(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】三次元多孔質カソードおよび/またはアノード構造体を有するハイブリッド固体セル
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20241106BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20241106BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20241106BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241106BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241106BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241106BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20241106BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241106BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241106BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241106BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241106BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241106BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241106BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20241106BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241106BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M50/434
H01M4/80 A
H01M4/66 A
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/485
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/48
H01M10/052
H01M10/058
H01M10/0562
H01M10/056
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525286
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 US2022048477
(87)【国際公開番号】W WO2023076696
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520272949
【氏名又は名称】サクウ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ズチャオ シ
(72)【発明者】
【氏名】アリ モドジターヘディ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エウゲン ログレン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017CC27
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
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5H017HH05
5H021EE22
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ14
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5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
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5H029HJ12
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
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5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
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5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050FA14
5H050FA15
5H050FA18
5H050GA02
5H050HA06
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】三次元多孔質構造体アノードおよび/またはカソードを有する電気化学セルを提供する。
【解決手段】
電気化学セルは、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に位置する電解質と、アノード集電体と、カソード集電体とを含み、アノードおよびカソードのうちの少なくとも1つは、対応する集電体から電解質セパレータまで多孔質構造体を通って延在するイオン伝導性電解質ストランドと、対応する集電体から電解質セパレータまで多孔質構造体を通って延在する細孔と、対応する集電体から電解質セパレータまで細孔の側壁表面上に延在する電子伝導性ネットワークとを含む三次元(3D)多孔質構造体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置された、セラミック材料を含む電解質セパレータと、アノード集電体とを含む電気化学セル用の3次元 (3D) 多孔質アノードを形成する方法であって、3D多孔質アノードを含む前記アノードが、前記アノード集電体と前記電解質セパレータとの間に配置され、
前記方法は、
第1の前駆体材料と第2の前駆体材料とを混合して混合物を形成するステップと、
前記アノードが形成される層として前記混合物を堆積させるステップと、
前記混合物を焼結して前記3D多孔質アノードを形成するステップとを備え、
前記3D多孔質アノードは、前記アノードを通って前記アノード集電体から前記電解質セパレータまで延在するイオン伝導性電解質ストランドと、前記アノードを通って前記アノード集電体から前記電解質セパレータまで延在する細孔と、前記細孔の側壁表面上で前記アノード集電体から前記電解質セパレータまで延在する電子伝導性ネットワークとを有し、
前記第2の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を使用する前記焼結による前記細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、
前記第1の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を焼結することによって形成された前記細孔の前記側壁表面上に、前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である、方法。
【請求項2】
カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置された、セラミック材料を含む電解質セパレータと、カソード集電体とを含む電気化学セル用の3次元 (3D) 多孔質カソードを形成する方法であって、3D多孔質カソードを含む前記カソードが、前記カソード集電体と前記電解質セパレータとの間に配置され、
前記方法は、
第1の前駆体材料と第2の前駆体材料とを混合して混合物を形成するステップと、
前記カソードが形成される層として前記混合物を堆積させるステップと、
前記混合物を焼結して前記3D多孔質カソードを形成するステップとを備え、
前記3D多孔質カソードは、前記カソードを通って前記カソード集電体から前記電解質セパレータまで延在するイオン伝導性電解質ストランドと、前記カソードを通って前記カソード集電体から前記電解質セパレータまで延在する細孔と、前記細孔の側壁表面上で前記カソード集電体から前記電解質セパレータまで延在する電子伝導性ネットワークとを有し、
前記第2の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を使用する前記焼結による前記細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、
前記第1の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を焼結することによって形成された前記細孔の前記側壁表面上に前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である、方法。
【請求項3】
前記焼結中に固体電解質材料を高密度化して、前記細孔の形成の完了時に前記イオン伝導性電解質ストランドを形成する材料からなる第3の前駆体材料を、前記混合物が含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の前駆体材料が、有機材料もしくは無機材料またはそれらの組合せから選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の前駆体材料のサイズ、形状、および濃度のうちの1つ以上を制御することによって、前記3D多孔質アノードのサイズ、形状および多孔率を制御することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細孔の直径が10μm未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細孔の直径が5μm未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の前駆体材料が、有機材料、無機材料、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の前駆体材料が、リチウム、炭素、銅、ニッケル、銀、アルミニウム、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素からなる有機材料もしくは無機材料またはそれらの組合せを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の前駆体材料が金属炭酸塩を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記アノードは、アノード受容空間内に配置され、前記カソードは、カソード受容空間内に配置され、前記アノード受容空間は、前記カソード受容空間内に含有されるカソライト材料から前記アノードを隔離するように構成されるシールを含む充填開口部を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記シールは、前記アノード受容空間に圧力解放を提供するように構成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カソード受容空間内の充填開口部を通して前記カソード受容空間内に充填された液体カソライト材料を、前記カソライト材料が含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記カソライト材料が、前記カソード受容空間内に配置された粉末カソライト材料を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記電子伝導性ネットワークが、前記細孔の側壁表面上におけるウェブまたはメッシュ型構造を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記アノードは、アノード受容空間内に配置され、前記カソードは、カソード受容空間内に配置され、前記カソード受容空間は、前記カソード受容空間内に含有されるカソライト材料から前記アノードを隔離するように構成されるシールを含む充填開口部を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記シールは、前記カソード受容空間に圧力解放を提供するように構成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カソライト材料が、前記カソード受容空間内の充填開口部を通して前記カソード受容空間内に充填された液体カソライト材料を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記カソライト材料が、前記カソード受容空間内に配置された粉末カソライト材料を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の前駆体材料のサイズ、形状および濃度のうちの1つ以上を制御することによって、前記3D多孔質カソードのサイズ、形状および多孔率を制御することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記細孔の直径が10μm未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細孔の直径が5μm未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記アノードが、リチウム、リチウム粉末、溶融リチウム、半液体リチウム、リチウムチタン酸化物(LTO) 、ケイ素、酸化ケイ素およびグラファイトのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記カソードが、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物およびリン酸鉄リチウムのうちの少なくとも1つのスラリーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記セラミック材料が、リチウムランタンジルコニウム酸化物、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム、リン酸リチウムアルミニウムチタン、リン酸リチウムオキシナイトライドおよび硫化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項26】
前記細孔が配向細孔を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項27】
前記配向された細孔が均一に分布している、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記配向された細孔の各々が、前記セパレータの長手方向軸線に実質的に平行な底面を含み、その側壁が前記長手方向軸線に実質的に垂直に配向される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記配向された細孔の各々の前記側壁表面上および底面上のコーティングをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティングが湿潤剤を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティングが、銀、シリカ、アルミナ、亜鉛、酸化亜鉛およびリン酸リチウムオキシナイトライドのうちの少なくとも1つを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記カソードが形成される層として堆積される前記混合物と、前記アノードが形成される層として堆積される前記混合物とが、同じ組成物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項33】
前記カソードが形成される層として堆積される前記混合物と、前記アノードが形成される層として堆積される前記混合物とが、異なる組成物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項34】
前記カソードの前記細孔の前記側壁表面上に前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される前記第1の前駆体材料と、前記アノードの前記細孔の前記側壁表面上に前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される前記第1の前駆体材料とが、同じ組成物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項35】
前記カソードの前記細孔の前記側壁表面上に前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される前記第1の前駆体材料と、前記アノードの前記細孔の前記側壁表面上に前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される前記第1の前駆体材料とが、異なる組成物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項36】
前記第1および第2の前駆体材料の前記混合物が、粉末堆積混合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の前駆体材料が、固体電解質材料の粉末および犠牲細孔形成材料の粉末を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記粉末堆積混合物が、前記焼結の前にバインダージェット印刷操作によって、バインダー材料で固定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記固体電解質材料の粉末および前記犠牲細孔形成材料の粉末を、前記第1の前駆体材料、バインダーおよび溶媒と一緒に混合してスラリーを形成する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
テープキャスティング、スクリーン印刷、スロットダイコーティング、およびインクジェット印刷からなる群から選択されるコーティング技術によって前記スラリーを堆積させることをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、固体電池、特にリチウムイオン電池、およびそのような電池のためのモノリシックセラミック電気化学セルハウジング、ならびに当該電気化学セルハウジングおよび関連電池デバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池 (LIB) は、それに先行するニッケルカドミウム電池およびニッケル水素電池と比較して、エネルギー密度およびワット時当たりのコストの大幅な改善をもたらす。それにもかかわらず、LIBの製造は、電気自動車の用途では法外な費用がかかる。さらに、低エネルギー密度は、電子機器を所望よりも大きく、かつ、かさばるものにする。この分野における最近の改善は、エネルギー密度を増加させるために、固体電池を用いてこれらの欠点に対処することを試みている。
【0003】
リチウム金属アノードを有する電池セルは優れたエネルギー密度を提供するが、充電サイクル中のデンドライト形成のリスクのために、リチウム金属アノードを用いて再充電可能なセルを構築することはできない。充電サイクル中のデンドライト形成は、液体電解質の点火中に爆発および燃焼を引き起こす短絡をもたらす。液体電解質は、可燃性の高い有機溶媒からなり、アノードとカソードとの間のデンドライト成長を防止することができない。結果として、LIBは、典型的には、リチウムイオンが集電体上にめっきされるのではなく、結晶構造内に挿入されることを可能にするインターカレーションアノードから構成される。リチウムイオンを結晶構造に挿入すると、アノードの有効エネルギー貯蔵容量がリチウム金属の理論容量の10%未満に減少する。
【0004】
液体電解質はまた、電池の最大電圧を制限する。典型的な液体電解質は、アノードとカソードとの間の4ボルトを超えるセル電圧で分解し、LIBセルの最大公称電圧を約3.8ボルトに制限する。リチウムアノードに対して6ボルトを生成することができるカソード材料は実用的であると考えられているが、液体電解質を有するセルでは使用できない。そのような高電圧カソードを使用する能力は、セルのエネルギー密度を50%増加させることができる。
【0005】
明らかな解決策は、デンドライト形成に抵抗し、6ボルトを超えるセル電圧で安定であり、液体電解質のイオン伝導率に匹敵するイオン伝導率を有する不燃性固体電解質を使用することである。高いリチウムイオン伝導性を有するセラミックは、これらの要件を満たすが、実用化を妨げる物理的および化学的特性も有する。例えば、セラミック材料は、典型的には、非常に硬くて脆い。さらに、実用的な電池セルは、サブセル(sub cells)のスタックから構成され、各サブセルは、電気化学セルの基本構成要素の非常に薄い層を含む。セルを構築するための一般的なアプローチは、薄層 (セパレータについては<40μm) をシートで製造し、それらを順に組み立てることを含む。
しかしながら、薄層は脆弱であり、平坦であることは稀であり、接触面にわたって個々の層の間に不連続な接触を引き起こす。層のスタックに圧力を加えることは、接触を改善する傾向があるが、層を破壊するリスクを、容認できないほど増大させる。
【0006】
さらに、層のスタックに圧力を加えることは、層間の一体化された接続を作り出すことができず、むしろ、2つの表面間に点接触のアレイを作り出す。場合によっては、隣接するシート間の実際の接触は、設計面積の1桁未満であり得る。その結果、接点における電流密度が1桁高くなり、これはデンドライト成長を引き起こす臨界電流密度を超える。
リチウム金属アノードを有するセルに関連する他の欠点としては、アノード空間の周りに真の気密封止を達成することが困難であることが挙げられる。アノード空間への酸素または水の侵入は、リチウムの酸化を引き起こすため、非気密シールは容量を低下させ、最終的には、酸素または水がセルに漏れるとセルを破壊する。液体電解質は重大な欠点をもたらすが、液体電解質は、リチウム原子がリチウムイオンに酸化され、セパレータを横切ってカソードに移動する任意の開放空間に流入して、セル全体のイオン伝導性を維持することができる。セラミック電解質はこの能力を有していない。その結果、セラミック電解質を使用する従来のアプローチは、リチウム金属とセラミック電解質との間に平面界面を形成することである。このようにして、セラミック電解質に近いリチウムの薄層のみが酸化し、電解質中に移動することができる。その結果、アノードのエネルギー貯蔵容量が非常に大きく制限される。薄いフィルム固体電池は、リチウム金属アノードの使用可能な厚さが、堆積されたリチウム金属のほんの一部であり、この欠点をよく表している。
【0007】
加えて、リチウムイオン電池などの電池構造では、カソードにおけるリチウムイオンおよび電子輸送の緩慢さが、電池レート性能を制限する高い内部抵抗をもたらす。高い充放電レートでは、電池の最大達成可能容量は急激に低下する。したがって、カソード構造体におけるリチウムイオンおよび電子輸送を改善する必要がある。
【0008】
リチウムイオンおよび電子輸送を改善するための1つのアプローチは、電子伝導性材料およびイオン伝導性材料の両方を含む三次元 (3D) 多孔質カソード構造体、すなわち、それぞれが表面積を有する多数の細孔を含むカソード構造体を用いることであり、ここで、カソード活物質と電子伝導性およびリチウムイオン伝導性材料との接触面積は、細孔によって提供される追加の表面積の存在によって大幅に増加させることができる。
例えば、50μmの厚さおよび60%の多孔率を有する3D多孔質カソードの場合、カソードの幾何学的面積1 cm2当たりの活性面積は、10μm~1μmの範囲の細孔直径で、それぞれ12 cm2~120 cm2に増加させることができる。大きな接触面積は、カソード活物質のための電子伝導経路およびリチウムイオン伝導経路のアクセス可能性を大幅に高め、したがって、内部抵抗を低下させ、電池レート性能を改善する。しかしながら、3D高表面積の完全な利点は、電子伝導性およびイオン伝導性ネットワークへのカソード活物質のアクセスの欠如に起因して、以前の構造では実現されていない。これは、電池の比較的低いカソード利用効率、低い容量および低いエネルギー密度をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、現在の固体セル開発努力の上述した欠点に対処する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置された、セラミック材料を含む電解質セパレータと、アノード集電体とを含む電気化学セル用の3次元 (3D) 多孔質アノードを形成する方法であって、3D多孔質アノードを含む前記アノードが、前記アノード集電体と前記電解質セパレータとの間に配置され、前記方法は、第1の前駆体材料と第2の前駆体材料とを混合して混合物を形成するステップと、前記アノードが形成される層として前記混合物を堆積させるステップと、前記混合物を焼結して前記3D多孔質アノードを形成するステップとを備え、前記3D多孔質アノードは、前記アノードを通って前記アノード集電体から前記電解質セパレータまで延在するイオン伝導性電解質ストランドと、前記アノードを通って前記アノード集電体から前記電解質セパレータまで延在する細孔と、前記細孔の側壁表面上で前記アノード集電体から前記電解質セパレータまで延在する電子伝導性ネットワークとを有し、前記第2の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を使用する前記焼結による前記細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、前記第1の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を焼結することによって形成された前記細孔の前記側壁表面上に、前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である、方法。
【0011】
カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間に配置された、セラミック材料を含む電解質セパレータと、カソード集電体とを含む電気化学セル用の3次元 (3D) 多孔質カソードを形成する方法であって、3D多孔質カソードを含む前記カソードが、前記カソード集電体と前記電解質セパレータとの間に配置され、前記方法は、第1の前駆体材料と第2の前駆体材料とを混合して混合物を形成するステップと、前記カソードが形成される層として前記混合物を堆積させるステップと、前記混合物を焼結して前記3D多孔質カソードを形成するステップとを備え、前記3D多孔質カソードは、前記カソードを通って前記カソード集電体から前記電解質セパレータまで延在するイオン伝導性電解質ストランドと、前記カソードを通って前記カソード集電体から前記電解質セパレータまで延在する細孔と、前記細孔の側壁表面上で前記カソード集電体から前記電解質セパレータまで延在する電子伝導性ネットワークとを有し、前記第2の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を使用する前記焼結による前記細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、前記第1の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を焼結することによって形成された前記細孔の前記側壁表面上に前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である、方法。
【0012】
上記の説明および以下の開示全体において、 「イオン伝導性」 という用語は、材料、例えば電解質ストランドを形成する材料が、その材料を通してイオンを容易に伝導する能力を指すことに留意されたい。言い換えれば、材料は、イオン伝導性材料(ionically conductive material)またはイオン伝導材(ion-conducting material)である。同様に、 「電子伝導性」 という用語は、材料、例えば、細孔の側壁表面上にコーティングを形成する材料が、材料を通して電子を容易に伝導する能力を指す。言い換えれば、材料は、電子伝導性材料(electronically conductive material)または電子伝導材(electron-conducting material)である。
【0013】
本明細書に開示される実装態様は、モノリシックセラミック電気化学セルハウジングを含む。ハウジングは、2つ以上の電気化学サブセルハウジングを含む。電気化学サブセルハウジングの各々は、アノード受容空間、カソード受容空間、アノード受容空間とカソード受容空間との間の電解質セパレータ、ならびにアノードサブセル集電体およびカソードサブセル集電体を含む。
【0014】
いくつかの実装態様では、アノード受容空間は、固体電解質材料のストランドで部分的に充填された気密封止された容積として構成される。固体電解質材料は、高密度セラミックを含む。高密度セラミックは、硫化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、リン化物、リン酸塩、酸化物、セレン化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
最も有用な材料としては、酸化物、硫化物、リン酸塩、および窒化物が挙げられる。より具体的には、好ましい材料は、リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)や、アルミニウム、ニオブ、ガリウム、タンタル、タングステンを含む様々なドーパントを有するLLZOを含むガーネット構造酸化物、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム(LAGP)およびリン酸リチウムアルミニウムチタン(LATP)などのリン酸ガラスセラミック、チオホスフェート(thiophosphate)およびアルジロダイト(argyrodite)などの硫化物、ならびにリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)からなる群から選択することができる。固体電解質のストランドは、セパレータとアノード集電体との間に連続的なイオン伝導性のネットワークを形成することができる。
【0015】
電解質のストランドは、アノード受容空間の20%~80%の体積を占めることができる。アノード集電体は、電気化学サブセルハウジングのアノード受容空間および第2の隣接する電気化学サブセルハウジングの第2のアノード受容空間のための集電体として機能することができる。
【0016】
カソード受容空間は、1体積%~60体積%のセラミック電解質材料のストランドで部分的に充填することができる。別の実装態様では、カソード受容空間は、セラミック電解質材料を含まなくてもよい。また、モノリシックセラミック電気化学セルハウジングは、電気化学サブセルハウジングのそれぞれの間に絶縁材料を含むことができる。
【0017】
カソード層は、カソライト(catholyte)を収容するように構成された充填開口部内にシール構造を含むことができる。カソライト材料は、カソード活物質、サブセルの電荷移動イオンのための電解質、および電子伝導性材料から構成することができる。電子伝導性材料は、炭素、金属または電子伝導性セラミックを含むことができる。
カソード活物質は、電荷移動イオンに適したインターカレーションホスト材料で構成することができる。シール構造は、カソライトを隔離し、カソード受容空間から圧力を解放するように構成することができる。アノード受容空間は、初期充電段階中にアノード活物質で充填することができる。
【0018】
アノード受容空間は封止することができ、カソード受容空間は部分的に封止することができる。また、モノリシックセラミック電気化学セルハウジングは、アノードサブセル集電体を接続するアノード電気接点と、カソードサブセル集電体を接続するカソード電気接点とを含むことができる。
【0019】
モノリシックセラミック電気化学セルハウジングを組み立てるための製造方法も提供される。この方法は、多層構造体を形成するために、柔軟なフォーマットで前駆体材料を堆積させることを含むことができる。本方法はまた、多層構造体を加熱して、前駆体を、堆積された層間の物理的界面のない単一のモノリシック構造体に変換することを含むことができる。いくつかの実装態様では、フォーマットは、ペースト、流動性粉末およびグリーンテープからなる群から選択される流体(流動性を有する物体)である。いくつかの実装態様では、前駆体は、付加製造技術を使用して堆積される。
【0020】
上記の開示ならびにその利点および特徴を得ることができる態様を説明するために、添付の図面に示される特定の例を参照して、上記の原理のより詳細な説明を行う。これらの図面は、本開示の例示的な態様を示すにすぎず、したがって、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではない。これらの原理は、以下の図面を使用してさらに具体的かつ詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一実装態様による、例示的な固体セルを示す図である。
【
図2】本開示の一実装態様による、
図1の例示的な固体セルの一体型フレームワークを示す図である。
【
図3】本開示の実装態様によるサブセルハウジングを示す図である。
【
図4】本開示の一実装態様によるサブセルハウジングを示す図である。
【
図5】本開示の一実装態様によるサブセルハウジングを示す図である。
【
図6】本開示の一実装態様による、サブセルハウジングの製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の一実装態様による、
図1の例示的な固体セルの代替の一体型フレームワークを示す図である。
【
図8】本開示の一実装態様による、
図1の例示的な固体セルのアノード層を示す図である。
【
図9】本開示の一実装態様による、
図1の例示的な固体セルのカソード層を示す図である。
【
図10】本開示の一実装態様による、
図1の例示的な固体セルのセル概略図である。
【
図11】本開示の一実装態様による、
図1の例示的な固体セルのセル概略図である。
【
図12】
図12Aは、種々の実装による、3D多孔質カソードを伴う固体電池の断面図であり、
図12Bおよび12Cは、カソード内の例示的細孔の拡大図である。
図12Dは、カソード中の例示的な細孔の拡大図であり、電子伝導性ネットワークなしの電子およびイオン伝導を示す。
【
図13】
図13 Aは、3D多孔質カソードを有する、様々な実施による固体電池の断面図であり、
図13Bは、カソードの細孔の側壁または側壁表面に沿った電子伝導性ネットワークを有するカソードの例示的な細孔の拡大図であり、
図13Cは、カソードの細孔の側壁表面に沿った電子伝導性ネットワーク上に形成されたカソード活物質を有するカソードの例示的な細孔の拡大図であり、
図13Dは、電子伝導性ネットワークとの電子およびイオン伝導を示す、カソードの例示的な細孔の拡大図である。
【
図14】
図14Aは、3D規則性多孔質アノードおよび多孔質カソードを有する固体電池の断面図であり、
図14Bは、カソード内の細孔の側壁表面に沿った電子伝導性ネットワークを有する、
図14Aのカソード内の例示的な細孔の拡大図であり、
図14Cは、アノード中の細孔の側壁表面に沿って電子伝導性ネットワークを有する
図14Aのアノード中の例示的な細孔の拡大図である。
【
図15】
図15Aは、アノードおよびカソードの細孔の側壁表面に沿って電子伝導性ネットワーク上に形成されたアノードおよびカソード活物質を有する3D規則性多孔質アノードおよび多孔質カソードを有する固体電池の断面図であり、
図15Bは、アノード中の細孔の側壁表面に沿って電子伝導性ネットワーク上に形成されたアノード活物質を有する、
図15Aのアノード中の例示的な細孔の拡大図であり、
図15Cは、カソード内の細孔の側壁表面に沿って電子伝導性ネットワーク上にカソード活物質が形成された、
図15Aのカソード内の例示的な細孔の拡大図である。
【
図16】様々な実装態様による、固体電池電極用の電極を製造する方法のフローチャートである。
【
図17】
図17Aは、様々な実装態様による、3D多孔質アノードを有する固体電池の断面図であり、
図17Bは、アノード内の例示的な細孔の拡大図である。
【
図18】
図18Aは、様々な実装態様による、アノード内の細孔の側壁表面上のコーティングとして形成された電子伝導性ネットワークを含む3D多孔質アノードを有する固体電池の断面図であり、
図18Bは、電子伝導性ネットワークを有するアノード内の例示的な細孔の拡大図である。
【
図19】
図19Aは、様々な実装態様による固体電池の断面図であり、
図19Bは、電子伝導性ネットワークおよびアノードの細孔の側壁表面に沿って電子伝導性ネットワーク上に形成されたリチウムを有するアノードの例示的な細孔の拡大図である。
【
図20】
図20Aは、様々な実施による固体電池の断面図であり、
図20Bは、電子伝導性ネットワークと、細孔を実質的に充填するアノードの細孔の側壁表面に沿って電子伝導性ネットワーク上に形成されたリチウムとを有するアノードの例示的な細孔の拡大図である。
【
図21】電子伝導性材料の注入のための開口部を示す、様々な実装態様による固体電池のアノードの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の詳細な説明では、関連する教示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が例として記載される。この説明を読めば、そのような詳細なしに様々な態様(形態)を実施できることが当業者には明らかになろう。他の例では、本教示の態様を不必要に不明瞭にすることを回避するために、周知の方法、手順、構成要素、および/または回路が、詳細なしに比較的高レベルで説明されている。
【0023】
上記を考慮して、本明細書に開示される実装態様は、セラミック電気化学セルを製造するための、および電気化学セル、より具体的にはリチウムイオン電池などの電池を、3次元 (3D) 多孔質カソード構造体にカソード材料を添加することによってモノリシックセラミック電気化学セルハウジングから形成するための、および充電動作中にモノリシックセラミック電気化学セルハウジングのアノード受容空間内にリチウムなどのアノード材料を形成するための、装置および製造プロセスを対象とする。
以下の開示および特許請求の範囲において、電気化学セルまたは電池に言及する場合、「カソード」という用語は、カソード材料がまだ添加されていない状態を含むことが意図され、「アノード」という用語は、電気化学セルまたは電池が放電された状態を含むことが意図され、その結果、アノードは、充電され、アノード材料で充填されるのを待っているアノード受容空間である一時的な状態にあることに留意されたい。
【0024】
モノリシックセラミック電気化学セルハウジングを含む電気化学セルおよび電池は、現在のリチウムイオン電池 (LIB) よりも低いワット当たりのコストで製造される。電池の体積エネルギー密度は、現在のLIBの体積エネルギー密度よりも著しく高く、数ミリワット時間からキロワット時間の範囲の容量である。
いくつかの実装態様では、最終材料の前駆体からセルを組み立て、組み立てが完了したときに、前駆体をそれらの最終特性に変換するために、多材料付加プロセスが組み込まれる。これらの多材料添加プロセスは、最終特性を有するセラミックシートからセルを組み立てる欠点を排除するために実施される。前駆体は、流体または塑性変形可能なシート状態であり得、前駆体として積層および接合され得る。この状態の前駆体はまた、取り扱いが容易であり、所望の構成に形成される。
【0025】
結果として、最終特性への変換後、得られた構造体は、隣接する層が接合された、識別可能な界面を有さないモノリシック(monolithic)ブロックである。異なる前駆体材料の層の界面は、2つの最終材料間の導電性を最適化するように化学的および物理的に設計される。具体的には、真の化学結合を界面に形成することができ、界面の所望の特性を損なう、環境との制御できない反応または材料間の不完全な接触の可能性を回避する。いくつかの実装態様における前駆体の変換は、前駆体の有機材料成分を除去し、残りの成分を最終的な所望の化学的性質に変換し、最終材料をそれぞれの密度目標に焼結する熱処理プロセスを含む。
【0026】
開示される複数材料添加プロセスはまた、セラミック電解質が、充電状態にかかわらず、電極空間にわたって完全にイオン伝導性を維持することを可能にする設計を生成する。例えば、固体電解質セパレータから電極の集電体まで完全に相互接続されたイオン伝導性材料のウェブを形成する電解質の多孔質構造体を、アノード空間を横切って形成することができる。多孔質構造体は、イオン伝導性ウェブの隣接部分間の距離が、イオンがアノード活性金属 (例えば、リチウム) からイオン伝導性電解質に移動することができる最大距離の2倍未満であるように構成することができる。
【0027】
開示される多材料添加プロセスはまた、従来のリチウムイオンセルで使用される典型的なカソードと同様の組成を有するカソードと、密閉空間であるアノードとを組み込むハイブリッドセル設計の費用効果の高い構成を提供する。具体的には、アノードは、セル構造体の製造直後に、一方の側の集電体、反対側の電解質セパレータによって結合され、イオン伝導性多孔質構造体で充填され、任意のインターカレーションホストまたは活性電荷移動種を含まないことができる。活性電荷移動種 (例えば、リチウム) は、セルのコンディショニングまたは最初の充電中にカソードからアノード集電体にリチウムをめっきすることによって、アノード受容空間に導入することができる。
【0028】
本開示は、改良されたモノリシック電気化学セルハウジングを包含し、リチウムイオン電池デバイスを含み、より具体的には、三次元 (3D) 多孔質カソードを含むリチウムイオン電池に関する。3D多孔質カソードは、リチウムイオン伝導性ネットワークおよび電子伝導性ネットワークの両方を含み、これらは、カソード活物質のための電子伝導性経路およびリチウムイオン伝導性経路のアクセス可能性を大幅に高め、したがって、内部抵抗を低下させ、電池レート性能を改善する。本説明は、主に、リチウムイオン電池を形成するためのモノリシック電気化学セルハウジングの使用に関するが、本開示に開示される原理は、リチウムイオン電池の形成に限定されず、異なる材料を有する電池を形成するためにも使用され得ることに留意されたい。
【0029】
様々な実装態様では、3D多孔質カソード内の細孔の側壁表面上に形成された電子伝導性ネットワークは、電子伝導性ネットワークを形成するための前駆体材料を使用して、細孔自体の形成中に形成されてもよく、または多孔質カソード構造体が形成された後に、多孔質カソード内の細孔の側壁表面上に組み込まれてもよい。後者の場合、3D多孔質カソードを形成するための受容体は、封止された壁を有さずに開放された少なくとも1つの側面を有し得る。開口部は、カソード受容空間の多孔質構造体への電子伝導性材料の注入を可能にする。いくつかの実装態様では、炭素を注入して電子伝導性ネットワークを形成することができ、炭素の薄層が細孔の表面にコーティングされる。炭素は、炭素分散体または炭化水素前駆体から導入され得る。炭素は、カーボンブラック、活性炭、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、およびカーボンナノチューブからなる群から選択することができる。
他の実装態様では、アルミニウムを注入して電子伝導性ネットワークを形成することができ、アルミニウムの薄層を細孔の表面にコーティングすることができる。アルミニウムは、例えば、有機金属前駆体から、又は化学蒸着 (CVD) 法、原子層堆積 (ALD) 法および無電解めっき法を介して導入することができる。他の実装態様では、銀を注入して電子伝導性ネットワークを形成することができ、銀の薄層を細孔の表面にコーティングすることができる。銀は、例えば、有機金属前駆体から、又は化学蒸着 (CVD) 法、原子層堆積 (ALD) 法および無電解めっき法を介して導入することができる。他の実装態様では、ニッケルを注入して電子伝導性ネットワークを形成することができ、ニッケルの薄層を細孔の表面にコーティングすることができる。ニッケルは、例えば、有機金属前駆体から、又は化学蒸着 (CVD) 法、原子層堆積 (ALD) 法および無電解めっき法を介して導入することができる。好ましい実装態様では、電子伝導性ネットワークは、3D多孔質カソード構造体を作製するために使用される前駆体材料に組み込まれた前駆体から形成される。同様のプロセスを使用して、多孔質アノードに形成された細孔の側壁上の電子伝導性コーティングによって形成された電子伝導性ネットワークを有する多孔質アノード構造体も形成できることに留意されたい。例えば、電子伝導性材料の前駆体は、アノード前駆体材料で作製された構造体の焼結中に細孔が形成されると、細孔の表面上の電子伝導性コーティングに変換される。
【0030】
本明細書に記載されるように、カソードを形成するため、および、アノードを形成するために様々な異なる前駆体を使用することができるので、カソードが形成される層として堆積される混合物およびアノードが形成される層として堆積される混合物は、同じ組成物 (本明細書に提供される様々な例から選択される) であってもよく、又は異なる組成物 (本明細書に提供される様々な例から選択される) であってもよい。したがって、カソードおよびアノードの細孔サイズおよび多孔率は、同じ前駆体材料が両方に使用される場合、実質的に同じであり得、または異なる前駆体材料が両方に使用される場合、実質的に異なり得る。
さらに、カソードの細孔の側壁表面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される第1の前駆体材料、および、アノードの細孔の側壁表面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される第1の前駆体材料は、同じ組成物または異なる組成物であり得る。この場合、カソード細孔およびアノード細孔の側壁上の電子伝導性ネットワークの電子伝導率は、同じ前駆体材料が両方に使用される場合、実質的に同じであるか、または異なる前駆体材料が両方に使用される場合、実質的に異なるかのいずれかであり得る。
【0031】
図1は、本開示の一実装態様による例示的な固体セル100を示す。固体セル100の一般的な構造は、
図2に示すように、モノリシックで高度に集積されたフレームワーク102を含むことができる。一体型フレームワーク102は、1~数千の積み重ねられたサブセルハウジング80を含むことができる。
【0032】
図2を参照すると、交互の薄層を有する各サブセルハウジング80は、アノード受容空間41およびカソード受容空間11を含むことができる。アノード受容空間41およびカソード受容空間11は、固体電解質で構成され得る薄いセパレータ30によって分離され得る。各アノード受容空間41は、固体電解質材料のストランド (
図3に32として示す) で部分的に充填された、密閉された画定された容積で構成することができる。
【0033】
図3を参照すると、固体電解質材料32のストランドで部分的に充填された密封された画定された容積は、制御された多孔性の領域 (本明細書では 「空の空間42」 と呼ばれる) を形成する。固体電解質材料32は、高密度セラミックを含むことができる。この例の目的のために、高密度セラミックは、硫化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、リン化物、リン酸塩、酸化物、セレン化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。最も有用な材料としては、酸化物、硫化物、リン酸塩、および窒化物が挙げられる。
より具体的には、リチウムランタンジルコニウム酸化物 (LLZO) や、アルミニウム、ニオブ、ガリウム、タンタル、タングステン等の各種ドーパントを添加したLLZO等のガーネット構造酸化物、リチウムアルミニウムゲルマニウムリン酸塩 (LAGP) やリチウムアルミニウムチタンリン酸塩 (LATP) 等のリン酸塩系ガラスセラミックス、チオリン酸塩やアルジロダイト等の硫化物、リチウムリンオキシナイトライド (LiPON) からなる群から選択することが好ましい。高密度セラミックは、特定の電池設計の意図された電荷移動イオンの室温伝導率が1×10
-6 S/cmを超える任意のセラミックを含むことができる。いくつかの実装態様では、電荷移動イオンはLi
+である。代替の実装態様では、電荷移動イオンは、Na
+、Mg
+2、K
+、およびAl
+3を含む群から選択することができる。
【0034】
固体電解質32のストランドは、セパレータ30とアノード集電体50との間に連続的なイオン伝導性のネットワークを形成することができる。多孔質電解質構造体は、セパレータ30と同様であるが、制御された構造を有する固体電解質材料から作製することができる。電解質の連続ストランドは、空間42によって囲まれ、セパレータ30から集電体50まで延在することができる。空間42は、セパレータ30からアノード集電体50まで延びていてもよい。いくつかの実装態様では、電解質のストランドは、アノード受容空間41 (
図2にも示されている) の体積の20%~80%を占めることができ、一方、空隙空間は残りの体積を占める。
いくつかの実装態様では、多孔質構造体は、電解質材料の隣接するストランド間の平均距離が1μm~40μmであり得るように設計される。再び
図2を参照すると、2つの隣接するサブセルハウジング80のアノード受容空間41は、集電体50によって分離されて並置され得る。集電体50は、2つの隣接するサブセルハウジング80の両方のアノード受容空間41の集電体として機能することができる。
【0035】
各カソード受容空間11は、セラミック材料のストランドで部分的に充填された画定された容積であってもよい。いくつかの実装態様では、カソード受容空間11は、制御された多孔率の領域を形成することができる。他の実装態様では、カソード受容空間11は、セラミック材料を含まない開放画定容積とすることができる。いくつかの実装態様では、カソード受容空間11内の電解質材料のストランドは、総体積の0%~60%を占めることができる。さらに、電解質材料のストランドは、電解質材料の隣接するストランド間の平均距離が0.02 mm~200 mmであり得るように設計され得る。
【0036】
セラミック材料のストランドは、アノード受容空間41内の多孔質構造体と同様に、カソード空間の厚さにわたってイオン伝導性を提供する固体電解質材料を含むことができる。あるいは、セラミックストランドは、カソード受容空間11の正確な厚さを制御するための機械的要素として提供することができる。
【0037】
いくつかの実装態様では、2つの隣接するサブセルハウジング80のカソード受容空間11は、1つのカソード受容空間が前記2つの隣接するサブセルハウジング80に役立つように構成することができる。
図2および
図3のカソード集電体20を一時的に参照する。2つの隣接するサブセルの各々は、セパレータ30のカソード側に直接電子伝導層を有するように構成することができる。
2つのサブセルハウジングのカソード受容空間11 (
図11に示される) は、2つの隣接するセルハウジングのカソード集電体20によって両側で境界付けられ得る。2つの隣接するサブセルハウジングのセパレータ30間の距離は、2つの隣接するサブセルの設計パラメータを満たす量のカソライトを含むカソード受容空間11の容積を形成するように計算することができる。
【0038】
図2および
図11を参照すると、サブセル80のカソード集電体20は、サブセルアノード受容空間41の1つの表面を画定する表面の反対側のサブセルセパレータ30の表面と直接接触して配置されてもよく、したがって、カソード受容空間11の1つの境界を画定する。2つの隣接するサブセル80は、カソード受容空間11とカソード受容空間11とが接触して並置されてもよく、2つのカソード受容空間11のそれぞれの集電体は、それぞれのサブセル80のセパレータ30のカソード側に接触して配置される。したがって、結果として生じるカソード受容空間11は、2つのサブセル80のためのカソード材料を収容するのに十分な体積であり得る。
この構成の利点は、セパレータ30上に支持された2つの非常に薄い集電体20が、2つのカソード受容空間11を分離するように配置された単一の支持されていない集電体よりも少ない体積を占めることができることである。第2に、カソード受容空間の周囲に集電体を配置することにより、2倍の厚さの単一のカソード受容空間が形成され、カソード受容空間11へのカソード材料の挿入が容易になる。
【0039】
カソード集電体20は、金属または金属合金または導電性セラミック、または導電性炭素系材料から構成され得る。カソード集電体20は、特定の電池設計の意図された電荷移動イオンを伝導するように選択されたイオン伝導性材料からさらに構成されてもよい。カソード集電体20のイオン伝導性材料は、アノード受容空間41およびセパレータ30を含む電解質と同じ固体電解質であってもよい。
一実装態様では、イオン伝導性材料はリチウムランタンジルコニウム酸化物である。カソード集電体20の金属または金属合金または導電性セラミックまたは導電性炭素系材料は、カソード集電体20の平面を通る電子浸透ネットワークを形成する多孔質膜を含み得る。カソード集電体20の金属または金属合金または導電性セラミックまたは導電性炭素系材料は、カソード集電体の20体積%~99体積%の間の任意の値を含んでもよい。いくつかの実装態様では、集電体20は、カソード受容空間11の片側のみに存在してもよい。
【0040】
再び
図2を参照すると、カソード受容空間11は、セパレータ30間に延在してセパレータ30間にシールを形成する低多孔率セラミック壁46によってさらに画定することができる。セラミック壁 (
図9に46として示す) は、カソード受容空間11の周囲の少なくとも60%の周りに延在することができる。低多孔率セラミックは、固体電解質で構成することができる。
【0041】
図3を参照すると、いくつかの実装態様では、各サブセルハウジング80は、絶縁材料25 (
図7に示す) の層によって周囲のサブセルハウジング80から分離することができる。絶縁材料は、計算された距離で、隣接するサブセルハウジングのセパレータ間に配置することができる。距離は、ある量のカソライトおよび電荷移動種を含むように、カソード受容空間11の容積およびアノード受容空間41の容積を生成するように計算することができる。カソライトおよび電荷移動種の量は、サブセル80の構成パラメータを満たすように設計される。これらの実装態様では、集電体は、絶縁材料25の層の表面上に、またはカソード受容空間11内の任意の場所に配置することができる。
【0042】
図3は、本開示の実装態様によるサブセルハウジング80を示す。各サブセルハウジング80は、高密度電解質材料の交互層を有する固体電解質を含むことができる層状構造である。サブセルハウジング80はまた、高度に制御された多孔性を有する層を含むことができる。層は、アノード層44、カソード層10、およびセパレータ層30を含む。アノード層およびカソード層は、高い多孔率で構成することができ、セパレータ層は、高密度電解質で構成することができる。
アノード層44は、アノード受容空間41、低多孔率境界60 (
図8に示す) 、およびアノード集電体50を含むことができる。カソード層10は、カソード受容空間11、低多孔率境界46、および充填開口部49 (
図9に示す) で構成することができる。低多孔率境界46は、高密度セラミック材料で構成することができる。いくつかの実装態様では、高密度セラミック材料は、固体電解質を含むことができる。低多孔率境界60は、アノード受容空間41を環境から完全に密封する。また、低多孔率境界46は、カソード受容空間11を部分的に取り囲み、カソード受容空間をサブセルハウジング内の他の層から物理的に隔離することができる。
【0043】
再び
図3を参照すると、セパレータ30は、各サブセルハウジングのアノード受容空間41を各サブセルのカソード受容空間11から分離して、空間間の接触を排除するように構成される。セパレータ層30は、開気孔がないことを確実にするために正確な厚さで構成することができる。
好ましい実装態様では、セパレータ層の厚さは、0.00001 mm~1.0 mmの範囲とすることができる。アノード受容空間41およびカソード受容空間11の厚さは、特定の材料の性能を最適化するように構成することができる。開放容積および固体イオン伝導性電解質ストランドの構成はまた、特定の材料の性能を最適化するように設計される。
【0044】
上記のように、カソード層10は、カソライトで部分的にまたは完全に充填されたカソード受容空間11を含むことができる。低多孔率セラミック壁は、カソード受容空間11の少なくとも一部およびカソード受容空間内のカソード集電体20の周りに配置することができる。
【0045】
カソード層10はまた、充填開口部49内(
図2および
図9に示す)に、カソライトを収容するように構成されたシール構造を含むことができる。シール構造は、環境からカソライトを保護し、カソード受容空間11からの圧力解放を提供するように構成することができる。セパレータ層30は、電気的に絶縁されたセラミック材料を含むことができる。
いくつかの実装態様では、電気的に絶縁されたセラミック材料の少なくとも中央部分は、サブセルの設計電荷移動種に適した固体電解質を含む。低多孔率セラミック壁はまた、固体電解質材料を含むことができ、サブセルの保護パッケージングとして機能することができる。
【0046】
好ましい実装態様では、アノード受容空間41、カソード受容空間11、セパレータ30、ならびに集電体50および20の多層構造体は、カソライトまたはアノード活物質のいずれも存在することなく組み立てることができる。カソライト材料は、充填開口部49 (
図2および
図9に示される) を通して挿入され、カソード層10内の定位置に封止され得る。
カソライト材料は、カソード活物質、サブセルの電荷移動イオンのための電解質、および電子伝導性材料から構成することができる。電子伝導性材料は、炭素、金属または電子伝導性セラミックを含むことができる。カソード活物質は、電荷移動イオンに適したインターカレーションホスト材料で構成することができる。
【0047】
特に
図5を参照すると、多孔性アノード受容空間41の空き空間42は、電池の初期充電時にアノード活物質43で部分的に満たされるか、または完全に満たされ得る。いくつかの実装態様では、アノード活物質43は、リチウム金属を含むことができる。アノード活物質をアノード集電体上に電気めっきして、アノード受容空間41の充填を開始することができる。
次いで、
図4に示すように、アノード受容空間41がアノード活物質43で満たされるまで、アノード活物質を、先にめっきされたアノード活物質上に電気めっきすることができる。
【0048】
カソライト材料は、カソライト材料を流体に変換し、真空力下で流体材料を多孔質構造体に引き込むことによって、カソード受容空間10に挿入することができる。いくつかの実装態様では、カソライト材料を流体に変換することは、カソライト材料を溶融すること、カソライト材料を固体および液体材料の混合物に配合すること、カソライト材料を溶媒に溶解すること、またはカソライト材料を微粉末に変換することを含むことができる。
代替の実装態様では、カソライト材料は、固体または半固体構造体として構成することができる。構造体は、カソード受容空間に正確に嵌合するように成形することができる。この実装態様では、カソライト材料構造体は、それぞれのカソード受容空間に直接挿入して固定することができる。
【0049】
サブセルは、構造体の残りの部分を損傷することなく、カソード受容空間へのカソライト材料の導入を可能にするように構成することができる。例えば、サブセルは、全てのカソード受容空間が、低多孔性セラミック壁46によって、シート状容積の縁部の少なくとも4分の3に沿って連続的に封止されるように構成することができる。
いくつかの実装態様では、カソード受容空間は、全周の1/1000~1/2にわたって開いている。いくつかの実装態様では、カソード受容空間は、セル層のスタックの第1の位置で開いている。第1の位置は、カソード受容空間の充填開口部が流体カソライト材料に浸漬されることを可能にする。いくつかの実装態様では、充填開口部は、流体カソライト材料中に完全に浸漬され得る。
【0050】
さらに、
図10および
図11に示すように、サブセルは、すべてのアノードサブセル集電体を接続するアノード電気接点92を含む。アノード電気接点は、サブセルの外側に電気接点を形成するための延長部を含むことができる。サブセルはまた、全てのカソードサブセル集電体を接続するカソード電気接点94を含む。カソード電気接点はまた、サブセルの外側で電気接点を形成するためにアクセス可能な延長部を含むことができる。
【0051】
いくつかの実装態様では、電解質構造は、固体セル100 (
図1) の基本的なフレームワークおよび外骨格である。連続的な電解質は、リチウムイオンを電子伝導部位へ、および電子伝導部位から輸送するためにアノード構造体内に必要とされる。固体電解質は、セル充電サイクル中のリチウムデンドライトの成長を防止する完全に緻密なセラミック構造として、アノード領域とカソード領域との間のセパレータ30としても機能することができる。
アノードおよびカソード領域では、電解質は、液体電解質を模倣する多孔質構造体を形成することができ、充電状態にかかわらず3次元空間全体にわたるイオン移動を可能にする。電解質構造体は、電極領域の縁部を封止することができ、サブセルの周りのパッケージを効果的に完成させる。その結果、高密度層と多孔質層とが交互になった構造が得られ、この構造は、セル全体にわたって連続構造として一体化され、同様の材料の層の界面に明らかな不連続性はない。化学的に異なる材料の界面において、異種材料の特性は、そのような界面における唯一の不連続性が界面層の化学組成にあるように構成される。
【0052】
いくつかの実装態様では、固体セル構造体の組み立ては、層または部分層の順次堆積によって達成される。層または部分層の堆積は、所望の最終材料の前駆体として、個々の層の機能のために適切にパターン化することができる。前駆体は、熱処理後に所望の高密度および電気化学的特性の最終材料を形成する材料の混合物を含む。
結合材料は、所望の最終材料を形成する材料とは別の材料であってもよい。この場合、結合材料は、熱処理プロセス中に構造体から除去される。他の実装態様では、結合材料は、所望の最終材料を形成し、結合特性を有することができる。
【0053】
図6は、サブセルハウジングの製造工程を示すフローチャートである。ステップ601において、前駆体材料は、高度に可撓性であり、脆くないフォーマットで堆積される。例えば、前駆体材料は、シートの完全性を犠牲にすることなく容易に塑性変形するシートを含む流動性を有する物体として堆積させることができる。流動性を有する物体は、ペースト、流動性粉末およびグリーンテープを含むことができる。前駆体は、1つの形式または2つ以上の形式の組み合わせで堆積され得ることを理解されたい。
セル構造体のすべての層が堆積された後、ステップ602において、完成した構造体を熱処理して、前駆体を所望の物理的および電気化学的特性の最終材料に変換することができる。さらに、熱処理は、堆積された層の間に物理的界面のない単一のモノリシック構造体を作り出す。
【0054】
いくつかの実装態様では、前駆体は、付加製造技術を使用して堆積させることができる。例えば、前駆体は、コンピュータシステムを伴う3次元 (3D) プリンタを使用して堆積され、構造体の各層のCADデータによって誘導され得る。代替的な実装態様では、前駆体は、グリーン (未焼成) テープの層として堆積され、所望のパターンに調製され、設計順序で積み重ねられ、一緒に積層され得る。代替の実装態様では、3D印刷および積層テープ堆積プロセスの両方を組み込んで、完全な構造体を形成することができる。
【0055】
いくつかの実装態様では、カソードは有機液体電解質を含むが、固体セル内の液体の全体積は、標準的なLIBの約10%である。この液体の減少は、標準的なLIBと比較して、固体セル100の爆発および発火の可能性を大幅に低減する。
【0056】
図12Aは、本開示の様々な実装態様による固体電池200の断面図である。
図12Aにおいて、固体電池200は、固体電解質150のストランドおよび細孔160 (
図12Bに示す) を含む3D多孔質カソード構造体110を含む。固体電池200はまた、3D多孔質カソード構造体110に接続されたカソード集電体120と、カソード構造体110をアノード構造体130から分離するセラミック電解質セパレータ105とを含む。
いくつかの実装態様では、電解質セパレータ105、および/またはカソード構造体110の固体電解質150のストランドは、リチウムランタンジルコニウム酸化物 (LLZO) であってもよく、またはそれを含んでもよい。「カソード構造体」 という用語は、任意のカソード材料が細孔に添加される前の、例えば
図12Aおよび
図12Bに示される3D構造体を含むことが意図されることに留意されたい。
【0057】
図12Bは、
図12Aに示す細孔160の例示的な1つの拡大図である。特に、
図12Bは、電子伝導性ネットワークでコーティングされていない側壁162を有する細孔160の1つを示す。これに関して、細孔160の側壁162は、カソード構造体110内のイオン伝導性電解質セパレータ105とカソード集電体120との間に延在する細孔160に当接するイオン伝導性電解質ストランド150の縁部によって形成される。
図面は、カソード構造体110を通って垂直にのみ延在する細孔160を示すが、細孔160の一部は、カソード構造体110を通って水平にも延在し、
図12Aに示される細孔160の垂直部分を接続して、垂直方向および水平方向の両方に延在する細孔を有する多孔質3Dカソード構造体110を形成することができることを理解されたい。
【0058】
図12Aおよび
図12Bに示す配置では、細孔160内に電子伝導性ネットワークは存在しない。より具体的には、
図12Aに示すように、多孔質カソード構造体110は、固体電解質セパレータ105からカソード集電体120まで延びる固体電解質ストランド150で部分的に充填されている。
各細孔160は、カソード集電体120にのみ電気的に接続されている。カソード活物質170が細孔内に導入されると、
図12Cに示すように、各細孔160内のカソード活物質170は、カソード集電体120にのみ電気的に接続される。換言すれば、
図12Dの領域112として示される、カソード集電体120に隣接するカソード活物質170の部分のみが、電子伝導経路およびリチウムイオン伝導経路へのアクセス可能性に関して非常に効果的である。後述するように、細孔の側壁に電子伝導性ネットワークを追加することにより、カソードの全体的な電子伝導能力が大幅に改善される。
【0059】
より具体的には、依然として
図12Dを参照すると、充電中、符号116などのリチウムイオンが、領域112内のカソード集電体120に隣接するカソード活物質170から放出される。これらのイオン116は、固体電解質ストランド150を通って固体電解質セパレータ105に向かって移動し、そこからさらにアノード130に移動する。
同時に、114などの電子もカソード活物質170から放出され、カソード集電体120に移動し、そこからさらに外部回路 (図示せず) を介してアノード集電体140およびアノード130に移動する。カソード集電体120から離れたカソード活物質170の大部分は、電子伝導性およびイオン伝導性ネットワークへの同時アクセスの欠如のために、機能していない。これは、電池200の低いカソード利用効率、低い容量、および低いエネルギー密度につながる。換言すれば、
図12Aに示される電池200における高表面積3D多孔質カソード110の利点は、完全には実現されていない。
【0060】
図13A~13Dに示すように、本開示は、固体電解質ストランド150’内の電子伝導性ネットワーク180および強化されたイオン伝導性ネットワークの両方からなる3D多孔質カソード構造体110’を提示し、これは、カソード活物質170が電子伝導性経路およびリチウムイオン伝導性経路に効果的にアクセスすることを可能にする。以下に説明するように、これにより、
図13Aに示す電池300の内部抵抗が減少し、
図12Aに示す電池200(そのような電子伝導性および増強されたイオン伝導性を含まない)と比較して電池の充放電速度が増加する。
したがって、本開示の実装態様によれば、
図13A~
図13Dでは、電子伝導性ネットワーク180が、3D多孔質カソード110’の細孔160の側壁162上に組み込まれている。さらに、後述するように、焼結操作によって多孔質カソード110’内に形成された固体電解質ストランド150’は、多孔質カソード110’の形成中に前駆体材料を使用することによって焼結中に高密度化され、固体電解質ストランド150’内に強化されたイオン伝導経路を提供する。
【0061】
より具体的には、
図13B~13Dに示すように、電子伝導性材料を細孔160の表面に導入して、電子伝導性ネットワーク180を形成する。電子伝導性ネットワーク180は、カソード集電体120と電気的に接続されている。また、後述するように、固体電解質ストランド150’内のイオン伝導は、焼結プロセスにおける細孔160の形成中の高密度化によって強化され、固体電解質ストランド150’内に強化されたイオン伝導経路を提供する。緻密化を促進するために、焼結助剤をこの目的のために添加することができる。
代替的に又は追加的に、焼結中の温度および圧力は、固体電解質ストランド150’全体にわたって均一な高密度を提供することを目的として、固体電解質ストランド150’の高密度化を高めるように調整することができる。これらの構成では、
図13Cに示すように、カソード活物質170が細孔160内に導入されると、各細孔160内のカソード活物質170は、固体電解質ストランド150’内の電子伝導性ネットワーク180およびイオン伝導性ネットワークと直接接触する。
【0062】
図13Dを参照すると、電池300の充電中、リチウムイオン116は、細孔160全体の至る所でカソード活物質170から放出され、固体電解質ストランド150’内の強化されたイオン伝導経路を通って固体電解質セパレータ105に向かって移動し、ここからさらにアノード130に移動する。同時に、電子114は、細孔160の至る所でカソード活物質170から放出され、電子伝導性ネットワーク180に移動し、次いでカソード集電体120に移動し、さらに外部回路 (図示せず) を介してアノード集電体140およびアノード130に移動する。
電子伝導性ネットワーク180の存在および固体電解質ストランド150’の強化されたイオン伝導は、カソード活物質170全体が機能的であることを可能にし、
図12Aに示される電池200と比較して、電池300の高いカソード利用効率、高容量および高エネルギー密度をもたらす。
【0063】
なお、固体電解質ストランド150’は、電解質セパレータ105を構成する材料と同じ材料で構成することができる。また、アノード130は、3D多孔質カソード110’について本明細書で説明したのと同じ方法で、細孔の側壁上の電子伝導性ネットワークと、アノード130の細孔間に形成された電解質ストランド内の強化されたイオン伝導性ネットワークとを有する3D多孔質アノードとして形成することもできることにさらに留意されたい。
また、カソード構造体110’の電解質ストランド150’について、上述した場合と同様に、電解質セパレータ105とアノード130内の電解質ストランドの両方を焼結中に高密度化して、上述したようにイオン伝導を高めることができる。
【0064】
図13A~
図13Dを参照すると、細孔160の側壁162は、固体イオン伝導性電解質ストランド150’の縁部によって形成され、固体イオン伝導性電解質ストランド150’は、固体イオン伝導性電解質セパレータ105とカソード構造体110’内のカソード集電体120との間に延在する細孔160に当接することに留意されたい。
図面は、カソード構造体110’を通って垂直方向にのみ延在する細孔160を示しているが、細孔160の一部は、カソード構造体110’を通って水平方向にも延在し、
図13A~
図13Dに示す細孔160の垂直部分を接続して、垂直方向および水平方向の両方に延在する細孔を有する多孔質3Dカソード構造体を形成することができることを理解されたい。
【0065】
電解質ストランド150’内に形成されるイオン伝導性ネットワークは、ホウ化物、炭化物、窒化物、リン化物、リン酸塩、硫化物、酸化物、セレン化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるリチウムイオン伝導性材料を含むことができる。最も有用なイオン伝導性材料としては、酸化物、硫化物、リン酸塩、および窒化物が挙げられる。
より具体的には、好ましいイオン伝導性材料は、リチウムランタンジルコニウム酸化物 (LLZO)、または、アルミニウム、ニオブ、ガリウム、タンタル、およびタングステンを含む様々なドーパントを有するLLZOを含むガーネット構造酸化物、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム (LAGP) およびリン酸リチウムアルミニウムチタン (LATP) などのリン酸ガラスセラミック、チオホスフェートおよびアルジロダイトなどの硫化物、ならびにリン酸リチウムオキシナイトライド (LiPON) からなる群から選択することができる。これらのイオン伝導性材料は、固体電解質セパレータ105および電解質ストランド150’の両方を形成することができる。
【0066】
電子伝導性ネットワーク180は、炭素材料、金属、半導体、伝導性ポリマー、電子伝導性セラミックまたはそれらの組み合わせから選択される電子伝導性材料を含むことができる。電子伝導性ネットワーク180の厚さは、0.01μm~1μmの範囲であり得る。いくつかの実装態様では、電子伝導性ネットワーク180は、30%~70%の表面被覆率で表面を部分的に覆い、リチウムイオンへのアクセスを可能にするためにランダムに構造化されたウェブまたはランダムに構造化されたメッシュを形成することができる。
【0067】
再び
図13A~
図13Dを参照すると、いくつかの実装態様では、イオン伝導性および電子伝導性ネットワークは、以下でさらに説明するように、カソード構造体110’内に細孔を形成するために使用される第2の前駆体材料に組み込まれた追加の前駆体材料から形成することができる。例えば、イオン伝導性および電子伝導性ネットワークは、3D多孔質カソード構造体を作製するために使用される第2の前駆体材料の中に組み込まれた前駆体からの構造体の焼結中に形成される。
理想的には、カソード活物質170は、カソード110’がそのような焼結条件下で安定なカソード活物質170で構成される場合、イオン伝導性および電子伝導性ネットワーク材料と共に導入され、共焼結 (または共焼成) される。例えば、カソード活物質170は、イオン伝導性材料の焼結温度 (例えば、典型的には500°C超) に耐える必要がある。あるいは、カソード材料170は、3D多孔質カソード構造体110’が焼結によって形成された後に、細孔160に組み込まれ得る。カソード活物質170を多孔質構造体に組み込むための様々な手法を以下に記載する。
【0068】
実装態様では、電子伝導性ネットワーク180は、3D多孔質カソード構造体110’を作製するために使用される第2の前駆体材料に組み込まれた第1の前駆体材料から形成することができる。例えば、これらの第1の前駆体材料は、第2の前駆体材料で作製された構造体の焼結中に細孔が形成されると、細孔160の表面上の電子伝導性コーティングに変換される。
【0069】
一例では、3D多孔質カソード構造体110’は、粉末堆積プロセスとそれに続く焼結によって形成される。固体電解質材料の粉末を、犠牲細孔形成材料 (例えば、第2の前駆体材料) の粉末および電子伝導性材料前駆体 (例えば、第1の前駆体材料) の粉末と混合する。混合粉末を薄層として堆積させ、バインダージェット印刷によってバインダー材料で固定する。次いで、堆積された粉末構造体は焼結され、固体電解質材料は高密度化されて固体電解質ストランド150’内にイオン伝導性ネットワークを形成し、犠牲細孔形成材料はガス化されて細孔160を形成する構造体から除去され、電子伝導性材料前駆体は変換され、一実装態様では分解して電子伝導性ネットワーク180を形成する。第3の前駆体材料は、前記固体電解質材料を高密度化して、前記電解質材料のイオン伝導能力を向上させるために含み得る。
その後、本開示の態様に従って、カソード活物質170を組み込むことができる。例えば、カソード活物質170は、以下の材料のうちのいずれか1つ以上を含むことができ、リチウムコバルト酸化物 (LCO) 、リチウムマンガン酸化物 (LMO) 、リチウム鉄リン酸塩 (LFP) 、リチウムニッケルマンガンコバルト (NMC) 、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物 (NCA) 、リチウムニッケルマンガン酸化物 (LNMO) 、リチウムバナジウム酸化物 (LVO) 、リチウム鉄二硫化物、銀バナジウム酸化物、一フッ化炭素、酸化銅、硫黄、またはそれらの組み合わせである。
【0070】
実装態様において、電解質セパレータ層105は、グリーン (未焼結) 状態であってもよく、その後、混合粉末の層と共に焼結されてもよい。
図13Aに示す多層電池セル300には、2つの構築シーケンスがあり得る。第1のシーケンスは、アノード集電体140、多孔質アノード130、セラミック電解質セパレータ105、多孔質カソード110、およびカソード集電体120の順の各層の堆積である。第2のシーケンスは、第1のシーケンスの逆であり、カソード集電体120、多孔質カソード110’、セラミック電解質セパレータ105、多孔質アノード130、およびアノード集電体140の順序で各層を堆積させる。層120~140は、多層電池セルの繰り返し単位を形成する。
【0071】
他の実装態様では、3D多孔質カソード構造体110’は、スラリーまたはペーストのコーティングプロセスとそれに続く焼結によって形成することができる。スラリーまたはペーストは、固体電解質材料の粉末を、犠牲細孔形成材料の粉末、電子伝導性材料前駆体、バインダーおよび溶媒と混合することによって配合される。スラリーまたはペーストは、テープキャスティング、スクリーン印刷またはスロットダイコーティングなどのコーティング技術によって薄層として堆積される。
次いで、コーティングされた構造体は、乾燥および焼結され、固体電解質材料は、高密度化され、電解質ストランド150’内にイオン伝導性ネットワークを形成し、犠牲細孔形成材料は、ガス化され、構造体から除去され、それによって、細孔160を形成し、電子伝導性材料前駆体は、変換され、一実装では、分解し、電子伝導性ネットワーク180を形成する。好ましくは、多孔質カソード構造体におけるセラミック電解質セパレータ105および電解質ストランド150’は、同じ固体電解質材料を含む。
【0072】
3D多孔質カソード110’の細孔サイズ、形状および多孔率は、細孔形成材料のサイズ、形状および濃度によって制御することができる。細孔形成材料は、有機もしくは無機材料またはそれらの組み合わせであり得る。電子伝導性材料前駆体は、有機材料もしくは無機材料またはそれらの組み合わせであり得る。特定の実施において、金属炭酸塩は、細孔形成材料および電子伝導性材料前駆体の両方として使用される。
【0073】
いくつかの実装態様では、電子伝導性ネットワーク180は、多孔質カソード構造体が形成された後に組み込むことができる。この場合、3D多孔質カソードは、 (
図2および
図9に示すカソード受容空間11内の充填開口部49を使用することに関して上述した構成と同様に) 封止壁のない少なくとも1つの開放側面を有する。アパーチャ(aperture)または開口部は、電子伝導性材料を多孔質構造体に注入して、細孔160の側壁表面162上に電子伝導性ネットワーク180を形成することを可能にする。
【0074】
実装態様では、炭素を注入して電子伝導性ネットワーク180を形成することができ、炭素の薄層が細孔160の側壁表面162にコーティングされる。炭素は、炭素分散液または炭化水素前駆体から導入することができる。代替的な実装態様では、金属を注入して電子伝導性ネットワーク180を形成し、細孔160の側壁面162に金属の薄層をコーティングする。金属は、金属粒子分散体または有機金属前駆体から導入され得る。
【0075】
実装において、カソード活物質170は、カソード活物質および液体電解質を含むカソライトとしての形態で導入することができ、カソライトは、真空および/または圧力の力の下でカソード多孔質構造体内に引き込まれる。
あるいは、カソード活物質170は、カソード活物質、ポリマーバインダー、および溶媒を含むカソードスラリーまたはペーストとしての形態で導入することができ、カソードスラリーまたはペーストは、真空および/または圧力の力の下でカソード多孔質構造体に引き込まれる。例えば、真空または差圧は、10-3~277トル (1.9×10-5~5.35 psi) の範囲であり得る。次いで、カソードスラリーまたはペーストで充填された多孔質カソードを熱または放射線 (例えば、赤外線またはUV) に供して、溶媒を除去し、バインダーを硬化させることができる。
【0076】
他の実装態様では、カソード活物質は、カソード活物質170を合成するための前駆体を含むスラリーの形態で、カソード受容空間 (
図2に示すカソード受容空間11に関して上述したものなど) に導入される。前駆体スラリーは、真空および/または圧力の力の下でカソード多孔質構造体内に引き込まれ得る。多孔質カソード受容体がカソード前駆体スラリーで充填されると、前駆体をカソード活物質170に変換するために、カソード活物質合成調整プロセスに供される。
コバルト酸リチウム (LCO) の前駆体としては、硝酸コバルト (Co (NO
3)
2) 、塩化コバルト (CoCl
2) 、硝酸リチウム (LiNO
3) 、水酸化リチウム (LiOH) 等が挙げられる。リチウムニッケルマンガンコバルト (NMC) の前駆体としては、硫酸ニッケル (NiSO
4) 、硫酸マンガン (MnSO
4) 、硫酸コバルト (CoSO
4) 、炭酸リチウム (Li
2CO
3) および水酸化リチウムが挙げられる。リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物 (NCA) の前駆体としては、硫酸ニッケル (NiSO
4) 、炭酸リチウム (Li
2CO
3) 、硫酸アルミニウム(Al
2(SO
4)
3)などが挙げられる。さらなる実装態様では、カソード活物質は、カソード活物質170を含む溶融液としての形態で導入することができ、カソード活物質は溶融され、真空および/または圧力の力の下でカソード多孔質構造体内に引き込まれる。溶融したカソード活物質を多孔質カソードに充填した後、冷却してカソード活物質を固化させる。
【0077】
上記の実装態様は全て、規則的で規則的な形状を有さないランダムに構造化された細孔160の使用に基づいている。しかしながら、
図14A、
図14B、
図14C、
図15A、
図15B、および
図15Cに示されるような本開示の他の実装態様は、規則的な、または配向された垂直細孔構造を有し、これは、以下で論じられるように、ランダムに構造化された細孔よりも特定の利点を提供する。
【0078】
図14Aは、3D秩序化又は配向された多孔質アノードおよび多孔質カソードを有する固体電池400の断面図である。
図14Bは、
図14Aのカソード210’内の例示的な細孔260の拡大図であり、カソード210’内の細孔260の側壁表面に沿って電子伝導性ネットワーク280を有する。
図14Cは、
図14Aのアノード230内の例示的な細孔260Aの拡大図であり、アノード230内の細孔260Aの側壁面262Aに沿った電子伝導性ネットワーク280Aを有する。
図14A、
図14Bおよび
図14Cは、
図13Aおよび
図13Bのカソード110’のランダムな細孔160およびアノード130のランダムな細孔160A (図示せず) が、
図14Aおよび
図14Bのカソード210’の規則的な (例えば、規則的な形状の非ランダムな) 垂直細孔260、および
図14Aおよび
図14Cのアノード230の規則的な垂直細孔260Aに置き換えられていることを除いて、
図13Aおよび
図13Bと同様である。
【0079】
具体的には、
図13Aと同様に、
図14Aにおいて、固体電池400は、3D多孔質カソード構造体210’を含み、3D多孔質カソード構造体210’は、固体電解質のストランド250’と、規則的な垂直細孔260 (
図14Bに示す) とを含む。固体電池400はまた、3D多孔質カソード構造体210’に接続されたカソード集電体220と、カソード構造体210’を3D多孔質アノード構造体230から分離するセラミック電解質セパレータ205とを含む。アノード構造体230は、固体電解質のストランド250A’、ならびに規則的な垂直細孔260A (
図14Cに示す) を含む。
いくつかの実装態様では、電解質セパレータ205、ならびに/またはカソード構造体210’の固体電解質のストランド250’およびアノード構造体の固体電解質のストランド250A’は、リチウムランタンジルコニウム酸化物 (LLZO) であってもよく、またはそれを含んでもよい。「カソード構造体」 および/または 「アノード構造体」 という用語は、任意のカソード材料およびアノード材料が、それぞれ、規則的な垂直細孔260および260A内に追加される前の、例えば、
図14A、
図14B、および
図14Cに示される3D構造体を含むことが意図されることに留意されたい。
【0080】
図14Bは、
図14Aに示す多孔質カソード210’の規則的な垂直細孔260の例示的な1つの拡大図である。特に、
図14Bは、カソード構造体210’のイオン伝導性電解質セパレータ205とカソード集電体220との間に延在する細孔260に当接するイオン伝導性電解質ストランド250’の縁部によって形成された側壁262を有する規則的な垂直細孔260の1つを示す。
図13A~
図13Dと同様に、
図14Aおよび
図14Bにも示されるように、本開示は、固体電解質ストランド250’内の電子伝導性ネットワーク280および強化されたイオン伝導性ネットワークの両方からなる3D多孔質カソード構造体210’を提示し、これは、カソード活物質270 (
図15Aおよび
図15B参照) が電子伝導性経路およびリチウムイオン伝導性経路に効果的にアクセスすることを可能にする。
図13A~
図13Dに関して上述したように、これは、そのような電子伝導性ネットワークおよび強化されたイオン伝導性ネットワークを含まない
図12Aに示される電池200と比較して、
図14Aに示される電池400の内部抵抗を減少させ、電池充放電速度を増加させる。したがって、本開示の実装態様によれば、
図14Aおよび
図14Bでは、電子伝導性ネットワーク280が、3D多孔質カソード210’の細孔260の側壁262上に組み込まれている。さらに、
図13A~
図13Dに関して上述したように、焼結操作によって多孔質カソード210’内に形成された固体電解質ストランド250’は、多孔質カソード210’の形成中に前駆体材料を使用することによって焼結中に高密度化されて、固体電解質ストランド250’内に強化されたイオン伝導経路を提供する。
【0081】
図15Aおよび
図15Bに示す多孔質カソード210の規則的な縦細孔260内のカソード活物質270に加えて、
図15Aおよび
図15Cは、電池500の多孔質アノード230の細孔260A内のアノード活物質270Aを示す。アノード230内のこれらの細孔260Aは、カソード210’内の細孔260と同様に、カソード210’の電子伝導性ネットワーク280と同じ改善された電子伝導性を提供する電子伝導性ネットワーク280Aを有する。
【0082】
上述のように、
図14A~
図15Cの細孔260および260Aは、
図12A~
図13Dに示すようなランダムな細孔ではなく、規則的な (例えば、配向された) 垂直細孔である。これは、電池の短絡を軽減、低減、または回避し、リチウムがアノードとして使用されるときにリチウムアクセス可能性を増加させるように設計された固体電池のための技術的解決策を提供する。特に、細孔260Aについて規則的で均一な多孔率を有することは、不均一な多孔率を有する細孔よりも効率的に、小孔または細孔内にリチウムを有するアノード230を形成することを可能にする。カソード210’の細孔260に充填されるカソード活物質の量に関しても同様の利点が提供される。
配向された細孔のいくつかの利点としては、屈曲度が低いことが挙げられ、そのため、多層構造中の電子伝導性ネットワークおよび電極活物質をより効果的に充填することができる。これは、より高いスループット(throughputs)を有する、より容易でより効果的なコーティング技術の使用を可能にし、配向された細孔に材料が浸透する、例えば、配向された多孔質カソードに浸透するカソライトのためのより容易な経路を提供する。
【0083】
様々な実装態様では、アノード表面積は、その中に形成された配向された細孔の存在により、配向された細孔のないアノードと比較して数桁増加し、より低い電流密度をもたらし、これは、配向された細孔のないアノードを使用して生じる短絡を軽減、低減、または排除し得る。配向された細孔構造はまた、配向された細孔のないカソードの欠点、すなわち、イオン伝導性ネットワークおよび電子伝導性ネットワークの両方との低い接触表面積を有し、高い界面抵抗をもたらし、ホットスポットを生成し、短絡を引き起こす、という欠点を軽減し得る。
【0084】
加えて、様々な実装態様は、固体電池の電極の表面積を増加させて、局所的な電流密度および短絡の発生率を減少させることを含む。これに関して、
図14Aおよび
図15Aは、カソード側およびアノード側の両方に規則的な垂直細孔を使用することを示しているが、代替の実装態様では、カソード側またはアノード側の一方のみが規則的な垂直細孔を有することができ、他方の側は、固体の非多孔質要素であるか、または、
図12A~
図13Dに示すように、ランダムな細孔を有することに留意されたい。
【0085】
1つの特定の例では、
図14A~
図14Cを参照すると、アノード230における細孔260Aの幅または細孔幅285Aは、10μm~200μm、好ましくは10μm~100μmの範囲であってもよく、アノード230における細孔260Aの間隙長さ (すなわち、細孔間の空間) 295Aは、10μm~500μm、好ましくは10μm~50μmの範囲であってもよい。同様に、
図14Bに示されるように、カソード210’における細孔260の幅285は、10 μm~500 μm、好ましくは10 μm~100 μmの範囲であってもよく、カソード210’における細孔260の間隙長さ295は、10 μm~500 μm、好ましくは10 μm~50 μmの範囲であってもよい。
しかしながら、全体の表面積を増加させる目的のために、一般に、幅285/285 Aおよび間隙長さ295/295 Aは、100μm未満であることが好ましく、さらにより好ましくは、50μm未満である。細孔260および260Aはまた、配向された構成を有してもよく、カソード層210’またはアノード層230において規則的に離間されてもよく、また、同様の寸法を有し、カソード層210’またはアノード層230の均一な多孔性をもたらしてもよい。例えば、細孔260および260Aは、カソード層210’又はアノード層230の長手方向に対して実質的に垂直な方向に配向され得る。したがって、電極、例えば、カソード層210’またはアノード層230は、所与のレベルの多孔率を有し、間隙295または295Aおよび細孔260または260Aと、カソード層210’またはアノード層230のいずれかとの組み合わせは、配向多孔質構造体を形成する。
【0086】
より具体的には、電極は、その中に形成された配向された細孔260または細孔260Aにより、規則的でより均一な多孔性を有する。様々な実装態様では、細孔260および260Aの底部は、実質的に矩形の形状を有することができ、細孔260の側壁262および細孔260Aの側壁262Aはそれぞれ、細孔260および260Aの底面に対して実質的に垂直な方向に延在することができる。側壁面262および262Aの深さまたは側壁長さ290および290Aは、10μm~200μmの範囲であってもよい。例えば、カソード層210’の側壁面262の深さまたは側壁長290は、50μm~200μmの範囲であってもよく、アノード層230の側壁面262Aの深さまたは側壁長290Aは、10μm~70μmの範囲であってもよい。
これに関して、
図14Aに示されるように、実装態様では、細孔260および260Aの深さまたは側壁長さ290および290Aは、必要に応じて、互いに異なることができ、すなわち、深さ/長さ290は、どのような最終デバイス特性が求められるかに応じて、深さ/長さ290Aよりも大きくまたは小さくすることができる。
【0087】
より具体的には、様々な実装態様では、
図14A~
図14Cを参照すると、カソード210’およびアノード230の細孔幅、間隙長さ、および側壁長の寸法は、使用される電池セルの化学的性質に応じて変化し得る。
一例では、インターカレーション型のアノード活物質が使用される場合、アノード230内の細孔260Aの側壁長290Aは、細孔幅および間隙長さがアノードおよびカソードの両方で同じであると仮定して、カソード210’内の細孔260の側壁長290よりも大きくすることができる。別の例では、リチウム金属アノードが使用される場合、アノード230内の細孔260Aの側壁長さ290Aは、カソード210内の細孔260の側壁長さ290よりも小さくすることができる。
【0088】
あるいは、細孔260および260Aの側壁262および262Aは、底部に対してある角度で配向されてもよい。例えば、細孔260および260Aの側壁262および262Aは、その底部に対して90°より小さい又は大きい角度で配向されてもよい。
様々な他の実装態様では、細孔260および/または260Aの底部は、実質的に丸い形状を有することができ、細孔260および/または260Aの側壁面262および262Aは、アノード、カソード、または電解質セパレータの長手方向軸線に実質的に垂直な方向に延在する。
【0089】
様々な実装態様では、ギャップまたは細孔260および260Aは、凍結鋳造、テープ鋳造、パターン印刷などを含むいくつかの製造技術によって製造することができる。また、固体電解質セパレータ205の材料としては、例えば、リン酸リチウムアルミニウムゲルマニウム (LAGP) や、リン酸リチウムアルミニウムチタン (LATP) や、リチウムランタンジルコニウム酸化物 (LLZO) 等の多くの固体電解質材料を用いることができる。
特に、規則性多孔質構造体は、パターン印刷、例えば3D印刷によって形成されてもよく、犠牲細孔形成材料は、標的細孔形状によって画定されるパターンで堆積され、固体電解質材料は、上述の
図14Aの構造体を形成するために、犠牲細孔形成材料のパターンを取り囲む層に堆積される。
【0090】
様々な実装態様において、アノード層230は焼結される。焼結されたアノード層230について、例えば、アノード層230の材料がリチウム非親和性である、すなわちリチウム金属との接着性が低い場合であっても、リチウムが細孔260Aの壁と良好な界面を有することを可能にするために、細孔260Aは保護湿潤剤を含んでもよい。あるいは、保護湿潤コーティング (図示せず) を、電子伝導性ネットワーク280Aの上またはその下 (例えば、電子伝導性ネットワーク280Aと細孔260Aの側壁262との間) のいずれかに設けることができる。好ましくは、このような保護湿潤コーティングは、10~100 nmの厚さを有する。
例えば、そのような保護湿潤コーティングは、固体電解質材料 (例えば、LLZO、LAGP、LATP) がリチウム非親和性であるときにリチウムが細孔260A内に留まることを可能にするために、リチウム親和性であってもよく、すなわち、リチウム金属との良好な接着性を有してもよい。LAGP、LATP、またはLLZOが使用される場合、コーティング機能は、保護緩衝層と、保護湿潤コーティングとして、例えば、Ag、Zn、ZnO、Al2O3、SiO2、またはリチウムリンオキシナイトライド (LiPON) 等の湿潤剤とを同時に適用することによって達成され、固体電解質材料がリチウム非親和性である場合、リチウムが細孔260A内に充填されることを可能にし得る。
【0091】
アノード層230は、リチウム/固体電解質界面を強化するように構成された湿潤剤を含む保護湿潤コーティングを有することができ、したがって、溶融リチウムが細孔230に充填される間、接触抵抗を低減する。
様々な実装態様では、湿潤剤による細孔260Aのコーティングは、原子層堆積 (ALD) 法、スパッタリング法、および蒸着法のいずれかを使用して行うことができるが、他の技術を使用してもよい。湿潤剤の組み込み、またはカソード細孔260の電子伝導性ネットワーク280の上もしくは下のいずれかに保護湿潤コーティングを提供することのいずれかに関して、同様の配置をカソード層210’に提供することができることに留意されたい。
【0092】
いくつかの実装態様では、アノード層230の焼結が完了した後、アノード層230は、アノード活物質で構成された軟質アノードスラリーで浸潤されて、細孔260Aを部分的にまたは実質的に充填することができる。例えば、軟質アノードスラリーは、細孔260Aの最大40体積%を充填してもよい。アノードの場合、軟質アノードスラリーは、リチウム、シリコン、グラファイトなどであるか、またはそれらを含む。以下に説明するように、同様の軟質カソードスラリーまたは液体カソライトをカソード側で使用することができる。以下、軟質アノードスラリーおよび軟質カソードスラリーを総称して電極スラリーという。軟質スラリーの浸透および乾燥の複数のサイクルは、細孔260Aの充填を達成することを可能にし得る。
実装態様では、軟質電解質スラリーを使用することができ、これは、アノード層230内のイオン伝導性を増加させるか、または強化されたイオン伝導性を確保するために、液体電解質、ゲル電解質、またはイオン液体電解質を含むことができる。アノード層230の内部に形成された細孔260Aの存在により、アノード活物質とイオン伝導性および電子伝導性ネットワークとの間の接触表面積が著しく増加し、したがって、電池の動作中に起こり得る短絡を緩和、低減、または排除する。加えて、細孔の長手方向軸線に対して実質的に垂直である細孔260Aの側壁262Aの配向は、細孔260Aへの軟質アノードスラリーのより効率的な浸透、またはアノード層230への溶融リチウムの添加を可能にする。
【0093】
構造体のカソード側では、カソードスラリー、液体カソライト、または固体カソライト、例えば粉末カソライトまたは他のタイプの固体カソライトは、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、およびリン酸鉄リチウムのうちのいずれか1つのスラリーを含み得る。
例えば、軟質カソードスラリーは、上述のアノードスラリーと同様に、カソード層210’の細孔260の容積を部分的にまたは実質的に充填してもよい。固体電解質セパレータ205の材料、カソード層210の細孔260を取り囲む固体電解質の材料、およびアノード層230の細孔260Aを取り囲む固体電解質の材料は、例えばセラミック電解質材料などの同じ材料であってもよいことにも留意されたい。
【0094】
図16は、様々な実装態様による、固体電池電極用の電極を製造する方法のフローチャートを示す。
図16では、方法はS810で開始し、第1の電極が、例えば第1の電極の長手方向軸線などの長手方向に沿って形成される。実装態様では、第1の電極はアノードであってもよい。
S820において、様々な実装態様では、方法は、第1の電極の上に固体電解質セパレータを形成することを含む。S830において、様々な実装態様では、方法は、固体電解質セパレータの上に第2の電極を形成することを含む。実装態様では、第2の電極はカソードであってもよい。固体電解質セパレータは、第1の電極および第2の電極に接続され、それらを分離する。
【0095】
S840において、様々な実装態様では、方法は、第1の電極内に、第1の側壁を有する複数の第1の配向細孔を形成することを含む。例えば、第1電極に形成された複数の第1配向孔は、開口しており、所望の方向に沿って配向している。一例では、細孔は、第1の側壁 (または水平方向の壁) が円筒の内部空間を画定する円筒形であってもよい。別の実施例では、細孔は、長方形であってもよく、または例えば、第1の側壁がそれらの内部空間を画定する、多面体形状等の他の形状を有してもよい。
いずれの場合も、複数の第1の配向細孔のそれぞれの第1の側壁は、長手方向に対して実質的に垂直であり得る。あるいは、第1の側壁は、長手方向に対して傾斜していてもよい。第1の側壁の長さは、実質的に10μm~70μmの範囲に等しくてもよく、例えば50μmに等しくてもよい。別の例として、第1の側壁は、長手方向から90°を超える角度であってもよい。あるいは、第1の側壁は、長手方向から90°未満の角度、または90°超と90°未満との角度の組み合わせであってもよい。
【0096】
S850において、様々な実装態様では、方法は、第2の電極内に第2の側壁を有する複数の第2の配向細孔を形成することを含む。例えば、第2の電極に形成された複数の第2の細孔は、開口しており、所望の方向に沿って配向している。
いくつかの例では、複数の第2の細孔の各々の、水平方向の壁とも呼ばれる第2の側壁は、第2の電極の長手方向に対して実質的に垂直であってもよい。あるいは、第2の側壁は、第2の電極の長手方向に対して傾斜していてもよい。
【0097】
様々な実装態様では、第1および第2の電極内の複数の第1および第2の配向細孔は、同時に形成することができる。実施において、第1および第2の配向細孔の底部は、様々な形状を有し得る。
例えば、第1および第2の配向細孔の一部又は全ての底部は、実質的に平坦又は平面であり、長手方向に平行であってもよい。第1および第2の配向細孔の一部又は全ての底部はまた、非平面であってもよく、幾何学的形状の最下点が長手方向に垂直な方向にある幾何学的形状を有してもよい。第1および第2の配向細孔の一部または全部の底部はまた、丸みを帯びた形状を有してもよい。
【0098】
様々な実装態様において、第1配向細孔の一部又は全ては、例えば、Ag、Zn、ZnO、Al2O3、SiO2、又はリチウムリン酸窒化物 (LiPON) などの保護湿潤コーティングでコーティングされて、リチウムに対する細孔の湿潤性を増加させてもよく、すなわち、電極固体電解質材料がリチウム非親和性である場合にリチウムが充填されることを可能にしてもよい。前記複数の第1および第2の配向細孔には、軟質電極スラリーおよび溶融金属のうち少なくとも一つが添加され得る。電極がカソードである場合、細孔は、軟質電極スラリー、液体カソライト、または粉末カソライトで充填されてもよい。
例えば、軟質電極スラリーは、カソード内の細孔の容積を部分的に又は実質的に充填することができる。軟質電極スラリーの浸透および乾燥の複数のサイクルは、細孔の充填を達成することを可能にし得る。前記軟質電極スラリーは、カソード内部のイオン伝導度を高めるために、液体電解質、ゲル電解質またはイオン性液体電解質を含むことができる。電極がアノードである場合、細孔は、例えば溶融リチウムなどの溶融金属で充填されてもよい。一例では、軟質電極スラリーまたは溶融金属は、複数の細孔の体積の所与の割合まで充填される。例えば、溶融リチウムは、複数の第1配向細孔のうちの1つ以上の体積の約30%~60%を満たすことができる。別の例として、軟質電極スラリーは、複数の第1の配向細孔のうちの1つ以上の体積の約40%~50%を充填してもよい。
【0099】
S860において、様々な実装態様では、方法は、電子伝導性ネットワークまたはコーティング280Aおよび第1の電極材料を第1の配向細孔内に提供し、電子伝導性コーティング280および第2の電極材料を第2の配向細孔内に提供することを含む。例えば、第2の電極材料は、第1の電極材料と異なっていてもよい。実装態様において、第1の電極材料は、リチウム、リチウム粉末、溶融リチウム、半液体リチウム、リチウムチタン酸化物 (LTO) 、シリコン、酸化シリコン、およびグラファイトのうちのいずれか1つを含んでもよい。
例えば、前記第2の電極物質は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、およびリチウムフェロホスフェート(lithium ferrophosphate)のうち少なくとも一つを含むカソライトまたはカソードスラリーを含むことができる。また、電子伝導性ネットワーク280および280Aは、
図13A~
図15Cに関して上述した技術のいずれかを使用して形成することができる。
【0100】
そのような配向構造のモノリシックセラミック電気化学セルを組み立てるための方法の一実装態様は、上述のように、前駆体材料を可撓性フォーマットで堆積させて多層構造体を形成することを含み得る。
前駆体は、アセンブリが完了したときにそれらの最終特性に変換され、隣接する層が接合された識別可能な界面を有さないモノリシックブロックである構造体をもたらす。
【0101】
いくつかの実装態様では、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極とを分離し、長手方向軸線を有する電解質セパレータと、第1の集電体と、第2の集電体とを含む電気化学セル用の三次元多孔質電極を形成するための方法が提供され、第1および第2の電極のうちの少なくとも1つは、複数の配向細孔を含み、方法は、第1の前駆体材料と第2の前駆体材料とを一緒に混合して混合物を形成することと、複数の配向細孔が形成される層として混合物を堆積させることと、混合物の層を取り囲む層として固体電解質材料を堆積させることと、混合物および固体電解質材料を焼結して、イオン伝導性電解質ストランドが集電体から電解質セパレータまで電極を通って延在し、集電体から電解質セパレータまで延在する複数の配向細孔を形成することと、集電体から電解質セパレータまで細孔の側壁面上に延在する電子伝導性ネットワークとを形成することとを含み、第2の前駆体材料は、第2の前駆体材料を使用する焼結による配向細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、第1の前駆体材料は、第2の前駆体材料を焼結することによって形成された配向細孔の側壁面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である。
【0102】
いくつかの実装態様では、電子伝導性ネットワークは、多孔質構造体が形成された後、集電体 (複数可) を追加する前に組み込むことができる。この場合、アパーチャまたは開口部は、多孔質構造体内への電子伝導性材料の注入、化学蒸着、原子層体積、無電解めっきなどの注入技術、または他のそのような堆積技術によって、細孔の側壁表面上だけでなく、集電体に隣接する表面に沿って、細孔の外側から細孔間の間隙領域まで延在する電子伝導性ネットワークを形成することを可能にする。
孔の表面に、例えば孔の長さに実質的に平行な方向に材料を注入することによって電子伝導性ネットワークを形成することは、比較的短い距離にわたる注入を必要とするので、製造プロセスを最適化する。続いて、集電体 (複数可) を構造体に加えることができる。加えて、上述のように、3D多孔質カソードは、 (カソード受容空間内の充填開口部を使用して) 封止壁なしで開放された少なくとも1つの側面を有することができ、カソード受容空間が流体または液体カソライト材料に浸漬されることを可能にする。
【0103】
別の実装態様では、第1または第2の電極の一方のみ、例えばアノードが、複数の配向された細孔および間隙を含むように形成される。他方の電極は、ランダムな構造の細孔、換言すれば、規則的でなく、一定の形状を有さない細孔を含む構造体で形成することができる。
例えば、カソードは、従来のロールツーロールプロセスによって調製され、固体電解質セパレータ/多孔質アノード構造体に取り付けられてもよい。この場合、電池は、カソードの内部に組み込まれた液体電解質を有する必要があるため、ハイブリッドまたは半固体状態電池であってもよい。
【0104】
図17A~
図21は、多孔質アノードの側壁に電子伝導性ネットワークを組み込むことを特に対象とする実装態様に関する。これに関して、
図17Aは、そのような電子伝導性ネットワークを含まない、様々な実装態様による固体電池1200の断面図である。
図17Aでは、固体電池1200は、固体電解質1232のストランドおよび細孔1245を含む3D多孔質アノード構造体1240を含む。多孔質アノード構造体1240は、アノード集電体1250と接触している。固体電池1200は、カソード構造体1220に接続されたカソード集電体1210、および、カソード構造体1220をアノード構造体1240から分離するセラミック電解質セパレータ1230を含む。例えば、電解質セパレータ1230、および/またはアノード構造体1240の固体電解質1232のストランドは、リチウムランタンジルコニウム酸化物 (LLZO) であってもよく、またはそれを含んでもよい。本明細書は、主に、充電動作中にリチウムイオン電池を形成するためのモノリシック電気化学セルハウジングの使用に関するが、本開示に開示される原理は、リチウムイオン電池の形成に限定されず、異なる材料を有する電池を形成するためにも使用され得ることに留意されたい。
【0105】
図17Bは、
図17 Aに示す細孔1245の例示的な1つの拡大図である。具体的には、
図17Bは、電子伝導性ネットワークでコーティングされていない側壁1260を有する細孔1245の1つを示す。これに関して、細孔1245の側壁1260は、アノード構造体1240内の固体イオン伝導性電解質ストランド1232間に延在する細孔1245に当接する固体イオン伝導性電解質ストランド1232の縁部によって形成される。
図面は、アノード構造体1240を通って垂直にのみ延在する細孔1245を示すが、細孔1245の部分は、アノード構造体1240を通って水平にも延在し、
図17Aおよび
図17Bに示される細孔1245の垂直部分を接続して、垂直および水平方向の両方に延在する細孔を有する多孔質3Dアノード構造体を形成することができることを理解されたい。
【0106】
依然として
図17Aおよび
図17Bを参照すると、リチウムイオン電池1200の充電中、細孔1245内に蓄積されるリチウム金属1270、または別のアノード活性材料は、
図17Bの拡大図に示されるように、アノード集電体1250上に蓄積するリチウムに限定されるであろう。
言い換えれば、
図17Bに示されるリチウム金属1270は、電池1200の初期充電または再充電中に、アノード集電体1250の上に堆積し、アノード集電体1250からのみ細孔1245の下部に延びる。
【0107】
より具体的には、
図17Aおよび
図17Bに示す構成では、細孔1245内に電子伝導性ネットワークは存在しない。上述したように、また、
図17Aおよび
図17Bに示すように、多孔質アノード1240は、固体電解質セパレータ1230からアノード集電体1250まで延在する固体イオン伝導性電解質ストランド1232で部分的に充填されている。各細孔1245は、アノード集電体1250にのみ電気的に接続されている。
図17Aおよび
図17Bを参照すると、充電中、リチウムイオンは、カソード1220から移動し、セラミック電解質セパレータ1230および細孔1245間の固体イオン伝導性電解質ストランド1232を通過し、次いで、アノード集電体1250に隣接する近傍に到達する。
カソード1220に由来するリチウムイオンは、アノード集電体1250によって提供される電子と結合して、アノード集電体1250の上面にリチウム金属1270を形成する。リチウム金属1270は、細孔1245の下部においてアノード集電体1250から延在するが、アノード構造体1240における細孔1245の3D高表面積の完全な利点は、リチウムめっきがアノード集電体1250からのみ開始するため、完全には実現され得ない。リチウムめっきは、十分なリチウムイオンがカソードによって提供される場合、例えば、
図4に示されるように、細孔全体がめっきされたリチウムで充填されるまで、以前にめっきされたリチウム上にめっきすることによって継続することができる。しかしながら、リチウムめっきの任意の点において、めっきのための活性領域は、平面構造、すなわちアノードの幾何学的領域よりも小さい。
【0108】
したがって、充電中に達成され得るリチウム金属めっきのための3D高表面積を完全に利用するために、電子伝導性ネットワーク1380が、
図18Aおよび
図18Bに示される3D多孔質アノード構造体1340の細孔1345の側壁表面1360上に組み込まれる。
図18Aおよび
図18Bに示すように、電子伝導性材料を細孔1345の側壁表面1360上に導入して、電子伝導性ネットワーク1380を形成する。電子伝導性ネットワーク1380は、アノード集電体1350と電子的に接続される。
図17Aおよび
図17Bの側壁1260に関する上記の説明と同様に、細孔1345の側壁1360は、アノード構造体1340内の固体イオン伝導性電解質ストランド1332の間に延在する細孔1345に当接する固体イオン伝導性電解質ストランド1332の縁部によって形成される。
図面は、アノード構造体1340を通って垂直にのみ延在する細孔1345を示すが、細孔1345の一部は、アノード構造体1340を通って水平にも延在し、
図18Aおよび
図18Bに示される細孔1345の垂直部分を接続して、垂直および水平方向の両方に延在する細孔を有する多孔質3Dアノード構造体を形成することができることを理解されたい。
【0109】
より具体的には、
図18Aは、様々な実装態様による固体電池1300の断面図であり、これは、
図18Bの拡大図に示すように、電子伝導性ネットワーク1380の追加を除いて、
図17Aに示す固体電池1200と同様である。特に、固体電池1300は、固体電解質1332のストランドおよび細孔1345を含む3D多孔質アノード構造体1340を含む。多孔質アノード構造体1340は、アノード集電体1350と接触している。
【0110】
固体電池1300はまた、カソード構造体1320に接続されたカソード集電体1310と、カソード構造体1320を多孔質アノード構造体1340から分離するセラミック電解質セパレータ1330とを含む。電子伝導性ネットワーク1380は、細孔1345の側壁表面1360上をアノード集電体1350から電解質セパレータ1330まで延在する。
電子伝導性ネットワーク1380は、
図19Aおよび
図19Bに示されるように、リチウムイオン電池1300の充電中に、アノード集電体1350から細孔1345の側壁面1360に沿って電子を伝導し、固体イオン伝導性電解質ストランド1332からのリチウムイオンと結合して、アノード集電体1350の上面上だけでなく、細孔1345の側壁1360上にもリチウム金属1470または別のアノード活物質を形成するように構成されている。アノード構造体1340の電解質セパレータ1330および固体電解質1332のストランドは、リチウムランタンジルコニウム酸化物 (LLZO) であってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0111】
図19Aおよび
図19Bを参照すると、充電中、リチウムイオンは、カソード1320から移動し、セラミック電解質セパレータ1330、および細孔1345間のイオン伝導性電解質ストランド1332を通過し、電子伝導性ネットワーク1380に隣接する近傍に到達する。電子は、アノード集電体1350によって提供され、電子伝導性ネットワーク1380に伝達され、カソード1320からのリチウムイオンは、アノード集電体1350からの電子と結合して、リチウム金属1470を形成する。
アノード集電体1350からセラミック電解質セパレータ1330まで細孔1345の長さに延在する電子伝導性ネットワーク1380の存在は、リチウム金属1470がアノード集電体1350だけでなく、細孔1345の側壁表面1360にもめっきすることを可能にする。これは、細孔1345内のリチウム金属めっきのための有効表面積を大幅に増加させ、それによって、局所電流密度を大幅に低減させ、リチウムデンドライト形成およびバッテリ1300の短絡を回避する。
【0112】
上述のように、また、
図19Aおよび
図19Bに図示されるように、3D多孔質アノード1340の細孔1345は、バッテリの初期充電後、および後続の再充電動作中、リチウム金属1470で部分的に充填されることができる。別の実装では、
図20Aおよび
図20Bに図示されるように、3D多孔質アノード構造体1340の細孔1345は、バッテリ1300の初期充電または再充電後、リチウム金属1570で実質的に完全に充填されることができる。充電中に細孔1345がリチウム金属で部分的に充填されるか、または実質的に完全に充填されるかは、アノード1340の多孔率および厚さ、細孔の直径 (好ましくは約5μm以下) 、電子伝導性ネットワーク1380の厚さ (好ましくは約1μm以下) 、充電動作の長さ、充電動作中に印加される電圧、カソード1320によって提供されるリチウムイオンからの電荷量、アノード1340内の細孔1345とイオン伝導性電解質ストランド1332との間のサイズ関係、ならびにアノード集電体1350によって提供される電子からの電荷量を含む、種々の要因によって制御することができる。
いくつかの実施形態では、細孔のそれぞれの直径は、100μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは10μm未満、最も好ましくは5μm未満である。
図19Aおよび
図19Bのリチウム金属1470、または
図20Aおよび20Bのリチウム金属1570、または他のアノード活物質を構築する充電動作は、リチウムイオン電池1300の初期充電、またはその後の再充電動作であり得ることに留意されたい。
【0113】
図21は、様々な実装態様による、
図18A~
図20Bの固体電池1300の上面図である。特に、
図21は、固体電池1300の3つの側面上の封止壁1610と、固体電池1300の第4の側面上の開口部1620とを有する構成を示し、開口部1620は、以下でさらに詳細に説明するように、
図18A~
図20Bに示す細孔1345の形成後に電子伝導性ネットワーク1380を形成するために電子伝導性材料を注入するための多孔質アノード1340へのアクセスを可能にする。
【0114】
図18A~
図20Bに示される電子伝導性ネットワーク1380は、炭素材料、金属、半導体、伝導性ポリマー、電子伝導性セラミックまたはそれらの組み合わせから選択される電子伝導性材料を含むことができる。電子伝導性ネットワーク1380の厚さは、0.01μm~1μmの範囲であり得る。
好ましくは、電子伝導性ネットワーク1380の厚さは、細孔1345の側壁表面1360に沿って構築され得るか、または細孔1345を充填し得るリチウム金属1470の量の減少を回避するために、細孔1345の幅の1/10以下であるべきである。いくつかの実装態様では、電子伝導性ネットワーク1380は、例えば30%~70%の表面部分被覆率で細孔1345の側壁面1360を部分的に被覆して、細孔1345の側壁面1360上にウェブまたはメッシュ型構造を形成し、電解質セパレータ1330および固体イオン伝導性電解質ストランド1332を介してカソード構造体1320によって提供されるリチウムイオンへのアクセスを可能にすることができる。いくつかの実装態様では、電子伝導性ネットワーク1380は、電子伝導性材料の連続層であってもよく、電子伝導性材料は、炭素、リチウム金属またはリチウム金属合金を含む。
【0115】
好ましい実装態様では、電子伝導性ネットワーク1380は、第1の前駆体材料、具体的には、3D多孔質アノード構造体1340を作製するために使用されるアノード前駆体材料に組み込まれた、電子伝導性コーティングを形成する前駆体材料から形成される。例えば、前駆体材料は、細孔が第2の前駆体材料およびセラミック電解質前駆体材料の焼結中に形成されるとき、細孔1345の側壁表面1360上の電子伝導性コーティングに変換される。
【0116】
一例では、3D多孔質アノード構造体1340は、粉末堆積プロセスとそれに続く焼結によって形成される。固体電解質材料の粉末を、犠牲細孔形成材料の粉末および電子伝導性材料前駆体の粉末と混合する。混合粉末を薄層として堆積させ、バインダージェット印刷によってバインダー材料で固定する。
次いで、堆積された粉末構造体は焼結され、固体電解質材料は高密度化されてイオン伝導性ネットワーク (すなわち、イオン伝導性電解質ストランド1332) を形成し、犠牲細孔形成材料はガス化されて、細孔1345を形成する構造体から除去され、電子伝導性材料前駆体は分解されて電子伝導性ネットワーク1380を形成する。
【0117】
別の例では、3D多孔質アノード構造体1340は、スラリーまたはペーストのコーティングプロセスと、それに続く焼結とによって形成される。スラリーまたはペーストは、固体電解質材料の粉末を、犠牲細孔形成材料の粉末、電子伝導性材料前駆体、バインダーおよび溶媒と混合することによって配合される。スラリーまたはペーストは、テープキャスティング、スクリーン印刷、スロットダイコーティングまたはインクジェット印刷などのコーティング技術によって薄層として堆積される。
次いで、コーティングされた構造体は、乾燥および焼結され、固体電解質材料は、高密度化されて、多孔質アノード1340内にイオン伝導性ネットワーク (すなわち、イオン伝導性電解質ストランド1332) を形成し、犠牲細孔形成材料は、ガス化され、細孔1345を形成する構造体から除去され、電子伝導性材料前駆体は、分解されて、電子伝導性ネットワーク1380を形成する。
【0118】
3D多孔質アノード1340の細孔サイズ、形状および多孔率は、細孔形成材料のサイズ、形状および濃度によって制御することができる。細孔形成材料は、有機もしくは無機材料またはそれらの組み合わせであり得る。電子伝導性材料前駆体は、リチウム、炭素、銅、ニッケル、銀、およびケイ素の元素、またはそれらの組み合わせからなる有機材料もしくは無機材料またはそれらの組み合わせであり得る。
特定の実装態様では、金属炭酸塩は、細孔形成材料および電子伝導性材料前駆体の両方として使用することができる。
【0119】
いくつかの実装態様では、電子伝導性ネットワークは、多孔質アノード構造体1340が形成された後に組み込まれる。この場合、3D多孔質アノード1340は、
図21に示すように、封止壁のない少なくとも1つの開放された側面を有し、封止壁1610は、電池1300の3つの側面に設けられ、開口部1620は、電子伝導性材料の注入のために設けられて、細孔1345の側壁面1360上に電子伝導性ネットワーク1380を形成する。開口部1620は、電子伝導性材料の多孔質構造体への注入を可能にする。
【0120】
いくつかの実装態様では、電子伝導性ネットワーク1380は、電子伝導性材料の注入を容易にするための一種のシード材料として動作する前駆体から形成される。例えば、アノード前駆体材料で作製された構造体の焼結中に細孔が形成されると、シード材料として機能する電子伝導性材料が、細孔1345の側壁表面1360上に形成される。
焼結後、電子伝導性材料は、3D多孔質アノードに注入され、電子伝導性材料は、注入後に細孔の側壁表面上のシード材料からコーティングされ、コーティングは、リチウムイオン電池の充電中に電解質セパレータからのリチウムイオンと結合して細孔内にリチウムを形成するために、細孔の側壁表面に沿ってアノード集電体から電子を伝導するように構成される。
【0121】
特定の実装態様では、リチウム金属が注入されて電子伝導性ネットワーク1380を形成し、リチウムの薄層が細孔1345の表面にコーティングされる。
【0122】
別の実装態様では、炭素が注入されて電子伝導性ネットワーク1380を形成し、炭素の薄層が細孔1345の表面にコーティングされる。炭素は、炭素分散体または炭化水素前駆体から導入され得る。
【0123】
他の実装態様では、銅を注入して電子伝導性ネットワークを形成することができ、銅の薄層を細孔の表面にコーティングすることができる。銅は、例えば、有機金属前駆体から、又は化学蒸着 (CVD) 法、原子層堆積 (ALD) 法および無電解めっき法を介して導入することができる。
【0124】
別の実装態様では、銀が注入されて電子伝導性ネットワーク1380を形成し、銀の薄層が細孔1345の表面にコーティングされる。銀は、例えば、有機金属前駆体から、又は化学蒸着(CVD) 法、原子層堆積 (ALD) 法、および無電解めっき法を介して導入することができる。
【0125】
さらなる実装態様では、ニッケルが注入されて電子伝導性ネットワーク1380を形成し、ニッケルの薄層が細孔1345の表面にコーティングされる。ニッケルは、例えば、有機金属前駆体から、又は化学蒸着(CVD) 法、原子層堆積 (ALD) 法および無電解めっき法を介して導入することができる。
【0126】
以下では、本出願のさらなる特徴、特性、および利点を、項目によって説明する。
【0127】
項目1:第1の集電体に接続された第1の電極と、第2の集電体に接続された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極とを相互接続するセパレータであって、固体電解質を含むセパレータと、前記第1の電極に形成された複数の第1の配向細孔であって、前記複数の第1の配向細孔は第1の電極材料を含み、前記複数の第1の配向細孔のそれぞれは、所望の方向に沿って配向された第1の側壁を有する、複数の第1の配向細孔と、前記第2の電極に形成された複数の第2の配向細孔であって、前記複数の第2の配向細孔は前記第1の電極材料とは異なる第2の電極材料を含み、前記複数の第2の配向細孔のそれぞれは、前記所望の方向に沿って配向された第2の側壁を有する、複数の第2の配向細孔と、を含み、前記第1の配向細孔および前記第2の配向細孔のうちの少なくとも1つは、前記第1の配向細孔および前記第2の配向細孔のうちの前記少なくとも1つの側壁表面上で、前記第1の集電体および前記第2の集電体のうちの対応する1つから前記電解質セパレータまで延在する電子伝導性ネットワークを含み、前記第2の電極は、前記第1の電極を前記第2の電極内のカソード材料から隔離するように構成されたシールを含む充填開口部を更に含む、固体電気化学セル。
【0128】
項目2:カソード材料が、カソード受容空間内に位置する液体カソード材料を含むカソライトを含む、項目1に記載の固体電気化学セル。
【0129】
項目3:第1の電極は、第2の電極に含まれるカソード材料から第1の電極を隔離するように構成されたシールを含む充填開口部を含む、項目1又は2のいずれか1つの固体電気化学セル。
【0130】
項目4:カソード材料が、カソード受容空間内に位置する粉末カソード材料を含むカソライトを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0131】
項目5:前記第1および第2の配向細孔が均一に分布している、項目1~4のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0132】
項目6:複数の第1の配向細孔および複数の第2の配向細孔の各々は、セパレータの長手方向軸線に実質的に平行な底面を含み、その側壁は、長手方向軸線に実質的に垂直に配向されている、項目1~5のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0133】
項目7:第1の側壁および第2の側壁のうちの少なくとも一方の底部は、直角、直角とは異なる角度、および実質的に丸みを帯びた形状のうちの少なくとも1つである形状を有する、項目1~6のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0134】
項目8:第1の側壁および第2の側壁のうちの少なくとも1つ、並びに第1の配向細孔および第2の配向細孔のうちの少なくとも1つの底面上にコーティングを更に含む、項目1~7のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0135】
項目9:コーティングが湿潤剤を含む、項目1~8のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0136】
項目10:第1の電極材料および第2の電極材料が、溶融金属およびスラリーのうちの少なくとも1つを含む、項目1~9のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0137】
項目11:第1の電極材料が、リチウム、リチウム粉末、溶融リチウム、半液体リチウム、リチウムチタン酸化物 (LTO) 、ケイ素、酸化ケイ素、およびグラファイトのうちの少なくとも1つを含む、項目1~10のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0138】
項目12:リチウムは、第1の電極の複数の第1の配向細孔のそれぞれの体積の30%~60%を充填する、項目1~11のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0139】
項目13:第1の側壁の長さは、10μm~70μmの範囲である、項目1~12のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0140】
項目14:第2の電極材料が、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、およびリン酸鉄リチウムのうちの少なくとも1つのスラリーを含む、項目1~13のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0141】
項目15:スラリーは、第2の電極の複数の第2の配向細孔のそれぞれの容積を実質的に充填する、項目1~14のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0142】
項目16:第2の側壁の長さは、50μm~200μmの範囲である、項目1~15のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0143】
項目17:固体電解質は、セラミック材料のうちの1つを含む、項目1~16のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0144】
項目18:セラミック材料の厚さが10μm~100μmである、項目1~17のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0145】
項目19:コーティングが10 nm~100 nmの厚さを有する、項目1~18のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0146】
項目20:コーティングは、銀、シリカ、アルミナ、亜鉛および酸化亜鉛、並びにリン酸リチウムオキシナイトライドのうちの少なくとも1つを含む、項目1~19のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0147】
項目21:第1の配向細孔および第2の配向細孔のうちの少なくとも1つの幅が、10μm~100μmである、項目1~20のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0148】
項目22:セラミック材料は、リチウムランタンジルコニウム酸化物、リチウムアルミニウムゲルマニウムリン、およびリチウムアルミニウムチタンリンのうちの少なくとも1つを含む、項目1~21のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0149】
項目23:電子伝導性ネットワークが湿潤剤を含む、項目1~22のいずれか一項に記載の固体電気化学セル。
【0150】
項目24:固体電気化学セルを製造する方法であって、第1の集電体に接続された第1の電極を形成することと、第2の集電体に接続された第2の電極を形成することと、第1の電極と第2の電極とを分離し、長手方向軸線を有する固体電解質セパレータを形成することと、第1の電極に複数の第1の配向細孔を形成することであって、第1の配向細孔のそれぞれが第1の底面および第1の側壁を有し、第1の側壁が長手方向軸線に対して実質的に垂直な配向を有する、複数の第1の配向細孔を形成することと、第2の電極に複数の第2の配向細孔を形成することであって、第2の配向細孔のそれぞれが第2の底面および第2の側壁を有し、第2の側壁が長手方向軸線に対して第1の側壁と同じ配向を有する、複数の第2の配向細孔を形成することと、第1の配向細孔内に第1の電極材料を、第2の配向細孔内に第1の電極材料とは異なる第2の電極材料を提供することと、を含み、第1の配向細孔および第2の配向細孔の少なくともそれぞれが、第1の配向細孔および第2の配向細孔の側壁表面上に、第1の集電体および第2の集電体の対応する一方から電解質セパレータまで延在する電子伝導性ネットワークを含む、方法。
【0151】
項目25:複数の第1の配向細孔を形成すること、および、複数の第2の配向細孔を形成することのうちの少なくとも1つは、均一な多孔率を作り出すことを含む、項目24に記載の方法。
【0152】
項目26:第1の底面、第2の底面、第1の側壁および第2の側壁の少なくとも1つを湿潤剤でコーティングすることをさらに含む、項目24または25に記載の方法。
【0153】
項目27:第1の電極材料が溶融金属を含み、第2の電極材料が軟質電極スラリーを含む、項目24~26のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
項目28:溶融金属が溶融リチウムを含む、項目24~27のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
項目29:電子伝導性ネットワークが湿潤剤を含む、項目24~28のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
項目30:第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極とを分離し、長手方向軸線を有する電解質セパレータと、第1の集電体と、第2の集電体と、を含む、電気化学セル用の三次元多孔質電極を形成するための方法であって、第1および第2の電極のうちの少なくとも1つが、複数の配向細孔を含み、方法は、第1の前駆体材料と、第2の前駆体材料とを一緒に混合して混合物を形成するステップと、前記混合物を、前記複数の配向細孔が形成される層に堆積させるステップと、前記混合物を取り囲む前記層に固体電解質材料を堆積させるステップと、前記混合物および前記固体電解質材料を焼結して、前記集電体から前記電解質セパレータまで前記電極を通って延在するイオン伝導性電解質ストランドを有する前記複数の配向細孔であって、前記集電体から前記電解質セパレータまで延在する前記配向細孔と、前記集電体から前記電解質セパレータまで前記細孔の側壁面上に延在する電子伝導性ネットワークとを形成するステップとを含み、前記第2の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を使用する前記焼結による前記配向細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、前記第1の前駆体材料は、前記第2の前駆体材料を焼結することによって形成された前記配向細孔の前記側壁面上に前記電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である、方法。
【0157】
項目31:カソードと、アノードと、電解質セパレータと、アノード上に位置するアノード集電体とを含む電気化学セルであって、アノードが、アノード集電体から電解質セパレータまでアノードを通って延在するイオン伝導性電解質ストランドと、アノード集電体から電解質セパレータまでアノードを通って延在する細孔と、アノード集電体から電解質セパレータまで細孔の側壁表面上に延在する電子伝導性ネットワークとを含む三次元 (3D) 多孔質アノードである、電気化学セル。
【0158】
項目32:電子伝導性ネットワークが、細孔の側壁表面の部分的被覆を含む、項目31に記載の電気化学セル。
【0159】
項目33:部分的被覆が、細孔の側壁表面の合計の30~70%の範囲である、項目31又は32に記載の電気化学セル。
【0160】
項目34:電子伝導性ネットワークの厚さが0.01 μm~1.0 μmである、項目31~33のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0161】
項目35:細孔のそれぞれの直径が、100μm未満、好ましくは50μm未満、10μm未満、より好ましくは5μm未満である、項目31~34のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0162】
項目36:電子伝導性ネットワークが、金属、炭素材料、半導体材料、伝導性ポリマー、および電子伝導性セラミック、又はこれらの組み合わせからなる群からの少なくとも1つの材料から構成される、項目31~35のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0163】
項目37:電子伝導性ネットワークがリチウムを含む、項目31~36のいずれかに記載の電気化学セル。
【0164】
項目38:電子伝導性ネットワークは、カーボンブラック、活性炭、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、およびカーボンナノチューブ、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む炭素材料から構成される、項目31~37のいずれかに記載の電気化学セル。
【0165】
項目39:電子伝導性ネットワークが、銀、銅、およびニッケル、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料から構成される、項目31~88のいずれかに記載の電気化学セル。
【0166】
項目40:電子伝導性ネットワークは、細孔を生成するために使用される犠牲細孔形成材料に組み込まれた電子伝導性材料前駆体から形成された材料から構成され、犠牲細孔形成材料は、細孔の形成中に分解するように構成され、電子伝導性材料前駆体は、細孔の側壁表面をコーティングして、細孔の形成の完了時に電子伝導性ネットワークを形成するように構成される、項目31~39のいずれかに記載の電気化学セル。
【0167】
項目41:リチウムイオン電池を形成するために使用されるように構成され、電子伝導性ネットワークが、リチウムイオン電池の充電中に、細孔の側壁表面でイオン伝導性電解質ストランドからのリチウムイオンと結合して細孔内にリチウムを形成するために、細孔の側壁表面に沿ってアノード集電体から電子を伝導する材料から構成される、項目31~40のいずれかに記載の電気化学セル。
【0168】
項目42:カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に位置するセラミック材料からなる電解質セパレータと、アノード集電体とを含む電気化学セルのための三次元 (3D) 多孔質アノードを形成するための方法であって、3D多孔質アノードを含むアノードは、アノード集電体と電解質セパレータとの間に位置し、方法は、第1の前駆体材料と第2の前駆体材料とを一緒に混合して混合物を形成することと、アノードが形成される層として混合物を堆積させることと、混合物を焼結して、アノード集電体から電解質セパレータまでアノードを通って延在するイオン伝導性電解質ストランドと、アノード集電体から電解質セパレータまでアノードを通って延在する細孔と、アノード集電体から電解質セパレータまで細孔の側壁表面上に延在する電子伝導性ネットワークとを有する3D多孔質アノードを形成することと、を含み、第2の前駆体材料は、第2の前駆体材料を使用する焼結による細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、第1の前駆体材料は、第2の前駆体材料を焼結することによって形成された細孔の側壁表面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である、方法。
【0169】
項目43:第1および第2の前駆体材料の混合物は、粉末堆積混合物を含む、項目42に記載の方法。
【0170】
項目44:第2の前駆体材料が、固体電解質材料の粉末および犠牲細孔形成材料の粉末からなる、項目42または43に記載の方法。
【0171】
項目45:粉末堆積混合物が、焼結前にバインダージェット印刷操作によってバインダー材料で固定される、項目42~44のいずれかに記載の方法。
【0172】
項目46:第1および第2の前駆体材料の混合物が、固体電解質材料の粉末、犠牲細孔形成材料の粉末、電子伝導性材料前駆体、バインダーおよび溶媒を含むスラリーを含む、項目42~45のいずれかに記載の方法。
【0173】
項目47:テープキャスティング、スクリーン印刷、スロットダイコーティング、およびインクジェット印刷からなる群から選択されるコーティング技術によってスラリーを堆積させることを更に含む、項目42~46のいずれか一項に記載の方法。
【0174】
項目48:第1の前駆体材料が金属炭酸塩を含む、項目42~47のいずれかに記載の方法。
【0175】
項目49:電気化学セルが、リチウムイオン電池を形成するために使用されるように構成され、電子伝導性ネットワークが、細孔の側壁面上でアノード集電体から電解質セパレータまで延在し、リチウムイオン電池の充電中に、細孔の側壁面においてイオン伝導性電解質ストランドからのリチウムイオンと結合して細孔内にリチウムを形成するように、細孔の側壁面に沿ってアノード集電体から電子を伝導する材料から構成される、項目42~48のいずれか一項に記載の方法。
【0176】
項目50:第1の前駆体材料が、有機材料若しくは無機材料又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの材料を含む、項目42~49のいずれか一項に記載の方法。
【0177】
項目51:カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に位置するセラミック材料からなる電解質セパレータと、アノード集電体とを含む電気化学セルのための3D多孔質アノードを形成するための方法であって、3次元 (3D) 多孔質アノードを含むアノードは、アノード集電体と電解質セパレータとの間に位置し、方法は、固体電解質材料の粉末と犠牲細孔形成材料の粉末との混合物を、アノードが形成される層として堆積させることと、混合物を焼結して細孔を形成して3D多孔質アノードを形成することと、焼結後に3D多孔質アノードに電子伝導性材料を注入して、細孔の側壁表面をコーティングすることと、を含み、電気化学セルは、リチウムイオン電池を形成するために使用されるように構成され、電子伝導性材料は、リチウムイオン電池の充電中に、細孔の側壁表面でイオン伝導性電解質ストランドからのリチウムイオンと結合して細孔内にリチウムを形成するように、細孔の側壁表面に沿ってアノード集電体から電子を伝導する材料からなる、方法。
【0178】
項目52:第2の前駆体材料のサイズ、形状、および濃度のうちの1つ以上を制御することによって、3D多孔質アノードのサイズ、形状、および多孔率を制御することを更に含む、項目42~50のいずれか一項に記載の方法。
【0179】
項目53:細孔の直径が10μm未満である、項目42~50または52のいずれか一項に記載の方法。
【0180】
項目54:細孔の直径が5μm未満である、項目42~50、52または53のいずれか一項に記載の方法。
【0181】
項目55:第2の前駆体材料が、有機材料、無機材料、又はこれらの組み合わせを含む、項目42~50又は52~54のいずれか一項に記載の方法。
【0182】
項目56:第1の前駆体が、リチウム、炭素、銅、ニッケル、銀、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの元素からなる、有機材料若しくは無機材料又はこれらの組み合わせを含む、項目42~50又は52~55のいずれか一項に記載の方法。
【0183】
項目57:第2の前駆体材料が金属炭酸塩を含む、項目42~50又は52~56のいずれか一項に記載の方法。
【0184】
項目58:アノードは、アノードをカソードから気密封止する境界を含む、項目42~50または52~57のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
項目59:カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に位置するセラミック材料からなる電解質セパレータと、カソード集電体とを含む電気化学セルであって、カソードは、カソード集電体と電解質セパレータとの間に位置し、カソードは、カソード集電体からカソードを通って電解質セパレータまで延在するイオン伝導性電解質ストランドと、カソード集電体からカソードを通って電解質セパレータまで延在する細孔と、細孔の側壁表面上でカソード集電体から電解質セパレータまで延在する電子伝導性ネットワークとを含む三次元 (3D) 多孔質カソード構造体を含み、カソードは、カソード受容空間内に位置する液体カソライト材料を含むカソライトを含む、電気化学セル。
【0186】
項目60:カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に位置する、セラミック材料を含む電解質セパレータと、カソード集電体とを含む電気化学セルであって、カソードは、カソード集電体と電解質セパレータとの間に位置し、カソードは、カソード集電体からカソードを通って電解質セパレータまで延在するイオン伝導性電解質ストランドと、カソード集電体からカソードを通って電解質セパレータまで延在する細孔と、細孔の側壁表面上でカソード集電体から電解質セパレータまで延在する電子伝導性ネットワークとを含む三次元 (3D) 多孔質カソード構造体を含み、カソードは、カソード受容空間内に位置する粉末カソライト材料を含むカソライトを含む、電気化学セル。
【0187】
項目61:電子伝導性ネットワークが、細孔の側壁表面を部分的に覆う、項目59または60に記載の電気化学セル。
【0188】
項目62:電子伝導性ネットワークが、細孔の側壁表面の合計の30~70%を部分的に覆う、項目59~61のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0189】
項目63:電子伝導性ネットワークの厚さが0.01μm~1.0μmであり、細孔のそれぞれの直径が100μm未満である、項目59~62のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0190】
項目64:細孔のそれぞれの直径が、好ましくは50μm未満、10μm未満、より好ましくは5μm未満である、項目59~63のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0191】
項目65:電子伝導性ネットワークが、金属、炭素材料、半導体材料、伝導性ポリマー、および電子伝導性セラミック、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料から構成される、項目59~64のいずれかに記載の電気化学セル。
【0192】
項目66:イオン伝導性電解質ストランドが、ホウ化物、炭化物、窒化物、リン化物、リン酸塩、硫化物、酸化物、セレン化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるリチウムイオン伝導性材料を含む、項目59~65のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0193】
項目67:電子伝導性ネットワークが、カーボンブラック、活性炭、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む炭素材料から構成される、項目59~66のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0194】
項目68:電子伝導性ネットワークが、銀、アルミニウム、およびニッケルからなる群から選択される少なくとも1つの材料から構成される、項目59~67のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0195】
項目69:電子伝導性ネットワークおよびイオン伝導性電解質ストランドは、電解質セパレータ上に形成された固体電解質材料中に細孔を生成するために使用される犠牲細孔形成材料に組み込まれた前駆体材料から形成され、犠牲細孔形成材料は、固体電解質材料中の細孔の形成中に分解するように構成され、前駆体材料は、細孔の側壁表面を電子伝導性ネットワークでコーティングし、細孔の形成の完了時に固体電解質材料を高密度化してイオン伝導性電解質ストランドを形成するように構成される、項目59~68のいずれかに記載の電気化学セル。
【0196】
項目70:細孔内に、イオン伝導性電解質ストランドおよび電子伝導性ネットワークと直接接触するカソード材料を更に含む、項目59~69のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0197】
項目71:カソード材料は、リチウムイオンが、電気化学セルの充電中に、細孔全体にわたってカソード活物質から放出されて、電解質ストランドを通って電解質セパレータに向かって移動し、電子が、電気化学セルの充電中に、細孔全体にわたってカソード材料から放出されて、電子伝導性ネットワークに移動する材料から構成される、項目59~70のいずれかに記載の電気化学セル。
【0198】
項目72:アノードは、密封された容積を含む、項目59~71のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0199】
項目73:アノードは、アノードを周囲環境から完全に封止するように構成された低多孔率境界を含む、項目59~72のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0200】
項目74:アノードがアノード受容空間内に配置され、カソードがカソード受容空間内に配置され、アノード受容空間が封止され、カソード受容空間が部分的に封止されている、項目59~73のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0201】
項目75:カソード受容空間は、カソード受容空間に収容された液体カソライト材料を隔離するように構成されたシールを含む充填開口部を含む、項目59~74のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0202】
項目76:カソライトが、液体カソライト材料と固体カソライト材料との混合物を含む、項目59~75のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0203】
項目77:シールは、カソード受容空間からの圧力解放を提供するように構成されている、項目59~76のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0204】
項目78:カソード受容空間は、カソード受容空間に収容されたカソライト材料を隔離するように構成されたシールを含む充填開口部を含む、項目59~77のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0205】
項目79:細孔のそれぞれの直径が10μm未満である、項目59~78のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0206】
項目80:細孔のそれぞれの直径が5μm未満である、項目59~79のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0207】
項目81:アノードは、密封された容積を含む、項目59~80のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0208】
項目82:アノードは、アノードを周囲環境から完全に封止するように構成された低多孔率境界を含む、項目59~81のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0209】
項目83:アノードがアノード受容空間内に配置され、カソードがカソード受容空間内に配置され、アノード受容空間が封止され、カソード受容空間が部分的に封止されている、項目59~82のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0210】
項目84:カソード受容空間は、カソード受容空間に収容されたカソライト材料を隔離するように構成されたシールを含む充填開口部を含み、シールは、カソード受容空間からの圧力解放を提供するように構成されている、項目59~83のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0211】
項目85:カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に位置するセラミック材料からなる電解質セパレータと、カソード集電体とを含む電気化学セルのための3D多孔質カソード構造体を形成するための方法であって、3D多孔質カソード構造体を含むカソードは、カソード集電体と電解質セパレータとの間に位置し、方法は、第1の前駆体材料と第2の前駆体材料とを一緒に混合して混合物を形成することと、カソードが形成される層として混合物を堆積させることと、混合物を焼結して、カソード集電体から電解質セパレータまでカソードを通って延在するイオン伝導性電解質ストランドと、カソード集電体から電解質セパレータまでカソードを通って延在する細孔と、カソード集電体から電解質セパレータまで細孔の側壁表面上に延在する電子伝導性ネットワークとを有する3D多孔質カソード構造体を形成することと、を含み、第2の前駆体材料は、第2の前駆体材料を使用する焼結による細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、第1の前駆体材料は、第2の前駆体材料を焼結することによって形成された細孔の側壁表面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である、方法。
【0212】
項目86:第1および第2の前駆体材料の混合物は、粉末堆積混合物を含む、項目85に記載の方法。
【0213】
項目87:第2の前駆体材料が、犠牲細孔形成材料の粉末からなる、項目85又は86に記載の方法。
【0214】
項目88:粉末堆積混合物は、焼結前にバインダジェット印刷操作によってバインダ材料で固定される、項目85~87のいずれかに記載の方法。
【0215】
項目89:第1および第2の前駆体材料の混合物は、第1および第2の前駆体材料のための粉末と、バインダーと、溶媒とを含むスラリーを含む、項目85~88のいずれかに記載の方法。
【0216】
項目90:テープキャスティング、スクリーン印刷、スロットダイコーティング、およびインクジェット印刷からなる群から選択されるコーティング技術によってスラリーを堆積させることを更に含む、項目85~89のいずれか一項に記載の方法。
【0217】
項目91:第1の前駆体材料が金属炭酸塩を含む、項目85~90のいずれか一項に記載の方法。
【0218】
項目92:電気化学セルは、リチウムイオン電池を形成するために使用されるように構成され、電子伝導性ネットワークと直接接触して、細孔内にカソード材料を充填することをさらに含み、カソード材料は、リチウムイオンが、電気化学セルの充電中に、細孔全体にわたってカソード活物質から放出されて、電解質ストランドを通って電解質セパレータに向かって移動し、電子が、電気化学セルの充電中に、細孔全体にわたってカソード活物質から放出されて、電子伝導性ネットワークに移動する材料から構成される、項目85~91のいずれかに記載の方法。
【0219】
項目93:混合物は、焼結中に固体電解質材料を高密度化して、細孔の形成の完了時にイオン伝導性電解質ストランドを形成する材料からなる第3の前駆体材料を含む、項目85~92のいずれか一項に記載の方法。
【0220】
項目94:第1の前駆体材料は、有機材料若しくは無機材料又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの材料を含む、項目85~93のいずれか一項に記載の方法。
【0221】
項目95:第2の前駆体材料のサイズ、形状、および濃度のうちの1つ以上を制御することによって、3D多孔質カソードのサイズ、形状、および多孔率を制御することを更に含む、項目85~94のいずれか一項に記載の方法。
【0222】
項目96:細孔の直径が10μm未満である、項目85~95のいずれか一項に記載の方法。
【0223】
項目97:細孔の直径が5μm未満である、項目85~96のいずれか一項に記載の方法。
【0224】
項目98:第2の前駆体材料は、有機材料、無機材料、又はこれらの組み合わせを含む、項目85~97のいずれか一項に記載の方法。
【0225】
項目99:第1の前駆体は、炭素、ニッケル、銀、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素からなる有機材料若しくは無機材料又はこれらの組み合わせを含む、項目85~98のいずれか一項に記載の方法。
【0226】
項目100:第2の前駆体材料が金属炭酸塩を含む、項目85~99のいずれか一項に記載の方法。
【0227】
項目101:アノードはアノード受容空間内に配置され、カソードはカソード受容空間内に配置され、カソード受容空間は、カソード受容空間内に収容されたカソライト材料からアノードを隔離するように構成されたシールを含む充填開口部を含む、項目85~100のいずれか一項に記載の方法。
【0228】
項目102:シールは、カソード受容空間に圧力解放を提供するように構成されている、項目85~101のいずれか一項に記載の方法。
【0229】
項目103:カソライトは、充填開口部を通してカソード受容空間に充填された液体カソライト材料を含む、項目85~102のいずれか一項に記載の方法。
【0230】
項目104:カソライトは、カソード受容空間内に配置された粉末カソライト材料を含む、項目85~103のいずれか一項に記載の方法。
【0231】
項目105:電子伝導性ネットワークが、細孔の側壁表面上にウェブまたはメッシュ型構造を含む、項目85~104のいずれか一項に記載の方法。
【0232】
項目106:カソード、アノード、カソードとアノードとの間に位置するセラミック材料からなる電解質セパレータ、カソード集電体、およびアノード集電体を含む電気化学セルのための3D多孔質カソードおよびアノード構造体を形成するための方法であって、3D多孔質カソード構造体を含むカソードは、カソード集電体と電解質セパレータとの間に位置し、3D多孔質アノード構造体を含むアノードは、アノード集電体と電解質セパレータとの間に位置し、方法は、第1の前駆体材料および第2の前駆体材料を一緒に混合して混合物を形成することと、カソードおよびアノードが形成される層として混合物を堆積させることと、混合物を焼結して、カソード集電体から電解質セパレータまでカソードを通って延在するイオン伝導性電解質ストランド、アノード集電体から電解質セパレータまでアノードを通って延在するイオン伝導性電解質ストランド、カソード集電体から電解質セパレータまでカソードを通って延在する細孔、アノード集電体から電解質セパレータまでアノードを通って延在する細孔、カソード集電体から電解質セパレータまでカソードの細孔の側壁面上に延在する電子伝導性ネットワーク、およびアノード集電体から電解質セパレータまでアノードの細孔の側壁面上に延在する電子伝導性ネットワークを有する3D多孔質カソード構造体および3D多孔質アノード構造体を形成することと、を含み、第2の前駆体材料は、第2の前駆体材料を使用する焼結によるカソードおよびアノードの細孔の形成中に分解するように構成された犠牲材料であり、第1の前駆体材料は、第2の前駆体材料を焼結することによって形成されたカソードおよびアノードの細孔の側壁面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成する材料である、方法。
【0233】
項目107:混合物は、焼結中に固体電解質材料を高密度化して、細孔の形成の完了時にイオン伝導性電解質ストランドを形成する材料からなる第3の前駆体材料を含む、項目106に記載の方法。
【0234】
項目108:カソードが形成される層として堆積される混合物と、アノードが形成される層として堆積される混合物とが同じ組成物である、項目106または107に記載の方法。
【0235】
項目109:カソードが形成される層として堆積される混合物と、アノードが形成される層として堆積される混合物とが異なる組成物である、項目106~108のいずれか一項に記載の方法。
【0236】
項目110:カソードの細孔の側壁表面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される第1の前駆体材料と、アノードの細孔の側壁表面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される第1の前駆体材料とが、同じ組成物である、項目106~109のいずれか一項に記載の方法。
【0237】
項目111:カソードの細孔の側壁表面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される第1の前駆体材料と、アノードの細孔の側壁表面上に電子伝導性ネットワークのコーティングを形成するために使用される第1の前駆体材料とが、異なる組成物である、項目106~110のいずれか一項に記載の方法。
【0238】
項目112:カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に位置するセラミック材料からなる電解質セパレータと、カソード集電体とを含む電気化学セルのための3D多孔質カソード構造体を形成するための方法であって、3D多孔質カソード構造体を含むカソードは、カソード集電体と電解質セパレータとの間に位置し、方法は、固体電解質材料の粉末と、犠牲細孔形成材料の粉末と、固体電解質材料を高密度化するための前駆体の粉末との混合物を、カソードが形成される層として堆積させることと、混合物を焼結して、3D多孔質カソード構造体内にイオン伝導性ネットワークを有する3D多孔質カソード構造体を形成することと、焼結後に3D多孔質カソード構造体に電子伝導性材料を注入して、細孔の側壁表面をコーティングして、電子伝導性ネットワークを形成することと、電子伝導性材料による側壁のコーティング後に細孔内にカソード材料を形成することとを含み、前記電子伝導性ネットワークが、前記カソード材料から電子を伝導するように構成されている、方法。
【0239】
項目113:カソードは、カソード受容空間内に位置する液体カソライト材料を含むカソライトから構成される、項目31~41のいずれか1つに記載の電気化学セル。
【0240】
項目114:カソードは、カソード受容空間内に配置された粉末カソライト材料を含むカソライトから構成される、項目31~41または113のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0241】
項目115:アノードは、気密封止された容積を含む、項目31~41、113または114のいずれか1つに記載の電気化学セル。
【0242】
項目116:アノードは、アノードを周囲環境から完全に封止するように構成された低多孔率境界を含む、項目31~41または113~115のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0243】
項目117:アノードがアノード受容空間内に配置され、カソードがカソード受容空間内に配置され、アノード受容空間が封止され、カソード受容空間が部分的に封止されている、項目31~41または113~116のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0244】
項目118:カソード受容空間は、カソード受容空間に収容されたカソライト材料を隔離するように構成されたシールを含む充填開口部を含み、シールは、カソード受容空間に圧力解放を提供するように構成されている、項目31~41または113~117のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0245】
項目119:カソードは、カソード受容空間内に位置する液体カソライト材料を含むカソライトから構成される、項目31~41または113~118のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0246】
項目120:カソードは、カソード受容空間内に位置する粉末カソライト材料を含むカソライトから構成される、項目31~41または113~119のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0247】
項目121:電子伝導性ネットワークは、細孔の側壁表面上にウェブ又はメッシュ型構造を含む、項目31~41又は113~120のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【0248】
いくつかの実装態様が示され、説明されてきたが、そのより広い態様において本発明から逸脱することなく変更および修正が行われ得ることは、当業者には明らかであろう。
したがって、添付の特許請求の範囲における目的は、本発明の真の精神および範囲内に入るすべてのそのような変更および修正を包含することである。前述の説明および添付の図面に記載された事項は、限定としてではなく例示としてのみ提供される。本発明の実際の範囲は、先行技術に基づく適切な観点から見た場合に、以下の特許請求の範囲において定義されることが意図される。
【0249】
本明細書で使用される用語は、特定の実装態様を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。単数の表現「a」「an」および「the」は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。さらに、用語 「含む (including) 」 、 「含む (includes) 」 、 「有する (having) 」 、 「有する (has) 」 、 「有する (with) 」 、またはそれらの変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限りにおいて、そのような用語は、用語 「含む (comprising) 」 と同様に包括的であることが意図される。
【0250】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語 (技術用語および科学用語を含む) は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。また、一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されなければならず、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0251】
様々な実施形態が説明されてきたが、説明は、限定ではなく例示であることが意図されており、実施形態の範囲内にあるより多くの実施形態および実装態様が可能であることが理解される。特徴の多くの可能な組み合わせが添付の図面に示され、この詳細な説明で論じられているが、開示された特徴の多くの他の組み合わせが可能である。
任意の実施形態の任意の特徴は、具体的に制限されない限り、任意の他の実施形態における任意の他の特徴または要素と組み合わせて使用されてもよく、またはそれらの代わりに使用されてもよい。したがって、本開示において示され、かつ/または論じられる特徴のいずれも、任意の適切な組合せで一緒に実装され得ることが理解されよう。したがって、実装態様は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物を考慮することを除いて、限定されるべきではない。また、添付の特許請求の範囲内で様々な修正および変更を行うことができる。
【0252】
上記では、最良の形態および/または他の例であると考えられるものを説明したが、その中で様々な修正を行うことができ、本明細書で開示された主題は様々な形態および例で実施することができ、教示は多数の用途に適用することができ、そのうちのいくつかのみが本明細書で説明されていることが理解される。以下の特許請求の範囲によって、本教示の真の範囲内に入る任意のおよび全ての適用、修正および変形を請求することが意図される。
【0253】
特に明記しない限り、以下の特許請求の範囲を含む本明細書に記載されるすべての測定値、値、定格、位置、大きさ、サイズ、および他の仕様は、近似値であり、正確ではない。それらは、それらが関連する機能およびそれらが関係する技術分野において慣習的であるものと一致する妥当な範囲を有することが意図される。
【0254】
保護の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。その範囲は、本明細書および以後の出願経過に照らして解釈されるとき、特許請求の範囲で使用される言語の通常の意味と一致するほど広く、すべての構造的および機能的等価物を包含するように意図され、解釈されるべきである。
それにもかかわらず、特許請求の範囲のいずれも、特許法のセクション101、102、または103の要件を満たさない主題を包含することを意図しておらず、そのように解釈されるべきではない。そのような主題の任意の意図しない包含は、本明細書によって放棄される。
【0255】
すぐ上で述べた場合を除いて、述べられているか、または例示されているものは、それが特許請求の範囲に記載されているか否かにかかわらず、任意の構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、利点、または同等物の公衆への専用化をもたらすことを意図しておらず、またはそのように解釈されるべきではない。
【0256】
本明細書で使用される用語および表現は、特定の意味が本明細書に別途記載されている場合を除いて、それらの対応するそれぞれの調査および研究の分野に関してそのような用語および表現に与えられる通常の意味を有することが理解されるであろう。
【0257】
第1および第2などの関係用語は、1つのエンティティまたはアクションを別のエンティティまたはアクションと区別するためだけに使用することができ、そのようなエンティティまたはアクション間の実際のそのような関係または順序を必ずしも必要とすることも意味することもない。用語 「含む (comprises) 」 、 「含んでいる(comprising) 」 、またはそれらの任意の他の変形は、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていないか、またはそのようなプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含み得るように、非排他的な包含を網羅することが意図される。
「1つの (a) 」 または 「1つの (an) 」 が先行する要素は、さらなる制約なしに、要素を含むプロセス、方法、物品、または装置における追加の同一の要素の存在を除外しない。
【0258】
方法は、特定の順序で実行される特定の動作を含むものとして図示および説明されているが、これは例示のためであることが理解される。様々な実装態様では、いくつかの動作は、本開示の範囲から逸脱することなく、別の順序で実行され得る。他の実装態様では、やはり本出願の範囲から逸脱することなく、様々な動作のサブセットのみが必要とされ得る。
【0259】
本開示の要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認することを可能にするために提供される。要約書は、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないという理解の下で提出される。
加えて、前述の詳細な説明では、本開示を合理化する目的で、様々な例において様々な特徴が一緒にグループ化されていることが分かる。この開示の方法は、請求項が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の主題は、単一の開示された例のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、以下の特許請求の範囲は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個に請求される主題として独立している。
【国際調査報告】