(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】試料-応答装置における分析プロセスを制御する為の装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20241106BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526475
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 US2022048636
(87)【国際公開番号】W WO2023076747
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524162594
【氏名又は名称】ノベル マイクロデバイシズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】パイス,ロハン
(72)【発明者】
【氏名】パイス,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ガーザンカ,アンドリュウ
(72)【発明者】
【氏名】ザキーラーズ,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ニスベット,トレボーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダ,ハムディ
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058EA14
2G058GA06
(57)【要約】
試料-応答装置及びポイントオブケア診断装置に用いられるマイクロ流体カートリッジにより行われる分析プロセスを制御する為の装置が開示される。前記装置は、核酸試料の調製、増幅及び検出プロセスと共に、マイクロ流体カートリッジへの試料の分注、磁気ビーズベースの分析対象物のマイクロ流体カートリッジへの移動を制御する。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置であって、
単一のモータと、
単一の駆動ベルトを含む駆動ベルト組立体と、
回転中心軸を中心に回転する様に構成された1つ以上のクラッチを含むクラッチ組立体であって、各クラッチは、回転の中心軸上で前記1つ以上のクラッチの夫々の内部の中心に配置された駆動シャフトを含み、前記1つ以上のクラッチの回転は、当該駆動ベルト組立体によって駆動される、クラッチ組立体と、
前記マイクロ流体カートリッジと係合し、1つ以上の分析プロセスを作動させる様に構成された、前記駆動シャフトに取り付けられた1つ以上の作動要素を備える作動機構と、
を備える装置。
【請求項2】
前記1つ以上の作動要素はプレスプレートを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マイクロ流体カートリッジは、1つ以上の試薬充填ブリスタ、流体チャネル、及び1つ以上のウェルを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プレスプレートは、前記マイクロ流体カートリッジと物理的に係合する様に構成された1つ以上の突起を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロ流体カートリッジは、入口弁及び出口弁を備える1つ以上のフロースルーブリスタを備え、前記1つ以上の突起は、前記入口弁及び前記出口弁に係合して開く様に構成された第1形状を備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記マイクロ流体カートリッジは、1つ以上の試薬充填破砕ブリスタを備え、前記1つ以上の突起は、前記1つ以上の破砕ブリスタを変形させて前記試薬を前記破砕ブリスタから押し出す様に構成された第2形状を備える、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記駆動シャフトは、前記1つ以上の作動要素を取り付ける為のねじ部を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記クラッチ組立体は複数のクラッチを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記クラッチ組立体は3つのクラッチを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記単一のモータは、前記駆動ベルト組立体の回転に動力を与える為に前記複数のクラッチのうちの1つのみに固定される軸を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記単一のモータは、前記駆動ベルト組立体の回転に動力を与える為に前記複数のクラッチのうちの1つのみに固定される軸を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記マイクロ流体カートリッジに近接した位置において、一連の空間的に配置された永久磁石を更に備え、前記マイクロ流体カートリッジは金属粒子を更に含み、前記永久磁石は、磁力によって前記マイクロ流体カートリッジを通して前記金属粒子を移動させる様に構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項13】
前記一連の空間的に配置された永久磁石は、前記マイクロ流体カートリッジに隣接する回転ホイールに取り付けられる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記1つ以上のクラッチは電磁クラッチである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記単一のモータはステッパモータである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記単一のモータはサーボモータである、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記単一のモータはギアモータである、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記単一のモータは1つのギアを含み、1つの速度で動作する様に構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する方法であって、
1つ以上の分析に対応する1つ以上のシーケンスファイルでプログラムされる様に構成された装置を提供する工程と、
前記1つ以上の分析に対応する1つ以上のシーケンスファイルで前記装置をプログラミングする工程と、
前記装置は、単一のモータと、単一の駆動ベルトを含む駆動ベルト組立体と、回転の中心軸を中心に回転する様に構成された複数のクラッチを含むクラッチ組立体であって、各クラッチは、前記回転の中心軸上の前記1つ以上のクラッチの夫々の内部の中心に配置された駆動シャフトを含み、前記複数のクラッチの回転は、前記駆動ベルト組立体によって駆動されるクラッチ組立体と、前記マイクロ流体カートリッジに係合し、1つ以上の分析プロセスを作動させる様に構成された、前記駆動シャフトに取り付けられた1つ以上の作動要素を含む作動機構と、を備え、
前記マイクロ流体カートリッジを前記装置に挿入する工程と、
前記装置を使用して前記分析の実行を開始する工程と、
を含む、方法。
【請求項20】
前記1つ以上の分析プロセスは、ポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の分析プロセスは、前記マイクロ流体カートリッジを通る標的分析物の磁気ビーズに基づく移動を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の分析プロセスは、ラテラルフローストリップ分析を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置であって、マイクロ流体カートリッジと、温度センサと、前記カートリッジに対して回転する回転ホイールと、を備え、前記回転ホイールは、加熱要素と放熱要素とを備える、装置。
【請求項24】
前記分析はポリメラーゼ連鎖反応である、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記マイクロ流体カートリッジは、PCRが行われる増幅チャンバを備える、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記加熱要素は誘導コイル要素を備える、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記加熱要素は前記回転ホイールに取り付けられる、請求項23に記載の装置。
【請求項28】
前記放熱要素は前記回転ホイールに取り付けられる、請求項23に記載の装置。
【請求項29】
前記誘導コイル要素はバイファイラコイルを備える、請求項26に記載の装置。
【請求項30】
前記放熱要素はヒートシンクを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項31】
前記放熱要素はヒートシンク、熱電冷却器及び/又はヒートスプレッダを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項32】
前記ヒートシンクは、アルミニウム、銅(その組み合わせ及び合金)、アルミニウムと組み合わせた炭素由来材料、及び/又は天然黒鉛複合材料を含んで構成される、請求項30に記載の装置。
【請求項33】
前記温度制御ユニットは、蓄熱対象物を更に備える、請求項23に記載の装置。
【請求項34】
前記蓄熱対象物は、前記増幅チャンバ内に配置される、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記蓄熱対象物は、金属を含んで構成される、請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記蓄熱対象物は、前記増幅チャンバの壁上に設けられ、前記壁は前記加熱要素に最も近い、請求項33に記載の装置。
【請求項37】
前記金属は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄金属及び鉄合金、又はそれらの組み合わせである、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
蓄熱対象物は、所定の熱慣性特性を有する材料を含んで構成される、請求項33に記載の装置。
【請求項39】
前記蓄熱対象物の材料は高い熱慣性特性を有する、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記温度センサはIR温度センサを備える、請求項23に記載の装置。
【請求項41】
前記熱源と前記増幅チャンバは物理的に接触していない、請求項25に記載の装置。
【請求項42】
前記温度センサと前記増幅チャンバは物理的に接触していない、請求項25に記載の装置。
【請求項43】
前記温度制御ユニットが、毎秒約10℃~毎秒約50℃の前記増幅試薬の加熱及び冷却速度を生成することができる、請求項23に記載の装置。
【請求項44】
5分未満~15分未満でPCRを約40サイクル行う反応速度を達成するように構成されている、請求項23に記載の装置。
【請求項45】
前記1つ以上の分析プロセスは、ラテラルフローストリップ検出、リアルタイム光学蛍光検出、光学マイクロアレイ検出、及び電気化学検出から成る組から選択される、請求項19に記載の装置。
【請求項46】
試料-応答装置であって、
マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置であって、単一のモータと、単一の駆動ベルトを含む駆動ベルト組立体と、回転中心軸を中心に回転する様に構成された1つ以上のクラッチを含むクラッチ組立体であって、各クラッチは、回転の中心軸上で前記1つ以上のクラッチの夫々の内部の中心に配置された駆動シャフトを含み、前記1つ以上のクラッチの回転は、当該駆動ベルト組立体によって駆動される、クラッチ組立体と、前記マイクロ流体カートリッジと係合し、1つ以上の分析プロセスを作動させる様に構成された、前記駆動シャフトに取り付けられた1つ以上の作動要素を備える作動機構とを備える装置を備える試料-応答装置。
【請求項47】
ポイントオブケア型診断装置であって、
マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置であって、単一のモータと、単一の駆動ベルトを含む駆動ベルト組立体と、回転中心軸を中心に回転する様に構成された1つ以上のクラッチを含むクラッチ組立体であって、各クラッチは、回転の中心軸上で前記1つ以上のクラッチの夫々の内部の中心に配置された駆動シャフトを含み、前記1つ以上のクラッチの回転は、当該駆動ベルト組立体によって駆動される、クラッチ組立体と、前記マイクロ流体カートリッジと係合し、1つ以上の分析プロセスを作動させる様に構成された、前記駆動シャフトに取り付けられた1つ以上の作動要素を備える作動機構とを備える装置を備えるポイントオブケア型診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料-応答装置における分析プロセスを制御する為の装置及びその使用方法に関する。
【0002】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年11月1日に出願された米国仮出願第63/274,507号及び63/274,510号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その開示内容の全体が参照により本願明細書に完全に記載される様に組み込まれる。
【0003】
一般的な技術分野は、マイクロ流体カートリッジ内で分析を行うポイントオブケア型試料-応答装置、及びポイントオブケア型試料-応答装置で行われる試薬の順次分注やその他の分析工程を制御する為に使用されるその構成要素である。
【背景技術】
【0004】
ポイントオブケア(POC)装置は、迅速な分子診断検査を患者の治療現場で行うことができる。このような試料-応答装置や関連手順では、PCRや等温増幅の様な分子増幅技術を利用するのが一般的であり、試薬の分注シーケンスや他の分析パラメータをコントロールする必要がある。
【0005】
典型的には、液体試薬は、マイクロ流体カートリッジ上にあり、カートリッジ内に液体が流入する様に開口部が設けられている試薬ブリスタに収納されている。開口部は破裂可能な膜又は層で密閉されている。通常、カートリッジに液体試薬を分注する為に、破裂可能な膜を引き裂き又は破り、ブリスタを押しつぶす必要がある。
【0006】
試薬を分注する為に試薬ブリスタを破砕する為には、圧力により試薬ブリスタを変形させる様に構成された構造体によって力を加える必要がある。この動作は、各作動構造を制御する個々のギアードモータによって行われるのが一般的である。しかし、例えば、複数の試薬ブリスタから複数の試薬を所定の分注シーケンスに従って分注する様な複雑なカートリッジ設計では、例えば、必要なモータや駆動組立体の数が増す等、装置の複雑さを増す必要が生じる。これは装置のサイズ、コスト及び携帯性を増大させる。
【0007】
試料-応答装置で行われる分析は、分析によってはマイクロ流体カートリッジ上で分子増幅を行うことが多い。これらの技術の殆どは、PCRや等温増幅の様な分子増幅技術を使用しており、増幅の為の反応への加熱(PCRの場合はサーマルサイクリング)に依存している。
【0008】
殆どの試料-応答装置は、抵抗加熱器を採用している。抵抗加熱方式では、抵抗要素に電流が流される。この電流は抵抗器で増幅反応の加熱に使用される熱に変換される。この方法の問題点の1つは、マイクロ流体カートリッジ上の反応チャンバと抵抗ヒーター要素との正確な接触が必要なことである。接触が上手くできないと、増幅チャンバへの熱伝導が悪くなり、増幅が失敗する可能性がある。この問題を克服する為、一般的に使用されている技術では、抵抗ヒーター要素を使い捨てカートリッジの一部として埋め込むものは殆どない。別のアプローチとしては、増幅ウェルに圧力を加えて外側に膨らませ、ヒーター要素との接触を改善する方法がある。
【0009】
接触式アプローチのもう一つの課題は、温度制御である。この様なセットアップでは、温度センサが(流体の代わりに)ヒーター要素に設置される。このアプローチでは、ヒーター要素温度と周囲温度に基づいて増幅チャンバ内の流体温度を決定する予測アルゴリズムが必要となる。これは不正確な温度制御につながる可能性がある。
【0010】
PCRサーマルサイクリング技術は「ヒートゾーン」を使用し、PCR試薬はサーマルサイクリングプロセス中にヒートゾーン間を移動する。これは迅速な技術であるが、適切なサイクル時間で温度を確実に保持する為にポンプと正確な流体移動制御が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明に従って、マイクロ流体カートリッジ内で実行される分析プロセスを制御する為の装置の様々な実施形態が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置が提供される。幾つかの実施形態では、装置は単一のモータによって駆動されてもよい。一実施形態では、前記単一のモータは、ステッパモータ、サーボモータ、又はギアモータであってもよい。他の実施形態では、前記単一のモータは1つのギアを含み、1つの速度で動作する様に構成される。
【0013】
他の実施形態では、前記マイクロ流体カートリッジは、1つ以上の試薬充填ブリスタ、流体チャネル、及び1つ以上のウェル又はチャンバを含むことができる。他の実施形態では、前記マイクロ流体カートリッジはラテラルフローストリップを含むことができる。更に他の実施形態では、前記マイクロ流体カートリッジは1つ以上のフロースルーブリスタを含むことができる。前記1つ以上のフロースルーブリスタは、入口弁及び出口弁を含むことができる。更に他の実施形態では、前記1つ以上の試薬充填ブリスタは破砕ブリスタを備える。
【0014】
前記装置は、駆動ベルト組立体を更に含むことができる。一実施形態では、前記駆動ベルト組立体は、単一の駆動ベルトを含むことができる。他の実施形態では、前記駆動ベルト組立体は、前記単一のモータから延びる1つの軸を含むことができる。
【0015】
本装置は、回転中心軸を中心に回転する様に構成された1つ以上のクラッチを含むクラッチ組立体を更に含むことができる。幾つかの実施形態では、各クラッチは、回転の中心軸上で前記1つ以上のクラッチの夫々の内部の中心に配置された駆動シャフトを含むことができ、当該1つ以上のクラッチの回転は、当該駆動ベルト組立体によって駆動される。一実施形態では、前記クラッチ組立体は複数のクラッチを含む。他の実施形態では、前記クラッチ組立体は3つのクラッチを含むことができる。他の実施形態では、前記1つ以上のクラッチは電磁クラッチである。幾つかの実施形態では、前記単一のモータから延びる単一の軸が、前記駆動ベルト組立体の回転に動力を与える為に、前記複数のクラッチのうちの1つのみに固定される。
【0016】
本装置は、前記マイクロ流体カートリッジと係合し、1つ以上の分析プロセスを作動させる様に構成された、当該駆動シャフトに取り付けられた1つ以上の作動要素を備える作動機構を更に含んでもよい。一実施形態では、前記1つ以上の作動要素は、1つ以上のプレスプレートを備えてもよい。他の実施形態では、前記1つ以上のプレスプレートは、当該マイクロ流体カートリッジと物理的に係合する様に構成された1つ以上の突起を含むことができる。幾つかの実施形態では、前記1つ以上の突起は、前記1つ以上のフロースルーブリスタ上の前記入口弁及び前記出口弁に係合して開く様に構成された第1形状を備える。他の実施形態では、前記1つ以上の突起は、前記1つ以上の破砕ブリスタを変形させて前記試薬を前記破砕ブリスタから押し出す様に構成された第2形状を備える。他の実施形態では、前記駆動シャフトは、当該1つ以上の作動要素を取り付ける為のねじ部を含むことができる。
【0017】
この装置は、前記マイクロ流体カートリッジに近接した位置において、一連の空間的に配置された永久磁石を更に含むことができる。幾つかの実施形態では、前記マイクロ流体カートリッジは、標的分析物に結合し、前記マイクロ流体カートリッジを通して前記標的分析物を移動させる為の金属粒子(例えば、金属ビーズ)を含むことができる。他の実施形態では、前記永久磁石は、磁力によって前記マイクロ流体カートリッジを通して前記金属粒子を移動させる様に構成することができる。一実施形態では、前記空間的に配置された永久磁石は、前記マイクロ流体カートリッジに隣接して実質的に同一平面上に配置された回転ホイールに取り付けることができる。
【0018】
他の実施形態では、マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する方法が提供される。この方法は、1つ以上の分析に対応する1つ以上のシーケンスファイルでプログラムされる様に構成された装置を提供する工程を含んでもよい。この装置は、以下の構成要素、即ち、単一のモータと、前記単一の駆動ベルトを含む駆動ベルト組立体と、回転の中心軸を中心に回転する様に構成された複数のクラッチを含むクラッチ組立体であって、各クラッチは、前記回転の中心軸上の前記1つ以上のクラッチの夫々の内部の中心に配置された駆動シャフトを含み、前記複数のクラッチの回転は、前記駆動ベルト組立体によって駆動されるクラッチ組立体と、前記マイクロ流体カートリッジに係合し、1つ以上の分析プロセスを作動させる様に構成された、前記駆動シャフトに取り付けられた1つ以上の作動要素を含む作動機構と、を更に含むことができる。幾つかの実施形態では、本方法は、1つ以上の分析に対応する1つ以上のシーケンスファイルで前記装置をプログラミングする工程を含んでもよい。他の実施形態では、本方法は、前記マイクロ流体カートリッジを前記装置に挿入する工程と、前記装置を使用して前記分析の実行を開始する工程とを更に含むことができる。幾つかの実施形態では、前記1つ以上の分析プロセスは、ポリメラーゼ連鎖反応、前記マイクロ流体カートリッジを通る標的分析物の磁気ビーズに基づく移動、及び/又はラテラルフローストリップ検出を含む。幾つかの実施形態では、前記検出手順は、ラテラルフローストリップ検出、リアルタイム光学蛍光検出、光学マイクロアレイ検出、及び電気化学検出の何れかであってもよい。
【0019】
一実施形態では、前記装置は、例えばポリメラーゼ連鎖反応における反応温度をモニターし、制御する。従って、使用される前記装置は、マイクロ流体カートリッジと、作動プレートと、加熱要素、放熱要素及び温度センサを備える温度制御ユニットと、を含んでもよい。幾つかの実施形態では、前記温度センサはIR温度センサを備える。
【0020】
他の実施形態では、前記マイクロ流体カートリッジは、PCR等の分析反応が行われる増幅チャンバを含んでいる。他の実施形態では、前記加熱要素は誘導コイル要素を備える。更に他の実施形態では、前記誘導コイル要素はバイファイラコイルを備える。更に他の実施形態では、前記加熱要素は、前記カートリッジに対して移動(例えば、回転)可能な回転ホイールに取り付けることができる。迅速な加熱及び冷却を容易にする為に、この移動により、加熱が必要な時に加熱要素が増幅ウェルに近接され、冷却時に加熱要素が取り外される。更なる実施形態では、前記加熱要素と当該増幅チャンバは、その間に空隙を有し、物理的に接触していない。
【0021】
幾つかの実施形態では、前記放熱要素は前記回転ホイールに取り付けることもできる。他の実施形態では、前記放熱要素はヒートシンクを備える。更に他の実施形態では、ヒートシンクは、アルミニウム、鉄系金属、銅(その組み合わせ及び合金)、アルミニウムと組み合わせた炭素由来材料、及び/又は天然黒鉛複合材料を含んで構成される。更に他の実施形態では、空気又は冷却剤流体の何れかによる対流冷却を導入する為にファン及び/又は水ポンプを使用することで、前記放熱要素の性能を更に高めることができる。更なる実施形態では、前記放熱要素の性能を高める為に、ファン/扇風機とヒートシンクの組み合わせの有無にかかわらず、熱電冷却器(TEC)を利用することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、前記温度制御ユニットは、蓄熱対象物を更に備える。他の実施形態では、前記蓄熱対象物は、前記増幅チャンバ内に含まれる前記流体への熱伝達を促進する為に、前記増幅チャンバ内に配置されるか、又は前記増幅チャンバの壁と接触する。他の実施形態では、前記蓄熱対象物は、増幅される前記試薬が蓄熱対象物の前面及び/又は後面に直接接触する様に、前記増幅チャンバ内に配置される。更に他の実施形態では、前記蓄熱対象物は増幅される前記試薬を包むポケットを形成する。これは、前記対象物内に凹部を設け、前記試薬が当該凹部内を流れる様にすることによって達成される。これにより、前記流体と接触する表面積が増加し、より速い熱伝達が可能になる。更に他の実施形態では、前記蓄熱対象物は、前記対象物と加熱される前記流体との接触表面積を増加させるフィンを備えてもよい。更に他の実施形態では、前記蓄熱対象物は金属を含んで構成される。幾つかの実施形態では、前記金属はアルミニウム、アルミニウム合金、鉄金属及びそれらの合金、銅、又はそれらの組み合わせである。更に他の実施形態では、前記金属対象物は、その熱慣性特性を変更する為にポリマーで被覆されてもよい。更なる実施形態では、蓄熱対象物は、所定の熱慣性特性を有する材料を含む。他の実施形態では、前記蓄熱対象物の材料は高い熱慣性特性を有する。前記蓄熱対象物は、前記増幅チャンバ内に接着剤で接着されてもよいし、前記マイクロ流体カートリッジのプラスチック基板に溶着されてもよい。更に他の実施形態では、前記蓄熱対象物は前記増幅チャンバ内に吊り下げられている。幾つかの実施形態では、前記温度制御ユニットは、当該増幅試薬の加熱及び冷却速度が毎秒約15℃まで可能である。更に他の実施形態では、前記装置は15分未満でPCRを約40サイクルまで反応させることができる。
【0023】
一実施形態では、前記装置は、試料-応答診断分析を実施する為の試料-応答及び/又はポイントオブケア装置に組み込まれる。従って、一実施形態では、マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の前記装置を含む、診断分析を実施する為の試料-応答及び/又はポイントオブケア装置が意図される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
この様にして、現在開示されている主題を一般的な用語で説明したので、次に、本発明の代表的な実施形態を開示する添付の図を参照する。
【
図1】
図1は、装置全体の一実施形態の側面透視図である。
【
図2】
図2は、クラッチシステムの一実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、クラッチ組立体、作動要素及びベルトドライブ組立体の一実施形態を示す図である。
【
図4B】
図4A乃至
図4Bは、3つの作動要素を有する作動機構の様々な構成部品の実施形態を示す図である。
【
図5B】
図5A乃至
図5Bは、第1作動要素とマイクロ流体カートリッジの実施形態を示す図である。
【
図6B】
図6A乃至
図6Bは、第2作動要素とマイクロ流体カートリッジの実施形態を示す図である。
【
図7B】
図7A乃至
図7Bは、第3作動要素とマイクロ流体カートリッジの実施形態を示す図である。
【
図9B】
図9A乃至
図9Bは、永久磁石を取り付けた回転ホイールとマイクロ流体カートリッジの一実施形態を示す。
【
図10】
図10は、増幅チャンバと蓄熱対象物を内蔵したマイクロ流体カートリッジの一実施形態を示している。
【
図11C】
図11A乃至
図11Cは、マイクロ流体カートリッジと連結した、永久磁石、加熱要素及びヒートシンクを取り付けた回転の一実施形態を示す図である。
【
図12C】
図12A乃至
図12Cは、永久磁石、加熱要素及び熱電冷却器(TEC)とヒートスプレッダとを有するヒートシンクを取り付けた回転ホイールの実施形態を示す図である。
【
図13】
図13は、加熱要素、マイクロ流体カートリッジ、増幅チャンバ、蓄熱対象物及び温度センサ構成の一実施形態を示す図である。
【
図15】
図15は、セグメント化された流体チャネル(弁付き)における3つの目標温度領域と、ある領域から次の領域へのチャネルを通る試薬の移動を描いた実施形態を示す図である。
【
図16】
図16は、ディスク上の連続した流体チャネル(弁無し)における3つの目標温度領域と、ある領域から次の領域へのチャネルを介した試薬の移動を描いた実施形態を示す図である。
【
図17】
図17は、実施例による陽性のCT及びNGの対象物を示すラテラルフローストリップと電気泳動像を示す図である。
【
図18B】
図18A乃至
図18Bは、本実施例による回転ホイールの単独の状態及びマイクロ流体カートリッジと連結した状態を示す図である。
【
図19C】
図19A乃至
図19Cは、実施例によるマイクロ流体カートリッジに連結された回転ホイールと温度センサを示す図である。
【
図20】
図20は、実施例で実施した分析後の陽性のCT-11を示すラテラルフローストリップ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の主題を、本開示の主題の全てではないが幾つかの実施形態が示されている添付の図を参照して、より完全に説明する。本開示される主題は、多くの異なる形態で具体化されることができ、本願明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、寧ろ、これらの実施形態は、本開示が適用される法的要件を満たす様に提供される。実際に、本願明細書に記載された本開示の主題の多くの変更及び他の実施形態は、前述の説明及び関連する図に提示された教示の利益を有する本開示の主題が関係する当業者に思い浮かぶであろう。従って、本開示された主題は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。
【0026】
試薬分注制御
図1を参照すると、制御された順次行われる試薬の分注に使用される装置100の実施形態は、一般的に、クラッチ組立体(一般的に101で示される)、ベルト駆動組立体(一般的に102で示される)、及び作動機構(一般的に103で示される)を含むことができる。装置100は、実施される診断分析の特定の手順要件によって大部分が規定される所定の制御された方法で、マイクロ流体カートリッジ上又はマイクロ流体カートリッジ内に配置された1つ以上の試薬分注ユニットから試薬を順次分注する様に構成される。
【0027】
図2を参照すると、クラッチ組立体101の一実施形態が図示されている。他のクラッチ組立体の設計を用いてもよいが、
図1~3に示すクラッチ組立体101は電磁クラッチ組立体である。幾つかの実施形態では、郵便番号08873米国ニュージャージー州サマセット郡ランドルフロード100にあるオグラインダストリアルコーポレーション(Ogura Industrial Corp.)(https://ogura-clutch.com)によって製造販売されている様な電磁クラッチ組立体を使用することができる。特に、幾つかの実施形態では、オグラインダストリアルコーポレーションが製造するMIC電磁マイクロクラッチ製品ラインに属するクラッチ組立体を使用することができる。マイクロ電磁クラッチ組立体の他の既知の製造業者としては、郵便番号55441米国ミネソタ州プリマス市シックスアベニューノース(Sixth Avenue North)13200にある三木プーリ米国(Miki Pulley, US)、及び郵便番号41462台湾台中市烏日区渓南路一段460巷305号にある台湾センタイ会社(Chain Tail Co., Ltd.)が挙げられるが、これらに限定されない。電磁クラッチ組立体の他の例は、米国特許第7,325,664号明細書、同第6,997,294号明細書、同第7,040,374号明細書、同第8,235,196号明細書、同第6,837,351号明細書、同第7,581,628号明細書、及び同第6,823,974号明細書に開示されている。以下の表1は、2.5、3.5、及び/又は5のトルクパラメータを有する電磁クラッチの例示的な技術的仕様を備える。参照される文字、例えばボアの「d」及び「t」は、
図8A~Cに示されている。
【0028】
【0029】
一実施形態では、クラッチ組立体101は、動力源によって駆動される1つ以上のクラッチ104を含むことができる。幾つかの実施形態では、クラッチ組立体101は電磁気的に制御することができる。単一のクラッチ104が
図2に示されている。
図2に示す様に、クラッチ104は、ロータ106及びハブ107を備えるハブ及びロータ組立体105を備えることができる。ロータ106の回転は、駆動ベルト組立体102によって駆動することができる。幾つかの実施形態では、駆動ベルト組立体102は、駆動ベルト組立体102が動力を受けている限り、ロータ106(又はロータ106に接続された別の出力構造135)を回転させるロータ106の外側出力面について配置され、これに係合した駆動ベルト(例えば、歯付き駆動ベルト)を含むことができる。他の実施形態では、ハブ107も、ロータ106とハブ107が機械的に係合している時に回転する。関連する実施形態では、ハブ107は、電気信号を介して、係合状態(作動状態又は回転状態)から非係合状態(非作動状態又は静止状態)に移行させることができる。幾つかの実施形態では、クラッチ104が非励磁状態又は中立状態(即ち、ロータとハブの結合回転無し)にある時、ロータ106とハブ107は、ロータ106が動力下で自由に回転できる一方、ハブ107は静止したままである様に、互いに摺動可能に係合するか、又は完全に係合解除することができる。摺動係合にはベアリング組立体を使用することができる。一実施形態では、電気信号がハブ107に送られ、その結果、ハブ107の構成部品とロータ106とが磁気的に駆動されて摩擦係合し、それによってロータ106とハブ107とが結合回転する。幾つかの実施形態では、クラッチ104は、軸(A)に沿ってクラッチ104内の中心に配置された駆動シャフトハウジング109内に駆動シャフト又はロッド108を収容することができる。
図2に示す様に、駆動シャフト108は、例えば、以下に説明される様な1つ以上の作動要素を取り付ける為のねじ部115を含むことができる。駆動シャフトハウジング109は、ロータ106とハブ107の両方を貫通して軸(A)に沿って延びている。
【0030】
図1は、装置の一実施形態を概略的に示している。上述した様に、装置は、クラッチ組立体(一般的に101で示される)、ベルト駆動組立体(一般的に102で示される)、及び作動機構(一般的に103で示される)を含むことができる。
図1に示される実施形態では、モータ110が、駆動軸113(
図3に最もよく示される)を介して駆動ベルト111に動力を与える為に使用される。幾つかの実施形態では、モータ110は、サーボモータ、ステッピングモータ、単相ギアモータ、DCモータ、AC誘導モータ等とすることができる。他の実施形態では、モータ110は単一のギアを含み、単一の速度で動作することができる。駆動ベルト111は、図示のロータ要素106a~106bに係合する2つの出力構造135に取り付けられ、その周囲に巻き付けられる様に示されている。駆動ベルト111は、ロータ106に係合する様に構成された出力構造135に取り付けることができる。或いは、駆動ベルト111をロータ106に取り付けることもできる。幾つかの実施形態では、モータ110は単一のギアを含むことができる。当業者であれば、ロータ106と係合する様に構成された上述の出力構造の様な追加のプーリ及び/又は回転構成部品を、モータ110と一直線上に追加できることを理解するであろう。例えば、駆動ベルトの角度位置に対する、より厳密な制御が望まれる場合には、ベルトの角度位置の閉ループ制御の為にサーボモータを利用することができ、またロータ上のベルトの滑りを検出することもできる。この配置は、クラッチ以外の構成部品が駆動ベルトの回転を利用している場合に有効である。
【0031】
引き続き
図1を参照すると、駆動ベルト111はゴム製駆動ベルトで構成することができる。他の実施形態では、ゴム製駆動ベルトは、滑りを少なくする為に歯付きとすることができる。他の実施形態では、更に滑りを少なくする為に駆動チェーンを使用することができる。駆動チェーンが使用される場合、ロータ106(又はロータ106に係合する様に構成された他の出力構造135)は、チェーン係合用のギア又はスプロケットを含むことができる。上述した様に、ハブ107とロータ106の係合/係合解除の制御は、電気信号と磁石の作動によって行われる。ハブ107がロータ106に係合すると、駆動ベルト111がハブ107とロータ106の両方を含むクラッチ組立体を回転させ、これは結合回転と表現することができる。ハブ及びロータ組立体の結合回転は、クラッチ構成部品を介して駆動シャフト108の直線運動(前方又は後方)を引き起こす。
【0032】
図3に示される実施形態を参照すると、1つ以上の駆動シャフト108が、試料-応答診断装置内部の1つ以上の作動要素112に係合されている(また、例えば、アンカーで固定されているか、又はその中に設置されている)。図示の実施形態では、3つのクラッチ104a~104c、3つの駆動シャフト108a~108c、及び3つの作動要素112a~112cがある(
図4A~4Bにも示す)。3つのクラッチ、3つの駆動シャフト、及び3つの作動要素は、単一のモータ110及び単一の駆動ベルト組立体102によって駆動されることに留意されたい。この実施形態では、モータ110は、駆動軸113を介して第1クラッチ104aに直接動力を供給し、クラッチ104aの回転を引き起こす。第2クラッチ104bと第3クラッチ104cの回転は、ロータ106a-106cの出力を纏める駆動ベルト111を介して達成される。
【0033】
複数の作動要素の制御された作動を生み出す複数のクラッチの単一モータ強化回転は、試料-応答診断装置のサイズ、複雑さ、コスト、及び電力の必要性/消費を大幅に削減することに留意されたい。この様な設計により、診断分析の速度、精度、及び効率を犠牲にすることなく、よりコンパクトで持ち運び可能な装置が実現する。この様に、単一のマイクロ流体カートリッジ116から、単一の電源を用いて、所定の試薬分注シーケンス(診断分析に応じて調整可能)を精密に制御することは、既知の試料-応答装置に対する技術的優位性をもたらす。
【0034】
図3~
図6に示す実施形態を参照すると、1つ以上の作動要素112は、幾つかの実施形態では、プレスプレートが駆動シャフト108を介してカートリッジ116表面に向かって移動する際に、マイクロ流体カートリッジ上の試薬分注ユニット(RDU)に接触する様に構成された1つ以上の突起113を有するプレスプレートである。
図4~
図6に示す様に、3つのプレスプレート112a~112cの各々は、マイクロ流体カートリッジ116の特定の構造的特徴に圧力を加える様に構成された、プレスプレート前面114上の1つ以上の突起113を含むことができる。1つ以上の突起は、均一なサイズ及び形状にすることもできるし、異なるサイズ及び形状にすることもできる。実際、幾つかの実施形態では、プレスプレート上の1つ以上の突起は置換可能又は交換可能、即ち、マイクロ流体カートリッジのブリスタ構成及び/又は分析手順に応じて、取り外して他の突起(異なるサイズ及び/又は形状のもの)と交換することができる。或いは、プレスプレート自体を駆動シャフト108のねじ部115から取り外し、異なる突起セットを含む他のプレートと交換又は置換することができる。
【0035】
例えば、幾つかの突起113は、カートリッジ116上に配置されたフロースルーブリスタ138(
図4B及び
図5Aに示す)上の特定の入口ポート弁及び出口ポート弁に係合して開く様に構成(サイズ、形状、及び全体的な設計)されている。幾つかの実施形態では、これらの突起は、例えば、ビーズ含有容器に圧力を加え、ビーズが箔の蓋を破裂させ、それにより入口/出口弁を開く細長い柱状の延長部とすることができる。他の突起113は、試薬が充填されたブリスタを押圧して破壊(又は変形)し、試薬の内容物をブリスタからマイクロ流体カートリッジ116内に押し出す様に構成されている。一部の実施形態では、これらの突起のサイズと形状はカートリッジ116上のブリスタの構成に依存する。
【0036】
この方法では、実施される診断分析に応じて必要とされる正しい順序で1つ以上のブリスタと係合及び/又は係合解除する為に、1つ以上の作動要素112の各々が前方又は後方に作動する様に、試料-応答装置を所定の方法でプログラムすることができる。このシステムにおいて、ブリスタに加えられる圧力の量は、例えば、プレスプレートによる移動距離又は使用される突起の長さを制御することによっても制御することができる。プログラム可能なソフトウェア駆動マイクロ流体システムは、例えばメジック(Mezic)等の米国特許出願公開第2009/0038938号明細書、マイクロ流体中央処理装置とマイクロ流体システムアーキテクチャ(Microfluidic Central Processing Unit and Microfluidic Systems Architecture)に記載されている。
【0037】
作動要素113は、マイクロ流体カートリッジ116の流体チャネルを通して分析物結合磁気ビーズと係合し、移動させる様に構成された1つ以上の永久磁石を更に含むことができることに留意されたい。所定のpHで正味の正電荷を有するイオン化可能な基を有する磁気ビーズは、DNAを結合する為に使用される。この様なタイプの磁気ビーズの例としては、チャージスイッチマグネティックビーズ(ChargeSwitch Magnetic bead)(カリフォルニア州カールスバッド市にあるライフテクノロジーズ社製)が挙げられる。DNAは、ビーズ上に正味の正電荷を生じさせることができる結合バッファーの存在下で、この様なタイプの磁気ビーズに結合し、DNAは、ビーズ上に正味の中性又は負電荷を生じさせることができる溶出バッファーの存在下で溶出される。この実施形態では、pH<5を有する緩衝液の存在下でDNAをビーズに結合させ、pH>8を有する緩衝液の存在下でDNAをビーズから溶出させるチャージスイッチマグネティックビーズが使用される。磁気ビーズは、本開示に記載の方法により、マイクロ流体カートリッジ上の全てのウェルを通して順次移動される。DNAはまず、結合バッファーの存在下で磁気ビーズに結合させられる。その後、ビーズから不純物を洗浄する為に、洗浄バッファーを含む2つのウェルからビーズが出し入れされる。不純物は洗浄バッファー溶液中に残る。洗浄されたビーズは、次に溶出バッファーが入ったウェルに移され、DNAがビーズから溶出バッファーに溶出される。溶出されたDNAは、核酸増幅検査(NAAT)の為の凍結乾燥試薬の水和に使用してもよい。一部の実施形態では、磁気ビーズを増幅ウェルに直接溶出してもよい。増幅の為の温度を供給する為に、自動化シーケンスの一部として1つ以上のヒーターがオンにされる。
【0038】
幾つかの実施形態では、作動要素112又はマイクロ流体カートリッジ116は、作動要素又はマイクロ流体カートリッジと実質的に同一平面上に留まりながら回転する様に構成される(どちらが回転できるかによる)。或いは、
図11A~
図11Cに示す様に、空間的に配置された1つ以上の永久磁石は、マイクロ流体カートリッジに垂直な軸を中心に回転する様に構成されたホイール117上に配置することができる。ホイール117がカートリッジに対して回転する間、ホイールとマイクロ流体カートリッジは実質的に同一平面内に留まる。上述した様に、ホイール117は、所定の方法で空間的に配置された1つ以上の永久磁石118を含むことができる。
図9及び
図18に示す実施形態では、ホイール117の面119上の特定の位置に、7つの磁石を含んでいる。この実施形態では、マイクロ流体カートリッジ116は回転せず、ホイール117は作動要素112としてマイクロ流体カートリッジ116の反対側に配置され、永久磁石118はマイクロ流体カートリッジ116に最も近いホイール面119に配置される。ホイール117、磁石118、及びカートリッジ116の間の相互作用は、以下の実施例でより詳細に説明される。
【0039】
図3~
図6を引き続き参照すると、プレスプレート112a~112cはカートリッジを通して試薬を正しい時間に移動させる為に、分析プロセス全体を通して制御された所定の方法で作動する。例えば、核酸増幅を必要とする分析では、プレスプレート112aを使用して液体試薬をウェルに分注し、プレート112bを使用してカートリッジの残る容積を鉱油で満たし、プレート112cを使用して増幅産物をカートリッジの第1チャネルからカートリッジのラテラルフローストリップ133に移すことができる。この実施例では、各プレスプレート(及び突起)は、モータにプログラムされた電流制限に達してプレートが完全に伸びて所定の位置にあるというメッセージが送信されるまで、カートリッジに圧力をかけ続けることができる。プレートの最終位置は、エンドストップトグルスイッチ又は近接センサ等の物理センサを用いて決定することもできる。一実施形態では、上記で簡単に説明し、以下の実施例でより詳細に説明する様に、分析における最後の工程は、核酸分子と結合した磁気ビーズとマイクロ流体カートリッジの回転とを係合する構造(例えば、回転ホイール117)上の所定の位置に空間的に配置された永久磁石を使用して実行することができる。磁気ビーズからの増幅産物の溶出に続いて、増幅産物は検出の為に別のステーションに移される。検出は、ラテラルフローストリップ検出、リアルタイム蛍光検出、光学マイクロアレイ検出、又は電気化学検出等のプロセスを用いて行うことができる。
【0040】
温度管理-分子増幅(PCR)
試料-応答装置は又、試薬の温度を制御及び調節する。更に具体的には、試料-応答装置は、PCR等の分子増幅プロセスに使用される試薬の温度を調節、加熱、冷却、及び/又は測定することができる。一実施形態では、試料-応答装置は、加熱及び温度測定に非接触アプローチを適用する。
【0041】
図10は、マイクロ流体カートリッジ116と、カートリッジ116内に配置された増幅チャンバ121(増幅ウェルの中心を通る断面)を示している。この実施形態では、加熱される試薬が蓄熱対象物122とともに増幅チャンバ内にある。
【0042】
ここで
図11を参照すると、加熱及び温度制御は、加熱要素123を必要とする。幾つかの実施形態では、加熱要素123は、コイル、渦又は螺旋形状のワイヤ等の電気導体であってもよい。他の実施形態では、加熱要素123は、
図11~
図13に示される実施形態の様な誘導コイルである。更に他の実施形態では、誘導コイル123は、バイフィラーコイル等の電磁コイルであってもよい。一実施形態では、誘導コイル123は増幅チャンバ121に近接して配置される。例えば、
図11~
図12に示される実施形態を参照すると、誘導コイル123は、空間的に分離された永久磁石118a~118fと共に当該回転ホイール(作動ホイール)117上に配置されてもよい。
図11A~
図11Cは、通常動作中のマイクロ流体カートリッジ116に対して誘導コイル123を担持する回転ホイール117の例を示す。
【0043】
或いは、加熱要素は、金属、金属酸化物又は金属合金等の熱伝導性材料のブロックに埋め込まれた抵抗器を備える抵抗加熱要素とすることもできる。加熱要素はまた、抵抗薄膜加熱要素又はペルチェ要素であってもよい。他の実施形態では、加熱要素は正の温度係数自己調整要素である。加熱要素は、マイクロ流体装置の一部として一体化され、1回のみ使用される、使い捨ての要素として意図されてもよい。更なる実施形態では、溶解及び試料移動の為の熱エネルギーを発生させる為に相変化材料が使用されてもよい。相変化材料は、熱エネルギーの貯蔵を必要とする様々な用途に広く使用されており、幅広い温度範囲(-40℃~150℃以上)で使用する様に開発されている。相変化材料は、高密度のエネルギー貯蔵を提供し、狭い温度範囲内で熱を貯蔵する為、有利である。更に、それらは安価で毒性がなく、発熱の為の電気エネルギーを必要としない。その為、相変化材料は、ポイントオブケア設定や、熱エネルギーを必要とする使い捨ての装置にとって魅力的な選択肢である。追加的な実施形態では、密封されたパウチに含まれる相変化材料が、試料抽出容器の周囲に被覆シースを形成する為に使用される。相変化材料の被覆は、マイクロ流体装置の一部として存在しても、試料抽出容器の一部として存在してもよい。試料抽出容器をマイクロ流体装置に接続することで、核生成サイトが形成され、相変化物質が活性化され、温度が上昇して試料が加熱される。これは、試料抽出容器をマイクロ流体装置に接続した時にパチッと音がする、相変化材料を含むパウチに金属片を封入することによって達成することができる。相変化材料は、マイクロ流体装置の作動要素上に存在する外部作動器によって作動させることもできる。幾つかの実施形態では、適切な相変化材料は、その劣化を防止する様に、試料を冷却する為に活性化されてもよい。一部の実施形態では、加熱要素は、マイクロ流体装置上の流体ウェルに試料を加熱溶解及び移動させるだけでなく、マイクロ流体装置上でNAATを実行する役割を果たしてもよい。
【0044】
図10及び
図14A~
図14Eを参照すると、幾つかの実施形態では、試料-応答装置は、マイクロ流体カートリッジ116の増幅チャンバ121内に配置された蓄熱対象物125を含むことができる。蓄熱対象物が適切な熱慣性の様な特定の特性を有する限り、様々な材料を蓄熱対象物125に使用することができる。幾つかの実施形態では、適切な熱慣性は中程度から低いものである。幾つかの実施形態では、蓄熱対象物は金属、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、又は銅を含む。
【0045】
図14B~
図14Eに示す様に、増幅チャンバ内の蓄熱対象物125の位置は修正又は変更することができる。例えば、
図14Bに示す様に、蓄熱対象物は増幅チャンバ121の裏面126に付着させることができる。代替的な実施形態(
図14C)では、蓄熱対象物を増幅チャンバ121内の中央に配置することができる。蓄熱対象物125の形状は変更可能である。例えば、
図14Dに示す様に、蓄熱対象物125は増幅チャンバ121の内壁に実質的に適合し、チャンバ内の試薬を囲むことができる。他の実施形態では、蓄熱対象物125は櫛形にすることができる(
図14E)。この様な変形によってもたらされる汎用性は、様々な分析を可能にし、変形の決定は分析に依存してもよい。増幅チャンバ内の蓄熱対象物のサイズ、形状及び/又は位置を変更することにより、増幅チャンバ内の特定の部分に加熱を局在化させることができる。幾つかの実施形態では、熱の局在化は、蓄熱対象物の形状、サイズ/厚さ、及び熱質量によって制御することができる。この様な局在化された加熱技術は、熱慣性が低く、従って急速冷却を促進し、PCR及びサーマルサイクリングプロセスに非常に有用な機能である。
【0046】
図13に示す実施形態を参照すると、発振信号を加熱要素123に供給することができ、これにより、増幅チャンバ内に収容されている蓄熱対象物125に電流が誘導される。これにより、蓄熱対象物125が急速に加熱され、蓄熱対象物125と接触している増幅試薬127が加熱される。この実施形態では、増幅チャンバ内の加熱要素123と蓄熱対象物125との間に接触がないことに注意することが重要である。従って、この様な加熱戦略により、マイクロ流体カートリッジ上の増幅ウェルを加熱する非接触方法が実現される。この様なアプローチの技術的利点には、加熱要素123と増幅ウェル121との間の正確な接触を必要としない、増幅チャンバ121の迅速な加熱速度及び信頼性の高い/反復可能な加熱が含まれる。
【0047】
サーマルサイクリング中の試薬温度を正確にコントロールすることは、ポリメラーゼ連鎖反応を成功させる為に重要であり、正確な温度モニタリングと測定が必要である。様々な温度モニタリング技術が当業者に知られており、幾つかの技術は他の技術よりも効果的である。1つの実施形態では、モニタリング及び測定は、測定対象に接触しない1つ以上のセンサ又は他の手段によって実施されてもよい。
図7Bは、増幅チャンバ121内の試薬温度を測定する為に使用できる温度センサ124の実施形態を示す。幾つかの実施形態では、温度センサ124は、赤外線(IR)温度センサであってもよい。他の実施形態(例えば、
図7を参照)では、温度センサは、回転ホイール117及び誘導コイル123から見てマイクロ流体カートリッジの反対側に配置される。他の実施形態では、温度センサ124は、
図7A-
図7Bに示される様に、作動要素112の1つ(例えば、112c)に配置される。
図7B及び
図13に示す実施形態では、温度センサ124は、増幅チャンバ、蓄熱対象物、又は試薬と接触していない。IR温度センサは、典型的には、IR放射を放出する電子式非接触センサである。一般的に使用される2種類のIR温度センサは、標準IRセンサと量子IRセンサである。
【0048】
上述した様に、一実施形態では、赤外線(IR)温度センサ124は、マイクロ流体カートリッジの増幅チャンバ121に近接して、すなわちその視野内に配置されてもよい。増幅チャンバ121は、一例として、IR放射に対して比較的透過性を有する薄いポリカーボネート等、IR放射波の透過を許容する材料で作ることができる。この様にして、IRセンサは、「真の閉ループ」温度制御の為に、増幅チャンバ121内の流体の温度を測定することができる。言い換えれば、蓄熱対象物125及び反応試薬を含む増幅チャンバ121の反対側に配置された加熱要素123(例えば、バイファイラコイル)及び温度センサ124により、閉ループ温度制御システムが構築される。
【0049】
幾つかの実施形態では、システム要件に応じて他の温度センサが適している場合がある。例えば、熱電対センサ、サーミスタセンサ、抵抗温度検出器、又は半導体ベースのセンサが、幾つかの実施形態で使用されてもよい。
【0050】
一実施形態では、増幅チャンバ内のどこに配置されていても、加熱要素が蓄熱対象物に近接し、温度センサが試薬に近接する限り、加熱要素及び温度センサは、増幅チャンバの何れの側にもあることができる。幾つかの実施形態では、
図13に示される様に、蓄熱対象物は、加熱要素に最も近い増幅チャンバの表面に配置される。他の実施形態では、蓄熱対象物は、表面の全部又は一部を構成するチャンバの一体的な部分である。蓄熱対象物がチャンバ表面に配置される実施形態では、効率的な加熱を促進する為に、対象物の下のチャンバ材料の厚さは、チャンバの他の部分よりも薄くてもよい。
【0051】
蓄熱対象物125の材料(例えば、金属対象物)の熱慣性が低い為、PCRサーマルサイクリング(2段階又は3段階の何れか)の為の効果的な温度制御は、単一の加熱要素(例えば、誘導コイル)を介して達成することができる。単一の加熱要素123によって生成される熱の量は、増幅チャンバ内の異なる温度を維持する為にそれ自体制御することができる。他の実施形態において、幾つかの実施形態では、複数の加熱要素123を使用することができる。
【0052】
図11及び
図12を参照すると、回転ホイール117には、加熱要素123(例えば、誘導コイル)と、ヒートシンク128の様なカートリッジから熱が放散する経路として機能する構造とが取り付けられている。ヒートシンク128の材料の例としては、アルミニウム、銅(これらの組み合わせ及び合金)、アルミニウムと組み合わせた炭素由来材料、及び天然黒鉛複合材料が挙げられる。この実施形態では、回転ホイール117は、その前に置かれたマイクロ流体カートリッジに対してその中心軸を中心に回転する様に電源に接続されている。
図7に示す実施形態では、温度センサ124を、増幅チャンバ121に近接配置された構造体に取り付け、カートリッジ内の流体の温度をモニターする為に使用することができる。この実施形態に示される温度センサ124は、加熱要素123及びヒートシンク128を担持する回転ホイール117とは反対側のマイクロ流体カートリッジ(即ち、増幅チャンバ121)側に配置された構造体に取り付けられる。
【0053】
図11及び
図12を参照すると、幾つかの実施形態では、加熱要素123及びヒートシンク128は、ホイールが回転されると、加熱要素123又はヒートシンク128の何れかがマイクロ流体カートリッジの増幅チャンバ121と接触するが、両方が同時に接触しない様に、回転ホイール117上で空間的に配向(例えば、制御される間の距離)されてもよい。加熱要素123が増幅チャンバ121に接触すると、カートリッジ内の蓄熱対象物125が急速に加熱され、蓄熱対象物125に接触している試薬が加熱される。増幅チャンバ121の前に配置された温度センサ124は、その中に含まれる流体の温度を測定する。幾つかの実施形態では、蓄熱対象物125の熱質量及び(対象物の前面の局所的な)加熱される流体の体積が小さい場合、10℃/秒を超える急速な加熱速度を達成することができる。
【0054】
図11A~
図11Cに示した実施形態を引き続き参照すると、流体の温度を急速に下げる為に、ヒートシンク128を採用することができる。この実施形態では、ヒートシンク128が増幅チャンバ121と接触する様に回転ホイール117が回転される。この実施形態では、ヒートシンク128は試薬から急速に熱を奪う。
図12A~
図12Cに示される代替的な実施形態では、冷却速度を更に改善する為に熱電冷却器(TEC)129を採用することができる。約15℃/秒まで至る冷却速度が、本願明細書に記載される構成を使用して、PCR速度を大幅に改善することが観察されている。例えば、15分未満で約40サイクルまで至る迅速なPCRが、この新規な構成を使用して実現されてもよい。他の実施形態では、ヒートスプレッダ130を使用することができる。幾つかの実施形態では、ヒートシンク128、熱電冷却器(TEC)及びヒートスプレッダ130は重ねられ、ヒートスプレッダ130は増幅チャンバ121に最も近く、熱電冷却器129はヒートシンク128とヒートスプレッダ130との間にある。ヒートスプレッダは、より高温の熱源からより低温のヒートシンク又は熱交換器に熱としてエネルギーを伝達する。受動的ヒートスプレッダの最も一般的なタイプは、銅、アルミニウム又はダイヤモンド等の熱伝導率の高い材料のプレート又はブロックである。能動的ヒートスプレッダは、外部電源を用いて熱の移動を加速する。熱電冷却器はペルチェ効果によって作動する。一般的に、TECには2つの面があり、直流電流が装置に流れると、一方の面からもう一方の面に熱が伝わる。通常、高温側は周囲温度を維持する為にヒートシンクに取り付けられている。趙棟梁(Zhao, Dongliang)著(2014年5月)「熱電冷却のレビュー:材料、モデリング及び応用(A review of thermoelectric cooling: Materials, modeling and applications.)」アプライドサーマルエンジニアリング(Applied Thermal Engineering)66(1-2):15-24.doi:10.1016/j.applthermaleng.2014.01.074。
【0055】
図15は、複数の温度目標領域136a~136cが使用される更に他の実施形態を示す(この実施形態では3つ)。第1温度目標領域136aは、第1増幅チャンバ121a(又は他の試薬ウェル)に含まれる試薬を加熱し、温度目標領域136bは、第2チャンバ121bに含まれる試薬を加熱し、第3温度目標領域136cは、第3チャンバ121cに含まれる試薬を加熱する。所望の温度を得る為に、単一の加熱要素123又は複数の加熱要素123a~123cを使用することができる。一実施形態では、蓄熱対象物の温度を一定に保ったまま、試薬への迅速な熱伝達を促進する為に、蓄熱対象物125の熱質量(従って熱慣性)を意図的に高く選択することができる。この様なシナリオは、試薬が1つのチャンバ/蓄熱対象物から別のチャンバ/蓄熱対象物に移送される場合に有利である。この実施形態では、複数の蓄熱対象物をPCRサーマルサイクリングに必要な保持温度に対応する異なる温度に加熱することができる。流体弁131a~131bは、畜熱対象物125a~125cを含むチャンバ間の試薬の移動を制御する為に開閉する。図には示されていないが、試薬を移動させる圧力を発生させる為に流体ポンプを使用することもできる。
【0056】
図16に示される更に他の実施形態では、複数の温度目標領域136a~136c(例えば、この実施形態では3つ)が、連続的な(弁が設けられていない)流体チャネル132内に配置される。この実施形態では、連続的な(弁が設けられていない)流体チャネル132を通る試薬の流速は一定であってもよい。更に、個々の蓄熱対象物の長さは、試薬が個々の対象物を通過するのに要する時間が特定の温度でのPCR工程の保持時間に対応する様に選択することができる。幾つかの実施形態では、試薬が(例えばポンプを介して)連続的な(弁が設けられていない)流体チャネル132の周りを移動する回数はPCRサイクルの回数に対応する。この様な構成は弁を必要とせず、トラック上の対象物を通して流体を移動させる為に単純な流体ポンプを利用することができる。
【0057】
実施例1:PCR増幅及びラテラルフロー検出を含む試料-応答分析を用いた試料中のクラミジア及び淋菌の検出
以下は、PCR増幅及び増幅産物のラテラルフロー分析を含む分析の一例であり、試料-応答装置で実施される分析プロセスを制御する為の装置を用いて実施される。以下の説明は、上述した本発明の重要な側面の実施例である。
【0058】
プールされていた陰性腟綿棒試料にCT細胞及びNG細胞を添加した。CT血清型Eは1.2 IFU/mL、NG WHО-L(シプロフロキサシン耐性)は5 CFU/mL、NG ATCC 430669(シプロフロキサシン感受性)は106 CFU/mLで添加した。試料を溶解し、出願人の独自のシステムを用いてチャージスイッチ磁気ビーズで精製した。マスターミックスには、CT、NG、gyrA(シプロフロキサシン耐性マーカー)及び試料適正コントロール用のヒトGAPDHを増幅する為のマルチプレックス5プライマーミックス、1×platinum II PCRバッファー(サーモス(Thermos)社製)、5.5mM MgCl
2、10U platinum II taq HS DNAポリメラーゼ、120mM Trisバッファー pH8.8、0.75×platinum GCエンハンサー、及び2μg/μL BSAが含まれる。試料調製工程の後、先ず95℃で2分間加熱してホットスタートDNAポリメラーゼを活性化することで増幅を開始し、次に95℃で15秒間及び62.5℃で30秒間、40回のサーマルサイクリングを行った。その後、増幅産物をゲル電気泳動で分析した。最初に増幅産物4μLを5×ローディング色素1μLと混合し、その後3μLをゲルウェルに加え、175Vで13分間泳動した。ゲル分析の後、更に増幅された試料をラテラルフローストリップで分析した。ラテラルフロー分析が行われる前に、試料をラムダエキソヌクレアーゼ酵素で分解し、一本鎖DNAを生成した。ゲル分析とラテラルフロー分析の両方が、対応する対象物の増幅を示した。
図17を参照。
【0059】
図18Bに示すマイクロ流体カートリッジ116は、試料-応答分析を実行する為に必要な全ての要素を含む。このカートリッジは、試料の精製、濃縮、増幅、及び最後に増幅産物の検出を容易にする。溶解後、試料は細胞の破片や他のPCR阻害物質を分離するフィルタを通して移動される。フィルタでろ過され、溶解した試料は次に磁気ビーズブリスタに通され、そこでチャージスイッチ磁気ビーズ粒子と混合される。試料と磁気ビーズの混合物は、気泡を除去し、気泡が結合チャンバに入ることを防止するデバブラフィルタを経由してカートリッジの結合チャンバに移動する。結合チャンバ内では、溶解した試料と磁気ビーズが結合試薬と混合され、これにより混合液のpHが変化し、試料中のDNAが電荷スイッチ磁気ビーズ粒子に結合する。その後、磁気ビーズ(とそれに結合したDNA)を洗浄チャンバ1及び2に移動させた。これらのチャンバで磁気ビーズは、磁気ビーズ粒子に捕捉される可能性のあるPCR阻害剤を除去する為、洗浄バッファーと相互作用する。最後にビーズは増幅チャンバ121に移動され、そこでビーズはマスターミックスに懸濁された。マスターミックスのpHによってDNAが磁気ビーズ粒子から溶出する。DNAを増幅する為にPCRのサーマルサイクリングが行われた。この例では、増幅産物は検出の為にラテラルフローストリップ133に移動された。
【0060】
増幅産物の検出には、pH感受性色素や金属感受性インジケータを用いた視覚的検出、電気化学的検出、インターカレート色素や蛍光プローブを用いた光学的検出、比濁法、ラテラルフローストリップ検出を含む、様々な方法を用いることができる。この例では、増幅された核酸を検出する為にラテラルフローストリップを使用する。LAMP反応では、ビオチン及びFAM/FITC修飾FIP及びBIPプライマーを夫々使用してもよい。挟み込み形式のラテラルフローテストを使用してもよい。増幅産物は、ラテラルフローストリップ検出の前に希釈バッファー又はランニングバッファーと混合してもよい。増幅産物がラテラルフローストリップ上に流れる様に、分析自動化シーケンスの一部として弁が存在し、作動してもよい。或いは、増幅産物がラテラルフローストリップ上を流れる様に、隔壁に孔を空けてもよい。
【0061】
本願明細書に記載の装置を具現化した本願出願人の装置は、試料-応答試験を自動化する為、マイクロ流体カートリッジとの相互作用に使用された。装置には、カートリッジ供給モジュール、ブリスタ/試薬分注モジュール、試料調製及び増幅モジュール、及び検出モジュールが含まれていた。試料は溶解チャンバに添加され、カートリッジは部分的に装置に挿入された。装置内のRFIDタグリーダーがカートリッジ上のRFIDタグを読み取り、カートリッジタイプを識別する。これは、装置が適切な分析固有のシーケンスファイルを選択して実行する為に重要である。
【0062】
本実施例において本願出願人の装置によって実行される分析工程は、以下の表2のシーケンスファイル例によって概説され、表2の下に補足説明がある。
【0063】
【0064】
カートリッジ供給モジュールはマイクロ流体カートリッジ116を受け入れ、装置内に引き込む。このモジュールは、装置上の残りのモジュールがカートリッジと相互作用できる様に、装置内にカートリッジを配置する。シーケンスファイルの工程1では、供給モータがオンになり、カートリッジ116が装置内に引き込まれる(Dir FM値は+1)。表2を参照。
【0065】
次に、ブリスタ/試薬分注モジュール(例えば、作動機構103)がプレート1(例えば、112a)を作動させ、ブリスタのシール(例えば、磁気ビーズブリスタ、洗浄ブリスタ1、洗浄ブリスタ2及び増幅バッファーブリスタのシール)を破裂させ、試薬ブリスタからカートリッジ上の夫々のチャンバへの流体流路を開く。
【0066】
ここで、エアポンプ137が30秒間作動する。
図5B及び表2を参照。これにより、溶解チャンバ内の試料が、試料フィルタ、磁気ビーズブリスタ及びデバブラフィルタを経由して、カートリッジの結合チャンバに移動する。カートリッジ内では、この30秒間に以下の手順が実行される。
i.試料が溶解チャンバで溶解される。
ii.溶解した試料が試料フィルタに通され、細胞の破片が除去される。
iii.ろ過された溶解液が磁気ビーズブリスタを通って流れ、磁気ビーズと混合する。
iv.溶解液と磁気ビーズの混合物がデバブラフィルタを通じて流れ、試料から気泡が除去される。
v.混合物が結合チャンバに入り、そこで結合バッファー試薬と混合され、試料中のDNAが磁気ビーズ粒子に結合する。
【0067】
次に、ブリスタ/試薬分注モジュール(例えば、作動機構103)がプレート2(例えば、プレスプレート112b)を作動させる。このプレートは試薬ブリスタに衝突し、ブリスタを変形/破壊させ、これによりブリスタに含まれる試薬をカートリッジに分注する。これはカートリッジを満たし、即ち、洗浄バッファーブリスタが洗浄チャンバ1と2に分注し、増幅ブリスタが増幅チャンバ121に分注し、オイルブリスタがカートリッジの第1チャネルを満たす。具体的には、工程2で、作動モータ110(Act Mtr)の値が1に設定され、モータが作動され、方向(Dir AM)の値が1に設定され、移動がカートリッジに向かって行われ、プレート1の値が1に設定され、プレート1を移動させるクラッチ1が作動される。工程3では、エアポンプ137の値が1に設定され、エアポンプが作動され、保持時間の値が30に設定され、エアポンプが30秒間作動する。工程4では、作動モータ(Act Mtr)の値が1に設定され、モータが作動され、方向(Dir AM)の値が1に設定され、移動がカートリッジに向かって行われ、プレート2 112bの値が1に設定され、クラッチ2 104bが作動してプレート2 112bが移動する。表2の工程2~4を参照。
【0068】
この時点で、
図18Aに示す様に、試料前処理及び増幅ホイールモジュール(回転ホイール117)は、カートリッジに対して移動し、磁気ビーズ試料前処理を実行する。試料前処理及び増幅ホイールは、試料の精製及び濃縮を行う為に、空間的に配置された磁石118を含む。増幅の為に、増幅用ホイールは、ヒーター要素(誘導コイル)123とヒートシンク128を含む。この例では、ホイールはマイクロ流体カートリッジに対して移動し、その磁石をカートリッジの様々なチャンバに提示する。
【0069】
以下の工程(例えば、表2の工程7~工程12を参照)は、650uLの試料からのDNAがどの様にして磁気ビーズ粒子に濃縮され、洗浄工程によって精製され、最終的に50uLの溶液に溶出されるのかについて説明する。
図18A~
図18Bは、試料調製及び増幅ホイールを示す。
図18Bは、ホイールを備えたマイクロ流体カートリッジも示している。この実施例では、ホイールはマイクロ流体カートリッジに対して回転し、磁気ビーズベースの試料濃縮及び精製を実行する。
i.ホイールが動き、ホイール上の磁石が結合チャンバ内の磁気ビーズ粒子を捕らえ、マイクロ流体カートリッジの第1チャネルに引き込む。
ii.ホイールが時計方向に回転し続けると、磁気ビーズ粒子は洗浄ウェル1の上のバッフルに堆積する。
iii.ホイールは時計回りに回転し続け、ホイール上の別の磁石が磁気ビーズ粒子を洗浄ウェル1に引き込み、そこでビーズが溶液に再懸濁されて洗浄される。
iv.ホイールが更に回転すると、次の磁石が洗浄ウェル1から磁気ビーズ粒子を回収し、それを洗浄ウェル2の上に移す。
v.次の磁石が再度洗浄工程の為に磁気ビーズ粒子を洗浄ウェル2に運ぶ。
vi.ホイールは回転し続け、ホイール上の次の磁石が洗浄ウェル2からビーズを回収し、それを増幅チャンバに運ぶ。
vii.次の磁石が磁気ビーズ粒子を増幅チャンバに運び、マスターミックスに再懸濁する。
viii.マスターミックスのpHにより、DNAは磁気ビーズ粒子からマスターミックスの溶液に溶出する。
【0070】
この例では、カートリッジ116上の増幅は、増幅チャンバ内の流体のサーマルサイクリングによって行われる。加熱は誘導加熱によって行われ、冷却は熱電冷却器で冷却されたヒートシンクによって行われる。表2の工程64~工程73はPCRサーマルサイクリングシーケンスファイルを示す。一般的に、手順は以下の通りである。
i.作動ホイール117(
図18参照)が回転し、ヒーター要素123をカートリッジの増幅チャンバに提示する。この例では、ヒーター要素は、作動ホイールに取り付けられた誘導加熱コイルである。カートリッジの増幅チャンバ121内には金属対象物125が存在し、コイルが金属対象物に熱を誘導する。金属対象物は増幅チャンバ内の流体と直接接触している為、流体の温度は急速に上昇する。
ii.
図19A~
図19Cは、増幅チャンバ121の前に配置されたIRセンサ124を示す。IRセンサは増幅チャンバ内の流体の温度を測定する。
iii.この実施例で使用する分析では、工程66(表2参照)でホイールを-386度に動かし、誘導コイルをカートリッジ上の増幅チャンバに提示し、ヒーター設定点温度(HTR1SP)の値は95℃、保持時間の値は120秒である。従って、誘導コイルはIRセンサが流体の温度を測定して95℃に達するまで流体を加熱する。一旦95℃になると、コイルは熱を保持するので、流体は120秒間その温度に保持される。工程66は、熱活性化工程を定義する。
iv.工程67では、ホイールを-424度まで動かし、ヒートシンクをカートリッジの増幅チャンバに提示する。ヒートシンクは熱電冷却器(TEC)によって4℃まで冷却される。ヒートシンクは増幅チャンバと接触してシステムから熱を引き出し、流体を62℃まで冷却する。
v.工程68では、ホイールを-386度まで戻し、誘導コイルを増幅チャンバに提示する。この工程ではフライドを62.5℃で30秒間保持する為に、誘導コイルがシステムに熱を加える。工程68はPCRのアニーリング/伸長工程を定義する。
vi.工程69で流体温度を95℃まで上げる。工程69はPCRの変性工程を定義する。
vii.工程69の完了後、シーケンスファイルは次の工程が64であり、39回繰り返されることを示す。これらの工程を実行することにより、95℃で5秒間の変性工程と62.5℃で30秒間のアニーリング/伸長を含む、95℃から65℃まで40サイクルのPCRが行われる。
【0071】
増幅後、PCR産物は増幅チャンバからカートリッジ上のラテラルフローストリップ133に移動される。ブリスタ/試薬分注モジュールのプレート3 112cをラテラルフローストリップブリスタ134の前に配置した状態を示す
図19A~
図19Cを参照。
図7Aに示す様に、プレート3(112c)上の突起113は、プレート3 112cがカートリッジ前方に移動する時、ラテラルフローブリスタ134に衝突する。以下、工程をより明確に説明する。
i.ブリスタ/試薬分注モジュール上のプレート3がカートリッジの前方に移動し、プレート3の突起がラテラルフローブリスタに衝突する。これによりブリスタが破れ、増幅チャンバからラテラルフローストリップへの流体経路が開く。
ii.一旦流体経路が開かれると、PCR産物の上にあるミネラルオイルの重さが、PCR産物を増幅チャンバからラテラルフローブリスタを通してラテラルフローストリップに移動させるのに必要な圧力ヘッドを提供する。
iii.ラテラルフローブリスタは親油性/疎水性パッドを含む。これにより、水性PCR産物はブリスタ内を流れるが、ミネラルオイルは親油性パッドに捕捉される。従って、増幅産物の50uL以下だけがラテラルフローストリップに流れる。
iv.ラテラルフローストリップ上でPCR産物がストリップを通り、標的病原体が存在すればストリップ上の線に結合して可視化される。
v.ストリップはカメラで撮像され、病原体の検出はラテラルフローストリップ画像の画像処理によって行われる。CT11陽性試料を示す
図19を参照。
【0072】
上記の実施例では、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用を説明しているが、他のNAATも考えられる。最近の等温増幅分析技術の進歩により、NAATを実施する為に必要な装置が簡素化された。
【0073】
実施例2-増幅プロファイル
a)腟綿棒試料中のCT/NGのマルチプレックスPCR増幅
この例では、プールされた陰性膣スワブ検体にCT細胞とNG細胞を添加した。CT serоvar Eは1.2IFU/mL、NG WHО-L(シプロフロキサシン耐性)は5CFU/mL、NG ATCC 430669(シプロフロキサシン感受性)は106CFU/mL添加された。試料は溶解され、NоvelDx独自のシステムを用いてチャージスイッチ磁気ビーズで精製された。マスターミックスは、CT、NG、gyrA(シプロフロキサシン耐性マーカー)及び試料適正コントロール用のヒトGAPDHを増幅する為のマルチプレックス5プライマーミックス、1×platinum II PCRバッファー(サーモス(Thermos)社製)、5.5mM MgCl2、10 U platinum II taq HS DNAポリメラーゼ(サーモス(Thermos)社製)、120mM TrisバッファーpH8.8、0.75×platinum GCエンハンサー、及び2μg/μL BSAを含む。試料調製工程の後、先ず95℃で2分間加熱してホットスタートDNAポリメラーゼを活性化し、次に95℃で15秒間及び62.5℃で30秒間のサーマルサイクリングを40回行うことで増幅を開始した。その後、増幅産物をFlashGel(登録商標)System(ロンザ(Lonza)社製)を用いたゲル電気泳動で分析した。先ず増幅産物4μLを5×FlashGel(登録商標)lоading dye(ロンザ(Lonza)社製)1μLと混合し、3μLをゲルウェルに加え、175Vで13分間泳動した。ゲル分析の後、増幅された試料はラテラルフローストリップにより更に分析された。試料はラテラルフロー分析にかけられる前に一本鎖DNAを生成する為ラムダエキソヌクレアーゼ酵素で分解された。ゲル分析とラテラルフロー分析の両方で、対応する対象物の増幅が確認された。
【0074】
b)SARS-CоV-2ゲノムRNAの高速RT-PCR増幅
NоvelDxプラットフォームが特定の標的配列を迅速に増幅できることを示す為に、SARS-CоV-2に特異的な2種類のプライマーを用いて92bpと112bpの標的配列を増幅した。高速SpeedStar DNAポリメラーゼ(TakataBiо社製)で強化した2×ready mix Оne Step PrimeScript(登録商標)III RT-PCRキット(Cat.♯RR600B、タカラバイオ株式会社(Takara Bio)製)を使用した。総量50μLの増幅ミックスは、14.6μLの水、25μLのОne Step PrimeScript(登録商標)III RT-PCR mix、5μLのプライマー1及びプライマー2(各1μM)、0.4μLのSpeedStar DNA Pоlymerase(5U/μL)、5μLのgRNA(1000、100又は10コピー/反応)から構成される。50μLをカートリッジの増幅チャンバに加え、cDNAを合成する為55℃で2分間加熱して逆転写工程を行い、95℃で10秒間加熱してRT酵素を失活させると共にホットスタートDNAポリメラーゼを活性化させた。その後、95℃で1秒、及び65℃で3秒を40サイクル繰り返すPCR増幅を行い、RTPCR増幅の総時間は約10.5分であった。その後、増幅産物をFlashGel(登録商標)System(ロンザ(Lonza)社製)を用いたゲル電気泳動で分析した。まず、増幅産物4μLを5×FlashGel(登録商標)lоading dye(ロンザ(Lonza)社製)1μLと混合し、3μLをゲルウェルに加え、175Vで13分間泳動した。ゲル分析の結果、1000コピーと100コピーのgRNAマーカーでは、100bpのDNAマーカーの下と上に、92bpと108bpの増幅産物に相当する2本のバンドが見られた。10コピーの場合は非常に微かなバンドが見られるが、NTC試料ではバンドは見られない。
【0075】
例示的実施形態
1. マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置であって、
単一のモータと、
単一の駆動ベルトを含む駆動ベルト組立体と、
回転中心軸を中心に回転する様に構成された1つ以上のクラッチを含むクラッチ組立体であって、各クラッチは、回転の中心軸上で前記1つ以上のクラッチの夫々の内部の中心に配置された駆動シャフトを含み、前記1つ以上のクラッチの回転は、当該駆動ベルト組立体によって駆動される、クラッチ組立体と、
前記マイクロ流体カートリッジと係合し、1つ以上の分析プロセスを作動させる様に構成された、前記駆動シャフトに取り付けられた1つ以上の作動要素を備える作動機構と、
を備える装置。
【0076】
2. 前記1つ以上の作動要素はプレスプレートを備える、段落1の装置。
【0077】
3. 前記マイクロ流体カートリッジは、1つ以上の試薬充填ブリスタ、流体チャネル、及び1つ以上のウェルを備える、段落1の装置。
【0078】
4. 前記プレスプレートは、前記マイクロ流体カートリッジと物理的に係合する様に構成された1つ以上の突起を備える、段落2の装置。
【0079】
5. 前記マイクロ流体カートリッジは、入口弁及び出口弁を備える1つ以上のフロースルーブリスタを備え、前記1つ以上の突起は、前記入口弁及び前記出口弁に係合して開く様に構成された第1形状を備える、段落4の装置。
【0080】
6. 前記マイクロ流体カートリッジは、1つ以上の試薬充填破砕ブリスタを備え、前記1つ以上の突起は、前記1つ以上の破砕ブリスタを変形させて前記試薬を前記破砕ブリスタから押し出す様に構成された第2形状を備える、段落4の装置。
【0081】
7. 前記駆動シャフトは、前記1つ以上の作動要素を取り付ける為のねじ部を備える、段落1の装置。
【0082】
8. 前記クラッチ組立体は複数のクラッチを備える、段落1の装置。
【0083】
9. 前記クラッチ組立体は3つのクラッチを備える、段落1の装置。
【0084】
10. 前記単一のモータは、前記駆動ベルト組立体の回転に動力を与える為に前記複数のクラッチのうちの1つのみに固定される軸を備える、段落8の装置。
【0085】
11. 前記単一のモータは、前記駆動ベルト組立体の回転に動力を与える為に前記複数のクラッチのうちの1つのみに固定される軸を備える、段落9の装置。
【0086】
12. 前記マイクロ流体カートリッジに近接した位置において、一連の空間的に配置された永久磁石を更に備え、前記マイクロ流体カートリッジは金属粒子を更に含み、前記永久磁石は、磁力によって前記マイクロ流体カートリッジを通して前記金属粒子を移動させる様に構成されている、段落3の装置。
【0087】
13. 前記一連の空間的に配置された永久磁石は、前記マイクロ流体カートリッジに隣接する回転ホイールに取り付けられる、段落12の装置。
【0088】
14. 前記1つ以上のクラッチは電磁クラッチである、段落1の装置。
【0089】
15. 前記単一のモータはステッパモータである、段落1の装置。
【0090】
16. 前記単一のモータはサーボモータである、段落1の装置。
【0091】
17. 前記単一のモータはギアモータである、段落1の装置。
【0092】
18. 前記単一のモータは1つのギアを含み、1つの速度で動作する様に構成されている、段落1の装置。
【0093】
19. マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する方法であって、
1つ以上の分析に対応する1つ以上のシーケンスファイルでプログラムされる様に構成された装置を提供する工程と、
前記1つ以上の分析に対応する1つ以上のシーケンスファイルで前記装置をプログラミングする工程と、
前記装置は、単一のモータと、単一の駆動ベルトを含む駆動ベルト組立体と、回転の中心軸を中心に回転する様に構成された複数のクラッチを含むクラッチ組立体であって、各クラッチは、前記回転の中心軸上の前記1つ以上のクラッチの夫々の内部の中心に配置された駆動シャフトを含み、前記複数のクラッチの回転は、前記駆動ベルト組立体によって駆動されるクラッチ組立体と、前記マイクロ流体カートリッジに係合し、1つ以上の分析プロセスを作動させる様に構成された、前記駆動シャフトに取り付けられた1つ以上の作動要素を含む作動機構と、を備え、
前記マイクロ流体カートリッジを前記装置に挿入する工程と、
前記装置を使用して前記分析の実行を開始する工程と、
を含む、方法。
【0094】
20. 前記1つ以上の分析プロセスは、ポリメラーゼ連鎖反応を含む、段落19の方法。
【0095】
21. 前記1つ以上の分析プロセスは、前記マイクロ流体カートリッジを通る標的分析物の磁気ビーズに基づく移動を含む、段落19の方法。
【0096】
22. 前記1つ以上の分析プロセスは、ラテラルフローストリップ分析を含む、段落19の方法。
【0097】
23. マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置であって、マイクロ流体カートリッジと、温度センサと、前記カートリッジに対して回転する回転ホイールと、を備え、前記回転ホイールは、加熱要素と放熱要素とを備える、装置。
【0098】
24. 前記分析はポリメラーゼ連鎖反応である、段落23の装置。
【0099】
25. 前記マイクロ流体カートリッジは、PCRが行われる増幅チャンバを備える、段落24の装置。
【0100】
26. 前記加熱要素は誘導コイル要素を備える、段落23の装置。
【0101】
27. 前記加熱要素は前記回転ホイールに取り付けられる、段落23の装置。
【0102】
28. 前記放熱要素は前記回転ホイールに取り付けられる、段落23の装置。
【0103】
29. 前記誘導コイル要素はバイファイラコイルを備える、段落26の装置。
【0104】
30. 前記放熱要素はヒートシンクを備える、段落23の装置。
【0105】
31. 前記放熱要素はヒートシンク、熱電冷却器及び/又はヒートスプレッダを備える、段落23の装置。
【0106】
32. 前記ヒートシンクは、アルミニウム、銅(その組み合わせ及び合金)、アルミニウムと組み合わせた炭素由来材料、及び/又は天然黒鉛複合材料を含んで構成される、段落30の装置。
【0107】
33. 前記温度制御ユニットは、蓄熱対象物を更に備える、段落23の装置。
【0108】
34. 前記蓄熱対象物は、前記増幅チャンバ内に配置される、段落33の装置。
【0109】
35. 前記蓄熱対象物は、金属を含んで構成される、段落33の装置。
【0110】
36. 前記蓄熱対象物は、前記増幅チャンバの壁上に設けられ、前記壁は前記加熱要素に最も近い、段落33の装置。
【0111】
37. 前記金属は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄金属及び鉄合金、又はそれらの組み合わせである、段落35の装置。
【0112】
38. 蓄熱対象物は、所定の熱慣性特性を有する材料を含んで構成される、段落33の装置。
【0113】
39. 前記蓄熱対象物の材料は高い熱慣性特性を有する、段落38の装置。
【0114】
40. 前記温度センサはIR温度センサを備える、段落23の装置。
【0115】
41. 前記熱源と前記増幅チャンバは物理的に接触していない、段落25の装置。
【0116】
42. 前記温度センサと前記増幅チャンバは物理的に接触していない、段落25の装置。
【0117】
43. 前記温度制御ユニットが、毎秒約10℃~毎秒約50℃の前記増幅試薬の加熱及び冷却速度を生成することができる、段落23の装置。
【0118】
44. 5分未満~15分未満でPCRを約40サイクル行う反応速度を達成するように構成されている、段落23の装置。
【0119】
45. 前記1つ以上の分析プロセスは、ラテラルフローストリップ検出、リアルタイム光学蛍光検出、光学マイクロアレイ検出、及び電気化学検出から成る組から選択される、段落19の装置。
【0120】
46. 試料-応答装置に使用するマイクロ流体カートリッジであって、
試薬ブリスタ及び流体チャネルを備えるマイクロ流体カートリッジであって、前記試薬ブリスタが、第1容器、第2容器、第3容器、試薬が前記ブリスタに流入することを可能にする入口連結、試薬が前記ブリスタから流出し流体チャネルに流入することを可能にする出口連結、及び破裂バーを含む、マイクロ流体カートリッジと、
第1プランジャー、第2プランジャー、及び第3プランジャーと、
を備えるマイクロ流体カートリッジ。
【0121】
47. 試料-応答装置であって、
試薬ブリスタ及び流体チャネルを備えるマイクロ流体カートリッジであって、前記試薬ブリスタが、第1容器、第2容器、第3容器、試薬が前記ブリスタに流入することを可能にする入口連結、試薬が前記ブリスタから流出し流体チャネルに流入することを可能にする出口連結、及び破裂バーを含む、マイクロ流体カートリッジと、
第1プランジャー、第2プランジャー、及び第3プランジャーと、
を備える試料-応答装置。
【0122】
上記の開示に基づき、当業者であれば、上記に開示したマイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置が、ポイントオブケア型の試料-応答装置又は機器に使用する様に構成されていることが明らかであろう。従って、本願明細書に記載の発明は、マイクロ流体カートリッジ内の分析プロセスを制御する為の装置を含むポイントオブケア装置又は機器(又は試料-応答装置又は機器)も対象とする。
【0123】
一般的な定義
本願明細書では特定の用語が使用されているが、これらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。別段の定義がない限り、本願明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本願明細書に記載される主題が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0124】
本願明細書で使用する「核酸」とは、ヌクレオチドと呼ばれる共有結合したサブユニットを備える高分子化合物を意味する。「ヌクレオチド」は、リン酸基に連結したヌクレオシド(即ち、糖、通常はリボース又はデオキシリボースに連結したプリン塩基又はピリミジン塩基を備える化合物)を備える、分子又はより大きな核酸分子中の個々の単位である。
【0125】
「ポリヌクレオチド」又は「オリゴヌクレオチド」又は「核酸分子」は、一本鎖又は二本鎖形態の何れかの、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン又はシチジン、「RNA分子」又は単に「RNA」)、又はデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン又はデオキシシチジン、「DNA分子」又は単に「DNA」)のリン酸エステル高分子形状、又はホスホロチオエート及びチオエステル等のそれらのリン酸エステル類似体を意味する。任意の長さのRNA、DNA、又はRNA/DNAハイブリッド配列を含むポリヌクレオチドが使用可能である。本発明で使用するポリヌクレオチドは、天然に存在するもの、合成されたもの、組換えられたもの、生体外で生成されたもの、又はそれらの組み合わせであってもよく、また、当技術分野で公知の任意の精製方法を利用して精製されてもよい。従って、「DNA」という用語は、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、半合成DNA、相補的DNA(「cDNA」、メッセンジャーRNAテンプレートから合成されたDNA)、及び組換えDNA(人工的に設計され、従って天然のヌクレオチド配列から分子生物学的操作を受けたDNA)を含むが、これらに限定されない。
【0126】
「増幅する」、「増幅」、「核酸増幅」等は、核酸テンプレート(例えば、テンプレートDNA分子)の複数のコピーの産生、又は核酸テンプレート(例えば、テンプレートDNA分子)に相補的な複数の核酸配列コピーの産生を指す。
【0127】
「上」、「下」、「上方」、「下方」、及び「~の上」という用語は、説明される装置の構成部品の相対的な位置、例えば装置内の上基板と下基板の相対的な位置に関して、本願明細書全体を通して使用される。装置は、空間内の向きに関係なく機能することが理解されよう。
【0128】
液滴アクチュエータ上のビーズに関する「ビーズ」とは、液滴アクチュエータ上で、又は近接して、液滴と相互作用できるあらゆるビーズ又は粒子を意味する。ビーズは、球形、概ね球形、卵形、円盤形、立方体、非晶質、その他の三次元形状等、多種多様な形状のいずれであってもよい。ビーズは、例えば、液滴アクチュエータ上の液滴で液滴操作を受けることができるか、又は液滴アクチュエータ上の液滴を液滴アクチュエータ上のビーズ及び/又は液滴アクチュエータ外のビーズに接触させることを可能にする方法で液滴アクチュエータに関して構成することができる。ビーズは、液滴内、液滴操作間隙内、又は液滴操作表面上に設けることができる。ビーズは、液滴操作間隙の外部にある、又は液滴操作表面から離間した位置にあるリザーバ内に設けることができ、リザーバは、ビーズを含む液滴を液滴操作間隙に入れる、又は液滴操作表面に接触させることを可能にする流路に関連付けることができる。ビーズは、例えば樹脂、ポリマー等、多種多様な材料を用いて製造することができる。ビーズは、例えばマイクロビーズ、マイクロパーティクル、ナノビーズ、ナノパーティクル等、任意の適切なサイズであってよい。ある場合にはビーズは磁気応答性であるが、他の場合にはビーズは有意に磁気応答性ではない。磁気応答性ビーズの場合、磁気応答性材料は、ビーズの実質的に全てを構成してもよく、ビーズの一部を構成してもよく、又はビーズの一構成要素のみを構成してもよい。ビーズの残りの部分は、特に、高分子材料、コーティング、分析試薬の付着を可能にする部位等を含んでもよい。適切なビーズの例としては、フローサイトメトリー用マイクロビーズ、ポリスチレンマイクロパーティクル及びナノパーティクル、機能化ポリスチレンマイクロパーティクル及びナノパーティクル、コーティングされたポリスチレンマイクロパーティクル及びナノパーティクル、シリカマイクロビーズ、蛍光マイクロスフェア及びナノスフェア、官能基化された蛍光性マイクロスフィア及びナノスフィア、コーティングされた蛍光性マイクロスフィア及びナノスフィア、カラー染色されたマイクロパーティクル及びナノパーティクル、磁性マイクロパーティクル及びナノパーティクル、超常磁性マイクロパーティクル及びナノパーティクル(例えば、カリフォルニア州カールスバッド市にあるインビトロゲングループ(Invitrogen Group)から入手可能なDYNABEADS(登録商標)粒子)、蛍光性マイクロパーティクル及びナノパーティクル、コーティングされた磁性マイクロパーティクル及びナノパーティクル、強磁性マイクロパーティクル及びナノパーティクル、コーティングされた強磁性マイクロパーティクル及びナノパーティクルを含む。ビーズは、生体分子又は生体分子に結合して複合体を形成することができる他の物質と予め結合されてもよい。ビーズは、抗体、タンパク質、抗原、DNA/RNAプローブ、又は所望の標的に対して親和性を有する分子とあらかじめ結合されてもよい。
【0129】
磁気応答性ビーズに関する「固定化」とは、ビーズが液滴内又は液滴アクチュエータ上の充填剤流体内の位置で実質的に拘束されることを意味する。例えば、一実施形態では、固定化ビーズは、液滴分割操作の実行を可能にする為に、液滴内の位置で十分に拘束され、実質的に全てのビーズを含む液滴と、実質的にビーズを欠く液滴とが得られる。
【0130】
「磁気応答性」とは、磁場に応答することを意味する。「磁気応答性ビーズ」は、磁気応答性材料を含むか、又は磁気応答性材料を構成している。磁気応答性材料の例には、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、及びメタ磁性材料が含まれる。好適な常磁性材料の例としては、鉄、ニッケル、コバルトの他、Fe304、BaFe12019、CоО、NiО、Mn203、Cr203、CоMnP等の金属酸化物が挙げられる。
【0131】
任意の形態の液体(例えば、液滴又は連続体であり、移動しているか静止しているかを問わない)が、電極、アレイ、マトリックス又は面の「上」、「点」又は「上方」にあると記載される場合、その様な液体は、電極/アレイ/マトリックス/面と直接接触しているか、又は液体と電極/アレイ/マトリックス/面との間に介在する1つ以上の層又は膜と接触していてもよい。一例として、フィラー液は、その様な液体と電極/アレイ/マトリックス/面との間の膜とみなすことができる。
【0132】
長年の特許法の慣例に従い、「a」、「an」、及び「the」という用語は、特許請求の範囲を含め、本出願で使用される場合、「1つ以上」を指す。従って、例えば、「a主題」への言及は、文脈が明らかに反対の場合(例えば、複数の主題等)を除き、複数の主題を含む。
【0133】
本願明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「備える(cоmprise)」、「備える(cоmprises)」、及び「備える(cоmprising)」という用語は、文脈上他に必要とされる場合を除き、非排他的な意味で使用される。同様に、用語「含む(include)」及びその文法的変形は、非限定的であることを意図しており、リスト中の項目の記述は、リストされた項目に置換又は追加されてもよい他の同様の項目を排除するものではない。
【0134】
本願明細書及び添付の特許請求の範囲の目的上、別段の指示がない限り、本願明細書及び特許請求の範囲で使用される量、サイズ、寸法、比率、形状、配合、パラメータ、パーセンテージ、パラメータ、量、特性、及び他の数値を表す全ての数は、「約」という用語が値、量又は範囲と共に明示的に表示されていなくても、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解される。従って、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、正確ではなく、正確である必要はないが、許容誤差、換算係数、四捨五入、測定誤差等、及び現在開示されている主題によって得ようとする所望の特性に応じて当業者に公知の他の要因を反映して、近似値及び/又は所望により大きくても小さくてもよい。例えば、値について言及する場合、用語「約」は、開示される方法を実施する為、又は開示される組成物を採用する為に適切である様な変動として、ある実施形態では±100%、ある実施形態では±50%、ある実施形態では±20%、ある実施形態では±10%、ある実施形態では±5%、ある実施形態では±1%、ある実施形態では±0.5%、及びある実施形態では±0.1%の規定量からの変動を包含することを意味してもよい。
【0135】
本願明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献(特定の市販製品又は製品ラインに関する参考文献を含む)は、現在開示されている主題が関係する当業者のレベルを示すものである。全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、個々の刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照により本願明細書に組み込まれる。多数の特許出願、特許、及びその他の参考文献が本願明細書で参照されているが、この様な参照は、これらの文書の何れかが当技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではないことが理解されよう。
【0136】
前述の主題は、理解を明瞭にする目的で、図示及び例示によってある程度詳細に説明されてきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲の範囲内で特定の変更及び修正を実施できることが理解されよう。
【国際調査報告】