(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20241106BHJP
A61N 5/02 20060101ALI20241106BHJP
A61N 7/00 20060101ALI20241106BHJP
A61N 2/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61N5/06 A
A61N5/02
A61N7/00
A61N2/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525893
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 NZ2022050131
(87)【国際公開番号】W WO2023075611
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524160970
【氏名又は名称】ニューミック セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ,ジョン ノーブル ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ポール デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】サワビー,スティーヴン ジョン
【テーマコード(参考)】
4C082
4C106
4C160
【Fターム(参考)】
4C082ME26
4C082PA01
4C082PC10
4C082PE04
4C082PL05
4C106AA05
4C106CC01
4C106CC15
4C160JK10
4C160KL01
(57)【要約】
頭部に装着するように構成された方法及び治療装置を開示する。治療装置は、少なくとも1つの放射線モダリティを頭部内の容積に送達するエミッタが構成されたフレームを含み、エミッタによって脳を照射して薬剤又は医薬品を活性化する。この装置は、頭部の周りの向き及び位置に関して調整可能なエミッタを含むヘルメットであってもよい。撮像システムを使用して頭部の3次元(又は3D)トポロジを取得することにより、患者固有のカスタマイズした治療装置を作成する方法をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に装着されるように構成された治療装置であって、当該治療装置は、
頭部に装着されるように構成されたフレームと、
該フレームによって支持される複数のエミッタと、を含み、
該複数のエミッタは、前記頭部内の容積に第1の放射線モダリティを送達するように構成され、
前記複数のエミッタは、前記エミッタによって照射された前記容積内の薬剤を活性化するように構成される、
治療装置。
【請求項2】
前記第1の放射線モダリティは、超音波放射線、電磁放射線、又は磁場である、請求項1に記載の治療装置。
【請求項3】
当該治療装置は、前記頭部内の前記容積に第2の放射線モダリティを送達するように構成された少なくとも1つの第2のエミッタをさらに含み、
前記第1の放射線モダリティ及び第2の放射線モダリティは異なる、請求項1又は請求項2に記載の治療装置。
【請求項4】
前記第2の放射線モダリティは、超音波放射線、電磁放射線、又は磁場である、請求項3に記載の治療装置。
【請求項5】
当該治療装置は、前記頭部内の前記容積に第3の放射線モダリティを送達するように構成された少なくとも1つの第3のエミッタをさらに含み、
前記第1の放射線モダリティ、第2の放射線モダリティ、及び第3の放射線モダリティは異なる、請求項3又は請求項4に記載の治療装置。
【請求項6】
前記第3の放射線モダリティは、超音波放射線、電磁放射線、又は磁場である、請求項5に記載の治療装置。
【請求項7】
任意の1つのモダリティの放射線を放出する前記エミッタは、閾値以下の放射線量を前記頭部内の前記容積に送達する、請求項3乃至6のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項8】
任意の2つのモダリティの放射線を放出する前記エミッタは、閾値の放射線量を前記頭部内の前記容積に集合的に送達するように構成される、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項9】
前記複数のエミッタ、少なくとも1つの第2のエミッタ、及び少なくとも1つの第3のエミッタは、閾値の放射線量を前記頭部内の前記容積に集合的に送達するように構成される、請求項5に記載の治療装置。
【請求項10】
当該治療装置は、前記頭部内から発せられる少なくとも1つの信号のモダリティを検出するように構成された少なくとも1つの検出器をさらに含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項11】
前記信号は、前記容積内の前記薬剤の活性化及び/又は破壊に対応する、請求項10に記載の治療装置。
【請求項12】
当該治療装置は複数の検出器を含む、請求項10又は請求項11に記載の治療装置。
【請求項13】
前記検出器は超音波検出器であり、前記頭部内から発せられる前記信号は超音波信号である、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの検出器はエミッタと一体化される、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項15】
前記検出器は、超音波検出器であり、超音波エミッタと一体化される、請求項14に記載の治療装置。
【請求項16】
前記検出器は、前記容積内の薬剤の活性化に基づいて薬物の放出を監視するように構成される、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項17】
当該治療装置は、所与の治療の進行を測定するように構成された制御システムをさらに含み、
該制御システムは、前記少なくとも1つの検出器を含む、請求項16に記載の治療装置。
【請求項18】
前記制御システムは、少なくとも1つのエミッタにフィードバックを提供する、請求項17に記載の治療装置。
【請求項19】
前記フィードバックは、1つ又は複数のエミッタを有効化又は無効化するために使用される、請求項18に記載の治療装置。
【請求項20】
前記1つ又は複数のエミッタは、放射線モダリティに基づいて有効化又は無効化される、請求項19に記載の治療装置。
【請求項21】
前記フィードバックは、十分な用量が投与されたときに1つ又は複数のエミッタを自動的にオフにするために使用される、請求項18乃至20のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項22】
前記フィードバックは、1つ又は複数のエミッタの周波数及び/又は電力を調整するために使用される、請求項18乃至21のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項23】
前記フィードバックは、当該治療装置の前記容積及び/又は前記フレームに対する1つ又は複数のエミッタの位置及び/又は向きを調整するために使用される、請求項18乃至22のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つの検出器によって取得したデータが記録される、請求項18乃至23のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項25】
当該治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項1乃至24のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項26】
当該治療装置は、電磁放射線を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項1乃至25のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項27】
当該治療装置は、磁場を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項1乃至26のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項28】
当該治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタと、電磁放射線を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項1乃至27のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項29】
当該治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタと、磁場を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項1乃至28のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項30】
当該治療装置は、電磁場を放出する少なくとも1つのエミッタと、磁場を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項1乃至29のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項31】
当該治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタ、電磁場を放出する少なくとも1つのエミッタ、及び磁場を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項1乃至30のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項32】
少なくとも1つのエミッタの向き及び/又は位置が前記フレームに対して調整可能である、請求項1乃至31のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項33】
頭部に装着されるように構成された治療装置であって、当該治療装置は、
頭部に装着されるように構成されたフレームと、
該フレームによって支持される複数のエミッタであって、各エミッタが少なくとも1つの放射線モダリティを前記頭部内の容積に送達するように構成される、前記複数のエミッタと、を含み、
当該治療装置は、前記フレームに対する少なくとも1つのエミッタの向き及び/又は位置を調整できるように構成され、
前記複数のエミッタは、前記頭部内の共通容積に放射線を送達するように構成される、
治療装置。
【請求項34】
前記フレームは1つ又は複数のガイド又はレールを含む、請求項33に記載の治療装置。
【請求項35】
前記少なくとも1つのエミッタは、前記フレーム上の異なる位置で前記1つ又は複数のガイド又はレールに取り外し可能に固定することができる、請求項34に記載の治療装置。
【請求項36】
前記少なくとも1つのエミッタは、前記少なくとも1つのレール又はガイドに沿って摺動するように構成されたキャリッジに固定される、請求項33又は34に記載の治療装置。
【請求項37】
前記フレームは、1つ又は複数のエミッタを受け入れるように構成された少なくとも1つの開口部を規定する、請求項33に記載の治療装置。
【請求項38】
前記1つ又は複数のエミッタは前記少なくとも1つの開口部から取り外し可能である、請求項37に記載の治療装置。
【請求項39】
前記少なくとも1つのエミッタは1つ又は複数の軸線の周りに旋回可能である、請求項33乃至38のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項40】
当該治療装置は、前記少なくとも1つのエミッタを少なくとも1つの軸線の周りに旋回させるように構成された少なくとも1つの圧電アクチュエータをさらに含む、請求項39に記載の治療装置。
【請求項41】
当該治療装置は超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項33乃至40のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項42】
当該治療装置は電磁放射線を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項33乃至41のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項43】
当該治療装置は磁場を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項33乃至42のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項44】
当該治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタと、電磁放射線を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項33乃至43のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項45】
当該治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタと、磁場を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項33乃至44のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項46】
当該治療装置は、電磁場を放出する少なくとも1つのエミッタと、磁場を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項33乃至45のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項47】
当該治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタ、電磁場を放出する少なくとも1つのエミッタ、及び磁場を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項33乃至46のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項48】
カスタマイズした頭部装着型治療装置を製造する方法であって、当該方法は、
頭部を撮像して該頭部の3次元トポロジを決定するステップと、
複数のエミッタによって照射される前記頭部内の少なくとも1つの指定した容積を特定するステップと、
該指定した容積に対する少なくとも1つのエミッタの所望の向きを決定するステップと、
前記頭部に装着されるように構成されたカスタマイズしたフレームを製造するステップと、を含み、
前記カスタマイズしたフレームは、該カスタマイズしたフレームを前記頭部に装着したときに、前記少なくとも1つのエミッタが前記頭部内の前記指定した容積に対して前記所望の向きに位置付けされるように、前記少なくとも1つのエミッタを支持するように構成される、
方法。
【請求項49】
必要なエミッタの数を決定するステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
必要なエミッタのモダリティを決定するステップをさらに含む、請求項48又は請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つの指定した容積に対する少なくとも1つのエミッタの必要な位置を決定するステップをさらに含む、請求項48乃至50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
検出器の数を決定するステップをさらに含む、請求項48乃至51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
1つ又は複数の検出器の必要な位置を決定するステップをさらに含む、請求項48乃至52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
1つ又は複数の検出器の必要な向きを決定するステップをさらに含む、請求項48乃至53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記カスタマイズしたフレームは、積層造形法を使用して製造される、請求項48乃至54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記カスタマイズしたフレームは、3D印刷を使用して製造される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記特定した容積に対する少なくとも1つのエミッタの所望の向きを決定するステップは、有限要素モデリングの使用を含む、請求項48乃至56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記製造した治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項48乃至57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記製造した治療装置は、電磁放射線を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項48乃至58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記製造した治療装置は、磁場を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項48乃至59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記製造した治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタと、電磁放射線を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項48乃至60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記製造した治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタと、磁場を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項48乃至61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記製造した治療装置は、電磁放射線を放出する少なくとも1つのエミッタと、磁場を放出する少なくとも1つのエミッタとを含む、請求項48乃至62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記製造した治療装置は、超音波放射線を放出する少なくとも1つのエミッタ、電磁場を放出する少なくとも1つのエミッタ、及び磁場を放出する少なくとも1つのエミッタを含む、請求項48乃至63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記製造した治療装置は、前記フレームに対する向き及び/又は位置を調整可能な少なくとも1つのエミッタを含む、請求項48乃至64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記製造した治療装置は、少なくとも1つの検出器を含む、請求項48乃至65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
治療を必要とする被験者の脳障害を治療する方法であって、請求項1乃至47のいずれか一項に記載の治療装置を前記被験者の頭部に適用するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療装置、治療装置の使用、及び治療装置の製造に関するものであり、特に脳障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
障害、病気、傷害、及び研究のための哺乳類の脳の治療は、脳の複雑さ、頭蓋骨の保護、及び(各血管を取り囲み、血管内の内容物を脳のニューロンから分離する)血液脳関門(BBB)と呼ばれるふるい状の組織層の選択的透過性によって複雑になる。
【0003】
脳の治療のために血流に導入される薬物は、体全体の循環系に対して全身的であり、脳の血管に入ると、BBBを通過して脳全体に分布し、その活性化の位置又はタイミングを殆ど制御できない。脳の特定の領域を標的とする薬物を全身投与すると、脳及び体の標的以外の領域に有害な副作用が生じる可能性がある。
【0004】
これらの問題の少なくとも一部を改善するために、頭蓋内の容積に様々な種類の放射線を送達する技術が開発される。現在まで、これらの装置は、参加者を固定した状態で大型の器具によって頭部に適用するのが一般的である。放射線を受ける個人は、放射線が照射される器具の領域に機械的に搬送される。このアプローチには、このような器具が、大きく、高価で、診療所に設置されており、需要が高いため、連続した適用の間に長い待ち時間が発生するという欠点がある。治療は参加者にとって負担が大きく、長時間に亘って脳の特定の容積に連続的又は半連続的又はオンデマンドの信号を適用することは実際には不可能な場合がある。
【0005】
さらに、脳の特定の容積に放射線を送達する器具では、放射線の送達中に頭部を固定するために、参加者の頭部に定位フレームを外科的に取り付ける必要があることがよくある。これは参加者にとって不快で望ましくない可能性があり、手術的リスクをもたらし、さらにコストがかかる。
【0006】
大型の器具、インプラント、又は留置物の欠点がない、頭蓋内の特定の容積に超音波圧及び/又は光子照射及び/又は磁場を送達できる治療装置が求められており、この装置は、連続使用又は半連続使用又はオンデマンド使用が可能で、頭蓋内の代替の容積に都合よく再構成でき、広く利用可能で、メンテナンスが便利で、比較的安価である。
【発明の概要】
【0007】
一例によれば、治療装置が提供され、治療装置は、頭部に装着するように構成でき、頭部に装着するように構成されたフレームと、フレームによって支持された複数のエミッタとを含むことができ、複数のエミッタは、頭部内の容積に第1の放射線モダリティを送達するように構成され、複数のエミッタは、エミッタによって照射された容積内の薬剤を活性化するように構成される。
【0008】
別の例によれば、治療装置が提供され、治療装置は、頭部に装着するように構成でき、頭部に装着するように構成されたフレームと、フレームによって支持される複数のエミッタとを含むことができ、各エミッタは、少なくとも1つの放射線モダリティを頭部内の容積に送達するように構成される。治療装置は、フレームに対する少なくとも1つのエミッタの向き及び/又は位置を調整できるように構成されており、複数のエミッタは、頭部内の共通容積に放射線を送達するように構成される。
【0009】
別の例によれば、カスタマイズした頭部装着型治療装置の製造方法が提供され、この方法は、頭部を撮像して頭部の3次元トポロジを決定するステップと、複数のエミッタによって照射される頭部内の少なくとも1つの指定した容積を特定するステップと、指定した容積に対する少なくとも1つのエミッタの所望の向きを決定するステップと、頭部に装着されるように構成されたカスタマイズしたフレームを製造するステップとを含む。カスタマイズしたフレームは、カスタマイズしたフレームを頭部に装着したときに、少なくとも1つのエミッタが頭部内の指定した容積に対して所望の向きに位置付けされるように、少なくとも1つのエミッタを支持するように構成される。
【0010】
本発明の別の例によれば、治療する必要がある被験者の脳障害を治療する方法が提供され、方法は、本明細書で説明する治療装置を被験者の頭部に適用するステップを含む。
【0011】
「備える、有する、含む(comprise,comprises,comprising)」という用語は、様々な司法管轄で、排他的又は包括的な意味を有する場合があることが認められる。この明細書の目的上、特に断りのない限り、これらの用語は包括的な意味を有することが意図している。つまり、これらの用語は、使用が直接参照する列挙したコンポーネント、及び場合によっては他の指定していないコンポーネント又は要素も含むことを意味する。
【0012】
この明細書における任意の文書への言及は、それが先行技術であること、他の文書と有効に組み合わせることができること、又はそれが一般的な一般知識の一部を構成することを認めるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面は、明細書に組み込まれ、その一部を構成しており、本発明の例を示しており、上記の本発明の一般的な説明及び下記の例の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【
図8】ハイドロフォンによって行われた記録を示す図である。
【
図10】測定した音圧レベルを示す等高線図である。
【
図11】ファントムヘッドに対する多数のエミッタの所望の向きを示す図である。
【
図12】ファントムヘッド上の治療装置を示す図である。
【
図13】ファントムヘッド上の治療装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1Aは、治療装置100の一例を示している。治療装置100は、ユーザ101の頭部に装着されるように構成されたフレーム103を含む。フレーム103は、ビーム105として概略的に示される少なくとも1つの放射線モダリティをユーザ101の頭部内の容積107に送達するように構成された複数のエミッタ104を支持する。複数のエミッタ104は、複数のエミッタ104によって照射される容積107内の薬剤を活性化するように構成される。薬剤は、熱活性化、機械的活性化、及び/又は磁気活性化され得る。例えば、薬剤は、熱活性化リポソームであり得る。
【0015】
治療装置100には、エミッタ104の動作を制御するために使用される制御回路90、及び治療装置100に電力を供給する電力回路95がさらに含まれる(又は、これらと動作的に通信している)。
【0016】
本明細書で使用する「放射(線)」とは、音響放射線(超音波放射線等)及び電磁放射(赤外線放射等)を含む、波又は粒子の形でのエネルギーの放射、伝達、及び/又は伝播を指す。複数のエミッタ104によって放出される放射線モダリティは、治療装置100の用途(例えば、容積107内で活性化される薬剤の種類)によって異なり得る。例えば、複数のエミッタ104は、超音波/集束超音波、電磁放射線(赤外線放射又は近赤外線放射等)、又は磁場を放出するように構成され得る。エミッタ104のいずれか又は全ては、以下でより詳しく説明するように調整可能である。
【0017】
いくつかの例では、エミッタ104は、音響エミッタ、超音波エミッタ、電磁エミッタ、光エミッタ、無線エミッタ、磁気エミッタ、及び/又は磁場エミッタから選択される。
図1Bには、単一のエミッタ104及びその放射105が示される。
【0018】
いくつかの例では、フレーム103は、永久フレーム、調整可能なフレーム、特注フレーム、可撓性フレーム、剛性フレーム、金属フレーム、ポリマーフレーム、複合材フレーム、積層造形によって作製したフレーム、及び/又は3Dプリントによって作製したフレームを含むグループから選択できる。
【0019】
図1Aに示される治療装置100には、フレーム103の周りに位置付けしたエミッタ104が含まれており、照射される容積107は各エミッタ104から放射線を受け取る。この配置により、着用者101の頭部内の軸外容積が受け取る放射線の量が減少する。これにより、治療の精度が向上し、非標的容積が照射されたときに発生する可能性のある有害な結果、例えば熱損傷を減らすことができる。エミッタ104は、通常、ビーム105が標的容積107に略直交するように、フレーム103の周りに位置付けされる。
【0020】
図1Aに示されたビーム105による放射線の向き及び形状は概略的なものであり、各エミッタ104によって放出される放射ビームの実際の形状は、エミッタ104から標的容積107までより複雑な経路を有する場合があることに留意されたい。例えば、超音波放射線は、インピーダンスの違いにより、ユーザ101の頭部内の異なる組織の間で、又は異なる組織を通過して反射及び/又は屈折し得る。ビーム105の前面も広がるため、その向きはやや不明瞭になる。
【0021】
いくつかの例では、エミッタ104はフレーム103の周りに位置付けされ、その放射線は、焦点が合っている、焦点が合っていない、直交している、同一線上にある、重なり合っている、交差している、及び/又は重ね合わされる。
【0022】
いくつかの例では、複数のエミッタ104はアレイに構成できる。いくつかの例では、エミッタのアレイは、疎なアレイ、密なアレイ、3個未満のエミッタのアレイ、10個未満のエミッタのアレイ、20個未満のエミッタのアレイ、50個未満のエミッタのアレイ、100個未満のエミッタのアレイ、及び/又は300個未満のエミッタのアレイを含むグループから選択される。エミッタの疎なアレイは、頭蓋骨内の指定した容積が単一のエミッタによって占められないという点で有利であり得、その場合、標的化は治療装置の配置に大きく依存することになる。エミッタ104の数と照明容積107、頭部の不完全なカバレッジによる照明フィールドの収差の許容度、治療装置の物理的重量、及び治療装置の製造コストの間にはトレードオフが存在する可能性がある。
【0023】
治療装置100のいくつかの用途では、エミッタ104によって照射される容積107には、組織、頭皮、骨、硬膜、くも膜、軟膜、脳組織、灰白質、白質、血管、脈管構造、ニューロン、グリア細胞、大脳半球、小脳半球、葉、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、皮質、前頭皮質、運動皮質、感覚皮質、後頭皮質、島皮質、側頭皮質、小脳、脳幹、中脳、脳橋、延髄、間脳、視床、視床下部、線条体、尾状核、被殻、淡蒼球、視床下核、黒質、扁桃体、海馬、薬物、悪性組織、腫瘍、病変組織、神経膠症、神経調節薬、細胞毒性薬、造影剤、超音波応答性材料、超音波不安定性材料、光応答性材料、磁場応答性材料、相変化材料、バブル、気泡、液体泡、パーフルオロカーボン、脂質、膜、ミセル、脂質二重層、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、キュービソーム、固体粒子、固体ナノ粒子、中空ナノ粒子、金属粒子、非金属粒子、磁性粒子、強磁性粒子、プラズモニック粒子、表面増強プラズモニック粒子、プラズモニックナノ粒子、金粒子、金ナノ粒子、無機粒子、アモルファス粒子、結晶粒子、半結晶粒子、脂質に連結された粒子、脂質に封入された粒子、分子、タンパク質、抗体、ペプチド、核酸、デオキシリボース核酸、リボース核酸、遺伝子構築物、遺伝子、遺伝子配列、ベクター、ウイルスのうちの1つ又は複数が含まれる。
【0024】
いくつかの例では、複数のエミッタ104によって照射される容積107は、1mm3未満、5mm3未満、10mm3未満、20mm3未満、50mm3未満、100mm3未満、200mm3未満、500mm3未満、1,000mm3未満、2,000mm3未満、5,000mm3未満、10,000mm3未満、50,000mm3未満、100,000mm3未満、500,000mm3未満、1,000,000mm3未満、及び/又は2,100,000mm3未満である。
【0025】
いくつかの例では、容積107の形状は、規則的、不規則、球形、卵形、及び/又は形状の組合せ又は重合せである。
【0026】
図1Aには1つの容積107のみが示されるが、これは限定を意図したものではない。治療装置100のいくつかの用途では、着用者101の頭部内の複数の容積に照射を行う。いくつかの例では、容積107は、1、2、3、4、5、6、7、20未満の指定した容積、100未満の指定した容積、及び/又は300未満の指定した容積を含むグループから選択された、重なり合う又は重なり合わない容積の数である。
【0027】
いくつかの例では、エミッタ104は、音響エミッタであり、超音波エミッタ、超音波トランスデューサ、及び/又は圧電トランスデューサを含むグループから選択される。
【0028】
いくつかの例では、エミッタ104は、約200kHz、300kHz、400kHz、500kHz、600kHz、700kHz、800kHz、900kHz、1MHz、2MHz、3MHz、4MHz、5MHz、6MHz、7MHz、8MHz、9MHz、10MHz、11MHz、12MHz、13MHz、14MHz、15MHz、16MHz、17MHz、18MHz、19MHz、20MHz、21MHz、22MHz、23MHz、24MHz、25MHz、26MHz、27MHz、28MHz、29MHz、30MHz、31MHz、32MHz、33MHz、34MHz、35MHz、36MHz、37MHz、38MHz、39MHz、40MHz、41MHz、42MHz、43MHz、44MHz、45MHz、46MHz、47MHz、48MHz、49MHz、又は約50MHzを含むグループから選択された周波数で超音波放射線を放射する。一例では、周波数は約1MHzである。別の例では、周波数は約300kHzである。別の例では、周波数は約600kHzである。他の例では、超音波信号は、約50MHz~約100MHzの間の周波数、すなわち、約50MHz、55MHz、60MHz、65MHz、70MHz、75MHz、80MHz、85MHz、90MHz、95MHz、又は約100MHzの周波数で提供される。
【0029】
いくつかの例では、エミッタ104は、100ワット/cm2未満、50ワット/cm2未満、10ワット/cm2未満、1ワット/cm2未満、0.1ワット/cm2未満、0.01ワット/cm2未満を含むグループから選択される強度で超音波放射線を放出する。
【0030】
頭蓋内の容積107に超音波放射線又は他の音響放射線を送達するエミッタ104は、脳の撮像、脳の一部の損傷、脳内の悪性組織の損傷、脳内のニューロンの活性化、脳への損傷の修復、脳への物質送達のためのBBBの透過性の向上、及び脳の特定の領域に対する音響応答性薬物の活性化を可能にすることができる。頭蓋内の特定の容積に焦点を合わせた超音波の使用は、開頭手術を必要とせずに、頭蓋内のニューロン及び血管を含む脳組織の特定の容積に音圧を適用する方法を提供することができる。
【0031】
図1Aでは、治療装置100が生きた人間の頭部に描かれているが、これは治療装置100の使用を制限することを意図するものではない。一部の用途では、装着者の頭部は、モデル、ファントム、生体、個体、死体、標本、動物、霊長類、人間、非ヒト霊長類、犬、羊、馬、牛、マウス、及び/又はラットの頭部のいずれか又は複数であってもよい。
【0032】
制御回路90及び電源回路95は、頭部に装着され、繋がれ、及び/又は治療装置100と無線通信することができる。制御回路90及び/又は電源回路95は、電源、電池、ケーブル、電子回路、光電子回路、集積回路、マイクロ回路、マイクロプロセッサ、電子メモリ、電子部品、電気通信、全地球測位システム、Bluetooth、無線、ソフトウェア、ファームウェア、インターネット接続、ソフトウェア、ファームウェア、コード、オペレーティングシステム、アプリケーション、プロトコル、及び/又はインターネットプロトコルを含み、及び/又はそれらを使用することができる。
【0033】
一例では、治療装置は、電源、電子機器、モーションセンサ、GPSテレメトリ、及びインターネット接続の1つ又は複数を組み込んだ外部制御及び電源ユニット(例えば、小型のバックパックユニット)と通信することができる。
【0034】
図2は、フレーム203、第1のモダリティの放射線(ビーム205として示される)を放出するように構成された第1の複数のエミッタ204、及び第2のモダリティの放射線(ビーム215として示される)を放出するように構成された第2の複数のエミッタ214を含む治療装置200を示している。治療装置200は、代替的に、第1の複数のエミッタ204に加えて、第2のモダリティの放射線を放出するように構成された単一の第2のエミッタ214を含むこともできる。第1の複数のエミッタ204及び第2の複数のエミッタ214(又は第2のエミッタ214)は、ユーザ101の頭部内の容積207に放射線を送達するように構成される。
【0035】
治療装置200は、第3のモダリティの放射線(ビーム225として示される)を放出するように構成された第3の複数のエミッタ224(又は第3のエミッタ224)を含むこともできる。例えば、第1の複数のエミッタ204は超音波/集束超音波放射線を放出するように構成することができ、第2の複数のエミッタ214は電磁放射線を放出するように構成することができ、第3の複数のエミッタ224は磁場を放出するように構成することができる。それぞれのエミッタ(又は複数のエミッタ)は全て、装着者101の頭部内の容積207に放射線を送達するように構成されており、容積207内の薬剤を活性化するように構成することができる。
【0036】
治療装置200が標的容積207内の薬剤(リポソーム等)を活性化するように構成されるいくつかの例では、治療装置200のエミッタ204、214及び224(該当する場合)は、いずれかのモダリティのエミッタが標的容積207に閾値以下(sub-threshold)の放射線量を送達するが、両方の(又は全ての)モダリティのエミッタが標的容積207に閾値の放射線量を送達するように構成することができる。
【0037】
例えば、治療装置200は、集束超音波放射線を放出するように構成された第1の複数のエミッタ204と、電磁放射線を放出するように構成された第2の複数のエミッタ214とを含むことができる。超音波エミッタ204の正味の放射線は、容積207内の薬剤を活性化するために必要な閾値を下回る場合がある。同様に、電磁放射線エミッタ214の正味の放射線も、容積207内の薬剤を活性化するために必要な閾値を下回る場合がある。ただし、超音波エミッタ204及び電磁放射線エミッタ214の正味の放射線の組合せは、容積207内の薬剤を活性化するために必要な閾値以上になる場合がある。
【0038】
容積207内の薬剤を活性化するために必要な閾値を個別に下回る様々な放射線モダリティを使用すると、ユーザの頭部内の軸外又は非標的容積を照射して損傷するリスクが軽減され、参加者の安全性が向上する。例えば、容積207内のリポソームは熱的に活性化され得る。意図した放射線を容積207に誤って向けてしまった場合に、リポソームを熱的に活性化するために必要な正味の放射線によって熱損傷が発生する可能性がある。正味の放射線を2つ以上の閾値以下モダリティに分割すると、所与のモダリティのエミッタが何らかの理由で位置ずれし、又は構成が間違っていても、それらのエミッタによって照射される標的外容積が受ける有害な放射線の量が少なくなる。これにより、単一の放射線モダリティのパワーが比較的低いため、熱損傷又は他の損傷の可能性が大幅に軽減される。
【0039】
対照的に、各モダリティのエミッタが正確に位置合わせされ、適切に構成される場合に、容積207は各モダリティの放射線を組み合わせて受け取り、それにより容積207内の薬剤に閾値量の放射線が提供される。
【0040】
上記の例では2つのモダリティの放射線を使用しているが、治療装置200は、3つのモダリティ(例えば、超音波/集束超音波、電磁放射線、及び磁場)のエミッタも含み、単一のモダリティからの放射線は閾値以下であるが、集合的なモダリティは閾値線量以上になる。3つのモダリティを使用する場合に、閾値線量を提供するために、3つのモダリティ全てのエミッタが共通の容積に放射線を送達する必要がある場合がある。他の例では、3つのモダリティのうちの2つのモダリティのみのエミッタが容積207に閾値線量を提供する必要がある場合がある。
【0041】
エミッタは共通の容積に放射線を送達するように構成されるが、各モダリティのエミッタによって照射される個々の容積は、サイズ、形状、及び位置が異なる場合がある。例えば、第1の複数のエミッタを使用して、頭部内の比較的大きな容積に拡散した閾値以下の電磁放射線(例えば、赤外線放射)を送達することができる。第2の複数のエミッタを使用して、比較的大きな容積と少なくとも部分的に重なり合う又は交差する、遥かに小さな容積に閾値以下の集束超音波放射線を送達することができる。より大きな容積及びより小さな容積の交差部は、拡散した電磁放射線及び集束超音波放射線の組合せを受け取る共通の容積である。治療装置200は、異なるモダリティの複数のエミッタを必ずしも必要としない。例えば、治療装置200は、1つのモダリティの放射線を放出するように構成された第1の複数のエミッタと、第2のモダリティの放射線を放出するように構成された単一のエミッタとを含んでもよい。治療装置200は、第3のモダリティの放射線を放出するように構成された単一のエミッタを含んでもよい。
【0042】
閾値以下のモダリティの使用は、頭部の照射容積内で薬剤又はリポソームが活性化される用途に限定されない。例えば、様々な閾値以下のモダリティを有するエミッタを含む治療装置は、神経治療の用途に使用することができる。照射容積内の神経組織は、神経治療の一部として特定の電力を必要とする可能性がある。エミッタは、異なるモダリティの合計が必要な電力を提供するのに十分であるが、いずれかのモダリティの電力が不十分であるように構成することができる。
【0043】
閾値線量又は十分な電力を提供するのに必要なモダリティの様々な組合せにも制限はない。例えば、治療装置は、3つの異なる放射線モダリティのエミッタを含むことができ、任意の2つのモダリティの組合せで必要な線量を提供するのに十分である可能性がある。あるいはまた、必要な線量を提供するのに3つのモダリティ全てが必要になる可能性がある。
【0044】
さらに、治療装置200は、2つ以上の異なるモダリティのエミッタを含むことができ、各個別モダリティは、必要な閾値線量又は必要な電力を提供するのに十分である。これは、治療装置の用途に依存する。
【0045】
治療装置200は、少なくとも以下のモダリティのエミッタを含むことができる:
・超音波エミッタ、
・電磁エミッタ、
・磁場エミッタ、
・超音波エミッタと電磁エミッタの組合せ、
・超音波エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・電磁エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・超音波エミッタ、電磁エミッタ、及び磁場エミッタの組合せ。
【0046】
エミッタ204及び/又は第2のエミッタ及び/又は第3のエミッタのいずれか又は全ては、以下に説明するように調整可能である。
【0047】
第1、第2及び/又は第3のエミッタ204、214、及び224の向き及び数は、それら送達される放射線と交差するように位置付けされ、有効な音圧及び/又は光子照明及び/又は無線周波数放射線及び/又は磁場を頭部内の指定した容積207に適用できる。計算は、3次元有限要素解析モデル、人間の死体及びファントムモデルのCTスキャン、測定、及びMRI熱画像に基づいて行うことができ、頭蓋骨内部の放射分布がマッピングされ、指定した許容範囲で予測可能になる。
【0048】
治療装置200のいくつかの例では、電磁エミッタは、ランプ、発光ダイオード、レーザ、レンズ、送信機、アンテナ、及び/又はコイルを含む。
【0049】
いくつかの例では、電磁エミッタは、狭帯域、広帯域、モノクロ、可視、赤外線、及び/又は近赤外線を含むグループから選択される波長で電磁放射線を放出する。
【0050】
いくつかの例では、電磁エミッタは、狭帯域、広帯域、短波、長波、及び/又はマイクロ波を含むグループから選択される波長で無線周波数の電磁放射線を放出する。
【0051】
いくつかの例では、電磁エミッタは、10ワット/cm2未満、1ワット/cm2未満、0.1ワット/cm2未満、0.01ワット/cm2未満、0.001ワット/cm2未満、0.00001ワット/cm2未満を含むグループから選択される強度で電磁放射線を放出する。
【0052】
いくつかの例では、電磁エミッタは、10ワット/cm2未満、1ワット/cm2未満、0.1ワット/cm2未満、0.01ワット/cm2未満、0.001ワット/cm2未満、0.00001ワット/cm2未満を含むグループから選択された強度で無線周波数電磁放射線を放射する。
【0053】
電磁エミッタの使用により、脳の領域への光応答性薬物の活性化、脳内のニューロンの活性化、及び/又は脳の損傷の修復が可能になり得る。
【0054】
治療装置200のいくつかの例では、磁場エミッタは、コイル、磁石、電磁石、永久磁石、インダクタ、及び/又は誘導コイルを含むことができる。
【0055】
磁場エミッタの使用により、脳の撮像、脳内のニューロンの刺激、及び/又は脳の領域への磁気応答性薬物の活性化が可能になり得る。
【0056】
特定の理論に縛られることなく、音響放射線、電磁放射線、及び/又は磁場を頭蓋骨内の指定した容積に送達する治療装置の使用は、次の1つ又は複数の目的で使用できる:
i.組織の損傷
ii.血液脳関門の開放
iii.脳内の特定の回路の活性化
を含むa.組織変調、
i.造影剤
ii.神経調節薬物
iii.細胞毒性薬物
を含むb.音響及び/又は光子及び/又は無線周波数及び/又は磁気感受性薬剤の活性化、
i.変性疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、他の認知症)
ii.悪性腫瘍(例えば、多形性神経膠芽腫)
iii.脳損傷(例えば、脳卒中、動脈瘤、強制外傷)
iv.慢性精神障害(例えば、統合失調症)
v.気分感情障害(例えば、双極性障害、うつ病、PTSD)
を含むc.脳障害の治療、
i.運動技能訓練(例えば、リハビリテーション、スポーツ)
ii.行動矯正(例えば、薬物依存、リハビリテーション)
を含むd.神経の再プログラミング。
【0057】
検出器
図3は、治療装置300の更なる例を示している。治療装置300は、フレーム303と、フレーム303によって支持される複数のエミッタ304を含む。複数のエミッタ304は、治療装置の装着者の頭部内の容積307に少なくとも1つの放射線モダリティ(ビーム305で示される)を送達するように構成される。治療装置300は、頭部内の容積307に第2及び/又は第3のモダリティの放射線を送達するように構成された1つ又は複数の第2のエミッタ及び/又は第3のエミッタも含むことができる。
【0058】
治療装置300は検出器350もさらに含む。検出器350は、装着者の頭部内から発せられる信号の少なくとも1つのモダリティを検出するように構成される。信号は、複数のエミッタ305によって照射される容積307から発せられる場合もあれば、異なる容積から発せられる場合もある。信号は、容積307内からの薬剤又はリポソームの活性化及び破壊に対応する場合がある。信号のモダリティは、薬剤を活性化するために使用される放射線のモダリティ(又は複数のモダリティ)とは無関係である場合がある。検出器350は超音波検出器である場合があり、信号は超音波信号である場合がある。
【0059】
薬剤又はリポソームの活性化に関連する信号を検出することにより、標的容積307内での薬剤の活性化による薬物の放出をリアルタイムで監視できる。この機能により、リアルタイムのフィードバック制御オプションと、各参加者に対する多大な試行錯誤及び実験を必要とする精度及び参加者の安全性のレベルを提供できるため、治療装置300の有用性が大幅に向上する。
【0060】
例えば、治療装置300の一部の構成は、リモート又は自動で動作できる可能性がある。これらの構成では、検出器350を制御システムの一部として使用して、所与の治療の進行を測定し、適切なフィードバックをエミッタ305(及び/又は存在する場合に他のエミッタ)に提供できる。例えば、活性化した薬剤を介して容積307に導入した薬物の投与量は、検出器350によって推測又は測定され、次のようなエミッタの特性又は動作を制御するために使用できる:
・1つ又は複数のエミッタを有効又は無効にする、
・所与のモダリティのどのエミッタを使用すべきかを決定する(換言すると、放射線のモダリティに基づいて1つ又は複数のエミッタを有効にする)、
・十分な投与量(dose)を投与したときに1つ又は複数のエミッタを自動的にオフにする、
・1つ又は複数のエミッタの電力、周波数、又は他の動作特性を調整する、
・標的容積及び/又は治療装置のフレームに対する1つ又は複数のエミッタの位置及び/又は向きを調整する。
【0061】
検出器350によって取得したデータは、後で解析するために記録することもできる。
【0062】
治療装置は、複数のこのような検出器350を含んでもよい。例えば、検出器350の数は、10、20、50、100、300個未満であってもよい。検出器350は、アレイ状に配置することができる。アレイは、疎であっても密であってもよい。アレイの正確な幾何学形状は、通常、治療装置の用途、例えば、頭部内の標的容積307の位置及び含まれるエミッタ305の数等に依存する。
【0063】
いくつかの例では、検出器350はエミッタ305と統合することもできる。例えば、超音波検出器は超音波エミッタと統合することができる。治療装置300は、エミッタ305、エミッタと統合した検出器、及び専用の検出器350の組合せを含むことができる。
【0064】
複数のエミッタ304及び/又は第2のエミッタ及び/又は第3のエミッタは、実質的に
図1及び
図2に関連して開示したものであってもよい。例えば、治療装置300は以下を含むことができる:
・超音波エミッタ、
・電磁エミッタ、
・磁場エミッタ、
・超音波エミッタと電磁エミッタの組合せ、
・超音波エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・電磁エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・超音波エミッタ、電磁エミッタ、及び磁場エミッタの組合せ。
【0065】
エミッタ304及び/又は第2のエミッタ及び/又は第3のエミッタのいずれか又は全ては、以下に説明するように調整可能であってもよい。
【0066】
代替形態の検出器350も治療装置300で使用可能である。検出器350の例には、超音波検出器、圧電検出器、光子検出器、無線周波数放射線検出器、及び/又は磁気検出器が含まれる。異なる検出器350を単一の治療装置300内で組み合わせて使用することもできる。
【0067】
いくつかの例では、治療装置は、頭部に装着されるフレーム内に調整可能なエミッタのアレイとして構成された音響エミッタ及び/又は電磁エミッタ及び/又は磁気エミッタを含み、各エミッタは頭蓋骨内の指定した容積に放射線を個別に送達し、調整可能なエミッタのアレイによって提供される送達される放射線のパラメータを調整することにより、照射される容積の交差部及び交差部での放射線の組合せによって、単一又は混合モダリティの効果的な集束放射線が提供され、脳の撮像、脳の一部の損傷、脳内の悪性組織の損傷、脳内のニューロンの活性化、脳の損傷の修復、脳への物質の送達のためのBBBの透過性の向上、及び脳の特定の領域への放射線応答性薬剤の活性化が可能になる。
【0068】
いくつかの例では、治療装置は、頭蓋内の1つ又は複数の容積に音響放射線及び/又は電磁放射線及び/又は磁気放射線を効果的に送達する調整可能なエミッタのアレイを組み込んだ頭部ウェアラブル装置と、調整可能なエミッタのアレイによって提供される送達される放射線のパラメータの少なくとも1つを変更するための調整手段とを含むことができる。
【0069】
いくつかの例では、治療は、頭蓋内の1つ又は複数の容積に音響放射線及び/又は電磁放射線及び/又は磁気放射線を効果的に送達する調整可能なエミッタのアレイを組み込んだ頭部ウェアラブル装置と、頭蓋内の1つ又は複数の容積からの音響信号及び/又は電磁信号及び/又は磁気信号を検出する調整可能な信号検出器のアレイと、調整可能なエミッタのアレイによって提供される送達される放射線のパラメータの少なくとも1つを変更するための調整手段とを含むことができる。
【0070】
いくつかの例では、頭蓋内の1つ又は複数の指定した容積に音響放射線及び/又は電磁放射線及び/又は磁気放射線を送達する方法は、音響放射線及び/又は電磁放射線及び/又は磁気放射線を放出するように構成されたエミッタのアレイを組み込んだ頭部ウェアラブル装置を提供するステップと、エミッタのアレイを規定の形状及び/又は向き及び/又は強度に調整して、放射線のパラメータの少なくとも1つを変更し、有効な放射線を頭蓋骨内の指定した容積に集束させるステップとを含む。
【0071】
いくつかの例では、治療装置を製造する方法は、
a.頭部の3次元トポロジを決定するステップと、
b.頭蓋内の指定した容積に有効な放射線を送達するために必要なエミッタのモダリティ、数、及び向きを決定するステップと、及び
c.頭部のトポロジに適合し、頭蓋内の指定した容積に有効な放射線を送達するようにエミッタを位置付けし、オプションで頭蓋内から発せられる信号を効果的に検出するために信号検出器を位置付けする頭部装着型フレームを製造するステップと、を含むことができる。
【0072】
治療装置のいくつかの使用例では、送達される放射線の調整の制御は、エミッタのモダリティ、エミッタの数、エミッタの配置、エミッタの向き、放射線のモダリティ、放射線の向き、放射線の強度、放射線の出力、放射線の振幅、放射線の位相、放射線のタイミング、及び/又は放射線の周波数を含むグループから選択される1つ又は複数のパラメータに基づいて実施することができる。
【0073】
調整可能な治療装置
治療装置の中には、治療装置のフレームに対して静的な位置に固定されたエミッタを含むものがある。代替的に又は追加的に、治療装置は調整可能なエミッタを含むことができる。これにより、治療装置のエミッタは装着者の頭部内の異なる領域及び容積を標的にすることができ、それにより治療装置の汎用性が高まる。
【0074】
図4は、治療装置400の例を示している。治療装置400は、頭部に装着されるように構成されたフレーム403を含む。フレーム403は、装着者101の頭部内の容積407に少なくとも1つの放射線モダリティを送達するように構成された複数のエミッタ404を支持する。治療装置400は、フレーム403に対する少なくとも1つのエミッタ404の向き及び/又は位置を調整できるように構成される。複数のエミッタ404は、共通の容積407に放射線を送達するように構成される。複数のエミッタ404は、容積407内のリポソームを活性化するように構成することができる。
【0075】
この特定の例では、フレーム403は1つ又は複数のレール又はガイド460を含む。1つ又は複数のエミッタ404は、フレーム403上の異なる位置でレール又はガイド460に固定することができ、これにより、着用者101の頭部に対する1つ又は複数のエミッタ404の位置を調整することができる。
【0076】
例えば、1つ又は複数のエミッタ404は、レール又はガイド460に沿って摺動できるキャリッジ465に取り外し可能に又は永久的に固定することができる。キャリッジ465は、関連するエミッタ404の位置を設定するために、レール又はガイド460上の任意の位置に固定することができる。一部のレール460によって、キャリッジ465をレール460に沿った任意の位置に固定することができる一方、他のレール460によって、キャリッジ465を1つ又は複数の個別の位置に固定できる。キャリッジ465は、キャリッジ465をレール460に沿って駆動し、その位置を設定するサーボモータ468を含んでもよい。サーボモータ468の代わりに、ステッピングモータ等を使用することもできる。追加又は代替的に、圧電素子470を使用して、レール460上のキャリッジ465の位置を微調整することもできる。追加又は代替的に、キャリッジ465は、レール460の周りに手動で調整できる。
【0077】
フレーム403は、複数のレール460及びキャリッジ465を含んでもよい。複数のレール460は、互いに略直交している。
【0078】
一部の治療装置400は、永久的に固定されたエミッタ404と調整可能なエミッタ404の組合せを含む場合がある。エミッタ404は、キャリッジ465に対して1つ又は複数の軸線の周りに枢動又は回転できる。つまり、エミッタ404の角度及び方向を、着用者101の頭部及び容積407に対して調整できる。エミッタ404は、キャリッジ465の周りに手動で枢動でき(例えば、ジンバルのような機構を使用する)、圧電アクチュエータ等によって駆動できる。これにより、エミッタの放射方向を非常に正確に調整できる。
【0079】
治療装置400は、特に
図3を参照して、本明細書で説明した1つ又は複数の検出器を含む。さらに、治療装置400には、本明細書で説明するエミッタの様々な種類のいずれかが、単独で、又は組み合わせて含まれる。例えば、治療装置は以下を含むことができる:
・超音波エミッタ、
・電磁エミッタ、
・磁場エミッタ、
・超音波エミッタと電磁エミッタの組合せ、
・超音波エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・電磁エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・超音波エミッタ、電磁エミッタ、及び磁場エミッタの組合せ。
【0080】
図5は、調整可能な治療装置500の更なる例を示している。この治療装置500はフレーム503を含み、フレーム503は、フレーム503の周りに間隔を空けて配置され、1つ又は複数のエミッタ504を収容するように構成された複数の開口部520を含む。フレーム503に組み込まれたエミッタ504の数、及びフレーム503に対するエミッタの初期位置は、治療装置500の組立て又は構築中に決定される。エミッタ504は、治療装置500を最初に組み立てた後にエミッタ504の数及び/又は位置を変更できるように、フレーム503の開口部520から取り外し可能であるのが好ましい。各エミッタ504は、放出の向きを調整できるように、その開口部内で1つ又は複数の軸線の周りに旋回可能であるのが好ましい。
【0081】
治療装置500は、特に
図3を参照して、本明細書で説明するように、1つ又は複数の検出器を含むことができる。さらに、治療装置500には、本明細書で説明するエミッタの様々な種類のいずれかが、単独で、又は組み合わせて含まれ得る。例えば、治療装置は以下を含むことができる:
・超音波エミッタ、
・電磁エミッタ、
・磁場エミッタ、
・超音波エミッタと電磁エミッタの組合せ、
・超音波エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・電磁エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・超音波エミッタ、電磁エミッタ、及び磁場エミッタの組合せ。
【0082】
治療装置の製造
所与の治療装置のエミッタの必要な数、モダリティ、及び位置/向きは、治療装置の用途に応じて変わる可能性がある。例えば、2人の異なる参加者が、それぞれの頭部内の2つの異なる容積で異なるモダリティの放射を必要とする場合がある。同様に、人によって頭部又は頭蓋骨の形状が異なると、治療装置のフレーム及び/又はエミッタの必要な構成も影響を受ける可能性がある。例えば、頭部内での超音波放射線の回折及び反射は、頭蓋骨の形状、及び頭部内の様々な材料(例えば、骨、脂肪、及び他の組織)の分布によって影響を受ける可能性がある。従って、所与の頭部及び特定の用途で使用するためにカスタマイズした治療装置を作製することが有利になる場合がある。
【0083】
図6は、カスタマイズした治療装置を製造する方法600の例を示している。最初に、610で、装着者の頭部を撮像し、頭部の3次元トポロジを決定する。測定、撮像、スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、X線、磁気共鳴画像(MRI)、光学スキャン、脳磁図(MEG)、及び/又は陽電子放出断層撮影(PET)スキャンを単独又は組み合わせて、造影剤の有無にかかわらず、様々な撮像技術を使用できる。
【0084】
次に、620で、複数のエミッタによって照射される少なくとも1つの指定した容積が、頭部の3次元トポロジから特定される。治療装置の必要な用途に応じて、複数の容積を特定することができる。次に、630で、指定した容積に基づいて、少なくとも1つの指定した容積に対する少なくとも1つのエミッタの所望の向きが決定される。640で、必要なエミッタの数、エミッタのモダリティ、及び/又は少なくとも1つの指定した容積に対するそれらエミッタの必要な位置も、必要に応じて決定することができる。有限要素モデリングを使用して、エミッタの配置及び構成を決定することができる。エミッタは、前述の頭部の撮像を使用して頭部内で特定された共通容積に放射線を送達するように配置することができる。エミッタは、共通容積が(例えば、薬剤又はリポソームを活性化するために)閾値線量を受け取る一方、軸外容積が閾値以下の線量を受け取るようにさらに配置することができる。650で、必要な又は望ましい検出器の数及び位置及び/又は向きも、必要に応じて決定できる。
【0085】
630で、指定した容積に対する少なくとも1つのエミッタの所望の向きが決定されると、次に660で、頭部に装着されるように構成されたカスタマイズしたフレームが製造される。カスタマイズしたフレームは、少なくとも1つのエミッタを支持するように構成され、それによって、カスタマイズしたフレームを頭部に装着させると、少なくとも1つのエミッタは、頭部内の少なくとも1つの指定した容積に対して所望の向きに位置付けされる。
【0086】
いくつかの例では、カスタマイズしたフレームは、3D印刷又は他の積層造形技術を使用して製造できる。これにより、高度にカスタマイズされ、さらに比較的低コストで製造できる精密フレームの比較的迅速な製造が可能になる。精密な減算的製造(subtractive manufacturing)等の他の製造形態も可能である。カスタマイズしたフレームは、必要なエミッタ-検出器をクレードル向きに配置するために設計されたスケルトン化された外頭蓋骨キャップである場合がある。
【0087】
3次元モデルのスケーリング及びフレームの再印刷により、頭のサイズの変化に対応し、頭蓋骨内の別の特定の容積に再標的することができる。例えば、所与の参加者は、異なる治療部位(例えば、治療部位に複数の病変があるため)又は異なる時間(例えば、第1の放射線モダリティを受け、その後、後で第2の放射線モダリティを受ける)で複数の治療を必要とする場合がある。一連のカスタマイズしたフレームをその特定の参加者用に製造して、各個別のフレームが特定の部位及び/又は時間での治療用に構成することができる。
【0088】
例えば、第1のカスタマイズしたフレームは、第1の治療部位を標的とする向きで1つ又は複数のエミッタを支持するように構成できる。第2のカスタマイズしたフレームは、第2の治療部位を標的とする向きで1つ又は複数のエミッタを支持するように構成できる。次に、参加者は、第1のカスタマイズしたフレームを使用して第1の位置(部位)で治療を受け、その後、第2のカスタマイズしたフレームを使用して第2の位置(部位)で治療を受けることができる。第1及び第2のカスタマイズしたフレームは両方とも参加者用にカスタマイズされる(例えば、参加者の頭部の外側の輪郭に一致するように構成できる)が、各個別のフレームは参加者の特定の治療用に構成される。
【0089】
カスタマイズしたフレームに対するエミッタの位置及び向き、並びにカスタマイズしたフレームの形状は、着用者の頭部の全体的な形状だけでなく、着用者の頭部の構成も考慮に入れることができる。
【0090】
例えば、着用者の頭部を通る超音波放射線の伝播は、筋肉及び骨等の様々な種類の組織の界面での回折及び反射の影響を受ける。これらの界面は、多数あり、頭毎に異なる複雑な形状になることがある。従って、超音波エミッタを標的容積に対して適切な位置に適切な向きで正確に配置するには、着用者の頭部(つまり、頭皮)の外部輪郭と頭部の内部構成に関する知識が必要になる場合がある。
【0091】
有限要素モデリングを使用して、超音波放射線が着用者の頭部をどのように伝播するかをモデル化できる。次に、超音波エミッタの位置及び向きは、超音波エミッタが所望の位置及び向きにあるときに、超音波放射線が伝播され、所望の特性で少なくとも1つの特定した容積に照射されるように決定できる。
【0092】
特に
図3を参照して、製造した治療装置は、本明細書で説明するように、1つ又は複数の検出器を含んでもよい。さらに、製造した治療装置は、本明細書で説明する様々なエミッタのいずれかを、単独で、又は組み合わせて含んでもよい。これらのエミッタのいずれか又は全てが、本明細書で説明するように調整可能であり得る。製造した治療装置は以下を含むことができる:
・超音波エミッタ、
・電磁エミッタ、
・磁場エミッタ、
・超音波エミッタと電磁エミッタの組合せ、
・超音波エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・電磁エミッタと磁場エミッタの組合せ、
・超音波エミッタ、電磁エミッタ、及び磁場エミッタの組合せ。
【0093】
補助実験
ヘッドセットによる頭蓋骨内の特定の容積への照射を確認するために、出願人は以下の実験を行った。
【0094】
エミッタ検出器の超音波ビームプロファイルの(個別及び疎なアレイでの)音響マッピング、解剖学的にリアルな3次元モデル頭部、及び死体頭部を使用した。解剖学的補償(compensation)と、超音波の放射及び検出測定のための治療装置のカスタム位置付けを確立するために、死体頭部の高解像度CTスキャンを実施した。場合によっては、脳血管系に音響感受性リポソームを注入した場合と注入しない場合に受ける放射線を比較できるように、組織固定の直前にこのスキャンを実施することがある(死体の長期保管に必要)。刺激後に、CTスキャンと解剖を実施した。脳はそのまま摘出され(開頭術)、組織固有の超音波ハイドロフォンプローブを線条体容積内の各半球に挿入した。脳は頭蓋(cranial vault)に戻され、頭蓋が修復され、ヘッドセットを再度取り付けた。解剖した組織においてハイドロフォンによって測定した超音波放射線を使用して、モデル予測を検証及び調整した。
【0095】
音圧の大きさ及びプロファイルを正確に決定し、位相ステアリング法の開発及び検証を行うための3次元スキャンタンクシステムを含むHIFU256チャネルVerasonicsシステムを使用した頭蓋骨を研究した。
【0096】
神経毒で損傷した羊(パーキンソン病モデル)にドーパミン作動薬を含むリポソームを使用した。羊の準備には、i)エミッタの座標を決定するためのCTヘッドスキャン、ii)黒質の損傷手術(両側に非対称の量の毒素を注入して非対称な回転を促進し、福祉を向上させる)及び回復、iii)損傷及び感度を確認するための全身DAチャレンジ(アポモルフィン、ジヒドキシジン、ロピニロール)、iv)動物に対するエミッタの配置、v)静脈内カニューレ挿入、vi)行動評価が含まれる。実験の最後に、脳を採取し、高性能液体クロマトグラフィーでカテコールアミン濃度(ドーパミン、ホモバニリン酸、及びジヒドロキシフェニル酢酸)を測定し、免疫組織化学で各黒質の細胞の喪失を測定した。両側損傷後に、全ての羊は動きが鈍くなったように見えたが、それ以外は動いて草を食むことができた。ドーパミン枯渇が非対称の場合に、羊は自発的に向きを変えることも示した。
【0097】
損傷した羊にドーパミン作動薬を含むリポソームを使用すると、一度に1つの線条体の機能を選択的に強化して、非対称な向きを変えることができる。これにより、別々の(ただし機能は類似する)脳領域に対するシステムの正確な制御を実証できる。これにより、内部コントロール(損傷対非損傷)が得られ、ドーパミン拮抗薬を含むリポソームを投与して標的領域を効果的にオフにした手術を受けていない動物と比較できる。羊の準備には、i)頭部のCTスキャンによるトランスデューサ座標の決定、ii)手術を受けた動物の黒質の損傷手術(両側に非対称の量の毒素を注入して非対称な回転を促進し、福祉を向上させる)及び回復、iii)動物に対するエミッタの配置、iv)静脈内カニューレ挿入、v)行動評価が含まれる。これらの実験は、超音波放射線を脳の片側に投射して非対称な回転を確認するためのラットの事前テストで実証される。
【0098】
パドックでの行動評価(超音波検出記録を含む)は、羊にハーネスを装着してエミッタコントローラ-レコーダー電子機器及びGPSテレメトリを運ぶというものであった。実験セッションは3~4時間続き、循環神経調節剤を充填したリポソームの有無にかかわらず超音波を適用した。衛星ビデオを使用して全ての大まかな動きを記録し、対照群の仲間と比較して行動を測定した。非対称な回転があったことから、ヘッドマウントエミッタが頭蓋内の特定の容積に十分な音圧を適用し、音響感受性リポソームの閾値活性化を達成したことが示された。
【0099】
高解像度MRIスキャンを使用して、超音波を適用し、MRI造影剤ガドリニウムの存在下でBBBを開くのに十分なマイクロバブルを注入することにより、ヘッドセットによる超音波信号の投影を検証した。超音波を適用した後に、ヘッドセットを取り外し、造影剤の血管外漏出の範囲及び位置を決定するために頭部をスキャンした。
【0100】
リアルタイムの薬剤放出は、焦点領域から発せられるリポソーム誘発超音波放射線を検出することによって監視した。
【0101】
音響感作リポソームからの薬物放出を誘発する混合モダリティは、超音波と近赤外線(NIR)を組み合わせたもので、閾値以下の音圧で非侵襲的な薬物放出を強化する追加機能を提供する。単色赤外線放射と超音波圧を組み合わせた混合モダリティ薬物放出パラダイムは、超音波感受性リポソームに近赤外線感作機能を組み込むことで(例えば、染料IR780をリポソーム二重層に組み込む)、近赤外線照射及び超音波を個別に、又は同時に照射すると、薬物の破壊と放出を引き起こす可能性があることを示した。
【0102】
超音波エミッタ
治療装置は、外科的埋込みを必要としない超音波エミッタを使用できる。これらの装置は、着用者の頭皮と頭皮/頭蓋骨の界面を介して、着用者の頭部内の容積(例えば、脳の一部)に超音波放射線を送達することができる。出願人は、頭部の頭皮-頭蓋骨-脳経路は、神経治療のために脳に超音波放射線を送達するための音響伝達特性が劣る可能性があることを発見した。音響損失は、特に着用者の頭皮と頭蓋骨の界面で発生する可能性がある。これらの損失を最小限に抑えるように設計されていない従来の超音波エミッタは、着用可能な治療装置で使用するには不適切であるか、あまり望ましくない可能性がある。
【0103】
図7は、3つの超音波エミッタ704を支持する調整可能なフレーム703(一部のみ示される)を含む治療装置700の例を示している。超音波エミッタ704は、着用者の頭皮/頭蓋骨の界面を介して着用者の頭部内の容積に超音波放射線を送達するように構成される。超音波エミッタが、界面のインピーダンスに一致するべく頭皮/頭蓋骨の界面との反響を確立するように構成される場合に、頭皮/頭蓋骨の界面での損失を最小限に抑えることができる。エミッタの動作周波数は、着用者の頭蓋骨を介した超音波放射線の伝達を改善するように少なくとも部分的に選択することができる。他の設計要因(装着者に必要な治療の種類等)も、超音波エミッタの動作周波数を少なくとも部分的に決定する可能性がある。
【0104】
超音波エミッタ704は、小型で、一般的には便利な頭部装着型治療装置で使用できる寸法になっている。
図7に示される超音波エミッタ704は、直径35ミリメートル(mm)、厚さ10mmm、重量45グラムである。治療装置700(図示せず)を制御するために使用される電子回路も、持ち運び可能なサイズ(例えば、フットプリントが約8センチメートル(cm)×5cm以下)のフォームファクタを有することができる。治療装置700の制御は、制御回路のハードウェア埋込みによって完全に規定できるため、マイクロプロセッサ又はコンピュータは必要ない。治療装置700がフェイルセーフになるように構成できるように、監視機能を制御回路に組み込むことができる。
【0105】
超音波エミッタは、3次元スキャンタンクシステム及びハイドロフォンを使用して、放出された超音波放射線を測定することによって特性評価した。
図8は、時間領域でハイドロフォンによって測定した信号801を示している。ハイドロフォンの信号は、軸810の時間(マイクロ秒単位)に対するy軸805のボルト単位で表される。
【0106】
図8には、周波数領域におけるハイドロフォンの信号802も示されており、x軸820の周波数(KHz単位)に対するy軸815のdB単位で表される。超音波エミッタの出力は、ピーク830で示されるように、約520KHzの基本周波数を有する。2次、3次、5次高調波は、それぞれ840、850、870で示される。これらのピークの振幅は、基本周波数の振幅に対して約-45dBである。4次高調波860の振幅は、周波数領域における信号のノイズフロアを大幅に上回っているようには見えない。
【0107】
図9及び
図10は、超音波エミッタのうちの1つに対する様々な位置での音圧レベルを示す等高線図である。
図9は、固定深度(つまり、z座標)におけるx-y平面の測定音圧レベルを示す横方向プロットである。測定音圧(通常は910で示される)は、放射軸920(
図9の視点から、ページの「内側」又は「外側」)の周りに略対称である。
【0108】
図10は、固定y座標におけるx-zプレートの音圧レベルを示す軸方向プロットである。測定音圧1010は、放射軸1020の周りに略対称である。
【0109】
超音波エミッタが頭皮/頭蓋骨の界面を介して超音波放射線を伝達する能力は、True Phantom Solutionsファントムヘッドを使用して特性評価した。ファントムヘッドは、平均的な人間の頭部(頭皮及び頭蓋骨を含む)を模倣した構造を有しており、平均的な人間の頭部の音響特性を模倣した材料で作製される。
【0110】
図11は、ファントムヘッド1110に対する多数のエミッタの所望の向きを示している。ファントムヘッド1110は、その3次元トポロジを決定するために撮像した。治療すべき指定した容積(1107で示される)は、ファントムヘッド1110の3次元トポロジから特定した。モデリングを使用して、5つの超音波エミッタ1104の所望の向きを決定し、超音波エミッタ1104が容積1107を照射するようにした。各超音波エミッタ1104の放射軸1105は、この所望の向きで互いに略直交し、治療を受ける共通の容積1107で交差する。超音波放射線は、ファントムヘッド1110の頭皮と頭皮/頭蓋骨の界面を通過して容積1107に到達する必要がある。
【0111】
超音波エミッタは、頭皮/頭蓋骨の界面を介して超音波放射線を伝達する能力を特徴付けるために、この実験で意図的に選択した。他の例では、エミッタのモダリティは、ファントムヘッド1110の撮像したトポロジ及び特定した容積1107に基づいて少なくとも部分的に決定できる。同様に、この実験では5つの超音波エミッタ1104を選択したが、エミッタの数も、ファントムヘッド1110の撮像したトポロジ、容積1107の性質(例えば、容積1107のサイズ、形状、位置、及び/又は内容を含む)、及び必要な治療の性質に応じて少なくとも部分的に決定できる。
【0112】
次に、ファントムヘッド1110の撮像したトポロジを使用して、ファントムヘッド1110の周りでエミッタ1104を所望の向きに支持するように構成されたカスタマイズしたフレームを製造した。
図12及び
図13は、ファントムヘッド1110の上に装着された治療装置を示している。超音波エミッタ1104は、ファントムヘッド1110の外側の頭皮に接触しており、頭部内の容積1107に対して所望の向きに配置される(
図11に示される)。この場合に、カスタマイズしたフレームはファントムヘッド1110を取り囲んでいる。エミッタ1104を支持するカスタマイズしたフレームは、3D印刷することも、他の積層製造技術を使用して構築することも、又は撮像したトポロジを使用して本明細書で説明するいずれかの技術を使用して構築することもできる。例えば、頭部内の他の容積を治療する必要がある場合、同じ容積1107をエミッタの異なる向きから治療する必要がある場合(例えば、容積1107が特に大きい場合)、又は後の段階でさらに治療が必要な場合に、ファントムヘッド1110用に一連のカスタマイズしたフレームを構築することもできる。本明細書で説明するように、治療装置には、検出器、単独又は組合せの様々なモダリティのエミッタ、及び/又は1つ又は複数の調整可能なエミッタも含まれ得る。
【0113】
容積1107を照射するために超音波エミッタ1104が使用され、容積1007での音圧が測定され、頭皮/頭蓋骨の界面を介した超音波放射線の伝達を決定した。頭皮/頭蓋骨の界面での損失は、頭皮/頭蓋骨の界面での反響によるインピーダンス整合により低減した。実験データから、頭蓋骨による屈折が各超音波エミッタの焦点深度に影響を与える可能性があることが示唆される。これを考慮すると、必要な焦点深度を実現できる。頭蓋骨の多孔性による波の散乱によって生じる音響信号の損失は、羊の頭蓋骨における波の散乱による信号の損失よりも著しく少なかった。
【0114】
利点
既に上で説明した利点の中で、単一又は混合の放出モダリティで頭蓋骨内の特定の容積に超音波圧及び/又は光子照明及び/又は無線周波数放射線及び/又は磁場を送達できる治療装置を本明細書に開示した。エミッタのアレイは、複数のエミッタからの交差する放射線が閾値以上である場合にのみ、閾値以下の放射を個別のエミッタから頭蓋骨内の容積に送達することを可能にするため、非特異的な影響を最小限に抑えることができる。例示の治療装置は、外科的設置を必要とせず、連続的又は半連続的又はオンデマンドの音響圧及び/又は光子照明及び/又は無線周波数放射線及び/又は磁場を頭蓋骨内の特定の容積に送達することができ、頭蓋骨内の別の容積に都合よく再構成することができ、都合よく保守することができ、製造コストが比較的安価であるため、広く利用可能である。
【0115】
治療装置のいくつかの例は、リソースから遠く離れたコミュニティ、又は伝染病(Covid-19等)により個人の移動が制限される時期に遠隔医療を提供するために使用できる。治療装置のいくつかの例は、頭部の外科的介入が文化的に難しいコミュニティでも使用できる可能性がある。治療装置の自動制御を可能にする検出器の使用により、非従来的な状況での治療も可能になる。例えば、場合によっては、治療装置のフレームを無害な衣類又はアクセサリ(メガネ等)にすることができ、バス又は自宅等都合のよいときに治療を送達できる。これに対して、従来の治療は、医療専門家の直接の監督の下で専門施設で行う必要がある場合がある。
【0116】
治療装置の使用により、脳の一部を損傷したり、脳の損傷を修復したり、悪性組織を除去したり、又は脳を刺激するための電極を挿入したりするための従来の脳の精密外科治療に存在するいくつかの欠点を克服することができる。これらの従来の外科手術は、非常に侵襲的であり、脳にアクセスするために頭蓋骨の一部を外科的に除去する開頭術に関連する多くのリスクを伴う。外科的リスクには、例えば、失血、組織損傷、感染、及び麻酔薬に対する副作用が含まれる。
【0117】
本発明は、その実施例の説明によって説明し、実施例は詳細に説明しているが、出願人の意図は、添付の請求項の範囲をそのような詳細に限定又は何らかの形で限定するものではない。当業者であれば、追加の利点及び修正を容易に理解できるであろう。従って、より広い態様における本発明は、図示及び説明した特定の詳細、代表的な機器及び方法、及び例示的な実施例に限定されない。従って、出願人の一般的な発明概念の精神又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。
【国際調査報告】