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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】新規タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20241106BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241106BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
A61P25/00
A61P25/28
A61P37/08
A61P37/06
A61P17/00
A61P17/14
A61P11/06
A61P1/04
A61P11/00
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K38/17
A61K47/68
A61K39/395 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526578
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 GB2022052764
(87)【国際公開番号】W WO2023079278
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2115803.5
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518399081
【氏名又は名称】デュセンティス バイオセラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】アシュフィールド,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ハクスリー,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA41
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB151
4C084ZB152
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、一般に、CD200受容体に野生型CD200よりも高い親和性で結合する変異型CD200タンパク質に関するものであり、特に、本発明は、アミノ酸残基130位及び/又は131位に特異的変異を含む変異したCD200タンパク質に関する。本発明はまた、非CD200タンパク質部分に直接又は任意のリンカー部分を介して融合した、本明細書で定義されるタンパク質を含む融合タンパク質、本明細書で定義されるタンパク質を含む医薬組成物、及びそれらの使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の変異:
(i)K130F;又は
(ii)I131F;又は
(iii)K130F及びI131F;又は
(iv)K130F及びI131Y;又は
(v)K130Y及びI131F、
を含む変異したCD200タンパク質。
【請求項2】
130位及び/又は131位に以下の変異:
(i)K130F;又は
(ii)I131F;又は
(iii)K130F及びI131F;又は
(iv)K130F及びI131Y;又は
(v)K130Y及びI131F、
を有する、
QVQVVTQDEREQLYTPASLKCSLQNAQEALIVTWQKKKAVSPENMVTFSENHGVVIQPAYKDKINITQLGLQNSTITFWNITLEDEGCYMCLFNTFGFGKISGTACLTVYVQPIVSLHYKFSEDHLNITCSATARPAPMVFWKVPRSGIENSTVTLSHPNGTTSVTSILHIKDPKNQVGKEVICQVLHLGTVTDFKQTVNK(配列番号26)
と少なくとも90%の同一性を含む変異したCD200タンパク質を含む、ポリペプチド。
【請求項3】
130位及び/又は131位に以下の変異:
(i)K130F;又は
(ii)I131F;又は
(iii)K130F及びI131F;又は
(iv)K130F及びI131Y;又は
(v)K130Y及びI131F、
を有する、
MERLVIRMPFSHLSTYSLVWVMAAVVLCTAQVQVVTQDEREQLYTPASLKCSLQNAQEALIVTWQKKKAVSPENMVTFSENHGVVIQPAYKDKINITQLGLQNSTITFWNITLEDEGCYMCLFNTFGFGKISGTACLTVYVQPIVSLHYKFSEDHLNITCSATARPAPMVFWKVPRSGIENSTVTLSHPNGTTSVTSILHIKDPKNQVGKEVICQVLHLGTVTDFKQTVNKGYWFSVPLLLSIVSLVILLVLISILLYWKRHRNQDRGELSQGVQKMT(配列番号27)
のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタンパク質又はポリペプチドを含み、非CD200部分に直接又はリンカー部分を介して融合した、融合タンパク質。
【請求項5】
前記非CD200部分が抗体又はその断片である、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記非CD200部分がFc断片である、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記Fc断片が、ヒトIgG4のS228P誘導体などのヒトIgG2又はヒトIgG4であるか、又はそれらに由来する、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
CD200のアミノ酸グリシン232をFcヒンジ領域のアミノ酸1に直接融合して形成されたFc融合タンパク質、又はCD200のアミノ酸グリシン232をFcヒンジ領域のアミノ酸6に直接融合して形成されたFc融合タンパク質である、請求項6又は7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
配列番号1~22のいずれか1つから選択される、請求項4~8のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
CD200受容体のモジュレーターである、請求項1~9のいずれか1項に記載のタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質。
【請求項11】
CD200受容体のアゴニストである、請求項1~10のいずれか1項に記載のタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のタンパク質、ポリペプチド、融合タンパク質、又はポリヌクレオチド、及び担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
自己免疫疾患、アレルギー性疾患、神経変性、又は神経障害性疼痛の治療において使用するための、請求項1に記載のタンパク質、請求項2又は3に記載のポリペプチド、請求項4~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載のポリヌクレオチド、又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、多発性硬化症、及び関節リウマチから選択される自己免疫疾患の治療において使用するための、請求項1に記載のタンパク質、請求項2又は3に記載のポリペプチド、請求項4~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載のポリヌクレオチド、又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
糖尿病性神経障害である神経障害性疼痛の治療において使用するための、請求項1に記載のタンパク質、請求項2又は3に記載のポリペプチド、請求項4~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載のポリヌクレオチド、又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1に記載のタンパク質、請求項2又は3に記載のポリペプチド、請求項4~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質、請求項12に記載のポリヌクレオチド、又は請求項13に記載の医薬組成物を被験体に投与することを含む、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、神経変性、又は神経障害性疼痛を有する被験体を治療する方法。
【請求項18】
自己免疫疾患が、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、多発性硬化症、及び関節リウマチから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
神経障害性疼痛が糖尿病性神経障害である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、野生型CD200よりもCD200受容体に高い親和性で結合する変異型CD200タンパク質に関するものであり、特に、本発明は、アミノ酸残基130位及び/又は131位に特異的変異を含む変異したCD200タンパク質に関する。本発明はまた、非CD200タンパク質部分に直接又は任意のリンカー部分を介して融合した、本明細書で定義されるタンパク質を含む融合タンパク質、本明細書で定義されるタンパク質を含む医薬組成物、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、世界における慢性疾患の原因の第2位であり、米国では女性の罹患率の第1位である。2008年の国際調査によると、米国の慢性疾患患者は、他国の患者と比較して、費用負担のために適切なケアを受けずにいる傾向が強い(Schoen,C.ら(2008)Health Affairs Web Exclusive、w1~w16)。さらに、このような患者は、最も高い発生率の医療事故、ケアの連携の問題、及び高額な医療費の自己負担を経験する可能性が高い。
【0003】
現在、米国自己免疫疾患協会(AARDA)は、5000万人の米国人が自己免疫疾患に罹患していると推定している。自己免疫疾患による医療システム全体への直接的及び間接的な全費用を決定する疫学的データは不足している。しかしながら、2001年、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、自己免疫疾患の年間治療費は1000億ドルを超えると推定した。1000億ドルは驚異的な数字ではあるが、100以上ある既知の自己免疫疾患のうち、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、乾癬、及び強皮症の7つのみにかかる年間費用が、疫学調査によって年間合計518億ドルから706億ドルに上ると推定されていることから、自己免疫疾患にかかる真の費用は、大幅に過小評価されている可能性が高い。さらに、これらの推定は、移植中の免疫抑制療法の費用を見落としている。
【0004】
免疫系が健康な細胞を異物と判断して攻撃することで発症する自己免疫疾患は、治療法のない慢性状態である。自己免疫疾患は、その種類によって、1つ又は多くの異なる種類の身体組織に影響を及ぼす可能性があり、臓器の異常な成長及び臓器機能の変化を引き起こす可能性がある。免疫系の正常な制御は、免疫応答に関与する細胞によって発現されるタンパク質を含む受容体/リガンドペアによるところが大きい。しかしながら、これらの受容体/リガンドペアは、自己免疫疾患の病態を引き起こすシグナル伝達カスケードにしばしば含まれる。
【0005】
OX-2膜糖タンパク質は、CD200(分化抗原群200)とも呼ばれ、様々な細胞型で発現し(Barclay,A.N.(1981)Immunology 44、727)、免疫グロブリン遺伝子ファミリーの分子と高い相同性を有する、CD200遺伝子によってコードされるヒトタンパク質である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、2つの免疫グロブリンドメインを含み、CD200受容体(CD200R)に結合する1型膜糖タンパク質である。
【0006】
CD200Rは骨髄系細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、及び好酸球)及びT細胞で発現している(Wrightら(2000)、Immunity 12、233~242;Wrightら(2003)、J.Immunol、171、3034~3046)。
【0007】
CD200とCD200Rとの会合は、骨髄球及びT細胞に抑制シグナルを送達し、したがって、免疫系の自然部門及び適応部門の両方に免疫抑制効果を及ぼす(Rahim S.A.(2005)AIDS、19、1907~1925;Shiratori,I.(2005)J.Immunol、175、4441~4449;Misstear,K.ら(2012)、Journal of Virology、86(11)、6246~6257)。
【0008】
CD200Rアゴニストは、広範なマウス疾患モデル、例えば関節炎(Gorczynskiら(2001)Clin.Immunol.101、328~34;Gorczynskiら(2002)Clin.Immunol.104、256~264)、移植片拒絶(Gorczynskiら(2002)Transplantation 73、1948~1953)、妊娠の失敗(Gorczynskiら(2002)Am.J.Reprod.Immunol.、48、18~26)、接触過敏症(Rosenblumら(2004)Blood 103、2691~8)、インフルエンザ誘発肺炎(Snelgroveら(2008)Nat.Immunol.、9、1074~1083)、及びHSV誘発炎症性病変(Sarangiら(2009)Clin.Immunol.131,31~40)において病態を軽減することが示されている。
【0009】
さらに、インフルエンザウイルスに暴露されたCD200-/-マウスは、野生型対照と比較して、肺浸潤及び肺内皮障害の増加と関連した、より重篤な疾患を発症した(Rygiel.T.P.ら(2009)J.Immunol.183(3)、1990~1996)。CD200-/-マウスはウイルス量を制御することができる免疫応答を誘導したことから、重篤な疾患は有益な抗ウイルス免疫応答とは対照的に免疫応答の制御不全が原因であることが示唆された。結果的に、ウイルス量が劇的に増加したにもかかわらず、ウイルス曝露の前にT細胞を枯渇させることで疾患を予防することができた。Rygiel.T.P.ら(2009)は、インフルエンザ感染時の疾患症状の発現にはT細胞が不可欠であり、ウイルス量よりもCD200-CD200Rシグナル伝達の下方制御の欠如が免疫病理を増大させると結論づけた。
【0010】
プロファイリング研究により、hCD200の発現は、多発性硬化症(Koningら(2007)Ann.Neurol.62、504~514)、喘息増悪(Aokiら(2009)Clin.Exp.Allergy 39、213~221)、アルツハイマー病(Walkerら(2009)Exp.Neurol.215、5~19)、原発性肥大性骨関節症(Renら(2013)Rheumatol.Int.33(10)、2509~2512)、妊娠の失敗(Clark(2009)Am.J.Reprod.Immunol.61、75~84)、及び毛孔性扁平苔癬(脱毛)(Harriesら(2013)J.Pathol.231(2)、236~247)の患者などの多様な患者集団において下方制御されていることが示されている。
【0011】
アゴニストCD200タンパク質は、例えば、WO2000/061171及びWO2008/089022に開示されている。その文献には、免疫細胞の機能を調節するために野生型CD200分子を使用することが記載されている。本発明は、野生型CD200よりも高い親和性でCD200受容体に結合する変異型CD200タンパク質に関する。
【0012】
したがって、CD200経路を調節する分子を用いた治療的介入は、慢性又は断続的な(再発的な)自己免疫疾患に罹患している患者において、過剰又は不要な免疫応答を制御し、病状を軽減する手段を提供する。
【0013】
したがって、現在利用可能な自己免疫疾患の治療に関連する問題を克服する、より低用量で改善された臨床効果を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、以下の変異:
(i)K130F;又は
(ii)I131F;又は
(iii)K130F及びI131F;又は
(iv)K130F及びI131Y;又は
(v)K130Y及びI131F、
を含む、変異したCD200タンパク質が提供される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、非CD200部分に直接又は任意のリンカー部分を介して融合した、本明細書で定義されるタンパク質を含む融合タンパク質が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるタンパク質又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0016】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質を含む医薬組成物が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、神経変性、又は神経障害性疼痛の治療に使用するための、本明細書で定義されるタンパク質、融合タンパク質、又は医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】高親和性CD200-Fc(パネルA~F)及び野生型CD200-Fc(パネルG)融合分子がヒトCD200受容体に25℃で結合する際の結合反応並びにオフ速度を示す表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示す図である。
図2】CD200R発現U937細胞のLPS刺激によるIL-6分泌阻害を示す棒グラフを示す図である。
図3】CD200R発現U937細胞のLPS刺激によるIL-6分泌阻害を示す棒グラフを示す図である。
図4】CD200R発現U937細胞のLPS刺激によるIL-6分泌阻害を示す棒グラフを示す図である。
図5】CD200R発現U937細胞のLPS刺激によるIL-6分泌阻害を示す棒グラフを示す図である。
図6】CD200R発現U937細胞のLPS刺激によるIL-6分泌阻害を示す棒グラフを示す図である。
図7】CD200R発現U937細胞のLPS刺激によるIL-6分泌阻害を示す棒グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、以下の変異:
(i)K130F;又は
(ii)I131F;又は
(iii)K130F及びI131F;又は
(iv)K130F及びI131Y;又は
(v)K130Y及びI131F、
を含む変異したCD200タンパク質が提供される。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、
130位及び/又は131位に以下の変異:
(i)K130F;又は
(ii)I131F;又は
(iii)K130F及びI131F;又は
(iv)K130F及びI131Y;又は
(v)K130Y及びI131F、
を有する、
QVQVVTQDEREQLYTPASLKCSLQNAQEALIVTWQKKKAVSPENMVTFSENHGVVIQPAYKDKINITQLGLQNSTITFWNITLEDEGCYMCLFNTFGFGKISGTACLTVYVQPIVSLHYKFSEDHLNITCSATARPAPMVFWKVPRSGIENSTVTLSHPNGTTSVTSILHIKDPKNQVGKEVICQVLHLGTVTDFKQTVNK(配列番号26)
と少なくとも90%の同一性を有する変異したCD200タンパク質を含むポリペプチドが提供される。
【0020】
配列番号26のポリペプチド配列は、CD200の細胞外ドメインの野生型ポリペプチド配列に関することが理解される。
1つの実施形態では、ポリペプチドは、
130位及び/又は131位に以下の変異:
(i)K130F;又は
(ii)I131F;又は
(iii)K130F及びI131F;又は
(iv)K130F及びI131Y;又は
(v)K130Y及びI131F、
を有する、
MERLVIRMPFSHLSTYSLVWVMAAVVLCTAQVQVVTQDEREQLYTPASLKCSLQNAQEALIVTWQKKKAVSPENMVTFSENHGVVIQPAYKDKINITQLGLQNSTITFWNITLEDEGCYMCLFNTFGFGKISGTACLTVYVQPIVSLHYKFSEDHLNITCSATARPAPMVFWKVPRSGIENSTVTLSHPNGTTSVTSILHIKDPKNQVGKEVICQVLHLGTVTDFKQTVNKGYWFSVPLLLSIVSLVILLVLISILLYWKRHRNQDRGELSQGVQKMT(配列番号27)
のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を含む。
【0021】
配列番号27のポリペプチド配列は、CD200の全長野生型ポリペプチド配列に関することが理解される。
本発明者らは、特定のアミノ酸残基(i)~(v)でのCD200の変異が、CD200受容体(CD200R)への結合親和性を増大させた変異型CD200を産生することを見出した。さらに、本発明者らは、3000秒を超えないような、CD200受容体上での短い滞留時間と高親和性結合を示す分子とを組み合わせると、最適な効果が得られることを見出した。さらに、本明細書に記載の変異したCD200タンパク質は、特に、より高い臨床効果及び低用量での治療を提供するという点で、大きな利点を有する。
【0022】
本明細書で使用される「CD200タンパク質」という用語は、野生型CD200タンパク質を表す。
本明細書で使用される「野生型」という用語は、自然界に存在するタンパク質、ペプチド、アミノ酸、及びヌクレオチド配列を表す。例えば、本明細書で使用される「野生型CD200タンパク質」という用語は、CD200受容体に結合するCD200の任意の全長アイソフォーム(UNIPROT P41217 OX2G_HUMAN)又はその任意の部分(天然に存在するタンパク質多型を含む)を表す。CD200タンパク質はまた、OX-2膜糖タンパク質として知られている。
【0023】
野生型CD200は、細胞表面タンパク質であり、N末端の細胞外ドメイン、並びに短い膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを有する。細胞外ドメインは、CD200受容体などの標的受容体に結合する。1つの実施形態では、CD200タンパク質は、CD200受容体に結合するCD200の細胞外ドメイン又はその任意の部分である。
【0024】
本明細書で使用される「位置」という用語は、アミノ酸配列中の残基番号を表し、1は最初に翻訳されたアミノ酸である。
本明細書で使用される「変異した」又は「変異」という用語は、野生型同等物から形態が変化して変異型となったタンパク質、ペプチド、アミノ酸、及びヌクレオチド配列表す。例えば、変異した又は変異型タンパク質は、対応する野生型配列と比較した場合、アミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列に変化が生じている可能性があり、このような変化は変異とも呼ばれ得る。
【0025】
本明細書で使用される「変異したCD200タンパク質」という用語は、野生型CD200タンパク質と類似しているがもはや同一ではないように、アミノ酸配列において変異したアミノ酸残基又は複数の変異したアミノ酸残基を含む、CD200受容体に結合する全長CD200タンパク質又はその任意の部分を表す。
【0026】
1つの実施形態では、変異したCD200タンパク質は、合成的又は組換え的に作製することができる。さらなる実施形態では、変異したCD200タンパク質は、合成的に作製することができる。代替実施形態では、変異したCD200タンパク質は、組換え的に作製することができる。
【0027】
1つの実施形態では、変異したCD200タンパク質は、野生型CD200よりも高い親和性でCD200受容体に結合する。
1つの実施形態では、変異したCD200タンパク質は、生物学的又は化学的に活性な非CD200成分をその中に、又はそれに結合して含み得る。
【0028】
1つの実施形態では、変異したCD200タンパク質は、可溶性(すなわち循環性)でもよく、又は表面に結合してもよい。さらなる実施形態では、変異したCD200タンパク質は、可溶性である。代替実施形態では、変異したCD200タンパク質は、表面に結合している。
【0029】
1つの実施形態では、変異したCD200タンパク質は、CD200の細胞外ドメイン全体又はその部分を含むことができる。さらなる実施形態では、変異したCD200タンパク質は、シグナル配列を含む。分泌されたタンパク質は、分泌前に切断されてもよいシグナル配列を構成する、いくらかのアミノ酸をN末端に含んでいることが理解される。したがって、特定の実施形態では、変異したCD200タンパク質は、産生細胞から分泌前に切断されるシグナル配列をN末端に含む。さらなる実施形態では、シグナル配列は、野生型CD200タンパク質のアミノ酸16~35位から選択される任意の位置で切断することができる。1つの実施形態では、シグナル配列は、野生型CD200タンパク質の最初の28アミノ酸を含む。代替実施形態では、シグナル配列は、野生型CD200タンパク質の最初の29アミノ酸を含む。さらなる代替実施形態では、シグナル配列は、野生型CD200タンパク質の最初の30アミノ酸を含む。さらなる代替実施形態では、シグナル配列は、野生型CD200タンパク質の最初の31アミノ酸を含む。さらなる代替実施形態では、シグナル配列は、野生型CD200タンパク質の最初の32アミノ酸を含む。したがって、特定の実施形態では、変異したCD200タンパク質は、シグナル配列を含むアミノ酸を欠く、本明細書で定義される配列を含む。例えば、野生型CD200タンパク質のアミノ酸1~30を欠く場合、変異したCD200タンパク質は、本明細書で定義される任意の配列のアミノ酸31~232に対応する配列を含む。
【0030】
タンパク質、ペプチド、及びアミノ酸、並びにヌクレオチド配列に関連して本明細書で使用される「部分」という用語は、機能的、すなわち標的に結合する断片及び誘導体を表す。
【0031】
本明細書で使用される「断片」という用語は、受容体などのその標的を認識し結合するタンパク質、ペプチド、アミノ酸、又はヌクレオチド配列の一部を表す。
本明細書で使用される「誘導体」及び「変異体」という用語は、野生型同等物と少なくとも70%(75%、80%、85%、90%、95%、又は99%など)の配列類似性を共有し、同様に機能する、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、又はヌクレオチド配列を表す。したがって、変異体は、野生型同等物の誘導体であってもよい。
【0032】
本明細書で使用される「アミノ酸残基」という用語は、重合体鎖中の単量体単位、すなわちタンパク質中の単一アミノ酸を表す。
本明細書で使用される「少なくとも90%の同一性」という用語は、配列同一性又は配列相同性を共有する配列を表す。適切な例としては、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性が挙げられる。
【0033】
1つの実施形態では、タンパク質は、アミノ酸配列中に存在する1つ以上の変異、例えば1~15個の変異をさらに含む。
1つの実施形態では、変異したCD200タンパク質は、K130Fの一置換変異を含む。この一置換変異を含む変異したタンパク質の具体例は、DS-175、DS-161、DS-174、及びDS-213として本明細書に記載されている。
【0034】
代替実施形態では、変異したCD200タンパク質は、I131Fの一置換変異を含む。この一置換変異を含む変異したタンパク質の具体例は、DS-215、DS-162、DS-216及びDS-214として本明細書に記載されている。
【0035】
代替実施形態では、変異したCD200タンパク質は、K130F及びI131Fの二重置換変異を含む。この二重置換変異を含む変異したタンパク質の具体例は、DS-217、DS-150、DS-218及びDS-220として本明細書に記載されている。
【0036】
代替実施形態では、変異したCD200タンパク質は、K130F及びI131Yの二重置換変異を含む。この二重置換変異を含む変異したタンパク質の具体例は、DS-164、DS-151、DS-163、DS-219、DS-167及びDS-165として本明細書に記載されている。
【0037】
代替実施形態では、変異したCD200タンパク質は、K130Y及びI131Fの二重置換変異を含む。この二重置換変異を含む変異したタンパク質の具体例は、DS-221、DS-149、DS-222及びDS-223として本明細書に記載されている。
【0038】
図1及び表4に示すように、本発明の変異したCD200タンパク質は、CD200受容体に、野生型CD200タンパク質よりも強固に結合し、受容体上でより長い滞留時間を示す。
【0039】
融合タンパク質
本発明の第2の態様によれば、非CD200部分に直接又は任意のリンカー部分を介して融合した、本明細書で定義されるタンパク質を含む融合タンパク質が提供される。
【0040】
例えば、リンカー部分は、1~15個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸を含むペプチドである。
【0041】
本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、当技術分野で周知であり、例えば米国特許第5,434,131号及び第5,637,481号に記載されている方法を使用して一緒に連結された1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド、及び/又はタンパク質を表す。これにより連結されたアミノ酸配列、ペプチド、又はタンパク質は、1つの融合タンパク質を形成する。
【0042】
1つの実施形態では、本明細書のタンパク質は、C末端で非CD200部分に直接又は任意のリンカー部分を介して融合される。
本明細書で使用される「非CD200部分」という用語は、CD200受容体に特異的に結合せず、変異したCD200タンパク質のその標的への結合を妨害しない任意の分子、ペプチド、又はタンパク質を表す。例としては、免疫グロブリン(Ig)定常領域若しくはその部分、又は非CD200部分が合成分子、例えばPEGである融合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
1つの実施形態では、当該非CD200部分は、抗体又はその断片である。さらなる実施形態では、当該非CD200部分は、Fc断片である。したがって、本明細書に記載されている変異したCD200融合タンパク質は、変異型CD200-Fcと呼ぶこともできる。さらなる実施形態では、Fc断片は、哺乳動物由来、例えばヒト又はサル由来であり、例えば、ヒンジ、CH2、及びCH3領域を含むヒトC(γ)1である。Fc断片は、本発明の変異したCD200タンパク質の血清中半減期を増加させるという利点を提供し、さらに、CD200タンパク質を二量体化することにより、結合活性を増加させ、作動性シグナル伝達を可能にする。エフェクター機能を低下させるためにFc領域を変異させてもよいことは、当業者には理解される(例えば、US5,637,481及びUS6,132,992を参照)。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒトFcドメインは、グリコシル化を除去するための、及び/又はFc-γ受容体結合を減少させるための変異を含む。いくつかの実施形態では、ヒトFcドメインは、変異N297Q、N297A、又はN297Gを含み、いくつかの実施形態では、ヒトFcドメインは、234位及び/又は235位、例えばL235E、若しくはL234A及びL235A(IgG1において)、又はF234A及びL235A(IgG4において)で変異を含み、いくつかの実施形態では、ヒトFcドメインは、変異V234A、G237A、P238S、H268Q/A、V309L、A330S、若しくはP331S、又はそれらの組合せを含むIgG2 Fcドメインである(すべてKabat、EUナンバリングに従う)。いくつかの実施形態では、ヒトFcドメインはそれぞれ、ヒトIgG1定常領域変異L234A/L235A(「LALA」)又はヒトIgG1定常領域変異L234A/L235A/P329G(「LALAPG」)を含む。操作されたヒトFcドメインのさらなる例は、当業者に公知である。少なくとも1つのアミノ酸の変異がFc機能の低下をもたらすIg重鎖定常領域アミノ酸の例としては、重鎖定常領域のアミノ酸228、233、234、235、236、237、239、252、254、256、265、270、297、318、320、322、327、329、330、及び331の変異が挙げられるが、これらに限定されない(Kabat、EUナンバリングに従う)。変異したアミノ酸の組合せの例も当技術分野で公知であり、限定されるものではないが、例えばアミノ酸234、235、及び331の変異の組合せ、例えば234、235、及び329の組合せ、例えばL234F、L235E、及びP331S、又はアミノ酸318、320、及び322の組合せ、例えばE318A、K320A、及びK322Aが挙げられる。
【0045】
操作されたFcドメインのさらなる例としては、F243L/R292P/Y300L/V305I/P396 IgG1;S239D/I332E IgG1;S239D/I332E/A330L IgG1;S298A/E333A/K334A;一方の重鎖では、L234Y/L235Q/G236W/S239M/H268D/D270E/S298A IgG1;及び対向する重鎖では、D270E/K326D、A330M/K334E IgG;G236A/S239D/I332E IgG1;K326W/E333S IgG1;S267E/H268F/S324T IgG1;E345R/E430G/S440Y IgG1;N297A又はN297Q又はN297G IgG1;L235E IgG1;L234A/L235A IgG1;F234A/L235A IgG4;H268Q/V309L/A330S/P331S IgG2;V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S IgG2;M252Y/S254T/T256E IgG1;M428L/N434S IgG1;S267E/L328F IgG1;N325S/L328F IgG1などが挙げられる。いくつかの実施形態では、操作されたFcドメインは、N297A IgG1、N297Q IgG1、及びS228P IgG4から成る群より選択される1つ以上の置換を含む。
【0046】
1つの態様では、Fcバリアントを含む本開示のポリペプチドは、非修飾抗体と比較して、Fc受容体、例えばFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIIAに対する親和性の低下を示す。1つの態様では、Fcバリアントを含むポリペプチドは、野生型ポリペプチドの親和性よりも少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%、又は少なくとも1%低いFc受容体に対する親和性を示す。1つの態様では、本開示のFcバリアントを含むポリペプチドは、Fcγ結合において700倍を超える減少、又はFcγ結合において3,500倍を超える減少を示す。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、又はIgMのバリアントFc領域を含む。特定の実施形態では、抗体は、エフェクター機能が低下したアグリコシル化抗体である。特定の実施形態では、IgG1のバリアントFc領域は、(a)Leu234位でのアラニンによるアミノ酸置換、(b)Leu235位でのアラニンによるアミノ酸置換、(c)Pro329位でのグリシンもしくはアルギニンによるアミノ酸置換、(d)Asn297位でのアラニンによるアミノ酸置換、(e)Asn297位でのグルタミンによるアミノ酸置換、(f)Asn297位でのグリシンによるアミノ酸置換、又は(g)(a)~(f)の任意の組合せを含む。特定の実施形態では、IgG2のバリアントFc領域は、(g)Ser228位でのプロリンによるアミノ酸置換、(h)Pro329位でのグリシンもしくはアルギニンによるアミノ酸置換、又は(i)(g)及び(h)の両方を含む。特定の実施形態では、IgG4のバリアントFc領域は、(j)Ser228位でのプロリンによるアミノ酸置換、(k)Leu235位でのアラニンもしくはグルタミン酸によるアミノ酸置換、(l)Pro329位でのグリシン若しくはアルギニンによるアミノ酸置換、又は(m)(j)~(l)の任意の組合せを含む。
【0048】
1つの実施形態では、Fc断片は、ヒトIgG2若しくはヒトIgG4であるか、又はそれらに由来する。
さらなる実施形態では、非CD200部分は、1つ以上のアミノ酸残基の変異を含む抗体Fc断片である。したがって、さらなる実施形態では、Fc断片は、ヒトIgG4のS228P誘導体である。
【0049】
1つの実施形態では、融合タンパク質は、CD200のアミノ酸グリシン232とFcヒンジ領域のアミノ酸1との直接融合によって形成されたFc融合タンパク質である。
代替実施形態では、融合タンパク質は、CD200のアミノ酸グリシン232とFcヒンジ領域のアミノ酸6との直接融合によって形成されたFc融合タンパク質である。
(この場合、Fcヒンジの最初の5アミノ酸が欠失している)。
【0050】
この説明のために、非CD200部分がFc断片である場合、非CD200部分に関して本明細書で使用される「位置」という用語は、EUナンバリングシステムに従ったアミノ酸配列における残基番号を表す。したがって、本明細書で引用するFc断片のアミノ酸の残基位置は、EUナンバリングシステムに従った位置に関することが理解される。さらに、Kabat、Aho、IMGT、Chothia、及びMartin(enhanced Chothia)などのFc断片配列中の残基のナンバリングのために開発された他のナンバリングシステムを代わりに利用してもよいことが理解される。例えば、本明細書でFcヒンジ領域に言及する場合、IMGTナンバリング(https://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.html)によって定義されるアミノ酸位置1、又はEUナンバリングシステムによって定義されるアミノ酸位置216から始まるFcドメインの領域を表すことが意図される。
【0051】
本発明の融合タンパク質の具体例は、配列番号1~22として表1に例示されている。
1つの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号1~22のいずれか1つから選択される。さらなる実施形態では、融合タンパク質は、配列番号1~16及び19~22のいずれか1つから選択される。
【0052】
【表1-1】
【0053】
【表1-2】
【0054】
【表1-3】
【0055】
【表1-4】
【0056】
【表1-5】
【0057】
【表1-6】
【0058】
【表1-7】
【0059】
【表1-8】
【0060】
野生型CD200-Fc融合タンパク質の具体例は、配列番号23~25として表2に例示されている。
【0061】
【表2】
【0062】
本発明のタンパク質は、好ましくは、変異したCD200タンパク質又はその任意の部分をコードする核酸配列を組換え発現ベクターに挿入し、発現を促進する条件下で組換え発現系において核酸配列を発現させることにより、組換えDNA法によって産生される。したがって、1つの実施形態では、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドはさらに、pcDNA3.4などのベクターを含む。1つの実施形態では、融合タンパク質は、Hind III及び/又はXho Iなどの1つ以上の制限酵素部位と隣接している。さらなる実施形態では、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、Hind III及びXho I制限部位と隣接している。
【0063】
1つの実施形態では、融合タンパク質は、Bam HIなどの1つ以上の制限酵素部位を含む。
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、並びにタンパク質を産生するため及び/又は治療目的のためのそのような核酸の使用が提供される。そのようなポリヌクレオチドは、本明細書で定義されるタンパク質をコードするDNA及びRNA分子(例えば、mRNA、自己複製RNA、自己増幅mRNAなど)を含むことができる。本発明によって提供されるタンパク質をコードする核酸配列は、cDNA断片及び短いオリゴヌクレオチドリンカーから、又は一連のオリゴヌクレオチドから組み立てられて、組換え発現ベクターに挿入され、組換え転写ユニットで発現させることができる合成遺伝子を提供することができる。
【0064】
組換え発現ベクターは、哺乳動物、微生物、ウイルス、又は昆虫遺伝子に由来する適切な転写又は翻訳調節エレメントと作動可能に連結された、変異したCD200をコードする合成又はcDNA由来核酸断片を含む。そのような調節エレメントは、転写プロモーター、転写を制御する任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終結を制御する配列を含む。通常、複製起点によって与えられる宿主での複製能力、及び形質転換体の認識を容易にするための選択遺伝子をさらに組み込むこともできる。
【0065】
治療的使用
CD200タンパク質とCD200受容体との間の相互作用は、CD200受容体に対するCD200の低い親和性をもたらす速い解離(「オフ」)速度という特徴があるため、本発明は治療において特に適用される。したがって、本明細書で示されるように、CD200受容体に対する変異型CD200タンパク質の親和性を高めることは、より強力な特性を有する医薬組成物の製造に使用することができる。
【0066】
さらに、組換えタンパク質の製造コストは高く、高い親和性を有する変異型CD200タンパク質は、治療効果を得るために野生型又は変異していないCD200タンパク質よりも有意に低い用量で医薬組成物に使用することができる。したがって、変異型CD200タンパク質を使用することは、臨床的により有効であるだけでなく、コスト的にもより有効である可能性がある。
【0067】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるタンパク質、ポリペプチド、若しくは融合タンパク質、又はタンパク質、ポリペプチド、若しくは融合タンパク質をコードする核酸を含む医薬組成物が提供される。
【0068】
1つの実施形態では、本明細書で定義される変異したCD200タンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質は、CD200受容体のモジュレーターである。本明細書で使用される「モジュレーター」という用語は、変化をもたらす物質を表し、例えば、タンパク質のモジュレーターは、当該タンパク質の活性の増加又は減少をもたらすことができる。本発明の変異したCD200タンパク質及び融合タンパク質の特性を考慮すると、これらはCD200受容体のアゴニストであると考えられ、したがって、自己免疫疾患の治療において有用であると考えられる。したがって、さらなる実施形態では、本明細書で定義される変異したCD200タンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質は、CD200受容体のアゴニストである。
【0069】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、自己免疫疾患の治療において使用するための、本明細書で定義されるタンパク質、ポリペプチド、若しくは融合タンパク質、又は本明細書で定義される組成物が提供される。
【0070】
本明細書で使用される「自己免疫疾患」又は「自己免疫異常」という用語は、互換的に使用され、自己細胞及び/若しくは組織、又は移植された細胞及び/若しくは組織に対する不適切又は不必要な免疫反応から生じる望ましくない状態を表す。「自己免疫疾患」又は「自己免疫異常」という用語は、体液性免疫応答又は細胞性免疫応答によって媒介されるかどうかを問わず、そのような状態を含むことを意味する。
【0071】
代替実施形態では、アレルギー性疾患の治療において使用するための、本明細書で定義されるタンパク質、ポリペプチド、若しくは融合タンパク質、又は本明細書で定義される組成物が提供される。本明細書で使用される「アレルギー」又は「アレルギー性疾患」という用語は、互換的に使用され、主にTH2細胞の活性から発症するTヘルパー2(TH2)駆動性の疾患を表す。アレルギー性疾患の例としては、慢性アレルギー性疾患(枯草熱又はアレルギー性鼻炎など)、アレルギー性接触皮膚炎、季節性アレルギー、アナフィラキシーの治療及び予防、並びに食物アレルギーが挙げられる。
【0072】
本明細書で定義される変異型CD200タンパク質を含む融合タンパク質は、野生型又は変異していないCD200タンパク質を含む融合タンパク質よりも高い効率で活性化免疫細胞を不活性化することができる。
【0073】
1つの実施形態では、自己免疫疾患は、神経筋系、血管系、眼、消化管、肺、腎臓、肝臓、末梢神経系若しくは中枢神経系、骨、軟骨、又は関節に影響を及ぼす自己免疫疾患から選択される。
【0074】
さらなる実施形態では、自己免疫疾患は、急性散在性脳脊髄炎(ADEM);急性壊死性出血性白質脳炎;アジソン病;無ガンマグロブリン血症;円形脱毛症;アミロイドーシス;強直性脊椎炎;抗GBM/抗TBM腎炎;抗リン脂質抗体症候群(APS);喘息,アトピー性皮膚炎;自己免疫性血管性浮腫;自己免疫性再生不良性貧血;自己免疫性自律神経障害;自己免疫性肝炎;自己免疫性高脂血症;自己免疫性免疫不全;自己免疫性内耳疾患(AIED);自己免疫性心筋炎;自己免疫性卵巣炎;自己免疫性膵炎;自己免疫性網膜症;自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP);自己免疫性甲状腺疾患;自己免疫性蕁麻疹;軸索型神経細胞ニューロパチー;バロー病;ベーチェット病;水疱性類天疱瘡及び関連自己免疫性水疱形成疾患;心筋症;キャッスルマン病;セリアック病(難治性2型セリアック病など);シャーガス病;特発性慢性蕁麻疹;慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP);慢性閉塞性肺疾患(COPD);慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO);慢性特発性蕁麻疹;チャーグストラウス症候群;瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡;クローン病;コーガン症候群;寒冷凝集素症;先天性心伝導障害;コクサッキー性心筋炎;CREST病;特発性混合クリオグロブリン血症;脱髄性ニューロパチー;疱疹状皮膚炎;皮膚筋炎;デビック病(視神経脊髄炎);円板状ループス;ドレスラー症候群;子宮内膜症;好酸球性食道炎;好酸球性筋膜炎;結節性紅斑;実験的アレルギー性脳脊髄炎;エヴァンス症候群;線維化肺胞炎;巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎);巨細胞性心筋炎;糸球体腎炎;グッドパスチャー症候群;多発血管炎性肉芽腫症(GPA)(以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていた);移植片対宿主病(GvHD);グレーブス病;ギランバレー症候群;橋本脳炎;橋本病;溶血性貧血;ヘノッホシェーンライン紫斑病性腎炎;妊娠性疱疹;低ガンマグロブリン血症;特発性血小板減少性紫斑病(ITP);IgAニューロパチー;IgG4関連硬化性疾患;免疫調節性リポタンパク質;封入体筋炎;炎症性腸疾患(IBD);炎症性皮膚疾患;間質性膀胱炎;若年性関節炎;若年性糖尿病(1型糖尿病);若年性筋炎;川崎病;ランバートイートン症候群;白血球破砕性血管炎;扁平苔癬;硬化性苔癬;木質性角結膜炎;線状IgA病(LAD);全身性エリテマトーデス(SLE);ライム病、慢性;マクロファージ活性化症候群(MAS);肥満細胞症;メニエール症候群;顕微鏡的多発血管炎;混合性結合組織病(MCTD);モーレン潰瘍;ムッハハーベルマン病;多発性硬化症;重症筋無力症;筋炎;ナルコレプシー;視神経脊髄炎(デビック病);好中球減少症;眼瘢痕性類天疱瘡;視神経炎;回帰性リウマチ;PANDAS(溶連菌感染症関連小児自己免疫性精神神経疾患);傍腫瘍性小脳変性症;発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH);パリーロンベルク症候群;パーソネジターナー症候群;扁平部炎(周辺部ブドウ膜炎);天疱瘡;末梢性ニューロパチー;静脈周囲性脳脊髄炎;悪性貧血;POEMS症候群;結節性多発動脈炎;多腺性自己免疫症候群1型、2型及び3型;リウマチ性多発筋痛症;多発性筋炎;心筋梗塞後症候群;心膜切開後症候群;プロゲステロン皮膚炎;原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎;乾癬;乾癬性関節炎;特発性肺線維症;壊疽性膿皮症;赤芽球癆;レイノー現象;反応性関節炎;反射性交感神経性ジストロフィー;ライター症候群;再発性多発性軟骨炎;下肢静止不能症候群;後腹膜線維症;リウマチ熱;関節リウマチ;類肉腫症;シュミット症候群;強膜炎;強皮症;シェーグレン症候群;精液及び精巣の自己免疫;全身硬直症候群;亜急性細菌性心内膜炎(SBE);Susac症候群;交感性眼炎;高安動脈炎;側頭動脈炎/巨細胞動脈炎;血小板減少性紫斑病(TTP);トロサハント症候群;横断性脊髄炎;1型糖尿病;潰瘍性大腸炎;未分化結合組織疾患(UCTD);ブドウ膜炎;脈管炎;小胞水疱性皮膚病;白斑;及びウェゲナー肉芽腫症(現在では多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と呼ばれる)から選択される1つ以上の自己免疫疾患である。
【0075】
さらなる実施形態では、自己免疫疾患は、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患(IBD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、多発性硬化症、及び関節リウマチから選択される1つ以上の自己免疫疾患である。
【0076】
代替実施形態では、神経変性の治療において使用するための、本明細書で定義されるタンパク質、ポリペプチド、若しくは融合タンパク質、又は本明細書で定義される組成物が提供される。
【0077】
代替実施形態では、神経障害性疼痛の治療において使用するための、本明細書で定義されるタンパク質、ポリペプチド、若しくは融合タンパク質、又は本明細書で定義される組成物が提供される。さらなる実施形態では、糖尿病性神経障害などの神経障害性疼痛の治療において使用するための、本明細書で定義されるタンパク質、ポリペプチド、若しくは融合タンパク質、又は本明細書で定義される組成物が提供される。
【0078】
本発明のさらなる態様によれば、被験体における自己免疫疾患、アレルギー性疾患、神経変性、又は神経障害性疼痛の治療方法であって、少なくとも1つの自己免疫疾患、アレルギー性疾患、神経変性、又は神経障害性疼痛を有する被験体に、本発明のタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質を投与することを含む方法が提供される。
【0079】
本発明のタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質は、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、神経変性、又は神経障害性疼痛を治療するために、単独の治療薬として投与することができ、又は1つ以上の他の化合物(又は治療法)との併用療法で投与することができることが理解される。
【0080】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質を、1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて含む医薬組成物が提供される。
【0081】
自己免疫疾患、アレルギー性疾患、神経変性、又は神経障害性疼痛を治療するために、本発明のタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質は、1つ以上の他の薬剤、より詳細には、免疫抑制療法における1つ以上の免疫抑制剤又はアジュバントと組み合わせて有利に使用することができる。
【0082】
本発明の化合物と一緒に(同時又は異なる時間間隔で)投与することができる治療薬又は治療法の例としては、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、モノクローナル抗体(バシリキシマブ、ダクリズマブ、及びムロモナブ)、及びコルチコステロイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の組合せに存在する各々の治療薬は、個々に異なる用量スケジュール及び異なる経路で投与することができる。さらに、2つ以上の各々の用法用量は異なっていてもよく、各々は、同時に投与することができ、又は異なる時間に投与することができる。当業者であれば、一般的な知識を通じて、使用する投与計画及び併用療法を理解している。例えば、本発明のタンパク質、ポリペプチド、又は融合タンパク質は、既存の併用投与計画に従って投与される1つ以上の他の薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0084】
一般に、本明細書に開示されたタンパク質は、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と一緒に精製された形態で利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝媒体を含む、水溶液若しくはアルコール/水溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖、及び塩化ナトリウム、並びに乳酸加リンゲル液が挙げられる。ポリペプチド複合体を懸濁状態に保つために必要であれば、適切な生理学的に許容されるアジュバントは、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギン酸塩などの増粘剤から選択することができる。
【0085】
本発明による医薬組成物の投与経路は、当業者に一般的に公知のもののいずれであってもよい。免疫療法を含むがこれに限定されない治療のために、本発明のタンパク質は、標準的な技術に従ってあらゆる患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、肺経路を介して、又は適切にはカテーテルによる直接注入を含む、任意の適切な様式で行うことができる。投与量及び投与頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、他の薬剤の同時投与、禁忌、及び臨床医が考慮すべき他のパラメータによって決まる。
【0086】
本発明のタンパク質は、保存のために凍結乾燥し、使用前に適切な担体中で再構成することができる。この技術は効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技術を用いることができる。凍結乾燥及び再構成によって活性を様々な程度に低下させる可能性があり、それを補うためにレベルを上方調整しなければならない可能性があることは、当業者には理解される。
【0087】
以下の研究及びプロトコルは、本明細書に記載の方法の実施形態を示すものである。
【実施例
【0088】
実施例1: 変異型及び野生型CD200-Fc分子の産生
遺伝子合成
N末端シグナル配列を含むUniprot P412178(OX2G_Human)の変異型又は野生型ヒトCD200の残基1~232をコードするDNA配列を、CD200のアミノ酸グリシン232をFcヒンジ領域のアミノ酸1に、又はFcヒンジ領域のアミノ酸6に直接融合して(後者の場合、Fcヒンジの最初の5アミノ酸は欠失している)、変異型又は野生型IgG2又はIgG4 FcにC末端で融合した。遺伝子合成は、野生型及び変異型の構築物についてGeneArtで行った。
【0089】
発現構築物は、5’Hind III及び3’Xhoを有する、哺乳動物発現ベクターpcDNA3.4を使用して作製した。Fcドメイン交換を容易にするために、内部Bam HIを導入した。
【0090】
Midi Prep
受領後、凍結乾燥したCD200-Fc標的タンパク質(野生型及び変異型CD200-Fcタンパク質の両方)のDNA構築物を50μlのMQに懸濁し、DH5α細胞を形質転換した。各標的タンパク質の単一コロニーを選択し、アンピシリンを含む5.0mlのLBに接種した。次いで、確認のために2.0mlの培養物からDNAを単離し、アガロースゲル電気泳動で分離した。DNAをHind III及びXhoIで消化することによって構築物を確認した。各変異型又は野生型構築物を100mlのLBに培養し、中規模DNAを調製した。DNAはpurelink Hipure plasmid midiprep kitを使用して単離した。
【0091】
タンパク質発現
CD200-Fc標的タンパク質は、サーモフィッシャー・ギブコ(商標)ExpiCHO(商標)発現システムを使用して、25mlの培養容量で製造者の指示に従って産生した。発現したCD200-Fcを含む培地上清を回収し、使用するまで-80℃で保存した。
【0092】
タンパク質精製
53mlのSephadexG25を充填したHiprep脱塩カラム(XK26/10)を使用して緩衝液交換を行い、アフィニティーカラム精製のため培地を調整した。脱塩カラムをAKTAエクスプローラープラットフォーム上でバッファーA(20mMリン酸ナトリウム pH7.4を含む150mM NaCl)で平衡化した。30mlの清澄化した培養液を、直列に接続した2本の脱塩カラムに1ml/分の速度でロードした。タンパク質は2ml/分の速度で溶出され、フラクションとして回収した。最大の吸光度及びpH7.4~7.2を示すフラクションをプールした。より低いpHを示すフラクションは除外した。脱塩後、サンプルを希釈して野生型又は変異型CD200-Fc上清を約45mlとした。精製手順はすべて4℃にて氷上で行った。
【0093】
カラムを10カラム容量のバッファーA(10mlの20mMリン酸ナトリウム pH7.4、150mM NaCl)で洗浄した。CD200-Fcタンパク質を、20mMリン酸ナトリウム pH7.4、150mM NaCl及び100mMクエン酸緩衝液 pH3.5を使用し、直線勾配で10カラム容量にわたるpH7.4~3.5の勾配で溶出した。タンパク質の二量体型を含むCD200-Fcフラクション(約103kDaと計算)を回収した。10kDaカットオフのAmicon ultra centriconを使用してタンパク質緩衝液を交換し、タンパク質を約1mg/mlに濃縮した。
【0094】
実施例2: 野生型及び変異型CD200-Fc分子の結合解析
Biacore実験はSyngene International Ltd.が行った(Biocon Park、Plot No2&3、Bommasandra Industrial Area、Bommasadra-Jigani Link Road、Bangalore-560099、India)。
【0095】
アッセイ原理
BIAcore装置は、光学的手法である表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、2つの相互作用分子、この場合はCD200受容体(CD200R)に結合する野生型CD200-Fc又はCD200-Fc変異体の結合特性を測定する。この技術では、チップ(センサー)上に捕捉された2つの相互作用分子のうち、第2の分子が溶液中で捕捉されたパートナーの上を流れる場合、1つの分子の屈折率の変化を測定する。これらの実験では、CD200-Fcをチップ(センサー)表面上に固定化し、水性緩衝液中の連続フロー条件下で、捕捉されたCD200-Fcの上にCD200Rを注入した。CD200R結合後のCD200-Fc屈折率の変化をリアルタイムで測定し、その結果を応答単位(Ru)対時間でプロットしてセンサーグラムを作成した。
【0096】
装置及び試薬
実験はGEヘルスケアBIAcore T200で行った。表3は、アッセイの開発及び実施に使用した試薬の詳細である。
【0097】
【表3】
【0098】
CD200-Fcの固定化
GEヘルスケアのキットを使用し、製造者の指示に従って、抗ヒトFcをアミンカップリングによりBIAcore CM5センサーチップ上に共有結合で固定化した。最大固定化目標を10000~15000RUに設定した。フローセル1は、チップ表面への非特異的結合の差引きを可能にするため、リガンドを固定化していない参照として使用した。FcリガンドをBIAcoreランニング緩衝液(HBS-EP+:2mM EDTA及び0.05%界面活性剤P-20を含む10mM HEPES緩衝生理食塩水)で0.5μg/mLに希釈した。最後の固定化ステップでは、野生型CD200-Fc、変異型CD200-Fc及び非関連対照タンパク質(ハーセプチン/トラスツズマブ)を、最小250応答単位(RU)を生じる濃度で、チップ上(それぞれフローセル2、3、4を使用)に120秒間通過させ、続いてランニング緩衝液中で120秒間表面を安定化させた。CD200Rの濃度ごとにCD200-Fcの捕捉手順を繰り返した。
【0099】
CD200-Fc結合チップ表面上のCD200Rの通過
Fcタグタンパク質の捕捉後、CD200R(異なる濃度)を、捕捉したCD200-Fc及び対照タンパク質上に120秒間流し(結合を観察するため)、続いてランニング緩衝液で120秒間流した(解離を観察するため)。次いで、チップ表面を10mMグリシン・HCl(pH2)を使用して30秒間再生し(流速30μl/分)、続いて、次のサイクルの前にBIAcoreランニング緩衝液で60秒間表面を安定化させた。すべてのCD200R濃度は、以下の濃度、1μM、500nM、250nM、125nM、62.5nM、31.25nM、15.6nM、及び0nMで2通り実行した。
【0100】
データ解析
応答単位又は共鳴単位(Ru)対時間としてプロットしたセンサーグラムで結果を表した。実験のセンサーグラムを、BIAevaluationソフトウェアバージョン1.0(GEヘルスケア)で解析した。DS-162を除くすべてのCD200-Fc融合分子のカーブフィッティングを、1:1のラングミュア結合モデルを使用して行った。DS-162の曲線は、1:1の結合モデルにはうまく適合しなかった。DS-162の結果を適合させるために、1:1結合モデル及び2状態結合モデルの両方を使用した。DS-162センサーグラムの解離相は、1:1結合モデルよりも2状態結合モデルの方がよく適合することが見出された(図1、パネルE~F)。標準的なパラメータ(例えば、リガンド濃度、時間)を使用した反応速度式を反復カーブフィッティングに使用した。適合度の近さは、BIAevaluationソフトウェアバージョン1.0で製造者が提供するアルゴリズムによって決定した。
【0101】
結果
結果(表4及び図1)は、変異したCD200-Fcタンパク質が、野生型CD200-Fcよりも16~70倍高い親和性でヒトCD200受容体に結合することを示している。表4で作表したオフ速度及び図1に示したセンサーグラムは、受容体のオフ速度及び半減期の範囲を示す。特に、DS-161及びDS-162は、CD200受容体に対する高親和性結合と、機能的細胞アッセイにおける効率的なアゴニズムに適合するオフ速度とを兼ね備えている。
【0102】
【表4】
【0103】
実施例3: CD200R発現U937細胞のLPS刺激後のIL-6分泌阻害
CD200-Fcタンパク質のアゴニスト活性を示すために、ヒト単球細胞株U937(ATCC、CRL1539)を、ヒトCD200RのcDNAでトランスフェクトした。これらの細胞からのIL-6を含むサイトカイン産生は、PMAで刺激し、次いでLPSで刺激することにより誘導できる。
【0104】
ウェル当たり50,000個のU937細胞を96ウェルプレートに播種し、100nM PMAで72時間インキュベートした後、分化させた。分化後、PMAを含む培地を新鮮なアッセイ培地に交換し、処理前にさらに2時間インキュベートした。次いで、CD200-Fc構築物(野生型対照としてDS-226を含む)を細胞培養に添加し、1時間インキュベートした。細胞を100ng/mlのLPSで刺激し、さらに24時間インキュベートした。最終インキュベーション後、細胞上清(1:10に希釈)を回収し、ELISAアッセイを使用してIL-6分泌を定量した。
【0105】
図2~7は、CD200-Fc構築物によるIL-6分泌の濃度依存的阻害を示している。
示されたデータは、CD200-Fc構築物が濃度依存的にLPS刺激によるIL-6分泌を阻害できることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】