(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】複数の型のがんを決定するための分配系および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525959
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022046537
(87)【国際公開番号】W WO2023076036
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524162066
【氏名又は名称】クリーブランド ダイアグノスティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャイト, アーノン
(72)【発明者】
【氏名】ザスラフスキー, ボリス ワイ.
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045DA36
2G045DA78
2G045GC10
(57)【要約】
本開示は、一般的には、種を分配するための系および方法に関する。一部の実施形態において、そのような系は、1つまたは複数の型のがんを決定するために使用され得る。例えば、特定の態様は、一般的には、例えば、種々の型のがんを区別するため、がんを有する対象を診断するためなどに使用され得る、水性多相分配系を対象とする。一部の場合において、そのような系は、溶媒特性、例えば、その分配系の2つの相の間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ*)、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)、および静電特性の差(c)を使用して、同定され得る。これらは、種々の実施形態にしたがって特定の範囲内にあり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
該水性二相分配系は、
(i)-0.175+/-0.007の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は該第一の相の二極性/分極率(π
*)と該第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)0.001+/-0.035の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは該第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と該第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)-0.050+/-0.021の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは該第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と該第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.020+/-0.135の該第一の相と該第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、該水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-7】
である、組成物。
【請求項2】
第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
該水性二相分配系は、
(i)表II内の行から選択される、該第一の相と該第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は該第一の相の二極性/分極率(π
*)と該第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)表II内の該行から選択される、該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは該第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と該第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の最大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)表II内の該行から選択される、該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは該第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と該第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)表II内の該行から選択される、該第一の相と該第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、該水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各々の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-8】
であり、
表IIは
【表2-3】
である、組成物。
【請求項3】
第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
該水性二相分配系は、
(i)表II内の行から選択される、該第一の相と該第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*);
(ii)表II内の該行から選択される、該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα);
(iii)表II内の該行から選択される、該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ);および
(iv)表II内の該行から選択される、該第一の相と該第二の相との間の静電特性の差(c)
を有し、
表IIは、
【表2-4】
である、組成物。
【請求項4】
少なくとも第一の水性多相分配系および該第一の分配系と組成上は実質的に同一な第二の水性多相分配系を提供する工程;
第一のがん対象由来の第一のサンプルを該第一の分配系に添加することおよび該第一の分配系内の該第一のサンプル中の溶質の分配を決定することによって、該第一の対象中の第一のがんを決定する工程;ならびに
第二のがん対象由来の第二のサンプルを該第二の分配系に添加することおよび該第二の分配系内の該第二のサンプル中の該溶質の分配を決定することによって、該第二の対象中の第二のがんを決定する工程
を含む、方法。
【請求項5】
前記第一の対象を前記第一のがんについて処置し、前記第二の対象を前記第二のがんについて処置する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第一のがんと前記第二のがんとが実質的に同じであるか否かを決定する工程をさらに含む、請求項4または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の対象中の前記第一のがんの正体が既知である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の分配系内の前記第一のサンプル中の第二の溶質の分配を決定する工程、および前記第二の分配系内の前記第二のサンプル中の該第二の溶質の分配を決定する工程をさらに含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の分配系内の前記第一のサンプル中の前記溶質の分配についての第一の分配係数を決定する工程、および前記第二の分配系内の前記第二のサンプル中の該溶質の分配についての第二の分配係数を決定する工程をさらに含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の分配係数を含む第一のシグネチャー、および前記第二の係数を含む第二のシグネチャーを構築する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一のシグネチャーおよび前記第二のシグネチャーを、参照がんを有する参照対象から得られたシグネチャーと比較する工程をさらに含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一のがんが以下:リンパ腫、肉腫および癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜腫、中皮腫、リンパ管内皮肉腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽細胞腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症、
から選択される、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第一のがんの型を有する対象から生じる溶質についての第一の分配係数、第二のがんの型を有する対象から生じる該溶質についての第二の分配係数、および該第一のがんの型も第二のがんの型もいずれも有しない対象から生じる該溶質についての第三の分配係数を示す、水性多相分配系
を含む、組成物。
【請求項14】
第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
該水性二相分配系は、
(i)0.005+/-0.008の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は該第一の相の二極性/分極率(π
*)と該第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)-0.380+/-0.095の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは該第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と該第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)-0.020+/-0.019の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは該第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と該第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.295+/-0.184の該第一の相と該第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、該水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウムの分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-9】
である、組成物。
【請求項15】
第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
該水性二相分配系は、
(i)-0.105+/-0.040の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は該第一の相の二極性/分極率(π
*)と該第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)-0.183+/-0.048の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは該第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と該第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)0.060+/-0.020の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは該第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と該第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.575+/-0.125の該第一の相と該第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、該水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-10】
である、組成物。
【請求項16】
第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
該水性二相分配系は、
(i)-0.040+/-0.040該第一の相と該第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は該第一の相の二極性/分極率(π
*)と該第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)-0.270+/-0.052の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは該第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と該第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)0.021+/-0.022の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは該第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と該第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.050+/-0.060の該第一の相と該第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、該水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-11】
である、組成物。
【請求項17】
第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
該水性二相分配系は、
(i)0.035+/-0.040の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は該第一の相の二極性/分極率(π
*)と該第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)-0.088+/-0.050の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは該第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と該第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)0.102+/-0.023の該第一の相と該第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは該第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と該第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.775+/-0.125の該第一の相と該第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、該水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-12】
である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年10月28日に出願された「複数の型のがんを決定するための分配系および方法(Partitioning Systems and Methods for Determining Multiple Types of Cancers)」という発明の名称の米国特許仮出願第63/272,759号の利益を主張し、その米国特許仮出願はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
(分野)
本開示は、一般的には、種を分配するための系および方法に関する。一部の実施形態において、そのような系は、1つまたは複数の型のがんを決定するために使用され得る。
【背景技術】
【0003】
(背景)
水性分配系は、低分子、タンパク質、ウイルスなどにおける構造変化について感度が高いことが一般的に知られている。例えば、米国特許第7,968,350号;同第8,099,242号;同第8,211,714号;または同第9,354,229号(各々がその全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。これらの分配系は、例えば、(例えば、がん細胞によって生成される)タンパク質による構造改変を検出するために、使用され得る。例えば、がんは、選択的スプライシング、コンフォメーション変化、翻訳後修飾(特に、特定のグリコシル化)、タンパク質-タンパク質相互作用などによって、そのようなタンパク質を変更し得る。したがって、そのような水性分配系は、がん状態と非がん状態とを区別するために以前に使用された。しかし、種々の型のがんを区別するための分配系は、以前には記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,968,350号明細書
【特許文献2】米国特許第8,099,242号明細書
【特許文献3】米国特許第8,211,714号明細書
【特許文献4】米国特許第9,354,229号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
本開示は、一般的には、種を分配するための系および方法に関する。一部の実施形態において、そのような系は、1つまたは複数の型のがんを決定するために使用され得る。本開示の主題は、いくつかの場合において、相互に関連した生成物、特定の問題に対する代替の解決策、ならびに/または1つもしくは複数のシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる使用を伴う。
【0006】
一態様は、概して、第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
水性二相分配系は、
(i)-0.175+/-0.007の第一の相と第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は第一の相の二極性/分極率(π
*)と第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)0.001+/-0.035の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)-0.050+/-0.021の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.020+/-0.135の第一の相と第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-1】
である、組成物に向けられる。
【0007】
別の態様は、概して、第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
水性二相分配系は、
(i)表II内の行から選択される、第一の相と第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は第一の相の二極性/分極率(π
*)と第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)表II内の行から選択される、第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)表II内の行から選択される、第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)表II内の行から選択される、第一の相と第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各々の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-2】
であり、
表IIは
【表2-1】
である、組成物に向けられる。
【0008】
なお別の態様は、概して、第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
水性二相分配系は、
(i)表II内の行から選択される、第一の相と第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*);
(ii)表II内の行から選択される、第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα);
(iii)表II内の行から選択される、第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ);および
(iv)表II内の行から選択される、第一の相と第二の相との間の静電特性の差(c)
を有し、
表IIは、
【表2-2】
である、組成物に向けられる。
【0009】
さらに別の態様は、概して、第一のがんの型を有する対象から生じる溶質についての第一の分配係数、第二のがんの型を有する対象から生じる溶質についての第二の分配係数、および第一のがんの型も第二のがんの型もいずれも有しない対象から生じる溶質についての第三の分配係数を示す、水性多相分配系を含む、組成物に向けられる。
【0010】
なお別の態様は、概して、第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
水性二相分配系は、
(i)0.005+/-0.008の第一の相と第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は第一の相の二極性/分極率(π
*)と第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)-0.380+/-0.095の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)-0.020+/-0.019の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.295+/-0.184の第一の相と第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウムの分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-3】
である、組成物に向けられる。
【0011】
別の態様は、概して、第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
水性二相分配系は、
(i)-0.105+/-0.040の第一の相と第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は第一の相の二極性/分極率(π
*)と第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)-0.183+/-0.048の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)0.060+/-0.020の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.575+/-0.125の第一の相と第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-4】
である、組成物に向けられる。
【0012】
なお別の態様は、概して、第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
水性二相分配系は、
(i)-0.040+/-0.040第一の相と第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は第一の相の二極性/分極率(π
*)と第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)-0.270+/-0.052の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)0.021+/-0.022の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.050+/-0.060の第一の相と第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-5】
である、組成物に向けられる。
【0013】
なお別の態様は、概して、第一の相と第二の相とを有する水性二相分配系を含む組成物であって、
水性二相分配系は、
(i)0.035+/-0.040の第一の相と第二の相との間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ
*)であって、Δπ
*は第一の相の二極性/分極率(π
*)と第二の相の二極性/分極率(π
*)との間の差として決定され、π
*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν
1)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のπ
*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の二極性/分極率の差;
(ii)-0.088+/-0.050の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)であって、Δαは第一の相の水素結合ドナー酸性度(α)と第二の相の水素結合ドナー酸性度(α)との間の差として決定され、αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタインの吸収帯の極大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(E
T(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649E
T(30)-2.03-0.72π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差;
(iii)0.102+/-0.023の第一の相と第二の相との間の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)であって、Δβは第一の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)と第二の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)との間の差として決定され、βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν
2)をcm
-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν
2)-0.57π
*として算出することによって各相中で別個に決定される、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差;ならびに
(iv)0.775+/-0.125の第一の相と第二の相との間の静電特性の差(c)であって、cは、水性二相分配系中の表Iの各ジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび表Iからの各ナトリウム塩のメチレン基当量(N
c)をlog
10K=c+EN
cに回帰させてcおよびEを決定することによって決定される、静電特性の差
を有し、
表Iは、
【表1-6】
である、組成物に向けられる。
【0014】
別の態様は、一般的には方法に関し、その方法は、少なくとも第一の水性多相分配系およびその第一の分配系と組成上は実質的に同一な第二の水性多相分配系を提供する工程;第一のがん対象由来の第一のサンプルをその第一の分配系に添加することおよびその第一の分配系内の該第一のサンプル中の溶質の分配を決定することによって、その第一の対象中の第一のがんを決定する工程;ならびに第二のがん対象由来の第二のサンプルをその第二の分配系に添加することおよびその第二の分配系内の第二のサンプル中のその溶質の分配を決定することによって、その第二の対象中の第二のがんを決定する工程を含む。
【0015】
別の態様において、本開示は、本明細書において記載されている実施形態のうちの1つまたは複数(例えば、水性分配系)を作製する方法を含む。なお別の態様において、本開示は、本明細書において記載されている実施形態のうちの1つまたは複数(例えば、水性分配系)を使用する方法を含む。
【0016】
本開示の他の利点および新規な特徴が、本開示の種々の非限定的実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
本開示は、一般的には、種を分配するための系および方法に関する。一部の実施形態において、そのような系は、1つまたは複数の型のがんを決定するために使用され得る。例えば、特定の態様は、一般的には、例えば、種々の型のがんを区別するため、がんを有する対象を診断するためなどに使用され得る、水性多相分配系を対象とする。一部の場合において、そのような系は、溶媒特性、例えば、その分配系の2つの相の間の溶媒の二極性(dipolarity)/分極率の差(Δπ*)、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)、および静電特性の差(c)を使用して、同定され得る。これらは、種々の実施形態にしたがって特定の範囲内にあり得る。さらに、これらの範囲は、その分配系の相の組成を制御することによって正確に調整され得、タンパク質または他の種の比較的微小な構造変化さえも区別することにおいて予想外に効率的な新規な分配系を生成し得、したがって、この新規な分配系は、種々の型のがんを区別するため、または他の適用のために、使用され得る。
【0018】
一態様は、一般的には、種々のがんまたは他の状態に対応するサンプルについて同じタンパク質の別々の分配係数(K)を決定するために使用され得る、単一の分配系を対象とする。すべてのがんサンプルに分配された同じタンパク質がすべてのがんについて同じ(すなわち、類似するK値で)挙動をしたであろうことを示し、種々のがんから生じるにも関わらず同じタンパク質が同じ様式で分配するだろうことを指し示した以前の研究を考慮すると、これは驚くべきことである。
【0019】
一般に、本明細書において記載されている分配系などの分配系を使用して明らかにされるがん(または他の状態)に起因するタンパク質の構造に対する変化は、そのような変化をもたらすがんの生物学(例えば、翻訳後修飾、代謝変化など)が類似することを考慮すると、種々のがんの間で類似すると予期されていただろう。しかし、驚くべきことに、一部の型の分配系(本明細書において記載されている分配系を含む)は、種々の型のがんから生じる同じタンパク質について別々の分配挙動を生じ得る。そのような異常な挙動を示す分配系は同定するのが困難であり、その分配系は、そのような系を形成する化学空間の広大な範囲を考慮すると、その分配系を形成する構成成分を単に点検することによっては同定され得ない。代わりに、そのような分配挙動は、特定の溶媒特性、例えば、溶媒の二極性/分極率の差(Δπ*)、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)、および静電特性の差(c)に依存する。これらは、その分配系を形成する構成成分によってだけではなく、それらの構成成分の濃度によっても、制御され得る。本明細書において記載されている溶媒特性などの溶媒特性を示す組成物は、種々のがんから生じるタンパク質が別々の様式で、例えば、そのタンパク質が生じるがんが決定されるのを可能にする様式で、分配されるのを可能にするのに適切な特性を示す分配系を同定するために重要であると、考えられる。したがって、本明細書において記載されている実施形態などの種々の実施形態は、一般的には、溶媒特性の特定の組合せを示す分配系を対象とする。これらは、本明細書において議論されているとおりに記載され、測定され、決定され得る。
【0020】
種々の化学成分または成分を有する種々の分配系が同じ溶媒特性を依然として示し得ることに、留意されたい。いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、タンパク質(または他の種)と、種々の分子間特性を有する2種以上の溶媒との相互作用は、本明細書において記載されている溶媒特性などの特定の溶媒特性によって支配されると、考えられる。したがって、本明細書において議論されているとおり、特定の型の分配系が、それらの溶媒特性によって記述される。特定の実施形態において記載され利用されている溶媒特性は使用するのに便利であり得かつ/または実験上利用可能であり得るが、他の特性もまた、目的の溶媒構造を記述するため、および/または溶媒:溶質間分子相互作用(水性二相分配系において観察される差次的分配をもたらすものが挙げられる)を分析するために、使用され得る。さらに、その分配系は、2つの相を含み得、または一部の場合には、2つよりも多い相を含み得る。さらに、一部の実施形態において、その分配系内の相のうちの一部またはすべては水性であり得る。
【0021】
がんは、一般的には、タンパク質合成中のコーティング、翻訳、および/または翻訳後事象に対する変化をもたらし得る変異(代謝変化に起因するいくつかの周知の全体的細胞間環境改変などが挙げられる)によって引き起こされる。これらのすべてが、タンパク質または他の種に対する種々の構造変更をもたらすために組み合わされ得、それらの構造変更は、タンパク質およびそれらの相互作用においてがんと相関し得る。この特性は、例えば、本明細書において議論されているとおり、診断または処置目的のために使用され得る。
【0022】
その構造に対する特定の改変は、がん細胞の変化した代謝環境において生成されたタンパク質の間で一貫して見出される(例えば、グリコシル化などの特定の翻訳後修飾)ことに留意することが、重要である。そのような構造変化は、目的のタンパク質バイオマーカー(例えば、糖タンパク質)または他のバイオマーカー(例えば、本明細書において記載されているバイオマーカー)のレパートリー全体に影響を与え得る。したがって、各タンパク質は別々の一次構造、二次構造、および三次構造を有し得るが、がん代謝の存在下でのその高次構造に対する特定の変更は、特異的であり、本明細書に置いて記載されている手段などの一般化された手段を使用して決定され得、それらの手段は、そのような差を分けることが可能であり得る。
【0023】
特定の態様において、分配系の特定の組成を記述する場合、その出発化学組成または出発化学成分(例えば、ポリマーの量および型、塩など)が使用され得る。しかし、この記述は、溶媒相との溶質(例えば、タンパク質)の差次的相互作用によってその溶質の観察される分配挙動を生じるそのような溶媒相の分子特性を十分には記述していない。それに対して、これらの溶媒-溶質間分子相互作用は、極めて複雑である。熱力学状態図が、その分配系の相の初期出発化学成分から経験的に作成され得るが、そのような状態図は、その分配系内の溶質の観察される分配挙動を正確に記述するにはしばしば不十分である。したがって、その分配系の出発化学成分によってその分配系の初期化学成分を詳述することは、その分配系とその溶質の分配挙動との間の特定の関係を十分には予測しない。実際には、類似する化学組成を有する種々の分配系が、ある溶質について実質的に別々の分配挙動を示し得る一方で、逆に、実質的に別々の出発化学組成が、同じ溶質について同じ分配挙動を示す分配系をもたらし得る。
【0024】
本明細書において議論されているとおり、分配系中の溶質の観察される分配挙動を予測する改善された方法論は、特定の溶媒特性、例えば、溶媒の二極性/分極率の差(Δπ*)、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)、および静電特性の差(c)を使用する。これらは、本明細書においてより詳細に議論されている。これらの溶媒特性の種々の特定の組合せは、特定の型の溶質(例えば、タンパク質)を分配することにおいて驚くほど有効である新規な配合物を生じる。例えば、本明細書において記載されている特定の分配系は、種々の型のがんを区別するために使用され得る。例えば、種々の対象(例えば、種々のがんを有する種々の人々)から生じる同じタンパク質は、例えば、がんの型に依存して、別々に分配し得る。上記のとおり、以前の研究は、予期されたとおり、すべてのがんサンプルに分配された同じタンパク質が、種々の型のがんから生じた場合でさえ、同じ挙動をしたであろうことを示したので、これは驚くべきことである。
【0025】
一部の実施形態において、その分配系は一般に、特定の溶媒特性に関して記載されている種々のがんに対応する特定の溶質(例えば、タンパク質またはタンパク質バイオマーカー)の構造における差に対して比較的感度が高いものであり得る。一実施形態において、4つの溶媒特性が、本明細書において記載されている新規な分配系の基礎を形成する種々の相の間の溶質-溶媒相互作用を規定するために使用される。そのような溶媒特性は、特定の実施形態において、溶媒、ポリマー、塩などの特定の組合せによって達成され得、その組合せは、本明細書において記載されているとおり決定され得る。
【0026】
したがって、一部の態様において、種々のがんにおいて生成される同じタンパク質(または他の溶質)が、同じ分配系を使用して決定され得る。そのタンパク質の分配挙動の変動性は、各がんについては平均して一貫したものであり得るが、がんの間では異なり得る。したがって、サンプル(例えば、血液または臨床的に得られる他のサンプル)が、単一の分配系に導入され得、その後、分配後に、そのタンパク質は、その分配系の相中のそのタンパク質の濃度を、例えば、適切なイムノアッセイ(例えば、ELISA)で測定することによって、決定され得る。一部の場合では、同じことが、その対応するイムノアッセイを使用して分配される同じサンプル中のさらなるタンパク質(または他の溶質)について、反復され得る。その後、(例えば、単一タンパク質として、または複数のタンパク質から構成されたシグネチャーとして、などの)そのような分配挙動が、例えば、分配係数(K)、または他の適切な測定基準として、決定され得る。一部の実施形態において、その後、分配係数(または他の測定基準)を事前に既知である値(例えば、種々のがんについて得られた分配係数に対応する)と比較することが、がんの型を決定するため、または他の方法でそのサンプルの臨床的表現型を決定するために、使用され得る。がんの非限定的な例としては、咽頭がん、胃がん、膵がん、脳がん、肺がん、子宮頸がん、前立腺がん、乳がん、精巣がん、卵巣がん、口腔がん、咽頭がん、食道がん、ならびに腸がんおよび腸がんが挙げられる。がんの他の例は、以下により詳細に議論されている。
【0027】
一部の場合において、1つよりも多い溶質または種(例えば、1種よりも多いタンパク質)が、例えば、同じ分配系または別々の分配系において、例えば、それらの対応するイムノアッセイまたは他の決定法を使用して、決定され得る。例えば、本明細書において議論されている一部の場合において、同じ分配系が、その溶質のうちの2種以上について種々のがんの型について種々の型の分配挙動を示し得る。したがって、複数の溶媒を決定することによって、その臨床診断法または性能が、例えば、感度および/または特異性に関して、一部の実施形態において改善され得る。
【0028】
いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、2種の非イオン性ポリマーによってかまたは単一のポリマーと塩とによって形成される分配系中の溶質(例えば、タンパク質)の分配挙動は、その2つの相中の溶質と水性媒体との間の種々の型の相互作用によって支配されると考えられる。これらとしては、(1)双極子-双極子相互作用および双極子-誘起双極子相互作用(本明細書において議論されているとおり、π*として定量化可能);(2)水素結合のドナーとして作用する水との水素結合相互作用(本明細書において議論されているとおり、αとして定量化可能);(3)水素結合のアクセプターとして作用する水との水素結合相互作用(本明細書において議論されているとおり、βとして定量化可能);(4)静電的なイオン-双極子相互作用およびイオン-イオン相互作用(本明細書において議論されているとおり、cとして定量化可能)が挙げられる。これらの溶媒特性は、いったん定量化されると、溶質分配挙動を比較的高い精度で記述し得る。一組の実施形態において、これらは、分配系(例えば、水性二相系)中の溶質分配係数を
logKs=SsΔπ*+BsΔα+AsΔβ+Csc
を使用して予測するために使用され得、この式において、Ksは溶質分配係数であり;Δπ*、Δα、Δβ、およびcは上の相の溶媒特性(それぞれ、溶媒の二極性/分極率、水素結合ドナー酸性度、水素結合アクセプター塩基性度、および静電特性)と下の相の溶媒特性との間の差であり;Ss、Bs、As、およびCsは、共存する相中の溶媒媒体とのその溶質の相補的相互作用を記述する定数(溶質特異的な係数)であり;添字「s」はその溶質を示す。
【0029】
分配系の各相の溶媒の二極性/分極率、溶媒の水素結合ドナー酸性度、および溶媒の水素結合アクセプター塩基性度は、一部の実施形態において、ソルバトクロミック色素、例えば、4-ニトロアニソール(nitroanizole)(溶媒の二極性/分極率であるπ*を推定するため)、4-ニトロフェノール(溶媒の水素結合アクセプター能力であるβを推定するため)、および水溶性ソルバトクロミックReichardtカルボキシル化ベタイン色素であるナトリウム{2,6-ジフェニル-4-[4-(4-カルボキシラト-フェニル)-2,6-ジフェニルピリジニウム-1-イル])フェノラート}(溶媒の水素結合ドナー能力であるαを推定するため)を使用して、定量化され得る。そのような溶媒特性を測定するための例示的なプロトコルは、Madeiraら、「Solvent Properties Governing Solute Partitioning in Polymer/Polymer Aqueous Two-Phase Systems:Nonionic Compounds」、J.Phys.Chem.B.、114(1):457~462、2010;およびMadeiraら、「Solvent Properties Governing Protein Partitioning in Polymer/Polymer Aqueous Two-Phase Systems」、J.Chromatogr.A、1218(10):1379~1384、2011(各々がその全体として参照により本明細書に援用される)において記載されている。分配系の相の溶媒特性の間の差(すなわち、Δ)は、その分配系の相の間のその差として算出される。
【0030】
溶媒の二極性/分極率の差(Δπ*)は、その分配系の相の二極性/分極率(π*)の間の差として決定され得る。π*は、一般的には、電荷または双極子についての溶媒の安定化の程度の尺度であり、荷電核酸(例えば、アルギニン、リジンなど)を使用することによって分配系において変更され得る。π*は、各相中の4-ニトロアニソールの最長波長吸収帯の波数(ν1)をcm-1単位で測定すること、および各相中のπ*を0.427(34.12-ν1)として算出することによって、各相中で別個に決定され得る。
【0031】
溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)は、その分配系の相の水素結合ドナー酸性度(α)の間の差として決定され得る。αは、一般的には、溶媒分子が溶質分子との水素結合においてプロトンを供与する傾向の尺度であり、浸透圧調節物質、例えば、トリメチルアミンN-オキシド(TMAO)、ジメチルスルホニオプロピオナート、サルコシン、ベタイン、グリセロホスホリルコリン、ミオイノシトール、タウリン、グリシンなどを使用することによって分配系において変更され得る。αは、各相中のカルボキシル化ピリジニウムN-フェノラートベタイン(carboxylated pyridinium N-phenolate betaine)の吸収帯の最大波長(λ)をnm単位で測定すること、各相中の溶媒極性(ET(30))を(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]として算出すること、および各相中のαを0.0649ET(30)-2.03-0.72π*として算出することによって、各相中で別個に決定され得る。
【0032】
溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)は、その分配系の相の水素結合アクセプター塩基性度(β)の間の差として決定され得る。βは、一般的には、溶媒が溶質-溶媒間水素結合相互作用において水素結合を受容する能力、または溶媒が溶質-溶媒間配位結合において電子対を供与する能力の尺度である。それは、糖、例えば、グルコース、トレハロース、スクロース、ガラクトース、フルクトースなどを添加することによって、分配系において変更され得る。βは、各相中の4-ニトロフェノールの最長波長吸収帯の波数(ν2)をcm-1単位で測定すること、および各相中のβを0.346(35.045-ν2)-0.57π*として算出することによって、各相中で別個に決定され得る。
【0033】
それらの相の静電特性の間の差(c)は、脂肪族アルキル側鎖を有するジニトロフェニル化(DNP-)アミノ酸(DNP-グリシン、DNP-アラニン、DNP-ノルバリン、DNP-ノルロイシン、およびDNP-α-アミノ-n-オクタン酸)の一連の同族のナトリウム塩の分配係数の分析によって、決定され得る。これらの化合物は水溶性で有色であり、このことは、360nmでのUV-VIS分光光度計を用いた直接的吸光度測定を使用してそれらの相中のこれらの化合物の濃度をアッセイすることを簡便にする。それらのDNP-アミノ酸Na塩の分配係数の対数が、メチレン基の当量数(Nc)で表された側鎖の長さに対してプロットされる場合、線形カーブが観察される。このカーブは、
log Ki
DNP-AA=ci+EiNc
として記述され得、この式において、KDNP-AAはDNP-アミノ酸Na塩の分配係数であり;Ncはその側鎖中のCH2基の当量数であり、Eおよびcは、それらの相の相対的疎水性の間の差および静電特性の間の差を特徴付ける、所定のi番目のATPSについての定数である。
【0034】
したがって、一部の実施形態において、cは、分配系中の種々のジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩を別個に分配すること、各ナトリウム塩の分配係数(K)を測定すること、ならびにKおよび各ナトリウム塩のメチレン基当量(Nc)をlog10 K=c+ENcに回帰させてcおよびEを決定することによって、決定され得る。例えば、そのジニトロフェニル化アミノ酸ナトリウム塩は、ジニトロフェニル化アラニンナトリウム塩(1.31であるNcを有する)、ジニトロフェニル化ノルバリンナトリウム塩(2.65であるNcを有する)、ジニトロフェニル化ノルロイシンナトリウム塩(3.75であるNcを有する)、およびジニトロフェニル化α-アミノ-n-オクタン酸のナトリウム塩(6.30であるNcを有する)であり得る。
【0035】
一般に、cは、一般的には、溶質の電荷のそれら自体の間の相互作用ならびに溶質の電荷と溶媒の電荷およびイオン電荷との相互作用に起因して生じる静電効果の尺度であり、塩、例えば、NaCl、KCl、Cs2SO4、または他の塩(本明細書において記載されている塩のいずれかが挙げられる)を添加することによって分配系において変更され得る。
【0036】
以前には記載されていなかった上記の溶媒特性についての特定の値を有する分配系の非限定的な例は、以下のとおりである:
【表11】
【0037】
いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、これらの特性を有する分配系は、同じタンパク質を、そのタンパク質が生じたがんに依存して別々の様式で分配するために驚くほど有効であり得ると、考えられる。本明細書において議論されているとおり、ほとんどの分配系において、同じタンパク質は、種々のがんから生じるにも関わらず同じ様式で分配されると予期された。しかし、本明細書において記載されている特定の分配系は、同じタンパク質を別々の様式で分配することにおいて有効であることが見出された。
【0038】
上記のとおり、一部の実施形態において、それらの相の溶媒特性の間で同一であるかまたは非常に近い差を有する分配系が、種々のポリマー対、種々の分子量および/または濃度のポリマー、非イオン性添加物、種々の型の緩衝液ならびに他の添加物を使用して、生成され得る。非限定的な例として、0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の15.1wt% Ficoll(登録商標)-70kDa、7.9wt% PEG-8kDa、および0.15M NaClから形成される分配系は、共存する相の溶媒の二極性/分極率の間の差(Δπ*) -0.052、共存する相の溶媒の水素結合ドナー酸性度の間の差(Δα)の値 0.023、共存する相の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の間の差(Δβ) -0.022、および共存する相の静電特性の間の差(c) -0.092を有する。0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中の12.9wt% デキストラン-70kDa、17.5wt%. Ficoll(登録商標)-70kDa、0.10M Cs2SO4から形成される分配系は、共存する相の溶媒の二極性/分極率の間の差(Δπ*) -0.056、共存する相の溶媒の水素結合ドナー酸性度の間の差(Δα) 0.020、共存する相の溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の間の差(Δβ) -0.019、および共存する相の静電特性の間の差(c) -0.093を有する。したがって、これらの2つの例示的な分配系は別々の塩、糖などから形成されるにも関わらず、それらは非常に類似する分配挙動を示す。
【0039】
議論されているとおり、その分配系は、特定の実施形態においては水性二相分配系であり得、または特定の実施形態においては水性多相分配系であり得る。水性二相系は、種々の水溶性ポリマーの水性混合物中、または単一のポリマーと特定の塩との水性混合物中で生じ得る。2種の特定のポリマー(例えば、デキストラン(Dex)およびポリエチレングリコール(PEG))、または単一の特定のポリマーと特定の無機塩(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)と硫酸ナトリウム)が特定の濃度を超えて水中で混合される場合、その混合物は2つの非混和性水相へと分離する。2つの相(一方の相は1種のポリマーが豊富であり、他方の相はもう1種のポリマーまたは無機塩が豊富である)を分離する不連続な境界面が存在する。両方の相中の水性溶媒は、生物由来物質に適した媒体を提供し得る。二相系は、種々の化学成分を使用することによって多相系へと一般化され得、12個以上の相を有する水性系が文献に記載されている。
【0040】
水性二相系は、種々の水溶性ポリマーの水性混合物中、または単一のポリマーと特定の塩との水性混合物中で生じる。例えば、デキストランとポリエチレングリコール(「PEG」)とが特定の濃度を超えて水中で混合され、その混合物は、明確な境界面によって隔てられた2つの非混和性水相へと分離する。これらの2つの分離した相は、分かれたと言われる。一方の相において、その溶液は1種のポリマーが豊富であり、第二の相中のこの境界のもう一方の側では、その溶液はもう1種のポリマーが豊富である。水性二相系の他の例としては、PEG-Ucon(商標)(50-HB-5100(これはエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマーである)、Ucon(商標)-PVP、Ucon(商標)-PPG(ポリプロピレングリコール)、PEG-PAM(ポリアクリルアミド)、PAM-PVP、PAM-PPG(ポリプロピレングリコール)、PEG-Ficoll(登録商標)(スクロースとエピクロロヒドリンとの共重合によって調製された中性で多分岐型で高分子量の疎水性ポリマー、GE Healthcareから入手可能)、PEG-PAM(ポリアクリルアミド)、PEG-PVP、PVP-PAMなどが挙げられるが、これらに限定されない.
【0041】
本明細書において使用される「水性」とは、溶媒/溶質系の特徴的特性を指し、その系において、その溶媒和物質は主に親水性特徴を有する。水性溶媒/溶質系の例としては、水または水含有組成物がその主要溶媒である溶媒/溶質系が挙げられる。
【0042】
本明細書において使用される「水性多相系」とは、分析物種が存在し得る1つよりも多い水相からなる水性系を指し、それは、本明細書において記載されている方法にしたがってその分析物種の構造状態を特徴付けるために使用され得る。例えば、これとしては、平衡時に2つ、3つ、またはそれ以上の非混和性の相へと分離し得る水性系が挙げられる。水性多相系は当該分野で公知であり、この句は、本明細書において使用される場合、当該分野で受容されている意味と一致しないことは意味されない。
【0043】
相を形成するポリマーの(例えば、化学的性質、構造、および分子量において反映される)型、ならびにそれらのポリマーの濃度の選択ならびに改変が、それらの相の特性を変化させるために使用され得る。さらに、それらの相の組成もまた、無機塩および/または有機添加物の添加によって変化され得る。それらの相の組成に対する変化は、それらの相の特性を変化させ得る。水性二相系の型の例としては、デキストラン/PEG、デキストラン/ポリビニルピロリドン、PEG/塩、およびポリビニルピロリドン/塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
一部の実施形態において、(例えば、生体液の)サンプル(例えば、血清または血漿)が分配系に添加される場合、そのサンプル中に存在する種は、例えば、その種が、これもまた存在し得る他の種とも他のパートナーとも相互作用しない場合に、それらの相の間で独立的に分配され得る。そのような相互作用が生じる場合は、その種-パートナー複合体自体がそれらの相の間で分配され得る。種(またはその種を含む複合体)の分配は、種々の因子、例えば、溶媒に露出した基の性質および3次元配置ならびに共存する相の特性に依存し得る。その溶媒に露出した基の3次元培地は、種々の因子、例えば、塩添加物の存在、pHなどに依存し得る。しかし、これらの相互作用の正確な性質は確実には知られていない可能性があることが、強調されるべきである。上記のとおり、そのような分配系は、溶媒特性、例えば、その分配系の2つの相の間の溶媒の二極性/分極率の差(Δπ*)、溶媒の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)、溶媒の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)、および静電特性の差(c)を使用することによって、種と分配系の相との間の相互作用に寄与し得る各因子を必ずしも同定することを必要とせずに、容易に同定され得、かつ/または容易に互いから区別され得る。
【0045】
溶質または他の種がそのような二相系に導入される場合、それは、それらの2つの相の間に分布する。溶質の分配は、平衡時のそれらの2つの非混和性の相中のその溶質の濃度の間の比として定義される分配係数Kによって、定量化され得る。水性ポリマー系における相分離は、その水構造に対する2種のポリマー(または単一のポリマーと塩)の異なる作用から生じ得る。水構造に対するその異なる作用の結果として、その共存する相中の水性媒体の溶媒特徴は、互いに異なる。相の間の差は、例えば、誘電的測定、ソルバトクロミック測定、電位差測定、および分配測定によって実証され得る。
【0046】
いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、水性二相系における種の分配は、その3次元構造ならびにその溶媒に露出した化学基の型およびトポグラフィーに依存すると、考えられる。なんらかの作用によって(例えば、リガンド結合の結合によって、または構造劣化によって)誘導されたレセプターの3次元構造の変化はまた、種中の溶媒に接近可能な化学基のトポグラフィー、またはその溶媒に接近可能な基のトポグラフィーおよび型の両方を変化させる。これらの変化の結果の一つは、その種の分配挙動における変更である。結果として、種の分配係数をモニタリングすることによって、分配係数が既知である構造の状態における変化を検出することが、可能である。
【0047】
同様に、そのような変化は、溶媒に接近可能な基のトポグラフィーおよび/または型への根本的な依存性を有する他の方法を使用して、検出され得る。そのような他の方法の例としては、カラム液体-液体分配クロマトグラフィー(LLCP)、不均一二相系または不均一多相系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
(例えば、分配係数のように)相対的分配を反映する係数を決定することにおけるような方法の場合、単一の記述子が得られる。多くの種々の水性二相系はすべて種々の化学基(例えば、荷電基および非極性基)に対するその感度が異なるが、分配係数における変化の形態である、2つのコンフォメーション状態の間の検出可能な差の存在が、非常に多数の別々の機構から生じ得る。したがって、単一の分配係数における類似の変化が、非常に似ていないコンフォメーション変化を反映し得る。さらに、一部の場合において、1つよりも多い分配係数が、例えば、シグネチャーのように得られる。例えば、米国特許第7,968,350号(その全体が参照により援用される)を参照のこと。
【0049】
本明細書において使用される「分配係数」とは、平衡時の2つの非混和性の相中の溶質の濃度の間の比によって定義される係数を指す。例えば、二相系中の分析物の分配係数(K)は、第一の相中の分析物の濃度と第二の相中のその分析物の濃度との比として定義される。多相系について、複数の分配係数が存在し、各分配係数は、選択された第一の相中の分析物と選択された第二の相中の分析物との比を規定する。任意の多相系における分配係数の総数は相の総数マイナス1と等しいことが、認識される。
【0050】
種の分配に由来するデータの評価は分配係数(「K」)の使用を含み得、その分配係数は、平衡時の2つの非混和性の相中のある種の濃度の間の比として定義される。例えば、あるタンパク質の分配係数Kは、二相系における第一の相中のそのタンパク質と第二の相中のそのタンパク質との比として定義される。多相系が形成される場合、任意の2つの相の間で定義され得る複数の独立した分配係数が存在し得る。物質収支を考慮すると、独立した分配係数の数は、その系中の相の数よりも1少ない。
【0051】
所定のコンフォメーションの所定の種についての分配係数Kは、その種が供されている熱力学的平衡状態の二相系の条件および組成が一定のままである場合に一定であることが、認識される。したがって、可能な結合パートナーを添加した際に、あるタンパク質について観察される分配係数Kにおける変化が存在する場合は、これらの変化は、タンパク質-結合パートナー複合体の形成によって引き起こされたそのタンパク質構造における変化から生じると推定され得る。本明細書において使用される「K」は、本明細書において具体的に数学的に定義されているとおりに使用され、すべての場合で、この「K」はまた、定義により、種と、少なくとも2つの相互作用する構成成分との間の相互作用の相対的尺度を表すあらゆる係数を含む。
【0052】
各相中の種の濃度は、特定の系条件下にあるサンプルの分配係数Kを決定するために使用され得る。Kはその2つの濃度の比だけを反映するので、その絶対値は、典型的には必要とされない。このことは、特定の分析手順が簡単にされることを可能にし得、例えば、一部の場合では較正が排除され得ることが、認識される。
【0053】
その分配係数は、一部の実施形態では、他のK値と比較され得る。例えば、ある種についてのK値が、種々の条件下でのその種についてのK値と比較され得、ある種についてのK値が、他の種と組み合わせた場合のその種についてのK値と比較され得、またはある種についての一組のK値が他の組のK値と比較され得る。
【0054】
一部の場合において、(例えば、種々の溶質についての)複数の分配係数または他の測定基準が、他の標準物質に対して(例えば、既知の型のがんについての非比較構成物(none comparative construct)に対して)、例えば、数学的または統計的に比較され得る値の数学的構成物(mathematical construct)(例えば、ベクトル、シグネチャー、プロファイル、パターンなど)になるように集合され得る。その数学的構成物は、数、数学的表現、視覚的表示または他の技術を含み得る。一部の実施形態において、サンプルはまた、2つの以上の種々の分配系、および数学的構成物を形成するために使用されるその分配系内の分配挙動を使用して、分配され得る。
【0055】
したがって、特定の実施形態において、同じ分配系または別々の分配系から得られた、種々のタンパク質バイオマーカーに対応する分配係数を含んで構成されるパターンが、それががんの型に対する特異性を提供し得るように構成され得る。例えば、種々のタンパク質(もしくは他の種)および/または種々の分配系についての分配係数のベクトルが、特定の型のがんを決定または同定するために使用され得る。そのようなパターンは、例えば、数学的アプローチまたは統計的アプローチ(機械学習、ディープラーニング、多重ロジスティック回帰などが挙げられる)を使用して、決定され得る。そのようなパターンは、一部の場合において、さらなるパラメータ(臨床的に適切なパラメータ(年齢、人種、他の診断情報など)が挙げられる)、または他の種(例えば、バイオマーカー(例えば、DNA、RNAなど))を用いて、構成され得る。
【0056】
本明細書において使用される場合、「シグネチャー」とは望ましい情報の特定の表示を指し、これは、種々の相互作用する構成成分を用いる実験から得られた上記の相互作用の相対的尺度の組として定義され得る。典型的には、シグネチャーは、より詳細な情報が取得困難である場合に、またはそのような情報を利用するためにはそのような情報を完全に記述する必要がない場合に、その詳細な情報の代わりに使用される。例えば、個々の人々を指紋で識別することは、個人を(妥当な確実度で)一意的に同定するための十分に認識された技術であり、他の表示(例えば、遺伝子構造)を使用するか、または身体的説明および他の情報を網羅的に使用することによってその個人を記述する代わりに、簡便に得られて好都合に密度の濃い情報の組を提供する。
【0057】
種々のアッセイ法が、例えば、分配系の1つまたは複数の相内の種(例えば、タンパク質)を決定するために使用され得る。それらのアッセイは、しばしば、存在する種の正体および型に依存する。適切なアッセイ技術の例としては、分光学アッセイ、免疫化学アッセイ、化学アッセイ、蛍光アッセイ、放射線アッセイおよび酵素アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。その種がペプチドまたはタンパク質である場合、一般的なペプチド検出技術またはタンパク質検出技術が使用され得る。これらとしては、直接的分光光度法(例えば、280ナノメートルでの吸光度のモニタリング)ならびにクーマシーブルー(Coomassie Blue)G-250もしくはフルオレスカミン、o-フタルジアルデヒド、または他の色素および/もしくは試薬との色素結合反応が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態において、特定の免疫化学アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA))が、一部の場合では、種を決定するために使用され得る。
【0058】
生体液のサンプルが対象から採取され得、それは、流体、例えば、全血、血清、血漿、唾液、鼻汁(nasal fluid)、痰、尿、CNS液、乳頭吸引液、脳脊髄液、精液などを含み得る。その生体液が採取される対象は、ヒトまたは非ヒト、例えば、非ヒト動物であり得る。非ヒト動物としては、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、霊長類、ラットおよびマウスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
上記のとおり、種々のがんが、血液サンプル(または他の適切な流体サンプル)中で決定され得る。がんの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、および脳がん。がんの他の非限定的な例としては、胆道がん;膀胱がん;脳がん(膠芽腫および髄芽腫が挙げられる);乳がん;子宮頸がん;絨毛癌;結腸がん;子宮内膜がん;食道がん;胃がん;血液学的新生物(急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病が挙げられる);多発性骨髄腫;AIDS関連白血病および成人T細胞白血病リンパ腫;上皮内新生物(ボーエン病およびパジェット病が挙げられる);肝がん;肺がん;リンパ腫(ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫が挙げられる);神経芽腫;口腔がん(扁平上皮癌が挙げられる);卵巣がん(上皮細胞から生じる卵巣がん、間質細胞から生じる卵巣がん、胚細胞から生じる卵巣がんおよび間葉系細胞から生じる卵巣がんが挙げられる);膵がん;前立腺がん;直腸がん;肉腫(平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および骨肉腫が挙げられる);皮膚がん(メラノーマ、カポジ肉腫、基底細胞がん、および扁平上皮がんが挙げられる);精巣がん(胚細胞腫瘍(germinal tumor)、例えば、セミノーマ、非セミノーマ、奇形腫、絨毛癌が挙げられる);間質腫瘍および胚細胞腫瘍(germ cell tumor);甲状腺がん(甲状腺腺癌(thyroid adenocarcinoma)および髄様癌(medullar carcinoma)が挙げられる);ならびに腎がん(腺癌およびウィルムス腫瘍が挙げられる)が挙げられる。がんのなお他の例としては、リンパ腫、肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、滑膜腫、中皮腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌(colon carcinoma)、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌(medullary carcinoma)、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病および赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病);ならびに真性多血症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症および重鎖病(heavy chain)が挙げられる。
【0060】
以下の文書は、それらの全体が参照により本明細書に援用される:米国特許第7,968,350号;同第8,041,513号;同第8,099,242号;同第8,211,714号;同第8,437,964号;同第9,354,229号;および同第9,678,076号。さらに、2021年10月28日に出願された「複数の型のがんを決定するための分配系および方法(Partitioning Systems and Methods for Determining Multiple Types of Cancers)」という発明の名称の米国特許仮出願第63/272,759号は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0061】
以下の実施例は、本開示のある特定の実施形態を例示することを意図しているが、本開示の全範囲を例証するわけではない。
【0062】
(実施例1)
本実施例において、種々のがんを有する患者由来のヒト血清中のタンパク質の分配係数が健常ドナー由来の血清中の同じタンパク質の分配係数とは顕著に異なること、およびそのような差ががんの型に依存することを、実証した。
【0063】
健常者からプールした血清サンプル(サンプル識別子0651)および卵巣がんステージI患者からプールした血清サンプル(サンプル識別子4850)を、Clinical Proteomics Reference Laboratory(Gaithersburg、MD)から取得した。ステージ1乳がんを有する患者からプールした血清サンプル、ステージ1膵がんを有する患者からプールした血清サンプル、およびステージ1前立腺がんを有する患者からプールした血清サンプルを、SeraCare Life SciencesおよびPromedDx,Incから取得した個々のサンプルから形成した。サンプルを取得し、凍結し、-80℃にて保管した。患者の診断状態は、それらの供給業者によって提供された。
【0064】
複数の水性二相分配系(例えば、以下の対)を、プロトコルにしたがって調製し使用して、適切な粗空間を推定した:6.1wt% PEG-8000/12.4wt% デキストラン-70K;16wt% PVP-40K/15wt% PEG-8000;16wt% ポリアクリルアミド(PAM-10,000)/8wt% PEG-8000;15.0wt% PVP-40K/19.0wt% PAM-10000;および7.9wt% PEG-8000/15.1wt% Ficoll(登録商標)。これらはすべて、pH7.4の0.01Mリン酸ナトリウム/リン酸カリウム緩衝液を用いて調製した。
【0065】
その水性二相系(「ATPS」)は、2種の非イオン性ポリマー、リン酸緩衝液(pH7.4)、およびNaClから構成した(ATPS#1)。乳がんの血漿プール、前立腺がんの血漿プール、膵がんの血漿プールおよび卵巣がんの血漿プール、ならびに対照(正常血漿)を、各々約10個の個々のサンプルから調製した。表2中のタンパク質バイオマーカーについてのイムノアッセイを下記のとおり使用した。複合スパースDOE-RSD分析をプロトコルにしたがって実行して、表1に示す望ましい溶媒パラメータを達成した。種々のがんおよび対照サンプルについての種々のタンパク質バイオマーカー候補の特定の分配係数を、表2に示す。その実験プロトコルの詳細を以下に記載する。表2中の溶媒パラメータに対応する組成は、7.9wt% PEG-8000、15.1wt% Ficoll(登録商標)、0.25M NaCl、0.5M アルギニンHCl、および0.11Mリン酸緩衝液(pH7.4)を含んだ。その2つの共存する相の溶媒特徴の間の差を特徴付けた。それらの差を以下の表1に提示する。これらを、実施例6において記載するとおりに測定した。
【0066】
その水性二相系は、適切な量のストックポリマーと塩と緩衝溶液とを混合することによって調製し、液体ハンドリングワークステーションHamilton ML-4000によって総容積1.2mLのマイクロチューブ中に総容積440マイクロリットルの混合物になるまで分注した。40マイクロリットルの各血清サンプルをその系に添加した。最終容積480マイクロリットルの各系の2つの相の容積間の比は、1:1程度であった。その系を激しく振盪し、マイクロプレートローターを備えた冷却遠心機において3500gにて45分間遠心分離し、その温度はその相沈降を加速させるために23℃にて維持した。マイクロチューブをその遠心機から取り出し、上の相からの40マイクロリットルアリコートおよび下の相からの40マイクロリットルアリコートを二連で取り出し、各々を5倍希釈し、下記で示す適切な試薬と混合し、下記のとおりに実施するさらなる分析のために使用した。
【0067】
LabMAP技術(Luminex)は、サンドイッチイムノアッセイの原理と蛍光ビースベースの技術とを組み合わせて、単一のマイクロタイターウェルにおける100個までの別々の分析物の多重分析を可能にする。LabMAPアッセイを、Biosource International(Camarillo、CA)によるプロトコルにしたがって96ウェルマイクロプレート形式で実施した。フィルター底96ウェルマイクロプレート(Millipore、Billerica、MA)をリン酸緩衝生理食塩水/ウシ血清アルブミン溶液で10分間ブロッキングした。標準曲線を作成するために、適切な標準物質の5倍希釈物を血清希釈剤中で調製した。標準物質および患者血清を1ウェル当たり50マイクロリットルにて二連でピペットで移し、50マイクロリットルのビーズ混合物と混合した。そのマイクロプレートをマイクロプレート振盪器にて室温で1時間インキュベートした。その後、真空マニホールドを使用して、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。フィコエリスリン(PE-)結合体化二次抗体を適切なウェルに添加し、それらのウェルを暗所で45分間、一定の振盪を行いながらインキュベートした。ウェルを2回洗浄し、アッセイ緩衝液を各ウェルに添加し、Bio-Plexサスペンションアレイシステム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用してサンプルをアッセイした。ATPS#1の分子特性を表1に示し、実験データの分析は、5パラメータカーブフィッティングを使用して実施した。上の相中の所定の抗原濃度と下の相中の所定の抗原の濃度との比として表した結果(すなわち、分配係数)を表2に提示する。この表2は、ATPS#1についての上の相の溶媒特徴と下の相の溶媒特徴との間の差、および血清中の種々の抗原についての分配係数を示す。
【表1】
【表2】
【0068】
IGFBP-1:インスリン様成長因子結合タンパク質1;ErbB2またはHer2は、上皮成長因子受容体(EGFR)に構造的に関連する受容体チロシンキナーゼのファミリーのタンパク質メンバー;MMP2:マトリックスメタロペプチダーゼ2; MMP9:マトリックスメタロペプチダーゼ9;MPO:ミエロペルオキシダーゼ;RANTES:ケモカイン;sIL-6R:可溶性IL-6受容体;TSP:トロンボスポンジン。
【0069】
表1に提示するデータは、列挙した抗原の組についての分配係数のパターンが、健常対照と試験した種々のがん(乳がん、卵巣がん、膵がん、および前立腺がん)を有する患者由来の血清との間で異なることを示す。個々のバイオマーカーのパターンを使用してがん特異性を与え得、または一組のバイオマーカーを組み合わせて、さらに増強した特異性を備える、より高次元のパターンを誘導し得る。
【0070】
(実施例2)
本実施例において、実施例1とは異なるATPSを使用した、種々のがんを有する患者由来のヒト血清中のタンパク質の分配係数が健常ドナー由来の血清中の同じタンパク質の分配係数とは顕著に異なること、およびそのような差ががんの型に依存することを、実証した。
【0071】
健常者からプールした血清サンプル(サンプル識別子0651)および卵巣がんステージI患者からプールした血清サンプル(サンプル識別子4850)を、Clinical Proteomics Reference Laboratory(Gaithersburg、MD)から取得した。ステージ1乳がんを有する患者からプールした血清サンプル、ステージ1膵がんを有する患者からプールした血清サンプル、およびステージ1前立腺がんを有する患者からプールした血清サンプルを、SeraCare Life SciencesおよびPromedDx,Incから取得した個々のサンプルから形成した。サンプルを取得し、凍結し、-80℃にて保管した。患者の診断状態は、それらの供給業者によって提供された。
【0072】
複数の水性二相分配系(例えば、以下の対)を、プロトコルにしたがって調製し使用して、適切な粗空間を推定した:6.1wt% PEG-8000/12.4wt% デキストラン-70K;12wt% PVP-40K/17wt% PEG-8000;18wt% ポリアクリルアミド(PAM-10,000)/6wt% PEG-8000;15.0wt% PVP-40K/19.0wt% PAM-10000;および9wt% PEG-8000/15wt% Ficoll(登録商標)。これらはすべて、pH7.4の0.01Mリン酸ナトリウム/リン酸カリウム緩衝液を用いて調製した。
【0073】
その水性二相系は、2種の非イオン性ポリマー、リン酸緩衝液(pH7.4)、およびNaClから構成した(ATPS#2)。乳がんの血漿プール、前立腺がんの血漿プール、膵がんの血漿プールおよび卵巣がんの血漿プール、ならびに対照(正常血漿)を、各々約10個の個々のサンプルから調製した。表4中のタンパク質バイオマーカーについてのイムノアッセイを下記のとおり使用した。複合スパースDOE-RSD分析をプロトコルにしたがって実行して、表3に示す望ましい溶媒パラメータを達成した。種々のがんおよび対照サンプルについての種々のタンパク質バイオマーカー候補の特定の分配係数を、表4に示す。その実験プロトコルの詳細を以下に記載する。表4中の溶媒パラメータに対応する組成は、18.2wt% PVP-40K、16.5wt% PEG-8000、1.5M NaCl、1.0M TMAO、および0.001Mリン酸緩衝液(pH7.4)を含んだ。その2つの共存する相の溶媒特徴の間の差を特徴付けた。それらの差を以下の表3に提示する。これらを、実施例6において記載するとおりに測定した。
【0074】
その水性二相系は、適切な量のストックポリマーと塩と緩衝溶液とを混合することによって調製し、液体ハンドリングワークステーションHamilton ML-4000によって総容積1.2mLのマイクロチューブ中に総容積440マイクロリットルの混合物になるまで分注した。40マイクロリットルの各血清サンプルをその系に添加した。最終容積480マイクロリットルの各系の2つの相の容積間の比は、1:1程度であった。その系を激しく振盪し、マイクロプレートローターを備えた冷却遠心機において3500gにて45分間遠心分離し、その温度はその相沈降を加速させるために23℃にて維持した。マイクロチューブをその遠心機から取り出し、上の相からの40マイクロリットルアリコートおよび下の相からの40マイクロリットルアリコートを二連で取り出し、各々を5倍希釈し、下記で示す適切な試薬と混合し、下記のとおりに実施するさらなる分析のために使用した。
【0075】
LabMAP技術(Luminex)は、サンドイッチイムノアッセイの原理と蛍光ビースベースの技術とを組み合わせて、単一のマイクロタイターウェルにおける100個までの別々の分析物の多重分析を可能にする。LabMAPアッセイを、Biosource International(Camarillo、CA)によるプロトコルにしたがって96ウェルマイクロプレート形式で実施した。フィルター底96ウェルマイクロプレート(Millipore、Billerica、MA)をリン酸緩衝生理食塩水/ウシ血清アルブミン溶液で10分間ブロッキングした。標準曲線を作成するために、適切な標準物質の5倍希釈物を血清希釈剤中で調製した。標準物質および患者血清を1ウェル当たり50マイクロリットルにて二連でピペットで移し、50マイクロリットルのビーズ混合物と混合した。そのマイクロプレートをマイクロプレート振盪器にて室温で1時間インキュベートした。その後、真空マニホールドを使用して、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。フィコエリスリン(PE-)結合体化二次抗体を適切なウェルに添加し、それらのウェルを暗所で45分間、一定の振盪を行いながらインキュベートした。ウェルを2回洗浄し、アッセイ緩衝液を各ウェルに添加し、Bio-Plexサスペンションアレイシステム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用してサンプルをアッセイした。実験データの分析は、5パラメータカーブフィッティングを使用して実施した。上の相中の所定の抗原濃度と下の相中の所定の抗原の濃度との比として表した結果(すなわち、分配係数)を表4に提示する。この表4は、ATPS#2についての上の相の溶媒特徴と下の相の溶媒特徴との間の差、および血清中の種々の抗原についての分配係数を示す。表3は、ATPS#2の分子特性を記述する。
【表3】
【表4】
【0076】
EGFR:上皮成長因子受容体;sICAM-1:可溶性細胞内接着分子1;sVCAM-1:循環血管細胞接着分子1;他の略語は表1に関して提示している。
【0077】
表4に提示するデータは、列挙した抗原の組についての分配係数のパターンが、健常対照と試験した種々のがん(乳がん、卵巣がん、膵がん、および前立腺がん)を有する患者由来の血清との間で異なることを示す。これらのデータはまた、ATPS#1についての表2に提示したデータとは異なる。個々のバイオマーカーのパターンを使用してがん特異性を与え得、または一組のバイオマーカーを組み合わせて、さらに増強した特異性を備える、より高次元のパターンを誘導し得る。さらに、少なくとも2つの別々のATPS由来の分配情報と、同じバイオマーカーまたは別々のバイオマーカーについての別個の分子特性とを合わせて1つのパターンにすることは、全体的特異性をさらに増強し得る。
【0078】
(実施例3)
本実施例において、なお別のATPSを使用した、種々のがんを有する患者由来のヒト血清中のタンパク質の分配係数が健常ドナー由来の血清中の同じタンパク質の分配係数とは顕著に異なること、およびそのような差ががんの型に依存することを、実証した。
【0079】
健常者からプールした血清サンプル(サンプル識別子0651)および卵巣がんステージI患者からプールした血清サンプル(サンプル識別子4850)を、Clinical Proteomics Reference Laboratory(Gaithersburg、MD)から取得した。ステージ1乳がんを有する患者からプールした血清サンプル、ステージ1膵がんを有する患者からプールした血清サンプル、およびステージ1前立腺がんを有する患者からプールした血清サンプルを、SeraCare Life SciencesおよびPromedDx,Incから取得した個々のサンプルから形成した。サンプルを取得し、凍結し、-80℃にて保管した。患者の診断状態は、それらの供給業者によって提供された。
【0080】
複数の水性二相分配系(例えば、以下の対)を、プロトコルにしたがって調製し使用して、適切な粗空間を推定した:14wt% PVP-40K/16wt% PEG-8000;16wt% ポリアクリルアミド(PAM-10,000)/8wt% PEG-8000;14.0wt% PVP-40K/20.0wt% PAM-10000;および7.9wt% PEG-8000/15.1wt% Ficoll(登録商標)。これらはすべて、pH7.4の0.01Mリン酸ナトリウム/リン酸カリウム緩衝液を用いて調製した。
【0081】
その水性二相系は、2種の非イオン性ポリマー、リン酸緩衝液(pH7.4)、およびNaSCN添加物から構成した(ATPS#3)。乳がんの血漿プール、前立腺がんの血漿プール、膵がんの血漿プールおよび卵巣がんの血漿プール、ならびに対照(正常血漿)を、各々約10個の個々のサンプルから調製した。表6中のタンパク質バイオマーカーについてのイムノアッセイを下記のとおり使用した。複合スパースDOE-RSD分析をプロトコルにしたがって実行して、表5に示す望ましい溶媒パラメータを達成した。種々のがんおよび対照サンプルについての種々のタンパク質バイオマーカー候補の特定の分配係数を、表6に示す。その実験プロトコルの詳細を以下に記載する。表6中の溶媒パラメータに対応する組成は、8.7wt% PEG-8000、16.3wt% Ficoll(登録商標)-70、0.75M NaSCN、0.5Mトレハロース、および0.11Mリン酸緩衝液(pH7.4)を含んだ。その2つの共存する相の溶媒特徴の間の差を特徴付けた。それらの差を以下の表5に提示する。これらを、実施例6において記載するとおりに測定した。
【0082】
その水性二相系は、適切な量のストックポリマーと塩と緩衝溶液とを混合することによって調製し、液体ハンドリングワークステーションHamilton ML-4000によって総容積1.2mLのマイクロチューブ中に総容積440マイクロリットルの混合物になるまで分注した。40マイクロリットルの各血清サンプルをその系に添加した。最終容積480マイクロリットルの各系の2つの相の容積間の比は、1:1程度であった。その系を激しく振盪し、マイクロプレートローターを備えた冷却遠心機において3500gにて45分間遠心分離し、その温度はその相沈降を加速させるために23℃にて維持した。マイクロチューブをその遠心機から取り出し、上の相からの40マイクロリットルアリコートおよび下の相からの40マイクロリットルアリコートを二連で取り出し、各々を5倍希釈し、下記で示す適切な試薬と混合し、下記のとおりに実施するさらなる分析のために使用した。
【0083】
LabMAP技術(Luminex)は、サンドイッチイムノアッセイの原理と蛍光ビースベースの技術とを組み合わせて、単一のマイクロタイターウェルにおける100個までの別々の分析物の多重分析を可能にする。LabMAPアッセイを、Biosource International(Camarillo、CA)によるプロトコルにしたがって96ウェルマイクロプレート形式で実施した。フィルター底96ウェルマイクロプレート(Millipore、Billerica、MA)をリン酸緩衝生理食塩水/ウシ血清アルブミン溶液で10分間ブロッキングした。標準曲線を作成するために、適切な標準物質の5倍希釈物を血清希釈剤中で調製した。標準物質および患者血清を1ウェル当たり50マイクロリットルにて二連でピペットで移し、50マイクロリットルのビーズ混合物と混合した。そのマイクロプレートをマイクロプレート振盪器にて室温で1時間インキュベートした。その後、真空マニホールドを使用して、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。フィコエリスリン(PE-)結合体化二次抗体を適切なウェルに添加し、それらのウェルを暗所で45分間、一定の振盪を行いながらインキュベートした。ウェルを2回洗浄し、アッセイ緩衝液を各ウェルに添加し、Bio-Plexサスペンションアレイシステム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用してサンプルをアッセイした。実験データの分析は、5パラメータカーブフィッティングを使用して実施した。上の相中の所定の抗原濃度と下の相中の所定の抗原の濃度との比として表した結果(すなわち、分配係数)を表6に提示する。この表6は、上の相の溶媒特徴と下の相の溶媒特徴との間の差、および血清中の種々の抗原についての分配係数を示す。表5は、ATPS#3の分子特性を与える。
【表5】
【表6】
【0084】
EGFBP:インスリン様成長因子結合タンパク質;他の略語は上記で提示している。
【0085】
表6に提示するデータは、列挙した抗原の組についての分配係数のパターンが、健常対照と試験した種々のがん(乳がん、卵巣がん、膵がん、および前立腺がん)を有する患者由来の血清との間で異なることを示す。これらのデータはまた、それぞれATPS#1およびATPS#2についての表2および4に提示したデータとは異なる。個々のバイオマーカーのパターンを使用してがん特異性を与え得、または一組のバイオマーカーを組み合わせて、さらに増強した特異性を備える、より高次元のパターンを誘導し得る。さらに、少なくとも2つの別々のATPS由来の分配情報と、同じバイオマーカーまたは別々のバイオマーカーについての別個の分子特性とを合わせて1つのパターンにすることは、全体的特異性をさらに増強し得る。
【0086】
(実施例4)
本実施例において、なお別のATPSにおける種々のがんを有する患者由来のヒト血清中のタンパク質の分配係数が健常ドナー由来の血清中の同じタンパク質の分配係数とは顕著に異なること、およびそのような差ががんの型に依存することを、実証した。
【0087】
健常者からプールした血清サンプル(サンプル識別子0651)および卵巣がんステージI患者からプールした血清サンプル(サンプル識別子4850)を、Clinical Proteomics Reference Laboratory(Gaithersburg、MD)から取得した。ステージ1乳がんを有する患者からプールした血清サンプル、ステージ1膵がんを有する患者からプールした血清サンプル、およびステージ1前立腺がんを有する患者からプールした血清サンプルを、SeraCare Life SciencesおよびPromedDx,Incから取得した個々のサンプルから形成した。サンプルを取得し、凍結し、-80℃にて保管した。患者の診断状態は、それらの供給業者によって提供された。
【0088】
複数の水性二相分配系(例えば、以下の対)を、実施例1におけるようなプロトコルにしたがって調製し使用して、適切な粗空間を推定した:6.1wt% PEG-8000/12.4wt% デキストラン-70K;16wt% PVP-40K/15wt% PEG-8000;16wt% ポリアクリルアミド(PAM-10,000)/8wt% PEG-8000;15.0wt% PVP-40K/19.0wt% PAM-10000;および7.9wt% PEG-8000/15.1wt% Ficoll(登録商標)。これらはすべて、pH7.4の0.01Mリン酸ナトリウム/リン酸カリウム緩衝液を用いて調製した。
【0089】
その水性二相系は、2種の非イオン性ポリマー、リン酸緩衝液(pH7.4)、およびNaClから構成した(ATPS#4)。乳がんの血漿プール、前立腺がんの血漿プール、膵がんの血漿プールおよび卵巣がんの血漿プール、ならびに対照(正常血漿)を、各々約10個の個々のサンプルから調製した。表8中のタンパク質バイオマーカーについてのイムノアッセイを下記のとおり使用した。複合スパースDOE-RSD分析をプロトコルにしたがって実行して、表7に示す望ましい溶媒パラメータを達成した。種々のがんおよび対照サンプルについての種々のタンパク質バイオマーカー候補の特定の分配係数を、表8に示す。その実験プロトコルの詳細を以下に記載する。表8中の溶媒パラメータに対応する組成は、17.0wt% PVP-40K、20.5wt% PAM-10K、0.25M Na2SO4、1.5M TMAO、および0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)を含んだ。その2つの共存する相の溶媒特徴の間の差を特徴付けた。それらの差を以下の表7に提示する。これらを、実施例6において記載するとおりに測定した。
【0090】
その水性二相系は、適切な量のストックポリマーと塩と緩衝溶液とを混合することによって調製し、液体ハンドリングワークステーションHamilton ML-4000によって総容積1.2mLのマイクロチューブ中に総容積440マイクロリットルの混合物になるまで分注した。40マイクロリットルの各血清サンプルをその系に添加した。最終容積480マイクロリットルの各系の2つの相の容積間の比は、1:1程度であった。その系を激しく振盪し、マイクロプレートローターを備えた冷却遠心機において3500gにて45分間遠心分離し、その温度はその相沈降を加速させるために23℃にて維持した。マイクロチューブをその遠心機から取り出し、上の相からの40マイクロリットルアリコートおよび下の相からの40マイクロリットルアリコートを二連で取り出し、各々を5倍希釈し、下記で示す適切な試薬と混合し、下記のとおりに実施するさらなる分析のために使用した。
【0091】
LabMAP技術(Luminex)は、サンドイッチイムノアッセイの原理と蛍光ビースベースの技術とを組み合わせて、単一のマイクロタイターウェルにおける100個までの別々の分析物の多重分析を可能にする。LabMAPアッセイを、Biosource International(Camarillo、CA)によるプロトコルにしたがって96ウェルマイクロプレート形式で実施した。フィルター底96ウェルマイクロプレート(Millipore、Billerica、MA)をリン酸緩衝生理食塩水/ウシ血清アルブミン溶液で10分間ブロッキングした。標準曲線を作成するために、適切な標準物質の5倍希釈物を血清希釈剤中で調製した。標準物質および患者血清を1ウェル当たり50マイクロリットルにて二連でピペットで移し、50マイクロリットルのビーズ混合物と混合した。そのマイクロプレートをマイクロプレート振盪器にて室温で1時間インキュベートした。その後、真空マニホールドを使用して、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。フィコエリスリン(PE-)結合体化二次抗体を適切なウェルに添加し、それらのウェルを暗所で45分間、一定の振盪を行いながらインキュベートした。ウェルを2回洗浄し、アッセイ緩衝液を各ウェルに添加し、Bio-Plexサスペンションアレイシステム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用してサンプルをアッセイした。実験データの分析は、5パラメータカーブフィッティングを使用して実施した。上の相中の所定の抗原濃度と下の相中の所定の抗原の濃度との比として表した結果(すなわち、分配係数)を表8に提示する。この表8は、上の相の溶媒特徴と下の相の溶媒特徴との間の差、および血清中の種々の抗原についての分配係数を示す。表7は、ATPS#4の分子特性を示す。
【表7】
【表8】
【0092】
すべての略語は上記の表で提示している。
【0093】
表8に提示するデータは、列挙した抗原の組についての分配係数のパターンが、健常対照と試験した種々のがん(乳がん、卵巣がん、膵がん、および前立腺がん)を有する患者由来の血清との間で異なることを示す。これらのデータはまた、それぞれATPS#1、ATPS#2およびATPS#3についての表2、4および6に提示したデータとは異なる。個々のバイオマーカーのパターンを使用してがん特異性を与え得、または一組のバイオマーカーを組み合わせて、さらに増強した特異性を備える、より高次元のパターンを誘導し得る。さらに、少なくとも2つの別々のATPS由来の分配情報と、同じバイオマーカーまたは別々のバイオマーカーについての別個の分子特性とを合わせて1つのパターンにすることは、全体的特異性をさらに増強し得る。
【0094】
(実施例5)
本実施例において、なお別のATPSにおける異なる種々のがんを有する患者由来のヒト血清中のタンパク質の分配係数が健常ドナー由来の血清中の同じタンパク質の分配係数とは顕著に異なること、およびそのような差ががんの型に依存することを、実証した。
【0095】
健常者からプールした血清サンプル(サンプル識別子0651)および卵巣がんステージI患者からプールした血清サンプル(サンプル識別子4850)を、Clinical Proteomics Reference Laboratory(Gaithersburg、MD)から取得した。ステージ1乳がんを有する患者からプールした血清サンプル、ステージ1膵がんを有する患者からプールした血清サンプル、およびステージ1前立腺がんを有する患者からプールした血清サンプルを、SeraCare Life SciencesおよびPromedDx,Incから取得した個々のサンプルから形成した。サンプルを取得し、凍結し、-80℃にて保管した。患者の診断状態は、それらの供給業者によって提供された。
【0096】
複数の水性二相分配系(例えば、以下の対)を、実施例3におけるようなプロトコルにしたがって調製し使用して、適切な粗空間を推定した:14wt% PVP-40K/16wt% PEG-8000;16wt% ポリアクリルアミド(PAM-10,000)/8wt% PEG-8000;14.0wt% PVP-40K/20.0wt% PAM-10000;および7.9wt% PEG-8000/15.1wt% Ficoll(登録商標)。これらはすべて、pH7.4の0.01Mリン酸ナトリウム/リン酸カリウム緩衝液を用いて調製した。
【0097】
その水性二相系は、2種の非イオン性ポリマー、リン酸緩衝液(pH7.4)から構成した(ATPS#5)。乳がんの血漿プール、前立腺がんの血漿プール、膵がんの血漿プールおよび卵巣がんの血漿プール、ならびに対照(正常血漿)を、各々約10個の個々のサンプルから調製した。表10中のタンパク質バイオマーカーについてのイムノアッセイを下記のとおり使用した。複合スパースDOE-RSD分析をプロトコルにしたがって実行して、表9に示す望ましい溶媒パラメータを達成した。種々のがんおよび対照サンプルについての種々のタンパク質バイオマーカー候補の特定の分配係数を、表10に示す。その実験プロトコルの詳細を以下に記載する。表10中の溶媒パラメータに対応する組成は、8.0wt% PEG-8000、15.5wt% Ficoll(登録商標)-70、および18.0wt%リン酸緩衝液(pH7.4)を含んだ。その2つの共存する相の溶媒特徴の間の差を特徴付けた。それらの差を以下の表9に提示する。これらを、実施例6において記載するとおりに測定した。
【0098】
その水性二相系は、適切な量のストックポリマーと塩と緩衝溶液とを混合することによって調製し、液体ハンドリングワークステーションHamilton ML-4000によって総容積1.2mLのマイクロチューブ中に総容積440マイクロリットルの混合物になるまで分注した。40マイクロリットルの各血清サンプルをその系に添加した。最終容積480マイクロリットルの各系の2つの相の容積間の比は、1:1程度であった。その系を激しく振盪し、マイクロプレートローターを備えた冷却遠心機において3500gにて45分間遠心分離し、その温度はその相沈降を加速させるために23℃にて維持した。マイクロチューブをその遠心機から取り出し、上の相からの40マイクロリットルアリコートおよび下の相からの40マイクロリットルアリコートを二連で取り出し、各々を5倍希釈し、下記で示す適切な試薬と混合し、下記のとおりに実施するさらなる分析のために使用した。
【0099】
LabMAP技術(Luminex)は、サンドイッチイムノアッセイの原理と蛍光ビースベースの技術とを組み合わせて、単一のマイクロタイターウェルにおける100個までの別々の分析物の多重分析を可能にする。LabMAPアッセイを、Biosource International(Camarillo、CA)によるプロトコルにしたがって96ウェルマイクロプレート形式で実施した。フィルター底96ウェルマイクロプレート(Millipore、Billerica、MA)をリン酸緩衝生理食塩水/ウシ血清アルブミン溶液で10分間ブロッキングした。標準曲線を作成するために、適切な標準物質の5倍希釈物を血清希釈剤中で調製した。標準物質および患者血清を1ウェル当たり50マイクロリットルにて二連でピペットで移し、50マイクロリットルのビーズ混合物と混合した。そのマイクロプレートをマイクロプレート振盪器にて室温で1時間インキュベートした。その後、真空マニホールドを使用して、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。フィコエリスリン(PE-)結合体化二次抗体を適切なウェルに添加し、それらのウェルを暗所で45分間、一定の振盪を行いながらインキュベートした。ウェルを2回洗浄し、アッセイ緩衝液を各ウェルに添加し、Bio-Plexサスペンションアレイシステム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用してサンプルをアッセイした。実験データの分析は、5パラメータカーブフィッティングを使用して実施した。上の相中の所定の抗原濃度と下の相中の所定の抗原の濃度との比として表した結果(すなわち、分配係数)を表10に提示する。この表10は、上の相の溶媒特徴と下の相の溶媒特徴との間の差、および血清中の種々の抗原についての分配係数を示す。表9は、ATPS#5の分子特性を示す。
【表9】
【表10】
【0100】
RANTES:メモリーTリンパ球および単球についての選択的誘引物質;他の略語は上記の表で提示している。
【0101】
表8に提示するデータは、列挙した抗原の組についての分配係数のパターンが、健常対照と試験した種々のがん(乳がん、卵巣がん、膵がん、および前立腺がん)を有する患者由来の血清との間で異なることを示す。これらのデータはまた、それぞれATPS#1、ATPS#2、ATPS#3およびATPS#4についての表2、4、6および8に提示したデータとは異なる。個々のバイオマーカーのパターンを使用してがん特異性を与え得、または一組のバイオマーカーを組み合わせて、さらに増強した特異性を備える、より高次元のパターンを誘導し得る。さらに、少なくとも2つの別々のATPS由来の分配情報と、同じバイオマーカーまたは別々のバイオマーカーについての別個の分子特性とを合わせて1つのパターンにすることは、全体的特異性をさらに増強し得る。
【0102】
(実施例6)
本実施例は、実施例1~5で使用した特定の分子溶媒特性の決定を示す。
【0103】
ソルバトクロミックプローブである4-ニトロアニソール、4-ニトロフェノール、および Reichardtカルボキシル化ベタイン色素を使用して、水性二相系(「ATPS」)の分離した相中の媒体の二極性/分極率(π*)、水素結合アクセプター(HBA)塩基性度(β)、および水素結合ドナー(HBD)酸性度(α)を測定した。
【0104】
これらのパラメータを決定するための非限定的な例示的手順の一つは、以下のとおりである。
1.各ソルバトクロミック色素の水溶液(約10mM)を調製し、各々の10マイクロリットル~20マイクロリットルを、ATPSの総容積500マイクロリットルの所定の相に別個に添加した。
2.強塩基を、Reichardtカルボキシル化ベタイン色素を含むサンプルに(約5マイクロリットルの1M NaOHを500マイクロリットルの所定の相に)添加して、塩基性pHを確実にした。
3.一部の溶液中で観察されたフェノラートアニオンの電荷移動帯を排除するために、強酸を、4-ニトロフェノールを含むサンプルに(約10マイクロリットルの1M HClを500マイクロリットルのその相に)添加した。
4.色素を含まない個々のブランク相を別個に調製した。
5.それらのサンプルをボルテックスミキサーでホモジナイズし、各溶液の吸収スペクトルを測定した。再現性を確認し、起こり得る凝集または他の特異的相互作用の影響を回避するために、各サンプル中の帯域極大(band maximum)の位置を、5つの別個のアリコートにおいて測定した。帯域幅2.0nm、データ間隔1nm、および約0.5nm/sの高解像度スキャンを用いたUV-VISマイクロプレートリーダー分光光度計SpectraMax Plus384(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)は、UV-Vis分子吸収データを取得した。測定した吸収スペクトルは240nm~600nmの範囲に及んだ。ベースライン基準を、色素を含まないATPSの黒い相をスキャンすることによって確立した。各相中の吸収極大の波長を、PeakFitソフトウェアパッケージ(Systat Software Inc.、San Jose、CA、USA)を使用して決定し、平均化した。その測定した最大吸収波長についての標準偏差は、調べたすべての溶液において、すべての色素について0.4nm未満であった。
【0105】
種々の濃度の4-ニトロフェノール(HClを伴う)および4-ニトロフェノール(HClを伴わない)、ならびにReichardtカルボキシル化ベタイン色素(NaOHを伴う)およびReichardtカルボキシル化ベタイン色素(NaOHを伴わない)について、3種の溶媒(水、n-ヘキサン、およびメタノール)において観察された最大シフトは、文献値に実験誤差の範囲内で対応した。
【0106】
溶媒の二極性/分極率π*を決定するために、π*の値を、4-ニトロアニソール色素の最長波長吸収帯の波数(ν1)から、関係:
π*=0.427(34.12-ν1)
を使用して決定した。
【0107】
溶媒の水素結合アクセプター塩基性度βを決定するために、β値を、4-ニトロフェノール色素の最長波長吸収帯の波数(ν2)から、関係:
β=0.346(35.045-ν2)-0.57π*
を使用して決定した。
【0108】
溶媒の水素結合ドナー酸性度αを決定するために、α値を、Reichardtベタイン色素の最長波長吸収帯から、関係:
α=0.0649ET(30)-2.03-0.72π*
を使用して決定した。
そのET(30)は、プローブとしてのソルバトクロミックピリジニウムN-フェノラートベタイン色素(Reichardt色素)に基づき、そのET(30)は、そのカルボキシル化形態の吸収帯の波長(λ、nm)から、
ET(30)=(1/0.932)[(28591/λ)-3.335]
として直接得る。
【0109】
共存する相の静電特性の間の差(c)は、漸増する長さの脂肪族アルキル側鎖を有するジニトロフェニル化(DNP)アミノ酸(アラニン、ノルバリン、ノルロイシン、およびα-アミノ-n-オクタン酸)の一連の同族のナトリウム塩を分配することによって、各ATPSにおいて決定し得る。これらの化合物の分配係数の対数を、メチレン基の当量数Ncで表した側鎖の長さに対して回帰させた。使用するDNP-アミノ酸についてのNc値は、以下である:DNP-アラニンNa=1.31、DNP-ノルバリンNa=2.65、DNP-ノルロイシンNa=3.75、およびDNP-α-アミノ-n-オクタン酸Na=6.30。その回帰式は:
log10KDNP-AA=c+E*Nc
であり、この式において、KDNP-AAはDNP-アミノ酸Na塩の分配係数であり;Ncはその側鎖中のCH2基の 当量数であり、Eiおよびciは、所定のATPS系についての定数である。このパラメータを使用して、それらの相の相対的疎水性の間の差および静電特性の間の差を決定し得る。
【0110】
(実施例7)
本実施例は、分配系の2つの相の溶媒特性の間の差を示すパラメータ(例えば、Δπ*、Δα、Δβ、およびc)を決定するための一つのプロトコルを示す。これらのパラメータは、一般的には、それぞれ、溶媒の二極性/分極率、水素結合ドナー酸性度、水素結合アクセプター塩基性度、および静電特性を測定する。この例示的プロトコルは、一般的には、以下の工程に依存する:
【0111】
最初に、水性二相分配系に適した候補を構築するための化学成分の粗決定(coarse determination)。これは、0.1~10の範囲の標的タンパク質バイオマーカーの分配係数を有する水性二相分配系を生成する基礎的化学成分を選択するのを可能にする。
【0112】
そのような分配係数は、最終分析アッセイとの実務上の適合性を可能にし得る。非常に小さい初期分配係数または非常に大きい初期分配係数は、特に、早期がん検出に関連し得る存在量の低い目的のタンパク質バイオマーカーについて、有用な分析検出の範囲外にあるかなりの比率の臨床サンプルを生じ得る。例えば、これらは、血液などの循環液中で非常に低濃度であり得る。
【0113】
一般に、 2つの相の全体的溶媒特性の間で小さい差を生じる2種の非イオン性ポリマーによって形成される水性二相分配系が、望ましい。この工程における化学成分の効率的な最適化のための系は、疎水性タンパク質のためのその疎水性特徴に関して異なる成分(例えば、PEG-Ucon(商標)、Ucon(商標)-PVP、Ucon(商標)-PPG、PEG-PAG、PAG-PVP、PAG-PPGなど)の使用、および/または親水性タンパク質のための成分、例えば、PEG-Ficoll(登録商標)、PEG-PAM、PEG-PVP、PVP-PAMなどの使用を含む。
【0114】
種々の出発化学成分から構成される水性二相系はそれらの溶媒特性における同じ差に対応し得るので、目的のタンパク質の分配挙動を最適化することは、この工程では重要ではない。それらの分配挙動の範囲が、許容可能な分析範囲の範囲内に存在することを確認することが、十分であり得る。
【0115】
次は、溶媒パラメータであるΔπ*、Δα、Δβ、およびcを使用して標的タンパク質の分配ランドスケープを決定するために、一般的4次元パラメータ空間において2つの望ましい臨床状態(例えば、がん表現型と良性表現型)の間の差の粗マッピングを提供することである。これは、禁制的(prohibitive)ではない。使用するサンプルは、特定の疾患表現型に対応する約20個以上の個々のサンプルをプールすることによって、一般的には調製する。これは、個体の間で分子レベルでその疾患の遺伝的に不均一な性質の平均的表示を提供する。その個々の標的タンパク質について利用可能な他の情報はそのパラメータ空間の初期選択を支援し、例えば、タンパク質等電点を使用してpHなどを狭め得る。一般に、実験計画法(Design of Experiments)(DOE)技術を使用して、そのパラメータ空間をマッピングし得る。溶媒パラメータを変化させるために使用し得る化学添加物の例としては、塩(それらの相の静電特性の間の差に影響を与える)および浸透圧調節物質(例えば、トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)、グルコース、トレハロース、アルギニン、リジンなど)が挙げられる。一部の添加物(例えば、TMAO)は、溶媒-溶媒間の水素結合ドナー酸性度の差(Δα)および溶媒-溶媒間の水素結合アクセプター塩基性度の差(Δβ)に影響を与え得、双極子-双極子相互作用、共存する相の間の水の二極性/分極率(Δπ*)にはわずかに影響を与えるに過ぎない。他の添加物もまた使用して、それらの溶媒パラメータを改変し得る。
【0116】
いったん、溶媒パラメータ空間における分配ランドスケープをマッピングすると、1つまたは複数の最適化技術を使用して、それらの臨床表現型の間の全体的な分離の程度を達成するためのパラメータ空間中の最適点を決定し得る。そのような技術は当業者に公知であり、それらとしては、応答曲面法、および種々の単純な線形補間技術ならびに非線形補間技術などが挙げられる。一部の場合において、1つよりも多い関数を同時に最適化し得る。例えば、両方の臨床表現型についての分配係数を1付近で維持すると同時にそれらの値の間の差を最大化することは、分析目的および臨床目的の両方を同時に達成するためのそのような二重目標関数設計の1つであり得る。また、単一のバイオマーカーの代わりに複数のバイオマーカーの間で最適化する目標関数は、計算上簡単である。例えば、溶媒パラメータ空間の初期サンプリング後の反復的指向性最適化を使用し得る。このプロセスは、広範な実験も盲検も試行錯誤アプローチも必要としない。
【0117】
次に、その溶媒特性に関して特定した水性二相分配系の性能を、目的の臨床表現型を示す2つのサンプル群を用いて試験し得る。この工程は、代表的には、各型に由来する統計的に有意な数(例えば、50個~100個)のサンプルを含む。従来の統計技術(例えば、受信者動作特性(ROC)分析)を使用してそれらの結果を分析して、感度と特異性との間のトレードオフを調べる。さらなる最適化もまた、この工程で実施し得る。
【0118】
本実施例は、標的タンパク質の分配挙動の基礎をなす一組の溶媒特性に到達することを可能にする。2つの異なる臨床表現型に対応する同じタンパク質の分配挙動の間の差を、同定し得る(例えば、異なるアイソフォームなど)。本実施例において、水性二相分配系の形成および改変に対する種々の化学成分の役割に関する全般的理解を、可能なあらゆるポリマーの型、分子量、塩、添加物などの網羅的な探索を必要とせずに達成し得る。いったん最適な組成を、例えば、上記のプロトコルを使用して同定した後は、それらの溶媒特性を有する系を形成するための化学成分の候補の1つまたは複数の組を、容易に同定し得る。このことはまた溶媒特性を測定することを可能にし得、これにより、後の使用のための「コンビナトリアルライブラリー」を構築するために、一組の水性二相分配系をそれらの溶媒特性に関して事前較正することを可能にし得る。
【0119】
本明細書において、本開示のいくつかの実施形態を説明および例示したが、機能を実行するため、ならびに/または結果および/もしくは本明細書に記載の利点の1つもしくは複数を得るための様々な他の手段および/または構造が、当業者によって容易に想定され、そのような変形および/または修正のそれぞれが、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、本開示書に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的であることが意図されていること、ならびにその実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途(単数又は複数)に依存することが、当業者に容易に理解される。当業者は、本明細書に記載の本開示の特定の実施形態の多くの均等物を認識し、または慣例的にすぎない実験を使用して確認することができる。したがって、上記実施形態は、例示のみを目的として示されること、ならびに、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本開示は、具体的に説明および請求されるものとは別様に実践されてもよいことを理解されたい。本開示は、本明細書に記載のそれぞれの個々の特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法に関連する。さらに、2つまたはそれよりも多くのそのような特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、系、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しない限り、本開示の範囲内に含まれる。
【0120】
本明細書および参照により援用される文書が矛盾する開示および/または一致しない開示を含む場合、本明細書が優先される。参照により援用される2つ以上の文書が互いに関して矛盾する開示および/または一致しない開示を含む場合、後の有効日を有する文書が優先される。
【0121】
本明細書において定義および使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、および/または定義されている用語の通常の意味よりも優先されることが理解されるべきである。
【0122】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲において、反対の意味が明示されない限り、「少なくとも1つ」を意味することが理解されるべきである。
【0123】
本明細書で使用される場合、「および/または」という語句は、本明細書および特許請求の範囲において、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合においては連言的に存在し、他の場合においては選言的に存在する要素を意味することが理解されるべきである。「および/または」で列挙される複数の要素も、同様に、すなわちそのように結合される要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「および/または」節により具体的に特定される要素以外の他の要素が、その具体的に特定される要素と関連しているか関連していないかに関わらず、必要に応じて存在してもよい。したがって、非限定的例として、「Aおよび/またはB」の言及は、「含む(comprising)」等の非制限的言語と併せて使用される場合、一実施形態ではAのみ(B以外の要素を必要に応じて含む)を、別の実施形態ではBのみ(A以外の要素を必要に応じて含む)を、さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(他の要素を必要に応じて含む)を、等指すことができる。
【0124】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲において、「または」は、上で定義されるような「および/または」と同じ意味を有することが理解されるべきである。例えば、あるリスト中の項目を分離する場合に、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、ある数の要素または列挙される要素のうちの少なくとも1つを含むが、1つ超もまた含み、必要に応じて追加の列挙されていない項目を含むと解釈されるものとする。反対の意味が明示されている用語のみ、例えば「~の1つのみ」もしくは「~の正確に1つ」、または、特許請求の範囲において使用される場合には、「~からなる」は、ある数の要素または列挙される要素のうちの正確に1つの要素の包含を指す。一般に、「または」という用語は、本明細書において使用される場合、「いずれか」、「~の1つ」、「~の1つのみ」、または「~の正確に1つ」等の排他性の用語が先行する場合には、排他的代替(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すものとただ解釈されるだけであるものとする。
【0125】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲において、列挙される1つまたは複数の要素に関連する「少なくとも1つ」という語句は、列挙される要素のうちの要素のいずれか1つまたは複数から選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも、列挙される要素の範囲内で具体的に列挙されたありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、また、列挙される要素の中での要素の任意の組合せを除外しないことが理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す、列挙された要素の範囲内で具体的に特定される要素以外の要素が、その具体的に特定される要素と関連しているか関連していないかに関わらず、必要に応じて存在してもよいことを許容する。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない、少なくとも1つ(必要に応じて1つ超を含む)のA(および必要に応じてB以外の要素を含む)を、別の実施形態では、Aが存在しない、少なくとも1つ(必要に応じて1つ超を含む)のB(および必要に応じてA以外の要素を含む)を、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ(必要に応じて1つ超を含む)のA、および少なくとも1つ(必要に応じて1つ超を含む)のB(および必要に応じて他の要素を含む)を、等指すことができる。
【0126】
「約」という語が数に関して本明細書において使用される場合、本開示のなお別の実施形態は、その「約」という語の存在によって修飾されていないその数を含むことが、理解されるべきである。
【0127】
また、反対の意味が明示されない限り、1つ超のステップまたは行為を含む本明細書において請求される任意の方法において、方法のステップまたは行為の順番は、方法のステップまたは行為が列挙される順番に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。
【0128】
特許請求の範囲および上記明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保持する」、「有する」、「入れている(containing)」、「伴う」、「保有する」、「~から構成される」等の移行句は全て、非制限的である、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味すると理解されたい。「~からなる」および「~から本質的になる」という移行句のみが、それぞれ、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、セクション2111.03に規定されるように、制限的または半制限的移行句であるものとする。
【国際調査報告】