(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】マラリアを検出するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20241106BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6888 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526626
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022080736
(87)【国際公開番号】W WO2023079032
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】シャロン ホー-チェン チウ
(72)【発明者】
【氏名】イボン ギチェル
(72)【発明者】
【氏名】マリンサ ヘイル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ケー.リー
(72)【発明者】
【氏名】チトラ マノハー
(72)【発明者】
【氏名】エレン オーディナリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤ ラジャマニ
(72)【発明者】
【氏名】ジンタオ サン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ54
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
(57)【要約】
生物学的または非生物学的試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の存在または非存在を迅速に検出する方法が記載されている。本方法は、増幅する工程、ハイブリダイズする工程、および検出する工程を実施することを含み得る。さらに、このアッセイは、複数のプラスモディウム(Plasmodium)標的を同時に増幅および検出するためのマルチプレックスアッセイであり得、これはシングルプレックスアッセイを超える利点を提供する。さらに、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)を標的とするプライマーおよびプローブ、ならびに熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、サルマラリア原虫(P.knowlesi)および四日熱マラリア原虫(P.malariae)のプラスモディウム(Plasmodium)種を含むがこれらに限定されない、プラスモディウム(Plasmodium)を検出するために設計されたキットが提供される。マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)を増幅および検出するためのキット、反応混合物およびオリゴヌクレオチド(例えば、プライマーおよびプローブ)も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の1種以上のマラリア原虫種を検出するための方法であって、
(a)前記1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が前記試料中に存在する場合、前記試料を1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施することと、
(b)前記1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が前記試料中に存在する場合、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを前記増幅産物と接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施することと、
(c)前記増幅産物の存在または非存在を検出することであって、前記増幅産物の存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の存在を示し、前記増幅産物の非存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の非存在を示す、検出することと
を含み、
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、
(1)配列番号1および2の核酸配列もしくはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに/または
(2)配列番号13および14の核酸配列もしくはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号15の核酸配列もしくはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブ
を含む、方法。
【請求項2】
前記1種以上のマラリア原虫種がプラスモディウム(Plasmodium)属に属する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラスモディウム(Plasmodium)属に属する前記1種以上のマラリア原虫種が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、および/またはサルマラリア原虫(P.knowlesi)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が生物学的試料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的試料が、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚または軟部組織感染部である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的試料が全血である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つが標識されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの前記少なくとも1つが、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)が、前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブの前記ドナー蛍光部分と前記アクセプター部分との間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の存在または非存在を検出することをさらに含み、前記蛍光の存在または非存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の存在または非存在を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
試料中の1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸および/または第2の標的核酸を検出する方法であって、
(a)前記1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸および/または第2の標的核酸が前記試料中に存在する場合、前記試料を1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施することと、
(b)前記1種以上のマラリア原虫種の前記第1の標的核酸および/または前記第2の標的核酸が前記試料中に存在する場合、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを前記増幅産物と接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施することと、
(c)前記増幅産物の存在または非存在を検出することであって、前記増幅産物の存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の存在を示し、前記増幅産物の非存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の非存在を示す、検出することと
を含み、
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、
(1)前記1種以上のマラリア原虫種の前記第1の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブであって、前記オリゴヌクレオチドプライマーのセットが配列番号1および2の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含み、前記オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含む、オリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに
(2)前記1種以上のマラリア原虫種の前記第2の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブであって、前記オリゴヌクレオチドプライマーのセットが配列番号13および14の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含み、前記オリゴヌクレオチドプローブが配列番号15の核酸配列またはその相補体を含む、オリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブ
を含む、方法。
【請求項11】
試料中の1種以上のマラリア原虫種を検出するための方法であって、
(a)前記1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が前記試料中に存在する場合、前記試料を1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施することと、
(b)前記1種以上のマラリア原虫種の前記標的核酸が前記試料中に存在する場合、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを前記増幅産物と接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施することと、
(c)前記増幅産物の存在または非存在を検出することであって、前記増幅産物の存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の存在を示し、前記増幅産物の非存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の非存在を示す、検出することと
を含み、
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、配列番号1および2の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、ならびに配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブを含む、方法。
【請求項12】
試料中の1種以上のマラリア原虫種を検出するための方法であって、
(a)前記1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が前記試料中に存在する場合、前記試料を1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施することと、
(b)前記1種以上のマラリア原虫種の前記標的核酸が前記試料中に存在する場合、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを前記増幅産物と接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施することと、
(c)前記増幅産物の存在または非存在を検出することであって、前記増幅産物の存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の存在を示し、前記増幅産物の非存在が、前記試料中の前記1種以上のマラリア原虫種の非存在を示す、検出することと
を含み、
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、配列番号13および14の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、ならびに配列番号15の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブを含む、方法。
【請求項13】
前記1種以上のマラリア原虫種がプラスモディウム(Plasmodium)属に属する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プラスモディウム(Plasmodium)属に属する前記1種以上のマラリア原虫種が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、および/またはサルマラリア原虫(P.knowlesi)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が生物学的試料である、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的試料が、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚または軟部組織感染部である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生物学的試料が全血である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つが標識されている、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの前記少なくとも1つが、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
試料中に存在し得る1種以上のマラリア原虫種を検出するためのキットであって、前記キットが、DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドモノマーのうちの少なくとも1つを含む増幅試薬と、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブとを含み、前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、
(1)配列番号1および2の核酸配列もしくはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに/または
(2)配列番号13および14の核酸配列もしくはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号15の核酸配列もしくはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブ
を含む、方法。
【請求項21】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、
(1)配列番号1および2の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに
(2)配列番号13および14の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号15の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブ
を含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記1種以上のマラリア原虫種がプラスモディウム(Plasmodium)属に属する、請求項20~21のいずれか一項に記載のキット。
【請求項23】
前記プラスモディウム(Plasmodium)属に属する前記1種以上のマラリア原虫種が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、および/またはサルマラリア原虫(P.knowlesi)である、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記試料が生物学的試料である、請求項20~23のいずれか一項に記載のキット。
【請求項25】
前記生物学的試料が、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚または軟部組織感染部である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記生物学的試料が全血である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つが標識されている、請求項20~26のいずれか一項に記載のキット。
【請求項28】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの前記少なくとも1つが、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
試料中に存在し得る1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸および/または第2の標的核酸を検出するためのキットであって、前記キットが、DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドモノマーのうちの少なくとも1つを含む増幅試薬と、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブとを含み、前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、
(1)前記1種以上のマラリア原虫種の前記第1の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブであって、前記オリゴヌクレオチドプライマーのセットが配列番号1および2の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含み、前記オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含む、オリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに
(2)前記1種以上のマラリア原虫種の前記第2の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブであって、前記オリゴヌクレオチドプライマーのセットが配列番号13および14の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含み、前記オリゴヌクレオチドプローブが配列番号15の核酸配列またはその相補体を含む、オリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブ
を含む、キット。
【請求項30】
試料中に存在し得る1種以上のマラリア原虫種を検出するためのキットであって、前記キットが、DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドモノマーのうちの少なくとも1つを含む増幅試薬と、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブとを含み、
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のプローブが、配列番号1および2の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、ならびに配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブを含む、キット。
【請求項31】
試料中に存在し得る1種以上のマラリア原虫種を検出するためのキットであって、前記キットが、DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドモノマーのうちの少なくとも1つを含む増幅試薬と、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブとを含み、
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、配列番号13および14の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、ならびに配列番号15の核酸配列またはその相補体を含むオリゴヌクレオチドプローブを含む、
キット。
【請求項32】
前記1種以上のマラリア原虫種がプラスモディウム(Plasmodium)属に属する、請求項29~31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
前記プラスモディウム(Plasmodium)属に属する前記1種以上のマラリア原虫種が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、および/またはサルマラリア原虫(P.knowlesi)である、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記試料が生物学的試料である、請求項29~33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
前記生物学的試料が、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚または軟部組織感染部である、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記生物学的試料が全血である、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つが標識されている、請求項29~36のいずれか一項に記載のキット。
【請求項38】
前記1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの前記少なくとも1つが、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている、請求項37に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年11月1日に作成された前記XMLコピーは、「P36987-WO sequence listing」という名前が付けられ、サイズが65,548バイトである。
【0002】
本開示は、インビトロ診断の分野に関する。この分野において、本発明は、試料中に存在し得る標的核酸の増幅および検出、特に、プライマーおよびプローブを使用した、マラリア原虫の配列変異および/または個々の変異を含む標的核酸の増幅、検出および定量に関する。本発明はさらに、マラリアの増幅および検出のためのプライマーおよびプローブを含有する反応混合物およびキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
マラリアは、ヒトおよび他の動物に影響を及ぼす蚊媒介感染症である。マラリアは、感染した雌のハマダラカ(Anopheles)に噛まれた後にヒトに伝染する単細胞微生物プラスモディウム(Plasmodium)寄生虫によって引き起こされる疾患である。マラリアの初期症状には、発熱、頭痛、および悪寒が挙げられ、入手可能な抗マラリア薬で処置され得る。治療せずに放置すると、貧血、脳マラリア、および呼吸窮迫を含む症状を伴う重度のマラリアを発症する可能性があり、最終的に死に至る可能性がある。
【0004】
2018年の世界保健機関(WHO)報告書によると、主に熱帯および亜熱帯地域に位置する87か国で、約32億人がマラリアの危険にさらされている。マラリアは年間約2億1900万件の症例があり、そのうち92%がアフリカから、5%が東南アジアから、2%が東地中海国からの症例である。米国では年間約1,700症例が生じている。マラリアはまた、年間435,000人の死亡者をもたらし、これらの死亡者のうち266,000人は5歳未満の子供である。マラリアを根絶および予防する努力が進められており、これらには殺虫剤処理されたネット、患者の医療へのアクセスの増加、薬物開発ワクチン、および遺伝子改変蚊(GMO)が含まれる。米国はマラリアの流行国ではないと考えられているが、米国への/米国からの世界的な移動は、輸入マラリアの症例の増加をもたらし得る。
【0005】
ヒトに感染することが知られているプラスモディウム(Plasmodium)には少なくとも5つの種がある。熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)およびサルマラリア原虫(P.knowlesi)。臨床症状は、プラスモディウム(Plasmodium)の種に応じて異なり得る。熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)は、感染した赤血球において急速な細胞分裂を引き起こし、貧血および脳への血管の閉塞を引き起こすことが知られている、最も致死的な種である。プラスモディウム(Plasmodium)の生活環は複雑であり、寄生虫は蚊における有性生殖とヒト宿主における無性生殖とを交互に行う。症状は、血液段階中に寄生虫によって引き起こされ、蚊に刺された7~30日後に現れることがある。三日熱マラリア原虫(P.vivax)および卵形マラリア原虫(P.ovale)は、肝臓段階で休眠したままであり、数ヶ月または数年後でさえも再活性化することがある。
【0006】
血液供給および献血に関して、米国の南部および東部で非常に不足している十分な血液供給を維持するための大きな課題が既に存在している。マラリアは、血液供給および献血にさらなる問題をもたらす。例えば、米国は非流行国と考えられているが、世界旅行は輸入マラリアの症例の増加をもたらし、それによって米国における血液供給に影響を及ぼす可能性がある。世界的に、血液供給の安全性を維持するために採用されているマラリアに関する現在の戦略には以下が挙げられる。(1)選択的試験、および(2)ドナー不適格(Donor Deferral)、米国はドナー不適格方針に従う。典型的には、ドナーは、病歴、居住地および旅行に基づくスクリーニング質問票への答えに基づいて不適格とされる。米国では、推定191,000人のドナーが一時的に不適格とされ(1~3年間)、不適格の大部分は流行地域への旅行に起因する。さらに、不適格とされた輸血は、一時的に不適格とされたドナーは不適格期間が終了した後、約1/4しか次の献血のために実際に戻ってこないので、血液供給に悪影響を及ぼす。ドナーの不適格は、マラリアの状態にかかわらず、質問票の回答に基づいて輸血を除外することによって血液供給に悪影響を及ぼす。一方、選択的試験は、ドナー不適格と比較して、血液供給在庫に対する影響を低減する。献血者の選択的試験も質問票の答えに基づいているが、選択的試験方針は、ドナーのマラリアの状態に応じて、ドナーの不適格時間の短縮および復帰を可能にする。選択的試験方針を有する国では、試験は酵素免疫測定法によって行われる。少なくとも3つの国が献血においてマラリアの試験を実施している。フランス、英国、およびオーストラリア。フランスでは、1年間に300万件の輸血のうち、約180,000件の輸血が試験され、試験された180,000件の輸血のうち、約3,300件(または1.8%)が陽性であった。
【0007】
マラリアについては、いくつかの診断およびスクリーニング方法が存在する。ギムザ染色血液スメアの顕微鏡検査によるマラリアの検出は、種の同定を可能にし、安価であり、依然として至適基準である。しかしながら、顕微鏡検査は、ハイスループットスクリーニング/検出を行うことができない。マラリア抗原の免疫クロマトグラフィー検出のための方法を採用する迅速診断試験(RDT)は、迅速かつ安価であるが、感度が低く(200~5,000p/μL)、依然として顕微鏡検査による確認を必要とする。血清中の抗プラスモディウム(Plasmodium)抗体を検出する酵素免疫測定法(EIA)が広く使用されているが、同様に感度が低い。対照的に、核酸検査(NAT)は、ハイスループットスクリーニング/検出に適しており、高感度(<1p/μL)である。したがって、核酸検査は、その感度が高く処理能力が高いため、マラリアについて血液試料を検出およびスクリーニングするための最良の方法である。しかしながら、現在のところ、献血をスクリーニングするために利用可能なインビトロ診断核酸検査はない。したがって、血液などの生物学的試料中のマラリアの存在を検出および定量するための迅速で信頼性が高く、特異的かつ高感度の方法が当技術分野で必要とされている。
【0008】
分子診断の分野では、核酸の増幅および検出はかなり重要である。そのような方法は、ウイルスや細菌などの任意の数の微生物を検出するために採用され得る。最も顕著で広く使用されている増幅技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。他の増幅技術としては、リガーゼ連鎖反応、ポリメラーゼリガーゼ連鎖反応、Gap-LCR、修復鎖反応(Repair Chain Reaction)、3SR、NASBA、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介増幅(TMA)およびQβ増幅が挙げられる。PCRに基づく分析のための自動化されたシステムは、しばしば、同じ反応容器におけるPCRプロセス中の産物増幅のリアルタイム検出を利用する。そのような方法の鍵は、レポーター基または標識を有する修飾オリゴヌクレオチドの使用である。
【0009】
マラリアを検出するための信頼性が高く、迅速で、安価で、高感度の手段がないことは、血液ドナー供給物の安全性を脅かす。したがって、血液などの生物学的試料中のマラリアの存在を検出および定量するための迅速で信頼性が高く、特異的かつ高感度の方法が当技術分野で必要とされている。本開示は、血液試料および輸血中の全てのプラスモディウム(Plasmodium)種(熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、サルマラリア原虫(P.knowlesi)、および四日熱マラリア原虫(P.malariae))を検出およびスクリーニングするためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づくアッセイに関する。
【発明の概要】
【0010】
本開示の特定の実施形態は、生物学的または非生物学的試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)の存在または非存在の迅速な検出、例えば、単一の試験管または容器内でのリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)のマルチプレックス検出および定量のための方法に関する。実施形態は、増幅する工程およびハイブリダイズする工程を含み得る少なくとも1つのサイクリング工程を実施することを含む、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)の検出方法を含む。さらに、実施形態は、単一の管または容器内でマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)を検出するように設計されたプライマー、プローブ、およびキットを含む。
【0011】
一実施形態は、試料中の1種以上のマラリア原虫種を検出するための方法であって、(a)1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が試料中に存在する場合、試料を1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施することと、(b)1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が試料中に存在する場合、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを増幅産物と接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施することと、(c)増幅産物の存在または非存在を検出することであって、増幅産物の存在が、試料中の1種以上のマラリア原虫種の存在を示し、増幅産物の非存在が、試料中の1種以上のマラリア原虫種の非存在を示す、検出することとを含み、
1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、(1)配列番号1および2の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに/または(2)配列番号13および14の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号15の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブ
を含む、方法に関する。
【0012】
別の実施形態では、1種以上のマラリア原虫種は、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する。別の実施形態では、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する1種以上のマラリア原虫種は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、および/またはサルマラリア原虫(P.knowlesi)である。別の実施形態では、試料は生物学的試料である。別の実施形態では、生物学的試料は、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚または軟部組織感染部である。別の実施形態では、生物学的試料は全血である。別の実施形態では、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは標識されている。別の実施形態では、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている。別の実施形態では、工程(c)は、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのドナー蛍光部分とアクセプター部分との間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の存在または非存在を検出することをさらに含み、蛍光の存在または非存在は、試料中の1種以上のマラリア原虫種の存在または非存在を示す。
【0013】
別の実施形態は、試料中の1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸および/または第2の標的核酸を検出する方法であって、(a)1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸および/または第2の標的核酸が試料中に存在する場合、試料を1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施することと、(b)1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸および/または第2の標的核酸が試料中に存在する場合、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを増幅産物と接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施することと、(c)増幅産物の存在または非存在を検出することであって、増幅産物の存在が、試料中の1種以上のマラリア原虫種の存在を示し、増幅産物の非存在が、試料中の1種以上のマラリア原虫種の非存在を示す、検出することとを含み、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、(1)1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブであって、オリゴヌクレオチドプライマーのセットが配列番号1および2の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含み、オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなる、オリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに(2)1種以上のマラリア原虫種の第2の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブであって、オリゴヌクレオチドプライマーのセットが配列番号13および14の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含み、オリゴヌクレオチドプローブが配列番号15の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなる、オリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブを含む、方法に関する。別の実施形態は、試料中の1種以上のマラリア原虫種を検出するための方法であって、(a)1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が試料中に存在する場合、試料を1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施することと、(b)1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が試料中に存在する場合、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを増幅産物と接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施することと、(c)増幅産物の存在または非存在を検出することであって、増幅産物の存在が、試料中の1種以上のマラリア原虫種の存在を示し、増幅産物の非存在が、試料中の1種以上のマラリア原虫種の非存在を示す、検出することとを含み、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、配列番号1および2の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブを含む、方法に関する。別の関連する実施形態は、試料中の1種以上のマラリア原虫種を検出するための方法であって、(a)1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が試料中に存在する場合、試料を1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットと接触させて増幅産物を産生することを含む増幅工程を実施することと、(b)1種以上のマラリア原虫種の標的核酸が試料中に存在する場合、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブを増幅産物と接触させることを含むハイブリダイゼーション工程を実施することと、(c)増幅産物の存在または非存在を検出することであって、増幅産物の存在が、試料中の1種以上のマラリア原虫種の存在を示し、増幅産物の非存在が、試料中の1種以上のマラリア原虫種の非存在を示す、検出することとを含み、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、配列番号13および14の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号15の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブを含む、方法に関する。別の実施形態では、1種以上のマラリア原虫種は、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する。別の実施形態では、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する1種以上のマラリア原虫種は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、および/またはサルマラリア原虫(P.knowlesi)である。別の実施形態では、試料は生物学的試料である。別の実施形態では、生物学的試料は、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚または軟部組織感染部である。別の実施形態では、生物学的試料は全血である。別の実施形態では、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは標識されている。別の実施形態では、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている。
【0014】
別の実施形態は、試料中に存在し得る1種以上のマラリア原虫種を検出するためのキットであって、キットが、DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドモノマーのうちの少なくとも1つを含む増幅試薬と、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブとを含み、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、(1)配列番号1および2の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに/または(2)配列番号13および14の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号15の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブを含む、方法に関する。別の実施形態では、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブは、(1)配列番号1および2の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号3の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに(2)配列番号13および14の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および配列番号15の核酸配列もしくはその相補体を含むかもしくはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0015】
別の実施形態では、1種以上のマラリア原虫種は、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する。別の実施形態では、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する1種以上のマラリア原虫種は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、および/またはサルマラリア原虫(P.knowlesi)である。別の実施形態では、試料は生物学的試料である。別の実施形態では、生物学的試料は、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚または軟部組織感染部である。別の実施形態では、生物学的試料は全血である。別の実施形態では、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは標識されている。別の実施形態では、少なくとも1種以上のオリゴヌクレオチドプローブは、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている。
【0016】
別の実施形態は、試料中に存在し得る1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸および/または第2の標的核酸を検出するためのキットであって、キットが、DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドモノマーのうちの少なくとも1つを含む増幅試薬と、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブとを含み、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、(1)1種以上のマラリア原虫種の第1の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブであって、オリゴヌクレオチドプライマーのセットが配列番号1および2の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含み、オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなる、オリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブ、ならびに(2)1種以上のマラリア原虫種の第2の標的核酸のためのオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブであって、オリゴヌクレオチドプライマーのセットが配列番号13および14の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含み、オリゴヌクレオチドプローブが配列番号15の核酸配列またはその相補体を含む、オリゴヌクレオチドプライマーのセットおよびオリゴヌクレオチドプローブを含む、方法に関する。
【0017】
別の実施形態は、試料中に存在し得る1種以上のマラリア原虫種を検出するためのキットであって、キットが、DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドモノマーのうちの少なくとも1つを含む増幅試薬と、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブとを含み、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、配列番号1および2の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、ならびに配列番号3の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブを含む、キットに関する。別の実施形態は、試料中に存在し得る1種以上のマラリア原虫種を検出するためのキットであって、キットが、DNAポリメラーゼおよびヌクレオチドモノマーのうちの少なくとも1つを含む増幅試薬と、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブとを含み、1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセットおよび1種以上のオリゴヌクレオチドプローブが、配列番号13および14の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチドプライマーを含むオリゴヌクレオチドプライマーのセット、ならびに配列番号15の核酸配列またはその相補体を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチドプローブを含む、キットに関する。別の実施形態では、1種以上のマラリア原虫種は、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する。別の実施形態では、プラスモディウム(Plasmodium)属に属する1種以上のマラリア原虫種は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、および/またはサルマラリア原虫(P.knowlesi)である。別の実施形態では、試料は生物学的試料である。別の実施形態では、生物学的試料は、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚または軟部組織感染部である。別の実施形態では、生物学的試料は全血である。別の実施形態では、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは標識されている。別の実施形態では、1種以上のオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つは、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター部分で標識されている。
【0018】
配列番号1~39から選択されるヌクレオチドの配列を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチド、特に配列番号1~3および13~15の核酸配列を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチド、またはその相補体がさらに提供され、オリゴヌクレオチドは100個以下のヌクレオチドを有する。本開示はまた、配列番号1~39のうちの1つと少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%または95%など。)を有する核酸を含むオリゴヌクレオチド、特に配列番号1~3および13~15の核酸配列を含むかまたはそれからなるオリゴヌクレオチド、またはその相補体も提供し、オリゴヌクレオチドは100個以下のヌクレオチドを有する。一般に、本明細書に開示されるこれらのオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドプライマー核酸、オリゴヌクレオチドプローブ核酸などであり得る。ある特定の態様では、オリゴヌクレオチドは、40個以下のヌクレオチド(例えば、35個以下のヌクレオチド、30個以下のヌクレオチド、25個以下のヌクレオチド、20個以下のヌクレオチド、15個以下のヌクレオチドなど)を有する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドは、例えば非修飾ヌクレオチドと比較して核酸ハイブリダイゼーション安定性を変化させるための、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを有する。任意に、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの標識および任意に少なくとも1つのクエンチャー部分を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの保存修飾変異(conservatively modified variation)を含む。特定の核酸配列の「保存修飾変異」または単に「保存変異」とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。当技術分野の当業者であれば、コードされた配列中の単一のヌクレオチドまたは低いパーセント比率のヌクレオチド(典型的には5%未満、より典型的には4%、2%または1%未満)を変更、付加または欠失させる個々の置換、欠失または付加は、変更がアミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、または化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす「保存修飾変異」であることを認識するであろう。
【0019】
一態様では、増幅は、5’から3’へのヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ酵素を採用し得る。したがって、ドナー蛍光部分およびアクセプター部分、例えばクエンチャーは、オリゴヌクレオチドプローブの長さに沿って互いに5~20ヌクレオチド(例えば、7または10ヌクレオチド)以内であり得る。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、二次構造の形成を可能にする核酸配列を含む。そのような二次構造の形成は、第1の蛍光部分と第2の蛍光部分との間の空間的近接をもたらし得る。この方法によれば、オリゴヌクレオチドプローブ上の第2の蛍光部分はクエンチャーであり得る。
【0020】
本開示はまた、個体からの生物学的試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)またはマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)核酸の存在または非存在を検出する方法を提供する。これらの方法は、血液スクリーニングおよび診断試験に採用するために、血漿中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)核酸の存在または非存在を検出するために採用され得る。さらに、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)核酸を検出および/または定量するために尿および他の試料タイプを評価するために、同じ試験が当業者に使用され得る。そのような方法は、一般に、増幅する工程および色素結合工程を含む少なくとも1つのサイクリング工程を実施することを含む。典型的には、増幅する工程は、試料中に核酸分子が存在する場合、試料を複数対のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させて1種以上の増幅産物を生成することを含み、色素結合工程は、増幅産物を二本鎖DNA結合色素と接触させることを含む。そのような方法はまた、増幅産物への二本鎖DNA結合色素の結合の存在または非存在を検出することを含み、結合の存在は試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)核酸の存在を示し、結合の非存在は試料中のマラリア原虫核酸の非存在を示す。代表的な二本鎖DNA結合色素は、臭化エチジウムである。他の核酸結合色素としては、DAPI、Hoechst色素、PicoGreen(登録商標)、RiboGreen(登録商標)、OliGreen(登録商標)、およびシアニン色素、例えばYO-YO(登録商標)およびSYBR(登録商標)Greenが挙げられる。さらに、そのような方法はまた、増幅産物と二本鎖DNA結合色素との間の融解温度を決定することを含むことができ、融解温度はマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)核酸の存在または非存在を確認する。
【0021】
マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)の1種以上の核酸を検出および/または定量するためのキットも提供される。キットは、遺伝子標的の増幅に特異的な1種以上のオリゴヌクレオチドプライマーのセット、および増幅産物の検出に特異的な1種以上の検出可能なオリゴヌクレオチドプローブを含むことができる。
【0022】
一態様では、キットは、ドナー部分および対応するアクセプター部分、例えば別の蛍光部分またはダーククエンチャーで既に標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含むことができ、またはプローブを標識するための蛍光部分を含むことができる。キットはまた、ヌクレオシド三リン酸、核酸ポリメラーゼ、および核酸ポリメラーゼの機能に必要な緩衝液を含み得る。キットはまた、添付文書およびオリゴヌクレオチドプライマー、オリゴヌクレオチドプローブおよび蛍光色素部分を使用して試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)核酸の存在または非存在を検出するための説明書を含むことができる。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料が本主題の実施または試験で使用され得るが、好適な方法および材料が以下に記載される。加えて、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。
【0024】
本発明の1種以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に示されている。本発明の他の特徴、目的および利点は、図面および発明を実施するための形態、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の写しは、請求に応じて、必要な手数料を支払うことにより、特許庁によって提供されることになる。
【0026】
【
図1】実施例1で論じたような熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)の第5染色体由来の18S rRNA標的の初期候補アッセイの図。マッピングされたプライマーおよびプローブによって示される18S rRNAゲノムの4つの異なる領域を試験した。
【
図2A】実施例1に記載されているような、プラスモディウム(Plasmodium)種およびバベシア(Babesia)に対する18S rRNA標的の初期候補プライマー/プローブのアラインメントマップの図。
図2Aは、公開されたPanDDTアッセイ(Seilieら、「Beyond Blood Smears:Qualification of Plasmodium 18S rRNA as a Biomarker for Controlled Human Malaria Infections」、Am.J.Trop.Med.Hyg.100巻(6号):1466~1476頁(2019年)(以降、「Seilieら(2019年)」)、バベシア(Babesia)および5種のプラスモディウム(Plasmodium)種にアラインメントした再設計されたフォワードプライマー領域およびリバースプライマー(PanDDT1238R/1262R)から得た、プライマーおよびプローブの結合部位の位置を示す。交差反応性を排除するために、バベシア(Babesia)に対するさらなるミスマッチ(
図2Bの表を参照されたい)を有する領域でプライマーを再設計した。
【
図2B】バベシア(Babesia)配列に対する再設計プライマー下のミスマッチ数。
【
図3】Seilieら(2019年)における同じプローブを用いて再設計したフォワードプライマーとリバースプライマーの異なる組み合わせで試験した熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)培養溶出液のリアルタイムPCR増殖曲線を示す図。Seilieら(2019年)におけるフォワードプライマーおよびリバースプライマーも、実施例1に記載されているように、および
図1に示されているように、18S rRNA標的の検出のために再設計されたプライマーの組み合わせで試験した。いくつかの特定の組み合わせはバベシア(Babesia)に対する交差反応性を示し(アスタリスクで示す)、他の組み合わせは遅延Ct値を示した。これらの組み合わせは、将来の研究から除外された。これらの研究は、18S rRNA標的のための多数のプライマー/プローブ設計が、全血溶出液バックグラウンドにおける熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)培養溶出液からの18S rRNA標的の検出および増幅に有効であったことを実証している。
【
図4】実施例2で論じたような、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)の第5染色体上の28S rRNA標的マップの初期候補アッセイがどこにあるかを示す図。28S rRNAを標的とする、3つの異なるフォワードプライマー候補、2つの異なるリバースプライマー候補、および1つのプローブの組み合わせを試験した。
【
図5】実施例2に記載され、
図4に示されているような28S rRNA標的の検出のためのプライマー/プローブの候補の組み合わせで試験した熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)培養溶出液のリアルタイムPCR増殖曲線を示す。プライマー/プローブの組み合わせのうちの2つは、バベシア(Babesia)に対して交差反応性を示した(アスタリスクで示す)。これらの研究は、28S rRNAを標的とする多数のプライマー/プローブ設計が、全血溶出液バックグラウンド中の熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)試料からの28S rRNA標的の検出および増幅に有効であったことを実証している。
【
図6A】実施例3に記載されているような、RFIを改善するための最良の性能の18Sおよび28S候補プライマー/プローブの修飾プライマーを試験した結果を示す図。プライマー/プローブ(非修飾または修飾)の全ての組み合わせは、全血バックグラウンドでの熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)培養溶出液からの18Sおよび28S rRNA標的を検出および増幅する能力を示した。最良のRFIを示す修飾18Sおよび28S単一標的アッセイをアスタリスクで示した。
【
図6B】実施例3に記載されているような、プラスモディウム(Plasmodium)18S/28S二重標的アッセイ設計構成を示す図。18Sおよび28S rRNAプライマー/プローブはFAMチャネルにあり、内部対照はCy5.5チャネルにある。特に、理想的な18S rRNA標的プライマー/プローブは配列番号1~3の核酸配列に対応し、理想的な28S rRNA標的プライマー/プローブは配列番号13~15の核酸配列に対応する。18S rRNA標的(すなわち、配列番号3の配列を有する)を検出するために使用されるプローブは、2019年の刊行物(Seilieら、「Beyond Blood Smears:Qualification of Plasmodium 18S rRNA as a Biomarker for Controlled Human Malaria Infections」、Am.J.Trop.Med.Hyg.100巻(6号):1466~1476頁(2019年))からの18S rRNA標的にハイブリダイズするためのプローブに由来することに留意されたい。
【
図7A】5種のプラスモディウム(Plasmodium)種(すなわち、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)(AL844504.2)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)(18S XR_003001206.1および28S XR_003001202.1)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)(18S XR_003751948.1および28S XR_003751946.1)、卵形マラリア原虫ワリケリ(P.ovale wallikeri)(18Sおよび28S LT594514.1)、(卵形マラリア原虫クルチシ(P.ovale curtisi)18Sおよび28S FLQU01002140.1)およびサルマラリア原虫(P.knowlesi)(LR701163.1)のそれぞれにマッピングされた18Sおよび28Sアッセイのプライマーおよびプローブ結合部位の位置を示す図。両方のアッセイについて、オリゴヌクレオチドの下の領域は保存されており、実施例4に記載されているように、5種全てのプラスモディウム(Plasmodium)種の検出を可能にする。特に、
図7Aは、プラスモディウム(Plasmodium)18S rRNA領域を標的とするための候補オリゴヌクレオチドのアラインメントを示し、全てのプラスモディウム(Plasmodium)種の包括性を実証する。
【
図7B】
図7Bは、プラスモディウム(Plasmodium)28S rRNA領域を標的とするための候補オリゴヌクレオチドのアラインメントを示し、全てのプラスモディウム(Plasmodium)種の包括性を示す。候補二重標的アッセイプライマー/プローブと標的とのアラインメントを示す
図7Aおよび
図7Bに見られるように、18S/28S rRNA二重標的アッセイは、単一標的アッセイと比較して、さらなる包括性を提供する。
【
図8】実施例4に記載されているような18S/28S二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイ、ならびに別の既存のマラリアアッセイ(ここでは「cobasマラリア」と表示)、および実施例4に記載されているような18S/28S二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイのためのプライマーおよびプローブのマッピングを示す図。既存のcobasマラリアアッセイは、非常に異なる検査である。既存のcobasマラリアアッセイは、両方の標的が18S rRNA領域内にある二重標的アッセイである。対照的に、18S/28S二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイは、18S rRNA領域に第1の標的を有し、28S rRNA領域に第2の標的を有する二重標的アッセイである。
【
図9A】実施例4に記載されているように、18Sおよび28S rRNA標的を含有するミニ遺伝子において、(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブを用い、28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いて、)18S/28S二重標的アッセイが、cobasマラリアアッセイと同様に5種のプラスモディウム(Plasmodium)種全てを検出できることを示す図。cobasマラリアアッセイは18S rRNA中の2つの標的を検出するが、18S/28S二重標的アッセイは18Sおよび28S rRNAの両方の標的を検出する。特に、
図9Aは、cobasマラリアアッセイについては1E5コピー、18S/28S二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブを用い、28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)については1E5~1E3コピーで試験したミニ遺伝子についてのCTおよびRFI値が、全てのプラスモディウム(Plasmodium)種(熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)(「Pf」ラベルによって指定される)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)(「Pv」ラベルによって指定される)、卵形マラリア原虫(P.ovale)(「Po」ラベルによって指定される)、サルマラリア原虫(P.knowlesi)(「Pk」ラベルによって指定される)、および四日熱マラリア原虫(P.malariae)(「Pm」ラベルによって指定される)を含む)を検出および増幅する(全てのコピー数は、NanoDropマイクロボリューム分光光度計(ThermoFisher Scientific)を使用して推定した)ことを示す。
【
図9B-F】特に、
図9Bは、cobasマラリア(淡色)および18S/28S二重標的(濃色)アッセイによって増幅された熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)ミニ遺伝子についてのリアルタイムPCR増殖曲線の結果を示す。
図9Cは、cobasマラリア(淡色)および18S/28S二重標的(濃色)アッセイによって増幅された三日熱マラリア原虫(P.vivax)ミニ遺伝子についてのリアルタイムPCR増殖曲線の結果を示す。
図9Dは、cobasマラリア(淡色)および18S/28S二重標的(濃色)アッセイによって増幅された四日熱マラリア原虫(P.malariae)ミニ遺伝子についてのリアルタイムPCR増殖曲線の結果を示す。
図9Eは、cobasマラリア(淡色)および18S/28S二重標的(濃色)アッセイによって増幅された卵形マラリア原虫(P.ovale)ミニ遺伝子についてのリアルタイムPCR増殖曲線の結果を示す。
図9Fは、cobasマラリア(淡色)および18S/28S二重標的(濃色)アッセイによって増幅されたサルマラリア原虫(P.knowlesi)ミニ遺伝子についてのリアルタイムPCR増殖曲線の結果を示す。これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が5種のプラスモディウム(Plasmodium)種を検出することができることを明確に実証する。
【
図10】実施例5に記載されているように、ヒトDNA、試料緩衝液およびいくつかの潜在的な交差反応性種を用いた18S/28S rRNA二重標的アッセイの特異性試験の結果を示す図。これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的アッセイが試験した非プラスモディウム(Plasmodium)試料のいずれにも反応しないことを示した(データは示さず)。すなわち、これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的アッセイがプラスモディウム(Plasmodium)に特異的であることを示す。したがって、これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)がプラスモディウム(Plasmodium)種に特異的であり、バベシア(Babesia)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アクネ菌(Cutibacterium acnes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)および西ナイルウイルスと交差反応しないことを実証している。
【
図11A】実施例6に記載されているような、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)および三日熱マラリア原虫(P.vivax)培養溶出液を使用した18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイの感度分析の結果を示す。
図11Aは、18S/28S rRNA二重標的アッセイが、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)(
図11B)については0.00224個の寄生虫/mL、三日熱マラリア原虫(P.vivax)(
図11C)については0.000536個の寄生虫/mLの寄生虫を検出するのに十分な感度を有することを示すデータを表形式で示す。
【
図11B-C】
図11Bおよび
図11Cは、それぞれ熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)および三日熱マラリア原虫(P.vivax)培養溶出液のリアルタイムPCR増殖曲線を示す。これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が非常に高感度のアッセイであり、試験試料中の1つの溶解したプラスモディウム(Plasmodium)寄生虫を検出できることを実証している。
【
図12】実施例7に記載されているような、18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイで試験した2種のプラスモディウム(Plasmodium)陽性臨床試料からの結果を示す図。
図12は、18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイが陽性臨床試料から熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)および三日熱マラリア原虫(P.vivax)核酸を検出できることを示す。したがって、これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が臨床試料からプラスモディウム(Plasmodium)を検出することができることを実証している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
核酸増幅によるマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)感染の診断は、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)感染を迅速に、正確に、確実に、特異的に、かつ感度よく検出および/または定量する方法を提供する。非生物学的または生物学的試料中のDNAおよび/またはRNAを含むマラリア原虫核酸を検出および/または定量するためのリアルタイムPCRアッセイを本明細書に記載する。マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)を検出および/または定量するためのプライマーおよびプローブが提供され、そのようなプライマーおよびプローブを含有する製造品またはキットも提供される。他の方法と比較したマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)の検出のためのリアルタイムPCRの特異性および感度の増加、ならびに試料の封じ込めならびに増幅産物のリアルタイム検出および定量を含むリアルタイムPCRの改善された特徴は、臨床検査室におけるマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)感染の日常的な診断のためのこの技術の実施を実現可能にする。さらに、この技術は、血液スクリーニングならびに予後診断に採用することができる。このマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)検出アッセイは、他の核酸、例えば他の細菌および/またはウイルスの検出のための他のアッセイと並行して多重化することもできる。
【0028】
したがって、マラリア原虫の検出のためのアッセイはqPCRに基づくアッセイであり、これは血液試料中でマラリアを引き起こすプラスモディウム(Plasmodium)種:熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、サルマラリア原虫(P.knowlesi)、および四日熱マラリア原虫(P.malariae)を検出するために開発された。このqPCRアッセイは、cobas6800/8800プラットフォーム用に設計された。合衆国は非流行国であると考えられているが、世界旅行は輸入マラリアの症例の増加につながり、それによって血液供給に影響を及ぼす可能性がある。血液供給物の安全性を維持するために採用されるマラリアに関する2つの戦略がある。(1)選択的試験、および(2)ドナー不適格。現在、米国は、献血に対するドナー不適格方針を有しており、ドナーは、マラリア感染の病歴、流行国に以前居住していたこと、および流行国への旅行に関する質問票の回答に基づいて不適格とされる。ドナーの不適格は、マラリアの状態にかかわらず、質問票の回答に基づく輸血を除外することによって、血液供給に悪影響を及ぼす。一方、選択的試験は、ドナー不適格と比較して、血液供給在庫に対する影響を低減する。献血の選択的試験も、質問票に基づいているが、選択的試験方針は、ドナーのマラリアの状態に応じて、ドナーの不適格時間の短縮および復帰を可能にする。選択的試験方針を有する国では、検査は酵素免疫測定法を介して行われる。現在のところ、献血をスクリーニングするために利用可能なIVD核酸検査はない。酵素免疫測定法と比較して、核酸検査は、血液中のマラリア原虫を検出する上でより感度が高い。qPCRに基づく試験のためのアッセイの設計戦略は、細胞内に複数のコピーで存在する遺伝子を標的とすることであった。この検査は28Sおよび18SリボソームRNAを標的とする。複数のコピーDNAおよびRNA標的を並行して検出することにより、感度を高めることができる。このqPCRアッセイは、収集された献血中のマラリアをスクリーニングするために病院および血液センターによって使用され得る。
【0029】
本開示は、例えばTaqMan(登録商標)増幅および検出技術を使用してマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)を特異的に同定するために、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)ゲノムにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーおよび蛍光標識加水分解プローブを含む。
【0030】
開示される方法は、1種以上のプライマー対を使用して試料からの核酸分子遺伝子標的の1種以上の部分を増幅することを含む、少なくとも1つのサイクリング工程を実施することを含み得る。本明細書で使用される「プラスモディウム(Plasmodium)プライマー」は、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)など)ゲノムに見られる核酸配列に特異的にアニーリングし、それぞれの増幅産物を産生する適切な条件下でそこからDNA合成を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを指す。プラスモディウム(Plasmodium)種およびゲノムに見られる核酸配列の例としては、ミトコンドリアDNA標的領域(MT-1およびMT-2)、RNA反復配列R125、ならびに18SリボソームRNA(18S rRNA)および28SリボソームRNA(28S rRNA)内の核酸などの標的が挙げられる。論じられるプラスモディウム(Plasmodium)プライマーのそれぞれは、各増幅産物の少なくとも一部が標的に対応する核酸配列を含むように標的にアニーリングする。1種以上の増幅産物は、1種以上の核酸が試料中に存在し、したがって1種以上の増幅産物の存在が試料中のプラスモディウム(Plasmodium)の存在を示すことを条件として産生される。増幅産物は、プラスモディウム(Plasmodium)に対する1種以上の検出可能なプローブに相補的な核酸配列を含有すべきである。本明細書で使用される「プラスモディウム(Plasmodium)プローブ」は、プラスモディウム(Plasmodium)ゲノムに見られる核酸配列に特異的にアニーリングするオリゴヌクレオチドプローブを指す。各サイクリング工程は、増幅工程、ハイブリダイゼーション工程および検出工程を含み、試料中のプラスモディウム(Plasmodium)の存在または非存在を検出するために、試料を1種以上の検出可能なプラスモディウム(Plasmodium)プローブと接触させる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「増幅する」という用語は、鋳型核酸分子(例えば、プラスモディウム(Plasmodium)ゲノムからの核酸分子)の一方または両方の鎖に相補的な核酸分子を合成するプロセスを指す。核酸分子を増幅することは、典型的には、鋳型核酸を変性すること、プライマーの融解温度未満の温度でプライマーを鋳型核酸にアニーリングすること、およびプライマーから酵素的に延長して増幅産物を生成することを含む。増幅には、典型的には、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ酵素(例えば、Platinum(登録商標)Taq)ならびにポリメラーゼ酵素の最適な活性のための適切な緩衝液および/または補因子(例えば、MgCl2および/またはKCl)の存在が必要である。
【0032】
本明細書で使用される「プライマー」という用語は、当業者に公知であり、オリゴマー化合物を指し、主にオリゴヌクレオチドを指すが、鋳型依存性DNAポリメラーゼによるDNA合成を「プライミング」することができる、すなわち、例えばオリゴヌクレオチドの3’末端が遊離3’-OH基を提供し、ここで、さらなる「ヌクレオチド」が、デオキシヌクレオシド三リン酸が使用され、それによってピロリン酸が放出される3’~5’ホスホジエステル結合を確立する鋳型依存性DNAポリメラーゼによって結合され得る修飾オリゴヌクレオチドも指す。
【0033】
「ハイブリダイズする」という用語は、増幅産物への1種以上のプローブのアニーリングを指す。「ハイブリダイゼーション条件」は、典型的には、プローブの融解温度より低いが、プローブの非特異的ハイブリダイゼーションを回避する温度を含む。
【0034】
「5’から3’へのヌクレアーゼ活性」という用語は、典型的には核酸鎖合成に関連し、それによってヌクレオチドが核酸鎖の5’末端から除去される核酸ポリメラーゼの活性を指す。
【0035】
「熱安定性ポリメラーゼ」という用語は、熱安定性であるポリメラーゼ酵素を指し、すなわち、酵素は、鋳型に相補的なプライマー伸長産物の形成を触媒し、二本鎖鋳型核酸の変性をもたらすのに必要な時間にわたり高温に供された場合、不可逆的には変性しない。一般に、合成は各プライマーの3’末端で開始され、鋳型鎖に沿って5’から3’方向へ進行する。熱安定性ポリメラーゼは、例えば、サーマス・フラブス(Thermus flavus)、T.ルーバー(T.ruber)、T.サーモフィルス(T.thermophilus)、T.アクアティカス(T.aquaticus)、T.ラクテウス(T.lacteus)、T.ルベンス(T.rubens)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、およびメタノサームス・フェルビダス(Methanothermus fervidus)から単離される。それでもなお、必要に応じて、酵素が補充されるならば、熱安定性でないポリメラーゼもPCRアッセイに採用され得る。
【0036】
「その相補体」という用語は、所与の核酸と同じ長さであり、正確に相補的である核酸を指す。
【0037】
核酸に関して使用される場合の「伸長」または「延長」という用語は、追加のヌクレオチド(または他の類似の分子)が核酸に組み込まれる場合を指す。例えば、核酸は、典型的には核酸の3’末端にヌクレオチドを付加するポリメラーゼ等の生体触媒を組み込むヌクレオチドによって任意に伸長される。
【0038】
2つまたはそれ以上の核酸配列の文脈における「同一」または「同一性」パーセントという用語は、例えば、当業者に利用可能な配列比較アルゴリズムの1つを使用してまたは目視検査によって測定して一致が最大となるように比較およびアラインメントした場合、同一または特定パーセンテージの同じヌクレオチドを有する2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。配列同一性および配列類似性パーセントを決定するのに好適な例示的なアルゴリズムは、BLASTプログラムであり、例えばAltschulら(1990年)「Basic local alignment search tool」J.Mol.Biol.215巻:403~410頁、Gishら(1993年)「Identification of protein coding regions by database similarity search」Nature Genet.3巻:266~272頁、Maddenら(1996年)「Applications of network BLAST server」Meth.Enzymol.266巻:131~141頁、Altschulら(1997年)「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs」Nucleic Acids Res.25巻:3389~3402頁、およびZhangら(1997年)「PowerBLAST:A new network BLAST application for interactive or automated sequence analysis and annotation」Genome Res.7巻:649~656頁に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
オリゴヌクレオチドの文脈における「修飾ヌクレオチド」とは、オリゴヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つのヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドに所望の特性を提供する異なるヌクレオチドによって置き換えられる変化を指す。本明細書に記載のオリゴヌクレオチド中で置換され得る例示的な修飾ヌクレオチドとしては、例えば、t-ブチルベンジル、C5-メチル-dC、C5-エチル-dC、C5-メチル-dU、C5-エチル-dU、2,6-ジアミノプリン、C5-プロピニル-dC、C5-プロピニル-dU、C7-プロピニル-dA、C7-プロピニル-dG、C5-プロパルギルアミノ-dC、C5-プロパルギルアミノ-dU、C7-プロパルギルアミノ-dA、C7-プロパルギルアミノ-dG、7-デアザ-2-デオキシキサントシン、ピラゾロピリミジン類似体、擬似dU、ニトロピロール、ニトロインドール、2’-0-メチルリボ-U、2’-0-メチルリボ-C、N4-エチル-dC、N6-メチル-dA、5-プロピニルdU、5-プロピニル-dC、7-デアザ-デオキシグアノシン(デアザG(u-デアザ))などが挙げられる。オリゴヌクレオチド中で置換され得る多くの他の修飾ヌクレオチドは、本明細書で言及されるか、または当技術分野で公知である。特定の実施形態では、修飾ヌクレオチド置換は、対応する非修飾オリゴヌクレオチドの融解温度と比較して、オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)を修正する。さらに説明すると、特定の修飾ヌクレオチド置換は、いくつかの実施形態では、非特異的核酸増幅(例えば、プライマーダイマー形成などを最小限に抑える)を減少させ、意図する標的アンプリコンの収率を増加させるなどし得る。これらのタイプの核酸修飾の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,001,611号に記載されている。他の修飾ヌクレオチド置換は、オリゴヌクレオチドの安定性を変化させ得るか、または他の望ましい特徴を提供し得る。
【0040】
マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)標的核酸の検出/定量
本開示は、例えば、プラスモディウム(Plasmodium)の核酸配列の一部を増幅することによって、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)を検出する方法を提供する。具体的には、本開示の実施形態によって、プラスモディウム(Plasmodium)核酸分子標的を増幅ならびに検出および/または定量するためのプライマーおよびプローブが提供される。
【0041】
マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の検出および/または定量のために、プラスモディウム(Plasmodium)を増幅および検出/定量するためのプライマーおよびプローブが提供される。本明細書に例示されるもの以外のプラスモディウム(Plasmodium)核酸も、試料中のプラスモディウム(Plasmodium)を検出するために使用することができる。例えば、機能的変異体は、日常的な方法を使用して、当業者によって特異性および/または感度について評価され得る。代表的な機能的変異体は、例えば、本明細書に開示されるプラスモディウム(Plasmodium)核酸における1種以上の欠失、挿入および/または置換を含み得る。
【0042】
より具体的には、オリゴヌクレオチドの実施形態はそれぞれ、配列番号1~39から選択される配列を有する核酸、特に配列番号1~3および13~15の核酸配列、配列番号1~39のうちの1つと少なくとも、例えば80%、90%もしくは95%の配列同一性を有するその実質的に同一の変異体、または配列番号1~39および変異体の相補体を含むかまたはそれらからなるオリゴヌクレオチドを含む。以下の表1は、18S rRNA標的に対するプラスモディウム(Plasmodium)アッセイで使用されるオリゴヌクレオチド(プライマーおよびプローブ)を示す。
【0043】
【0044】
以下の表2は、28S rRNA標的に対するプラスモディウム(Plasmodium)アッセイで使用されるオリゴヌクレオチド(プライマーおよびプローブ)を示す。
【0045】
【0046】
一実施形態では、18S rRNAを標的とする、プラスモディウム(Plasmodium)を含有すると疑われる生物学的試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の検出を提供するために、上記のプラスモディウム(Plasmodium)プライマーのセットおよびプローブが使用される(表1)。一実施形態では、28S rRNAを標的とする、プラスモディウム(Plasmodium)を含有すると疑われる生物学的試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の検出を提供するために、上記のプラスモディウム(Plasmodium)プライマーのセットおよびプローブを使用する(表2)。
【0047】
一実施形態では、アッセイは二重標的アッセイであり、第1の標的は18S rRNA(表1のオリゴヌクレオチドを使用)であり、第2の標的は28S rRNA(表2のオリゴヌクレオチドを使用)である。このような二重標的アッセイでは、2つの標的(18S rRNAおよび28S rRNA)が同じ試料中で同時に検出される。リボソームRNA標的は、複数のコピーで存在するので選択された。さらに、異なる染色体上のrRNA配列は、同一ではないが、保存されている。一般に、2種以上の標的を標的とするアッセイ、例えば二重標的(または二重アッセイ)は、単一標的だけを標的とするアッセイ(またはシングルプレックスアッセイ)よりも有利である。特に、複数のコピー標的を並行して検出することにより、感度を高めることができる。さらに、複数のコピー標的を並行して検出することはまた、複数の標的をカバーすることによって任意の1つのシングルプレックスアッセイが失敗するリスクを軽減する。したがって、本明細書で提供される二重標的アッセイは、当技術分野、特に単一標的アッセイの技術分野を超える改善を表す。
【0048】
プライマーのセットおよびプローブは、配列番号1~39の核酸配列を含むかまたはそれからなり、特に配列番号1~3および13~15の核酸配列を含むかまたはそれからなる、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の核酸配列に特異的なプライマーおよびプローブを含むかまたはそれからなり得る。別の実施形態では、プラスモディウム(Plasmodium)標的に対するプライマーおよびプローブは、配列番号1~39のプライマーおよびプローブのいずれかの機能的に活性な変異体を含むかまたはそれからなり、特に配列番号1~3および13~15の核酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0049】
配列番号1~39のプライマーおよび/またはプローブのいずれかの機能的に活性な変異体は、開示された方法においてプライマーおよび/またはプローブを使用することによって同定され得る。配列番号1~39のいずれかのプライマーおよび/またはプローブの機能的に活性な変異体は、記載された方法またはキットにおいて、配列番号1~39のそれぞれの配列と比較して、同様またはより高い特異性および感度を提供するプライマーおよび/またはプローブに関する。
【0050】
変異体は、例えば、配列番号1~39のそれぞれの配列の5’末端および/または3’末端における1種以上のヌクレオチドの付加、欠失もしくは置換などの1種以上のヌクレオチドの付加、欠失もしくは置換によって、配列番号1~39の配列から変化し得る。上に詳述したように、プライマーおよび/またはプローブは化学的に修飾されていてもよく、すなわち、プライマーおよび/またはプローブは修飾ヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド化合物を含んでいてもよい。したがって、プローブ(またはプライマー)は修飾オリゴヌクレオチドである。「修飾ヌクレオチド」(または「ヌクレオチド類似体」)は、いくつかの修飾によって天然の「ヌクレオチド」とは異なるが、依然として、塩基もしくは塩基様化合物、ペントフラノシル糖もしくはペントフラノシル糖様化合物、リン酸部分もしくはリン酸様部分、またはそれらの組み合わせからなる。例えば、「ヌクレオチド」の塩基部分に「標識」を付着させて、「修飾ヌクレオチド」を得ることができる。「ヌクレオチド」中の天然塩基はまた、例えば、7-デスアザプリンによって置き換えられてもよく、それによっても同様に「修飾ヌクレオチド」が得られる。「修飾ヌクレオチド」または「ヌクレオチド類似体」という用語は、本出願において互換的に使用される。「修飾ヌクレオシド」(または「ヌクレオシド類似体」)は、「修飾ヌクレオチド」(または「ヌクレオチド類似体」)について上に概説したように、いくらかの修飾により天然のヌクレオシドとは異なる。
【0051】
プラスモディウム(Plasmodium)標的をコードする核酸分子、例えばプラスモディウム(Plasmodium)の代替部分をコードする核酸を増幅する修飾オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドは、例えばOLIGO(Molecular Biology Insights Inc.、Cascade、Colo.)などのコンピュータプログラムを使用して設計され得る。増幅プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドを設計する際の重要な特徴には、検出(例えば、電気泳動による)を容易にするための適切なサイズの増幅産物、一対のプライマーのメンバーの同様の融解温度、および各プライマーの長さ(すなわち、プライマーは、配列特異性でアニーリングし、合成を開始するのに十分な長さである必要があるが、オリゴヌクレオチド合成中に忠実度が低下するほど長くはない。)が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、オリゴヌクレオチドプライマーは8~50ヌクレオチド長(例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、または50ヌクレオチド長)である。マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の検出および増幅のための開示されたプライマーには、配列番号1、2、4~23、27、29および30~36が含まれる。
【0052】
プライマーのセットに加えて、本方法は、プラスモディウム(Plasmodium)の存在または非存在を検出するために1種以上のプローブを使用し得る。「プローブ」という用語は、合成的または生物学的に産生された核酸(DNAまたはRNA)を指し、これは、設計または選択により、それらが定義された所定のストリンジェンシーの下で、「標的核酸」、この場合はプラスモディウム(Plasmodium)(標的)核酸に特異的に(すなわち、優先的に)ハイブリダイズすることを可能にする特定のヌクレオチド配列を含む。「プローブ」は、標的核酸を検出することを意味する「検出プローブ」と呼ばれ得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、記載されるプラスモディウム(Plasmodium)プローブは、少なくとも1つの蛍光標識で標識され得る。一実施形態では、プラスモディウム(Plasmodium)プローブは、ドナー蛍光部分、例えば蛍光色素、および対応するアクセプター部分、例えばクエンチャーで標識され得る。一実施形態では、プローブは蛍光部分を含むかまたはそれからなり、核酸配列は配列番号3、24~26、28および37~39を含むかまたはそれからなる。例えばアンプリコンへのハイブリダイゼーション/アニーリングを介したマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の検出のための開示されたプローブとしては、配列番号3、24~26、28および37~39が挙げられる。
【0054】
プローブとして使用されるオリゴヌクレオチドの設計は、プライマーの設計と同様に実施され得る。実施形態では、増幅産物の検出のために単一のプローブまたは一対のプローブを使用してもよい。実施形態に応じて、使用するプローブ(複数可)は、少なくとも1種の標識および/または少なくとも1種のクエンチャー部分を含み得る。プライマーと同様に、プローブは通常、同様の融解温度を有し、各プローブの長さは、配列特異的ハイブリダイゼーションが起こるのに十分でなければならないが、合成中に忠実度が低下するほど長くはない。オリゴヌクレオチドプローブは、一般に15~40(例えば、15、16、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、または40)ヌクレオチド長である。
【0055】
構築物は、それぞれがプラスモディウム(Plasmodium)プライマーおよびプローブ核酸分子(例えば、配列番号1~39)のうちの1つを含有するベクターを含むことができる。構築物は、例えば、対照鋳型核酸分子として使用され得る。使用に好適なベクターは、市販されている、および/または当技術分野で日常的な組換え核酸技術法によって生成される。プラスモディウム(Plasmodium)核酸分子は、例えば、化学合成、プラスモディウム(Plasmodium)からの直接クローニング、または核酸増幅によって得られ得る。
【0056】
本方法での使用に好適な構築物は、典型的には、プラスモディウム(Plasmodium)核酸分子、ならびに/またはプラスモディウム(Plasmodium)(例えば、配列番号1~39の1種以上の配列を含む核酸分子)の増幅および/もしくは検出のためのプライマー/プローブに加えて、所望の構築物および/または形質転換体を選択するための選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)をコードする配列、ならびに複製起点を含む。ベクター系の選択は、通常、宿主細胞の選択、複製効率、選択性、誘導性および回復の容易さを含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存する。
【0057】
プラスモディウム(Plasmodium)核酸分子ならびに/またはプラスモディウム(Plasmodium)の増幅および/もしくは検出のためのプライマー/プローブを含有する構築物は、宿主細胞内で増殖され得る。本明細書で使用される場合、宿主細胞という用語は、原核生物および真核生物、例えば酵母、植物および動物細胞を含むことを意味する。原核生物宿主には、大腸菌(E.coli)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)および枯草菌(Bacillus subtilis)が含まれ得る。真核生物宿主としては、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.ポンベ(S.pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母、COS細胞またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳動物細胞、昆虫細胞、ならびにシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)およびタバコ(Nicotiana tabacum)等の植物細胞が挙げられる。構築物は、当業者に一般的に公知である技術のいずれかを使用して宿主細胞に導入され得る。例えば、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、熱ショック、リポフェクション、マイクロインジェクションおよびウイルス媒介核酸移動は、核酸を宿主細胞に導入するための一般的な方法である。さらに、ネイキッドDNAは細胞に直接送達され得る(例えば、米国特許第5,580,859号および同第5,589,466号を参照されたい)。
【0058】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
米国特許第4,683,202号、第4,683,195号、第4,800,159号および第4,965,188号は、従来のPCR技術を開示している。PCRは、典型的には、選択された核酸鋳型(例えば、DNAまたはRNA)に結合する2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いる。いくつかの実施形態で有用なプライマーには、記載されるプラスモディウム(Plasmodium)核酸配列(例えば、配列番号1、2、4~23、27、29および30~36)内の核酸合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドが含まれる。プライマーは、従来の方法によって制限消化物から精製され得るか、または合成的に生成され得る。プライマーは、増幅における最大効率のために一本鎖が好ましいが、プライマーは二本鎖であってもよい。二本鎖プライマーを最初に変性させる、すなわち鎖を分離するように処理する。二本鎖核酸を変性させる1つの方法は、加熱によるものである。
【0059】
鋳型核酸が二本鎖である場合、PCRで鋳型として使用され得る前に、二本の鎖を分離することが必要である。鎖分離は、物理的、化学的、または酵素的手段を含む任意の好適な変性方法によって達成され得る。核酸鎖を分離する1つの方法は、核酸が優位に変性する(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、または95%を超える変性)まで加熱することを含む。鋳型核酸を変性させるのに必要な加熱条件は、例えば、緩衝塩濃度、ならびに変性される核酸の長さおよびヌクレオチド組成に依存するが、典型的には、温度および核酸長などの反応の特徴に応じて、一定時間、約90℃~約105℃の範囲である。変性は、典型的には、約30秒間~4分間(例えば、1分~2分30秒、または1.5分)実施される。
【0060】
二本鎖鋳型核酸が熱により変性された場合、反応混合物は、その標的配列に対する各プライマーのアニーリングを促進する温度まで冷却される。アニーリングの温度は、通常、約35℃~約65℃(例えば、約40℃~約60℃、約45℃~約50℃)である。アニーリング時間は、約10秒~約1分(例えば、約20秒~約50秒、約30秒~約40秒)であり得る。次いで、反応混合物を、ポリメラーゼの活性が促進または最適化される温度、すなわち、アニーリングされたプライマーから伸長が起こり、鋳型核酸に相補的な産物を生成するのに十分な温度に調節する。温度は、核酸鋳型にアニーリングされた各プライマーから伸長産物を合成するのに十分でなくてはならないが、その相補的な鋳型から伸長産物を変性させるほど高くすべきではない(例えば、伸長のための温度は、一般に、約40℃~約80℃の範囲(例えば、約50℃~約70℃、約60℃)である)。伸長時間は、約10秒~約5分(例えば、約30秒~約4分、約1分~約3分、約1分30秒~約2分)であり得る。
【0061】
レトロウイルスまたはRNAウイルスのゲノムは、リボ核酸、すなわちRNAから構成される。そのような場合、鋳型核酸であるRNAは、酵素逆転写酵素の作用を介して相補的DNA(cDNA)に最初に転写されなければならない。逆転写酵素は、RNA鋳型およびRNAの3’末端に相補的な短いプライマーを使用して、第1のcDNA鎖の合成を指示し、次いでこれはポリメラーゼ連鎖反応の鋳型として直接使用され得る。
【0062】
PCRアッセイは、プラスモディウム(Plasmodium)核酸、ならびに/またはRNAもしくはDNA(cDNA)などのプラスモディウム(Plasmodium)を増幅および/もしくは検出するプライマー/プローブを採用することができる。鋳型核酸は精製される必要はない。鋳型核酸は、ヒト細胞に含まれるプラスモディウム(Plasmodium)核酸などの複合混合物の微量画分であり得る。プラスモディウム(Plasmodium)核酸分子、ならびに/またはプラスモディウム(Plasmodium)を増幅および/もしくは検出するプライマー/プローブは、Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications(Persingら(編)、1993年、American Society for Microbiology、Washington D.C.)に記載されているような日常的な技術によって生物学的試料から抽出され得る。核酸は、任意の数の供給源、例えばプラスミド、あるいは細菌、酵母、ウイルス、細胞小器官、または植物もしくは動物等の高等生物を含む天然供給源から得られ得る。
【0063】
オリゴヌクレオチドプライマー(例えば、配列番号1、2、4~23、27、29および30~36)を、プライマー伸長を誘導する反応条件下でPCR試薬と組み合わせる。例えば、鎖伸長反応物には、一般に、50mMのKCl、10mMのTris-HCl(pH8.3)、15mMのMgCl2、0.001%(w/v)ゼラチン、0.5~1.0μgの変性された鋳型DNA、50pmolの各オリゴヌクレオチドプライマー、2.5UのTaqポリメラーゼ、および10%のDMSO)が含まれる。反応物は、通常、それぞれ150~320μMのdATP、dCTP、dTTP、dGTP、またはそれらの1種以上の類似体を含む。
【0064】
新規に合成される鎖は、反応の後続工程で使用され得る二本鎖分子を形成する。鎖分離、アニーリングおよび延長の工程は、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の標的核酸分子に対応する所望の量の増幅産物を産生するために必要に応じて頻繁に繰り返され得る。反応の制限因子は、反応物中に存在するプライマー、熱安定性酵素、およびヌクレオシド三リン酸の量である。サイクリング工程(すなわち、変性、アニーリング、および伸長)は、好ましくは少なくとも1回繰り返される。検出での使用については、サイクリング工程の数は、例えば、試料の性質に依存し得る。試料が核酸の複合混合物である場合、検出に十分な標的配列を増幅するために、より多くのサイクリング工程が必要となる。一般に、サイクリング工程は少なくとも約20回繰り返されるが、40、60、または100回でさえ繰り返されてもよい。
【0065】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)
FRET技術(例えば、米国特許第4,996,143号、同第5,565,322号、同第5,849,489号、および同第6,162,603号を参照されたい)は、ドナー蛍光部分および対応するアクセプター蛍光部分が互いに一定の距離内に配置されると、可視化または他の方法で検出および/もしくは定量され得る2つの蛍光部分間でエネルギー移動が起こるという概念に基づいている。典型的に、ドナーは好適な波長の光照射によって励起されると、アクセプターにエネルギーを移動させる。典型的に、アクセプターは移動されたエネルギーを異なる波長の光照射の形態で再発光する。特定の系では、非蛍光エネルギーは、実質的に非蛍光のドナー部分を含む生体分子を介して、ドナー部分とアクセプター部分との間で移動され得る(例えば、米国特許第7,741,467号を参照されたい)。
【0066】
一例では、オリゴヌクレオチドプローブは、ドナー蛍光部分または色素(例えば、HEXまたはFAM)と、蛍光性であってもなくてもよく、移動されたエネルギーを光以外の形態で散逸させる対応するクエンチャー(例えば、BlackHole Quencher(商標)(BHQ)(BHQ-2など))とを含有することができる。プローブがインタクトである場合、エネルギー移動は、典型的には、ドナー蛍光部分からの蛍光発光がアクセプター部分によってクエンチされるように、ドナー部分とアクセプター部分との間で起こる。ポリメラーゼ連鎖反応の伸長工程中、増幅産物に結合したプローブは、ドナー蛍光部分の蛍光発光がもはやクエンチされないように、例えばTaqポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性によって切断される。この目的のための例示的なプローブは、例えば、米国特許第5,210,015号、同第5,994,056号および同第6,171,785号に記載されている。一般的に使用されるドナー-アクセプター対は、FAM-TAMRA対を含む。一般的に使用されるクエンチャーは、DABCYLおよびTAMRAである。一般的に使用されるダーククエンチャーは、BlackHole Quencher(商標)(BHQ)(BHQ2など)、(Biosearch Technologies,Inc.、Novato、Cal.)、Iowa Black(商標)(Integrated DNA Tech.,Inc.、Coralville、Iowa)、BlackBerry(登録商標)Quencher 650(BBQ-650)(Berry&Assoc.、Dexter、Mich.)を包含する。
【0067】
別の例では、それぞれが蛍光部分を含む2つのオリゴヌクレオチドプローブは、プラスモディウム(Plasmodium)標的核酸配列に対するオリゴヌクレオチドプローブの相補性によって決定される特定の位置で増幅産物にハイブリダイズすることができる。オリゴヌクレオチドプローブが適切な位置で増幅産物の核酸にハイブリダイゼーションすると、FRETシグナルが発生する。ハイブリダイゼーション温度は、約10秒間~約1分間、約35℃~約65℃の範囲であり得る。
【0068】
蛍光分析は、例えば、光子計数落射蛍光顕微鏡システム(適切なダイクロイックミラーおよび特定の範囲での蛍光発光をモニターするためのフィルタを備える)、光子計数光電子増倍管システム、または蛍光光度計を使用して行われ得る。エネルギー移動を開始するため、またはフルオロフォアの直接検出を可能にするための励起は、アルゴンイオンレーザー、高強度水銀(Hg)アークランプ、キセノンランプ、光ファイバー光源、または所望の範囲の励起のために適切にフィルタにかけられた他の高強度光源を用いて行われ得る。
【0069】
ドナーおよび対応するアクセプター部分に関して本明細書で使用される場合、「対応する」とは、ドナー蛍光部分の発光スペクトルと重複する吸光度スペクトルを有する、アクセプター蛍光部分またはダーククエンチャーを指す。アクセプター蛍光部分の発光スペクトルの波長最大値は、ドナー蛍光部分の励起スペクトルの波長最大値よりも少なくとも100nm大きくなければならない。したがって、それらの間で効率的な非照射エネルギー移動が行われ得る。
【0070】
蛍光ドナー部分および対応するアクセプター部分は、一般に、(a)高効率Foersterエネルギー移動、(b)大きな最終ストークスシフト(>100nm);(c)可能な限り可視スペクトルの赤色部分(>600nm)への発光のシフト;(d)ドナー励起波長での励起によって生じるラマン水蛍光発光(Raman water fluorescent emission)よりも高い波長への発光のシフトのために選択される。例えば、レーザー線付近のその最大励起波長(例えば、ヘリウム-カドミウム442nmまたはアルゴン488nm)、高い消衰係数、高い量子収率、およびその蛍光発光の対応するアクセプター蛍光部分の励起スペクトルとの良好な重複を有する、ドナー蛍光部分が選択され得る。高い消衰係数、高い量子収率、ドナー蛍光部分の発光とのその励起の良好な重複、および可視スペクトルの赤色部分(>600nm)の発光を有する対応するアクセプター蛍光部分が選択され得る。
【0071】
FRET技術において様々なアクセプター蛍光部分と共に使用され得る代表的なドナー蛍光部分としては、フルオレセイン、ルシファーイエロー、B-フィコエリトリン、9-アクリジンイソチオシアネート、ルシファーイエローVS、4-アセトアミド-4’-イソチオ-シアナトスチルベン-2、2’-ジスルホン酸、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン、スクシンイミジル1-ピレンブチレート、および4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸誘導体が挙げられる。代表的なアクセプター蛍光部分としては、使用されるドナー蛍光部分に応じて、LC Red640、LC Red705、Cy5、Cy5.5、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、ローダミンxイソチオシアネート、エリスロシンイソチオシアネート、フルオレセイン、ジエチレントリアミンペンタアセテート、またはランタニドイオンの他のキレート(例えば、ユウロピウム、またはテルビウム)が挙げられる。ドナー蛍光部分およびアクセプター蛍光部分は、例えば、Molecular Probes(Junction City、Oreg.)またはSigma Chemical Co.(St.Louis、Mo.)から得られ得る。
【0072】
ドナー蛍光部分およびアクセプター蛍光部分は、リンカーアームを介して適切なプローブオリゴヌクレオチドに結合され得る。リンカーアームはドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分との間の距離に影響を及ぼすので、各リンカーアームの長さは重要である。リンカーアームの長さは、ヌクレオチド塩基から蛍光部分までのオングストローム(Å)の距離であり得る。一般に、リンカーアームは約10Å~約25Åである。リンカーアームは、国際公開第84/03285号に記載されている種類のものであってもよい。国際公開第84/03285号はまた、リンカーアームを特定のヌクレオチド塩基に結合させる方法、および蛍光部分をリンカーアームに結合させる方法も開示している。
【0073】
LC Red640などのアクセプター蛍光部分は、アミノリンカー(例えば、ABIFoster City,Calif.)またはGlen Research(Sterling,VA)から入手可能なC6-アミノホスホラミダイト)を含有するオリゴヌクレオチドと組み合わされ得、例えば、LC Red640標識オリゴヌクレオチドを生成することができる。フルオレセイン等のドナー蛍光部分をオリゴヌクレオチドにカップリングするために頻繁に使用されるリンカーとしては、チオ尿素リンカー(FITC由来、例えばGlen ResearchまたはChemGene(Ashland、Mass.)製のフルオレセイン-CPG)、アミド-リンカー(フルオレセイン-NHS-エステル由来、例えば、BioGenex(San Ramon、Calif.)製のCX-フルオレセイン-CPG)、またはオリゴヌクレオチド合成後にフルオレセイン-NHS-エステルのカップリングを必要とする3’-アミノ-CPGが挙げられる。
【0074】
プラスモディウム(Plasmodium)増幅産物(アンプリコン)の検出
本開示は、生物学的または非生物学的試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の存在または非存在を迅速に検出する方法を提供する。提供される方法は、試料の汚染、偽陰性、および偽陽性の問題を回避する。この方法は、1対以上のプラスモディウム(Plasmodium)プライマーを使用して試料からのプラスモディウム(Plasmodium)標的核酸分子の一部を増幅することを含む少なくとも1つのサイクリング工程と、FRETを検出する工程とを実施することを含む。複数のサイクリング工程は、好ましくはサーモサイクラーで実施される。方法は、プラスモディウム(Plasmodium)の存在を検出するためにプラスモディウム(Plasmodium)プライマーおよびプローブを使用して実施され得、プラスモディウム(Plasmodium)の検出は試料中のプラスモディウム(Plasmodium)の存在を示す。
【0075】
本明細書に記載されているように、増幅産物は、FRET技術を活用する標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用して検出され得る。1つのFRET形式は、TaqMan(登録商標)技術を利用して、増幅産物の存在または非存在、したがってマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の存在または非存在を検出する。TaqMan(登録商標)技術は、例えば1つの蛍光部分または色素(例えば、HEXまたはFAM)および蛍光性であってもなくてもよい1つのクエンチャー(例えば、BHQ-2)で標識された1つの一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを利用する。第1の蛍光部分が好適な波長の光で励起されると、吸収されたエネルギーは、FRETの原理に従って第2の蛍光部分またはダーククエンチャーに移動する。第2の蛍光部分は、一般的には、クエンチャー分子である。PCR反応のアニーリング工程中、標識されたハイブリダイゼーションプローブは、標的DNA(すなわち、増幅産物)に結合し、その後の延長段階中に、例えばTaqポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性によって分解される。その結果、蛍光部分とクエンチャー部分とが互いに空間的に分離される。結果として、クエンチャーの非存在下で第1の蛍光部分を励起すると、第1の蛍光部分からの蛍光発光が検出され得る。例として、ABI PRISM(登録商標)7700配列検出システム(Applied Biosystems)は、TaqMan(登録商標)技術を使用し、試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)の存在または非存在を検出するための本明細書に記載の方法を実施するのに適している。
【0076】
FRETと組み合わせた分子ビーコンを使用して、リアルタイムPCR法を使用して増幅産物の存在を検出することもできる。分子ビーコン技術は、第1の蛍光部分および第2の蛍光部分で標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用する。第2の蛍光部分は一般的にはクエンチャーであり、蛍光標識は典型的にはプローブの各端部に配置される。分子ビーコン技術は、二次構造形成を可能にする配列(例えば、ヘアピン)を有するプローブオリゴヌクレオチドを使用する。プローブ内で二次構造が形成された結果、プローブが溶液中にある場合、両方の蛍光部分が空間的に近接する。標的核酸(すなわち、増幅産物)へのハイブリダイゼーション後、プローブの二次構造が破壊され、蛍光部分が互いに分離され、それにより、好適な波長の光による励起後、第1の蛍光部分の発光が検出され得る。
【0077】
FRET技術の別の一般的な形式は、2つのハイブリダイゼーションプローブを利用する。各プローブは、異なる蛍光部分で標識され得、一般に、標的DNA分子(例えば、増幅産物)内で互いに近接してハイブリダイズするように設計される。ドナー蛍光部分、例えばフルオレセインは、LightCycler(登録商標)機器の光源によって470nmで励起される。FRETの間、フルオレセインは、そのエネルギーをアクセプター蛍光部分、例えばLightCycler(登録商標)-Red640(LC Red640)またはLightCycler(登録商標)-Red705(LC Red705)に移動する。次いで、アクセプター蛍光部分はより長い波長の光を放出し、これはLightCycler(登録商標)機器の光学検出システムによって検出される。効率的なFRETは、蛍光部分が直接局所的に近接しており、ドナー蛍光部分の発光スペクトルがアクセプター蛍光部分の吸収スペクトルと重複している場合にのみ起こり得る。放出されたシグナルの強度は、元の標的DNA分子の数(例えば、プラスモディウム(Plasmodium)ゲノムの数)と相関し得る。プラスモディウム(Plasmodium)標的核酸の増幅が起こり、増幅産物が産生される場合、ハイブリダイズする工程は、プローブ対のメンバー間のFRETに基づく検出可能なシグナルをもたらす。
【0078】
一般に、FRETの存在は試料中のプラスモディウム(Plasmodium)の存在を示し、FRETの非存在は試料中のプラスモディウム(Plasmodium)の非存在を示す。しかしながら、不十分な検体収集、輸送遅延、不適切な輸送条件、またはある特定の収集スワブ(アルギン酸カルシウムまたはアルミニウムシャフト)の使用はいずれも、試験結果の成功および/または精度に影響を及ぼし得る条件である。
【0079】
本方法の実施に使用され得る代表的な生物学的試料としては、全血、呼吸器検体、尿、糞便検体、血液検体、血漿、皮膚スワブ、鼻スワブ、創傷スワブ、血液培養物、皮膚および軟部組織感染部が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的試料の収集および保存方法は、当業者に公知である。生物学的試料は(例えば、当技術分野で公知の核酸抽出方法および/またはキットによって)処理され得、プラスモディウム(Plasmodium)核酸を放出し、またはいくつかの場合、生物学的試料はPCR反応成分および適切なオリゴヌクレオチドと直接接触させられ得る。いくつかの例では、生物学的試料は全血である。全血を典型的に収集する場合、全血は多くの場合、好適な温度で保存することを可能にする、ヘパリン、クエン酸塩、またはEDTAなどの抗凝固剤を含む容器に収集される。しかし、そのような条件下では、全血内の核酸はかなりの量の分解を受ける。したがって、核酸を含む全血成分を溶解、変性および安定化する核酸安定化溶液などの試薬に血液を収集することが有利であり得る。そのような場合、核酸は、後続の単離およびPCRなどの核酸試験などによる分析のために、より良好に保存および安定化され得る。そのような核酸安定化溶液は当技術分野で周知であり、これには、pH7.5で4.2Mのグアニジニウム塩(GuHCl)および50mMのTrisを含有するcobas PCR培地が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
試料は、分析前に試料を適切に保持および保存するように設計された任意の方法もしくは装置によって収集され得る。そのような方法および装置は、当技術分野で周知である。試料が全血などの生物学的試料である場合、方法または装置は、採血容器を含むことができる。このような採血容器は、当該技術において周知であり、例えば採血チューブを含み得る。多くの場合、採血チューブを使用することが有利であり得、この場合、採血容器は、試料取り込みのために意図された空間内で圧力下にあり、例えば、バキュテナー採血チューブのような、真空排気されたチャンバを有する血液容器などである。真空排気されたチャンバを有するそのような採血チューブ、例えばバキュテナー採血チューブは、当技術分野で周知である。吸引される全血が採血容器内の核酸安定化溶液と直ちに接触するように、血液を、真空排気されたチャンバを有するかまたは有しない、核酸を含む全血成分を溶解、変性、および安定化する核酸安定化溶液などの溶液を内部に含む採血容器内に収集することがさらに有利であり得る。
【0081】
融解曲線分析は、サイクリングプロファイルに含められ得る追加の工程である。融解曲線分析は、DNA二本鎖の半分が一本鎖に分離した温度として定義される融解温度(Tm)と呼ばれる特徴的な温度でDNAが融解するという事実に基づいている。DNAの融解温度は、主にそのヌクレオチド組成に依存する。したがって、GおよびCヌクレオチドが豊富なDNA分子は、AおよびTヌクレオチドが豊富なDNA分子よりも高いTmを有する。シグナルが失われる温度を検出することにより、プローブの融解温度が決定され得る。同様に、シグナルが発生する温度を検出することによって、プローブのアニーリング温度は決定され得る。プラスモディウム(Plasmodium)増幅産物からのプラスモディウム(Plasmodium)プローブの融解温度は、試料中のプラスモディウム(Plasmodium)の存在または非存在を確認し得る。
【0082】
各サーモサイクラーを運転している間に、対照試料も同様にサイクルされ得る。陽性対照試料は、例えば、対照プライマーおよび対照プローブを使用して、(記載された標的遺伝子の増幅産物以外の)標的核酸対照鋳型を増幅することができる。陽性対照試料はまた、例えば標的核酸分子を含むプラスミド構築物を増幅することができる。そのようなプラスミド対照は、意図された標的の検出に使用されるのと同じプライマーおよびプローブを使用して、内部で(例えば、試料内で)または患者の試料と並んで実行される別個の試料中で増幅され得る。そのような対照は、増幅、ハイブリダイゼーションおよび/またはFRET反応の成功または失敗の指標である。各サーモサイクラー実行はまた、例えば標的鋳型DNAを欠く陰性対照を含むことができる。陰性対照は汚染を測定することができる。これにより、系および試薬が偽陽性シグナルを生じないことが保証される。したがって、対照反応物は、例えば、プライマーが配列特異性によりアニーリングする能力、および延長を開始する能力、ならびにプローブが配列特異性によりハイブリダイズし、FRETが発生する能力を容易に決定することができる。
【0083】
一実施形態では、本方法は、汚染を回避する工程を含む。例えば、あるサーモサイクラーの運転と次回との間の汚染を低減または排除するための、ウラシル-DNAグリコシラーゼを利用する酵素的方法は、米国特許第5,035,996号、同第5,683,896号および同第5,945,313号に記載されている。
【0084】
FRET技術と組み合わせた従来のPCR法を使用して、方法を実践することができる。一実施形態では、LightCycler(登録商標)機器が使用される。以下の特許出願は、LightCycler(登録商標)技術で使用されるリアルタイムPCRを記載している:国際公開第97/46707号、国際公開第97/46714号および国際公開第97/46712号。
【0085】
LightCycler(登録商標)は、PCワークステーションを使用して動作され得、Windows NTオペレーティングシステムを利用することができる。試料からのシグナルは、機械が光学ユニット上にキャピラリを順次配置するときに得られる。ソフトウェアは、各測定の直後にリアルタイムで蛍光シグナルを表示することができる。蛍光取得時間は10~100ミリ秒(msec)である。各サイクリング工程の後、蛍光対サイクル数の定量的表示は、全ての試料について連続的に更新され得る。生成されたデータは、さらなる分析のために保存され得る。
【0086】
FRETの代替法として、増幅産物は、蛍光DNA結合色素(例えば、SYBR(登録商標)GreenまたはSYBR(登録商標)Gold(Molecular Probes))などの二本鎖DNA結合色素を用いて検出され得る。二本鎖核酸と相互作用すると、このような蛍光DNA結合色素は、好適な波長の光での励起後に蛍光シグナルを発する。また、核酸インターカレート色素等の二本鎖DNA結合色素も使用され得る。二本鎖DNA結合色素を使用する場合、増幅産物の存在を確認するために、通常は融解曲線分析を実施する。
【0087】
当業者は、他の核酸またはシグナル増幅方法も採用され得ることを理解するであろう。そのような方法の例としては、分岐DNAシグナル増幅、ループ媒介等温増幅(LAMP)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、自家持続配列複製(3SR)、鎖置換増幅(SDA)、またはスマートアンプ法バージョン2(SMAP2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本開示の実施形態は、1つ以上の市販の機器の構成によって限定されないことが理解される。
【0089】
製造品/キット
本開示はさらに、マラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)を検出するための製造品またはキットを提供する。製造品は、好適な包装材料と共に、プラスモディウム(Plasmodium)遺伝子標的を検出するために使用されるプライマーおよびプローブを含むことができる。プラスモディウム(Plasmodium)の検出のための代表的なプライマーおよびプローブは、プラスモディウム(Plasmodium)標的核酸分子にハイブリダイズすることができる。さらに、キットはまた、固体支持体、緩衝液、酵素、およびDNA標準等、DNA固定化、ハイブリダイゼーション、および検出に必要な適切に包装された試薬および材料を含み得る。プライマーおよびプローブを設計する方法は本明細書に開示されており、プラスモディウム(Plasmodium)標的核酸分子を増幅しそれにハイブリダイズするプライマーおよびプローブの代表的な例が提供される。
【0090】
製造品はまた、プローブを標識するための1種以上の蛍光部分を含み得るか、あるいは、キットと共に供給されるプローブは標識され得る。例えば、製造品は、プラスモディウム(Plasmodium)プローブを標識するためのドナーおよび/またはアクセプター蛍光部分を含み得る。好適なFRETドナー蛍光部分および対応するアクセプター蛍光部分の例は上に提供されている。
【0091】
製造品はまた、プラスモディウム(Plasmodium)プライマーおよびプローブを使用して試料中のプラスモディウム(Plasmodium)を検出するための説明書を有する添付文書または包装ラベルを含むことができる。製造品は、本明細書に開示される方法を実施するための試薬(例えば、緩衝液、ポリメラーゼ酵素、補因子、または汚染を防止するための薬剤)をさらに含み得る。そのような試薬は、本明細書に記載されている市販の機器のうちの1つに特異的であり得る。
【0092】
本開示はまた、試料中のマラリア原虫(プラスモディウム(Plasmodium)を含む)を検出するためのプライマーのセットおよび1種以上の検出可能なプローブを提供する。
【0093】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定しない以下の実施例において更に説明される。
【実施例】
【0094】
以下の実施例および図は、主題の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の趣旨から逸脱することなく、記載された手順において修正が行われ得ることが理解される。
【0095】
試験は、完全に自動化された試料調製(核酸抽出および精製)とそれに続くPCR増幅および検出であった。使用したシステムは、試料供給モジュール、移動モジュール、処理モジュール、および分析モジュールからなる、cobas(登録商標)6800/8800システムであった。
【0096】
標的核酸の選択的増幅は、標的核酸の高度に保存された領域から選択された特異的フォワードプライマーおよびリバースプライマーの使用によって達成された。熱安定性DNAポリメラーゼ酵素を逆転写および増幅の両方に使用した。マスターミックスは、新たに合成されたDNA(増幅産物またはアンプリコン)に組み込まれるデオキシチミジン三リン酸(dTTP)の代わりにデオキシウリジン三リン酸(dUTP)を含んだ。以前のPCR実行からの汚染アンプリコンはいずれも、第1の熱サイクリング工程で加熱すると、PCRミックスに含まれていたAmpErase酵素(ウラシル-N-グリコシラーゼ)によって破壊された。しかし、AmpErase酵素は55°Cを超える温度に一度曝露されると不活性化されたので、新たに形成されたアンプリコンは破壊されなかった。
【0097】
cobas(登録商標)プラスモディウム(Plasmodium)マスターミックスは、プラスモディウム(Plasmodium)および対照核酸に特異的な検出プローブを含んでいた。特定のプラスモディウム(Plasmodium)および対照検出プローブをそれぞれ、レポーターとして作用する2つの独自の蛍光色素のうちの1つで標識した。それぞれのプローブは、クエンチャーとして作用する第2の色素も有していた。レポーター色素を規定の波長で測定し、したがって、増幅されたプラスモディウム(Plasmodium)標的および対照の検出および識別を可能にした。完全なプローブの蛍光シグナルは、クエンチャー色素によって抑制された。PCR増幅工程中、プローブと特定の一本鎖DNA鋳型とのハイブリダイゼーションは、DNAポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性による切断をもたらし、レポーター色素とクエンチャー色素との分離、および蛍光シグナルの生成をもたらした。各PCRサイクルに伴い、生成される切断プローブ量が増加し、レポーター色素の累積シグナルが同時に増加した。2つの特異的レポーター色素が規定の波長で測定されるので、増幅されたプラスモディウム(Plasmodium)標的および対照の同時検出および識別が可能であった。
【0098】
プラスモディウム(Plasmodium)ゲノムの標的領域は、18SリボソームRNAおよび28SリボソームRNAであった。開示されたマラリア原虫アッセイは、以下のプラスモディウム(Plasmodium)種を検出することができる汎マラリアアッセイであるように設計されている。熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、卵形マラリア原虫(P.ovale)およびサルマラリア原虫(P.knowlesi)。このアッセイは、密接に関連する種(例えば、寄生虫および細菌)およびヒトと相同性を共有する標的配列、ならびに様々なアッセイ試薬に見られ得る環境DNAを除外する。マラリアアッセイは、全血などの生物学的試料などの試料中のプラスモディウム(Plasmodium)種を検出するように設計されている。開示されたマラリアアッセイは、約1.1mlの全血中、プラスモディウム(Plasmodium)種を検出する。いくつかの状況では、全血試料は、吸引される全血が採血容器内の核酸安定化溶液と直ちに接触するように、核酸を含む全血成分を溶解、変性および安定化する核酸安定化溶液などの試薬/溶液も内部に含む真空排気されたチューブ/容器などのチューブ/容器内にある。配列番号1および2の核酸配列を有する開示されたプライマー対、ならびに配列番号3および/または4の核酸配列を有する開示されたプローブは、18SリボソームRNA標的を検出および/または増幅する。配列番号13および14の核酸配列を有する開示されたプライマー対、ならびに配列番号15の核酸配列を有する開示されたプローブは、28SリボソームRNA標的を検出および/または増幅する。
【0099】
したがって、マラリア原虫の検出のためのアッセイはqPCRに基づくアッセイであり、これは血液試料中でマラリアを引き起こすプラスモディウム(Plasmodium)種:熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、サルマラリア原虫(P.knowlesi)、および四日熱マラリア原虫(P.malariae)を検出するために開発された。このqPCRアッセイは、cobas6800/8800プラットフォーム用に設計された。合衆国は非流行国であると考えられているが、世界旅行は輸入マラリアの症例の増加につながり、それによって血液供給に影響を及ぼす可能性がある。血液供給物の安全性を維持するために採用されるマラリアに関する2つの戦略がある。(1)選択的試験、および(2)ドナー不適格。現在、米国は、献血に対するドナー不適格方針を有しており、ドナーは、マラリア感染の病歴、流行国に以前居住していたこと、および流行国への旅行に関する質問票の回答に基づいて不適格とされる。ドナーの不適格は、マラリアの状態にかかわらず、質問票の回答に基づく輸血を除外することによって、血液供給に悪影響を及ぼす。一方、選択的試験は、ドナー不適格と比較して、血液供給在庫に対する影響を低減する。献血の選択的試験も、質問票に基づいているが、選択的試験方針は、ドナーのマラリアの状態に応じて、ドナーの不適格時間の短縮および復帰を可能にする。選択的試験方針を有する国では、検査は酵素免疫測定法を介して行われる。現在のところ、献血をスクリーニングするために現在利用可能なIVD核酸検査はない。酵素免疫測定法と比較して、核酸検査は、血液中のマラリア原虫を検出する上でより感度が高い。qPCRに基づく試験のためのアッセイの設計戦略は、細胞内に複数のコピーで存在する遺伝子を標的とすることであった。この検査は28Sおよび18SリボソームRNAを標的とする。複数のコピーDNAおよびRNA標的を並行して検出することにより、感度を高めることができる。このqPCRアッセイは、収集された献血中のマラリアをスクリーニングするために病院および血液センターによって使用され得る。
【0100】
実施例1:18S rRNA標的アッセイの設計
18S rRNA標的核酸アッセイを、ATCC(カタログ番号30932)からの熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)培養物からの熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)を使用して試験した。
図1に示すように、刊行物(Seilieら、「Beyond Blood Smears:Qualification of Plasmodium 18S rRNA as a Biomarker for Controlled Human Malaria Infections」、The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene 100巻(6号):1466~1476頁(2019年);Rougemontら、「Detection of Four Plasmodium Species in Blood from Humans by 18S rRNA Gene Subunit-Based and Species-Specific Real-Time PCR Assays」、Journal of Clinical Microbiology 42巻(12号):5636~5643頁(2004年);Kamauら、「Development of a Highly Sensitive Genus-Specific Quantitative Reverse Transcriptase Real-Time PCR Assay for Detection and Quantitation of Plasmodium by Amplifying RNA and DNA of the 18S rRNA Genes」、Journal of Clinical Microbiology49巻(8号):2946~2953頁(2011年);Waggonerら、「Multiplex Nucleic Acid Amplification Test for Diagnosis of Dengue Fever,Malaria,and Leptospirosis」、Journal of Clinical Microbiology52巻(6号):2011~2018頁(2014年))に基づく18S rRNAの4つの異なる領域を検討した。使用される試薬には、cobas(登録商標)6800/8800と共に使用するためのプロファイルおよび条件を有するcobas(登録商標)6800/8800汎用PCRマスターミックス、およびTaqMan(登録商標)増幅および検出技術を使用することが含まれる。マスターミックス中のオリゴヌクレオチドの最終濃度は、プライマーについては0.3μM、プローブについては0.1μMであった。これらの実施例全体で採用されるcobas(登録商標)6800/8800 PCRプロファイルを以下の表3に示す:
【0101】
【0102】
4つの候補のそれぞれを、全血溶出液バックグラウンド中の熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)ATCC培養溶出液で評価した。バベシア(Babesia)交差反応性試験も同時に行った(データは示さず)。評価した4つの候補領域のうち、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)3D7の第5染色体上の18S rRNAにマッピングされた1,290,600塩基~1,290,800塩基の間の領域を標的とするオリゴヌクレオチドは最も高いRFIを示し(データは示さず)、これをさらなる評価のために選択した。熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)3D7の第5染色体上の18S rRNAにマッピングされる1,290,600塩基~1,290,800塩基の間の領域を標的とするいくつかの追加の再設計候補オリゴヌクレオチドを試験した。これらの候補オリゴヌクレオチドを、
図2に示すように、プラスモディウム(Plasmodium)種およびバベシア(Babesia)に対してマッピングした。再設計されたオリゴヌクレオチドの異なる組み合わせを、再び全血溶出液バックグラウンドで熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)ATCC培養物で試験した。結果を
図3に示す。
図3に見られるように、いくつかの組み合わせは、バベシア(Babesia)との高い交差反応性を示した(アスタリスクで示す)。1073Fと呼ばれるフォワードプライマーと1262Rと呼ばれるリバースプライマーとを含むプライマーセットは、バベシア(Babesia)との交差反応性を示さずに、最も高いRFIを示した。
【0103】
したがって、これらの研究は、18S rRNA標的のための多数の候補プライマー/プローブ設計が全血溶出液環境においてプラスモディウム(Plasmodium)試料からの18S rRNA標的の検出および増幅に有効であったことを実証している。
【0104】
実施例2:28S rRNA標的アッセイの設計
28S rRNA標的核酸アッセイを、ATCC(カタログ番号30932)からの熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)培養物からの熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)を使用して試験した。実施例1と同様に、使用される試薬には、cobas(登録商標)6800/8800と共に使用するためのプロファイルおよび条件を有するcobas(登録商標)6800/8800汎用PCRマスターミックス、およびTaqMan(登録商標)増幅および検出技術を使用することが含まれる。マスターミックス中のオリゴヌクレオチドの最終濃度は、プライマーについては0.3μM、プローブについては0.1μMであった。採用したcobas(登録商標)6800/8800 PCRプロファイルを上記の表3に示す。
【0105】
図4に示すように、第5染色体由来の28S rRNAの領域を標的とする、3つの異なるフォワードプライマー候補、2つの異なるリバースプライマー候補、および1つのプローブの組み合わせを試験した。候補のそれぞれを、全血溶出液バックグラウンド中の熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)および三日熱マラリア原虫(P.vivax)(三日熱マラリア原虫(P.vivax)のデータは示さず)ATCC培養溶出液で評価した。バベシア(Babesia)交差反応性試験も同時に行った(データは示さず)。これらの研究は、
図5に見られるように、プライマーの全ての組み合わせが全て、熱帯熱マラリア原虫(F.falciparum)および三日熱マラリア原虫(F.vivax)(三日熱マラリア原虫(P.vivax)のデータは示さず)を検出および増幅する能力を示すことを示した。しかしながら、プライマーの組み合わせのうちの2つはバベシア(Babesia)との交差反応性を示し(
図5にアスタリスクで示す)、さらに検討されなかった。
【0106】
したがって、これらの研究は、28S rRNA標的のための多数の候補プライマー/プローブ設計が全血溶出液環境においてプラスモディウム(Plasmodium)試料からの28S rRNA標的の検出および増幅に有効であったことを実証している。
【0107】
実施例3:性能を改善するための18Sおよび28S rRNA候補プライマー/プローブの修飾
次いで、18Sおよび28Sの候補プライマー/プローブのリストを、実施例1および2で論じたように、潜在的に性能をさらに改善および向上させるための修飾に供した。その目的のために、プライマーを修飾して、性能が改善され得るかどうかを評価した。18Sおよび28S rRNA標的のための修飾プライマーを、ATCC(カタログ番号30932)からの熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)培養物からの熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)を使用したシングレプレックスアッセイで試験した。実施例1および2のように、使用される試薬には、cobas(登録商標)6800/8800と共に使用するためのプロファイルおよび条件を有するcobas(登録商標)6800/8800汎用PCRマスターミックス、およびTaqMan(登録商標)増幅および検出技術を使用することが含まれる。マスターミックス中のオリゴヌクレオチドの最終濃度は、プライマーについては0.3μM、プローブについては0.1μMであった。採用したcobas(登録商標)6800/8800 PCRプロファイルを上記の表3に示す。
【0108】
結果を
図6Aに示す。プライマー/プローブの全ての組み合わせは、全血バックグラウンドの培養物から18Sまたは28S rRNA熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)標的核酸を検出および増幅する能力を示した。したがって、最良のRFI(
図6Aにおいてアスタリスクで示す)を示す単一標的アッセイを、二重標的アッセイ構成でのさらなる試験のために選択した。二重標的アッセイ構成を、FAMチャネルにおける18Sおよび28S rRNA標的プライマー/プローブ、ならびにCy5.5チャネルにおける内部対照を示す
図6Bに示す。理想的な18S rRNA標的プライマー/プローブは配列番号1~3の核酸配列に対応し、理想的な28S rRNA標的プライマー/プローブは配列番号13~15の核酸配列に対応する。18S rRNA標的(すなわち、配列番号3の配列を有する)を検出するために使用されるプローブは、2019年の刊行物(Seilieら、「Beyond Blood Smears:Qualification of Plasmodium 18S rRNA as a Biomarker for Controlled Human Malaria Infections」、Am.J.Trop.Med.Hyg.100巻(6号):1466~1476頁(2019年))からの18S rRNA標的にハイブリダイズするためのプローブに由来することに留意されたい。18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイの配列を以下の表4に示す。
【0109】
【0110】
したがって、これらの研究は、18S rRNA標的(配列番号1~3に対応する)に対する修飾プライマー/プローブおよび28S rRNA標的(配列番号13~15に対応する)に対する修飾プライマー/プローブが、全血環境での熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)培養物からの18Sおよび28S rRNA標的核酸の検出および増幅にそれぞれ有効であることを実証している。
【0111】
実施例4:包括性分析
リボソームRNA(rRNA)標的18Sおよび28S rRNAは、それらが複数のコピーで存在するので選択された。プラスモディウム(Plasmodium)の異なる種間で、異なる染色体上のrRNA配列は保存されているが同一ではなく、rRNA発現は発生段階に依存する。染色体rRNA発現は、あまり優位でない種については十分に特徴づけられていない。
【0112】
Bioinformatics PLRツールを使用して、インシリコ包括性分析を行った。この分析のこれらの結果は、18S rRNA標的が、全てのプラスモディウム(Plasmodium)配列について、28S rRNA標的よりも多くの堆積された配列を有することを実証した(データは示さず)。さらに、18Sおよび28S標的の大部分は、A型およびS型の両方を含むアッセイによって網羅されると予測される。実際、ゲノムあたり4~8個のrRNA遺伝子コピーでは、1つのコピーが失敗すると予測される場合、他のコピーがカバレッジを提供することが決定された(データは示さず)。したがって、候補二重標的アッセイプライマー/プローブと標的とのアラインメントを示す
図7Aおよび7Bに見られるように、18S/28S rRNA二重標的アッセイは、さらなる包括性を提供する。
【0113】
種の包括性を確認するために、プラスモディウム(Plasmodium)(熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、およびサルマラリア原虫(P.knowlesi))の各種由来の完全長18S rRNAを含有するミニ遺伝子を、既存の18Sのみの二重標的アッセイ(すなわち、18S rRNA領域中の両方の標的を用いた二重標的アッセイ)と比較して、確認アッセイ(すなわち、18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる本18S/28S rRNA二重標的アッセイ)によって試験した。
図8は、これら2つの異なるアッセイのアラインメントを示す。結果を、本18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、およびサルマラリア原虫(P.knowlesi)を含む全てのプラスモディウム(Plasmodium)種を検出できることを確認するデータを示す、
図9Aに示す。特に、
図9Bは、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)についての結果を示す。
図9Cは、三日熱マラリア原虫(P.vivax)の結果を示す。
図9Dは、四日熱マラリア原虫(P.malariae)についての結果を示す。
図9Eは、卵形マラリア原虫(P.ovale)についての結果を示す。
図9Fはサルマラリア原虫(P.knowlesi)についての結果を示す。
【0114】
まとめると、これらの研究は、本18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が全てのプラスモディウム(Plasmodium)種を検出することができることを明確に実証している。
【0115】
実施例5:プラスモディウム(Plasmodium)種のみについての18S/28S rRNA二重標的アッセイの特異性の分析
本18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が全てのプラスモディウム(Plasmodium)種を検出できることを実証したので、本18S/28S rRNA二重標的アッセイが他の非プラスモディウム(Plasmodium)標的に対する交差反応性を示さないことを確認することが重要であった。その目的のために、一連の非プラスモディウム(Plasmodium)試料(バベシア(Babesia)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アクネ菌(Cutibacterium acnes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Stephaylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、西ナイルウイルスを含む)を、本18S/28S rRNA二重標的アッセイで試験した。これらの研究は、
図10に示すように、18S/28S rRNA二重標的アッセイが試験した非プラスモディウム(Plasmodium)試料のいずれにも反応しないことを示した。
【0116】
したがって、これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)がプラスモディウム(Plasmodium)種に特異的であり、バベシア(Babesia)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アクネ菌(Cutibacterium acnes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)および西ナイルウイルスと交差反応しないことを実証している。
【0117】
実施例6:18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイの感度の分析
本18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が全てのプラスモディウム(Plasmodium)種を特異的に検出できることを実証したので、18S/28S rRNA二重標的アッセイの感度を分析することが重要であった。その目的のために、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)由来の核酸を使用して18S/28S rRNA二重標的アッセイを試験し、ATCC(カタログ番号30932、30139)由来の三日熱マラリア原虫(P.vivax)培養物をcobas6800/8800で抽出し、次いで全血溶出液とブレンドした。次いで、これらの試料を18S/28S rRNA二重標的アッセイに供した。実施例1~3のように、使用される試薬には、cobas(登録商標)6800/8800と共に使用するためのプロファイルおよび条件を有するcobas(登録商標)6800/8800汎用PCRマスターミックス、およびTaqMan(登録商標)増幅および検出技術を使用することが含まれる。マスターミックス中のオリゴヌクレオチドの最終濃度は、プライマーについては0.3μM、プローブについては0.1μMであった。採用したcobas(登録商標)6800/8800 PCRプロファイルを上記の表3に示す。
【0118】
結果を
図11A、
図11B、および
図11Cに示す。
図11Aは、18S/28S rRNA二重標的アッセイが、熱帯熱マラリア原虫(F.falciparum)については0.000224個の寄生虫/mLを検出するのに十分な感度であり、三日熱マラリア原虫(F.vivax)については0.0000536個の寄生虫/mLを検出するのに十分な感度であることを示すデータを示す。
図11Bおよび
図11Cは、それぞれ熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)および三日熱マラリア原虫(P.vivax)のPCR増殖曲線を示す。
【0119】
したがって、これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が非常に高感度のアッセイであり、非常に低い量/レベルのプラスモディウム(Plasmodium)種であっても検出することができることを実証している。
【0120】
実施例7:18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイを用いたプラスモディウム(Plasmodium)陽性臨床検体による完全なプロセス
18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイが実際の臨床試料に対して有効であるかどうかを評価するために、完全なプロセス研究を行った。この研究では、プラスモディウム(Plasmodium)について陽性である(顕微鏡検査によって確認される)ことが知られている臨床試料を採用し、18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイに供した。これらのプラスモディウム(Plasmodium)陽性臨床検体を陰性全血で段階希釈した。実施例1~3および6のように、使用される試薬には、cobas(登録商標)6800/8800と共に使用するためのプロファイルおよび条件を有するcobas(登録商標)6800/8800汎用PCRマスターミックス、およびTaqMan(登録商標)増幅および検出技術を使用することが含まれる。マスターミックス中のオリゴヌクレオチドの最終濃度は、プライマーについては0.3μM、プローブについては0.1μMであった。採用したcobas(登録商標)6800/8800 PCRプロファイルを上記の表3に示す。
【0121】
結果を、18S/28S rRNA二重標的プラスモディウム(Plasmodium)アッセイが陽性臨床試料からの熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)および三日熱マラリア原虫(P.vivax)核酸を検出および増幅することができることを示す、
図12に示す。
【0122】
したがって、これらの研究は、18S/28S rRNA二重標的アッセイ(18S rRNA標的については配列番号1~3の配列を有するプライマー/プローブ、および28S rRNA標的については配列番号13~15の配列を有するプライマー/プローブを用いる)が臨床試料からプラスモディウム(Plasmodium)を検出することができることを実証している。
【0123】
したがって、まとめると、これらの実施例および結果は、配列番号1~39のオリゴヌクレオチドセット、特に配列番号1~3を含むプライマー/プローブおよび配列番号13~15を含む配列を有するプライマー/プローブが、全血中のプラスモディウム(Plasmodium)(熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、サルマラリア原虫(P.knowlesi)、および四日熱マラリア原虫(P.malariae)を含む)を含むマラリア原虫を特異的かつ効率的に増幅および検出することを実証している。さらに、これらの実施例および結果は、配列番号1~39のオリゴヌクレオチドセット、特に配列番号1~3を含むプライマー/プローブおよび配列番号13~15を含む配列を有するプライマー/プローブをマルチプレックスアッセイ、例えば二重標的アッセイで採用して、全血などの臨床試料中の全てのプラスモディウム(Plasmodium)種を特異的かつ感度よく検出および増幅することができることを実証している。
【0124】
前述の発明を明確化および理解のためにある程度詳細に説明してきたが、本開示を読むことにより、本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更が行われ得ることが当業者には明らかであろう。例えば、上述した全ての技術および装置は、様々な組み合わせで使用され得る。本出願で引用される全ての刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献は、あたかも各個別の刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献が全ての目的のために参照により組み込まれることが個別に示されているのと同程度に、全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】