(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】グリコシル化プロドラッグ
(51)【国際特許分類】
C07J 5/00 20060101AFI20241106BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20241106BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20241106BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241106BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241106BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20241106BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20241106BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241106BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241106BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241106BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20241106BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241106BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241106BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C07J5/00 CSP
A61K31/7028
A61P19/02
A61P9/14
A61P11/06
A61P11/02
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/06
A61P27/02
A61P31/10
A61P31/04
A61P37/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P1/04
A61P1/14
A61P31/14
A61P11/00
A61P31/00
A61P37/08
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P17/02
A61P17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525969
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 NL2022050621
(87)【国際公開番号】W WO2023080784
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522096097
【氏名又は名称】ウニフェルシテイト・ライデン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT LEIDEN
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】シャーフ,マルセル
(72)【発明者】
【氏名】メイエル,アンネマリー
(72)【発明者】
【氏名】ハリーマ,マフムード
(72)【発明者】
【氏名】ワン,メイ
(72)【発明者】
【氏名】アールツ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン,ナタニエル
(72)【発明者】
【氏名】アイエド,カロル
【テーマコード(参考)】
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA15
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA68
4C086ZA69
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB32
4C086ZB35
4C086ZC06
4C086ZC31
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB05
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
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4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA05
4C091PA09
4C091PB02
4C091QQ01
4C091RR08
(57)【要約】
本明細書では、式:A-B[式中、Aは、単糖または二糖から選択され、そして、Bは、治療的部分(例えば、抗炎症性部分または化学療法的部分から選択される)である]の化合物;ならびにその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸または溶媒和物が提供される。このような化合物は、グルコシルセラミダーゼベータ2(GBA2)の基質であり得て、その結果、この化合物は、GBA2による単糖または二糖の切断後に活性化合物を提供するプロドラッグである。また、該化合物を含む医薬組成物、ならびに該化合物および組成物のさまざまな医学的および非医学的用途も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
[式中:
Aは、単糖および二糖から選択され;そして
Bは、抗炎症性部分または化学療法的部分から選択される]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物。
【請求項2】
Aが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態、ならびに1つまたは2つのグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態から形成されるいずれかの二糖から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、1つまたは2つのグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態から形成される二糖であり;場合により、二糖がゲンチオビオースである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、2つのアルドヘキソースから形成される二糖であり;場合により、Aが、1つまたは2つのグルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態から形成される二糖である、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Aが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態から選択される単糖であり;場合により、単糖がグルコースまたはグルクロン酸である、請求項2の請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Bが、抗炎症性部分である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
抗炎症性部分が、コルチコステロイド(例えば、グルココルチコイド)、非ステロイド性グルココルチコイド受容体アゴニスト、非ステロイド性抗炎症性、疾患修飾性抗リウマチ薬、またはラパマイシンであるか、それらを含む、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Bが、ヒドロコルチゾン型コルチコステロイド、トリアムシノロンアセトニド型コルチコステロイド、メタゾン型コルチコステロイド、ベタメタゾンジプロピオネート型コルチコステロイドおよびメチルプレドニゾロンアセポネート型コルチコステロイドから選択されるコルチコステロイド(例えば、グルココルチコイド)であるか、それらを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Bが、アルクロメタゾン(alclometasone)、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、シクロメタゾン(ciclometasone)、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレンドノール(cloprednol)、コルチフェン(cortifen)、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、コルチゾン、コルチバゾール、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメサゾン、ジクロリゾン、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、ジフルプレドナート、ホルモコータル、フルアザコート(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルドロコルチゾン、フルコルチン(flucortin)、フルコルトロン(flucortolone)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド(flucinolone acetonide)、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ハロメタゾン、ヒドロコルタメート、イコメタゾン(icometasone)、イソフルプレドノン(iisofluprednone)、ロトプレドノール、マジプレドン(mazipredone)、メドリソン(medrysone)、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、ニココルトニド(nicocortonide)、パラメタゾン、プレドニカルベート(prednicarbate)、プレドニゾロン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロシノニド(procinonide)、チキソコルトール、トリアムシノロンまたはトリアムシノロンアセトニド、またはそれらのいずれかのエステル、の分子ラジカルであるか、それを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、それらのエステルであり、場合により、前記エステルが、アセテート、アダマントエート(adamantoate)、ベンゾエート、ベンゾフランカルボキシレート、ベンゾイル-β-アミノイソブチレート、ブチレート(butyrate)、ブチレート(butylate)、カプロエート(caproate)、カルボキシレート、クロラムブシル、クロルフェナシル(chlorphenacyl)、シペシレート(cipecilate)、シクロペンタンプロピオネート、シクロペンチルプロピオネート、シクロプロピルカルボキシレート、シピオネート、ジシベート(dicibate)、ジクロアセテート、ジエチルアミノアセテート、エナンタート、エンブテート、エタボネート(エチルカーボネート)、フオレート(fuorate)、ヘミスクシネート、ヘキサノエート、イソブチレート、イソニコチネート、リノレート、メタスルホベンゾエート、メテンボネート(metembonate)、パルミテート、ホスフェート、ピペリジノアセテート、ピバレート、プロピオネート、サリチラート、ステアロイルグリコレート、スクシネート、スレプタネート(suleptanate)、スルフェート、テブテート(tert-ブチルアセテート)、テトラヒドロフタレート、トロックスンダート(troxundate)、バレレート、またはキサントゲナートから選択される基を含む、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Bが、化学療法的部分である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
式II:
【化2】
[式中:
R
1は、単糖または二糖から選択され;
R
2は、H、置換または非置換C
1-C
8アルキル、置換または非置換C
1-C
8アルコキシ、置換または非置換C
3-C
8アルケニルから選択され、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、H、OH、C
1-C
4置換または非置換アルキル、OR
9、OC(O)R
9から選択され;あるいは、R
3およびR
4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換または非置換5員または6員ヘテロシクロアルキルを形成し;
R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、H、OH、ハロ、置換または非置換-C
1-C
4アルキルまたはOR
10から選択され;
R
9は、Hまたは-C
1-C
8置換または非置換アルキルから選択され;
R
10は、Hまたは-C
1-C
8置換または非置換アルキルから選択され;
Xは、=Oまたは-OHから選択される]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物。
【請求項13】
R
1が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態、ならびに1つまたは2つのグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態から形成されるいずれかの二糖から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
R
1が、1つまたは2つのグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態から形成される二糖である、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項15】
R
1が、2つのアルドヘキソースおよびそれらのいずれかの酸形態から形成される二糖であり、場合により、R
1が、1つまたは2つのグルコース、ガラクトース、イドースおよびアルトロースから形成される二糖である、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項16】
R
1が、ゲンチオビオースである、請求項12~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
R
1が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態から選択される単糖であり;場合により、単糖が、グルコースまたはグルクロン酸である、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項18】
R
2が、Hおよび置換または非置換C
1-C
8アルキルから選択され;場合により、ここで、R
2がHである、請求項12~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
R
3が、H、OHおよびOC(O)R
9から選択される、請求項12~18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
R
9が、置換または非置換-C
1-C
8アルキルであり;場合により、R
8が、非置換-C
1-C
8アルキルである、請求項12~19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
R
4が、H、OH、またはC
1-C
4アルキルから選択され;場合により、R
4が、H、OH、またはメチルから選択される、請求項12~20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
R
3およびR
4が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換または非置換5員または6員ヘテロシクロアルキルを形成する、請求項12~18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
R
3およびR
4が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換または非置換1,3ジオキソランを形成する、請求項11~17または21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
1,3ジオキソランが、-C
1-C
4アルキル(例えば、メチル)、5員もしくは6員シクロアルキル、または5員もしくは6員ヘテロ環(例えば、フラン)から選択される1個または2個の基によって2位が置換されている、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
R
2がHであり、R
3がOHであり、そして、R
4がHである、請求項12~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
R
2がHであり、R
3およびR
4が、それらが結合している炭素原子と一緒になって置換または非置換1,3ジオキソランを形成する、請求項12~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
R
2がHであり、R
4がC
1-C
4アルキルであり;場合により、R
2がHであり、R
4がメチルである、請求項12~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
R
2がHであり、R
3がOC(O)R
9であり、R
4がHであり;場合により、R
9が置換または非置換-C
1-C
8アルキルである、請求項12~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
R
10が、Hである、請求項12~28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
R
5が、Hおよびハロから選択され;場合により、R
5が、H、FおよびClから選択される、請求項12~29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
R
8が、Hおよびハロから選択され;場合により、R
8が、H、FおよびClから選択される、請求項12~30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
R
6およびR
7が、それぞれHである、請求項12~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
XがOHである、請求項12~32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
XがOである、請求項12~32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
式(Vb):
【化3】
[式中:
R
1は、単糖または二糖およびそのいずれかの酸形態から選択され;
R
2は、H、置換または非置換C
1-C
8アルキル、置換または非置換C
1-C
8アルコキシ、置換または非置換C
3-C
8アルケニルから選択され;
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、H、OH、C
1-C
4置換または非置換アルキル、OR
9、OC(O)R
9から選択され;あるいは、R
3およびR
4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換または非置換5員または6員ヘテロシクロアルキルを形成し;
R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、H、OH、ハロ、置換または非置換-C
1-C
4アルキル、またはOR
10から選択され;
R
9は、H、または-C
1-C
8置換または非置換アルキルから選択され;そして
R
10は、H、または-C
1-C
8置換または非置換アルキルから選択される]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物。
【請求項36】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9およびR
10のいずれか1つ以上が、請求項13~32のいずれかにおいてさらに定義される通りである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
R
1が2つのアルドヘキソースおよびそれらのいずれかの酸形態から形成される二糖であり、R
2がHであり、R
3がOHであり、そして、R
4がHであり;場合により、R
6がHであり、R
7がHであり、R
8がHであり、そして、R
9がHである、請求項35に記載の化合物。
【請求項38】
R
1が、1つまたは2つのD-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態から形成される二糖であり;場合により、R
1がゲンチオビオースである、請求項35または37に記載の化合物。
【請求項39】
前記化合物が、グルコシルセラミダーゼベータ2(GBA2)の基質である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項40】
【化4】
から選択される化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物。
【請求項41】
化合物:
【化5】
またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物。
【請求項42】
前記請求項のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項43】
非経口投与用に製剤化され、場合により、非経腸投与用に製剤化され、さらに、場合により、注射用に製剤化される、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
医薬として使用するための、請求項1~41のいずれか一項に記載の化合物、または請求項42もしくは43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
炎症の処置に使用するための、請求項1~42のいずれか一項に記載の化合物、または請求項42もしくは43に記載の医薬組成物。
【請求項46】
炎症性症状または、免疫系の活動亢進を特徴とする他の症状の処置に使用するための、請求項1~41のいずれか一項に記載の化合物、または請求項42もしくは43に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記炎症性症状または他の症状が、関節症、骨関節症、痛風、リウマチ性関節炎、他の自己免疫障害(例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD、クローン病、潰瘍性大腸炎を含む)、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIPD))、感染性疾患(例えばCOVID-19および結核)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎および副鼻腔炎、腱炎、鼻茸、皮膚症状(例えば皮疹(rash)、皮膚炎、掻痒、湿疹、皮膚真菌症、(硬化性または紅色)苔癬、および乾癬)、眼疾患(例えばブドウ膜炎、結膜炎、黄斑浮腫)、耳炎、甲状腺炎、サルコイドーシス、筋炎、脈管炎、痔核、移植レシピエントにおける臓器拒絶反応および移植片対宿主病から選択される、請求項46に記載の使用のための化合物または組成物。
【請求項48】
前記炎症性症状または他の症状が、リウマチ性関節炎、他の自己免疫障害(例えば全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD))および甲状腺炎から選択される、請求項46または47に記載の使用のための化合物または組成物。
【請求項49】
免疫系に属する細胞の過剰増殖を特徴とする症状の処置に使用するための、場合により、前記症状は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、または急性骨髄白血病(AML)から選択される、請求項1~41のいずれか一項に記載の化合物、または請求項42もしくは43に記載の医薬組成物。
【請求項50】
癌の処置に使用するための、請求項1~41のいずれか一項に記載の化合物、または請求項42もしくは43に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記使用が、患者への前記化合物または組成物の非経口投与を含み、場合により、前記投与は非経腸投与を含み、さらに、場合により、前記投与は注射を含む、請求項44~50のいずれか一項に記載の使用のための化合物または組成物。
【請求項52】
抗炎症剤としての、請求項1~41のいずれか一項に記載の化合物の使用であって、化合物を(場合により、インビトロ)で、グルコシルセラミダーゼベータ2(GBA2)を発現する細胞と接触させることを含む、使用。
【請求項53】
前記細胞が、組織または臓器の細胞である、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
前記細胞が、細胞培養液中の細胞である、請求項53に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単糖または二糖および治療的部分(例えば、抗炎症性部分または化学療法的部分)を含む化合物ならびにその薬学的に許容される塩、立体異性体、酸または溶媒和物に関する。前記化合物は、グルコシルセラミダーゼベータ2(GBA2)の基質であり得て、その結果、GBA2による単糖または二糖の切断後に活性化合物を提供するプロドラッグである。また、前記化合物を含む医薬組成物、ならびに前記化合物および組成物のさまざまな医学的および非医学的用途も提供される。
【0002】
グルココルチコイドなどのコルチコステロイドは、プレドニゾロンおよびデキサメタゾンなどの、免疫抑制作用のために臨床的に一般的に使用される化合物のクラスである(Burns, 2016, The History of Cortisone Discovery and Development. Rheum Dis Clin North Am 42, 1-14, vii)。それらは、広範囲の炎症性障害および免疫障害、例えば喘息、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患および乾癬、血液系腫瘍、例えば白血病の処置に使用され、感染症、例えば結核およびCOVID-19の炎症性合併症の軽減に使用される(Barnes, 2017, Glucocorticosteroids. Handb Exp Pharmacol 237, 93-115; Buttgereit, 2020, Views on glucocorticoid therapy in rheumatology: the age of convergence. Nat Rev Rheumatol 16, 239-246; Rhen and Cidlowski, 2005, Antiinflammatory action of glucocorticoids-- new mechanisms for old drugs. N Engl J Med 353, 1711-1723)。それらは炎症反応および他の免疫応答を弱めるのに非常に効果的であるが、それらの臨床使用は、糖尿病のリスク増加、内分泌系の破壊、骨粗鬆症、創傷治癒の遅延および破壊、ならびに成長および生殖能力の阻害を含む副作用の重症度により制限される(Hoes et al., 2009, Adverse events of low- to medium-dose oral glucocorticoids in inflammatory diseases: a meta-analysis. Ann Rheum Dis 68, 1833-1838; McDonough et al., 2008, The epidemiology of glucocorticoid-associated adverse events. Curr Opin Rheumatol 20, 131-137; Schacke et al., 2002, Dissociation of transactivation from transrepression by a selective glucocorticoid receptor agonist leads to separation of therapeutic effects from side effects. Proc Natl Acad Sci U S A 101, 227-232)。
【0003】
グルココルチコイドのすべての効果は細胞内受容体であるグルココルチコイド受容体(GR)によって媒介され、この受容体は我々の体のほとんどすべての細胞に発現している(Nicolaides et al., 2010)。リガンドによって活性化されると、細胞質GRは活性化されて核に移行し、そこで転写因子として働き、多種多様な標的遺伝子の転写を調節する。GRはいくつかの方法で遺伝子発現を調節する(Meijsing, 2015, Mechanisms of Glucocorticoid-Regulated Gene Transcription. Adv Exp Med Biol 872, 59-81; Miranda et al., 2013, Complex genomic interactions in the dynamic regulation of transcription by the glucocorticoid receptor. Mol Cell Endocrinol 380, 16-24; Ramamoorthy and Cidlowski, 2016, Corticosteroids: Mechanisms of Action in Health and Disease. Rheum Dis Clin North Am 42, 15-31, vii; Ratman et al., 2013, Beck, I.M., and De Bosscher, K. (2013). How glucocorticoid receptors modulate the activity of other transcription factors: a scope beyond tethering. Mol Cell Endocrinol 380, 41-54)。それは、ゲノム中の特定の配列、いわゆるグルココルチコイド応答性要素(GRE)に二量体として結合することができ(ただし、最近では四量体としての結合も報告されている)、局所的なクロマチン構造を調節する特異的転写コレギュレータータンパク質を動員し、続いて転写装置を動員して活性化することによって、遺伝子の転写を促進または抑制する。このプロセスは一般にトランス活性化と称されるが、特定のクラスのGRE(いわゆる陰性GRE)に結合すると、結果として転写が抑制される。あるいは、GRは二量体化することなく、他の転写因子との相互効果を通じて遺伝子転写を調節することができる。例えば、NF-κB転写因子複合体のp65サブユニットと物理的に相互作用し、したがって、この転写因子の活性を阻害することができる。GRと他の転写因子との相互作用によって転写活性が亢進する場合もあるが、一般にこのプロセスはトランス抑制と称される。
【0004】
当初、このGRのトランス抑制活性はグルココルチコイドの抗炎症作用の根底にある主要なメカニズムと考えられていたが、グルココルチコイドの副作用のほとんどはGRのトランス活性化活性に起因すると考えられていた(Schacke et al., 2002, Mechanisms involved in the side effects of glucocorticoids. Pharmacol Ther 96, 23-43; Schacke et al., 2004, Dissociation of transactivation from transrepression by a selective glucocorticoid receptor agonist leads to separation of therapeutic effects from side effects. Proc Natl Acad Sci U S A 101, 227-232)。したがって、グルココルチコイド薬の治療率を改善するために、GRのトランス活性化活性ではなくトランス抑制活性を誘導する新規なGRアゴニストの開発に多くの努力が払われた(Sundahl et al., 2015, Selective glucocorticoid receptor modulation: New directions with non-steroidal scaffolds. Pharmacol Ther 152, 28-41)。しかし、いくつかの有望な化合物が開発されているが(例えば, Baiula et al., 2014, Mapracorat, a selective glucocorticoid receptor agonist, causes apoptosis of eosinophils infiltrating the conjunctiva in late-phase experimental ocular allergy. Drug Des Devel Ther 8, 745-757; Biggadike et al., 2007, Nonsteroidal glucocorticoid agonists: tetrahydronaphthalenes with alternative steroidal A-ring mimetics possessing dissociated (transrepression/transactivation) efficacy selectivity. J Med Chem 50, 6519-6534; Dewint et al., 2008, A plant-derived ligand favoring monomeric glucocorticoid receptor conformation with impaired transactivation potential attenuates collagen-induced arthritis. J Immunol 180, 2608-2615; Stock et al., 2017, Improved disease activity with fosdagrocorat (PF-04171327), a partial agonist of the glucocorticoid receptor, in patients with rheumatoid arthritis: a Phase 2 randomized study. Int J Rheum Dis 20, 960-970; Zhang et al., 2020, Natural and synthetic compounds as dissociated agonists of glucocorticoid receptor. Pharmacol Res 156, 104802、を参照のこと)、グルココルチコイドによる免疫抑制は抗炎症遺伝子のトランス活性化にも依存している可能性があり、いくつかの副作用もトランス抑制活性に起因するため、成功は限られている(Clark, 2007, Anti-inflammatory functions of glucocorticoid-induced genes. Mol Cell Endocrinol 275, 79-97; Smoak and Cidlowski, 2004, Mechanisms of glucocorticoid receptor signaling during inflammation. Mech Ageing Dev 125, 697-706; Vandewalle et al., 2018, Therapeutic Mechanisms of Glucocorticoids. Trends Endocrinol Metab 29, 42-54)。したがって、既存のGCの構造の改変のような副作用の少ないグルココルチコイド薬を開発するための新規なアプローチを試みることは興味深い。例えば、活性化マクロファージを標的とするように設計された抗CD163-デキサメタゾンコンジュゲートは、ラットにおいて治療率の改善を示し(Thomsen et al., 2016, Anti-CD163-dexamethasone conjugate inhibits the acute phase response to lipopolysaccharide in rats. World J Hepatol 8, 726-730)、加水分解性ポリエチレングリコール(PEG)のプレドニゾロンへのコンジュゲーションによりラット肺内保持時間が増加し、したがって全身性の副作用は引き起こさなかった(Bayard et al., 2013, Polyethylene glycol-drug ester conjugates for prolonged retention of small inhaled drugs in the lung. J Control Release 171, 234-240)。さらに、γ-ラクトンや環状カーボネートを加えることにより、グルココルチコイドが血流に入ると特定の酵素によって不活性化されやすくすることができる(Biggadike et al., 2000, Selective plasma hydrolysis of glucocorticoid gamma-lactones and cyclic carbonates by the enzyme paraoxonase: an ideal plasma inactivation mechanism. J Med Chem 43, 19-21)。
【0005】
したがって、改善されたコルチコステロイド型化合物が必要である。特に、活性型に変換されるまで限定された活性(抗炎症剤や抗癌剤など)を有する有用なプロドラッグを提供することは有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、単糖または二糖および抗炎症性部分または化学療法的部分を含む化合物、ならびにその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸または溶媒和物を提供する。前記化合物は、グルコシルセラミダーゼベータ2(GBA2)の基質であり得て、その結果、前記化合物はGBA2による単糖または二糖の切断後に活性化合物を提供するプロドラッグである。
【0007】
このようなグリコシル化化合物は、例えば、GBA2によってそれらの糖基が除去されるまで、比較的不活性であり得ることを既に述べた。酵素GBA2は炎症組織で優先的に発現する(多くの癌組織も炎症を示す)。これは、抗炎症性化合物および化学療法的化合物が、GBA2によって炎症部位またはその近傍で切断され得る単糖または二糖部分を付加することによってプロドラッグに変換され得て、炎症組織における活性抗炎症性化合物または化学療法的化合物を提供し得ることを意味する。これにより、治療活性を標的組織の近傍に向けさせて、オフターゲット効果を減少させる、新規なアプローチが提供される。
【0008】
本発明は、第1の態様において、式I:
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物を提供する。
Aは、単糖および二糖から選択される。Bは、治療的部分であり、そして、抗炎症性部分または化学療法的部分から適切に選択され得る。
【0009】
本発明の第2の態様では、第1の態様の化合物を含む医薬組成物が提供される。前記組成物は、非経口投与用に製剤化され得る。例えば、前記組成物は非経腸投与用に製剤化され得て、例えば、前記組成物は注射用に製剤化され得る。
【0010】
第3の態様では、医薬として使用するための、第1の態様の化合物または第2の態様の組成物が提供される。前記医薬は、炎症と関連する症状の処置に使用するためのものであり得る。前記医薬は、炎症部位でのプロドラッグの局所的な変換により、炎症と関連する症状の処置に使用するためのものであり得る。
【0011】
第4の態様では、炎症の処置に使用するための、第1の態様の化合物または第2の組成物が提供される。
【0012】
第5の態様では、炎症性症状または免疫系の活動亢進を特徴とする他の症状の処置に使用するための、第1の態様の化合物または第2の態様の組成物が提供される。
【0013】
第6の態様では、免疫系に属する細胞の過剰増殖を特徴とする症状の処置に使用するための、第1の態様の化合物または第2の態様の組成物が提供される。
【0014】
第7の態様では、癌の処置に使用するための、第1の態様の化合物または第2の組成物が提供される。
【0015】
第8の態様では、第1の態様の化合物の抗炎症剤としての使用であって、前記化合物を、グルコシルセラミダーゼベータ2(GBA2)を発現する細胞と接触させることを含む、使用が提供される。前記接触は、インビトロで行われ得る。前記接触は、インビボで行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施態様を、添付図面を参照して以下にさらに説明する。
【0017】
【
図1】
図1は、GRの活性化を介したジンセノサイド類の抗炎症作用を示す。A. 本発明のアッセイにおいて使用される実験的アプローチの図式的概観。ゼブラフィッシュ幼生の尾に74hpfに創傷を負わせた。化学化合物処置は創傷の2時間前に開始し、創傷後4時間継続した。この時点で、創傷部(赤枠で示す)に遊走した好中球の数を測定した。B. 処置に使用した化合物の構造:ベクロメタゾン(Bec)、プロトパナキサジオール(PPD)、F2およびRb1。ステロイド骨格にコンジュゲートしたグルコース(Glc)基は赤色で示す。C. 野生型(gr
+/+)およびGr欠損(gr
-/-)個体における化合物処置時の遊走の好中球の数。D. 創傷前後および化合物処置時にqPCRにより測定されたil1b、il6およびmmp9の相対的mRNAレベル。E~H. 非特異的化学的Gba阻害剤ミグルスタットの非存在下および存在下(E)、Gba1阻害剤ME656の非存在下および存在下(F)、Gba2阻害剤MZ31の非存在下および存在下(G)、およびGba2欠損(gba2
-/-)個体(H)において、化合物処置時の遊走の好中球の数。示しているデータは、(CおよびE~H)における3つの独立した実験からプールしたデータの平均値±SEM、または(D)における3つの個別実験の平均値±SEMである。統計学的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定(Tukey’s post hoc test)により決定した。対応するVeh群(灰色のバー、C、E、F、G、H)との有意差は***(P<0.001)で示し、対応するgr
+/+(C)または同一化合物/Veh(E、G)群(同じ色のバー、ハッチングなし)との有意差は###(P<0.001)で、非創傷/Veh群(D)との有意差は+++(P<0.001)で示している。
【0018】
【
図2】
図2は、Bec、PPD、F2またはRb1で処置した野生型ゼブラフィッシュ幼生における、遊走の好中球およびマクロファージの数を示している。示されているデータは、3つの独立した実験からプールしたデータの平均値±SEMである。統計的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定によって決定した。Veh群との有意差は***(P<0.001)で示している。
【0019】
【
図3】
図3は、ベクロメタゾンで観察された副作用とさまざまなジンセノサイドで観察された副作用との比較を示している。A. 2hpfからベクロメタゾンまたは、ジンセノサイドであるPPD、F2またはRb1で処置した受精後(dpf)5日目のゼブラフィッシュ幼生において、ELISAで測定した全身グルコースレベル。B. 5dpf幼生の、2dpfに創傷時、およびMZ31の含有または非含有の化合物処置時の全身グルコースレベル。C. 2hpfからベクロメタゾンまたは、ジンセノサイドであるPPD、F2またはRb1で処置した受精後(dpf)5日目のゼブラフィッシュ幼生おいて、ELISAにより測定した全身コルチゾールレベル。D. 5dpf幼生の、2dpfに創傷時、およびMZ31の含有または非含有の化合物処置時の全身コルチゾールレベル。E. 5dpfのゼブラフィッシュ幼生の、2hpfから化合物処置時の体長。F. 2dpfに創傷を負わせた5dpf幼生の、MZ31の含有または非含有の化合物処置時の再生した尾びれの長さ。G. Grのトランス活性化活性のレポーターラインであるTg(9x GCRE-HSV.UI23:EGFP)系統の3dpf幼生において24時間の化合物処置後の相対GFP蛍光レベル。H. Fに示している実験群の5dpf幼生の尾びれの代表的な明視野顕微鏡写真。I. Gに示している実験群の3dpf幼生の代表的な蛍光顕微鏡写真。データは3回の独立した実験の平均値±SEMを示している。統計的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定によって決定した。対応するVeh群(A-F、H、灰色のバー)との有意差は*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示し、同じ化合物/Veh群(E、G、同じ色のバー、ハッチングなし)との差は#(P<0.05)、##(P<0.01)、##(P<0.001)で示し、対応するF2-およびRb1-処置群(C、D、H)との差は++(P<0.001)で示している。
【0020】
【
図4】
図4は、ゼブラフィッシュの幼生における再生尾びれの長さおよびmRNAレベルに対するベクロメタゾンによる処置によるさらなる効果を、さまざまなジンセノサイドと比較して示している。A. 2dpfに創傷を負わせた5dpf幼生の、様々な濃度のBecにより処置時の再生した尾びれの長さ。B. 創傷前後、および化合物処置時のqPCRにより測定したfkbp5、pck1、nfkbiaaの相対的mRNAレベル。示されているデータは3回の独立した実験の平均値±SEMである。統計的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定によって決定した。対応するVeh群との有意差は***(P<0.001)で示し、PPD-、F2-およびRb1-処理群との差は++(P<0.001)で示している。
【0021】
【
図5】
図5は、試験したゼブラフィッシュ幼生におけるGba1およびGba2のmRNAレベル、タンパク質レベルおよび酵素活性に対する創傷の影響を示している。A. 対照幼生と5dpfに創傷後の4時間で、qPCRにより測定したgba1およびgba2の相対mRNAレベル。B. 対照幼生と5dpfに傷害後の4時間で、活性に基づくプローブアッセイでバンド(
図S3Aに示す)の強度によって決定したGba1およびGba2の相対的なタンパク質レベル。C. 対照幼生および創傷幼生の体の前部および後部におけるGba1およびGba2の相対的タンパク質レベル。D. 5dpfの対照幼生および創傷幼生からの溶解物において測定したGba2の酵素活性(タンパク質1mg当たりの発現量)。示されたデータは、3回の独立した実験の平均値±SEMを意味する。統計学的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。対応する対照群との有意差は、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示し、対応する前部群との有意差は###(P<0.01)で示している。
【0022】
【
図6】
図6は、酵素活性、タンパク質レベル、およびmRNAレベル、ならびに活性に基づくプローブアッセイによって生成されたゲルに対する創傷の影響のさらなる証拠を示している。A.
図3Bに示している実験群を示す、活性に基づくプローブアッセイによって生成されたゲルの代表的な画像。B.
図3Cに示している実験群を示す、活性に基づくプローブアッセイによって生成されたゲルの代表的な画像。C. 対照幼生および5dpf創傷幼生からの溶解物において測定したGba2の酵素活性(ゼブラフィッシュ幼生あたりの発現量)。D. 対照処置および6時間のTNF-α処置後のHeLa細胞における、qPCRにより測定したgba1およびgba2の相対mRNAレベル。E.
図S3Fに示している実験群を示す、活性に基づくプローブアッセイによって生成されたゲルの代表的な画像。F. 対照処置および6時間のTNF-α処置後のHeLa細胞における、活性を基づくプローブアッセイによって測定したGba1およびGba2の相対タンパク質レベル。示されているデータは、3つの独立した実験の平均値±SEMである。統計学的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。対応する対照群との有意差は、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示している。
【0023】
【
図7】
図7は、グルクロン酸抱合デキサメタゾン(GDex)の抗炎症活性およびそれに関連する副作用を他の化合物と比較して示している。A. 野生型ゼブラフィッシュ幼生の、創傷後の4時間で、Bec、デキサメタゾン(Dex)およびグルクロン酸抱合デキサメタゾン(GDex)処置時の遊走の好中球およびマクロファージの数。B. Gr欠損(gr
-/-)個体における化合物処置時の遊走の好中球の数。C. 創傷前後および化合物処置時にqPCRにより測定したil1b、il6、mmp9およびmmp13の相対的mRNAレベル。D. 2hpfからBec、DexまたはG-Dexで処置した受精後(dpf)5日目のゼブラフィッシュ幼生における、ELISAにより測定した全身グルコースレベル。E. 2hpfからBec、DexまたはGDexで処置した受精後(dpf)5日目のゼブラフィッシュ幼生における、ELISAにより測定した全身コルチゾールレベル。F. 2dpfに創傷を負わせた5dpf幼生の、化合物処置時の再生した尾びれの長さ。G. Tg(9x GCRE-HSV.UI23:EGFP)系統由来の3dpf幼生における24時間化合物処置後の相対的GFP蛍光レベル。H. 創傷前後、および化合物処置時の、qPCRにより測定したfkbp5、pck1およびnfkbiaaの相対的mRNAレベル。示されているデータは、3つの独立した実験(A-B)からプールしたデータの平均値±SEM、または3つの独立した実験(C-H)の平均値±SEMである。統計学的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。対応するVeh群との有意差は、*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示し、Bec(存在する場合)処置群およびDex処置群との差は、+++(P<0.001)で示している。
【0024】
【
図8】
図8は、グルコシド化プレドニゾロン(GPdn)の抗炎症活性および副作用を他の化合物と比較して示したいる。A. Gba2阻害剤MZ31の非存在下および存在下、Bec、Dex、GDex、プレドニゾロン(Pdn)およびグルコシド化プレドニゾロン(GPdn)による処置時の遊走の好中球の数。B. 2hpfからBec、Dex、G-Dex、PdnまたはG-Pdnで処置した受精後(dpf)5日目のゼブラフィッシュ幼生における、ELISAにより測定した全身グルコースレベル。C. 5dpf幼虫の、2dpfに創傷を負わせ、MZ31の含有または非含有の化合物処置時の全身グルコースレベル。D. 2hpfからBec、Dex、G-Dex、Pdn、G-Pdnにより処置した受精後(dpf)5日目のゼブラフィッシュ幼生の、ELISAで測定した全身コルチゾールレベル。E. 5dpf幼虫の、2dpfに創傷を負わせ、MZ31の含有または非含有の化合物処置時の全身コルチゾールレベル。示されているデータは、3つの独立した実験(A)からプールされたデータの平均値±SEM、またはB-Eにおける3つの独立した実験(3回実施)の平均値±SEMである。統計学的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。対応するVeh群(灰色のバー)との有意差は、*(P<0.05)、***(P<0.001)で示し、グリコシド化されていない化合物(DexまたはPdn)で処置した対応する群との有意差は、+++(P<0.001)で示し、MZ31処置群(同じ色、ハッチングなしのバー)のVeh群との有意差は、#(P<0.05)、###(P<0.001)で示している。
【0025】
【
図9】
図9は、ゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GbPdn)の抗炎症活性およびそれに関連する副作用を、グルコシド化プレドニゾロンおよびプレドニゾロンと比較して示している。A. 処置に使用した化合物の構造:プレドニゾロン(Pdn)、グルコシド化プレドニゾロン(GPdn)およびゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GdPdn)。Pdnのステロイド骨格にコンジュゲートしたグルコース(Glc)およびゲンチオビオース(Gb)基は赤色で示している。B. Gba2阻害剤MZ31の非存在下および存在下、Pdn、GPdnおよびゲンチオビオシド化Pdn(GbPdn)による処置時の遊走の好中球の数。C. 創傷前後および化合物処置時にqPCRにより測定したil1b、il6およびil8の相対mRNAレベル。D. 2hpfからPdn、GPdnまたはGbPdnで処置した5dpfの対照および損傷ゼブラフィッシュ幼生における、ELISAにより測定した全身グルコースレベル。E. 2hpfからPdn、GPdnまたはGbPdnで処理した5dpfゼブラフィッシュ幼生における、対照処置またはCMV:gba2プラスミドを用いたgba2過剰発現時のELISAにより測定した全身グルコースレベル。F. 2hpfからPdn、GPdnまたはGbPdnで処置した5dpfの対照および傷害ゼブラフィッシュ幼生における、ELISAで測定した全身コルチゾールレベル。G. 2hpfからPdn、GPdnまたはGbPdnで処置した5dpfのゼブラフィッシュ幼生における、対照処理またはCMV:gba2プラスミドを用いてgba2過剰発現時の、ELISAにより測定した全身コルチゾールレベル。示されているは、3つの独立した実験からプールしたデータの平均値±SEM(B)、または3つの独立した実験の平均値±SEM(C-G)である。統計的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定によって決定した。対応するVeh群(灰色のバー)との有意差は*(P<0.05)、**(P<0.01)、**(P<0.001)で示し、対応するPdn処置群(ピンクのバー)との有意差はは+++(P<0.001)で示し、MZ31処置群(B)のVeh群との有意差、創傷の対照群(D、F)またはCMV:gba2群(E、G)との有意差は#(P<0.05)、##(P<0.01)、###(P<0.001)で示している。
【0026】
【
図10】
図10は、ゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GbPdn)、グルコシド化プレドニゾロン(GPdn)およびプレドニゾロン(Pdn)でのゼブラフィッシュ幼生の処置によるさらなる効果を示している。A. 2dpfに創傷を負わせた5dpf幼生の、さまざまな濃度のPdnで処置時の再生した尾びれの長さ。B. 対照幼生において、およびCMV:gba2プラスミドを用いてgba2を過剰発現させた後に、qPCRにより測定したgba2の相対mRNAレベル。C. 2hpfから化合物処置した5dpfゼブラフィッシュ幼生の体長。D. 2dpfに創傷を負わせた5dpfの幼生の、MZ31の含有または非含有の化合物処置時の再生尾びれの長さ。E. Tg(9x GCRE-HSV.UI23:EGFP)系統由来の3dpf幼生における、24時間化合物処置後の相対的GFP蛍光レベル。F. CMV:gba2プラスミドを用いたgba2の過剰発現後のTg(9x GCRE-HSV.UI23:EGFP)系統由来の3dpf幼生における、24時間化合物処置後の相対的GFP蛍光レベル。G. E~Fで示している実験群から選択された3dpf幼生の代表的蛍光顕微鏡画像。H. 創傷前後および化合物処置時のqPCRにより測定したfkbp5、pck1およびnfkbiaaの相対的mRNAレベル。I. gba2過剰発現(CMV:gba2プラスミドの使用)の存在下または非存在下、化合物処置時の、fkbp5、pck1およびnfkbiaaの相対的mRNAレベル。示されているデータは、3つの独立した実験の平均値±SEMである。統計学的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukey事後検定により決定した。対応するVeh群(灰色のバー)との有意差は***(P<0.001)で示し、Pdn処置群(ピンクのバー)との有意差は+++(P<0.001)で示し、対応するMZ31処置群(D、同じ色のハッチングなしのバー)との有意差は###(P<0.001)で示している。
【0027】
【
図11】
図11は、ゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GbPdn)、グルコシド化プレドニゾロン(GPdn)およびプレドニゾロン(Pdn)によるインビトロでのヒト細胞処置の比較効果を示している。A. PolarScreenグルココルチコイド受容体(GR)競合アッセイを用いた相対的結合親和性のインビトロでの測定。蛍光偏光レベルは、化合物Dex、Pdn、G-PdnおよびGb-Pdnの濃度を増加させることによって受容体から競合される蛍光リガンドの結合を反映してプロットしている。各化合物のIC50levelを示している。B. TNF-αおよび/またはMZ31の非存在下および存在下、免疫細胞化学および共焦点顕微鏡を用いて測定した、Pdn、GPdnおよびGbPdnで処置したHeLa細胞におけるGRの核移行レベル。C~F. TNF-αおよび/またはMZ31の存在下および非存在下、Pdn、G-PdnまたはGb-Pdnによる6時間処置後の、qPCRにより測定した、Hela細胞におけるIL1B(C)、IL8(D)、FKBP5(E)およびNFKBIA(F)の相対的mRNAレベル。G. TNF-αの非存在下および存在下、Pdn、G-PdnまたはGb-Pdnによる6時間処置後、ならびにGBA1またはGBA2のレンチウイルス介在shRNAノックダウン後のHeLa細胞におけるFKBP5の相対的mRNAレベル。H. CMV:GBA2プラスミドのトランスフェクションによるGBA2の過剰発現後のPdn、G-PdnまたはGb-Pdnによる6時間処置後のHeLa細胞におけるFKBP5およびNFKBIAの相対的mRNAレベル。示されているデータは、3つの独立した実験の平均値±SEMである。統計学的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。対応するVeh群(灰色のバー)との有意差は*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示し、Pdn処置群(ピンクのバー)との有意差は+(P<0.05)、++(P<0.01)、+++(P<0.001)で示し、MZ31処置群(B、同じ色のハッチングなしのバー)処置群のVeh群との有意差は##(P<0.01)で示している。
【0028】
【
図12】
図12は、ゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GbPdn)、グルコシド化プレドニゾロン(GPdn)およびプレドニゾロン(Pdn)によるヒト細胞のインビトロでの処置によるさらなる効果を示している。A.
図11Bに示している実験群について、HeLa細胞におけるGR(緑色蛍光)の核移行を示す代表的な共焦点顕微鏡画像。核DAPI染色は青色で示している。B~D. TNF-αおよび/またはMZ31の非存在下および存在下、Pdn、GPdnまたはGbPdnによる6時間処置後、qPCRにより測定した、Hela細胞におけるMMP13(B)、GILZ(C)およびSGK1(D)の相対的mRNAレベル。E. TNF-αの非存在下および存在下、Pdn、GPdnまたはGbPdnによる6時間処置後、ならびにGBA1またはGBA2のレンチウイルス介在shRNAノックダウン後のHeLa細胞におけるNFKBIAの相対mRNAレベル。示されているデータは、3つの独立した実験の平均値±SEMである。統計学的有意性は、一元配置分散分析または二元配置分散分析およびTukeyの事後検定により決定した。対応するVeh群(灰色のバー)との有意差は**(P<0.01)、***(P<0.001)で示し、対応するPdn処置群(ピンク色のバー)との有意差は++(P<0.01)、+++(P<0.001)で示している。
【0029】
【
図13】
図13は、コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスモデル実験においてとられた手順の図式的概観を提供している。マウスは1日目にCAIAカクテルを受け、続いて4日目にLPS処置を受けた。プレドニゾロン(Pdn)またはゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GbPdn)処置を7日目から15日まで毎日行った。
【0030】
【
図14】
図14は、CAIAモデルにおけるプレドニゾロン(Pdn)およびゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GbPdn)で得られた治療効果および副作用を示している。A. 5日目から15日目まで毎日測定したマウスの関節炎スコア。B. 10日目および15日目にELISAにより測定した血清IL-6レベル。C. 14日目にELISAにより測定した血清インスリンレベル。D. 15日目にエンザイムイムノアッセイにより測定した血清コルチコステロンレベル。E. qPCRにより測定した15日目のFkbp5、Pck1およびGilzの肝臓組織mRNAレベル。F. 15日目のRedde1、Foxo3およびKlf15の筋肉組織mRNAレベル。G. 15日目の後足足首関節の組織におけるGilzおよびFkbp5のmRNAのレベル。Veh群との統計学的有意差は***(P<0.001)で示している。
【0031】
【
図15】
図15は、炎症部位に近接して発現されたGba2が、ゲンチオビオース基全体をゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GbPdn)から除去することを示している。尾部に創傷を負わせ、25μM GbPdnで処置(創傷前2時間および創傷後4時間)後のゼブラフィッシュ幼生からの抽出物中のGbPdn、グルコシド化プレドニゾロン(GPdn)およびプレドニゾロン(Pdn)濃度をLC-MS分析により測定した。A. ビヒクルまたはGba2阻害剤MZ31で処置した対照(創傷のない)および創傷野生型幼生からの抽出物で測定した濃度。B. 対照(創傷のない)および創傷gba2-/-幼虫からの抽出物で測定した濃度。対照/Veh群との統計学的有意差を***(P<0.001)で示している。
【0032】
詳細な説明
本明細書の記載および特許請求の範囲を通じて、「含む」および「含有する」という用語ならびにそれらの変形とは、「含むが、これらに限定されない」を意味し、他の部分、添加剤、成分、整数または工程を除外することを意図しない(また、除外しない)。本明細書の記載および特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他に必要とされない限り、単数形だけでなく複数形も意図していると理解される。
【0033】
本発明の特定の態様、実施態様または実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または化学基は、それと両立しない場合を除き、本明細書に記載の他の態様、実施態様または実施例にも適用可能であると理解される。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴のすべて、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程のすべては、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、前述の実施態様の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせ、あるいはそのように開示された任意の方法またはプロセスの工程の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0034】
読者は、本出願に関連して本明細書と同時にまたはそれ以前に提出され、本明細書とともに公開されているすべての論文および文書に注意を向けるべきであり、そのようなすべての論文および文書の内容は引用により本明細書に包含される。
【0035】
定義
以下の用語および方法の説明は、本開示をより良く説明し、本開示の実施に当業者を導くために提供される。
【0036】
本発明は、とりわけ、疾患の処置に関する。用語「処置」、および本発明に包含される療法は、以下およびそれらの組合せを含む:(1)事象、状態、障害または症状の開始および/または進行を妨げること、例えば遅延させること、例えば、事象、状態、障害もしくは症状の発生、または処置維持もしくは二次予防の場合のその再発、またはその少なくとも1つの臨床的もしくは潜在的症候、を停止させるか、減少させるか、または遅延させること;(2)動物(例えば、ヒト)においてある事象、状態、障害または症状の臨床症候の出現を予防するか、遅延させること(ここで、動物は、当該状態、障害または症状に悩み得るかまたはかかりやすいが、当該状態、障害または症状の臨床症候または潜在的症候をまだ経験していないか示していない);および/または(3)事象、状態、障害または症状の緩和および/または治癒(例えば、事象、状態、障害もしくは症状、またはその臨床症候もしくは潜在的症候の少なくとも1つの退縮を引き起こすこと、患者を治癒させること、または患者を寛解させること)。処置される患者に対する利益は、統計的に有意であるもの、または少なくとも患者または医師に知覚できるものであり得る。医薬は、それが投与される各患者において必ずしも臨床的効果を生じるとは限らないことが理解されるであろう。このように、個々の患者において、あるいは特定の患者集団においてさえ、処置は部分的にのみ失敗することもあれば成功することもあり、「処置」および「予防」という用語、ならびに同種の用語の意味は、それに応じて理解されなければならない。本明細書に記載の組成物および方法は、上述の状態の処置および/または予防に使用される。
【0037】
用語「予防」とは、例えば、事象、状態、障害または症状が発生する可能性を減少させる目的で、健康を維持させること、または事象、状態、障害または状態の開始および/もしくは進行を阻害もしくは遅延させることを目的とする処置療法への言及を含む。予防の結果は、例えば、健康を維持させること、または事象、状態、障害もしくは症状の開始および/もしくは進行を遅延させることである。個々の患者において、あるいは特定の患者集団においてでさえ、処置が失敗する可能性があり、本段落はそれに応じて理解されるべきである。
【0038】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、20個まで(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個)の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル部分への言及を含む。この用語には、例えば、メチル、エチル、プロピル(n-プロピルまたはイソプロピル)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチル)、ペンチル、ヘキシルなどが含まれる。特に、アルキルは、「C1-C8アルキル」、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個もしくは8個の炭素原子を有するアルキル;「C1-C6アルキル」、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個もしくは6個の炭素原子を有するアルキル;「C1-C4アルキル」、すなわち、1個、2個、3個もしくは4個の炭素原子を有するアルキル;または「C1-C3アルキル」、すなわち、1個、2個もしくは3個の炭素原子を有するアルキルであり得る。用語「低級アルキル」とは、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルキル基への言及を含む。
【0039】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、20個まで(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個)の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルケニル部分への言及を含む。この用語は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどへの言及を含む。特に、アルケニルは、「C3-C8アルケニル」、すなわち、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を有するアルケニル;「C3-C6アルキル」、すなわち、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルケニル;「C3-C4アルキル」、すなわち、3個または4個の炭素原子を有するアルケニルであり得て、用語「低級アルケニル」は、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルキル基への言及を含む。アルケニルは、一価不飽和(すなわち、単一の炭素-炭素二重結合を含む)または多価不飽和(すなわち、2つ以上の炭素-炭素二重結合、例えば、2個、3個または4個の炭素-炭素二重結合を含む)であり得る。例えば、アルケニルは、アルカジエニル、アルカトリエニルなどであり得る。
【0040】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する脂環式部分への言及を含む。この基は、架橋式または多環式環系であり得る。より多くの場合、シクロアルキル基は単環式である。この用語には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの基への言及を含む。
【0041】
用語「ヘテロアルキル」とは、それ自体で、または他の用語と組み合わせて、特に断らない限り、安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせであって、少なくとも1個の炭素原子と、O、N、P、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、ここで、窒素原子および硫黄原子は場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は場合により4級化されていてもよい、ものを意味する。ヘテロ原子のO、N、P、SおよびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置、またはアルキル基が分子の残部に結合する位置に配置され得る。例として、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2,-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH-N(CH3)-CH3、O-CH3、-O-CH-2-CH3、および-CNがあるが、これらに限定されない。同様に、それ自体または別の置換基の一部としての用語「ヘテロアルキレン」は、ヘテロアルキルから誘導される二価のラジカルを意味し、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって例示されるがこれらに限定されない。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子はまた、鎖末端のいずれかまたは両方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン結合基については、結合基の式が書かれる方向によって結合基の配向が暗示されることはない。例えば、式:-C(O)2R’-は、-C(O)2R’-および-R’C(O)2-の両方を示す。上述したように、本明細書で使用されるヘテロアルキル基には、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合している基、例えば、-C(O)R’、-C(O)NR’、-NR’R’’、-OR’、-SR’、および/または-SO2R’が含まれる。「ヘテロアルキル」が記載され、次いで、-NR'R''などの特定のヘテロアルキル基が記載される場合、ヘテロアルキルおよび-NR'R''という用語は、冗長でも相互排他的でもないことが理解されるであろう。むしろ、特定のヘテロアルキル基は、明確性を付加するために記載されている。したがって、用語「ヘテロアルキル」は、-NR'R''などの特定のヘテロアルキル基を除外するものとして本明細書で解釈されるべきではない。
【0042】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクロアルキル」は、3個、4個、5個、6個または7個の環炭素原子と、窒素、酸素、リンおよび硫黄から選択される1個、2個、3個、4個または5個の環ヘテロ原子とを有する飽和ヘテロ環式部分への言及を含む。例えば、ヘテロシクロアルキルは、3個、4個、または5個の環炭素原子と、窒素および酸素から選択される1個または2個の環ヘテロ原子とを含み得る。この基は多環式環系であってもよいが、単環式であることが多い。この用語は、アゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、オキシラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、インドリジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、キノリジジニルなどの基への言及を含む。
【0043】
本明細書で使用される「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrまたはI、例えば、F、ClまたはBrへの言及を含む。特定のクラスの実施態様において、ハロゲンはFまたはClであり、Fがより一般的である。
【0044】
それ自体で、または別の置換基の一部としての用語「ハロ」または「ハロゲン」は、特に断らない限り、、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味し、例えば、ハロは、フッ素、塩素または臭素であり得る。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、用語「ハロアルキル」とは、1つ以上の水素原子が対応する数のハロゲンによって置換されているアルキル基を意味する。例えば、用語「ハロ(C1-C4)アルキル」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル、などを含むが、これらに限定されないことを意味する。
【0045】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、-O-アルキルへの言及を含み、ここで、アルキルは直鎖または分枝鎖であり、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を含む。一クラスの実施態様において、アルコキシは、1個、2個、3個または4個の炭素原子、例えば、1個、2個または3個の炭素原子を有する。この用語は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどへの言及を含む。用語「低級アルコキシ」とは、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルコキシ基への言及を含む。
【0046】
本明細書で使用される用語「ハロアルコキシ」とは、1つ以上の水素原子が対応する数のハロゲンによって置換されているアルコキシ基を意味する。
【0047】
上記の各用語(例えば、「アルキル」、「シクロアルキル」、「ヘテロアルキル」および「アルコキシル」)は、特に断りのない限り、示されたラジカルの置換および非置換形態の両方を含むことを意味する。置換基がR置換である場合(例えば、Rx-置換アルキルであり、ここで「x」は整数である)、該置換基は、各R基が場合により異なる化学原子価規則で許容される1つ以上のR基によって置換されていてもよい(例えば、Rx-置換アルキルは、各Rx基が場合により異なる複数のRx基を含んでもよい)。各種類のラジカルの置換基の特定の例を以下に示す。
【0048】
用語「置換(substituted)」とは、本明細書において一部分に関して使用される場合、前記部分における水素原子の1つ以上、特に1~5個、より具体的には1個、2個または3個が、記載された置換基の対応する数によって互いに独立して置き換えられていることを意味する。特に明記しない限り、置換基の例としては、-OH、-CN、-NH2、-NH(C1-C6アルキル)、-N(C1-C4アルキル)2、=O、-ハロ、-C1-C6アルキル、-C2-C6アルケニル、-C1-C6ハロアルキル、-C1-C6ハロアルコキシおよび-C2-C6ハロアルケニル、-C1-C6アルキルカルボン酸(例えば、-CH3COOHまたは-COOH)がある。置換基が-C1-C6アルキルまたは-C1-C6ハロアルキルである場合、C1-C6鎖は、場合によりエーテル結合(-O-)またはエステル結合(-C(O)O-)によって中断される。置換アルキルの置換基の例示としては、-OH、-CN、-NH2、=O、-ハロ、-CO2H、-C1-C6ハロアルキル、-C1-C6ハロアルコキシおよびC2-C6ハロアルケニル、-C1-C6アルキルカルボン酸(例えば、-CH3COOHまたは-COOH)がある。例えば、アルキルの置換基の例示としては、-OH、-CN、-NH2、=O、-ハロがある。
【0049】
もちろん、置換基は化学的に可能な位置にのみ存在し、当業者は特定の置換基が可能かどうかを不適切な努力なしに(実験的または理論的に)決定できることは理解されるであろう。例えば、遊離水素を有するアミノ基またはヒドロキシ基は、不飽和(例えばオレフィン性)結合を有する炭素原子に結合すると不安定であり得る。さらに、本明細書に記載の置換基は、当業者によって認識されるような適切な置換基への前述の制限を条件として、それ自体が任意の置換基で置換されていてもよいことはもちろん理解されるであろう。
【0050】
立体的なイシューが基上の置換基の配置を決定する場合、最も低い立体配座エネルギーを有する異性体が好ましい。
【0051】
化合物、部分、プロセスまたは製品が、ある特徴を「場合により」有すると記載されている場合、本開示は、その特徴を有する化合物、部分、プロセスまたは製品、およびその特徴を有しない化合物、部分、プロセスまたは製品を含む。したがって、ある部分が「場合により置換されている」と記載されている場合、本開示は、非置換部分および置換部分を含む。
【0052】
2つ以上の部分が、原子または基のリストから「独立して」または「それぞれ独立して」選択されると記載されている場合、これは、該部分が同じであってもよく、または異なっていてもよいことを意味する。したがって、各部分の同一性は、1つ以上の他の部分の同一性から独立している。
【0053】
用語「分子ラジカル」とは、それ自体または別の置換基の一部として、示された分子種から誘導される一価のラジカルを意味する。例えば、所定の分子種の分子ラジカルは、該所定の分子種から水素原子またはヒドロキシル基が引き抜かれた後に残るラジカルに相当する。
【0054】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容できる」は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わず、ヒトまたは動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、および/または剤形への言及を含む。この用語には、ヒトと獣医の両方の目的に対する許容性が含まれる。
【0055】
用語「薬学的に許容できる塩」とは、本明細書に記載の化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的毒性のない酸または塩基で調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態を、純状態または適切な不活性溶媒中のいずれかで、十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容できる塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、マグネシウム塩、または類似の塩がある。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を、純状態または適切な不活性溶媒中のいずれかで、十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容できる酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸またはリン酸などの無機酸から誘導される塩、および酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的無毒性の有機酸から誘導される塩がある。また、アルギニン酸などのアミノ酸の塩、グルクロン酸やガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照すること)。本発明の特定の化合物は、塩基性官能基および酸性官能基の両方を含み、化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換することができる。
【0056】
本明細書に開示された化合物を構成する糖類に関連する「酸」という用語は、糖類(および/またはその少なくとも1つの単糖残基)がカルボン酸を構成する化合物の形態を含むことを意味する。このようなカルボン酸は、アルドン酸またはウロン酸の一部を形成することができる。アルドン酸は、アルド糖の末端アルデヒド基が酸化されたときに得られるものであり、例えばD-グルコースをC1で酸化するとD-グルコン酸が得られる。ウロン酸は、糖のカルボニル基から最も遠いヒドロキシル基がカルボン酸に酸化されたときに得られるものであり、例えば、D-グルコースを酸化すると、対応するウロン酸であるD-グルコロン酸が得られる。例示的な糖酸としては、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクトン酸、ガラクツロン酸、イドン酸、イズロン酸、アルトロン酸(altronic acid)、アルトルロン酸(altruronic acid);およびそれらのD-およびL-エナンチオマー(D-グルコン酸、D-グルクロン酸、D-ガラクトン酸、D-ガラクツロン酸、L-イドン酸、およびL-イズロン酸、L-アルトロン酸(L-altronic acid)、L-アルトルロン酸(L-altruronic acid)など)がある。
【0057】
化合物の中性型は、好ましくは塩を塩基または酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することにより再生される。化合物の親型は、極性溶媒中の溶解度などの特定の物理的性質において、様々な塩型と異なる。
【0058】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態だけでなく、水和形態を含む溶媒和形態でも存在し得る。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶形態または非晶質形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本発明によって企図される用途のために等価であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0059】
本発明の特定の化合物は、非対称の炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ体、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体および個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。本発明の化合物には、合成および/または単離が不安定すぎると当技術分野で知られているものは含まれない。
【0060】
本明細書で使用される用語「プロドラッグ」とは、例えば血中での加水分解により、インビボで親化合物または他の活性化合物に変換する化合物を示す。このようなプロドラッグの例は、カルボン酸の薬学的に許容できるエステルである。徹底的な議論は、T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series, Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987; H Bundgaard, ed, Design of Prodrugs, Elsevier, 1985; and Judkins, et al. Synthetic Communications, 26(23), 4351-4367 (1996); and The organic chemistry of drug design and drug action by Richard B Silverman in particular pages 497 to 546(そらぞれは、引用により本明細書に包含される)に提供されている。本発明の化合物は、例えばGBA2の作用による、単糖または二糖部分の加水分解により活性な抗炎症剤または活性な抗癌剤を提供するプロドラッグ(例えば、潜在的な抗炎症剤または潜在的な抗癌剤を含む)を示すことができる。
【0061】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」とは、少なくとも1つの活性化合物(またはプロドラッグ)、および場合により1つ以上の追加の薬学的に許容できる成分、例えば薬学的に許容できる担体を含む組成物への言及を含む。文脈において他に示さない限り、本明細書における「組成物」への言及はすべて、医薬製剤への言及である。
【0062】
本明細書で使用される用語「製品」または「本発明の製品」は、本発明の化合物を含有するいずれかの製品への言及を含む。特に、製品という用語は、例えば医薬組成物のような、本発明の化合物を含有する組成物または製剤に関するものである。
【0063】
本明細書で使用される用語「治療有効量」とは、健全な薬理学的判断の範囲内で、哺乳動物(動物またはヒト)において所望の治療的応答を提供するように計算される(または提供するであろう)薬物または医薬品の量を意味する。治療的応答は、例えば、疾患、障害または症状の治癒、進行遅延または予防に役立つ。
【0064】
本明細書で使用される用語「GBA2」とは、HUGO遺伝子命名委員会によって指定された酵素グルコシルセラミダーゼベータ2を意味する。この酵素は、胆汁酸3-O-グルコシドの加水分解を触媒することが知られているミクロソームベータ-グルコシダーゼである。我々は、酵素GBA2が炎症部位、例えばゼブラフィッシュの炎症誘導部位で選択的に発現することを判定した。本明細書で提供される、単糖または二糖に共有結合いている治療的部分、例えば抗炎症性部分または化学療法的部分を含む化合物(式Iまたは式IIの化合物など)は、単糖または二糖がGBA2活性によって加水分解され得る。したがって、GBA2は、炎症部位において、抗炎症剤または活性化学療法的部分などの活性治療的部分を選択的に放出し得る。このように、本発明の化合物は、炎症部位への活性治療的部分(活性抗炎症剤または活性化学療法的部分を含むが、これらに限定されない)の標的化送達における使用に適している。炎症が発生した部位に、このように標的を定めて送達することは、広範な治療部位に関して有益であることが容易に理解されよう。炎症は、多くの病理学的プロセスおよび症状の構成要素であり、このアプローチは、本発明のプロドラッグ化合物から活性薬剤をインサイチュで生成することにより、そのような病態の処置に適した治療的部分(炎症反応の緩和のためだけではない)を送達するために使用することができる。
【0065】
哺乳類のGBA2がコレステロールやステロイドホルモンなどの親油性化合物からどの糖類を切断できるかについては不明な点が多いが、本開示で提供する結果に加えて、いくつかの知見では、利用可能な一定レベルの特異性があることを示している。GBA2は、β-D-グルコシル化化合物(すなわち、β-グリコシド結合により結合したD-グルコース基を有する化合物)を切断することが示されている(Marques, et al. (2016). "Glucosylated cholesterol in mammalian cells and tissues: formation and degradation by multiple cellular beta-glucosidases." J Lipid Res 57(3): 451-463)。GBA2はβ-D-ガラクトシル化化合物も切断する(Akiyama, et al. (2020). "Glucocerebrosidases catalyze a transgalactosylation reaction that yields a newly-identified brain sterol metabolite, galactosylated cholesterol." J Biol Chem 295(16): 5257-5277)。対照的に、これはβ-キシロシド化化合物には当てはまらない(Boer, et al. (2021). "Human glucocerebrosidase mediates formation of xylosyl-cholesterol by beta-xylosidase and transxylosidase reactions." J Lipid Res 62: 100018)。したがって、GBA2はアルドヘキソースに特異的であると考えられる。イミノ糖デオキシノジリマイシンの誘導体がGBA2の阻害剤として試験された研究で観察されたように、アルドヘキソースの群内では、さらなる特異性が可能かもしれない((Wennekes, et al. (2010). "Dual-action lipophilic iminosugar improves glycemic control in obese rodents by reduction of visceral glycosphingolipids and buffering of carbohydrate assimilation." J Med Chem 53(2): 689-698; Ghisaidoobe, et al. (2014). "Identification and development of biphenyl substituted iminosugars as improved dual glucosylceramide synthase/neutral glucosylceramidase inhibitors." J Med Chem 57(21): 9096-9104; Lahav, et al. (2017). "A Fluorescence Polarization Activity-Based Protein Profiling Assay in the Discovery of Potent, Selective Inhibitors for Human Nonlysosomal Glucosylceramidase." J Am Chem Soc 139(40): 14192-14197)。例えば、これらの研究に基づいて、L-イドースも強力なGBA2切断の基質を形成することが示唆された。
【0066】
これまでの研究では、GBA2はエキソグリコシダーゼ、すなわち親油性化合物から単糖を切断することしかできない酵素であると考えられていた。しかしながら、われわれは本出願において、GBA2がステロイド分子から二糖を実際に除去できることを初めて証明し、それによってGBA2が実際にはエンドグリコシダーゼであり、コルチコステロイドのような親油性化合物から二糖部分を切断できることを示唆した。
【0067】
本明細書で使用される用語「コルチコステロイド」とは、脊椎動物によって産生される天然のコルチコステロイドおよびそのような化合物の合成類似体を含む、ステロイドホルモンの一クラスを意味する。他のステロイド分子と同様に、コルチコステロイドの炭素原子は、以下の仮想的な親骨格構造に基づいて番号が付けられる:
【化2】
コルチコステロイドの好ましい群は、抗炎症活性を有することが多いグルココルチコイドである。抗炎症性効果は、炎症誘発メディエーターのレベルを減少させること(例えば、遺伝子発現のトランス抑制による)、および/または抗炎症メディエーターのレベルを増加させること(例えば、遺伝子発現のトランス活性化による)によって媒介され得る。
【0068】
化合物
一態様において、本発明は、前述した式Iの化合物、またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。これらの化合物は、グリコシル化化合物が対応するアグリコシル化(すなわち非グリコシル化)化合物と比較して生物学的活性が低下しているプロドラッグを表すことができる。
【0069】
式Iの化合物において、Aは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、およびそれらのいずれかの酸形態、ならびにグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、およびそれらのいずれかの酸形態から選択される1つまたは2つの糖類から形成される二糖から選択され得る。グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースの酸形態は、アルドン酸またはウロン酸であり得る;例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースの酸形態は、グルクロン酸などのウロン酸であり得る。アルドン酸は、アルド糖の末端アルデヒド基が酸化されて得られるものであり、例えば、D-グルコースをC1で酸化するとD-グルコン酸が得られる。ウロン酸は、糖のカルボニル基から最も遠いヒドロキシル基がカルボン酸に酸化された場合に得られるものであり、例えば、D-グルコースを酸化すると、対応するウロン酸であるD-グルコロン酸が得られる。
【0070】
式Iの化合物において、Aは、アルドヘキソースであり得る。Aは、グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態、ならびにグルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態から選択される1つまたは2つの糖類から形成される二糖から選択され得る。グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースの酸形態は、アルドン酸またはウロン酸であり得る;例えば、グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースの酸形態は、ウロン酸、例えばグルクロン酸であり得る。アルドン酸は、アルド糖の末端アルデヒド基が酸化されると得られるものであり、例えば、D-グルコースがC1で酸化されるとD-グルコン酸が得られる。ウロン酸は、糖のカルボニル基から最も遠いヒドロキシル基がカルボン酸に酸化されると得られるものであり、例えば、D-グルコースが酸化されると、対応するウロン酸であるD-グルコロン酸が得られる。C2および/またはC3位のヒドロキシル基の位置は、GBA2の切断に影響を及ぼすかもしれない(van den Berg, et al. (2011). "Assessment of partially deoxygenated deoxynojirimycin derivatives as glucosylceramide synthase inhibitors." ACS Med Chem Lett 2(7): 519-522)。このような観点から、Aは、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態、ならびにD-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態から選択される1つまたは2つの糖類から形成される二糖から選択され得る。D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースの酸形態は、アルドン酸またはウロン酸であり得る;例えば、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースの酸形態は、ウロン酸、例えばグルクロン酸であり得る。
【0071】
式Iの化合物において、Aは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態(例えば、アルドン酸またはウロン酸)のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。Aは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのウロン酸形態のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。Aは、グルコース、ガラクトース、マンノースおよびフルクトースのそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。例えば、Aは、ゲンチオビオースであり得る。Aは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのいずれかの酸形態(例えば、アルドン酸またはウロン酸)から選択される単糖であり得る。Aは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびそれらのウロン酸形態から選択される単糖であり得る。例えば、Aは、グルコースまたはグルクロン酸であり得る。Aは、グルコース、ガラクトース、マンノースおよびフルクトースから選択される単糖であり得る。例えば、Aはグルコースであり得る。
【0072】
式Iの化合物において、Aは、2つのアルドヘキソースから形成される二糖であり得る。例えば、Aは、グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態(例えば、アルドン酸またはウロン酸)のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。Aは、グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびそれらのウロン酸形態のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。Aは、グルコース、ガラクトース、イドースおよびアルトロースのそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。例えば、Aは、ゲンチオビオースであり得る。C2および/またはC3位のヒドロキシル基の位置は、GBA2の切断に影響を及ぼすかもしれない(van den Berg, et al. (2011).supra)。このような観点から、Aは、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態(例えば、アルドン酸またはウロン酸)のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。AはD-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびそれらのウロン酸形態のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。Aは、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドースおよびL-アルトロースのそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。例えば、Aはゲンチオビオースであり得る。
【0073】
いくつかの実施態様において、二糖プロドラッグは対応する単糖プロドラッグと比較して活性が低下し得て、両化合物は同じ活性のアグリコシル化化合物を提供するので、二糖が好ましい。したがって、二糖および単糖を含む化合物は(糖鎖が除去された後)同じレベルのオンターゲット活性を提供するはずであり、一方、二糖はオフターゲット活性による副作用をより少なくすることができる。
【0074】
式Iの化合物において、Bは、上記で考察したように、単糖または二糖の付加によって生物学的活性を低下させることができるいずれかの治療的部分であり得る。治療的部分の例示的なカテゴリーとしては、抗炎症性部位、化学療法的部分、抗感染性部分、鎮痛性部分、抗血管新生性部分および抗線維化部分がある。
【0075】
好適には、Bは抗炎症性部分であり得る。前記抗炎症性部分は、コルチコステロイド(例えば、グルココルチコイド)、非ステロイド性グルココルチコイド受容体アゴニスト、非ステロイド性抗炎症性、疾患修飾性抗リウマチ薬、またはラパマイシンであり得るか、これらを含み得る。前記抗炎症性部分は、コルチコステロイド(例えば、グルココルチコイド)であり得るか、それを含み得る。前記抗炎症性部分は、非ステロイド性グルココルチコイド受容体アゴニストであり得るか、それを含み得る。前記抗炎症性部分は、非ステロイド性抗炎症性であり得るか、それを含み得る。前記抗炎症性部分は、疾患修飾性抗リウマチ薬であり得るか、それを含み得る。前記抗炎症性部分は、ラパマイシンであり得るか、それを含み得る。
【0076】
コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾン型コルチコステロイド、トリアムシノロンアセトニド型コルチコステロイド、メタゾン型コルチコステロイド、ベタメタゾンジプロピオネート型コルチコステロイドおよびメチルプレドニゾロンアセポネート型コルチコステロイドから選択され得る。コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾン型コルチコステロイドであり得る。コルチコステロイドは、トリアムシノロンアセトニド型コルチコステロイドであり得る。コルチコステロイドは、メタゾン型コルチコステロイドであり得る。コルチコステロイドは、ベタメタゾンジプロピオネート型コルチコステロイドであり得る。コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロンアセポネート型コルチコステロイドであり得る。これらのコルチコステロイドのクラスは、以下でさらに定義される。
【0077】
コルチコステロイドによるアレルギー性接触性皮膚炎における交差感受性に基づき、コルチコステロイド薬の4つの構造クラスが定義されている(Coopman and Dooms-Goossens, Cross-reactions in topical corticosteroid contact dermatitis. Contact Dermatitis. 1988 Aug;19(2):145-6; Coopman et al., Identification of cross-reaction patterns in allergic contact dermatitis from topical corticosteroids. Br J Dermatol. 1989 Jul;121(1):27-34; Isaksson, Corticosteroids. Dermatol Ther. 2004;17(4):314-20; Jacob and Steele, Corticosteroid クラスes: a quick reference guide including patch test substances and cross-reactivity. J Am Acad Dermatol. 2006 Apr;54(4):723-7.)。以下の段落では、コルチコステロイドの各クラスの説明と一般的な構造を示している。コルチコステロイドのクラスに関するこれらの段落において、「nn」が番号である「Cnn」への言及は、コルチコステロイドの示された番号の炭素原子への言及であることに注意すべきである。
【0078】
クラスA:ヒドロコルチコン(Hydrocorticone)型コルチコステロイドは、コルチコステロイドのD環またはC11炭素鎖に置換基を有しないが、C11および/またはC21酢酸エステル、およびC21チオエステルチキソコルトールピバレートを含むコルチコステロイドである。
【化3】
【0079】
クラスB:トリアムシノロンアセトニド型コルチコステロイドは、C16、C17-シス、-ジオール、-ケタール鎖構造を有するコルチコステロイドである。
【化4】
【0080】
クラスC:ベタメタゾン型コルチコステロイドは、C16アルキル置換を有するコルチコステロイドである。
【化5】
【0081】
クラスD:ヒドロコルチゾン-17-ブチレート型コルチコステロイドは、C17および/またはC21に長鎖エステルを有するコルチコステロイドである。
【化6】
クラスDはさらに2つのサブクラスに分けられる(Matura and Goossens, Reactions to corticosteroids: some new aspects regarding cross-sensitivity. Cutis. 2000 Jan;65(1):43-5; Goossens et al., Contact allergy to corticosteroids. Allergy. 2000 Aug;55(8):698-704)、クラスD1とD2。クラスD1であるベタメタゾンジプロピオネート型コルチコステロイドは、C16にメチル置換、B環にハロゲン化、C17および/またはC21に長鎖エステルを有するコルチコステロイドを含む。クラスD2であるメチルプレドニゾロンアセポネート型コルチコステロイドは、C16にメチル置換がなく、ハロゲン化もなく、C17に長い側鎖エステルを有し、場合によりC21に側鎖を有する、コルチコステロイドを含む。
【0082】
式Iの化合物において、Bは、アルクロメタゾン(alclometasone)、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、シクロメタゾン(ciclometasone)、シクレソニド、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレンドノール(cloprednol)、コルチフェン(cortifen)、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、コルチゾン、コルチバゾール、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメサゾン、ジクロリゾン、ジフルコルトロン、ジフロラゾン、ジフルプレドナート、ホルモコータル、フルアザコート(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルドロコルチゾン、フルコルチン(flucortin)、フルコルトロン(flucortolone)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド(flucinolone acetonide)、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、フルチカゾン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ハロメタゾン、ヒドロコルタメート、イコメタゾン(icometasone)、イソフルプレドノン(iisofluprednone)、ロトプレドノール、マジプレドン(mazipredone)、メドリソン(medrysone)、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、ニココルトニド(nicocortonide)、パラメタゾン、プレドニカルベート(prednicarbate)、プレドニゾロン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロシノニド(procinonide)、チキソコルトール、トリアムシノロンまたはトリアムシノロンアセトニド、またはそれらのいずれかのエステルの分子ラジカルであり得るか、それを含み得る。前記エステルは、アセテート、アダマントエート(adamantoate)、ベンゾエート、ベンゾフランカルボキシレート、ベンゾイル-β-アミノイソブチレート、ブチレート(butyrate)、ブチレート(butylate)、カプロエート(caproate)、カルボキシレート、クロラムブシル、クロルフェナシル(chlorphenacyl)、シペシレート(cipecilate)、シクロペンタンプロピオネート、シクロペンチルプロピオネート、シクロプロピルカルボキシレート、シピオネート、ジシベート(dicibate)、ジクロアセテート、ジエチルアミノアセテート、エナンタート、エンブテート、エタボネート(エチルカーボネート)、フオレート(fuorate)、ヘミスクシネート、ヘキサノエート、イソブチレート、イソニコチネート、リノレート、メタスルホベンゾエート、メテンボネート(metembonate)、パルミテート、ホスフェート、ピペリジノアセテート、ピバレート、プロピオネート、サリチラート、ステアロイルグリコレート、スクシネート、スレプタネート(suleptanate)、スルフェート、テブテート(tert-ブチルアセテート)、テトラヒドロフタレート、トロックスンダート(troxundate)、バレレート、またはキサントゲン酸基から選択される基であるか、それを含み得る。
【0083】
式Iの化合物において、Bは化学療法的部分であり得る。前記化学療法的部分は、アルキル化剤(例えば、シスプラチン)、ニトロソウレア類(例えば、カルムスチン)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサートおよびペントスタチン)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン)、および有糸分裂阻害剤(例えば、パクリタキセル)、またはこれらのカテゴリーに当てはまらない他の化学療法薬の分子ラジカルであり得るか、これらを含み得る。
【0084】
式Iの化合物において、Bは抗感染剤であり得る。式Iの化合物において、Bは鎮痛剤であり得る。式Iの化合物において、Bは抗血管新生剤であり得る。式Iの化合物において、Bは抗線維化剤であり得る。
【0085】
ある実施態様において、本発明は、式II:
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物を提供する。
R
1は、単糖または二糖から選択される。R
2は、H、置換または非置換C
1-C
8アルキル、置換または非置換C
1-C
8アルコキシ、置換または非置換C
3-C
8アルケニルから選択される。R
3およびR
4は、それぞれ独立して、H、OH、C
1-C
4置換または非置換アルキル、OR
9、OC(O)R
9から選択され;あるいは、R
3およびR
4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって置換または非置換5員または6員ヘテロシクロアルキルを形成する。R
5、R
6、R
7およびR
8は、それぞれ独立して、H、OH、ハロ、置換または非置換-C
1-C
4アルキルまたはOR
10から選択される。R
9は、Hまたは-C
1-C
8置換または非置換アルキルから選択される。Xは、=Oまたは-OHから選択される。
【0086】
Xは=Oであり得る。Xは-OHであり得る。
【0087】
前記化合物は、式IIIaまたはIIIb:
【化8】
の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物であり得る。
【0088】
前記化合物は、式IVaまたは式IVb:
【化9】
の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体もしくは溶媒和物であり得る。
【0089】
前記化合物は、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vd:
【化10】
の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物であり得る。
【0090】
式IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VcおよびVdのそれぞれにおいて、置換基は以下のように定義される。R1は、単糖または二糖から選択される。R2は、H、置換または非置換C1-C8アルキル、置換または非置換C1-C8アルコキシ、置換または非置換C3-C8アルケニルから選択される。R3およびR4は、それぞれ独立して、H、OH、C1-C4置換または非置換アルキル、OR9、OC(O)R9から選択され;あるいは、R3およびR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって置換または非置換の5員または6員ヘテロシクロアルキルを形成する。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、H、OH、ハロ、置換または非置換-C1-C4アルキルまたはOR10から選択される。R9は、Hまたは-C1-C8置換または非置換アルキルから選択される。
【0091】
式II、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VcおよびVdのいずれかにおいて、置換基はさらに以下のように定義され得る:
【0092】
R1は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびこれらのいずれかの酸形態、ならびにグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびこれらのいずれかの酸形態から選択される1つまたは2つの糖類から形成されるいずれかの二糖から選択され得る。グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースの酸形態は、アルドン酸またはウロン酸であり得て;例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースの酸形態は、ウロン酸、例えばグルクロン酸であり得る。
【0093】
R1は、アルドヘキソース、および2つのアルドヘキソース(同一であってもよく、異なっていてもよい)から形成される二糖から選択され得る。例えば、R1は、グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびこれらのいずれかの酸形態、ならびにグルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびこれらのいずれかの酸形態から選択される1つまたは2つの糖類から形成されるいずれかの二糖から選択され得る。グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースの酸形態は、アルドン酸またはウロン酸であり得て;例えば、グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースの酸形態は、ウロン酸、例えばグルクロン酸であり得る。C2および/またはC3位のヒドロキシル基の位置は、GBA2の切断に影響を及ぼすかもしれない(van den Berg, et al. (2011), supra)。このような観点から、R1は、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびこれらのいずれかの酸形態、ならびD-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびこれらのいずれかの酸形態から選択される1つまたは2つの糖類から形成されるいずれかの二糖から選択され得る。D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースの酸形態は、アルドン酸またはウロン酸であり得て;例えば、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースの酸形態は、ウロン酸、例えばグルクロン酸であり得る。
【0094】
R1は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびこれらのいずれかの酸形態(例えば、アルドン酸またはウロン酸)のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。R1は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびこれらのウロン酸形態のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。R1は、グルコース、ガラクトース、マンノースおよびフルクトースのそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。例えば、R1はゲンチオビオースであり得る。R1は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびこれらのいずれかの酸形態(例えば、アルドン酸またはウロン酸)から選択される単糖であり得る。R1は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースおよびこれらのウロン酸形態から選択される単糖であり得る。例えば、R1は、グルコースまたはグルクロン酸であり得る。R1は、グルコース、ガラクトース、マンノースおよびフルクトースから選択される単糖であり得る。例えば、R1はグルコースであり得る。
【0095】
R1は、2つのアルドヘキソース(同一であってもよく、異なっていてもよい)から形成される二糖であり得る。R1は、グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびこれらのいずれかの酸形態(例えば、アルドン酸またはウロン酸)のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。R1は、グルコース、ガラクトース、イドース、アルトロースおよびそれらのウロン酸形態のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。R1は、グルコース、ガラクトース、イドースおよびアルトロースのそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。例えば、R1はゲンチオビオースであり得る。C2および/またはC3位のヒドロキシル基の位置は、GBA2の切断に影響を及ぼすかもしれない(van den Berg, et al. (2011), supra)。このような観点から、R1は、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびそれらのいずれかの酸形態(例えば、アルドン酸またはウロン酸)のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。R1は、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドース、L-アルトロースおよびそれらのウロン酸形態のそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。R1は、D-グルコース、D-ガラクトース、L-イドースおよびL-アルトロースのそれぞれ1つまたは2つから形成される二糖であり得る。例えば、R1はゲンチオビオースであり得る。
【0096】
R1が二糖である化合物が好ましい場合がある。このような化合物は、対応する単糖プロドラッグに比べて活性が低下した二糖プロドラッグを示すことがある一方、両方の化合物はともに同じ活性のアグリコシル化化合物を提供するからである。従って、二糖および単糖を含む化合物は(単糖または二糖部分が除去された後)同じレベルのオンターゲット活性を提供するはずであり、一方、R1が二糖である化合物はオフターゲット性による副作用が少ないかもしれない。
【0097】
R2は、Hおよび置換または非置換C1-C8アルキルから選択され得る。R2はHであり得る。R2は、置換または非置換C1-C8アルキルであり得る。R2は、置換C1-C8アルキルであり得る。R2は非置換C1-C8アルキルであり得る。
【0098】
R3は、H、OHおよびOC(O)R9から選択され得る。R3は、HおよびOHから選択され得る。R3は、HおよびOC(O)R9から選択され得る。R3は、OHおよびOC(O)R9から選択され得る。R3はHであり得る。R3はOHであり得る。R3はOC(O)R9であり得る。
【0099】
R9は、置換または非置換-C1-C8アルキルであり得る。R9は、置換-C1-C8アルキルであり得る。R9は、非置換-C1-C8アルキルであり得る。
【0100】
R4は、H、OHまたはC1-C4アルキルから選択され得る。R4は、H、OHまたはメチルから選択され得る。R4はHであり得る。R4はOHであり得る。R4はC1-C4アルキル(例えば、メチル)であり得る。
【0101】
R3およびR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって置換または非置換の5員または6員ヘテロシクロアルキルを形成し得る。例えば、R3およびR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって置換または非置換1,3ジオキソランを形成し得る。R3およびR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって置換1,3ジオキソランを形成し得る。1,3ジオキソランは、-C1-C4アルキル(例えば、メチル)、5員もしくは6員シクロアルキル、または5員もしくは6員ヘテロ環式(例えば、フラン)から選択される1個または2個の基によって2位が置換されていてもよい。1,3ジオキソランは、-C1-C4アルキルから選択される1個または2個の基、例えば1個または2個のメチル基によって2位が置換されていてもよい。1,3ジオキソランは、5員または6員シクロアルキルによって2位が置換されていてもよい。1,3ジオキソランは、5員または6員ヘテロ環式、例えば、フランによって2位が置換されていてもよい。。
【0102】
特定の化合物において、R2はHであり、R3はOHであり、R4はHである。
【0103】
特定の化合物において、R2はHであり、R3およびR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって置換または非置換1,3ジオキソランを形成する。
【0104】
特定の化合物において、R2はHであり、R4はC1-C4アルキル(例えば、メチル)である。
【0105】
特定の化合物、R2はHであり、R3はOC(O)R9であり、R4はHであり;場合により、ここで、R9は置換または非置換-C1-C8アルキルである。
【0106】
R5は、Hおよびハロから選択され得る。R5は、H、FおよびClから選択され得る。R5はHであり得る。R5はFであり得る。R5はClであり得る。
【0107】
R6およびR7はそれぞれ、Hであり得る。
【0108】
R8は、Hおよびハロから選択され得る。R8は、H、FおよびClから選択され得る。R8はHであり得る。R8はFであり得る。R8はClであり得る。
【0109】
R10は、Hまたは-C1-C8(例えば、-C1-C4)置換または非置換アルキルから選択され得る。R10はHであり得る。R10は、-C1-C6(例えば、-C1-C4)置換または非置換アルキルであり得る。
【0110】
前記化合物は、
【化11】
およびその薬学的に許容できる塩、立体異性体、酸もしくは溶媒和物から選択され得る。
【0111】
この化合物は、グルコシルセラミダーゼベータ2(GBA2)の基質であり得る。
【0112】
GBA2の基質である化合物は、酵素GBA2の活性によってその糖基が加水分解される。GBA2活性は、1)この化合物の特定の効果がこの酵素の存在および/または活性に依存するかどうかを決定するため、および2)化合物がGBA2によって変換されるかどうかをインビトロで決定するために、それぞれ遺伝学的および薬理学的な2種類のアプローチを用いて決定することができる。
【0113】
1)化合物の特定の効果がGBA2の存在および/または活性に依存するかどうかを決定するために、その効果は、a)遺伝子組み換え培養細胞または動物モデル(例えば、mouse or zebrafish (Yildiz et al., Mutation of beta-glucosidase 2 causes glycolipid storage disease and impaired male fertility. J Clin Invest. 2006 Nov;116(11):2985-94; Lelieveld et al., Role of β-glucosidase 2 in aberrant glycosphingolipid metabolism: model of グルコセレブロシダーゼ deficiency in zebrafish. J Lipid Res. 2019 Nov;60(11):1851-1867))であって、この組み換えの結果としてGBA2欠損であるものにおいて、またはb)GBA2の化学的阻害剤の存在下での培養細胞または動物モデル(e.g. MZ31/ L-ido-AMO-DNM (Wennekes et al., Dual-action lipophilic iminosugar improves glycemic control in obese rodents by reduction of visceral glycosphingolipids and buffering of carbohydrate assimilation. J Med Chem. 2010 Jan 28;53(2):689-98; Marques et al., Reducing GBA2 Activity Ameliorates Neuropathology in Niemann-Pick Type C Mice. PLoS One. 2015 Aug 14;10(8):e0135889))において研究することができる。
【0114】
2)化合物がGBA2によって変換されるかどうかをインビトロで決定するために、Lelieveld et al. (2019), supra; and Marques et al., Glucosylated cholesterol in mammalian cells and tissues: formation and degradation by multiple cellular beta-glucosidases. J Lipid Res. 2016 Mar;57(3):451-63に以前に記載されているプロトコルを使用することができる。簡単に説明すると、GBA2を発現するヒト細胞培養液(例えば、HeLaまたはHEK293T)を成長させる。実験のために、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で収集し、遠心分離して、0.1%(v/v)Triton-X100およびbenzonaseを添加した25mMリン酸カリウム緩衝液(25mM Kpi pH6.5、0.1%Triton-X100、25U/mL benzonase)に再懸濁し、超音波処理で溶解する。細胞ホモジネートを、適切なpHのMcIlvaine緩衝液に化合物を混合し、添加剤(0.1%(v/v)Triton-X100および/または0.2%(w/v)タウロコール酸ナトリウムを添加した150mM McIlvaine pH4またはpH5.2中、1%エタノール、3.75mM 4MU-β-Glc、0.1%(w/v)BSAおよび25μMコレステロールを含む100μL)を添加したものに加える。振盪しながら37℃で1時間インキュベートした後、試料5μLを200μLのSTOP緩衝液(1M グリシン-NaOH、pH10.3)に移す。メタノールおよびクロロホルム(2:1 (v/v))の添加によりタンパク質を沈殿させ、遠心分離後、上清の脂質をBligh-Dyer抽出(MeOH:CHCl3:H2O、1:1:0.9)を用いて抽出し、液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)を用いて測定する。
【0115】
組成物および投与
本発明のさらなる態様によれば、本発明の化合物を含む医薬組成物が提供される。例えば、前記医薬組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。前記組成物は、前記化合物を、少なくとも1つの薬学的に許容できるアジュバント、担体、または希釈剤と混合して提供することができる。前記組成物は、非経口投与、特に非経口全身投与用に製剤化され得る。前記組成物は、非経腸投与用に製剤化され得る。組成物は、注射用(例えば、静脈内注射用または筋肉内注射用)に製剤化され得る。
【0116】
本発明の化合物または組成物は、経口、局所、静脈内、皮下、頬側、直腸、経皮、経鼻、気管、気管支、その他の非経腸経路、経口または経鼻スプレーとして、または吸入を介して投与され得る。好ましくは、化合物または組成物は非経口投与用に製剤化される。化合物は、遊離化合物、または例えば薬学的に許容できる非毒性の有機酸もしくは無機酸もしくは塩基の付加塩として、薬学的に許容できる剤形中の化合物を含む医薬調剤(pharmaceutical preparation)の形態で投与することができる。前記組成物は、処置される障害および患者ならびに投与経路に応じて、様々な用量で投与され得る。
【0117】
非経口投与形態が好ましい場合がある。その理由は、本発明の化合物の糖鎖部分(例えば、単糖または二糖)が、本開示の化合物の残りの部分の活性を隠すことがあるからである。この糖鎖部分は除去されて、活性なアグリコシル化部分を提供する。非経口投与において、この糖鎖の除去は、炎症部位またはその近傍で(例えば、GBA2触媒加水分解を介して)行われ得る。これにより、炎症部位またはその近傍に活性化合物が提供され、炎症部位から離れた場所では通常活性が低下し、特に化合物が全身投与される場合に副作用を軽減できる。化合物が経口投与される場合、糖鎖部分が腸内微生物叢によって加水分解されることがあるため、この利点は低下することがある。
【0118】
従って、本発明の医薬化合物は、治療効果(抗炎症効果または化学療法的効果など)を得るために、宿主に非経腸(本明細書で使用される「非経腸的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、皮下および関節内注射および注入を含む投与様式を意味する)または経口投与され得る。例えば、本発明の医薬化合物は、静脈内注射または点滴により投与され得る。ヒトのような大型動物の場合、本発明の化合物は単独で、または薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤または担体と組み合わせた組成物として投与され得る。
【0119】
本発明の医薬製剤および医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物および投与様式に対して所望の治療反応を達成するのに有効な活性化合物の量を得るように変動させ得る。選択される用量レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、処置される症状の重症度、処置される患者の症状および既往歴に依存する。しかし、化合物の投与を、所望の治療効果を得るために必要な量よりも低いレベルから開始し、所望の効果に達成するまで徐々に用量を増加させることは当業者の技術範囲内である。適当な用量は、一般に0.01~100mg/kg/日の範囲であり、例えば0.1~50mg/kg/日の範囲である。
【0120】
非経腸(例えば静脈内)注射用の本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる無菌水性または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、ならびに使用直前に無菌注射用溶液または分散液に再構成するための無菌粉末を含み得る。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物、植物油(オリーブ油など)、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルがある。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用、分散液の場合の必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。非経口注射用組成物は、本発明の好ましい組成物を示し得る。
【0121】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有し得る。微生物の作用の阻害は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノールまたはフェノールソルビン酸などを含有させることによって確実にすることができる。また、例えば、糖類または塩化ナトリウムのような等張剤を含有させることが望ましい場合もある。吸収を遅延させる剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチン)を含有させることにより、注射用医薬形態の持続的吸収がもたらされる。
【0122】
直腸投与用または膣投与用の組成物は、本発明の化合物を、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬ワックス(室温では固体であるが体温では液体であるため、直腸または膣腔内で融解して活性化合物を放出するもの)などの適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができる坐薬の形態であり得る。
【0123】
本発明の化合物の局所投与用剤形としては、粉末、スプレー、クリーム、フォーム、ゲル、軟膏、吸入剤などがある。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容できる担体および必要とされる防腐剤、緩衝剤または噴射剤と混合される。眼科用製剤、眼軟膏、粉末および溶液もまた、本発明の範囲内であると考えられる。
【0124】
本主題による組成物は、不活性成分を含有し得る。適当な不活性成分は、当該技術分野において周知であり、GoodmanおよびGillman: The Pharmacological Bases of Therapeutics, 13thEd., Brunton et al., Eds. McGraw-Hill Education (2017), and Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1990)のような標準的な教科書に記載されている(両方とも、引用により本明細書に包含される)。
【0125】
本組成物は、本明細書に記載の障害のいずれかの処置における有効性を向上させるために、追加の医薬剤形と組み合わせて使用することができる。この点に関して、本製剤は、これらの障害のいずれかの処置に有効であることが当技術分野で知られているいずれかの他の医薬および/または医薬剤形を追加的に含むレジメンの一部として投与され得る。
【0126】
用途
本発明の化合物は、治療的部分、例えば抗炎症性部分および化学療法的部分の新規な単糖および二糖含有誘導体を示す。したがって、本発明の化合物は炎症および/または癌の処置に有用である。
【0127】
我々は、抗炎症剤または抗癌剤などの治療剤が、単糖または二糖の付加によってプロドラッグに変換され、糖鎖(単糖または二糖)部分と治療的(例えば、抗炎症性または化学療法的)部分を含む化合物を提供できることを確立した。
【0128】
GBA2、例えば、炎症部位またはその近傍に存在するGBA2は糖鎖部分を加水分解し、治療的(例えば抗炎症性または化学療法的)部分の活性アグリコン形態を提供すると考えられている。
【0129】
炎症性症状は、過剰かつ/または非制御的かつ/または慢性的な炎症(本明細書では免疫系の「活動亢進」と総称する)を特徴とする。炎症は、病原体、損傷した細胞または刺激物質などの有害な刺激に対する身体の反応である。免疫系が関与する一般的で非特異的な反応である。熱、痛み、発赤、腫脹および機能喪失の5つが主な徴候である。炎症の機能は、病原体または物質、損傷した細胞や組織を体内から駆逐し、組織の修復を開始することである。しかし、過剰な(慢性であることが多い)炎症は、多くの臨床的問題と関連している。不快になったり、治癒反応の正常な進行を妨げたり遅らせたり、傷害を長引かせたり、様々な疾患をもたらしたりする。これらには、リウマチ性関節炎のような機能的な身体部分に対する異常な免疫反応から生じる自己免疫疾患、枯草熱、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性喘息のような外来の(無害であることが多い)物質に対する過剰な反応から生じるアレルギー、およびCOVID-19および結核のような感染症に関連する炎症が含まれる。
【0130】
免疫系に属する細胞の過剰増殖を特徴とする症状には、白血病(急性リンパ芽球性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML))がある。ALLは、未熟なリンパ球が大量に発生することを特徴とする、血液細胞のリンパ系の癌であり、一方、AMLは、骨髄や血液中に蓄積し、正常な血液細胞の産生を妨げる異常細胞の急速な成長を特徴とする、血液細胞の骨髄系の癌である。
【0131】
さらに、19世紀にはすでに、癌は炎症と関連していると認識されていたことにも注目すべきである(Balkwill et al., Smoldering and polarized inflammation in the initiation and promotion of malignant disease. Cancer Cell. 2005 Mar;7(3):211-7; Mantovani et al., Cancer-related inflammation. Nature. 2008 Jul 24;454(7203):436-44; Multhoff et al., Chronic inflammation in cancer development. Front Immunol. 2012 Jan 12;2:98; Danforth, The Role of Chronic Inflammation in the Development of Breast Cancer. Cancers (Basel). 2021 Aug 3;13(15):3918)。ほとんどの新生物組織の微小環境には、明らかな炎症プロセスとは無関係なものも含めて、炎症性成分が存在する。癌関連炎症(CRI)の主な特徴には、白血球、特に腫瘍関連マクロファージ(TAMs (Kimm et al., Tumor-Associated Macrophages-Implications for Molecular Oncology and Imaging. Biomedicines. 2021 Apr 2;9(4):374)の浸潤が含まれ、これは、GBA2を発現している可能性が高い。したがって、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、GBA2の基質である化学療法剤のグリコシル化プロドラッグ(本明細書に開示された化合物、例えば式IおよびIIの化合物など)は、腫瘍およびその微小環境において標的活性を誘導し、そこで局所的に、より活性の高い(非グリコシル化)形態に変換される。この結果、対応する非グリコシル化化学療法剤の直接投与と比較して、副作用が軽減され得る。
【0132】
本発明の一態様では、医薬品として使用するための、本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用は、炎症部位に提供することが望まれるいずれかの適当な治療的部分を組み込んだ本発明の化合物を利用することができる。好適には、このような適用では、抗炎症性部分または化学療法的部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0133】
GBA2のアップレギュレーションをもたらす炎症および/または炎症性症状は、多くの病態と関連している。本発明および本開示の化合物(例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物)またはそのような化合物を含む医薬組成物は、そのような症状または病理の処置に使用され得る。
【0134】
本発明の化合物は抗炎症剤の送達に適しているが、炎症部位への他の治療的部分の標的送達にも使用され得る。炎症は多くの病理学的プロセスおよび症状に見られるため、広範な治療的部分がこの方法で有用に標的化され得る。
【0135】
炎症は感染と関連することが知られているので、本発明の化合物は治療的部分として抗感染剤を含み得る。このような本発明の化合物は、感染症の処置、および/または炎症に関連する感染症の合併症の処置のための医薬品として使用され得る。
【0136】
痛みは、炎症が関与する多くのプロセスに関連することが知られているので、本発明の化合物は、治療的部分として鎮痛剤を含み得る。このような本発明の化合物は、痛み、特に炎症に伴う痛みを緩和するための医薬品として使用され得る。
【0137】
炎症はまた、過剰または病理学的血管新生が起こる多くのプロセスに関連することが知られている。従って、本発明の化合物は治療的部分として血管新生阻害剤を含み得る。このような本発明の化合物は、過剰な血管形成に関連する症状の処置のための医薬品として使用され得る。単なる例として、このような症状には、癌、乾癬、血管性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症または湿性黄斑変性症など)、および創傷治癒などが含まれる。
【0138】
創傷治癒における炎症の役割は、抗線維化剤を治療的部分として含む本発明の化合物の医療用途に役立つ。このような本発明の化合物は、瘢痕化を阻害するための医薬品として使用され得る。
【0139】
したがって、本発明の化合物に組み込み得る適当な治療的部分は、抗炎症性部分または化学療法的部分に限定されず、単に例として、抗線維化部分、鎮痛性部分、抗血管新生性部分、または抗感染性部分も含み得る。
【0140】
上記で検討した用途のいずれかにおける使用は、患者への化合物または組成物の非経口投与を含み得る。非経口投与は、非経腸投与を含み得る。例えば、非経口投与は注射を含み得る。
【0141】
本発明の一態様では、炎症の処置に使用するための、本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。この態様ではまた、炎症を軽減するために使用するための、本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用では、抗炎症性部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0142】
前記使用は、前記化合物または組成物の患者への非経口投与を含み得る。非経口投与は、非経腸投与を含み得る。例えば、非経口投与は注射を含み得る。
【0143】
本発明の別の態様では、炎症を処置する方法であって、有効量の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を患者に投与(例えば、非経口投与)することを含む、方法が提供される。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用では、抗炎症性部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0144】
関連する態様では、炎症を処置のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用が提供される。
【0145】
本発明の一態様では、免疫系の活動亢進を特徴とする炎症性症状または他の症状の処置に使用するための、本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用では、抗炎症性部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0146】
前記炎症性症状または他の症状は、関節症、骨関節症、痛風、リウマチ性関節炎、他の自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD、クローン病、潰瘍性大腸炎を含む)、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIPD))、感染性疾患(例えば、COVID-19および結核)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎および非アレルギー性鼻炎および副鼻腔炎、腱炎、鼻茸、皮膚症状(例えば、皮疹(rash)、皮膚炎、掻痒、湿疹、皮膚真菌症、(硬化性または紅色)苔癬、および乾癬)、眼疾患(例えば、ブドウ膜炎、結膜炎、黄斑浮腫)、耳炎、甲状腺炎、サルコイドーシス、筋炎、脈管炎、痔核、移植レシピエントにおける臓器拒絶反応および移植片対宿主病から選択され得る。
【0147】
前記炎症性症状または他の症状は、リウマチ性関節炎、他の自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD))、甲状腺炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎および非アレルギー性鼻炎、呼吸器感染症(例えば、COVID-19)、鼻茸、乾癬、湿疹、皮膚炎、眼疾患および移植片対宿主病から選択され得る。前記炎症性症状または他の症状は、リウマチ性関節炎、他の自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD))および甲状腺炎から選択され得る。
【0148】
前記使用は、前記化合物または組成物の患者への非経口投与を含み得る。非経口投与は、非経腸投与を含み得る。例えば、非経口投与は注射を含み得る。
【0149】
本発明の別の態様では、免疫系の活動亢進を特徴とする炎症性症状または他の症状を処置する方法であって、有効量の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を患者に投与(例えば、非経口投与)することを含む、方法が提供される。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。
【0150】
前記炎症性症状または他の症状は、関節症、骨関節症、痛風、リウマチ性関節炎、他の自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD、クローン病、潰瘍性大腸炎を含む)、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIPD))、感染性疾患(例えば、COVID-19および結核)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎および非アレルギー性鼻炎および副鼻腔炎、腱炎、、鼻茸、皮膚症状(例えば、皮疹(rash)、皮膚炎、掻痒、湿疹、皮膚真菌症、(硬化性または紅色)苔癬、および乾癬)、眼疾患(例えば、ブドウ膜炎、結膜炎、黄斑浮腫)、耳炎、甲状腺炎、サルコイドーシス、筋炎、脈管炎、痔核、移植レシピエントにおける臓器拒絶反応および移植片対宿主病から選択され得る。
【0151】
前記炎症性症状または他の症状は、リウマチ性関節炎、他の自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD))、甲状腺炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎および非アレルギー性鼻炎、呼吸器感染症(例えば、COVID-19)、鼻茸、乾癬、湿疹、皮膚炎、眼疾患および移植片対宿主病から選択され得る。前記炎症性症状または他の症状は、リウマチ性関節炎、他の自己免疫障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD))および甲状腺炎から選択され得る。
【0152】
関連する態様では、免疫系の活動亢進を特徴とする炎症性症状または他の症状の処置のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用が提供される。免疫系の活動亢進を特徴とする炎症性症状または他の症状は、上記でさらに定義されているおりである。
【0153】
本発明の一態様では、免疫系に属する細胞の過剰増殖を特徴とする症状の処置に使用するための、本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用では、化学療法的部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0154】
前記症状は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)から選択され得る。
【0155】
前記使用は、前記化合物または前記組成物の患者への非経口投与を含み得る。非経口投与は、非経腸投与を含み得る。例えば、非経口投与は注射を含み得る。
【0156】
本発明の別の態様では、免疫系に属する細胞の過剰増殖を特徴とする症状を処置する方法であって、有効量の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を患者に投与(例えば、非経口投与)することを含む、方法が提供される。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用では、化学療法的部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0157】
前記症状は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)および急性骨髄白血病(AML)から選択され得る。
【0158】
関連する態様では、免疫系に属する細胞の過剰増殖を特徴とする症状を処置するための医薬の製造のための本発明の化合物の使用が提供される。免疫系に属する細胞の過剰増殖を特徴とする症状は、上記でさらに定義されているおりであり得る。
【0159】
本発明の一態様では、癌の処置に使用するための、本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)から選択され得る。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用では、化学療法的部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0160】
前記使用は、前記化合物または前記組成物の患者への非経口投与を含み得る。非経口投与は、非経腸投与を含み得る。例えば、非経口投与は注射を含み得る。
【0161】
本発明の別の態様では、癌を処置する方法であって、有効量の本発明の化合物または本発明の医薬組成物を患者に投与(例えば、非経口投与)することを含む、方法が提供される。癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)から選択され得る。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用では、化学療法的部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0162】
関連する態様では、癌を処置するための医薬の製造のための本発明の化合物の使用が提供される。癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)から選択され得る。前記化合物は、例えば、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。このような適用では、化学療法的部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0163】
本発明の一態様では、本発明の化合物の抗炎症剤としての使用が提供される。その使用は、グルコシルセラミダーゼベータ2(GBA2)を発現する細胞と化合物を接触させることを含む。このような適用では、抗炎症性部分を組み込んだ本発明の化合物が利用され得る。
【0164】
前記使用は、インビトロでの使用であり得る。細胞は組織または臓器中のものであり得る。細胞は細胞培養物中のものであり得る。前記化合物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物であり得る。前記組成物は、式I、式II、式IIIa、式IIIb、式IVa、式IVb、式Va、式Vb、式Vcまたは式Vdのいずれかの化合物を含み得る。
【0165】
アッセイ
本発明の化合物は、当業者に公知であろういずれかの適当なアッセイを用いて生物学的活性を評価することができる。本発明の化合物の評価に有用な例示的アッセイは、以下の段落に提供される。
【0166】
材料および方法
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)は、ゼブラフィッシュモデル生物データベース(https://zfin.org/)のガイドラインに従い、Leiden大学の地域動物福祉委員会の指示に従って飼育し、取り扱った。概日リズム性を維持させるため、成魚を14時間の明期と10時間の暗期のサイクルにさらした。受精は明期の始まりに自然産卵により行った。受精卵を採取し、28℃で卵水(60μg/mlのインスタントオーシャン海塩および0.0025%メチレンブルー)中で飼育した。本研究では以下のゼブラフィッシュ系統を使用した:AB/TL野生型、トランスジェニック系Tg(mpx:GFPi114/mpeg1:mCherryumsF001)(Bernut et al., (2014). Mycobacterium abscessus cording prevents phagocytosis and promotes abscess formation. Proc Natl Acad Sci U S A 111, E943-952; Renshaw et al., (2006). A transgenic zebrafish model of neutrophilic inflammation. Blood 108, 3976-3978)、およびTg(9xGCRE-HSV.UI23:EGFP)ia20(Benato et al., (2014). A living biosensor model to dynamically trace glucocorticoid transcriptional activity during development and adult life in zebrafish. Mol Cell Endocrinol 392, 60-72)、変異系統gba2-/-(Lelieveld et al., (2019). Role of beta-glucosidase 2 in aberrant glycosphingolipid metabolism: model of グルコセレブロシダーゼ deficiency in zebrafish. J Lipid Res 60, 1851-1867)、およびgrs357(Ziv et al., (2013). An affective disorder in zebrafish with mutation of the glucocorticoid receptor. Mol Psychiatry 18, 681-691)。
【0167】
化合物のベクロメタゾン、プレドニゾロン、デキサメサゾン、デキサメサゾン、PPD、Rb1、F2およびミグルスタットはSigma-Aldrich社(Burlington, MA, USA)から購入し、デキサメタゾン-グルクロニド(グルクロン酸抱合デキサメタゾン、GDexと称する)は、Santa Cruz社(Dallas, TX, USA)から購入し、ME656およびMZ31はDr.Hans Aerts(Leiden大学、The Netherlands)が親切に提供した。化合物の21-O-Glc-プレドニゾロン(グルコシド化プレドニゾロン、GPdn)および21-O-Gb-プレドニゾロン(ゲンチオビオシド化プレドニゾロン、GbPdn)は、本明細書の実施例に記載されているようにして合成した。
【0168】
尾びれ切断アッセイ
尾びれ切断実験では、Tg(mpx:GFPi114/mpeg1:mCherryumsF001)系統の受精後3日目(dpf)の幼生を、卵水中0.02%緩衝アミノ安息香酸エチルエステル(トリカイン)で麻酔し、2%アガロースコーティングペトリ皿に置いた。尾はLeica M165C実体顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)下、1mmサファイアブレード(World Precision Instruments)で部分切断した。化学処置(またはビヒクル処置として0.1%DMSO)は切断の2時間前に開始し(前処置)、尾びれ切断後4時間継続した(特に断らない限り、1群20幼生)、その時点で幼生を、4℃で、4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で一晩固定し、更なる検査まで4℃で保存した。いくつかの実験において、ミグルスタット、ME656またはMZ31による24時間の処置を2dpfに開始し、これらの処置は前処置および他の化学物質による処置中も継続した。Tg(mpx:GFPi114/mpeg1:mCherryumsF001)系統の幼生のイメージングには、LAS 3.7ソフトウェアを搭載したLeicaMZ16FA蛍光実体顕微鏡を使用した。好中球はGFP蛍光で検出し、マクロファージはmCherry蛍光で検出した。好中球の数は、あらかじめ決められた領域で、盲検による手動カウントによって測定した。gba2-/-またはgrs357変異体系統の幼生を用いた場合、好中球の標識は、ミエロペルオキシダーゼ(Mpx)陽性細胞を特異的に染色するためのTSAフルオレセイン検出キット(PerkinElmer社)を用い、製造者の指示に従って行った。
【0169】
幼生の体長および尾びれの再生の測定
創傷後の尾びれの再生、または幼生の体長を読み取るために、受精後2時間(hpf)から胚の化学処置を開始し、5dpfまで続けた。この間、溶液は毎日リフレッシュした。5dpfに、幼生をLeicaMZ16FA蛍光実体顕微鏡(LAS 3.7ソフトウエア対応)でイメージングし、ImageJソフトウエアを用いて幼生の体長を測定した(各処置群あたり15頭)。再生実験では、2dpfに尾びれを切断し、5dpfに幼生をイメージングした(各処理群15頭)。新しく成長した組織は古い組織と区別できるため、ImageJソフトウェアを用いて新しく成長した組織の大きさを正確に測定することができる。
【0170】
比色アッセイを用いた全身グルコース測定
2hpfのゼブラフィッシュ胚に、5dpfまで、毎日溶液をリフレッシュしながら、指示通りの化学処置を行った。5dpfに、幼生をエッペンドルフチューブに集め、氷冷したグルコース緩衝液100μLを各試料に加えた。幼生をBulletBlender(登録商標)を用いて8,000rpmで3分間ホモジナイズした。次に、ホモジネートを、4℃で、11000rpmで8分間遠心分離し、上清を-20℃で保存した。グルコース比色アッセイキット(Cayman Chemical社、USA)を用いて、製造元の説明書に従い、全身のグルコース濃度を測定した。各実験において、各処置群について3つの生物学的反復を使用し、比色測定は技術的二重反復を用いて行った。
【0171】
ELISAを用いた全身コルチゾール測定
2hpfのゼブラフィッシュ胚に、96hpfまで、毎日溶液をリフレッシュしながら、指示された化学処置を行った。次に、処置を中止し、胚を5dpfまで、卵水中で培養して、ELISAで使用するコルチゾール抗体の化合物との交差反応性を避けた。次に、処置を中止し、卵水に置き換えた。5dpfに、幼生をエッペンドルフチューブに集め、氷冷したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)100μLを加えた。幼生をBulletBlender(登録商標)を用いて8,000rpmで3分間ホモジナイズした。ホモジネートに酢酸エチルを添加し、上清を一緒にして蒸発させた。リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解した0.2%ウシ血清アルブミン(Sigma Aldrich社)150μlを試料に添加し、凍結させた。ゼブラフィッシュ幼生の全身コルチゾールは、ELISA(Demeditec Diagnostics GmbH, Kiel-Wellsee,Germany)により、製造元の指示に従って測定した。各実験で、各処置群について3つの生物学的反復を使用し、比色測定は技術的二重反復を用いて行った。
【0172】
ゼブラフィッシュレポーター系統におけるGrのトランス活性化活性
Tg(9xGCRE-HSV.UI23:EGFP)ia20ゼブラフィッシュレポーター系統は、9つのGREのアレイを含むプロモーターの制御下で増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現する。Grのトランス活性化活性に及ぼす化学処置の効果を調べるため、1群あたり15匹のゼブラフィッシュ胚(2dpf)を標記化合物で24時間処置した。処置によって誘導されたGrのトランス活性化活性は、LeicaMZ16FA蛍光実体顕微鏡(LAS 3.7ソフトウェア対応)を用いて評価した。幼生のEGFPシグナルの積分強度はImageJソフトウェアを用いて測定した。
【0173】
ゼブラフィッシュにおけるgba2の過剰発現
ゼブラフィッシュにおけるgba2の過剰発現について、CMVプロモーターに融合したゼブラフィッシュgba2遺伝子をコードするcDNAを含むプラスミド(pDEST-zeo-zGBA2 (Lelieveld et al., 2020)を使用した。1細胞期のゼブラフィッシュ胚に、自動化微量注入システムバージョン3 AMS-03(Automated Microinjection System Version 3 AMS-03,Life Science Methods BV)を用いて、ヌクレアーゼを含有しない水で希釈したこのプラスミドを注入した(1nl/卵、最終濃度80pg/卵)。注入後、指示通りの化学処置を行った。
【0174】
定量的PCR(qPCR)分析
ゼブラフィッシュにおける実験では、遺伝子発現を、3dpfの胚を用いて測定した。15匹の幼生の群をTRIzol試薬(Invitrogen)中に集め、mRNAをmiRNeasyミニキット(Qiagen)を用いて、製造元の指示に従って単離した。HeLa細胞における実験では、試料をTRIzol試薬中で6ウェルプレート(80%コンフルエント)から1ウェルずつ採取し、RNeasyミニキットを用いてmRNAを単離した。ゼブラフィッシュおよび細胞試料は、DNA-freeTMキット(Ambion)を用いてDNAseで処置した。cDNA合成は、iScript cDNA合成キット(Bio-Rad)を用いて、1試料あたり1μgのRNAを用いて行った。qPCRについて、10μMの順方向プライマーと10μMの逆方向プライマー、12.5μLのiQ SYBR Green Supermix(Bio-Rad)、および2μLのcDNAをqPCR反応混合物に添加した。各混合物の総容量は25μLであり、これを12.5μLの容量の2つに分割した。qPCR反応はMyiQ-単一色リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad社)を用い、95℃で3分間の初期変性、95.5℃で15秒、60℃で15秒、72℃で30秒といったサイクルを40回行った。各試料についてサイクル閾値(Ct値、すなわち蛍光強度が閾値に達したサイクル数)を決定した。各試料の遺伝子発現レベルは、ゼブラフィッシュ試料ではppial(ペプチジルプロリルイソメラーゼAb(シクロフィリンA))、ヒト細胞では18S rRNAの発現を用いて正規化した。試料あたりの倍率変化(それぞれの対照群と比較)は、ΔΔCt法を用いて算出した。各実験では、各処置群について生物学的三反復を3回行い、反応は二重反復で行った。
【0175】
細胞培養、トランスフェクションおよびshRNA遺伝子ノックダウン
HeLa細胞(ATCCから購入)を、10%子牛胎児血清(FCS)および10%Glutamax(Sigma-Aldrich社)を添加した、フェノールレッドを含まないダルベッコ変法イーグル(DMEM)高グルコース(HG)培地で培養した。細胞は37℃、5% CO2に保持させた。処置の24~48時間前に、細胞を6ウェルプレートに播種し、接着させた。接着後80%コンフルエンスに達した細胞を、標記化学物質(またはビヒクルとして0.01%DMSO)で6時間処置した。
【0176】
HeLa細胞におけるGBA2の過剰発現のために、CMVプロモーターに融合したヒトGBA2遺伝子をコードするcDNAを含むプラスミド(pDEST-zeo-hGBA2(Lelieveld et al, 2020))を約70%コンフルエントのHeLa細胞にトランスフェクトした。このプラスミドをFuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega, Madison, WI, USA)および500μlの無血清DMEMと混合した。この混合物を室温で20分間インキュベートし、補充DMEMで培養したHeLa細胞に添加した。2日後、培地を交換し、指示された化学処置を6時間行った。
【0177】
GBA1およびGBA2をノックダウンさせるために、GBA1およびGBA2に対するshRNAを含むレンチウイルス粒子を作製した。この目的のために、GBA1(TRCN0000029294)およびGBA2(TRCN0000049585)に対するshRNAを含むRNAiコンソーシアムによって開発されたプラスミドを使用した。これらのプラスミドを、30μlのトランスフェクション試薬(Lipo293D)中のパッケージングプラスミド(psPAX2)およびレンチウイルスエンベロープベクター(pMD2.G)と混合した。この混合物を室温で20分間インキュベートし、完全DMEM培地で培養したHEK293T Lenti-X細胞に添加した。6時間後、培地を25mM HEPESを含む完全DMEMに交換した。24時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、培地をHEPESを含む新鮮なDMEMに交換し、48時間後と72時間後にレンチウイルス粒子を収集した。フラスコからの培地を50mlの無菌ファルコンチューブに集め、3,000rpmで7分遠心分離した。上清を0.45μmフィルターで濾過した。滴定を行い、効率的なノックダウンに必要な最適ウイルス量を求めた。これらの実験に基づいて、レンチウイルスのアリコート(2ml)を、10μg/mlのポリブレンを含む3mlの無血清DMEMに加えた。この混合物を、T75フラスコで70~80%コンフルエントの新鮮な血清添加DMEMで培養したHela細胞に加えた。培地は12~16時間後に交換し、48時間後に細胞を6ウェルプレートに播種した。次に、化学処置を指示されている通り6時間行い、細胞を回収してqPCR分析を行い、GBA1およびGBA2のノックダウンを確認した。
【0178】
活性に基づくプローブアッセイ
活性に基づくプローブ(ABP)アッセイを、Lelieveld et al., (2019)によって以前に記載されたようにして実施した。ゼブラフィッシュでの実験では、5dpf幼生(試料あたり10匹)を切断し、切断4時間後に氷上で0.02%トリケインで安楽死させた。余分な水を除去し、50μLのホモジナイズ用緩衝液(25mM KPI、pH6.5、0.1% v/v Triton-X)を添加し、氷上で超音波処理によりホモジナイズし、-20℃で保存した。さらに、炎症部位の酵素活性を測定するため、切断後4時間で幼生を卵黄伸長部より前方の部分と後方の部分に切断し、別々に採取した(1試料あたり30個)。HeLa細胞を用いた実験では、細胞を80~90%コンフルエントにまで成長させ、ビヒクル(0.001%DMSO)またはTNF-α処置を6時間行った。ホモジナイズ用緩衝液(25mM KPI、pH6.5、0.1%v/v Triton-X)を添加し、試料を氷上で超音波処理し、-20℃で保存した。
【0179】
DMSO中のβ-グルコシダーゼプローブ(JJB367-アルキルCy5)をMcIlvaine緩衝液(クエン酸/第二リン酸ナトリウム:100mM/200mM混合物、pH5.8)で希釈し、10μLをタンパク質試料10μlに添加し(1%DMSO中プローブ最終濃度10μM)、37℃で30分間インキュベートした。Laemmli試料緩衝液を添加し(15μL)、試料を95℃で5分間インキュベートした。その後、直ちに12% SDS-PAGEゲル(Bio-Rad Laboratories)にロードした。ゲルは、90Vで約2時間流し、Typhoon FLA 9000 Gel Imager(GE Healthcare社;Cy5(λEX:635nm、λEM:665nm)、750V、ピクセルサイズ100μm)を用いて分析した。タンパク質バンドの強度は、ImageJソフトウェアを用いて定量化した。各実験において、幼生を前部と後部に分けた実験を除き、4つの生物学的反復を使用した。後者の実験では、2つの生物学的反復を使用した。試料の総タンパク質濃度は、Bradfordアッセイキット(Bio-Rad)を用いて定量化し、総タンパク質濃度の標準化を可能にした。
【0180】
酵素活性アッセイ
ゼブラフィッシュ幼生を5dpfに切断し、切断後4時間に氷上で0.02%トリカインで安楽死させ、エッペンドルフチューブに回収した(1試料あたり10匹の幼生)。余分な水分をすべて除去し、50μLのホモジナイズ用緩衝液(25mM KPI、pH6.5、0.1% Triton-X)を添加し、試料を氷上で超音波処理によりホモジナイズし、-20℃で保存した。ホモジネートのうち、12.5μL(幼生約1匹に相当)を、5% DMSOを含む12.5μLのMilli-Q水(GBA1またはGBA2阻害剤を含むものと含まないもの)とともに、氷上で黒色平底96ウェルプレートに加えた。GBA1阻害剤(ME656)溶液は、最終濃度1μMで調製した。GBA2阻害剤(MZ31)は最終濃度100nMで使用した。プレートを37℃で30分間インキュベートして、阻害剤を酵素に結合させた。150mMのMcIlvaine緩衝液(pH5.8)中の4MU(4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルコピラノシド)100μLを添加した。ブランクには、ホモジネート12.5μL、5%DMSO入りMilli-Q 12.5μL、150mM McIlvaine緩衝液(pH5.8)100μLを入れた。プレートを、短時間振盪した後、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、プレートを氷上に置き、200μLのSTOP緩衝液(1M NaOH-グリシン、pH 10.3)を各ウェルに添加した。反応を停止した後、4MU標準物を作製し(10μLの既知の4MU標準物(1nmol)、15μLのKPI緩衝液、100μLの150mM McIlvaine(pH 5.8)、および200μLのSTOP緩衝液)、別のウェルに添加した。その後、4MU標準用のブランク(10μLのMilli-Q、15μLのKPI緩衝液、100μLの150mM McIlvaine(pH 5.8)、および200μLのSTOP緩衝液)を調製し、別のウェルに添加した。次いで、全てのウェル中の蛍光強度を、蛍光スペクトロメーターLS-55(PerkinElmer)を用いて測定した。3つの生物学的反復を使用した。比活性は、以下の式:
【数1】
[式中、Arbs Xは試料の吸光度であり、Arbs ブランクはブランクの吸光度であり、Arbs 4MU stdは4MU標準物の吸光度である](Kallemeijn et al., (2017). Investigations on therapeutic グルコセレブロシダーゼs through paired detection with fluorescent activity-based probes. PLoS One 12, e0170268)を用いて各条件について計算した。得られたタンパク質1mgあたりの酵素活性を標準化するため、Pierce
TM BCAタンパク質アッセイキット(Fisher Scientific社)を用い、製造元の指示に従って総タンパク質濃度を測定した。
【0181】
競合物質結合アッセイ
様々な化合物の相対的なGR結合親和性を測定するために、PolarScreenTMグルココルチコイド受容体競合物質アッセイキット(ThermoFisher社)を製造元の説明書に従って使用した。簡単に説明すると、まず試験化合物をDMSOに溶解して10mM(100x)ストック濃度にし、GR緩衝液(100mMリン酸カリウム(pH7.4)、200mM Na2MoO4、1mM EDTA、20%DMSO)でさらに希釈した。化合物の連続希釈液をCorning(登録商標)の黒色384ウェルプレートに移し、Fluormone GS redTMを添加し、次いで、GR Full Length(貯蔵緩衝液中で部分精製した受容体)を添加した。プレートを、RT、暗所で4時間インキュベートし、CLARIOStar マイクロプレートリーダー(BMG Labtech社)を用いて蛍光偏光を測定した。得られた値は、アッセイ最大値(リガンドなし)および最小対照(10μMデキサメタゾン)に対して正規化し、偏光の相対パーセンテージを決定した。用量反応曲線をフィッティングし、各化合物のIC50s値を算出した。実験は二重に行った。
【0182】
関節炎誘発アッセイ
炎症性疾患の処置における化合物の効果は、マウスのコラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを用いて調べることができる。本方法は、化合物GbPdnについて以下に記載されているが、当業者であれば、どのような関連化合物についても、これを一般化する方法を容易に理解するであろう。
【0183】
雄のBALB/cAnNCrlマウス(±8週齢)をCharles River社から購入した。個々に換気したケージで、特定病原体フリー(SPF)条件下で1ケージあたり4~5匹のマウスを飼育した。本実験は、LUMCの動物福祉団体により審査され、オランダ動物実験法およびEU指令2010/63/EUに従い、ライセンスおよび研究番号AVD11600202115391/PE.15391.01.002の下、動物に関する科学的手続きに関する中央当局から付与されたライセンスの下で実施した。
【0184】
すべてのマウスに、1日目にCAIA-カクテル(Chondrex)1.5mgを静脈内投与し、その後4日目にLPS(Chondrex)50μgを腹腔内(i.p.)注射した。マウスを無作為に6群に分けた。一群あたり5匹のマウスが含まれる25mg/kgのPdn群とGbPdn群を除き、各群に4匹のマウスを含ませた。PdnおよびGbPdnを10%EtOH(ビヒクル)で希釈し、Pdnについては12.5mg/kgおよび25mg/kgの用量を、GbPdnについては12.5mg/kg、25mg/kg、50mg/kgの用量を7日目から15日目まで毎日、i.p.注射で投与した。関節炎は、Jansenら(Jansen DT et al. Abatacept decreases disease activity in a absence of CD4(+) T cells in a collagen-induced arthritis model. Arthritis Res Ther 2015; 17: 220)に記載されているように、5日目から15日目まで毎日スコア化した。スコアは盲検下で割り当てた。血液は、0日目(75μl)、10日目(40μl)、14日目(40μl)および15日目(75μl)に尾静脈サンプリングにより採取した。14日目の採血は6時間の絶食後に行った。15日目にマウスを二酸化炭素で犠牲にし、組織試料を採取して直ちに液体窒素で凍結させた。人道的エンドポイントは、LPS投与日と比較して20%超の体重減少、または関節炎スコアが45点に達したこととした。
【0185】
IL-6濃度は、10日目および15日目に採取した血清で、IL-6マウスELISAキット(Invitrogen)を用い、製造元のプロトコルに従ってELISA法により測定した。インスリン濃度は、14日目に採取した血清で、Ultra-超高感度マウスインスリンELISAキット(Crystal Chem)を用いて、製造元のプロトコルに従って測定した。コルチコステロン濃度は、コルチコステロンHS(高感受性)エンザイムイムノアッセイキット(Immunodiagnostic Systems)を用いて、製造元のプロトコルに従い、15日目に採取した血清中の濃度を測定した。様々なGR標的遺伝子の発現レベルは、15日目に採取した組織試料(TRIzol試薬(ThermoFisher)でホモジナイズ)において、qPCRにより測定した。
【0186】
液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリーによる切断確認アッセイ
化合物から糖類を切断するGBA2の能力は、得られた生成物を評価するために使用される液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリーを用いてゼブラフィッシュにおいて実施される以下のアッセイにより評価することができる。以下の方法では、化合物GPdnを、PdnおよびGPdnの適切な標準物質とともに使用する。この方法は、LC/MS較正曲線を作成するための適切な標準物質を選択することにより、他のグリコシル化化合物にも適応できる。
【0187】
100匹の野生型ゼブラフィッシュ幼生(Gba2阻害剤MZ31の存在下または非存在下)、またはgba2-/-幼生を尾部に創傷を負わせ、5dpfに6時間(創傷前2時間、創傷後4時間)GbPdnで処置した。MZ31で処置した群では、創傷の24時間前にこの化合物を添加した。試料はセルストレーナーで回収し、MilliQ水で3回素早く洗浄して残留した処置液を除去した。洗浄した幼生を、すぐに液体窒素に浸した2mlのエッペンドルフチューブに移した。幼生を一晩凍結乾燥させた後、ガラスビーズ(5mm)を用いて30Hzで2分間ホモジナイズした。粉末化したフチューを1mlの80%メタノールで20分間超音波処理した。混合物を0.22μmのRC膜で濾過した。
【0188】
LC/MSを行うために、ブランク試料(非処置幼生由来)にスパイクした2.5pg/ml、5pg/ml、25pg/ml、100pg/ml、500pg/ml、1000pg/ml、5000pg/mlのプレドニゾロン、21-グルコースプレドニゾロン、21-ゲンチオビオースプレドニゾロンを用いて較正曲線を作成した。化合物を、SCIEX Q-Trap 6500+(Framingham, MA, USA)に接続されたShimadzu LC-30AD(日本)で、Acquity BEH C18カラム(50×2.1mm、1.7μm(Waters、USA))を用いて分析した。以下の3つの移動相を用いて、40℃、流速0.5ml/min、3分間でBを25%で、Cを1%で分離した:(A)0.1%酢酸を含む水、(B)0.1%酢酸を含むACN:メタノール(9:1、v/v)、(C)0.1%酢酸を含むイソプロパノール。多重反応モニタリング(MRM)は、スプレー電圧4.5kV、キャピラリー温度600℃、シースガス50、補助ガス50、カーテンガス40、および衝突エネルギー20Vのポジティブエレクトロスプレーイオン化モードでMS/MS取得に利用した。データはSciex Analystソフトウェア(バージョン1.7、Framingham、MA、USA)を用いて取得し、ピーク積分はSciex OS(バージョン1.4.0、Framingham、MA、USA)を使用した。
【実施例】
【0189】
合成例(実施例1および2)において、使用したすべての試薬は、米国化学会(ACS)グレード以上のものであり、特に明記しない限り、さらなる精製を行うことなく使用した。NMR特性評価は、DMSO-d6を用いたBruker 500(500MHz)を用いて行った。HRMS分析は、30℃のWaters Acquity HSS C18カラム(2.1×100mm、1.8μm)を用い、ダイオードアレイ検出器を備えたShimadzu Nexera X2 UHPLCシステムで行った。以下の溶媒系を流速0.5mL/分で使用した:溶媒A、水中の0.1%ギ酸;溶媒B、アセトニトリル中の0.1%ギ酸。勾配溶出は以下のように行った:1分間で95:5(A/B)、6分間にわたて95:5から15:85(A/B)、1分間に割った手15:85から0:100(A/B)、3分間で0:100(A/B)、次に3分間で95:5(A/B)に戻した。このシステムは、質量カウント1万に達成するよう希釈したAgilentのAPI-TOF参照質量溶液キット(5.0mMプリン、100.0mMトリフルオロ酢酸アンモニウムおよび2.5mMヘキサキス(1H, 1H, 3H-テトラフルオロプロポキシ)ホスファゼン)で内部的にキャリブレーションしたShimadzu 9030 QTOFマススペクトロメーター(ESIイオン化)に接続した。分取HPLCを、Dr.Maisch Reprosil Gold 120 C18カラム(25×250mm、10μm)を備え、XnmでモニタリングするECOMフラッシュUV検出器を備えたBESTA-Technikシステム上で実施した。以下の溶媒系を流速12mL/分で使用した:溶媒A、水/アセトニトリル95/5中の0.1%TFA;溶媒B、/水/アセトニトリル5/95中の0.1%TFA。勾配溶出は以下のように行った:2分間で95:5(A/B)、55分間にわたって95:5から0:100(A/B)、2分間で0:100 (A/B)、その後1分間にわたって95:5(A/B)、次に、2分間で95:5(A/B)に戻した。
【0190】
提供された実施例および反応スキームは、当業者が理解するように、特定のグリコシル化コルチコステロイドの合成を例示するが、これらの方法は、例えば、異なる糖類および/または異なるコルチコステロイドを用いて、他のグリコシル化コルチコステロイドを合成するために一般化することができる。
【0191】
実施例1:21-O-グルコース-プレドニゾロンの合成
【化12】
【0192】
反応スキーム1にしたがって21-O-グルコース-プレドニゾロンを調製した。アルゴン雰囲気下、プレドニゾロン(0.50g、1.39mmol)、銀トリフラート(1.1eq、0.39g、1.53mmol)、グラウンド4Åモレキュラーシーブ(1.2g)を、10mlのDCM中で、室温で1h攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、10mlのDCM中のブロモ-α-D-グルコーステトラアセテート(1.1eq、0.63g、1.53mmol)を1hにわたって一滴ずつ添加した。反応混合物を0℃で1h攪拌した後、氷水浴を除去し、混合物を室温で一晩攪拌した。翌日に、反応混合物をセライトで濾過し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液を濾液に添加した。2.5h後、有機相と水相とを分離した。次に、有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。次に、混合物をシリカカラムに適用し、100%DCMから70:30 DCM/アセトンの勾配で溶出して、後続の脱保護工程に適していると考えられる部分的に精製された状態の中間生成物を得た。次に、過アセチル化グルコース-プレドニゾロンコンジュゲートを3mlの無水メタノールに溶解し、メタノール中の1.5mlの無水クロロホルムおよび0.32mlの25%wtナトリウムメトキシドをアルゴン雰囲気下で一滴ずつ添加した。1h撹拌した後、Dowex 50WX8(H+)樹脂を添加して混合物を中和した。次に、樹脂を濾過により除去し、濾液を減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLCを用いて精製し、凍結乾燥させて、125mgの21-O-Glc-プレドニゾロンを、2段階にわたって17%の収率で、フワフワした白色の粉末として得た。C27H38O10、523,2538について計算した[M+H] +は (HRMS) 523,2538であった。
【0193】
1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 7.32 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 6.16 (dd, J = 10.1, 1.9 Hz, 1H), 5.91 (t, J = 1.6 Hz, 1H), 5.28 (s, 1H), 4.78 (d, J = 18.2 Hz, 1H), 4.59 (s, 1H), 4.34 (d, J = 18.2 Hz, 1H), 4.30 - 4.23 (m, 1H), 4.17 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.69 (dd, J = 11.8, 2.0 Hz, 2H), 3.49 - 3.37 (m, 1H), 3.16 - 3.07 (m, 2H), 3.06 - 2.97 (m, 2H), 2.58 - 2.51 (m, 2H), 2.33 - 2.22 (m, 1H), 2.11 - 1.94 (m, 3H), 1.87 (dd, J = 13.7, 3.6 Hz, 1H), 1.70 - 1.57 (m, 4H), 1.44 - 1.35 (m, 5H), 1.34 - 1.22 (m, 1H), 1.01 (qd, J = 13.2, 4.6 Hz, 1H), 0.89 (dd, J = 11.0, 3.5 Hz, 1H), 0.78 (s, 3H).
【0194】
13C NMR (126 MHz, DMSO) δ 208.53, 185.70, 171.05, 157.26, 127.61, 121.72, 102.41, 89.25, 77.53, 77.19, 73.85, 71.69, 70.53, 69.03, 61.61, 55.85, 51.58, 47.19, 44.31, 40.56, 40.39, 40.23, 40.06, 39.89, 39.73, 39.56, 39.43, 34.50, 33.24, 31.86, 31.51, 24.08, 21.37, 17.45.
【0195】
実施例2:21-O-ゲンチオビオース-プレドニゾロンの合成
【化13】
【0196】
反応スキーム2にしたがって21-O-ゲンチオビオース-プレドニゾロンを調製した。アルゴン雰囲気下、プレドニゾロン(0.50g、1.39mmol)、銀トリフラート(1.1eq、0.39g、1.53mmol)、グラウンド4Åモレキュラーシーブ(1.2g)を、室温で、10mlのDCM中で攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、10mlのDCM中のブロモ-α-D-ゲンチオビオースオクタアセテート(1.1eq、1.10g、1.53mmol)を一滴ずつ1h添加した。反応混合物を0℃で1h撹拌した後、氷水浴を除去し、混合物を室温で一晩攪拌した。翌日に、反応混合物をセライトで濾過し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液を濾液に添加した。2.5h後、有機相と水相とを分離した。次に、有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。混合物をシリカカラムに適用し、100% DCMから70:30 DCM/アセトンの勾配で溶出して、後続の脱保護工程に適していると考えられる部分的に精製された状態の中間生成物を得た。過アセチル化ゲンチオビオース-プレドニゾロンコンジュゲートを3mlの無水メタノールに溶解し、次に、メタノール中の1.5mlの無水クロロホルムおよび0.32mlの25%wtのナトリウムメトキシドをアルゴン雰囲気下で一滴ずつ添加した。1h攪拌した後、Dowex 50WX8(H+)樹脂を添加して、混合物を中和した。次に、樹脂を濾過により除去し、減圧下で濃縮した。残留物を、RP-HPLCを用いて精製し、凍結乾燥されて、2つの工程にわたって23%の収率で、221mgの21-O-ゲンチオビオース-プレドニゾロンをフワフワした白色の粉末として得た。C33H48O15、685,3066ついて計算した[M+H]+は、(HRMS)685,3067であった。
【0197】
1H NMR (500 MHz, DMSO) δ 7.33 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 6.15 (dd, J = 10.0, 1.9 Hz, 1H), 5.91 (t, 1H), 5.24 (s, 1H), 4.83 (d, J = 18.3 Hz, 1H), 4.61 (s, 1H), 4.33 (s, 1H), 4.29 (s, 1H), 4.19 (dd, J = 10.1, 7.8 Hz, 2H), 3.96 (dd, J = 11.5, 1.9 Hz, 1H), 3.66 (dd, J = 11.8, 1.7 Hz, 1H), 3.58 (dd, J = 11.4, 5.9 Hz, 1H), 3.44 (dd, J = 11.6, 5.2 Hz, 1H), 3.34 - 3.27 (m, 1H), 3.18 - 3.10 (m, 3H), 3.08 - 3.01 (m, 3H), 2.99 - 2.94 (m, 1H), 2.56 - 2.51 (m, 2H), 2.32 - 2.25 (m, 1H), 2.07 - 1.97 (m, 2H), 1.86 (dd, J = 13.8, 3.7 Hz, 1H), 1.73 - 1.52 (m, 2H), 1.45 - 1.33 (m, 4H), 1.28 (dd, J = 11.4, 6.3 Hz, 1H), 0.99 (qd, J = 13.1, 4.6 Hz, 1H), 0.88 (m, 1H), 0.78 (s, 3H).
【0198】
13C NMR (126 MHz, DMSO) δ 208.54, 185.75, 171.12, 157.37, 127.58, 122.09, 103.86, 102.78, 89.19, 77.39, 77.22, 77.07, 76.08, 74.00, 73.74, 72.27, 70.56, 70.12, 68.97, 68.74, 61.53, 55.85, 47.28, 47.25, 44.32, 40.51, 40.34, 40.17, 40.00, 39.84, 39.67, 39.50, 39.45, 34.50, 33.36, 31.87, 31.48, 24.05, 21.38, 17.45.
【0199】
実施例3:ジンセノサイド類の抗炎症作用
ジンセノシドがGRの活性化を介して抗炎症効果を有することは、以前に報告されている(He et al., 2020, Ginsenoside Rg1 Acts as a Selective Glucocorticoid Receptor Agonist with Anti-Inflammatory Action without Affecting Tissue Regeneration in Zebrafish Larvae. Cells 9)。この効果をより詳細に研究するために、ゼブラフィッシュ幼生を尾びれを創傷負わせることによって局所的な炎症反応を誘導し(
図1A)、その結果、創傷部位に向かって白血球が移動し、炎症誘発性遺伝子の発現が増加する(Renshaw et al., 2006, Blood 108, 3976-3978; Xie et al., 2019, Dis Model Mech 12)。このモデルを用いて、まず、ジンセノサイドの抗炎症効果がそのグリコシド化パターンに依存するかどうかを調べた。この目的のために、ジンセノサイドのプロトパナキサジオール(PPD)、F2、Rb1を使用した。PPDはグリコシド化されておらず、F2とRb1はステロイド骨格のC-3位とC-20位に2つのグリコン基を有するアグリコンPPDからなる。F2ではこれらのグリコンは単糖のグルコースによって形成され、Rb1では2つのグルコース分子がβ(1->6)結合で結合した二糖のゲンチオビオースによって形成される。陽性対照として、抗炎症性グルココルチコイド薬ベクロメタゾン(Bec)の合成物を使用した。これらの化合物の構造を
図1Bに示す。
【0200】
その結果では、先に示したように、Becは創傷部へ向かう好中球の遊走を減少させ、マクロファージの遊走は影響を受けないことが示された。ジンセノサイドPPD、F2およびRb1は、いずれも好中球の遊走を同様に阻害した(
図1Cおよび
図2)。以前にジンセノサイドRg1について示したように、このジンセノサイドの効果はGrによって媒介され、これは、Grの機能が欠損した変異体系統のゼブラフィッシュ幼生では、好中球の遊走の阻害が消失したからである(Fig.1C)。同様の結果は、炎症誘発性遺伝子の発現を読み取り値として用いた場合にも得られた。Bec、PPD、F2およびRb1は、創傷により誘導されあたil1b、il6およびmmp9の発現増加を強く抑制した(
図1D)。ジンセノサイドの効果はグリコシド化パターンに依存しないようであったので、グリコシド化ジンセノサイドがアグリコン型に代謝されると仮定した。PPDとグリコン基との間のβ-グリコシド結合の加水分解を触媒できる酵素の一クラスにβ-グルコシダーゼがあり、有脊動物には2つのアイソフォームが存在する。グルコセレブロシダーゼ(GBA1)とも称されるリソソーム酸性β-グルコシダーゼは、この酵素の欠損により、グルコシルセラミド含有組織マクロファージの蓄積を特徴とする、ヒトで最も一般的なリソソーム貯蔵障害であるゴーシェ病が発症することから、よく研究されている。さらに、非ライソゾームのグルコシルセラミダーゼ(GBA2)も存在し、これはGBA1とは構造的に関連しておらず、細胞表面の近傍に位置し、人工基質や阻害剤に対する特異性など酵素的特徴が異なる。
【0201】
ジンセノサイドの抗炎症効果におけるGba1およびGba2酵素の役割を、非特異的化学的GBA阻害剤ミグルスタット、特異的GBA1およびGBA2阻害剤それぞれME656およびMZ31を用いてゼブラフィッシュで試験した。ミグルスタットおよびMZ31の存在下では、F2およびRb1による好中球の遊走の減少は消失したが、これらの阻害剤はPPDの作用には影響しなかった(
図1E、G)。しかし、ME656で処置しても、どのジンセノサイドの効果も変化しなかったことから(
図1F)、この効果はGba2特異的であることが示された。グリコシド化ジンセノサイドのGba2効果への依存性を確認するために、Gba2欠損変異系統を使用した。この系統の幼生では、F2およびRb1は好中球の遊走に影響を与えなかったが、PPDは好中球の遊走に影響を与えた(
図1H)。これらのデータを総合すると、グリコシド化ジンセノサイドの効果は、GBA1ではなく、これらの化合物を加水分解してアグリコン型にするGBA2がに依存していることが示唆される。
【0202】
実施例4:伝統的なグルココルチコイド薬と比較した、副作用に対する配糖体化ジンセノサイドの効果
他のジンセノシドについても、同様に低レベルの副作用および可能性のある副作用が、ジンセノシドのグリコシド化パターンに依存するかどうかを決定するために検討した。この目的のために、ゼブラフィッシュ胚をBec、PPD、F2およびRb1で処置し、グルコースおよびコルチゾールレベル、幼生の長さおよび創傷時の組織再生に及ぼす影響をモニターしたが、これは臨床で観察されたいくつかのよく知られているグルココルチコイド副作用のプロキシと考えることができる。抗炎症性グルココルチコイド薬Becを陽性対照として使用したところ、実際にグルコースレベルの上昇(
図3A)、コルチゾールレベルの低下(
図3C)、幼生の長さ(
図3E)および組織再生(
図3F、G)が誘導された。アグリコン型ジンセノサイドPPDはグルコースレベルに影響しなかったが(
図3A)、コルチゾール濃度(
図3C)、幼生の長さ(
図3E)および再生(
図3F、G)を減少させた。興味深いことに、グリコシド化ジンセノサイドF2およびRb1は、グルコースに対してもいかなる効果も示さなかったが(
図3A)、コルチゾール濃度(
図3C)、幼生の長さ(
図3E)または組織再生(
図3F、G)にも影響を及ぼさなかった。創傷時に、グリコシド化ジンセノサイドRb1およびF2は、コルチゾールおよび組織再生に対してわずかな効果を示し、これは、化学GBA2阻害剤MZ31(
図3D、F、H)を用いて実証されたように、GBA2依存性であり、これは、創傷がGba2の活性を増加させ、次いで、Rb1およびF2を加水分解することを示唆し得る。
【0203】
残された疑問は、PPDがグルコースレベルに影響を与えないのに対し、他のすべての測定値ではBecと同様の(場合によってはより小さな)影響を示すのはなぜか、ということである。グルココルチコイドによって誘導されるグルコース濃度の上昇は、もっぱらGRのトランス活性化活性に依存することはよく知られているので、PPDのGrへの結合はこのトランス活性化活性を誘導しないという仮説を立てた。この仮説を検証するために、GRE含有プロモーターにGFP遺伝子を融合させたレポーター魚の系統を使用した。この系統の幼生をBecで処置すると、幼生の体全体でGFPシグナルが大きく増加したが、PPD(F2およびRb1も同様)では蛍光強度の増加は起こらなかった(
図3G、I)。さらに、PPDは、Gr、fkbp5、pck1(コルチゾール濃度のグルココルチコイド誘導による増加に重要な役割を果たす)、およびnfkbiaaのトランス活性化活性の周知の標的遺伝子の発現を増加させず(
図4B)、PPDがGRのトランス活性化活性を誘導しないことを確認した。
【0204】
これは、Grのトランス活性化活性が誘導されないため、比較的小さいPPDの副作用が、アグリコン型ジンセノサイドのグリコシド化により消失することを示している。炎症反応に対するジンセノサイドの観察された効果と合わせて、これらの結果は、ジンセノサイドのグリコシド化がこれらの化合物を不活性化し、活性が炎症組織で特異的に増加する酵素GBA2による加水分解を介して活性なアグリコン型に変換できることを示唆する。
【0205】
実施例5:GBA2の存在量および活性は炎症部位で局所的に増加する
GBA2活性が炎症組織で増加するかどうかを試験するために、ゼブラフィッシュ幼生の尾びれに創傷を負わせ、gba1およびgba2 mRNA濃度、GBA1およびGBA2タンパク質レベル、およびGBA2活性レベルを測定した。結果では、ゼブラフィッシュ幼生において、創傷がgba2 mRNAレベル(
図5A)、Gba2タンパク質レベル(
図5Bおよび6A)、およびGba2酵素活性(
図5Dおよび6C)を増加させることが示された。この増加が創傷部位の炎症組織に限定されるかどうかを調べるために、幼生を前部と後部(後者は創傷部位を含む)に分けた。GBA2タンパク質レベルの創傷誘導による増加は体の後部でのみ観察され、前部では観察されなかった(
図5Cおよび6B)。gba1 mRNA(
図5A)およびGBA1タンパク質レベル(
図5Bおよび6A)に創傷の影響は観察されなかった。これらのデータでは、GBA2の濃度と活性が炎症部位で特異的に増加することを示している。
【0206】
実施例6:デキサメタゾンのグルクロン酸抱合が抗炎症活性および副作用に対する効果
ジンセノサイドPPDのグリコシド化はその副作用を消失させたことから、デキサメタゾンなどの合成グルココルチコイド薬へのグリコン基のコンジュゲーションにより、副作用を軽減する新規グルココルチコイド薬を開発できるのではないかと考えた。デキサメタゾン(すなわち、C21位にグルコロン酸がコンジュゲートしたデキサメタゾン)のグルクロン酸抱合形態であって、C21位にβ-グリコシド結合を介してグルコース基がコンジュゲートしたもの(GDex)が市販されている。この化合物は、腸内微生物叢由来のβ-グルコシダーゼによる化合物の加水分解に基づく、炎症性腸疾患に対する薬として開発されている。まず、我々のゼブラフィッシュ尾びれ創傷モデルを用いて、GDexの抗炎症効果を測定した。その結果、GDexはBecやDexと同様に好中球の遊走を抑制したが、マクロファージの遊走には影響を及ぼさなかった(
図7A)。Bec、DexおよびGDexによる好中球の遊走の阻害は、gr変異系統の幼生では見られなかったことから、これらの化合物の効果がGrによって媒介されていることが示された。さらに、創傷によって誘導された炎症性遺伝子il1b、il6、mmp9、mmp13の発現増加は、GDexによって強く減少し、この効果はDex処理後に観察された減少と同様であった(
図7C)。GDexの副作用の可能性を調べるため、Bec、DexおよびGDexで処置した後のグルコースおよびコルチゾールのレベル、幼生の長さを測定した。DexはBecと同様にグルコース濃度を上昇させ、コルチゾールレベルと幼生の長さを減少させたが、GDexはコルチゾールレベルのごくわずかな減少しか示さなかった(
図7D、E、F)。さらに、GDexはグリコシド化ジンセノサイドと同様に、Grのトランス活性化活性を誘導しなかったが、GRE:GFPレポーターフィッシュラ系統(
図7G)とGr遺伝子fkbp5、pck1、nfkbiaaの発現レベル(
図7H)を用いて示したように、BecおよびDexはGrのトランス活性化活性を誘導した。これらのデータは、GDexがグリコシド化ジンセノサイドRb1およびF2と同様に効果することを示しており、これはGDexが炎症組織の外側では不活性であり、これらの炎症部位では活性であることを意味する。
【0207】
実施例7:抗炎症活性および副作用に対するプレドニゾロンのグリコシド化の効果
グルココルチコイド薬であるプレドニソロン(Pdn)の同様な修飾が副作用の同じ減少をもたらすかどうかを調べるために、グルコース基がPdnのC-21位にコンジュゲートしたプレドニソロン(GPdn)からグルコシド化化合物を合成した。ゼブラフィッシュの尾びれ創傷モデルを用いて、GPdnが好中球の遊走を阻害することを示した(
図8A)。GDexと同様に、GPdnはグルコースレベルを増加させず(一方、Bec、DexおよびPdnは増加させた(
図8B))、コルチゾール濃度をわずかに減少させた(一方、Bec、DexおよびPdnは有意に大きな減少を引き起こした(
図8D))。創傷条件下では、GPdnは非創傷幼生に比べてグルコース濃度のわずかな増加(この効果はPdnの効果よりもかなり小さいが(
図8C))とコルチゾール濃度の大きな減少(この効果もPdnの効果より小さい(
図8E))を引き起こした。創傷後に観察されたこれらの付加的副作用はMZ31による処置で減少したことから、これら効果が創傷部位でのGPdnからPdnへのGBA2介在変換に依存することを示唆している。
【0208】
興味深いことに、GDexおよびGPdnによる好中球の遊走の阻害は、グリコシド化ジンセノサイドの効果とは異なり、GBA2阻害剤MZ31を用いて示されたように、GBA2活性とは無関係である(
図8A)。このことは、PPDのように、非切断型でもGrと結合し、好中球の遊走を減少させるのに十分な活性化が可能であることを示唆している。従って、グルココルチコイドを不活性化するには、単一の単糖のコンジュゲーションでは不十分であり、より大きな、より嵩高い修飾が必要であると立証できる。そこでわれわれはプレドニゾロンのC-21位に二糖ゲンチオビオースを形成させた第二のグリコシド化形態を合成した。Pdn、GPdnおよびこのゲンチオビオシド化プレドニゾロン(GbPdn)の構造を
図9Aに示す。ゼブラフィッシュ幼生をGbPdnで処置すると、尾びれの創傷後に好中球の遊走が減少し(
図9B)、炎症誘発性遺伝子il1b、il6およびil8の発現が抑制され(
図9C)、これらの効果は、PdnおよびGPdn処置時に観察された効果と同様であった(
図9B、C)。GPdnではなくGbPdnの好中球の遊走に対する効果は、MZ31によって消失し、このことは、GbPdnが不活性分子であり、GBA2による加水分解を介して嵩高いゲンチオビオース基を除去する必要があることを示唆している。
【0209】
さらに、GbPdnはグルコース濃度またはコルチゾール濃度に影響を与えず(
図9B、D)、幼生の長さにも影響を与えなかった(
図10A)。尾びれの再生にはわずかな効果が観察された。この効果はPdnよりも有意に小さく、MZ31を用いて示されたように、Gba2活性に依存していた(
図10D)。創傷条件下では、GPdnおよびGbPdnの両方ともグルコースレベルの上昇(
図9B)およびコルチゾール濃度の低下(
図9D)を誘導したが、これはおそらくGBA2活性が上昇した結果であろう。GRE:GFPレポーターのゼブラフィッシュ系統を用いて、GPdnもGbPdnもGrのトランス活性化活性を誘導しないこと示し(
図10E、G)、Grの標的遺伝子fkbp5、pck1およびnfkbiaaの発現を調べたところ、この効果の欠如が確認された(
図10H)。明らかに、単糖のコンジュゲーションは、Grのトランス活性化活性を誘導するPdnの能力を消失させ、このモデルにおけるほとんどすべてのグルココルチコイド副作用を消失させるのに十分である。
【0210】
炎症組織外でのGBA2活性の欠如が、グリコシド化グルココルチコイドの副作用の欠如の原因であるかどうかを証明するために、構成的に活性なCMVプロモーターによって駆動されるgba2 cDNAを含むプラスミドをゼブラフィッシュ幼生の体内に注射することにより、GBA2を過剰発現させた。過剰発現はqPCR分析によって確認したところ、gba2 mRNA濃度の劇的な増加が示された(
図10B)。Gba2を全身に過剰発現させると、Pdn、GPdnおよびGbPdnは、グルコースとコルチゾールの濃度、およびトランス活性化に対して同様の有害効果が示された。後者の効果は、GRE:GFPレポーター系統を用い(
図10F、G)、Gr標的遺伝子fkbp5、pck1およびnfkbiaaの発現を調べることによって実証された(
図10I)。これらのデータは、体内のほとんどにGBAa2活性が存在しないため、グリコシド化グルココルチコイドは体に害を与えない不活性なグリコシド化状態のままであることを示している。
【0211】
実施例8:インビトロでのヒト細胞におけるGR活性化の検討
ヒトGRに対するDex、Pdn、GPdnおよびGbPdnのインビトロでの結合を、競合リガンド結合アッセイを用いて調べた。その結果、BecおよびPdnは、同様の結合親和性(それぞれ、約4.8および約12nMのIC50)を有することが示された。Pdnの親和性はわずかに低かったが(IC50約350nM)、GbPdnの親和性は劇的に低かった(IC50約17mM)(
図11A)。明らかに、Pdnのグルコシル化はリガンドの結合親和性を約30倍低下させ、ゲンチオビオシル化は親和性を約1400倍低下させる。HeLa細胞培養液を用いて、Pdn、GPdnおよびGbPdn投与後のGRの核への移行を測定した。PdnおよびGPdnで処置した後、核移行が最大であり、GbPdnではビヒクル処置に比べて移行レベルがわずかに上昇しただけであったことが観察された(
図11B、12A)。これらのデータは、二糖のコンジュゲーションがステロイドの不活性化の程度を大きくするから、プロドラッグを設計する場合には、ゲンチオビオシル化がグルコシル化よりも好ましいことを示している。興味深いことに、炎症誘発性サイトカインTNF-αとの共処置により、GbPdnはPdnおよびGPdnと同様に完全なトランスロケーションを引き起こし、この効果はMZ31処置で消失したため、GBA2の活性に依存していた(
図11B)。
【0212】
ヒト細胞におけるGPdnおよびGbPdnの抗炎症効果を研究するために、HeLa細胞をTNF-αで処置した。この処置により、炎症誘発性遺伝子IL1B(
図11C)、IL8(
図11D)およびMMP13(
図12B)の発現が誘導されたが、これは3つの遺伝子すべてはPdnによって強く抑制された。GPdnおよびGbPdnはこれら遺伝子の発現におけるTNF-αが誘導した増加を同様に抑制した。GbPdnではIL1BおよびIL8の抑制はGBA2の活性に依存し、このことは、その効果がMZ31処理で減少したからである。これらの結果は、ゼブラフィッシュで観察した、GbPdnの抗炎症効果のGBA2依存性と一致する。
【0213】
HeLa細胞におけるGRのトランス活性化活性を検討するたに、GRの標的遺伝子であるFKBP5およびNFKBIA、GILZおよびSGK1の発現レベルを測定した。Pdnはこれらの遺伝子の発現を強く増加させたが、GPdnおよびGbPdnはこれらの遺伝子の発現レベルを増加させなかったか、わずかに増加させただけであった(
図11E、F、12C、D)。TNF-α処置は、GPdn処置細胞ではこれらの遺伝子の発現をほとんど変化させなかったが、GbPdn処置細胞ではこれらの遺伝子の発現を増加させ、この効果はGba2依存的であり、MZ31によって強く減少した(
図11E、F、12C、D)。GBA2のこの役割は、GBA1またはGBA2のレンチウイルス介在shRNAノックダウンを用いた実験で確認された。GBA1のノックダウンではなく、GBA2のノックダウンは、TNF-αによって誘導されたFKBP5およびNFKBIAの発現増加を抑制した(
図11G、12E)。最後に、CMV:GBA2 DNAコンストラクトを含むプラスミドをHeLa細胞にトランスフェクションすることで、GBA2を過剰発現させた。これらのGBA2過剰発現細胞において、Pdn、GPdnおよびGbPdnは同様にFKBP5およびNFKBIAの発現レベルを増加させた。これらのデータは、TNF-αがGBA2の活性を増加させ、GbPdnで処置すると遺伝子のトランスアクチベーションを増加させるが、GPdn処置後は非常に控えめな効果しかないことを示している。
【0214】
実施例9:コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)マウスの実験
炎症性疾患の哺乳類モデルにおけるGbPdnの効果を検討するために、上記の「アッセイ」のセクションに記載の誘導関節炎アッセイを実施した。マウスのコラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)モデルを用い、1日目にコラーゲンに対する抗体のカクテルを注射し、4日目にLPSを注射することにより関節炎を誘発した(
図13)。その後、ビヒクル、Pdn(12.5mg/kgまたは25mg/kg)またはGbPdn(12.5mg/kg、25mg/kgまたは50mg/kg)で毎日マウスを処置した。関節炎スコアは5日目から15日目まで毎日測定した。ビヒクル処置マウスは高い関節炎スコア(約15)に達し、これらのレベルは14日目まで安定していた(Fig.14A)。一方、PdnおよびGbPdn処置マウス群では、スコアが処置開始後急速に低下した。Pdn処置群は実験11日目に最大の減少(スコアは約0)を示したが、GbPdnの12.5mg/kg、25mg/kg、50mg/kg処置群ではそれぞれ15日目、14日目、13日目に最大の効果を示した(Fig.14A)。
【0215】
これらの動物における炎症反応の第二の指標として、10日目と15日目に血清IL-6濃度を測定した。この実験の結果、ビヒクル群と比較して、すべての処置群でIL-6レベルの有意な減少が認められたが、12.5mg/kgのGbPdn処置群では、PdnまたはGbPdnで処置した他の群と比較して、IL-6濃度がわずかに高かった(
図14B)。15日目には、PdnまたはGbPdnで処置した全群の血清でIL-6濃度は検出されなかった(12.5mg/kgのGbPdn群で2匹(4匹中)のマウスで非常に低い濃度が検出されたことを除く)。まとめると、これらのデータは、GbPdnがPdnと比較して活性の遅延のみを示す非常に有効な抗炎症薬であることを示す。
【0216】
GbPdnが関節炎マウスに副作用を引き起こすかどうかを調べるため、グルココルチコイドの副作用のバイオマーカーである血清インスリンレベルおよびコルチコステロンレベル(それぞれ14日目と15日目)に対する処置の効果を調べた。データでは、Pdn処置ではインシュリンレベルを有意に増加させたが、GbPdn処置ではインシュリン濃度を変化させなかったことを実証された(
図14C)。加えて、Pdnはコルチコステロンレベルを強く抑制したが、GbPdnはコルチコステロンレベルに影響を与えなかった(
図14D)。これらのデータは、化合物が炎症部位でのみ活性化されるという仮定と一致しており、GbPdnはこの動物モデルにおいていかなる副作用も誘発しないことを示している。
【0217】
最後に、いくつかのGR標的遺伝子のmRNAレベル(qPCRを用いて)を、肝臓および筋肉組織、および後肢足関節の組織で調べた。データでは、肝臓組織ではFkbp5、Pck1およびGilzのmRNAレベル(
図14E)、筋肉組織ではRedde1、Foxo3およびKlf15のmRNAレベル(
図14F)、関節ではGilzおよびFkbp5のmRNAレベル(
図14G)がPdn処置により上昇したことが示された。興味深いことに、GbPdn処置により肝臓または筋肉組織において検討したGR標的遺伝子の発現には影響を与えなかった。しかし、関節におけるGilzおよびFkbp5のmRNAレベルはGbPdn処置群で上昇し、このことは、この組織における炎症がGbPdnのPdnへの局所的変換を引き起こし、それに続くGRの活性化を引き起こしたことを示唆している。
【0218】
実施例10:ゲンチオビオース切断のマススペクトロメトリーによる確認
GbPdnがGba2によって一段階でPdnに変換されるのか、あるいは2つのグルコース基が独立して切断されるのかを調べるために、上記の「アッセイ」のセクションに記載の液体クロマトグラフィー/質量分析法による切断確認アッセイを実施した。25μMのGbPdnで6時間(創傷前2時間と創傷後4時間)処置した後、創傷したゼブラフィッシュ幼生と創傷していないゼブラフィッシュ幼生で、GbPdn、Pdn、および中間代謝物の可能性があるグルコース-プレドニゾロン(GPdn)の濃度レベルを測定した。この実験は、MZ31の存在下または非存在下の野生型ゼブラフィッシュと、gba2-/-系統の幼生で行った。この実験の結果、GbPdnは主にPdnに変換され、これは創傷幼生でのみ観察された(
図15A)。興味深いことに、創傷した幼虫におけるGBPdnのPdnへの高い変換率は、MZ31の存在下ではほとんど消失し(
図15A)、創傷したgba2-/-幼虫では観察されなかった(
図15B)。これらの結果は、この変換が炎症によって誘導されたGba2活性に依存していることを示している。注目すべきことに、非常に低濃度のGPdnが全ての処置群(
図15A、B)で検出され、このことは、GbPdnがほとんどGPdnに変換されないが、Gba2がGbPdnから全ゲンチオビオース基を一段階で除去することを示している。
【国際調査報告】