(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】抗IL23特異的抗体を用いてクローン病を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241106BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241106BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241106BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241106BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61P1/04
A61P37/06
A61K45/00
C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525067
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2022060353
(87)【国際公開番号】W WO2023073615
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ジャーミナロ,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】オルリンデ,モバラジ
(72)【発明者】
【氏名】サフー,アパルナ
(72)【発明者】
【氏名】イー,ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】アデドクン,オモニイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA681
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB112
4C084ZC082
4C084ZC212
4C084ZC412
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
患者におけるクローン病を治療する方法は、患者が抗体に奏功し、臨床エンドポイントのうちの1つ以上を満たすために、初回皮下投与及びその後の皮下投与のIL-23特異的抗体、例えば、グセルクマブを投与する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるクローン病を治療する方法であって、IL23に特異的な抗体の400mgの初回皮下投与、前記初回投与の約4週間後の400mgの皮下投与、及び前記初回投与の約8週間後の400mgの皮下投与を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記初回投与後約8週間での投与後約4週間毎又は約8週間毎に100mg又は200mgの抗体の投与を行うことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初回投与後約8週間での投与後約4週間毎に200mgの抗体の投与を行うことを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記初回投与後約8週間での投与後約8週間毎に100mgの抗体の投与を行うことを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が前記抗体に対する奏功者であり、前記初回投与の約12週間後に臨床エンドポイントを満たすものとして特定され、前記臨床エンドポイントが、CDAIが150ポイント未満(<)であると定義される12週目での臨床寛解、又はクローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善によって測定される内視鏡奏功である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者が臨床エンドポイントを満たすものとして特定され、前記臨床エンドポイントが、(i)前記初回投与の約24週間後に測定されたCDAIが150ポイント未満(<)であると定義される臨床寛解;(ii)1日平均排便回数(stool frequency、SF)≦3かつ1日平均腹痛(abdominal pain、AP)スコア≦1、及び前記初回投与の約12週間後に測定されたベースラインからAPもSFも悪化しないことに基づいて定義される患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome、PRO)-2寛解、並びに(iii)前記初回投与の約12週間後に測定されたCDAIスコアにおけるベースラインからの(≧)100ポイント以上の低下として定義される臨床奏功からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が、
配列番号4の相補性決定領域軽鎖1(CDRL1)アミノ酸配列、
配列番号5のCDRL2アミノ酸配列、及び
配列番号6のCDRL3アミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域が、
配列番号1の相補性決定領域重鎖1(CDRH1)アミノ酸配列、
配列番号2のCDRH2アミノ酸配列、及び
配列番号3のCDRH3アミノ酸配列を含み、前記患者が、前記抗体に対する奏功者であるとみなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、前記抗体に対する奏功者であり、以下に示す臨床エンドポイント:
(xii)クローン病活動性指数(Crohn's Disease Activity Index、CDAI)スコアにおけるベースラインからの変化;
(xiii)150ポイント未満(<)のCDAIとして定義される、臨床寛解;
(xiv)CDAIスコアにおけるベースラインからの100ポイント以上(≧)の低下又はCDAIスコア<150として定義される、臨床奏功;
(xv)1日平均排便回数(SF)及び1日平均腹痛(AP)スコアに基づいて定義される、患者報告アウトカム(PRO)-2寛解;
(xvi)CDAIスコアに基づく臨床奏功及びC反応性タンパク質(C-reactive protein、CRP)又は糞便カルプロテクチンにおけるベースラインからの減少を使用して定義される、臨床バイオマーカー奏功;
(xvii)クローン病簡易内視鏡スコア(Simple Endoscopic Score for Crohn's Disease、SES-CD)によって測定される、内視鏡奏功;
(xviii)クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)によって測定される、内視鏡的寛解;
(xiv)12週目~48週目の全ての来院のうちの大多数についてCDAI<150であると定義される、48週目における持続的な臨床寛解;
(xx)48週目におけるCDAIスコアが<150でありかつ48週目においてコルチコステロイドを投与されていないとして定義される、48週目におけるコルチコステロイドフリー臨床寛解;
(xxi)患者報告アウトカム測定情報システム(Patient-Reported Outcomes Measurement Information System、PROMIS)に基づく、倦怠感奏功;並びに
(xxii)クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)によって測定される、内視鏡奏功
を満たすものとして特定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記臨床エンドポイントが、初期治療の4、8、12、16、20、28、32、36、40、44、及び/又は48週間後に測定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、医薬組成物の7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL-ヒスチジン一塩酸塩一水和物;0.053%(w/v)のポリソルベート80を含む組成物中に存在し、希釈剤は標準状態の水である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
クローン病を治療するために使用される1つ又は2つ以上の追加の薬物を前記患者に投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記追加の薬物が、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、メトトレキサート(MTX)、抗B細胞表面マーカ抗体、抗CD20抗体、リツキシマブ、TNF阻害剤、コルチコステロイド、及び共刺激調節剤からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、配列番号10の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号9の重鎖アミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、クローン病に対して生物学的療法非奏効又は不耐性(Bio非奏効)とみなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、クローン病に対して従来療法非奏効又は不耐性(Con非奏効)とみなされる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記クローン病が、中等度から重度の活動性クローン病である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、前記初回投与の投与前に活動性クローン病の内視鏡的証拠を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、前記初回投与の投与前少なくとも3ヶ月間、中等度から重度の活動性クローン病を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
患者における中等度から重度の活動性クローン病を治療する方法であって、(i)IL23に特異的な抗体の400mgの初回皮下投与、前記初回投与の約4週間後の400mgの皮下投与、及び前記初回投与の約8週間後の400mgの皮下投与を患者に投与することと、(ii)200mgの抗体の投与を前記初回投与後約8週間での投与後約4週間毎に、又は100mgの抗体の投与を前記初回投与後約8週間での投与後約8週間毎に更に投与することと、を含み、前記抗体が、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、前記患者が、前記初回投与の約12週間後に臨床エンドポイントを満たすものとして特定されることによって、前記抗体に対する奏功者であり、前記臨床エンドポイントが、CDAIが150ポイント未満(<)であると定義される12週目での臨床寛解、又はクローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善によって測定される内視鏡奏功である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ヒトIL23に結合する抗体を用いてクローン病を治療する方法を対象とする。具体的には、本発明は、抗IL23特異的抗体及び抗体の特定の医薬組成物を投与するための投薬レジメンに関する。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、XML形式の配列表として米国特許商標庁特許センターを介して電子的に提出された、ファイル名「JBI6635WOPCT1 Sequence Listing.xml」、作成日2022年10月24日、サイズ11kbの配列表を含む。特許センター(Patent Center)を介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
(発明の背景)
インターロイキン(interleukin、IL)-12は、2つのジスルフィド結合グリコシル化タンパク質サブユニット(それらのおよその分子量に関してp35及びp40と表記される)で構成された分泌型ヘテロ二量体サイトカインである。IL-12は主に抗原提示細胞によって産生され、T細胞又はナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞の表面上に発現される2鎖受容体複合体に結合することによって細胞媒介性免疫を促進する。IL-12受容体ベータ-1(IL-12 receptor beta-1、IL-12Rβ1)鎖は、IL-12のp40サブユニットに結合し、IL-12とその受容体との間の一次相互作用をもたらす。しかしながら、細胞内シグナル伝達(例えば、STAT4リン酸化)及び受容体保有細胞の活性化を付与するのは、第2の受容体鎖であるIL-12Rβ2のIL-12p35ライゲーションである(Presky et al,1996)。抗原提示と同時に起こるIL-12シグナル伝達は、インターフェロンガンマ(IFNγ)産生を特徴とするTヘルパー1(T helper 1、Th1)表現型へのT細胞分化を引き起こすと考えられている(Trinchieri,2003)。Th1細胞は、いくつかの細胞内病原体に対する免疫を促進し、補結抗体アイソタイプを生成し、腫瘍免疫監視に寄与すると考えられる。それ故に、IL-12は、宿主防御免疫機構にとって重要な構成要素であると考えられる。
【0004】
IL-12のp40タンパク質サブユニットは、p19と表記される別個のタンパク質サブユニットと会合して、新規サイトカインであるIL-23を形成することもできることが発見された(Oppman et al,2000)。IL-23も2鎖受容体複合体を介してシグナル伝達する。p40サブユニットがIL-12とIL-23との間で共有されるため、IL-12Rβ1鎖もIL-12とIL-23との間で共有されることになる。しかしながら、IL-23特異的細胞内シグナル伝達(例えば、STAT3リン酸化)及びその後のT細胞によるIL-17産生を付与するのは、IL-23受容体複合体であるIL-23Rの第2の構成要素のIL-23p19ライゲーションである(Parham et al,2002、Aggarwal et al.2003)。最近の研究は、IL-23の生物学的機能とIL-12の生物学的機能が、これらの2つのサイトカイン間の構造的類似性にもかかわらず、異なることを示した(Langrish et al,2005)。
【0005】
抗体によるIL-12の中和が、乾癬、多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)、関節リウマチ、炎症性腸疾患、インスリン依存性(1型)真性糖尿病、及びブドウ膜炎の動物モデルの処置において有効であるため、IL-12及びTh1細胞集団の異常な制御は、多くの免疫媒介性疾患に関連している(Leonard et al,1995、Hong et al,1999、Malfait et al,1998、Davidson et al,1998)。しかしながら、これらの研究は共通のp40サブユニットを標的化しているため、IL-12及びIL-23の両方をインビボで中和した。したがって、IL-12又はIL-23が疾患を媒介していたかどうか、あるいは疾患の抑制を達成するために両サイトカインが阻害される必要があるかは明らかではない。最近の研究は、IL-23阻害が抗IL-12p40戦略と同等の利益を提供し得ることを、IL-23p19欠損マウス又はIL-23の特異的抗体中和により確認した(Cua et al,2003、Murphy et al,2003、Benson et al 2004)。したがって、免疫介在性疾患におけるIL-23の特異的な役割に関する証拠が増加している。IL-12経路を阻害することなくIL-23を中和することは、重要な宿主防御免疫機構に対する影響が限定的である、免疫媒介疾患の有効な治療を提供することができる。これは、他の治療選択肢に対して著しい改善をもたらすであろう。
【0006】
現在、中等度から重度の活動性クローン病の治療に認可された3つのクラスの生物学的薬剤:腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)拮抗薬療法(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ)、インテグリン阻害剤(ナタリズマブ及びベドリズマブ)、及びIL-12/23阻害剤(ウステキヌマブ)が存在する。生物学的薬剤の導入は、中等度から重度の活動性クローン病を有する患者の臨床管理を有意に改善したが、被検者患者集団のうちかなりの割合が奏功しないか、又は経時的に奏功を失う。承認された生物学的薬剤に対する利用可能なデータの総説は、特に、以前に生物学的薬剤不全であった患者間での、長期的な寛解の達成及び維持における必要性が満たされていないことを強調している。全ての治療患者(すなわち、評価された研究の0週目に無作為化された全ての患者)において、生物学的薬剤不全又は非耐性(BIO不全)集団での1年における臨床寛解の推定率は約20%であり、従来療法の不全又は非耐性(CON不全)集団では20%~50%の範囲である。
【0007】
要約すると、新たな治療選択肢、特に、有効性バー(efficacy bar)を上昇させ、臨床寛解を達成及び維持する患者の割合を最大化する可能性を有する新規な作用機序を有する療法に対する、相当な医学的必要性が依然として満たされておらずに存在する。
【0008】
(発明の概要)
第1の態様では、本発明は、クローン病に罹患している対象を治療する方法であって、抗IL23特異的抗体(IL23p19又はIL23p19サブユニット抗体とも呼ばれる)、例えば、グセルクマブを治療開始から、治療開始から4週間目まで初回皮下導入投与で患者に投与し、次いで、その後4又は8週間毎に1回、例えば、0、4、8、12又は16、20又は24、28又は32、36又は40、44又は48週目に抗IL-23特異的抗体を皮下投与することを含む、方法に関する。更に、別の実施形態では、皮下治療は、治療開始後96週間以上継続する。
【0009】
一実施形態では、対象は、抗IL23特異的抗体を、初回、初回投与の4週間後、及び初回投与の8週間後に400mgの投与で皮下投与され、初回治療後24週間を通じて4週間又は8週間毎に100又は200mgの投与で抗IL23特異的抗体の皮下治療を継続し、場合によっては、24週間を超えて48週間まで、96週間まで、及びそれを超えて継続する。
【0010】
別の態様では、本発明の方法で使用される組成物は、抗IL23特異的抗体を含む医薬組成物を含む。好ましい実施形態では、抗IL-23特異的抗体は、医薬組成物の7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL-ヒスチジン一塩酸塩一水和物;0.053%(w/v)のポリソルベート80の組成物中に存在するグセルクマブであり、希釈剤は標準状態の水である。
【0011】
一実施形態では抗IL23特異的抗体は、YpsoMate自己注射器を備えた単回投与プレフィルドシリンジ(PFS-Y)において200mg/mL製剤で提供され、代替実施形態では、抗IL23特異的抗体は、UltraSafe Plus(商標)Passive Needle Guardを備えた単回投与プレフィルドシリンジ(PFS-U)において100mg/mLで提供される。
【0012】
一実施形態では、クローン病患者は、以下から選択される臨床エンドポイントにおいて著しい改善を達成する:
(i)クローン病活動性指数(Crohn’s Disease Activity Index、CDAI)スコアにおけるベースラインからの変化;CDAIスコアは、8つの異なるクローン病関連変数に関する情報を収集することによって評価され、スコアは0~約600の範囲である。経時的な減少が、疾患活動性の改善を示す、変化;
(ii)液状便又は非常に軟便の総数及び腹痛(abdominal pain、AP)スコアの重み付けのないCDAIコンポーネントによって定義される患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome、PRO)-2;
(iii)粘膜潰瘍の有無及びクローン病簡易内視鏡スコア(Simple Endoscopic Score for Crohn’s Disease、SES-CD)に基づく腸粘膜の内視鏡評価;
(iv)組織学的評価;
(v)C反応性タンパク質(C-reactive protein、CRP)又は糞便カルプロテクチンを含む炎症性薬力学的(Inflammatory pharmacodynamic、PD)マーカー;
(vi)瘻孔評価;
(vii)炎症性腸疾患問診票(Inflammatory Bowel Disease Questionnaire、IBDQ)及び患者報告アウトカム測定情報システム(Patient-reported Outcomes Measurement Information System、PROMIS)-29を含む、健康関連の生活の質のアウトカムを評価するためのPRO尺度;
(viii)ブリストル便性状スケール(Bristol Stool Form Scale、BSFS)及びAP-数値評価スケール(Numerical Rating Scal、NRS)を含む患者報告症状尺度;
(ix)(<)150ポイント未満のCDAIとして定義される、12週目における臨床寛解。
(x)CDAIスコアにおけるベースラインからの(≧)100ポイント以上の低下又はCDAIスコア<150として定義される、12週目における臨床奏功。
(xi)クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)によって測定される、12週目における内視鏡奏功。SES-CDは、5つの回結腸セグメントにわたる4つの内視鏡要素の評価に基づいており、合計スコアは0~56の範囲である。
(xii)クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)によって測定される、12週目における内視鏡的寛解;SES-CD≦2。
(xiii)CDAIスコア<150として定義される、48週目における臨床寛解。
(xiv)12週目~48週目の全ての来院のうちの大多数についてCDAI<150であると定義される、48週目における持続的な臨床寛解。
(xv)48週目におけるCDAIスコアが<150でありかつ48週目にコルチコステロイドを投与されていないと定義される、48週目におけるコルチコステロイドフリー臨床寛解。
(xvi)1日平均排便回数(stool frequency、SF)及び1日平均腹痛(AP)スコアに基づいて定義される、48週目におけるPRO-2寛解。患者報告結果測定情報システム(Patient-Reported Outcomes Measurement Information System、PROMIS)に基づく、12週目における倦怠感奏功。倦怠感簡易フォーム7aには、倦怠感の重症度を評価する7つの項目が含まれ、スコアが高いほど倦怠感が大きいことを示す。
【0013】
本発明の別の態様では、医薬組成物は、任意選択で、医薬組成物の7.9%(w/v)スクロース、4.0mMヒスチジン、6.9mM L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)ポリソルベート80の組成物中に存在する、(i)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の重鎖CDRアミノ酸配列と、(ii)配列番号4、配列番号5、及び配列番号6の軽鎖CDRアミノ酸配列と、を含むCDR配列を有する単離抗IL23特異的抗体を含み、希釈剤は標準状態の水である。
【0014】
本発明の方法の別の態様は、任意選択で、医薬組成物の7.9%(w/v)スクロース、4.0mMヒスチジン、6.9mM L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)ポリソルベート80の組成物中に存在する、配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列と、を有する単離抗IL23特異的抗体を含む当該医薬組成物を投与することを含み、希釈剤は標準状態の水である。
【0015】
本発明の方法の更なる態様は、任意選択で、医薬組成物の7.9%(w/v)スクロース、4.0mMヒスチジン、6.9mM L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)ポリソルベート80の組成物中に存在する、配列番号9の重鎖アミノ酸配列と、配列番号10の軽鎖アミノ酸配列と、を有する単離抗IL23特異的抗体を含む当該医薬組成物を投与することを含み、希釈剤は標準状態の水である。
【0016】
なお更なる実施形態において、本発明の方法は、任意選択で医薬組成物の7.9%(w/v)スクロース、4.0mMヒスチジン、6.9mM L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、0.053%(w/v)ポリソルベート80の組成物中に存在する、抗体グセルクマブ(Janssen Biotech,IncによってTremfya(登録商標)として販売されている)を含む当該医薬組成物を投与することを含み、希釈剤は標準状態の水である。
【0017】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態の詳細は、下記の説明に述べられている。他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】治療相のための投薬レジメン及び試験介入がどのように投与されるかを示す。
【0019】
(好ましい態様の詳細な記述)
本明細書で使用される場合、クローン病に罹患している対象の治療方法は、単離された、組換え、及び/又は合成抗IL-23特異的ヒト抗体の投与を行うことを含み、並びに診断用及び治療用組成物、方法、及びデバイスを含む。
【0020】
本明細書で使用される場合、「抗IL-23特異的抗体」、「抗IL-23抗体」、「抗体部分」、又は「抗体断片」、及び/又は「抗体バリアント」などは、本発明の抗体に組み込むことができる、重鎖若しくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)若しくはそのリガンド結合部分、重鎖若しくは軽鎖可変領域、重鎖若しくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域、又はこれらの任意の部分、あるいはIL-23受容体又は結合タンパク質の少なくとも一部などであるが、これらに限定されない、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。このような抗体は、任意選択で、更に特異的なリガンドに影響を及ぼし、限定するものではないが、例えばこのような抗体は、インビトロ、インサイチュ、及び/又はインビボで、少なくとも1つのIL-23活性若しくは結合、又はIL-23受容体活性若しくは結合を、調節、低減、増大、拮抗、刺激、軽減、緩和、遮断、阻害、抑止する及び/又は妨げる。非限定的な例として、本発明の好適な抗IL-23抗体、特定の部分、又は変異体は、少なくとも1つのIL-23分子又はその特定の部分、変異体若しくはドメインに結合することができる。好適な抗IL-23抗体、特定の部分、又は変異体はまた、任意選択で、少なくとも1つのIL-23活性又は機能にも影響を及ぼすことができ、そのような活性又は機能としては、RNA、DNA、若しくはタンパク質合成、IL-23の放出、IL-23受容体のシグナル伝達、膜IL-23の切断、IL-23活性、IL-23の産生及び/又は合成などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
「抗体」という用語は、抗体模倣薬を含む、あるいは単鎖抗体及びその断片を含む抗体又はその特定の断片若しくは一部の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分を含む、抗体、その消化断片、特定の部分、及びバリアントを包含することが更に意図されている。機能断片としては、哺乳動物のIL-23に結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)及びF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片が挙げられるがこれらに限定されない、IL-23又はその一部分に結合することができる抗体断片が、本発明に包含される(例えば、上記のColligan,Immunologyを参照)。
【0022】
かかる断片は、当該技術分野において既知であり、かつ/又は本明細書に記載される、酵素による切断、合成、又は組換え技術により生成することができる。抗体はまた、1つ又は2つ以上の終止コドンが天然終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を使用して、種々の切断型で産生することもできる。例えば、F(ab’)2重鎖部をコードする遺伝子の組み合わせは、重鎖のCH1ドメイン及び/又はヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。抗体の様々な部分を従来の技術により化学的に結合でき、又は遺伝子工学技術を用いて隣接タンパク質(contiguous protein)として調製できる。
【0023】
本明細書で使用するとき、「ヒト抗体」という用語は、タンパク質の実質的に全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)、ヒンジ(VL、VH))がわずかな配列変化又は変異を有するだけでヒトにおいて実質的に非免疫原性である抗体を指す。「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列型免疫グロブリン配列に由来する抗体又はそれに厳密に一致する抗体であってもよい。ヒト抗体は、生殖細胞系列型免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダムな若しくは部位特異的な変異の導入により、又はインビボにおける体細胞変異により導入された変異)を含んでもよい。多くの場合、これは、ヒト抗体がヒトにおいて実質的に非免疫原性であることを意味する。ヒト抗体は、それらのアミノ酸配列の類似性に基づいて群に分類されている。したがって、配列類似性検索を使用して、類似の直鎖配列を有する抗体を、ヒト抗体を作り出すためのテンプレートとして選択することができる。同様に、名称に霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジーなど)、げっ歯類(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスターなど)、及び他の哺乳動物を含む抗体は、かかる種、亜属、属、亜科、及び科に特異的な抗体を指定する。更に、キメラ抗体は、上記の任意の組み合わせを含むことができる。かかる変化又は変異は、任意選択でかつ好ましくは、修飾されていない抗体に比べて、ヒト又は他の種における免疫原性を保持する又は低減させる。したがって、ヒト抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体とは異なる。
【0024】
ヒト抗体は、機能的に再構成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)遺伝子を発現することができる非ヒト動物又は原核若しくは真核細胞により産生され得ることが指摘される。更に、ヒト抗体が単鎖抗体である場合、天然ヒト抗体では見られないリンカーペプチドを含むことができる。例えば、Fvは、重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とを接続する2~約8個のグリシン又は他のアミノ酸残基などのリンカーペプチドを含むことができる。かかるリンカーペプチドは、ヒト由来のものとみなされる。
【0025】
また、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナルの、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体である、二重特異的、異種特異的、異種結合性、又は類似の抗体を使用してもよい。この場合、結合特異性のうち一方は少なくとも1つのIL-23タンパク質に対するものであり、他方は任意の他の抗原に対するものである。二重特異性抗体の製造方法は、当該技術分野において既知である。従来、二重特異性抗体の組換え産生は、2種の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、ここで、2本の重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の無作為な組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の可能な混合物を産生し、これらのうち1種のみが正しい二重特異的構造を有する。正確な分子の精製(通常アフィニティクロマトグラフィー工程により行われる)はかなり面倒であり、生成物の収率は低い。類似する手順が、例えば、国際公開第93/08829号、米国特許第6,210,668号、同第6,193,967号、同第6,132,992号、同第6,106,833号、同第6,060,285号、同第6,037,453号、同第6,010,902号、同第5,989,530号、同第5,959,084号、同第5,959,083号、同第5,932,448号、同第5,833,985号、同第5,821,333号、同第5,807,706号、同第5,643,759号、同第5,601,819号、同第5,582,996号、同第5,496,549号、同第4,676,980号、国際公開第91/00360号、同第92/00373号、欧州特許第03089号、Traunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)に開示されており、これらの各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0026】
本発明の方法及び組成物において有用である抗IL-23特異的抗体(IL-23特異的抗体とも称される)(又はIL-23に対する抗体)は、IL-23への高親和性結合、並びに任意選択でかつ好ましくは、低毒性を有することを、任意選択で特徴とし得る。具体的には、可変領域、定常領域、及びフレームワークなどの個々の構成要素が、個々に及び/又は集合的に、任意選択でかつ好ましくは、低い免疫原性を有する、本発明の抗体、その特定の断片、又は変異体が本発明において有用である。本発明で使用することができる抗体は、任意選択で、症状の測定可能な緩和並びに低い及び/又は許容される毒性で、患者を長期間にわたって治療する能力を特徴とする。低い若しくは許容される免疫原性、及び/又は高い親和性、並びに他の好適な特性が、得られる治療結果に寄与することができる。「低い免疫原性」は、本明細書では、治療される患者の約75%未満、若しくは好ましくは約50%未満において有意なHAHA、HACA、若しくはHAMA応答が上昇する、及び/又は治療される患者において低い力価(二重抗原酵素免疫アッセイで測定したとき約300未満、好ましくは約100未満)が上昇すると定義される(参照により全体が本明細書に組み込まれる、Elliott et al.,Lancet 344:1125-1127(1994))。「低い免疫原性」は、治療期間中の推奨治療過程にわたって推奨投与で治療された患者の25%未満、好ましくは治療された患者の10%未満で発生したとき、抗IL-23抗体で治療された患者における抗IL-23抗体に対する滴定可能なレベルの抗体の発生率として定義することもできる。
【0027】
「安全」という用語は、本発明の抗IL-23抗体(例えば、抗IL-23抗体グセルクマブ)の投与、投与レジメン、治療、又は方法に関するとき、標準的治療又は別の比較基準と比較して、実施される臨床試験、例えば第2相及びそれ以前の臨床試験から治療中に発生した有害事象(AE又はTEAEと称される)の頻度が比較的低い若しくは低減された及び/又は重症度が低い若しくは低減されたことを指す。有害事象は、医薬品を投与された患者における好ましくない医療上の出来事である。特に、本発明の抗IL-23抗体による投与、投与レジメン又は治療に関連するとき、臨床的に証明された安全は、原因が抗IL-23抗体の使用による可能性がある、確率が高い、又は非常に可能性が高いと考えられる場合、抗体の投与に関連する有害事象の比較的低い若しくは低減された頻度及び/又は低い若しくは低減された重症度を指す。
【0028】
有用性
本発明の単離された核酸は、少なくとも1つの抗IL-23抗体又はその特定のバリアントの生成に使用することができ、当該抗体又はバリアントは、クローン病の症状を診断、監視、調節、治療、緩和する、その発生の防止を支援する、又はその症状を低減するために、細胞、組織、器官、又は動物(哺乳動物及びヒトを含む)を測定するために又はそれらに作用させるために使用することができる。
【0029】
このような方法は、症状、効果、又は機序を調節、治療、緩和、予防、若しくは低減することを必要としている細胞、組織、器官、動物、又は患者に少なくとも1つの抗IL-23抗体を含む組成物又は医薬組成物を有効量投与することを含んでもよい。有効量は、本明細書に記載される、又は関連分野で既知である、既知の方法を使用して行われかつ決定される、単回(例えば、ボーラス)、複数回、若しくは持続投与当たり約0.001~500mg/kgの量、又は単回、複数回、若しくは持続投与当たり0.01~5000μg/mlの血清中濃度を達成する量、又はそれらの中の任意の有効範囲若しくは値を含むことができる。
【0030】
引用文献
本明細書で引用する全ての刊行物又は特許は、具体的な指定の有無にかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、本発明の時点での先行技術を示し、かつ/又は本発明の説明及び実施可能性を提供する。刊行物は、電子形式若しくは印刷形式で記録されたものを全て含む任意のメディア形式で利用可能な、任意の科学刊行物若しくは特許公報又は任意の他の情報を指す。以下の文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる:Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987-2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994-2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997-2001)。
【0031】
本発明の抗体-産生及び生成
本発明の方法に使用される少なくとも1つの抗IL-23は、任意選択で、当該技術分野において周知の細胞株、混合細胞株、不死化細胞、又は不死化細胞のクローン集団によって産生することができる。例えば、各々全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987-2001)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989)、Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994-2001)、Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997-2001)を参照されたい。
【0032】
好ましい抗IL-23抗体は、配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列、並びに、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3の重鎖CDRアミノ酸配列及び配列番号4、配列番号5、及び配列番号6の軽鎖CDRアミノ酸配列を有するグセルクマブ(CNTO1959とも呼ばれる)である。他の抗IL-23抗体は本明細書に列挙される配列を有し、全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,935,344号に記載されている。
【0033】
ヒトIL-23タンパク質又はその断片に特異的なヒト抗体は、単離されたIL-23タンパク質及び/又はその一部分(合成ペプチドなどの合成分子を含む)などの適切な免疫原性抗原に対して生じ得る。他の特異的な又は一般的な哺乳動物の抗体も同様に産生させることができる。免疫原性抗原の調製及びモノクローナル抗体の産生は、任意の好適な技術を使用して行うことができる。
【0034】
1つのアプローチでは、好適な不死細胞株(例えば、限定されるものではないが、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、L243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2 SA5、U937、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL-60、MLA 144、NAMALWA、NEURO 2Aなどの骨髄腫細胞株、又はヘテロミローマス(heteromylomas)、その融合産物、又はそれに由来する任意の細胞若しくは融合細胞、又は当該技術分野において公知の任意の他の好適な細胞株)(例えば、www.atcc.org、www.lifetech.com.などを参照されたい)を、限定されるものではないが、単離若しくはクローン化された脾臓、末梢血、リンパ、扁桃腺、又は他の免疫若しくはB細胞含有細胞などの抗体産生細胞、あるいは内因性又は異種核酸として、組換え又は内因性のウイルス、細菌、藻、原核生物、両生類、昆虫、爬虫類、魚、哺乳動物、げっ歯類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ヒツジ、霊長類、真核生物、ゲノムDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNA若しくはRNA、葉緑体DNA若しくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、単一、二重、若しくは三重鎖、ハイブリダイズなど、又はそれらの任意の組み合わせとしてのいずれかで、重鎖若しくは軽鎖の定常若しくは可変、又はフレームワーク、又はCDR配列を発現する任意のその他の細胞と融合することにより、ハイブリドーマを産生する。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のAusubel、及び上記のColligan,Immunologyの第2章を参照されたい。
【0035】
抗体産生細胞は、目的とする抗原で免疫化されたヒト又は他の好適な動物の末梢血、又は好ましくは脾臓若しくはリンパ節から得ることもできる。任意の他の好適な宿主細胞を使用して、本発明の抗体、その特定の断片又はバリアントをコードする異種核酸若しくは内因性核酸を発現させることもできる。融合細胞(ハイブリドーマ)又は組換え細胞は、選択的培養条件又は他の好適な既知の方法を使用して単離し、限界希釈若しくは細胞選別又は他の既知の方法によってクローニングすることができる。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、好適なアッセイ(例えば、ELISA)によって選択することができる。
【0036】
ペプチド又はタンパク質ライブラリから組換え抗体を選択する方法が挙げられるが、これらに限定されない、必要とされる特異性を有する抗体を産生又は単離するのに好適な他の方法を使用することができる(例えば、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなどのディスプレイライブラリであるが、これらに限定されず、例えば、Cambridge antibody Technologies,Cambridgeshire,UK、MorphoSys,Martinsreid/Planegg,DE、Biovation,Aberdeen,Scotland,UK、BioInvent,Lund,Sweden、Dyax Corp.,Enzon,Affymax/Biosite、Xoma,Berkeley,CA、Ixsys.から入手可能である)。例えば、欧州特許第368,684号、国際出願第GB91/01134号、国際出願第PCT/GB92/01755号、国際出願第PCT/GB92/002240号、国際出願第PCT/GB92/00883号、国際出願第PCT/GB93/00605号、米国特許出願公開第08/350260号(5/12/94)、国際出願第PCT/GB94/01422号、国際出願第PCT/GB94/02662号、国際出願第PCT/GB97/01835号、(CAT/MRC)、国際公開第90/14443号、国際公開第90/14424号、国際公開第90/14430号、国際出願第US94/1234号、国際公開第92/18619号、同第96/07754号(Scripps)、国際公開第96/13583号、国際公開第97/08320号(MorphoSys)、国際公開第95/16027号(BioInvent)、国際公開第88/06630号、国際公開第90/3809号(Dyax)、米国特許第4,704,692号(Enzon)、国際出願第US91/02989号(Affymax)、国際公開第89/06283号、欧州特許第371998号、欧州特許第550400号、(Xoma)、欧州特許第229046号、国際出願第US91/07149号(Ixsys)、又は確率論的に生成されるペプチド若しくはタンパク質-米国特許第5723323号、同第5763192号、同第5814476号、同第5817483号、同第5824514号、同第5976862号、国際公開第86/05803号、欧州特許第590689号(Ixsys、適用された分子進化(Applied Molecular Evolution、AME)の前身、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる)か、又は当該技術分野において既知であり、かつ/若しくは本明細書に記載される、ヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物の免疫化に依存する(例えば、SCIDマウス、各々参照により全体が組み込まれる、Nguyen et al.,Microbiol.Immunol.41:901-907(1997)、Sandhu et al.,Crit.Rev.Biotechnol.16:95-118(1996);Eren et al.,Immunol.93:154-161(1998)、並びに関連特許及び出願)。かかる技術としては、リボソームディスプレイ(Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:4937-4942(May 1997)、Hanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:14130-14135(Nov.1998))、単一細胞抗体産生技術(例えば、選択リンパ球抗体方法(selected lymphocyte antibody method、「SLAM」)(米国特許第5,627,052号、Wen et al.,J.Immunol.17:887-892(1987);Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843-7848(1996))、ゲルマイクロドロップレット及びフローサイトメトリー(Powell et al.,Biotechnol.8:333-337(1990);One Cell Systems,Cambridge,MA、Gray et al.,J.Imm.Meth.182:155-163(1995);Kenny et al.,Bio/Technol.13:787-790(1995))、B細胞選択物(Steenbakkers et al.,Molec.Biol.Reports 19:125-134(1994)、Jonak et al.,Progress Biotech,Vol.5,In Vitro Immunization in Hybridoma Technology,Borrebaeck,ed.,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,Netherlands(1988))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
非ヒト抗体又はヒト抗体を操作又はヒト化するための方法も使用することができ、当該技術分野において周知である。概して、ヒト化抗体又は修飾抗体は、非ヒト、例えば、限定されるものではないが、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又は他の哺乳動物源由来の1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と多くの場合呼ばれる残基により置き換えられるが、この「インポート」残基は、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変ドメイン、定常ドメイン、又は他のドメインから得られる。
【0038】
既知のヒトIg配列が、例えば、:www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi、www.ncbi.nih.gov/igblast、www.atcc.org/phage/hdb.html、www.mrc-cpe.cam.ac.uk/ALIGNMENTS.php;www.kabatdatabase.com/top.html、ftp.ncbi.nih.gov/repository/kabat;www.sciquest.com、www.abcam.com、www.antibodyresource.com/onlinecomp.html、www.public.iastate.edu/~pedro/research_tools.html、www.whfreeman.com/immunology/CH05/kuby05.htm、www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab、www.path.cam.ac.uk/~mrc7/mikeimages.html、mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html;www.immunologylink.com、pathbox.wustl.edu/~hcenter/index.html;www.appliedbiosystems.com、www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody、www.m.ehime-u.ac.jp/~yasuhito/Elisa.html、www.biodesign.com、www.cancerresearchuk.org、www.biotech.ufl.edu、www.isac-net.org、baserv.uci.kun.nl/~jraats/links1.html;www.recab.uni-hd.de/immuno.bme.nwu.edu、www.mrc-cpe.cam.ac.uk、www.ibt.unam.mx/vir/V_mice.html、http://www.bioinf.org.uk/abs、antibody.bath.ac.uk;www.unizh.ch、www.cryst.bbk.ac.uk/~ubcg07s、www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.html、www.path.cam.ac.uk/~mrc7/humanisation/TAHHP.html、www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html、www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html、www.jerini.de、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.Health(1983)に開示されている。
【0039】
このようなインポートされた配列を使用して、免疫原性を低減させるか、又は当該技術分野において既知であるように、結合、親和性、結合速度定数、解離速度定数、結合活性、特異性、半減期、若しくは任意の他の好適な特徴を低減、増強、若しくは調節することができる。概して、CDR残基は、抗原結合に直接的にかつほとんど実質的に影響する。したがって、非ヒトCDR配列又はヒトCDR配列の一部又は全てを維持しつつ、可変領域及び定常領域の非ヒト配列をヒトアミノ酸又は他のアミノ酸に置き換えることもできる。
【0040】
抗体は、任意選択で、抗原に対する高い親和性及び他の有利な生物学的特性を保持したまま遺伝子操作されたヒト化又はヒト抗体であってもよい。本目的を達成するためには、任意選択で、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して親配列及び種々の理論上のヒト化産物を解析するプロセスによって、ヒト化(又はヒト)抗体を調製することができる。三次元の免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者に周知である。選択された免疫グロブリン配列候補について確率の高い三次元立体構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、免疫グロブリン配列候補の機能において残基が示す可能性の高い働きの解析、すなわち免疫グロブリン候補の抗原結合能に影響する残基の解析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増強などといった所望の抗体特性が達成されるように、コンセンサス配列及びインポート配列からフレームワーク(FR)残基を選択し組み合わせることができる。
【0041】
加えて、本発明の方法に使用されるヒトIL-23特異的抗体は、ヒト生殖系列軽鎖フレームワークを含み得る。特定の実施形態では、軽鎖生殖系列配列は、A1、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4、及びO8を含むが、これらに限定されない、ヒトVK配列から選択される。ある特定の実施形態では、本軽鎖ヒト生殖系列フレームワークは、V1-11、V1-13、V1-16、V1-17、V1-18、V1-19、V1-2、V1-20、V1-22、V1-3、V1-4、V1-5、V1-7、V1-9、V2-1、V2-11、V2-13、V2-14、V2-15、V2-17、V2-19、V2-6、V2-7、V2-8、V3-2、V3-3、V3-4、V4-1、V4-2、V4-3、V4-4、V4-6、V5-1、V5-2、V5-4、及びV5-6から選択される。
【0042】
他の実施形態では、本発明の方法に使用されるヒトIL-23特異的抗体は、ヒト生殖細胞系列重鎖フレームワークを含み得る。特定の実施形態では、本重鎖ヒト生殖系列フレームワークは、VH1-18、VH1-2、VH1-24、VH1-3、VH1-45、VH1-46、VH1-58、VH1-69、VH1-8、VH2-26、VH2-5、VH2-70、VH3-11、VH3-13、VH3-15、VH3-16、VH3-20、VH3-21、VH3-23、VH3-30、VH3-33、VH3-35、VH3-38、VH3-43、VH3-48、VH3-49、VH3-53、VH3-64、VH3-66、VH3-7、VH3-72、VH3-73、VH3-74、VH3-9、VH4-28、VH4-31、VH4-34、VH4-39、VH4-4、VH4-59、VH4-61、VH5-51、VH6-1、及びVH7-81から選択される。
【0043】
特定の実施形態では、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域は、フレームワーク領域、又はフレームワーク領域の少なくとも一部分(例えば、FR2及びFR3などの2又は3つの小領域を含む)を含む。ある特定の実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3、又はFRL4は、完全ヒトである。他の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3、又はFRH4は、完全ヒトである。いくつかの実施形態では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3、又はFRL4は、生殖系列配列(例えば、ヒト生殖系列)であるか、又は特定のフレームワークのためのヒトコンセンサス配列(上述の既知のヒトIg配列の供給源で容易に入手可能である)を含む。他の実施形態では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3、又はFRH4は、生殖系列配列(例えば、ヒト生殖系列)であるか、又は特定のフレームワークのためのヒトコンセンサス配列を含む。好ましい実施形態では、フレームワーク領域は、完全なヒトフレームワーク領域である。
【0044】
本発明の抗体のヒト化又は遺伝子操作は、Winter(Jones et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988))、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号、同第4816567号、国際出願第US98/16280号、同第US96/18978号、同第US91/09630号、同第US91/05939号、同第US94/01234号、国際出願第GB89/01334号、同第GB91/01134号、同第GB92/01755号、国際公開第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号、欧州特許第229246号(各々参照により全体が明細書に組み込まれ、その中で引用される文献を含む)に記載されるものなどであるが、これらに限定されない、任意の既知の方法を使用して行うことができる。
【0045】
ある特定の実施形態では、抗体は、改変された(例えば、変異を導入された)Fc領域を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Fc領域は、抗体のエフェクター機能を低減又は増強するように改変されている。いくつかの実施形態では、Fc領域は、IgM、IgA、IgG、IgE、又は他のアイソタイプから選択されるアイソタイプである。あるいは、又は加えて、アミノ酸修飾と、IL-23結合分子のFc領域のC1q結合及び/又は補体依存性細胞毒性機能を変更する1つ又は2つ以上の更なるアミノ酸修飾とを組み合わせることが有用であり得る。特に関心のある出発ポリペプチドは、C1qに結合するものであってもよく、補体依存性細胞毒性(complement dependent cytotoxicity、CDC)を示すものである。既存のC1q結合活性を有し、任意選択で、CDCを媒介する能力を更に有するポリペプチドは、これらの活性のうちの一方又は両方が増進するように修飾されてもよい。C1qを改変する、かつ/又はその補体依存性細胞傷害機能を修飾するアミノ酸修飾は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第0042072号に記載されている。
【0046】
上記に開示されるように、例えば、C1q結合及び/又はFcγR結合を修飾し、それにより、補体依存性細胞毒性(CDC)活性及び/又は抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)活性を変化させることによって、変更されたエフェクター機能を有する本発明のヒトIL-23特異的抗体のFc領域を設計することができる。「エフェクター機能」は、(例えば、対象における)生物学的活性を活性化する又は低減させる役割を果たす。エフェクター機能の例としては、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられるが、これらに限定されない。かかるエフェクター機能は、Fc領域が、結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と結合することを必要とする場合があり、多種多用な試験法(例えば、Fc結合アッセイ、ADCCアッセイ、CDCアッセイなど)を使用して評価することができる。
【0047】
例えば、改善されたC1q結合及び改善されたFcγRIII結合を有する(例えば、改善されたADCC活性及び改善されたCDC活性の両方を有する)ヒトIL-23(又は抗IL-23)抗体のバリアントFc領域を生成することができる。あるいは、エフェクター機能を低減又は除去することが所望である場合、変異体Fc領域は、CDC活性を低減させるよう及び/又はADCC活性を低減させるよう修飾することができる。他の実施形態では、これらの活性のうちの1つのみが増強されてもよく、任意選択で、同時に他の活性が低減されてもよい(例えば、改善されたADCC活性と低減されたCDC活性を有するFc領域変異体、及びこの逆のFc領域変異体を生成するため)。
【0048】
胎児性Fc受容体(neonatal Fc receptor、FcRn)との相互作用を変化させ、それらの薬物動態特性を改善するように、遺伝子操作においてFc変異を導入してもよい。FcRnへの結合を改善したヒトFc変異体の収集は、説明されている(Shields et al.,(2001).High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for FcγRI,FcγRII、FcγRIII,and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the FCγR、J.Biol.Chem.276:6591-6604)。
【0049】
別のタイプのアミノ酸置換は、ヒトIL-23特異的抗体のFc領域のグリコシル化パターンを改変するように働く。Fc領域のグリコシル化は、典型的に、N結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。O結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンが使用される場合もある。アスパラギン側鎖ペプチド配列への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列は、アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニンであり、ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である。このため、ポリペプチド中にこれらのいずれかのペプチド配列が存在すると、潜在的なグリコシル化部位がもたらされる。
【0050】
グリコシル化パターンは、例えば、ポリペプチドに見られる1つ以上のグリコシル化部位を欠失させること及び/又はポリペプチド中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加することによって改変され得る。ヒトIL-23特異的抗体のFc領域へのグリコシル化部位の付加は、上記のトリペプチド配列のうちの1つ又は2つ以上を含むようにアミノ酸配列を改変することによって首尾よく達成される(N結合型グリコシル化部位の場合)。代表的なグリコシル化変異体は、重鎖の残基Asn297のアミノ酸置換を有する。この改変は、元のポリペプチド配列への1つ又は2つ以上のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれらによる置換によって行われてもよい(O結合型グリコシル化部位の場合)。加えて、Asn 297をAlaに変更すると、グリコシル化部位の1つを除去することができる。
【0051】
ある特定の実施形態では、本発明のヒトIL-23特異的抗体は、GnT IIIがGlcNAcをヒトIL-23抗体に付加するように、ベータ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnT III)を発現する細胞において発現される。かかる様式で抗体を産生するための方法は、国際公開第99/54342号、同第03/011878号、特開第2003/0003097(A1)号、及びUmana et al.,Nature Biotechnology,17:176-180,Feb.1999に提供されており、これらは全て、参照によりそれらの全体が本明細書に明確に組み込まれる。
【0052】
抗IL-23抗体はまた、任意選択で、本明細書に記載のように及び/又は当該技術分野において既知であるように、ヒト抗体のレパートリーを生成することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、非ヒト霊長類など)の免疫化によって生成することもできる。ヒト抗IL-23抗体を産生する細胞は、本明細書に記載の方法のような好適な方法を使用して、かかる動物から単離し、不死化してもよい。
【0053】
ヒト抗原に結合するヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニックマウスは、既知の方法(例えば、これらに限定されないが、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、Lonbergらに発行された米国特許第5,770,428号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、同第5,625,126号、同第5,625,825号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、及び同第5,789,650号、Jakobovitsらの国際公開第98/50433号、Jakobovitsらの国際公開第98/24893号、Lonbergらの国際公開第98/24884号、Lonbergらの国際公開第97/13852号、Lonbergらの国際公開第94/25585号、Kucherlapateらの国際公開第96/34096号、Kucherlapateらの欧州特許第0463151(B1)号、Kucherlapateらの欧州特許0710719(A1)号、Suraniらの米国特許第5,545,807号、Bruggemannらの国際公開第90/04036号、Bruggemannらの欧州特許第0438474(B1)号、Lonbergらの欧州特許第0814259(A2)号、Lonbergらの英国特許第2272440(A)号、Lonberg et al.Nature 368:856-859(1994),Taylor et al.,Int.Immunol.6(4)579-591(1994),Green et al,Nature Genetics 7:13-21(1994),Mendez et al.,Nature Genetics 15:146-156(1997),Taylor et al.,Nucleic Acids Research 20(23):6287-6295(1992),Tuaillon et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90(8)3720-3724(1993)、Lonberg et al.,Int Rev Immunol 13(1):65-93(1995)、及びFishwald et al.,Nat Biotechnol 14(7):845-851(1996))によって生成することができる。概して、これらのマウスは、機能的に再構成された、又は機能的な再構成を受けることができる少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座に由来するDNAを含む、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。かかるマウスの内因性免疫グロブリン遺伝子座を破壊又は欠失させて、マウスの、内因性遺伝子によりコードされている抗体の産生能を除去することができる。
【0054】
類似のタンパク質又は断片への特異的結合についての抗体のスクリーニングは、ペプチドディスプレイライブラリを使用して首尾よく達成することができる。本方法は、所望の機能又は構造をもつ個々のメンバーについてペプチドの大規模コレクションをスクリーニングすることを含む。ペプチドディスプレイライブラリの抗体スクリーニングは当該技術分野において周知である。ディスプレイされたペプチド配列は、3~5000又はそれ以上のアミノ酸長、高頻度で5~100アミノ酸長、多くの場合、約8~25アミノ酸長であることができる。ペプチドライブラリを作成する直接化学合成法に加えて、いくつかの組換えDNA方法も記述されている。1つのタイプは、バクテリオファージ又は細胞の表面上でのペプチド配列のディスプレイを含む。各バクテリオファージ又は細胞は、特定のディスプレイされたペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含有する。かかる方法は、国際公開第91/17271号、同第91/18980号、同第91/19818号、及び同第93/08278号に記載されている。
【0055】
ペプチドライブラリを作成するための他のシステムは、インビトロでの化学合成法及び組換え法の両方の態様を有する。国際公開第92/05258号、同第92/14843号、及び同第96/19256号を参照されたい。米国特許第5,658,754号及び同第5,643,768号も参照されたい。ペプチドディスプレイライブラリ、ベクター、及びスクリーニングキットは、Invitrogen(Carlsbad,CA)及びCambridge antibody Technologies(Cambridgeshire,UK)などの供給業者から市販されている。例えば、Enzonに譲渡された米国特許第4704692号、同第4939666号、同第4946778号、同第5260203号、同第5455030号、同第5518889号、同第5534621号、同第5656730号、同第5763733号、同第5767260号、同第5856456号、Dyaxに譲渡された米国特許第5223409号、同第5403484号、同第5571698号、同第5837500号、Affymaxに譲渡された米国特許第5427908号、同第5580717号、Cambridge antibody Technologiesに譲渡された米国特許第5885793号、Genentechに譲渡された米国特許第5750373号、Xomaに譲渡された米国特許第5618920号、同第5595898号、同第5576195号、同第5698435号、同第5693493号、同第5698417号、上記のColligan、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい。上記特許及び刊行物は各々、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
本発明の方法に使用される抗体は、このような抗体を乳中に産生するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギなどのトランスジェニック動物又は哺乳動物を提供するために、核酸をコードする少なくとも1つの抗IL23抗体を使用して調製することもできる。かかる動物を、既知の方法を使用して提供することができる。例えば、限定されるものではないが、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,827,690号、同第5,849,992号、同第4,873,316号、同第5,849,992号、同第5,994,616号、同第5,565,362号、同第5,304,489号などを参照されたい。
【0057】
本発明の方法に使用される抗体は、植物部分又はそれから培養された細胞において、そのような抗体、特定の部分、又は変異体を産生するトランスジェニック植物及び培養された植物細胞(例えば、タバコ及びトウモロコシであるが、これらに限定されない)を提供するために、核酸をコード化する少なくとも1つの抗IL23抗体を使用して更に調製することができる。非限定的な例として、例えば、誘導プロモータを用い、組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉をうまく使用して、大量の組換えタンパク質が提供されてきた。例えば、Cramer et al.,Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95~118(1999)及びその中で引用される文献を参照されたい。また、トランスジェニックトウモロコシは、他の組換え系において産生されたタンパク質又は天然源から精製されたタンパク質に等しい生物学的活性を有する哺乳動物タンパク質を、商業生産レベルで発現させるために使用されてきた。例えば、Hood et al.,Adv.Exp.Med.Biol.464:127-147(1999)及びその中で引用される文献を参照されたい。抗体は、タバコ種子及びポテト塊茎を含む、単鎖抗体(single chain antibody、scFv)などの抗体断片を含むトランスジェニック植物の種子からも大量に生産されている。例えば、Conrad et al.,Plant Mol.Biol.38:101-109(1998)及びその中で引用される文献を参照されたい。したがって、本発明の抗体は、既知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用して生産することもできる。例えば、Fischer et al.,Biotechnol.Appl.Biochem.30:99-108(Oct.,1999)、Ma et al.,Trends Biotechnol.13:522-7(1995)、Ma et al.,Plant Physiol.109:341-6(1995);Whitelam et al.,Biochem.Soc.Trans.22:940-944(1994);及びこれらの中で引用される文献も参照されたい。上記の文献は各々、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0058】
本発明の方法に使用される抗体は、広範囲にわたる親和性(KD)でヒトIL-23に結合することができる。好ましい実施形態では、ヒトmAbは、任意選択で、高い親和性でヒトIL-23に結合することができる。例えば、ヒトmAbは、ヒトIL-23を約10-7M以下、例えば、限定されないが、0.1~9.9(又はその中の任意の範囲若しくは値)×10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13、又はその中の任意の範囲若しくは値などのKDで結合することができる。
【0059】
抗原に対する抗体の親和性又は結合活性は、任意の好適な方法を用いて実験により求めることができる。(例えば、Berzofsky,et al.,「Antibody-Antigen Interactions,」Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,NY(1992)、及び本明細書に記載される方法を参照されたい)。特定の抗体抗原相互作用について測定される親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)下で測定された場合に異なることができる。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、KD、Ka、Kd)の測定は、好ましくは、抗体及び抗原の標準化溶液、及び本明細書で記載される緩衝剤などの標準化緩衝剤を用いて行われる。
【0060】
核酸分子
本明細書に開示される配列の中でもとりわけ、例えば、本明細書に記載される軽鎖若しくは重鎖の可変又はCDR領域のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸の少なくとも70~100%をコードするヌクレオチド配列、それらの特定の断片、バリアント、若しくはコンセンサス配列、又はこれらの配列のうちの少なくとも1つを含む寄託ベクターといった本明細書に提供される情報を使用して、少なくとも1つの抗IL-23抗体をコードする本発明の核酸分子は、本明細書に記載されるか又は当該技術において既知の方法を使用して得ることができる。
【0061】
本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNA、若しくは任意の他の形態などのRNAの形態、又はクローニングにより得られる若しくは合成的に生成されるcDNA及びゲノムDNAを含むがこれらに限定されないDNAの形態、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。DNAは、3本鎖、2本鎖若しくは1本鎖、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。DNA又はRNAの少なくとも1本の鎖の任意の部分は、センス鎖としても知られるコード鎖であってもよいし、又はアンチセンス鎖と呼ばれる、非コード鎖であってもよい。
【0062】
本発明の方法において使用される単離された核酸分子は、任意選択で1つ以上のイントロン、例えば、限定されるものではないが、少なくとも1つの重鎖若しくは軽鎖のCDR1、CDR2、及び/又はCDR3などの少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特定の部分を有するオープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)を含む核酸分子、抗IL-23抗体又は可変領域のコード配列を含む核酸分子、並びに上述のものとは実質的に異なるヌクレオチド配列を含むが、遺伝子コードの縮重のために、本明細書に記載される及び/又は当該技術分野で既知である少なくとも1つの抗IL-23抗体を依然としてコードする核酸分子を含み得る。当然のことながら、遺伝子コードは、当該技術分野において周知である。したがって、本発明の方法で使用される特異的な抗IL-23抗体をコードするそのような変性核酸変異体を作製することは、当業者には日常的であるだろう。例えば、上記のAusubelらを参照されたい。かかる核酸変異体は、本発明に含まれる。単離された核酸分子の非限定的な例としては、それぞれ、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3をコードする核酸が挙げられる。
【0063】
本明細書に記載されるように、抗IL-23抗体をコードする核酸を含む核酸分子としては、それ自体で抗体断片のアミノ酸配列をコードするもの、抗体の全長若しくは抗体の一部分をコードする配列、抗体、断片若しくは部分のコード配列、並びに追加の配列、例えば、少なくとも1つのイントロンなど、前述の追加のコード配列を伴って、又は伴わずに、非コード5’及び3’配列、例えば、スプライシング及びポリアデニル化シグナル(例えば、mRNAのリボソーム結合及び安定性)を含む、転写、mRNAプロセシングにおいて役割を果たす転写された非翻訳配列を含むが、これに限定されない、追加の非コード配列と共に、少なくとも1つのシグナルリーダー若しくは融合ペプチドのコード配列、追加のアミノ酸、例えば、追加の機能を提供するアミノ酸をコードする追加のコード配列を挙げることができるが、これらに限定されない。したがって、抗体をコードする配列はマーカー配列に融合させることができ、例えば、マーカー配列は、これを融合させた抗体断片又は部分を含む抗体の精製を促進するペプチドをコードする配列である。
【0064】
本明細書に記載のポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド
本発明の方法は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドに対して、選択的なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする単離された核酸を使用する。したがって、本実施形態のポリヌクレオチドは、かかるポリヌクレオチドを含む核酸を単離、検出、及び/又は定量するために使用することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを使用して、寄託されたライブラリにおける部分長又は完全長クローンを同定、単離、又は増幅することができる。いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドは、単離された、又はそうでなければヒト若しくは哺乳動物の核酸ライブラリのcDNAに相補的な、ゲノム配列又はcDNA配列である。
【0065】
好ましくは、cDNAライブラリは完全長配列の少なくとも80%、好ましくは完全長配列の少なくとも85%又は90%、より好ましくは完全長配列の少なくとも95%を含む。このcDNAライブラリは、稀な配列の発現量を増大させるよう正規化することができる。相補配列に対する配列同一性が低い配列を使用する、低又は中ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が典型的なものであるが、これに限定されない。同一性がより高い配列には、任意選択で、中及び高ストリンジェンシーの条件を使用することができる。低ストリンジェンシー条件は、約70%の配列同一性をもつ配列の選択的ハイブリダイゼーションを可能にし、オーソロガス又はパラロガス配列を特定同定するために利用できる。
【0066】
任意選択で、ポリヌクレオチドは、抗体の少なくとも一部分をコードする。ポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドに対する選択的ハイブリダイゼーションに利用することができる核酸配列を包含する。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のAusubel、上記のColliganを参照されたい。
【0067】
核酸の構築
単離された核酸は、当該技術分野において周知であるように、(a)組換え方法、(b)合成技術、(c)精製技術、及び/又は(d)これらの組み合わせを使用して作製することができる。
【0068】
核酸には、本発明のポリヌクレオチドに加えて、都合よく配列を含ませることができる。例えば、1つ又は2つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含むマルチクローニングサイトを核酸に挿入して、ポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。また、翻訳可能な配列を挿入して、本発明の翻訳されたポリヌクレオチドの単離に役立てることができる。例えば、ヘキサヒスチジンマーカー配列は、本発明のタンパク質を精製するのに便利な手段を提供する。本発明の核酸(コード配列を除く)は、任意選択で、本発明のポリヌクレオチドのクローニング及び/又は発現のためのベクター、アダプター、又はリンカーである。
【0069】
かかるクローニング配列及び/又は発現配列に追加の配列を付加して、クローニング及び/又は発現におけるそれらの機能を最適化すること、ポリヌクレオチドの単離に役立てること、又は細胞へのポリヌクレオチドの導入を改善することができる。クローン化ベクター、発現ベクター、アダプター、及びリンカーの使用は、当該技術分野において周知である。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい)
【0070】
核酸を構築するための組換え方法
RNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組み合わせなどの単離された核酸組成物は、当業者に既知の任意の数のクローニング方法を用いて生物源から得ることができる。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが、cDNA又はゲノムDNAライブラリ内の所望の配列の同定に使用される。RNAの単離、並びにcDNA及びゲノムライブラリの構築は、当業者には周知である。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい)
【0071】
核酸のスクリーニング及び単離方法
本明細書に開示されているものなど、本発明の方法に使用されるポリヌクレオチドの配列に基づいたプローブを使用して、cDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることができる。プローブを使用して、ゲノムDNA又はcDNA配列にハイブリダイズさせて、同じ又は異なる生体の相同遺伝子を単離することができる。当業者であれば、アッセイに様々な度合のハイブリダイゼーションストリンジェンシーを用いることができ、ハイブリダイゼーション又は洗浄媒質のいずれかがストリンジェントであり得ることを理解するであろう。ハイブリダイゼーション条件がストリンジェントになるほど、二重鎖の形成が生じる際のプローブと標的との間の相補性の度合が大きくなるはずである。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pH、及びホルムアミドなどの部分的に変性する溶媒の存在のうちの1つ又は2つ以上によって制御され得る。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、例えば、0%~50%の範囲内でのホルムアミド濃度の操作により反応溶液の極性を変えることにより首尾よく変更される。検出可能な結合に必要とされる相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒質及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーによって異なる。相補性の程度は、最適には100%、又は70~100%、又はその中の任意の範囲若しくは値である。しかしながら、プローブ及びプライマ中の配列のわずかな違いは、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄媒質のストリンジェンシーを低減させることで埋め合わせることができることを理解すべきである。
【0072】
RNA又はDNAの増幅方法は当該技術分野において周知であり、本明細書に提示される教示及び指針に基づいて、過度の実験なしに、本発明に従って使用することができる。
【0073】
DNA又はRNA増幅の既知の方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)及び関連する増幅プロセス(例えば、Mullisらの米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号、Taborらの米国特許第4,795,699号及び同第4,921,794号、Innisの米国特許第5,142,033号、Wilsonらの米国特許第5,122,464号、Innisの米国特許第5,091,310号、Gyllenstenらの米国特許第5,066,584号、Gelfandらの米国特許第4,889,818号、Silverらの米国特許第4,994,370号、Biswasの米国特許第4,766,067号、Ringoldの米国特許第4,656,134号を参照されたい)、及び二本鎖DNA合成のためのテンプレートとして標的配列に対してアンチセンスRNAを使用するRNA媒介増幅(Malekらの米国特許第5,130,238号、商標名NASBA)が挙げられるが、これらに限定されず、これらの文献の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。(例えば、上記のAusubel、又は上記のSambrookを参照されたい。)
【0074】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、ゲノムDNA又はcDNAライブラリから直接、本発明の方法に使用されるポリヌクレオチド及び関連する遺伝子の配列を増幅することができる。PCR及び他のインビトロ増幅方法はまた、例えば、発現すべきタンパク質をコードする核酸配列をクローニングすること、サンプル中の所望のmRNAの存在を検出するため、核酸の配列決定のため、又は他の目的のためのプローブとして用いる核酸を作製することに関し有用であり得る。インビトロでの増幅方法によって当業者を導くのに十分な技術の例は、上記のBerger、上記のSambrook、及び上記のAusubel、並びにMullisらの米国特許第4,683,202号(1987)、及びInnis,et al.,PCR Protocols A Guide to Methods and Applications,Eds.,Academic Press Inc.,San Diego,CA(1990)に見られる。ゲノムPCR増幅用の市販キットは技術分野において既知である。例えば、Advantage-GC Genomic PCR Kit(Clontech)を参照されたい。加えて、例えば、T4遺伝子32タンパク質(Boehringer Mannheim)を用いて、長いPCR産物の収率を改善することができる。
【0075】
核酸を構築するための合成方法
本発明の方法に使用される単離された核酸は、既知の方法による直接化学合成によって調製することもできる(例えば、上記のAusubelらを参照されたい)。化学合成は、概して、相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、又は1本鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼとの重合によって、2本鎖DNAに変換可能な1本鎖オリゴヌクレオチドを産生する。当業者であれば、DNAの化学合成は約100又はそれ以上の塩基の配列に限定され得るが、より長い配列は、より短い配列のライゲーションによって得ることができることを認識する。
【0076】
組換え発現カセット
本発明は核酸を含む組換え発現カセットを使用する。核酸配列、例えば本発明の方法に使用される抗体をコードするcDNA又はゲノム配列を使用して、少なくとも1つの所望の宿主細胞に導入することができる組換え発現カセットを構築することができる。組換え発現カセットは、典型的には、意図される宿主細胞においてポリヌクレオチドの転写を導く、転写開始調節配列に操作可能に連結される、ポリヌクレオチドを含む。異種及び非異種(すなわち、内因性)プロモータの両方を利用して、核酸の発現を導くことができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、プロモータ、エンハンサ、又は他の要素として機能する単離された核酸を、ポリヌクレオチドの発現を上方又は下方調節するために、本発明のポリヌクレオチドの非異種形の適切な位置(上流、下流、又はイントロン内)に導入することができる。例えば、変異、欠失、及び/又は置換により、インビボ又はインビトロで内因性プロモータを変化させることができる。
【0078】
ベクター及び宿主細胞
本発明はまた、単離された核酸分子を含むベクター、組換えベクターを用いて遺伝子操作された宿主細胞、及び当該技術分野において周知である組換え技術による少なくとも1つの抗IL-23抗体の産生に関する。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のSambrookら、上記のAusubelらを参照されたい。
【0079】
ポリヌクレオチドは、任意選択で、宿主の増殖についての選択マーカーを含有するベクターに結合することができる。概して、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物などの沈殿物中に、又は荷電脂質との複合体中に導入される。ベクターがウイルスである場合は、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでこれをパッケージングし、その後、宿主細胞内に形質導入することができる。
【0080】
DNA挿入物は、適切なプロモータに機能的に連結されるべきである。発現コンストラクトは、転写開始部位、転写終結部位、及び転写された領域内では翻訳のためのリボソーム結合部位を更に含む。コンストラクトにより発現した成熟した転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきmRNAの最後に適切に位置する開始及び終止コドン(例えば、UAA、UGA、又はUAG)で始まる翻訳を含み、哺乳動物又は真核生物細胞の発現ではUAA及びUAGが好ましい。
【0081】
発現ベクターが少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましいが、任意選択である。かかるマーカーは、例えば、真核細胞培養のためのメトトレキサート(methotrexate、MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase(DHFR、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、同第4,656,134号、同第4,956,288号、同第5,149,636号、同第5,179,017号、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、ミコフェノール酸、又はグルタミンシンセターゼ(glutamine synthetase、GS、米国特許第5,122,464号、同第5,770,359号、同第5,827,739号)抵抗性遺伝子、並びにE.coli及び他の細菌又は原核生物における培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン抵抗性遺伝子を含むが、これらに限定されない(上記の特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。上記の宿主細胞に対して適切な培養培地及び条件は、技術分野において既知である。好適なベクターは、当業者にとって容易に明白となる。宿主細胞へのベクタコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染又は他の既知の方法により影響を受け得る。かかる方法については、上記のSambrook、第1~4章及び第16~18章、上記のAusubel、第1、9、13、15、16章などの当該技術分野に記載されている。
【0082】
本発明の方法に使用される少なくとも1つの抗体は、融合タンパク質などの修飾された形態で発現され得、分泌シグナルだけでなく、追加の異種機能領域も含むことができる。例えば、追加アミノ酸の領域、特に荷電アミノ酸を抗体のN末端に追加して、精製中又は後続の処理及び保存中に、宿主細胞における安定性及び持続性を改善することができる。また、ペプチド部分を本発明の抗体に追加して、精製を促進することもできる。抗体又は少なくとも1つのその断片の最終調製前に、かかる領域を除去することができる。かかる方法は、上記のSambrook、第17.29~17.42章及び第18.1~18.74章、上記のAusubel、第16、17、及び18章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0083】
当業者であれば、本発明の方法に使用されるタンパク質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現系について精通している。あるいは、核酸は、抗体をコードする内因性DNAを含有する宿主細胞内で、(操作により)オンに切り替えることにより、宿主細胞中で発現させることができる。かかる方法は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号、及び同第5,733,761号に記載されているように、当該技術分野において周知である。
【0084】
抗体、その特定の部分又は変異体の産生に有用な細胞培養物の一例は、哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞系は、多くの場合細胞からなる単層形態を取るが、哺乳動物細胞の懸濁液又はバイオリアクターを使用することもできる。無傷なグリコシル化タンパク質を発現可能ないくつかの好適な宿主細胞株が当該技術分野において開発されており、これにはCOS-1(例えばATCC CRL 1650)、COS-7(例えばATCC CRL-1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL-10)、CHO(例えばATCC CRL1610)及びBSC-1(例えばATCC CRL-26)細胞株、Cos-7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0-Ag14、293細胞、HeLa細胞などが挙げられ、これらは例えば、American Type Culture Collection(Manassas,Va)(www.atcc.org)から容易に入手できる。好ましい宿主細胞としては、骨髄腫及びリンパ腫細胞などのリンパ系に由来する細胞が挙げられる。特に好ましい宿主細胞は、P3X63Ag8.653細胞(ATCC寄託番号CRL-1580)及びSP2/0-Ag14細胞(ATCC寄託番号CRL-1851)である。特に好ましい実施形態では、組換え細胞は、P3X63Ab8.653又はSP2/0-Ag14細胞である。
【0085】
これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモータ(例えば、後期又は初期SV40プロモータ、CMVプロモータ(米国特許第5,168,062号、同第5,385,839号)、HSV tkプロモータ、pgk(ホスホグリセレートキナーゼ)プロモータ、EF-1アルファプロモータ(米国特許第5,266,491号)、少なくとも1つのヒト免疫グロブリンプロモータ、エンハンサ、及び/又はリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えば、SV40ラージT Agポリ付加部位)、並びに転写終結配列などのプロセシング情報部位などであるが、これらに限定されない、発現制御配列のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。例えば、上記のAusubelら、上記のSambrookらを参照されたい。本発明の核酸又はタンパク質の生成に有用なその他の細胞は周知である、並びに/あるいは例えば、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas(www.atcc.org)又はその他の周知の供給源若しくは商業的供給源から入手可能である。
【0086】
真核宿主細胞が利用される場合、典型的には、ベクター内にポリアデニル化又は転写終結配列が組み込まれる。終結配列の一例は、ウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写の正確なスプライシングのための配列も、同様に含むことができる。スプライシング配列の一例は、SV40由来のVP1イントロンである(Sprague,et al.,J.Virol.45:773-781(1983))。加えて、当該技術分野において既知であるように、宿主細胞内の複製を制御するための遺伝子配列をベクター内に組み込むことができる。
【0087】
抗体の精製
抗IL-23抗体は、プロテインA精製、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーが挙げられるがこれらに限定されない周知の方法により、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、「HPLC」)を精製に利用することもできる。例えば、各々参照により全体が本明細書に組み込まれる、Colligan,Current Protocols in Immunology又はCurrent Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY(1997-2001)の、例えば、第1、4、6、8、9、10章を参照されたい。
【0088】
本発明の方法において使用される抗体としては、天然に精製された産物、化学合成手順の産物、並びに例えば、酵母、高等植物、昆虫、及び哺乳動物細胞を含む真核宿主から組換え技術により産生された産物が挙げられる。組換え生産工程において利用される宿主に応じて、抗体は、グリコシル化されてもグリコシル化されなくてもよいが、グリコシル化されるのが好ましい。かかる方法は、全て参照により全体が本明細書に組み込まれる、上記のSambrook、節17.37~17.42、上記のAusubel、第10、12、13、16、18、及び20章、上記のColligan,Protein Science、第12~14章などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載されている。
【0089】
抗IL-23抗体。
本発明による抗IL-23抗体は、抗体に組み込むことができる、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分、例えば、限定されるものではないが、少なくとも1つのリガンド結合部分(ligand binding portion、LBP)、例えば、限定されるものではないが、重鎖若しくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部分、重鎖又は軽鎖の可変領域、フレームワーク領域(例えば、FR1、FR2、FR3、FR4、又はそれらの断片、更に任意選択で、少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を含む)、重鎖若しくは軽鎖の定常領域(例えば、少なくとも1つのCH1、ヒンジ1、ヒンジ2、ヒンジ3、ヒンジ4、CH2、若しくはCH3、又はそれらの断片、更に任意選択で、少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を含む)、又はそれらの任意の部分を含む、任意のタンパク質又はペプチド含有分子を含む。抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類、又はこれらの任意の組み合わせなどであるが、これらに限定されない、任意の哺乳動物を含むか、又はそれに由来することができる。
【0090】
本発明の方法に使用される単離された抗体は、任意の好適なポリヌクレオチドによってコードされる本明細書に開示される抗体のアミノ酸配列、又は任意の単離若しくは調製された抗体を含む。好ましくは、ヒト抗体又は抗原結合断片は、ヒトIL-23に結合し、それにより、タンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を部分的又は実質的に中和する。少なくとも1つのIL-23タンパク質又は断片の少なくとも1つの生物学的活性を部分的に又は好ましくは実質的に中和する、抗体、又はその特定の部分若しくは変異体は、タンパク質又は断片に結合し、それによりIL-23受容体へのIL-23の結合を介して、又は他のIL-23依存性若しくは媒介型機序を介して、媒介される活性を阻害することができる。本明細書で使用する場合、「中和抗体」という用語は、アッセイに応じて、約20~120%、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%又はそれ以上、IL-23依存性活性を阻害できる抗体を指す。IL-23依存性活性を阻害する抗IL-23抗体の能力は、好ましくは、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知の、少なくとも1つの好適なIL-23タンパク質又は受容体アッセイによって評価される。ヒト抗体は、任意のクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)又はアイソタイプのものであってもよく、カッパ又はラムダ軽鎖を含むことができる。一実施形態において、ヒト抗体は、IgG重鎖又は定義された断片、例えば、アイソタイプ、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4(例えば、γ1、γ2、γ3、γ4)のうちの少なくとも1つを含む。このタイプの抗体は、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知である、少なくとも1つのヒト軽鎖(例えば、IgG、IgA、及びIgM)導入遺伝子を含む、トランスジェニックマウス又は他の非ヒトトランスジェニック哺乳動物を利用することによって調製することができる。別の実施形態では、抗IL-23ヒト抗体は、IgG1重鎖と、IgG1軽鎖とを含む。
【0091】
抗体は、少なくとも1つのIL-23タンパク質、サブユニット、断片、部分、又はそれらの任意の組み合わせに特異的な少なくとも1つの特定のエピトープに結合する。本少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の少なくとも一部分を含む少なくとも1つの抗体結合領域を含むことができ、このエピトープは好ましくは、タンパク質の少なくとも1つの細胞外部分、可溶性部分、親水性部分、外側部分、又は細胞質部分で構成されている。
【0092】
概して、ヒト抗体又は抗原結合断片は、少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)又は少なくとも1つの重鎖可変領域の変異体、及び少なくとも1つのヒト相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)又は少なくとも1つの軽鎖可変領域の変異体を含む抗原結合領域を含む。CDR配列は、ヒト生殖細胞系列型配列に由来するものでも、生殖細胞系列型配列に厳密に一致するものでもよい。例えば、元の非ヒトCDRに由来する合成ライブラリからのCDRを使用することができる。これらのCDRは、元の非ヒト配列に由来する保存的置換の組込みによって形成され得る。別の特定の実施形態では、抗体又は抗原結合部分又は変異体は、対応するCDR1、2、及び/又は3のアミノ酸配列を有する少なくとも1つの軽鎖CDR(すなわち、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3)の少なくとも一部分を含む抗原結合領域を有することができる。
【0093】
かかる抗体は、組換えDNA技術に関する従来技術を使用して抗体をコードする(すなわち、1つ又は2つ以上の)核酸分子を調製して発現させることによって、又は任意の他の好適な方法を使用することによって、従来技術を使用して抗体の種々の部分(例えば、CDR、フレームワーク)を一緒に化学的に結合させることにより調製することができる。
【0094】
抗IL-23特異的抗体は、画定されたアミノ酸配列を有する重鎖又は軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、好ましい実施形態では、抗IL-23抗体は、任意選択的に配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のうちの少なくとも1つ、及び/又は任意選択的に配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含む。例えば、好ましい実施形態では、抗IL-23抗体は、任意選択的に配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域のうちの少なくとも1つ、及び/又は任意選択的に配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域のうちの少なくとも1つを含む。ヒトIL-23に結合し、かつ、規定された重鎖又は軽鎖可変領域を含む抗体は、当該技術分野で既知及び/又は本明細書に記載の、ファージディスプレイ(Katsube,Y.,et al.,Int J Mol.Med,1(5):863-868(1998))又はトランスジェニック動物を採用する方法など、好適な方法を使用して調製することができる。例えば、機能的に再配列されたヒト免疫グロブリン重鎖導入遺伝子と、機能的な再配列を受けることが可能なヒト免疫グロブリン軽鎖遺伝子座からのDNAを含む導入遺伝子と、を含むトランスジェニックマウスを、ヒトIL-23又はその断片で免疫化して抗体の生成を誘発することができる。所望である場合、抗体産生細胞を単離することができ、本明細書に記載され、かつ/又は当該技術分野において既知である、ハイブリドーマ又は他の不死化抗体産生細胞を調製することができる。あるいは、抗体、特定の部分又は変異体は、好適な宿主細胞内で、コード核酸又はその一部分を使用して発現させることができる。
【0095】
本発明はまた、本明細書に記載されるアミノ酸配列と実質的に同じである配列中のアミノ酸を含む抗体、抗原結合断片、免疫グロブリン鎖及びCDRに関する。好ましくは、かかる抗体又は抗原結合断片及びかかる鎖若しくはCDRを含む抗体は、高い親和性(例えば、約10-9M以下のKD)でヒトIL-23と結合することができる。本明細書に記載されている配列と実質的に同じであるアミノ酸配列としては、保存的アミノ酸置換並びにアミノ酸欠失及び/又は挿入を含む配列が挙げられる。保存的アミノ酸置換は、第1のアミノ酸のものに類似する化学的及び/又は物理的特性(例えば、電荷、構造、極性、疎水性/親水性)を有する第2のアミノ酸で、第1のアミノ酸を置換することを指す。保存的置換は、限定されるものではないが、1個のアミノ酸を、以下の群内の別のアミノ酸で置き換えることを含む:リジン(K)、アルギニン(R)、及びヒスチジン(H);アスパラギン酸塩(D)及びグルタミン酸塩(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、D、及びE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)、及びグリシン(G);F、W、及びY;C、S、及びT。
【0096】
アミノ酸コード
本発明の抗IL-23抗体を構成するアミノ酸は、多くの場合略字表記される。アミノ酸表記は、その一文字コード、その三文字コード、名称、又は3つのヌクレオチドのコドンによりアミノ酸を表記することにより示すことができ、当該技術分野においてよく理解されている(Alberts,B.ら、「Molecular Biology of The Cell」第3版、Garland Publishing,Inc.,New York(1994)を参照されたい)。
【0097】
【0098】
本発明の方法に使用されるIL-23抗体は、本明細書で指定されるように、天然の変異又はヒトによる操作のいずれかによる1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を含み得る。
【0099】
当業者が行い得るアミノ酸置換の数は、上記のものを含む多くの要因に依存する。一般的に言えば、所与の抗IL-23抗体、断片、又は変異体のアミノ酸置換、挿入、又は欠失の数は、本明細書で指定されるように、40、30、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1以下、例えば、1~30又はこの中の任意の範囲若しくは値である。
【0100】
機能上不可欠である抗IL-23特異的抗体内のアミノ酸は、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発などの、当該技術分野において既知の方法により同定することができる(例えば、上記のAusubel、Chapters 8,15;Cunningham及びWells,Science 244:1081-1085(1989))。後者の手順では、分子内の残基ごとに単個のアラニンによる変異を導入する。次いで、得られた変異型分子は、生物活性、例えば、限定されないが、少なくとも1つのIL-23中和活性について試験される。抗体結合にとって極めて重要である部位もまた、結晶化、核磁気共鳴又は光親和性標識などの構造解析によって同定することができる(Smithら,J.Mol.Biol.224:899-904(1992)及びde Vosら,Science 255:306-312(1992))。
【0101】
抗IL-23抗体は、配列番号1、2、3、4、5、及び6のうちの少なくとも1つの隣接アミノ酸のうちの5つから全てから選択される少なくとも1つの部分、配列、又は組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0102】
IL-23抗体又は特定の部分若しくは変異体としては、上記配列番号の少なくとも3~5個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5~17個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5~10個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5~11個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5~7個の隣接アミノ酸、上記配列番号の5~9個の隣接アミノ酸から選択される少なくとも1つの部分、配列、又は組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0103】
IL-23抗体は、更に任意選択的に、上記配列番号の5、17、10、11、7、9、119、又は108個の隣接アミノ酸のうちの70~100%の少なくとも1つのポリペプチドを含むことができる。一実施形態では、免疫グロブリン鎖又はその部分(例えば、可変領域、CDR)のアミノ酸配列は、上記配列番号のうちの少なくとも1つの対応する鎖のアミノ酸配列と、約70~100%の同一性(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)を有する。例えば、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、上記配列番号の配列と比較することができ、又は重鎖CDR3のアミノ酸配列を、上記配列番号と比較することができる。好ましくは、70~100%のアミノ酸同一性(すなわち、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、又はこの中の任意の範囲若しくは値)は、当該技術分野において既知の好適なコンピュータアルゴリズムを使用して決定される。
【0104】
「同一性」とは、当該技術分野において既知であるように、配列を比較することにより決定される、2つ以上のポリペプチド配列間又は2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、「同一性」とは、かかる配列のストリング間の一致によって決定される、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」及び「類似性」は、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、並びにCarillo,H.,and Lipman,D.,Siam J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない、既知の方法によって容易に算出することができる。加えて、同一性の割合に関する値は、Vector NTI Suite 8.0(Informax,Frederick,MD)の構成要素であるAlignXのデフォルト設定を用いて作成される、アミノ酸及びヌクレオチド配列アラインメントから得ることができる。
【0105】
同一性を決定する好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致度が得られるように設計される。同一性及び類似性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムにおいて成文化(codified)されている。2つの配列間の同一性及び類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Atschul,S.F.ら,J.Molec.Biol.215:403-410(1990))を含むが、これらに限定されるものではない。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他のソース(BLAST Manual,Altschul,S.ら,NCBINLM NIH Bethesda,Md.20894:Altschul,S.ら,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)から公的に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用され得る。
【0106】
ポリペプチド配列比較のための好ましいパラメータは、以下を含む:(1)アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol Biol.48:443-453(1970)Comparison matrix:BLOSSUM62 from Hentikoff and Hentikoff,Proc.Natl.Acad.Sci,USA.89:10915-10919(1992)、
ギャップペナルティ:12
ギャップ長ペナルティ:4
これらのパラメータで有用なプログラムは、Genetics Computer Group,Madison Wisからの「ギャップ」プログラムとして公的に入手可能である。前述のパラメータは、ペプチド配列比較のためのデフォルトパラメータ(末端ギャップに関してペナルティがないのと同様に)である。
【0107】
ポリヌクレオチド比較のための好ましいパラメータとしては、以下が挙げられる:
(1)アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol Biol.48:443-453(1970)
比較マトリックス:一致=+10、ミスマッチ=0
ギャップペナルティ:50
ギャップ長ペナルティ:3
Genetics Computer Group,Madison Wisからの「ギャップ」プログラムとして入手可能。これらは、核酸配列比較のデフォルトパラメータである。
【0108】
例として、ポリヌクレオチド配列は、別の配列と同一である、つまり、100%同一であってもよく、又は参照配列と比較して特定の整数以下のヌクレオチド改変を含んでいてもよい。かかる改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、置換(転移及び転換を含む)、又は挿入からなる群から選択され、この改変は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置で、又はこれらの末端位置の間のどこで生じてもよく、参照配列のヌクレオチド間に個々に、又は参照配列内の1つ又は2つ以上の隣接基のいずれかに分散していてもよい。ヌクレオチド改変の数は、配列中のヌクレオチドの総数に、対応する同一性パーセントの数値パーセント(100で割ったもの)を乗じ、その積を配列中のヌクレオチドの総数から差し引くこと、又は、
n.sub.n.ltorsim.x.sub.n-(x.sub.n.y)によって決定され、
式中、n.sub.nはヌクレオチド改変の数であり、x.sub.nは配列中のヌクレオチドの総数であり、yは、例えば、70%に対しては0.70、80%に対しては0.80、85%に対しては0.85、90%に対しては0.90、95%に対しては0.95などであり、x.sub.nとyとの任意の整数ではない積は、x.sub.nから差し引く前に最も近い整数に切り捨てる。
【0109】
上記配列番号をコードするポリヌクレオチド配列を改変すると、このコード配列中にナンセンス、ミスセンス、又はフレームシフト変異が生じ、それにより、かかる改変後にポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを改変することができる。同様に、ポリペプチド配列は、上記の配列番号の参照配列と同一、すなわち、100%同一であってもよく、又は同一性パーセントが100%未満になるように、参照配列と比較して特定の整数までのアミノ酸改変を含んでいてもよい。かかる改変は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的及び非保存的置換を含む)、又は挿入からなる群から選択され、この改変は、参照ポリペプチド配列のアミノ若しくはカルボキシ末端位置で、又はこれらの末端位置の間のどこで生じてもよく、参照配列のアミノ酸間に個々に、又は参照配列内の1つ又は2つ以上の隣接基のいずれかに分散していてもよい。所与の同一性%についてのアミノ酸変更の数は、上記配列番号中のアミノ酸の総数に、それぞれの同一性パーセントの数値パーセント(100で割ったもの)を乗じ、その積を上記配列番号中のアミノ酸の総数から差し引くことにより、又は
n.sub.a.ltorsim.x.sub.a-(x.sub.a.y)によって決定され、
式中、n.sub.aは、アミノ酸変更の数であり、x.sub.aは、上記配列番号中のアミノ酸の総数であり、yは、例えば、70%に対しては0.70、80%に対しては0.80、85%に対しては0.85などであり、x.sub.aとyとの整数ではない任意の積は、x.sub.aから差し引く前に最も近い整数に切り捨てる。
【0110】
例示的な重鎖及び軽鎖可変領域の配列、並びにそれらの部分は、上記配列番号に示される。本発明の抗体、又はその特定のバリアントは、本発明の抗体由来の任意の数の隣接アミノ酸残基を含むことができ、その数は、抗IL-23抗体における隣接残基数の10~100%からなる整数の群から選択される。任意選択で、隣接アミノ酸のこの部分配列は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、若しくはそれ以上のアミノ酸長、又はその中の任意の範囲若しくは値である。更に、かかる部分配列の数は、少なくとも2、3、4、又は5などの、1~20からなる群から選択される任意の整数であることができる。
【0111】
当業者が認識しているように、本発明は、本発明の少なくとも1つの生物学的活性抗体を含む。生物学的活性抗体は、天然(非合成)、内因性、又は関連する、及び既知の抗体のものの、少なくとも20%、30%、又は40%、好ましくは少なくとも50%、60%、又は70%、最も好ましくは少なくとも80%、90%、若しくは95%~100%、又はそれ以上(限定されるものではないが、比活性の最大10倍を含む)の比活性を有する。酵素活性及び基質特異性のアッセイ及び定量測定の方法は、当業者には周知である。
【0112】
別の態様では、本発明は、有機部分の共有結合により修飾される、本明細書に記載されるヒト抗体及び抗原結合断片に関する。かかる修飾は、改善された薬物動態特性(例えば、増大したインビボでの血清半減期)を有する抗体又は抗原結合断片を産生することができる。有機部分は、直鎖又は分枝鎖親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であることができる。特定の実施形態では、親水性ポリマー基は、分子量が約800~約120,000ダルトンであって、ポリアルカングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー又はポリビニルピロリドンであり得、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基は、約8~約40個の炭素原子を含むことができる。
【0113】
修飾された抗体及び抗原結合断片は、抗体に直接的又は間接的に共有結合される、1つ又は2つ以上の有機部分を含むことができる。本発明の抗体又は抗原結合断片に結合される各有機部分は、独立して、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であってよい。本明細書で使用するとき、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を包含する。本明細書で使用する場合、「親水性ポリマー基」という用語は、オクタンよりも水に対する溶解度が高い有機ポリマーを意味する。例えば、ポリリシンは、オクタンよりも水に対する溶解度が高い。よって、ポリリシンの共有結合により修飾された抗体は、本発明に包含される。本発明の抗体を修飾するのに好適な親水性ポリマーは、直線状又は分岐状であることができ、例えば、ポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ-ポリエチレングリコール(monomethoxy-polyethylene glycol、mPEG)、PPGなど)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、及びポリビニルピロリドンを含む。好ましくは、本発明の抗体を修飾する親水性ポリマーは、個別の分子体として、約800~約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000を使用することができ、下付き文字は、ポリマーの平均分子量(ダルトン)である。親水性ポリマー基は、1~約6個のアルキル基、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基で置換することができる。脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換される親水性ポリマー類は、好適な方法を利用することによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーを、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボン酸塩に連結させることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボン酸塩(例えば、N,N-カルボニルジイミダゾールで活性化されている)をポリマー上のヒドロキシル基に連結させることができる。
【0114】
本発明の抗体を修飾するために好適な脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和していてもよく、又は1つ以上の不飽和単位を含有していてもよい。本発明の抗体を修飾するのに好適な脂肪酸としては、例えば、n-ドデカン酸塩(C12、ラウリン酸塩)、n-テトラデカン酸塩(C14、ミリスチン酸塩)、n-オクタデカン酸塩(C18、ステアリン酸塩)、n-エイコサン酸塩(C20、アラキジン酸塩)、n-ドコサン酸塩(C22、ベヘン酸)、n-トリアコンタン酸塩(C30)、n-テトラコンタン酸塩(C40)、シス-Δ9-オクタデカン酸塩(C18、オレイン酸塩)、全てのシス-Δ5,8,11,14-エイコサテトラエン酸塩(C20、アラキドン酸塩)、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などが挙げられる。好適な脂肪酸エステルは、直鎖又は分枝鎖の低級アルキル基を含む、ジカルボン酸のモノエステルを含む。低級アルキル基は、1~約12個、好ましくは1~約6個の炭素原子を含むことができる。
【0115】
修飾ヒト抗体及び抗原結合断片は、1つ又は2つ以上の修飾剤と反応させることなどによって、好適な方法を使用して調製することができる。本明細書で使用するとき、「修飾剤」という用語は、活性化基を含む好適な有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を意味する。「活性化基」とは、適切な条件下で第2の化学基と反応し、それにより修飾剤と第2の化学基との間に共有結合を形成することのできる化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基としては、トシル酸、メシル酸、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)などの求電子基、N-ヒドロキシスクシニミジルエステル(N-hydroxysuccinimidyl esters、NHS)などが挙げられる。チオール類と反応可能な活性化基としては、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5-チオール-2-ニトロ安息香酸チオール(TNB-チオール)などが挙げられる。アルデヒド官能基は、アミン又はヒドラジド含有分子と連結することができ、アジド基は、三価リン基と反応してホスホルアミデート又はホスホルイミド結合を形成することができる。分子中に活性化基を導入するための好適な方法は、当該技術分野において既知である(例えば、Hermanson,G.T.、Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)参照)。活性化基は、有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接的に、又はリンカー部分、例えば、二価のC1~C12基(ここで、1つ又は2つ以上の炭素原子は酸素、窒素又は硫黄などのヘテロ原子に置換できる)を介して結合することができる。好適なリンカー部分としては、例えば、テトラエチレングリコール、-(CH2)3-、-NH-(CH2)6-NH-、-(CH2)2-NH-、及び-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH-NH-が挙げられる。リンカー部分を含む修飾剤は、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で、モノ-Boc-アルキルジアミン(例えば、モノ-Boc-エチレンジアミン、モノ-Boc-ジアミノへキサン)を脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間にアミド結合を形成することによって生産することができる。Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid、TFA)処理により生成物から除去し、記載されているように別のカルボン酸塩に連結し得る一級アミンを露出させることができ、又はこれを無水マレイン酸と反応させ、結果として得られた生成物を環化させて脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を産生することができる。(例えば、国際公開第92/16221号(Thompsonら)を参照されたく、この全教示が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0116】
修飾された抗体は、ヒト抗体又は抗原結合断片を修飾剤と反応させることによって生産することができる。例えば、有機部分は、アミン反応性修飾剤、例えば、PEGのNHSエステルを利用して、部位特異的なものではない方法で抗体に結合させることができる。抗体又は抗原結合断片のジスルフィド結合(例えば、鎖内ジスルフィド結合)を還元することによって、修飾されたヒト抗体又は抗原結合断片を調製することもできる。このとき、還元された抗体又は抗原結合断片をチオール反応性修飾剤と反応させて、本発明の修飾された抗体を生産することができる。本発明の抗体の特定の部位に結合される有機部分を含む修飾されたヒト抗体及び抗原結合断片は、逆タンパク質分解(Fischら,Bioconjugate Chem.,3:147-153(1992)、Werlenら、Bioconjugate Chem.,5:411~417(1994)、Kumaranら、Protein Sci.6(10):2233-2241(1997)、Itohら,Bioorg.Chem.,24(1号):59~68(1996)、Capellasら,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456~463(1997))、及びHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,CA(1996)に記載される方法などの好適な方法を使用して調製することができる。
【0117】
本発明の方法はまた、天然に存在しない組成物、混合物、又は形態で提供される、本明細書に記載されている及び/又は当該技術分野において既知である少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又はそれ以上のその抗IL-23抗体を含む、IL-23抗体組成物を使用する。かかる組成物は、上記配列番号の隣接アミノ酸の70~100%、又はその特定の断片、ドメイン、若しくは変異体からなる群から選択される抗IL-23抗体のアミノ酸配列の、少なくとも1つ又は2つの完全長、C及び/若しくはN末端欠失変異体、ドメイン、断片、又は特定の変異体を含む、天然に存在しない組成物を含む。好ましい抗IL-23抗体組成物は、本明細書に記載される抗IL-23抗体配列、例えば、上記配列番号の70~100%、又はその特定の断片、ドメイン、若しくは変異体の少なくとも1つのCDR又はLBP含有部分として、少なくとも1つ又は2つの完全長、断片、ドメイン、又は変異体を含む。更に好ましい組成物は、例えば、上記配列番号などの70~100%、又はその特定の断片、ドメイン、若しくは変異体のうちの少なくとも1つを40~99%含む。かかる組成物の百分率は、当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に記載されるように、重量、容量、濃度、モル濃度、あるいは液体若しくは無水溶液(dry solution)、混合物、懸濁液、エマルション、粒子、粉末、又はコロイドとしてのモル濃度によるものである。
【0118】
更なる治療活性成分を含む抗体組成物
本発明の方法に使用される抗体組成物は、任意選択で更に、抗感染症薬、心血管(cardiovascular、CV)系作用薬、中枢神経系(central nervous system、CNS)薬、自律神経系(autonomic nervous system、ANS)薬、呼吸器薬、消化(gastrointestinal、GI)管作用薬、ホルモン薬、体液又は電解質平衡薬、血液作用薬、抗腫瘍薬、免疫調節薬、眼、耳又は鼻用薬、局所作用薬、栄養薬などのうち、少なくとも1つから選択される、有効量の少なくとも1つの化合物又はタンパク質を含むことができる。かかる薬物は、本明細書に示される各々の製剤、適応症、投与量、及び投与を含めて、当該技術分野では周知である(例えば、各々全体が参照により本明細書に組み込まれる、Nursing 2001 Handbook of Drugs,21st edition,Springhouse Corp.,Springhouse,PA,2001、Health Professional’s Drug Guide 2001,ed.,Shannon,Wilson,Stang,Prentice-Hall,Inc,Upper Saddle River,NJ、Pharmcotherapy Handbook,Wells et al.,Appleton & Lange,Stamford,CTを参照されたい)。
【0119】
本発明の方法の抗体と組み合わせることができる薬物の例として、抗感染薬は、殺アメーバ薬又は少なくとも1種の抗原虫薬、駆虫薬、抗真菌薬、抗マラリア薬、抗結核薬又は少なくとも1種の抗らい菌薬、アミノグリコシド、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、スルホンアミド、フルオロキノロン、抗ウイルス薬、マクロライド抗感染薬、及び種々の抗感染薬から選択される少なくとも1種であることができる。ホルモン薬は、コルチコステロイド、アンドロゲン、又は少なくとも1種のアナボリックステロイド、エストロゲン、又は少なくとも1種のプロゲスチン、ゴナドトロピン、抗糖尿病薬、又は少なくとも1種のグルカゴン、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン拮抗薬、下垂体ホルモン、及び副甲状腺様薬から選択される少なくとも1種であり得る。少なくとも1種のセファロスポリンは、セファクロル、セファドロキシル、セファゾリンナトリウム、セフジニル、塩酸セフェピム、セフィキシム、セフメタゾールナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォタキシムナトリウム、セフォテタン二ナトリウム、セフォキシチンナトリウム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムナトリウム、塩酸セファレキシン、セファレキシン一水和物、セフラジン、及びロラカルベフから選択される少なくとも1種であることができる。
【0120】
少なくとも1種のコルチコステロイド(coricosteroid)は、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン又はリン酸ベタメタゾンナトリウム、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸コルチゾン、デキサメサゾン、酢酸デキサメサゾン、リン酸デキサメサゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、シピオン酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、及び二酢酸トリアムシノロンから選択される少なくとも1種であることができる。少なくとも1種のアンドロゲン又はタンパク質同化ステロイドは、ダナゾール、フルオキシメステロン、メチルテストステロン、デカン酸ナンドロロン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、テストステロン、シピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、及びテストステロン経皮系から選択される少なくとも1種であることができる。
【0121】
少なくとも1つの免疫抑制剤は、アザチオプリン、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ、リンパ球免疫グロブリン、ムロモナブ-CD3、ミコフェノール酸モフェチル、塩酸ミコフェノール酸モフェチル、シロリムス、及びタクロリムスから選択される少なくとも1つであってよい。
【0122】
少なくとも1つの局所抗感染薬は、アシクロビル、アンホテリシンB、アゼライン酸クリーム、バシトラシン、硝酸ブトコナゾール、リン酸クリンダマイシン、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、エリスロマイシン、硫酸ゲンタマイシン、ケトコナゾール、酢酸マフェニド、メトロニダゾール(局所)、硝酸ミコナゾール、ムピロシン、塩酸ナフチフィン、硫酸ネオマイシン、ニトロフラゾン、ナイスタチン、スルファジアジン銀、塩酸テルビナフィン、テルコナゾール、塩酸テトラサイクリン、チオコナゾール、及びトルナフテートから選択される少なくとも1つであってよい。少なくとも1種の疥癬殺虫剤若しくは殺シラミ薬は、クロタミトン、リンデン、ペルメトリン、及びピレトリンから選択される少なくとも1種であることができる。少なくとも1種の局所コルチコステロイドは、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメサゾン、リン酸デキサメサゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド(halcionide)、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フロ酸モメタゾン、及びトリアムシノロンアセトニドから選択される少なくとも1種であることができる。(例えば、Nursing 2001 Drug Handbookの1098~1136ページを参照されたい。)
【0123】
抗IL-23抗体組成物は、かかる調節、治療、又は療法を必要とする細胞、組織、器官、動物、又は対象に接触されるか又は投与される少なくとも1つの抗IL-23抗体を含み、任意選択で更に、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、限定されないが、TNF化学若しくはタンパク質拮抗薬、TNFモノクローナル若しくはポリクローナル抗体又は断片、可溶性TNF受容体(例えば、p55、p70、又はp85)又は断片、その融合ポリペプチド、又は小分子TNF拮抗薬、例えば、TNF結合タンパク質I若しくはII(TBP-1又はTBP-II)、ネレリモンマブ(nerelimonmab)、インフリキシマブ、エタナセプト(eternacept)、CDP-571、CDP-870、アフェリモマブ、レネルセプトなど)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、エタネルセプト、金チオリンゴ酸ナトリウム、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、レフルノミド、スルファサラジン)、免疫化物質、免疫グロブリン、免疫抑制薬(例えば、アザチオプリン、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、サイトカイン又はサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1種を含む、任意の好適かつ有効な量の組成物又は医薬組成物のうちの少なくとも1つを更に含むことができる。かかるサイトカインの非限定的な例としては、IL-1~IL-40など(例えば、IL-1、IL-2など)のいずれかが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な投与量は、当該技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,CA(2000)を参照されたく、これらの文献は各々、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0124】
本発明の方法に使用される抗IL-23抗体化合物、組成物、又は混合物は更に、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどであるがこれらに限定されない、任意の好適な助剤のうちの少なくとも1つを含み得る。医薬的に許容される助剤が好ましい。このような滅菌溶液を調製する方法の非限定例は、当該技術分野において周知であり、例えば、Gennaro,Ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(Easton,PA)1990が挙げられるが、これに限定されない。当該技術分野において周知であるか、又は本明細書に記載される、抗IL-23抗体、断片、又は変異体組成物の投与方式、溶解度、及び/又は安定性に好適な医薬的に許容される担体は、日常的に選択することができる。
【0125】
本組成物において有用な医薬賦形剤及び添加剤は、これらに限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質及び炭水化物(例えば、単糖類、二糖、三糖、四糖、及びオリゴ糖を含む糖類、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖、並びに多糖類又は糖ポリマー)を含み、これらは、単独で又は組み合わせて存在してもよく、単独で又は組み合わせて1~99.99重量%又は容量%含まれる。代表的なタンパク質賦形剤としては、ヒト血清アルブミン(human serum albumin、HSA)などの血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(recombinant human albumin、rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝能においても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体構成要素としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。好ましいアミノ酸の1つはグリシンである。
【0126】
本発明で使用するのに好適な炭水化物賦形剤としては、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン類などの多糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。本発明で使用するのに好ましい炭水化物添加物は、マンニトール、トレハロース、及びラフィノースである。
【0127】
抗IL-23抗体組成物はまた、緩衝剤又はpH調整剤を含むことができ、典型的には、緩衝剤は、有機酸又は塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の塩などの有機酸塩、トリス、トロメタミン塩酸塩、又はリン酸緩衝剤が挙げられる。本組成物で使用するのに好ましい緩衝剤は、クエン酸などの有機酸塩である。
【0128】
更に、抗IL-23抗体組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」及び「TWEEN80」などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、及びキレート剤(例えば、EDTA)などのポリマー賦形剤/添加剤を含み得る。
【0129】
本発明による抗IL-23抗体、部分又は変異体組成物における使用に好適なこれら及び追加の既知の医薬賦形剤及び/又は添加剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy,」19th ed.,Williams & Williams,(1995)、及び「Physician’s Desk Reference,」52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998)に記載され、これらの開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。好ましい担体又は添加物材料は、炭水化物(例えば、単糖類及びアルジトール)及び緩衝剤(例えば、クエン酸)又はポリマー剤である。例示的な担体分子はムコ多糖、ヒアルロン酸であり、これらは関節内送達に有用であり得る。
【0130】
製剤
上述したとおり、本発明は、好ましくは、生理食塩水又は選択された塩を含むリン酸緩衝剤である安定した製剤、並びに保存剤を含有する保存溶液及び製剤、並びに医薬的に許容される製剤中に少なくとも1つの抗IL-23抗体を含む薬剤学的又は獣医学的用途に好適な多用途保存製剤を提供する。保存製剤は、水性希釈剤中に、少なくとも1つのフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から任意選択で選択される、少なくとも1つの既知の保存剤を含む。当該技術分野において既知であるように、0.001~5%、又はその中の任意の範囲若しくは値、例えば、0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9など、又はその中の任意の範囲若しくは値の、任意の好適な濃度又は混合物を使用することができる。非限定的な例としては、保存剤無添加、0.1~2%のm-クレゾール(例えば、0.2、0.3.0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1~3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001~0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001~2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005~1.0%のアルキルパラベン(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)などが挙げられる。
【0131】
上述のとおり、本発明の方法は、包装材と、任意選択で水性希釈剤中に処方された緩衝剤及び/又は保存剤を伴う少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体の溶液を含む少なくとも1つのバイアルと、を含む製品を使用し、この包装材は、かかる溶液を1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間以上にわたり保持することができることを記したラベルを含む。本発明は、包装材と、凍結乾燥された抗IL-23特異的抗体を含む第1のバイアルと、処方された緩衝剤又は保存剤の水性希釈剤を含む第2のバイアルと、を含む製品を更に使用し、この包装材は、抗IL-23特異的抗体を水性希釈剤でもどして、24時間以上にわたって保持することができる溶液を形成するように患者に指示するラベルを含む。
【0132】
本発明により使用される抗IL-23特異的抗体は、本明細書に記載されるか又は当該技術分野において既知の、哺乳動物細胞又はトランスジェニック調製物から産生することを含む組換え手段により産生され得るか、又は他の生物源から精製され得る。
【0133】
抗IL-23特異的抗体の範囲は、湿式/乾式系の場合、もどすときに約1.0μg/ml~約1000mg/mlの濃度が得られる量で含まれるが、より低い濃度及び高い濃度でも作業可能であり、意図される送達ビヒクルに依存し、例えば溶液製剤では、経皮パッチ、肺、経粘膜、又は浸透圧性若しくはマイクロポンプ方法とは異なる。
【0134】
好ましくは、水性希釈剤は、任意選択で、医薬的に許容される保存剤を更に含む。好ましい保存剤には、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。製剤中で使用される保存剤の濃度は、抗菌効果を生み出すのに十分な濃度である。かかる濃度は選択された保存剤によって異なり、当業者により容易に決定される。
【0135】
他の賦形剤、例えば、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、及び保存剤エンハンサは、任意選択でかつ好ましくは希釈剤に添加することができる。グリセリンなどの等張剤が、既知の濃度で概して使用される。好ましくは、生理学的に耐性の緩衝剤を添加して、改善されたpH制御を提供する。製剤は、約pH4~約pH10、及び好ましくは約pH5~約pH9の範囲、及び最も好ましくは約6.0~約8.0の範囲などの、広範囲のpH範囲を網羅とすることができる。好ましくは、本発明の製剤は、約6.8~約7.8のpHを有する。好適な緩衝剤には、リン酸緩衝剤、最も好ましくは、リン酸ナトリウム、特にリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline、PBS)が含まれる。
【0136】
その他の添加剤、例えばTween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、及びPEG(ポリエチレングリコール)などの、医薬的に許容される可溶化剤、又はポリソルベート20若しくは80又はポロキサマー184若しくは188、Pluronic(登録商標)ポリル(polyl)などの非イオン性界面活性剤、その他のブロックコポリマー、並びにEDTA及びEGTAなどのキレート剤を、任意に製剤又は組成物に添加して、凝集を低減させることができる。これらの添加物は、製剤を投与するためにポンプ又はプラスチック容器が使用される場合に特に有用である。医薬的に許容される界面活性剤の存在により、タンパク質が凝集する傾向が軽減される。
【0137】
製剤は、少なくとも1つの抗IL-23抗体と、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又はこれらの混合物からなる群から選択される保存剤と、を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体と保存剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、緩衝溶液中の一定量の少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体を、所望の濃度のタンパク質及び保存剤を提供するために十分な量の緩衝溶液中で所望の保存剤と組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0138】
製剤は、透明な溶液として、又は水、保存剤及び/若しくは賦形剤、好ましくはリン酸塩緩衝剤及び/若しくは生理食塩水、並びに選択された塩を水性希釈剤中に含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された抗IL-23特異的抗体のバイアルを含む併用バイアル(dual vial)として、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供することができる。
【0139】
本製品は、即時から24時間以上の範囲の期間にわたる投与に有用である。したがって、本発明により特許請求される製品は、患者に大きな利益を提供する。本発明の製剤は、任意選択で、約2℃~約40℃の温度で安全に保存し、タンパク質の生物学的活性を長期間保持することができ、したがって、包装ラベルで、溶液を6、12、18、24、36、48、72、又は96時間以上保持及び/又は使用し得ることを記することができる。保存されている希釈剤を使用する場合には、かかるラベルは、最高1~12か月、半年、1年半、及び/又は2年までの使用を含むことができる。
【0140】
抗IL-23特異的抗体の溶液は、少なくとも1つの抗体を水性希釈剤中で混合することを含むプロセスにより調製することができる。混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な希釈剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質、及び任意選択で保存剤又は緩衝剤を提供するのに十分な量で組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0141】
特許請求される製品は、透明な溶液として、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体のバイアルを含む併用バイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供する。
【0142】
特許請求される製品は、透明な溶液、又は水性希釈剤を含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL-23特異的抗体のバイアルを含む併用バイアルを、薬局、診療所、又はその他のかかる機関及び施設に提供することによって、患者に対し間接的に提供することができる。この場合の透明溶液は最高1リットル又は更にはそれ以上の容量であってもよく、この大きな容器からより少量の少なくとも1つの抗体溶液を1回又は複数回取り出してより小さなバイアルに移し、かつ薬局又は診療所により顧客及び/又は患者に提供できる。
【0143】
単一バイアルシステムを含む承認済みデバイスとしては、溶液を送達するためのペン型注射器デバイス、例えば、BD Pens、BD Autojector(登録商標)、Humaject(登録商標)、NovoPen(登録商標)、B-DPen(登録商標)、AutoPen(登録商標)、及びOptiPen(登録商標)、GenotropinPen(登録商標)、Genotronorm Pen(登録商標)、Humatro Pen(登録商標)、Reco-Pen(登録商標)、Roferon Pen(登録商標)、Biojector(登録商標)、Iject(登録商標)、J-tip Needle-Free Injector(登録商標)、Intraject(登録商標)、Medi-Ject(登録商標)、Smartject(登録商標)など(Becton Dickensen(Franklin Lakes,NJ、www.bectondickenson.com)、Disetronic(Burgdorf、Switzerland、www.disetronic.com)、Bioject(Portland,Oregon(www.bioject.com)、National Medical Products,Weston Medical(Peterborough,UK,www.weston-medical.com)、Medi-Ject Corp(Minneapolis,MN,www.mediject.com)によって製造又は開発されているもの)、及び類似の好適なデバイスが挙げられる。デュアルバイアルシステムを含む認知されたデバイスとしては、もどした溶液を送達するために、凍結乾燥された薬品をカートリッジ内でもどすためのペン型注射器システム、例えばHumatroPen(登録商標)などが挙げられる。好適なその他のデバイスの例としては、予め充填された注射器、自動注射器、針なし注射器、及び針なしIV注入セットが挙げられる。
【0144】
本製品は、包装材を含み得る。包装材は、規制当局によって必要とされる情報に加えて、本製品を使用することができる条件を提供する。本発明の包装材は、適用できる場合、少なくとも1つの抗IL-23抗体を水性希釈剤でもどして溶液を形成し、2~24時間以上の期間にわたって、この溶液を湿式/乾式の2つのバイアル製品に使用する、という指示を患者に提供する。シングルバイアルの溶液製品、プレフィルドシリンジ、又は自己注射器の場合、ラベルは、かかる溶液を2~24時間以上の期間にわたって使用することができることを示す。本製品は、ヒト用医薬製品用途に有用である。
【0145】
本発明の方法に使用される製剤は、抗IL-23抗体及び選択された緩衝剤、好ましくは生理食塩水又は選択された塩を含有するリン酸塩緩衝剤を混合することを含むプロセスにより調製することができる。抗IL-23抗体と緩衝剤との水性希釈剤中での混合は、従来の溶解及び混合手順を使用して実施される。好適な製剤を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の一定量の少なくとも1つの抗体を、所望の濃度のタンパク質及び緩衝剤を提供するのに十分な量の水中で所望の緩衝剤と組み合わせる。本プロセスの変化形態は、当業者によって認識される。例えば、構成成分の添加順序、追加の添加剤の使用の有無、製剤調製時の温度及びpHは全て、使用する投与濃度及び投与手段に関して最適化することのできる因子である。
【0146】
本発明の方法は、ヒト又は動物患者に投与するのに有用であり、かつ許容される様々な製剤を含む医薬組成物を提供する。このような医薬組成物は、希釈剤として「標準状態」の水、及び当業者に周知の日常的な方法を使用して調製される。例えば、ヒスチジン及びヒスチジン一塩酸塩水和物などの緩衝構成要素が最初に提供され、続いて適切な非最終容量の「標準状態」の水希釈剤、スクロース、及びポリソルベート80が添加され得る。次いで、単離された抗体を添加することができる。最後に、水を希釈剤として使用して「標準状態」条件の下で、医薬組成物の容量を所望の最終容量に調整する。当業者であれば、医薬組成物の調製に好適ないくつかの他の方法を認識する。
【0147】
医薬組成物は、水の容量単位当たりの示される質量の各構成成分を含むか、又は「標準状態」の示されるpHを有する水溶液又は懸濁液であってもよい。本明細書で使用するとき、「標準状態」という用語は、25℃±2℃の温度及び1気圧の圧力を意味する。「標準状態」という用語は、当該技術分野では、当該技術分野で認識されている単一の温度又は圧力のセットを指すために使用されるのではなく、代わりに参照「標準状態」条件下の特定の組成物を含む溶液又は懸濁液を説明するために使用される温度及び圧力を指定する参照状態である。これは、溶液の容量が一つには温度及び圧力の関数であるためである。当業者であれば、本明細書に開示されるものと同等の医薬組成物を他の温度及び圧力で生産することができることを認識する。かかる医薬組成物が本明細書に開示されるものと同等であるかは、上記に定義された「標準状態」条件下(例えば、25℃±2℃及び1気圧の圧力)で決定されるべきである。
【0148】
重要なことに、かかる医薬組成物は、医薬組成物の単位容積当たり「約」ある特定の値の構成要素の質量(例えば、「約0.53mgのL-ヒスチジン」)を含有するか、又は約ある特定の値のpH値を有し得る。医薬組成物中に存在する構成要素の質量又はpH値は、単離された抗体が医薬組成物中に存在している間に又は単離された抗体が医薬組成物から除去された後(例えば、希釈により)に、医薬組成物中に存在する単離された抗体がペプチド鎖に結合することができる場合の、「約」所与の数値である。つまり、構成要素の質量値又はpH値などの値は、単離された抗体を医薬組成物中に入れた後に単離された抗体の結合活性が維持され、検出可能である場合の、「約」所与の数値である。
【0149】
競合結合分析を行って、IL-23特異的mAbが類似の若しくは異なるエピトープに結合し、かつ/又は互いに競合するかを決定する。ELISAプレート上にAbを個々にコーティングする。競合するmAbを添加し、続いてビオチン化hrIL-23を添加する。陽性対照には、コーティングに同じmAbを競合mAb(「自己競合」)として使用してもよい。IL-23結合は、ストレプトアビジンを使用して検出される。これらの結果は、mAbがIL-23上の類似の又は部分的に重複するエピトープを認識するかどうかを示す。
【0150】
医薬組成物の一実施形態では、単離された抗体濃度は、1mLの医薬組成物当たり約77~約104mgである。医薬組成物の別の実施形態では、pHは約5.5~約6.5である。
【0151】
安定又は保存製剤は、透明な溶液として、又は水性希釈剤中に保存剤若しくは緩衝剤及び添加物を含有する第2のバイアルでもどされる、凍結乾燥された少なくとも1つの抗IL-23抗体のバイアルを含むデュアルバイアルとして、患者に提供することができる。単一溶液バイアル又は再構成を必要とするデュアルバイアルはいずれも複数回再利用することができ、単一又は複数の患者治療サイクルを満たすことができ、したがって、現在使用できるよりも便利な治療レジメンを提供する。
【0152】
抗IL-23抗体を安定化する他の製剤又は方法は、抗体を含む凍結乾燥粉末の透明溶液以外のものであってよい。非透明溶液としては、微粒子懸濁液を含む製剤があり、このような微粒子は、ミクロスフェア、微小粒子、ナノ粒子、ナノスフェア、又はリポソームとして様々に知られる種々の大きさの構造内に、抗IL-23抗体を含有する組成物である。活性薬剤を含有するかかる比較的均質な本質的に球状の微粒子製剤は、米国特許第4,589,330号に教示されるとおり、活性薬剤及びポリマーを含有する水相と非水相とを接触させ、次に、非水相を蒸発させて水相からの粒子の合体を引き起こすことにより、形成することができる。多孔性微小粒子は、米国特許第4,818,542号に教示されるとおり、連続溶媒中に分散された活性薬剤とポリマーとを含有する第1相を使用し、凍結乾燥又は希釈-抽出-沈殿により懸濁液からこの溶媒を除去することで調製することができる。こうした調製に好ましいポリマーは、ゼラチン寒天、デンプン、アラビノガラクタン、アルブミン、コラーゲン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド-L(-)ラクチドポリ(エプシロン-カプロラクトン、ポリ(エプシロン-カプロラクトン-CO-乳酸)、ポリ(エプシロン-カプロラクトン-CO-グリコール酸)、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリ(アルキル-2-シアノアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(2-ヒドロキシエチルDL-アスパルトアミド)、ポリ(エステル尿素)、ポリ(L-フェニルアラニン/エチレングリコール/1,6-ジイソシアナトヘキサン)及びポリ(メチルメタクリレート)からなる群から選択される、天然又は合成のコポリマー又はポリマーである。特に好ましいポリマーは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド-L(-)ラクチドポリ(エプシロン-カプロラクトン、ポリ(エプシロン-カプロラクトン-CO-乳酸)、及びポリ(エプシロン-カプロラクトン-CO-グリコール酸)などのポリエステルである。ポリマー及び/又は活性物質を溶解させるのに有用な溶媒としては、水、ヘキサフルオロイソプロパノール、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンゼン、又はヘキサフルオロアセトンセスキ水和物が挙げられる。活性物質含有相を第2相に分散させるプロセスは、ノズル内のオリフィスに当該第1相を圧力で強制的に通して液滴形成に作用させることを含むことができる。
【0153】
乾燥粉末製剤は、例えば、噴霧乾燥法、又は蒸発による溶媒抽出法、若しくは水性若しくは非水性溶媒を除去するための1つ又は2つ以上の工程が後続する結晶性組成物の沈殿による溶媒抽出法などの、凍結乾燥以外のプロセスの結果として得てもよい。噴霧乾燥抗体製剤の調製は、米国特許第6,019,968号に教示されている。抗体ベースの乾燥粉末組成物は、抗体の溶液又はスラリーを、及び任意選択で、呼吸用乾燥粉末を提供するための条件下で溶媒中の、賦形剤を、噴霧乾燥させることによって生産され得る。溶媒としては、容易に乾燥可能な、例えば水及びエタノールなどの極性化合物が挙げられる。抗体の安定性は、酸素不在下、例えば窒素ブランケット下において噴霧乾燥手順を実施すること、又は乾燥用気体として窒素を使用することにより増強され得る。別の比較的乾燥した製剤は、国際公開第9916419号に教示されている典型的にはヒドロフルオロアルカン噴射剤を含む懸濁培地中に分散している複数の有孔微細構造の分散物である。安定化された分散物は、定量吸入器を用いて患者の肺に投与できる。噴霧乾燥された薬物の商業的製造において有用な機器は、Buchi Ltd.又はNiro Corp.により製造されている。
【0154】
本明細書に記載される安定若しくは保存製剤又は溶液中のいずれかで抗IL-23抗体は、技術分野において周知のように、SC若しくはIM注射、経皮、経肺、経粘膜、埋め込み、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプ、又は当業者により理解される他の手段などの種々の送達方法を介して、本発明に従って患者に投与することができる。
【0155】
治療への応用
本発明はまた、当該技術分野において既知又は本明細書に記載のように、少なくとも1つの本発明のIL-23抗体を用いて、例えば、細胞、組織、器官、動物、又は患者に、治療有効量のIL-23特異的抗体を投与又は接触させて、細胞、組織、器官、動物、又は患者におけるクローン病を調節又は治療するための方法を提供する。
【0156】
本発明のいずれの方法も、かかる調節、治療、又は療法を必要としている細胞、組織、器官、動物又は患者に、抗IL-23抗体を含む有効量の組成物又は医薬組成物を投与することを含み得る。かかる方法は、任意選択で、かかる疾患又は障害の治療のための同時投与又は併用療法を更に含むことができ、ここで、この少なくとも1つの抗IL-23抗体、その特定の部分、又は変異体を投与することは、少なくとも1つのTNF拮抗薬(例えば、限定されないが、化学物質性若しくはタンパク質性TNF拮抗薬、TNFモノクローナル若しくはポリクローナル抗体若しくは断片、可溶性TNF受容体(例えば、p55、p70、又はp85)若しくは断片、その融合ポリペプチド、又は低分子TNF拮抗薬、例えば、TNF結合タンパク質I又はII(TBP-1又はTBP-II)、ネレリモンマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト(eternacept)(Enbrel(商標))、アダリムマブ(Humira(商標))、CDP-571、CDP-870、アフェリモマブ、レネルセプトなど)、抗リウマチ薬(例えば、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン)、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroid anti-inflammatory drug、NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬(例えば、アミノグリコシド、抗真菌薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬、カルバペナム、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド、ペニシリン、スルホンアミド、テトラサイクリン、その他抗菌薬)、乾癬治療薬、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、糖尿病関連薬、ミネラル、栄養薬、甲状腺剤、ビタミン、カルシウム関連ホルモン、止瀉薬、鎮咳薬、制吐剤、抗腫瘍薬、緩下剤、抗凝固薬、エリスロポエチン(例えば、エポエチンアルファ)、フィルグラスチム(例えば、G-CSF、Neupogen)、サルグラモスチム(GM-CSF、Leukine)、免疫付与剤、免疫グロブリン、免疫抑制剤(例えば、バシリキシマブ、シクロスポリン、ダクリズマブ)、成長ホルモン、ホルモン補充薬、エストロゲン受容体調節薬、散瞳剤、毛様体筋麻痺薬、アルキル化剤、代謝拮抗薬、分裂阻害剤、放射性医薬品、抗うつ薬、抗躁薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、交感神経刺激薬、刺激薬、ドネペジル、タクリン、ぜんそく治療薬、ベータ作用薬、吸入ステロイド、ロイコトリエン阻害剤、メチルキサンチン、クロモリン、エピネフリン若しくは類似体、ドルナーゼアルファ(Pulmozyme)、サイトカイン若しくはサイトカイン拮抗薬から選択される少なくとも1つを、前に、同時に、及び/又は後に投与することを更に含む。好適な投与量は、当該技術分野において周知である。例えば、Wells et al.,eds.,Pharmacotherapy Handbook,2nd Edition,Appleton and Lange,Stamford,CT(2000)、PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,CA(2000)、Nursing 2001 Handbook of Drugs,21st edition,Springhouse Corp.,Springhouse,PA,2001、Health Professional’s Drug Guide 2001,ed.,Shannon,Wilson,Stang,Prentice-Hall,Inc,Upper Saddle River,NJを参照されたい。これらの参照文献の各々は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0157】
治療処置
典型的には、クローン病の治療は、有効な量又は投薬量の抗IL-23抗体組成物を投与することによって影響を受け、これは、組成物に含まれる活性剤の特異的活性に応じて、合計で、平均して、1投与当たり、患者1キログラム当たり少なくとも約0.01~500ミリグラムの範囲の抗IL-23抗体であり、好ましくは、単回又は複数回投与当たり、患者1キログラム当たり少なくとも約0.1~100ミリグラムの抗体である。あるいは、有効な血清濃度は、単回又は複数回投与当たり0.1~5000μg/mLの血清濃度を含み得る。好適な投与量は、医療従事者には既知であり、当然のことながら、具体的な疾患状態、投与される組成物の比活性、及び治療を受けている具体的な患者に依存する。いくつかの場合では、所望の治療量を達成するために、反復投与、すなわち特定の監視された投与又は計量された投与の反復個別投与を提供することが必要となる場合があり、この場合、個別投与は、所望の1日の投与量又は効果が得られるまで繰り返される。
【0158】
好ましい投与は、任意選択で、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、及び/若しくは100~500mg/kg/投与、又はその任意の範囲、値、若しくは割合を含み得るか、あるいは単回若しくは複数回投与当たり0.1、0.5、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.9、2.0、2.5、2.9、3.0、3.5、3.9、4.0、4.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、20、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14.0、14.5、4.9、5.0、5.5.、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、12、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14、14.5、15、15.5、15.9、16、16.5、16.9、17、17.5、17.9、18、18.5、18.9、19、19.5、19.9、20、20.5、20.9、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、96、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、及び/若しくは5000μg/mL血清濃度の血清濃度、又はその任意の範囲、値、若しくは割合を達成するように含み得る。
【0159】
あるいは、投与される投与は、特定の薬剤の薬力学的特徴並びにその投与方法及び経路、受容者の年齢、健康状態及び体重、症状の性質及び程度、同時治療の種類、治療頻度、並びに所望の作用などの既知の因子に応じて異なり得る。活性成分の投与量は、通常、体重1キログラム当たり約0.1~100ミリグラムであり得る。通常、0.1~50、好ましくは0.1~10ミリグラム/キログラム/投与、又は徐放性形態が、所望の結果を得るために有効である。
【0160】
非限定的な例として、ヒト又は動物の治療は、単回投与、静注投与、又は反復投与を使用して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39若しくは40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51若しくは52週目のうちの少なくとも1週に、あるいは又は追加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20年目のうちの少なくとも1年に、又はこれらの任意の組み合わせで、1日当たり0.1~100mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/kgの、本発明の少なくとも1つの抗体の1回又は周期的な投与量として提供され得る。
【0161】
体内投与に好適な剤形(組成物)は、概して、ユニット又は容器当たり約0.001ミリグラム~約500ミリグラムの活性成分を含む。これらの医薬組成物において、活性成分は、組成物の総重量に基づいて、通常、約0.5~99.999重量%の量で存在する。
【0162】
非経口投与に関して、抗体は、医薬的に許容される非経口ビヒクルと合わせて、又は別個に提供される、溶液、懸濁液、エマルション、粒子、粉末、若しくは凍結乾燥粉末として製剤化され得る。かかるビヒクルの例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び1~10%ヒト血清アルブミンである。リポソーム及び不揮発性油などの非水性ビヒクルを使用することもできる。ビヒクル又は凍結乾燥粉末は、等張性及び化学安定性を維持する添加剤(例えば、等張性に関しては塩化ナトリウム、マンニトール、化学安定性に関しては緩衝剤及び保存剤)を含有することができる。製剤は、既知の又は好適な技術によって滅菌される。
【0163】
好適な医薬担体は、本分野での標準的参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,A.Osolの最新版に記載されている。
【0164】
代替的投与
医薬有効量の抗IL-23抗体を投与するために、本発明に従って、多くの既知の及び開発された方式を使用することができる。以下の記述では経肺投与が使用されているが、本発明に従って他の投与方式を使用して、好適な結果を得てもよい。本発明のIL-23特異的抗体は、担体中で、溶液、エマルション、コロイド若しくは懸濁液として、又は乾燥粉末として、吸入によるか、又は本明細書に記載される若しくは当該技術分野において既知である他の方法による投与に適した様々なデバイス及び方法のいずれかを使用して、送達することができる。
【0165】
非経口製剤及び投与
非経口投与用製剤は、一般的な賦形剤として滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物性油、水素化ナフタレンなどを含有してもよい。注射用の水性又は油性懸濁液は、既知の方法に従って、適切な乳化剤又は加湿剤及び懸濁剤を使用することによって調製することができる。注射剤は、例えば水溶液、無菌注射液又は溶媒中懸濁液などの非毒性の非経口投与可能な希釈剤であることができる。使用可能なビヒクル又は溶媒としては、水、リンゲル液、等張生理食塩水などが許容され、通常の溶媒又は懸濁溶媒としては、無菌の不揮発性油を使用することができる。これらの目的では、天然又は合成若しくは半合成の、脂肪油又は脂肪酸、天然又は合成若しくは半合成の、モノグリセリド又はジグリセリド又はトリグリセリドを含む、あらゆる種類の不揮発性油及び脂肪酸を使用することができる。非経口投与は当該技術分野において既知であり、従来の注射手段、米国特許第5,851,198号に記載のガス加圧式無針注射デバイス、及び米国特許第5,839,446号に記載のレーザ穿孔機デバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0166】
代替的送達
本発明は更に、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹部内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、子宮頸部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮手段による抗IL-23抗体の投与に関する。IL-23抗体組成物は、特に液体溶液若しくは懸濁液の形態で、非経口(皮下、筋肉内、又は静脈内)又は任意の他の投与用に使用するために、特に、クリーム剤及び座剤などであるが、これらに限定されない半固体形態で、膣若しくは直腸投与における使用のために、錠剤若しくはカプセル剤などであるが、これらに限定されない形態で、口腔若しくは舌下投与用に、あるいは散剤、点鼻薬若しくはエアロゾル、又はある特定の薬剤などであるが、これらに限定されない形態で、鼻腔内用に、あるいは、皮膚構造を改変するか又は経皮パッチ中の薬物濃度を増加させるかのいずれかのために、ジメチルスルホキシドなどの化学的促進剤を用いて(参照により全体が本明細書に組み込まれるJunginger,et al.In「Drug Permeation Enhancement;」Hsieh,D.S.,Eds.,pp.59-90(Marcel Dekker,Inc.New York 1994)、又はタンパク質及びペプチドを含有する製剤の皮膚への適用(国際公開第98/53847号)、又は電気穿孔法などの一過性の輸送経路を作り出すための、若しくはイオントフォレシスなどの皮膚を通して荷電薬物の移動度を増加させるための電界の適用、又は超音波導入などの超音波の適用(米国特許第4,309,989号及び同第4,767,402号)を可能にする酸化剤を用いて、限定されるものではないが、ゲル、軟膏、ローション、懸濁液若しくはパッチ送達系システムなどで、経皮用に、調製することができる(上記の刊行物及び特許は、参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0167】
本発明を全般的に記述してきたが、上記と同様のことは、実例として提供されるが制限することを意図していない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解される。更に、本発明の詳細は、以下の非限定的実施例によって例示される。本明細書の全ての引用の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0168】
実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
1.患者におけるクローン病を治療する方法であって、IL23に特異的な抗体の400mgの初回皮下投与、当該初回投与の約4週間後の400mgの皮下投与、及び当該初回投与の約8週間後の400mgの皮下投与を患者に投与することを含む、方法。
2.約8週間での投与後約4週間毎又は約8週間毎に100mg又は200mgの抗体の投与を行うことを更に含む、実施形態1に記載の方法。
3.約8週間での投与後約4週間毎に200mgの抗体の投与を行うことを更に含む、実施形態2に記載の方法。
4.約8週間での投与後約8週間毎に100mgの抗体の投与を行うことを更に含む、実施形態2に記載の方法。
5.当該患者が抗体に対する奏功者であり、当該初回投与の約12週間後に臨床エンドポイントを満たすものとして特定され、当該臨床エンドポイントが、CDAIが150ポイント未満(<)であると定義される12週目での臨床寛解、又はクローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善によって測定される内視鏡奏功である、実施形態1に記載の方法。
6.当該患者が臨床エンドポイントを満たすものとして特定され、当該臨床エンドポイントが、(i)初回投与の約24週間後に測定されたCDAIが150ポイント未満(<)であると定義される臨床寛解、(ii)1日平均排便回数(SF)≦3かつ1日平均腹痛(AP)スコア≦1、及び当該初回投与の約12週間後に測定されたベースラインからAPもSFも悪化しないことに基づいて定義される患者報告アウトカム(PRO)-2寛解、並びに(iii)当該初回投与の約12週間後に測定されたCDAIスコアにおけるベースラインからの(≧)100ポイント以上の低下として定義される臨床奏功からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
7.当該抗体が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、当該軽鎖可変領域が、
配列番号4の相補性決定領域軽鎖1(CDRL1)アミノ酸配列、
配列番号5のCDRL2アミノ酸配列、及び
配列番号6のCDRL3アミノ酸配列を含み、
当該重鎖可変領域が、
配列番号1の相補性決定領域重鎖1(CDRH1)アミノ酸配列、
配列番号2のCDRH2アミノ酸配列、及び
配列番号3のCDRH3アミノ酸配列を含み、当該患者が、当該抗体に対する奏功者であるとみなされる、実施形態1に記載の方法。
8.当該患者が、当該抗体に対する奏功者であり、以下に示す臨床エンドポイント:
(i)クローン病活動性指数(CDAI)スコアにおけるベースラインからの変化;
(ii)150ポイント未満(<)のCDAIとして定義される、臨床寛解;
(iii)CDAIスコアにおけるベースラインからの100ポイント以上(≧)の低下又はCDAIスコア<150として定義される臨床奏功;
(iv)1日平均排便回数(SF)及び1日平均腹痛(AP)スコアに基づいて定義される、患者報告アウトカム(PRO)-2寛解;
(v)CDAIスコアに基づく臨床奏功及びC反応性タンパク質(CRP)又は糞便カルプロテクチンにおけるベースラインからの減少を使用して定義される、臨床バイオマーカー奏功;
(vi)クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)によって測定される、内視鏡奏功;
(vii)クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)によって測定される、内視鏡的寛解;
(viii)12週目~48週目の全ての来院のうちの大多数についてCDAI<150として定義される、48週目における持続的な臨床寛解;
(ix)48週目におけるCDAIスコアが<150でありかつ48週目においてコルチコステロイドを投与されていないとして定義される、48週目におけるコルチコステロイドフリー臨床寛解;
(x)患者報告アウトカム測定情報システム(PROMIS)に基づく、倦怠感奏功;並びに
(xi)クローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)によって測定される、内視鏡奏功
を満たすものとして特定される、実施形態7に記載の方法。
9.当該臨床エンドポイントが、初回治療の4、8、12、16、20、28、32、36、40、44、及び/又は48週間後に測定される、実施形態8に記載の方法。
10.当該抗体が、医薬組成物の7.9%(w/v)のスクロース、4.0mMのヒスチジン、6.9mMのL-ヒスチジン一塩酸塩一水和物;0.053%(w/v)のポリソルベート80を含む組成物中に存在し、希釈剤は標準状態の水である、実施形態7に記載の方法。
11.クローン病を治療するために使用される1つ以上の追加の薬物を当該患者に投与することを更に含む、実施形態1に記載の方法。
12.当該追加の薬物が、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs、NSAID)、メトトレキサート(methotrexate、MTX)、抗B細胞表面マーカ抗体、抗CD20抗体、リツキシマブ、TNF阻害剤、コルチコステロイド、及び共刺激調節剤からなる群から選択される、実施形態11に記載の方法。
13.当該抗体が、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
14.当該抗体が、配列番号10の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号9の重鎖アミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の方法。
15.当該患者が、クローン病について生物学的療法非奏効又は不耐(Bio非奏効)とみなされる、実施形態1に記載の方法。
16.当該患者が、クローン病について従来療法非奏効又は不耐(Con非奏効)とみなされる、実施形態1に記載の方法。
17.当該クローン病が、中等度から重度の活動性クローン病である、実施形態1に記載の方法。
18.当該患者が、当該初回投与の投与前に活動性クローン病の内視鏡的証拠を有する、実施形態17に記載の方法。
19.当該患者が、当該初回投与の投与前少なくとも3ヶ月間、中等度から重度の活動性クローン病を有する、実施形態17に記載の方法。
20.患者における中等度から重度の活動性クローン病を治療する方法であって、(i)IL23に特異的な抗体の400mgの初回皮下投与、当該初回投与の約4週間後の400mgの皮下投与、及び当該初回投与の約8週間後の400mgの皮下投与を患者に投与することと、(ii)200mgの投与の抗体を約8週間での投与後約4週間毎に、又は100mgの投与の抗体を約8週間での投与後約8週間毎に更に投与することと、を含み、当該抗体が、配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、当該患者が、当該初回投与の約12週間後に臨床エンドポイントを満たすものとして特定されることによって、当該抗体に対する奏功者であり、当該臨床エンドポイントが、CDAIが150ポイント未満(<)であると定義される12週目での臨床寛解、又はクローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)におけるベースラインからの少なくとも50%の改善によって測定される内視鏡奏功である、方法。
【実施例】
【0169】
(実施例1)
クローン病の標的としてIL-23を関与させる前臨床的証拠
遺伝的及び動物モデルの試験により、クローン病の病態生理学の駆動におけるIL-12及びIL-23の寄与を調べた。結果は、IL-23が炎症性腸疾患(IBD)において主要な役割を果たすことを示し、新たな証拠は、IL-23単独を遮断することがIL-12及びIL-23の両方を遮断するよりも効果的な戦略であり得ることを示唆している。
【0170】
遺伝的及び動物モデルのデータからの初期観察は、クローン病が、潜在的に、IL-12及び/又はIL-23がそれぞれ導入するTh1及びTh17経路を介して、IL-12及び/又はIL-23によって媒介されることを示唆している。しかしながら、クローン病におけるIL-23が主要な役割を果たすことを示唆する証拠が増えている。ゲノムワイド関連解析は、クローン病に関連するIL-23R遺伝子における多型を同定した。腸炎症を駆動する際のIL-23の役割は、いくつかのマウスモデルで示されている。抗IL-23抗体で処置したマウスは、炎症の減弱を示し、IL-23のp19サブユニットの遺伝的欠失を有するマウスは、腸炎症のいくつかのモデルで保護される。
【0171】
クローン病におけるIL-12/23-標的化療法(ウステキヌマブ)による臨床経験
クローン病におけるウステキヌマブの第3相プログラムには、ウステキヌマブの静脈内(intravenous、IV)導入の有効性及び安全性を評価する2つの8週間の試験、並びに合計で52週間の治療期間にわたるウステキヌマブの皮下(subcutaneous、SC)維持の有効性及び安全性を評価する1つの維持試験を含んだ。ウステキヌマブは、クローン病を有する生物学的に適格な患者、すなわち、従来療法非奏効であった患者及び生物学的療法非奏効であった患者の全範囲において評価した。0週目にウステキヌマブ約6mg/kgのIV導入投与を1回行った後、それぞれBIO非奏効参加者及びCON非奏効参加者の約21%及び40%(プラセボ治療参加者のそれぞれ約7%及び20%に対して)が、8週目に臨床寛解を達成した(クローン病活動指数[CDAI]で評価)。ウステキヌマブIV導入に奏功し、再無作為化されて90mgを8週間毎(q8w)又は90mgを12週間毎(q12w)のウステキヌマブSC維持療法に受けた参加者のうち、それぞれ参加者の約53%及び49%が、プラセボ維持を受けた参加者の36%と比較して52週目に臨床寛解状態にあった。
【0172】
クローン病におけるIL-23標的化療法による臨床経験
まずIL-12/23p40アンタゴニスト(ブリアキヌマブ及びウステキヌマブ)の臨床試験によって、クローン病におけるIL-23の潜在的な治療的役割を確立した。ウステキヌマブ(STELARA(登録商標))は、最近、中程度から重度に活性なクローン病への治療に対して承認された。これらのプログラムは、IL-12及びIL-23の両方の遮断がクローン病の治療に有効であることを示しているが、それらは2つのサイトカインの相対的な寄与を確認できなかった。
【0173】
2つの抗IL-23アンタゴニスト、リサンキズマブ(以前はBI-655066)及びブラジクマブ(以前はMEDI2070、AMG 139)の最近の研究では、中等度から重度の活動性クローン病を有する参加者におけるIL-23遮断の有効性、臨床の徴候及び症状の改善、炎症バイオマーカーの低減、並びに主に生物学的抵抗性クローン病を有する参加者における内視鏡所見の改善における有効性を実証する第2相結果が報告されている。これらの試験の各々で観察された有効性の大きさは、ウステキヌマブ(抗IL-12/23)と比較して改善された有効性の可能性を示し、交差試験比較及び比較的小さい規模のIL-23第2相試験の制限が認められる。
【0174】
IL-23遮断薬による臨床寛解率の交差試験比較は、ウステキヌマブと比較して、改善された有効性の可能性を示唆している。リサンキズマブ(0、4、8週目に200及び600mg IV)及びブラジクマブ(0、4週目に700mg IV)の両方の試験で使用した導入投与は、承認されたウステキヌマブ投与(0週目に約6mg/kg IV)よりもかなり多かったことは注目すべきである。化合物の交差メタ分析は、特にリサンキズマブを投与することで、投与応答曲線の終点がより高くなり得ることを示唆する。
【0175】
更に、リサンキズマブを用いた第2相試験はまた、6ヶ月の治療後まで奏功率が最大に達しない可能性があることを示唆した。最大6ヶ月間にわたり4週間毎に(q4w)600mg IVの投与を用いた場合、約50%の臨床寛解率が全ての処置患者において観察され、同様のフォローアップ時点で同様の試験集団において、ウステキヌマブを含む他の薬剤で以前に報告された寛解率よりも大幅に高かった。6ヶ月で寛解し、リサンキズマブ維持治療(180mg SC q8w)を継続した参加者のうち、約70%が1年で寛解した。
【0176】
現在、GALAXI臨床プログラムは、以前の従来の療法又は生物学的療法に対して不十分な奏功又は耐容性不良を示した中等度から重度の活動性クローン病を有する参加者において、グセルクマブの静脈内(IV)導入投与とそれに続く皮下(SC)維持投与を評価している。GALAXIプロトコルの下には、3つの別個の試験がある(第2相試験GALAXI 1並びに第3相試験GALAXI 2及びGALAXI 3)。GALAXI 1試験からの結果は、グセルクマブIV誘導が、12週目における主要な臨床的有効性及び内視鏡的アウトカム尺度にわたってプラセボと比較してより大きな改善を示したことを示す。
【0177】
クローン病におけるグセルクマブの包括的な根拠
要約すると、遺伝的及び前臨床的証拠を合わせて、IBDの根底にある病態生理学の調節においてIL-23を選択的に標的化することについての大きな役割が示唆される。2つのIL-23拮抗薬の利用可能な臨床経験及び承認されたIL-12/23拮抗薬(ウステキヌマブ)からの確立された証拠は、それぞれ、クローン病の治療におけるIL-23を標的化するためのメカニズムの証明及び概念の証明を実証している。これとともに、利用可能な証拠は、クローン病の治療においてグセルクマブを治験するための裏付けを提供する。
【0178】
現在の試験において、治験依頼者の関心は、クローン病治療の誘導期のためのグセルクマブのSC投与を評価することにある。生物剤の皮下送達は、多くの疾患領域にわたるIV投与に対する貴重な代替手段となっている。SC及びIV投与経路の薬物動態(pharmacokinetic、PK)プロファイルは異なるが、SC投与は、有効であり、安全であり、耐容性が良好であることが証明されており、患者又はその介護者の好ましい状況において患者又はその介護者にとって投与の柔軟性がより大きく、そして、投与がより容易であるため、全般的に患者及び医療提供者に好まれている。加えて、SC投与は、薬物送達に関連する医療費の低減及び資源活用をもたらした。要するに、SC投与は、より侵襲性が高く、時間のかかるIV注入に対する魅力的な代替手段となっている。
【0179】
GALAXI 1の結果並びに患者及び医療制度に対するSC誘導投与の潜在的利益を考慮して、本研究の目的は、中等度から重度の活動性クローン病を有する参加者においてプラセボと比較したグセルクマブSC誘導の有効性、安全、及びPK/薬力学(pharmacodynamics、PD)プロファイルを評価することである。
【0180】
臨床プロトコル
プロトコル標題-GRAVII
中等度から重度の活動性クローン病の参加者におけるグセルクマブ皮下導入療法の有効性及び安全性を評価するための、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群、多施設試験
【0181】
シノプシス
簡略標題:中等度から重度の活動性クローン病の参加者におけるグセルクマブ皮下導入療法の有効性及び安全を評価するための第3相試験
【0182】
プロトコル全体を通して「試験介入」という用語は、試験薬物を指す。
【0183】
目的及びエンドポイント
この試験の目的は、中等度から重度の活動性クローン病におけるグセルクマブ SCの効果を評価することである。12週目のエンドポイントは、併用グセルクマブ誘導投与群(0、4、及び8週目にグセルクマブ400mg SCを投与)とプラセボ群との比較に基づく。24週目のエンドポイントは、各グセルクマブ群(0週目、4週目、及び8週目にグセルクマブ400mg SC、続いて、一方の群ではグセルクマブ200mg SCを4週間毎[q4w]、他方の群では100mg SCを8週間毎[q8w])とプラセボ群との比較に基づく。三次エンドポイントとしては、以下に指定するエンドポイントが挙げられるが、これらに限定されない。分析は、24週目までの適用可能な時点で行われる。
【0184】
【0185】
仮説
この試験の共主要仮説は、中等度から重度の活動性クローン病を有する参加者の間で、グセルクマブが12週目での臨床寛解の誘導においてプラセボよりも優れており、グセルクマブが12週目での内視鏡奏功の誘導においてプラセボよりも優れているというものである。
【0186】
全体的な計画
これは、グセルクマブ皮下(SC)誘導投与の有効性及び安全性を評価するための無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群、多施設試験である。標的集団は、X線撮影、組織学的検査、及び/又は内視鏡検査によって既に確認されている、結腸炎、回腸炎、又は回結腸炎を伴う中等度から重度の活動性クローン病(少なくとも3ヶ月持続)を有する成人参加者である。試験に適格であるためには、参加者は、活動性クローン病の内視鏡的証拠も有している必要があり、以前の従来療法(経口コルチコステロイド又は免疫調節剤アザチオプリン[AZA]、6-メルカプトプリン[6-MP]、又はメトトレキサート[MTX];CON非奏功)又は生物学的療法(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ベドリズマブ、又はこれらの剤について承認されたバイオシミラー;BIO非奏功)に対する不十分な奏功若しくは耐容性不良が実証されている必要がある。
【0187】
標的集団を含む以前の治療に基づく2つの群について、以下に簡単に説明する。
【0188】
従来療法の非奏功又は不耐(CON非奏功)
参加者は、以下の従来のクローン病療法:経口コルチコステロイド(プレドニゾン、ブデソニド、及びベクロメタゾンジプロピオネートを含む)又は免疫調節剤アザチオプリン(AZA)、6-メルカプトプリン(6-MP)、又はメトトレキサート(MTX)のうちの少なくとも1つに対して不十分な奏功を示しているか、又は耐容性不良であったという必要がある。
【0189】
コルチコステロイド依存性(すなわち、クローン病の症状を再発させることなく、成功裏にコルチコステロイドを漸減することができない)を示した参加者も適格である。
【0190】
参加者は、生物学的療法(すなわち、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ベドリズマブ、又はこれらの剤について承認されたバイオシミラー)を受けたことがなくてもよく、又は生物学的療法に曝露されたことがあり、不十分な奏功若しくは不耐を示していなくてもよい。
【0191】
生物学的療法の非奏功又は不耐(BIO非奏功)
参加者は、少なくとも1つ又は2つ以上の生物学的療法(すなわち、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ベドリズマブ、又はこれらの剤について承認されたバイオシミラー)に対して、最低でもクローン病の治療のために局所として承認された投与である投与で、不十分な奏功を示したか又は耐容性不良であったという必要がある。不十分な奏功とは、一次非奏功(すなわち、初期奏功がない)又は二次非奏功(すなわち、初期に奏功したがその後奏功が喪失する)として定義される。
【0192】
以前IL-12/23又はIL-23剤に曝露された参加者は、この試験に不適格である。
【0193】
全体として、試験は、12週間の導入療法及び少なくとも12週間の維持療法を通してグセルクマブSC治療を評価する。24週目に、全ての参加者が延長相に入り、24週目に受けていた同じ治療レジメンを受ける。試験は、最後の参加者が48週目の評価を完了し、48週目のデータベースロック(database lock、DBL)が完了した後に非盲検化される。試験の非盲検時に、グセルクマブでレスキューされていなかったプラセボ参加者は、試験介入を中止し、最終有効性及び安全性(final efficacy and safety、FES)フォローアップ来院する。他の全ての参加者は、96週目までグセルクマブ治療を継続する。
【0194】
全試験期間は最長109週間である。試験には、以下の相が含まれる。
1.スクリーニング相:最長5週間
2.主治療相:24週間
3.延長治療相:72週間
4.治療後相(FESフォローアップ来院):試験介入の最後の投与のおよそ12週間後まで
【0195】
概して、ベースラインにおいてクローン病の治療のために経口5-アミノサリチル酸化合物、経口コルチコステロイド、従来の免疫調節剤(AZA、6-MP、又はMTX)、抗生物質、及び/又は経腸栄養を受けている参加者は、経口コスチコステロイドを除いて、ベースライン前の指定の期間にわたって及び48週目まで安定した投与を維持するべきである。0週目にコルチコステロイドを服用した全ての参加者は、12週目に始めて、コルチコステロイド投与を漸減し始める必要がある。この漸減は、医学的に実現不可能でない限り必須である。試験介入を早期に中止する参加者は、試験介入中止(study intervention discontinuation、SID)来院のために戻るべきである。全ての無作為化された参加者は、試験介入の最後の投与のおよそ12週間後にFESフォローアップ来院を完了するべきである。
【0196】
有効性、安全性、薬物動態(PK)、免疫原性、及びバイオマーカーは、活動スケジュール(Schedule of Activitie、SoA)に従って評価される。薬理ゲノミクス研究のための血液サンプルは、プロトコルのこのコンポーネントに同意する参加者のみから採取される(現地の規制によって許可される場合)。
【0197】
データベースロックは、24週目、48週目、及び最後の参加者がSoAに示すように最後に予定された評価を完了したときに計画される。必要に応じて、追加のDBLを追加することができる。
【0198】
参加者数
標的サンプルサイズは、318人の参加者である。生物学的療法に対して不十分な奏功又は耐容性不良を有した参加者は、集団のおよそ35%~65%を構成する。
【0199】
介入群及び継続期間
全試験期間は最長109週間である。試験には、以下の相が含まれる。
1.スクリーニング相:最長5週間
2.主治療相:24週間
3.延長治療相:72週間
4.治療後相(FESフォローアップ来院):試験介入の最後の投与のおよそ12週間後まで
【0200】
0週目に、適格参加者を、以下のSC治療のうちの1つに1:1:1の比で無作為に割り付ける。
・参加者106人に、0週目、4週目、及び8週目にグセルクマブ400mg SC、続いて、24週目まで4週毎に(q4w)グセルクマブ200mg SC
・参加者106人に、0週目、4週目及び8週目にグセルクマブ400mg SC、続いて、24週目まで8週毎に(q8w)グセルクマブ100mg SC
・参加者106人に、0週目から24週目までプラセボSC q4w
【0201】
表2は、試験介入の説明である。
【0202】
【0203】
無作為化は、ベースラインクローン病活動指数(CDAI)スコア(≦300又は>300)、ベースラインクローン病簡易内視鏡スコア(SES-CD)スコア(≦12又は>12)、及びベースライン(0週目)におけるBIO非奏功ステータス(イエス又はノー)によって層別化される。
【0204】
延長相中、全ての参加者が、24週目に受けていた同じ処置レジメンを受け続ける。
【0205】
48週目のDBL後の試験の非盲検時に、グセルクマブでレスキューされていなかったプラセボ参加者は、試験介入を中止し、FESフォローアップ来院する。他の全ての参加者は、96週目までグセルクマブ治療を継続する。
【0206】
12週目及び16週目にレスキュー基準のうちの少なくとも1つを満たすプラセボ群の全ての参加者に、レスキュー治療、すなわち、16週目、20週目、及び24週目にグセルクマブ400mg SC、続いて、8週毎(q8w)にグセルクマブ100mg SCを投与する。盲検を維持するために、レスキュー基準のうちの少なくとも1つを満たすグセルクマブに無作為化された参加者は、割り付けられた治療レジメンを継続し、プラセボSC注射に適合する盲検偽レスキューを受ける。
【0207】
ウステキヌマブ第3相クローン病プログラム(IM-UNITI)の維持試験において、治験依頼者は、クローン病を有する参加者におけるウステキヌマブ(IL-12/23アンタゴニスト)の単回投与調整の効果を評価した。参加者を無作為化して、プラセボ、ウステキヌマブ90mg q12w、又はウステキヌマブ90mg q8w(承認されている投与)を投与した。ウステキヌマブ90mg q8w群では、28人の参加者が予め指定された奏功喪失基準を満たし、偽投与調整を受けた。16週間後、32.1%が臨床的に寛解し、46.4%が16週間後に臨床的に奏功した。これらの結果は、臨床奏功が不十分/喪失した一部の参加者が、同じ投与レジメンを経時的に継続することから利益を得られる場合があることを示す。したがって、この試験におけるグセルクマブ群は、投与調整を受けるのではなく、盲検偽レスキューを受ける。
【0208】
クローン病におけるグセルクマブIVの第2相投与範囲決定試験(GALAXI 1)からのデータに基づいて、この試験のために単回SC誘導グセルクマブ投与レジメン(0週目、4週目、及び8週目に400mg SC)を選択した。GALAXI 1の12週目の分析により、それぞれ0週目、4週目、及び8週目にIV投与された1200mg、600mg、及び200mgのグセルクマブ誘導投与で同様の有効性が実証された。試験したグセルクマブIV誘導投与の範囲内に明確な投与/曝露応答はなかった。結果として、グセルクマブ第3相試験(GALAXI 2及び3)における確認評価のために、200mgのIV導入投与レジメンを選択した。
【0209】
グセルクマブSC(TREMFYA(登録商標)SmPC 2021;TREMFYA(登録商標)USPI 2020))の推定バイオアベイラビリティがおよそ50%である場合、400mg SC投与のグセルクマブは、200mg IV投与に匹敵する全グセルクマブ曝露(AUC)をもたらすと予想される。集団PKモデリング及びシミュレーションにより、ピーク濃度は200mgのIV導入投与レジメンよりも高かったが、400mgのSC導入投与レジメン後のトラフ濃度は、IV導入投与レジメンと比較した場合非劣性であったことが実証される。IV及びSC投与の両方について承認された生物製剤からの経験により、非劣性トラフ濃度で同様の全曝露(平均定常状態血清試験介入濃度[Cavg,ss])を達成することが、両方の投与経路について同等の有効性をもたらすことが実証される。加えて、誘導期における血清ピーク濃度は、IBDにおける生物製剤の有効性の主要な駆動因子ではない可能性がある。これを考慮して、0週目、4週目、及び8週目に400mg SCの単回グセルクマブ誘導投与レジメンを、中等度から重度の活動性クローン病を有する参加者において評価する。
【0210】
2つのグセルクマブ維持投与レジメン(200mg SC q4w及び100mg SC q8w)を、本試験において評価する。これらは、進行中の第3相GALAXI試験において評価されている同じ投与である。同じ維持投与レジメンを選択することにより、SC誘導とそれに続くSC維持レジメン(本試験)対IV誘導とそれに続くSC維持レジメン(GALAXI試験)の交差試験比較が可能になる。全体として、2つのグセルクマブ維持投与レジメン(すなわち、200mg SC q4w及び100mg SC q8w)は、およそ4倍の投与範囲の曝露を提供し、これは、クローン病の治療における維持療法の投与/曝露応答評価を裏付けるものとなる。
【0211】
無作為化は、各介入群への参加者の割り当ての偏りを最小化し、既知及び未知の参加者属性(例えば患者背景的特性及びベースライン特性)が介入群間で均等なバランスとなる可能性を高め、介入群間の統計学的比較の妥当性を高めるために用いられる。加えて、介入群間の不均衡を最小化するために、無作為化は、予後又は治療奏功に影響を及ぼす因子によって層別化される(すなわち、ベースラインごとのCDAIスコア、SES-CDスコア、及びBIO非奏功ステータスで層別化される)。
【0212】
適格参加者のスクリーニングは、試験介入の投与前5週間以内に実施される。本試験に参加者を登録するための組み入れ基準及び除外基準を以下に記述する。
【0213】
組み入れ基準
各潜在的参加者は、試験に登録されるのに、以下の基準の全てを満たす必要がある。
1.年齢が18歳以上(又は試験が行われている管轄区域における同意の法定年齢)の男性又は女性(生殖器官及び染色体対によって割り当てられた機能による)。
2.X線撮影、組織学、及び/又は内視鏡検査によって過去の任意の時点で確認された、大腸炎、回腸炎、又は回結腸炎を伴う、少なくとも3ヶ月の持続期間(最小で12週間として定義される)のクローン病又は瘻孔を伴うクローン病を有する。
3.ベースラインCDAIスコア≧220以上かつ≦450として定義される臨床的に活動性のクローン病を有する:
a.液状便又は非常に軟便の数の重み付けのないCDAIコンポーネントに基づいて、1日平均SF回数≧4であるか
又は
b.APの重み付けのないCDAIコンポーネントに基づいて、1日平均APスコア≧2である
4.5つの回腸結腸部分のうちの少なくとも1つにおける潰瘍形成の存在に基づいて、スクリーニングSES-CDスコア≧6(又は孤立性回腸疾患を有する参加者については≧4)として定義されるスクリーニング内視鏡検査での施設内視鏡検査読み取り値によって評価したときに活動性回腸結腸クローン病の内視鏡的証拠を有し、その結果、以下の指定された潰瘍形成コンポーネントスコアがもたらされる:
a.「潰瘍のサイズ」のコンポーネントについて最小スコア1
及び
b.「潰瘍化表面」のコンポーネントについて最小スコア1
5.8年以上にわたる広範な大腸炎、又は10年以上にわたって結腸の部分に限定された疾患を有していた参加者は、
a.試験介入の初回投与前1年以内に異形成の存在について評価するために完全結腸鏡検査を受けたことがあるか
又は
b.スクリーニング期間中のベースライン内視鏡検査として異形成についての生検監視を伴う完全結腸鏡検査を受ける必要がある。これらの監視生検からの結果は、試験介入の初回投与前に、異形成(低グレード、高グレード、又は「反応性異型性における不定異形成」)について陰性である必要がある。
【0214】
投与された併用又は過去の薬物療法
6.クローン病のための以前又は現在の医薬は、以下のうちの少なくとも1つを含んでいる必要がある:
a.経口コルチコステロイド(ブデソニド及びジプロピオン酸ベクロメタゾンを含む)及び/又は免疫調節剤(AZA、6-MP、MTX)による現在の治療
又は
b.以下の療法:経口コルチコステロイド(ブデソニド及びジプロピオン酸ベクロメタゾンを含む)又は免疫調節剤(AZA、6-MP、MTX)のうちの少なくとも1つに対して非奏功又は耐容性不良であった履歴
又は
c.コルチコステロイド依存性(すなわち、クローン病の症状を再発させることなく成功裏にコルチコステロイドを漸減することができない)の履歴
又は
d.最低でもクローン病の治療のために局所として承認された投与である投与の1つ以上の生物剤(すなわち、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ベドリズマブ、又はこれらの剤について承認されたバイオシミラー)に対して、以前に初期奏功の欠如を示したことがある(すなわち一次非奏功者)か、初期に奏功したが、継続療法では奏功が喪失した(すなわち二次非奏功者)か、又は不耐であった
注記:基準6a~cを満たす参加者は、生物学的療法(すなわち、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ベドリズマブ、又はこれらの剤について承認されたバイオシミラー)を受けたことがなくてもよく、又はこれらの生物学的療法に曝露されたことがあってもよく、不十分な奏功も不耐も示さなかった。
7.クローン病を治療するための併用薬剤についての以下の要件の全てを順守する。以下の薬物療法は、以下に列挙される要件を満たす投与が安定であるか、又は以下で指定される時間枠内のベースラインの前に中止されているという条件の下に許容される:
a.少なくとも2週間安定した投与の経口5-ASA化合物;又は最近中止された場合、少なくとも2週間停止していたという必要がある。
b.40mg/日以下のプレドニゾン等価投与の経口コルチコステロイド、又は9mg/日のブデソニド、又は5mg/日のジプロピオン酸ベクロメタゾン、及び少なくとも2週間の安定した投与;又は最近中止された場合、少なくとも2週間停止していたという必要がある。
c.少なくとも12週間の従来の免疫調節剤(すなわち、AZA、6-MP、又はMTX)及び少なくとも4週間安定した投与であったか;又は最近中止された場合、少なくとも4週間停止していたという必要がある。
d.抗生物質をクローン病の一次治療として受ける場合、投与は少なくとも3週間安定である必要がある;又は最近中止された場合、少なくとも3週間停止していたという必要がある。
e.クローン病の一次治療として経腸栄養剤を服用する場合、少なくとも2週間服用していたという必要がある;又は最近中止された場合、少なくとも2週間停止していたという必要がある。
【0215】
検査室試験のスクリーニング
8.以下のパラメータ範囲内の検査室スクリーニング試験結果を有し、検査室パラメータのうちの1つ以上が範囲外である場合、およそ5週間のスクリーニング期間中に検査室値の1回の再試験が許容される:
a.ヘモグロビン≧8.0g/dL
b.白血球(White blood cells、WBC)≧3.0×103/μL
c.好中球≧1.5×103/μL
d.血小板≧100×103/μL
e.血清クレアチニン≦1.5mg/dL
f.アラニントランスアミナーゼ(Alanine transaminase、ALT)(又はアスパラギン酸トランスアミナーゼ[aspartate transaminase、AST])≦2×正常上限(upper limit of normal、ULN)
g.総ビリルビン(Total bilirubin、TBili)≦1.5×ULN(既知のジルベール症候群を有する参加者では単離された総ビリルビン>1.5×ULNが許容される。ジルベール症候群は、直接ビリルビン<30%によって示唆される。)
【0216】
結核
潜在的参加者は、参加者が以下のTBスクリーニング基準の全てを満たす場合に適格であるとみなされる:
注記:インターフェロンガンマ放出アッセイ(IGRA)試験は、QuantiFERON-TB(登録商標)又はT-SPOT(登録商標).TBのいずれかを含む。
a.活動性TBの履歴を有しておらず、又はスクリーニング時の病歴及び/又は身体検査の際に活動性TBを示唆する徴候若しくは症状を示す。
b.スクリーニング前に、潜在性TBの履歴がない。潜在性TBの履歴を有し、かつ以下の基準のうちの1つを満たす参加者は例外となる。
1.潜在性TBの治療を現在受けているか
又は
2.試験介入の初回投与前に潜在性TBの治療を開始する
注記:治療された潜在性TBの履歴を有する参加者については、試験介入の初回投与前に適切な治療の文書化を行う必要がある。以前のTB治療の妥当性を検証し、適切な文書を提供することは、治験責任医師の責任である。治療された潜在性TBの履歴を有するか又は潜在性TBを現在治療中である参加者についてのスクリーニングにおいて、IGRA試験は必要ない。
c.活動性TBを有する人と最近濃厚接触したことがない。接触があった場合、そのような参加者を、治療が是認されるか否かを判定するためにTBを専門とする医師に紹介する。この評価は適切に文書化される必要があり、治療が推奨される場合、参加者は、試験介入の初回投与前に適切な治療を受けている必要がある。
d.試験介入の初回投与前2カ月以内に陰性IGRA検査結果を有するか、又は
1.上記の適切に治療された潜在性TBの履歴を有する。
2.活動性TBが排除され、潜在性TBの適切な治療が試験介入の初回投与前に開始されたという新たに同定された陽性IGRA検査結果を有する。
3.以下によって決定される偽陽性IGRA検査を有する:
◆偽陽性であることが疑われる初期IGRA検査を反復する必要がある。反復検査が陽性ではない場合、最初の検査を偽陽性とみなすことができるかどうかを判定するために、参加者を、TBを専門とする医師に紹介する必要がある。この評価は、試験介入の初回投与前に適切に文書化される必要がある。しかしながら、反復検査が陽性である場合、それは真の陽性とみなされ、参加者が適格であるのは、活動性TBが排除されており、上記のように潜在性TBに対する適切な治療が開始されている場合のみである。
注記:不確定/境界域の結果を取り扱うべきである。
e.活動性又は非活動性TBを示唆する異常を示さない、試験介入の初回投与前3カ月以内の胸部X線写真(後-前及び側面像の両方、又は該当する場合、地域/国の規制による)又は胸部コンピュータ断層撮影(CT)を有する。
【0217】
避妊
9.女性の出産能力については、スクリーニング時の血清妊娠検査結果が陰性である必要がある。
10.無作為化の前に、女性は以下である必要がある
a.出産能力がないか
又は
b.出産能力があり、かつ
○異性間性交が活発である場合、有効性の高い避妊方法(一貫して正確に使用した場合、1年当たりの失敗率が<1%)を実施し、試験介入を受けている間及び最後の投与の12週間後(関連する全身曝露の終了)まで有効性の高い方法を維持することに同意する。注記:選択された方法は、有効性の高い避妊についての現地/地域規制/ガイドラインを満たす必要がある。
注記:試験開始後に参加者の出産能力が変化した場合(例えば、初経前の女性が初経を経験した)又は妊娠リスクが変化した場合(例えば、異性間性交が活発でない女性が活発になった)、女性は、有効性の高い避妊方法の実施を開始する必要がある。
11.女性は、試験中及び試験介入の最後の投与後12週間、生殖補助の目的で卵子(卵細胞、卵母細胞)を提供しないことに同意する必要がある。
12.試験中及び試験介入の最後の投与後少なくとも12週間、男性参加者は、
a.出産能力のある女性との性交が活発である者は、バリア避妊法(すなわち、殺精子剤フォーム/ジェル/フィルム/クリーム/座薬付きのコンドーム又は殺精子剤フォーム/ジェル/フィルム/クリーム/座薬付きの女性用コンドーム/閉塞キャップ[隔壁又は頚管/ボールトキャップ])の使用に同意する必要がある
b.妊娠中の女性との性交が活発である者は、コンドームを使用する必要がある。
13.生殖目的で精子を提供しないことに同意する必要がある。各参加者は、各自が試験の目的とそれに必要な手順について理解し、試験に参加する意思があることを示す、インフォームドコンセントフォーム(informed consent form、ICF)に署名する必要がある。
注記:同意の法定年齢が18歳を超える地域では、参加者及びその法的に許容可能な代理人の両方によるインフォームドコンセントを得、署名を得る必要がある。
14.各自が研究のために任意によるDNAサンプルを提供することに同意する場合は、別個のICFに署名する必要がある(現地条例が許す場合)。任意によるDNA研究サンプルについての同意を拒否したことで、参加者を試験への参加から除外することはない。
注記:同意の法定年齢が18歳を超える地域では、参加者及びその法的に許容可能な代理人の両方によるインフォームドコンセントを得、署名を得る必要がある。
15.評価の完了、来院スケジュールの順守、及びライフスタイル制限の順守を含むがこれらに限定されない、全ての指定された要求を順守する意思があり、順守することができる。
【0218】
除外基準
以下の基準のいずれかを満たす潜在的参加者は、試験の参加から除外される。
1.症候性狭窄若しくは狭窄症、短腸症候群、又は手術が必要になると予測され得る任意の他の症状発現などのクローン病の合併症を有している場合、療法に対する奏功を評価するためのCDAIの使用から除外され得る。さもなければ、場合によりグセルクマブによる治療の効果を評価する能力に混乱が生じる。
2.現在膿瘍があるか、又は膿瘍の疑いがある場合。最近の皮膚及び肛門膿瘍は、更なる手術の必要性が予想されない限りにおいて、ベースラインの少なくとも3週間前、又は腹腔内膿瘍に関してはベースラインの8週間前に、排膿され適切に治療されている場合は、除外とはならない。活動性の瘻孔を有する参加者は、手術の必要性が予測されない場合、かつ現在特定されている膿瘍がない場合には、組み入れることができる。
3.試験介入の初回投与前24週間以内に任意の種類の腸切除、又は12週間以内に任意の他の腹腔内若しくは他の大手術を受けたことがある。
4.排出する(すなわち、機能する)ストーマ又はオストミーを有する場合。
5.試験へのエントリー前に除去されなかった場合のスクリーニング内視鏡検査における腺腫性結腸ポリープの存在、又は除去されなかった腺腫性結腸ポリープの履歴。
6.試験介入の初回投与前4ヶ月以内に、クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridium difficile、以前はクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium dificile))毒素を含む腸内病原菌について便培養又は他の検査で陽性を有する。ただし、反復検査が陰性であり、その病原体による感染継続の徴候がない場合は除く。
注記:治療及び反復試験は、現在のスクリーニング期間に行うことができる。
【0219】
投与された併用又は過去の薬物療法
7.所定期間内に、以下の処方薬又は療法のいずれかを受けている場合:
a.ベースラインの3週間以内に、IVコルチコステロイドを投与された
b.ベースラインの8週間以内に、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、又はミコフェノール酸モフェチルを投与された
c.ベースラインの4週間以内に、6-チオグアニンを投与された
d.生物剤:
1.ベースラインの8週間以内に、抗TNFα療法(例えば、インフリキシマブ、エタネルセプト、セルトリズマブペゴル、アダリムマブ、ゴリムマブ)を投与された
2.ベースラインから12週間以内に、ベドリズマブを投与された
3.ベースラインの12週間以内又はベースラインの5半減期以内のいずれか長い方に、承認された及び治験中の生物剤を含む他の免疫調節生物剤を投与された
e.ベースラインの4週間以内又はベースラインの5半減期以内のいずれか長い方に、任意の治験介入を受けた。
f.ベースラインの12ヶ月以内に、非自家幹細胞療法(例えば、Prochymal)、ナタリズマブ、エファリズマブ、又はB細胞若しくはT細胞を枯渇させる生物剤(例えば、リツキシマブ、アレムツズマブ、又はビジリズマブ)を投与された。
g.ベースラインの3週間以内に、クローン病をアフェレーシス(例えば、Adacolumnアフェレーシス)又は完全静脈栄養により治療した。
8.ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、ブラジクマブ、グセルクマブ、ミリキズマブ、及びリサンキズマブを含むがこれらに限定されない、IL-12/23又はIL-23を標的とする生物剤を以前に投与されたことがある。
【0220】
感染症又は感染素因:
9.スクリーニング前に、潜伏性又は急性肉芽腫性感染症の履歴がある場合。これにはヒストプラスマ症又はコクチジオイデス真菌症が含まれる。過去にヒストプラスマ症又はコクシジオイデス症の可能性があるX線写真の証拠を有する参加者は除外される。
10.気道感染症、気管支拡張症、再発性腎臓/尿路感染症(例えば、腎盂腎炎、膀胱炎)、又は開放、排液性、若しくは感染皮膚創傷、又は潰瘍を含むがこれらに限定されない慢性又は再発性の感染症の履歴があるか又は進行中である。
11.試験介入の初回投与前12週間以内に胸部X線写真を入手する必要がある。悪性腫瘍、以前は認識されていなかった肺病理、並びにTB、ヒストプラスマ症、又はコクシジオイデス真菌症からの活動性又は潜在性感染を含むがこれらに限定されない未診断の肺病理を示唆する異常を示す結果は除外される。胸部X線写真の代わりにプロトコル外で得られた胸部CTスキャンも許容可能である。潜在的TBの履歴の適格性に関する情報については、組み入れ基準9を参照されたい。
12.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体陽性の履歴、又はスクリーニング時のHIV検査で陽性。
13.以下の条件のうちの1つを満たさない限り、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus、HCV)に対する抗体に対して血清陽性である:
a.抗ウイルス治療を完了した少なくとも12週間後にHCV RNAについて陰性であると定義される治療成功歴を有し、スクリーニング時に陰性のHCV RNA試験結果を有するか、
又は
b.血清陽性である一方、スクリーニングの少なくとも12週間前に陰性のHCV RNA試験結果を有し、スクリーニング時に陰性のHCV RNA試験結果を有する。
14.B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus、HBV)感染について検査が陽性である(付録4[第10.4節])。
注記:HIV、HCV、又はHBV検査結果によりこの試験に適格ではない参加者は、これらの感染の治療における専門知識を有する医師と相談することが推奨される。
15.12ヶ月以内のカルメット-ゲラン桿菌(BCG)ワクチン接種、又はスクリーニング前4週間以内の任意の他の生細菌若しくは生ウイルスワクチン接種、又は試験中にそのようなワクチンを受ける予定がある。
16.非結核性抗酸菌感染症又は臨床的に有意な日和見感染症(例えば、サイトメガロウイルス大腸炎、ニューモシスチス症、侵入性アスペルギルス症)を有しているか、又は有したことがある場合。
17.臨床的に有意な感染症(すなわち、肝炎、敗血症、肺炎、又は腎盂腎炎)を有したことがあるか、感染のために入院したことがあるか、又は試験介入の初回投与前8週間以内に感染のために非経口抗生物質で治療されたことがある。治験責任医師の裁量で臨床的に有意であるとみなされない治療された及び消散した感染症は、除外する必要がない(すなわち、急性上気道感染症、無併発性尿路感染症)。
18.現在、臨床的に有意な感染の徴候又は症状を有する場合。治験責任医師の裁量で臨床的に有意であるとみなされない進行中の感染症は、除外する必要がない(すなわち、急性上気道感染症、無併発性尿路感染症)。
19.試験介入の初回投与前8週間以内に帯状疱疹感染の証拠を有する。
20.ベースライン前の6週中に、(a)確認された重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)(コロナウイルス病2019[COVID-19])感染(検査陽性)、又は(b)SARS-CoV-2感染が疑われる(文書化された検査結果を伴わない臨床的特徴)、又は(c)既知のSARS-CoV-2感染を有する若しくは疑われる人との濃厚接触のいずれかを有していた。
例外:検証されたSARS-CoV-2検査についての文書化された陰性結果を有する場合は含めてよい。
a.上記の条件(a)、(b)、(c)の少なくとも2週間後に得られた(存在する場合、重要な臨床的特徴、例えば、発熱、咳、呼吸困難の消散から時間を計った)
及び
b.陰性検査結果とベースライン検査来院との間の期間中に、上記の条件(a)、(b)、(c)が全て存在しない
COVID-19関連の除外についての注記:
・COVID-19関連の検査(SARS-CoV-2ウイルスの存在及びそれに対する免疫について)の分野は急速に進化している。追加の検査は、治験責任医師によって必要とみなされた場合、スクリーニングの一部として及び/又は試験中に、当局からの現在の規制/指導/標準治療に従って実施され得る。
・注意:重度のCOVID-19病に対してより高いリスクを有する可能性のある者については、試験に登録することの潜在的利益及びリスクを比較するとき及び試験への参加中、現地の保健当局からの指導に従う。
【0221】
悪性腫瘍又は悪性腫瘍の高い可能性:
21.現在悪性腫瘍を有するか又はスクリーニング前5年間以内に悪性腫瘍の履歴を有する(適切に治療され、試験介入の初回投与前少なくとも3ヶ月間[最短で12週間として定義される]に再発のエビデンスがない非黒色腫皮膚癌、又は治療され、試験介入の初回投与前少なくとも3ヶ月間再発のエビデンスがない子宮頸部上皮内癌を除く)。
22.リンパ種を含むリンパ増殖性疾患の既知の履歴、意義不明の単クローン性γグロブリン血症の履歴;又はリンパ節症若しくは脾腫などの可能性のあるリンパ増殖性疾患を示唆する徴候及び症状を有する。
【0222】
共存する医学的状態又は過去の病歴
23.重度、進行性、又は制御されていない腎臓、泌尿生殖器、血液、内分泌、心臓、血管、肺、リウマチ、神経、精神、若しくは代謝障害、又はこれらの徴候及び症状の履歴を有する。
24.移植臓器を有している場合(スクリーニングの12週間超前に行われた角膜移植は除く)。
25.静脈穿刺の耐容性が不十分であるか又は試験期間中に必要とされる血液サンプル採取のための適切な静脈アクセスを欠く。
26.スクリーニング前1年間以内に、Diagnostic and Statistical Manual of Disorder(第5版)の基準に従って薬物又はアルコール乱用の履歴。
27.過去6ヶ月間に、実行する意向のある自殺念慮(念慮レベル4)、具体的な計画及び意向を伴う自殺念慮(念慮レベル5)、又は自殺行動(実際の自殺企図、自殺企図の中断、自殺企図の失敗、又は自殺企図をなすための準備行動)のスクリーニング時におけるコロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia-Suicide Severity Rating Scale、C-SSRS)評点と定義され得る、不安定な自殺念慮又は自殺行動を有し、かつ精神保健の専門家による評価に基づいて治験担当者によりそのリスクがあるとみなされる。更に、死を望むこと(「念慮レベル1」)、非特異的な積極的自殺思考(「念慮レベル2」)、実行する意向のない任意の方法による積極的自殺念慮(計画なし)(「念慮レベル3」)、又は治験担当者によってリスクがあると判定される非自殺的自傷行動のC-SSRS評点を有する参加者は、無作為に割り付けられない場合がある。
28.グセルクマブ又はその賦形剤に対する既知のアレルギー、過敏症、又は不耐を有する。
29.この試験に登録している間に又は試験介入最後の投与後12週間以内に、妊娠しているか、若しくは授乳中であるか、又は妊娠する計画をしている女性である。
30.この試験に登録している間に又は試験介入の最後の投与後12週間以内に、子供の父親となる計画をしている男性である。
【0223】
全般
31.この試験の実施中に治験薬又は手順を用いた何らかの他の試験に現在参加中であるか又は参加する意図がある。
32.治験担当者の意見で、参加することが参加者の最良の利益にならない(例えば、健康を損なう)か、又はプロトコルに規定された評価を妨げる、制限する、若しくは混乱させる可能性のある、任意の条件を有する。
33.治験担当者又は試験拠点の被雇用者であり、治験担当者又は試験拠点の指示に基づいて提示試験又は他の試験に直接的に関与している者の場合、同様にその被雇用者又は治験責任者の家族である場合。
【0224】
クローン病におけるグセルクマブのSC誘導とそれに続くSC維持の有効性及び安全を評価するには、24週間の試験期間で十分であると考えられる。この試験における8週目の後のグセルクマブ投与レジメンは、進行中のグセルクマブ第3相クローン病試験(GALAXI 2及び3)におけるものと同一である。24週目の後、400mg SC誘導(本試験)投与レジメンと200mg IV誘導(GALAXI)投与レジメンとの間で、グセルクマブ濃度及び曝露に差はないと予想される。結果として、この試験は、72週間の延長を伴う24週間の試験となる。延長は、治験責任医師によって試験介入から利益を得ているとみなされる参加者におよそ2年間の治療へのアクセスを与える。フォローアップ相(試験介入の最後の投与のおよそ12週間後)は、最終的な有効性及び安全データを評価することに加えて、PK及びグセルクマブに対する抗体を測定するためのサンプルを収集するように設計される。
【0225】
バイオマーカー及びDNA採取
グセルクマブの細胞的及び分子的作用機序を評価するか、又は臨床アウトカムにおける個体間変動を説明するのに役立てるか、又は介入に対する奏功が異なる集団サブグループを特定するのに役立て得るように、バイオマーカーサンプル(現地の規制によって許可される場合)を収集する。IL-23経路及びグセルクマブに対する奏功に関連するPDマーカーを評価するために、全ての参加者の全血から血清中バイオマーカーを採取する。リボ核酸(RNA)発現プロファイルに対する試験介入の効果を評価するために、全ての参加者から全血サンプルを採取する。腸粘膜組織内の細胞及び分子の変化を評価するために、全ての参加者から回腸結腸生検も得る。バイオマーカー解析の目標は、クローン病におけるグセルクマブによるIL-23の選択的遮断の作用機序を更に定義し、介入-臨床奏功の関係の評価に役立てることである。
【0226】
任意による薬理ゲノミクスサブスタディを計画する。遺伝的変動は、介入分布及び奏功における個体間差に対する重要な有力因子であり得、疾患感受性及び予後のためのマーカーとしても機能し得ることが認識されている。薬理ゲノミクスコンポーネントの目標は、DNAを採取して、グセルクマブのPK、PD、有効性、安全性、又は耐容性に影響を与え得る遺伝因子の同定を可能にし、また、クローン病又はグセルクマブ治療に対する奏功に関係する遺伝因子を特定することである。この解析の焦点は、クローン病及びグセルクマブによる治療に対する奏功に関連する遺伝的一塩基多型の評価である。
【0227】
バイオマーカー及びDNAサンプルを使用して、新たな問題に対処するのに役立てることができ、安全で、より有効で、最終的には個別化された療法の開発を可能にすることができる。
【0228】
健康関連の生活の質に関する患者報告アウトカム
患者報告アウトカム評価(すなわち、IBDQ、PROMIS-29)を使用して、疾患特異的及び全般的な健康関連の生活の質(health-related quality of life、HRQOL)に対するグセルクマブ治療の利益を評価する。患者報告アウトカム評価は、評価の翻訳が入手可能な国においてのみ収集されている。
【0229】
経口コルチコステロイドの漸減
コルチコステロイドの参加者は、コルチコステロイドフリー臨床寛解を得ることが療法の重要な目標であることを考慮して、予め規定された推奨漸減スケジュールに従って、12週目以降から強制的に漸減を受ける。
【0230】
介入の説明
グセルクマブは、2つの投与強度で提供される:YpsoMate自己注射器(PFS-Y)を備えた単回投与プレフィルドシリンジ内のグセルクマブ200mg/2mL及びUltraSafe Plus(商標)Passive Needle Guard(PFS-U)を備えた単回投与プレフィルドシリンジ内の100mg/1mL。対応するプラセボは、単回投与PFS-Y内2mLとして、及び単回投与PFS-U内1mLとして提供される。
【0231】
有効性評価
有効性評価は、以下を含む。
・CDAI
・PRO-2(液状便又は非常に軟便の総数及び腹痛[AP]スコアの重み付けのないCDAIコンポーネント)
・粘膜潰瘍の有無及びSES-CDに基づく腸粘膜の内視鏡的評価
・組織学的評価
・C反応性タンパク質(CRP)及び糞便カルプロテクチンを含む炎症性薬力学的(PD)マーカー、
・瘻孔評価
・炎症性腸疾患問診票(IBDQ)及び患者報告アウトカム測定情報システム(PROMIS)-29を含む、健康関連の生活の質のアウトカムを評価するためのPRO尺度、
・ブリストル便性状スケール(BSFS)及びAP-数値評価スケール(NRS)を含む患者報告症状尺度
【0232】
薬物動態評価
血清サンプルを分析して、治験依頼者により又はその監督下で検証されている特異的かつ感受性の高いイムノアッセイ法を用いてグセルクマブの濃度を求める。
【0233】
薬理ゲノミクス(DNA)評価
薬理ゲノミクス血液サンプルは、必要に応じて(現地の規制によって許可される場合)、薬理ゲノミクス研究を可能にするよう試験のこのコンポーネントに別個に同意する参加者のみから収集される。薬理ゲノミクス研究への参加は任意による。デオキシリボ核酸(DNA)サンプルは、臨床奏功に関連し得る遺伝因子の同定のために解析される。
【0234】
薬力学的評価及びバイオマーカー評価
炎症性PDマーカー(CRP及び糞便カルプロテクチン)を、血液及び糞便サンプルを使用して評価する。バイオマーカー評価を行って、治療に対する生物学的奏功を調べ、グセルクマブ治療及び/又はクローン病に関連するバイオマーカーを同定する。評価には、現地の規制によって許可される場合、血清、全血、及び回腸結腸生検サンプル中の関連バイオマーカーの評価が含まれる。
【0235】
免疫原性評価
血清サンプルをグセルクマブに結合する抗体についてスクリーニングし、確認された陽性サンプルの力価を報告する。他の分析を行って、グセルクマブに対する抗体の安定性を検証すること、及び/又はグセルクマブの免疫原性を更に特徴付けることができる。
【0236】
安全性評価
安全性評価には、有害事象(AE)、臨床検査、バイタルサイン及び身体検査、スクリーニング心電図検査、自殺傾向評価、併用薬レビュー、注射部位反応、過敏性反応のモニタリング、結核評価、並びに他の感染評価が含まれる。
【0237】
統計的方法
試料サイズの決定
0.05有意水準での両側カイ二乗検定を使用して、併用グセルクマブ群とプラセボ群との間の12週目での臨床寛解及び12週目での内視鏡奏功(共一次エンドポイント)における有意差の検出力によって、サンプルサイズを決定した。想定される比率は、臨床寛解については50%対15%(グセルクマブ対プラセボ)、内視鏡奏功については30%対13%である。試験は、グセルクマブ療法が、プラセボと比較して共一次エンドポイントについて>90%の検出力を達成するようなサイズである。このサンプルサイズはまた、全ての二次エンドポイントについて>90%の検出力を提供する。
【0238】
有効性解析
記述的統計(例えば、平均、中央値、標準偏差[SD]、四分位範囲、最小、及び最大)を用いて、連続変数を要約する。計数及び百分率を使用して、分類変数が要約される。グラフィックデータディスプレイ(例えば、線プロット)を使用して、データを要約することもできる。
【0239】
分類データに好適な解析(例えば、適宜、カイ二乗検定、又はコクラン-マンテル-ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel、CMH)カイ二乗検定又はロジスティック回帰)を使用して、選択されたエンドポイント(例えば、臨床奏功)を達成する参加者の割合を比較する。稀に、治療比較のためにフィッシャーの直接確率検定を使用する。連続奏功パラメータは、特に明記しない限り、分散分析(analysis of variance、ANOVA)又は共分散分析(analysis of covariance、ANCOVA)を使用して比較される。正規性の仮定が問題になっている場合、ファン・デア・ヴェルデン(van der Waerden)正規スコアに対するANOVA又はANCOVAを使用する。
【0240】
共一次エンドポイント(12週目での臨床寛解及び12週目での内視鏡奏功)は、一次推定値に基づき、治療群、集団、変数、併発事象(ICE)戦略、及び集団レベルの概要を考慮して分析される。ICE戦略を考慮した後、共一次エンドポイントについてその奏功者ステータスが欠落している参加者は、その共一次エンドポイントについての非奏功者であるとみなされる。
【0241】
統計的検定は、0.05(両側)の有意性水準で実施される。第一種の過誤は、共一次エンドポイント及び二次エンドポイントに対して制御される。共一次エンドポイントについては、まず12週目の臨床寛解を試験し、続いて12週目の内視鏡奏功を試験する。以下に列挙される3つの二次解析は、両方の共一次エンドポイント解析の成功を条件として逐次行われる。
・24週目での臨床寛解(CDAIスコア<150)
・12週目におけるPRO-2寛解(AP1日平均スコア1以下かつ排便回数(SF)1日平均スコア3以下、すなわち、AP≦1かつSF≦3、そして、ベースラインからAPもSFも悪化しないとして定義される)
・12週目での臨床奏功(CDAI≧100ポイントにおけるベースラインからの減少又は臨床寛解)
多重度が制御されていないエンドポイントについては、見掛けp値を提示する。
【0242】
安全性分析
AE、重篤な有害事象(SAE)、感染、感染部位反応、(血液学的及び化学的)検査室パラメータの変化、並びに自殺念慮及び自殺行動が挙げられるがこれらに限定されない、安全性データについて要約する。報告される治療により発現したAEの全てが分析に含まれる。
【0243】
その他の分析
薬物動態分析
経時的な血清グセルクマブ濃度を、記述統計学を使用して各治療群に関して要約する。適切な場合には、母集団PKモデリングが実施されてもよい。これらの母集団のPK解析が実施される場合、これらの解析の結果は別個の報告で提示される。
【0244】
薬物動態/薬力学的解析
血清グセルクマブ濃度と有効性測定対との間の関係を、グラフを使って分析する。実現可能であれば、好適な曝露-応答モデルを開発して、血清グセルクマブ曝露と有効性との間の関係を記述することができる。母集団PK/PD解析の結果については、別個の技術報告書に提示する。
【0245】
薬理ゲノミクス分析
遺伝(DNA)分析は、薬理ゲノミクスサブスタディに参加する同意書に署名している参加者のみで行われる。これらの分析は探索的であると考えられ、別個の技術報告書にまとめられる。
【0246】
バイオマーカー分析
現地の規制によって許可される場合、経時的に得られた血清タンパク質検体及び全血リボ核酸(RNA)の変化を介入群毎にまとめる。選択されたバイオマーカーにおけるベースラインレベル及びベースラインからの変化と、治療に対する奏功との間の関連性について調べる。RNA分析は、別個の技術報告で要約される。
【0247】
免疫原性の分析
グセルクマブの投与を受け、グセルクマブに対する抗体を検出するための適切なサンプルを有する全ての参加者(すなわち、グセルクマブの初回投与後に得られた少なくとも1つのサンプルを有する参加者)について、グセルクマブに対する抗体の発生率及び力価をまとめる。グセルクマブに対する抗体について陽性であり、グセルクマブに対する中和抗体について評価可能なサンプルを有する参加者について、グセルクマブに対する中和抗体の発生率をまとめる。
【配列表】
【国際調査報告】