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特表2024-541973ヒトヒアルロニダーゼPH20及び薬物を含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ヒトヒアルロニダーゼPH20及び薬物を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241106BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 9/26 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241106BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20241106BHJP
   C12N 15/56 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K38/04
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K35/12
A61K9/08
A61K47/42
A61K47/34
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/40
A61K39/395 V
C12N9/26 Z
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
C12N15/56
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525296
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 KR2022016709
(87)【国際公開番号】W WO2023075506
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0146385
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】517432732
【氏名又は名称】アルテオジェン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】パク スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム ギュワン
(72)【発明者】
【氏名】ナム キソク
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヒュンナム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC26
4C076CC29
4C076DD26Z
4C076DD38Q
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD50Z
4C076DD51Q
4C076DD55Q
4C076DD57Q
4C076DD57Z
4C076DD60Q
4C076DD60Z
4C076DD66Q
4C076DD67Q
4C076EE23
4C076EE39Q
4C076EE41
4C076EE48
4C076FF61
4C076FF63
4C084AA01
4C084AA17
4C084BA41
4C084BA44
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA10
4C084ZB211
4C084ZC411
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA33
4C085BB42
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE05
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA10
4C086ZB21
4C086ZC41
4C087AA01
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA05
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA10
4C087ZB21
4C087ZC41
(57)【要約】
【課題】(a)薬物、(b)PH20又はその変異体、及び(c)ポロキサマー(poloxamer)系の界面活性剤を含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る医薬組成物に含まれるヒトPH20変異体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型ヒトPH20においてアルファヘリックス8配列(S347~C381)、及びアルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)から選ばれる1つ以上の部位におけるアミノ酸置換を含み、N末端及び/又はC末端の部分に位置しているアミノ酸が選択的に切断されることを特徴とする。また、本発明に係る医薬組成物には、薬学的に許容可能な添加剤、特に安定化剤がさらに含まれてよい。本発明に係る医薬組成物は、ヒトPH20又はその変異体の効果によって、併用する薬物の治療効果を極大化できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)薬物、(b)ヒアルロニダーゼ、及び(c)ポロキサマー(poloxamer)系界面活性剤を含む医薬組成物であって、
前記ヒアルロニダーゼは、配列番号1の配列を有する野生型PH20又はそのPH20変異体を含み、前記PH20変異体は、配列番号1の配列を有する野生型PH20において、T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、I361T、及びN363Gからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換を含み、選択的にN末端及び/又はC末端の切断を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
前記PH20変異体は、L354I及びN356Eからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記PH20変異体は、配列番号1の野生型PH20のアルファヘリックス部位及びその連結部位に該当する部位からなる群から選ばれる1つ以上の部位において1つ以上のアミノ酸残基の置換をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記配列番号1の野生型PH20のアルファヘリックス部位は、アルファヘリックス8部位(S347~C381)であり、その連結部位は、アルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)であることを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記配列番号1の野生型PH20のアルファヘリックス部位及びその連結部位に該当する部位は、T341~N363、T341~I361、L342~I361、S343~I361、I344~I361、M345~I361、又はM345~N363であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記配列番号1の野生型PH20のアルファヘリックス8部位(S347~C381)及びアルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)からなる群から選ばれる1つ以上の部位が、Hyal1の対応する部位のアミノ酸配列の一部のアミノ酸残基で置換されていることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記PH20変異体は、L354I及び/又はN356Eのアミノ酸残基の置換を含み、
さらに、T341、L342、S343、I344、M345、S347、M348、K349、L352、L353、D355、E359、I361、及びN363からなる群から選ばれる1つ以上の位置におけるアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記PH20変異体は、L354I及び/又はN356Eのアミノ酸残基の置換を含み、
さらに、T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、D355K、E359D、I361T、及びN363Gからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記PH20変異体は、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361Tのアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記PH20変異体はさらに、T341S、L342W、S343E、I344N、及びN363Gからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記PH20変異体は、次に構成された群から選ばれるいずれか1つのアミノ酸置換を含むことを特徴とする、請求項10に記載の医薬組成物:
(a)T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T;
(b)L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T;
(c)M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T;
(d)M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、I361T、及びN363G;
(e)I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T;及び
(f)S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T
【請求項12】
前記野生型PH20又はPH20変異体はさらに、C末端及びN末端のいずれか1つ以上の末端において一部のアミノ酸残基が欠失していることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記野生型PH20又はPH20変異体は、N末端のM1~P42からなる群から選ばれるアミノ酸残基の前で切断されて一部のアミノ酸残基が欠失していることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記野生型PH20又はPH20変異体は、N末端のL36、N37、F38、R39、A40、P41、又はP42の残基の前で切断されて一部のアミノ酸残基が欠失していることを特徴とする、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記野生型PH20又はPH20変異体は、C末端のV455~L509からなる群から選ばれるアミノ酸残基の次で切断されて一部のアミノ酸残基が欠失していることを特徴とする、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記野生型PH20又はPH20変異体は、C末端のV455~S490からなる群から選ばれるアミノ酸残基の後で切断されて一部のアミノ酸残基が欠失していることを特徴とする、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記野生型PH20又はPH20変異体は、C末端のV455、C458、D461、C464、I465、D466、A467、F468、K470、P471、P472、M473、E474、T475、E476、P478、I480、Y482、A484、P486、T488、又はS490の残基の後で切断されて一部のアミノ酸残基が欠失していることを特徴とする、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記野生型PH20又はPH20変異体は、N末端にヒトヒアルロニダーゼ-1(Hyal1)、ヒト成長ホルモン、又はヒト血清アルブミン由来のシグナルペプチドをさらに含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記PH20変異体は、配列番号5~配列番号50のアミノ酸配列からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記PH20変異体は、配列番号44の配列を有することを特徴とする、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記薬物は、タンパク質医薬品(protein drugs)、抗体(antibody)、小分子化合物(small molecules)、アプタマー(aptamer)、RNAi、アンチセンス(antisense)、又は細胞治療剤であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記薬物は、抗体、水溶性受容体、又は水溶性受容体とFcとの融合タンパク質であることを特徴とする、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗体は、4-1BB、5T4、インテグリン(integrin)、アクチビン(Activin)、アミロイドベータ(amyloid beta)、アンジオポエチン(アンジオポエチン1又は2)、アンジオポエチン類似物質3、B細胞成熟化抗原(B cell maturation antigen,BCMA)、B細胞活性因子(B-cell activating factor,BAFF)、B7-H3、補体5(complement5)、CCR4、CCR5、CCL11、CD2、CD3、CD4、CD6、CD11a、CD16A、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD28、CD30、CD32B、CD33、CD38、CD40、CD45、CD46、CD47、CD52、CD56、CD62、CD70、CD73、CD74、CD79b、CD80、CD105、CD123、CD154、CD166、CD262、CD278、CD319、CD326、胎児性癌抗原(Carcinoembryonic antigen,CEA)、CGRP、クラウジン18(Claudin-18)、c-Met、CSF-1、CSF-1受容体、CTLA4、DLL3、EGF受容体、血友病因子、Fc受容体、FGF23、葉酸(folate)受容体、GD2、グルココルチコイド誘導TNF受容体(Glucocorticoid-induced TNF receptor,GITR)、グリピカン3(Glypican 3)、GM-CSF、HER2、HER3、肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor,HGF)、インターフェロン受容体、インターフェロンガンマ、IgE、IGF-1受容体、インターロイキン1、インターロイキン2受容体、インターロイキン4、インターロイキン4受容体、インターロイキン5、インターロイキン5受容体、インターロイキン6、インターロイキン6受容体、インターロイキン8、インターロイキン12/23、インターロイキン13、インターロイキン17A、インターロイキン17受容体A、インターロイキン23、インターロイキン31受容体、インターロイキン36受容体、リンパ球活性化遺伝子3(Lymphocyte-activation gene 3,LAG3)、リシル酸化酵素類似体2(Lysyl oxidase homolog 2,LOXL2)、メソテリン(Mesothelin)、ムチン1(Mucin-1)、ムチン16(Mucin-16)、ネクチン4(Netin-4)、神経成長因子(Nerve Growth Factor,NGF)、OX40、前駆タンパク質転換酵素類型9(Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin type 9,PCSK9)、PD-1、PD-L1、ホスホリパーゼC(Phospholipase C)、RANKL(Receptor activator of nuclear factors kappa B ligand)、チロシン-タンパク質キナーゼ膜貫通受容体(Tyrosine-protein kinase transmembrane receptor,ROR1)、シアル酸結合Ig様レクチン15(Sialic acid binding ig-like lectin 15,Siglec-15)、転換成長因子ベータ(Transforming growth factor beta,TGFβ)、TIGIT(T-cell innunoreceptor with immunoglobulin and ITIM domain)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有物質3(T cell immunoglobulin and mucin-domain containing-3,Tim-3)、組織因子(Tissue factor)、組織因子経路抑制剤(Tissue factor pathway inhibitor,TFPI)、TORP-2、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor,TNF)、胸腺間質リンホポイエチン(Thymic stromal lymphopoietin,TSLB)、大食細胞集落刺激因子(Colony stimulating factor 1 receptor,CSF1R)、血管内皮細胞成長因子(Vascular endothelial growth factor,VEGF)、VEGF受容体、及びvWF(von Willebrand Factor)からなる群から選ばれる1つ以上の抗原と結合することを特徴とする、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記抗体は、ADG 106.EU101、LVGN6051、ウレルマブ(Urelumab)、ウトミルマブ(Utomilumab)、ベブテロビマブ(Bebtelovimab)、アデュカヌマブ(Aducanumab)、バピネオズマブ(Bapinezumab)、クレネズマブ(Crenezumab)、ドナネマブ(Donanemab)、ガンテネルマブ(Gantenerumab)、レカネマブ(Lecanemab)、ソラネズマブ(Solanezumab)、ネスバクマブ(Nesvacumabum)、エノブリツムマブ(Enoblituzumab)、オムブルタマブ(Omburtamab)、ベリムマブ(Belimumab)、イアナルマブ(Ianalumab)、タバルマブ(Tabalumab)、ベルチリムマブ(Bertilimumab)、モガムリズマブ(Mogamulizumab)、レロンリマブ(Leronlimab)、シピリズマブ(Siplizumab)、フォラルマブ(Foralumab)、ムロモナブ-CD3(Muromonab-CD3)、オテリクシズマブ(Otelixizumab)、テプリズマブ(Teplizumab)、イバリズマブ(Ibalizumab)、トレガリズマブ(Tregalizumab)、ザノリムマブ(Zanolimumab)、イトリズマブ(Itolizumab)、エパリズマブ(Efalizumab)、イネビリズマブ(Inebilizumab)、タファシタマブ(Tafasitamab)、トシツモマブ(Tositumomab)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)、オファツムマブ(Ofatumutumab)、ウブリツキシマブ(Ublituximab)、ベルツズマブ(Veltuzumab)、エプラツズマブ(Epratuzumab)、バシリキシマブ(Basiliximab)、ダクリズマブ(Daclizumab)、バルリルマブ(Varlilumab)、ルリズマブペゴル(Lulizumab pegol)、イラツムマブ(Iratumumab)、BI-1206、リンツズマブ(Lintuzumab)、ダラツムマブ(Daratumumab)、フェルザルタマブ(Felzartamab)、GEN3014、イサツキシマブ(Isatuximab)、メザギタマブ(Mezagitamab)、CDX-1140、ブレセルマブ(Bleselumab)、ダセツズマブ(Dacetuzumab)、イスカリマブ(Iscalimab)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ミタザリマブ(Mitazalimab)、SEA-CD40、ソチガリマブ(Sotigalimab)、SAR441344、テゴプルバート(Tegoprubart)、ダピロリズマブペゴル(Dapirolizumab pegol)、I-131 アパミスタマブ(I-131-Apamistamab)、AO-176、リグファリマブ(Ligufalimab)、マグロリマブ(Magrolimab)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、クリザンリズマブ(Crizanlizumab)、インクラクマブ(Inclacumab)、クサツズマブ(Cusatuzumab)、オレクルマブ(Oleclumab)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、ガリキシマブ(Galiximab)、カロツキシマブ(Carotuximab)、アデカツムマブ(Adecatumumab)、エプチネズマブ(Eptinezumab)、エレヌマブ(Erenumab)、フレマネズマブ(Fremanezumab)、ガルカネズマブ(Galcanezumab)、TST001、ZL-1211、ゾルベツキシマブ(Zolbetuximab)、オナルツズマブ(Onartuzumab)、エクリズマブ(Eculizumab)、ポゼリマブ(Pozelimab)、ラブリズマブ(Ravulizumab)、ラクノツズマブ(Lacnotuzumab)、PD-0360324、AMB-051、アクサチリマブ(Axatilimab)、カビラリズマブ(Cabiralizumab)、エマクツズマブ(Emactuzumab)、BA3071、イピリムマブ(Ipilimumab)、クアボンリマブ(Quavonlimab)、トレメリムマブ(Tremelimumab)、ザリフレリマブ(Zalifrelimab)、セツキシマブ(Cetuximab)、デパツキシズマブ(Depatuxizumab)、フツキシマブ(Futuximab)、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、マツズムマブ(Matuzumab)、モドツキシマブ(Modotuximab)、ネシツムマブ(Necitumumab)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、トムゾツキシマブ(Tomuzotuximab)、ザルツムマブ(Zalutumumab)、MK-2060、バトクリマブ(Batoclimab)、ニポカリマブ(Nipocalimab)、ロザノリキシズマブ(Rozanolixizumab)、ブロスマブ(Burosumab)、ファーレツズマブ(Farletuzumab)、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ジヌツキシマブベータ(Dinutuximab beta)、ナキシタマブ(Naxitamab)、BMS-986156、ラギフィリマブ(Ragifilimab)、ギムシルマブ(Gimsilumab)、レンジルマブ(Lenzilumab)、マブリリムマブ(Mavrilimumab)、ナミルマブ(Namilumab)、オチリマブ(Otilima)、プロンマルリマブ(Plonmarlimab)、コドリツズマブ(Codrituzumab)、マルゲツキシマブ(Margetuximab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、HMBD-001、パトリツマブ(Patritumab)、セリバンツマブ(Seribantumab)、デュリゴツズマブ(Duligotuzumab)、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)、リロツズマブ(Rilotumumab)、アロムフィリマブ(Alomfilimab)、アニフロルマブ(Anifrolumab)、エマパルマブ(Emapalumab)、FB825、リゲリズマブ(Ligelizumab)、オマリズマブ(Omalizumab)、シクスツムマブ(Cixutumumab)、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、フィギツムマブ(Figitumumab)、ガニツマブ(Ganitumab)、テプロツムマム(Teprotumumab)、ベルメキマブ(Bermekimab)、カナキヌマブ(Canakinumab)、ゲボキズマブ(Gevokizumab)、ブリアキヌマブ(Briakinumab)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、アンルキンズマブ(Anrukinzumab)、センダキマブ(Cendakimab)、レブリキズマブ(Lebrikizumab)、トラロキヌマブ(Tralokinumab)、ブロダルマブ(Brodalumab)、ビメキズマブ(Bimekizumab)、イクセキズマブ(Ixekizumab)、セクキヌマブ(Secukinumab)、ブラジクマブ(Brazikumab)、グセルクマブ(Guselkumab)、ミリキズマブ(Mirikizumab)、リサンキズマブ(Risankizumab)、チルドラキズマブ(Tildrakizumab)、ネモリズマブ(Nemolizumab)、イムシドリマブ(Imsidolimab)、スペソリマブ(Spesolimab)、パスコリズマブ(Pascolizumab)、CBP201、デュピルマブ(Dupilumab)、デペモキマブ(Depemokimab)、メポリズマブ(Mepolizumab)、レスリズマブ(Reslizumab)、ベンラリズマブ(Benralizumab)、クラザキズマブ(Clazakizumab)、オロキズマブ(Olokizumab)、シルツキシマブ(Siltuximab)、シルクマブ(Sirukumab)、ジルチベキマブ(Ziltivekimab)、レビリマブ(Levilimab)、サリルマブ(Sarilumab)、サトラリズマブ(Sarilumab)、トシリズマブ(Tocilizumab)、HuMax-IL8、アビツズマブ(Abituzumab)、ファベゼリマブ(Favezelimab)、フィアンリマブ(Fianlimab)、GSK2831781、イエラミリマブ(Ieramilimab)、INCAGN02385、レラツリマブ(Relatlimab)、シムツズマブ(Simtuzumab)、アバゴボマブ(Abagovomab)、オレゴボマブ(Oregovomab)、タネズマブ(Tanezumab)、BMS-986178、GSK3174998、INCAGN01949、イブキソリマブ(Ivuxolimab)、ロカチンリマブ(Rocatinlimab)、タボリマブ(Tavolimab)、テラゾルリマブ(Telazorlimab)、ボンレロリズマブ(Vonlerolizumab)、アリロクマブ(Alirocumab)、ボコシズマブ(Bococizumab)、エブロヌシマブ(Ebronucimab)、エボロクマブ(Evolocumab)、フロボシマブ(Frovocimab)、オンゲリシマブ(Ongericimab)、タフォレシマブ(Tafolecimab)、ドスタルリマブ(Dostarlimab)、バルスチリマブ(Balstilimab)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、ゲプタノリマブ(Geptanolimab)、MEDI0680、ニボルマブ(Nivolumab)、ベムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ペンプリマブ(Penpulimab)、ピジリズマブ(Pidilizumab)、プロルゴリマブ(Prolgolimab)、レチファンリマブ(Retifanlimab)、ササンリマブ(Sasanlimab)、セルプルリマブ(Serplulimab)、シンチリマブ(Sintilimab)、スパルタリズマブ(Spartalizumab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、トリパリマブ(Toripalimab)、エザベンリマブ(Ezabenlimab)、ジムベレリマブ(Zimberelimab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、コシベリマブ(Cosibelimab)、スゲマリマブ(Sugemalimab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、IMC-001、エンバフォリマブ(Envafolimab)、スブラトクスマブ(Suvratoxumab)、デノスマブ(Denosumab)、ジロベルタマブ(Zilovertamab)、NC318、エロツズマブ(Elotuzumab)、NIS793、BMS-986207、ドムバナリマブ(Domvanalimab)、EOS-448、エチギリマブ(Etigilimab)、オシペルリマブ (Ociperlimab)、チラゴルマブ(Tiragolumab)、ビボストリマブ (Vibostolimab)、スルゼビシリマブ(Surzebiclimab)、コポリマブ(Cobolimab)、サバトリマブ(Sabatolimab)、TQB2618、コンシズマブ(Concizumab)、マルスタシマブ(Marstacimab)、アダリムマブ(Adalimumab)、ゴリムマブ(Golimumab)、インフリキシマブ(Infliximab)、セトルリズマブペゴル(Certolizumab pegol)、コナツムマブ(Conatumumab)、ティガツズマブ(Tigatuzumab)、テゼペルマブ(Tezepelumab)、ガチポツズマブ(Gatipotuzumab)、カビラリズマブ(Cabiralizumab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ブロルシズマブ(Bro
lucizumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、オリンバシマブ(Olinvacimab)、イクルクマブ(Icrucumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、カプラシズマブ(Caplacizumab)、アブリルマブ(Abrilumab)、エトロリズマブ(Etrolizumab)、ベドリズマブ(Vedolizumab)、インテツムマブ(Intetumumab)、ナタリズマブ(Natalizumab)、DSP107、RO7122290、シンレバフスプアルファ(Cinrebafusp alfa)、GEN1042、ロジバフスプアルファ(Rozibafusp alfa)、GEN1044、オブリンダタマブ(Obrindatamab)、GEN1047、エルラナタマブ(Elranatamab)、リンボセルタマブ(Linvoseltamab),テクリスタマブ(Teclistamab)、エプコリタマブ(Epcoritamab)、グロフィタマブ(Glofitamab)、モスネツズマブ(Mosunetuzumab)、オドロネクスタマブ(Odronextamab)、フロテツズマブ(Flotetuzumab)、ビベコタマブ(Vibecotamab)、カツマキソマブ(Catumaxomab)、シビサタマブ(Cibisatamab)、TAK-186、タルクエタマブ(Talquetamab)、ウバマタマブ(Ubamatamab)、NVG-111、エムフィザタマブ(Emfizatamab)、HPN536、AFM13、ブリナツモマブ(Blinatumomab)、ISB1442、CPO107、AFM24、アミバタマブ(Amivantamab)、MCLA-129、SI-B001、エミシズマブ(Emicizumab)、Mim8、ゼノクツズマブ(Zenocutuzumab)、ザニダタマブ(Zanidatamab)、チブリズマブ(Tibulizumab)、GI-101、ボバリリズマブ(Vobarilizumab)、REGN5668、HX009、カドニリマブ(Cadonilimab)、ブダリマブ(Vudalimab)、EMB-02、RO7247669、テボテリマブ(Tebotelimab)、IBI318、AZD2936、AZD7789、RO7121661、イボネスシマブ(Ivonescimab)、IBI322、ES101、GEN1046、PRS-344、エルフォンリリマブ(Erfonrilimab)、FS118、ビントラフスプアルファ(Bintrafusp alfa)、HB0036、HLX301、NM21-1480、オゾラリズマブ(Ozoralizumab)、バヌシズマブ(Vanucizumab)、ナビシキシズマブ(Navicixizumab)、IBI302、ナプツモマブエスタフェナトクス(Naptumomab estafenatox)、ベランタマブマフォドチン(Belantamab mafodotin)、DS-7300、MGC018、ピベキマブスニリン(Pivekimab sunirine)、プラルザタマブラブタンシン(Praluzatamab ravtansine)、コルツキシマブラブタンシン(Coltuximab ravtansine)、デニンツズマブマフォドチン(Denintuzumab mafodotin)、ロンカスツキシマブテシリン(Loncastuximab tesirine)、イブリツモマブチウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)、イノツズマブオゾガミシン(Inotuzumab ozogamicin)、エプラツズマブシステシリン(Epratuzumab-cys-tesirine)、モキセツモマブパスドトクス(Moxetumomab pasudotox)、ブレンツキシマブベドチン(Brentuximab vedotin)、ゲムツズマブオゾガミシ(Gemtuzumab ozogamicin)、バダスツキシマブタリリン(Vadastuximab talirine)、STI-6129、FOR46、ロルボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ポラツズマブベドチン(Polatuzumab vedotin)、ツサミタマブラブタンシン(Tusamitamab ravtansine)、テリソツズマブベドチン(Telisotuzumab vedotin)、ロバルピツズマブテシリン(Rovalpituzumab tesirine)、デパツキシズマブマフォドチン(Depatuxizumab mafodotin)、ファルレツズマブエクテリブリン(Farletuzumab ecteribulin)、ミルベツキシマブソラブタンシン(Mirvetuximab soravtansine)、ARX788、トラスツズマブデルクステカン(Trastuzumab deruxtecan)、トラスツズマブデュオカルマジン(Trastuzumab duocarmazine)、A166、トラスツズマブエムタンシン(Trastuzumab emtansine)、DP303c、MRG002、BDC-1001、SHR-A1811、ディシタマブベドチン(Disitamab vedotin)、ペルツズマブジュボトリモド(Pertuzumab zuvotolimod)、パトリツマブデルクステカン(Patritumab Deruxtecan)、アネツマブラブタンシン(Anetumab ravtansine)、BMS-986148、エンフォルツマブベドチン(Enfortumab vedotin)、NBE-002、MRG004、ABBV-3373、サシツズマブゴビテカン(Sacituzumab Govitecan)からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記水溶性受容体又は水溶性受容体とFcとの融合タンパク質に含まれる水溶性受容体は、TNF-α水溶性受容体、VEGF水溶性受容体、CTLA-4、インターロイキン1水溶性受容体、及びLFA3水溶性受容体からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記水溶性受容体とFcとの融合タンパク質は、エタネルセプト(Etanercept)、アフリベルセプト(Aflibercept)、コンベルセプト(Conbercept)、OPT-302、アバタセプト(Abatacept)、ベラタセプト(Belatacept)、リロナセプト(Rilonacept)、インバキセプト(Inbakicept)、アレファセプト(Alefacept)、エボルパセプト(Evorpacept)、オントルパセプト(Ontorpacept)、TTI-622、ソタテルセプト(Sotatercept)、ダランテルセプト(Dalantercept)、アカジコルセプト(Acazicolcept)、及びダゾダリベプ(Dazodalibep)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
ヒアルロニダーゼ及びポロキサマー(poloxamer)系界面活性剤を含む医薬組成物。
【請求項28】
前記ポロキサマー系界面活性剤は、ポロキサマー188であることを特徴とする、請求項1又は27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記ポロキサマー系界面活性剤は、0.001%~1.5%(w/v)含まれることを特徴とする、請求項1又は27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
緩衝剤及び安定化剤からなる群から選ばれる1つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記緩衝剤は、リンゴ酸塩(malate)、ギ酸塩(formate)、クエン酸塩(citrate)、酢酸塩(acetate)、プロピオン酸塩(propionate)、ピリジン(pyridine)、ピペラジン(piperazine)、カコジル酸(cacodylate)、コハク酸(succinate)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid,MES)、ヒスチジン(histidine)、トリス(Tris)、ビス-トリス(bis-Tris)、リン酸塩(phosphate)、エタノールアミン(ethanolamine)、炭酸塩(carbonate)、2-エタンスルホン酸(piperazine-N,N’-bis(2-ethanesulfonic acid),PIPES)、イミダゾール(imidazole)、ビス-トリスプロパン(BIS-TRIS propane)、BES(N,N-bis(2-hydroxyethyl)-2-aminoethanesulfonic acid)、MOPS(3-(N-morpholino)propanesulfonic acid)、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonic acid)、ピロリン酸塩(pyrophosphate)、及びトリエタノールアミン(triethanolamine)からなる群から選ばれる1種以上の緩衝剤であり;
前記安定化剤は、炭水化物、糖類又はそれらの水和物、糖アルコール類又はそれらの水和物、及びアミノ酸からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記炭水化物、糖類又は糖アルコール類は、トレハロース又はその水和物、スクロース、サッカリン、グリセロール、エリストール、トレイトール、キシリトール、アラビトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ポリグリシトール、シクロデキストリン(cyclodextrin)、ヒドロオキシプロピルシクロデキストリン(Hydroxypropyl Beta-cyclodextrin)、及びグルコースからなる群から選ばれる1種以上であり、
前記アミノ酸は、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、リジン、シリルリジン、ロイシン、メチオニン、バリン、セリン、セレノメチオニン、シトルリン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、オルニチン、イソロイシン、タウリン、テアニン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ピロリシン、ヒスチジン、及びアラニンからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
50~350mg/mLの抗体、好ましくは抗HER2抗体又は免疫チェックポイント抗体、100~20,000units/mLのPH20変異体、0.001%~1.5%(w/v)のポロキサマー系界面活性剤、pH 5.5±2.0を提供する0.001~200mMのヒスチジン緩衝液、及び10~400mMのα,α-トレハロースを含み、選択的に1~50mMのメチオニンをさらに含むことを特徴とする、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項34】
120±18mg/mLの抗HER2抗体又は免疫チェックポイント抗体、1,500~12,000units/mLのPH20変異体、0.1%~0.5%(w/v)のポロキサマー系界面活性剤、pH5.5±2.0を提供する10~30mMヒスチジン緩衝液、180~230mM α,α-トレハロースを含み、選択的に8~15mMのメチオニンをさらに含むことを特徴とする、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
40±2℃の条件下で、7日経過後に残存酵素活性が20%以上であることを特徴とする、請求項1~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む皮下投与用剤形。
【請求項37】
追加の希釈過程無しで直ちに投与可能な(ready-to-injection)形態であることを特徴とする、請求項36に記載の皮下投与用剤形。
【請求項38】
プレフィルドシリンジ(pre-filled syringe)、ガラスアンプル、プラスチック容器、ウェアラブルデバイス(Wearable device)、又はオートインジェクター(Auto-injector)に含まれて提供されることを特徴とする、請求項37に記載の皮下投与用剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)PH20又はその変異体と1つ以上の薬物を含む医薬組成物及びこれを用いた疾病の治療方法に関し、前記組成物にはポロキサマー(poloxamer)系界面活性剤を含むことを特徴とする。
【0002】
本発明に係る医薬組成物は、様々な疾病の治療のために使用可能であり、好ましくは、皮下投与(subcutaneous injection)用途に使用されてよい。
【背景技術】
【0003】
高用量又は多量投与が必要な薬物、特に抗体医薬品などは一般に静脈注射で投与されるが、注射時間に90分以上がかかる他、静脈注射のための調製作業もさらに伴われるため、患者及び医療スタッフの両者にとって非常に不便であり、追加コストがかかる問題点がある。これに対し、皮下注射は、即刻投与が可能である利点があるが、静脈注射に比べて吸収率が低く、吸収速度が遅いため、注射液量3~5mL以上では注射部位に膨潤及び疼痛を誘発することがある。このため、タンパク質治療剤の皮下注射は2mL以下の少量の溶液注射に限って適用されるのが一般的である。しかし、ヒアルロニダーゼを治療薬物と共に皮下投与(subcutaneous administration又はsubcutaneous injection)すれば、ヒアルロニダーゼの作用によって、細胞外基質に分布するヒアルロン酸が加水分解されるため、皮下部の粘性が減少し、物質透過性が増加し、よって、高用量及び多量の医薬品を体内に容易に伝達することができる。
【0004】
ヒトには、Hyal1、Hyal2、Hyal3、Hyal4、HyalPS1及びPH20/SPAM1のように6種のヒアルロニダーゼ遺伝子が存在する。Hyal1とHyal2は大部分の組織に発現し、PH20/SPAM1(以下、PH20)は精子の細胞膜及び先体(acrosome)膜に発現する。HyalPS1は偽遺伝子(pseudogene)であって、発現しない。PH20は、ヒアルロン酸の構成糖であるN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸間のβ-1,4結合を切断する酵素(EC3.2.1.35)である。ヒトヒアルロニダーゼPH20は、最適pHが5.5であるが、pH 7~8条件においても一部の活性を示すが、Hyal1を含む他のヒトヒアルロニダーゼは、最適pHが3~4であり、pH 7~8条件では活性が非常に弱い。人の皮下部位は約pH 7.4程度の中性であるため、多種のヒアルロニダーゼの中でもPH20が臨床で多用されている。PH20が臨床で使用される例には、抗体治療剤の皮下注射、眼科手術時の眼球弛緩剤及び麻酔注射添加剤、腫瘍細胞細胞外基質のヒアルロン酸を加水分解して抗癌治療剤の腫瘍細胞接近性を高めるための用途、及び組織内に過多に存在する体液及び血液の再吸収を促進するための用途などがある。
【0005】
一方、現在商業的に多く使用されているPH20は、牛や羊の睾丸から抽出した形態である。例えば、アンファダーゼ(Amphadase,ウシヒアルロニダーゼ)とビトラーゼ(Vitrase,ヒツジヒアルロニダーゼ)などがある。
【0006】
ヒトPH20の組換えタンパク質は、酵母(P.pastoris)、DS-2昆虫細胞、動物細胞などから発現したものが報告されている(Chen et al.,2016,Hofinger et al.,2007)。昆虫細胞と酵母から生産された組換えPH20タンパク質は、タンパク質翻訳後修飾過程においてN-糖化の様相がヒトPH20と異なる。
【0007】
ヒトPH20を用いて様々な治療用医薬品を皮下注射(subcutaneous injection)剤形の形態で開発しようとする研究が行われているが、ヒトPH20自体の安定性が低い問題は依然として解決されずにいる。
【0008】
このような技術的な背景下で、本発明の発明者らは、野生型ヒアルロニダーゼPH20のアミノ酸配列において、アルファヘリックス8部位(S347~C381)、及びアルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)に1つ以上のアミノ酸置換を含み、PH20のN末端及び/又はC末端の部分に位置しているアミノ酸の一部が切断されたヒトPH20変異体が非常に優れた酵素活性及び熱安定性を有することを確認し、特許出願したことがある(PCT/KR2019/009215号)。
【0009】
さらに、本出願の発明者らは、薬物、好ましくは抗体医薬品、具体的には高用量の抗HER2抗体又は免疫チェックポイント抗体を含む医薬組成物(pharmaceutical composition)又は剤形(formulation)にPH20又はその変異体が適用されてよく、特に、前記組成物又は剤形にポロキサマー系の界面活性剤が含まれる場合に、抗体医薬品などの薬物及びPH20又はその変異体の活性が非常に安定して長期間維持され得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、薬物と共に、PH20又はその変異体及びポロキサマー(poloxamer)系界面活性剤を含むこと特徴とし、薬物とPH20又はその変異体の熱安定性及び活性が長期間持続され得る新しい医薬組成物、特に皮下投与用途に使用可能な医薬組成物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、本発明に係る医薬組成物を治療が必要な対象に投与することを特徴とする疾病の治療方法を提供することである。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(a)薬物、(b)ヒアルロニダーゼ、及び(c)ポロキサマー(poloxamer)系界面活性剤を含む医薬組成物であって、前記ヒアルロニダーゼは、配列番号1の配列を有する野生型PH20又はその変異体を含むことを特徴とする医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明において、前記ヒアルロニダーゼは、ヒアルロニダーゼPH20、特にヒトPH20又はその変異体であることが好ましいが、これに限定されず、前記PH20変異体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型ヒトPH20において、T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、I361T、及びN363Gからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とし、さらに、アルファヘリックス8配列(S347~C381)及び/又はアルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)から選ばれる1つ以上の部位におけるアミノ酸置換を含んでよく、前記PH20又はその変異体は、選択的に、N末端及び/又はC末端の部分に位置しているアミノ酸残基の一部が切断されたことを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記医薬組成物中に含まれたヒアルロニダーゼは、苛酷条件下でも活性が長期間維持されることを特徴とし、具体的には、40±2℃の条件下で、7日経過後にも残存酵素活性が20%以上であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る医薬組成物には、薬学的に許容可能な添加剤、具体的には緩衝剤及び安定化剤からなる群から選ばれる1つ以上がさらに含まれてよい。
【0016】
本発明に係る医薬組成物は、皮下投与のための注射剤形の形態で使用されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】界面活性剤としてポロキサマーを使用した場合とポリソルベートを使用した場合である剤形1、2、3、4、5に対するヒアルロニダーゼ酵素活性の変化を示す図である。
図2】剤形8の長期安定性試験結果を示す図である。
図3】剤形9、10、11に対するヒアルロニダーゼ酵素活性の変化を示す図である。図3のAは剤形9-1、9-2、9-3、9-4に対するものであり、図3のBは剤形10-1、10-2、10-3、10-4に対するものであり、図3のCは剤形11-1、11-2、11-3、11-4に対するものである。
図4】剤形12-1、12-2、12-3、12-4に対するヒアルロニダーゼ酵素活性の変化を示す図である。
図5】剤形13-1、13-2、13-3、13-4に対するヒアルロニダーゼ酵素活性の変化を示す図である。
図6】剤形14-1、14-2、14-3、14-4に対するヒアルロニダーゼ酵素活性の変化を示す図である。
図7】剤形15-1、15-2、15-3、15-4に対するヒアルロニダーゼ酵素活性の変化を示す図である。
図8】剤形16-1、16-2に対するヒアルロニダーゼ酵素活性の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に断らない限り、本明細書で使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われる命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常使われるものである。
【0019】
一実施例において、本発明は、(a)薬物、(b)ヒアルロニダーゼ、及び(c)ポロキサマー(poloxamer)系界面活性剤を含む医薬組成物に関する。
【0020】
本発明において、前記ヒアルロニダーゼは、ヒト又は動物由来のものを全て含む概念で使われ、ヒトヒアルロニダーゼPH20又はその変異体が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明に係る医薬組成物は、疾病の予防又は治療の用途に使用されてよく、好ましくは、皮下投与用途に使用されることを特徴とする。
【0022】
特に、本発明において、前記医薬組成物中に含まれたヒアルロニダーゼは、苛酷条件下でも活性が長期間維持されることを特徴とし、具体的には、40±2℃の条件下で、7日経過後にも残存酵素活性が20%以上であることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る医薬組成物に含まれるヒトPH20の変異体は、野生型PH20(配列番号1のアミノ酸配列を有する。)、好ましくは、成熟した野生型PH20のアミノ酸配列(配列番号1のアミノ酸配列のうちL36~S490からなる配列を有する。)のうち、アルファヘリックス部位及び/又はその連結部位に該当する部位、好ましくは、アルファヘリックス8部位(S347~C381)、及び/又はアルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)、より好ましくは、T341~N363の間のアミノ酸部位、最も好ましくは、T341~I361、L342~I361、S343~I361、I344~I361、M345~I361、又はM345~N363に該当するアミノ酸部位において一部のアミノ酸残基が置換されたことを特徴とする。
【0024】
本発明において、「成熟した野生型PH20」は、配列番号1の野生型PH20のアミノ酸配列において、シグナルペプチドであるM1~T35及びPH20の実質的な機能とは関係のないA491~L509が欠失している、配列番号1のL36~S490のアミノ酸残基からなるタンパク質を意味する。
【0025】
【表1】
【0026】
本発明において、「PH20変異体」とは、野生型ヒトPH20の配列において一部のアミノ酸残基の変異、好ましくはアミノ酸残基の置換を含むものだけでなく、このようなアミノ酸残基の置換と共に、N末端及び/又はC末端における一部のアミノ酸残基の欠失が起きたものも含む概念で使われ、「PH20変異体又はその切片」という表現と実質的に同じ概念で使われる。
【0027】
本発明の発明者らは、以前の研究から、ヒトPH20のアルファヘリックス8部位と、アルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位のアミノ酸配列を、親水性の大きいHyal1のアルファヘリックス8部位と、アルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位のアミノ酸配列で一部置換すれば、中性pHでの酵素活性とタンパク質凝集温度(aggregation temperature,Tagg.)が増加するという実験結果に基づいて、野生型PH20に比べて酵素活性及び熱安定性が増加した新しいPH20変異体又はその切片を提供できることを究明したことがある。
【0028】
これにより、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体は、野生型PH20(配列番号1のアミノ酸配列を有する。)、好ましくは成熟した野生型PH20のアミノ酸配列(配列番号1のアミノ酸配列のうちL36~S490からなる配列を有する。)において、T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、I361T、及びN363Gからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換、より好ましくは、S343E、M345T、K349E、L353A、L354I、N356E、及びI361Tからなる群から選ばれる1つ以上の変異、好ましくはアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とし、最も好ましくは、L354I及びN356Eからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とし、選択的にN末端及び/又はC末端の切断を含むことを特徴とする。
【0029】
他の側面において、本発明に係るPH20変異体はさらに、配列番号1の野生型PH20のアミノ酸配列のアルファヘリックス部位及び/又はその連結部位に該当する部位、好ましくはアルファヘリックス8部位(S347~C381)及び/又はアルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)、より好ましくはT341~N363、T341~I361、L342~I361、S343~I361、I344~I361、M345~I361、又はM345~N363に該当するアミノ酸部位において1つ以上のアミノ酸残基が置換されたことを特徴とする。
【0030】
特に、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体は、前記野生型PH20、好ましくは成熟した野生型PH20のアルファヘリックス8部位(S347~C381)及び/又は、アルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)が、配列番号51の配列を有するHyal1の対応する部位(表2及び表3参照)のアミノ酸配列中の一部のアミノ酸残基で置換されてよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
より具体的には、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体又はその切片は、野生型PH20、好ましくは成熟した野生型PH20のアミノ酸配列において、L354I及び/又はN356Eのアミノ酸残基の置換を含み、
【0034】
さらに、T341~N363の間における1つ以上の位置、特に、T341、L342、S343、I344、M345、S347、M348、K349、L352、L353、D355、E359、I361、及びN363からなる群から選ばれる1つ以上の位置におけるアミノ酸残基の置換を含むことが好ましいが、これに限定されるものではなく、
【0035】
より好ましくは、T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、D355K、E359D、I361T、及びN363Gからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換をさらに含むことを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0036】
好ましくは、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体又はその切片は、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361Tのアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とし、
【0037】
さらに、T341S、L342W、S343E、I344N、及びN363Gからなる群から選ばれる1つ以上のアミノ酸残基の置換を含むことを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0038】
より好ましくは、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体又はその切片は、次に構成された群から選ばれるいずれか1つの置換を含んでよいが、これに限定されるものではない。
(a)T341S、L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T;
(b)L342W、S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T;
(c)M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T;
(d)M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、I361T、及びN363G’
(e)I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T;及び
(f)S343E、I344N、M345T、S347T、M348K、K349E、L352Q、L353A、L354I、D355K、N356E、E359D、及びI361T
【0039】
本発明において、「S347」のように1文字(one letter)のアミノ酸残基名と数字が併記された表現は、配列番号1によるアミノ酸配列において各位置でのアミノ酸残基を意味する。
【0040】
例えば、「S347」は、配列番号1のアミノ酸配列において347番目の位置でのアミノ酸残基がセリンであることを意味する。また、「S347T」は、配列番号1の347番目のセリンがトレオニンで置換されたものであることを意味する。
【0041】
本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体は、特定アミノ酸残基位置において、アミノ酸残基が保存的置換された変異体も含む意味で解釈される。
【0042】
本明細書において「保存的置換」とは、1個以上のアミノ酸を当該PH20変異体の生物学的又は生化学的機能の損失を引き起こさない類似の生化学的特性を有するアミノ酸で置換することを含むPH20変異体の修飾を意味する。
【0043】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で代替させる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基の部類は当該技術分野に規定されており、よく知られている。これらの部類は、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、帯電されていない極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐した側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0044】
本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体は、保存的アミノ酸置換を有しても依然として活性を保有できることが予想される。
【0045】
また、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体又はその切片は、本発明に係るPH20変異体又はその切片と実質的に同じ機能及び/又は効果を有し、80%又は85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上のアミノ酸配列相同性を有するPH20変異体又はその切片も含む意味で解釈される。
【0046】
本発明に係るPH20変異体は、成熟した野生型PH20に比べて動物細胞において発現がより増加し、タンパク質折りたたみ速度も増加して熱安定性が増加する効果を示し、さらには、熱安定性が増加するにもかかわらず、それらの酵素活性は、成熟した野生型PH20に比べてより増加又は類似していた。
【0047】
一方、成熟した野生型PH20のS490などのC末端部アミノ酸の一部がさらに切断されると酵素活性が減少することが知られているが、本発明に係るPH20変異体は、成熟した野生型PH20のC末端部がさらに切断された配列を有するにもかかわらず、成熟した野生型PH20に比べて熱安定性が増加しており、また酵素活性も増加又は類似していたし、また、成熟した野生型PH20のN末端アミノ酸が5個まで切断された配列を有するにもかかわらず、酵素活性を維持し、N末端のP41残基から始まってタンパク質発現及び酵素活性に重要な役割を担うことを示した。
【0048】
これにより、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体は、野生型PH20のアルファヘリックス8部位(S347~C381)、及び/又はアルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位(A333~R346)における一部のアミノ酸残基の置換に加え、さらに、C末端及び/又はN末端における一部のアミノ酸残基が欠失していることを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0049】
一側面において、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20又はPH20変異体は、配列番号1のアミノ酸配列N末端のM1~P42からなる群から選ばれるアミノ酸残基の前、好ましくは、L36、N37、F38、R39、A40、P41、又はP42のアミノ酸残基の前で切断が起き、N末端において一部のアミノ酸残基が欠失している、及び/又はC末端のV455~W509からなる群から選ばれるアミノ酸残基の後、好ましくは、V455~S490からなる群から選ばれるアミノ酸残基、最も好ましくは、V455、C458、D461、C464、I465、D466、A467、F468、K470、P471、P472、M473、E474、T475、E476、P478、I480、Y482、A484、P486、T488、又はS490のアミノ酸残基の後で切断が起き、C末端において一部のアミノ酸残基が欠失していることを特徴とする。
【0050】
前記N末端のL36、N37、F38、R39、A40、P41又はP42の前で切断が起きるという表現は、それぞれ、配列番号1の配列においてM1~L36の直前のアミノ酸残基であるT35まで、M1~N37の直前のアミノ酸残基であるL36まで、M1~F38の直前のアミノ酸残基であるN37まで、M1~R39の直前のアミノ酸残基であるF38まで、M1~A40の直前のアミノ酸残基であるR39まで、M1~P41の直前のアミノ酸残基であるA40まで、M1~P42の直前のアミノ酸残基であるP41まで、が切断されて除去されたことを意味する。ただし、前記配列番号1のN末端M1の前で切断が起きたという意味は、何らのN末端における切断も起きていないことを意味する。
【0051】
また、C末端のV455、C458、D461、C464、I465、D466、A467、F468、K470、P471、P472、M473、E474、T475、E476、P478、I480、Y482、A484、P486、T488、又はS490の後で切断が起きたという表現は、それぞれ、配列番号1の配列において上記のV455、C458、D461、C464、I465、D466、A467、F468、K470、P472、M473、E474、T475、E476、P478、I480、Y482、A484、P486、T488、又はS490の次のアミノ酸残基から切断され始めて除去されたことを意味する。例えば、S490の次で切断が起きたという意味は、S490とA491との間で切断が起きたことを意味する。
【0052】
好ましくは、本発明に係る医薬組成物に含まれるヒトPH20変異体は、配列番号5~配列番号50のアミノ酸配列からなる群から選ばれてよく、より好ましくは、配列番号44のアミノ酸配列を有してよいが、これに限定されるものではない。本発明に係る具体的実施例において作製したPH20変異体で置換又は切断されたアミノ酸の配列は、表4に記載の通りである。。
【0053】
【表4】
【0054】
一方、先行研究において、野生型ヒトPH20は、C末端に位置しているアミノ酸残基の切断位置によって酵素活性が変わることが報告されたが、本発明では、ヒトPH20の2次構造をなす特定アルファヘリックスを他のヒトヒアルロニダーゼのアルファヘリックスで置換することで、野生型ヒトPH20に比べて安定性の高いヒトPH20変異体を作製したし、これらの変異体は、置換されたアルファヘリックスドメインとPH20の他の2次構造がなす相互作用が野生型PH20と異なる様相を示すことにより、C末端切断位置に関係なく一定レベル以上の酵素活性を持つことを特徴とする。
【0055】
また、本発明では、ヒトPH20又はその変異体の固有のシグナルペプチドではなく動物細胞において高いタンパク質発現量を示す他のタンパク質のシグナルペプチドを用いて組換えヒトPH20又はその変異体の発現を向上させようとした。
【0056】
これにより、さらに他の側面において、本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体は、M1~T35の野生型PH20のシグナルペプチドに代えて、N末端にヒトヒアルロニダーゼ-1(Hyal1)、ヒト成長ホルモン、又はヒト血清アルブミン由来のシグナルペプチドを含むことを特徴とし、好ましくは、表5に記載のような、配列番号2によるMATGSRTSLLLAFGLLCLPWLQEGSAのアミノ酸配列を有するヒト成長ホルモン由来のシグナルペプチド、配列番号3によるMKWVTFISLLFLFSSAYSのアミノ酸配列を有するヒト血清アルブミン由来のシグナルペプチド、又は配列番号4によるMAAHLLPICALFLTLLDMAQGのアミノ酸配列を有するヒトHyal1由来のシグナルペプチドを含むことを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0057】
【表5】
【0058】
本発明に係る医薬組成物に含まれるPH20変異体のうち、C末端に6xHis-tagが付着している変異体はHMと命名し、6xHis-tagがない変異体はHPと命名した。また、C末端に6xHis-tagが付着している成熟した野生型PH20(L36~S490)は、WTと命名し、6xHis-tagがないと共にC末端がY482の次で切断された成熟した野生型PH20(L36~Y482)は、HW2と命名した。
【0059】
HP46(配列番号44)は、タンパク質3次構造が知られたヒトヒアルロニダーゼであるHyal1(PDB ID:2PE4)(Chao et al.,2007)を用いてタンパク質構造をモデリングした後、ヒトPH20のアルファヘリックス8のアミノ酸及びアルファヘリックス7とアルファヘリックス8との連結部位のアミノ酸配列がHyal1のアミノ酸配列で置換され、N末端がF38で切断され、C末端がF468の次で切断されたヒトPH20の変異体である。
【0060】
本発明に係る医薬組成物にPH20又はPH20の変異体は少なくとも50units/mL含まれ、好ましくは100~20,000units/mL、より好ましくは約150~18,000units/mL、さらに好ましくは1,000~16,000units/mL、最も好ましくは1,500~12,000units/mL含まれる。
【0061】
本発明に係る医薬組成物に含まれる薬物としては、タンパク質医薬品(protein drugs)、抗体(antibody)医薬品、小分子化合物(small molecules)、アプタマー(aptamer)、RNAi、アンチセンス(antisense)、CAR(chimeric antigen receptor)-T又はCAR-NK(Natural Killer)などの細胞治療剤などが挙げられるが、これに限定されず、現在商用化して使用されている薬物だけでなく、臨床及び開発が進行中であるいかなる薬物も使用可能である。
【0062】
上記の薬物としては、好ましくはタンパク質医薬品又は抗体(antibody)医薬品が使用されてよい。
【0063】
本発明に係る医薬組成物に含まれる「タンパク質医薬品」は、アミノ酸で構成され、タンパク質の活性によって疾病の治療又は予防の効果を奏する薬物で、抗体医薬品以外のタンパク質からなる医薬品を意味し、サイトカイン(cytokines)、治療用酵素(therapeutic enzyme)、ホルモン(hormone)、水溶性受容体(soluble receptor)及びその融合タンパク質、インスリン(insulin)又はその類似体(analogue)、BMP(Bone Morphogenetic Protein)、EPO(erythropoietin)、及び血漿由来タンパク質(serum derived protein)などからなる群から選ばれてよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
本発明に係る医薬組成物に含まれるサイトカインは、インターフェロン(interferon)、インターロイキン(interleukin)、CSF(colony stimulating factor)、TNF(tumor necrosis factor)、及びTGF(tissue growth factor)などからなる群から選ばれてよいが、これに限定されるものではなく、治療用酵素は、ベータ-グルコセレブロシダーゼ(β-Glucocerebrosidase)及びアガルシダーゼベータ(agalsidase β)などが挙げられてよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
サイトカイン及びその類似製品としてオプレルベキン(Oprelvekin)、ペグインターフェロンベータ1a(Peginterferon Beta-1a)、ペギロデカキン(Pegilodecakin)、レズペガルデスロイキン(Rezpegaldesleukin)、SAR444245、GO-203-2c、デカビル(Dekavil)、ネムバロイキンアルファ(Nemvaleukin alfa)、エファヴァルキンアルファ(Efavaleukin alfa)、エフィネプタキンアルファ(Efineptakin alfa)、オンフェカヒュスプアルファ(Onfekafusp alfa)、ビフィカヒュスプアルファ(Bifikafusp alfa)、レロダルシベプ(Lerodalcibep)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0066】
本発明に係る医薬組成物に含まれる水溶性受容体(soluble receptor)は、受容体の細胞外ドメイン(extracellular domain)を意味し、その融合タンパク質は、前記水溶性受容体に抗体のFc領域などが融合されたタンパク質を意味する。前記水溶性受容体は、疾病と関連したリガンドが結合する受容体の水溶性形態であり、TNF-α水溶性受容体にFc領域が融合された形態(例えば、エタネルセプト(Etanercept)という成分名の製品及びこれと類似の形態)及びVEGF水溶性受容体にFc領域が融合された形態(アフリベルセプト(Aflibercept)、コンベルセプト(Conbercept)又はOPT-302という成分名の製品及びこれと類似の形態)、CTLA-4にFc領域が融合された形態(例えば、アバタセプト(Abatacept)又はベラタセプト(Belatacept)という成分名の製品及びこれと類似の形態)、インターロイキン水溶性受容体にFc領域が融合された形態(例えば、リロナセプト(Rilonacept)又はインバキセプト(Inbakicept)という成分名の製品及びこれと類似の形態)、LFA3水溶性受容体にFc領域が融合された形態(例えば、アレファセプト(Alefacept)という成分名の製品及びこれと類似の形態)、CD47と相互作用する信号調節タンパク質アルファ(Signal regulatory protein alpha,SIRPalpha)にFc領域が融合された形態(例えば、エボルパセプト(Evorpacept)、オントルパセプト(Ontorpacept)、又はTTI-622という成分名の製品及びこれと類似の形態)、ソタテルセプト(Sotatercept)、ダランテルセプト(Dalantercept)、アカジコルセプト(Acazicolcept)、又はダゾダリベプ(Dazodalibep)という成分名の製品及びこれと類似の形態などが例示されてよいが、これに限定されるものではない。
【0067】
本発明に係る医薬組成物に含まれるホルモンは、ホルモン欠乏などによって発生する疾患の治療又は予防のために体外から注入するホルモン又はその類似体を意味し、ヒト成長ホルモン(human growth hormone)、エストロゲン(estrogen)、プロゲステロン(Progesterone)などが例示されてよいが、これに限定されるものではない。
【0068】
本発明に係る医薬組成物に含まれる血漿由来タンパク質は、血漿に存在するタンパク質で、血漿から抽出したものと組換えで生産された全てのものを意味し、フィブリノーゲン(fibrinogen)、フォンヴィレブランド因子(von Willebrand Factor)、アルブミン(albumin)、トロンビン(thrombin)、FII(Factor II)、FV(Factor V)、FVII(Factor VII)、FVIII(Factor VIII)、FIX(Factor IX)、FX(Factor X)及びFXI(Factor XI)などが例示されてよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
本発明に係る医薬組成物に含まれる抗体医薬品は、単クローン抗体医薬品(monoclonal antibody drug)又は多クローン抗体医薬品(polyclonal antibody drug)であってよい。
【0070】
本発明に係る単クローン抗体医薬品は、特定疾病と関連した抗原に特異的に結合し得る単クローン抗体及び単クローン抗体断片を含むタンパク質を意味する。単クローン抗体には二重抗体も含まれ、単クローン抗体又はその断片を含むタンパク質は、ADC(Antibody-drug conjugate)を含む意味で使われる。
【0071】
特定疾病と関連した抗原は、4-1BB、5T4、インテグリン(integrin)、アクチビン(Activin)、アミロイドベータ(amyloid beta)、アンジオポエチン(アンジオポエチン1又は2)、アンジオポエチン類似物質3、B細胞成熟化抗原(B cell maturation antigen,BCMA)、B細胞活性因子(B-cell activating factor,BAFF)、B7-H3、補体5(complement5)、CCR4、CCR5、CCL11、CD2、CD3、CD4、CD6、CD11a、CD16A、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD28、CD30、CD32B、CD33、CD38、CD40、CD45、CD46、CD47、CD52、CD56、CD62、CD70、CD73、CD74、CD79b、CD80、CD105、CD123、CD154、CD166、CD262、CD278、CD319、CD326、胎児性癌抗原(Carcinoembryonic antigen,CEA)、CGRP、クラウジン18(Claudin-18)、c-Met、CSF-1、CSF-1受容体、CTLA4、DLL3、EGF受容体、血友病因子、Fc受容体、FGF23、葉酸(folate)受容体、GD2、グルココルチコイド誘導TNF受容体(Glucocorticoid-induced TNF receptor,GITR)、グリピカン3(Glypican 3)、GM-CSF、HER2、HER3、肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor,HGF)、インターフェロン受容体、インターフェロンガンマ、IgE、IGF-1受容体、インターロイキン1、インターロイキン2受容体、インターロイキン4、インターロイキン4受容体、インターロイキン5、インターロイキン5受容体、インターロイキン6、インターロイキン6受容体、インターロイキン8、インターロイキン12/23、インターロイキン13、インターロイキン17A、インターロイキン17受容体A、インターロイキン23、インターロイキン31受容体、インターロイキン36受容体、リンパ球活性化遺伝子3(Lymphocyte-activation gene 3,LAG3)、リシル酸化酵素類似体2(Lysyl oxidase homolog 2,LOXL2)、メソテリン(Mesothelin)、ムチン1(Mucin-1)、ムチン16(Mucin-16)、ネクチン4(Netin-4)、神経成長因子(Nerve Growth Factor,NGF)、OX40、前区タンパク質転換酵素類型9(Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin type 9,PCSK9)、PD-1、PD-L1、ホスホリパーゼC(Phospholipase C)、RANKL(Receptor activator of nuclear factors kappa B ligand)、チロシン-タンパク質キナーゼ膜横断受容体(Tyrosine-protein kinase transmembrane receptor,ROR1)、シアル酸結合Ig様レクチン15(Sialic acid binding ig-like lectin 15,Siglec-15)、転換成長因子ベータ(Transforming growth factor beta,TGFβ)、TIGIT(T-cell innunoreceptor with immunoglobulin and ITIM domain)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有物質3(T cell immunoglobulin and mucin-domain containing-3,Tim-3)、組織因子(Tissue factor)、組織因子経路抑制剤(Tissue factor pathway inhibitor,TFPI)、TORP-2、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor,TNF)、胸腺間質リンホポイエチン(Thymic stromal lymphopoietin,TSLB)、大食細胞集落刺激因子(Colony stimulating factor 1 receptor,CSF1R)、血管内皮細胞成長因子(Vascular endothelial growth factor,VEGF)、VEGF受容体及びvWF(von Willebrand Factor)などが例示されてよいが、これに限定されるものではない。
【0072】
また、特定疾病と関連した抗原に対する単クローン抗体及び単クローン抗体断片を含むタンパク質と二重/多重特異性抗体、抗体-薬物接合体は、次のような薬物が例示されてよいが、これに限定されるものではない;
【0073】
単クローン抗体及び単クローン抗体断片を含むタンパク質としては、ADG 106.EU101、LVGN6051、ウレルマブ(Urelumab)、ウトミルマブ(Utomilumab)、ベブテロビマブ(Bebtelovimab)、アデュカヌマブ(Aducanumab)、バピネオズマブ(Bapinezumab)、クレネズマブ(Crenezumab)、ドナネマブ(Donanemab)、ガンテネルマブ(Gantenerumab)、レカネマブ(Lecanemab)、ソラネズマブ(Solanezumab)、ネスバクマブ(Nesvacumabum)、エノブリツムマブ(Enoblituzumab)、オムブルタマブ(Omburtamab)、ベリムマブ(Belimumab)、イアナルマブ(Ianalumab)、タバルマブ(Tabalumab)、ベルチリムマブ(Bertilimumab)、モガムリズマブ(Mogamulizumab)、レロンリマブ(Leronlimab)、シピリズマブ(Siplizumab)、フォラルマブ(Foralumab)、ムロモナブ-CD3(Muromonab-CD3)、オテリクシズマブ(Otelixizumab)、テプリズマブ(Teplizumab)、イバリズマブ(Ibalizumab)、トレガリズマブ(Tregalizumab)、ザノリムマブ(Zanolimumab)、イトリズマブ(Itolizumab)、エパリズマブ(Efalizumab)、イネビリズマブ(Inebilizumab)、タファシタマブ(Tafasitamab)、トシツモマブ(Tositumomab)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)、オファツムマブ(Ofatumutumab)、ウブリツキシマブ(Ublituximab)、ベルツズマブ(Veltuzumab)、エプラツズマブ(Epratuzumab)、バシリキシマブ(Basiliximab)、ダクリズマブ(Daclizumab)、バルリルマブ(Varlilumab)、 ルリズマブペゴル(Lulizumab pegol)、イラツムマブ(Iratumumab)、BI-1206、リンツズマブ(Lintuzumab)、ダラツムマブ(Daratumumab)、フェルザルタマブ(Felzartamab)、GEN3014、イサツキシマブ(Isatuximab)、メザギタマブ(Mezagitamab)、CDX-1140、ブレセルマブ(Bleselumab)、ダセツズマブ(Dacetuzumab)、イスカリマブ(Iscalimab)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ミタザリマブ(Mitazalimab)、SEA-CD40、ソチガリマブ(Sotigalimab)、SAR441344、テゴプルバート(Tegoprubart)、ダピロリズマブペゴル(Dapirolizumab pegol)、I-131 アパミスタマブ(I-131-Apamistamab)、AO-176、リグファリマブ(Ligufalimab)、マグロリマブ(Magrolimab)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、クリザンリズマブ(Crizanlizumab)、インクラクマブ(Inclacumab)、クサツズマブ(Cusatuzumab)、オレクルマブ(Oleclumab)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、ガリキシマブ(Galiximab)、カロツキシマブ(Carotuximab)、アデカツムマブ(Adecatumumab)、エプチネズマブ(Eptinezumab)、エレヌマブ(Erenumab)、フレマネズマブ(Fremanezumab)、ガルカネズマブ(Galcanezumab)、TST001、ZL-1211、ゾルベツキシマブ(Zolbetuximab)、オナルツズマブ(Onartuzumab)、エクリズマブ(Eculizumab)、ポゼリマブ(Pozelimab)、ラブリズマブ(Ravulizumab)、ラクノツズマブ(Lacnotuzumab)、PD-0360324、AMB-051、アクサチリマブ(Axatilimab)、カビラリズマブ(Cabiralizumab)、エマクツズマブ(Emactuzumab)、BA3071、イピリムマブ(Ipilimumab)、クアボンリマブ(Quavonlimab)、トレメリムマブ(Tremelimumab)、ザリフレリマブ(Zalifrelimab)、セツキシマブ(Cetuximab)、デパツキシズマブ(Depatuxizumab)、フツキシマブ(Futuximab)、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、マツズムマブ(Matuzumab)、モドツキシマブ(Modotuximab)、ネシツムマブ(Necitumumab)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、トムゾツキシマブ(Tomuzotuximab)、ザルツムマブ(Zalutumumab)、MK-2060、バトクリマブ(Batoclimab)、ニポカリマブ(Nipocalimab)、ロザノリキシズマブ(Rozanolixizumab)、ブロスマブ(Burosumab)、ファーレツズマブ(Farletuzumab)、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ジヌツキシマブベータ(Dinutuximab beta)、ナキシタマブ(Naxitamab)、BMS-986156、ラギフィリマブ(Ragifilimab)、ギムシルマブ(Gimsilumab)、レンジルマブ(Lenzilumab)、マブリリムマブ(Mavrilimumab)、ナミルマブ(Namilumab)、オチリマブ(Otilima)、プロンマルリマブ(Plonmarlimab)、コドリツズマブ(Codrituzumab)、マルゲツキシマブ(Margetuximab)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、HMBD-001、パトリツマブ(Patritumab)、セリバンツマブ(Seribantumab)、デュリゴツズマブ(Duligotuzumab)、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)、リロツズマブ(Rilotumumab)、アロムフィリマブ(Alomfilimab)、アニフロルマブ(Anifrolumab)、エマパルマブ(Emapalumab)、FB825、リゲリズマブ(Ligelizumab)、オマリズマブ(Omalizumab)、シクスツムマブ(Cixutumumab)、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、フィギツムマブ(Figitumumab)、ガニツマブ(Ganitumab)、テプロツムマム(Teprotumumab)、ベルメキマブ(Bermekimab)、カナキヌマブ(Canakinumab)、ゲボキズマブ(Gevokizumab)、ブリアキヌマブ(Briakinumab)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、アンルキンズマブ(Anrukinzumab)、センダキマブ(Cendakimab)、レブリキズマブ(Lebrikizumab)、トラロキヌマブ(Tralokinumab)、ブロダルマブ(Brodalumab)、ビメキズマブ(Bimekizumab)、イクセキズマブ(Ixekizumab)、セクキヌマブ(Secukinumab)、ブラジクマブ(Brazikumab)、グセルクマブ(Guselkumab)、ミリキズマブ(Mirikizumab)、リサンキズマブ(Risankizumab)、チルドラキズマブ(Tildrakizumab)、ネモリズマブ(Nemolizumab)、イムシドリマブ(Imsidolimab)、スペソリマブ(Spesolimab)、パスコリズマブ(Pascolizumab)、CBP201、デュピルマブ(Dupilumab)、デペモキマブ(Depemokimab)、メポリズマブ(Mepolizumab)、レスリズマブ(Reslizumab)、ベンラリズマブ(Benralizumab)、クラザキズマブ(Clazakizumab)、オロキズマブ(Olokizumab)、シルツキシマブ(Siltuximab)、シルクマブ(Sirukumab)、ジルチベキマブ(Ziltivekimab)、レビリマブ(Levilimab)、サリルマブ(Sarilumab)、サトラリズマブ(Sarilumab)、トシリズマブ(Tocilizumab)、HuMax-IL8、アビツズマブ(Abituzumab)、ファベゼリマブ(Favezelimab)、フィアンリマブ(Fianlimab)、GSK2831781、イエラミリマブ(Ieramilimab)、INCAGN02385、レラツリマブ(Relatlimab)、シムツズマブ(Simtuzumab)、アバゴボマブ(Abagovomab)、オレゴボマブ(Oregovomab)、タネズマブ(Tanezumab)、BMS-986178、GSK3174998、INCAGN01949、イブキソリマブ(Ivuxolimab)、ロカチンリマブ(Rocatinlimab)、タボリマブ(Tavolimab)、テラゾルリマブ(Telazorlimab)、ボンレロリズマブ(Vonlerolizumab)、アリロクマブ(Alirocumab)、ボコシズマブ(Bococizumab)、エブロヌシマブ(Ebronucimab)、エボロクマブ(Evolocumab)、フロボシマブ(Frovocimab)、オンゲリシマブ(Ongericimab)、タフォレシマブ(Tafolecimab)、ドスタルリマブ(Dostarlimab)、バルスチリマブ(Balstilimab)、カムレリズマブ(Camrelizumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)、ゲプタノリマブ(Geptanolimab)、MEDI0680、ニボルマブ(Nivolumab)、ベムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ペンプリマブ(Penpulimab)、ピジリズマブ(Pidilizumab)、プロルゴリマブ(Prolgolimab)、レチファンリマブ(Retifanlimab)、ササンリマブ(Sasanlimab)、セルプルリマブ(Serplulimab)、シンチリマブ(Sintilimab)、スパルタリズマブ(Spartalizumab)、チスレリズマブ(Tislelizumab)、トリパリマブ(Toripalimab)、エザベンリマブ(Ezabenlimab)、ジムベレリマブ(Zimberelimab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、コシベリマブ(Cosibelimab)、スゲマリマブ(Sugemalimab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、IMC-001、エンバフォリマブ(Envafolimab)、スブラトクスマブ(Suvratoxumab)、デノスマブ(Denosumab)、ジロベルタマブ(Zilovertamab)、NC318、エロツズマブ(Elotuzumab)、NIS793、BMS-986207、ドムバナリマブ(Domvanalimab)、EOS-448、エチギリマブ(Etigilimab)、オシペルリマブ(Ociperlimab)、チラゴルマブ(Tiragolumab)、ビボストリマブ(Vibostolimab)、スルゼビシリマブ(Surzebiclimab)、コポリマブ(Cobolimab)、サバトリマブ(Sabatolimab)、TQB2618、コンシズマブ(Concizumab)、マルスタシマブ(Marstacimab)、アダリムマブ(Adalimumab)、ゴリムマブ(Golimumab)、インフリキシマブ(Infliximab)、セトルリズマブペゴル(Certolizumab pegol)、コナツムマブ(Conatumumab)、ティガツズマブ(Tigatuzumab)、テゼペルマブ(Tezepelumab)、ガチポツズマブ(Gatipotuzumab)、カビラリズマブ(Cabiralizumab)、ベバシズマブ(Beva
cizumab)、ブロルシズマブ(Brolucizumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、オリンバシマブ(Olinvacimab)、イクルクマブ(Icrucumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、カプラシズマブ(Caplacizumab)、アブリルマブ(Abrilumab)、エトロリズマブ(Etrolizumab)、ベドリズマブ(Vedolizumab)、インテツムマブ(Intetumumab)、ナタリズマブ(Natalizumab)などがあり、これに限定されるものではない。
【0074】
二重/多重特異性抗体及び抗体類似タンパク質には、DSP107、RO7122290、シンレバフスプアルファ(Cinrebafusp alfa)、GEN1042、ロジバフスプアルファ(Rozibafusp alfa)、GEN1044、オブリンダタマブ(Obrindatamab)、GEN1047、エルラナタマブ(Elranatamab)、リンボセルタマブ(Linvoseltamab),テクリスタマブ(Teclistamab)、エプコリタマブ(Epcoritamab)、グロフィタマブ(Glofitamab)、モスネツズマブ(Mosunetuzumab)、オドロネクスタマブ(Odronextamab)、フロテツズマブ(Flotetuzumab)、ビベコタマブ(Vibecotamab)、カツマキソマブ(Catumaxomab)、シビサタマブ(Cibisatamab)、TAK-186、タルクエタマブ(Talquetamab)、ウバマタマブ(Ubamatamab)、NVG-111、エムフィザタマブ(Emfizatamab)、HPN536、AFM13、ブリナツモマブ(Blinatumomab)、ISB1442、CPO107、AFM24、アミバタマブ(Amivantamab)、MCLA-129、SI-B001、エミシズマブ(Emicizumab)、Mim8、ゼノクツズマブ(Zenocutuzumab)、ザニダタマブ(Zanidatamab)、チブリズマブ(Tibulizumab)、GI-101、ボバリリズマブ(Vobarilizumab)、REGN5668、HX009、カドニリマブ(Cadonilimab)、ブダリマブ(Vudalimab)、EMB-02、RO7247669、テボテリマブ(Tebotelimab)、IBI318、AZD2936、AZD7789、RO7121661、イボネスシマブ(Ivonescimab)、IBI322、ES101、GEN1046、PRS-344、エルフォンリリマブ(Erfonrilimab)、FS118、ビントラフスプアルファ(Bintrafusp alfa)、HB0036、HLX301、NM21-1480、オゾラリズマブ(Ozoralizumab)、バヌシズマブ(Vanucizumab)、ナビシキシズマブ(Navicixizumab)、IBI302などがあり、これに限定されるものではない。
【0075】
抗体-薬物接合体には、ナプツモマブエスタフェナトクス(Naptumomab estafenatox)、ベランタマブマフォドチン(Belantamab mafodotin)、DS-7300、MGC018、ピベキマブスニリン(Pivekimab sunirine)、プラルザタマブラブタンシン(Praluzatamab ravtansine)、コルツキシマブラブタンシン(Coltuximab ravtansine)、デニンツズマブマフォドチン(Denintuzumab mafodotin)、ロンカスツキシマブテシリン(Loncastuximab tesirine)、イブリツモマブチウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)、イノツズマブオゾガミシン(Inotuzumab ozogamicin)、エプラツズマブシステシリン(Epratuzumab-cys-tesirine)、モキセツモマブパスドトクス(Moxetumomab pasudotox)、ブレンツキシマブベドチン(Brentuximab vedotin)、ゲムツズマブオゾガミシ(Gemtuzumab ozogamicin)、バダスツキシマブタリリン(Vadastuximab talirine)、STI-6129、FOR46、ロルボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ポラツズマブベドチン(Polatuzumab vedotin)、ツサミタマブラブタンシン(Tusamitamab ravtansine)、テリソツズマブベドチン(Telisotuzumab vedotin)、ロバルピツズマブテシリン(Rovalpituzumab tesirine)、デパツキシズマブマフォドチン(Depatuxizumab mafodotin)、ファルレツズマブエクテリブリン(Farletuzumab ecteribulin)、ミルベツキシマブソラブタンシン(Mirvetuximab soravtansine)、ARX788、トラスツズマブデルクステカン(Trastuzumab deruxtecan)、トラスツズマブデュオカルマジン(Trastuzumab duocarmazine)、A166、トラスツズマブエムタンシン(Trastuzumab emtansine)、DP303c、MRG002、BDC-1001、SHR-A1811、ディシタマブベドチン(Disitamab vedotin)、ペルツズマブジュボトリモド(Pertuzumab zuvotolimod)、パトリツマブデルクステカン(Patritumab Deruxtecan)、アネツマブラブタンシン(Anetumab ravtansine)、BMS-986148、エンフォルツマブベドチン(Enfortumab vedotin)、NBE-002、MRG004、ABBV-3373、サシツズマブゴビテカン(Sacituzumab Govitecan)などがあり、これに限定されるものではない。
【0076】
本発明に係る医薬組成物において抗体医薬品の含有量は5~500mg/mL、好ましくは20~200mg/mL、より好ましくは100~150mg/mL、最も好ましくは120±18mg/mLであってよく、例えば、約110mg/mL、約120mg/mL、又は約130mg/mLであってよい。
【0077】
本発明に係る医薬組成物に含まれる多クローン抗体は、免疫グロブリン(immune globulin)などの血漿などから抽出した血漿抗体(serum antibody)などが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0078】
小分子化合物は、予防又は治療の目的で速い効果が要求される薬物であればいずれも使用可能である。例えば、モルヒネ(Morphine)系の亢進統制が使用されてよい(Thomas et al.,2009)。また、抗癌剤による組織壊死の治療剤として使用する場合に、単独で使用するか、解毒剤(Antidote)薬物であるビンカアルカロイド(Vinca Alkaloid)系統、タキサン(Taxane)系統の薬物と共に使用することができる(Kreidieh et al.,2016)。
【0079】
本発明に係る医薬組成物又は剤形は、界面活性剤、特にポロキサマー(poloxamer)系の界面活性剤を含むことを特徴とする。ポロキサマーは非イオン性界面活性剤で、米国FDAからGRAS(Generally recognized as safe substance)として認証を受けた物質であり、急性胸疼痛では、1日当たりに3gの投与用量でも一般的に反応がないことが知られている(Zarrintaj et als.,2020)。ポロキサマー系の界面活性剤は、抗癌効果があることが知られており、ハイドロゲルの構成成分としても使われ、細胞培養時に0.1~0.5%の濃度で添加され、細胞を気泡から保護する役割も担う。そして、ポロキサマー系の界面活性剤は、化学式(1)又は化学式(2)のような構造を有し、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide,poly-EO)とポリプロピレンオキシド(polypropylene oxide,poly-PO)で構成されているが、各EO鎖とPO鎖の構成含有量によって命名される。EO鎖の分子当たりの質量含有量は10%~80%、PO鎖の分子当たりの質量は950~4000ダルトンの範囲から選定される。
【0080】
【化1】
【0081】
上記の化学式(1)及び化学式(2)において、xは2~130、yは15~67の範囲を有し、好ましくは、xは10~60、yは20~40、より好ましくは、xは10~60、yは20~40、最も好ましくは、xは38、yは29の値を有する。
【0082】
好ましくは、ポロキサマー系界面活性剤にはポロキサマー188が使用されてよいが、これに限定されるものではない。ポロキサマー188はプルロニックF68とも呼ばれ、EO鎖含有量が80%であり、且つPO鎖の分子量が1,750ダルトンである場合を指し、この場合、分子量は8,750ダルトンになる。このポロキサマー188のミセル濃度(Critical micelle concentration,CMC)は、0.04mM(~0.03%)と知られている。これは、類似の非イオン性界面活性剤であるポリソルベート20又はポリソルベート80の0.006%、0.0012%を遥かに上回る数値である。
【0083】
ポロキサマー188は多種の抗体医薬品及びタンパク質医薬品に使用されている。例えば、EnspryngTM(Roche社)には0.05%、GazyvaTM(Roche社-スウェーデンSobi社)には0.02%、HemlibraTM(Roche社)には0.05%、DanyelzaTM(Y-mAbs社)には0.15%、OrenciaTM(BMS社)には0.8%、Nuwiq(Octaphama社)には0.12%、Accretropin(Cangene社)には0.2%で使用されている(Strichley & Lambert,2021)。
【0084】
本発明に係る医薬組成物中のポロキサマー系界面活性剤、好ましくはポロキサマー188の濃度は、0.001%~1.5%(w/v)、好ましくは0.01%~1.0%(w/v)、より好ましくは0.02%~0.8%(w/v)、最も好ましくは0.05%~0.5%(w/v)であってよいが、これに限定されるものではない。
【0085】
一側面において、本発明は、薬物無しでヒアルロニダーゼ及びポロキサマー(poloxamer)系界面活性剤を含む医薬組成物に関する。
【0086】
また、本発明に係る医薬組成物には、緩衝剤及び安定化剤からなる群から選ばれる1つ以上の物質がさらに含まれてよい。
【0087】
本発明に係る組成物に含まれる前記緩衝剤は、4~8、好ましくは5~7のpHを提供する如何なるものも使用可能であり、前記緩衝剤は、リンゴ酸塩(malate)、ギ酸塩(formate)、クエン酸塩(citrate)、酢酸塩(acetate)、プロピオン酸塩(propionate)、ピリジン(pyridine)、ピペラジン(piperazine)、カコジル酸(cacodylate)、コハク酸(succinate)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid,MES)、ヒスチジン(histidine)、トリス(Tris)、ビス-トリス(bis-Tris)、リン酸塩(phosphate)、エタノールアミン(ethanolamine)、炭酸塩(carbonate)、2-エタンスルホン酸(piperazine-N,N’-bis(2-ethanesulfonic acid),PIPES)、イミダゾール(imidazole)、ビス-トリスプロパン(BIS-TRIS propane)、BES(N,N-bis(2-hydroxyethyl)-2-aminoethanesulfonic acid)、MOPS(3-(N-morpholino)propanesulfonic acid)、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonic acid)、ピロリン酸塩(pyrophosphate)、及びトリエタノールアミン(triethanolamine)からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ヒスチジン緩衝剤、例えば、L-ヒスチジン/HCl又は酢酸塩(acetate)緩衝剤であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0088】
緩衝剤の濃度は0.001~200mM、好ましくは1~50mM、より好ましくは5~40mM、最も好ましくは10~30mMであってよい。
【0089】
本発明に係る組成物に安定化剤としては、タンパク質の安定化の目的で当業界で通常使われる如何なる物質も使用可能であり、好ましい例としては、炭水化物、糖類又はそれらの水和物、糖アルコール類又はそれらの水和物、及びアミノ酸からなる群から選ばれる1種以上が使用されてよい。
【0090】
前記安定化剤として使用される炭水化物、糖類又は糖アルコール類は、トレハロース又はその水和物、スクロース、サッカリン、グリセロール、エリストール、トレイトール、キシリトール、アラビトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ポリグリシトール、シクロデキストリン(cyclodextrin)、ヒドロオキシプロピルシクロデキストリン(Hydroxypropyl Beta-cyclodextrin)、及びグルコースからなる群から選ばれる1種以上であり、
【0091】
前記アミノ酸は、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、リジン、シリルリジン、ロイシン、メチオニン、バリン、セリン、セレノメチオニン、シトルリン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、オルニチン、イソロイシン、タウリン、テアニン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ピロリシン、ヒスチジン、及びアラニンからなる群から選ばれる1種以上を挙げることができるが、これに限定されず、好ましくは、メチオニンが使用されてよい。
【0092】
本発明に係る医薬組成物中に安定化剤として使われる前記糖類又は糖アルコール類の濃度は0.001~500mM、好ましくは100~300mM、より好ましくは150~250mM、最も好ましくは180~230mMであり、具体的には約210mMであってよい。
【0093】
また、本発明に係る医薬組成物中に安定化剤として使われるアミノ酸の濃度は1~100mM、好ましくは又は3~30mM、より好ましくは5~25mM、最も好ましくは7~20mMであり、具体的には約8~15mMであってよい。
【0094】
一具体例において、本発明に係る医薬組成物は、50~350mg/mLの抗体、例えば抗HER2抗体又は免疫チェックポイント抗体、100~20,000units/mLのPH20変異体、0.001%~1.5%(w/v)のポロキサマー系界面活性剤、pH 5.5±2.0を提供する0.001~200mMのヒスチジン緩衝液、及び10~400mMのα,α-トレハロースを含んでよく、選択的には1~50mMのメチオニンをさらに含んでよい。
【0095】
より具体的な実施例において、本発明に係る医薬組成物は、120±18mg/mL mg/mLの抗HER2抗体又は免疫チェックポイント抗体、1,500~12,000units/mLのPH20変異体、0.1%~0.5%(w/v)のポロキサマー系界面活性剤、pH 5.5±2.0を提供する10~30mMヒスチジン緩衝液、180~230mM α,α-トレハロースを含んでよく、選択的に8~15mMのメチオニンをさらに含んでよい。
【0096】
本発明に係る医薬組成物は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、及び直腸内投与などで投与でき、皮下注入で皮下投与されることが好ましく、皮下注射投与のための注射剤形の形態で使用されることがより好ましい。
【0097】
これにより、本発明は、他の側面において、本発明に係る医薬組成物を含む剤形(formulation)、好ましくは皮下投与用剤形を提供する。
【0098】
前記皮下投与用剤形は、注射剤形が好ましく、追加の希釈過程無しで直ちに投与可能な形態(ready-to-injection)で提供されてよく、プレフィルドシリンジ(pre-filled syringe)、ガラスアンプル、プラスチック容器、ウェアラブルデバイス(Wearable device)、又はオートインジェクター(Auto-injector)に含まれて提供されてよい。
【0099】
ウェアラブルデバイス(Wearable device)はウェアラブルインジェクター(Wearable injector)とも呼ばれ、ウェスト(West)社、イネーブルインジェクションズ(Enable Injections)社、イプソムド(Ypsomed)社、ウェイベルCDS(Weibel CDS)社、サブキュジェクト(Subcuject)社、エイタンメディカル(Eitan Medical)社、ソンスボズ(Sonceboz)社などの製品などが例示的に使われてよいが、これに限定されるものではない(Wearable Injectors,2019)。
【0100】
また、本発明は、本発明に係る医薬組成物又は剤形を用いる疾病の治療方法に関する。
【0101】
本発明に係る医薬組成物又は剤形で治療可能な疾病には特に制限はなく、本発明に係るPH20又はPH20変異体と併用される薬物で治療可能な疾患であればいずれも可能である。
【0102】
本発明に係る医薬組成物又は剤形で治療可能な疾患は、癌、自己免疫疾患などが例示されてよいが、これに限定されるものではない。
【0103】
本発明に係る医薬組成物又は剤形で治療可能な癌又は癌腫は特に限定されず、固形癌及び血液癌のいずれをも含む。このような癌の例には、黒色腫などの皮膚癌、肝癌、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵癌、膀胱癌、大腸癌、結腸癌、子宮頸癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、腎臓癌、食道癌、胆道癌、精巣癌、直腸癌、頭頸部癌、頸椎癌、尿管癌、骨肉腫、神経芽細胞腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、及び神経膠腫からなる群から選ばれてよいが、これに限定されるものではない。好ましくは、本発明の医薬組成物又は剤形で治療可能な癌は、胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、及び腎臓癌からなる群から選ばれてよいが、これに限定されるものではない。
【0104】
本発明に係る医薬組成物又は剤形で治療可能な自己免疫疾患は、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、喘息(asthma)、乾癬(psoriasis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、アレルギー性鼻炎(allergic Rhinitis)、クローン病(Crohn’s disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、全身性紅斑性ループス、1型糖尿病(type I diabetes)、炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease,IBD)、及びアトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis)からなる群から選ばれてよいが、これに限定されるものではない。
【0105】
また、本発明は、本発明に係る医薬組成物又は剤形を治療が必要な対象に投与することを特徴とする疾病の治療方法を提供し、さらに、本発明に係る医薬組成物又は剤形を、疾病の治療のための薬剤を製造するための用途を提供する。
【0106】
本発明で使われる技術用語及び科学用語は、特に断らない限り、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味をもつ。また、従来と同じ技術的構成及び作用に関する反復説明は省略するものとする。
【実施例
【0107】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されると解釈されないことは、当該技術の分野における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0108】
実施例1.剤形開発:ポロキサマー188を含むトラスツズマブ皮下注射剤形の安定性試験
【0109】
次の表6に記載されているように、5種のトラスツズマブ(Trastuzumab)皮下注射剤形を製造した。剤形1~剤形5は共通に120mg/mLのトラスツズマブを含み、20mMヒスチジン/ヒスチジン-HCl(pH 5.5)、210mMトレハロース、2000units/mLヒアルロニダーゼで構成されている。ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)は、剤形1~剤形3ではHP46を使用しており、剤形4と剤形5では野生型組換えPH20(rHuPH20)を使用している。また、剤形3を除けば10mMメチオニンを含んでいる。界面活性剤としては、剤形1、剤形4では0.04%ポリソルベート20(Polysorbate 20)、剤形2、剤形3及び剤形5では0.2%ポロキサマー188(Poloxamer 188)を含んでいる。
【0110】
【表6】
【0111】
このような各剤形の安定性を確認するために、苛酷条件である40±2℃、相対湿度(Relative humidity,RH)60±5%で保管した後、0、1、4、7日の間隔で払い出して次の分析を行った。
【0112】
イ.分光光度計を用いた含有量測定
【0113】
安定性期間に払い出したタンパク質の濃度変化を分光光度計で分析した。試料の濃度が0.4mg/mLとなるように蒸留水で希釈した後、分光光度計で280nmにおいてタンパク質の吸光度を測定した。表7では最初試験日を基準にして相対含有量で表示した。
【0114】
【表7】
【0115】
ロ.サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)を用いたトラスツズマブの不純物比率調査
【0116】
サイズ排除クロマトグラフィー分析のために、Shimadzu Prominence社のHPLCシステムとTSK-gel G3000SWXL(7.8X300mm、5μm)及びTSKガードカラム(6.0×4.0mm,7μm)を使用した。移動相としては、0.25M塩化カリウムが含まれた0.2Mリン酸カリウム(pH 6.2)を使用した。流速0.5mL/minの等速(Isocratic)分離モードを適用して35分間分析を行った。試料は、分析溶媒で希釈して最終濃度が10mg/mLとなるようにしたし、20μLをHPLCカラムに注入した後、280nmにおいてカラム溶出液の吸光度を記録した。HPLCクロマトグラムでトラスツズマブの不純物比率を計算し、表8に示した。
【0117】
【表8】
【0118】
ハ.剤形1~剤形5に対するIEXクロマトグラフィー測定
【0119】
IEXクロマトグラフィー分析のために、Shimadzu Prominence社のHPLCシステムと、カラムとしてTSKgel CM-STAT(4.6×100mm、7μm)、TSKgel guard gel CMSTAT(3.2mm l.D.×1.5cm)などを使用した。移動相Aは、10mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)で、移動相Bは、0.1M NaClが含まれた10mMリン酸ナトリウム(pH 7.2)である。流速0.8mL/minで0~30%移動相Bの線形濃度勾配を期しつつ55分間分析を行った。試料は移動相Aで希釈して最終濃度が1.0mg/mLとなるようにしたし、80μLの試料をHPLCに注入した後、280nmでカラム溶出液の吸光度を記録した。HPLCクロマトグラムでトラスツズマブの単量体比率を計算し、表9に示した。
【0120】
【表9】
【0121】
二.剤形1~剤形5に対する不溶性微粒子測定
【0122】
不溶性微粒子測定のために、測定機器に試料1mLを30mLで希釈し、注射剤の一般試験法に記述された方法で測定し、表10に示した。注射剤の一般試験法不溶性微粒子試験の基準は、10μm以上の粒子(NLT 10μm)が6000個以下、25μm以上の粒子(NLT25μm)が600個以下でなければならない。
【0123】
【表10】
【0124】
ホ.剤形1~剤形5に対するヒアルロニダーゼ酵素活性測定
【0125】
酵素活性を測定するマイクロ比濁分析(Microturbidimetric assay)方法は、反応溶液に残存するヒアルロン酸が酸性化されたアルブミン(BSA)と結合して凝集体を形成する程度を吸光度で測定する方法であり、ヒアルロニダーゼによってヒアルロン酸が加水分解されると、アルブミンと結合する量が減少して吸光度が減少する。標準品としてBTH(Sigma)を1、2、5、7.5、10、15、20、30、50、60unit/mLとなるように希釈し、各チューブに準備する。試料を酵素希釈バッファー(enzyme diluent buffer)(20mM Tris・HCl、pH 7.0、77mM NaCl、0.01%(w/v)ウシ血清アルブミン)で100X、300X、600X、1200X、2400Xとなるように希釈して各チューブに準備する。新しいチューブに3mg/mLであるヒアルロン酸溶液を濃度が0.3mg/mLとなるように10倍希釈し、各チューブの体積が180μLとなるようにする。希釈したヒアルロン酸溶液に、ヒアルロニダーゼが含まれた試料を60μL入れ、混合して37℃で45分間反応させる。反応が終わると、96ウェルプレートに反応させた酵素50μLと酸性アルブミン溶液(acidic albumin solution)250μLを各ウェルに入れて10分間振盪した後、600nmにおいて分光光度計で吸光度を測定する。
【0126】
各剤形における試験結果を図1に示す。
【0127】
実施例1の結果から、5種の剤形において、肉眼では見えない粒子(sub-visible particle)の変化や含有量、純度、電荷変異体(Charge variant)の変化が大きくないため、各剤形の抗体の安定性には差異がないことがわかった。しかし、ポロキサマー188 0.2%剤形では、ポリソルベート20 0.04%剤形と比較するとき、抗体の安定性には大差がないが、ヒアルロニダーゼ酵素活性は遥かに高く長期間維持される結果を示した。
【0128】
また、同じ初期ヒアルロニダーゼ酵素活性を有する場合に、HP46を含む剤形がrHuPH20を含む剤形に比べて酵素活性がより維持される結果を示した。
【0129】
実施例2.剤形開発:ヒアルロニダーゼ単独剤形の苛酷安定性試験
【0130】
他の薬物を含まないヒアルロニダーゼ単独剤形の安定性を調べるための実験を行った。ヒアルロニダーゼ単独剤形は表11のように調製したし、これに対して苛酷条件である40±2℃、相対湿度60±5%で酵素活性が変化するか否かを表12のように確認した。
【0131】
【表11】
【0132】
【表12】
【0133】
表12に記載のように、剤形6と剤形7において類似にpH 6~7の範囲で酵素活性がよく維持されていることが確認された。
【0134】
実施例3.剤形開発:ヒアルロニダーゼ単独剤形の長期安定性試験
【0135】
他のタンパク質治療剤と混合していないヒアルロニダーゼ単独剤形の長期安定性を調べるための実験を行った。ヒアルロニダーゼ単独剤形(剤形8)は、3,000units/mLヒアルロニダーゼ(HP46)、10mMリン酸ナトリウム、145mM NaCl、10mMメチオニン、0.1%ヒト血清アルブミン、0.02%ポリソルベート80、pH 7.0で調製したし、これに対して長期保管条件である5±3℃で、図2のように、性状(Appearance)、pH、浸透圧(Osmolality)、エンドトキシン含有量(Endotoxin content)、無菌(Sterility)、不溶性異物(Particulated matter,visible)、不溶性微粒子(Particulated matter,subvisible)、力価(酵素活性)/確認試験(Potency/Identity)、溶出体積(Extractable volume)、容器密集度(Container-closure integrity)が変化するか否かを確認した。
【0136】
実施例4.剤形開発:界面活性剤種類別トラスツズマブ皮下注射剤形の安定性試験
【0137】
表13に記載のように、界面活性剤の種類別と濃度別にトラスツズマブ(Trastuzumab)皮下注射剤形を製造し、各剤形の苛酷条件における安定性を確認した。各剤形は、120mg/mLのトラスツズマブを含み、20mMヒスチジン/ヒスチジン-HCl(pH 5.5)、210mMトレハロース、10mMメチオニン、2000units/mLヒアルロニダーゼで基本構成されている。ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)は、HP46を使用した。このような基本組成に、剤形9-1、9-2、9-3、9-4は、ポリソルベート20を各0.005%、0.01%、0.1%、0.2%で添加した剤形であり、剤形10-1、10-2、10-3、10-4は、ポリソルベート80を各0.005%、0.01%、0.1%、0.2%で添加した剤形であり、剤形11-1、11-2、11-3、11-4は、ポロキサマー188を各0.005%、0.01%、0.1%、0.2%で添加した剤形である。
【0138】
【表13】
【0139】
表13に記載された各トラスツズマブ(Trastuzumab)皮下注射剤形を、苛酷条件である40±2℃、相対湿度60±5%で安定性を確認した。含有量の変化は、実施例1のイ.分光光度計を用いた含有量方法で測定し、表14に示した。IEXクロマトグラフィー上の変化に対しては、実施例1のハ.IEXクロマトグラフィー方法で測定し、表15に示した。ヒアルロニダーゼ酵素活性の変化は、実施例1のホ.ヒアルロニダーゼ酵素活性方法で測定し、図3のA(剤形9)、B(剤形10)、C(剤形11)に示した。表14及び図3では、各0日(Day 0)の含有量又は酵素活性を100%にして活性の変化を示した。
【0140】
【表14】
【0141】
【表15】
【0142】
表14に記載されたように、各剤形の含有量は殆ど変化無しで維持された。表15に記載されたように、加速安定性期間で塩基性変異体(Basic variants)が増加する様相を示したが、各剤形間の差異はなかった。このことから、各剤形による抗体に及ぼす影響は剤形別に差異がないことがわかった。図3に見られるように、ヒアルロニダーゼ酵素活性が、剤形9において界面活性剤であるポリソルベート20の含有量が増加しながら活性の減少様相を示し、残りの剤形10及び剤形11では、界面活性剤の含有量の増加と酵素活性の減少の様相は発生しなかった。ポリソルベート80を含む剤形10とポロキサマー188を含む剤形11は、ポリソルベート20を含む剤形9に比べて、界面活性剤含有量の増加にもかかわらずヒアルロニダーゼ酵素活性がよく維持されている結果を示した。
【0143】
実施例5.剤形開発:オクレリズマブ皮下注射剤形の安定性試験
【0144】
表16に記載されたように、オクレリズマブ(Ocrelizumab)皮下注射剤形を製造して各剤形の苛酷条件における安定性を確認した。各剤形は30mg/mLのオクレリズマブを含み、20mM酢酸ナトリウム(pH 5.5)、106mMトレハロース、85mM 塩化ナトリウム、2000units/mLヒアルロニダーゼで構成されている。ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)は、HP46とrHuPH20を使用した。界面活性剤としては0.04%ポリソルベート20と0.2%ポロキサマー188を使用した。
【0145】
【表16】
【0146】
表16に記載された各オクレリズマブ皮下注射剤形を、苛酷条件である40±2℃、相対湿度60±5%における安定性を確認した。含有量の変化は、実施例1のイ.分光光度計を用いた含有量方法で測定し、表17に示した。サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)上の主分画の含有量の変化については、実施例1のロ.サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)方法で測定し、表18に示した。ヒアルロニダーゼ酵素活性の変化は、実施例1のホ.ヒアルロニダーゼ酵素活性方法で測定し、図4に示した。表17、表18、及び図4では、各0日(day 0)の含有量や酵素活性を100%にして活性の変化を示した。
【0147】
【表17】
【0148】
【表18】
【0149】
表17及び表18に記載されたように、各剤形別に含有量などは大きな変化無しで維持された。図4のように、界面活性剤としてポロキサマー188を使用する場合に、ヒアルロニダーゼ酵素活性が60%以上と維持されていることが確認されたし、ポリソルベート20を使用する場合には、40%以上の酵素活性が維持されていた。このことから、各剤形別に抗体に対する影響はないが、ポロキサマー188を使用する剤形がヒアルロニダーゼ酵素活性の安定性に影響を与えると考えられる。HP46とrHuPH20は大差がなかった。
【0150】
実施例6.剤形開発:リツキシマブ皮下注射剤形の安定性試験
【0151】
表19に記載されたように、リツキシマブ(Rituximab)皮下注射剤形を製造し、各剤形の苛酷条件における安定性を確認した。各剤形は、120mg/mLのリツキシマブを含み、20mM酢酸ナトリウム(pH 5.5)、106mMトレハロース、85mM塩化ナトリウム、2000units/mLヒアルロニダーゼで基本構成されている。ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)は、HP46とrHuPH20を使用した。界面活性剤としては0.04%ポリソルベート20と0.2%ポロキサマー188を使用した。
【0152】
【表19】
【0153】
表19に記載された各リツキシマブ皮下注射剤形を、苛酷条件である40±2℃、相対湿度60±5%における安定性を確認した。含有量の変化は、実施例1のイ.分光光度計を用いた含有量方法で測定し、表20に示した。サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)上の主分画の含有量の変化については、実施例1のロ.サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)方法で測定し、表21に示した。ヒアルロニダーゼ酵素活性の変化は、実施例1のホ.ヒアルロニダーゼ酵素活性方法で測定し、図5に示した。表20、表21及び図5には、各0日(day 0)の含有量や酵素活性を100%にして活性の変化を示した。
【0154】
【表20】
【0155】
【表21】
【0156】
表20及び表21に記載されたように、各剤形別に含有量などが大きな変化無しで維持された。図5から、界面活性剤としてポロキサマー188を使用する場合に、ヒアルロニダーゼ酵素活性が20%以上と維持されていることが見られたし、ポリソルベート20を使用する場合には、20%以下に減少することもあることが見られた。このことから、各剤形別に抗体に対する影響はないが、ポロキサマー188を使用する剤形がヒアルロニダーゼ酵素活性の安定性に影響を与えると考えられる。HP46とrHuPH20は大差がなかった。
【0157】
実施例7.剤形開発:ニボルマブ皮下注射剤形の安定性試験
【0158】
表22に記載されたように、ニボルマブ(Nivolumab)皮下注射剤形を製造し、各剤形の苛酷条件における安定性を確認した。各剤形は、25mg/mLのニボルマブを含み、20mM酢酸ナトリウム(pH 5.5)、106mMトレハロース、85mM塩化ナトリウム、2000units/mLヒアルロニダーゼで基本構成されている。ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)は、HP46とrHuPH20を使用した。界面活性剤としては0.04%ポリソルベート20と0.2%ポロキサマー188を使用した。
【0159】
【表22】
【0160】
表22に記載された各ニボルマブ皮下注射剤形を、苛酷条件である40±2℃、相対湿度60±5%における安定性を確認した。含有量の変化は、実施例1のイ.分光光度計を用いた含有量方法で測定し、表23に示した。サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)上の主分画の含有量の変化については、実施例1のロ.サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)方法で測定し、表24に示した。ヒアルロニダーゼ酵素活性の変化は、実施例1のホ.ヒアルロニダーゼ酵素活性方法で測定し、図6に示した。表22、表23、及び図6では、各0日(day 0)の含有量や酵素活性を100%にして活性の変化を示した。
【0161】
【表23】
【0162】
【表24】
【0163】
表23及び表24に記載されたように、各剤形別に含有量などが大きな変化無しで維持された。図6から、界面活性剤としてポロキサマー188を使用する場合に、ヒアルロニダーゼHP46の酵素活性が60%以上、ヒアルロニダーゼrHuPH20の酵素活性が50%以上を維持していることが見られ、ポリソルベート20を使用する場合には、ヒアルロニダーゼHP46の酵素活性が50%以上、ヒアルロニダーゼrHuPH20の酵素活性が30%以下と維持されていることが見られた。このことから、各剤形別に抗体に対する影響はないが、HP46とポロキサマー188を使用する剤形がヒアルロニダーゼ酵素活性の安定性に影響を与えると考えられる。
【0164】
実施例8.剤形開発:ダラツムマブ皮下注射剤形の安定性試験
【0165】
表25に記載されたように、ダラツムマブ(Daratumumab)皮下注射剤形を製造し、各剤形の苛酷条件における安定性を確認した。各剤形は、60mg/mLのニボルマブを含み、20mM酢酸ナトリウム(pH5.5)、106mMトレハロース、85mM塩化ナトリウム、2000units/mLヒアルロニダーゼで基本構成されている。ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)は、HP46とrHuPH20を使用した。界面活性剤としては0.04%ポリソルベート20と0.2%ポロキサマー188を使用した。
【0166】
【表25】
【0167】
表25に記載された各ダラツムマブ皮下注射剤形を、苛酷条件である40±2℃、相対湿度60±5%における安定性を確認した。含有量の変化は、実施例1のイ.分光光度計を用いた含有量方法で測定し、表26に示した。サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)上の主分画の含有量の変化については、実施例1のロ.サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)方法で測定し、表27に示した。ヒアルロニダーゼ酵素活性の変化は、実施例1のホ.ヒアルロニダーゼ酵素活性方法で測定し、図7に示した。表26、表27、及び図7には、各0日(day 0)の含有量や酵素活性を100%にして活性の変化を示した。
【0168】
【表26】
【0169】
【表27】
【0170】
表26及び表27に記載されたように、各剤形別に含有量などが大きな変化無しで維持された。図7から、界面活性剤としてポロキサマー188を使用する場合に、ヒアルロニダーゼHP46の酵素活性が80%以上、ヒアルロニダーゼrHuPH20の酵素活性が60%以上を維持していることが見られ、ポリソルベート20を使用する場合には、ヒアルロニダーゼHP46の酵素活性が60%以上、ヒアルロニダーゼrHuPH20の酵素活性が50%以下と維持されていることが見られた。このことから、各剤形別に抗体に対する影響はないが、HP46とポロキサマー188を使用する剤形がヒアルロニダーゼ酵素活性の安定性に影響を与えると考えられる。
【0171】
実施例9.剤形開発:ペンブロリズマブ皮下注射剤形の安定性試験
【0172】
表28に記載されたように、ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)皮下注射剤形を製造し、各剤形の苛酷条件における安定性を確認した。各剤形は25mg/mLのペンブロリズマブを含み、20mM酢酸ナトリウム(pH 5.5)、106mMトレハロース、85mM塩化ナトリウム、2000units/mLヒアルロニダーゼで構成されている。ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)は、HP46とrHuPH20を使用した。界面活性剤としては0.2%ポロキサマー188を使用した。
【0173】
【表28】
【0174】
表25に記載された各ペンブロリズマブ皮下注射剤形を、苛酷条件である40±2℃、相対湿度60±5%における安定性を確認した。ヒアルロニダーゼ酵素活性の変化は、実施例1のホ.ヒアルロニダーゼ酵素活性方法で測定し、図8に示した。図8では、各0日(day 0)の含有量や酵素活性を100%にして活性の変化を示した。
【0175】
図8から、界面活性剤としてポロキサマー188を使用する場合にはヒアルロニダーゼの種類に関係なく酵素活性が40%以上と維持されていることが見られた。
【0176】
以上の結果から、抗体タンパク質医薬品では、ヒアルロニダーゼと界面活性剤を変更する場合に、各剤形別に抗体に対する影響はないが、HP46とポロキサマー188を使用する剤形がヒアルロニダーゼ酵素活性の安定性の維持を可能にする影響を与えると考えられる。
【0177】
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【0183】
Zarrintaj P., Ramsey J.D., Samadi A., Atoufic Z., Yazdi M.K., Ganjali M.R., Amirabad L.M., Zangene E., Farokhi M., Formela K., Saeb M.R., Mozafari M., and Thomas S. Poloxamer: A versatile tri-block copolymer for biomedical applications. Acta Biomaterialia (2020) 110, 37-67
【0184】
Wearable Injectors. OnDrugDelivery (2019) 100, 04-91
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明に係る医薬組成物は、皮下投与(subcutaneous injection)のために使用可能であるだけでなく、非常に安定しているため、抗癌剤、好ましくは抗体医薬品、より好ましくは抗HER2抗体及び免疫チェックポイント抗体などの抗体医薬品、及びPH20変異体の活性が長期間維持され得、よって、皮下投与剤形の生産コストの他、医療コストの節減にも寄与でき、患者の便宜性側面においても非常に有利である利点がある。
【配列表フリーテキスト】
【0186】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】