(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】循環骨髄系細胞炎症性表現型を有する対象の選択および処置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20241106BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241106BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241106BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241106BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241106BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241106BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20241106BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20241106BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20241106BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C12Q1/06
A61P25/28
A61P25/00
A61P29/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/48
A61K9/20
A61K31/4184
C12Q1/68
C12Q1/6851 Z
G01N33/53 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526580
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 US2022079079
(87)【国際公開番号】W WO2023081656
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523475480
【氏名又は名称】トランクイス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カッカー, サンジャイ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ハンネスタッド, ジョナス オガーラ
(72)【発明者】
【氏名】ランセロ, ホープ
(72)【発明者】
【氏名】エングルマン, エドガー イー.
(72)【発明者】
【氏名】グエン, コア ディー.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR36
4B063QR48
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS15
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC05
4C076FF01
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086BC70
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA01
4C086ZB11
(57)【要約】
循環骨髄系細胞の炎症性表現型に基づき、式Iの2-アリールベンゾイミダゾール化合物、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するための対象を選択するための方法を提供する。神経変性疾患と診断されていないが、神経変性疾患または認知障害を発症するリスクがある対象において、神経変性疾患を処置する、その進行を減速させる、およびその発症を遅延させる方法であって、処置するための対象を循環骨髄系細胞の炎症性表現型に基づき選択するステップと、治療有効量の式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与するステップとを含む方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化26】
の化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するための対象を選択する方法であって、式中、
Arは
【化27】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化28】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化29】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルであり、
前記方法は、
d) 前記対象からの循環骨髄系細胞を含有する生体試料においてCD14+CD16+骨髄系細胞のベースライン濃度を測定するステップと;
e) 循環CD14+CD16+骨髄系細胞の前記ベースライン濃度を、事前に決定された閾値濃度と比較するステップと;
f) CD14+CD16+骨髄系細胞の患者ベースライン濃度が前記事前に決定された閾値よりも高く、それにより、循環骨髄系細胞炎症性表現型を示している場合、前記患者を処置のために選択するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
循環CD14+CD16+骨髄系細胞の前記ベースライン濃度が前記事前に決定された閾値よりも低く、それにより、循環骨髄系細胞非炎症性表現型を示している場合、前記対象を処置から外すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記事前に決定された閾値が、健康な個体からの循環骨髄系細胞を含有する生体試料における循環CD14+CD16+骨髄系細胞の濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
処置のために選択された前記対象に、治療有効量の式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与することをさらに含む、請求項1または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記治療有効量が、循環骨髄系細胞の前記炎症性表現型を抑制するために十分な量である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するために選択された前記対象が、神経炎症と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある、請求項1または3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するために選択された前記対象が、神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある、請求項1または3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が神経変性疾患の家族歴を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が軽度認知障害を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、TREM2ヘテロ接合性またはホモ接合性変異を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、脳脊髄液(CSF)においてアミロイド-β(Aβ)またはタウタンパク質陽性を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、アミロイド-β(Aβ)PETスキャン陽性を有していた、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記対象がGRNヘテロ接合性またはホモ接合性変異を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、プログラニュリンレベルの低下を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するために選択された前記対象が、認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である、請求項1または3から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が少なくとも45歳である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が少なくとも50歳である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が少なくとも55歳である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が少なくとも60歳である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が少なくとも65歳である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が少なくとも70歳である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が少なくとも75歳である、請求項16に記載の方法。
22. 前記対象が少なくとも80歳である、請求項16に記載の方法。
23. 前記対象が少なくとも85歳である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
神経炎症および/または神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある対象を処置する方法であって、
a) 請求項1に記載の方法により処置するための患者を選択するステップと;
b) 処置のために選択された前記対象に、少なくとも第1の用量の式I
【化30】
の化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与するステップと
を含み、式中、
Arは
【化31】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化32】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化33】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルである、
方法。
【請求項25】
c) 前記対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと;
d) 前記対象の投与後濃度を前記対象のベースライン濃度と比較するステップと;
e) 前記投与後濃度が前記ベースライン濃度よりも低い場合、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップと
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
f) 前記投与後濃度が前記ベースライン血液濃度よりも低くない場合、ステップ(a)~(d)を連続的な漸増用量の式Iの化合物を用いて、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の前記対象の投与後濃度が前記対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または前記化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップ
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
g) CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度が前記患者のベースライン濃度よりも低くない場合、前記対象をさらなる処置から外すステップ
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である対象を処置する方法であって、
a) 請求項1に記載の方法により処置するための患者を選択するステップと;
b) 処置のために選択された前記対象に、少なくとも第1の用量の式I
【化34】
の化合物またはその塩、溶媒和物、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与するステップと
を含み、式中、
Arは
【化35】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化36】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化37】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルである、
方法。
【請求項29】
c) 前記対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと;
d) 前記対象の投与後濃度を前記対象のベースライン濃度と比較するステップと;
e) 前記投与後濃度が前記ベースライン濃度よりも低い場合、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップと
をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
f) 前記投与後濃度が前記ベースライン血液濃度よりも低くない場合、ステップ(a)~(d)を連続的な漸増用量の式Iの化合物を用いて、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の前記対象の投与後濃度が前記対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または前記化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップ
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
g) CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度が前記患者のベースライン濃度よりも低くない場合、前記対象をさらなる処置から外すステップ
をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
循環骨髄系細胞の炎症性表現型を有する対象を処置する方法であって、
a) 前記対象に、治療有効量の式I
【化38】
の化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与するステップと
を含み、式中、
Arは
【化39】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化40】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化41】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルである、
方法。
【請求項33】
b) 前記対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと;
c) 前記対象の投与後濃度を前記対象のベースライン濃度と比較するステップと;
d) 前記投与後濃度が前記ベースライン濃度よりも低い場合、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップと
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
e) 前記投与後濃度が前記ベースライン血液濃度よりも低くない場合、ステップ(a)~(c)を連続的な漸増用量の式Iの化合物を用いて、循環CD14+CD16+単球の前記対象の投与後濃度が前記対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または前記化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップ
をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
g) CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度が前記患者のベースライン濃度よりも低くない場合、前記対象をさらなる処置から外すステップ
をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記循環CD14+CD16+骨髄系細胞が単球である、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物を経口投与する、請求項4から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記投与される用量が約200mg~約800mgである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記投与される用量が約300mg~約700mgである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記投与される用量範囲が約400mg~約600mgである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記用量が400mg、450mg、または500mgである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記用量を毎日投与する、請求項37から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記用量を単一の分割されていない用量として1日1回投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記生体試料が全血である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
CD14+CD16+循環骨髄系細胞の濃度を、前記生体試料においてCD14およびCD16ポリペプチド、CD14およびCD16mRNA、ならびにCD14およびCD16cDNAの少なくとも1つを測定することにより決定する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
CD14+CD16+単球の濃度を、CD14およびCD16ポリペプチドを測定することにより決定する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記試料におけるCD14+CD16+単球の濃度を、CD14またはCD16ポリペプチドに特異的に結合する1種または複数の試薬を使用することにより測定する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記試薬が、抗体、抗体誘導体、および抗原結合性抗体断片からなる群より選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
CD14+CD16+単球の濃度をフローサイトメトリーにより決定する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
CD14およびCD16ポリペプチドのレベルを、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の量を検出することにより決定する、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記転写されたポリヌクレオチドがmRNAである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記転写されたポリヌクレオチドがcDNAである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記検出が、前記転写されたポリヌクレオチドまたはその一部を増幅させることをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記化合物が、化合物I
【化42】
および化合物II
【化43】
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、もしくは重水素化類似体から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記化合物が、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは重水素化類似体である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記化合物が、化合物IIまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは重水素化類似体である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記化合物またはその塩、溶媒和物、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を懸濁物、溶液で、または固体剤形で投与する、請求項4から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記固体剤形がカプセル剤である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記固体剤形が錠剤である、請求項57に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月2日出願の米国仮出願第63/274,931号に基づく利益および優先権を主張しており、その仮出願は、全体で参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
以前はZLN-005として知られていたTQS-168(2-(4-tert-ブチルフェニル)-1H-ベンゾイミダゾール)は、Ppargc1α(PGC-1α)発現の活性化因子であることが公知であるが(Zhang et al., Diabetes 62:1297-1307 (2013))、その即時的標的、その直接的な分子結合パートナーは未知である。TQS-168は、中枢神経系の骨髄媒介性炎症を抑制し、パーキンソン病、アルツハイマー病、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む、神経炎症が根底にある病態生理に寄与する神経変性疾患のマウスモデルにおいて疾患重症度を低下させることが以前に示されている(その開示が全体で参照により本明細書に援用される米国特許第10,272,070号;同第10,583,125号;および同第10,653,669号)。TQS-168は、高齢マウスにおいて小グリア細胞における代謝機能不全を抑制する、高齢マウスにおいて小グリア細胞における炎症性サイトカイン産生を阻害する、高齢マウスにおいて全身炎症を抑制する、および高齢マウスにおいて行動機能障害を緩和することも示されている(その開示が全体で参照により本明細書に援用される米国特許第10,653,669号)。
CNSの骨髄媒介性炎症、殊に、中枢神経系における小グリア細胞の炎症状態は、in vivoでは容易に評価され得ない。したがって、TQS-168および他の2-アリール-ベンゾイミダゾール化合物で処置するための患者を同定および選択するために使用することができ、かつそのような患者の処置をモニターして、用量設定する(titrate)ために使用することができる臨床的にアクセス可能なマーカーが必要とされている。ヒトALS患者においてPpargc1α(PGC-1α)発現の活性化因子の有効性を評価およびモニターする方法が特に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10,272,070号明細書
【特許文献2】米国特許第10,583,125号明細書
【特許文献3】米国特許第10,653,669号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
3. 発明の要旨
本開示の実験実施例において詳述されるとおり、本発明者らは、式Iの化合物が、in vitroにおいて、ALS患者からの循環骨髄系細胞の炎症誘発性表現型を抑制する、およびまたはその抑制を誘導/促進することを発見した。本明細書において示されるとおり、ALSを有する個体は、健康な集団と比較した場合に、炎症誘発性CD14+CD16+循環骨髄系細胞のより高い発現を呈する。ALS患者からの生体試料への化合物Iの提示は、in vitroにおいてCD14+CD16+循環骨髄系細胞の抑制および減少を示した。炎症誘発性CD14+CD16+循環骨髄系細胞の抑制は、循環骨髄系細胞の炎症誘発性表現型を発現する神経炎症および神経変性疾患を処置すること、その発症を予防すること、およびまたはその進行を減速させることにおいて有効であろう。
【0005】
したがって、第1の態様において、式Iの化合物
【化1】
またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体
[式中、
Arは
【化2】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化3】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化4】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルである]
で処置するための対象を選択するための方法が提供される。
方法は、対象からの循環骨髄系細胞を含有する生体試料においてCD14+CD16+骨髄系細胞の基線濃度を測定するステップと、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の基線濃度を、事前に決定された閾値濃度と比較するステップと、CD14+CD16+骨髄系細胞の患者基線濃度が事前に決定された閾値よりも高く、それにより、循環骨髄系細胞炎症性表現型を示していれば、患者を処置のために選択するステップとを含む。
【0006】
さらなる一態様では、循環CD14+CD16+骨髄系細胞のベースライン濃度が事前に決定された閾値よりも低い場合、対象を処置から外す(deselect)ための方法を提供する。事前に決定された閾値と比較してより低いベースライン濃度の循環CD14+CD16+骨髄系細胞は、循環骨髄系細胞の非炎症性表現型を示す。
【0007】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、健康な個体からの循環骨髄系細胞を含有する生体試料における循環CD14+CD16+骨髄系細胞の濃度である。
【0008】
方法の一部の実施形態では、患者は筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有する。
【0009】
さらなる一態様では、処置のために選択された対象に、治療有効量の式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体を投与することをさらに含む方法が提供される。
【0010】
方法の一部の実施形態では、治療有効量は、循環骨髄系細胞の炎症性表現型を抑制するために十分な量である。
【0011】
方法の一部の実施形態では、式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体で処置するために選択された対象は、神経炎症と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある。
【0012】
方法の一部の実施形態では、式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体で処置するために選択された対象は、神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある。
【0013】
方法の一部の実施形態では、対象は少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する。
【0014】
方法の一部の実施形態では、対象は神経変性疾患の家族歴を有する。
【0015】
方法の一部の実施形態では、対象は軽度認知障害を有する。
【0016】
方法の一部の実施形態では、対象は、TREM2ヘテロ接合型または同型接合型変異を有する。
【0017】
方法の一部の実施形態では、対象は、脳脊髄液(CSF)においてアミロイド-β(Aβ)またはタウタンパク質陽性を有する。
【0018】
方法の一部の実施形態では、対象は、アミロイド-β(Aβ)PETスキャン陽性を有している。
【0019】
方法の一部の実施形態では、対象はGRNヘテロ接合型または同型接合型変異を有する。方法の一部の実施形態では、対象は、プログラニュリンレベルの低下を有する。
【0020】
方法の一部の実施形態では、式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体で処置するために選択された対象は、認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも45歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも50歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも55歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも60歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも65歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも70歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも75歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも80歳である。一部の実施形態では、対象は少なくとも85歳である。
【0021】
別の態様では、神経炎症および/または神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある対象を処置するための方法が提供される。方法は、
a) 前述の方法により処置するための患者を選択するステップと;
b) 処置のために選択された対象に、少なくとも第1の用量の式Iの化合物
【化5】
またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体
[式中、
Arは
【化6】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化7】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化8】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルである]
を投与するステップと
を含む。
【0022】
一部の実施形態では、神経炎症および/または神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
c) 対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと;
d) 対象の投与後濃度を対象の基線濃度と比較するステップと;
e) 投与後濃度が基線濃度よりも低ければ、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップと
をさらに含む。
【0023】
一部の実施形態では、神経炎症および/または神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
f) 投与後濃度が基線血液濃度よりも低くなければ、ステップ(a)~(d)を連続的な漸増用量の式Iの化合物で、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の対象の投与後濃度が対象の基線濃度よりも低くなるか、または化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップ
をさらに含む。
【0024】
一部の実施形態では、神経炎症および/または神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
g) CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度が患者の基線濃度よりも低くなければ、対象をさらなる処置から外すステップ
をさらに含む。
【0025】
別の態様では、認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である対象を処置するための方法が提供される。方法は、
a) 請求項1に記載の方法により処置するための患者を選択するステップと;
b) 処置のために選択された対象に、少なくとも第1の用量の式I
【化9】
の化合物またはその塩、溶媒和物、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与するステップと
を含み、式中、
Arは
【化10】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化11】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化12】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルである。
【0026】
一部の実施形態では、認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
c) 対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと;
d) 対象の投与後濃度を対象のベースライン濃度と比較するステップと;
e) 投与後濃度がベースライン濃度よりも低い場合、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップと
をさらに含む。
【0027】
一部の実施形態では、認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
f) 投与後濃度がベースライン血液濃度よりも低くない場合、ステップ(a)~(d)を連続的な漸増用量の式Iの化合物を用いて、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の対象の投与後濃度が対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップ
をさらに含む。
【0028】
一部の実施形態では、認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
g) CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度が患者のベースライン濃度よりも低くない場合、対象をさらなる処置から外すステップ
をさらに含む。
【0029】
別の態様では、循環骨髄系細胞の炎症性表現型を有する対象を処置するための方法が提供される。方法は、
対象に、治療有効量の式I
【化13】
の化合物またはその塩、溶媒和物、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与するステップと
を含み、式中、
Arは
【化14】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化15】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化16】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルである、
方法。
【0030】
一部の実施形態では、循環骨髄系細胞の炎症性表現型を有する対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
b) 対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと;
c) 対象の投与後濃度を対象のベースライン濃度と比較するステップと;
d) 投与後濃度がベースライン濃度よりも低い場合、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップと
をさらに含む。
【0031】
一部の実施形態では、循環骨髄系細胞の炎症性表現型を有する対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
e) 投与後濃度がベースライン血液濃度よりも低くない場合、ステップ(a)~(c)を連続的な漸増用量の式Iの化合物を用いて、循環CD14+CD16+単球の対象の投与後濃度が対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップ
をさらに含む。
【0032】
一部の実施形態では、循環骨髄系細胞の炎症性表現型を有する対象を処置するための追加の方法を提供する。方法は、
g) CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度が患者のベースライン濃度よりも低くない場合、対象をさらなる処置から外すステップ
をさらに含む。
【0033】
方法の一部の実施形態では、循環CD14+CD16+骨髄系細胞は単球である。
【0034】
方法の一部の実施形態では、化合物を経口投与する。
【0035】
方法の一部の実施形態では、投与される用量は、約200mg~約800mgである。方法の一部の実施形態では、投与される用量は、約300mg~約700mgである。方法の一部の実施形態では、投与される用量範囲は、約400mg~約600mgである。
【0036】
方法の一部の実施形態では、用量は、400mg、450mg、または500mgである。
【0037】
方法の一部の実施形態では、用量を毎日投与する。方法の一部の実施形態では、用量を1日1回、単一の分割されていない用量として投与する。
【0038】
方法の一部の実施形態では、生体試料は全血である。
【0039】
方法の一部の実施形態では、CD14+CD16+循環骨髄系細胞の濃度を、生体試料においてCD14およびCD16ポリペプチド、CD14およびCD16mRNA、ならびにCD14およびCD16cDNAの少なくとも1つを測定することにより決定する。方法の一部の実施形態では、CD14+CD16+単球の濃度を、CD14およびCD16ポリペプチドを測定することにより決定する。方法の一部の実施形態では、試料におけるCD14+CD16+単球の濃度を、CD14またはCD16ポリペプチドに特異的に結合する1種または複数の試薬を使用することにより測定する。方法の一部の実施形態では、試薬は、抗体、抗体誘導体、および抗原結合性抗体断片からなる群より選択される。方法の一部の実施形態では、CD14+CD16+単球の濃度をフローサイトメトリーにより決定する。
【0040】
方法の一部の実施形態では、CD14およびCD16ポリペプチドのレベルを、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の量を検出することにより決定する。方法の一部の実施形態では、転写されたポリヌクレオチドはmRNAである。方法の一部の実施形態では、転写されたポリヌクレオチドはcDNAである。方法の一部の実施形態では、検出は、転写されたポリヌクレオチド(polynuclotide)またはその一部を増幅させることをさらに含む。
【0041】
方法の一部の実施形態では、化合物は、化合物I
【化17】
および化合物II
【化18】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは重水素化類似体から選択される。
【0042】
方法の一部の実施形態では、化合物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは重水素化類似体である。
【0043】
方法の一部の実施形態では、化合物は、化合物IIまたはその薬学的に許容される塩、水和物、もしくは重水素化類似体である。
【0044】
方法の一部の実施形態では、化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体を懸濁液、溶液で、または固体剤形で投与する。
【0045】
方法の一部の実施形態では、固体剤形はカプセル剤である。方法の一部の実施形態では、固体剤形は錠剤である。
【0046】
4. 図面の簡単な説明
本発明のこれら、および他の特徴、態様、および利点は、次の説明、および添付の図面に関してより良好に理解されることとなるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1-1】
図1Aは、Ly6C
hi細胞を検出および定量化するために、マウスLPS誘導性血液試料のFACSアッセイにおいて用いられるゲーティング手順を示す。
図1Bは、LPSを用いる野生型マウス血液試料のin vitroインキュベーションが、Ly6C
hi細胞のパーセンテージを上昇させること、およびTQS-168を用いるインキュベーションが炎症性骨髄系細胞におけるこの上昇を抑制することを示す。
図1Cは実験の設計を図示する。
【
図1-2】
図1Aは、Ly6C
hi細胞を検出および定量化するために、マウスLPS誘導性血液試料のFACSアッセイにおいて用いられるゲーティング手順を示す。
図1Bは、LPSを用いる野生型マウス血液試料のin vitroインキュベーションが、Ly6C
hi細胞のパーセンテージを上昇させること、およびTQS-168を用いるインキュベーションが炎症性骨髄系細胞におけるこの上昇を抑制することを示す。
図1Cは実験の設計を図示する。
【0048】
【
図2】
図2Aは、マウスにおける50mg/mLのTQS-168の単回経口用量後のTQS-168の血漿中濃度を経時的にプロットする。
図2Bは、SOD1マウス研究のプロトコールを表すタイムラインである。
【0049】
【
図3】
図3Aは、TQS-168が、SOD1マウスにおいて炎症性単球の画分を減少させることを示す棒グラフである。
図3Bは、TQS-168がSOD1マウスにおいて抗炎症および炎症誘発性サイトカインの血漿中レベルを調節することを示す棒グラフである。
【0050】
【
図4】
図4Aは、50mg/kgのTQS-168の経口用量で処置されたSOD1マウスにおいて110日後の生存パーセンテージ対時間を比較する。
図4Bは、2つの集団であるSOD1マウスと、TQS-168 50mg/kgの経口投与で処置されたSOD1マウスとの生存日齢を比較する。
【0051】
【
図5-1】
図5Aは、ALS患者の末梢血試料におけるCD14+CD16+単球のパーセンテージが、健康な正常対象の末梢血試料におけるCD14+CD16+単球のパーセンテージよりも高いことを示すFACSアッセイである。
図5Bは、ALS患者および対照の健康ドナーの末梢血試料における循環骨髄系細胞の炎症性表現型に対するTQS-168の作用を評価するための実験プロトコールを概説し、
図5Cは、漸増濃度のTQS-168を用いる末梢血試料の4時間ex vivoインキュベーションの結果を示す棒グラフであり、TQS-168がALS患者の全血におけるCD14+CD16+細胞のパーセンテージを用量依存的に低下させることを実証する。
【
図5-2】
図5Aは、ALS患者の末梢血試料におけるCD14+CD16+単球のパーセンテージが、健康な正常対象の末梢血試料におけるCD14+CD16+単球のパーセンテージよりも高いことを示すFACSアッセイである。
図5Bは、ALS患者および対照の健康ドナーの末梢血試料における循環骨髄系細胞の炎症性表現型に対するTQS-168の作用を評価するための実験プロトコールを概説し、
図5Cは、漸増濃度のTQS-168を用いる末梢血試料の4時間ex vivoインキュベーションの結果を示す棒グラフであり、TQS-168がALS患者の全血におけるCD14+CD16+細胞のパーセンテージを用量依存的に低下させることを実証する。
【
図5-3】
図5Aは、ALS患者の末梢血試料におけるCD14+CD16+単球のパーセンテージが、健康な正常対象の末梢血試料におけるCD14+CD16+単球のパーセンテージよりも高いことを示すFACSアッセイである。
図5Bは、ALS患者および対照の健康ドナーの末梢血試料における循環骨髄系細胞の炎症性表現型に対するTQS-168の作用を評価するための実験プロトコールを概説し、
図5Cは、漸増濃度のTQS-168を用いる末梢血試料の4時間ex vivoインキュベーションの結果を示す棒グラフであり、TQS-168がALS患者の全血におけるCD14+CD16+細胞のパーセンテージを用量依存的に低下させることを実証する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
5. 発明の詳細な説明
5.1. 定義
別段に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が共通して理解するのと同じ意味を有する。
【0053】
対象の末梢循環から採取された試料におけるCD14+CD16+骨髄系細胞の濃度が事前に決定された閾値濃度を超えるならば、個々の対象は「循環骨髄系細胞の炎症性表現型」を有する。下でさらに定義されるとおり、対象の末梢循環から採取された試料におけるCD14+CD16+骨髄系細胞の濃度が事前に決定された閾値濃度を超えなければ、個々の対象は、「循環骨髄系細胞の非炎症性表現型」を有する。「循環骨髄系細胞の炎症性表現型の抑制」という語句は、対象の末梢循環から採取された試料におけるCD14+CD16+細胞の濃度を事前に決定された閾値濃度未満に下げることを指す。
【0054】
「個体」、「宿主」、および「対象」という用語は、互換的に使用され、これに限定されないが、ヒトおよび非ヒト霊長類;ラットおよびマウスを含むげっ歯類;ウシ;ウマ;ヒツジ;ネコ;ならびにイヌを含む処置される動物を指す。「患者」は、ヒト対象を指す。
【0055】
「処置すること」、「処置」という用語、およびその文法的変化形は、臨床分野で理解される最も広い意味で使用される。したがって、これらの用語は、疾患の治癒または完全寛解を必要とせず、何らかの臨床的に所望の薬理学的および/または生理的効果を得ることを包含する。別段に指定されていない限り、「処置すること」および「処置」は予防を包含しない。
【0056】
「治療有効量」という語句は、疾患、病態、または障害を処置するために哺乳動物または他の対象に投与された場合に、疾患、病態、または障害の処置をもたらすために十分である化合物の量を指す。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度ならびに処置される対象の年齢、体重などに依存して変化し得る。
【0057】
「薬学的に許容される塩」という用語は、対象に投与するために許容される塩を指す。薬学的に許容される塩の例には、これに限定されないが:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホネート、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が含まれる。
【0058】
薬学的塩の他の例には、N+、NH4
+、およびNW4
-(式中、WはC1~C8アルキル基であり得る)などの好適なカチオン、および同様のものと複合した本開示の化合物のアニオンが含まれる。治療用途では、本開示の化合物の塩は、薬学的に許容され得る。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において使用することができる。
【0059】
もともと塩基性である、本組成物および方法に含まれる化合物は、様々な無機および有機酸と共に広範囲の様々な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用することができる酸は、非毒性酸付加塩、すなわち、これに限定されないが、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホネート、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))塩を含む、薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩を形成するものである。
【0060】
もともと酸性である、本組成物および方法に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと共に塩基塩を形成し得る。そのような塩の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄塩が含まれる。
【0061】
塩基性または酸性部分を含む、本組成物および方法に含まれる化合物は、様々なアミノ酸と共に薬学的に許容される塩も形成し得る。本開示の化合物は、酸性および塩基性基の両方;例えば、1個のアミノおよび1個のカルボン酸基を含有し得る。そのような場合には、化合物は、酸付加塩、双性イオン、または塩基塩として存在し得る。
【0062】
「薬学的に許容される添加剤」、「薬学的に許容される希釈剤」、「薬学的に許容される担体」、および「薬学的に許容される補助剤」という用語は、互換的に使用され、概して安全で、非毒性で、かつ生物学的にも別段にも望ましくないものではない医薬組成物の調製において有用である添加剤、希釈剤、担体、または補助剤を指し、獣医学的使用、さらにはヒト医薬的使用のために許容される添加剤、希釈剤、担体、および補助剤を含む。「薬学的に許容される添加剤」という語句は、1つおよび1つより多いそのような添加剤、希釈剤、担体、および/または補助剤を含む。
【0063】
一般に、水素またはHなどのある特定の元素の言及または記述は、その元素のすべての同位体を含むことが意図されている。例えば、R基が水素またはHを含むと定義されているならば、それにはジュウテリウムおよびトリチウムも含まれる。したがって、トリチウム、14C、32Pおよび35Sなどの放射性同位体を含む化合物は、本技術の範囲内である。本技術の化合物にそのような標識を挿入するための手順は、本明細書における開示に基づき、当業者には容易に明らかであろう。
【0064】
具体的な立体化学が明白に示されていない限り、化合物のすべてのキラル、ジアステレオマー、およびラセミ体が意図されている。したがって、本明細書において記載される化合物には、記述から明らかであるとおり、任意またはすべての不斉原子で濃縮または分割された光学異性体が含まれる。R-鏡像異性体およびS-鏡像異性体のラセミ混合物、ならびにR-およびS-鏡像異性体を含むエナンチオ濃縮された立体異性混合物、さらには個々の光学異性体を、それらの鏡像異性またはジアステレオ異性パートナーを実質的に非含有であるように単離または合成することができ、これらの立体異性体はすべて、本技術の範囲内である。
【0065】
本明細書において記載される化合物は、溶媒和物、特に水和物として存在し得て、別段に指定されていない限り、すべてのそのような溶媒和物および水和物が意図されている。水和物は、化合物または化合物を含む組成物の製造中に形成し得るか、または水和物は、化合物の吸湿性により経時的に形成し得る。本技術の化合物は、とりわけDMF、エーテル、およびアルコール溶媒和物を含む有機溶媒和物としても存在し得る。いずれか特定の溶媒和物の同定および調製は、合成有機または医薬品化学の当業者の技能の範囲内である。
【0066】
本明細書において記載されているとおり、本テキストは、本化合物、組成物、および方法の様々な実施形態に関する。記載されている様々な実施形態は、様々な実例を提示することを意味されたものであり、代替の種の記述として解釈されるべきではない。むしろ、本明細書において提供される様々な実施形態の記載は重複範囲のものであり得ることに留意すべきである。本明細書において論述される実施形態は単なる例示であり、本技術の範囲を限定することを意味されていない。
【0067】
5.2. 他の解釈上の約束
範囲:本開示を通じて、本発明の様々な態様が範囲の形式で表される。範囲は、挙げられている終点を含む。範囲の形式での記載は単に簡便さと簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する硬直した限定と解釈されるべきではないことは理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、具体的に開示されているすべての考えられ得るサブ範囲、さらには、その範囲内の個々の数値を有すると判断されるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示されるサブ範囲、さらには、その範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、5.3、および6を有すると判断されるべきである。このことは、範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0068】
本開示では、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、「有すること(having)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、およびその言語学的バリアントは、米国特許法においてそれらに付与された意味を有し、明確に列挙されているものを超える追加の成分の存在を許容する。
【0069】
具体的に記述されていない、または文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、「または」という用語は、包括的であると理解される。
【0070】
具体的に記述されていない、または文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、単数形または複数形であると理解される。すなわち、冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法的目的語の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書において使用される。例として、「an element」は、1つの元素または1つより多い元素を意味する。
【0071】
具体的に記述されていない、または文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、「約」という用語は、当技術分野における正常な許容の範囲内、例えば平均から2標準偏差以内と理解され、記述された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、なおより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変化を包含することが意味されている。パーセンテージが組成物中の成分または材料の量に関して提示されている場合、そのパーセンテージは、別段に述べられていない限り、重量に基づくパーセンテージであると理解されるべきであるか、または文脈から理解される。
【0072】
2つまたはそれより多いステップまたは行為を同時に行うことができると理解されるべきである。
【0073】
5.3. 実験的観察の要旨
本開示の実験実施例において詳述されるとおり、本発明者らは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のためのモデルであるSOD1マウスが、それらの末梢循環において、野生型マウスが有するよりも約5倍高いパーセンテージのLy6Chi炎症性単球を有した(約2%対約11%)ことを示している。50mg/kgのTQS-168を経口胃管栄養により3日ごとに70日目から90日目まで投与する処置は、SOD1マウスにおいて循環Ly6Chi単球の増加を阻害した。TQS-168を経口胃管栄養により受けたSOD1マウスは、ビヒクルのみを受けたマウスよりも長く生存した。
【0074】
次に、本発明者らは、ALS患者が末梢循環において、健康な対照と比較した場合に異常に高いパーセンテージのCD14+CD16+単球を同様に呈することを実証した。本発明者らは、TQS-168を用いるALS患者からの血液試料の4時間のex vivoインキュベーションが、試料における中間型(CD14+CD16+)単球のパーセンテージを用量依存的に低下させ、TQS-168の最高濃度、30μMが、CD14+CD16+単球を1.5%から1%未満に低下させたことをさらに実証した。
【0075】
総じて、これらのデータは、ヒト患者におけるCD14+CD16+単球などの循環炎症性骨髄系細胞が、神経炎症性および神経変性障害の処置におけるTQS-168などの2-アリールベンゾイミダゾールの作用についての臨床的にアクセス可能な代理マーカーであることを示している。データは、CD14+CD16+単球などの循環炎症性骨髄系細胞を、TQS-168および他の2-アリール-ベンゾイミダゾールで処置するための患者を同定および選択するために使用することができ、ヒトALS患者を含むそのような患者の処置をモニターおよび用量設定するために使用することができることを示している。
【0076】
5.4. 2-アリールベンゾイミダゾール化合物で処置するための対象を選択する方法
したがって、第1の態様では、本明細書のセクション5.9において記載されているとおりのある特定の治療用2-アリールベンゾイミダゾール化合物、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するための対象を選択するための方法を提供する。方法は、
a) 対象からの循環骨髄系細胞を含有する生体試料においてCD14+CD16+骨髄系細胞のベースライン濃度を測定するステップと;
b) 循環CD14+CD16+骨髄系細胞のベースライン濃度を、事前に決定された閾値濃度と比較するステップと;
c) CD14+CD16+骨髄系細胞の患者ベースライン濃度が事前に決定された閾値よりも高く、それにより、循環骨髄系細胞炎症性表現型を示している場合、患者を処置のために選択するステップ
とを含む。
【0077】
一部の実施形態では、CD14+CD16+循環骨髄系細胞は、CD14+CD16+循環単球である。
【0078】
典型的な実施形態では、生体試料は、対象から採取された全血試料である。一部の実施形態では、生体試料は、全血試料に由来する細胞画分である。
【0079】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、健康な個体からの循環骨髄系細胞を含有する生体試料における循環CD14+CD16+骨髄系細胞の濃度である。典型的な実施形態では、事前に決定された閾値を提供する生体試料は全血試料である。一部の実施形態では、事前に決定された閾値を提供する生体試料は、健康な個体の全血試料に由来する画分である。
【0080】
方法の一部の実施形態では、健康な対象または個体は、神経変性疾患と診断されていない人である。方法の一部の実施形態では、健康な対象は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管もしくは多発梗塞性認知症、または前頭側頭型認知症(FTD)、パーキンソン病、ハンチントン病、脱髄疾患、および多発性硬化症(MS)から選択される神経変性疾患と診断されていない人である。方法の一部の実施形態では、健康な対象は、ALSと診断されていない人である。
【0081】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、健康な集団からの循環骨髄系細胞を含有する生体試料における循環CD14+CD16+骨髄系細胞の平均濃度である。方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、健康な集団からの循環骨髄系細胞を含有する生体試料における循環CD14+CD16+骨髄系細胞のメジアン濃度である。方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、健康な対象における循環CD14+CD16+骨髄系細胞のパーセンテージの値の範囲の最大値である。
【0082】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、単一の値である。方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、ある範囲の値である。
【0083】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、全循環骨髄系細胞と比較した循環CD14+CD16+骨髄系細胞の濃度である。様々な実施形態で、濃度は、0.85%、0.86%、0.88%、0.89%、0.90%、0.91%、0.92%、0.93%、0.94%、0.95%、0.96%、0.97%、0.98%、0.99%、1.0%、1.01%、1.02%、1.03%、1.04%、1.05%、1.06%、1.07%、1.08%、1.09%、1.10%、1.11%、1.12%、1.13%、1.14%、1.15%、1.16%、1.17%、1.18%、1.19%、1.20%、1.21%、1.22%、1.23%、1.24%、1.25%、1.26%、1.27%、1.28%、1.29%、1.30%、1.31%、1.32%、1.33%、1.34%、1.35%、1.36%、1.37%、1.38%、1.39%、1.40%、1.41%、1.42%、1.43%、1.44%、1.45%、1.46%、1.47%、1.48%、1.49%、1.50%、1.51%、1.52%、1.53%、1.54%、1.55%、1.56%、1.57%、1.58%、1.59%、1.60%、1.61%、1.62%、1.63%、1.64%、1.65%、1.66%、1.67%、1.68%、1.69%、または1.70%である。
【0084】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、少なくとも18歳の年齢の間の男性の健康な集団全体でのメジアンよりも高い。方法の一部のさらなる実施形態では、男性は、18、19、20、21、22、23、24、25,26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100歳である。方法の一部のさらなる実施形態では、事前に決定された閾値は、少なくとも18~40歳の間の年齢の男性の健康な集団全体でのメジアンよりも高い。
【0085】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、少なくとも18歳の年齢の間の男性の健康な集団全体での平均値よりも高い。方法の一部のさらなる実施形態では、男性は、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100歳である。方法の一部のさらなる実施形態では、事前に決定された閾値は、少なくとも18~40歳の間の年齢の男性の健康な集団全体での平均値よりも高い。
【0086】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、少なくとも18歳の年齢の間の女性の健康な集団全体でのメジアンよりも高い。方法の一部のさらなる実施形態では、女性は、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100歳である。方法の一部のさらなる実施形態では、事前に決定された閾値は、少なくとも18~40歳の間の年齢の女性の健康な集団全体でのメジアンよりも高い。
【0087】
方法の一部の実施形態では、事前に決定された閾値は、少なくとも18歳の年齢の間の女性の健康な集団全体での平均値よりも高い。方法の一部のさらなる実施形態では、女性は、18、19、20、21、22、23、24、25,26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100歳である。方法の一部のさらなる実施形態では、事前に決定された閾値は、少なくとも18~40歳の間の年齢の女性の健康な集団全体での平均値よりも高い。
【0088】
方法の一部の実施形態では、健康な集団は、男性および女性の混合である。方法の一部の実施形態では、健康な集団は、少なくとも18歳の男性および女性の混合である。方法の一部のさらなる実施形態では、男性および女性は、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100歳である。方法の一部の実施形態では、健康な集団は、少なくとも18~40歳の間の年齢の男性および女性の混合である。
【0089】
方法の一部の実施形態では、処置のために選択された対象に、本明細書においてセクション5.9に記載されているとおりの治療有効量の式Iの化合物、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与する。方法の一部の実施形態では、治療有効量は、循環骨髄系細胞の炎症性表現型を抑制するために十分な量である。方法の一部の実施形態では、治療有効量は、循環炎症性骨髄系細胞がin vitroにおいてLPSに暴露される際の1種または複数の炎症性サイトカインの合成、および必要に応じて分泌を抑制するために有効である。一部の実施形態では、1種または複数の炎症性サイトカインは、IFN-γ、IL-6、TNF-α、MCP-1、およびIL12から選択される。
【0090】
方法の一部の実施形態では、式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するために選択される対象は、神経炎症と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある。
【0091】
方法の一部の実施形態では、式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するために選択される対象は、神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある。
【0092】
方法の一部の実施形態では、神経変性疾患、対象は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管または多発梗塞性認知症、または前頭側頭型認知症(FTD)、パーキンソン病、ハンチントン病、脱髄疾患、または多発性硬化症(MS)と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある。
【0093】
方法の一部の実施形態では、対象は、少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する。方法の特定の実施形態では、対象は、2つのApoE4対立遺伝子を有する。方法の一部の特定の実施形態では、方法は、対象においてApoE4対立遺伝子の存在を検出する先行ステップをさらに含む。
【0094】
方法の特定の実施形態では、対象は、神経変性疾患の家族歴を有する。方法の一部の特定の実施形態では、対象の家族歴における神経変性疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管または多発梗塞性認知症、または前頭側頭型認知症(FTD)、パーキンソン病、ハンチントン病、脱髄疾患、または多発性硬化症(MS)である。
【0095】
方法の一部の実施形態では、対象は軽度認知障害を有する。ある特定の実施形態では、MCIの診断を、メンタルステート簡易試験(Short Test of Mental Status)、モントリオール認知評価(Montreal Cognitive Assessment)(MoCA)またはミニメンタルステート検査(Mini-Mental State Examination)(MMSE)を使用して行う。
【0096】
方法の一部の実施形態では、対象は、TREM2ヘテロ接合性またはホモ接合性変異を有する。方法の一部の特定の実施形態では、対象は、TREM2ヘテロ接合性変異を有する。方法の一部の特定の実施形態では、対象は、TREM2ホモ接合性変異を有する。方法の一部の実施形態では、TREM2バリアントは、TREM2タンパク質の機能の部分的喪失を呈する。方法の一部の実施形態では、TREM2バリアントは、TREM2タンパク質の異常な機能を呈する。方法の一部の実施形態では、TREM2バリアントは、アミロイド斑に対するそれらの応答を含むミクログリア細胞の挙動を変化させる。方法の一部の特定の実施形態では、方法は、対象においてTREM2ヘテロ接合性またはホモ接合性変異の存在を検出する先行ステップをさらに含む。
【0097】
方法の一部の実施形態では、対象は、PSEN1ヘテロ接合性またはホモ接合性変異を有する。方法の一部の特定の実施形態では、対象は、PSEN1ヘテロ接合性変異を有する。方法の一部の特定の実施形態では、対象は、PSEN1ホモ接合性変異を有する。方法の一部の実施形態では、PSEN1バリアントは、PSEN1タンパク質の機能の部分的喪失を呈する。方法の一部の実施形態では、PSEN1バリアントは、PSEN1タンパク質の異常な機能を呈する。方法の一部の実施形態では、PSEN1バリアントを有する対象は、アミロイド斑産生の増大を呈する。方法の一部の特定の実施形態では、方法は、対象においてPSEN1ヘテロ接合性またはホモ接合性変異の存在を検出する先行ステップをさらに含む。
【0098】
方法の一部の実施形態では、対象は、脳脊髄液(CSF)においてアミロイド-β(Aβ)またはタウタンパク質陽性を有する。方法の一部の実施形態では、対象は、CSFにおいて異常なレベルの総タウおよびリン酸化タウを有する。
【0099】
方法の一部の実施形態では、対象は、処置前にアミロイド-β(Aβ)PETスキャン陽性を有していた。
【0100】
方法の一部の実施形態では、対象は、神経変性疾患を有さない健康な対照集団と比較した場合に、(i)血漿中Aβ42のレベルの低下、(ii)血漿中Aβ40のレベルの上昇、(iii)血漿中Aβ42/Aβ40の比の低下、(iv)血漿中ニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベルの上昇、および(v)血漿中ニューログラニンのレベルの上昇の少なくとも1つを有すると、処置前に決定されている。
【0101】
方法の一部の実施形態では、対象は、処置前にタウタンパク質PETスキャン陽性を有していた。方法の一部の特定の実施形態では、対象は、Tau PETイメージングに基づき、Tauの異常なパターンを有すると、処置前に決定されている。
【0102】
方法の一部の実施形態では、対象は、GRNヘテロ接合性またはホモ接合性変異を有する。方法の一部の特定の実施形態では、対象は、GRNヘテロ接合性変異を有する。方法の一部の特定の実施形態では、対象は、GRNホモ接合性変異を有する。方法のある特定の実施形態では、GRNバリアントは、GRNタンパク質の機能の一部喪失を呈する。方法のある特定の実施形態では、GRNバリアントは、GRNタンパク質の異常な機能を呈する。方法の一部の特定の実施形態では、方法は、対象においてGRNヘテロ接合性またはホモ接合性変異の存在を検出する先行ステップをさらに含む。
【0103】
方法の一部の実施形態では、対象は、プログラニュリンレベルの低下を有する。方法の一部の実施形態では、対象は、プログラニュリンレベルを有する。
【0104】
方法の一部の実施形態では、式Iの化合物またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体で処置するために選択される対象は、認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である。方法の一部の実施形態では、対象は、少なくとも45歳である。方法の一部の実施形態では、対象は、少なくとも50歳である。方法の一部の実施形態では、対象は、少なくとも55歳である。方法の一部の実施形態では、対象は、少なくとも60歳である。方法の一部の実施形態では、対象は、少なくとも61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100歳である。
【0105】
方法の一部の実施形態では、循環CD14+CD16+骨髄系細胞のベースライン濃度が事前に決定された閾値より低く、それにより、循環骨髄系細胞非炎症性表現型を示している場合、対象を処置から外す。
【0106】
5.5. 神経炎症および/または神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある対象を処置する方法
別の態様では、神経炎症および/または神経変性疾患と以前に診断されたことはないが、それを発症するリスクがある対象を処置するための方法を提供する。方法は、本明細書においてセクション5.4に記載されている方法により処置するための患者を選択するステップと;処置するために選択された対象に、少なくとも第1の用量の、本明細書においてセクション5.9に記載されているとおりの式Iの2-アリールベンゾイミダゾール化合物、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与するステップとを含む。
【0107】
一部の特定の実施形態では、方法は、対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと、対象の投与後濃度を対象のベースライン濃度と比較するステップと、投与後濃度がベースライン濃度よりも低い場合、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップとをさらに含む。
【0108】
一部の特定の実施形態では、方法は、投与後濃度が、ベースライン血中濃度よりも低くない場合、対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと、対象の投与後濃度を対象のベースライン濃度と比較するステップと、投与後濃度がベースライン濃度よりも低い場合、1つまたは複数の連続的な漸増用量の式Iの化合物を投与するステップとを、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の対象の投与後濃度が対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップをさらに含む。
【0109】
方法の一部のさらなる特定の実施形態では、方法は、CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度が患者のベースライン濃度よりも低くない場合、対象をさらなる処置から外すステップをさらに含む。
5.6. 認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である対象を処置する方法
【0110】
さらなる態様では、認知障害と以前に診断されたことはないが、少なくとも40歳である対象を処置するための方法を提供する。方法は、本明細書においてセクション5.4に記載されている方法により処置するための患者を選択するステップと;処置するために選択された対象に、少なくとも第1の用量の、本明細書においてセクション5.9に記載されているとおりの式Iの2-アリールベンザミダゾール化合物、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体を投与するステップとを含む。
【0111】
一部の実施形態では、方法は、対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと、対象の投与後濃度を対象の基線濃度と比較するステップと、投与後濃度が基線濃度よりも低ければ、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップとをさらに含む。
【0112】
方法の一部のさらなる実施形態では、対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定した後に、方法は、対象の投与後濃度を対象のベースライン濃度と比較するステップと、投与後濃度がベースライン濃度よりも低い場合、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップとをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、投与後濃度がベースライン血中濃度よりも低くない場合、上述のステップを連続的な漸増用量の式Iの化合物を用いて、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の対象の投与後濃度が対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップをさらに含む。
【0113】
方法の一部のさらなる実施形態では、対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定した後に、方法は、対象の投与後濃度を対象のベースライン濃度と比較するステップと、投与後濃度がベースライン濃度よりも低い場合、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップと、さらに、投与後濃度がベースライン血中濃度よりも低くない場合、上述のステップを連続的な漸増用量の式Iの化合物を用いて、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の対象の投与後濃度が対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップと、さらになお、CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度が患者のベースライン濃度よりも低くない場合、対象をさらなる処置から外すステップとをさらに含む。
【0114】
5.7. 循環骨髄系細胞の炎症性表現型を有する対象を処置する方法
別の態様では、循環骨髄系細胞の炎症性表現型を有する対象を処置するための方法を提供する。方法は、循環骨髄系細胞の炎症性表現型を有する対象に、治療有効量の、本明細書においてセクション5.9に記載されているとおりの式(I)の化合物、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体を投与するステップを含む。
【0115】
方法の一部の実施形態では、方法は、対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと、対象の投与後濃度を対象の基線濃度と比較するステップと、投与後濃度が基線濃度よりも低ければ、複数の後続の用量を同じか、またはより多い量で投与するステップとをさらに含む。
【0116】
方法の別の実施形態では、投与後濃度が、基線血中濃度よりも低くなければ、方法は、対象から得られた生体試料において循環CD14+CD16+骨髄系細胞の投与後濃度を決定するステップと、対象の投与後濃度を対象の基線濃度と比較するステップと、投与後濃度が基線濃度よりも低ければ、連続的な漸増用量で同じまたはより多量の複数の後続の用量の式Iの化合物を投与するステップとを、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の対象の投与後濃度が対象の基線濃度よりも低くなるか、または化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまで繰り返すステップをさらに含む。
【0117】
方法の別の実施形態では、投与後濃度がベースライン血中濃度よりも低くない場合、方法は、複数の連続的な漸増用量の式Iの化合物を、循環CD14+CD16+骨髄系細胞の対象の投与後濃度が対象のベースライン濃度よりも低くなるか、または化合物の事前に決定された最大用量が達成されるまでさらに投与するステップを含む。循環CD14+CD16+骨髄系細胞の対象の投与後濃度がベースラインより低くなることなく、化合物の最大用量が達成されるならば、方法はさらに、CD14+CD16+単球の投与後濃度が患者のベースライン濃度よりも低くない場合、対象をさらなる処置から外すステップを含み得る。
【0118】
5.8. 神経変性疾患の処置における化合物の有効性を評価する方法
別の態様では、次のナンバリングされた項目において記述されるとおり、神経変性疾患の処置における化合物の有効性を評価するための方法を提供する。
【0119】
1. 2-アリールベンゾイミダゾール部分によるヒト患者における神経変性疾患の処置における化合物の有効性を評価する方法であって、
(a) 健康なヒト対象から収集された全血において1種または複数のバイオマーカーのベースライン発現レベルを決定するステップと;
(b) 1種または複数の神経変性Fに罹患している患者から収集された全血において、ステップ(a)において利用されたのと同じバイオマーカーの1種または複数のベースライン発現レベルを決定するステップと;
(c) 健康なヒト対象から収集された全血において事前測定されたバイオマーカーのベースライン発現を、1つまたは複数の神経変性疾患に罹患している患者の全血から収集された同じバイオマーカーのベースライン発現レベルと比較するステップと;
(d) 2-アリールベンゾイミダゾール部分を、1つまたは複数の神経変性疾患に罹患している患者に投与するステップと;
(e) ステップ(b)において測定されたバイオマーカーのベースライン発現レベルからの処置後変化を測定するステップと
を含む方法。
【0120】
2. 2-アリールベンゾイミダゾール部分がTQS-168およびTQS-621から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0121】
3. バイオマーカーが炎症性表現型である、実施形態1に記載の方法。
【0122】
4. 炎症性表現型がCD14+CD16+である、実施形態1に記載の方法。
【0123】
5. 神経変性障害が、以下:アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、前頭側頭骨変性(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)、運動ニューロン疾患(MND)、および脱髄疾患のうちの1つまたは複数である、実施形態1に記載の方法。
【0124】
6. 2-アリールベンゾイミダゾール部分を患者に投与することにより神経変性疾患を処置する方法であって、用量設定により、患者に適切な治療投薬量を決定するために、
(a) 末梢循環CD14+およびCD16+単球/マクロファージの数;および/または
(b) 循環CD14およびCD16単球のパーセンテージ低下;および/または
(c) CD14+/CD16+比の変化
を使用することを含む方法。
5.9. 式(I)の2-アリールベンゾイミダゾール化合物
【0125】
本明細書に記載される方法において、2-アリールベンゾイミダゾール化合物は、式Iの化合物
【化19】
またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ素化類似体
[式中、
Arは
【化20】
であり;
W
1は、N-R
1、O、およびSから選択されるか、またはW
9がNである場合、W
1は、追加で、C-R
50であってもよく;
W
2は、C-R
2またはNであり;
W
3は、C-R
3またはNであり;
W
4は、C-R
4またはNであり;
W
5は、C-R
5またはNであり;
W
6は、C-R
6またはNであり;
W
7は、C-R
7またはNであり;
W
8は、C-R
8またはNであり;
W
9は、Cであるか、またはW
1がC-R
50である場合、W
9は、Nであってもよく;
R
1は、H、(C
1~C
3)アルキル、-CH
2OC(=O)R
30、-CH
2OP(=O)OR
40OR
41、-C(=O)OR
42、および-C(=O)R
43から選択され;
R
2、R
3、R
4、およびR
5は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)アシル、(C
1~C
4)アルコキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
4)アルキル、ヒドロキシ、カルボキシ、(C
1~C
4)アルコキシカルボニルアミノ、カルボキサミド、(C
1~C
4)アルキルアミノカルボニル、シアノ、アセトキシ、ニトロ、アミノ、(C
1~C
4)アルキルアミノ、ジ(C
1~C
4)アルキルアミノ、メルカプト、(C
1~C
4)アルキルチオ、アミノスルホニル、(C
1~C
4)アルキルスルホニル、および(C
1~C
4)アシルアミノから独立に選択され;
R
6およびR
10は、水素、ジュウテリウム、ハロ、(C
1~C
3)アルキル、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルキル、ヒドロキシ、(C
1~C
3)アルコキシ、ペルフルオロ(C
1~C
3)アルコキシ、およびアミノから独立に選択され;
R
7およびR
9は、水素、ジュウテリウム、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、
【化21】
から独立に選択され;
R
8は、水素、ジュウテリウム、ハロゲン、ハロ(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、ハロ(C
1~C
4)アルコキシ、シアノ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、
【化22】
から選択され;
R
30は、(C
1~C
10)ヒドロカルビル、アミノで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、(C
1~C
4)ヒドロカルビルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシルで置換されている(C
1~C
10)ヒドロカルビル、カルボキシ、(C
1~C
6)アルコキシカルボニル、(C
1~C
6)アルコキシカルボニルアミノ、メチルチオ、ヘテロシクリル、(C
1~C
10)オキサアルキル、CHR
44NHR
45およびグアニジンから選択され;
R
40およびR
41は、水素、(C
1~C
6)ヒドロカルビルから独立に選択され;
R
42は、(C
1~C
5)アルキルであり;
R
43は、(C
1~C
3)アルキルであり、
R
44は、任意の天然に存在するアミノ酸側鎖から選択され;
R
45は、H、メチル、および(C
1~C
4)アルコキシカルボニルから選択され;
R
50は、Hまたは(C
1~C
3)アルキルである。
[0001]
一部の実施形態では、式Iの化合物は、
【化23】
またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体から選択される。
【0126】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は、化合物1
【化24】
(ZLN-005またはTQS-168としても公知)、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体である。
【0127】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は、化合物4
【化25】
(TQS-621としても公知)、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体である。
【0128】
5.10. 循環骨髄系細胞の測定
本明細書において記載される方法の典型的な実施形態では、循環CD14+CD16+骨髄系細胞は単球である。
【0129】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、生体試料は全血である。ある特定の実施形態では、生体試料は、全血の区画または画分である。
【0130】
ある特定の実施形態では、CD14+CD16+循環骨髄系細胞の濃度を、生体試料においてCD14およびCD16ポリペプチド、CD14およびCD16mRNA、ならびにCD14およびCD16cDNAの少なくとも1つを測定することにより決定する。
【0131】
ある特定の実施形態では、CD14+CD16+単球の濃度を、CD14およびCD16ポリペプチドを測定することにより決定する。
【0132】
ある特定の実施形態では、試料におけるCD14+CD16+単球の濃度を、CD14またはCD16ポリペプチドに特異的に結合する1種または複数の試薬を使用することにより測定する。
【0133】
ある特定の実施形態では、試薬は、抗体、抗体誘導体、および抗原結合性抗体断片からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、抗体、抗体誘導体、抗原結合性抗体断片は、これらのアイソタイプの任意のサブクラスを含むIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM抗体であってよい。ある特定の実施形態では、抗体は、IgG抗体である。
【0134】
本明細書において記載される方法において、ある特定の実施形態では、CD14+CD16+単球の濃度をフローサイトメトリーにより決定する。
【0135】
本明細書において記載される方法において、ある特定の実施形態では、CD14およびCD16ポリペプチドのレベルを、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部の量を検出することにより決定する。本明細書において記載される方法において、ある特定の実施形態では、転写されたポリヌクレオチドはmRNAである。本明細書において記載される方法において、ある特定の実施形態では、転写されたポリヌクレオチドはcDNAである。本明細書において記載される方法において、ある特定の実施形態では、検出は、転写されたポリヌクレオチドまたはその一部を増幅することをさらに含む。
【0136】
5.11. 用量レジメンおよび剤形
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、式Iの化合物、またはその塩、水和物、重水素化類似体、もしくはフッ化類似体において、化合物を経口投与する。
【0137】
一部の実施形態では、化合物を錠剤として投与する。
【0138】
ある特定の実施形態では、投与される用量は約200mg~約800mgである。
【0139】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、投与される用量は約300mg~約700mgである。
【0140】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、投与される用量は約400mg~約600mgである。
【0141】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、用量は、400mg、450mg、または500mgである。
【0142】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、投与される用量は約100mg、120mg、140mg、160mg、180mg、200mg、220mg、240mg、260mg、280mg、300mg、320mg、340mg、360mg、380mg、400mg、420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、520mg、540mg、560mg、580mg、600mg、620mg、640mg、660mg、680mg、または700mgである。
【0143】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、投与される用量は100mg、120mg、140mg、160mg、180mg、200mg、220mg、240mg、260mg、280mg、300mg、320mg、340mg、360mg、380mg、400mg、420mg、440mg、460mg、480mg、500mg、520mg、540mg、560mg、580mg、600mg、620mg、640mg、660mg、680mg、または700mgである。
【0144】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、用量を毎日投与する。
【0145】
本明細書において記載される方法のある特定の実施形態では、用量を、単一の分割されていない用量として1日1回投与する。
【0146】
ある特定の実施形態では、用量を複数の分割された用量として投与する。ある特定の実施形態では、用量を1日おきに投与する。
【実施例】
【0147】
6. 実施例
本発明の意図および範囲から逸脱することなく、様々な変化を成すことができることは分かるであろう。本明細書を検討することで、多くの変形形態が当業者には明らかになるであろう。
【0148】
6.1.
(実施例1)
TQS-168は、野生型マウス由来の循環骨髄系細胞に対するLPSの炎症作用を抑制する(ex vivo)
in vitroで、野生型マウス由来の循環骨髄系細胞が炎症性表現型を採用するように誘導するために、リポ多糖(LPS)を使用した。次いで、細胞をin vitroで、TQS-168(2-(4-tert-ブチルフェニル)-1H-ベンゾイミダゾール)と共にインキュベートして、TQS-168がex vivo細胞培養において、LPS促進炎症性表現型の発生を抑制し得たか否かを評価した。
【0149】
図1Cにおいて図示されているとおり、野生型マウス由来の血液試料をEDTA管に収集し、LPSで刺激した。全血を37℃で、漸増濃度のTQS-168と共に5時間インキュベートした。全血をBD Bioscience製の溶解緩衝液で10分間、37℃で溶解した。溶解させた血液を500gで10分間遠心分離した。上清をデカンテーションし、細胞ペレットをハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で洗浄した。次いで、細胞を300gで10分間遠心分離した。続いて、それらを2mM EDTA FACS緩衝液に再懸濁した。固定された細胞(100μL)をPBSで洗浄した。細胞(100μL)をPBS(1:500希釈で、Zombie Aqua溶液(Biolegend)を含有)に再懸濁した。細胞を暗所で、室温で5分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液で洗浄した。細胞をCd11b、Ly6G、およびLy6C抗体(BD Bioscience)で染色した。次いで、細胞を抗体と共に30分間インキュベートした。次いで、それらをFACS緩衝液で洗浄し、次いで同じく、FACS緩衝液に再懸濁した。最後に、細胞をフローサイトメーターで捕らえた。
【0150】
図1Bに示されているとおり、LPS刺激は、Ly6C
hi炎症性単球のパーセンテージの約2.5%から約5%への2倍の上昇をもたらした。TQS-168を用いる予備インキュベーションは、Ly6C
hi単球のLPS誘導増加を阻害し、TQS-168が、LPSに対する急性炎症応答を阻害することを示している。
【0151】
6.2.
(実施例2)
TQS-168は、マウスにおいて経口で生体利用可能である。
単一の50mg/kg用量のTQS-168の後に、野生型マウスにおけるTQS-168の血漿中レベルを分析した。薬物動態研究の結果は、TQS-168がマウスにおいて経口で生体利用可能であることを示している。結果は
図2Aに示されている。
【0152】
6.3.
(実施例3)
TQS-168はSOD1マウスにおいて炎症性マーカーを抑制する
6.3.1. TQS-168は、SOD1マウスにおいて炎症性単球の画分を減少させる
SOD1-G93Aトランスジェニックマウスは、ALSの研究において有用なツールであることが証明されている。ALS症例の大部分は、スーパーオキシドジスムターゼ1遺伝子における家族性遺伝子変異による。SOD1-G93Aマウスは、ヒトSOD1プロモーターの制御下でG93A変異を有するヒトSOD1を発現する。そのマウスは、ヒトにおける筋萎縮性側索硬化症と同様の表現型を示す。
【0153】
ヒトSOD1-G93AのALSを引き起こす変異(ストック#002726)を過剰発現する60日齢のトランスジェニックマウスおよび野生型マウス(WT;C57BL/6J)をJackson Labsから入手した。胃管栄養による経口投薬を70日齢で開始した。SOD1マウスに、3日ごとのTQS-168 50mg/kg、またはビヒクル(同じ体積および頻度)のいずれかを投与した。マウスに投与し、評価するスタッフは、処置割り当てについて盲検にされた。血液試料を2つの時点:90日齢および安楽死の時にEDTA管に収集した。血液試料をフローサイトメトリーおよび血漿中サイトカイン分析のために処理した。用いられたフローサイトメトリー方法は、実施例1および実施例2において用いられたものと同じである。
【0154】
図3Aにおける結果は、SOD1マウスが野生型マウスよりも約5倍高いパーセンテージ(約2%対約11%)のLy6C
hi炎症性単球を有したことを示している。この上昇は、疾患進行と共に生じる炎症性サイトカインの増加と一致する。70日目から90日目まで3日ごとに経口胃管栄養により投与される50mg/kg TQS-168での処置は、SOD1マウスにおいてLy6C
hi単球の増加を阻害し、TQS-168がSOD1マウスにおいて単球の慢性炎症応答を阻害し得ることを実証した。
【0155】
6.3.2. TQS-168は、SOD1マウスにおいて抗炎症性および炎症誘発性サイトカインの血漿中レベルを調節する
血液試料をSOD1マウスから90日目および安楽死の時に収集した。血漿試料を、48-plex Procartaパネル(Thermo Fisher)を使用してアッセイした。
【0156】
図3Bは、SOD1マウスにおいて疾患が進行するにつれて、複数のサイトカイン(IL-6、IL-1β、TNFα、インターフェロンガンマ、CXCL5など)の血漿中レベルが90日目から安楽死の日まで上昇したことを示している。70日目から安楽死の日まで3日ごとの経口胃管栄養によるTQS-168 50mg/kgでの処置は、血漿中サイトカインのこの増加を阻害し、TQS-168がALSのSOD1マウスモデルにおいて幅広い抗炎症効果を有することを実証した。
【0157】
6.3.3. TQS-168はSOD1マウスの生存を改善する
ヒトSOD1-G93AのALSを引き起こす変異(ストック#002726)を過剰発現する60日齢のトランスジェニックマウスをJackson Labsから入手した。投薬を70日齢で開始した。SOD1マウスに、3日ごとのTQS-168 50mg/kg、またはビヒクル(同じ体積および頻度)のいずれかを経口胃管栄養により投与した。立ち直り反射(仰向けに置かれた場合に反転する能力)を、マウスが110日齢未満では3日ごとに、110日齢後には毎日評価した。仰向けに置いた後に20秒以内に立ち直ることができなかったら、マウスを安楽死させた。誕生から安楽死までの時間を各マウスで計算し、2つの群で比較した。
【0158】
TQS-168を投与されたマウスは、ビヒクルを投与されたマウスよりも長く生存した。メジアン生存の差は6日であった(ビヒクルで129およびTQS-168で135)。
図4A~Bにおいて示されている結果は、リルゾールおよびエダラボンなどのALSのために承認された処置が延命効果を呈することに失敗しているモデルにおいて、生存を増大させるTQS-168の能力を実証している。
【0159】
6.4. TQS-168は、ALS患者からの循環骨髄系細胞の炎症性表現型を抑制する
6.4.1. ALS患者において、循環CD14+CD16+細胞が増加する
ALSを有する患者からの全血試料は室温で輸送された。CD14+CD16+単球のパーセンテージを蛍光活性化細胞選別(FACS)により決定した。
【0160】
簡単に述べると、全血を溶解緩衝液(BD Bioscience)で10分間、37℃で溶解させた。溶解させた血液を500gで10分間遠心分離した。上清をデカンテーションし、細胞ペレットをHBSS(ハンクス平衡塩類溶液)で洗浄した。細胞を300gで10分間遠心分離した。細胞をFACS緩衝液(PBS+2% FBS=2mM EDTA)に再懸濁した。固定された細胞(100μL)をPBSで洗浄した。細胞(100μL)をZombie Aquaを含有するPBS(Biolegend;1:500希釈)に再懸濁した。細胞を暗所で、室温で5分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で洗浄した。細胞をCD16抗体5μLおよびCD14抗体5μL(BD Bioscience製)で染色した。細胞を抗体と共に30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で洗浄した。細胞をFACS緩衝液に再懸濁した。細胞をフローサイトメーターで捕らえた。
【0161】
ヒト単球は、3つの主なサブセット:古典的(CD14
hi CD16
lo)、中間型(CD14
hi CD16
hi)および非古典的(CD14
lo CD16
hi)に分けることができる。中間型単球(CD14
+CD16
+とも慣用的に呼ばれる)は、炎症誘発性であり、ある特定の疾患状態において増加すると考えられる。
図5Aにおいて示されているとおり、本発明者らの実験において、健康なドナー(n=2)は約0.5%の中間型単球(総単球集団のうち)を有し、ALSを有する患者(n=3)は約1.5%を有した。
【0162】
6.4.2. TQS-168は、炎症性CD14+CD16+単球発現を減少させる
図5Bは、ALS患者の末梢血試料において、循環骨髄系細胞の炎症性表現型に対するTQS-168を用いるex vivoインキュベーションの作用を評価するための実験プロトコールを概説している。試料をiSpecimen社(Lexington、MA)およびBioIVT社(Westbury、NY)から入手した。血液試料を収集から36時間以内に処理し、凍結させなかった。FACS分析を、本質的にセクション6.4.1において上記されたとおりに行った。
【0163】
図5Cは、漸増濃度のTQS-168を用いるALS患者の末梢血試料の4時間ex vivoインキュベーションの結果を示す棒グラフである。TQS-168を用いる4時間インキュベーションは、ALS患者の全血中の中間型(CD14+CD16+)単球のパーセンテージの用量依存的低下を引き起こし、TQS-168の最高濃度30μMでは、CD14+CD16+単球を1.5%から1%未満に低下させた。
【0164】
この作用は、SOD1マウスへのTQS-168の経口投与が、ビヒクル処置マウスと比較した場合に末梢循環における炎症性単球の減少を引き起こす実施例3(
図3A)において観察されたin vivo作用と一致する。
【0165】
7. 均等物および参照による援用
本発明を好ましい実施形態および様々な代替実施形態に関して詳細に示し、記載してきたが、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、その形態および詳細の様々な変更が成され得ることは関連分野の当業者には理解されるであろう。
【0166】
本明細書の本文内で引用されたすべての参照文献、発行済みの特許および特許出願は、あらゆる目的のために、それらの全体で参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】