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特表2024-541991新規アロステリック結合部位に結合するウイルスヘリカーゼ阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】新規アロステリック結合部位に結合するウイルスヘリカーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4178 20060101AFI20241106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20241106BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20241106BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20241106BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20241106BHJP
   C07D 417/12 20060101ALI20241106BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20241106BHJP
   C07D 403/06 20060101ALN20241106BHJP
   C07D 239/84 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
A61K31/4178
A61P43/00 111
A61P31/14 ZNA
A61K31/517
C07D403/04
C07D401/04
C07D403/12
A61K31/454
C07D417/12
C07D417/14
C07D403/06
C07D239/84
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525391
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022080307
(87)【国際公開番号】W WO2023073222
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21205666.7
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523209922
【氏名又は名称】アイスバッハ・バイオ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Eisbach Bio GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】メンツァー,ウィリアム エム
(72)【発明者】
【氏名】クノブロッホ,グンナー
(72)【発明者】
【氏名】ションブルク,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】リーレク,コリンナ
(72)【発明者】
【氏名】ゼンヘン,ペーター
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086BC62
4C086BC86
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC20
(57)【要約】
本出願は、ウイルスヘリカーゼ、特にコロナウイルスのNsp13ヘリカーゼを阻害する低分子化合物およびウイルス感染、特にコロナウイルスのウイルス感染を予防および治療するためのそのような化合物の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2のNsp13ヘリカーゼ(Nsp13)またはそのウイルスホモログのヘリカーゼ活性の阻害剤であって、阻害剤が、Nsp13またはそのウイルスホモログのATPアーゼドメインのN末端ローブ内のアロステリック結合ポケットに特異的に結合する、阻害剤。
【請求項2】
式(I):
【化1】
〔式中、
A1およびA3は、それぞれ独立して、NまたはCから選択され;
A2は、N、CまたはOから選択され;
Xは、HまたはOHまたはNH2であり;
L1は、C、CH、CH2、O、NおよびNHからなる群より選択され;またはL1は存在せず;
Zは、R3で置換された任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり、任意選択的にさらに置換され、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに接続され;
R1は、Hまたは-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル、NH-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキル、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で互いに独立して任意選択的に置換された5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;
R2は、Hまたは、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される、1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に接続され;
R3は、Hまたは任意の5員、6員もしくは7員の炭素-もしくは複素環であり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル、NH-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキル、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の互いに独立して置換された置換基で任意選択的に置換されている。〕
の構造を有するまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
式(I)の構造を有し、式中、
A1は、R1で置換されたNであり
A2はNであり
A3は、R2で置換されたCであり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に接続され;
Xは、HまたはOHであり;
L1は、CH=またはZに接続されたCH2であり;
Zは、5員または6員の複素環、好ましくはR3で置換されたヘテロアリールであり、任意選択的にさらに置換され、ここでR3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結され;
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル、NH-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキル、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の互いに独立して置換された置換基で任意選択的に置換されており;
R2は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される、互いに独立して1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換されており;そして
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル、NH-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキル、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で互いに独立して任意選択的に置換されている、
請求項2に記載の阻害剤。
【請求項4】
式(I)の構造を有し、式中、
A1は、R1で置換されたNであり
A2はNであり
A3は、R2で置換されたCであり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に接続され;
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、5員複素環、好ましくはR3で置換されたヘテロアリールであり、任意選択的にさらに置換され、ここでR3は、結合を介してまたは-CH2-基を介して、好ましくは-CH2-基を介してZに連結され、より好ましくはイミダゾリジン-2,4-ジオニルであり、ここでR3は、イミダゾリジン-2,4-ジオニルの3位のNで-CH2-基を介してZに連結され;
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキルからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されている、NH-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキル、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択され、好ましくは、互いに独立して、-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキル、NH-CO-アルキル、-CONH2および-CONH-アルキルからなる群より選択され;
R2は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されており;
R3は、1個、2個または3個で任意選択的に置換された、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールである。好ましくは、互いに独立して、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル、NH-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキル、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個の置換基であり、好ましくは、互いに独立して、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個の置換基である、
請求項2または3に記載の阻害剤。
【請求項5】
式中
R1は、フェニル、4-ニトロフェニル、2,6-ジクロロ-4-ブロモフェニル、4-フルオロフェニル、4-ブロモフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2,3-ジメチルフェニルまたは4-メトキシフェニルであり;
R2は、2,4-ジクロロフェニル、4-クロロフェニル、フェニル、ベンジル、3-ピリジン、2-メチルベンジル、4-フルオロベンジル、4-クロロベンジル、2-メトキシフェニルまたは3-メトキシフェニルであり;そして
R3は、4-フルオロフェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、2,4-ジフルオロフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、3-ピリジン、3-メトキシフェニル、4-ニトロフェニル、3-ニトロフェニル、4-トリフルオロメチル-フェニルまたは4-シアノフェニルである、
式(I)の構造を有する、請求項2から4のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項6】
式(II):
【化2】
〔式中、
A5およびA8は、それぞれ独立して、NまたはCHから選択され;
A6は、NまたはCHから選択されるかまたはA6が環化された炭素-もしくは複素環Zに関与する場合、A6はCであり;
A7は、NまたはCHから選択されるかまたはA7が環化された炭素-もしくは複素環Zに関与する場合、A7はCであり;
L2は、-CH2-R4、-CF2-R4、-CH2-CH2-R4、-CH2-CH2-CH2-R4、-O-R4、-NH-R4、-N=R4からなる群より選択され;
L3は、CH2-R5、-CF2-R5、-CH2-CH2-R5、-CH2-COH2-R5、-CH=CH-R5、-CH2-CF2-R5、-CH2-CH2-CH2-R5、-O-R5、-NH-R5、-N=R5からなる群より選択され;
または
L2およびL3は、それらが連結しているA8と一体になって、R4および/またはR5で置換された5員または6員の複素環を形成し;
L4は、CH2、-CF2-、CH2-CH2、CH2-CH2-CH2、O、N、NHであるかまたは存在せず;
Zは、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;
そして中心コアに環化され得るかまたは共有結合を介して連結され得て;
R4は、-Br、-Cl、-F、-I、-CF3、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環であるか、あるいはR4は、水素、メチルまたはCOOHであり;
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員、7員、8員、9員または10員の炭素-または複素環であり;
R6は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NO2、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;
またはR6は、Hであり;
または
A7は環化カルボ環またはヘテロ環Zに関与する場合、A5およびA6は、独立して、-Nまたは-CHから選択され、そしてA8は、-N、-CH、-CH2-N、-CH2-CHまたは-NH-CHから選択される
の構造を有するまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項7】
式(II)の構造を有し、式中、
A5はNであり
A6およびA7の一方がCHであり、他方がNであり;またはA6およびA7の一方がCであり、環化炭素-または複素環Zを構成し、他方がNであり;
A8はNまたはCHである、
請求項6に記載の阻害剤。
【請求項8】
式(II)の構造を有し、式中、
A5はNであり
A6およびA7の一方はCであり、環化された5員、6員または7員の炭素-または複素環、好ましくは5員または6員のアリールまたはヘテロアリールZを構成し、他方はNであり;
A8はNであり;
L2はCH2-CH2-R4であり、L3はCH2-CH2-R5またはCH2-CF2-R5であるか、あるいはL2およびL3は、それらが連結しているA8と一体になって、5員または6員の複素環、好ましくはピペリジニルまたはR4およびR5によって置換されたピロリジニルを形成し;
L4は存在せず;
Zは、任意の6員カルボ環またはヘテロ環、好ましくは中心コアに環化された6員アリールまたはヘテロアリールであり、ここでZは、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよびNO2からなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換され;
R4は、COOHまたはテトラゾリルであり;
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;
R6は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NO2、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換された、任意の5員または6員の炭素-または複素環である、
またはR6はHである、
請求項6または7に記載の阻害剤。
【請求項9】
式(II)の構造を有し、式中、
A5、A7およびA8の各々は、Nであり;
A6は、Cであり、環化された炭素-または複素環Zの一部を占め;
L2およびL3の各々は、CH2-CH2であるか;またはL2およびL3は、それらが連結しているA8と一体になって、R4およびR5によって置換されたピペリジン環またはピロリジン環を形成し;
L4は存在せず;
Zは、中心コアに環化されたフェニルまたはシクロヘキシルであり、ここでZは、-Br、-Cl、-F、-OH、Me、-CF3、-OMeおよび-NO2からなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換され、
R4は、COOHまたはテトラゾリルであり;
R5は、-Br、-CF3、Me、-CH2-CF3および-OMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されたフェニル、シクロペンチルまたはアダマンチルであり;
R6は、Br、-Cl、-F、Me、-CF3、-OMeおよび-NO2からなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換された、任意の6員炭素-または複素環(好ましくはフェニルまたはシクロヘキシル;より好ましくはフェニル)である、
請求項6から8のいずれかに記載の阻害剤。
【請求項10】
式(IV):
【化3】
〔式中、
Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含む5、6または7員複素環であり、好ましくは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含む5員複素環であり;
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;
Z1は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NH2、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択されるか;またはZ1は存在せず、
X1は、OまたはSであり;
A9は、O、NHまたはCH2であり;
A10は、O、NHまたはCH2であり;そして
R8は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環である。〕
の構造を有するまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項11】
式中、
X1は、Oであり
A9は、OまたはNHであり;そして
A10は、OまたはNHである
または
X1は、OまたはSであり
A9はNHであり;そして
A10は、NHである、
請求項10に記載の阻害剤。
【請求項12】
式(III)
【化4】
〔式中、
各A4は、互いに独立して、N、NH、CHまたはCH2、好ましくはNまたはCHから選択され
Z1は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NH2、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択されるか;またはZ1は存在せず;
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;
R8は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;好ましくは、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、シクロヘキシル、ピペリジニル、ヘキサヒドロピリダジニル、ヘキサヒドロピリミジニルまたはピペラジニルである。〕
の構造を有するまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグ、請求項10または11に記載の阻害剤。
【請求項13】
式(III)の構造を有し、式中、
各A4は、Nであり;
Z1は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NH2、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択されるか;またはZ1は存在せず、好ましくは存在せず;
R8は、シクロヘキシル、ピペリジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピリミジンまたはピペラジニルであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されており;
R7は、メチル基またはエチル基で任意選択的に置換された、5員または6員の炭素環または複素環(好ましくは、5員または6員のアリール基またはヘテロアリール基)である、
請求項12に記載の阻害剤。
【請求項14】
次のものまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグからなる群から選択される、請求項1から13のいずれかに記載の阻害剤。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【請求項15】
次のものからなる群から選択される、請求項1または6~9のいずれかに記載の阻害剤。
【表6】
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項17】
ウイルス感染症の予防または治療に使用するための、請求項1~15のいずれかに記載の阻害剤または請求項16に記載の医薬組成物であって、ウイルス感染症が、好ましくはピソニウイルス綱(Pisoniviricetes)、より好ましくはニドビル目(Nidovirales)のウイルス、より好ましくはコルニドビル亜目(コルニドウイルス)のウイルス、最も好ましくはコロナウイルス科(Coronaviridae)のウイルスによる感染症である、阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ウイルスヘリカーゼ、特にコロナウイルスのNsp13ヘリカーゼを阻害する低分子化合物およびウイルス感染を予防および治療する、特にコロナウイルスのウイルス感染を治療するためのそのような化合物の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
重症呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によるウイルスパンデミックは、過去100年で最悪の呼吸器疾患の大流行の一つであり、2019年12月に中国の武漢省で初めてウイルス感染が発生して以来、1年間で450万人以上が死亡した。このパンデミックは世界的な社会経済的影響を及ぼし、世界中の何十億もの人々の生活に影響を及ぼしている。しかし、現在までのところ、SARS-CoV-2感染によって引き起こされる疾患COVID-19の治療に対して承認された有効な治療法はない。これまでのところ、最も有望な治療法は、レムデシビル(HIV)、インジナビル(HIV)、サキナビル(HIV)、ロピナビル/リトナビル(HIV、C型肝炎)など、ウイルスの複製に不可欠なプロテアーゼやポリメラーゼを標的とする既知の抗ウイルス薬の再利用アプローチである。しかし、現在までのところ、COVID-19を対象とした承認された標的治療法はなく、現在の治療法は発熱、空咳、肺炎を含み得る症状を緩和することにのみ焦点が当てられている。従って、特に、ワクチンの有効性を疑問とする、COVID-19感染後の患者における抗体価の低下を示す現在の報告に照らして、ヒト・コロナウイルス感染症の標的治療に対する医療上のニーズは高い(Long, Q, et al. (2020) Nat. Med., https://doi.org/10.1038/s41591-020-0965-6)。
【0003】
コロナウイルスは一本鎖の正鎖RNAウイルスで、ヒトへの感染が確認されているのは229E、NL63、OC43、HKU1、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV-2の7種類である。感染の症状は、軽度の呼吸困難から致死的であり得るより重度の疾病まで幅広い。29.9kbのSARS-CoV-2ゲノムは少なくとも6個のオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、そのうち最初のORF(ORF1a/b)はゲノムの70%超を占める。このORFはウイルス複製において主要な役割を果たすことが示されている16の非構造タンパク質(nsp1-16)をコードする。スパイク、エンベロープ、膜、ヌクレオカプシドを含む4個の主要な構造タンパク質は、ゲノムの3’末端付近のORFによってコードされている。これらのタンパク質はビリオンの組み立てと細胞への侵入に重要であり、最終的にコロナウイルスの細胞感染を引き起こす。さらに、HEタンパク質のような特異的な構造タンパク質やアクセサリータンパク質もコロナウイルスゲノムにコードされている (Chen, Y. et al. (2020) J. Med. Virol., 92:418-423)。興味深いことに、SARS-CoV-2は、最初に同定された感染力は弱いが致死率の高いSARS流行性ウイルスと塩基レベルで約80%を超える同一性を共有している(L.E. Gralinski, V.D. Menachery (2020) Viruses, 12: 135)。
【0004】
驚くべきことに、コロナウイルスの構造タンパク質は、異なるコロナウイルス種間で大きなばらつきを示す一方で、主要な非構造タンパク質(NSP)、特にヘリカーゼNsp13は、より保存されていることが示されている。特にSARS-CoVとSARS-CoV-2コロナウイルス科のウイルスヘリカーゼは99%を超える配列同一性を示す(図1参照)。極めて顕著には、ウイルスヘリカーゼ、特にコロナウイルス科のウイルスヘリカーゼの間には密接な進化的関係がある(図2参照)。アロステリックポケットを構成するアミノ酸配列は、ピソニウイルス綱、特にニドウイルス目、より詳細にはコルニドウイルス亜目、最も詳細にはコロナウイルス科の間で高度に保存されており、コロナウイルス科の間では少なくとも57%の配列同一性と28%を超える類似性を示す(図3参照)。MERS-CoVならびにSARS-CoVおよびSARS-CoV2 Nsp13ヘリカーゼの構造はX線結晶構造解析によって解明されており(Hao, W. et al. (2017) PLos Pathog, 13: e1006474-e1006474 and Jia, Z. et al. (2019) Nucleic Acids Res 47: 6538-6550)(図4)、全体のRMSD値が1.15~1.6Å2の範囲で、高い構造類似性を示した。このタンパク質は、ヘリカーゼのSF1スーパーファミリーに属し、5個のドメインからなる:N末端亜鉛結合ドメイン(ZBD)、ヘリカルストークドメイン、1Bドメインおよび6個の保存された活性部位モチーフを含む2個のRecA様ドメイン1Aおよび2A。従って、SF1スーパーファミリーに属するヘリカーゼを含むウイルスの感染を本発明の化合物で処理することが特に好ましい。
【0005】
ウイルスヘリカーゼは、ATP加水分解から得られるエネルギーを使って、RNAまたはDNAの二重鎖オリゴヌクレオチドを5’から3’の方向に一本鎖にほどく触媒作用をするモータータンパク質である。この酵素活性はウイルスゲノムの複製に絶対必要であり、ウイルスmRNAの転写、翻訳、RNA-タンパク質複合体の破壊および核酸のビリオンへのパッケージングに必要であることが示されている。重要なことは、単純ヘルペスヘリカーゼについて、ウイルス複製を抑える抗ウイルス薬の標的としてのヘリカーゼの有効性が動物モデルで証明されたことである(Crute, J.J., et al. (2002) Nat Med., 8:386-391 and Kleymann G, et al. (2002) Nat Med. 2002;8:392-398)。
【0006】
しかしながら、非毒性ヘリカーゼ阻害剤の開発は、ヘリカーゼのATP結合部位は、異なるクラスのヘリカーゼだけでなく、モータータンパク質、スモールGTPアーゼ、キナーゼ、AAA+ファミリーのATPアーゼなどにも保存されているため、歴史的にはるかに困難であると考えられている(D. N. Frick and A. M. I. Lam (2006) Curr. Pharm. Des., 12(11): 1315-1338のFig 1A)。そのため、ATP競合的なメカニズムでヘリカーゼを阻害する化合物は、一般的に毒性を持つ可能性があると考えられてきた。ヘリカーゼのATP競合阻害剤の他の固有の問題は、標的細胞における、典型的に1~10mmol/Lに維持される、高いATP濃度である。ATP競合阻害剤による有効な阻害は、阻害剤の高い細胞内濃度を達成するかまたはNTPアーゼ活性部位に、ATPがNTPアーゼ活性部位に結合するより数桁低いKDで結合するかまたはNTPアーゼ活性部位に共有結合する競合的阻害剤の同定を必要とする。Mirza M.U. & Froeyen M. (J. Pharm. Anal. (2020) 10(4):320-328)は、コンピューター法により3個のSARS-CoV-2のタンパク質、すなわち、主プロテアーゼ、Nsp 12ポリメラーゼおよびNsp13ヘリカーゼの構造を解明している。彼らは、インシリコ法を使用して、可能性のある結合モードおよびATP結合部位に位置する構造上重要な結合部位残基を同定しており、ATP結合部位に結合する、潜在的薬物候補を同定している。彼らは、Nsp13ヘリカーゼについて、活性部位におけるATP結合を妨害することによりNTPアーゼを阻害できる数個の小分子を同定しており、すなわち、Mirza et al. (supra)はNsp13ヘリカーゼのATP結合部位の競合的阻害剤を同定している。
【0007】
Ugurelおよび共同研究者ら(O. M. Ugurel et al. Int. J. Biol. Macromol. (2020) 163:1687-1696)は、インシリコ法を使用して、野生型および変異SARS-CoV-2ヘリカーゼ(Nsp13)に対するFDA承認薬の効能を評価している。彼らは、最も強力な薬物はATP加水分解を担う活性部位の重要なおよび近隣の残基と相互作用することが判明したと記載している。しかしながら、Ugurel et al. (supra)は、Nsp13ヘリカーゼを阻害する能力についていずれの化合物の活性も実際には試験していない。従って、Ugurel et al.はNsp13ヘリカーゼへのATP結合の潜在的競合的阻害剤をインシリコモデリングにより同定している。
【0008】
Gurung A.B. (Gene Reports (2020) 21:100860)も、SARS-CoV-2 Nsp13ヘリカーゼおよびNsp14のインシリコ構造モデリングを実施しており、さらに、FDA承認抗ウイルス薬の、バーチャルスクリーニング(すなわち同様にインシリコ)を実施している。この目的で、Nsp13ヘリカーゼのNTPアーゼ結合ポケット(すなわち活性部位)を、高ウイルス薬のドッキングに使用した。しかしながら、GurungはNsp13ヘリカーゼを阻害する能力についていずれの化合物の活性も実際には試験していない。従って、Ugurel et al.はNsp13ヘリカーゼへのATP結合の潜在的競合的阻害剤をインシリコモデリングにより同定している。よって、当分野では、ATP結合の競合的阻害ではなく、ヘリカーゼにより特異的であり、KDに関する要求があまりない、ウイルスヘリカーゼ、特にNsp13ヘリカーゼの新規阻害剤を同定する必要がある。本発明は、ATP結合部位自体ではなく、ウイルスヘリカーゼのアロステリック制御部位への結合によりウイルスヘリカーゼの酵素活性を阻害する化合物を提供することにより、これらおよび他の課題を解決する。本発明は、ウイルスヘリカーゼ、特にピソニウイルス綱のウイルスのヘリカーゼ、より好ましくはニドウイルス目のウイルスのヘリカーゼ、さらに好ましくはコルニドウイルス亜目のウイルスのヘリカーゼ、最も好ましくはコロナウイルス科のウイルスのヘリカーゼの酵素活性を阻害する化合物に関する。コロナウイルス科の中では、SARS-CoV-2の非構造タンパク質13(Nsp13)ヘリカーゼが特に好ましい標的である。本発明の化合物は、ウイルスヘリカーゼ、好ましくはSARS-CoV-2のNsp13ヘリカーゼの新規なアロステリック結合ポケットを標的とする。このポケットは、分子動力学とそれに続く小分子のドッキングを用いて同定された。本発明はさらに、ウイルス感染症、特にピソニウイルス綱、より好ましくはニドウイルス目、さらに好ましくはコルニドウイルス亜目、最も好ましくはコロナウイルス科の感染症の予防および治療に使用するためのこのような化合物に関する。従って、本発明は、相同ヘリカーゼを含むすべてのウイルス種による感染の予防および治療に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の化合物は、特に先行技術に対して以下の利点を提供する:(i)コロナウイルス科の間で高度に保存されているだけでなく(このウイルス科内で99%を超えるアミノ酸配列同一性)、ピソニウイルス綱に属するウイルスの間でも保存されている構造タンパク質を標的とする、従って、ヒトに病原性を有する既存のコロナウイルスの変異の結果であるかまたは動物宿主からヒトに変化する新規コロナウイルスへの感染も、本発明の化合物で予防および/または治療できることが期待される、(ii)ウイルスヘリカーゼのアロステリック結合ポケットを標的とするため、オフターゲット効果は、ATP競合メカニズムを介して機能する可能性のある化合物よりもはるかに低いと予測されるおよび/または(iii)化合物は、低親和性結合剤であっても有効である。従って、これらの部位を標的とする本発明の化合物は、SF1スーパーファミリーに属するヘリカーゼを含むウイルスに対して非常に特異的に作用する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
第1の局面において、本発明は、SARS-CoV-2のNsp13ヘリカーゼまたはそのウイルスホモログのヘリカーゼ活性の阻害剤に向けられ、ここで、阻害剤は、Nsp13またはそのウイルスホモログのATPアーゼドメインのN末端ローブ内のアロステリック結合ポケットに特異的に結合する。
【0011】
第二の局面において、本発明は、式(I)~~(IV)によるNsp13ヘリカーゼのヘリカーゼ活性の阻害剤に向けられている。
【0012】
第3の局面において、本発明は、本発明の第1または第2の局面による阻害剤を含む医薬組成物に向けられている。
【0013】
第4の局面において、本発明は、治療における使用のための、本発明の第1または第2の局面による阻害剤または本発明の第3の局面の医薬組成物に向けられている。
【0014】
第5の局面において、本発明は、ウイルス感染の予防または治療における使用のための、本発明の第1または第2の局面による阻害剤または本発明の第3の局面の薬学的組成物に向けられている。
【0015】
本発明の第5の局面の好ましい実施形態において、ウイルス感染は、正鎖一本鎖(ss)RNAによる感染である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】SARS-CoVとSARS-CoV-2の非構造タンパク質間の配列相違を示す(Frick, D.N. et al (2020) Biochemistry, 59:2608-2615のFig. 1)。ウイルスヘリカーゼはNSPの中で最も保存されたタンパク質であり、アミノ酸レベルでの配列同一性は99%を超える。
【0017】
図2】パネル(A)は、ウイルスヘリカーゼと他のウイルスおよび細胞ヘリカーゼとの進化的関係を示している(Frick & Lam (2006) supraより引用)。パネル(B)は、既知の7種のヒトCoVヘリカーゼの系統樹を示す(B)。
【0018】
図3】7個のコロナウイルスのアロステリック結合ポケットを形成するヘリカーゼ、すなわち図において「229E」と称されるHCoV-229EのNsp13ヘリカーゼ(配列番号2)、図において「NL-63」と称されるHCoV-NL63のNsp13ヘリカーゼ(配列番号3)、図において「OC43」と称されるHCoV OC43のNsp13ヘリカーゼ(配列番号4)、図において「HKU1H」と称されるCoV HKU1のNsp13ヘリカーゼ(配列番号5)、MERS CoVのNsp13ヘリカーゼ(配列番号6)、SARS CoVのNsp13ヘリカーゼ(配列番号7)およびSARS CoV2のNsp13ヘリカーゼ(配列番号1)のアラインメントを示す。7個のコロナウイルスヘリカーゼのアロステリック結合ポケットはボックスで強調されている。SARS CoV2では、アロステリック結合ポケットはS236-T440にまたがっている。これらの205個のアミノ酸のうち、28個だけが結合ポケットを形成している。これらのアミノ酸はSARS-CoV2およびまた他の6個のコロナウイルスヘリカーゼで、太字で強調表示されている。結合ポケットを形成する28個のアミノ酸のうち、57.1%のアミノ酸残基が同一、17.9%が高度に類似、10.7%が類似、14.3%が異なっている。従って、本発明の化合物の相互作用に関連する領域内では、7個のコロナウイルスヘリカーゼは85.7%の相同性を有する。さらに、アラインメントの結果、コロナウイルスヘリカーゼで保存されたモチーフがいくつか同定され、それらは7個のアミノ酸配列すべてにおいて下線で強調されている。さらに、薄い灰色でハイライトされたアミノ酸は、活性部位モチーフにおいて絶対的に保存されている。
【0019】
図4】パネル(A)は、SARS-CoV2 Nsp13の構造を漫画で表したものである(PDB 6XEZ, Chen et al., 2020, Cell 182, 1-14から引用)。3個の亜鉛イオンが結合したN末端の亜鉛結合ドメイン(ZBD)(暗色の球)、ストークドメイン、1Bドメインならびに2個のRecA様ドメイン1Aおよび2Aには、それぞれラベルが付けられている。遷移状態アナログADP-AF3が結合したヌクレオチド結合クレフトを矢印で示す。パネル(B)は、RecAローブ1Aと2Aを強調し、6個の活性部位モチーフの保存残基を棒で示す。遷移状態のアナログADP-AF3(灰色)および補酵素Mg2+(黒)は球で示してある。新たに同定されたアロステリックポケットの位置は表面表現で示されており、ヌクレオチド結合部位とは重なっていない。
【0020】
図5】パネル(A)はSARS-CoV2ヘリカーゼドメインN末端ローブS236-T440(ローブ1)のスライスした表面の上面図で、エントリーチャネル(1)、左チャネル(2)および右チャネル(3)からなる三分割ポケットならびに活性部位(4)は丸で囲まれている。パネル(B)は、SARS-CoV2ヘリカーゼドメインN末端ローブS236-T440(ローブ1)のスライスした表面の底面図であり、エントリーチャネル(1)、左チャネル(2)および右チャネル(3)からなる三分割ポケットならびに活性部位(4)は丸で囲まれている。
【0021】
図6】A) 白で示す親水性領域および黒で示す疎水性領域の疎水性で着色したSARS-CoV-2ヘリカーゼドメインローブ1Aのスライスした表面の上面図。B) 白で示す親水性領域および黒で示す疎水性領域の疎水性で着色したSARS-CoV-2ヘリカーゼドメインローブ1Aのスライスした表面の底面図。
【0022】
図7】A) エントリーチャネルおよび右チャネルに接近する化合物COVI-3を伴うSARS-CoV-2ヘリカーゼドメインローブ1Aをスライスした表面の上面図()。B) エントリーチャネルおよび右チャネルに接近する化合物COVID阻害剤(COVI)3(COVI-3)を伴うSARS-CoV-2ヘリカーゼドメインローブ1Aのスライスした表面の底面図。C) エントリーチャネル、右チャネルおよび左チャネルに接近する化合物COVI-10を伴うSARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1をスライスした表面の上面図。D) エントリーチャネル、右チャネルおよび左チャネルに接近する化合物COVI-10を伴うSARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1Aをスライスした表面の底面図。E) エントリーチャネルおよび右チャネルに接近する化合物COVI-35を伴うSARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1のスライスした表面の上面図。F) エントリーチャネルおよび右チャネルに接近する化合物COVI-35を伴うSARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1Aをスライスした表面の底面図()。
【0023】
図8】パネル(A)は、化合物COVI-10の分子表面を3個の異なる角度から示したものである。領域1は極性置換基を含むが、領域2と3はほとんど無極性である。パネル(B)3個の異なる角度から見た化合物COVI-3の分子表面。領域1は極性置換基を含むが、領域2と3はほとんど無極性である。(C)化合物COVI-35の分子表面を3個の異なる角度から示す。領域1は極性置換基を含むが、領域2は非極性である。
【0024】
図9】パネル(A)は、SARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1Aの結合ポケットを構成する残基で囲まれた化合物COVI-10の表面の上面図である。パネル(B)は、SARS-CoV-2ヘリカーゼドメインローブ1の結合ポケットを構成する残基で囲まれた化合物COVI-10の表面の底面図である。パネル(C)SARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1の結合ポケットを構成する残基で囲まれた化合物COVI-3の表面の上面図。パネル(D)SARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1の結合ポケットを構成する残基で囲まれた化合物COVI-3の表面の底面図。パネル(E)SARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1の結合ポケットを構成する残基で囲まれた化合物COVI-35の表面の上面図。パネル(F)SARS-CoV2ヘリカーゼドメインローブ1の結合ポケットを構成する残基で囲まれた化合物COVI-35の表面の底面図。
【0025】
図10】パネル(A)は、N158、F143およびI169との特異的相互作用を示す化合物COVI-10の底面図。B) N158との特異的相互作用を示す化合物COVI-3の底面図。C) M429との特異的相互作用を示す化合物COVI-35の上面図。
【0026】
図11】パネル(A)は、SARS-CoV2 Nsp13ローブ1のアロステリック結合部位における化合物COVI-10のリグプロット図である。パネル(B)は、SARS-CoV2 Nsp13ローブ1のアロステリック結合部位における化合物COVI-3のリグプロット図である。パネル(C)は、SARS-CoV2 Nsp13ローブ1のアロステリック結合部位における化合物COVI-35のリグプロット図である。
【0027】
図12】FRETベースのDNA巻き戻しヘリカーゼアッセイで試験した活性型SARS-CoV-2 Nsp13阻害剤の用量反応曲線を示す。
【0028】
図13】マラカイトグリーンをベースとしたATPアーゼアッセイで試験した選択したSARS-CoV2 Nsp13阻害剤の用量反応曲線を示す。
【0029】
図14】COVI阻害剤の構造と、DNA巻き戻しおよびATPaseアッセイで決定されたそれぞれのIC50を示す表。
【0030】
図15】229Eコロナウイルスを用いた細胞感染アッセイで試験した選択したNsp13阻害剤の用量反応曲線を示す。
【0031】
図16】SARS-CoV-2ナノルシフェラーゼアッセイで試験した選択したSARS-CoV2 Nsp13阻害剤の用量反応曲線を示す。
【0032】
図17】ピラゾールコア構造を含む式(I)の化合物の一般的な合成スキーム。その後にコアに共有結合される3個の置換基は、置換基なしで示されているが、当技術分野で一般的に知られているとおり、結合時にそのような置換基を含み得るおよび/またはカップリング反応中にそのような置換基を保護し、その後に除去される保護基を含み得るまたはその後に開裂して、所望の置換基が最終的に結合される新たな反応性基を作成することができる保護基を含み得る。
【0033】
図18】キナゾリンコア構造からなる式(II)の化合物の一般的な合成スキーム。その後にコアに共有結合される2個の置換基は、置換基なしで示されているが、当技術分野で一般的に知られているとおり、結合されたときにそのような置換基を含み得るおよび/またはカップリング反応中にそのような置換基を保護し、その後に除去される保護基を含むみ得るまたはその後に開裂して、所望の置換基が最終的に結合される新たな反応性基を作成することができる保護基を含み得る。
【0034】
図19】式(III)の化合物の一般的な合成スキーム
【0035】
図20】各化合物を入手したサプライヤーのリスト。
【0036】
図21】パネル(A)エントリーチャネルおよび右チャネルに接近する化合物COVI-3を伴うSARS-CoV-2 Nsp13ヘリカーゼドメインローブ1Aのスライスした表面を示す。Mirza and Froeyen (supra)により報告された阻害剤結合部位およびGurung (supra)により報告された阻害剤結合部位を丸で囲み、結合部位間で共有される残基(D144、E145およびM148)を黒で着色する。パネル(B)はMirza and Froeyenにより報告される化合物およびGurungにより報告される化合物と直接相互作用するアミノ酸を黒、本願で報告している化合物と直接相互作用する結合部位残基を明灰色、そして共有されているものを白色で示す、SARS-CoV-2 Nsp13ヘリカーゼドメインローブ1Aのリボン表示を示す。Mirza and Froeyen (supra)により報告された阻害剤およびGurung (supra)により報告された阻害剤はNSP13の異なるポケットに結合し、故に、先行技術の阻害剤は、ウイルスヘリカーゼのアロステリック結合ポケットに結合する本願発明の化合物と異なることは明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に、それらが変わり得るために限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0038】
本明細書の本文中では、いくつかの文献を引用する。本明細書で引用した各文書(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造者の仕様書、説明書などを含む)は、上述または下述にかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明によりかかる開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるものではない。
【0039】
本発明を実施するために、特に断らない限り、化学、生化学および組換えDNA技術の従来の方法が採用され、これらは当該分野の文献に説明されている(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrookら編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989参照)。
【0040】
定義
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、「含む」という語および「含み」や「含んで」などの変形は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を排除することを意味しないと理解される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容から明確に示されない限り、複数の参照語を含む。
【0041】
以下の段落において、用語アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロシクロアルケニルおよびアルキニルの定義を提供する。これらの用語は、本明細書の残りの部分における使用の各例において、それぞれ定義された意味および好ましい意味を有する。それにもかかわらず、本明細書全体を通して使用されるいくつかの例では、これらの用語の好ましい意味が示されている。
【0042】
用語「アルキル」は、飽和直鎖または分岐炭素鎖を指す。好ましくは、鎖は1~10個、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を含み、例えばメチル、エチルプロピル(n-プロピルまたはイソ-プロピル)、ブチル(n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルである。アルキル基は任意選択的に置換されている。
【0043】
用語「ヘテロアルキル」は、飽和直鎖または分岐炭素鎖を指す。好ましくは、鎖は、1回または複数回、例えば1回、2回、3回、4回、5回、同一または異なるヘテロ原子で中断されている、1~9個、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個の炭素原子、例えばメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルを含む。好ましくは、ヘテロ原子は、O、SおよびNから選択され、例えば、-(CH2)n-X-(CH2)mCH3であり、n=0、1、2、3、4、5、6、7、8または9、m=0、1、2、3、4、5、6、7、8または9およびX=S、OまたはNR'であり、R'=Hまたは炭化水素(例えば、C1-C6アルキル)である。特に、「ヘテロアルキル」は、-O-CH3、-OC2H5、-CH2-O-CH3、-CH2-O-C2H5、-CH2-O-C3H7、-CH2-O-C4H9、-CH2-O-C5H11、-C2H4-O-CH3、-C2H4-O-C2H5、-C2H4-O-C3H7、-C2H4-O-C4H9などを指す。ヘテロアルキル基は任意選択的に置換されている。
【0044】
用語「ハロアルキル」は、1個以上の水素原子がハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素で置換された飽和直鎖または分岐炭素鎖を指す。好ましくは、鎖は1~10個、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を含む。特に、「ハロアルキル」とは、-CH2F、-CHF2、-CF3、-C2H4F、-C2H3F2、C2H2F3、-C2HF4、-C2F5、-C3H6F、-C3H5F2、-C3H4F3、-C3H3F4、-C3H2F5、-C3HF6、-C3F7、-CH2Cl、-CHCl2、-CCl3、-C2H4Cl、-C2H3Cl2、-C2H2Cl3、-C2HCl4、-C2Cl5、-C3H6Cl、-C3H5Cl2、-C3H4Cl3、-C3H3Cl4、-C3H2Cl5、-C3HCl6および-C3Cl7を指す。ハロアルキル基は任意選択的に置換されている。
【0045】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単独でまたは他の用語と組み合わせて、特に断らない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状バージョンを表し、好ましくは3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の原子が環を形成し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどである。用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」はまた、それらの二環式、三環式および多環式バージョンを含むことを意味する。二環式、三環式または多環式環が形成される場合、それぞれの環は2個の隣接する炭素原子で互いに連結されることが好ましいが、あるいは、2個の環は同じ炭素原子を介して連結されるか、すなわちスピロ環系を形成するかまたは「橋かけ」環系、好ましくはトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンを形成する。用語「ヘテロシクロアルキル」は、好ましくは、少なくとも1個のメンバーがN、OまたはS原子であり、任意選択的に1個の追加のOまたは1個の追加のNを含む5個のメンバーを有する飽和環;少なくとも1個のメンバーがN、OまたはS原子であり、任意選択的に1個の追加のOまたは1個の追加のNまたは2個の追加のN原子を含む6個のメンバーを有する飽和環;または少なくとも1個のメンバーがN、OまたはS原子であり、任意選択的に1個、2個または3個の追加のN原子を含む9個または10個のメンバーを有する飽和二環を指す。「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」基は、任意選択的に置換されている。さらに、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、ヘテロ環が分子の残りの部分に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、スピロ[3,3]ヘプチル、スピロ[3,4]オクチル、スピロ[4,3]オクチル、スピロ[3,5]ノニル、スピロ[5,3]ノニル、スピロ[3,6]デシル、スピロ[6,3]デシル、スピロ[4,5]デシル、スピロ[5,4]デシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、1,8-ジアゾ-スピロ[4,5]デシル、1,7-ジアゾ-スピロ[4,5]デシル、1,6-ジアゾ-スピロ[4,5]デシル、2,8-ジアゾ-スピロ[4,5]デシル、2,7-ジアゾ-スピロ[4,5]デシル、2,6-ジアゾ-スピロ[4,5]デシル、1,8-ジアゾ-スピロ[5,4]デシル、1,7-ジアゾ-スピロ[5,4]デシル、2,8-ジアゾ-スピロ[5,4]デシル、2,7-ジアゾ-スピロ[5,4]デシル、3,8-ジアゾ-スピロ[5,4]デシル、3,7-ジアゾ-スピロ[5,4]デシル、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクト-2-イル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられる。
【0046】
用語「アリール」は、好ましくは、6個の炭素原子を含む芳香族単環式環、10個の炭素原子を含む芳香族二環式環系または14個の炭素原子を含む芳香族三環式環系を指す。例えば、フェニル、ナフチルまたはアントラセニルである。アリール基は任意選択的に置換されている。
【0047】
用語「アラルキル」は、アリールで置換されたアルキル部分を指し、ここでアルキルおよびアリールは上記で概説した意味を有する。例としては、ベンジルラジカルが挙げられる。好ましくは、この文脈において、アルキル鎖は1~8個、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を含み、例えばメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルである。アラルキル基は、その基のアルキルおよび/またはアリール部分で任意選択的に置換されている。好ましくは、アルキルに結合したアリールは、フェニル、ナフチルまたはアントラセニルを意味する。
【0048】
用語「ヘテロアリール」は、好ましくは、炭素原子の少なくとも1個が、1個、2個、3個もしくは4個(5員環の場合)または1個、2個、3個、4個もしくは5個(6員環の場合)の、好ましくはO、NおよびSから選択される同一または異なるヘテロ原子で置換されている、5員または6員の芳香族単環式環;8員、9員、10員、11または12員の炭素原子の1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子が、好ましくはO、NおよびSから選択される同一または異なるヘテロ原子で置換されている、8員から12員の芳香族二環式環系;あるいは、13員、14員、15員または16員の炭素原子の1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子が、好ましくはO、NおよびSから選択される同一または異なるヘテロ原子で置換されている13員から16員の芳香族三環式環系を指す。例えば、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、1-ベンゾフラニル、2-ベンゾフラニル、インドイル、イソインドイル、ベンゾチオフェニル、2-ベンゾチオフェニル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、インドキサジニル、2,1-ベンゾオキサゾイル、ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、2,3-ベンゾジアジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、キノリニル、1,2,3-ベンゾトリアジニルまたは1,2,4-ベンゾトリアジニルである。ヘテロアリール基は、任意選択的に置換されていてもよい。
【0049】
用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールによって置換されているアルキル部分を指し、ここでアルキルおよびヘテロアリールは、上記で概説したような意味を有する。例としては、2-アルキルピリジニル、3-アルキルピリジニルまたは2-メチルピリジニルラジカルが挙げられる。好ましくは、この文脈において、アルキル鎖は1~8個、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を含み、例えばメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルである。ヘテロアラルキル基は、その基のアルキルおよび/またはヘテロアリール部分で任意選択的に置換されている。好ましくは、アルキルに結合したヘテロアリールは、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2、4-トリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、1-ベンゾフラニル、2-ベンゾフラニル、インドイル、イソインドイル、ベンゾチオフェニル、2-ベンゾチオフェニル、1H-インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、インドキサジニル、2,1-ベンゾオキサゾイル、ベンゾチアゾリル、1,2-ベンズイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、2,3-ベンゾジアジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、キノリニル、1,2,3-ベンゾトリアジニルまたは1,2,4-ベンゾトリアジニルの意味を有する。ヘテロアラルキル基は、その基のアルキルおよび/またはヘテロアリール部分で任意選択的に置換されていてもよい。
【0050】
「アルケニル」および「シクロアルケニル」という用語は、1個以上の二重結合を有する鎖または環を含むオレフィン系不飽和炭素原子を指す。例としては、プロペニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。好ましくは、アルケニル鎖は、2~8個、すなわち、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を含み、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソ-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソ-ブテニル、sec-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルである。好ましくは、シクロアルケニル環は3~8個、すなわち3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を含み、例えば1-シクロプロペニル、2-シクロプロペニル、1-シクロブテニル、2-シクロブテニル、1-シクロペンテニル、2-シクロペンテニル、3-シクロペンテニル、1-シクロヘキセニル、2-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニルである。「アルケニル」および「シクロアルケニル」基は、任意選択的に置換されていてもよい。
【0051】
「ヘテロアルケニル」および「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、それぞれ「ヘテロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」の不飽和バージョンを指す。従って、用語「ヘテロアルケニル」は、不飽和の直鎖または分岐炭素鎖を指す。好ましくは、鎖は、1回以上、例えば1回、2回、3回、4回、5回、同一または異なるヘテロ原子で中断されている1~9個、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個の炭素原子を含む。好ましくは、ヘテロ原子はO、SおよびNから選択される。中断ヘテロ原子の1個以上がNである場合、Nは-NR'-部分として存在してもよく、ここでR'は水素または炭化水素(例えばC1-C6アルキル)であるかまたは=N-もしくは-N=基として存在してもよく、すなわち窒素原子は隣接するC原子または隣接するさらなるN原子と二重結合を形成することができる。「ヘテロアルケニル」基は、任意選択的に置換されている。用語「ヘテロシクロアルケニル」は、好ましくは3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の原子が環を形成している「ヘテロアルケニル」の環状バージョンを表す。用語「ヘテロシクロアルケニル」は、その二環式、三環式および多環式バージョンも含むことを意味する。二環式、三環式または多環式環が形成される場合、それぞれの環は2個の隣接原子で互いに連結されていることが好ましい。これらの2個の隣接する原子は、両方とも炭素原子であることができ;または一方の原子は炭素原子であり、他方の原子はヘテロ原子であることができ;または2個の隣接する原子は両方ともヘテロ原子であることができる。しかしながら、それとは別に、2個の環が同じ炭素原子を介して連結している、すなわちスピロ環系を形成しているまたは「橋かけ」環系を形成している。用語「ヘテロシクロアルケニル」は、好ましくは、少なくとも1個のメンバーがN、OまたはS原子であり、任意選択的に1個の追加のOまたは1個の追加のNを含む、5個のメンバーを有する不飽和環;少なくとも1個のメンバーがN、OまたはS原子であり、任意選択的に1個の追加のOまたは1個の追加のNまたは2個の追加のN原子を含む、6個のメンバーを有する不飽和環;または少なくとも1個のメンバーがN、OまたはS原子であり、任意選択的に1個、2個または3個の追加のN原子を含む、9個または10個のメンバーを有する不飽和二環式環を指す。「ヘテロシクロアルケニル」基は、任意選択的に置換されている。さらに、ヘテロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルの場合、ヘテロ原子は、ヘテロ環が分子の残りの部分に結合している位置を占めることができる。
【0052】
用語「アラルケニル」は、アリールによって置換されているアルケニル部分を指し、ここでアルケニルおよびアリールは上記で概説した意味を有する。
【0053】
用語「ヘテロアラルケニル」は、ヘテロアリールによって置換されているアルケニル部分を指し、ここでアルケニルおよびヘテロアリールは、上記で概説した意味を有する。
【0054】
用語「アルキニル」は、1個以上の三重結合を有する鎖または環を含む不飽和炭素原子を指す。好ましくは、アルキニル鎖は2~8個、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を含み、例えばエチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニルである。アルキニル基は任意選択的に置換されていてもよい。
【0055】
用語「ヘテロアルキニル」、「シクロアルキニル」および「ヘテロシクロアルキニル」は、基本的にはそれぞれ上記で定義した「ヘテロアルケニル」、「シクロアルケニル」および「ヘテロシクロアルケニル」に対応するが、少なくとも1個の二重結合が三重結合で置換されている点で「ヘテロアルケニル」、「シクロアルケニル」および「ヘテロシクロアルケニル」とは異なる部位を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「脂環式系」は、上記で定義されるように、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル置換基を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「炭素環」は、単環式シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよびアリール置換基を含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「複素環」は、単環式ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニルおよびヘテロアリール置換基を含む。
【0059】
一実施形態において、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルラジカル中の炭素原子または水素原子は、O、S、Nからなる群から選択される1個以上の元素またはO、S、Nからなる群から選択される1個以上、すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個またはそれ以上の元素を含む基で、互いに独立して置換されていてもよい。
【0060】
実施形態には、アルコキシ、シクロアルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アルケニルオキシ、シクロアルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、アルケニルチオ、シクロアルケニルチオ、アルキニルチオ、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルケニルアミノ、シクロアルケニルアミノ、アルキニルアミノラジカルが含まれる。
【0061】
他の実施形態としては、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアラルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシシクロアルケニル、ヒドロキシアルキニル、メルカプトアルキル、メルカプトシクロアルキル、メルカプトアリール、メルカプトアラルキル、メルカプトアルケニル、メルカプトシクロアルケニル、メルカプトアルキニル、アミノアルキル、アミノシクロアルキル、アミノアリール、アミノアラルキル、アミノアルケニル、アミノシクロアルケニル、アミノアルキニルラジカルが挙げられる。
【0062】
別の実施形態において、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、脂環式系、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アルキニルラジカル中の1個以上の水素原子、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の水素原子は、1個以上のハロゲン原子、例えば、Cl、FまたはBrで互いに独立して置換されていてもよい。好ましいラジカルの一個は、トリフルオロメチルラジカルである。
【0063】
2個以上のラジカルが互いに独立して選択され得る場合、用語「独立して」は、ラジカルが同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0064】
「任意選択的に置換された」という用語は、各例において、さらに特定されない場合、ハロゲン(特に、F、Cl、BrまたはI)、-NO2、-CN、-OR''、-NR'R''、-COOR''、-CONR'R''、-NR'COR''、-NR''CONR'R''、-NR'SO2E、-COR'''、-SO2NR'R''、-OOCR'''、-CR'''R''''OH、-R'''OHおよび-Eを指し;
R'およびR''は、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アラルキルおよびヘテロアリールからなる群より選択されるかまたは一体となってヘテロアリール、もしくはヘテロシクロアルキルを形成し;
R'''およびR''''は、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよび-NR'R''からなる群より選択され;
Eは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヘテロシクロアルキル、脂環式系、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、任意選択的に置換されている。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「アミノ酸配列同一性」という用語は、配列同一性のパーセンテージに関するものであり、比較ウィンドウにわたって最適に整列された2個の配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウィンドウ中の配列の部分は、2個の配列の最適な整列のための参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が出現する位置の数を決定して一致した位置の数を得、一致した位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数で除算し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。
【0066】
本明細書で使用する「同一」という用語は、2個以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、同一である、すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸の同じ配列からなる2個以上の配列または部分配列を指す。以下の配列比較アルゴリズムの1個を使用してまたは手動アライメントおよび目視検査によって測定される比較ウィンドウまたは指定領域にわたって最大の対応について比較し、アライメントした場合、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の割合が同一である場合である(例えば、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性)ならば、配列は互いに「実質的に同一」である。これらの定義は、試験配列の相補体も指す。従って、「少なくとも80%の配列同一性」という用語は、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列比較に関して本明細書全体を通して使用される。この表現は、好ましくは、それぞれの参照ポリペプチドまたはそれぞれの参照ポリヌクレオチドに対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を指す。
【0067】
本明細書中で使用される「配列比較」という用語は、1個の配列が参照配列として機能し、それに対して試験配列が比較されるプロセスを指す。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列がコンピューターに入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。デフォルトのプログラムパラメータが一般的に使用されるが、代替パラメータを指定することもできる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性または類似性を計算する。2個の配列が比較され、配列同一性パーセントが計算されるべき参照配列が比較において指定されない場合、配列同一性は、特に他に指示されなければ、比較される2個の配列の長い方を参照して計算される。参照配列が示されている場合、特に他に指示されなければ、配列同一性は配列番号で示される参照配列の全長に基づいて決定される。
【0068】
配列アラインメントにおいて、「比較ウィンドウ」という用語は、配列の連続する位置のストレッチであって、同じ位置数を有する配列の連続する位置の参照ストレッチと比較されるものを指す。選択される連続位置の数は、10~1000の範囲であり得て、すなわち、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000の連続位置を含み得る。典型的には、連続する位置の数は、約20から約800の連続する位置、約20から約600の連続する位置、約50から約400の連続する位置、約50から約200の連続する位置、約100から約150の連続する位置の範囲である。
【0069】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482, 1970)、NeedlemanおよびWunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)、PearsonおよびLipmanの類似性検索法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988)、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(例えば、Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)または手動によるアライメントおよび目視検査(例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)を参照のこと)により実施され得る。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschulら(Nuc. Acids Res. 25:3389-402, 1977)およびAltschulら(J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)に記載されている。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から一般に入手可能である。このアルゴリズムでは、まず、クエリー配列中の長さWの短い単語が、データベース配列中の同じ長さの単語とアラインメントしたときに、ある正の値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たすものを同定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を同定する。Tは近傍単語スコア閾値と呼ばれる(Altschul et al., supra)。これらの最初の近傍単語ヒットは、その単語を含む長いHSPを見つけるための検索を開始するための種として働く。単語ヒットは各配列に沿って、累積アラインメントスコアが増加し得る限り両方向に拡張される。累積スコアは塩基配列の場合、パラメータM(残基がマッチした時の報酬スコア;常に0超)とN(残基がミスマッチした時のペナルティスコア;常に0未満)を使って計算される。アミノ酸配列の場合は、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向のワードヒットの拡張は、次の場合に停止される:累積アライメントスコアがその達成された最大値から量Xだけ低下する;1個以上の負のスコアの残基アライメントの蓄積により累積スコアが0以下になる;またはいずれかの配列の終端に到達する。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、Xは、アラインメントの感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W)を11、期待値(E)を10、M=5、N=-4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォルトとしてワード長3、期待値(E)10、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989参照)、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、両鎖の比較を使用する。BLASTアルゴリズムは、2個の配列間の類似性の統計的分析も行う(例えば、Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-87, 1993を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の尺度の1個は最小和確率(P(N))であり、これは2個のヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸と参照核酸の比較における最小和確率が約0.2未満、典型的には約0.01未満、より典型的には約0.001未満である場合、核酸は参照配列に類似しているとみなされる。
【0070】
半保存的および特に保存的アミノ酸置換は、アミノ酸が化学的に関連するアミノ酸で置換されることが好ましい。典型的な置換は、脂肪族アミノ酸の間、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の間、酸性残基を有するアミノ酸の間、アミド誘導体の間、塩基性残基を有するアミノ酸の間または芳香族残基を有するアミノ酸の間である。代表的な半保存的置換および保存的置換は以下の通りである。
【表1】

【0071】
「薬学的に許容される」とは、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されるかまたは動物、より詳細にはヒトでの使用について米国薬局方(United States Pharmacopeia-33/National Formulary-28 Reissue、United States Pharmacopeia Convention, Inc, Rockville Md., publication date: April 2010)または他の一般的に認識される局法に挙げられていることを意味する。
【0072】
用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の塩を指す。本発明の化合物の適切な薬学的に許容される塩としては、例えば、本明細書に記載の化合物またはその誘導体の溶液を、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸などの薬学的に許容される酸の溶液と混合することにより形成され得る酸付加塩が挙げられる。さらに、本発明の化合物が酸性部分を担持する場合、その適切な薬学的に受容可能な塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩);および適切な有機リガンド(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩のような対アニオンを使用して形成されるアンモニウム、第4級アンモニウムおよびアミンカチオン)で形成される塩が挙げられ得る。薬学的に許容される塩の例示としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、重硫酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタネプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルカプチン酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルサニル酸塩、ヘミスルフィン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/第二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、亜酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トシレート、トリエチオジド、ウンデカン酸塩、バレレートなど(例えば、Berge, S. M., et al, "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照のこと)。本発明の特定の化合物は、塩基性官能基と酸性官能基の両方を含み、化合物を塩基または酸付加塩のいずれかに変換することができる。
【0073】
化合物の中性型は、塩を塩基または酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することにより再生することができる。化合物の親形態は、極性溶媒への溶解性などの特定の物理的性質において様々な塩形態と異なるが、それ以外、塩形態は、本発明の目的において化合物の親形態と同等である。
【0074】
塩形態に加えて、本発明は一般式(I)、(II)、(III)および(IV)により定義される化合物の異性体である、化合物を提供する。用語「異性体」は、エナンチオマー、ジアステレオマー、cis-trans異性体、配座異性体および回転異性体を含む、構造異性体および立体異性体を含む。本発明の状況において、「異性体」が立体異性体である(かつ構造異性体ではない)のが好ましい。
【0075】
本発明はまた一般式(I)、(II)、(III)および(IV)により定義される化合物の溶媒和物も提供する。本発明による用語「溶媒和物」は、非共有結合により結合した別の分子(例えば極性溶媒)を有する、化合物の任意の形態を意味するとして理解される。溶媒和物の例は、水和物およびアルコラート、例えば、メタノラートおよびエタノラートを含む。溶媒和法は当分野で一般に知られる。
【0076】
本発明は、さらに、一般式(I)、(II)、(III)および(IV)により定義される化合物の化学的に保護された形態を提供する。本発明の化合物の製造の過程のどこかで、考慮される分子の何れか上の感受性または反応性気を保護、それにより、本発明の化学的に保護された形態をもたらすことが必要および/または望ましい可能性がある。これは、慣用の保護基の手段により達成され得る。保護基は、簡便なその後の段階で当分野で既知の方法を使用して、除去され得る。
【0077】
塩形態に加えて、本発明はプロドラッグ形態の化合物を提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を起こして式(I)~(IV)の化合物、特に図14に示す化合物を提供する化合物である。プロドラッグは、該プロドラッグの患者への投与後に、加水分解、代謝などの生体内生理作用により化学的に修飾され本発明の化合物となる活性化合物または不活性化合物である。さらに、プロドラッグは、生体外環境において化学的または生化学的方法により本発明の化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグは、適当な酵素と共に経皮パッチリザーバーに入れると、ゆっくりと本発明の化合物に変換される。プロドラッグの製造および使用に関与する適合性および技術は、当業者に周知である。エステルを含むプロドラッグの一般的な議論については、Svensson L.A. and Tunek A. (1988) Drug Metabolism Reviews 19(2): 165-194およびBundgaard H. "Design of Prodrugs", Elsevier Science Ltd. (1985)を参照のこと。マスクされたカルボキシレートアニオンの例としては、アルキル(例えば、メチル、エチル)、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、アラルキル(例えば、ベンジル、p-メトキシベンジル)、アルキルカルボニルオキシアルキル(例えば、ピバロイルオキシメチル)などの様々なエステルが挙げられる。アミンはアリールカルボニルオキシメチル置換誘導体としてマスクされており、これは生体内でエステラーゼによって切断され、遊離薬物とホルムアルデヒドを放出する(Bundgaard H. et al. (1989) J. Med. Chem. 32(12): 2503-2507)。また、イミダゾール、イミド、インドールなどの酸性NH基を含む薬物は、N-アシルオキシメチル基でマスクされている(Bundgaard H. "Design of Prodrugs", Elsevier Science Ltd. (1985))。ヒドロキシ基は、エステルおよびエーテルとしてマスクされている。EP 0 039 051 A2は、マンニッヒ塩基ヒドロキサム酸プロドラッグ、その調製および使用を開示している。
【0078】
特定の理論に拘束されることを願わないが、本発明者らは、活性化合物COVI-3が生体内でCOVI-86に代謝され得ると考える。次に、COVI-86がさらに生体内で代謝されて、活性化合物COVI-87となり得る。従って、COVI-86は活性化合物COVI-87のプロドラッグとみることができる。
【0079】
本発明の化合物はまた、そのような化合物を構成する原子の1個以上に不自然な割合の原子同位体を含んでもよい。例えば、化合物は、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素125(125I)または炭素14(14C)のような放射性同位体で放射性標識されていてもよい。放射性であるか否かにかかわらず、本発明の化合物の全ての同位体バリエーションは、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0080】
本明細書において、アリールの置換基に言及する場合の「パラ位」とは、アリールが化合物の主鎖に連結される位置とは反対の位置を置換基が占めることを意味する。
【0081】
本明細書で使用される場合、「患者」とは、本明細書に記載される化合物による治療から利益を得る可能性のある任意の哺乳動物または鳥類を意味する。好ましくは、「患者」は、実験動物、家畜またはチンパンジーおよびヒトを含む霊長類からなる群から選択される。「患者」がヒトであることが特に好ましい。
【0082】
本明細書において、疾患または障害の「治療」、「治療する」または「治療して」とは、以下のうちの1個以上を達成することを意味する:(a)障害の重症度を軽減すること;(b)治療される障害に特徴的な症状の発現を制限または予防すること;(c)治療される障害に特徴的な症状の悪化を抑制すること;(d)以前に障害に罹患したことがある患者において、障害の再発を制限または予防すること;および(e)以前に障害の症状であった患者において、症状の再発を制限または予防すること。
【0083】
本明細書で使用される場合、疾患または障害の「予防」、「予防する」、「予防して」または「防止」は、対象において障害が発生することを一定時間阻止することを意味する。例えば、本明細書に記載の化合物が、疾患または障害を予防する目的で対象に投与される場合、前記疾患または障害は、少なくとも投与当日、好ましくは投与当日から1日以上後(例えば、1~30日;または2~28日;または3~21日;または4~14日;または5~10日)にも発生が予防される。
【0084】
本発明による「医薬組成物」は、異なる有効成分と希釈剤および/または担体とが互いに混和された組成物の形態で存在し得るかまたは有効成分が部分的にまたは完全に異なる形態で存在する、配合製剤の形態をとり得る。このような組み合わせまたは配合製剤の例としては、キットがある。
【0085】
「有効量」とは、意図された目的を達成するのに十分な治療薬の量である。所与の治療剤の有効量は、治療剤の性質、投与経路、治療剤を投与する動物の大きさおよび種、投与の目的などの要因によって変化する。個々の場合の有効量は、当業者が当技術分野で確立された方法に従って経験的に決定することができる。
【0086】
用語「担体」は、本明細書で使用される場合、治療剤と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。このような医薬担体は、水中の生理食塩水のような滅菌液体および石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであることができる。生理食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合に好ましい担体である。水性デキストロースおよびグリセロールの生理食塩水溶液も、特に注射液用の液体担体として採用することができる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、粉末剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。組成物は、トリグリセリドなどの従来の結合剤および担体を用いて、座薬として製剤化することができる。本発明の化合物は、中性または塩の形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する遊離アミノ基で形成されたもの、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する遊離カルボキシル基で形成されたものなどが挙げられる。適切な医薬担体の例は、E. W. Martin著 "Remington's Pharmaceutical Sciences "に記載されている。このような組成物は、治療上有効な量の化合物、好ましくは精製された形態の化合物を、適切な量の担体とともに含有し、患者への適切な投与のための形態を提供する。製剤は投与様式に適したものでなければならない。
【0087】
発明の実施の形態
以下の段落では、本発明の要素について説明する。これらの要素は、特定の実施形態とともに列挙されているが、追加の実施形態を作成するために、任意の方法および任意の数で組み合わせることができることを理解されたい。様々に記載された例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に記載された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。本明細書は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示された要素および/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願における全ての記載された要素の任意の順列および組み合わせは、文脈が他のことを示さない限り、本出願の記載によって開示されたとみなされるべきである。
【0088】
本発明者らは、Nsp13内に、Nsp13のATPアーゼ活性のアロステリック制御に関与すると考えられるポケットを同定し、特徴付けた。このポケットに特異的に結合する化合物は、Nsp13のATPアーゼ活性を阻害することができる。Nsp13のATPase部位に結合してATPase活性を阻害する化合物は、ATPase部位への結合をATPと競合させなければならない。細胞のATP濃度は細胞区画にもより1~10mMの範囲であるため、Nsp13のATPアーゼ部位へのATPの結合を十分に阻害するには、ナノモル以下の非常に高い結合親和性が必要である。Mirza and Froeyen (supra)により報告された化合物およびUgurel et al. (supra)、Gurung (supra)により報告された化合物は、ATP結合部位に結合すると報告される。特に、Mirza and Froeyenは、残基 288、289、374、375、567、178、310、312、314、378および539への結合を報告し、一方Gurungはアミノ酸178、284、285、286、287、288、289、290、310、312、313、316、317、320、374、375、378、404、442、443、534、535、537、538、539、540、567および553への結合を報告する、以前報告された化合物およびATPの結合部位は、2個のループ、E144~Y150およびD171~P178によるアロステリックポケットと異なる。従って、これらのアミノ酸は、ATPの結合部位およびアロステリックポケット両方と相互作用でき、実際、D374、E375およびM378はMirza and FroeyenおよびGurungにより報告されるATP競合化合物のいくつかおよび本発明者らにより報告されるアロステリック阻害剤と相互作用と相互作用するとして報告される。Nsp13のアロステリック阻害剤は、ATPの結合を阻害する必要がなく、別のメカニズムでNsp13のATPアーゼ活性を阻害するため、このような制限はない。本発明者らは、アロステリックポケットに特異的に結合できる化合物を同定し、このポケットに適合する化合物の空間的および電子的要件を決定した。従って、「ロック」を定義することによって、本発明者らは、このロック、すなわちアロステリック結合ポケットに適合し、非共有結合または他の安定化相互作用を形成してポケットに特異的に結合することができる「キー」すなわち化合物を定義することができた。本発明者らは、この合理的設計アプローチにより、クロマチン上でのNsp13の動きを阻害できる化合物を同定した。
【0089】
リガンドとタンパク質の相互作用の構造ベースのコンピューター・モデリングは、今や現代の創薬の中核をなす要素である(Charifson and Kuntz, 1997)。HIVプロテアーゼ阻害剤(Charifson and Kuntz, 1997; Greer et al., 1994; Jorgensen, 2004)およびザナミビル(抗ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤)(von Itzstein et al, 1993)を含む増え続けている市販薬の創薬過程、HIVインテグラーゼ阻害剤(Hazuda et al., 2004; Schames et al., 2004)、C型肝炎プロテアーゼ阻害剤(Liverton et al., 2008; Thomson and Perni, 2006)およびβセクレターゼ阻害剤(BACE-1)(Stauffer et al., 2007)などの新薬候補の開発において重要な役割を有している。この分野で利用可能な物理コンピューター手法には、大きく分けて3個のクラスがある(最も高速なものから最も低速なものへ、低物理的なものから高物理的なものへ):(1)DOCK、Glide、AutoDock、FlexX、ICN、PMFおよびGOLDなどの超高速分子ドッキング法、溶媒、タンパク質およびリガンドが互いに力および熱変動を受け、これらの力に応答して段階的移動するMM/GBSAまたはMM/PBSAなどの分子動力学に基づく自由エネルギー法(MD)、(4)最も高価なコンピューター法であるが、現在実際的な最も厳密な方法での物理を含む、錬金術シミュレーションを含む絶対結合自由エネルギー(ABFE)法。ABFE法は、結合していないリガンドと、潜在的には結合していないタンパク質の構造から出発し、対象となる複合体の構造、親和性、熱的特性を予測しようとするものである。当技術分野で知られているこれらの戦略、特に実験セクションに記載されたアプローチは、本発明者らによって最初に同定されたALC1内のアロステリック結合ポケットに結合することによって、ALC1のアロステリック阻害剤である化合物を同定するために使用することができる。
【0090】
従って、第1の局面において、本発明は、SARS-CoV-2のNsp13ヘリカーゼ(Nsp13)またはそのウイルスホモログのヘリカーゼ活性の阻害剤に関し、ここで、阻害剤は、Nsp13またはそのウイルスホモログのATPアーゼドメインのN末端ローブ内のアロステリック結合ポケットに特異的に結合する。
【0091】
本発明の阻害剤の文脈で使用される「ヘリカーゼ活性の阻害剤」という用語は、正鎖RNAウイルスのクラスのウイルス、好ましくはピソニウイルス(Pisoniviricetes)綱のウイルス、より好ましくはニドビル目(Nidovirales)、さらに好ましくはコロナウイルス科(Coronaviridae)のウイルスのヘリカーゼの活性の阻害を指す。ヘリカーゼ活性を阻害する個々の化合物の能力を評価するために、ヘリカーゼ活性を、本明細書に記載される配列番号1のアミノ酸配列を有するSARSCoV2ヘリカーゼNsp13を用いるヘリカーゼ巻き戻しアッセイにおいて決定することが好ましい。このようなアッセイは、好ましくは、0.15nMのNsp13と、dsDNAの巻き戻しを検出するために一対のFRET標識で標識された100nMのdsDNAとを使用する。巻き戻し反応は、200μMのATPと1μMの非標識一本鎖DNAを加えることで開始できる。本発明の阻害剤は、IC50が100μM以下、より好ましくはIC50が50μM以下、さらに好ましくはIC50が20μM以下、最も好ましくはIC50が10μM以下でヘリカーゼ活性を阻害することが好ましい。
【0092】
配列番号1のアミノ酸配列を有するSARS-CoV-2 Nsp13の「ウイルスホモログ」という用語は、機能的ホモログであるウイルスタンパク質、すなわち本発明の実施例で使用されるようなクロマチンリモデリングアッセイにおいてヘリカーゼ活性を示すウイルスタンパク質を指す(実施例3を参照のこと)。好ましくは、この用語は、SARS-CoV-2 Nsp13の機能的および構造的ホモログであるタンパク質を指す。構造的相同性は、好ましくは、ヘリカーゼのアロステリックポケットを形成するウイルスホモログのアミノ酸内である。本発明者らは、SARS-CoV-1 Nsp13ヘリカーゼの第1ローブ(公開されたSARS-CoV-1 Nsp13 PDB: 6JYTの残基236から440、実施例1を参照)の分子動力学(MD)シミュレーションを用いて、Nsp13内のまだ同定されていないアロステリック結合ポケットを同定した。本発明のヘリカーゼ阻害剤が結合するアロステリック結合ポケットは、配列番号1のNsp13のアミノ酸236から440によって形成される。しかしながら、配列番号1のアミノ酸残基236から440にまたがるアミノ酸ストレッチ内の全てのアミノ酸が、本発明の阻害剤の結合に利用可能なNsp13のアロステリックポケットの表面を形成しているわけではない。これは、いくつかのアミノ酸がポケットに埋もれてアクセス性が悪く、他のアミノ酸はポケットの一部ですらなく、Nsp13内またはNsp13の外表面に位置しているという事実によるものである。Nsp13のこのアロステリック結合ポケットの表面領域は、以下のアミノ酸によって形成されている(配列番号1を参照):Y277、T279、L280、Q281、G282、T307、C309、F373、D374、E375、I376、S377、M378、A379、L384、N388、Y396、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、N423、V425、C426、R427およびM429。これらの残基のうち、アミノ酸Y277、L384、N388、Y396、Y398およびV425は、本発明の阻害剤が結合ポケットに入ることができるポケットへのエントリーチャネルを形成する、そしてアミノ酸T307、C309、F373、D374、E375、S377、M378、A379およびN423は左チャネルを形成し、そしてT279、L280、Q281、G282、I376、I399、G400、D401、P406、P408、C426、R427およびM429は右チャネルを形成する。従って、好ましいウイルスホモログは、類似した構造の結合ポケットを構成し、これは以下に記載するようにMDを用いて評価することができる。好ましい構造ホモログは、配列番号1のアミノ酸のY277、T279、L280、Q281、G282、T307、C309、F373、D374、E375、I376、S377、M378、A379、L384、N388、Y396、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、N423、V425、C426、R427およびM429に対応するアミノ酸位置の少なくとも50%において、同一または保存的もしくは半保存的に置換されたアミノ酸を含むものである。好ましい構造ホモログは、配列番号1のアミノ酸配列とY277、T279、L280、Q281、G282、T307、C309、F373、D374、E375、I376、S377、M378、A379、L384、N388、Y396、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、N423、V425、C426、R427およびM429に対応するアミノ酸位置の少なくとも60%、70%、80%が、同一または保存的もしくは半保存的に置換されたアミノ酸を含む。特に好ましい構造ウイルスヘリカーゼホモログは、配列番号1のアミノ酸配列を有するNsp13のAA277からM429と少なくとも60%、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%を共有する。SARS-CoV-2 Nsp13の例示的な好ましいウイルスホモログは、図3に示され、配列番号2~7として添付の配列リストに描かれている。
【0093】
「対応する位置」という用語は、本発明の文脈において、参照タンパク質と整列される、所定のタンパク質(例えば配列番号1のNsp13のヘリカーゼホモログ)のアミノ酸配列内のアミノ酸位置と、特に、参照タンパク質のアミノ酸と整列される、特に配列番号1のSARSCoV2のNsp13を指すために使用される。2個以上のアミノ酸配列のアラインメントは、いずれの場合も標準的なアラインメントパラメーターを用いて、Clustal Omega(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)またはPBLASTを含む多くの一般に利用可能なソフトウェアツールを用いて実施することができる。配列番号1のSARSCoV2のNsp13および6個の関連RNAウイルスのヘリカーゼを用いたこのようなアラインメントの例を図3に示す。当業者は、このようなアラインメントに基づいて、配列番号1のSARSCoV2のNsp13を参照して上下に具体的に示したアミノ酸の1個に対応するアミノ酸を容易に決定することができる。例えば、SARSCoV2のY277は、図3において「229E」と称されるSARSCoV(配列番号2)のI278と、図3において「NL-63」と称されるHCoV-NL63(配列番号3)のNsp13ヘリカーゼのI278と整列し、図3において「NL-63」と称されるHCoV OC43(配列番号4)において「OC43」と称されるHCoV HKU1(配列番号5)のNsp13ヘリカーゼのY276と、図において「HKU1」と称されるMERS CoV(配列番号6)のNsp13ヘリカーゼのY277とおよびSARS CoV(配列番号7)のNsp13ヘリカーゼのY277と整列する。
【0094】
従って、第1の局面のある実施形態において
(i)ATPアーゼドメインのN末端ローブは、配列番号1のアミノ酸残基236~440またはウイルスホモログの対応するアミノ酸残基からなる;
および/または
(ii)アロステリック結合ポケットが、配列番号1のY277、T279、L280、Q281、G282、T307、C309、F373、D374、E375、I376、S377、M378、A379、L384、N388、Y396、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、N423、V425、T426、R427およびM429またはNsp13のウイルスホモログの対応する位置のアミノ酸を含むまたはこれからなる。これらは、その側鎖および/または背骨が結合ポケットの表面を形成するため、本発明の阻害剤と非共有結合を形成し得るアミノ酸である。
【0095】
第1の態様のさらなる実施形態では、アロステリック結合ポケットは三分割構造であり、エントリーチャネル(1)、左チャネル(2)および右チャネル(3)を含み、Nsp13またはそのウイルスホモログの活性部位の裏側に位置する。図5から図7および図10で見ることができる。本発明のアロステリック阻害剤は、好ましくは非共有結合的に、エントリーチャネル(1)、左チャネル(2)および右チャネル(3)の1個以上の中のアミノ酸に特異的に結合し、それによってヘリカーゼのアロステリック活性化を阻害する。
【0096】
第1の態様のさらなる実施形態において、阻害剤は、配列番号1のSARSCoV2のNsp13のアロステリック結合ポケットにおける次の7アミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログの対応する位置のアミノ酸の1以上(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個または全7個)に特異的に結合する: F373、I376、L384、Y398、I399、V425およびM429。
【0097】
第1の態様のさらなる実施形態において、阻害剤は、アロステリック結合ポケット内の以下の7組のアミノ酸のうちの少なくとも1組に特異的に結合する:
(i)エントリーチャネルにおいて、配列番号1のSARSCoV2のNsp13のN381、L384、S385、V387、N388およびV425から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の主鎖および/または配列番号1のSARSCoV2のNsp13のP238、T239、Y277、N381、L384、S385、V387、N388、Y396、Y398、N423およびV425から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の側鎖の1個以上;
【0098】
(ii)右チャネルにおいて、配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280、T279、Q281、G282、T307、C309、F373、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、V425、C426およびR427から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基の主鎖またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸および/または配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280、Q281、F373、I376、I399、G400、P406、P408、N423、C426およびM429から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の側鎖の1個以上;
【0099】
(iii)左チャネルにおいて、配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT279、E375、I376、S377、M378、A379、P408およびM429から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の主鎖および/または配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT307、C309、F373、D374、I376、M378、A379、L384およびN423から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の1個以上の側鎖;
【0100】
(iv)右チャネルおよび進入チャネルにおいて、配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280、T279、Q281、G282、T307、C309、F373、N381、L384、S385、V387、N388、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、V425、C426およびR427から選択される少なくとも1個のアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の主鎖および/または配列番号1のSARSCoV2のNsp13のP238、T239、Y277、L280、Q281、F373、I376、N381、L384、S385、V387、N388、Y396、Y398、I399、G400、P406、P408、N423、V425、C426およびM429から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログの対応する位置のアミノ酸の側鎖の1個以上;
【0101】
(v)左チャネルおよびエントリーチャネルにおいて、配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT279、E375、I376、S377、M378、A379、N381、L384、S385、V387、N388、P408、V425およびM429から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の主鎖および/または配列番号1のSARSCoV2のNsp13のP238、T239、Y277、T307、C309、F373、D374、I376、M378、A379、N381、L384、S385、V387、N388、Y396、Y398、N423およびV425から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の側鎖の1個以上;
【0102】
(vi)左チャネルおよび右チャネルにおいて、配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT279、L280、Q281、G282、T307、C309、F373、E375、I376、S377、M378、A379、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、V425、C426、R427、M429から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の主鎖および/または配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280、Q281、T307、C309、F373、D374、I376、M378、A379、L384、I399、G400、P406、P408、N423、C426、M429から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の側鎖の1個以上;および/または
【0103】
(vii)左チャネル、右チャネルおよびエントリーチャネルにおいて、配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT279、L280、Q281、G282、T307、C309、F373、E375、I376、S377、M378、A379、N381、L384、S385、V387、N388、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、V425、C426、R427およびM429から選択されるアミノ酸残基またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の主鎖および配列番号1のSARSCoV2のNsp13の残基P238、T239、Y277、L280、Q281、T307、C309、F373、D374、I376、M378、A379、N381、L384、S385、V387、N388、Y396、Y398、I399、G400、P406、P408、N423、V425、C426およびM429またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の側鎖。
【0104】
第1の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、以下に特異的に結合する:
(a)上記(i)に示されるアミノ酸および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY277またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面もしくは端-面π-π相互作用を介してY277の芳香族環に結合するかまたは阻害剤は、極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基とのカチオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用によってY277に結合する;またはY277の末端酸素が水素結合供与基と相互作用する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のN388またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基または受容基を介してN388上の側鎖に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY396またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面もしくは端-面π-π相互作用を介してY396の芳香族環に結合しまたはここで、Y396は、極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を形成する);および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY398またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族炭素-または複素環置換基との対面または端から端までのπ-π相互作用を介してY398の芳香族環に結合するかまたは極性、荷電または炭素-ハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πまたはハロゲン-π相互作用を形成する)からなる群より選択されるさらに1個のアミノ酸;
【0105】
(b)上記(ii)に示されるアミノ酸および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基を有する配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY398またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y398の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のI399またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンもしくは水素結合供与基によってI399の主鎖カルボニル酸素に結合するかまたは水素結合アクセプターと相互作用するI399の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のG400またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基を有するG400の主鎖Nに結合するかまたはカルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するG400の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のD401またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するD401の主鎖カルボニル酸素に結合する);P406(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するP406の主鎖カルボニル酸素に結合する);および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のC426またはNsp13のウイルスホモログの対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲン基を有するC426のSに結合するかまたはC426のSが阻害剤の「弾頭」に共有結合を形成する)からなる群より選択されるさらに1個のアミノ酸;
【0106】
(c)上記(iii)で示されるアミノ酸および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT307またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、T307の側鎖に水素結合供与基もしくは受容基で結合するかまたは阻害剤がT307の主鎖カルボニル酸素にカルボハロゲンもしくは水素結合供与基で結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のF373またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、F373の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のC309またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンを有するC309のSに結合するかまたはC309のSが阻害剤の「弾頭」に共有結合を形成する);配列番号1またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸のうち、阻害剤が水素結合供与基または受容基でD374の側鎖に結合する;配列番号1のSARSCoV2のNsp13のE375またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンまたは水素結合供与基でE375の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のI376またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するI376の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のM378またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基でM378の主鎖Nに結合する);および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のA379またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するA379の主鎖カルボニル酸素に結合するかまたは水素結合受容基を有するA379の主鎖Nに結合する)からなる群より選択されるさらに1個のアミノ酸;
【0107】
(d)上記(iv)に示されるアミノ酸および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY277またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面もしくは端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基とのカチオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介してY277の芳香族環に結合するかまたは阻害剤が水素結合供与基でY277の末端酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基でL280の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のN388またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基または受容基でN388の側鎖に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY396またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y396の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY398またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y398の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のI399またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するI399の主鎖カルボニル酸素にまたは水素結合受容基を有するI399の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のG400またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基を有するG400の主鎖Nに結合するかまたはカルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するG400の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のD401またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するD401の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のP406またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するP406の主鎖カルボニル酸素に結合する);および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のC426またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンでC426のSに結合するかまたは426のSが阻害剤の「弾頭」に共有結合を形成する)からなる群より選択されるさらに1個のアミノ酸;
【0108】
(e)上記(v)で示されるアミノ酸およびさらに配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY277またはウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基とのカチオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y277の芳香族環に結合するかまたは阻害剤が、水素結合供与基を有するY277の末端酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のN388またはウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基または受容基でN388の側鎖に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT307またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基もしくは受容基でT307の側鎖に結合するかまたはカルボハロゲンもしくは水素結合供与基でT307の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のF373またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、F373の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のC309またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンを有するC309のSに結合するかまたはC309のSが阻害剤の「弾頭」に共有結合を形成する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のD374またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基または受容基でD374の側鎖に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のE375またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、E375の主鎖カルボニル酸素にカルボハロゲンまたは水素結合供与基で結合する);配列番号1のSARSCoV2のI376またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、I376の主鎖カルボニル酸素にカルボハロゲンまたは水素結合供与基で結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のM378またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基でM378の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のA379またはウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するA379の主鎖カルボニル酸素に結合するかまたは水素結合受容基を有するA379の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY396またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基とのカチオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y396の芳香族環に結合する);および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY398またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基とのカチオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y398の芳香族環に結合する)からなる群より選択されるさらに1個のアミノ酸;
【0109】
(f)上記(vi)に示されるアミノ酸および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基でL280の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT307またはまたはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基もしくは受容基でT307の側鎖に結合するかまたはカルボハロゲンもしくは水素結合供与基でT307の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のF373またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基とのカチオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、F373の芳香族環に結合する);C309(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンを有するC309のSに結合するかまたはC309のSは、阻害剤の「弾頭」に共有結合を形成する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のD374またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤が水素結合供与基または受容基でD374の側鎖に結合する);E375(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンまたは水素結合供与基でE375の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のI376またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するI376の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のM378またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基でM378の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のA379またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するA379の主鎖カルボニル酸素に結合するかまたは水素結合受容基を有するA379の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY398またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y398の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のI399またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するI399の主鎖カルボニル酸素にまたは水素結合受容基を有するI399の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のG400またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基を有するG400の主鎖Nに結合するかまたはカルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するG400の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のD401またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するD401の主鎖カルボニル酸素に結合する);P406(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するP406の主鎖カルボニル酸素に結合する);および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のC426またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンでC426のSに結合するかまたは426のSが阻害剤の「弾頭」に共有結合を形成する)からなる群より選択されるさらに1個のアミノ酸;あるいは
【0110】
(g)上記(vii)に示されるアミノ酸および配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY277またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y277の芳香族環に結合するかまたは阻害剤が、水素結合供与基を有するY277の末端酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のN388またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基または受容基でN388の側鎖に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY396またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y396の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のL280またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基を有するL280の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のT307またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基もしくは受容基でT307の側鎖に結合するかまたはカルボハロゲンもしくは水素結合供与基でT307の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のF373またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、F373の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のC309またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤がカルボハロゲンを有するC309のSに結合するかまたはC309のSが阻害剤の「弾頭」に共有結合を形成する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のD374またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合供与基または受容基でD374の側鎖に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のE375またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンまたは水素結合供与基でE375の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のI376またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するI376の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のM378またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基でM378の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のA379またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するA379の主鎖カルボニル酸素に結合するかまたは水素結合受容基を有するA379の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のY398またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、芳香族カルボもしくは複素環置換基との面-面または端-面π-π相互作用を介してまたは極性、荷電もしくはカルボハロゲン置換基との陽イオン-π、極性-πもしくはハロゲン-π相互作用を介して、Y398の芳香族環に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のI399またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、カルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するI399の主鎖カルボニル酸素にまたは水素結合受容基を有するI399の主鎖Nに結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のG400またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、水素結合アクセプター基を有するG400の主鎖Nに結合するかまたはカルボハロゲンもしくは水素結合供与基を有するG400の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のD401またはNsp13のウイルスホモログにおける対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、ハロゲン化炭素または水素結合供与基を有するD401の主鎖カルボニル酸素に結合する);配列番号1のSARSCoV2のNsp13のP406またはNsp13のウイルスホモログの対応する位置のアミノ酸(ここで、阻害剤は、P406の主鎖カルボニル酸素にカルボハロゲンまたは水素結合供与基で結合する);およびC426(ここで、阻害剤は、C426のSにカルボハロゲンで結合するかまたは426のSが阻害剤の「弾頭」に共有結合を形成する)からなる群より選択されるさらに1個のアミノ酸。
【0111】
当業者は、Nsp13またはそのホモログの3Dモデルまたは少なくとも結合ポケットの3Dモデルおよびインシリコモデリングを用いて、結合ポケットの上記のアミノ酸または上記のアミノ酸内の化学基と上記の示された結合を形成することができる化学基を決定することができる(実施例1も参照)。
【0112】
第1の態様のある実施形態において、阻害剤は、200~700Daの範囲内の分子量を有する有機分子である。
【0113】
第1の態様のある実施形態において、阻害剤は、アロステリック結合ポケットに相補的な構造および立体電子特性を有する。阻害剤の構造が相補的であると考えられるのは、結合ポケットに入り込み、結合ポケットの三分割構造に適合できる場合である。アロステリック結合ポケットと相補的な構造と立体電子物性を有し、従って結合ポケットに適合する阻害剤の例を図7に示す。アロステリック結合ポケットと相補的な構造と立体電子物性を有する例示的化合物の位置も図9に示す。図11は結合ポケットの2D図であり、3個の異なる化合物が結合ポケット内のアミノ酸とどのように相互作用するかを示している。
【0114】
第1の態様の一実施形態では、阻害剤は、三分割アロステリック結合ポケットのエントリーチャネル、左チャネルおよび右チャネルの群から選択されるチャネルの1個、2個または3個に独立に向けられる1~3個の置換基を有する中心非環式または環式コア構造からなる。置換基がチャネルに向けられている」という語句は、本発明の文脈において、そのチャネル内に突出し、チャネル内の少なくとも1個のアミノ酸と非共有結合を形成する置換基を特徴付けるために使用される。
【0115】
第1の態様のさらなる実施形態において、阻害剤は、三分割アロステリック結合ポケットのエントリーチャネル、左チャネルおよび右チャネルからなる群から選択されるチャネルの1個、2個または3個に独立して指向する1~3個の置換基で任意選択的に置換された中心複素環式または炭素環式スカフォールドからなる。
【0116】
第1の態様のさらなる実施形態において、阻害剤は、三分割アロステリック結合ポケットのエントリーチャネル、左チャネルおよび右チャネルの群から選択されるチャネルの1個、2個または3個に独立して指向する1~3個の置換基で任意選択的に置換された中心複素芳香族スカフォールドからなる。
【0117】
第1の態様のさらなる実施形態において、阻害剤は、2または3個の置換基、好ましくは3個の置換基で任意選択的に置換された中央のヘテロ芳香族スカフォールドからなり、これらの置換基は、独立して、三分割アロステリック結合ポケットのエントリーチャネル、左チャネルおよび右チャネルの群から選択されるチャネルの1個、2個または3個を指向する。
【0118】
第1の態様のさらなる実施形態において、阻害剤は、1~3個の5員、6員または7員環からなる中心複素芳香族スカフォールドからなり、ここで、個々の環の0~2個は、5員、6員または7員炭素環から選択され、1~3個の環は、5員、6員または7員複素環から選択され、ここで、各環は、少なくとも1個の他の環に輪環化しているおよび/または共有結合を介して少なくとも1個の他の環に連結されており、そしてここで、ヘテロ芳香族スカフォールドは、2個または3個の置換基、好ましくは3個の置換基で任意選択的に置換されており、これらの置換基は、独立して、三分割アロステリック結合ポケットのエントリーチャネル、左チャネルおよび右チャネルの群から選択されるチャネルの1個、2個または3個に指向している。
【0119】
第1の態様の特定の実施形態において、5員、6員または7員の複素環は、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾロン、ピロール、2-ヒドロキシピロール、1,2,3-トリアゾール、チオフェン、1,2,4-チアジアゾール、キナゾリン、1-キノリン、3-キノリン、ピロロピリジン、イミダゾピリジンおよびピリミドピリミジンからなる群から選択される。
【0120】
第1の態様または第2の態様の特定の実施形態において、本発明の阻害剤は、式(I)
【化1】
〔式中、
A1およびA3は、それぞれ独立して、NまたはCから選択され
A2は、N、CまたはOから選択され
Xは、HまたはOHまたはNH2であり;
L1は、C、CH、CH2、O、NおよびNHからなる群より選択されるか;またはL1は存在せず;
Zは、R3で置換された5員、6員または7員の炭素-または複素環であり、任意選択的にさらに置換され、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結され;
R1は、Hまたは、-NO2、-CNからなる群より選択される、互いに独立して、1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環である、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、-Me、-CF3、-Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個(好ましくは、1個)の置換基で独立して置換されており;
R2は、Hまたは5員、6員もしくは7員の炭素-もしくは複素環であり、-Br、-Cl、-F、-I、-Me、-CF3、-Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換され、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に連結され;
R3は、Hまたは5員、6員もしくは7員の炭素-もしくは複素環であり、-NO2、-CNからなる群より選択される、互いに独立して、1個、2個もしくは3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換されている、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、-Me、-CF3、-Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個(好ましくは、1個)の置換基で互いに独立して置換されている。〕
の構造を有するかまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグであり、
ここで、R1、R2およびR3は、好ましくは、アロステリック結合ポケットに相補的な分子形状および立体電子特性を有する。
【0121】
上記式(I)において、「エントリーチャネル」、「左チャネル」および「右チャネル」は、本発明の阻害剤が結合ポケットに結合したときに占める相対的な位置を示すために示されているにすぎない。3個のチャネルの位置を示すことは、当業者が、結合ポケットのそれぞれ示された部分内のアミノ酸に結合することができる、上記の示された置換基から適切な置換基を選択することを助ける。従って、第1の局面のさらなる実施形態において、R1は、エントリーチャネル内のアミノ酸に結合するように選択され、R2は、左チャネル内のアミノ酸に結合するように選択され、そしてR3は、右チャネル内のアミノ酸に結合するように選択される。
【0122】
上記の実施形態において、以下が好ましい
A1はR1で置換されたNである。
【0123】
上記の実施形態では
A2は、Nである。
【0124】
上記の実施形態では、以下が好ましい
A3は、R2で置換されたCであり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に接続される。
【0125】
上記の実施形態において、以下が好ましい
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2である。
【0126】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
Zは、R3で置換され、任意選択的にさらに1個または2個の=Oまたは-NH2、より好ましくは1個または2個の=Oで置換された5員、6員複素環であり;ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに接続され、R3で置換され、意選択的にさらに置換された5員複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに接続され、好ましくは、-CH2-基を介してZに接続されている。特に好ましい5員ヘテロアリールは、任意選択的にさらに置換されたフラニル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリルからなる群から選択され、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに接続されている。5員ヘテロアリールは、1個または2個の=Oまたは-NH2でさらに置換されていてもよく、より好ましくは1個または2個の=Oで置換されている。さらなる好ましい実施形態において、Zは、イミダゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリルから選択される、5員N-ヘテロアリールであり、好ましくは任意選択的にさらに置換されていてもよく、好ましくは1個または2個の=Oまたは-NH2で置換されていてもよく、より好ましくは1個または2個の=Oで置換されていてもよい。最も好ましい実施形態において、Zはイミダゾリジン-2,4-ジオニルであり、ここでR3は-CH2-基を介して3位のNでイミダゾリジン-2,4-ジオニルに連結している。
【0127】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、-Me、-CF3、-Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個の置換基で任意選択的に置換されている。より好ましくは、R1は、-NO2、-CN、-OHからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換された6員アリールである、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、-Me、-CF3、-Et、-OMeおよび-SMeからなる群より独立して選択される1個または2個または3個、好ましくは1個の置換基で置換されている
【0128】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
R2は、互いに独立して、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、6員アリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリールである。より好ましくは、R2は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される、1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された6員アリールである。R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される1個の親油性置換基はパラ位にある。R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される2個の親油性置換基はオルト位およびパラ位にある。
【0129】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個の置換基で独立して置換されている。より好ましくは、R1は、NO2、-CN、-OHからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換された6員アリールである、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個の置換基で任意選択的に置換されている。
【0130】
第1の態様のさらなる実施形態または本発明の第2の態様において、阻害剤は、式(I)の構造を有し、ここで
A1はR1で置換されたNであり;
A2はNであり;そして
A3は、R2で置換されたCであり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に接続される。
【0131】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHである。
【0132】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2である。
【0133】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
Zは、R3で置換された5員または6員の複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに接続される。
【0134】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されている。
【0135】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R2は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される、1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、6員アリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリールであり、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される1個の親油性置換基は好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にある。
【0136】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されている。
【0137】
上記の実施態様において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;そして
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2である。
【0138】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2であり;そして
Zは、R3で置換された5員または6員の複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結される。
【0139】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2であり;そして
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2からなる群より選択される、互いに独立して1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換されている、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個(好ましくは、1個)の置換基で独立して置換されている。
【0140】
上記の実施態様において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2であり;そして
R2は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される、1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されている、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される1個の親油性置換基は、好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にある。
【0141】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2であり;そして
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される、互いに独立して、1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換されている。
【0142】
上記の実施態様において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2であり;
Zは、R3で置換された5員または6員の複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結され;そして
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、互いに独立して、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個(好ましくは、1個)からなる群から選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換されており;
【0143】
上記の実施態様において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2であり;
Zは、R3で置換された5員または6員の複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結され;そして
R2は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される、互いに独立して1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換されており、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される1個の親油性置換基は好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にある;そして
【0144】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=またはCH2であり;
Zは、R3で置換された5員または6員の複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結され;そして
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、互いに独立して、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換されている。
【0145】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
A1は、R1で置換されたNであり;
A2は、Nであり;
A3は、R2で置換されたCであり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に接続され;
Xは、HまたはOHであり;
L1は、CH=またはZに接続されたCH2であり;
Zは、R3で置換された5員または6員の複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結されており;
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、-Me、-CF3、-Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個(好ましくは、1個)の置換基で独立して置換されており;
R2は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換されている、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される1個の親油性置換基は、好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にある;そして
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個(好ましくは、1個)の置換基で独立して置換されている。
【0146】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
A1は、R1で置換されたNであり;
A2は、Nであり;
A3は、R2で置換されたCであり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に接続され;
Xは、HまたはOHであり;
L1は、CH=またはZに接続されたCH2であり;
Zは、R3で置換された5員複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結されており;
R1は、6員アリールまたはヘテロアリール、好ましくは6員アリールであり、互いに独立して、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個または2個、好ましくは1個の置換基で独立して置換されており;
R2は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される、互いに独立して1個または2個の親油性置換基で任意選択的に置換された、6員アリールまたはヘテロアリール、好ましくは6員アリールであり、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より互いに独立して選択される1個の親油性置換基は、好ましくはパラ位にあり、R2が2回されるならば、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはパラ位にある;そして
R3は、6員アリールまたはヘテロアリール、好ましくは6員アリールであり、互いに独立して、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個(好ましくは、1個)の置換基で任意選択的に置換されている。
【0147】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(I)の構造を有し、ここで
A1は、R1で置換されたNであり;
A2は、Nであり;そして
A3は、R2で置換されたCであり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介して、A3に連結される。
【0148】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHである。
【0149】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
L1は、Zに接続されたCH=である。
【0150】
上記実施形態において、以下が好ましい:
Zは、R3で置換された5員複素環、好ましくは5員ヘテロアリール、より好ましくは5員N-ヘテロアリールであり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介して、好ましくは-CH2-基を介してZに連結される。
【0151】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されている。
【0152】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R2は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、6員アリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、R2が1回置換されているならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される互いに独立している1個の親油性置換基は、好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されているならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にある。
【0153】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される互いに独立して1個または2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換され、ここで、R3は、-CH2-基を介してZに連結される。
【0154】
上記の実施態様において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;そして
L1は、Zに接続されたCH=である。
【0155】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
XはHまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=であり;そして
Zは、R3で置換された5員複素環、好ましくは5員N-複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介して、好ましくは-CH2-基を介してZに連結される。
【0156】
上記の実施態様において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、R3で置換された5員複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに連結され;そして
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されており;
【0157】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、R3で置換された5員複素環、好ましくは5員N複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに接続され;そして
R2は6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されており、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される1個の親油性置換基は好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にある;そして
【0158】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、R3で置換されている5員複素環、好ましくは5員N-複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに接続され;そして
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されており、ここで、R3-CH2-基を介してZに接続されている。
【0159】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
A1は、R1で置換されているNであり;
A2は、Nであり;
A3は、R2で置換されているCであり、ここで、R2はA3に結合を介してまたは-CH2-基を介して接続され;
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、R3で置換されている5員複素環、好ましくは5員N-複素環、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基、好ましくは-CH2-基を介してZに接続され;
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキル(特に-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されており;
R2は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個または2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されており、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される1個の親油性置換基は好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にあり;そして
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されており、ここで、R3-CH2-基を介してZに接続されている。
【0160】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
A1は、R1で置換されているNであり;
A2は、Nであり;
A3は、R2で置換されているCであり、ここで、R2はA3に結合を介してまたは-CH2-基を介して接続され;
Xは、HまたはOHであり;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、R3で置換された5員複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基、好ましくは-CH2-基を介してZに接続され;
R1は、6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキル(特に-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されており;
R2は、6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個または2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されており、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される1個の親油性置換基は好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にあり;そして
R3は、6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、-NO2、-CN、-OH、-COOH、-NH-SO2-アルキル(特に-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2、-CONH-アルキル(特に-CONH-(C1-C6)アルキル)、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されており、ここで、R3-CH2-基を介してZに接続されている。
【0161】
第1の態様のさらなる実施形態または本発明の第2の態様において、阻害剤は、式(I)の構造を有し、ここで
A1は、R1で置換されているNであり;
A2は、Nであり;
A3は、R2で置換されているCであり、ここで、R2はA3に結合を介してまたは-CH2-基を介して接続され;
Xは、OH;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、R3で置換されている5員複素環であり、ここで、R3は、結合を介してまたは-CH2-基を介してZに接続され;
R1は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、互いに独立して-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキル(特に-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2および-CONH-アルキル(特に-CONH-(C1-C6)アルキル)からなる群から選択される1個または2個または3個の極性置換基で任意選択的に置換されており;
R2は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、互いに独立して-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されており、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される1個の親油性置換基は好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にある;
R3は、6員アリールまたは5員もしくは6員ヘテロアリール、好ましくは6員アリールまたはヘテロアリール、より好ましくは6員アリールであり、互いに独立して-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されている。
【0162】
第1の態様のさらなる実施形態または本発明の第2の態様において、阻害剤は、式(I)の構造を有し、ここで
A1は、R1で置換されているNであり;
A2は、Nであり;
A3は、R2で置換されているCであり、ここで、R2はA3に結合を介してまたは-CH2-基を介して接続され;
Xは、OH;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、イミダゾリジン-2,4-ジオンであり、ここで、R3はイミダゾリジン-2,4-ジオンの3位で-CH2-基を介してZに連結しており;
R1は、6員アリールまたはヘテロアリール、好ましくは6員アリールであり、互いに独立して-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキル(特に-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2および-CONH-アルキル(特に-CONH-(C1-C6)アルキル)からなる群から選択される1個または2個または3個の極性置換基で任意選択的に置換されており;
R2は、6員アリールまたはヘテロアリール、好ましくは6員アリールであり、互いに独立して-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されており、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される1個の親油性置換基は好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にあり;
R3は、6員アリールまたはヘテロアリール、好ましくは6員アリールであり、互いに独立して-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されている。
【0163】
第1の態様のさらなる実施形態または本発明の第2の態様において、阻害剤は、式(I)の構造を有し、ここで
A1は、R1で置換されているNであり;
A2は、Nであり;
A3は、R2で置換されているCであり、ここで、R2はA3に結合を介してまたは-CH2-基を介して接続され;
Xは、OHであり;
L1は、Zに接続されたCH=であり;
Zは、イミダゾリジン-2,4-ジオンであり、ここで、R3はイミダゾリジン-2,4-ジオンの3位のNで-CH2-基を介してZに連結しており;
R1は、-NO2、-CN、-OH、COOH、NH-SO2-アルキル(特に、-NH-SO2-(C1-C6)アルキル)、NH-CO-アルキル(特に、-NH-CO-(C1-C6)アルキル)、-CONH2および-CONH-アルキル(特に、-CONH-(C1-C6)アルキル)からなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の極性部分で任意選択的に置換されたフェニルであり;
R2は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から互いに独立して選択される1個、2個または3個(好ましくは、1個)の親油性置換基で置換された任意のフェニルまたはベンジル(好ましくは、フェニル)であり、R2が1回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される1個の親油性置換基は好ましくはパラ位にあり、R2が2回置換されるならば、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から独立して選択される2個の親油性置換基は、好ましくはオルト位およびパラ位にある;
R3は、は、互いに独立して、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で置換されたフェニルである。
【0164】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(I)の構造を有し、ここで
A1は、R1で置換されたNであり
A2はNであり
A3は、R2で置換されたCであり、ここで、R2は、結合を介してまたは-CH2-基を介してA3に連結され;
XはOHであり;
L1はZに結合したCH=であり;
Zはイミダゾリジン-2,4-ジオンであり、ここでR3はイミダゾリジン-2,4-ジオンの3位のNで-CH2-基を介してZに連結しており;
R1は、フェニル、4-ニトロフェニル、2,6-ジクロロ-4-ブロモフェニル、4-フルオロフェニル、4-ブロモフェニル、2,6-ジクロロフェニル、2-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2,3-ジメチルフェニルまたは4-メトキシフェニルであり;
R2は、2,4-ジクロロフェニル、4-クロロフェニル、フェニル、ベンジル、3-ピリジン、2-メチルベンジル、4-フルオロベンジル、4-クロロベンジル、2-メトキシフェニルまたは3-メトキシフェニルであり;そして
R3は、4-フルオロフェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、2,4-ジフルオロフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、3-ピリジン、3-メトキシフェニル、4-ニトロフェニル、3-ニトロフェニル、4-トリフルオロメチル-フェニルまたは4-シアノフェニルである。
【0165】
本発明の第1の態様または第2の態様のさらなる特定の実施形態において、阻害剤は、式(II):
【化2】
〔式中、
A5およびA8は、それぞれ独立して、NまたはCHから選択され
A6は、NまたはCHから選択されるかまたはA6が環化された炭素-もしくは複素環Zに関与する場合、A6はCであり;
A7は、NまたはCHから選択されるかまたはA7が環化された炭素-もしくは複素環Zに関与する場合、A7はCであり;
L2は、-CH2-R4、-CF2-R4、-CH2-CH2-R4、-CH2-CH2-CH2-R4、-O-R4、-NH-R4、-N=R4からなる群より選択され;
L3は、CH2-R5、-CF2-R5、-CH2-CH2-R5、-CH2-COH2-R5、-CH=CH-R5、-CH2-CF2-R5、-CH2-CH2-CH2-R5、-O-R5、-NH-R5、-N=R5からなる群より選択され;
または
L2およびL3は、それらが連結しているA8と一体になって、R4および/またはR5で置換された5員または6員の複素環を形成し;
L4は、CH2、-CF2-、CH2-CH2、CH2-CH2-CH2、O、N、NHであるかまたは存在せず;
Zは、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;
そして中心コアに環化され得るかまたは共有結合を介して連結され得て;
R4は、-Br、-Cl、-F、-I、-CF3、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環であるか、あるいはR4は、水素、メチルまたはCOOHであり;
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員、7員、8員、9員または10員の炭素-または複素環であり;
R6は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NO2、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;
またはR6は、Hであり;
または
A7は環化カルボ環または複素環Zの一部を占める場合、A5およびA6は、独立して、-Nまたは-CHから選択され、A8は、-N、-CH、-CH2-N、-CH2-CHまたは-NH-CHから選択される。〕
の構造を有するかまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグであり、
ここで、R4、R5およびR6は、好ましくは、アロステリック結合ポケットに相補的な分子形状および立体電子特性を有する。
【0166】
式(II)の状況におけるリンカーL2およびL3の上の定義は、それぞれR4およびR5を含む。リンカー定義内の置換基R4およびR5の言及は、R4およびR5が式(II)の得られる化合物で2回存在することを意味しない。R4およびR5は、さらに、リンカーのそれぞれA8からR4またはA8からR5への配向を明確化するために、L2およびL3の定義に挙げる。
【0167】
上記式(II)において、「エントリーチャネル」および「右チャネル」は、本発明の阻害剤が結合ポケットに結合したときに占める相対的な位置を示すために示されているにすぎない。3個のチャネルの位置を示すことは、当業者が、結合ポケットのそれぞれ示された部分内のアミノ酸に結合し得る、上記示された置換基から適切な置換基を選択することを助ける。従って、第1の局面のさらなる実施形態において、R4およびR5は、エントリーチャネルのアミノ酸に結合するように選択され、R6は、右チャネルのアミノ酸に結合するように選択される。
【0168】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
A5およびA6はNであり;そして
A7は環化炭素-または複素環、好ましくは炭素環Zに関与する。
【0169】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
A5およびA6はNであり;
A7は、環化炭素-または複素環、好ましくは炭素環Zに関与し;そして
A8は、-CH2-N、-CH2-CHまたは-NH-CH、好ましくは-NH-CHである。
【0170】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
A5は、Nであり、そしてA8は、-Nまたは-CHである。
【0171】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
A5は、Nであり、そしてA8は、-Nまたは-CHであり;そして
A6は、環化された炭素環または複素環、好ましくは炭素環Zに関与する。
【0172】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
L2は、-CH2-R4、-CH2-CH2-R4、-CH2-CH2-CH2-R4からなる群より選択される。
【0173】
上記実施形態では、以下が好ましい:
L2は、-CH2-R4、-CF2-R4、-CH2-CH2-R4、-CH2-CH2-CH2-R4、-NH-R4からなる群より選択され;そして
R4は、6員アリールまたは5員、6員もしくは7員ヘテロアリール、好ましくは5員もしくは6員ヘテロアリールであり、-Br、-Cl、-F、-I、-CF3、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されているかまたはR4は、水素、メチルまたはCOOHである。
【0174】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
L3は、-CH2-R5、-CH2-CH2-R5、-CH2-CF2-R5からなる群より選択され;
【0175】
上記実施形態において、以下が好ましい:
L3は、-CH2-R5、-CH2-CH2-R5、-CH2-CF2-R5からなる群より選択され;そして
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員、7員、8員、9員または10員の炭素-または複素環である。
【0176】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
L2およびL3は、それらが接続されているA8と一体になって、R4およびR5によって置換された5員または6員の複素環を形成する。
【0177】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
L2およびL3は、それらが接続されるA8とともに、R4およびR5によって置換された5員または6員の複素環を形成し;
R4は水素、メチルまたはCOOHであり;
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員、7員のカルボ環または複素環、好ましくはフェニルまたは5員もしくは6員のヘテロアリールである。
【0178】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
L4は存在しない。
【0179】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
R4は、水素、メチル、COOHまたはテトラゾリルである。
【0180】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
L2は、-CH2-R4、-CH2-CH2-R4、-CH2-CH2-CH2-R4であり;そして
R4は、水素、メチル、COOHまたはテトラゾリルである。
【0181】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、-CF3、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員、7員、8員、9員または10員の炭素-または複素環である。
【0182】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されている、C5-C7-シクロアルキル、すなわちC5-、C6-またはC7-シクロアルキル、C6-C10-ビシクロアルキル、すなわちC6-、C7-、C8-、C9-またはC10-ビシクロアルキル、C6-C10-スピロアルキル、すなわちC6-、C7-、C8-、C9-またはC10-スピロアルキル、フェニル、5員または6員のヘテロアリール、アダマンチル;より好ましくは、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意的に置換されている、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ブロモ-フェニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、スピロ[3,3]ヘプチルまたはアダマンチルであり、より好ましくは、非置換フェニルまたは-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個の親油性置換基で置換されたアダマンチルである;
【0183】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
L3は、-CH2-R5、-CH2-CH2-R5、-CH2-CF2-R5からなる群より選択され;そして
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され、C5-C7-シクロアルキル、すなわちC5-、C6-またはC7-シクロアルキル、C6-C10-ビシクロアルキル、すなわちC6-、C7-、C8-、C9-またはC10-ビシクロアルキル、C6-C10-スピロアルキル、すなわちC6-、C7-、C8-、C9-またはC10-スピロアルキル、フェニル、5員または6員のヘテロアリール、アダマンチル;より好ましくは、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されている、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ブロモ-フェニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、スピロ[3,3]ヘプチルまたはアダマンチルであり、より好ましくは非置換フェニルまたは、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個の親油性置換基で置換されたアダマンチルである;
【0184】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R6は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NO2、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換された、6員アリールまたは5員、6員もしくは7員のヘテロアリールであり
またはR6はHである。
【0185】
上記の実施形態において、以下が好ましい:
L4は存在せず;そして
R6は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NO2、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換された、5員または6員の炭素-または複素環、好ましくは6員の炭素-または複素環である。
【0186】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Zは、6員アリールまたは5員、6員ヘテロアリール、好ましくはフェニルであり、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されている。
【0187】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(II)の構造を有し、ここで
A5は、Nであり
A6およびA7のうちの1個がCHであり、そして他の1個がNであり;またはA6およびA7のうちの1個がCであり、そして環化された炭素-または複素環Zの一部を占め、そして他の1個がNであり
A8は、NまたはCHであり;
L2、L3、L4は、互いに独立して、CH2、-CF2-、CH2-CH2、CH2-CH2-CH2、O、NおよびNHからなる群から選択されるかまたは存在しないかまたはL2およびL3は、それらが接続されるA8と一体になって、R4およびR5によって置換された5員または6員の複素環を形成し;
Zは、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり、中心コアに環状であるかまたは共有結合を介して接続され得、そして-Br、-Cl、-F、-I、-OH、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群から選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換され;
R4は、-Br、-Cl、-F、-I、-CF3、Me、-Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり、
またはR4は水素、メチルまたはCOOHであり;
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、-CF3、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員、7員、8員、9員または10員の炭素-または複素環であり;
R6は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NO2、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環であり、
またはR6は、Hである
または
A7は環化された炭素-または複素環Zに関与する場合、A5およびA6はNであり、そしてA8は-N、-CH、-CH2-N、-CH2-CHまたは-NH-CH、好ましくは-CH2-N、-CH2-CHまたは-NH-CHから選択され;
ここで、R4、R5およびR6は、好ましくは、アロステリック結合ポケットに相補的な分子形状および立体電子特性を有する。
【0188】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(II)の構造を有し、ここで
A5は、Nであり
A6およびA7の一方は、Cであり、環化された炭素-または複素環Zに関与し、他方は、Nであり
A8はNであり;
L2は、CH2-CH2であり、そしてL3は、CH2-CH2またはCH2-CF2であり;あるいはL2およびL3は、それらが連結しているA8と一体になって、R4およびR5によって置換された5員または6員の複素環(好ましくは、ピペリジンまたはピロリジン)を形成し;
L4は存在せず;
Zは、中心コアに環化された6員カルボ環または複素環であり、ここで、Zは、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよびNO2からなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の置換基で任意選択的に置換され;
R4は、COOHまたはCH2N4であり;
R5は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員、7員または10員の炭素-または複素環であり;
R6は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NO2、Me、-CF3、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換された、5員または6員の炭素-または複素環である、
またはR6はHである。
【0189】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(II)の構造を有し、ここで
A5、A7およびA8の各々は、Nであり
A6は、Cであり、環化された炭素-または複素環Zの一部を占め;
L2は、CH2-CH2-R4であり;
L3はCH2-CH2-R4であり;
またはL2およびL3は、それらが連結しているA8と一体になって、R4およびR5で置換されたピペリジン環またはピロリジン環を形成し;
L4は、存在せず;
Zは、中心コアに環化されたフェニルまたはシクロヘキシルであり、ここでZは、-Br、-Cl、-F、-OH、Me、-CF3、-OMeおよび-NO2からなる群から選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換される、
R4は、COOHまたはテトラゾリルであり
R5は、-Br、-CF3、Me、-CH2-CF3および-OMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換されたフェニル、シクロペンチルまたはアダマンチルであり
R6は、6員炭素-または複素環、好ましくはフェニルまたはシクロヘキシルであり;より好ましくはフェニルであり、Br、-Cl、-F、Me、-CF3、-OMeおよび-NO2からなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の置換基で任意選択的に置換されている。
【0190】
本発明の第1の態様または第2の態様のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(IV):
【化3】
〔式中、
Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含む5員、6員または7員複素環であり
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環であり
Z1は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NH2、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択されるか;またはZ1は存在せず、
X1は、OまたはSであり、好ましくはOであり;
A9は、O、NHまたはCH2であり;
A10は、O、NHまたはCH2であり;そして
R8は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員、6員または7員の炭素-または複素環である。〕
の構造を有するかまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグであり、
ここで、R7およびR8は、好ましくは、アロステリック結合ポケットに相補的な分子形状および立体電子特性を有する。
【0191】
上記式(IV)において、「エントリーチャネル」および「右チャネル」は、本発明の阻害剤が結合ポケットに結合したときに占める相対的な位置を示すために示されているにすぎない。2個のチャネルの位置を示すことは、当業者が、結合ポケットのそれぞれ示された部分内のアミノ酸に結合することができる、上記の示された置換基から適切な置換基を選択することを助ける。従って、第1の局面のさらなる実施形態において、R7は、エントリーチャネル内のアミノ酸に結合するように選択され、そしてR8は、右チャネル内のアミノ酸に結合するように選択される。
【0192】
上記の実施態様において、以下が好ましい:
Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子、好ましくはNまたはSから選択される3個のヘテロ原子、より好ましくは1,2,4-チアジアザロイルからなる5員複素環である。Bが1,2,4-チアジアザロイルである場合、A9が1,2,4-チアジアザロイルの5位およびR7が3位で置換されていることが好ましい。
【0193】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
X1は、Oであり;
A9は、OまたはNHであり、
A10は、OまたはNHであり;そして
Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子、好ましくはNまたはSから選択される3個のヘテロ原子、より好ましくは1,2,4-チアジアザロイルからなる5員複素環である。Bが1,2,4-チアジアザロイルである場合、A9が1,2,4-チアジアザロイルの5位およびR7が3位で置換されていることが好ましい。
【0194】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
X1は、OまたはS(好ましくはO)であり;
A9はNHであり;
A10は、NHであり;そして
Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子、好ましくはNまたはSから選択される3個のヘテロ原子、より好ましくは1,2,4-チアジアザロイルからなる5員複素環である。Bが1,2,4-チアジアザロイルである場合、A9が1,2,4-チアジアザロイルの5位およびR7が3位で置換されていることが好ましい。
【0195】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
X1は、Oであり;
A9は、OまたはNHである、
A10は、OまたはNHであり;
Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子、好ましくはNまたはSから選択される3個のヘテロ原子からなる5員複素環であり、より好ましくは1,2,4-チアジアザロイルである。Bが1,2,4-チアジアザロイルである場合、A9が1,2,4-チアジアザロイルの5位およびR7が3位で置換されていることが好ましく;そして
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員または6員の炭素-または複素環、好ましくは、6員のアリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリールであり、より好ましくは、R7は、フェニルまたは5員のヘテロアリール、好ましくは、チオフェニルである、Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され、より好ましくは、非置換フェニルまたは-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されたチオフェニルである。
【0196】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
X1は、OまたはS(好ましくは、O)であり;
A9は、NHであり;
A10は、NHであり;
Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子、好ましくはNまたはSから選択される3個のヘテロ原子、より好ましくは1,2,4-チアジアザロイルからなる5員複素環である。Bが1,2,4-チアジアザロイルである場合、A9が1,2,4-チアジアザロイルの5位およびR7が3位で置換されていることが好ましく;そして
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員または6員の炭素-または複素環、好ましくは、6員のアリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリールであり、より好ましくは、R7は、フェニルまたは5員のヘテロアリール、好ましくは、チオフェニルである、Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され、より好ましくは、非置換フェニルまたは-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されたチオフェニルである。
【0197】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員または6員の炭素-または複素環、好ましくは、6員のアリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリールであり、より好ましくは、R7は、フェニルまたは5員のヘテロアリール、好ましくは、チオフェニルである、Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され、より好ましくは、非置換フェニルまたは-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されたチオフェニルである。
【0198】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子、好ましくはNまたはSから選択される3個のヘテロ原子からなる5員複素環であり、より好ましくは1,2,4-チアジアザロイルである。Bが1,2,4-チアジアザロイルである場合、A9が1,2,4-チアジアザロイルの5位およびR7が3位で置換されていることが好ましく;そして
R7は、フェニルまたは5員ヘテロアリール、好ましくはチオフェニルであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され、より好ましくは、非置換フェニルまたは-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されたチオフェニルである。
【0199】
本発明の第1の局面または別の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(IV)の構造を有し、ここで、Bは、O、NまたはSから選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含む5員複素環である。
【0200】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(IV)の構造を有し、ここで
X1は、Oであり
A9は、OまたはNHであり;そして
A10は、OまたはNHである。
【0201】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(IV)の構造を有し、ここで
X1は、OまたはS、好ましくはOであり
A9は、NHであり;そして
A10は、NHである。
【0202】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる特定の実施形態において、阻害剤は、式(III)の構造を有する:
【化4】
〔式中、
各A4は、互いに独立して、N、NH、CHまたはCH2から選択され、
Z1は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NH2、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択されるか;またはZ1は存在せず;
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり
R8は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環である。〕
の構造を有するかまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグであり、
ここで、R7およびR8は、好ましくは、アロステリック結合ポケットに相補的な分子形状および立体電子特性を有する。
【0203】
上記式(III)において、「エントリーチャネル」および「右チャネル」は、本発明の阻害剤が結合ポケットに結合したときに占める相対的な位置を示すために示されているにすぎない。2個のチャネルの位置を示すことは、当業者が、結合ポケットのそれぞれ示された部分内のアミノ酸に結合することができる、上記の示された置換基から適切な置換基を選択することを助ける。従って、第1の局面のさらなる実施形態において、R7は、エントリーチャネル内のアミノ酸に結合するように選択され、そしてR8は、右チャネル内のアミノ酸に結合するように選択される。
【0204】
上記の実施態様において、以下が好ましい:
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員または6員の炭素-または複素環、好ましくは、6員のアリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリールであり、より好ましくは、R7は、フェニルまたは5員のヘテロアリール、好ましくは、チオフェニルである、Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され、より好ましくは、非置換フェニルまたは-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されたチオフェニルである。
【0205】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
A4は、Nであり;そして
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される、1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員もしくは6員の炭素-または複素環、好ましくは、6員のアリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリールであり、より好ましくは、R7は、フェニルまたは5員のヘテロアリール、好ましくは、チオフェニルである、Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され、より好ましくは、非置換フェニルまたは-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されたチオフェニルである。
【0206】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Z1は存在せず;
A4は、Nであり;そして
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される、1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、5員もしくは6員の炭素環または複素環、好ましくは、6員のアリールまたは5員もしくは6員のヘテロアリールであり、より好ましくは、R7は、フェニルまたは5員のヘテロアリール、好ましくは、チオフェニルである、Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され、より好ましくは、非置換フェニルまたは-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個または2個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されたチオフェニルである。
【0207】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
R8は、シクロヘキシル、ピペリジニル、ヘキサヒドロピリダジニル、ヘキサヒドロピリミジニルまたはピペラジニルであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換されている。
【0208】
上記の実施形態では、以下が好ましい:
Z1は存在せず;
A4は、Nであり;そして
R8は、シクロヘキシル、ピペリジニル、ヘキサヒドロピリダジニル、ヘキサヒドロピリミジニルまたはピペラジニルであり、任意選択的に、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で置換されている。
【0209】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(III)の構造を有し、ここで
各A4は、NまたはCHであり
Z1は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NH2、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択されるか;またはZ1は存在せず;
R7は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個(好ましくは1個)の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環であり;そして
R8は、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換された、任意の5員、6員または7員の炭素-または複素環である。
【0210】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(III)の構造を有し、ここで
各A4は、Nであり
Z1は、-Br、-Cl、-F、-I、-OH、-NH2、Me、-CF3、Et、-OMe、-SMeおよび-NO2からなる群より選択されるか;またはZ1は存在せず;
R8は、シクロヘキシル、ピペリジニル、ヘキサヒドロピリダジニル、ヘキサヒドロピリミジニルまたはピペラジニルであり、-Br、-Cl、-F、-I、Me、Et、-OMeおよび-SMeからなる群より選択される1個、2個または3個、好ましくは1個の親油性置換基で任意選択的に置換され;そして
R7は、メチル基またはエチル基で任意選択的に置換された、5員または6員の炭素-または複素環(好ましくは、5員または6員のアリール基またはヘテロアリール基)である。
【0211】
本発明の第1の局面または第2の局面のさらなる実施形態において、阻害剤は、式(III)の構造を有し、ここで
各A4は、Nであり
Z1は存在せず
R8は、メチルピペリジニル、好ましくは1-メチルピペリジニルであり
R7は、メチルもしくはエチルで任意選択的に置換されたフェニルまたはメチルもしくはエチルで任意選択的に置換されたチオフェンであり;好ましくは、R7は、フェニルまたはメチル置換されたチオフェニルである。
【0212】
本発明の第1の態様または第2の態様の特に好ましい実施形態において、阻害剤は、以下からなるまたはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグ群より選択される。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0213】
本発明の第1の態様または第2の態様の特に好ましい実施形態において、阻害剤は、以下の2個の化合物またはその薬学的に許容される塩、異性体、溶媒和物、化学的に保護された形態もしくはプロドラッグから選択される。
【表7】
【0214】
特定の理論に拘束されることを願わないが、本出願人は、上記化合物の左側のもの(すなわちCOVI-86)が生体内で右側の化合物(すなわちCOVI-87)に変換されると推測する。
【0215】
第3の局面において、本発明は、本発明の第1または第2の局面による阻害剤を含む医薬組成物に向けられている。
【0216】
第4の局面において、本発明は、治療における使用のための、本発明の第1または第2の局面による阻害剤または本発明の第3の局面の医薬組成物に向けられている。
【0217】
第5の局面において、本発明は、ウイルス感染の予防または治療における使用のための、本発明の第1または第2の局面による阻害剤または本発明の第3の局面の薬学的組成物に向けられている。
【0218】
本発明の第5の局面の好ましい実施形態において、ウイルス感染は、好ましくはピソニウイルス綱の正鎖一本鎖(ss)RNA、より好ましくはニドウイルス目のウイルス、より好ましくはコルニドウイルス亜目のウイルス、そして最も好ましくはコロナウイルス科のウイルスによる感染である。最も好ましくは、ウイルスはコロナウイルスであり、特にSARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2およびそれらの変異体である。
【実施例
【0219】
実験
1. インシリコ特性評価
最初に、SARS-CoV-2オーソログとこの特異的領域で100%配列同一性を共有するSARS-CoV-1 Nsp13ヘリカーゼの最初のローブ(SARS-CoV-1 Nsp13 PDB: 6JYTの236残基から440残基)について、12μsの分子動力学(MD)シミュレーションを行った。MDは陰溶媒で開始された。シミュレーションは、2フェムト秒のステップサイズを使用して、実施した。シミュレーションはNVIDIA Tesla V100-SXM2-32gb GPUで実行した。MDは最初の最小化ステップから始まり、その後10,000ステップの平衡化が行われた。その後、エネルギーとフレームが100フレームごとに書き込まれた。MDシミュレーションが完了した後、軌跡から10フレーム毎に取った。これらのフレームは、PCAを用いて初期ポーズにアライメントされた。PCAのプロットは、最初の2個の主成分を用いて作成された。タンパク質のコンフォーメーションの8個のクラスターを手動で同定した。各クラスターの中心付近のランダムな点をPDBファイルとして抽出した。次に、Intel(R) Xeon(R) Platinum 8268 CPU @ 2.90GHz cpuで、8個のタンパク質コンフォーメーションそれぞれにフレキシブルドッキングを行った。ドッキングは専有の化合物ライブラリーを用いて行った。
【0220】
全タンパク質コンフォーメーションの平均ドッキングスコアを用いて、ライブラリーのリガンドをランク付けした。その後、上位64個のリガンドを選択し、生化学的解析を行った。in vitroデータは、分子ドッキングを各タンパク質フレームと相関させた。in vitroのFRETに基づくDNA巻き戻しアッセイ測定値と最も相関の高いフレーム(図12)が、生物学的活性分子のポーズ精密化のためのより厳密な分子ドッキングに使用する代表構造として選ばれた。驚くべきことに、これらのドッキングポーズは、タンパク質内部の活性部位のモチーフIIの背後に位置する、これまで知られていなかったアロステリック結合部位を明らかにした。このポケットは結晶構造では見えず、分子動力学シミュレーションによってのみ同定された。このポケットは、エントリーチャネル、左チャネルおよび右チャネルからなる三分割構造を示している。このポケットはSARS-CoV/SARS-CoV-2 Nsp13の以下のアミノ酸からなる:Y277、T279、L280、Q281、G282、T307、C309、F373、D374、E375、I376、S377、M378、A379、L384、N388、Y396、Y398、I399、G400、D401、P406、P408、N423、V425、C426、R427およびM429。これらの残基のうち、Y277、L384、N388、Y396、Y398およびV425はエントリーチャネルを形成し、T307、C309、F373、D374、E375、S377、M378、A379およびN423は左チャネルを形成し、T279、L280、Q281、G282、I376、I399、G400、D401、P406、P408、C426、R427およびM429は右チャネルを形成する。表1は3個の例示化合物、COVI-3、COVI-10およびCOVI-35と直接相関する各アミノ酸を挙げる。
【0221】
【表8】

【0222】
図3は、コロノウイルスの既知の7個のヘリカーゼのアミノ酸配列のアラインメントを示す。このアラインメントは、EMBL-EBIで利用可能なClustal Omega Multiple Sequence Alignmentプログラム(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)を用いて、標準的なアラインメントパラメーターを用いて作成した。SARS-CoV-2 Nsp13のアミノ酸のうち、上に述べたアロステリック結合ポケットの一部であるアミノ酸は、それぞれのヘリカーゼの対応する位置にある他の6個のコロナウイルスヘリカーゼのアミノ酸と同様に、太字で強調してある。次の表2は、SARS-CoV-2 Nsp13の結合ポケットを形成していると同定されたアミノ酸と、他の6個のコロナウイルスヘリカーゼの結合ポケットとの間の保存レベルをまとめたものである。
【0223】
【表9】

【0224】
結合ポケットに適合し、かつ特異的で有利な相互作用を持つ低分子阻害剤をさらに開発するために、潜在的な低分子とタンパク質との間の以下の相互作用に特別な注意が払われてきた。結合ポケットの大部分は疎水性であり、従って結合は疎水性相互作用が支配的となるが、好ましい薬物動態学的特性をもたらす物理化学的特性を維持しながら、以下の有利な相互作用の数を最大にする必要がある。
【0225】
水素結合:水素結合(H-bonding)は、一般的に低分子結合にとって最も重要な側面であると考えられる。H結合は、1.5Åから2.5Åの距離で、孤立電子対と、極性かつ電子不足水素との間に形成される。すべてのアミノ酸の主鎖にはH結合の供与体と受容体の両方が含まれ、多くのアミノ酸側鎖にはH結合の供与体、受容体またはその両方が存在する。結合ポケットの右チャネルと左チャネルには、H結合供与体と受容体の両方が豊富に存在する。エントリーチャネルでは、特にタンパク質の中心に近づくにつれて、H-結合供与体と受容体の数は少なくなる。これは、黒い領域が疎水性であるため、H-結合の受容基と供与基に乏しい、図6に見られ得る。この利点を生かすには、H結合受容基と供与基を、エントリーチャネル外側の境界だけでなく、左右のチャネルに向けられた低分子部分に配置する必要がある。
【0226】
塩橋:結合ポケットに並ぶいくつかの残基は、荷電した側鎖 - 特にアスパラギン酸374と401、グルタミン酸375およびそしてある程度はアルギニン427 - を有するため、荷電したアミノ酸側鎖と低分子の荷電部位との間に塩橋を形成する電位がある。塩橋は理想的には約2Åの距離で形成され、2桁の低い値のkcal/molの相互作用エネルギーを有することができるが、低分子の荷電部分に関連した大きな脱溶媒和ペナルティに悩まされることが多い。塩橋を利用するために、荷電部位を左右のチャネルに向けることができる。
【0227】
π-πスタッキング:π結合系、特に芳香族π結合系間の相互作用は、最も一般的な分子内および分子間相互作用である。タンパク質では、いくつかのアミノ酸が低分子中の芳香族部分とπスタッキングすることが可能であり、それらはフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびヒスチジンである。SARS-CoV-2 Nsp13ヘリカーゼのアロステリック結合ポケットの場合、πスタッキングのために、1個のフェニルアラニンが左チャネルに、2個のチロシンがエントリーチャネルに、そして1個のチロシンがエントリーチャネルと右チャネルで共有されている。これらの芳香族系は、低分子に相補的な芳香族部分を含めることで、πスタッキングの標的とすることができる。3.5Åから5Åの距離では、面-面相互作用と端-面相互作用の両方が非常に有利である。
【0228】
陽イオン/極性-π:陽イオン-πおよび極性-π相互作用は、芳香族π系と陽イオンまたは電子不足極性領域との間で起こる。これらの相互作用は、(iii)と同様に、フェニルアラニンとチロシンとの結合ポケットの左チャネルとエントリーチャネルで利用することができる。これらの残基を標的とするためには、主にエントリーおよび左チャネルに接近する、低分子は極性領域または陽イオンを含む必要がある。さらに、低分子中のπ系は、主にエントリーチャネル外側の境界、左チャネルおよび右チャネルに存在する極性または荷電アミノ酸側鎖と相互作用する可能性がある。
【0229】
ハロゲン結合:低分子中のカルボハロゲンには3個の重要な電子相互作用がある。1個目は主鎖のカルボニル酸素との相互作用で、これは2.5Åから3.5Åの距離で起こる傾向があり、ハロゲンのファンデルワールス半径が大きくなるほど有利になる。さらに、カルボハロゲンは、(iv)で述べた極性-π相互作用と同様の方法でπ系と相互作用する。最後に、カルボハロゲン、特にフッ素は、硫黄原子、特にシスチン中の硫黄原子と強固な結合を形成することができる。結合ポケットの多くの場所に潜在的な結合相互作用が存在するため、ハロゲンは低分子上の多くの場所に付加することができる。左チャネル、右チャネル、エントリーチャネルにハロゲンの標的となるπ系がある。主鎖カルボニル酸素は、主に左チャネルと右チャネルを標的とすることができる。シスチン硫黄は左右のチャネルで利用できる。
【0230】
ファンデルワールス:タンパク質の非荷電、非極性原子と小分子との間の非特異的相互作用は、最も多く存在すると同時に最も弱い。この相互作用は結合ポケット内の全てのチャネルに存在するが、図8でこの領域に疎水性残基が集中していることから観察できるように、エントリーチャネルの中央で唯一利用可能な相互作用である。そのため、新規化合物の開発においては、非極性置換基をエントリーポケットの中心に向けるべきである。
【0231】
その後、以下のアッセイで試験された化合物の構造は、このアプローチで決定され、その後、様々な外注工場によって合成された。
【0232】
2. Nsp13の発現と精製
N末端にHis10-SUMOタグを持つSARS-CoV-2 Nsp13ヘリカーゼをコードするプラスミドを、pGro7(タカラシャペロンプラスミドセット#3340)と共に大腸菌BL21 Gold(DE3)発現株(Agilent Technologies 230132)に共形質転換し、クロラムフェニコールとカナマイシンを添加したLB寒天プレートにプレーティングし、37℃で一晩培養した。LB寒天プレートからの綿棒を、前培養(クロラムフェニコールとカナマイシンを添加したLB)の接種に使用し、30℃で一晩振盪培養した。この前培養を使用して、翌日、発現培養1:50に接種した。発現培養は、光学密度(600nm)が0.5~0.8になるまで37℃で振盪培養した。その後、0.5mg/ml(最終濃度)のL-アラビノースを添加することで、シャペロンの発現を誘導した。さらに37℃で1時間振盪した後、培養を25℃に移し、0.5mM IPTG(最終濃度)の添加によりNsp13の発現を誘導した。発現を25℃で15時間進行させた後、遠心分離によって細菌細胞を回収した。
【0233】
細胞を、EDTAフリーのプロテアーゼ阻害剤(Roche)を添加した50mM Tris pH7.5、500mM NaCl、1mM MgCl2、20mM イミダゾール、1mM DTTに懸濁し、超音波処理で溶解した。溶解液を20,000 x g(4℃)で30分間スピンダウンした。洗浄バッファーとして溶解バッファー、溶出バッファーとして50mM Tris pH7.5、500mM NaCl、1mM MgCl2、500mM イミダゾール、1mM DTTを用いたIMACによりタンパク質を精製した。標的タンパク質を含む溶出画分をプールし、1mgのHis6-SenP2プロテアーゼを添加し、20mM Tris pH 7.5, 300mM NaCl, 1mM MgCl2, 1mM DTTに対して徹底的に透析した。透析したタンパク質溶液に5M NaClを最終濃度500mMになるように添加した。非切断His10-SUMO-Nsp13およびHis6-SenP2はIMACで除去した。タグなし標的タンパク質を含むフロースルーを20mM Tris pH7.5で希釈し、最終NaCl濃度を50mMとし、20mM Hepes pH7.5、50mM NaCl、1mM DTTで操作するヘパリンカラムにロードし、50% 20mM Hepes pH7.5、1M NaCl、1mM DTTへのグラジエントで溶出した。純粋なピーク画分をプールし、20%(v/v)のグリセロールを加え、液体窒素で瞬間凍結し、-80℃で保存した。
【0234】
3. Nsp13ヘリカーゼ巻き戻しアッセイ
FRETベースのDNA巻き戻しアッセイは、配列番号のアミノ酸配列を有するSARSCoV2 Nsp13について確立された。ヘリカーゼ巻き戻しアッセイは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)をモニターし、Nsp13によってスペクトル的に対になるクエンチャー色素で修飾された負荷鎖から、蛍光標識されたレポーター鎖の分離を検出する。ヘリカーゼの巻き戻し反応は、384ウェルプレート中、10mM HEPES pH 7.4、10mM NaCl、0.005% BSA、2.5% グルセロール、2.5mM MgCl2、0.01% CHAPS、2mM DTTで行われ、反応混合物には0.15nM Nsp13と100nMのフルオレセインおよびブラックホールクエンチャー標識dsDNAが含まれていた。200μMのATPおよび1μMの非標識一本鎖DNA(再アニーリングを防止し、レポーター鎖とローディング鎖を永久に分離するssDNA/キャプチャーオリゴ)を添加することで巻き戻し反応を開始し、続いてプレートを1450rpmで5秒間振盪し、蛍光測定に適したホイルで密封した。蛍光の変化は直ちにBMG labtech PheraStar FSXリーダーで記録した(励起波長485nm、発光波長520nm)。特に断りのない限り、巻き戻しは20分間行った。蛍光の増加を時間に対する関数としてプロットし、得られた速度論的トレースを直線曲線フィットすることにより、Nsp13を介した巻き戻しの初期速度を求めた。Nsp13の巻き戻し活性を調節する化合物をプロファイリングするために、ATP添加によって巻き戻しを開始する前に、酵素と基質を化合物存在下で30分間インキュベートした。巻き戻しの速度(初速)を上記のように測定し、推定モジュレーター/化合物非存在下での巻き戻し速度と比較した。
【0235】
4. マラカイトグリーンATPアーゼアッセイ
直交法で活性化合物を確認するため、マラカイトグリーンアッセイを確立し、Nsp13酵素によるATP加水分解の阻害剤としての低分子を検証した(図4)。マラカイトグリーンアッセイでは、ヘリカーゼによるATP加水分解時に遊離する有機リン酸を検出することができる。10μLのATPアーゼアッセイ反応は、10mM HEPES pH7.4、10mM NaCl、0.005% BSA、2.5% グリセロール、2.5mM MgCl2、0.01% CHAPS、2mM DTT、2.5% DMSOの透明384ウェルプレートで行った。反応混合物は500pMのNsp13と、ヘリカーゼアッセイと同じ配列の100nMのdsDNAを含んでいた。反応は100μM ATPの添加によって開始され、その後1450rpmで5秒間プレートを振盪した。反応を5分間進行させた後、20μLのBiomol Green(Enzo Life Sciences)を加えて反応を停止させた。反応停止4分後、ホスホモリブデン酸-マラカイトグリーン複合体の吸光度をTecan Genios proで650nmでモニターした。SARS-CoV-2 Nsp13のATPアーゼ活性を阻害する化合物は、ATPで反応を開始する前に、酵素基質複合体と30分間インキュベートすることによりプロファイリングした。阻害率は、未処理のブランク減算コントロールのブランク減算吸光度を正規化することにより計算した。
【0236】
5. ヒトACE-2発現A549細胞を用いたSARS-CoV-2ナノルシフェラーゼアッセイ
ヒトACE-2レセプターを発現するA549細胞を用いたSARS-CoV-2ナノルシフェラーゼアッセイは、Eisbachの代理として、テキサス大学医学部のPei-Yong Shiの研究室で行われた。A549-ACE2細胞(1ウェルあたり12,000個)を、2%FBS添加フェノールレッドフリー培地中で96ウェル透明プレートに播種した。翌日、化合物の2倍連続希釈液をSARS-CoV-2-Nluc感染の1時間前に添加した。感染後48時間で、溶解した細胞中のルシフェラーゼシグナルをナノルシフェラーゼ基質(Promega)を用いて測定した。相対ルシフェラーゼシグナルを、化合物処理群のルシフェラーゼシグナルをDMSO処理群(100%として設定)に対して正規化することにより算出した。実験は1回(MOI = 0.025)で行い、テクニカルデュプリケートした。
【0237】
6.. VeroE6細胞における患者分離株を用いたSARS-CoV-2抗ウイルスアッセイ。
TCID50読み出し
透明な96ウェルプレートに、10%FBSと100Uペニシリン/0.1mg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM培地にVeroE6(1ウェルあたり10,000細胞)を播種した。翌日、SARS-CoV-2(初代SARS-CoV-2分離株、デュッセルドルフ株、MOI = 1)に感染する1時間前に、化合物の2倍連続希釈液を添加した。感染1時間後、細胞をPBSで3回洗浄し、化合物を補充した。感染から24時間後に各ウェルの細胞培養培地を回収し、TCID50測定に供した。TCID50/mLの値は、クリスタルバイオレット染色と、それに続く細胞変性効果を示すウェルの量のスコアリングによって決定した。TCID50はスピアマン・カーバーアルゴリズムにより算出した。
【0238】
CPEベースのアッセイ
透明な96ウェルプレートに、10%FBSと100Uペニシリン/0.1mg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM培地にVeroE6(1ウェルあたり10,000細胞)を播種した。翌日、SARS-CoV-2(初代SARS-CoV-2分離株、デュッセルドルフ株)に感染する1時間前に、化合物の2倍連続希釈液を添加した。細胞生存率は、感染後72時間のSRBアッセイで測定した。510nmの吸光度をTecanプレートリーダーで測定した。実験は1MOI(MOI = 0.01、2000TCID50)で、テクニカルクアドロプリケートで行った。細胞のみを含むウェルおよびウイルスに感染した細胞を内部コントロールとして用いた。細胞障害効果(CPE)阻害率は、[(試験化合物-ウイルスコントロール)/(細胞コントロール-ウイルスコントロール)]*100と定義した。
【0239】
N-タンパク質ELISA
透明な96ウェルプレートに、10%FBSと100Uペニシリン/0.1mg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM培地にVeroE6(1ウェルあたり1,000細胞)を播種した。翌日、SARS-CoV-2(初代SARS-CoV-2分離株、デュッセルドルフ株)に感染する1時間前に、化合物の2倍連続希釈液を添加した。さらに24時間後、細胞を4%PFAで固定し、Tritonで透過処理し、FCSでブロッキングした。一次抗体はN-タンパク質に対するものである。基質にはTMBを用いた。15分後にHClを加えて反応を停止させ、ELISAリーダーで450nmで測定した。測定値は、生存ウイルスとDMSOのみで処理した細胞に対して正規化した。
【0240】
7. hCoV-229e-Rluc 抗ウイルスアッセイ
Huh7細胞(1ウェルあたり10万個)を、10%FBSと100Uペニシリン/0.1mg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM培地に、白色96ウェルプレートに播種した。翌日、化合物の2倍連続希釈液をhCoV-229e-Rluc感染の1時間前に添加した。感染後24時間で、溶解した細胞中のルシフェラーゼシグナルを、コエンテラジンを生物発光基質として用い、ルミノメーターを用いて測定した。相対ルシフェラーゼシグナルは、化合物処理群のルシフェラーゼシグナルをDMSO処理群(100%として設定)のそれに対して正規化することにより算出した。実験はMOI = 0.01で行い、テクニカルデュプリケートした。
【0241】
8. 化合物の合成
一般式(I)の化合物の合成は、図17に示す一般的な合成スキームに従って行うことができる。図17で調製された化合物は、図14に描かれた化合物リストには示されておらず、むしろフェニル基が置換されていない基本化合物のスカフォールドを反映している(一方、図14に示されたいくつかの化合物はフェニル基に置換基を有する)。
【0242】
例えば、COVI-06の合成は、まず、DMF中、塩基としてNaHを用い、0℃で、3-フルオロベンジルブロミドをヒダントインでN-アルキル化し、室温まで温めることからなる。工程2では、工程1の生成物である3-(3-フルオロベンジル)-2,4-イミダゾリジンジオンとDMFとの縮合反応を還流条件下で6時間行い、(5Z)-5-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-3-[(3-メチルフェニル)メチル]イミダゾリジン-2,4-ジオンを生成させる。工程3は、1-(4-クロロフェニル)エタン-1-オンと炭酸ジメチルを還流条件下で16時間アルドール反応させ、3-(4-クロロフェニル)-3-オキソプロパン酸エチルを生成させる。次に、エチル 3-(4-クロロフェニル)-3-オキソプロパノエートと(4-ニトロフェニル)ヒドラジン塩酸塩の反応混合物をエタノール中で16時間還流することにより、ピラゾール3を生成させる。この工程4の生成物は、3-(4-クロロフェニル)-1-(4-ニトロフェニル)-1H-ピラゾール-5-オールであり、続いて、酢酸存在下、還流条件下で4時間、工程2の生成物である(5Z)-5-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-3-[(3-メチルフェニル)メチル]イミダゾリジン-2,4-ジオンと反応させて、COVI-06を生成させる。
【0243】
COVI-20の合成は、まず(3-メトキシフェニル)メタノールを1-(ブロモメチル)-3-メトキシベンゼンに変換することからなる。予想通り、その後の工程はCOVI-06の合成と同じである。工程2は、1-(ブロモメチル)-3-メトキシベンゼンとヒダントインをDMFおよびNaHで0℃から室温までN-アルキル化反応させ、2-ヒドロキシ-3-[(3-メトキシフェニル)メチル]イミダゾリジン-4-オンを生成させる。工程3では、2-ヒドロキシ-3-[(3-メトキシフェニル)メチル]イミダゾリジン-4-オンを還流条件下で6時間DMFと縮合反応させ、(5Z)-5-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-2-ヒドロキシ-3-[(3-メトキシフェニル)メチル]イミダゾリジン-4-オンを生成させる。工程4では、1-(4-クロロフェニル)エタン-1-オンと炭酸ジメチルを還流条件下で16時間アルドール反応させ、3-(4-クロロフェニル)-3-オキソプロパン酸エチルを生成させる。次に、工程5で、エチル3-(4-クロロフェニル)-3-オキソプロパノエートと(4-ニトロフェニル)ヒドラジン塩酸塩をエタノール中、還流条件下で16時間、ピラゾール形成反応させる。この工程4の生成物は、3-(4-クロロフェニル)-1-(4-ニトロフェニル)-1H-ピラゾール-5-オールであり、この生成物を、その後、酢酸存在下、還流条件下で4時間、(5Z)-5-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-2-ヒドロキシ-3-[(3-メトキシフェニル)メチル]イミダゾリジン-4-オンと反応して、COVI-20を形成させる。
【0244】
同様に、一般式(II)の化合物の合成は、図18に示す一般的な合成スキームに従って行うことができる。ここでも、図18で調製された化合物は、図14に描かれた化合物リストに示されておらず、むしろ、フェニル基が置換されていない基本化合物のスカフォールドを反映している(一方、図14に示されたいくつかの化合物は、フェニル基に置換基を有する)。
【0245】
具体的には、COVI-3の合成は、工程1で2-アミノベンズアミドと3-ブロモベンズアルデヒドの間でキノリノンを形成することから始まる。工程2では、工程1の生成物である2-(3-ブロモフェニル)キナゾリン-4-オールが塩化ホスホリルによる塩素化を受け、2-(3-ブロモフェニル)-4-クロロキナゾリンが生成する。次いで、2-(3-ブロモフェニル)-4-クロロキナゾリンは、工程3において、エチル 3-[(2-フェニルエチル)アミノ]プロパノエート - これは、エチル 3-アミノプロパノエートと(2-ブロモエチル)ベンゼンとの間のDMFおよび炭酸カリウムの存在下、120℃で2時間のアルキル化反応により生成する - での、同様にDMFおよび炭酸カリウムの存在下、120℃で8時間のアミノ化反応に付して、工程4でエチル 3-{[2-(3-ブロモフェニル)キナゾリン-4-イル](2-フェニルエチル)アミノ}プロパノエートを生成させる。続いて、エチル 3-{[2-(3-ブロモフェニル)キナゾリン-4-イル](2-フェニルエチル)アミノ}プロパノエートを、水酸化ナトリウムおよびTHF-H2Oを用いて0℃から室温まで16時間、次いで3時間還流するエステル加水分解反応に付し、COVI-3を生成させる。
【0246】
同様に、COVI-72の合成は、工程1で2-アミノベンズアミドと3-ブロモベンズアルデヒドの間のキノリノン形成から始まる。工程2では、工程1の生成物である2-(3-ブロモフェニル)キナゾリン-4-オールを塩化ホスホリルによる塩素化に付して、2-(3-ブロモフェニル)-4-クロロキナゾリンを生成させる。並行して2-(3-エチルアダマンタン-1-イル)酢酸を酸塩化物を介してアミド形成に付し、2-(3-エチルアダマンタン-1-イル)アセトアミドを生成させ、これは水素化リチウムアルミニウムとTHFで2時間かけて対応するアミンに還元され、2-(3-エチルアダマンタン-1-イル)エタン-1-アミンを生成させる。次に、工程3において、2-(3-エチルアダマンタン-1-イル)エタン-1-アミンが、100℃で1時間加熱することにより、プロプ-2-エンニトリルによるシアノアルキル化を受ける。工程3の生成物である3-{[2-(3-エチルアダマンタン-1-イル)エチル]アミノ}プロパンニトリルは、DIPEAを塩基として2-(3-ブロモフェニル)-4-クロロキナゾリンとジオキサンを用いて120℃で16時間アミノキノリノン形成に使用され、3-{[2-(3-ブロモフェニル)キナゾリン-4-イル][2-(3-エチルアダマンタン-1-イル)エチル]アミノ}プロパンニトリルが得られる。
【0247】
最後に、工程5のテトラゾール形成において、3-{[2-(3-ブロモフェニル)キナゾリン-4-イル][2-(3-エチルアダマンタン-1-イル)エチル]アミノ}プロパンニトリルを、L-プロリン、DMFおよびアジ化ナトリウムを120℃で24時間加熱してCOVI-72に変換する。同様に、一般式(III)の化合物の合成は、図19に示す一般的な合成スキームに従って行うことができる。
【0248】
具体的には、COVI-35は2工程で製造できる。まず、2-ブロモ-1-フェニルエタン-1-オンとチオ尿素を用い、エタノール中、50℃で6時間、アミノチアゾール形成を行い、4-フェニル-1,3-チアゾール-2-アミンを生成させる。4-フェニル-1,3-チアゾール-2-アミンを、次に、1-メチルピペリジン-4-アミン、トリホスゲンおよびDCMと2時間、尿素形成反応に参加させ、COVI-35を形成させる。
【0249】
さらに、COVI-85は、エタノールと3-メチルチオフェン-2-カルボニトリルとのピナー反応から始まり、HClを触媒として3-メチルチオフェン-2-カルボキシイミデートエチルを生成する3段階で製造することができる。COVI-35と同様に、続いてエチル 3-メチルチオフェン-2-カルボキシイミデートとチオ尿素の間で、カリウムtert-ブトキシド、DMSO、分子状ヨウ素を用い、室温で16時間、アミノチアジアゾール形成がされる。これにより3-(3-メチルチオフェン-2-イル)-1,2,4-チアジアゾール-5-アミンが形成され、このアミンが1-メチルピペリジン-4-アミン、トリホスゲン、DCMを用いた工程3の尿素形成反応で2時間使用され、COVI-85が形成される。
【0250】
実施例1に記載したとおり合理的に設計された化合物はすべて、図20の表に示すとおりに、CDAのもと、製造業者のEnamine(Riga, Latvia)、ChemDiv(San Diego CA, USA)またはIntonation Research Laboratories(Hyderabad, India)から取り寄せた。本発明の阻害剤は、合成するのが簡単な分子であり、当業者であれば、何ら発明的活動をせずともそのような分子を合成することは可能である。従って、合成すべき構造が提供されれば、このような化合物を注文に応じて製造できる受託製造業者は多数存在する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8-1】
図8-2】
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図18
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図20
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【配列表】
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【国際調査報告】