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特表2024-542066非地上系ネットワークにおける共通タイミングアドバンスの決定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】非地上系ネットワークにおける共通タイミングアドバンスの決定
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20241106BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20241106BHJP
   H04W 48/08 20090101ALI20241106BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20241106BHJP
【FI】
H04W56/00 130
H04W84/06
H04W48/08
H04W16/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525996
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2022079539
(87)【国際公開番号】W WO2023078709
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21206801.9
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレナー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀俊
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA42
5K067EE02
5K067EE07
5K067EE10
(57)【要約】
本開示は、ネットワークノードおよびユーザデバイス、ならびに、非地上系ネットワークの共通タイミングアドバンス成分を決定するためにネットワークノード、ユーザデバイス、または集積回路において実行するための方法、に関する。特に、有効区間について、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数が決定され、近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。係数は、ネットワークノードからユーザデバイスに提供され、タイミングアドバンスを近似するために使用される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークノードであって、
処理回路であって、動作中に、
有効区間において、近似誤差を最小化するように、前記ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数を決定し、
前記近似誤差が、基準時間インスタンスに対する前記有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される、
処理回路と、
動作中に、前記係数を送信する送受信機と、
を備える、ネットワークノード。
【請求項2】
前記多項式p(t)が、以下の形式を有し、
【数23】
ここで、c,...,cが前記多項式の前記係数であり、nが、前記多項式の事前定義された正の整数次数であり、trefが基準時間インスタンスである、
請求項1に記載のネットワークノード。
【請求項3】
前記処理回路が、動作中に、前記近似誤差の符号が前記複数の時間インスタンスにおいて交互に変化することを強制することにより、前記多項式の前記係数を決定する、請求項1または請求項2に記載のネットワークノード。
【請求項4】
前記処理回路が、動作中に、以下を解くことによって前記多項式の前記係数を決定し、
【数24】
ここで、p(t)が、時間インスタンスtにおける前記多項式であり、iが、等距離にある前記複数の時間インスタンスのうちの前記時間インスタンスの整数インデックスであり、Eが前記近似誤差の値であり、前記近似誤差が-Eと+Eの間で振動し、NTA,common(t)が、時間インスタンスtにおける前記ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンスであって、前記ネットワークノードの位置および前記衛星の位置に基づいて前記ネットワークノードによって決定され、
前記複数の時間インスタンスにおける前記時間インスタンスtの数が、前記多項式の次数よりも大きい、
請求項3に記載のネットワークノード。
【請求項5】
前記解くことから得られる前記係数が、Remezアルゴリズムに従って1回以上の反復を適用することにより修正される、請求項4に記載のネットワークノード。
【請求項6】
前記送受信機が、動作中に、前記基準時間インスタンスの指示を送信する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のネットワークノード。
【請求項7】
前記送受信機が、動作中に、前記係数、および/または、前記基準時間インスタンスの指示、および/または、前記有効区間の指示を、システム情報の中で送信する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のネットワークノード。
【請求項8】
前記処理回路が、動作中に、
前記システム情報の前記送信のタイミングに基づいて、および/または
- 前記システム情報が送信されるシステム情報ウィンドウの開始点、
- 前記システム情報が送信されるフレームのシステムフレーム番号の開始点、
- 前記システム情報が送信されるフレームの開始点、
- システム情報のタイミングと、基準時間インスタンスに対する事前定義されたオフセット、
のうちの少なくとも1つに基づいて、
前記基準時間インスタンスを決定する、
請求項7に記載のネットワークノード。
【請求項9】
前記有効区間が、システム情報期間に対応し、
前記システム情報期間が、前記係数が決定されて前記システム情報内で送信される期間である、
請求項7または請求項8に記載のネットワークノード。
【請求項10】
前記係数を決定した後、前記決定された係数と前記基準時間インスタンスの前記指示とを含むシステム情報の複数の繰り返しが、前記有効区間中に送信される、
請求項7または請求項8に記載のネットワークノード。
【請求項11】
前記有効区間が、システム情報期間よりも長く、
前記システム情報期間が、前記係数が決定されて前記基準時間インスタンスの前記指示とともに前記システム情報内で送信される期間である、
請求項7または請求項8に記載のネットワークノード。
【請求項12】
前記システム情報が、第1の有効区間について決定された係数と、前記第1の有効区間とは異なる長さおよび/または基準時間インスタンスを有する第2の有効区間について決定された係数とを含む。
請求項7または請求項8に記載のネットワークノード。
【請求項13】
ユーザデバイスであって、
動作中に、ネットワークノードから多項式の係数を受信する送受信機と、
処理回路であって、動作中に、
前記多項式に基づいて、衛星を介して前記ネットワークノードにデータを送信するための、有効区間に対するタイミングアドバンスを決定し、前記多項式が、近似誤差を最小化するように、前記ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似し、前記近似誤差が、基準時間インスタンスに対する前記有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される、
処理回路と、
を備え、
前記送受信機が、動作中に、前記決定されたタイミングアドバンスを使用して前記データを送信する、
ユーザデバイス。
【請求項14】
前記送受信機が、動作中に、前記基準時間インスタンスの指示を受信する、
請求項13に記載のユーザデバイス。
【請求項15】
前記送受信機が、動作中に、前記係数、および/または、前記基準時間インスタンスの指示、および/または、前記有効区間の指示を、システム情報内で受信する、請求項13に記載のユーザデバイス。
【請求項16】
前記処理回路が、動作中に、前記システム情報の送信のタイミングに基づいて前記基準時間インスタンスを決定する、請求項13に記載のユーザデバイス。
【請求項17】
前記処理回路が、動作中に、
- 前記システム情報が送信されるシステム情報ウィンドウの開始点、
- 前記システム情報が送信されるフレームのシステムフレーム番号の開始点、
- 前記システム情報が送信されるフレームの開始点、
- システム情報のタイミングと、前記基準時間インスタンスに対する事前定義されたオフセット、
のうちの少なくとも1つに基づいて、前記基準時間インスタンスを決定する、
請求項16に記載のユーザデバイス。
【請求項18】
前記有効区間が、前記システム情報期間に対応し、
前記システム情報期間が、前記係数が決定されて前記システム情報内で送信される期間である、
請求項13から請求項17のいずれか1項に記載のユーザデバイス。
【請求項19】
前記処理回路が、動作中に、
前記ユーザデバイスが接続状態にある場合、前記送受信機を制御して、前記有効区間に対応する期間を有するシステム情報を受信し、
前記ユーザデバイスがアイドルモードにある場合、前記送受信機を制御して、前記有効区間中に送信されるシステム情報の複数の繰り返しのうちの1つにおいて、前記基準時間インスタンスの指示とともにシステム情報を受信する、
請求項13から請求項17のいずれか1項に記載のユーザデバイス。
【請求項20】
前記有効区間が、前記システム情報期間よりも長く、
前記システム情報期間が、前記係数が更新され、前記基準時間インスタンスの指示とともに前記システム情報内で送信される期間である、
請求項13から請求項17のいずれか1項に記載のユーザデバイス。
【請求項21】
前記システム情報が、第1の有効区間に対して決定された係数と、前記第1の有効区間とは異なる長さおよび/または前記基準時間インスタンスを有する第2の有効区間に対して決定された係数とを含み、
前記処理回路が、動作中に、前記第1の有効区間および/または前記第2の有効区間が満了するまでの時間に基づいて、前記第1の有効区間に対して決定された係数を適用するか、前記第2の有効区間に対して決定された係数を適用するかを決定する、
請求項13から請求項20のいずれか1項に記載のユーザデバイス。
【請求項22】
前記基準時刻が、前記システム情報の受信時刻と、前記衛星と前記ユーザデバイスとの間のサービスリンク遅延とに基づいて決定される、請求項13から請求項21のいずれか1項に記載のユーザデバイス。
【請求項23】
ネットワークノードによって実行される方法であって、
有効区間について、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数を決定するステップであって、
前記近似誤差が、基準時間インスタンスに対する前記有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される、決定するステップと、
前記係数を送信するステップと、
を含む、方法。
【請求項24】
ユーザデバイスによって実行される方法であって、
ネットワークノードから多項式の係数を受信するステップと、
前記多項式に基づいて、衛星を介して前記ネットワークノードにデータを送信するための、有効区間に対するタイミングアドバンスを決定するステップであって、前記多項式が、近似誤差を最小化するように、前記ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似し、前記近似誤差が、基準時間インスタンスに対する前記有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される、決定するステップと、
前記決定されたタイミングアドバンスを使用してデータを送信するステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
ネットワークノードを制御するように構成された集積回路(IC)であって、動作中に、
有効区間について、近似誤差を最小化するように、前記ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数を決定し、
前記近似誤差が、基準時間インスタンスに対する前記有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定され、
前記ICが、前記決定された係数が提供される出力をさらに備える、
集積回路(IC)。
【請求項26】
ユーザデバイスを制御するように構成された集積回路(IC)であって、動作中に、
多項式に基づいて、衛星を介してネットワークノードにデータを送信するための、有効区間に対するタイミングアドバンスを決定し、前記多項式が、近似誤差を最小化するように、前記ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似し、前記近似誤差が、基準時間インスタンスに対する前記有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定され、
前記ICが、送信のために前記決定されたタイミングアドバンスを使用して前記データが提供される出力をさらに備える、
集積回路(IC)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非地上系ネットワークにおけるタイミングアドバンスの決定に関する。詳細には、本発明は、決定されたタイミングアドバンスを計算する、シグナリングする、および/または利用する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP:3rd Generation Partnership Project)は、次世代携帯電話技術(第5世代(5G)とも呼ばれる)の技術仕様の策定を進めている。
【0003】
1つの目的は、少なくとも拡張モバイルブロードバンド(eMBB:enhanced mobile broadband)、超高信頼・低遅延通信(URLLC:ultra-reliable low-latency communications)、および大規模マシンタイプ通信(mMTC:massive machine type communication)を含む、あらゆる利用シナリオ、要件、および配備シナリオ(例えば非特許文献1の6節を参照)に対応する単一の技術的枠組みを提供することである。例えば、eMBBの導入シナリオには、屋内ホットスポット、密集都市部、農村部、都市部のマクロ、および高速通信が含まれ、URLLCの導入シナリオには、産業制御システム、モバイルヘルスケア(遠隔監視、遠隔診断、および遠隔治療)、車両のリアルタイム制御、広域監視、およびスマートグリッドの制御システムが含まれ、mMTCの導入シナリオには、スマートウェアラブルおよびセンサーネットワークなど、タイムクリティカルでないデータ転送を行う多数のデバイスを使用するシナリオが含まれる。eMBBとURLLCのサービスは、どちらも非常に広い帯域幅を必要とする点で類似しているが、URLLCサービスが好ましくは超低遅延を必要とする点で異なっている。
【0004】
第2の目的は、前方互換性を達成することである。ロングタームエボリューション(LTE、LTE-A)セルラーシステムとの後方互換性は必要ないため、まったく新しいシステム設計および/または新機能の導入が容易になる。
【0005】
5Gの特筆すべき特徴のひとつは、ユーザデバイスとネットワーク間の通信経路に衛星を含む非地上系ネットワーク(NTN:non-terrestrial network)を導入することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TR 38.913 version 16.0.0
【非特許文献2】3GPP TS 38.300 v16.3.0
【非特許文献3】3GPP TS 38.211 v16.3.0
【非特許文献4】ITU-R M.20183
【非特許文献5】TS 23.501 v16.6.0
【非特許文献6】3GPP TR 38.811, Study on New Radio (NR) to support non-terrestrial networks, version 15.4.0
【非特許文献7】3GPP TR 38.821, Solutions for NR to support non-terrestrial networks, version 16.0.0
【非特許文献8】TR 38.321
【非特許文献9】TS 38.401
【非特許文献10】3GPP RP-201256, "WID: Solutions for NR to support non-terrestrial networks (NTN)"
【非特許文献11】3GPP TR 38.821,v.1.1.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非限定的かつ例示的な一実施形態は、共通タイミングアドバンス(衛星とネットワークノード間のタイミングアドバンス成分)の効率的な計算を容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、本明細書に開示される技術は、ネットワークノードであって、動作中に、有効区間について、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数を決定する処理回路、を備えるネットワークノード、を提供する。近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。ネットワークノードは、動作中に上述の係数を送信する送受信機、をさらに備える。
【0009】
なお、一般的または特定の実施形態は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、記憶媒体、またはこれらの任意の選択的な組合せとして実施できることに留意されたい。
【0010】
開示されている実施形態のさらなる恩恵および利点は、本明細書および図面から明らかになるであろう。これらの恩恵および/または利点は、本明細書および図面の様々な実施形態および特徴によって個別に得ることができ、このような恩恵および/または利点の1つまたは複数を得るために、これらの特徴すべてを設ける必要はない。
【0011】
以下では、例示的な実施形態について、添付の図および図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】3GPP NRシステムの例示的なアーキテクチャを示す図である。
図2】NG-RANと5GCとの間の機能の分離を示した概略図である。
図3】RRC接続確立/再設定手順のシーケンス図である。
図4】拡張モバイルブロードバンド(eMBB)、大規模マシンタイプ通信(mMTC)、および超高信頼・低遅延通信(URLLC)の使用シナリオを示した概略図である。
図5】非ローミングシナリオの例示的な5Gシステムアーキテクチャを示すブロック図である。
図6】透過中継型衛星に基づく例示的なNG RANアーキテクチャを示す図である。
図7】再生中継型衛星に基づく例示的なNG RANアーキテクチャを示す図である。
図8】いくつかのUEが衛星によってサービス提供される例示的なシナリオを示す図である。
図9A】一実施形態に従ってテイラー級数として得られる一級多項式による放物線関数の例示的な近似を示す図である。
図9B図9Aの近似値の場合における近似誤差を示す図である。
図10】UEおよびネットワークノードの例示的かつ単純化された構造を示す図である。
図11】NTNネットワークにおけるタイミングアドバンスを含むアップリンクおよびダウンリンクの例示的なタイミングを示す図である。
図12】システムタイミングに基づいて基準時間インスタンスを決定することを示す概略図である。
図13】NTNネットワークにおいてタイミングアドバンスを取得するためのユーザデバイスでの処理チェーンを例示したフロー図である。
図14】共通TA近似係数を、繰り返して、かつこれらの共通TA近似係数を更新するよりも頻繁に送信する例を示す概略図である。
図15】共通TA近似係数の更新と同じ頻度で共通TA近似係数を送信する例を示す概略図である。
図16】共通TA近似係数を繰り返し送信することなく、これらの共通TA近似係数を更新するよりも頻繁に送信する例を示す概略図である。
図17】共通TA決定が評価される例示的なシナリオケース1を示す図である。
図18】共通TA決定が評価される例示的なシナリオケース2を示す図である。
図19A】ケース1および線形近似多項式の近似誤差に関する結果を示す図である。
図19B】ケース1および二次近似多項式の近似誤差に関する結果を示す図である。
図19C】ケース2および線形近似多項式の近似誤差に関する結果を示す図である。
図19D】ケース2および二次近似多項式の近似誤差に関する結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<5G NRシステムのアーキテクチャおよびプロトコルスタック>
3GPPは、最大100GHzの周波数で動作する新しい無線アクセス技術(NR)の開発を含む第5世代セルラー技術(単に5Gと呼ばれる)の次のリリースに取り組んでいる。5G標準の最初のバージョンは、2017年の終わりに完了し、これにより、5G NR標準に準拠したスマートフォンの試験および商用展開に進むことができる。
【0014】
特に、全体的なシステムアーキテクチャは、gNBを備えるNG-RAN(次世代-無線アクセスネットワーク:Next Generation - Radio Access Network)を想定しており、gNBは、UEに向かうNG無線アクセスユーザプレーン(SDAP/PDCP/RLC/MAC/PHY)プロトコルおよび制御プレーン(RRC)プロトコルを終端させる。gNBは、Xnインターフェースによって互いに相互接続されている。さらにgNBは、次世代(NG)インターフェースによってNGC(次世代コア:Next Generation Core)に接続され、より具体的には、NG-CインターフェースによってAMF(アクセスおよびモビリティ管理機能:Access and Mobility Management Function)(例:AMFを実行する特定のコアエンティティ)に接続され、NG-UインターフェースによってUPF(ユーザプレーン機能:User Plane Function)(例:UPFを実行する特定のコアエンティティ)に接続される。図1はNG-RANのアーキテクチャを示している(非特許文献2の4節を参照)。
【0015】
NRにおけるユーザプレーンプロトコルスタック(例えば非特許文献2の4.4.1節を参照)は、PDCP(パケットデータコンバージェンスプロトコル:Packet Data Convergence Protocol、非特許文献2の6.4節を参照)サブレイヤ、RLC(無線リンク制御:Radio Link Control、非特許文献2の6.3節を参照)サブレイヤ、およびMAC(媒体アクセス制御:Medium Access Control、非特許文献2の6.2節を参照)サブレイヤを含み、これらのサブレイヤは、ネットワーク側ではgNBにおいて終端する。これに加えて、PDCPの上に、アクセス層(AS)の新しいサブレイヤ(SDAP:サービスデータアダプテーションプロトコル:Service Data Adaptation Protocol)が導入される(例えば非特許文献2の6.5節を参照)。NRにおいても制御プレーンプロトコルスタックが定義されている(例えば非特許文献2の4.4.2節を参照)。レイヤ2の機能の概要は、非特許文献2の6節に記載されている。RRC層の機能は、非特許文献2の7節に記載されている。
【0016】
媒体アクセス制御(MAC)層は、例えば、論理チャネルの多重化と、スケジューリングおよびスケジューリング関連機能(様々なヌメロロジーの処理を含む)を扱う。
【0017】
物理層(PHY)は、例えば、符号化、PHY HARQ処理、変調、マルチアンテナ処理、適切な物理的時間-周波数リソースへの信号のマッピングの責務を担う。さらに物理層(PHY)は、物理チャネルへのトランスポートチャネルのマッピングを処理する。物理層(PHY)は、トランスポートチャネルの形でMAC層にサービスを提供する。物理チャネルは、特定のトランスポートチャネルの送信に使用される時間周波数リソースのセットに対応し、各トランスポートチャネルが、対応する物理チャネルにマッピングされる。例えば、物理チャネルは、アップリンク用として、PRACH(物理ランダムアクセスチャネル:Physical Random Access Channel)、PUSCH(物理アップリンク共有チャネル:Physical Uplink Shared Channel)、およびPUCCH(物理アップリンク制御チャネル:Physical Uplink Control Channel)があり、ダウンリンク用として、PDSCH(物理ダウンリンク共有チャネル:Physical Downlink Shared Channel)、PDCCH(物理ダウンリンク制御チャネル:Physical Downlink Control Channel)、およびPBCH(物理ブロードキャストチャネル:Physical Broadcast Channel)がある。
【0018】
NRのユースケース/配置シナリオには、拡張モバイルブロードバンド(eMBB)、超高信頼・低遅延通信(URLLC)、大規模マシンタイプ通信(mMTC)が含まれ、これらのサービスは、データレート、レイテンシ、およびカバレッジに関して多様な要件を有する。例えばeMBBは、IMT-Advancedによって提供される3倍のオーダーのピークデータレート(ダウンリンクが20Gbps、アップリンクが10Gbps)およびユーザ体感データレートをサポートすることが期待される。これに対してURLLCの場合、より厳しい要件として、極めて低いレイテンシ(ユーザプレーンのレイテンシはアップリンクおよびダウンリンクそれぞれで0.5ms)および高い信頼性(1ms内で1~10-5)が課せられる。さらにmMTCでは、高い接続密度(都市環境では1kmあたり1,000,000個のデバイス)、過酷な環境における広いカバレッジ、デバイスコストを下げるための極めて長寿命のバッテリ(15年)が好ましくは要求されうる。
【0019】
したがって、あるユースケースに適したOFDMヌメロロジー(例:サブキャリア間隔、OFDMシンボル持続時間、サイクリックプレフィックス(CP)持続時間、スケジューリング間隔あたりのシンボル数)が、別のユースケースではうまく機能しないことがある。例えば、低レイテンシのサービスでは、mMTCサービスよりも短いシンボル持続時間(したがってより大きいサブキャリア間隔)、および/または、スケジューリング間隔(TTIとも称される)あたりの少ないシンボル、が好ましくは要求されうる。さらには、チャネルの遅延スプレッドが大きい配置シナリオでは、遅延スプレッドが短いシナリオよりも長いサイクリックプレフィックス(CP)持続時間が好ましくは要求されうる。同程度のサイクリックプレフィックス(CP)オーバーヘッドを維持するため、遅延スプレッドに応じてサブキャリア間隔を最適化するべきである。NRでは、サブキャリア間隔の2つ以上の値がサポートされうる。したがって現在のところ、15kHz、30kHz、60kHz、...のサブキャリア間隔が検討されている。シンボル持続時間Tとサブキャリア間隔Δfは、式Δf=1/Tにより、直接関係している。LTEシステムの場合と同様に、1個のOFDM/SC-FDMAシンボルの長さに対する1つのサブキャリアから構成される最小リソース単位を表すのに、用語「リソースエレメント」を使用することができる。
【0020】
新無線システム5G NRでは、各ヌメロロジーおよびキャリアごとに、アップリンクおよびダウンリンクそれぞれにおいて、サブキャリアとOFDMシンボルのリソースグリッドが定義される。リソースグリッド内の各要素は、リソースエレメントと呼ばれ、周波数領域における周波数インデックスと時間領域におけるシンボル位置とに基づいて識別される(非特許文献3の例えば4節を参照)。例えば、ダウンリンクおよびアップリンクの送信は、持続時間10msのフレームに編成され、各フレームは、それぞれ持続時間1msの10個のサブフレームから構成される。5G NRの実装では、サブフレームあたりの連続するOFDMシンボルの数は、サブキャリア間隔の設定に依存する。例えば、サブキャリア間隔が15kHzの場合、1サブフレームは14個のOFDMシンボルを有する(通常のサイクリックプレフィックスを想定したLTE準拠の実装に類似する)。一方、サブキャリア間隔が30kHzの場合、サブフレームは2つのスロットを有し、各スロットが14個のOFDMシンボルを含む。
【0021】
<NG-RANと5GCの5G NR機能の分割>
図2は、NG-RANと5GCとの間での機能の分割を示している。NG-RANの論理ノードは、gNBまたはng-eNBである。5GCの論理ノードは、AMF、UPF、およびSMFである。
【0022】
gNBおよびng-eNBは、特に次の主要機能を処理する。
- 無線ベアラ制御(Radio Bearer Control)、無線アドミッション制御(Radio Admission Control)、接続モビリティ制御(Connection Mobility Control)、アップリンクおよびダウンリンクの両方向におけるUEへの動的なリソース割当て(スケジューリング)など、無線リソース管理(Radio Resource Management)の機能
- IPヘッダ圧縮、暗号化、およびデータの完全性保護
- UEによって提供される情報からAMFへのルーティングを決定できないときのUEのアタッチ時のAMFの選択
- UPFへのユーザプレーンデータのルーティング
- AMFへの制御プレーン情報のルーティング
- 接続の確立および解放
- ページングメッセージのスケジューリングおよび送信
- (AMFまたはOAMから送られる)システムブロードキャスト情報のスケジューリングおよび送信
- モビリティおよびスケジューリングのための測定および測定報告の設定
- アップリンクにおけるトランスポートレベルのパケットマーキング
- セッション管理
- ネットワークスライシングのサポート
- QoSフロー管理およびデータ無線ベアラへのマッピング
- RRC_INACTIVE状態にあるUEのサポート
- NASメッセージの配信機能
- 無線アクセスネットワークシェアリング
- 二重接続
- NRとE-UTRA間の緊密なインターワーキング
【0023】
アクセスおよびモビリティ管理機能(AMF)は、次の主要機能を処理する。
- 非アクセス層(NAS:Non-Access Stratum)シグナリングの終端
- NASシグナリングのセキュリティ
- アクセス層(AS:Access Stratum)のセキュリティ制御
- 3GPPアクセスネットワーク間のモビリティのためのコアネットワーク(CN:Core Network)ノード間シグナリング
- アイドルモードUEの到達可能性(ページング再送の制御および実行を含む)
- レジストレーションエリア(Registration Area)管理
- システム内モビリティおよびシステム間モビリティのサポート
- アクセス認証
- ローミング権のチェックを含むアクセス認証
- モビリティ管理制御(サプスクリプションおよびポリシー)
- ネットワークスライシングのサポート
- セッション管理機能(SMF:Session Management Function)の選択
【0024】
さらに、ユーザプレーン機能(UPF:User Plane Function)は、次の主要機能を処理する。
- RAT内/RAT間モビリティのためのアンカーポイント(適用可能時)
- データネットワークとの相互接続の外部PDUセッションポイント
- パケットのルーティングおよび転送
- パケット検査およびポリシー規則施行のユーザプレーン部分
- トラフィック使用報告
- データネットワークへのトラフィックフローのルーティングをサポートするためのアップリンク分類器
- マルチホームPDUセッションをサポートするためのブランチングポイント
- ユーザプレーンのQoS処理(例:パケットフィルタリング、ゲーティング、UL/DLレート強制)
- アップリンクトラフィックの検証(SDFからQoSフローへのマッピング)
- ダウンリンクパケットのバッファリングおよびダウンリンクデータ通知のトリガーリング
【0025】
最後に、セッション管理機能(SMF)は、次の主要機能を処理する。
【0026】
- セッション管理
- UE IPアドレスの割当ておよび管理
- UP機能の選択および制御
- トラフィックを正しい宛先にルーティングするためのユーザプレーン機能(UPF)におけるトラフィックステアリングの設定
- ポリシー施行およびQoSの制御部分
- ダウンリンクデータ通知
【0027】
<RRC接続の確立および再構成の手順>
図3は、UEがNAS部分においてRRC_IDLEからRRC_CONNECTEDに遷移するときの、UE、gNB、およびAMF(5GCエンティティ)の間のいくつかのインタラクションを示している(非特許文献2を参照)。
【0028】
RRCは、UEおよびgNBの設定に使用される上位層シグナリング(プロトコル)である。特に、この遷移では、AMFがUEコンテキストデータ(例:PDUセッションコンテキスト、セキュリティキー、UE無線能力、UEセキュリティ能力などを含む)を作成し、それを初期コンテキスト設定要求(INITIAL CONTEXT SETUP REQUEST)によってgNBに送る。次にgNBが、UEとのASセキュリティをアクティブにし、これはgNBがSecurityModeCommandメッセージをUEに送信し、UEがSecurityModeCompleteメッセージでgNBに応答することによって実行される。その後gNBは、再設定を実行してシグナリング無線ベアラ2(SRB2)およびデータ無線ベアラ(DRB:Data Radio Bearer)を確立し、これは、gNBがRRCReconfigurationメッセージをUEに送信し、これに応答してUEからのRRCReconfigurationCompleteをgNBが受信することによる。シグナリングのみの接続の場合、SRB2およびDRBが確立されないため、RRCReconfigurationに関連するこれらのステップはスキップされる。最後にgNBは、確立手順が完了したことを、初期コンテキスト設定応答(INITIAL CONTEXT SETUP RESPONSE)によってAMFに通知する。
【0029】
したがって本開示では、第5世代コア(5GC:5th Generation Core)のエンティティ(例えばAMF、SMFなど)であって、動作時に、gNodeBとの次世代(NG)接続を確立する制御回路と、動作時に、gNodeBとユーザ機器(UE)との間のシグナリング無線ベアラを確立させるために、NG接続を介して初期コンテキストセットアップメッセージをgNodeBに送信する送信器と、を備える、第5世代コアのエンティティ、が提供される。具体的には、gNodeBは、リソース割当て設定の情報要素(IE:information element)を含む無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)シグナリングを、シグナリング無線ベアラを介してUEに送信する。UEは、リソース割当て設定に基づいて、アップリンク送信またはダウンリンク受信を実行する。
【0030】
<2020年以降のIMTの使用シナリオ>
図4は、5G NRのユースケースのいくつかを示している。3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)の新無線(3GPP NR)では、IMT-2020による様々なサービスおよびアプリケーションをサポートするために想定される3つのユースケースが考慮されている。拡張モバイルブロードバンド(eMBB)のフェーズ1の仕様は決定された。現在および今後の作業としては、eMBBのサポートをさらに拡張することに加えて、超高信頼・低遅延通信(URLLC)および大規模マシンタイプ通信の標準化が含まれる。図4は、2020年以降のIMTの想定される使用シナリオのいくつかの例を示している(例えば非特許文献4の図2を参照)。
【0031】
URLLCのユースケースは、スループット、レイテンシ、可用性などの能力に関する厳しい要件を有し、産業製造や生産工程のワイヤレス制御、リモート医療手術、スマートグリッドにおける配電自動化、輸送の安全性など、将来の垂直アプリケーションを実現する手段の1つとして想定されている。URLLCの超高信頼性は、非特許文献1によって設定される要件を満たすための技術を特定することによってサポートされる。リリース15のNR URLLCでは、主な要件として、UL(アップリンク)で0.5ms、DL(ダウンリンク)で0.5msの目標ユーザプレーンレイテンシが含まれる。パケットの1回の送信における一般的なURLLCの要件は、1msのユーザプレーンレイテンシでパケットサイズ32バイトの場合にBLER(ブロック誤り率)1E-5である。
【0032】
物理層の観点から、信頼性を向上させる方法はいくつか考えられる。信頼性を向上させるための現在の範囲には、URLLC用の個別のCQIテーブルの定義、よりコンパクトなDCIフォーマット、PDCCHの繰り返しなどが含まれる。しかしながら、(NR URLLCの重要な要件について)NRがさらに安定し、開発が進むにつれて、超高信頼性を実現するための範囲が広がりうる。リリース15におけるNR URLLCの具体的なユースケースとしては、拡張現実/仮想現実(AR/VR)、eヘルス、eセーフティ、ミッションクリティカルなアプリケーションが挙げられる。
【0033】
さらに、NR URLLCが対象とする技術強化は、レイテンシの改良および信頼性の向上を目標としている。レイテンシを改良するための技術強化としては、設定可能なヌメロロジー、柔軟なマッピングを使用する非スロットベースのスケジューリング、グラントフリー(設定済みグラント(configured grant))のアップリンク、データチャネルのスロットレベルの繰り返し、およびダウンリンクのプリエンプションが挙げられる。プリエンプションとは、リソースがすでに割り当てられている送信が中止され、すでに割り当てられているリソースが、後から要求された、より小さいレイテンシ/より高い優先度要件を有する別の送信に使用されることを意味する。したがって、すでに許可された送信が、より後の送信によってプリエンプトされる。プリエンプションは、サービスタイプに関係なく適用される。例えば、サービスタイプA(URLLC)の送信を、サービスタイプB(eMBBなど)の送信によってプリエンプトすることができる。信頼性の向上に関連する技術強化としては、1E-5の目標BLERのための専用CQI/MCSテーブルが挙げられる。
【0034】
mMTC(大規模マシンタイプ通信)のユースケースは、非常に多数の接続されたデバイスが、一般には遅延の影響が小さい比較的少量のデータを送信することを特徴とする。デバイスは、低コストでありかつ極めて長いバッテリ寿命を有することが要求される。NRの観点からは、非常に狭い帯域幅部分を利用することは、UEの観点からの省電力を達成して長いバッテリ寿命を可能にするための1つの可能な解決策である。
【0035】
上に述べたように、NRにおける信頼性の範囲が広がることが予測される。あらゆるケース、特にURLLCおよびmMTCの場合に必要な1つの重要な要件は、高信頼性または超高信頼性である。無線の観点およびネットワークの観点から、信頼性を向上させるためのいくつかのメカニズムを考えることができる。一般には、信頼性の向上に役立つ可能性のある重要な領域がいくつか存在する。これらの領域としては、コンパクトな制御チャネル情報、データチャネル/制御チャネルの繰り返し、周波数領域、時間領域、および/または空間領域に関連するダイバーシティが挙げられる。これらの領域は、特定の通信シナリオには関係なく、一般的に信頼性に適用可能である。
【0036】
NR URLLCの場合、ファクトリーオートメーション、運輸業、配電など、より厳しい要件のさらなるユースケースが特定されている。より厳しい要件とは、ユースケースに応じて、より高い信頼性(最大10-6レベル)、より高い可用性、最大256バイトのパケットサイズ、数μsオーダーまでの時刻同期(値は周波数範囲に応じて1μsないし数μs)、0.5~1msオーダーの短いレイテンシ、特に0.5msの目標ユーザプレーンレイテンシである。
【0037】
さらに、NR URLLCの場合、物理層の観点からいくつかの技術的強化が確認されている。特に、PDCCH(物理ダウンリンク制御チャネル)に関連する強化として、コンパクトなDCI、PDCCHの繰り返し、PDCCH監視の増加などが挙げられる。また、UCI(アップリンク制御情報:Uplink Control Information)に関連する強化として、HARQ(ハイブリッド自動再送要求)の強化およびCSIフィードバックの強化が挙げられる。また、ミニスロットレベルのホッピングや再送/繰り返しの強化に関連するPUSCHの強化も認識されている。用語「ミニスロット」は、スロットよりも少ない数のシンボルを含むTTI(送信時間間隔:Transmission Time Interval)を意味する(スロットは14個のシンボルを含む)。
【0038】
<QoS制御>
5G QoS(サービス品質)モデルは、QoSフローに基づいており、保証フロービットレートを必要とするQoSフロー(GBR QoSフロー)と、保証フロービットレートを必要としないQoSフロー(非GBR QoSフロー)の両方をサポートする。したがってNASレベルでは、QoSフローはPDUセッションにおけるQoS差別化の最も細かい粒度である。QoSフローは、PDUセッション内では、NG-Uインターフェースを通じてカプセル化ヘッダ内で伝えられるQoSフローID(QFI)によって識別される。
【0039】
5GCは、UEごとに1つ以上のPDUセッションを確立する。NG-RANは、UEごとに、PDUセッションと一緒に少なくとも1つのデータ無線ベアラ(DRB)を確立し、次にそのPDUセッションのQoSフローのための追加のDRBを、例えば図3を参照しながら上述したように設定することができる(いつ設定するかはNG-RANが決定する)。NG-RANは、異なるPDUセッションに属するパケットを異なるDRBにマッピングする。UEおよび5GCにおけるNASレベルのパケットフィルタによって、ULおよびDLのパケットがQoSフローに関連付けられ、UEおよびNG-RANにおけるASレベルのマッピング規則によって、ULおよびDLのQoSフローがDRBに関連付けられる。
【0040】
図5は、5G NRの非ローミング基準アーキテクチャを示している(非特許文献5の4.2.3節を参照)。アプリケーション機能(AF:Application Function)(例えば図4に例示的に記載されている5Gサービスを処理する外部アプリケーションサーバ)は、サービスを提供する目的で、3GPPコアネットワークと対話する。例えば、トラフィックのルーティングに対するアプリケーションの影響をサポートしたり、ネットワーク公開機能(NEF:Network Exposure Function)にアクセスしたり、ポリシー制御(例:QoS制御)のためのポリシーフレームワーク(ポリシー制御機能(PCF)を参照)と対話する。事業者の配備に基づいて、事業者によって信頼されるものとみなされるアプリケーション機能(AF)を、関連するネットワーク機能(Network Function)と直接対話できるようにすることができる。ネットワーク機能に直接アクセスすることが事業者によって許可されていないアプリケーション機能(AF)は、NEFを介して外部の公開フレームワークを使用して、関連するネットワーク機能と対話する。
【0041】
図5は、5Gアーキテクチャのさらなる機能ユニット、すなわち、ネットワークスライス選択機能(NSSF:Network Slice Selection Function)、ネットワークリポジトリ機能(NRF:Network Repository Function)、統一データ管理(UDM:Unified Data Management)、認証サーバ機能(AUSF:Authentication Server Function)、アクセスおよびモビリティ管理機能(AMF:Access and Mobility Management Function)、セッション管理機能(SMF:Session Management Function)、およびデータネットワーク(DN:Data Network)(例:事業者のサービス、インターネットアクセス、またはサードパーティのサービス)を示している。コアネットワーク機能およびアプリケーションサービスのすべてまたは一部を、クラウドコンピューティング環境に配置して実行してもよい。
【0042】
したがって、本開示では、送信機および制御回路を備えるアプリケーションサーバ(例えば5GアーキテクチャのAF)が提供され、送信機は、動作中に、URLLCサービス、eMBBサービス、およびmMTCサービスの少なくとも1つに対するQoS要件を含む要求を、5GCの機能(例えば、NEF、AMF、SMF、PCF、UPFなど)の少なくとも1つに送信し、QoS要件に従って、gNodeBとUEとの間の無線ベアラを含むPDUセッションを確立し、制御回路は、動作中に、確立されたPDUセッションを使用してサービスを実行する。
【0043】
<システム情報の送信>
システム情報は、基地局(5GではgNB、一般的にはネットワークノード)によって定期的に送信されるダウンリンクのブロードキャスト情報である。システム情報には、UEが基地局との接続を確立するための情報が含まれる。5Gでは、UEは、電源オン時にセルキャンプを行うため、またRRC_IDLEモード時にセルの選択および再選択を行うために、システム情報を読み取る。システム情報は、システムフレーム番号、システム帯域幅、PLMN、セル選択および再選択のしきい値など、ネットワークへのアクセスに必要なすべての詳細情報を提供する。
【0044】
システム情報は、マスタ情報ブロック(MIB:Master Information Block)およびシステム情報ブロック(SIB:System Information Block)で構成されている。SIBは、様々な情報を収容する。本開示において関連性があるのは、後から説明するNTN伝送に関連する情報である。MIB情報は、BCHチャネルおよびPBCHチャネルを介して送信(ブロードキャスト)され、一方でSIBは、DL-SCHチャネルおよびPDSCHチャネルを介して送信される。
【0045】
一般に、システム情報は、定期的に(新たに接続する端末が情報を取得できるように)送信してもよいし、オンデマンド式に送信してもよい。システム情報送信の定期的なスケジュールは、RRCによって設定可能である。特に、SIB1(MIBによって参照される)は、例えば、システム情報ウィンドウ(システム情報送信パターンの繰り返し周期)、システム情報を受信するためのいくつかの送信パラメータ(例えば、物理層パラメータ)、およびシステム情報ウィンドウ内のSIBのマッピング(送信パターン)を指定するスケジューリング情報を伝える。
【0046】
<非地上系ネットワーク、NTN>
NTNは、広いサービスカバレッジ能力を有し、物理的な攻撃や自然災害に対する宇宙飛行体/空中飛行体の脆弱性が少ないため、地上系NRネットワークではカバーできない未サービスエリア(例えば、孤立したエリアあるいは遠隔地、航空機あるいは船舶内)および未サービス地域(例えば郊外および農村部)でのNRサービスの展開を促進することができる。さらに、NTNは、移動するプラットフォーム上の乗客にサービスの継続性を提供する、あるいは特に重要な通信のために、あらゆる場所でのサービスの可用性を確保することにより、NRサービスの信頼性を強化することができる。
【0047】
このメリットは、単独で運用される非地上系ネットワーク、または地上波と非地上波を統合したネットワークのいずれかに関連しており、カバレッジ、ユーザ帯域幅、システム容量、サービスの信頼性または可用性に影響を与える可能性がある。
【0048】
非地上系ネットワークとは、例えば、衛星に搭載されたRFリソースを使用するネットワーク、またはネットワークのセグメントを指す。NTNは、通常では以下のシステム要素を特徴とし、すなわち、NTN端末(3GPP UE、または衛星が直接3GPP UEにサービス提供しない場合は衛星システムに固有の端末を指す)、ユーザ機器と宇宙/空中プラットフォーム間の無線リンクを指すサービスリンク、ペイロードを搭載する空中プラットフォーム、宇宙/空中プラットフォームをコアネットワークに接続するゲートウェイ、ゲートウェイと宇宙/空中プラットフォーム間の無線リンクを指すフィーダリンクである。
【0049】
3GPPでは、非地上系ネットワーク(NTN)におけるNRベースの動作が検討、記載されている(例えば非特許文献6および非特許文献7を参照)。
【0050】
非地上系ネットワーク(NTN)とは、例えば以下のように、空中飛行体または宇宙飛行体に搭載されたRFリソースを伝送に使用するネットワーク、またはネットワークのセグメントを指す。
【0051】
・ 宇宙飛行体: 衛星(低軌道(LEO:Low Earth Orbiting)衛星、中軌道(MEO:Medium Earth Orbiting)衛星、静止軌道(GEO:Geostationary Earth Orbiting)衛星、高楕円軌道(HEO:Highly Elliptical Orbiting)衛星を含む)
・ 空中飛行体: 航空機より軽量のUAS(LTA:Lighter than Air)、航空機より重量のあるUAS(HTA:Heavier than Air)を含む無人航空機システム(UAS:Unmanned Aircraft Systems)を包含する高高度プラットフォーム(HAP:High Altitude Platforms)。これらはすべて通常8~50kmの高度で準定常的に運用される。
【0052】
例えば、UASまたは衛星プラットフォームは、データネットワークにリンクされた1つまたは複数のゲートウェイを介して5Gネットワークに接続される。NTNは、以下のシステム要素を備えることができ、すなわち、NTN対応端末(3GPP UEを指す、または衛星が3GPP UEに直接的にサービス提供しない場合には衛星システムに固有の端末を指す)、ユーザ機器と宇宙/空中プラットフォーム間の無線リンクを指すサービスリンク、ペイロードを搭載する空中プラットフォーム、宇宙/空中プラットフォームをコアネットワークに接続するゲートウェイ、ゲートウェイセンター宇宙/空中プラットフォーム間の無線リンクを指すフィーダリンク、である。プラットフォームは、透過中継型ペイロード伝送または再生中継型ペイロード伝送のいずれかを実装することができ、以下の例示的な特性を有する。
【0053】
・ 透過中継型ペイロードでは、プラットフォームは波信号をフィルタリング、変換、および増幅することによって中継器として機能するが、ペイロードは変更されない。
・ 再生中継型ペイロードでは、プラットフォームは基地局の機能の一部またはすべてを有する。プラットフォームは、無線周波数のフィルタリング、変換、増幅に加えて、復調/変調、スイッチング/ルーティング、符号化/復号化を実行することができる。
・ 衛星間リンク(ISL:Inter-Satellite Link)は、任意選択で衛星コンステレーションを形成するために使用することができる。ISL(衛星間リンク)は、衛星間のトランスポートリンクである。
【0054】
図6は、衛星およびNTNゲートウェイを含む遠隔無線ユニットを介して端末(UE)間の伝送が実行される、非地上系ネットワークのシナリオを示している。ゲートウェイには、スケジューリングデバイスとしてgNBが配置されている。衛星ペイロードは、アップリンクとダウンリンクの両方向で周波数変換および無線周波数増幅器を実装している。したがって、衛星は、フィーダリンク(NTNゲートウェイと衛星の間)からサービスリンク(衛星とUEの間)へ、またはその逆方向に、NR無線インターフェースを繰り返す。フィーダリンクの衛星無線インターフェース(SRI:Satellite Radio Interface)は、NR-Uuである。言い換えれば、衛星はNR-Uuを終端させない。このような構成の衛星は、透過中継型衛星と呼ばれる。
【0055】
図7は、非地上系ネットワークのシナリオを示しており、端末(UE)間の伝送が、スケジューリングデバイスとしてのgNBを含む衛星を介して行われる。この構成の衛星は、再生中継型衛星と呼ばれる。例示的な一実装形態によれば(非特許文献8の5.2節を参照)、非特許文献9に記載されているNG-RAN論理アーキテクチャがNTNシナリオのベースラインとして使用される。衛星ペイロードは、地球から受信した信号の再生を実装する。NR-Uu無線インターフェースは、UEと衛星の間のサービスリンク上にある。衛星無線インターフェース(SRI)は、NTNゲートウェイと衛星の間のフィーダリンク上にある。SRI(衛星無線インターフェース)は、NTN GWと衛星の間のトランスポートリンクである。
【0056】
図8は、3つのUE(UE1、UE2、UE3)が衛星S1によってサービス提供される、例示的なシナリオを示している。衛星S1は、gNBおよびNTNゲートウェイとのフィーダリンクを介して、また別の近隣の衛星S2との衛星間リンク(ISL)を介して、通信している。
【0057】
通信を提供する衛星には、地球低軌道(LEO)衛星または地球同期赤道軌道(GEO)衛星(静止衛星とも呼ばれる)など、異なる種類がある。静止衛星は、地球と同じ角速度で移動し、地球の自転と平行な軌道に沿って周回するため、固定されているように見え、特定の地域をカバーする。地上からは、GEO衛星は静止しているように見える。LEO衛星は、160~2000キロメートル(99~1200マイル)の高度で自転している。LEO衛星のコンステレーションは、衛星が移動する際に連続的に全地球をカバーすることができる。GEO衛星とは異なり、LEO衛星は地球に近いため、はるかに速いペースで飛行する。
【0058】
GEO衛星には、天気予報、衛星ラジオ、テレビなど多くの用途がある。しかしながら、GEO衛星は非常に高い高度を周回しているため、これらの衛星との間で信号が往復する際の通信タイムラグ(レイテンシ)が長くなる。このため、多くの重要な通信は、電線またはケーブルなしでより高速に接続できるLEO衛星ネットワークを通じて処理されている。
【0059】
しかしながら、一般的にNTNでは、衛星のみならず、UAS(無人航空機システム)プラットフォームを含む様々な異なる種類のプラットフォームが存在することができ、その例を表1に示す(非特許文献7の表4.1-1に対応しており、非特許文献7の4.1節「Non-Terrestrial Networks overview(非地上系ネットワークの概要)」も参照)。
【表1】
【0060】
LEO衛星、MEO衛星、およびHEO衛星の場合、地球上の所与の地点に対して位置を固定しないため、NR無線システムのセルまたはPCI(物理セルID:Physical Cell ID)あるいはSSB(同期信号ブロック:Synchronization Signal Block)ビームに対応する衛星ビームが地球上を移動し得る。
【0061】
地球上を連続的に移動するセルを提供するNTNシナリオ(例えばLEOベース、MEOベース、HEOベースのNTN)は、地球移動型セルシナリオと呼ばれる。地球上をセルが連続的に移動するのは、衛星ビームがNTNプラットフォームに対して固定されている動作によるものである。したがって、いくつかの衛星ビームまたは1つの衛星ビームに対応するセルのフットプリントは、NTNプラットフォーム(例えばLEO衛星)の動きに伴って地表を移動する。
【0062】
衛星の軌道に関する情報は、エフェメリスデータ(または「衛星エフェメリスデータ」)に含まれている。エフェメリスデータには様々な表現方法があり、1つの可能な方法は、半長軸、離心率、傾斜角、昇交点赤経、近点引数、基準時点における平均異常値(mean anomaly at a reference point in time)、エポックなどの軌道パラメータを使用することである。最初の5つのパラメータは、軌道面を決定することができ(軌道面パラメータ)、残りの2つのパラメータは、ある時点の正確な衛星位置を決定するために使用される(衛星レベルパラメータ)。軌道面パラメータおよび衛星レベルパラメータは、非特許文献7の7.3.6.1節「Representation of Complete Ephemeris Data(完全なエフェメリスデータの表現)」に例示されている。別のオプションとして、衛星の位置座標(x,y,z)、速度ベクトル(vx,vy,vz)、および時間の基準点を提供することも可能である。
【表2】
【0063】
NTNシステムでは、いくつかの衛星が共通の軌道面を共有することがある。そのような場合、データ量を減らすために、一部のエフェメリスデータを、単一の衛星ではなく、軌道面に対して提供することができる。軌道面ごとのエフェメリスデータは、UEまたはUEのSIM(加入者識別モジュール:Subscriber Identity Module)に格納することができる。しかしながら、多数の衛星を有するネットワークでは、エフェメリスデータのサイズがかなり大きくなり得る。したがって、エフェメリスデータを保存する代わりに、エフェメリスデータを少なくとも部分的にgNBから送信することができる。
【0064】
例えば、UEにサービス提供する可能性のあるすべての衛星の衛星レベルの軌道パラメータを、UEまたはSIMに格納することができ、各衛星のエフェメリスデータは衛星IDまたは衛星インデックスにリンクされている。この場合、UEが、UEのSIMまたは記憶装置において対応するエフェメリスデータを見つけることができるように、サービス提供する衛星の衛星IDまたは衛星インデックスをシステム情報の中でブロードキャストすることができる。あるいは、サービス提供する衛星の衛星レベルの軌道パラメータをシステム情報の中でブロードキャストすることができ、UEが、サービス提供する衛星の位置座標を導出する。近隣の衛星のエフェメリスデータも、システム情報または専用のRRCシグナリングを介してUEに提供することができる。基準軌道面パラメータがUEまたはSIMに提供されている場合、基準時点の平均異常値をブロードキャストするだけで十分であり、UEにエポックをブロードキャストする必要があるため、オーバーヘッドを削減することができる。
【0065】
<NTNにおけるタイミングアドバンス>
3GPPでは、非地上系ネットワーク(NTN)をサポートするためのリリース17の作業項目が依然として進行中である(例えば非特許文献10を参照)。NTNシナリオは長い伝搬遅延を特徴とするため、UEはアップリンクで送信するときにタイミングアドバンスにおいて伝搬遅延を考慮する必要がある。タイミングアドバンス(TA)は、個々のUEのアップリンク送信タイミングを制御するために使用される遅延である。タイミングアドバンス(TA)は、すべてのUEからのアップリンク送信が、基地局(ネットワークノード)によって受信されたときに同期していることを保証するのに役立つ。地上系システムではすでに、UEにおいて適用されるタイミングアドバンスは、ネットワークノードから特定のUEに送信される。
【0066】
NTNの伝送チェーンは、2つのセグメントに分割され、ゲートウェイと衛星の間(フィーダリンク)と、衛星とUEの間(サービスリンク)である。フィーダリンクでの遅延は、同じNTNエンティティ(例えば、衛星S1)によってサービス提供される任意のUE(例えば図8のUE1、UE2、およびUE3を参照)において同じであるため、「共通遅延」と呼ばれる。フィーダリンクでの遅延は、UEの位置が異なる可能性がありUEごとに異なり得るため、「UE固有の遅延」と呼ばれる。
【0067】
ネットワークノード(gNB)の物理的な位置がUEに明らかになるのを避けるため、3GPP RAN1では、特に図6に示したアーキテクチャにおいて、フィーダリンク遅延を共通タイミングアドバンス値としてシグナリングすることを決定した(非特許文献11の6.3.4節を参照)。
【0068】
UEにおけるサービスリンクTAの自律的な取得は、UEの既知の位置および衛星エフェメリスを使用して可能である。UE自身の位置は、特にUEが測位システム、例えば全地球測位システム(GPS:global positioning system)などの全地球的航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)にアクセスできることが想定できる場合、一般的にUEに利用可能である。エフェメリスデータは、上記のいくつかの例で述べたように、UEに利用可能とすることができる(SIMに格納されている、および/またはシステム情報のシグナリングなどから取得される)。
【0069】
しかしながら、一般に本開示は、サービスリンクのTA成分を完全に自律的に決定することに限定されない。むしろ、サービスリンクTA成分の取得を、特定のUEにUE固有情報をシグナリングすることによって支援することもできる。共通TAは、同じ衛星ビーム/セルのカバレッジ内のすべてのUEによって共有される伝搬遅延の共通成分を指し、衛星ビーム/セルごとにネットワークによってブロードキャストされてもよい。この共通TAの計算は、衛星ビーム/セルごとに、少なくとも1つの基準点を仮定してネットワークによって行われる。
【0070】
言い換えれば、例示的なシナリオでは、UEはGNSS対応であると想定されているため、UEは、UE固有の遅延を自律的に計算する。UEは、共通TAの多項式に基づいてフィーダリンクの遅延を計算する。これらの遅延の合計により、UL送信に適用されるタイミングアドバンス値がUEに提供される。
【0071】
しかしながら、フィーダリンク遅延は、特に、高速で移動するLEO衛星の場合、時間とともに変化する可能性があることが判明した。したがって、共通TAを表す単一の値では、近似誤差が大きくなる、または非常に頻繁なSIB更新が必要になり得る。時間に伴う変化を反映するために、共通TAを例えば多項式として表す(近似する)ことができる。
【0072】
5G-NTNに関して、RAN1(3GPPのRadio Access Network Working Group 1(無線アクセスネットワーク作業部会1))において、TAをシグナリングする方法が議論されてきた。例えば、共通のTAを、特定の区間(本明細書では有効区間と呼ぶ)にわたって多項式で近似し、多項式の係数をネットワークノードから1つ以上のUEに送信することができる。係数は、同じNTNエンティティ(例えば衛星)によってサービス提供されるUEに共通であるため、係数をブロードキャストによって送信することが可能である。その後、UEは、共通TAについて受信された係数によって定義される多項式に基づいて、フィーダリンクの遅延を計算する。
【0073】
1つの可能性は、例えば一点の近傍の関数をその導関数の和として表すツールとして数学解析で知られるテイラー級数を、特定の種類の多項式として使用することである。特に、テイラー級数は、時間インスタンスtの近傍の関数f(t)を、その導関数f(t)、f’(t)、f’’(t)などで以下のように表す。
【数1】
【0074】
この場合、例えば、gNB(ネットワークノード)は、係数NTA,common(t)、N’TA,common(t)、N’’TA,common(t)などをシグナリングし、UEは、tの近傍において共通TAであるNTA,common(t)を計算することができる。シグナリングされた係数は、それぞれの求められた導関数f(t)、f’(t)、f’’(t)などに対応することができる。
【0075】
この手法の欠点は、テイラー級数が、対象の関数を一点「t」でのみ正確に近似することである。例えば、二次関数の線形近似において、関数が上昇する点付近で問題が生じることがある。このような場合、実際の関数が上昇する一方で、一次方程式が例えば下を向いてしまう可能性がある。図9Aおよび図9Bは、二次関数を一次関数によって近似するこの単純化されたシナリオを示している。
【0076】
単純な二次関数f(t)=(t-1.1)を想定すると、縦の点線と一点鎖線によって示した区間(t,t+h)=(1,2)において、この関数を線形近似したい。テイラー級数は次のようになる。
【数2】
【0077】
テイラー級数は、関数f(t)自体は区間(1,2)内で上昇するものの、f(t)の傾きが負となる不都合なタイミング(t=1)で対象関数を近似する。
【0078】
図9Bは、対象の関数とテイラー級数多項式との間の絶対近似誤差910を示している。図から理解できるように、テイラー級数の近似誤差910は、考慮されている時間区間(1,2)の間、制約を受けずに成長する。
【0079】
テイラー級数の近似誤差を減らすには2つの可能な方法がある。
- 更新区間を減少させる、および/または
- 高次の係数を含める
【0080】
しかしながら、これらの手法はいずれもオーバーヘッドの増加につながり、アプリケーションによっては望ましくない場合がある。
【0081】
<実施形態>
近似誤差を制限するために、一実施形態では、共通タイミングアドバンスの近似は、所与の時間区間における最大近似誤差を最小化するように係数が設計されている多項式に基づく。近似誤差は、多項式と実際の共通TA値との差の絶対値によって与えられる。
【0082】
以下では、5G移動通信システム向けに想定される新しい無線アクセス技術について、これらのニーズを満たすUE、基地局、および手順について説明するが、LTE移動通信システムでも使用することができる。複数の異なる実装形態および変形形態も説明する。以下の開示は、上述した議論および発見事項によって促進され、例えば、その少なくとも一部に基づくことができる。
【0083】
一般に、本開示の基礎となる原理を明確、簡潔に、かつ理解しやすい方法で説明できるように、本明細書では多くの想定がなされていることに留意されたい。しかしながら、これらの想定は、本明細書において説明を目的としてなされた単なる例であり、本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。当業者であれば、以下の開示の原理および特許請求の範囲に記載された原理は、異なるシナリオに適用することができ、本明細書に明示的に記載されていない方法で適用することができることを認識するであろう。
【0084】
さらに、次の3GPP 5G通信システムのための新しい無線アクセス技術のコンテキストで使用される特定の専門用語は、まだ完全に決定されていない、または最終的に変更される可能性があるが、以下で使用されている手順、エンティティ、層などの用語のいくつかは、LTE/LTE-Aシステムに、または現在の3GPP 5G標準化において使用されている専門用語に、密接に関連している。したがって、用語は将来的に変更されうるが、実施形態の機能に影響を与えることはない。したがって、実施形態およびその保護範囲は、より新しいまたは最終的に合意された専門用語が存在しないために本明細書で例示的に使用されている特定の用語に制限されるものではなく、本開示の機能および原理の基礎をなす機能およびコンセプトの観点においてより広義に理解されるべきであることが、当業者には認識されるであろう。
【0085】
例えば、移動局、移動ノード、ユーザ端末、ユーザデバイス、またはユーザ機器(UE)は、通信ネットワーク内の物理的なエンティティ(物理ノード)である。1つのノードがいくつかの機能エンティティを有することができる。機能エンティティとは、所定の機能セットを実装する、および/または、所定の機能セットを同じノードもしくは別のノードまたはネットワークの他の機能エンティティに提供するソフトウェアまたはハードウェアモジュールを指す。ノードは、自身を通信設備または通信媒体にアタッチする1つ以上のインターフェースを有することができ、ノードは、これら通信設備または通信媒体を通じて通信することができる。同様に、ネットワークエンティティは、機能エンティティを通信設備または通信媒体にアタッチする論理インターフェースを有することができ、機能エンティティは、これら通信設備または通信媒体を通じて別の機能エンティティまたは対応するノードと通信することができる。
【0086】
本明細書における「基地局」または「無線基地局」という用語は、通信ネットワーク内の物理的なエンティティを指す。移動局と同様に、基地局はいくつかの機能エンティティを有することができる。機能エンティティとは、所定の機能セットを実装する、および/または、所定の機能セットを同じノードもしくは別のノードまたはネットワークの他の機能エンティティに提供するソフトウェアまたはハードウェアモジュールを指す。物理エンティティは、スケジューリングおよび設定の1つ以上を含む、通信デバイスに関するいくつかの制御タスクを実行する。なお基地局の機能と通信デバイスの機能は、単一のデバイス内に統合されてもよいことに留意されたい。例えば、移動端末が、他の端末のために基地局の機能も実施することができる。LTEで使用される専門用語はeNB(またはeNodeB)であり、5G NRで現在使用されている専門用語はgNBである。
【0087】
非地上系ネットワーク(NTN)エンティティという用語は、NTNに関する上記の節で紹介したように、宇宙飛行体または空中飛行体などの非地上系ネットワークのエンティティとして広く理解することができる。以下では、そのようなNTNエンティティの例として衛星のみを想定しているが、NTNエンティティの他の例も対象となることは明らかである。
【0088】
以下の実施形態では、NTNエンティティ(例えば、衛星)を介したUEとネットワークノードとの間のデータ伝送の一部として、改善されたタイミングアドバンス決定が実行されることを例示的に想定する。ネットワークノードという用語は、図6のような基地局(例えばgNB)、または図7に示したNTNゲートウェイなど、コアネットワーク(CN)へのインターフェースを有する別のエンティティを指す。以下では、図8のすでに紹介したシナリオを例示的に参照することができる。説明を簡潔にする目的で、ゲートウェイと(ネットワークノードを形成する)gNBとが同じ場所に配置されていることを例示的に想定しており、これにより、以降の説明において、ゲートウェイとgNB(基地局)が物理的および論理的に分離されることはない。したがって、以下では、ゲートウェイがNTNエンティティとgNBの間に配置されていること、またはgNBに統合されていることに特に言及することなく、改善されたタイミングアドバンス決定が、UE、NTNエンティティ、およびgNBの間で行われるものとして説明される。
【0089】
図10は、ユーザ機器110(通信デバイスとも称される)およびスケジューリングデバイス160(ここでは例示的に、基地局、例えばeLTE eNB(代替的にng-eNBと称される)または5G NRにおけるgNBに配置されると想定される)の一般的で簡略化された例示的なブロック図を示している。UE 110およびeNB/gNB 160は、送受信機を使用して、それぞれ(無線)物理チャネルを介して互いに通信する。通信は矢印150によって示されている。さらに、NTNエンティティは、スケジューリングデバイスと同一または類似する構造を有することができ、例えば送受信機および処理回路を含む。したがって、UE 110およびgNB 160は、通信システム100の一部である。
【0090】
デバイス110およびデバイス160の両方は、送受信機120、170および処理回路130、180を備えることができる。送受信機120,170は、受信機および送信機を備える、かつ/または、受信機および送信機として機能することができる。処理回路130、180は、1つ以上のプロセッサまたは任意のLSIなどの1つ以上のハードウェアとすることができる。送受信機と処理回路との間には、入出力点(またはノード)があり、処理回路は、動作中に、入出力点(またはノード)を通じて送受信機を制御する、すなわち、受信機および/または送信機を制御し、受信/送信データを交換することができる。送受信機は、送信機および受信機として、1つ以上のアンテナ、増幅器、RF変調器/復調器などを含むRF(無線周波数:radio frequency)フロントを含むことができる。処理回路は、処理回路によって提供されるユーザデータおよび制御データを送信するように送受信機を制御すること、および/または、処理回路によってさらに処理されるユーザデータおよび制御データを受信することなどの制御タスクを実施することができる。処理回路はまた、判定する、決定する、計算する、測定するなどの他の処理を実行する役割を担うこともできる。送信機は、送信する処理およびそれに関連する他の処理を実行する役割を担うことができる。受信機は、チャネルを監視するなど、受信の処理およびそれに関連する他の処理を実行する役割を担うことができる。
【0091】
以下では、改善された送信手順のさまざまな実装形態について説明する。これに関連して、改善された送信手順に参加する改善されたUE、改善されたNTNエンティティ、および改善された基地局などの改善されたエンティティを提示する。UE、NTNエンティティ、およびBSの動作に対応する方法も提供する。
【0092】
一実施形態によれば、ネットワークノードが提供される。ネットワークノードは、図10に示しているものに類似する構造を有することができる。ネットワークノード160は、処理回路180および送受信機170を備える。この実施形態における処理回路180は、有効区間について、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数を決定するように構成されている。近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。その後、送受信機170が、決定された係数を送信する。
【0093】
有効区間は、係数を決定する前にネットワークノードによって決定する(すなわち予め決定する)ことができ、係数とともにUEに示すことができる。また、有効区間を係数とは別に(場合によっては係数をシグナリングするよりも少ない頻度で)示すことも可能である。このような手法により、例えばタイミングアドバンスの実際の挙動に応じて近似の精度を制御することが可能になる。しかしながら、シグナリングによる設定を可能とせずに、例えば規格において事前定義された(固定された)有効区間を提供することも考えられる。本開示は、ネットワークノードおよび/またはユーザデバイスにおいて有効区間を取得する特定の方法に限定されない。任意の有効区間内において、最大誤差の最小化を採用する近似により、タイミングアドバンスのシグナリングの効率を改善することができる。
【0094】
一般に、ネットワークとUEとの間のタイミングアドバンスは、フィーダリンク遅延、サービスリンク遅延、および場合によってはネットワーク制御遅延などの補正成分によって定義され得る。上述した多項式近似は、フィーダリンク部分(すなわちネットワークと衛星との間)に関連して適用される。本開示は、サービスリンク遅延またはネットワーク制御遅延を決定および/またはシグナリングするための特定の手法に限定されない。
【0095】
適切な有効区間長の選択とは別に、近似誤差は、多項式の次数および複数の時間インスタンスにおける時間インスタンスの数を選択することによって、さらに制御することができる。多項式の次数が高いほど、また最大誤差の最小化が実行される時間インスタンスの数が多いほど、近似はより正確になり得る。
【0096】
後からさらに詳しく説明するように、基準時間インスタンスは、何らかのシステムタイミングパラメータに対してネットワークノードおよびユーザデバイスによって同じ方法で決定され得るため、追加のシグナリングは必要ない場合がある。しかしながら、実装形態によっては、ネットワークノードからユーザデバイスに基準時間インスタンスを明示的にシグナリングすることが有利な場合がある。有効区間(およびその中の複数の時間インスタンス)は、基準時間インスタンスに対して決定(指定)される。いくつかの実施形態における基準時間インスタンスは、有効区間を開始させることができ、有効区間の複数の時間インスタンスのうちの最初の時間インスタンスであってもよい。しかしながら、本開示は、基準時間インスタンスと有効区間との間のこのような関係に限定されない。一般に、基準時間インスタンスと有効区間との他の任意の事前設定された相対位置がサポートされてもよい。
【0097】
上記のネットワークノードの機能は、上述した処理回路180に機能的に対応する集積回路上に組み込まれてもよいことに留意されたい。このような処理回路は、送信機を制御して送信および/または受信を実行する。例えば、回路180は、決定された係数を送信するように送受信機(送受信機170など)を制御することができる。ここで、係数を送信するとは、一般に、ネットワークノードから1つ以上のユーザデバイスに係数を伝達することを意味する。係数は任意の方法で示すことができ、例えば、互いにもしくは過去の係数に相対的に符号化された係数、または受信側のユーザデバイスが係数を復元し、それらを使用して多項式を定義できるようにする任意の表現で、示すことができる。共通TA成分は、同じNTNエンティティ(例えば衛星)によってサービス提供される1つ以上のデバイスに共通であるため、ネットワークノードまたはNTNエンティティによってブロードキャストされるシステム情報などのブロードキャストによって送信されてもよい。図6の例では、例えばgNBは、RRCプロトコルにおいて定義されたシステム情報ブロック(SIB)内のさらなる情報とともに、係数を(NTNエンティティを介して)送信することができる。
【0098】
上述したネットワークノード160に対応して、(例えば図10のような)ユーザデバイス110が提供される。ユーザデバイス110は、送受信機120および処理回路130を備える。送受信機120は、ネットワークノード(例えば、上述したネットワークノード160)から多項式の係数を受信するように構成する(例えば処理回路130によって制御される)ことができる。処理回路130は、その多項式に基づいて、衛星を介してネットワークノードにデータを送信するための、有効区間に対するタイミングアドバンスを決定するように構成されている。多項式は、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する。近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。送受信機120は、決定されたタイミングアドバンスを使用してデータを送信するようにさらに構成されている。
【0099】
ここで、データとは、ペイロードおよび/または制御データなどあらゆる種類のデータを意味する。ネットワークノードの機能は、集積回路によって実装することができる。このような集積回路(上記のネットワークノードを参照しながら述べたものと同様)は、送受信機を実装する必要はない。しかしながら、処理回路は図10の入出力ノードのような対応するインターフェースを有することができ、処理回路は、このインターフェースを介して送受信機を制御してデータを受信および/または送信することができる。
【0100】
上述したように、ネットワークノードおよびユーザデバイスにおいてタイミングアドバンスの近似計算を使用することで、誤差が低減されるという利点を得ることができ、したがって品質が向上し、システムリソースをより効率的に利用できるようになる。
【0101】
(ネットワークノード、ユーザデバイス、対応する集積回路または方法の)例示的な実装形態では、上記の多項式p(t)は、以下の形式を有する。
【数3】
【0102】
ここで、c,...,cは多項式の係数、nは多項式の事前定義された正の整数次数、trefは基準時間インスタンスである。
【0103】
本開示は、最大誤差を最小化するための特定の手法に限定されない。しかしながら、実際の実装上の理由から、有効区間の複数の離散的な時間インスタンスにおいてのみ誤差を考慮(サンプリング)してもよい。有効区間は、共通のTAが近似され、したがって、多項式の係数の特定のセットが有効である時間区間であることに留意されたい。この有効区間は、ネットワークがユーザデバイスに係数の特定のセットをシグナリング(ブロードキャスト)する更新区間に対応していることができる。本明細書において更新とは、次の有効区間の新しい係数セットを取得することである。
【0104】
例えば、多項式の係数は、近似誤差の符号が複数の時間インスタンスにおいて交互に変化することを強制することによって決定することができる。
【0105】
例示的な実装形態では、多項式の係数は以下を解くことによって決定される。
【数4】
【0106】
ここで、p(t)は時間インスタンスtにおける多項式であり、iは、等距離にある複数の時間インスタンスのうちの時間インスタンスの整数インデックスであり、Eは、近似誤差の値であり、NTA,common(t)は、時間インスタンスtにおけるネットワークノードと衛星(または一般的にNTNエンティティ)との間の実際のタイミングアドバンス成分であり、ネットワークノードの位置と衛星の位置とに基づいてネットワークノードによって決定される。複数の時間インスタンスにおける時間インスタンスtの数は、多項式の次数よりも大きい。
【0107】
したがって、この特定の例示的な最適化では、近似誤差は-Eと+Eの間で振動する。これは、項(-1)によって達成される。しかしながら、この振動は、異なる方法で、例えば(-1)i+1または他の方法で実施することもできる。さらに、Eはすべての時間インスタンスに対して同じである。Eは、多項式pの係数とともに変数として解かれる。時間インスタンスの数を、多項式の次数に2を加算した数に等しく選ぶと有利であり得る。このようにして、フルランクの連立方程式が得られ、連立一次方程式を解く(計算する)ための周知の手法によって解くことができる。
【0108】
係数c、c、cなどの設計は、有効(更新)区間h内で複数のサンプリング点t∈(tref,tref+h)を選択することから始まる。この例示的な実装形態では、trefは有効区間の開始点である。これらのサンプリング点において、多項式p(t)と実際の関数NTA,common(t)が誤差Eだけ異なり、誤差Eは、上述した式p(t)+(-1)E=NTA,common(t)で与えられるように、サンプリング点間で符号が交互に変わる。この等式に基づき、異なる時間インスタンスtについて線形方程式系を構築し、多項式の係数と誤差Eについて解くことができる。
【0109】
説明のための簡単な例として、2つの係数を有する線形多項式p(t)=c+c(t-tref)を、サンプリング点t=tref,t=tref+h/2、およびt=tref+hにおいて近似することができる。
【0110】
方程式系は次のようになる。
【数5】
これは次のように簡略化することができる。
【数6】
【0111】
ここで多項式の次数は1であり、近似が計算される3つの時間インスタンスがある。その結果、線形独立な列を有するフルランク行列が得られる。この方程式系を解くと、係数cおよびcと、最大誤差Eが得られる。ガウス消去法、LU分解などの線形代数の標準的なツールを使用して係数cを解くことができ、この係数をgNBによってシグナリングすることができる。したがって、UEは、示された係数が有効期間にわたって最大近似誤差を最小化するものと想定することができる。
【0112】
サンプリング点を繰り返し変更することで、最大誤差Eをさらに最小化することが可能であり得る。繰り返し形式では、このようなアルゴリズムはRemezアルゴリズムとして知られている。特に、可能な実装形態では、上記の線形連立方程式を解いた結果の係数は、Remezアルゴリズムに従って1回以上の繰り返しを適用することによって修正される。
【0113】
Remezアルゴリズムは、関数f(t)を、次数nの多項式p(t)=c+ct+・・・+cとして近似する。多項式の係数は、近似区間におけるn+2個のサンプリング点t,t,...,tn+1のセットTから開始して反復的に計算される。サンプリング点の一般的な選択肢は、近似区間に線形写像されたチェビシェフ多項式の極値である。
【0114】
Remezアルゴリズムのステップは以下のとおりである。
1) 線形連立方程式p(t)+(-1)E=f(t)(ここでi=0,1,2,...,n+1)を構築し、係数c,c,...,cおよび誤差値Eについて解く。
2) 係数cを使用して多項式p(t)を形成する。
3) 局所最大誤差|p(t)-f(t)|の集合T’を求める。
4) 各t∈T’における誤差が等しい大きさであり、かつ符号が交互に変化する場合、p(t)はミニマックス近似多項式である。そうでない場合、TをT’に置き換えて上のステップを繰り返す。
【0115】
この結果を、最良近似の多項式またはミニマックス近似アルゴリズムと呼ぶ。
【0116】
Remezアルゴリズムの数値的に難しい側面は、ステップ3、すなわち数値的にしか評価できない関数fの局所最大誤差の識別である。
【0117】
しかしながら、上述した連立方程式を一度計算することによって得られる結果は、十分に正確な結果をすでに提供している可能性があり、反復は必要ないことに留意されたい。反復は精度を向上させるが、複雑さを増大させる可能性もある。したがって、特定の用途に関しては、繰り返しありまたは繰り返しなしのRemezアルゴリズムを使用することができる。
【0118】
上記の例では、複数の時間インスタンスtは、有効区間内で等距離に分布している必要はない。しかしながら、等距離に配置することで、簡単かつ効率的に解くことができる。
【0119】
図9Aおよび図9Bに戻ると、最大近似誤差を最小化することによって多項式の係数を計算する手法は、有効区間にわたってより正確な結果を提供することを理解できる。上述した連立方程式を図9Aの例に適用することにより、ミニマックス多項式p(t)が得られる。
【数7】
【0120】
二次関数f(t)の対応する線形「ミニマックス」近似p(t)を図9Aに示す。ミニマックス近似p(t)は、上述したテイラー近似p(t)よりも、放物線f(t)の形状に近くなることがわかる。ミニマックス多項式の誤差は、E=0.125の振幅に限定される。誤差振幅Eは係数の数の結果として生じる(係数が多いほどEは小さくなる)。
【0121】
図9Bは、テイラー近似(曲線910)とミニマックス近似(曲線920)の近似誤差値Eを示している。テイラー級数の場合の誤差は、近似点での傾きが異なるために制約を受けずに増大するのに対し、ミニマックス近似では、更新期間内の誤差が最大レベルを超えないように制限される。テイラー級数のサンプリング点(ここではt=1)では近似誤差がゼロであるのに対して、ミニマックス多項式では誤差がゼロではないことに留意されたい。しかしながら、単一のサンプリング点におけるテイラー級数のこの利点よりも、ミニマックスではサンプリング区間全体にわたり近似誤差が小さいことのメリットが上回る。
【0122】
以下では、共通TAを取得するためのいくつかの具体的な例示的な実装形態を提供する。以下の例示的な実装形態は、上述した実施形態および例のいずれかと組み合わせることが可能である。
【0123】
第1および第2の例示的な実装形態は、(ネットワークノードおよび/またはユーザデバイスにおいて)基準時間インスタンスを取得することに関する。
【0124】
基準時間インスタンスの取得に関する第1の例示的な実装形態によれば、ネットワークノード160の送受信機170は、基準時間インスタンスの指示を送信する。送受信機は、送信を実行するように処理回路180によって制御することができる。本開示は、特定の種類の送信に限定されない。例えば、基準時間インスタンスの指示は、係数および/または有効区間などの他のシグナリングデータとともに送信されてもよい。
【0125】
5G/NRシステムでは、基準時間インスタンスは特定のNTNエンティティによってサービス提供されるUEに共通であるため、基準時間インスタンスの指示をシステム情報の中で送信することが有利であり得る。上述したように、上記の係数および/または基準時間インスタンスの指示および/または有効区間の指示のうちの1つ以上を、システム情報の中で伝達することができる。
【0126】
例えば、以下の情報要素SIB_NTNは、NTN設定パラメータを伝えるシステム情報ブロック(SIB)のRRC定義において提供される。
【表3】
【0127】
頭字語CTAは共通タイミングアドバンスを表す。パラメータCTA_0、CTA_1、CTA_2、CTA_Nは、(ミニマックスによって決定される)上述の特徴を有するCTA近似多項式のそれぞれのN+1個の係数を示す。Nは正の整数であることに留意されたい。Nは、事前定義された(固定された)ものであってもよいし、設定可能なものであってもよい。Nの設定は、同じ要素SIB_NTNにおいて伝えられてもよいし、別々に、かつ場合によっては係数よりも少ない頻度でシグナリングされてもよい。
【0128】
パラメータCTA_T1は、エポック時間とも呼ばれる基準時間インスタンスの指示を伝える。例えば、CTA_T1は、例えばUTC(絶対時刻を示し、例えばGPSによって提供される)のようなフォーマットで、明示的にシグナリングすることができる。別の例としては、スロット、フレーム、および/またはシステムフレームのカウンタのような暗黙的なフォーマットであってもよい。言い換えれば、CTA_T1は、システムタイミングに相対的に、および/または、いくつかのシステム時間単位においてシグナリングすることができる。
【0129】
さらに、パラメータCTA_hは有効区間を表す。有効区間は、(時間領域における)その長さによって、または事前定義された時間単位あたりの頻度によって示すことができる。SIB_NTNは、NTN通信を設定するためのさらなる設定パラメータを含むことができる。上記の構文に例示的に示されるように、いくつかのNTN通信エフェメリスデータも、SIB_NTNにおいて提供することができる。
【0130】
SIB_NTNは、任意の他のシステム情報と同様に、例えばシステム情報ブロック内で、上述したようにスケジューリング情報に従って定期的に送信することができる。
【0131】
この第1の実施形態では、CTA_0(=c)、CTA_1(=c)、...、CTA_N(=c)は、有効期間(区間)CTA_hにわたって最大近似誤差を最小化するように設計された係数である。これらは有効期間CTA_hの間も有効である。有効性は、有効期間のCTAを近似するためにユーザデバイスが係数を使用できることを意味する。この第1の実施形態では、エポック時間は、CTA_T1として明示的にシグナリングされる。この例のCTA_hの有効期間は、CTA_T1から始まる。有効期間中の任意の時刻tについて、ユーザデバイスは、以下のようにCTA NTA,common(t)を計算することができる。
【数8】
【0132】
上記の計算は例示に過ぎないことに留意されたい。一般的に、SIB_NTNの要素は、計算に直接使用される必要はない。例えば、SIB_NTNの要素は、係数とエポック時間の指示を、符号化された方法で、または式に直接使用するのには適さない表現で、伝えることができる。このような場合、係数およびエポック時間を最初に復元し(SIB_NTN要素に基づいて決定し)、次いで方程式で使用する必要がある。
【0133】
図11は、gNB/GW、衛星、ユーザデバイス間の例示的なアップリンク(UL)およびダウンリンク(DL)のフレームタイミングを示している。以下では、いくつかの一般的なTAの態様について、図11を参照しながら説明する。TAの一般的な概念は、移動通信システムにおいて以前から知られていることに留意されたい。以下の説明は、いくつかの説明および背景を提供するためのものである。ただし、本開示は以下に限定されるものではなく、標準化および文献において現在理解されているTAを使用して機能することができる。
【0134】
時刻tにおいて、gNBは、アップリンクおよびダウンリンクのフィーダリンク遅延df,ULおよびdf,DLからなる共通TAを記述する多項式p(t)を送信する。衛星は、時刻tにおいてDL信号をUEに中継する。UEは、時刻tにおいてこのDL信号を受信する。時刻tにおいて、UEに、基準時刻(ここではt)、多項式係数、衛星エフェメリス、および(GNSSを介した)地上での自身の位置、が提供されるものと想定する。これらのデータは、UEがタイミングアドバンス(TA)値NTAを計算するのに十分である。アップリンク送信タイミングは、DL受信タイミングからTA値を減算することによって、すなわちtUL=t-NTAで得られる。
【0135】
この時間アドバンスの説明は例示的かつ単純化したものであり、実際、特に5Gとは異なり得ることに留意されたい。例えば、本開示の他の部分および例にも記載されているように、実際には、SIB送信タイミング(t)と基準タイミング(エポック時間)は必ずしも同一ではない。
【0136】
UL送信タイミングtULは、それが制御されるDL信号の受信に先行することはできないため、以降のアップリンク送信に適用される。
【0137】
その後の時刻t~tの間に、UEは1つのラウンドトリップラウンドを完了する(t-tのラウンドトリップ遅延に相当)。UEは、UL送信タイミングをtUL=t-NTAとして決定する。tULにおいてUL信号を送信することで、理想的には、gNB(ここではゲートウェイ、GWとも呼ばれる)において、t(すなわちgNBがDL信号を送信する時刻)に近接してUL信号を受信することができる。
【0138】
上記のTAの説明は簡略化されていることに留意されたい。実際には、ネットワークによってUEに示されるKoffsetなど、さらなる(1つ以上の)時間オフセットが存在し得る。UEは、gNBによってUEに示されたKoffsetからtを導出することができる。その後、gNBでの目標受信タイミング(t)と一致するように、tおよびtの間の(gNB)RTTに従ってNTAを決定する必要がある。
【数9】
【数10】
【0139】
例として、数式9によって与えられる、ゲートウェイと衛星間の前進方向遅延df,DLを考える。その根拠として、gNBは時刻tにDL信号を送出し、信号がdf,DL秒伝播して、時刻t+df,DLに衛星に到着する。衛星は、送信時刻tと受信時刻t+df,DLの間に移動している。同様に、t=t-df,DLと置き換えることで、後方方向のDLのフィーダリンク遅延が得られる。数式10は、衛星を時刻tに相当する位置に配置し、その解df,DLは、gNBが位置していたはずの場所、すなわちt-df,DLに相当する位置を明らかにする。
【0140】
以下の表は、前進方向および後進方向の4つのセグメントすべてについての方程式を示したものである。これらの方程式は、例えば数値的に(例えば反復的に)解くことができる。そのための手法は、従来技術から公知である。
【表4】
【0141】
概念的に、フィーダリンクの遅延dおよびサービスリンクの遅延dは、DLおよびULの2つの成分からなり、すなわち、d=df,DL+df,ULおよびds=ds,DL+ds,ULである。特に、発想は、共通TAを以下のようにモデル化することである。
【数11】
【数12】
【0142】
図11を参照して、以下では、タイミングアドバンスのためのUEの手順を簡潔に説明する。この手順は図13に概略的にさらに示されている。上述したように、gNBはステップ210において、時間区間(t,t+h)の多項式p(t)を送信する。UEは、ステップ220において、時間インスタンスtに多項式p(t)を受信する。
【0143】
UEは、次に(ステップ230において)時刻tにおいてDL信号を受信する。UEは、そのGNSS能力および衛星エフェメリスに基づいて、ステップ240において数式12を計算することができ、したがってUEは、例えば次のように、DL信号が衛星によって中継されたタイミングを知ることができる。
【数13】
【数14】
【0144】
UEはフィーダリンク遅延をNTA,common(t)として導出でき、したがってUL信号が衛星によって中継されるタイミングを知ることができる。理想的には、UEは共通TA NTA,common(t)を認識する。対応するタイミングは、t=t-NTA,common(t)として計算される。実際にはUEは、上で説明したように、共通TAの多項式近似、すなわち数式14のみを認識する。したがって、UEは、ステップ250において、UL信号が衛星によって中継されなければならない時刻を以下のように推定する。
【数15】
【数16】
【0145】
再びGNSSデータおよび衛星エフェメリスデータに基づいて、UEはUL上の遅延を数式16によって計算することができ、ステップ260において次式によりULタイミングを取得する。
【数17】
【数18】
【0146】
理想的には、tUL=tである。しかしながら、共通TA NTA,common(t)は多項式としてUEに提供されるため、一般的に等式が成り立つのはおよそ数式18のみである。UEがUL送信タイミングを決定し、それに従って270でアップリンク信号を送信すると、ULフレームは、この例では時刻tにおいて送信されるgNBにおけるDLフレームとうまく整列して到着するはずである(ステップ280)。これは次のようにモデル化することができる。
【数19】
【0147】
残留タイミング誤差は次のように推定される。
【数20】
【0148】
上述したタイミングアドバンスメカニズムは、上述した、または以下の実施形態および例のいずれにも適用可能である。
【0149】
基準時間インスタンスの取得に関する第2の例示的な実装形態によれば、エポック時間(基準時間インスタンス)は、シグナリングされる必要がなく、ネットワークとユーザデバイスとの間でシグナリングされない。特に、SIB_NTNは依然として送信され得るが、以下に示すように、SIB_NTNはCTA_T1要素を含まない。
【表5】
【0150】
ネットワークノードおよびユーザデバイスの両方またはいずれかにおいて、処理回路130および/または180は、システム情報の送信のタイミング(例えば、アップリンクおよび/またはダウンリンク送信タイミング)に基づいて基準時間インスタンスを決定するように構成することができる。
【0151】
例えば、基準時間インスタンスは、以下の基準点の少なくとも1つに基づいて決定される。
- システム情報(例えばSIB_NTN)が送信されるシステム情報ウィンドウの開始点。(受信側エンティティとしての)UEは、SIB受信タイミングから、すなわちUEがダウンリンクでSIB_NTNを受信したタイミングから、開始点を導出することができる。
- システム情報が送信されるフレームのシステムフレーム番号(SFN)の開始点。システムフレーム番号は、MIBにおいてシグナリングすることができる。
- システム情報が送信されるフレームの開始点。
- システム情報のタイミングと、基準時間インスタンスに対する事前定義されたオフセット。このオプションを図12に示す。
【0152】
例えば、基準点は直接以下のいずれかとすることができる。
- SIB_NTNが送信されるシステム情報(SI:system information)ウィンドウの開始点。
- SIB_NTNが送信されるSFNの開始点。
- SIB_NTNが送信されるフレームの開始点。
- SIB_NTNタイミングからdelta_t(δt)を引いたもの。この例でのdelta_t(δt)は、基準時間インスタンスから始まる(相対的な)固定オフセットである。
【0153】
図12は、10msの持続時間を有するシステムフレームを示している(10msは、例えば5Gにおける典型的なシステムフレーム持続時間である)。「システムフレーム」という用語は、フレームが、通信システムにおけるデータ伝送のために(例えば規格によって)定義されていることを意味する。SIB_NTNは、システムフレームの開始tDLからのオフセットδtによって与えられるシステムフレーム内の特定の位置(例えば、サブフレームおよび/またはスロットおよび/またはシンボルによって与えられる)で送信される。
【0154】
上記の基準点の定義により、UEはgNBと同じ方法で基準時刻(エポック時間)を導出することができる。例えば、UEは相対タイミングτ(τは基準時間インスタンスに対する相対タイミング)を使用して、以下のようにNTA,commonを計算する。
【数21】
【0155】
ここで、τはUEのデータ送信タイミングであり、ds,DLは、上述したように衛星の位置およびUEの位置から計算される。パラメータCTA_0(=c)、CTA_1(=c)などは、基準時間インスタンスtに対して計算され、すなわち図11に示したように衛星が基準位置である。基準時間インスタンスtは、衛星がUEにダウンリンク信号を送信する時間インスタンスである。このサービスリンクにおける遅延はdである。このように、UEは、DL受信タイミングからdを差し引いた値に基づいて導出される基準点から、tを計算することができる。有効期間は、tからCTA_h(=h)の持続時間にわたり保持される。
【0156】
第1および第2の例示的な実装形態では、基準時間インスタンスは、t、t、またはtとtの間の任意の値であってよいことに留意されたい。一般に、近似がUEに近いほど、達成可能な誤差が小さくなり得る。したがって、実装形態によってはtが望ましい場合があり、なぜならそれにより近似誤差が小さくなるためである。一方、tは、gNBの実装においていくつかの利点がある。
【0157】
要約すると、この第2の実施形態における基準時間インスタンスは、システム情報の受信時刻と、衛星とユーザデバイスとの間のサービスリンク遅延とに基づいて決定することができる。
【0158】
以下では、係数を有するSIB_NTNを送信する頻度(および場合によっては、エポック時間および/または有効区間設定)およびそのような係数の有効性に関係する、第3、第4、第5、および第6の例示的な実装形態について説明する。
【0159】
第3の例示的な実装形態によれば、係数を決定した後、決定された係数および基準時間インスタンスの指示を含むシステム情報の複数回の繰り返しが、有効区間中に送信される。
【0160】
1つの有効期間中に同じ係数が複数回繰り返されるため、SIB_NTNの中でタイミング基準(基準時間インスタンス)も明示的に提供することが有利である。そうでなければ、UEは、有効期間中に受信したSIB_NTNが、どのSIB_NTNであるかを知ることができない。この第3の例示的な実装形態では、SIB_NTNは、係数が更新されるよりも頻繁にシグナリングされる。言い換えれば、UE側でのSIB_NTNからの更新された係数(および場合によっては他の要素も)の読み取りは、SIB_NTNの送信期間よりも頻度が低い。gNBが係数を送信する周期は、UEが係数を更新する周期よりも短い。
【0161】
図14は、システム情報にSIB_NTNを頻繁に、例えば0.32秒ごと(32フレームに対応)に埋め込むが、UEはより長い有効区間、例えば10.24秒(1024フレーム、すなわちシステムフレーム番号の1周期に対応)に従ってのみSIB_NTNコンテンツを更新する例を示している。したがって、最初の共通TA値は11:21’00に更新され、11:21’10.24における次の更新まで維持される。有効区間の間、係数の繰り返しはgNBによって、10.24/0.32=32回、送信される。
【0162】
図14では、SIB_NTNコンテンツは、各SIB受信タイミングkにおいて、次の10.24-(0.32×k)秒にわたって有効である。UEは、示されたエポック時間とSIB受信タイミングの差として(0.32×k)を導出する。あるいは、SIBの周期性およびカウントkは、(例えばシステム情報の中で)gNBによって明示的に設定されてもよい。図14の例では、kは1~9の任意の値を有することができる。例えば、UEがSIB_NTNの5回目の繰り返しを受信した場合、UEは、10.24-(0.32×5)=8.64秒においてSIB_NTNを更新する(再度読み込む)必要がある。一方、UEがSIB_NTNの20回目の繰り返しを受信した場合、UEは、10.24-(0.32×20)=3.84秒においてSIB_NTNを更新する(再度読み込む)必要がある。このことは図14では、UEが係数を更新しなければならない残り時間に対応する異なる長さを有する水平矢印によって示されている。有効性タイマーの値は、SIB受信タイミングと、SIB_NTNに示されたエポック時間との時間差から導出される。
【0163】
この手法の利点の1つは、アイドル状態のUEは迅速に接続できるのに対し、接続状態のUEは低い頻度でシステム情報を更新できることである。
【0164】
したがって、この例示的な実装形態では、ユーザデバイスの処理回路は、以下を行うように構成することができる。
・ ユーザデバイスが接続状態にある場合、有効区間に対応する期間を有するシステム情報を受信するように送受信機を制御する。
・ ユーザデバイスがアイドルモードにある場合、有効区間中に送信されたシステム情報の複数の繰り返しのうちの1つにおいて、基準時間インスタンスの指示とともにシステム情報を受信するように送受信機を制御する。
【0165】
第4の例示的な実装形態によれば、有効区間はシステム情報期間に対応し(または等しく)、システム情報期間は、係数が決定されてシステム情報内で送信される期間である。
【0166】
このことは図15に示されている。図から理解できるように、SIB_NTNのシグナリングとUEによるSIB_NTNの更新は一致している。gNBが係数を送信する周期は、UEが係数を更新する周期と同じである。この場合、エポック時間は、例えばSIB_NTNの位置によって、暗黙的にUEに示すことができる(上記の第2の例示的な実装形態を参照)。
【0167】
図15の例では、システム情報には例えば10.24秒ごとにSIB_NTNが埋め込まれ、UEは同じく10.24秒ごとにSIB_NTNを読み出して更新する。この手法は、第3の例示的な実装形態よりも単純であり得る。一方、大きな指示期間は、接続しているUE(例えば、アイドルモードのUE)に対するレイテンシを増加させる可能性がある。この手法の利点の1つは、エポック時間の指示が必要ないことである。
【0168】
第5の例示的な実装形態によれば、システム情報は、第1の有効区間について決定された係数と、第1の有効区間とは異なる長さおよび/または基準時間インスタンスを有する第2の有効区間について決定された係数とを含む。
【0169】
例えば、SIB_NTNは、異なる有効期間(例えば、1つは0秒~5.12秒、もう1つは0秒~10.24秒)を有する2つのCTAパラメータセット、を含む。
【0170】
図14に示した第3の例示的な実装形態において、UEが、有効期限が切れる前の1つまたは2つのSIB送信期間(例えば図14の例では11:21’10.24-0.32秒)においてSIB_NTNを取得するとき、UEは極めてすぐにNTN-SIBを再度取得する必要がある。係数の2つのセットを送信することによって、このような頻繁なSIBの読み取りを回避することができる。係数のセットは2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0171】
第6の例示的な実装形態によれば、有効区間がシステム情報期間よりも長い。さらに、システム情報期間は、係数が決定されて基準時間インスタンスの指示とともにシステム情報内で送信される期間である。
【0172】
図16はそのような例を示している。水平矢印で示したように、有効期間は重なっていてもよい。この例では、有効期間は、10.24秒の同じ長さを有する。gNBは、UEがSIB_NTNを読み取るように要求される頻度(ここでは10.24秒毎)よりも高い頻度(ここでは0.32秒毎)でSIB_NTNをシグナリングする。この例では、シグナリングされる各SIB_NTNは、更新された係数を含む。したがって、第3の例示的な実施形態(図14)以外では、係数は繰り返されず、SIB_NTNの送信ごとにgNBによって更新される。UEは、任意のタイミングでSIB_NTNを読み取り、係数(およびそれに対応してTA)を更新することができる。ただし、実際にSIB_NTNを読み取る(受信する)必要があるのは、最後に受信したSIB_NTNの有効性が切れた後(ここでは受信から10.24秒後)である。エポック時間(基準時間インスタンス)は、UEに明示的にシグナリングされる(エポック時間のシグナリングに関する第1の例示的な実装形態を参照)。
【0173】
図14図16を参照しながら提示した例では、特定の有効区間長および特定のSIB更新タイミングを適用している。しかしながら、本開示は、これらの単に例示的なタイミングに限定されない。当業者には明らかであるように、特定の時間区間は、本明細書で提示されている時間区間より長くても短くてもよい。
【0174】
<例示的なシミュレーション結果>
以下では、近似を決定するために最大誤差の最小化を適用することにより得られる係数を想定して、本明細書に記載されている共通TA決定の性能を説明するためのケーススタディを提供する。ケーススタディは、ゲートウェイ(gNB、ネットワークノード)、衛星、および2つの異なる初期位置にある単一のUEを有するコンステレーションである。時刻t=0において、衛星はゲートウェイの真上にあると想定する。ケース1(図17、左側)では、t=0において、衛星はUEから10°の仰角で見えている。ケース2(図18、左側)では、ゲートウェイとUEは、仰角90°に対応する同じ位置に存在している。衛星は、ゲートウェイに対する最小仰角10°に達するまで軌道上を進む。図17および図18(右側)には、対応する共通タイミングアドバンス値NTA,common(t)が、2つの衛星高度(600km、1200km)について示されている。数値結果が得られるように、図11および図13を参照しながら概説したステップをPythonコードとして実装した。最初に、ゲートウェイおよび衛星の両方から衛星が見える時間軸または可視ウィンドウを決定する(最小仰角10°を想定)。次に、可視ウィンドウを、重複しない更新期間に分割する。これらは、本開示全体を通じて現れる同じ大きさの時間区間(t、t+h)である。各区間について、NTA,common(t)を表す多項式を計算し、これは、UEがアップリンクタイミングを導出するために、すべての時間区間で使用される。
【0175】
上述したタイミング誤差は次のように得られる。
【数22】
【0176】
この誤差は、各更新区間について、テイラー級数およびミニマックス手法、ならびに線形多項式および二次多項式の場合について、図19A~19Bに示されている。誤差は、確率的かつロバストなアルゴリズムであり、動作に微分を必要としない差分進化(Differential Evolution)と呼ばれる大域的最適化アルゴリズムによって計算した。
【0177】
<ケース1>
4つの更新周期、0.1秒、1.0秒、2.0秒、10.0秒を考慮した。図19A図19Dの左側のグラフはテイラー級数の結果を示しており、図19A図19Dの右側のグラフはミニマックス多項式の結果を示している。示した図の各々には、誤差閾値1/4*0.58usと記された水平の線があり、これはPUSCHの5G-NRで最も厳しいサイクリックプレフィックスの4分の1を示している。図19Aは線形補間、図19Bは二次補間を示している。
【0178】
図19A(線形多項式)では、最大の近似誤差は時刻t=0で発生している。ミニマックスの誤差挙動は、テイラー手法を半桁上回っている。テイラー級数は目標の閾値以下の誤差になるには1秒以下の更新間隔を必要とするのに対し、ミニマックスは2秒のみの更新間隔で誤差の閾値に近づくことがわかる。
【0179】
図19B(二次多項式)では、誤差性能は全体的に改善されている。しかしながら、ミニマックス手法の誤差性能は、テイラー級数よりも容易に1桁向上する。また、ミニマックス手法では10秒の更新間隔で目標誤差閾値を下回ることができるが、テイラー級数では下回ることはできない。
【0180】
いくつかの誤差曲線のギザギザ状の挙動は、かなり小さな数値で動作する差分進化アルゴリズムの確率的性質によって説明できることに留意されたい。
【0181】
<ケース2>
ケース2(GWとUEの位置が一致している)のセットアップを図18に示す。結果はケース1に類似している。特に、図19Cは、更新期間0.1秒、1.0秒、2.0秒、10.0秒および線形多項式係数の近似誤差を示しており、図19Dは同じ更新期間および二次多項式係数の近似誤差を示している。
【0182】
要約すると、上述したように最大誤差の最小化を適用することによって設計された係数を有する一般化された多項式は、例えばテイラー級数と比較して、すべての更新区間にわたって大幅に小さい近似誤差をもたらすことができる。したがって、テイラー級数と比較した利点は、シグナリングのオーバーヘッドが少ないこと、および/または、係数の更新周期が大きくなる可能性があることである。
【0183】
本開示は、ソフトウェアによって、ハードウェアによって、またはハードウェアと協働するソフトウェアによって、実施することができる。上述した各実施形態の説明において使用される各機能ブロックは、その一部または全体を、集積回路(IC)などのLSI(大規模集積回路)によって実施することができ、各実施形態において説明した各プロセスは、その一部または全体を、同じLSIまたはLSIの組合せによって制御することができる。LSIは、チップとして個別に形成する、または、機能ブロックの一部またはすべてが含まれるように1個のチップを形成することができる。LSIは、自身に結合されたデータ入出力部を含むことができる。ここでLSIは、集積度の違いに応じて、IC、システムLSI、スーパーLSI、またはウルトラLSIとも称される。しかしながら、集積回路を実施する技術は、LSIに限定されず、専用回路、汎用プロセッサ、または専用プロセッサを使用することによって実施されてもよい。さらには、LSIの製造後にプログラムすることのできるFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)や、LSI内部に配置されている回路セルの接続および設定を再設定できるリコンフィギャラブル・プロセッサを使用することもできる。本開示は、デジタル処理またはアナログ処理として実施することができる。半導体技術または別の派生技術が進歩する結果として、LSIが将来の集積回路技術に置き換わる場合、その将来の集積回路技術を使用して機能ブロックを集積化することができる。バイオテクノロジを適用することもできる。
【0184】
本開示は、通信の機能を有する任意の種類の装置、デバイス、またはシステム(通信装置と呼ばれる)によって実施することができる。
【0185】
通信装置は、送受信機および処理/制御回路を備えていることができる。送受信機は、受信機および送信機を備えている、および/または、受信機および送信機として機能することができる。送信機および受信機としての送受信機は、増幅器、RF変調器/復調器などを含むRF(無線周波数)モジュールと、1つ以上のアンテナを含むことができる。
【0186】
このような通信装置の非限定的ないくつかの例としては、電話(例:携帯電話、スマートフォン)、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)(例:ラップトップ、デスクトップ、ノートブック)、カメラ(例:デジタルスチル/ビデオカメラ)、デジタルプレイヤー(デジタルオーディオ/ビデオプレイヤー)、ウェアラブルデバイス(例:ウェアラブルカメラ、スマートウォッチ、トラッキングデバイス)、ゲームコンソール、電子書籍リーダー、遠隔医療/テレメディシン(リモート医療・医薬)装置、通信機能を提供する車両(例:自動車、飛行機、船舶)、およびこれらのさまざまな組合せ、が挙げられる。
【0187】
通信装置は、携帯型または可搬型に限定されず、非携帯型または据置型である任意の種類の装置、デバイス、またはシステム、例えば、スマートホームデバイス(例:電化製品、照明、スマートメーター、制御盤)、自動販売機、および「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」のネットワーク内の任意の他の「モノ」なども含むことができる。
【0188】
通信は、例えばセルラーシステム、無線LANシステム、衛星システム、その他、およびこれらのさまざまな組合せを通じてデータを交換するステップ、を含むことができる。
【0189】
通信装置は、本開示の中で説明した通信の機能を実行する通信デバイスに結合されたコントローラやセンサなどのデバイスを備えることができる。例えば、通信装置は、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスによって使用される制御信号またはデータ信号を生成するコントローラまたはセンサ、を備えていることができる。
【0190】
通信装置は、インフラストラクチャ設備、例えば、上の非限定的な例における装置等の装置と通信する、またはそのような装置を制御する基地局、アクセスポイント、および任意の他の装置、デバイス、またはシステムなどを、さらに含むことができる。
【0191】
<実施形態の要約>
本開示では、ネットワークノードを提供する。ネットワークノードは、処理回路を備えており、処理回路は、動作中に、有効区間について、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数を決定する。近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。ネットワークノードは、動作中に係数を送信する送受信機をさらに備える。
【0192】
ネットワークノードは基地局であってもよい。また、ネットワークノードは、衛星ゲートウェイ機能を搭載することもできる。
【0193】
例えば、多項式p(t)は次の形式を有する。
【数23】
【0194】
ここで、c,...,cは多項式の係数であり、nは多項式の事前定義された正の整数次数であり、trefは基準時間インスタンスである。
【0195】
いくつかの例示的な実装形態では、処理回路は、動作中に、近似誤差の符号が複数の時間インスタンスにおいて交互に変化することを強制することによって、多項式の係数を決定する。
【0196】
特に、処理回路は、動作中、以下を解くことによって多項式の係数を決定する。
【数24】
【0197】
ここで、p(t)は、ある時間インスタンスtにおける多項式であり、iは、等距離にある複数の時間インスタンスのうちの時間インスタンスの整数インデックスであり、Eは、近似誤差の値であり、NTA.common(t)は、時間インスタンスtにおけるネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンスであり、ネットワークノードの位置と衛星の位置に基づいてネットワークノードによって決定される。複数の時間インスタンスにおける時間インスタンスtの数は、多項式の次数よりも大きい。
【0198】
例えば、Remezアルゴリズムに従って1回以上の反復を適用することにより、上記解くことから得られる係数を修正することができる。
【0199】
例示的な実装形態によれば、送受信機は、動作中に、基準時間インスタンスの指示を送信する。
【0200】
例えば、送受信機は、動作中、システム情報の中で、前出の係数、および/または、基準時間インスタンスの指示、および/または、有効区間の指示を送信する。
【0201】
いくつかの実装形態では、基準時間インスタンスの指示を送信する必要はない。例えば、いくつかの実装形態では、処理回路は、動作中に、システム情報の送信のタイミングに基づいて基準時間インスタンスを決定する。
【0202】
第1の実装形態によれば、有効区間はシステム情報期間に対応し、システム情報期間は、係数が決定されてシステム情報内で送信される期間である。
【0203】
第2の実装形態によれば、係数を決定した後、決定された係数と基準時間インスタンスの指示とを含むシステム情報の複数の繰り返しが、有効区間中に送信される。
【0204】
第3の実装形態によれば、有効区間はシステム情報期間よりも長く、システム情報期間は、係数が決定され、基準時間インスタンスの指示とともに係数がシステム情報内で送信される期間である。
【0205】
第4の実装形態によれば、システム情報は、第1の有効区間について決定された係数と、第1の有効区間とは異なる長さおよび/または基準時間インスタンスを有する第2の有効区間について決定された係数とを含む。
【0206】
本開示では、ユーザデバイスが提供される。ユーザデバイス(ユーザ機器)は、動作中に、ネットワークノードから多項式の係数を受信する送受信機と、動作中に、この多項式に基づいて、衛星を介してネットワークノードにデータを送信するための、有効区間に対するタイミングアドバンスを決定する処理回路であって、多項式が、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する、処理回路と、を備える。近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。また、送受信機は、動作中に、決定されたタイミングアドバンスを使用してデータを送信する。
【0207】
ユーザデバイスでは、例えば、送受信機が動作中に基準時間インスタンスの指示を受信する。
【0208】
いくつかの実装形態では、ユーザデバイスの送受信機は、動作中に、係数、および/または、基準時間インスタンスの指示、および/または、有効区間の指示をシステム情報内で受信する。
【0209】
ネットワークノードを参照して上述したように、ユーザ機器が基準時間インスタンスの指示を実際に受信する必要がないことがある。いくつかの実装形態では、ユーザ機器の処理回路が、動作中に、システム情報の送信のタイミングに基づいて基準時間インスタンスを決定する。
【0210】
基準時間インスタンスの決定に関しては、多くの実装形態が可能である。例えば、ユーザデバイスにおいて、処理回路は、動作中に、以下の少なくとも1つに基づいて基準時間インスタンスを決定する。
- システム情報が送信されるシステム情報ウィンドウの開始点
- システム情報が送信されるフレームのシステムフレーム番号の開始点
- システム情報が送信されるフレームの開始点
- システム情報のタイミングと、基準時間インスタンスに対する事前定義されたオフセット
【0211】
第1の実装形態では、有効区間はシステム情報期間に対応し、システム情報期間は、係数が決定されてシステム情報内で送信される期間である。
【0212】
ユーザデバイス側の第2の実装形態では、処理回路は、動作中に、ユーザデバイスが接続状態にある場合、有効区間に対応する期間を有するシステム情報を受信するように送受信機を制御し、ユーザデバイスがアイドルモードにある場合、有効区間中に送信されるシステム情報の複数の繰り返しのうちの1つにおいて、基準時間インスタンスの指示とともにシステム情報を受信するように送受信機を制御する。
【0213】
第3の実装形態では、有効区間はシステム情報期間よりも長く、システム情報期間は、係数が更新されて基準時間インスタンスの指示とともにシステム情報内で送信される期間である。
【0214】
第4の実装形態では、システム情報は、第1の有効区間について決定された係数と、第1の有効区間とは異なる長さおよび/または基準時間インスタンスを有する第2の有効区間について決定された係数とを含む。
【0215】
処理回路は、動作中に、第1の有効区間および/または第2の有効区間が満了するまでの時間に基づいて、第1の有効区間について決定された係数を適用するか、または第2の有効区間について決定された係数を適用するかを決定する。
【0216】
別の可能な実装形態では、ネットワークノードまたはユーザデバイスにおいて、基準時間は、システム情報の受信時間と、衛星とユーザデバイス間のサービスリンク遅延に基づいて決定される。
【0217】
上述したネットワークノードおよびユーザデバイス、ならびに関連するさらなる例および実装形態に対応して、本開示は、ネットワークノードおよびユーザデバイスによって、またはそれらの処理回路によって実行される対応する方法を提供する。
【0218】
本開示では、ネットワークノードにおいて実行することのできる方法が提供される。本方法は、有効区間について、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数を決定することを含む。近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。本方法は、(例えば、本方法がネットワークデバイス上で実行されるとき)上記の係数を送信することをさらに含むことができる。本方法は、(本方法がネットワークデバイスの処理回路または対応する集積回路の処理回路によって実行されるとき)送信するために上記の係数を送信機に提供することを含むことができる。
【0219】
本開示では、ユーザデバイスによって実行することのできる方法が提供される。本方法は、ネットワークノードから多項式の係数を受信するステップと、その多項式に基づいて、衛星を介してネットワークノードにデータを送信するための、有効区間に対するタイミングアドバンスを決定するステップであって、多項式が、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似し、近似誤差が、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される、決定するステップと、決定されたタイミングアドバンスを使用してデータを送信することと、を含む。
【0220】
本方法のさらなる例示的な実施形態および実装形態は、ネットワークノードおよび/またはユーザデバイスの上述した処理回路によって動作中に実行されるステップによって提供される。
【0221】
本方法は、ユーザデバイスの処理回路上で、または集積回路によって、実行することもできることに留意されたい。そのような場合、受信ステップおよび遷移テップの代わりに、本方法は、(無線)送信のためのデータを送受信機に(または単に出力に)提供することと、送受信機から(または単に入力において)データ(例えば係数)を取得することとを含む。
【0222】
本開示では、動作中に、有効区間について、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する多項式の係数を決定する集積回路(IC)が提供される。近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。ICは、決定された係数が提供される出力をさらに備える。このような出力は、実際の実装形態では、送信を実行する送受信機に接続可能であるか、または接続されることができる。
【0223】
本開示では、集積回路(IC)が提供される。ICは、動作中に、多項式に基づいて、衛星を介したネットワークノードへのデータの送信のための、有効区間に対するタイミングアドバンスを決定し、多項式は、近似誤差を最小化するように、ネットワークノードと衛星との間のタイミングアドバンス成分を近似する。近似誤差は、基準時間インスタンスに対する有効区間の複数の時間インスタンスにおいて指定される。多項式は、(例えば送受信機から)ICの入力において得られる(受信される)ことができる。ICはさらに、例えば送受信機による送信のために、決定されたタイミングアドバンスを使用してデータが提供される出力を有することができる。
【0224】
本開示は、1つ以上のプロセッサ上で実行されたときに、1つ以上のプロセッサに上述の方法のいずれかを実行させるプログラムコード、をさらに提供する。プログラムコードは、非一時的媒体に記憶することができる。
【0225】
本開示は、上述したネットワークノードと、上述した1つ以上のユーザデバイスとを含む通信システムを提供する。通信システムは、1つ以上のNTNエンティティをさらに含むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
【国際調査報告】