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特表2024-542107シンジオタクチックプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】シンジオタクチックプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/06 20060101AFI20241106BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08F210/06
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526640
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 US2022048907
(87)【国際公開番号】W WO2023081325
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/276,012
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505335740
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】チンウェン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ アン エム.カニチ
(72)【発明者】
【氏名】ペイチュン チアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール.ハガドーン
(72)【発明者】
【氏名】チェイス エー.エッカート
(72)【発明者】
【氏名】サラ ジェイ.マットラー
(72)【発明者】
【氏名】シューホイ カン
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA04
4J100CA12
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA25
4J100DA42
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA29
4J100JA58
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC01
4J128AC28
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128AD19
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12A
4J128BC13B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC25B
4J128EB02
4J128EB04
4J128EC02
4J128EC03
4J128FA02
4J128GA04
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA12
4J128GA16
4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】
a)5~15質量%のエチレン及び85~95質量%のプロピレンと、b)60~90%のrrトリアドと、c)10~250kg/molのMw(LS)とを含み、d)実質的な融解ピークを含まず、ピークの融解熱が、10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(ASTM D3418-03)により決定した場合に5J/g以下である、シンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーが提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5~15質量%のエチレン及び85~95質量%のプロピレンと、
b)60~90%のrrトリアドと、
c)10~250kg/molのMw(LS)とを含み、
d)実質的な融解ピークを含まず、ピークの融解熱が、10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(ASTM D3418-03)により決定した場合に5J/g以下である、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項2】
5~10質量%のエチレンを有する、請求項1に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項3】
75~85%のrrトリアドを有する、請求項1に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項4】
10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定により測定した場合に、第2の加熱サイクルにおいて融点を示さない、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項5】
2.16kg及び230℃で測定したMFRが0.1~650g/10分である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項6】
0℃以下のガラス転移温度を有する、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項7】
光散乱からの質量平均分子量(MW,LS)が10~120kg/molである、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項8】
分子量分布(Mw,DRI/Mn,DRI)が1.2~2.5である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項9】
13C NMRからの[EPP]とFTIRからのC2質量%との関係が、1.9833×C2質量%-0.0818<[EPP]<1.3333×C2質量%+0.09である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項10】
13C NMRからの[EEP]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.2931×C2質量%-0.0187<[EEP]<0.303×C2質量%-0.0045である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項11】
13C NMRからの[PPP]とFTIRからのC2質量%との関係が、-2.8×C2質量%+0.878<[PPP]<-2.8154×C2質量%+1.0451である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項12】
13C NMRからの[PEP]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.8923×C2質量%-0.0021<[PEP]<0.9333×C2質量%+0.03である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項13】
13C NMRからの[EEE]が0.008未満である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項14】
13C NMRからの[EE]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.2×C2質量%-0.016<[EE]<0.1292×C2質量%+0.0082である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項15】
13C NMRからのプロピレンラン#とFTIRからのC2質量%との関係が、110.67×C2質量%-4.7<[Pラン#]<97.143×C2質量%+4.7286である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項16】
13C NMRからのrが8.0未満である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項17】
DSCからのTgとFTIRからのC2質量%との関係が、-190×C2質量%-9.15<Tg<-175×C2質量%+1.725である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項18】
GPCからのg’visとMW,LSとの関係が、g’vis>2E-06×MW,LS+0.9703である、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項19】
40℃及び1psigで3ヶ月間エージングした後にペレット安定性を示す、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【請求項20】
シンジオタクチックプロピレンコポリマーを製造する方法であって、均一相において、プロピレン及びエチレンを、活性化剤及び触媒化合物を含む触媒系と接触させることと;シンジオタクチックプロピレンコポリマーであって、(a)前記ポリマーの質量に基づいて85~95質量%のプロピレンと、(b)60~90%のrrトリアドと、(c)10~250kg/molのMw(LS)とを含み、(d)実質的な融解ピークを含まず、ピークの融解熱が、10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(ASTM D3418-03)により決定した場合に5J/g以下である、シンジオタクチックプロピレンコポリマーを得ることとを含む方法。
【請求項21】
前記方法が、約50℃~約110℃の温度、約1MPa~約14MPaの範囲の圧力で行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、約50℃~約110℃の温度、約3MPa~約14MPaの範囲の圧力で行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、TP1以上の重合温度で行われ、TP1=0.9×EXP(-0.005×rr)であり、式中、TP1の単位が、℃であり、rrが、13C NMRを使用して測定されたトリアドタクチシチー指数である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
重合が、9MPa以上の圧力、約50℃~約120℃の温度、及び触媒1kg当たり50,000kg以上のポリマーの触媒効率で、溶液プロセスにおいて行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
重合が、9MPa以上の圧力、約0.01~約0.2の、エチレン供給物のプロピレン供給物に対するモル比、及び触媒1kg当たり50,000kg以上のポリマーの触媒効率で、溶液プロセスにおいて行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記触媒系が、式(1a)によって表される触媒化合物を含み、
【化1】
式中、
Mは、ジルコニウム又はハフニウムであり、
Gは、架橋基であり、
各Xは、独立して、ヒドリドラジカル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルであるか、又は両方のXが連結し、かつ、金属原子に結合して、約3~約20個の炭素原子を含有するメタラサイクル環を形成しているか、又は両方が一緒になってオレフィン、ジオレフィン若しくはアライン配位子となっているか、又は両方のXが、独立して、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド若しくは他の一価アニオン性配位子であってもよいか、あるいは両方のXが連結してジアニオン性キレート配位子を形成していてもよく、
各R及びRは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、ゲルミルカルビル又は極性ラジカルから選択され、任意選択で、2つ以上の隣接する置換基が連結して、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式置換基を形成していてもよく、ただし、各Rは同じであり、各Rは同じであり、前記化合物がC対称又は擬C対称となることを可能にし、
各Rは、独立して、他方に対して対称又は擬対称の置換基であり、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルラジカルから選択され、
各Rは、他方に対して対称又は擬対称の置換基であり、独立して、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルラジカルから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
Mが、ジルコニウムであり、Xが、メチル又はクロロであり、Gが、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン又はジフェニルメチレンであり、各R、R及びRが、水素であり、各Rが、メチル、エチル、プロピル又はブチルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
Xが、メチルであり、Gが、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレンであり、各R、R及びRが、水素であり、各Rが、tert-ブチルである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記活性化剤が、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N-メチル-4-ノナデシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、ジ(水素化タロー)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、ジ(水素化タロー)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、及びジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレートのうちの1つ以上から選択される、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2021年11月5日に出願された「SYNDIOTACTIC PROPYLENE-BASED ETHYLENE-PROPYLENE COPOLYMERS」と題する米国仮特許出願第63/276,012号の出願日の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、シンジオタクチックリッチプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、オレフィンポリマー及びオリゴマー(「ポリオレフィン」又は「ポリオレフィンポリマー」)、特に、プロピレン又は他のC3以上のアルファオレフィンモノマーを含むポリアルファオレフィンポリマーは、ポリマー骨格鎖から懸垂しているヒドロカルビル基を含む。ペンダントヒドロカルビル基は、ポリマー骨格鎖に対して決定される立体化学的配置で配置され得る。これらの配置としては、アタクチック、アイソタクチック及び/又はシンジオタクチック配置が挙げられる。
【0004】
タクチシチー(Tacticity)は、オレフィンポリマー、特にポリアルファオレフィンポリマーが得ることができる結晶性の程度に関連し得る。本明細書で使用される場合、ポリマーのタクチシチーは、ポリマー分子骨格に懸垂しているヒドロカルビル基の立体化学的規則性(すなわち、ポリマーのタクチシチー)を反映する。ポリアルファオレフィンにおいて、アタクチック、ノルマルアイソタクチック、アイソタクチックステレオブロック、及びシンジオタクチックの4つのタイプのタクチシチーが記載されている。
【0005】
アタクチックポリオレフィンは、ポリマー分子骨格に懸垂しているヒドロカルビル基が骨格に対して規則的な秩序をとらないものである。このランダム又はアタクチック構造は、メチレン炭素及びメチン炭素が交互するポリマー骨格によって表され、ランダムに配向した分岐がメチン炭素を置換している。メチン炭素はランダムにR及びS配置を有し、類似の配置(「メソ」又は「m」ダイアド)又は異なる配置(「ラセミ」又は「r」ダイアド)のいずれかの隣接対を形成する。
【0006】
アタクチック形態のポリマーは、メソ及びラセミダイアドのほぼ等しい分率を含有する。重要なことに、アタクチックポリアルファオレフィン、特にアタクチックポリプロピレンは、周囲温度で脂肪族及び芳香族溶媒に可溶性であることを特徴とすることができる。アタクチックポリマーは、ポリマー鎖中に規則的な秩序も反復単位配置も示さないので、このようなアタクチックポリマーは、非晶質材料と呼ばれることがある。非晶質材料として、アタクチックポリマーは分子格子構造を欠く傾向があり、十分に規定された融点を有しない場合がある。したがって、アタクチックポリアルファオレフィンは非晶質であり、典型的には測定可能な融点を有さず、したがって、結晶性がもしあったとしてもほとんど結晶性を示さない。
【0007】
アイソタクチックポリオレフィンは、ポリマー骨格鎖の同じ側又は面に対して空間的に整列した懸垂ヒドロカルビル基を有することを特徴とする。一例としてアイソタクチックポリプロピレンを使用すると、アイソタクチック構造は、典型的には、ポリマーの炭素骨格鎖を通る仮想平面の同じ側で連続モノマー単位の三元炭素原子に結合した懸垂メチル基を有するものとして、例えば、メチル基が全て平面の上又は下にあるものとして記載される。
【0008】
アイソタクチックステレオブロック形態のポリオレフィンは、アイソタクチックステレオブロックポリアルファオレフィンポリマーの形成中の「サイトキラリティ交換(site chirality exchange)」及び/又は「鎖末端制御(chain end control)」機構から生じ得る。鎖の構造の規則性のずれ(deviation)又は反転(inversion)は、アイソタクチシチーの程度を低下させ、したがってポリマーが可能な結晶化度を低下させる。
【0009】
シンジオタクチックポリアルファオレフィンは、ポリマー分子骨格に懸垂しているヒドロカルビル基が、ポリマー骨格に対する一方の側又は面から反対の側又は面へ順番に連続して交互になっているものである。鎖中のrダイアドの百分率は、ポリマーのシンジオタクチシチーの程度を決定し、ポリマーの結晶化度に関連する。
【0010】
シンジオタクチックポリマーの分子鎖骨格は、交互の立体化学的配置を有するオレフィンのコポリマーであると考えることができる。高度にシンジオタクチックなポリマーは、高度に結晶性であり得、したがって、それらのアイソタクチック多形体と同様の規定された融点を有し得、したがって、それらの融点温度を部分的に特徴とし得る。
【0011】
ポリマーのトリアドタクチシチーは、m及びr配列の二元組合せとして表される、頭-尾結合からなる鎖である3つの隣接プロピレン単位の配列の相対的タクチシチーである。これは、プロピレン系ポリマーにおいては、通常、ポリマー中の全てのプロピレントリアドに対する特定のタクチシチーの単位数の比として表される。
【0012】
シンジオタクチック配列を有する骨格を含むエチレン-プロピレンコポリマーは、PPホモポリマーよりも軟質であるが、より良好な衝撃強度を有し、より強靭であり、より耐久性がある。シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、PPホモポリマーよりも良好な耐応力亀裂性及び低温靭性を有する傾向がある。主な潜在的用途としては、耐衝撃性改良剤、粘度調整剤、包装、織物、ヘルスケア、パイプ、自動車、建築及び電気用途が挙げられる。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、a)5~15質量%のエチレンと、b)60~90%のrrトリアドと、c)10~200kg/molのMw(DRI)とを含み、d)実質的な融解ピークを含まず、ピークの融解熱が、10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(ASTM D3418-03)により決定した場合に5J/g以下である、シンジオタクチックプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーに関する。
【0014】
本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマー(srPP/C2)は、13C NMRにより測定した場合に、rrトリアド%によって示されるように、高いシンジオタクチシチーを示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明のsrPP/C2 EPコポリマー、市販のEP及び非シンジオリッチEP参照試料それぞれについての、13C NMRからの[PPP]対GPCからのMw,LSを示す。
【0016】
図2図2は、本発明の試料M8を40℃及び1psigのオーブン中で3ヶ月間エージングした後、本発明の試料M8が良好なペレット安定性を示すことを示す。ペレットは良好に分散した個々のペレットのままである。
【0017】
図3図3は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのエチレン含有量(C2質量%)及び13C NMRからの[EPP]を示す。
【0018】
図4図4は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのエチレン含有量(C2質量%)及び13C NMRからの[EEP]を示す。
【0019】
図5図5は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのエチレン含有量(C2質量%)及び13C NMRからの[PPP]を示す。
【0020】
図6図6は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのエチレン含有量(C2質量%)及び13C NMRからの[PEP]を示す。
【0021】
図7図7は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのエチレン含有量(C2質量%)及び13C NMRからの[EE]を示す。
【0022】
図8図8は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのエチレン含有量(C2質量%)及び13C NMRからのプロピレンラン#を示す。
【0023】
図9図9は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのエチレン含有量(C2質量%)及びDSCからのガラス転移温度(T)を示す。
【0024】
図10図10は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのGPCからのg’vis及びMW,LSを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、水素基がヘテロ原子又はヘテロ原子含有基で置き換えられたことを意味する。例えば、「置換ヒドロカルビル」は、炭素と水素から構成されるラジカルであって、少なくとも1個の水素がヘテロ原子又はヘテロ原子含有基によって置き換えられたラジカルである。
【0026】
本明細書で使用される場合、元素周期表の番号付けスキームは、CHEMICAL AND ENGINEERING NEWS, 63(5), 27(1985)に記載されているように使用される。
【0027】
本開示の目的のために、ポリマーがオレフィンを含むと言及される場合、ポリマー中に存在するオレフィンは、それぞれ、オレフィンの重合形態である。同様に、ポリマーという用語の使用は、ホモポリマー及びコポリマーを包含することを意味し、コポリマーは、2つ以上の化学的に異なるモノマーを有する任意のポリマーを含む。
【0028】
本開示の目的のために、本明細書で使用される「ポリプロピレン」という用語は、モノマーとしてプロピレンを含有するポリマーを意味し、ホモポリプロピレン又はプロピレンとα-オレフィンコモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0029】
「触媒系」は、少なくとも1つの触媒化合物、少なくとも1つの活性化剤、任意選択の活性化補助因子、及び任意選択のサポート材料の組合せである。「触媒化合物」、「触媒錯体」、「遷移金属錯体」、「遷移金属化合物」、「プレ触媒化合物(precatalyst compound)」、及び「プレ触媒錯体(precatalyst complex)」という用語は、互換的に使用される。「触媒系」が活性化前のこのような対を記載するために使用される場合、それは、活性化剤及び任意選択で活性化補助因子と一緒になった、活性化されていない触媒錯体(プレ触媒)を意味する。「触媒系」が活性化後のこのような対を記載するために使用される場合、それは、活性化錯体及び活性化剤又は他の電荷平衡部分を意味する。遷移金属化合物は、プレ触媒におけるように中性であっても、活性化触媒系におけるように対イオンを有する荷電種であってもよい。本開示及びそれに対する特許請求の範囲の目的のために、触媒系が成分の中性の安定な形態を含むと記載される場合、成分のイオン形態は、モノマーと反応してポリマーを生成する形態であることが、当業者によって十分に理解される。重合触媒系は、モノマーを重合させてポリマーにすることができる触媒系である。更に、本明細書の式によって表される触媒化合物及び活性化剤は、触媒化合物及び活性化剤の中性及びイオン形態の両方を包含することが意図される。
【0030】
本明細書の記載において、触媒は、触媒、触媒前駆体、プレ触媒化合物、触媒化合物又は遷移金属化合物として記載されてもよく、これらの用語は互換的に使用される。
【0031】
「アニオン性配位子」は、金属イオンに1つ以上の電子対を供与する負に荷電した配位子である。「ルイス塩基」は、金属イオンに1つ以上の電子対を供与する中性に荷電した配位子である。ルイス塩基の例としては、エチルエーテル、トリメチルアミン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフィド、及びトリフェニルホスフィンが挙げられる。「複素環式ルイス塩基」という用語は、複素環でもあるルイス塩基を指す。複素環式ルイス塩基の例としては、ピリジン、イミダゾール、チアゾール、及びフランが挙げられる。
【0032】
捕捉剤は、不純物を除去することによって重合を促進するために添加することができる化合物である。いくつかの捕捉剤は活性化剤としても作用することがあり、活性化補助因子と呼ばれることがある。捕捉剤ではない活性化補助因子(coactivator)もまた、活性触媒を形成するために、活性化剤と共に使用され得る。少なくとも1つの実施形態では、活性化補助因子を遷移金属化合物と予備混合してアルキル化遷移金属化合物を形成することができる。
【0033】
非配位性アニオン(noncoordinating anion、NCA)は、触媒金属カチオンに配位しないか、又は金属カチオンに配位するが弱く配位するに過ぎないアニオンを意味すると定義される。NCAという用語はまた、酸性カチオン基及び非配位アニオンを含有するN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの多成分NCA含有活性化剤を含むと定義される。NCAという用語はまた、触媒と反応してアニオン基の引抜きにより活性化種を形成することができる、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの中性ルイス酸を含むと定義される。ルイス酸は、電子供与体と反応して結合を形成することができる化合物又は元素であると定義される。NCAは、オレフィンモノマーなどのルイス塩基が触媒中心からそれを変位させることができるほど十分に弱く配位する。相溶性の弱配位性錯体を形成することができる任意の金属又は半金属が、非配位性アニオン中に使用又は含有されてもよい。好適な金属としては、アルミニウム、金、及び白金が挙げられるが、これらに限定されない。好適な半金属としては、ホウ素、アルミニウム、リン、及びケイ素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用される場合、Mnは数平均分子量であり、Mwは質量平均分子量であり、Mzはz平均分子量であり、質量%は質量パーセントであり、mol%はモルパーセントである。分子量分布(molecular weight distribution、MWD)は、多分散性(PDI)とも呼ばれ、MwをMnで割ったものとして定義される。別段の記載がない限り、全ての分子量単位(例えば、Mw、Mn、Mz)はg/molである。
【0035】
一般的に、オレフィンポリマー及びオリゴマー(「ポリオレフィン」又は「ポリオレフィンポリマー」)、特に、プロピレン又は他のC3以上のアルファオレフィンモノマーを含むポリアルファオレフィンポリマーは、ポリマー骨格鎖から懸垂しているヒドロカルビル基を含む。懸垂ヒドロカルビル基は、ポリマー骨格鎖に対して決定される異なる立体化学的配置で配置され得る。これらの配置としては、アタクチック、アイソタクチック及び/又はシンジオタクチック配置が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、ポリマーの「タクチシチー」は、ポリマー分子骨格に懸垂しているヒドロカルビル基の立体化学的規則性を反映する。タクチシチーは、オレフィンポリマー、特にポリアルファオレフィンポリマーが得ることができる結晶性の程度に関連し得る。ポリアルファオレフィンにおいて、アタクチック、アイソタクチック、及びシンジオタクチックの3つの主要なタイプのタクチシチーが記載されている。
【0037】
アタクチックポリオレフィンは、ポリマー分子骨格に懸垂しているヒドロカルビル基が骨格に対して規則的な秩序をとらないものである。このランダム又はアタクチック構造は、メチレン炭素及びメチン炭素が交互するポリマー骨格によって表され、ランダムに配向した分岐がメチン炭素を置換している。メチン炭素はランダムにRectus(「R」)及びSinister(「S」)配置を有し、類似の配置(「メソ」又は「m」ダイアド)又は異なる配置(「ラセミ」又は「r」ダイアド)のいずれかの隣接対を形成する。
【0038】
アイソタクチックポリオレフィンは、ポリマー骨格鎖の同じ側又は面に対して空間的に整列した懸垂ヒドロカルビル基を有することを特徴とする。一例としてアイソタクチックポリプロピレンを使用すると、アイソタクチック構造は、典型的には、ポリマーの炭素骨格鎖を通る仮想平面の同じ側で連続モノマー単位の三元炭素原子に結合した懸垂メチル基を有するものとして、例えば、メチル基が全て平面の上又は下にあるものとして記載される。鎖中のmダイアドの百分率は、ポリマーのアイソタクチシチーの程度を決定し、ポリマーの結晶化度に関連する。
【0039】
シンジオタクチックポリオレフィンは、ポリマー分子骨格に懸垂しているヒドロカルビル基が、ポリマー骨格に対する一方の側又は面から反対の側又は面へ順番に連続して交互になっているものである。鎖中のrダイアドの百分率は、ポリマーのシンジオタクチシチーの程度を決定し、ポリマーの結晶化度に関連する。
【0040】
シンジオタクチックポリマーの分子鎖骨格は、交互の立体化学的配置を有するオレフィンのコポリマーであると考えることができる。高度にシンジオタクチックなポリマーは、高度に結晶性であり得、したがって、それらのアイソタクチック多形体と同様の規定された融点を有し得、したがって、それらの融点温度を部分的に特徴とし得る。
【0041】
ポリマーのトリアドタクチシチーは、m及びr配列の二元組合せとして表される、頭-尾結合からなる鎖である3つの隣接プロピレン単位の配列の相対的タクチシチーである。これは、プロピレン系ポリマーにおいては、通常、ポリマー中の全てのプロピレントリアドに対する特定のタクチシチーの単位数の比として表される。例えば、rrトリアドは、3つの隣接プロピレン単位を示し、プロピレン単位の立体化学は交互である(例えば、RSR、SRS)。
【0042】
一実施形態によれば、本開示のシンジオタクチックリッチプロピレンコポリマーは、
a)5~15質量%のエチレン及び85~95質量%のプロピレンと、
b)60~90%のrrトリアドと、
c)10~250kg/molのMw(LS)とを有し、
d)実質的な融解ピークを有さず、ピークの融解熱が、10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(ASTM D3418-03)により決定した場合に5J/g以下である、エチレン-プロピレンコポリマーを含む。
【0043】
ある実施形態では、本開示で作製されるシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、シンジオタクチック立体規則性プロピレン結晶化度を有する。本開示で使用される「立体規則性」という用語は、エチレンなどの任意の他のモノマーを除く、ポリマー鎖中のポリプロピレンセグメントにおける優勢な数、すなわち50%超のプロピレン残基が同じ1,2挿入を有し、ペンダントメチル基の立体化学配向がメソ又はラセミのいずれかで同じであることを意味する。
【0044】
アイソタクチック及びシンジオタクチックダイアド([m]及び[r])及びトリアド([mm]、[mr]及び[rr])の濃度を含むエチレン-プロピレンコポリマーのタクチシチーは、13C NMRによって測定される。記号「m」又は「r」は、連続するプロピレン基の対の立体化学を表し、「m」はメソを指し、「r」はラセミを指す。NMRによるポリマーの特徴付けに関与する計算は、F. A. Bovey によるPolymer Conformation and Configuration (Academic Press, New York 1969)に、及びJ. Randall によるPolymer Sequence Determination, 13C-NMR Method (Academic Press, New York, 1977)に記載されている。
【0045】
ポリマーの「rrトリアドタクチシチー指数」は、頭-尾配置で連結された3つの隣接プロピレン単位の配列の相対的シンジオタクチシチーの尺度である。より具体的には、本発明において、ポリプロピレンコポリマーのrrトリアドタクチシチー指数(「rr分率」とも呼ばれる)は、コポリマー中の全てのメチルトリアドに対するラセミタクチシチーの単位数の比として表される。
【数1】
【0046】
PP+EP(mm)、PP+EP(mr)、及びPP+EP(rr)の領域は、次のように定義される。
【表1】
【0047】
このトリアドタクチシチー計算は、これらの領域内に存在する配列も、鎖末端も、領域欠陥も考慮しない。
【0048】
同様に、mダイアド及びrダイアドは以下のように計算することができ、式中、mm、mr及びrrは、上で定義されている。
【数2】
【0049】
本開示で製造されるプロピレンコポリマーは、13C NMRにより測定した場合に、3つのプロピレン単位のrrトリアドタクチシチー指数が、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上であり得る。いくつかの実施形態では、シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、60~90%のrrトリアド、65~90%のrrトリアド、70~90%のrrトリアド、75~90%のrrトリアド、及び75~85%のrrトリアドの範囲であり得る。他の実施形態では、コポリマーは、65~85%のrrトリアド、及び75~85%のrrトリアドの範囲であり得る。
【0050】
触媒「M」の存在下でのモノマー「E」と「P」との間の共重合は、以下の反応スキーム及び反応速度式によって表すことができ、式中、R11は「E」の後の「E」挿入の速度であり、R12は「E」の後の「P」挿入の速度であり、R21は「P」の後の「E」挿入の速度であり、R22は「P」の後の「P」挿入の速度であり、k11、k12、k21、及びk22は各々に対応する速度定数である。反応スキーム及び反応速度式を以下に示す。
【数3】
【0051】
反応性比r及びrは以下のとおりである:
【数4】
【0052】
×rの積は、異なるモノマーがポリマー鎖に沿ってどのように分布するかについての情報を提供する。以下は、交互コポリマー、ランダムコポリマー及びブロックコポリマーの例示であり、r×rの積が各々にどのように関連するかを示す:
【数5】
【0053】
及びrはまた、それぞれコポリマー中のエチレン及びプロピレンの反応性を表し、これらは触媒系の特性を説明するために使用される。rとrとの積であるrは、コポリマーの主鎖中のモノマーの分布を表す。13C NMRを使用し、J. C. Randallの論文: Polymer Reviews, 1989, vol. 29(2), pp.201-317から改変された手順を使用して、エチレン-プロピレンコポリマーについてのモノマー含有量及び配列分布を決定した。この論文には、EEE、EEP、PEP、EPE、EPP及びPPPと呼ばれ、モル分率として報告される1,2プロピレン付加トリアド配列分布についての測定及び計算が含まれている。モル%でのプロピレン含有量、ラン数、平均連鎖長、及びダイアド/トリアド分布は全て、上記論文で確立された方法に従って計算した。
【0054】
プロピレン-エチレンコポリマーについて、反応性比(r)は、以下のように定義される:r=4×(EE×PP)/(EP)(式中、EE、PP及びEPは、E=エチレン、P=プロピレンであるダイアドである)。
【0055】
プロピレンラン#(Pラン#及びPラン長とも呼ばれる)の計算は、Pラン#=([EPE]+0.5×[EPP])×100という式に基づいており、式中、[EPE]、[EPP]はトリアドモル濃度であり、Eはエチレンであり、Pはプロピレンである。
【0056】
本開示は、rが8未満、6未満、4未満、2未満又は少なくとも1.4未満であるシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、13C NMRからの[EPP]とFTIRからのC2質量%との関係が、1.9833×C2質量%-0.0818<[EPP]<1.3333×C2質量%+0.09である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0058】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、13C NMRからの[EEP]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.2931×C2質量%-0.0187<[EEP]<0.303×C2質量%-0.0045である。
【0059】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、13C NMRからの[PPP]とFTIRからのC2質量%との関係が、-2.8×C2質量%+0.878<[PPP]<-2.8154×C2質量%+1.0451である。
【0060】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、13C NMRからの[PEP]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.8923×C2質量%-0.0021<[PEP]<0.9333×C2質量%+0.03である。
【0061】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、13C NMRからの[EEE]が0.008未満である。
【0062】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、13C NMRからの[EE]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.2×C2質量%-0.016<[EE]<0.1292×C2質量%+0.0082である。
【0063】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、13C NMRからのプロピレンラン#とFTIRからのC2質量%との関係が、110.67×C2質量%-4.7<[Pラン#]<97.143×C2質量%+4.7286である。
【0064】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、DSCからのTgとFTIRからのC2質量%との関係が、-190×C2質量%-9.15<Tg<-175×C2質量%+1.725である。
【0065】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、GPCからのg’visとMW,LSとの関係が、g’vis>2E-06×MW,LS+0.9703である。
【0066】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、5~15質量%のエチレン、あるいは5~12質量%のエチレン、あるいは5~10質量%のエチレンの範囲であり得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、Mw(LS)は、10~250kg/mol、あるいは20~200kg/mol、あるいは30~150kg/mol、あるいは30~120kg/mol、あるいは30~100kg/molの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーのMWD(又はPDI)は、1.2~5.0、あるいは1.2~2.5、あるいは1.2~2.0、あるいは1.4~2.0の範囲であり得る。
【0068】
本開示は、2.16kg及び230℃で測定したMFRが0.1~550g/10分であるシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーを含む。2.16kg及び230℃で測定したMFRは、1~450g/10分、あるいは5~300g/10分、あるいは10~200g/10分、あるいは20~100g/10分の範囲であり得る。あるいは、シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーのMFRは、少なくとも1g/10分、又は少なくとも2g/10分、又は少なくとも10g/10分である。
【0069】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックポリプロピレン-エチレンコポリマーは、約50000Pa・s以下、例えば約300Pa・s~約50000Pa・s、例えば約400Pa・s~約40000Pa・s、あるいは約500Pa・s~約10000Pa・s、あるいは約500Pa・s~約10000Pa・sの複素粘度(0.1rad/s、190℃で)を有する。複素粘度は、動的周波数掃引(dynamic frequency sweep、DFS)測定によって測定することができる。複素粘度は、TA InstrumentsモデルARES-G2レオメーターを使用して、190℃での小振幅振動剪断(small amplitude oscillatory shear、SAOS)試験によって決定することができる。試験片は、190℃で加熱プレスを使用して圧縮成形することができる。試験片は、25mmの直径及び約2mmの厚さを有することができる。試験片を190℃に予熱したレオメーターに装填し、1.5mmの測定ギャップにトリミングする。装填し、トリミングした試験片を、試験前に190℃の試験温度で5分間平衡化する。試験角周波数は0.01~628rad/sである。
【0070】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、20℃以下、あるいは10℃以下、あるいは0℃以下、あるいは-5℃以下、あるいは-10℃以下のガラス転移温度を有する。別の実施形態では、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、-0.5263×T-4.8158<C2質量%<-0.5714×T+0.9857という関係の、DSCからのT(℃)及びFTIRからのエチレン含有量(C2質量%)を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、実質的な融解ピークを示さず、ピークの融解熱は、10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(ASTM D3418-03)により決定した場合に5J/g以下である。いくつかの実施形態では、シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、10℃/分の走査速度でのDSC測定の第2の加熱サイクル中に吸熱ピークを示さない。あるいは、シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、本開示に記載の手順によるDSC測定の第2の加熱サイクルにおいて融解ピークを有しない。
【0072】
シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーがブレンドされたポリマーである実施形態。第1のポリマー成分のrrトリアドタクチシチー指数は、70%以下、65%以下、又は更には60%以下であり得る。第2のポリマー成分のrrトリアドタクチシチー指数は、70%以上、75%以上、又は更には80%以上であり得る。
【0073】
シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーがブレンドされたポリマーである実施形態では、第1のシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマー成分のエチレン含有量は、第1のポリマー成分の総質量に基づいて10質量%未満、あるいは7質量%未満、あるいは5質量%未満、あるいは3質量%未満であり得る。第2のシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマー成分のエチレン含有量は、第2のポリマー成分の総質量に基づいて、5質量%超、あるいは7質量%超、あるいは10質量%超、あるいは15質量%超、あるいは20質量%超であり、上限が25質量%であり得る。
【0074】
複数の実施形態では、第1のコポリマー成分の質量平均分子量は、第2のコポリマー成分の質量平均分子量よりも大きい。複数の実施形態では、第1のコポリマー成分の質量平均分子量は、約150,000g/mol超、又は約200,000g/mol超、又は約250,000g/mol超である。あるいは、第2のコポリマー成分の質量平均分子量は、約150,000g/mol未満、又は約100,000g/mol、又は約50,000g/mol~約20,000g/mol未満である。
【0075】
様々な実施形態によるシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、少なくとも2つのシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーのブレンドであってもよい。本発明の一実施形態では、ブレンドは、二峰性分子量分布又はMWD>3.0の広い分子量分布を有する。ブレンドは、二峰性組成分布又は広い組成分布を有することもできる。あるいは、一方の成分は、0.2~5質量%の範囲のエチレン含有量及び100,000~400,000g/molの範囲のMwを有し、一方の成分は、2~15質量%の範囲のエチレン含有量及び10,000~150,000g/molの範囲のMwを有する。
【0076】
シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、エチレン供給物のプロピレン供給物に対するモル比が約0.01~約0.2、約0.02~0.15、約0.03~0.1である方法で製造される。
【0077】
触媒
本開示のシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、当該技術分野で公知の任意の好適な触媒によって製造することができる。本開示に記載される触媒化合物は、プロピレン及びエチレンを含むオレフィンモノマーを重合して、シンジオタクチックリッチコポリマーを形成するために使用される。本開示で使用される場合、「ヒドロカルビルラジカル」、「ヒドロカルビル」、及び「ヒドロカルビル基」という用語は、本開示全体を通して互換的に使用される。同様に、「基(group)」、「ラジカル(radical)」及び「置換基(substituent)」という用語もまた、本開示全体を通して互換的に使用される。本開示の目的のために、「ヒドロカルビルラジカル」は、C1~C100ラジカルであると定義され、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。環状である場合、ヒドロカルビルラジカルは芳香族であっても非芳香族であってもよい。「ヒドロカルビルラジカル」は、置換ヒドロカルビルラジカル、ハロカルビルラジカル、置換ハロカルビルラジカル、シリルカルビルラジカル、及びゲルミルカルビルラジカルを含むと定義され、これらの用語は以下に定義される。置換ヒドロカルビルラジカルは、少なくとも1個の水素原子が、少なくとも1個の官能基、例えばNR 、OR、SeR、TeR、PR 、AsR 、SbR 、SR、BR 、SiR 、GeR 、SnR 、PbR などで置換されているか、又は少なくとも1個の非炭化水素原子若しくは基、例えば-O-、-S-、-Se-、-Te-、-N(R)-、=N-、-P(R)-、=P-、-As(R)-、=As-、-Sb(R)-、=Sb-、-B(R)-、=B-、-Si(R-、-Ge(R-、-Sn(R-、-Pb(R-などが、ヒドロカルビルラジカル中に挿入されているラジカルであり、ここで、Rは、独立して、ヒドロカルビル又はハロカルビルラジカルであり、2つ以上のRがつながり合って、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式環構造を形成してもよい。
【0078】
ハロカルビルラジカルは、1個以上のヒドロカルビル水素原子が、少なくとも1個のハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)又はハロゲン含有基(例えば、CF)で置換されているラジカルである。
【0079】
置換ハロカルビルラジカルは、少なくとも1個のハロカルビル水素若しくはハロゲン原子が、少なくとも1個の官能基、例えばNR 、OR、SeR、TeR、PR 、AsR 、SbR 、SR、BR 、SiR 、GeR 、SnR 、PbR などで置換されているか、又は少なくとも1個の非炭素原子若しくは基、例えば-O-、-S-、-Se-、-Te-、-N(R)-、=N-、-P(R)-、=P-、-As(R)-、=As-、-Sb(R)-、=Sb-、-B(R)-、=B-、-Si(R-、-Ge(R-、-Sn(R-、-Pb(R-などが、ハロカルビルラジカル中に挿入されているラジカルであり、ここで、Rは、独立して、ヒドロカルビル又はハロカルビルラジカルであるが、少なくとも1個のハロゲン原子が、元のハロカルビルラジカル上に残っていることを条件とする。更に、2つ以上のRがつながり合って、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式環構造を形成してもよい。
【0080】
シリルカルビル基(ヒドロカルビルシリル基とも呼ばれる)とも呼ばれるヒドロカルビルシリル基は、1個以上のヒドロカルビル水素原子が少なくとも1個のSiR 含有基で置換されているか、又は少なくとも1個の-Si(R-がヒドロカルビルラジカル中に挿入されているラジカルであり、ここで、Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル又はハロカルビルラジカルであり、2つ以上のRがつながり合って、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式環構造を形成してもよい。シリルカルビルラジカルは、ケイ素原子又は炭素原子を介して結合することができる。
【0081】
置換シリルカルビルラジカルは、少なくとも1個の水素原子が、少なくとも1個の官能基、例えばNR 、OR、SeR、TeR、PR 、AsR 、SbR 、SR、BR 、GeR 、SnR 、PbR などで置換されているか、又は少なくとも1個の非炭化水素原子若しくは基、例えば-O-、-S-、-Se-、-Te-、-N(R)-、=N-、-P(R)-、=P-、-As(R)-、=As-、-Sb(R)-、=Sb-、-B(R)-、=B-、-Ge(R-、-Sn(R-、-Pb(R-などが、シリルカルビルラジカル中に挿入されているシリルカルビルラジカルであり、ここで、Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル又はハロカルビルラジカルであり、2つ以上のRがつながり合って、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式環構造を形成してもよい。
【0082】
ゲルミルカルビル基(ヒドロカルビルゲルミル基とも呼ばれる)とも呼ばれるゲルミルカルビルラジカルは、1個以上のヒドロカルビル水素原子が少なくとも1個のGeR 含有基で置換されているか、又は少なくとも1個の-Ge(R-がヒドロカルビルラジカル中に挿入されているラジカルであり、ここで、Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル又はハロカルビルラジカルであり、2つ以上のRがつながり合って、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式環構造を形成してもよい。ゲルミルカルビルラジカルは、ゲルマニウム原子又は炭素原子を介して結合することができる。
【0083】
置換ゲルミルカルビルラジカルは、少なくとも1個の水素原子が、少なくとも1個の官能基、例えばNR 、OR、SeR、TeR、PR 、AsR 、SbR 、SR、BR 、GeR 、SnR 、PbR などで置換されているか、又は少なくとも1個の非炭化水素原子若しくは基、例えば--O-、-S-、-Se-、-Te-、-N(R)-、=N-、-P(R)-、=P-、-As(R)-、=As-、-Sb(R)-、=Sb-、-B(R)-、=B-、-Ge(R-、-Sn(R-、-Pb(R-などが、ゲルミルカルビルラジカル中に挿入されているゲルミルカルビルラジカルであり、ここで、Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル又はハロカルビルラジカルであり、2つ以上のRがつながり合って、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式環構造を形成してもよい。
【0084】
「極性ラジカル」(又は「極性基」)は、ヘテロ原子官能基が、示された原子(複数可)に直接結合している基である。極性ラジカルは、単独の、あるいは共有結合又はイオン結合、ファンデルワールス力、若しくは水素結合などの他の相互作用によって他の元素に結合している、周期表の1~17族のヘテロ原子(炭素及び水素を除く)を含む。ヘテロ原子含有官能基の例としては、カルボン酸、酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、アルデヒド類及びそれらのカルコゲン(14族)類似体、アルコール類及びフェノール類、エーテル類、ペルオキシド類及びヒドロペルオキシド類、カルボン酸アミド、ヒドラジド及びイミド、アミジンや、アミド類、ニトリル類、アミン類及びイミン類の他の窒素類似体、アゾ類、ニトロ類、他の窒素化合物、硫黄酸、セレン酸、チオール類、スルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、ホスフィン類、ホスフェート類、他のリン化合物、シラン類、ボラン類、ボレート類、アラン類、アルミネート類が挙げられる。極性基の例としては、NR 、OR、SeR、TeR、PR 、AsR 、SbR 、SR、BR 、SnR 、PbR などが挙げられ、ここで、Rは、独立して、上で定義したようなヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル又は置換ハロカルビルラジカルであり、2つのRがつながり合って、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式環構造を形成してもよい。
【0085】
「置換又は非置換シクロペンタジエニル配位子」、「置換又は非置換インデニル配位子」、及び「置換又は非置換テトラヒドロインデニル配位子」という用語を使用する場合、前述の配位子に置換されるものは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビルであり得る。置換はまた、ヘテロシクロペンタジエニル配位子、ヘテロインデニル配位子又はヘテロテトラヒドロインデニル配位子を与える環内で行われてもよく、これらの各々は更に置換されても置換されなくてもよい。
【0086】
ヒドロカルビルラジカルは、独立して、メチル、エチル、エテニル、並びにプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、トリアコンチル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニル、ヘキサコセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、ノナコセニル、トリアコンテニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニル、ノナデシニル、エイコシニル、ヘンエイコシニル、ドコシニル、トリコシニル、テトラコシニル、ペンタコシニル、ヘキサコシニル、ヘプタコシニル、オクタコシニル、ノナコシニル、トリアコンチニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、及びデカジエニルの異性体から選択され得る。また、ラジカルが上記のタイプの置換に更に供されていてもよい、飽和、部分不飽和及び芳香族環式及び多環式構造の異性体も含まれる。例としては、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、プロピルフェニル、ジプロピルフェニル、ベンジル、メチルベンジル、ナフチル、アントラセニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、ノルボルニル、ノルボルネニル、アダマンチルなどが挙げられる。本開示に関して、ラジカルが列挙される場合、それは、そのラジカルタイプ及びそのラジカルタイプが上で定義した置換に供される場合に形成される全ての他のラジカルを示す。列挙されたアルキル、アルケニル及びアルキニルラジカルは、適切な場合に環状異性体を含む全ての異性体を包含し、例えば、ブチルは、n-ブチル、2-メチルプロピル、1-メチルプロピル、tert-ブチル、及びシクロブチル(及び類似の置換シクロプロピル)を包含し、ペンチルは、n-ペンチル、シクロペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、及びネオペンチル(及び類似の置換シクロブチル及びシクロプロピル)を包含し、ブテニルは、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル及び2-メチル-2-プロペニル(並びにシクロブテニル及びシクロプロペニル)のE型及びZ型を包含する。置換基を有する環状化合物は、全ての異性体形態を包含し、例えば、メチルフェニルは、オルト-メチルフェニル、メタ-メチルフェニル及びパラ-メチルフェニルを包含し、ジメチルフェニルは、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジフェニルメチル、3,4-ジメチルフェニル、及び3,5-ジメチルフェニルを包含する。
【0087】
アニオン性配位子としてのシクロペンタジエニル及びインデニル配位子の例を以下に示す。環番号付けスキームも示す。シクロペンタジエニル配位子が1個の架橋置換基を有する場合、架橋置換基は1位にある。シクロペンタジエニル配位子が2個の架橋置換基を有する場合、架橋置換基は1位及び2位にある。フルオレニル配位子が架橋置換基を有する場合、架橋置換基は9位にある。ジベンゾ[b,h]フルオレンが架橋置換基を有する場合、架橋置換基は12位にある。
【化1】
【0088】
以下に示すように、ヘテロシクロペンタペンタレニル、ヘテロフルオレニルなどについて、同様の番号付け及び命名スキームを使用する。示される各構造は、アニオンとして描かれている。
【0089】
ヘテロシクロペンタペンタレニルの非限定的な例としては、以下のものが挙げられ、式中、Qは、ヘテロ原子O、S、Se、若しくはTe、又はヘテロ原子基NR**、PR**、AsR**、若しくはSbR**を表し、R**は、水素、又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、若しくはゲルミルカルビル置換基である。ヘテロシクロペンタペンタレニル配位子が架橋置換基を有する場合、架橋置換基は7位にある。
【化2】
【0090】
Zがヘテロ原子N又はPを表すヘテロフルオレニルの非限定的な例としては、以下が挙げられる。ヘテロフルオレニル配位子が架橋置換基を有する場合、架橋置換基は9位にある。
【化3】
【0091】
「環ヘテロ原子」は、環式環構造内にあるヘテロ原子である。「ヘテロ原子置換基」は、ヘテロ原子を介して環構造に直接結合しているヘテロ原子含有基である。「架橋ヘテロ原子置換基」は、ヘテロ原子を介して2つの異なる環構造に直接結合しているヘテロ原子又はヘテロ原子基である。「環ヘテロ原子」、「ヘテロ原子置換基」、及び「架橋ヘテロ原子置換基」という用語を以下に示し、式中、Z及びR’は、上で定義したとおりである。
【化4】
【0092】
「環炭素原子」は、環式環構造の一部である炭素原子である。例えば、インデニル配位子は9個の環炭素原子を有し、シクロペンタジエニル配位子は5個の環炭素原子を有する。
【0093】
遷移金属化合物は、対称要素を有し、対称族に属する。これらの元素及び基は十分に確立されており、F. Albert CottonによるChemical Applications of Group Theory (2nd Edition), Wiley-Interscience, 1971を参照することができる。C対称性を有する化合物は、鏡面を有する。例えば、以下の構造は、ジルコニウム中心、炭素架橋、並びにシクロペンタジエニル及びフルオレニル配位子を二等分するC対称面を有する。
【化5】
【0094】
対称置換基は、遷移のC対称性を保持する置換基である。例えば、フルオレニル配位子の2位及び7位で置換されたt-ブチル基は、対称置換基であり得る。
【0095】
擬C対称性を有する化合物は、架橋基、不安定配位子、及びシクロペンタジエニル配位子又はフルオレニル配位子上の同様のサイズの離れた置換基が、化合物の対称性の決定に含まれないことを除いて、同様である。これらの化合物は、真にC対称ではないが、オレフィン重合のためのC対称活性サイトを有すると考えられる。したがって、例えばMeEtSi又はMePhSi架橋配位子を有する化合物は、適切な残りの配位子構造を考慮すると、擬C対称面を有すると考えられる。同様に、例えば、1つのMe不安定配位子及び1つのCl不安定配位子を有する化合物は、適切な残りの配位子構造を考慮すると、擬C対称面を有すると考えられる。擬C対称化合物の非限定的な例を以下に示す:
【化6】
【0096】
擬C対称性を有する化合物は、置換基が活性サイトから離れている場合、非不安定配位子(すなわち、シクロペンタジエニル又はフルオレニル配位子)上に異なる置換基を有することもできる。擬対称置換基と呼ばれるこのタイプの置換基は、典型的には架橋基に隣接しており、互いにサイズが実質的に異ならない。典型的には、これらの置換基のサイズの差は、互いに2個の非水素原子以内である。したがって、2位及び5位においてそれぞれメチル及びエチルで置換されたシクロペンタジエニル、又は2位においてメチルで置換され、5位で置換されていないシクロペンタジエニル、又は1位及び8位でそれぞれヘキシル及びオクチルで置換されたフルオレニルは、擬C対称性を有すると考えられる。
【0097】
一般的に、シンジオタクチックポリプロピレンを作製することができ、かつ水素と反応してポリマー鎖の成長を停止させることができる触媒は、本開示に記載のシンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー及びシンジオタクチックプロピレンリッチエチレン-プロピレンコポリマーを製造するのに有用な触媒である。
【0098】
シンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー及びシンジオタクチックプロピレンリッチエチレン-プロピレンコポリマーを製造するのに有用な触媒としては、C又は擬C対称性を有する式(1)によって表される構造を有するメタロセン化合物(プレ触媒)が挙げられ、
【化7】
式中、
Mは、ジルコニウム又はハフニウムであり、
は、非置換フルオレニル、ヘテロシクロペンタペンタレニル、若しくはヘテロフルオレニル、又は1つ以上の対称若しくは擬対称置換基を有する置換フルオレニル、ヘテロシクロペンタペンタレニル、若しくはヘテロフルオレニル配位子であり、各置換基群は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビルであるラジカル基であり、任意選択で、2つ以上の隣接する置換は連結して、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式置換基を形成していてもよく、
【0099】
は、シクロペンタジエニル環、又は環の2位及び5位に1つ以上の対称若しくは擬対称置換基を有する置換シクロペンタジエニル環であり、各置換基群は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビルであるラジカル基であり、
Gは、架橋基であり、
各Xは、独立して、ヒドリドラジカル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルであるか、又は両方のXは連結し、金属原子に結合して、約3~約20個の炭素原子を含有するメタラサイクル環を形成するか、又は両方は一緒になってオレフィン、ジオレフィン若しくはアライン(aryne)配位子となり得るか、両方のXは、独立して、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド若しくは他の一価アニオン性配位子であってもよいか、又は両方のXはまた、連結してジアニオン性キレート配位子を形成することができる。
【0100】
式(1)のいくつかの実施形態では、Lは、フルオレニル又は置換フルオレニル、例えばフルオレニル、2,7-ジメチルフルオレニル、2,7-ジエチルフルオレニル、2,7-ジプロピルフルオレニル、2,7-ジブチルフルオレニル、2,7-ジフェニルフルオレニル、2,7-ジクロロフルオレニル、2,7-ジブロモフルオレニル、3,6-ジメチルフルオレニル、3,6-ジエチルフルオレニル、3,6-ジプロピルフルオレニル、3,6-ジブチルフルオレニル、3,6-ジフェニルフルオレニル、3,6-ジクロロフルオレニル、3,6-ジブロモフルオレニル、2,7-ジ-tertブチルフルオレニル、又は1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-オクタヒドロジベンゾフルオレニルである。最も好ましくは、2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル又はフルオレニルである。いくつかの実施形態では、Lは、シクロペンタジエニルである。いくつかの実施形態では、Gは、メチレン、ジメチルメチレン、ジフェニルメチレン、ジメチルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(4-トリエチルシリルフェニル)シリレン、エチレン、又はジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレンであり、最も好ましくはジメチルメチレン、ジフェニルメチレン又はジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレンである。いくつかの実施形態では、各Xは、独立して、ヒドロカルビル又はハロ、例えば、メチル、ベンジル、フルオロ又はクロロである。いくつかの実施形態では、Mは、好ましくはジルコニウムである。代替的な実施形態では、Mは、ハフニウムである。
【0101】
使用され得るC又は擬C対称性を有する式(1)によって表されるメタロセン化合物(プレ触媒)のサブセットは、式(1a)によって表され、
【化8】
式中、M、G及びXは、式(1)と同様に定義され、
各R及びRは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、ゲルミルカルビル又は極性ラジカルから選択され、任意選択で、2つ以上の隣接する置換基は連結して、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式置換基を形成していてもよく、ただし、各Rは同じであり、各Rは同じであり、化合物がC対称又は擬C対称となることを可能にし、
各Rは、独立して、他方に対して対称又は擬対称の置換基であり、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルラジカルから選択され、
各Rは、他方に対して対称又は擬対称の置換基であり、独立して、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルラジカルから選択される。
【0102】
式(1a)のいくつかの実施形態では、各R、R及びRは、水素であり、各Rは、水素、ヒドロカルビル、ハロゲン、シリルカルビル、又は極性ラジカル、例えば水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メシチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ジメチルアミド、ジエチルアミド又はメトキシ、例えば水素又はブチル、例えば水素又はtert-ブチル、例えばtert-ブチルである。
【0103】
式(1a)の他の実施形態では、各R、R及びRは、水素であり、各Rは、独立して、水素、ヒドロカルビル、ハロゲン、又はシリルカルビル、例えば水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フルオロ、クロロ、又はブロモ、例えば水素又はブチル、例えば水素又はtert-ブチル、例えば水素である。
【0104】
更に、式(1a)の他の実施形態では、各R及びRは、水素であり、各R及びRは、つながり合って縮合部分飽和6員炭素環を形成し、このような各縮合環は、4個のメチル置換基で置換されていてもよい。このような配位子構造は、式(1b)に示される:
【化9】
【0105】
更に、式(1a)の他の実施形態では、R及びRは、水素であり、各R及びRは、独立して、水素、臭素、塩素、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はフェニルであり、例えば、Rは、水素であり、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、若しくはブチルであるか、又はRは、水素であり、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、若しくはブチルである。いくつかの実施形態では、Rは、水素であり、Rは、tert-ブチル又は水素である。Gは、メチレン、ジメチルメチレン、ジフェニルメチレン、ジメチルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(4-トリエチルシリルフェニル)シリレン、エチレン、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン、例えばジフェニルメチレン、ジメチルメチレン、ジフェニルシリレン及びジメチルシリレン、例えばジフェニルメチレンであってもよい。各Xは、独立して、ヒドロカルビル又はハロ、例えばメチル、ベンジル、フルオロ又はクロロ、例えばメチル又はクロロである。いくつかの実施形態では、Mは、ジルコニウムである。他の実施形態では、Mは、ハフニウムである。
【0106】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、式(1)、(1a)及び/又は(1b)のメタロセン化合物について、Mは、ジルコニウムである。
【0107】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、式(1)、(1a)及び/又は(1b)のメタロセン化合物について、Xは、メチルである。
【0108】
式(1a)のいくつかの実施形態では、各R、R及びRは、水素であり、各Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチルであり、tert-ブチルが最も好ましい。
【0109】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、式(1a)及び/又は(1b)のメタロセン化合物について、Gは、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレンである。
【0110】
式(1)によって表されるプレ触媒の例としては、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン-(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン-(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、メチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジフェニルシリレン-(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、エチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tertブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、メチレン-(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、エチレン-(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジメチル、メチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジメチル、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジメチル、ジメチル-シリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジメチル、ジフェニルシリレン-(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジメチル、エチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジメチル、及びジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tertブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチルを挙げることができる。いくつかの実施形態では、式(1)によって表されるプレ触媒は、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ハフニウムジメチル、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tertブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、又はジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tertブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルであってもよい。いくつかの実施形態では、式1、1a及び1bのジルコニウム系触媒、例えばジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチル、又はジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tertブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルなどが好ましい。
【0111】
シンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー及びシンジオタクチックプロピレンリッチエチレン-プロピレンコポリマーを製造することができる触媒としては、C又は擬C対称性を有する式(2)によって表される構造を有するメタロセン化合物(プレ触媒)も挙げることができ、
【化10】
式中、
Mは、ハフニウム、ジルコニウム又はチタンであり、
は、非置換フルオレニル、ヘテロシクロペンタペンタレニル、若しくはヘテロフルオレニル、又は1つ以上の対称若しくは擬対称置換基を有する置換フルオレニル、ヘテロシクロペンタペンタレニル、若しくはヘテロフルオレニル配位子であり、各置換基群は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビルであるラジカル基であり、任意選択で、2つ以上の隣接する置換は連結して、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式置換基を形成していてもよく、
Gは、架橋基であり、
Jは、15族からのヘテロ原子、例えばN又はP、例えばNであり、
R’は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、又は置換ハロカルビルであるラジカル基であり、
L’は、中性ルイス塩基であり、wは、Mに結合しているL’の数を表し、wは、0、1、又は2であり、任意選択で、任意のL’及び任意のXは、互いに結合していてもよく、
各Xは、独立して、ヒドリドラジカル、ヒドロカルビルラジカル、置換ヒドロカルビルラジカル、ハロカルビルラジカル、置換ハロカルビルラジカル、シリルカルビルラジカル、置換シリルカルビルラジカル、ゲルミルカルビルラジカル、若しくは置換ゲルミルカルビルラジカルであるか、又は両方のXは連結し、かつ、金属原子に結合して、約3~約20個の炭素原子を含有するメタラサイクル環を形成しているか、又は両方は一緒になってオレフィン、ジオレフィン若しくはアライン配位子となっているか、両方のXは、独立して、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド若しくは他の一価アニオン性配位子であってもよいか、あるいは両方のXは連結してジアニオン性キレート配位子を形成していてもよい。
【0112】
式(2)のいくつかの実施形態では、Lは、フルオレニル又は置換フルオレニル、例えばフルオレニル、2,7-ジメチルフルオレニル、2,7-ジエチルフルオレニル、2,7-ジプロピルフルオレニル、2,7-ジブチルフルオレニル、2,7-ジフェニルフルオレニル、2,7-ジクロロフルオレニル、2,7-ジブロモフルオレニル、3,6-ジメチルフルオレニル、3,6-ジエチルフルオレニル、3,6-ジプロピルフルオレニル、3,6-ジブチルフルオレニル、3,6-ジフェニルフルオレニル、3,6-ジクロロフルオレニル、3,6-ジブロモフルオレニル、又は1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-オクタヒドロジベンゾフルオレニルである。いくつかの実施形態では、Gは、メチレン、ジメチルメチレン、ジフェニルメチレン、ジメチルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(4-トリエチルシリルフェニル)シリレン、エチレン、例えばジフェニルメチレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、及びジメチルシリレン、例えばジメチルシリレンである。いくつかの実施形態では、Jは、窒素である。いくつかの実施形態では、R’は、ヒドロカルビル又はハロカルビル、例えばC3~C20ヒドロカルビル、例えばプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ベンジル、フェニル及び置換フェニルの全ての異性体(環状及び多環状を含む)、例えばtert-ブチル、ネオペンチル、ベンジル、フェニル、ジイソプロピルフェニル、アダマンチル、ノルボルニル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロデシル、及びシクロドデシル、例えばtert-ブチル、アダマント-1-イル、ノルボルナ-2-イル、シクロヘキシル、シクロオクチル、及びシクロドデシルである。いくつかの実施形態では、Xは、ヒドロカルビル又はハロ、例えば、メチル、ベンジル、フルオロ又はクロロ、例えばメチル又はクロロである。いくつかの実施形態では、wは、0であり(L’は存在しない)、Mは、ジルコニウム又はチタンである。
【0113】
いくつかの実施形態では、式(2)の触媒は、以下のものである:
【化11】
【0114】
シンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー及びシンジオタクチックプロピレンリッチエチレン-プロピレンコポリマーを製造するのに有用な触媒としては、C又は擬C対称性を有する式(3)によって表される構造を有するメタロセン化合物(プレ触媒)も挙げることができ、
【化12】
式中、
Mは、ハフニウム又はジルコニウムであり、
は、任意選択で環の4位で置換されたシクロペンタジエニル環であり、置換基群は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビルであるラジカル基から選択され、
は、環の3位及び5位に対称又は擬対称置換基を有する置換シクロペンタジエニル環であり、各置換基群は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビルであるラジカル基であり、
G’及びG”は、架橋基であり、
【0115】
各Xは、独立して、ヒドリドラジカル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルであるか、又は両方のXは連結し、かつ、金属原子に結合して、約3~約20個の炭素原子を含有するメタラサイクル環を形成しているか、又は両方は一緒になってオレフィン、ジオレフィン若しくはアライン配位子となっているか、両方のXは、独立して、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド若しくは他の一価アニオン性配位子であってもよいか、あるいは両方のXは連結してジアニオン性キレート配位子を形成していてもよい。
【0116】
式(3)において、Lは、シクロペンタジエニル、又はシクロペンタジエニル環の4位に置換を有するヒドロカルビル若しくはシリルカルビル置換シクロペンタジエニル、例えばシクロペンタジエニル、4-メチルシクロペンタジエニル、4-エチルシクロペンタジエニル、4-プロピルシクロペンタジエニル、4-ブチルシクロペンタジエニル、4-ペンチルシクロペンタジエニル、4-ヘキシルシクロペンタジエニル、4-ヘプチルシクロペンタジエニル、3-オクチルシクロペンタジエニル、又は4-トリメチルシリルシクロペンタジエニル、例えばシクロペンタジエニル、4-イソプロピルシクロペンタジエニル、4-tert-ブチルシクロペンタジエニル、4-(2,2-ジメチルペンタ-3-イル)シクロペンタジエニル、4-(2,2-ジメチルブタ-3-イル)シクロペンタジエニル、又は4-トリメチルシリルシクロペンタジエニル、例えばシクロペンタジエニル、4-イソプロピルシクロペンタジエニル、又は4-トリメチルシリルシクロペンタジエニルである。いくつかの実施形態では、Lは、シクロペンタジエニル環の3位及び5位に置換を有するヒドロカルビル又はシリルカルビル置換シクロペンタジエニル、例えば3,5-ジメチルシクロペンタジエニル、3,5-ジエチルシクロペンタジエニル、3,5-ジプロピルシクロペンタジエニル、3,5-ジブチルシクロペンタジエニル、3,5-ジペンチルシクロペンタジエニル、3,5-ジヘキシルシクロペンタジエニル、3,5-ジベンジルシクロペンタジエニル、又は3,5-ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル、例えば3,5-ジメチルシクロペンタジエニル、3,5-ジイソプロピルシクロペンタジエニル、3,5-ジ-tert-ブチルシクロペンタジエニル、3,5-ジシクロペンチルシクロペンタジエニル、3,5-ジペンタ-3-イルシクロペンタジエニル、3,5-ジシクロヘキシルシクロペンタジエニル、3,5-ジベンジルシクロペンタジエニル、又は3,5-ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル、例えば3,5-ジメチルシクロペンタジエニル、3,5-ジイソプロピルシクロペンタジエニル、3,5-ジ-tert-ブチルシクロペンタジエニル、3,5-ジベンジルシクロペンタジエニル、又は3,5-ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニルである。いくつかの実施形態では、各G’及びG”は、メチレン、ジメチルメチレン、ジメチルシリレン、例えばジメチルメチレン又はジメチルシリレン、例えばジメチルシリレンである。いくつかの実施形態では、各Xは、ヒドロカルビル又はハロ、例えば、メチル、ベンジル、フルオロ又はクロロ、例えばメチル又はクロロである。いくつかの実施形態では、Mは、ジルコニウムである。代替的な実施形態では、Mは、ハフニウムである。
【0117】
又は擬C対称性を有するものを含む、使用され得る式(3)によって表されるメタロセン化合物(プレ触媒)のサブセットは、式(3a)によって表され、
【化13】
式中、M、G’、G”及びXは、式(3)におけるのと同様に定義され、
は、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルラジカルから選択され、
各R及びRは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビルから選択され、ただし、各R及びRは、化合物がC対称又は擬C対称となることを可能にするように選択される。
【0118】
式(3a)のいくつかの実施形態では、各R及びRは、独立して、ヒドロカルビル又はシリルカルビル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ベンジル、又はトリメチルシリル、例えばメチル、イソプロピル、tert-ブチル、シクロペンチル、ペンタ-3-イル、シクロヘキシル、ベンジル、又はトリメチルシリル、例えばメチル、イソプロピル、tert-ブチル、ベンジル又はトリメチルシリルである。いくつかの実施形態では、Rは、水素、ヒドロカルビル又はシリルカルビル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル又はトリメチルシリル、例えば水素、イソプロピル、tert-ブチル、2,2-ジメチルペンタ-3-イル、2,2-ジメチルブタ-3-イル、又はトリメチルシリル、例えば水素、イソプロピル又はトリメチルシリルである。
【0119】
いくつかの実施形態では、式(3)の触媒は、以下のものである:
【化14】
【0120】
式1、1a、1b、2、3、又は3aのいくつかの実施形態では、G、G’及びG”は、R C、R Si、R Ge、R CCR 、RC=CR、R CSiR 、R SiSiR 、RB、R C-BR、RN、RP、O、S、及びSeから選択され、ここで、各Rは、独立して、水素、C~C20含有ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル置換基から選択され、任意選択で、2つ以上の隣接するRは連結して、置換又は非置換の飽和、部分不飽和環式又は多環式置換基を形成していてもよい。いくつかの実施形態では、G、G’及びG”は、R C、R Si、R Ge、R CCR 、RB、RN、RP、O、S、及びSeから選択され、ここで、各Rは、独立して、水素、C~C20含有ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル置換基から選択され、任意選択で、2つ以上の隣接するRは連結して、置換又は非置換の飽和、部分不飽和環式又は多環式置換基を形成していてもよい。いくつかの実施形態では、G、G’及びG”は、独立して、R C、R Si及びR CCR から選択され、ここで、各Rは、独立して、水素、C~C20含有ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル置換基から選択され、任意選択で、2つ以上の隣接するRは連結して、置換又は非置換の飽和、部分不飽和環式又は多環式置換基を形成していてもよい。
【0121】
本開示に記載のシンジオタクチックポリプロピレンポリマー及びシンジオタクチックプロピレンリッチエチレン-プロピレンコポリマーを製造することができる触媒としては、C対称性を有する式(4)によって表される構造を有する化合物(プレ触媒)を挙げることができ、
【化15】
式中、
Mは、ジルコニウム又はチタンであり、
Oは、酸素であり、
Nは、窒素であり、
は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビルであり、例えばRは、ハロカルビルであり、
は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビルであり、例えばRは、3個以上の炭素原子を有するヒドロカルビル又は3個以上の炭素原子を有するシリルカルビルであり、
、R及びRの各々は、独立して、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルであり、例えばR、R及びRは、水素であり、
各Xは、独立して、ヒドリドラジカル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルであるか、又は両方のXは連結し、かつ、金属原子に結合して、約3~約20個の炭素原子を含有するメタラサイクル環を形成しているか、又は両方は一緒になってオレフィン、ジオレフィン若しくはアライン配位子となっているか、両方のXは、独立して、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド若しくは他の一価アニオン性配位子であってもよいか、あるいは両方のXは連結してジアニオン性キレート配位子を形成していてもよい。
【0122】
式(4)のいくつかの実施形態では、Rは、ヒドロカルビル又はハロカルビルラジカル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ベンジル、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、プロピルフェニル、ジプロピルフェニル、ペルフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、ジフルオロフェニル、又はフルオロフェニル、例えばフェニル、2-メチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2-イソプロピルフェニル、ペルフルオロフェニル、2,4,6-トリフルオロフェニル、2,6-ジフルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル又は4-フルオロフェニル、例えばペルフルオロフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、ヒドロカルビル又はシリルカルビルラジカル、例えばC~C12ヒドロカルビル又はC~C12シリルカルビル、例えばプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、クミル、又はトリメチルシリル、例えばイソプロピル、tert-ブチル、クミル、又はトリメチルシリル、例えばtert-ブチル又はトリメチルシリルである。いくつかの実施形態では、R、R、及びRは、独立して、水素又はヒドロカルビルラジカルである。いくつかの実施形態では、各Xは、ヒドロカルビル又はハロ、例えば、メチル、ベンジル、フルオロ又はクロロ、例えばメチル又はクロロである。いくつかの実施形態では、Mは、チタンである。
【0123】
いくつかの実施形態では、式(4)の触媒化合物は、以下のものである:
【化16】
【0124】
活性化剤及び触媒活性化
「共触媒」及び「活性化剤」という用語は、本開示において互換的に使用され、中性のプレ触媒化合物を触媒的に活性なカチオン性化合物に変換することによって、上述のプレ触媒化合物のいずれか1つを活性化することができる任意の化合物であると定義される。非限定的な活性化剤としては、例えば、アルモキサン、アルミニウムアルキル、中性(ルイス酸活性化剤)又はイオン性(イオン性活性化剤)であり得るイオン化活性化剤、及び従来型の共触媒が挙げられる。活性化剤としては、アルモキサン化合物、変性アルモキサン化合物、又は反応性のσ結合金属配位子を引き抜いて金属錯体をカチオン性にし、電荷平衡非配位性若しくは弱配位性アニオンを提供するイオン化アニオン前駆体化合物を挙げることができる。
【0125】
アルモキサン活性化剤は、本開示に記載される触媒系における活性化剤として利用される。アルモキサンは、一般的に、-Al(R)-O-サブユニットを含有するオリゴマー化合物であり、ここで、Rは、アルキル基である。アルモキサンの例としては、メチルアルモキサン(methylalumoxane、MAO)、変性メチルアルモキサン(modified methylalumoxane、MMAO)、エチルアルモキサン及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。アルキルアルモキサン及び変性アルキルアルモキサンは、特に引抜き可能な配位子がアルキル、ハロゲン化物、アルコキシド又はアミドである場合に、触媒活性化剤として好適である。異なるアルモキサン及び変性アルモキサンの混合物も使用され得る。視覚的に透明なメチルアルモキサンを使用してもよい。濁った又はゲル化したアルモキサンを濾過して透明な溶液を生成しても、濁った溶液から透明なアルモキサンをデカントしてもよい。有用なアルモキサンは、変性メチルアルモキサン(MMAO)共触媒タイプ3A(Akzo Chemicals,Inc.からModified Methylalumoxane type 3Aの商品名で市販されており、米国特許第5,041,584号の特許番号で保護されている)である。別の有用なアルモキサンは、米国特許第9,340,630号、同第8,404,880号、及び同第8,975,209号に記載されているような固体ポリメチルアルミノキサンである。
【0126】
活性化剤がアルモキサン(変性又は非変性)である場合、少なくとも1つの実施形態は、典型的には触媒化合物に対して(金属触媒サイト当たり)最大5000倍モル過剰Al/Mの活性化剤の最大量を選択する。活性化剤対触媒化合物の最小モル比は1:1である。代替的な好適な範囲としては、1:1~500:1、あるいは1:1~200:1、あるいは1:1~100:1、あるいは1:1~50:1が挙げられる。
【0127】
代替的な実施形態では、本開示に記載の重合プロセスにおいて、アルモキサンはほとんど又は全く使用されない。例えば、アルモキサンは、0モル%で存在し、あるいはアルモキサンは、500未満:1、例えば300未満:1、例えば100未満:1、例えば1未満:1の、アルミニウムの触媒化合物遷移金属に対するモル比で存在する。
【0128】
ルイス酸活性化剤としては、トリフェニルホウ素、トリス-ペルフルオロフェニルホウ素、トリス-ペルフルオロフェニルアルミニウムが挙げられるが、アルモキサンと呼ばれる種類の活性化剤は除外される。イオン性活性化剤としては、ジメチルアニリニウムテトラキスペルフルオロフェニルボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキスペルフルオロフェニルボレート、ジメチルアニリニウムテトラキスペルフルオロフェニルアルミネートが挙げられる。遷移金属化合物に対して大過剰の活性化剤を必要とするアルモキサン活性化剤と比較して、遷移金属化合物に対する活性化剤の比較的低いモル比が必要とされるので、ルイス酸活性化剤及びイオン性活性化剤は、化学量論的活性化剤と呼ばれる。
【0129】
トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)、トリスペルフルオロフェニルホウ素、トリスペルフルオロナフチルホウ素、ポリハロゲン化ヘテロボランアニオン、ホウ酸、又はそれらの組合せなどの中性又はイオン性活性化剤も使用することができる。
【0130】
化学量論的活性化剤(時には活性化補助因子と組み合わせて使用される)は、本開示に記載のシンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー及びシンジオタクチックプロピレンリッチエチレン-プロピレンコポリマーを作製する際に使用することができる。
【0131】
例えば、トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリアルキルアンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリアルキルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリアルキルアンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N-ジアルキルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N-ジアルキル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、ジ-(i-プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(アルキルは、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル又はt-ブチルである)などの活性化剤が使用される。
【0132】
少なくとも1つの実施形態では、活性化剤は、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリ(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ジ(水素化タロー)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、ジ(水素化タロー)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、及びジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレートのうちの1つ以上である。更なる有用な活性化剤としては、
N-メチル-4-ノナデシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-ヘキサデシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-テトラデシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-ドデシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-デシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-オクチル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-ヘキシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-ブチル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-オクタデシル-N-デシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-ノナデシル-N-ドデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-ノナデシル-N-テトラデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-4-ノナデシル-N-ヘキサデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-エチル-4-ノナデシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N,N-ジオクタデシルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N,N-ジヘキサデシルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N,N-ジテトラデシルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N,N-ジドデシルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N,N-ジデシルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N,N-ジオクチルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-エチル-N,N-ジオクタデシルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N,N-ジ(オクタデシル)トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N,N-ジ(ヘキサデシル)トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N,N-ジ(テトラデシル)トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N,N-ジ(ドデシル)トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-オクタデシル-N-ヘキサデシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-オクタデシル-N-ヘキサデシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-オクタデシル-N-テトラデシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-オクタデシル-N-ドデシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-オクタデシル-N-デシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-ヘキサデシル-N-テトラデシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-ヘキサデシル-N-ドデシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-ヘキサデシル-N-デシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-テトラデシル-N-ドデシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-テトラデシル-N-デシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-ドデシル-N-デシル-トリルアンモニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N-ヘキサデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N-テトラデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N-ドデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、
N-メチル-N-デシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、及び
N-メチル-N-オクチルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]が挙げられる。
【0133】
中性化学量論的活性化剤の例としては、三置換ホウ素、テルル、アルミニウム、ガリウム及びインジウム又はそれらの混合物が挙げられる。3つの置換基群は、各々独立して、アルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、アリールハロゲン化物、アルコキシ及びハロゲン化物から選択される。例えば、3つの置換基群は、独立して、ハロゲン、単環式又は多環式(ハロ置換を含む)アリール、アルキル、及びアルケニル化合物、並びにそれらの混合物から選択され、例えば、1~20個の炭素原子を有するアルケニル基、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、及び3~20個の炭素原子を有するアリール基(置換アリールを含む)であり得る。いくつかの実施形態では、3つの置換基群は、1~4個の炭素基を有するアルキル、フェニル、ナフチル又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、3つの置換基群は、フッ素化アリール基などのハロゲン化されているものである。いくつかの実施形態では、中性化学量論的活性化剤は、トリス(ペルフルオロフェニル)ホウ素又はトリス(ペルフルオロナフチル)ホウ素である。
【0134】
イオン性化学量論的活性化剤化合物は、活性プロトン、又はイオン化化合物の残りのイオンと会合しているが配位していないか、若しくは緩く配位しているに過ぎない何らかの他のカチオンを含有し得る。このような化合物は、欧州公開第EP-A-0570982号、同第EP-A-0520732号、同第EP-A-0495375号、同第EP-B1-0500944号、同第EP-A-0277003号及び同第EP-A-0277004号、並びに米国特許第5,153,157号、同第5,198,401号、同第5,066,741号、同第5,206,197号、同第5,241,025号、同第5,384,299号及び同第5,502,124号、米国特許出願公開第2021079537号、国際公開第2021/086467号、米国特許出願公開第2019/0330169号、同第2019/0330392号、及び米国特許第5,972,823号に記載されており、これらの全ては、参照により本開示に援用される。
【0135】
イオン性触媒は、遷移金属化合物を、B(Cなどの活性化剤と反応させることによって調製することができ、活性化剤は、遷移金属化合物の加水分解性配位子(X’)と反応すると、([B(C(X’)])などのアニオンを形成し、アニオンは、反応によって生成されたカチオン性遷移金属種を安定化させる。触媒は、イオン性化合物又は組成物である活性化剤成分を用いて調製することができる。しかしながら、中性化合物を利用する活性化剤の調製も企図される。
【0136】
本方法で使用されるイオン性触媒系の調製における活性化剤成分として有用な化合物は、プロトンを供与することができるブレンステッド酸であり得るカチオン、及び2つの化合物が組み合わされたときに形成される活性触媒種を安定化させることができる比較的大きい(嵩高い)相溶性非配位性アニオンを含むことができ、当該アニオンは、オレフィン基質、ジオレフィン基質及びアセチレン性不飽和基質、又はエーテル、ニトリルなどの他の中性ルイス塩基によって変位されるほど十分に不安定である。2つの部類の相溶性非配位性アニオン:1)中心電荷担持金属又は半金属コアに共有結合的に配位してそれを遮蔽する複数の親油性基を含むアニオン性配位錯体、並びに2)カルボラン、メタラカルボラン及びボランなどの複数のホウ素原子を含むアニオンが、1988年に公開されたEPA277,003及びEPA277,004に開示されている。
【0137】
少なくとも1つの実施形態では、イオン性化学量論的活性化剤は、カチオン成分及びアニオン成分を含み、以下の式:
(L**-H) (Ad-
によって表すことができ、
式中、L**は、中性ルイス塩基であり、Hは、水素であり、(L**-H)は、ブレンステッド酸であり、Ad-は、電荷d-を有する非配位性アニオンであり、dは、1~3の整数である。
【0138】
カチオン成分((L**-H) )は、プロトン若しくはプロトン化ルイス塩基などのブレンステッド酸、又はアルキル化後のプレ触媒からアルキル若しくはアリールなどの部分をプロトン化若しくは引き抜くことができる還元可能なルイス酸を含むことができる。
【0139】
活性化カチオン(L**-H) は、アンモニウム、オキソニウム、ホスホニウム、シリリウム、及びそれらの混合物、例えばメチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p-ブロモN,N-ジメチルアニリン、p-ニトロ-N,N-ジメチルアニリンのアンモニウム、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、及びジフェニルホスフィンからのホスホニウム、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサンなどのエーテルからのオキソニウム、ジエチルチオエーテル及びテトラヒドロチオフェンなどのチオエーテルからのスルホニウム、並びにそれらの混合物を含む、遷移金属カチオンをもたらすアルキル化遷移金属触媒前駆体にプロトンを供与することができるブレンステッド酸であってもよい。活性化カチオン(L**-H) は、銀、トロピリウム、カルベニウム、フェロセニウム、及び混合物、例えばカルボニウム及びフェロセニウム、例えばトリフェニルカルボニウムのような部分であってもよい。アニオン成分Ad-は、式[Mk+d-を有するものを含み、式中、kは、1~3の整数であり、nは、2~6の整数であり、n-k=dであり、Mは、ホウ素又はアルミニウムなどの元素周期表の13族から選択される元素であり、Qは、独立して、水素化物、架橋又は非架橋ジアルキルアミド、ハロゲン化物、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、及びハロ置換ヒドロカルビルラジカルであり、当該Qは、最大20個の炭素原子を有し、ただし1つ以下の出現において、Qは、ハロゲン化物である。例えば、各Qは、1~20個の炭素原子を有するフッ素化ヒドロカルビル基であり、例えば各Qは、フッ素化アリール基であり、例えば各Qは、ペンタフルオリルアリール基である。好適なAd-の例としては、参照によりその全体が本開示に援用される米国特許第5,447,895号に開示されているようなジボロン化合物も挙げられる。
【0140】
いくつかの実施形態では、本開示の触媒の調製において活性化補助因子と組み合わせて非配位性アニオン活性化剤として使用され得るホウ素化合物は、三置換アンモニウム塩、例えばトリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(tert-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(sec-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(tert-ブチル)アンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリ(tert-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリ(tert-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリ(tert-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、並びにジアルキルアンモニウム塩、例えばジ-(イソプロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、並びに他の塩、例えばトリ(o-トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルシリリウムテトラフェニルボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラフェニルボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリエチルシリリウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、及びベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートである。
【0141】
いくつかの実施形態では、非配位性アニオン活性化剤(L**-H) (Ad-)は、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート)、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、又はトリフェニルカルベニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボレートである。
【0142】
触媒前駆体はまた、米国特許出願公開第2002/0058765(A1)号に記載されているような半金属非含有シクロペンタジエニドイオンを含有する非配位アニオンを含む共触媒又は活性化剤で活性化することができ、本開示では、触媒前駆体への活性化補助因子の添加を必要とする。「相溶性」非配位性アニオンは、最初に形成された錯体が分解するときに中性に分解されないものである。更に、アニオンは、アニオン置換基又はフラグメントをカチオンに移動させてアニオンからの中性遷移金属化合物及び中性副生成物の形成を引き起こさない。本開示に従って有用な例示的な非配位性アニオンは、相溶性であり、そのイオン電荷を+1に平衡させるという意味で遷移金属錯体カチオンを安定化させ、更に重合中にエチレン性又はアセチレン性不飽和モノマーによる変位を可能にするのに十分な傾向を保持するものである。これらのタイプの共触媒は、これらに限定されないが、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム又はトリメチルアルミニウムなどの捕捉剤と共に使用されることがある。
【0143】
本開示の方法はまた、最初は中性ルイス酸であるが、アルキル化遷移金属化合物との反応時にカチオン性金属錯体及び非配位性アニオン、又は双性イオン錯体を形成する共触媒化合物又は活性化剤化合物を使用することができる。アルキル化メタロセン化合物は、触媒前駆体と活性化補助因子との反応から形成される。例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素又はアルミニウムは、ヒドロカルビル配位子を引き抜いて、本開示のカチオン性遷移金属錯体及び安定化非配位性アニオンを生じるように作用する(類似の4族メタロセン化合物の説明については、EP-A-0427697及びEP-A-0520732を参照されたい)。また、EP-A-0495375の方法及び化合物を参照されたい。類似の4族化合物を使用する双性イオン錯体の形成については、米国特許第5,624,878号、同第5,486,632号、及び同第5,527,929号を参照されたい。
【0144】
更なる中性ルイス酸は、当該技術分野において公知であり、形式的なアニオン性配位子を引き抜くのに好適である。特に、E. Y.-X. Chen and T. J. Marks, “Cocatalysts for Metal-Catalyzed Olefin Polymerization: Activators, Activation Processes, and Structure-Activity Relationships”, Chem. Rev., 100, 1391-1434 (2000)の総説論文を参照されたい。
【0145】
非配位性アニオン活性化剤のカチオンが、プロトン若しくはプロトン化ルイス塩基(水を除く)などのブレンステッド酸、又はフェロセニウム若しくは銀カチオンなどの還元可能なルイス酸、又はナトリウム、マグネシウム若しくはリチウムのカチオンなどのアルカリ若しくはアルカリ土類金属カチオンである場合、触媒前駆体対活性化剤のモル比はいかなる比であってもよい。記載された活性化剤化合物の組合せも活性化のために使用することができる。
【0146】
イオン性又は中性化学量論的活性化剤(NCAなど)が使用される場合、触媒前駆体対活性化剤のモル比は、1:10~1:1、1:10~10:1、1:10~2:1、1:10~3:1、1:10~5:1、1:2~1.2:1、1:2~10:1、1:2~2:1、1:2~3:1、1:2~5:1、1:3~1.2:1、1:3~10:1、1:3~2:1、1:3~3:1、1:3~5:1、1:5~1:1、1:5~10:1、1:5~2:1、1:5~3:1、1:5~5:1、1:1~1:1.2である。触媒前駆体対活性化補助因子のモル比は、1:500~1:1、1:100~100:1、1:75~75:1、1:50~50:1、1:25~25:1、1:15~15:1、1:10~10:1、1:5~5:1、1:2~2:1、1:100~1:1、1:75~1:1、1:50~1:1、1:25~1:1、1:15~1:1、1:10~1:1、1:5~1:1、1:2~1:1、1:10~2:1である。
【0147】
いくつかの実施形態では、活性化剤及び活性化剤/活性化補助因子の組合せとしては、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート若しくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、又はトリアルキルアルミニウムとジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート若しくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素との混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、捕捉化合物は、活性化剤と共に使用される。捕捉剤として有用な典型的なアルミニウム又はホウ素アルキル成分は、一般式RJ’Z’によって表され、式中、J’は、アルミニウム又はホウ素であり、Rは、上で定義したとおりであり、各Z’は、独立して、R又はハロゲン(Cl、Br、I)、アルコキシド(OR)などの異なる一価アニオン性配位子である。アルミニウムアルキルとしては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウムなどを挙げることができる。ホウ素アルキルとしては、トリエチルホウ素を挙げることができる。捕捉化合物は、アルモキサン、並びにメチルアルモキサン及び変性メチルアルモキサンを含む変性アルモキサンであり得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、プレ触媒及び/又は活性化剤は、トリアルキルアルミニウム化合物などのアルキルアルミニウム化合物と組み合わせた後に反応器に入れる。例えば、アルキルアルミニウム化合物は、式:RAlによって表すことができ、式中、各Rは、独立して、C~C20アルキル基であり、例えば、R基は、独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、n-ブチル、ペンチル、イソペンチル、n-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、n-オクチル、ノニル、イソノニル、n-ノニル、デシル、イソデシル、n-デシル、ウンデシル、イソウンデシル、n-ウンデシル、ドデシル、イソドデシル、及びn-ドデシル、例えばイソブチル、n-オクチル、n-ヘキシル、及びn-ドデシルから選択される。いくつかの実施形態では、アルキルアルミニウム化合物は、トリ-イソブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-ドデシルアルミニウムから選択される。
【0149】
連鎖移動剤
本開示の重合プロセスは、連鎖移動剤又は鎖シャトリング剤の存在下での重合を含んでもよい。
【0150】
連鎖移動剤としては、式:RAlによって表されるアルキルアルミニウム化合物が挙げられ、式中、各Rは、独立して、C~C18アルキル基であり、例えば、各Rは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソ-ブチル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル、n-ヘプチル、イソ-ヘプチル、n-オクチル、イソ-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、及びそれらのイソ類似体から選択される。
【0151】
このプロセスでは、水素もまた反応における有用な連鎖移動剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、代替の連鎖移動剤を本開示に記載のプロセスで使用して、水素が存在しないか又は限定された量で使用される場合における水素の必要性を低減することができる。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤としては、ジエチル亜鉛、及びトリアルキルアルミニウム、例えばトリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなど、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0152】
いくつかの実施形態では、連鎖移動剤は、1:1~150:1の、連鎖移動剤の遷移金属化合物に対するモル比で使用することができる。少なくとも1つの実施形態では、連鎖移動剤の遷移金属化合物に対するモル比は、5:1超、又は10:1超、又は20超であってもよい。同様に、連鎖移動剤の遷移金属化合物に対するモル比は、120:1未満、又は100:1未満、又は80:1未満であってもよい。
【0153】
重合プロセス
シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、当該技術分野で公知の任意の様式で、エチレン及びプロピレンを少なくとも1つの触媒と接触させることによって作製することができる。当該技術分野で公知の任意の均一、バルク、溶液(超臨界を含む)相、スラリー及び気相重合プロセスを使用することができる。このようなプロセスは、バッチ、セミバッチ、又は連続モードで実行することができる。このようなプロセスは、単一の反応器又は直列及び/若しくは並列配置の複数の反応器を有するシステムで実行することもできる。均一重合プロセスが好ましい。均一重合プロセスは、生成物の少なくとも90質量%が重合条件で反応媒体に可溶性であるプロセスであると定義される。モノマー自体もまた、バルク重合プロセスにおいて溶媒/希釈剤として使用することができる。バルクプロセスは、典型的には、反応器への全ての供給物中のモノマー濃度が70体積%以上であるプロセスである。あるいは、溶媒及び希釈剤のいずれも、反応媒体中に存在しないか又は添加されない(触媒系若しくは他の添加剤のためのキャリアとして使用される少量、又はモノマーと共に典型的に見出される量(例えば、プロピレン中のプロパン)を除く)。
【0154】
重合に好適な希釈剤/溶媒としては、非配位性不活性液体が挙げられる。例としては、直鎖及び分岐鎖炭化水素、例えばイソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、及びそれらの混合物;ノルマルパラフィン溶媒(ExxonMobil Chemical Company,テキサス州ヒューストン)から入手可能なNorpar溶媒など)、又はイソパラフィン溶媒(ExxonMobil Chemical Company,テキサス州ヒューストン)から入手可能なIsopar溶媒など)(Isopar(商標));環式及び脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びそれらの混合物;芳香族及びアルキル置換芳香族化合物、例えばトルエン及び/又はキシレン及び/又はエチルベンゼン;過ハロゲン化炭化水素、例えば過フッ素化C4~10アルカン、クロロベンゼンが挙げられる。前述の炭化水素溶媒のいずれかの混合物も使用することができる。好適な溶媒としてはまた、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、及びそれらの混合物を含むモノマー又はコモノマーとして作用し得る液体オレフィンが挙げられる。好ましい実施形態では、脂肪族炭化水素溶媒、例えばイソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、及びそれらの混合物;環式及び脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びそれらの混合物が、溶媒として使用される。別の実施形態では、溶媒は、芳香族ではなく、好ましくは、芳香族は、溶媒の質量に基づいて、1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、好ましくは0質量%未満で溶媒中に存在する。
【0155】
好ましい重合は、所望のポリマーを得るのに好適な任意の温度及び/又は圧力で行うことができる。典型的な温度及び/又は圧力としては、約50℃~約200℃、約55℃~約150℃、約58℃~約120℃、好ましくは約60℃~約110℃、好ましくは約60℃~約90℃の範囲の温度、及び約0.35MPa~約14MPa、好ましくは約2MPa~約13MPa、好ましくは約4MPa~約13MPa、好ましくは約7MPa~約12MPa、好ましくは約9MPa~約11.5MPa、好ましくは約9MPa~約11MPaの範囲の圧力が挙げられる。いくつかの触媒系では、エチレン-プロピレンコポリマーのシンジオタクチシチーは重合温度と共に変化し、温度の選択は、エチレン-プロピレンコポリマーのシンジオタクチシチーの望ましいレベルによって決定することができる。一実施形態では、重合は、120℃の上限温度を伴う60℃以上の温度、及び9.5MPa以上の圧力で行われる。
【0156】
一実施形態では、重合は、TP1以上の重合温度で行われ、ここで、TP1=0.9×EXP(-0.005×rr)である。好ましくは、重合温度は、少なくともTP2であり、ここで、TP2=1.15×EXP(-0.006×rr)である。TP1及びTP2の単位は℃であり、rrは、13C NMRを使用して測定されるシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーのトリアドタクチシチー指数である。
【0157】
いくつかの実施形態では、水素は、0.001~50psig(0.007~345kPa)、好ましくは0.01~25psig(0.07~172kPa)、より好ましくは0.1~10psig(0.7~70kPa)の分圧で重合反応器中に存在する。いくつかの実施形態では、水素は重合反応器に添加されない、すなわち、水素は、水素生成触媒などの他の供給源由来のものが存在してもよいが、反応器には添加されない。あるいは、水素濃度は、供給物中で10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下である。
【0158】
触媒は、典型的には、重合が連続プロセスで行われる場合、触媒1kg当たり10,000kg以上のポリマー、触媒1kg当たり20,000kg以上のポリマー、触媒1kg当たり50,000kg以上のポリマー、触媒1kg当たり100,000kg以上のポリマーよりも高い触媒活性を有する。同様に、オレフィンモノマーの転化率は、ポリマー収量及び反応ゾーンに入るモノマーの質量に基づいて、少なくとも10%、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上、好ましくは50%以上、好ましくは80%以上である。
【0159】
触媒及び活性化剤は、溶液、原液、懸濁液又はスラリーとして、反応器に別々に投入されても、反応器の直前にインラインで活性化されても、予備活性化されて活性化溶液又はスラリーとして反応器にポンプ輸送されてもよい。一実施形態では、触媒及び活性化剤は、触媒を担持溶媒に溶解することによって均質な触媒溶液を調製する必要なく、乾燥粉末又はスラリーの形態で重合反応器に供給することができる。
【0160】
シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーはまた、少なくとも1つの他のモノマーを含むことができ、エチレン、プロピレン及び少なくとも1つの他のモノマーを、当該技術分野で公知の任意の様式で少なくとも1つの触媒と接触させることによって調製することができる。好適な他のモノマーとしては、置換又は非置換のC2~C40アルファオレフィン、好ましくはC2~C20アルファオレフィン、好ましくはC2~C12アルファオレフィン、好ましくはブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン及びそれらの異性体が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、モノマーは、プロピレンと、エチレン又はC4~C40オレフィン、好ましくはC4~C20オレフィン、若しくは好ましくはC6~C12オレフィンのうちの1つ以上を含む任意選択のコモノマーとを含む。C4~C40オレフィンモノマーは、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。C4~C40環状オレフィンは、ひずんでいてもひずんでいなくてもよく、単環式であっても多環式であってもよく、任意選択で、ヘテロ原子及び/又は1つ以上の官能基を含んでもよい。例示的なC2~C40オレフィンモノマー及び任意選択のコモノマーとしては、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロドデセン、7-オキサノルボルネン、7-オキサノルボルナジエン、それらの置換誘導体、及びそれらの異性体、好ましくはヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、シクロオクテン、1,5-シクロオクタジエン、1-ヒドロキシ-4-シクロオクテン、1-アセトキシ-4-シクロオクテン、5-メチルシクロペンテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、並びにそれらのそれぞれのホモログ及び誘導体、好ましくはノルボルネン、ノルボルナジエン、及びジシクロペンタジエンが挙げられる。好ましくは、ポリマーはシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレン-ヘキセンターポリマー又はシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレン-オクテンターポリマーである。
【0161】
重合は、直列及び並列配置の複数の反応器で行うことができる。一実施形態では、コポリマーは、第1のポリマー成分と第2のポリマー成分との反応器ブレンドである。したがって、コポリマーのコモノマー含有量は、第1のポリマー成分のコモノマー含有量を調節すること、第2のポリマー成分のコモノマー含有量を調節すること、及び/又はコポリマー中に存在する第1のポリマー成分の第2のポリマー成分に対する比を調節することによって調節することができる。
【0162】
様々な実施形態によるシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーは、少なくとも2つのシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーのブレンドであってもよい。ブレンドは、直列又は並列の2つ以上の反応器を使用して調製することができる。好ましくは、ブレンドは、二峰性分子量分布又はMWD>3.0の広い分子量分布を有する。ブレンドは、二峰性組成分布又は広い組成分布を有することもできる。好ましくは、一方の成分は、0.2~5質量%の範囲のエチレン含有量を有し、一方の成分は、2~15質量%の範囲のエチレン含有量を有する。ブレンド成分の各々は、複数の反応器が使用される場合、異なる反応器で調製することができる。これは、反応器を異なる重合条件で操作すること、及び/又は各反応器において異なる触媒を使用することによって達成される。シンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーブレンドは、単一の反応器中で複数の触媒を用いて製造することもできる。一実施形態では、一方の成分は、10,000~30000g/molの範囲のMw及び0.2~3質量%の範囲のエチレン含有量を有し、一方の成分は、30,000~200,000g/molの範囲のMw及び2~10質量%の範囲のエチレン含有量を有する。
【0163】
一実施形態では、溶液重合プロセスが好ましい。溶液重合プロセスは、当業者に公知の任意の好適な様式で、本明細書に開示される重合反応を行うために使用され得る。特定の実施形態では、重合プロセスは、連続重合プロセスで行われてもよい。「バッチ」という用語は、重合反応の終わりに完全な反応混合物が重合反応容器から取り出されるプロセスを指す。対照的に、連続重合プロセスでは、1つ以上の反応物が反応容器に連続的に導入され、ポリマー生成物を含む溶液が同時に又はほぼ同時に取り出される。溶液重合は、作製されたポリマーが液体重合媒体、例えば不活性溶媒若しくはモノマー又はそれらのブレンドに可溶性である重合プロセスを意味する。溶液重合は、典型的には均一である。このような系は、J. Vladimir Oliveira, C. Dariva and J. C. Pinto, Ind. Eng. Chem. Res. 29, 2000, 4627に記載されているように、好ましくは濁らない。
【0164】
典型的な溶液プロセスでは、触媒成分、溶媒、モノマー及び水素(使用される場合)は、圧力下で1つ以上の反応器に供給される。反応器内の温度制御は、一般的に、重合熱のバランスをとることによって、及び反応器の内容物を冷却するための反応器ジャケット又は冷却コイルによる反応器冷却、自動冷蔵、予冷供給物、液体媒体(希釈剤、モノマー又は溶媒)の気化、又は3つ全ての組合せによって得ることができる。予冷供給物を有する断熱反応器も使用することができる。モノマーは、溶媒に溶解/分散された後に、第1の反応器に供給されるか又は反応混合物に溶解される。溶媒及びモノマーは、一般的に、精製して潜在的な触媒毒を除去した後に反応器に入れる。供給原料は、加熱又は冷却した後に第1の反応器に供給してもよい。追加のモノマー及び溶媒を第2の反応器に添加してもよく、それを加熱又は冷却してもよい。触媒/活性化剤は、第1の反応器に供給しても、2つの反応器に分割して供給してもよい。溶液重合では、生成されたポリマーは溶融しており、反応器条件下で溶媒に溶解したままであり、ポリマー溶液(流出液とも呼ばれる)を形成する。
【0165】
本発明の溶液重合プロセスは、1つ以上の撹拌重合反応器を備える撹拌タンク反応器システムを使用する。一般的に、反応器は、反応物の完全な混合を達成する条件下で操作されるべきである。複数反応器システムでは、第1の重合反応器は、好ましくは、より低い温度で操作される。各反応器中の滞留時間は、反応器の設計及び容量に依存する。触媒/活性化剤は、第1の反応器のみに供給しても、2つの反応器に分割して供給してもよい。代替的な実施形態では、ループ反応器及びプラグフロー反応器を本発明に用いることができる。
【0166】
次いで、ポリマー溶液は、流出液流として反応器から排出され、重合反応は、更なる重合を防止するために、典型的には配位極性化合物でクエンチされる。反応器システムを出ると、ポリマー溶液は、経路上の熱交換器システムを通過し、脱揮システム及びポリマー仕上げプロセスに送られる。液相分離の下流で除去された希薄相及び揮発性物質は、重合供給物の一部となるように再循環することができる。
【0167】
ポリマーは、流出液の他の成分からポリマーを分離することによって、いずれかの反応器の流出液又は組み合わされた流出液から回収することができる。従来の分離手段を用いることができる。例えば、ポリマーは、イソプロピルアルコール、アセトン、若しくはn-ブチルアルコールなどの非溶媒を用いて凝固させることによって流出液から回収することができるか、又はポリマーは、溶媒若しくは他の媒体を熱若しくは蒸気で加熱及び真空ストリッピングすることによって回収することができる。酸化防止剤などの1つ以上の従来の添加剤を、回収手順中にポリマーに組み込むことができる。下限臨界溶液温度(lower critical solution temperature、LCST)の使用とそれに続く脱揮などによる他の回収方法も想定される。
【0168】
ある実施形態では、重合は、1)120℃以下、あるいは110℃以下、あるいは100℃以下の上限温度で、50℃以上(好ましくは60℃以上、好ましくは65℃以上)の温度で、溶液プロセスにおいて行われ、2)大気圧~15MPa(好ましくは1~15MPa、好ましくは2~14MPa、好ましくは4~13MPa)の圧力で行われ、3)脂肪族炭化水素溶媒(例えばイソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、及びそれらの混合物;環式及び脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びそれらの混合物;好ましくは、芳香族(トルエンなど)が、溶媒の質量に基づいて、好ましくは1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、好ましくは0質量%で溶媒中に存在する場合)中で行われ、4)エチレンは、重合反応器中に2モル/リットル以下の濃度で存在し)、5)重合は、好ましくは1つの反応ゾーンで行われ、6)触媒化合物の生産性は、触媒1kg当たり5,000kg以上のポリマー(好ましくは、触媒1kg当たり10,000kg以上のポリマー、例えば触媒1kg当たり20,000kg以上のポリマー、例えば触媒1kg当たり40,000kg以上のポリマー、例えば触媒1kg当たり50,000kg以上のポリマー、例えば、触媒効率は、触媒1kg当たり約10,000kgのポリマー~触媒1kg当たり約500,000kgのポリマーであり得る)である。
【0169】
様々な実施形態によるシンジオタクチックリッチエチレン-プロピレンコポリマーの組成は、重合反応器中のモノマーの供給物組成及び濃度と共に変化する。一実施形態では、供給物中のエチレンのプロピレンに対するモル比は、0.29以下、好ましくは0.25以下、好ましくは0.20以下、好ましくは0.15以下、好ましくは0.10以下である。別の実施形態では、供給物中のエチレンのプロピレンに対するモル比は、0.03以上、好ましくは0.035以上である。
【0170】
好ましい実施形態では、重合は、9MPa以上の圧力、120℃の上限温度を伴う60℃以上の温度、及び触媒1kg当たり50,000kgのポリマー~触媒1kg当たり約600,000kgのポリマーの触媒効率で、溶液プロセスにおいて行われる。
【0171】
好ましくは、重合は、9MPa以上の圧力で、0.03以上の、エチレンのプロピレンに対する供給モル比で、触媒1kg当たりポリマー50,000kg~触媒1kg当たりポリマー約600,000kgの触媒効率で、溶液プロセスにおいて行われる。
【0172】
シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、様々な最終用途に使用することができる。このような最終用途は、当該技術分野で公知の方法によって作製することができる。例示的な最終用途は、フィルム、フィルムベースの製品、おむつバックシート、ハウスラップ、ワイヤ及びケーブルコーティング組成物、成形技術、例えば、射出成形又はブロー成形、押出コーティング、発泡、キャスティング、及びそれらの組合せによって形成される物品である。最終使用としてはまた、フィルムから製造される製品、例えば、バッグ、包装、及びパーソナルケアフィルム、パウチ、医療用製品、例えば、医療用フィルム及び静脈内(intravenous、IV)バッグなどが挙げられる。最終用途としてはまた、熱可塑性ポリオレフィン(thermoplastic polyolefin、TPO)屋根シート材、発泡体、不織布、3D印刷、及びリサイクルソリューションが挙げられる。シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーは、潤滑剤用の粘度指数調整剤として使用することもできる。
【0173】
3つの検出器を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromotography with Three Detectors、GPC-3D)
分子量(数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、及びz平均分子量(Mz))は、オンライン示差屈折率(DRI)検出器、光散乱(LS)検出器、及び粘度計(VIS)検出器を備えたAgilent PL220高温GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)を使用して決定される。それは、0.5ml/分の公称流量及び300マイクロリットルの公称注入量で分離するために、3つのPolymer Laboratories PLgel 10μm Mixed-Bカラムを使用する。検出器及びカラムは、145℃に維持されたオーブンに収容した。これらの検出器の詳細及びそれらの較正は、例えば、T. Sun, P. Brant, R. R. Chance, and W. W. GraessleyによるMacromolecules, Volume 34, Number 19, pp.6812-6820, (2001)(参照により本開示に援用する)に記載されている。
【0174】
GPC試験用の溶媒を、6グラムの酸化防止剤としてのブチル化ヒドロキシトルエンを4リットルのAldrich試薬グレード1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)に溶解することによって調製した。次いで、TCB混合物を、0.1マイクロメートルのTeflon(登録商標)フィルターを通して濾過した。次いで、TCBをオンライン脱気装置で脱気した後、GPCに入れた。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量のTCBを添加し、次いで混合物を160℃で約2時間連続撹拌しながら加熱することによって、ポリマー溶液を調製した。全ての量を質量測定法で測定した。注入濃度は1.0~2.0mg/mLであり、高分子量試料にはより低い濃度を使用した。クロマトグラム中の各点における濃度cは、以下の式を用いて、ベースラインを差し引いたDRI信号IDRIから計算される:
c=KDRIDRI/(dn/dc)
式中、KDRIは、約600~11Mの範囲の分子量を有する一連の単分散ポリスチレン標準を用いてDRIを較正することによって決定された定数であり、(dn/dc)は、システムの屈折率増分である。本発明及びその特許請求の範囲の目的のために、全てのエチレン-プロピレンコポリマー及びホモポリマーについて(dn/dc)=0.1048である。GPC法のこの記載全体を通して使用されるパラメータの単位は、濃度が、g/cmで表され、分子量が、g/molで表され、固有粘度が、dL/gで表される。
【0175】
光散乱検出器は、高温18角度Dawn Heleos(Wyatt Technology,Inc.)であった。クロマトグラム中の各点における分子量Mは、静的光散乱のためのZimmモデルを用いてLS出力を分析することによって決定された(M. B. Huglin, LIGHT SCATTERING FROM POLYMER SOLUTIONS, Academic Press, 1971)。
【数6】
ここで、ΔR(θ)は、散乱角θで測定された過剰レイリー散乱強度であり、cは、DRI分析から決定されたポリマー濃度であり、Aは、第二ビリアル係数である。P(θ)は、単分散ランダムコイルの形状因子であり、Kは、システムの光学定数である:
【数7】
式中、Nは、アボガドロ数であり、(dn/dc)は、システムの屈折率増分である。145℃及びλ=657nmでのTCBの屈折率n=1.500。2つの圧力変換器を有する、4つのキャピラリーがホイートストンブリッジ構成で配置された高温Agilent粘度計を使用して、比粘度を決定する。一方の変換器は、検出器にわたる全圧力降下を測定し、ブリッジの2つの側の間に位置する他方の変換器は、差圧を測定する。粘度計を流れる溶液についての比粘度ηは、それらの出力から計算される。クロマトグラム中の各点における固有粘度[η]は、以下の式から計算される:
η=c[η]+0.3(c[η])
式中、cは、濃度であり、DRI出力から決定された。
【0176】
g’visは、シンジオタクチックプロピレン-エチレンコポリマーの固有粘度の、等しい分子量及び組成のアイソタクチックリッチポリプロピレン-エチレンコポリマーの固有粘度に対する比として定義され、以下のようにSEC-DRI-LS-VIS法の出力を使用して計算された。試料の平均固有粘度[η]avgは、以下の式によって計算された:
【数8】
式中、加算は、積分限界間のクロマトグラフスライスiにわたって行われる。
【0177】
g’visは、以下のように定義される:
【数9】
は、LS分析によって決定された分子量に基づく粘度平均分子量であり、a及びKは、本発明及びその特許請求の範囲の目的のためにエチレン-プロピレン共重合体についてα=0.695+TRUNC(10×C3wt)/1000及びK=0.000579×(1-0.48601×C3wt-0.068989×C3wt^2)×(200000)^(-TRUNC(10×C3wt)/1000)であることを除いて、刊行物(T. Sun, P. Brant, R. R. Chance, and W. W. Graessley, Macromolecules, Volume 34, Number 19, pp.6812-6820, (2001))で計算される。別段の記載がない限り、C3wtは、質量パーセントにおけるコポリマーのプロピレン含有量であり、濃度は、g/cmで表され、分子量は、g/モルで表され、固有粘度(したがって、Mark-Houwink式におけるK)は、dL/gで表される。
【0178】
示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)
ピーク融点Tm(融点とも呼ばれる)、ピーク結晶化温度Tc(結晶化温度とも呼ばれる)、ガラス転移温度(Tg)、融解熱(ΔHf又はHf)、及び結晶化度パーセントを、ASTM D3418-03に従う以下のDSC手順を使用して決定した。示差走査熱量測定(DSC)データは、TA InstrumentsモデルQ200装置を用いて得た。およそ5~10mgの質量の試料をアルミニウム密封試料パンに密封した。DSCデータは、最初に試料を10℃/分の速度で200℃まで徐々に加熱することによって記録した。試料を200℃で2分間保持し、次いで10℃/分の速度で-90℃に冷却し、続いて2分間等温にし、10℃/分で200℃に加熱した。第1のサイクル熱事象及び第2のサイクル熱事象の両方を記録した。吸熱ピーク下面積を測定し、融解熱及び結晶化度のパーセントを決定するために使用した。結晶化度パーセントは、式[融解ピーク下面積(J/g)/B(J/g)]×100を使用して計算され、式中、Bは、主要モノマー成分の100%結晶性ホモポリマーの融解熱である。これらのBの値は、John Wiley and Sons, New York 1999により出版されたPolymer Handbook, Fourth Editionから得られるが、100%結晶性ポリプロピレンの融解熱として189J/g(B)の値を使用する場合、100%結晶性ポリエチレンの融解熱として290J/gの値を使用する。本開示で報告される融解温度及び結晶化温度は、別段の記載がない限り、第2の加熱/冷却サイクル中に得た。
【0179】
炭素NMR
ポリマーのコモノマー含有量及び配列分布は、当業者に周知の方法によって13C核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)を使用して測定することができる。他に示されない限り、13C NMR分光法のためのポリマー試料は、1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2に140℃で67mg/mLの濃度で溶解し、試料は、少なくとも512の積算回数で、90°パルス及びゲートデカップリングを使用する10mmクライオプローブを用いて125MHz以上の13C NMR周波数でBruker NMR分光計を使用して120℃で記録した。溶媒1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2の化学シフトは、メチルの主アイソタクチックピークが21.83ppmとなるように、74.24ppmを基準とした。NMRによるポリマーの特徴付けに関与する計算は、Polymer Conformation and Configuration, Academic Press, New Yorkに記載のBovey, F. A.の研究(1969)及びPolymer Sequence Determination, Carbon-13 NMR Method, Academic Press, New Yorkに記載のRandall, J.の研究(1977)に従う。
【表2】
【0180】
連立方程式を、定数が0であると仮定して、出力をトリアド面積とするエクセルのlinest関数を使用して解く。Yは、化学シフト領域の面積として定義され、Xは、各領域についてのトリアド寄与度である。次いで、これは、個々の面積を合計で割ることによって、例えば、linestからのPPP(面積)/(PPP+PPE+EPE+PEP+EEP+EEE)によって、トリアドのモル分率に変換することができる。
【0181】
%rr(PP+EP)は、プロピレンのCH領域を用いて以下のように計算される。
【表3】
【0182】
エチレン-プロピレンコポリマーの化学シフト帰属は、Randallによる“A Review of High Resolution Liquid Carbon Nuclear Magnetic Resonance Characterization of Ethylene-Based Polymers”, Polymer Reviews, 29:2,201-5 317 (1989)に記載されている。コポリマー含有量、モル及び質量%、トリアド配列決定、並びにダイアド計算もまた、この論文においてRandallによって確立された方法において計算され、記載される。
【0183】
の計算は、式r=4×[EE]×[PP]/[EP]に基づき、式中、[EE]、[EP]、[PP]は、ダイアドモル濃度でありEは、エチレンであり、Pは、プロピレンである。Pラン長(プロピレンラン#及びPラン#とも呼ばれる)の計算は、式Pラン#=([EPE]+0.5×[EPP])×100に基づき、式中、[EPE]、[EPP]は、トリアドモル濃度であり、Eは、エチレンであり、Pは、プロピレンである。
【0184】
特に明記しない限り、エチレン-プロピレンコポリマーのエチレン含有量は、ASTM D3900に従ってFTIRを使用して決定した。他のポリマーの組成は、当業者に周知の方法によって13C NMRを使用して得ることができる。本開示の特許請求の範囲では、FTIRからのエチレン含有量が使用される。
【0185】
小振幅振動剪断(SAOS):動的剪断溶融レオロジーデータは、窒素雰囲気下で動的モードにおいて平行プレート(直径=25mm)を使用してAdvanced Rheometrics Expansion System(ARES)で測定した。全ての実験について、レオメーターは、樹脂(ポリマー組成物)の圧縮成形試料を平行プレート上に挿入する前に、190℃で少なくとも30分間熱的に安定であった。試料の粘弾性挙動を決定するために、10%の一定ひずみ下で、190℃の温度で、0.01~385rad/sの範囲の周波数掃引を行った。窒素流を試料オーブン中に循環させて、実験中の鎖延長又は架橋を最小限にした。正弦波剪断ひずみを材料に印加する。ひずみ振幅が十分に小さい場合、材料は線形に挙動する。当業者が認識するように、結果として生じる応力もまた、同じ周波数で正弦的に振動し得るが、ひずみ波に対して位相角δだけシフトし得る。純粋に弾性の材料の場合、δ=0度(応力はひずみと同相)であり、純粋に粘性の材料の場合、δ=90度である。粘弾性材料については、0<δ<90である。周波数の関数としての複素粘度、損失弾性率(G”)及び貯蔵弾性率(G’)は、小振幅振動剪断試験によって提供される。動的粘度は、複素粘度又は動的剪断粘度とも呼ばれる。位相又は損失角δは、G”(剪断損失弾性率)のG’(剪断貯蔵弾性率)に対する比の逆正接である。
【0186】
メルトフローレート(MFR)は、230℃及び2.16kg荷重で、ASTM D1238-13に従って測定される。高荷重メルトフローレート(high load melt flow rate、MFR HL)は、230℃及び21.6kg荷重で、ASTM D1238に従って測定される。
【0187】
追加の実施形態
以下の更なる実施形態は、本開示の範囲内として企図される。
【0188】
実施形態A:a)5~15質量%のエチレン及び85~95質量%のプロピレンと、b)60~90%のrrトリアドと、c)10~250kg/molのMw(LS)とを含み、d)実質的な融解ピークを含まず、ピークの融解熱が、10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(ASTM D3418-03)により決定した場合に5J/g以下である、シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0189】
実施形態B:5~10質量%のエチレンを有する、実施形態Aに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0190】
実施形態C:75~85%のrrトリアドを有する、実施形態A又はBに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0191】
実施形態D:10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定により測定した場合に、第2の加熱サイクルにおいて融点を示さない、実施形態A~Cのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0192】
実施形態E:2.16kg及び230℃で測定したMFRが0.1~650g/10分である、実施形態A~Dのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0193】
実施形態F:0℃以下のガラス転移温度を有する、実施形態A~Eのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0194】
実施形態G:光散乱からの質量平均分子量(MW,LS)が10~120kg/molである、実施形態A~Fのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0195】
実施形態H:分子量分布(Mw,DRI/Mn,DRI)が1.2~2.5である、実施形態A~Gのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0196】
実施形態I:13C NMRからの[EPP]とFTIRからのC2質量%との関係が、1.9833×C2質量%-0.0818<[EPP]<1.3333×C2質量%+0.09である、実施形態A~Hのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0197】
実施形態J:13C NMRからの[EEP]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.2931×C2質量%-0.0187<[EEP]<0.303×C2質量%-0.0045である、実施形態A~Iのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0198】
実施形態K:13C NMRからの[PPP]とFTIRからのC2質量%との関係が、-2.8×C2質量%+0.878<[PPP]<-2.8154×C2質量%+1.0451である、実施形態A~Jのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0199】
実施形態L:13C NMRからの[PEP]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.8923×C2質量%-0.0021<[PEP]<0.9333×C2質量%+0.03である、実施形態A~Kのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0200】
実施形態M:13C NMRからの[EEE]が0.008未満である、実施形態A~Lのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0201】
実施形態N:13C NMRからの[EE]とFTIRからのC2質量%との関係が、0.2×C2質量%-0.016<[EE]<0.1292×C2質量%+0.0082である、実施形態A~Mのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0202】
実施形態O:13C NMRからのプロピレンラン#とFTIRからのC2質量%との関係が、110.67×C2質量%-4.7<[Pラン#]<97.143×C2質量%+4.7286である、実施形態A~Nのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0203】
実施形態P:13C NMRからのrが8.0未満である、実施形態A~Oのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0204】
実施形態Q:DSCからのTgとFTIRからのC2質量%との関係が、-190×C2質量%-9.15<Tg<-175×C2質量%+1.725である、実施形態A~Pのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0205】
実施形態R:GPCからのg’visとMW,LSとの関係が、g’vis>2E-06×MW,LS+0.9703である、実施形態A~Qのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0206】
実施形態S:40℃及び1psigで3ヶ月間エージングした後にペレット安定性を示す、実施形態A~Rのいずれか1つに記載のシンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマー。
【0207】
実施形態T:シンジオタクチックプロピレンコポリマーを作製する方法であって、均一相において、プロピレン及びエチレンを、活性化剤及び触媒化合物を含む触媒系と接触させることと;シンジオタクチックプロピレンコポリマーであって、(a)ポリマーの質量に基づいて85~95質量%のプロピレンと、(b)60~90%のrrトリアドと、(c)10~250kg/molのMw(LS)とを含み、(d)実質的な融解ピークを含まず、ピークの融解熱が、10℃/分の走査速度での示差走査熱量測定(ASTM D3418-03)により決定した場合に5J/g以下である、シンジオタクチックプロピレンコポリマーを得ることと、を含む、方法。
【0208】
実施形態U:約50℃~約110℃の温度、約1MPa~約14MPaの範囲の圧力で行われる、実施形態Tに記載の方法。
【0209】
実施形態V:約50℃~約110℃の温度、約3MPa~約14MPaの範囲の圧力で行われる、実施形態Tに記載の方法。
【0210】
実施形態W:方法が、TP1以上の重合温度で行われ、TP1=0.9×EXP(-0.005×rr)であり、式中、TP1の単位が、℃であり、rrが、13C NMRを使用して測定されたトリアドタクチシチー指数である、実施形態T~Vのいずれか1つに記載の方法。
【0211】
実施形態X:重合が、9MPa以上の圧力、約50℃~約120℃の温度、及び触媒1kg当たり50,000kg以上のポリマーの触媒効率で、溶液プロセスにおいて行われる、実施形態T~Wのいずれか1つに記載の方法。
【0212】
実施形態Y:重合が、9MPa以上の圧力、約0.01~約0.2の、エチレン供給物のプロピレン供給物に対するモル比、及び触媒1kg当たり50,000kg以上のポリマーの触媒効率で、溶液プロセスにおいて行われる、実施形態T~Xのいずれか1つに記載の方法。
【0213】
実施形態Z:触媒系が、式(1a)によって表される触媒化合物を含み、
【化17】
式中、
Mは、ジルコニウム又はハフニウムであり、
Gは、架橋基であり、
各Xは、独立して、ヒドリドラジカル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルであるか、又は両方のXが連結し、かつ、金属原子に結合して、約3~約20個の炭素原子を含有するメタラサイクル環を形成しているか、又は両方が一緒になってオレフィン、ジオレフィン若しくはアライン配位子となっているか、又は両方のXは、独立して、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド若しくは他の一価アニオン性配位子であってもよいか、あるいは両方のXが連結してジアニオン性キレート配位子を形成していてもよく、
各R及びRは、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、ゲルミルカルビル又は極性ラジカルから選択され、任意選択で、2つ以上の隣接する置換基が連結して、置換又は非置換の飽和、部分不飽和又は芳香族環式又は多環式置換基を形成してもよく、ただし、各Rは同じであり、各Rは同じであり、化合物がC対称又は擬C対称となることを可能にし、
各Rは、独立して、他方に対して対称又は擬対称の置換基であり、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルラジカルから選択され、
各Rは、他方に対して対称又は擬対称の置換基であり、独立して、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビルラジカルから選択される、実施形態T~Yのいずれか1つに記載の方法。
【0214】
実施形態AA:Mが、ジルコニウムであり、Xが、メチル又はクロロであり、Gが、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン又はジフェニルメチレンであり、各R、R及びRが、水素であり、各Rが、メチル、エチル、プロピル又はブチルである、実施形態T~Zのいずれか1つに記載の方法。
【0215】
実施形態BB:Xが、メチルであり、Gが、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレンであり、各R、R及びRが、水素であり、各Rが、tert-ブチルである、実施形態T~AAのいずれか1つに記載の方法。
【0216】
実施形態CC:活性化剤が、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、N-メチル-4-ノナデシル-N-オクタデシルアニリニウム[テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート]、ジ(水素化タロー)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、ジ(水素化タロー)メチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、及びジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレートのうちの1つ以上から選択される、実施形態T~BBのいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0217】
シンジオタクチックエチレン-プロピレンコポリマーを、連続溶液重合プロセスで製造した。表1に列挙した実施例G1~G20の重合は、連続撹拌タンク反応器システムで行った。1リットルのオートクレーブ反応器に、スターラー、圧力制御装置、及び温度制御装置を有する水冷/蒸気加熱要素を備え付けた。反応器は、反応物混合物の沸点圧力を超える反応器圧力で液体充填条件において操作し、反応物を液相に保った。イソヘキサン及びプロピレンは、Pulsa供給ポンプによって反応器にポンプ輸送した。エチレン及びHは、それら自体の圧力下で気体としてBrooksフロー制御装置を流れた。エチレン、プロピレン及びH供給物を1つの流れに合わせ、次いで少なくとも0℃に冷却しておいた予冷イソヘキサン流と混合した。次いで、混合物を単一のラインを通して反応器に供給した。捕捉剤溶液(トリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)(ヘキサン中25質量%、Sigma Aldrich)のイソヘキサン溶液)もまた、任意の触媒毒を更に低減するために、反応器に入れる直前に、組み合わされた溶媒及びモノマー流に添加した。触媒溶液を、別々のラインを通るISCOシリンジポンプを用いて反応器に供給した。イソヘキサン(溶媒として使用)及びモノマー(例えば、エチレン及びプロピレン)を、アルミナ及びモレキュラーシーブの床上で精製した。触媒溶液を調製するためのトルエンを、同じ技術によって精製した。全ての実施例の反応器圧力は、約350psigであった。
【0218】
反応器内で作製されたポリマーは、圧力を大気圧まで下げる背圧制御弁を通って出た。これにより、溶液中の未転化モノマーが蒸発して蒸気相となり、これを気液分離器の頂部から排出した。ポリマー及び溶媒を主に含む液相を、ポリマー回収のために収集した。収集した試料を最初にフード内で空気乾燥させて溶媒の大部分を蒸発させ、次いで真空オーブン内で約90℃の温度で約12時間乾燥させた。真空オーブン乾燥した試料を秤量して収量を得た。
【0219】
触媒は、トルエン中、約1:1のモル比で活性化剤と予備混合した。実施例G1~G20の全てについて、ジフェニルメチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル(触媒#1)を使用した。この触媒をN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(活性化剤A)で予備活性化した。詳細なプロセス条件及びいくつかの特徴付けデータを表1に列挙する。触媒及びTONA供給速度は、目標転化率を達成するように調節することができる。触媒#1及び触媒#2の化学構造を以下に示す:
【化18】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0220】
実施例G21~G44は、使用した触媒が、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル(触媒#2)であったことを除いて、実施例G1~G20の作製に使用したのと同じ手順に従って製造した。この触媒をN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(活性化剤A)で予備活性化した。詳細なプロセス条件及びいくつかの特徴付けデータを表2に列挙する。触媒及びTONA供給速度は、目標転化率を達成するように調節することができる。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【0221】
実施例G45~G59は、使用した触媒が、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル(触媒#2)であったことを除いて、実施例G1~G20の作製に使用したのと同じ手順に従って製造した。この触媒をN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ヘプタフルオロ-2-ナフチル)ボレート(活性化剤B)で予備活性化した。詳細なプロセス条件及びいくつかの特徴付けデータを表3に列挙する。触媒及びTONA供給速度の両方は、目標転化率を達成するように調節することができる。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0222】
表4に列挙した実施例M1~M8の重合は、28リットルの連続撹拌タンク反応器(オートクレーブ反応器)中で溶液プロセスを使用して行った。オートクレーブ反応器に、撹拌機、圧力制御装置、及び熱損失を防ぐための断熱材を備え付けた。反応器温度を、触媒供給速度を制御することによって制御し、熱除去を、供給物冷却によって実現した。全ての溶媒及びモノマーを、アルミナ及びモレキュラーシーブの床上で精製した。反応器を、液体が満たされた状態で、11.03MPaの圧力で操作した。イソヘキサンを溶媒として使用した。それは、タービンポンプを用いて反応器に供給し、その流量を下流のマスフロー制御装置によって制御した。圧縮され、液化されたプロピレン供給物は、マスフロー制御装置によって制御した。水素(使用する場合)を、サーマルマスフロー制御装置を通して反応器に供給した。エチレン供給物もまたマスフロー制御装置によって制御した。エチレン、プロピレン及び水素(使用する場合)を、マニホールドを介して別々の添加点でイソヘキサン蒸気に混合した。トリ-n-オクチルアルミニウムのイソヘキサン中3質量%混合物も、別々のラインを通してマニホールドに添加し(捕捉剤として使用)、モノマー、捕捉剤、及び溶媒の組み合わされた混合物を単一のラインを通して反応器に供給した。
【0223】
実施例番号M1~番号M7の重合に使用した触媒は、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル(触媒#2)であった。この触媒を、4リットルのトルエン中、約1:1のモル比で、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ヘプタフルオロ-2-ナフチル)ボレート(活性化剤B)で予備活性化した。実施例M8では、ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル(触媒#2)を、4リットルのトルエン中、約1:1のモル比で、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(活性化剤A)と予備混合した。固体が溶解した後、撹拌しながら、触媒溶液をISCOポンプに充填し、反応器に計量供給した。触媒供給速度は、表4に示すように、モノマー供給速度及び反応温度と共に制御した。
【0224】
作製したポリマーも表4に記載する。反応器生成物流を微量のメタノールで処理して重合を停止させた。次いで、混合物を低圧フラッシュ分離で溶媒から解放し、Irganox(商標)1076で処理し、次いで脱揮押出機プロセスに供した。次いで、乾燥したポリマーをペレット化した。
【表7-1】
【表7-2】
【0225】
実施例M8で作製したポリマーは球状にペレット化した(約26ペレット/グラムのペレットサイズ)。ペレットを安定性試験に供した。ペレット安定性試験は、40℃及び1psigの圧力下で90日間、換気装置を有するオーブン中で行った。ペレットの上面に印加される圧力が1psigになるように、上部に特注の重りを有する100mlのガラスビーカーにおよそ35グラムの試料を入れた。ペレットを90日後にガラスビーカーから注ぎ出し、良好に分散した個々のペレットが観察された。
【0226】
比較例のセットを表5に列挙する。例C1~C22は、(1)ジフェニルメチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル(触媒#1)及びN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(活性化剤A)を例C1~C6で使用したこと、(2)ジ(パラ-トリエチルシリルフェニル)メチレン(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル(触媒#2)及びN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(活性化剤A)を例C7~C20で使用したことを除いて、実施例G1~G20の作製に使用したのと同じ手順に従って製造した。詳細なプロセス条件及びいくつかの特徴付けデータを表5に列挙する。触媒及びTONA供給速度の両方は、目標転化率を達成するように調節することができる。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【0227】
表6は、参照材料としてのExxonMobil Chemical Companyから入手可能な市販のVistamaxx(商標)ポリマーを列挙する。Vistamaxx(商標)ポリマーは、アイソタクチックリッチプロピレン-エチレンコポリマーである。CV1~CV4は、それぞれVistamaxx(商標)3000、Vistamax(商標)6102、Vistamaxx(商標)6502、Vistamaxx(商標)3588FLである。
【表9】
【0228】
図1は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマー及び表6に列挙された非シンジオリッチEP Vistamaxx(商標)参照試料それぞれについての、13C NMRからの[PPP]対GPCからのMw,LSを示す。同様のMWにおいて、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーは、参照試料と比較して、より高い[PPP]値を示す。
【0229】
図2は、オーブンから取り出した直後の試料M8の写真である。試料M8は、オーブン中40℃及び1psigの圧力下で90日間エージングした後に良好なペレット安定性を示す。圧力が大気圧より1psi高くなるように、上部に特注の重りを有するビーカーに試料を入れた。90日後にオーブンから取り出した後、ペレットは個々のペレットのままであった。
【0230】
図3は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのC2質量%及び13C NMRからの[EPP]を示す。2つの傾向線は、本発明のシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについて、FTIRからのC2質量%と13C NMRからの[EPP]との関係を確立する。
【0231】
図4は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのC2質量%及び13C NMRからの[EEP]を示す。2つの傾向線は、本発明のシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについて、FTIRからのC2質量%と13C NMRからの[EEP]との関係を確立する。
【0232】
図5は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのC2質量%及び13C NMRからの[PPP]を示す。2つの傾向線は、本発明のシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについて、FTIRからのC2質量%と13C NMRからの[PPP]との関係を確立する。
【0233】
図6は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのエチレン含有量及び13C NMRからの[PEP]を示す。2つの傾向線は、本発明のシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについて、FTIRからのエチレン含有量と13C NMRからの[PEP]との関係を確立する。
【0234】
図7は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのC2質量%及び13C NMRからの[EE]を示す。2つの傾向線は、本発明のシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについて、FTIRからのC2質量%と13C NMRからの[EE]との関係を確立する。
【0235】
図8は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのC2質量%及び13C NMRからのプロピレンラン#を示す。2つの傾向線は、本発明のシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについて、FTIRからのC2質量%と13C NMRからのプロピレンラン#との関係を確立する。
【0236】
図9は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのFTIRからのC2質量%及びDSCからのガラス転移温度Tを示す。2つの傾向線は、本発明のシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについて、FTIRからのC2質量%とDSCからのTgとの関係を確立する。
【0237】
図10は、本開示によるシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについてのGPCからのg’vis及びMW,LSを示す。2つの傾向線は、本発明のシンジオタクチックポリプロピレン系エチレン-プロピレンコポリマーについて、GPCからのg’visとGPCからの光散乱からの質量平均MWとの関係を確立する。
【0238】
本開示に記載される全ての文書は、本開示と矛盾しない範囲で、任意の優先権文書及び/又は試験手順を含めて、参照により本開示に援用される。前述の概略的な説明及び特定の実施形態から明らかなように、本開示の形態を例示及び記載してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができる。したがって、本開示がそれによって限定されることは意図されない。
【0239】
説明を簡潔にするために、特定の範囲のみが本開示に明示的に開示される。しかしながら、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を記載してもよく、同様に、任意の下限からの範囲を任意の他の下限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を記載してもよく、同様に、任意の上限からの範囲を任意の他の上限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を記載してもよい。更に、範囲内には、明示的に記載されていなくても、その端点間の全ての点又は個々の値が含まれる。したがって、全ての点又は個々の値は、明示的に記載されていない範囲を記載するための、任意の他の点若しくは個々の値又は任意の他の下限若しくは上限と組み合わされるそれ自体の下限又は上限としての役割を果たし得る。
【0240】
別段の指定がない限り、「から本質的になる(consists essentially of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、本明細書で具体的に言及されているか否かにかかわらず、他のステップ、要素、又は材料が、本開示の基本的かつ新規な特徴に影響を及ぼさず、更に、使用される要素及び材料に通常関連する不純物及び変動を除外しない限り、このようなステップ、要素、又は材料の存在を除外しない。
【0241】
同様に、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義であると考えられる。同様に、組成物、要素又は要素の群に移行句「含む」が先行する場合は常に、移行句「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」又は「である」が組成物、要素又は複数の要素の列挙に先行する場合と同じ組成物又は要素の群も企図しており、逆もまた同様であることが理解される。
【0242】
用語「a」及び「the」は、本開示で使用される場合、単数形だけでなく複数形も包含すると理解される。
【0243】
様々な用語が上で定義されている。特許請求の範囲で使用される用語が上で定義されていない場合は、少なくとも1つの印刷された刊行物又は発行された特許に反映されているような、当業者がその用語に与える最も広い定義が与えられるべきである。更に、本出願において引用される全ての特許、試験手順、及び他の文書は、このような開示が本出願と矛盾しない範囲で、かつこのような援用が許容される全ての法域について、参照により全体が援用される。
【0244】
本開示の前述の記載は、本開示を例示及び記載する。加えて、本開示は、好ましい実施形態のみを示し、記載しているが、上述のように、本開示は、様々な他の組合せ、修正、及び環境において使用することが可能であり、上記の教示及び/又は関連技術の技能若しくは知識に相応して、本開示で表される概念の範囲内で変更又は修正することが可能であることを理解されたい。上記は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく本開示の他の実施形態及び更なる実施形態を考案することができ、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
【0245】
上で記載された実施形態は、その実施に関して知られている最良の形態を説明し、当業者が本開示を、このような実施形態又は他の実施形態において、特定の用途又は使用によって必要とされる様々な修正と共に利用することを可能にすることを更に意図している。したがって、本明細書は、それを本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。また、添付の特許請求の範囲は、代替的な実施形態を含むと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】