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特表2024-542009可塑化PVOH組成物をベースとするエラストマーマトリックス及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】可塑化PVOH組成物をベースとするエラストマーマトリックス及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20241106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K47/32
A61P27/02
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/16
A61K47/38
A61K47/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525522
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 IL2022051138
(87)【国際公開番号】W WO2023073707
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】287646
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】63/272,241
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522411832
【氏名又は名称】アヴィシ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】aVISI Ltd.
【住所又は居所原語表記】11 HaBarzel Street, 7th Floor, Suite A13, Tel-Aviv, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベトサー ニル
(72)【発明者】
【氏名】アディン イタイ
(72)【発明者】
【氏名】ハダー ケレン
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD42
4C076DD49
4C076DD50
4C076DD51
4C076DD59
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE37
4C076FF31
(57)【要約】
ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)と、いずれも水ではない少なくとも2つの可塑剤と、水とを含むエラストマーマトリックスが本明細書において提供される。可塑剤とPVOHとの合計質量比は、少なくとも2:1であり、PVOH及び可塑剤の合計質量含有率は、水を除くマトリックスの総重量の少なくとも70重量%である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーマトリックスであって、
ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)と、
いずれも水ではない少なくとも2つの可塑剤と、
水と、
を含み、
前記可塑剤と前記PVOHとの合計質量比が少なくとも2:1であり、
前記PVOH及び前記可塑剤の合計質量含有率が、前記水を除く前記マトリックスの総重量の少なくとも70wt%である、エラストマーマトリックス。
【請求項2】
眼科用デバイスとして使用されるエラストマーマトリックスであって、
ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)と、
水ではない少なくとも1つの可塑剤と、
水と、
を含み、
前記可塑剤と前記PVOHとの質量比が少なくとも2:1であり、
前記PVOH及び前記可塑剤の合計質量含有率が、前記水を除く前記マトリックスの総重量の少なくとも70wt%である、エラストマーマトリックス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの可塑剤が少なくとも2つの可塑剤を含み、そのいずれも水ではない、請求項2に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項4】
前記可塑剤と前記PVOHとの質量比が20未満:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項5】
実質的に等方性に膨潤及び収縮する、請求項1~4のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項6】
湿潤条件又は乾燥条件下で実質的に同じ形状を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項7】
湿潤条件下で50体積%未満膨潤する、請求項1~6のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項8】
結晶化度が50%未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項9】
全光線透過率が80%未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項10】
前記PVOHの加水分解度が90%超である、請求項1~9のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項11】
前記PVOHの重合度が500~5,000である、請求項1~10のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項12】
前記可塑剤又は前記可塑剤の少なくとも1つが、少なくとも2つの水素結合形成官能基を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項13】
前記可塑剤又は前記可塑剤の少なくとも1つのモル質量が1,000g/mol未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項14】
2つ以上の可塑剤を含む場合、前記可塑剤の少なくとも1つが、モル質量1,000g/mol超のオリゴマーである、請求項1~13のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項15】
2つ以上の可塑剤を含む場合、前記可塑剤の少なくとも1つの粘度が少なくとも1,000cpであり、前記可塑剤の少なくとも他の1つの粘度が200cp未満である、請求項1~14のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項16】
前記可塑剤又は前記可塑剤の少なくとも1つがポリオール、多塩基有機酸、ポリアミン、アルキルグルセス、脂肪族ポリアルキレングリコール、エタノールアミン、糖、オリゴ糖、アミノ酸、ポリフェノール、トロメタミン、尿素、タンニン酸、並びにそれらの任意の塩及びそれらの組合せからなる群から独立して選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項17】
前記ポリオールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチンエリスリトール、ポリグリコール、ポロキサマー、並びにそれらのコポリマー、並びにグリセロール及びそのエステルからなる群から選択される、請求項16に記載のマトリックス。
【請求項18】
前記多塩基有機酸がシュウ酸、マレイン酸、クエン酸及びそれらの任意の塩からなる群から選択される、請求項16に記載のマトリックス。
【請求項19】
前記ポリアミンがスペルミン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリエチレンイミン及びそれらの任意の塩からなる群から選択される、請求項16に記載のマトリックス。
【請求項20】
前記脂肪族ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール、ポロキサマー及びポリソルベートからなる群から選択される、請求項16に記載のマトリックス。
【請求項21】
前記脂肪族ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項16に記載のマトリックス。
【請求項22】
前記PVOHの質量含有率が前記脂肪族ポリアルキレングリコールの質量含有率と実質的に等しい、請求項20又は21に記載のマトリックス。
【請求項23】
前記脂肪族ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項22に記載のマトリックス。
【請求項24】
前記可塑剤又は前記可塑剤の各々が生体適合性である、請求項1~23のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項25】
前記可塑剤又は前記可塑剤の各々が眼科的に許容可能である、請求項24に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項26】
前記水が前記マトリックスの全質量含有率の50wt%未満を占める、請求項1~25のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項27】
前記PVOHの質量含有率が前記マトリックスの非水成分の総重量の5wt%未満である、請求項1~26のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項28】
共有結合架橋を本質的に含まない、請求項1~27のいずれか一項に記載のエラストマーマトリックス。
【請求項29】
複数の水素結合形成残基を含む非PVOHポリマーを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項30】
前記PVOHと前記非PVOHポリマーとの質量比が少なくとも2:1である、請求項29に記載のマトリックス。
【請求項31】
前記非PVOHポリマーがポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、セルロース、キチン、グリコーゲン、デンプン、ジェラン、デキストラン、イヌリン、ペクチン、アラビノキシラン及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項30に記載のマトリックス。
【請求項32】
薬学的活性剤を更に含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のマトリックス。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載のマトリックスを含む眼科用デバイス。
【請求項34】
前記マトリックスが眼科的に許容可能な成分からなる、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記マトリックスが薬学的活性剤を含む、請求項33又は34に記載のデバイス。
【請求項36】
眼の表面に配置されるように構成される、請求項33~35のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
前記表面が、少なくとも部分的に、上眼瞼及び下眼瞼の少なくとも一方の内側、かつ眼の角膜の外側にある、請求項33~36のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項38】
少なくとも1つの薬学的活性剤を眼に長時間にわたって送達する、請求項33~37のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
この出願は、2021年10月27日に出願された米国仮特許出願第63/272,241号の優先権の利益を主張するものである。この米国出願の開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
この出願はまた、2021年10月27日に出願されたイスラエル国特許第287646号に関するものである。この米国出願の開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0003】
本発明は、その幾つかの実施の形態において、材料科学に関し、より詳細には、ポリビニルアルコール(PVOH)ベースのエラストマーマトリックス及びその使用に関するが、これらに限定されるものではない。
【背景技術】
【0004】
ポリビニルアルコール(PVOH)は、式(CO)nによって表される水溶性合成ポリマーである。PVOHは、アセテート基をヒドロキシル基に置き換えるポリ酢酸ビニルの加水分解によって調製される。PVOHには、人工心臓の内壁、人工軟骨、カテーテル、皮膚及び膵臓用膜等の生物医学的用途及び薬学的用途を含む多数の用途がある。PVOHは、化学的又は物理的に(すなわち、共有結合によらない)架橋することができる。
【0005】
物理的架橋中に、ヒドロキシル基が相互作用して、分子内及び分子間に水素結合を形成し、結果として結晶子が形成される。物理的架橋は通例、溶媒の添加を伴う又は伴わない凍結融解によって行われ、よく知られたクリオゲルが得られる。代替的には、ポリビニルアルコールの溶液を乾燥させることができる(Otsuka, E., & Suzuki, A., Journal of Applied Polymer Science, 2009, 114(1), 10-16, doi:10.1002/app.30546)。柔軟性を改善するために様々な可塑剤を添加することができ、添加量は、一般に30%未満、しばしば10%未満である(Mohsin, M., et al., Journal of Applied Polymer Science, 2011, 122(5), 3102-3109. doi:10.1002/app.34229、Lim, L. Y. et al., Drug Development and Industrial Pharmacy, 1994, 20(6), 1007-1020. doi:10.3109/03639049409038347、及びWu, W. et al., Journal of Polymers and the Environment, 2011, 20(1), 63-69. doi:10.1007/s10924-011-0364-7)。
【0006】
Zhang, B. et al.,(Ceramics International, 2020, doi:10.1016/j.ceramint.2020.03.286)は、YSZテープカレンダー法におけるポリビニルアルコールフィルムの機械的特性の有益な役割について教示している。
【0007】
米国特許第4,874,562号には、ポリビニルアルコールコンタクトレンズを成形する方法が開示されている。
【0008】
米国特許第4,663,358号には、水と水混和性有機溶媒とからなる混合溶媒中のポリ(ビニルアルコール)溶液から調製される多孔質の透明な水和ゲルが開示されている。ポリ(ビニルアルコール)溶液を室温未満に冷却することで、ポリ(ビニルアルコール)分子の結晶化の結果としてゲルが形成される。ゲルに含まれる有機溶媒を水と交換することで、高い引張強度、高い含水率及び高い光線透過率を有するポリ(ビニルアルコール)の水和ゲルが生成する。
【0009】
米国特許第10,513,588号には、可塑剤ブレンドを含む水溶性ポリビニルアルコールフィルムが開示されている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、ポリビニルアルコール及び可塑剤から形成されるエラストマーマトリックスを提供する。本明細書に開示されるエラストマーマトリックスは、その乾燥形態で軟質かつ弾性である。マトリックスは、その軟性及び可塑性を失うことなく、乾燥条件下で長時間保存することができるため、特に長い保存寿命を享受し得る。マトリックスは、液体に浸漬又は曝露された後に形状、体積及び弾性等の特性が実質的に変化しないため、かかる安定性を必要とする用途に適している可能性がある。エラストマーマトリックスに、薬学的活性剤等の付加的な化合物を装填することができ、これを眼科用デバイスとして又は眼科用デバイスに使用することができる。本明細書に開示されるマトリックスの幾つかの実施の形態は、インプラントとして、局所適用のために、又は体腔への挿入のために使用することができる。幾つかの実施の形態は、自己適用され得るか、又は例えば外科処置中に医師により適用され得る。
【0011】
そのため、本発明の幾つかの実施の形態の一つの態様によると、エラストマーマトリックスであって、
ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)と、
いずれも水ではない少なくとも2つの可塑剤と、
水と、
を含み、
可塑剤とPVOHとの合計質量比が少なくとも2:1であり、
PVOH及び可塑剤の合計質量含有率が、水を除くマトリックスの総重量の少なくとも70wt%である、エラストマーマトリックスが提供される。
【0012】
本発明の幾つかの実施の形態の別の態様によると、眼科用デバイスとして使用されるエラストマーマトリックスであって、
【0013】
ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)と、
水ではない少なくとも1つの可塑剤と、
水と、
を含み、
可塑剤とPVOHとの質量比が少なくとも2:1であり、
PVOH及び可塑剤の合計質量含有率が、水を除くマトリックスの総重量の少なくとも70wt%である、エラストマーマトリックスが提供される。
【0014】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、少なくとも2つの可塑剤を含み、そのいずれも水ではない。
【0015】
幾つかの実施の形態において、可塑剤とPVOHとの質量比は、20未満:1である。
【0016】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、実質的に等方性に膨潤及び収縮する。
【0017】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、湿潤条件又は乾燥条件下で実質的に同じ形状を有することを特徴とする(形状安定性、形状不変性、形状保持)。
【0018】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、湿潤条件下で50体積%未満膨潤することを特徴とする。
【0019】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、結晶化度が50%未満であることを特徴とする。
【0020】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、全光線透過率が80%未満であることを特徴とする。
【0021】
幾つかの実施の形態において、PVOHの加水分解度が90%超であることを特徴とする。
【0022】
幾つかの実施の形態において、PVOHの重合度が500~5,000であることを特徴とする。
【0023】
幾つかの実施の形態において、1つ又は複数の可塑剤(plasticizer or plasticizers)は、少なくとも2つの水素結合形成官能基を含む。
【0024】
幾つかの実施の形態において、1つ又は複数の可塑剤のモル質量は、1,000g/mol未満であることを特徴とする。
【0025】
マトリックスが2つ以上の可塑剤を含む幾つかの実施の形態において、可塑剤の少なくとも1つは、モル質量が1,000g/mol超であることを特徴とするオリゴマーである。
【0026】
マトリックスが2つ以上の可塑剤を含む幾つかの実施の形態において、可塑剤の少なくとも1つの粘度は、少なくとも1,000cpであることを特徴とし、可塑剤の少なくとも他の1つの粘度は、200cp未満であるであることを特徴とする。
【0027】
幾つかの実施の形態において、可塑剤は、ポリオール、多塩基有機酸、ポリアミン、アルキルグルセス(alkyl gluceth)、脂肪族ポリアルキレングリコール、エタノールアミン、糖、オリゴ糖、アミノ酸、ポリフェノール、トロメタミン、尿素、タンニン酸、並びにそれらの任意の塩及び/又はそれらの組合せからなる群から独立して選択される。
【0028】
幾つかの実施の形態において、ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチンエリスリトール、ポリグリコール、ポロキサマー、並びにそれらのコポリマー、並びにグリセロール及びそのエステルからなる群から選択される。
【0029】
幾つかの実施の形態において、多塩基有機酸は、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸及びそれらの任意の塩からなる群から選択される。
【0030】
幾つかの実施の形態において、ポリアミンは、スペルミン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリエチレンイミン及びそれらの任意の塩からなる群から選択される。
【0031】
幾つかの実施の形態において、脂肪族ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール、ポロキサマー及びポリソルベートからなる群から選択される。
【0032】
幾つかの実施の形態において、脂肪族ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールである。
【0033】
幾つかの実施の形態において、PVOHの質量含有率は、脂肪族ポリアルキレングリコールの質量含有率と実質的に等しい。
【0034】
幾つかの実施の形態において、脂肪族ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0035】
幾つかの実施の形態において、可塑剤は、生体適合性である。
【0036】
幾つかの実施の形態において、可塑剤は、眼科的に許容可能である。
【0037】
幾つかの実施の形態によると、本明細書において提供されるエラストマーマトリックス中の可塑剤は、グリセロール、プロピレングリコール、マンニトール及びソルビトール等の糖アルコール、クエン酸塩、並びにEDTA塩のいずれか1つである。幾つかの実施の形態において、PEG及びポリプロピレングリコールが好ましい第2の可塑剤である。他の好ましい可塑剤としては、ジカルボン酸(例えばマレイン酸、フマル酸、タンニン酸等)、糖(例えばフルクトース、マルトース等)、DMSO、アミノ酸、クエン酸トリエチル及びジプロピレングリコールが挙げられる。
【0038】
幾つかの実施の形態によると、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの機械的特性は、0.05MPa~2MPaのヤング率、0.05MPa~2MPaの引張強度、及び100%~900%の破断点伸びを含む。
【0039】
幾つかの実施の形態において、水の質量含有率は、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの全質量含有率の50wt%未満を占める。
【0040】
幾つかの実施の形態において、PVOHの質量含有率は、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの非水成分の全質量含有率の5wt%未満を占める。
【0041】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、共有結合架橋を本質的に含まない。
【0042】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、複数の水素結合形成残基を特徴とする非PVOHポリマーを含む。
【0043】
幾つかの実施の形態において、PVOHと非PVOHポリマーとの質量比は、少なくとも2:1である。
【0044】
幾つかの実施の形態において、非PVOHポリマーは、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、セルロース、キチン、グリコーゲン、デンプン、ジェラン(gellan)、デキストラン、イヌリン、ペクチン、アラビノキシラン及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0045】
幾つかの実施の形態において、本明細書において提供されるマトリックスは、薬学的活性剤を更に含む。
【0046】
本発明の幾つかの実施の形態の別の態様によると、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスを含む眼科用デバイスが提供される。
【0047】
幾つかの実施の形態において、エラストマーマトリックスは、眼科的に許容可能な成分からなる。
【0048】
幾つかの実施の形態において、エラストマーマトリックスは、薬学的活性剤を含む。
【0049】
幾つかの実施の形態において、デバイスは、眼の表面に配置されるように構成される。
【0050】
幾つかの実施の形態において、表面は、少なくとも部分的に、上眼瞼及び下眼瞼の少なくとも一方の下、かつ眼の角膜の外側にある。
【0051】
幾つかの実施の形態において、デバイスは、少なくとも1つの薬学的活性剤を眼に長時間にわたって送達するように構成される。
【0052】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、±10%を意味する。
【0053】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの活用形は、「含むが、それに限定されない」を意味する。
【0054】
「からなる」という用語は、「含み、それに限定される」を意味する。
【0055】
「から本質的になる」という用語は、組成物、方法又は構造が付加的な成分、工程及び/又は部分を含んでいてもよいが、付加的な成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的な新規の特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0056】
本明細書において使用される場合、或る特定の物質の文脈における「実質的に含まない」及び/又は「本質的に含まない」という表現は、この物質を全く含まないか、又は組成物の総重量若しくは総体積に対して約5%、1%、0.5%若しくは0.1%未満の物質を含む組成物を指す。代替的には、プロセス、方法、特性又は特徴の文脈における「実質的に含まない」及び/又は「本質的に含まない」という表現は、或る特定のプロセス/方法工程、若しくは或る特定の特性若しくは或る特定の特徴を全く含まないプロセス、組成物、構造若しくは物品、又は或る特定のプロセス/方法工程が、所与の標準的なプロセス/方法と比較して約5%、1%、0.5%若しくは0.1%未満達成されるプロセス/方法、又は所与の標準と比較して約5%、1%、0.5%若しくは0.1%未満の特性若しくは特徴を特徴とする特性若しくは特徴を指す。
【0057】
物体又は組成物の元の特性、又は所望の特性、又は得られた特性に適用される場合、本明細書において使用される「実質的に維持する」という用語は、処理された物体又は組成物において特性が20%、10%超又は5%超変化していないことを意味する。
【0058】
「例示的な」という用語は、本明細書において「例、実例又は説明としての役割を果たす」という意味で使用される。「例示的」と記載される任意の実施の形態は、必ずしも他の実施の形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるものではなく、及び/又は他の実施の形態からの特徴の組込みを排除するものではない。
【0059】
「任意に」又は「代替的に」という語は、本明細書において「幾つかの実施の形態において提供され、他の実施の形態において提供されない」という意味で使用される。本発明の任意の特定の実施の形態は、かかる特徴が矛盾しない限り、複数の「任意の」特徴を含んでいてもよい。
【0060】
本明細書において使用される場合、数量を特定していない単数形(the singular form "a", "an" and "the")は、文脈上他に明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0061】
本願全体を通して、本発明の様々な実施の形態は、範囲形式で提示される場合がある。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する融通性のない限定として解釈されるべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6等の範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。このことは、範囲の広さに関わらずに当てはまる。
【0062】
本明細書において数値範囲を示す場合は常に、指定の範囲内の引用された任意の数値(分数又は整数)を含むことが意図される。第1の指定の数値と第2の指定の数値と「の間の範囲(ranging/ranges)」、及び第1の指定の数値「から」第2の指定の数値「までの範囲」という表現は、本明細書において区別なく使用され、第1の指定の数値及び第2の指定の数値、並びにその間の全ての分数及び整数の数値を含むことを意味する。
【0063】
本明細書において使用される場合、「プロセス」及び「方法」という用語は、化学、材料、機械、計算及びデジタル技術の当業者に既知であるか、又は既知の方法、手段、技術及び手順から容易に開発される方法、手段、技術及び手順を含むが、これらに限定されない、所与の課題を達成するための方法、手段、技術及び手順を指す。
【0064】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料が、本発明の実施の形態の実施又は試験において使用され得るが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先される。加えて、材料、方法及び実施例は、例示に過ぎず、必ずしも限定を意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、その幾つかの実施形態において、材料科学に関し、より詳細には、ポリビニルアルコール(PVOH)ベースのエラストマーマトリックス及びその使用に関するが、これらに限定されるものではない。
【0066】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その適用において、以下の説明に記載されるか又は実施例により例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態を包含するか、又は様々な方法で実施若しくは実行されることが意図される。
【0067】
本発明者らは、本発明を考案する際に、化学架橋剤の残留物を含まず、水性媒体への浸漬中に形状及び粘稠度の点で安定したPVOHベースのエラストマーマトリックスを構想した。構想されたエラストマーマトリックスは、乾燥条件下及び湿潤条件下で軟質かつ弾性的であり、液体に浸漬又は曝露した後に形状が実質的に変化しなかった。本発明者らは、本発明を実施化する際に、ポリビニルアルコールに多量の可塑剤を添加することにより、かかるマトリックスを形成し得ることを驚くべきことに見出した。特に、可塑剤(単数又は複数)の量は、ポリビニルアルコールの少なくとも2倍とすることが望ましい。
【0068】
PVOHベースのエラストマーマトリックス:
上で論考した知見を最適化する際に、本発明者らにより、組成物中に35重量%(wt%)未満のポリビニルアルコールを含むエラストマーマトリックスが、乾燥条件下でエラストマーマトリックス形態を維持し、湿潤条件下で50体積%未満(又はその三次元の各々に沿って15%未満)膨潤し、乾燥条件と湿潤条件との間を行き来する際にそのサイズ、形状及び形態を実質的に維持することが驚くべきことに見出された。これらの特性を操作する(例えば、可撓性を損なうことなく膨潤傾向を減少させる)には、少なくとも2つの可塑剤の使用が必要とされることが見出された。
【0069】
このため、本発明の幾つかの実施形態の一態様によると、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)と、いずれも水ではない少なくとも2つの可塑剤と、水とを含むエラストマーマトリックスが提供される。マトリックスは、PVOHに対する可塑剤の合計質量比が少なくとも2:1であり、PVOH及び可塑剤の合計質量含有率が、水の質量を除くマトリックスの総重量の少なくとも70wt%であり、すなわち、PVOH及び可塑剤(複数の場合もある)の総質量が、マトリックスの全ての非水成分の質量の少なくとも70wt%、少なくとも60wt%又は少なくとも50wt%である場合に、特定の所望の特性を示す。
【0070】
「合計質量比」という用語は、本明細書において使用される場合、マトリックスの別の成分(例えばPVOH)の量に対する複数の成分(例えば可塑剤)の合計量を指し、ここで、全ての量は、質量(例えばグラム)単位で提示される。合計質量比は、複数の成分の質量を合計して合計質量を得て、合計質量を他の成分の質量で除算することによって算出される。
【0071】
「合計質量」という用語は、本明細書において使用される場合、質量単位で提示される複数の成分の合計量を指す。合計質量は、複数の成分を構成する成分の質量を合計することによって算出される。
【0072】
本発明の幾つかの実施形態の別の態様によると、眼科用デバイスとして使用されるエラストマーマトリックスであって、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)と、水ではない可塑剤と、水とを含み、可塑剤とPVOHとの質量比が少なくとも2:1であり、マトリックスの全ての非水成分の質量含有率が、水の質量を除くマトリックスの総重量の少なくとも70wt%である、エラストマーマトリックスが提供される。幾つかの実施形態において、眼科用デバイスとして使用されるエラストマーマトリックスは、いずれも水ではない少なくとも2つの可塑剤を含み、PVOHに対する可塑剤の合計質量比は、少なくとも2:1であり、PVOH及び可塑剤の合計質量含有率は、水の質量を除くマトリックスの総重量の少なくとも70wt%であり、すなわち、PVOH及び可塑剤(複数の場合もある)の総質量は、眼科用デバイスとして使用されるエラストマーマトリックスの全ての非水成分の質量の少なくとも70wt%、少なくとも60wt%又は少なくとも50wt%である。
【0073】
幾つかの実施形態において、可塑剤(複数の場合もある)とPVOHとの質量比は、5未満:1、10未満:1、15未満:1、20未満:1又は30未満:1である。幾つかの実施形態において、可塑剤(複数の場合もある)とPVOHとの質量比は、5~2:1(5:1~2:1)又は30:1~5:1の範囲である。
【0074】
本発明の幾つかの実施形態によると、PVOHの質量含有率は、マトリックスの非水成分の総重量の5wt%未満を占める。代替的には、PVOHの質量含有率は、マトリックスの非水成分の総重量の10wt%未満、15wt%未満、20wt%未満、25wt%未満又は30wt%未満を占める。
【0075】
「エラストマーマトリックス」という用語は、本明細書において使用される場合、ゴム状弾性を示し、力の影響下で変形を受け、力が取り除かれると元の形状を回復することができる架橋ポリマー構造形態を指す。本発明の幾つかの実施形態の文脈において、エラストマーマトリックスは、相互接続した空隙内に隔離され、放出可能な物質を組み込むことができるオープンセル多孔質微細構造を有する物理的に架橋されたポリマー構造の形態である。本発明の幾つかの実施形態によると、エラストマーマトリックスは、水素結合ポリマー及び可塑剤のネットワークである。本発明の幾つかの実施形態によると、エラストマーマトリックスは、水素結合ポリマー、可塑剤及び水のネットワークである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、共有結合架橋を本質的に含まない。
【0076】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、約50%~約90%の空隙率を有する。幾つかの実施形態において、マトリックスは、少なくとも約50%、60%、70%、80%又は少なくとも約90%の空隙率を特徴とする。
【0077】
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの粘稠度は、ヒドロゲルの粘稠度に類似し得るが、ヒドロゲルとは対照的に、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、乾燥条件下で安定し、その可撓性を保持するために水に浸漬する必要はない。本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの機械的特性は、乾燥条件下及び/又は湿潤条件下(例えば、水性媒体に浸漬)でゴム(エラストマー)の機械的特性に類似する。
【0078】
明示的に別段の記載がない限り、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスへの任意の言及は、乾燥条件下でのエラストマーマトリックスに対してなされる。「乾燥条件」という用語は、本明細書において提供されるエラストマーマトリックス自体を指し、マトリックスが浸漬していても又は浸漬していなくてもよい溶液を指すことはない。本発明の実施形態によると、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、液体培地に浸漬しているか否か、又は濡れているか否かに関わらず、画定可能であり、形状が安定している。
【0079】
水は、エラストマーマトリックス内に構造的に固定されていてもよく、マトリックスから自由に蒸発/流出してもよく、又はマトリックス内に存在しなくてもよい。水の正確な量(固定及び/又は遊離)は、マトリックス中の成分の性質及びマトリックスが保存される条件に応じて変化する。本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの「非水」要素/成分について言及する場合、水を除くその全成分に言及することが意図される。「非水」要素の質量含有率は、水の質量を含み得る乾燥条件下でのマトリックスの質量含有率と混同してはならない。
【0080】
「乾燥条件」に言及する場合、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスが、開放容器又は密閉容器内にて室温で空気に曝露され、液体、例えば水又は任意の他の水性媒体若しくは液体に浸漬していない条件に関するものと解釈されるべきである。眼科用デバイスの文脈において、「乾燥条件」は、コンタクトレンズの保管方法とは相反する状態を表す。コンタクトレンズは一般にヒドロゲル製であり、その形状及び展延性を保持するために、常に水性媒体下に保存する必要がある。これとは際立って対照的に、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、濡れたままにしておく必要はなく、湿潤条件と乾燥条件との間を行き来する際に、その形状は変化しない(但しサイズは変化する可能性がある)。
【0081】
したがって、エラストマーマトリックスがマトリックスの非水成分の総重量の35wt%未満のポリビニルアルコールを有すると言われる場合、PVOHの質量含有率が、(もしあれば)マトリックス内に構造的に固定された又はマトリックスから自由に流出する任意の水を除くマトリックスの全質量含有率の35wt%未満を占めることを意味する。
【0082】
マトリックス中の水が比較的少量であることで、マトリックスがより長い保存寿命を有し、乾燥条件下(すなわち、液体に浸漬しない)で保存可能となるが、過剰量の水は必要とされず、望ましくない。湿ったエラストマーマトリックスから水のみが蒸発すると仮定すると、従来の乾燥後に残る水の量は、マトリックスの一部を形成するとみなされる。本発明の文脈において、従来の乾燥は、室温及び周囲湿度下でマトリックスの外表面を周囲空気に曝露することによって乾燥させることである。室温は15℃~30℃の範囲とすることができ、相対湿度は30%~75%の範囲とすることができる。正確な従来の乾燥時間は、マトリックスの特定の含有量によって異なり得るが、通例24時間~4日である。
【0083】
水分量は、数ある方法の中でも、カールフィッシャー法、及び乾燥による質量損失の直接測定、すなわちLOD法によって決定することができる。カールフィッシャー法は、滴定液としてHydranalコンポジット5(Honeywell社)を用い、カールフィッシャー装置モデルTitrando 852(Metrohm社)を使用して容量分析で行った。メタノールを溶媒として使用した。LOD試験は、日本の株式会社エー・アンド・デイのMX-50水分計を用い、700mg以上のサンプルに対して85℃の温度下で行った。
【0084】
所与のサンプルについて同様の結果をもたらすこれらの方法によると、本発明の幾つかの実施形態において、エラストマーマトリックスは、その中に約50wt%未満の水を含む。幾つかの実施形態において、水分量は、マトリックスの総質量の約40wt%未満、約30wt%未満、約25wt%未満、約20wt%未満、約15wt%未満、約10wt%未満又は約5wt%未満である。
【0085】
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、その独自の組成により、湿潤条件下で、形状を保持したまま50体積%未満膨潤する。幾つかの実施形態において、マトリックスは、湿潤条件下で40体積%以下、又は35体積%未満、又は20体積%未満、又は15体積%未満、又は10体積%未満、又は5体積%未満膨潤する。
【0086】
本明細書において、マトリックスを注型、成形、切断、又は他の形で明確な3D形状に作製することができ、この形状が、条件が乾燥から湿潤及びその逆に変化しても本質的に変化しないことに留意されたい。この特性は、本明細書において形状保持と称される。言い換えると、本明細書において提供されるマトリックスの断片の全体積は、湿潤条件の変化の下で変化(膨潤又は収縮)する可能性があるが、断片の全体的な形状は、歪み、圧縮又は変形なしに本質的に同じままである。したがって、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの別の特徴は、湿潤条件の変化の下であらゆる方向及び配向に沿った実質的に均一なサイズ変動性である。実質的に均一とは、サイズが各方向に沿って同じ量±20%だけ変化することを意味する。この特徴は、本明細書において等方性の膨潤及び収縮と称されることがある。
【0087】
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの組成及び調製方法では、マトリックスの結晶化度も決定される。結晶化度(DoC)は、ポリマー物質中の規則的な分子の割合であり、多くの既知のポリマー物質については通例、10%~80%の範囲である。小分子を有する材料、又は融点直下の温度で調製及び/又は保存されたポリマー物質においては、より高い値を達成することができる。結晶化度を評価する殆どの方法では、完全な結晶性の領域と完全に無秩序な領域との混合が仮定され、移行領域は数%になると予想される。これらの方法には、密度測定、示差走査熱量測定(DSC)、X線回折(XRD)、赤分光法及び核磁気共鳴(NMR)が含まれる。
【0088】
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、室温未満まで冷却する必要はなく、凝固及び乾燥させた後、室温超に加熱する必要はない。幾つかの実施形態によると、マトリックスの結晶化度は、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満又は20%未満である。
【0089】
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、マトリックスが透明である必要がある用途及びかかる要件を提起しない用途を含む眼科用途における眼科用デバイスとしての使用に非常に適している。このため、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、幾つかの実施形態によると、比較的低い透明性を特徴とする。物質の透明性は、物質から作製されたフィルム/シートを通して見た際に物体を見ることができる光学的明瞭さを指す。本明細書において提供されるエラストマーマトリックスから作製された物体の透明性は、反射、吸収及び分散という影響因子を考慮しながら、入射光に対する透過光の比率である全透過率によって測定することができる。例えば、吸収/分散及び反射を減算するため、サンプルの全透過率は、入射光(100%)から吸収/分散(X%)及び反射(Y%)を差し引いたものであり、言い換えると、全透過率=入射光-(吸収/分散+反射)である。幾つかの実施形態において、不透明エラストマーマトリックスが、例えば機能性を損なうことなく製造がより容易であるため、好ましい場合がある。例えば、不透明エラストマーマトリックスは、可塑剤としてPEGを用い、及び/又は室温でマトリックスを製造することによって得ることができる。
【0090】
本発明の幾つかの実施形態によると、エラストマーマトリックスは、0.5mmの光路長を通した全透過率(透明性)が80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、40%未満又は30%未満の全光線透過率であることを特徴とする。
【0091】
本発明の幾つかの実施形態によると、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの調製に使用されるPVOHは、80%超、85%超、90%超又は95%超の加水分解度(D.H.)を特徴とする。幾つかの実施形態において、PVOHの加水分解度は、100%未満である。
【0092】
ポリマーの重合度(D.P.)は、ポリマーの分子量をモノマー単位の分子量で除算することによって推定される。本発明の幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの調製に使用されるPVOHは、500~5,000の範囲の重合度を更に特徴とする。幾つかの実施形態において、PVOHは、異なる重合度の混合物であり、例えば高分子量(例えば、3,000モノマー以上の鎖長)の1つのPVOHと低分子量(例えば、1,000モノマー以下の鎖長)の1つのPVOHとを含有し得る。
【0093】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、非生分解性マトリックスである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、生分解性マトリックスである。幾つかの実施形態において、エラストマーマトリックスは、室温にて1ヶ月超液体中で安定である。幾つかの実施形態において、上記エラストマーマトリックスは、液体(水、体液)と接触すると、少なくとも部分的かつ徐々に溶解及び/又は浸食を受ける。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、生体侵食性であり、すなわち、マトリックスが生体組織及び/又は体液と接触した場合に生じる物理的プロセス、例えば溶解、及び/又は化学的プロセスのいずれかにより、マトリックス中のポリマーバルクの量が減少する。幾つかの実施形態において、上記体液は涙液である。
【0094】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、少なくとも1つの無機イオン及び/又はその塩、及び/又は少なくとも1つの有機イオン及び/又はその塩を更に含む。
【0095】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、少なくとも1つの緩衝剤を更に含む。幾つかの実施形態において、緩衝剤はトロメタミン、リン酸カリウム、クエン酸及びそれらの任意の組合せである。
【0096】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、少なくとも1つの界面活性剤を更に含む。幾つかの実施形態において、界面活性剤は、ソルビタンエステル(Span)、ソルビタントリステアレート(Tween)、ポロキサマー、Triton、Betain及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0097】
幾つかの実施形態において、本発明のマトリックスは、化学的(共有結合)架橋を実質的に含まない。
【0098】
機械的特性:
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、湿潤条件に曝露した場合に、その機械的特性、例えばレオロジー特性、破断点伸び、引張強度、降伏強度、降伏点伸び、弾性率等を実質的に維持することができる。
【0099】
本明細書において「乾燥条件」に言及する場合、本発明のマトリックスが開放容器又は密閉容器内にて室温で空気に曝露され、液体、特に水性液体に浸漬していない条件に関するものと理解されるべきである。「湿潤条件」に言及する場合、本発明のマトリックスが液体と直接接触している(液体に浸漬しているか、又は液体に浸漬した後かつ液体が蒸発若しくは払拭される前である)条件に関するものと理解されるべきである。
【0100】
幾つかの実施形態において、液体は、天然に存在する体液(血液、唾液、涙液、排泄物、生体組織、組織液を含むが、これらに限定されない)、(例えば少なくとも1つの可塑剤の)水溶液、緩衝液及びそれら任意の組合せである。幾つかの実施形態において、液体は、天然に存在するか、又は人工涙液等の天然に存在する液体を模擬したものである。幾つかの実施形態において、人工涙液は、約0.67%の塩化ナトリウム、約0.2%の重炭酸ナトリウム及び約0.008%の塩化カルシウムを含有する水溶液をベースとする。
【0101】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、乾燥条件下で少なくとも100%、200%、300%、400%、500%、700%、少なくとも800%又は少なくとも900%の破断点伸びを特徴とする。幾つかの実施形態において、マトリックスの破断点伸びは、湿潤条件下(液体に浸漬しているか、又は液体に浸漬した後)で少なくとも100%である。
【0102】
驚くべきことに、含水率が比較的低い本発明の幾つかの実施形態において、破断点伸びが驚くほど高いことが見出された。このため、本発明の幾つかの実施形態によると、30wt%以下、25wt%以下又は20wt%以下の含水率を有するエラストマーマトリックスは、100%以上、更には300%以上又は500%以上の比較的高い破断点伸びを示した。
【0103】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、乾燥条件下で0.1MPa~1.5MPa又は0.05MPa~2MPaの範囲の引張強度を特徴とする(0.05がより適当な下限であることを示す追加の測定を行った)。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、湿潤条件下で実質的に0.1MPa~0.4MPaの範囲の引張強度を特徴とする。幾つかの実施形態において、マトリックスの引張強度は、湿潤条件下(液体に浸漬しているか、又は液体に浸漬した後)で少なくとも0.1MPaである。
【0104】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの降伏強度は、乾燥条件下で少なくとも0.05MPa~0.5MPaである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの降伏強度は、湿潤条件下で少なくとも0.01MPa~0.5MPaである。
【0105】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの機械的特性は、乾燥条件下で維持される。幾つかの実施形態において、上記機械的特性は、乾燥条件下で少なくとも1年間維持される。
【0106】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの弾性率は、乾燥条件下で少なくとも0.05MPa~0.5MPaである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの弾性率は、湿潤条件下で少なくとも0.05MPa~0.5MPaである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの弾性率は、乾燥条件下で少なくとも0.05MPa又は少なくとも0.1MPa又は少なくとも0.2MPaである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの弾性率は、湿潤条件下で少なくとも0.05MPa又は少なくとも0.1MPaである。
【0107】
下記表1の4列目による例示的なエラストマーマトリックスは、0.41MPaのヤング率、0.51MPaの引張強度及び456%の破断点伸びを有することが測定された。
【0108】
可塑剤:
「可塑剤」という用語は、本明細書において使用される場合、PVOHとともに本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの機械的特性をもたらす広範な物質を指す。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、PVOH及び可塑剤(複数の場合もある)が相互作用して水素結合ネットワークを形成し、それにより湿潤条件下及び乾燥条件下でマトリックスが形状安定性及び弾性を示すことが可能となると想定される。水素結合ネットワークは、2つ(又はそれ以上)のPVOH残基に連結した可塑剤分子を含み得る。
【0109】
本発明の幾つかの実施形態において、可塑剤は有機物質、すなわち、炭素原子を含有する様々な形態の物質である。
【0110】
本発明の実施形態によると、可塑剤の少なくとも1つは、少なくとも2つの水素結合形成官能基、すなわち少なくとも2つのH結合アクセプタ、少なくとも2つのH結合ドナー、又は少なくとも1つのH結合アクセプタ及び少なくとも1つのH結合ドナーを示すことを特徴とする。
【0111】
本発明の幾つかの実施形態によると、可塑剤は、3つ以上のH結合形成官能基、又は4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上若しくは9つ以上のH結合形成官能基を示す。幾つかの実施形態において、可塑剤は複数のH結合形成官能基を含む。
【0112】
幾つかの実施形態によると、可塑剤は、1,000g/mol未満又は500g/mol未満のモル質量を特徴とする。エラストマーマトリックスが少なくとも2つの可塑剤を含む幾つかの実施形態において、マトリックスは、1,000g/mol超のモル質量を特徴とするオリゴマーである少なくとも1つの可塑剤を含み得る。幾つかの実施形態において、オリゴマーは、1,000g/mol~2,000g/molの範囲のモル質量を特徴とする。
【0113】
本発明の幾つかの実施形態によると、可塑剤は、PVOH等のマトリックスの他の要素と非剛性の架橋を形成することを特徴とする。この文脈において、可塑剤は、ヒドロキシル基を分子に接続する結合を含まず、その構造に少なくとも1つ又は少なくとも2つの回転可能な結合を示すことを特徴とする。幾つかの実施形態において、可塑剤は、可変二面角を有する少なくとも1つの結合を示すことを特徴とする。二面角は、2つの原子を共有する、3つの原子の2つのセットを通る半平面間の角度である。幾つかの実施形態において、二面角は、2つの非水素原子を共有する、3つの非水素原子の2つのセットを通る半平面間で定義される。例えば、エチレングリコールは、各々が非水素原子の2つのセットに共通する酸素及び2つの炭素原子を有する、3つの原子の2つのセットによって定められる1つの可変二面角を示す。
【0114】
幾つかの実施形態において、可塑剤は生体適合性であり、すなわち、可塑剤は、レシピエント/使用者において非耐容性の局所作用又は全身作用を惹起しない。幾つかの実施形態において、可塑剤は、眼に適合性の(許容可能な)物質であり、すなわち生体適合性であり、特にレシピエント/使用者において非耐容性の眼科作用を惹起しない。
【0115】
本発明の文脈において、幾つかの実施形態によると、エラストマーマトリックスは1つ以上の可塑剤を含み、他の実施形態において、エラストマーマトリックスは少なくとも2つの可塑剤を含む。本明細書において可塑剤の特定の特徴に言及する場合、単一の可塑剤又は複数の可塑剤の各々を個別に指すものとみなされることが意図されることに留意されたい。
【0116】
本発明の幾つかの実施形態によると、マトリックスが2つ以上の可塑剤を含む場合、1つは、他の可塑剤の粘度よりも少なくとも5倍高い粘度を特徴とする。幾つかの実施形態において、可塑剤の少なくとも1つは、少なくとも1,000cpの粘度を特徴とし、他の可塑剤は、200cp未満の粘度を特徴とする。代替的には、1つの可塑剤は500cp以上の粘度を有し、他の可塑剤は50cp以下の粘度を有する。例えば、1つの例示的なマトリックスにおいて、可塑剤の1つはグリセロールであり、約1,400cpの粘度を示し、他の可塑剤はポリエチレングリコールであり、約100cpの粘度を示す。別の例では、可塑剤の1つはグリセロールであり、他の可塑剤はプロピレングリコールであり、約40cpの粘度を示す。
【0117】
幾つかの実施形態において、可塑剤は、マトリックスの総重量の少なくとも30wt%、40wt%、50wt%、60wt%、70wt%、80wt%又は少なくとも90wt%を占める。幾つかの実施形態において、可塑剤は、マトリックスの重量の30wt%~90wt%及びその間の任意の部分範囲を占める。
【0118】
幾つかの実施形態において、可塑剤は、ポリオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)及びテトラエチレングリコール)、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールのエステル(例えばトリアセチン)、多塩基有機酸(例えばシュウ酸、マレイン酸、クエン酸等)、ポリアミン(例えばスペルミン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ポリエチレンイミン(PEI;ポリアジリジン等)、トリパンブルー、アルキルグルセス、脂肪族ポリエーテルグリコール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリソルベート80)、ポリオキシエチレン、エタノールアミン、エリスリトール、トロメタミン、尿素、糖、アミノ酸(例えばグリシン、アスパルテート/アスパラギン酸等)、ポリフェノール(例えばタンニン酸)及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0119】
幾つかの実施形態において、可塑剤は、FDAにより21 CFR 349.12に記載されているような眼科用皮膚軟化剤又は粘滑剤である。このため、本発明の幾つかの実施形態によると、可塑剤はセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヘミセルロース、デキストラン、ゼラチン、液体ポリオール、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ポビドン及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される眼科用粘滑剤である。
【0120】
幾つかの実施形態において、マトリックスは、単一の可塑剤としてグリセロールを含む。幾つかの実施形態において、マトリックスは、単一の可塑剤としてプロピレングリコールを含む。幾つかの実施形態において、マトリックスは、可塑剤としてグリセロール及びプロピレングリコールを含む。幾つかの実施形態において、マトリックスは、可塑剤としてグリセロール及びプロピレングリコールのそれぞれ単独、又はPEGと混合したその混合物を含む。実施形態の幾つかにおいて、PEGは単一の可塑剤として使用され、これらの実施形態の幾つかにおいて、PEGの量及びPVOHの量は、実質的に同じである。
【0121】
エラストマーマトリックスの組成物:
本発明は、液体に浸漬した、及び/又は追加の1つ以上のエラストマーマトリックスと組み合わせたエラストマーマトリックスの組成物を更に提供し、マトリックスの各々は、本明細書に開示される通りである。
【0122】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に開示される少なくとも2つのエラストマーマトリックスを含み、組成、構成及び特性が類似していても、又は異なっていてもよい。幾つかの実施形態において、1つの配合物を流し型に注型して乾燥させ、エラストマーを得てもよく、別の溶液を上記エラストマーの上に注型して、マトリックスの二層エラストマー組成物を得てもよい。幾つかの実施形態において、1種類(又は数種類)の複数の微小エラストマーを、沈降して別の種類のエラストマーをもたらす配合物と混合してもよく、それにより、配合物が沈降することで、別のエラストマーの「生地」中に1つ以上のエラストマー微小サンプルの「レーズンケーキ」組成物が得られる。
【0123】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1つの可塑剤を含む溶液を含み、少なくとも1つのエラストマーマトリックスを上記溶液に浸漬する。幾つかの実施形態において、本発明の上記組成物は、水又は水性の溶液若しくは溶媒から選択される流体を更に含み、上記少なくとも1つのエラストマーマトリックスを上記流体に浸漬する。
【0124】
幾つかの実施形態において、上記組成物を、その使用前に乾燥条件下で保存する。幾つかの他の実施形態において、上記組成物を、その使用前に湿潤条件下で保存する。
【0125】
複合エラストマーマトリックス:
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、所望の特性に適合するように調製することができるが、用途によっては、マトリックスが独自の特性を示す必要があり、PVOHではないが、通例、水素形成モノマーから製造される別のタイプのポリマー(複数の場合もある)を添加する必要がある。このタイプのエラストマーマトリックスを本明細書において複合マトリックスと称する。
【0126】
概して、複合材料は、2つの異なる化学的実体(chemical entities)の間の接続の産物である。異なる実体間の接続は、共有結合、非共有結合、イオン結合又は他のタイプの結合を介することができる。得られる特性は、各成分の個々の特性の単純又は複雑な加重平均を表すこともあり、2つの元の成分の特性とは極めて異なる特性を有する産物が得られることもある。
【0127】
本発明の文脈において、PVOHではない付加的なポリマーを添加することにより、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスの基本的な特性、すなわち低いポリマー量、軟性、並びに様々な乾燥条件下及び湿潤条件下での形状保持を維持しながら、無数の多様な特性を有する新たな材料を得ることができることが見出された。
【0128】
非PVOHポリマーの添加は、例えば、
乾燥条件及び湿潤条件での安定性、
生分解性、
レオロジー特性、
生体付着性、
活性物質との適合性、
活性物質放出プロファイル、並びに、
活性物質の刷込み、
を更に改良するために使用することができる。
【0129】
幾つかの実施形態において、複合エラストマーマトリックスは、PVOHと、PVOHと水素結合が可能な非PVOHポリマーとをブレンドすることによって作製される。幾つかの実施形態において、上記非PVOHポリマーは中性(非荷電)である。幾つかの実施形態において、上記非PVOHポリマーは、アニオン性又はカチオン性官能基(荷電)を有する。幾つかの実施形態において、上記非PVOHポリマーは、合成ポリマーである。幾つかの実施形態において、上記非PVOHポリマーは、オリゴ糖又は多糖である。幾つかの実施形態において、上記非PVOHポリマーは、アクリルポリマーである。
【0130】
2つのポリマーを接続するために、共有結合性又は非共有結合性のいずれかの相互作用を用い、付加的なポリマー及び様々なタイプの分子連結(例えばイオン結合、錯体等)を使用して、PVOHとの複合材料を作製することができることは当業者には明らかである。PVOHではない付加的なポリマーは、天然に存在するポリマー及び高分子、合成ポリマー等を含む様々なポリマーから選択することができる。例えば、限定されるものではないが、PVOHではない水素結合形成モノマーのポリマーは、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、セルロース、キチン、グリコーゲン、デンプン、ジェラン、デキストラン、イヌリン、ペクチン、アラビノキシラン及びそれらの任意の混合物である。
【0131】
本発明の幾つかの実施形態によると、本明細書において提供されるエラストマーマトリックス中の非PVOHポリマーの質量含有率は、PVOHの質量含有率よりも小さい。幾つかの実施形態において、PVOHと非PVOHポリマーとの質量比は、約100:1~2:1の範囲である。複合マトリックスの幾つかの例示的な実施形態を、以下に続く実施例のセクションに提示する。
【0132】
医療/眼科用デバイス:
本発明は、眼科/眼病理及び疾患の治療に使用することができる眼科用/眼デバイスの態様を更に含み、デバイスは、本明細書において提供されるエラストマーマトリックスを含むか又はそれからなる。
【0133】
眼科用デバイスの文脈において、本発明の幾つかの実施形態によると、マトリックスは、本明細書において上で論考されるように、眼科的に許容可能な成分を含むか又はそれからなる。
【0134】
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、反応性が低く、安定し、無害であるため、薬学的活性剤を隔離し、回避させるのに特に有用である。本明細書において提供されるエラストマーマトリックスを含む眼科用デバイスは、ボーラスレジメン及び持続放出レジメンの両方の薬物送達のために構成される。したがって、幾つかの実施形態によると、マトリックスは、その中又はその上に少なくとも1つの薬学的活性剤を含む。薬学的活性(治療)剤は、眼科症状、疾患又は障害を治療するために選択されるのが好ましい。
【0135】
本明細書に記載される眼科用デバイスは、概して、眼の外表面に配置され、眼デバイスの少なくとも一部が角膜に接触又は干渉しないように一方又は両方の眼瞼の下に配置されるサイズ及び形状である。一態様では、本明細書において提供される眼科用デバイスは、少なくとも1つの治療剤を眼に長時間にわたって送達するために、少なくとも部分的に、上眼瞼及び/又は下眼瞼の少なくとも一方の内側、かつ眼の角膜の外側で眼の表面上に配置されるように構成される。
【0136】
本明細書において提供されるエラストマーマトリックスは、その中に液体を封入することを可能にする多孔質微細構造を特徴とする。液体は、例えば薬学的活性剤を含む溶液又はコロイドであってもよく、この液体は、マトリックス中に分散させることができ、及び/又はマトリックスの細孔に封入することができる。したがって、幾つかの実施形態において、デバイスは、本明細書において提供されるエラストマーマトリックス内に分散、隔離、含浸された少なくとも1つの治療剤を含む。
【0137】
薬学的活性剤は、例えば小分子、高分子、細胞又は組織を含み得る。
【0138】
幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は液体形態である。幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は固体形態である。幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は、水に可溶であるか、又は有機溶媒に可溶であるか、又は両親媒性である。
【0139】
幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は、カプセル化されているか、又はマイクロカプセル化されているか、又はマイクロ粒子形態であるか、又はナノ粒子形態である。
【0140】
本発明の文脈において、薬学的活性剤は、限定されるものではないが、鎮痛剤、制酸剤、抗不安剤、抗不整脈剤、抗菌剤、抗生物質剤、抗凝固剤、血栓溶解剤、抗痙攣剤、抗鬱剤、制吐剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、降圧剤、抗炎症剤、抗悪性腫瘍剤、抗精神病剤、解熱剤、抗ウイルス剤、バルビツール酸塩、気管支拡張剤、β遮断薬、コルチコステロイド、風邪薬、細胞毒性薬、充血除去剤、利尿剤、去痰剤、ホルモン、血糖降下薬、免疫抑制剤、下剤、筋弛緩剤、鎮静剤、性ホルモン、睡眠薬、精神安定剤、ビタミン及びそれらの任意の組合せである。
【0141】
幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は眼科用活性剤である。幾つかの実施形態において、眼科用活性剤は、滑沢剤、血管新生阻害剤、散瞳剤、麻酔剤、抗感染剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、緑内障治療剤、外科処置剤、診断用薬又はそれらの任意の組合せである。
【0142】
薬学的活性剤としては、限定されるものではないが、ビマトプロスト、トラボプロスト、ラタノプロスト、タフルプロスト、NSAID、ステロイド、抗ヒスタミン剤、炭酸脱水酵素阻害剤(CAI)、ドルゾラミド、シクロスポリン、抗生物質、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、アジスロマイシン、脂肪酸、長鎖脂肪酸、脂肪アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、非浸透性ステロイド、ステロイドの遊離酸、脂質、ケトロラク、シリコーン油、オロパタジン、プロスタグランジン、プロスタグランジン類似体、プロスタミド、小分子インテグリンアンタゴニスト、リフィテグラスト(lifitegrast)、ロテプレドノール及びフルオロメトロン、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0143】
薬学的活性剤は、プロスタグランジン類似体を含み得る。プロスタグランジン類似体は、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロスト及びタフルプロストの少なくとも1つを含み得る。薬学的活性剤は、眼の眼圧を低下させるためのものであってもよい。薬学的活性剤は、ドライアイを治療するためのものであってもよい。薬学的活性剤は、シクロスポリン、ステロイド、ロテプレドノール、フルオロメトロン、非浸透性ステロイド、ステロイドの遊離酸、非ステロイド性抗炎症剤、ケトロラク、小分子インテグリンアンタゴニスト、リフィテグラスト、ドキシサイクリン、アジスロマイシン、脂質、脂肪アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、脂肪酸、長鎖脂肪酸、油又はシリコーン油の少なくとも1つを含み得る。薬学的活性剤は、ステロイドを含み得る。ステロイドは、ロテプレドノール又はフルオロメトロンの少なくとも1つを含み得る。
【0144】
本発明の幾つかの実施形態によるエラストマーマトリックスを含む眼科用デバイスを調製する場合、下に提示する調製手順に従って配合物を調製する。簡潔に述べると、液体配合物が得られ、これを最終的なデバイスの調製に使用することができる。薬学的活性剤は、上記液体配合物に混合することで、薬学的活性剤を含むマトリックス及びデバイスをもたらすことができる。親水性の薬学的活性剤は、配合物に容易に溶解し、疎水性の薬学的活性剤は、配合物中に(例えばコロイドとして)懸濁することができる。
【0145】
マトリックス中の薬学的活性剤の量は、薬学的活性剤及び治療レジメンによって異なる。マトリックスの性質及びその要件により、マトリックスが含む非水構成要素の30%を活性剤とすることができる。
【0146】
幾つかの実施形態において、デバイスのマトリックスは、少なくとも1つの眼科的に許容可能な担体/補助剤/アジュバント/添加剤/非薬剤を更に含む。
【0147】
薬物放出プロファイルは、薬学的活性剤及びレジメンによって異なる。当業者であれば、様々なデバイスからの様々な条件下での薬物の持続放出を制御するために利用可能な手段及び技術が存在することを理解するであろう。例えば、薬学的活性剤のカプセル化、活性剤とマトリックスとの間の相互作用を変更する材料の添加等がある。
【0148】
幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は、液体の存在下でマトリックスから放出される。この液体は上で定義される。「液体の存在」に言及する場合、本発明のマトリックスが部分的又は完全に浸漬した液体に曝露される条件に関するものと理解されるべきである。
【0149】
幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は、乾燥条件下でエラストマーマトリックス内に維持される。幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は、保存中にマトリックス内に維持される。幾つかの実施形態において、薬学的活性剤は、乾燥条件下で少なくとも1年間、マトリックス内に維持される。
【0150】
治療方法:
本発明のエラストマーマトリックスは、細胞又は組織/膜への薬学的活性剤の投与に使用することができる。本発明は、少なくとも1つの薬学的活性剤を細胞又は組織/膜に投与する方法を更に提供し、これは、細胞又は組織/膜と、本明細書に開示されるエラストマーマトリックス中に存在する治療有効量の薬学的活性剤とを接触させることによって実現される。幾つかの実施形態において、組織は眼組織、歯列(orthodontic)組織、筋肉組織、粘膜組織、皮膚組織、結合組織、心臓組織及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0151】
本明細書において使用される場合、「治療有効量」という表現は、治療される医学的状態の症状の1つ以上を或る程度緩和する、投与される活性剤の量を記載するものである。本実施形態の文脈において、「治療有効量」という表現は、標的細胞(複数の場合もある)又は微生物(複数の場合もある)に有害なレベルであることにより、治療される病態の症状の1つ以上を或る程度緩和し、標的細胞(複数の場合もある)又は微生物(複数の場合もある)のライフサイクルに混乱を引き起こす、投与及び/又は再投与される薬学的活性剤の量を記載するものである。
【0152】
本発明の実施形態の文脈において、治療有効量は、薬学的活性剤全体、又はマトリックスに放出可能に隔離された1つ以上の生物活性剤の量を指すことがある。任意の薬学的活性剤の有効性は、当該技術分野で既知の幾つかの方法論によって決定することができる。
【0153】
本発明の実施形態の別の態様によると、本明細書に記載されるマトリックスのいずれか1つが、隔離され、マトリックスから制御可能に放出され得る少なくとも薬学的活性剤によって治療可能な医学的状態と診断された被験体の治療に使用されるものであると特定される。
【0154】
本発明の実施形態の別の態様によると、薬剤として使用される送達ビヒクルとしての本明細書に記載されるエラストマーマトリックスのいずれかの使用が提供される。幾つかの実施形態において、薬剤は、隔離され、マトリックスから制御可能に放出され得る薬物の少なくとも1つによって治療可能な医学的状態と診断された被験体を治療するためのものである。
【0155】
本明細書に記載される方法及び使用のいずれかにおいて、マトリックスは、医療デバイスの一部として医療目的で使用することができる。
【0156】
調製方法:
本発明は、本明細書に開示されるエラストマーマトリックスを調製する方法であって、
(a)ポリビニルアルコールを水に溶解して、溶液を形成する工程と、
(b)任意に、溶液を加熱する工程と、
(c)可塑剤(複数の場合もある)を溶液に混合して、混合物を形成する工程と、
(d)任意に、混合物を加熱する工程と、
(e)混合物を流し型に添加する工程と、
(f)混合物を流し型内で凝固させる工程と、
を含み、それにより本発明のエラストマーマトリックスを形成する、方法を更に提供する。
【0157】
幾つかの実施形態において、(a)において得られる溶液は、20wt%未満のPVOHを有する。
【0158】
幾つかの実施形態において、可塑剤は、(c)において形成される混合物の30wt%以上を占める。
【0159】
本発明のマトリックスを調製する方法の幾つかの実施形態において、任意の加熱は、60℃~100℃の範囲の温度で達成される。
【0160】
方法の更なる実施形態において、工程(e)は例えば、混合物を混合しながら冷却した後に室温で行われる。方法の幾つかの実施形態において、工程(e)は開放形態、例えば開放フラスコ又は流し型内で行われる。幾つかの実施形態において、エラストマーマトリックスを流し型に流し込む。幾つかの実施形態において、エラストマーマトリックスを流し型に圧送する。
【0161】
方法の幾つかの実施形態において、好ましくは、活性剤と溶液中の他の成分との間の反応を促進しないように、溶液が室温程度である際に、少なくとも1つの薬学的活性剤を溶液に添加する。これにより、熱に弱い活性剤を使用することもできる。
【0162】
方法の幾つかの実施形態において、工程(f)において形成されるエラストマーマトリックスを、少なくとも1つの可塑剤を含む溶液又は水又は水溶液又は溶媒に、例えば5分間浸漬する。
【0163】
本出願から成熟する特許の存続期間中に、多くの関連するエラストマーマトリックスが開発されることが予想され、「エラストマーマトリックス」という表現の範囲は、かかる全ての新たな技術を先験的に含むことが意図される。
【0164】
明確にするために別個の実施形態の文脈において記載されている本発明の或る特定の特徴が、単一の実施形態における組合せでも提示され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において記載されている本発明の様々な特徴が、別個に、又は任意の適切な部分的組合せで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態において適切に提示されてもよい。様々な実施形態の文脈において記載されている或る特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは機能しない限り、それらの実施形態の本質的な特徴とはみなされない。
【0165】
上記で正確に概説され、添付の特許請求の範囲のセクションにおいて特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的に支持される。
【実施例
【0166】
ここで、上記の記載とともに、本発明の幾つかの実施形態を非限定的に説明する以下の実施例を参照する。
【0167】
実施例1
エラストマーマトリックスの調製
本発明の実施形態によるエラストマーマトリックスの調製は、PVOH溶液の調製から開始することができる。
【0168】
簡潔に述べると、420mlの精製水を、オーバーヘッドスターラーを備える500ml丸底フラスコに添加した。フラスコを加熱マントルに入れ、80グラムのPVOHを撹拌しながら少量ずつ添加し、全てのPVOHが溶解するまで加熱した。
【0169】
PVOH溶液を更に1時間~2時間撹拌及び加熱し、その後、溶液を撹拌しながら室温まで冷却した。
【0170】
可塑剤及び80グラムのPVOH溶液を500mlガラスビーカーに添加して、表1に従う混合物を得た(乾物ベース)。任意に、精製水を添加して溶質の濃度を希釈した。混合物を完全に溶解するまで磁気撹拌しながら加熱し、その後、加熱を止め、混合物を放置して冷却した。
【0171】
表1に、本明細書において提供される例示的なエラストマーマトリックスを調製するための幾つかの例示的な配合物を示す。値は、非水成分の総重量に対する%での質量含有率を表す。
【0172】
【表1】
【0173】
実施例2
比較研究
PVOHと可塑剤との間の質量比の重要度を研究するために、20グラムのPVOHを500mlガラスビーカーにおいて36グラムのグリセロールと混合し、20wt%PVOHの溶液を達成するために水を添加した。本明細書において、マトリックスを製造するためのこの配合物が、36:20、すなわち1.8:1の可塑剤とPVOHとの質量含有率の比率を特徴とし、本発明の範囲外であることに留意されたい。混合物を完全に溶解するまで加熱した。加熱を止め、溶液を放置して冷却した。
【0174】
得られたエラストマーマトリックスは、乾燥条件及び湿潤条件の両方で、可塑剤とPVOHとの質量含有率の比率が2:1である比較用マトリックスと比較して劣った安定性を示す。
【0175】
別の比較例は、35wt%の高分子量PVOH、11wt%のポリエチレングリコール、27wt%のグリセロール及び27wt%のプロピレングリコールを用い、上に記載した手順に従って調製した。
【0176】
この配合物は、水中で20%超の膨潤を示し、乾燥条件下での形状を保持していない物質を生成した。
【0177】
実施例3
デバイスの調製
表1に指定した様々な配合物の各々の溶液を、それぞれの流し型(開放又は閉鎖)に流し入れ、放置して乾燥させた。任意に、コーティング機を用いて所望の厚さのフィルムを作製した。フィルを放置して乾燥させた。
【0178】
実施例4
複合エラストマーマトリックス
本発明の幾つかの実施形態による複合エラストマーマトリックスを調製するために、表1に従う配合物を調製し、下記表2に従うポリビニルアルコールと非PVOHポリマーとの比率に達するように、10グラムの配合物を非PVOHポリマーと混合した。混合物を完全に溶解するまで撹拌し、更に処理してデバイス(例えばフィルム)を作製した。
【0179】
【表2】
【0180】
本発明をその特定の実施形態とともに説明してきたが、当業者には、多くの代替形態、変更形態及び変化形態が明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるそのような全ての代替形態、変更形態及び変化形態を包含することが意図されている。
【0181】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願のそれぞれが、引用することにより本明細書の一部をなすことが具体的及び個々に示される場合と同じ程度に、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限りにおいて、これらは、必ずしも限定として解釈されるべきではない。
【0182】
加えて、本願のあらゆる優先権書類(複数の場合もある)は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【国際調査報告】