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特表2024-542093組換えヘマグルチニン及びノイラミニダーゼを含む多価インフルエンザワクチン、並びにその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】組換えヘマグルチニン及びノイラミニダーゼを含む多価インフルエンザワクチン、並びにその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/145 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 39/295 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241106BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K39/145 ZNA
A61K39/295
A61K39/39
A61P31/16
A61P37/04
C07K14/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526572
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022079274
(87)【国際公開番号】W WO2023081798
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,284
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517055195
【氏名又は名称】サノフィ パスツール インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・アレファンティス
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・バロ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・バイヤーズ
(72)【発明者】
【氏名】グアダルペ・コルテス-ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ-アレクサンドレ・ジルベール
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド・クリーンサウス
(72)【発明者】
【氏名】アルマハン・ナイク
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・プガチョフ
(72)【発明者】
【氏名】サランヤ・シュリダー
(72)【発明者】
【氏名】トーステン・ヴォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ワレン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA55
4C085BB11
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085FF30
4C085GG03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本願で開示されているのは、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)、及び任意選択的なアジュバントを含む多価ワクチン又は免疫原性組成物である。同様に開示されているのは、このワクチン又は免疫原性組成物を使用する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質を含む免疫原性組成物であって、前記複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、
第1の組換えインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)であり、前記第1の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである、第1の組換えインフルエンザウイルス(HA);
第2の組換えインフルエンザウイルスHAであり、前記第2の組換えインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである、第2の組換えインフルエンザウイルスHA;
第3の組換えインフルエンザウイルスHAであり、前記第3の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスHA;
第4の組換えインフルエンザウイルスHAであり、前記第4の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスHA;
第1の組換えインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)であり、前記第1の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NAである、第1の組換えインフルエンザウイルス(NA);
第2の組換えインフルエンザウイルスNAであり、前記第2の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである、第2の組換えインフルエンザウイルスNA;
第3の組換えインフルエンザウイルスNAであり、前記第3の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスNA;及び
第4の組換えインフルエンザウイルスNAであり、前記第4の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスNA
を含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
前記第1、第2、第3、及び第4の組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、改変組換えインフルエンザウイルスNAである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記改変組換えインフルエンザウイルスNAは、4つの改変単量体NA分子であって、各々は、前記インフルエンザウイルスの前記NAの頭部領域を含むが、前記インフルエンザウイルスの前記NAの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の全て又は実質的に全てとを欠いている、改変単量体NA分子を含む改変組換え四量体インフルエンザウイルスNAを含み、前記改変単量体NA分子は、宿主細胞中で発現された場合に、改変組換え四量体NAを形成する、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
各改変組換え単量体インフルエンザウイルスNAは、異種四量体化ドメインを含む、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
各改変組換え単量体インフルエンザウイルスNAは、異種オリゴマー化ドメインを含まない、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記異種四量体化ドメインは、スタフィロサームス・マリヌス(Staphylothermus marinus)テトラブラキオン四量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー四量体化ドメイン、パラミクソウイルスリン酸化タンパク質由来の四量体化ドメイン、又はヒト血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)四量体化ドメインである、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、培養昆虫細胞中においてバキュロウイルス発現系により産生されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で産生されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記免疫原性組成物は、不活性化インフルエンザビリオン又は生弱毒化インフルエンザビリオンを含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれ、及び/又は前記組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、標準治療インフルエンザ株に由来している、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記H1 HAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及び/又は前記H3 HAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来している、請求項1~10のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記N1 NAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及び/又は前記N2 NAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来している、請求項1~11のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記H1 HAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、前記H3 HAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来しており、前記N1 NAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及び前記N2 NAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来している、請求項1~12のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記H1 HA及び前記N1 NAは、同一のH1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、前記H3 HA及びN2 NAは、同一のH3N2インフルエンザウイルス株に由来している、請求項13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、
第1の組換えインフルエンザウイルスHAであって、前記第1の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである、第1の組換えインフルエンザウイルスHA;
第2の組換えインフルエンザウイルスHAであって、前記第2の組換えインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである、第2の組換えインフルエンザウイルスHA;
第3の組換えインフルエンザウイルスHAであって、前記第3の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスHA;
第4の組換えインフルエンザウイルスHAであって、前記第4の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスHA;
第1の組換えインフルエンザウイルスNAであって、前記第1の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NAである、第1の組換えインフルエンザウイルスNA;
第2の組換えインフルエンザウイルスNAであって、前記第2の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである、第2の組換えインフルエンザウイルスNA;
第3の組換えインフルエンザウイルスNAであって、前記第3の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスNA;及び
第4の組換えインフルエンザウイルスNAであって、前記第4の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスNA
からなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記組成物は、アジュバントをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記アジュバントは、水中スクアレンアジュバント又はリポソームベースのアジュバントを含む、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記水中スクアレンアジュバントは、AF03を含む、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記リポソームベースのアジュバントは、SPA14を含む、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、約0.1μg~約90μgの範囲の量で前記組成物中に存在しており、任意選択的に、約1μg~約60μg又は5μg~約45μgの範囲の量で前記組成物中に存在している、請求項1~19のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、約0.1μg~約90μgの範囲の量で前記組成物中に存在しており、任意選択的に、約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgの範囲の量で前記組成物中に存在している、請求項1~20のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記組成物は、筋肉内注射用に製剤化されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物、及び医薬担体を含むワクチン。
【請求項24】
インフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法であって、請求項23に記載のワクチンの免疫学的有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項25】
前記方法により、前記対象におけるインフルエンザウイルス感染が予防される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記方法により、前記対象における防御免疫反応が生じる、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記防御免疫反応は、HA抗体反応、及び/又はNA抗体反応を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記対象は、ヒトである、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ワクチンを、筋肉内投与するか、皮内投与するか、皮下投与するか、静脈内投与するか、鼻腔内投与するか、吸入により投与するか、又は腹腔内投与する、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法により、季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株のいずれか又は両方により引き起こされる疾患が処置されるか、又は予防される、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象は、ヒトであり、前記ヒトは、生後6ヶ月以上、18歳未満、少なくとも生後6ヶ月及び18歳未満、少なくとも18歳及び65歳未満、少なくとも生後6ヶ月及び5歳未満、少なくとも5歳及び65歳未満、少なくとも60歳、又は少なくとも65歳である、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
インフルエンザウイルス感染の1つ又は複数の症状を軽減する方法であって、請求項23に記載のワクチンの予防的有効量を対象に投与することを含む方法。
【請求項33】
対象における防御免疫反応を増強するか又は拡大する方法であって、請求項23に記載のワクチンの免疫学的有効量を前記対象に投与することを含み、前記ワクチンにより、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン有効性が、約5%~約100%の範囲の量だけ増加し、例えば、少なくとも約20%、又は約40%~約80%、例えば、約40%~約60%の量のだけ増加する、方法。
【請求項34】
前記標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/ビクトリア系統、及びB/山形系統に由来する不活性化インフルエンザウイルスを含む不活性化インフルエンザウイルス組成物である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/ビクトリア系統、及びB/山形系統に由来する組換えインフルエンザウイルスHAを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
2~6週間の間隔で、任意選択的には4週間の間隔で、前記ワクチンの2回の用量を前記対象に投与することを含む請求項24~35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月5日に出願された米国仮特許出願第63/276,284号明細書の出願日の利益を主張するものであり、且つこの出願日に依拠するものであり、この明細書の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、XMLフォーマットで電子的に提出されており且つその全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。前記XMLコピー(2022年10月14日に作成)は、名称が0171_0067_PCT_Sequence_Listing.xmlであり、サイズが3,450バイトである。
【0003】
本開示の分野
本明細書で開示されているのは、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)及びインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)の両方に対する免疫を誘発するための多価組換えインフルエンザワクチン又は免疫原性組成物、並びにこの多価組換えインフルエンザワクチン又は免疫原性組成物を使用する方法である。
【背景技術】
【0004】
インフルエンザは、鼻、咽喉、及び気管支を含む上気道を主に攻撃し、稀にまた肺も攻撃するウイルスによって引き起こされる。この感染は、通常、約1週間続く。それは、高熱、筋肉痛、頭痛、及び重度の倦怠感、乾性咳嗽、咽頭痛、並びに鼻炎の突然の発症を特徴とする。ほとんどの人は、いかなる治療も必要とせずに、1~2週間以内に回復する。しかしながら、非常に若い人、高齢者、及び肺疾患、糖尿病、癌、腎臓又は心臓の問題等の病状に苦しんでいる人々においては、インフルエンザは、深刻なリスクをもたらす。これらの人々では、この感染は、基礎疾患、肺炎、及び死亡の重度の合併症をもたらし得るが、健康な成人や年長の小児であっても同様に影響を受ける可能性がある。毎年の季節性インフルエンザの流行により、世界中で毎年、300万~500万人が重症化し、250,000~500,000人が死亡すると考えられている。
【0005】
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のメンバーである。インフルエンザウイルスには、インフルエンザA型、インフルエンザB型、及びインフルエンザC型と呼ばれる3つの主なサブタイプがある。インフルエンザビリオンは、下記のタンパク質をコードするセグメント化されたマイナスセンスRNAゲノムを含有する:ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、マトリックス(M1)、プロトンイオンチャネルタンパク質(M2)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼ塩基性タンパク質1(PB1)、ポリメラーゼ塩基性タンパク質2(PB2)、ポリメラーゼ酸性タンパク質(PA)、及び非構造タンパク質2(NS2)。HA、NA、M1、及びM2は、膜結合型であるが、NP、PB1、PB2、PA、及びNS2は、ヌクレオカプシド結合型タンパク質である。HA及びNAタンパク質はエンベロープ糖タンパク質であり、それぞれ、細胞へのウイルスの付着及びウイルス粒子の侵入、並びに細胞からの放出に主に関与している。
【0006】
ある特定の既知の認可されたインフルエンザワクチン組成物は、全ビリオン、若しくは脂質を溶解する薬剤で処理したビリオン(「スプリット」ワクチン)、細胞培養において発現された糖タンパク質の精製物(「サブユニットワクチン」)を含有する不活化ワクチン、又は生弱毒化ウイルスワクチンである。RNA/DNAベース、ウイルスベクターベース等の他のタイプのワクチンが開発中である。これらのワクチンは、部分的には、HA等のインフルエンザ抗原に対する抗体の産生を誘発することにより、防御を提供する。変異によるインフルエンザウイルスの抗原性の進化(抗原ドリフトとも称される)により、HAが変化し、程度は低いがNAも変化する。そのため、HA及びNAを含むインフルエンザの主要な抗原のアミノ酸配列は、ある特定の群、サブタイプ、及び/又は株にわたって非常に変化しやすい。
【0007】
従って、利用可能なワクチンは、同一又は交差反応性のエピトープを含む表面糖タンパク質を有する株のみを防御し得る。より広範な抗原スペクトルを提供するために、従来のワクチンは、いくつかの異なるウイルス株からの構成成分を含み、例えば、A型インフルエンザ及びB型インフルエンザの両方の株からの構成成分を含む。現在の季節性インフルエンザワクチンで使用される株の選択は、抗原ドリフトを考慮するために、及び急速に進化しているウイルス株に適合するために、毎年再検討されており、且つ世界保健機関(WHO)の推奨に基づいている。この推奨は、国際的な疫学的観察を反映している。
【0008】
ワクチン製造用の現在のインフルエンザウイルス種子は、製造に使用される高収量ウイルス株を生成するために使用される再集合手順のために、適切なHA抗原を有していることを示さなければならない。しかしながら、現在、インフルエンザワクチン中のNA含有量に関する要件又は制限は存在していない。ワクチン中のNAレベルにはかなりのばらつきがあるという証拠がある。Kendal et al.,Further Studies of Neuraminidase Content of Inactivated Influenza Vaccines and the Neuraminidase Antibody Responses After Vaccination of Immunologically Primed and Unprimed Populations,INFECTION AND IMMUNITY 1980;29(3):966-971により、様々なロットのNA比活性には約40倍の幅があり得ることが報告された。Kendal他はまた、6ヶ月の保管中でのNA活性の急速な低下にも注目した。結果として、NAに対する抗体反応の頻度は、HA反応(血清転換率64%)と比較して低かった(平均血清転換率18%)。
【0009】
さらに、NA特異的抗体がヒトの疾患に対する耐性と相関することを示す証拠が増えているにもかかわらず、現在のワクチン戦略は、組換えHAタンパク質を含むFLUBLOK(登録商標)四価ワクチンの場合のように、ほぼ完全にHA抗原に焦点を当てているか、又は完全にHA抗原に焦点を当てている。加えて、インフルエンザ感染中のNAに免疫学的反応に関して利用可能なデータは、特にHAに関するデータと比較して限られている(Wong et al.,Hemagglutinin and Neuraminidase Antibodies Are Induced in Age- and Subtype-Dependent Manner after Influenza Virus Infection,JOURNAL OF VIROLOGY 2020;94(7):e01385-19)。インフルエンザウイルスは、自然界では、ウイルス表面上のNAがHAと比較して約10分の1であり、HA抗原を濃縮する確立されたプロセスでは、NAを酵素的に活性な四量体構造で維持することには適していない場合がある。そのため、現在入手可能な不活化インフルエンザウイルスワクチンはNAを含み得るが、量及び品質が大きく異なり、均一ではない。
【0010】
さらに、NAは、HAと共に免疫系に提示される場合に免疫準優勢であると説明されている(Krammer,The human antibody response to influenza A virus infection and vaccination,NATURE REVIEWS IMMUNOLOGY 2019;19:383-397)。換言すると、HAは、NAと比べて免疫優勢であることが知られている。Id. 従来のインフルエンザワクチンで観察されるこの免疫優勢現象は、特に、HA等の免疫優勢タンパク質を含む多価ワクチンの場合に、及び/又はワクチン中の価数が増加するにつれて、複数種の抗原又はエピトープに対する多価免疫反応を成功裏に達成し得る多価ワクチンの開発に対する障害のままである(Woodruff et al.,B Cell Competition for Restricted T Cell Help Suppresses Rare-Epitope Responses,CELL REPORTS 2018;25:321-27)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのため、HA及びNAの両方の免疫反応を誘発することにより、流行しているインフルエンザ株に対する防御の強化及び/又はより幅広い防御を付与し得る、ワクチン中のインフルエンザウイルスHAの、1種又は複数種インフルエンザウイルスNAタンパク質を補充する能力が望ましい。しかしながら、インフルエンザウイルスHAとインフルエンザウイルスNAとをワクチン組成物に組み合わせて、抗原競合なしに、流行しているインフルエンザ株に対する防御の強化及び/又は幅広い防御を付与する能力は、特に、多価ワクチン組成物において課題となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質を含むワクチン又は免疫原性組成物であって、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHAと、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNAとを含むか又はからなる、ワクチン又は免疫原性組成物を提供する。
【0013】
様々な実施形態では、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8種、又はより多くの組換えインフルエンザウイルスHA抗原と、1、2、3、4、5、6、7、8種、又はより多くの組換えインフルエンザウイルスNA抗原とを含む。ある特定の実施形態では、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、4種のインフルエンザウイルスHAと、4種のインフルエンザウイルスNAとを含むか、又はからなる。ある特定の実施形態では、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、第1の組換えインフルエンザウイルスHAであって、この第1の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである、第1の組換えインフルエンザウイルスHA;第2の組換えインフルエンザウイルスHAであって、この第2の組換えインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである、第2の組換えインフルエンザウイルスHA;第3の組換えインフルエンザウイルスHAであって、この第3の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスHA;第4の組換えインフルエンザウイルスHAであって、この第4の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスHA;第1の組換えインフルエンザウイルスNAであって、この第1の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NAである、第1の組換えインフルエンザウイルスNA;第2の組換えインフルエンザウイルスNAであって、この第2の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである、第2の組換えインフルエンザウイルスNA;第3の組換えインフルエンザウイルスNAであって、この第3の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスNA;及び第4の組換えインフルエンザウイルスNAであって、この第4の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスNAを含むか、又はからなる。
【0014】
本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物の様々な実施形態では、第1、第2、第3、及び第4の組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、改変組換えインフルエンザウイルスNAである。ある特定の実施形態では、改変組換えインフルエンザウイルスNAは、4つの改変組換え単量体NA分子であって、各々は、インフルエンザウイルスのNAの頭部領域を含むが、インフルエンザウイルスのNAの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の全て又は実質的に全てとを欠いている、改変組換え単量体NA分子を含む改変組換え四量体インフルエンザウイルスNAを含み、改変単量体NA分子は、宿主細胞中で発現された場合に、改変組換え四量体NAを形成する。ある特定の実施形態では、各改変組換え単量体インフルエンザウイルスNAは、異種四量体化ドメインを含み、ある特定の実施形態では、改変組換え単量体インフルエンザウイルスNAは、異種オリゴマー化ドメインを含まない。
【0015】
本開示のある特定の実施形態では、異種四量体化ドメインは、スタフィロサームス・マリヌス(Staphylothermus marinus)テトラブラキオン(Tetrabrachion)四量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー四量体化ドメイン、パラミクソウイルスリン酸化タンパク質由来の四量体化ドメイン、又はヒト血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)四量体化ドメインである。
【0016】
本開示の一態様では、組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、バキュロウイルス発現系により産生されており、例えば、培養昆虫細胞中においてバキュロウイルス発現系により産生されている。本開示の一態様では、組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で産生されている。
【0017】
本明細書で開示されている様々な実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、不活性化インフルエンザビリオン又は生弱毒化インフルエンザビリオンを含まず、様々な実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれ、及び/又は組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、標準治療インフルエンザ株に由来している。ある特定の実施形態では、H1 HAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及び/又はH3 HAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来しており、ある特定の実施形態では、N1 NAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及び/又はN2 NAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来している。ある特定の実施形態では、H1 HAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、H3 HAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来しており、N1 NAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及びN2 NAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来している。ある特定の実施形態では、H1 HA及びN1 NAは、同一のH1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、H3 HA及びN2 NAは、同一のH3N2インフルエンザウイルス株に由来している。
【0018】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含み、ある特定の実施形態では、このアジュバントは、水中スクアレンアジュバント(例えば、AF03)又はリポソームベースのアジュバント(例えば、SPA14)を含む。
【0019】
本開示のある特定の態様では、組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、約0.1μg~約90μgの範囲の量でワクチン又は免疫原性組成物中に存在しており、任意選択的に、約1μg~約60μg又は5μg~約45μgの範囲の量でワクチン又は免疫原性組成物中に存在しており、ある特定の態様では、組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、約0.1μg~約90μgの範囲の量でワクチン又は免疫原性組成物中に存在しており、任意選択的に、約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgの範囲の量でワクチン又は免疫原性組成物中に存在している。ある特定の実施形態では、組成物は、筋肉内注射用に製剤化されている。
【0020】
別の態様では、本明細書で開示されているのは、本明細書で開示されている免疫原性組成物、及び医薬担体を含むワクチンである。
【0021】
同様に本明細書で開示されているのは、インフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法であって、本明細書で開示されているワクチンの免疫学的有効量をこの対象に投与することを含む方法である。同様に本明細書で開示されているのは、インフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法で使用される、本明細書で開示されているワクチンである。同様に本明細書で開示されているのは、インフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法で使用されるワクチンを製造するための、本明細書で開示されている免疫原性組成物である。ある特定の実施形態では、この方法又は使用により、対象におけるインフルエンザウイルス感染が予防され、ある特定の実施形態では、この方法又は使用により、対象における防御免疫反応(例えば、HA抗体反応及び/又はNA抗体反応)が生じる。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトであり、ある特定の実施形態では、ワクチンを、筋肉内投与するか、皮内投与するか、皮下投与するか、静脈内投与するか、鼻腔内投与するか、吸入により投与するか、若しくは腹腔内投与するか、又はそのように投与するために調製されている。
【0022】
本開示の別の態様は、インフルエンザウイルス感染の1つ又は複数の症状を軽減する方法であって、本明細書で開示されているワクチンの予防的有効量を対象に投与することを含む方法である。同様に本明細書で開示されているのは、インフルエンザウイルス感染の1つ又は複数の症状を軽減する方法で使用される、本明細書で開示されているワクチンである。同様に本明細書で開示されているのは、インフルエンザウイルス感染の1つ又は複数の症状を軽減する方法で使用されるワクチンを製造するための、本明細書で開示されている免疫原性組成物である。
【0023】
同様に本明細書で開示されているのは、対象における防御免疫反応を増強するか又は拡大する方法であって、本明細書で開示されているワクチンの免疫学的有効量をこの対象に投与することを含み、このワクチンにより、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン有効性が、約5%~約100%の範囲の量だけ増加し、例えば、約10%~約25%、又は約40%~約80%、又は約40%~約60%の量のだけ増加する、方法である。同様に本明細書で開示されているのは、対象における防御免疫反応を増強するか又は拡大する方法で使用される、本明細書で開示されているワクチンであって、この方法は、本明細書で開示されているワクチンの免疫学的有効量をこの対象に投与することを含み、このワクチンにより、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン有効性が、約5%~約100%の範囲の量だけ増加し、例えば、少なくとも約20%、又は約40%~約80%、例えば、約40%~約60%の量のだけ増加する、ワクチンである。同様に本明細書で開示されているのは、対象における防御免疫反応を増強するか又は拡大する方法で使用されるワクチンを製造するための、本明細書で開示されている免疫原性組成物であって、この方法は、本明細書で開示されているワクチンの免疫学的有効量をこの対象に投与することを含み、このワクチンにより、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン有効性が、約5%~約100%の範囲の量だけ増加し、例えば、少なくとも約20%、又は約40%~約80%、例えば、約40%~約60%の量のだけ増加する、免疫原性組成物である。ある特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルスワクチンは、H1N1株、H3N2株、B/ビクトリア系統、及びB/山形系統に由来する不活性化インフルエンザウイルスを含む不活性化インフルエンザウイルス組成物である。ある特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/ビクトリア系統、及びB/山形系統に由来する組換えインフルエンザウイルスHAを含む。
【0024】
様々な実施形態では、本明細書で開示されている方法又は使用、及び組成物により、季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株のいずれか又は両方により引き起こされる疾患が処置されるか、又は予防される。本明細書で開示されている方法又は使用のある特定の実施形態では、対象は、ヒトであり、このヒトは、生後6ヶ月以上、18歳未満、少なくとも生後6ヶ月及び18歳未満、少なくとも18歳及び65歳未満、少なくとも生後6ヶ月及び5歳未満、少なくとも5歳及び65歳未満、少なくとも60歳、又は少なくとも65歳である。ある特定の態様では、本明細書で開示されている方法又は使用は、2~6週間の間隔で、例えば4週間の間隔で、ワクチン又は免疫原性組成物の2回の用量を対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】rTET-NA(配列番号2)の概略図及び部分的なアミノ酸配列である。配列番号2は、CD5シグナル配列、第1のリンカー配列、テトラブラキオン四量体化ドメイン、及び第2のリンカー配列を順に表す。配列番号2は、NA頭部領域のアミノ酸配列を含まない。
図2図2Aは、実施例2で説明されている、マウスにおけるワクチン接種の実験デザインを示す概略である。図2Bは、実施例2で説明されている、rTET-NA、生ウイルス由来NA(LVNA)、又は一価の不活性化インフルエンザワクチン(IV)(両方とも、アジュバント(AF03)と共に又はなし)を使用してワクチン接種したマウスに関するA/Singapore/INFIMH-16-0019/2016(N2)に対するNA阻害のIC50を示すプロットである。○記号は、AF03が付加されていないIC50 NA阻害価を表しており、■は、AF03が付加されている群を表す。図2Cは、実施例2で説明されている、rTET-NA又は一価の不活性化インフルエンザワクチン(両方とも、アジュバント(AF03)と共に又はなし)を使用するマウスのワクチン接種に関するA/Michigan/45/2015(N1)に対するNA阻害のIC50を示すプロットである。○記号は、AF03が付加されていないIC50 NA阻害価を表しており、■は、AF03が付加されている群を表す。
図3-1】図3Aは、実施例3で説明されている、0及び21日目にワクチンサンプルの2回の筋肉内用量を投与し、42日目に最終的に採血する、ナイーブフェレットにおけるワクチン接種の実験デザインを示す概略である。図3Bは、実施例3で論じられている、免疫前フェレット(0日目にウイルスで鼻腔内予備刺激した)でのワクチン接種の実験デザインを示す概略である。
図3-2】図3Cは、実施例3で説明されている、下記の投与量のrTET-NAで1回又は2回免疫化した後でのナイーブフェレットにおけるA/Singapore/Infimh/16/2016(N2)に対するNAI力価を示すプロットである:希釈液のみ(偽)、5μg+AF03;45μg+AF03、及び45μg。○記号は、1回目の用量後のNAI力価を表しており、■は、2回目の用量後のNAI力価を表す。図3Dは、実施例3で説明されている、希釈液(偽)、rTET-NA 1.8μg、9μg、及び45μg、並びにIIV 1.8μg及び9μgの単回用量後の免疫前フェレットにおけるA/Singapore/Infimh/16/2016(N2)に対するNAI力価を示すプロットである。○記号は、鼻腔内ウイルス予備刺激後のNAI力価を表しており、■は、単回筋肉内ワクチンブースト後のNAI力価を表す。
図3-3】図3Eは、実施例3で説明されている、希釈液(偽)、rTET-NA 1.8μg、9μg、及び45μg、並びにIIV 1.8μg及び9μgの単回用量後の免疫前フェレットにおけるA/Singapore/Infimh/16/2016(N2)に対するブースト/予備刺激のNAI比を示すグラフである。図3Fは、実施例3で説明されている、下記の投与量のrTET-NAで1回又は2回免疫化した後でのナイーブフェレットにおけるA/Michigan/45/2015(N1)に対するNAI力価を示すプロットである:希釈液(偽)、5μg+AF03;45μg+AF03、及び45μg。○記号は、1回目の用量後のNAI力価を表しており、■は、2回目の用量後のNAI力価を表す。
図3-4】図3Gは、実施例3で説明されている、希釈液(偽)、rTET-NA 1.8μg、9μg、及び45μg、並びにIIV 1.8μg及び9μgの単回用量後の免疫前フェレットにおけるA/Michigan/45/2015(N1)に対するNAI力価を示すプロットである。○記号は、鼻腔内ウイルス予備刺激後のNAI力価を表しており、■は、単回筋肉内ワクチンブースト後のNAI力価を表す。図3Hは、実施例3で説明されている、希釈液(偽)、rTET-NA 0.36μg、1.8μg、9μg、及び45μg、並びにIIV 1.8μg及び9μgの単回用量後の免疫前フェレットにおけるA/Michigan/45/2015(N1)に対するブースト/予備刺激のNAI比を示すグラフである。
図4】実施例4で説明されている、下記の投与量のrTET-NAで2回免疫化した後でのナイーブフェレットにおけるA/Perth/16/2009(N2)に対するNAI力価を示すプロットである:希釈液+AF03(偽)、0.2μg、3μg、45μg、0.2μg+AF03、3μg+AF03、及び45μg+AF03。A/Perth/16/2009 H3N2インフルエンザウイルスによる感染後のNAI力価も示す(A/PE/09感染前)。
図5】実施例4で説明されている、下記の投与量:希釈液+AF03(偽)、0.2μg、3μg、45μg、0.2μg+AF-03、3μg+AF03、45μg+AF03のrTET-NAでの事前に免疫化、及びA/Perth/16/2009 H3N2インフルエンザウイルス(A/PE/09感染前)による感染後のフェレットにおけるチャレンジ後の体重変化(毎日及びAUC)、体温上昇(ピーク)、並びにウイルス排出(AUC)を示すグラフである。
図6A】実施例4で説明されている、ワクチン接種したフェレットにおける疾患重症度とNAI力価との間の逆相関を示すグラフであり、非重症疾患のフェレットにおけるNAI力価を、左側に示し、重症疾患のフェレットにおけるNAI力価を、右側に示す。
図6B】実施例4で論じられている、受信者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)を示すROC曲線モデルを示すグラフであり、AUCは、偶然と比べて有意に高い。
図6C】実施例4で説明されている、42日目にワクチン接種されたフェレットにおける疾患重症度とNAI力価との間の逆相関を示すグラフである。
図7-1】図7Aは、実施例5で論じられている、フェレットにおけるワクチン接種の実験デザインを示す概略である。図7Bは、実施例5で論じられている、フェレットにおける4×rNA及び4×rHAワクチン株選択で使用されるインフルエンザウイルス株を示すチャートである。
図7-2】図7Cは、左列は、実施例5で説明されている、(1)八価(4×rHA+4×rNA)組換えワクチン組成物の45μg/抗原又は5μg/抗原+アジュバントの1回の用量、(2)四価(4×rNA)組換えワクチン組成物の1回の用量、又は(3)四価(4×rHA)組換えワクチン組成物の1回の用量によるワクチン接種後の、A/Singapore/Infimh/16/2016(N2)(最上部の行);A/Michigan/45/2015(N1)(2行目):B/Colorado/06/2017(3行目);及びB/Phuket/3073/2013(最下部の行)に対するNAI力価を示すプロットである。右列は、実施例5で説明されている、(1)八価(4×rHA+4×rNA)組換えワクチン組成物の45μg/抗原又は5μg/抗原+アジュバントのブースター用量、(2)四価(4×rNA)組換えワクチン組成物のブースター用量、又は(3)四価(4×rHA)組換えワクチンのブースター用量によるワクチン接種後の、A/Singapore/Infimh/16/2016(N2)(最上部の行);A/Michigan/45/2015(N1)(2番目の行);B/Colorado/06/2017(3番目の行);及びB/Phuket/3073/2013(最下部の行)に対するNAI力価を示すプロットである。白抜きの四角形は、八価組換え組成物を投与した後のNAI力価を表しており、塗りつぶされた四角形は、四価(4×rNA)組換え組成物を投与した後NAI力価を表しており、三角形は、四価(4×rHA)組換え組成物を投与した後のNAI力価を表す。
図8-1】図8Aは、実施例5で説明されている、(1)四価rNA(塗りつぶされた四角形);(2)四価rHA(三角形);又は(3)八価rHA+rNA(白抜きの四角形)の45μg/抗原又は5μg/抗原+アジュバントのいずれかによるワクチン接種後のA/Singapore/Infimh/16/2016 H3N2ウイルスに対するHAI力価を示すプロットである。
図8-2】図8Bは、実施例6で説明されている、(1)八価rHA+rNA(Y軸)又は(2)四価rHA(X軸)の45μg/抗原によるワクチン接種後のH3 rHAビーズパネルに対する、抗体法医学により測定したIgG力価を示すプロットである。図8Cは、実施例6で説明されている、(1)八価rHA+rNA(Y軸)又は(2)四価rHA(X軸)の5μg/抗原+アジュバントによるワクチン接種後のH3 rHAビーズパネルに対する、抗体法医学により測定したIgG力価を示すプロットである。
図8-3】図8Dは、実施例5で説明されている、(1)四価rNA(塗りつぶされた黒色の四角形);(2)四価rHA(三角形);又は(3)八価rHA+rNA(白抜きの四角形)の45μg/抗原又は5μg/抗原+アジュバントのいずれかによるワクチン接種後のA/Michigan/45/2015 H1N1ウイルスに対するHAI力価を示すプロットである。
図8-4】図8Eは、実施例6で説明されている、(1)八価rHA+rNA(Y軸)又は(2)四価rHA(X軸)の45μg/抗原によるワクチン接種後のH1 rHAビーズパネルに対する、抗体法医学により測定したIgG力価を示すプロットである。図8Fは、実施例6で説明されている、(1)八価rHA+rNA(Y軸)又は(2)四価rHA(X軸)の5μg/抗原+アジュバントによるワクチン接種後のH1 rHAビーズパネルに対する、抗体法医学により測定したIgG力価を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
いくつかのウイルスは、それらのエンベロープ糖タンパク質成分の構造を実質的に変化させ得る。例えば、インフルエンザウイルスは、そのエンベロープ糖タンパク質のアミノ酸配列を絶えず変化させる。主要なアミノ酸変異(抗原シフト)又は軽微な変異(抗原ドリフト)が、新しいエピトープを生じさせ得、ウイルスが免疫系を回避することを可能にする。抗原変異は、インフルエンザの流行が繰り返されることが主な原因である。サブタイプ(例えば、H1又はH3)内の抗原変異体が出現し、優勢なウイルスとして徐々に選択される一方で、先行するウイルスは、集団において生じる特異的抗体によって抑制される。一般に、1つの変異体に対する抗体の中和は、連続的に変異体が生じるにつれて、効果が次第に低下する。サブタイプ内の変異体に対する免疫反応は、宿主の以前の経験に依存し得る。
【0027】
HA及びNAは、進化が全く異なる。例えば、サイレントヌクレオチド置換の速度は、HAの遺伝子を含む、インフルエンザウイルスの全ての遺伝子のコードヌクレオチド置換の速度と比べて高いことが示されている(Webster,R.G.,et al.,Evolution and ecology of influenza A viruses,MICROBIOL.REVS.1992;56(1):152-179)。しかしながら、HAは、コード変化速度が内部タンパク質と比べてはるかに高い。他の遺伝子と比較してHA遺伝子のコードヌクレオチド変化の速度が大きいことは、免疫選択がその進化の重要な要因であることの証拠と考えられている(Palese,P.,et al.,Variation of Influenza A,B,and C Viruses,SCIENCE1982;215(4539):1468-74)。あらゆる非特異的立体障害を排除するために再集合抗原を使用して、Kilbourneらは、10年間にわたってヒトから単離した疫学的に重要なHA抗原及びNA抗原の進化速度を研究しており、HAがNAと比べて急速に進化すると決定した(Kilbourne,E.D.,et al.,Independent and disparate evolution in nature of influenza virus A hemagglutinin and neuraminidase glycoproteins,PNAS 1990;87(2):786-790)。このことは、A型H1N1及びH3N2ウイルスの両方で示され、より最近の株を用いたその後の実験によって確認されている。進化速度が明らかに異なる理由は不明であるが、HAに対する抗体がウイルスを中和して感染を予防するという事実に起因する可能性がある。これにより、部分的に免疫がある集団においてそれ自身が維持されるように、HAにより選択的な圧力がかかる。そのため、NAは、HAと比較して緩やかな抗原ドリフトを受けることから、HA及びNAの両方を含むワクチン又は免疫原性組成物は、抗原的にドリフトしたHA抗原を含むインフルエンザの株に対して(NA抗体の形で)より広範な防御を付与し得る。
【0028】
インフルエンザウイルスは、本来、ウイルス表面上で含まれるNAがHAと比べて約10分の1であることから、且つHA抗原を濃縮するために確立されたプロセスは、NAをその酵素的に活性で四量体の高次構造で維持するのに適していない場合があることから、ワクチン組成物(例えば、不活性化ウイルスワクチン)中で検出可能なNAの量は、非常に多様であり得る。従って、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物への組換えNAの添加により、ワクチン又は免疫原性組成物に含まれるNAの量をより良好に制御することが可能となり得る。安定したNAを組換えにより生成してHA抗原(例えば、組換えにより生成されたHA抗原)に添加することにより、現在入手可能なワクチンと比較して、ワクチン又は免疫原性組成物を投与した対象におけるHA免疫反応とNA免疫反応との両方のバランスを良好に保つことが可能となり得、ひいては、流行しているインフルエンザ株に対する防御の増強及び/又は幅広い防御が可能となり得る。
【0029】
従って、本明細書で開示されているのは、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質(例えば、複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、及び複数種の組換えインフルエンザウイルスNA)を含む多価ワクチン又は免疫原性組成物である。
【0030】
定義
本開示をより容易に理解するために、最初に、ある特定の用語を下記で定義する。下記の用語及び他の用語のさらなる定義は、本明細書を通して記載され得る。下記に記載する用語の定義が、参照により組み込まれる出願又は特許中の定義と矛盾する場合には、この用語の意味は、本出願に記載の定義を使用して理解されるべきである。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。そのため、例えば、「方法」への言及は、本明細書で説明されているタイプの1つ又は複数の方法及び/又は工程を含み、且つ/或いはそれは本開示等を読めば当業者に明らかになるであろう。
【0032】
請求項の要素を変更するための請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」等の序数用語の使用は、それ自体、1つの請求項要素の別の請求項要素に対する重要度、優先度若しくは順序、又は方法の操作が実行される時間的順序を意味するものではなく、単に、請求項要素を区別するために、ある名称を有するある1つの請求項要素を、同じ名称を有する別の要素から区別する(但し、序数用語の使用のための)ラベルとして使用される。
【0033】
アジュバント:本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、ワクチンの抗原成分に対する免疫反応を増強するために使用され得る物質又は物質の組み合わせを指す。
【0034】
抗原:本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、生物に曝露されたか又は投与された場合に、免疫反応を誘発する薬剤、並びに/或いは(ii)T細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示された場合)又は抗体(例えば、B細胞によって産生された)に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、生物において、体液性反応(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発し、代替的に又は追加的に、いくつかの実施形態では、抗原は、生物において、細胞性反応(例えば、受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞が関与する)を誘発する。当業者であれば、特定の抗原が、標的生物(例えば、マウス、フェレット、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つ又はいくつかのメンバーにおいて免疫反応を誘発し得るが、標的生物種の全てメンバーで誘発し得るわけではないことは、理解していよう。いくつかの実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%において免疫反応を誘発する。いくつかの実施形態では、抗原は、抗体及び/又はT細胞受容体に結合し、生物において特定の生理学的反応を誘発することもあれば誘発しないこともある。いくつかの実施形態では、例えば、抗原はインビトロで抗体及び/又はT細胞受容体に結合し得、これは、そのような相互作用がインビボで生じるか否かにかかわらない。いくつかの実施形態では、抗原は、特定の体液性免疫又は細胞性免疫の産物と反応し、そのような産物には、異種免疫原によって誘発されるものも含まれる。抗原は、本明細書で説明されているNA形態及びHA形態を含む。
【0035】
およそ:本明細書で使用される場合、1つ又は複数の対象の値に適用される「およそ」又は「約」という用語は、記載された基準値に類似する値を指す。いくつかの実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、記載された基準値のどちらの方向でも(それより大きい、又はそれより小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満に入る範囲の値を指す(そのような数があり得る値の100%を超える場合を除く)。
【0036】
担体:本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、組成物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。いくつかの例示的な実施形態では、担体には、例えば、水及び油、例えば石油、動物油、植物油又は合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等の滅菌液体が含まれる。いくつかの実施形態では、担体は、1つ又は複数の固体成分であるか、又はそれを含む。
【0037】
エピトープ:本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語には、免疫グロブリン(例えば、抗体又はT細胞受容体)結合成分によって全体的又は部分的に特異的に認識される部分が含まれる。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原上の複数の化学原子又は化学基から構成されている。いくつかの実施形態では、そのような化学原子又は化学基は、抗原が関連する三次元構造をとる際に表面に露出される。いくつかの実施形態では、そのような化学原子又は化学基は、抗原がそのような構造をとるとき、空間内で物理的に互いに近接する。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかのそのような化学原子又は化学基は、抗原が選択的構造をとる(例えば、線状化される)場合には、互いに物理的に離れる。
【0038】
賦形剤:本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、例えば、所望の一貫性又は安定化効果を付与するか又はそれに寄与するために、医薬組成物に含まれ得る非治療薬を指す。好適な医薬品賦形剤として、下記が挙げられる:例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0039】
H1:本明細書で使用される場合、「H1」は、インフルエンザウイルスサブタイプ1ヘマグルチニン(HA)を指す。A型インフルエンザウイルスは、グループ1及びグループ2に分けられる。グループ1及びグループ2は、さらに、ウイルス表面上の2種のタンパク質HA及びノイラミニダーゼ(NA)の配列に基づくウイルスの分類を指すサブタイプに分けられる。現在、18種のHAサブタイプ(H1~H18)が認識されている。そのため、H1は、H2~H18を含む他のHAサブタイプとは異なる。
【0040】
H3:本明細書で使用される場合、「H3」は、インフルエンザウイルスサブタイプ3 HAを指す。そのため、H3は、H1、H2、及びH4~H18を含む他のHAサブタイプとは異なる。
【0041】
免疫反応:本明細書で使用される場合、「免疫反応」という用語は、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、又は多形核球等の免疫系の細胞の、抗原、免疫原、又はワクチン等の刺激に対する反応を指す。免疫反応は、例えば、インターフェロン又はサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御反応に関与する身体のあらゆる細胞を含み得る。免疫反応として、自然免疫反応及び/又は適応免疫反応が挙げられるが、これらに限定されない。免疫反応を測定する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、リンパ球(B細胞又はT細胞等)の増殖及び/又は活性の測定、サイトカイン又はケモカインの分泌の測定、炎症の測定、抗体産生の測定等が挙げられる。抗体反応又は体液性反応は、抗体が産生される免疫反応である。「細胞性免疫反応」は、T細胞及び/又は他の白血球によって媒介されるものである。
【0042】
免疫原:本明細書で使用される場合、「免疫原」又は「免疫原性」という用語は、適切な条件下で、動物に注入されるか又は吸収される組成物を含む、動物における抗体の産生又はT細胞反応等の免疫反応を刺激し得る化合物、組成物、又は物質を指す。本明細書で使用される場合、「免疫原性組成物」という用語は、防御免疫反応であってもなくてもよい免疫反応を生じる組成物を指す。本明細書で使用される場合、「免疫化する」とは、感染性疾患(例えば、インフルエンザ)に対する防御免疫反応を対象に誘発することを意味する。
【0043】
免疫学的有効量:本明細書で使用される場合、「免疫学的有効量」という用語は、対象を免疫化するのに十分な量を意味する。
【0044】
いくつかの実施形態では:本明細書で使用される場合、「いくつかの実施形態では」という用語は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、本開示の全ての態様の実施形態を指す。
【0045】
機械学習:本明細書で使用される場合、「機械学習」という用語は、経験を通して及び/又はデータの使用によって自動的に改善するアルゴリズムの使用を指す。機械学習は、予測モデルを通して候補抗原を選択するように設計されたアルゴリズムの使用を含む、データの予測を可能にするためのインフルエンザ抗原性のモデル等の予測モデルの構築を伴い得る。標的株を同定し、次に選択アルゴリズムを構築し得る。機械学習アルゴリズム及び方法の例を、例えば、PCT出願の国際公開第2021/080990A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Designing Vaccines)、及び国際公開第2021/080999A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Predicting Biological Responses)で見出し得、これらの両文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。機械学習にはまた、本明細書で使用される場合、データを分析し解釈するための計算ツール、例えば、系統発生解析等のバイオインフォマティクス解析の適用も含まれ得る。同様に、「機械学習インフルエンザウイルスHA」は、機械学習により同定されているか又は設計されているインフルエンザウイルスHAを示し、「機械学習インフルエンザウイルスNA」は、機械学習により同定されているか又は設計されているインフルエンザウイルスNAを示す。「機械学習モデル」は、候補抗原等のデータを予測するために、経験を通して、及び/又はデータの使用によって自動的に改善するアルゴリズムを使用するモデルを示す。
【0046】
改変:本明細書で使用される場合、「改変」という用語は、タンパク質又は核酸の野生型と比較して異なるアミノ酸配列又は核酸配列を有するあらゆるタンパク質又は核酸を指す。例えば、改変インフルエンザNA又はHAは、野生型のNAタンパク質又は核酸配列とは異なるアミノ酸配列又は核酸配列を有するインフルエンザNA又はHAを指す。改変インフルエンザNA又はHAは、野生型インフルエンザNA又はHAに対して1つ又は複数のアミノ酸の欠失及び/又は置換を含み得る。
【0047】
単量体インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ:野生型インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)は、4つの同一の単量体の四量体である。野生型インフルエンザNAの各NA単量体は、下記の4つの異なる構造ドメインからなる:酵素頭部領域、柄領域、膜貫通領域、及び細胞質尾部。本明細書で使用される場合、「単量体インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ」という用語は、3つの他のNA単量体と結合して四量体NAを形成し得るNA単量体を指す。本明細書で説明されているように、改変単量体インフルエンザウイルスノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスNAの頭部領域を含み得るが、異種四量体化ドメイン若しくはその一部を含み得、並びに/又は細胞質尾部、膜貫通領域、及び柄領域の内の1つ若しくは複数の少なくとも一部を欠き得る。
【0048】
N1:本明細書で使用される場合、「N1」は、インフルエンザウイルスサブタイプ1ノイラミニダーゼ(NA)を指す。A型インフルエンザウイルスは、グループ1及びグループ2に分けられる。グループ1及びグループ2は、さらに、ウイルス表面上の2種のタンパク質HA及びノイラミニダーゼ(NA)の配列に基づくウイルスの分類を指すサブタイプに分けられる。現在、11種のNAサブタイプ(N1~N11)が認識されている。そのため、N1は、N2~N11を含む他のNAサブタイプとは異なる。N2:本明細書で使用される場合、「N2」は、インフルエンザウイルスサブタイプ2ノイラミニダーゼ(NA)を指す。そのため、N2は、N1及びN3~N11を含む他のNAサブタイプとは異なる。
【0049】
インフルエンザB株は、下記の2つの系統に分類される:B/山形及びB/ビクトリア。
【0050】
パンデミック株:「パンデミック」インフルエンザ株は、ヒト集団等の対象集団のパンデミック感染を引き起こしたか又は引き起こす能力を有するものである。いくつかの実施形態では、パンデミック株は、パンデミック感染を引き起こしている。いくつかの実施形態では、そのようなパンデミック感染は、複数の地域にわたるエピデミック感染を含み、いくつかの実施形態では、パンデミック感染は、感染が通常それらの間で伝わることがないように、(例えば、山によって、水域によって、別個の大陸の一部として等)互いに離れている地域にわたる感染を含む。
【0051】
予防:「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の疾患、障害、又は病態(例えば、インフルエンザウイルスによる感染)の1つ又は複数の症状の予防、疾患発現の回避、発症の遅延、並びに/又は頻度及び/若しくは重症度の低減を指す。いくつかの実施形態では、予防は、集団ベースで評価され、疾患、障害、又は病態の1つ又は複数の症状の発生、頻度、及び/又は強度の統計的に有意な減少が、疾患、障害、又は病態に罹りやすい集団において観察される場合に、薬剤が特定の疾患、障害、又は病態を「予防する」と見なされる。
【0052】
組換え体:本明細書で使用される場合、「組換え体」という用語は、組換え手段によって設計されているか、操作されているか、調製されているか、発現されているか、作製されているか又は単離されているポリペプチド(例えば、本明細書で説明されているHA及び/又はNAポリペプチド)、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されているポリペプチド、組換えコンビナトリアルポリペプチドライブラリから単離されているポリペプチド、又は選択された配列要素を互いにスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製されているか、発現されているか、作製されているか又は単離されているポリペプチドを指すことが意図されている。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の内の1つ又は複数は、自然界で見出されている。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の内の1つ又は複数は、コンピュータで設計されている。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の内の1つ又は複数は、既知の配列要素の変異誘発(例えば、インビボ又はインビトロで)から生じており、例えば天然又は合成源から生じている。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素の内の1つ又は複数は、天然には同じポリペプチドに存在していない複数の(例えば、2つ以上の)既知の配列要素(例えば、2つの別々のHAポリペプチド又は2つの別々のNAポリペプチドからの2つのエピトープ)の組み合わせから生じている。組換えHAは、rHAであり、組換えNAは、rNAである。
【0053】
季節性株:「季節性」インフルエンザ株は、ヒト集団等の対象集団の季節性感染(例えば、毎年のエピデミック)を引き起こしたか又は引き起こす能力を有するものである。いくつかの実施形態では、季節性株は、季節性感染を引き起こしている。
【0054】
配列同一性:アミノ酸又は核酸の配列間の類似性は、配列間の類似性の観点から表され、それ以外の場合、配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、同一性(又は類似性若しくは相同性)のパーセンテージの観点から測定されることが多く、パーセンテージが大きいほど、2つの配列はより類似している。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。所与の遺伝子又はタンパク質の相同体又は変異体は、標準的な方法を用いてアラインさせた場合、比較的高度の配列同一性を有する。
【0055】
「%同一の」、「%同一性」という用語、又は類似の用語は特に、比較される配列間の最適なアラインメントにおいて同一であるヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図される。前記パーセンテージは、純粋に統計的であり、2つの配列間の差異は、比較される配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしも分布している必要はない。2つの配列の比較は通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアラインメントの後に、セグメント又は「比較の窓」に関して前記配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手動で実行し得るか、又はSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444による類似性検索アルゴリズムを用いて、又は前記アルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、及びTFASTA)を用いて実行し得る。
【0056】
同一性パーセンテージは、比較する配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数(例えば、参照配列における位置の数)で除算し、この結果に100を乗算することによって得られる。
【0057】
いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合には、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200個のヌクレオチドについて与えられており、いくつかの実施形態では連続ヌクレオチドで与えられる。いくつかの実施形態において、同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0058】
所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対してそれぞれ特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、前記所与の配列の少なくとも1つの機能的及び/又は構造的特性を有し得、例えば、いくつかの例では、前記所与の配列と機能的及び/又は構造的に同等である。いくつかの実施形態では、所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、前記所与の配列と機能的及び/又は構造的に同等である。
【0059】
標準治療株:世界保健機関(World Health Organization)(WHO)は、毎年、集中的なサーベイランス努力に基づいて、季節性ワクチン製剤に含まれるべきインフルエンザ株を選択する。本明細書で使用される場合、「標準治療株」又は「SOC株」という用語は、季節性ワクチン製剤に含まれるために世界保健機関(World Health Organization)(WHO)によって選択されるインフルエンザ株を指す。標準治療株には、過去の標準治療株、現在の標準治療株、又は将来の標準治療株が含まれ得る。
【0060】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物界の任意のメンバーを意味する。いくつかの実施形態では、「対象」は、ヒトを指す。いくつかの実施形態では、「対象」は、非ヒト動物を指す。いくつかの実施形態では、対象として、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、及び/又は蠕虫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、フェレット、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/又はブタ)である。いくつかの実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、及び/又はクローンであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、成人、青年、又は乳児である。いくつかの実施形態では、「個体」又は「患者」という用語が使用され、「対象」と置き換え可能であることが意図されている
【0061】
四量体NA分子:本明細書で使用される場合、「四量体NA分子」という用語は、4つのNA単量体ポリペプチド単位を含む化合物を指す。いくつかの実施形態では、所与の四量体NA化合物中のそれぞれの単量体NA分子として、球状頭部ドメイン、柄領域、疎水性膜貫通ドメイン、及び短いN末端細胞質ドメインが挙げられる。いくつかの実施形態では、所与の単量体NA分子のこれらのドメイン又は領域の内の1つ又は複数は、参照野生型単量体NA分子と比較して、切り詰められているか、全く存在していないか、又は改変されている。
【0062】
四量体化ドメイン:本明細書で使用される場合、「四量体化ドメイン」という用語は、ポリペプチド又はタンパク質の四量体集合を引き起こすドメインをコードするアミノ酸配列を指す。特定のタンパク質に対してネイティブではない四量体化ドメインは、人工四量体化ドメイン又は異種四量体化ドメインと称され得る。例示的な四量体化ドメインとして、テトラブラキオン(Tetrabrachion)、GCN4ロイシンジッパー、又は血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)からの配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
ワクチン組成物:本明細書で使用される場合、「ワクチン組成物」又は「ワクチン」という用語は、対象において防御免疫反応を生じさせる組成物を指す。本明細書で使用される場合、「防御免疫反応」は、感染から対象を保護する(感染を予防するか、若しくは感染に関連する疾患の発症を予防する)か又は感染(例えば、インフルエンザウイルスによる感染)の症状を軽減する免疫反応を指す。ワクチンは、予防(prophylactic)(予防(preventative))反応及び治療反応の両方を誘発し得る。投与方法はワクチンによって異なるが、接種、摂取、吸入、又は他の投与形態が挙げられ得る。接種は、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、又は筋肉内等の非経口を含む多くの経路のいずれかによって送達され得る。ワクチンは、免疫反応を増強するためにアジュバントと共に投与され得る。
【0064】
ワクチン接種する:本明細書で使用される場合、「ワクチン接種する」等の用語は、対象における防御免疫反応(例えば、インフルエンザウイルス等の疾患を引き起こす病原体に対する反応)を生成するためのワクチン組成物の投与を指す。ワクチン接種を、疾患を引き起こす病原体への曝露の前、間、及び/又は後に、並びに/或いは1つ又は複数の症状の発現の前、間、及び/又は後に、いくつかの実施形態では、病原体への曝露の前、間、及び/又は直後に行い得る。いくつかの実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン組成物の適切な時間間隔を置いての複数回の投与を含む。
【0065】
ワクチン有効性:本明細書で使用される場合、「ワクチン有効性(vaccine efficacy)」又は「ワクチン有効性(vaccine effectiveness)」という用語は、ワクチンを投与している対象における疾患の証拠の減少のパーセンテージに関する測定値を指す。例えば、50%のワクチン有効性は、ワクチン接種されていない対象の群、又は異なるワクチンが投与されている対象の群と比較した、ワクチン接種された対象の群における疾患症例の数の50%減少を示す。
【0066】
野生型(WT):当該技術分野で理解されているように、「野生型」という用語は、一般に、天然に見出されるような正常な形態のタンパク質又は核酸を指す。例えば、野生型のHAポリペプチド及びNAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然単離物中に見出される。様々な異なる野生型のHA配列及びNA配列を、NCBIインフルエンザウイルス配列データベース中に見出し得る。
【0067】
インフルエンザウイルスの命名法
インフルエンザウイルスを分類するために使用される全ての命名法は、当業者によって一般的に使用されるものである。そのため、インフルエンザウイルスのタイプ、又はグループは、次の3つの主要なタイプのインフルエンザを指す:ヒトに感染する、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、又はC型インフルエンザ。インフルエンザA及びBは、毎年、かなりの罹患率及び死亡率を引き起こす。ウイルスの特定のタイプとしての指定が、それぞれのMl(マトリックス)タンパク質又はP(核タンパク質)における配列の違いに関連することは、当業者に理解されている。A型インフルエンザウイルスは、グループ1及びグループ2にさらに分けられる。これらのグループは、さらに、ウイルス表面の2種のタンパク質HA及びNAの配列に基づくウイルスの分類を指すサブタイプに分類される。現在、18種の認識されたHAサブタイプ(H1~H18)及び11種の認識されたNAサブタイプ(N1~N11)が存在する。グループ1は、N1、N4、N5、及びN8と、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、及びH18とを含む。グループ2は、N2、N3、N6、N7、及びN9と、H3、H4、H7、H10、H14、及びH15とを含む。N10及びN11は、コウモリから単離されたインフルエンザ様ゲノムにおいて同定されている(Wu et al.,Bat-derived influenza-like viruses H17N10 and H18N11,TRENDS IN MICROBIOLOGY,2014,22(4):183-91)。潜在的に198種の異なるインフルエンザAサブタイプの組み合わせが存在するが、自然界では約131種のサブタイプしか検出されていない。季節的な大流行を引き起こす、ヒト集団において一般的に流行しているA型インフルエンザウイルスの現在のサブタイプとして、A(H1N1)及びA(H3N2)が挙げられる。
【0068】
インフルエンザAサブタイプを、さらに、異なる遺伝「クレード」及び「サブクレード」に分類し得る。例えば、AサブタイプのA(H1N1)は、クレード6B.1及びサブクレード6B.1Aを含む。AサブタイプのA(H3N2)は、クレード3C.2A及び3C.3A、並びにサブクレード3C.2A1、3C.2A2、3C2A3、及び3C.2A4を含む。同様に、Bサブタイプビクトリアは、クレードV1A及びサブクレードV1A.1、V1A.2、及びV1A.3を含み、一方、Bサブタイプ山形は、クレードY1、Y2、及びY3を含む。最後に、株という用語は、ゲノムに小さな遺伝的変異を有するという点で互いに異なるサブタイプ内のウイルスを指す。
【0069】
便宜上、本明細書で説明されているタンパク質構築物及びその一部を指すために、ある特定の略語を使用し得る。例えば、HAは、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質を指し得る。H1は、インフルエンザサブタイプ1株由来のHAを指す。H3は、インフルエンザサブタイプ3株由来のHAを指す。同様に、NAは、インフルエンザノイラミニダーゼタンパク質又はその一部を指し得る。N2は、インフルエンザサブタイプ2株由来のノイラミニダーゼを指す。tet-NA又はrTET-NAという用語は、細胞中で発現される場合に四量体NAを形成する異種四量体化ドメインを含む組換えNAを指す。HAは、ヘマグルチニン又はその一部を指す。
【0070】
ヘマグルチニン(HA)
ヘマグルチニン(HA)は、NAと共に、2つの主要なインフルエンザ表面タンパク質の内の1つである。NA及びHAの両方の機能には、細胞の表面上で発現される糖タンパク質又は糖脂質上の糖部分に結合している末端分子であるシアル酸との相互作用が含まれる。細胞表面上のシアル酸へのHAの結合により、細胞によるウイルスのエンドサイトーシスが誘発され、ウイルスが細胞に侵入し感染することが可能になる。シアル酸はまた、感染細胞内で起こるグリコシル化プロセスの一部としてHA及びNAに付加される。
【0071】
HAは、宿主細胞へのインフルエンザウイルスの付着、及び細胞へのウイルスの浸透の間のウイルス-細胞膜融合を媒介すると考えられている。HA分子における抗原性の変異は、インフルエンザの頻繁な流行、及び免疫化による感染の限られた制御の原因である。
【0072】
HAは、成熟インフルエンザウイルス中に三量体として存在している。各HA単量体は、ジスルフィド結合によって連結された2つのポリペプチド(HA1及びHA2)からなる。これらのポリペプチドは、インフルエンザウイルスの成熟中の単一前駆体タンパク質HA0の開裂によって誘導される。一部には、これらの分子はしっかりと折り畳まれているので、HA0並びに成熟HA1及びHA2は、立体構造及び抗原特性が僅かに異なる。さらに、HA0はより安定であり、変性及びタンパク質分解に対して耐性を示す。
【0073】
所望のHA遺伝子をクローニングするためのインフルエンザウイルス株の単離、増殖、及び精製を、当該技術分野で既知の任意の方法で実施し得、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,762,939号明細書で開示されている方法により実施し得る。
【0074】
組換えHA抗原を、適切な宿主細胞中で発現させ得る。例えば、組換えHAを、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0189228号明細書で開示されているように、微細藻類細胞中で発現させ得る。或いは、組換えHAを、昆虫細胞中で発現させ得る。他の好適な宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、又は酵母細胞)を使用して、組換えHAを発現させ得る。
【0075】
ある特定の実施形態では、組換えHAを、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,976,552号明細書で開示されているように、ウイルス-HAベクター(例えば、バキュロウイルスベクター)に感染している昆虫細胞中で発現させる。組換えHA0由来のバキュロウイルス/昆虫細胞培養物は、インフルエンザに対する防御免疫を付与することが知られている。バキュロウイルスは、バキュロウイルス科(Baculoviridae)のDNAウイルスである。これらのウイルスは、主に鱗翅目の昆虫種(例えば、チョウ及びガ)に限定される狭い宿主範囲を有することが知られている。例えば、バキュロウイルスオートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス(AcNPV)は、感受性培養昆虫細胞において効率的に複製する。AcNOVは、約130,000塩基対の二本鎖閉鎖環状DNAゲノムを有しており、且つ宿主範囲、分子生物学、及び遺伝学に関して十分に特徴付けられている。
【0076】
AcNPVを含む多くのバキュロウイルスは、感染細胞の核内に大きなタンパク質結晶性閉塞を形成する。ポリヘドリンと呼ばれる単一のポリペプチドは、これらの閉塞体のタンパク質質量の約95%を占める。ポリヘドリンの遺伝子は、AcNPVウイルスゲノム中に単一コピーとして存在している。ポリヘドリン遺伝子は、培養細胞におけるウイルス複製に必要とされないので、外来遺伝子を発現するように容易に改変し得る。ポリヘドリンプロモーターの転写制御下に存在するように、外来遺伝子配列を、AcNPV遺伝子のポリヘドリンプロモーター配列のちょうど3’に挿入し得る。次いで、組換えHAタンパク質をコードする組換えバキュロウイルスを含む組換えバキュロウイルスを、様々な昆虫細胞株において複製し得る。組換えHAタンパク質をまた、例えばエントモポックスウイルス(昆虫のポックスウイルス)、細胞質多角体病ウイルス(CPV)、及び組換えHA遺伝子による昆虫細胞の形質転換を含む、他の発現ベクター中でも発現させ得る。
【0077】
一次遺伝子産物は、プロセシングされていない完全長HA(rHA0)であり、分泌されず、感染細胞の周辺膜と結合したままである。昆虫細胞において、このrHA0は、N結合高マンノース型グリカンでグリコシル化されており、rHA0が翻訳後に三量体を形成し、その後に細胞質細胞膜に蓄積している証拠がある。
【0078】
非変性非イオン性界面活性剤で、或いは細胞(例えば、昆虫細胞)から組換えタンパク質を精製するための当該技術分野で既知の他の方法(例えば、アフィニティー若しくはゲルクロマトグラフィー、抗原結合、DEAEイオン交換、又はレンチルレクチンアフィニティークロマトグラフィー)を用いて、rHA0は周辺膜から選択的に抽出し得る。次いで、精製rHA0を、等張の緩衝溶液に再懸濁させ得る。ある特定の実施形態では、rHA0は、少なくとも約80%、例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%まで精製されている。
【0079】
本明細書で開示されている組換えインフルエンザウイルスHAを、単独で、又は他の組換えインフルエンザウイルスHA抗原及び/若しくは後述する組換えインフルエンザウイルスHAとの組み合わせで、製剤化して包装し得る。ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAを、1、2、3、4、5、6、又は7種の追加の組換えインフルエンザウイルスHA抗原と共に製剤化し、ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAを、1、2、3、4、5、6、又は7種の追加の組換えインフルエンザウイルスNA抗原と共に製剤化する。ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAを、3種の追加の組換えインフルエンザウイルスHA抗原と共に製剤化して、四価のワクチン又は免疫原性組成物を生成する。ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAを、3種の追加の組換えインフルエンザウイルスHA抗原と、4種の追加の組換えインフルエンザウイルスNA抗原と共に製剤化して、八価のワクチン又は免疫原性組成物を生成する。
【0080】
本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に存在している組換えインフルエンザウイルスHAは、標準治療インフルエンザウイルス株由来の組換えインフルエンザウイルスHA、及び/又は本明細書で開示されている機械学習インフルエンザウイルスHAの任意の組み合わせを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAは、野生型インフルエンザHA、改変インフルエンザHA、季節性インフルエンザウイルス株若しくはパンデミックインフルエンザウイルス株由来のHA、及び/又は当該技術分野で既知の任意の他の形態のインフルエンザHAであり得る。ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているのは、組換えインフルエンザウイルスHAであって、このHAは、標準治療インフルエンザウイルス由来のH1 HA、標準治療インフルエンザウイルス由来のH3 HA、B/ビクトリア系統の標準治療インフルエンザウイルス株由来のHA、又はB/山形系統の標準治療インフルエンザウイルス由来のHAから選択される、組換えインフルエンザウイルスHAである。
【0081】
本明細書で開示されているある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAは、パンデミック株又はパンデミック潜在性を有する株(例えば、例えば、H1、H2、H3、H5、H7、H9、及び/又はH10)に由来する。
【0082】
本明細書で開示されているある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAは、機械学習モデルから同定されているか又は設計されている分子配列を有する1種又は複数種の機械学習組換えインフルエンザウイルスHAである。ある特定の実施形態では、機械学習組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、又はこれらの組み合わせの内の1つ又は複数から選択され得る。
【0083】
1種又は複数種の機械学習インフルエンザウイルスHAを選択する場合には、任意の機械学習アルゴリズムを使用し得る。例えば、本明細書で想定されているのは、PCT出願の国際公開第2021/080990A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Designing Vaccines)、国際公開第2021/080999A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Predicting Biological Responses)、米国仮出願第63/319,692号明細書(発明の名称:Machine-Learning Techniques in Protein Design for Vaccine Generation)、及び米国仮出願第63/319,700号明細書(発明の名称:Machine-Learning Techniques in Protein Design for Vaccine Generation)(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されている機械学習アルゴリズム及び方法の内のいずれかである。
【0084】
ある特定の実施形態では、インフルエンザ抗原性の予測機械学習モデルを構築して、動物モデル及び/又はヒトにおける抗体力価の予測を可能にし得る。ある特定の実施形態では、機械学習モデルは、トレーニングセットの入力データから特徴値を抽出し得、特徴は、入力データ項目が関連する特性を有するか否かにかかわらず、潜在的に関連すると見なされる変数である。入力データのための特徴の順序付きリストは、入力データのための特徴ベクトルと呼ばれ得る。ある特定の実施形態では、機械学習モデルは、次元削減を(例えば、線形判別分析(LDA)、主成分分析(PCA)、ニューラルネットワークからの学習された深層特徴等を介して)適用して、入力データの特徴ベクトル内のデータの量を、より小さく、より代表的なデータのセットに削減する。次いで、防御すべき一連のインフルエンザ配列(例えば、標的株)を同定し、選択アルゴリズムを構築し得る。
【0085】
当該技術分野で既知の技術(例えば、ヘマグルチニン阻害アッセイ(HAI))を使用して、ヘマグルチニン活性を測定し得る。HAIは、赤血球(RBC)表面上のシアル酸受容体がインフルエンザウイルス(及びいくつかの他のウイルス)の表面上で見出されるヘマグルチニン糖タンパク質に結合し、ウイルス粒子に濃度依存的に生じる、相互接続されたRBC及びウイルス粒子のネットワーク又は格子構造を作り出す、赤血球凝集反応と呼ばれる赤血球凝集反応のプロセスを適用する。これは、体内の病原体を標的とする細胞上の類似のシアル酸受容体に結合するウイルスの機能に関する代用として取られる物理的測定である。別のウイルス(アッセイにおいてRBCに結合するために使用されるウイルスと遺伝的に類似であり得るか又は異なり得る)に対するヒト又は動物の免疫反応において生じた抗ウイルス抗体の導入は、ウイルス-RBC相互作用を妨害し、アッセイにおいて赤血球凝集が観察される濃度を変えるのに十分なウイルスの濃度を変化させる。HAIの1つの目標は、アッセイにおいて赤血球凝集を阻害するそれらの能力と比較して、抗体を含有する抗血清又は他の試料中の抗体の濃度を特徴付けることであり得る。赤血球凝集を防止する抗体の最も高い希釈は、HAI力価(即ち、測定された反応)と呼ばれる。
【0086】
HA抗体反応を測定するための別のアプローチは、ヒト又は動物の免疫反応によって誘発され、HAIアッセイにおいて赤血球凝集に必ずしも影響を及ぼし得るわけではない潜在的により大きな抗体のセットを測定することである。このための一般的なアプローチは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)技術を利用するものであり、ウイルス抗原(例えば、ヘマグルチニン)を固体表面に固定化し、次いで、抗血清由来の抗体を抗原に結合させる。リードアウトは、抗血清由来の抗体、又はそれ自体が抗血清の抗体に結合する他の抗体に複合化した外因性酵素の基質の触媒作用を測定する。基質の触媒作用により、容易に検出可能な生成物が生じる。この種のインビトロアッセイには、多くのバリエーションがある。そのようなバリエーションの1つは、抗体法医学(AF)と呼ばれ、これは多くの抗原に対して同時に単一の血清試料を測定することを可能にする多重ビーズアレイ技術である。これらの測定は、HAI力価と比較して、濃度及び総抗体認識を特徴付けるものであり、これらはヘマグルチニン分子によるシアル酸結合の干渉とより特異的に関連すると考えられている。従って、抗血清の抗体は、場合によっては、別のウイルスのヘマグルチニン分子と比較して、1つのウイルスのヘマグルチニン分子について対応するHAI力価よりも比例的に高いか又は低い測定値を有し得;言い換えれば、これらの2つの測定値であるAF及びHAIは、一般に直線的に相関しない。
【0087】
HA抗体反応を測定する別の方法として、ウイルス中和アッセイ(例えば、マイクロ中和アッセイ)が挙げられ、このアッセイでは、ウイルスを抗体/血清サンプルの連続希釈物と共にインキュベートした後の許容培養細胞において、特異的中和アッセイ技術に応じて、プラーク、巣、及び/又は蛍光シグナルの減少により抗体力価が測定される。
【0088】
ノイラミニダーゼ(NA)
ノイラミニダーゼ(NA)は、HAと共に、2番目に主要なインフルエンザ表面タンパク質である。NAは、細胞の糖タンパク質及び糖脂質から、さらには新生ビリオン上で新たに合成されたHA及びNAから、シアル酸を除去する。NAによるシアル酸の除去によって、ウイルス粒子の凝集が防止されて感染細胞の表面からのウイルス粒子の効率的な放出が促進される。また、HAを介した、既に感染している瀕死の細胞へのウイルスの結合も防止され、ウイルス感染のさらなる拡大が促進される。NAが、従来のワクチン中に又は無傷のビリオン上に免疫原性の形態で存在する場合には、少数成分であり、従って、免疫優位のHAとの抗原競合が継続する。競合メカニズムに起因して、NAに対する免疫原性反応は、より頻繁に起こるHA抗原に優先して部分的に抑制されるように見える(Johanssen et al.,Immunologic response to influenza virus neuraminidase is influenced by prior experience with the associated viral hemagglutinin,J.IMMUNOL.1987;139(6):2010-2014;及びKilbourne,Comparative Efficacy of Neuraminidase-Specific and Conventional Influenza Virus Vaccines in Induction of Antibody to Neuraminidase in Humans,J.Infect.Dis.1976;134(4):384-94)。結果として、NA免疫の効果は、一般に、中和HA抗体により目立たない。
【0089】
a.野生型インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ
本明細書で開示されている組成物及び方法は、ある特定の実施形態では、野生型単量体NA分子の4つのコピーを含む四量体NAポリペプチドの使用を伴い得る。NAは、II型膜貫通糖タンパク質であり、4つの同一の単量体からなる四量体として、ウイルス表面上で集合する。野生型単量体の分子量は、インフルエンザサブタイプにもよるが、典型的には約55~72kDaであり;四量体の分子量は、インフルエンザサブタイプにもよるが、典型的には約240~260kDaである。各単量体は、下記の4つの異なる構造ドメインからなる:酵素頭部領域、柄領域、膜貫通領域、及び細胞質尾部。最大のドメインは、頭部領域であり、この頭部領域は、膜貫通領域につながる柄領域によりウイルス膜に繋がれており、最終的にはN末端の細胞質ドメインに繋がれている。
【0090】
N1及びN2等の様々なA型インフルエンザウイルスサブタイプ間の柄領域は、サイズ及びアミノ酸構造が顕著に異なり得る(Blok et al.,Variation in the membrane-insertion and’stalk’sequences in eight subtypes of influenza type A virus neuraminidase,BIOCHEMISTRY1982,21(17):4001-4007)。柄の長さの差違により、酵素頭部領域の距離が調節され、NAが細胞表面受容体上のシアル酸にアクセスする能力が影響を受けると考えられており、柄領域が短いほどシアリダーゼ活性が低下することと相関している(Da Silva et al.,Assembly of Subtype 1 Influenza Neuraminidase is Driven by Both the Transmembrane and Head Domains,J Biol Chem2013,288(1):644-53;及びMcAuley et al.,Influenza Virus Neuraminidase Structure and Functions,FRONTIERS IN MICROBIOLOGY 2019,10(39))。様々なサブタイプの柄領域間でのばらつきにもかかわらず、NAの柄領域はまた、少なくとも1つのシステイン残基、及び潜在的なグリコシル化部位等のいくつかの構造的特徴も共有する。システイン残基は、NA単量体間のジスルフィド結合の形成に関与して、安定化したNA四量体の形成を助け得、グリコシル化部位は、四量体の安定化に寄与し得る(McAuley et al.,2019)。例えば、N2NAのアミノ酸位置78で保存されているシステイン残基は、四量体集合メカニズムで役割を果たすと考えられている(Shtyrya et al.,Influenza virus neuraminidase:structure and function,ACTA NATURAE 2009;1(2):26-32)。
【0091】
酵素頭部領域は、4つの単量体で構成されている。頭部の各単量体は、保存された6枚羽根のプロペラ構造を形成する。各羽根は、ジスルフィド結合により安定化されており且つ様々な長さのループにより接続されている4つの逆平行βシートを有している(McAuley et al.,2019)。これらの単量体の四量体化は、活性部位の形成と、酵素活性NAの合成とに重要である(Dai et al.,Identification of Residues That Affect Oligomerization and/or Enzymatic Activity of Influenza Virus H5N1 Neuraminidase Proteins,J.VIROLOGY 2016,90(20):9457-70)。
【0092】
NAのアミノ酸配列及び長さは、N1及びN2等の様々なA型インフルエンザウイルスNAサブタイプ間で顕著に異なり得、特に、様々なA型インフルエンザウイルスNAサブタイプのNA茎領域間で顕著に異なり得るが、様々なインフルエンザ株由来のN2のアミノ酸配列の長さは、典型的には約469個のアミノ酸であり、いくつかの株は、典型的には頭部領域において、約1又は2個(又はより多く)のアミノ酸の挿入又は欠失を有する。野生型N2の特定のアミノ酸残基に言及する場合には、この特定のアミノ酸残基の番号は、当該技術分野で理解されるように、N2ナンバリングに基づいている。N末端の細胞質尾部は、典型的には、野生型N2配列のアミノ酸1~6に対応しており、膜貫通ドメインは、典型的には、野生型N2配列のアミノ酸7~35に対応する。例えば、A/PERTH/16/2009株の野生型NA配列(配列番号1)において、細胞質領域は、配列番号1のアミノ酸1~6に対応しており、膜貫通領域は、配列番号1のアミノ酸7~35に対応する。N2柄領域の長さは、典型的には約46個のアミノ酸の長さであり、野生型N2配列の約アミノ酸36で始まり約アミノ酸82で終わる。例えば、A/PERTH/16/2009株の野生型NA配列(配列番号1)において、柄領域は、配列番号1のアミノ酸36~約アミノ酸82に対応する。しかしながら、N2柄領域の終わりとN2頭部領域の始まりとの間の正確な境界は、X線結晶構造解析により解明されていない。
【0093】
b.組換え及び/又は改変インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ
本開示の方法及び組成物は、組換えNAの使用を伴う。ある特定の実施形態では、組換えNAは、宿主細胞中で発現された場合に可溶性の四量体NAを形成する改変単量体NA分子の4つのコピーを含む。一態様では、改変単量体NA分子は、インフルエンザウイルスNAの頭部領域と、異種オリゴマー化ドメインとを含むが、インフルエンザウイルスNAの細胞質尾部、膜貫通領域、及び柄領域の内の1つ又は複数の少なくとも一部を欠いている。
【0094】
例えば、改変単量体NAは、インフルエンザウイルスNAの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域との内の1つ若しくは複数を置き換えるか又はインフルエンザウイルスNAの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の全て若しくは実質的に全てとを置き換える異種四量体化ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、異種四量体化ドメインは、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0034578号明細書で開示されている四量体化ドメインである。同様に、Schmidt et al.,PLos ONE,2011,6(2):e16284;Da Silva et al.,J Biol Chem,2013,288(1):644-53;Dai et al.,2016,J.Virology,90(20):9457-70;Bosch et al.,2010,J.Virology,84(19):10366-74;Prevato et al.,2015,PLos ONE,10(8):e0135474を参照されたい。他の実施形態では、異種四量体化ドメインは、国際公開第2016/097769号パンフレットで説明されているヤツメウナギVLR-B抗体の端のC末端で見出されるペプチド(即ち、参照により全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2008/016854号パンフレットの図11Cにおいて「C-TERM」と命名されているドメイン)であり、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2016/097769号パンフレットの配列番号1又は配列番号2である。
【0095】
ある特定の実施形態では、改変単量体インフルエンザウイルスNAは、シグナルペプチド、異種四量体化ドメイン、及びインフルエンザウイルスNAの頭部領域を含み、宿主細胞中での改変単量体インフルエンザウイルスNAの発現により、四量体NAが分泌される。
【0096】
野生型のNAタンパク質は、膜貫通ドメインを含む膜結合タンパク質である。可溶性NAタンパク質を作るために、膜貫通ドメインを欠失させてシグナルペプチドを付加することが可能である。シグナルペプチドは、組換えNAタンパク質の標的を分泌経路とし、その結果、組換えNAタンパク質は、この組換えNAが発現されている宿主細胞から分泌される。改変単量体NA核酸が宿主細胞内でポリペプチドに翻訳される場合には、このポリペプチドは、シグナルペプチドを含む。しかしながら、翻訳後プロセッシング中に、シグナルペプチドは開裂され、分泌されたポリペプチドは、もはやシグナルペプチドを含まない。従って、改変単量体NAは、この改変単量体NAの標的を分泌経路とするために翻訳後にシグナルペプチドを含み得るが、このシグナルペプチドは、翻訳後プロセッシングにより除去され、そのため、この改変単量体NAを発現する宿主細胞から得られる可溶性四量体NAは、もはやシグナルペプチドを含まない4つの改変NA単量体で構成されている。
【0097】
ある特定の実施形態では、例えば、四量体NAは、改変単量体インフルエンザウイルスNAの4つのコピーを含み、改変単量体インフルエンザウイルスNAは、インフルエンザウイルスNAの頭部領域と、異種四量体化ドメインとを含む。
【0098】
ある特定の実施形態では、インフルエンザウイルスNAの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の全て又は実質的に全てとは、シグナルペプチド及び異種四量体化ドメインに置き換えられ得る。異種四量体化ドメインを含む改変NAは、NA柄領域全体を欠き得るか、又はNA柄領域の実質的に全てを欠き得、即ち、改変NA構築物は、NA柄領域のC末端部分を含み得る。例えば、異種四量体化ドメインを含む改変NAは、NA柄領域の最もC末端のアミノ酸の約1~13個を含み得る。当該技術分野で理解されるように、柄領域の最もC末端のアミノ酸は、NA頭部領域にすぐ隣接する残基である。さらなる例として、異種四量体化ドメイン構築物を含む改変NAは、NA柄領域の最もC末端のアミノ酸の1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、又は1~2個を含み得る。さらなる例として、異種四量体化ドメイン構築物を含む改変NAは、NA柄領域の最もC末端のアミノ酸の約8個を含み得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、異種四量体化ドメインは、スタフィロサームス・マリヌス(Staphylothermus marinus)テトラブラキオン四量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー四量体化ドメイン、パラミクソウイルスリン酸化タンパク質由来の四量体化ドメイン、又はヒト血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)四量体化ドメインである。
【0100】
さらなる例として、参照により全体が本明細書に組み込まれるPCT出願第PCT/US2022/039980号で開示されているように、柄ドメインの全て又は実質的に全てを欠いている改変単量体インフルエンザウイルスサブタイプ2ノイラミニダーゼ(N2)は、たとえ異種四量体化ドメインが付加されなくても、細胞中で発現された場合に可溶性四量体NAを形成し得ることが発見されている。柄ドメインの全て又は実質的に全てを欠いている全てのN2株が、検出可能な量で可溶性四量体NAを産生したわけではないが、試験したN2株の大部分は、検出可能な量の可溶性四量体NAを産生しており、このことは、切り詰められている柄の設計戦略が、様々なN2インフルエンザ株由来のNAタンパク質に広く適用可能であることを示している。使用されるN2株に応じて、この改変単量体NA設計戦略により、宿主細胞中で発現された場合に、主に四量体NAが産生され得るか、又は単量体NAと四量体との混合物で産生され得る。そのため、ある特定のN2株、及び特定のN2株のある特定の柄が欠失したバリアントは、細胞内で発現され場合に、可溶性の四量体NAをより高収率で産生する。いずれの場合においても、そのような改変NA構築物が宿主細胞中で発現された場合に産生される四量体NAを精製することが望ましい場合がある。
【0101】
本明細書で使用される場合、インフルエンザウイルスサブタイプ2ノイラミニダーゼ(N2)の「柄領域の実質的に全て」とは、インフルエンザウイルスN2の柄領域のアミノ酸36から少なくともアミノ酸69を指す。そのため、細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の実質的に全てとを欠いている改変N2は、インフルエンザウイルスサブタイプ2 NAのアミノ酸1~70、1~71、1~72、1~73、1~74、1~75、1~76、1~77、1~78、1~79、1~80、又は1~81を欠き得る。換言すると、本明細書で説明されている改変N2は、インフルエンザウイルスサブタイプ2 NAの柄領域の最もC末端のアミノ酸の最大13個を含み得、柄領域の最もC末端のアミノ酸は、典型的には、N2のアミノ酸70~82を指す。ある特定の実施形態では、細胞質尾部、膜貫通領域、及び柄領域全体(例えば、アミノ酸1~82)が、改変N2から除去されている。
【0102】
いくつかの実施形態では、例えば、四量体NAは、改変インフルエンザウイルスサブタイプ2ノイラミニダーゼの4つのコピーを含み、このノイラミニダーゼでは、改変インフルエンザウイルスノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼの頭部領域を含み、且つインフルエンザウイルスノイラミニダーゼの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の全て又は実質的に全てとを欠いており、四量体NAは、異種四量体化ドメインを含まない。これらの実施形態の内のいくつかでは、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の全て又は実質的に全てとが、シグナルペプチドに置き換えられている。シグナルペプチドは、通常、翻訳後プロセッシング中に開裂されており、そのため、分泌されたNAポリペプチドは、典型的には、シグナルペプチドを含まない。これらの実施形態の内のいくつかでは、例えば、野生型N2インフルエンザウイルスNAのアミノ酸1から少なくともアミノ酸70~82は、シグナルペプチドに置き換えられている。細胞質ドメインと、膜貫通ドメインと、柄領域の全て又は実質的に全てとがシグナルペプチドに置き換えられており、且つ細胞中で発現される場合には四量体NAを形成するこれらの改変N2構築物はまた、参照により全体が本明細書に組み込まれる国際PCT出願第PCT/US2022/039980号でもさらに詳細に説明されている。
【0103】
これらの改変単量体NAにより形成されている四量体NA分子は、一般に、流体サンプル中で実質的に可溶性であり、また、典型的には触媒的に活性である(例えば、ノイラミン酸のグリコシド結合を酵素的に開裂可能)。しかしながら、四量体NA分子はまた、例えば変異に起因して、触媒的に不活性でもあり得る。
【0104】
ノイラミニダーゼ活性を、例えば、MUNANAアッセイ、ELLAアッセイ、又はNA-Star(登録商標)アッセイ(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)等の当該技術分野で既知の技術を使用して測定し得る。MUNANAアッセイでは、基質として、2’-(4-メチルウンベリフェリル)-アルファ-D-N-アセチルノイラミン酸(MUNANA)が使用される。サンプル中に含まれるあらゆる酵素的に活性なノイラミニダーゼは、MUNANA基質を開裂し、蛍光化合物である4-メチルウンベリフェロン(4-MU)が放出される。そのため、試験サンプル中のノイラミニダーゼ活性の量は、放出された4-MUの量と相関しており、この4-MUの量を、蛍光強度(RFU、相対蛍光単位)を使用して測定し得る。
【0105】
本開示の可溶性四量体NAのノイラミニダーゼ活性を決定する目的のために、MUNANAアッセイを、下記の条件を使用して実施すべきである:可溶性四量体NAを緩衝液[33.3mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES、pH6.5)、4mM CaCl、50mM BSA]、及び基質(100μM MUNANA)と混合し、振盪しつつ37℃で1時間にわたりインキュベートし;アルカリ性pH溶液(0.2M NaCO)を添加することにより反応を停止させ;励起波長355nm及び発光波長460nmそれぞれを使用して蛍光強度を測定し;4MU参照に対する酵素活性を算出する。必要に応じて、同等のアッセイを使用して、ノイラミニダーゼ酵素活性を測定し得る。
【0106】
本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に存在する組換えインフルエンザウイルスNAは、標準治療インフルエンザウイルス株由来の組換えインフルエンザウイルスNA、及び/又は本明細書で開示されている機械学習インフルエンザウイルスNAの任意の組み合わせを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスNAは、野生型インフルエンザNA、非野生型インフルエンザNA、季節性インフルエンザウイルス株若しくはパンデミックインフルエンザウイルス株に由来するNA、及び/又は当該技術分野で既知の任意の他の形態のインフルエンザNAであり得る。ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているのは、組換えインフルエンザウイルスNAであって、このNAは、標準治療インフルエンザウイルス由来のN1 NA、標準治療インフルエンザウイルス由来のN2 NA、B/ビクトリア系統の標準治療インフルエンザウイルス株由来のNA、又はB/山形系統の標準治療インフルエンザウイルス由来のNAから選択される、組換えインフルエンザウイルスNAである。
【0107】
本明細書で開示されているある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスNAは、例えば、N1、N2、N7、及び/又はN9を含む、パンデミック株又はパンデミック潜在性を有する株に由来する
【0108】
本明細書で開示されているある特定の実施形態では、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNAは、機械学習モデルを使用して同定されているか、又は設計されている(「組換え機械学習インフルエンザウイルスNA」)。ある特定の実施形態では、機械学習組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NA、N2 NA、B/ビクトリア系統由来のNA、B/山形系統のNA、又はこれらの組み合わせの内の1つ又は複数から選択され得る。
【0109】
機械学習組換えインフルエンザウイルスHAに関して上記で開示されているように、1種又は複数種の機械学習組換えインフルエンザウイルスNAを選択する場合には、任意の機械学習アルゴリズムを使用し得る。例えば、本明細書で想定されているのは、PCT出願の国際公開第2021/080990A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Designing Vaccines)、及び国際公開第2021/080999A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Predicting Biological Responses)(これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されている機械学習アルゴリズム及び方法の内のいずれかである。
【0110】
ワクチン又は免疫原性組成物
ある特定の態様では、本明細書で開示されているのは、1種又は複数種(例えば、2、3、又は4種)の組換えインフルエンザウイルスHAと、1種又は複数種(例えば、2、3、又は4種)の組換えインフルエンザウイルスNAとを含む複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質を含むワクチン又は免疫原性組成物である。ある特定の実施形態では、1種又は複数種(例えば、2、3、又は4種)の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HA、H3 HA、B/ビクトリア系統由来のHA、B/山形系統由来のHA、又はこれらの組み合わせから選択される。ある特定の実施形態では、異種四量体化ドメインを含む1種又は複数種(例えば、2、3、又は4種)の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NA、N2 NA、B/ビクトリア系統由来のNA、B/山形系統由来のNA、又はこれらの組み合わせから選択される。ある特定の実施形態では、インフルエンザウイルスノイラミニダーゼの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の全て又は実質的に全てとを欠いており且つ異種四量体化ドメインを含まない1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである。
【0111】
ある特定の態様では、本明細書で開示されているのは、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質を含むワクチン又は免疫原性組成物であって、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、(1)第1の組換えインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)であり、この第1の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである、第1の組換えインフルエンザウイルスHA;(2)第2の組換えインフルエンザウイルスHAであり、この第2の組換えインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである、第2の組換えインフルエンザウイルスHA;(3)第3の組換えインフルエンザウイルスHAであり、この第3の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスHA;(4)第4の組換えインフルエンザウイルスHAであり、この第4の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスHA;(5)第1の組換えインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)であり、この第1の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NAである、第1の組換えインフルエンザウイルスNA;(6)第2の組換えインフルエンザウイルスNAであり、この第2の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである、第2の組換えインフルエンザウイルスNA;(7)第3の組換えインフルエンザウイルスNAであり、この第3の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスNA;及び(8)第4の組換えインフルエンザウイルスNAであり、この第4の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスNAを含む、ワクチン又は免疫原性組成物である。様々な実施形態では、組換えNAの内の1つ又は複数は、本明細書で説明されているように改変されている。
【0112】
本明細書でさらに開示されているのは、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質を含むワクチン又は免疫原性組成物であって、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、(1)第1の組換えインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)であり、この第1の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである、第1の組換えインフルエンザウイルスHA;(2)第2の組換えインフルエンザウイルスHAであり、この第2の組換えインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである、第2の組換えインフルエンザウイルスHA;(3)第3の組換えインフルエンザウイルスHAであり、この第3の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスHA;(4)第4の組換えインフルエンザウイルスHAであり、この第4の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスHA;(5)第1の組換えインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)であり、この第1の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NAである、第1の組換えインフルエンザウイルスNA;(6)第2の組換えインフルエンザウイルスNAであり、この第2の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである、第2の組換えインフルエンザウイルスNA;(7)第3の組換えインフルエンザウイルスNAであり、この第3の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスNA;及び(8)第4の組換えインフルエンザウイルスNAであり、この第4の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスNAからなる、ワクチン又は免疫原性組成物である。様々な実施形態では、組換えNAの内の1つ又は複数は、本明細書で説明されているように改変されている。
【0113】
ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物中の組換えインフルエンザウイルスHAの内の1つ又は複数(例えば、1、2、3、又は4つ)は、標準治療インフルエンザ株に由来しており、ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物中の組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、標準治療インフルエンザ株に由来している。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物中の組換えインフルエンザウイルスNAの内の1つ又は複数(例えば、1、2、3、又は4つ)は、標準治療インフルエンザ株に由来しており、ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物中の組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、標準治療インフルエンザ株に由来している。
【0114】
ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H1N1インフルエンザウイルス株由来のH1 HAを含む。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H3N2インフルエンザウイルス株由来のH3 HAを含む。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H1N1インフルエンザウイルス株由来のN1 NAを含む。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、N3N2インフルエンザウイルス株由来のN2 NAを含む。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、同一のH1N1インフルエンザウイルス株由来のH1 HA及びN1 NAを含み、ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、同一のH3N2インフルエンザウイルス株由来のH3 HA及びN2 NAを含む。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、異なるH1N1インフルエンザウイルス株由来のH1 HA及びN1 NAを含み、ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、異なるH3N2インフルエンザウイルス株由来のH3 HA及びN2 NAを含む。
【0115】
ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、H1N1インフルエンザウイルス株由来のH1 HA、H3N2インフルエンザウイルス株由来のH3 HA、H1N1インフルエンザウイルス株由来のN1 NA、及びH3N2インフルエンザウイルス株由来のN2 NAを含む。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、同一のH1N1インフルエンザウイルス株由来のH1 HA及びN1 NAを含み、ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、同一のH3N2インフルエンザウイルス株由来のH3 HA及びN2 NAを含む。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、異なるH1N1インフルエンザウイルス株由来のH1 HA及びN1 NAを含み、ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、異なるH3N2インフルエンザウイルス株由来のH3 HA及びN2 NAを含む。
【0116】
多価のワクチン又は免疫原性組成物中の組換えインフルエンザウイルスHAの内の1つ又は複数、及び組換えインフルエンザウイルスNAの内の1つ又は複数を、単独で、又は他の組換えHA及び/若しくはNA抗原との組み合わせで、製剤化して包装し得る。ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAを、1、2、又は3種の追加の組換えインフルエンザウイルスHA抗原(例えば、標準治療インフルエンザウイルス株由来の1、2、又は3種の追加の組換え抗原)と共に製剤化する。ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスHAを、3種の追加の組換えインフルエンザウイルスHA抗原と共に製剤化して、四価のワクチン又は免疫原性組成物を生成する。
【0117】
ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスNAを、1、2、又は3種の追加の組換えインフルエンザウイルスNA抗原(例えば、標準治療インフルエンザウイルス株由来の1、2、又は3種の追加の組換え抗原)と共に製剤化する。ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスNAを、3種の追加の組換えインフルエンザウイルスNA抗原と共に製剤化して、四価のワクチン又は免疫原性組成物を生成する。
【0118】
ある特定の実施形態では、1種又は複数種(例えば、1、2、又は3種)の組換えインフルエンザウイルスNAを、1種又は複数種(例えば、1、2、3、又は4種)の組換えインフルエンザウイルスHAと共に製剤化する。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、4種の組換えインフルエンザウイルスHA抗原と、4種の組換えインフルエンザウイルスNA抗原とを含み、八価のワクチン又は免疫原性組成物を生成し得る。ある特定の実施形態では、4種の組換えインフルエンザウイルスHA抗原、及び4種の組換えインフルエンザウイルスNA抗原は、それぞれ、標準治療インフルエンザウイルス株に由来し得る。ある特定の実施形態では、4種の組換えインフルエンザウイルスHA抗原と、4種の組換えインフルエンザウイルスNA抗原とを含む八価のワクチン又は免疫原性組成物は、1種若しくは複数種の機械学習インフルエンザウイルスHA、及び/又は1種若しくは複数種の機械学習インフルエンザウイルスNAをさらに含む。
【0119】
ある特定の実施形態では、組換えインフルエンザウイルスH1 HA、組換えインフルエンザウイルスH3 HA、B/ビクトリア系統由来の組換えインフルエンザウイルスHA、B/山形系統由来の組換えインフルエンザウイルスHA、組換えインフルエンザウイルスN1 NA、組換えインフルエンザウイルスN2 NA、B/ビクトリア系統由来の組換えインフルエンザウイルスNA、及び/又はB/山形系統由来の組換えインフルエンザウイルスNAは、機械学習モデルから同定されているか又は設計されている分子配列を有している。
【0120】
ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、1種又は複数種の組換えHAと、1種又は複数種の組換えNAとを含む五価のワクチン又は免疫原性組成物である。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、1種又は複数種の組換えHAと、1種又は複数種の組換えNAとを含む六価のワクチン又は免疫原性組成物である。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、1種又は複数種の組換えHAと、1種又は複数種の組換えNAとを含む七価のワクチン又は免疫原性組成物である。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、1種又は複数種の組換えHAと、1種又は複数種の組換えNAと(例えば、4種の組換えHA、及び4種の組換えNA)を含む八価のワクチン又は免疫原性組成物である。ある特定の実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、8種超の異なるHA分子及びNA分子を含む多価のワクチン又は免疫原性組成物である。
【0121】
各組換えHAは、本明細書で開示されている組成物中に、この組成物が投与される対象において免疫反応を誘発するのに有効な量で存在し得る。ある特定の実施形態では、各組換えHAは、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約0.1μg~約500μgの範囲の量で存在し得、例えば、約5μg~約120μg、約1μg~約60μg、約10μg~約60μg、約15μg~約60μg、約40μg~約50μg、約42μg~約47μg、約5μg~約45μg、約15μg~約45μg、約0.1μg~約90μg、約5μg~約90μg、約10μg~約90μg、又は約15μg~約90μgの範囲の量で存在し得る。ある特定の実施形態では、各組換えHAは、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に、約5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、又は約90μgの量で存在し得る。
【0122】
各組換えHAは、本明細書で開示されている組成物中に、この組成物が投与される対象において免疫反応を誘発するのに有効な量で存在し得る。ある特定の実施形態では、各組換えNAは、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に、例えば、約0.1μg~約500μgの範囲の量で存在し得、例えば、約5μg~約120μg、約1μg~約60μg、約10μg~約60μg、約15μg~約60μg、約5μg~約45μg、約15μg~約45μg、約0.1μg~約90μg、約5μg~約90μg、約10μg~約90μg、約15μg~約90μg、約5μg~約25μg、又は約10μg~約20μg、又は約12μg~18μgの範囲の量で存在し得る。ある特定の実施形態では、各組換えNAは、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に、約5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、又は約90μgの量で存在し得る。
【0123】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に存在している組換えインフルエンザHA及びNAの総量は、約150μg~約400μg、約150μg~約300μg、約200μg~約300μg、約200μg~約250μg、又は約225μg~約245μgの範囲であり得る。ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に存在している組換えインフルエンザHA及びNAの総量は、約500μg、400μg、350μg、300μg、250μg、200μg、又は150μg未満である。ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物中に存在している組換えインフルエンザHA及びNAの総量は、約500μg、約400μg、約350μg、約300μg、約290μg、約280μg、約270μg、約260μg、約250μg、約240μg、約230μg、約220μg、約210μg、約200μg、約190μg、約180μg、約170μg、約160μg、又は約150μgである。
【0124】
本ワクチン又は免疫原性組成物はまた、アジュバントもさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫反応を非特異的に増強する物質又はビヒクルを指す。アジュバントとして、抗原が吸着される無機物(ミョウバン、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム/オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)、リン酸アルミニウム(AlPO)、アルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩(AAHS)、及び/又は硫酸アルミニウムカリウム))の懸濁液;又は抗原溶液が鉱油中に乳化された油中水型エマルション(例えば、フロイントインコンプリートアジュバント)が挙げられ、抗原性をさらに増強するために、死滅マイコバクテリアが含まれることもある(フロイントコンプリートアジュバント)。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むもの等)もまた、アジュバントとして使用し得る(例えば、米国特許第6,194,388号明細書;同第6,207,646号明細書;同第6,214,806号明細書;同第6,218,371号明細書;同第6,239,116号明細書;同第6,339,068号明細書;同第6,406,705号明細書;及び同第6,429,199号明細書を参照されたい)。アジュバントとしてはまた、脂質及び共刺激分子等の生体分子が挙げられる。例示的な生物学的アジュバンとして、AS04(Didierlaurent,A.M.et al,AS04,an Aluminum Salt-and TLR4 Agonist-Based Adjuvant System, Induces a Transient Localized Innate Immune Response Leading to Enhanced Adaptive Immunity,J.IMMUNOL.2009,183:6186-6197)、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、及び41 BBLが挙げられる。
【0125】
ある特定の実施形態では、アジュバントは、少なくともスクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤、及び疎水性非イオン性界面活性剤を含む水中油型アジュバントエマルションを含むスクアレンベースのアジュバントである。ある特定の実施形態では、エマルションは熱可逆性であり、任意選択的に、油滴の体積基準で集団の90%が200nm未満のサイズを有する。
【0126】
ある特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、式CH-(CH-(O-CH-CH-OH(式中、nは10~60の整数であり、xは11~17の整数である)のものである。ある特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤は、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテルである。
【0127】
ある特定の実施形態では、油滴の体積基準で集団の90%が160nm未満のサイズを有する。ある特定の実施形態では、油滴の体積基準で集団の90%が150nm未満のサイズを有する。ある特定の実施形態では、油滴の体積基準で集団の50%が100nm未満のサイズを有する。ある特定の実施形態では、油滴の体積基準で集団の50%が90nm未満のサイズを有する。
【0128】
ある特定の実施形態では、アジュバントは、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールを含むがこれらに限定されない少なくとも1種のアルジトールをさらに含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、親水性非イオン性界面活性剤の親水性親油性バランス(HLB)は、10以上である。ある特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤のHLBは、9未満である。ある特定の実施形態では、親水性非イオン性界面活性剤のHLBは、10以上であり、疎水性非イオン性界面活性剤のHLBは、9未満である。
【0130】
ある特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤は、ソルビタンモノオレアート等のソルビタンエステル、又はマンニドエステル界面活性剤である。ある特定の実施形態では、スクアレンの量は、5~45%である。ある特定の実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤の量は、0.9~9%である。ある特定の実施形態では、疎水性非イオン性界面活性剤の量は、0.7~7%である。ある特定の実施形態では、アジュバントは、i)32.5%のスクアレン、ii)6.18%のポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル、iii)4.82%のソルビタンモノオレアート、及びiv)6%のマンニトールを含む。
【0131】
ある特定の実施形態では、アジュバントは、アルキルポリグリコシド及び/又は凍結防止剤、例えば糖、特にドデシルマルトシド及び/又はスクロースをさらに含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、アジュバントは、Klucker et al.,AF03,an alternative squalene emulsion-based vaccine adjuvant prepared by a phase inversion temperature method,J.PHARM.SCI.2012,101(12):4490-4500(この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で説明されているようなAF03を含む。ある特定の実施形態では、アジュバントは、例えば、国際公開第2022/090359号パンフレット(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で説明されているようなSPA14等のリポソームベースのアジュバントを含む。SPA14は、トール様受容体4(TLR4)アゴニスト(E6020)及びサポニン(QS21)を含むリポソームベースのアジュバントである。
【0133】
組換えHA、組換えNA、及び任意選択的なアジュバントに加えて、ワクチン又は免疫原性組成物はまた、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤もさらに含み得る。一般に、賦形剤の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロール等の薬学的に且つ生理学的に許容される流体を含む注入可能な流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、又はカプセル形態)では、従来の非毒性固体担体として、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを挙げ得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与されるワクチン又は免疫原性組成物は、少量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤又は乳化剤、浸透圧を調整するための薬学的に許容される塩、保存剤、安定剤、緩衝剤、糖、アミノ酸、及びpH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレート)を含み得る。
【0134】
典型的には、ワクチン又は免疫原性組成物は、静脈内、皮下、腹腔内、皮内、又は筋肉内等の非経口投与用に製剤化された無菌の液体溶液である。ワクチン又は免疫原性組成物はまた、鼻腔内又は吸入投与用に製剤化され得る。ワクチン又は免疫原性組成物はまた、任意の他の意図される投与経路のために製剤化され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物は、皮内注射、鼻腔内投与、又は筋肉内注射用に製剤化されている。いくつかの実施形態では、注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液として、注射前に液体の溶液若しくは懸濁液とするのに適した固体形態として、又はエマルションとして、従来の形態で調製されている。いくつかの実施形態では、注射溶液及び懸濁液は、滅菌された粉末又は顆粒から調製されている。これらの経路による投与のための医薬品の製剤化及び製造における一般的な考慮事項を、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995(参照により本明細書に組み込まれる)に見出し得る。現在、経口又は経鼻スプレー又はエアロゾル経路(例えば、吸入による)は、治療薬を肺及び呼吸器系に直接送達するために最も一般的に使用される。いくつかの実施形態では、ワクチン又は免疫原性組成物を、このワクチン又は免疫原性組成物を定量送達するデバイスを使用して投与する。本明細書で説明されている皮内用医薬組成物の送達に使用するのに好適なデバイスとして、短針デバイス、例えば米国特許第4,886,499号明細書、同第5,190,521号明細書、同第5,328,483号明細書、同第5,527,288号明細書、同第4,270,537号明細書、同第5,015,235号明細書、同第5,141,496号明細書、同第5,417,662号明細書(これらの文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる)で説明されているものが挙げられる.皮内用組成物をまた、皮膚への針の有効な貫入長を制限するデバイス、例えば、国際公開第1999/34850号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)で説明されているもの、及びその機能的等価物によっても投与し得る。また、液体ジェット式注射器によって、又は角質層を穿孔し、真皮に到達するジェットを生成する針によって、液体ワクチンを真皮に送達するジェット式注射デバイスも好適である。ジェット式注射デバイスは、例えば、米国特許第5,480,381号明細書、同第5,599,302号明細書、同第5,334,144号明細書、同第5,993,412号明細書、同第5,649,912号明細書、同第5,569,189号明細書、同第5,704,911号明細書、同許第5,383,851号明細書、同第5,893,397号明細書、同第5,466,220号明細書、同第5,339,163号明細書、同第5,312,335号明細書、同第5,503,627号明細書、同第5,064,413号明細書、同第5,520,639号明細書、同第4,596,556号明細書、同第4,790,824号明細書、同第4,941,880号明細書、同第4,940,460号明細書、国際公開第1997/37705号パンフレット、及び同第1997/13537号パンフレット(これらの文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる)で説明されている。また、皮膚の外層を通って真皮まで粉末形態のワクチンを加速するために圧縮ガスを使用する弾道粉末/粒子送達デバイスも好適である。加えて、皮内投与の古典的なマントー法において、従来のシリンジが使用され得る。
【0136】
非経口投与のための製剤として、典型的には、滅菌した水性又は非水性の溶液、懸濁液、及びエマルションが挙げられる。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、及びオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルがある。水性担体として、水、アルコール性/水性の溶液、乳液、又は懸濁液、例えば、生理食塩水、及び緩衝媒体が挙げられる。非経口用ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、又は不揮発性油が挙げられる。静脈内用ビヒクルとして、流体及び栄養補充物、電解質補充物(例えば、リンゲルデキストロースをベースとしたもの)等が挙げられる。保存剤及び他の添加剤(例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガス等)も存在し得る。
【0137】
キット
本明細書でさらに開示されているのは、本明細書で開示されているワクチン又は免疫原性組成物のためのキットである。キットには、ワクチン若しくは免疫原性組成物を含む好適な容器、又はワクチン若しくは免疫原性組成物の種々の成分を含む複数の容器が、任意選択的に使用説明書と共に含まれ得る。
【0138】
ある特定の実施形態では、キットは、複数の容器を含み得、例えば、本明細書で開示されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHAを含む第1の容器と、本明細書で開示されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNAを含む第2の容器とを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているのは、(1)第1の組換えインフルエンザウイルスHAであって、この第1の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである、第1の組換えインフルエンザウイルスHA;第2の組換えインフルエンザウイルスHAであって、この第2の組換えインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである、第2の組換えインフルエンザウイルスHA;第3の組換えインフルエンザウイルスHAであって、この第3の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスHA;第4の組換えインフルエンザウイルスHAであって、この第4の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスHAを含む第1の容器と、(2)第1の組換えインフルエンザウイルスNAであって、この第1の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NAである、第1の組換えインフルエンザウイルスNA;第2の組換えインフルエンザウイルスNAであって、この第2の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである、第2の組換えインフルエンザウイルスNA;第3の組換えインフルエンザウイルスNAであって、この第3の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスNA;及び第4の組換えインフルエンザウイルスNAであって、この第4の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスNAを含む第2の容器とを含むキットである。ある特定の実施形態では、キットは、任意選択的なアジュバントを含む第3の容器をさらに含み得、ある特定の実施形態では、第1及び/又は第2の容器は、組換えインフルエンザウイルス抗原に加えて、任意選択的なアジュバントを含み得る。
【0139】
ある特定の実施形態では、キットは、本明細書で開示されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれ、及び本明細書で開示されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれ、並びに任意選択的なアジュバントを含む単一の容器を含み得る。ある特定の実施形態では、この任意選択的なアジュバントは、別個の容器中に存在し得る。
【0140】
使用説明書は、投与前に第1及び第2の容器の内容物を組み合わせ得ること、又は第1及び第2の容器の内容物を、組み合わせ得ずに別々に投与することを示し得る。
【0141】
核酸、クローニング及び発現系
本開示は、本開示の組換えHA及びNAをコードする人工核酸分子をさらに提供する。この核酸は、DNAを含むか又はRNAを含んでよく、また全体が又は部分的に合成であっても組換えであってもよい。本明細書に記載されているヌクレオチド配列への言及は、特定の配列を有するDNA分子を包含し、文脈上別段の要求がない限り、UがT又はシュードウリジン等のその誘導体に置換されている特定の配列を有するRNA分子を包含する。他のヌクレオチド誘導体又は改変ヌクレオチドを、本開示のHA及びNAをコードする人工核酸分子に組み込み得る。
【0142】
本開示はまた、本明細書で開示されているHA又はNAをコードする人工核酸分子を含むベクター(例えば、プラスミド、ファージミド、コスミド、転写又は発現カセット、人工染色体等)の形態の構築物も提供する。本開示は、さらに、上記の1つ又は複数の構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0143】
同様に提供されるのは、当該技術分野で既知の且つ上述した組換え技術を使用して、組換えHAポリペプチド又は組換えNAポリペプチドを製造する方法である。組換えタンパク質の生成及び発現は、当該技術分野で公知であり、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(4th Ed.2012),Cold Spring Harbor Pressで開示されているもの等の従来の手順を使用して実行し得る。例えば、HAポリペプチド又はNAポリペプチドの発現を、本明細書で開示されているHA又はNAをコードする人工核酸分子を含有する宿主細胞を適切な条件下で培養することにより達成し得る。例えば、組換えHA又はNAポリペプチドの発現を、本明細書で開示されているHA又はNAをコードする核酸分子を含有する宿主細胞を適切な条件下で培養することにより達成し得る。発現により生成後、任意の好適な技術を使用してHA又はNAを単離し得、及び/又は精製し得、次いで、必要に応じて使用し得る。
【0144】
様々な異なる宿主細胞におけるクローニング及びポリペプチド発現のための系は、当該技術分野で公知である。本出願で開示されている構築物に適合する任意のタンパク質発現系(例えば、安定又は一過性)を使用して、本明細書で説明されているHA又はNAを生成し得る。
【0145】
好適なベクターは、適切な調節配列(例えば、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、及び必要に応じて他の配列)を含むように選択され得るか、又は構築され得る。
【0146】
本明細書で開示されている組換えHA及び/又は組換えNAを発現させるために、HAをコードする核酸又はNAコードする核酸を、宿主細胞に導入し得る。この導入は、任意の利用可能な技術を用い得る。真核細胞では、好適な技術として、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、及びレトロウイルス若しくは他のウイルス(例えば、ワクシニア、又は昆虫細胞ではバキュロウイルス)を使用する形質導入が挙げられ得る。細菌細胞では、好適な技術として、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、及びバクテリオファージを使用するトランスフェクションが挙げられ得る。これらの技術は、当該技術分野で公知である。(例えば、“Current Protocols in Molecular Biology”,Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons,2010を参照されたい)。DNA導入に続いて、ベクターを含有する細胞を選択する選択方法(例えば、抗生物質耐性)を行い得る。
【0147】
宿主細胞は、植物細胞、酵母細胞、又は動物細胞であり得る。動物細胞は、無脊椎動物細胞(例えば、昆虫細胞)、非哺乳類脊椎動物細胞(例えば、鳥類、爬虫類、及び両生類)、並びに哺乳動物細胞を包含する。一実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞の例として、COS-7細胞、HEK293細胞;ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞;チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;マウスセルトリ細胞;アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HeLa);イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK)等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。一実施形態では、宿主細胞は、昆虫細胞である。
【0148】
機械学習
1種又は複数種の機械学習インフルエンザウイルスHA及び/又はNAを選択する際、任意の機械学習アルゴリズムを使用し得る。例えば、本明細書で想定されているのは、PCT出願の国際公開第2021/080990A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Designing Vaccines)、及び同第2021/080999A1号パンフレット(発明の名称:Systems and Methods for Predicting Biological Responses)、米国仮出願第63/319,692号明細書(発明の名称:Machine-Learning Techniques in Protein Design for Vaccine Generation)、及び同第63/319,700号明細書(発明の名称:Machine-Learning Techniques in Protein Design for Vaccine Generation)(これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で開示されている機械学習アルゴリズム及び方法の内のいずれかである。
【0149】
ある特定の実施形態では、インフルエンザ抗原性の予測機械学習モデルを構築して、動物モデル及び/又はヒトにおける抗体力価の予測を可能にし得る。ある特定の実施形態では、機械学習モデルは、トレーニングセットの入力データから特徴値を抽出し得、この特徴は、入力データ項目が関連する特性を有するか否かにかかわらず、潜在的に関連すると見なされる変数である。入力データのための特徴の順序付きリストは、入力データのための特徴ベクトルと称され得る。ある特定の実施形態では、機械学習モデルは、次元削減を(例えば、線形判別分析(LDA)、主成分分析(PCA)、ニューラルネットワークからの学習された深層特徴等を介して)適用して、入力データの特徴ベクトル内のデータの量を、より小さく、より代表的なデータのセットに削減する。次いで、防御すべき一連のインフルエンザ配列(例えば、標的株)を同定して、選択アルゴリズムを構築し得る。
【0150】
ある特定の実施形態では、ワクチンを設計するためのシステムが提供される。このシステムは、1つ又は複数のプロセッサを含む。このシステムは、1つ又は複数のプロセッサによって実行される場合に、この1つ又は複数のプロセッサに1つ又は複数の操作を実行させる、実行可能なコンピュータ命令を保存するコンピュータストレージを含む。この1つ又は複数の操作は、1つ又は複数の分子配列を表す出力データを生成するように構成された複数のドライバモデルを第1の時系列データセットに適用することを含み、第1の時系列データセットは、1つ又は複数の分子配列、及び1つ又は複数の分子配列のそれぞれについて、その分子配列を天然抗原として含む病原性株の1回又は複数回の循環を示す。1つ又は複数の操作は、複数のドライバモデルのそれぞれについて、下記によってドライバモデルを訓練することを含む:i)ドライバモデルから、受け取った第1の時系列データセットに基づく1つ又は複数の予測分子配列を表す出力データを受け取り、ii)予測された1つ又は複数の分子配列を表す出力データに、複数の並進軸についての分子配列に対する生物学的反応を予測するように構成された並進モデルを適用して、出力データの1つ又は複数の予測分子配列に基づいて複数の並進軸の特定の並進軸に対応する1つ又は複数の第1の並進応答を表す第1の並進応答データを生成し、iii)第1の並進応答データに基づいてドライバモデルの1つ又は複数のパラメータを調整し、iv)ステップi~iiiを多数回繰り返して、特定の並進軸に対応する1つ又は複数の訓練された並進応答を表す訓練された並進応答データを生成する。1つ又は複数の操作は、1つ又は複数の訓練された並進応答に基づいて、複数のドライバモデルの内の訓練されたドライバモデルのセットを選択することを含む。1つ又は複数の操作は、訓練されたドライバモデルのセットの各訓練されたドライバモデルについて、特定の季節のための1つ又は複数の予測分子配列を表す訓練された出力データを生成するために、訓練されたドライバモデルを第2の時系列データセットに適用し;複数の並進軸の各並進軸について、1つ又は複数の第2の並進応答を表す第2の並進応答データを生成するために、並進モデルを最終出力データに適用し;第2の並進応答データに基づいて、訓練されたドライバモデルのセットの訓練されたドライバモデルのサブセットを選択することを含む。
【0151】
複数のドライバモデルの内の少なくとも1つは、リカレントニューラルネットワークを含み得る。複数のドライバモデルの内の少なくとも1つは、長・短期記憶リカレントニューラルネットワークを含む。
【0152】
受信された第1の時系列データセットに基づく1つ又は複数の予測分子配列を表す出力データは、複数の病原性季節のそれぞれについての抗原を表す出力データを含み得る。複数の病原性季節のそれぞれについての抗原を表す出力データは、特定の季節の循中の全ての病原性株にわたって最大化された凝集生物学的反応を生成する分子配列を予測することによって決定される抗原を含み得る。複数の病原性季節のそれぞれについての抗原を表す出力データは、特定の季節の循環中の最大数のウイルスに対して効果的に免疫する反応を生成する分子配列を予測することによって決定される抗原を含み得る。
【0153】
複数の並進軸は、フェレット抗体法医学(AF)軸、フェレット赤血球凝集阻害アッセイ(HAI)軸、マウスAF軸、マウスHAI軸、ヒトレプリカAF軸、ヒトAF軸、又はヒトHAI軸の内の少なくとも1つを含み得る。反復回数は、所定の反復回数に基づき得る。反復回数は、所定の誤差値に基づき得る。1つ又は複数の第1の翻訳応答は、予測フェレットHAI力価、予測フェレットAF力価、予測マウスAF力価、予測マウスHAI力価、予測ヒトレプリカAF力価、予測ヒトAF力価、又は予測ヒトHAI力価の内の少なくとも1つを含み得る。
【0154】
複数のドライバモデルの内の訓練されたドライバモデルのセットを選択することは、複数のドライバモデルの各ドライバモデルをドライバモデルのクラスに割り当てることを含み得、各クラスは、そのドライバモデルを訓練するために使用される複数の並進軸の特定の並進軸に関連付けられている。複数のドライバモデルの内の訓練されたドライバモデルのセットを選択することは、複数のドライバモデルの内の各ドライバモデルについて、そのドライバモデルの内の1つ又は複数の訓練された並進応答を、そのドライバモデルと同じクラスに割り当てられた少なくとも1つの他のドライバモデルの内の1つ又は複数の訓練された並進応答と比較することを含み得る。
【0155】
操作は、訓練されたドライバモデルのサブセットの各訓練されたドライバモデルについて、その訓練されたドライバモデルに対応する第2の並進応答データを、観察された実験応答データと比較することによって、その訓練されたドライバモデルを検証し、その訓練されたドライバモデルの検証に応答して、その訓練されたドライバモデルに対応する訓練された出力データによって表される1つ又は複数の分子配列を含むワクチンを生成することをさらに含み得る。
【0156】
一態様では、システムが提供される。このシステムは、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読メモリを含む。このシステムは、1つ又は複数の分子配列を予測するように訓練された少なくとも1つの機械学習モデルを含む実行可能ロジックを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、その少なくとも1つのプロセッサがコンピュータ実行可能命令を実行している場合に、少なくとも1つのプロセッサは、1つ又は複数の操作を実行するように構成されている。1つ又は複数の操作は、1つ又は複数の分子配列を示す時系列データを受信すること、及び1つ又は複数の分子配列のそれぞれについて、天然抗原としてその分子配列を含む病原性株の1回又は複数回の循環を受信することを含む。1つ又は複数の操作は、機械学習モデルに含まれる実行可能ロジックの1つ又は複数の部分を保存する1つ又は複数のデータ構造を通して時系列データを処理し、この時系列データに基づいて1つ又は複数の分子配列を予測することを含む。
【0157】
時系列データに基づいて1つ又は複数の分子配列を予測することは、予測された1つ又は複数の分子配列が将来の使用に与える1つ又は複数の免疫学的特性を予測することを含み得る。時系列データに基づいて1つ又は複数の分子配列を予測することは、時系列データの全ての病原性株にわたって最大化された凝集生物学的反応を生成する1つ又は複数の分子配列を予測することを含み得る。時系列データに基づいて1つ又は複数の分子配列を予測することは、時系列データの最大数の病原菌株を効果的にカバーする生物学的反応を生成する1つ又は複数の分子配列を予測することを含み得る。予測された1つ又は複数の分子配列を使用して、時系列データの1回又は複数回の循環の後の時間に循環する病原性株のためのワクチンを設計し得る。
【0158】
機械学習モデルは、リカレントニューラルネットワークを含見える。
【0159】
ある特定の実施形態では、生物学的反応を予測するためのデータ処理システムが提供される。このシステムは、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読メモリを含む。このシステムは、生物学的反応を予測するように訓練された少なくとも1つの機械学習モデルを含む実行可能ロジックを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、その少なくとも1つのプロセッサがコンピュータ実行可能命令を実行している場合には、少なくとも1つのプロセッサは、1つ又は複数の操作を実行する。1つ又は複数の操作は、第1の分子配列の第1の配列データを受信することを含む。1つ又は複数の操作は、第2の分子配列の第2の配列データを受信することを含む。1つ又は複数の操作は、受信した第1及び第2の配列データに少なくとも部分的に基づいて、第2の分子配列に対する生物学的反応を予測することを含む。
【0160】
1つ又は複数の操作は、第1の分子配列及び第2の分子配列に対応する非ヒト生物学的反応データを受信することを含み得る。1つ又は複数の操作は、さらに非ヒト生物学的反応データに少なくとも部分的に基づいて生物学的反応を予測することを含み得る。1つ以上の操作は、第1の配列データ及び第2の配列データをアミノ酸ミスマッチとしてコードすることを含み得る。
【0161】
第1の分子配列は、候補抗原を含み得る。第2の分子配列は、既知のウイルス株を含み得る。
【0162】
生物学的反応を予測することは、ヒト生物学的反応を予測することを含み得る。生物学的反応を予測することは、少なくとも1つのヒト生物学的反応、及び少なくとも1つの非ヒト生物学的反応を予測することを含み得る。生物学的反応は、抗体力価を含み得る。機械学習モデルは、ディープニューラルネットワークを含み得る。
【0163】
機械学習法を使用して、偽陽性及び偽陰性の発生率が低下するように、生物学的反応を予測する機械学習モデルを訓練し得る。説明されているシステム及び方法の内の少なくともいくつかを使用して、従来の手法と比較した場合に、例えば、データの次元を削減することによって、本質的に疎なデータを効率的に処理し得る。説明されているシステム及び方法の内の少なくともいくつかは、受信データにおける非線形関係を利用して、従来の手法と比較して予測精度を高め得る。説明されているシステム及び方法の内の少なくともいくつかを使用して、ヒト生物学的反応及び非ヒト生物学的反応を同時に予測し得る。説明されているシステム及び方法の内の少なくともいくつかを使用して、実験的に観察されない結果を予測し得る。
【0164】
ある特定の実施形態では、1つ又は複数のコンピュータからなるシステムを、操作中にシステムに動作を実行させる、システムに搭載されたソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はこれらの組み合わせを有することによって、特定の操作又は動作を実行するように構成し得る。1つ又は複数のコンピュータプログラムを、データ処理装置によって実行される場合に、装置に動作を実行させる命令を含むことによって、特定の操作又は動作を実行するように構成し得る。一般的な一態様には、連続データアルゴリズムを使用することによってワクチンを製造する方法が含まれる。本方法は、複数の第1の離散値を含み得る離散データオブジェクトを受信することを含み、この離散データオブジェクトは、1つ又は複数のアミノ酸配列を含み得る。本方法はまた、離散データオブジェクトを、複数の第1の連続値を含み得る連続データオブジェクトに変換することも含む。本方法はまた、連続データオブジェクトに、連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含み得る連続結果オブジェクトを生成することも含む。本方法はまた、連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含み得る離散結果オブジェクトに変換することも含む。本方法はまた、i)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの内の少なくとも1つを含み得るワクチンを製造することも含む。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、本方法の動作を実行するように構成されている。
【0165】
実装形態には、下記の特徴の内の1つ又は複数が含まれ得る。1つ又は複数のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得る方法(第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれは、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む)。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成すること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す)、各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成すること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す)、及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成することを含み得る。各重みベクトルは、20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸の内の1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は、複数の第2の離散値を形成する。本方法は、さらに、複数の候補離散結果オブジェクトを生成すること、及び複数の候補離散結果オブジェクトから、製造可能性試験に失敗したアミノ酸を特定する少なくとも1つの離散結果オブジェクトを除外することを含み得る。連続結果オブジェクトを生成するための連続データアルゴリズムの適用は、複数の損失基準に基づいて損失値を決定する損失関数を用いた勾配降下法を適用することを含み得、損失関数には、2つのアミノ酸配列が与えられた免疫学的反応に基づく第1の損失基準;正しく折り畳まれないと予測される野生型配列又はサブ配列のデータセットに見出されないサブ配列の損失値を修正する第2の損失基準;及び各重みベクトルについて、第2の連続値における最大値に基づいて損失値を修正する第3の損失基準が含まれ得る。説明されている手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータにアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0166】
一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成するためのシステムが含まれ、このシステムは、コンピュータメモリを含み得る。このシステムはまた、1つ又は複数のプロセッサも含み得る。このシステムはまた、プロセッサによって実行されるときに、操作をプロセッサに実行させる命令を記憶するコンピュータメモリも含み得、その操作には、複数の第1の離散値を含む離散データオブジェクトを受信すること(離散データオブジェクトは、1又は複数のアミノ酸配列を含む);この離散データオブジェクトを複数の第1の連続値を含む連続データオブジェクトに変換すること;この連続データオブジェクトに連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含む連続結果オブジェクトを生成すること;この連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含む離散結果オブジェクトに変換すること、並びにi)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義定されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの内の少なくとも1つを含むワクチンを製造することが含まれ得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、方法の動作を実行するように構成されている。
【0167】
実装形態には、下記の特徴の内の1つ又は複数が含まれ得る。一実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれが、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む、システムがある。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成すること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す)、各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成すること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す)、及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成することを含む。各重みベクトルは、20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸のうちの1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は、複数の第2の離散値を形成する。この操作は、さらに:複数の候補離散結果オブジェクトを生成すること、及び複数の候補離散結果オブジェクトから、製造可能性試験に失敗したアミノ酸を特定する少なくとも1つの離散結果オブジェクトを除外することを含み得る。連続結果オブジェクトを生成するための連続データアルゴリズムの適用は、複数の損失基準に基づいて損失値を決定する損失関数を用いた勾配降下法を適用することを含み得、損失関数には、2つのアミノ酸配列が与えられた免疫学的反応に基づく第1の損失基準;正しく折り畳まれないと予測される野生型配列又はサブ配列のデータセットに見出されないサブ配列の損失値を修正する第2の損失基準;及び各重みベクトルについて、第2の連続値における最大値に基づいて損失値を修正する第3の損失基準が含まれ得る。説明されている手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータがアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0168】
一般的な一態様は、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、1つ又は複数のプロセッサに、下記を含み得る操作を実行させる命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を含む:複数の第1の離散値を含む離散データオブジェクトを受信すること(離散データオブジェクトは、1つ又は複数のアミノ酸配列を含む);この離散データオブジェクトを、複数の第1の連続値を含む連続データオブジェクトに変換すること;この連続データオブジェクトに連続データアルゴリズムを適用して、複数の第2の連続値を含む連続結果オブジェクトを生成すること;この連続結果オブジェクトを、複数の第2の離散値を含む離散結果オブジェクトに変換すること、並びにi)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質、ii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)離散結果オブジェクトによって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの内の少なくとも1つを含むワクチンを製造する。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれは、本方法の動作を実行するように構成されている。
【0169】
実装形態には、下記の特徴の内の1つ又は複数が含まれ得る。1つ又は複数のアミノ酸配列が、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列を含み得る媒体(第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列のそれぞれは、それぞれの1文字又はそれぞれの文字列を含む)。離散データオブジェクトの連続データオブジェクトへの変換は、各第1の離散値について、重み値の重みベクトルを生成すること(各重み値は、第1の離散値が特定のアミノ酸を表す尤度を表す)、各重みベクトルの各重み値について、特性値の特性ベクトルを生成すること(各特性値は、特定のアミノ酸の物理化学的特性を表す)、及び重みベクトルと特性ベクトルとを組み合わせて、連続データオブジェクトの第1の連続値を生成することを含み得る。各重みベクトルは、20個の重み値を有し、各重み値は、20個の可能なアミノ酸の内の1つに対応する。連続結果オブジェクトの離散結果オブジェクトへの変換は、各第2の連続値について、それぞれの単一のアミノ酸を決定することを含み得、決定された単一のアミノ酸は、複数の第2の離散値を形成する。説明されている手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータがアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0170】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているのは、ワクチンとして使用するためのインフルエンザ抗原を生成し得るアルゴリズムである。一実装形態では、これには、下記が含まれ得る:1)次の2つのステップを使用する機械学習(例えば、変分オートエンコーダアーキテクチャ)によって、全ての野生型ヘマグルチニン配列の削減次元空間を生成する:
a)削減された空間に可変的に埋め込む(例えば、モデルが、予測された平均及び分散を有する正規分布から選択された埋め込まれた座標を用いて、入力配列から平均及び分散を予測する);
b)次いで、削減された空間位置「オートエンコーダ」損失関数から元の配列にデコードし、入力及び出力配列の類似性によって削減する。
【0171】
2)削減次元空間における抗原(ワクチン候補)及びリードアウト株(標的配列)の位置に基づく免疫反応予測モデルを訓練する[入力:ステップ1のモデルにより埋め込まれた抗原及びリードアウト、出力:抗体力価等の免疫反応の尺度]。
【0172】
3)削減空間から候補ワクチン成分表現をサンプリングし、ステップ2で説明されているモデルを用いて標的配列に対する予測性能によって候補ワクチン成分表現をランク付けし、上位候補を特定する。
【0173】
4)上位候補表現をデコードして[ステップ1bからのモデルを使用する]、元の野生型セットで観察された可能性又は観察されなかった可能性のあるヘマグルチニン配列を放出する。
【0174】
1つ又は複数のコンピュータからなるシステムを、操作中にシステムに動作を実行させる、システムに搭載されたソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はこれらの組み合わせを有することによって、特定の操作又は動作を実行するように構成し得る。1つ又は複数のコンピュータプログラムを、データ処理装置によって実行されると、装置に動作を実行させる命令を含むことによって、特定の操作又は動作を実行するように構成し得る。一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成するための次元削減方法が含まれ、この方法は、1つ又は複数のコンピュータからなるシステムによって実行される。この方法は、複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ又は複数のデータオブジェクトを受信することを含む。この方法はまた、1つ又は複数のデータオブジェクトから、削減次元空間内の複数の削減次元配列を生成することを含み、各削減次元配列は野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含み、削減次元空間は野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する。この方法はまた、複数の削減次元配列を使用して、削減次元空間内に複数の候補配列を生成することを含む。この方法はまた、ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ又は複数のデータオブジェクトを受信することを含む。この方法はまた、削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成することを含む。この方法はまた、力価予測因子への入力として、候補配列のそれぞれ及び少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を提供することを含む。この方法はまた、力価予測因子からの出力として、候補配列のそれぞれについての候補スコアを受信することを含む。この方法はまた、候補配列の中から少なくとも1つの候補配列を選択することを含む。この方法はまた、選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成することを含む。この方法はまた、生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供することを含む。この方法はまた、生成されたアミノ酸配列のそれぞれが、それぞれのワクチンを製造するのに適している操作を含む。ワクチンには、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの内の少なくとも1つを含み得る。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、この方法の動作を実行するように構成されている。
【0175】
実装形態には、下記の特徴の内の1つ又は複数が含まれ得る。本方法は、複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得る操作を含む。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値のグループを含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列、及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し、出力として、候補スコアとして力価スコアを提供し、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義するように構成される。選択された候補配列として少なくとも1つの候補配列を選択することは、最も高い候補スコアを有するn個の候補配列を選択することを含み得る。この方法は、単一の候補配列が選択されるように、nが1の値である操作を含む。この方法は、複数の候補配列が選択されるように、nが1より大きい値である操作を含む。少なくとも1つの候補配列を、選択された候補配列として選択することは、それぞれの候補スコアが閾値よりも大きい候補配列を選択することを含み得る。生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、野生型アミノ酸配列のいずれとも異なる。候補配列の内の少なくとも1つは、複数の削減次元配列内にある。説明されている手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータがアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0176】
一般的な一態様には、アミノ酸配列を生成するためのシステムが含まれ、このシステムは、コンピュータメモリを含み得る。このシステムはまた、1つ又は複数のプロセッサを含む。このシステムはまた、プロセッサによって実行されるときに、操作をプロセッサに実行させる命令を記憶するコンピュータメモリを含み、その操作には、複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ又は複数のデータオブジェクトを受信すること、その1つ又は複数のデータオブジェクトから、削減次元空間において複数の削減次元配列を生成すること(ここで、各削減次元配列は、野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含み、削減次元空間は、野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する);複数の削減次元配列を使用して削減次元空間内に複数の候補配列を生成すること;ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ又は複数のデータオブジェクトを受信すること;削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成すること;候補配列のそれぞれ及び削減次元ウイルス配列の内の少なくとも1つを力価予測因子に入力として提供すること;候補配列のそれぞれの候補スコアを力価予測子から出力として受信し、候補配列の中から少なくとも1つの候補配列を選択すること;選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成すること;及び生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供すること(ここで、生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの内の少なくとも1つを含むそれぞれのワクチンを製造するのに好適である)が含まれる。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれは、この方法の動作を実行するように構成されている。
【0177】
実装形態には、下記の特徴の内の1つ又は複数が含まれ得る。複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得るシステム。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値のグループを含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列、及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し、出力として、候補スコアとして力価スコアを提供し、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義するように構成される。選択された候補配列として少なくとも1つの候補配列を選択することは、最も高い候補スコアを有するn個の候補配列を選択することを含み得る。説明されている手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータがアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0178】
一般的な一態様は、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、1つ又は複数のプロセッサに、下記を含む操作を実行させる命令を記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体を含む:複数の野生型アミノ酸配列を定義する1つ又は複数のデータオブジェクトを受信すること、その1つ又は複数のデータオブジェクトから、削減次元空間において複数の削減次元配列を生成すること(ここで、各削減次元配列は、野生型アミノ酸配列の少なくとも1つのそれぞれのデータを含み、削減次元空間は、野生型アミノ酸配列よりも低次元であり、複数の削減次元配列は、削減次元空間の各次元に沿った値の分布を定義する);複数の削減次元配列を使用して削減次元空間内に複数の候補配列を生成すること;ウイルスアミノ酸配列を定義する1つ又は複数のデータオブジェクトを受信すること;削減次元空間内に少なくとも1つの削減次元ウイルス配列を生成すること;候補配列のそれぞれ及び削減次元ウイルス配列のうちの少なくとも1つを力価予測因子に入力として提供すること;候補配列のそれぞれの候補スコアを力価予測子から出力として受信し、候補配列の中から少なくとも1つの王甫配列を選択すること;選択された候補配列のそれぞれについて少なくとも1つの新しいアミノ酸配列を生成すること;及び生成された少なくとも1つのアミノ酸配列を提供すること(ここで、生成されたアミノ酸配列のそれぞれは、i)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質、ii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な核酸、及びiii)生成されたアミノ酸配列によって定義されるタンパク質を生成可能な送達ビヒクルの内の少なくとも1つを含むそれぞれのワクチンを製造するのに好適である)。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータストレージデバイスに記録されたコンピュータプログラムを含み、それぞれ、この方法の動作を実行するように構成されている。
【0179】
実装形態には、下記の特徴の内の1つ又は複数が含まれ得る。複数の削減次元配列の生成が、入力データの平均値及び分散値を予測する変分オートエンコーダを使用して野生型アミノ酸配列の表現を作成することを含み得る媒体。削減次元配列のそれぞれは、それぞれの値のグループを含み、削減次元空間における複数の候補配列の生成は、複数の削減次元配列の値の分布をサンプリングすることを含み得る。力価予測因子は、入力として、i)削減次元空間内の第1の配列、及びii)削減次元空間内の第2の配列を受信し、出力として、候補スコアとして力価スコアを提供し、力価スコアは、第1の配列と第2の配列との間の生物学的反応の尺度を定義するように構成される。説明されている手法の実装形態には、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータがアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアが含まれ得る。
【0180】
これら及び他の態様、特徴、及び実装形態を、方法、装置、システム、構成要素、プログラム製品、ビジネスを行う方法、機能を実行するための手段又はステップとして、及び他の方法で表すことができ、特許請求の範囲を含む下記の説明から明らかになるであろう。
【0181】
本開示の実装形態は、下記の利点を提供し得る。従来の手法と比較して、ワクチンを将来の病原性シーズンに向けて設計し、将来の病原性シーズンの少なくとも1つの病原性株に対する生物学的反応量の観点から、より多くの防御を付与し得る。従来の手法と比較して、ワクチンを将来の病原性シーズンに向けて設計し、将来の病原性シーズンの複数の病原性株を有効にカバーすることができる範囲の広さ(即ち、将来の病原性シーズンにおいて多くの病原性株に対し有効な免疫学的反応を誘発する)の観点から、より多くの防御を付与し得る。従来の手法とは異なり、まれに観察される株は、頻繁に観察される株と比べて多くの株と交差反応することから、「より多くの防御」を付与し得る。
【0182】
使用方法
本開示は、本明細書で説明されているワクチンを対象に投与する方法を提供する。この方法は、対象にインフルエンザウイルスのワクチン接種をするために使用され得る。いくつかの実施形態では、ワクチン接種方法は、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを、必要な対象に、この対象にインフルエンザウイルスのワクチン接種をするのに有効な量で投与することを含む。同様に、本開示は、対象へのインフルエンザウイルスのワクチン接種で使用するための、本明細書で説明されている1種又は複数種のインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種のNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを提供する。同様に本明細書で開示されているのは、対象へのインフルエンザウイルスのワクチン接種で使用されるワクチンを製造するための、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを含む免疫原性組成物である。
【0183】
本開示はまた、インフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法であって、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンの免疫学的有効量をこの対象に投与することを含む方法も提供する。同様に、本開示は、インフルエンザウイルスに対する対象の免疫化で使用するための、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを提供する。同様に本明細書で開示されているのは、インフルエンザウイルスに対する対象の免疫化で使用されるワクチンを製造するための、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含む免疫原性組成物である。
【0184】
いくつかの実施形態では、本方法又は使用は、対象におけるインフルエンザウイルスによる感染又は疾患を予防する。いくつかの実施形態では、本方法又は使用は、対象における防御免疫反応を引き起こす。いくつかの実施形態では、この防御免疫反応は、抗体反応である。
【0185】
本明細書で提供されている免疫化の方法(又は関連する使用)は、1種又は複数種のインフルエンザウイルスに対する広範な中和免疫反応を誘発し得る。従って、様々な実施形態では、本明細書で説明されている組成物は、様々なタイプのインフルエンザウイルスに対して広範な交差防御を提供し得る。いくつかの実施形態では、この組成物は、トリ、ブタ、季節性、及び/又はパンデミックインフルエンザウイルスに対する交差防御を提供する。いくつかの実施形態では、免疫化の方法(又は関連する使用)は、1種又は複数種の季節性インフルエンザ株(例えば、標準治療株)に対し、改善された免疫反応を誘発し得る。例えば、改善された免疫反応は、改善された体液性免疫反応であり得る。いくつかの実施形態では、免疫化の方法(又は関連する使用)は、1種又は複数種のパンデミックインフルエンザ株に対して、改善された免疫反応を誘発し得る。いくつかの実施形態では、免疫化の方法(又は関連する使用)は、1種又は複数種の豚インフルエンザ株に対して、改善された免疫反応を誘発し得る。いくつかの実施形態では、免疫化の方法(又は関連する使用)は、1種又は複数種のトリインフルエンザ株に対して、改善された免疫反応を誘発し得る。
【0186】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、対象における防御免疫反応を増強するか又は拡大する方法であって、本明細書で開示されているワクチンの免疫学的有効量をこの対象に投与することを含む方法である。同様に、本開示は、対象における防御免疫反応の増強又は拡大で使用される、本明細書で説明されているワクチンの内のいずれかであり、例えば、複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質を含むワクチンであり、この複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHAと、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNAとを含むか、又はからなる。同様に本明細書で開示されているのは、対象における防御免疫反応の増強又は拡大で使用されるワクチンを製造するための、本明細書で説明されている免疫原性組成物である。ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているワクチンにより、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン有効性が、約5%~約100%の範囲の量だけ増加し、例えば、約10%~約25%、約20%~約100%、約15%~約75%、約15%~約50%、約20%~約75%、約20%~約50%、又は約40%~約80%、例えば、約40%~約60%、又は約60%~約80%の範囲の量だけ増加する。ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているワクチンは、ワクチン有効性が、標準治療インフルエンザウイルスワクチンのワクチン有効性と比べて少なくとも5%高く、例えば、標準治療インフルエンザウイルスワクチンのワクチン有効性と比べて少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%高い。
【0187】
ある特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルスワクチンは、三価又は四価のIIV等の不活性化インフルエンザワクチン(IIV)であり得る。典型的には、標準治療の不活化インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/ビクトリア系統、及びB/山形系統に由来する不活化インフルエンザウイルスを含む。ある特定の実施形態では、標準治療インフルエンザウイルスワクチンは、組換えインフルエンザウイルスHAを含み得、例えば、組換えインフルエンザウイルスHAを含む三価又は四価ワクチン組成物を含み得る。典型的には、標準治療の組換えHAワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/ビクトリア系統、及びB/山形系統に由来するrHAを含む。ワクチン有効性を、ワクチン接種された集団と、ワクチン接種されていない集団、又は異なるワクチンを投与された集団との間の疾患の減少の割合として表し得る。ある特定の実施形態では、ワクチン有効性を、下記式に従って、ワクチン接種されていない集団の罹患率からワクチン接種された集団の罹患率を減算し、ワクチン接種されていない集団の罹患率で除算することにより算出し得る:[(ワクチン接種されていない集団の罹患率)-(ワクチン接種された集団の罹患率)/(ワクチン接種されていない集団の罹患率)×100]。
【0188】
同様に提供されるのは、対象におけるインフルエンザウイルス疾患を予防する方法であって、この対象におけるインフルエンザウイルス疾患を予防するのに有効な量で本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを、この対象に投与する方法である。同様に、本開示は、対象におけるインフルエンザウイルス疾患の予防で使用する、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルス、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを提供する。同様に本明細書で開示されているのは、対象におけるインフルエンザウイルス疾患の予防で使用されるワクチンを製造するための、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含む免疫原性組成物である。
【0189】
同様に提供されるのは、対象においてインフルエンザウイルスHA及びインフルエンザNAに対する免疫反応を誘発する方法であって、明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンをこの対象に投与することを含む方法である。同様に、本開示は、対象におけるインフルエンザウイルスHA及びインフルエンザウイルスNAに対する免疫反応の誘発で使用する、明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを提供する。同様に本明細書で提供されるのは、対象におけるインフルエンザウイルスHA及びインフルエンザウイルスNAに対する免疫反応の誘発で使用されるワクチンを製造するための、明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含む免疫原性組成物である。
【0190】
本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを、インフルエンザ感染の1つ又は複数種の症状の発症前後に投与し得る。即ち、いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているワクチンを、インフルエンザ感染を予防するために、又は潜在的なインフルエンザ感染の症状を改善するために、予防的に投与し得る。いくつかの実施形態では、対象が、季節性インフルエンザウイルス若しくはパンデミックインフルエンザウイルスに感染していることが知られているか若しくは疑われる他の個体又は家畜(例えば、ブタ)と接触するような場合には、及び/又はインフルエンザ感染が知られているか又は流行しているか若しくはエンデミックであると考えられる地域に対象が存在している場合には、対象は、インフルエンザウイルスに感染するリスクがある。いくつかの実施形態では、ワクチンを、インフルエンザ感染に罹患している対象、又はインフルエンザ感染に一般に関連する1つ若しくは複数の症状を示している患者に投与する。いくつかの実施形態では、対象は、インフルエンザウイルスに曝露されていることが分かっているか、又は曝露されていると考えられている。いくつかの実施形態では、対象がインフルエンザウイルスに曝露されていることが分かっているか又は曝露されていると考えられている場合には、対象は、インフルエンザに感染するリスクがあるか、又は感染しやすい。いくつかの実施形態では、対象が、パンデミックインフルエンザウイルスに感染していることが分かっているか若しくは疑われる他の個体若しくは家畜(例えば、ブタ)と接触している場合には、及び/又は対象が、インフルエンザ感染が知られているか又は流行しているか若しくはエンデミックであると考えられる地域に存在するか若しくは存在している場合には、対象は、インフルエンザウイルスに曝露されていることが分かっているか、又は曝露されていると考えられる。本明細書で開示されているワクチンを使用して、季節性インフルエンザ株又はパンデミックインフルエンザ株により引き起こされるか又はその両方により引き起こされる疾患を処置し得るか、又は予防し得る。
【0191】
本開示によるワクチンを、所望の結果を達成するのに適切な任意の量又は用量で投与し得る。いくつかの実施形態では、所望の結果は、季節性株及びパンデミック株の両方を含む広範囲のインフルエンザ株に対する持続的適応免疫反応の誘発である。いくつかの実施形態では、所望の結果は、インフルエンザ感染の1つ又は複数の症状の強度、重症度、及び/若しくは頻度の低下、並びに/又は発症の遅延である。必要とされる用量は、対象の種、年齢、体重、及び全身状態、処置される感染の重症度、使用される特定の組成物、及びその投与様式に応じて、対象毎に異なり得る。
【0192】
様々な実施形態では、本明細書で説明されているワクチン又は免疫原性組成物を対象に投与し、この対象は、動物界の任意のメンバーであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト動物である。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、鳥類(avian)(例えば、ニワトリ又はトリ(bird)、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、及び/又は線虫である。いくつかの実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、フェレット、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/又はブタ)である。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているワクチン又は免疫原性組成物を、ヒト対象に投与する。特定の実施形態では、ヒト対象は、生後6ヶ月以上、生後6ヶ月~35ヶ月、少なくとも2歳、少なくとも3歳、生後36ヶ月~8歳、9歳以上、生後少なくとも6ヶ月及び5歳未満、生後少なくとも6ヶ月及び18歳未満、又は少なくとも3歳及び18歳未満である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、乳児(36ヶ月未満)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、小児又は青年(18歳未満)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、生後少なくとも6ヶ月及び5歳未満の小児である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、少なくとも5歳及び60歳未満である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、少なくとも5歳及び65歳未満である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、高齢者(少なくとも60歳又は少なくとも65歳)である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、非高齢成人(少なくとも18歳及び65歳未満、又は少なくとも18歳及び60歳未満)である。
【0194】
典型的には、本明細書で説明されているワクチンの方法及び使用は、対象への単回用量(即ち、ブースター用量ではない)の投与を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、本明細書で説明されているワクチンの方法及び使用は、プライムブーストワクチン接種戦略を含む。プライムブーストワクチン接種は、プライミングワクチンを投与し、その後、ある期間が経過した後に、ブースティングワクチンを対象に投与することを含む。免疫反応は、プライミングワクチンの投与時に「プライミング」され、ブースティングワクチンの投与時に「ブースティング」される。プライミングワクチンは、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを含み得る。同様に、ブースティングワクチンは、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを含むワクチンを含み得る。プライミングワクチンは、ブースティングワクチンと同一であり得るが、同一である必要はない。ブースティングワクチンの投与は、一般に、プライミング組成物の投与から数週間乃至数ヶ月後であり、好ましくは約2~3週間後、又は4週間後、又は8週間後、又は16週間後、又は20週間後、又は24週間後、又は28週間後、又は32週間後である。ある特定の実施形態では、プライムブーストワクチン接種のレシピエントは、ナイーブ対象であり、典型的には、ナイーブな乳児又は小児である。
【0195】
ワクチンを、上記のように、例えば非経口送達を含む、任意の好適な投与経路を使用して投与し得る。
【0196】
典型的には、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、本明細書で説明されている1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び任意選択的なアジュバントを、同一ワクチンの構成成分として一緒に投与する。しかしながら、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び/又は任意選択的なアジュバントを、同一ワクチンの一部として投与する必要はない。即ち、所望される場合には、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHA、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNA、及び/又は任意選択的なアジュバントを、別々に対象に投与し得る。例えば、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスHAを含む第1のワクチンを、1種又は複数種の組換えインフルエンザウイルスNAを含む第2のワクチンとは別に対象に投与し得る。第1のワクチン及び第2のワクチンを別々に投与する場合には、第1のワクチン及び第2のワクチンを、異なる部位で対象に投与し得る。
【0197】
本開示の代表的な実施形態
1. 複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質を含む免疫原性組成物であって、前記複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、
第1の組換えインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)であり、前記第1の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである、第1の組換えインフルエンザウイルスHA;
第2の組換えインフルエンザウイルスHAであり、前記第2の組換えインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである、第2の組換えインフルエンザウイルスHA;
第3の組換えインフルエンザウイルスHAであり、前記第3の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスHA;
第4の組換えインフルエンザウイルスHAであり、前記第4の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスHA;
第1の組換えインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)であり、前記第1の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NAである、第1の組換えインフルエンザウイルスNA;
第2の組換えインフルエンザウイルスNAであり、前記第2の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである、第2の組換えインフルエンザウイルスNA;
第3の組換えインフルエンザウイルスNAであり、前記第3の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスNA;及び
第4の組換えインフルエンザウイルスNAであり、前記第4の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスNA
を含む、免疫原性組成物。
【0198】
2. 前記第1、第2、第3、及び第4の組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、改変組換えインフルエンザウイルスNAである、実施形態1に記載の免疫原性組成物。
【0199】
3. 前記改変組換えインフルエンザウイルスNAは、4つの改変単量体NA分子であって、各々は、前記インフルエンザウイルスの前記NAの頭部領域を含むが、前記インフルエンザウイルスの前記NAの細胞質尾部と、膜貫通領域と、柄領域の全て又は実質的に全てとを欠いている、改変単量体NA分子を含む改変組換え四量体インフルエンザウイルスNAを含み、前記改変単量体NA分子は、宿主細胞中で発現された場合に、改変組換え四量体NAを形成する、実施形態2に記載の免疫原性組成物。
【0200】
4. 各改変組換え単量体インフルエンザウイルスNAは、異種四量体化ドメインを含む、実施形態3に記載の免疫原性組成物。
【0201】
5. 各改変組換え単量体インフルエンザウイルスNAは、異種オリゴマー化ドメインを含まない、実施形態3に記載の免疫原性組成物。
【0202】
6. 前記異種四量体化ドメインは、スタフィロサームス・マリヌス(Staphylothermus marinus)テトラブラキオン四量体化ドメイン、GCN4ロイシンジッパー四量体化ドメイン、パラミクソウイルスリン酸化タンパク質由来の四量体化ドメイン、又はヒト血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)四量体化ドメインである、実施形態4に記載の免疫原性組成物。
【0203】
7. 前記組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、培養昆虫細胞中においてバキュロウイルス発現系により産生されている、実施形態1~6のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0204】
8. 前記組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で産生されている、実施形態1~7のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0205】
9. 前記免疫原性組成物は、不活性化インフルエンザビリオン又は生弱毒化インフルエンザビリオンを含まない、実施形態1~8のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0206】
10. 前記組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれ、及び/又は前記組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、標準治療インフルエンザ株に由来している、実施形態1~9のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0207】
11. 前記H1 HAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及び/又は前記H3 HAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来している、実施形態1~10のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0208】
12. 前記N1 NAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及び/又は前記N2 NAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来している、実施形態1~11のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0209】
13. 前記H1 HAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、前記H3 HAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来しており、前記N1 NAは、H1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、及び前記N2 NAは、H3N2インフルエンザウイルス株に由来している、実施形態1~12のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0210】
14. 前記H1 HA及び前記N1 NAは、同一のH1N1インフルエンザウイルス株に由来しており、前記H3 HA及びN2 NAは、同一のH3N2インフルエンザウイルス株に由来している、実施形態13に記載の免疫原性組成物。
【0211】
15. 前記複数種の組換えインフルエンザウイルスタンパク質は、
第1の組換えインフルエンザウイルスHAであって、前記第1の組換えインフルエンザウイルスHAは、H1 HAである、第1の組換えインフルエンザウイルスHA;
第2の組換えインフルエンザウイルスHAであって、前記第2の組換えインフルエンザウイルスHAは、H3 HAである、第2の組換えインフルエンザウイルスHA;
第3の組換えインフルエンザウイルスHAであって、前記第3の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスHA;
第4の組換えインフルエンザウイルスHAであって、前記第4の組換えインフルエンザウイルスHAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスHA;
第1の組換えインフルエンザウイルスNAであって、前記第1の組換えインフルエンザウイルスNAは、N1 NAである、第1の組換えインフルエンザウイルスNA;
第2の組換えインフルエンザウイルスNAであって、前記第2の組換えインフルエンザウイルスNAは、N2 NAである、第2の組換えインフルエンザウイルスNA;
第3の組換えインフルエンザウイルスNAであって、前記第3の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/ビクトリア系統に由来する、第3の組換えインフルエンザウイルスNA;及び
第4の組換えインフルエンザウイルスNAであって、前記第4の組換えインフルエンザウイルスNAは、B/山形系統に由来する、第4の組換えインフルエンザウイルスNA
からなる、実施形態1~14のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0212】
16. 前記組成物は、アジュバントをさらに含む、実施形態1~15のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0213】
17. 前記アジュバントは、水中スクアレンアジュバント又はリポソームベースのアジュバントを含む、実施形態16に記載の免疫原性組成物。
【0214】
18. 前記水中スクアレンアジュバントは、AF03を含む、実施形態17に記載の免疫原性組成物。
【0215】
19. 前記リポソームベースのアジュバントは、SPA14を含む、実施形態17に記載の免疫原性組成物。
【0216】
20. 前記組換えインフルエンザウイルスHAのそれぞれは、約0.1μg~約90μgの範囲の量で前記組成物中に存在しており、任意選択的に、約1μg~約60μg又は5μg~約45μgの範囲の量で前記組成物中に存在している、実施形態1~19のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0217】
21. 前記組換えインフルエンザウイルスNAのそれぞれは、約0.1μg~約90μgの範囲の量で前記組成物中に存在しており、任意選択的に、約1μg~約60μg又は約5μg~約45μgの範囲の量で前記組成物中に存在している、実施形態1~20のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0218】
22. 前記組成物は、筋肉内注射用に製剤化されている、実施形態1~21のいずれか一つに記載の免疫原性組成物。
【0219】
23. 請求項1~22のいずれか一項に記載の免疫原性組成物、及び医薬担体を含むワクチン。
【0220】
24. インフルエンザウイルスに対して対象を免疫化する方法であって、請求項23に記載のワクチンの免疫学的有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【0221】
25. 前記方法により、前記対象におけるインフルエンザウイルス感染が予防される、実施形態24に記載の方法。
【0222】
26. 前記方法により、前記対象における防御免疫反応が生じる、実施形態24又は25に記載の方法。
【0223】
27. 前記防御免疫反応は、HA抗体反応、及び/又はNA抗体反応を含む、実施形態26に記載の方法。
【0224】
28. 前記対象は、ヒトである、実施形態24~27のいずれか一つに記載の方法。
【0225】
29. 前記ワクチンを、筋肉内投与するか、皮内投与するか、皮下投与するか、静脈内投与するか、鼻腔内投与するか、吸入により投与するか、又は腹腔内投与する、実施形態24~28のいずれか一つに記載の方法。
【0226】
30. 前記方法により、季節性インフルエンザ株及びパンデミックインフルエンザ株のいずれか又は両方により引き起こされる疾患が処置されるか、又は予防される、実施形態24~29のいずれか一つに記載の方法。
【0227】
31. 前記対象は、ヒトであり、前記ヒトは、生後6ヶ月以上、18歳未満、少なくとも生後6ヶ月及び18歳未満、少なくとも18歳及び65歳未満、少なくとも生後6ヶ月及び5歳未満、少なくとも5歳及び65歳未満、少なくとも60歳、又は少なくとも65歳である、実施形態24~30のいずれか一つに記載の方法。
【0228】
32. インフルエンザウイルス感染の1つ又は複数の症状を軽減する方法であって、実施形態23に記載のワクチンの予防的有効量を対象に投与することを含む方法。
【0229】
33. 対象における防御免疫反応を増強するか又は拡大する方法であって、実施形態23に記載のワクチンの免疫学的有効量を前記対象に投与することを含み、前記ワクチンにより、標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物のワクチン有効性が、約5%~約100%の範囲の量だけ増加し、例えば、少なくとも約20%、又は約40%~約80%、例えば、約40%~約60%の量のだけ増加する、方法。
【0230】
34. 前記標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/ビクトリア系統、及びB/山形系統に由来する不活性化インフルエンザウイルスを含む不活性化インフルエンザウイルス組成物である、実施形態33に記載の方法。
【0231】
35. 標準治療インフルエンザウイルスワクチン組成物は、H1N1株、H3N2株、B/ビクトリア系統、及びB/山形系統に由来する組換えインフルエンザウイルスHAを含む、実施形態33に記載の方法。
【0232】
36. 2~6週間の間隔で、任意選択的には4週間の間隔で、前記ワクチンの2回の用量を前記対象に投与することを含む実施形態24~35のいずれか一つに記載の方法。
【0233】
本開示は、下記の実施例を参照することによってより深く理解されるであろう。
【実施例
【0234】
下記の実施例は、例示的なものと見なされるべきであり、上記の開示の範囲を限定するものではない。
【0235】
動物実験は、実験動物の人道的管理と使用(Humane Care and Use of Laboratory Animals)に関する公衆衛生局(Public Health Service)(PHS)規範、及び実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)に準拠して行い、Sanofi動物実験委員会(Institutional animal Care and Use Committee)(IACUC)から承認された動物プロトコルで実施した。全ての動物を、特定の病原体を含まない条件下で、食物及び水を自由に与えて飼育した。
【0236】
インフルエンザウイルス:酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)で使用する再集合H6ウイルスは、逆遺伝学によって生成されたものであり、各再集合体は、標的とするNA抗原、A/mallard/Sweden/81/2002 H6N1由来のHA、及びA/Puerto Rico/8/1934 H1N1(「PR8」)由来の内部遺伝子を発現していた。非コード領域を含むHAセグメント及びNAセグメントを、カスタム遺伝子合成(Geneart AG)により生成し、PR8セグメントを、ウイルス単離体から得た。全てのセグメントを、ポリメラーゼ(Pol)Iプロモーター及びPol IIプロモーターの組込みにより、pUC57(Genscript)由来の双方向転写プラスミドにクローニングした。簡単に説明すると、293FT細胞(Thermo Fisher Scientific)に、Lipofectamine 2000 CD(Thermo Fisher Scientific)を使用して、各インフルエンザウイルスセグメントを表す合計8種のプラスミドをトランスフェクトした。24時間後、このトランスフェクトした細胞に、TPCK処理トリプシン(Sigma)の存在下でMDCK-ATL細胞(ATCC)を添加して、インフルエンザウイルスの増殖を可能にした。インフルエンザウイルスを含む細胞培養上清を、MDCK添加後7日目に採取し、8~10日齢の胚化鶏卵(Charles River Laboratories,Inc.)で継代させた。接種した卵を、48時間にわたり37℃でインキュベートし、次いで12時間にわたり4℃まで冷却し、採取し、低速遠心分離(3,000rpm、20分)で清澄化した。ウイルス力価を、MDCK細胞によるプラークアッセイで決定した。
【0237】
HAI試験に含まれるA/Michigan/45/2015(H1N1)、A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016(H3N2)、B/Colorado/06/2017(ビクトリア系統)、B/Maryland/15/2016(ビクトリア系統)、及びB/Phuket/3073/2013(山形系統)の卵増殖ストックは、Sanofi Paster Global Clinical Immunology(Swiftwater,PA)から提供された。フェレットの研究で使用される野生型インフルエンザA/Perth/16/2009(H3N2)は、IIT Research Institute(Chicago,IL)から提供された。全てのウイルスを、使用するまで-65℃未満で保存した。
【0238】
ワクチン抗原:組換え可溶性インフルエンザNAを発現させるために、構築物を設計した。四量体NA構築物及び単量体NA構築物の両方のデザインは、N末端CD5分泌シグナルペプチド、任意選択的な6HISタグ(精製用)、及び球状ノイラミニダーゼ頭部ドメインを含む。四量体デザイン(rTET-NA)はまた、多量体化のために、HISタグと球状頭部と間にテトラブラキオンドメインも含む。定義されたアミノ酸配列を使用して、オリゴヌクレオチド及び/又はPCR産物からコドン最適化合成遺伝子を構築し、この断片を、pcDNA3.4-TOPO(ThermoFisher)に挿入した。このプラスミドDNAを、形質転換細菌から精製し、トランスフェクションに適切な濃度になるように調整した。タンパク質発現を、ExpiCHO(商標)Expression System Max Titer Protocol(ThermoFisher)を使用してCHO-S細胞中で実施した。清澄化工程を実施して、分泌されたタンパク質を細胞から分離した。NAタンパク質を、アフィニティー(HisTrap(商標)HP Column-GE Healthcare)、続いて陰イオン交換クロマトグラフィー(HiTrap(商標)Q HP-GE HealthCare)、10mM リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)への透析、及び0.2μm滅菌ろ過により、宿主細胞タンパク質から精製した。NAワクチン調製物を、現行の優良研究慣行(good research practices)(cGRP)に準拠して製造した。
【0239】
NAI反応の酵素結合レクチンアッセイ(ELLA)評価:NAI抗体反応を、Couzens,An optimized enzyme-linked lectin assay to measure influenza A virus neuraminidase inhibition antibody titers in human sera,J.VIROLOGICAL METHODS 2014,210:7-14で既に説明されているELLAにより、目的の株に由来するNAを含むH6再集合ウイルスに対して測定した。簡潔に説明すると、目的の株に由来するNAを含むH6再集合ウイルスを、フェチュインでコーティングされた96ウェルプレート中で滴定し、最大NA酵素活性の70%を提供する標準ウイルス量を決定した。血清中に存在するNAI抗体の滴定を、熱不活化した血清の2倍連続希釈を実施することにより行なった。次いで、希釈した血清合計50μLを、フェチュインでコーティングされたプレート中において、最大NA酵素活性の70%に対応する希釈ウイルス50μLに添加した。血清-ウイルス混合物を、一晩37℃でインキュベートした。このプレートを4回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートピーナッツアグルチニン(PNA)と共にインキュベートし、再度洗浄した後に、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)を添加して現像した。ウイルス対照に対するシグナルが低いか又は全くない場合には、NA特異的抗体の存在に起因するNA活性の阻害が示されている。NAI力価を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して非線形4パラメータロジスティック(4PL)曲線で近似し、50%最大阻害濃度(IC50)を算出した。
【0240】
ヘマグルチニン阻害(HAI)アッセイ:HAIアッセイの前に、血清を受容体破壊酵素(RDE;Denka Seiken,Co.,Japan)で処理して、非特異的阻害剤を不活性化した。RDE処理した血清を、v底マイクロタイタープレート中で連続的に希釈した(2倍希釈)。HAIリードアウトパネルからの各ウイルスの等量を、各ウェルに添加した(1ウェル当たり4赤血球凝集単位(HAU))。本実施例では、別途示さない限り、同種ウイルスパネルには、卵中で増殖させたA/Michigan/45/2015(H1N1)、A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016(H3N2)、B/Colorado/06/2017、又はB/Maryland/15/2016(ビクトリア系統)、及びB/Phuket/3073/2013(山形系統)ウイルスが含まれていた。このプレートを覆い、20分(又は45~60分間)にわたり室温でインキュベートし、続いて、PBS中の、ニワトリ赤血球(erythrocyte)(赤血球(red blood cell);CRBC)の1%混合物、又はシチメンチョウ赤血球(TRBC)(Lampire Biologicals)の0.5%混合物を添加した。このプレートを、撹拌により混合し、覆い、RBCを、室温で約30分~1時間にわたり静置した。HAI力価を、非凝集RBCを含む最後のウェルの希釈率の逆数により決定した。
【0241】
抗体法医学アッセイ:抗体法医学法(AF)を使用して、蛍光色素を用いた磁気ビーズアレイ(MagPlex(登録商標)Microspheres)を使用して、フェレット血清中の株特異的rHA抗体を測定した。株特異的rHAへの抗体結合の強度を、生の蛍光強度シグナルに血清希釈率を乗算して算出した正規化平均蛍光強度単位(nMFI)で示した。磁気ビーズに結合したrHAを、Francis Crick Instituteによるインフルエンザワクチンの組成に関する年次報告書及び中間報告書で公開された抗原性データに基づいて選択した。2018~2019年北半球推奨株に加えて、rH3パネルには、2013年から2016年シーズンまでの株が含まれており、H1パネルには、2009年から2016年シーズンまでの株が包含されていた。個々のフェレット血清を分析し、その結果得られた40種のH3株及び18のH1株の抗体法医学データを評価した。
【0242】
HINT mNTインフルエンザプロトコル:インフルエンザ株に対する中和価を、出典Jorquera,P.A.et al,Insights into the antigenic advancement of influenza A(H3N2)viruses,2011-2018,Sci.Reports 9,2676(2019)の通りに測定した。簡潔に記載すると、RDE処理された血清の1:20~1:2,560の連続2倍希釈物を、等量のウイルス、約1000病巣形成単位(FFU)と混合し、37℃で60分にわたりインキュベートした。インキュベーション後、MDCK-SIAT1細胞懸濁液を、ウイルス:血清混合物に添加し、約22時間にわたりインキュベートした。単層を、メタノールで固定し、染色の準備をした。次いで、ウェルを、核タンパク質(NP)に対する抗インフルエンザモノクローナル抗体と共にインキュベートし、続いてALEXA FLUOR(登録商標)488コンジュゲート二次抗体と共にインキュベートした。細胞を洗浄し、CTL IMMUNOSPOT(登録商標)Cell Imaging v2でプレートを走査した。プレートからのカウントを、Graphpad Prismソフトウェアに転送し、シグモイド曲線から50%の病巣減少を達成する中和価を算出した。このアッセイは、トリプシンを含まず、血清を含まないウイルス投入対照ウェルと比較してウイルス侵入の阻害を測定する。カウントは、個々の感染細胞であり、このアッセイは、H1、H3、BVic、及びBYamを含む全ての生ウイルスサブタイプに好適である。
【0243】
本明細書で開示されている抗体法医学アッセイでは、下記のrHAを使用した:H3 AFパネル:A/URUGUAY/716/2007、A/VICTORIA/361/2011、A/HONGKONG/4801/2014、A/SINGAPORE/INFIMH-16-0019/2016、A/BRISBANE/1059/2017、A/ETHIOPIA/1877/2017、A/KENYA/105/2017、A/MISSOURI/37/2017、A/MIYAZAKI/89/2017、A/OSORNO/60580/2017、A/SAPPORO/46/2017、A/SHANGHAIXUHUI/1373/2017、A/SYDNEY/1093/2017、A/SYDNEY/1013/2017、A/AKSARAY/4048/2016、A/ALBANIA/7165/2016、A/ANKARA/4110/2016、A/BRETAGNE/2836/2016、A/BRISBANE/1009/2016、A/CALIFORNIA/168/2016、A/CHIBA/33/2016、A/CHRISTCHURCH/513/2016、A/GUANGXIQIXIN/328/2016、A/HAWAII/67/2016、A/JORDAN/J16420301NT/2016、A/KAWASAKI/142/2016、A/KHMELNITSKY/719/2016、A/LAOS/F2884/2016、A/LINKOU/0051/2016、A/LISBOA/NIEVA063/2016、A/MARTINIQUE/531/2016、A/MARYLAND/24/2016、A/MEKNES/168/2016、A/MICHIGAN/84/2016、A/PORTUGAL/MS68/2016、A/SAUDIARABIA/192150/2016、A/SHANDONGLAICHENG/1763/2016、A/SINGAPORE/GP2366/2016、A/TASMANIA/97/2016、A/TOWNSVILLE/51/2016。
【0244】
H1 AFパネル:A/CALIFORNIA/07/2009、A/BAYERN/69/2009、A/HONGKONG/34079/2009、A/HONGKONG/33597/2009、A/LVIV/N6/2009、A/MONTPELLIER/2051/2009、A/CHRISTCHURCH/16/2010、A/ANKARA/TR40/2011、A/ASTRAKHAN/1/2011、A/HONGKONG/3934/2011、A/GOTEBORG/1/2011、A/MEXICO/2208/2011、A/HONG/KONG/5659/2012、A/STOCKHOLM/25/2012、A/ISRAEL/Q504/2015、A/MICHIGAN/45/2015、A/HUNGARY/12/2016、A/BRATISLAVA/342/2016。
【0245】
下記の実施例では、組換えHAタンパク質を、Protein Sciencesから入手した。簡潔に説明すると、精製されたHAタンパク質を、Sf9細胞に由来しており且つ無血清培地で増殖させた連続昆虫細胞株(EXPRESSF+(登録商標))で産生させた。IIVを、胚化鶏卵で増殖させたインフルエンザウイルスから調製し、ホルムアルデヒドで不活化し、濃縮し、スクロース勾配でのゾーン遠心分離で精製し、Triton(登録商標)X-100で分割し、さらに精製し、次いでリン酸緩衝等張塩化ナトリウム溶液に懸濁させた。調製物を、0.2μmシリンジフィルタを使用して無菌ろ過した。生きているインフルエンザウイルス由来ノイラミニダーゼ(LVNA)を、胚化鶏卵中で増殖させたインフルエンザウイルスから単離した。ウイルスを、スクロース勾配超遠心分離で精製し、NAを洗剤可溶化により抽出し、カラムクロマトグラフィーでさらに精製し、リン酸ナトリウム緩衝等張塩化ナトリウム溶液に懸濁させた。調製物を、0.2μmシリンジフィルタを使用して無菌ろ過した。
【0246】
実施例1-rTET-NAの発現、精製、及びキャラクタリゼーション
現在流行している季節性インフルエンザウイルス中に存在する4つのサブタイプ全て(A/Michigan/45/2015 N1;A/Singapore/2016 N2;B/Colorado/06/2017ビクトリア系統;及びB/Phuket/3073/2013山形系統)のNAに由来するrTET-NA構築物を、CHO-S細胞中で発現させ、さらなるキャラクタリゼーションのために、ほぼ均質になるまで精製した。rTET-NA構築物(例えば、A/Singapore/2016 N2由来)の概略図及び部分的アミノ酸配列を、図1に示す。別途示さない限り、NA頭部領域が得られたインフルエンザウイルス株とは無関係に、下記の実施例で開示されている全てのrTET-NA構築物には、異種テトラブラキオン四量体化配列が存在している。しかしながら、当該技術分で既知であるように、テトラブラキオン四量体化配列の代わりに、任意の好適な異種四量体化ドメインを使用し得る。rTET-NA構築物では、野生型インフルエンザノイラミニダーゼの細胞質ドメインと、膜貫通領域と、柄領域の全て又は実質的に全てとを、「分泌シグナル」ペプチド、異種テトラブラキオン四量体化ドメイン、及び任意選択的なヒスチジンタグに置き換えられており、これらは、rTET-NAの精製を容易にするために使用され得る。
【0247】
多角度光散乱によるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MALS)により、rTET-NAの効率的な四量体化が実証されており、全てのrTET-NAは、四量体として形成されており、分子量(約260kDa)は、対照(エクトドメイン)単量体(約74kDa)の約4倍であることが確認された(データは示さない)。サイズ排除クロマトグラフィーでは、TSK-GEL G4000 PWXL(7.8mm×30cm)カラム(Tosoh Bioscience)を用い、移動相は、0.02%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)であった。全ての検出器を、カラムの下流で一列に接続した。Empower(登録商標)(Waters Corporation,Milford,MA)ソフトウェアを使用して、クロマトグラム上のUVピーク面積を積分した。サンプルの純度を、特定のピーク面積/全ピーク面積の割合に基づいて算出した。ピーク中のタンパク質の分子量(MW)を、濃度検出器(RI又はUV)による光散乱シグナルを使用して、ASTRA(Wyatt Technologies,Santa Barbara,CA)ソフトウェアで決定した。
【0248】
rTET-NA酵素活性を、2’-(4-メチルウンベリフェリル)-α-d-N-アセチルノイラミン酸(MUNANA)アッセイで実証した。緩衝液(33.3mM 2-[N-モルホリノ]エタンスルホン酸[MES,pH6.5]、4mM CaCl2、50mM BSA)を使用して、96ウェルプレート中において、2倍連続rTET-NA希釈液を調製し、MUNANA基質(100μM)と混合し、振盪しつつ37℃で1時間にわたりインキュベートした。この反応を、アルカリ性溶液(0.2M NaCO)の添加により停止させた。rTET-NAとMUNANA基質との混合物からの蛍光強度(RFU、相対蛍光単位)を、励起波長355nm及び発光波長460nmそれぞれを使用して測定した。標準曲線は、様々な濃度にて酵素緩衝液で希釈した4-メチルウンベリフェロン(4-MU)を使用して作成し;rTET-NA酵素活性を、4MU基準に対して決定し、結果を、全NA活性に関してはμM/60分で表し、特異的NA活性に関してはnmole/分/μgで表した。
【0249】
加えて、rTETは、オセルタミビル-リン酸塩に結合することが示された。対照的に、酵素的に不活性な単量体N2エクトドメインバリアントは、オセルタミビル-リン酸塩に結合しなかった。SEC-MALS分析をまた、様々なインフルエンザサブタイプ及び34種の異なるN2株に由来するrTET-NAに対しても実施し、rTET-NAの4量体化、及びオセルタミビル-リン酸塩への結合が、全ての場合で実証された。オセルタミビル結合アッセイを、下記の条件を使用して実施した:オセルタミビル-リン酸塩-ビオチンコンジュゲート(1xKB緩衝液(PBS中に1%BSA及び0.02%Tween)中に5~10μg/ml)を、ストレプトアビジンでコーティングされたバイオセンサの表面上で捕捉し;このバイオセンサを、組換えNAのサンプルの連続2倍希釈液(1xKB中に0.16~10μg/ml)が入っているウェルに浸し;Octet装置(ForteBio,Molecular Devices,LLC)の生体層干渉法(BLI)技術を使用して、オセルタミビル-リン酸塩への組換えNAの結合動態を測定する。
【0250】
実施例2-マウスにおけるrTET-NA免疫原性の評価
マウスモデルを使用して、rTET-NAの免疫原性を評価した。6~8週齢の雌BALB/cマウス(1群当たり8匹)に、AF03(水中スクアレン)アジュバントと共に又はなしで(投与量は全て50μLであった)、A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016由来のN2 rTET-NA、A/Michigan/45/2015由来のN1 rTET-NA、一価不活化インフルエンザワクチン(IIV)0.2μg若しくは1μg、又は生ウイルス由来NA(LVNA)0.2μgのいずれかで2回ワクチン接種した。図2Aに示すように、初回用量を、0日目に筋肉内投与し、ブースター用量を、21日目に筋肉内投与した。最終用量の2週間後(35日目)に、血清中におけるNAI抗体価を測定した。2匹の動物からの血清プールを生成し(必要な時まで-20℃で保存した)、1群当たり合計4つのサンプルを得た。血清を、ELLAで試験してNAI活性を評価したか、又はELISAによりNA結合抗体を得た。
【0251】
rTET-NAが、他のNA含有ウイルス調製物に匹敵する免疫原性を有しており、この免疫原性は、AF03アジュバントで顕著に増強されることが実証された。図2B及び2Cを参照されたい。図2Cに示すように、rTET-NAの免疫原性は、マウスで同様に試験したN1サブタイプ、A/Michigan45/2015株に関するIIVと比べて高かった。理論に束縛されることを望まないが、このサブタイプ特異的な差違は、後者の分割不活化プロセスに起因している可能性があり、その結果、N2と比較して酵素活性が低下し、且つ免疫原性が喪失する。
【0252】
実施例3-フェレットにおけるrTET-NA免疫原性の評価
インフルエンザナイーブで免疫前のフェレットにおいて、rTET-NAの免疫原性を評価した。フェレットは、肺の生理機能及びインフルエンザに対する感受性がヒトと共有していることに基づいて、インフルエンザの研究で広く使用されている。
【0253】
17~21週齢のナイーブな非近交系の雄及び雌のFitchフェレット(1群当たり6匹)に、5μg+AF03、45μg+AF03、若しくはA/Singapore/INFIMH-16-0019/2016由来のN2 rTET-NA 45μg(図3C)、又は5μg+AF03、45μg+AF03、若しくはA/Michigan/45/2015由来のN1 rTET-NA 45μg(図3F)(500μL/用量)のいずれかで、21日間隔にて2回、筋肉内ワクチン接種した(試験概要を、図3Aに示す)。図3Bに示すように、免疫前フェレットモデルにおいて、フェレットを、0日でにおいてインフルエンザウイルス(1,000μL/用量、鼻孔に均等に分割)の経鼻投与により、最初に予備刺激した。予備免疫化後3週間(21日目)で、フェレットに、A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016由来のN2 rTET-NA(1.8μg、9μg、若しくは45μg)、IIV(1.8μg若しくは9μg)、又はワクチン希釈液(偽)でワクチン接種したか(図3D)、又はA/Michigan/45/2015由来のN1 rTET-NA(0.36μg、1.8μg、9μg、若しくは45μg)、IIV(1.8μg若しくは9μg)、又はワクチン希釈液(偽)でワクチン接種した(図3G)。予備刺激及びブーストの3週間後に、血清中のNAI抗体値を測定した。
【0254】
ベースライン時、ブースターの1日前又は直前、及びブースターの3週間後に、鎮静下で、全てのフェレットから採血した。血清サンプル(必要な時まで-20℃で保存した)をELLAで試験して、NAI活性を評価した。
【0255】
rTET-NAは、ナイーブフェレットにおいて、且つ免疫前フェレットにおいてブースターワクチンとして、高い免疫原性を示すことが実証された(図3C~3H)。rTET-NAは、単回用量後にナイーブフェレットにおいて高い免疫原性を示しており、2回目の用量でさらにブーストされ得た(図3C及び3F)。マウスモデルと同様に、NAI力価は、アジュバントなし製剤と比較してAF03で増強された。アジュバントの添加により、用量が節約される(例えば、5μg+AF03は、アジュバントなしの45μgと比べて免疫原性が高い)。アジュバントなしのA/Singapore/INFIMH-16-0019/2016 N2 rTET-NA又はA/Michigan/45/2015 N1 rTET-NAの単回用量による免疫前フェレットのワクチン接種により、一致させたIIV用量と比べて同等の又は優れたNAI反応のブーストが得られた(図3D及び3G)。
【0256】
ナイーブマウスと同様に、rTET-N1は、試験した両方の用量でのナイーブフェレットモデルにおいてIIVと比べて高い免疫原性を示しており、N1サブタイプに対するrNAプラットフォームの利点が拡大したことが実証された(図3G)。免疫前フェレットモデルでは、感染後のNAI反応のブースト(NAIブースト/予備刺激比)もまた、評価した2つの最高用量(9μg及び45μg)ではN2と比べてN1で大きかったが、評価した低用量(1.8μg)ではそうではなかった。図3E及び図3Hを参照されたい。
【0257】
実施例4-フェレットでのインフルエンザウイルスチャレンジ研究
インフルエンザウイルスチャレンジ研究のために、17~21週齢のナイーブの非近交系の雄のFitchフェレット(Triple F farms,Sayre,PA)(1群当たり16匹)に、最初に、AF03アジュバントと共に又はAF03アジュバントなしでのA/Perth/09 N2 TET-NA(500μL/用量、筋肉内)の同一の用量(0.2μg、3μg、又は45μg)で、21日間隔で2回ワクチン接種した。ブースターワクチン接種の3週間後、フェレットに、10PFUのA/Perth/09 H3N2野生型インフルエンザAチャレンジウイルス(1,000μL/用量、鼻孔に均等に分割)を経鼻投与した。ウイルスの投与後14日にわたり、この動物を、臨床症状及び体重の変化に関して1日1回モニタリングし、体温に関して1日2回モニタリングした。
【0258】
チャレンジ後1、3、5、及び7日目に、チャレンジした全ての動物から鼻洗浄液を回収し、サンプルを、ウイルス評価のために-65℃以下で保存した。フェレットを、ケタミン(25mg/kg)及びキシラジン(2mg/kg)の混合物で麻酔し、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)、及びゲンタマイシン(50μg)を含む滅菌PBS 0.5mLを各鼻孔に注射し、回収して-65℃以下で保存した。鼻洗浄検体中のウイルスを、標準的な50%組織培養感染用量(TCID50)アッセイにより滴定した。鼻洗浄液を解凍し、次いで遠心分離により清澄化した。得られた上清を、10倍連続希釈し、次いで、滴定のためにMadin-Darby Canine Kidney Cells(MDCK)細胞の単層を含む96ウェルプレートの各ウェルに移した。
【0259】
ウイルス投与後1、3、6、及び14日目に、ウイルス力価用に、肺の切片(左右の頭蓋葉、及び左右の尾肺葉)並びに鼻甲介を採取した。組織切片を秤量し、次いでエタノール/ドライアイス又は液体窒素中で急速に冷凍し、処理、及び上述した標準的なTCID50アッセイによるウイルス滴定のために、-65℃以下で保存した。各群から選択されたフェレット(1~2匹)を、チャレンジ後1、3、6、及び14日目に、安楽死させて剖検した。ウイルス力価及び病理組織学的分析のために、剖検されたフェレットから、肺及び鼻甲介を採取した。肺及び鼻甲介を、10%中性緩衝ホルマリン中で固定した。病理組織学に予定された剖検は、認定された獣医病理学者が監督した。固定された肺葉及びNT切片を、パラフィンに包埋させ、通常の組織学的方法で処理し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、無作為化し、認定された獣医病理学者により病理の存在及び重症度を等級付けした。
【0260】
上記でA/Singapore/2016に関して示したように、A/Perth/16/2009 N2に基づくrTET-NAは、AF03によりブーストされる用量依存的なNAI力価を誘発した。AF03で評価した最高のrTET-NA用量(45μg)は、チャレンジ時のみでの感染と比べて優れた力価を誘発した(図4)。
【0261】
図5に示すように、rTET-NAワクチン接種により、体重減少、及び発熱、及び全体的なウイルス排出等の臨床症状の強度及び持続期間を減少させることにより、フェレットにおける相同H3N2チャレンジ後の疾患重症化が予防された。NA媒介防御は、AF03による高rTET-NA用量でのみ、感染前と同程度の用量及びアジュバントに依存的な全体的な体重減少及びピーク体温上昇の減少を特徴としていた。総ウイルス排出へのわずかな効果のみが観察され、用量依存的なパターンには従わないようであった(図5)。
【0262】
個々のフェレットのデータ解析から、偽AF03群での症状の発現には、症状の強度だけでなくタイミングの点でもばらつきが示された。全体的なピーク症状は、チャレンジ後2日目に観察されたが、一部の動物は、チャレンジ後2週間目に遅発性症状を発症したか、又は症状の2番目のピークを生じたため、長期的な分析が困難であった。
【0263】
rTET-NAは、ウイルス排出に対して以前の感染ほど効率的ではないように見えたが、感染により、保存されたエピトープに対するT細胞免疫に加えて抗NA免疫及び抗HA免疫の両方がもたらされることから、この結果は予想されたものである。
【0264】
図6A~Cに示すように、ワクチン接種後のNAI力価は、疾患重症度と逆相関しており、防御の相関として使用される予測力を有していた。重症の疾患を示す動物(n=21)は、42日目の平均Log2 NAI力価が5.2±2.80であったが、非重症の疾患を示す動物(n=55)は、42日目の平均Log3 NAI力価が7.7±3.00であった(p値=0.0014)(図6A)。
【0265】
抗NA抗体反応と疾患重症度との関連を、ピーク症状及び全体的なウイルス排出に基づく疾患スコアリングシステムを開発することにより調べた。フェレットを、その合計重症度スコアに基づいて重症及び非重症に分類し、この二元疾患分類に従うNAI力価の分布を分析した。症状が重症のフェレットは、非重症と分類されたフェレットと比べて有意に低いNAI力価を示したが、一部の非反応フェレットも保護された(図6C)。防御バイオマーカーとしてNAIをさらに評価するために、受信者動作特性(ROC)分析を開発した。ROC曲線の曲線下面積(AUC)は、偶然と比べて有意に高く(0.73対0.50、p値=0.0002)、このことから、NAI力価を使用してフェレットの疾患重症度を正確に予測し得ることが確認された(図6B)。ROC分析を使用して、防御に必要なNAI力価閾値も決定した。
【0266】
実施例5-マウスにおける多価HA及びNAの免疫原性の評価
マウスに、0日目に予備刺激ワクチンを注射し、21日目に同投与量のブースターワクチンを注射した。1、20、22、及び35日目に採血した。AF03アジュバントを使用する場合には、抗原と1:1の比で混合した。下記の表1に示すように、N1、N2、B/ビクトリア系統由来のNA、及びB/山形系統由来のNAのそれぞれを有するrTET-NAを含む四価ワクチン組成物を使用し(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Colorado/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013株由来)、H1、H3、B/ビクトリア系統由来のHA、及びB/山形系統由来のHAのそれぞれを有するrHAを含む四価ワクチン組成物を使用した(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Maryland/15/2016;及びB/Phuket/3037/2013株由来)。各群に関して、n=6のマウス。下記のインフルエンザウイルス株に関して、35日目のHAI力価を測定した:A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Maryland/15/2016;及びB/Phuket/3037/2013.結果を、下記の表1で報告する。
【0267】
【表1】
【0268】
同様に、下記の4種の株のインフルエンザウイルスにより、マウスにおいてNAI力価を同様に評価した:A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Colorado/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013。結果を、下記の表2に示す。
【0269】
【表2】
【0270】
表1及び2に示すように、4種のrTET-NA及び4種のrHAを含む八価ワクチンによるワクチン接種では、4種の株の内の3種で四価rHAのHAIの4倍以内であり且つB/Maryland/15/2016では4倍を超えるHAIが示された。この八価ワクチンは、例えばB/Maryland/15/2016に対して1μg/株の投与量で、四価rHA単独でのワクチン接種と比較してHAIの改善を示した(140対23.3)。同様に、4種のrTET-NA及び4種のrHAを含む八価ワクチンによるワクチン接種では、4種の株の内の3種で四価rHAのNAIの4倍以内であるNAIが示されたが、A/Michigan/45/2015でのNAIは低下しており、この減少は4倍未満であった。
【0271】
実施例6-フェレットにおける多価HA及びNAの免疫原性の評価 パート1
図7Aに示すように、多価ワクチンの免疫原性を評価するために使用するナイーブフェレットに、アジュバントと共に又はアジュバントなしでの4種のrTET-NA抗原及び/又は4種の組換えHA抗原の混合物を含む八価ワクチン組成物で、21日間隔で2回ワクチン接種した。この実験ではまた、一価rTET-NA(即ち、A/Singapore/Infimh-16-0019/2016のみに由来するrTET-NA)も評価した。完全な研究デザインを、表3に示す。
【0272】
【表3】
【0273】
各rTET-NA抗原は、四価の2018-19季節性インフルエンザワクチンに含まれる標準治療株(A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016(N2)、A/Michigan/45/2015(N1)、B/Colorado/06/2017(B/ビクトリア系統)、及びB/Phuket/3073/2013(B/山形系統))の内の1つに由来するNA頭部ドメインを含む。同様に、各組換えHAは、下記の4種の株の内の1つに由来するHAを含む:A/Michigan/45/2015(H1);A/Singapore/Infimh-16-0019/2016(H3);B/Maryland/15/2016(B/ビクトリア系統);及びB/Phuket/3073/2013(B/山形系統)。図7B
【0274】
全てのフェレットから、ベースライン、ブースターの1日前又は直前、ブースターワクチン接種時、及びブースターの3週間後(42日目)に、鎮静下で採血した。血清サンプル(必要な時まで-20℃で保存した)をELISAで試験して、NAI活性を評価した。加えて、血球凝集素阻害アッセイ(HAI)及び抗体法医学も実施して、多価ワクチン接種後の血球凝集素抗原に対する抗体反応を評価した。
【0275】
フェレットにおける八価のHA及びNAワクチン接種後に、rTET-NAがその免疫原性を保持することが実証された。これは、HA及びNAを含む完全組換え八価ワクチンの可能性を初めて実証したものである。組換え八価組成物で免疫化されたフェレットは、用量及びアジュバント依存的に、四価rNA組成物単独で免疫化した動物と同程度のNAI抗体反応を発現した(図7C)。図7Cに示すように、HA抗原とNA抗原の間に干渉は観察されず、最初のワクチン接種後のアジュバントなしの45μg用量では、いくつかの相乗効果が検出された。2回目のワクチン接種後に、顕著なNAI力価の増加を観察した。NAI力価(及びNA ELISA)の誘発は、4種全てのNAサブタイプにわたって確認された。
【0276】
八価ワクチン接種したフェレットにおけるHA特異的抗体反応は、HAI及び多重抗体結合ELISA(抗体法医学、AF)により実証されているように、量と質の両方の点で、四価rHAワクチン単独で免疫化したフェレットと同等であった。図8に示すように、四価rHA及び四価rTET-NAの補充は、H3(図8A~C)又はH1(図8D~F)のいずれかに対して誘発される四価rHA免疫反応の大きさ及び範囲を妨げない。結果は、2回目の免疫化(ブースト後)のみに対応する。上記のNAと同様の結果が実証され、HA抗原とNA抗原との間には干渉がなく、5μg+AF03用量で明らかな相乗効果があり、AF03の用量節約効果もあった。H1 HA及びH3 HAのパネルに対して決定した場合での、四価rHA及び八価製剤(4種のrHA+4種のrNA)のHA抗原により誘発される同様の応答の幅を示すAFデータを示す(図8B、C、E、F))。
【0277】
そのため、四価組換えインフルエンザNAワクチンの四価組換えインフルエンザHAワクチンへの添加により、強力なHA特異的免疫を誘発する能力を妨げることなく、フェレットにおいて強力なNA特異的体液性免疫が誘発された。
【0278】
組換え一価NA、四価rNA、及び八価rHA、及びrNAタンパク質により誘発される抗体反応への、この実験におけるアジュバント(AF03)の影響も評価し、結果を下記の表4に示す。
【0279】
【表4】
【0280】
AF03アジュバントは、一価NAワクチン及び多価NAワクチンに対するNAI反応を増加させ、且つ用量節約効果を示す。四価rNAワクチン及び八価rHA+rNAワクチンの両方に関して、初回の用量後に用量効果を観察し、二回目の用量後に大きなNAIブースト(例えば8倍超)を観察した。
【0281】
さらに、四価rNAへの4価rHAの添加により、用量及び/又はアジュバントに関係なく組換えNAの免疫原性は低下せず、アジュバントなしの四価rNA(45μg)と比較して、アジュバントなしの八価rHA+rNA(45μg)の初回の用量後に明らかな相乗効果を観察した。
【0282】
実施例7-フェレットにおける多価HA及びNAの免疫原性の評価 パート2
下記の表5に示すように、N1、N2、BvNA、及びByNAのそれぞれを有するrTET-NA(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Colorado/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013株由来)を含む四価ワクチン組成物を、H1、H3、HBv、及びHByのそれぞれを有するrHA(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Maryland/15/2016;及びB/Phuket/3037/2013株由来)を含む四価ワクチン組成物と組み合わせた。rHAと、H1、H3、HBv、及びHByのそれぞれとを含み且つアジュバントを含まない四価ワクチン組成物を、対照として使用した。各群に関して、n=6フェレット。mNT(HINT)力価を、下記のインフルエンザウイルス株に関して測定した:A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Iowa/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013。結果を、下記の表5で報告する。フェレットに、0日目に予備刺激ワクチンを注射し、21日目に同投与量のブーストワクチンを注射した。-7、1、20、22、及び42日目に採血した。アジュバントを使用する場合には、抗原と1:1の比で混合した。
【0283】
【表5】
【0284】
上記で示したように、3種のアジュバント(AF03、SPA14LD(低用量)、及びSPA14HD(高用量))は全て、アジュバントを含まない組成物と比較して同等の又は改善された力価を示した。低用量であっても、アジュバント反応間に有意差を観察しなかった。アジュバントとの八価組換えワクチン投与により、アジュバントなしの最高用量35μgでの四価組換えHAワクチン投与と比較して同等の(4倍以内)又は高い(4倍超)反応が誘発された。
【0285】
同様に、NAI力価を、インフルエンザウイルスの下記の4種の株によりフェレットで同様に評価した:A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Colorado/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013。結果を、下記の表6に示す。
【0286】
【表6】
【0287】
上記で示したように、3種のアジュバント(AF03、SPA14HD、及びSPA14LD)全てが、試験した4種の株のうち3種(A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Colorado/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013))に対して、アジュバントなしよりもNAI反応を有意に改善することを観察した。
【0288】
さらに、下記の表7に示すように、SPA14HDは、アジュバントなしよりもNAI反応の最も顕著な増加を誘発しており、且つ1回の免疫化後の低用量であってもB株NAIを有意に改善したことを観察しており、この免疫化により、ブースター用量を投与する前に、20日目にNAI反応が生じる。
【0289】
【表7】
【0290】
実施例8-フェレットにおける多価HA及びNAワクチンイメージによる広範なNAI免疫原性の誘発
下記の表8に示すように、N1、N2、BvNA、及びByNAのそれぞれを有するrTET-NA(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Colorado/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013株由来)を含む四価ワクチン組成物を、H1、H3、HBv、及びHByのそれぞれを有するrHA(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Maryland/15/2016;及びB/Phuket/3037/2013株由来)を含む四価ワクチン組成物と組み合わせた。下記のインフルエンザウイルス株に関して、NAI力価を測定した:A/Singapore/Infimh160019/2016;A/Hatay/4990/2016;A/Sweden/3/2017;A/Louisiana/13/2017;A/Townsville51/2016;A/Aksaray/4048/2016;A/Perth/16/2009;及びA/Ohio13/2017。結果を、下記の表8で報告する。フェレットに、0日目に予備刺激ワクチンを注射し、21日目に同投与量のブーストワクチンを注射した。1、20、22、及び42日目に採血した。
【0291】
【表8】
【0292】
上記で示したように、八価組換えワクチン組み合わせの投与後に、株間での幅広いNAI反応が実証された。試験した全ての異種N2株に対して、SPA14HDアジュバントにより、より高い力価の傾向を観察した。
【0293】
実施例9-免疫前フェレットモデルにおける多価HA及びNAワクチンイメージ
インフルエンザ陰性HAI状態の確認後、免疫前フェレットを、0日目に、下記の4種の生ウイルスインプリンティング株[1×10ffu/株;鼻孔当たり0.5mL(合計1mL)]の混合物により、鼻腔内で事前免疫化した(pre-immunized):A/NewCaledonia/20/1999;A/Perth/16/2009;B/HongKong330/2001;及びB/Florida/4/2006。21日目に、下記の表9に示すように、フェレットを、N1、N2、BvNA、及びByNAのそれぞれを有するrTET-NA(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Colorado/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013株由来)と、H1、H3、HBv、及びHByのそれぞれを有するrHA(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Maryland/15/2016;及びB/Phuket/3037/2013株由来)とを含む八価組換えタンパク質ワクチン組成物で免疫化した。20日目に採血してベースライン力価を確立し、42日目(組換えタンパク質による免疫化後21日目)に再度採血してELLA抗体反応を測定した。結果を、下記の表9に示し、各群に関する平均IC50比を、下記の表10に示す。
【0294】
【表9】
【0295】
【表10】
【0296】
上記の表9及び表10で示したように、組換え八価ワクチン組成物は、使用したアジュバントに関係なく、A/Michigan/45/2015、B/Colorado/06/2017、及びA/Singapore/Infimh160019/2016に対する強いELLA反応を誘発した。A/Perth/16/2009に対しては弱い(決定的ではない)反応を観察しており、B/Phuket/3037/2013に対する反応は、最初のベースラインが高いことから、検出することがより困難であった。従って、免疫前フェレットの感染により、八価2018/2019 SOC株タンパク質ワクチンの単回投与によりブーストされる、ほとんどの2018/2019 SOC株に対するある程度のレベルの交差反応性ELLA反応が誘発されることを観察した。
【0297】
加えて、HA中和価を、HINT mNTプロトコルを使用して測定した。結果を、下記の表11に示す。
【0298】
【表11】
【0299】
表11に示したように、八価ワクチン組成物による免疫化後の全ての群にわたり、同様のHINT力価を観察した。
【0300】
実施例10-相同H1N1及びドリフトされたH1N1に対する、マウスにおける多価組換えワクチンの保護
マウスを、0.2μg/株の投与量にて、N1、N2、BvNA、及びByNAのそれぞれを有するrTET-NA(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Colorado/06/2017;及びB/Phuket/3037/2013株由来)と、H1、H3、HBv、及びHByのそれぞれを有するrHA(具体的には、A/Michigan/45/2015;A/Singapore/Infimh160019/2016;B/Maryland/15/2016;及びB/Phuket/3037/2013株由来)とを含む組換え八価ワクチン組成物で、0日目に免疫化し(予備刺激)、且つ21日目に免疫化した(ブースター)。対照マウスに、PBSを投与した。両方の群に関してN=5。予備刺激の投与から3週間後、及びブースターの投与から3週間後に、採血した。マウスを、42日目に、A/Belgium/145/2009の5LD50(50%死亡率を誘発する致死用量の5倍)、又はWisconsin/588/2019の5LD50でチャレンジし、体重変化をモニタリングした。
【0301】
対照マウスと比較して、A/Belgium/145/2009の5LD50による感染後の2週間のモニタリング期間中に、マウスが体重減少から十分に保護されることが実証された。感染後8日目までに死亡率が100%であった対照マウスと比較して、ワクチン接種されたマウスは、生存率が100%であった
【0302】
さらに、対照マウスと比較して、Wisconsin/588/2019の5LD50の感染から最大2週間にわたり、マウスは体重減少がより良く保護されたが、ワクチン接種されたマウス及び対照マウスの両方の生存率は100%であることが実証された。
【0303】
また、本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される場合に、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。任意選択的な(Optional)又は任意選択的に(optionally)、は、後に記載される事象又は状況が起こることも起こらないこともあることを意味し、説明は、事象又は状況が起こる場合も起こらない場合も含むことを意味する。例えば、組成物は任意選択的に組み合わせを含むことができる、というフレーズは、説明が組み合わせ及び組み合わせの非存在(即ち、組み合わせの個々のメンバー)の両方を含むように、組成物が異なる分子の組み合わせを含むことも、組み合わせを含まないこともあることを意味する。範囲は、本明細書においては、約1つの特定の値から、且つ/又は約別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表される場合、別の態様は、1つの特定の値から、且つ/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞を使用することによって、値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することは理解されよう。範囲のそれぞれの両端点が、他方の端点と関連して、及び他方の端点とは独立して、の両方の意味を有していることもさらに理解されよう。本開示において引用される全ての参照文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
【配列表】
2024542093000001.xml
【国際調査報告】