(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ポリマー送達系
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20241106BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20241106BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20241106BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241106BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241106BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20241106BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20241106BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241106BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20241106BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241106BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K9/51
C08G63/12
A61K47/59
A61K31/7088
A61K48/00
A61K38/02
A61K31/198
A61K38/16
A61K38/19
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 105
A61K9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525041
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 US2022047744
(87)【国際公開番号】W WO2023076284
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516334709
【氏名又は名称】ザ・セカント・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェレミー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラジンスキ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ギン,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ,ピーター・ディー
(72)【発明者】
【氏名】リード,ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ローダーメル,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
4J029
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA65
4C076AA95
4C076EE24
4C084AA01
4C084AA13
4C084BA03
4C084DA01
4C084MA38
4C084MA55
4C084NA13
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA38
4C086MA55
4C086NA13
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA58
4C206MA75
4C206NA13
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC01
4J029AC02
4J029AC03
4J029AD01
4J029AE06
4J029AE18
4J029BF25
4J029CA02
4J029CA03
4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029CE01
4J029DA02
4J029DA07
4J029FB16
4J029FC03
4J029FC29
4J029HA01
4J029HB01
4J029JC042
4J029JC072
4J029JC091
4J029JC092
4J029JC361
4J029JE072
4J029JE182
(57)【要約】
ポリマー送達系は、生物製剤を細胞に送達する。一部の実施形態では、ポリマー送達系はポリプレックスを含む。各ポリプレックスは、少なくとも1種の荷電ポリマーおよび少なくとも1種の生物製剤を含む。少なくとも1種の荷電ポリマーは、少なくとも1種の生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。他の実施形態では、ポリマー送達系は、ブロックコポリマーおよびブロックコポリマーに結合している生物製剤を含む自己組織化粒子を含む。ブロックコポリマーは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーの第1のブロックと、第2のモノマーまたは第2のポリマーの第2のブロックとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を含むポリマー送達系であって、各ナノ粒子が少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の生物製剤を含み、前記少なくとも1種のポリマーが、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む、ポリマー送達系。
【請求項2】
前記ナノ粒子がポリプレックスであり、前記ポリマーが荷電ポリマーであり、各ポリプレックスが少なくとも1種の荷電ポリマーおよび少なくとも1種の生物製剤を含み、前記少なくとも1種の荷電ポリマーが、前記少なくとも1種の生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー送達系。
【請求項3】
前記ポリプレックスが、約10nm~約1000nmの範囲にある数加重平均粒径を有する、請求項2に記載のポリマー送達系。
【請求項4】
溶媒をさらに含む、請求項2に記載のポリマー送達系。
【請求項5】
ポリオールおよびポリカルボン酸の前記ポリエステルコポリマーが、グリセロールと、セバシン酸、コハク酸、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリカルボン酸とのコポリマーを含む、請求項2に記載のポリマー送達系。
【請求項6】
前記少なくとも1種の荷電ポリマーおよび前記少なくとも1種の生物製剤が、リガンド相互作用または複合体配位によって結合している、請求項2に記載のポリマー送達系。
【請求項7】
前記少なくとも1種の生物製剤が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、遺伝子編集系、抗体、およびサイトカインからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー送達系。
【請求項8】
前記少なくとも1種の生物製剤が核酸を含む、請求項7に記載のポリマー送達系。
【請求項9】
前記少なくとも1種の荷電ポリマーが非免疫原性である、請求項2に記載のポリマー送達系。
【請求項10】
塩、緩衝剤、界面活性剤、安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される添加剤をさらに含み、前記添加剤が、前記ポリプレックスの少なくとも1つの特性を調整する、請求項2に記載のポリマー送達系。
【請求項11】
前記ナノ粒子が自己組織化粒子であり、前記コポリマーがブロックコポリマーであり、各ブロックコポリマーが、ポリオールおよびポリカルボン酸の前記ポリエステルコポリマーの第1のブロックと、第2のモノマーまたは第2のポリマーを含む第2のブロックとを含む、請求項1に記載のポリマー送達系。
【請求項12】
前記第1のブロックが、式(1):
-[-CO-(CH
2)
m-R-(CH
2)
n-CO
2-CH
2-CH(OR’)-CH
2-O-]
x (1)
[式中、mおよびnは1から30までの整数であり、xは1から75までの整数であり、Rは、-CH
2-、-NH-、-NCH
3-、-O-、-S-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO
2-、および-CONH-からなる群から選択され、R’は、水素または別の交換可能なペンダント基である]
の化学構造を有する、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項13】
前記自己組織化粒子が、約10nm~約1000nmの範囲にある数加重平均粒径を有する、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項14】
溶媒をさらに含む、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項15】
前記第1のブロックが、実質的に分岐していない、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項16】
前記第1のブロックの少なくとも1種のポリオールが、長さが炭素少なくとも5個のアルキルテールを含むように修飾されている、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項17】
前記自己組織化粒子がポリマーソームである、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項18】
前記自己組織化粒子がポリマーミセルである、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項19】
前記自己組織化粒子がポリプレックスである、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項20】
前記ブロックコポリマーおよび前記生物製剤が、リガンド相互作用または複合体配位によって結合している、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項21】
前記ブロックコポリマーがカチオン性であり、前記生物製剤がアニオン性である、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項22】
前記生物製剤が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、遺伝子編集系、抗体、およびサイトカインからなる群から選択される、請求項11に記載のポリマー送達系。
【請求項23】
前記生物製剤が核酸を含む、請求項22に記載のポリマー送達系。
【請求項24】
ポリマー送達系を形成するための方法であって、溶媒中でポリマーと生物製剤とを合わせて、ナノ粒子を形成するステップを含み、各ナノ粒子が少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の生物製剤を含み、各ポリマーが、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む、方法。
【請求項25】
前記ナノ粒子がポリプレックスであり、前記ポリマーが荷電ポリマーであり、前記方法が、前記溶媒中で前記荷電ポリマーと前記生物製剤とを合わせて、前記荷電ポリマーおよび前記生物製剤を前記ポリプレックスとして静電的に結合させるステップを含み、前記荷電ポリマーのそれぞれが、前記生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸の前記ポリエステルコポリマーを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリプレックスが、約10nm~約1000nmの範囲にある数加重平均粒径を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ポリオールおよびポリカルボン酸の前記ポリエステルコポリマーが、グリセロールと、セバシン酸、コハク酸、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリカルボン酸とのコポリマーを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ポリオールおよびポリカルボン酸の前記ポリエステルコポリマーを前記荷電部分で修飾して、前記荷電ポリマーを形成するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリプレックスが、約10nm~約1000nmの範囲にある数加重平均粒径を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記生物製剤が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、遺伝子編集系、抗体、およびサイトカインからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記生物製剤が核酸を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマー送達系に少なくとも1種の添加剤を添加するステップをさらに含み、前記添加剤が、塩、緩衝剤、界面活性剤、安定化剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記ナノ粒子が自己組織化粒子であり、前記ポリマーがブロックコポリマーであり、各ブロックコポリマーが、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーの第1のブロックと、第2のモノマーまたは第2のポリマーの第2のブロックとを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記自己組織化粒子が、約10nm~約1000nmの範囲にある数加重平均粒径を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記自己組織化粒子がポリマーソームである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記自己組織化粒子がポリマーミセルである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記自己組織化粒子がポリプレックスである、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記生物製剤が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、遺伝子編集系、抗体、およびサイトカインからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
生物製剤を細胞に送達するための方法であって、ポリマーおよび前記生物製剤を含むナノ粒子を投与するステップを含み、前記ポリマーが、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む、方法。
【請求項40】
前記ナノ粒子がポリプレックスであり、前記ポリマーが荷電ポリマーであり、各荷電ポリマーが、前記生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸の前記ポリエステルコポリマーを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリプレックスが、約10nm~約1000nmの範囲にある数加重平均粒径を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記投与するステップが、生体外で細胞に投与するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記投与するステップが、試験管内で細胞に投与するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記投与するステップが、生体内で細胞に投与するステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記荷電ポリマーと前記生物製剤とを合わせて、前記ポリプレックスを形成するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
ポリオールおよびポリカルボン酸の前記ポリエステルコポリマーが、グリセロールと、セバシン酸、コハク酸、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリカルボン酸とのコポリマーである、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記生物製剤が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、遺伝子編集系、抗体、およびサイトカインからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記生物製剤が核酸を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ナノ粒子が自己組織化粒子であり、前記ポリマーがブロックコポリマーであり、各ブロックコポリマーが、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーの第1のブロックと、第2のモノマーまたは第2のポリマーの第2のブロックとを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記投与するステップが、非経口的に投与するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記投与するステップが、生体外で細胞に投与するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記投与するステップが、試験管内で細胞に投与するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記投与するステップが、生体内で細胞に投与するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記ブロックコポリマーと前記生物製剤とを合わせて、前記自己組織化粒子を形成するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記自己組織化粒子がポリマーソームである、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記自己組織化粒子がポリマーミセルである、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記自己組織化粒子がポリプレックスである、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記生物製剤が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、遺伝子編集系、抗体、およびサイトカインからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、どちらも2021年10月25日に出願された米国特許仮出願第63/271,275号、および米国特許仮出願第63/271,283号の優先権および利益を主張し、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、一般にポリマー送達系を対象とする。より具体的には、本開示は、生体系に生物製剤を送達するポリマー送達系を対象とし、ポリマーはポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。
【背景技術】
【0003】
[0003]核酸の効率的な標的化デリバリーは、多くの生物学分野の目標である。カチオン性の脂質化合物は、例えば、研究用に試験管内で細胞にトランスフェクトするなどして、核酸を生体細胞に送達するために使用されてきた。核酸は強く負に帯電するため、細胞膜を越えて細胞に侵入しにくく、細胞に取り込まれる際に形成されるエンドソームコンパートメントから脱出しにくい。核酸はまた、細胞外および細胞内の両方に存在し得るヌクレアーゼによって切断される。
【0004】
[0004]ポリプレックス、より具体的にはカチオン性ポリマー/治療用遺伝子複合体は、哺乳類細胞を含む細胞への生物活性化合物の効率的な送達の可能性を示す。例えば、プラスミドデオキシリボ核酸(pDNA)と混合したカチオン性ポリマーは、細胞によって取り込まれ得る二成分の高分子電解質複合体(binary polyelectrolyte complex)を形成するが、これらの製剤は生体内での循環時間が短く、高濃度では細胞毒性となるため、使用が制限されている。
【0005】
[0005]ある種のカチオン性ポリマーは、核酸を凝縮してヌクレアーゼによる分解から保護するのに非常に効率的であるが、カチオン性ポリマーはまた、存在する正味正電荷の総量、および分子量または分岐度などのポリマーの特性によっては細胞に有毒となる場合がある。カチオン性ポリアミン、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(L-リジン)、ポリアミドアミン、キトサン、ポリアミノエステル、およびポリアクリレートは、有望な核酸送達媒体として評価されている。
【0006】
[0006]過去20年間にわたり、ナノ医療およびナノ粒子をベースとした治療的投与のための生物製剤ペイロードの標的化デリバリーは、玉虫色の成功の経歴を収めてきた。成功が精彩を欠いた理由としては、サブミクロンレベルで人体に異物が入らないようにする細網内皮系および免疫系についての理解の欠如、単球およびマクロファージの分化についての限定的な理解、物質表面および細胞の相互作用についての不十分な理解が挙げられる。例えば、注入されたナノ粒子の用量のうち、標的腫瘍に到達できるのは約0.7%にすぎない(例えば、Mitchellら、「Engineering precision nanoparticles for drug delivery」、Nature Reviews:Drug Discovery、第20巻、101~124ページ(2021)を参照されたい)。過去10年ほどの間、医用工学士および生物医学者は、皮下、静脈内、筋肉内、または髄腔内投与を問わず、非経口投与に免疫系が与える影響について疎かった可能性があり、この認識の欠如が混乱を招き、成功の過度な一般化を招いた可能性がある。
【0007】
[0007]いずれの投与経路も、ヒトの免疫系の体液性成分および細胞性成分の両方を攻撃するため、免疫介在反応に対する生体材料の影響をより深く理解し、細胞治療、遺伝子治療、ドラッグデリバリー、および移植技術を含む投与および移植治療のさらなる成功を達成する必要がある。従来の合成生分解性ポリマー、例えばラクチド、グリコリド、無水物、フマル酸塩、およびホスファゼンに対する生物学的反応は公知であり、これらの材料を使用した製剤を計画する際には考慮に入れなければならない。したがって、非免疫原性材料が入手できないため、このような材料を用いたヒト治療処置用の小粒子デリバリーを製剤化する場合、ある程度の炎症反応または生体適合性の欠如は受け入れられなければならない。このような非免疫原性材料の不足は、粒子デリバリーの課題を克服しようとする最近の試みをひたすら困難にしている。
【0008】
[0008]従来の非ウイルス遺伝子デリバリーシステムは、典型的には、脂質ナノ粒子かポリプレックスのいずれかである。リポソーム、ミセル、ポリマーミセル、ポリマーソーム、デンドリマー、およびニオソームは、それぞれが遺伝子デリバリーシステムの基盤となり得るナノ粒子システムである。リポソームは両親媒性脂質分子を含み、これらは典型的には2本の尾部を持つリン脂質で、電荷を帯びた親水性頭部を有しており、自己組織化して球状構造を形成し、例えば核酸などの親水性ペイロードを含有する水性コアを囲む脂質二重層シェルを持つ。ミセルは両親媒性脂質分子を含み、これらは自己組織化して単層の球状小胞構造を形成し、極性頭部基が疎水性尾部のコアを囲む。ポリマーミセルは、カチオン性基および非荷電疎水性基を持つブロックコポリマーをベースとしており、核酸とともに自己組織化してコアシェル構造を形成する。ポリマーソームは、リポソームと同様に、両親媒性ブロックコポリマーで構成される自己組織化構造である。デンドリマーは、高分岐球状ポリマーであり、強く帯電している場合がある。ニオソームはリポソームと同様の球状小胞構造であるが、1本の疎水性尾部を有する非イオン性界面活性剤から典型的には形成される点が異なる。
【0009】
[0009]脂質ナノ粒子(LNP)は、両親媒性構造によって形成される粒子群を表し、これらに限定されないがリポソームおよびミセルを含み、親水性コアまたは疎水性のコア、層、もしくはシェルのいずれかにペイロードをカプセル化する。脂質ナノ粒子は、両親媒性脂質分子が球状構造に自己組織化することによって形成される。LNPの形成に従来使用されてきた脂質の大半は、負に帯電した核酸との結合に必要なカチオン性極性頭部基を有する。脂質の尾部の部分は典型的には、1つまたは複数のアルキル鎖であり、長さおよび飽和度はさまざまであり得る。LNPの所望の機能特性に応じて、他の官能基は導入され得る。
【0010】
[0010]従来の脂質ナノ粒子には、典型的には、一部の極性頭部基にポリエチレングリコール(PEG)が含まれ、水性コアに生物製剤が装填されている。ナノ粒子デリバリーシステムにおける従来のLNPに関する懸念としては、電荷スクリーニングによる相互作用によって生理学的条件下でナノ粒子が不安定になることが挙げられる。さらに、LNPを自然免疫系から覆い隠すPEG化脂質の存在は、繰り返し曝露するとアレルギー反応を引き起こし、免疫応答を高める可能性がある。
【0011】
[0011]ポリプレックスは、荷電ポリマーと反対に帯電した標的分子との間の静電相互作用によって形成され、結合されたナノ粒子である。ポリプレックスの形成に従来使用されてきたカチオン性ポリマーは、生理学的pHで正電荷を帯びることができる複数のアミン官能基を含む。カチオン性ポリマーはトランスフェクション剤として日常的に使用されており、負に帯電した核酸とともにポリプレックスを形成し、細胞膜を通過する核酸の移動を促進する。細胞内に入ると、ポリプレックスが解離し、核酸が放出されて送達が完了してその機能を果たす。PEIなどのカチオン性ポリ(アミン)の懸念事項の1つは、高濃度では細胞毒性があるため、送達能力および生体内での使用が制限されることである。他のポリマーベースのトランスフェクション剤も非吸収性であるため、ポリプレックス成分との相互作用の結果としてすでに健康状態が悪化している可能性が高い細胞からポリマーを除去するには、さらに細胞エネルギーを使用する必要がある。細胞療法は、病気の患者および免疫不全の患者から採取した細胞を使用することに基づくため、このような追加的なストレスが、最終的な細胞産生物の収量および品質を低下させる可能性がある。
【0012】
[0012]ポリマーソームは別のクラスのポリマー担体であり、自己組織化という点からはリポソームに類似しているが、分子脂質ではなく両親媒性ポリマーから形成されている。ポリマーの分子量が大きいほど、より大きなペイロードのカプセル化、および電荷-疎水性の特性のより柔軟な変更に適応することができるという点で、ポリマーソームはリポソーム構造よりもさらなる利点を提供する。場合によっては、ポリマー構造はまた、小分子脂質よりもさらなる生体適合性を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
[0013]現在のナノ粒子デリバリーシステムと同等かそれ以上の生物学的ペイロードを送達する能力を提供する、より生体適合性の高い遺伝子デリバリーシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[0014]例示的な実施形態では、ポリマー送達系はナノ粒子を含み、各ナノ粒子は、少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の生物製剤を含む。少なくとも1種のポリマーは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。
【0015】
[0015]例示的な実施形態では、ポリマー送達系はポリプレックス(polyplex)を含む。各ポリプレックスは、少なくとも1種の荷電ポリマーおよび少なくとも1種の生物製剤を含む。少なくとも1種の荷電ポリマーは、少なくとも1種の生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。
【0016】
[0016]例示的な実施形態では、ポリマー送達系は、ブロックコポリマーおよびブロックコポリマーに結合している(associated)生物製剤を含む自己組織化粒子(self-assembled particle)を含む。ブロックコポリマーは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーの第1のブロックと、第2のモノマーまたは第2のポリマーの第2のブロックとを含む。
【0017】
[0017]例示的な実施形態では、ポリマー送達系を形成するための方法は、高分子と生物製剤とを溶媒中で合わせて、ナノ粒子を形成するステップを含む。各ナノ粒子は、少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の生物製剤を含む。各ポリマーは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。
【0018】
[0018]例示的な実施形態では、ポリプレックスを含むポリマー送達系を形成するための方法は、溶媒中で荷電ポリマーと生物製剤とを合わせて、荷電ポリマーおよび生物製剤をポリプレックスとして静電的に結合させるステップを含む。各ポリプレックスは、少なくとも1種の荷電ポリマーおよび少なくとも1種の生物製剤を含む。各荷電ポリマーは、生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。
【0019】
[0019]例示的な実施形態では、ポリマー送達系を形成するための方法は、ブロックコポリマーおよびブロックコポリマーに結合している生物製剤を含む自己組織化粒子を溶媒中で形成するステップを含む。ブロックコポリマーは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーの第1のブロックと、第2のモノマーまたは第2のポリマーの第2のブロックとを含む。
【0020】
[0020]例示的な実施形態では、生物製剤を細胞に送達するための方法は、ポリマーおよび生物製剤を含むナノ粒子を投与するステップを含む。ポリマーは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。
【0021】
[0021]例示的な実施形態では、生物製剤を細胞に送達するための方法は、荷電ポリマーと静電的に結合した生物製剤のポリプレックスを投与するステップを含む。荷電ポリマーは、生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。
【0022】
[0022]例示的な実施形態では、生物製剤を細胞に送達するための方法は、ブロックコポリマーおよびブロックコポリマーに結合している生物製剤を含む自己組織化粒子を投与するステップを含む。ブロックコポリマーは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーの第1のブロックと、第2のモノマーまたは第2のポリマーの第2のブロックとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】[0023]本開示の実施形態における、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーならびに荷電部分からの荷電ポリマーの形成を示す概略図である。
【
図2】[0024]本開示の実施形態における、荷電ポリマー-核酸ポリプレックスデリバリーシステムの静電形成を示す概略図である。
【
図3】[0025]本開示の実施形態における、生物製剤およびブロックコポリマーのポリマーミセルの概略図である。
【
図4】[0026]本開示の実施形態における、生物製剤およびブロックコポリマーのポリマーソームの概略図である。
【
図5A】[0027]ポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトール)のアタッチドプロトンテスト(attached proton test)(APT)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図5B】[0028]ポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)のAPT
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図6】[0029]ポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトール)およびポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)のフーリエ変換赤外減衰全反射(FTIR-ATR)スペクトルを示す図である。
【
図7】[0030]画像の明るい領域で示されるポリプレックスに48時間曝露した後、初代ヒト心臓線維芽細胞が正常にトランスフェクションされたことを示す、蛍光顕微鏡で得られた画像を示す図である。
【
図8】[0031]画像の明るい領域で示されるポリプレックスに48時間曝露した後、マウスNIH/3T3細胞が正常にトランスフェクションされたことを示す、蛍光顕微鏡で得られた画像を示す図である。
【
図9】[0032]画像の明るい領域で示されるポリプレックスに48時間曝露した後、マウスNIH/3T3細胞が正常にトランスフェクションされたことを示す、蛍光顕微鏡で得られた画像を示す図である。
【
図10】[0033]画像の明るい領域で示されるポリプレックスに24時間曝露した後、Jurkat E6.1細胞が正常にトランスフェクションされたことを示す、蛍光顕微鏡で得られた画像を示す図である。
【
図11】[0034]本開示の実施形態における1:40のmRNA:荷電ポリマーの重量比であるポリプレックス粒子の粒度分布を示すグラフである。
【
図12】[0035]本開示の実施形態における1:40のmRNA:荷電ポリマーの重量比であるポリプレックス粒子のゼータ電位を示すグラフである。
【
図13】[0036]本開示の実施形態における1:50のpDNA:荷電ポリマーの重量比であるポリプレックス粒子の粒度分布を示すグラフである。
【
図14】[0037]本開示の実施形態における1:50のpDNA:荷電ポリマーの重量比であるポリプレックス粒子のゼータ電位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0038]可能な限り、図面全体で同じ参照番号を使用して、同じ部分を表す。
【0025】
[0039]ポリマーおよびポリマーに結合する生物製剤のナノ粒子を含むポリマー送達系が提供され、ポリマーは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。
【0026】
[0040]本開示の実施形態は、例えば、本明細書に開示された特徴の1つまたは複数を含まない概念と比較して、非免疫原性であるポリマーを提供し;標的化デリバリーのために一連のペイロードサイズに適合するように設計することができ、特定の分解速度に合わせて調整することができ、特定の機能性部分で装飾することができる一連の構造を作製するように調整できる荷電ポリマー構造を提供し;ポリ(グリセロールセバケート)(PGS)の免疫ステルス特性を利用して、デリバリーシステムにおけるPEG化脂質の存在を軽減または回避し;ポリマーの分解に対する低炎症反応を利用して、細胞で容易に代謝されて細胞ストレスを軽減できる吸収性遺伝子送達媒体を提供し;ナノ粒子の安定性を改善して血液滞留時間を延長し;従来の遺伝子デリバリーシステムの限界に対処するカスタマイズ可能なポリマー構造を備えたポリマープラットフォームを提供し;標的化デリバリーのために一連のペイロードサイズに適合するように設計することができ、特定の分解速度に合わせて調整することができ、特定の機能性部分で装飾することができる一連のポリマー構造を作製するように調整できるブロックコポリマー構造を提供し;炎症反応の少ない生物製剤のデリバリーシステムを提供し;細胞内で容易に代謝されて細胞ストレスを軽減できる吸収性ポリマー送達媒体を提供し;ナノ粒子の安定性を改善して血液滞留時間を延長し;またはこれらの組合せを提供する。
【0027】
[0041]本明細書では、「ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマー」とは、エステル結合によって結合された1つまたは複数のポリオールと1つまたは複数のポリカルボン酸との交互モノマー単位を含む任意のコポリマーを指す。このようなコポリマーには、ポリオールまたはポリカルボン酸でなくてもよい追加のモノマー、ならびにポリオールおよび/またはポリカルボン酸モノマーを含んでも含まなくてもよい追加のポリマーブロックが含まれ得る。このようなコポリマーには、他の官能基も含まれ得る。一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、グリセロールおよびセバシン酸モノマーを含む。
【0028】
[0042]本明細書では、「ポリオール」とは、1つより多くのアルコール基を有する任意のモノマーを指す。
【0029】
[0043]本明細書では、「ポリカルボン酸」とは、1つより多くのカルボン酸基を有する任意のモノマーを指す。
【0030】
[0044]本明細書では、「生物製剤」とは、生物学に基づいており、生物系に送達され、生物系と相互作用することが望ましい任意の化合物または成分を指す。例示的な生物製剤としては、これらに限定されないが、核酸、タンパク質、ペプチド、遺伝子編集系(a gene editing system)、抗体、サイトカイン、および医薬品有効成分(API)が挙げられる。生物製剤は、天然由来でも合成由来でもよく、これらに限定されないが、合成もしくは組換え核酸、合成ペプチド、または組換えタンパク質が挙げられる。核酸生物製剤は、一本鎖でも二本鎖でもよく、デオキシリボ核酸(DNA)でもリボ核酸(RNA)でもよい。適切な遺伝子編集系には、これらに限定されないが、クラスター化され、規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)システム、例えば、CRISPR/Cas9、トランスポゾン、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、または亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)などが含まれる。
【0031】
[0045]例示的な実施形態では、ポリマー送達系の高分子は、以下に示す式(1):
[[-Aa-Bb]x-Cc-Dd]z (1)
[式中、Aはポリオールモノマーであり、a=1~30であり、Bはポリカルボン酸モノマーであり、b=1~30であり、Cはポリマーブロック、荷電部分、またはポリオールモノマーであり、c=0~30であり、Dはポリマーブロック、荷電部分、またはポリカルボン酸モノマーであり、d=0~30であり、xは1から75までの整数またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲であり、zは1から100までの整数、またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲である]
の構造を含む。
【0032】
[0046]存在する場合、Cおよび/またはDは、コポリマーの特定の化学的および/または物理的特性に合わせてカスタマイズ可能かつ調整できる。一部の実施形態では、Aは生物製剤と結合している。他の実施形態では、Bは生物製剤と結合している。他の実施形態では、Cは生物製剤と結合している。他の実施形態では、Dは生物製剤と結合している。式(1)中のCおよび/またはDがポリマーブロックである一部の実施形態では、ポリマーブロックは、ポリ酸、ポリオール、またはポリアミンである。適切なポリマーには、これらに限定されないが、PEG、PEI、ポリリジン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒアルロン酸、またはアグリカンが含まれ得る。
【0033】
[0047]例示的な実施形態では、ポリマーは、リガンド相互作用または複合体配位によって生物製剤と結合する。
【0034】
[0048]一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、ポリマーの溶解度に影響を与えない低濃度のウレタンおよび/またはアクリレートを含む。
【0035】
[0049]一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、ポリオールとしてグリセロールを、ポリカルボン酸としてセバシン酸を含む。グリセロールエステル部分は、ポリマーの脂質様ビス-二酸トリグリセリドと考えられ得る。さらに、これらのグリセロールエステルは、分解または侵食時にクレブス回路に直接供給される代謝ビルディングブロックから構築されたポリマーである。したがって、PGSなどのポリマーの正しく評価されていない利点は、細胞と物質との局所的な相互作用および免疫応答が良好であることである。対照的に、ラクチドおよびグリコリドで構成される分解性ポリマーは、分解副産物としての乳酸およびグリコール酸の放出に起因する炎症性マクロファージ(M1)による免疫応答を開始する。さらに、PGSは、治癒促進(M2)マクロファージ分化を開始するグリセロールエステル代謝副産物の存在により、酸化的リン酸化の刺激を誘発することができる。M2の存在は、治療デリバリー中の局所的な炎症を緩和、抑制、および/または制御するために不可欠であり、これにより、望ましくない物質である酸副産物が免疫応答を開始することによる合併症および混乱を招くことなく治療を開始できる。
【0036】
[0050]一部の実施形態では、ポリマーは、例えば、第1のブロックもしくはポリオールのアルコール、または他のテザー部位で、標的化ペイロードデリバリーのためのリガンドによって誘導体化される。このリガンドは、特定の細胞マーカーに結合するように設計されており、細胞マーカーには、これらに限定されないが、腫瘍特異的抗原、腫瘍関連抗原タンパク質、抗体、アルファフェトプロテイン、がん胎児性抗原、がん抗原125(CA-125)、ムチン1(MUC-1)、上皮性腫瘍抗原、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原、rasの異常生成物、腫瘍タンパク質P53(p53)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)タンパク質、または細胞特異的エピトープが含まれ得る。
【0037】
荷電ポリマー
[0051]一部の実施形態では、ポリマーは荷電ポリマーである。このような実施形態では、C単位は、存在する場合はポリオールモノマーであるか、またはD単位は、存在する場合はポリカルボン酸モノマーである。荷電ポリマーは、C単位、D単位、またはA単位、B単位、C単位、および/もしくはD単位上のペンダント基であってもよい少なくとも1つの荷電部分をさらに含む。
【0038】
[0052]一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、1種または複数のポリオールモノマーと1種または複数のポリカルボン酸モノマーとの縮合反応生成物である。
【0039】
[0053]適切なポリオールモノマーには、これらに限定されないが、グリセロール、低分子量PEG(約1000Da以下)、ポリビニルアルコール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、またはイソマルトが含まれ得る。1種より多くのポリオールモノマーをポリカルボン酸モノマーと共重合させる場合、これらは1:99~50:50の範囲の任意のモル比で含まれ得る。
【0040】
[0054]適切なポリカルボン酸モノマーには、これらに限定されないが、一般式[HOOC(CH2)mZ(CH2)nCOOH][式中、mおよびn=1~30であり、Zは-O-、-COO-、-CO-、-S-S-、-NH-、-NZ’-、-CHZ”-、-CH=CH-、-C≡C-、または-CH=CH-CH=CH-であり、Z’は-H、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2NH2、または-CH2CH2NHCH3であり、Z”は-H、-OH、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2CH2NH2、または-CH2CH2NHCH3である]を有する二酸が含まれる。適切なポリカルボン酸モノマーには、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オキサル酢酸、クエン酸、フマル酸、またはリンゴ酸が含まれ得る。1種より多くのポリカルボン酸モノマーをポリオールモノマーと共重合させる場合、これらは1:99~50:50の範囲の任意のモル比で含まれ得る。
【0041】
[0055]荷電ポリマー中の他の適切なモノマーには、これらに限定されないが、グルタミン、リジン、またはアルギニンが含まれ得る。
【0042】
[0056]一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、非直鎖型であり、かつ/または分岐を含み、荷電部分で修飾されると荷電ポリマーを形成する。一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、低分子量から中分子量を有する。例示的な実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーの重量平均分子量は、約2kDa~約50kDa、あるいは約2kDa~約30kDa、あるいは約2kDa~約15kDa、あるいは約2kDa~約10kDa、あるいは約5kDa~約50kDa、あるいは約10kDa~約50kDa、あるいは約10kDa~約25kDa、またはそれらの間の任意の値、範囲、もしくは部分範囲である。例示的な実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは熱硬化状態ではない。一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、高い多分散度指数を有する。
【0043】
[0057]例示的な実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、少なくとも1つの荷電部分で修飾されて荷電ポリマーを形成する。
【0044】
[0058]例示的な実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、2種類以上の異なるポリカルボン酸を含有し、少なくとも1つの荷電部分で修飾されて荷電ポリマーを形成する。
【0045】
[0059]例示的な実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、2種類以上の異なるポリオールを含有し、少なくとも1つの荷電部分で修飾されて荷電ポリマーを形成する。
【0046】
[0060]例示的な実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、2種類以上の異なるポリカルボン酸モノマー、2種類以上の異なるポリオールモノマーを含有し、少なくとも1つの荷電部分で修飾されて荷電ポリマーを形成する。
【0047】
[0061]
図1を参照すると、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマー10は、複数のR官能基を含む。一部の実施形態では、R基が荷電化合物12のテザー部位となるように、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミン基、またはこれらの組合せがR基に含まれる。荷電化合物12はR’-X
+として
図1に示されており、R’基はテザー部分Rへの相補的な化学反応部分(complimentary chemistry)を表し、およびX
+は荷電部分を表す。一部の実施形態では、R’基の相補的な化学反応部分には、ヒドロキシ基および/またはアミン基と反応するカルボキシル基、ヒドロキシ基および/またはアミン基と反応するイソシアネート基、カルボキシル基と反応するヒドロキシ基、カルボキシル基と反応するアミン基、ヒドロキシ基および/またはアミン基と反応する酸性塩化物、開環反応するもの、またはこれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、例えば、カルボニルジイミダゾール(carbonyl diimdazole)またはトシル化合物などの活性化剤が使用され得る。この反応スキームにより、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマー10を誘導体化して、荷電ポリマー14を生成することができる。荷電化合物12は、ポリオールおよびポリカルボン酸モノマーと共重合するモノマーを介して導入されてポリマーの繰り返し単位内に位置してもよいか、または荷電化合物12は、ポリオールおよびポリカルボン酸モノマーの共重合後の導入によるペンダントであってもよい。
【0048】
[0062]適切な荷電化合物には、これらに限定されないが、アミノ酸、例えば、グルタミン、リジン、またはアルギニン、ジメチルアミノプロパン酸、1,1-ジメチルエチレンジアミン、PEI、ポリリジン、またはヒアルロン酸が含まれ得る。
【0049】
[0063]適切な荷電部分には、これらに限定されないが、硫酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、亜硫酸塩、カルボキシ塩、炭水化物、糖タンパク質、アンモニウム、アミノ酸、ペプチド、ペプチド配列、例えば、細胞接着を促進するアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列、コリン、ホスホコリン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン、またはカルボン酸塩が含まれ得る。
【0050】
ブロックコポリマー
[0064]他の実施形態では、ポリマーはブロックコポリマーである。一部の実施形態では、式(1)のブロックコポリマーのA-B基は、式(2):
-[-CO-(CH2)m-R-(CH2)n-CO2-CH2-CH(OR’)-CH2-O-]x (2)
[式中、Aは-CH2-CH(OR’)-CH2-O-であり、Bは-CO-(CH2)m-R-(CH2)n-CO-であり、mおよびnは1から30までの整数またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲であり、Rは-CH2-、-NH-、-NCH3-、-O-、-S-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-CO2-、または-CONH-であり、R’は水素または別の交換可能なペンダント基である]
の第1のブロックであり、式(1)のCおよび/またはD基は、カスタマイズ可能なモノマーまたはポリマーブロックであり、ブロックコポリマーの特定の化学的および物理的特性に合わせて調整され得る。
【0051】
[0065]一部の実施形態では、式(1)のブロックコポリマーの第1のブロックは、ポリオールとのジエポキシドの反応によって生成される。一部の実施形態では、ポリオールはジオールである。式(3)は、反応してポリエステルコポリマーを形成し得るジエポキシドおよびポリオールの例である:
H2COCH-CH2-O2C-(CH2)n-CO2-CH2-CHOCH2+HO-CH2-(CHR)x-(CHR’)y-CH2-OH (3)
[式中、nは1から20までの整数またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲であり、xは1から10までの整数またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲であり、yは0から10までの整数、1から10までの整数、またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲であり、RおよびR’は、独立して-Hまたは-OHを表してもよい]。
このようなジエポキシド-ジオールモノマー対は、実質的に分岐していないポリマーを提供することができる。
【0052】
[0066]他の実施形態では、式(1)のブロックコポリマーの第2のブロックは、ポリアミンとのジエポキシドの反応によって生成される。一部の実施形態では、ポリアミンはジアミンである。式(4)は、反応してポリアミンコポリマーを形成し得るジエポキシドおよびポリアミンの例である:
H2COCH-CH2-O2C-(CH2)n-CO2-CH2-CHOCH2+H2N-(CH2)x-Xm-(CH2)y-NH2 (4)
[式中、nは1から20までの整数またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲であり、mは0から10までの整数、またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲であり、xおよびyは独立して0から10までの整数、またはそれらの間の任意の整数値、範囲、もしくは部分範囲であり、XはA-Bブロックに特定の特性、例えば、所定の電荷密度、所定の疎水性、または所定の親水性を提供するように選択される]。
適切なX基には、これらに限定されないが、-CH2-、-NH-、-CH2-CH2-O-、-CH2-CH2-NH-、-CH2-CH2-CH2-CH2-NH-、またはフェニルが含まれ得る。このようなジエポキシド-ジアミンモノマー対は、実質的に分岐していないポリマーを提供することができる。
【0053】
[0067]一部の実施形態では、式(1)中のCおよび/またはDの第2のブロックは、ブロックコポリマーを両親媒性にするように選択される。一部の実施形態では、第2のブロックは、コポリマーを親水性にするように選択される。一部の実施形態では、第2のブロックは、ポリマーを疎水性にするように選択される。一部の実施形態では、第2のブロックは、得られたコポリマーを分岐コポリマーにするように選択される。一部の実施形態では、第2のブロックは、得られたコポリマーを架橋させるように選択される。一部の実施形態では、第2のブロックは、得られたコポリマーをカチオン性にするように選択される。一部の実施形態では、第2のブロックは、得られたコポリマーをアニオン性にするように選択される。
【0054】
[0068]一部の実施形態では、第2のブロックはカチオン電荷を有するので、例えば核酸などの負に帯電した生物製剤との静電複合体形成が可能になる。他の実施形態では、第2のブロックはアニオン電荷を有するので、正に帯電した生物製剤との静電複合体形成が可能になる。
【0055】
[0069]例示的な実施形態では、第2のブロックは、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーよりも親水性が高いので、水溶液に溶解することができる。一部の実施形態では、式(1)のa、b、c、d、zの値は、ブロックコポリマーが特定の水性環境で自己組織化するように選択される。一部の実施形態では、第2のブロックはポリグリセロールである。一部の実施形態では、第2のブロックはポリ(ビニルアルコール)である。一部の実施形態では、第2のブロックはポリ(エチレングリコール)などのポリオールであり、エチレングリコール単位の繰り返しの数は、1から20の間である。第2のブロックに適したポリマーには、これらに限定されないが、別のポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマー、親水性ポリマー、ヒアルロン酸、多糖類、PEI、ポリリジン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、またはポリカプロラクトンが含まれ得る。
【0056】
[0070]一部の実施形態では、ブロックコポリマーは、例えば3ブロックまたは4ブロックなど、3つ以上のブロックを含む。例えば、トリブロックコポリマーは、カチオン性の第1のブロック、疎水性の第2のブロック、およびアニオン性またはカチオン性の低い第3のブロックを含み得る。
【0057】
ポリマーデリバリー複合体
[0071]例示的な実施形態では、一連の生物製剤および治療薬を送達するためのポリマーナノ粒子プラットフォームは、これらに限定されないが、核酸、タンパク質、医薬品有効成分(API)、遺伝子編集系、抗体、サイトカイン、および他の生物製剤を含むさまざまなペイロードのニーズに対応するようにカスタマイズ可能である。ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーは、形状因子を構成する基本的なビルディングブロックとして機能する。ポリマーおよび生物製剤の構造に応じて、形状因子はポリプレックス、ミセル、ポリマーソーム、ニオソーム、またはポリマー脂質ナノ粒子であってもよい。
【0058】
[0072]一部の実施形態では、ナノ粒子は細胞への生体外送達に使用される。
【0059】
[0073]一部の実施形態では、ナノ粒子は細胞への生体内送達に使用される。
【0060】
[0074]一部の実施形態では、ナノ粒子は細胞への試験管内送達に使用される。
【0061】
[0075]一部の実施形態では、ポリマー送達系は、標的化デリバリーのために一連のペイロードサイズに適合するように設計され得、特定のペイロード放出速度に合わせて調整され得、特定の機能性部分で装飾され得る一連のナノ粒子構造を作製するように調整され得るポリマー構造を提供する。
【0062】
[0076]ポリマーが荷電ポリマーの場合、荷電ポリマーは、反対の電荷の生物製剤のペイロード分子と結合されて混合されるとポリプレックスを形成し、そこでポリプレックスは反対の電荷によって結合される。例示的な実施形態では、ポリプレックスはナノ粒子である。
【0063】
[0077]一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーはカチオン性部分で修飾されて、得られた荷電ポリマーが負に帯電した分子、例えば核酸などに結合できるようになる。
【0064】
[0078]一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーはアニオン性部分で修飾されて、荷電ポリマーが正に帯電した分子、例えば特定のペプチドまたはタンパク質などに結合できるようになる。
【0065】
[0079]一部の実施形態では、ポリマー送達系は、非免疫原性を維持しながら、ポリプレックスおよびナノ粒子の両方の利点を1つの形状因子に組み込む。ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーがベース構造として機能し、そこにさまざまなペンダントビルディングブロックが追加されて特定の機能が実現され得る。
【0066】
[0080]ポリマーナノ粒子の性能を調整するためのプロセスレバー(process lever)には、これらに限定されないが、分子量、電荷密度、荷電ポリマービルディングブロックの酸:アルコール比、架橋密度、ペイロード(生物製剤)と荷電ポリマーの比率、使用する荷電部分、ならびに添加剤の選択および存在が含まれ得る。
【0067】
[0081]一部の実施形態では、ポリマー送達系は、システムの少なくとも1つの特性を調整するように選択された添加剤を含む。添加剤によって改質されるべき適切な特性には、これらに限定されないが、数加重平均粒径(a number-weighted average particle size)、ゼータ電位、水安定性、低温安定性(cryostability)、微生物耐性、血漿安定性、または細胞膜への親和性が含まれ得る。適切な添加剤には、これらに限定されないが、塩、緩衝剤、界面活性剤、安定化剤、凍結保存用の加工助剤、抗菌剤、またはアジュバントが含まれ得る。一部の実施形態では、添加剤は荷電ポリマーの少なくとも1つの特性を調整する。一部の実施形態では、添加剤は、荷電ポリマーと複合体化した生物製剤の少なくとも1つの特性を調整する。一部の実施形態では、添加剤は、例えば、コレステロール、脂質、タンパク質、リン脂質、または合成両親媒性分子などのポリマー-生物製剤複合体に挿入または組み立てられる付加物である。
【0068】
[0082]ポリオールにはグリセロールが含まれ、ポリカルボン酸にはセバシン酸が含まれる場合、PGSに結合して非免疫原性を維持する適切なカチオン性部分には、これらに限定されないが、アミン、アンモニウム、アミノ酸、ペプチド、ペプチド配列、例えば、細胞接着を促進するアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)、コリン、ホスホコリン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、またはカルシウムイオンが含まれ得る。
【0069】
[0083]PGSに結合して非免疫原性を維持する適切なアニオン性部分には、これらに限定されないが、硫酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、亜硫酸塩、カルボキシ塩、炭水化物、または糖タンパク質が含まれ得る。
【0070】
[0084]前述のように、PEGは自然免疫系から脂質ナノ粒子を覆い隠すために使用されることが多いが、PEGはアレルギー反応を引き起こす可能性があり、PEG化はナノ粒子製造の追加的なステップである。PGSは、その非免疫原性により、例示的な実施形態では、PEGまたは別のクローキング材料の必要性を低減または排除することができる。
【0071】
[0085]例示的な実施形態では、荷電ポリマーは、反対に帯電したペイロード生物製剤分子と混合されてポリプレックスを形成し、細胞に送達される。細胞に送達されると、ペイロード分子がポリプレックスから放出され、次いで荷電ポリマーが細胞への毒性を最小限に抑えながら生分解する。
【0072】
[0086]一部の実施形態では、ポリマーと生物製剤の比率は、得られるポリマーナノ粒子の平均サイズおよび/またはゼータ電位の調整を助けるように選択される。一部の実施形態では、ポリマーと生物製剤の比率は、約150nm~約400nmの範囲、あるいは約200nm~約300nmの範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲、もしくは部分範囲の数平均粒径を有するナノ粒子が提供されるように選択される。一部の実施形態では、ポリマーと生物製剤の比率は、約+10mV~約+25mVの範囲、あるいは約+14~約+22mVの範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲、もしくは部分範囲のゼータ電位を有するナノ粒子を提供するように選択される。
【0073】
[0087]一部の実施形態では、荷電ポリマー-生物製剤複合体は、多層的であり層ごとに組み立てられてもよく、正に帯電した種および負に帯電した種の層が交互に重なっている。一部の実施形態では、複合体はPEGでキャッピングされ、水和コロナ(corona of hydration)を形成してもよい。
【0074】
[0088]例示的な実施形態では、ポリプレックスデリバリーシステムは、粒子送達へのビルディングブロックアプローチに基づく。
図1および
図2は、ポリプレックスデリバリーシステムのモジュール形成の概略図である。これらに限定されないが、サイズまたは電荷を含み得るパッケージの特性に応じて、さまざまな複合体形成技術が利用される場合がある。PGSがポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーである場合、ポリプレックス生成へのモジュラーアプローチは、好ましくは、PGSの非免疫原性を維持する。
【0075】
[0089]
図2を参照すると、荷電ポリマー14は、自然に正味の反対の電荷を有する生物製剤16と混合し、その反対の電荷に基づいてポリプレックス18に組み立てられる。形成されたポリプレックス18は、次いで、PGSベースのポリプレックスデリバリーシステムとして使用され得る。一部の実施形態では、ポリプレックス18はナノ粒子である。一部の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマー10がカチオン性部分で修飾され、生物製剤16は自然に正味の負電荷を有し、これは
図2に核酸として概略的に示されている。他の実施形態では、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマー10はアニオン性部分で修飾され、生物製剤16は自然に正味の正電荷を有する。
【0076】
[0090]一部の実施形態では、デリバリーシステムを形成するための方法は、複数の荷電ポリマーと複数の生物製剤とを溶媒中で合わせて、複数の荷電ポリマーおよび複数の生物製剤を静電的に結合させて複数のポリプレックスを生成するようステップを含み、複数のポリプレックスの各ポリプレックスは、複数の荷電ポリマーのうちの少なくとも1種、および複数の生物製剤のうちの少なくとも1種を含む。複数の荷電ポリマーのそれぞれは、複数の生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。一部の実施形態では、合わせるステップは混合するステップを含む。一部の実施形態では、合わせるステップは超音波処理を含む。一部の実施形態では、合わせるステップはマイクロ流体混合するステップを含む。一部の実施形態では、溶媒は水性溶媒である。一部の実施形態では、水性溶媒はPH緩衝水性溶媒である。一部の実施形態では、溶媒はエタノールおよび水の共溶媒組成物である。一部の実施形態では、溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
【0077】
[0091]一部の実施形態では、荷電ポリマーおよび/またはポリプレックスは、使用前に高い電荷密度または高い原子価を含有して荷電ポリマーおよび/またはポリプレックスの安定性を向上させ、溶液中に保管される。一部の実施形態では、荷電ポリマーおよび/またはポリプレックスは、使用前に凍結乾燥され、低水分環境に維持されて保管される。
【0078】
[0092]ポリマーがブロックコポリマーである場合、式(1)中のCは、静電複合体形成によりポリプレックスの自己組織化粒子を形成するように、生物製剤とは反対の電荷を有するように選択されるポリマーブロックであってもよい。
【0079】
[0093]ポリプレックスデリバリーシステムのポリプレックスに適したサイズは、1ナノメートル(nm)~1000nm、あるいは約10nm~約1000nm、あるいは約50nm~約1000nm、あるいは約100nm~約900nm、あるいは約200nm~約800nm、あるいは約100nm~約500nm、あるいは約50nm~約100nm、あるいは約50nm~約200nm、あるいは約50nm~約500nm、あるいは約50nm~約800nm、あるいは約100nm~約200nm、あるいは約300nm~約500nm、あるいは約500nm~約900nmの範囲であるか、またはそれらの間の任意の値、範囲、もしくは部分範囲である。粒子は本明細書では一般にナノ粒子として説明されるが、ポリプレックス数加重平均粒径は、一部の実施形態ではミクロ粒子サイズの範囲にまで及ぶことがある。
【0080】
[0094]ポリプレックスナノ粒子デリバリーシステムは、主に生物製剤としてアニオン性核酸を送達するために説明されてきたが、ポリマー送達系は、他のアニオン性生物製剤またはカチオン性生物製剤を送達するように変更され得る。他の適切な荷電生物製剤には、これらに限定されないが、酵素、タンパク質、API、ペプチド、アミノ酸、遺伝子編集系、抗体、サイトカイン、またはアプタマーが含まれ得る。
【0081】
[0095]本明細書に記載され、
図1に示されている荷電ポリマーのカチオン特性は、生物製剤の電荷に応じてアニオン特性に置き換えられてもよい。
【0082】
[0096]一部の実施形態では、生物製剤を細胞に送達するための方法は、荷電ポリマーと静電的に結合した生物製剤のポリプレックスを投与するステップを含み、荷電ポリマーは、生物製剤の正味電荷とは反対の電荷を有する少なくとも1つの荷電部分で修飾された、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを含む。一部の実施形態では、ポリプレックスは非経口的に投与される。
【0083】
[0097]一部の実施形態では、式(1)のa、b、c、d、x、およびzの値は、ブロックコポリマーが単独で、または生物製剤と組み合わさって自己組織化してポリマーソームを形成するように選択される。
【0084】
[0098]一部の実施形態では、式(1)のa、b、c、d、x、およびzの値は、ブロックコポリマーが単独で、または生物製剤と組み合わさってポリマーミセルの自己組織化粒子を形成するように選択される。
【0085】
[0099]一部の実施形態では、自己組織化粒子はナノ粒子である。ポリマー送達系の自己組織化粒子に適したサイズは、1ナノメートル(nm)~1000nm、あるいは約50nm~約1000nm、あるいは約100nm~約900nm、あるいは約200nm~約800nm、あるいは約100nm~約500nm、あるいは約50nm~約100nm、あるいは約50nm~約200nm、あるいは約50nm~約500nm、あるいは約50nm~約800nm、あるいは約100nm~約200nm、あるいは約300nm~約500nm、あるいは約500nm~約900nmの範囲であるか、またはそれらの間の任意の値、範囲、もしくは部分範囲である。粒子は本明細書では一般にナノ粒子として説明されるが、粒径は、一部の実施形態ではミクロ粒子サイズの範囲にまで及ぶことがある。
【0086】
[00100]例示的な実施形態では、ブロックコポリマーを含むポリマー送達系は、粒子送達へのビルディングブロックアプローチに基づく。
図3および
図4は、ブロックコポリマーおよび生物製剤に由来するポリマー送達系の2種の分子製剤の概略図である。
図3では、ブロックコポリマーおよび生物製剤が自己組織化してポリマーミセルになっている。
図4では、ブロックコポリマーおよび生物製剤が自己組織化してポリマーソームになっている。
図3および
図4に示す結合された疎水性鎖の代わりに、ブロックコポリマーは、疎水性の第1のブロックポリマーまたは疎水性の第2のブロックポリマーを含んでもよい。これらに限定されないが、サイズ、疎水性または電荷を含み得るパッケージの特性に応じて、さまざまな粒子技術が利用される場合がある。粒子生成へのモジュラーアプローチは、構成モノマーのポリマーの非免疫原性を維持するだけでなく、第1のブロックの生体吸収性も維持する。
【0087】
[00101]式(1)を参照すると、ブロックコポリマーに属するポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーのA-B第1のブロックのアルコールは誘導体化されておらず、Cはデリバリーシステムに、例えば、電荷、親水性、または分子量などの機能性を付与するために使用される。
【0088】
[00102]一部の実施形態では、第1のブロックのアルコール基は、誘導体化されて追加の機能性を付与できるテザー部分として使用され、ここで、アルコールはアルキルテール(alkyl tail)に変換されてデリバリーシステムに両親媒性を付与し、これにより、
図3に概略的に示すように、ポリマーミセル構造の形成が可能になり、
図4に概略的に示すように、ポリマーソーム構造の形成が可能になる。アルキルテールは、シングルテールでもダブルテールでもよい。アルキルテールは、飽和を含む任意の適切な不飽和度を含んでもよい。アルキルテールは、例えば、5から22の間の任意の整数値、範囲、または部分範囲を含む、C
5からC
22までの範囲の任意の適切な長さであってもよい。一部の実施形態では、アニオン性生物製剤は、一本鎖または二本鎖の核酸であり、DNAでもRNAであってもよい。
【0089】
[00103]例示的な実施形態では、デリバリーシステムの全体的な電荷特性を高めるために、第1のブロックのアルコール基は荷電分子またはポリマーで誘導体化される。
【0090】
[00104]一部の実施形態では、デリバリーシステムの親水性を高め、ナノ粒子の周囲に水性コロナを提供するために、第1のブロックのアルコールはPEGで誘導体化される。
【0091】
[00105]第1のブロックのアルコール基の誘導体化により分解性結合が生じ、ペイロード送達の際にポリマー送達系の分解が可能になることは、当業者に理解されるだろう。
【0092】
[00106]一部の実施形態では、ポリマー送達系を形成するための方法は、溶媒中でブロックコポリマーと生物製剤と合わせて、ブロックコポリマーおよびブロックコポリマーに結合している生物製剤を含む自己組織化粒子を形成するステップを含む。一部の実施形態では、合わせるステップは混合するステップを含む。一部の実施形態では、合わせるステップは超音波処理を含む。一部の実施形態では、合わせるステップはマイクロ流体混合するステップを含む。一部の実施形態では、溶媒は水性溶媒である。一部の実施形態では、水性溶媒はPH緩衝水性溶媒である。一部の実施形態では、溶媒はエタノールおよび水の共溶媒組成物である。一部の実施形態では、溶媒はDMSOを含む。
【0093】
[00107]一部の実施形態では、形成されたポリマー送達系は、ポリマーミセルの形態である。
図3は、反対に帯電した生物製剤との静電相互作用を形成する荷電基を含有するブロックコポリマーの第1のブロックおよび第2のブロックの、一部のアルコール疎水性部分を示す。ブロックコポリマーおよび生物製剤は、水性溶媒中で自己組織化して、疎水性部分のコアを有するミセルのような構造になる。
【0094】
[00108]一部の実施形態では、形成されたポリマー送達系は、ポリマーソーム(polymersome)の形態である。
図4は、反対に帯電した生物製剤との静電相互作用を形成する荷電基を含有するブロックコポリマーのうちの1つの第1のブロックおよび第2のブロックの一部のアルコール基からグラフトされた疎水性部分を示す。ブロックコポリマーおよび生物製剤は、溶媒中で自己組織化して、疎水性部分の二重層と、生物製剤と複合体化した荷電第2のブロックを含むコアとを有するポリマーソームになる。
【0095】
[00109]一部の実施形態では、上述のミセルまたはポリマーソームは、従来の脂質ナノ粒子技術とともに使用してハイブリッドナノ粒子を作製するように設計されている。従来の脂質ナノ粒子は両親媒性脂質で構成されており、荷電頭部基が反対に帯電したコアと結合している。得られた構造により、疎水性の尾部が粒子の外側に露出する。本明細書に記載の両親媒性ブロックコポリマーは、ポリマー複合体の疎水性尾部を脂質ナノ粒子の疎水性尾部と同じ方向になるように配向することができる。ハイブリッド粒子にポリマー成分を添加することで、LNPコアが安定し、解離、オプソニン化タンパク質、または自然免疫応答または適応免疫応答から保護される。さらに、ポリマーをターゲティングリガンドで誘導体化して、特定の生物学的標的にペイロードを送達できるハイブリッドナノ粒子を作製してもよい。
【0096】
[00110]一部の実施形態では、ポリマー送達系は、特定のセグメントを組み込むように設計されており、このセグメントは、生物製剤ペイロードの部分と相互作用してアモルファス固体分散液を生成し、ペイロードを凝縮してより小さな粒子を生成し、放出速度を増強し、生物製剤を安定させ、オプソニン化または他の免疫系の攻撃から生物製剤を保護し、血漿安定性を改善して循環時間を長くするか、または他の利益を得ることを可能にする。
【0097】
[00111]一部の実施形態では、ハイブリッド粒子系が作製され、ポリマー送達系が凝縮剤として作用してより小さなペイロード粒子を生成し、このペイロード粒子は、標準的な脂質ナノ粒子形成法を使用してさらに処理され得る。
【0098】
[00112]一部の実施形態では、ブロックコポリマーは、使用前に凍結乾燥され、低水分環境に維持されて保管される。
【0099】
[00113]ポリマー送達系は、主に生物製剤としてアニオン性核酸を送達するために説明されてきたが、ポリマー送達系は、これらに限定されないが、酵素、タンパク質、API、ペプチド、アミノ酸、またはアプタマーを含む、カチオン性または非荷電の生物製剤を送達するように変更され得る。
【0100】
[00114]本明細書に記載され、
図3および
図4に示されるカチオン特性は、ブロックコポリマーと生物製剤との間の結合機構に応じて、アニオン性、中性、疎水性、または親水性の部分に置き換えられてもよい。
【0101】
[00115]一部の実施形態では、生物製剤は極性もしくは親水性であるか、またはブロックコポリマーの極性もしくは親水性部分もしくは領域と結合する極性もしくは親水性領域を含む。
【0102】
[00116]一部の実施形態では、生物製剤は非極性もしくは疎水性であるか、またはブロックコポリマーの非極性もしくは疎水性部分もしくは領域と結合する非極性もしくは疎水性領域を含む。
【0103】
[00117]一部の実施形態では、生物製剤を細胞に送達するための方法は、ブロックコポリマーおよびブロックコポリマーに結合している生物製剤を含む自己組織化粒子を投与するステップを含む。一部の実施形態では、自己組織化粒子は非経口的に投与される。
【0104】
[00118]ポリマー送達系の他の用途には、これらに限定されないが、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)の形成;固形腫瘍または血液がんの治療;他の細胞/遺伝子ベースの治療、例えば、これらに限定されないが、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法、人工T細胞受容体(TCR)療法、ナチュラルキラー(NK)療法、眼細胞療法、神経細胞療法、皮膚細胞療法、ベータ細胞療法、多能性幹細胞療法、成体幹細胞療法、がん幹細胞療法、樹状細胞療法、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞療法、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞療法、γδT細胞療法、臍帯血(CB)細胞療法、造血幹細胞(HSC)療法、間葉系幹細胞(MSC)療法;プラスチックのバイオレメディエーション用酵素カプセル化;農業環境における肥料、成長促進剤、殺虫剤、または除草剤の放出制御;外部刺激に反応する物質の送達制御、例えば、特定のpH範囲に曝露するとナノ粒子が分解し、比色検出用のカプセル化された染料が放出されるか、または機械的応力もしくはせん断が加わるとナノ粒子が分解し、ゴムベルトもしくはタイヤの内部センシング用のペイロードが放出されるなど;あるいは経皮送達が含まれ得る。
【0105】
[00119]例えば、ポリマー送達系が固形腫瘍がん治療を提供する一部の実施形態では、ポリプレックスの荷電ポリマーはグルタミンを含む。一部の実施形態では、グルタミンは、重合ステップにおいてポリオールおよびポリカルボン酸への追加のモノマーとして荷電ポリマーの繰り返し単位内に組み込まれる。一部の実施形態では、グルタミンは、形成された、ポリオールおよびポリカルボン酸のポリエステルコポリマーを修飾するのに使用され、荷電ポリマーにペンダント荷電部分を提供する。
【0106】
[00120]一部の実施形態では、本明細書に記載のポリプレックスは、織物移植片(textile graft)または他の移植組織の1つまたは複数の表面にコーティングされ、移植組織の表面での血液凝固の誘導を助ける。例えば、織物移植片による動脈瘤修復では、縫合孔ビアから血液が漏れることが多く、これによって凝固形成の遅延および一過性の血栓症が引き起こされる。ポリプレックスのコーティングは、コーティングされた表面に血小板を引き寄せて血液凝固を引き起こすことにより、織物移植片表面の凝固を誘発し、これによって孔が塞がれ、移植片からの血液漏れが抑制される。
【実施例】
【0107】
[00121]本発明は、以下の実施例に関連してさらに説明されるが、これらは例示として示されており、限定するものではない。
【0108】
実施例1
[00122]ポリ(グリセロールセバケート)は、2016年6月7日に発行された米国特許第9,359,472号に記載の水媒介法で合成した。次いで、15gのポリ(グリセロールセバケート)を反応器に入れ、15gのジメチルアミノプロパン酸を添加した。次いで、この混合物を加熱し、窒素流下で120℃にて24時間維持した。得られた混合物を逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、カチオン性修飾ポリ(グリセロールセバケート)ポリマーの荷電ポリマーを得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の結果から、得られた荷電ポリマーの重量平均分子量は4500Da、多分散度指数(D)は3.0であることがわかった。動的光散乱(DLS)の結果から、平均粒径が78nmであり、ゼータ電位が+20mVであることがわかった。
【0109】
実施例2
[00123]ポリ((グリセロールセバケート
10%スクシネート
90%)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(100.0g)、セバシン酸(22.0g)、コハク酸(115.4g)、および水(25.4g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(26.0g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は4500Da(D4.8)であることがわかった。
図5Aは、ポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトール)のAPT
13C-NMRスペクトルを示すグラフである。
【0110】
[00124]15gのポリ((グリセロールセバケート
10%スクシネート
90%)-co-キシリトール)を、触媒としてp-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させ、ポリ((グリセロールセバケート
10%スクシネート
90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)を形成した。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は9800Da(D1.9)であることがわかった。
図5Bは、ポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)のAPT
13C-NMRスペクトルを示すグラフである。53ppmおよび42ppmのピーク(矢印)は、ジメチルアミノプロパン酸を添加した後の第三級アミンを表す。
【0111】
[00125]
図6は、ポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトール)(破線)およびポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)(実線)のFTIR-ATRスペクトルを示すグラフである。1586cm
-1の吸光度(矢印)は、ジメチルアミノプロパン酸を添加した後の第三級アミンを表す。その後の3400cm
-1での-OH吸光度の低下は、ポリオールモノマーの-OH基との反応をさらに示す。
【0112】
実施例3
[00126]実施例2のポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)をサイズ排除カラムに通し、低分散ポリマー(Mw4500D2)を得た。次いで、このポリマーをカルボニルジイミダゾールと反応させ、3時間撹拌した。次いで、1,1-ジメチルエチレンジアミンを添加し、12時間撹拌した。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は1546Da(D1.1)であることがわかった。
【0113】
実施例4
[00127]ポリ((PEG300)10%グリセロール90%スクシネート)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(71.7g)、ポリエチレングリコール300(25.9g)、コハク酸(175g)、および水(20.2g)を反応器に添加し、48時間機械的撹拌をしながら窒素流下で120℃に加熱した。次いでキシリトール(27.3g)を添加し、反応をさらに24時間行った。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は5300Da(D5.3)であることがわかった。
【0114】
[00128]15gのポリ((PEG300)10%グリセロール90%スクシネート)-co-キシリトール)(15g)を、触媒としてp-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は10,800Da(D1.20)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0115】
実施例5
[00129]ポリ((グリセロールスクシネート)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(100.0g)、コハク酸(128.0g)、および水(25.4g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて24時間維持した。次いで、キシリトール(22.8g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は2724Da(D3.6)であることがわかった。
【0116】
[00130]15gのポリ((グリセロールスクシネート)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は20,200Da(D1.52)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0117】
実施例6
[00131]ポリ(((PEG300)10%グリセロール90%グルタレート)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(94g)、ポリエチレングリコール300(34.1g)(PEG300)、グルタル酸(150g)、および水(26.6g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(30.5g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は8280Da(D8.6)であることがわかった。
【0118】
[00132]15gのポリ(((PEG300)10%グリセロール90%グルタレート)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は24,980Da(D1.50)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0119】
実施例7
[00133]ポリ(((TPEG1000)50%グリセロール50%スクシネート)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(19.49g)、トリメチロールプロパンエトキシレート1000(214.83g)(TPEG1000)、コハク酸(50.0g)、および水(9.9g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(29.4g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は4850Da(D4.1)であることがわかった。
【0120】
[00134]15gのポリ(((TPEG1000)50%グリセロール50%スクシネート)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は4,270Da(D-1.52)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0121】
実施例8
[00135]ポリ(((PEG600)25%グリセロール75%スクシネート)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(73.1g)、ポリエチレングリコール600(158.9g)(PEG600)、コハク酸(125.0g)、および水(24.8g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(38.18g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は3380Da(D3.4)であることがわかった。
【0122】
[00136]15gのポリ(((PEG600)25%グリセロール75%スクシネート)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は2900(D1.7)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0123】
実施例9
[00137]ポリ(((PEG600)10%グリセロール90%スクシネート)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(87.7g)、ポリエチレングリコール600(63.6g)、コハク酸(125.0g)、および水(24.8g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(30.11g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は4895Da(D4.8)であることがわかった。
【0124】
[00138]15gのポリ(((PEG600)10%グリセロール90%スクシネート)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は5210(D1.50)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0125】
実施例10
[00139]ポリ((グリセロールグルタレート)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(100.0g)、グルタル酸(143.0g)、および水(25.4g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(26.8g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は4986Da(D5.5)であることがわかった。
【0126】
[00140]15gのポリ((グリセロールグルタレート)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は25,100Da(D1.38)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0127】
実施例11
[00141]ポリ((グリセロールグルタレート50%スクシネート50%)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(100.0g)、グルタル酸(71.7g)、コハク酸(64.1g)、および水(25.4g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(26.0g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は5141Da(D5.5)であることがわかった。
【0128】
[00142]15gのポリ((グリセロールグルタレート50%スクシネート50%)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は7500Da(D1.58)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0129】
実施例12
[00143]ポリ((グリセロールアジペート)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(125.0g)、アジピン酸(198.0g)、および水(32.0g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(35.5g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は9842Da(D10.5)であることがわかった。
【0130】
[00144]15gのポリ((グリセロールアジペート)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。
【0131】
実施例13
[00145]ポリ((グリセロールアジペート50%スクシネート50%)-co-キシリトール)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(113.0g)、アジピン酸(90.0g)、コハク酸(73.0g)、および水(14.0g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。次いで、キシリトール(29.0g)を反応混合物に添加し、24時間撹拌した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は7037Da(D7.1)であることがわかった。
【0132】
[00146]15gのポリ((グリセロールアジペート50%スクシネート50%)-co-キシリトール)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は9500Da(D1.56)であることがわかった。FTIRは1586cm-1の吸光度を示し、ポリマーの機能化を示した。
【0133】
実施例14
[00147]ポリ((グリセロール50%キシリトール50%)スクシネート)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(19.5g)、キシリトール(32.2g)、コハク酸(50.0g)、および水(9.9g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて24時間維持した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は1219Da(D1.9)であることがわかった。
【0134】
[00148]15gのポリ((グリセロール50%キシリトール50%)スクシネート)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。
【0135】
実施例15
[00149]ポリ(グリセロールスクシネート)を、水媒介法を使用して合成した。グリセロール(100.0g)、コハク酸(128.0g)、および水(25.4g)を反応器に添加した。次いで、混合物を溶融し、窒素流および機械的撹拌の下で120℃の温度にて48時間維持した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は3,064Da(D3.2)であることがわかった。
【0136】
[00150]15gのポリ(グリセロールスクシネート)を、触媒として1%p-トルエンスルホン酸を含むジメチルアミノプロパン酸(15g)と、機械的に撹拌しながら溶融物中130℃で24時間反応させた。次いで、得られた混合物を透析チューブに入れ、4日間透析した後、凍結乾燥した。
【0137】
実施例16
[00151]ポリ(グリセロールN-メチルイミノジアセテート)を、マグネチックスターラーを備えた丸底フラスコにグリセロール(3g)を添加し、窒素流下で120℃に加熱することによって合成した。N-メチルイミノ二酢酸(4.8g)を、均質な混合物が観察されるまでゆっくりと添加した。次いで、反応物を120℃で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を脱イオン水に溶解し、透析した。GPCの結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は3,000Da(D1.6)であることがわかった。
【0138】
実施例17
[00152]実施例1のカチオン性修飾PGSの荷電ポリマーを、GFPレポーターを含有するmRNA(Dasher GFP mRNA、Aldevron、Fargo、ND)と、mRNAの荷電ポリマーに対する重量比が1:1、1:2、1:4、1:16で混合した。混合物をオービタルシェーカーで100rpmにて20分間振とうし、顕微鏡下で見た場合にナノメートルからマイクロメートルまでのサイズの範囲にあるポリプレックス粒子を形成した。
【0139】
実施例18
[00153]mRNA:荷電ポリマーの重量比が1:2である実施例17のポリプレックス粒子を細胞に導入し、1ウェルあたり7.38×104個の細胞の密度で播種されたヒト心臓線維芽細胞を含有する24ウェルプレートに、1ウェルあたり合計500ngのmRNAが存在するようにした。ポリプレックス粒子は細胞に組み込まれ、GFPレポーター蛍光検査により、21時間後に細胞が正常にトランスフェクトされたことが示された。トランスフェクトされた細胞は、蛍光顕微鏡および光学顕微鏡下で目視できた。
【0140】
実施例19
[00154]実施例2のポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)(PGSSuX 1-9D)を使用して、0.25μgのDasher mRNA(Aldevron)を含むポリプレックス粒子を調製し、ヒト心臓線維芽細胞でGFPレポーターを発現させた。100:1のPGSSuX 1-9D:mRNAの重量比で調製した10μLのポリプレックス粒子を、1ウェルあたり12,500個の細胞を含有する96ウェルマイクロプレートで培養した細胞に添加した。細胞のトランスフェクションは、Cellink CELLCYTE X(Cytena GmbH、Freiburg、Germany)生細胞イメージングシステムで96時間にわたって監視し、トランスフェクション中に1時間に1回細胞の画像を撮影した。トランスフェクションの3時間後に撮影された画像から、初期の時点ではトランスフェクションは見られなかったことが示された。トランスフェクションの5時間後に撮影された画像により、一部のトランスフェクションが成功したという目に見える証拠が示された。細胞の数の増加は、後の時点、例えばトランスフェクションの18時間後のmRNAのトランスフェクションによる蛍光を示した。
【0141】
実施例20
[00155]実施例2のポリ((グリセロールセバケート10%スクシネート90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)(PGSSuX 1-9D)を使用して、5757塩基対のサイズを有する12.6μgのgWiZ pDNA(Aldevron)を含むポリプレックス粒子を調製し、マウスNIH/3T3細胞(American Type Tissue Culture、Manassas、VA)でGFPレポーターを発現させた。140:1のPGSSuX 1-9D:pDNAの重量比で調製した10μLのポリプレックス粒子を、1ウェルあたり10,000個の細胞を含有する96ウェルマイクロプレートで培養した細胞に添加した。細胞のトランスフェクションは、Cellink CELLCYTE X(Cytena)生細胞イメージングシステムで96時間にわたって監視され、トランスフェクション中に1時間に1回細胞の画像を撮影した。PGSポリプレックス粒子を添加してから29時間後に、10%の細胞がトランスフェクトされた。
【0142】
実施例21
[00156]実施例2のポリ((グリセロールセバケート
10%スクシネート
90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)(PGSSuX 1-9D)を使用して、250ヌクレオチドポリ(A)テールを持つ755ヌクレオチドのサイズを有する20pgのDasher GFP mRNA(Aldevron)を含むポリプレックス粒子を調製し、細胞ごとに送達して初代ヒト心臓線維芽細胞(PromoCell、Heidelberg、Germany)でGFPレポーターを発現させた。100:1のPGSSuX 1-9D:mRNAの重量比で調製した、25mM酢酸ナトリウム中の10μLのポリプレックス粒子を、1ウェルあたり12,500個の細胞を含有する96ウェルマイクロプレートで培養した細胞に添加した。細胞のトランスフェクションは、Cellink CELLCYTE X生細胞イメージングシステムで120時間にわたって監視し、トランスフェクションを監視するために、明視野および緑色フィルターチャネルで1時間に1回細胞の画像を撮影した。
図7に示すように、PGSポリプレックス粒子を添加してから48時間後に、細胞はトランスフェクションのピークレベルを示した。
【0143】
実施例22
[00157]実施例2のポリ((グリセロールセバケート
10%スクシネート
90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)(PGSSuX 1-9D)を使用して、5757塩基対のサイズを有する140pgのgWiZ pDNA(Aldevron)を含むポリプレックス粒子を調製し、細胞ごとに送達してマウスNIH/3T3細胞(American Type Tissue Culture、Manassas、VA)でGFPレポーターを発現させた。100:3のPGSSuX 1-9D:pDNAの重量比で調製した、25mM酢酸ナトリウム中の10μLのポリプレックス粒子を、1ウェルあたり10,000個の細胞を含有する96ウェルマイクロプレートで培養した細胞に添加した。細胞のトランスフェクションは、Cellink CELLCYTE X生細胞イメージングシステムで96時間にわたって監視し、トランスフェクションを監視するために、明視野および緑色フィルターチャネルでトランスフェクション中に1時間に1回細胞の画像を撮影した。
図8に示すように、PGSポリプレックス粒子を添加してから48時間後に、細胞はトランスフェクションのピークレベルを示した。
【0144】
実施例23
[00158]実施例2のポリ((グリセロールセバケート
10%スクシネート
90%)-co-キシリトールジメチルアミノプロピルアミン)(PGSSuX 1-9D)を使用して、5757塩基対のサイズを有する60pgのgWiZ pDNA(Aldevron)を含むポリプレックス粒子を調製し、細胞ごとに送達してマウスNIH/3T3細胞(American Type Tissue Culture、Manassas、VA)でGFPレポーターを発現させた。50:2のPGSSuX 1-9D:pDNAの重量比で調製した、25mM酢酸ナトリウム中の10μLのポリプレックス粒子を、1ウェルあたり10,000個の細胞を含有する96ウェルマイクロプレートで培養した細胞に添加した。細胞のトランスフェクションは、Cellink CELLCYTE X生細胞イメージングシステムで96時間にわたって監視し、トランスフェクションを監視するために、明視野および緑色フィルターチャネルでトランスフェクション中に1時間に1回細胞の画像を撮影した。
図9に示すように、PGSポリプレックス粒子を添加してから48時間後に、細胞はトランスフェクションのピークレベルを示した。
【0145】
実施例24
[00159]実施例10のポリ((グリセロールグルタレート)-co-キシリトール)(PGGXD)を使用して、5757塩基対のサイズを有する10pgのgWiZ pDNA(Aldevron)を含むポリプレックス粒子を調製し、細胞ごとに送達してJurkat E6.1細胞株(American Type Tissue Culture、Manassas、VA)でGFPレポーターを発現させた。25:1のPGGXD:pDNAの重量比で調製した、25mM酢酸ナトリウム中の20μLのポリプレックス粒子を、1ウェルあたり250,000個の細胞を含有する96ウェルマイクロプレートで培養した細胞に添加した。細胞のトランスフェクションは、Cellink CELLCYTE X生細胞イメージングシステムで48時間にわたって監視し、トランスフェクションを監視するために、明視野および緑色フィルターチャネルでトランスフェクション中に3時間に1回細胞の画像を撮影した。
図10に示すように、PGSポリプレックス粒子を添加してから24時間後に、細胞はトランスフェクションのピークレベルを示した。
【0146】
実施例25
[00160]mRNA:荷電ポリマーの重量比が1:40の実施例17のポリプレックス粒子を、Zetasizer Ultra(Malvern Panalytical Ltd.、Malvern、UK)の光散乱システムでゼータ電位およびサイズについて特性評価した。結果を
図11および
図12に示す。ポリプレックス粒子は、荷電ポリマーとmRNAの複合体形成により、167.3nmの平均粒径を有し、多分散度は0.068で、ゼータ電位は-7.929mVとわずかに負であることがわかった。
【0147】
実施例26
[00161]pDNA:荷電ポリマーの重量比が1:50の実施例20のポリプレックス粒子を、Zetasizer Ultra(Malvern Panalytical Ltd.、Malvern、UK)の光散乱システムでゼータ電位およびサイズについて特性評価した。結果を
図13および
図14に示す。ポリプレックス粒子は、荷電ポリマーとpDNAの複合体形成により、135nmの平均粒径を有し、ゼータ電位は23.135mVとわずかに正であることがわかった。
【0148】
実施例27
[00162]等しいモル比のグリセロール(1.83g)およびコハク酸(2.34g)を50mLの丸底フラスコに添加し、マグネチックスターラーで撹拌しながら130℃に加熱した。混合物が均質になったら、グリセロールに対するモル比が1:1の乾燥リジン(2.9g)を丸底フラスコにゆっくりと添加した。リジンを添加すると、ガスが放出された。ガスの発生が終了してから、さらにリジンを添加した。すべてのリジンを添加した後、窒素流を適用し、反応を12時間続けた。GPCの結果から、得られたポリ(リジングリセロールスクシネート)ポリマーの重量平均分子量は、3430Da(D5.09)であることがわかった。
【0149】
実施例28
[00163]ジグリシジルセバケート(0.5g、0.159mmol)、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン(348μL、0.159mmol)、臭化トリブチルアンモニウム(8mg、0.025mmol)、およびジメチルホルムアミド(DMF)(1mL)を、マグネチックスターラーを備えた丸底フラスコに添加した。次いで、混合物を70℃に3時間加熱した。次いで、反応物を火から下ろし、室温に冷却すると、粘性のある液体が得られた。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の結果から、得られたポリマーの重量平均分子量は1700Da(D-1.8)であることがわかった。
【0150】
実施例29
[00164]実施例27のポリマー1μgに緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーターmRNA(Dasher GFP mRNA、Aldevron、Fargo、ND)500ngを混合したものからなるポリプレックス製剤を、1.0×105個の線維芽細胞を含有する24ウェルプレートに添加した。24時間後、細胞を蛍光顕微鏡で画像化し、トランスフェクトされた細胞を視覚化した。
【0151】
[00165]ポリプレックス粒子を、顕微鏡の明視野モードで画像化した。細胞を蛍光顕微鏡および光学顕微鏡で画像化し、蛍光により細胞が正常にトランスフェクトされたことが示された。
【0152】
[00166]上記のすべての参照文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
[00167]本発明は、1つまたは複数の例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が加えられ、その要素の代わりに等価物が用いられることが当業者に理解されるであろう。さらに、発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、多くの修正を加えることができる。したがって、本発明は、本発明を実行するために考えられる最良の方法として開示された特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことを意図している。さらに、詳細な説明で識別されているすべての数値は、正確な値およびおおよその値の両方が明示的に識別されているかのように解釈されるものとする。
【国際調査報告】