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特表2024-541985肺高血圧症を治療するための方法および組成物
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  • 特表-肺高血圧症を治療するための方法および組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】肺高血圧症を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/19 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K31/19
A61K9/72
A61K9/14
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/32
A61P11/00
A61P9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525356
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 US2022078816
(87)【国際公開番号】W WO2023077025
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/272,467
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503208552
【氏名又は名称】マンカインド コーポレイション
【住所又は居所原語表記】1 Casper Street, Danbury CT 06810, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン、ジョン ジェイ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】グラント、マーシャル エル
(72)【発明者】
【氏名】アントゥノビッチ、ジェイソン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ベイ、ウィリアム エリオット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB27
4C076DD35
4C076DD37
4C076DD43
4C076DD51
4C076DD59
4C076DD60
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE23
4C076FF68
4C076GG05
4C076GG08
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA29
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA10
4C206ZA42
4C206ZA59
(57)【要約】
トレプロスチニル、その誘導体またはその類似体を含む肺高血圧症を治療するための吸入可能な組成物、および肺高血圧症、肺動脈性肺高血圧症および/または特発性肺線維症を治療するための方法が本明細書に開示される。医薬組成物の製造方法も開示される。医薬組成物は肺吸入用の結晶性ジケトピペラジン粉末をベースとしている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺高血圧症を治療する方法であって、治療を必要とする患者に、最大量200μgの用量のトレプロスチニルおよび1つ以上の薬学的に許容されるその塩、ならびに薬学的に許容される担体および/または添加剤を含む医薬乾燥粉末組成物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記医薬乾燥粉末組成物は、ジケトピペラジンを含む吸入可能な乾燥粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジケトピペラジンは、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トレプロスチニルの用量は、前記乾燥粉末組成物中に約10μg~約180μgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記医薬乾燥粉末組成物は、実質的に結晶形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記医薬乾燥粉末組成物は、8μg、16μg、24μg、32μg、64μg、または80μgのトレプロスチニルを含有する単一のカートリッジとして提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に、1回の投与につき1つ以上の前記医薬乾燥粉末組成物のカートリッジが投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬乾燥粉末組成物は、1日1回以上、カートリッジ当たり単回吸入で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記患者に、前記乾燥粉末製剤を1日2回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
肺動脈性肺高血圧症を治療する方法であって、治療を必要とする患者に、最大200μgのトレプロスチニルおよび(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの結晶粒子を含む吸入可能な乾燥粉末組成物を含む乾燥粉末吸入器を使用して、経口吸入により投与することを含む、方法。
【請求項11】
前記乾燥粉末は、ラクトース、マンノース、スクロース、マンニトール、トレハロース、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸亜鉛、グリシン、L-ロイシン、イソロイシン、トリロイシン、酒石酸ナトリウム、酒石酸亜鉛、メチオニン、ビタミンA、ビタミンE、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ポリビニルピロリドン、およびポリソルベート80からなる群から選択される1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤をさらに含む、請求項10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【請求項12】
前記1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンまたはイソロイシン、およびトレハロースである、請求項10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【請求項13】
前記乾燥粉末組成物は、8μg、16μg、24μg、32μg、64μg、または80μgのトレプロスチニルを含有する単一のカートリッジで提供される、請求項10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【請求項14】
前記乾燥粉末組成物は、前記乾燥粉末吸入器から1回の吸入において10秒未満で投与され、前記トレプロスチニルは約10分未満で前記患者の血液におけるTmaxに到達する、請求項10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【請求項15】
前記患者に、前記乾燥粉末製剤を1日2回投与する、請求項10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【請求項16】
吸入可能な乾燥粉末組成物の製造方法であって、
アンモニア水溶液中の(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの微結晶粒子の懸濁液を調製し、高剪断ミキサー中で混合しながら13℃~約20℃の範囲の温度で、剪断ミキサー内で酢酸溶液と合わせて、懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を水で洗浄し、凍結造粒機で前記懸濁液をペレット化し、凍結乾燥機で前記懸濁液を乾燥させて、前記ジケトピペラジンの前記微結晶粒子を回収することと、
前記ジケトピペラジンの前記微結晶粒子を脱イオン水とエタノールの溶液に再懸濁し、約70%~約100%のエタノール溶液中で疎水性化合物を調製し、前記溶液を前記懸濁液に混合しながら添加し、前記懸濁液を乾燥させることと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記疎水性化合物は、トレプロスチニル、その誘導体、またはその類似体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記再懸濁工程は、前記懸濁液中に約0.2%~約2%の固形分、または前記懸濁液中に約1%~約4%の固形分、または前記懸濁液中に固形分約1%~約10%の固形分を含有する、脱イオン水およびアルコールの溶液中のジケトピペラジンの乾燥結晶粒子を含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月27日に出願された米国仮特許出願第63/272,467号に対する優先権を主張し、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
トレプロスチニルおよびジケトピペラジンを含む吸入可能な組成物、製造方法、および肺疾患を治療するための組成物の使用方法を開示する。特に、組成物は肺動脈性肺高血圧症および特発性肺疾患を治療するためのものである。
【背景技術】
【0003】
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、右心室の後負荷の上昇を引き起こし、最終的には右心不全となる、肺動脈圧の持続的な上昇および肺血管抵抗(PVR)によって特徴づけられる、複雑で多因子性の進行性症候群である。右心室不全は、労作中の心拍出量を制限する。発症時の最も一般的な症状は、息切れ、疲労、咽喉痛、失神、および腹部膨満であり、この疾患の特徴として運動能力の低下がみられる。
【0004】
現在、疾患の症状を緩和するために錠剤、ネブライザー、注射剤、およびポンプを使用してPAHを治療する様々な方法が存在するが、PAHに苦しむ患者に薬剤を入手するための簡単かつ効果的な方法を提供することは有利であろう。したがって、患者へのこれらの製品の投与を容易にするために、PAH治療のための新しい薬剤および方法が必要とされている。
【0005】
肺組織への薬物送達は、局所疾患または局所障害を治療するためのネブライザーならびに定量吸入器および乾燥粉末吸入器等の吸入器を含む、様々な吸入装置を使用して達成されている。吸入器を介した粉末製剤の送達は、製剤化する化合物の種類と使用する吸入器の種類に応じて、ある程度簡単に行うことができる。他の一部の化合物は、例えば、吸湿性、疎水性、温度感受性、または温度耐性等の特定の特性により送達がより困難であり、安定性、不溶性、粘度、およびその他の固有の化学的特徴のため、特定の薬学的に許容される担体および/または添加剤と配合することが困難である。製剤化が困難で可溶化が困難な化合物としては、プロスタサイクリンおよびトレプロスチニルを含むプロスタサイクリン誘導体および塩が挙げられる。したがって、疾患の治療のための薬剤を製剤化するための新しい方法は、安定であり、治療上有効な活性を、好ましくは室温で維持することができ、長期間保存することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
プロスタサイクリンならびにトレプロスチニルおよびその誘導体を含むプロスタサイクリン類似体の、吸入および肺深部送達のための乾燥粉末組成物への製剤化を容易にする方法が開示される。例えば、トレプロスチニル、またはその誘導体、もしくはそれらの組み合わせを含む乾燥粉末組成物が、肺動脈性肺高血圧症および/または特発性肺線維症を含む疾患の治療に使用できることが開示される。
【0007】
一実施形態では、疎水性化合物を含む乾燥粉末組成物の製造方法は、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンを含むジケトピペラジンの結晶粒子および酢酸溶液を含む乾燥粉末組成物の懸濁液を、高剪断ミキサー中で懸濁液を混合しながら13℃~約20℃の範囲の温度で調製すること、懸濁液を水で洗浄すること、凍結造粒機で懸濁液をペレット化し、凍結乾燥機で懸濁液を乾燥させてジケトピペラジンの結晶粒子を回収することを含む。この実施形態では、方法は、ジケトピペラジンの乾燥結晶粒子を含む乾燥粉末を、懸濁液中に約0.5%~約2%の固形分、または懸濁液中に約1%~約4%の固形分、または懸濁液中に約1%~約10%の固形分、または10%超を含有するように脱イオン水およびアルコールの溶液中に再懸濁すること、希釈エタノール水溶液または無水エタノール中にトレプロスチニルを含む溶液を調製し、トレプロスチニルを含む溶液を懸濁液中のジケトピペラジンの結晶粒子と混合すること、および、懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末組成物を形成することを含む。一実施形態では、方法は、トレプロスチニルの密度に近いエタノール/水の密度を達成するために懸濁液にさらにエタノールを添加することを含み、これによりトレプロスチニルの浮力を低下させ、懸濁液中でより均一に分散させる。
【0008】
肺高血圧症の治療において組成物を使用する方法も開示される。本明細書の実施形態では、方法は、肺循環への局所的送達または全身送達のために肺に送達するための吸入用乾燥粉末を含む交換可能な単回用量カートリッジを含む乾燥粉末吸入器内にトレプロスチニル組成物を提供することを含む。乾燥粉末吸入器は、コンパクトで再利用可能または使い捨て可能な呼吸動力式の吸入器であり、さまざまな形状およびサイズを有し、粉末薬剤を肺および全身循環に効果的かつ迅速に送達するための気流導管経路のシステムを備えている。一実施形態では、トレプロスチニルまたはその塩を含む吸入用乾燥粉末組成物は、10秒未満、または5秒未満、または3秒未満で呼吸器系に提供され、トレプロスチニルは、治療を受けた対象の血液中で30分未満にピーク濃度で検出され、Tmax(トレプロスチニル最大)の中央値は約10分以下である。
【0009】
特定の実施形態では、肺動脈性肺高血圧症を治療する方法は、肺の動脈循環を利用した標的組織に送達される活性剤の迅速な送達および作用の開始のために、吸入を含む肺への薬物送達のために設計された薬物送達システムを利用する。この方法では、活性剤は、治療上効果的な方法でその標的部位に到達することができる。一実施形態では、PAHおよび/または特発性肺疾患の治療方法は、肺の肺胞の深部に活性剤を送達できる経口吸入装置を使用する本組成物によるものである。
【0010】
一実施形態では、方法は、PAHを治療し、乾燥粉末吸入器を使用した肺吸入によってトレプロスチニルを対象の肺の全身循環に送達するために、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、プロスタグランジンまたはその類似体、例えばトレプロスチニルまたはトレプロスチニルナトリウムを含む薬学的に許容されるその塩を含む血管拡張剤を含む、1つ以上の活性剤を含む安定な医薬組成物を投与することを含む。一実施形態では、方法は、安定な乾燥粉末製剤中にトレプロスチニルを含む乾燥粉末吸入器を治療が必要な患者に提供すること、および、経口吸入によって活性剤を投与することを含む。
【0011】
一実施形態では、薬物送達システムは、小分子、例えばプロスタグランジン、またはトレプロスチニルを含むその類似体、および/またはPAHを治療するためのタンパク質ベースの製品を送達するためのジケトピペラジンベースの薬物製剤を含む乾燥粉末吸入器を含む。方法は、分解および/または酵素失活に敏感な経口錠剤および皮下および静脈内注射/注入薬剤製品等の典型的な薬物送達方法に比べて利点を提供する。
【0012】
本明細書に開示されるある実施形態では、それを必要とする患者にプロスタグランジン製剤を提供する方法が開示され、この方法は、PAHの治療を受ける患者を選択することと、トレプロスチニルを含む乾燥粉末製剤を患者に投与することとを含み、トレプロスチニルは、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンを含むジケトピペラジンと合わされて、肺吸入に適した医薬製剤または医薬組成物を生成し、呼吸動力式乾燥粉末吸入器を使用して、治療セッションごとに1回以上の呼吸でトレプロスチニル製剤またはトレプロスチニル組成物を患者の肺に送達する。この実施形態および他の実施形態では、乾燥粉末製剤は、患者の必要に応じて1日複数回提供することができ、組成物は、1用量当たり乾燥粉末製剤中に約1μg~約200μgのトレプロスチニル、10μg~約100μg、約100μg~約150μg、約150μg~約300μgのトレプロスチニル、その誘導体、その類似体、またはそれらの組み合わせを含む再構成可能なカートリッジで提供される。
【0013】
ある実施形態では、乾燥粉末製剤は、カートリッジまたはカプセル中に治療用量当たり約10μg~約300μgのトレプロスチニルを含むことができる。一実施形態では、単回使用のためのカートリッジは、少なくとも1回の吸入に対して約10μg~約90μgのトレプロスチニルを含むことができる。いくつかの実施形態では、乾燥粉末製剤は、使用または用量ごとに少なくとも1回の吸入を用いて送達される。この実施形態および他の実施形態では、乾燥粉末製剤は、吸入または呼吸当たり10秒未満、または8秒未満、または6秒未満で患者に送達される。一実施形態では、医薬乾燥粉末組成物は、フマリルジケトピペラジンの微結晶粒子を含み、粒子は、約59m/g~約63m/gの範囲の比表面積を有し、約23nm~約30nmの範囲の孔径を有する。
【0014】
また、本明細書に開示されているのは肺動脈性肺高血圧症の疾患または障害を治療する方法であって、この方法は、機能分類I、IIもしくはIIIの肺動脈性肺高血圧症の治療を受ける患者、またはトレプロスチニル、エポプロステノール、ボセンタン、アンブリセンタン、マシセンタン、シルデナフィル、タダラフィル、リオシグアトなど、またはそれらの組み合わせを含む活性剤で治療可能な状態を示すPAH患者であって、通常、経口投与または注射投与によってのみ治療される、患者を選択すること、前述の療法を、疾患または障害を治療するための安定な乾燥粉末組成物であって、当該安定な乾燥粉末組成物が活性剤およびジケトピペラジンを含む、安定な乾燥粉末組成物中に活性剤を含む吸入器を患者に提供することを含む吸入療法に置き換えること、および安定した乾燥粉末組成物を肺吸入によって患者に投与することによって疾患または状態を治療することを含む。
【0015】
例示的な実施形態では、肺動脈性肺高血圧症を治療するための製剤は、用量当たり最大量200μg、例えば、1μg、5μg、10μg、15μg、20μg、30μg、60μg、90μg、100μg、120μg、150μg、180μg、または200μgの量のトレプロスチニルを含み、1用量当たり1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤が対象に投与される。この実施形態では、薬学的に許容される担体および/または添加剤は、経口吸入用に製剤化することができ、粒子、例えば、フマリルジケトピペラジンを含むジケトピペラジン、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、およびトレハロース等の糖;グリシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニンを含むアミノ酸;ポリソルベート80を含む界面活性剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛を含む一価、二価および三価の塩を含むカチオン塩;クエン酸塩および酒石酸塩等の緩衝液、または1つ以上の担体および/または添加剤等の組み合わせを形成することができる。特定の実施形態では、製剤は、トレプロスチニル、糖、アミノ酸、およびカチオン塩を含む乾燥粉末を含み、糖はマンニトールまたはトレハロースであり、アミノ酸はロイシンまたはイソロイシンである。ある実施形態では、製剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムもしくは塩化亜鉛、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0016】
例示的な実施形態では、トレプロスチニル用量は、経口吸入用の乾燥粉末吸入器を使用して、乾燥粉末吸入器からの1回以上の吸入により投与される。この実施形態では、トレプロスチニル吸入粉末用量が、肺動脈高血圧症を患い、治療を必要とする患者に提供され、乾燥粉末吸入器は、カートリッジを含む容器を備え、容器またはカートリッジは、6か月間、1日複数回投与される、トレプロスチニルおよび(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンを含む乾燥粉末を含み、トレプロスチニルは機能分類I、IIまたはIIIの患者に対して第一選択の単剤療法として疾患の経過の早い時期に経口吸入によって投与される。この実施形態および他の実施形態では、トレプロスチニル組成物は、使いやすいようにブリスターパッケージで患者に提供することができるトレプロスチニルまたはその塩を含む、8μg、16μg、32μg、64μg、80μgを含む単回用量のカプセルもしくはカートリッジ、またはそれらのカートリッジの組み合わせを含む。ある実施形態では、PAH、間質性肺疾患(ILD)、および/または肺線維症を含むがこれらに限定されない疾患を治療する方法は、治療を必要とする患者に、個々の患者に必要な用量を達成するために1つ以上のカプセルまたはカートリッジを投与することを含む。ある実施形態では、この方法は、医師の決定に従って、乾燥粉末吸入器を使用して、トレプロスチニルを含む吸入可能な乾燥粉末の所定用量を患者に1日1回以上投与することを含む。特に、治療計画は1日2回投与することができる。いくつかの実施形態では、この方法は、カートリッジ用量当たり単回吸入を使用して、カートリッジ当たり所定用量の吸入可能な乾燥粉末を投与することを含む。
【0017】
一実施形態では、肺動脈性肺高血圧症を治療するための方法が提供され、この方法は、治療を必要とする患者に、トレプロスチニルおよび薬学的に許容される担体、および/または添加剤を含む吸入可能な乾燥粉末を使用する単剤療法を提供すること、吸入可能な乾燥粉末を含む乾燥粉末吸入器および乾燥粉末容器を使用する経口吸入によって提供すること、および乾燥粉末製剤を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、トレプロスチニル製剤はフマリルジケトピペラジン粒子を含む。
【0018】
一実施形態では、肺動脈性肺高血圧症を治療するための方法が提供され、この方法は、治療を必要とする患者に、トレプロスチニルおよびフマリルジケトピペラジンを含む吸入可能な乾燥粉末を使用する併用療法を提供すること、およびプロスタサイクリン類似体、ボセントラン、アンブリセントランもしくはマシテンタンを含むエンドセリン受容体アンタゴニスト(ERA)、リオシグアト等の可溶性グアニンシクラーゼアゴニスト/刺激剤、およびシルデナフィル、バルデナフィル、もしくはタダラフィルを含むPDE-5阻害剤から選択される経口投与薬物と組み合わせて別々に投与することを含む。
【0019】
別の実施形態では、トレプロスチニルおよびフマリルジケトピペラジンを含む乾燥粉末は、経口剤との事前併用療法の一部として投与することもできる。代替の実施形態では、用量のフマリルジケトピペラジンおよびトレプロスチニル粉末を含み、トレプロスチニルの量が約1μg~約200μgである吸入可能なトレプロスチニル組成物は、PDE-5阻害剤等の経口薬剤と組み合わせて投与することができ、または、エンドセリン受容体アンタゴニストおよび/または併用療法は、重症でWHO機能分類IVに分類される患者におけるプロスタサイクリン類似体の持続的非経口注入の代わりに投与することもできる。PDE-5阻害剤を含むホスホジエステラーゼ阻害剤は、単独で、またはトレプロスチニルと組み合わせて吸入用に製剤化することもでき、単独で投与した場合には、併用療法としてそれに続いて投与することもできる。
【0020】
別の実施形態では、吸入システムは、薬剤を含む活性剤を肺管および肺に送達するための、呼吸動力式乾燥粉末吸入器、乾燥粉末を含有する容器またはカートリッジを含み、薬剤は、例えば、懸濁液中で自己集合する結晶粉末形態、非晶質粉末形態、および/または懸濁液中で自己集合しない結晶を含む微結晶粉末形態、またはそれらの組み合わせであるジケトピペラジン、ならびにトレプロスチニル、シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル、またはそれらの組み合わせを含む活性剤を含む組成物等の、肺送達のための吸入可能な薬物製剤を含むことができる。カートリッジまたはカプセルは、治療に簡単にアクセスできるようにブリスターパッケージに組み立てることができる。
【0021】
代替の実施形態では、吸入用乾燥粉末は、ジケトピペラジン以外の他の担体および/または添加剤、例えばトレハロースを含む糖、クエン酸ナトリウムを含む緩衝液、塩化ナトリウムおよび塩化亜鉛を含む塩、ならびにトレプロスチニル、バルデナフィル、およびシルデナフィルを含む1つ以上の活性剤を用いて製剤化することができる。
【0022】
本明細書の実施形態では、PAHを治療する方法は、医薬組成物を含む容器を装填するための可動部材を含む乾燥粉末吸入器を使用して、トレプロスチニルならびに薬学的に許容される担体および/または添加剤を含む乾燥粉末製剤をトレプロスチニルの最大量200μgで中等度から重度のPAHを有する患者に投与することを含み、可動部材は、吸入器が吸入操作中に吸入器を通る空気流を作り出し、容器の内容物が空気流路に入るようにし、容器内の乾燥粉末用量の60%超が1回の吸入で肺に送達されるように、容器装填構成から投与構成になるように容器を構成することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、吸入乾燥粉末での治療計画は、患者の必要性に応じて異なり、疾患の重症度に応じて1日当たり少なくとも1~4回の吸入を含む標準治療で行われる各噴霧セッションの代わりに1回の吸入とすることができる。
【0024】
一実施形態では、PAH/ILD疾患の治療を受けている患者に本組成物を提供するためのキットも開示され、これは、吸入器、様々な用量のトレプロスチニル組成物を含有するブリスター、および使用説明書を含む。一実施形態では、キットは、患者の必要性および治療要件に応じて、ある用量を含む単一のブリスタータイプまたは様々な用量内容を有するブリスターの組み合わせを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、乾燥粉末吸入器によって投与されるトレプロスチニル吸入粉末(TIP=TreT)を受ける研究において、および噴霧によって投与されるTYVASO(登録商標)を用いた標準治療による、トレプロスチニルAUC0-5(曲線下面積)と患者に投与される用量の増加との間の関係に関するデータ比較のグラフを示す。グラフからわかるように、両方のデータセットは、いずれかの方法による用量の投与がトレプロスチニルの量の増加に比例することを示している。
図2図2は、乾燥粉末吸入器によって投与されるトレプロスチニル吸入粉末(TIP=TreT)を受ける研究において、および噴霧によって投与されるTYVASO(登録商標)を用いた標準治療による、トレプロスチニルCmax(血中最大濃度)と患者に投与される用量の増加との間の関係に関するデータ比較のグラフを示す。
図3図3は、本トレプロスチニル吸入粉末(TIP)で治療された対象の6MWD試験におけるベースラインからの変化のグラフを示し、これは、治療の3週目および研究の59週間を通して、全体的に有意な改善(8メートル増加;p=0.0217)を実証している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に開示される実施形態では、乾燥粉末組成物、および経口吸入によって医薬を含む乾燥粉末を対象に送達するための容器またはカートリッジを備える乾燥粉末吸入器が記載される。一実施形態では、乾燥粉末吸入器は呼吸動力式の乾燥粉末吸入器であり、容器またはカートリッジは、薬学的に活性な物質を含む活性成分、および任意に薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を含むがこれに限定されない吸入可能な乾燥粉末を含有するように設計される。特に、乾燥粉末吸入器は肺動脈性肺高血圧症の治療用である。
【0027】
乾燥粉末吸入器は、形状およびサイズの様々な実施形態で提供され、再利用可能で、使いやすく、安価に製造でき、および/またはプラスチックもしくは他の許容可能な材料を使用して単純な工程で大量に製造することができる。乾燥粉末吸入器の様々な実施形態が本明細書で提供され、一般に、吸入システムは、吸入器、粉末が充填されたカートリッジ、および空のカートリッジを含む。本発明の吸入システムは、あらゆる種類の乾燥粉末とともに使用されるように設計することができる。一実施形態では、乾燥粉末は、最適な解凝集条件を必要とする比較的凝集性の高い粉末である。一実施形態では、吸入システムは、予め計量された用量の乾燥粉末製剤を含有する単回使用のカートリッジと組み合わせて、再利用可能な小型の呼吸動力式吸入器を提供する。この吸入器は、肺動脈性肺高血圧症の治療において、10秒未満で患者に1回の吸入で乾燥粉末用量を送達できる。特定の実施形態では、経口吸入は、粉末用量の60%超を6秒未満、4秒未満、および2秒未満で送達することができる。
【0028】
本明細書で使用される「単位用量吸入器」という用語は、乾燥粉末製剤を含む単一の筐体(enclosure)、カートリッジ、または容器を受け入れるように適合され、単一の容器から使用者に吸入によって乾燥粉末製剤の単回用量を送達する吸入器を指す。場合によっては、使用者に特定の投薬量を提供するために複数の単位用量が必要とされることは理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用される「カートリッジ」は、乾燥粉末製剤を保持または含有するように構成された筐体であり、カップまたは容器および蓋を備えた粉末含有筐体である。カートリッジは硬い材料で作られており、カップまたは容器は、蓋に対して並進運動、またはその逆の運動で移動可能である。
【0030】
本明細書で使用される「粉末塊」は、幅、直径、および長さ等の不規則な幾何学的形状を有する粉末粒子の集塊または凝集物を指す。
【0031】
本明細書で使用される「単位用量」とは、吸入のために予め計量された乾燥粉末製剤を指す。あるいは、単位用量は、計量された単回量として吸入によって送達され得る、単回用量または複数回用量の製剤を有する容器を含む単回の筐体であり得る。単位用量の筐体/カートリッジ/容器は単回用量を含有する。あるいは、それは、それぞれが単位用量を含有している、複数の個別にアクセス可能な区画を備えることができる。
【0032】
本明細書で使用される「約」という用語は、その値を決定するために使用される装置または方法において、誤差の標準偏差を含む値を示すものとして使用される。
【0033】
本明細書で使用する「微粒子」という用語は、正確な外部構造または内部構造に関係なく、約0.5~約1000μmの直径を有する粒子を指す。約0.5ミクロンと約10ミクロンとの間の直径を有する微粒子は、自然の障壁のほとんどをうまく通過して肺に到達することができる。喉の転回部分を通り抜けるためには、約10ミクロン未満の直径が必要であり、吐き出されるのを防ぐためには、約0.5μm以上の直径が必要である。最も効率的な吸収が起こると考えられる肺の深部(または肺胞領域)に到達するためには、「呼吸可能分率(respirable fraction)」(RF)に含有される粒子の割合を最大にすることが好ましく、一般的には、約0.5~約6μmの空気力学的直径を有するこれらの粒子が受け入れられるが、いくつかの文献では、例えばアンダーソンカスケードインパクター(Anderson Cascade Impactor)のような標準技術を使用して測定した、多少異なる範囲が使用されている。他のインパクターは、NEXT GENERATION IMPACTOR(登録商標)(NGI(登録商標),MSP Corporation)のような他のインパクターが、空気力学的粒子サイズを測定するために使用することができ、これらのために、同様の空気力学的サイズ、例えば6.4μm未満で呼吸可能分率が定義される。いくつかの実施形態では、粒子サイズを決定するために、例えば、米国特許第8,508732号明細書に開示されているようなレーザー回折装置が使用され、この開示は、レーザー回折に関するその関連教示のためにその全体が本明細書に組み込まれ、粒子の体積中央幾何学直径(VMGD)が、吸入システムの性能を評価するために測定される。例えば、様々な実施形態において、カートリッジの空きが、80%以上、85%以上、または90%以上であること、および放出粒子のVMGDが12.5μm未満、7.0μm未満、または4.8μm未満であることは、漸進的に良好な空力性能を示すことができる。
【0034】
充填時の呼吸可能分率(RF/fill)は、用量として使用するために充填された粉末内容物の放出時に吸入器から放出され、呼吸に適した用量中の粉末のパーセンテージ(%)、すなわち、充填された用量から、肺送達に適したサイズで放出される粒子の割合を表し、これは微粒子の空力性能の指標である。本明細書に記載されるように、40%以上のRF/fill値は、許容可能な空力性能特性を反映する。本明細書に開示されるある実施形態では、充填時の呼吸可能分率は50%より大きくてもよい。例示的な実施形態では、充填時の吸入可能分率は最大約80%であり、充填物の約80%は、標準技術を使用して測定した場合、5.8μm未満の粒子サイズで放出される。
【0035】
本明細書で使用される「乾燥粉末」という用語は、推進剤または他の液体に懸濁または溶解していない微粒子組成物を指す。これは、必ずしも全ての水分子が完全に存在しないことを意味するものではない。
【0036】
本明細書で使用される「非晶質粉末」とは、全ての非結晶性粉末を含み、明確な反復形態、形状、または構造を欠く乾燥粉末を指す。
【0037】
本開示はまた、微結晶粒子を含む改良された粉末、組成物、粒子の製造方法、および対象における疾患および障害を治療するための肺への薬物の送達の改善を可能にする治療方法を提供する。本明細書に開示される実施形態は、1つ以上の活性剤の高い薬物含有量を有する粉末を得るために、高い薬物吸着能力を有する微結晶ジケトピペラジン粒子を含む結晶性ジケトピペラジン組成物を提供することによって送達の改善を達成する。本発明の微結晶粒子を用いて製造された粉末は、より少ない量の粉末投与量で増加した薬物含有量を送達することができ、患者への薬物送達を容易にすることができる。粉末は、出発材料に応じて、界面活性剤を含まない溶液または界面活性剤を含む溶液を利用する方法を含む様々な方法によって製造することができる。
【0038】
本明細書に開示される代替の実施形態では、薬物送達システムは、多数の実質的に均一な微結晶粒子を含む吸入用乾燥粉末を含むことができ、微結晶粒子は、実質的に中空の球状構造を有することができ、懸濁液中または溶液中で自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含む多孔質であり得る殻を含むことができる。ある実施形態では、微結晶粒子は、薬物および/または提供される薬物含有量、および粉末の製造方法における他の要因に応じて、実質的に中空の球状およびジケトピペラジンの結晶を含む実質的に中実の粒子であり得る。一実施形態では、微結晶粒子は、BJH吸着により決定された、約0.43cm/g、約0.4cm/g~約0.45cm/gの範囲の平均孔容積、および約23nm~約30nm、または約23.8nm~約26.2nmの範囲の平均孔径を有する、比較的多孔性の粒子を含む。
【0039】
本明細書に開示されるある実施形態は、多数の実質的に均一な微結晶粒子を含む乾燥粉末を含み、粒子は、多孔質であり得る殻を含む実質的に球形の構造を有し、粒子は、懸濁液中または溶液中で自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含み、体積中央幾何学直径が5μm未満、または2.5μm未満であり、活性剤を含む。
【0040】
本明細書の特定の実施形態では、最大約92%の微結晶粒子が5.8μmの体積中央幾何学直径を有する。一実施形態では、粒子の殻は、表面に1つ以上の薬物を吸着したジケトピペラジン微結晶が絡み合って構築される。いくつかの実施形態では、粒子は、その内部空隙容積に薬物を捕捉することができ、および/または結晶の表面に吸着された薬物と球の内部空隙容積に捕捉された薬物との組み合わせを捕捉することができる。
【0041】
ある実施形態では、多数の実質的に均一に形成された微結晶粒子を含むジケトピペラジン組成物が提供され、粒子は実質的に中空の球状構造を有し、自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含む殻を含み、粒子は、界面活性剤の存在なしに、溶液中で約45%~65%の範囲のトランス異性体含量を有するジケトピペラジンと酢酸溶液を合わせて、最大2,000psiの高圧で高剪断ミキサー中で同時に均質化して沈殿物を形成し、懸濁液中の沈殿物を脱イオン水で洗浄し、懸濁液を濃縮し、噴霧乾燥装置内で懸濁液を乾燥させる工程を含む方法によって形成される。微結晶粒子は、後で使用することなく事前に形成することができ、または噴霧乾燥前に懸濁液中の活性剤と合わせることができる。
【0042】
この方法は、活性剤または活性成分が粒子上または粒子内に吸着および/または捕捉されるように、噴霧乾燥工程の前に、薬物もしくは生理活性剤等の活性剤または活性成分を含む溶液を、他の薬学的に許容される担体および/または添加剤と混合しながら加える工程をさらに含むことができる。この方法で作成された粒子は、噴霧乾燥前にサブミクロンのサイズ範囲であり得る。
【0043】
ある実施形態では、多数の実質的に均一に形成された微結晶粒子を含むジケトピペラジン組成物が提供され、粒子は実質的に中空の球状構造を有し、自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含む殻を含み、粒子は体積平均幾何直径が5μm以下であり、粒子は、界面活性剤の存在なしに、溶液中のジケトピペラジンと酢酸溶液を合わせて、最大2,000psiの高圧で高剪断ミキサー中で同時に均質化して沈殿物を形成し、懸濁液中の沈殿物を脱イオン水で洗浄し、懸濁液を濃縮し、噴霧乾燥装置内で懸濁液を乾燥させる工程を含む方法によって形成される。
【0044】
この方法は、活性剤または活性成分が粒子上または粒子内に吸着および/または捕捉されるように、噴霧乾燥工程の前に、薬物もしくは生理活性剤等の活性剤または活性成分を含む溶液を混合しながら加える工程をさらに含むことができる。この方法で作成された粒子は、噴霧乾燥前にサブミクロンのサイズ範囲であり得る。
【0045】
ある実施形態では、多数の実質的に均一に形成された微結晶粒子を含むジケトピペラジン組成物が提供され、微結晶粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、自己集合しないジケトピペラジンの結晶を含む殻を含み、粒子は体積平均幾何学直径が5μm以下であり、粒子は、界面活性剤の存在も活性剤の存在もなしに、溶液中のジケトピペラジンと酢酸溶液を合わせて、最大2,000psiの高圧で高せん断ミキサー中で同時に均質化して沈殿を形成し、懸濁液中の沈殿物を脱イオン水で洗浄し、懸濁液を濃縮し、噴霧乾燥装置内で懸濁液を乾燥させる工程を含む方法によって形成される。
【0046】
活性成分を含む出発物質が、高度の粘度を示す抽出物、または蜂蜜のような粘性外観を有する物質である、ある実施形態では、微結晶粒子は、上述したように、抽出物または粘性材料と合わせる前に、タンジェンシャルフロー濾過を使用して水中で洗浄することによって形成される。水中で洗浄した後、固体として、または懸濁液中、もしくは溶液中で活性成分を添加する前に、得られた粒子懸濁液を凍結乾燥して水を除去し、エタノールまたはメタノールを含むアルコール溶液に再懸濁する。一実施形態では、任意に、組成物を製造する方法は、活性成分と同時にまたは活性成分の添加に続いて、および噴霧乾燥前に、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、メチオニン等の1つ以上のアミノ酸、または1つ以上のリン脂質、例えば1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)または1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)を含む任意の追加の添加剤を添加する工程を含む。ある実施形態では、組成物の形成は、所望の活性剤を含む抽出物を任意に濾過または凍結に備えて、脂質等の不要な材料の層を分離および除去してその溶解性を高める工程を含む。
【0047】
この方法は、噴霧乾燥工程の前に、混合しながら溶液を混合物に添加する工程をさらに含むことができ、活性剤または活性成分が粒子内または粒子表面上に吸着および/または捕捉されるように、混合は高剪断ミキサー中での均質化の有無にかかわらず任意に行うことができ、溶液は薬物もしくは生理活性剤等の活性薬剤または活性成分を含む。この方法で製造された粒子は、噴霧乾燥前にサブミクロンサイズの範囲であるか、または粒子は噴霧乾燥中に溶液から形成され得る。
【0048】
本明細書のいくつかの実施形態では、薬物含有量は、FDKPを使用して結晶性粉末に付いて送達でき、約10%、または約20%、または約30%以上の含有物になるように凍結乾燥または噴霧乾燥される。FDKPまたはFDKP二ナトリウム塩から形成される、自己集合せず、サブミクロンサイズの粒子を含む微結晶粒子を使用した実施形態では、薬物含有量は、典型的には0.01%(w/w)より大きくなり得る。一実施形態では、微結晶粒子とともに送達される薬物含有量は、送達される薬物に応じて、約0.01%(w/w)~約75%(w/w)、約1%~約50%(w/w)、約10%(w/w)~約25%(w/w)、または約10%~約20%(w/w)、またはから5%~約30%、または25%超である。薬物がインスリン等のペプチドである例示的な実施形態では、本発明の微粒子は、典型的にはおおよそ10%~45%(w/w)、または約10%~約20%(w/w)のインスリンを含む。ある実施形態では、粒子の薬物含有量は、送達される薬物の形態およびサイズに応じて変化することができる。
【0049】
例示的な実施形態では、組成物は、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの微結晶粒子を含む乾燥粉末を含み、トレプロスチニルは粒子に吸着され、組成物中のトレプロスチニルの含有量は、乾燥粉末の最大約20%(w/w)、約0.5%~約10%(w/w)、または約1%~約5%の範囲を含む。一実施形態では、本明細書の組成物は、メチオニン、イソロイシンおよびロイシンを含むアミノ酸等の吸入に適した他の添加剤を含むことができる。この実施形態では、トレプロスチニル組成物は、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの微結晶粒子およびトレプロスチニルを含む約1mg~15mgの乾燥粉末組成物を含む有効用量を単回吸入で自己投与することによって、肺高血圧症の予防および治療に使用することができる。特定の実施形態では、製剤中のトレプロスチニル含有量は、約1μg~約200μgとすることができる。一実施形態では、トレプロスチニルを含むカートリッジの乾燥粉末含有量は、20μg、30μg、60μg、90μg、120μg、150μg、180μg、または200μgとすることができる。他の実施形態では、トレプロスチニルを含むカートリッジの乾燥粉末含有量は、約20μg、約30μg、約60μg、約90μg、約120μg、約150μg、約180μg、または約200μg、約20μg~約60μg、約50μg~約90μg、約60μg~約120μg、約90μg~約120μg、約100μg~約150μg、約120μg~約150μg、約120μg~約180μg、約150μg~180μg、または約180μg~200μgの間とすることができる。
【0050】
代替の実施形態では、乾燥粉末を製造するための薬学的に許容される担体は、乾燥粉末を製造するのに有用であり、肺送達に適した任意の担体または添加剤を含むことができる。薬学的に適切な担体および添加剤の例には、ラクトース、マンノース、スクロース、マンニトール、トレハロース等の単糖類および多糖類を含む糖、クエン酸塩、グリシン、L-ロイシン、イソロイシン、トリロイシン等のアミノ酸、酒石酸塩、メチオニン、ビタミンA、ビタミンE、クエン酸亜鉛、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、酒石酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、酒石酸亜鉛、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80、ジホスホチジルコリンを含むリン脂質等が含まれる。
【0051】
一実施形態では、乾燥粉末吸入システムを用いて乾燥粉末製剤を自身の肺に自己投与する方法も提供される。この方法は、閉位置にあり、マウスピースを有する乾燥粉末吸入器を入手すること、格納構造内に予め計量された用量の乾燥粉末製剤を含むカートリッジを入手すること、乾燥粉末吸入器を開いてカートリッジを取り付けること、吸入器を閉じて、カートリッジを投与位置に移動させること、マウスピースを自身の口につけること、および一度深く吸入して、乾燥粉末製剤を送達することを含む。
【0052】
さらに別の実施形態では、肥満、高血糖、インスリン抵抗性、肺高血圧症、アナフィラキシー、および/または糖尿病を治療する方法が開示される。この方法は、例えば、式(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンを有するジケトピペラジンを含む吸入可能な乾燥粉末組成物または乾燥粉末製剤の投与を含む。この実施形態では、乾燥粉末組成物はジケトピペラジン塩を含むことができる。さらに別の実施形態では、薬学的に許容される担体または添加剤の有無にかかわらず、ジケトピペラジンが、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンである乾燥粉末組成物または乾燥粉末製剤が提供される。
【0053】
乾燥粉末製剤を患者の肺に送達するための吸入システムが提供され、このシステムは、投与構成における流れに対する総抵抗が毎分0.065~約0.200(√kPa)/リットルの範囲の値を有する流路を備えるように構成された乾燥粉末吸入器を含む。使用後に廃棄することができる単回使用のための乾燥粉末製剤を含むか、または複数回使用吸入器内に交換可能な個別用量の乾燥粉末製剤を含む乾燥粉末吸入器を提供することができ、個別用量の筐体または容器は使用後に廃棄することができる。
【0054】
一実施形態では、上述した乾燥粉末吸入器と、肺動脈性肺高血圧症、嚢胞性線維症、呼吸器感染症、癌、ならびに糖尿病および肥満を含む内分泌疾患を含むその他の全身疾患を含む、気道および肺疾患等の障害または疾患を治療するための乾燥粉末製剤を含む1つ以上の薬剤カートリッジを含む乾燥粉末吸入キットが提供される。
【0055】
本明細書で開示される乾燥粉末吸入器の実施形態を用いて患者の疾患または障害を治療する方法も提供される。治療方法は、治療を必要とする患者に、上記の群から選択される活性成分、ならびに薬学的に許容される担体および/または添加剤を含む吸入可能な製剤の用量を含有するカートリッジを含む乾燥粉末吸入器を提供すること、および患者に乾燥粉末吸入器を通して約3~4秒間深く吸入させて用量を送達することを含む。この方法では、患者はその後通常の呼吸パターンを再開することができる。本明細書に開示されるすべての実施形態において、患者はその後、通常の呼吸パターンを再開することができる。
【0056】
トレプロスチニルを含む医薬組成物の製造方法が開示される。方法は、組成物中に0.25%(w/w)~約10%(w/w)、または約1%(w/w)~約5%(w/w)の量のトレプロスチニル、および(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの微結晶粒子を含む経口吸入用の乾燥粉末組成物を製造することを含む。一実施形態では、方法は、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンを含むジケトピペラジンの結晶粒子を含む乾燥粉末組成物と酢酸溶液の懸濁液を、高剪断ミキサー中で懸濁液を混合しながら13℃~約20℃の範囲の温度で調製すること、懸濁液を脱イオン水で洗浄して酢酸を除去すること、凍結造粒機で懸濁液をペレット化すること、および凍結乾燥機で懸濁液を乾燥させてジケトピペラジンの結晶粒子を回収することを含み、各工程は不連続であり得る。この実施形態では、乾燥粉末ペレットは、使用するまで室温または冷蔵で保管することができる。別の実施形態では、方法は連続的であり得る。
【0057】
一実施形態では、方法は、ジケトピペラジンの乾燥微結晶粒子を含む乾燥粉末を脱イオン水とアルコールの溶液中に再懸濁して、懸濁液中に約0.5%~約2%の固形分、または懸濁液中に約1%~約4%の固形分、または懸濁液中に約1%~約10%の固形分、または10%以上を含有させること、希釈エタノール水溶液または無水エタノール中にトレプロスチニルを含む溶液を調製すること、トレプロスチニルを含む溶液を懸濁液中のジケトピペラジンの結晶粒子と混合すること、および懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末組成物を形成することを含む。一実施形態では、方法は、トレプロスチニルの密度に近いエタノール/水の密度を達成するために、より多くのエタノールを懸濁液に添加することを含み、これにより、トレプロスチニルの浮力が低下し、懸濁液中でより均一に分散される。別の実施形態では、方法は、ジケトピペラジン粒子を含む懸濁液に乾燥粉末形態のトレプロスチニルを、粉末が溶解するまで混合しながら添加すること、および懸濁液を噴霧乾燥または凍結乾燥することを含む。一実施形態では、方法は、溶液をジケトピペラジン懸濁液に添加する前に、トレプロスチニル、その誘導体またはその類似体をエタノール溶液に溶解する工程を含む。
【0058】
別の実施形態では、肺疾患を治療するための吸入可能な乾燥粉末組成物を製造方法は、アンモニウム水溶液中に最大約30重量%、または最大40重量%のジケトピペラジンを含む溶液を調製すること、形成された溶液を濾過すること、溶液を高剪断ミキサーで濾過した酢酸水溶液と、混合しながら、合わせて、沈殿物を形成すること、脱イオン水を用いて複数工程で洗浄することにより懸濁液を濃縮すること、懸濁液中の固形分パーセントを決定すること、懸濁液を凍結乾燥または噴霧乾燥して、バルクFDKP微結晶粉末を形成することを含む。例示的な実施形態では、FDKPを含む乾燥粉末を、エタノールの有無にかかわらず精製脱イオン水に再懸濁し、懸濁液のpHを約4.5、または約5.0に調整する。例えばトレプロスチニルのような活性成分の溶液は、例えば、70%~約99.5%のエタノール、または70%~約99.5%の無水エタノールを含む溶液に活性成分を溶解することにより製造される。活性成分を含む溶液を、FDKPを含む粒子懸濁液に混合しながら添加し、続いて、溶液を噴霧乾燥装置で噴霧乾燥する。
【0059】
以下の実施例は、本明細書に記載の吸入器での使用に適した乾燥粉末を製造する方法のいくつか、および乾燥粉末を使用した実験から得られたデータを示す。
【0060】
(実施例)
(実施例1)
吸入器で使用するためのFDKP微結晶粉末を含む界面活性剤を含まない乾燥粉末の調製
例示的な実施形態では、FDKP微結晶粒子を含む、界面活性剤を含まない乾燥粉末を調製した。デュアルフィード高せん断ミキサーを使用し、約25℃±5℃に保持されたほぼ等しい質量の酢酸溶液(表1)とFDKP溶液(表2)を、0.001-inの開口部を通して2000psiで供給して、均質化によって沈殿物を形成した。沈殿物をほぼ同じ温度の脱イオン(DI)水中に集めた。懸濁液中のFDKP微結晶の重量%含有量は約2~3.5%である。懸濁液中のFDKPの濃度は、オーブン乾燥法によって固形分について分析できる。FDKP微結晶懸濁液は、脱イオン水を使用したタンジェンシャルフロー濾過によって任意に洗浄することができる。FDKP微結晶は、濾過、遠心分離、噴霧乾燥または凍結乾燥によって任意に分離することができる。乾燥粉末は冷蔵または室温で保存でき、および/または使用されて活性成分が添加される。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
上述の方法によって製造された微結晶粒子を含む乾燥粉末(A、B、CおよびD)について、表面積、水分含量および多孔度の測定を含む様々な特性について試験した。この実験では4つの異なる粉末を使用した。試験したすべての粉末は、0.4%の残留水分含量を有していた。表2aは本試験から得られたデータを示している。
【0064】
【表2a】
【0065】
表2aのデータは、試験したサンプルの微結晶粒子を含む噴霧乾燥されたバルク乾燥粉末の表面積が59m/g~63m/gの範囲であったことを示している。多孔度データは、微結晶粒子が、BJH吸着による測定において、約0.43cm/gの平均孔容積および約23.8nm~26.2nmの範囲の平均孔径を有する比較的多孔質であることを示している。多孔度測定データは、これらの粒子が、約0.36cm/gの平均孔容積および約20nm~約22.6nmの平均孔径を有することが示されている従来技術のFDKP微粒子とは異なることを示している。
【0066】
(実施例2)
トレプロスチニルを含有する微結晶FDKP粒子を含む乾燥粉末の調製
エチルアルコール中に0.2~1.0重量%のトレプロスチニルを含有する溶液を、実施例1に記載のように得られたFDKP微結晶の懸濁液に添加した。混合物を、高効率サイクロンを備えたBuchi B290噴霧乾燥装置を使用して噴霧乾燥した。窒素(60mm)をプロセスガスとして使用した。混合物を、10~12%のポンプ容量を使用し、90~100%の吸引率、および170~190℃の入口温度で乾燥した。得られた粉末中のトレプロスチニルの重量%濃度は0.5~10%であった。乾燥粉末吸入器から放出された後のこれらの粉末の送達効率は、おおよそ50%~70%の範囲であった。
【0067】
(実施例3)
健康な対象におけるトレプロスチニル-フマリルジケトピペラジン(TIP)組成物の使用
この研究は、TIPの単回投与を受ける6つのコホート(30、60、90,120、150、および180μg)に順次割り当てられた36人の健康な正常ボランティアを対象とした非盲検の単回漸増用量研究であった。トレプロスチニルを含む乾燥粉末組成物の安全性および忍容性は、単回吸入でカートリッジ用量を含む乾燥粉末吸入器システムを使用して、次のコホートのために用量を段階的に増加する前に、各連続コホートで評価された。血液サンプルは、組成物の投与前および投与後480分間を通して選択された時間に採取した。血液サンプルは、検証済みの分析方法を使用してトレプロスチニルについて分析され、PKパラメータは非コンパートメント方法を使用して計算された。
【0068】
合計36人は無作為に投与された。この研究中に重篤な有害事象、重篤な有害事象、死亡はなかった。対象の早期終了につながる有害事象はなかった。最も頻繁に報告された有害事象は咳(n=11、30.6%)および頭痛(n=8、22%)であった。生物学的分析データにより、トレプロスチニルの血漿濃度およびトレプロスチニルへの曝露が、過去のTYVASO(登録商標)単回用量臨床研究で観察されたものと同等の臨床的に適切な濃度を達成したことが確認された(表3、図1および2)。表3は、TYVASO(登録商標)とDPIを使用したTIPカートリッジの単回吸入を比較する投与の研究デザインを示している。図1は、TIPおよびTYVASO(登録商標)で治療された対象のAUC0-5および用量を示す。図2は、TIPおよびTYVASO(登録商標)について表3に記載されるように投与された様々な量のトレプロスチニルのCmax(ng/mL)を示す。図1および2のデータは、トレプロスチニルのCmaxおよびAUCが、用量の増加とともに直線的に増加したことを示している。結果を表4にも示す。
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
PK研究データは、AUC0-5が各TIP-DPIおよびTYVASO(登録商標)用量レベルについて概して同等であったことを例証している。データはまた、用量比較全体にわたって、TIP-DPIのCmax値がTYVASO(登録商標)Cmax値よりわずかに高かったことを示している。上記のデータは、TIP-DPIが単回吸入で個人にトレプロスチニルを送達するのに、セッションごとに複数回の吸入が必要なTYVASO(登録商標)の噴霧形態よりも効率的であり、DPI形態の方が1回当たりのトレプロスチニルの必要量が少なくなることを例証している。
【0072】
有害事象プロファイルは、既知のプロスタサイクリン効果およびTYVASO(登録商標)の以前の研究と一致している。AUC0-5とCmaxの両方に関する対象間のばらつきは、TYVASO(登録商標)と比較してTIP-DPIでは約2分の1であった。TIP-DPIおよびTYVASO(登録商標)のAUC0-5およびCmaxは、ほぼ用量に比例して増加し、Tmaxの中央値は、TIP-DPIでは約10分、TYVASO(登録商標)では10~15分であった。
【0073】
(実施例4)
トレプロスチニル噴霧(TYVASO(登録商標))で治療された肺動脈性肺高血圧症(PAH)の対象におけるトレプロスチニル-フマリルジケトピペラジン吸入粉末(TIP)の使用
この研究デザインは、PAH患者におけるTIPの安全性と忍容性を評価する比較研究であった。研究では、PAH患者51人(WHO機能分類I(11.8%)、II(60.8%)、およびIII(27.5%)、年齢範囲23~82歳におけるトレプロスチニルの全身曝露と薬物動態(PK)も評価した。研究では、対象は、女性43名と男性8名であった。トレプロスチニルは、噴霧(TYVASO(登録商標))、または乾燥粉末吸入器(TIP)によって送達された。TIPは、DPI(DREAMBOAT(登録商標)吸入器、マンカインド コーポレイション)を用いて、カートリッジ用量当たり単回吸入で対象に投与された。対象(51人)に32μg、48μg、および64μgのトレプロスチニルを1日2回、3週間投与し、49人の対象が治療を継続した。連続薬物動態サンプリングはベースライン時と研究開始から3週間後に採取され、治療は残りの研究期間中毎日2回続けられた。フォローアップのクリニック訪問は、研究開始後8週間ごとに行われた(以下の表5を参照)。
【0074】
【表5】
【0075】
ベースライン対象の身体的特徴は、噴霧トレプロスチニルを使用する患者の6分間歩行距離テスト(6MWD)によって評価されるように、治療期間前に測定され、また、様々な間隔でおよび研究の終了時にも測定された。図3は、研究治療の結果を示す。見てわかるように、TIP全体の6MWDテストにおけるベースラインからの変化は、治療3週目に有意な改善(8.0m増加;p=0.0217)を示している。TIP全体の6MWDの改善は、59週間治療を受けた対象で持続した。患者(95.7%)は、トレプロスチニルネブライザーと比較した場合、TIP-DPIに全体的な満足度を報告した。
【0076】
3週目および11週目に、患者には、PAHの症状および影響を評価するために、十分に検証された患者報告のアウトカムアンケートであるPAH-SYMPACTが与えられた。PAH-SYMPACTは4つのドメイン(心肺症状、心血管症状、身体的影響、認知/感情的影響)を含有し、ベースライン、研究の3週目、および11週目に与えられた。データは、TIP-DPIを受けた対象の3週目と11週目の両方で改善傾向が明らかになった。ベースラインからの平均変化は両週ともPAH-SYMPACTの全てのドメインスコアで低くなり(範囲:-0.05~-0.22)、3週目では身体的影響スコア(範囲:-1.1~1.0;p=0.0438)と認知/感情的影響(範囲:-1.3~0.5;p=0.0048)が大幅に改善された。
【0077】
研究報告書では、研究全体を通じて、TYVASO(登録商標)による標準治療と比較して、TIPで治療した患者の治療段階中の有害事象の減少も示した(表6および7を参照)。
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
全体として、TreT/トレプロスチニルは安全で忍容性が良好であり、乾燥粉末として吸入した場合、臨床的に適切な濃度のトレプロスチニルを生成した。
【0081】
前述の開示は例示的な実施形態である。本明細書に開示される装置、技術、および方法が、本開示の実施において良好に機能する代表的な実施形態を明らかにするものであることは、当業者に理解されるべきである。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態に多くの変更を加えても同様のまたは類似の結果が得られることを理解すべきである。
【0082】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量等の特性、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約(about)」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、別段の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定するものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示す数値は可能な限り正確に報告されている。ただし、どの数値にも、それぞれのテスト測定で見つかった標準偏差に必然的に起因する特定の誤差が本質的に含まれている。
【0083】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)で使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、および類似の指示対象は、本明細書で別段の定めがない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するものと解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内にあるそれぞれの個別の値を個別に参照する簡略的な方法として機能することを単に意図している。本明細書に別段の指示がない限り、それぞれの個々の値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意およびすべての実施例、または例示的な表現(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く理解することを目的としており、特許請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書のいかなる文言も、本発明の実施に必須の特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0084】
特許請求の範囲における「または(or)」という用語の使用は、代替案のみを意味することが明示的に示されている場合、または代替案が相互に排他的である場合を除き、「および/または(and/or)」を意味するために使用されるが、本開示は代替案のみ、および「および/または(and/or)」を意味する定義を支持する。
【0085】
本明細書に開示される代替要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書に記載の他の要素と任意に組み合わせて、参照されてもよく、請求項に記載されてもよい。利便性および/または特許性の理由から、グループの1以上のメンバーがグループに含まれるか、またはグループから削除される可能性があることが予想される。そのような包含または削除が行われた場合、本明細書は、変更されたグループを含むものとみなされ、こうして、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記載を満たす。
【0086】
本明細書では、発明者が知る本発明を実施するための最良のモードを含む、好ましい実施形態について説明する。もちろん、これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。発明者は、当業者がそのような変形を適宜採用することを期待しており、発明者は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用される法律によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての変更および同等のものを含む。さらに、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、あらゆる可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0087】
本明細書に開示される特定の実施形態は、からなる(consisting of)またはから本質的になる(consisting essentially of)という文言を使用して、特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲で使用される場合、出願時のものであるか、補正によって追加されたものであるかにかかわらず、移行用語「からなる(consisting of)」は、請求項で特定されていない要素、ステップ、または成分を除外する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行用語は、特許請求の範囲を特定の材料またはステップ、ならびに基本的および新規の特徴(複数可)に実質的に影響を与えないものに限定する。そのように請求項に記載された実施形態は、本質的にまたは明示的に本明細書に記載され、有効化される。
【0088】
さらに、本明細書全体を通じて、特許および印刷出版物に対して多数の参照が行われている。上記で引用した参考文献および印刷出版物のそれぞれは、その全体が参照により個別に本明細書に組み込まれる。
【0089】
さらに、本明細書に開示される実施形態は、本発明の原理を例示するものであることを理解されたい。採用され得る他の変更も本発明の範囲内である。このように、限定ではなく例として、本明細書の教示に従って代替構成を利用することができる。したがって、本発明は、図示され説明されたものに正確に限定されるものではない。
【0090】
(付記)
(付記1)
肺高血圧症を治療する方法であって、治療を必要とする患者に、最大量200μgの用量のトレプロスチニルおよび1つ以上の薬学的に許容されるその塩、ならびに薬学的に許容される担体および/または添加剤を含む医薬乾燥粉末組成物を投与することを含む、方法。
【0091】
(付記2)
前記医薬乾燥粉末組成物は、ジケトピペラジンを含む吸入可能な乾燥粉末である、付記1に記載の方法。
【0092】
(付記3)
前記ジケトピペラジンは、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンである、付記1に記載の方法。
【0093】
(付記4)
前記トレプロスチニルの用量は、前記乾燥粉末組成物中に約10μg~約180μgである、付記1に記載の方法。
【0094】
(付記5)
前記医薬乾燥粉末組成物は、実質的に結晶形態である、付記1に記載の方法。
【0095】
(付記6)
前記医薬乾燥粉末組成物は、8μg、16μg、24μg、32μg、64μg、または80μgのトレプロスチニルを含有する単一のカートリッジとして提供される、付記1に記載の方法。
【0096】
(付記7)
前記患者に、1回の投与につき1つ以上の前記医薬乾燥粉末組成物のカートリッジが投与される、付記1に記載の方法。
【0097】
(付記8)
前記医薬乾燥粉末組成物は、1日1回以上、カートリッジ当たり単回吸入で投与される、付記1に記載の方法。
【0098】
(付記9)
前記患者に、前記乾燥粉末製剤を1日2回投与する、付記1に記載の方法。
【0099】
(付記10)
肺動脈性肺高血圧症を治療する方法であって、治療を必要とする患者に、最大200μgのトレプロスチニルおよび(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの結晶粒子を含む吸入可能な乾燥粉末組成物を含む乾燥粉末吸入器を使用して、経口吸入により投与することを含む、方法。
【0100】
(付記11)
前記乾燥粉末は、ラクトース、マンノース、スクロース、マンニトール、トレハロース、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸亜鉛、グリシン、L-ロイシン、イソロイシン、トリロイシン、酒石酸ナトリウム、酒石酸亜鉛、メチオニン、ビタミンA、ビタミンE、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ポリビニルピロリドン、およびポリソルベート80からなる群から選択される1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤をさらに含む、付記10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【0101】
(付記12)
前記1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンまたはイソロイシン、およびトレハロースである、付記10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【0102】
(付記13)
前記乾燥粉末組成物は、8μg、16μg、24μg、32μg、64μg、または80μgのトレプロスチニルを含有する単一のカートリッジで提供される、付記10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【0103】
(付記14)
前記乾燥粉末組成物は、前記乾燥粉末吸入器から1回の吸入において10秒未満で投与され、前記トレプロスチニルは約10分未満で前記患者の血液におけるTmaxに到達する、付記10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【0104】
(付記15)
前記患者に、前記乾燥粉末製剤を1日2回投与する、付記10に記載の肺動脈性肺高血圧症の治療方法。
【0105】
(付記16)
吸入可能な乾燥粉末組成物の製造方法であって、
アンモニア水溶液中の(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの微結晶粒子の懸濁液を調製し、高剪断ミキサー中で混合しながら13℃~約20℃の範囲の温度で、剪断ミキサー内で酢酸溶液と合わせて、懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を水で洗浄し、凍結造粒機で前記懸濁液をペレット化し、凍結乾燥機で前記懸濁液を乾燥させて、前記ジケトピペラジンの前記微結晶粒子を回収することと、
前記ジケトピペラジンの前記微結晶粒子を脱イオン水とエタノールの溶液に再懸濁し、約70%~約100%のエタノール溶液中で疎水性化合物を調製し、前記溶液を前記懸濁液に混合しながら添加し、前記懸濁液を乾燥させることと、
を含む、方法。
【0106】
(付記17)
前記疎水性化合物は、トレプロスチニル、その誘導体、またはその類似体である、付記16に記載の方法。
【0107】
(付記18)
前記再懸濁工程は、前記懸濁液中に約0.2%~約2%の固形分、または前記懸濁液中に約1%~約4%の固形分、または前記懸濁液中に固形分約1%~約10%の固形分を含有する、脱イオン水およびアルコールの溶液中のジケトピペラジンの乾燥結晶粒子を含む、付記16に記載の方法。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺高血圧症を治療するための、最大量200μgの用量のトレプロスチニルおよび1つ以上の薬学的に許容されるその塩、ならびに薬学的に許容される担体および/または添加剤を含む医薬乾燥粉末組成物であって、前記医薬乾燥粉末組成物は、治療を必要とする患者に投与されることを特徴とする医薬乾燥粉末組成物
【請求項2】
前記医薬乾燥粉末組成物は、ジケトピペラジンを含む吸入可能な乾燥粉末である、請求項1に記載の医薬乾燥粉末組成物
【請求項3】
前記ジケトピペラジンは、(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンである、請求項1に記載の医薬乾燥粉末組成物
【請求項4】
前記トレプロスチニルの用量は、前記乾燥粉末組成物中に約10μg~約180μgである、請求項1に記載の医薬乾燥粉末組成物
【請求項5】
前記医薬乾燥粉末組成物は、実質的に結晶形態である、請求項1に記載の医薬乾燥粉末組成物
【請求項6】
前記医薬乾燥粉末組成物は、8μg、16μg、24μg、32μg、64μg、または80μgのトレプロスチニルを含有する単一のカートリッジとして提供される、請求項1に記載の医薬乾燥粉末組成物
【請求項7】
前記患者に、1回の投与につき1つ以上の前記医薬乾燥粉末組成物のカートリッジが投与される、請求項1に記載の医薬乾燥粉末組成物
【請求項8】
前記医薬乾燥粉末組成物は、1日1回以上、カートリッジ当たり単回吸入で投与される、請求項1に記載の医薬乾燥粉末組成物
【請求項9】
前記患者に、前記乾燥粉末製剤を1日2回投与する、請求項1に記載の医薬乾燥粉末組成物
【請求項10】
肺動脈性肺高血圧症を治療するための、最大200μgのトレプロスチニルおよび(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの結晶粒子を含む吸入可能な乾燥粉末組成物であって、前記吸入可能な乾燥粉末組成物は、乾燥粉末吸入器を使用して、経口吸入により治療を必要とする患者に投与されることを特徴とする吸入可能な乾燥粉末組成物
【請求項11】
前記乾燥粉末は、ラクトース、マンノース、スクロース、マンニトール、トレハロース、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸亜鉛、グリシン、L-ロイシン、イソロイシン、トリロイシン、酒石酸ナトリウム、酒石酸亜鉛、メチオニン、ビタミンA、ビタミンE、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、ポリビニルピロリドン、およびポリソルベート80からなる群から選択される1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤をさらに含む、請求項10に記載の吸入可能な乾燥粉末組成物
【請求項12】
前記1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンまたはイソロイシン、およびトレハロースである、請求項10に記載の吸入可能な乾燥粉末組成物
【請求項13】
前記乾燥粉末組成物は、8μg、16μg、24μg、32μg、64μg、または80μgのトレプロスチニルを含有する単一のカートリッジで提供される、請求項10に記載の吸入可能な乾燥粉末組成物
【請求項14】
前記乾燥粉末組成物は、前記乾燥粉末吸入器から1回の吸入において10秒未満で投与され、前記トレプロスチニルは約10分未満で前記患者の血液におけるTmaxに到達する、請求項10に記載の吸入可能な乾燥粉末組成物
【請求項15】
前記患者に、前記乾燥粉末製剤を1日2回投与する、請求項10に記載の吸入可能な乾燥粉末組成物
【請求項16】
吸入可能な乾燥粉末組成物の製造方法であって、
アンモニア水溶液中の(E)-3,6-ビス[4-(N-カルボニル-2-プロペニル)アミドブチル]-2,5-ジケトピペラジンの微結晶粒子の懸濁液を調製し、高剪断ミキサー中で混合しながら13℃~約20℃の範囲の温度で、剪断ミキサー内で酢酸溶液と合わせて、懸濁液を形成することと、
前記懸濁液を水で洗浄し、凍結造粒機で前記懸濁液をペレット化し、凍結乾燥機で前記懸濁液を乾燥させて、前記ジケトピペラジンの前記微結晶粒子を回収することと、
前記ジケトピペラジンの前記微結晶粒子を脱イオン水とエタノールの溶液に再懸濁し、約70%~約100%のエタノール溶液中で疎水性化合物を調製し、前記溶液を前記懸濁液に混合しながら添加し、前記懸濁液を乾燥させることと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記疎水性化合物は、トレプロスチニル、その誘導体、またはその類似体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記再懸濁工程は、前記懸濁液中に約0.2%~約2%の固形分、または前記懸濁液中に約1%~約4%の固形分、または前記懸濁液中に固形分約1%~約10%の固形分を含有する、脱イオン水およびアルコールの溶液中のジケトピペラジンの乾燥結晶粒子を含む、請求項16に記載の方法。
【国際調査報告】