IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノルディック バイオサイエンス エー/エスの特許一覧

<>
  • 特表-XXII型コラーゲンアッセイ 図1
  • 特表-XXII型コラーゲンアッセイ 図2
  • 特表-XXII型コラーゲンアッセイ 図3
  • 特表-XXII型コラーゲンアッセイ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】XXII型コラーゲンアッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20241106BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20241106BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20241106BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241106BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01N33/574 A ZNA
G01N33/577 B
C07K16/18
C12N15/13
C12M1/34 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526602
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022080910
(87)【国際公開番号】W WO2023079130
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2116008.0
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522403778
【氏名又は名称】ノルディック バイオサイエンス エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マドセン,エミリー アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ソーラシウス‐ウッシング,ジェッペ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルムセン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】カルスダル,モルテン アッサー
【テーマコード(参考)】
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB17
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA51
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、イムノアッセイ、特には患者においてがんを検出するかつ/もしくは監視するためのイムノアッセイ、ならびに/または上記イムノアッセイの実行に使用するためのモノクローナル抗体およびイムノアッセイキットに関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるがんを検出するかつ/または監視するためのイムノアッセイの方法であって、
i)患者由来のサンプルをC末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)に特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させることと、
ii)前記サンプル中の前記モノクローナル抗体とペプチドの間の結合の量を検出するかつ決定すること
を含む、方法。
【請求項2】
iii)ステップii)で決定された前記モノクローナル抗体の結合の量を正常な健常対象と関連した値と、および/または既知の疾患重症度と関連した値と、および/または以前の時点で前記患者から得た値と、および/または所定のカットオフ値と相関させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記がんが、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、メラノーマ、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、または胃がんである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、膵がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
全生存期間の予後を提供することをさらに含む請求項4に記載の方法であって、既知の膵がん患者と関連した中央値を超えるステップii)で決定された前記モノクローナル抗体の結合の量が、不十分な全生存期間と関連する、方法。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体が、AARPGNVKGPA(SEQ ID No. 3)である前記C末端アミノ酸配列の伸長されたバージョンに特異的に結合しない、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体が、AARPGNVKG(SEQ ID No. 4)である前記C末端アミノ酸配列のトランケートされたバージョンに特異的に結合しない、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体が、C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)を有する合成ペプチドに対して産生される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、血液、血清、または血漿から選択される生体液サンプルである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記イムノアッセイが、競合アッセイまたはサンドイッチアッセイである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記イムノアッセイが、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着測定法である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)に特異的に結合するモノクローナル抗体と、
ストレプトアビジンでコートされたウェルプレート、
Lが任意選択的なリンカーである、ビオチン化されたペプチド ビオチン-L-AARPGNVKGP(SEQ ID No. 15)、
サンドイッチイムノアッセイにおける使用のための二次抗体、
C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)を含むキャリブレータータンパク質、
抗体ビオチン化キット、
抗体HRPラベリングキット、
抗体放射標識キット、および
アッセイ可視化キット
の少なくとも1つ
を含むイムノアッセイキット。
【請求項13】
前記モノクローナル抗体が、ARPGNVKGPA(SEQ ID No. 3)である前記C末端アミノ酸配列の伸長されたバージョンに特異的に結合しない、請求項12に記載のイムノアッセイキット。
【請求項14】
前記モノクローナル抗体が、AARPGNVKG(SEQ ID No. 4)である前記C末端アミノ酸配列のトランケートされたバージョンに特異的に結合しない、請求項12または13に記載のイムノアッセイキット。
【請求項15】
前記モノクローナル抗体が、C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)を有する合成ペプチドに対して産生される、請求項12~14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項16】
C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)に特異的に結合するモノクローナル抗体。
【請求項17】
前記モノクローナル抗体が、ARPGNVKGPA(SEQ ID No. 3)である前記C末端アミノ酸配列の伸長されたバージョンに特異的に結合しない、請求項16に記載のモノクローナル抗体。
【請求項18】
前記モノクローナル抗体が、AARPGNVKG(SEQ ID No. 4)である前記C末端アミノ酸配列のトランケートされたバージョンに特異的に結合しない、請求項16または17に記載のモノクローナル抗体。
【請求項19】
前記モノクローナル抗体が、C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)を有する合成ペプチドに対して産生される、請求項16~18のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノアッセイ、特には患者においてがんを検出するかつ/もしくは監視するためのイムノアッセイ、ならびに/または上記イムノアッセイの実行に使用するためのモノクローナル抗体およびイムノアッセイキットに関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、世界的に主要な健康上の問題であり、米国単独で2021年に600.000超のがん死亡をもたらすと推定されている[1]。継続的な研究および進歩にもかかわらず、がんの負担は持続している。がん患者に対する火急のニーズの1つは、良好で非侵襲的な診断用および予後診断用のバイオマーカーである。従来の組織ベースの手法とは対照的に、血液ベースのバイオマーカーは、組織生検を必要とせず、それほど侵襲性でなく、その結果不快感および合併症が少ない[2],[3]。
【0003】
腫瘍内微小環境は、がんの発達に複雑に関わっており、近年、がんの従来の特徴と並び認識されている[4]。腫瘍内微小環境は、がん細胞および周囲の間質を含む。間質の中には、免疫系の様々な細胞および繊維芽細胞がある。繊維芽細胞は、大部分の組織の大きな非細胞性構成要素である細胞外マトリックス(ECM)の鍵となる成分である、コラーゲンの産生に寄与している。ECMは、腫瘍の周辺に蓄積し、増殖を封入するマトリックスの周囲層を形成し得、がんに挑む免疫細胞または薬物の能力を阻害し得る[5]。健常な組織では、ECMの成分は、常に産生され、微細な均衡にて分解される。しかしながらがんでは、この代謝回転の均衡は歪められている[6],[7]。
【0004】
コラーゲンは、今日まで28種が同定されており、ラミニン、プロテオグリカン、および糖タンパク質と併せてECMの主要な構成要素である。コラーゲンは、上皮細胞および内皮細胞の基底側の基底膜(BM)から間質内マトリックス(IM)内へ広がる。BMとIMの間の界面における基底膜領域には、FACIT(断続性三重らせんを有する線維付随性コラーゲン)などのいわゆる希少コラーゲンがいくつか存在する。コラーゲンのFACITファミリーは、それらがコラーゲンの繊維と他のECM成分の間の相互作用を媒介するため、架橋として機能すると提案されている。このようにして、それらは、ECMの組織化および安定性を支援する[7],[8]。XXII型コラーゲン(COL22)は、希少コラーゲンであり、コラーゲンのEACITファミリーのメンバーである。COL22は、筋肉、軟骨、心臓、皮膚の組織接合部の部位で発現され、血管の安定性の維持に関連していることが知られている[9],[10]。COL22はまた、頭頸部の扁平上皮癌(HNSCC)における予後上の価値を有しており、ここでCOL22A1のmRNA発現は、リンパ節の転移を有する事例において有意に増大していた。さらに、mRNA発現レベルは、早期疾患再発に有意に関連しており、COL22A1 mRNAのアップレギュレーションは、無病生存期間の減少に関連していた[11]。個別に、COL22は、皮膚由来細胞および肺由来細胞(腺癌性ヒト肺胞基底上皮細胞(basal epithelial cells)、A549細胞を含む)の両方を使用して、トランスフォーミング増殖因子βに対する早期応答遺伝子として、ヒトのex vivoモデルおよびin vivoモデルにおいて同定された。COL22A1のこの誘導は、mRNAおよびタンパク質のレベルの両方で有意に増大された[12]。いくつかのFACITについて、これらのうち特にXVI、XX、およびXXII型コラーゲンは、それらが発達および/または組織修復のあいだにより顕著であることが観察されている[13],[14],[15]。
【0005】
がんにおけるCOL22の役割は、本発明者らにより調査されており、いくつかの類似点が、がんと発達、ならびに組織修復の間で存在することが示唆されている。
【発明の概要】
【0006】
本出願人はここで、血液中のXXII型コラーゲンのバイオマーカー(本明細書中「PRO-C22」と呼ばれる)の存在を定量化するための酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を開発した。本アッセイは、がん患者および健常対照の血清中の循環するXXII型コラーゲンのレベルを決定するために、最適化され、検証され、および使用された。本アッセイは、XXII型コラーゲンに対する特異性に関して、ならびに健常対照および疾患(がん)を有する患者の両方におけるレベルを検出するための感受性に関して、非常に強力であることが見いだされた。データは、PRO-C22のレベルが、健常対照と比較してがん患者の血清において有意に高いことを示している。
【0007】
よって、第1の態様では、本発明は、イムノアッセイの方法を提供し、方法は、
i)患者由来のサンプルをC末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)(C末端アミノ酸配列は、本明細書中「PRO-C22」および/または「標的配列」と呼ばれ、上記C末端アミノ酸配列からなるかまたはこれを含むペプチドもまた、本明細書中「PRO-C22」および/または「標的配列」と呼ばれる)に特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させることと、
ii)前記サンプル中の前記モノクローナル抗体とペプチドの間の結合の量を検出することかつ決定すること
を含む。
【0008】
本方法は好ましくは、患者において疾患を検出するかつ/または監視するためのイムノアッセイの方法である。本方法は好ましくは、
iii)ステップii)で決定された上記モノクローナル抗体の結合の量を、正常な健常対象と関連した値と、および/または既知の疾患重症度と関連した値と、および/または以前の時点で上記患者から得た値と、および/または所定のカットオフ値と相関させること
をさらに含む。
【0009】
好ましい実施形態では、疾患は、がんである。がんは、たとえば膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、メラノーマ、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、または胃がんである。好ましくは、がんは、膵がんである。
【0010】
患者が膵がんを有する場合、本方法は、全生存期間の予後を提供するために使用され得る。よって、本方法は、全生存期間の予後を提供することを含んでよく、既知の膵がん患者と関連した中央値(50パーセンタイル)を超えるステップ(ii)で決定された上記モノクローナル抗体の結合の量が、不十分な全生存期間と関連する。中央値(50パーセンタイル)未満の結合量は、改善された全生存期間と関連する。
【0011】
好ましい実施形態では、モノクローナル抗体は、AARPGNVKGPX(SEQ ID No. 2)(Xは任意のアミノ酸である)である、標的配列の伸長されたバージョン(すなわちアミノ酸の付加によりそのC末端で伸長されたPRO-C22標的配列のバージョン)に特異的に結合しない。好ましくは、XはAであり、標的配列の伸長されたバージョンは、AARPGNVKGPA(SEQ ID No. 3)(すなわちアラニンの付加によりそのC末端で伸長されたPRO-C22標的配列のバージョン)である。好ましくは、PRO-C22標的配列に対する上記抗体の親和性対標的配列の伸長されたバージョンに対する上記抗体の親和性の比率は、少なくとも10対1、より好ましくは少なくとも20対1または少なくとも30対1である。
【0012】
好ましい実施形態では、モノクローナル抗体は、AARPGNVKG(SEQ ID No. 4)である、標的配列のトランケートされたバージョン(すなわち、最後のプロリン残基の除去によりトランケートされたPRO-C22標的配列のバージョン)に特異的に結合しない。好ましくは、PRO-C22標的配列に対する上記抗体の親和性対標的配列のトランケートされたバージョンに対する上記抗体の親和性の比率は、少なくとも10対1、より好ましくは少なくとも20対1または少なくとも30対1である。
【0013】
好ましくは、モノクローナル抗体は、C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)を有する合成ペプチドに対して産生されるモノクローナル抗体である。
【0014】
疾患が患者で検出されると、本方法は、患者に対し適切な処置を行うステップをさらに含み得る。たとえば、当該疾患ががんである場合、そのがんに関して既知の処置、たとえば化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、幹細胞移植、外科手術、標的療法、またはそれらの組み合わせが、行われ得る。
【0015】
サンプルは好ましくは、生体液である。生体液は、限定するものではないが、血液、血清、血漿、尿、または細胞もしくは組織培養物由来の上清であり得る。好ましくは、生体液は、血液、血清、または血漿である。
【0016】
イムノアッセイは、限定するものではないが、競合アッセイまたはサンドイッチアッセイであり得る。イムノアッセイは、たとえば、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)であり得る。このようなアッセイは、当業者に既知の技術である。
【0017】
本明細書中で使用される、用語ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)は、サンプル中に存在する標的ペプチド(もし存在する場合)が、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素に連結された抗体を使用して検出される、イムノアッセイを表す。酵素の活性はよって、測定可能な産物を産生する基質とのインキュベーションにより評価される。サンプル中の標的ペプチドの存在および/または量はそれにより、検出されかつ/または定量化され得る。ELISAは、当業者に既知の技術である。
【0018】
本明細書中使用される、用語「競合ELISA」は、競合酵素結合免疫吸着測定法を表す。「競合ELISA」において、サンプル中に存在する標的ペプチド(もし存在する場合)は、抗体を結合することに関して、標的のペプチドの既知の量(それは、たとえば固定された基質に結合されるまたは標識される)と競合し、当業者に既知の技術である。
【0019】
本明細書中使用される、用語「サンドイッチイムノアッセイ」は、サンプル中の抗原の検出のための少なくとも2つの抗体の使用を表し、当業者に既知の技術である。
【0020】
本明細書中使用される、用語「結合の量」は、患者のサンプル中のモノクローナル抗体とペプチドの間の結合の定量化を表す。上記定量化はたとえば、それに対し抗体が特異的に結合するペプチドの既知の濃度を含む標準サンプル中で測定された結合の値を使用して作成された検量線に対し、患者のサンプル中で測定された結合の値を比較することにより決定され、それにより患者のサンプル中でそれに対し抗体が特異的に結合するペプチドの量を決定し得る。以下に記載される実施例では、ELISA法が使用され、ここでは分光光度的な解析を使用して患者のサンプル中の結合の量および検量線を作成する場合の結合の量を測定する。しかしながら、任意の適切な方法を使用できる。
【0021】
本明細書中使用される、用語「所定のカットオフ値」は、統計上のカットオフ値以上である患者のサンプル中の標的ペプチドの測定された値が、疾患またはその特定の重症度の存在の少なくとも70%の確率、好ましくは少なくとも75%の確率、好ましくは少なくとも80%の確率、より好ましくは少なくとも85%の確率、より好ましくは少なくとも90%の確率、および最も好ましくは少なくとも95%の確率に対応する点で、患者における上記疾患またはその特定の重症度の高い尤度を表すと統計的に決定される結合の量を意味する。
【0022】
本明細書中使用される、用語「正常な健常対象と関連した値」は、健常である、すなわち疾患を有しないとみなされる対象由来のサンプルについて上述の方法により決定された結合の標準化された量を意味し、用語「既知の疾患の重症度または予後と関連した値」は、既知の重症度の疾患を有すると知られている患者由来のサンプルについて上述の方法により決定された結合の標準化された量を意味する。
【0023】
本明細書中使用される、用語「C末端」は、ポリペプチドの末端での、すなわちポリペプチドのC末端の端部でのC末端ペプチド配列を表し、その一般的な方向での意味として解釈すべきではない。
【0024】
本明細書中使用される、用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、同意語として使用される。
【0025】
本明細書中使用される、用語「モノクローナル抗体」は、全抗体および全抗体の結合特異性を保持するそのフラグメント、たとえばFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、単鎖Fvフラグメント、または当業者に既知の他のこのようなフラグメント、の両方を表す。よく知られているように、全抗体は通常、各対が1つの「軽」鎖および1つの「重」鎖から構成される、同一の2対のポリペプチド鎖である「Y字型の」構造を有する。各軽鎖および重鎖のN末端領域は、可変領域を含み、一方で重鎖および軽鎖のそれぞれのC末端部は、定常領域を構成する。可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、それらは主に、抗原認識に寄与する。定常領域は、抗体が免疫系の細胞および分子を動員できるようにする。結合特異性を保持する抗体フラグメントは、少なくともCDRおよび上記結合特異性を保持するために十分な可変領域の残りの部分を含む。
【0026】
本発明の方法では、当該分野で既知のいずれかの定常領域を含むモノクローナル抗体が、使用され得る。ヒト定常軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖と分類される。重鎖定常領域は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンと分類され、それぞれgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のアイソタイプを定義する。IgGアイソタイプは、限定するものではないがIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む、いくつかのサブクラスを有する。モノクローナル抗体は好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のいずれかを含む、IgGアイソタイプであり得る。
【0027】
抗体のCDRは、Kabatら[18]により記載されるものなどの、当該分野で既知の方法を使用して決定され得る。抗体は、実施例に記載されるようにB細胞のクローンから作製され得る。抗体のアイソタイプは、ヒトIgM、IgG、またはIgAのアイソタイプ、またはヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のサブクラスに特異的なELISAにより決定され得る。作製された抗体のアミノ酸配列は、標準的な技術を使用して決定され得る。たとえば、RNAは、細胞から単離され、逆転写によりcDNAを作製するために使用され得る。cDNAは次に、抗体の重鎖および軽鎖を増幅するプライマーを使用するPCRに供される。たとえば、全てのVH(可変重鎖)配列に対するリーダー配列に特異的なプライマーは、以前に決定されているアイソタイプの定常領域に位置する配列に結合するプライマーと共に使用され得る。軽鎖は、VκまたはVλリーダー配列にアニールするプライマーと共に、κ鎖またはλ鎖の3´末端に結合するプライマーを使用して増幅され得る。完全長の重鎖および軽鎖が、作製されおよび配列決定され得る。
【0028】
第2の態様では、本発明は、C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)に特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。モノクローナル抗体は、本発明の第1の態様に係るイムノアッセイでの使用に適しており、本発明の第2の態様に係るモノクローナル抗体の好ましい実施形態および他の任意選択的な実施形態は、本発明の第1の態様ならびにその好ましい実施形態および他の任意選択的な実施形態での使用のためのモノクローナル抗体の上記の論述から明らかである。
【0029】
C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)に特異的に結合するモノクローナル抗体は、当該分野で既知のいずれかの適切な技術を介して作製され得る。たとえば、モノクローナル抗体は、たとえばげっ歯類(または他の適切な哺乳類)を、任意選択で免疫原性担体タンパク質(たとえばキーホールリンペットヘモシアニン)に連結され得る、配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)からなる合成ペプチドで免疫処置すること、単一の抗体産生細胞を単離することかつクローニングすること、および得られたモノクローナル抗体をアッセイしてこれらが望ましい特異性を有することを確かめることにより、アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)を有する合成ペプチドに対して産生され得る。C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコルは、以下に記載される。
【0030】
好ましくは、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは好ましくは、
CDR-L1: KASQDIYSSLS(SEQ ID No. 5)
CDR-L2: RANRLIN(SEQ ID No. 6)および
CDR-L3: LQYDDFPYM(SEQ ID No. 7)
CDR-H1: TYGVH(SEQ ID No. 8)
CDR-H2: AIWRGGSTDYNPAFMS(SEQ ID No. 9)および
CDR-H3: RSTLFYFDY(SEQ ID No. 10)
から選択される1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含み得る。
【0031】
好ましくは、抗体またはそのフラグメントは、少なくとも2、3、4、5、または6つの上に列挙されたCDR配列を含む。
【0032】
好ましくは、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、CDR配列
CDR-L1: KASQDIYSSLS(SEQ ID No. 5)
CDR-L2: RANRLIN(SEQ ID No. 6)および
CDR-L3: LQYDDFPYM(SEQ ID No. 7)
を含む軽鎖可変領域を有する。
【0033】
好ましくは、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、CDR間にフレームワーク配列を含む軽鎖を有し、上記フレームワーク配列は、以下の軽鎖配列のCDR間のフレームワーク配列と実質的に同一であるまたは実質的に類似している(ここではCDRは太字および下線により示され、フレームワーク配列はイタリック体で示される)。
【化1】
【0034】
好ましくは、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、CDR配列
CDR-H1: TYGVH(SEQ ID No. 8)
CDR-H2: AIWRGGSTDYNPAFMS(SEQ ID No. 9)および
CDR-H3: RSTLFYFDY(SEQ ID No. 10)
を含む重鎖可変領域を有する。
【0035】
好ましくは、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、CDR間にフレームワーク配列を含む重鎖を有し、ここで上記フレームワーク配列は、以下の重鎖配列のCDR間のフレームワーク配列と実質的に同一であるまたは実質的に類似している(ここではCDRは太字および下線により示され、フレームワーク配列はイタリック体で示される)。
【化2】
【0036】
本明細書中使用される、抗体のCDR間のフレームワークアミノ酸配列は、それらが少なくとも70%、80%、90%、または少なくとも95%の類似性または同一性を有する場合、別の抗体のCDR間のフレームワークアミノ酸配列と実質的に同一であるまたは実質的に類似している。類似のまたは同一のアミノ酸は、連続的または非連続であり得る。
【0037】
フレームワーク配列は、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を含み得る。アミノ酸の置換は、保存的であり得、これは置換されたアミノ酸が元のアミノ酸と類似の化学的特性を有することを意味する。当業者は、どのアミノ酸が類似の化学的な特性を共有するかを理解している。たとえば、以下のアミノ酸のグループは、大きさ、電荷、および極性などの類似の化学的な特性を共有する:グループ1 Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;グループ2 Asp、Asn、Glu、Gln;グループ3 His、Arg、Lys;グループ4 Met、Leu、Ile、Val、Cys;グループ 5 Phe Thy Trp。
【0038】
CLUSTALプログラムなどのプログラムが、アミノ酸配列を比較するために使用され得る。このプログラムは、適宜いずれかの配列中にスペースを挿入することによりアミノ酸配列を比較し最適なアライメントを見出す。最適なアライメントのためアミノ酸の同一性または類似性(同一性+アミノ酸のタイプの保存)を計算することが可能である。BLASTxのようなプログラムは、類似の配列の最長の範囲を整列し、値を適合に割り当てる。よって、それぞれが異なるスコアを有する、類似するいくつかの領域が見いだされる比較を得ることが可能である。両方の種類の解析が、本発明で企図される。同一性または類似性は好ましくは、フレームワーク配列の全長にわたり計算される。
【0039】
特定の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、軽鎖可変領域配列:
【化3】
【化4】
【0040】
第3の態様では、本出願は、第2の態様に係るモノクローナル抗体と、
ストレプトアビジンでコートされたウェルプレート、
Lが任意選択的なリンカーである、ビオチン化されたペプチド ビオチン-L-AARPGNVKGP(SEQ ID No. 15)、
サンドイッチイムノアッセイでの使用のための二次抗体、
C末端アミノ酸配列AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1)を含むキャリブレータータンパク質、
抗体ビオチン化キット、
抗体HRPラベリングキット、
抗体放射標識キット、および
アッセイ可視化キット
の少なくとも1つ
を含むイムノアッセイキットに関する。
【0041】
ここで本発明を、以下の図面を参照する実施例で記載する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、PRO-C22 ELISAの特異性を示す。ビオチン化されたコーティングペプチド(ビオチン-AARPGNVKGP(SEQ ID No. 15))の用量依存的な阻害、ならびにそれぞれ30(GPPGPPGQCDPSQCAYFASLAARPGNVKGP(SEQ ID No. 16))および10(AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1))のアミノ酸残基(AA)の標準ペプチドに特異的なアッセイによるモノクローナル抗体の相互作用。C末端からペプチド配列をトランケート(AARPGNVKG(SEQ ID No. 4))または伸長(AARPGNVKGPA(SEQ ID No. 3))した場合、阻害は観察されなかった。ナンセンスな30AAペプチドPGMRGMPGSPGGPGSDGKPGPPGSQGESGR(SEQ ID No. 17)は、阻害効果を有さず、アッセイ特異的な30AAの標準ペプチドと組み合わせたナンセンスコーティングペプチドPPGSQGESGR-ビオチン (SEQ ID No. 18)の付加は、相互作用に関して効果を呈しなかった。エラーバーは、がん患者の血清中の標準PRO-C22を表す。
図2図2は、健常対照(n=33)、ならびに膀胱がん(n=20)、乳がん(n=20)、結腸直腸がん(n=20)、頭頸部がん(n=20)、腎臓がん(n=20)、肺がん(n=20)、メラノーマ(n=20)、卵巣がん(n=20)、膵がん(n=20)、前立腺がん(n=20)、および胃がん(n=20)の血清中のPRO-C22の定量化を示す。PRO-C22のレベルは、個々に提示され、バーは、散布図としての平均値を付す。LLOQ未満を測定したサンプルには、PRO-C22の検証で決定されたLLOQ値を与えた。****は、0.0001未満の値を表す。***は0.001未満。**は0.01未満。
図3図3は、BIOPACコホートに登録された患者由来の血清で測定したPRO-C22レベルを示す。(左)PDAC患者(n=39)のPRO-C22レベルは、健常対照(n=20)と比較して有意に高かった。
図4図4は、高いPRO-C22(中央値:50パーセンタイルを超える)が、膵がんの不十分な全生存期間と有意に関連していることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
実施例
本発明の開示される実施形態は、以下の実施例で記載され、これは、本開示の理解を支援するように記載され、本明細書中以下に続く特許請求の範囲に定義される開示の範囲をいかなる方法によっても限定するように解釈すべきではない。以下の実施例は、記載の実施形態の作製方法および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するように提示され、本開示の範囲を限定するようには意図されず、以下の実験が全てであるかまたは最適な実験が行われたことを表すようには意図されない。使用される数(たとえば量、温度など)に関する正確性を保つよう試みがなされているが、いくらかの実験上の誤差および偏差は考慮されるべきである。他の記載がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は、大気圧付近である。
【0044】
材料および方法
PRO-C22を標的とするモノクローナル抗体の作製
XII型コラーゲン(UniprotKB:Q8NFW1)のC末端に対応する10アミノ酸ペプチド1616AARPGNVKGP1626(SEQ ID No. 1)を、Genscript(Piscataway, NJ, USA)から購入し、免疫処置のため使用した。
【0045】
6週齢の雌性のBalb/Cマウスに、乳化したKLH-CGGコンジュゲート免疫原性ペプチド(KLH-CGG-AARPGNVKGP(SEQ ID No. 19))を皮下注射した。これを、スルホスクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、SMCC(Thermo Scientific, Waltham, MA, USA, cat.no. 22322)を使用して、標的ペプチドをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)担体タンパク質に共有結合的に架橋することにより作製した。グリシン残基およびシステイン残基をN末端に付加して、担体タンパク質の正しい連結を確実にした。Sigma Adjuvant System (Sigma cat. No. S6322)と混合した100μgの免疫原性ペプチドを含む200μlの乳化した抗原を使用する免疫処置を、安定な血清力価のレベルが達成されるまで2週間間隔で行った。最も高い力価を有したマウスを、4週間休息させ、次に静脈内に00μgの免疫原性ペプチドを含む0.9%のNaCl溶液100μlをブーストし、終了させた。
【0046】
ハイブリドーマ細胞を、以前に記載されるように(Gefter, Margulies and Scharff, 1977)、脾臓細胞をSP2/0メラノーマ細胞と融合することにより産生した。得られたハイブリドーマ細胞を次に、96ウェルのマイクロタイタープレートで培養し、サブクローニングを、細胞の限界希釈の間に行った。選択されたモノクローナル細胞を、24ウェルプレートに播種し、次にT25フラスコ、次いでT75フラスコ中で、最後にT150フラスコ中で増殖させ、その後、上清を回収した。約500mLを、製造社の指示(GE Healthcare Life Sciences, Little Chalfont, UK, cat. #17-0404-01)にしたがいタンパク質Gカラムを使用して、回収しおよび精製した。
【0047】
作製した抗体を配列決定し、CDRを決定した。総RNAを、RNA-easy Isolation Reagentの技術的マニュアルに従い、ハイブリドーマ細胞から単離した。総RNAを次に、、SMARTScribe Reverse Transcriptaseの技術的マニュアルに従いアイソタイプに特異的なアンチセンスプライマーまたはユニバーサルプライマーを使用してcDNAへと逆転写した。VHおよびVLの抗体フラグメントを、GenScriptのRACE(rapid amplification of cDNA ends)の標準作業手順書(standard operating procedure:(SOP)にしたがい増幅した。増幅した抗体フラグメントを、別々に標準的なクローニングベクター中にクローニングした。コロニーPCRを行って、正確な大きさのインサートを有するクローンをスクリーニングした。正確な大きさのインサートを有する5以上のコロニーを、各フラグメントに関して配列決定した。異なるクローンの配列を整列し、これらクローンのコンセンサス配列を提供した。
【0048】
鎖の配列は、以下の通りである(CDR:太字;フレームワーク配列:イタリック体;定常領域:下線)。
【化5】
【0049】
【化6】
【0050】
PRO-C22 ELISAのプロトコル
最終的なPRO-C22のプロトコルを、以下のように行った:96ウェルのストレプトアビジンでコートしたELISAプレートを、アッセイバッファー(25mMのTBS、1%のBSA(w/v)、0.1%のTween-20(w/v)、2g/LのNaCl,pH8.0)に溶解した20ng/mLのビオチン化されたAARPGNVKGP(ビオチン-AARPGNVKGP(SEQ ID No. 15))ペプチドで100μl/ウェルにてコートし、300RPMにて振とうしながら20℃で30分間インキュベートした。洗浄バッファー(25mMのTris、50mMのNaCl、pH7.2)で5回洗浄した後、20μL/ウェルのサンプルを、二連で添加し、その後、アッセイバッファー中35ng/mLのHRPで標識したモノクローナル抗体を、100μl/ウェルで添加し、300RPMにて振とうしながら4℃で20時間インキュベートした。第2の洗浄サイクルを行い、100μL/ウェルの3,3´,5,5´-テトラメチルベンジジン(TMB)を添加し、300RPMにて振とうしながら20℃の暗室にてインキュベートした。この反応を、1%のHSOを100μl/ウェルにて添加することにより停止させた。吸光度を、参照として650nmを用いて450nmで測定した。標準曲線を、2倍に段階希釈された125ng/mLのGPPGPPGQCDPSQCAYFASLAARPGNVKGP(SEQ ID No. 16)標準ペプチドを20μl/ウェルにて使用することにより作製した。4パラメーターロジスティック回帰モデルを使用して曲線を適合させた。各プレートは、アッセイバッファー中のペプチドである2つのキット対照、ならびに1つのヒト血清サンプル、1つのブタ血清サンプル、および1つの滑液サンプルを含む3つのクオリティコントロールサンプルを含んだ。
【0051】
PRO-C22 ELISAの技術的バリデーション
抗体の特異性を、シグナル阻害により評価した。2つのバージョンの選択ペプチド、10アミノ酸(AA)バージョンAARPGNVKGP(SEQ ID No. 1))および30AAバージョン(GPPGPPGQCDPSQCAYFASLAARPGNVKGP(SEQ ID No. 16))を使用し、これらをトランケートされたバージョン(AARPGNVKG(SEQ ID No. 4))および伸長されたバージョン(AARPGNVKGPA(SEQ ID No. 3))と比較し、ナンセンスなビオチン化ペプチド(PGMRGMPGSP-ビオチン(SEQ ID No. 22))およびナンセンスな標準ペプチド(PGMRGMPGSPGGPGSDGKPGPPGSQGESGR(SEQ ID No. 17))を試験した。
【0052】
アッセイの線形範囲の濃度限度として定義される、測定範囲の下限および上限(LLMRおよびULMR)を、10個の独立した実行を通して決定した。これらの実行から、アッセイ間およびアッセイ内のバリエーションを、LLMR-ULMRの測定範囲をカバーする10のサンプルに基づき決定した。10のサンプルは、2つのキット対照および3つのクオリティコントロールのサンプルに加え、3つのヒト血清サンプル、2つのアッセイバッファー中のペプチドを含んだ。アッセイ内のバリエーションを、プレート内の平均変動係数(CV%)として計算した。アッセイ間のバリエーションを、プレート間の平均CV%として計算した。10の実行から、定量の上限(ULOQ)を、この回収率(RE%)およびCV%に基づき最も高い許容される標準点として決定した。許容性の基準は、CV%≦20%かつ80~120%内のRE%であった。定量の下限(LLOQ)を、その濃度でCV%が、5つの独立した実行にわたり6連で測定された低い解析物濃度を有する4つのヒト血清サンプルに基づき、大部分のサンプルで20%を超える、濃度として決定した。
【0053】
線形性および平行性を、4つの健常なヒト血清サンプルを2倍に段階希釈すること、および3つの独立した実行を介してCV%を計算することにより試験した。RE%を、1:2の希釈した値と比較して計算した。CV%の許容基準は、≦20%であり、RE%の許容基準は、80~120%内であった。
【0054】
正確性を、30AAの標準ペプチドを3つのヒト血清サンプル中にスパイクすること、およびRE%を計算することにより評価した。平均RE%の許容基準は、80~120%であった。正確性をさらに、3セットの血清サンプルを異なる量で混合(たとえば25%の血清A+75%の血清B、50%の血清A+50%の血清Bなど)すること、および個々の参照血清サンプルの値に対しRE%を計算することにより評価した。各スパイク比のRE%は、80~120%内であった。一般に干渉する物質のビオチン、脂質、およびヘモグロビンの効果を、3つの血清サンプルを使用して、異なる濃度(ビオチン低:5ng/mL、高:100ng/mL;脂質低:1.5mg/mL、高:5mg/mL;ヘモグロビン:0.5mg/mL~5.0mg/mまでの範囲の10の濃度、0.5mg/mLずつ変動)により試験した。干渉を、RE%により評価し、80~120%の範囲内で許容した。
【0055】
解析物の安定性を、4℃および20℃で、2、4、24、または48時間の間、3つの血清サンプルのアリコートをインキュベートすることにより評価した。RE%を、解析後に解凍された対照血清サンプルと比較して計算し、RE%を、80~120%内で許容した。安定性をさらに、血清サンプルの反復した凍結融解サイクル:最大で5ラウンドの凍結融解サイクルを介して評価した。凍結融解の安定性を、解析の前の単回の解凍を経たサンプルに対するRE%に基づき計算し、RE%が80~120%内であった場合に許容した。アッセイの技術的な安定性を、20℃で24時間インキュベートしたキット試薬を使用してアッセイを3回実行すること、および凍結保存から試薬を使用して測定した10のサンプルのRE%を計算することにより評価した。ここでRE%の許容基準は、80~120%内であった。
【0056】
患者のサンプル
第1のコホートは、223のがんサンプルおよび33の健常サンプルを含んだ。これは、それぞれ膵がん、結腸直腸がん、腎臓がん、胃がん、乳がん、膀胱がん、肺がん、メラノーマ、頭頚部がん、前立腺がん、および卵巣がんの患者である20名の患者、ならびに33名の年齢の一致した健常対照を含んだ。全てのがんサンプルを、Proteogenex(Los Angeles, CA, USA)から入手し、健常対照を、BioIVT(Westbury, NY, USA)から入手した。第1のコホートの特徴の概要を、表1で見出すことができる。
【0057】
【表1】
【0058】
第2のコホートは、20名の健常なドナーおよび39名の浸潤性膵管癌(pancreas ductal adenocarcinoma:PDAC)を有する患者を含んだ。全ての患者は、デンマークのBIOPAC試験“BIOmarkers in patients with Pancreatic Cancer”(NCT03311776)由来であった。患者を、2008年12月から2017年9月まで6つのデンマークの病院から動員した。PC患者は、組織学的に確認された腫瘍を有した。PC患者を、国のガイドライン(www.gicancer.dk)にしたがい様々な種類の化学療法で処置した。試験を、健康研究倫理に関するデンマーク地域委員会((Health Research Ethics on Danish Regional Committee)の提言にしたがい行った。BIOPACのプロトコルは、健康研究倫理に関するデンマーク地域委員会(VEK ref. KA-20060113)およびデータ保護機関(j.nr. 2006-41-6848)により承認された。血液サンプルを、診断時または実施の前に入手した。全ての対象は、ヘルシンキ宣言にしたがい記載済のインフォームドコンセントを提供した。
【0059】
【表2】
【0060】
統計
PRO-C22レベルの比較を、クラスカル=ウォリス検定、次いでDunnの多重比較検定を使用して行い、各固形がんのタイプを健常対照のグループと比較した。この後に、ROC曲線下面積(AUROC)によりPRO-C22の診断の正確性を試験した。BIOPACコホートを使用して、カットポイントとして中央値を使用して全生存期間(OS)との関連を評価し、高いPRO-C22レベルを有するグループを定義した。カプラン・マイヤー曲線解析および単変量Cox回帰解析を使用して、PRO-C22とOSの間の関連を評価した。アスタリスクは、以下の有意性のレベルを表す:**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001。
【0061】
結果
PRO-C22のELISAの開発
ELISAの開発プロセスを介して、最適化ステップを行って、適切なアッセイバッファー、インキュベーション時間、および温度、ならびに抗体およびペプチドの濃度を見出し、アッセイにとって最良の競合状況を提供した。競合イムノアッセイPRO-C22は、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したmAb(HRP-mAb)を使用して、血清サンプル中のCOL22の量を定量化した。このアッセイは、標準ペプチド(GPPGPPGQCDPSQCAYFASLAARPGNVKGP(SEQ ID No. 16))を含み、これは離れて競合すること(competing away)により、HRP-mAbとペプチドのビオチン化バージョン(ビオチン-AARPGNVKGP(SEQ ID No. 15))の間の相互作用を使用して、血清中のCOL22の循環量を定量化した。特異性を、HRP-mAbに競合を全く示さないペプチドのトランケートしたバージョン(AARPGNVKG (SEQ ID No. 4))および伸長したバージョン(AARPGNVKGPA (SEQ ID No. 3))を使用して試験した。ナンセンコーター(PGMRGMPGSP-ビオチン(SEQ ID No. 22))およびナンセンス30AA標準ペプチド(PGMRGMPGSPGGPGSDGKPGPPGSQGESGR(SEQ ID No. 17))をまた、競合を妨害する特質に関して評価したが、これらはいずれの効果も示さなかった(図1)。対照的に、10AAの配列選択ペプチド(AARPGNVKGP(SEQ ID No. 1))および30AA配列標準ペプチド(GPPGPPGQCDPSQCAYFASLAARPGNVKGP(SEQ ID No. 16))は、用量依存的に相互作用をうまく阻害した(図1)。
【0062】
線形測定の範囲を、1.0-53.0ng/mLであると決定し、LLOQおよびULOQを、それぞれ、1.95および125.0ng/mLであると決定した。バリエーション内(Intra variation)試験およびバリエーション間(intra variation)試験を介して、アッセイの精度を決定した。バリエーション内およびバリエーション間はいずれも、3.6%であると決定された。血清のMRD(最小必要希釈濃度 minimum required dilution)を、アッセイにおいて2倍に希釈された健常血清サンプルの線形性により評価した。これは、MRDとして1:2(1+1)を決定し、希釈を、健常血清サンプルの1:4(1+3)に限定した。これは、103.7%の平均RE%に基づいた。
【0063】
正確性を、スパイク回収試験(spiking recovery test)により決定し、ここで血清におけるペプチドの平均RE%は、105.1%であり、血清における血清の平均RE%は、103.5%であった。基質であるビオチン、脂質、およびヘモグロビンを、異なる濃度において干渉について試験した。5ng/mlの低濃度のビオチンは、3つの異なるサンプルにおいて99.1の平均RE%を有し、100ng/mlの高濃度は、85.5%の平均RE%を有することが見いだされた。3つの血清サンプルにおいて1.5mg/mLの低い脂質濃度は、104.6%の平均RE%を有し、5mg/mLの高濃度は、102.3%の平均RE%を有した。ヘモグロビンの干渉カットオフを、0.50mg/mL~5.0mg/mLの範囲のヘモグロビンで0.5mg/mLずつ変動する濃度を使用して決定した。3.0mg/mLで、3つの血清サンプルの平均RE%は、126.6%であり、RE%の許容範囲(80~120%)を超えた。よってカットオフを、112.5%の平均RE%に基づき2.5mg/mLの濃度であると決定した。
【0064】
安定性を、解析物およびキット試薬の安定性の両方に関して評価した。5回の凍結融解サイクルを経た3つの血清サンプルの平均RE%は、103.1%であった。4℃で最大48時間インキュベートされた血清サンプルは、107.2%のRE%を有し、20℃で最大48時間インキュベートされたサンプルでは106.1%であった。キット試薬(バッファー、ビオチン化ペプチド、およびHRP-mAb)を、20℃で24時間のインキュベーションの後に評価した。試薬の安定性を、バリエーション内およびバリエーション間で使用された同じ10のサンプルを測定すること、およびRE%を計算することにより評価した。3つの個々の実行で測定された10のサンプルは、94.4%の平均RE%を示した。
【0065】
技術的バリエーションの概要を、表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
がん患者の血清中のPRO-C22
コホート1において、PRO-C22は、対照と比較して全ての固形がんのタイプにおいて有意に高かった(図2)。このことは、PRO-C22、すなわちCOL22の循環レベルが、様々なタイプの固形腫瘍に罹患している患者由来の血清において高いことを示唆する。ROC曲線下面積(AUROC)を使用してがん患者と健常対照を区別するPRO-C22の能力を評価した(表4)。
【0068】
【表4】
【0069】
AUROCの範囲は0.886-0.976で様々であり、これは、PRO-C22が、がん患者と健常対照を見事に区別することを表している(0.8超のAUROC)。PRO-C22は、第2の(BIOPAC)コホートにおいて膵がん患者で高められることが検証された(図3)。全生存期間(OS)を評価しこれと関連づける場合、高いPRO-C22(中央値:50パーセンタイル超)は、低いレベルを有する患者と比較して3.987のハザード比(95%CI:1.724-8.806)を有する膵がんの不十分なOSと有意に関連していた。同様に、OS時間の中央値は、PRO-C22が高い患者では162日間であり、PRO-C22が低い患者では1363日間であった(ログランクP値=0.0011)。
【0070】
結論
この試験において、血液中のXXII型コラーゲンの存在を定量化するためのELISAを、うまく開発し、最適化し、および検証した。PRO-C22ELISAは、技術的に強力であり、正確でかつ感度がよい。循環XXII型コラーゲンのレベルは、がん患者および健常対照の血清において評価でき、ここでPRO-C22のレベルは、健常対照と比較して試験された全てのがんにおいて有意に高かった。PRO-C22のレベルは、がん患者および健常対照を区別するために使用され得、PRO-C22のレベルはまた、膵がんの全生存期間に関する予後を提供するために使用され得る。
【0071】
本明細書において、特段他の意味が明記されない限り、単語「または(or)」は、状態の一つのみが合致することを必要とする操作詞(operator)「排他的または(exclusive or)」とは反対に、記載される状態のいずれかまたは両方が合致する場合の真の値を選出する操作詞の意味で使用される。単語「~を含む(comprising)」は、「~を含むまたは~からなる(including or consisting of)」を意味するように使用される。上記で認められた全ての従来技術は、本明細書によって参照により組み込まれる。本明細書中の全ての公開済みの先行文献は、本明細書の日付においてオーストラリアまたは他の場所において共通する一般的な知識であると承認されたものとみなされるべきではない。
【0072】
参照文献
[1] R. L. Siegel, K. D. Miller, H. E. Fuchs, and A. Jemal, “Cancer Statistics, 2021,” CA. Cancer J. Clin., vol. 71, no. 1, pp. 7‐33, Jan. 2021, doi: 10.3322/caac.21654.
[2] S. M. Hanash, C. S. Baik, and O. Kallioniemi, “Emerging molecular biomarkers-blood-based strategies to detect and monitor cancer,” Nat. Rev. Clin. Oncol., vol. 8, no. 3, pp. 142‐150, Mar. 2011, doi: 10.1038/nrclinonc.2010.220.
[3] M. Sund and R. Kalluri, “Tumor stroma derived biomarkers in cancer,” Cancer Metastasis Rev., vol. 28, no. 1‐2, pp. 177‐183, Jun. 2009, doi: 10.1007/s10555-008-9175-2.
[4] D. Hanahan and R. A. Weinberg, “Hallmarks of Cancer: The Next Generation,” Cell, vol. 144, no. 5, pp. 646‐674, Mar. 2011, doi: 10.1016/j.cell.2011.02.013.
[5] N. Willumsen, L. B. Thomsen, C. L. Bager, C. Jensen, and M. A. Karsdal, “Quantification of altered tissue turnover in a liquid biopsy: a proposed precision medicine tool to assess chronic inflammation and desmoplasia associated with a pro-cancerous niche and response to immuno-therapeutic anti-tumor modalities,” Cancer Immunol. Immunother., vol. 67, no. 1, pp. 1‐12, Jan. 2018, doi: 10.1007/s00262-017-2074-z.
[6] N. I. Nissen, M. Karsdal, and N. Willumsen, “Collagens and Cancer associated fibroblasts in the reactive stroma and its relation to Cancer biology,” J. Exp. Clin. Cancer Res., vol. 38, no. 1, p. 115, Dec. 2019, doi: 10.1186/s13046-019-1110-6.
[7] S. Xu et al., “The role of collagen in cancer: from bench to bedside,” J. Transl. Med., vol. 17, no. 1, p. 309, Dec. 2019, doi: 10.1186/s12967-019-2058-1.
[8] L. M. Shaw and B. R. Olsen, “FACIT collagens: diverse molecular bridges in extracellular matrices,” Trends Biochem. Sci., vol. 16, pp. 191‐194, Jan. 1991, doi: 10.1016/0968-0004(91)90074-6.
[9] M. Koch et al., “A novel marker of tissue junctions, collagen XXII,” J. Biol. Chem., vol. 279, no. 21, pp. 22514‐22521, May 2004, doi: 10.1074/jbc.M400536200.
[10] Q. V. Ton et al., “Collagen COL22A1 maintains vascular stability and mutations in COL22A1 are potentially associated with intracranial aneurysms,” Dis. Model. Mech., vol. 11, no. 12, Dec. 2018, doi: 10.1242/dmm.033654.
[11] K. MISAWA et al., “Prognostic value of type XXII and XXIV collagen mRNA expression in head and neck cancer patients,” Mol. Clin. Oncol., vol. 2, no. 2, pp. 285‐291, Mar. 2014, doi: 10.3892/mco.2013.233.
[12] T. Watanabe et al., “A Human Skin Model Recapitulates Systemic Sclerosis Dermal Fibrosis and Identifies COL22A1 as a TGFβ Early Response Gene that Mediates Fibroblast to Myofibroblast Transition,” Genes (Basel)., vol. 10, no. 2, p. 75, Jan. 2019, doi: 10.3390/genes10020075.
[13] R. Bauer et al., “Inhibition of Collagen XVI Expression Reduces Glioma Cell Invasiveness,” Cell. Physiol. Biochem., vol. 27, no. 3‐4, pp. 217‐226, 2011, doi: 10.1159/000327947.
[14] M. Koch et al., “α1(XX) Collagen, a New Member of the Collagen Subfamily, Fibril-associated Collagens with Interrupted Triple Helices,” J. Biol. Chem., vol. 276, no. 25, pp. 23120‐23126, Jun. 2001, doi: 10.1074/jbc.M009912200.
[15] B. Charvet et al., “Knockdown of col22a1 gene in zebrafish induces a muscular dystrophy by disruption of the myotendinous junction.,” Development, vol. 140, no. 22, pp. 4602‐4613, Nov. 2013, doi: 10.1242/dev.096024.
[16] A. Y. Wong and J. L. Whited, “Parallels between wound healing, epimorphic regeneration and solid tumors,” Development, vol. 147, no. 1, Jan. 2020, doi: 10.1242/dev.181636.
[17] G. Manzo, “Similarities Between Embryo Development and Cancer Process Suggest New Strategies for Research and Therapy of Tumors: A New Point of View,” Front. Cell Dev. Biol., vol. 7, Mar. 2019, doi: 10.3389/fcell.2019.00020.
[18] Kabat EA, Wu TT, Bilofsky H, Reid-Miller M, Perry H. Sequence of Proteins of Immunological Interest. Bathesda: National Institute of Health; 1983
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2024542100000001.xml
【国際調査報告】