IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファイザー・インクの特許一覧

特表2024-541933抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法
<>
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図1-1
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図1-2
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図1-3
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図2
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図3
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図4
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図5
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図6
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図7
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図8
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図9
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図10
  • 特表-抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241106BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241106BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20241106BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P21/00
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524991
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 IB2022060469
(87)【国際公開番号】W WO2023079430
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/274,721
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/368,526
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ビナ マリア アルバカーキ
(72)【発明者】
【氏名】ジダン ウ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、GDF15に特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片、ならびにこれらの抗体のための方法および使用を提供する。
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原発性ミトコンドリア筋症(PMM)を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、GDF-15に結合する単離された抗体を投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記原発性ミトコンドリア筋症が、リー症候群、カーンズ・セイヤー症候群、アルパーズ・フッテンロッヒャー症候群、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様エピソードを伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS)ならびに運動失調ニューロパチー症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗GDF15抗体の前記投与が、投与前と比較して、PMMの1つ以上の徴候または症状における改善を生じる、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
PMMの前記1つ以上の徴候または症状が、肉体的疲労、筋力低下および/または運動耐容能を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
PMMの1つ以上の徴候または症状における前記改善が、増加した体重増加、増加した除脂肪筋肉量、増加した骨格筋量、回復した筋強度、および/または運動能力における改善を含む、請求項3から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、悪液質、がんおよび/または心不全を有さない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、前記単離された抗体またはその抗原結合性断片の投与前に、上昇したGDF15のレベルおよび/または活性を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHCDR-3を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のVLアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、皮下投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、静脈内投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、または4カ月毎に1回、5カ月毎に1回、6カ月毎に1回、7カ月毎に1回、8カ月毎に1回、9カ月毎に1回、10カ月毎に1回、11カ月毎に1回または12カ月毎に1回投与される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、約0.1mgと約1000mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、約1mgと約500mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、約0.1mgと約500mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、約0.1mgと約500mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるアミノ酸配列、およびATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるアミノ酸配列、を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
原発性ミトコンドリア筋症(PMM)を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、GDF-15に結合する単離された抗体を投与するステップを含み、前記対象が、投与前に、上昇したGDF15のレベルおよび/または活性を有し、前記抗GDF15抗体の前記投与が、投与前と比較して、前記対象において肉体的疲労、筋力低下および/または運動耐容能における改善を生じ、前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHCDR-3を含む、方法。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のVLアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、抗GDF15抗体を使用してミトコンドリア筋症を予防、寛解および/または処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
増殖分化因子15(GDF15)は、マクロファージ阻害性サイトカイン1(MIC-1)、前立腺由来因子(PDF)、胎盤骨形成タンパク質(PLAB)、NSAID活性化遺伝子1(NAG-1)および胎盤トランスフォーミング増殖因子β(PTGFB)としても公知であり、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)スーパーファミリーのメンバーである25kDaのジスルフィド連結されたホモダイマーを形成する12kDaの分泌型タンパク質である。GDF15は、細胞ストレスおよび心不全の確立されたバイオマーカーである(Anandら、2010)。GDF15は、後脳だけで発現される受容体複合体を介して作用し、それを介して、嫌悪として把握されるニューロン経路を活性化し、食物摂取を抑制する(Lockhartら、2020)。低減された食物摂取は、体重に対するGDF15の効果のほとんどを媒介することが示されている(Emmersonら、2017)(Maciaら、2012)(Mullicanら、2017)。最近、GDF15投与は、マウスにおいて条件付け味覚回避を誘発することが示され、GDF15発現は、栄養的ストレスに応答した統合的ストレス応答(ISR)によって調節された(Bornerら、2020;Patelら、2019a)。
【0003】
WO2020/039321は、抗GDF15抗体およびその使用を開示しており、その全体が本明細書で参照によって組み込まれる。これらの抗GDF15抗体は、がんおよび心不全が含まれるいくつかの疾患に関連する悪液質の処置において有用であることが示されている。
【0004】
原発性ミトコンドリア筋症(PMM)は、核DNA(nDNA)および/またはミトコンドリアDNA(mtDNA)内で見出される遺伝子における病原性変異によって引き起こされる一群の遺伝性障害である。これらの遺伝子は、ミトコンドリアタンパク質、またはミトコンドリア機能に関与するタンパク質をコードする(Gormanら、2015)。PMMは、排他的にではないが優勢に骨格筋に影響を与え、最も一般的な症状は、承認された治療が存在しない、筋力低下、運動耐容能および進行性外眼筋麻痺である(Mancusoら、2016)。GDF15は、前臨床モデルにおいて食欲不振、嫌悪/嘔吐および体重減少を引き起こすことが報告されたサイトカインであり、患者におけるがん悪液質および低い生存に関連する(Breitら、2021;Lernerら、2015)。GDF15の中和は、前臨床がん悪液質モデルにおいて食欲不振、体重減少を和らげ、筋機能および身体能力を改善することが報告された(Lernerら、2015;Breenら、2020)。興味深いことに、上昇した循環GDF15が、PMMを有する患者において報告されたが(Montanoら、Neurol Genet.2020)、GDF15がこれらの患者における筋力低下、疲労および運動耐容能に寄与するかどうかは不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
PMMを患っている患者のための疾患改変処置は存在しない;現在の治療は、特定の症状を改善また解消することを目的としている。PMMのための治療選択肢の満たされていない著しい必要性が存在したままである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、GDF15に結合する抗体およびその抗原結合性断片を使用してミトコンドリア筋症を予防、寛解および/または処置するための方法を提供する。
【0007】
一部の態様では、原発性ミトコンドリア筋症(PMM)を処置する方法が提供される。この方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の、GDF-15に結合する単離された抗体を投与するステップを含む。
【0008】
一部の実施形態では、原発性ミトコンドリア筋症は、リー症候群、カーンズ・セイヤー症候群、アルパーズ・フッテンロッヒャー症候群(Alpers-Huttenlocher syndrome)、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様エピソードを伴うミトコンドリア脳筋症(mitochondrial encephalomyopathy with lactic acidosis and stroke-like
episodes)(MELAS)ならびに運動失調ニューロパチー症候群(ataxia neuropathy
syndrome)からなる群から選択される。一部の実施形態では、抗GDF15抗体の投与は、投与前と比較して、PMMの1つ以上の徴候または症状における改善を生じる。一部の実施形態では、PMMの1つ以上の徴候または症状は、肉体的疲労、筋力低下および/または運動耐容能を含む。一部の実施形態では、PMMの1つ以上の徴候または症状における改善は、増加した体重増加、増加した除脂肪筋肉量、増加した骨格筋量、回復した筋強度、および/または運動能力における改善を含む。一部の実施形態では、対象は、悪液質、がんおよび/または心不全を有さない。一部の実施形態では、対象は、単離された抗体またはその抗原結合性断片の投与前に、上昇したGDF15のレベルおよび/または活性を有する。
【0009】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHCDR-3を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のVLアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0010】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、皮下投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、静脈内投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、または4カ月毎に1回、5カ月毎に1回、6カ月毎に1回、7カ月毎に1回、8カ月毎に1回、9カ月毎に1回、10カ月毎に1回、11カ月毎に1回または12カ月毎に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約0.1mgと約1000mgとの間の用量で、1週間に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約1mgと約500mgとの間の用量で、1週間に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約0.1mgと約500mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約0.1mgと約500mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される。
【0011】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるアミノ酸配列、およびATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるアミノ酸配列、を含む。
【0012】
一部の態様では、原発性ミトコンドリア筋症(PMM)を処置する方法が提供される。この方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の、GDF-15に結合する単離された抗体を投与するステップを含み、対象は、投与前に、上昇したGDF15のレベルおよび/または活性を有し、抗GDF15抗体の投与は、投与前と比較して、対象において肉体的疲労、筋力低下および/または運動耐容能における改善を生じ、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHCDR-3を含む。
【0013】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のVLアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1-1】図1Aは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定した、本発明の抗GDF15抗体についての遷移温度(T1)を示すグラフを示す。T1は、抗体のC2が50%折り畳まれていない温度を示す。
図1-2】図1Bは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定した、本発明の抗GDF15抗体についての遷移温度(T2)を示すグラフを示す。T2は、抗体のFabが50%折り畳まれていない温度を示す。
図1-3】図1Cは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定した、本発明の抗GDF15抗体についての遷移温度(T3)を示すグラフを示す。T3は、抗体のC3が50%折り畳まれていない温度を示す。
図2図2は、Anton Parr機器によって分析した、GDF15_001の粘度を示す。許容できる粘度限界(20cP)には、約140mg/mlにおいて到達する。
図3図3は、本発明のGDF15抗体に対応する配列番号を示す表を提供する。
図4図4Aおよび4Bは、3、6および10月齢のWTおよびPolGマウスにおける血漿GDF15(図4A)およびFGF21(図4B)レベルを示す。
図5図5は、PolGおよびWTマウスによる自発的ホイールランニングの間の運動能力を示すグラフであり、PoIGマウスが、WTと比較して、自発的ホイールランニングの間により低い運動能力を有したことを実証している。
図6図6は、PolGおよびWTマウスのin vivo力測定の間の筋機能を示すグラフであり、PolGマウスが、WTマウスと比較して、in vivo筋力測定の間により低い筋機能を有したことを実証している。
図7図7は、GDF15 mAb2による処置後のPolG 対 WTマウスの体重(グラム)を示し、PolGマウスにおけるGDF15 mAb2処置による体重を実証している。
図8図8Aおよび図8Bは、除脂肪量(図8A)および体脂肪量(図8B)が、処置後22日目および57日目に、筋重量で、PolGマウスにおいてGDF15 mAb2処置によって有意に増加したことを実証している。
図9図9Aおよび図9Bは、筋肉量、特に、腓腹筋(図9A)および前脛骨筋(図9B)が、研究終結時(処置後87日目)に、筋重量で、PolGマウスにおいてGDF15 mAb2処置によって有意に増加したことを実証している。
図10図10は、筋機能が、PolGマウスにおいてGDF15 mAb2処置によって有意に増加したことを実証するグラフである。
図11図11Aおよび図11Bは、GDF15 mAb2処置が、PolGマウスにおいて、トレッドミルランニング持久力(図11A)および自発的ランニング距離(図11B)が含まれる運動能力を改善したことを実証している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
上昇した循環レベルのGDF15が、原発性ミトコンドリア筋症を有する患者において報告されているが(Montanoら、Neurol Genet.2020)、GDF15がこれらの筋症に関連する徴候および症状、例えば、筋力低下、肉体的疲労および運動耐容能に寄与するかどうかは不明である。本発明は、抗GDF15抗体を使用してGDF15活性を遮断することが、PMMの患者と似た特色を示す前臨床マウスモデルにおいて運動能力および肉体的疲労を改善するという、思いがけない観察に関連する。特に、GDF15遮断が、PolGマウス(ミトコンドリアDNAミューテーターマウス)において、有意に、体重増加を改善し、除脂肪筋肉量および骨格筋量を増加させたことが決定された。さらに、GDF15抗体による処置は、トレッドミルランニングおよび自発的ホイールランニング試験を使用して決定した場合、これらのマウスにおいて、筋強度を完全に回復させ、運動能力を改善した。したがって、本明細書で開示されるデータは、GDF15活性の遮断が、原発性ミトコンドリア筋症に関連する徴候および症状を寛解させるという、およびGDF15阻害が、原発性ミトコンドリア筋症のための新たな治療アプローチを提供するという、最初の証拠を提供する。したがって、一部の態様では、本開示は、例えば、GDF15_001(本明細書でポンセグロマブ(ponsegromab)、PF-06946860とも呼ばれる)およびGDF15_0301(本明細書でmAB2とも呼ばれる)であるがこれらに限定されない抗GDF15抗体を使用して、原発性ミトコンドリア筋症を予防、寛解および/または処置するための方法を提供する。
【0016】
本明細書で使用されるセクション見出しは、構成のみを目的としており、記載される主題を限定すると解釈すべきではない。
【0017】
特許出願、特許公開およびGenbankアクセッション番号を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献がその全体が参照によって組み込まれると具体的かつ個々に示されるかのように、本明細書で参照によって組み込まれる。
【0018】
本明細書に記載されるまたは本明細書で言及される技術および手順は、一般に、十分に理解され、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第3版(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y. CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubelら編(2003));シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson、B.D.HamesおよびG.R.Taylor編(1995))、HarlowおよびLane編(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編(1987));Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney)編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993-8)J.Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999));The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995);およびCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、1993);ならびにそれらの最新版に記載される広く利用される方法論などの、当業者による従来の方法論を使用して、一般に使用される。
【0019】
抗体
「抗体」または「Ab」は、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、特異的標的または抗原(Ag)、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどを認識しそれに結合することが可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、所与の抗原(例えば、GDF15)に特異的に結合する能力を保持する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、インタクトな抗体の抗原結合性断片(または部分)が含まれるがこれらに限定されない、任意の型の抗体を包含し得る。
【0020】
用語「抗原」は、Agを認識する抗体を産生するため、または発現ライブラリー(例えば、とりわけ、ファージ、酵母またはリボソームディスプレイライブラリー)をスクリーニングするために、免疫適格性脊椎動物の免疫化のために使用される分子実体を指す。本明細書で、Agは、より広い用語であり、Abによって特異的に認識される標的分子を含むこと、したがって、Abを生じさせるための免疫化プロセスにおいて、またはAbを選択するためのライブラリースクリーニングにおいて使用される分子の断片または模倣物を含むことを一般に意図する。したがって、GDF15に結合する本発明の抗体について、そのモノマーおよびマルチマー、例えば、ダイマー、トリマーなどを含む、哺乳動物種由来の全長GDF15(例えば、ヒト、サル、マウスおよびラットGDF15)、ならびにGDF15の短縮型および他のバリアントが、抗原と呼ばれる。
【0021】
抗体の「抗原結合性断片」は、抗原に(好ましくは、実質的に同じ結合親和性で)特異的に結合する能力を保持する、全長抗体の断片を指す。抗原結合性断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)1つのVHドメインからなるdAb断片(Wardら、1989 Nature 341:544~546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ジスルフィド連結されたFv(dsFv)、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体および細胞内抗体、が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインVLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え方法を使用して、VLおよびVH領域が対になって一価分子(単鎖Fv(scFv)としても公知)を形成している単一のタンパク質鎖としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーによって、接合され得る;例えば、Birdら Science 242:423~426(1988)およびHustonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879~5883を参照のこと。他の形態の単鎖抗体、例えば、ダイアボディ(diabody)もまた包含される。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによって、これらのドメインをもう一方の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を創出する、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holligerら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444~6448;Poljakら、1994、Structure 2:1121~1123を参照のこと)。
【0022】
抗体「可変ドメイン」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の可変領域(VL)または抗体重鎖の可変領域(VH)を指す。当該分野で公知のように、重鎖および軽鎖の可変領域は各々、3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。
【0023】
「相補性決定領域」(CDR)は、Kabat、Chothia、KabatおよびChothiaの両方の集積、AbM、接触、Northおよび/もしくはコンフォメーション定義または当該分野で周知のCDR決定の任意の方法の定義に従って同定され得る。例えば、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版(超可変領域);Chothiaら、1989、Nature 342:877~883(構造的ループ構造)を参照のこと。特定の抗体中のCDRを構成するアミノ酸残基の同一性は、当該分野で周知の方法を使用して決定され得る。CDRのAbM定義は、KabatとChothiaとの間の妥協であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(Accelrys(登録商標))を使用する。CDRの「接触」定義は、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732~745に示される、観察された抗原接触に基づく。CDRの「コンフォメーション」定義は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基に基づく(例えば、Makabeら、2008、J.Biol.Chem.、283:1156~1166を参照のこと)。Northは、異なる好ましいセットのCDR定義を使用して、カノニカルなCDRコンフォメーションを同定している(Northら、2011、J.Mol.Biol.406:228~256)。CDRの「コンフォメーション定義」と本明細書で呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定され得る(Makabeら、2008、J Biol.Chem.283:1156~1166)。なお他のCDR境界定義は、上記アプローチのうちの1つに厳密に従わなくてもよいが、それにもかかわらず、Kabat CDRの少なくとも一部分と重複するが、これらは、特定の残基もしくは残基の群またはさらにはCDR全体であっても抗原結合に顕著には影響しないという予測または実験的知見に照らして、短縮または延長され得る。本明細書で使用する場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当該分野で公知の任意のアプローチによって定義されるCDRを指し得る。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用し得る。1つよりも多くのCDRを含む任意の所与の実施形態について、CDR(または抗体の他の残基)は、Kabat、Chothia、North、拡張型(extended)、AbM、接触および/またはコンフォメーション定義のいずれかに従って定義され得る。
【0024】
「フレームワーク」(FR)残基は、CDR残基以外の抗体可変ドメイン残基である。VHまたはVLドメインフレームワークは、以下の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4でCDRが散在する4つのフレームワークサブ領域FR1、FR2、FR3およびFR4を含む。
【0025】
当該分野で公知のように、抗体の「定常領域」は、単独のまたは組み合わせた、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
【0026】
用語「Fc領域」、「Fcドメイン」および「Fc」は、本明細書で相互交換可能に使用される場合、免疫グロブリン(Ig)分子のパパイン消化によって得られる結晶化可能な断片と相関する、Ig分子の部分を指す。本明細書で使用する場合、これらの用語は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除外する抗体の定常領域に関し、その領域の部分にさらに関する。したがって、Fcは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対してN末端側の可動性ヒンジ、またはそれらの部分を指す。IgAおよびIgMについて、Fcは、J鎖を含み得る。
【0027】
IgGについて、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3(Cガンマ2およびCガンマ3)ならびにCγ1(Cガンマ1)とCγ2(Cガンマ2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226またはP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、この番号付けは、Kabatら、1991に記載されるように、Edelmanら、1969、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63(1):78~85のEUインデックスに従う。典型的には、Fcドメインは、ヒトIgG1定常ドメインのアミノ酸残基約236~約447を含む。例示的なヒト野生型IgG1 Fcドメインアミノ酸配列は、配列番号31に示される。Fcポリペプチドは、単離状態にあるこの領域、または抗体もしくはその抗原結合性部分、またはFc融合タンパク質と関連したこの領域を指し得る。
【0028】
重鎖定常ドメインは、Fc領域を含み、IgG重鎖のCH1ドメインおよびヒンジならびにCH2およびCH3(ならびに、任意選択により、IgAおよびIgEのCH4)ドメインをさらに含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合性断片は、Fcドメインを含む。Fcドメインは、IgA(例えば、IgAまたはIgA)、IgD、IgE、IgMまたはIgG(例えば、IgG、IgG、IgGまたはIgG)に由来し得る。
【0030】
「Fc融合」タンパク質は、1つ以上のポリペプチドがFcポリペプチドに作動可能に連結されたタンパク質である。Fc融合は、免疫グロブリンのFc領域を融合パートナーと組み合わせる。
【0031】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原のエリアまたは領域、例えば、抗体と相互作用する残基を含むエリアまたは領域を指す。エピトープは、線状またはコンフォメーションであり得る。
【0032】
その最も詳細なレベルでは、AgとAbとの間の相互作用のためのエピトープは、Ag-Ab相互作用中に存在する原子接触を定義する空間座標、ならびに結合熱力学へのそれらの相対的寄与についての情報によって、定義され得る。あまり詳細でないレベルでは、エピトープは、AgとAbとの間の原子接触を定義する空間座標によって特徴付けられ得る。さらにあまり詳細でないレベルでは、エピトープは、具体的な基準によって、例えば、AbおよびAg中の原子(例えば、重原子、即ち、非水素原子)間の距離によって定義される、それが含むアミノ酸残基によって特徴付けられ得る。さらにあまり詳細でないレベルでは、エピトープは、機能を介して、例えば、他のAbとの競合結合によって、特徴付けられ得る。エピトープはまた、別のアミノ酸による置換(例えば、アラニンスキャニングを使用する)がAbとAgとの間の相互作用の特徴を変更するアミノ酸残基を含むものとして、より一般に定義され得る。
【0033】
使用されるエピトープマッピング法に依存するエピトープの説明および定義が、異なるレベルの詳細さで得られるという事実から、同じAg上の、異なるAbに対するエピトープの比較は、異なるレベルの詳細さで同様に実施することができるということになる。
【0034】
例えばX線構造から決定される、アミノ酸レベルで記載されるエピトープは、それらが同じセットのアミノ酸残基を含む場合、同一であると言われる。エピトープは、少なくとも1つのアミノ酸がそれらのエピトープによって共有される場合、重複すると言われる。エピトープは、アミノ酸残基がそれらのエピトープによって共有されない場合、別々(独自)であると言われる。
【0035】
競合結合によって特徴付けられるエピトープは、対応する抗体の結合が相互に排他的である場合、即ち、1つの抗体の結合が、他の抗体の同時のまたは連続的な結合を排除する場合、重複していると言われる。エピトープは、抗原が、両方の対応する抗体の結合を同時に受け入れることが可能である場合、別々(独自)であると言われる。
【0036】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書で相互交換可能に使用される)抗体は、当該分野で十分に理解された用語であり、かかる特異的または優先的結合を決定するための方法もまた、当該分野で周知である。分子は、それが代替的な細胞または物質と反応または会合する場合よりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、および/またはより高い親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体が他の物質に結合する場合よりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間で結合する場合、抗体は、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、GDF15エピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体は、それが他のGDF15エピトープまたは非GDF15エピトープに結合する場合よりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間でこのエピトープに結合する抗体である。一般に、必ずではないが、結合に対する言及は、優先的結合を意味する。「特異的結合」または「優先的結合」は、サンプル中の特定の分子を認識しそれに結合するが、サンプル中の他の分子は実質的に認識も結合もしない、化合物、例えば、タンパク質、核酸、抗体などを含む。例えば、サンプル中の同族リガンドまたは結合パートナーを認識しそれに結合するが、サンプル中の他の分子は実質的に認識も結合もしない抗体またはペプチド受容体は、その同族リガンドまたは結合パートナーに特異的に結合する。したがって、指定されたアッセイ条件下で、特定された結合部分(例えば、抗体もしくはその抗原結合性部分または受容体もしくはそのリガンド結合性部分)は、特定の標的分子に優先的に結合し、試験サンプル中に存在する他の構成要素には、顕著な量では結合しない。
【0037】
種々のアッセイフォーマットが、目的の分子に特異的に結合する抗体またはペプチドを選択するために使用され得る。抗原と特異的に反応する抗体、または同族リガンドもしくは結合パートナーに特異的に結合する受容体もしくはそのリガンド結合性部分を同定するために使用され得る多くのアッセイの中では、例えば、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、BIAcore(商標)(GE Healthcare、Piscataway、NJ)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、Octet(商標)(ForteBio,Inc.、Menlo Park、CA)およびウエスタンブロット分析である。典型的には、特異的または選択的反応は、背景シグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的には、背景の10倍を超え、さらにより具体的には、抗体は、平衡解離定数(K)が、≦1μM、好ましくは≦100nM、より好ましくは≦10nM、さらにより好ましくは≦100pM、なおより好ましくは≦10pM、さらにより好ましくは≦1pMである場合、抗原に「特異的に結合する」と言われる。
【0038】
用語「競合する」は、抗体に関して本明細書で使用する場合、抗原への第1の抗体またはその抗原結合性部分の結合が、第2の抗体またはその抗原結合性部分による同じ抗原の引き続く結合を低減させることを意味する。一般に、第1の抗体の結合は、同じ抗原への第2の抗体の結合が低減されるような、立体障害、コンフォメーション変化、または共通のエピトープ(もしくはその部分)への結合を創出する。標準的な競合アッセイが、2つの抗体が互いに競合するかどうかを決定するために使用され得る。抗体競合についての1つの適切なアッセイには、表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジーを使用して、典型的には、バイオセンサーシステム(例えば、BIACOREシステム)を使用して相互作用の程度を測定することができる、Biacoreテクノロジーの使用が関与する。例えば、SPRは、第2の抗体の結合を阻害する1つの抗体の能力を決定するために、in vitro競合的結合阻害アッセイにおいて使用され得る。抗体競合を測定するための別のアッセイは、ELISAベースのアプローチを使用する。
【0039】
さらに、それらの競合に基づいて抗体を「ビニング」するためのハイスループットプロセスが、国際特許出願公開WO2003/48731に記載されている。競合は、1つの抗体(または断片)がGDF15への別の抗体(または断片)の結合を低減させる場合に存在する。例えば、逐次的な結合競合アッセイが使用され得、異なる抗体は逐次的に添加される。第1の抗体は、飽和に近い結合に到達するまで添加され得る。次いで、第2の抗体が添加される。GDF15への第2の抗体の結合が検出されない場合、または第1の抗体の非存在下での並行アッセイ(その値が100%と設定され得る)と比較して、顕著に低減される(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%の低減)場合、これら2つの抗体は、互いに競合するとみなされる。
【0040】
バリアント抗体は、上で議論した特定の配列および断片からの、1、2、3、4、5、最大で10、最大で20、最大で30、またはそれよりも多くのアミノ酸置換および/または欠失および/または挿入を含み得る。「欠失」バリアントは、個々のアミノ酸の欠失、アミノ酸の小さい群、例えば、2、3、4もしくは5アミノ酸の欠失、またはより大きいアミノ酸領域の欠失、例えば、特定のアミノ酸ドメインもしくは他の特色の欠失を含み得る。「挿入」バリアントは、個々のアミノ酸の挿入、アミノ酸の小さい群、例えば、2、3、4もしくは5アミノ酸の挿入、またはより大きいアミノ酸領域の挿入、例えば、特定のアミノ酸ドメインもしくは他の特色の挿入を含み得る。「置換」バリアントには、好ましくは、1つ以上のアミノ酸の、同じ数のアミノ酸による置き換え、および保存的アミノ酸置換を行うことが関与する。例えば、アミノ酸は、類似の特性を有する代替的アミノ酸、例えば、別の塩基性アミノ酸、別の酸性アミノ酸、別の中性アミノ酸、別の荷電アミノ酸、別の親水性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸、別の極性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸または別の脂肪族アミノ酸で置換され得る。適切な置換基を選択するために使用され得る20種の主要アミノ酸の一部の特性は、以下の通りである:
【0041】
置換バリアントは、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されている。置換変異誘発のために最も目的とされる部位には、超可変領域が含まれるが、フレームワーク変更もまた企図される。保存的置換は、「保存的置換」の見出しの下で、表1中に示される。かかる置換が生物学的活性における変化を生じる場合、以下に示される「例示的な置換」と称される、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載される、より実質的な変化が導入され得、産物がスクリーニングされ得る。
【0042】
【表1】
【0043】
抗体の生物学的特性における実質的な改変は、(a)例えば、ベータ-シートもしくはらせんコンフォメーションとしての、置換のエリアにおけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩、を維持することに対するそれらの効果が顕著に異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて、以下の群へと分けられる:
i.非極性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
ii.電荷なし極性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
iii.酸性(負に荷電):Asp、Glu;
iv.塩基性(正に荷電):Lys、Arg;
v.鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;および
vi.芳香族:Trp、Tyr、Phe、His。
【0044】
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを、別のクラスと交換することによって行われる。
【0045】
例えば、行われ得る1つの型の置換は、抗体中の化学的に反応性であり得る1つ以上のシステインを、別の残基、例えば、限定なしに、アラニンまたはセリンに変化させることである。例えば、非カノニカルなシステインの置換が存在し得る。置換は、抗体の可変ドメインのCDRもしくはフレームワーク領域中、または定常領域中で行われ得る。一部の実施形態では、システインは、カノニカルである。抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基もまた、分子の酸化安定性を改善するためおよび異常な架橋結合を防止するために、一般にはセリンで置換され得る。逆に、システイン結合は、特に、抗体がFv断片などの抗体断片である場合、その安定性を改善するために抗体に付加され得る。
【0046】
「生殖系列化(germlining)」として公知のプロセスでは、VHおよびVL配列中の特定のアミノ酸が、生殖系列VHおよびVL配列中に天然に見出されるアミノ酸と一致するように変異され得る。特に、VHおよびVL配列中のフレームワーク領域のアミノ酸配列は、抗体が投与された場合の免疫原性のリスクを低減させるために、生殖系列配列と一致するように変異され得る。本明細書で使用する場合、用語「生殖系列」は、それらが生殖細胞を介して親から子孫に受け継がれるときの、抗体遺伝子および遺伝子セグメントのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を指す。この生殖系列配列は、B細胞成熟化の過程の間の組換えおよび超変異事象によって変更された、成熟B細胞中の抗体をコードするヌクレオチド配列から識別される。特定の生殖系列を「利用する」抗体は、その生殖系列ヌクレオチド配列またはそれが特定するアミノ酸配列と最も密接にアラインするヌクレオチドまたはアミノ酸配列を有する。かかる抗体は、生殖系列配列と比較して、頻繁に変異される。ヒトVHおよびVL遺伝子についての生殖系列DNA配列は、当該分野で公知である(例えば、「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースを参照のこと;Kabat,E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242;Tomlinsonら、J.Mol.Biol.227:776~798、1992;およびCoxら、Eur.J.Immunol.24:827~836、1994もまた参照のこと)。
【0047】
結合親和性
抗体の結合親和性は、特定の抗原-抗体相互作用の解離速度を指すK値として表され得る。Kは、「オフレート(off-rate)(koff)」とも呼ばれる解離の速度の、会合速度、即ち「オンレート(on-rate)(kon)」に対する比である。したがって、Kは、koff/konと等しく、モル濃度(M)として表され、Kが小さいほど、結合の親和性はより強い。抗体についてのK値は、当該分野で十分に確立された方法を使用して決定され得る。Kdを測定するための1つの例示的な方法は、BIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを典型的には使用する、表面プラズモン共鳴(SPR)である。BIAcore動態分析は、それらの表面上に固定化された分子(例えば、エピトープ結合ドメインを含む分子)を有するチップからの、抗原の結合および解離を分析することを含む。抗体のKdを決定するための別の方法は、Bio-Layer Interferometryを使用すること、典型的には、OCTETテクノロジー(Octet QKe system、ForteBio)を使用することによる。あるいは、またはさらに、Sapidyne Instruments(Boise、Id.)から入手可能なKinExA(Kinetic Exclusion Assay)アッセイもまた使用され得る。
【0048】
GDF15に対する抗体
本発明は、抗GDF15抗体を提供する。抗GDF15抗体、好ましくは、高親和性抗体は、GDF15がその標的細胞に対して作用すると考えられる血漿および複数の組織区画において有効であり得る。本発明の抗体は、とりわけ、がん、心不全またはCOPDと関連する悪液質の発達および進行を駆動する経路を改変する潜在力を有する。
【0049】
中和または「遮断」抗体は、GDF15へのその結合が、GDF15もしくはGDF15断片とGDF15受容体、例えば、GFRALもしくはGDF15受容体構成要素との間の相互作用を妨害、制限もしくは阻害する;および/または(ii)GDF15の少なくとも1つの生物学的機能の阻害を生じる、抗体を指す。本発明の抗体による中和を決定するためのアッセイは、本明細書の他の場所に記載されており、当該分野で周知である。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「GDF15」には、ヒトGDF15のバリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログが含まれる。本発明の一部の態様では、抗体は、ヒト以外の種からのGDF15、例えば、マウス、ラットまたは非ヒト霊長類のGDF15、ならびに異なる形態のGDF15と交差反応する。他の態様では、抗体は、ヒトGDF15に対して完全に特異的であり得、種または他の型の交差反応性を示さなくてもよい。本明細書で使用する場合、GDF15という用語は、文脈上他のように定められない限り、天然に存在するヒトGDF15を指す。したがって、「GDF15抗体」、「抗GDF15抗体」または他の類似の指定は、GDF15型のリガンドもしくはアイソフォームと特異的に会合、結合もしくは反応する任意の抗体(本明細書で定義される)、またはその断片もしくは誘導体を意味する。UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q99988.1によって示される全長成熟形態のヒトGDF15は、本明細書で配列番号1として提供される。
【0051】
いずれの特定の理論に束縛されることも望まないが、GDF15との相互作用の際に、GFRALは、原癌遺伝子チロシンタンパク質キナーゼ受容体Ret(RET)と相互作用し、MAPKシグナル伝達経路およびAKTシグナル伝達経路の活性化を介して細胞シグナル伝達を誘導する。次いで、RETシグナル伝達は、例えば、とりわけ、ERK、S6のリン酸化を誘導または媒介する。本明細書で使用する場合、用語「GFRAL」には、ヒトGFRALのバリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログが含まれる。全長成熟形態のヒトGFRALは、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q6UXV0によって示される。本明細書で使用する場合、用語「RET」には、ヒトRETのバリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログが含まれる。全長成熟形態のヒトRETは、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号P07949によって示される。
【0052】
GDF15の「生物学的機能」または「生物学的活性」は、組織における炎症およびアポトーシス経路、ならびに細胞傷害後の細胞のストレス応答プログラムを調節することを含む意味である。GDF15の「生物学的機能」または「生物学的活性」には、とりわけ、当該分野で現在公知のまたは後に同定される、悪液質を増加させること、減少した食物摂取、減少した食欲、減少した体重、体重減少、減少した体脂肪量、減少した除脂肪量、GFRALの結合、RETの活性化、ERKのリン酸化、およびS6のリン酸化を媒介することが含まれる。GDF15の生物学的機能または生物学的活性は、GDF15とその同族受容体GFRALとの間の相互作用によって媒介され得るが、その必要はない。
【0053】
本発明は、GDF15の生物学的活性をモジュレートし得る抗体またはその抗原結合性部分を含む。即ち、本発明は、その抗体が、(a)食物摂取を増加させる;(b)食欲を増加させる;(c)体重を増加させる;(d)体重減少を減少させる;(e)体脂肪量を増加させる;(f)除脂肪量を増加させる;(g)体脂肪量の喪失を減少させる、(h)除脂肪筋肉量の喪失を減少させる、(i)GFRALへのGDF15結合を減少させる;(j)RETによって媒介される下流シグナル伝達を減少させる;(k)ERKのリン酸化を減少させるもしくは阻害する;(l)S6のリン酸化を減少させるもしくは阻害する;(m)MAPKシグナル伝達経路のRET活性化を減少させる;(n)AKTシグナル伝達経路のRET活性化を減少させる;および/または(o)PLC-γ1シグナル伝達経路の活性化を減少させるような、GDF15に特異的に結合し、少なくとも1つの検出可能なGDF15活性をモジュレートする、単離された抗体またはその抗原結合性部分を含む。
【0054】
GDF15の生物学的活性およびGDF15依存的シグナル伝達活性は、多くの当該分野で認識されたアッセイの中でも、GFRALおよびRETを共発現するHEK293またはCHO細胞を使用して、in vitroで評価され得る。GDF15による刺激後のMAPK経路の活性化は、とりわけ、ルシフェラーゼベースの遺伝子レポーターシステム(例えば、PathDetect、Agilent Technologies)を使用して測定され得る。均一時間分解蛍光テクノロジー(Cisbio Inc.)に基づくリン酸化タンパク質アッセイもまた、その受容体に結合するGDF15に応答したMAPKおよびAKT経路の活性化(例えば、リン酸化ERK1/2)を測定するための直交アプローチとして使用され得る。GDF15依存的シグナル伝達を防止する中和抗体の能力は、漸増濃度の抗GDF15抗体の非存在下または存在下で、細胞を固定濃度のGDF15と共にインキュベートすることによっても評価され得る。
【0055】
本発明の一態様では、本発明のGDF15抗体は、配列番号166として示される重鎖可変領域のアミノ酸配列および配列番号163として示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と、ヒトGDF15への結合について競合する、および/またはそれと同じエピトープに結合する、抗体を包含する。
【0056】
本発明の一態様では、本発明のGDF15抗体は、GFRALとのGDF15の結合を阻害するまたは低減させる抗体を包含する。
【0057】
一態様では、本発明は、GFRALとのGDF15の結合を阻害するにあたり、配列番号166として示される重鎖可変領域のアミノ酸配列および配列番号163として示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する抗体またはその抗原結合性断片と競合する抗体を包含する。
【0058】
本発明の一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1重鎖定常領域、例えば、配列番号164として示されるGDF15重鎖を含む。他の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、カッパ軽鎖定常領域、例えば、配列番号162として示されるGDF15軽鎖を含む。
【0059】
表2は、本発明の抗GDF15抗体のアミノ酸(タンパク質)配列および関連の核酸(DNA)配列を提供する。Kabatによって、およびChothiaによって定義される抗GDF15 VHおよび抗GDF15 VLのCDRは、別々の配列として示される。
【0060】
一部の態様では、CDRは、配列番号171、172、173、174、175および176を含む。これらのCDR配列は、以下の実施例1~10に示される好ましい配列分析および生物物理学的プロファイルデータに基づくコンセンサスを取り込む。これらのCDR配列は、それらの配列、結合、熱安定性、低いpHにおける安定性、および粘度プロファイルに基づく利点を保有する。
【0061】
【表2-1】
【0062】
【表2-2】
【0063】
【表2-3】
【0064】
【表2-4】
【0065】
【表2-5】
【0066】
【表2-6】
【0067】
【表2-7】
【0068】
【表2-8】
【0069】
【表2-9】
【0070】
【表2-10】
【0071】
【表2-11】
【0072】
【表2-12】
【0073】
【表2-13】
【0074】
【表2-14】
【0075】
【表2-15】
【0076】
【表2-16】
【0077】
【表2-17】
【0078】
【表2-18】
【0079】
【表2-19】
【0080】
【表2-20】
【0081】
【表2-21】
【0082】
ある特定の実施形態では、置換は、(ドナー)CDR残基が、例えば、米国特許出願公開第2017/0073395号およびTownsendら、2015、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 112(50):15354~15359に記載されるように、ヒトアミノ酸含量を増加させ、抗体の免疫原性を潜在的に低減させるように、対応するヒト生殖系列(アクセプター)残基で置き換えられる、ヒト生殖系列置換である。例えば、ヒト生殖系列IGHV1-6901フレームワークが使用され、例示的な抗体、GDF15_001VH(配列番号166)が比較される場合、GDF15_001抗体(配列番号32)およびヒト生殖系列IGHV1-6901のHCDR-1のアラインメントは、以下の通りである:
【0083】
【表3】
【0084】
アミノ酸位置番号26、28、29、30、31、32および34(イタリック)について、ヒト生殖系列残基(アクセプター)と対応するGDF15_001残基(ドナー)とは同じであり、生殖系列置換は不可能である。位置27、33および35(太字かつ下線付き)について、ヒト生殖系列(アクセプター)残基と対応するGDF15_001(ドナー)残基とは異なる。これらの位置におけるGDF15_001の残基は、ヒト残基含量をさらに増加させるために、対応するヒト生殖系列IGHV1-6901残基で置き換えられ得る。ヒトアミノ酸残基の含量を増加させる一方で、マウス残基の含量を最小化し、それによって、ヒトにおける抗体に対する任意の潜在的な免疫原性、例えば、ヒト抗マウス抗体(HAMA)免疫応答を減少させつつ、結合特徴、例えば、エピトープ結合、親和性などを保存するために、同じプロセスが、各重鎖および軽鎖CDRについて踏襲され得る。
【0085】
抗体CDR中にヒト生殖系列残基を導入するための方法およびライブラリーは、米国特許出願公開第2017/0073395号およびTownsendら、2015、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.112(50):15354~15359に詳細に記載されており、これらは共に、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。
【0086】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列を含むVHフレームワークを含み得る。一部の態様では、以下の生殖系列からのVHフレームワークが使用され得る:IGHV1-202、IGHV1-301、IGHV1-4601、IGHV1-6901、IGHV1-6902、IGHV1-801、IGHV3-1301、IGHV3-2301、IGHV3-2304、IGHV3-3001、IGHV3-3018、IGHV5-10-101、IGHV5-10-104またはIGHV5-5101(生殖系列の名称は、IMGT生殖系列定義に基づく)。一部の態様では、以下の生殖系列からのVLフレームワークが使用され得る:IGKV1-1201、IGKV1-1302、IGKV1-3301、IGKV1-3901、IGKV1-501、IGKV3-1101、IGKV3-1501、IGKV3-2001、IGKV3D-2002およびIGKV4-101(生殖系列の名称は、IMGT生殖系列定義に基づく)。ヒト生殖系列フレームワークの配列は、種々の公的データベース、例えば、V-base、IMGT、NCBIまたはAbysisから入手可能である。
【0087】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VLフレームワーク配列を含むVLフレームワークを含み得る。VLフレームワークは、それが由来した生殖系列との機能的および構造的類似性をなおも保持しつつ、1つ以上のアミノ酸置換、付加または欠失を含み得る。一部の態様では、VLフレームワークは、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも53%、58%、60%、63%、71%、72%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VLフレームワーク配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸置換、付加または欠失を含むVLフレームワークを含む。一部の態様では、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加または欠失は、フレームワーク領域中のみにある。一部の態様では、パーセント(%)同一性は、本明細書でCDRと定義される部分を除いたVLとの類似性に基づく。
【0088】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列を含むVHフレームワークを含み得る。VHフレームワークは、それが由来した生殖系列との機能的および構造的類似性をなおも保持しつつ、1つ以上のアミノ酸置換、付加または欠失を含み得る。一部の態様では、VHフレームワークは、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも72%、74%、75%、77%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。一部の態様では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト生殖系列VHフレームワーク配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個のアミノ酸置換、付加または欠失を含むVHフレームワークを含む。一部の態様では、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加または欠失は、フレームワーク領域中のみにある。一部の態様では、%同一性は、本明細書でCDRと定義される部分を除いたVHとの類似性に基づく。
【0089】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHを含み得る。VHは、配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161および166のアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161および166のアミノ酸配列を含み得る。
【0090】
抗体または抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLを含み得る。VLは、配列番号11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158および163のアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。VLは、配列番号11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158および163のアミノ酸配列を含み得る。
【0091】
一部の態様では、抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158および163のうち少なくとも1つのアミノ酸配列に示されるLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3を含む。
【0092】
一部の態様では、抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161および166のうち少なくとも1つのアミノ酸配列に示されるHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3をさらに含む。
【0093】
一部の態様では、抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号163のアミノ酸配列に示されるLCDR-1、LCDR-2、LCDR-3、ならびに配列番号166のアミノ酸配列に示されるHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3を含む。
【0094】
抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号163のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLを含み得る。VLは、配列番号163のアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。VLは、配列番号163のアミノ酸配列を含み得る。
【0095】
抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号166のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHを含み得る。VHは、配列番号166のアミノ酸配列に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号166のアミノ酸配列を含み得る。
【0096】
抗体または抗原結合性断片は、配列番号164のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むHCを含み得る。HCは、配列番号164のアミノ酸配列を含み得る。
【0097】
抗体または抗原結合性断片は、配列番号162に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むLCを含み得る。LCは、配列番号162のアミノ酸配列を含み得る。
【0098】
PD-1軸結合性アンタゴニスト
用語「PD-1軸結合性アンタゴニスト」は、本明細書で使用する場合、PD-1シグナル伝達軸(「PD-1/PD-L経路」または「PD-1/PD-Lシグナル伝達経路」とも呼ばれる)上でのシグナル伝達から生じるT細胞機能障害を除去して、結果が、T細胞機能の回復または増強であるような、その結合パートナーのいずれか1つ以上との、PD-1軸結合性パートナーの相互作用を阻害する分子を指す。本明細書で使用する場合、PD-1軸結合性アンタゴニストには、PD-1結合性アンタゴニスト、PD-L1結合性アンタゴニストおよびPD-L2結合性アンタゴニストが含まれる。一部の実施形態では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、抗PD-L2抗体である。
【0099】
一部の態様では、PD-1軸アンタゴニスト、PD-1軸結合性アンタゴニスト、PD-1結合性アンタゴニストおよび抗PD-L1抗体には、アベルマブが含まれない。即ち、任意選択により、アベルマブは、PD-1軸シグナル伝達軸を阻害する薬剤から排除される。
【0100】
本発明の処置方法、医薬および使用における使用のための例示的なPD-1軸結合性アンタゴニストには、限定なしに、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、国際特許出願公開第WO2010/027827およびWO2011/066342に記載される、シグナル配列ありまたはなしのAMP-224、国際特許出願公開第WO2016/092419に開示されるmAb7およびmAb15、ならびにWO2013/079174に記載されるアベルマブが含まれる。WO2010/027827、WO2011/066342、WO2016/092419およびWO2013/079174の開示は、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。表3は、例示されたPD-1軸結合性アンタゴニストの一部の種々の配列を列挙する。
【0101】
【表4-1】
【0102】
【表4-2】
【0103】
用語「PD-1結合性アンタゴニスト」は、本明細書で使用する場合、PD-1に特異的に結合し、PD-1と、その結合パートナー、例えば、PD-L1、PD-L2のうち1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する分子を指す。一部の実施形態では、PD-1結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-1の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、PD-1に特異的に結合し、それによって、PD-L1および/またはPD-L2へのPD-1の結合を阻害する。例えば、PD-1結合性アンタゴニストには、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する、抗PD-1抗体、その抗原結合性断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-1結合性アンタゴニストは、PD-1に特異的に結合し、それによって、機能障害性T細胞をあまり非機能障害性でなくするように、PD-1を介したシグナル伝達を介して媒介される、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させる。一部の実施形態では、PD-1結合性アンタゴニストは、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、チスレチズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-554、セミプリマブおよびPF-06801591が含まれるがこれらに限定されない抗PD-1抗体である。
【0104】
PF-06801951は、ササンリマブ(CAS登録番号2206792-50-7)、RN888とも呼ばれ、それらの全体が本明細書に示されるかのように参照によって組み込まれる国際特許出願公開第WO2016/092419に開示されている。ササンリマブは、ヒト化されたヒンジ領域安定化IgG4-カッパ(κ)モノクローナル抗体である。ササンリマブ(PF-06801951;RN888)のアミノ酸配列は、以下の表4に示される。
【0105】
具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、ニボルマブである。別の具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、ペムブロリズマブである。別の具体的な態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、ピディリズマブである。
【0106】
用語「PD-L1結合性アンタゴニスト」は、本明細書で使用する場合、PD-L1に特異的に結合し、PD-L1と、その結合パートナー、例えば、PD-1、B7-1のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する分子を指す。一部の実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L1の結合を阻害する分子である。一部の態様では、PD-L1結合性アンタゴニストには、アベルマブは含まれない。具体的な態様では、PD-L1結合性アンタゴニストは、PD-1および/またはB7-1へのPD-L1の結合を阻害する。一部の実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストには、PD-L1と、その結合パートナー、例えば、PD-1、B7-1のうち1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する、抗PD-L1抗体、その抗原結合性断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストは、機能障害性T細胞をあまり非機能障害性でなくするように、PD-L1を介したシグナル伝達によって媒介される、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させる。一部の実施形態では、PD-L1結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、アベルマブ(国際特許出願公開第WO2013/079174において、A09-246-2として開示される)である。一部の態様では、アベルマブは、PD-1軸アンタゴニストとしては含まれない。
【0107】
別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブである。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(MDX-1105)である。
【0108】
本明細書で使用する場合、抗ヒトPD-L1抗体は、成熟ヒトPD-L1に特異的に結合する抗体またはその部分を指し、成熟ヒトPD-L1分子は、以下の配列のアミノ酸19~290からなる:
MRIFAVFIFMTYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET(配列番号221)
【0109】
【表5-1】
【0110】
【表5-2】
【0111】
用語「PD-L2結合性アンタゴニスト」は、本明細書で使用する場合、PD-L2に特異的に結合し、PD-L2と、その結合パートナー、例えば、PD-1のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する分子を指す。一部の実施形態では、PD-L2結合性アンタゴニストは、その結合パートナーへのPD-L2の結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L2結合性アンタゴニストは、PD-1へのPD-L2の結合を阻害する。一部の実施形態では、PD-L2アンタゴニストには、PD-L2に特異的に結合し、PD-L2と、その結合パートナー、例えば、PD-1のいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化または妨害する、抗PD-L2抗体、その抗原結合性断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチドおよび他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L2結合性アンタゴニストは、機能障害性T細胞をあまり非機能障害性でなくするように、PD-L2を介したシグナル伝達を介して媒介される、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減させる。一部の実施形態では、PD-L2結合性アンタゴニストは、PD-L2イムノアドヘシンである。
【0112】
核酸
本発明は、本明細書に記載される抗体部分および改変抗体を含む本発明の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドもまた提供する。本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法もまた提供する。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の手順によって作製および発現され得る。
【0113】
所望の抗体またはその抗原結合性断片およびかかる抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸の配列は、標準的な配列決定技術を使用して決定され得る。所望の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸配列は、組換え産生および特徴付けのために、種々のベクター(例えば、クローニングおよび発現ベクター)中に挿入され得る。重鎖または重鎖の抗原結合性断片をコードする核酸、および軽鎖または軽鎖の抗原結合性断片をコードする核酸は、同じベクターまたは異なるベクター中にクローニングされ得る。
【0114】
一態様では、本発明は、以下のGDF15抗体およびその抗原結合性部分のいずれかのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを提供する:
GDF15_001、GDF15_002、GDF15_003、GDF15_004、GDF15_005、GDF15_006、GDF15_007、GDF15_008、GDF15_009、GDF15_010、GDF15_011、GDF15_012、GDF15_013、GDF15_014、GDF15_015、GDF15_017、GDF15_018、GDF15_020、GDF15_021、GDF15_022、GDF15_100、GDF15_200、GDF15_297、GDF15_301、GDF15-470
【0115】
本発明は、(i)配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161、166、11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158、163、166、183、187、189、191、193および195からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む1つ以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0116】
本発明は、配列番号167、168、169および170のうち1つ以上として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号167として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号168として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号169として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、配列番号170として示される核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。遺伝コードの縮重に起因して、本発明は、配列番号170の位置番号1344におけるヌクレオチドがA、C、G、Tであり得、および/または位置番号1347におけるヌクレオチドがA、C、G、Tであり得る、核酸配列をさらに提供する。配列番号170中に提供される最後の2つのコドンは、それぞれ、プロリンおよびグリシンをなおもコードする。
【0117】
本発明は、GDF15_001のVHドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明は、GDF15_001のVLドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた提供する。さらに、本発明は、GDF15_001のVHドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドのDNA挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。本発明は、GDF15_001のVLドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドをさらに提供する。
【0118】
本発明は、GDF15_001のVHドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、およびGDF15_001のVLドメインをコードする、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、を含むポリヌクレオチドもまた提供する。
【0119】
別の態様では、本発明は、抗GDF15抗体をコードするポリヌクレオチドおよびそのバリアントを提供し、かかるバリアントポリヌクレオチドは、本明細書で開示または言及される核酸配列のいずれかに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を共有する。これらの量は限定を意味せず、列挙されたパーセンテージ間の増分は、本開示の一部として具体的に想定される。
【0120】
本発明は、本明細書に記載される核酸分子によってコードされるポリペプチドを提供する。
【0121】
一実施形態では、VHおよびVLドメインもしくはその抗原結合性部分、または全長HCもしくはLCは、別々のポリヌクレオチドによってコードされる。あるいは、VHおよびVLもしくはその抗原結合性部分、またはHCおよびLCは共に、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0122】
任意のかかる配列に対して相補的なポリヌクレオチドもまた、本開示によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コーディングまたはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノム、cDNAまたは合成)またはRNA分子であり得る。RNA分子には、イントロンを含み、一対一の様式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子が含まれる。さらなるコードまたは非コード配列が、本開示のポリヌクレオチド内に存在してもよいがその必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持体材料に連結されてもよいがその必要はない。
【0123】
ポリヌクレオチドは、抗体もしくはその一部分をコードする核酸配列を含み得、またはかかる配列のバリアントを含み得る。ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの結合特徴がネイティブ抗体分子と比較して減弱されるような、1つ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含む。バリアント核酸配列によってコードされるポリペプチドの結合特徴に対する影響は、一般に、本明細書に記載されるように評価され得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、いずれの置換、付加、欠失および/もしくは挿入も含まない元の(親)抗体またはその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも約70%の同一性、一部の実施形態では、少なくとも約80%の同一性、一部の実施形態では、少なくとも約90%の同一性、一部の実施形態では、少なくとも約95%の同一性を示す。これらのパーセント同一性は限定を意味せず、列挙されたパーセンテージ間の増分は、本開示の一部として具体的に想定される。
【0124】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、以下に記載されるように、最大の対応を求めてアラインした場合に同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を同定および比較するために、比較ウインドウにわたって配列を比較することによって実施される。「比較ウインドウ」は、本明細書で使用する場合、少なくとも約20、通常は30~約75または40~約50連続する位置のセグメントを指し、ここで、配列は、2つの配列を最適にアラインした後に、同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る。
【0125】
比較のための配列の最適なアラインメントは、デフォルトパラメーターを使用して、Lasergene(登録商標)スイートのバイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR(登録商標),Inc.、Madison、WI)中のMegAlign(登録商標)プログラムを使用して実施され得る。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかのアラインメントスキームを具体化する:Dayhoff,M.O.、1978、A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships.、Dayhoff,M.O.(編)Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、Washington DC、第5巻、補遺3、345~358頁;Hein J.、1990、Unified Approach to Alignment and Phylogenes、626~645頁、Methods in Enzymology、第183巻、Academic Press,Inc.、San Diego、CA;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.、1989、CABIOS 5:151~153;Myers,E.W.およびMuller W.、1988、CABIOS 4:11~17;Robinson,E.D.、1971、Comb.Theor.11:105;Santou,N.、Nes,M.、1987、Mol.Biol.Evol.4:406~425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.、1973、Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、San Francisco、CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA80:726~730。
【0126】
一部の実施形態では、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20個の位置の比較のウインドウにわたって、2つの最適にアラインされた配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウインドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して、20パーセント以下、通常は5~15パーセントまたは10~12パーセントの付加または欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一な核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を得、一致した位置の数を参照配列中の位置の総数(即ち、ウインドウサイズ)によって除算し、結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算される。
【0127】
ポリヌクレオチドバリアントはまた、またはあるいは、遺伝子、またはその一部分もしくは相補体に対して実質的に相同であり得る。かかるポリヌクレオチドバリアントは、抗体をコードする天然に存在するDNA配列(または相補的配列)に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能である。
【0128】
適切な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中で事前洗浄すること;約50℃~65℃、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)で一晩ハイブリダイズさせること;その後、0.1%SDSを含む2×、0.5×および0.2×SSCの各々で、65℃で20分間2回洗浄すること、を含む。
【0129】
本明細書で使用する場合、「高度にストリンジェントな条件」または「高ストリンジェンシー条件」は、以下の条件である:(1)洗浄のために、低いイオン強度および高い温度、例えば、50℃で、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを使用する;(2)ハイブリダイゼーションの間に、変性剤、例えば、ホルムアミド、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5と共に、42℃で使用する;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/mL)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で42℃および50%ホルムアミド中で55℃での洗浄、その後の、EDTAを含む0.1×SSCからなる55℃での高ストリンジェンシー洗浄を使用する。当業者は、例えば、プローブ長さなどの因子に適応するために、必要に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法を認識する。
【0130】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが、当業者によって理解される。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意のネイティブ遺伝子のヌクレオチド配列に対する最小限の相同性を保有する。それにもかかわらず、コドン使用における差異に起因して変動するポリヌクレオチドは、本開示によって具体的に企図される。さらに、本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本開示の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの1つ以上の変異、例えば、欠失、付加および/または置換の結果として変更された内因性遺伝子である。得られたmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有し得るが、その必要はない。対立遺伝子は、標準的な技術(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較)を使用して同定され得る。
【0131】
本開示のポリヌクレオチドは、化学的合成、組換え法またはPCRを使用して得ることができる。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該分野で周知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。当業者は、所望のDNA配列を産生するために、本明細書で提供される配列および市販のDNA合成機を使用することができる。
【0132】
組換え法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含むポリヌクレオチドが、適切なベクター中に挿入され得、このベクターは、次に、本明細書でさらに議論されるように、複製および増幅に適切な宿主細胞中に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の手段によって、宿主細胞中に挿入され得る。細胞は、直接的取り込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F交配(F-mating)またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって形質転換される。いったん導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(例えば、プラスミド)として細胞内で維持され得、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれ得る。そうして増幅されたポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法によって、宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrookら、1989を参照のこと。
【0133】
あるいは、PCRは、DNA配列の再生産を可能にする。PCRテクノロジーは、当該分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994に記載されている。
【0134】
RNAは、適切なベクター中の単離されたDNAを使用し、それを適切な宿主細胞中に挿入することによって得ることができる。細胞が複製し、DNAがRNAへと転写される場合、RNAは、例えば、Sambrookら、1989に示される、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0135】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、目的の1つ以上の遺伝子または配列を宿主細胞中に送達すること、好ましくは、それを宿主細胞において発現させることが可能な、構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、ネイキッドDNAもしくはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドもしくはファージベクター、カチオン性縮合剤と関連したDNAもしくはRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNAもしくはRNA発現ベクター、および特定の真核生物細胞、例えば、産生細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0136】
適切なクローニングおよび発現ベクターは、種々の構成要素、例えば、プロモーター、エンハンサーおよび他の転写調節配列を含み得る。ベクターはまた、異なるベクター中への抗体可変ドメインの引き続くクローニングを可能にするように構築され得る。適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得、または当該分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用が意図される宿主細胞に従って変動し得るが、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を保有し得、および/またはベクターを含むクローンを選択する際に使用され得るマーカーの遺伝子を保有し得る。適切な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28が含まれる。これらおよび多くの他のクローニングベクターが、供給業者、例えば、BioRad、StrategeneおよびInvitrogenから入手可能である。発現ベクターがさらに提供される。発現ベクターは、一般に、本開示に従うポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの不可欠な一部として、宿主細胞中で複製可能でなければならないことが暗示される。適切な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスが含まれるウイルスベクター、コスミド、およびPCT公開番号WO87/04462に開示される発現ベクターが含まれるがこれらに限定されない。ベクター構成要素には、一般に、以下のうち1つ以上が含まれ得るがこれらに限定されない:シグナル配列;複製起点;1つ以上のマーカー遺伝子;適切な転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーおよびターミネーター)。発現(即ち、翻訳)のために、リボソーム結合部位、翻訳開始部位および停止コドンなどの、1つ以上の翻訳制御エレメントもまた通常は必要とされる。
【0137】
目的のポリヌクレオチドを含むベクターおよび/またはポリヌクレオチド自体は、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、ベクターが、ワクシニアウイルスなどの感染性因子である場合)が含まれるいくつかの適切な手段のいずれかによって、宿主細胞中に導入され得る。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択は、宿主細胞の特色に依存する場合が多い。
【0138】
したがって、「宿主細胞」には、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターの取り込みのための、ポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを含むベクターのレシピエントであり得るまたはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、この子孫は、天然の、偶然のまたは意図的な変異に起因して、(形態学的に、またはゲノムDNA相補性において)元の親細胞とは必ずしも完全に同一でなくてもよい。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドでin vivoでトランスフェクトおよび/または形質転換された細胞が含まれる。
【0139】
抗体またはその抗原結合性断片は、適切な宿主細胞を使用して、組換え作製され得る。抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸は、発現ベクター中にクローニングされ得、これは次いで、組換え宿主細胞における抗体の合成を得るために、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、酵母細胞、昆虫細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞中に導入され得る。好ましい宿主細胞には、当該分野で周知の多くの細胞の中で、CHO細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293細胞、NS0細胞またはSp2.0細胞が含まれる。抗体断片は、全長抗体のタンパク質分解性もしくは他の分解によって、組換え法によって、または化学的合成によって産生され得る。抗体のポリペプチド断片、特に、最大で約50アミノ酸のより短いポリペプチドは、化学的合成によって簡便に作製され得る。タンパク質およびペプチドのための化学的合成の方法は、当該分野で公知であり、市販されている。
【0140】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、親和性成熟され得る。例えば、親和性成熟された抗体は、当該分野で公知の手順によって産生され得る(Marksら、1992、Bio/Technology、10:779~783;Barbasら、1994、Proc Nat.Acad.Sci、USA 91:3809~3813;Schierら、1995、Gene、169:147~155;Yeltonら、1995、J.Immunol.、155:1994~2004;Jacksonら、1995、J.Immunol.、154(7):3310~9;Hawkinsら、1992、J.Mol.Biol.、226:889~896;およびWO2004/058184)。
【0141】
免疫原性
免疫原性は、抗体およびFc融合タンパク質が含まれるタンパク質治療薬の開発および利用に対する主な障壁である。タンパク質配列、投与の経路および頻度、ならびに患者集団が含まれるがこれらに限定されないいくつかの因子が、タンパク質免疫原性に寄与し得る。免疫応答は、典型的には、マウス抗体などの非ヒトタンパク質に対して最も激しいが、主にまたは完全にヒト配列内容を有する治療薬であっても、免疫原性であり得る。免疫原性は、外来として把握される物質に対する複雑な一連の応答であり、これには、中和および非中和抗体の産生、免疫複合体の形成、補体活性化、肥満細胞活性化、炎症ならびにアナフィラキシーが含まれ得る。望まれない免疫応答は、抗原認識を直接妨害すること、エフェクター分子との相互作用を変更すること、または治療薬の血清半減期もしくは組織分布を乱すことによって、抗体およびFc融合タンパク質治療薬の効力を低減させ得る。
【0142】
タンパク質治療薬は、Providence、R.I.のEpivax,Inc.によって提供されるような市販のサービスを使用して、潜在的な免疫原性エピトープの存在を予測するために分析され得る。一部の実施形態では、in silicoアルゴリズムが、クラスII MHC分子に結合するエピトープを予測できる。かかるアルゴリズムを用いたポリペプチドのデータセットの分析は、予測されたエピトープを提供する。予測されたエピトープは、自動ペプチド合成または組換えDNA技術の標準的な方法によって調製されるペプチドを作製するために使用される。Epivaxから提供されたスコアリング情報は、集団中に認識された予測されたエピトープがどのように広がっているかの指標を提供し得る。
【0143】
以下の実施例10に記載されるように、本発明の抗体を、EpiVaxによって開発されたEpiMatrixアルゴリズムを使用して、本明細書でT細胞エピトープ、「T-レジトープ」または「tReg」とも呼ばれる、T細胞によって認識されるエピトープの存在についてスクリーニングした。抗体配列は、重複する9マーフレームへと分類解析され、各フレームは、最後が8アミノ酸重複する。次いで、得られたフレームの各々は、8つの一般的なMHCクラスII HLA対立遺伝子(DRB10101、DRB10301、DRB10401、DRB10701、DRB10801、DRB11101、DRB11301およびDRB11501)のパネルに関して、予測される結合親和性についてスコアリングされる。生スコアは、無作為に生成されたペプチドの大きいサンプルのスコアに対して標準化され、得られた「Z」スコアが報告される。
【0144】
全体的配列スコアであるtReg調整済スコアは、抗体の免疫原性を予測するために、EpiMatrix Zスコアを使用して計算され得る。実施例10に記載されるように、tReg調整済スコアは、9マーフレームのEpiMatrix Zスコアを合計し(中間合計)、HLA型観測の数を指摘することによって計算される。9マーおよびHLA型の全ての個々の組み合わせ(「観測」)が、その9マーがエピトープであるかどうかにかかわらず、試験される。特定の観測が、そのペプチドが所与のHLA型に対する結合子の上位5%にあることを示す場合、この観測についてのEpiMatrix Zスコアが、タンパク質配列全体と関連する中間合計に加算される。試験した観測の総数もまた記録される。唯一の例外は、EpiVaxによって開発されたISPRIソフトウェアパッケージによって「T-レジトープ」として同定された9マーについての全ての観測が、ゼロのEpiMatrixスコアを有すると仮定されることである。本明細書で使用する場合、「T-レジトープ」は、天然の調節性T細胞を活性化し、望まれない免疫応答を低減させることが潜在的にできる、モノクローナル抗体フレームワーク領域内のアミノ酸配列である。tReg調整済スコアは以下のように計算される:tReg調整済スコア=(中間合計)1000/(観測の数)。中間合計では、0.052.2248のベースラインスコアが、各観測(T-レジトープを含む)から減算される。より低いtReg調整済スコアは、免疫原性リスクのより低い潜在力を予測する。
【0145】
使用
原発性ミトコンドリア筋症を処置するための方法
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象において原発性ミトコンドリア筋症を予防、寛解および/または処置するための方法であって、対象に、治療有効量のGDF15抗体(例えば、本明細書に記載されるGDF15抗体)を投与するステップを含む、方法に関する。
【0146】
原発性ミトコンドリア筋症(PMM)は、骨格筋に優勢に影響を与える、ミトコンドリアのDNA(mtDNA)内またはミトコンドリアの外側の遺伝子(核DNA)内で見出される変化(例えば、枯渇、欠失または変異であるがこれらに限定されない)に関連する一群の遺伝性障害である。ミトコンドリアは、身体の全ての細胞内で見出される。ミトコンドリアは、細胞エネルギーの産生の調節を担い、それら自身の独自のDNA(mtDNA)内に、このプロセスのための遺伝的設計図を保有している。PMMは、影響された細胞が、食物および酸素を分解し、エネルギーを産生する能力を妨げる場合が多い。ミトコンドリアは、身体の組織によって使用されるエネルギーの90%よりも多くを提供する;ミトコンドリア障害は、身体の細胞が適切に機能するために十分なエネルギーの欠如によって特徴付けられる。したがって、高いエネルギーを要求する組織、例えば、筋肉、脳または心臓組織が、ミトコンドリア障害によって影響される可能性が最も高い。ミトコンドリア疾患は、身体の1つよりも多くの臓器系に影響を与え得る。しかし、多くのミトコンドリア疾患が、筋肉に主に影響を与え(筋症)、筋肉疾患が、ミトコンドリア障害の唯一のまたは優勢な徴候であり、したがって、PMMと定義される。PMMのための疾患改変処置は存在しない;処置は、特定の症状を改善また解消することを目的としている(Primary Mitochondrial Myopathies - NORD(National Organization for Rare Disorders)(rarediseases.org))。
【0147】
本明細書で使用する場合、原発性ミトコンドリア筋症という用語には、リー症候群、カーンズ・セイヤー症候群、アルパーズ・フッテンロッヒャー症候群、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様エピソードを伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS)ならびに運動失調ニューロパチー症候群が含まれるがこれらに限定されない。
【0148】
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象において原発性ミトコンドリア筋症(PMM)を処置するための方法を提供する。これらの方法は、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含み、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片の投与は、PMMの1つ以上の徴候または症状の改善を生じる。PMMの主な徴候または症状には、肉体的疲労、筋力低下および運動耐容能が含まれるがこれらに限定されない。筋力低下は、眼および眼瞼の動きを制御する筋肉において生じ得、進行性外眼筋麻痺(opthalmoplegia)(PEO)と呼ばれる眼の動きの漸進的な麻痺、および下垂と呼ばれる上眼瞼の垂下を生じる。筋力低下および消耗は、顔、首および腕の他の筋肉においても生じ得る。労作性疲労とも呼ばれる運動耐容能は、肉体労作、例えば、運動、例えばジョギング、またはさらには日常的な活動、例えば、歩行もしくは牛乳パックの持ち上げによってもたらされる、普通でない感覚の疲弊を指す。
【0149】
一部の実施形態では、抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片の投与は、投与前と比較して、増加した体重増加、増加した除脂肪筋肉量、増加した骨格筋量、回復した筋強度、および/または運動能力における改善を生じる(がこれらに限定されない)。改善は、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%であり得る。
【0150】
一部の実施形態では、対象は、上昇したレベルのGDF15を有する。一部の実施形態では、GDF15のレベルは、≧2000ng/Lである。一部の実施形態では、対象は、対照対象と比較して、異常なレベルの1つ以上のエネルギーバイオマーカーを有する。エネルギーバイオマーカーには、乳酸(乳酸塩)レベル;ピルビン酸(ピルビン酸塩)レベル;乳酸塩/ピルビン酸塩比;クレアチンリン酸レベル;NADH(NADH+H)またはNADPH(NADPH+H)レベル;NADまたはNADPレベル;ATPレベル;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;総補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型チトクロムCレベル;還元型チトクロムCレベル;酸化型チトクロムC/還元型チトクロムC比;アセト酢酸塩レベル;ベータ-ヒドロキシ酪酸塩レベル;アセト酢酸塩/ベータ-ヒドロキシ酪酸塩比;8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)レベル;反応性酸素種のレベル;酸素消費量(VO)、二酸化炭素放出量(VCO)および呼吸商(VCO/VO)が含まれるがこれらに限定されない。
【0151】
一部の実施形態では、対象は、悪液質を有さない。一部の実施形態では、対象は、がんを有さない。一部の実施形態では、対象は、心不全を有さない。一部の実施形態では、対象は、悪液質を有するが、抗GDF15治療を受けていない。一部の実施形態では、対象は、がんを有するが、抗GDF15治療を受けていない。一部の実施形態では、対象は、心不全を有するが、抗GDF15治療を受けていない。
【0152】
用語「処置」または「処置された」には、予防的(prophylactic)(即ち、予防的(preventative))および/または治療的処置が含まれる。状態の臨床所見の前に投与される場合、処置は、予防的とみなされる。治療的処置には、例えば、疾患の重症度を寛解もしくは低減させる、または疾患の長さを短縮することが含まれる。
【0153】
本明細書で開示される方法は、任意の抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。抗GDF15抗体の例は、当該分野で公知である(例えば、WO14100689、WO2015/196142およびWO2020/039321を参照のこと)。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、GDF15_001(HCDR-1:配列番号32、HCDR-2:配列番号165、HCDR-3:配列番号52、LCDR-1:配列番号95、LCDR-2:配列番号28、LCDR-3:配列番号9を含む)またはGDF15_0301(HCDR-1:配列番号179、HCDR-2:配列番号180、HCDR-3:配列番号181、LCDR-1:配列番号184、LCDR-2:配列番号185、LCDR-3:配列番号186を含む)を投与するステップを含む。
【0154】
心不全を処置するための方法
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象において心障害または機能障害を処置する方法を提供する。一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象において心不全(例えば、低減された駆出率(HFrEF)を伴う心不全)を処置するための方法を提供する。これらの方法は、治療有効量の抗GDF15抗体(例えば、本明細書で開示される抗体であるがこれらに限定されない)またはその抗原結合性断片を投与して、HFrEFの1つ以上の徴候または症状を寛解させるステップを含む。
【0155】
HFrEFは、損なわれた収縮機能を有する罹患した心筋が、呼吸困難または労作性(extertional)制約をもたらし、それによって、日常生活の活動を患者が実行する能力が制限される、臨床症候群である。2013年~2016年にNational Health and Nutrition Examination Surveyから収集されたデータに基づくと、推定620万人のアメリカの成人が心不全を有し、その有病率は、2030年までに800万人よりも多くの成人にまで増加すると予期される;心不全を有する成人の50%は、HFrEFを有する。これは一般に、薬物療法および/もしくは治療的デバイスで安定化され得る、または適切な候補では心臓移植によって処置され得る、慢性の進行性の状態である。心不全ケアの一次目的は、疾患進行の予防、症状の寛解、および心血管死亡率の予防である。
【0156】
循環GDF-15濃度は、特に、HFrEFを有する集団における心血管罹患率および死亡率の予後バイオマーカーとして同定されている。HFrEFを有する患者では、循環GDF-15レベルはまた、ボディマス指数と逆相関し、HF症状重症度、機能的状態および運動能力に高度に関連する。さらに、上昇したGDF-15レベルは、HFrEFを有する患者における死亡および有害な心不全事象の増加したリスクを予測する。
【0157】
対象は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に基づいてII~IVと分類される心不全を有する。一部の実施形態では、対象は、体液(例えば、血清)中の上昇したGDF15レベルを有する。一部の実施形態では、対象の血清GDF15レベルは、≧2000pg/mLである。一部の実施形態では、対象は、40%未満の/40%と等しい左心室駆出率(LVEF)を示す。一部の実施形態では、対象は、最も最近の測定時(例えば、直近の12カ月以内)に、50%未満のLVEFを示す。一部の実施形態では、対象は、14mL/kg/分未満のピークVOを示す。一部の実施形態では、対象は、400pg/mLと等しいまたはそれを超えるN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)レベルを示す。一部の実施形態では、対象は、l00g/mlを超えるBNPレベルを示す。一部の実施形態では、対象は、1.5ng/mLを超える血清心筋トロポニンI(cTnl)レベルを示す。
【0158】
一部の実施形態では、対象は、以下のうち少なくとも1つによって実証される、悪液質または疲労または機能的障害の証拠を示す:
a.主観的疲労もしくは食欲不振に関連する、直近の6カ月における非浮腫性の意図しない体重減少≧5%、もしくは現在のBMI<20kg/m;または
b.1週間当たり少なくとも3回の疲労および過去2週間における少なくとも中程度に厄介な疲労;または
c.スクリーニング時に施行したKCCQ 23のPhysical Limitations Domainで<60のスコア。
【0159】
一部の実施形態では、対象は、75未満のKansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ)-Clinical Summary Score(CSS)を有する。KCCQは、うっ血性心不全を有する参加者について肉体的制約、症状、自己効力感、社会的干渉および生活の質を定量化する、自己施行型アンケートである(Microsoft Word - Q160011 Qualification Summary_FINAL.docx(fda.gov))。KCCQは、臨床的変化に対して感受性であり、参加者にとって完了するのが明快な手段であり、他の患者報告アウトカム(PRO)と比較して負担を低減させる。機能的状態およびPROデータの利益および重要性は、CHF研究における重要な臨床的エンドポイントと認識される。
【0160】
一部の実施形態では、対象は、以下のうち少なくとも1つによって実証される、悪液質、疲労または機能的障害の証拠を示す:(i)主観的疲労もしくは食欲不振に関連する、12カ月における非浮腫性の意図しない体重減少≧5%、もしくはBMI<20kg/m;(ii)1週間当たり少なくとも3回の疲労および過去2週間における少なくとも中程度に厄介な疲労、および(iii)スクリーニング来院時に施行したKCCQ-23のPhysical Limitations Domainで<60のスコア。
【0161】
抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片の投与は、HFrEFの1つ以上の徴候または症状を寛解させる。これらには、肉体的疲労/疲れ、息切れ、発作性夜間呼吸困難、浮腫/腫脹、体重の喪失、および肉体活動制約(例えば、例えば、6分間歩行距離試験によって測定される歩行困難、低減した体力であるがこれらに限定されない)が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、HFrEFの1つ以上の徴候または症状の寛解は、1つ以上のPROの、ベースライン(即ち、投与前)からの変化として測定される。PROの例には、KCCQ-23、Patient Global Impression of Severity(PGI-S)、Fatigue Severity Daily Diary、PROMIS-Fatigue 7a(「past 7 days」改修版)、Patient Global Impression of Change(PGI-C)および/またはAppetite Assessmentが含まれるがこれらに限定されない。
【0162】
Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire:KCCQは、心不全を有する参加者においてHRQLを評価する、自己申告型23項目アンケートである。項目は、肉体的制約、症状(頻度、重症度、および最近の経時変化)、QoL、社会的干渉および自己効力感を評価する。応答選択肢は、質問によって変動する。KCCQ内には、以下の10個のサマリースコアが存在する:肉体的制約、症状安定性、症状頻度、症状負荷、総症状スコア、自己効力感、生活の質、社会的制限、全体的サマリースコアおよび臨床的サマリースコア。生サマリースコアは、0~100のスケールに変換され、より高いスコアは、より良い健康状態を示す。
【0163】
Fatigue Severity Daily Diary:Fatigue Severity Daily Diaryは、疲労の重症度を測定する、毎日の自己申告型アンケートである。これは、患者を用いた定性的研究ならびに文献および他の既存の関連する尺度の再検討に基づいて開発された。この尺度は、研究参加者に、過去24時間にわたる自身の疲労の重症度を、0 - 「疲労なし」から10 - 「最悪の疲労」までの範囲の11ポイントのNRSで評価してもらう1つの質問からなる。
【0164】
Appetite Assessment:Appetite Assessmentは、食欲不振の重症度を測定する自己申告型アンケートである。これは、患者を用いた定性的研究ならびに文献および他の既存の関連する尺度の再検討に基づいて開発された。この尺度は、研究参加者に、過去7日間にわたる自身の食欲を、0 - 「食欲なし」から10 - 「非常に良好な食欲」までの範囲の11ポイントのNRSで評価してもらう1つの質問からなる。
【0165】
PROMIS Fatigue(Version 7a):PROMIS Fatigue 7aは、過去7日間における、疲れの軽度の主観的感覚から、人が日常活動を実行し、家族または社会的役割において正常に役割を果たす能力を減少させる可能性が高い圧倒的で衰弱性かつ持続的な意味での疲弊までの範囲の症状を評価する、自己申告型尺度である。
【0166】
短文形式の7Aは、研究参加者が1:「決してない」から5:「常に」までを評価する7つの項目からなる。7から35までの範囲の全体的生スコアが計算され、PROMISユーザーズマニュアルに提供された適用可能なスコア変換表を使用して、T-スコア(平均=50、SD=10)に変換され得る。
【0167】
Patient’s Global Impression of Severity(PGI-S):PGI-Sは、研究参加者に、過去14日間にわたる自身の疲労、心不全に起因する症状、および日常活動制約の重症度を、「なし」から「非常に重症」までの範囲の5ポイントの言葉による応答スケールで評価してもらう3つの質問からなる尺度である。PGI-Sは、標的患者集団における意味のある個体内変化を示す適切な閾値を生成するためのアンカー尺度としての使用のために、FDAによって推奨されている。
【0168】
Patient’s Global Impression of Change(PGI-C):PGI-Cは、研究参加者に、自身の疲労、心不全に起因する症状、および日常活動を行う能力における全体的変化を、「かなり良い」から「かなり悪い」までの範囲の、5ポイントの言葉による評価スケールで評価してもらう3つの質問からなる尺度である。PGI-Cは、標的患者集団における意味のある個体内変化を示す適切な閾値を生成するためのアンカー尺度としての使用のために、FDAによって推奨されている。
【0169】
6-Minute Walk Test(6MWT)
6MWTは、6分間の長さにわたって歩行した距離の測定を伴う最大下運動試験である。6MWD(メートルでの移動距離)は、運動に関与する複数の心肺および骨格筋系の統合的な全体的応答についての尺度を提供する。息切れおよび疲労重症度を評価するBorg疲労スケールは、6MWTの一部として、歩行距離評価の前および後に施行され得る。
【0170】
一部の実施形態では、抗GDF15抗体の投与は、(例えば、投与の1日、2、日、4日、1週間、5週間、7週間、10週間、15週間、20週間、21週間、22週間または25週間後)に、KCCQ-CSSにおけるベースラインからの変化を生じる。一部の実施形態では、抗GDF15抗体の投与は、KCCQ-CSS、全体的サマリースコア(OSS)、総症状スコア(TSS)および/または肉体的制約における、ベースラインからの変化を生じる。一部の実施形態では、抗GDF15抗体の投与は、1つ以上のPROの、ベースライン(即ち、投与前)からの少なくとも5ポイントの増加を生じる。一部の実施形態では、抗GDF15抗体の投与は、KCCQ-CSSの、ベースライン(即ち、投与前)からの少なくとも5ポイントの増加を生じる。一部の実施形態では、抗GDF15抗体の投与は、KCCQ-CSS、OSS、TSSおよび/または肉体的制約の、ベースライン(即ち、投与前)からの少なくとも5ポイントの増加を生じる。一部の実施形態では、抗GDF15抗体の投与は、6MWDにおけるベースラインからの変化を生じる。
【0171】
本明細書で開示される方法は、任意の抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。抗GDF15抗体の例は、当該分野で公知である(例えば、WO14100689、WO2015/196142およびWO2020/039321を参照のこと)。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、GDF15_001(HCDR-1:配列番号32、HCDR-2:配列番号165、HCDR-3:配列番号52、LCDR-1:配列番号95、LCDR-2:配列番号28、LCDR-3:配列番号9を含む)またはGDF15_0301(HCDR-1:配列番号179、HCDR-2:配列番号180、HCDR-3:配列番号181、LCDR-1:配列番号184、LCDR-2:配列番号185、LCDR-3:配列番号186を含む)を投与するステップを含む。
【0172】
本開示は、それを必要とする対象において、低減された駆出率を伴う心不全を処置するための方法を提供する。この方法は、治療有効量の抗GDF15抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含み、対象は、40%未満の/40%と等しいLVEF、2000ng/Lよりも高い/2000ng/Lと等しい血清GDF15レベル、75未満のKCCQ-CSSを有し、悪液質、疲労または機能的障害の証拠を示し;抗GDF15抗体の投与は、投与後と比較して、KCCQ-CSSにおけるベースライン(即ち、投与前)からの変化(例えば、少なくとも5ポイントの増加)を生じ、抗GDF15抗体は、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1;
(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2;
(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3;
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1;
(e)配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2;および
(f)配列番号52のaa配列を含むHCDR-3
を含む。
【0173】
一部の実施形態では、抗GDF15抗体は、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のアミノ酸配列を含むVLを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号164のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号162のアミノ酸配列を含むLCを含む。一部の実施形態では、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mgまたは500mgの抗GDF15抗体(例えば、GDF15_001)が、4週間毎に皮下投与される。一部の実施形態では、100mg、200mgまたは300mgの抗GDF15抗体(例えば、GDF15_001)が、4週間毎に皮下投与される。一部の実施形態では、300mgの抗GDF15抗体が、4週間毎に投与される。
【0174】
診断方法
本開示の抗GDF15抗体、抗体組成物および方法は、原発性ミトコンドリア筋症の診断およびその処置の評価のためのイムノアッセイおよび使用が含まれる、in vitroおよびin vivoの有用性を有する。これらの方法には、サンプル中のGDF15の存在を検出するための方法であって、GDF15を含むと疑われるサンプルを、GDF15に対して特異的な抗体と接触させるステップ、および抗体と結合したGDF15の存在を検出するステップを含み、それによって、サンプル中のGDF15を検出する、方法が含まれる。GDF15が固体支持体に結合され、サンプルがそれに添加されて、サンプル中のGDF15に抗体を結合させるアッセイが含まれるがこれに限定されない、抗体と結合したGDF15を検出するための方法が、当該分野で周知である。固体支持体に結合した抗体と同じまたはそれとは異なる第2のGDF15抗体が添加され、直接的標識化(即ち、第2の抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされる)によって、または例えば、第2の抗体の定常ドメインと反応し、検出可能な標識を含む、別の種由来の第3の抗体を添加することによって、検出され得る。したがって、アッセイは、PMMを有する対象からのサンプル中のGDF15の存在または非存在を検出するために使用され得る。
【0175】
別の実施形態では、本発明は、PMMを有する対象からのサンプル中のGDF15の存在を検出するためのキットであって、GDF15に対して特異的な抗体、アプリケーター、およびそれらの使用のための指導用材料を含む、キットを含む。
【0176】
本発明は、PMMを有する対象からのサンプル中のGDF15の濃度を決定するための方法であって、検出可能な標識にカップリングされたGDF15を含む標識された競合相手を提供するステップ;GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供するステップ;サンプル、抗体および標識された競合相手を組み合わせるステップであって、サンプル中のGDF15が、抗体への結合について、標識された競合相手と競合する、ステップ;ならびに標識の検出によって、抗体に結合していない標識された競合相手の量を測定することによって、このサンプル中のGDF15の濃度を決定するステップ、を含む方法もまた提供する。サンプルの非存在下で抗体に結合した標識された競合相手の量が、サンプルが添加された場合の抗体に結合した標識された競合相手の量と比較される。サンプルの存在下での結合した標識された競合相手の減少の量は、サンプル中に存在する標識されていないGDF15の量の指標であり、その結果、このアッセイは、PMMを有する対象からのサンプル中のGDF15の存在およびレベルを評価するために使用され得る。
【0177】
一実施形態では、本発明は、PMMを有する対象において、増加したレベルのGDF15と関連する疾患または障害に対する処置の有効性を評価するための方法であって、対象に処置を投与するステップ、および処置の前に対象から得られたサンプル中のGDF15のレベルを、処置の後に対象から得られた他の点では同一のサンプル中のGDF15のレベルと比較するステップ、を含み、サンプル中のGDF15のレベルが、GDF15特異的抗体を使用して評価され、さらに、処置の前に対象から収集されたサンプル中のGDF15のレベルと比較した、処置の後に対象から収集されたサンプル中のGDF15のより低いレベルが、処置の過程の有効性の指標である、方法を提供する。
【0178】
GDF15特異的抗体または標識された競合相手に関して、「標識された」という用語は、検出可能な物質を抗体または標識された競合相手にカップリングする(即ち、物理的に連結する)ことによる直接的標識化、ならびにそれを直接標識される別の試薬にカップリングすることによる、抗体または標識された競合相手の間接的標識化を含む。間接的標識化の一例には、蛍光標識した二次抗体を使用した一次抗体の検出が含まれる。本発明のポリペプチドの検出のためのin vitro技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光が含まれる。
【0179】
用語「生物学的サンプル」は、対象から単離された組織、細胞および生物学的流体、ならびにPMMを有する対象内に存在する組織、細胞および流体を含む意図である。
【0180】
本明細書に記載される抗体、標識された競合相手、および潜在的な治療的化合物は、様々な検出システムを用いたいくつかの他の均一および不均一イムノアッセイのいずれかとの使用のためにも適切である。
【0181】
組成物
本発明のGDF15抗体は、医薬組成物として製剤化され得る。医薬組成物は、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態の、薬学的に許容できる担体、賦形剤および/または安定剤(Remington:The Science and practice of Pharmacy、第21版、2005、Lippincott Williams and Wilkins、K.E.Hoover編)をさらに含み得る。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、投薬量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンが含まれる抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム(octadecyldimethylbenzyl ammonium chloride);塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;グルコース、マンノースもしくはデキストランが含まれる、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。薬学的に許容できる賦形剤は、本明細書にさらに記載される。
【0182】
本開示の医薬組成物は、本明細書に記載されるPD-1軸アンタゴニストおよび本明細書に記載されるGDF15阻害剤をさらに含み得る。一実施形態では、GDF15阻害剤は、抗GDF15抗体GDF15_001またはGDF15_297であり、PD-1軸アンタゴニストは、任意選択により、アベルマブ、PF-06801591(「ササンリマブ」および「RN-888」およびmAb7とも呼ばれ、全てWO2016/092419に開示されている)、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブおよびデュルバルマブからなる群から選択される。一実施形態では、PD-1軸アンタゴニストには、アベルマブは含まれない。
【0183】
本開示の医薬化合物には、1つ以上の薬学的に許容できる塩が含まれ得る。かかる塩の例には、酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、非毒性無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、ならびに非毒性有機酸、例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族ならびに芳香族スルホン酸などに由来するものが含まれる。塩基付加塩には、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、ならびに非毒性有機アミン、例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものが含まれる。
【0184】
本開示の医薬組成物は、薬学的に許容できる抗酸化剤もまた含み得る。薬学的に許容できる抗酸化剤の例には、以下が含まれる:(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0185】
本開示の医薬組成物において使用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、ならびに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが含まれる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンの使用によって、分散物の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0186】
これらの組成物は、アジュバント、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤もまた含み得る。微生物の存在の防止は、無菌化手順、ならびに種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めること、の両方によって確実にされ得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射可能な医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0187】
医薬組成物は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、高い薬物濃度に適切な、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは他の秩序立った構造として製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用によって、分散物の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることが適切である。注射可能な組成物の延長された吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0188】
無菌の注射可能な溶液は、上に列挙した成分のうち1つまたはその組み合わせと共に、適切な溶媒中に活性化合物を要求される量で取り込み、その後、必要に応じて、無菌化精密濾過することによって、調製され得る。
【0189】
一般に、分散物は、基本分散媒および上に列挙したものからの要求される他の成分を含む無菌のビヒクル中に活性化合物を取り込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、調製の好ましい方法は、その以前に無菌濾過された溶液から、活性成分プラス任意のさらなる所望の成分の粉末を得る、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0190】
本開示の医薬組成物は、点眼投与に適切な製剤で、調製、包装または販売され得る。かかる製剤は、例えば、水性または油性液体担体中の活性成分の0.1%~1.0%(w/w)溶液または懸濁物を例えば含む点眼薬の形態であり得る。かかる点眼薬は、緩衝剤、塩、または本明細書に記載されるさらなる成分のうち1つ以上の他のものをさらに含み得る。有用な他の点眼投与可能な製剤には、微結晶形態で、またはリポソーム調製物中に、活性成分を含むものが含まれる。
【0191】
本明細書で使用する場合、「さらなる成分」には、以下のうち1つ以上が含まれるがこれらに限定されない:賦形剤;表面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒および崩壊剤;結合剤;滑沢剤;甘味剤;香味剤;着色剤;防腐剤;生理学的に分解可能な組成物、例えば、ゼラチン;水性ビヒクルおよび溶媒;油性ビヒクルおよび溶媒;懸濁化剤;分散剤または湿潤剤;乳化剤、乳化破壊剤(demulcent);緩衝液;塩;増粘剤;フィラー;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定化剤;および薬学的に許容できるポリマー性または疎水性材料。本開示の医薬組成物中に含められ得る他の「さらなる成分」は、当該分野で公知であり、例えば、本明細書で参照によって組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Genaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1985)に記載されている。
【0192】
一実施形態では、GDF15抗体またはその抗原結合性部分は、約5~6の範囲のpHで、酢酸ナトリウム、ポリソルベート80および塩化ナトリウムと共に、5mg/mL、または一部の実施形態では、約10mg/mL、または一部の実施形態では、約15mg/mL、または一部の実施形態では、約20mg/mLの抗体、または一部の実施形態では、約25mg/mL、または一部の実施形態では、約50mg/mLを含む無菌の水溶液として、静脈内製剤で投与される。一部の実施形態では、静脈内製剤は、pH5.5で、20mM酢酸ナトリウム、0.2mg/mLポリソルベート80および140mM塩化ナトリウムと共に、5または10mg/mLの抗体を含む、無菌の水溶液である。さらに、抗体またはその抗原結合性部分を含む溶液は、多くの他の化合物の中でも、ヒスチジン、マンニトール、スクロース、トレハロース、グリシン、ポリ(エチレン)グリコール、EDTA、メチオニンおよびそれらの任意の組み合わせ、ならびに当該分野で公知の多くの他の化合物を含み得る。
【0193】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、以下の構成要素を含む:pH5.8で、50mg/mLの本開示のGDF15抗体または抗原結合性部分、20mMヒスチジン、8.5%スクロースおよび0.02%ポリソルベート80、0.005%EDTA;別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、以下の構成要素を含む:pH5.8で、100mg/mLの本開示のGDF15抗体または抗原結合性部分、10mMヒスチジン、5%スクロースおよび0.01%ポリソルベート80。この組成物は、液体製剤として、または凍結乾燥された粉末として、提供され得る。粉末が最大体積で再構成される場合、組成物は、同じ製剤を保持する。あるいは、粉末は、半分体積で再構成され得、その場合、組成物は、pH5.8で、100mgの本開示のGDF15抗体またはその抗原結合性部分、20mMヒスチジン、10%スクロースおよび0.02%ポリソルベート80を含む。
【0194】
一実施形態では、用量の一部は、静脈内ボーラスによって投与され、残りは、抗体製剤の注入によって投与される。例えば、GDF15抗体またはその抗原結合性部分の0.01mg/kg静脈内注射は、ボーラスとして与えられ得、抗体用量の残りは、静脈内注射によって投与され得る。所定の用量のGDF15抗体またはその抗原結合性部分は、例えば、1時間半~2時間~5時間の期間にわたって、投与され得る。
【0195】
治療剤に関して、この薬剤が例えば小分子である場合、これは、当該分野で周知のように、例えば、生理学的に許容できるカチオンまたはアニオンと組み合わせた、生理学的に許容できるエステルまたは塩の形態で、医薬組成物中に存在し得る。
【0196】
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で公知のまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、かかる調製方法は、活性成分を、担体または1つ以上の他の補助成分と関連させるステップ、および次いで、必要な場合または望ましい場合、産物を所望の単回用量単位または複数用量単位へと成形または包装するステップを含む。
【0197】
一実施形態では、本開示の組成物は、エンドトキシンおよび/または関連の発熱性物質を実質的に含まない、発熱物質を含まない製剤である。エンドトキシンには、微生物の内側に制限される毒素が含まれ、これは、微生物が破壊または死亡した場合に放出される。発熱性物質には、細菌および他の微生物の外膜からの、発熱誘導性の熱安定性物質(糖タンパク質)もまた含まれる。これらの物質は共に、ヒトに投与されると、発熱、低血圧およびショックを引き起こし得る。潜在的な有害作用に起因して、静脈内投与される医薬薬物溶液から、低い量のエンドトキシンでさえも除去することが有利である。食品医薬品局(「FDA」)は、静脈内薬物適用のための、単一の1時間の期間における、体重1キログラム当たり1用量当たり、5エンドトキシン単位(EU)の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention、Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000))。治療的タンパク質が、体重1キログラム当たり数百または数千ミリグラムの量で投与される場合、微量のエンドトキシンでさえも除去することが有利である。一実施形態では、組成物中のエンドトキシンおよび発熱物質のレベルは、10EU/mg未満、または5EU/mg未満、または1EU/mg未満、または0.1EU/mg未満、または0.01EU/mg未満、または0.001EU/mg未満である。別の実施形態では、組成物中のエンドトキシンおよび発熱物質のレベルは、約10EU/mg未満、または約5EU/mg未満、または約1EU/mg未満、または約0.1EU/mg未満、または約0.01EU/mg未満、または約0.001EU/mg未満である。
【0198】
一実施形態では、本開示は、組成物を投与することを含み、この投与は、経口、非経口、筋肉内、鼻腔内、腟、直腸、舌、舌下、頬、頬内、静脈内、皮膚、皮下または経皮である。
【0199】
別の実施形態では、本開示は、他の治療、例えば、手術、化学療法、ホルモン療法、生物学的治療、免疫療法または放射線治療と組み合わせて、組成物を投与することをさらに含む。
【0200】
投薬量
本開示のGDF15抗体またはその抗原結合性部分を含む医薬組成物または無菌の組成物を調製するために、抗体は、薬学的に許容できる担体または賦形剤と混合される。治療剤および診断剤の製剤は、例えば、凍結乾燥された粉末、スラリー、水溶液、ローションまたは懸濁物の形態の、生理学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製され得る(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、McGraw-Hill、New York、N.Y.;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott,Williams,and Wilkins、New York、N.Y.;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、Marcel Dekker、NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems、Marcel Dekker、NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety、Marcel Dekker,Inc.、New York、N.Y.を参照のこと)。
【0201】
治療薬のために投与レジメンを選択することは、実体の血清または組織ターンオーバー速度、症状のレベル、実体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞のアクセス可能性が含まれるいくつかの因子に依存する。ある特定の実施形態では、投与レジメンは、許容できるレベルの副作用と合致した、患者に送達される治療薬の量を最大化する。したがって、送達される生物製剤の量は、特定の実体、および処置されている状態の重症度に一部依存する。抗体、サイトカインおよび小分子の適切な用量を選択する際のガイダンスは、入手可能である(例えば、Wawrzynczak、1996、Antibody Therapy、Bios Scientific Pub.Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)、1991、Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis、Marcel Dekker、New York、N.Y.;Bach(編)、1993、Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases、Marcel Dekker、New York、N.Y.;Baertら、2003、New Engl.J.Med.348:601~608;Milgromら、1999、New Engl.J.Med.341:1966~1973;Slamonら、2001、New Engl.J.Med.344:783~792;Beniaminovitzら、2000、New Engl.J.Med.342:613~619;Ghoshら、2003、New Engl.J.Med.348:24~32;Lipskyら、2000、New Engl.J.Med.343:1594~1602を参照のこと)。
【0202】
適切な用量の決定は、例えば、当該分野で公知の、または処置に影響を与えると疑われるもしくは処置に影響を与えると予測される、パラメーターまたは因子を使用して、臨床医によってなされる。一般に、用量は、最適な用量よりもいくらか少ない量で開始し、任意の負の副作用と比較して所望のまたは最適な効果が達成されるまで、その後小さい増分ずつ増加される。
【0203】
「GDF15のレベルを低減させる」または「GDF15のレベルを低下させる」は、これらの用語が本明細書で使用される場合、任意の治療的介入の前の遊離GDF15のレベルと比較して、遊離GDF15のレベルを低下させることを意味する。本明細書で使用する場合、「遊離GDF15」は、結合していない、またはさもなくば別の分子(例えば、血漿中などに存在する抗体または結合分子)との複合体中に存在しないGDF15を意味する。
【0204】
GDF15のレベルには、対象における遊離GDF15のレベルが含まれ、このレベルは、本明細書で開示される方法または当該分野で公知の遊離GDF15のレベルを評価するための任意の他の方法を使用して、評価される。
【0205】
一実施形態では、遊離GDF15のレベルは、本発明の抗体の投与前の対象におけるGDF15のレベルと比較して低減される。一実施形態では、遊離GDF15のレベルは、増加したレベルの遊離GDF15と関連するまたはそれによって媒介される疾患、障害または状態に対象が罹患していないことと関連するまたはそれを示す標準的なレベルの遊離GDF15と比較して低減される。一実施形態では、遊離GDF15の標準的なまたは参照のレベルは、血漿中で約0.05ng/mL~約3ng/mLである。別の実施形態では、遊離GDF15の標準的なまたは参照のレベルは、その下限値が、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9ng/mLからなる群から選択され、その上限値が、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9および3.0ng/mLからなる群から選択される範囲内である。さらなる実施形態では、遊離GDF15の標準的なまたは参照のレベルは、1ng/mL未満、好ましくは0.9ng/mL未満、さらにより好ましくは0.8ng/mL未満、なおより好ましくは0.7ng/mL未満、さらにより好ましくは0.6ng/mL未満、なおより好ましくは0.5ng/mL未満、さらにより好ましくは0.4ng/ml未満である。一実施形態では、遊離GDF15のレベルは、血漿中のレベルである。
【0206】
本発明は、0.5ng/mL未満の遊離GDF15レベルに限定されない;そのかわり、治療レベルは、特定の対象について、0.5ng/mLよりも低くても高くてもよいことが、当業者によって理解される。したがって、本発明は、増加したレベルの遊離GDF15によって媒介されるまたはそれと関連する検出可能な有害作用の減少またはその完全な欠如が存在するレベルまで、遊離GDF15のレベルを低減させることを包含する。かかる効果には、悪液質、減少した食物摂取、減少した食欲、減少した体重、体重減少、減少した体脂肪量、減少した除脂肪量などが含まれるがこれらに限定されない。
【0207】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投薬量」、「有効用量」、「有効量」または「治療有効量」は、任意の1つ以上の有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、リスクを排除もしくは低減させること、重症度を低下させること、または疾患、その合併症、および疾患の発達の間に存在する中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的および/もしくは行動学的症状を含む、疾患の開始を遅延させること、が含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、検出可能な臨床結果、例えば、体重減少の速度を低減もしくは減少させること、または活性GDF15の高い発現から生じる1つ以上の症状(例えば、減少した食物摂取、減少した食欲、減少した体重、体重減少、減少した体脂肪量および減少した除脂肪量)を低減させること、疾患を処置するために要求される他の薬物療法の用量を減少させること、別の薬物療法の効果を増強すること、および/もしくは患者の疾患の進行を遅延させること、が含まれる。有効投薬量は、1つ以上の投与で投与され得る。本発明の目的のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、予防的処置または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効投薬量」は、1つ以上の治療剤を投与する観点から検討され得、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合に、有効量で与えられたとみなされ得る。
【0208】
一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の有効投薬量は、健康なヒトボランティアおよび罹患患者における遊離GDF-15の血漿濃度に基づく。全体の有効な用量は、罹患患者における遊離GDF-15の初期血漿濃度に基づく。一実施形態では、有効投薬量は、投薬間隔全体にわたって、定常状態で、対象における遊離GDF15レベルを、健康なヒトボランティアにおいて測定された同じまたはより低い平均レベルまで低下または低減させる能力を有する投薬量であり得る。別の実施形態では、有効投薬量は、投薬間隔全体にわたって、定常状態で、患者における遊離GDF15レベルを、0.5ng/mL未満まで低下または低減させる能力を有する投薬量であり得る。なお別の実施形態では、有効投薬量は、投薬間隔を通じて、定常状態で、対象における遊離GDF15レベルを、0.5ng/mL未満まで低下または低減させることができる、70kgの対象に与えられる投薬量であり得る。
【0209】
「個体」、「患者」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくは、ヒトである。哺乳動物には、家畜、スポーツ動物(sport animal)、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットもまた含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、個体は、その受容体へのGDF15結合およびそれによって媒介されるシグナル伝達によって媒介されるまたはそれと関連する疾患、障害または状態のリスクがあるとみなされる。ある特定の実施形態では、対象は、がん、化学療法、がん免疫学治療と組み合わせた化学療法、慢性心不全、うっ血性心不全、サルコペニア、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコペニアおよび慢性腎臓疾患(CKD)と関連する悪液質を有する。
【0210】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体もしくはその抗原結合性断片または医薬組成物の約0.025mg/kg~約20mg/kgの初期用量を投与することを含む。初期用量には、1つ以上の引き続く用量が後に続き得る。一部の実施形態では、1つ以上の引き続く用量は、毎週、1週間おき、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎または12週間毎の少なくともいずれかで投与され得る。
【0211】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の約0.25mg~約2000mgの固定用量を投与することを含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、毎週、1週間おき、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎または12週間毎に投与される。
【0212】
他の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の約0.1~約60mgの固定用量を毎週投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の固定用量は、毎週投与される約2mg、約5mg、約7mg、約10mg、約12mg、約15mg、約25mg、約40mgおよび約50mgである。
【0213】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の約0.1~約130mgの固定用量を1週間おきに投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の固定用量は、隔週で投与される約5mg、約12mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約60mg、約90mgおよび約125mgである。
【0214】
一部の実施形態では、方法または使用は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の約0.1~約400mgの固定用量を4週間毎に投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の固定用量は、4週間毎に投与される約15mg、約40mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約200mg、約300mgおよび約385mgである。
【0215】
一部の実施形態では、抗GDF15抗体は、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、または4カ月毎に1回、5カ月毎に1回、6カ月毎に1回、7カ月毎に1回、8カ月毎に1回、9カ月毎に1回、10カ月毎に1回、11カ月毎に1回または12カ月毎に1回投与される。
【0216】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約0.1mgと約1000mgとの間の用量で、1週間に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約1mgと約500mgとの間の用量で、1週間に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mgおよび約500mgからなる群から選択される用量で、1週間に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約0.1mgと約500mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約10mgと約250mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約5mg、約12mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約60mg、約90mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mgおよび約500mgからなる群から選択される用量で、2週間毎に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約0.1mgと約500mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約10mgと約500mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、約15mg、約40mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約200mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mgおよび約500mgからなる群から選択される用量で、4週間毎に1回投与される。
【0217】
キット
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含むキットまたは製造品、および使用のための指示もまた提供する。したがって、一部の実施形態では、コンテナ、コンテナ内の抗GDF15抗体を含む組成物、およびPMMを有する対象の処置のために治療有効量の抗GDF15抗体を投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品が提供される。
【0218】
ある特定の実施形態では、キットは、乾燥タンパク質を有する第1のコンテナおよび水性製剤を有する第2のコンテナの両方を含み得る。ある特定の実施形態では、単一および複数チャンバーの事前充填シリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を含むキットが含まれる。
【0219】
一実施形態では、本発明は、サンプル中のGDF15の濃度を決定するためのキットであって、検出可能な標識にカップリングされたGDF15を含む標識された競合相手;GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片;アプリケーター;およびそれらの使用のための指導用材料、を含むキットを提供する。
【0220】
本発明は、試験サンプル中のGDF15の量を決定するための競合的イムノアッセイキットであって、GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片;検出可能な標識にコンジュゲートされたGDF15を含む標識された競合相手を含み;標識された競合相手が、抗体との結合について、試験サンプル中のGDF15と競合し、さらに、標識が、試験サンプル中のGDF15の量を示すシグナルを提供する、競合的イムノアッセイキットをさらに提供する。例示的な実施形態では、GDF15を含まない他の点では同一のサンプル中の抗体によって結合された標識と比較した、試験サンプル中の抗体によって結合された標識における減少は、試験サンプル中のGDF15の量の指標である。
【0221】
一実施形態では、本発明は、サンプル中のGDF15の濃度を決定するためのキットであって、検出可能な標識にカップリングされたGDF15を含む標識された競合相手;GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片;アプリケーター;およびそれらの使用のための指導用材料、を含むキットを提供する。
【0222】
代替的な実施形態では、本発明は、悪液質のリスクがあるヒト患者を同定するためのキットであって、GDF15特異的抗体またはその抗原結合性断片、アプリケーター、およびそれらの使用のための指導用材料、を含むキットを提供する。
【0223】
一部の実施形態では、第1のコンテナ、このコンテナ内の抗GDF15抗体を含む組成物、第2のコンテナ、第2のコンテナ内のPD-1軸結合性アンタゴニストを含む組成物、ならびにそれを必要とする患者の処置のために治療有効量の抗GDF15抗体およびPD-1軸結合性アンタゴニストを投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品が提供される。
【0224】
本発明は、第1のコンテナ、このコンテナ内の相乗的治療有効量の抗GDF15抗体を含む組成物、第2のコンテナ、第2のコンテナ内の治療有効量のPD-1軸結合性アンタゴニストを含む組成物、ならびにそれを必要とする患者の組み合わせ処置のために相乗的治療有効量の抗GDF15抗体およびPD-1軸結合性アンタゴニストを投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品を包含する。
【0225】
一部の態様では、PD-1軸結合性アンタゴニストは、PD-1抗体またはその抗原結合性断片、PD-L1抗体またはその抗原結合性断片、およびPD-L2抗体またはその抗原結合性断片からなる群から選択される。一部の態様では、PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、スパルタリズマブ、チスレリズマブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514、セミプリマブおよびPF-06801591(ササンリマブ、RN888)からなる群から選択される。他の態様では、PD-L1抗体は、任意選択により、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブからなる群から選択される。他の態様では、PD-L1抗体は、アベルマブではない。
【0226】
他の実施形態では、第1のコンテナ、このコンテナ内の抗GDF15抗体を含む組成物、第2のコンテナ、第2のコンテナ内の抗がん治療剤を含む組成物、ならびにそれを必要とする患者の処置のために治療有効量の抗GDF15抗体および抗がん治療剤を投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品が提供される。一部の態様では、抗がん治療剤は、抗CD40抗体である。
【0227】
本発明は、第1のコンテナ、このコンテナ内の相乗的治療有効量の抗GDF15抗体を含む組成物、第2のコンテナ、第2のコンテナ内の治療有効量の抗がん治療剤を含む組成物、ならびにそれを必要とする患者の組み合わせ処置のために相乗的治療有効量の抗GDF15抗体および抗がん治療剤を投与するための指示を含む添付文書、を含むキットまたは製造品を包含する。一部の実施形態では、抗がん治療剤は、抗CD40抗体である。
【0228】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片の使用に関する指示は、一般に、意図した処置のための投薬量、投薬スケジュール、および投与の経路に関する情報を含む。コンテナは、単位用量、バルク包装(例えば、多用量包装)またはサブ単位用量であり得る。本発明のキット中に供給される指示は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キット中に含まれる紙シート)上の書面による指示であるが、機械可読指示(例えば、磁気または光学保存ディスク上で運搬される指示)もまた許容できる。
【0229】
本発明のキットは、適切な包装中にある。適切な包装には、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性包装(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)などが含まれるがこれらに限定されない。特定のデバイス、例えば、インヘラー、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)または注入デバイス、例えば、ミニポンプと組み合わせた使用のための包装もまた企図される。キットは、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、コンテナは、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。コンテナもまた、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、コンテナは、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。コンテナは、第2の薬学的に活性な薬剤をさらに含み得る。
【0230】
キットは、任意選択により、さらなる構成要素、例えば、緩衝液および説明情報を提供し得る。通常、キットは、コンテナ、およびコンテナ上にあるまたはそれと関連したラベルまたは添付文書を含む。
【0231】
定義
「約」または「およそ」は、本明細書で他に定義されない限り、測定可能な数値変数と併せて使用される場合、変数の示された値、および示された値の実験誤差(例えば、平均についての95%信頼区間)または示された値の10パーセントのいずれか大きい方以内の、変数の全ての値を指す。数値範囲は、範囲を規定する数字を含む。
【0232】
用語「同一性」は、当該分野で公知のように、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列間の関連性を指す。当該分野では、「同一性」は、場合によっては、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のストリング間の一致によって決定され得る、ポリペプチドまたは核酸分子配列間の配列関連の程度もまた意味する。「同一性」は、特定の数理モデルのコンピュータープログラム(即ち、「アルゴリズム」)によって扱われるギャップアラインメントを用いて、2つ以上の配列間の同一の一致のパーセントを測定する。
【0233】
用語「類似性」は、関連する概念であるが、「同一性」とは対照的に、同一の一致および保存的置換一致の両方を含む類似性の尺度を指す。保存的置換は、ポリペプチドには当てはまり、核酸分子には当てはまらないので、類似性は、ポリペプチド配列比較のみを扱う。2つのポリペプチド配列が、例えば、20個のうち10個の同一なアミノ酸を有し、残りが全て非保存的置換である場合、パーセント同一性および類似性は、共に50%である。同じ例において、保存的置換が存在する5つのさらなる位置が存在する場合、パーセント同一性は、50%のままであるが、パーセント類似性は、75%(20個のうち15個)である。したがって、保存的置換が存在する場合、2つのポリペプチド配列間の類似性の程度は、その2つの配列間のパーセント同一性よりも高い。
【0234】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢のみを指すこと、または選択肢が相互に排他的であることを指すことが明確に示されない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢および「および/または」のみを指す定義を支持する。本明細書で使用する場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、明確に他が示されない限り、1つ以上を意味し得る。特許請求の範囲において本明細書で使用する場合、単語「含む(comprising)」と併せて使用される場合、単語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは1つよりも多くを意味し得る。本明細書で使用する場合、「別の」は、少なくとも第2のものまたはそれ以上を意味し得る。本明細書で他に定義されない限り、本発明と併せて使用される科学用語および技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。単語「含む(comprises/comprising)」および単語「有する(having)/含む(including)」は、本発明に関して本明細書で使用される場合、述べられた特色、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定するために使用されるが、1つ以上の他の特色、整数、ステップ、構成要素またはそれらの群の存在または追加を除外しない。
【0235】
用語「がん」、「がん性」または「悪性」は、調節されない細胞成長によって典型的には特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すまたは記述する。がんの例には、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫および肉腫が含まれるがこれらに限定されない。かかるがんのより特定の例には、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸(管)がん、腎がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽腫、膵がん、多形神経膠芽腫、子宮頸がん、脳腫瘍、胃がん(stomach cancer)、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸癌および頭頸部がんが含まれる。がんの別の特定の例には、腎細胞癌が含まれる。
【0236】
用語「処置する」は、本明細書で使用する場合、他に示されない限り、かかる用語が適用される障害もしくは状態、またはかかる障害もしくは状態の1つ以上の症状を逆転させること、軽減すること、その進行を阻害すること、またはそれを予防することを意味する。
【0237】
本発明に従って処置される「患者」には、例えば、ヒト、サルまたは他の下位霊長類、ウマ、イヌ、ウサギ、モルモットまたはマウスであるがこれらに限定されない、任意の温血動物が含まれる。例えば、患者は、ヒトである。医学分野の当業者は、非小細胞肺がんに罹患しており処置を必要としている個々の患者を容易に同定することができる。
【0238】
用語「処置レジメン」、「投薬プロトコール」および投薬レジメンは、本発明の組み合わせ中の各治療剤の用量および投与のタイミングを指すために、相互交換可能に使用される。
【0239】
「寛解させる」は、処置を投与しない場合と比較した、1つ以上の症状の低下または改善を意味する。「寛解させる」は、症状の持続時間における短縮または低減もまた含む。
【0240】
医薬による処置に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」および類似の言い回しは、疾患または障害、例えばPMMのリスクがある、またはそれを患っている患者に付与される、臨床的または治療的利益を指す。一実施形態では、かかる利益には、以下のうちいずれか1つ以上が含まれる:客観的応答(完全を含む)を生じさせること。
【0241】
本明細書で使用する場合、「~と組み合わせた」または「~と併せた」は、別の処置モダリティに加えた、1つの処置モダリティの投与を指す。このように、「~と組み合わせた」または「~と併せた」は、個体への他の処置モダリティの投与の前、その間またはその後の、1つの処置モダリティの投与を指す。
【0242】
「低用量」は、本明細書で使用する場合、臨床設定において典型的に使用される量または用量よりも低い、物質、薬剤、化合物または組成物の量または用量を指す。
【0243】
用語「相加的」は、2つの化合物、構成要素または標的化された薬剤の組み合わせの結果が、各個々の化合物、構成要素または標的化された薬剤の合計以下であることを意味するために使用される。用語「相加的」は、各個々の化合物、構成要素または標的化された薬剤の使用を超える、処置されている疾患状態または障害における改善が存在しないことを意味する。
【0244】
用語「シナジー」または「相乗的」は、2つの化合物、構成要素または標的化された薬剤の組み合わせの効果が、各薬剤が単独で提供する効果の合計よりも大きいことを意味するために使用される。用語「シナジー」または「相乗的」は、各個々の化合物、構成要素または標的化された薬剤の別々の使用を超える、処置されている疾患状態または障害における改善が存在することを意味する。処置されている疾患状態または障害におけるこの改善は、「相乗的効果」または「相乗的治療効果」である。「相乗的量」、「相乗的有効量」または「相乗的治療有効量」は、組み合わせて投与された場合に相乗的効果を生じる化合物、構成要素または標的化された薬剤の量であり、「相乗的」は、本明細書で定義される。2つ以上の構成要素間の相乗的相互作用を決定すると、効果のための最適な範囲および効果のための各構成要素の絶対的用量範囲が、処置を必要とする患者への、異なるw/w(重量/重量)比範囲および用量にわたる構成要素の投与によって断定的に測定され得る。しかし、in vitroモデルまたはin vivoモデルにおけるシナジーの観察は、ヒトおよび他の種における効果を予測し得、in vitroモデルまたはin vivoモデルは、本明細書に記載されるように、相乗的効果を測定するために存在し、かかる研究の結果は、ヒトおよび他の種において要求される有効用量および血漿濃度比範囲ならびに絶対的用量および血漿濃度を、薬物動態学的/薬力学的方法の適用によって予測するためにも使用され得る。
【0245】
非限定的な実施形態
本発明は、GDF15に特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片を使用してミトコンドリア筋症を予防、寛解および/または処置するための方法を提供する。当業者は、慣用的にすぎない実験を使用して、本明細書に記載される発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を認識する、またはそれを確認することができる。かかる等価物は、以下の実施形態(E)によって包含される意図である。
【0246】
E1.原発性ミトコンドリア筋症(PMM)を予防、寛解および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、GDF-15に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、方法。
【0247】
E2.原発性ミトコンドリア筋症(PMM)を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、GDF-15に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、方法。
【0248】
E3.原発性ミトコンドリア筋症が、リー症候群、カーンズ・セイヤー症候群、アルパーズ・フッテンロッヒャー症候群、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様エピソードを伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS)ならびに運動失調ニューロパチー症候群からなる群から選択される、E1に記載の方法。
【0249】
E4.投与が、投与前と比較して、PMMの1つ以上の徴候または症状における改善を生じる、E1からE3のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
E5.PMMの1つ以上の徴候または症状が、肉体的疲労、筋力低下および/または運動耐容能を含む、E4に記載の方法。
【0251】
E6.PMMの1つ以上の徴候または症状における改善が、増加した体重増加、増加した除脂肪筋肉量、増加した骨格筋量、回復した筋強度、および/または運動能力における改善を含む、E4に記載の方法。
【0252】
E7.対象が、悪液質、心不全および/またはがんを有さない、E1からE9のいずれか1つに記載の方法。
【0253】
E8.対象が、悪液質、心不全および/またはがんを有する、E1からE9のいずれか1つに記載の方法。
【0254】
E9.対象が、対照対象と比較して、異常なレベルの1つ以上のエネルギーバイオマーカーを示す、E8に記載の方法。
【0255】
E10.エネルギーバイオマーカーが、乳酸(乳酸塩)レベル;ピルビン酸(ピルビン酸塩)レベル;乳酸塩/ピルビン酸塩比;クレアチンリン酸レベル;NADH(NADH+H)またはNADPH(NADPH+H)レベル;NADまたはNADPレベル;ATPレベル;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;総補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型チトクロムCレベル;還元型チトクロムCレベル;酸化型チトクロムC/還元型チトクロムC比;アセト酢酸塩レベル;ベータ-ヒドロキシ酪酸塩レベル;アセト酢酸塩/ベータ-ヒドロキシ酪酸塩比;8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)レベル;反応性酸素種のレベル;酸素消費量(VO)、二酸化炭素放出量(VCO)および呼吸商(VCO/VO)からなる群から選択される、E9に記載の方法。
【0256】
E11.対象が、単離された抗体またはその抗原結合性断片の投与前に、上昇したGDF15のレベルおよび/または活性を有する、E1からE10のいずれか1つに記載の方法。
【0257】
E12.対象が、投与前と比較して、単離された抗体またはその抗原結合性断片の投与後に、低減されたGDF15のレベルおよび/または活性を有する、E1からE11のいずれか1つに記載の方法。
【0258】
E13.GDF15の活性が、
(a)GFRALの結合を増加させること;
(b)食物摂取を減少させること;
(c)ボディマスを減少させること;
(d)筋肉量を減少させること;
(e)体脂肪量を減少させること;
(f)RETを活性化すること;
(g)ERKのリン酸化(pERK)を増加させること;および
(h)リボソームタンパク質S6(S6)のリン酸化を増加させること
(i)AKTのリン酸化を増加させること;
(j)MAPKのリン酸化を増加させること;
(k)PLC-γ1のリン酸化を増加させること;
(l)疲労を増加させること;および
(m)身体能力/肉体活動を減少させること
からなる群から選択される、E11またはE12に記載の方法。
【0259】
E14.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号21、34、44、53、60、68、73、80、86、93、99、106、112、120、127、136、142、148、155、161および166からなる群のうち1つのHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1からE13のいずれか1つに記載の方法。
【0260】
E15.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号11、30、39、49、56、64、71、77、83、90、96、103、109、115、123、131、139、144、151、158および163からなる群のうち1つのLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE14のいずれか1つに記載の方法。
【0261】
E16.抗体またはその抗原結合性断片が、(a)~(f):
(a)配列番号7、27、36、46、55、62、82、88、95、101、129、138、150および157からなる群から選択されるLCDR-1、
(b)配列番号8、28、37、47、70、108、114、122および130からなる群から選択されるLCDR-2、
(c)配列番号9、29、38、48、63、76、89および102からなる群から選択されるLCDR-3、
(d)配列番号17、32、41、58、66、117、125、133および153からなる群から選択されるHCDR-1、
(e)配列番号18、33、42、51、59、67、85、92、98、105、118、126、134、141、146および165からなる群から選択されるHCDR-2、
(f)配列番号1、19、43、52、79、111、119、135、147、154および160からなる群から選択されるHCDR-3
のうち1つ以上を含む、E1からE15のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
E17.抗体またはその抗原結合性断片が、i)アミノ酸配列GYTFXYNIDを含むHCDR-1であって、式中、XがSまたはTであり、XがSまたはDである、HCDR-1;ii)アミノ酸配列XINPXGXAXQKFQGを含むHCDR-2であって、式中、XがGまたはQであり;XがIまたはNであり;XがFまたはNであり;XがTまたはLであり;XがFまたはNであり;XがYまたはFであり、XがNまたはAである、HCDR-2;およびiii)アミノ酸配列EX10ITTX11GAMDX12を含むHCDR-3であって、式中、X10がAまたはQであり;X11がVまたはIであり;X12がHまたはYである、HCDR-3、を含む、E1からE16のいずれか1つに記載の方法。
【0263】
E18.抗体またはその抗原結合性断片が、i)アミノ酸配列RXSQXYLAを含むLCDR-1であって、式中、XがTまたはAであり、XがSまたはNであり、XがVまたはLであり、XがHまたはSであり、XがNまたはSである、LCDR-1;ii)アミノ酸配列DAXRAXを含むLCDR-2であって、式中、XがSまたはKであり;XがTまたはNであり;XがDまたはTである、LCDR-2;およびiii)アミノ酸配列QQFX1011PX12Tを含むLCDR-3であって、式中、XがWまたはSであり;X10がSまたはNであり;X11がWまたはDであり;X12がWまたはYである、LCDR-3、を含む、E1からE17のいずれか1つに記載の方法。
【0264】
E19.抗体またはその抗原結合性断片が、以下:
(a)配列番号174のアミノ酸配列を含むLCDR-1、
(b)配列番号175のアミノ酸配列を含むLCDR-2、
(c)配列番号176のアミノ酸配列を含むLCDR-3、
(d)配列番号171のアミノ酸配列を含むHCDR-1、
(e)配列番号172のアミノ酸配列を含むHCDR-2、
(f)配列番号173のアミノ酸配列を含むHCDR-3
のうち1つ以上を含む、E1からE18のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
E20.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号34、106、148、155および166からなる群から選択される少なくとも1つの配列のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1からE19のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
E21.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号30、103、144、151および163からなる群から選択される少なくとも1つの配列のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE20のいずれか1つに記載の方法。
【0267】
E22.抗体またはその抗原結合性断片が、(a)~(f)
(a)配列番号27、88、95、101および150からなる群から選択されるLCDR-1
(b)配列番号8、28および108からなる群から選択されるLCDR-2
(c)配列番号9、29、38、48および102からなる群から選択されるLCDR-3
(d)配列番号32、41および153からなる群から選択されるHCDR-1
(e)配列番号33、105、146および165からなる群から選択されるHCDR-2
(f)配列番号19、52、147および154からなる群から選択されるHCDR-3
のうち1つ以上を含む、E1からE21のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
E23.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166のHCDR-1、HCDR-2およびHCDR-3配列を含む、E1からE22のいずれか1つに記載の方法。
【0269】
E24.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号163のLCDR-1、LCDR-2およびLCDR-3配列を含む、E1からE23のいずれか1つに記載の方法。
【0270】
E25.抗体またはその抗原結合性断片が、以下:
(a)配列番号95の配列を含むLCDR-1、
(b)配列番号28の配列を含むLCDR-2、
(c)配列番号9の配列を含むLCDR-3、
(d)配列番号32の配列を含むHCDR-1、
(e)配列番号165の配列を含むHCDR-2、および
(f)配列番号52の配列を含むHCDR-3
のうち1つ以上を含む、E1からE24のいずれか1つに記載の方法。
【0271】
E26.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2、配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3、配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1、配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2および配列番号52のアミノ酸配列を含むHCDR-3を含む、E1からE25のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
E27.抗体またはその抗原結合性断片が、以下の置換:
(a)ヒト生殖系列VL配列の対応する残基への、LCDR-1中の1、2、3、4、5または6個の置換、
(b)ヒトVL生殖系列配列の対応する残基への、LCDR-2中の1、2、3、4または5個の置換、
(c)ヒト生殖系列VL配列の対応する残基への、LCDR-3中の1、2、3、4、5または6個の置換、
(d)ヒト生殖系列VH配列の対応する残基への、HCDR-1中の1個の置換、
(e)ヒト生殖系列VH配列の対応する残基への、HCDR-2中の1、2、3、4、5、6、7または8個の置換
のうち1つ以上を含む、E1からE26のいずれか1つに記載の方法であって、ヒト生殖系列VL配列が、IGKV1-1201、IGKV1-1302、IGKV1-3301、IGKV1-3901、IGKV1-501、IGKV3-1101、IGKV3-1501、IGKV3-2001、IGKV3D-2002およびIGKV4-101からなる群から選択され、ヒト生殖系列VHが、IGHV1-202、IGHV1-301、IGHV1-4601、IGHV1-6901、IGHV1-6902、IGHV1-801、IGHV3-1301、IGHV3-2301、IGHV3-2304、IGHV3-3001、IGHV3-3018、IGHV5-10-101、IGHV5-10-104およびIGHV5-5101からなる群から選択される、方法。
【0273】
E28.抗体またはその抗原結合性断片が、IGHV1-202、IGHV1-301、IGHV1-4601、IGHV1-6901、IGHV1-6902、IGHV1-801、IGHV3-1301、IGHV3-2301、IGHV3-2304、IGHV3-3001、IGHV3-3018、IGHV5-10-101、IGHV5-10-104およびIGHV5-5101からなる群から選択されるヒト生殖系列VH配列に由来するVHフレームワーク配列を含む、E1からE27のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
E29.抗体またはその抗原結合性断片が、IGHV1-6901 VHフレームワーク配列を含む、E1からE28のいずれか1つに記載の方法。
【0275】
E30.抗体またはその抗原結合性断片が、IGKV1-1201、IGKV1-1302、IGKV1-3301、IGKV1-3901、IGKV1-501、IGKV3-1101、IGKV3-1501、IGKV3-2001、IGKV3D-2002およびIGKV4-101からなる群から選択されるヒト生殖系列VL配列に由来するVLフレームワーク配列を含む、E1からE29のいずれか1つに記載の方法。
【0276】
E31.抗体またはその抗原結合性断片が、IGKV3-1101 VLフレームワーク配列を含む、E1からE30のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
E32.抗体またはその抗原結合性断片が、VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含み、VLフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも72%同一である、E1からE31のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
E33.抗体またはその抗原結合性断片が、VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含み、VLフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも72%、74%、75%、77%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、E1からE32のいずれか1つに記載の方法。
【0279】
E34.抗体またはその抗原結合性断片が、VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含み、VHフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも53%同一である、E1からE33のいずれか1つに記載の方法。
【0280】
E35.抗体またはその抗原結合性断片が、VLフレームワーク配列およびVHフレームワーク配列を含み、VHフレームワーク配列が、それが由来したヒト生殖系列配列に対して少なくとも53%、58%、60%、63%、71%、72%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、E1からE34のいずれか1つに記載の方法。
【0281】
E36.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む、E1からE35のいずれか1つに記載の方法。
【0282】
E37.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むVHを含む、E1からE36のいずれか1つに記載の方法。
【0283】
E38.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHを含む、E1からE37のいずれか1つに記載の方法。
【0284】
E39.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号163に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む、E1からE38のいずれか1つに記載の方法。
【0285】
E40.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号163に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むVLを含む、E1からE39のいずれか1つに記載の方法。
【0286】
E41.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号163のアミノ酸配列を含むVLを含む、E1からE40のいずれか1つに記載の方法。
【0287】
E42.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のVLアミノ酸配列を含む、E1からE41のいずれか1つに記載の方法。
【0288】
E43.抗体またはその抗原結合性断片が、Fcドメインを含む、E1からE42のいずれか1つに記載の方法。
【0289】
E44.Fcドメインが、IgA(例えば、IgAまたはIgA)、IgD、IgE、IgMまたはIgG(例えば、IgG、IgG、IgGまたはIgG)のFcドメインである、E1からE43のいずれか1つに記載の方法。
【0290】
E45.Fcドメインが、IgGのFcドメインである、E43またはE44に記載の方法。
【0291】
E46.IgGが、IgG、IgG、IgGまたはIgGからなる群から選択される、E45に記載の方法。
【0292】
E47.IgGがIgGである、E46に記載の方法。
【0293】
E48.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号164に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む、E1からE47のいずれか1つに記載の方法。
【0294】
E49.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号164に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む、E1からE48のいずれか1つに記載の方法。
【0295】
E50.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む、E1からE49のいずれか1つに記載の方法。
【0296】
E51.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号162に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む、E1からE50のいずれか1つに記載の方法。
【0297】
E52.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号162に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一なアミノ酸配列を含むLCを含む、E1からE51のいずれか1つに記載の方法。
【0298】
E53.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号162のアミノ酸配列を含むLCを含む、E1からE52のいずれか1つに記載の方法。
【0299】
E54.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号164のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号162のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、E1からE53のいずれか1つに記載の方法。
【0300】
E55.抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物によってコードされるCDR1、CDR2およびCDR3を含む、E1からE50のいずれか1つに記載の方法。
【0301】
E56.抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物によってコードされるCDR1、CDR2およびCDR3を含む、E1からE55のいずれか1つに記載の方法。
【0302】
E57.抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するプラスミド中の挿入物によってコードされる、E1からE56のいずれか1つに記載の方法。
【0303】
E58.抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するプラスミド中の挿入物によってコードされる、E1からE57のいずれか1つに記載の方法。
【0304】
E59.抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるアミノ酸配列、およびATCCに寄託され、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するプラスミド中の挿入物によってコードされるアミノ酸配列、を含む、E1からE58のいずれか1つに記載の方法。
【0305】
E60.抗体または抗原結合性断片が、Fc融合タンパク質、モノボディ(monobody)、マキシボディ(maxibody)、二機能性抗体、scFab、scFv、ペプチボディである、E1からE59のいずれか1つに記載の方法。
【0306】
E61.抗体またはその抗原結合性断片が、約10nM、5nM、2nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、50pM、40pM、30pM、25pM、20pM、15pMおよび10pMからなる群から選択されるおよその値のKまたはその値未満のKで、ヒトGDF15に結合する、E1からE60のいずれか1つに記載の方法。
【0307】
E62.抗体またはその抗原結合性断片が、約10nM、5nM、2nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、50pM、40pM、30pM、25pM、20pM、15pM、13pM、10pMおよび9pMからなる群から選択されるおよその値のKまたはその値未満のKで、カニクイザルGDF15に結合する、E1からE61のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
E63.抗体またはその抗原結合性断片が、約8pMまたは9pMのKでカニクイザルGDF15に結合する、E1からE62のいずれか1つに記載の方法。
【0309】
E64.抗体またはその抗原結合性断片が、約8.28pMのKでカニクイザルGDF15に結合する、E1からE63のいずれか1つに記載の方法。
【0310】
E65.抗体またはその抗原結合性断片が、少なくとも約16日間である、ヒトにおける終末相半減期を有する、E1からE64のいずれか1つに記載の方法。
【0311】
E66.抗体またはその抗原結合性断片が、少なくとも17日間である、ヒトにおける終末相半減期を有する、E1からE65のいずれか1つに記載の方法。
【0312】
E67.抗体またはその抗原結合性断片が、約-24未満のt-レジトープ(t-regitope)(tReg)調整済スコアによって示される、予測される免疫原性潜在力を有する、E1からE66のいずれか1つに記載の方法。
【0313】
E68.tReg調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-24、-26、-27、-30、-32、-33、-34、-35、-36、-37、-38、-39、-40、-41、-42、-43、-50および-51からなる群から選択されるtReg調整済スコア未満である、E1からE67のいずれか1つに記載の方法。
【0314】
E69.tReg調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-26、-34、-36、-41および-42からなる群から選択される、E1からE68のいずれか1つに記載の方法。
【0315】
E70.tReg調整済スコアによって示される、抗体の予測される免疫原性潜在力が、約-41または-42である、E1からE69のいずれか1つに記載の方法。
【0316】
E71.抗体またはその抗原結合性断片が、25℃で測定した場合に、少なくとも約10センチポアズ(cP)、少なくとも約15cP、少なくとも約20cP、少なくとも約40cPおよび少なくとも約70cPからなる群から選択される粘度を有する、E1からE70のいずれか1つに記載の方法。
【0317】
E72.抗体または抗原結合性断片が、25℃で測定した場合に、約20cPの粘度を有する、E1からE71のいずれか1つに記載の方法。
【0318】
E73.抗体またはその抗原結合性断片が、25℃で測定した場合に、20cPの粘度を有する、E1からE72のいずれか1つに記載の方法。
【0319】
E74.マウスGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、約0.05と約0.10との間である、E1からE73のいずれか1つに記載の方法。
【0320】
E75.マウスGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、約0.07である、E1からE74のいずれか1つに記載の方法。
【0321】
E76.マウスGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、0.07である、E1からE75のいずれか1つに記載の方法。
【0322】
E77.カニクイザルGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、約1.0と約1.5との間である、E1からE76のいずれか1つに記載の方法。
【0323】
E78.カニクイザルGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、約1.2である、E1からE77のいずれか1つに記載の方法。
【0324】
E79.カニクイザルGDF15への結合と比較した、ヒトGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、1.21である、E1からE78のいずれか1つに記載の方法。
【0325】
E80.マウスGDF15への結合と比較した、カニクイザルGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、約0.03と約0.09との間である、E1からE79のいずれか1つに記載の方法。
【0326】
E81.マウスGDF15への結合と比較した、カニクイザルGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、約0.04と0.08との間である、E1からE80のいずれか1つに記載の方法。
【0327】
E82.マウスGDF15への結合と比較した、カニクイザルGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、0.05と0.06との間である、E1からE81のいずれか1つに記載の方法。
【0328】
E83.マウスGDF15への結合と比較した、カニクイザルGDF15への抗体またはその抗原結合性断片のKの比が、0.05である、E1からE82のいずれか1つに記載の方法。
【0329】
E84.抗体またはその抗原結合性断片が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、約71℃以上の、融解温度(T1)または抗体のC2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE83のいずれか1つに記載の方法。
【0330】
E85.抗体が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、71℃と72℃との間の、融解温度(T1)または抗体のC2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE84のいずれか1つに記載の方法。
【0331】
E86.抗体またはその抗原結合性断片が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、71℃と72℃との間の、融解温度(T1)または抗体のC2が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE85のいずれか1つに記載の方法。
【0332】
E87.抗体が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、約80℃以上の、融解温度(T2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE86のいずれか1つに記載の方法。
【0333】
E88.抗体が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、80℃と86℃との間の、融解温度(T2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE87のいずれか1つに記載の方法。
【0334】
E89.抗体が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、84℃と85℃との間の、融解温度(T2)または抗体のFabが50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE88のいずれか1つに記載の方法。
【0335】
E90.抗体が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、約82℃以上の、融解温度(T3)または抗体のC3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE89のいずれか1つに記載の方法。
【0336】
E91.抗体が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、83℃と91℃との間の、融解温度(T3)または抗体のC3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE90のいずれか1つに記載の方法。
【0337】
E92.抗体が、示差走査熱量測定によって測定した場合に、87℃と89℃との間の、融解温度(T3)または抗体のC3が50%折り畳まれていない温度で、熱安定性を有する、E1からE91のいずれか1つに記載の方法。
【0338】
E93.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号167の核酸配列、配列番号168の核酸配列、またはそれら両方を含む核酸分子によってコードされる、E1からE92のいずれか1つに記載の方法。
【0339】
E94.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号169の核酸配列、配列番号170の核酸配列、またはそれら両方を含む核酸分子によってコードされる、E1からE93のいずれか1つに記載の方法。
【0340】
E95.抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む核酸分子によってコードされる、E1からE94のいずれか1つに記載の方法。
【0341】
E96.抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列を含む核酸分子によってコードされる、E1からE95のいずれか1つに記載の方法。
【0342】
E97.抗体またはその抗原結合性断片が、ATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125038を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、およびATCCに寄託され、アクセッション番号PTA-125039を有するプラスミドの挿入物の核酸配列、を含む核酸分子によってコードされる、E1からE96のいずれか1つに記載の方法。
【0343】
E98.対象がヒトである、E1からE97のいずれか1つに記載の方法。
【0344】
E99.抗体またはその抗原結合性断片が、皮下投与される、E1からE98のいずれか1つに記載の方法。
【0345】
E100.抗体またはその抗原結合性断片が、静脈内投与される、E1からE99のいずれか1つに記載の方法。
【0346】
E101.抗体またはその抗原結合性断片が、約1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、または4カ月毎に1回、5カ月毎に1回、6カ月毎に1回、7カ月毎に1回、8カ月毎に1回、9カ月毎に1回、10カ月毎に1回、11カ月毎に1回または12カ月毎に1回投与される、E1からE100のいずれか1つに記載の方法。
【0347】
E102.抗体またはその抗原結合性断片が、約0.1mgと約1000mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、E1からE101のいずれか1つに記載の方法。
【0348】
E103.抗体またはその抗原結合性断片が、約1mgと約500mgとの間の用量で、1週間に1回投与される、E1からE102のいずれか1つに記載の方法。
【0349】
E104.抗体またはその抗原結合性断片が、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mgおよび約500mgからなる群から選択される用量で、1週間に1回投与される、E1からE103のいずれか1つに記載の方法。
【0350】
E105.抗体またはその抗原結合性断片が、約0.1mgと約500mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、E1からE104のいずれか1つに記載の方法。
【0351】
E106.抗体またはその抗原結合性断片が、約10mgと約250mgとの間の用量で、2週間毎に1回投与される、E1からE105のいずれか1つに記載の方法。
【0352】
E107.抗体またはその抗原結合性断片が、約5mg、約12mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約60mg、約90mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mgおよび約500mgからなる群から選択される用量で、2週間毎に1回投与される、E1からE106のいずれか1つに記載の方法。
【0353】
E108.抗体またはその抗原結合性断片が、約0.1mgと約500mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、E1からE123のいずれか1つに記載の方法。
【0354】
E109.抗体またはその抗原結合性断片が、約10mgと約500mgとの間の用量で、4週間毎に1回投与される、E1からE108のいずれか1つに記載の方法。
【0355】
E110.抗体またはその抗原結合性断片が、約15mg、約40mg、約60mg、約75mg、約100mg、約115mg、約200mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mgおよび約500mgからなる群から選択される用量で、4週間毎に1回投与される、E1からE109のいずれか1つに記載の方法。
【0356】
E111.原発性ミトコンドリア筋症を予防、寛解および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1;
(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2;
(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3;
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1;
(e)配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2;および
(f)配列番号52のaa配列を含むHCDR-3
を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、方法。
【0357】
E112.原発性ミトコンドリア筋症を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1;
(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR-2;
(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR-3;
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHCDR-1;
(e)配列番号165のアミノ酸配列を含むHCDR-2;および
(f)配列番号52のアミノ酸配列を含むHCDR-3
を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、方法。
【0358】
E113.原発性ミトコンドリア筋症を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1;
(b)配列番号28のaa配列を含むLCDR-2;
(c)配列番号9のaa配列を含むLCDR-3;
(d)配列番号32のaa配列を含むHCDR-1;
(e)配列番号165のaa配列を含むHCDR-2;および
(f)配列番号52のaa配列を含むHCDR-3
を含む抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含み、抗体の投与が、投与前と比較して、対象において肉体的疲労、筋力低下および/または運動耐容能における改善を生じる、方法。
【0359】
E114.抗体またはその抗原結合性断片が、配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のアミノ酸配列を含むVLを含む、E111からE113のいずれか1つに記載の方法。
【0360】
E115.抗体が、配列番号164のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号162のアミノ酸配列を含むLCを含む、E111からE114のいずれか1つに記載の方法。
【0361】
E116.先行する実施形態のいずれか1つに記載の本発明の方法における、GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片の使用。
【0362】
E117.先行する実施形態のいずれか1つに記載の使用のための、GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片。
【0363】
E118.先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法における使用のための医薬の製造における、GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片。
【0364】
E119.原発性ミトコンドリア筋症の予防、寛解および/または処置における使用のための、GDF15に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、
(a)配列番号95のアミノ酸配列を含むLCDR-1;
(b)配列番号28のaa配列を含むLCDR-2;
(c)配列番号9のaa配列を含むLCDR-3;
(d)配列番号32のaa配列を含むHCDR-1;
(e)配列番号165のaa配列を含むHCDR-2;および
(f)配列番号52のaa配列を含むHCDR-3
を含む、抗体またはその抗原結合性断片。
【0365】
E120.配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のアミノ酸配列を含むVLを含む、E119に記載の、使用のための抗体またはその抗原結合性断片。
【0366】
E121.配列番号164のアミノ酸配列を含むHCおよび配列番号162のアミノ酸配列を含むLCを含む、E119からE120に記載の、使用のための抗体またはその抗原結合性断片。
【0367】
等価物
上述の説明および以下の実施例は、本開示のある特定の具体的な実施形態を詳述し、本発明者らによって企図される最良の形態を記載する。しかし、上述がテキスト中に出現し得ることがどんなに詳述されても、本開示が多くの方法で実施され得、本開示が添付の特許請求の範囲およびその任意の等価物に従って実施されるべきであることが、理解される。
【0368】
開示された教示は、種々の適用、方法、キットおよび組成物に関して記載されてきたが、種々の変化および改変が、本明細書の教示および以下の特許請求される開示から逸脱することなしになされ得ることが理解される。以下の実施例は、開示された教示をよりよく説明するために提供されるのであって、本明細書に提示された教示の範囲を限定することを意図しない。本明細書の教示は、これらの例示的な実施形態に関して記載されてきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数のバリエーションおよび改変が過度の実験なしに可能であることを容易に理解する。全てのかかるバリエーションおよび改変は、本明細書の教示の範囲内である。
【0369】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用される全ての参考文献、ならびにまだ引用されていない範囲までその中で引用される参考文献は、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。組み込まれた文献および類似の資料のうち1つ以上が、定義された用語、用語の用法、記載された技術などが含まれるがこれらに限定されない本出願とは異なるまたはそれと矛盾する場合、本出願が支配する。
【0370】
一般技術
本発明は、当然変動し得る、それを作製する特定の合成方法に限定されないことを理解すべきである。本明細書で他に定義されない限り、本発明と併せて使用される科学用語および技術用語は、当業者が一般に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションと併せて使用される術語体系、ならびにそれらの技術は、当該分野で周知かつ一般に使用されるものである。
【0371】
本発明の実施は、他に示されない限り、当業者の技術範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用する。かかる技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993~1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);SambrookおよびRussell、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(2001);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY(2002);HarlowおよびLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1998);Coliganら、Short Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons、NY(2003);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献中で完全に説明されている。
【0372】
酵素反応および精製技術は、当該分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書に記載される分析化学、生化学、免疫学、分子生物学、合成有機化学ならびに医薬品化学および薬化学と併せて使用される術語体系、ならびにそれらの実験室手順ならびに技術は、当該分野で周知かつ一般に使用されるものである。標準的な技術が、化学的合成、化学的分析、医薬の調製、製剤および送達、ならびに患者の処置のために使用される。
【0373】
生物学的寄託
本発明の代表的な材料は、2018年4月4日に、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、Va.20110-2209、USAに寄託された。ATCCアクセッション番号PTA-125038を有するベクターGDF15_001-VHは、抗体GDF15_001の重鎖可変領域をコードするDNA挿入物を含むプラスミドを含み、ATCCアクセッション番号PTA-125039を有するベクターGDF15_001-VLは、抗体GDF15_001の軽鎖可変領域をコードするDNA挿入物を含むプラスミドを含む。これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項およびその規則(ブダペスト条約)の規定の下で行われた。これは、寄託の日から30年間にわたって寄託物の生存可能な培養物の維持を保証する。寄託物は、Pfizer Inc.とATCCとの間での同意を条件として、ブダペスト条約の条項の下でATCCによって入手可能にされ、これは、関連する米国特許の発行の際、または任意の米国もしくは外国の特許出願の公衆への公開の際のいずれか早い方の時点における、公衆への寄託物の培養物の子孫の恒久的かつ無制限の入手可能性を保証し、米国特許商標庁長官が米国特許法122条およびそれに従う長官規則(特に886 OG 638に関連した米国特許規則1.14を含む)に従って資格ありと決定した者への子孫の入手可能性を保証する。
【0374】
本出願の譲受人は、寄託にかかる材料の培養物が、適切な条件下で培養した場合に万一死んだり失われたり破壊されたりしたときには、通知があり次第それらの材料が同一物の別のもので速やかに置き換えられることに同意している。寄託された材料の入手可能性は、その特許法に従って任意の政府の権限の下で与えられた権利に違反して本発明を実施することの許諾として解釈すべきではない。
【実施例
【0375】
(実施例1)
抗GDF15抗体
抗体のパネル(表2および5ならびに図29を参照のこと)を生成し、様々な結合および生物物理学的アッセイを横断して比較した。
【0376】
本発明の抗GDF15抗体を、それらのアミノ酸配列、およびCDR領域中の「ホットスポット」(例えば、潜在的なグリコシル化、酸化および化学的分解の部位)の存在に基づいて分析した。抗GDF15抗体のホットスポット配列分析は、以下の表5に示される。GDF15_005、GDF15_006、GDF15_007、GDF15_008、GDF15_009およびGDF15_200は、CDR領域中のN結合型グリコシル化部位の存在を実証し、さらなる研究のためには選択しなかった。
【0377】
【表6-1】
【0378】
【表6-2】
【0379】
(実施例2)
抗GDF15抗体の結合特性:SPRによる、ヒト、カニクイザルおよびマウスGDF15への結合活性
ヒト、カニクイザルおよびマウスGDF15に対する抗体GDF15_001(配列番号166のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号163のアミノ酸配列を含むVLを含む)の結合親和性を、10Hzの収集速度で37℃でBIAcore T200機器(GE Healthcare)を使用して決定した。マウスFc-ヒトGDF15(Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15;配列番号2)、マウスFc-マウスGDF15(Mu IgG1Fc_Fxa_Mu GDF15;配列番号5)およびマウスFc-カニクイザルGDF15(Mu IgG1Fc_Fxa_Cyno GDF15;配列番号4)を、製造業者のプロトコールに従ってMouse Antibody Capture Kit(BR100838、GE Healthcare)を使用して、CM4センサーチップ(カタログ番号BR100534、GE Healthcare)表面の3つの異なるフローセル上に捕捉した。ランニングおよびサンプル緩衝液は、10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%P-20(HBS-EP+)であった。Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15、Mu IgG1Fc_Fxa_Mu GDF15およびMu IgG1Fc_Fxa_Cyno GDF15の最終捕捉レベルは、それぞれ、40レゾナンスユニット(RU)、32RUおよび25RUであった。フローセル1を、参照フローセルとして使用した。10nMから0.625nMまでの範囲の濃度を有するGDF15_001の2倍希釈シリーズを、120秒間にわたってセンサー表面上に注入した。解離を2.8時間にわたってモニタリングし、表面を、10mMグリシンpH1.7で再生させた。結合親和性および速度定数を、得られたセンサーグラムデータを、BIAcore T200 Evaluationソフトウェアバージョン2.0(GE Healthcare)で1:1 Langmuirモデルにフィットさせることによって、マウスおよびカニクイザルGDF15について決定した。親和性値を、以下の表6に示すように決定した。
【0380】
マウスFc-ヒトGDF15に対するGDF15結合性抗体のいくつかのクローンの結合親和性もまた、実施例2で本明細書に記載される方法論を使用して決定し、以下の表6に示す。二価フォーマットで試験した全てのクローンは、150pMを下回る見かけのKD値を実証し、これは、これらが、ヒトGDF15に対する強い結合子であることを示唆している。さらに、カニクイザルおよびマウスGDF15へのクローンGDF15_001の結合を、上で言及したBIAcoreアッセイを使用して測定した(表7)。クローンGDF15_001は、カニクイザルGDF-15への強い結合を示し(見かけのKD 8.28pM)、マウスGDF15への結合を維持し(見かけのKD 142.3pM)、このことが、クローンGDF15_001を、両方の種における前臨床研究にとって適切なものにしている。
【0381】
【表7-1】
【0382】
【表7-2】
【0383】
【表8】
【0384】
(実施例3)
抗GDF15抗体の結合特性:SPRによる、ヒト、カニクイザルおよびマウスGDF15へのモノマー性抗GDF15抗体の結合活性
GDF15へのGDF15_001結合の、結合力効果(avidity effect)なしのKD値を理解するために、モノマー性Fc-Fabを産生し、実施例2で使用したのと同じアッセイにおいて試験した。ヒト、カニクイザルおよびマウスGDF15に対するモノマー性GDF15_001の結合親和性を、10Hzの収集速度で37℃でBIAcore T200機器(GE Healthcare)を使用して決定した。Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15、Mu IgG1Fc_Fxa_Mu GDF15およびMu IgG1Fc_Fxa_Cyno GDF15を、製造業者のプロトコールに従ってMouse Antibody Capture Kit(BR100838、GE Healthcare)を使用して、CM4センサーチップ(カタログ番号BR100534、GE Healthcare)表面の3つの異なるフローセル上に捕捉した。ランニングおよびサンプル緩衝液は、10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05%P-20(HBS-EP+)であった。Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15、Mu IgG1Fc_Fxa_Mu GDF15およびMu IgG1Fc_Fxa_Cyno GDF15の最終捕捉レベルは、それぞれ、19レゾナンスユニット(RU)、22RUおよび19RUであった。フローセル1を、参照フローセルとして使用した。10nMから1.25nMまでの範囲の濃度を有するモノマー性GDF15_00の2倍希釈シリーズを、120秒間にわたってセンサー表面上に注入した。解離を1200秒間にわたってモニタリングし、表面を、10mMグリシンpH1.7で再生させた。結合親和性および速度定数を、得られたセンサーグラムデータを、BIAcore T200 Evaluationソフトウェアバージョン2.0(GE Healthcare)で1:1 Langmuirモデルにフィットさせることによって決定した。モノマー性クローンGDF15_001は、以下の表8に示すように、マウスGDF15へのより弱い結合(KD 1965.0pM)と共に、ヒト(KD 21.3pM)およびカニクイザルGDF15(KD 62.0pM)への強い結合を実証した。
【0385】
【表9】
【0386】
(実施例4)
抗GDF15抗体の結合特性:ヒトGDF15へのGDF15_001の結合特異性
ヒトGDF15へのGDF15_001の結合特異性を評価するために、さらなるTGFβファミリーメンバーへのGDF15_001結合を試験した。分析を、Octet Red機器で実施した。
【0387】
OctetRED 384(ForteBio、Menlo Park、CA)を使用して、ヒトGDNF(R&D、212-GD/CF)、ヒトインヒビンA(R&D、8506-AB/CF)、ヒトアクチビンB(R&D、659-AB/CF)、ヒトTGFβ-1(R&D、240-B/CF)、ヒトBMP2(R&D、355-BM/CF)、ヒトBMP3b(R&D、1543-BP/CF)、ヒトBMP6(R&D、507-BP/CF)、ヒトBMP9(R&D、3209-BP/CF)、ヒトBMP11(R&D、1958-CD/CF)、ヒトGDF8(Pfizer、41075-201)および対照ヒトGDF15(Mu IgG1Fc_Fxa_Hu GDF15)を含む10種のTGFβファミリーメンバーへの、モノマー性GDF15_001(CH23LS-GBT-GDF15_001)のオフターゲット結合を評価した。TGFβファミリーメンバーを、10mM酢酸ナトリウムpH4.5中で10ug/mlになるように希釈し、製造業者の指示に従って、AR2Gバイオセンサー(カタログ番号18-5092、ForteBio)上にアミンカップリングした。モノマー性GDF15_001を、キネティクス(kinetics)緩衝液(カタログ番号18-5032 ForteBio)中で200nMになるように希釈した。Octetアッセイを、300秒の会合時間および180秒の解離時間で室温で実施した。データを二重参照し(Myszka,D.、J.Mol.Recognit 1999;279~284)、Octet Data Analysisソフトウェアバージョン8.1(ForteBio)で分析した。
【0388】
GDF15_001は、期待通り、ヒトGDF15に結合した。他のTGFβファミリーメンバー(GDF-11、BMP-9、GDF-8、BMP-2、BMP-6、TGFβ-1、アクチビン-B、インヒビン-A)への結合は、200nMのモノマー性クローンGDF15_001では検出されず、これは、これらの他の関連のファミリーメンバーには結合しない、GDF15_001の高い特異性を実証している。GDF15_001の高い特異性は、オフターゲット結合のリスクを最小化し、GDF15_001が、潜在的な新規の有用なヒト治療薬であることを示している。
【0389】
(実施例5)
抗GDF15抗体は、GFRALへのGDF15結合を防止する
GFRALの細胞外ドメインへのヒトGDF15結合を防止するGDF15_001の能力を、競合アッセイによって評価した。分析を、BIAcore T200機器(GE Healthcare、Chicago、IL)を使用して実施した。
【0390】
GDF15_001を、10nMから2.5nMまでの範囲の濃度で、10nMヒトGDF-15中に滴定した。混合物GDF-15、GDF15_001および対照を、CM4センサーチップ上に直接固定化したヒトGFRALの細胞外ドメイン上に注入した。GFRALへのヒトGDF15結合の濃度依存的阻害が観察された。ヒトGFRAL ECDへのヒトGDF15の結合は、7.5nM GDF15_001によって完全に遮断された。
【0391】
これらのデータは、GDF15_001が、ヒトGDF15とその同族受容体GFRALとの間の相互作用を遮断し、それによって、GFRALシグナル伝達を妨害できることを実証している。これは、GDF15_001が、GFRALへのGDF15結合によって媒介される活性を減少させるための新規の潜在的に有用な治療薬であり得ることをさらに実証している。
【0392】
(実施例6)
抗GDF15抗体の生物物理学的特性:熱安定性
抗GDF15抗体の熱安定性を、示差走査熱量測定(DSC)によって評価した。タンパク質を、リン酸緩衝溶液(PBS)中に、400μlの体積中0.3mg/mlになるように希釈した。PBSを、参照セルにおいて緩衝液ブランクとして使用した。PBSは、137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM NaHPOおよび1.47mM KHPO、pH7.2を含んだ。サンプルを、Autosampler(Malvern Instruments Ltd、Malvern、UK)を用いて、MicroCal VP-Capillary DSCのサンプルトレイ中に分配した。サンプルを、10℃で5分間平衡化し、次いで、1時間当たり100℃の速度で、110℃までスキャンした。16秒間のフィルタリング期間を選択した。生データをベースライン補正し、タンパク質濃度を標準化した。Origin Software 7.0(OriginLab Corporation、Northampton、MA)を使用して、データを、適切な数の遷移を有するMN2-State Modelにフィットさせた。
【0393】
遷移温度は、図1A、1Bおよび1Cに示され、表9に列挙される。T1は、抗体のC2が50%折り畳まれていない温度を示す。T2は、抗体のFabが50%折り畳まれていない温度を示す。T3は、抗体のC3が50%折り畳まれていない温度を示す。65℃を超える融解温度(T1)を有する全てのクローンは、安定なクローンとして設計され、これは、製造および貯蔵の間、安定である。
【0394】
【表10】
【0395】
(実施例7)
抗GDF15抗体の生物物理学的特性:サイズ排除クロマトグラフィー
抗体クローンを、分析的サイズ排除クロマトグラフィー(aSEC)によって分析した。タンパク質を、リン酸緩衝溶液(PBS)中に1.0mg/mlになるように希釈し、20mMリン酸ナトリウムpH7.2、400mM NaClを含むアイソクラチックランニング緩衝液を用いたYMC-Pack Diol-200、300×8mmカラム上でのaSECによって分析した。ネイティブSECを使用して、高分子量(凝集体)およびモノマー性のインタクトな抗体の相対的な量を決定した。パーセント凝集体を、総(凝集体およびモノマー)ピーク面積によって除算し、100を乗算した、高分子量のピーク面積として計算した。分での保持時間を記録し、アッセイ対照と比較した。aSEC分析からの、標準の保持時間およびピーク形状を有する抗体クローンは、固定相樹脂との最小の相互作用および最適な疎水性を示唆し得、これらは、有用な特徴であり、抗体が、潜在的な有用な治療薬であり得ることを示している。
【0396】
試験した各抗体クローンについての保持時間を、表10に示す。GDF15_002は、遅延された保持時間および広いピーク形状を示し、したがって、さらには研究しなかった。
【0397】
【表11】
【0398】
(実施例8)
抗GDF15抗体の生物物理学的特性:低pHにおける安定性
抗体はプロテインA捕捉によって精製され、溶出は低pH条件であるので、抗GDF15抗体クローンを、低pH維持安定性について試験した。PBS、pH7.2中1.0mg/mlの抗体を、グリシンpH3.4で酸性化し、25℃で5時間インキュベートし、次いで、Tris塩基で中和し、aSEC上に流して、高分子量種(HMMS)および低分子量種(LMMS)の量を決定した、表11。試験した全てのクローンは、低pHチャレンジ後に、HMMSの許容できる量の増加(<5%)を示す。これは、抗GDF15抗体が、精製プロセスの間安定のままであり、潜在的に有用な治療薬であり得ることを示している。
【0399】
【表12】
【0400】
(実施例9)
抗GDF15抗体の生物物理学的特性:粘度
GDF15_001の粘度を、Anton Paar機器によって分析した。GDF15_001を、30kDa分子量カットオフAmicon遠心濾過ユニット(EMD Millipore、Billerica、MA)を使用して、215mg/mLに濃縮した。46~178mg/mLの範囲の一連の希釈を、20mMヒスチジン、85g/Lスクロース、0.05mg/ml EDTA pH5.8緩衝液を希釈剤として用いて調製した。タンパク質濃度を、SoloVPE Variable Pathlength System(C Technologies,Inc、Bridgewater、NJ)での280nm分析によって決定した。粘度測定を、25℃で150rpmの一定の回転速度で、MCR-302血流計(Anton Paar USA Inc.、Ashland、VA)上でCP25-1円錐およびプレートを使用して実施した。各々10秒間の合計10個の測定値を、サンプル1つ当たり収集し、データを、Rheoplus(Anton Paar USA Inc.)V 3.62ソフトウェアを使用して分析した。粘度は、センチポアズ(cP)単位で報告する。
【0401】
GDF15_001の粘度を、図2に示す。このデータは、許容できる粘度限界(20cP)には、約140mg/mlにおいて到達することを示しており、これが、GDF15_001の皮下注射を実現可能なものにしており、この抗体が有用な潜在的な治療薬であることをさらに示している。
【0402】
(実施例10)
抗GDF15抗体の免疫原性
非生殖系列T細胞エピトープの検出、および計算されたtReg調整済スコアに基づいて、本発明の抗GDF15抗体および当該分野で公知の別の抗GDF15抗体、例えば、hu01G06(hu01G06のVHおよびVL配列は、それぞれ配列番号177および配列番号178として本明細書で提供される(VH、WO2014/100689の配列番号248、およびVL、WO2014/100689の配列番号254))の免疫原性を予測した。より低いtReg調整済スコアは、免疫原性リスクのより低い潜在力を予測する。
【0403】
配列を、2つのプロトコール(以下のプロトコール1および2)を使用して分析して、エピトープを同定した。いずれかのプロトコールについて本明細書に記載される規則によって同定された任意の配列を、エピトープとみなした。配列を、アミノ酸9マーのレベルで試験した。
【0404】
プロトコール1 - ISPRI/EpiMatrix:配列を、ISPRIソフトウェアパッケージ(ISPRI v 1.8.0、EpiVax Inc.、Providence、RI(2017);Schaferら Vaccine 16(19)、1880~84(1998))でのEpiMatrix分析に供した。生結果は、8つの異なるHLA型に対する各9マーアミノ酸断片の結合の可能性のランキングを提供する。したがって、各9マーについて、8つの予測(「観測」)が存在する。これらの9マーを、配列の各個々の直線的な番号付け位置で開始して生成する。同じ9マーが同じ配列中に1回よりも多く存在することが可能である。任意の4つの観測が、9マーが結合子の上位5%にあることを示す場合、これは、少なくとも4つのHLA型について、それが結合子の上位5%にあることを意味し、9マーは、予測されたエピトープとみなされる。あるいは、8つの予測のうちいずれか1つが、9マーが結合子の上位1%にあることを示す場合、この9マーも、予測されたエピトープとみなされる。
【0405】
プロトコール2 -IEDBコンセンサス法:配列を、免疫エピトープデータベース(IEDB)(IEDB MHC-II Binding Predictions、http://www.iedb.org;Vitaら、Nucleic Acids Res.Jan 28(43)、D405~12(2015))においてMHC-II binding Consensus Method(Wangら、BMC Bioinformatics 11、568(2010);Wangら、PLoS Comput Biol.4(4)、e1000048(2008))を使用する分析に供した。ソフトウェアのアウトプットは、結果を15マーずつ配置する。コンセンサススコアおよびパーセンタイルランキングが、15マーおよびHLA型の各組み合わせについて提供される。しかし、各15マーのコンセンサスが由来する個々のスコアは、15マー中に見出される特定の9マーのランキングである:コンセンサスのために使用される各方法は、15マー内の9マーについてのパーセンタイルランクを報告し、15マー全体についての値として取られたコンセンサスは、中央値スコアを有する9マーについての予測である。9マーは、(a)それが15マーを代表するコンセンサスとして選択される場合、および(b)検討されているHLA型に対する結合子の上位10%中にパーセンタイルランキングを有する場合、ならびに基準(a)および(b)が、同じ9マーについて3つ以上の別個のHLA型(即ち、3つの観測)について生じる場合、エピトープとして分類される。検討したHLA型は、DRB101、103、104、107、108、111、113および115であり、これらは、標準的なISPRI/EpiMatrix報告では、同じHLA型である。プロトコール1との比較の容易さのために、データは、予測された9マーエピトープのリストを得るために再解釈されるが、コンセンサス法の一次アウトプットは、15マーのランキングである。
【0406】
各エピトープは、生殖系列または非生殖系列エピトープとして分類される。抗体について、各エピトープは、抗体内でのその位置(例えば、CDRまたは非CDR)に基づいて、さらに分類される。IMGT(www.imgt.org)から得られたヒトVドメインの配列をフィルタリングして、偽遺伝子またはオープンリーディングフレームとしてアノテーションされる生殖系列を除去する。残りの配列中に見出される任意の予測された9マーエピトープは、生殖系列エピトープとみなされる。JもしくはC領域(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)またはこれらの領域間の接合部中に見出されるエピトープもまた、生殖系列エピトープとして分類した。さもなければ、エピトープは、非生殖系列エピトープとして分類した。
【0407】
CDR定義は、Kabatの方法に基づき、ここで、CDRは、以下の残基を含むと定義される:HCDR-1(例えばH35Aであるが、H36未満の挿入を含むH26~H35)、HCDR-2(H50~H65包含的)、HCDR-3(H95~H102包含的)、LCDR-1(L24~L34包含的)、LCDR-2(L54~L56包含的)、LCDR-3(L89~L97、包含的)。予測された9マーエピトープは、そのアミノ酸のうちいずれか1つがCDR領域の一部である場合、CDRエピトープとして定義される。
【0408】
全体的配列スコア(tReg調整済スコア):個々の鎖について、または抗体VHおよびVLドメインの対形成について、全体的スコアは、以下に記載されるように、構成成分9マーの各々を合計することによって計算され得る。
【0409】
9マーおよびHLA型の全ての個々の組み合わせ(「観測」)を、9マーがエピトープであるかどうかにかかわりなく試験した。特定の観測が、そのペプチドが所与のHLA型に対する結合子の上位5%にあることを示す場合、この観測についてのEpiMatrix Zスコアが、タンパク質配列全体と関連する中間合計に加算される。試験した観測の総数もまた記録される。唯一の例外は、ISPRIによって「T-レジトープ」(天然の調節性T細胞を活性化し、望まれない免疫応答を低減させることが潜在的にできる、モノクローナル抗体フレームワーク領域内のアミノ酸配列)として同定された9マーについての全ての観測が、ゼロのEpiMatrixスコアを有すると仮定されることである。
【0410】
中間合計では、0.052.2248のベースラインスコアが、各観測(T-レジトープを含む)から減算される。最終スコアは、以下のように計算される:tReg調整済スコア=(中間合計)1000/(観測の数)。
【0411】
計算されたスコアを、表12に列挙する。上述のように、より低いスコアは、より低い予測される免疫原性潜在力を示す。本発明の抗GDF15抗体は、hu01G06よりも低いスコアを有した。クローンGDF15_001、GDF15_004、GDF15_005およびGDF15_013は、最も低いスコアを有し、したがって、免疫原性応答を惹起する、最も低い潜在的な予測されたリスクを有した。これは、本発明の抗体が潜在的な有用な治療薬であることをさらに示している。
【0412】
【表13】
【0413】
GDF15_001およびhu01G06の予測されたT細胞エピトープもまた、上記in silico方法に基づいて比較した。以下の表13に示すように、hu01G06は、重鎖中に2つの予測されたT細胞エピトープを有し、軽鎖中に1つの予測されたT細胞エピトープを有するが、GDF15_001は、いずれの予測されたT細胞エピトープも有さない。これは、GDF15_001がまた、hu01G06と比較した場合に、免疫原性応答を惹起するより低い潜在的なリスクを有することを示している。これは、GDF15_001が、改善された特徴を有する潜在的な有用な新規の治療薬であることをさらに示している。
【0414】
【表14】
【0415】
(実施例11)
健康なマウスにおけるヒトおよびマウスGDF15の阻害
ヒトGDF15活性を阻害するGDF15_001の能力を、アデノ随伴ウイルス(AAV)-ヒトGDF15で処置した健康なC57Bl6Nマウスにおいて評価した。AAV-ヒトGDF15処置の2週間後、循環ヒトGDF15レベルは、およそ17ng/mLまで増加し(図3)、体重は15%減少した(図4)。GDF15_001の投与は、IgG対照と比較して、AAV-ヒトGDF15処置マウスにおいて、体重(図4)、脂肪(図5)および除脂肪量喪失(図6)を迅速に逆転させた。GDF15_001は、AAV対照ベクター処置マウスでは効果を有さなかった。
【0416】
マウスGDF15活性を阻害するGDF15_001の能力もまた、AAV-マウスGDF15で処置した健康なC57Bl6Nマウスにおいて評価した。AAV-マウスGDF15投与の11日後、循環マウスGDF15レベルは、およそ3ng/mLまで増加し(図7)、体重は、およそ10%減少した(図8)。GDF15_001の投与は、IgG対照と比較して、AAV-ヒトGDF15処置マウスにおいて、体重減少を迅速に逆転させ(図8)、食物摂取を増加させた(図9)。GDF15_001は、AAV対照ベクター処置マウスでは効果を有さなかった。
【0417】
これらのデータは、GDF15_001が、増加したレベルのGDF15の存在下であってさえも、健康なマウスにおいて、除脂肪量および体脂肪量喪失の両方に起因する体重減少を逆転させ、食物摂取を増加させることを実証している。
【0418】
(実施例12)
抗GDF-15抗体によるミトコンドリアミューテーターマウス(PolgAD257A)の処置
材料および方法
動物
雄性野生型(WT)およびホモ接合体(PolgD257A/D257A)ミトコンドリアDNA(mtDNA)ミューテーター(本明細書でPolgAD257A、PolGと相互交換可能に言及される)マウスを、Jackson Laboratoryから得た(ストック番号017341)。これらのマウスにおけるPolgD257A変異体対立遺伝子は、DNAポリメラーゼγ遺伝子(Polg)のN末端「プルーフリーディング」エキソヌクレアーゼドメイン中にD257A変異を有し、発現された変異体タンパク質を、ミトコンドリアにおいてポリメラーゼプルーフリーディング機能を欠くものにする。全てのマウスを、中立温度(thermoneutral)条件(27±1℃)で個々に収容し、標準的な明-暗サイクル(6a.m.~6p.m.)で維持した。マウスに、食物摂取測定のために特定された場合を除き、水および食物(Purinaげっ歯類食5061;Purina Mills、St.Louis、MO、USA)に自由意志でアクセスさせた。全ての手順は、1964年のヘルシンキ宣言およびその後の修正において制定された倫理規範に従って、Pfizer Groton and Cambridge Animal Care and Use Committeesによって承認された。
【0419】
血漿GDF15およびFGF21測定
尾部血液サンプルを、3、6および10月齢のWTおよびPolGマウスから収集した。血漿GDF-15およびFGF21レベルを、R&D systemのELISAキット(GDF-15についてはカタログ番号MGD150、FGF-21についてはMF2100、R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を使用して測定した。アッセイを、製造業者の指示に従い、MSDによって提供されたキャリブレーターを使用して、実施した。6および10月齢についてのPolGサンプルのみを、アッセイ緩衝液中に1:4希釈した。
【0420】
自発的ホイールランニング測定
自発的ホイールランニング活動を測定するために、マウスを、標準的な明-暗サイクル(6a.m.~6p.m.)で、ホイール(Columbus Instruments、Chicago、IL、USA)、食物および水への自由意志での自由なアクセスと共に、中立温度条件で収容した。ランニング距離を示すホイール計数を、自発的ホイールランニングへのアクセスを伴う3日間の順化期間後に、5日間にわたって毎日測定した。
【0421】
in vivo筋力生成測定
マウスを、2%イソフルランで麻酔し、循環水浴を介して37℃に加熱したプラットフォーム上にあおむけに配置した。右脚を、膝蓋骨に向かって剃り上げ、右膝を膝クランプを介して安定化した。安定化したら、右足を、Dual Mode Foot Plate(300-C FP、Aurora Scientific Inc.、Aurora、Canada)に貼り付け、2つの電極を、腓腹筋の腹中央(mid-belly)近傍で皮下に配置して、底屈を達成した。1Hzの電気刺激(0.2秒の持続時間、刺激間1秒)を、アンペアを増加させつつ、50Hz、100Hzおよび150Hzまで、刺激器(701C、Aurora Scientific Inc.)を介して与えて、最大単収縮測定を生成した。全てのデータを、製造業者が供給したソフトウェア(DMCおよびDMA、Aurora Scientific Inc.)を使用して、収集および分析した。マウスを、分析の前に、中立温度で収容した。
【0422】
トレッドミルランニング評価
全てのマウスを、試験日前に2日間順化させた。最初の順化日は、マウスを動いていないベルト上に25分間配置し、その後、マウスを3m/分で5分間走らせることからなった。翌日、全てのマウスを、動いていないベルトに20分間順化させ、その後、マウスを3m/分で5分間走らせた。試験日に、マウスを、動いていないトレッドミル上に20分間配置し、その後、マウスを8m/分で2分間走らせた。スピードを、もう2分間かけて12m/分まで増加させ、その後、3回の引き続く場合にわたり、連続する3秒間にわたってショックグリッド上にマウスが滞在する疲弊まで、2分毎に3m/分増加させた。全ての試験を、10度の傾斜を有する、2Hzに設定したショックグリッドを有する、Columbus InstrumentsのModular Enclosed Metabolic Treadmill for Mice(合計4レーン)上で実施した。
【0423】
抗GDF15介入
抗GDF-15抗体:本明細書でmAB2とも呼ばれるGDF15-0301を、この研究で使用した。PolGマウス(9月齢)を、2つの群:PolG-ビヒクルおよびPolG-mAB2に無作為化した。WT同腹仔も研究のために含めた。マウスに、研究の持続時間を通じて毎週1回、10mg/kgのGDF15抗体、mAb2(PolG-mAB2)または対照IgG(PolG-ビヒクル)のいずれかを、皮下注射した。体重を毎週測定した。除脂肪量および体脂肪量を、EchoMRI(商標)4100システムを使用して評価した。
【0424】
組織収集
マウスを、CO下で安楽死させ、心スティック(cardiac
stick)を実施して、マウスを失血させた。腓腹筋および前脛骨筋(TA)を収集し、計量し、液体窒素下で即座に凍結させた。
【0425】
統計分析
データは、平均±SEとして表される。統計分析を、T検定、一元配置および二元配置ANOVA、ならびに多変量分析のためのTukey HSD検定のいずれかによって実施した。統計的有意性は、以下の記号を使用して図中に示される:P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0426】
結果
血漿GDF15レベルを、3、6および10月齢の時点で、WTおよびPolGミューテーターマウスにおいて測定した。循環GDF15レベルは、3月齢の時点で、WTマウスとPolGマウスとの間で匹敵していた(図1A)。GDF15レベルは、3~10月齢のWTマウスでは、200ng/mlよりも低かった。対照的に、GDF15は、PolGマウスにおいて3月齢から10月齢まで著しく増加し、10月齢の時点で1.3ng/mlよりも上に達した(図1A)。循環FGF21もまた、10月齢の時点で、それらのWT同腹仔と比較して、PolGマウスにおいてかなり高かった(図1B)。
【0427】
身体能力および筋機能を、自発的ホイールランニング活動およびin vivo筋力生成を測定することによって、WTおよびPolGマウスにおいて評価した。ホイールランニング距離および筋力生成は、WT同腹仔と比較して、PolGマウスにおいてそれぞれ33%および13.5%低減し(図2および3)、これは、運動耐容能および筋力低下を示している。
【0428】
GDF15中和が、PoGミューテーターマウスにおいて罹患した状態を改善することができるかどうかを評価するために、体重減少、筋機能障害および運動耐容能を示していた9月齢のPolGミューテーターマウスを、選択的かつ強力なGDF15抗体(mAB2)またはIgG対照(ビヒクル)で処置した。WT同腹仔も研究に含めた。PolGマウスは、それらのWT同腹仔と比較して、より低い体重を有した(図4)。GDF15 mAB2で処置したPolGマウスは、ビヒクルで処置したPolGマウスと比較して、有意に多くの体重が増加した(図4)。EcoMRIによって評価した体組成は、GDF15 mAB2で処置したPolGマウスが、処置後22日目および57日目の時点で、ビヒクル処置マウスと比較して、有意に多くの除脂肪量が増加した(図5A)。GDF15 mAB2処置群は、処置後22日目の時点で、ビヒクル処置群と比較して、有意に高い体脂肪量を有した(図5B)。後肢筋肉を、研究の終了時(処置後87日目)に摘出し、計量した。GDF15 mAB2で処置したPolGマウス由来の腓腹筋および前脛骨筋(tibias)は、ビヒクルで処置したPolGマウス由来のものよりも有意に重かった(図6AおよびB)。
【0429】
GDF15 mAB2によって増加した筋肉量が、改善された筋機能を生じたかどうかを評価するために、筋力生成を、電気刺激の間にin vivoで評価した。PolG-GDF15 mAB2処置群における筋力生成は、PolGマウスにおけるビヒクル処置群と比較して、有意に高かった。意外なことに、GDF15 mAB2で処置したPolGマウスの最大の力は、WTマウスと類似のレベルまで回復した(図7)。さらに、GDF15 mAB2で処置したPolGマウスは、PolGビヒクル処置群と比較して、トレッドミル上で有意に長く走行し、これは、運動能力の改善を示している(図8A)。自発的ホイールランニング距離もまた、ビヒクル処置PolGマウスと比較して、GDF15 mAB2処置によって増加した(図8B)。
【0430】
結論
この研究からのデータは、GDF15 mAB2処置が、体重増加を改善し、除脂肪筋肉量および骨格筋量を増加させたことを実証した。GDF15 mAB2は、in vivoで筋力生成によって評価される筋強度を、完全に回復させた。さらに、GDF15 mAB2処置は、トレッドミルランニングおよび自発的ホイールランニング距離を改善し、これは、PolGマウスにおける運動能力の改善を示している。これらの結果は、GDF15阻害が、原発性ミトコンドリア筋症のための新たな治療アプローチを提供することを実証している。
【0431】
(実施例13)
心不全を有する患者における健康関連の生活の質に対するポンセグロマブの効果および安全性の研究(GARDEN TIMI74)
この研究の一次目的は、心不全を有する参加者における症状の頻度、重症度および負荷ならびに肉体的制約、ならびに上昇した循環GDF-15濃度に対する、ポンセグロマブ(PF-06946860;本明細書でGDF15_001とも呼ばれる)の反復皮下投与の効果を評価することである。この研究は、ポンセグロマブの安全性、忍容性、PK、PDおよび免疫原性もまた評価する。
【0432】
状態:心不全
介入:
薬物:ポンセグロマブ100mg
薬物:ポンセグロマブ200mg
薬物:ポンセグロマブ300mg
その他:釣り合う用量のプラセボ
【0433】
第2相
割り付け:無作為化
【0434】
【表15】
【0435】
この研究では、ポンセグロマブを、合計6用量になるように、皮下注射によって4週間毎に100、200または300mgの用量で投与する。参加者を、ポンセグロマブの3つの用量のうち1つまたはプラセボに無作為化する。
【0436】
主要評価項目:
・ Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire 23 Clinical Summary Score[時間枠:22週間]におけるベースラインからの変化
心不全を有する参加者における心不全疾患特異的健康状態に対するポンセグロマブの効果をプラセボに対して比較する
【0437】
二次評価項目:
・ Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire 23 Overall Summary Score、Total Symptom Scoreおよび肉体的制約におけるベースラインからの変化[時間枠:22週間]
HFを有する参加者におけるHF疾患特異的健康状態全般に対するポンセグロマブの効果をプラセボに対して比較する
・ Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire 23 Clinical Summary Score(CSS)、Overall Summary Score(OSS)、Total Symptom Score(TSS)および肉体的制約(PL)におけるベースラインからの≧5ポイントの増加によって定義される応答[時間枠:22週間]
HFを有する参加者におけるHF疾患特異的健康状態に対するポンセグロマブの効果をプラセボに対して比較する
・ 6-Minute Walk Distanceにおけるベースラインからの変化[時間枠:22週間]
HFを有する参加者の身体機能に対するポンセグロマブの効果をプラセボに対して比較する
・ 心不全Daily Diary疲労スコアにおけるベースラインからの変化[時間枠:22週間]
HFを有する参加者によって報告される疲労に対するポンセグロマブの効果をプラセボに対して比較する
・ Patient-Reported Outcomes Measurement Information System Fatigue 7aにおけるベースラインからの変化[時間枠:22週間]
HFを有する参加者によって報告される疲労に対するポンセグロマブの効果をプラセボに対して比較する
・ 処置により発生した有害事象の発生率[時間枠:22週間]
HFを有する参加者におけるポンセグロマブの安全性および忍容性を記述する
・ 処置により発生した重篤有害事象の発生率[時間枠:22週間]
HFを有する参加者におけるポンセグロマブの安全性および忍容性を記述する
・ 異常実験室結果の発生率[時間枠:22週間]
HFを有する参加者におけるポンセグロマブの安全性および忍容性を記述する
・ 異常なバイタルサインの発生率[時間枠:22週間]
HFを有する参加者におけるポンセグロマブの安全性および忍容性を記述する
【0438】
【表16】
【0439】
適格性
【0440】
【表17】
【0441】
基準
組み入れ基準:
- 18歳以上の雄性および雌性参加者
-.以下の基準の各々による、HFの臨床的証拠:
a.最も最近の測定時(直近の12カ月以内)にLVEF<50%
b.スクリーニング時にNYHAクラスII~IV
c.スクリーニング時にNT-proBNP≧400pg/mL
- スクリーニング時に血清GDF-15濃度≧2000pg/mL
- スクリーニング時にKCCQ-23 CSS<75
- 以下のうち少なくとも1つによって実証される、悪液質または疲労または機能的障害の証拠:
a.主観的疲労もしくは食欲不振に関連する、直近の6カ月における非浮腫性の意図しない体重減少≧5%、もしくは現在のBMI<20kg/m;または
b.1週間当たり少なくとも3回の疲労および過去2週間における少なくとも中程度に厄介な疲労;または
c.スクリーニング時に施行したKCCQ 23のPhysical Limitations Domainで<60のスコア。
【0442】
除外基準:
- 無作為化前の1カ月以内の急性非代償性HF
- 無作為化前の3カ月以内の心臓再同期治療デバイスの埋め込みまたは弁修復もしくは置換、または試験中にそれを行う意思があること
- 心臓移植の履歴、現在心臓移植のリストに入っている、または予定された機械的循環補助
- 無作為化前の1カ月以内の急性冠動脈症候群
- 無作為化前の3カ月以内の冠血行再建(経皮的冠動脈介入または冠動脈バイパス移植)、または試験の間に冠血行再建を受ける意思があること
- 心リズム異常(即ち、頻脈性不整脈または徐脈性不整脈)を処置するための埋め込み可能な心除細動器またはペースメーカーに関して未処置の適応症
- この研究で使用される研究介入の最初の用量に先行する30日(または現地の要求によって決定される)または5半減期(いずれか長い方)以内の、治験産物(薬物またはワクチン)の以前の投与。1日目の6カ月または5半減期(いずれか長い方)以内の、治験生物剤による処置
- 透析を必要とする腎疾患
- HFに起因しない門脈圧亢進の証拠を伴う硬変
【0443】
参考文献
Breenら, Cell Metab.
2020 Dec1; 32(6):938-950
Breitら, Annu Rev
Physiol. 2021 Feb 10;83:127-151
Grormanら, Ann
Neurol. 2015 Nov 78(5):814-23
Mancusoら,
Neuromuscul Disord. 2017 Dec; 27(12):1126-1137
Montanoら, Neurol
Genet. 2020 Oct 20; 6(6):e519
Lernerら, 2015, J.
Cachexia Sarcopenia Muscle, 6: 317-324
【0444】
開示された教示は、種々の適用、方法、キットおよび組成物に関して記載されてきたが、種々の変化および改変が、本明細書の教示および以下の特許請求される発明から逸脱することなしになされ得ることが理解される。上述の実施例は、開示された教示をよりよく説明するために提供されるのであって、本明細書に提示された教示の範囲を限定することを意図しない。本明細書の教示は、これらの例示的な実施形態に関して記載されてきたが、当業者は、これらの例示的な実施形態の多数のバリエーションおよび改変が過度の実験なしに可能であることを容易に理解する。全てのかかるバリエーションおよび改変は、本明細書の教示の範囲内である。
【0445】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書で引用される全ての参考文献、ならびにまだ引用されていない範囲までその中で引用される参考文献は、全ての目的のために、それらの全体が本明細書で参照によって組み込まれる。組み込まれた文献および類似の資料のうち1つ以上が、定義された用語、用語の用法、記載された技術などが含まれるがこれらに限定されない本出願とは異なるまたはそれと矛盾する場合、本出願が支配する。
【0446】
種々の改変およびバリエーションが、本発明の範囲または精神から逸脱することなしに本発明においてなされ得ることが、当業者に明らかである。本発明の他の実施形態は、本明細書で開示される発明の仕様および実施を考慮して、当業者に明らかである。仕様および例は、例示にすぎないとみなされる意図であり、本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024541933000001.xml
【国際調査報告】