(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】RNAプログラム可能な細胞編集のための組成物およびシステム、ならびにそれを作製および使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20241106BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20241106BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241106BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20241106BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20241106BHJP
C12Q 1/6897 20180101ALI20241106BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241106BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20241106BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/52 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N15/09 100
C12Q1/02
C12Q1/6897
A61P43/00 105
A61P25/08
A61P25/28
A61K48/00
A61P25/04
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525343
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022079008
(87)【国際公開番号】W WO2023077138
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】598174705
【氏名又は名称】コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ゼット. ジョシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ヨンジュン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR35
4B063QR80
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4B065AA90X
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4C084AA13
4C084MA17
4C084MA21
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4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZB211
4C084ZB212
(57)【要約】
readrRNA(内因性ADARによるRNAセンシング)分子は、哺乳動物神経系の細胞、例えば哺乳動物中枢神経系および/もしくは末梢神経系の神経または非神経細胞を含む細胞の細胞型もしくは細胞状態のセンシングおよび検出を容易にし、ならびに/または選択された細胞へのエフェクタータンパク質の送達を容易にする、モジュラーRNA分子である。そのようなモジュラーRNA分子および別の核酸(モジュラーRNA分子に連結または非連結)を含む組成物は、CellREADR(内因性ADARによるRNAセンシングを通した細胞アクセス)である。CellREADRは、readrRNAを介して哺乳動物神経系の細胞における選択された細胞RNAの存在を感知し、細胞を定義するRNAの検出を哺乳動物神経系の細胞における1つまたは複数のエフェクタータンパク質の翻訳と組み合わせるために、ADAR(RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ)によって媒介されるRNA編集を活用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)哺乳動物の中枢神経系の細胞の細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに
(ii)タンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、前記タンパク質コードドメインが、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域
を含む、モジュラーRNA分子であって、
Adar酵素を含む前記細胞への前記モジュラーRNAの導入の際に、前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間および前記細胞RNAの前記対応するヌクレオチド区間が、前記停止コドンを含むRNA二重鎖を形成し、前記RNA二重鎖に含まれる前記停止コドンが、前記細胞においてADARによって編集され、それによって、前記タンパク質の翻訳が可能になる、
モジュラーRNA分子。
【請求項2】
i.哺乳動物の末梢神経系の細胞の細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに
ii.タンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、前記タンパク質コードドメインが、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域
を含む、モジュラーRNA分子であって、
Adar酵素を含む前記細胞への前記モジュラーRNAの導入の際に、前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間および前記細胞RNAの前記対応するヌクレオチド区間が、前記停止コドンを含むRNA二重鎖を形成し、前記RNA二重鎖に含まれる前記停止コドンが、前記細胞においてADARによって編集され、それによって、前記タンパク質の翻訳が可能になる、
モジュラーRNA分子。
【請求項3】
前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、mRNAの少なくとも一部分とRNA二重鎖を形成することが可能であり、前記一部分が、連続ヌクレオチドの対応する区間を含む、請求項1または請求項2に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項4】
前記タンパク質コード領域が、エフェクタータンパク質をコードする、請求項1または請求項2に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項5】
前記分子が、前記センサードメインと前記3’タンパク質コードドメインとの間に位置する自己切断2Aペプチドをさらにコードする、請求項1または請求項2に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項6】
前記自己切断2Aペプチドが、T2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、およびF2Aペプチドのうちの1つまたは複数からなる群から選択される、請求項5に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項7】
3’タンパク質コードドメインが、標識、転写活性化因子、および転写抑制因子の群から選択されるタンパク質を含む、請求項1または請求項2に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項8】
i)(i)中枢神経系の哺乳動物細胞の細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインであって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、センサードメイン、および(ii)エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コードドメインであって、前記第1のタンパク質コード領域が、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、第1のタンパク質コードドメインを含む、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸、ならびに
ii)第2のタンパク質コードドメインを含む第2の核酸
を含む組成物。
【請求項9】
i)(i)末梢神経系の哺乳動物細胞の細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインであって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、センサードメイン、および(ii)エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コードドメインであって、前記第1のタンパク質コード領域が、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、第1のタンパク質コードドメインを含む、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸、ならびに
ii)第2のタンパク質コードドメインを含む第2の核酸
を含む組成物。
【請求項10】
前記第1および第2の核酸が、単一の核酸分子を含む、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1および第2の核酸が、2つの核酸分子を含む、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1および第2の核酸が、共有結合的に連結されている、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2のタンパク質コードドメインが、転写制御エレメント、必要に応じて、プロモーターを含む遺伝子内に含まれている、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記エフェクタータンパク質が、前記遺伝子に結合する、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項15】
前記第2のタンパク質コードドメインの発現が、前記エフェクタータンパク質によってモジュレートされる、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子または転写抑制因子をコードする、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1のタンパク質コードドメインが、DNAリコンビナーゼをコードする、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項18】
前記細胞が、哺乳動物皮質細胞を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項19】
前記細胞が、前記末梢神経系の哺乳動物シュワン細胞または哺乳動物サテライト細胞を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項20】
前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子を含むエフェクタータンパク質をコードする、請求項8に記載の組成物。
【請求項21】
前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、Fezf2遺伝子によってコードされる皮質細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的である、請求項8または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記第2の核酸が、誘導性プロモーターの転写制御下の第2のタンパク質コード領域を含む、請求項8、20または21に記載の組成物。
【請求項23】
前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子を含むエフェクタータンパク質をコードする、請求項9に記載の組成物。
【請求項24】
前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、末梢CNS細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的である、請求項9または23に記載の組成物。
【請求項25】
前記第2の核酸が、誘導性プロモーターの転写制御下の第2のタンパク質コード領域を含む、請求項9、23、または24に記載の組成物。
【請求項26】
前記第1のタンパク質コード領域が、以下:
〇チミジンキナーゼ(TK)およびシトシンデアミナーゼ(CD)からなる群から選択される細胞死滅タンパク質、
〇CASP3、CASP9、BCL、GSDME、GSDMD、GZMAおよびGZMBからなる群から選択されるプログラム細胞死タンパク質、
〇ChR2およびDREADD-M3Dqからなる群から選択される神経活性化タンパク質、
・IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15およびCD40Lからなる群から選択される免疫エンハンサータンパク質、
・NaChBacおよびKir2.1からなる群から選択される生理学的編集タンパク質、f)リシンを含むタンパク質合成阻害タンパク質、
・DREADD-hM4D、NpHRおよびGtACR1からなる群から選択される神経阻害タンパク質、
・NEURODなどの神経細胞運命に関与するタンパク質、ならびに
・表皮増殖因子を含む細胞再生と関与するタンパク質
から選択されるエフェクタータンパク質をコードする、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1もしくは2に記載のモジュラーRNA分子、または請求項8もしくは請求項9に記載の組成物、および/あるいは請求項1もしくは2に記載の前記モジュラーRNA分子、または請求項8もしくは請求項9に記載の前記組成物をコードするDNAを含む核酸送達ビヒクル。
【請求項28】
ナノ粒子、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、および細胞送達のための選択的内因性封入(SEND)システムからなる群から選択される、請求項27に記載の核酸送達ビヒクル。
【請求項29】
ウイルスベクターを含む、請求項28に記載の核酸送達ビヒクル。
【請求項30】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルスからなる群から選択される、請求項29に記載の核酸送達ビヒクル。
【請求項31】
DNAベクターによってコードされる、請求項1または請求項2に記載のモジュラーRNA分子。
【請求項32】
前記モジュラーRNA分子が、DNAベクターによってコードされる、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項33】
前記モジュラーRNA分子が、DNAベクターによってコードされる、請求項27に記載の送達ビヒクル。
【請求項34】
請求項1もしくは請求項2に記載のモジュラーRNA分子、請求項8もしくは請求項9に記載の組成物、または請求項27に記載の送達ビヒクル、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項35】
請求項1もしくは請求項2に記載のモジュラーRNA分子、請求項8もしくは請求項9に記載の組成物、または請求項27に記載の送達ビヒクルを含む細胞。
【請求項36】
哺乳動物細胞である、請求項31に記載の細胞。
【請求項37】
請求項1もしくは請求項2に記載のモジュラーRNA分子、請求項8もしくは請求項9に記載の組成物、または請求項27に記載の送達ビヒクル、およびそれらのためのパッケージングを含むキット。
【請求項38】
請求項1もしくは2に記載のモジュラーRNA、前記モジュラーRNAをコードする請求項8もしくは9に記載の核酸組成物、または前記モジュラーRNAもしくは前記モジュラーRNAをコードする核酸組成物を含む請求項27に記載の送達ビヒクルを哺乳動物の選択された細胞に導入する方法であって、
前記哺乳動物の細胞を前記モジュラーRNA分子、前記モジュラーRNAをコードする前記核酸組成物、または前記モジュラーRNAもしくは前記モジュラーRNAをコードする核酸組成物を含む前記送達ビヒクルと、前記哺乳動物の前記細胞が、前記モジュラーRNA、または前記モジュラーRNAもしくは前記モジュラーRNAをコードする前記核酸組成物を含む前記送達ビヒクルを含むことを可能にする条件下で接触させるステップを含み、
前記モジュラーRNAが、請求項1または請求項2に記載されるものであり、前記核酸組成物が、請求項8または請求項9に記載されるものであり、前記送達ビヒクルが、請求項27に記載されるものである、
方法。
【請求項39】
選択された標的細胞RNAを含む哺乳動物の細胞において、停止コドンのADAR編集を誘発して、インフレームの下流のコードされるタンパク質の発現を可能にする方法であって、
前記モジュラーRNAが前記細胞に含まれる条件下で、モジュラーRNA分子を前記哺乳動物の前記細胞に導入するステップであって、前記モジュラーRNAが、(i)前記選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、前記センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(ii)エフェクタータンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、前記タンパク質コード領域が、前記センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含み、
前記哺乳動物への前記モジュラーRNA分子の導入の際に、RNA二重鎖が、前記細胞において、前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間と前記細胞RNAの連続ヌクレオチドの前記対応する区間との間で形成され、前記RNA二重鎖が、前記ADAR編集可能停止コドンを含み、ADARが、前記RNA二重鎖に含まれる前記停止コドンを編集し、それによって、前記タンパク質の翻訳を可能にし、
前記タンパク質が、前記哺乳動物において産生される、ステップ
を含む、方法。
【請求項40】
哺乳動物における疾患または障害を処置するための方法であって、
薬剤を準備するステップであって、前記薬剤が、請求項1もしくは請求項2に記載のモジュラーRNA分子、または請求項8、9、11もしくは12に記載の核酸組成物、または請求項27に記載の送達ビヒクルを含む、ステップ、および
前記哺乳動物の選択された細胞において、前記3’のコードされるタンパク質または前記エフェクタータンパク質の翻訳を可能にする治療有効量で、前記薬剤を前記哺乳動物に投与し、それによって、前記細胞において前記タンパク質を産生させるステップであって、前記細胞における前記タンパク質の産生が、前記哺乳動物における前記疾患または障害の処置を提供する、ステップ
を含む、方法。
【請求項41】
請求項8もしくは請求項9に記載の前記組成物または請求項23に記載の前記送達ビヒクルを含む前記薬剤が、投与され、前記薬剤に含まれる前記エフェクタータンパク質をコードする前記第1のタンパク質コード領域が、前記第2のタンパク質コード領域の発現を活性化するトランス活性化タンパク質をコードし、前記選択された細胞における前記第2のタンパク質コード領域の発現が、前記疾患または障害の処置において治療的に有効である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前足の機械的刺激に応答する、測光法によって測定される、マウスの前肢体性感覚皮質におけるL5b/L6皮質下行性投射ニューロンシグナルを刺激する方法であって、
請求項8に記載の組成物を前記マウスに投与するステップであって、前記センサードメインが、Ctip2またはFezfをコードする細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含み、前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子を含むエフェクタータンパク質をコードし、前記第2の核酸が、誘導性プロモーターの転写制御下のレポータータンパク質をコードする遺伝子を含み、
前記投与が、前記エフェクタータンパク質および前記レポータータンパク質の産生を提供し、
それによって、前記マウスの前記前肢体性感覚皮質における前記L5b/L6 CFPNシグナルの刺激を可能にする、ステップ
を含む、方法。
【請求項43】
マウスの尾側前肢領域(CFA)の光刺激に応答する、前肢の移動を刺激する方法であって、
請求項8に記載の組成物を前記マウスに投与するステップであって、前記センサードメインが、Ctip2をコードする細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含み、前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子を含むエフェクタータンパク質をコードし、前記第2の核酸が、誘導性プロモーターの転写制御下の光活性化レポータータンパク質をコードする遺伝子を含み、
前記投与が、前記エフェクタータンパク質および前記光活性化レポータータンパク質の産生を提供し、それによって、前記マウスの前記前肢の動きの光刺激を可能にする、ステップ
を含む、方法。
【請求項44】
第2の遺伝子が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターに作動可能に連結されており、前記第2の遺伝子が、高感度黄色蛍光タンパク質(eYFP)をコードし、前記投与が、高感度黄色蛍光タンパク質の産生を提供する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
請求項1もしくは請求項2に記載のモジュラーRNA分子、および/または請求項8もしくは請求項9に記載の組成物、および/または請求項27に記載の送達システム、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項46】
請求項1もしくは請求項2に記載のモジュラーRNA分子、および/または請求項8もしくは請求項9に記載の組成物、および/または請求項27に記載の送達システムを含む細胞。
【請求項47】
請求項1もしくは請求項2に記載のモジュラーRNA分子、および/または請求項8もしくは請求項9に記載の組成物、および/または請求項27に記載の送達システムを含むキット。
【請求項48】
in vivoで哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンを同定する方法であって、
組成物のS1バレル皮質および海馬の細胞へのトランスフェクション、ならびに前記タンパク質コード領域の発現を可能にする条件下で、請求項8に記載の組成物を前記哺乳動物に投与するステップであって、
前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、皮質細胞の選択された細胞vGAT RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、
前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子を含むエフェクタータンパク質および第1のレポータータンパク質を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、前記第2の核酸が、誘導性プロモーターの転写制御下の第2のレポータータンパク質のコード領域を含み、
前記モジュラーRNA分子を含む前記第1の核酸が、プロモーターの制御下にあり、前記モジュラーRNA分子が、前記センサードメインの上流にあって、プロモーターの制御下の第3のレポータータンパク質をコードする遺伝子を含み、
前記タンパク質が、前記コード領域から産生され、
vGAT mRNAを含む前記哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンの同定が、前記第1、第2および第3のレポータータンパク質のうちの1つまたは複数の検出の際に可能である、ステップ
を含む、方法。
【請求項49】
sesRNA標的化vGAT mRNAが、vGAT mRNAのエクソン1の全部または一部分に相補的である、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
in vivoで哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンを同定する方法であって、組成物による前記哺乳動物皮質の細胞のトランスフェクションおよび前記組成物によってコードされる前記タンパク質の産生を可能にする条件下で、請求項8に記載の組成物を哺乳動物に投与するステップであって、
前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、皮質細胞の選択された細胞Tle4 RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、
前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子を含むエフェクタータンパク質および第1のレポータータンパク質を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、
前記第2の核酸が、誘導性プロモーターの転写制御下の第2のレポータータンパク質のコード領域を含み、
前記モジュラーRNA分子を含む前記第1の核酸が、プロモーターの制御下にあり、
前記モジュラーRNA分子が、前記センサードメインの上流にあって、プロモーターの制御下の第3のレポータータンパク質をコードする遺伝子を含み、
前記哺乳動物皮質の細胞における前記第1、第2および第3のレポータータンパク質のうちの1つまたは複数の検出が、TLE4陽性投射ニューロンの同定を可能にし、それによって、前記哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンを同定する、ステップ
を含む、方法。
【請求項51】
前記センサードメインが、Tle4 mRNAのエクソン15の全部または一部分に相補的である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
培養物において、哺乳動物皮質の皮層のフォークヘッドボックスタンパク質P2(FOXP2)RNAを含む細胞の存在を決定する方法であって、
哺乳動物皮質の培養された皮層を請求項9に記載の組成物と接触させるステップであって、
前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、皮質細胞の選択されたFOXP2細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、
前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子を含むエフェクタータンパク質および第1のレポータータンパク質をコードする遺伝子を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、
前記第2の核酸が、誘導性プロモーターの制御下の第2のレポータータンパク質のコード領域を含み、
前記モジュラーRNA分子が、前記センサードメインの上流の第3のレポータータンパク質をコードする遺伝子をさらに含む、
ステップ、
前記第1、第2および第3のレポータータンパク質のうちの1つまたは複数を検出するステップであって、前記皮層の細胞体における前記検出が、前記細胞の存在を示す、ステップ
を含む、方法。
【請求項53】
焦点性てんかん発作を促進する哺乳動物における神経活動を抑制するための方法であって、
治療有効量の薬剤を前記哺乳動物に投与するステップであって、前記薬剤が、請求項1に記載のモジュラーRNA分子、または請求項8に記載の核酸組成物、または請求項27に記載の送達ビヒクルを含み、
前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、SST遺伝子によってコードされる皮質細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、
前記第1のタンパク質コードドメインが、a)転写活性化因子およびb)第1のエフェクタータンパク質をコードし、
前記第2の核酸が、前記転写活性化因子によって誘導される誘導性プロモーターの制御下の第2のエフェクタータンパク質のコード領域を含み、
前記モジュラーRNA分子が、前記センサードメインの上流の第3のエフェクタータンパク質をコードする遺伝子をさらに含み、
前記組成物が、DREADD受容体をコードする遺伝子またはPSAMをコードする遺伝子をさらに含み、
前記DREADDまたは前記PSAM遺伝子によってコードされる前記受容体を活性化するのに有効な薬物の存在下で、前記DREADD受容体または前記PSAM受容体が活性化され、それによって、前記哺乳動物における1つまたは複数の前記エフェクタータンパク質の産生、およびてんかんの処置を可能にする、ステップ
を含む、方法。
【請求項54】
焦点性てんかん発作を促進する哺乳動物の神経活動を抑制するための方法であって、
治療有効量の薬剤を前記哺乳動物に投与するステップであって、前記薬剤が、請求項1に記載のモジュラーRNA分子、または請求項11に記載の核酸組成物、または請求項34に記載の送達ビヒクルを含み、前記モジュラーRNAの前記センサードメインの連続ヌクレオチドの前記区間が、皮質細胞の選択されたcfos細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子を含む第1のエフェクタータンパク質およびosmFlagをコードする遺伝子を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、
前記第2の核酸が、誘導性プロモーターの制御下の第1のレポータータンパク質のコード領域を含み、
前記モジュラーRNA分子を含む前記第1の核酸が、プロモーターの制御下にあり、
前記モジュラーRNA分子が、前記センサードメインの上流にあって、前記プロモーターの制御下の第2のレポータータンパク質をコードする遺伝子を含み、
前記薬剤が、DREADD受容体をコードする遺伝子またはPSAMをコードする遺伝子をさらに含み、
前記投与が、前記DREADDまたは前記PSAM受容体を活性化する薬物の存在下で、前記哺乳動物の選択された細胞における前記エフェクタータンパク質の翻訳を可能にし、それによって、前記細胞において前記タンパク質が産生され、前記細胞における前記タンパク質の産生が、前記哺乳動物において、焦点性てんかん発作を促進する神経活動を抑制するのに有効である、ステップ
を含む、方法。
【請求項55】
哺乳動物における慢性疼痛を処置する方法であって、
治療有効量の薬剤を前記哺乳動物に投与するステップであって、前記薬剤が、請求項1もしくは2に記載のモジュラーRNA分子、または請求項12に記載の核酸組成物、または請求項34に記載の送達ビヒクルを含み、
前記モジュラーRNAの前記センサードメインが、選択されたTRPV1またはNaV1.8 細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的な連続ヌクレオチドの区間、および転写活性化因子を含むエフェクタータンパク質をコードする前記第1のタンパク質コードドメインを含み、
前記モジュラーRNAが、NaV1.7またはNaV1.8 RNAに結合するshRNAをコードするドメインをさらに含み、前記shRNAをコードする前記ドメインが、誘導性プロモーターの制御下にあり、
前記哺乳動物の前記細胞における前記転写活性化因子および前記shRNAの産生が、それによって、前記哺乳動物における慢性疼痛を処置する、ステップ
を含む、方法。
【請求項56】
哺乳動物におけるアルツハイマー病を処置する方法であって、
治療有効量の薬剤を前記哺乳動物に投与するステップであって、前記薬剤が、請求項1に記載のモジュラーRNA分子、または請求項12に記載の核酸組成物、または請求項34に記載の送達ビヒクルを含み、
前記モジュラーRNAの前記センサードメインが、以下の遺伝子:a)アルデヒドデヒドロゲナーゼファミリー1メンバーL1のヒトアストロサイトマーカー遺伝子(Aldh1L1)、b)グリア線維酸性タンパク質(GFAP)遺伝子、c)興奮性アミノ酸トランスポーター1(EAAT1)遺伝子、およびd)ミクログリア遺伝子:C-X3-Cモチーフケモカイン受容体1(CX3CR1)、e)膜貫通タンパク質119(TMEM119)、およびf)イオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA-1)から選択される遺伝子によってコードされる選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的な連続ヌクレオチドの前記区間を含み、
前記モジュラーRNAの前記第1のタンパク質コードドメインが、転写活性化因子をコードし、
前記モジュラーRNAが、ApoE4の抑制因子をコードする第2のコードドメインをさらに含み、前記第2のコードドメインが、誘導性プロモーターの制御下にあり、
前記細胞における前記転写活性化因子および前記抑制因子の産生が、それによって、前記哺乳動物におけるアルツハイマー病の進行を処置および/または防止する、ステップ
を含む、方法。
【請求項57】
前記組成物を前記哺乳動物の前記S1バレル皮質および海馬に投与するステップを含む、請求項44または46に記載の方法。
【請求項58】
前記第1のレポータータンパク質が、抗原タンパク質タグを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項59】
前記抗原タンパク質タグが、smV5を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
転写活性化因子が、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含む、請求項20、23、38、39、44~49に記載の組成物。
【請求項61】
前記第2のタンパク質コード領域が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下にある、請求項22、25、38、39、44~49に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
このPCT出願は、2022年5月19日に出願された米国仮出願第63/343,669号、および2021年10月29日に出願された同第63/273,343号に基づく利益を主張し、それぞれの内容は、それらの全体が、本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する陳述
この発明は、国立衛生研究所によって付与された連邦政府助成金番号U19MH114821-03およびDP1MH129954の政府支援で行われた。連邦政府は、この発明に対する特定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、パテントセンターを介して、WIPO標準のST.26 XMLファイルとして提出された配列表を含む。2022年10月31日に作成された前記XMLファイルは、「123658-10903.xml」という名称であり、193,913バイトのサイズである。配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
背景
細胞型の多様性は、個々の生物内の生命の形態および生理学的システムの多様性の基礎になる[1]。それらの異なる遺伝子発現プロファイル、形態学的および生理学的特性、ならびに組織機能によって定義される細胞型は、遺伝情報が生物の表現型および挙動を形作る媒介である。すべての身体機能は、細胞型の間の相互作用から出現し、異常な細胞型の生理および機能は、無数の疾患を生じさせる[2]。最近のハイスループット単一細胞ゲノムアプローチは、ヒト身体および多くの他の生物における分子的に定義された主要な細胞型のすべてを同定する見込みがある[3][4]。分子プロファイリングを超えて、生物学的組織化のレベルにわたって、組織構造およびシステム機能におけるそれらの特異的な役割を同定するために、ありとあらゆる細胞型をモニターおよび操作することが必要である。
【0005】
多細胞生物における細胞型のアクセスおよび操作の文脈では、すべてではないがほとんどの遺伝的アプローチは、これまでに、生殖細胞系列細胞もしくは体細胞を通してゲノム内におけるDNA調節エレメントを操作することによって、または転写エンハンサーに基づくウイルスベクターを使用することによって、細胞型特異的なmRNA発現を再現しようと試みている。これまでに、細胞型に対するほぼすべての遺伝的アプローチは、一握りのみの生物の生殖細胞系列操作を主に通して、ある特定の細胞特異的RNA発現を模倣するツール遺伝子(例えば、マーカー、センサー、エフェクター)を発現するためのDNAに基づく転写調節エレメントに依拠している[5~7]。CRISPR[8~10]を含む、すべての生殖細胞系列アプローチは、本質的に扱いにくく、遅く、増減および一般化が困難であり、特に、霊長類およびヒトにおいて、倫理的な問題を生じる[11、12]。最近、ウイルスベクターに基づく転写エンハンサーが、動物における細胞型を標的化するために見込みがあることを示したが[13~19]、そのようなエンハンサーは、同定および検証することが困難であり、多くの場合、標的遺伝子および細胞型とのそれらの複雑な関係に起因して、大規模な努力を必要とする[13]。通常CRISPR/Cas9技術による、体細胞操作は、現在、低効率であり、意図しないオフターゲットを含む傾向がある。エンハンサーウイルスベクターアプローチも、遺伝子発現および細胞型とのその複雑な関係に根差した主要な限界を有し、これは、大規模な努力、特殊専門技術、広範な検証を必要とし、種にわたって、真にスケーラブルで、ユーザーフレンドリーで、一般化可能である可能性は低い。そのため、転写エンハンサーに基づくウイルスベクターが、動物における体細胞型を標的化するために見込みがあることを示すが、そのようなエンハンサーは、同定および検証することが困難であり、多くの場合、標的遺伝子および細胞型とのそれらの複雑な関係に起因して、大規模な努力を必要とする。本質的には、すべてのDNAおよび転写に基づくアプローチは、細胞型特異的RNA発現パターンを模倣および活用する試みにおいて、本質的に間接的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
本開示は、部分的には、DNAに基づく転写プロセスを避け、細胞型を定義するRNAに直接関与する、細胞型技術の新しいクラスの発見に基づく。一部の実施形態では、この新規技術(CellREADR:内因性ADAR[RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ]によるRNAセンシングを通した細胞アクセスと称する)は、細胞RNAの存在を検出し、細胞型をモニターおよび操作するためにエフェクタータンパク質の翻訳のスイッチをオンにするために、すべての動物細胞に遍在するRNAセンシングおよび編集メカニズムを利用する。本明細書に提供される組成物および方法は、標的RNAの存在のおかげで特定の細胞型を標的にする、ワトソン-クリック塩基対合を通した単一RNA分子のオペレーティングとして、展開可能である。したがって、CellREADRは、種にわたって、本質的に特異的で、構築および使用するのが容易で、スケーラブルで、プログラム可能で、一般的である。
【0007】
したがって、本開示は、(i)哺乳動物の中枢神経系の細胞の細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(ii)タンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、タンパク質コードドメインが、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含む、モジュラーRNA分子であって、Adar酵素を含む哺乳動物の中枢神経系の細胞へのモジュラーRNAの導入の際に、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間および細胞RNAの対応するヌクレオチド区間が、停止コドンを含むRNA二重鎖を形成し、RNA二重鎖に含まれる停止コドンが、細胞においてADARによって編集され、それによって、タンパク質の翻訳が可能になる、モジュラーRNA分子を提供する。
【0008】
(i)哺乳動物の末梢神経系の細胞の細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(ii)タンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、タンパク質コードドメインが、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含む、モジュラーRNA分子であって、Adar酵素を含む哺乳動物の末梢神経系の細胞へのモジュラーRNAの導入の際に、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間および細胞RNAの対応するヌクレオチド区間が、停止コドンを含むRNA二重鎖を形成し、RNA二重鎖に含まれる停止コドンが、細胞においてADARによって編集され、それによって、タンパク質の翻訳が可能になる、モジュラーRNA分子も本明細書に開示される。モジュラーRNA分子では、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間は、mRNAの少なくとも一部分とRNA二重鎖を形成することが可能である。モジュラーRNA分子では、タンパク質コード領域は、エフェクタータンパク質をコードする。モジュラーRNA分子の一態様では、これは、センサードメインとエフェクターRNA領域との間に位置する自己切断2Aペプチドをさらにコードする。モジュラーRNA分子の一態様では、自己切断2Aペプチドは、T2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、およびF2Aペプチドのうちの1つまたは複数からなる群から選択される。モジュラーRNA分子の一態様では、efRNAコードタンパク質は、標識、および転写活性化因子または抑制因子の群から選択されるタンパク質を含む。
【0009】
(i)(a)中枢神経系の哺乳動物細胞の細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインであって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、センサードメイン、および(b)エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コードドメインであって、第1のタンパク質コード領域が、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、第1のタンパク質コードドメインを含む、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸、ならびに(ii)第2のタンパク質コードドメインを含む第2の核酸を含む組成物も本明細書に開示される。(i)(a)末梢神経系の哺乳動物細胞の細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインであって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、センサードメイン、および(b)エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コードドメインであって、第1のタンパク質コード領域が、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、第1のタンパク質コードドメインを含む、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸、ならびに(ii)第2のタンパク質コードドメインを含む第2の核酸を含む組成物も本明細書に開示される。組成物の一態様では、第1および第2の核酸は、単一の核酸分子を含む。組成物の一態様では、第1および第2の核酸は、2つの核酸分子を含む。組成物の一態様では、第1および第2の核酸は、共有結合的に連結されている。組成物の一態様では、第2のタンパク質コードドメインは、転写制御エレメント、必要に応じて、プロモーターを含む遺伝子内に含まれている。組成物の一態様では、エフェクタータンパク質は、遺伝子に結合する。組成物の一態様では、第2のタンパク質コードドメインの発現は、エフェクタータンパク質によってモジュレートされる。組成物の一態様では、第1のタンパク質コードドメインは、転写活性化因子または転写抑制因子をコードする。組成物の一態様では、第1のタンパク質コードドメインは、DNAリコンビナーゼをコードする。組成物の一態様では、脳細胞は、哺乳動物皮質細胞を含む。組成物の一態様では、脳細胞は、末梢神経系の哺乳動物シュワン細胞または哺乳動物サテライト細胞を含む。組成物の一態様では、第1のタンパク質コードドメインは、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質をコードし、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間は、Fezf2遺伝子によってコードされる脳皮質細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、第2の核酸は、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下の第2のタンパク質コード領域を含む。組成物の一態様では、第1のタンパク質コードドメインは、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質をコードし、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間は、末梢CNS細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、第2の核酸は、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下の第2のタンパク質コード領域を含む。組成物の一態様では、第1のタンパク質コード領域は、チミジンキナーゼ(TK)およびシトシンデアミナーゼ(CD)、CASP3、CASP9、BCL、GSDME、GSDMD、GZMAおよびGZMBからなる群から選択されるプログラム細胞死タンパク質、ChR2およびDREADD-M3Dqからなる群から選択される神経活性化タンパク質、IFNB、IFNG、TNFA、IL2、IL12、IL15およびCD40Lからなる群から選択される免疫エンハンサータンパク質、NaChBacおよびKir2.1からなる群から選択される生理学的編集タンパク質、リシンを含むタンパク質合成阻害タンパク質、DREADD-hM4D、NpHRおよびGtACR1からなる群から選択される神経阻害タンパク質、NEURODなどの神経細胞運命に関与するタンパク質、表皮増殖因子を含む細胞再生と関与するタンパク質からなる群から選択される細胞死滅タンパク質をコードする。
【0010】
本明細書に記載されるモジュラーRNA分子、または本明細書に記載される組成物、または本明細書に記載されるモジュラーRNA分子をコードするDNAを含む核酸送達ビヒクルも本明細書に開示される。一態様では、核酸送達ビヒクルは、ナノ粒子、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、および細胞送達のための選択的内因性封入(SEND)システムであり得る。一態様では、核酸送達ビヒクルは、ウイルスベクターを含み、ウイルスベクターは、限定されるものではないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルスからなるものを含む。
【0011】
DNAベクターによってコードされるモジュラーRNA分子も本明細書に開示される。モジュラーRNA分子が、DNAベクターによってコードされる、組成物も本明細書に開示される。DNAベクターによってコードされるモジュラーRNA分子を含む、送達ビヒクルも本明細書に開示される。本明細書に記載されるモジュラーRNA分子、および/または本明細書に記載されるモジュラーRNA分子を含む組成物、および/または本明細書に記載される送達ビヒクルと一緒に、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物も本明細書に開示される。本明細書に記載されるモジュラーRNA分子、および/または本明細書に記載されるモジュラーRNA分子を含む組成物、および/または本明細書に記載される送達ビヒクルを含む細胞も本明細書に開示される。また、哺乳動物細胞である、細胞も本明細書に開示される。本明細書に記載されるモジュラーRNA分子、および/または本明細書に記載されるモジュラーRNA分子を含む組成物、および/または本明細書に記載される送達ビヒクル、およびそれらのためのパッケージングを含むキットも本明細書に開示される。
【0012】
モジュラーRNA、またはモジュラーRNAをコードする核酸組成物、またはモジュラーRNAもしくはモジュラーRNAをコードする核酸組成物を含む送達ビヒクルを哺乳動物の選択された細胞に導入する方法であって、哺乳動物の細胞が、本明細書に記載されるモジュラーRNAまたはモジュラーRNAもしくはモジュラーRNAをコードする核酸組成物を含む送達ビヒクルを含むことを可能にする条件下で、哺乳動物の細胞をモジュラーRNA分子、モジュラーRNAをコードする核酸組成物、またはモジュラーRNAもしくはモジュラーRNAをコードする核酸組成物を含む送達ビヒクルと接触させるステップを含む、方法も本明細書に開示される。
【0013】
選択された標的細胞RNAを含む哺乳動物の細胞において、停止コドンのADAR編集を誘発して、インフレームの下流のコードされるタンパク質の発現を可能にする方法であって、モジュラーRNAが細胞に含まれる条件下で、モジュラーRNA分子を哺乳動物の細胞に導入するステップであって、モジュラーRNAが、(i)選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含むセンサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、ADARによって編集可能な停止コドンを含む、5’領域、ならびに(ii)エフェクタータンパク質をコードするドメインを含む3’領域であって、タンパク質コード領域が、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、3’領域を含み、哺乳動物へのモジュラーRNA分子の導入の際に、RNA二重鎖が、細胞において、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間と細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間との間で形成され、RNA二重鎖が、ADAR編集可能停止コドンを含み、ADARが、RNA二重鎖に含まれる停止コドンを編集し、それによって、タンパク質の翻訳を可能にし、タンパク質が、哺乳動物において産生される、ステップを含む、方法も本明細書に開示される。
【0014】
哺乳動物における疾患または障害を処置するための方法であって、薬剤を準備するステップであって、薬剤が、本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを含む、ステップ、ならびに哺乳動物の選択された細胞において、エフェクタータンパク質の翻訳を可能にする治療有効量で、薬剤を哺乳動物に投与し、それによって、細胞においてタンパク質を産生させるステップであって、細胞におけるタンパク質の産生が、哺乳動物における疾患または障害の処置を提供する、ステップを含む、方法も本明細書に開示される。方法のある態様では、薬剤は、本明細書に記載されるモジュラーRNA分子、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを含む薬剤を含む組成物を含み、投与され、薬剤に含まれるエフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コード領域は、第2のタンパク質コード領域の発現を活性化するトランス活性化タンパク質をコードし、選択された細胞における第2のタンパク質コード領域の発現は、疾患または障害の処置において治療的に有効である。
【0015】
前足の機械的刺激に応答する、測光法によって測定される、マウスの前肢体性感覚皮質におけるL5b/L6皮質下行性投射ニューロン(CFPN)シグナルを刺激するための方法であって、組成物をマウスに投与するステップであって、センサードメインが、Ctip2をコードする細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含み、第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質をコードし、第2の核酸が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下のカルシウムインジケーターGCaMP6sをコードする遺伝子を含む、ステップを含む、方法も本明細書に開示される。
【0016】
マウスの尾側前肢領域(CFA)の光刺激に応答する、前肢の移動を刺激するための方法であって、組成物をマウスに投与するステップであって、センサードメインが、Ctip2をコードする細胞RNAの連続ヌクレオチドの対応する区間に相補的である連続ヌクレオチドの区間を含み、第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質をコードし、第2の核酸が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下の光活性化イオンチャネルのチャネルロドプシン-2をコードする遺伝子を含む、ステップを含む、方法も本明細書に開示される。方法の一態様では、第2の遺伝子は、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターに作動可能に連結されており、第2の遺伝子は、高感度黄色蛍光タンパク質(eYFP)をコードする。
【0017】
本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを含む薬剤、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物も本明細書に記載される。本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを含む細胞も本明細書に記載される。本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを含むキットも本明細書に記載される。
【0018】
in vivoで哺乳動物皮質における小胞状GABAトランスポーター(vGAT)mRNAを標的化することを含む、in vivoで哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンを同定する方法であって、本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを哺乳動物のS1バレル皮質および海馬に投与するステップであって、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間が、vGAT遺伝子によってコードされる皮質細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質およびsmV5をコードする遺伝子を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、第2の核酸が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下の緑色蛍光タンパク質のコード領域を含み、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸が、hSynプロモーターの転写制御下にあり、モジュラーRNA分子が、センサードメインの上流にあり、hSynプロモーターの転写制御下のmCherryをコードする遺伝子を含み、投与の際に、哺乳動物のS1バレル皮質および海馬におけるvGAT mRNAが、赤紫色およびGFPで共標識され、哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンの同定を示す、ステップを含む、方法も本明細書に記載される。方法の一態様では、sesRNA標的化vGAT mRNAは、vGAT mRNAのエクソン1の全部または一部分に相補的である。
【0019】
トランスデューシン様エンハンサータンパク質4(Tle4)mRNAを標的化することを含む、in vivoで哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンを同定する方法であって、本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを哺乳動物のS1バレル皮質に投与するステップであって、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間が、Tle4遺伝子によってコードされる皮質細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質およびsmFlagをコードする遺伝子を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、第2の核酸が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下の緑色蛍光タンパク質のコード領域を含み、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸が、hSynプロモーターの転写制御下にあり、モジュラーRNA分子が、センサードメインの上流にあり、hSynプロモーターの転写制御下のmCherryをコードする遺伝子を含み、投与の際に、哺乳動物のS1バレル皮質におけるTle4 mRNAが、赤紫色およびGFPで共標識され、哺乳動物皮質におけるTLE4陽性投射ニューロンの同定を示す、ステップを含む、方法も本明細書に記載される。方法の一態様では、sesRNA標的化Tle4 mRNAは、Tle4 mRNAのエクソン15の全部または一部分に相補的である。
【0020】
器官培養プラットフォームにおいてヒトFOXP2を発現する皮層を決定する方法であって、本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを培養物に投与するステップであって、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間が、フォークヘッドボックスタンパク質P2(FOXP2)遺伝子によってコードされる皮質細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質およびsmV5をコードする遺伝子を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、第2の核酸が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下の緑色/黄色蛍光タンパク質(mNeon)のコード領域を含み、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸が、hSynプロモーターの転写制御下にあり、モジュラーRNA分子が、センサードメインの上流にあり、hSynプロモーターの転写制御下のClipFをコードする遺伝子を含み、投与の5日後に、mNeon標識化細胞体が、器官培養プラットフォームの皮層の上層および深層で観察され、上層および深層におけるヒトFOXP2の発現を示す、ステップを含む、方法も本明細書に記載される。
【0021】
発作の活動に関与する病態生理学的神経集合(PNE)の神経活動の細胞型標的化モジュレーションを含むPNEを標的化することを含む、焦点性てんかん発作を促進する神経活動を抑制するための方法であって、(i)本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを準備するステップであって、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間が、ヒトSST遺伝子によってコードされる皮質細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質およびosmFlagをコードする遺伝子を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、第2の核酸が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下の緑色蛍光タンパク質(GFB)のコード領域を含み、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸が、hSynプロモーターの転写制御下にあり、モジュラーRNA分子が、センサードメインの上流にあり、hSynプロモーターの転写制御下のmCherryをコードする遺伝子を含み、デザイナードラッグによって独占的に活性化されるデザイナー受容体(DREADD)をコードする遺伝子または薬理学的選択的アクチュエータモジュール/薬理学的選択的エフェクター分子(PSAM)をコードする遺伝子をさらに提供する、ステップ、ならびに(ii)哺乳動物の選択された細胞において、DREADDを活性化するオランザピンまたはクロザピン-n-オキシドの経口用量またはPSAMを活性化するバレニクリンの経口用量の投与の際に、エフェクタータンパク質の翻訳を可能にする治療有効量で、薬剤およびデザイナー受容体遺伝子を哺乳動物に投与し、それによって、細胞においてタンパク質を産生させるステップであって、細胞におけるタンパク質の産生が、哺乳動物におけるてんかんの処置を提供する、ステップを含む、方法も本明細書に記載される。
【0022】
発作の活動に関与する病態生理学的神経集合(PNE)の神経活動の細胞型標的化モジュレーションを含むPNEを標的化することを含む、焦点性てんかん発作を促進する神経活動を抑制するための方法であって、(i)薬剤を準備するステップであって、薬剤が、本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを含み、センサードメインの連続ヌクレオチドの区間が、ヒト中初期成長cfos遺伝子によってコードされる皮質細胞の選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であり、第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含むエフェクタータンパク質およびosmFlagをコードする遺伝子を含む第2のエフェクタータンパク質をコードし、第2の核酸が、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下の緑色蛍光タンパク質(GFB)のコード領域を含み、モジュラーRNA分子を含む第1の核酸が、hSynプロモーターの転写制御下にあり、モジュラーRNA分子が、センサードメインの上流にあり、hSynプロモーターの転写制御下のmCherryをコードする遺伝子を含む、ステップ、(ii)デザイナードラッグによって独占的に活性化されるデザイナー受容体(DREADD)をコードする遺伝子または薬理学的選択的アクチュエータモジュール/薬理学的選択的エフェクター分子(PSAM)をコードする遺伝子をさらに準備するステップ、ならびに(iii)哺乳動物の選択された細胞において、DREADDを活性化するオランザピンまたはクロザピン-n-オキシドの経口用量またはPSAMを活性化するバレニクリンの経口用量の投与の際に、エフェクタータンパク質の翻訳を可能にする治療有効量で、薬剤およびデザイナー受容体遺伝子を哺乳動物に投与し、それによって、細胞においてタンパク質を産生させるステップであって、細胞におけるタンパク質の産生が、哺乳動物における疾患または障害の処置を提供する、ステップを含む、方法も本明細書に記載される。
【0023】
哺乳動物における慢性疼痛を処置する方法であって、(i)薬剤を準備するステップであって、薬剤が、本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを含み、モジュラーRNAの第1のモジュールが、ヒトTRPV1遺伝子またはヒトNaV1.8遺伝子のいずれかによってコードされる選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であるセンサードメインの連続ヌクレオチドの区間を含み、エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含み、モジュラーRNA分子の第1のモジュールが、hSynプロモーターの転写制御下にあり、センサードメインの上流にスペーサーをさらに含み、モジュラーRNAが、第2のモジュールをさらに含み、第2のモジュールが、第1のモジュールの上流にあり、第2のモジュールが、NaV1.7またはNaV1.8に対するshRNAをコードし、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下にある、ステップ、ならびに(ii)哺乳動物の選択された細胞において、エフェクタータンパク質の翻訳を可能にする治療有効量で、薬剤を哺乳動物に投与し、それによって、細胞においてタンパク質を産生させるステップであって、細胞におけるタンパク質の産生が、哺乳動物における慢性疼痛の処置を提供する、ステップを含む、方法も本明細書に記載される。
【0024】
哺乳動物におけるアルツハイマー病を処置する方法であって、(i)薬剤を準備するステップであって、薬剤が、本明細書にすべて記載される、モジュラーRNA分子を含む組成物、および/または核酸組成物、および/または送達ビヒクルを含み、モジュラーRNAの第1のモジュールが、アルデヒドデヒドロゲナーゼファミリー1メンバーL1のヒトアストロサイトマーカー遺伝子(Aldh1L1)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)遺伝子、興奮性アミノ酸トランスポーター1(EAAT1)遺伝子、およびミクログリア遺伝子:C-X3-Cモチーフケモカイン受容体1(CX3CR1)、膜貫通タンパク質119(TMEM119)、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA-1)からなる群のうちの1つによってコードされる選択された細胞RNAの連続ヌクレオチドの区間に相補的であるセンサードメインの連続ヌクレオチドの区間を含み、エフェクタータンパク質をコードする第1のタンパク質コードドメインが、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含み、モジュラーRNA分子の第1のモジュールが、hSynプロモーターの転写制御下にあり、センサードメインの上流にスペーサーをさらに含み、モジュラーRNAが、第2のモジュールをさらに含み、第2のモジュールが、第1のモジュールの上流にあり、第2のモジュールが、ApoE4に対するshRNAをコードし、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターの転写制御下にある、ステップ、ならびに(ii)哺乳動物の選択された細胞において、エフェクタータンパク質の翻訳を可能にする治療有効量で、薬剤を哺乳動物に投与し、それによって、細胞においてタンパク質を産生させるステップであって、細胞におけるタンパク質の産生が、哺乳動物におけるアルツハイマー病の処置を提供する、ステップを含む、方法も本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】CellREADR設計および哺乳動物細胞における実行 a、CellREADRは、翻訳的にインフレームの5’-センサードメイン(sesRNA)および3’-エフェクタードメイン(efRNA)からなり、T2aコード領域によって分離された、単一モジュラーreadrRNA分子である。sesRNAは、細胞RNAに相補的であり、efRNA翻訳を防止するインフレームのSTOPコドンを含有する。sesRNAと標的RNAとの間の塩基対合は、ADARを動員し、これは、A→Iの編集を媒介し、UAG STOPをUGG Trpコドンに変換し、エフェクタータンパク質の翻訳のスイッチをオンにする。b~d、b、CAG-tdT(上)は、CAGプロモーターからtdTomato標的RNAを発現し、READR
tdT-GFP(下)は、CAGプロモーターによって駆動される、BFPコード領域とそれに続くsesRNA
tdTおよびefRNA
GFPからなるreadrRNAを発現する。c、CAG-tdTおよびREADR
tdT-GFPの両方でトランスフェクトされた293T細胞は、BFPおよびRFPと共局在化したロバストなGFP発現を示した(下)。READR
tdT-GFPのみ(上)、またはSTOPコドンを含有するスクランブルコード配列を有するsesRNA
Ctrlを発現するCAG-tdTおよび対照READR
Ctrl(中央)でトランスフェクトされた細胞は、GFP発現をほとんど示さなかった。GFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析を右に示す。d、FACSによるCellREADR効率の定量化。e~g、CellREADRにおける標的RNAレベルの効果。e、CellREADRにおける標的RNAレベルの効果を定量化するための発現ベクター。rtTA-TRE-ChETAにおいて(上)、BFP-ChETA融合標的RNAは、テトラサイクリンの濃度依存性の様式で構成的に発現されたrtTAによって駆動される、TREから転写される。READR
ChETA-GFP(下)は、mCherryコード領域とそれに続くsesRNA
ChETAおよびefRNA
GFPからなるreadrRNAを発現する。f、rtTA-TRE-ChETAおよびREADR
ChETA-GFPで共トランスフェクトされた293T細胞において、培地中のテトラサイクリン濃度の増加が、RFP
+細胞においてBFP
+の増加したパーセンテージをもたらしたことが、FACS解析によって明らかになった。g、GFP
+のRFP+に対する比は、テトラサイクリン濃度の増加とともに増加した。BFP-ChETA RNAを構成的に発現するCAG-ChETAは、陽性対照としての役割を果たし、sesRNA
Ctrlを発現するREADR
Ctrlは、陰性対照としての役割を果たした。h~i、ADAR1は、CellREDAR機能のために必要である。sesRNA
tdTのみ、sesRNA
CtrlおよびtdT、sesRNA
tdTおよびtdT、またはADAR2過剰発現を伴うsesRNA
tdTおよびtdTを発現する野生型またはADAR1
KO293T細胞のFACS解析(h)。矢印は、GFP
+/RFP
+集団を示す。i、細胞変換比の定量化。j、示された異なる試料における意図した編集部位でのAからGへの変換を示すサンガーシークエンシングのエレクトロフェログラム。k、棒グラフは、標的化編集部位でのAからGへの変換率の定量化を示す。d、f、g、およびkにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
【0026】
【
図2】sesRNAの特性。 a、最適なsesRNAの長さは、約200~300ntである。READR
BFP-tdT-GFPおよび標的RNAとしてtdTを使用して、可変の長さを有するsesRNA
tdTを試験して、FACSアッセイにおける細胞変換比として定量化される、最適な長さを同定した。b、sesRNAと標的RNA塩基対合との間のミスマッチの効果。ミスマッチの数(上)およびsesRNA
tdTとtdT標的RNAとの間の同一性パーセント(下)を、それぞれの場合について示す。c、EF1a-ChETA-tdTベクターから発現された標的RNA(例えば、異なるChETAおよびtdTコード領域)内の異なる場所および配列のsesRNAセンシングの効果;プロモーター領域を陰性対照として使用した。readrRNAの効率を示した(下)。d、ストリンジェンシーを改善するために、sesRNA
tdTを、READR
tdT-Lucベクター中に1~3つのSTOPコドン(X-TAG)を含有するように設計した。e~f、READR
tdT-Lucのみでトランスフェクトされたか(e)、またはCAG-tdTと共トランスフェクトされた(f)、293T細胞の発光。g、EF1a-ChETA-tdTから発現されたChETA-tdT融合転写物の異なる領域を標的化するsesRNAアレイを用いる、二重および三重センサーREADR
ChETA/tdT-GFPベクターの概略図。h、EF1a-ChETA-tdTおよび二重または三重READR
tdT-GFPベクターで共トランスフェクトされた293T細胞のFACS解析。矢印は、GFP+/RFP+集団を示す。i、(h)におけるさまざまな二重または三重READR
tdT-GFPベクターの効率の定量化。j、二重センサーREADR
ChETA/tdT-GFPまたはREADR
ChETA/tdT-Lucベクターを使用する2つの標的RNA(ChETAおよびtdT)を発現する細胞の交差標的化のためのスキーム;二重センサーアレイにおけるそれぞれのsesRNAは、編集可能STOPを含有する。k、FACS解析は、READR
Chet/atdT-GFPおよびCAG-ChETAまたはCAG-tdTのいずれかによる293T細胞の共トランスフェクションがGFP翻訳をほとんどもたらさず、三重トランスフェクションのみがGFP発現をもたらしたことを示した。EF1a-ChETA-tdT(ChETA-tdT融合転写物を発現する)共トランスフェクションを陽性対照として使用した。定量化を、FACS(l)およびルシフェラーゼアッセイ(m)を用いて示した。a~c、e~f、i、およびl~mにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
【0027】
【
図3-1】CellREADRを用いる内因性RNAセンシング。 a、エクソンおよびイントロン構造(縮尺通りではない)、pre-mRNA(中央)、ならびにmRNA(下)を示す、ヒトEEF1A1遺伝子のゲノム遺伝子座の概略図。sesRNA
EEF1A1(1~7)を、コード配列(CDS)を含むEEF1A1転写物にわたってサンプリングするように設計した。b、sesRNA
EEF1A1(1~7)を試験するためのREADR
EEF1A1-GFPベクターの概略図;BFP発現カセットは、すべてのトランスフェクト細胞を標識する。c、293T細胞におけるsesRNA
EEF1A1(1~7)の効率の定量化。d、CellREADRの高い感度。異なる発現レベルを有するいくつかの内因性細胞RNAについてのCellREADR効率の定量化;RNAseqデータからのTPM(100万あたりの転写物)を使用して、細胞RNA発現レベルを示した。1~3つのsesRNAを、それぞれの標的について設計した。e、二重センサーREADR
EEF1A1/ACTB-GFPベクターを使用する2つの内因性RNA(EEF1A1およびACTB)の交差標的化のための概略図;二重センサーアレイにおけるそれぞれのsesRNAは、編集可能STOPを含有する。二重センサーREADR
Ctrl/Ctrl-GFP、READR
EEF1A1/Ctrl-GFPまたはREADR
Ctrl/ACTB-GFPを対照として使用した。効率の定量化は、READR
Chet/atdT-GFPトランスフェクションによる293T細胞のみが、有意なGFP発現をもたらしたことを示した。f、CellREADRは、RNAシークエンシングによってアッセイされる細胞トランスクリプトームを変更しなかった。sesRNA
EEF1A1(7)またはsesRNA
Ctrl(上)およびsesRNA
PCNAまたはsesRNA
Ctrl(下)でトランスフェクトされた細胞間のトランスクリプトームの比較。g.sesRNA
EEF1A1またはsesRNA
Ctrl(上)、sesRNA
PCNAまたはsesRNA
Ctrl(下)間の差次的遺伝子発現解析のボルケーノプロット。調整P値<0.01およびlog
2(倍数変化)>2を有する遺伝子を、有意な差次的発現遺伝子として定義し、赤色で標識した。1つの遺伝子OAS2が、sesRNA
EEF1A群において、有意に増加した発現を伴って検出された。h、RNAシークエンシングによるAからIの編集に対するsesRNA
EEF1A1(上)またはsesRNA
ACTB(下)の効果のトランスクリプトーム-ワイド解析。ピアソン相関係数分析を使用して、差次的RNA編集率を評価した。c~eにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
【0028】
【
図4-1】マウスにおける神経細胞型のCellREADR標的化、モニタリング、および操作 a.示されたsesRNA3およびsesRNA8の場所を有するマウスCtip2遺伝子のゲノム構造。b.脳組織におけるCtip2ニューロンを標的化するための特異およびバイナリーAAVベクターの概略図。特異READR
Ctip2-smFlag/tTA2ベクターにおいて、hSynプロモーターは、mCherryとそれに続くsesRNA
Ctip
2、smFlagおよびtTA2エフェクターをコードする配列の発現を駆動する。バイナリーベクターにおいて、レポーターベクターは、
READRCtip2-smFlag/tTA2由来のtTA2に応答して、TREプロモーターからのmNeonGreen発現を駆動する。c、READR
Ctip2(3)-smFlag/tTA2AAVを注射されたS1皮質の冠状断面。FLAG(左)およびCTIP2(中央)抗体による免疫蛍光は、READR標識化細胞(FLAG
+、緑色)がCTIP2
+PNとの高い共局在化を示したことを示した。d、(c)における囲み領域の拡大図。矢じり形は、代表的な共標識化細胞を示す。e、特異ベクターを用いて送達されたREADR
Ctip2(3)の特異性。f、バイナリーAAVベクターを共注射されたS1皮質において、ニューロンは、mCherryを発現したREADR
Ctip2に感染した(f1)。これらのニューロンのサブセットにおいて、sesRNA
Ctip2(3)は、L5b PNにおけるtTA2の翻訳およびmNeon発現の活性化を引き起こした(f2)。Ctip2 PNにおけるmNeon発現の特異性を、CTIP2免疫蛍光を用いて評価した(f3~5)。f5は、f4における囲み領域である。矢じり形は、共標識化細胞を示す。g、バイナリーベクターで送達されたREADR
Ctip2(3)の特異性。h、mCherryおよびCTIP2発現細胞内のGFP
+細胞として計算された、バイナリーREADR
Cti
p
2(3)の効率。i~l、READR
Ctip2(3)は、in vivoで特異的な皮質ニューロン型のカルシウムイメージングを可能にした。i~j、麻酔マウスにおける左足の刺激の概略図(i)、およびファイバー測光記録(j)。j、AAV-PTエンハンサー-tTA2またはAAV-Ctip2-CellREADR-tTA2を、AAV-TRE-GCaMP6sとともに、一次体性感覚皮質、上肢領域(SSp-ul)に共注射した。k、左足の刺激の開始と整列させたニューロン活動のヒートマップ。l、左足の刺激の開始と整列させた平均カルシウムシグナル(左の2つのパネル)。応答のピークZスコアを示した(右パネル、それぞれn=2頭のマウス)。灰色領域は、1秒の刺激を示す。黒色トレースは、シャッフルされた開始時間と整列させたデータからである。平均周辺の影付きは、±s.e.m.を表す。データは平均±s.e.m.である。m~p、READR
Ctip2(3)は、マウスの行動における特定の皮質ニューロン型の光遺伝学的操作を可能にした。m~n、頭を固定したマウスにおける光遺伝学的刺激実験(m)、およびウイルス注射(n)の概略図。2つのカメラを使用して、誘導された移動を記録した。鼻先が座標原点である。X、Y、およびZ軸は、それぞれ、中央-側面、前-後、および背側-腹側の軸に対応する。反射マーカーを、追跡するために、左足の後側に取り付けた(赤色ドット)。n、AAV-PTエンハンサー-tTA2またはAAV-Ctip2-CellREADR-tTA2を、AAV-TRE-ChRger2-eYFPとともに、尾側前肢領域(CFA)に共注射した。o、刺激開始前および後の左足のスピード(PTエンハンサーマウスについてn=20の試行;Ctip2 CellREADRマウスについてn=16の試行)。黒色トレースは、平均を示す。赤色線は、刺激の開始を示す。青色バーは、500ミリ秒の刺激を表す(補充ビデオ1も参照されたい)。p、光遺伝学的刺激の間の左足の移動の軌跡(PTエンハンサーマウスについてn=20の試行;Ctip2 CellREADRマウスについてn=16の試行)。側面(左)および前面(右)の軌跡を、左足の開始位置に対して正規化した。黒色軌跡は、平均を示す。四角は、刺激を停止した時の左足の位置を示す。
【0029】
【
図5-1】ヒト皮質ニューロン型のCellREADRが可能にする標的化および記録 a、ヒト脳組織におけるニューロン型を標的化するためのバイナリーAAVベクターの概略図。READRベクターにおいて、hSynプロモーターはClipF-Tagとそれに続くsesRNA
FOXP2、smV5、およびtTA2をコードする配列の転写を駆動する。TRE3g-mNeonにおいて、TREプロモーターは、READRウイルス由来のtTAに応答して、mNeonを駆動する。b、ヒトFOXP2遺伝子のゲノム構造。2つのsesRNAを、FOXP2 mRNAを標的化するように設計した。c、ヒトFOXP2細胞のREADR標的化。上層のFOXP2細胞(mNeon、ネイティブ蛍光)を側頭部新皮質からの器官スライスにおけるREADR
FOXP2(1)AAVで標的化した(c1)。より深い層のFOXP2細胞を頭頂部新皮質からREADR
FOXP2(2)で標的化した(c2)。c1およびc2における挿入図は、囲み領域の拡大図を示した。破線は、軟膜および白質を描写する。d、READR
FOXP2(2)標識化ニューロンにおけるFOXP2の免疫染色。矢じり形は、mNeonネイティブ蛍光(左)およびFOXP2免疫蛍光(中央)で共標識されたニューロンを示し、矢印は、mNeonのみによって標識された細胞を示す。e、FOXP2免疫蛍光法によってアッセイされたREADR
FOXP2(2)の特異性。エラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=2の生物学的反復を行った。f、3つのmNeon標識化ニューロンの電流-クランプ記録トレース(上)。細胞のインプット-アウトプット曲線は、類似のスパイク挙動を示す(上)。g、(f)において記録された標識化ニューロンの形態(青色曲線)。パッチされた細胞は、事後回復のためにビオサイチンで満たされ、明視野で、銀染色によって視覚化された。茶色の矢じり形、青緑色の矢じり形、および紫色の矢じり形は、それぞれ、細胞体、軸索、および樹状突起を示す。h、ヒトVGAT mRNAのエクソン2を標的化するように設計されたSesRNA。i、AAV-READR
VGAT、TRE3g-mNeonに共感染し、感染8日後のネイティブ蛍光によって可視化された、ヒト側頭部新皮質からの器官スライス。j~k、AAV-READR
VGAT標識化介在ニューロンの形態。l、mNeonネイティブ蛍光(左)のin situハイブリダイゼーションによるVGAT mRNA(中央)との共局在化。矢じり形は、共標識化ニューロンを示し、矢印は、mNeonのみによって標識された細胞を示す。m、in situでVGAT mRNAによってアッセイされたREADR
VGATの特異性。エラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=2の生物学的反復を行った。n、事後回復のためにビオサイチンで満たされた、3つの標識化ニューロンの電流-クランプ記録トレース(上)。ストレプトアビジン色素を、視覚化のために使用した。インプット-アウトプット曲線(下)は、別個のスパイク挙動を示す(協調的(青色)、速い(緑色)、遅れて発生(赤色))。o、(n)において記録されたREADR
VGAT標識化細胞の形態。
【0030】
【
図6-1】特異およびバイナリーCellREADRベクターの設計および試験 a、特異CellREADRベクターの概略図。左、PGK-tdTは、PGKプロモーターからtdTomato標的RNAを発現する。READR
tdT-GFPは、CAGプロモーターによって駆動される、sesRNA
tdTおよびefRNA
GFPからなるREADR RNAを発現する。縦の破線は、tdT mRNAとsesRNA
tdTとの間の相補的塩基対合領域を示し、編集可能STOPコドンを取り囲む配列を右に示す。編集部位で、sesRNA
tdTにおける編集可能アデニン(青緑色)は、tdT mRNAにおけるシトシンとミスマッチである。TdTomatoは、2つのdTomato遺伝子のタンデムリピートであり、したがって、tdT RNAは、sesRNA
tdT塩基対合のための標的配列の2つのコピーを含有する。b~d、READR
tdT-GFPベクターの検証。READR
tdT-GFPおよびPGK-tdTで共トランスフェクトされた293T細胞において(b)、多くは、GFP翻訳および蛍光のスイッチをオンにした(c、上側矢印)。対照空ベクターで共トランスフェクトされた細胞において、わずかな細胞が、GFP発現を示した(c、下側)。GFP発現を、ウエスタンブロットによってさらにアッセイした(d)。e、CellREADRルシフェラーゼアッセイのためのバイナリーベクター設計。READR
tdT-tTA2は、sesRNA
tdTおよびefRNA
tTA2からなるreadrRNAを発現し、TRE-ffLucは、tTA2活性化の際に、ルシフェラーゼRNAを発現する。f、ルシフェラーゼ活性は、(e)における3つのベクターでトランスフェクトされた細胞においてのみ劇的に増加した。tTA2を構成的に発現する、TRE-ffLucとCAG-tTA2の共トランスフェクションは、陽性対照としての役割を果たした。g、スペーサー配列がsesRNA
tdTコード領域の前に挿入されている、概略的なREADR
tdT-GFPベクター。h、293T細胞は、それぞれ、tdT標的RNA発現なし(灰色)またはあり(ピンク色)の可変の長さのスペーサーをコードするREADR
tdT-GFPベクターでトランスフェクトされた。RFP
+細胞のうちのGFP
+細胞のパーセンテージとして計算された変換比の定量化。i、CellREADRアッセイのためのバイナリーベクター設計。j、(i)におけるバイナリーベクターによるGFP変換の代表画像。sesRNA
Ctrlベクターで共トランスフェクトされた細胞において、わずかなGFP
+細胞が観察された。変換パーセンテージを右に示す。fおよびhにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。fについてn=3、hについてn=2、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
【0031】
【
図7-1】CellREADRは、RNAセンシング依存性遺伝子編集および細胞アブレーションを可能にする a、CellREADR媒介および標的RNA依存性遺伝子編集のためのベクター設計。READR
tdT-Cas9/GFPにおいて、CAGプロモーターは、BFPとそれに続くsesRNA
tdT、Cas9、およびeGFPエフェクターをコードする配列の発現を駆動する。別のベクターでは、EF1aプロモーターは、tdT発現を駆動し、U6bプロモーターは、293T細胞において、DYRK1A遺伝子を標的化するガイドRNA(gRNA)の発現を駆動する。b、tdT標的RNAありまたはなしで、RFPおよびBFPを発現する細胞間のGFPのパーセントとしてのREADR
tdT-Cas9/GFP効率の定量化。c、U6b-gRNA
DYRK1A-CAG-tdTおよびREADR
tdT-Cas9/GFPの両方でトランスフェクトされた細胞は、BFPおよびRFPと共局在化したロバストなGFP発現を示した(下)。READR
tdT-Cas9/GFPのみでトランスフェクトされた細胞(上)は、GFP発現をほとんど示さなかった。d、SURVEYORアッセイは、ヒトDYRK1A遺伝子座におけるCas9媒介切断を示した。DNA切断は、U6b-gRNA
DYRK1A-CAG-tdTおよびREADR
tdT-Cas9/GFPでトランスフェクトされた細胞溶解物において観察されたが、tdT標的RNAを欠くU6b-gRNA
DYRK1AおよびREADR
tdT-Cas9/GFPでは観察されなかった。プラスミドトランスフェクションなしのCAG-Cas9とU6b-gRNA
DYRK1A細胞溶解物および293T細胞溶解物を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として使用した。矢印は、切断産物を示す。e、CellREADR媒介および標的RNA依存性細胞死誘導のためのベクター設計。READR
tdT-taCasp3-TEVpにおいて、CAGプロモーターは、BFPとそれに続くエフェクターとしてのsesRNA
tdTおよびtaCasp3-TEVpをコードする配列の発現を駆動して、細胞死を誘導する。f.発光によって測定された細胞アポトーシスレベルは、tdT RNAなしの細胞と比較して、READR
tdT-taCasp3-TEVpおよびEF1a-tdTでトランスフェクトされた細胞において増加した。bおよびfにおけるエラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、並行して行われた独立した実験の数を表す。
【0032】
【
図8】標的化mRNAに対するCellREADRの効果 a、CellREADR媒介sesRNA発現が、標的化RNAの発現レベルに影響を及ぼさなかったことを示す定量的PCR。b、EEF1A1 mRNAおよびsesRNA
EEF1A1-CDSの塩基対合。EEF1A1 mRNAまたはsesRNAを、それぞれ、青色および赤色で表した。EEF1A1 mRNAから翻訳されたペプチドを、茶色で強調した。EEF1A1 mRNAの標的化領域を、RNAseqによって解析した。c、それぞれのアデノシン位置でのEEF1A1 mRNAのAからGへの変化の比を定量化し、ヒートマップに示した。2つのアデノシン(A107およびA115)が、より高いAからGへの編集の比を示した(c)。2つの感受性アデノシンのオフターゲット編集は、潜在的なアミノ酸変化を誘導し得る(bにおける下線)。エラーバーは、平均値±s.e.m.である。n=3、nは、行われた生物学的反復の数を表す。
【0033】
【
図9-1】in vitroおよびin vivoでのFezf2およびCtip2 RNAを標的化するsesRNAの設計およびスクリーニング。 a~b、示された通り、さまざまなsesRNAの場所を有する、マウスFezf2(a)およびCtip2(b)遺伝子のゲノム構造。c、sesRNAスクリーニングのために使用されたsesRNAおよびFezf2およびCtip2標的遺伝子断片のリスト。d、標的ベクターCAG-BFP-Fezf2またはCAG-BFP-Ctip2において、(a、b)におけるsesRNAに相補的な配列を含有するFezf2またはCtip2遺伝子の200bp~3000bpのゲノム領域を、CAGプロモーターによって駆動されるBFPおよびT2aコード領域の下流でクローニングした。READRベクターにおいて、READR
Fezf2-GFPまたはREADR
Ctip2-GFPは、(a、b)に示される対応するsesRNAを発現する。e~f、それぞれ、CAG-BFP-Fezf2またはCAG-BFP-Ctip2標的ベクターで共トランスフェクトされた293T細胞のFACSアッセイによるGFP変換比としてのREADR
Fezf2-GFP(e)またはREADR
Ctip2-GFP(f)の効率の定量化。g、バイナリーREADR AAVベクターの概略図。READRベクターにおいて、hSynプロモーターは、mCherryとそれに続くsesRNA
Ctip
2、smFlagおよびtTA2エフェクターをコードする配列の発現を駆動する。レポーターベクターにおいて、TREプロモーターは、READRベクター由来のtTA2に応答して、mNeonGreenを駆動する。h、バイナリーREADR
Fezf2ベクターを注射されたマウス皮質の冠状断面。mNeonGは、READR
Fezf2標識化細胞を示した。4つのFezf2 sesRNAをスクリーニングした。i、(h)における4つのFezf2 sesRNAの特異性の定量化。Fezf2 sesRNAのin-vivoスクリーニングのために、それぞれのsesRNAの特異性を、READR AAVおよびCTIP2抗体(FEZF2抗体の欠如に起因する)による共標識化によって計算し、Ctip2は、Fezf2+細胞(示さない)のサブセットを表し、CTIP2抗体は、Fezf2 sesRNAの特異性の過小評価を与える。SesRNA1は、最も高い特異性を示した。j、バイナリーREADR
Ctip2ベクターを注射されたマウス皮質の冠状断面。mNeonGは、バイナリーREADR標識化細胞を示した。8つのCtip2 sesRNAをスクリーニングした。k、(j)における8つのsesRNAの特異性の定量化。それぞれのsesRNAの特異性を、バイナリーREADR
Ctip2AAVおよびCTIP2抗体の共標識化によって計算した(示さない)。SesRNA3およびsesRNA8は、最も高い特異性を示した。
【0034】
【
図10】ADAR2過剰発現を有するマウス皮質における
PNFezf2
および
PNC
tip2型のCellREADR標的化 a~b、それぞれ、示されたsesRNAの場所を有するマウスFezf2(a)およびCtip2(b)遺伝子のゲノム構造。c、ニューロン型を標的化するためのバイナリーAAVベクターの概略図。READR
Fezf
2-tTA2において、hSynプロモーターは、ADAR2とそれに続くsesRNA
Fezf2(1)、T2a、およびtTA2エフェクターをコードする配列の発現を駆動する。TRE-mRubyにおいて、TREプロモーターは、READRウイルス由来のtTA2に応答して、mRuby3を駆動する。d、S1体性感覚皮質におけるFezf2
+PNの分布パターンを示す、Fezf2-CreER;LoxpSTOPLoxp-H2bGFPマウス脳からの冠状断面の画像(d1)。Rodrigo Munoz-Castaneda et al. Cellular anatomy of the mouse primary motor cortex Nature volume 598, pages 159-166 (2021)、Creレポータートランスジェニックマウスを、「ノックイン」CreドライバーとKim, Y. et al. Brain-wide maps reveal stereotyped cell-type-based cortical architecture and subcortical sexual dimorphism. Cell 171, 456-469.e422 (2017)に以前に記載されたレポーターマウス(CAG-LoxP-STOP-LoxP-H2B-GFP)とを交雑することによって作出した。AAV READR
Fezf2(1)-tTA2およびTRE-mRubyの共注射は、L5bおよびL6において、PNを特異的に標識した(d2)。CellREADR AAVおよびH2bGFPによる共標識化(d3)と、(d4)の拡大図。矢印は、共標識化細胞を示し、矢じり形は、CellREADR AAVによって標識されたが、Fezf2-H2bGFPによって標識されなかったニューロンを示す(d4)。e、READR
Fezf2(1)-tTA2の特異性。f、S1皮質におけるCtip2
+PNの分布パターンを示す、CTIP2抗体で免疫染色されたWT脳の冠状断面(f1)。AAV READR
Ctip2(1)およびTRE-mRubyの共注射は、L5bにおいて、PNを特異的に標識した(f2)。CellREADR AAVおよびCTIP2抗体による共標識化(f3)と、(f4)の拡大図。矢印は、共標識細胞を示し、矢じり形は、READR
Ctip2(1)によって誤って標識された細胞を示した(f4)。g、READR
Ctip
2(1)の特異性。h、S1皮質におけるAAV READR
Ctip2(1)-tTA2およびTRE-eYFP感染PNの軸索投射パターン。線条体、視床、中脳、脳橋および髄質(矢印)に対する投射を示す代表画像。i、冠状断面の概略的な場所を右パネルに示す。
【0035】
【
図11】マウスにおける皮質細胞型マーカーの発現レベルおよび層分布。 a.Allen Institute for Brain Scienceからのデータセットに基づく、トランスクリプトーム細胞型クラスターにおける選択された遺伝子の群プロット。遺伝子発現レベルおよび皮質分布を示した。b、主要な細胞型マーカー遺伝子の遺伝子発現レベル。プロットは、scRNAseqデータ
40を用いて作成した。
【0036】
【
図12】マウスにおける追加の皮質ニューロン型のCellREADR標的化 a、示されたsesRNAの場所を有するマウスSatb2遺伝子のゲノム構造。b~c、
図4iに記載されたバイナリーベクターの共注射によるS1における細胞標識化パターン。(b1)上層および深層の両方におけるAAV READR
Satb2およびTRE-mNeon標識化細胞。(b2)Satb2 mRNA in-situハイブリダイゼーション。(b3)READR
Satb2およびSatb2 mRNAによる共標識化。c、(b3)における囲み領域の拡大図。矢印は、共標識化細胞を示す。d、Allen Mouse Brain AtlasからのP56でのS1皮質におけるSatb2 mRNA発現パターン。e、mNeon細胞のうちのSatb2
+細胞のパーセントとして測定されたREADR
Satb2の特異性。f、示されたsesRNAの場所を有するマウスPlxnD1遺伝子のゲノム構造。g~h、S1における上層およびL5aのAAV READR
PlxnD1およびTRE-mNeon標識化細胞(g1)。PlxnD1 mRNA in-situハイブリダイゼーション(g2)。READR
PlxnD1 AAVおよびPlxnD1 mRNAによる共標識化(g3)。h、(g3)における囲み領域の拡大図。矢印は、共標識化細胞を示す。i、Allen Mouse Brain AtlasからのP56 S1皮質におけるPlxnD1 mRNA発現。j、mNeon細胞のうちのPlxnD1
+細胞のパーセントとして測定されたREADR
PlxnD1の特異性。k、示されたsesRNAの場所を有するマウスRorb遺伝子のゲノム構造。l、層4におけるAAV READR
RorbおよびTRE-mNeon標識化細胞(l1、l3)。DAPI染色は、層構造を示した(l2)。mNeon標識化パターンは、Allen Mouse Brain AtlasからのP56 S1皮質におけるRorb mRNA発現と一致し(m)、Rorb sesRNAの特異性は、さらに、RORBに対する特異的抗体およびRorb mRNAに対するin situプローブの欠如に起因して、厳密に定量化されるべきである。n、示されたsesRNAの場所を有するマウスvGAT遺伝子のゲノム構造。o~p、バイナリーREADR
vGATおよびTRE-mNeon標識化細胞(o1)。vGAT mRNA in-situハイブリダイゼーション(o2)。READR
vGAT AAVおよびvGAT mRNAによる共標識化(o3)。p、(o3)における長方形の拡大図。矢印は、共標識化細胞を示す。q、Allen Mouse Brain AtlasからのP56 S1皮質におけるvGAT mRNA発現。r、mNeon細胞のうちのvGAT
+細胞のパーセントとして測定されたREADR
vGATの特異性。
【0037】
【
図13】CellREADRベクターの長期発現後の皮質細胞の免疫応答の評価 a、in vivoでのCellREADRの長期効果の評価の概略図。それぞれのマウスについて、READR
Ctip2(3)またはCAG-tdT対照AAVを、S1皮質に注射し、3か月間インキュベートした。新鮮な脳を解剖し、注射部位の皮質組織の小片を収集した。定量的PCRをすぐに行った。ウイルス注射なしのマウスのS1組織を対照として使用した。b、グリア活性化および免疫原性に関わる9つの遺伝子の発現レベル変化のヒートマップ。
【0038】
【
図14】AAV READR
Ctip2およびTRE-ChRger2-eYFPによって標的化された尾側前肢運動野におけるL5/6 CFPNの軸索投射パターン a、光遺伝学的活性化および軸索投射追跡のためのREADR
Ctip2(3)-smFlag/tTA2およびTRE-ChRger2-eYFPのバイナリーAAVベクターの概略図。b、CFAに感染したCFPNの軸索投射パターン。線条体(b2)、視床(b3、b4)、脳橋(b5)および髄質(b6、矢印)への投射を示す代表画像。c、bにおける冠状断面の概略的な場所を示す。
【0039】
【
図15】ラットにおけるニューロン型のCellREADR標的化 a、ラットにおける細胞型標的化のためのバイナリーAAVベクターの概略図。READRベクターにおいて、hSynプロモーターは、mCherryとそれに続くsesRNA、smFlagおよびtTA2エフェクターをコードする配列の発現を駆動する。READRと一緒に、レポーターベクターは、READRベクター由来のtTA2に応答して、TREプロモーターからmNeonG発現を駆動する。b、示されたsesRNAの場所を有するラットvGAT遺伝子のゲノム構造。c、AAV READR
vGATおよびTRE-mNeonを皮質深層および海馬に注射した。バイナリーベクター標識化細胞を皮質において示した(c1)。c2、(c1)における囲み領域の拡大図。vGAT mRNAを、in-situハイブリダイゼーションによって標識化した(c3)。mNeonおよびvGAT mRNAによる共標識化(c4)。矢印は、共標識化細胞を示した。d、AAV READR
vGATおよびTRE-mNeonの共注射による海馬CA1領域における細胞標識化パターン。e、(d)における囲み領域の拡大図。矢印は、共標識化細胞を示す。f-g、mNeon細胞のうちのvGAT
+細胞のパーセントとして測定されたラット皮質(f)および海馬(g)におけるラットREADR
vGATの特異性。h、示されたsesRNAの場所を有するラットTle4遺伝子のゲノム構造。i~j、AAV READR
Tle4およびTRE-mNeon(
図4i)を、深層において濃縮されたラット運動皮質標識化細胞に共注射した(i1)。Tle4
+PNを、TLE4抗体染色によって標識化した(i2、3)。j、(i)における囲み領域の拡大図。矢印は、CellREADRおよびTLE4抗体による共標識化細胞を示す。k、mNeon細胞のうちのTLE4+細胞のパーセントとして測定されたラット皮質におけるラットREADR
Tle4の特異性。
【0040】
【
図16】ヒト皮質ex vivo組織におけるニューロン型のCellREADRベクター標的化 a、ヒト皮質ex vivo組織のための器官プラットフォームの概略図。b、幅広い神経細胞標識化を駆動するために使用されたhSyn-eGFPウイルス構築物の概略図。c.AAVrg-hSyn-eGFP標識化細胞は、すべての層にわたって分布し、多様な形態を示した(c1)。c1(c2)およびc2(c3、4)からの挿入図は、顕著な垂直方向の尖端樹状突起を含む、錐体形態を有する多数の細胞を表す。d、ヒト新皮質におけるFOXP2発現。上層および深層発現(矢印)を示す、Allen Instituteのヒト脳マップ(検体番号4312)から取られたFOXP2 mRNA発現パターン(d1)。現在の研究におけるFOXP2免疫染色(赤紫色)も、上層および深層の標識化の両方を実証した(d2、4)。皮質ニューロンを表すNeuN免疫染色(赤色)(d3、4)。破線は、軟膜および白質を描写する。e、d)において使用された同じ組織に由来する器官スライスにおけるREADR
FOXP2(1)標識化。dにおいて観察されたものと比較して、非常に限定的な標識化を実証する、器官スライスにおける明視野およびmNeonネイティブ蛍光の概要。上層の錐体ニューロンの形態を表すe2(e3)からの挿入図。f、READR
FOXP2の2つの特異ベクターの概略図。READR
FOXP2(1)において、hSynプロモーターは、ClipF、sesRNA1、smV5、およびtTA2をコードする発現カセットを駆動する。READR
FOXP2(2)において、hSynプロモーターは、ClipF、sesRNA2、smFlag、およびFlpOをコードする発現カセットを駆動する。g、DIV 1におけるREADR
FOXP2(2)AAVの適用7日後に、組織を固定化し、FOXP2およびFLAGに対する抗体で染色した。READR
FOXP2(2)からのFLAG標識化細胞は、短い尖端樹状突起を有する比較的小さい細胞体を示した(矢じり形)。非特異的バックグラウンド蛍光シグナル(例えば、血管様プロファイル)を、中央パネルの薄い矢印によって示す。i、それぞれ、FOXP2免疫染色によって標識化されたV5
+細胞(READR
FOXP2(1)について)およびFLAG
+細胞(READR
FOXP2(2)について)のパーセンテージとして測定されたCellREADR特異性の定量化。
【0041】
【
図17】in vivoでのマカク皮質におけるGABAニューロンのてんかんCellREADR標的化。 a.マカクvGAT遺伝子の概略図。b.バイナリーCellREADR AAVベクター。c~e、AAVインキュベーションの2か月後のマカク一次視覚野における介在ニューロン形態を有するニューロンの標識化。
【0042】
【
図18】切除されたてんかん患者由来のヒト新皮質ex vivo組織におけるヒトPVおよびSSTニューロンのてんかんCellREADR標的化。 a.ヒトSST遺伝子およびsesRNA設計。b.GABAニューロン型を標識および操作するためのバイナリーAAVベクター。c.ヒトPV遺伝子およびsesRNA設計。d.ヒトPVニューロンの形態学的標識化および発火パターンの例。e.PVセンサーによって標的化された15のうち14のニューロンが、PV介在ニューロンの特徴である速いスパイクを示す。
【0043】
【
図19】マカクにおけるGLUおよびGABAニューロン型のCellREADR標的化。 a.V1におけるAAV-READRFOXP2;AAV-TRE3g-mNeon標識化推定FOXP2細胞。囲み領域は、bにおいて、主にL6にある尖端樹状突起(白矢じり形)を有するGFP+錐体、およびそれらの遠心性を示唆する白質の軸索(黒矢じり形)を示すために拡大する。c.V1におけるAAV-READRVGAT;AAV-TRE3g-mNeon標識化推定GABA細胞。d~g.多様なGABA INの特徴である突起部がわずかな樹状突起を有するcからの多極細胞の例。
【0044】
【
図20】慢性疼痛の細胞特異的処置 転写活性化因子tTAの翻訳がNaV1.7またはNaV1.8 RNAセンサーによってゲーティングされ、次いで、tTAが、NaV1.7またはNaV1.8 RNAについてのshRNAの転写を活性化する、バイナリー発現ベクター。
【0045】
【
図21】アルツハイマー病の細胞特異的介入 ADマーカーRNAを標的化するsesRNA、およびhSynプロモーターによって駆動されるtTA2をコードするエフェクターRNAからなるREADR RNAの概略図。このカセットの上流で、ApoE4 RNAに対するshRNAは、TREエンハンサーによって駆動される。
【発明を実施するための形態】
【0046】
説明
定義
本開示の原理の理解を促進する目的のために、ここに、好ましい実施形態を参照し、特定の言語を使用して、それを記載する。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定が、それによって意図されず、本明細書で説明される本開示のそのような変更およびさらなる改変が、本開示が関連する技術分野の当業者が通常想到するとして企図されることが理解されるであろう。
【0047】
したがって、本開示の一態様は、(i)センサーRNAドメインを含む5’領域であって、センサードメインが、ADAR編集可能STOPコドンを含む、5’領域、および(ii)センサードメインの下流にあり、それとインフレームにあるエフェクターRNA(efRNA)ドメインを含む3’領域を含むモジュラーreadrRNA分子であって、モジュラーreadrRNA分子のセンサードメインが、配列特異的塩基対合を通して、細胞、好ましくは、皮質の細胞または細胞の群において差次的発現される遺伝子によってコードされる細胞RNAに特異的に結合して、RNA二重鎖を形成し、efRNAが、タンパク質をコードし、ADAR編集可能STOPコドンが、翻訳スイッチとして作用し、それによって、efRNA領域の翻訳を可能にして、エフェクタータンパク質を産生する、モジュラーreadrRNA分子を提供する。
【0048】
一態様では、モジュラーreadrRNA分子は、センサードメインとエフェクターRNA領域との間に位置する自己切断2Aペプチドをさらにコードする。自己切断2Aペプチドは、T2Aペプチド、P2Aペプチド、E2Aペプチド、およびF2Aペプチドのうちの1つまたは複数からなる群から選択される。好ましくは、2Aペプチドは、T2Aである。
【0049】
一態様では、モジュラーreadrRNAのエフェクター(efRNA)ドメインは、検出可能タンパク質もしくは検出可能タンパク質断片(標識)、および/または転写活性化因子もしくは抑制因子をコードする。
【0050】
一態様では、皮質の細胞において差次的発現する遺伝子(複数可)は、Fezf2、Ctip2、PlxnD1、Satb2、RorbおよびvGATからなる群から選択される。
【0051】
本発明の別の実施形態は、少なくとも2つの構成要素を含むCellREADR「システム」であり、第1の構成要素は、モジュラーreadrRNA分子を含み、第2の構成要素は、エフェクタードメインコードタンパク質に応答性である遺伝子を含む。CellREADRシステムのある態様では、モジュラーreadrRNA分子によるefRNAコードタンパク質はテトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2を含み、モジュラーreadrRNA分子のセンサードメインは、Ctip2遺伝子によってコードされる細胞RNAに特異的に結合し、CellREADRシステムの第2の構成要素は、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2に応答性であるTRE-3G真核生物誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子を含む。CellREADRシステムのある態様では、モジュラーreadrRNA分子によるefRNAコードタンパク質は、smFlagをさらに含む。CellREADRシステムのある態様では、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子は、カルシウムインジケーターGCaMP6sをコードする。CellREADRシステムのある態様では、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子は、カルシウムインジケーターGCaMP6sをコードする。CellREADRシステムのある態様では、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子は、光活性化イオンチャネルのチャネルロドプシン-2をコードする。
【0052】
本発明の別の実施形態は、前足の機械的刺激に応答する、CellREADRCtip2/3で形質導入されたマウスにおいて、測光法によって測定される、前肢体性感覚皮質におけるGCaMP6sシグナルを刺激する方法であって、マウスに上記で言及したCellReadRシステムを共感染させるステップを含む、方法である。
【0053】
本発明の別の実施形態は、CellREADRCtip2/3で形質導入されたマウスのCFAの光刺激に応答する、前肢の移動を刺激する方法であって、マウスに上記で言及したCellReadRシステムを共感染させるステップを含む、方法である。別の態様では、第2の遺伝子は、TRE-3G真核生物誘導性プロモーターに作動可能に連結されており、第2の遺伝子(eYFP)は、高感度黄色蛍光タンパク質をコードする。
【0054】
本発明の別の実施形態は、モジュラーreadrRNAを器官、組織または細胞に投与するためのビヒクルと作動可能に会合したモジュラーreadrRNA分子を含む送達システムである。
【0055】
本発明の別の実施形態は、上記で言及したCellREADRシステムを器官、組織または細胞に投与するためのビヒクルと作動可能に会合した上記で言及したCellREADRシステムを含む送達システムである。
【0056】
本発明の別の実施形態は、送達ビヒクルが、ナノ粒子、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、および細胞送達のための選択的内因性封入(SEND)システムからなる群から選択される、送達システムである。
【0057】
本発明の別の実施形態は、送達ビヒクルが、組換えウイルスベクター、好ましくは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルス、およびその組合せのうちの1つを含む、送達システムである。
【0058】
本発明の別の実施形態は、上記で言及したモジュラーreadrRNA分子および/または上記で言及したCellREADRシステムおよび/または上記で言及した送達システム、ならびに薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物である。
【0059】
本発明の別の実施形態は、上記で言及したモジュラーreadrRNA分子および/または上記で言及したCellREADRシステム、または上記で言及した送達システムを含む細胞であり、ここで、優先的には、細胞は、哺乳動物細胞である。
【0060】
本発明の別の実施形態は、上記で言及したモジュラーreadrRNA分子、および/または上記で言及したCellREADRシステムおよび/または上記で言及した送達システムを含むキットである。
【0061】
本発明の別の実施形態は、in vivoで哺乳動物皮質における小胞状GABAトランスポーター(vGAT)mRNAを標的化することを含む、in vivoで哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンを同定する方法であって、(i)READRvGATを含むバイナリーAAVベクター、および(ii)レポーターmNeonを哺乳動物のS1バレル皮質および海馬に投与するステップを含み、READRvGATが、赤色蛍光タンパク質mCherryをコードするRNAとそれに続くsesRNA標的化vGAT mRNA、2aタンパク質、smFlag(smV5)、第2の2aタンパク質、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2およびW3SLをコードする配列に作動可能に連結されたヒトSynプロモーターである、5’から3’の転写順序の[hSyn-mCherry-sesRNAvGAT-smFlag-tTA2]を含み、レポーターmNeonが、[TRE3g-mNeon-WPRE]を含み、
投与の際に、哺乳動物のS1バレル皮質および海馬におけるvGAT mRNAが、赤紫色およびGFPで共標識され、哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンの同定を示す、方法である。一態様では、sesRNA標的化vGAT mRNAは、vGAT mRNAのエクソン1の全部または一部分に相補的である。
【0062】
本発明の別の実施形態は、トランスデューシン様エンハンサータンパク質4(Tle4)mRNAを標的化することを含む、in vivoで哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンを同定する方法であって、(i)READRvGATを含むバイナリーAAVベクター、および(ii)レポーターmNeonを哺乳動物のS1バレル皮質に投与するステップを含み、READRvGATが、赤色蛍光タンパク質mCherryをコードするRNAとそれに続くsesRNA標的化Tle4 mRNA、2aタンパク質、smFlag(smV5)、第2の2aタンパク質、テトラサイクリン依存性転写活性化因子tTA2およびW3SLをコードする配列に作動可能に連結されたヒトSynプロモーターである、5’から3’の転写順序の[hSyn-mCherry-sesRNAvGAT-smFlag-tTA2]を含み、レポーターmNeonが、[TRE3g-mNeon-WPRE]を含み、投与の際に、哺乳動物のS1バレル皮質におけるTle4 mRNAが、赤紫色およびGFPで共標識され、哺乳動物皮質におけるGABA作動性ニューロンの同定を示す、方法である。一態様では、sesRNA標的化Tle4 mRNAは、Tle4 mRNAのエクソン15の全部または一部分に相補的である。
【0063】
本発明の別の実施形態は、器官培養プラットフォームにおいて、ヒト言語スキルの発達に関わる進化的に保存された遺伝子であるヒトFOXP2を発現する皮層を決定する方法であって、READRFOXP2/レポーターmNeonAAV(hSyn-ClipF-sesRNAFOXP2-smV5-tTA2とTRE3g-mNeon)を、器官培養プラットフォームのヒト新皮質スライスに投与するステップを含み、投与の5日後に、mNeon標識化細胞体が、器官培養プラットフォーム皮層の上層および深層で観察され、上層および深層におけるヒトFOXP2の発現を示す、方法である。
【0064】
本発明の別の実施形態は、発作の活動に関与する病態生理学的神経集合(PNE)の神経活動の細胞型標的化モジュレーションを含むPNEを標的化することを含む、焦点性てんかん発作を促進する一部の細胞型における神経活動を抑制するための方法であって、神経活動についてのマーカーが、最初期遺伝子(IEG)c-fosの迅速な上方調節であり、電位依存性カリウムチャネルKv1.1(KCNA1)、抑制性DREADD(hM4D(Gi)阻害性受容体)、および塩化物透過性である無脊椎動物グルタミン酸受容体(eGluCL)からなる群から選択される3つのエフェクター遺伝子のうちの1つに作動可能に連結されたREADRc-fosを投与するステップを含み、てんかんの間に、c-fos RNAの上方調節が、エフェクター翻訳を引き起こして、PNE活動を抑制する、方法である。一態様では、エフェクター遺伝子は、抑制性DREADD受容体であり、これは、経口薬物オランザピンによって活性化される。別の態様では、エフェクター遺伝子は、eGluCLであり、これは、薬物イベルメクチンによって活性化される。別の態様では、エフェクター遺伝子は、抑制性PSEMであり、これは、薬物バレニクリンによって活性化される。
【0065】
本発明の別の実施形態は、慢性疼痛を処置する方法であって、後根神経節の電位依存性ナトリウムチャネルTRPV1またはNaV1.8によってコードされるRNAを標的化するRNAセンサーを含む侵害受容器を標的化するステップ、およびノックダウンアプローチにおいてCellReadR細胞型特異的低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を使用してエフェクター発現を媒介して、侵害受容器におけるNaV1.7およびNaV1.8 mRNAを下方調節するステップを含む、方法である。
【0066】
本発明の別の実施形態は、限定されるものではないが、アストロサイトにおいて、アルデヒドデヒドロゲナーゼファミリー1メンバーL1(Aldh1L1)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、興奮性アミノ酸トランスポーター1(EAAT1)、およびミクログリアにおいて、C-X3-Cモチーフケモカイン受容体1(CX3CR1)、膜貫通タンパク質119(TMEM119)、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA-1)を含む、アルツハイマー病標的化マーカー遺伝子/RNAを処置する方法であって、CellReadR細胞型特異的低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を使用してエフェクター発現を媒介して、ApoE4を下方調節するステップを含む、方法である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「停止コドン」という用語は、細胞中でタンパク質合成を停止するシグナルを伝達するDNAまたはメッセンジャーRNA(mRNA)における3つのヌクレオチド(トリヌクレオチド)の配列を指す。
【0068】
メッセンジャーRNAにおける「コドン」は、アミノ酸をコードするヌクレオチドトリプレットに対応する。RNA中の連続コドンは、タンパク質に翻訳可能である。本来は、停止コドンは、mRNAのコード領域の3’末端に位置し、結合放出因子による翻訳の終結をシグナル伝達し、この結合は、リボソームサブユニットを解離させ、それによって、アミノ酸鎖を放出させる。64の異なるトリヌクレオチドコドンが存在する:61の特異的アミノ酸および3つが停止コドンである(すなわち、RNAにおけるUAA、UAGおよびUGA、ならびにDNAにおけるTAA、TAGおよびTGA)。
【0069】
本明細書で使用される場合、「編集可能停止コドン」は、停止コドンから翻訳可能コドンまでの細胞によって編集可能である停止コドンを指す。そのため、RNAでは、UAA、UAGまたはUGAである編集可能停止コドンは、細胞によって、UII、UIG、またはUGIに編集可能である。編集可能停止コドンは、編集可能停止コドンの下流の任意のコドンのための翻訳スイッチとして機能する。停止コドンの編集は、内因性ADAR酵素が存在する細胞中で起こる。
【0070】
停止コドンの「編集」は、編集可能停止コドンを含有する感覚性RNAが、標的RNAとdsRNAを形成し、それによって、内因性ADAR酵素を動員する場合に起こる。ADARは、STOPコドンで作用し、AからIへの編集を行い、このようにして、例えば、UAG STOPをUIG(トリプトファン)コドンに変換し、これは、下流のコドンの翻訳を可能にする。
【0071】
「ADAR」という用語は、RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼを表す曖昧性除去である。ADAR酵素は、二本鎖RNA(dsRNA)に結合し、脱アミノ化によってアデノシンをイノシン(ヒポキサンチン)に変換する。ADARタンパク質は、転写後に作用し、RNAのヌクレオチド含有量を変化させる。RNAにおけるアデノシンからイノシン(AからI)への変換は、正常なA:U対合を破壊し、RNAを不安定化する。イノシンは、イノシンとシトシン(I:C)の結合をもたらすグアニン(G)に構造的に類似している。イノシンは、典型的には、翻訳の間に、グアノシンを模倣するが、ウラシル、シトシン、およびアデノシンにも結合することができるにもかかわらず、これは、好ましくない。
【0072】
本明細書で使用される場合、「readrRNA」は、5’領域および3’領域を有する分子であって、readrRNA分子が、(i)センサー(ses)ドメインを含む5’領域であって、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能STOPコドンを含む、5’領域、および(ii)センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNA(efRNA)領域を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、分子を指す。
【0073】
readrRNAでは、ADAR編集可能停止コドンは、センサーRNA内、およびインフレームエフェクターコード領域の上流に位置する。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ADAR編集可能STOPコドン」は、ADARによって細胞中で編集可能である停止コドンを指す。Schneider, M. F., Wettengel, J., Hoffmann, P. C., & Stafforst, T. (2014). Optimal guide RNAs for re-directing deaminase activity of hADAR1 and hADAR2 in trans. Nucleic acids research, 42(10), e87. https://doi.org/10.1093/nar/gku272
【0075】
本明細書で使用される場合、「センサードメイン」は、readrRNAの一部分を形成するヌクレオチドの連続セットを指し、ここで、センサードメインは、少なくとも1つの編集可能停止コドンおよび下流のエフェクタードメインも含む。センサードメインは、配列特異的塩基対合を通して、特定の細胞型のRNAに相補的である連続ヌクレオチドを含有する。センサードメインは、少なくとも10ヌクレオチド~少なくとも1000ヌクレオチド、またはそれよりも多くを含む、任意の数のヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、センサードメインは、約100~約900ヌクレオチドを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。別の実施形態では、センサードメインは、約200ヌクレオチド~約300ヌクレオチドの範囲を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。センサードメインは、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000またはそれよりも多くの連続ヌクレオチドの長さであってもよい。
【0076】
センサードメイン中の少なくとも1つの編集可能停止コドンは、readrRNAのセンサードメイン内のどこかに位置する。センサードメインは、readrRNA分子中で5’から3’の方向を有し、上流(5)’部分および下流(3)’部分を含む。編集可能停止コドンは、センサードメインの上流部分またはセンサードメインの下流部分に位置し得る。編集可能停止コドンは、センサードメインの中央に近いセンサードメインの上流部分に位置していてもよく、または編集可能停止コドンは、センサードメインの下流の末端に近いセンサードメインの下流部分に位置していてもよい。例えば、センサードメインが、600ヌクレオチドの長さであり、空間的に半分に分割される場合、第1のヌクレオチドは、センサードメインの5’末端を表し、300番目のヌクレオチドは、センサードメインの中央を表し、センサードメインの最後(600番目)のヌクレオチドは、センサードメインの3’末端を表し、編集可能停止コドンは、センサードメインの上流部分、または下流部分、または中央の近傍に位置し得る。およそ同じ長さを有するセンサードメインが4分の1に分割される場合、編集可能停止コドンは、センサードメインの第1の4分の1部分(ヌクレオチド1~250)、センサードメインの第2の4分の1部分(ヌクレオチド150~300)、センサードメインの第3の4分の1部分(ヌクレオチド300~450)、またはセンサードメインの第4の4分の1部分(ヌクレオチド450~600)に位置し得る。そのため、所与の長さのセンサードメインについて、編集可能停止コドンは、センサードメインの選択された部分に位置し得る。一般に、編集可能停止コドンは、センサードメインの下流の半分、またはセンサードメインの下流の4分の1に位置し得る。編集可能停止コドンを含有するセンサードメインの選択された部分は、センサードメインの3’末端の10~50ヌクレオチド内にあり得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、「エフェクターRNA(efRNA)」は、エフェクタータンパク質を翻訳可能であるおよびコードする、RNAである。
【0078】
「エフェクタータンパク質」は、エフェクターRNAドメインによってコードされ、それが発現される細胞に対する効果を有する、タンパク質である。エフェクタータンパク質は、細胞中で、エフェクターRNAから翻訳され、したがって、それをコードするRNAのようなエフェクタータンパク質は、同じ内因性タンパク質を含有していてもよく、含有していなくてもよい、細胞に導入される。エフェクタータンパク質は、それが翻訳される細胞に対する、または細胞から分泌された場合に、周囲の細胞に対する効果を有するタンパク質である。エフェクタータンパク質の非限定的な例としては、酵素、検出可能タンパク質、サイトカイン、毒素、ポリメラーゼ、転写もしくは翻訳因子、腫瘍抑制因子、神経活性化因子もしくは抑制因子、アポトーシス性タンパク質、または生理学的因子が挙げられる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「エフェクターRNA(efRNA)領域」は、センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNAを含むreadrRNAの一部分を指す。
【0080】
エフェクターRNA(efRNA)は、目的のエフェクタータンパク質をコードし得る。所望のエフェクタータンパク質の選択は、十分に当業者の技能内であり、readrRNAの所望の使用の文脈に依存する。例えば、所与の疾患を処置することが所望される場合、エフェクタータンパク質は、疾患を確立するおよび/または長引かせるために重要である細胞に対する阻害効果をそれが有することに基づいて選択されてもよい。例えば、CellREADR(efRNA)のエフェクターモジュールは、活性および機能を増強すること、活性および機能を抑制すること、欠失または突然変異タンパク質のインタクトバージョンを再導入することによって突然変異細胞の機能をレスキューすること、活性および機能を変更および編集すること、細胞のアイデンティティー、運命および機能を初期化すること、細胞型を死滅および除去すること、ある種類の細胞数の産生を増加または減少させること、ならびに細胞型特異的ゲノム編集および遺伝子調節を含む、複数の方法で、細胞を操作するように構築され得る。
【0081】
エフェクターの非限定的な例を下記の表1にリストする。表1は、本発明に従って有用なエフェクタータンパク質(ペイロード)の非限定的なリスト、および細胞に対するそれらの効果を提供する。
表1
【表1】
【0082】
エフェクターRNA「ペイロード」の文脈における「ペイロード」という用語は、エフェクタータンパク質をコードするRNAによってコードされるタンパク質を意味する。
【0083】
本明細書で使用される場合、「細胞型」という語句は、生物、器官、組織、細胞の集団、もしくは細胞系、またはハイブリドーマ、同種細胞集団、もしくは異種細胞集団、休止もしくは静止もしくは活性化されている細胞、または形質転換もしくは罹患もしくはストレスもしくは炎症もしくはヒートショックを受けている細胞の体細胞であるか、あるいはRNAの差次的発現を通して同定され得る、自然免疫系の一部、天然免疫系の一部、幹細胞、多能性幹細胞、腸幹細胞、幹細胞、胎児細胞、ホメオスタシスに寄与する細胞、心臓もしくは血管関連細胞、消化器系の細胞、神経系の細胞、骨格構造の細胞、器官の細胞である。
【0084】
おそらく、あらゆる細胞またはその群は、異なり、単一細胞RNA解析は、細胞の系統、その活性化状態、発達の状態、他の細胞、組織および器官との相互作用の結果としてその状態、可溶性分子、ならびに/または細胞が罹患、形質転換もしくは感染しているかに関して、この多様性の証拠が得られている。
【0085】
本明細書で使用される場合、「自己切断2Aペプチド」または「2Aペプチド」という用語は、細胞におけるタンパク質の翻訳の間にリボソームスキッピングを誘導し得る18~22アミノ酸長のペプチドのクラスを指す。これらのペプチドは、DxExNPGPのコア配列モチーフを共有し、広範囲のウイルスファミリーで見出され、リボソームがペプチド結合を作るのを失敗させることによって、ポリタンパク質の生成を助ける。2Aペプチドの好適な例としては、限定されるものではないが、T2A、P2A、E2A、F2Aなどが挙げられる(Liu, Ziqing et al. "Systematic comparison of 2A peptides for cloning multi-genes in a polycistronic vector." Scientific reports vol. 7,1 2193. 19 May. 2017, doi:10.1038/s41598-017-02460-2)。そのような自己切断2Aペプチドの1つは、T2Aペプチドを含む。
【0086】
いくつかの2Aペプチドは、ピコルナウイルス、昆虫ウイルス、およびC型ロタウイルスにおいて同定されている。本明細書で使用される場合、T2Aは、トセアアシグナウイルス2Aにおいて同定された2Aペプチドであり、P2Aは、ブタテッショウウイルス-1 2Aにおいて同定された2Aペプチドであり、E2Aは、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2Aにおいて同定された2Aペプチドであり、F2Aは、口蹄疫ウイルス(FMDV)の自己切断2Aペプチドとして同定された2Aペプチドである。以下の表は、さまざまな2AペプチドのDNAおよび対応するアミノ酸配列を提供する。下線付きの配列は、アミノ酸GSGをコードし、これは、切断効率を改善するために設計された、ネイティブ2A配列に対する必要に応じた付加の例であり、P2Aは、ブタテッショウウイルス-1 2A、T2Aは、トセアアシグナウイルス2A、E2Aは、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A、F2Aは、FMDV 2Aを示す。これは、Kim J.H.et al. (High Cleavage Efficiency of a 2A Peptide Derived from Porcine Teschovirus-1 in Human Cell Lines, Zebrafish and Mice) PLoS One. 2011; 6(4): e18556. Published online 2011 Apr 29. doi: 10.1371/journal.pone.0018556の表1が出典である。
表2
【表2】
【0087】
本明細書で使用される場合、「自己切断2Aペプチドをコードする配列」は、上記に記載される自己切断2Aペプチドをコードする、核酸、好ましくは、RNAである。本発明によれば、自己切断2Aペプチドをコードする配列は、典型的には、センサードメインとエフェクターRNA領域との間に位置する。
【0088】
「モジュラー」という用語は、「モジュラーreadrRNA分子」という語句の文脈で使用される場合、核酸レベル、好ましくは、RNAレベルで設計されたタンパク質ドメインをコードする核酸配列(好ましくは、RNA配列)を含む組換えreadrRNA分子を指し、ここで、異なるタンパク質ドメインは、特定の数のリピート(0を含む)で、所望の順序で、組換えreadrRNA分子において、アセンブルされ得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「CellREADR」は、「内因性ADAR[RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ]によるRNAセンシングを通した細胞アクセス」を表し、これは、ADAR編集可能STOPコドンによるなどのすべての動物細胞に遍在性の編集メカニズムの、5’センサー-編集-スイッチ領域(sesRNA)および3’エフェクタータンパク質(またはタンパク質断片)コード領域(ef RNA)からなり、自己切断ペプチドT2Aをコードする連結配列によって分離された、単一のモジュラーReadr RNA分子として設計される。CellREADRは、細胞RNAの存在を検出するため、ならびにエフェクタータンパク質の翻訳のスイッチをオンにして、細胞型の生理、機能および/または構造をモニターおよび操作するためのメカニズムを提供する。以下の表は、濃縮されたmRNAの指標とともに、さまざまな組織の細胞型を提供する。
表3
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0090】
本明細書で使用される場合、「CellREADRシステム」は、以下の構成要素を含む:(i)選択された細胞RNAの一部分に相補的であるヌクレオチドの連続セットを含むセンサーRNAドメイン、(ii)エフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNA(efRNA)ドメインであって、efRNAドメインが、センサーRNAドメインの下流にあり、それとインフレームにある、efRNAドメイン、(iii)センサーRNAドメイン内にあるか、またはセンサーとエフェクターRNAドメインとの間にあるADAR編集可能STOPコドン、ならびに(iv)第2のタンパク質コード核酸、または遺伝子制御エレメントを必要に応じて含む遺伝子であって、ここで(iv)は、センサーRNAおよびエフェクターRNAドメインに物理的に連結されていてもよく、または連結されていなくてもよい。CellREADRシステムは、readrRNAに物理的に連結されていない(例えば、別々のベクター上の)外因性遺伝子(DNAまたはRNA)を含み得る。CellREADRシステムは、readrRNA核酸を含有する細胞を含んでいてもよく、核酸は、第2のタンパク質をコードし、細胞は、多細胞の生物、植物、動物、またはヒトへの送達のために使用される。
【0091】
本明細書で使用される場合、「送達システム」は、モジュラーreadrRNA分子および/またはCellREADRシステムを投与するためのビヒクルを含むシステムを指し、ここで、ビヒクルには、限定されるものではないが、ナノ粒子、リポソーム、ベクター、エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、SENDシステム、およびその組合せが含まれる。
【0092】
「SENDシステム」は、ヒトゲノム中に存在するレトロエレメントに基づくヒト化ウイルス様粒子(VLP)を含むmRNA送達システムである(Segel M, et al. Mammalian retrovirus-like protein PEG10 packages its own mRNA and can be pseudotyped for mRNA delivery. Science. 2021;373:882-889. doi: 10.1126/science.abg6155)。そのような送達システムのベクターとしては、限定されるものではないが、組換えウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルス、およびその組合せが挙げられる。一実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターを含む。
【0093】
本明細書で使用される場合、「と二重鎖を形成することが可能である」は、「連続ヌクレオチドの対応する区間」がセンサードメインRNAの連続ヌクレオチドの区間と塩基対合し得ることを意味する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「対応する区間」は、同じ長さのヌクレオチドであり、塩基対合を通してマッチする、配列を意味する。
【0095】
「区間」は、少なくとも15塩基またはそれよりも多くの連続ヌクレオチドの長さを示し、より多くには、20塩基、25塩基、30塩基,40塩基、50塩基、60塩基、75塩基、100塩基、125塩基、150塩基、175塩基、200塩基、225塩基、250塩基、275塩基、300塩基、325塩基、350塩基、375塩基、400塩基、425塩基、450塩基、475塩基、500塩基、525塩基、550塩基、575塩基、600塩基、625塩基、650塩基、675塩基、700塩基、725塩基、750塩基、775塩基、800塩基、825塩基、850塩基、875塩基、900塩基、925塩基、950塩基、975塩基、1000塩基、およびそれよりも多くが含まれる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「翻訳スイッチ」は、ADAR編集可能STOPコドン構成要素を含むreadrRNA分子の構成要素であり、これは、標的RNAに相補的な上流のセンサーRNAに結合して、二本鎖RNA構造を形成する際に、その後のAUG停止コドンのADAR媒介編集をもたらし、エフェクタータンパク質をコードする下流RNAの翻訳をもたらす。
【0097】
本明細書で使用される場合、「細胞RNA」は、それが、細胞に導入された遺伝子から転写されているか、または細胞に感染した病原体(ウイルス、細菌、真菌または別の微生物など)から転写されているので、RNAが細胞に対して内因性である(すなわち、細胞に対して内因性の遺伝子から転写される)かどうか、または細胞に存在するかにかかわらず、所与の細胞に存在するRNAを意味する。
【0098】
本明細書で使用される場合、「細胞の細胞RNA」は、RNAが特定の特徴を有する細胞に存在することが公知であるので、特定の特徴を有する結果として同定可能である、細胞に存在するRNAを意味する。
【0099】
本明細書で使用される場合、「細胞状態を定義する細胞RNA」は、目的の選択細胞または細胞の群に存在する1つまたは複数のRNA配列を指し、その存在が、限定されるものではないが、特定の細胞の生理、細胞の特定の発達段階、細胞の特定の形質転換、または細胞の活性化状態を含む、所与の細胞の状態を同定する。
【0100】
すなわち、細胞の特定の生理は、大部分では、RNA転写物の固有のレパートリーのその発現によって決定される。RNA転写物の固有のレパートリーは、目的の特定の細胞もしくは細胞の群を同定するか、または目的の特定の細胞もしくは細胞の群の特定の活性化状態を同定するか、または目的の特定の細胞もしくは細胞の群の特定の発達段階を同定するか、または目的の細胞もしくは特定の細胞もしくは細胞の群の多数の生理学的状態のうちのいずれか1つを同定する1つの手段である。
【0101】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、線状または分枝状であってもよく、これは、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。この用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作、例えば、標識化構成要素とのコンジュゲーションによって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。
【0102】
本明細書に提供されるポリペプチドおよび分子の文脈では、「融合」、「融合された」、「組み合わせ」、および「連結された」という用語は、本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含むどんな手段によっても、2つより多くのタンパク質構成要素を一緒に接続することを指す。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結された」とは、連結されているDNA配列が、連続的であり、リーディング段階またはインフレームにあることを意味する。本明細書で使用される場合、「インフレーム(in-frame)」または「インフレーム(in frame)」という用語は、元のオープンリーディングフレーム(ORF)の正しいリーディングフレームを維持する様式で、2つまたはそれよりも多くのORFを接続して、連続的なより長いORFを形成することを指す。そのため、得られた組換え分子は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つまたはそれよりも多くのセグメントを含有する単一タンパク質である(このセグメントは、通常、天然でそのように結合していない)。
【0103】
ポリペプチドの文脈では、「線状配列」または「配列」は、配列中の互いに隣接する残基が、ポリペプチドの一次構造中で連続的である、アミノ末端からカルボキシル末端への方向のポリペプチド中のアミノ酸の順序である。「部分配列」は、一方向または両方向で追加の残基を含むことが公知のポリペプチドの部分の線状配列である。
【0104】
「異種」とは、比較される実体の残部とは遺伝子型的に異なる実体に由来することを意味する。例えば、そのネイティブコード配列から除去され、ネイティブ配列以外のコード配列に作動可能に連結されたグリシンリッチ配列は、異種グリシンリッチ配列である。ポリヌクレオチド、ポリペプチドに適用される「異種」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、比較される実体の残部のものとは遺伝子型的に異なる実体に由来することを意味する。
【0105】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は互換的に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそのアナログのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有していてもよく、公知または未知の任意の機能を行ってもよい。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座(複数可)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリーの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成要素によって中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば、標識化構成要素とのコンジュゲーションによってさらに修飾されてもよい。
【0106】
「に相補的な」、「ポリヌクレオチドの相補体」という語句は、逆方向の塩基配列を有する核酸と塩基対合する、5’から3’または3’から5’の方向の塩基配列を有する相補性を有するポリヌクレオチド核酸分子を表す。本明細書で記載される場合、センサーRNAは、不可避のミスマッチコドン(好ましくは、センサーRNA中のAUG)を除いて、特定の標的RNAに相補的である。
【0107】
センサードメインの文脈における「細胞RNAに相補的である部分」という語句は、細胞RNAの対応する連続ヌクレオチドと塩基対合することが可能なセンサー核酸ドメインの連続ヌクレオチドを指す。
【0108】
センサードメインの文脈における「メッセンジャーRNA(mRNA)に相補的である部分」という語句は、mRNAの対応する連続ヌクレオチドと塩基対合することが可能なセンサー核酸ドメインの連続ヌクレオチドを指す。
【0109】
「細胞RNA」という用語は、デオキシリボヌクレオチドを含んでいてもよいが、実質的にリボヌクレオチドであるヌクレオチドから構成される細胞中の核酸を指す。細胞RNAの種類としては、限定されるものではないが、mRNA、rRNA、tRNA、およびマイクロRNAが挙げられる。細胞RNAは、ミスマッチを編集および修復するようにADARを引き付ける、ミスマッチを含有するセンサーRNAと核酸二重鎖を形成するのに十分な長さを有する。したがって、細胞RNAは、少なくとも10残基の長さであり、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000ヌクレオチドの長さ、またはそれよりも長くてもよい。
【0110】
ポリヌクレオチドに適用される「組換え」は、ポリヌクレオチドが、in vitroクローニング、制限および/またはライゲーションステップ、ならびに宿主細胞において潜在的に発現され得る構築物をもたらす他の手順のさまざまな組合せの産物であることを意味する。
【0111】
「遺伝子」または「遺伝子断片」という用語は、本明細書で互換的に使用される。それらは、転写および翻訳された後に、特定のタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子」という用語は、オープンリーディングフレームだけでなく、適切な転写因子の存在下でオープンリーディングフレームの転写を開始するように、オープンリーディングフレームと作動可能に会合する少なくともプロモーターを含む。遺伝子または遺伝子断片は、ポリヌクレオチドが、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有し、これが、コード領域全体またはそのセグメントをカバーし得る限り、ゲノムまたはcDNAであり得る。「融合遺伝子」は、一緒に連結されている少なくとも2つの異種ポリヌクレオチドから構成される遺伝子である。
【0112】
「相同性」または「相同」は、2つもしくはそれよりも多くのポリヌクレオチド配列、または2つもしくはそれよりも多くのポリペプチド配列間の配列の類似性または互換性を指す。2つの異なるアミノ酸配列間の配列の同一性、類似性または相同性を決定するためにBestFitなどのプログラムを使用する場合、デフォルト設定が使用されてもよく、または適切なスコアリング行列、例えば、blosum45またはblosum80が、同一性、類似性または相同性スコアを最適化するために選択されてもよい。好ましくは、相同であるポリヌクレオチドは、本明細書に定義されるストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、その配列と、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、95%、より好ましくは、97%、より好ましくは、98%、さらにより好ましくは、99%の配列同一性を有するものである。
【0113】
本明細書で使用される場合、「処置」、「治療」および/または「治療レジメン」は、患者によって呈されるか、または患者が感受性であり得る、疾患、障害または生理学的状態に応答して行われる臨床介入を指す。処置の目的には、症状の軽減もしくは防止、疾患、障害もしくは状態の進行もしくは悪化を遅延させることもしくは停止させること、および/または疾患、障害もしくは状態の寛解が含まれる。本明細書で使用される場合、「防止する」、「防止すること」、「防止」、「予防的処置」などの用語は、疾患、障害もしくは状態を有していないが、それを発生するリスクがあるまたはその疑いがある対象において、疾患、障害または状態の発生する確率を低減することを指す。「有効量」または「治療有効量」という用語は、有利なまたは所望の生物学的および/または臨床結果を生じるのに十分な量を指す。
【0114】
本明細書で使用される有効量は、さまざまな文脈において、疾患の症状の発生を遅延させる、疾患の症状の経過を変更する(例えば、限定されるものではないが、疾患の症状の進行を遅延させる)、または疾患の症状を反転させるのに十分な量も含む。そのため、正確な「有効量」を規定することは一般に実現可能ではない。しかしながら、任意の所与の事例について、適切な「有効量」は、ルーチン的な実験のみを使用して、当業者によって決定することができる。
【0115】
有効量、毒性、および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死の用量)およびED50(集団の50%が治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。任意の特定の投薬量の効果は、好適なバイオアッセイ、例えば、数ある中でも、腫瘍成長および/またはサイズについてのアッセイによってモニターすることができる。投薬量は、医師によって決定することができ、必要により、処置の観察された効果を満足させるために調整され得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、薬剤、例えば、治療実体を動物または細胞に「投与すること」という用語は、意図される標的に物質を分配すること、送達することまたは適用することを指すことが意図される。治療剤の観点から、「投与すること」という用語は、非経口または経口経路、筋肉内注射、皮下/皮内注射、静脈内注射、くも膜下腔内投与、頬側投与、経皮送達、外用投与、および鼻腔内または気道経路による投与のいずれかによる送達を含む、動物における所望の場所への治療剤の送達のための任意の好適な経路によって、対象に治療剤を接触させることもしくは分配すること、送達すること、または適用することを指すことが意図される。
【0117】
本明細書で使用される「生体試料」という用語には、限定されるものではないが、対象から単離された、組織、細胞、および/または体液を含有する試料が含まれる。生体試料の例としては、限定されるものではないが、組織、細胞、生検、血液、リンパ液、血清、血漿、尿、唾液、粘液、および涙液が挙げられる。生体試料は、直接対象から(例えば、血液または組織サンプリングによって)、または第三者から(例えば、ヘルスケア提供者または実験助手などの仲介者から受け取る)得てもよい。
【0118】
本明細書で使用される場合、「状態および/または疾患」という用語には、限定されるものではないが、生物の一部分に影響を及ぼす構造または機能の任意の異常な状態および/または障害が含まれる。これは、外部要因、例えば、感染性疾患によって、または、内部機能障害、例えば、がん、がん転移、遺伝性障害/突然変異(先天性および環境的の両方)などによって引き起こされ得る。
【0119】
本明細書で使用される場合、遺伝子中に根本的な遺伝的突然変異を含む単一遺伝子体細胞障害は、単一遺伝子のバリアントによって引き起こされる単一遺伝子(monogenetic)障害を指す。バリアントは、染色体の対の一方または両方に存在し得る。単一遺伝子障害の非限定的な例は、嚢胞性線維症、ハンチントン病および鎌状赤血球症である。
【0120】
当技術分野で公知であるように、がんは、一般に、未制御の細胞成長と考えられる。本発明の方法を使用して、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病を含む、任意のがん、およびその任意の転移を処置することができる。そのようながんのより特定の例としては、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、中皮腫、腎臓がん、外陰部がん、膵臓がん、甲状腺がん、肝癌、皮膚がん、黒色腫、脳がん、神経芽細胞腫、骨髄腫、さまざまな種類の頭頸部がん、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫および末梢性神経上皮腫が挙げられる。
【0121】
例えば、「試料を接触させること」におけるような、本明細書で使用される「接触させること」は、in vitro、ex vivo、またはin vivo(すなわち、本明細書に定義される対象内)で、直接的または間接的に、試料または細胞と接触させることを指す。試料を接触させることには、化合物(例えば、本明細書に提供されるreadrRNA分子および/または本明細書に提供されるreadrRNA分子を含む送達システム)の試料への添加、または対象への投与が含まれ得る。接触させることは、溶液、細胞、組織、哺乳動物、対象、患者、またはヒトへの投与を包含する。さらに、細胞を接触させることには、薬剤を細胞培養物に添加することが含まれる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、ヒトおよび非ヒト動物の両方を指す。本開示の「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。本明細書に開示される方法および組成物は、in vitroで(例えば、単離された細胞または組織)、または対象(すなわち、生体、例えば、患者)においてin vivoでのいずれかで、試料に対して使用することができる。
【0123】
「減少させる」、「低減された」、「低減」、および「阻害する」という用語はすべて、統計学的に有意な量の減少を意味するために本明細書で使用される。一部の実施形態では、「低減する」、「低減」または「減少させる」または「阻害する」とは、典型的には、参照レベル(例えば、所与の処置または薬剤の非存在)と比較して、少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれよりも高い減少を含み得る。本明細書で使用される場合、「低減」または「阻害」は、参照レベルと比較して、完全阻害または低減を包含しない。「完全阻害」は、参照レベルと比較して、100%の阻害である。減少は、好ましくは、所与の障害を有さない個体についての正常範囲内として許容されるレベルへの低下であり得る。
【0124】
「増加した」、「増加させる」、「増強する」、または「活性化する」という用語はすべて、統計学的に有意な量の増加を意味するために本明細書で使用される。一部の実施形態では、「増加した」、「増加させる」、「増強する」、または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して、少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは最大で100%の増加を含む増加、または10~100%の間の任意の増加、あるいは参照レベルと比較して、少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、または2倍~10倍、もしくはそれよりも高い任意の増加を意味し得る。マーカーまたは症状の文脈では、「増加させる」は、そのようなレベルの統計学的に有意な増加である。
【0125】
中枢神経系(CNS)は、3つの主な構成要素:脳、脊髄、およびニューロン(または神経細胞)を有する。
【0126】
これは、神経系の2つの部分のうちの1つである。他の部分は、末梢神経系であり、これは、脳および脊髄を身体の残りの部分に接続する神経からなる。
【0127】
中枢神経系の主要な細胞型は、ニューロン、グリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、およびミクログリア)、脈絡叢細胞、血管および被覆に関連する細胞を含む。末梢神経系は、遠心性ニューロン(運動ニューロン)、求心性ニューロン(感覚ニューロン)およびシュワン細胞を含む。
【0128】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、家畜動物または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが挙げられる。家畜動物および狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、水牛、ネコ科の種、例えば、飼い猫、イヌ科の種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類の種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚類、例えば、トラウト、ナマズおよびサケが挙げられる。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。「個体」、「患者」および「対象」という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0129】
好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、がんの動物モデルを表す対象として有利に使用され得る。対象は、雄または雌であり得る。
【0130】
対象は、処置を必要とする状態(例えば、がん)またはそのような状態に関連する1つもしくは複数の合併症を患っているまたはそれを有していると以前に診断もしくは同定されており、必要に応じて、状態または状態に関連する1つもしくは複数の合併症のための処置を既に受けているものであり得る。あるいは、対象はまた、状態または状態に関連する1つもしくは複数の合併症を有すると以前に診断されていないものであり得る。例えば、対象は、状態または状態に関連する1つもしくは複数の合併症についての1つもしくは複数のリスク因子を示すもの、またはリスク因子を示さない対象であり得る。
【0131】
特定の状態のための処置を「必要とする対象」は、その状態を有する、その状態を有すると診断された、またはその状態を発生するリスクがある、対象であり得る。
【0132】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸)は、本明細書に記載されるアミノ酸配列のうちの1つの機能的断片であり得る。本明細書で使用される場合、「機能的断片」は、本明細書の下記に記載されるアッセイに従って、野生型参照ポリペプチドの活性の少なくとも50%を保持する、ペプチドの断片またはセグメントである。機能的断片は、本明細書に開示される配列の保存的置換を含み得る。
【0133】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは、本明細書に記載される配列のバリアントであり得る。一部の実施形態では、バリアントは、保存的に修飾されたバリアントである。保存的置換バリアントは、例えば、ネイティブヌクレオチド配列の突然変異によって得ることができる。「バリアント」は、本明細書で言及される場合、ネイティブまたは参照ポリペプチドと実質的に相同であるが、1つまたは複数の欠失、挿入または置換を理由として、ネイティブまたは参照ポリペプチドのものと異なるアミノ酸配列を有する、ポリペプチドである。バリアントポリペプチドをコードするDNA配列は、ネイティブまたは参照DNA配列と比較した場合に、ヌクレオチドの1つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、活性を保持するバリアントタンパク質またはその断片をコードする、配列を包含する。多種多様なPCRに基づく部位特異的突然変異誘発アプローチは、当技術分野において公知であり、当業者によって適用され得る。
【0134】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸置換または修飾を含み得る。一部の実施形態では、置換および/または修飾は、対象において、タンパク質分解を防止もしくは低減することができ、および/またはポリペプチドの半減期を延長することができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、例えば、非限定的な例の目的で、トランスフェリン(W006096515A2号)、アルブミン(Yeh et al., 1992)、成長ホルモン(US2003104578AA号)、セルロース(Levy and Shoseyov, 2002)、および/またはFc断片(Ashkenazi and Chamow, 1997)によって、それを他のポリペプチドまたはポリペプチドドメインにコンジュゲートまたは融合することによって修飾され得る。前述の段落における参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸配列」という用語は、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはそのアナログの組み込み単位である、任意の分子、好ましくは、ポリマー分子を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。一本鎖核酸は、変性二本鎖DNAの1つの核酸鎖であり得る。あるいは、これは、任意の二本鎖DNAに由来しない一本鎖核酸であり得る。一態様では、核酸は、DNAであり得る。別の態様では、核酸は、RNAであり得る。好適なDNAには、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAが含まれ得る。好適なRNAには、例えば、mRNAが含まれ得る。
【0136】
「発現」という用語は、RNAおよびタンパク質、ならびに適切な場合、分泌タンパク質の産生に関与する細胞プロセスを指し、適用可能な場合、限定されるものではないが、例えば、転写、転写物のプロセシング、翻訳およびタンパク質フォールディング、修飾、ならびにプロセシングを含む。発現は、本発明の1つもしくは複数の核酸断片に由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積、ならびに/またはポリペプチドへのmRNAの翻訳を指し得る。
【0137】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、組織特異的である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、網羅的である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるバイオマーカー、標的、または遺伝子/ポリペプチドの発現は、全身的である。
【0138】
「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、および遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。「遺伝子」という用語は、適切な調節配列に作動可能に連結された場合に、in vitroまたはin vivoで、RNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子は、コード領域に先行するおよびそれに続く領域、例えば、5’非翻訳(5’UTR)または「リーダー」配列、および3’UTRまたは「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含んでいてもよく、または含んでいなくてもよい。
【0139】
「作動可能に連結された」は、そのように記載される構成要素が、それらの通常の機能を行うように構成されている、エレメントの配置を指す。そのため、コード配列に作動可能に連結された制御エレメントは、コード配列の発現を生じさせることができる。制御エレメントは、それらがその発現を方向付けるように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。そのため、例えば、介在するまだ翻訳されていないが転写された配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、プロモーター配列は、依然として、コード配列に「作動可能に連結された」と考えられる。さらに、それらは、物理的に連結されている必要はない。
【0140】
本発明の文脈における「マーカー」は、対照対象(例えば、健康な対象)から得た同等の試料と比較して、糖尿病またはがんを有する対象から得られた試料中に差次的に存在する、発現産物、例えば、核酸またはポリペプチドを指す。「バイオマーカー」という用語は、「マーカー」という用語と互換的に使用される。
【0141】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも1つのマーカーのレベルを測定すること、検出すること、または決定することに関する。本明細書で使用される場合、「検出すること」または「測定すること」という用語は、例えば、試料中の分析物の存在を示す、プローブ、標識、または標的分子からのシグナルを観察することを指す。特定の標識部分を検出するための当技術分野において公知の任意の方法を、検出のために使用することができる。例示的な検出方法としては、限定されるものではないが、分光学的、蛍光、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的方法が挙げられる。態様のいずれかの一部の実施形態では、測定することは、定量的観察であり得る。
【0142】
態様のいずれかの一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、または細胞は、操作することができる。本明細書で使用される場合、「操作された」は、人の手によって操作されている態様を指す。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチド、例えば、その配列の少なくとも1つの態様が、それが天然に存在する態様と異なるように人の手によって操作されている場合、「操作されている」と考えられる。通常のプラクティスであるように、および当業者によって理解されるように、操作された細胞の子孫は、典型的には、実際の操作が以前の実体に対して行われていたとしても、依然として「操作された」と称される。
【0143】
「外因性」という用語は、そのネイティブ起源以外の細胞中に存在する物質を指す。「外因性」という用語は、本明細書で使用される場合、人の手を含むプロセスによって、生物システムに導入された、核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)またはポリペプチド、例えば、それが通常見出されない細胞または生物であり、そのような細胞または生物に核酸またはポリペプチドを導入することを望むものを指し得る。あるいは、「外因性」は、人の手を含むプロセスによって、生物システムに導入された、核酸またはポリペプチド、例えば、比較的低い量で見出され、細胞または生物における核酸またはポリペプチドの量を増加させること、例えば、異所性発現またはレベルを作出することを望むものである細胞または生物を指し得る。対照的に、「内因性」という用語は、生物システムまたは細胞に対してネイティブである物質を指す。本明細書で使用される場合、「異所性」は、普通ではない場所および/または量で見出される物質を指す。異所性物質は、所与の細胞中で通常見出されるが、非常に低い量および/または異なる時に見出されるものであり得る。異所性は、その天然環境中で所与の細胞において天然に見出されないまたは発現されない、物質、例えば、ポリペプチドまたは核酸も含む。
【0144】
本明細書に記載される態様の一部では、本明細書に記載される所与のポリペプチドをコードする核酸配列、またはその任意のモジュールは、ベクターに作動可能に連結されている。「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、宿主細胞への送達のため、または異なる宿主細胞間の移入のために設計された核酸構築物を指す。本明細書で使用される場合、ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスであり得る。「ベクター」という用語は、適した制御エレメントと会合した場合に複製でき、遺伝子配列を細胞に移入することができる、任意の遺伝エレメントを包含する。ベクターとしては、限定されるものではないが、クローニングベクター、発現ベクター、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、およびビリオンが挙げられ得る。
【0145】
態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、組換えであり、例えば、これは、少なくとも2つの異なる起源を起源とする配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、少なくとも2つの異なる種を起源とする配列を含む。態様のいずれかの一部の実施形態では、ベクターは、少なくとも2つの異なる遺伝子を起源とする配列を含み、例えば、これは、少なくとも1つの非ネイティブ(例えば、異種)遺伝子制御エレメント(例えば、プロモーター、抑制因子、活性化因子、エンハンサー、応答エレメントなど)に作動可能に連結されている、発現産物をコードする融合タンパク質または核酸を含む。
【0146】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列から、RNAまたはポリペプチドの発現を方向付ける、ベクターを指す。発現される配列は、必ずしもではないが、多くの場合に、細胞に対して異種である。発現ベクターは、追加のエレメントを含んでいてもよく、例えば、発現ベクターは、2つの複製システムを有していてもよく、このようにして、2つの生物、例えば、発現のためにヒト細胞において、ならびにクローニングおよび増幅のために原核宿主において、それを維持することを可能にする。
【0147】
本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも1つのエレメントを含み、ウイルスベクター粒子にパッケージングされる能力を有する、核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸を含有することができる。ベクターおよび/または粒子は、in vitroまたはin vivoのいずれかで、任意の核酸を細胞に移入する目的のために利用され得る。多数の形態のウイルスベクターが、当技術分野において公知である。
【0148】
本明細書に記載されるベクターが、一部の実施形態では、他の好適な組成物および治療と組み合わされ得ることが理解されるべきである。一部の実施形態では、ベクターは、エピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、高コピー数の外部染色体DNAで、対象において、目的のヌクレオチドを維持し、それによって、染色体の組み込みの潜在的な効果を排除する手段を提供する。
【0149】
態様のいずれかの一部の実施形態では、処置の予防的方法が本明細書に記載される。本明細書で使用される場合、「予防的」は、疾患または症状に対する処置のタイミングおよび意図を指し、すなわち、処置は、疾患または症状から患者を保護するために、その特定の疾患または症状の臨床検出または診断の前に投与される。予防的処置は、疾患もしくは症状の重症度もしくはその発生のスピードの低減を包含し得るか、または疾患もしくは症状からのより早い回復に寄与し得る。したがって、本明細書に記載される方法は、転移または腫瘍形成に対して予防的であり得る。態様のいずれかの一部の実施形態では、予防的処置は、疾患のすべての症状または兆候の防止ではない。
【0150】
本明細書で使用される場合、「組合せ」は、例えば、同じ対象への投与のための、一緒に使用するための2つまたはそれよりも多くの物質の群を指す。2つまたはそれよりも多くの物質は、任意の分子的または物理的配置で、同じ製剤中に、例えば、混合剤、溶液、混合物、懸濁液、コロイド、エマルジョン中に存在し得る。製剤は、均一なまたは不均一な混合物であり得る。態様のいずれかの一部の実施形態では、2つまたはそれよりも多くの物質の活性化合物は、同じまたは異なる超構造、例えば、ナノ粒子、リポソーム、ベクター、細胞、スキャフォールドなどに含まれ得、超構造は、溶液、混合物、混合剤、溶媒との懸濁液、担体、または2つもしくはそれよりも多くの物質の一部である。あるいは、2つまたはそれよりも多くの物質は、同じ対象に投与される、2つまたはそれよりも多くの別々の製剤中に、例えば、別々の容器中に複数の製剤を含むキットまたはパッケージ中に存在し得る。
【0151】
キットは、本明細書に記載される少なくとも1つの試薬を含む、材料または構成要素の集団である。キットに構成される構成要素の正確な特質は、その意図される目的に依存する。態様のいずれかの一部の実施形態では、キットは、使用説明書を含む。「使用説明書」は、典型的には、例えば、対象を処置するためまたは対象に投与するための、キットの構成要素を使用するのに用いられる技法を記載する目に見える表現を含む。本発明にさらに従って、「使用説明書」は、典型的には意図される目的のための、本明細書に記載される少なくとも1つの試薬の調製を記載する目に見える表現、例えば、希釈、混合、またはインキュベーションの説明などを含み得る。必要に応じて、キットは、他の有用な構成要素、例えば、測定ツール、希釈剤、緩衝液、注射器、薬学的に許容される担体、または当業者に容易に認識される他の有用な道具も含有する。
【0152】
キットに組み立てられる材料または構成要素は、それらの操作性および有用性を保つ任意の便利で好適な方法で、開業医が貯蔵するために提供され得る。例えば、構成要素は、溶解、脱水、または凍結乾燥形態であり得、それらは、室温、冷蔵温度または凍結温度で提供され得る。構成要素は、典型的には、好適なパッケージング材料に含有される。本明細書で用いられる場合、「パッケージング材料」という語句は、キットの内容物、例えば、発明組成物などを収容するために使用される1つまたは複数の物理的構造を指す。パッケージング材料は、好ましくは、無菌の、夾雑物を含まない環境を提供するために、周知の方法によって構築される。パッケージングはまた、好ましくは、光、湿度、および酸素から保護する環境を提供し得る。本明細書で使用される場合、「パッケージ」という用語は、個々のキットの構成要素を保持することができる、好適な固体マトリックスまたは材料、例えば、ガラス、プラスチック、紙、ホイル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、またはMylarなど)などを指す。そのため、例えば、パッケージは、ある体積の本明細書に記載される少なくとも1つの試薬を含有する好適な量の組成物を含有するために使用されるガラスバイアルであり得る。パッケージング材料は、一般に、キットおよび/またはその構成要素の内容物および/または目的を示す、外部ラベルを有する。
【0153】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」という用語は、約1~1,000ナノメートル程度の直径または幅である粒子を指す。「ナノ粒子」という用語には、ナノスフェア、ナノロッド、ナノシェル、およびナノプリズムが含まれ、これらのナノ粒子は、ナノネットワークの一部分であってもよい。「ナノ粒子」という用語は、ナノ粒子のサイズを有するリポソームおよび脂質粒子も包含する。例示的なナノ粒子としては、脂質ナノ粒子またはフェリチンナノ粒子が挙げられる。脂質ナノ粒子は、例えば、イオン化可能脂質(MC3、DLin-MC3-DMA、ALC-0315、またはSM-102など)、ペグ化脂質(PEG2000-C-DMG、PEG2000-DMG、ALC-0159など)、リン脂質(DSPCなど)、およびコレステロールを含む、複数の構成要素を含み得る。
【0154】
例示的なリポソームは、例えば、DSPC、DPPC、DSPG、コレステロール、水素化ダイズホスファチジルコリン、ダイズホスファチジルコリン、メトキシポリエチレングリコール(mPEG-DSPE)ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジステアロイルホスファチジルコリン、およびその組合せを含み得る。
【0155】
本明細書で使用される場合、「投与すること」という用語は、所望の部位で薬剤の少なくとも部分的な送達をもたらす方法または経路による、本明細書に開示される化合物の対象への配置を指す。本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物は、対象において有効な処置をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。一部の実施形態では、投与は、物理的なヒトの活動、例えば、注射、摂取の行為、適用の行為、および/または送達デバイスもしくは機械の操作を含む。そのような活動は、例えば、医療専門家および/または処置される対象によって行われ得る。
【0156】
本明細書で使用される場合、「接触させること」は、薬剤を少なくとも1つの細胞に送達または曝露するための任意の好適な手段を指す。例示的な送達方法としては、限定されるものではないが、細胞培養培地への直接送達、灌流、注射、または当業者に周知の他の送達方法が挙げられる。一部の実施形態では、接触することは、物理的なヒトの活動、例えば、注射、分配、混合および/もしくはデカンテーションする行為、ならびに/または送達デバイスもしくは機械の操作を含む。
【0157】
「統計学的に有意な」または「有意に」という用語は、統計学的有意性を指し、一般に、2標準偏差(2SD)またはそれよりも大きい差を意味する。
【0158】
操作実施例以外に、または他に示される場合、本明細書で使用される成分または反応条件の量を表すすべての数は、すべての例において、「約」という用語によって修飾されているとして理解されるべきである。「約」という用語は、パーセンテージと併せて使用される場合、±1%を意味し得る。
【0159】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、他の要素も、提示された定義された要素に加えて存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定的ではなく、包括的を示す。
【0160】
「からなる」という用語は、実施形態のその記載に列挙されていない任意の要素が排除される、本明細書に記載される組成物、方法、およびその個々の構成要素を指す。
【0161】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態について必要な要素を指す。この用語は、本発明のその実施形態の基本的および新規のまたは機能的特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。
【0162】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」という用語は、2つの分子、化合物、細胞および/または粒子間の化学的相互作用であって、ここで、第1の実体は第2の標的実体に、非標的である第3の実体にそれが結合するよりも高い特異性および親和性で結合する、化学的相互作用を指す。一部の実施形態では、特異的結合は、第3の非標的実体に対する親和性よりも、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、またはそれよりも高い、第2の標的実体に対する第1の実体の親和性を指し得る。所与の標的に特異的な試薬は、利用されるアッセイの条件下で、その標的に対して特異的結合を示すものである。
【0163】
本明細書に他に定義されない限り、本出願に関連して使用される科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味を有するものとする。本発明が、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬などに限定されず、それ自体変更され得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。免疫学および分子生物学における一般的な用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 20th Edition, published by Merck Sharp & Dohme Corp., 2018 (ISBN 0911910190, 978-0911910421); Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine, published by Blackwell Science Ltd., 1999-2012 (ISBN 9783527600908); and Robert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8); Immunology by Werner Luttmann, published by Elsevier, 2006; Janeway's Immunobiology, Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver (eds.), W. W. Norton & Company, 2016 (ISBN 0815345054, 978-0815345053); Lewin's Genes XI, published by Jones & Bartlett Publishers, 2014 (ISBN-1449659055); Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012) (ISBN 1936113414); Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012) (ISBN 044460149X); Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Jon Lorsch (ed.) Elsevier, 2013 (ISBN 0124199542); Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), Frederick M. Ausubel (ed.), John Wiley and Sons, 2014 (ISBN 047150338X, 9780471503385), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John E. Coligan (ed.), John Wiley and Sons, Inc., 2005; and Current Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) John Wiley and Sons, Inc., 2003 (ISBN 0471142735, 9780471142737)に見ることができ、これらの内容は、それらの全体が、参照により本明細書にすべて組み込まれる。
【0164】
当業者は、使用する化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、Physicians' Cancer Chemotherapy Drug Manual 2014, Edward Chu, Vincent T. DeVita Jr., Jones & Bartlett Learning; Principles of Cancer Therapy, Chapter 85 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 18th edition; Therapeutic Targeting of Cancer Cells: Era of Molecularly Targeted Agents and Cancer Pharmacology, Chs. 28-29 in Abeloff's Clinical Oncology, 2013 Elsevier; and Fischer D S (ed): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 2003を参照されたい)。
【0165】
mCherryは、Discosoma sp.に由来する、2004年に公開された、塩基性(構成的に蛍光性の)赤色蛍光タンパク質である。これは、酸感受性が低く、非常に迅速に成熟するモノマーであると報告されており、ウイルスによって発現されたmCherryは、赤紫色に疑似着色される。
SmV5は、スパゲッティモンスター(spaghetti monster)V5を指す。
smFLAGは、スパゲッティモンスターFLAG:エピトープタグFLAG-(DYKDDDDK)の10コピーを指す。
tTA2は、テトラサイクリン依存性転写活性化因子である。
【0166】
W3SLは、切断型ウッドチャック肝炎の転写後調節エレメントおよびポリアデニル化シグナルカセットである(Choi et al., 2014)。Choi JH, Yu NK, Baek GC, Bakes J, Seo D, Nam HJ, Baek SH, Lim CS, Lee YS, Kaang BK (2014)。
【0167】
eYFPは、高感度黄色蛍光タンパク質である。
【0168】
PTエンハンサーは、CFPNのサブセットであるL5錐体路(PT)ニューロンを標識する、mscRE4エンハンサーである。
【0169】
カルシウム飽和GCaMP6sは、その親蛍光タンパク質の高感度GFP(EGFP)よりも27%明るい。
【0170】
PlxnD1(L2/3およびL5aにおける終脳内-IT PN)、Satb2(上層および下層の両方にわたるIT PN)、Rorb(L4錐体ニューロン)、およびvGAT(pan-GABA作動性ニューロン)。
【0171】
Fezf2は、FEZファミリージンクフィンガー2遺伝子である。FEZF2と関連する疾患としては、部分的胎児性アルコール症候群および胸腺形成異常が挙げられる。
【0172】
Ctip2 tip2/Bcl11bは、さまざまな組織の発達の間に、エピジェネティック調節を遺伝子転写と組み合わせる、二重作用(抑制/活性化)を有するジンクフィンガー転写因子である。転写因子COUP TF1相互作用タンパク質2(CTIP2)は、軸索伸長および大脳皮質の大脳下投射ニューロンによる経路探索の間に重要な役割を果たす(Arlotta et al., 2005)。ここで、我々は、線条体内で、Ctip2が、この重要なニューロン集団を初期有糸分裂後段階から特異的に標識する、MSNによって固有に発現されることを報告する。Ctip2機能の喪失は、MSN分化の失敗、MSNのパッチ-マトリックス組織化の破壊、およびパッチ区画の新規分子識別子を含む複数の遺伝子の発現の異なる変化をもたらす。パッチ凝集の欠陥はまた、線条体の異常なドーパミン作動性神経支配をもたらす。最後に、突然変異線条体内の細胞反発および異所形成の出現に関与する分子の発現の変更が存在し、Ctip2の喪失が、発達の間の細胞反発の正常なメカニズムを破壊することを強く示唆している。Journal of Neuroscience 16 January 2008, 28 (3) 622-632; DOI: doi.org/10.1523/JNEUROSCI.2986-07.2008。
【0173】
皮質下行性投射ニューロン(CFPN)は、PlxnD1(L2/3およびL5aにおける終脳内-IT PN)、Satb2(上層および下層の両方にわたるIT PN)、Rorb(L4錐体ニューロン)、およびvGAT(pan-GABA作動性ニューロン)を含む、皮質のアウトプットチャネルを構成する。
hSynは、ヒトシナプシン1遺伝子プロモーターを指し、これは、成体ラット脳において、アデノウイルスベクターからの非常にニューロン特異的な長期の導入遺伝子発現を付与することが、当技術分野で認識されている。
【0174】
TRE-3Gは、真核生物誘導性プロモーターを指し、TREは、ミニマルプロモーター(通常、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)最初期プロモーターに由来するミニマルプロモーター配列)に融合されたTetオペレーター(tetO)配列コンカテマーから構成される。TcまたはDoxの非存在下で、tTAは、TREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。
【0175】
mNeonGreenは、Branchiostoma lanceolatumに由来する、2013年に公開された、塩基性(構成的に蛍光性の)緑色/黄色蛍光タンパク質である。
【0176】
WPREは、各種のウイルスベクターからの導入遺伝子発現を増加させるウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)であるが、正確なメカニズムは公知ではない。WPREは、導入遺伝子の下流、ポリアデニル化シグナルの近位に配置される場合、最も有効である。
【0177】
dTomato遺伝子は、dTomatoをコードする遺伝子であり、これは、Discosoma sp.に由来する、塩基性(構成的に蛍光性の)橙色蛍光タンパク質である。
【0178】
tdTomatoは、dTomato遺伝子の2つのコピーの遺伝子融合物であり、tdTomatoは、並外れて明るい赤色蛍光タンパク質である。
【0179】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。
【0180】
詳細な説明
本開示は、一部では、二重機能RNA分子(readrRNA)の発見に基づき、これは、(i)その転写プロファイルに基づく、選択された体細胞の標的化、および(ii)RNA分子によってコードされる所望のエフェクタータンパク質の選択された細胞における翻訳、RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によって媒介されるRNA編集によって実行されるエフェクタータンパク質の翻訳を可能にする。
【0181】
ADAR媒介RNA編集
RNA編集は、すべての後生動物細胞において遍在性のDNA鋳型によってコードされるRNAの配列を変更する広範囲の転写後プロセスである。動物界にわたって、RNA編集の最も普及している形態は、哺乳動物において3つのメンバー(ADAR1、ADAR2、ADAR3)を有するADAR(RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ)ファミリーの酵素によって触媒されるアデノシンからイノシン(AからI)の変換である。次いで、編集されたイノシンは、代わりに、システインと塩基対合し、さまざまな細胞機構によって、グアノシン(G)として認識される。ADAR媒介A-I編集は、すべての後生動物細胞に遍在性である。
図3を参照されたい。
【0182】
ヒトおよび動物のトランスクリプトーム中に数百万のADAR編集部位が存在し、この編集のわずかな割合のみが、コードmRNAにおいて起こり、タンパク質の特性を変更する。大部分は非コード領域にあり、RNAスプライシング、マイクロRNA、およびshRNAの機能に影響を及ぼし得る。それらの最も必須の役割は、感染の間に免疫系にウイルスdsRNAを破壊させながら、自然免疫応答から細胞を保護して、dsRNAを自己生成することである。
【0183】
readrRNA
「readrRNA」は、5’領域および3’領域を有するRNAに基づく分子であって、readrRNA分子が、(i)センサー(ses)ドメインを含む5’領域であって、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能STOPコドンを含む、5’領域、および(ii)センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNA(efRNA)領域を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、分子を指す。出願人の発明の二重機能readrRNAは、選択された体細胞において発現された標的RNAとのミスマッチを有するdsRNAの形成によって、readrRNA中の特異的部位を編集するように、ADARデアミナーゼの動員を可能にする。readrRNA分子からの停止コドンのADAR媒介除去の際に、readrRNAによってコードされる下流の作動可能に連結されたエフェクタータンパク質の翻訳は、選択された体細胞において起こる。
図4。選択された体細胞における標的RNAの非存在下で、readrRNAは、細胞において不活性のままである。
【0184】
readrRNAが、選択された体細胞において標的RNAを検出または「感知」するので、readrRNAは、細胞型を定義するRNAの検出を体細胞におけるエフェクタータンパク質の翻訳と組み合わせるためのADAR(RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ)によって媒介されるRNA編集を活用するプログラム可能なRNAセンシング技術である、CellREADR(内因性ADARによるRNAセンシングを通した細胞アクセス)に含まれるシステムの統合構成要素である。
【0185】
細胞型を定義するRNA
RNAは、細胞型および細胞状態の多様性の根底にある遺伝情報の中心的かつ普遍的なメディエーターであり、これは、種および寿命にわたって、組織の組織化および生物機能を一緒に形作る。RNAシークエンシングの進歩および生命科学にわたるトランスクリプトームデータセットの大規模な蓄積にもかかわらず、細胞型を観察および操作するためにRNAを活用する技術の不足は、生物学および医薬における法外なボトルネックのままである。(Zeng et al. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0186】
細胞型は、進化の産物であり、それらは、生物の基本的な機能単位である。脳および身体における細胞型のレパートリー全体は、単一の受精卵の接合子から出発する、空間的および時間的に協調した発生事象の連続的および並行的なシリーズを通して構築される。この発生プログラムは、進化を通してゲノムにおいてコードされるすべての細胞型のアイデンティティーを解明する、注目すべき実行計画を行う。転写およびエピジェネティック調節プログラムは、ゲノム配列から展開され、細胞の増殖および分化プロセスのカスケードシリーズを駆動し、多様な細胞表現型の顕在化をもたらす。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0187】
RNA発現プロファイルは、ほぼ間違いなく、細胞が特徴付けられ、細胞のワンタイムスナップショットである場合の時間または状態で、細胞のすべての表現型特徴の根底にある。区別の重要なポイントは、選択された細胞において発現されたRNAが、細胞型が異なる状態で存在し得るように、特定の細胞状態-背景に対する細胞の一過的または動的に応答する特性-または細胞型を表すかどうかである。異なる細胞状態と関連するRNA発現の細胞型特異的変化は、概日周期、変動する代謝状態、発生、老化、または挙動的、薬理学的、もしくは病的状態の間に見られ得る(Mayr et al., 2019;Morris, 2019)。(Zeng et al. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0188】
単一細胞トランスクリプトームは、唯一の細胞のワンタイムスナップショットである。しかしながら、異なる時点、または異なる挙動的、生理学的、もしくは病理学的状態から収集されたトランスクリプトームを比較することができる。細胞が、それらの状態を継続的に変化し、ある特定の重要な時点で、それらが、それらの細胞型のアイデンティティーを切り替え得るので、細胞型と細胞状態との間の区別は、特に、発生の間の課題である。しかしながら、絶対的ではないが、トランスクリプトームの変化が、細胞状態の遷移の間に、より連続的になる傾向があるが、細胞が、それらの種類を切り替える場合に、より突然または別々になる傾向があると仮定することが合理的である。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0189】
意味がある細胞型の定義のために、これは、理想的には、細胞型が行うものと関連する。そのため、その細胞型を定義するRNAに基づいて細胞型を定義することに加えて、細胞型は、そのRNA発現を、解剖学的および機能的情報に関連付けることによって定義される。今までのところ、トランスクリプトームの種類が、それらの空間分布パターンと優れた対応を有することが示されている。空間分布パターンが発生の間に定義されるので、これは、トランスクリプトームが発生プランを保持し得ることを示唆する。(Zeng et al. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0190】
系列追跡および他の表現型特徴付けと組み合わせた、高い時間分解能を有する体系的な単一細胞トランスクリプトーム、エピゲノムおよび空間的に分解されたトランスクリプトームプロファイリングは、これらの一連の事象に関与する遺伝子およびゲノム調節ネットワークの重要なセットを捕捉し、細胞型の成体段階のレパートリーをもたらす、細胞型および状態の極めて複雑な空間的および時間的遷移を解決することを開始する驚異的な可能性を保持する(Allaway et al., 2021;Bandler et al., 2022;Bhaduri et al., 2021;Cao et al., 2019b;Chen et al., 2022;Delgado et al., 2022;Di Bella et al., 2021;Klingler et al., 2021;La Manno et al., 2021;Romanov et al., 2020;Schmitz et al., 2022;Sharma et al., 2020;Shekhar et al., 2022;Tiklovaet al., 2019;Zhu et al., 2018)。(Zeng et al. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0191】
トランスクリプトーム的に定義された細胞型の段階的組織化
本明細書で使用される場合、「脳細胞」という用語は、哺乳動物の脳において見出される任意の細胞型を指す。
【0192】
これらの主要な脳構造のそれぞれ内で、多くの細胞型をそれぞれ有する、複数の領域および下位領域が存在する。哺乳動物の脳の基本構造(Swanson, 2000, 2012)は、終脳、間脳、中頭(中脳)、および菱脳(後脳)から構成される。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0193】
終脳(5つの主要な脳構造(1)皮質、(2)海馬形成[HPF]、(3)嗅覚野、(4)皮質サブプレート、および(5)大脳核からなる)。終脳および間脳(視床および視床下部を含む)は、まとめて前脳と呼ばれる。中頭(中脳)は、蓋および被蓋に分けられる。菱脳(後脳)は、脳橋、髄質、および小脳に分けられる。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0194】
皮質では、分岐の第1の(最も高い)レベルは、神経細胞およびさまざまな非神経細胞のクラスの分離である(
図2A)。ニューロンについて、分岐の第2のレベルは、主要な脳構造/領域によって決定され、第3のレベルは、それぞれの主要な脳構造内のさまざまな細胞サブクラスおよび細胞型を含むが、発生の間の細胞輸送に起因する脳構造間を横断するまたはそこで共有される細胞型が存在し得る。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0195】
皮質は、複数の皮質領(視覚野および運動野を含む)から構成され、感覚、運動、または連合性の機能をそれぞれ媒介する。これらの領域のそれぞれでは、それらが放出する優位な神経伝達物質に基づく2つの神経細胞クラスであるグルタミン酸作動性およびGABA作動性、ならびにいくつかの非神経細胞クラスが存在する。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0196】
グルタミン酸作動性興奮性ニューロンは、大部分が、他の皮質および/または皮質下領域への長距離軸索投射を有する。それらは、それらの層の特異性および長距離投射パターンに基づいて9つのサブクラスに分けられる:L2/3終脳内投射[IT]、L4/5 IT、L5 IT、L6 IT、Car3 IT、L5終脳外投射[ET]、L5/6近投射[NP]、L6皮質視床投射[CT]、およびL6b。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0197】
GABA作動性抑制性ニューロンは、ほとんどが、局所領域内に制限されるそれらの軸索投射を有する。それらは、標準マーカー遺伝子の後の名付けられた6つのサブクラスに分けられる:Lamp5、Sncg、Vip、Sst、Sst-Chodl、およびPvalb。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0198】
グルタミン酸作動性またはGABA作動性サブクラスのそれぞれ、ならびにそれぞれの非神経細胞クラス内で、いくつかのトランスクリプトームのクラスターまたは種類が存在し、それぞれの皮質領において合計で110のトランスクリプトーム細胞型をもたらす(Brain Initiative Cell Census Network, 2021; Tasic et al., 2018)。この組織化は、過去50年にわたって、各種の表現型モダリティにおいて広く研究されてきた皮質細胞型についての既存の知識と非常に一致し(Harris and Shepherd, 2015;Tremblay et al., 2016;Yuste et al., 2020;Zeng and Sanes, 2017)、単一細胞トランスクリプトミクスが、単独で、クラスおよびサブクラスレベルで、細胞型組織化の全体をきちんと捕捉することができることを示唆する。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0199】
しかしながら、皮質内では、皮質領域に特異的な細胞型または領域間で共有される細胞型の両方が同定されている。共有される細胞型は、多くの場合、細胞型間の別個のおよび連続的な変動が共存する領域にわたって勾配分布または勾配遺伝子発現を示す。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0200】
別個の変動は、通常、階層のより上位の分岐にある、細胞サブクラスおよび主要な細胞型内に存在する。連続的な変動は、通常、より下位の分岐、例えば、L2/3~L6の皮質の深さにわたる多くのITニューロン型で、密接に関連するトランスクリプトームのクラスターまたはサブタイプ内で見出される(
図2C)。連続体の反対端の細胞は、明確に別個のトランスクリプトームプロファイルを有するが、一方の端から他方への推移は、連続体を構成する細胞内で段階的である。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0201】
空間的分解トランスクリプトーム法であるトランスクリプトミクスおよびMERFISHの統合は、マウス運動皮質細胞型の空間的組織化を明らかにする(Zhang et al., 2021a)。この研究の主要な知見は、予想されるグルタミン酸作動性ニューロンサブクラスの層分布に加えて、それぞれのサブクラス内の均一なGABA作動型が、層選択的局在化を示し、個々のグルタミン酸作動型またはGABA作動型内の連続的な変動が、皮層/深さに沿ったそれらの連続的な分布と十分に相関することである(顕著な例では、興奮性のL2/3~L6 IT型のすべてが、L2/3~L6の皮質の深さに沿って並んでいる)。(Zeng https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.06.031)
【0202】
しかしながら、異なる表現型特徴によって定義された細胞型が互いに一致するのかも、どの特徴が細胞型を定義するのに正しいのかも、多くの場合、不明確である。
【0203】
特異的RNA転写物の標的化を蛍光タンパク質などのコードされるエフェクター分子の発現と関連付けることによって、cell readrRNAシステムは、転写物に基づいておよび空間的/形態学的に、細胞型およびその状態を同時にモニターするシステムを提供する。
【0204】
本明細書に記載される発明は、ワトソン-クリック塩基対合およびRNA編集に基づいており、CellREADRは、1)細胞RNAおよびRNA発現によって定義される細胞に対する固有および絶対特異性を有し、2)設計する、構築する、使用する、および広めることが容易であり(例えば、DNAベクター)、3)任意の組織において、すべてのRNAが定義する細胞型の標的化;「細胞医療設備」のライブラリーのために非常にスケーラブルであり、4)ヒトを含むほとんどの動物種に一般化可能であり、5)ほとんどの細胞型および組織に対して網羅的であり、6)動物種にわたって一般的であり、7)ヒト生物学および医薬に適用可能であり、8)2つまたはそれよりも多くのRNAによって定義される細胞の交差標的化、ならびに同じ組織におけるいくつかの細胞型の多重標的化および操作を達成するためにプログラム可能である。
CellREADR技術
【0205】
CellREADR技術のコアは、RNA配列特異的分子センサー-エフェクター分子に作動可能に連結されたスイッチである、readrRNAである。これは、5’-プライム感知-編集-スイッチドメイン(sesRNA)および3’-プライムエフェクタードメイン(efRNA)を含む単一モジュラーreadrRNAである。sesRNAの標的特異性は、標的mRNAにおける相補配列とのその相互作用に起因する。相補性の程度は、sesRNAのADAR媒介編集が存在するかどうかを決定する。標的RNAに完全に相補的であるsesRNAは、ADAR編集可能停止コドンで、sesRNAのADAR媒介編集を誘導する。
【0206】
readrRNAは、従来のDNA発現ベクターから作成することができる。これらのベクターは、プロモーター、sesRNAおよびefRNAをコードするDNAカセット、ならびに3’非翻訳領域からなり、これは、ルーチン的なDNA合成および分子クローニングによってアセンブルすることができる。一実施形態では、sesRNAコードカセットは、約200~300塩基対であってもよく、エフェクター遺伝子カセットは、約1~2キロ塩基対であってもよい。これらの発現ベクターは、さまざまなウイルス粒子に容易にパッケージングされ得る。readrRNAは、必要により、化学修飾ヌクレオチドの組み込みを用いる、直接一本鎖オリゴヌクレオチド合成によって作成することもできる。
モジュラーreadrRNA
【0207】
したがって、本開示の一態様は、(i)センサードメインを含む5’領域であって、センサードメインが、少なくとも1つのADAR編集可能STOPコドンを含む、5’領域、および(ii)センサードメインの下流にあり、それとインフレームにある、エフェクターRNA(efRNA)領域を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、モジュラーreadrRNA分子を提供する。「モジュラー」という用語は、「モジュラーreadrRNA分子」という語句の文脈で使用される場合、非常に少数の連結された構造単位の組合せを含む組換えreadrRNA分子を指し、ここで、それぞれの構造単位は、独立して機能するタンパク質分子をコードする。
【0208】
異なるタンパク質コードドメインがRNAレベルで設計され、特定の数のリピート設計を有する所望の順序で組換えreadrRNA分子にアセンブルされる、readrRNA分子のモジュラー設計は、多様な特性を有するreadrRNA分子の産生を可能にする。翻訳機構は、所望のreadrRNA分子が、特定のアミノ酸配列を有するように、高い忠実性も有する。
【0209】
一般に、readrRNA分子は、限定されるものではないが、生物システムにおける時空間インプット/アウトプットを生じさせることを含んで、細胞間の相互作用の促進、環境刺激のセンシング、環境刺激に対する応答を生じさせることを含む、特定の機能を付与するモジュラードメインから構成される。
モジュラーreadrRNAのセンサードメイン
【0210】
センサードメイン(sesRNA)は、特定の細胞型に存在するRNAとの配列特異的な塩基対合を通して、特定の細胞型に相補的であり、特定の細胞型を検出することができる、ヌクレオチドのセットを含む。センサードメインは、任意の数のヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、センサードメインは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、少なくとも650、少なくとも700、少なくとも750、少なくとも800、少なくとも850、少なくとも900、少なくとも950、少なくとも1000を含む。一部の実施形態では、センサードメインは、約100~約900ヌクレオチドの範囲を含む。別の実施形態では、センサードメインは、約200ヌクレオチド~約300ヌクレオチドの範囲を含む。好ましくは、センサードメイン(sesRNA)は、塩基対合を通して、特定の細胞型RNAに相補的な、したがって、それを検出することができる、約200ヌクレオチドを含有する。
【0211】
センサードメインは、翻訳スイッチ(本明細書で感知-編集-スイッチRNA(sesRNA)と称される)として作用する1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンも含む。センサードメインは、このようにして、感知-編集-スイッチRNA(sesRNA)として機能する。センサーRNAは、細胞RNAに相補的であるヌクレオチド配列を含む。
【0212】
モジュラーreadrRNA分子はまた、自己切断2Aペプチドをコードする配列を含んでいてもよい。そのような実施形態では、2Aペプチドは、本明細書でさらに論じられるように、ドメイン間、好ましくは、センサードメインとエフェクターRNA領域との間および/またはreadrRNA分子またはCellREADERシステムに存在し得る追加のドメイン/領域間に位置する。
【0213】
モジュラーreadrRNAのインフレームエフェクターRNA(efRNA)コード領域
センサードメインの下流に、必要に応じて自己切断2Aペプチドをコードする配列によって分離された、インフレームエフェクターRNA(efRNA)コード領域がある。エフェクターRNA(efRNA)は、目的のエフェクタータンパク質、例えば、標識された細胞の視覚化を可能にする標識をコードしてもよい。エフェクターRNA(efRNA)は、細胞の生理機能を変化させるエフェクタータンパク質をコードしてもよい。例えば、単一遺伝子における突然変異によって引き起こされる疾患を処置する事例では、コードされるエフェクタータンパク質は、突然変異した遺伝子の補正されたコピーであり得る。生物に対して内因性または外因性であるある特定のタンパク質を提供することによって疾患を処置する事例では、タンパク質は、エフェクター領域においてコードされ得る。
【0214】
所与のefRNAの選択は、readrRNA分子のreadrRNAの所望される使用(例えば、疾患の処置、タンパク質/経路の研究など)に依存し、当業者によって容易に決定することができる。例えば、CellREADRのエフェクターモジュール(efRNA)は、活性および機能を増強すること、活性および機能を抑制すること、欠失または突然変異タンパク質のインタクトバージョンを再導入することによって突然変異細胞の機能をレスキューすること、活性および機能を変更および編集すること、細胞のアイデンティティー、運命および機能を初期化すること、細胞型を死滅および除去すること、ある種類の細胞数の産生を増加または減少させること、ならびに細胞型特異的ゲノム編集および遺伝子調節を含む、複数の方法で、細胞を操作するように構築され得る。
【0215】
標的RNAを発現する細胞では、sesRNAは、内因性ADAR酵素を動員するdsRNAを形成する。STOPコドンで、AからIへの編集は、STOPを、TI(G)Gトリプトファンコドンに変換し、efRNAの翻訳、およびエフェクタータンパク質の生成のスイッチをオンにする。N末端ペプチドT2AおよびC末端エフェクターを含む得られる融合タンパク質は、次いで、T2Aにより自己切断され、機能性エフェクタータンパク質を放出する。標的RNAを発現しない細胞では、readrRNAは不活性のままである。
【0216】
efRNAコードタンパク質は、細胞複製、遺伝子発現、および/または転写/翻訳に関与するか、またはそれに影響を及ぼし得る、任意のタンパク質を含んでいてもよい。好適な例としては、限定されるものではないが、転写活性化因子、転写阻害因子、およびDNAリコンビナーゼなどが挙げられる。
【0217】
エフェクタータンパク質としては、限定されるものではないが、
A)酵素、例えば、プロテアーゼ、ホスファターゼ、グリコシラーゼ、アセチラーゼ、またはリパーゼ、b)宿主細胞タンパク質の機能を模倣するタンパク質、c)転写因子、d)タンパク質間相互作用を促進するタンパク質パートナー、d)例えば、感染を容易にすることによって、および/または防御応答を引き起こすこと、および/または形態形成を促進することによって、宿主細胞の構造および機能を変更するタンパク質(毒性因子または毒素)が挙げられる(Cachat, E., Liu, W., Hohenstein, P. et al. A library of mammalian effector modules for synthetic morphology. J Biol Eng 8, 26 (2014). https://doi.org/10.1186/1754-1611-8-26)。
【0218】
例えば、例示的なエフェクタータンパク質を、下記の表4にリストする。
【表4】
【0219】
したがって、エフェクター機能は、ファゴサイトーシス、サイトカインの分泌、免疫細胞の輸送、または機能、遊走、生存および増殖の促進を含む、自然免疫細胞応答の活動に影響を及ぼし得る。
【0220】
したがって、コードされるエフェクター分子は、目的の遺伝子のプロモーター/増強領域に結合することによって、目的の遺伝子の発現をそれぞれ刺激または抑制し、内因性遺伝子または細胞の背後のシステムの一部分として投与される外因性遺伝子である、トランス活性化因子またはトランス抑制因子であり得る。
【0221】
転写活性化因子は、DNA(またはレトロウイルスの事例では、RNA)中の1つまたは複数の特異的調節配列に結合し、1つまたは複数の近傍の遺伝子の転写を刺激する、タンパク質または低分子である。ほとんどの活性化因子は、RNAポリメラーゼの結合(閉鎖複合体の形成)または転写の開始に必要な開放複合体への移行を増強する。ほとんどの活性化因子は、RNAポリメラーゼのサブユニットと直接相互作用する。
【0222】
転写抑制因子は、ヒストン修飾酵素を含む複数のタンパク質を含有する共役制御因子複合体を動員することによって機能すると一般に考えられる、配列特異的DNA結合タンパク質である。
【0223】
本明細書で使用される場合、「モジュレートされた」とは、活性化されたまたは阻害されたという意味で、調節されたを意味する。
【0224】
本明細書で使用される場合、病原体は、人間において疾患を引き起こす生物を含む。病原体としては、限定されるものではないが、細菌、ウイルス、寄生生物、昆虫、藻類、プリオンおよび真菌が挙げられる。
【0225】
CellREADRシステム2のレポーター遺伝子
本開示の別の態様は、CellREADRシステムを提供し、CellREADRシステムは、少なくとも2つの構成要素を含み、第1の構成要素は、本明細書に記載されるモジュラーreadrRNA分子、および必要に応じて、readrRNA分子のefRNAコードタンパク質(例えば、転写調節因子、例えば、AP1およびSP1)に作動可能に連結された(この実施形態では、物理的に連結されていない)応答遺伝子を含む追加の構成要素を含む。これは、readrRNA分子が、物理的に別々の外部から添加された核酸分子、例えば、細胞死をもたらすカスパーゼ分子においてコードされる別のタンパク質の転写を活性化し、増加させ、減少させ、または抑制することを可能にする。
ADARが媒介するプログラム可能性および交差標的化
【0226】
センサーおよびエフェクターモジュールは、コンビナトリアルで、容易にプログラム可能であり、これは、それぞれを具体的かつ協調した方法で、複数の方法でそれぞれの細胞型を操作し、組織中の複数の細胞型を同時に操作することを可能にする。上記に提供されるように、一部の実施形態では、モジュラーreadrRNA分子は、自己切断ペプチド2Aをコードする配列の必要に応じた連結によって分離された、5’センサー-編集-スイッチ領域(sesRNA)および3’エフェクターコード領域(efRNA)を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる。一部の実施形態では、sesRNAは、塩基対合を通して、特定の細胞型RNAに相補的な、したがって、それを検出することができる、約200~約300ヌクレオチドを含有するが、翻訳スイッチとして作用し、下流に、目的のさまざまなエフェクタータンパク質を生成するインフレームのエフェクターコード領域がある、1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンも含む。
【0227】
標的RNAを発現する細胞では、sesRNAは、内因性ADAR酵素を動員する標的RNAを有するdsRNAを形成する。STOPコドンで、AからIへの編集は、STOPを、TI(G)Gトリプトファンコドンに変換し、efRNAの翻訳、およびエフェクタータンパク質の生成のスイッチをオンにする。N末端ペプチド2AおよびC末端エフェクターを含む得られる融合タンパク質は、次いで、2Aにより自己切断され、機能性エフェクタータンパク質を放出する。重要なことには、標的RNAを発現しない細胞では、readrRNAは不活性のままである。そのため、モジュラーreadrRNA分子は、このようにして単一RNA分子として展開され得、ADARが細胞内因性であるので、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)に容易に適合し得る。
【0228】
一部の状況では、ADARタンパク質は、細胞において、高度に発現されないか、または一部の事例では、存在しない。そのような事例では、本開示は、モジュラーreadrRNA分子内に含められる、および/または別々のベクターを介してシステムに添加される、ADARタンパク質(例えば、ADAR2)の添加を提供する。CellREADRの最も基本的な特徴は、それが、全体的に、限定されるものではないが、(i)細胞RNAに対する固有および絶対特異性、(ii)設計、構築、使用および共有の容易さ(DNAベクター)、(iii)「細胞医療設備」の非常にスケーラブルなライブラリー、(iii)ほとんどの細胞型および組織に対して網羅的、(iv)動物種にわたって一般的、ならびに(v)ヒト生物学および医薬を含む、多数の非常に所望される特性を付与する、ワトソン-クリック塩基対合に基づいて、それにより作動するRNA配列であることである。そのため、網羅的でコンビナトリアルなCellREADRセンサー-エフェクターライブラリーを、器官系および動物種にわたって、細胞型を同定する、特徴付ける、および操作するために構築することができる。
【0229】
本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子のプログラム可能性は、追加の能力を付与する。したがって、本開示の別の実施形態は、プログラム可能なモジュラーreadrRNA分子および/または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を使用する交差標的化を提供する。
【0230】
第1に、2つまたはそれよりも多くのRNAセンサーを、2つまたはそれよりも多くの別々の細胞RNAを検出して、2つまたはそれよりも多くの特定の細胞型の交差標的化を達成するように設計することができる。第2に、同じRNAセンサーを、異なるエフェクターに連結して、同じ細胞型を標識、記録、および操作することができる。第3に、複数のRNAセンサーのコホートを、異なるエフェクターをそれぞれ発現する同じ組織におけるいくつかの細胞型を標的化して、組織機能を協調的にモジュレートするように設計することができる。第4に、RNAセンサーを、標的RNAの異なる閾値レベルを検出して、RNAレベルによって定義される異なる細胞状態をモニターおよび操作するように設計することができる。
【0231】
一実施形態では、本開示は、2つの別々の細胞RNAを検出して、より多くの特定の細胞型の交差標的化を達成するように設計されている、2つのセンサーを提供する。一態様では、それぞれのセンサーモジュールは、STOPコドンを有し、両方が除去された場合にのみ、発現されるエフェクター分子であり得る。一実施形態では、それぞれのセンサーは、少なくとも1つのSTOPコドンを含む。別の実施形態では、同じセンサーを、異なるエフェクターを発現させて、同じ細胞型を標識、記録、および操作するために使用することができる。さらに別の実施形態では、多数のセンサーは、異なるエフェクターをそれぞれ発現する同じ組織におけるいくつかの細胞型を標的化して、それによって、組織機能のモジュールを協調させるように設計される。
【0232】
そのため、RNAセンシングドメインは、任意の細胞RNAを検出する能力、ならびにしたがって、任意のヒト組織において任意のRNAが定義する細胞型および細胞状態にアクセスする性能を有する。エフェクタードメインは、任意のタンパク質をコードする能力、ならびにしたがって、多くの細胞特性をモニター、操作、および編集する性能を有する。
細胞型および細胞状態を標的化する一般性
【0233】
RNAセンサードメインは、細胞型および細胞状態を定義するRNAマーカーを検出することができる。単一細胞RNAシークエンシングにおける最近の進展は、すべてのヒトおよび動物組織における大規模データセットを作成している1、2、3。いくつかの主な努力は、Human Cell Atlasプロジェクト(humancellatlas.orgのワールドワイドウェブ)、(commonfund.nih.gov/hubmap)のNIH Human Biomolecular atlasプログラム、BRAIN Initiative Cell Census Network(biccn.org/)、およびAllen Brain Cell Atlas(portal.brain-map.org/)を含んで、進歩を推進している。
【0234】
すべての単一細胞トランスクリプトームデータセットは、公にアクセス可能である。RNAマーカーは、すべてではないが、主要なヒト細胞型のほとんどについて同定されている
1、2、3。さらにまた、RNAマーカーは、多くの罹患細胞状態について同定されている
4。これらのRNAマーカーはすべて、細胞型および細胞状態を標的化するために、CellREADRによって使用され得る。これらのマーカーの一部を、表5にリストする。
表5
【表5】
【0235】
【0236】
送達
ADARが細胞内因性であるので、CellREADRを、単一RNA分子として展開することができる。また、<4.7Kbで、AAV ウイルスベクターに容易に適合させることができる。実際に、readrRNA全体は、どの特定のセンサーおよびエフェクターが分子に組み込まれるかに応じて、数キロ塩基であり、したがって、送達システムを通して、細胞に送達可能である。標的RNAを発現する細胞では、sesRNAは、標的とdsRNAを形成し、これは、ADARを動員して、編集複合体をアセンブルする。編集可能STOPコドンで、ADARは、AからIに変換し、これは、標的RNA中の反対のCと対合する。このA→G置換は、TAG STOPコドンをTI(G)Gトリプトファンコドンに変換し、efRNAの翻訳のスイッチをオンにする。インフレーム翻訳は、N末端ペプチド2A(使用される場合)およびC末端エフェクターを含む融合タンパク質を生成し、これは、次いで2Aにより自己切断され、機能性エフェクタータンパク質を放出する(例えば、
図1aを参照されたい)。readrRNAは、標的RNAを発現しない細胞では、不活性のままである。
【0237】
本開示および当技術分野における知識により、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子もしくはその任意の構成要素、その核酸分子、および/またはその構成要素をコードもしくは提供する核酸分子、ならびに本明細書に提供される任意のCellREADRシステムは、さまざまな送達システムによって送達され得る。そのような送達システムの例としては、限定されるものではないが、DNAまたはRNAトランスフェクション法:化学試薬(PEI、lipofectamine、リン酸カルシウムなど)または電気穿孔が挙げられ、DNA発現ベクターは、リポソームナノ粒子にパッケージングされ得る。readrRNAは、in vitroで転写または合成され得、リポソームナノ粒子、ナノ粒子、リポソーム、組換えウイルスベクター(ウイルスベクター:アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、および水疱性口内炎ウイルスが好ましいウイルスビヒクルである)、電気穿孔エキソソーム、マイクロベシクル、遺伝子銃、細胞送達のための選択的内因性封入(SEND)システム、ヒトゲノムに存在するレトロエレメントに基づくヒト化ウイルス様粒子(VLP)を含むmRNA送達システム(Segel M, et al. Mammalian retrovirus-like protein PEG10 packages its own mRNA and can be pseudotyped for mRNA delivery. Science. 2021;373:882-889. doi: 10.1126/science.abg6155)、その組合せなどにパッケージングされ得る。
【0238】
モジュラーreadrRNA分子および/またはRNA(例えば、sesRNA、efRNAなど)のいずれかおよび/または任意の付属タンパク質および/またはCellREADRシステムは、好適なベクター、例えば、プラスミドまたは組換えウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルス、および他のウイルスベクター、またはその組合せを使用して、送達することができる。タンパク質、例えば、sesRNA、efRNA、efRNA応答遺伝子、タンパク質コードまたは非コードRNA(例えば、sgRHA、shRNAなど)、Cell READRシステムなどは、1つまたは複数のベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスベクターにパッケージングされ得る。例えば、一部の実施形態では、efRNAコードタンパク質に作動可能に連結されたefRNA応答遺伝子を含む第2の発現ベクターは、readrRNA分子および/またはCellREADRシステムと共送達され、ここで、モジュラーreadrRNA分子およびエフェクターRNAの翻訳の成功の際に、レポーター産物の成功裏の結合および活性化をもたらす。一部の実施形態では、efRNA応答遺伝子は、レポーター遺伝子(例えば、限定されるものではないが、GFP、mRuby、mCherry、ChR2、DTA、Gcamp、TK、インターフェロンなどを含むレポーター遺伝子)を含む。他の実施形態では、efRNA応答遺伝子は、第2のエフェクター遺伝子を含む。
【0239】
細菌適用のために、適用可能な場合、本明細書に記載されるモジュラーreadrRNA分子システムの構成要素のいずれかをコードする核酸は、ファージを使用して、細菌に送達することができる。例示的なファージとしては、限定されるものではないが、T4ファージ、μ、λファージ、T5ファージ、T7ファージ、T3ファージ、Φ29、M13、MS2、Qβ、およびΦX174が挙げられる。そのような実施形態では、外因性ADARの添加が必要であり得る。
【0240】
一部の実施形態では、ベクター、例えば、プラスミドまたは組換えウイルスベクターは、例えば、筋肉内注射、静脈内投与、経皮投与、鼻腔内投与、経口投与、または粘膜投与によって、目的の組織に送達される。そのような送達は、単回用量または複数回用量を介してのいずれかであり得る。当業者は、本明細書における送達される実際の投薬量が、各種の要因、例えば、ベクターの選択、標的細胞、生物、組織、処置される対象の全身状態、求められる形質転換/修飾の程度、投与経路、投与方式、求められる形質転換/修飾の種類などに応じて、大きく変わり得ることを理解する。
【0241】
一部の実施形態では、組換えウイルスベクターは、少なくとも1×105個粒子(粒子単位、puとも称される)のアデノウイルスを含有する単回用量であり得る、アデノウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、用量は、好ましくは、少なくとも約1×106個粒子、少なくとも約1×107個粒子、少なくとも約1×108個粒子、および少なくとも約1×109個粒子のアデノウイルスである。
【0242】
一部の実施形態では、送達は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを介してである。例えば、一部の実施形態では、改変AAVベクターが、送達のために使用されてもよい。改変AAVベクターは、AAV1、AV2、AAV5、AAV6、AAV8、AAV 8.2、AAV9、AAV rhlO、改変AAVベクター(例えば、改変AAV2、改変AAV3、改変AAV6)および偽型AAV(例えば、AAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6)、AAV-PHP.eBおよびその任意のバリアント、AAV-PHP.Sおよびその任意のバリアント、AAV-PHP.V1およびその任意のバリアントなどを含む、いくつかのカプシド型のうちの1つまたは複数に基づき得る。例示的なAAVベクター、およびrAAV粒子を生成するために使用され得る技法は、当技術分野において公知である。
【0243】
一部の実施形態では、送達は、プラスミドを介してである。投薬量は、応答を誘発するのに十分な数のプラスミドであり得る。一部の事例では、プラスミド組成物におけるプラスミドDNAの好適な量は、約0.1~約2mgであり得る。プラスミドは、一般に、(i)プロモーター、(ii)プロモーター(例えば、同じプロモーターまたは異なるプロモーター)にそれぞれ作動可能に連結された、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/またはCellREADRシステムをコードする配列、(iii)選択マーカー、(iv)複製起点、ならびに(v)(ii)の下流にあり、それに作動可能に連結された転写ターミネーターを含む。プラスミドは、他のRNA構成要素をコードすることもできるが、これらのうちの1つまたは複数は、代わりに、異なるベクター上でコードされてもよい。投与の頻度は、医学もしくは獣医学の実務家(例えば、医師、獣医師)、または当業者の範囲内である。
【0244】
ADARタンパク質が発現されないか、または低レベルで発現される、これらの細胞/システム(例えば、細菌細胞およびある特定の植物細胞)では、プラスミド(本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子および/もしくはCellREADRシステムを単独で、またはこれらを発現するもののいずれか)は、ADAR遺伝子(例えば、Adar1、Adar2など)をコードする配列をさらに含んでいてもよい。
【0245】
外因性ADARまたは操作されたADAR(すなわち、改善された機能性を有する)は、CellREADRシステムの効率を増加させることがある。外因性ADARは、以下の方法で、動物(または植物)細胞に送達することができる。
1)ADAR1またはADAR2は、トランスフェクションまたはウイルス感染(AAV、レンチウイルスなど)によって、CMV、CAGプロモーターを有する別々の構築物/DNAベクター(Readr構築物由来)を用いて送達される。
2)ADAR1またはADAR2は、同じCellReadr構築物/DNAベクターにおいて、SesRNA配列の前に置かれ、トランスフェクションまたはウイルス感染によって、細胞に送達される。
3)ADAR1またはADAR2 mRNAは、CellReadr DNAベクターまたはRNAを有するLNPによって、細胞に送達される。
4)ADAR1またはADAR2タンパク質は、CellReadr DNAベクターまたはRNAを有するLNPまたはVLP(ウイルス様粒子)によって、細胞に送達される。
【0246】
別の実施形態では、送達は、リポソームまたはリポフェクション製剤などを介してであり、当業者に公知の方法によって調製することができる。そのような方法は、例えば、WO2016205764号、ならびに米国特許第5,593,972号、同第5,589,466号、および同第5,580,859号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0247】
一部の実施形態では、送達は、ナノ粒子またはエキソソームを介してである。例えば、エキソソームは、RNAの送達において特に有用であることが示されている。
【0248】
本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子システムの1つまたは複数の構成要素を細胞に導入するさらなる手段は、細胞透過性ペプチド(CPP)を使用することによる。一部の実施形態では、細胞透過性ペプチドは、モジュラーreadrRNA分子に連結されている。一部の実施形態では、モジュラーreadrRNA分子および/またはその任意の構成要素は、1つまたは複数のCPPと組み合わされて、細胞(例えば、植物プロトプラスト)内部でそれらを効率的に輸送する。一部の実施形態では、モジュラーreadrRNA分子および/またはその任意の構成要素は、細胞送達のために1つまたは複数のCPPと組み合わされた、1つまたは複数の環状または非環状DNA分子によってコードされる。
【0249】
CPPは、レポーター非依存性の様式で、細胞膜を横断して生体分子を輸送することができるタンパク質由来またはキメラ配列由来の35よりも少ないアミノ酸の短いペプチドである。CPPは、カチオン性ペプチド、疎水性配列を有するペプチド、両親媒性ペプチド、プロリンリッチおよび抗微生物配列を有するペプチド、ならびにキメラまたは二連ペプチドであり得る。CPPの例としては、例えば、Tat(HIV 1型によるウイルス複製に必要な核転写活性化因子タンパク質である)、ペネトラチン、カポジ線維芽細胞増殖因子(FGF)シグナルペプチド配列、インテグリン3シグナルペプチド配列、ポリアルギニンペプチドArgs配列、グアニンリッチ分子トランスポーター、およびスイートアローペプチドが挙げられる。
【0250】
本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子システムの1つまたは複数の構成要素を細胞に導入するさらに別の手段は、SENDを使用することによる(例えば、Segel, M. et al., 2021. Science 373:6557; 882-889を参照されたく、その内容は、その全体が、これにより参照により本明細書に組み込まれる)。そのような実施形態では、細胞外ウイルス様カプシドにおいて、それ自身のmRNAに直接結合し、それを分泌する、レトロウイルス様タンパク質、例えば、PEG10は、フソゲンにより偽型化されて、機能性mRNAカーゴ(すなわち、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子)を哺乳動物細胞に送達する。
【0251】
本開示の他の実施形態は、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子の修飾を提供する。そのような修飾は、任意の目的、例えば、安定性の増加、モジュラーreadrRNA分子が対象の免疫を回避する性能などのためであり得る。例えば、モジュラーreadrRNA分子が環状RNA分子を含む実例では、1つのそのような修飾は、N6-メチルアデノシン修飾を含み得る。例えば、N6-メチルアデノシン(methyadenosine)リーダーYTHDF2配列の包含は、N6-メチルアデノシン-環状RNAの隔絶を可能にし、それによって、自然免疫の抑制を可能にする(例えば、Chen, Y.G.et al., (2019) Molecular Cell (76):1; 96-109を参照されたく、その内容は、その全体が、これにより参照により本明細書に組み込まれる)。他の実施形態では、そのような修飾は、対象の免疫系の回避を助けるウリジンのシュードウリジンによる置き換えを含み得る(例えば、Dolgin, E.(2021) Nature 597; 318-324を参照されたく、その内容は、その全体が、これにより参照により本明細書に組み込まれる)。
医薬組成物
【0252】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるモジュラーreadrRNA分子、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子(本明細書において、「分子」として単純にまたは一緒に使用される)を含む送達システムの1つまたは複数、および適切な担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物を提供する。担体、賦形剤または希釈剤の正確な特質は、組成物についての所望の使用に依存し、獣医的使用に好適であるか、もしくはそれに許容されるものから、ヒト使用に好適であるか、もしくはそれに許容されるものまでの範囲であり得る。組成物は、必要に応じて、1つまたは複数の追加の化合物および/または治療剤を含んでいてもよい。
【0253】
医薬組成物は、例えば、外用、眼、経口、頬側、全身、経鼻、注射、経皮、直腸、経膣などを含む、事実上任意の投与の形式に好適な形態、または吸入もしくはガス注入による投与に好適な形態を取り得る。
【0254】
あるいは、他の医薬送達システムが用いられてもよい。リポソームおよびエマルジョンは、分子を送達するために使用され得る送達ビヒクルの周知の例である。通常、より高い毒性を犠牲にするが、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのある特定の有機溶媒も用いられてもよい。
【0255】
医薬組成物は、所望により、分子を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得る、パックまたは分注デバイスで提示されてもよい。パックは、例えば、ブリスターパックなどの、金属またはプラスチックホイルを含み得る。パックまたは分注デバイスは、投与のための説明書が付随していてもよい。
【0256】
本明細書に記載される分子、またはその医薬組成物は、一般に、意図される結果を達成するために有効な量、例えば、処置される特定の疾患を処置または防止するために有効な量で使用される。治療利益とは、患者は、患者が依然として基礎障害を患っていることがあるにもかかわらず、気分または状態が改善したと報告するような、処置される基礎障害の根絶もしくは回復、および/または基礎障害と関連する1つまたは複数の症状の根絶もしくは回復を意味する。治療利益には、一般に、改善を自覚するかどうかにかかわらず、疾患の進行の中止または遅延も含まれる。
【0257】
特定の使用および投与の方式のための分子の有効投薬量の決定は、十分に当業者の能力内である。有効投薬量は、in vitro活性および代謝アッセイから最初に推定され得る。例えば、動物における使用のための化合物の最初の投薬量は、in vitroアッセイで測定される、特定の化合物のIC50またはそれを上回る、活性化合物(例えば、efRNA産物)の代謝物の循環血液または血清濃度を達成するように処方され得る。所望の投与の経路を介した特定の化合物の生物学的利用率を考慮に入れて、そのような循環血液または血清濃度を達成するための投薬量を計算することは、十分に当業者の能力内である。化合物の最初の投薬量は、動物モデルなどのin vivoデータから推定することもできる。上記に記載されるさまざまな疾患を処置または防止するための活性代謝物の有効性を試験するために有用な動物モデルは、当技術分野において周知である。化合物の生物学的利用率および/またはその活性代謝物への代謝を試験するために好適な動物モデルも周知である。当業者は、ヒト投与に好適な特定の化合物の投薬量を決定するためのそのような情報をルーチン的に適応させることができる。
【0258】
投薬量は、他の要因の中でも、活性化合物の活性、化合物の生物学的利用率、その代謝動態および他の薬物動態学的特性、投与の方式、ならびに上記で論じたさまざまな他の要因に依存する。投薬量および間隔は、治療または予防効果を維持するのに十分である化合物および/または活性代謝化合物の血漿レベルを提供するように、個々に調整され得る。例えば、化合物は、数ある中でも、投与の方式、処置される特定の指標、および処方医師の判断に応じて、週に1回、週に数回(例えば、1日おき)、1日1回または1日に複数回投与されてもよい。局所投与または選択的取り込み、例えば、局所の外用投与の事例では、化合物および/または活性代謝化合物の有効局所濃度は、血漿濃度に関連しないことがある。当業者は、過度の実験なしで、有効投薬量を最適化することができる。
細胞操作
【0259】
目的の細胞または細胞の群の生理機能をモニターおよび/または変化させるために、目的の細胞は、readrRNAのSES構成要素を通して、細胞の1つまたは複数のRNA転写物の差次的発現に基づいて同定される。ADAR媒介編集を通して、作動可能に連結されたエフェクター分子は、翻訳され、細胞を蛍光的に標識してもよく、および/または細胞死を含む細胞の生理機能の一部の所望の変化を生じさせてもよい。
【0260】
readrRNAのコードされるエフェクターへのreadrRNAのSES構成要素の物理的連結に加えて、目的の細胞は、readrRNAのコードされるエフェクターの制御下にあり、CellREADRシステムと呼ばれるシステムを含む、第2の核酸実体をさらに含むことができる。例えば、ReadrRNAのエフェクターは、第2の核実体上でコードされるいずれかの遺伝子を活性化し得るトランス活性化因子をコードすることができ、ここで、第2の核実体は、細胞に対して内因性であるトランス活性化因子の制御下で遺伝子をコードする細胞に対して内因性であり、および/または第2の核実体は、細胞に外部から添加され、細胞に対して外因性および/または内因性であるトランス活性化因子の制御下の遺伝子をコードする。
【0261】
トランス活性化因子または抑制因子は、サイレンシングする緊密なヘアピンループ(shRNA)をコードする外因性遺伝子の発現を制御することによって、細胞において特定の内因性遺伝子の発現をサイレンシングまたは減少させることもできる。第2の核実体上に位置することの代替で、トランス活性化因子の制御下の遺伝子が、必要に応じて、readrRNA分子それ自身上に位置し得ることにも留意されたい。患者における疾患または障害を最終的に引き起こす突然変異遺伝子を含む細胞の事例では、エフェクターは、機能性遺伝子をコードすることができ、および/または機能性遺伝子をコードする核の発現を引き起こすことができる。
【0262】
したがって、細胞または組織は、モジュラーreadrRNA分子、およびそのようなモジュラーreadrRNA分子を含むシステムを発現する。それ故に、本開示の別の態様は、提供されるモジュラーreadrRNA分子、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を含む送達システムを含む細胞を提供する。本明細書に提供されるreadrRNA分子は、原核細胞および真核細胞において発現され得る。一部の実施形態では、細胞は、真核細胞を含む。一実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞または植物細胞を含む。
【0263】
本開示の別の態様は、本明細書に提供される細胞を含む動物モデルまたは植物モデルを提供する。
処置
【0264】
本開示は、本明細書に提供されるおよび下記の実施例に提供されるreadrRNA分子を含む方法をさらに包含する。
【0265】
本開示の別の態様は、1つもしくは複数のエフェクタータンパク質の細胞状態を定義する細胞RNAの存在もしくは動態を検出する方法、および/またはその翻訳のスイッチをオンにする方法であって、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を含む送達システム、または本明細書に提供される医薬組成物を用いて標的エフェクターRNAを検出する/ハイブリダイズするステップであって、センサードメインが、配列特異的塩基対合を通して特定の細胞型RNAを検出およびそれに結合し、1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンが、翻訳スイッチとして作用し、それによって、エフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNAの翻訳を可能にする、ステップを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、方法を提供する。
【0266】
一部の実施形態では、エフェクタータンパク質は、細胞内にある。
【0267】
細胞の動的状態を検出すること/評価することは、診断のために、個体における疾患を検出するために重要である。細胞の動的状態を検出すること/評価することは、治療薬が最も効果的であり得、多面的な副作用が低減された特定の標的細胞に特異的な治療薬を提供することによる、個体における疾患の標的化処置のために重要である。しかしながら、エフェクター分子は、その後、例えば、分泌サイトカインおよびインターロイキン、ならびにT-CARの事例では、特定の細胞外で機能し得る。
【0268】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象における状態および/または疾患を処置する方法であって、状態および/または疾患が対象において処置されるように、本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子、または本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子を含む送達システムを対象に投与することを含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる、方法を提供する。
【0269】
一部の実施形態では、状態および/または疾患は、がん、感染性疾患、遺伝性障害などからなる群から選択される。
【0270】
本明細書で使用される場合、状態および/または疾患を「処置すること」は、状態および/または疾患と関連する任意の状態または症状を回復させることである。同等の未処置対照と比較した場合に、そのような低減は、任意の標準技法によって測定されるように、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%、またはそれよりも高い。本明細書に記載される組成物を対象に投与するための各種の手段は、当業者に公知である。そのような方法としては、限定されるものではないが、経口、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、皮膚、外用、注射、または腫瘍内投与が挙げられ得る。投与は、局所または全身であり得る。態様のいずれかの一部の実施形態では、投与は、皮下である。
【0271】
体細胞型特異的遺伝子治療の例としては、限定されるものではないが、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、先天性難聴、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、家族性高コレステロール血症、ヘモクロマトーシス、神経線維腫症1型(NF1)、鎌状赤血球症およびテイ-サックス病を含む、単一遺伝子疾患における正常なmRNA/タンパク質の細胞型特異的補完が挙げられる。
【0272】
がんの処置:(例えば、固形腫瘍;白血病)は、RNAのそれらの上方調節されたおよび/または異常な形態によってがん細胞を検出するために、ならびに、限定されるものではないが、カスパーゼ、プログラム細胞死タンパク質1、カスパーゼ8、Bcl-2関連Xタンパク質、PDL-L1、カスパーゼ3、CFLAR、Bcl-xl、SMAC/Diablo、Diabloホモログ、Bcl-2ホモログアンタゴニストキラー、FADD、BECN1、Death受容体5、PDCD6、RIP1キナーゼ、RIP3キナーゼ、およびグランザイムを含む、1つまたは複数の細胞死タンパク質;または限定されるものではないが、CD16、ケモカイン受容体(CCR2、CCR5、CXCR3およびCX3CR1)およびβ2-インテグリンLFA-1を含む免疫キラー細胞を動員する受容体の発現によって、がん細胞を排除するために、readrRNAおよびcellREADRを使用することを含む。
【0273】
readrRNAおよびcellREADRは、限定されるものではないが、慢性B、C型肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む肝臓疾患(門脈を介した脂質ナノ粒子による送達の利点など)、心臓の疾患、ならびに限定されるものではないが、潜伏性ウイルス感染症(細胞内寄生生物)、および耐性感染症、例えば、エプスタインバーウイルス、ヘルペス、結核、プリオン、ジカ熱、HIVを含む、感染性疾患の処置のために使用することができる。
【0274】
readrRNAおよびcellREADRは、慢性疼痛の処置:広く広範囲にわたる影響;例えば、糖尿病性神経障害;NIDA、NINDS HEAL主導の依存性のない疼痛の処置のために使用することができる。readrRNAおよびcellREADRは、標的化局所AAVベクター注射によって、末梢神経節における特定の感覚ニューロンおよびグリア細胞型におけるイオンチャネルおよび受容体発現をモジュレートすることができる。
【0275】
readrRNAおよびcellREADRは、現在、多くの場合に、脳組織の外科的切除によって処置されるてんかんの処置のために使用することができる。てんかんは、多くの場合、ある特定の神経細胞型における異常な神経活動から生じる。すなわち、てんかんは、病理学的脳ネットワークの過剰同期化された神経活動によって特徴付けられる。脳回路は、複数の興奮性および抑制性の細胞型を含み、それぞれ、情報処理および興奮-抑制のバランスにおいて固有に寄与している。他の細胞型において、てんかんの異なる段階(開始、維持)で発作を抑制しながら、一部の細胞型における神経活動が促進される。RNAセンサー-エフェクター(例えば、新薬の開発につながるようなGPCR、イオンチャネルなど)を通して脳回路の活動の細胞型特異的モジュレーションのためにreadrRNAおよびcellREADRを使用することは、てんかんを制御するおよび処置するための有望なアプローチである。そのため、readrRNAおよびcellREADRは、神経活動の細胞型標的化モジュレーションのために使用して、てんかんを抑制および処置することができる。
【0276】
キット
本開示は、本明細書に提供される組成物を含み、本明細書に提供される対象の方法を行うための、キットをさらに提供する。例えば、一実施形態では、対象のキットは、以下:(i)本明細書に提供されるモジュラーreadrRNA分子、(ii)本明細書に提供されるCellREADRシステム、(iii)本明細書に提供されるモジュラーreadrRNAおよび/もしくはCellREADRシステムを含む送達システム、(iv)本明細書に提供される、モジュラーreadrRNA、ならびに/またはCellREADRシステム、ならびに/またはモジュラーreadrRNAおよび/もしくはCellREADRシステムを含む送達システムを含む細胞、ならびに/あるいは(v)本明細書に提供される医薬組成物のうちの1つまたは複数を含み得るか、それからなり得るか、またはそれから本質的になり得る。
【0277】
他の実施形態では、キットは、他の構成要素をさらに含んでいてもよい。そのような構成要素は、個々にまたは組合せで提供されてもよく、任意の好適な容器、例えば、バイアル、ボトル、または管で提供されてもよい。そのような構成要素の例としては、限定されるものではないが、(i)1つまたは複数の追加の試薬、例えば、1つまたは複数の希釈緩衝液、1つまたは複数の再構成溶液、1つまたは複数の洗浄緩衝液、1つまたは複数の貯蔵緩衝液、1つまたは複数の対照試薬など、(ii)1つまたは複数の対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド、(iii)本明細書に提供される分子、細胞、送達システムなどのin vitro産生および/または維持のための1つまたは複数の試薬などが挙げられる。構成要素(例えば、試薬)はまた、特定のアッセイにおいて使用可能な形態、または使用前に1つもしくは複数の他の構成要素の添加を必要とする形態(例えば、濃縮または凍結乾燥形態)で提供されてもよい。好適な緩衝液としては、限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水、炭酸ナトリウム緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸緩衝液、Tris緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、およびその組合せが挙げられる。キットの構成要素は、個々にまたは組合せで提供されてもよく、任意の好適な容器、例えば、バイアル、ボトル、または管で提供されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に開示されるキットは、本明細書に開示される実施形態における使用のための1つまたは複数の試薬を含む。
【0278】
上記で述べた構成要素に加えて、対象のキットは、対象の方法を実施するために、キットの構成要素を使用するための説明書をさらに含むことができる。対象の方法を実施するための説明書は、一般に、好適な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、基材、例えば、紙またはプラスチックなどに印刷されていてもよい。そのため、説明書は、キットまたはその構成要素の容器のラベル(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに関連する)などにおいて、添付文書としてキット中で提示されていてもよい。他の実施形態では、説明書は、好適なコンピューター可読ストレージ媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する電子ストレージデータファイルとして提示される。さらに他の実施形態では、実際の説明書は、キット中に存在しないが、例えば、インターネットを介して、リモートソースから説明書を入手するための手段が提供される。この実施形態の例は、説明書を見ることができるおよび/または説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るためのこの手段は、好適な基材に記録される。
【0279】
本開示の別の態様は、本明細書に記載され、説明されるものをすべて提供する。以下の実施例は、実例の目的で提供され、限定する目的で提供されるものではない。
【実施例】
【0280】
下記の作業実施例に共通する一般的方法
補充動画1.バイナリーCellREADRウイルスベクターを注射されたマウスの光遺伝学的活性化
バイナリーREADRCtip2/3/レポーターChRger2-eYFP AAVを注射されたマウスにおける光遺伝学的活性化(CFA、0.5秒)は、足踏みする前肢の移動を誘導する。上方移動は、肘、手首、および指の屈曲とそれに続く伸びを順番に含む。
【0281】
補充動画2.バイナリーPTエンハンサーウイルスベクターを注射されたマウスの光遺伝学的活性化
PTエンハンサー/レポーターChRger2-eYFPAAVを注射されたマウスにおける光遺伝学的活性化(CFA、0.5秒)は、指の伸びに付随して起こる肘の伸びを誘導する。
【0282】
作業実施例において使用される方法
プラスミド
すべての構築物は、標準的な分子クローニング手順を使用して作成した。ベクター骨格を、制限酵素消化を使用して線状化し、DNA断片インサートを、PCRまたはgBlock合成(IDT)を使用して作成した。すべてのプラスミドについての情報は、表6に含まれる。すべてのsesRNAインサートは、gBlock合成(IDT)によって作成し、この研究で使用されたsesRNA配列は、表7に含まれる。
【0283】
細胞培養およびトランスフェクション:HeLa細胞系を、A.Krainer laboratory(Cold Spring Harbor Laboratory)から入手した。マウス神経芽細胞腫Neuro-2a(N2a)細胞を、Millipore-Sigma(Sigma、カタログ89121404)から購入した。HEK293TおよびKPC1242細胞系を、D.Fearon laboratory(Cold Spring Harbor Laboratory)から入手した。HEK293T、HelaおよびN2a細胞系を、5%のCO2下、37℃で、10%のウシ胎仔血清(FBS)(Gibco、カタログ16000036)を有するダルベッコ改変イーグル培地(Corning、10-013-CV)中で培養した。1%のペニシリン-ストレプトマイシンを、培地に補充した。細胞を、製造業者の説明書に従って、Lipofectamine2000(Invitrogen、カタログ11668019)DNAトランスフェクション試薬でトランスフェクトした。インターフェロン処置のために、1nMの組換えマウスIFN-β(R&D、カタログ8234-MB)を含有する培地を使用し、トランスフェクションプロセスの間、24時間ごとに交換した。テトラサイクリン処置のために、示されたテトラサイクリン濃度を含有する培地を、トランスフェクション24時間後に使用して、分析前に48時間、テトラサイクリンを含まない培地に置き換えた。アポトーシスアッセイのために、細胞を、トランスフェクション後72時間インキュベートし、RealTime-GloTM Annexin V Apoptosis and Necrosisアッセイ(Promega JA1011)を使用して、アポトーシスレベルを定量化した。
【0284】
SURVEYORアッセイ
ゲノムDNAのPCR(DYRK1Aについてのプライマー、フォワード:GGAGCTGGTCTGTTGGAGAA;リバース:TCCCAATCCATAATCCCACGTT)を使用して、改変および未改変細胞の異種集団からCas9標的領域を増幅し、PCR産物を、ゆっくりと再アニーリングして、ヘテロ二重鎖を作成した。再アニーリングされたヘテロ二重鎖を、SURVEYORヌクレアーゼによって切断する一方で、ホモ二重鎖は、インタクトのままである(IDT:Alt-Rゲノム編集検出キット)。Cas9媒介切断効率(インデル%)を、切断DNAの割合に基づいて計算する31。
【0285】
動物
6~20週齢(雄および雌両方)のマウスを、この研究で使用した。幅広い型のマウスは、Jackson Laboratoryから購入した(C57BL/6J、000664)。Fezf2-CreERおよびRosa26-LoxpSSTOLoxp-H2bGFPマウスは、以前に記載された39、56。Fezf2+皮質錐体ニューロンを標識するために、200mg/kg用量のタモキシフェン(T56648、Sigma)を、AAV注射の2日前に、腹腔内注射によって投与した。Long Evansラット(Rattus norvegicus、12週齢、50~250g)を、Charles Riverから入手した。すべての動物を、マウスについてケージあたり最大5頭の動物およびラットについてケージあたり1頭の動物で、12時間:12時間の明:暗サイクルで維持した。すべての動物の維持および実験手順は、Cold Spring Harbor LaboratoryおよびDuke Medical Centerによって確立されたガイドラインに従って行った。
【0286】
ADAR1ノックアウト細胞系構築:ADAR1ノックアウト細胞系を、CRISPR-Cas9ゲノム編集を介して作成した。gRNAを、pSpCas9(BB)-2A-puro(pX459)(Addgene、カタログ62988)にクローニングした。gRNA配列は、5’GGATACTATTCAAGTCATCTGGG 3’(gRNA1)および5’GTTATTTGAGGCATTTGATG 3’(gRNA2)であった。簡潔には、ADAR1ノックアウト細胞を、ADAR1-p110およびADAR1-p150アイソフォームの両方によって共有される、2つのgRNA標的化エクソン2を用いて作成した。HEK293T細胞を、6ウェルプレートに播種し、Lipofectamine 2000(Thermo Fisher Scientific、カタログ11668019)を使用して、1ugのpX459-gRNA1およびpX459-gRNA2のプラスミド混合物でトランスフェクトした。翌日、トランスフェクション試薬を含有するすべての培地を除去し、ピューロマイシン(最終濃度2ug/ml)が補充された新鮮な培地で置き換えた。ピューロマイシンを有する新鮮な培地を、2日ごとに3回、古い培地で置き換えた。ピューロマイシン選択後の残った細胞を、TrypLE(Gibco、カタログ12605036)を用いて回収し、それぞれのウェルに1~2個細胞で、96ウェルプレートに分配した。増えた単一クローンを、ウエスタンブロットによってADAR1欠損をスクリーニングし、ADAR1ゲノム遺伝子座の崩壊を、サンガーシークエンシングによって確認した。
【0287】
フローサイトメトリー分析:トランスフェクションの2日後、細胞を、TrypLE(Gibco、カタログ12605036)を用いて回収し、96ウェル丸底プレートに分配し、500rpmで、4℃で1分間遠心分離した。上清を除去し、細胞を、1%のPFA緩衝液で再懸濁し、4℃で終夜またはより長い時間、インキュベートした。次いで、細胞を、LSR Fortessa(BD Biosciences)を使用する分析の前に、200ulのフローサイトメトリー染色緩衝液(Invitrogen、カタログ00-4222-26)で再懸濁した。Fortessaを、FACSDIVA(BD Biosciences)ソフトウェアによって作動させた。データ解析を、FlowJo 10(FlowJo、LLC)を用いて行った。選別するために、細胞を、1%のPFA処置なしであるが、フローサイトメトリー分析に関して同じ手順に供し、BD FACSAria(BD Biosciences)を使用して処理した。
【0288】
外因性または内因性転写物についてのCellREADR効率
蛍光レポーター遺伝子を用いてCellREADR効率をアッセイするために、HEK293T細胞またはHEK293T ADAR1ノックアウト細胞を、最初に、24ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞を、合計で1.5μgのプラスミドで共トランスフェクトした。トランスフェクション後48時間で、細胞を、収集し、1%のPFAで固定し、FACS解析のために調製した。FACSデータからCellREADR効率を計算するために、READRベクターを発現する細胞を、スペーサーによって発現する蛍光タンパク質(例えば、
図1b~dにおけるBFP)によってゲーティングし、効率を、ゲート内のすべての標的RNA発現細胞内のefRNAおよび標的RNAの両方を発現する二重陽性細胞の比として計算した。スペーサーが蛍光タンパク質ではない場合(
図1hおよび
図2)、比は、標的RNA発現細胞内のefRNAおよび標的RNAの両方を発現する二重陽性細胞の比として直接計算した。一部の対照について、CellREADR効率を、すべてのカウントされた細胞内のefRNA発現細胞のパーセントとして計算した。
【0289】
sesRNA設計
以下の手順を、sesRNA設計のために使用する:1)sesRNAは、特定の細胞のコードまたは非コードRNA配列に対して相補的、すなわち、アンチセンスである、2)sesRNAの最適な長さは、200~300ヌクレオチドである、3)readrRNAは、連続する翻訳リーディングフレームに配置されたsesRNAおよびefRNAからなる、4)1つまたは複数のSTOPコドン(TAG)を、sesRNAの中央近くに置く(5’末端から約80220ヌクレオチドの間の範囲)、5)sesRNA中の5’-TGG-3’配列に相補的である、標的RNA中の5’-CCA-3’配列を見出し、次いで、5’-TGG-3’を5’-TAG-3’で置き換え、その結果、A-Cミスマッチを、sesRNAが標的RNAと塩基対合する場合に、導入す、6)他のSTOPコドンがsesRNAに存在しないことを確実にするために、sesRNA中のすべての他のTAG、TAA、TGA配列を、それぞれ、GAG、GAA、GGAに変換し、好ましくは、変換されたSTOPコドンは、ステップ5で定義されたTAGの近くにない(すなわち、それから10bp超)、7)意図しない翻訳開始の可能性を排除するために、ステップ5で定義されたTAGの後にATG(開始コドン)があってはならない、8)sesRNAは、エクソン、イントロン、UTR領域、またはスプライシング後の成熟mRNAを含む細胞転写物の任意の領域に方向付けられ得る、9)複雑な二次構造を有するsesRNAを回避する。
【0290】
CellREADRによるAからIの編集率
AからIの編集率を評価するために、HEK293T細胞を、12ウェルプレートに播種した。トランスフェクション48時間後、細胞を収集し、RNAを抽出した。RNAを、RNeasy Miniキット(Qiagen カタログ74106)を用いて精製し、TaqManTM逆転写試薬(Thermo Fisher、N8080234)を使用してcDNAに変換した。全sesRNA領域をカバーするPCR産物を、CloneAmp HiFi PCR Premix(Takara、カタログ番号639298)で作成し、サンガーシークエンシングのために、NucleoSpin Gel and PCR Clean-upキット(Takara、カタログ番号74061)を用いて精製した。編集効率を、サンガーピーク高さの比G/(A + G)として計算した。3回の生物学的反復を行った。
【0291】
トランスクリプトーム-ワイドRNAシークエンシング解析
赤色蛍光タンパク質(tdTomato)発現カセットを有するreadrRNACtrlまたはreadrRNAPCNA、readrRNAEEF1A1-CDS発現プラスミドを、293T細胞にトランスフェクトした。RFP+細胞(約5×10^5個)を、トランスフェクションの48時間後に、FACS選別によって濃縮し、RNAを、RNeasy Miniキット(Qiagen カタログ74106)を用いて精製した。ライブラリーを調製するために、RNA試料を、TrueSeq Stranded mRNA library Prepキット(Illumina、20020594)およびTrueSeq RNA Single Indexes(Illumina、20020492)で処理した。ディープシークエンシング解析を、Cold Spring Harbor Laboratory NGS Bioinformatics Centerで、Illumina NextSeq500プラットフォームにおいて行った。FastQCを、RNA-seqデータに適用して、シークエンシング品質をチェックした。品質チェックを通過したすべての試料を、参照ゲノム(GRCh38-hg38)に対してマッピングした。STAR(バージョン2.7.2)およびRSEM(バージョン1.3.2)を使用して、遺伝子をアノテートした。TPM値を、RSEMから計算した。ゼロを上回るリードのライブラリーのうちの少なくとも1つを有するすべての遺伝子について、生物学的反復にわたる平均発現値を、DESeq2を使用して、差次的発現する遺伝子を検出するために、試料間で比較した36。調整p値<0.01および倍数変化>2または<0.5を有する遺伝子を、有意に差次的発現したとして同定した。包括的なAからGの編集率の解析のために、AからGの編集率の計算を、REDItoolのためのpython wrapperであるRNA Editing Detection Pipeline(REDP)を使用して行った37。パラメーターを、デフォルト値に設定した。アライメントステップを、デフォルトおよび座標ソートパラメーターを用いて、STAR v2.7.8aを使用して行った。Gencode GRCH38.p13からのゲノム参照を使用し、EEF1A1およびPCNAを含む標的遺伝子からの公知配列と連結させた。
【0292】
ウエスタンブロット
ADAR1に対する一次抗体(Santa Cruz、sc-271854、1:500)、GFP抗体(Cell Signaling Technology、カタログ2956、1:10000)、β-アクチン抗体(Cell Signaling Technology、カタログ3700、1:10000)を、この研究で使用した。標準的なウエスタンブロットプロトコールを使用する。簡潔には、約2×106個細胞を溶解し、等量のそれぞれの溶解物を、SDS-PAGEのためにロードした。次いで、試料タンパク質を、二フッ化ポリビニリデン膜(Bio-Rad Laboratories)に移し、ADAR1またはGFPに対する一次抗体を用いて免疫ブロットし、それに続いて二次抗体インキュベーション(1:10,000)および曝露を行った。
【0293】
ルシフェラーゼ相補性アッセイ
トランスフェクションの48時間後、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現するHEK293T細胞を、PBS中で洗浄し、粉砕によって収集し、96ウェルプレートに移した。Promegaルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、E1500)を使用した。ホタル発光を、SpectraMax Multi-Modeマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して測定した。
【0294】
qRT-PCR
RNAを、抽出し、RNeasy Miniキット(Qiagen カタログ74106)を用いて精製した。RNAを、TaqManTM逆転写試薬(Thermo Fisher、N8080234)を使用してcDNAに変換した。qRT-PCRを、QuantStudio 6 FlexリアルタイムPCRシステムにおいて、Taqmanプローブを用いて行った。ハウスキーピング遺伝子TBPを、正規化のために使用した。遺伝子プローブを、Thermo Fisher Scientificから購入した(Thermo Fisher Scientific、EEF1A1:Hs01591985、PCNA:Hs00427214、XIST:Hs00300535、ACTB:Hs03023943、Mda5:Mm00459183_m1、Rig-I:Mm01216853_m1、Ifnb1:Mm00439552_s1、Il6:Mm00446190_m1、Ccl2:Mm00441242_m1、Fgf2:Mm01285715_m1、Cd40:Mm00441891_m1、Iba1:Mm00479862_g1、Cxcl10:Mm00445235_m1)。ハウスキーピング遺伝子TBP(Thermo Fisher Scientific、ヒトTBP:Hs00427620、マウスTbp:Mm01277042_m1)を、正規化のために使用した。
【0295】
ウイルス生成
READRおよびレポーターウイルスを生成するために、HEK293T細胞を、PEI MAX(カタログ24765、Polysciences Inc.)を使用して、READRまたはレポータープラスミド、AAV血清型プラスミド、およびpHelperを用いて一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後に、細胞を、細胞培養培地中で収集し、4,000rpmで15分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを、細胞溶解緩衝液に再懸濁し、ドライアイス/エタノール浴を使用して、凍結および解凍を3回行った。細胞溶解物を、4,000rpmで20分間遠心分離した。上清中の夾雑DNAを、ベンゾナーゼを添加することによって除去し、37℃で30分間インキュベートした。ウイルスの粗溶液を、イオジキサノール密度勾配にロードし、Beckman Ti70ローターを使用して、60,000rpmで90分間スピンした。遠心分離後、3~4mlの粗ウイルス調製物を、10mlの注射器に取り付けられた18ゲージ針を用いて、40~60%の層から収集した。ウイルスの粗溶液を、Amicon Ultra-15遠心分離フィルター(100kDa)を使用して、200~250μlまで濃縮し、8mlのPBSで1回洗浄し、適切な体積まで濃縮した。アリコートを、使用まで、-80℃で貯蔵した。マウスおよびラットREADRおよびレポーターウイルスを、AAV-DJまたはAAV-PHP.eB血清型としてパッケージングした。PTエンハンサー-tTA2ウイルスを、Addgene(番号163480)からのベクターを用いて、PHP.eBとしてパッケージングした。ヒトREADRおよびレポーターウイルスを、AAV2-Retro血清型としてパッケージングした。pAAV(DJ)-hSyn-Adar2-sesRNAFezf2-tTA2およびpAAV(PHP.eB)-hSyn-ADAR2-sesRNACtip2(1)-tTA2を、Vigene Inc.からパッケージングした。
【0296】
免疫組織化学的検査
マウスまたはラットを、麻酔し(アバチンを使用)、生理食塩水、続いて、0.1MのPBS緩衝液中の4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で心臓内に灌流した。4℃での終夜の固定後、脳を、3回すすぎ、Leica 1000sビブラトームを用いて、50μmの厚さに切片化した。切片を、PBS1X中の10%の正常ヤギ血清(NGS)および0.1%のTriton(登録商標)-X100を含有するブロッキング溶液中に1時間入れ、次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体とともに4℃で終夜インキュベートした。抗GFP(1:1000、Aves、GFP-1020)、抗CTIP2(1:250、Abcam 18465)、抗TLE4(1:500、Scbt:sc-365406)、抗Rorb(1:300、Novus Biologicals NBP1-82532)を使用した。切片を、PBS中で3回すすぎ、対応する二次抗体(1:500、Life Technologies)とともに室温で1時間インキュベートした。切片を、Fluoromount(Sigma、F4680)マウンティング培地を使用して、スライド上にドライマウントした。
【0297】
ヒト組織について、ウイルス発現がピークに達した後、またはパッチクランプ記録後、皮質スライスを、4%のPFA中で終夜固定し、次いで、PBS中ですすぎ、アジドを有するPBS中で1~7日貯蔵した。ビオサイチン回収のために、組織を、シェーカープレート上で、10%のTriton(登録商標)X100、5%のNGS、100uMのグリシン、および0.5%のBSAを有するPBS中、室温で30分間透過処理した。一次抗体および二次抗体はどちらも、4℃で24時間インキュベートした。ビオサイチンを、Alexa647コンジュゲートストレプトアビジンで直接的に、または活性部位に金属銀が堆積している銀イオン基材で処理されたペルオキシダーゼ標識化ストレプトアビジンを使用する酵素金属組織学的方法で間接的に発色させた。回収された細胞を、10倍または20倍の対物レンズを備えたKeyence BZ-X800において画像化した。ネイティブmNeon蛍光の大きな概要画像を、Leica SP8正立共焦点顕微鏡において作製した。FOXP2、およびNeuNの免疫組織化学的標識化のために、組織を、30%のスクロース中、少なくとも24時間凍結保護し、次いで、スライド式ミクロトームを用いて40umに再切片化した。浮遊切片を、1%のTriton(登録商標)X100、5%のNGS、および100uMのグリシンを有するPBS中、室温で30分間透過処理し、一次抗体(ウサギ抗FOXP2 Abcam番号16046 1:500、ラット抗Flag 1:500 Novus NBP1-06712、マウス抗NeuN Ab 1:500、Cell Signaling 番号94403S)を用いて、4℃で終夜標識化した。二次抗体について、組織を、ビオチン化抗ウサギAb(1:1000、ThermoFisher 31822)とともに室温で2時間、続いて、ストレプトアビジンAlexaFluor647とともに室温で1時間(FOXP2、またはヤギ抗マウスAb(1:1000、ThermoFisher 32723)とともに室温で2時間(NeuN)、インキュベートした。
【0298】
in situハイブリダイゼーション
すべてのプローブは、Molecular Instrumentsに注文した(マウスSatb2 カタログ番号PRM128、マウスPlxnD1 カタログ番号PRK885、マウスFezf2 カタログ番号PRA339、マウスvGAT カタログ番号PRE853、ラットvGAT カタログ番号PRN024およびヒトVGAT カタログ番号PRM351)。マウス脳を、PFA灌流固定およびスクロース保護後、50μmの厚さのスライスに、スライスした。in situのハイブリダイゼーション連鎖反応を、24ウェルプレートにおいて、浮遊法を介して行った。最初に、脳スライスを、HCRプローブセットを有するプローブハイブリダイゼーション緩衝液に、37℃で24時間曝した。脳スライスを、プローブ洗浄緩衝液で洗浄し、増幅緩衝液とともにインキュベートし、25℃で24時間増幅した。3日目に、脳スライスを、洗浄し、必要により対比染色した。
【0299】
定位ウイルス注射
8週齢またはそれよりも高齢の成体マウスを、一定の空気の流れ(0.4L/分)で送達される2%のイソフルランの吸入によって麻酔した。ケトプロフェン(5mg/kg)およびデキサメタゾン(0.5mg/kg)を、それぞれ、先制鎮痛として、脳浮腫を防止するために、皮下投与し、手術の前に、リドカイン(2~4mg/kg)を適用した。マウスを、定位ヘッドフレーム(Kopf Instruments、940シリーズまたはLeica Biosystems、Angle Two)にマウントした。定位座標を特定した。切開術を、頭皮に対して行い、頭蓋に小さな穿頭孔を開け、脳の表面を露出させた。ウイルス懸濁液を含有する20~30μmの引きガラスピペットチップを、脳まで下げ、500nl体積の単一または混合ウイルスを、Picospritzer(General Valve Corp)を使用して、300umおよび700um(1:1体積)の注射部位に、30nl/分の速度で送達し、ピペットを、引き戻す前に逆流を防止するために10分間所定の位置に留め、その後、切開部を、ナイロン縫合糸(Ethilon Nylon Suture、Ethicon Inc.Germany)またはTissueglue(3M Vetbond)で閉じ、動物を、完全に回復するまで、加温パッド上で温めたままにした。ラットTle4細胞型の標的化のために、READRTle4およびレポーターAAVの3:1混合物を、皮質に定位注射し(0mm後方、3.5mm外側)、それぞれ、1000ul体積を-2mm腹側に注射し、1000ul体積を-1mm腹側に注射した。ラットvGATの標的化のために、READRvGATおよびレポーターAAVの3:1混合物を、皮質に定位注射し(-4mm後方、3.5mm外側)、それぞれ、1000ul体積を-2.5mm腹側に注射し、1000ul体積を-1.5mm腹側に注射した。免疫組織化学的検査またはin situハイブリダイゼーションのさらなる実験を、ウイルスインキュベーションの3週間後に行った。
【0300】
マウスにおける生理機能
-定位手術およびウイルス注射。すべての手術を、無菌条件下で行い、体温を、加温パッドを用いて維持した。標準的な手術手順を、定位注射および光ファイバー埋め込みのために使用した。マウスを、イソフルランで麻酔し(開始時に2~5%および手術手順の安静の間0.8~1.2%)、定位フレームに置き、加温パッドの上で、34~37℃で維持した。ケトプロフェン(5mg/kg)を、手術の前および後の鎮痛として腹腔内(IP)投与し、リドカイン(2%)を、手術の前に、頭皮の下に、皮下適用した。頭皮および結合組織を除去して、頭蓋の背面を露出させた。皮膚を、傍らに押し出し、頭蓋表面を、生理食塩水を使用してきれいにした。デジタルmouse brain atlasを、定位フレームに連結させて、異なる脳領域の同定および標的化をガイドした(Angle Two Stereotaxic System、Leica Biosystems)。以下の座標を、SSp-ulにおける注射および埋め込みのために使用した:ブレグマから-0.09、正中線から2.46mm外側、CFA:ブレグマから0.37mm、正中線から1.13mm 外側。
【0301】
ウイルス注射のために、小さな穿頭孔を、頭蓋に開け、脳の表面を露出させた。ウイルス懸濁液を含有する20~30μmの引きガラスピペットチップを、脳まで下げ、500nl体積を、Picospritzer(General Valve Corp)を使用して、10~30nl/分の速度で送達し、ピペットを、引き戻す前に逆流を防止するために5分間所定の位置に留めた。注射を、700μmの深さで行った。次いで、光ファイバー(直径200μm;NA、0.39)を、それぞれ、光遺伝学的活性化またはファイバー測光法のために、CFAまたはSSp-ulに埋め込んだ。光ファイバーを、脳表面に触れるそのチップを用いて埋め込んだ。光ファイバーを頭蓋に固定するために、シリコーン接着剤(Kwik-Sil、WPI)を、孔を覆うために適用し、それに続いて、歯科用セメント(C&B Metabond、Parkell)、次いで、黒色瞬間接着剤(Loctite 426)、および歯科用セメント(Ortho-Jet、Lang Dental)の層を適用した。チタンヘッドバーを、歯科用セメントを使用して、ラムダの周囲の頭蓋に固定した。マウスを、完全に回復するまで、加温パッド上に移した。光遺伝学的活性化またはファイバー測光法のさらなる実験を、ウイルスインキュベーションの8週間後に行った。
【0302】
-in vivo光遺伝学的活性化。マウスを、最初に、イソフルラン(2%)で短時間麻酔して、それらの左足の後ろに反射マーカーを取り付けた。次いで、マウスを、管に移し、頭部をステージに固定し、刺激開始前に、麻酔から完全に回復させた。ファイバー結合レーザー(5-ミリ秒のパルス、10~20mW;λ=473nm)を使用して、20および50Hzで、0.5秒間何度も刺激した。刺激間の間隔は、9.5秒であった。1つが前方、1つが側面カメラの2つのカメラ(FLIR、FL3-U3-13E4C-C)を、ステージに設置して、高フレームレート(100Hz)動画を撮影した。2つのカメラを、特注のMATLAB(登録商標)プログラムによって制御されるTTLシグナルによって同期させた。動画およびTTLシグナル状態を、Bonsaiソフトウェアにおけるワークフローを使用して、同時に取得した。4つのLED光ランプを、照明のために使用した(それぞれのカメラについて2つ)。
【0303】
-行動の動画解析。2つのカメラを、MATLAB(登録商標)のCamera Calibrator Appを使用して較正した。MATLAB(登録商標)を使用した左足の追跡のために、動画からの画像を、Gaussianローパスフィルター(サイズ9、シグマ1.8)を用いて平滑化した。足の上の反射マーカーの重心を、最初に、輝度および色相閾値の組合せによって検出し、次いで、特徴に基づく追跡アルゴリズム(PointTracker in Computer Vision Toolbox)によって追跡した。追跡結果を、手動で検証し、エラーを、それに従って補正した。マウスが刺激開始前(0.5秒以内)に自発運動を行った試行を、さらなる分析から除外した。
【0304】
-足の刺激。左足を刺激するために、マウスを、イソフルラン(0.75~1%)で軽く麻酔した。体温を、フィードバック制御加温パッドを使用して維持した。ミニチュアpiezo driver(PDu100B、PiezoDrive)によって駆動されるpiezo bender(BA4510、PiezoDrive)を、尖っていない針が接着されたKaptonテープを用いて絶縁した。針の先を、足の後ろに取り付けて、振動(100Hz、正弦波、1秒)によりそれを刺激した。刺激間隔は、10秒であった。
【0305】
-in vivoファイバー測光法およびデータ解析。市販のファイバー測光システム(Neurophotometrics)を使用して、SSp-ulからのカルシウム活性を記録した。パッチコード(ファイバーコア直径、200μm;Doric Lenses)を使用して、埋込型光ファイバーを備えた測光システムを接続した。GCaMP励起に対する青色光(λ=470nm)の強度を、パッチコードの先端で約60μWに調整した。紫色光(λ=415nm、先端で約60μW)を使用して、等吸収制御シグナルを取得して、カルシウム非依存性人為現象を検出した。放出されたシグナルを、バンドパスフィルター処理し、CMOSカメラのセンサーに焦点を合わせた。測光シグナルおよび刺激開始を、多機能I/Oデバイス(PCIe-6321、National Instruments)によって生じたTTLシグナルに基づいて整列させた。ROIからのシグナルの平均値を計算し、Bonsaiソフトウェアを使用することによってセーブし、さらなる解析のためにMATLAB(登録商標)にエクスポートした。
【0306】
記録された測光シグナルを処理するために、それぞれのシグナルの最初のベースライン補正を、適応的に反復的に再重み付けされたPenalized Least Squares(airPLS)アルゴリズム(https:// at github.com/zmzhang/airPLS)を使用して行って、シグナルにおける傾きおよび低頻度の変動を除去した。ベースライン補正されたシグナルを、5秒のベースライン期間の中央値および標準偏差を使用して、試行ごとの基準で標準化した(Zスコア)。標準化された415nmの励起等吸収シグナルは、ロバスト線形回帰を使用して、標準化された470nmの励起GCaMPシグナルに適合させた。最後に、標準化された等吸収シグナルを、線形回帰のパラメーターを使用して調整し、標準化されたGCaMPシグナルから復帰させて、カルシウム依存性シグナルを得た。
【0307】
ヒト器官試料調製
ヒト新皮質組織(前頭、頭頂、側頭)を、てんかんのために脳切除を受けている小児および成人患者(N=6;6~60歳)から得た。Duke University IRBプロトコール00103019の元で、インフォームドコンセントを、組織の供与について得た。
【0308】
組織調製は、一般に、文献41、57、58に記載された方法に従った。解剖溶液は、95/5%のO2/CO2(pH7.4)でバブリングされた、75mMのスクロース、87mMのNaCl、25mMのグルコース、26mMのNaHCO3、2.5mMのKCl、1.2mMのNaH2PO4、10mMのMgCl2、0.5mMのCaCl2を含有した。皮質を、氷冷(約4℃)の酸素化解剖溶液下で注意深く解剖して、軟膜を除去した。単一の脳回を、スライスするためにブロックし、Leica VT1200において300umの厚さで切断した。スライスを、ハンクス緩衝食塩水中ですすぎ、6ウェルプレートにおいて、PTFE膜(Millipore、カタログ番号PICMORG50)上に置いた。組織を、文献40に記載された条件付け培地中で培養した。条件付け培地はまた、in vitroで、最初の7日間、抗生物質/抗真菌薬(1×、ThermoFisherによるGibco)、および培養期間全体にわたって、シクロスポリン(5ug/mL)を含有していた。HEPES(20mM)を、スライス後最初の1時間、培地に添加した。AAVレトログレード(AAV-rg)ウイルスを、条件付け培地に懸濁し、プレーティングの日に、ピペットによってスライス表面に直接適用した。mNeonレポーターの発現を、DIV 3から前方へモニターし、組織を、DIV 6~DIV 14の免疫組織化学的検査およびパッチクランプ実験のために使用した。
【0309】
ヒト器官試料における電気生理学
培養されたヒト新皮質組織を、Olympus BX-50正立顕微鏡のプラットフォーム上の加熱された記録バス(32~34℃)に移した。記録溶液は、95/5%のO2/CO2で完全に飽和された、118mMのNaCl、3mMのKCl、25mMのNaHCO3、1mMのNaH2PO4、1mMのMgCl2、1.5mMのCaCl2、30mMのグルコースを含有した。ホウケイ酸塩パッチピペットを、4.0~5.5MΩの抵抗で引き、KOHで7.4に調整されたpHの、134mMのグルコン酸K、10mMのHEPES、4mMのATP三リン酸Mg塩、3mMのGTP三リン酸Na塩、14mMのクレアチンリン酸、6mMのKCl、4mMのNaClを含有する内液で満たした。ビオサイチン(0.2%)を、内液に添加して、記録後の形態の同定を可能にした。パッチされた細胞を、最低でも12分間、ホールセルモードで保って、ビオサイチンで完全に満たすのを確実にした。mNeonを発現する細胞を、Axopatch 700B増幅器(Molecular Devices)を使用して、視線誘導下でパッチクランプした。データを、(Digidata 1550B)でデジタル化し、pClamp 10(Molecular Devices)を用いて記録した。膜電圧を、100kHzで記録し、10kHzでローパスフィルター処理した。液間電位差は補正しなかった。ピペットキャパシタンスおよび直列抵抗を、それぞれの記録の開始の際に相殺し、記録設定の安定性のために周期的にチェックした。内在性膜の特性を、-10pAの電流ステップを用いて測定した。発火基電流を、1秒の期間の勾配電流および100~300pAの最終振幅を用いて測定した。インプット-アウトプット曲線を、最大発火率が誘発されるまで、-50pAで開始して、10pAの増分で増加する一連の電流ステップから作成した。データを、NeuroMaticおよび組織内のルーチンのIgor Pro(Wavemetrics)を使用して解析した。
【0310】
顕微鏡法および画像解析:組織培養における細胞イメージングを、ZEISS Axio Observer(CSHL St.Giles Advanced Microscopy Center)において行った。連続的にマウントされた脳切片からのイメージングを、胎児組織について63倍および5倍、ならびに成体組織について20倍の対物レンズを使用して、Zeiss LSM 780または710共焦点顕微鏡(CSHL St.Giles Advanced Microscopy Center)およびNikon Eclipse 90i蛍光顕微鏡において、ならびにMBF Neurolucidaソフトウェア(MBF)を備えたZeiss Axioimager M2システムにおいて5倍で、行った。定量化および画像解析を、Image J/FIJIソフトウェアを使用して行った。グラフの統計学およびプロットを、GraphPad Prism 9を使用して行った。
【0311】
統計学:独立両側スチューデントのt検定を、群比較のために使用した。統計分析を、Prism 9(GraphPad Software,Inc.)で行った。DESeq2を使用して、トランスクリプトーム-ワイドRNA-seqデータの統計学的有意性を分析した。
【0312】
本明細書で参照されるすべての参考文献、刊行物、オンラインリソース、特許および/または非特許文献は、その全体が、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0313】
プログラム可能RNAセンシングによる細胞型アクセスの概要
多細胞生物における多様な細胞型は、そのゲノムを構築し、生物の表現型を組織化する、必須の中間体である。この生物学的情報フローおよび疾患におけるその変更の組織論理を解読することは、多様な種にわたる細胞型の特異的で網羅的な分析を可能にする方法を必要とする。以下の例は、CellREADR(内因性ADARによるRNAセンシングを通した細胞アクセス)を記載し、これは、RNAにおいて作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)によって媒介されるRNA編集を通して実行される、所望のエフェクタータンパク質の翻訳に体細胞型を定義するRNAの検出を組み合わせる。以下の例は、CellREADRが、ヒトおよびマウス細胞系において、およびウイルスベクターによって送達される場合に、マウス大脳皮質の異なるニューロン型において、レポータータンパク質を翻訳する特定のRNA配列を感知することを実証する。このRNAプログラム可能技術は、生物学、医学、およびバイオテクノロジーにおいて広範な適用を有する、器官系および種にわたって、特異的で、単純で、多目的の、一般的な方法で、動物細胞型を発見し、モニターし、および編集する可能性を強調する。
【0314】
(実施例1)
CellREADR設計および哺乳動物細胞における検証
RNA編集は、再コード化、スプライシング、マイクロRNA標的化、ならびに他のRNAプロセシングおよび細胞プロセスに関わる後生動物遺伝子の調節ツールキットに必須の、広く、ロバストな転写後メカニズムである[20,21]。RNA編集の最も普及している形態は、ADARによって触媒されるアデノシンからイノシン(A→I)変換であり、イノシンは、細胞機構によってグアノシン(G)として認識される[21]。ADARは、塩基対合二本鎖(ds)RNAの区間を認識し、それによって動員され[20]、このようにして、配列がガイドする塩基編集マシンとして作動することができ、トランスクリプトーム編集のために利用されている[22~26]。ADARは、動物細胞において遍在性であるので[27]、CellREADRは、単一およびモジュラーreadrRNA分子として設計した(
図1a)。readrRNAの5’領域は、約300ヌクレオチドのセンサードメインを含有し、これは、配列特異的塩基対合を通して、特定の細胞型RNAに相補的であり、このようにして、それを検出する。このセンサードメインは、翻訳スイッチとして作用する1つまたは複数のADAR編集可能STOPコドンを含有し、これは、感知-編集-スイッチRNA(sesRNA)に対するこの領域の命名法をもたらす。sesRNAの下流およびSTOPのインフレームには、自己切断ペプチド2Aをコードする配列があり、インフレームで、さまざまなエフェクタータンパク質をコードするエフェクターRNA(efRNA)領域が続く。readrRNA全体は、特異的センサーおよびエフェクターに応じて、数キロ塩基であり、このようにして、ウイルスベクターまたはリポソームナノ粒子を通して細胞に送達可能である。標的RNAを発現する細胞では、sesRNAは、標的とdsRNAを形成し、これは、ADARを動員して、編集複合体をアセンブルする。編集可能STOPコドンで、ADARは、AからIに変換し、これは、標的RNA中の反対のCと対合する。このA→G置換は、TAG STOPコドンをTI(G)Gトリプトファンコドンに変換し、efRNAの翻訳のスイッチをオンにする。インフレーム翻訳は、N末端ペプチド2AおよびC末端エフェクターを含む融合タンパク質を生成し、これは、次いで2Aにより自己切断され、機能性エフェクタータンパク質を放出する(
図1a)。readrRNAは、標的RNAを発現しない細胞では、不活性のままであると予想される。
【0315】
(実施例2)
ヒト細胞における操作性
CellREADRの原理証明バージョンを構築し、ヒト293T細胞系において、それを試験した。発現ベクター(PGK-tdT)を使用して、外因性標的RNAとしてtdTomato遺伝子を発現させ、トランスフェクト細胞を標識した。次に、5’センサー領域からTAG STOPコドンが埋め込まれたtdT配列(sesRNAtdT)、2Aコード配列、および緑色蛍光(GFP)のための3’コードカセットからなる、readrRNAを発現するREADRベクター(READRtdT-GFP)を設計した、
図6。READRtdT-GFPとPGK-tdTの共トランスフェクションは、tdT+細胞のサブセットにおけるGFP発現をもたらした(
図6)。この結果を立証するために、READRベクターのGFPコード領域を、テトラサイクリン応答エレメント(TRE)プロモーターからホタルルシフェラーゼ遺伝子(Luc)の発現を駆動するテトラサイクリン誘導性転写活性化因子(tTA2)のものと置き換えた(
図6)。READRtdT-tTA2およびTRE LucとPGK-tdTの共トランスフェクションは、空ベクター対照と比較して、発光の劇的な誘導をもたらした(
図6)。それぞれ、わずかなおよび弱いGFPまたはルシフェラーゼ発現は、READRtdT-GFP単独または空PGKベクターと共トランスフェクトされた場合のREADRtdT-tTA2/TRE Lucから観察され(
図6b~f)、これは、sesRNAにおけるSTOPコドンの偶然のリードスルーから生じ得た[28]。
【0316】
(実施例3)
スペーサー
スペーサー配列は、本開示の一実施形態に従って、readrRNAの漏出を低減した。sesRNAの前のおよそ600bpのインフレームスペーサー領域の包含は、残ったGFP翻訳を実質的に排除した、
図2a。
図6gおよび6iは、スペーサー配列がsesRNAtdTコード領域の前に挿入されている、概略的なREADRtdT-GFPベクターである。
図6Jは、それぞれ、tdT標的RNA発現あり(上側)またはなし(下側)の可変の長さのスペーサーをコードするREADRtdT-G’Pベクターでトランスフェクトされた293T細胞におけるGFPおよびRFP発現の代表的なFACS解析である。(
図6j)より長いスペーサーは、tdT標的RNAの存在下で、readrRNAの有効性を減少させ(
図6h)、
図6Jに示されるRFP+細胞内のGFP+細胞のパーセンテージとして計算された変換比の定量化を示す。
【0317】
(実施例4)
定量化
CellREADR効率をより定量的に特徴付けるために、BFPコードカセットを、READRtdT-GFPにおいて、sesRNAtdT領域の上流に挿入し、これは、スペーサーとして機能するだけでなく、CAG-tdTトランスフェクト細胞と一緒にすべてのREADRtdT-GFPトランスフェクト細胞を標識した(
図1b、c)。CellREADR効率を、FACS解析において、BFP+細胞においてゲーティングされたRFP+細胞内のGFP+細胞の比として計算した。tdT標的RNAの非存在下で、READRtdT-GFPは、漏出性のGFP発現を示さなかった。tdT RNAの存在下で、READRtdT-GFPの効率は、15.2%であったが(
図1c、d)、STOPコドンを含有するスクランブルコード配列によりsesRNACtrlを発現する対照READRベクターは、GFP翻訳を示さなかった。
【0318】
(実施例5)
CellREADR効率は標的RNAレベルと相関する
次に、CellREADR効率が、標的RNAレベルと相関するかどうかを調べた。READRtdT-GFPの効率は、293T細胞トランスフェクションにおいて、CAG-tdTベクターの量の増加とともに増加した。ChETA(光ゲート型チャネルロドプシン-2のバリアント)コード配列が青色蛍光タンパク質(BFP)に融合され、TREによって駆動される、テトラサイクリン誘導性発現ベクターをさらに設計し、このようにして、BFP蛍光レベルは、培養培地中のテトラサイクリン濃度と相関したCheta転写レベルを示した。テトラサイクリン濃度およびBFP発現レベルの増加は、Cheta RNA依存性の様式で、READRCheta-GFP効率を増加させた。
図1e~f。BFP-Cheta発現を駆動する構成的プロモーターにより、READRCheta-GFP効率は、41.5%の高さに達した。これらの結果は、CellREADRの標的RNAレベル依存性およびロバスト性を示した。生理学的機能を媒介するためのエフェクターRNAの能力を実証するために、我々は、ゲノムDNA編集のためにCas9タンパク質を発現するようにREADRtdT-Cas9 29を、およびプログラム細胞死のための機能性カスパーゼ3タンパク質を発現するようにREADRtdT-taCas3/TEV 30を構築した。効率的な遺伝子編集(
図7a~d)および細胞アポトーシスの増加(
図7e~f)が、それぞれ、tdT標的RNAが存在する場合のみ、誘導された。
【0319】
(実施例6)
CellREADR機能におけるADARタンパク質の役割
CellREADR機能におけるADARタンパク質の役割を調べるために、ADAR1遺伝子ノックアウト(KO)293T細胞系を、CRISPRを使用して作成した。293T細胞において、ADAR1が高度に発現される一方で、ADAR2が辛うじて発現されるので、ADAR1KO 293Tは、本質的に、ADARヌル細胞系を表した。ADAR1の除去は、主に、READRtdT-GFP機能性を排除し(
図5h、i)、これは、p110またはp150 ADAR1アイソフォームのいずれか、およびADAR2タンパク質(
図5h、i)の外因性発現によってレスキューされた。野生型細胞におけるADAR2の過剰発現は、READR
tdT-GFP効率を約25~30%増加させた(
図5h、i)。サンガーシークエンシングは、TAG STOPコドンをTGGトリプトファンコドンに変換した、意図した部位でのAからI/Gの編集を確認した(
図5j、k)。ADAR発現が、インターフェロン刺激によって誘導され得るので[32、33]、ADAR1-p110およびADAR1-p150 ADARが、野生型293T細胞において、インターフェロン刺激によって誘導されたことをさらに確認し、したがって、READRtdT-GFP効率が増加したことを実証した。
【0320】
(実施例7)
広範囲の細胞におけるCellREADR機能
293T細胞に加えて、CellREADR機能性を、ヒトHeLa、マウスN2a、およびマウスKPC1242細胞系を含む、異なる組織または種が起源のいくつかの他の細胞系において実証した。集合的に、これらの結果は、細胞-内因性ADARを活用することによって、CellREADRが、特異的で、有効で、ロバストな方法で、細胞RNAの検出をエフェクタータンパク質の翻訳と組み合わせることができることを実証する。
【0321】
(実施例8)
sesRNAの特性はCellREADRプログラム可能性を付与する
sesRNAは、CellREADRの重要な構成要素であるので、sesRNAのいくつかの特性を、ロバストアッセイとして、ADAR2過剰発現READRAdar2-tdT-GFPベクターを使用して調べた。100ヌクレオチド未満のsesRNAが、ほとんどが無効であった一方で、長さが増加したsesRNAが、200~250ntの最適な長さで、CellREADR効率と正に相関したことを見出した。
【0322】
(実施例9)
プログラム可能性におけるミスマッチの役割
標的RNAとの配列ミスマッチの観点から、約200ntのsesRNAは、最大で10のミスマッチ(配列の長さの5%の)またはREADRAdar2-tdT-GFP効率の大きな減少なしのインフレームのインデルを許容し(
図2)、この特性は、sesRNA設計に対する柔軟性を付与する(方法を参照されたい)。
【0323】
しかしながら、編集部位の近傍のミスマッチは、CellREADR効率を有意に低減した。sesRNA設計における標的転写物に沿って場所の効果を検討するために、EF1a-Cheta-tdT発現ベクターを使用し、それぞれ、プロモーター、異なるコード領域、および3’UTRを標的化する5つのsesRNAを試験した。転写領域を標的化する4つのsesRNAはすべて、プロモーターを標的化するものを除いて、ロバストな効率を示した。最後に、より多くのSTOPコドンの包含が、sesRNAのストリンジェンシーをさらに増加させ得るかどうか(すなわち、標的RNAの非存在下で、基礎的な翻訳を低減する)を調べた。読み飛ばしの翻訳の感知指標としてルシフェラーゼを使用して、2つのSTOPコドンを有するsesRNAは、1つのSTOPコドンを有するものと比較して、同等の効率で漏出性の低減を示したが、3つのSTOPコドンは、効率を有意に低減した(
図2d~f)。同時に、これらの結果は、CellREADRのストリンジェンシー、効率、および柔軟性を増強する戦略を示唆する。
【0324】
(実施例10)
CellREADRは本質的にプログラム可能である
ワトソン-クリック塩基対合において構築された、CellREADRは、本質的にプログラム可能であり、より特定の細胞型の定義のために2つまたはそれよりも多くの細胞RNAを交差標的化するための可能性を付与する。この特性を検討するために、同じ転写物の異なる領域を標的化する二重または三重sesRNAアレイを設計した。試験されたsesRNAアレイはすべて、単一sesRNAのものと同等の、ロバストなCellREADR有効性を示した。
【0325】
2つの標的RNAの交差標的化のための可能性を調べるために、タンデムに配置されたsesRNAtdTおよびsesRNACheta(sesRNAtdT/Cheta)からなるsesRNAアレイを設計した。単一の標的RNA、tdTomatoまたはChetaは、readrRNAtdT/ChetaによるGFPまたはLuc発現の誘導に失敗したが、tdTomatoおよびChetaベクターの両方がトランスフェクトされた場合に、それぞれ、有意なGFP発現または発光の増加が観察された。この結果は、CellREADRのプログラム可能性に基づく交差細胞型標的化の可能性を実証した。
図2。
【0326】
(実施例11)
CellREADRによる内因性RNAセンシング
外因性RNAを発現する合成遺伝子と比較して、内因性遺伝子は、多くの場合、多数のエクソン、イントロン、および調節エレメントを含む、より複雑なゲノム構造を有し、転写された内因性RNAは、成熟mRNAとしてプロセシングされる前に、複数の精巧な転写後ステップ、例えば、スプライシングおよび化学修飾を受ける。細胞内因性RNAを標的化するためのCellREADRの能力を調べるために、293T細胞において高度に発現されるEEF1A1ハウスキーピング遺伝子を、最初に選択し、そのさまざまなエクソン、イントロン、5’および3’UTR、ならびにmRNAを標的化するsesRNAのセットを体系的に設計した(
図3)。これらのsesRNAは、すべての意図されるEEF1A1領域を感知して、efRNA翻訳のスイッチをオンにするのに有効であり、エクソンは、UTRおよびイントロンよりも良好な標的であった。とりわけ、2つのエクソンから接続されたmRNA領域に相補性的なsesRNAは、エクソン内に含有されたものと同等の有効性を達成し、CellREADRが、mRNAおよびpre-mRNAにおいて作用したことを示した。EEF1A1 RNAに対するCellREADR有効性は、細胞トランスフェクション後のインキュベーション時間とともに増加した。高度に発現されるACTB、中程度に発現されるPCNA、および長鎖非コードRNA XISTを含む、いくつかの他の内因性RNAを、293T細胞においてさらに試験した。これらのRNAすべてについてのロバストなCellREADR有効性(
図3d)が観察された。外因性ADAR2過剰発現は、むしろ、約30%のCellREADR有効性の中程度の増加をもたらした(
図3c、d)。同時に、これらの結果は、細胞内因性ADARが、細胞内因性RNAに対する有効でロバストなCellREADR機能性を可能にすることを示唆する。
【0327】
(実施例12)
標的化転写物のレベルに対するCellREADRの効果
CellREADRは、定量的PCR(qPCR)によってアッセイされる標的化転写物のレベルを変更せず(
図3e)、この結果は、readrRNAによって誘導されるRNA干渉の可能な効果も除外した。RNAシークエンシング解析をさらに行って、sesRNA
EEF1AまたはsesRNA
PCNAを発現する293T細胞のトランスクリプトームプロファイルを、スクランブル化sesRNACtrlを発現するものと比較することによって、CellREADRのトランスクリプトームの効果を評価した。相関分析は、sesRNAEEF1AまたはsesRNAPCNA発現が、全体的なトランスクリプトームに対する有意な影響を有さなかったことを示し(
図3f)、DESeq2分析は、sesRNA
EEF1AまたはsesRNA
PCNAとsesRNA
Ctrl群との間の有意な差次的遺伝子発現がないことを明らかにし、CellREADRが、細胞トランスクリプトームに対する有意な効果を有さないことを実証した。
【0328】
(実施例13)
CellREADRによるさらなる内因性RNAセンシング
外因性RNAを発現する合成遺伝子と比較して、内因性遺伝子は、多くの場合、多数のエクソン、イントロン、および調節エレメントを含む、より複雑なゲノム構造を有し、転写された内因性RNAは、成熟mRNAs34としてプロセシングされる前に、複数の精巧な転写後ステップ、例えば、スプライシングおよび化学修飾を受ける。細胞内因性RNAを検出するためのCellREADRの能力を調べるために、293T細胞において高度に発現されるハウスキーピング遺伝子のEEF1A1を、最初に選択し、そのさまざまなエクソン、イントロン、5’および3’UTR、ならびにmRNAを標的化するsesRNAのセットを体系的に設計した(
図3a、b)。これらのsesRNAは、すべての意図されるEEF1A1領域を感知して、efRNA翻訳のスイッチをオンにするのに有効であり、エクソンは、イントロンよりも良好な標的であると思われた(
図3c)。とりわけ、2つのスプライスされたエクソンから接続されたmRNA領域に相補的なsesRNAは、エクソン内に含有されたものと同等の効率を達成し、sesRNAを、pre-mRNAおよびmRNA配列の両方を標的化するように設計することができることを示した。EEF1A1 RNAに対するCellREADR有効性は、細胞トランスフェクション後のインキュベーション時間とともに増加した。
【0329】
(実施例14)
感度
標的RNAレベルに対するCellREADRの感度を調べるために、高度に発現されるACTB、中程度に発現されるPCNA、および長鎖非コードRNA XISTを含む、いくつかの他の内因性RNAを、293T細胞においてさらに試験した。高いレベル(ACTB、PCNA)から、中程度のレベル(TP53、XIST)、低いレベル(HER2、ARC)までの範囲の発現を有するいくつかの内因性RNAを選択した。これらのRNAすべてについてのロバストなCellREADR有効性(
図3d)が観察された。外因性ADAR2過剰発現は、むしろ、約30%のCellREADR有効性の中程度の増加をもたらした(
図3c、d)。CellREADRは、はるかに低い効率であったが、低レベルのARC RNAでさえ確実に検出することが可能であった。同時に、これらの結果は、細胞内因性ADARが、細胞内因性RNAに対する有効でロバストなCellREADR機能性を可能にすることを示唆する。
【0330】
実施例1~14の要約
CellREADRを、ヒト293T細胞におけるレポーターRNA編集アッセイを構築することによって、ヒトおよびマウス細胞系において試験し、ここで、標的RNAは、RFP発現ベクターから作製され、センサーRNAは、RFP標的に対してアンチセンスであり、次いで、第3のベクターにおいてGFP発現を活性化および増幅するtTA転写活性化因子に続く。細胞にトランスフェクトされたら、センサーRNAは、RFP RNAと対合し、ADARが動員されて、STOPコドンを編集し、GFPを活性化するtTAの翻訳のスイッチをオンにし、それによって、細胞を赤色から緑色にする。編集は、蛍光標識細胞分取[FACS]アッセイによって定量化することもでき、ここで、右上象限は、RFP/GFP陽性細胞である。
【0331】
この変換は、それがADAR1ノックアウト細胞系において起こらなかったので、ADAR媒介であり、これは、次いで、Adar2の発現によってレスキューされ得る。サンガーシークエンシングは、これが、実際に、STOPコドンを解除した意図したA-I(G)変換に起因することを証明した。
【0332】
このシステムはまた、ヒトHela細胞、ならびにマウスN2a細胞および細胞内因性RNAにおいて作動する。Ef1a遺伝子およびpre-mRNAの異なる領域が標的として使用された場合に、エクソンおよびコード領域が、イントロンおよび非翻訳領域よりも良好なセンシング標的であることが見出された。加えて、これは、非コードRNAを含む5つの他の細胞RNAについて作動した。
【0333】
(実施例15)
CellREADRで標的化する神経細胞型
神経組織および細胞を含む、動物組織における特定の細胞型にアクセスするために使用されるCellREADRは、特異ベクターシステムおよびバイナリーベクターシステムの両方を含む(
図4b)。特異ベクターシステムでは、すなわち、特異READRベクターは、例えば、mCherry赤色蛍光タンパク質をコードする遺伝子とそれに続くsesRNAならびにsmFlagおよびtTA2をコードするefRNAの転写を駆動する、hSynプロモーターを含む。この特異READRベクターは、RNA検出をエフェクター遺伝子発現と直接組み合わせ、その効率および特異性は、mCherry、smFlag、および標的mRNAまたはタンパク質の共局在化によって評価される。
【0334】
バイナリーシステムは、追加のレポーターベクターを含み、これは、READRベクターから翻訳されたテトラサイクリン依存性転写活性化因子(tTA2)に応答して、mNeonGreen(mNeon)または他のエフェクタータンパク質を駆動するTREプロモーターを含有する(
図4b)。バイナリーベクターは、エフェクター遺伝子発現の増幅、ならびにREADRおよびレポーターベクターが対合することによって、異なる細胞型において異なるエフェクター遺伝子を発現するコンビナトリアルな柔軟性を提供する。
【0335】
Fezf2またはCtip2のin vitro標的化
マウス大脳皮質の主要なグルタミン酸作動性投射ニューロン(PN)型を定義するmRNAを標的化するREADRベクターのセットを、293T細胞において、293T細胞における個々のsesRNA標的化ニューロンRNA配列、この場合では、Ctip2およびFezf2配列を共発現させることによって、最初に試験およびスクリーニングした(
図9a、b、d)。ジンクフィンガー転写因子Fezf2は、皮質アウトプットチャネルを構成する層5b(L5b)およびL6の皮質下行性投射ニューロン(CFPN)の大部分を標識するが、Ctip2は、優先的に、L5b/L6 CFPNニューロンのサブセットを標識する
38、39。すべてのsesRNAは、外因性Fezf2またはCtip2標的配列の存在下、293T細胞において、可変であるが有意なCellREADR効率を示した(
図9e~f)。
【0336】
Fezf2またはCtip2のin vivo標的化
AAVベクターを使用して、ウィスカーバレルの体性感覚皮質(S1)または運動皮質(M1)への局所注射によって、これらのsesRNAをマウス皮質に投与した。バイナリーベクターで送達される場合、Fezf2 sesRNA1は、86.4%の特異性を示し、Ctip2 sesRNA3および8は、Ctip2抗体染色によってアッセイされる、90%を超える特異性に達した(
図9j~k)。
【0337】
Ctip2 sesRNA3は、以下の実験の中心であった。一次体性感覚マウス皮質(S1皮質)に特異READRAAV
Ctip2/3を感染させた場合に、FLAG免疫蛍光は、深層に集中し(
図4c)、CTIP2およびFLAG免疫標識細胞の共局在化(
図4c、d)は、94.1%の特異性を示した(
図4e)。バイナリーREADR
Ctip2/3/レポーター
mNeonAAVに共感染したS1皮質では、READRベクターからのmCherry発現は、皮層にわたって細胞を標識したが、レポーターベクターからのmNeon発現は、L5bおよび一部のL6ニューロンを特異的に標識し(
図4f)、CTIP2免疫蛍光は、90.4%の特異性を示した(
図4g)。mCherryおよびCtip2二重陽性細胞内のGFP細胞の比として計算されるREADR
Ctip2/3の効率は、84.2%に達した(
図4h)。
【0338】
ADAR2過剰発現
READRベクターからのADAR2過剰発現が、CellREADR機能性を増強する可能性があるかどうかを試験するために、READRベクターにおけるmCherryモジュールを、ADAR2 cDNAで置き換えた。バイナリーREADR
Ctip2/3/レポーター
mRuby3またはバイナリーREAD
Fezf2/レポーター
mRuby3に共感染したマウス皮質を、Fezf2およびCtip2についてのsesRNAの発現について試験した、
図10a~c。ADAR2過剰発現が内因性ADARに依拠するバイナリーベクターと比較して、特異性または効率を特に増強しなかったことが分かった(
図10c~i)。
【0339】
(実施例16)
RNA発現レベルおよびCellREADR
CFPN(視床および脊髄を含む皮質外の領域にそれらの軸索を送る皮質下行性投射ニューロン)をマークするCtip2およびFezf2 mRNAに加えて、ある範囲のレベルで発現されるいくつかの他のmRNAw標的化するsesRNA
40を、それぞれ、PlxnD1(L2/3およびL5aにおける終脳内投射ニューロン(IT PN))、Satb2(上層および下層の両方にわたるIT PN)、Rorb(L4錐体ニューロン)、およびvGAT(pan-GABA作動性ニューロン)を含むバイナリーベクターにおいて構築した(
図11)。75%またはそれを上回る特異性を達成するいくつかのsesRNAを同定した(
図12)。これらの結果は、CellREADRが、ロバストな方法であり、特定の細胞型の標的化が、それぞれの標的についての複数のsesRNAを試験することによって達成され得ることを示す。
【0340】
(実施例17)
CellREADRの長期効果
in vivoでのCellREADR sesRNAの長期効果を評価するために、READR
Ctip2/3および対照CAG-tdT AAVを、マウス皮質において、3か月間モニターした。グリア活性化および免疫原性に関わる9つの遺伝子の発現に対する定量的RT-PCRアッセイは、READR
Ctip2/3感染組織対対照組織において、有意な変化を示さなかった(
図13)。
(実施例18)
CellREADRによるニューロン型の記録および制御
【0341】
CellREADR有効性を使用して、マウスにおいて、神経機能を記録および制御した。ベンチマークとして、CellREADRを、転写エンハンサーに基づく細胞型標的化アプローチと比較した。mscRE4エンハンサーを同定して、CFPNのサブセットであるL5錐体トラック(PT)ニューロンを有効にした
18。このようにして、mscRE4エンハンサー(すなわち、PTエンハンサー)とCtip2 sesRNA3の有効性を、遺伝的にコードされたカルシウムインジケーターGCaMP6sおよび光活性化イオンチャネルチャネルロドプシン2を発現するための同じtTA-TREバイナリーベクターを使用することによって比較した(
図4i~p)。
【0342】
マウス前肢体性感覚皮質においてPTエンハンサー-tTA2/レポーター
GCaMP6sまたはREADR
Ctip
2/3/レポーター
GCaMP6sAAVに共感染したマウスにおいて、前足の機械的刺激は、PTエンハンサーおよびREADR
Ctip2/3両方の感染マウスにおいて、ファイバー測光法によって測定される、前肢体性感覚皮質のGCaMP6sシグナルの確実で時間固定の増加を誘導した(
図4i~l)。この結果は、CellREADRによって達成されたエフェクター遺伝子発現レベルが、生きている動物において細胞生理学をモニターするのに十分であったことを示す。
【0343】
尾側前肢運動野(CFA)においてPTエンハンサー-tTA2/レポーター
ChRger2-eYFPまたはREADR
Ctip
2/3/レポーター
ChRg
er2-eYFPAAVに共感染したマウスにおいて、CFAの光刺激は、確実で時間固定の前肢の移動を誘導し、これは、PTエンハンサー感染マウスと比較して、READR
Ctip2/3においてより強いと思われた(
図4m~p、拡張データ動画1)。この結果は、CellREADRによって達成されたエフェクター遺伝子発現レベルが、動物の行動における細胞機能を制御するのに十分であったことを示す。eYFP発現の解剖学的解析は、線条体、視床、脳橋、および髄質を含む皮質下標的における軸索投射によって明らかにされるように、READR
Ctip2/3によるL5 PTニューロン標識化を確認した(
図14)。
【0344】
(実施例19)
哺乳動物種にわたるニューロン型のCellREADR標的化
ラットおよびヒトの脳における一連の実験を行って、哺乳動物種にわたるCellREADRの一般化可能性を実証した。GABA作動性ニューロンを、バイナリーAAVベクター標的化vGAT mRNA、pan-GABA作動性転写物を使用することによって、ラットにおいて標的化した(
図15b)。READR
vGAT(hSyn-mCherry-sesRNA
vGAT-smFlag-tTA2)とレポーター
mNeon(TRE3g-mNeon)AAV(
図15a)のラットS1バレル皮質および海馬への共注射は、皮質(
図15c)および海馬(
図15d~c)のGABA作動性介在ニューロンを特異的に標識化した。vGAT mRNA(赤紫色)およびREADR
vGAT(GFP)の共標識化によってアッセイされる特異性は、それぞれ、皮質について91.7%および海馬について93.8%であった(
図15f~g)。Tle4は、げっ歯類においてL6皮質視床(CT)錐体細胞をマークする、保存された転写因子である。バイナリーREADR
Tle4 AAVによって送達されたTle4 mRNAのエクソン15を標的化するsesRNA(
図15h)は、62.5%で、TLE4抗体による共標識化によって、深層ニューロンを標識した(
図15i~k)。
【0345】
(実施例20)
新皮質器官培養プラットフォーム
器官培養プラットフォームを、てんかん手術から収集されたヒト新皮質検体においてCellREADRを研究するために確立した
41(
図16a)。hSynプロモーター(AAVrg-hSyn-eGFP)によって駆動されるGFP構築物によるこれらの試料の感染は、顕著な尖端樹状突起によって特徴付けられる多くの錐体ニューロンの観察された形態および支配を伴って、複数の層にわたる高密度のウイルス標識化を示した(
図16b、c)。皮質および線条体投射ニューロンにおいて発現され、ヒト言語スキル発達
42に関わる、進化的に保存された遺伝子である、2つのsesRNA標的化FOXP2 mRNA(フォークヘッドボックスタンパク質P2)(
図5a、b)が発生した。in situハイブリダイゼーションおよび免疫染色は、FoxP2発現がL6 CTニューロンに制限される
39マウスとは異なって、ヒトFOXP2が、皮層にわたって発現されることを示す(
図16d)。バイナリーREADR
FOXP2/レポーター
mNeonAAV(hSyn-ClipF-sesRNA
FOXP2-smV5-tTA2とTRE3g-mNeon)をヒト新皮質スライスに適用した5日後、mNeon標識化細胞体を、上層および深層において観察した(
図5c、
図16eの拡張データ)。FOXP2免疫染色は、バイナリーREADR
FOXP2の特異性が、ほぼ80%であったことを示した(
図5d、e)。標識化されたニューロンは、グルタミン酸作動性錐体ニューロンと一致した、電気生理学的(
図5f)および形態学的(
図5g)特性も示した
43。それぞれ異なるsesRNAを有する2つの特異READR
FOXP2ベクターを使用して、標的化FOXP2ニューロンの97%を超える特異性が観察された(
図16f~i)。
【0346】
(実施例21)
ヒト新皮質GABA作動性細胞の標的化
ヒト新皮質GABA作動性細胞を、sesRNAを使用して、VGATに標的化した(
図5h)。バイナリーREADR
VGAT/レポーター
mNeonを使用して、新皮質層にわたる細胞標識化を観察し(
図5i)、標識化細胞は、多極および平滑な樹状突起を含む介在ニューロンの多様な形態学的特徴(
図5j)、際立って高密度の垂直方向の軸索(
図5i、k)を示した。VGAT mRNAについてのin situハイブリダイゼーションは、おそらく、培養されたex vivo組織におけるin situハイブリダイゼーションの潜在的に低減された感受性に起因する過小評価の、76.5%の特異性を示した(
図5l、m)。この可能性のサポートにおいて、非常に少ない標識化細胞が、錐体の形態で観察された(
図5i~l)。ウイルス適用7日後のREADR
VGAT/レポーター
mNeon標識化介在ニューロンの標的化パッチ-クランプ記録は、協調的で、速く、遅れて開始する発火を含む、さまざまな内在性の特性を明らかにした(
図5n)。パッチされた細胞の生理学的特性(
図5n)および部分的に再構築された形態(
図5o)は、哺乳動物の新皮質介在ニューロンのものと一致した
44。同時に、これらの結果は、CellREADRの異種間の一般化可能性および有用性を実証する。
【0347】
(実施例22)
てんかんを処置するための標的化ニューロン型および病理学的神経集合
疾患および臨床背景
てんかんは、人口のおよそ1%に影響を及ぼし、先進国では、患者の最大で30%が、最適な抗てんかん薬物療法にもかかわらず、発作を経験し続けている1。焦点性てんかんの最も有効な処置は手術であるが、これは、脳組織を除去する許容されない影響を理由として、非常に少ない患者に対して好適である。新規治療標的を同定し、新しい処置戦略を開発する緊急の必要性が存在する。遺伝子治療は、機能を保存しながら、難治性てんかん病巣における神経興奮性を調節し得る1。しかしながら、現在の十分な細胞型および疾患状態特異性の欠如は、有効な遺伝子治療のための主要な障害である2。
【0348】
焦点性てんかんは、病理学的脳ネットワークの過剰同期化された神経活動によって特徴付けられる興奮および抑制の不均衡によって生じる1。脳回路は、複数の興奮性および抑制性の細胞型を含み、それぞれ、情報処理および興奮-抑制のバランスにおいて固有に寄与している3,4。神経活動は、一部の細胞型において促進するが、他の細胞型において発作を抑制する2。したがって、てんかん進行の適切な段階、例えば、開始、維持などで神経活動の細胞型標的化モジュレーションを達成することは重要である1、2。病態生理学的集合を抑制するための方法、発作活動に実際に関与する方法が、特に有効であり得る。CellREADR技術は、RNAセンサーを使用して、新薬の開発につながるようなモジュレート性受容体(例えば、GPCR)およびイオンチャネルの発現を通して、脳回路の活動の細胞型および疾患状態特異的モジュレーションを達成することができ、このようにして、焦点性てんかんを制御および処置する有望なアプローチを提示することができる。
【0349】
GABA作動性抑制性ニューロン型の標的化
GABA作動性介在ニューロンは、脳回路の抑制性制御を媒介し、多様なニューロン型を含む
4。小胞状GABAトランスポーター(vGAT)は、すべてのGABAニューロンにおいて発現されるが、パルブアルブミン(PV)、ソマスタチン(SST)、カルレチニン(CR)、およびVIPは、いくつかの主要な下位集団/型をマークする。発作の病因におけるこれらの介在ニューロン型の役割は、完全に理解されていないままである。PVニューロンは、微妙に異なる役割を有し、てんかんの異なる段階で、発作を促進または抑制することが示されている。CellREADR技術は、マウス、ラット、ヒトの新皮質
9(表Aを参照されたい)、およびより最近では、マカクザルの新皮質において、GABA介在ニューロンを標的化する助けになる(
図17)。ヒトPVおよびSSTニューロンを標的化するためのセンサー(
図18)が、てんかん患者の側頭葉または前頭葉から切除された、すべてのヒトex vivo皮質組織において使用される。
表A
【表A-1】
【表A-2】
【0350】
GABA抑制性ニューロンのためのエフェクターおよび予想される結果
発作活動を抑制するためのSSTニューロン媒介阻害を活性化する2種類のリガンド開口型メカニズムを使用する化学遺伝学的アプローチ1。化学遺伝学は、内因性受容体の改変または外因性リガンドに応答する改変キメラ受容体の産生に依拠する。
【0351】
第1に、興奮性DREADD(デザイナー薬物によって独占的に活性化されるデザイナー受容体;hM3Dq興奮性受容体)10。DREADDは、FDAが承認した薬物であるクロザピン-n-オキシドまたはオランザピンによって特異的に活性化され得る11。薬物の用量は、有害作用なく発作を抑制するために、用量設定され得る。
【0352】
第2に、興奮性PSAM(薬理学的選択的アクチュエータモジュール/薬理学的選択的エフェクター分子)12。禁煙のために承認された薬物であるバレニクリン13に感受性である新たなバージョンのPSAMが開発された。
【0353】
化学遺伝学的アプローチの利点は、遺伝子治療が、薬物が与えられるまで不活性であり、その結果、遺伝子治療の「オフおよびオン」を変えることが可能であることである。また、効果の大きさは、リガンドの用量に依存する。したがって、任意の可能性のある副作用を回避するが、依然として有効性を最適化するために、薬物の用量を設定することが可能である。CellREADRに基づく細胞特異的化学遺伝学的戦略を一般化して、発作および他の神経疾患を処置するために、他のGABA作動性およびグルタミン酸作動性ニューロン型を標的化することができる。
【0354】
病態生理学的神経集合(PNE)の標的化
てんかんを管理または処置するための特に有効な戦略は、過剰活動を生じるニューロンおよび神経集合、すなわち、病態生理学的神経集合(PNE)だけでも抑制または制御することである。CellREADRは、このために有用である。過剰および同期化神経活動は、最初期遺伝子(IEG)c-fosの迅速な上方調節をもたらし14、15、これは、PNEを構成する大部分のグルタミン酸作動性興奮性ニューロンをマークする。c-fos RNAセンサーは、PNEを標的化およびモジュレートするように構築されている。4つのセンサーのパネルを試験し、その多くは、すでに、神経細胞培養における有望な結果を示している。c-fosに加えて、PNEを標的化するためにも使用され得る他のIEG15の拡張リストが存在する。
【0355】
エフェクター遺伝子
3種類のエフェクター遺伝子が、c-fosセンサーと組み合わされる。
【0356】
第1は、PNEのニューロンにおいてスパイクを低減する電位依存性カリウムチャネルKv1.1(KCNA1)16である。これは、PNE内のニューロンの発火を抑制する。
【0357】
第2は、抑制性DREADD(hM4D(Gi)抑制性受容体)10であり、これは、経口薬物のオランザピンによって活性化され得る。
【0358】
第3は、塩化物透過性である無脊椎動物グルタミン酸受容体(eGluCL)である17、18。eGluCLは、発作活動の間に放出されたグルタミン酸に結合し、FDAが承認した薬物のイベルメクチンによっても活性化され得、得られた塩素流が、神経活動を抑制する。イベルメクチンはまた、慢性的にまたはレスキュー薬物療法としてのいずれかで、神経活動を低減するために与えられ得る。
【0359】
PNEを標的化するこのアプローチの固有の利点は、これが「閉鎖ループ」制御であることである。正常な生理学的状態下で、c-fosは、顕著に発現されず、したがって、エフェクター発現は存在しない。てんかんの間、c-fos RNAの上方調節が、エフェクター翻訳を引き起こして、PNE活動を抑制する。戦略は、発作および他の神経疾患を処置するために、他のIEGを標的化するように一般化され得る。
【0360】
送達
上記のCellREADRベクターはすべて、AAVベクター(血清型2/9およびphp.eb)を使用して、てんかん病巣に送達される。従来のてんかん手術の間に、てんかん病巣の脳組織を除去する代わりに、治療用CellREADR AAVを、病巣に注射し、脳組織を保存する。
【0361】
予想される結果および現在の処置に対する改善
SSTセンサーおよびCellREADRベクターに関して、オランザピン(興奮性DREADDのため)またはバレニクリン(興奮性PSEMのため)の経口投与は、SST介在ニューロンを活性化して、焦点性てんかんを抑制する。c-fosセンサーおよびCellREADRベクターにより、オランザピン(抑制性DREADDのため)またはバレニクリン(抑制性PSEMのため)の経口投与は、PNEにおけるグルタミン酸作動性ニューロンの発火を低減して、てんかんを抑制する。同時に、特定の細胞型および特定の疾患状態に特異的なこれらのRNA治療薬は、てんかんの管理および処置を転換するであろう。
参考文献
【化3】
【化4】
【化5】
【0362】
(実施例23)
非ヒト霊長類におけるニューロン型のCellREADR標的化
我々は、それぞれ、グルタミン酸作動性錐体ニューロン(サブセット)およびGABA作動性介在ニューロンをマークする、マカクザルFoxp2およびvGATのためのRNAセンサーを開発した。我々は、次いで、RNAセンシングに対して条件付きのEGFPを発現するバイナリーAAV6ベクターを作成した。マカクFOXP2およびvGAT mRNAを標的化するこれらのAAV CellREADRベクターを使用して(
図17)、我々は、バイナリーREADR
FOXP2/レポーター
mNeonおよびREADR
FOXP2/レポーター
mNeonAAVを、マカク皮質のV1領域に注射した。READR
FOXP2感染皮質の蛍光顕微鏡法は、顆粒下錐体ニューロンにおけるmNeon、それらの尖端樹状突起、および白質における遠心性軸索が、グルタミン酸作動性錐体ニューロンを示すことを明らかにした。READR
vGAT感染皮質由来のmNeonは、皮質層全体にわたって、形態学的に多様な推定上の抑制性ニューロンに制限された。したがって、CellREADRは、in vivoで非ヒト霊長類において有効である。
【0363】
(実施例24)
慢性疼痛の細胞特異的処置
疾患および臨床背景
慢性疼痛の発生率は、世界中で、20~25%であると推定される。慢性疼痛を有するわずかな患者が、現在利用可能な薬物から完全な救済を得ており、半分超が、不完全な救済を報告している1。無傷の中枢神経系(CNS)は、疼痛の意識的知覚のために必要であるが、CNSにおける変化は、慢性疼痛状態において明らかに明白であり、進行中の末梢侵害受容インプットが慢性疼痛の維持に主要な役割を果たしている1。有害なまたは潜在的に組織に損傷を与える刺激に選択的に応答し、末梢疼痛を媒介する、皮膚、筋肉、関節および内臓の侵害受容器は、CNSにインプットする。集中点としての役割を果たすいくつかのイオンチャネル、受容体および第2のメッセンジャーシグナル伝達分子の同定と組み合わせた、侵害受容器興奮性の根底にあるメカニズムの詳細な特徴付けにもかかわらず、有害な副作用を有さない疼痛の管理のための有効な治療介入はとらえどころのないままである1。侵害受容性求心性神経の間の解剖学的、生理学的、および機能的不均一性は、それらの差次的遺伝子発現に根差しており、新しい治療剤の同定の困難さ、および前臨床データが有効な臨床介入に変換できないいくつかの顕著な失敗に寄与している1。
【0364】
感覚刺激後の侵害受容器内のシグナル伝達メカニズムの間で、活動電位の発火は、求心性神経シグナルがCNSに至る最終アウトプットである。侵害受容性活動電位は、電位依存性ナトリウムチャネルNaV1.7およびNaV1.8によって主に駆動される。ヒト遺伝学研究は、侵害受容性プロセシングにおけるNaV1.7についての重要な役割を強調した:機能獲得突然変異は、肢端紅痛症および発作性激痛症などの疼痛症候群と関連するが、機能欠失突然変異は、先天性無痛症と関連する2。したがって、侵害受容器は、慢性疼痛のための重要な治療標的を提示する。Nav1.7の下方調節のための以前のCRISPR-dCas9に基づくアプローチは、マウスにおいて、運動機能の変化なく、長期の疼痛の救済を達成した3。CellREADR技術は、副作用を低減しながら、治療有効性を達成するための、侵害受容器の特定の型内のナトリウムチャネルおよび他のシグナル伝達メカニズムのモジュレーションを可能にする。
【0365】
後根神経節の侵害受容器の標的化およびエフェクター発現
NaV1.8およびTRPV1は、侵害受容器において特異的に発現される。TRPV1およびNaV1.8のためのRNAセンサーを使用して、侵害受容器への特異的アクセスを確立する。CellREADRに基づく細胞型特異的低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を、ノックダウンアプローチにおいて使用して、侵害受容器のNaV1.7およびNaV1.8 mRNAを下方調節する。転写活性化因子tTAの翻訳がNaV1.7またはNaV1.8 RNAセンサーによってゲーティングされる、バイナリー発現ベクター(
図20)を生成し、次いで、tTAは、NaV1.7またはNaV1.8 RNAについてのshRNAの転写を活性化する。このバイナリーCellREADRベクターは、AAV9にパッケージングされる。
【0366】
腰椎穿刺を介した髄液へのくも膜下腔内注射による送達
これらのAAVベクターは、髄液へのくも膜下腔内注射によって送達されて、後根神経節のニューロンに感染する。CellREADRは、侵害受容器を定義するRNAセンサーにおいて特異的に発現される。
【0367】
予想される結果および現在の処置に対する改善
特定の種類の侵害受容器内でのNaV1.7およびNaV1.8、ならびに他のシグナル伝達メカニズムのCellREADR媒介モジュレーションは、低い副作用で治療効果を達成するのにより効果的である。
【0368】
アストロサイトおよびサテライトグリア細胞の標的化
アストロサイトは、CNSのホメオスタシスを維持するために重要である。慢性疼痛を含むいくつかの神経障害は、アストロサイト「グリオパチー」から生じ得る4。アストロサイトは、神経細胞-グリア細胞およびグリア細胞-グリア細胞の相互作用を介して侵害受容性シナプス伝達、ならびに疼痛シグナル伝達のモジュレーションおよび神経障害性疼痛の維持における脊髄性および上脊髄性アストロサイトの関与を調節することができる4。加えて、アストロサイト媒介神経炎症は、慢性疼痛の維持の根底にある重要なメカニズムである4。アストログリオパチーの原因となる特定の経路の標的化は、慢性疼痛のための治療を開発するための新規アプローチを提示する。
【0369】
複数の細胞型が、侵害受容ニューロンと相互作用し、サテライトグリア細胞、T細胞、オリゴデンドロサイトおよびミクログリアを含む、異なるシグナル伝達メカニズムを通して疼痛の病態形成に寄与する5。CellREADRを使用して、特定のグリア細胞型を標的化することによって、慢性疼痛処置のための神経-グリア相互作用がモジュレートされる。
【0370】
サテライトグリア細胞は、末梢神経系の後根神経節に局在化し、Kir4.1およびFABP7などのマーカーを発現する6。FABP7のためのRNAセンサーは、サテライトグリア細胞を標的化する。カリウムチャネルKir4.1は、病理学的疼痛状態において下方調節される6。Kir4.1の機能は、FABP7+サテライトグリア細胞に対するカリウムチャネルを発現することによって修復される。
【0371】
vGluT1は、病理学的状態の脊髄において下方調節され、グルタミン酸受容体の過剰活性化および慢性疼痛をもたらす4。アストロサイトを標的化するためのAldh1l1(アストログリア特異的マーカー)およびサテライトグリア細胞を標的化するためのFabp7のためのRNAセンサー。小胞状グルタミン酸トランスポーターvGluT1は、Aldhl1+アストロサイトに発現される。とりわけ、くも膜下腔内経路は、DRGの感覚ニューロンだけでなく、DRGのサテライトグリア細胞および脊髄のアストロサイトを標的化し得る。
【0372】
CellREADRは、くも膜下腔内送達後、DRGのサテライトグリア細胞および脊髄のアストロサイトを特異的に標識化するための有用なアプローチである。さらにまた、CellREADRに基づくアプローチは、病理学的状態のサテライトグリア細胞およびアストロサイトの機能を修復することができ、慢性疼痛の長期の救済および反転をもたらす。
参考文献
【化6】
【0373】
(実施例24)
アルツハイマー病の細胞特異的介入
疾患および臨床背景
神経炎症は、神経変性疾患の最も一般的な形態であるアルツハイマー病(AD)において観察されるように、神経変性に関与する中心的なメカニズムである、1、2。ADに対する最も強い遺伝的リスク因子であるアポリポタンパク質E4(APOE4)は、アミロイド-βプラーク、神経原線維のタウ濃縮体、および神経炎症を含む、ADの主要な病理学的特徴と相互作用することによって、疾患の発生および進行に直接影響を及ぼす、1、2。基礎条件下のCNSでは、アストロサイトは、ほとんどのapoEを産生し、脳損傷または神経変性の状況下では、APOE発現は、ミクログリアにおいて、強く上方調節される。
【0374】
脳における2つの主要な免疫細胞であるミクログリアおよびアストロサイトは、免疫警戒状態で存在し、免疫学的防御、および神経細胞の健康を促進するハウスキーピング機能を提供する。疾患状態下で、これらの免疫細胞は、代謝および免疫調節経路の調節において徐々に機能不全になり、それによって、慢性炎症誘発性神経変性を促進し、この病理学的プロセスの重要な構成要素は、ミクログリア媒介シナプスファゴサイトーシスの上昇である、1、2。
【0375】
アストロサイト由来apoE粒子は、かなり大きく、したがって、ミクログリアによって分泌されたapoEと比較して、より多くの脂質を含有する。単独でまたはC1qなどの他の分子とともにのいずれかでのアストロサイト分泌apoE4は、ミクログリア応答を活性化するための特異的ミクログリア受容体のためのオプソニンとしての役割を果たし得る。ADのP301Sタウマウスモデルでは、アストロサイトAPOE4の除去により、タウ媒介神経変性が著しく低減され、リン酸化タウ(pTau)病理、ならびにニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、およびミクログリアにおける疾患関連遺伝子シグネチャーを減少させた、3。アストロサイトAPOE4の除去は、さらに、タウ誘発性シナプス喪失およびシナプスエレメントのミクログリアファゴサイトーシスを減少させ、シナプス変性におけるアストロサイトapoEについての重要な役割を示唆する、3。
【0376】
標的細胞型
脳、特に大脳皮質のアストロサイトおよびミクログリア。マーカー遺伝子/RNAは以下を含む。
-アストロサイト:アルデヒドデヒドロゲナーゼファミリー1メンバーL1(Aldh1L1)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、興奮性アミノ酸トランスポーター1(EAAT1)
-ミクログリア:C-X3-Cモチーフケモカイン受容体1(CX3CR1)、膜貫通タンパク質119(TMEM119)、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA-1)
【0377】
標的遺伝子
脳のアストロサイトおよび/またはミクログリアにおいて下方調節を達成する、ApoE4 RNAに対するshRNA。
【0378】
図21は、readrRNAの第1のモジュールが、hSynプロモーターとそれに続くスペーサー、上記の標的RNAの1つに特異的なSES RNA、およびtTA2転写活性化因子によって駆動され、その際に、ADAR編集が、翻訳され、readrRNAの第1のモジュールの上流に位置するTREに結合し、これが、ApoE4 RNAに相補的な低分子ヘアピン型RNAの発現を駆動する、構築物を図示する。
【0379】
送達
AAVベクターは、P300タウマウスモデルにおける最初の試験のために使用され、Wang and Holtzman Neuron 2021の結果を概括する、すなわち、タウ媒介神経変性およびシナプスファゴサイトーシスの低減を実証する。
【0380】
AD患者では、前臨床段階から初期および後期段階への進行に沿って、アミロイドの沈着は、側頭底部および前頭内側領域で開始し、続いて、残りの連合新皮質、一次感覚運動野、および側頭葉内側部に、最終的に、線条体に影響を及ぼす、4、5。AAVベクターは、早期段階の患者の側頭底部および前頭内側領域に注射されて、これらの領域のアストロサイトおよびミクログリアからのApoE4産生が低減される。
【0381】
予想される結果
側頭底部および前頭内側領域のアストロサイトおよびミクログリアからのApoE4産生の低減は、神経炎症応答を弱め、ミクログリアによるタウ媒介神経変性およびシナプスファゴサイトーシスに対して保護する。同時に、これらの処置は、ADの進行を弱めるか、または防止する。
参考文献
【化7】
【化8】
【0382】
表6 (i)原理証明実験のための標的化外因性転写物、(ii)readrRNA、または(iii)エフェクター遺伝子、例えば、トランス活性化因子をコードして、(物理的に連結されていないが)応答性の遺伝子をコードするプラスミドが本明細書に記載される。
【表6】
【0383】
エフェクターとしてのUGT1A1遺伝子
【化9】
【化10】
【0384】
エフェクターとしてのVEGFAコード配列
【化11】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【表7-11】
【表7-12】
【表7-13】
【表7-14】
【表7-15】
【表7-16】
【表7-17】
【表7-18】
【表7-19】
【表7-20】
【表7-21】
【表7-22】
【配列表】
【国際調査報告】