(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ヒト及びサル組織における増強されたBCMA免疫組織化学検出のための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20241106BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20241106BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20241106BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241106BHJP
C12N 5/07 20100101ALN20241106BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20241106BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20241106BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
G01N33/574 A
C12Q1/02
G01N33/48 M
G01N33/48 S
C07K16/28
C12N5/07
C12N5/09
C12N5/10
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525000
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022078683
(87)【国際公開番号】W WO2023076921
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】カレイラ,ヴィニシウス
(72)【発明者】
【氏名】マレラ,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】コルナックス,イングリッド
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA26
2G045BA13
2G045BB22
2G045CB02
2G045DA36
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA19
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4B063QR48
4B063QR77
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4B065AA90X
4B065AA90Y
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本明細書において、患者の体液又は組織などの試料中の分子の存在を検出する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルマリン固定パラフィン包埋(「FFPE」)試料中のB細胞成熟抗原(「BCMA」)分子を検出する方法であって、
a.FFPE試料を切片化及びマウントすることと;
b.試料を脱パラフィンすることと;
c.試料の熱媒介抗原賦活化と;
d.ブロッキング剤による試料の前処理と;
e.前記試料を第1の検出剤と接触させることであって、前記第1の検出剤は任意選択で、前記試料中の少なくとも1つのBCMA分子に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む、接触させることと;
f.任意選択で、未結合試料を除去することと;
g.前記第1の検出剤に結合した前記試料を第2の検出剤と接触させることであって、前記第2の検出剤は任意選択で、抗体又はその断片である、接触させることと;
h.任意選択で、未結合の第2の検出剤を除去することと;及び
i.前記試料に結合した前記第2の検出剤の存在を検出することと、を含み、
前記試料に結合した前記第2の検出剤の量のバックグラウンドを超える検出は、前記試料中の少なくとも1つのBCMA分子の存在を示す、方法。
【請求項2】
前記熱媒介抗原賦活化が、EDTA系溶液を使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記EDTA系溶液が、8.5~9.5のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記EDTA系溶液が9.0のpHを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱媒介抗原賦活化の工程が、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間又は60分間行われる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記熱媒介抗原賦活化の工程が、85℃~100℃の温度で行われる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記熱媒介抗原賦活化の工程が100℃で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブロッキング剤が内因性ペルオキシダーゼを遮断する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ブロッキング剤が過酸化物ブロックである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
過酸化物ブロックで前処理する前記工程が、2分間、5分間、8分間、10分間又は15分間行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ブロッキング剤が、非特異的抗体結合を遮断する、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ブロッキング剤がDako/Agilent Protein Blockである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Dako/Agilent Protein Blockで前処理する前記工程が、5分間、10分間、15分間、20分間、又は30分間行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の検出剤が抗体又はその抗原結合断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料を前記第1の検出剤と室温又は37℃で接触させた、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記試料を前記第1の検出剤と15分間、30分間、45分間、60分間、95分間、又は120分間接触させた、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の検出剤が、抗体又はその抗原結合断片である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の検出剤に結合した前記試料を前記第2の検出剤と、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、又は30分間接触させた、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、体液又は組織由来の細胞を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記組織が脳組織である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組織が、線条体、視床、中脳、又は脳の髄質領域に由来する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組織が、腫瘍組織である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記試料が、対象由来のものである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、哺乳動物である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳動物が、カニクイザルである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の方法を行うためのキット。
【請求項28】
対象由来の試料中のBCMAを検出する工程を含む、前記対象をBCMA標的化剤で処置する方法。
【請求項29】
前記試料中のBCMAを検出する工程が、請求項1~22又は24~26のいずれか一項に記載の方法を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記標的化剤が、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記標的化剤がT細胞リダイレクト抗体である、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が癌を有する、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記癌は、多発性骨髄腫である、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年10月27日に出願された米国特許出願第63/272,600号に対する優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(分野)
本明細書において、患者の体液又は組織などの試料中の分子の存在を検出する方法が提供される。
【0003】
(概要)
一態様では、本明細書では、ホルマリン固定パラフィン包埋(「FFPE」)試料中のB細胞成熟抗原(「BCMA」)の分子を検出する方法であって、FFPE試料を切片化してマウントすることと;試料を脱パラフィンすることと;試料の熱媒介抗原賦活化と;ブロッキング剤による試料の前処理と;試料を第1の検出剤と接触させることであって、第1の検出剤は任意選択で、試料中の少なくとも1つのBCMA分子に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む、接触させることと;任意選択で、未結合試料を除去することと;第1の検出剤に結合した試料を第2の検出剤と接触させることであって、第2の検出剤は任意選択で、抗体又はその断片である、接触させることと;任意選択で未結合の第2の検出剤を除去することと;試料に結合した第2の検出剤の存在を検出することとを含み;試料に結合した第2の検出剤の量のバックグラウンドを超える検出は、試料中の少なくとも1つのBCMA分子の存在を示す、方法が提供される。
【0004】
いくつかの実施形態では、熱媒介抗原賦活化は、EDTA系溶液を使用して行われる。
【0005】
いくつかの実施形態では、EDTA系溶液は、8.5~9.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、EDTA系溶液は、9.0のpHを有する。
【0006】
いくつかの実施形態では、熱媒介抗原賦活化の工程は、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、又は60分間行われる。
【0007】
いくつかの実施形態では、熱媒介抗原賦活化の工程は、85℃~100℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、熱媒介抗原賦活化の工程は、100℃で行われる。
【0008】
いくつかの実施形態では、ブロッキング剤は内因性ペルオキシダーゼを遮断する。いくつかの実施形態では、ブロッキング剤は、過酸化物ブロックである。
【0009】
いくつかの実施形態では、過酸化物ブロックで前処理する工程は、2分間、5分間、8分間、10分間、又は15分間行われる。
【0010】
いくつかの実施形態では、ブロッキング剤は非特異的抗体結合を遮断する。いくつかの実施形態では、ブロッキング剤はDako/Agilent Protein Blockである。
【0011】
いくつかの実施形態では、Dako/Agilent Protein Blockで前処理する工程は、5分間、10分間、15分間、20分間、又は30分間行われる。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の検出剤は、抗体又はその抗原結合断片である。
【0013】
いくつかの実施形態では、試料を第1の検出剤と室温又は37℃で接触させた。
【0014】
いくつかの実施形態では、試料を第1の検出剤と15分間、30分間、45分間、60分間、95分間、又は120分間接触させた。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の検出剤は、抗体又はその抗原結合断片である。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の検出剤に結合した試料を第2の検出剤と、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、又は30分間接触させた。
【0017】
いくつかの実施形態では、試料は、体液又は組織由来の細胞を含む。いくつかの実施形態では、組織は、脳組織である。他の実施形態では、組織は、線条体、視床、中脳、又は脳の髄質領域に由来する。
【0018】
いくつかの実施形態では、組織は、腫瘍組織である。
【0019】
いくつかの実施形態では、試料は、対象からのものである。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、この哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態では、哺乳動物はカニクイザルである。
【0020】
一態様では、本明細書では、本明細書に開示される方法を実施するためのキットが提供される。
【0021】
一態様では、本明細書では、対象をBCMA標的化剤で治療する方法であって、対象由来の試料中のBCMAを検出する工程を含む方法が提供される。
【0022】
いくつかの実施形態では、試料中のBCMAを検出する工程は、本明細書に開示される方法を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、標的化剤は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である。いくつかの実施形態では、標的化剤は、T細胞リダイレクト抗体である。
【0024】
いくつかの実施形態では、対象は、癌を有する。いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
前述の「発明の概要」、並びに以下の、本出願の特定の実施形態の「発明を実施するための形態」は、添付図面と共に読んだときにより深く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
【
図1-1】ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)細胞ペレット及び組織対照に対する免疫組織化学(「IHC」)によるB細胞成熟抗原(「BCMA」)タンパク質の検出、及びin situハイブリダイゼーション(「ISH」)によるBCMA RNAの検出を示す。
図1Aは、H929細胞におけるBCMA発現を示す。
図1Bは、MM1R細胞におけるBCMA発現を示す。
図1Cは、Jeko-1細胞におけるBCMA発現を示す。暗い山形は、核周囲領域におけるBCMA検出を示す。
図1Dは、Raji細胞におけるBCMA発現を示す。暗い山形は、核周囲領域におけるBCMA検出を示す。
図1Eは、K562細胞におけるBCMA発現を示す。
図1Fは、U-937細胞におけるBCMA発現を示す。
図1Gは、HEK293細胞におけるBCMA発現を示す。
図1L~
図1Rは、それぞれH929、MM1R、Jeko-1、Raji、K562、U-937、及びHEK293細胞に対する実証的ISHを示す。明るい山形は、
図1N及び
図1OにおけるBCMA RNAの検出を示す。
図1Hは、ヒト結腸FFPE試料におけるBCMA IHCを示す。BCMA発現は、粘膜固有層内の推定常在性形質細胞における膜性及び核周囲である。
図1Hの挿入図は、推定形質細胞のより高い倍率を示す。
図1Iは、陽性推定形質細胞を有する、ヒト結腸FFPEにおけるBCMA発現のISHを示す。
図1Iの挿入図は、推定形質細胞のより高い倍率を示す。
【
図1-2】ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)細胞ペレット及び組織対照に対する免疫組織化学(「IHC」)によるB細胞成熟抗原(「BCMA」)タンパク質の検出、及びin situハイブリダイゼーション(「ISH」)によるBCMA RNAの検出を示す。
図1Aは、H929細胞におけるBCMA発現を示す。
図1Bは、MM1R細胞におけるBCMA発現を示す。
図1Cは、Jeko-1細胞におけるBCMA発現を示す。暗い山形は、核周囲領域におけるBCMA検出を示す。
図1Dは、Raji細胞におけるBCMA発現を示す。暗い山形は、核周囲領域におけるBCMA検出を示す。
図1Eは、K562細胞におけるBCMA発現を示す。
図1Fは、U-937細胞におけるBCMA発現を示す。
図1Gは、HEK293細胞におけるBCMA発現を示す。
図1L~
図1Rは、それぞれH929、MM1R、Jeko-1、Raji、K562、U-937、及びHEK293細胞に対する実証的ISHを示す。明るい山形は、
図1N及び
図1OにおけるBCMA RNAの検出を示す。
図1Hは、ヒト結腸FFPE試料におけるBCMA IHCを示す。BCMA発現は、粘膜固有層内の推定常在性形質細胞における膜性及び核周囲である。
図1Hの挿入図は、推定形質細胞のより高い倍率を示す。
図1Iは、陽性推定形質細胞を有する、ヒト結腸FFPEにおけるBCMA発現のISHを示す。
図1Iの挿入図は、推定形質細胞のより高い倍率を示す。
【
図1-3】ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)細胞ペレット及び組織対照に対する免疫組織化学(「IHC」)によるB細胞成熟抗原(「BCMA」)タンパク質の検出、及びin situハイブリダイゼーション(「ISH」)によるBCMA RNAの検出を示す。
図1J及び
図1Kは、BAFFR(
図1J)又はTACI(
図1K)でトランスフェクトされたBCMA陰性細胞上のBCMA発現のIHCを示す。
図1J及び
図1Kの挿入図は、抗タグ免疫反応性(挿入図)によって示されるように細胞株のトランスフェクションの成功にもかかわらず、免疫反応性が検出されないことを示す。
【
図2-1】脳試料に対して様々なBCMA抗体を用いて行ったIHCアッセイの結果を示す。
図2Aは、被殻におけるCell Signaling E6D7Bクローン(タグ)でのBCMA免疫反応性を示す。
図2B~2Cは、髄質における Cell Signaling E6D7Bクローン(タグ)でのBCMA免疫反応性を示す。
【
図2-2】脳試料に対して様々なBCMA抗体を用いて行ったIHCアッセイの結果を示す。
図2D及び
図2Gは、被殻におけるSanta Cruz BiotechクローンD6(タグ)でのBCMA免疫反応性を示す。
図2E~2F及び
図2H~2Iは、髄質におけるSanta Cruz BiotechクローンD6(タグ)でのBCMA免疫反応性を示す。
【
図2-3】脳試料に対して様々なBCMA抗体を用いて行ったIHCアッセイの結果を示す。
図2D及び
図2Gは、被殻におけるSanta Cruz BiotechクローンD6(タグ)でのBCMA免疫反応性を示す。
図2E~2F及び
図2H~2Iは、髄質におけるSanta Cruz BiotechクローンD6(タグ)でのBCMA免疫反応性を示す。
【
図3-1】トランス及びシスゴルジマーカーとのBCMAの共局在を示す。
図3A~3Dは、様々な抗体によるH929細胞における免疫蛍光染色の結果を示す。
図3Aは、DAPI染色を示す。
図3Bは、GOLM1染色を示す。
図3Cは、E6D7B染色を示す。
図3Dは、GOLM1及びE6D7Bの共局在を示す。矢印は、GOLM1及びE6D7Bの共局在を示す。
【
図3-2】トランス及びシスゴルジマーカーとのBCMAの共局在を示す。
図3E~3Hは、様々な抗体による髄質における免疫蛍光染色の結果を示す。
図3Eは、DAPI染色を示す。
図3Fは、GOLM1染色を示す。
図3Gは、E6D7B染色を示す。
図3Hは、GOLM1、E6D7B及びBCMAの共局在を示す。山形は、点在するニューロンにおける自己蛍光を示す。
【
図4-1】様々な脳領域におけるBCMA RNA発現を示す。
図4Aは、GTEx、Allen BrainSpanにおけるRNA配列決定の結果、及び全ての脳領域の凝集線条体データを示す。
【
図4-2】様々な脳領域におけるBCMA RNA発現を示す。
図4Bは、発達段階によってプロットされた全ての脳領域についてのAllen BrainSpanバルクRNA-seqデータを示す。
【
図4-3】様々な脳領域におけるBCMA RNA発現を示す。
図4Cは、ドナー年齢によってプロットされた、Allen BrainSpan由来の線条体及び線条体の成分(GTEx:尾状核及び被殻)についての凝集BCMA RNA発現データを示す。略語:TPM、100万当たりの転写産物。
【
図5-1】Santa Cruz D6クローンのアッセイ検証を示す。
図5Aは、D6クローンを使用した骨髄中のBCMA発現多発性骨髄腫細胞を示す。
図5Bは、D6クローンを使用した結腸の粘膜固有層中のBCMA発現推定形質細胞を示す。
【
図5-2】Santa Cruz D6クローンのアッセイ検証を示す。
図5C~5I及び
図5J~5Pは、D6クローンを使用した細胞ペレットにおけるBCMA発現を示す。
【
図6】E6D7B免疫反応性とタンパク質凝集マーカーとの比較を示す。
図6A~6Cは、E6D7Bクローンを使用してヒト脳のニューロンにおいて観察されたBCMA免疫反応性を示す。
図6Dは、髄質におけるリン酸化タウタンパク質(pTau)免疫反応性(山形)を示す。
図6E~6Fは、髄質におけるビルショウスキー銀染色を示す。
【0026】
(詳細な記述)
「背景技術」において、また、本明細書全体を通じて、各種刊行物、論文及び特許が引用又は記載され、これらの参照文献の各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明の前後関係を与えるためのものである。そのような考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0027】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有する。
【0028】
本明細書に記載又は参照されている技術及び手順には、当業者が概ねよく理解しているもの、及び/又は当業者が従来の手法を用いて通常採用しているもの、例えば、Sambrook et al:A Laboratory Manual(3d ed.2001)、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,2003)、Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic(An ed.2009)、Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Albitar ed.2010)、及びAntibody Engineering Vols 1 and 2(Kontermann and Dubel eds.,2d ed.2010)に記載されている広く利用されている手法などが含まれる。本明細書中で特に定義されていない限り、本明細書で使用されている技術用語及び科学用語は、当業者によって通常理解される意味を有する。この明細書を解釈するために、以下の用語の説明が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語は複数形も含まれ、その逆もまた同様である。記載された用語のいずれかの説明が、参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文書と矛盾する場合、以下に記載された用語の説明が優先されるものとする。
【0029】
以下の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:Binghamet al.,Oncotarget 2017;8(55):93392-403;Bolon et al.,Toxicol Pathol.2013;41(7):1028-48;Gras et al.,1995;7(7):1093-106;Uchihara et al.,Neuropathology.2014;34(6):571-7;Schuh et al.,J Immunol.2017;198(8):3081-8;and Shah et al.,Leukemia.2020;34(4):985-1005。
【0030】
定義
本明細書において、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明記されていない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0031】
本明細書の用語について複数の定義が存在する場合、別段記述されない限り、本項の定義が優先される。
【0032】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値について許容される誤差を意味し、これは、値が測定又は決定される方法に部分的に依存する。特定の態様では、「約」又は「およそ」という用語は、1、2、3、又は4つ以内の標準偏差を意味する。特定の態様では、「約」又は「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内を意味する。
【0033】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの均等物を認識するか、又は確認することができよう。そのような均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、若しくは「含有する(containing)」、又はこれらの任意の他の変形は、述べられている要素又は要素群を含むことが意図されるが、これら以外の他の要素又は要素群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、若しくは装置に固有である他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって満たされる。
【0035】
本明細書で使用される場合、複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続的な用語は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書に使用される場合、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「からなる(consists of)」、又は「からなる(consist of)」若しくは「からなる(consisting of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された要素又は要素群を包含するが、追加の要素又は要素群が、指定の方法、構造、又は組成物に追加されないことを示す。
【0037】
本明細書で使用されるとき、用語「から本質的になる(consists essentially of)」、又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用されるとき、任意の列挙された要素又は要素群を包含し、任意選択で、指定の方法、構造、又は組成物の基本的又は新規の特性を実質的に変化させない任意の列挙された要素又は要素群も包含することを示す。M.P.E.P.§2111.03を参照されたい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「投与する」又は「投与」は、本明細書に記載されているか、又は当該技術分野において既知の、経口、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達、及び/又は他の任意の物理的送達方法などによって、体外に存在する物質を患者に注射又は他の方法で物理的に送達する行為を指す。疾患又はその症状が治療される場合、物質の投与は、典型的には、疾患又はその症状の発症後に生じる。疾患又はその症状が予防される場合、物質の投与は、典型的には、疾患又はその症状の発症前に生じる。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「ポリヌクレオチド」は、同義的に「核酸分子」、「ヌクレオチド」、又は「核酸」とも称され、非修飾RNA若しくはDNA又は修飾RNA若しくはDNAであってもよい、任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指す。「ポリヌクレオチド」としては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、一本鎖若しくはより典型的には二本鎖、又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であってもよいDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語には、1つ又は2つ以上の修飾された塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性又は他の理由により修飾された骨格を有するDNA又はRNAも含まれる。「修飾された」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。様々な修飾をDNA及びRNAに行うことができる。したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的には天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと称される)も包含する。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「発現」は、遺伝子産物の生合成を指す。この用語は、遺伝子のRNAへの転写を包含する。この用語はまた、RNAの1つ又は2つ以上のポリペプチドへの翻訳も包含し、全ての天然に存在する、転写後及び翻訳後修飾も更に包含する。発現される抗体は、宿主細胞の細胞質内、細胞培養物の成長培地などの細胞外環境中に存在し得るか、又は細胞膜に固定され得る。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「タンパク質」は、アミノ酸から構成される分子を指すことができ、当業者によってタンパク質として認識され得る。本明細書では、アミノ酸残基の従来の1文字又は3文字コードが使用される。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書において互換的に使用することができる。ポリマーは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、修飾されたアミノ酸を含むことができ、かつ非アミノ酸により中断されてもよい。この用語はまた、天然に修飾されているか、又は介入によって修飾されているアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲートを包含する。また、例えば、アミノ酸の1つ又は2つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、並びに当該技術分野において既知である他の修飾も定義内に含まれる。
【0042】
本明細書に記載のペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左側にあり、C末端領域は右側にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されない限り、示されるのはアミノ酸のL型である。
【0043】
「抗体」、「免疫グロブリン」、又は「Ig」という用語は、本明細書で互換的に使用され、最も広い意味で使用され、具体的には、例えば、モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、完全長又はインタクトモノクローナル抗体を含む)、ポリエピトープ又はモノエピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル又は一価抗体、多価抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限りにおいて、二重特異性抗体)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、及びそのフラグメント(例えば、ドメイン抗体)を包含する。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、及び/又は親和性成熟されたものであり、また他の種、例えば、マウス、ウサギ、ラマなどからの抗体であり得る。「抗体」という用語は、特定の分子抗原に結合することができ、2つの同一の対のポリペプチド鎖で構成される、ポリペプチドの免疫グロブリンクラス内のB細胞のポリペプチド産物を含むことを意図しており、各対は、1つの重鎖(約50~70kDa)及び1つの軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分は、約100~約130以上のアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分は、定常領域を含む。例えば、Antibody Engineering(Borrebaeck ed.,2d ed.1995);、及びKuby,Immunology(3d ed.1997)を参照。また、抗体としては、合成抗体、組換え産生抗体、ラクダ科種(例えば、ラマやアルパカ)由来などの単一ドメイン抗体又はそれらのヒト化変異体、体内抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のいずれかの機能的フラグメント(例えば、抗原結合フラグメント)が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、フラグメントの由来となった抗体の結合活性の一部又は全部を保持する抗体重鎖又は軽鎖ポリペプチドの部分を指す。機能的フラグメント(例えば、抗原結合フラグメント)の非限定的な例としては、単鎖Fvs(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)2フラグメント、F(ab’)2フラグメント、ジスルフィド結合Fvs(dsFv)、Fdフラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、及びミニボディが挙げられる。特に、本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えば、抗原に結合する抗原結合部位(例えば、抗体の1つ又は2つ以上のCDR)を含有する抗原結合ドメイン又は分子を含む。そのような抗体フラグメントは、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(1989)、Mol.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers ed.,1995)、Huston et al.,1993,Cell Biophysics 22:189-224、Pluckthun and Skerra,1989,Meth.Enzymol.178:497-515、及びDay,Advanced Immunochemistry(2d ed.1990)に見出すことができる。本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又は任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)であり得る。抗体は、アゴニスト抗体又はアンタゴニスト抗体であり得る。抗体は、アゴニストでもなくアンタゴニストでもなくてもよい。
【0044】
「抗原」とは、抗体が選択的に結合することができる構造である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、又は他の天然に存在する化合物若しくは合成化合物であり得る。いくつかの実施形態では、標的抗原は、ポリペプチドである。特定の実施形態では、抗原は、細胞と関連し、例えば、細胞上又は細胞内に存在する。
【0045】
本明細書で使用するとき、「BCMA」という用語は、B細胞成熟抗原を指し、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(tumor necrosis factor receptor superfamily member 17、TNFRSF17)としても知られ、ヒトにおいてTNFRSF17遺伝子によってコードされるタンパク質である。BCMAは、B細胞活性化因子を認識するTNF受容体スーパーファミリーの細胞表面受容体である。BCMAは、成熟Bリンパ球において優先的に発現される。「BCMA」という用語は、細胞(B細胞を含む)によって天然に発現されるか、又はそのポリペプチドをコードする遺伝子若しくはcDNAでトランスフェクトされた細胞上に発現され得る、任意のBCMAバリアント、アイソフォーム、及び種間相同体を含む。記載されない限り、好ましくは、BCMAはヒトBCMAである。例示的なヒトBCMAヌクレオチド配列は、GenBankアクセッション番号BC058291によって提供される。ヒトゲノムにはBCMA遺伝子の4つの主要なハプロタイプが存在し、本開示では、「BCMA」という用語は、4つ全てを包含することを意味する(Kawasaki et al.,Genes Immun.2:276-9,2001)。
【0046】
「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合フラグメント」又は「抗原に結合するドメイン」は、抗原に特異的に結合する分子の一部を指す。抗原結合ドメインは、抗原に結合する免疫グロブリンの一部、例えば、VH、VL、VH及びVL、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVH又は1つのVLから成るドメイン抗体(dAb)、サメ可変IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、VHH、FR3-CDR3-FR4部分などの抗体のCDRを模倣するアミノ酸残基から成る最小認識ユニット、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3、並びに抗原に結合する非抗体スカフォールドを含んでもよい。
【0047】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」とは、当該技術分野の用語であり、結合分子(例えば、単鎖抗体配列を含む抗体)が特異的に結合することができる抗原の局在領域を指す。エピトープは、線状エピトープ又は立体構造エピトープ、非線状エピトープ、又は不連続エピトープであり得る。ポリペプチド抗原の場合、例えば、エピトープは、ポリペプチドの連続したアミノ酸(「線状」エピトープ)であり得るか、又はエピトープは、ポリペプチドの2つ又は3つ以上の非連続領域からのアミノ酸(「立体構造」、「非線状」、又は「不連続」エピトープ)を含み得る。概ね、線状エピトープは、二次、三次、又は四次構造に依存する場合もあれば、依存しない場合もあることが当業者によって理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、アミノ酸が天然の三次元タンパク質構造に折り畳まれているかどうかにかかわらず、アミノ酸の群に結合する。他の実施形態では、結合分子は、エピトープを認識して結合するために、エピトープを構成するアミノ酸残基が特定の立体構造(例えば、屈曲、ねじれ、回転、又はフォールディング)を示すことを必要とする。
【0048】
「インタクト」抗体とは、抗原結合部位、並びにCL及び少なくとも重鎖定常領域であるCH1、CH2、CH3を含むものである。定常領域には、ヒト定常領域又はそのアミノ酸配列の変異体が含まれ得る。特定の実施形態では、インタクト抗体は、1つ又は2つ以上のエフェクター機能を有する。
【0049】
「sFv」又は「scFv」とも略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に接続されたVH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを更に含む。sFvについては、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)のPluckthunを参照されたい。
【0050】
本明細書で使用される「単一ドメイン抗体」又は「sdAb」は、単一の単量体可変抗体ドメインを指し、抗原結合が可能である。単一ドメイン抗体には、本明細書に記載のVHHドメインが含まれる。単一ドメイン抗体の例としては、Camelidae種(例えば、ラマ)由来のものなどの軽鎖を自然に欠く抗体、従来の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作された抗体、及び抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が挙げられるが、これらに限定されない。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、及びウシを含むがこれらに限定されない任意の種に由来し得る。例えば、単一ドメイン抗体は、本明細書に記載されているように、ラクダ科種、例えばラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、及びグアナコで産生された抗体に由来し得る。ラクダ科以外の他の種でも、天然に軽鎖を持たない重鎖抗体を産生することがある。そのような他の種に由来するVHHは、本開示の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される単一ドメイン抗体(例えば、VHH)は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の構造を有する。単一ドメイン抗体は、本明細書に記載されるように、別の分子(例えば、薬剤)に遺伝的に融合するか又は化学的にコンジュゲートし得る。単一ドメイン抗体は、より大きな結合分子(例えば、多重特異性抗体又は機能的外因性受容体)の一部であり得る。
【0051】
「結合」又は「結合すること」という用語は、例えば、複合体を形成することを含む分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、及び/又はファンデルワールス相互作用を含む非共有相互作用であり得る。複合体には、共有結合若しくは非共有結合、相互作用、又は力によって一緒に保持された2つ又は3つ以上の分子の結合も含まれ得る。抗体の単一の抗原結合部位と、抗原などの標的分子の単一のエピトープとの間の非共有相互作用全体の強さが、そのエピトープに対する抗体又は機能的フラグメントの親和性である。一価の抗原に対する結合分子(例えば、抗体)の解離速度(koff)と会合速度(kon)との比(koff/kon)は、解離定数KDであり、親和性とは逆の関係にある。KD値が低いほど、抗体の親和性は高くなる。KDの値は、抗体及び抗原の異なる複合体によって様々であり、kon及びkoffの両方に依存する。本明細書において提供される抗体の解離定数KDは、本明細書において提供される任意の方法、又は当業者に周知である任意の他の方法を使用して決定することができる。1つの結合部位での親和性は、必ずしも抗体と抗原との間の相互作用の真の強さを反映するものではない。多価抗原などの複数の繰り返し抗原決定基を含有する複雑な抗原が、複数の結合部位を含む抗体と接触した場合、ある部位での抗体の抗原との相互作用は、第2部位での反応の確率を増加させるであろう。そのような多価抗体と抗原との間の複数の相互作用の強さは、親和力と呼ばれる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「体液(body fluid)」又は「体液(bodily fluid)」という用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)患者などの患者から得られる流体を指す。例えば、体液は、血液、脳脊髄液(cerebral spinal fluid、CSF)、母乳、又は尿であり得る。体液はまた、細胞を除去するために分画された血液(すなわち、血漿)又は細胞及び凝固因子を除去するために分画された血液(すなわち、血清)であり得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「捕捉部分」又は「第1の抗体」という用語は、固体支持体に固定化された、例えば、結合された、又は別の方法で連結された別の組成物によって特異的に結合され得る組成物を指す。本明細書で提供される検出部分の多くは、結合事象が伴う限り、捕捉部分として使用することもできる。例えば、有用な捕捉部分としては、特異的かつ選択的なリガンドが利用可能である親和性標識(例えば、ビオチンとアビジン、グルタチオンとGST)、抗血清又はモノクローナル抗体が利用可能であるハプテン及びタンパク質(例えば、c-Myc)、標的に相補的な配列を有する核酸分子、並びに特異的かつ選択的なリガンドが利用可能であるペプチド(例えば、ヒスチジンタグとNi)が挙げられる。クロマトグラフィー樹脂への結合特性に影響を及ぼす分子も想定される。固体支持体は、例えば、フィルタ、プレート、膜、クロマトグラフィー樹脂、又はビーズであり得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「カットポイント係数」又は「閾値」という用語は、概ね、ナイーブプールマトリックス(例えば、血清又は血漿)からのシグナルを数学的に操作して、陽性とみなされるために必要とされる試料かの最小シグナルを設定するために使用される値を指す。
【0055】
「誘導体」という用語は、本明細書で提供される方法で使用される抗体物質及びポリペプチドに関連して使用される場合、ユビキチン化、治療薬又は診断薬へのコンジュゲーション、標識(例えば、放射性核種又は様々な酵素による)、ペグ化などの共有ポリマー結合(すなわち、ポリエチレングリコールによる誘導体化)、及びヒトタンパク質では通常生じないオルニチンなどのアミノ酸の化学合成による挿入又は置換を含むがこれらに限定されない技法によって化学修飾されたポリペプチドを指す。誘導体は、非誘導体化分子の結合特性を保持することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「検出可能な部分」、「検出部分」、又は「標識」という用語は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、又は他の物理的手段を含むがこれらに限定されない手段によって検出可能な組成物(例えば、ポリペプチド又は抗体)を指す。例えば、有用な検出可能な部分又は標識としては、ルテニウム(Ru)ベースの触媒、ユーロピウム、32P、35S、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に使用されるようなもの)、ビオチン-ストレプトアビジン、ジオキシゲニン、抗血清又はモノクローナル抗体が利用可能なハプテン及びタンパク質、並びに標的に相補的な配列を有する核酸分子が挙げられる。検出可能な部分又は標識は、多くの場合、試料中の結合した検出可能な部分又は標識の量を定量化するために使用することができる、放射性シグナル、発色シグナル、発光シグナル、又は蛍光シグナルなどの測定可能なシグナルを生成する。
【0057】
本発明において使用されてもよい標識の例としては、フルオロフォア、発色団、電気化学発光標識、生物発光標識、ポリマー、ポリマー粒子、ビーズ若しくは他の固体表面、金若しくは他の金属粒子若しくは重原子、スピン標識、放射性同位体、酵素基質、ハプテン、抗原、量子ドット、アミノヘキシル、ピレン、核酸若しくは核酸類似体、又は例えば、受容体、ペプチドリガンド若しくは基質、酵素、及び抗体(抗体断片を含む)などのタンパク質が挙げられる。
【0058】
本発明によるいくつかの標識は、標的が試料中の色の有無又は色の変化によって検出される「色標識」を含む。「色標識」の例は、発色団、フルオロフォア、化学発光化合物、電気化学発光標識、生物発光標識、及び基質の色変化を触媒する酵素である。いくつかの実施形態では、例えば、識別可能な色標識を単一の検出ユニットに付着させることによって、又は各々が異なる識別可能な色標識を担持する2つ以上の検出ユニットを使用することによって、2つ以上の種類の色を使用してもよい。
【0059】
本明細書に記載される「フルオロフォア」は、1つ又は複数の波長の電磁放射線で励起されると検出可能な電磁放射線を放出する分子である。多種多様なフルオロフォアが当技術分野で公知であり、標識として使用するために化学者によって開発され、本発明のリンカーにコンジュゲートすることができる。例としては、フルオレセイン又はその誘導体、例えばフルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC)、5-(及び6)-カルボキシフルオレセイン、5-又は6-earboxyfluorescein、6-(フルオレセイン)-5-(及び6)-カルボキサミドヘキサン酸、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミン及びテトラメチルローダミン-5-(及び-6)-イソチオシアネート(TRITC)などのローダミン又はその誘導体が挙げられる。本発明のリンカーにコンジュゲートさせることもある他の例示的なフルオロフォアとしては、(ジエチル-アミノ)クマリン又は7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸、スクシンイミジルエステル(AMCA)などのクマリン色素、スルホローダミン101スルホニルクロリド(TexasRed(商標)又はTexasRed(商標)スルホニルクロリド;5-(及び-6)-カルボキシ-X-ローダミン、スクシンイミジルエステル(CXR)としても知られている、5-(及び-6)-カルボキシローダミン101、スクシンイミジルエステル、リサミンローダミンBスルホニルクロリド(LiSR)などのリサミン又はリサミン誘導体、5-(及び-6)-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFI);フルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC);7-ジエチルアミノクマリン-3-カルボン酸、スクシンイミジルエステル(DECCA);5-(及び-6)-カルボキシテトラメチルローダミン、スクシンイミジルエステル(CTMR);7-ヒドロキシクマリン-3-カルボン酸、スクシンイミジルエステル(HCCA);6-(フルオレセイン-5-(及び-6)-カルボキサミドヘキサン酸(FCHA);N-(4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-3-インダセンプロピオン酸、スクシンイミジルエステル;5,7-ジメチルBODIPY(商標)プロピオン酸スクシンイミジルエステル(DMBP)としても知られる、Molecular Probes,Inc.から入手可能な「活性化フルオレセイン誘導体」(FAP);エオシン-5-イソチオシアネート(EITC);エリスロシン-5-イソチオシアネート(ErITC);及びCascade(商標)Blueアセチルアジド(CBAA)(1-ヒドロキシ-3,6,8-ピレントリスルホン酸の0-アセチルアジド誘導体)が挙げられる。本発明において有用な更に他の潜在的なフルオロフォアには、緑色蛍光タンパク質及びその類似体又は誘導体などの蛍光タンパク質、チロシン及びトリプトファン並びにそれらの類似体などの蛍光アミノ酸、蛍光ヌクレオシド、並びにCy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、IR色素、Dyomics色素、フィコエリスリン、オレゴングリーン488、パシフィックブルー、ローダミングリーン、及びアレクサ色素などの他の蛍光分子が含まれる。本発明において使用されてもよい蛍光標識の更に他の例としては、R-フィコエリスリン又はaliiophycoerythrinの結合体、被覆CdSeナノ微結晶のような半導性材料に基づく粒子などの無機蛍光標識が挙げられる。
【0060】
上記の多数のフルオロフォア並びに他のものは、Molecular Probes,Inc.(Eugene,OR)、Pierce Chemical Co.(Rockford,IL)、又はSigma-Aldrich Co.(St.Louis,MO)などの会社から市販されている。
【0061】
本発明において使用されてもよいポリマー粒子標識の例としては、ポリスチレン、PMMA又はシリカの微粒子、ビーズ又はラテックス粒子が挙げられ、これらは、蛍光色素、又は色素、酵素若しくは基質を含有するポリマーミセル若しくはカプセルに埋め込まれることができる。
【0062】
本発明において使用されてもよい金属粒子の例としては、金粒子及び被覆金粒子が挙げられ、これらは銀染色によって変換することができる。
【0063】
いくつかの実施形態でコンジュゲートされてもよいハプテンの例は、フルオロフォア、myc、ニトロチロシン、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、2,4-ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、ブロモデオキシウリジン、スルホネート、アセチルアミノフルレン、マーキュリートリニトロフェノール、及びエストラジオールである。
【0064】
本発明において使用されてもよい酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、β-グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ及びグルコースオキシダーゼ(GO)を含む。
【0065】
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のために一般的に使用される基質の例としては、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、ニッケル増強を伴うジアミノベンジジン、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、ベンジジン二塩酸塩(BDHC)、Hanker-Yates試薬(HYR)、インドファンブルー(IB)、テトラメチルベンジジン(TMB)、4-クロロ-1-ナフトール(CN)、α-ナフトールピロニン(α-NP)、o-ジアニシジン(OD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、2-(p-ヨードフェニル)-3-p-ニトロフェニル-5-フェニルテトラゾリウムクロリド(INT)、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル-β-D-ガラクトシド/フェロ-フェリシアニド(BCIG/FF)が挙げられる。
【0066】
アルカリホスファターゼに一般的に使用される基質の例としては、ナフトール-AS-B1-リン酸/ファーストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール-AS-MX-リン酸/ファーストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール-AS-B1-リン酸/ファーストレッドTR(NABP/FR)、ナフトール-AS-MX-リン酸/ファーストレッドTR(NAMP/FR)、ナフトール-AS-B1-リン酸/ニューフクシン(NABP/NF)、ブロモクロロインドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-b(ベータ)-d(デルタ)-ガラクトピラノシド(BCIG)が挙げられる。
【0067】
本発明において使用されてもよい発光標識の例としては、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、1,2-ジオキセタン及びピリドピリダジンが挙げられる。電気化学発光標識の例としては、ルテニウム誘導体が挙げられる。
【0068】
本発明において使用されてもよい放射性標識の例としては、ヨウ化物、コバルト、セレン、水素、炭素、硫黄及びリンの放射性同位体が挙げられる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「検出可能な抗体」という用語は、検出され得る任意の抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗体は、検出可能な部分により直接標識される。特定の実施形態では、抗体は、検出可能な抗Ig抗体である。本明細書で使用される場合、「検出可能な抗Ig抗体」という用語は、検出され得る抗Ig抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗Ig抗体は、Ig分子へのその固有の結合に加えて、検出可能な部分により直接標識される。Ig抗体は、例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、又はIgYアイソタイプのものであり得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「一次抗体」という用語は、目的の抗原に直接結合する抗体を指す。本明細書で使用される場合、「二次抗体」という用語は、検出標識にコンジュゲートされた抗体を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される二次抗体は、一次抗体に直接結合する。他の実施形態では、本明細書に提供される二次抗体は、例えば、一次抗体を認識する別の抗体に結合することによって、一次抗体に間接的に結合する。
【0071】
ペプチド又はポリペプチドの文脈において、本明細書で使用される場合、「フラグメント」という用語は、完全長未満のアミノ酸配列を含むペプチド又はポリペプチドを指す。そのようなフラグメントは、例えば、アミノ末端での切断、カルボキシ末端での切断、及び/又はアミノ酸配列からの残基(複数可)の内部欠失から生じ得る。フラグメントは、例えば、選択的RNAスプライシング又はインビボプロテアーゼ活性から生じ得る。特定の実施形態では、フラグメントは、標的抗原に免疫特異的に結合する抗体のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ酸残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基、少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125個の連続したアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基、少なくとも175個の連続したアミノ酸残基、少なくとも200個の連続したアミノ酸残基、又は少なくとも250個の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。特定の実施形態では、標的抗原に免疫特異的に結合する抗体フラグメントは、抗体の少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つの機能を保持する。
【0072】
2つ又は3つ以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の文脈における「同一である」又はパーセント「同一性」という用語は、配列比較アルゴリズムを使用して又は目視検査によって測定したとき、一致が最大になるように比較及び位置合わせさせた場合に同じである、又は特定のパーセントの同じであるヌクレオチド若しくはアミノ酸残基を有する、2つ又は3つ以上の配列又はサブ配列を指す。
【0073】
標的抗原と「免疫特異的に結合する抗体」という用語及び類似の用語は、本明細書において互換的に使用され、標的抗原又はエピトープのみに特異的に結合する抗体及びそのフラグメントを指す。更に他の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAアイソタイプなどのIgに免疫特異的に結合する。
【0074】
本明細書で使用される場合、「干渉」という用語は、概ね、標的分析物の正確な検出及び測定を妨げる体液(例えば、血清又は血漿)試料中の物質の存在を指す。本明細書で使用される場合、干渉は、概ね、濃度-応答関係に対する遊離薬物の効果又はマトリックス(例えば、血清又は血漿)の効果を指す。例えば、マトリックスからの干渉は、75~125%の相対精度の範囲を目標とするために、潜在的な干渉のない試料に対する相対精度として評価され得る。
【0075】
試料の文脈における「インビボ」という用語は、生物学的試料、例えば、生物学的若しくは体液、例えば、血液、血漿、血清、骨髄、髄液、脳液、又は組織、例えば、リンパ組織、薄層細胞学的試料、新鮮な凍結組織試料若しくは腫瘍組織を含む、対象、例えば、患者、例えばヒト患者から得られた試料を指す。「インビボ」という用語は、生きている生物の外で培養又は増殖された細胞若しくは細胞株、又は細胞の生体分子成分を包含する「インビトロ」という用語と区別されるべきである。
【0076】
「検出限界」、「LOD」、又は「感度」という用語は、本明細書で使用される場合、概ね、検出され得るが必ずしも正確な値として定量されない体液(例えば、血清又は血漿)試料中の最低分析物濃度を指す。例えば、LODは、プールされたナイーブマトリックス+カットポイント係数の測定された平均応答よりも大きいシグナルを一貫して生成する分析物濃度として定義され得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、「マトリックス(matrix)」又は「マトリックス(matrices)」という用語は、概ね、抗体が測定される生物学的バックグラウンドを指す。マトリックスの例としては、例えば、体液及び組織が挙げられる。
【0078】
「モノクローナル抗体」という用語は、均質又は実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、各モノクローナル抗体は、典型的には、抗原上の単一のエピトープを認識する。特定の実施形態では、本明細書で使用される「モノクローナル抗体」は、単一のハイブリドーマ又は他の細胞によって生成される抗体である。「モノクローナル」という用語は、抗体を作製するための特定の方法に限定されるものではない。例えば、本明細書で提供される方法において使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.;Nature,256:495(1975)に記載されているハイブリドーマ法によって作製され得るか、又は当該技術分野において既知の技法を使用してファージライブラリーから単離され得る。クローン細胞株及びそれによって発現されるモノクローナル抗体の調製のための他の方法は、当該該分野において周知である(例えば、Short Protocols in Molecular Biology,(2002)5th Ed.,Ausubel et al.,eds.,John Wiley and Sons,New Yorkの第11章を参照されたい)。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ポリクローナル抗体」は、多くのエピトープを有するタンパク質に対する免疫原性応答において生成される抗体集団を指し、したがって、タンパク質内の同じエピトープ及び異なるエピトープ向けられた様々な異なる抗体を含む。ポリクローナル抗体を産生するための方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Short Protocols in Molecular Biology,(2002)5th Ed.,Ausubel et al.,eds.,John Wiley and Sons,New Yorkの第11章を参照されたい)。
【0080】
本明細書で使用される場合、「精度」という用語は、概ね、分析者と日数との間のシグナルの変動性を指す。例えば、精度は、変動係数、値の範囲として、又はANOVA統計を使用して評価され得る。
【0081】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、本明細書で提供される療法又は療法の組み合わせの投与から生じる、疾患及び/又はそれに関連する症状(例えば、患者におけるPKU又は癌などのフェニルアラニンレベルの上昇に関連する疾患又はそれに関連する症状)の発生、再発、発症、又は拡大の全体的又は部分的な阻害を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「試薬安定性」という用語は、概ね、試薬の調製の堅牢性及び貯蔵安定性を指す。例えば、試薬安定性は、新たに調製された試薬に対して75~125%の精度内で値が測定されることを依然として可能にする条件によって確立され得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「堅牢性」という用語は、概ね、方法パラメータの小さな変動によって影響を受けないままであるアッセイの能力を指し、通常の実行条件中のアッセイの信頼性を示す。例えば、堅牢性は、公称条件に対して75~125%の精度内で依然としてシグナルを生成する試薬濃度、試薬体積、又はインキュベーション時間のパーセント変化として評価することができる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、概ね、本明細書で提供される方法において使用することができる、例えば、患者から採取された試験流体又は組織を指す。いくつかの実施形態では、試料は、インビボ試料、例えば、対象、例えば、患者、例えば、ヒト患者由来の体液(又は生物学的流体)である。そのような体液の非限定的な例としては、血液(例えば、ヒト末梢血(human peripheral blood、HPB))、血液溶解物、血清、血漿、細針吸引物、管洗浄液、髄液、脳液、骨髄、腹水、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。他の実施形態では、試料は、対象からの腫瘍組織などの生検組織、又は他の体組織若しくは臓器の薄層細胞学的試料から採取される。特定の実施形態では、試料は、末梢血試料、腫瘍組織又は疑わしい腫瘍組織、薄膜細胞学的試料、細針吸引試料、骨髄試料、リンパ節試料、尿試料、腹水試料、洗浄試料、食道ブラッシング試料、膀胱又は肺洗浄試料、髄液試料、脳液試料、管吸引試料、乳房分泌物試料、胸水試料、新鮮な凍結組織試料、パラフィン包埋組織試料を含む。他の実施形態では、試料は、末梢血試料、腫瘍組織若しくは疑わしい腫瘍組織、薄膜細胞学的試料、細針吸引試料、骨髄試料、尿試料、腹水試料、洗浄試料、食道ブラッシング試料、膀胱若しくは肺洗浄試料、髄液試料、脳液試料、管吸引試料、乳房分泌物試料、胸水試料、新鮮な凍結組織試料、又はパラフィン包埋組織試料のうちのいずれかからの抽出液であるか、又はそれから産生された処理された試料である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「特異性」という用語は、概ね、特定のタンパク質と反応する抗体を検出するアッセイの能力を指す。例えば、特異性は、非特異的タンパク質に対する応答がLOD未満であるべきである一方で、特定の分析物との比例的な検出応答を指し得る。比例的な応答は、0.98以上の相関係数R値に対して評価され得る。標的抗原を検出するために本明細書で提供される方法に関連して使用される場合、特異性は、特定のタンパク質と反応する抗原を検出する能力を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は互換的に使用される。本明細書で使用される場合、対象は、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)又は霊長類(例えば、サル及びヒト)などの哺乳動物、最も好ましくはヒトである。一実施形態では、対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。本明細書で提供される方法及びキットのいくつかの実施形態では、患者は、疾患若しくは症状、又は癌を有する。本明細書で提供される方法及びキットの他の実施形態では、患者は、癌療法を受けている患者である。本明細書で提供される方法及びキットの更に他の実施形態では、患者は、妊婦又は乳児(例えば、0~約36ヶ月齢)である。
【0087】
本明細書で使用される場合、「タグ」及び「標識」という用語は、互換的に使用され、抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は本明細書で提供される方法において使用される他のポリペプチドに結合される任意の種類の部分を指す。抗体又はタグに関する「検出可能な」又は「検出」という用語は、可視化することができる任意の抗体又はタグを指すか、あるいは抗体又はタグの存在を別の方法で決定及び/又は測定することができる(例えば、定量化によって)。検出可能なタグの非限定的な例としては、蛍光タグ又は他の化学発光タグ、及びPCRを使用して増幅及び定量され得るタグが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書で提供される方法において使用される二次抗体は、標識されたストレプトアビジンと組み合わせて使用されるビオチン化二次抗体である。
【0088】
本明細書で使用される場合、「療法」という用語は、疾患(又はそれに関連する症状)又は癌の予防、管理、治療、及び/又は寛解において使用され得る任意のプロトコル、方法、及び/又は薬剤を指す。特定の実施形態では、「療法(therapies)」及び「療法(therapy)」という用語は、医療関係者などの当業者に既知の疾患又は癌の予防、管理、治療、及び/又は寛解に有用な生物学的療法、支持療法、及び/又は他の療法を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「組織」という用語は、哺乳動物、例えばヒトから得られる組織を指す。例えば、組織は、生検試料、外科的に除去された組織、又は死後収集物由来のものであり得る。更に、組織をホモジナイズし抽出して、組織から酵素又は抗体を単離することができる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、1つ又は2つ以上の療法を投与することによって生じる、疾患(それに関連する症状)又は癌の進行、重症度、及び/又は持続期間の減少又は寛解を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、元のポリペプチドコードドメインに対してコード領域に少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、又は挿入を含むポリペプチド配列を指す。変異体は、天然に存在するポリペプチドの生物学的活性を保持する。
【0092】
本明細書で使用される場合、「インサイチュハイブリダイゼーション」又は「ISH」という用語は、供給源試料の形態を保存しながら、特定の標的核酸を局在化及び可視化するための技法を指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「免疫組織化学」又は「IHC」という用語は、供給源試料の形態を保存しながら、抗体を利用して供給源試料中の目的のタンパク質を検出するための技法を指す。免疫蛍光(Immunofluorescence、IF)は、蛍光標識を指し、したがって、IHCという用語にも包含される。
【0094】
本明細書で使用される場合、「架橋」という用語は、2つ又は3つ以上の分子を一緒に結合するプロセスを指す。「架橋剤」又は均等物は、タンパク質及び他の分子に見られる官能基に自身を結合する2つ又は3つ以上の化学的に反応性の末端を含有する薬剤を指す。具体的には、架橋剤がホルムアルデヒド又はその均等物である場合、アミノ酸又は核酸塩基上の求核基は、ホルムアルデヒドと共有結合を形成し、これは、しばしば別の分子上の別の官能基を伴う第2のステップにおいて安定化され、メチレン架橋の形成をもたらす。架橋剤が酸化剤である場合、それはタンパク質及び他の生体分子の側鎖と反応することができ、組織構造を安定化させる架橋の形成を可能にする。
【0095】
本明細書で使用される場合、「固定」又は「固定すること」という用語は、IHCプロセスにおける試料の固定に関して行われる場合、例えば、自己分解又は腐敗による崩壊から試料を保護するための手順を指す。それは、任意の進行中の生化学反応を終結させ、また、処理された組織の機械的強度又は安定性を増加させ得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「検出すること」という用語は、概ね、任意の形態の測定を指し、要素が存在するか否かを決定することを含む。この用語は、定量的及び/又は定性的決定を含む。
【0097】
BCMAを検出するためのIHC方法
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織に対する免疫組織化学(IHC)は、目的の標的タンパク質を発現する細胞を同定し、潜在的な毒性を予測することによる、R&D治療キャンペーンにおける重要なステップである。堅牢なIHCアッセイは、最適な特異性及び感度で標的を確実に認識する好適な一次抗体に依存する。FFPE組織は、しばしば、立体構造が変化した過剰固定タンパク質を提示し、これは、非IHCアッセイにおいて検証された抗体の再目的化を極めて不確実にする。組織調製及び保存プロセス中に、ホルマリンなどの架橋剤が使用される場合、ホルマリン固定は、エピトープをマスクし、免疫反応性の減少をもたらしてもよい(Arnold et al.,Biotech Histochem 71:224-230(1996)を参照されたい)。ホルマリン固定は、固定時間が増加すると平衡点までタンパク質へのホルムアルデヒド基結合が連続する時間依存性プロセスである(Fox et al.,J Histochem Cytochem 33:845-853(1985)を参照されたい)。研究により、ホルマリン固定は、特に延長された場合、抗原性を減少させることが示されており(Battifora and Kopinski,J Histochem Cytochem 34:1095-1100(1986)を参照されたい)、これにより、診断的IHCのためのホルマリン固定組織の使用が制限される(Ramos-Vara,Vet Pathol 42:405-426(2005)、Webster et al.,J Histochem Cytochem.57(8):753-761(2009)を参照されたい)。新しいIHC抗体の生成は、好適な試薬が市販されていない場合、関連する対照に対して多くの候補をスクリーニングすることを必要とする。
【0098】
一態様では、本明細書ではホルマリン固定パラフィン包埋(「FFPE」)試料中のBCMAを検出する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、(1)FFPE試料を切片化し、マウントすることと、(2)試料を脱パラフィンすることと、(3)試料を加熱して抗原賦活化を媒介することと、(4)試料をブロッキング剤で前処理することと、(5)試料を第1の検出剤と接触させることと、(6)第1の検出剤に結合した試料を第2の検出剤と接触させることと、(7)試料に結合した未結合の第2の検出剤の存在を検出することとを含む。
【0099】
別の実施形態では、本方法は、(1)FFPE試料を切片化し、マウントすることと、(2)試料を脱パラフィンすることと、(3)試料を加熱して抗原賦活化を媒介することと、(4)試料をブロッキング剤で前処理することと、(5)試料を第1の検出剤と接触させることと、(6)未結合試料を除去することと、(7)第1の検出剤に結合した試料を第2の検出剤と接触させることと、(8)未結合の第2の検出剤を除去することと、(9)試料に結合した未結合の第2の検出剤の存在を検出することとを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって検出されたBCMAは、細胞(B細胞を含む)によって天然に発現されるか、又はそのポリペプチドをコードする遺伝子若しくはcDNAでトランスフェクトされた細胞上に発現されることができる、任意のBCMAバリアント、アイソフォーム、及び種間相同体を含む。記載されない限り、好ましくは、BCMAはヒトBCMAである。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の方法で使用される試料は、体液又は組織から収集された細胞を含む。いくつかの実施形態では、試料は、生物に見られる任意の組織を含んでもよい。いくつかの実施形態では、生物は、脊椎動物又は無脊椎動物を含む。いくつかの実施形態では、脊椎動物は、ヒト又は非ヒト霊長類を含む。いくつかの実施形態では、サルは、カニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル(Macaca mulatta)、マーモセット(Callithrix jacchus)、チンパンジー(Pan troglodytes)、ボノボ(Pan paniscus)、ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)、スマトラオランウータン(Pongo abelii)、タパヌリオランウータン(Pongo tapanuliensis)又は任意の他の既知の霊長類種を含む。いくつかの実施形態では、組織は、腫瘍組織を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍組織は、良性腫瘍を含む。別の実施形態では、腫瘍組織は前悪性腫瘍を含む。他の実施形態では、腫瘍組織は悪性腫瘍を含む。本開示によって企図される例示的な腫瘍組織の非網羅的なリストには、肉腫、癌腫、腺癌、リンパ腫、乳腺腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、頭頸部腫瘍、脳腫瘍、下垂体腫瘍、神経膠芽腫、髄芽腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、膀胱腫瘍、膵腫瘍、膵島腫瘍、肝腫瘍、卵巣腫瘍、直腸結腸腫瘍、肺腫瘍、気管支腫瘍、気管気管支腫瘍、皮膚腫瘍、リンパ系腫瘍、及び胃腸腫瘍が含まれる。
【0102】
更なる実施形態では、組織は脳組織を含んでもよい。脳組織は更に、脳の線条体領域、視床領域、中脳領域又は髄質領域を含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、本開示の方法において使用される試料は、対象から取得される。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒト又は非霊長類ヒトである。他の実施形態では、哺乳動物はカニクイザル(Macaca fascicularis)である。試料は、当技術分野において公知の任意の方法によって収集してもよい。当業者は、収集手順が試料の種類及び意図される分析に応じて変わることを理解する。例えば、血液試料は、真空管システムを用いて静脈内経路によって収集されてもよい。脳組織は、頭皮を切開し、頭蓋骨に穴を開け、脳に針を挿入して脳組織を取得することによって収集してもよい。
【0104】
本開示のいくつかの実施形態では、組織又は細胞試料を、固定又は包埋してもよい。固定剤は、例えば、細胞及び組織を再現可能及び生きているような方法で保存するために必要とされてもよい。固定剤はまた、細胞及び組織を安定化し、それによってそれらを処理及び染色技術の過酷な状況から保護してもよい。例えば、組織ブロック、切片、又は塗抹標本を含む試料を、固定液に浸漬してもよく、又は塗抹標本の場合、乾燥してもよい。
【0105】
組織標本を固定及び包埋する多くの方法、例えば、ホルマリン固定及びその後のパラフィン包埋(FFPE)が知られている。任意の好適な固定剤を使用してもよい。例としては、エタノール、酢酸、ピクリン酸、2-プロパノール、3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩二水和物、アセトイン(単量体の混合物)及び二量体、アクロレイン、クロトンアルデヒド(シス+トランス)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、二クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、四酸化オスミニウム、パラホルムアルデヒド、塩化水銀、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリクロロ酢酸、タングステン酸が挙げられる。他の例としては、ホルマリン(水性ホルムアルデヒド)及び中性緩衝ホルマリン、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミデート、ベンゾキノン(benzoequinone)、オスミウム酸及び四酸化オスミウムが挙げられる。新鮮な生検標本、細胞学的調製物(接触調製物及び血液塗抹標本を含む)、凍結切片、及びIHC分析用の組織を、エタノール、酢酸、メタノール及び/又はアセトン試料を含む有機溶媒中で固定してもよい。
【0106】
本開示のいくつかの実施形態では、本方法は、非特異的相互作用を低減しながら、試料中の標的分子の反応性又はアクセシビリティを増加させるための前処理工程を含む。このプロセスは抗原賦活化と呼ばれ、標的賦活化、エピトープ賦活化、標的アンマスキング又は抗原アンマスキングとしても知られている。例えば,Shiet al.,J Histochem Cytochem,45(3):327(1997)を参照されたい。抗原賦活化は、例えばプロテイナーゼ、プロナーゼ、ペプシン、パパイン、トリプシン又はノイラミニダーゼなどのタンパク質分解酵素による酵素消化を含む様々な方法を包含する。いくつかの実施形態では、熱、例えば「熱媒介抗原賦活化」を使用してもよい。加熱は、マイクロ波照射、又は適切なpHに安定化された緩衝液中での水浴、スチーマ、通常のオーブン、オートクレーブ、若しくは圧力調理器を含んでもよい。いくつかの実施形態では、熱媒介抗原賦活化は、EDTA系溶液を使用して行われる。
【0107】
いくつかの実施形態では、EDTA系溶液は、8.0~9.0、8.5~9.5、9.0~10.0、9.5~10.5、10~11、10.5~11.5、12.0~13.0、12.5~13.5又は13.0~14.0のpHを有する。別の実施形態では、EDTA系溶液は、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5又は14.0のpHを有する。更なるpH安定化緩衝液としては、EGTA、Tris-HCl、クエン酸、尿素、グリシン-HCl又はホウ酸を挙げてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、熱媒介抗原賦活化の工程は、1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分又は60分にわたって行われる。他の実施形態では、熱媒介抗原賦活化工程は、80℃~120℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、熱媒介抗原賦活化工程は、80°C~95°C、85°C~100°C、90°C~105°C、95°C~110°C、100°C~115°C、又は105°C~120°Cの温度で行われる。他の実施形態では、熱媒介抗原賦活化法は、98℃、99℃、100℃、又は120℃で行われる。特定の実施形態では、熱媒介抗原賦活化法は100℃で行われる。いくつかの実施形態では、上記の抗原賦活化法の任意の組み合わせを使用してもよい。
【0109】
本開示のいくつかの実施形態では、方法は、ブロッキング剤で試料を遮断することを含む。当技術分野で公知のブロッキング剤としては、とりわけ、血清(ウシ血清アルブミン)、カゼイン、ゼラチン、サケ精子DNA、アビジン/ビオチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、ブロッキング剤は内因性ペルオキシダーゼを遮断する。したがって、ブロッキング剤は過酸化物ブロックを含んでもよい。ブロッキングは、持続時間にわたって行われてもよい。いくつかの実施形態では、過酸化物ブロックによるブロッキングは、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、又は20分間実施されてもよい。他の実施形態では、ブロッキング剤は、非特異的抗体結合を遮断する。したがって、ブロッキング剤は、Dako/Agilent Protein Blockを含んでもよい。いくつかの実施形態では、Dako/Agilent Protein Blockによるブロッキングは、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、60分間、90分間、又は120分間実施されてもよい。いくつかの実施形態では、Dako/Agilent Protein blockによるブロッキングは、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間又は12時間にわたって行われてもよい。更なるブロッキング剤を使用してもよいことが理解される。当業者は、ブロッキング剤及びブロッキングのための時間が処理される組織に依存することを理解する。
【0110】
本開示は、多くの既知の検出フォーマット及びそれらに関連する試料と互換性がある。例えば、本発明は、イムノアッセイ、タンパク質検出アッセイ、又は核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、例えば、とりわけ表面又はアレイ上の標識する、免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、及びin situハイブリダイゼーション(ISH)に関連して使用されてもよい。これらの検出アッセイの全ては、研究だけでなく、例えば種々の疾患及び状態の検出及び診断においても有用である。
【0111】
例えば、IHCは、インサイチュで試料又は組織標本中の標的を検出する方法を具体的に提供する(Mokry 1996,ACTA MEDICA 39:129を参照されたい)。IHCでは試料の全体的な細胞完全性が維持されるので、目的の標的の有無及び位置の両方の検出が可能になる。典型的には、試料をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、染色及びその後の光学顕微鏡による検査のために切片に切断する。IHCの現在の方法は、直接標識又は二次抗体ベース若しくはハプテンベースの標識のいずれかを使用する。公知のIHCシステムの例としては、例えば、EnVision(商標)(DakoCytomation)、Powervision(登録商標)(Immunovision,Springdale,AZ)、NBA(商標)キット(Zymed Laboratories Inc.,South San Francisco,CA)、HistoFine(登録商標)(Nichirei Corp,Tokyo,Japan)が挙げられる。本発明は、IHC検出プラットフォームにおけるシグナルの増強又は柔軟性の増加を可能にしてもよい。
【0112】
IHC、ISH及び病因学的技術は、部分的に架橋され、本質的に非常に不均一であってもよい組織、細胞及びタンパク質のマトリックス中で実施されてもよい。拡散速度は、濃度の増加及び温度の上昇と共に増加するが、分子量及び分子サイズと共に減少する。したがって、構成要素の物理的サイズは非常に重要である。例えば、大きな分子は、試料の一部への拡散から除外されることができるが、小さなサイズの成分は、試料の異なる区画の内外に容易に拡散してもよい。いくつかの実施形態では、本発明のユニットは、標的認識及び検出を改善するために、小さいサイズ、例えば、抗体又はビオチン-ストレプトアビジン複合体より小さいサイズであるように設計されてもよい。
【0113】
本開示のいくつかの実施形態では、方法は、試料を検出剤と接触させることを含む。本明細書で使用される場合、「検出剤」という用語は、標的に特異的に結合することができる結合剤を指す。このような結合剤としては、例えば、抗体及びリガンドが挙げられる。抗体には、完全長抗体並びに上記に例示したものなどの機能的断片が含まれる。リガンドには、上で例示したものなどの完全長ポリペプチド及びその機能的結合断片が含まれる。リガンドにはまた、上記に例示された非ポリペプチドリガンドも含まれる。標的への特異的結合に言及する場合、本開示の検出剤は、標的に直接結合することができ、又は間接的手段によって標的に特異的にすることができる。いくつかの実施形態では、試料を第1の検出剤及び第2の検出剤と接触させる。いくつかの実施形態では、検出剤は、抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、試料を室温で第1の検出剤と接触させる。いくつかの実施形態では、試料を4℃又は37℃で第1の検出剤と接触させる。いくつかの実施形態では、試料を第1の検出剤と15分間、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、60分間、65分間、70分間、75分間、80分間、90分間、95分間、100分間、105分間、110分間、115分間又は120分間接触させた。いくつかの実施形態では、試料を第1の検出剤と3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間又は12時間接触させた。いくつかの実施形態では、試料を室温で第2の検出剤と接触させる。いくつかの実施形態では、試料を37℃で第2の検出剤と接触させる。他の実施形態では、試料を4℃で第2の検出剤と接触させる。いくつかの実施形態では、試料を第2の検出剤と1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、又は60分間接触させた。
【0114】
いくつかの実施形態では、試料に結合した第2の検出剤の量のバックグラウンドを超える検出は、試料中の少なくとも1分子のBCMAの存在を示す。
【0115】
いくつかの実施形態では、FFPE試料中のBCMA”)を検出する方法は、ヒト及びカニクイザル由来の結腸、脾臓、及びリンパ節のFFPE試料を切片化及びマウントすることと、試料を脱パラフィンすることと;試料を、pH9.0のEDTA系溶液中、100℃で20分間加熱することと;試料を内因性ペルオキシダーゼ溶液で10分間前処理し、次いで試料をDako無血清タンパク質ブロックで10分間前処理することと;試料を抗体希釈剤中7.8μg/mLの濃度のウサギモノクローナル抗BCMA抗体と30分間接触させることと;試料を広範囲に洗浄することと;第1の検出剤に結合した試料をDABを含む第2の検出剤と接触させることとを含む。
【0116】
ISH
ISHは、中期又は間期染色体調製物に関して標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)を含有する試料(例えば、スライドにマウントした細胞又は組織試料)を、標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)に対して特異的にハイブリダイズ可能又は特異的であるプローブ(すなわち、上記の標的核酸プローブ)と接触させることを含む。スライドは、例えば均一なハイブリダイゼーションを妨害することができるパラフィン又は他の物質を除去するために、任意選択で前処理される。染色体試料及びプローブは共に、例えば、二本鎖核酸を変性させるための加熱によって処理される。プローブ(適切なハイブリダイゼーション緩衝液中で配合される)及び試料は、ハイブリダイゼーションが起こる(典型的には平衡に達する)ことを可能にする条件下及び十分な時間で組み合わせられる。染色体調製物を洗浄して過剰な標的核酸プローブを除去し、染色体標的の特異的標識の検出を行う。本開示のプローブ及びプローブシステムは、in situハイブリダイゼーション手順(例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)及び銀in situハイブリダイゼーション(SISH))などの核酸検出に使用することができる。相補的核酸分子間のハイブリダイゼーションは、相補的ヌクレオチドユニット間のワトソン-クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合を含む水素結合を介して媒介される。例えば、アデニン及びチミンは、水素結合の形成を介して対になる相補的核酸塩基である。本開示のプローブの特定の位置のヌクレオチド単位が、DNA又はRNA分子(例えば、標的核酸配列)の同じ位置のヌクレオチド単位と水素結合することができる場合、オリゴヌクレオチドは、その位置で互いに相補的である。プローブ及びDNA又はRNAは、各分子中の十分な数の対応する位置が、互いに水素結合することができ、したがって検出可能な結合を生じることができるヌクレオチド単位によって占められる場合、互いに相補的である。プローブは、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸配列例えば、ゲノム標的核酸配列)に100%相補的である必要はない。しかしながら、その配列が複合体混合物例えば、全細胞DNA又はRNA)中に存在する場合、プローブが標的核酸配列にのみ、又は実質的にのみ結合、二本鎖化又はハイブリダイズするように十分な相補性が必要である。
【0117】
本開示のいくつかの実施形態では、検出は、標的核酸プローブへの検出剤のハイブリダイゼーションによって促進される。検出剤は、直接検出又は間接検出によって検出してもよい。例えば、いくつかの直接検出の実施形態では、検出剤は、1つ又は複数の蛍光化合物で標識され、試料は、蛍光顕微鏡又は画像化によって分析される。いくつかの間接検出の実施形態では、検出剤は、結合対の第1のメンバー(すなわち、ハプテン又はビオチン)を含む複数の検出可能な部分を含み、第1のメンバーは、試料を検出可能な部分(すなわち、蛍光色素又は量子ドット)にコンジュゲートされた結合対の第2のメンバー(すなわち、抗ハプテン抗体又はアビジン)を含む化合物と接触させることによって検出される。in situハイブリダイゼーション手順の一般的な説明については、例えば、米国特許第4,888,278号を参照されたい。FISH、CISH及びSISHの多数の手順が当技術分野において公知である。例えば、FISHを行うための手順は、米国特許第5,447,841号、同第5,472,842号、同第5,427,932号、及び例えば、Pinkelet al.,Proc.Natl.Acad.Sci. 83:2934-2938,1986;Pinkel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.85:9138-9142,1988,and Lichter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.85:9664-9668,1988に記載されている。CISHは、例えば、Tanneret al.、Am.J.Pathol.157:1467-1472,2000、及び米国特許第6,942,970に記載されている。更なる検出方法は、米国特許第6,280,929号に提供されている。in situハイブリダイゼーションによってウイルスを検出するための例示的な手順は、Poddighe et al.,J.Clin.Pathol.49:M340-M344,1996に見出すことができる。
【0118】
多数の試薬及び検出スキームを、感度、分解能、又は他の望ましい特性を改善するために、FISH、CISH、及びSISH手順と組み合わせて使用することができる。上述したように、フルオロフォア(蛍光色素及びQUANTUM DOTS(商標)を含む)で標識された検出剤は、FISHを行う場合に直接光学的に検出することができる。あるいは、検出剤は、ハプテン(例えば、以下の非限定的な例:ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP、及び種々のオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノン、クマリン、クマリン系化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシン系化合物、及びこれらの組み合わせ)、リガンド、又は他の間接的に検出可能な部分などの非蛍光分子で標識することができる。次いで、そのような非蛍光分子で標識された検出剤(及びそれらが結合する標的核酸配列)は、試料(例えば、プローブが結合している細胞又は組織試料)を、選択されたハプテン又はリガンドに特異的な抗体(又は受容体、又は他の特異的結合パートナー)などの標識された検出試薬と接触させることによって検出することができる。検出試薬は、フルオロフォア(例えば、QUANTUM DOT(商標))又は別の間接的に検出可能な部分で標識することができ、又はフルオロフォアで標識することができる1つ又は複数の追加の特異的結合剤(例えば、二次抗体又はは特異的抗体)と接触させることができる。任意選択で、検出可能な標識は、抗体、受容体(又は他の特異的結合剤)に直接結合される。あるいは、検出可能な標識は、ヒドラジドチオールリンカー、ポリエチレングリコールリンカー、又は同等の反応性を有する任意の他の可撓性結合部分などのリンカーを介して結合剤に結合される。例えば、抗体、受容体(又は他の抗リガンド)、アビジンなどの特異的結合剤を、ヘテロ二官能性ポリエチレングリコール(PEG)リンカーなどのヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーを介してフルオロフォア(又は他の標識)で共有結合的に修飾することができる。ヘテロ二官能性リンカーは、例えばカルボニル反応性基、アミン反応性基、チオール反応性基及び光反応性基から選択される2つの異なる反応性基を組み合わせ、そのうちの第1のものは標識に結合し、そのうちの第2のものは特異的結合剤に結合する。
【0119】
他の例では、検出剤又は特異的結合剤(例えば、一次抗体などの抗体、受容体又は他の結合剤)は、蛍光発生組成物又は発色性組成物を検出可能な蛍光、着色又は他の検出可能なシグナル(例えば、SISHにおける検出可能な金属粒子の沈着のようなもの)に変換することができる酵素を含む。上記のように、酵素は、関連するプローブ又は検出試薬にリンカーを介して直接的又は間接的に結合させることができる。適切な試薬(例えば、結合試薬)及び化学物質(例えば、リンカー及び結合化学物質)の例は、米国特許出願公開第2006/0246524号、同第2006/0246523号、及び米国特許出願公開第2007011715号に記載されている。
【0120】
標識された検出剤及び/又は標識された結合対を適切に選択することによって、単一のアッセイ(例えば、単一の細胞若しくは組織試料上、又は1つ超の細胞若しくは組織試料上)で複数の標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)の検出を容易にするよう多重検出スキームを作製することができることが当業者には理解される。例えば、第1の標的核酸プローブに対応する第1の検出剤は、ビオチンなどの第1のハプテンで標識することができ、第2の標的核酸配列に対応する第2の検出剤は、DNPなどの第2のハプテンで標識することができる。試料をプローブセットに曝露した後、試料を第1の特異的結合剤(この場合、第1のフルオロフォア、例えば、585nmで発光する、例えば第1のスペクトル的に異なるQUANTUM DOT(商標)で標識されたアビジン)及び第2の特異的結合剤(この場合、第2のフルオロフォア(例えば、705nmで発光する第2のスペクトル的に異なるQUANTUM DOT(商標)で標識された抗DNP抗体又は抗体断片)と接触させることによって、結合したプローブを検出することができる。更なるプローブ/結合剤対を、他のスペクトル的に異なるフルオロフォアを使用して多重検出スキームに加えることができる。直接的及び間接的な(1工程、2工程以上)の多数の変形を想定することができ、これらの全ては、開示されたプローブ及びアッセイの文脈において適切である。
【0121】
標準的な蛍光顕微鏡は、量子ドットバイオコンジュゲートなどの蛍光化合物を組み込んだ試薬及びプローブを検出するための安価なツールである。量子ドットコンジュゲートは実質的に光安定性であるため、顕微鏡で時間をかけて目的の領域を見つけ、試料に十分に焦点を合わせることができる。量子ドットコンジュゲートは、明るい光安定発光が必要とされるときはいつでも有用であり、1つの励起源/フィルタのみが利用可能であり、色間の最小限のクロストークが必要とされる多色用途において特に有用である。
【0122】
治療方法
一態様では、本明細書では、対象をBCMA標的化剤で治療する方法であって、対象由来の試料中のBCMAを検出する工程を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象をBCMA標的化剤で治療する方法は、最初にBCMAを検出することを含む。本明細書に開示される方法のいずれも、BCMAを検出する方法において使用されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、標的化剤は、当技術分野で公知の任意の標的化剤を含む。本明細書で使用される場合、「標的化剤」とは、目的の標的と相互作用することができる任意の分子を指す。したがって、いくつかの実施形態では、標的化剤は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞又はT細胞リダイレクト抗体を含む。他の実施形態では、標的化剤は、抗体又はその抗原断片を含む。抗体又はその抗原性断片は、抗BCMA抗体又はその抗原断片を含んでもよい。更なる実施形態では、抗体は、二重特異性又は多重特異性抗体を含んでもよい。二重特異性又は多重特異性抗体は、抗BCMA二重特異性又は多重特異性抗体を含んでもよい。他の実施形態では、標的化剤は、BCMAに結合することができる小分子を含んでもよい。他の実施形態では、標的化剤は、BCMAポリペプチドを含んでもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、目的の標的は、可溶性ポリペプチドである。他の実施形態では、目的の標的は、受容体を含む膜結合ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、受容体はBCMAを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明の治療方法の対象は、疾患、障害、状態又は症候群を有する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、状態又は症候群は、当技術分野で公知の任意のヒト疾患、障害、状態又は症候群であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の標的化剤はまた、BCMAを発現する疾患を治療するためにも使用されてもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明の治療方法の対象は、癌又は腫瘍を有する。他の実施形態では、癌は、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、卵管癌、胆嚢癌、胃癌(gastric(stomach)cancer)、頭頸部癌、肝癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、喉頭癌、白血病、肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵癌、黒色腫、メルケル細胞癌(皮膚癌)、中皮種、悪性、副鼻腔及び鼻腔癌(頭頸部癌)、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌(頭頸部癌)、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、腟癌、及び外陰癌を含んでもよい。
【0127】
更なる実施形態では、乳癌の例としては、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、乳管内上皮内癌及び非浸潤性小葉癌が挙げられるが、これらに限定されない。気道癌の例としては、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支腺腫及び胸膜肺芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。脳癌の例としては、脳幹及び視床下部神経膠腫、小脳及び大脳星状細胞腫、髄芽細胞腫、上衣腫並びに神経外胚葉性及び松果体腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。男性生殖器腫瘍としては、前立腺癌及び精巣癌が挙げられるが、これらに限定されない。女性生殖器腫瘍としては、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、腟癌、外陰癌及び子宮筋腫(hysteroma)が挙げられるが、これらに限定されない。胃腸腫瘍としては、肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵癌、直腸癌、小腸癌及び唾液腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。尿道腫瘍としては、膀胱癌、陰茎癌、腎細胞癌、腎盂腎癌、尿管癌及び尿道癌が挙げられるが、これらに限定されない。眼癌としては、眼球内黒色腫及び網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。肝癌の例としては、肝細胞癌(線維層板型変動を伴う又は伴わない肝細胞癌)、胆管細胞癌(肝内胆管癌)及び混合型肝細胞癌-胆管細胞癌が挙げられるが、これらに限定されない。皮膚癌としては、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞癌及び非黒色腫皮膚癌が挙げられるが、これらに限定されない。頭頸部癌としては、喉頭/下咽頭/鼻咽頭/中咽頭癌、並びに口唇及び口腔癌が挙げられるが、これらに限定されない。リンパ腫としては、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病及び中枢神経系リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。肉腫としては、軟部肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫及び横紋筋肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
いくつかの実施形態では、癌は、血液癌を含んでもよい。血液の癌は、血液又は骨髄の癌である。いくつかの実施形態では、本開示の血液(又は血行性)癌は、白血病(急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(acute myelocytic leukemia)、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病及び赤白血病)、慢性白血病(慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ種、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性度及び高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリーセル白血病、B細胞リンパ腫、形質細胞性白血病、脊髄形成異常症、二次性白血病、骨髄増殖性症候群(MPS)又はバーキットリンパ腫(Burkett’s lymphoma)(風土性バーキットリンパ腫又は孤発性バーキットリンパ腫)、悪性形質細胞腫瘍、BCMA+高悪性度リンパ腫、カーレル病及び骨髄腫症、形質細胞白血病;形質細胞腫、B細胞前リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病、濾胞性リンパ腫(濾胞性非ホジキンリンパ腫型を含む)、辺縁帯リンパ腫(粘膜関連リンパ組織:MALT 1 MAltoma、単球様B細胞リンパ腫、絨毛リンパ球を有する脾リンパ腫)、マントル細胞リンパ腫;大細胞型リンパ腫(びまん性大細胞、びまん性混合細胞、免疫芽球性リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫肺B細胞)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫;亜急性骨髄性白血病、骨髄肉腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病)又は他のB細胞性白血病若しくはリンパ腫を含んでもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、本開示の対象は、重鎖病、原発性又は免疫細胞関連アミロイドーシス、及び意義不明単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS))などの形質細胞障害を有する。
【0130】
いくつかの実施形態では、本発明の治療方法の対象は、疾患又は障害を有する。いくつかの実施形態では、疾患又は障害は、後天性免疫不全症候群(AIDS)、脳疾患、急性弛緩性脊髄炎(AFM)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー症、筋萎縮性側索硬化症、関節炎、骨疾患、炎症性疾患、変形性関節症(OA)、関節リウマチ(RA)、喘息、血液障害、脳疾患、認知症、糖尿病、腸疾患、肝疾患、腎疾患、肺疾患、皮膚疾患、胃腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、高血圧、又は心血管障害を含んでもよい。他の実施形態では、疾患又は状態は、乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿道(urethrae)、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺及び副甲状腺の疾患又は障害を含んでもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の治療方法の対象は、免疫学的障害、特に自己免疫障害を有する。いくつかの実施形態では、自己免疫障害としては、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗リン脂質抗体症候群、シャーガス病、グレーブス病、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎、急速進行性糸球体腎炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群(Sjorgren's syndrome)、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、及び移植片対宿主病免疫介在性血小板減少症、溶血性貧血、水疱性類天疱瘡、重症筋無力症、グレーブス病、アジソン病、落葉状天疱瘡、乾癬、乾癬性関節炎、及び強直性脊椎炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明の治療方法の対象は、炎症性疾患を有する。いくつかの実施形態では、炎症性疾患は、関節リウマチ、乾癬、アレルギー、喘息、クローン病、IBD、線維筋痛症(fibromyalga)、肥満細胞症、セリアック病などの自己免疫疾患、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。更に、本発明の方法は、糖尿病、特に1型糖尿病を治療するのに有用であってもよい。
【0133】
実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0134】
1組の実施形態では、以下が提供される。
1.ホルマリン固定パラフィン包埋(「FFPE」)試料中のB細胞成熟抗原(「BCMA」)分子を検出する方法であって、
a.FFPE試料を切片化及びマウントすることと;
b.試料を脱パラフィンすることと;
c.試料の熱媒介抗原賦活化と;
d.ブロッキング剤による試料の前処理と;
e.試料を第1の検出剤と接触させることであって、第1の検出剤は任意選択で、試料中の少なくとも1つのBCMA分子に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む、接触させることと;
f.任意選択で、未結合試料を除去することと;
g.第1の検出剤に結合した試料を第2の検出剤と接触させることであって、第2の検出剤は任意選択で、抗体又はその断片である、接触させることと;
h.任意選択で、未結合の第2の検出剤を除去することと;
i.試料に結合した第2の検出剤の存在を検出することと、を含み、
試料に結合した第2の検出剤の量のバックグラウンドを超える検出は、試料中の少なくとも1つのBCMA分子の存在を示す、方法が提供される。
2.熱媒介抗原賦活化が、EDTA系溶液を使用して行われる、実施形態1に記載の方法。
3.EDTA系溶液が、8.5~9.5のpHを有する、実施形態2に記載の方法。
4.EDTA系溶液が9.0のpHを有する、実施形態3に記載の方法。
5.熱媒介抗原賦活化の工程が、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間又は60分間行われる、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.熱媒介抗原賦活化の工程が、85℃~100℃の温度で行われる、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.熱媒介抗原賦活化の工程が100℃で行われる、実施形態6に記載の方法。
8.ブロッキング剤が内因性ペルオキシダーゼを遮断する、実施形態1~7のいずれか一項記載の方法。
9.ブロッキング剤が過酸化物ブロックである、実施形態8に記載の方法。
10.過酸化物ブロックで前処理する工程が、2分間、5分間、8分間、10分間又は15分間行われる、実施形態9に記載の方法。
11.ブロッキング剤が、非特異的抗体結合を遮断する、実施形態1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.ブロッキング剤がDako/Agilent Protein Blockである、実施形態11に記載の方法。
13.Dako/Agilent Protein Blockで前処理する工程が、5分間、10分間、15分間、20分間、又は30分間行われる、実施形態12に記載の方法。
14.第1の検出剤が抗体又はその抗原結合断片である、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
15.試料を第1の検出剤と室温又は37℃で接触させた、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法。
16.試料を第1の検出剤と15分間、30分間、45分間、60分間、95分間、又は120分間接触させた、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法。
17.第2の検出剤が、抗体又はその抗原結合断片である、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
18.第1の検出剤に結合した試料を第2の検出剤と、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、又は30分間接触させた、実施形態1~17のいずれか一項に記載の方法。
19.試料が、体液又は組織由来の細胞を含む、実施形態1~18のいずれか一項に記載の方法。
20.組織が脳組織である、実施形態19に記載の方法。
21.組織が、線条体、視床、中脳、又は脳の髄質領域に由来する、実施形態20に記載の方法。
22.組織が、腫瘍組織である、実施形態19に記載の方法。
23.試料が、対象由来のものである、実施形態1~22のいずれか一項に記載の方法。
24.対象が哺乳動物である、実施形態23に記載の方法。
25.哺乳動物が、ヒトである、実施形態24に記載の方法。
26.哺乳動物がカニクイザルである、実施形態24に記載の方法。
27.実施形態1~26のいずれか1項に記載の方法を行うための、キット。
28.対象由来の試料中のBCMAを検出する工程を含む、対象をBCMA標的化剤で治療する方法。
29.試料中のBCMAを検出する工程が、実施形態1~22又は24~26のいずれか一項に記載の方法を含む、実施形態28に記載の方法。
30.標的化剤がキメラ抗原受容体(CAR)T細胞である、実施形態28又は29に記載の方法。
31.標的化剤がT細胞リダイレクト抗体である、実施形態28又は29に記載の方法。
32.対象が癌を有する、実施形態28~31のいずれか一項に記載の方法。
33.癌は、多発性骨髄腫である、実施形態32に記載の方法。
【0135】
本発明の特定の実施形態が本明細書に記載される。前述の説明を読むと、開示された実施形態の変形形態は、当業者に明らかになり得、必要に応じてそのような変形形態を採用し得ることが予想される。したがって、本発明が、本明細書に具体的に記載されるもの以外の方法で実施されること、並びに本発明が、適用法によって許可されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙される主題の全ての修正物及び均等物を含むことが意図される。更に、全ての可能性のあるこれらの変形形態における上記要素の任意の組み合わせは、本明細書において別途記載のない限り、又は文脈が明らかに矛盾しない限り、本明細書に包含される。本発明の多くの実施形態が説明されてきた。しかしながら、様々な修正が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実行され得ることが、理解されるであろう。したがって、実施例のセクションにおける説明は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するのではなく、例示することを意図するものである。
【実施例】
【0136】
以下は、試験に使用された様々な方法及び材料の説明であり、当業者に本開示の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するように記載されており、本発明者らがその開示とみなす範囲を限定することを意図しておらず、また、以下の実験が実施され、実施可能な実験の全てであることを表すことを意図していない。現在形で書かれた例示的な記述は、必ずしも実行されたものではなく、むしろ記述は、本開示の教示に関連するデータなどを生成するために実行できるものであることを理解されたい。使用される数値(例えば、量、パーセンテージなど)についての正確度を保証するための努力はなされているが、多少の実験誤差及び偏差が考慮に入れられるべきである。
【0137】
実施例1:免疫化学的方法の開発
スクリーニングした抗体を表1に示す。
【0138】
【0139】
アッセイ対照の作製。公的に入手可能なCCLE(https://sites.broadinstitute.org/ccle/)及びGenentech(https://ega-archive.org/dacs/EGAC00001000055)データセットからのRNA-seqデータに基づいて、内因性BCMA RNA発現レベルに従って7つの細胞株を選択した。選択された細胞株は、BCMA発現が陰性、低、中、及び高レベルである適格な試薬対照として機能した(表1)。BCMAは、BCMAとリガンドを共有するBAFFR及びTACIを含む腫瘍壊死因子受容体のより大きなファミリーの一部であるので、潜在的に保存されたエピトープに対する抗体交差反応性の欠如を確認するために更なる研究を行った。TACI又はBAFFRを発現する操作された細胞株を、タグエピトープと結合したヒトTACI又はヒトBAFFR遺伝子を有するレンチウイルスでHEK293親細胞をトランスフェクトすることによって作製した。細胞株を100%コンフルエンスまで培養し、非酵素的に収集し、遠心分離によってペレット化した。細胞ペレットを10%中性緩衝ホルマリン中で24時間固定し、日常的な方法でパラフィン処理し、包埋して単一のパラフィンブロック中にアレイを形成した。
【0140】
結腸、脾臓、及びリンパ節のFFPE試料を、常在性BCMA発現形質細胞の存在のために内因性組織対照として取得した。カニクイザル由来の同じ組織を使用して、この種との抗体の交差反応性を確認した。全ての組織を、解剖学的位置、組織病理学の欠如、並びにIHC及びISHに対する適合性について品質管理(QCed)し、QC基準を満たした試料のみを実験に使用した。IHCに適していると考えられるためには、試料は、シナプトフィジンIHCによって予想される免疫標識パターンを示す必要があった。ISHに対する適合性は、mRNAハウスキーピング遺伝子、ペプチジルプロリルイソメラーゼB(PPIB)に対する豊富な陽性シグナル、及びDapB(陰性対照プローブ)シグナルの欠如によって確認された。
【0141】
候補IHC試薬のスクリーニング。IHCアッセイは、Leica Bond Rx自動染色装置(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)で展開した。表1は、最終的なBCMA IHCアッセイを展開すると考えられるIHC候補試薬を要約する。IHC試薬を細胞ペレット試薬対照で試験して、BCMAタンパク質に対する特異性及び感受性を評価した。試験した全ての試薬のうち、ウサギモノクローナル抗BCMA抗体クローン[E6D7B]のみが、許容されるIHC結合特異性及び感度を示した。したがって、抗BCMA抗体クローン[E6D7B]を、組織切片上のBCMAタンパク質の内因性発現の検出のための一次抗体として、精製アッセイで使用した。
【0142】
アッセイ条件。最後のIHC法は、ウサギモノクローナル抗BCMA抗体クローン[E6D7B](Cell Signaling Technology#88183)を使用した。FFPEブロックを4μmに切片化し、試料をSuperFrost Plusガラススライド(VWR、カタログ番号48311-703)上にマウントした。簡潔に述べると、未焼成ガラススライドを自動染色装置に装填し、一般的なLeica脱パラフィンプロトコルに従って脱パラフィンした。EDTA系溶液(pH約9.0)による熱媒介抗原賦活化を、100℃で20分間行った。次いで、スライドを内因性ペルオキシダーゼ溶液で10分間前処理した。ウサギモノクローナル抗BCMA抗体クローン[E6D7B]の1/200希釈物(抗体希釈剤[Diagnostic Biosystem#K0004]中の最終濃度7.8μg/mL)で30分間インキュベーションする直前に、Dako無血清タンパク質ブロック(Agilentカタログ番号X0909)を試料に10分間適用した。広範な洗浄工程の後、結合した一次抗体を、製造業者の推奨に従って、発色Leica refine DAB検出キット(Leicaカタログ番号DS9800)によって検出した。スライドにカバーガラスをマウントし、明視野顕微鏡で検査した。
【0143】
IHC及びISHのためのヒト脳組織の研究。FFPEヒト正常脳組織は、様々なベンダーから商業的に供給された。各脳組織試料を、H&Eによる位置精度、及びシナプトフィジン染色によるIHC適合性についてチェックした(ウサギモノクローナル抗シナプトフィジン抗体1/8000[Abcam#32127])。広範囲の脳座位に及ぶ合計107個の脳試料を本研究で使用した。試料は63人の異なるドナーに由来した。試料のサブセットを、PPIB(陽性対照プローブ)を使用してISH適合性について更に評価した。
【0144】
2匹の性的に成熟していない雄及び2匹の性的に成熟していない雌に由来するFFPEカニクイザル正常脳組織を、種特異的脳トリミングスキームに従って冠状切片から評価した。カニクイザル組織は、他の種における生物学的治療交差反応性及び薬理学的活性が欠如しているため、いくつかの生物学的治療薬の前臨床安全性においてこの種が日常的に研究されているので含めた。分析前の変数を減少させ、組織試料品質を最大化するために、標準化された組織サンプリング及び処理プロトコルに従った。
【0145】
共局在化研究。E6D7B及びゴルジ装置で観察されたIHC免疫反応性と神経原線維変化マーカーとの間の共局在化研究を、免疫蛍光によって行った。Zeiss共焦点顕微鏡(Zeiss,White Plains,NY)を使用して染色の評価を完了した。共局在化実験では、以下の抗体プローブを含めた:シス及びトランスゴルジマーカー、マウスモノクローナル抗TGN46抗体1/500(LSBio#LS-C133654-100)、マウスポリクローナル抗GOLGA2抗体1/100(Abnova#H00002801-B01P)、マウスモノクローナル抗GOLGA5抗体1/300(NovusBio#NBP2-66875)、及びマウスモノクローナル抗GOLM1抗体1/100(Sino Biological#13066-MM12)。各特異的抗体を以下の二次結合剤によって検出した:ヤギポリクローナルAlexa Fluor(登録商標)488 AffiniPure F(ab’)2断片抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories#115-546-146)、及びヤギポリクローナルAlexa Fluor(登録商標)594 AffiniPure F(ab’)2断片抗ウサギIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories#111-586-144)。
【0146】
ビルショウスキー銀染色。神経原線維変化を強調するために、重要な組織試料をビルショウスキー銀染色法(Abcam ab245877)で染色した。この方法は製造業者の推奨に従って実行した。簡潔に述べると、4μmの組織切片を脱パラフィンし、水和した後、硝酸銀溶液中で40℃で15分間、続いてアンモニア銀溶液中で10分間インキュベートした。銀染色を、所望の着色になるまで撹拌しながら現像液中で現像した。沈殿した銀を5%チオ硫酸ナトリウムで2分間固定し、スライドを脱水し、デジタル捕捉前にPermount(Fisher Scientific、SP15-100)でマウントした。リン酸化タウタンパク質の検出はまた、タングルマーカープローブ:マウスモノクローナル抗pTau 1/100(RnD Systems#MAB34941-100)を使用して実行した。
【0147】
実施例2:RNA IN SITUハイブリダイゼーションアッセイの開発
対照。実施例1で前述したように、細胞ペレットアレイ及びヒトFFPE結腸試料を試薬対照とした。各ISH染色アッセイについて、FFPEブロックを4μmで切片化し、試料をSuperFrost Plusガラススライド上にマウントした。
【0148】
試薬。ISHアッセイは、Leica Bond Rx自動染色装置(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)で、以下の重要な試薬を使用して開発した:ヒトBCMA特異的プローブ(Hs-TNFRSF17、ACDBioカタログ番号585791)、ヒト陽性組織PPIB対照プローブ(Hs-PPIB、ACDBioカタログ番号313908)、及び陰性対照プローブDapB(ACDBioカタログ番号312038)を含むmRNA検出プローブ。ハイブリダイズしたプローブを、RNAscope(登録商標)2.5 LSx Reagent Kit-Red(ACDBioカタログ番号322750)を使用して検出した。
【0149】
アッセイ条件。BCMA ISHアッセイは、Leica Bond Rx自動染色装置で行った。簡潔に述べると、スライドガラスを自動染色装置に装填し、60℃で30分間焼成し、一般的なLeica脱パラフィンプロトコルに従って脱パラフィンした。EDTA系溶液(pH約9.0)を用いた熱媒介抗原賦活化を、細胞ペレット試薬対照については85℃で、又は組織試料については95℃で15分間行った。次いで、プロテイナーゼK(ACDBio RNAscope(登録商標)2.5 LSxキットで提供される)による非特異的酵素消化を、各組織学的試料に40℃で15分間適用した。特異的プローブのハイブリダイゼーションは、42℃で120分間行った。広範な洗浄後、特異的に結合したプローブを一連のシグナル増幅工程によって検出した。最後に、アルカリホスファターゼ酵素活性が色原体と反応し、明視野顕微鏡下で可視の赤色沈殿シグナルを生じた。
【0150】
ISH染色シグナルは、細胞内ドット様パターンをもたらす。細胞当たりの陽性ドットの数は一般に、存在する検出可能なmRNA転写物の量と相関する。各ドットのサイズは、プローブセット全体の設計に優先的に依存する。ISHシグナルの評価は、製造業者のガイドラインに従って目視で行った。細胞陽性を考慮する場合のドットの最小数及び相関タンパク質発現に対するその関係は、目的の各標的に依存する。mRNAレベルとタンパク質レベルとの間に差があることができるので、ISHシグナルレベルとIHC免疫反応性強度との間の対照特徴付けは、タンパク質発現に対して考慮すべきISHシグナル閾値の許容可能な指標を提供する。
【0151】
エタノール中での長時間などの組織採取及び処理における分析前の変数は、ISH法で検出することができるmRNAの品質に影響を及ぼしてもよい。PPIBはハウスキーピング遺伝子であり、そのISHシグナルを使用して、FFPE試料中に存在するmRNAの全体的な品質を評価した(すなわち、QCチェック)。対照アレイに含まれる各細胞ペレットは、細胞当たり3~4ドットの製造業者の最小推奨閾値をはるかに上回るISH PPIBシグナルを示した。
【0152】
GTEx RNA-seqデータ。GTEx Analysis Release V8のRNA-seqデータをdbGaPデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/gap/cgi-bin/study.cgi?study_id=phs000424.v8.p2)から得て、Omicsoft Array Suiteツール(https://www.arrayserver.com/wiki/)を使用して処理した。ヒトゲノム構成GRCh38及び遺伝子モデルGENCODE Release 33(https://www.gencodegenes.org/human/)を、RNA-seq配列をゲノムにマッピングし、遺伝子発現を定量化するために採用した。246個の尾状核試料及び204個の被殻試料を含む13個の脳領域の2641個の試料全てを、ヒト脳におけるBCMA発現のプロファイリングのために選択した。100万当たりの転写産物(「TPM」)を遺伝子発現測定の単位として採用した。
【0153】
Allen BrainSpan RNA-seqデータ。全ての遺伝子発現データを、brain Allen BrainSpanウェブサイト(https://www.brainspan.org/)からリンクhttps//www.brainspan.org/api/v2/well_known_file_download/267666525を使用してダウンロードした。GTExデータとの適合性を可能にするために、データを100万キロベース当たりの読み取りからTPMに変換した。BCMA発現は、脳領域及び発達段階によってグループ化された試料で報告された。
【0154】
凝集RNA-seqデータ。ヒト線条体におけるBCMA遺伝子の発現が発達段階と共にどのように変化するかを決定するために、Allen BrainSpanデータセットからの線条体試料並びにGTExデータセットからの尾状核及び被殻試料におけるBCMA遺伝子発現データを抽出した。合わせたデータを一緒にプロットし、ドナーの年齢群によって分割した。
【0155】
実施例3:IHC及びISHアッセイの結果
IHCアッセイ。細胞ペレット試薬対照アレイ染色結果を表1及び
図1A~1Rに要約する。マウスモノクローナル抗BCMA抗体クローン[1004023](RnD Systems、カタログ番号MAB1931)、マウスモノクローナル抗BCMA抗体クローン[クローン19F2](BioLegend、カタログ番号357502)、及びラットモノクローナル抗BCMA抗体クローン[Vicky-1](Novus Biologicals、カタログ番号NBP1-97637SS)は、発現されたBCMAタンパク質に対しても、対照細胞ペレットによっても、許容される特異性及び感度を生じなかった(データは示さず)。ウサギモノクローナル抗BCMA抗体クローン[E6D7B]は、細胞ペレット対照においてBCMA特異的免疫反応性の予想パターン(すなわち、膜及び/又はゴルジ様パターン)を生成した(
図1A~1R)。H929及びMM1.R細胞は、それらの細胞質において顕著な陽性膜染色及び顕著なゴルジ様染色パターンを示した。JEKO-1及びRaji細胞は、ほとんどが細胞の細胞質に存在するゴルジ様構造において観察可能な、低強度から非常に低強度の染色を示した。予想通り、BCMA陰性細胞株(K562、U937及びHEK293)ではE6D7Bで免疫反応性は観察されなかった。クローン[E6D7B]によって生成されたBCMA免疫反応性を、BCMA mRNAを検出するのに特異的なISHアッセイを用いて直交的に確認した。密接に関連する標的BAFFR並びに膜貫通活性化因子及びCAML相互作用因子(TACI)を過剰発現するHEK293-BAFFr及びHEK293-TACI細胞株は、いかなるBCMA免疫反応性も示さず、BCMAに対するE6D7Bの特異性が更に示された。
【0156】
組織切片では、ヒトリンパ節、脾臓及び結腸試料中の形質細胞と一致する形態を有する細胞において特異的陽性標識が同定された。BCMA陽性細胞ペレット試薬対照と同様に、形質細胞は、切断面に存在する場合、強い膜染色及びゴルジ様陽性構造を示した。リンパ節及び脾臓における陽性細胞の相対強度は、結腸組織試料において観察されたものより小さかった。カニクイザル組織試料との交差反応性の証拠は、同様の解剖学的位置で同定された。陽性BCMA IHC細胞の全体的強度は、カニクイザルではヒトで観察されたものよりも小さかった。カニクイザル結腸は、ヒト結腸よりも高密度のBCMA陽性細胞を示した。ウサギモノクローナル抗BCMA抗体クローン[E6D7B]を作製するために使用された正確なペプチド免疫原配列は、Cell Signaling Technology(CST)の所有権である。CSTは、モノクローナル抗体が、ヒトTNFRSF17/BCMAタンパク質のLeu115を取り囲む残基に対応する合成ペプチドで動物を免疫することによって産生されることを公表した。ヒト及びカニクイザルBCMAタンパク質の細胞質部分(アミノ酸残基78~184)の生物情報学的アラインメントは、カニクイザルタンパク質とヒトタンパク質(BLAST-P、NIH)との間で92.5%の配列同一性を示した。
【0157】
ISHアッセイ。BCMA特異的ISH染色は、100万キロベース当たりのBCMA mRNA断片(FPKM)スコアの低いものから高いものまでの、ある範囲の内因性発現を提示する細胞株で同定された(表1、
図1A~1R)。高いBCMA FPKMスコアを有する細胞株(H929及びMM1.R)は、細胞あたり15以上のドットを示した。より低いFPKMスコアを有する細胞(JEKO-1及びRaji)では、細胞当たり5ドット又は1ドットがそれぞれ観察された。予想されるように、BCMA ISHアッセイは、極めて低い又は0のFPKMスコアを示す細胞株(K562、U937、及びHEK293)において特異的シグナルを生成することができなかった。
【0158】
同じ対照細胞ペレットにおけるBCMA ISHシグナルとBCMA IHC免疫反応性との間の直接相関を、視覚的に推定した(表1、
図1A~1R)。FFPE細胞ペレットでは、BCMA IHC免疫反応性の強度とBCMA ISHシグナルとの間に許容される一致が観察された。全てのRaji細胞が切断面においてBCMA ISH陽性を示したわけではなく、陽性細胞は主に1ドットを示し、稀に2ドットを示した。その細胞株について、陽性BCMA ISHシグナルの全体密度は、BCMA IHCアッセイで観察されたものと一致し、製造業者によって推奨されるスコアリングによって決定される陽性の閾値に達した(https://www.indicalab.com/wp-content/uploads/2018/04/MK_51_103_RNAScope_data_analysis_guide_RevB.pdf)。ISHシグナルが陰性対照細胞株(K562、U-937、及びHEK293)に時折存在したが、シグナルはまれであり、10細胞あたり1ドットの閾値に達しなかった。
【0159】
ヒト正常結腸組織切片(陽性対照)では、形質細胞と一致する形態を有する細胞において特異的陽性BCMA ISH標識が同定された。これらの細胞のほとんどは、低レベルのBCMA ISHシグナル(1ドット/細胞及び時折2~3ドット/細胞)を示した。単一のBCMA ISHドットシグナルを示す形質細胞の群は、その後の隣接切片においてIHCアッセイによって強く染色されるようであり、Raji対照細胞と同様に、組織におけるIHC検出可能なBCMAタンパク質発現が、1ドット/細胞という低い持続的なISHレベルを示す細胞について予測されることもあることを示す。
【0160】
BCMA ISHアッセイによって生成される観察可能な陽性シグナルの存在は、PPIB QC ISHアッセイによって評価されるように、特定の全体的なmRNA品質閾値(4ドット/細胞以上)を必要とした。特異的陽性BCMA ISHシグナルを提示した形質細胞は一般に、QC PPIB ISHシグナル中に存在する細胞当たり最低4ドットを有した。対照的に、形質細胞が4ドット/細胞未満の低いPPIB ISHシグナルを有する領域では、タンパク質レベルでの強力かつ特異的な陽性シグナル(直接隣接する切片でのIHC)にもかかわらず、対応するBCMA ISHシグナルは検出されなかった。
【0161】
ヒトFFPE正常脳試料におけるBCMA IHC。ウサギモノクローナル抗BCMA抗体クローン[E6D7B](CST)による免疫反応性が、いくつかの正常ヒト脳試料の特定の解剖学的領域におけるニューロンの小サブセットにおいて観察された。免疫反応性パターンは、細胞体(細胞体(soma))及び特定のニューロンの軸索突起(
図2A~
図2I)に見られ、グリア細胞突起にまれに見られる細胞質原線維又は針状構造として示された。IHC免疫反応性を有するニューロンは主に、背側線条体、視床、中脳、及び延髄において観察された。組織切片上に存在する全てのニューロンの中で、免疫反応性を有する細胞の密度は、調べた位置によって異なり、一般的に低かった。免疫反応性の類似の局所パターンは、試料の人口統計又は商業的起源にかかわらず、脳組織及びドナーにわたって一貫して再現された。この研究で評価された試料は比較的少数なので、E6D7BによるIHC免疫反応性と、組織試料に関連する利用可能な人口統計データとの間に明確な類似は見られなかった。
【0162】
ヒト正常脳における免疫反応性のユニークな原線維様又は針様細胞内、非膜性、非ゴルジ様パターンは、このタンパク質を発現することが知られている細胞(例えば、形質細胞)における特徴的パターンとは大きく異なっていたので、予想外だった。予想外の免疫反応性により、更なる特徴付けが必要となった。その目的のために、IHC免疫反応性が観察された代表的なヒト脳試料に対して直交実験を行った。
【0163】
ヒト脳試料におけるBCMA発現を更に評価するために、外部分子病理学サービス提供者(CRO)を契約して、低レベルのBCMAタンパク質の検出に適用するために、少なくともE6D7Bと同程度の感度の独立したBCMA IHCアッセイを開発した。Reveal Biosciences(San Diego,CA)及びHematogenix(Tinley Park,IL)で開発された2つのBCMA IHCアッセイは、Santa Cruz Biotechnology製のマウスモノクローナル抗BCMAクローンD6に基づいた。これらの2つのアッセイは、内部BCMA IHCアッセイを開発するために使用される同じ細胞ペレット試薬及び結腸組織対照上のBCMAを標的化する際に、許容されかつ同等の特異性及び感度を生じた。E6D7Bクローンを使用して免疫反応性を示した同じ脳試料のセットを、盲検様式で染色するために各CROに送った。対照試料では、Santa Cruz抗BCMA抗体クローンD6に基づくBCMA IHCは、内部BCMA IHCに非常に類似した染色パターンを示した(
図5A~5P)。対照的に、脳試料では、BCMA染色も原線維様免疫反応性も見られなかった。したがって、2つの契約研究所で独立して行われたSanta Cruzマウスモノクローナル抗BCMA抗体クローンD6に基づくBCMA IHCアッセイは、ウサギモノクローナル抗BCMA抗体クローン[E6D7B]を用いて脳試料で最初に観察された免疫反応性を再現しなかった。
【0164】
ヒトFFPE正常脳試料におけるBCMA ISH。同じ細胞及び解剖学的領域における目的のタンパク質の遺伝子からのmRNA転写物の特異的検出は、観察された免疫反応性の特異性における信頼性を高めることができた。したがって、BCMA ISHは、解剖学的及び細胞分解能を有する遺伝子発現を明らかにするので、E6D7Bクローンを使用した場合に観察された免疫反応性を確証するためにBCMA ISHを使用した。E6D7B媒介免疫反応性に関係なく無作為に選択した合計49個の脳試料を、mRNA QCプローブPPIBで染色した。これら49個の試料のうち、25個が許容されるPPIB対照シグナル(細胞当たり4ドット以上)を示し、その後の実験に使用した。BCMA特異的プローブをこれらの25個の試料に適用し、これらの試料のうち4個のみが、切片中に存在する数千個の細胞のうち1個又は2個の細胞にスポットされた非常に低い(1~2ドット/細胞)陽性シグナルを生じた。同様のシグナルを陰性対照細胞ペレット試料(HEK293細胞)で検出することができたが、このシグナルは、アッセイに基づいて陽性とみなされるものの閾値未満だった。E6D7Bクローンで生成された免疫反応性は、脳切片全体にわたって時折ニューロンにおいて見られたが、ISHシグナルは非常に稀だった。
【0165】
共局在アッセイ。正常ヒト脳組織に対して行われたBCMA IHCアッセイから生じる免疫反応性を更に特徴付けるために、ゴルジ装置マーカーを用いた免疫蛍光共局在実験を行った。BCMAタンパク質を内因的に発現する形質細胞では、BCMAは、細胞膜上又はゴルジ装置内に見出すことができる。ニューロンのゴルジ装置は、形質細胞と比較した場合、形状、サイズ、及び分布が大きく異なり、したがって、BCMA免疫反応性がニューロン細胞体内の既知のゴルジタンパク質と共局在するかどうかを決定することが適切であると考えられた。ゴルジ装置のスパンをカバーするために、シス(GOLGA2及びGOLM1、PMID:18953438)及びトランス(TGN46、PMID:29311477)ゴルジIHCマーカーを調べた。組織常在性形質細胞及び試薬対照細胞ペレットでは、BCMA IHCアッセイは、タンパク質を形質膜に位置付け、細胞質中のゴルジ様構造に常に位置付けた。予想されたように、ゴルジマーカーとBCMA抗体との間で行われた共焦点観察では、細胞ペレット対照中に明らかに共局在した。正常ヒト脳試料のニューロンでは、シス及びトランス-ゴルジマーカーとE6D7Bから生じる免疫反応性との間に共局在は観察することができなかった(
図3A~3H)。
【0166】
更に、免疫反応性原線維は、アルツハイマー病などの神経変性疾患において見られる神経原線維変化を形態学的に暗示するので、pTau(アルツハイマー病において前臨床的及び臨床的に見られる最も一般的な凝集タンパク質)とBCMAとの共局在も調べた。共局在を共焦点顕微鏡によって評価した。pタウIHC染色は、評価された組織試料中に変化がないことを示し、したがって、E6D7Bで観察された免疫反応性は、そのマーカーとの共局在を示さなかった(
図6A~6F)。pタウ共局在試験は、組織試料に見られる免疫反応性とのいかなる関係も明らかにしなかった。タンパク質凝集体は、pタウ以外の多種多様なタンパク質によって形成されることができるので、ビルショウスキー銀染色を使用して、関与するタンパク質(複数可)とは無関係にほとんどの変化を同定した。選択されたニューロンは点状神経細胞内好銀性凝集体を示し、細胞の大部分は透明な原形質を示した。髄質では、好銀性凝集体の分布及び形態は、E6D7B IHCによって生成されたパターンに類似せず、免疫反応性が凝集タンパク質に由来しない可能性が最も高いことを示唆した(
図6A~6F)。
【0167】
カニクイザル脳試料における比較BCMA IHC。ヒトで考慮されたものに対応するカニクイザル正常脳位置を、E6D7Bクローンを使用してBCMA IHCアッセイで染色した。BCMA免疫反応性は、尾状核、被殻、及び視床などのヒトで研究された同じ解剖学的位置を含む、評価したカニクイザル組織試料では観察されなかった。
【0168】
GTEx RNA-Seq分析。脳試料にわたって、BCMA RNA検出は、一般に無視できる(0~0.21TPM)。尾状核及び被殻(線条体の構成要素)では、わずかに高いTPM値(1~3TPM)を有するサンプルの小さなサブセットが存在する。
【0169】
Allen BrainSpan RNA-seq分析。BCMA(TNFRSF17)RNA発現(
図4A~4C)は、胎児(平均TPM=5.2)、乳児(平均TPM=15.1)、若年(平均TPM=9.5)、思春期(1人のドナー、TPM=2.2)、及び若年成人(19歳及び20歳、平均TPM=4.6)由来の試料中の線条体で検出される。BCMA RNAレベルは、複数の発達段階が検査された全ての他の脳領域では無視できる(平均TPMが0.4未満)。
【0170】
凝集BCMA RNA-seq発現データ:線条体。線条体及び線条体の成分(尾状核及び被殻)のGTEx及びAllen BrainSpan BCMA RNA発現レベルの場合、試料(n=478)は、年齢の増加と共に明らかな発現低下を示す(
図4A~4C)。BCMA RNA発現は一般に、30歳を超えるドナーの線条体では無視できる。
【0171】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく、上で説明される実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本明細書によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【国際調査報告】