場合、LNPPOEGMAL10とLNPPEG-DMGの両方が同様のAUCを示したことである。しかし、より低いmRNA量(300ng)では、LNPPOEGMAL10は、同一のN:P 6:1にておよそ2倍より高いAUCをもってModernaバイオシミラーLNPPEG-DMGよりも優れており、N:P 8:1にては、LNPPOEGMAL10はLNPPEG-DMGよりも2.3倍高いAUCを示した。最終的に、mRNAカーゴをRNaseから保護するLNPの有効性を調査した。これは、LNP-mRNAワクチンの前臨床上の及び臨床上の橋渡しの成功を左右する重要なパラメータである。mRNAは、in vivoでの性能の不良な結果をもたらす細胞外RNaseによって容易に消化される可能性がある。自社アッセイ、ここでは、LNP-mRNAワクチン候補物質を高濃度のRNaseとインキュベートした。RNaseの添加前又は後にLNP破壊剤(rupturing agent)を添加した。インキュベーションの時間の後、過剰なRNaseをプロテイナーゼKでクエンチした。図12にまとめてあるが、全ての候補物質LNPは、RNaseからの有意な保護を与えることができる。対照の遊離mRNAと、RNaseを添加する前にTriton-Xが添加される群は、mRNAの完全な分解を示す。まとめると、これらのデータが示唆するところは、POEGMA化LNPは、mRNAワクチン送達プラットフォームとして機能することができ且つ臨床上の橋渡しを成功させる高い可能性を有している。
前述の詳細な説明及び添付の実施例は、単に例示的ものであり、本発明の範囲を限定するものと取られるべきものではないことが理解される。
【0092】
開示された実施形態に対する様々な変更及び改変は、当業者であれば明らかであろう。本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤、又は使用方法に関するものを非限定的に含めて、かかる変更及び改変は、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
完全を期すため、本発明の種々の態様を以下の番号付き節において記載する:
【0093】
節1.イオン化可能な脂質;リン脂質;ステロール;ポリ[オリゴ(エチレングリコール)エーテルメタクリレート](POEGMA)が100kDa未満の数平均分子量を有する、10mol%未満にてのPOEGMA-脂質コンジュゲート;及び治療薬を含む、脂質ナノ粒子。
節2.POEGMAは、ポリ(メチルメタクリレート)骨格及び骨格に共有結合で付着した複数の側鎖を有し、各側鎖は、タンデムに反復したエチレングリコール(EG)の2~9つのモノマーを含む、節1の脂質ナノ粒子。
節3.脂質ナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む脂質ナノ粒子と比べて減少した免疫応答を有する、節1又は2の脂質ナノ粒子。
節4.脂質ナノ粒子は、対象における既存の抗PEG抗体と反応性ではない、節1~3のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節5.POEGMA-脂質コンジュゲートの脂質はC2-40炭化水素鎖を含む、節1~4のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
【0094】
節6.POEGMA-脂質コンジュゲートの脂質は、トリアゾール、アミド、エステル、エーテル、又は炭化水素リンカーを介してPOEGMAにコンジュゲートされている、節1~5のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節7.POEGMAは、約1kDa~約50kDaの数平均分子量を有する、節1~6のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節8.脂質ナノ粒子は、POEGMA-脂質コンジュゲートを約0.1mol%~約10mol%で含む、節1~7のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節9.イオン化可能な脂質は、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102)、3,6-ビス({4-[ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ]ブチル})ピペラジン-2,5-ジオン(cKK-E12)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLm-DAP)、1,2(l,2)-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、ジオクタデシルアミドログリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、スペルミンコレステリルカルバメート(GL-67)、ビス-グアニジニウム-スペルミジン-コレステロール(BGTC)、3b-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-t-ブチル-N’-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン(ジC14-アミジン)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMR1E)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、アミノプロピル-ジメチル-ビス(ドデシルオキシ)-プロパンアミニウムブロミド(GAP-DLRIE)、1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315))、又はそれらの組合せを含む、節1~8のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
【0095】
節10.イオン化可能な脂質は、(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102)を含む、節1~9のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
【0096】
節11.脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質を約20mol%~約65mol%で含む、節1~10のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
【0097】
節12.リン脂質は、ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、スフィンゴミエリン(SM)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(DMPC)、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、又はそれらの組合せを含む、節1~11のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
【0098】
節13.脂質ナノ粒子は、リン脂質を約5mol%~約25mol%で含む、節1~12のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節14.ステロールは、コレステロール、カンペステロール、アントロステロール、デスモステロール、ニカステロール、スチグマステロール、シトステロール、オキシステロール、C4-10ステロール、エルゴステロール、コレスタ-4-エン-3-オン、又はそれらの組合せを含む、節1~13のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
【0099】
節15.脂質ナノ粒子は、ステロールを約10mol%~約50mol%で含む、節1~14のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節16.治療薬は、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、mRNA、tRNA、rRNA、CircRNA、DNA、又はそれらの組合せを含む核酸である、節1~15のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節17.核酸は、siRNA、mRNA、又はそれらの組合せを含む、節16の脂質ナノ粒子。
節18.(ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル)アミノ)オクタノエート)(SM-102);DSPC;コレステロール;ポリ[オリゴ(エチレングリコール)エーテルメタクリレート](POEGMA)が約1kDa~約50kDaの数平均分子量を有する、約0.25mol%~約3mol%にてのPOEGMA-脂質コンジュゲート;及びmRNAを含む、脂質ナノ粒子。
節19.脂質ナノ粒子は、約4:1~約16:1のN:P比を有する、節1~18のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
【0100】
節20.脂質ナノ粒子は約30nm~約300nmの直径を有する、節1~19のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節21.脂質ナノ粒子は、蛍光により測定して75%以上の治療薬カプセル化効率を有する、節1~20のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節22.ターゲティングリガンドをさらに含む、節1~21のいずれか1節の脂質ナノ粒子。
節23.節1~22のいずれか1節に従う1つ又は複数の脂質ナノ粒子;及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
節24.それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法であって、薬学的に許容される賦形剤と組合せでよい、節1~22のいずれか1節に従う1つ又は複数の脂質ナノ粒子の有効量を対象に投与するステップを含む、方法。
【0101】
節25.1つ又は複数の脂質ナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む脂質ナノ粒子と比べて減少した免疫応答を有する;対象における既存の抗PEG抗体と反応性ではない、又はそれらの組合せである、節24の方法。
節26.疾患又は障害は、感染症、ハンチントン病、筋ジストロフィー、自己免疫疾患、又はがんである、節24又は25の方法。
節27.細胞に治療薬を送達する方法であって、細胞を節1~22のいずれか1節に従う1つ又は複数の脂質ナノ粒子と接触させるステップを含み、それによって治療薬は細胞に送達される、方法。
【0102】
配列
配列番号1 ウミホタルルシフェラーゼmRNA:
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【0103】
配列番号2 SARS-COV2スパイクタンパク質mRNA:
AGGAAUAAACUAGUAUUCUUCUGGUCCCCACAGACUCAGAGAGAACCCGCCACCAUGUUCGUGUUCCUGGUGCUGCUGCCUCUGGUGUCCAGCCAGUGUGUGAACCUGACCACCAGAACACAGCUGCCUCCAGCCUACACCAACAGCUUUACCAGAGGCGUGUACUACCCCGACAAGGUGUUCAGAUCCAGCGUGCUGCACUCUACCCAGGACCUGUUCCUGCCUUUCUUCAGCAACGUGACCUGGUUCCACGCCAUCCACGUGUCCGGCACCAAUGGCACCAAGAGAUUCGACAACCCCGUGCUGCCCUUCAACGACGGGGUGUACUUUGCCAGCACCGAGAAGUCCAACAUCAUCAGAGGCUGGAUCUUCGGCACCACACUGGACAGCAAGACCCAGAGCCUGCUGAUCGUGAACAACGCCACCAACGUGGUCAUCAAAGUGUGCGAGUUCCAGUUCUGCAACGACCCCUUCCUGGGCGUCUACUACCACAAGAACAACAAGAGCUGGAUGGAAAGCGAGUUCCGGGUGUACAGCAGCGCCAACAACUGCACCUUCGAGUACGUGUCCCAGCCUUUCCUGAUGGACCUGGAAGGCAAGCAGGGCAACUUCAAGAACCUGCGCGAGUUCGUGUUUAAGAACAUCGACGGCUACUUCAAGAUCUACAGCAAGCACACCCCUAUCAACCUCGUGCGGGAUCUGCCUCAGGGCUUCUCUGCUCUGGAACCCCUGGUGGAUCUGCCCAUCGGCAUCAACAUCACCCGGUUUCAGACACUGCUGGCCCUGCACAGAAGCUACCUGACACCUGGCGAUAGCAGCAGCGGAUGGACAGCUGGUGCCGCCGCUUACUAUGUGGGCUACCUGCAGCCUAGAACCUUCCUGCUGAAGUACAACGAGAACGGCACCAUCACCGACGCCGUGGAUUGUGCUCUGGAUCCUCUGAGCGAGACAAAGUGCACCCUGAAGUCCUUCACCGUGGAAAAGGGCAUCUACCAGACCAGCAACUUCCGGGUGCAGCCCACCGAAUCCAUCGUGCGGUUCCCCAAUAUCACCAAUCUGUGCCCCUUCGGCGAGGUGUUCAAUGCCACCAGAUUCGCCUCUGUGUACGCCUGGAACCGGAAGCGGAUCAGCAAUUGCGUGGCCGACUACUCCGUGCUGUACAACUCCGCCAGCUUCAGCACCUUCAAGUGCUACGGCGUGUCCCCUACCAAGCUGAACGACCUGUGCUUCACAAACGUGUACGCCGACAGCUUCGUGAUCCGGGGAGAUGAAGUGCGGCAGAUUGCCCCUGGACAGACAGGCAAGAUCGCCGACUACAACUACAAGCUGCCCGACGACUUCACCGGCUGUGUGAUUGCCUGGAACAGCAACAACCUGGACUCCAAAGUCGGCGGCAACUACAAUUACCUGUACCGGCUGUUCCGGAAGUCCAAUCUGAAGCCCUUCGAGCGGGACAUCUCCACCGAGAUCUAUCAGGCCGGCAGCACCCCUUGUAACGGCGUGGAAGGCUUCAACUGCUACUUCCCACUGCAGUCCUACGGCUUUCAGCCCACAAAUGGCGUGGGCUAUCAGCCCUACAGAGUGGUGGUGCUGAGCUUCGAACUGCUGCAUGCCCCUGCCACAGUGUGCGGCCCUAAGAAAAGCACCAAUCUCGUGAAGAACAAAUGCGUGAACUUCAACUUCAACGGCCUGACCGGCACCGGCGUGCUGACAGAGAGCAACAAGAAGUUCCUGCCAUUCCAGCAGUUUGGCCGGGAUAUCGCCGAUACCACAGACGCCGUUAGAGAUCCCCAGACACUGGAAAUCCUGGACAUCACCCCUUGCAGCUUCGGCGGAGUGUCUGUGAUCACCCCUGGCACCAACACCAGCAAUCAGGUGGCAGUGCUGUACCAGGACGUGAACUGUACCGAAGUGCCCGUGGCCAUUCACGCCGAUCAGCUGACACCUACAUGGCGGGUGUACUCCACCGGCAGCAAUGUGUUUCAGACCAGAGCCGGCUGUCUGAUCGGAGCCGAGCACGUGAACAAUAGCUACGAGUGCGACAUCCCCAUCGGCGCUGGAAUCUGCGCCAGCUACCAGACACAGACAAACAGCCCUCGGAGAGCCAGAAGCGUGGCCAGCCAGAGCAUCAUUGCCUACACAAUGUCUCUGGGCGCCGAGAACAGCGUGGCCUACUCCAACAACUCUAUCGCUAUCCCCACCAACUUCACCAUCAGCGUGACCACAGAGAUCCUGCCUGUGUCCAUGACCAAGACCAGCGUGGACUGCACCAUGUACAUCUGCGGCGAUUCCACCGAGUGCUCCAACCUGCUGCUGCAGUACGGCAGCUUCUGCACCCAGCUGAAUAGAGCCCUGACAGGGAUCGCCGUGGAACAGGACAAGAACACCCAAGAGGUGUUCGCCCAAGUGAAGCAGAUCUACAAGACCCCUCCUAUCAAGGACUUCGGCGGCUUCAAUUUCAGCCAGAUUCUGCCCGAUCCUAGCAAGCCCAGCAAGCGGAGCUUCAUCGAGGACCUGCUGUUCAACAAAGUGACACUGGCCGACGCCGGCUUCAUCAAGCAGUAUGGCGAUUGUCUGGGCGACAUUGCCGCCAGGGAUCUGAUUUGCGCCCAGAAGUUUAACGGACUGACAGUGCUGCCUCCUCUGCUGACCGAUGAGAUGAUCGCCCAGUACACAUCUGCCCUGCUGGCCGGCACAAUCACAAGCGGCUGGACAUUUGGAGCAGGCGCCGCUCUGCAGAUCCCCUUUGCUAUGCAGAUGGCCUACCGGUUCAACGGCAUCGGAGUGACCCAGAAUGUGCUGUACGAGAACCAGAAGCUGAUCGCCAACCAGUUCAACAGCGCCAUCGGCAAGAUCCAGGACAGCCUGAGCAGCACAGCAAGCGCCCUGGGAAAGCUGCAGGACGUGGUCAACCAGAAUGCCCAGGCACUGAACACCCUGGUCAAGCAGCUGUCCUCCAACUUCGGCGCCAUCAGCUCUGUGCUGAACGAUAUCCUGAGCAGACUGGACCCUCCUGAGGCCGAGGUGCAGAUCGACAGACUGAUCACAGGCAGACUGCAGAGCCUCCAGACAUACGUGACCCAGCAGCUGAUCAGAGCCGCCGAGAUUAGAGCCUCUGCCAAUCUGGCCGCCACCAAGAUGUCUGAGUGUGUGCUGGGCCAGAGCAAGAGAGUGGACUUUUGCGGCAAGGGCUACCACCUGAUGAGCUUCCCUCAGUCUGCCCCUCACGGCGUGGUGUUUCUGCACGUGACAUAUGUGCCCGCUCAAGAGAAGAAUUUCACCACCGCUCCAGCCAUCUGCCACGACGGCAAAGCCCACUUUCCUAGAGAAGGCGUGUUCGUGUCCAACGGCACCCAUUGGUUCGUGACACAGCGGAACUUCUACGAGCCCCAGAUCAUCACCACCGACAACACCUUCGUGUCUGGCAACUGCGACGUCGUGAUCGGCAUUGUGAACAAUACCGUGUACGACCCUCUGCAGCCCGAGCUGGACAGCUUCAAAGAGGAACUGGACAAGUACUUUAAGAACCACACAAGCCCCGACGUGGACCUGGGCGAUAUCAGCGGAAUCAAUGCCAGCGUCGUGAACAUCCAGAAAGAGAUCGACCGGCUGAACGAGGUGGCCAAGAAUCUGAACGAGAGCCUGAUCGACCUGCAAGAACUGGGGAAGUACGAGCAGUACAUCAAGUGGCCCUGGUACAUCUGGCUGGGCUUUAUCGCCGGACUGAUUGCCAUCGUGAUGGUCACAAUCAUGCUGUGUUGCAUGACCAGCUGCUGUAGCUGCCUGAAGGGCUGUUGUAGCUGUGGCAGCUGCUGCAAGUUCGACGAGGACGAUUCUGAGCCCGUGCUGAAGGGCGUGAAACUGCACUACACAUGAUGACUCGAGCUGGUACUGCAUGCACGCAAUGCUAGCUGCCCCUUUCCCGUCCUGGGUACCCCGAGUCUCCCCCGACCUCGGGUCCCAGGUAUGCUCCCACCUCCACCUGCCCCACUCACCACCUCUGCUAGUUCCAGACACCUCCCAAGCACGCAGCAAUGCAGCUCAAAACGCUUAGCCUAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGUGAUUAACCUUUAGCAAUAAACGAAAGUUUAACUAAGCUAUACUAACCCCAGGGUUGGUCAAUUUCGUGCCAGCCACACCCUGGAGCUAGCAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGCAUAUGACUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
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図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
【配列表】
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【国際調査報告】