(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2受容体結合ドメイン抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20241106BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241106BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241106BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241106BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241106BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241106BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241106BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20241106BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20241106BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C07K16/10 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
G01N33/569 L
G01N33/531 A
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525061
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022079718
(87)【国際公開番号】W WO2023072904
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ゲルク,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヨッフム,ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】ユックニシュケ,ウテ
(72)【発明者】
【氏名】クルトカヤ,ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】シュレームル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュティーグラー,ザンドリーネ・カロリナ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメインに結合するモノクローナル抗体、前記抗体をコードする核酸、前記抗体を産生する宿主細胞、前記抗体を含む組成物及びキット、前記抗体を使用することを含む、試料中のSARS-CoV-2ウイルスを検出する方法、及びイムノアッセイにおいて前記抗体を使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に結合する(単離された)モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、
a)表面プラズモン共鳴によって決定される2.5E+06M
-1s
-1を超える会合速度定数(k
a)を有する、
及び/又は
b)表面プラズモン共鳴によって決定される5.0E-03s
-1未満の解離速度定数(k
d)を有する、
及び/又は
c)表面プラズモン共鳴によって決定される4分以上のt/
2dissの半減期時間を有する、
及び/又は
d)1:1若しくは1:2の化学量論を有する、
(単離された)モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
抗体が中和性である、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
a)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
請求項1又は2に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
a)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
請求項3に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
a)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
請求項1又は2に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
a)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
請求項5に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
a)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
請求項1又は2に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
a)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
請求項7に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
a)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
請求項1又は2に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
a)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
請求項9に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
少なくとも1つの、請求項1~10のいずれかに記載の抗体と、任意に、第2の異なる、請求項1~10のいずれかに記載の抗体と、任意に、第3の異なる、請求項1~10のいずれかに記載の抗体と、を含む、キット。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の抗体をコードする核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含む、及び/又は請求項1~10のいずれかに記載の抗体を産生する、宿主細胞。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の抗体を含む、組成物。
【請求項15】
in vitroイムノアッセイのための、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体、請求項11に記載のキット、又は請求項14に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に結合するモノクローナル抗体、前記抗体をコードする核酸、前記抗体を産生する宿主細胞、前記抗体を含む組成物及びキット、前記抗体を使用することを含む、試料中の前記SARS-CoV-2ウイルスを検出する方法、及びイムノアッセイにおいて前記抗体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
コロナウイルス(CoV)は、大型でエンベロープ型のポジティブセンス一本鎖RNAウイルスであり、それらの血清学的特性及び遺伝子型特性に基づいて、アルファウイルス、ベータウイルス、ガンマウイルス及びデルタコロノウイルスに更に細分することができる。2つのベータコロナウイルスSARS-CoV-1(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)及びMERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)は、過去10年間に2つの重症コロナウイルス流行を引き起こした(SARS 2002/2003、MERS 2012)。2019年12月に、コロナウイルス病2019(COVID-19)と呼ばれる新規の感染性呼吸器疾患のアウトブレイクが中国で発生し、2020年3月までに世界的なパンデミックとなった。2019年12月31日以降、2021年7月5日の時点で、3,995,429名の死亡が確認された184,677,763名の症例が世界中で報告されており、221の国又は地域が影響を受けている(出典:World Health Organization - https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019)。COVID-19は、新規のコロナウイルス、すなわち、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる。SARS-CoV-2は、下気道にも広く存在する受容体である宿主の細胞受容体ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)の結合によって気道に感染する。SARS-CoV-2の表面スパイク(S)糖タンパク質は、ACE2受容体とのこの相互作用を媒介し、膜融合を駆動し、したがって宿主細胞侵入を駆動する。スパイクタンパク質(S)は3量体タンパク質で、ワクチンやウイルス侵入阻害剤の主な標的である(Walls et al,2020)。
【0003】
COVID-19の一般的な症候には、発熱、咳、疲労、息切れ又は呼吸困難が含まれる。これらの症候は比較的非特異的であり、様々な他の疾患で見られ得る。ほとんどのCOVID-19患者は軽度の症状を有するが、一部の患者は肺炎、急性呼吸窮迫症候群、敗血症性ショック及び腎不全を発症する。
【0004】
COVID-19の負荷は、伝染病の負荷をはるかに超えており、ヘルスケアシステムを圧倒する恐れがある。緊急医療及び公衆衛生資源の慎重且つ効果的な分配を保証するために、疾病負荷が高い場所を特定することが重要である。COVID-19に関連する重度の転帰のリスクは、年齢、虚弱及び血管併存症と共に増加するようである。このシナリオは、入院、集中治療室への入院、及び再入院を増加させると考えられる。SARS-CoV-2は新規なウイルスであるため、診断から治療及びワクチン接種までの患者管理における経験が不足している。
【0005】
SARS-CoV-2感染症を検査する標準的な方法は、患者からの鼻咽頭及び中咽頭スワブ試料のリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT-PCR)である。しかしながら、分子検査はかなり時間がかかり、高価であり、COVID-19のパンデミックに対応するために必要な規模の検査を提供することはできない。PCRベースのSARS-CoV-2検査の需要は高く、パンデミックが続くため供給は依然として問題である。
【0006】
抗ヌクレオカプシド又は抗スパイク免疫アッセイのような抗体試験は、患者の免疫を評価するために実験室環境でのPCR試験に従った。抗原試験は、分子試験(PCR)と免疫試験(抗体試験)との間のギャップを埋める。
【0007】
迅速な抗原検査は、検査の高い需要に対応し、できるだけ早くSARS-CoV-2感染を可能にすることを目的として、ポイントオブケア設定で開発された。しかしながら、市場には、ハイスループット検査を可能とし、世界中でSARS-CoV-2検査能力が増加する、中央検査室設定のための抗原試験は存在しない。進行中のパンデミック及び感染患者の増加、したがって検査の需要を考慮すると、集中的な研究室セットアップでの費用効率が高く、且つハイスループットの抗原検査に対する高い需要がある。このような完全に自動化されたシステムは、分析器に応じて、単一の分析器から最大300個の試験/時間のスループットで、単一の試験(試料採取、輸送、調製のための時間を除外する)に対して18分で試験結果を提供することができる。実験室ベースの自動抗原アッセイは、手作業による操作を取り除き、並びに迅速なターンアラウンド時間及び高い試験スループットによるコスト及び誤差の低減を可能にする。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に結合する(単離された)モノクローナル抗体又はその抗原結合断片に関し、該モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、
a)表面プラズモン共鳴によって決定される2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する、
及び/又は
b)表面プラズモン共鳴によって決定される5.0E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する、
及び/又は
c)表面プラズモン共鳴によって決定される4分以上のt/2dissの半減期時間を有する、
及び/又は
d)1:1若しくは1:2の化学量論を有する。
【0009】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、抗体は中和性である。
【0010】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、抗体は阻害性である。
【0011】
第2の態様では、本発明は、単離された抗体又はその抗原結合断片に関し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号1、2、3、4、0 5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、単離された抗体又はその抗原結合断片に関し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0013】
第4の態様では、本発明は、単離された抗体又はその抗原結合断片に関し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0014】
第5の態様では、本発明は、単離された抗体又はその抗原結合断片に関し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明の第2、第3、第4及び第5の態様による抗体は中和抗体である。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明の第2、第3、第4及び第5の態様による抗体は阻害性抗体である。
【0017】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される少なくとも1つの抗体、及び任意で、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される第2の抗体、及び任意で、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される第3の抗体を含むキットに関する。
【0018】
第7の態様では、本発明は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される抗体をコードする核酸に関する。
【0019】
第8の態様では、本発明は、本発明の第7の態様について上述した核酸を含む宿主細胞、及び/又は本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体を産生する宿主細胞に関する。
【0020】
第9の態様では、本発明は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される少なくとも1つの抗体を含む組成物に関する。
【0021】
第10の態様では、本発明は、in vitroイムノアッセイのための、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様若しくは第5の態様の抗体、又は本発明の第6の態様のキット、又は本発明の第9の態様の組成物の使用に関する。
【0022】
第11の態様では、本発明は、患者から得られた試料中のSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出するための in vitro方法に関する。
【0023】
以下、本発明による実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】抗体/RBD(野生型)相互作用の例示的な速度論的シグネチャを用いた速度論的スクリーニング。(A)スクリーニング後に選択解除。(B)スクリーニング後に更に推奨。
【
図2】クローン1F12、4H10、7G5、及び14F10の速度定数。
【
図3】BSAの存在下、RBD濃度を0.2nMから13.3nMまで増加させたときの抗体とRBD(野生型)との相互作用。濃度13.3nM(黒)の複製をラングミュア1:1結合モデル、R
max グローバル、RI=0(灰色)によって重ね合わせた濃度系列を示す。
【
図4-1】インハウス野生型RBDと抗体対の複合体形成に関するエピトープビニング実験のための例示的なセンサーグラムオーバーレイ。灰色の矢印は、注入の開始(上)及び停止(下)を示す。1)一次抗体、2)ブロッキング混合物、3)インハウスRBD、4)再び一次抗体、5)二次抗体、6)再生。A)一次抗体としてクローン2C11、及び二次抗体として7G5(上のセンサーグラム)は、RBDと免疫複合体を形成する。下のセンサーグラムは、一次抗体及び二次抗体として2C11を用いた陰性対照を示す。陽性反応は、時間セクション5の陰性対照の実行において検出できない。B)ズーム-一次抗体としてクローン2C11、二次抗体としてクローン7G5(上のセンサーグラム)対陰性対照(i)2C11をそれぞれ二次抗体として緩衝液(ii)二次抗体の代わりに緩衝液、及びRBDの代わりに緩衝液、及び二次抗体として2C11(下のセンサーグラム)。陽性反応は、時間セクション5の両方の陰性対照の実行において検出できない。C)ズーム-一次抗体として7G5及び二次抗体として2C11(上のセンサーグラム)、RBDとサンドイッチ複合体を形成、一次抗体及び二次抗体としてそれぞれ陰性対照7G5、一次抗体及び二次抗体として7G5、及びRBDの代わりに緩衝液(下のセンサーグラム)。様々な実験からの情報を組み合わせて、21のエピトープ領域が同定された。
【
図4-2】インハウス野生型RBDと抗体対の複合体形成に関するエピトープビニング実験のための例示的なセンサーグラムオーバーレイ。灰色の矢印は、注入の開始(上)及び停止(下)を示す。1)一次抗体、2)ブロッキング混合物、3)インハウスRBD、4)再び一次抗体、5)二次抗体、6)再生。A)一次抗体としてクローン2C11、及び二次抗体として7G5(上のセンサーグラム)は、RBDと免疫複合体を形成する。下のセンサーグラムは、一次抗体及び二次抗体として2C11を用いた陰性対照を示す。陽性反応は、時間セクション5の陰性対照の実行において検出できない。B)ズーム-一次抗体としてクローン2C11、二次抗体としてクローン7G5(上のセンサーグラム)対陰性対照(i)2C11をそれぞれ二次抗体として緩衝液(ii)二次抗体の代わりに緩衝液、及びRBDの代わりに緩衝液、及び二次抗体として2C11(下のセンサーグラム)。陽性反応は、時間セクション5の両方の陰性対照の実行において検出できない。C)ズーム-一次抗体として7G5及び二次抗体として2C11(上のセンサーグラム)、RBDとサンドイッチ複合体を形成、一次抗体及び二次抗体としてそれぞれ陰性対照7G5、一次抗体及び二次抗体として7G5、及びRBDの代わりに緩衝液(下のセンサーグラム)。様々な実験からの情報を組み合わせて、21のエピトープ領域が同定された。
【
図5】エピトープビニングの決定:9x9抗体のモル比をマトリックスにまとめる。抗体4H10は、9つの試験抗体からなるエピトープビニングマトリックス中の代表的な抗体として示されている。ここでは、81の抗体対合の組み合わせを分析した。
【
図6】ACE-2 RBD接触面バインダーの同定。 2回の連続注入(1)1番目の野生型RBD及び(2)2番目のACE2が、表面に提示された抗RBD mAbクローン4H10、1F12、1H9及び2C11に提供される。(3)ACE-2の注入停止及び解離相。A)クローン4H10及び1F12で示された二元複合体解離相[2-3]では、ACE-2応答シグナルの増加も減少もない。これらのクローンは、ACE-2/RBD接触面内又はその近くで野生型RBDに結合し、ACE-2/RBDのドッキングを完全に回避する。B)ACE-2増加応答シグナル及び三元mAb/RBD/ACE-2複合体形成がクローン1H9及び2C11で示されている。これらのクローンは、ACE-2/RBD接触面から離れて野生型RBDに結合する。
【
図7】競合イムノアッセイによるElecsys(登録商標)プラットフォーム上の抗体によるACE2-RBD結合の妨害の評価。このデータはBIACORE(登録商標)のデータを裏付けるものである。
【
図8】SPRで得られた37℃におけるmAb 1F12と選択したRBD変異体との結合の速度論的プロファイル。漸増濃度のRBD変異体と抗体との相互作用、c=1.2-33.3nM、それぞれ3.7-33.3nMをラングミュア1:1結合モデルと重ね合わせたもの。
【
図9】親和性、会合速度定数k
a、及び複合体安定性(t
/2 diss)(SARS-CoV-2の異なる変異体(バリアント)に対するクローン1F12の結合)に関するRBD野生型と変異体の比較。
【
図10】相対的親和性、RBD野生型対変異体(SARS-CoV-2の異なる変異体(バリアント)に対するクローン1F12の結合)。
【
図11】相対的会合速度定数k
a RBD、及び複合体安定性(t
/2 diss)、野生型対変異体(SARS-CoV-2の異なる変異体(バリアント)に対するクローン1F12の結合)。
【
図12】クローン1F12の、SARS-CoV-2の野生型及び変異体(バリアント)に対する結合の速度定数。1行目は野生型の結果を示している。2行目は変異体SARS-CoV-2-RBD-N501Y;3行目は変異体SARS-CoV-2 RBD-E484K;4行目は変異体SARS-CoV-2 RBD-E484K N501Y;5行目は変異体SARS-CoV-2 RBD-Q-His8_L452R,E484Q;6行目は変異体SARS-CoV-2 RBD-Q-His8 L452R,N501Y;7行目は変異体SARS-CoV-2 RBD-Q-His8 E406W;8行目は変異体SARS-CoV-2 RBD-Q-His8 K417T,E484K,N501Y;9行目は変異体SARS-CoV-2 RBD-Q-His8 K417N,E484K,N501Y;10行目は変異体SARS-CoV-2 オミクロン;11行目は変異体SARS-CoV-2 BA2;12行目は変異体SARS-CoV-2 BA2.12.1;13行目は変異体SARS-CoV-2 BA2.11;14行目は変異体SARS-CoV-2 RBD Q L452R,T478K;15行目は変異体SARS-CoV-2 RBD Q L452Q F490S;16行目は変異体SARS-CoV-2 RBD Q R346K E484K N501Y;17行目は変異体SARS-CoV-2 RBD Q_BA5。
【発明を実施するための形態】
【0025】
配列表
配列番号1 抗体1F12:CDR-H1:NNYVMC
配列番号2 抗体1F12:CDR-H2:CINTGSGSTYYATWAKG
配列番号3 抗体1F12:CDR-H3:STTYYNYIGGNWIYVMDGFNL
配列番号4 抗体1F12:CDR-L1:QASENIYSSLA
配列番号5 抗体1F12:CDR-L2:DASDLAS
配列番号6 抗体1F12:CDR-L3:QQGYTVDNIDNT
配列番号7 抗体1F12:FR-H1:QSLEESGGDLVKPGASLTLTCTASGFSFS
配列番号8 抗体1F12:FR-H2:WVRQAPGKGLEWIG
配列番号9 抗体1F12:FR-H3:RFTISKISSTTVTLQMTSLTAADTATYFCAR
配列番号10 抗体1F12:FR-H4:WGPGTLVPVSS
配列番号11 抗体1F12:FR-L1:AQVLTQTPSSVSEPVGGTVTINC
配列番号12 抗体1F12:FR-L2:WYQQKPGQPPKLLIY
配列番号13 抗体1F12:FR-L3:GVPSRFSGSGSGTEYTLTISGVECDDAATYYC
配列番号14 抗体1F12:FR-L4:FGGGTEVVVK
配列番号15 抗体1F12:重鎖可変ドメイン:QSLEESGGDLVKPGASLTLTCTASGFSFSNNYVMCWVRQAPGKGLEWIGCINTGSGSTYYATWAKGRFTISKISSTTVTLQMTSLTAADTATYFCARSTTYYNYIGGNWIYVMDGFNLWGPGTLVPVSS
配列番号16 抗体1F12:重鎖可変ドメイン:AQVLTQTPSSVSEPVGGTVTINCQASENIYSSLAWYQQKPGQPPKLLIYDASDLASGVPSRFSGSGSGTEYTLTISGVECDDAATYYCQQGYTVDNIDNTFGGGTEVVVK
配列番号17 抗体4H10:CDR-H1:TYYFMC
配列番号18 抗体4H10:CDR-H2:CIATSSGSTWYANWVNG
配列番号19 抗体4H10:CDR-H3:WDVSYAGDGYGFNL
配列番号20 抗体4H10:CDR-L1:QASQSISNDLN
配列番号21 抗体4H10:CDR-L2:KASTLAS
配列番号22 抗体4H10:CDR-L3:QQGYSSSNVDNV
配列番号23 抗体4H10:FR-H1:QEQLVESGGGLVQPEGSLTLTCKGSGFDLS
配列番号24 抗体4H10:FR-H2:WVRQAPGKGLEWIG
配列番号25 抗体4H10:FR-H3:RFSISKTSSTTVTLQMTSLTAADTATYFCAR
配列番号26 抗体4H10:FR-H4:WGPGTLVTVSS
配列番号27 抗体4H10:FR-L1:YDMTQTPSSVSAAVGGTVTINC
配列番号28 抗体4H10:FR-L2:WYQQKPGQPPKLLTY
配列番号29 抗体4H10:FR-L3:GVPSRFKGSGSGTQFTLTISGIECADAATYYC
配列番号30 抗体4H10:FR-L4:FGGGTEVVVK
配列番号31 抗体4H10:重鎖可変ドメイン:QEQLVESGGGLVQPEGSLTLTCKGSGFDLSTYYFMCWVRQAPGKGLEWIGCIATSSGSTWYANWVNGRFSISKTSSTTVTLQMTSLTAADTATYFCARWDVSYAGDGYGFNLWGPGTLVTVSS
配列番号32 抗体4H10:重鎖可変ドメイン:YDMTQTPSSVSAAVGGTVTINCQASQSISNDLNWYQQKPGQPPKLLTYKASTLASGVPSRFKGSGSGTQFTLTISGIECADAATYYCQQGYSSSNVDNVFGGGTEVVVK
配列番号33 抗体7G5:CDR-H1:TYSMG
配列番号34 抗体7G5:CDR-H2:IINTGGGAYYASWAKG
配列番号35 抗体7G5:CDR-H3:ESLIYGGFHI
配列番号36 抗体7G5:CDR-L1:QASQSISNALA
配列番号37 抗体7G5:CDR-L2:GASNLAS
配列番号38 抗体7G5:CDR-L3:QSTYYGSSYVGGA
配列番号39 抗体7G5:FR-H1:QSVEESGGRLVTPGTPLTLTCTVSGIDLS
配列番号40 抗体7G5:FR-H2:WVRQAPGKGLEYIG
配列番号41 抗体7G5:FR-H3:RFTISRTSTTVDLKITSPTTEDTATYFCAR
配列番号42 抗体7G5:FR-H4:WGPGTLVTVSL
配列番号43 抗体7G5:FR-L1:DVVMTQTPASVSEPVGGTVTIKC
配列番号44 抗体7G5:FR-L2:WYQQKPGQRPNLLIY
配列番号45 抗体7G5:FR-L3:GVPSRFTGSRSGTEFTLTISDLECADAATYYC
配列番号46 抗体7G5:FR-L4:FGGGTEVVVK
配列番号47 抗体7G5:重鎖可変ドメイン:QSVEESGGRLVTPGTPLTLTCTVSGIDLSTYSMGWVRQAPGKGLEYIGIINTGGGAYYASWAKGRFTISRTSTTVDLKITSPTTEDTATYFCARESLIYGGFHIWGPGTLVTVSL
配列番号48 抗体7G5:重鎖可変ドメイン:DVVMTQTPASVSEPVGGTVTIKCQASQSISNALAWYQQKPGQRPNLLIYGASNLASGVPSRFTGSRSGTEFTLTISDLECADAATYYCQSTYYGSSYVGGAFGGGTEVVVK
配列番号49 抗体14F10:CDR-H1:SYYMI
配列番号50 抗体14F10:CDR-H2:FINTGGGAYYASWAKG
配列番号51 抗体14F10:CDR-H3:GGAPDVNDYGYDI
配列番号52 抗体14F10:CDR-L1:QASQNIVGRLA
配列番号53 抗体14F10:CDR-L2:GASTLAS
配列番号54 抗体14F10:CDR-L3:QSNYGADSTTYGVV
配列番号55 抗体14F10:FR-H1:QSVEESGGRLVKPDESLTLTCTASGFSLS
配列番号56 抗体14F10:FR-H2:WVRQAPGKGLECIG
配列番号57 抗体14F10:FR-H3:RFTISRTSTTVDLKMTSLTTEDTATYFCAR
配列番号58 抗体14F10:FR-H4:WGPGTLVTVSL
配列番号59 抗体14F10:FR-L1:DIVMTQTPASVSEPVGGTVTIKC
配列番号60 抗体14F10:FR-L2:WYQQKPGQPPKLLIY
配列番号61 抗体14F10:FR-L3:GVPSRFKGSGSGTQFTLTISDLECDDAATYYC
配列番号62 抗体14F10:FR-L4:FGGGTEVVVR
配列番号63 抗体14F10:重鎖可変ドメイン:QSVEESGGRLVKPDESLTLTCTASGFSLSSYYMIWVRQAPGKGLECIGFINTGGGAYYASWAKGRFTISRTSTTVDLKMTSLTTEDTATYFCARGGAPDVNDYGYDIWGPGTLVTVSL
配列番号64 抗体14F10:重鎖可変ドメイン:DIVMTQTPASVSEPVGGTVTIKCQASQNIVGRLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTLASGVPSRFKGSGSGTQFTLTISDLECDDAATYYCQSNYGADSTTYGVVFGGGTEVVVR
【0026】
発明の詳細な説明
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法、プロトコル、及び試薬に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0027】
いくつかの文献が本明細書中で引用されている。本明細書に引用されている各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、説明書等を含む)は、上記であろうと以下であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。このように組み込まれた参照の定義又は教示と、本明細書に引用された定義又は教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
【0028】
以下、本発明の各要素について説明する。これらの要素は特定の実施形態とともに列挙されているが、これらは任意の方法及び任意の数で組み合わせて追加の実施形態を作成することができることを理解されたい。様々な実施例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明した実施形態のみに限定するものと解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示された要素及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、且つ包含するものと理解されるべきである。更に、本出願に記載されている全ての要素の任意の順列及び組み合わせは、文脈が別段の意味を示さない限り、本出願の説明によって開示されていると考えるべきである。
【0029】
定義
「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」のような変形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程のグループの包含を意味するが、いかなる他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程のグループの除外を意味しないことが理解されよう。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0031】
濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では「範囲」の形式で表現又は提示され得る。このような範囲の形式は、便宜上及び簡潔にするために単に使用されているに過ぎないことが理解され、したがって、その範囲の境界として明示的に列挙されている数値を含むだけではなく、各数値及び部分範囲があたかも明示的に列挙されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲の全てを含むことを柔軟に解釈するべきである。例示として、「150mg~600mg」の数値範囲は、150mg~600mgの明示的に列挙された値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、150、160、170、180、190、・・・580、590、600mgなどの個々の値、及び150~200、150~250、250~300、350~600などの部分範囲が含まれる。これと同じ原則が、1つの数値のみを表す範囲にも適用される。更に、このような解釈は、その範囲の幅又は記載されている特性にかかわらず、適用すべきである。
【0032】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限値を有し、且つ示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0033】
疾患の「症候」は、そのような疾患を有する組織、器官又は生物によって顕著な疾患の暗示であり、以下に限定されないが、組織、器官又は個体の疼痛、脱力感、圧痛、緊張、硬直及び痙攣を含む。疾患の「兆候」又は「シグナル」には、以下に限定されないが、バイオマーカー若しくは分子マーカー等の特定のインジケータの有無、増加若しくは上昇、減少若しくは低下等の変化(change)若しくは変化(alteration)、又は症候の発症、存在若しくは悪化が含まれる。疼痛の症候には、以下に限定されないが、持続性又は様々な灼熱痛、拍動痛、かゆみ又は刺痛として感じられ得る不快な感覚が含まれる。
【0034】
「疾患」及び「障害」という用語は、本明細書では互換的に使用され、異常な症状、特に組織、器官又は個体がもはやその機能を効率的に果たすことができない病気又は損傷等の異常な医学的症状を指す。必ずしもそうとは限らないが、典型的には、疾患は、そのような疾患の存在を示す特定の症候又は兆候に関連する。したがって、そのような症候又は兆候の存在は、疾患に罹患している組織、器官又は個体を示し得る。これらの症候又は兆候の変化は、そのような疾患の進行を示し得る。疾患の進行は、典型的には、疾患の「悪化」又は「好転」を示し得る、そのような症候又は兆候の増加又は減少を特徴とする。疾患の「悪化」は、組織、器官又は生物がその機能を効率的に果たす能力の減少を特徴とするのに対して、疾患の「好転」は、典型的には、組織、器官又は個体がその機能を効率的に果たす能力の増加を特徴とする。疾患を「発症するリスク」にある組織、器官又は個体は、健康な状態にあるが、疾患が顕在化する可能性を示す。典型的には、疾患を発症するリスクは、そのような疾患の早期又は弱い兆候又は症候に関連する。そのような場合、疾患の発症は依然として処置によって予防され得る。疾患の例には、感染性疾患、外傷性疾患、炎症性疾患、皮膚症状、内分泌疾患、腸疾患、神経障害、関節疾患、遺伝性障害、自己免疫疾患、及び様々な種類の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
「コロナウイルス」という用語は、哺乳動物及び鳥類において疾患を引き起こす関連ウイルスの群を指す。ヒトでは、コロナウイルスは、軽度から致死的までの範囲であり得る気道感染症を引き起こす。軽度の病気には、風邪の一部の症例が含まれるが、より致死的な種類は、「SARS」、「MERS」、及び「COVID-19」を引き起こす可能性がある。コロナウイルスは、プラスセンスの一本鎖RNAゲノムを含有する。
【0036】
ウイルスエンベロープは、膜(M)、エンベロープ(E)及びスパイク(S)構造タンパク質が固定されている脂質二重層によって形成される。エンベロープの内部で、ヌクレオカプシド(N)タンパク質の複数のコピーがヌクレオカプシドを形成し、これは連続的なビーズ-オン-ストリング型の立体配座でプラスセンス一本鎖RNAゲノムに結合している。そのゲノムは、レプリカーゼ/転写酵素ポリタンパク質をコードするOrfs 1a及び1bと、その後に、スパイク(S)-エンベロープタンパク質、エンベロープ(E)-タンパク質、膜(M)-タンパク質及びヌクレオカプシド(N)-タンパク質をコードする配列とを含む。これらのリーディングフレームの間には、異なるウイルス株の間で異なるアクセサリータンパク質のリーディングフレームが散在している。
【0037】
いくつかのヒトコロナウイルスが知られており、そのうちの4つは患者においてかなり軽度の症候をもたらす:
ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)、α-CoV
ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、α-CoV
ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)、β-CoV
ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、β-CoV
HCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-HKU1、及びHCoV-OC43は、「風邪コロナウイルス」と呼ばれることが多い。
【0038】
3つのヒトコロナウイルスは、潜在的に重度の症候を生じる:
中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)、β-CoV
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、β-CoV
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、β-CoV
SARS-Cov-2は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)を引き起こす。この株は中国の武漢で最初に発見されたので、武漢ウイルスと呼ばれることもある。本出願の文脈において、この株は野生型株と呼ばれる。ウイルスの最初の発見以来、野生型株のいくつかの変異体が出現している。これらの変異株は当業者によく知られており、先行技術によく記載されている(例えば、https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/variants/variant-classifications.htmlを参照)。本出願の文脈において、SARS-CoV-2という用語は、野生型株並びに変異株(バリアントとしても知られる)を指す。SARS-Cov-2は、ヒトに対して非常に伝染性があり、世界保健機関(WHO)は、まだ進行中のCOVID-19のパンデミックを、国際的懸念の公衆衛生に関する緊急事態に指定している。現在知られている最も早い感染症例は、2019年11月17日に発見されたと考えられている。SARS-Cov-2配列は、2020年1月10日に最初に公表された(Wuhan-Hu-1、GenBankアクセション番号MN908947)。最初の武漢でのアウトブレイク後、このウイルスは中国の全ての省、並びにアジア、欧州、北米、南米、アフリカ及び太平洋の150を超える他の国に拡散した。症候としては、高熱、喉の痛み、乾性咳、及び消耗が挙げられる。重篤な場合、肺炎が発症することがある。
【0039】
「天然コロナウイルス」という用語は、自然界に存在するコロナウイルス、すなわち、野生型株と変異株(バリアント)の両方を含む、上記で開示した任意のコロナウイルスを指す。天然コロナウイルスは、天然に存在するウイルスに存在する全てのタンパク質及び核酸分子を含むことが理解される。天然コロナウイルスとは異なり、「ウイルス断片」、「ウイルス様粒子」、又はコロナ特異的抗原は、天然に存在するウイルスに存在する全てではないが一部のタンパク質及び核酸分子のみを含む。したがって、そのような「ウイルス断片」、「ウイルス様粒子」、又はコロナウイルス特異的抗原は、感染性ではないが、依然として患者において免疫応答を引き起こすことができる。したがって、コロナウイルス特異的ウイルス断片、コロナウイルス特異的ウイルス様粒子、又はコロナウイルス特異的抗原によるワクチン接種は、患者においてそれらのウイルス断片、ウイルス様粒子、又は抗原に対する抗体の産生を与える。
【0040】
「測定」、「測定する」、「検出する」又は「検出」、「決定/判定すること」又は「決定/判定」という用語は、定性的、半定量的又は定量的測定を含む。「存在を検出する」という用語は、定性的測定を指し、量についての記述なしに存在又は非存在を示す(例えば、イエス又はノーの記述)。「量を検出する」という用語は、絶対数が検出される定量的測定(ng)を指す。「濃度を検出する」という用語は、量が所与の体積に関して決定される定量的測定(例えばng/ml)を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「患者」は、本明細書に記載の判定又は診断から利益を得ることができる任意の哺乳動物、魚類、爬虫類又は鳥類を意味する。特に、「患者」は、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ又はゼブラフィッシュ)、家畜(例えば、モルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、ラクダ、ネコ、イヌ、タートル、カメ、ヘビ、トカゲ又は金魚を含む)、又はチンパンジー、ボノボ、ゴリラ及びヒトを含む霊長類からなる群から選択される。「患者」はヒトであることが特に好ましい。
【0042】
「試料」又は「目的の試料」という用語は、本明細書において互換的に使用され、組織、器官若しくは個体の部分又は片を指し、通常、組織、器官又は個体の全体を表すことが意図されているこのような組織、器官又は個体よりも小さい。分析に際して、試料は、組織の状態、又は器官若しくは個体の健康若しくは疾患状態に関する情報をもたらす。サンプルの例は、限定されるものではないが、鼻咽頭スワブ、中咽頭スワブ、血液、血清、血漿、滑液、尿、唾液、及びリンパ液等の流体試料、又は組織抽出物、軟骨、骨、滑膜、及び結合組織等の固形試料を含む。試料の分析は、視覚的又は化学的に達成され得る。視覚的分析には、試料の形態学的評価を可能にする組織、器官又は個体の顕微鏡イメージング又は放射線スキャニングが含まれるが、これらに限定されない。化学的分析には、特定のインジケータの有無、又はそれらの量若しくはレベルの変化の検出が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
「宿主細胞」という用語は、ベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)を保有する細胞を指す。そのような宿主細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)又は真核細胞(例えば真菌、植物又は動物細胞)のいずれかであり得る。宿主細胞には、単一細胞原核生物及び真核生物(例えば、細菌、酵母、及び放線菌)の両方、並びに細胞培養で増殖させた場合の高次植物又は動物由来の単一細胞が含まれる。
【0044】
「アミノ酸」という用語は、一般に、置換又は非置換アミノ基、置換又は非置換カルボキシ基、及びこれらの基のいずれかの1つ又は複数の側鎖又は基、又は類似体を含む任意のモノマー単位を指す。例示的な側鎖は、例えば、チオール、セレノ、スルホニル、アルキル、アリール、アシル、ケト、アジド、ヒドロキシル、ヒドラジン、シアノ、ハロ、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、ヘテロ環式、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、又はこれらの基の任意の組み合わせを含む。その他の代表的なアミノ酸は、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、金属結合アミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光性アミノ酸、金属含有アミノ酸、新規官能基を有するアミノ酸、その他の分子と共有結合的に又は非共有結合的に相互作用するアミノ酸、フォトケージド及び/又は光異性化可能なアミノ酸、放射性アミノ酸、ビオチン又はビオチン類似体を含むアミノ酸、グリコシル化アミノ酸、その他の炭水化物修飾アミノ酸、ポリエチレングリコール又はポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能な及び/又は光切断可能なアミノ酸、炭素結合糖含有アミノ酸、レドックス活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、並びに1つ又は複数の毒性部分を含むアミノ酸を含むがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、下記の20種の天然又は遺伝的にコードされたアルファ-アミノ酸:アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン(Gln又はQ)、グルタミン酸(Glu又はE)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リジン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、トレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Trp又はW)、チロシン(Tyr又はY)及びバリン(Val又はV)を含む。「X」残基が未定義である場合には、これらは「任意のアミノ酸」として定義されるべきである。これらの20個の天然アミノ酸の構造は、例えば、Stryer et al.,Biochemistry,5th ed.,Freeman and Company(2002)に示されている。セレノシステイン及びピロリシン等の更なるアミノ酸は遺伝的にコードされていてもよい(Stadtman(1996)“Selenocysteine,”Annu Rev Biochem.65:83-100及びIbba et al.(2002)“Genetic code:introducing pyrrolysine,”Curr Biol.12(13):R464-R466)。「アミノ酸]という用語は、非天然アミノ酸、修飾アミノ酸(例えば、修飾された側鎖及び/又は骨格を有する)、及びアミノ酸類似体も含む。例えば、Zhang et al.(2004)“Selective incorporation of 5-hydroxytryptophan into proteins in mammalian cells,”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101(24):8882-8887,Anderson et al.(2004)“An expanded genetic code with a functional quadruplet codon” Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101(20):7566-7571,Ikeda et al.(2003)“Synthesis of a novel histidine analogue and its efficient incorporation into a protein in vivo,” Protein Eng.Des.Sel.16(9):699-706,Chin et al.(2003)“An Expanded Eukaryotic Genetic Code,” Science 301(5635):964-967,James et al.(2001)“Kinetic characterization of ribonuclease S mutants containing photoisomerizable phenylazophenylalanine residues,” Protein Eng.Des.Sel.14(12):983-991,Kohrer et al.(2001)“Import of amber and ochre suppressor tRNAs into mammalian cells:A general approach to site-specific insertion of amino acid analogues into proteins,” Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98(25):14310-14315,Bacher et al.(2001)“Selection and Characterization of Escherichia coli Variants Capable of Growth on an Otherwise Toxic Tryptophan Analogue,” J.Bacteriol.183(18):5414-5425,Hamano-Takaku et al.(2000)“A Mutant Escherichia coli Tyrosyl-tRNA Synthetase Utilizes the Unnatural Amino Acid Azatyrosine More Efficiently than Tyrosine,” J.Biol.Chem.275(51):40324-40328、及びBudisa et al.(2001)“Proteins with {beta}-(thienopyrrolyl)alanines as alternative chromophores and pharmaceutically active amino acids,” Protein Sci.10(7):1281-1292を参照。アミノ酸は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に併合され得る。
【0045】
本発明との関連では、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸の短いポリマーを指す。これは、タンパク質と同じ化学(ペプチド)結合を有するが、一般に長さが短い。最短のペプチドは、単一のペプチド結合によって連結された2つのアミノ酸からなるジペプチドである。トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドなどもあり得る。典型的には、ペプチドは、最大4、6、8、10、12、15、18又は20アミノ酸の長さを有する。ペプチドは、環状ペプチドでない限り、アミノ末端及びカルボキシル末端を有する。
【0046】
本発明との関連では、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって共に結合したアミノ酸の一本鎖を指し、典型的には少なくとも約21個のアミノ酸、すなわち少なくとも21、22、23、24、25個等のアミノ酸を含む。ポリペプチドは、2本以上の鎖から構成されるタンパク質の1本の鎖であり得るか、又はタンパク質が1本の鎖から構成される場合はタンパク質自体であり得る。
【0047】
本発明の様々な態様に関連して、「タンパク質」という用語は、二次及び三次構造を再開する1つ又は複数のポリペプチドを含む分子を指し、更に四次構造を形成するいくつかのポリペプチド、すなわちいくつかのサブユニットで構成されるタンパク質を指す。タンパク質には、時折、非ペプチド基が結合しており、これは、補欠分子族又は補因子と呼ばれ得る。
【0048】
特に、「ペプチドバリアント」、「ポリペプチドバリアント」、「タンパク質バリアント」という用語は、例えば変異株(バリアント)の場合のように、アミノ酸配列の1つ又は複数の変化によってそれが由来するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と比較して異なるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質として理解される。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質バリアントが由来するペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、親ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質としても公知である。更に、本発明で使用可能なバリアントはまた、バリアントが親ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を示す限り、親ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のホモログ、オルソログ若しくはパラログに由来してもよく、又は人工的に構築されたバリアントに由来してもよい。アミノ酸配列の変化は、1つ又はいくつかの部位で起こり得るアミノ酸交換、挿入、欠失、N末端切断若しくはC末端切断、又はこれらの変化の任意の組み合わせであり得る。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質バリアントは、アミノ酸配列(すなわち、交換、挿入、欠失、N末端切断及び/又はC末端切断)において合計200個まで(最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200)の変化を示し得る。アミノ酸交換は、保存的及び/又は非保存的であり得る。或いは又は更に、本明細書で使用される場合、「バリアント」は、それが由来する親ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質とのある程度の配列同一性を特徴とし得る。より正確には、本発明との関連でペプチド、ポリペプチド又はタンパク質バリアントは、その親ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に対して少なくとも80%の配列同一性を示す。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質バリアントの配列同一性は、20、30、40、45、50、60、70、80、90、100又はそれ以上のアミノ酸の連続ストレッチにわたる。
【0049】
本発明による「置換」という用語は、アミノ酸を他のアミノ酸と置き換えることを指す。したがって、アミノ酸の総数は同じままである。特定の位置でのアミノ酸の欠失又は異なる位置での1つ(又は複数)のアミノ酸(複数可)の導入は、それぞれ、「置換」という用語に明示的に包含されるものではない。
【0050】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、あるアミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換される置換を指す。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。このような類似性には、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質における類似性を含む。一実施形態では、保存的アミノ酸置換は、(i)アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン及びメチオニンを含む非極性(疎水性)アミノ酸;(ii)グリシン、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン及びグルタミンを含む極性中性アミノ酸;(iii)アルギニン、リジン及びヒスチジンを含む正に帯電した(塩基性)アミノ酸;並びに(iv)アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む負に帯電した(酸性)アミノ酸の群のうちの1つに含まれるような別のアミノ酸に対する1つのアミノ酸の置換である。
【0051】
「特異的結合剤」という用語は、標的に特異的に結合する天然又は非天然分子を指す。特異的結合剤の例としては、タンパク質、ペプチド及び核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「抗原(Ag)」という用語は、抗原特異的抗体(Ab)又はB細胞抗原受容体(BCR)によって結合される分子又は分子構造である。体内の抗原の存在は、通常、免疫応答を誘発する。体内では、各抗体は、免疫系の細胞がそれと接触した後に抗原に適合するように特異的に産生され、これにより、抗原の正確な同定又はマッチング及び個別化された応答の開始が可能になる。ほとんどの場合、抗体は1つの特異的抗原にのみ反応して結合することができる。しかしながら、いくつかの例では、抗体は交差反応し、1つを超える抗原に結合し得る。抗原は、通常、タンパク質、ペプチド(アミノ酸鎖)及び多糖(単糖/単一の糖の鎖)又はそれらの組み合わせである。
【0053】
「結合優先性」又は「結合優先性」という用語は、そうでなければ同等の条件下で、2つの代替的な抗原又は標的のうちの1つが他のものよりも良好に結合することを示す。
【0054】
典型的には、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、膜貫通領域を欠き、したがって血流及び体腔に放出され得る分泌型免疫グロブリンを指す。存在する重鎖の種類は、抗体のクラス(すなわち、これらの鎖は、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM抗体にそれぞれ見られる)を定義し、それぞれ異なる役割を果たし、異なる種類の抗原に対する適切な免疫応答を指示する。異なる重鎖は、サイズ及び組成が異なり、約450個のアミノ酸を含み得る(Janeway et al.(2001)Immunobiology,Garland Science)。IgAは、消化管、気道及び尿生殖路等の粘膜領域、並びに唾液、涙及び母乳中に見出され、病原体によるコロニー形成を妨げる(Underdown&Schiff(1986)Annu.Rev.Immunol.4:389~417)。IgDは主に、抗原に曝露されていないB細胞の抗原受容体として機能し、好塩基球及び肥満細胞を活性化して抗微生物因子を産生することに関与している(Geisberger et al.(2006)Immunology 118:429-437;Chen et al.(2009)Nat.Immunol.10:889-898)。IgEは、肥満細胞及び好塩基球からのヒスタミン放出を引き起こすアレルゲンへの結合を介してアレルギー反応に関与する。IgEは、寄生虫からの保護にも関与する(Pier et al.(2004)Immunology,Infection,and Immunity,ASM Press)。IgGは、侵入病原体に対する抗体ベースの免疫の大部分を提供し、胎盤を通過して胎児に受動免疫を与え得る唯一の抗体アイソタイプである(Pier et al.(2004)Immunology,Infection,and Immunity,ASM Press)。ヒトでは4つの異なるIgGサブクラス(IgGl、2、3、及び4)があり、血清中の存在量の順に命名され、IgGlが最も多く(約66%)、IgG2(約23%)、IgG3(約7%)、及びIgG(約4%)がこれに続く。異なるIgGクラスの生物学的プロファイルは、それぞれのヒンジ領域の構造によって決定される。IgMは、単量体形態、及び非常に高いアビディティーを有する分泌型五量体形態でB細胞の表面に発現される。IgMは、十分なIgGが産生される前のB細胞媒介(体液性)免疫の初期段階で病原体を排除することに関与する(Geisberger et al.(2006)Immunology 118:429-437)。抗体は、単量体として見出されるだけでなく、2つのIgユニットの二量体(例えばIgA)、4つのIgユニットの四量体(例えば、硬骨魚のIgM)、又は5つのIgユニットの五量体(例えば哺乳動物IgM)を形成することもよく知られている。抗体は、典型的には、ジスルフィド結合を介して連結される、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を含む4つのポリペプチド鎖から作製され、「Y」形状の巨大分子に類似する。鎖の各々は、いくつかの免疫グロブリンドメインを含み、そのうちのいくつかは定常ドメインであり、他のものは可変ドメインである。免疫グロブリンドメインは、2つの~シート状に配置された7から9本の逆平行~鎖の2層サンドイッチからなる。典型的には、抗体の重鎖は4つのIgドメインからなり、そのうちの3つは定数ドメイン(CHドメイン:CHI.CH2.CH3)、そのうちの1つは可変ドメイン(VH)である。軽鎖は、典型的には、1つの定常Igドメイン(CL)及び1つの可変Igドメイン(VL)を含む。例示すると、ヒトIgG重鎖は、N末端からC末端にVwCH1-CH2-CH3の順序(VwCyl-Cy2-Cy3とも称される)で連結された4つのIgドメインで構成されており、一方、ヒトIgG軽鎖は、N末端からC末端にVL-CLの順序で連結された2つの免疫グロブリンドメインで構成されており、カッパ型又はラムダ型のいずれか(VK-CK又はVA-CA)である。例示すると、ヒトIgGの定常鎖は447個のアミノ酸を含む。本明細書及び特許請求の範囲を通して、免疫グロブリンのアミノ酸位置のナンバリングは、Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesman,K.S.,and Foeller,C.,(1991)Sequences of proteins of immunological interest,5th ed.U.S.Department of Health and Human Service,National Institutes of Health,Bethesda,MDにおけるような「EUインデックス」のものである。「KabatにおけるようなEUインデックス」とは、ヒトIgG lEU抗体の残基ナンバリングを指す。したがって、IgGの文脈におけるCHドメインは以下の通りである:「CH1」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置118~220位を指し;「CH2」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置237~340位を指し;「CH3」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置341~447位を指す。
【0055】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0056】
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab断片」(「Fab部分」又は「Fab領域」とも称される)と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc断片」(「Fc部分」又は「Fc領域」とも称される)と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片が産生される。ヒトIgG Fe領域の結晶構造は決定されている(Deisenhofer(1981)Biochemistry 20:2361-2370)。IgG、IgA及びIgDアイソタイプでは、Fe領域は、抗体の2つの重鎖のCH2及びCH3ドメインに由来する2つの同一のタンパク質断片から構成され、IgM及びIgEアイソタイプでは、Fe領域は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CH2~4)を含む。更に、より小さい免疫グロブリン分子が天然に存在するか、又は人工的に構築されている。「Fab’断片」という用語は、Ig分子のヒンジ領域を追加で含むFab断片を指し、一方で「F(ab’)2断片」は、化学的に連結されているか又はジスルフィド結合を介して結合されている2つのFab’断片を含むと理解される。「単一ドメイン抗体(sdAb)」、(Desmyter et al.(1996)Nat.Structure Biol.3:803-811))及び「ナノボディ」は単一のVHドメインのみを含むが、「一本鎖Fv(scFv)」断片は、短いリンカーペプチドを介して軽鎖可変ドメインに連結された重鎖可変ドメインを含む(Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,5879-5883)。二価の一本鎖可変断片(di-scFv)は、2つのscFv(scFvA-scFvB)を連結することによって操作することができる。これは、2つのVH領域及び2つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を生成することによって行われ得、「タンデムscFv」(VHA-VLA-VHB-VLB)を得る。別の可能性は、2つの可変領域が一緒に折り畳まれるには短すぎるリンカーを有するscFvの作製であり、scFvを強制的に二量体化させる。通常、5残基の長さを有するリンカーが、これらの二量体を生成するために使用される。このタイプは、「ダイアボディ」として知られている。VHドメインとVLドメインとの間の更に短いリンカー(1個又は2個のアミノ酸)は、単一特異性三量体、いわゆる「トリアボディ」又は「トリボディ」の形成をもたらす。二重特異性ダイアボディは、それぞれ配列VHA-VLB及びVHB-VLA又はVLA-VHB及びVLB-VHAを有する鎖に発現させることによって形成される。一本鎖ダイアボディ(scDb)は、12~20個のアミノ酸、好ましくは14個のアミノ酸のリンカーペプチド(P)によって連結されたVHA-VLB及びVHB-VLA断片(VHA-VLB-P-VHB-VLA)を含む。「二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)」は、異なる抗体の2つのscFvからなる融合タンパク質であり、scFvの一方はCD3受容体を介してT細胞に結合し、他方は腫瘍特異的分子を介して腫瘍細胞に結合する(Kufer et al.(2004)Trends Biotechnol.22:238-244)。二重親和性再標的化分子(「DART」分子)は、C末端ジスルフィド架橋によって更に安定化されたダイアボディである。
【0057】
したがって、「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の、好ましくはその抗原結合領域を含む部分を指す。抗体断片には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片;ダイアボディ;sdAb、ナノボディ、scFv、di-scFv、タンデムscFv、トリアボディ、ダイアボディ、scDb、BiTE、及びDARTが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0059】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、且つ各特定の抗体の特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方の超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、且ついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大部分が採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクター機能を呈する。
【0060】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの1つに割り当て得る。
【0061】
本明細書の目的で、「ネイキッド抗体」は、任意の付加部分、例えば細胞傷害性部分又は標識(例えば、放射性標識)にコンジュゲートしていない抗体である。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」という用語は、配列が超可変性であり、及び/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)及びVLに3つ(L1、L2、L3)、計6つのHVRを含む。天然抗体では、H3及びL3が、6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000);Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる、天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の非存在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993)及びSheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含されている。Kabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列可変性に基づいており、最も一般的に使用される(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、KabatのCDRとChothiaの構造的ループとの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々に由来する残基が、以下に示される。
【0063】
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B (Kabatナンバリング)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35 (Chothiaナンバリング)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24~36又は24~34(L1)、46~56又は50~56(L2)、及び89~97又は89~96(L3)、並びにVHにおいて、26~35(H1)、50~65又は49~65(H2)、及び93~102、94~102、又は95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの拡張HVRの定義の各々について、上記のKabatらに従ってナンバリングされる。
【0064】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0065】
軽鎖可変ドメイン/配列は、式Iに表されるフレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)からなる:
FR-L1 - CDR-L1 - FR-L2 - CDR-L2 - FR-L3 - CDR-L3 - FR-L4
重鎖可変ドメイン/配列は、式IIに表されるFR及びCDRからなる:
FR-H1 - CDR-H1 - FR-H2 - CDR-H2 - FR-H3 - CDR-H3 - FR-H4
【0066】
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatにおけるようなアミノ酸位置ナンバリング」という表現及びその変形は、上記のKabatらの抗体の編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用すると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮又はそれへの挿入に対応するより少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従って残基52a)を、そして重鎖FR残基82後に挿入された残基(例えば、Kabatに従って残基82a、82b、及び82c等)を含んでもよい。「KabatにおけるようなEUインデックス」とは、ヒトIgG lEU抗体の残基ナンバリングを指す。したがって、IgGの文脈におけるCHドメインは以下の通りである:「CH1」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置118~220位を指し;「CH2」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置237~340位を指し;「CH3」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置341~447位を指す。
【0067】
「結合親和性」という用語は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、平衡解離定数(KD)により表すことができる。この定数は、「オン速度」又は「会合速度定数」(ka)と「オフ速度」又は「解離速度定数」(kd)との比でもある。2つの抗体は同じ親和性を有し得るが、一方は高いオン速度定数及びオフ速度定数の両方を有し得、他方は低いオン速度定数及びオフ速度定数の両方を有し得る。会合速度定数ka[M-1 s-1]は抗体/抗原複合体の複合体形成速度を定義するが、解離速度定数[s-1]は抗体/抗原複合体安定性を1秒あたりの減衰として定義する。式t/2 diss=ln(2)/(kd*60)に従って再計算すると、分単位の抗体/抗原複合体半減期は記述パラメータを表す。
【0068】
親和性は、限定されないが、表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(例えば、PCT出願公開WO2005/012359号に記載されているようなBIAcoreアッセイ);酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);及び競合アッセイ(例えば、RIA)を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定し得る。低親和性抗体は、一般に、抗原とゆっくり結合し、容易に解離する傾向にあるが、高親和性抗体は、一般に、抗原と迅速に結合し、より長く結合したままの傾向にある。結合親和性の種々の測定方法が当技術分野で公知であり、これらのいずれも、本発明の目的に対して使用することができる。結合親和性を測定するための特定の例証的及び例示的な実施形態を以下に記載する。
【0069】
ka値及びkd値は、当技術分野で周知の方法を使用して、例えば、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000機器(BIAcore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを25℃で、約10応答単位(RU)の固定化抗原CM5チップを用いて測定することができる。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIAcore Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化させる。抗原を、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/ml(~0.2μM)に希釈してから、5μl/分の流速で注入し、結合タンパク質の十分な高密度を達成する。抗原の注入後、未反応群を遮断するために、1Mのエタノールアミンを注入する。速度論的測定については、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、0.05%TWEEN20(登録商標)界面活性剤を含むPBS(PBST)に、25℃で、およそ25μL/分の流速で注入する。会合速度(ka)及び解離速度(kd)は、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合及び解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数(KD)は、kd/ka比として計算される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加又は減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定し得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、固有の親細胞のクローンである同一の免疫細胞によって作製され、したがって全て所与の標的分子の同一のエピトープに対して反応性である単一特異性抗体を指す。対照的に、「ポリクローナル抗体」は、いくつかの異なる免疫細胞から作製され、したがって所与の標的分子の異なるエピトープを標的とする。したがって、モノクローナル抗体は一価親和性を有し、すなわち、それらは同じエピトープに結合するが、ポリクローナル抗体は同じ標的のいくつかの異なるエピトープに結合する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的には他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。
【0071】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないと解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、限定されないが、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,PNAS USA 101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods284(1-2):119-132(2004)を参照されたい)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全てを有するヒト又はヒト様抗体を動物で産生するための技術(例えば、国際公開第1998/24893号、国際公開第1996/34096号、国際公開第1996/33735号、国際公開第1991/10741号、Jakobovits et al.,PNAS USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994)、Morrison,Nature 368:812-813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、並びにLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995))を含む様々な技法によって作製され得る。
【0072】
抗体は、例えば「タグ」又は「標識」等の「エフェクター基」を更に含み得る。「タグ」という用語は、抗体が他の分子に結合する能力又は他の分子に結合される能力を提供するエフェクター基を指す。タグの例としては、限定されないが、例えば精製を可能にするために抗原配列に結合したHisタグが挙げられる。タグはまた、抗原が結合対の第2のパートナーによって結合されることを可能にするバイオアフィン結合対のパートナーを含み得る。「バイオアフィン結合対」という用語は、互いに結合する強い親和性を有する2つのパートナー分子(すなわち、1対中の2つのパートナー)を指す。バイオアフィン結合対のパートナーの例は、a)ビオチン又はビオチン類似体/アビジン又はストレプトアビジン;b)ハプテン/抗ハプテン抗体又は抗体断片(例えばジゴキシン/抗ジゴキシン抗体);c)糖類/レクチン;d)相補的オリゴヌクレオチド配列(例えば相補的LNA配列)、及び一般にe)リガンド/受容体である。
【0073】
「標識」という用語は、抗原の検出を可能にするエフェクター基を指す。標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的又は化学的標識が含まれるが、これらに限定されない。例示される適切な標識には、蛍光色素、発光又は電気化学発光錯体(例えば、ルテニウム又はイリジウム錯体)、高電子密度試薬、及び酵素標識が含まれる。
【0074】
「サンドイッチイムノアッセイ」は、目的の分析物の検出に広く使用されている。そのようなアッセイでは、分析物は、第1の抗体と第2の抗体との間に「サンドイッチされる」。典型的には、サンドイッチアッセイは、捕捉及び検出抗体が目的の分析物上の重複しない異なるエピトープに結合することを必要とする。適切な手段によって、そのようなサンドイッチ複合体が測定され、それにより分析物が定量される。典型的なサンドイッチ型アッセイでは、固相に結合した、又は固相に結合することができる第1の抗体、及び検出可能に標識された第2の抗体は各々、重複しない異なるエピトープで分析物に結合する。第1の分析物に特異的な結合剤(例えば、抗体)は、固体表面に共有結合しているか又は受動結合している(passively bound)かのいずれかである。固体表面は、典型的にはガラス又はポリマーであり、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンである。固体支持体は、粒子、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、又はイムノアッセイの実施に好適な任意の他の表面であっても良い。結合プロセスは、当技術分野でよく知られており、一般に、架橋共有結合、又は物理的吸着からなり、ポリマー-抗体複合体は、試験試料の調製において洗浄される。次いで、試験される試料のアリコートを固相複合体に添加し、第1の抗体又は捕捉抗体と対応する抗原との間の結合を可能にするのに十分な期間(例えば、2~40分又はより好都合であれば一晩)及び適切な条件下(例えば、室温~40℃、例えば25℃~37℃(両端を含む))でインキュベートする。インキュベーション期間に続いて、第1の抗体又は捕捉抗体、及び抗体に結合した抗原を含む固相を洗浄し、抗原上の別のエピトープに結合する二次抗体又は標識抗体と共にインキュベートすることができる。第2の抗体を、第1の抗体と目的の抗原との複合体に対する第2の抗体の結合を示すために使用するレポーター分子に結合させる。
【0075】
非常に用途の広い代替サンドイッチアッセイ形式には、結合対の第1のパートナーでコーティングされた固相、例えば、常磁性ストレプトアビジンでコーティングした微粒子の使用が含まれる。このような微粒子を、結合対の第2のパートナー(例えば、ビオチン化抗体)に結合した分析物に特異的な結合剤、結合対の当該第2のパートナーが当該分析物に特異的な結合剤に結合している分析物を含むと疑われる又は含んでいる試料、及び検出可能に標識された第2の分析物に特異的な結合剤と混合及びインキュベートする。当業者には明らかなように、これらの成分は、適切な条件下で、分析物、結合対の第2のパートナー(に結合した)分析物に特異的な結合剤、及び結合対の第1のパートナーを介して標識抗体を固相微粒子に結合させるのに十分な期間インキュベートされる。適宜、このようなアッセイは、1つ又は複数の洗浄工程を含んでもよい。
【0076】
「検出可能に標識した」という用語は、直接的又は間接的に検出することができる標識を包含する。直接的に検出可能な標識が、検出可能なシグナルを提供するか、又は標識が、第2の標識と相互作用するかのいずれかをして、第1又は第2の標識によってもたらされる検出可能なシグナルを改変して、例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を与える。蛍光色素及び発光色素(化学発光及び電気化学発光を含む)などの標識(Briggs et al “Synthesis of Functionalised Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids,”J.Chem.Soc.,Perkin-Trans.1(1997)1051-1058)は、検出可能なシグナルを提供し、一般に標識に適用できる。一実施形態では、検出可能に標識されたとは、検出可能なシグナル、すなわち蛍光標識、発光標識(例えば、化学発光標識又は電気化学発光標識)、放射性標識又は金属キレート系標識をそれぞれ提供するか又は提供するように誘導可能な標識を指す。
【0077】
多数の標識(色素とも称する)が利用可能であり、これらは概して、以下の区分に分類することができ、区分は全てまとまっており、及びその各々が本開示による実施形態を表している。
(a)蛍光色素
蛍光色素は、例えば、Briggsら「Synthesis of Functionalized Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids」、J.Chem.Soc.、Perkin-Trans.1(1997)1051-1058)によって記載されている。
【0078】
蛍光標識又は蛍光体には、希土類キレート(ユーロピウムキレート)、フルオレセイン型標識(FITC、5-カルボキシフルオロセイン、6-カルボキシフルオロセインを含む)、ローダミン型標識(TAMRAを含む)、ダンシル、リサミン、シアニン、フィコエリトリン、テキサスレッド、及びこれらの類似体が含まれる。蛍光標識は、本明細書に開示される技術を使用して、標的分子内に含まれるアルデヒド基に結合させることができる。蛍光色素及び蛍光標識試薬には、Invitrogen/Molecular Probes(Eugene,Oregon,USA)及びPierce Biotechnology,Inc.(Rockford,Ill.)から市販されるものが含まれる。
【0079】
(b)発光色素
発光色素又は標識は、化学発光色素及び電気化学発光色素に更に下位分類することができる。
【0080】
化学発光標識の異なるクラスには、ルミノール、アクリジニウム化合物、セレンテラジン及び類似体、ジオキセタン、ペルオキシシュウ酸及びペルオキシシュウ酸誘導体に基づく系が含まれる。免疫診断手順のためには、主にアクリジニウム系標識が使用される(詳細な概要は、Dodeigne C.ら,Talanta 51(2000)415-439において示されている)。
【0081】
電気化学発光標識として使用される主な関連性のある標識は、それぞれルテニウム及びイリジウム系の電気化学発光錯体である。電気化学発光(ECL)は、高感度で選択的な方法として分析用途に非常に有用であることが証明された。ECLは、化学発光分析の分析上の利点(背景光シグナルの非存在)を、電極電位を適用することによる反応制御の容易さと組み合わせている。概して、ルテニウム錯体、特に液相又は液固界面においてTPA(トリプロピルアミン)を用いて再生する[Ru(Bpy)3]2+(約620nmで光子を放出)がECL標識として使用される。
【0082】
電気化学発光(ECL)アッセイは、目的の分析物の存在及び濃度の高感度且つ正確な測定を提供する。このような技法は、適切な化学的環境において電気化学的に酸化又は還元したときに発光するように誘導することができる標識又は他の反応物を使用する。このような電気化学発光は、特定の時間に特定の様式で作用電極に印加される電圧によって引き起こされる。標識によって生成された光は、測定され、分析物の存在又は量を示す。このようなECL技法のより完全な説明については、米国特許第5,221,605号、米国特許第5,591,581号、米国特許第5,597,910号、PCT出願公開WO90/05296、PCT出願公開WO92/14139、PCT出願公開WO90/05301、PCT出願公開WO96/24690、PCT出願公開US95/03190、PCT出願US97/16942、PCT出願公開US96/06763、PCT出願公開WO95/08644、PCT出願公開WO96/06946、PCT出願公開WO96/33411、PCT出願公開WO87/06706、PCT出願公開WO96/39534、PCT出願公開WO96/41175、PCT出願公開WO96/40978、PCT/US97/03653及び米国特許出願08/437,348(米国特許第5,679,519号)が参照される。また、Knightら(Analyst、1994、119:879-890)によるECLの分析用途に関する1994年の総説及び総説に引用されている参考文献も参照される。一実施形態では、本明細書による方法は、電気化学発光標識を使用して実施される。
【0083】
近年、イリジウム系ECL標識も記載されている(国際公開第2012107419号)。
【0084】
(c)放射性標識は、放射性同位体(放射性核種)、例えば、3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Gn、86Y、89Zr、99TC、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211At、又は131Biを採用する。
【0085】
(d)イメージング及び治療目的のための標識として適切な金属キレート錯体は当技術分野でよく知られている(米国特許出願公開第2010/0111861、米国特許第5,342,606号、米国特許第5,428,155号、米国特許第5,316,757号、米国特許第5,480,990号、米国特許第5,462,725号、米国特許第5,428,139号、米国特許第5,385,893号、米国特許第5,739,294号、米国特許第5,750,660号、米国特許第5,834,461号、Hnatowich et al,J.Immunol.Methods 65(1983)147-157、Meares et al,Anal.Biochem.142(1984)68-78、Mirzadeh et al,Bioconjugate Chem.1(1990)59-65、Meares et al,J.Cancer(1990),Suppl.10:21-26、Izard et al,Bioconjugate Chem.3(1992)346-350、Nikula et al,Nucl.Med.Biol.22(1995)387-90、Camera et al,Nucl.Med.Biol.20(1993)955-62、Kukis et al,J.Nucl.Med.39(1998)2105-2110、Verel et al.,J.Nucl.Med.44(2003)1663-1670、Camera et al,J.Nucl.Med.21(1994)640-646、Ruegg et al,Cancer Res.50(1990)4221-4226、Verel et al,J.Nucl.Med.44(2003)1663-1670、Lee et al,Cancer Res.61(2001)4474-4482、Mitchell,et al,J.Nucl.Med.44(2003)1105-1112、Kobayashi et al Bioconjugate Chem.10(1999)103-111、Miederer et al,J.Nucl.Med.45(2004)129-137、DeNardo et al,Clinical Cancer Research 4(1998)2483-90、Blend et al,Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 18(2003)355-363、Nikula et al J.Nucl.Med.40(1999)166-76、Kobayashi et al,J.Nucl.Med.39(1998)829-36、Mardirossian et al,Nucl.Med.Biol.20(1993)65-74、Roselli et al,Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals,14(1999)209-20)。
【0086】
本明細書で使用される場合、「粒子」は、体積、質量又は平均サイズ等の物理的特性を帰することができる小さな局在化した物体を意味する。したがって、粒子は、対称、球状、本質的に球状又は球形の形状であってもよく、又は不規則、非対称の形状又は形態であってもよい。粒子のサイズは変化し得る。「微粒子」という用語は、ナノメートル及びマイクロメートル範囲の直径を有する粒子を指す。
【0087】
上記の本明細書で定義される微粒子は、当業者に公知の任意の適切な材料を含んでもよく、又はそれからなってもよく、例えば、無機又は有機材料を含んでもよく、又はそれからなってもよく、又は本質的にそれからなってもよい。典型的には、それらは、金属若しくは金属の合金、又は有機材料を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になり得るか、又は炭水化物要素を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になり得る。微粒子のために想定される材料の例としては、アガロース、ポリスチレン、ラテックス、ポリビニルアルコール、シリカ及び強磁性金属、合金又は混成材料が挙げられる。一実施形態では、微粒子は、磁性又は強磁性金属、合金又は混成である。更なる実施形態では、材料は特定の特性を有してもよく、例えば疎水性又は親水性であってもよい。そのような微粒子は、典型的には水溶液中に分散され、微粒子を分離したままにし、非特異的なクラスター形成を回避しながら、小さな負の表面電荷を保持する。
【0088】
本発明の一実施形態では、微小粒子は常磁性微小粒子であり、本開示に係る測定方法における該粒子の分離は磁力によって促進される。溶液/懸濁液から常磁性又は磁性粒子を引き抜き、それらを必要に応じて保持するために磁力が印加され、溶液/懸濁液の液体を除去することができ、粒子を例えば洗浄することができる。
【0089】
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば障害の処置のための薬品、又は本発明のバイオマーカー遺伝子若しくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製品(例えば、パッケージ又は容器)である。キットは、好ましくは、本発明の方法を実行するためのユニットとして、促進、流通、又は販売される。典型的には、キットは、厳重な管理下で、バイアル及びチューブ等の1つ又は複数の容器手段を受容するように区分化された担体手段を更に含み得る。特に、容器手段のそれぞれは、第1の態様の方法において使用される別個の要素のうちの1つを含む。キットは、緩衝液、希釈剤、フィルタ、ニードル、注射器、及び使用説明を伴う添付文書を含むがこれらに限定されない、更なる材料を含む1つ又は複数の他の容器を更に備えてもよい。標識は、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示され得、in vivo使用又はin vitro使用のいずれかに関する指示も示し得る。コンピュータプログラムコードは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)などのデータ記憶媒体もしくは装置上に、又はコンピュータ若しくはデータ処理装置に直接提供されてもよい。更に、キットは、較正目的のために、本明細書の別の箇所に記載されるようなバイオマーカーの標準量を含み得る。
【0090】
「添付文書」は、かかる治療薬若しくは薬品の適応症、使用法、投薬量、投与、禁忌症についての情報、パッケージ製品と組み合わされる他の治療薬、及び/又はその使用に関する警告等を含有する、治療薬又は薬品の商用のパッケージに通例含まれる指示書を指すように使用される。
【0091】
実施形態
患者試料中のSARS CoV-2ウイルスを検出するための現在利用可能なPCRフォーマット診断アッセイは、結果が利用可能になるのに数時間を必要とする。したがって、それらは、現在進行中のパンデミックにおいてコロナウイルス検査に対する高い需要を満たすのに十分ではない。迅速なポイントオブケア抗原検査は、はるかに速い結果を提供するが、信頼できる診断に必要となる感度及び/又は特異性を示さないことが多い。パンデミックにおける信頼できる診断結果の高い要求を提供するために、本発明者らは、高特異性抗体を使用するハイスループット抗原アッセイを開発した。
【0092】
第1の態様では、本発明は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDに結合する(単離された)モノクローナル抗体又はその抗原結合断片に関し、該モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、
a)表面プラズモン共鳴によって決定される2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する、
及び/又は
b)表面プラズモン共鳴によって決定される5.0E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する、
及び/又は
c)表面プラズモン共鳴によって決定される4分以上のt/2dissの半減期時間を有する、
及び/又は
d)1:1若しくは1:2の化学量論を有する。
【0093】
特定の実施形態では、第1の態様の抗体は中和抗体である。
【0094】
特定の実施形態では、第1の態様の抗体は、SARS-CoV-2ウイルス野生型及び変異型株(バリアント)のスパイクタンパク質のRBDに結合する。
【0095】
特定の実施形態では、抗体は、2.0E+06M-1s-1を超える、特に2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.7E+06M-1s-1を超える、特に3.0E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、3.3E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。
【0096】
特定の実施形態では、抗体は、5.0E-03s-1未満、特に4.5E-03s-1未満、特に4.0E-03s-1未満、特に3.0E-03s-1未満、特に2.7E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.6E-03s-1未満、特に1.1E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。
【0097】
特定の実施形態では、抗体は、4分以上のt/2diss、6分以上のt/2diss、特に11分以上のt/2dissの抗体/抗原複合体半減時間を有する。
【0098】
特定の実施形態では、抗体は、3.3E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び1.1E-03s-1の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、11分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。
【0099】
特定の実施形態では、抗体は、2.7E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び2.7E-03s-1の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、4分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。
【0100】
特定の実施形態では、抗体は、3.0E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び2.6E-03s-1の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、4分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。
【0101】
特定の実施形態では、抗体は、2.5E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び1.9E-03s-1の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、6分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。
【0102】
特定の実施形態では、抗体は、以下の態様2~5のいずれかについて記載される配列を有する。
【0103】
実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、単離された抗体又は抗原結合断片である。したがって、抗体又は抗原結合断片は、精製された抗体又は抗原結合断片である。抗体の精製は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)等の当技術分野で周知の方法によって達成され得る。したがって、抗体又は抗原結合断片は、抗体が産生された細胞から単離されているものとする。いくつかの実施形態では、単離された抗体又は抗原結合断片は、例えば、ローリー(Lowry)法によって測定される場合、抗体の70重量%超まで、いくつかの実施形態では、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99重量%超まで精製される。好ましい一実施形態では、本発明による単離された抗体又は抗原結合断片は、タンパク質検出のためにクーマシーブルー染色を使用する還元条件下でSDS-PAGEによって決定される場合、90%超の純度まで精製される。
【0104】
実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ネイキッド抗体又はネイキッド抗原結合断片である。実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、タグ又は標識を更に含む。特定の実施形態では、タグは、抗体又はその抗原結合断片を固相に直接又は間接的に結合することを可能にする。特定の実施形態では、タグは、バイオアフィン結合対のパートナーである。特定の実施形態では、タグは、ビオチン、ジゴキシン、ハプテン、又は相補的オリゴヌクレオチド配列(特に相補的LNA配列)からなる群から選択される。特定の実施形態では、タグはビオチンである。
【0105】
特定の実施形態では、標識は、抗体又はその抗原結合断片の検出を可能にする。特定の実施形態では、標識は、電気化学発光ルテニウム又はイリジウム錯体である。特定の実施形態では、電気化学発光ルテニウム錯体は、負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、標識は、1:1~15:1の化学量論で抗原中に存在する負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、化学量論は、2:1、2.5:1、3:1、5:1、10:1、又は15:1である。
【0106】
第2の態様では、本発明は、単離された抗体又はその抗原結合断片に関し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0107】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙された配列を含む(すなわちアミノ酸変異のない)CDRを含む。
【0108】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上記の配列の配列変異を有する1つ又は複数のCDRを含む。特定の実施形態では、配列変異は、1又は2、特に1個のアミノ酸変化を含む。特定の実施形態では、1つ又は2つのアミノ酸変化は、互いに独立して、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、又はアミノ酸置換である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0109】
特定の実施形態では、第2の態様の抗体又は抗原結合断片は、更に、
a)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0110】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙された配列を含む(すなわちアミノ酸変異のない)FRを含む。
【0111】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上記の配列の配列変異を有する1つ又は複数のFRを含む。特定の実施形態では、配列変異は、最大5個、特に1、2、3、4又は5個のアミノ酸変化を含む。特定の実施形態では、最大5個、特に1、2、3、4又は5個のアミノ酸の変化は、互いに独立して、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加又はアミノ酸の置換である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0112】
特定の実施形態では、第2の態様の抗体又は抗原結合断片は、
a)配列番号15によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含むか、
b)配列番号15によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)配列番号15によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0113】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙した配列を含む、すなわちアミノ酸変異のない重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0114】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に列挙した配列の配列変異を有する重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態では、バリアント配列は、上に具体的に列挙した配列と少なくとも85%同一である。更なる一実施形態では、同一性は少なくとも90%である。更なる実施形態では、同一性は少なくとも95%、特に少なくとも98%である。
【0115】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDに結合し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)表面プラズモン共鳴によって決定される2.0E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する、
及び/又は
b)表面プラズモン共鳴によって決定される3.0E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する、
及び/又は
c)表面プラズモン共鳴によって決定される4分以上のt/2dissの半減期時間を有する、
及び/又は
d)1:1若しくは1:2の化学量論を有する。
【0116】
特定の実施形態では、抗体は、2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.7E+06M-1s-1を超える、特に3.0E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、3.3E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。
【0117】
特定の実施形態では、抗体は、5.0E-03s-1未満、特に4.5E-03s-1未満、特に4.0E-03s-1未満、特に3.5E-03s-1未満、3.0E-03s-1、特に2.7E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.6E-03s-1未満、特に1.1E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。
【0118】
特定の実施形態では、抗体は、4分以上の抗体/抗原複合体半減期時間、6分以上のt/2diss、特に11分以上のt/2dissを有する。
【0119】
特定の実施形態では、抗体は、3.3E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び1.1E-03s-1の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、11分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。特定の実施形態では、抗体は、3.3E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び1.1E-03s-1の解離速度定数(kd)及び11分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。
【0120】
実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、単離された抗体又は抗原結合断片である。したがって、抗体又は抗原結合断片は、精製された抗体又は抗原結合断片である。抗体の精製は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)等の当技術分野で周知の方法によって達成され得る。したがって、抗体又は抗原結合断片は、抗体が産生された細胞から単離されているものとする。いくつかの実施形態では、単離された抗体又は抗原結合断片は、例えば、ローリー(Lowry)法によって測定される場合、抗体の70重量%超まで、いくつかの実施形態では、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99重量%超まで精製される。好ましい一実施形態では、本発明による単離された抗体又は抗原結合断片は、タンパク質検出のためにクーマシーブルー染色を使用する還元条件下でSDS-PAGEによって決定される場合、90%超の純度まで精製される。
【0121】
実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ネイキッド抗体又はネイキッド抗原結合断片である。実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、タグ又は標識を更に含む。特定の実施形態では、タグは、抗体又はその抗原結合断片を固相に直接又は間接的に結合することを可能にする。特定の実施形態では、タグは、バイオアフィン結合対のパートナーである。特定の実施形態では、タグは、ビオチン、ジゴキシン、ハプテン、又は相補的オリゴヌクレオチド配列(特に相補的LNA配列)からなる群から選択される。特定の実施形態では、タグはビオチンである。
【0122】
特定の実施形態では、標識は、抗体又はその抗原結合断片の検出を可能にする。特定の実施形態では、標識は、電気化学発光ルテニウム又はイリジウム錯体である。特定の実施形態では、電気化学発光ルテニウム錯体は、負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、標識は、1:1~15:1の化学量論で抗原中に存在する負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、化学量論は、2:1、2.5:1、3:1、5:1、10:1、又は15:1である。
【0123】
特定の実施形態では、第2の態様の抗体は、SARS-CoV-2ウイルス野生型及び変異型株(バリアント)のスパイクタンパク質のRBDに結合する。
【0124】
第3の態様では、本発明は、抗体又はその抗原結合断片に関し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0125】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙された配列を含む(すなわちアミノ酸変異のない)CDRを含む。
【0126】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上記の配列の配列変異を有する1つ又は複数のCDRを含む。特定の実施形態では、配列変異は、1又は2、特に1個のアミノ酸変化を含む。特定の実施形態では、1つ又は2つのアミノ酸変化は、互いに独立して、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、又はアミノ酸置換である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0127】
特定の実施形態では、第3の態様の抗体又は抗原結合断片は、更に、
a)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0128】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙された配列を含む(すなわちアミノ酸変異のない)FRを含む。
【0129】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上記の配列の配列変異を有する1つ又は複数のFRを含む。特定の実施形態では、配列変異は、最大5個、特に1、2、3、4又は5個のアミノ酸変化を含む。特定の実施形態では、最大5個、特に1、2、3、4又は5個のアミノ酸の変化は、互いに独立して、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加又はアミノ酸の置換である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0130】
特定の実施形態では、第3の態様の抗体又は抗原結合断片は、
a)配列番号31によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号32によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含むか、
b)配列番号31によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号32によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)配列番号31によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号32によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0131】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙した配列を含む、すなわちアミノ酸変異のない重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0132】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に列挙した配列の配列変異を有する重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態では、バリアント配列は、上に具体的に列挙した配列と少なくとも85%同一である。更なる一実施形態では、同一性は少なくとも90%である。更なる実施形態では、同一性は少なくとも95%、特に少なくとも98%である。
【0133】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDに結合し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)表面プラズモン共鳴によって決定される2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する、
及び/又は
b)表面プラズモン共鳴によって決定される3.0E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する、
及び/又は
c)表面プラズモン共鳴によって決定される4分以上のt/2dissの半減期時間を有する、
及び/又は
d)1:1若しくは1:2の化学量論を有する。
【0134】
特定の実施形態では、抗体は、2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.7E+06M-1s-1を超える、特に3.0E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、3.3E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。
【0135】
特定の実施形態では、抗体は、5.0E-03s-1未満、特に4.5E-03s-1未満、特に4.0E-03s-1未満、特に3.5E-03s-1未満、3.0E-03s-1、特に2.7E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.6E-03s-1未満、特に1.1E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。
【0136】
特定の実施形態では、抗体は、4分以上の抗体/抗原複合体半減期時間、6分以上のt/2diss、特に11分以上のt/2dissを有する。
【0137】
特定の実施形態では、抗体は、2.7E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び2.7E-03s-1の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、4分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.7E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び2.7E-03s-1の解離速度定数(kd)及び4分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。
【0138】
実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、単離された抗体又は抗原結合断片である。したがって、抗体又は抗原結合断片は、精製された抗体又は抗原結合断片である。抗体の精製は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)等の当技術分野で周知の方法によって達成され得る。したがって、抗体又は抗原結合断片は、抗体が産生された細胞から単離されているものとする。いくつかの実施形態では、単離された抗体又は抗原結合断片は、例えば、ローリー(Lowry)法によって測定される場合、抗体の70重量%超まで、いくつかの実施形態では、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99重量%超まで精製される。好ましい一実施形態では、本発明による単離された抗体又は抗原結合断片は、タンパク質検出のためにクーマシーブルー染色を使用する還元条件下でSDS-PAGEによって決定される場合、90%超の純度まで精製される。
【0139】
実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ネイキッド抗体又はネイキッド抗原結合断片である。実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、タグ又は標識を更に含む。特定の実施形態では、タグは、抗体又はその抗原結合断片を固相に直接又は間接的に結合することを可能にする。特定の実施形態では、タグは、バイオアフィン結合対のパートナーである。特定の実施形態では、タグは、ビオチン、ジゴキシン、ハプテン、又は相補的オリゴヌクレオチド配列(特に相補的LNA配列)からなる群から選択される。特定の実施形態では、タグはビオチンである。
【0140】
特定の実施形態では、標識は、抗体又はその抗原結合断片の検出を可能にする。特定の実施形態では、標識は、電気化学発光ルテニウム又はイリジウム錯体である。特定の実施形態では、電気化学発光ルテニウム錯体は、負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、標識は、1:1~15:1の化学量論で抗原中に存在する負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、化学量論は、2:1、2.5:1、3:1、5:1、10:1、又は15:1である。
【0141】
特定の実施形態では、第3の態様の抗体は、SARS-CoV-2ウイルス野生型及び変異型株(バリアント)のスパイクタンパク質のRBDに結合する。
【0142】
第4の態様では、本発明は、抗体又はその抗原結合断片に関し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0143】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙された配列を含む(すなわちアミノ酸変異のない)CDRを含む。
【0144】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上記の配列の配列変異を有する1つ又は複数のCDRを含む。特定の実施形態では、配列変異は、1又は2、特に1個のアミノ酸変化を含む。特定の実施形態では、1つ又は2つのアミノ酸変化は、互いに独立して、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、又はアミノ酸置換である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0145】
特定の実施形態では、第4の態様の抗体又は抗原結合断片は、更に、
a)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0146】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙された配列を含む(すなわちアミノ酸変異のない)FRを含む。
【0147】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上記の配列の配列変異を有する1つ又は複数のFRを含む。特定の実施形態では、配列変異は、最大5個、特に1、2、3、4又は5個のアミノ酸変化を含む。特定の実施形態では、最大5個、特に1、2、3、4又は5個のアミノ酸の変化は、互いに独立して、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加又はアミノ酸の置換である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0148】
特定の実施形態では、第4の態様の抗体又は抗原結合断片は、
a)配列番号47によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号48によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含むか、
b)配列番号47によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号48によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)配列番号47によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号48によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0149】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙した配列を含む、すなわちアミノ酸変異のない重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0150】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に列挙した配列の配列変異を有する重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態では、バリアント配列は、上に具体的に列挙した配列と少なくとも85%同一である。更なる一実施形態では、同一性は少なくとも90%である。更なる実施形態では、同一性は少なくとも95%、特に少なくとも98%である。
【0151】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDに結合し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)表面プラズモン共鳴によって決定される2.0E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する、
及び/又は
b)表面プラズモン共鳴によって決定される3.0E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する、
及び/又は
c)表面プラズモン共鳴によって決定される4分以上のt/2dissの半減期時間を有する、
及び/又は
d)1:1若しくは1:2の化学量論を有する。
【0152】
特定の実施形態では、抗体は、2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.7E+06M-1s-1を超える、特に3.0E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、3.3E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。
【0153】
特定の実施形態では、抗体は、5.0E-03s-1未満、特に4.5E-03s-1未満、特に4.0E-03s-1未満、特に3.5E-03s-1未満、3.0E-03s-1、特に2.7E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.6E-03s-1未満、特に1.1E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。
【0154】
特定の実施形態では、抗体は、4分以上の抗体/抗原複合体半減期時間、6分以上のt/2diss、特に11分以上のt/2dissを有する。
【0155】
特定の実施形態では、抗体は、3.0E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び2.6E-03s-1の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、4分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。特定の実施形態では、抗体は、3.0E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び2.6E-03s-1の解離速度定数(kd)及び4分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。
【0156】
実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、単離された抗体又は抗原結合断片である。したがって、抗体又は抗原結合断片は、精製された抗体又は抗原結合断片である。抗体の精製は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)等の当技術分野で周知の方法によって達成され得る。したがって、抗体又は抗原結合断片は、抗体が産生された細胞から単離されているものとする。いくつかの実施形態では、単離された抗体又は抗原結合断片は、例えば、ローリー(Lowry)法によって測定される場合、抗体の70重量%超まで、いくつかの実施形態では、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99重量%超まで精製される。好ましい一実施形態では、本発明による単離された抗体又は抗原結合断片は、タンパク質検出のためにクーマシーブルー染色を使用する還元条件下でSDS-PAGEによって決定される場合、90%超の純度まで精製される。
【0157】
実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ネイキッド抗体又はネイキッド抗原結合断片である。実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、タグ又は標識を更に含む。特定の実施形態では、タグは、抗体又はその抗原結合断片を固相に直接又は間接的に結合することを可能にする。特定の実施形態では、タグは、バイオアフィン結合対のパートナーである。特定の実施形態では、タグは、ビオチン、ジゴキシン、ハプテン、又は相補的オリゴヌクレオチド配列(特に相補的LNA配列)からなる群から選択される。特定の実施形態では、タグはビオチンである。
【0158】
特定の実施形態では、標識は、抗体又はその抗原結合断片の検出を可能にする。特定の実施形態では、標識は、電気化学発光ルテニウム又はイリジウム錯体である。特定の実施形態では、電気化学発光ルテニウム錯体は、負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、標識は、1:1~15:1の化学量論で抗原中に存在する負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、化学量論は、2:1、2.5:1、3:1、5:1、10:1、又は15:1である。
【0159】
特定の実施形態では、第4の態様の抗体は、SARS-CoV-2ウイルス野生型及び変異型株(バリアント)のスパイクタンパク質のRBDに結合する。
【0160】
第5の態様では、本発明は、単離された抗体又はその抗原結合断片に関し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0161】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙された配列を含む(すなわちアミノ酸変異のない)CDRを含む。
【0162】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上記の配列の配列変異を有する1つ又は複数のCDRを含む。特定の実施形態では、配列変異は、1又は2、特に1個のアミノ酸変化を含む。特定の実施形態では、1つ又は2つのアミノ酸変化は、互いに独立して、アミノ酸欠失、アミノ酸付加、又はアミノ酸置換である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0163】
特定の実施形態では、第2の態様の抗体又は抗原結合断片は、更に、
a)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0164】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙された配列を含む(すなわちアミノ酸変異のない)FRを含む。
【0165】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上記の配列の配列変異を有する1つ又は複数のFRを含む。特定の実施形態では、配列変異は、最大5個、特に1、2、3、4又は5個のアミノ酸変化を含む。特定の実施形態では、最大5個、特に1、2、3、4又は5個のアミノ酸の変化は、互いに独立して、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加又はアミノ酸の置換である。特定の実施形態では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。
【0166】
特定の実施形態では、第2の態様の抗体又は抗原結合断片は、
a)配列番号63によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号64によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含むか、
b)配列番号63によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号64によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)配列番号63によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号64によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する。
【0167】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に具体的に列挙した配列を含む、すなわちアミノ酸変異のない重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0168】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、上に列挙した配列の配列変異を有する重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態では、バリアント配列は、上に具体的に列挙した配列と少なくとも85%同一である。更なる一実施形態では、同一性は少なくとも90%である。更なる実施形態では、同一性は少なくとも95%、特に少なくとも98%である。
【0169】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDに結合し、該抗体又はその抗原結合断片は、
a)表面プラズモン共鳴によって決定される2.0E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する、
及び/又は
b)表面プラズモン共鳴によって決定される3.0E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する、
及び/又は
c)表面プラズモン共鳴によって決定される4分以上のt/2dissの半減期時間を有する、
及び/又は
d)1:1若しくは1:2の化学量論を有する。
【0170】
特定の実施形態では、抗体は、2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.7E+06M-1s-1を超える、特に3.0E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。特定の実施形態では、抗体は、3.3E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する。
【0171】
特定の実施形態では、抗体は、5.0E-03s-1未満、特に4.5E-03s-1未満、特に4.0E-03s-1未満、特に3.5E-03s-1未満、3.0E-03s-1、特に2.7E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.6E-03s-1未満、特に1.1E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する。
【0172】
特定の実施形態では、抗体は、4分以上のt/2diss、6分以上のt/2diss、特に11分以上のt/2dissの抗体/抗原複合体半減時間を有する。
【0173】
特定の実施形態では、抗体は、2.5E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び1.9E-03s-1の解離速度定数(kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、6分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。特定の実施形態では、抗体は、2.5E+06M-1s-1の会合速度定数(ka)及び1.9E-03s-1の解離速度定数(kd)及び6分のt/2dissの抗体/抗原複合体半減期時間を有する。
【0174】
実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、単離された抗体又は抗原結合断片である。したがって、抗体又は抗原結合断片は、精製された抗体又は抗原結合断片である。抗体の精製は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)等の当技術分野で周知の方法によって達成され得る。したがって、抗体又は抗原結合断片は、抗体が産生された細胞から単離されているものとする。いくつかの実施形態では、単離された抗体又は抗原結合断片は、例えば、ローリー(Lowry)法によって測定される場合、抗体の70重量%超まで、いくつかの実施形態では、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99重量%超まで精製される。好ましい一実施形態では、本発明による単離された抗体又は抗原結合断片は、タンパク質検出のためにクーマシーブルー染色を使用する還元条件下でSDS-PAGEによって決定される場合、90%超の純度まで精製される。
【0175】
実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ネイキッド抗体又はネイキッド抗原結合断片である。実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、タグ又は標識を更に含む。特定の実施形態では、タグは、抗体又はその抗原結合断片を固相に直接又は間接的に結合することを可能にする。特定の実施形態では、タグは、バイオアフィン結合対のパートナーである。特定の実施形態では、タグは、ビオチン、ジゴキシン、ハプテン、又は相補的オリゴヌクレオチド配列(特に相補的LNA配列)からなる群から選択される。特定の実施形態では、タグはビオチンである。
【0176】
特定の実施形態では、標識は、抗体又はその抗原結合断片の検出を可能にする。特定の実施形態では、標識は、電気化学発光ルテニウム又はイリジウム錯体である。特定の実施形態では、電気化学発光ルテニウム錯体は、負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、標識は、1:1~15:1の化学量論で抗原中に存在する負に帯電した電気化学発光ルテニウム錯体である。特定の実施形態では、化学量論は、2:1、2.5:1、3:1、5:1、10:1、又は15:1である。
【0177】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される少なくとも1つの抗体を含むキトに関する。したがって、実施形態において、キットは、本発明の第1の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第2の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第3の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第5の態様について上述した抗体を含み得る。
【0178】
特定の実施形態では、キットは、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される第2の抗体を更に含む。
【0179】
したがって、実施形態では、キットは、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第2の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第3の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第3の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第3の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第3の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第4の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体を含み得る。
【0180】
特定の実施形態では、キットは、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される第3の抗体を更に含む。したがって、実施形態では、キットは、本発明の第1の態様について上述した抗体、第2の態様について上述した抗体、及び第3の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、キットは、本発明の第1の態様について上述した抗体、第2の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。特定の実施形態では、キットは、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様による3つの抗体の任意の組み合わせを含み得る。
【0181】
第7の態様では、本発明は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される抗体をコードする核酸に関する。
【0182】
第8の態様では、本発明は、本発明の第7の態様について上述した核酸を含む宿主細胞、及び/又は本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体を産生する宿主細胞に関する。
【0183】
好ましい実施形態では、宿主細胞はハイブリドーマ細胞である。更に、宿主細胞は、本発明による抗体を生成するように操作することができる任意の種類の細胞系であり得る。例えば、宿主細胞は動物細胞、特に哺乳動物細胞であり得る。一実施形態では、実施例の欄で使用されるHEK 293-F細胞等のHEK293(ヒト胎児腎臓細胞)又はCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞が宿主細胞として使用される。別の実施形態では、宿主細胞は、非ヒト動物又は哺乳動物細胞である。
【0184】
宿主細胞は、好ましくは、本発明の抗体又はその断片をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、宿主細胞は、本発明の第7の態様の核酸を含む。特に、宿主細胞は、本発明の抗体の軽鎖をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及び本発明の抗体の重鎖をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。当該ポリヌクレオチド(複数可)は、適切なプロモーターに作動可能に連結されているものとする。
【0185】
第9の態様では、本発明は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される少なくとも1つの抗体を含む組成物に関する。したがって、実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第2の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第3の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第5の態様について上述した抗体を含み得る。
【0186】
特定の実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される第2の抗体を更に含む。
【0187】
したがって、実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第2の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第3の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第3の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第3の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第3の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第4の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体を含み得る。
【0188】
特定の実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される第3の抗体を更に含む。したがって、実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体、第2の態様について上述した抗体、及び第3の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体、第2の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第2の態様について上述した抗体、第3の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体、第3の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。更なる実施形態では、組成物は、本発明の第1の態様について上述した抗体、第2の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体を含み得る。特定の実施形態では、キットは、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様による3つの抗体の任意の組み合わせを含み得る。
【0189】
特定の実施形態では、組成物は診断用組成物である。したがって、特定の実施形態では、組成物は診断用である。
【0190】
第10の態様では、本発明は、in vitroイムノアッセイのための、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様若しくは第5の態様の抗体若しくは抗原結合断片、又は本発明の第6の態様のキット、又は本発明の第9の態様の組成物の使用に関する。特定の実施形態では、イムノアッセイは異種イムノアッセイである。
【0191】
第11の態様では、本発明は、患者から得られた試料中のSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出するための in vitro方法であって、
a)試料を、SARS-CoV-2のSpikeタンパク質のRBDに結合する少なくとも1つの抗体又はその抗体結合断片と共にインキュベートし、それによって少なくとも1つの抗体又は抗体結合断片とSARS-CoV-2のSpikeタンパク質のRBDとの間に複合体を生成させることと、
b)任意に、形成された複合体を固相、特に微粒子に固定化することと、
c)工程a)で形成された複合体を検出することにより、試料中のSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出することと、を含むin vitro方法に関する。
【0192】
一実施形態では、前述の方法は、対象からの試料の採取を包含しない。むしろ、(例えば、主治医の監督下で)対象から得られた試料が提供される。例えば、試料は、当該試料中のSARS-CoV-2ウイルスの存在の検出を行う検査室に試料を送達することによって提供することができる。
【0193】
特定の実施形態では、少なくとも1つの抗体又は抗体結合断片は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様及び/又は第5の態様の抗体又は抗体結合断片である。
【0194】
実施形態では、試料は、工程a)において、本発明の第1の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第2の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第3の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第4の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第5の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。
【0195】
特定の実施形態では、試料は、工程a)において、本発明の本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される第2の抗体と更にインキュベートされる。
【0196】
特定の実施形態では、工程a)において、試料は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBDに結合する2つの抗体と共にインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗SARS-CoV-2 RBD-抗体/SARS-CoV-2 RDB-抗原/第2の抗SARS-CoV-2 RBD-抗体の複合体を形成するために十分な時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に、第1の抗体及び第2の抗体と接触させることができる。当業者であれば容易に理解するように、特異的抗SARS-CoV-2 RBD抗体とSARS-CoV-2 RBD-抗原/分析物との間の複合体(=抗SAR-CoV-2 S-複合体)の形成、又は第1の抗体である抗SARS-CoV-2 RBD-抗体と、SARS-CoV-2 RBD-抗原(分析物)と、第2の抗SARS-CoV-2 RBD-抗体を含む二次複合体若しくはサンドイッチ複合体(=第1の抗SARS-CoV-2 RBD-抗体/SARS-CoV-2 RBD-抗原/第2の抗SARS-CoV-2 RBD-抗体複合体)の形成に適切な、又は十分な時間及び条件を確立することは日常的な実験にすぎない。
【0197】
抗SARS-CoV-2 RBD-抗体/SARS-CoV-2 RBD-抗原複合体の検出は、任意の適切な手段によって行うことができる。第1の抗SARS-CoV-2 RBD-抗体/SARS-CoV-2 RBD-抗原/第2の抗SARS-CoV-2 RBD-抗体複合体の検出は、任意の適切な手段によって行うことができる。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0198】
したがって、実施形態では、試料は、工程a)において、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第2の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第3の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第1の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第3の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第2の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第3の態様について上述した抗体及び第4の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第3の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第4の態様について上述した抗体及び第5の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。
【0199】
特定の実施形態では、試料は、工程a)において、本発明の本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様について上述した抗体の群から選択される第3の抗体と更にインキュベートされる。したがって、実施形態では、試料は、本発明の第1の態様について上述した抗体、第2の態様について上述した抗体、及び第3の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第1の態様について上述した抗体、第2の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、工程a)において、本発明の第2の態様について上述した抗体、第3の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第1の態様について上述した抗体、第3の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。更なる実施形態では、試料は、本発明の第1の態様について上述した抗体、第2の態様について上述した抗体、及び第4の態様について上述した抗体と共にインキュベートされる。特定の実施形態では、試料は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、又は第5の態様による3つの抗体の任意の組み合わせと共にインキュベートされる。
【0200】
実施形態では、第1の抗体は固相に固定化することができ、第2の抗体は検出可能な標識で標識される。実施形態では、検出可能な標識は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素である。実施形態では、固相上に固定化することのできる抗体を、特に、バイオアフィン結合対のパートナー、特にビオチン又は相補的LNA配列と一緒にタグ付けする。
【0201】
実施形態では、第1の抗体は検出可能な標識で標識され、第2の抗体は固相に固定化することができる。実施形態では、検出可能な標識は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素である。実施形態では、固相上に固定化することのできる抗体を、特に、バイオアフィン結合対のパートナー、特にビオチン又は相補的LNA配列と一緒にタグ付けする。
【0202】
実施形態では、第1の抗体は固相に固定化することができ、第2の抗体は検出可能な標識で標識され、第3の抗体は検出可能な標識で標識される。実施形態では、検出可能な標識は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素である。実施形態では、固相上に固定化することのできる抗体を、特に、バイオアフィン結合対のパートナー、特にビオチン又は相補的LNA配列と一緒にタグ付けする。
【0203】
実施形態では、第1の抗体は検出可能な標識で標識され、第2の抗体は固相に固定化することができ、第3の抗体は検出可能な標識で標識される。実施形態では、検出可能な標識は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素である。実施形態では、固相上に固定化することのできる抗体を、特に、バイオアフィン結合対のパートナー、特にビオチン又は相補的LNA配列と一緒にタグ付けする。
【0204】
実施形態では、方法は、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)又は電気化学発光免疫アッセイ(ECLIA)又はラジオイムノアッセイ(RIA)である。特定の実施形態では、方法は、ELICA法である。
【0205】
特定の実施形態では、患者の試料は、流体試料、特に体液試料である。特定の実施形態では、試料は、鼻咽頭スワブ、中咽頭スワブ、痰、唾液、全血、血清、又は血漿からなる群から選択される。特定の実施形態では、試料は、鼻咽頭スワブ、中咽頭スワブ、痰、唾液からなる群から選択される。特定の実施形態では、試料は、鼻咽頭スワブ又は中咽頭スワブである。実施形態では、試料はin vitro試料であり、すなわち、それは in vitroで分析され、体内に戻されない。
【0206】
特定の実施形態では、患者は実験動物、家畜又は霊長類である。特定の実施形態では、患者はヒト患者である。
【0207】
特定の実施形態では、本発明の第11の態様に従って患者から得られた試料中のSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出するための方法は、SARS-CoV-2の変異体(バリアント)も検出することができる。
【0208】
更なる実施形態では、本発明は、以下の項目に関する。
1.SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDに結合する(単離された)モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、
a)表面プラズモン共鳴によって決定される2.5E+06M-1s-1を超える会合速度定数(ka)を有する、
及び/又は
b)表面プラズモン共鳴によって決定される5.0E-03s-1未満の解離速度定数(kd)を有する、
及び/又は
c)表面プラズモン共鳴によって決定される4分以上のt/2dissの半減期時間を有する、
及び/又は
d)1:1若しくは1:2の化学量論を有する、
(単離された)モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【0209】
2.
a)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号1、2、3、4、5及び6によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目1に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0210】
3.
a)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号7、8、9、10、11、12、13及び14によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目2に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0211】
4.
a)配列番号15によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含むか、
b)配列番号15によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)配列番号15によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号16によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目1~3のいずれかに記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0212】
5.
a)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号17、18、19、20、21及び22によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目1に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0213】
6.
a)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号23、24、25、26、27、28、29及び30によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目5に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0214】
7.
a)配列番号31によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号32によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含むか、
b)配列番号31によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号32によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)配列番号31によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号32によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目1、5、又は6のいずれかに記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0215】
8.
a)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号33、34、35、36、37及び38によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目1に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0216】
9.
a)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号39、40、41、42、43、44、45及び46によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目8に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0217】
10.
a)配列番号47によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号48によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含むか、
b)配列番号47によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号48によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)配列番号47によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号48によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目1、8、又は9のいずれかに記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0218】
11.
a)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含むか、
b)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号49、50、51、52、53及び54によるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目1に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0219】
12.
a)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含むか、
b)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)それぞれ配列番号55、56、57、58、59、60、61及び62によるFR-H1、FR-H2、FR-H3、FR-H4、FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4を含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目8に記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0220】
13.
a)配列番号63によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号64によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含むか、
b)配列番号63によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号64によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と同じエピトープに結合するか、
又は
c)配列番号63によるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号64によるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む抗体と、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質のRBDへの結合について競合する、
項目1、8、又は9のいずれかに記載の単離されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【0221】
14.少なくとも1つの、項目2~4のいずれかに記載の抗体と、任意に、第2の、項目5~7のいずれかに記載の抗体と、任意に、第3の、項目8~10のいずれかに記載の抗体と、任意に、第4の、項目11~13のいずれかに記載の抗体と、を含む、キット。
【0222】
15.項目1~13のいずれかに記載の抗体をコードする核酸。
【0223】
16.項目15に記載の核酸を含む、及び/又は項目1~13のいずれかに記載の抗体を産生する、宿主細胞。
【0224】
17.項目1~13のいずれかに記載の抗体を含む、組成物。
【0225】
18.in vitroイムノアッセイのための、項目1~13のいずれか一項に記載の抗体、項目14に記載のキット、又は項目17に記載の組成物の使用。
【0226】
19.患者から得られた試料中のSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出するためのin vitro方法であって、
a)前記試料を、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBDに結合する少なくとも1つの抗体又はその抗体結合断片、特に項目1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体又はその抗体結合断片と共にインキュベートし、それによって前記抗体とSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の前記RBDとの間に複合体を生成することと、
b)任意に、形成された前記複合体を固相、特に微粒子に固定化することと、
c)前記試料中のSARS-CoV-2ウイルスの存在を検出することと、を含む、in vitro方法。
【0227】
20.前記患者の試料が、鼻咽頭スワブ、中咽頭スワブ、痰、唾液…からなる群から選択される、項目19に記載の方法。
【0228】
以下の実施例及び図は、本発明の理解を助けるために提供されており、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の思想から逸脱することなく、定められた手順に変更を加えることができると理解される。
【実施例】
【0229】
実施例
実施例1:抗体の生成
SARS-CoV-2スパイクタンパク質のRBDに対する特異性の高い抗体を生成するために、本発明者らは、ニュージーランド白ウサギ及びNMRIマウスをスパイク糖タンパク質のS1サブユニットのRBDで免疫し、その後RBD結合抗体についてスクリーニングした。
【0230】
免疫原:HEK細胞で発現させたSARS-CoV-2 RBD(全長スパイクタンパク質の319-541位のアミノ酸に相当、https://www.uniprot.org/uniprot/P0DTC2に開示されている配列に従う)。
【0231】
スクリーニング試薬:ビオチン化SARS-CoV-2 mSpike及びRBDタンパク質(Amanat et al.,A serological assay to detect SARS-CoV-2 seroconversion in humans,Nature Medicine,Vol.26,1033-1036(2020)に記載)。
【0232】
免疫処置の結果、様々な個々のウサギ及びマウスIgGクローンがSARS-CoV-2のS1-RBDタンパク質と特異的に反応したが、他のコロナウイルス(HKU-1、SARS-CoV-1、MERS、及びOC43 - データは示さず)とは反応しなかった。これらのRBD抗体の特異性は、それぞれB細胞上清及びマウスハイブリドーマ上清のELISAアッセイ及びSPR Biacore分析によって実証された(示していない)。
【0233】
実施例2:抗体SPRスクリーニング
生成された抗体の速度論的スクリーニングを、GE Healthcare BIAcore(商標)8K+、8K及びB4000機器で37℃で行った。Biacore CM-5シリーズSセンサを機器に取り付け、製造業者の指示に従ってプレコンディショニングした。
【0234】
システム緩衝液は、HBS ET pH7.4、10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%(w/v)Tween20であった。システム緩衝液に1mg/mL CMD(カルボキシメチルデキストラン、Fluka)を補充し、希釈系列を調製するための試料緩衝液として使用した。
【0235】
ウサギ又はマウスに特異的な抗体捕捉システムが、システム緩衝液としてHBS-N pH7.4を使用してセンサ表面に固定化された。ポリクローナルヤギ抗ウサギIgG Fc捕捉抗体GARbFcγ(コード番号111-005-046、Jackson Immuno Research)、又はポリクローナルヤギ抗マウスFcy捕捉抗体PAK<M-IgG(Fcy)>Z(コード番号115-005-071、Jackson Immuno Research)を、EDC/NHS化学を用いて、製造業者の指示に従ってアミンカップリングした。30μg/mLの捕捉抗体を10mM酢酸ナトリウム緩衝液中で使用した。ウサギ抗体捕捉用には溶液をpH4.5に調整し、マウス捕捉用には溶液をpH5に調整した。捕捉抗体は、約10000RU~15000RUのリガンド密度で固定化された。続いて、遊離活性化カルボキシル基を1MエタノールアミンpH8.5で飽和させた。
【0236】
全てのチャネルのフローセル1は、8K機器のリファレンスとして機能した。B4000を使用し、スポット2と4をリファレンスとして使用した。ウサギ又はマウスの各抗体溶液を試料緩衝液で希釈し、5μl/分又は10μL/分で2分間注入した。共鳴単位(RU)における抗体捕捉レベル(CL)をモニターした。90nMRBD(Roche自社製、42kDa)を、捕捉された抗RBD抗体に30μl/分で注入した。別の実施形態では、抗体を40μl/分で注入した。分析物の会合相は3~5分間モニターされ、解離相は5、10、又は14分間モニターされた。各測定サイクルの後、10mMグリシン緩衝液pH2.0及びpH2.25を20μL/分で60秒間その後注入することによって、捕捉システムを再生した。
【0237】
単一濃度反応速度の結合シグネチャは、BIAcore(商標)8K Control-SW V3.0.11.15423によってモニターし、BIAcore(商標)Insight Evaluation SW V3.0.11.15423によって評価した(それぞれB4000 Control SW V1.1及びEvaluation SW V1.1.)。
【0238】
速度論的データは、レポートポイントの特徴付けと速度論的決定によって解釈された。2つの報告点、すなわち、分析物注入の終了直前に記録されたシグナルである分析物Binding Late(BL)、及び解離時間の終了直前のシグナルであるStability Late(SL)を使用して、抗体/抗原結合の安定性を特徴付けた。
【0239】
ラングミュアモデルに従って解離速度定数kd(s-1)を計算し、式t/2 diss=ln(2)/(kd*60)に従って抗体/抗原複合体半減期を分単位で計算した。
【0240】
モル比、結合化学量論を以下の式によって計算した。
MR=B(抗原)*MW(抗体)/(MW(抗原)*CL(抗体))。
【0241】
実施例3:SARS-CoV-2 RBD抗体の速度論的特徴付け
速度論的スクリーニングによって選択されたモノクローナルウサギ及びマウスRBD抗体を更に詳細に特徴付けた。
【0242】
測定は、BIAcore(商標)8K及び8K+機器を使用して行った。0.2~180nMのRBD濃度系列を30-60μl/minの流速で注入した。37℃で、会合相を3~5分間、解離相を5~60分間モニターした。
【0243】
クローン4H10、1F12、7G5及び14F10の速度論的特性評価のために、システムと試料緩衝液は上記の通りであったが、2mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を補充した。速度論的速度定数及び解離平衡定数KDは、BIAcore(商標)Insight Evaluation SW V3.0.11.15423によるラングミュア1:1適合モデルを使用して、又はScrubber-SW V2.0cからのラングミュア1:1適合モデルを使用して計算した。
【0244】
代表的なRBD抗体のSPR速度論的スクリーニング及び特性評価の結果をそれぞれ
図1、
図2及び
図3に示す。
【0245】
本発明者らのストリンジェントな選択基準を満たす全ての抗体は、>1.0E+05M
-1s
-1の範囲の速い会合速度(k
a)及び5.0E-03s
-1未満の解離速度(k
d)を示す。全ての抗体は、それぞれナノモル及びサブナノモルの範囲の親和性を示す。
図1は、上で定義した選択基準を満たした抗体(
図1B)、及び本発明者らの目的に適していない速度論的シグネチャを示したため、更なる調査を行わずに選択解除された抗体(
図1A)の例を示している。抗体1F12は0.34nM±0.1%の高い親和性を示した。抗体4H10は、RBDに対して1.0nM±0.1%の親和性を示す。抗体7G5及び14F10は、それぞれ0.86nM±0.1%及び0.78nM±0.3%の高い親和性を示す(
図2を参照)。抗体4H10、1F12、7G5、14F10と異なる濃度のRBD(0.2nM~13.3nM)との相互作用を、BSA存在下、37℃で測定した。濃度13.3nM(黒)の複製を含む濃度系列を、ラングミュア1:1フィッティングモデル、Rmaxグローバル、RI=0(灰色)で重ね合わせた(
図3)。
【0246】
同様に、生成された抗体の動態スクリーニングは、Bruker SRP-32-Pro機器を使用して、異なる変異体RBS(バリアント)を使用して行われた。クローン1F12とバリアントとの結合に関するSPR動態スクリーニングと特徴付けの例示的な結果を
図8~
図12に示す。
【0247】
結論:RBD免疫化の結果として、本発明者らはSARS-CoV-2 RBD(野生型及び変異体)に特異的であるが、風邪コロナウイルス又はMERS由来のRBDタンパク質とは反応しない、ウサギ及びマウスのモノクローナルIgGを生成した(データは示さず)。これは、Biacore SPR及びイムノアッセイ分析の結果によって支持される。
【0248】
合計で13248個のウサギ抗体及び21504個のマウス抗体をRBD標的特異的ELISAで予備スクリーニングした。3427個のウサギ抗体及びマウス抗体をSPR実験で試験した。速度論的スクリーニングによって同定された157個のウサギ及びマウスのRBD抗体を、RBDへの結合に関して更に速度論的に特徴付けた。Elecsys(登録商標)プラットフォームの基準を満たす速度論的特性を有する63個のクローンを同定した。
【0249】
実施例4:サンドイッチ複合体形成実験
抗体/抗原サンドイッチ形成実験は、GE Healthcare BIAcore(商標)8K+装置で25℃で行った。Biacore 2D-PEGセンサ表面を機器に取り付け、製造業者の指示に従ってプレコンディショニングした。ウサギ又はマウス抗体捕捉システムを上記のように利用した。EDC/NHS混合物の活性化時間は30秒であった。捕捉システムを最大400RUで固定した。システム及び試料緩衝液は上記の通りであった。システム緩衝液は、HBS-ET+ pH7.4(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%(w/v)Tween20、pH7.4)であった。1mg/mL CMD(カルボキシメチルデキストラン、Fluka)を補充したシステム緩衝液を試料緩衝液として使用した。ウサギ又はマウスのRBD mAbを、RBDタンパク質とのサンドイッチ複合体形成について試験した。
【0250】
一次抗体上清を希釈し、各Fc2センサチャネル上で10μL/分で2分間捕捉した。捕捉システムを、1μMウサギ正常IgG又はマウス抗体ブロッキングカクテルで30μL/分で3分間ブロックした。その後、45nMのRBDを3分間注入した。1:20から1:50に希釈した一次抗体上清を、30μL/分で2分間繰り返し注入した。二次抗体溶液を1:20から1:50に希釈し、3分間注入し、続いて30μL/分で5分間の解離時間を設けた。システムは記載されたように再生された。
【0251】
システムは上記のように再生された。
【0252】
免疫複合体の安定性は、BIAcore(商標)Insight Evaluation SW V3.0.11.15423のSW拡張「エピトープビニング」を使用して評価した。サンドイッチ複合体形成実験は、報告点評価によって解釈された。2つの報告点である捕捉レベル(CL)(一次抗体の捕捉の終了直後に記録されたシグナル)、及び早期の分析物安定性(二次抗体注入の終了直後に記録されたシグナル)を使用して、免疫複合体安定性を特徴付けた。エピトープのアクセシビリティを、二次抗体結合応答シグナルの共鳴単位と一次抗体の捕捉レベルとの間の商を形成することによってモル比(MR)として定量した。
【0253】
異なる実験からの情報を組み合わせることにより、21の異なるRBDエピトープ領域が同定された(データは示さず)。
【0254】
実施例5:ACE-2 RBD接触面バインダーの同定
抗RBD抗体は、ACE-2とRBDの相互作用を妨害する可能性について更に検討された。実験はGE Healthcare BIAcore(商標)8K+及び8K装置を用いて37℃で行った。ウサギのmAbは上記のようにリガンドとして捕捉された。RBD及びACE2-FL-His8(Roche、87kDa)を溶液中の分析物として使用し、連続して注入した。50nM RBDを40μl/分で3分間注入し、続いて250nM ACE2-FL-His8を40μl/分で3分間注入し、その後5分間の解離時間を設けた。
【0255】
図6Aは、ACE-2/RBD接触面内又はその近くでRBDに結合し、ACE-2/RBDドッキングを完全にブロックする抗体の例を示す。
【0256】
図6Bは、ACE2/RBD接触面から離れて結合する抗体の例を示す。
【0257】
したがって、BIAcoreアッセイを使用して、抗体がACE-2/RBD接触面内又はその近くに結合するか、あるいはACE2/RBD接触面から離れた場所に結合するかを判定することができる。
【0258】
実施例6:電気化学発光免疫測定法(ECLIA)への適用
SARS-CoV-2スパイクに反応する抗体を検出し、野生型RBD及びRBDの変異体に結合する抗体を検出するために、RBD抗体を使用したECLIAアッセイが確立された(データは示さず)。RBDに結合するモノクローナル抗体(mAb)も同様にこのアッセイで検出できる。mAbは無制限の量で同一に再現でき、絶対SI単位(体積あたりの質量)で定量できるため、アッセイの標準化に非常に適した参照キャリブレーターとなる。このようなmAbがACE2-RBD結合を妨害する能力は興味深いものであり、このアッセイが阻害性抗体を検出できるという固有の証拠を提供する。
【0259】
ACE2-RBD結合に対するmAbの妨害能力に関する情報を生成するために、本発明者らはElecsys(登録商標)プラットフォーム上で競合イムノアッセイをセットアップした。ACE2及びRBDはシグナル指定子として機能するように標識され、定義された濃度でアッセイのインキュベートに添加された。ACE2とRBDの本来の親和性がこれらの分子の結合を引き起こし、シグナルを発生させた(CLIA法)。ベースライン反応性は、RBD特異的抗体を含まない試料(2019年10月より前に収集されたパンデミック前の試料)で得られた平均シグナルを使用して定義された。ブランク試料(希釈剤)と比較して、陰性試料のシグナルに有意な差は観察されなかった。次に、mAbを反応液に添加し、規定濃度のRBD特異的Abを含む「試料」を形成させた。RBD mAbを含む試料で観察されたシグナルとベースラインシグナルの比は、ACE2-RBD結合を妨害するmAbの能力を評価するのに役立った。IC50は、mAbの段階希釈に回帰分析を適用することによって決定された。
【0260】
阻害性であると同定されたmAbの例示的な結果を
図7に示す。
【0261】
Elecsys(登録商標)でのACE2-RBDの阻害の評価を、Biacore測定で生成された阻害データと比較した。得られたElecsys(登録商標)とBiacoreの結果は相互に確認され、中和mAbsの自動スクリーニング用にElecsys(登録商標)セットアップを確立することができた。BIAcoreアッセイと同様に、Elecsys(登録商標)アッセイは患者試料中の阻害/中和抗体を検出することができる。この結果は、患者の疾患の進行をモニターするために使用することができる。
【配列表】
【国際調査報告】